くにさくロゴ
1984/06/11 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 地方行政委員会 第19号
姉妹サイト
 
1984/06/11 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 地方行政委員会 第19号

#1
第102回国会 地方行政委員会 第19号
昭和六十年六月十一日(火曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月七日
    辞任         補欠選任
     藤田  栄君     上田  稔君
 六月十日
    辞任         補欠選任
     丸谷 金保君     野田  哲君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         金丸 三郎君
    理 事
                岩上 二郎君
                松浦  功君
                上野 雄文君
                三治 重信君
    委 員
                井上  孝君
                上田  稔君
                上條 勝久君
                古賀雷四郎君
                出口 廣光君
                吉川 芳男君
                佐藤 三吾君
                野田  哲君
                中野  明君
                峯山 昭範君
                神谷信之助君
   国務大臣
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    古屋  亨君
   政府委員
       警察庁長官    鈴木 貞敏君
       警察庁長官官房
       長        鈴木 良一君
       警察庁刑事局保
       安部長      中山 好雄君
       警察庁交通局長  太田 壽郎君
       警察庁警備局長  柴田 善憲君
       自治大臣官房長  津田  正君
       自治省行政局長  大林 勝臣君
       自治省行政局選
       挙部長      小笠原臣也君
       自治省財政局長  花岡 圭三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高池 忠和君
   説明員
       総務庁長官官房
       参事官      石出 宗秀君
       総務庁長官官房
       参事官      戸田 正之君
       総務庁行政管理
       局管理官     藤澤 建一君
       法務省民事局第
       二課長      細川  清君
       法務省入国管理
       局登録課長    黒木 忠正君
       大蔵省主計局主
       計官       吉本 修二君
       大蔵省銀行局保
       険部保険第二課
       長        鏡味 徳房君
       文部省体育局学
       校保健課長    下宮  進君
       運輸省地域交通
       局陸上技術安全
       部技術企画課長  福田 安孝君
       建設省道路局道
       路交通管理課長  横内 正明君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(金丸三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る七日、藤田栄君が、また昨十日、丸谷金保君が委員を辞任され、その補欠として上田稔君、野田哲君がそれぞれ選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(金丸三郎君) 道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○神谷信之助君 まず最初に、六月の二日の午後四時過ぎに、東京都北区赤羽駅東口すずらん通りで反核署名の街宣行動中の北区日本共産党青年後援会員が軽犯罪法違反などを理由に逮捕された事件と、同日、午後四時四十分ごろ、八王子市長沼町においてポスターを張っていた共産党後援会の労働者が逮捕された事件について、概要の報告をまず求めます。
#5
○政府委員(中山好雄君) 今お尋ねの二件の概要でございますが、まず赤羽の関係でございます。六月二日の午後四時十七分ごろ、東京都北区赤羽二の十四の一付近の路上におきまして、十数人の者が道路わきの商店街のアーケードの支柱や電柱などに高さ三メートルほどののぼりをくくりつけておりました。これをたまたま通りかかった警察官が発見したわけでございます。そこで、その警察官がそのうちで、そこの美宝堂というお店の前のアーケードの支柱にのぼり三本を一緒にしてビニールひもで上下二カ所にくくりつけた男の一人に対しまして、のぼりをくくりつけた行為に対し、アーケードの支柱の管理者の許可を受けているのかどうか質問いたしました。そうすると、その男は許可を受けていないという答えでございました。そこで、警察官がさらに住所と名前を質問したのに対しまして、その男は名前なんか言う必要はないだろうと言いながら、今度はくくりつけたばかりののぼり三本のひもを急遽外しまして、旗を持って逃げようとした。そのため、午後四時二十分ごろこの男を軽犯罪法第一条三十三号違反の現行犯人として逮捕したものでございます。
 さらに、この事犯の直後の同じ日の午後四時四十分ごろ、その付近のサトウビル、ユニーク洋品店前の路上において、警察官が逮捕した被疑者を応援要請で駆けつけた警察車両に乗車させようとしたところ、現場におりました十数人の者が警察車両や警察官を取り囲み、口々に不当逮捕だ、何をするんだなどと叫び、その中の一人の男が、どこへ連れて行くんだ、何を根拠に連れていくんだなどと大声でどなりながら一人の警察官の右腕のそで口を両手で強く引っ張るとか、さらに逮捕した被疑者を警察官から引き離そうとするように割り込んで、右のひじでこの警察官の左胸をひじ打ちで数回突くなどの暴行を加えたということで、これは公務執行妨害の現行犯と認めて現場で逮捕したものでございます。
 次に八王子関係でございますが、これは同じ六月二日午後四時三十分ごろ、事件捜査に従事していた警視庁八王子警察署の警察官が、八王子市の長沼町の二百六番地先路上に車両で差しかかったところ、その前の約十メートル先の小田急建設共同事業体事務所の管理する工事現場の鉄の塀にポスター様のものを手でなでつけている男二人を発見いたしました。近づいて見ますと、男のうちの一人がポスターについている両面接着テープの裏紙を取り、両手でなでるようにして、演説会の告知用のポスター、これは都議選の予定候補の方の顔写真入いりでございます、それ一枚を張ったのを現認したわけでございます。そこで警察官は、車両からおりて、二人の男に対しまして、許可の有無について質問しましたところ、そのうちの一人は、ここの人に許可を受けた、もう一人の人も、許可を受けているから張っているんだと言いながら、約十メートル離れたその鉄塀にさらに二枚のポスターをその二人のうちの一人が張ったのを認めたわけでございます。そこで警察官は、この両名を帯同しまして、ポスターを張りつけられた鉄の塀の管理者側に許諾の有無について問い合わせましたところ、許可をしていないという旨の確認ができた。そこで、その両名に対しまして住所、氏名を質問しましたが、二人ともその点について黙秘した。さらに、川崎街道の方向に逃走しかけたということで現行犯逮捕したということでございます。
#6
○神谷信之助君 まず最初に、赤羽の方の事件についてお伺いいたしますが、これは軽犯罪、最初の逮捕ですね。軽犯罪法違反ということですけれども、それは何に該当するわけですか。
#7
○政府委員(中山好雄君) 軽犯罪法一条三十三号に該当しております。
#8
○神谷信之助君 その三十三号、幾つかありますね。どれに該当するんですか。
#9
○政府委員(中山好雄君) みだりに他人の家屋その他の工作物に張り札をしたということでございます。
#10
○神谷信之助君 そうすると、のぼりでしょう、いわゆる俗称桃太郎旗というのですか、それがなぜ張り札になるんですか。
#11
○政府委員(中山好雄君) 軽犯罪法の一条三十三号の他人の家屋その他の工作物に張り札をする行為を処罰するという趣旨は、これらの工作物等に関する財産権、管理権、それから美観を保護しようとするものであるわけでございます。こういった権利の保護の観点からは、張り札の材質、形状は問わないというのが判例にもございます。したがって、のぼりの形をしていても、それ自体では犯罪の成立を妨げないと解せられるところでございます。
 張り札をするという行為、これは札をひもや針金などで工作物に結びつけて固定するものも含まれるというのが判決例でございますので、今申しましたのぼりをビニールひもで工作物等に結びつけて固定する行為、これはやはり軽犯罪法の一条三十三号の張り札をしたことになる、こういうふうに解されると思います。
#12
○神谷信之助君 それはちょっと無理があるのじゃないんですか。例えば五十六年八月五日の東京高裁判決、御承知だと思うのですが、立て看板事件の控訴審判決では、あのときは立て看板です。のぼりじゃないです。その立て看板を他の工作物に付着させても、立て看板本来の機能である脚部の存在を失わしめるような付着でなければ張り札と同視できないとして無罪の判決をし、検察庁は上告断念をしたために確定をした判例がありますね。したがって、これは立て看板ですよ。あの判例の中にもありますように、立て看板を立てるということが主であって、固定をさせる行為は従であるという判断をして無罪の判決になっているのですけれども、これは確定判決としてあるわけです。今度はのぼりですから、のぼりが何で張り札に該当するのか。のぼりはハタハタはためくのだから、その旗を全部壁なら壁に固定をさせるということになれば張り札にそれは該当する、これはわかります。それですから、何で張り札になるのかというように思うのだけれども、少し拡大解釈をし過ぎるのじゃないかというふうに思うのですが、いかがですか。
#13
○政府委員(中山好雄君) 今も申しましたように、軽犯罪法一条三十三号の趣旨というのは、やはりこれらの工作物に関する財産権、管理権、美観を保護しようとするというもので、その材料が紙であっても木であっても金属であっても材質や形状は問わないものというふうに解されるわけでございます。その紙、全部張らなければいけないかというと、そうではないというふうに私どもは考えているわけでございます。
 それからもう一つ、先ほど東京高裁の判決例を御引用になりましたが、問題は、工作物あるいは対象物に付着させる、その付着のさせ方だと思います。付着の態様や程度が張り札と言えるような、そういうことになっているかどうかという点が問題になろうと思います。この場合はビニールひもでアーケードの支柱に二カ所にわたって二重にくくりつけたということで、これは三十三号で言う程度の付着行為があった、こういうふうに私どもは見ているわけでございます。
#14
○神谷信之助君 この問題で、「注解 特別刑法 軽犯罪法編」で三十三号の解釈について木谷明裁判官の解説がありますが、これによると、検察庁におられた伊藤榮樹さん、あの人のを引用して、「「みだりに」は、占有者・管理者の承諾かないことと、必ずしも同義ではなく、その承諾がなくても、社会通念上是認されるような理由があれば、「みだりに」にあたらないこともありうるわけである。どのような事情があれば、社会通念上是認されるような理由ありとされるのかは、結局は、当該行為に出るに至った経過、目的、行為の態様(特に、はり札の場合は、その貼付方法、復元の難易等)、行為の場所、管理権侵害の程度などを総合考察して決するほかはない。」、こういう解説で、幾つかの判例を引用して解説をしていますね。
 だから、このアーケードの鉄柱にビニールのひもで二カ所くくりつけて固定させた。そして、行為は何かというたち、署名行動をやるための宣伝行動でしょう。反核署名、そのことを通行人なり、みんなに知ってもらって協力をお願いする。それが終われば取り外されるもの、そこに置きっ放しにするものではない。だから、こういった復元も極めてたやすいものだし、経過、目的においても社会通念上是認される内容の範囲内に私はなるというように思うのですが、そういう核兵器反対の署名運動や大衆的な行動を、その目的を達成をするために、より理解を求め、協力を求めるための一切の行動までが、それは張り札に該当するといって逮捕するというのは、私はどう考えたって認めるわけにいかぬのです。ちょっと余りにも拡大解釈じゃありませんか。立て看板を立てて、そしてそれを固定をさせるというのと、のぼりを持っていって立て看板の場合は二、三日なり一週間置く場合もあるでしょう。のぼりの場合は大体、終わったらすぐ持って帰る。そんなところへ置いておいたらだれにとられるかわからない、これは有償の物件ですから。立て看板とのぼりと同一視すること自身も、私は無理があるような気がしますが、いかがですか。
#15
○政府委員(中山好雄君) 私どもで検挙したものはアーケードの商店の一人の方の管理する一本のアーケードの支柱に三本ののぼりをくくりつけた、こういうものでございます。その中身は、一つは「飯田幸平さんとともに核兵器廃絶を」、これは共産党の都議会議員のお名前だそうでございます。それと「核兵器全面禁止を今こそ実現しよう」、それからもう一つが「核兵器廃絶を青年の手で」、この三つをくくりつけたということでございます。このほかに十数本ちょっと並べてくくりつけているわけでございます。これは見方によっては美観を害しないということも言えるかもしれませんが、商店街のそれぞれの支柱等の管理者の立場からすれば、これは困るという方もあり得るわけでございます。そして、そして、現に今回の事件について管理者の御意向を聞いたら、許可をしていない、それを立ててもらっては困る、こういう御意向だということでございます。何といっても管理者の許諾といいますか、了解というのが大事であると思いますが、それを得ずにやっているというのはやはり問題ではないか、こう思うわけでございます。
#16
○神谷信之助君 これは、今までにものぼりをひもでくくりつけてやったもので軽犯罪法一条三十三号違反ということで逮捕したりした例はあるんですか。
#17
○政府委員(中山好雄君) 定かには承知しておりませんが、私の承知する限りでは初めてでございます。ただ、警告等で、そののぼりをやるのを警告を受け撤去したような事例が私どもの知らない範囲で、あるかもしれません。
#18
○神谷信之助君 警告をした事例も恐らくないでしょう。京都で四条河原町の四つ角で土曜、日曜になったらほとんどやっていますよ、それぞれのいろんな団体が署名運動をやったりビラをまいたりするために。警官が横におったって一言も文句を言いませんよ。私もそこでメガホン持って通行中の人に訴えています。東京都内でも恐らくそういうことは自由にやられているんです。だから警察庁は、そういうのぼりをアーケードの鉄柱に無断でくくりつけた場合、これはこれからは軽犯罪法の一条三十三号違反として、言うことを聞かなければ逮捕すると、そういうように方針を変えたんですか。方針を変えたとしか思えぬじゃないですか。
#19
○政府委員(中山好雄君) 軽犯罪法といいますのは、それ自体罪となる行為は国民の日常生活における余り程度の大きくない迷惑行為など、比較的軽微なものであるわけであります。しかし、これらの行為を放置するということは社会における法秩序無視の傾向を強め、あるいは重大な犯罪や事故に発展することも考えられるということで、その態様に応じて警察は警告したり指導したり、あるいは検挙したりと、こういうことをやっているわけでございます。京都の事例というのは私存じませんが、やはりそういうのぼりでも一条三十三号に該当するものと私ども考えております。態様によってそれらのいずれかの措置をとっていくわけでございますが、大体警察官の警告ないし指導に従って直していただけるのが大半と存じますが、場合によっては検挙という事態も、今後ともあり得るかもしれないと思っております。
#20
○神谷信之助君 今の答弁は重要です。私自身でさえも何偏もやっていますけれども、一回も警告も指導もされたことがない。東京都内においてもそういう事案は起こっていない。だからそれは、違法の行為ではない、軽犯罪法の一条三十三号には当たらない、いつもやっていることだ。だから安心をしてやろうとするんですよ。これは当たり前ですよ。これはそれに該当するということをちゃんと法律的にも確定をするならば、これはまたそれでわかります。そういうことはしたらいかぬとわかっているのだったらせぬ。してもいいということで従来きていることを警察庁の方で勝手に解釈を変えて、該当するのだと、これからはやるでしょう。ますますそれこそ大衆の運動というものを抑えていくということになって、わざわざこの軽犯罪法制定のときに第四条を加えたこの趣旨に反するわけでしょう。だから、旧法の警察犯処罰令でしたか、あれが人民の、国民のいろんな運動を弾圧をする武器になっておったという反省の上に立って、したがって軽犯罪法の問題でも第四条を特別に入れたわけでしょう。だからこの辺は、今の問題は私は重要だと思いますよ。
 警官にこれは軽犯罪法違反であると言われても当該の人間はどう言っています、その現場で。なぜ軽犯罪法違反になるんですか、今までちゃんと普通にやっているじゃありませんか、なぜですかと。そうしたら、そのときに大西という刑事さん――ここにそのときのテープがあります。大体路上でわあっとやっているところですから全部細かくはいきませんけれども、非常に聞き取りにくい部分もありますから、聞き取りできたところによると、大西刑事と言うてみずから名乗っておられますからわかります。何でそうなるんだ、軽犯罪法の何条何号ですかと聞いていますよ。
 ただそれには、それはこんなところでできぬ、説明してやるから署へ来いと、こう言うているんですよ。そういう押し問答がやられているのでしょう。だから、この段階では軽犯罪法違反ですよといって、それじゃ軽犯罪法の具体的に何条に何で張り札行為に当たるのですかと言っていろいろやりとりしています。そしたら、ここでは何だから、説明してわからないなら連れていくんだと、こう言って署に同行を求めているんです。逮捕じゃない、任意同行を求めている形態ですが、任意同行ですとは直接言ってない、逮捕とも言っていません。説明してわからないから連れていくんだよというのが最後のところの話です。それまで何遍も、説明してやるから署まで来いということを何回も繰り返して言っています。現場での説明はない。軽犯罪法違反だと言うだけですよ、このテープにあるのは。
 だから、あなた方はそこでのぼりを持って逃げようとしたから逮捕したのだと、こうおっしゃるけれども、逃げるどころの騒ぎじゃない。警官の方がそう言いながら、さあ署へ行きましょうと言って二人の警官が両腕を抱えて、そして車の中へ引っ張り込もうとする。本人は行く必要はないと任意同行を拒否しているのです。だから、ここで説明するならせいやと言うておる。だから、逮捕じゃなしに任意同行で強制連行されようとするそのA君に対して、正当防衛をするために周りの者が、連れていくな、納得してないんだからと、こう言っている内容でしょう。そのもつれ合いの中であなた方は公務執行妨害罪ということを言い出した。それで今度は無理やりにB君を捕まえて車にねじ込むその行動の中で、そのB君に対しては全治五日間、五日間の診断書がありますから、そういうけがを与えています。これがこのテープでもはっきりしているのです。
 だから、この問題は私は二つ問題があって、一つはこののぼりを立てて短時間署名行動なら署名行動するための行為としてそれを立てる、くくりつける、それを今までは警告も指導もない。突如として警察庁の方針を変えて、反核平和署名運動を弾圧する意図を持って、明確に言うたら、やらせない、従わなければ逮捕すると、こういう方針をとったと言わざるを得ないでしょう。
 もう一つは、現行犯逮捕で告知義務が確かに法文上はありませんね。明文の規定はない。しかし、そこで実際に警察官が言っていることは、軽犯罪法違反の説明をしてやるから署に来なさい、そのために連れていくんですよとして、周りの人にも説明をしている。任意同行で強制あるいは逮捕という意思表示、職権の発動、その行為を明確に国民の前には明らかにしてない。したがって、A君が行きたくないというその正当防衛権を確立をするというか保障するためにB君がA君の腕を引っ張ってとめようとする。警官はそれを妨害しようとするでしょう。そうしたらそれを公務執行妨害と、まさにこれは不当だと思います。
 それは現行犯で逮捕すると仮にしても、今まであなた方はそういうのは犯罪行為とは認めてなかったのだから、警察官の面前で堂々と今までやっているのだから、全国至るところでこれは一件もないですよ。これは正当な行為だということで国民がやっているのに、警察が決めたらそれは絶対に正しいんだ、それに従わない者は逮捕するんだと、まさにもう甚だしい増上慢といいますか、権力にあぐらをかいたそういう行為だと私は思うんです。許せぬです。そのことが、そういう行為が社会的に議論があったにしても、異論があるにしても、意見、見解が分かれるにしても、軽犯罪法違反の疑いがある行為だということで一定の事例なり一定の解釈なりそういうものが闘わされておる、そういう疑いがある行為だということがわかっていればまた別です。違うんだ。
 しかも、五十六年八月の東京高裁確定判決でも、立て看板でさえも脚部がちゃんとあって立てかける状況が残っている限りはこの張り札には当たらないとするんでしょう。私は、これはまさに警察権の乱用以外の何物でもないというように思いますが、警察側の見解を聞きたいと思います。
#21
○政府委員(中山好雄君) 先ほどから申し上げておりますとおり、のぼりもやはり張り札となり得るものであると。
 それから、先ほどの東京高裁の判決で言っているのは、その立て看板の工作物に対する付着の態様が余り強くなかった、こういうことで張り札とするに当たらないという判断をされているようでございますが、今回の場合は、先ほど申しましたように、アーケードの支柱に上下二カ所にビニールのひもでくくりつけるという付着の仕方をしている。そういったことから、やはり軽犯罪法一条三十三号に該当するものと、こういうふうに考えているわけでございます。
 それからもう一点の、署へ任意同行するつもりだったではないか、それを嫌だということで正当な権利の行使をなさった、こういうことでございますが、私どもの聞いているところでは、その場で先ほど申しましたアーケードの支柱の管理者の許可を受けているのかどうか質問したところ、男は許可を受けていないと答えた。そこで警察官がさらに住所と名前を質問したのに対し、男は名前なんか言う必要はないだろうということでありましたものですから、その場で逮捕いたしました。その際、私どもで報告を受けているところでは、軽犯罪法違反の現行犯人として逮捕する旨を告げているわけでございます。
#22
○神谷信之助君 なるほど、報告によれば現行犯逮捕を行うということを告げているという報告を受けているんですね。だから、現場の警察官がいかに自分の越権行為を隠すために虚偽の報告をしているかということを証明するのがこのテープです。それをうのみにして、正常な国民に対して二泊三日ですか、二晩、三日間にわたる留置まで行う、まさに乱用以外の何物でもないということを指摘をしておきたいと思います。
 これだけでやるわけにいきません。八王子の方もそうなんです。八王子の方、今の報告を聞くと、張っているところを、その現場の近くに来て橋上から見て、粘着テープで張りつけているのを見た、そして両人を帯同して、そして許可を得たかどうかと許可の有無をやったら、許可を受けていないということを確認した、こう言っているんですね。
 その二人の労働者は、そのとき警官にどう言いましたか、どういう主張をいたしましたか。
#23
○政府委員(中山好雄君) 一名はここの人に許可を受けたと言い、もう一名は許可は受けているから張っているんだと、こう申しました。
#24
○神谷信之助君 そうでしょうか。一人は許可を受けたと。一人は直接行ってポスターを見せて、それでこれを張りたいのだけれどもよろしいですかと、そうしたら先方の方は、張っていいから、しかし終わったらはがしてくれよと言うて許可を得た。許可を与えた人は二階へ上がっていった。だから安心をして張っているのだ。それで、それに対してあなた方の警官の方は、その許可の有無をもう一遍確認に上がった。飯場みたいな二階ですから数十人いるわけです。初めの一つ、二つの部屋で許可を受けたかどうか確認をして、許可を与えた人がたまたまそこにはいなかった。そしたら、おまえはもう無許可で張ったと一方的に断定をして逮捕した。二人は、まだおるじゃないか、私はちゃんと許可を受けた、そういう主張をしたのを無理やり、そこで確認をせずに、形だけ無許可の確認をしてそして逮捕したんです。いかがですか。
#25
○政府委員(中山好雄君) ただいま、両名の男から許可を受けたということを聞いた、それを本当かどうか確かめにその二名を帯同して警察官は鉄塀の管理者側に問い合わせに行ったわけでございます。許可を受けている受けていないということは、この軽犯罪法一条三十三号の成立に関しまして非常に重要な点でございますから、当然その資格のある人から聞いたものと存じます。
#26
○神谷信之助君 そういうあいまいなことをしてもらっては困る。あなたおっしゃるように、最大、重要な要件である「みだりに」に該当するわけですから、許可の有無というものは、あなたが言うようにその確認をしっかりやらなきゃいかぬ。ところが、実際はそうはしてない。
 大体、最近都議選を前にしまして、ポスター張りについて確認を得ているかどうかということで、無許可でポスター張ったということで逮捕されるという事件が最近ふえている。だから、必ず許可を取るようにということでずっと最近は全部皆やっているわけだ。この場合も、何軒か行って断られたうちも何軒かありましたけれども、六軒のうちにはちゃんと許可をとって張って、七カ所目の応諾を得て張っているところを逮捕されたんですよ。この一連の経過からいっても、無許可で張るはずはない。許可されなかった、断られたところは張ってない。
 しかも、もう時間がありませんから最後に申し上げますが、重要なことは、その五軒、六軒張った後、必ず警官が、許可を与えたかどうかということを確認しているじゃないですか。六軒のうち五軒は警察官が直接行って確認をしています。それは張った後二、三分してから、あるいは五分後、十分後に、一軒だけ翌日、こういうことになっています。一軒だけ言葉を濁しながら、警察が来たとはおっしゃらない家が一軒ありました。確認は、張ってよろしいという許可を与えましたかということを確認しました。
 そうすると、これはどういうことを示しますか。ある目的を持って車に乗って二人はポスター張りに行動する、それを警官が尾行しているわけです。張り終わって行ったらすぐ行って確認をし、そしてまた次に行く。初めのところは二、三分後に行っていますよ。二軒目、三軒目になるとちょっとおくれてくるから五分後になったり十分後になったりする。街道筋やっていますから、ずっと。そして、七軒目張ろうとするところに来たのは、もう今度は片一方大体振る作業の終わるところへ来ています。ずっと尾行しているんだ。共産党の政治活動を妨害するために、そういう目的と意思を持ってこの行動を監視し続けてきたことは歴然としている。これが警察法の「不偏不党」というこの規定に反することは明確じゃないですか。事実がこのことを証明しているのだ。そういうことをぬけぬけとやっているということは許せないですよ。
 あなた方のところへ来る報告にはそんなこと書いてない。ぐあいの悪いことは報告しない、あるいは知っていて知らぬ顔しているのかもわからぬ。やらしていてここでその弁明をする。防御してその行動をさらに支える。こういうことになる。この点ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
#27
○政府委員(中山好雄君) 許可の有無についての確認につきましては、二人の男を帯同して管理者側に許諾の有無を問い合わせたと申しました。それはとりあえずはそこの事務所内にいた係長に確認をいたしました。それからその後、これは小田急建設等の共同企業体の事務所でございます。そこの事務所長からも許可をしていない旨を確認しているところでございます。
 それから、尾行してねらった云々のお話でございますが、この事件は、ほかの事件の捜査中の警察官が先ほど御説明したような違法なビラ張り行為を現認して職務質問を行った、それにもかかわらず住所、氏名等を明らかにしないということで検挙措置をとったというものでございまして、決してねらい撃ちとか不当な逮捕とか、そういうものではないわけでございます。
#28
○神谷信之助君 公安委員長、それから長官も見ておいてください。(写真を示す)これが現場です。ほかの候補のポスターが全部張ってあります。ここで許可を得て張っていたところを逮捕されました。事件後、この塀はどうなったか。きれいにはがされています。我々のポスターを張る以前に張ってあったポスターはちゃんと許可を得ていたのかどうかということは確認はできているのか。確認ができない、無許可で勝手に張ったようだ、だから全部はがした、こういうことがこの現場の事務所の手でやられている。まさに意図的なそういうものと言わざるを得ぬです。張ってあるところを一々許可を取ったかどうか、けつについて歩いて確認をしたり、これは一連の行動です。その日の一日の六軒、七軒目のところですから。こういうことを私は、それは警察庁の上までそんな報告が入ってくるのかどうか知りませんけれども、虚偽の報告が山のように来ているのじゃないかと思いますけれども、こういうことは私はあってはならぬものだと思いますよ。この点について長官の意見を聞いておきたいと思います。
#29
○政府委員(中山好雄君) ただいまお示しいただいた写真で、現場の鉄塀にほかの候補者の写真も張ってあったじゃないか、こういうお話でございます。これにつきましては、今回の違反事件を明らかにするために現場の実況見分を行いました際に、塀に本件以外のポスターが張られているのを発見いたしました。そこで、これについても管理者から事情聴取をいたしましたところ、やはり許可なく張っているということがわかりました。したがいまして、これらにつきましても実況見分を行うなど、所要な事後捜査を行っているところでございます。
 なお、それらのポスターにつきましては、その管理者が管理権に基づいて撤去していると聞いております。
#30
○神谷信之助君 いかに何ぼおっしゃっても言い抜けられないですよ。だから、こういう不当なことを、ほかの候補者のポスターはほったらかし、聞きもしない、事件後聞いているんです。やばい、だからもう取っちまえということが明らかだと思います。証拠隠滅のおそれさえある。だから、こういうきょうは二件この問題言いましたが、のぼりの問題についても今日まで従来ずっと一貫して違法な行為ではないという、そういうことが蓄積されている。途端に警察の方針を変更して逮捕するというようなことは、まさに警察が方針を決めれば国民は文句なしに聞かないかぬという、そういう態度ではこれは許せません。
 したがって、こういうことは、この間、港区の事件もありましたけれども、そういった問題も含めまして最後に、時間ありませんが、国家公安委員長、この点は、警察法の「不偏不党」、「中正」というこの原則はやっぱり堅持して、こういう不当な行為を許さないように国家公安委員会としてもちゃんと目を光らしてもらいたいと思うのだが、いかがですか。
#31
○政府委員(鈴木貞敏君) 先ほど来の御質疑、反核あるいは政治活動、そういったもの、さらにまた公職の候補者を一般住民に知らせようというような行為、もろもろのそういった運動なり行為につきましては法に従った範囲内、これはもとより自由でございます。この軽犯罪法の運用につきましても、警察としましても十分な配意をもって過去のいろいろの事例も積み重ねてやってきているわけでございまして、いわゆる桃太郎旗というようなのぼりというものが先生のおっしゃるように張り札に入らぬということは私も思いません。やはりとれはそれぞれの掲示の仕方において張り札とみなされるものであろう、こう思いますし、そういう意味では、張り札を問擬して処置したこの件につきましては、決して過去警察としてそういうものは野放しにしておったということは私としても認識いたしません。
 いずれにしましても、警察としましては違法行為の取り締まりに当たっては不偏不党、厳正中正にあらゆる面について十分気を配ってやっていきたい、こういう気持ちでございます。
#32
○神谷信之助君 今の答弁は全面的に納得できませんが、時間ですから、もうこれでやめます。
#33
○三治重信君 まず、シートベルト着用義務化についてお尋ねをいたしますが、諸外国で大分着用の強制を法制化をしている。それから、さらには罰則も盛っているところも大分あるように出ておるわけなんですが、これは我々が外国へ行って自動車に乗ったときの運転手なんかが本当にこのシートベルトをつけているのを見たことがほとんどないわけだと思うんですけれども、日本においても外交官関係の車はこういうようなのはもちろん適用から外されるということだろうと思うのだけれども、一般の運転ドライバーが確実にシートベルトをつけているかどうかというところまで精密には見てこなかったわけなんですが、こういうことに倣って今度は法改正をしたことだろうと思うんです。
 それはそれとしていいのだが、この「道路交通法施行令の一部を改正する政令案の骨子」というものの二枚目に、「8行政処分点数及び反則金の額(別表一及び別表三関係)」ということになっておって、この項目は今度の別表一及び別表三できちんとこれは発表されるものなんですか。殊に一番重要なものは、真ん中の「座席ベルト装着義務一点」というところで、「(当面、高速道路運転者の非装着のみ)」と、こういうふうに書いてある。これはきちんと別表一及び別表三で表示をされるということなんですか。
#34
○政府委員(太田壽郎君) この行政処分の点数の付与の部分は政令に委任されている事項でございますので、今御指摘のように、政令の別表一あるいは三の改正をするということになる部分でございます。
#35
○三治重信君 しかし、法律の方では全然そういう留保条件や政令に委譲するということは全然出ないで、それで政令でやるというのはどういうことか。
#36
○政府委員(太田壽郎君) 道路交通法の百三条の規定がございまして、百三条の二項でございますが、そこで今のような政令に対する委任事項が規定されているということになるわけでございます。
#37
○三治重信君 そういうことで括弧書きでこの点数を減らされるのは、そうすると高速道路の場合だけと、こういうことでいいのだが、しかしこれをいずれまた一般道路までやろうと、こういうことなんですが、自動車にはシートベルトはついているわけなんだが、その装着ということになってくると、自分の命のことなんだけれども、なかなか現実に慣習的につける、つけぬということになってくると、これは指導体制、PRというものがなかなか大変だろうと思うんです。そういうシートベルトの装着義務化ということについてドライバーに観念的にはわかっていても、現実にそれを必ず自動車に乗ればシートベルトをつけるという慣習化するという方法について警察庁の方でどういうふうな指導案があるか。
#38
○政府委員(太田壽郎君) 今御指摘のように、座席ベルトの装着率を高める一番いい方法というのは、座席ベルトの効用というものについて各ドライバーが、あるいは同乗する方も含めてですが、正しく理解をしていただく、それによって自分の命も守れるし、交通事故が起きた場合の関係当事者の利益というものにも非常にプラスになるというようなことで、そういう正しい理解の上に立って初めて着用率が上がってくるというふうに考えるわけでございます。
 そこで、この法案が成立するということになりました場合には、単に警察だけでございませんで、関係各省が座席ベルトについてのいわば国民的なPR作戦といいますか、そういうものを行うような、そういう仕組みというようなものもつくりまして、関係団体を初めとして地域の幅広い協力というものを求めながらこの着用率の定着を図っていくということで、具体的にいろいろと今段取りといいますか、まだこれは法案の審議していただいている最中ですので、全くの内々の話でございますけれども、いろいろ考えているところでございます。
#39
○三治重信君 それで、総務庁としてはシートベルト着用推進会議というような構想もあるというふうに聞いているわけなんですが、それを発足さす計画なりその会議に参加する省庁の範囲というものについて、ある程度の計画があるなら知らしてもらいたいと思いますが、その場合に、今警察庁が答弁なさったように、やはりシートベルトをつけるとどういう効用があるという、単につけることになったからという義務化の装着よりは、やはりシートベルトをつけることによってドライバーはどういう利点があります、プラスがあるかということについてPRするという着眼点というのは、僕は非常にいいことだと思うんですが、そういう問題について、総務庁の方で総括的なシートベルト着用推進会議のような構想があるのかどうか。
#40
○説明員(石出宗秀君) シートベルトの着用の推進についてでございますが、これにつきましては、従来から交通対策本部の決定いたしました実施要綱に基づきまして、毎年八月の一月間を運動期間としますシートベルト着用推進運動を全国的に実施いたしますとか、また、春秋の全国交通安全運動におきましてはその重点目標にする等、その普及に努めてきたところでございますけれども、今後さらにこのシートベルト着用のための、今先生御指摘の着用効果でありますとか着用の正しい方法でありますとか、そういう点に重点を置きまして、広報、啓発活動の強化をしていきたい、また強化を図る必要があると考えているところでございます。
 御指摘のシートベルト着用推進会議でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げました広報、啓発活動の強化のため現在検討いたしております方策の一つでございまして、その内容等につきましては、交通安全に関係します中央省庁や、また民間の交通安全関係団体により構成いたしまして、その構成員がシートベルト着用の徹底のために行う活動につきまして連携を密にすることによりまして、その効果的な実施に資することができるのではなかろうかというようなことで、検討を現在進めているものでございます。したがいまして、まだ検討途中でございますために、お尋ねの点につきまして詳細な内容は差し控えさしていただきたいと思うわけでございまして、どうか御理解を賜りたいと存じます。
 いずれにしましても、従来から行っておりますシートベルト着用推進運動につきましては、中央省庁でありますとか特殊法人、地方公共団体、さらには民間団体の方々に主催または協賛という形で協力をいただき、活動をやっていただいているわけでございまして、今後はこのような団体の活動をさらに活性化いたしまして、官民一体の運動の盛り上がりを図りまして、シートベルトの着用の徹底、当然その際には御指摘の着用の効果でありますとか正しい着用方法の周知につきましても啓蒙をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
#41
○三治重信君 それから、これは東京の本部ばかりじゃなくて、都道府県も同じようなことでやれるような体制をひとつとってもらいたいと思います。都道府県単位、地方の単位もですね。
 それから、これは文部省だが、私は労働省におって産業安全のマターずっとやっていたのですけれども、予防対策というのが非常に必要なこと、その予防対策というのはPRとともに、それに取り組む基本的な予防教育というものが必要だと思うんです。
 学校において交通安全教育というものをどの程度学科に入れているのか。また、将来こういうふうな法規の改正によって、社会科だろうと思うんですが、社会科の教育の中で交通安全の教科を変えていくつもりなのかという問題と、それから自動車学校なんというのは警察だが、自動車学校の教科の中にもこういう交通安全の問題を教科の中に、免許を取らした場合には事前に相当入れているだろうと思うんですが、そういう学校による子供のときからの教育と、それから現実に免許を取る段階になっての教育というものがやはり両々相まってやっていくことによって非常に浸透すると思うんですが、この文部省のいろいろの義務教育、また各学校の段階においての社会道徳教育というものに、国民が守らなくちゃならぬこういう具体的な事例、単にシートベルトばかりじゃなくて、自動車から物を投げちゃいかぬとか、また、そういう総合的なつまりドライバーのマナーというような問題、またこれは自動車と一般の道路を歩く者について相当なやはり重点を置いてやっていかぬというと交通安全は進歩しないと思うんですが、まずそういうことについての心がけをどういうふうにお考えになっているのかお伺いしたい。
#42
○説明員(下宮進君) 学校における交通安全教育につきましては、児童、生徒の心身の発達段階や地域の実情に応じまして、日常生活における交通安全に必要な事柄を理解し、身近な交通環境におけるさまざまな危険に気づいて、的確な判断のもとに安全に行動できる態度や能力を養うことをねらいとしてやっているわけでございまして、具体的には特別活動の学級指導、ホームルームあるいは学校行事を中心にいたしまして、学校の教育活動全体を通じて行うこととしているわけでございます。教科の中での取り扱いにつきましては、社会とかあるいは理科等において部分的に出てきますが、主として特別活動で特設時間を設けて指導をすることにしているわけでございます。
 学校段階で申しますと、小中学校におきましては道路の歩行と横断、自転車の安全な乗り方、さらには乗り物の安全な利用などについて重点的に指導をやっております。また、高等学校におきましては、小中学校における指導を一層発展させまして、安全に対する意識の高揚と実践力の向上を図り、よき社会人として必要な交通マナーを身につけることにいたしているわけでございます。
 シートベルトの問題につきましては、乗り物の安全な利用ということで、子供の段階でございますので自分で自動車を運転するといったことは通常ないわけでございますので、乗り物の安全な利用という形で、学校の中において十分今後とも指導の徹底を図ってまいりたいと存ずる次第でございます。
#43
○政府委員(太田壽郎君) 自動車の教習所におきます座席ベルトの着用の問題でございますが、学科教習におきましてこれまでも座席ベルト着用の効果と座席ベルトの正しい着用方法ということにつきまして時間を割きまして、特別に教習を行っているところでございます。それから、現実にハンドルを握って技能講習を行うそちらの方の場合は、教習所の場内あるいは路上に出て行う教習を問わず、必ず座席ベルトを着装させて教習を行う、この点は基本的な事項ということで厳しく指導をして、座席ベルト着装の習慣化をまず図ろうということで努力しているところでございます。
#44
○三治重信君 そういうぐあいに教育されていくと効果が逐次出てくるだろうと思うんですが、私の経験からいって、工場、事業場なんかの産業安全なんかも、これは労働者ばかりでなく、施行する業界全体が一緒になってやる気にならぬとできない。だから、警察が取り締まることだけで先へ先行しちゃうと、それは現実に効果があらわれてこない。学校教育から、自動車学校の教育から、それをやった方が自分にプラスだということをどうして頭へたたき込むかということが、それがいわゆる安全予防対策だと思うわけなんです。これを担当者にどうして覚えさすか、これがいわゆる労働省なんかが全国安全会議というのを毎年一万人以上集めてやったり、そこに一つの思想統一というもので随分死亡事故災害というものを減らして、また各業種団体にも産業災害の防止の団体をつくってやっているわけなんです。
 交通安全も、これは警察だけでやるということでなくて、取り締まりは警察なんだけれども、その前提としての交通安全というものは単にシートベルトばかりじゃなくて、結局、死亡事故災害をどうして減らすか、こういう国民的課題にどう取り組むかということだろうと思うんですが、そこは総務庁、しっかりひとつそういう指揮棒をとってもらい、役所ばかりじゃなくて、民間も入れたひとつ指揮棒をとってもらって、そして目標はやはり交通事故によっての死亡災害を初め、人身傷害をどうして少なくするかと、こういうことに取り組むと、こういうことだろうと思うんですが、これはそういう取り締まる、取り締まられるということでなくて、ひとつそういう目的に向かって力を合わしてやっていくようにしてもらいたいと思います。
 大蔵省にひとつ。
 自動車保険で、これは全部やっているのですか、高速道路でシートベルトを着用して死亡した場合には百万円の割り増し制度があると、こういうことなんだが、これは今のところ高速道路だけで、シートベルトを着用して死亡した場合には保険会社が百万円死亡者に余分にやる。今度はシートベルトを、こういうように義務づけるということになると、一般道路は先ほど言ったみたいにまだ点数は差っ引かないと、こういうことなんだが、着用義務というものを法律上きちんとして、着用しなくちゃならぬというのは、一般道路でもみんなこの法律が成立すると義務化するわけでしょう。それがすぐ点数を減らしたり、罰金をつけるということはやらないが、そういうぐあいになったときに、高速道路ばかりじゃなくて、シートベルトをつけておっても死亡した場合には保険の割り増しをつける、これもやるのもひとつ利害関係があって、シートベルトをつけなさいという非常にセールスポイントになろうと思うんですが、そういうことについてどういうふうにお考えになっていますか。
#45
○説明員(鏡味徳房君) ただいま先生からお話がございましたように、現在任意の自動車保険におきましては、高速道路等で座席ベルト装着者が事故により死亡した場合には搭乗者に対する死亡保険金のほかに特別保険金が支払われる制度になっております。
 高速道路等に限定いたしましたのは、現在高速道路等において自動車を運転する場合には座席ベルトの装着が義務づけられておる。したがいまして、事故当時の座席ベルトを装着していたかどうかの事実の確認が比較的容易であるという事情があるからでございまして、これを一般道路まで拡大せよというお話でございますけれども、この問題は道交法改正の具体的実施方法や事故当時の座席ベルト装着の確認方法等につきまして、警察当局の考え方も伺いつつ道交法改正の実施時期までに損保業界において検討をさせるように指導してまいりたいと思っております。
#46
○三治重信君 そういうような教育も教育だけれども、シートベルトを着用するとこういう利点があるというものもぜひひとつ加えて、一般的にやっていくということがいいのじゃないかと思うんです。
 それから、先ほどちょっと言ったのだけれども、交通安全基本計画というものがまた別につくられているようなんだけれども、現在、第三次五カ年計画として五十六年度―六十年度でやって、この目標は六十年末に死者八千人以下、こういうふうな目標を立ててやっている。ところが、その実績と第三次五カ年計画との比較達成率はどういうものか。それから、さらに第四次五カ年計画というものをつくる計画があるのか。または、その目標をどのように考えているか。
#47
○説明員(戸田正之君) お答え申し上げます。
 第三次の交通安全基本計画の目標でございますが、先生おっしゃいましたとおり、交通事故の死者数を昭和六十年までに八千人以下に抑えたい、こういうことでございますが、昨年昭和五十九年の交通事故の死者数を見ますと、九千二百六十二人ということで、一昨年に比べまして二百五十八人減少はいたしましたけれども、三年連続しまして九千人を超えるという非常に厳しい状況でございます。したがいまして、第三次の交通安全基本計画の目標達成はなかなか厳しい状況にあるということで、私ども非常に厳粛に受けとめているところでございます。
 本年度は、第三次の交通安全基本計画の最終年度でございます。先生御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、関係省庁の連携のもとに、先ほど来いろいろございましたような交通安全思想の普及徹底でありますとか、あるいは道路交通環境の整備、さらには道路交通秩序の維持等、各般の施策をきめ細かく効果的に推進いたしまして、一件でも交通事故が減少するよう一層努力してまいりたいと存じております。
 続きまして、もう一件のお尋ねでございますが、第四次の交通安全基本計画の件でございますが、三次計画が今年度で最終ということでございまして、引き続きまして第四次の基本計画策定に向けて現在関係省庁等と鋭意御相談中でございます。この策定につきましては、現在いろいろな施策を実施しておるわけでございますが、そういう各種施策の点検等の作業を進めますとともに、学識経験者の御意見でございますとかあるいは都道府県等の御意見を聞いておるところでございまして、今後さらに学識経験者でございますとか、それからさらに民間団体等の御意見をも賜りまして、また関係省庁と協議しながら、目標の設定も含めまして計画を固めていきたいと、かように存じている次第でございます。
 したがいまして、その内容等につきましては、現在まだ確定的なことを申し上げる段階ではございませんけれども、第四次の基本計画におきましても、人命尊重を基本理念にいたしまして、道路交通環境の整備あるいは交通取り締まり等交通秩序の維持、さらには交通安全教育の推進等がやはり施策の中心になろうかと考えているところでございます。
#48
○三治重信君 そうやってこの交通安全基本計画をつくって年次でやっていくわけなんですが、おっしゃるとおりなかなか目標を達成をするのには難しい。しかし、これは人命尊重からいくというと、安全対策はどうしても相当官民挙げての努力をやる必要がある、こういうことにおいては一致した意見だろうと思うんです。さらに、四次計画をつくってやる、こういうことでございますので了承しますが、それには完全に実施できるような、しかも効果が上がる計画というものをしっかりひとつつくってもらいたいと思います。
 それから、そういう災害を減らすソフトな計画というものがつくられるとともに、今度はハードな部面でいくというと、やはり交通安全施設というものがハードの問題として出てくるわけなんです。これもまた政府は何次計画とかというのはなかなか得意なんで、交通安全施設整備計画で、これも第三次五カ年計画というものが五十六年度―六十年度で設定をされているようでございますが、こういう交通安全基本計画と交通安全施設整備計画というのはソフトの部面とハードの部面と表裏一体してつくった、こういうふうに理解していいのじゃないかと思うんですが、こちらの方のハードの部面の三次五カ年計画というものの達成率はどういうふうになって、また実施状況はどういうふうになっているんですか。
#49
○政府委員(太田壽郎君) 第三次の交通安全施設等整備事業五カ年計画の公安委員会の所管の分でございますが、これは昭和五十六年度を初年度といたしまして、事業費が千九百億円でスタートいたしました。昭和六十年度当初予算までの実績は千三百十一億円ということで、進捗率六九%ということになっております。
#50
○説明員(横内正明君) 第三次交通安全施設等整備事業五カ年計画の道路管理者分でございますが、昭和五十六年度―六十年度の五カ年で九千百億円の投資規模を見込んでおりますが、全体としての達成率は八九%にとどまる見込みでございます。
#51
○三治重信君 これもいわゆるマイナスシーリングや予算の節約というようなことで達成率が落ちているのじゃないかと思うんですが、これは先ほど答弁があった交通安全基本計画の第四次計画をつくる計画ありというような話だったと思うんですが、こちらの方の施設整備計画も第四次をつくる計画があるのか。それはまた予算節約だから、マイナスシーリングだからやめた、こういうことになるのか、どうなのか。
#52
○政府委員(太田壽郎君) 交通安全基本計画の方は現在総務庁の方を中心に作業が徐々に進められておる段階でございますが、それに対応いたしました形で安全施設の計画をどういう形で対応したものとしてつくり上げるかというのは、これから作業を始めるという段階でございます。
#53
○三治重信君 いずれにしても予算はこの財政再建の非常に難しい段階には来ていますが、そうすると、つくるともつくらぬともそれは決まっていない、こういうふうに理解していいんですか、建設省も。
#54
○説明員(横内正明君) 建設省といたしましては、交通安全施設の整備がまだ不十分であるというふうに考えておりますし、また高齢化社会の到来や身体障害者の社会参加のための環境整備の必要性といった交通安全事業を取り巻く社会的ニーズがますます多様化しておりますので、今後とも交通安全施設の整備に努めてまいりたいと考えております。
 新たな五カ年計画を策定するかどうかについては、今後政府内で検討してまいりたいと考えております。
#55
○三治重信君 そうすると、こちらの方はまだやるかやらぬかわからぬ、そういうことのようですね。しかし、このソフトの部面をやっていくのだったら、またこのハードの部面の方も平仄を合わせぬと、いわゆる交通安全の推進という問題が、今まで両方やってきたのが片方抜けてしまって、ちょっとそこに非常に気力が衰えるような格好にならぬようにひとつ考えてやってほしいと思うんです。
 それで、具体的なそのハードの部面の裏打ちとして自動車重量税の問題をひとつ取り上げてみると、自動車重量税はいろいろないきさつで、一つは地方への特定財源として四分の一を自動車重量譲与税としてやる、それからこの四分の三を大体道路事業にやる、こういうような格好で自動車重量税の使い道について各省庁と大蔵省と話し合いがついているようなんですが、何というのですか、国の道路特定財源のうちで二割ほど一般財源としてやるということになって、その中にこの警察の道路施設整備の財源が入っているというふうなことに聞いているわけなんです。つまり、自動車重量税の四分の一が地方の道路特定財源になって、四分の三が国の道路特定財源、その国の四分の三の中で八割を道路事業に使って、二割を一般財源にする。その一般財源の中に警察の施設整備の財源が入っているというのは、これは間違いないのか。こういう理解でいいんですか。
#56
○説明員(吉本修二君) ちょっと制度的な問題でございますので申し上げておきますが、おっしゃるとおりその四分の三は国の財源になるわけでございますけれども、制度的には全額一般財源ということでございます。ただ、沿革的にその八割程度を道路に充てるという運用を行おう、こういうことでできておるということだけをちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
#57
○三治重信君 それで、その八割方は一般財源にしても国の道路財源というふうに使うという分はいいのだが、そのあとの二割の、これまた準一般財源の中は警察の道路施設の財源というふうに理解をしているというふうに言っているのだけれども、それはそれでいいのか。それはどうなのか。そんなことは別にそこまでは約束してない、こういうふうに理解しているのか。
#58
○説明員(吉本修二君) 制度的な一般財源でございますので、金目につながりはございません。全体として予算を総合的に編成していく。そういう財源としては、そのほか所得税、法人税等の一般財源全体と、今公債も発行しておりますが、そういう毎年度厳しい財政状況の中で予算編成を行っていく、こういう考え方でまいっておるわけでございます。
#59
○三治重信君 そうすると、警察庁の道路施設整備の財源として別に自動車重量税の部面が充てられるとかなんとかいうようなことはない、それは重量税の方は純然たる一般財源だから、それから警察庁の道路施設整備の財源も一般財源だ、重量税とは関係なく、警察庁の道路施設整備の財源は一般財源から出すと、こういうふうに理解していいのかな。
#60
○説明員(吉本修二君) 制度的に特定のものに充てるというような考え方で今立法されておるものに、自動車重量税ですと、例えば公害健康被害補償の関係の財源に充てるとか、そういう制度があるのがございますが、そのほかのものについては特に制度的なものはございません。
#61
○三治重信君 そういうふうだと、結局大蔵省とすれば、自動車重量税で国の財源としての四分の三のうちで道路等の方に使うという拘束を受けているのは八割だけである、公害健康被害補償関係が一部あるけれども、あとのは一般財源として考えていると、こういうことで、必ずしも警察の道路施設整備の財源というふうな考え方については賛成できないと、こういうふうに解釈していいのかな。
#62
○説明員(吉本修二君) そういう問題ではございませんで、交通安全対策というものについては、その施設の整備、そういうものももちろん必要でございます。そういう必要性というものについて、全体の予算編成の中でいろいろその必要性を考えながら、限られた財源の中で必要な財源を配分していく、こういうことでございまして、その財源があるとかないとかいう問題とは別な次元で考えさしていただきたい、こういうことでございます。
#63
○三治重信君 はい、わかった。警察庁も知っているのだろうけれども、そういうことのようなんで、必ずしも警察の道路施設整備は自動車重量税の枠にとらわれないで大蔵省は査定をする、そういう理解でいいんですね。
 そういうことなんだが、なぜそういう質問をするかというと、結局ユーザーは、とにかく自動車の方で出しているわけだから、この交通安全施設の財源もできるだけその中で優先的に見てほしいと、こういうことだろうと思うんですが、そういうことで、ひもつき、ひもつきでないというのは第二の問題としても、警察の行う施設整備の方も、道路財源としてきちんと枠があって道路に使うというのに準じて、こういう自動車税から優先的に警察の道路施設整備に枠といいますか、予算を十分つけてほしい、こういうふうにお願いをしておきます。
 それから、予算の問題はそんなことにしておいて、その次は駐車違反の問題で、殊にレッカー車で持ち去る車で、割合に持ち主がわからなかったり、警察で後で処分に困る台数がえらい多いように感ずるのだが、これはそれほど自動車の違法駐車というのは取り締まりを時々やると、もう所有主もわからなければ、盗難車であるのか、もう要らぬといって放置された車であるのかわからぬような事例が、実際レッカー車で引っ張ってみるとどんどん出てきているように感じて、警察の方ではその処理に困って今度は処分を早める、いつまでも所有者がわからぬで倉庫に入っておると経費ばかりかかってしようがないというのが今度の法律の改正だから、その点は僕は今度の法律改正で好転を認めます。
 せっかく路上駐車の違反の車をレッカー車で引っ張って持ってきたけれども、そのやったものが所有者があらわれぬとなると、それは保管の費用もかかるし、あと処分についてもそうめちゃくちゃに警察が無主物として処分もできぬだろう、そういうことについて道路交通法で整備を図るというのは、これは時宜に適した改正だろうと思う。シートベルトを強制するとかなんとかいうよりか、僕は非常にいいと思うんです。シートベルトについては、安全のそういう予防対策や基本であって、法律にまで入れて強制するということについては、どうも僕は余り賛成じゃないんですが、レッカー車でやるという車について、無主物というのじゃないが、だれが所有しているのかわからぬという車をいつまでもほっておくということはできぬということについての改正は非常に賛成なんですが、こういうことはどうしてこんなふうなものが多く起こると考えておられるか。
#64
○政府委員(太田壽郎君) 今御指摘がございました違法駐車車両の返還不能のまず数字的なものでございますが、昭和五十八年中約四十六万台レッカー移動いたしまして、返還不能というものは百九十台、〇・〇四%程度でございます。五十九年につきましても、サンプル調査でございますが、警視庁、大阪、これがレッカー移動をやっている主力でございますのでこの例で申し上げますと、八十六台があれだと。
 それで、どうしてこういうふうになるのか、これにつきまして、御案内のように、自動車についてはいわゆる登録ファイルというものでしっかりした不動産に準ずるような戸籍的なものがあるわけでございまして、その登録ファイルに表示されている所有者というものは、これはすぐわかるわけでございます。ただ、その人を現実に捜し当てて聞いたところが、実はこれはAならAという人間に譲渡したんだと、自分のものではないんだ、登録ファイル上はそういうふうになっているけれども自分のものではないんだということで、後の一連の手続に応じないという者がかなりあるわけでございます。
 今までの実態的な問題で申し上げますと、暴力団の仲間とかあるいは暴走族的な人たちの間での売り買いとか、そんなようなものの中にかなりそういうケースが見られる。それで、登録ファイルに登録されている所有者がAならAという人間に売ったというので、そのAというのを捜し出そうということで懸命にいろいろ捜すわけでございますけれども、どうにもそれが捜し当てられない、あるいは名前はわかってもその所在がどうしても突きとめられないというものが今申し上げましたような年間百台なり二百台前後あるという状況になっているわけでございます。
#65
○三治重信君 こういうふうなのを能率的に処理するために法的な根拠が要るでしょうから、これは非常にいいことだと思うんだが、そういうことが現実に行われているというのは、今後そういう部面が非常に出てくることが予想されるので、ひとつそういう問題と、それからレッカー車というのは、一般の所有者にしてみればふっと持っていかれてしまうというと、それを取りにいっても時間がかかるし、それにまた罰金を取られて、その上また保管料を取られるという大変な迷惑かかるわけなんで、そうやって放置された違法駐車の車をレッカー車で引っ張っていくのはいいけれども、所有主がわかっている車はできるだけ事前に、違法駐車だから取りなさいと、こういう周知徹底をしてやって、できるだけレッカー車で持っていく件数を少なくする、こういう努力はひとつぜひしてほしいと思う。そうしないと、ただもうむやみに一網打尽にレッカー車でやるということは、警察の方も経済的にもまた実際においてもつまらぬ努力だと、こういうふうに思います。
 それとは別なんだけれども、道路交通対策で一番問題なのは暴走族対策だろうと思うんだが、僕のところも町の中におるので、夜明け方暴走族がえらい爆音を立てて走り回っておるわけなんだが、これはどうも警察が取り締まってもなかなかなくならぬ。そうすると、結局一つの考え方とすれば、こういう連中の遊び場をつくってやったらどうかという感じを持つわけなんだが、こんなのはそこの河川敷とか付近の山とかいうところで簡単にできはせぬかと思うのだけれども、どうも若い者、暴走族といっても、持ってやる者が必ずしも、不良少年もいるかもしらぬけれども、不良ばっかりでもないし、やはり若い者の気の吐きぐあいで走り飛ばしたりするのも一つの運動だと思うんだが、こういうものについての対策というもので、町の付近でそう整備は要らぬと思うんだが、暴走族の遊び場所をつくってやるという、そういうことは考えられるのかどうか。
#66
○政府委員(太田壽郎君) 暴走族は、まあ三万数千人も我々の方としても把握いたしておりまして、中にはいろいろな者もいるだろうと思いますけれども、暴走族を検挙あるいは補導等をいたしました際にアンケート等を実施いたしました結果によりますと、暴走族と言われる人たちはとにかく目立ちたい、それから大勢の人の見ているところで暴走をしたい、あるいは町の中で走ることによって快感を覚えるというような、いわゆる非常に自己顕示欲が強いというような性格を持っている人が多いようであります。こういうような点にかんがみますと、今お話しのようなことが自治体等の努力によりまして一部実現いたしましたとしても、なかなか問題の全面的な解決になるか疑問もあるところでございまして、公害の問題その他新たな問題を生ずるというような面もございますので、慎重に対処していくべきことではないだろうかというふうに考えているところでございます。
 もちろん、モータースポーツの健全育成を図るということは、青少年の教育あるいは交通社会の発展という面から見て好ましいことでございまして、警察といたしましてもこれまでも関係機関、団体等とも相はかりながら、交通安全教育の延長線上のものといたしまして、そういう空き地等におきます場所を利用いたしまして、白バイの隊員等がそういう二輪車の運転指導を行うとか、そういうような形の仕事というものはやってきているわけでございますが、いわゆる暴走族というものとは一線を引いて対応しているということでございます。
#67
○三治重信君 運輸省で座席ベルトについては、締めやすい座席ベルト、今後いろいろと製造業者に義務づけるのにELRという型を奨励していく、こういうふうに理解していいですか。
#68
○説明員(福田安孝君) 御説明いたします。
 運輸省といたしましては、着用率向上のためということで、使用者が着用しやすくまた安全なシートベルトであるということが重要なことであると考えておる次第でございます。ただいま先生のお話もございましたようなELRのような使いやすいものを装備することなどと理解しているところでございます。
#69
○三治重信君 最後に自治大臣、この交通法の改正について、必要な部面もあるけれども、僕は、実際上は交通の安全というのは、安全教育面と、それからまたやるものについての責任体制というものでやって、必ずしも法制的にやるものじゃないと思っておるわけなんです。しかし、全国九千人を超す死亡災害を初めとして、交通事故によって、むち打ち症から一家の資産、家計の破壊や悲惨な状態にあるということは事実なんで、この予防対策は政府を挙げてやらなくちゃならぬと思うわけなんですが、道路交通法の改正は衆議院の方で僕のところの党も賛成してきちゃったものだからしようがないんだけれども、法律によらぬで、もっとそういう国民運動的な、また道徳教育的なものとしてやっていくというふうな体制を主としてやってもらいたいと思うんですが、そういう御意見についていかがですか。
#70
○国務大臣(古屋亨君) 交通安全ということは、ソフトの面とハードの面といろいろやっておりますが、施設の整備も必要でありますが、やはりこれに協力しようという一般の方々の自発的な協力ということがお話のように極めて大事でございますので、そういう点につきましては総務庁、文部省とも連絡いたしまして、予防という見地からも十分努力してまいりたいと思っております。
#71
○佐藤三吾君 私は、先日この問題で質問をしたわけですが、特に今までの各委員に対する答弁をお聞きしますと、一番問題点というのはやっぱりシートベルトの着用義務、それに伴う行政処分、ここにあると思うんです。しかし、なかなか警察庁の方はのらりくらりというわけじゃないんですが、修正をするとは言わない。そういうことで、この問題について四、五点ほど確認をしておきたい、こういうふうに思います。
 きょうはもう採決など理事会で決めておるものですから、会期末ぎりぎりまでやるのかと思っておったんですけれども、予定が変わりましたから、これは警察庁長官、ひとつお答えいただきたいと思うんですが、おおむね過半数を超えたという、これは極めて私はあいまいな表現だと思うんです。これは先般申し上げました。ことはおたくの答弁を聞きますと、いわゆる一定時期に一定の道路で集中的にやったその数でもって都道府県の過半数かどうか、市町村の過半数かどうか、こういう判断をしたい、その集計でおおむね過半数を超えた、こういう表現しか出てないんですけれども、私はこれでは承認できないと思うんです。全都道府県が少なくとも過半数を超えたという、こういうことが行政処分をつけると判断すべき一つの表現だ、私はこういうふうに思うんですけれども、この点についていかがですか。
#72
○政府委員(鈴木貞敏君) まず、着用率の調査でございますが、現在これは全国各地で行っているところでありますが、その総サンプル数に占める割合がおおむね過半数に達することが基本的な条件であります。ただ、一部少数の県だけが極めて高くなったために、他の多くの県が低率であるにもかかわらず全体として過半数を超えるということになったといたしましても、これをもって直ちに過半数に達したと断ずるのは妥当ではないと考えられますので、各都道府県別に着用率を算出いたしまして、着用率が五割を超える県が全都道府県の過半数を超えることをも一つの目安にしていきたい、こう考えております。
 なお、大都市を抱える都府県においては最大限の行政努力、啓発宣伝に努めましても着用率を過半数にまで上げることは困難であると考えられますが、施行は全国斉一に行う必要がありますので、着用率向上による死傷事故の減少を早急に図る必要があることから、今申し上げたような要件が整った場合には施行いたしたい、こう思います。しかし、そのような場合でありましても、決して大都府県の着用率を無視するということではなくて、それらの都府県にありましても相当程度の実績が積み重ねられたということを確認いたしましてからスタートすることにいたしたい、こう考えております。
#73
○佐藤三吾君 今のお答え、全都道府県の過半数の都道府県が一つのめど、それから大都市についてはそこまでいかなくても、少なくともその趣旨に基づいて相当数の実績、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
#74
○政府委員(鈴木貞敏君) 仰せのとおりでございます。
#75
○佐藤三吾君 そこで、道路もいろいろあると思うんですが、国道や主要県道のような幹線道路もあれば、路地や団地内の道路とか、俗に言う買い物道路、通学道路、この一般道路において適用といっても、要は先ほど大臣もお答えになったように、啓蒙的というか、本人が自覚してというか、こういった点の要素が当然なきゃならぬと思うんです。そういう意味で、点数付加については一定の節度が必要だ、そういう買い物道路、通学道路についてはですね。私はこう思うんです。
 同時に、営業用自動車や自家用車であっても、営業に使用している場合は処分点数が死活にかかわる場合がある。これは科罰でないという言い方がございますが、行政処分といえども十五点になれば営業できないわけですから、こういった点について適用除外もございますけれども、除外とならない場合であっても取り締まりの乱発はいけない、こういうふうに私は思うのでありますが、この点はどういう御見解ですか。
#76
○政府委員(鈴木貞敏君) 法律の運用についての御質問でございますが、法律の施行前はもちろん、施行後においてもその周知徹底に努めまして、着用の慣習を身につけるような工夫を凝らしていきたいと思います。また、その地域の道路交通の状況や周辺住民の生活環境等を勘案いたしまして、取り締まりの重点は幹線的な道路に置き、いわゆる生活道路的な道路におきましては指導を中心に運用していきたいと考えております。
#77
○佐藤三吾君 次に、タクシーの助手席同乗者の着用にかかる運転者の責務についてですが、これが極めてあいまいであります。運転者の相当な努力、これは相当という字を使うとそれこそ相当な努力しなきゃならぬ、こう受け取るのはこれが自然だと思うんですが、先般同僚委員の質問の中で太田交通局長は、それは一声だと、こういう答弁もあったようでございますけれども、そういう理解でいいんですか。
 なお、タクシー以外の助手席同乗者の場合はどういうことになりますか。
#78
○政府委員(鈴木貞敏君) タクシー運転者の場合は、いわば法律的に義務の衝突が生ずるので、相当な努力を持って足りると考えており、この場合の相当な努力とは、御指摘のとおり、少なくとも一声かけていただくことであると考えております。なお、一声かけたかどうかは立証上の問題でありますが、結局その事情を知り得る者は運転者と同乗者しかないわけでありますから、運転者の証言を重視していくということは当然であります。
 タクシー以外の場合は、これと基本的事情が異なりますので、この考え方がそのまま当てはまることはないと考えます。ただ、運転者が助手席同乗者に再三座席ベルトの装着をお願いしても拒まれ、なおかつその者の乗車を拒み得ないような、社会的に見て特殊な事情のあるケースには、タクシーについて申し上げたところが当てはまるケースもないではないと思うのであります。
#79
○佐藤三吾君 次に、ヘルメット、シートベルトの保安基準のようなものが設定されて着用が義務化されますと価格が不当に上がってくる、これは先般私が申し上げたとおりであります。また運転者に余計な負担をかける、こういう心配がされます。私は、そういう意味で先般の際には、例えばバイクなどは九十キロも出るのが問題であって、大体五十キロ以内にきちんと装備を抑えればこういう心配はないわけでございますけれども、この辺の問題についてどういうことなのか。また、そのときにもお話ししましたが、女性のヘルメットの美的外観ですか、これが問題になっておりましたが、これについてどういうお考えなんですか。
#80
○政府委員(鈴木貞敏君) 価格等につきましては、運転者に過度の負担をかけないように、また、便乗値上げ的行為が行われないよう、十分業界等に対しましても指導してまいりたいと考えます。また、女性が抵抗なく着用できるようなヘルメットの開発につきましても業界にお願いしていきたいと考えております。
#81
○佐藤三吾君 頼みます。
 そこで、法制定は立法府の手を離れて警察庁の運用次第と、こういうことになります。国会の審議を踏まえ、十分に現場警察官への趣旨の徹底を図ることが大事でありますが、着用率が目標に達したから一般道路にも行政処分点数を付加するという段階においては、これは私はやっぱり国会でもひとつ報告いただいて議論すべきだと、こう思うんですが、いかがですか。
#82
○政府委員(鈴木貞敏君) 現場に対しましても御趣旨の旨を十分に徹底してまいりたいと考えます。また、一定の段階での御要請であれば国会でも御報告し、御意見も伺いたいと考えます。
#83
○佐藤三吾君 これは委員長にもひとつ要請しますが、風俗営業等に関する小委員会というのがありますね。昨年これを設置しておりますから、これは同じ警察行政でもありますので、等の中に道交法も読み込んで、一般道路にも行政処分点数を付加する場合に報告さして議論する場を保障してもらう、こういうことを要望しておきたいと思うんですが、いかがですか。
#84
○委員長(金丸三郎君) 佐藤君の御要望につきましては理事会に御相談いたしまして、その趣旨に沿いまして処置いたします。
#85
○佐藤三吾君 ぜひひとつお願いしておきたいと思います。
 そこで、若干時間ございますから、この問題については一応この程度といたしまして、指紋押捺の問題で大臣に少しお聞きしておきたいと思うんです。大臣よろしいですか。
 実は、私は六日のこの委員会が終わった直後の八、九に北九州に現地調査に入りました。そこで現場の皆さんの実態をお聞きしますと、委員会でも私が指摘したように、あなたの答弁ございましたけれども、やはりこれは若干違いがある。どういうふうに違いがあるかといいますと、まず法務省は、今度の通達の趣旨は事務を簡素化して、そして押捺者の心理的な影響、抵抗を和らげる、そこに目的があると、こういう趣旨が先般の際にありました。ところが、現地は事務量が三倍になる、今まで一遍で済んだものが一カ月ごとに三カ月やらなきゃならない、これではたまらないというのが第一です。それから、超過負担が北九州の場合六五%ぐらいある、これも現地では大変だと。しかも、七月以降は、あそこは一万一千六百六十九名の該当者がいらっしゃるんですけれども、そのうち五千四百がこの七、八、九、十に集中する、こういうような事情で、二十日の日に県の説明会があるのでそこでただしたいということは言っていましたが、現地は対応に苦慮しておる、これが実感なんです。この点自治省はどう把握して対応しておるのか、お聞ききしたいと思います。
#86
○政府委員(大林勝臣君) 先般の政令改正あるいはこれに伴います法務省の運用通達の問題でいろいろ御意見も出ておりますし、また私どもの方でも窓口関係者の方から、先ほどの委員の御意見にありましたような声が実は来ておるわけであります。前々からその都度機会あるごとに法務省に対しましては、現場の混乱あるいは負担を十分に考えて適切な指導をしていただくようにお願いをしておるところでありますが、今後とも法務省に対しましては、できるだけ市町村の窓口でスムーズに仕事ができるようにお願いをしてまいる所存でございます。
#87
○佐藤三吾君 そういうことではちょっと若干なまぬるいのじゃないかと私は思うんです。現場では、やはり自治省はしっかりしてくれなきゃ困ると、こう言っておる。例えば現在、自治体で十六区一市がこの新通達では対応できないということで、従来どおりで対処するという方向を決めています。そして、現実にそれがまた起こっております。こういう事態に対して、私はこれからずっと出てくると思うんです。こういうことに対して大臣としてどう対応するのか、この点は深刻にひとつ受けとめていただきたいと思うんです。
 同時に、ちょうど私が行った前の日に、やはり朝鮮人の方ですが、これは警察とも関連するんですが、自動車の装備の関係で交通警察にとめられたというんです。そして見たらば外国人、登録証は持っていなかった。そのまま本人は若松署に連れていかれた。そこで家に電話を入れて、家にあるからといって奥さんが外国人登録証を持ってきた。ところが警察は、それにもかかわらず十指の指紋押捺をさせて、財産がどうだ、仕事はどうだ、兄弟はどうなのかというようなことを調べて、そして一たんは帰したけれども、また翌々日出頭せよと、こういうことでまた厳しく具体的に聞いた、こういう事態も起こっておるわけです。これは、私はまさに警察の行き過ぎじゃないかと思う。この点はいかがですか。
#88
○国務大臣(古屋亨君) 私は、実はけさほど法務大臣に話しまして、地方で少し混乱を起こさないように考えないかという提言をいたしましたら、事務当局でもう少し相談させましょうということを言っておりましたが、地方にごたごたがあることはお話のとおりでありまして、このまま放任できないような事態でありますので、法務省当局と十分至急話し合うことが必要だと思っておりますし、そうさせようと思っております。
 今お話しの警察の事件につきましては、私承知しておりませんけれども、登録証を持っていったらそれでもう用は済むわけでありますから、そう何重もその問題については調査する必要はないというのが私の、事件を知りませんが、一般的考えでありますが、ひとつその点は警察の方で調査をさせます。
 それから超過負担の問題、これはやはりほかの省でもいろいろ超過負担がありますと、私どもその省と一緒に調査をいたしまして、実態に合うように努力をしておりますけれども、五十七年、五十八年で改正のときは実態調査もしたようでありますが、ひとつこの問題は、どのぐちい足らないかということはやはり町の行政が円滑にいくためにも必要でありますので、法務省並びに大蔵省とも相談いたしまして、超過負担が生じないような方向に向かって進んでまいりたいと思っております。
#89
○政府委員(太田壽郎君) 後の方の若松署の問題でございますが、今初めて伺いましたので、後で調査してみたいと思いますが、推測でございますけれども、外登証の不携帯罪、これはやはり一種の犯罪でございます。したがいまして、これにつきましては被疑事実の取り調べを被疑者として当然行う、これは警察の責務でございます。被疑者として取り調べる際には、本人の財産の問題その他の問題につきましても取り調べるというのが調書作成の際の基本的な事項でございますので、恐らくそういう一連の手続が行われたのではないかと推測いたしますが、これは事実確認いたしておりませんので、御参考までに申し上げておきます。
#90
○佐藤三吾君 確かに不携帯罪というのは犯罪だと、こういうふうに警察が対応するのは、現行法としては当然でしょう。しかし私が言ったのは、本人がその地場の人で、そしてしかも通常の大工さんですよ。よく知っておる仲だ。しかも、奥さんが登録証を持ってきておるのに、そこまでしなきゃならないか。これは、私はやっぱりまた時間を置いて追及したいと思いますが、警察は真剣に検討してもらいたいということをきょうは要請しておきます。
 そこで、今度は現地の指紋押捺の状況を見ると、これは大林局長、あなた知っておるかどうか知りませんが、私は大臣もやっぱり現場を見るべきだと思うんです。ゆうべの町田市のテレビを見ると、一般の窓口でやっていました。北九州は違うんです。福岡も違うんです。いわゆる別のところについたてを置いて、隔離してそこでやる。そこへ日本人はだれ一人入れない仕組みになっている。こういうやり方がやられますと、これは人権じゅうりんと言われても仕方がない。そこら辺はひとつぜひ現場を見て、そして対応していただきたいということだけ一つ私つけ加えておきます。
 最後に、これは大臣の感想も聞きたいと思うんですが、私が行ったときに、十五歳の朝鮮人の高校の少女ですが、私は要請文をいただきました。ちょっとこれを読み上げます。
  私はこの8月4日で十六才になります。
  十六才になる日を前に、私はぜひみなさんに訴えたいことがあります。
  北九州市内で今年十六才になる、また十六才になった朝鮮人少年少女は二〇〇余人います。
  私たち朝鮮人少年少女にとって、「十六才」はできることなら避けて通りたい、そんな年なのです。
  なぜなら、十六才になると外国人登録法によって、誕生日から三〇日の間に市役所で指紋をおさなければならないからです。
  そして指紋をおし、写真をはった外国人登録証明書というものを、いつでも、どこに行く時でも必ず持ち歩かなければなりません。
  これに違反すると警察に連れて行かれ、何時間も調べられたり、罰金をとられたりするのです。この罰金は、車のスピード違反や駐車違反の時に払わされる罰金などとは違って、前科のつく罰金です。
  きょうの朝の新聞には、登録証明書をもたなかったということだけで、警察に連れて行かれ顔写真をとられたり、十本の指紋や足型までとられたという記事が載っていました。
  本当にこんな事があってもいいのでしょうか。
  私たちもこれからこんな目に会うのか、と思うと、とても恐しい気がします。
  こんな事を考えると、毎日が憂うつで、家にいても、学校に行く時でも、授業中でも、気が晴れません。
  一体、十六才になることが指紋をとられ、犯人あつかいされるほどの「罪」なのでしょうか。
  私の祖父は今から四十六年前、朝鮮が日本の植民地だったころ、土地をうばわれ、家族を養うことができず、家族を残し、たった一人で日本に渡って来ました。
  日本に来た私たちの祖父や父たちの多くは、言葉もわからない異国の地で、ありとあらゆるさげすみを受けながら、それでも生きて行くために働かなければなりませんでした。
  特に、筑豊や大牟田の炭鉱などに連れてこられた人たちは、とてもひどい扱いを受けました。
  筑豊の豊州炭鉱という所には、今の私たちと同じ年くらいの少年が何人も連れてこられ、大人と同じように働かされ、病気になっても休ませてもらえず、「お母さん会いたいよ、おなかが空いたよ」といいながら死んでいきました。
  私たちは当時、その炭鉱に連れてこられた人の間で歌いつづけられてきた、次のような歌を学校で習いました。
  「おなかがすいたのに、それをいうと殴られる。監督がこわいから、「お母さん」と、大きな声で呼べずにそっと呼んでみた。十五才の少年は体が病気で、ある日休もうと思ったら殴られた。坑内に入れられ天井がくずれてその晩死んだ。少年の手足をもみながら涙を流し名前を呼んだ。監督は少年の死体を放ったらかして”スミを出せ”と言った。死んだ人は多いのに葬式は一度も見た事がない。」
  この歌を思い出すと、とてもつらくなってきます。
  もうその時から四〇年以上にもなります。
  私の家族だけでも祖父から数えて三世代、五十年近くも、日本に住んでいます。
  でも朝鮮人に対する差別は今も続いています。炭鉱で死んだ少年の遺体は、四〇年以上もの間放ったらかしです。
  少し前、大阪の警察の人は、テレビで、指紋がいやなら自分の国に帰れ、と言いました。
  本当にはらが立ちました。
  こんな考えや差別が、いつまで続くのでしょうか。
  人はたとえどこに住もうと、平和で、平等で、幸せでなければなりません。
  民族や国籍を理由に、平和で、平等で、幸せに生きたい人間を差別することは絶対に間違っています。
  指紋をとられる人と、とられない人がいたり、登録証明書といったものをいつももたされ、もたないと罰せられる人がいて、そうでない人がいたりするのも間違っていると思います。私たちは差別というものを憎みます。人間が人間を差別する、こんな事を絶対に許してはならないと思います。
  私たちが大人になったら、差別のない社会、差別を許さない社会を造りたいと思います。
  これからも日本の友だちと仲良くし、朝鮮が一つとなって、日本と一日も早く仲良くなるようにして行きたいと思います。
  そのためにも私たちの心をひき裂くような、仲を裂くようなことをやめてほしいと思います。私たちは犯罪者ではありません。
   指紋をとることをやめて下さい。
   外国人登録証明書をいつも持たされる苦痛を、なくして下さい。
   法律をかえて下さい。
   十六才を迎える朝鮮人少年少女の心からの願いは、登録法の全面的な改正なのです。
   この願いが、ぜひかなえられるよう、私はみなさんに訴えます。
   一九八五年六月七日 金任淑
 こういう訴えを私はいただきました。
 大臣の御感想をお聞きしておきたいと思います。
#91
○国務大臣(古屋亨君) 今、差別の問題につきましては、特に一般的に労働者としてそういう差別があったということは、私これは指紋の問題を離れましても大変おかしい問題であり、また先生がそういうのをお読みになった気持ちも十分わかりますので、そういう点は速記録を見まして、労働省とも十分連絡し、そういうような扱いのないようにやはりしなきゃならぬと思っております。
 ただ、お話しの、十六歳になったというのは法律でございまして、二年前に法律を改正していただきましたので、やはり法治国家として法律を守っていかなきゃならぬというような見地からも、――まあ殊さら犯罪者をつくるということは間違っておりますが、ただ法治国家としての扱いは必要でありますので、そういう問題がありましたということを法務省に十分私から連絡をいたしておきたいと思います。
 いずれにしましても、速記録によりまして、労働大臣あるいはまた法務大臣には、御趣旨はわかりましたから、よく私から伝えます。ただ、警察といたしましては、法治国家であります以上、一応法律の違反というものは違反でございますので、そういう点の措置は私必要だと考えております。
#92
○佐藤三吾君 最後に、これは政府を追及ということだけじゃなくて、私は立法府の責任でもあろうと思うんです。したがって、ぜひひとつ委員長にお取り扱いをお願いしたいと思いますのは、七月から大量に出てくると、このような事態が次々に起こってくると思いますし、そういう予測はもう既に起こっております。こういうことで、できれば今国会中に地行と法務と外務と内閣と連合審査を要求して、集中的な議論ができる場をつくってほしい、こう思いますので、ぜひひとつ理事会で検討して必要な手続をお願いしておきたいと、かように思います。よろしいですか。
#93
○委員長(金丸三郎君) わかりました。
#94
○佐藤三吾君 これで終わります。
#95
○委員長(金丸三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#96
○委員長(金丸三郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#97
○委員長(金丸三郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 道路交通法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#98
○委員長(金丸三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 上野君から発言を求められておりますので、これを許します。上野君。
#99
○上野雄文君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、左の諸点について善処すべきである。
 一、座席ベルトの効果と正しい着用方法の広報活動及び締め易い座席ベルトへの改善指導を行う等着用率向上のための施策の推進に努めるとともに、助手席同乗者の着用義務に対する運転者の責務については弾力的運用を図ること。
 二、一般道路における座席ベルトの非着用に対する行政処分点数の付加については、一般道路における着用率が全国的におおむね過半数に達した段階で実施に移すよう配慮すること。
   なお、ベルト着用率の推進状況を適宜当委員会に報告すること。
 三、座席ベルト着用義務化に伴う除外対象については、運転者の利便と安全を考慮し、業務及び日常生活に支障を来さぬよう、その範囲及び取締り対象道路について弾力的な運用を行うよう留意すること。
 四、今回の法改正による取締り規定の運用、特に、空ふかしによる騒音禁止及び初心の自動二輪運転者の二人乗り禁止規定の運用に当たっては、公平性を保ち、いやしくも取締りのための取締りに偏することのないよう、現場警察官への教育、指導に周到な配慮をすること。
 五、違法駐車車両の移動、保管後の処置については、国民の財産権の侵害にならないよう、所有権者等の調査の徹底及び車両価額の評価、売却等の手続きに当たって慎重なうえにも慎重を期すること。
 六、交通事故とりわけ営業用貨物自動車、営業用乗用自動車の事故抑止のため、過積載、過労運転等に対する施策を強力に推進すること。
 七、自動車交通の伸張にかんがみ、道路交通の安全と円滑を図り、快適な交通環境を確保するため、引き続き交通安全施設等整備事業を計画的に推進すること。
 八、手数料の決定に際しては、実費を勘案した合理的な手数料額とするとともに、安易な引上げは行わないよう配慮すること。
  右決議する。
 何とぞ御賛同をいただきますようお願い申し上げます。
 以上でございます。
#100
○委員長(金丸三郎君) ただいま上野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#101
○委員長(金丸三郎君) 全会一致と認めます。よって、上野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、古屋国家公安委員長から発言を求められておりますので、これを許します。古屋国家公安委員長。
#102
○国務大臣(古屋亨君) 政府は、ただいまの附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、万全の措置を講じてまいりたいと存じます。
#103
○委員長(金丸三郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○委員長(金丸三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後一時二十分再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時二十二分開会
#105
○委員長(金丸三郎君) 地方行政委員会を再開いたします。
 住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題とし、まず政府から趣旨説明を聴取いたします。古屋自治大臣。
#106
○国務大臣(古屋亨君) ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨を御説明申し上げます。
 住民基本台帳制度は、市町村において住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務処理の基礎とするとともに、住民の住所に関する届け出等の簡素化を図るため、昭和四十二年に創設されたものであり、市町村長は住民基本台帳を備え、住民からの届け出等に基づき、住所、氏名、生年月日、性別、本籍、続柄等個々の住民に関する事項を記録することとされ、これらの事項は原則として何人に対しても公開されているところであります。
 しかし、近年における社会一般のプライバシー意識の高揚や情報化社会の進展等の社会情勢の変化に伴い、国民のプライバシー保護に対する関心が高まりつつあり、現行の住民基本台帳制度についてもさまざまな問題点が指摘され、閲覧等の制度の見直しを含め、住民に関する記録の適正な管理を求める声が強くなってきております。
 このため、こうした情勢に対処し、住民基本台帳制度における住民に関する記録のより一層の適正な管理を図ることを目的として、住民基本台帳法について所要の改正を行おうとするものであります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。
 次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、目的規定の改正についてであります。これは、住民に関する記録の適正な管理を図ることが住民基本台帳制度の目的の一つであることを明確にしようとするものであります。
 第二に、住民に関する記録の適正な管理についての市町村長等の責務の明確化についてであります。これは、市町村長に、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨の責務を課するとともに、何人に対しても、住民基本台帳の閲覧等により知り得た事項を使用する場合に当たっては、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない旨を定めようとするものであります。
 第三に、住民基本台帳の閲覧及び住民票の写しの交付等に関する規定の整備についてであります。これは、現行法の公開の原則に対して、最近における社会情勢の変化に即し、住民に関する記録の適正な管理を図る観点から、一定の合理的な制限を加えようとするものであります。
 まず、住民基本台帳の閲覧につきましては、請求者はその請求事由等を明らかにすべきものとし、市町村長は、請求が不当な目的によることが明らかなときまたは閲覧により知り得た事項を不当な目的に使用されるおそれがあること等の当該請求を拒むに足りる相当の理由があるときは、当該請求を拒むことができるものとするとともに、閲覧対象事項の制限を行おうとするものであります。
 次に、住民票の写しの交付につきましては、戸籍の謄抄本の交付に準じて、請求者はその請求事由等を明らかにすべきものとし、市町村長は、請求が不当な目的によることが明らかなときは、当該請求を拒むことができるものとするとともに、住民票記載事項証明書の制度化、住民票の写しの交付に際して省略できる記載事項の追加等を行おうとするものであります。
 さらに、戸籍の附票につきましては、戸籍に準じて閲覧を廃止するとともに、写しの交付につきましては、住民票の写しの交付の規定を準用しようとするものであります。
 また、住民基本台帳の閲覧及び写しの交付等の制度の改正に伴い、偽りその他の不正の手段により住民基本台帳の閲覧等をした者に過料を科する旨を定めようとするものであります。
 以上のほか、住民基本台帳制度における住民に関する記録の適正な管理を図る観点から、住民基本台帳事務の電子計算機等による処理のために必要な規定の整備を図ること、市町村の選挙管理委員会が選挙人名簿を閲覧等に供する場合における責務を明確にすること、市町村長の委託により住民基本台帳に関する事務の処理に従事する者等の責務を明確にすること等関係規定の所要の整備を行おうとするものであります。
 以上が住民基本台帳法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#107
○委員長(金丸三郎君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#108
○三治重信君 提案理由にも改正の理由で説明されておるわけなんですが、この中で一つ確認しておきたいのは、住民基本台帳はそもそも公開の原則と、こういうのでずっとやってきたのだけれども、プライバシーの保護に関する関心が強くなってきたと、こういうことが言われておるんですが、その公開の原則とプライバシーの保護に関するということなんだが、住民基本台帳に記載されている事項で特に国民のプライバシーが問題になった事項をひとつ具体的に二、三、また、そういうものを順序的にこういう問題、こういう問題がそういうプライバシーの問題として、公開の原則からいって再検討しなくちゃならぬようになったという御説明をお願いしたいと思います。
#109
○政府委員(大林勝臣君) 御指摘のとおり、住民基本台帳は昭和四十二年に制定されまして以来、その前の住民登録法の時代から公開の原則が貫かれておったわけでありますけれども、昭和四十年代の後半以降、世界的と申しますか、日本におきましても相当プライバシー意識というものが高まってまいりました。その間、住民基本台帳を利用いたしまして住民のいわゆる名簿づくり、具体的に申しますと、山形県の鶴岡市の鶴岡市名鑑を出版するとか、あるいは島根県の安来市などにおきましては家族構成名簿を出版するとか、さらには高知におきましても家族名簿を出版すると、こういう事件が相次いだわけです。その都度、適宜処理はされたわけでありますけれども、そのほかいろいろ市町村の窓口におきましても、みだりに出生地を調べて差別の問題にするとか、あるいは続柄等を調べて、その続柄で本人にとっては外に出したくないということをみだりに世間に公表するとかいうことが具体的にも各地で重なってきたわけでありまして、この際、住民基本台帳の記載事項の中でも特定のケースにおきましては、やはり公開について一定の制約を課す必要があるだろう、こういう趣旨で今回の改正をお願いをいたしておるわけであります。
#110
○三治重信君 今の一般的な説明で、そうすると住民台帳を結局もうけ仕事に、一つの市役所へ一々行って見なくても、住民基本台帳を印刷物にして住民の住居一覧表というようなものを市販すれば、それを買ってくれば市民の全体がだれでも全部わかる、それを商売の道具にしよう、こういうことでそういうものがよく売れるようになった。それが結局プライバシーの侵害にもなる、こういうことなんですが、そこはどうも結局、住民台帳を印刷物にして営利の対象にするのがいかぬというのか、その中身が一般に公開されることによって、それがどう利用されるかわからぬ、公開とはいうけれども、各人のことはそうあからさまにならぬ方がいいというふうな考え方なんですか。
#111
○政府委員(大林勝臣君) 住民台帳が公開されております限りは、住民のいろんな経済行為にも使われておるのはまた事実でありますけれども、一番の問題にすべきものは、やはり特定の住民の方々にとっては外に公表されたくないと思うものまでも、そういった名簿を世間に公表することによって、公表の結果、場合によりましては特定の方々にとっては大変なプライバシーの侵害になる、そういうことがやはり制度上は反省をする必要があろうというふうな考え方に基づくものであります。
#112
○三治重信君 その点が結局よくまだどうも納得できぬのです。しかし、住民基本台帳というのはだれが行っても自由に閲覧できるようになっているわけでしょう。だから、知ろうと思えば特定な人についての住民台帳の記載事項はだれでも自由に閲覧ができる。それの制限は全然今回はしないわけですね。
#113
○政府委員(大林勝臣君) この住民台帳の今回の改正とプライバシーの関係、いろいろ私どもも考えたわけでありますけれども、プライバシーと申しますものには、個人のそれぞれの情報、これはいろんな種類がございます。思想、信条でありますとか支持政党でありますとか、財産、病歴、いろんな情報がそれぞれの個人にあるわけでありますけれども、そういったプライバシー、つまり個人情報の中でもたくさんあるには違いないのでありますけれども、現在の住民台帳に記載されております事項、例えば氏名、年齢あるいは世帯の構成でありますとか戸籍でありますとか、そういったものについては、全国民にとってこれがプライバシーの侵害になるというようなものであるとは考えられていないわけであります。ただ、そういった事項につきましても、個々人の問題として考えました場合に、特定の個々人にとりましては、項目によってはこれはプライバシーの侵害になる、こういうのが今日の実態であろうと思います。
 したがいまして、現在はプライバシー概念というものが必ずしも確立されてはおりません。むしろ学問的にも、まだどちらかと申しますと混沌たる状況であるという認識を私どもも持っておるわけでありまして、一律に特定の個人情報がすべてこれはプライバシーの侵害につながるものだというものを、個々具体的にこれを限定するというような段階にはまだなってない。ただ、少なくとも住民台帳の記載事項に関する限りは、一般的に、総括的にそれぞれの項目がプライバシーの侵害につながるとは考えられない。ただ、項目によりましては、あるいは特定の私人の立場にとりましてはその使い方によってプライバシーの侵害になることがあり得る、そういう趣旨から、閲覧の原則としては一応従来の公開の原則というものを維持はいたしますけれども、閲覧の目的、こういったものを窓口でチェックすることによって適正な運用を図りたいという考え方でございます。
#114
○三治重信君 住民台帳の写しを要求する場合には、本人以外のものについてはそれの写しを必要とする理由とか請求する理由を書かなくちゃならぬということが改正の趣旨になっているようなんだけれども、閲覧については別にそうチェックするというようなことは一つも出てないので、それで僕の方は、むしろ写しをとるのにそういう使用目的なんかのチェックを要求されるように今度の改正でするのに、閲覧では何らチェックということが書いてないのは、それはどういうわけかということの質問を僕はしたいわけなんです。だから、閲覧は従来と変わらぬ、自由のままかと聞いているわけだから、そこをひとつはっきりしてもらいたい。
#115
○政府委員(大林勝臣君) 閲覧あるいは写しの交付の請求があります場合にそれぞれに規定を設けておりまして、御質問の閲覧につきましては、今回の第十一条の改正で一応公開の原則は書いてはおりますけれども、第二項で、閲覧の「請求は、請求事由その他自治省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。」、つまり具体的な請求の理由と、今後省令で考えておりますのは、閲覧者の氏名でありますとかあるいは住所でありますとか、さらには閲覧の対象の範囲、こういったものを明らかにして請求をするような措置を考えております。そういう意味におきまして、閲覧の場合と写しの交付請求の場合に、手続的には整合性を保つように考えておる次第であります。
#116
○三治重信君 わかりました。それで妥当だと思うんです。閲覧は自由だけれども、住民台帳の写しについては利用する理由を書けというのはどうも整合性がないと思っておったら、それは閲覧についても同じように制限をする、こういうことでわかりました。
 ところで、そういうふうに利用について非常に制限をする、その中で殊に個人のプライバシーの問題だと、こういうことになると結局、戸籍制度のほかに住民基本台帳をつくった意味がなくなってくる。もちろん僕も、基本台帳なりそういうものが商売の道具に、余り住民の一覧表といって商売にされるのもどうかと、電話帳みたいに利用されるのもどうかと思うわけなんで、そうならそうで一定のプライバシーということで制限をするのはいいのだが、そういうぐあいにすると戸籍制度との関係が二重になりはせぬか。しかも、見てみると住民基本台帳にも本籍を書くようになっていますね。だから、もしもプライバシーというなら、住民基本台帳なんかに本籍なんか書かぬようにして、本当の世帯、住民のそこに現在住んでいるその世帯だけの関係を書けば、そういうプライバシーとかそういうような問題、先祖とか出生とかというような問題が随分保護されるのじゃないかと思うんです。
 そこで、プライバシーの制限をするというのを住民基本台帳でする、しかし戸籍制度はそのまま残しておくというと、どうもそこはせっかく住民台帳をつくってやってきたのと重複すると思うんです。こういうようなものは、本当にある程度プライバシーを制限するための住民の基本台帳ということになると、戸籍制度と一緒にした方がいいような気がするのだが、どうなんですか。
#117
○政府委員(大林勝臣君) 一つの御意見であろうと思います。
 たしか戸籍制度ができました時点では、住民の把握というのは戸籍の方で一緒にやっておった。むしろ戸籍イコール住民である、これから制度として出発したように私ども聞いております。その後の過程におきまして、寄留制度でありますとか、さらには住民登録あるいは今日の住民台帳に発展をする。つまり、住民の住所移動というものが極めて頻繁に多角的になってくる。
 そこで、やはり戸籍制度というのは、本来、人が生まれて死ぬまでの身分関係を記録し、これを公証するものでございますし、これに対しまして住民台帳は現実の市町村におきまして住民の居住関係、これを公証する。その住民の居住関係を基礎にして、選挙人名簿でございますとか、いろんな各種年金あるいは国民保険、こういった仕事の基礎にするというような発展の仕方をしておるわけでありまして、身分関係と住所関係というふうな格好で分離をしてきたわけであります。
 しかも、戸籍は市町村の区域内に本籍を有する夫婦でありますとか、これと氏を同じくする戸ごとに編製するということになっておりますのに対しまして、住民台帳は市町村の区域内に住所を有する個人を単位にしまして、それを世帯ごとに編製する。したがいまして、例えば住民票の世帯を見ましても、親族以外の縁故者でありますとかあるいは同居人など、生活を同じくするような方も現実の住居状況ということで載ってまいるわけでありまして、やはり戸籍との取り扱いの違いから、一本化は難しいという感じを持っております。
#118
○三治重信君 それでは、意見だけ言っておきますけれども、だから住民台帳にもっとプライバシーが出てきたのだから、本籍なんという問題の事項を書くのをやめて、本当の現状の世帯の状況を把握するというふうなものだけにして、それはもう親戚を一緒の世帯にすれば、それは親戚でいいわけなんです。そうすると、戸籍は本当の続柄だとか身分関係を出すようにして、住民台帳はだから一般にプライバシーを最小限度に制限するようなことだけの記載にしてしまうと、今度は経済関係のいわゆるマル優の制度をやるにしてもそれから世論調査をやるにしても、何にしても社会的な調査に必要な資料として使われるというふうに僕はした方がいいと思うんだ。二つやるなら身分関係のようなものを住民台帳からみんな除いてしまうか、あるいはそれが両方とも必要なら一緒にしちゃった方が事務が楽になっていいし、そこをもう少し再検討してもらうことを要望しまして私の質問を終わります。
#119
○上野雄文君 それでは、最初に住民基本台帳の方から御質問を申し上げたいと思うんです。
 「住民に関する記録の適正な保護・管理の在り方について」ということしの一月に出されました報告書を読ませていただいたわけであります。これは住民記録に係るプライバシーの保護等に関する研究委員会という名前がついておりますから、そちらに力点が置かれたという報告書というふうに私は見たわけですし、また中もそういうように組み立てられているように思うんです。今三治委員からの質問もありましたけれども、公開が原則になってその方向については変わってないんですね。そこのところがこの研究委員会の報告と大分違っているのではないかなと、こういう印象を持つのですけれども、そこのところの見解をお聞かせをいただきたいと思うんです。
#120
○政府委員(大林勝臣君) 昨年の夏以来、学識経験者にいろいろ研究をしていただいたわけでありまして、御指摘の報告書のような結論をいただいたわけであります。
 この研究会の途上におきまして、まさに今上野委員がおっしゃいましたような今後の論議、要するに原則公開ということで考えていくのか、あるいは原則非公開ということで考えていくのかというのが、もう既に最初の段階から大変な議論になりました。これにはやはりそれぞれの委員の間で相当の意見の食い違いがありましたので、一応、原則非公開、原則公開という原則を立てないまま、どういう制度の立て方にするか考えていこうではないかということで、前提を決めないままいろいろ議論をしていただいたわけであります。
 その議論の過程におきまして、プライバシーの意識の向上の現状から言いまして、住民台帳の登録事項の中でもプライバシーの侵害になり得る項目がどうしてもあるから、こういった問題を踏まえて閲覧の制限というものはやはり考えていかざるを得ないだろう。そこで、その閲覧の制限の仕方でありますけれども、方法としては二つある。一つは、閲覧対象者を制限する、つまり閲覧ができる人をもう制限してしまう方法、それからもう一つは、閲覧の目的、これの当否を判断してその目的から制限していく方法と、二つ考えられるわけであります。
 そこで、この研究会の方ではいろいろ議論があったのでありますけれども、まず閲覧の請求者の限定と、それから請求目的の当否の判定、この両方の面から制度を組み立てた方がいいのではないか、こういう結論になって報告をいただいたわけでありますが、結果的に、しからばそういった立て方が原則公開と考えるのか、原則非公開と考えるのかという話が最後の段階になりまして再び出てまいりました。結局は、そういうまた議論になりますと、はてこういった研究結果をまとめたけれども、全般的にこれを原則公開と考えるべきか、原則非公開と考えるべきか、なかなか研究会自身においても判断できない。そこで、一応こういった制度の立て方の改正について提言はするけれども、それの制度化、立法化については一応政府にお任せしよう、こういうことに結果的になったわけであります。
   〔委員長退席、理事岩上二郎君着席〕
 そこで、私ども立法作業をいたしたわけでありますが、一番難しいのは、もう御案内のように、請求者をどう限定するかということであります。この研究会の報告書にもございますように、公務員でありますとか弁護士でありますとか、あるいはいろんな行政書士、ほかのそういった公的な部門で職務上働いておられる方々、こういう者は一応いいだろう、これは研究会の報告にもございます。そのほか、しからばそれに続くものとして、世論調査でありますとか世間のためにやられておる仕事、こういったものもいいだろう。しからば、あと経済的行為はどうかなという、そこら辺が非常にボーダーラインになってくるわけであります。
 そこで、報告書におきましてもなかなかはっきりしない文言が出ておるわけでありまして、なかなか立法技術的にそれをしかと限定して書くということが非常に困難だ。法制局でいろいろ議論したわけでありますが、やむを得ず今日の段階ではプライバシー概念がまだ未熟である段階を踏まえまして、当面は請求目的の当否の判定から制度改正を考えていこう、こういう結論になったわけでありまして、今後実際の運用を通じまして、さらに改正をすべきかどうか検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
#121
○上野雄文君 それから、今度は電算機を使って磁気ファイルでやってよろしいということになるわけでありますが、それは人間の目で見て確かめるというわけにはいかないわけなんです。ここのところをどういう議論をされたのか。そこに専門的な知識なり技術なり持っている人でないと出すことができないということになるわけですから、その辺の不安の問題についての考え方をお聞かせをいただきたいと思います。
#122
○政府委員(大林勝臣君) 確かに電算機に入ってしまいますと目では見えない。そこで、電算機から出しまして、それを文字にしないと結局わからないわけであります。そういう意味で、御指摘のような不安というものが出てまいるわけであります。ただ、現在の大変な高度化した情報化社会におきまして現実に既にこういった台帳類が電算化されまして、これが現実にもう利用されておるし、実際に行政の簡素合理化、迅速化、住民の利便というものを考えました場合には、こういった状況は避けて通れないというのが現実であります。そこで、そういった現実を踏まえながら先ほどの不安という問題に対処いたしますためには、結局こういった電算関係の部門におきます公の記録の管理、保護、こういうものを今後どう進めていくかということが基本になるわけであります。既に電算化しておる市町村におきましても相当程度プライバシー関係の条例をつくりまして、内部の電算化されておる資料の管理、保護には留意いたしておるわけでありますが、今回の改正を御承認いただきました場合には、一年間の余裕期間をもってその具体的な取り扱いを地方の方に示したいと考えております。現在、自治省におきましてそういった電算化された情報の保護、管理の研究会というものを設置をいたしておるわけでありますが、そこで具体的な細目を決めて、遺漏のないような運用にいたしたいと考えております。
#123
○上野雄文君 お話としてはそれなりにわかるわけですが、現状はどうなってますか。
 これは朝日の社説ですか、二月二十日のやつですが、「住民記録に電子計算機を活用している市町村は千六百を超えた。新しい情報処理技術に沿った個人情報の適正な管理が問われるのは当然といえよう。」、こう書いてあるわけですけれども、現状についてわかりやすくお話しいただきますか。
#124
○政府委員(大林勝臣君) 既に住民記録を電算化しております市町村が過半数を超えておりまして、千七百六十団体ほどございます。また、国においてもいろんな情報を電算化しておるのが現実でありますけれども、そういった問題は何も今に始まったわけではないわけでありまして、既に昭和五十年代を迎えますと相当程度の普及を示してきたわけであります。
 そこで、OECDのこういった問題の勧告でありますとか、これを受けました現在の総務庁、当時の行政管理庁の研究会、こういったものの提言を受けまして、昭和五十年早々に各省の事務次官会議で、一つの電算化されております資料の取り扱いについての基準というものが示されております。この基準に基づいて国の方は現在維持管理に努めておるわけでありますが、自治省といたしましても、その当時の事務次官会議の基準をさらに敷衍いたしまして、地方公共団体の方に通達として流しております。非常に細かな内容にわたるものでありますけれども、こういったものを基本にして、現在千七百六十の住民記録の電算化されておる市町村におきましては対処をしていただいておるわけであります。
#125
○上野雄文君 さて、電算化をされてまいりますといろんなところへ利用することが可能なんです。
 そこで、五月の二十七日ですけれども、日経で「郵便局で住民票交付 郵政・自治省方針 特産品販売も拡大」、こういう見出しで報道があるわけです。郵政省もいろいろ仕事を広げていくということなんでしょう。一、二、三とありまして、一番目は、郵便局の窓口でカタログによる特産品の販売、配達。それから二番目がお祭りなどの観光情報誌の配布。三番目に、「早ければ六十一年度から住民票、戸籍謄本の交付など行政事務の一部を代行する――方針。」というふうに載っているんです。それで、財団法人地域活性化センターというのが今度できる、そこと郵便局と提携をさしてそういう仕事をやろうと。これは我々もあれっという感じでこの記事を見たわけですけれども、実はこの最後の方に「住民票や戸籍謄本の交付など行政事務の代行サービスは、郵政省が「自治省側の態勢ができ次第開始したい」」とある。その次に、「自治省首脳も「行政判断を伴わない単なる受け渡しの仲介なら、郵便局でも可能なので、住民サービスになる」としており、早ければ六十一年度から実施するため、」云々と、こう書いてあるんです。これはどうなっているのですか。各市町村の電算化が進んでいく、そうすればいろんなところと結びつくこともできる、最近は機種が違っても全部同じように結びつけることができるような、何かINS体制下でできるようです。そういう状況下ですから、御見解はどうなんですか。特に、首脳が大体オーケーしているのだと言わんばかりの書き方なものですから。
#126
○政府委員(大林勝臣君) その新聞記事は私どもも拝見しましてまことに驚いたわけであります。私ども、こういった住民票あるいは閲覧、そういった行為はやはり一つの証明行為、いわゆる行政処分的な行為だと考えておりまして、そういった証明行為を郵便局で扱っていただくということは毛頭考えてないわけであります。どこからそういった記事が出たのかいろいろあちこち聞いてみたのでありますが、省内ではそういった記事については全く関知いたしておりません。
#127
○上野雄文君 それと、いろいろお話を伺いましてそれなりにわかりましたけれども、やはりこれからプライバシー保護という問題が、各自治体でも保護条例の制定などの動きも活発でありますし、それからさらに情報公開の問題もまた片一方で進んでいるわけです。そういう状態の中でありまして、おのずから整理を迫られてくると思うのでありますけれども、個人の情報の問題というのはやはりプライバシーの保護という観点からスタートをしていくべきではないかと私も実は思っております。いろいろな新聞社の社説を読んでみましても、これは朝日、競売、毎日の社説でありますけれども、この研究委員会の提起をした閲覧請求者の制限についてはいずれも肯定している立場をとっておられるようです。ですから、そういう面について今後ともひとつ御検討をお願いをしたいなという意見を申し上げて、この問題については終わりにいたしたいと思うのです。
   〔理事岩上二郎君退席、委員長着席〕
 さて、せっかくの機会でありますので、住民基本台帳の問題と同じように市町村の窓口で扱っております外国人登録の問題、このことについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 きょうは何か裁判の都合があったのに、私が質問をすることになってこちらにおいでをいただきました黒木課長に大変どうも申しわけないと思うのでありますけれども、お許しをいただきたいと思うのであります。
 そこで、前置きはさておきまして最初に、指紋の照合というような仕事が自治体の窓口事務になじむものであるものかどうかというのは、僕らいつも疑問に思っているわけなんですけれども、法務省はやらせている側ですからその方のお答えは二の次にして、自治省の方ではどうですか。
 こういう仕事、都道府県や市町村の職員はこれやれと言えば何でも唯々諾々としてやらざるを得ない、こういう立場をとらざるを得ないことはないだろうと私は思っているのですが、こういう仕事、先ほど佐藤委員からも北九州の指紋を押捺させる施設設備等についての説明がありましたけれども、どうでしょう。どんなふうにお考えですか。
#128
○政府委員(大林勝臣君) 外国人登録法の施行が法務省の機関委任事務として各市町村の窓口で行われておるわけでありますが、その仕事の一つとして指紋の照合というのがある。そこで、御質問は指紋の照合というのが市町村の窓口職員で可能かどうか、こういう御趣旨の御質問であると思います。
 問題は、指紋の照合というのをどの程度の正確性で要求されるかということにかかってくるのだろうと思います。そういった問題について法務省として市町村の窓口に対して御指導をされておるのであろうと思いますので、私どもの立場から、市町村の窓口で現在法務省が御指導されておる指紋の照合が可能であるか難しいものであるか、どうであるかということについてのお答えは差し控えさしていただきたいと思うわけであります。
#129
○上野雄文君 自治省が委任事務として決まっていることについてとやかく言う筋合いではないという気持ちもわからぬわけではありませんが、それにしても、一般常識的に言って指紋をとるというのをどうしても日本人の場合犯罪の問題と関連して考えるという、そういう風潮といいますか、それがあるだけに、役場の窓口でそういった仕事を扱うというのはどうも私はなじまない仕事ではないかなという感じを持っているのですけれども、法務省なんかでは、これを始めたときにそういう点についての検討、それから議論といいますか、どんなふうにお考えでしたか。
#130
○説明員(黒木忠正君) 指紋制度が始まりましたのは法律的には昭和二十七年でございますが、実施は昭和三十年でございます。その間準備期間がかかりましたのは、一つは私ども法務省における指紋の鑑識をやるというための職員の訓練その他の時間がございまして、それからそのほかの事務もございますけれども、実施が昭和三十年に延びた、こういういきさつがございます。
 それで、市町村の窓口における指紋の照合につきましては、あえて言葉を二つ使わせていただきますが、指紋の鑑識と申しますのは大変難しい仕事のようでございます。これにつきましては、今申し上げましたように、職員の間でも特別の訓練を受けなければ鑑識はできないというふうに私ども思っております。ところが、指紋の照合と申しますか、二つの指紋、特に外国人登録の場合は、前回ある人が押した指紋と今回押した指紋が同じであるかどうか、しかもそれが左人さし指と限定された指紋を肉眼で照合するということはさほど難しい仕事ではないというふうに私ども思っております。
 ただ、市町村の窓口の職員につきましてはずっと長く外国人登録の窓口に座っているわけではなくて、職場内で配置転換ということが行われまして、その窓口に座る職員の中には、ついことしの四月に配置がえになったという人もおるわけでございます。そういった人たちににわかに指紋を照合しなさいと言いましても、これはなかなか訓練といいますか、多少の指導を受けなければ見分けもつかないであろうというようなことがございまして、私どもとしましては県単位、それから実はきょうから始まっておるわけでございますが、中央研修と申しまして、法務省で行われております研修の中でもそういった指紋の照合につきましては一応のガイダンスをして、それで指紋の肉眼による照合をしてもらうというようなことでやっておる次第でございます。
#131
○上野雄文君 これは黒木課長さんもごらんになっていると思うのですが、「新版・外国人登録法と実務」というのがあるそうですね。その中で「指紋による同一人性または非同一人性の識別は絶対的な正確度を持つ反面、指紋の鑑識には専門的知識と経験を必要とし、だれでも容易にこれを識別できるわけではない欠点がある。」、こう書いているそうです。今の御答弁はまことに巧妙でございまして、照合と鑑識というのを分けてお答えになられたわけですが、この「外国人登録法と実務」というものからいくと、照合の問題を含めてこれは述べているのと違うのですか。全く鑑識のことについてだけ触れているわけですか。
#132
○説明員(黒木忠正君) この表現から申しますと、専門的な鑑識について述べていると思います。したがいまして、肉眼による指紋の照合ということについては必ずしも専門的なそういう知識というものが必要であるというふうに私ども思っていないわけでございます。
#133
○上野雄文君 そうすると、指紋の照合は何らの道具もなくて、ただ普通の目で見て、それだけでいい、こういうふうにお考えになっているわけですね。
#134
○説明員(黒木忠正君) 市町村の窓口におきます指紋の照合は今お話しのような肉眼による照合で結構ですと、こういうことで、特別に専門的な知識、技術を私ども要求いたしておりません。
#135
○上野雄文君 わかりました。
 今まで指紋押捺拒否をめぐって幾つか裁判がありましたね。その中で市町村の職員が、全部証言に立った職員の方々は実際照合してないのですと、同一人物の確認というのはみんな写真でやっているんですと、こういうことを言っていることについても、それは課長御存じですね。
#136
○説明員(黒木忠正君) そのような証言が多かったことは承知しております。ただ、一言つけ加えさしていただきますと、そういったことも踏まえて、実は先月の十四日でございますか、私どもの局長名で都道府県知事に出しました通達で、改めて各自治体に対して指紋の照合をするようにということを指導したといういきさつは、そういう背景があるからでございます。
#137
○上野雄文君 後からそのことについても申し上げようと思ったんですが、先ほど課長が言われたように、習熟している人が必ずしもやっているわけじゃないんです。市町村の職員の任命権は皆さんのところにはないわけですよ。市町村長が持っている人事権で内部の配置を決めているわけです。しかも最近では、こういういろんなもめごとの起こるようなところはあんまり長くいたくないよと、こういう気分もないわけじゃありませんから、できるだけ交流をしてやるという配慮が働くのはそれぞれの市町村では当たり前のことなんだろうと思うんです。実際にそれはガイダンスで少し訓練はするかもしらぬけれども、そのことをやれないと言っている連中に強引にやれと言う態度というのはどういうんですかね。通常仕事を委任事務でお願いをしている立場からすれば、頼まれた方がなかなかそこまでやれないんですよと、こう言っているのを、またさらにやれやれと言う態度というのはどうも理解できないのが私なんかの立場なんです。
 これはそれならそのように、例えば最近の市町村の窓口の印鑑証明、ほとんど間接証明方式に変わってきましたが、これはやっぱり職員に先行きいろんな負担をかけない、できるだけ正確さを保つということでカードを出して、偽造だ何だで後で担当者が民事訴訟の引き合いに引っ張り出されるようなことをやらないようにしているわけです。そういうことから考えると、ただ法律で決まっていることで、委任事務でおまえたちを指揮監督できるのだから、このことは強引にとにもかくにもやりなさいと言うことだけの考えでは少し足らないんじゃないですか。やっぱりそれをやらせるのであれば、やってもらうような手だてというものを考えていくというのが普通なんじゃないかなと私ら思うんです。私だって県の職員をしておって、特に私がいたのは地方課ですから、市町村の職員とも年じゅうつき合うわけです。高圧的な態度で物事なんか頼んだって、それは仕事はうまくいきませんよ。国家公務員と地方公務員とは上下の関係にあるんですか。
#138
○説明員(黒木忠正君) 上下の関係はございません。
#139
○上野雄文君 委任事務についての理解というのはどういうのでしょうね。末端まで国の意思をとことんまで押し通すことができる仕事だと、そういうふうにお考えなんでしょうか。自治省では一般的に委任事務というものについての見解というものをひとつ局長、私もいろいろ議論をする場合に勉強しないといけませんので、改めて教えていただけませんか。
#140
○政府委員(大林勝臣君) 一つの事務を執行いたします場合には、例えば国でありますと、国の指揮監督するところと出先の現場で働くところと、典型的な例を出しますと、そこではいわゆるもう全面的な指揮監督権というものがかぶるわけであります。ただ、現場の仕事を地方公共団体が行いますという関係が、国の本省と出先の関係とは違うわけでありますので、機関委任事務を執行する際には一応国の方に指揮監督権というものは制度的にはありますけれども、やはり地方の立場というものもあわせて考えて仕事をする質のものでもあろうと思います。したがいまして、地方自治法の中でも、地方の議会の意見提出権でありますとか、あるいは委任事務についての地方団体の長としての意見の提出権というものも制度的に国家行政組織法等で規定をされておるところでありまして、家が委任を地方公共団体の執行機関にいたします場合にも、結局は地方公共団体の現場で混乱が起こらないような配慮というものがあってしかるべきであろうと思います。
 そういう意味で私どもも、外人登録問題というのは非常に高度の政府の政策判断あるいは国会における慎重な御審議の結果、できておる制度でありますので、この制度の適正な運用を地方公共団体が行うのもまたこれ当然でありますけれども、同時に窓口ができるだけ混乱しないような運用を法務省の方にお願いをしてきてまいっておるわけであります。
#141
○上野雄文君 今お聞きのように、裁判の証言で職員の例が、実際に指紋の照合というのはやろうたって我々にはできないんですということを言ったから、今度は通達で改めて照合しなさいということを出したのだと、こう言うのです。これは、できなければできるようにしむけるためには何らかの手だてというものを考えるというのが普通のやり方なんだろうと思うんです。仮に指紋の押捺の是非の問題は別にしても、何としてもどうもやりづらい仕事であると言えば、やれるような仕組みを考えるというのが普通なんじゃないのかと私は思っていますけれども、こういう点については、自治省なんか通常の仕事の場合はどうですか。通達でぽんと出しておけば、それでおまえらはもう何でもかんでもやるんだよということだけで通達をお出しになるような考えをお持ちなんですか、やはり自治省も自治省の立場に立った場合に。
#142
○政府委員(大林勝臣君) 一般論として申し上げまして、いろいろ都道府県あるいは市町村の方に仕事をお願いするととが多いわけでありますが、そういった場合に、都道府県あるいは市町村の方に仕事をしてもらいます場合には、私どもの役所の場合には地方六団体というような地方の団体の声を常に把握し調整をしている機関もございます。そういったところと事前に打ち合わせをしながらいろんな仕事の通達を考えておるのが現状でございます。
#143
○上野雄文君 というようなことなんだけれども、どうですか、法務省の今回のやり方についてはそれなりの反省なり何なりというものはお持ちではありませんか。
#144
○説明員(黒木忠正君) 指紋の照合につきましては、私どもかねてから照合を励行するようにという指導は市町村に対して行ってきておるわけでございますが、このたびの通達は、先ほど申し上げた見てないという証言等が出ていることを踏まえて、改めて重ねて通達した、こういう次第でございます。
 私どもといたしましても、市町村における指紋の照合をただ命令一つでやりなさいと言うだけで済む問題とは思っておりません。私どもといたしましては、そもそもこの事務が市町村に機関委任事務されておりますその理由というものが、一つは外国人の利便というものを考えて、その居住地の市町村において登録をしてもらうということが外国人のために大変便利であるということから機関委任事務されておりますような背景もございますので、これらの事務に当たりましては、外国人の利便ということが一つ、それからもう一つは、事務を実際やっていただきます市町村においてなるべく負担のかからない方法といったようなことは、これは常に考えておるわけでございまして、このたび私どもの方で指紋の押捺方法を改めましたのは、一つはやはり外国人の負担を軽くするということと同時に指紋を押捺させる方の自治体の職員の負担を多少でも軽減できるならばといったようなことももちろん配慮の中には入っているわけでございます。
#145
○上野雄文君 余り変わっていませんよ。やはり通達で市町村の職員を法務省は手足のごとく使える、こういう感覚で、法律で決めれば自治体の窓口は全部それに従って何でもやれる、こういうふうにお考えになっていることは間違いない。私はこういうふうに思わざるを得ないんですが、どうもまた後でその裏打ちを申し上げなければなりませんが、その辺の感覚が、指紋をとること自体がただこれに変わっても、照合ということがやれないというふうに言っている連中がやれるようにする、その手だては一体どうやったらいいのかということをとことんまで考えるというのが普通のやり方ではないか。自治体が印鑑証明のやり方についてこういうふうに制度も変えてくるという自分の側での努力をしているという姿をあなた方は的確にとらえていないというふうに私は言っても差し支えない、こう思うんです。
 自治省に、また指紋押捺問題で局長をこんなに答弁に引っ張り出してはどうも申しわけないと思うのだけれども、しかし県や市町村にしてみればやっぱり頼りになるのは自治省だ、こう思っているのが大部分だろうと思うんです。そういう立場からいろいろ見解をお聞きしたいのでありますけれども、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民」、これは国籍の別なくそこに住所を持っている人たちは全部住民なんだ、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。自治省のひとつ見解をお聞きしたい、こう思うんです。
#146
○政府委員(大林勝臣君) 地方自治法で住民の権利義務、各所にそれぞれ出てくるわけでありますが、地方自治法の第十条で御指摘のような規定がございます。この場合の住民の中には、国籍のいかんを問わずそこに居住しておる者を住民とするというのが従来からの一貫した解釈でございます。
#147
○上野雄文君 そうすると、国籍のいかんを問わず、当該自治体の長は、そこに住んでいる住民、この人たちの包括的な意味での生活を守るというか、法律で定められているいろんな仕事についてのことを平等に扱ってやる、そういう立場に立つのは当然だろう、私はこう思うんです。それも間違いないですね。
#148
○政府委員(大林勝臣君) 市町村、都道府県の一番の役目が住民の福祉の向上ということにあるわけでありますから、国籍のいかんを問わず、市町村長、都道府県知事としては努力をする義務があるわけでありますが、事柄それぞれに法律という一つのルールがあるわけでありまして、その法律で規定をされておる事柄に即して知事や市町村長が行政を執行するわけであります。したがいまして、日本人と外国人が同じ地方公共団体の住民でありながら、いろいろ法律の立て方のいかんによりまして取り扱いが異なってくるということはやむを得ない場合も多いのであろうとは存じます。
#149
○上野雄文君 後段の話は当たり前のことなんであって、言わずもがなのことなんだろうと思うんですが、包括的に福祉を守るというその中では全く同じように扱うというのが当然のことだというふうに理解をするわけです。
 そこで、登録済証明書のことについてお尋ねをしたいのでありますが、これは五月十七日に衆議院の法務委員会で大分突っ込んだやりとりやりましたね。我が党の横山委員やそれから特に小澤委員と黒木課長も随分いろんな答弁をされておられるわけでありますが、ここで一つ最初にお聞きしておきたいと思うのは、登録済証明書の作成の問題をめぐって、これは一〇一国会のときの衆議院でのやりとりだと思いますが、当時の入管局長は小林さんじゃなくて、去年の入管局長ですね、ちょっと今見当たりませんから、後でまたお尋ねをいたしたいと思いますが、登録済証明書が使われる範囲、これはたくさんあると思うのでありますが、法務省の方ではどんなものがあるというふうにお考えですか。
#150
○説明員(黒木忠正君) 登録済証明書の使われ方と申しますのは、大変に外国人の生活が多岐にわたっておりますので、官庁に提出する場合、民間の信用機関、取引先、それから場合によっては結婚するような場合と、大変広い範囲で使われていると理解しております。
#151
○上野雄文君 これはもうほとんど日常生活に欠かすことができないほど多く使われているわけですが、この扱いの問題をめぐって今度はかなり制限を加えることになってきたわけですけれども、このことについて市町村長が、ことからは固有事務であるから何も法務省の言うとおりに処理をしなくてもいいのではないかという判断を持つところがたくさんふえてきましたね。この新聞記事でも、これは六月七日の毎日新聞夕刊ですが、町田市長は、法務省通達は誤りである、こう言って告発もしませんし、それから証明書の発給は継続してやる、こういう立場を明確にしているわけです。この点についての一つの議論がまだ整理されていないのではないのか、こういうふうに思うんですけれども、この点について五月十七日の小林入管局長のこの答弁を取り上げてみますと、
  その指示に反して市町村が登録済証明書を作成してしまったという場合に、これは明確に通達に反するわけでございますけれども、その場合にこれを担保する法的な根拠があるかという点は、これはなお詰める必要があると思います。これは地方自治法百四十六条に基づく職務執行命令の対象とすることができるかどうかということに尽きると思います。その点につきましてはさらに詰める必要があると思いますから、私は軽々にお答えを申し上げませんけれども、しかしその条項に最終的にはかからしめる可能性が全くないとは私は存じません。
 こういう答弁をされているんです。これは御存じですね。
 そこで、「さらに詰める必要がある」ということを言われているのでありますが、今詰めてみた議論はされておられるんですか。
#152
○説明員(黒木忠正君) この登録済証明書の発行するその事務そのものにつきましては、これは市町村固有の事務であろうというふうに考えておりまして、その意味では機関委任事務ではないというふうな理解でございます。ただし、この登録済証明書と申しますのは本来国の管理いたします登録原票、これに基づいて交付されるということになりまして、私どもとしましては市町村長にその登録原票の管理を委任していると、こういうことでございますので、登録済証明書交付自体は固有事務でありましても、それを利用する立場から申しますと、これは本来その管理を市町村長に委任しているわけでございますので、その辺のところになりますと五月の十七日の法務委員会における入管局長答弁のように若干詰める点がございまして、私ども現在その詰めの作業をやっております。しかしながら、ただいま現在これを詰め切ったという状況にはございませんで、引き続きそこのところは検討しておるという次第でございます。
#153
○上野雄文君 その苦しみもわからないわけではないんです。わからないわけではないんですが、もう大体二十日以上たっているのじゃないんですか。それと、七月に入ればいよいよ大量切りかえというのを迎えるわけです。これは一体詰めていると言ったっていつをめどに詰めるんですか。市町村の方では毎日と言ってもいいくらい、借金するのでも運転免許の書きかえでもあるいは新規の取得でも、今どろ学校はありませんからあれですが、国民年金、健康保険、就職、土地の登記、各種資格取得の際の添付すべき書類、この間なんかは風俗営業の問題なんかでは大変だったと思うんです。毎日とも言っていいくらい、みんなかかわりあるわけです。これは早く態度を決めてくれなければ困るんじゃないんですか。いつどろをめどにおやりになるんですか。
#154
○説明員(黒木忠正君) 時期についてはいつまでと明確には申し上げられませんけれども、なるべく早い機会に結論を出したいというふうに思っております。
 ただ、この登録済証明書につきましては、一般の指紋を押している外国人については従前どおり当然のことながら出るわけでございまして、このたび通達で若干の制限をすると申しましたのは指紋押捺を拒否した人でありまして、なおかつ、指紋の押捺を拒否した人の中で一切出さないというわけではなくて、効力に若干の制限を加えたような登録済証明書を出しましょうということでございまして、実際の件数としては御懸念のような場合はそう多くないのではないかというふうに私ども思っております。
#155
○上野雄文君 そう言ったって、もうきのうは町田だけではなくて東京都の区でもそういうことがあったということ、これはテレビで放送しておりましたね。だから、この扱いの問題について何もそうこだわって詰まらなくも、これは固有事務なんだから市町村が独自の判断でやっていいんじゃないんですか。小澤委員とのやりとりでも、いろんな制限がついて、過去のものの証明はできるけれども、新しいものは書いて出しちゃいかぬ、こういうことであります。それでは何にもならないじゃないか。受け取った側は大体主としてお役所あるいは半公共的な団体とかあるいは金融機関とか、そういうところが多いでしょう。古い過去のものの証明なんかしてもらったって、これは何にもならぬわけです。ですから、本来の機関委任事務との関係の中でこれは明確な答えを出すことができるのじゃないんですか。どうして出すことできないんですか。
#156
○説明員(黒木忠正君) お尋ねの地方自治法の百四十六条の関係ということになりますと、今申し上げましたようにまだ詰めるべきところがあるということでございますが、私どもとしましては、国の指導監督を規定しました百五十条の規定に関しましてはこれは登録済証明書の交付について国の指導監督ができるというふうに理解しておりまして、このたびの通達もそういう趣旨で出しておるわけでございます。ただ、お尋ねのように、ぎりぎりのところでそれが機関委任事務に当たるかどうかということにつきましては理論上かなり詰めるべきところがあるであろうということでございまして、私ども、各自治体が五月十四日の私どもの通達に従って行動されるということを期待しているような次第でございます。
#157
○上野雄文君 やっぱり依然として法務省の感覚は最初の指紋照合の問題と同じであって、本当の意味での自治体の立場というものを考えていない、この点についても私はそう言わざるを得ないと思うんです。そんな固有事務に至るまで、それは確かにもとはそうかもしれませんけれども、それだったら、そのような自治体で処理しやすいような仕組みというものを考えるというのがこれもまた当たり前のことなんであって、当たり前のことを全く手抜きをしてやらない、権力的に物事だけを押しつける、こういう態度はもう許せないことなんではないか、私はこう思うんです。これはもう百四十六条では明確にこの手順も書いてありますし、それからこの最高裁の判例もあるわけです。そういうものに照らし合わせてみれば、どうしなきゃならないかなどということは、もう言わずもがなのことではないか、私はそう思うんです。ですから、これなんかもいつまでも意地を張ってないで、現場で仕事を頼んでいるのですから、頼んでいる仕事、頼んでいる立場に立って物を見る。
 地方自治体と国というのは車の両輪論、これはよっぱらやってきたんですが、黒木課長は補助金等の特別委員会なんか関係がないから初めて聞くような話になるか知らぬけれども、国と自治体はもう車の両輪だと、両方が協力し合ってやるのだと。今度の場合は国が、あんちゃんが銭が足らないから舎弟が助けるのは当たり前だなんていう議論までよっぱらやってきたわけです。そういう中での仕事のやり方の問題をめぐって、これまたできるだけ早くだけで済ませてしまうなどということにはいかぬことだ、毎日起こっている問題だというふうに、私はこの点についても自治体に任せるようにきちっとしなさいということを強く要請をしたいというふうに思うのです。
 それから、機関委任事務のこの議論をやり出しますと、これは際限なく続くし、また国の方でもこれから見直しをするという議論の起こっている最中ですから、私もこのことでの論争を今ここでやってみてもあなたの方の態度が変わらぬ限りはどうもおもしろくない議論を続けることになりますから、これ以上申し上げるのはやめにいたしますけれども、ただ自治体というものについて余りにも甘く見るようなことは許せない、こういうことだけは私は強く申し上げたいと思うのです。
 それから、告発の問題についても、これも私は申し上げなきゃいけないんですが、告発しなさいということを今度も強く述べておられます。この告発の仕事は、これは委任事務じゃないですね。これは確認していいですね。
#158
○説明員(黒木忠正君) 告発そのものは刑事訴訟法に基づく公務員の義務ということでございまして、国の委任事務の中には入らないと理解しております。
#159
○上野雄文君 そうすると、さっき言いかけたんですが、一〇一国会で前の田中入国管理局長が告発義務は、「国の機関委任事務の範囲に属するか否かは議論が存するところでございまして、今後このような事例に対して、地方自治法の職務執行命令を発動していくかどうかは慎重に検討いたしたいと考えております。」というこの答弁は、これは知っていますか。一〇一国会でやっているんです。これは当然否定されたということになるわけですね。どうですか。
#160
○説明員(黒木忠正君) そのように理解していただいて結構でございます。
#161
○上野雄文君 告発は、さっき地方自治法の第十条でいって、ひとしく区域内の住民皆平等に扱おう、指紋押捺に非常な嫌悪感を持ってこれを拒否したという人に対して、住民を官憲に売り渡すようなことは何としてもできがたい、これはどう考えてみても憲法違反の疑いがあるのじゃないか、そういうふうに市町村長が考えれば、これはやってもやらなくてもいいことなのではないかなというふうに私は思うのです。少なくとも委任事務ではないということが明確になってきていればですね。ですから、それをまた告発の励行、しかもさらに指紋の押捺の説得というのをやれということを言い続けているわけですが、この感覚も先ほどの感覚と全く同じ立場で、私はこのことを指示するというのはどうしても理解できないんです。これはここの部分に関しては従前の考え方と変わりないんですね。
#162
○説明員(黒木忠正君) ちょっとお尋ねの趣旨がよくわからなかったのでございますが、告発についての従前の考え方が変わったかということじゃないわけでございますか。
#163
○上野雄文君 ただ、今度やり方を変えたわけですね。今まで説得だの何だのとかということはなかったんでしょう。事実上、市町村長は自分の住民だからいきなり告発だということはもうやらないと、だからずっと説得を継続しているわけです。法律はこうなっていますというお話を申し上げて、それでもなお押さないという人についてはそのままやってきたわけです。ところが、今度は三カ月に期間を切ったわけでしょう。それで、そういう手続をやっています、いつ幾日までにまたとりに来なさい、こういう書類を出しなさいということを今度の通達で押しつけてきたわけですね。これは午前の佐藤三吾委員の質問では、事務量が三倍になったんですよ、こう言っているわけです。今までやってなかったことがかぶさってきたわけですから。そして、あるところでは切りかえに応じてすぐ交付できるようにアルバイトまで雇って準備しているんです。そういう準備態勢まで全部整えて大量切りかえの事務に支障を来さないように、窓口の混乱を起こさせないようにいろんな気を使ってやっているわけです。そういう態勢というものについて法務省の方では全く配慮しない今回の通達のやり方ではないかという批判がされても仕方がないんじゃないですか。
#164
○説明員(黒木忠正君) どうも失礼いたしました。先ほどのお尋ねの件につきましては、私どもこれまでの市町村に対する指導は、指紋押捺拒否者があれば直ちに告発するようにという指導をこれまで続けてきたわけでございます。ところが、自治体の一部の中には、直ちに告発するのではなくて、まず説得を試みたい、説得することによって外国人が翻意してくれれば、それによって法の目的は達せられるのではないかということで説得を続けられ、告発はその間保留する、こういうような現実が出ておったわけでございます。私ども、自治体の御意見なども聞いたりいたしますと、やはり法違反があったから直ちに告発するということについてはいかがであろうかということでございましたので、とりあえず今度通達で、三カ月間説得を続けてください、三カ月たって翻意しないで依然として指紋を押さない人につきましてはその時点で告発するようにというふうに、従来よりも若干緩めた運用を通達で示した、こういうことでございます。
#165
○上野雄文君 だから、その辺が今度は皆さんの物の考え方というのは大変違ってきているんです。三カ月という今度期限がつけば、そこまでは全部そういうふうなことでこれから戦術として取り上げて、そういうふうにやってあげましょうということが今度出てきたんです。そういうことは予想できなかったんですか。だから、市町村の窓口ではそういう戦術をとられるわけです。今までより以上に混雑をする、煩雑になってくる、こういうことじゃありませんか。その辺の分析は、そのことをお決めになるときはどういうふうにされておったんですか。
#166
○説明員(黒木忠正君) 私ども、指紋押捺拒否者が出た場合の実態については市町村にいろいろ照会いたしまして、調べたわけでございますが、指紋押捺を拒否した人に対して各自治体において指紋を押すような説得を一番多いところで一年間に三十何回続けておられる。場合によっては、役場の職員が本人の自宅まで行き説得するとか、役場に来てもらって説得するとかという大変な御苦労をおかけしている部分も見受けられたわけでございまして、そういったことからも、いつまでも説得を続けても相手方が意思を変更しないということであれば、これはいつまでも説得を続けることも事務上いろいろ支障があろうというような判断もございまして、三カ月程度が一応のその判断をする時期ではないかということで三カ月というものを実は決めたような次第でございます。
#167
○上野雄文君 それはもっともらしく聞けると思うんです。ところがこの間、川崎で指紋押捺を拒否した人が逮捕されたですね。きのうかおととい起訴されたんです。それで、あのとき私も社会党の代表として国家公安委員長のところへ申し入れに行ったんです。そうしたら公安委員長は、いや、三回もいろいろ警察も行って早くやってくれという話もしましたよ、三カ月たったんですと、こういう話だ。しかし、もうこれは法律があるんだから仕方がないんじゃないですかと。しかし、あれは勾留つきじゃなくて、すぐにもう帰っているはずですよという話を聞いたんです。そのときはそれなりに私も普通に聞いたのですけれども、今度この通達で三カ月とこの文書に載ってきちゃうと、話が合っちゃうんです。ははあ、これは警察と法務省といろんなところと相談して三カ月というのを決めて、そこから後はひとつ勝手に警察にやってもらえるようにやりましょうということを相談したんじゃないんですか。
 三カ月というのは、結果的には警察もやれるし、市町村の窓口は三倍も忙しくなってくるし、すぐにもうやらないでたまっていると、こういう状態が続くのじゃないんですか。だから、独自の御判断ではなくて、いろんなところと相談をした結果、かえって仕事をややこしくしてしまったという結果しか生んでないんじゃないですか。そうはお思いになりませんか。
#168
○説明員(黒木忠正君) 私ども指紋制度のあり方につきましては関係省庁ともいろいろ研究、検討する場を設けて議論しておりますけれども、今お尋ねの三カ月という点につきましては、少なくとも私の理解している限りでは、特別にそういう捜査当局との打ち合わせということはございません。
#169
○上野雄文君 そう言うだろうなということは私も期待はしておりません。言ったらとんでもない話になることですからね。しかし、私たちにはそういうにおいがぷんぷんと感ずることができるということだけは承知をしていただきたいと思うんです。
 それから、この告発について、やはり告発しなさいということを言い続けているわけですけれども、ずっと私なりにいろんな資料を調べてみました。そうしましたら、検察統計年報というのがあるんです。そこで委任事務等について、何も外国人登録法だけが委任事務じゃありませんからいろんな委任事務があるわけですが、それの対比をしてみますと、これは五十四年の統計ですが、年間四千四百六十三件中三千八百四十五件が外国人登録法違反で告発されているんです。これがもう圧倒的に多いんです。これだけ罪人をつくるようなやり方を外国人登録法でやっているのだということについて、やっぱり考えてみなければならないのじゃないのかと思うんです。しかも、これは不携帯が主なんです。
 きょう午前の質疑で、佐藤委員の質問に対して、これは不携帯罪だから摘発するのだと、そして財産がどうで何がどうでというのを全部調べます、指紋も十本の指から全部とりますと、こういうふうなことを答弁しておりましたが、警察当局の方はこういうことにそんなに大変な罪の意識がないんだと思うんです。わざわざ罪人づくりをやるようなやり方というのは、これは法律があるからこうなんだと言えばそれまでかもしれませんが、そういうやり方をやっているところから私は、嫌ならば本国へ帰るか帰化すればいいんだなんという言葉が出てくるのではないのかなというふうにも思うんです。
 それで、この間山口労働大臣がヘリコプターで糸山英太郎さんのバースデーパーティーに、庭にヘリコプターでおりた。これは無許可だと、こういう新聞記事が出たんです。私も運輸省にお尋ねをしました。これは運航課の補佐官の各務さんという人にお尋ねをしまして、これはどういうんですかと言ったら、航空法の七十九条違反で、罰則は五万円以下の罰金がついていると。あなたの方で告発されたんですかと、こう聞いたち、告発してないと言うんです。それからまた、いろいろ我々が関係する県や市町村では建築基準法違反というのが非常に多いです。これを全部告発、告発でやったらばどうにもこうにもならぬし、警察だって検察庁だってお手挙げだと私は思うんです。これは指導という問題が伴っているんです。こういう例との比較からいってみても少し酷じゃありませんか。そういう発想になることはできないんですか。その辺いかがですか。
#170
○説明員(黒木忠正君) 外国人登録法につきましては昭和二十年代以来、たくさんの不正登録とか、それから申請の義務懈怠というのが大変目立ちまして、そういった意味もございまして、ある程度きちっと登録をしてもらうためにはどうしても罰則の適用も必要であろうということで、これまでそのような指導もし、運用もしてきているということでございます。
#171
○佐藤三吾君 関連。
 黒木さん、確かにあなたがおっしゃるように、罰則を思えば告発をせざるを得ないという論理になってきますが、今度通達出したのは入管局長じゃないですか。その入管局長が告発せよということを通達してますね。これはどういう権限ですか。
#172
○説明員(黒木忠正君) 私ども地方自治法百五十条による指揮監督の及ぶ範囲内であるというふうに理解しております。
#173
○佐藤三吾君 それなら、告発せよじゃないじゃないですか。そんな権限があるはずないじゃないか。そういう越権的な行為をやるのじゃなくて、またきょうは入管局長が地方自治体を集めて同じようなことをやってますね。そんなにやるなら直接あなた方がやればいいじゃないか。機関委任事務なんてしなさんな。そんな横着なことをするから問題が起こるんです。入管局長が告発しなさいなんて言うべき性格のものじゃないでしょう。思い起こしてくださいというなら別だ。こういうことがありますから思い起こしてくださいというのなら別だ。後は思い起こすか起こさぬかは自治体の判断ではないですか。何か命令するようなそんな通達を出して、そんなことを言うならあなた方が直接やればいい。どうですか。
#174
○説明員(黒木忠正君) 私どもの通達を今ちょっと見てみたのでございますが、趣旨は佐藤先生言われるとおりでございまして、「告発されたい」とは書いてございませんで、「することとされたい」と、表現はストレートに「されたい」とは書いていないわけでございます。
 それからもう一点、地方自治体に告発させないで法務省当局でやるべきではないかということでございますが、一般的に告発と申しますのは、当該違反が起こった現場において一番よくその事実関係を把握しておるということから、私どもはかねてから現場である市町村において告発をするようにという指導をしてきているのがこれまででございます。
#175
○佐藤三吾君 これで終わりますが、大臣、あなたにこっと笑わぬで、少しは怒りなさいよ。入管局に今ただしてみれば、あの文章が、思い起こしてください、そんなふうにとれますか。そこまでやっておるのにあなたは自治大臣として、今自治体はそのことで深刻に苦しんでおるのだから、もっとやっぱりきちっとしてくださいよ。どうですか。
#176
○国務大臣(古屋亨君) 私は、きちっとしないことは嫌いでございますので、きちっと何でもすることが好きでございます。
 ただ、この法律というのは、法務省の機関委任事務、そう言うと先生はそんなのやめてしまえと、こうおっしゃるかもしれませんが……
#177
○佐藤三吾君 そんな越権なことをするのならやめてしまえと言うんです。
#178
○国務大臣(古屋亨君) 私どもとしては、法務省というものがあって、その機関委任事務になっておりますので、それをどうしたらよく守ってもらえるかということが一番自治体に混乱を起こさぬ根本だと思っております。そういう意味で私どもは、けさほど申しましたように、事務当局がそういう相談する機関がありますので、そういう意見をそこでもう一遍相談をしなさい、先生のいろいろ御意見のあることもお知らせをして、そういうところでもう一度話し合ったらどうですかということを申し上げたわけでございます。
#179
○上野雄文君 そこで、告発の問題についていろんな差があることについては今申し上げたとおりなんです。
 そこで私は、これだけのこんなややこしい仕事を頼んでおいて、しかも一片の通達でどうにでも使えるというような感覚が一つも抜けてないでおって、それじゃ一体財政的に予算の面でどれだけ面倒見てくれているのかというと、これは超過負担ですから、法務当局の方ではどれぐらい迷惑をかけているかというのを自分の方で計算したことがありますか。どのぐらい超過負担をお願いしちゃっているのか、数字的にはじき出しておりませんか。
#180
○説明員(黒木忠正君) 昭和五十二年以前につきまして大変超過負担問題が取り上げられておりまして、昭和五十二年に法務省と自治省と大蔵省三省による実態調査をいたしまして、このときにそういう是正措置を講じておるというふうに理解しております。
#181
○上野雄文君 それを是正したからもう超過負担は消えたと、こういう認識なんですか。
#182
○説明員(黒木忠正君) 今五十二年と申し上げまして、もうそれから八年たっておるわけでございます。その間給与のベースアップによる増額とか、それから人件費の積算方式の改定とかというような努力を今日までいたしてきております。
 ただ、そういう声もございますので、私ども機会を見て、改めて現場の実態調査というようなものをやりまして、それを予算に反映していきたいというふうに考えております。
#183
○上野雄文君 これはこの間も私はこの席上で申し上げたんですが、私の住んでいる宇都宮では、数は少ないのですけれども、歳入七十万円、歳出六百万円です。大阪では約五億円近くかかっているのに、市町村や府の分も合わせてこれが一億七千八百万円しか五十九年度は来てない、こう言うんです。それから、これは川崎の例で概算ですが、川崎では歳入一千万円、歳出は五千二百万円、こう言われておるんです。八年たったから、かなり超過負担の額の差があるでしょう、こう言いますけれども、これじゃしかし余りにもひどいのじゃないですか。
 普通、嫌な仕事に従事する場合は特勤手当というのが出るのは御存じでしょう。こんな嫌な仕事を値切った金でごってり仕事をさせられるなんという自治体の側にとったら、こんな歩の悪い話はないじゃありませんか。金の面でこれは八つ当たりするつもりじゃありませんよ。自治省ではどういうふうにお考えですか。
#184
○政府委員(大林勝臣君) それぞれの分野で地方公共団体の現場におきまして非常にやりにくい仕事、危険な仕事、嫌われる仕事、そういった業務につきましては、条例措置を基本にして、それに相当する手当を出してやっておるわけであります。現在の住民登録関係の事務についてそれぞれの市町村で現実にどういう取り扱いをされているか、ただいま承知いたしておりませんが、それぞれの地域における実態に応じて判断をすべき問題であろうと思います。
#185
○上野雄文君 せっかく官房長お座りになったのですから、超過負担の現状について。
#186
○政府委員(津田正君) 財政局がおりませんので、便宜私が前に財政局におりましたのでその経験から申し上げますと、これは委託費の系統に属するものでございまして、地方団体が負担することがないように地方財政法に書いてある事務でございまして、また超過負担の調査の対象になるかと存じております。
 そして、先ほど法務当局から答弁ございましたように、五十年代初期におきまして一回調査をいたしました。その結果につきまして適切な措置をとってまいったわけでございますが、今回の事務の変更に伴いまして地方団体の超過負担がまた生まれているのではないかということにつきましては、自治省としても非常に関心を持っております。
 私が財政局におったときもこの問題が出たのでございますが、正直申しまして、超過負担の実態調査をするにはある程度事務処理が安定した時点においてとらえるのがいいであろう、いわば事務の変更の経過期間内にやりますと必ずしも的確な結果が出ないであろう、こういうことで見送ったわけでございます。しかし、この問題につきましては私ども関心を持っておるわけでございまして、専務の安定した状況におきまして関係省庁とも相談しながらこの超過負担の問題につきまして調査をいたしたい、かように考えております。
#187
○上野雄文君 これは、大臣ずっといろいろお聞きいただいておって、この本筋以外の議論をここでやらなきゃいけないというのは全く残念なことなんですけれども、やはりやらざるを得ないわけです。今、市町村の窓口で大変な問題が起きてきているわけでありますし、しかもこの間、五日の日ですか、財政課長や地方課長なんかも集めて、地方行革もっとしっかりやれという会議やったばっかりでしょう。それで、事務事業の見直し、委任事務やなんかももう一回整理して今度やりましょう、簡素合理化をしましょう、こういうことを言っているわけです。ところが、片方でこういうお話を聞いておりますと、負担のかからない方法を編み出したのだと言いながら、ややこしい手順を決めて自治体の窓口に仕事を押しつけるというやり方になってきているわけです。
 基本的な問題の解決に向かわないでおって、小手先だけで表面を糊塗しようとすれば仕事はますます複雑化していく。これらは地方行革に反する。国が自治体の意思で地方行革をやろうということ、これは大臣と何回もやりとりしていますが、地方行革の方がよほど進んでいるという議論やりましたね。それを国の方がこうやってぶっ壊してくるんです。こういうのをどこかでチェックしてくれなければ、これはどうにもならない。さっき佐藤委員の質問に対して大臣は、局長やなんかを通じてこれから法務省に伝えるというお話はわかりましたけれども、もっともっと自治体の立場というものを十分熟知した上で対応策をとってくれるという空気をつくってくれなければ、これはもうどうにもならないと思うんです。それに加えて金もくれないんですから、こんなひどい仕打ちないでしょう。補助金一括削減で銭はどんどん召し上げられるというところへきて、頼まれ仕事で銭も満足にくれないなんということがまかり通るというのじゃ、これは自治体側としてはたまったものではないと私は思っているんです。こういう立場で、ひとつ今後とも自治大臣として自治体の立場に立ったひとつ物の言い方をしていっていただきたいということを私は強く要請をしたいと思うのであります。
 きょうは、私ももっともっと本当は毒づきたいぐらいの気持ちなんですが、きょうは内輪に話を申し上げました。マムシの三吾という人もおりますから、その人よりも私の方が幾らかおとなしいのだなという印象も与えなきゃいけないかなと思ったりして、控え目に物を申したつもりでありますけれども、ひとつ大臣の決意のほどをお伺いをいたしまして、終わりにいたしたいと思うんです。
#188
○国務大臣(古屋亨君) 私、自治大臣としましては、やはりそういうようなことがないようにしなきゃならぬということは思っておりますが、さて私が何できるかというと、法務大臣とこの話をするという以外にはないと思うんですが、とにかく今最高の事務次官の会議というものがあるわけでございますから、もう一度今の御趣旨の点もそこへおろしまして、早急に検討さしていただく。早急にやらなければもう来月から大変でございますし、また超過負担のことは私も先ほどの御説明その他で大体わかりましたので、そういう点はひとつ法務省を押しながら、こういうふうに実際かかっております、大変ですということで大蔵省にも申し入れをしたいと思っております。
#189
○中野明君 住民基本台帳に関係をして個人のプライバシーが問題になっておりますが、けさほどもちょっと説明がありましたが、今まで問題になったところの山形県の問題あるいは島根県、私の住んでおります高知県ですか、とれは具体的にどういう問題が起こって、そしてこれの処理はどうされたかということを最初にお答えいただきたいんです。
#190
○政府委員(大林勝臣君) 代表的な名簿あるいは名鑑の出版事件というものが三つほどかつてございます。
 昭和四十八年に山形の鶴岡市で鶴岡市名鑑の出版事件というものがございました。これはダイレクトメール業者が住民台帳の閲覧を通じまして、市民全員の氏名、住所、性別、続柄、郵便番号を記載した鶴岡市名鑑の出版を企画して購入予約の募集を行ったようであります。そこで、それが判明いたしましたので、非常に問題になりまして、当時は国会でも御議論の対象になったということでありますが、販売の事実は確認をされておりません。
 それから、昭和五十四年になりますと、島根県の安来市で同じように家族構成名鑑が出版されるというような要件がございました。そこで、安来市といたしまして各方面に対し、購入しないような呼びかけを行ったところでありますが、完全にそれが販売されなかったかどうかの確認は行われておりません。
 それから、昭和五十六年になりまして高知県下で八つの市の家族名鑑をまた出版をするというような事件が起こりました。五十二冊販売されたようでありますが、各市からの抗議もございまして、業者が全部回収をし、各中の方へ知り得た資料も返却をした、こういう結果になってございます。
#191
○中野明君 そこで、これは公開の原則をとられておるわけでして、台帳の閲覧件数とかあるいは住民票の写しの交付請求、これはまことに膨大な量に上っているようですが、お手元に数字がありましたら、大体年間どれぐらいの件数になっているか、報告をいただきたいと思います。
#192
○政府委員(大林勝臣君) 一番最近の調査でいきますと、昭和五十八年度一年間におきまして住民票の写しの請求件数が六千五百六十六万四千件、それから住民票の閲覧の請求件数が六百二十万一千件という数字になっております。
#193
○中野明君 もう一度、写しの件数が六千五百六十六万ですか、それで閲覧の請求が六百二十万ですか、ちょっと何か数字が違うような気がするんです。
#194
○政府委員(大林勝臣君) 写しの請求が六千五百六十六万四千件、それから閲覧が六百二十万一千件でございます。
#195
○中野明君 閲覧というのがそんなに少ないんですか。そんなものですか。
 それで、今回はこの公開の原則というのは変えないで、個人のプライバシーを侵す心配があるところで一部制限を加えると、こういうことになったように理解をしますが、自治省は今まで個人の秘密に属することは住民票の記載事項には含まれてないから心配ないのだという考えをとってこられておるようですが、今回はこの法律の改正によって、今申し上げた基本的な考え方に変化があったというふうにとらえてよろしいんですか。
#196
○政府委員(大林勝臣君) 御指摘のように、昭和四十二年の住民台帳制度あるいはそれ以前の住民登録制度の時点から、住民の記録については全面公開、つまりその時点におきましては、住民台帳の記載事項には個人の秘密に属するものはないのだという考え方で来たわけであります。これがやはり世間のプライバシー観というものの進展に伴いまして、昭和四十年代後半ぐらいから、住民台帳の記載事項の中でも物によっては、あるいは人によっては非常にプライバシー侵害と感ずるようなケースがあり得る、したがいましてそういった問題については住民台帳制度を改正して世間のプライバシー感情に合致するような運用をする必要があるのではないかというような意見がそれぞれ出てきたわけであります。
 そこで、研究会を持ちましていろいろ学者の先生方からの意見もお聞きしたわけでありますが、さて全面公開を原則公開にするのか原則非公開にするのかという議論になりますと、それぞれの先生方のお考えも多種多様であります。
 現在、住民台帳の記載事項それぞれを見てみましても、人によっては、それぞれの記載事項が自分のプライバシーとは別に関係ない、そんなことが世間にわかったところで何ともないという人もおりますし、あるいは人によりましては、いや自分の記載事項の中のこういった項目については外に流れては非常に困るのだというような人もおるわけでありまして、一般的客観的に現在の住民基本台帳の記載事項が全部秘密事項だということにはなかなかならないであろう、やはりケース・バイ・ケースでプライバシーの侵害になることもあり得る、そういうわけで従来の全面公開を一部制約する、こういうのが今回お願いをいたしております改正の内容であります。
#197
○中野明君 そうしますと、非常に難しいですね。ケース・バイ・ケースということになってきますとなかなか難しいのですが、例えば今回、御承知のように川崎市で個人情報保護制度というものを条例で決めようとしております。この制度の問題につきましては私どもも非常に関心を持って見ておるわけですが、この個人の情報を本人が閲覧をして、その情報が誤っていたりあるいは収集方法が不当なときは訂正、削除を請求できるということと、目的外に情報が利用された場合は使用の中止を求める権利を付与する。それからもう一つの柱としては、民間企業にも協力を求めて、違反企業に対しては是正を指導、勧告する、こういうことを内容としているようなんですが、この川崎市は三番目だということのようですが、個人のプライバシー保護について川崎市がとったこの考え方は、自治省としてはどう見ておられますか。
#198
○政府委員(大林勝臣君) 既にプライバシー保護条例は、電算機にいろんな個人情報が組み込まれました昭和五十年代に入ったとたんに、地方公共団体の方で自主的にプライバシー保護条例を制定する働きが相当ふえてまいりました。既に現在百七十団体を超えておりますけれども、川崎市のプライバシー保護条例が一番最近のものということであります。
 川崎市におきましても、この一年間あちこちの専門家の御意見を聞きながら内部的に研究をされたようでありまして、その結果、条例を眺めてみますと、情報の収集あるいは情報の利用あるいは保護、管理、さらには本人のアクセス権と申しますか、自分の情報の訂正を要求する権利とか、従来OECDなりあるいは行政管理庁の提言、そういった基本原則を踏まえながらつくられておるなと、こういう感じを持っておるわけであります。
 問題は、そこで個人情報の保護の対象をどう運用をしていくかということになりましょうが、従来のどの条例もおおむね、法令で公開と決めておられるものにつきましてはその法令に従う。それ以外のものについてそれぞれの市が持っておるいろんな個人情報がございます。住民台帳の記載というのはそのごく一部分でありまして、財産でありますとか税金の問題でありますとか、あるいは病歴とか職歴とか、そういうものがあるのでありましょう。そういった問題についてはおおむね原則非公開というような考え方で条例を制定されておるという感じを持っております。
#199
○中野明君 この川崎中の場合、結局状況を聞いてみますと、本来の目的と違いまして、ダイレクトメール用とか金融機関等のリストづくりのために事業者に利用されているということが間々あって、一年間で一人につき何十回も閲覧に供されたというようなことが起こってきた、そのほとんどがダイレクトメール業者によるものであるという、こういう現状にかんがみて、条例もそういう形でのプライバシー侵害の手助けを市町村がすることを回避できるように決めた、こういうようなことが言われておるわけです。
 同じように、今回のこの基本台帳法の改正も十一条、十二条で、いたずらに個人情報をこうした形で漏らすことを防ぐ意味で改正しようと、こういうふうに理解してよろしいかどうか。
#200
○政府委員(大林勝臣君) プライバシーというものを本来どう考えていろんな制度仕組みを考えていくかにつきましては、これまたいろいろ大議論があるところであろうと思います。
 冒頭に申し上げましたように、個人のプライバシーと申しましても、個人が持っておる情報というのが非常に多種多様であります。これは隠したいけれども、これは出ても自分としては構わぬというものもいろいろあるわけであります。ただ、住民基本台帳の記載事項に関する限りは、従来から国民一般の共通の感情として、その記載事項全部がプライバシー関連の記載事項であると、こういうところまではいっていないであろう。むしろ人によってはあるいは地域によりましては、住民基本台帳の項目の一部がプライバシー侵害につながる可能性を持っておる、こういう判断に立ちまして、今回の改正は住民基本台帳の記載事項に関する限りの一部修正、こういうふうに御理解賜りたいと思うわけであります。
#201
○中野明君 そうしますと、この十一条の二項として、閲覧の請求のときに請求事由等を明らかにしなければならない規定が入ったわけです。そこで、今までは通達でこういう指導もしておられたように思いますけれども、ここにはっきり書かれたということは、そういう意味で今までやっておったことを法律で明らかにしたと、こういう意味を持つのか、それとも別の意味があるのでしょうか。
#202
○政府委員(大林勝臣君) まさに御質問の点が今回の改正でございます。従来、御案内のように昭和五十一年に戸籍法の改正がありまして、戸籍の閲覧について全面非公開ということになったわけでありますが、住民台帳の閲覧について、その時点でどうするかといろいろ考えたわけであります。ただ、戸籍の閲覧と住民台帳の閲覧というのは非常に利用の範囲が違います。住民台帳の閲覧の件数の方がはるかに多い。それだけ世間で住民台帳の利用というものが現実に行われておるわけであります。
 そこで、それだけ住民の利便に供せられておるという実態を踏まえました場合に、いきなり閲覧制度をその時点で改正をしてしまうというわけにはまいらないだろう。したがって、当面は行政指導で閲覧のチェックをできないかと、こう考えたわけでありまして、旧和五十六年以来既に数回にわたりまして通達を出しまして、閲覧請求する際には具体的な請求理由を書いてもらう、それから本人の住所、氏名はもちろん、閲覧の範囲でありますとか、そういった資料を事前に出してもらいまして、閲覧の目的が果たしてプライバシーの侵害につながるかつながらないかをそこの場で判断をしてもらいたい、こういう趣旨の行政指導がこの数年間行われてきたわけであります。
 ところが、現実の問題となりますと、実際に請求理由を書きなさい、あるいはもっと具体的に書きなさいというような窓口の要請があります場合に、いや、しかし法律は全面公開ではないか、法律が全面公開となっておるのにどうして窓口でそういう取り扱いをするのだと、こういうまた紛争が絶えなかったわけでありまして、各地方の方からも、やはり行政指導ではとても無理だ、むしろ現実の行政運営に法律の制度自体を合わせてもらいたいと、こういう要望が少なくなかったわけであります。
 そこで今回、この一年間いろいろプライバシー論を勉強はしていただいたわけでありますけれども、結局のところ現在の段階ではなかなかプライバシーの概念を明確に把握するということは困難である。したがいまして、先ほど申し上げましたような程度の改正をすることによりまして、結果的には従来行政指導でやっておりましたことを制度の上に位置づけたというのが今回の改正でございます。
#203
○中野明君 先ほどお答えになっておりましたが、どうも個人によってケース・バイ・ケースで、プライバシーの問題は個人差があるということになってくると非常にまた難しい感じがするのですが、「請求が不当な目的によることが明らかなとき」と、こううたわれているわけですが、不当な目的であるかどうかという判断の基準というのはどこで分けるように指導されようとしていますか。
#204
○政府委員(大林勝臣君) 今回の改正に基づきます今後の行政運営で一番難しいのがまさに御指摘の不当な目的の判定の問題であります。結局は、不当な目的というのをもう少し具体的にケースを例示をいたしましてわかりやすいような表現にできないかといろいろ立法技術的に法制局とも相談をしたのでありますけれども、なかなかこれは物の性質上はっきりと法律上書きにくい。結局は昭和五十一年の戸籍法の改正の際におきます戸籍の抄本の交付に不当な目的を排除する、こういう改正が行われたわけでありますので、法律上は整合性を持って戸籍法の表現に合わせる以外実はなかったわけであります。
 そこで今後、不当な目的の取り扱いにつきましては、戸籍の側でこの十年間既に不当な目的を判定するための材料というものを法務省の方でいろいろ実例としてお持ちのようであります。そこで、今後政令を制定をし、あるいは指導をいたしてまいります場合には、これまでの十年間の戸籍の実例というものを一つの実例集としまして、こういった請求理由についてはこういうチェックをするというような指導をいたしたいと考えておるわけであります。
#205
○中野明君 今お答えがありましたように、これまた窓口で不当な目的であるかどうかという議論が出て、よりこういうあいまいな規定といいますか、はっきりしない規定を置くことによってトラブルが起こり、つまらない紛争が起こるという原因の一つになりかねないので、その辺は何か明確に通達の中というか指導の中で、あるいは政令でお決めになるのかどうかわかりませんが、そこのところを具体的に、こういうことに使ってはいけないとかこういうことはいかぬとか、そういうはっきりしたことを示してあげた方が窓口でのトラブルが少なくなるのじゃないか、こういう気がするんですが、その辺はどうお考えになっていますか。
#206
○政府委員(大林勝臣君) そういった問題が一番大切な問題でありますので、戸籍の実例を参考にしながら、窓口で混乱が起こらないように具体的に指導をしてまいるつもりであります。
#207
○中野明君 今までにそういうことで問題が起きた実例があるわけですから、それを他のことに活用してはいけないとか、あるいはそういうことで名簿をつくってはいかぬとか、不特定多数の人の閲覧あるいは住民票の交付の請求をしてはいかぬとか、そういうような具体的なことはお決めになるつもりはあるのですか。
#208
○政府委員(大林勝臣君) 実は、そういった不特定多数の閲覧というものが制限できないだろうかということも研究会等の一つの大きな問題点として取り上げられておりました。そこで、頭に考えられますことが、不特定多数といいますと、どうしてもやはり世論調査でありますとか学術調査でありますとか、経済行為といたしましてダイレクトメールでありますとか、いろんなケースが出てくるわけであります。
 そこで問題は、一番いいのがそういった不特定多数の閲覧の中で閲覧を許すものと閲覧を拒否するものとを具体的に法律の上でぴしっと決めることができるのが本当は一番いいのでありますけれども、世論調査、これはいいだろうと、しからばダイレクトメールはどうかということになりますと、住民台帳をいわゆる商売に使うとか経済行為に使うということをチェックするということが一体どうなのかという話になってくるわけであります。経済行為といっても社会的にもう既に相当の量で行われてきておるわけでありますので、これを一気にとめてしまうというわけにもなかなかいかないだろうという意見もございます。
 そういうふうに結局は、大量閲覧、不特定多数の閲覧、こういったものを相手のいかんによって区別をして、こういうケースならいい、こういうケースなら悪いということが立法技術上解決がつかなかった。したがいまして、そういうケースで区分けをするのではなくて、現在の段階では不当な目的、つまりそれを利用する目的の不当さによってチェックをする以外に法律の改正のしようがないではないか。そこで問題は、不当な目的というのはこういったプライバシー問題がポイントになって出てきた問題でありますので、従来の事例から申しますと、むやみやたらに続き柄を調べてこれを世間に言いふらすとか公表するとか、あるいは出生地をみだりに調査をしてこれを発表するとか、そういったケース、これが一番チェックをするポイントであろう。それを請求の理由を書かせます場合にできるだけ具体的に書かせることによって窓口でチェックをしようというのが今回の改正の一つの限度でございます。
#209
○中野明君 非常にそこら辺を私心配をしているのですが、特に最近は非常に情報化時代になりまして、個人の情報というのが各方面で、例えば金融機関とかあるいはその他信用機関とか調査機関とかいうところでもそれぞれ担保されているような感じを受けますし、それと今申し上げたように住民台帳の写し、あるいは不特定多数の人のさっき問題に出ました市民の住所から本籍から全部それが一覧表に出るというような事態と一緒になりますと、非常に大きな問題になってくるわけです。
 そういうことが一般に公開されるということについては、これはもう大変な問題になるわけでして、それの一番信用の置ける基礎になるのはこの住民基本台帳ということになってきたら、直接住民基本台帳としては大した内容ではなくってもほかの問題がこれへ加味されてきて、そして資産状況はある信用機関がつかんでいる、あるいは銀行関係も資料持っている、それが一つのところへ全部集約されたらとんでもない資料ができ上がるということで、プライバシーの問題が大きく出てくるもとになるのじゃないだろうかということで、最初に御答弁がありましたように、原則公開ということかあるいは原則非公開、どちらがいいのかということがこれからの大きな問題になってくるのじゃないだろうか、私はそういうふうに心配をしております。
 そこで次の問題ですが、十一条の三項で「政令で定めるところにより、」というふうに規定をしておりますが、この内容はどういうことをお決めになろうとしておりますか。
#210
○政府委員(大林勝臣君) この十一条三項の「政令で定めるところにより、」と書いてございますのは、従来は住民基本台帳あるいはその抄本を閲覧に供しておったわけでありますけれども、住民基本台帳にかえて閲覧に供することのできる住民基本台帳の写しでありますとかまたは住民基本台帳の一部の写し、これの作成方法を定めまして、できるだけ住民基本台帳の原本の写しよりもこういった一部の写しで処理をしてもらう、こういうのが趣旨であります。このうち、住民台帳の一部の写しの作成につきましては、住民票の記載事項いろいろありますけれども、その中で住所、氏名、性別、生年月日程度の記載に限定をいたしたい、こう考えております。
#211
○中野明君 それは全国の市町村で統一した基準ということになるのですか。それとも市町村の判断によって原本でもいいし、抄本といいますか、それでもいいしというふうに考えておられるのか、私はその辺にばらつきがあっては困ると思うんです。
#212
○政府委員(大林勝臣君) 場合によりましては、住民基本台帳の原本というものを見せてもらいたいとかあるいはその写しをもらいたい、こういうケースもあろうと思います。今のいろんな方面の行政に応ずるためには、やはり原本の写しというものも要るケースがあろうと思います。ただ、住民基本台帳の閲覧などで利用されます場合に、住所、氏名、性別あるいは生年日日程度以上の資料というものは一般的にはそんなに必要がないのではないだろうか。したがいまして、特別な相手方の具体的な請求理由というものがあれば格別でありますけれども、そうでない限りは原則的にこういった抄本あるいは一部の写しというもので処理をしてもらいたい、こういう指導をしてまいりたいと考えております。
#213
○中野明君 そうしますと将来は、一部の写しといいますか、抄本を閲覧の主体としていく、そういうお考えと考えてよろしいでしょうか。
#214
○政府委員(大林勝臣君) 運用の実績を見ながらそういう方向で進めていきたいと考えております。
#215
○中野明君 それでは、改めてもう一度確認をしておきますが、不当な目的というのがどうも気にかかるんですが、この不当な目的ということで例えていえばどういうことをお考えになっていますか、例示として。
#216
○政府委員(大林勝臣君) これも戸籍などの取り扱い等いろいろ話を聞いてみるわけでありますが、住民台帳において従来プライバシー問題として一番のポイントになりましたのが、やはり住民基本台帳の記載事項の中で、地域によって出生地、これがプライバシーの問題になる、あるいは世帯主との続き柄、こういった事柄が人によっては公表されたくないというようなお話がいろいろあるわけであります。結局は、現在の段階におきましてこの不当な目的というのは、そういった身分的な差別事象につながるようなケース、これを中心に考えております。
#217
○中野明君 そうしますと、今までどおりダイレクトメールの業者とかあるいは信用の情報機関、銀行、カード会社などは営利のために利用する目的での大量閲覧というものは不当な目的による、こういうふうには当たらない、こういうふうに解釈しておられるのですか。
#218
○政府委員(大林勝臣君) そこら辺が結局議論の一番難しいところだったわけでありまして、ダイレクトメールあるいはそういった会社の販売行為を行いますために、経済活動を行いますために住民台帳を利用することを制限するというところまでは、現在の段階でまだ踏み切るところまではいかないというのがおおむねの結論になったというわけでありまして、こういったプライバシー問題は、結局はやっぱり個々人の感情と申しますか、感覚と申しますか、この感覚の問題でありますので、当面は不当目的ということでチェックすることによりまして、今後の運用あるいは世間のプライバシー感情のいかんによりましてさらにいろいろ考え直していく問題も出てくるだろう、こういう感じを持っております。
 結局は、一番難しいのはプライバシーというものについての統一的な国民的な合意というものが現在の段階では確としたものがない。したがいまして本来、将来はあらゆる行政部門あるいは民間部門を含めての話でありますけれども、プライバシーの保護について何か国として統一的なシステム、制度、考え方、こういったものをやはり早く検討、確定する必要があるだろう、それまでの間は、言ってみれば一つの試行錯誤ということになるかもわかりません。住民基本台帳の現在の記載事項に関する限りは現状ではこの程度というのが偽らぬ私どもの気持ちであります。
#219
○中野明君 非常にその辺がせっかくこの不当な目的ということまで規制をかけようとしておられても、全然不当な目的という中身がまことにあいまいで、結果として出てきてから大騒ぎになるということが何か出てくるような気がしてならぬのですが、政令をお決めになったり通達を出すときに、もうちょっと現場でわかりやすいような基準というんですか、一つの線をきちっと示してあげた方がいい。そうしないと現場の人が自分のそのときの考えで、これは不当な事項に当たりますからだめですとか、あるいはこれはよろしいとか言って、現場で自由にやれるということがあるということになれば、せっかくこの改正をしても意味がないのじゃないか、そういう気がするわけです。
 それで、先ほどちょっと触れましたが、こういうこともちょっと私気になっているんです。が、「マイタウン葛西」、何かこういう雑誌が販売されているのですけれども、「近年、東京都区部においても団地、マンション等の中高層集合住宅の建設がすすみ、これら集合住宅住民と在来の地域住民とのコミュニケーションの問題が、地域連帯感、定住意識の昂揚とともに論じられています。」というようなことで、そういう言い方をして全部のマンション、団地の居住者一覧、部屋の番号から個人の名前、そして電話番号、一軒残らずずばっと上がっているわけです。これ出された人で非常に困っておる人もおるようです。
 というのは、部屋の番号から電話番号から名前までずらっと出ているわけです。そうしたら、無差別に電話かかってきたり、あるいは迷惑をすることが多い。こんなものに自分らの許可なしに載せてくれては困るといっても言っていくところがないということで、こういう要するにその団地の自治会といいますか、管理員といいますか、そういう人からでないとこういう名簿に出てこないのじゃないかと思われるものがずらっと全部、後でお見せしてもよろしいですが、一覧表に出ているわけです。こういうことの根拠に使われるということに将来なってきたときにやはりぐあいが悪いのじゃないかなと、そういう気持ちもして今申し上げているわけです。
 これは何か代金は千五百円かなんかで売っているようです。これは商売人のすべてのあれも書いてますし、要するに非常に便利は便利のようです。おそば屋さんから喫茶店からすし屋さんからお米屋さんから全部載っています。しかし、これだけでは地域の住民の人とのコミュニケーションにはなりません。これは団地の人の名簿と、こういうことになるわけです。ですから、これをつくるのならば、地域の人の名簿も一緒に載っておればコミュニケーションということもあるのでしょうけれども、何かこういうこと要る人もおるのかもしれませんが、載せられた人で迷惑をしている人がおっても文句言っていくところがない、そういうことも私耳にしたのですが、将来こういうことに使われるということになるとそれはよろしくないと、こういうことですか。
#220
○政府委員(大林勝臣君) そこら辺がいわゆるプライバシーを個人個人の一つの感覚の問題としてとらえざるを得ない難しさと思います。
 個人が社会で生活をしていきます場合に、やはり個人としても社会に知ってもらいたいという面も相当あるわけであります。そうかといって、個々人にとってこういったことは自分の特定の個人情報として外に出してもらいたくないというものもあるわけであります。これがまた一人一人皆恐らく違うのであろうと思います。と同時に、社会生活をしておりますものでありますから、社会としてもその社会の成員である個々人の情報というものはある程度知っておく必要もあるのだろうと思います。
 そうなりますと、結局は個人の問題と、また公共の福祉の問題という非常に難しい問題に発展をしていくのであろうと思いますけれども、根がプライバシーというのがその個々人の立場に立った感覚の問題から出発をしている問題でありますので、今後、今御指摘になったようなことも含めまして、あらゆる社会現象でプライバシーというものといわゆる情報公開というものとの関連を一体どう考え、どう調整していくかというのが現段階における一番大きい将来の宿題であろうと思います。
 現在、総務庁においてもそのあたりのことを頭に置きながら研究をされておると伺っておりますけれども、私どもも御指摘を踏まえましてせっかく勉強をしてまいりたいと考えておるところであります。
#221
○中野明君 これから絶えずこういうことが起こってくるのではないかと私どもも心配をするわけでして、この点については今個人のプライバシー権というのですか、これについてなかなか確立をしていないということを踏まえてこういう改正をされるということが、ちょっとまた余計混乱をするのじゃないかと、そういう気持ちでお尋ねをしたわけでございます。
 そこでその次の問題として、この委託業者の責務について三十六条でしたか、市町村におけるコンピューターの利用状況、住民の記録についてはそれぞれいろいろの項目にわたっております。住民の記録について入力している市町村がかなりあるようでございますが、税目のファイルとか国民健康保険ファイル等々、いろいろ総合してみますと膨大なデータベースになりますが、特に民間に委託されているものがかなり多くなってきておりますが、この点について三十六条で委託業者の義務が書かれているのですが、これはどういう規定になっているんですか、もうちょっと説明をしていただきたいと思います。
#222
○政府委員(大林勝臣君) 今回の住民台帳の改正に当たりまして、実際の現実の実務で住民記録を既に電算化しております市町村がもう既に過半数となっております。そこで、住民記録を電算化しておる市町村にとりまして、自己の電算の管理、磁気テープの保存、維持、こういった問題について今後政令あるいは省令で具体的な保護措置あるいは管理措置というものを決めてまいりたいと考えておりますが、同時に、電算化しております市町村におきましても相当数の市町村が業者に委託をして処理をしているというのがまた現実の姿であります。
 そこで、そういった委託を受けて行う住民基本台帳に関する事務の処理に従事している者でありますとか、そういった業者につきましても一つの責務をこの際法律上明確にしておく必要があろう。こういう趣旨で、委託業者も「知り得た事項をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。」という条文を、改めて挿入をいたしたわけであります。
#223
○中野明君 しかし、それは単なる訓示規定でしかないように思うんです。それを他人に漏らしたり、不当な目的に使用した場合にどういう責任が出てくるんですか。この責任の追及はどうなさるんですか。
#224
○政府委員(大林勝臣君) 第三十六条は一応訓示規定にいたしております。そこで、現実の問題といたしましては、委託業者と地方公共団体が契約を結んで電算の処理を委託することになるわけでありますが、その契約の中に第三十六条に書いてありますようなことを必ず組み込ませる。そして、それに違反したような場合には契約を解除するとかあるいは損害賠償の請求をする、こういう格好になろうと思います。既に現在委託業者に委託しております委託契約の中にもそういった措置がとられておるわけであります。
 結局は、こういったものを厳重に処理するためには、やはり一つの罰則、制裁措置というものも法律上考え得るのかなということも考えたわけでありますけれども、先ほど来申し上げておりますように、プライバシー侵害に対する罰則を考えます場合に、プライバシーという観念が非常に個々人によって感覚の問題としてニュアンスが違うところから、どうも罰則の構成要件というものがなかなかまたこれは難しいわけであります。
 つまり、本来のプライバシー侵害に対する構成要件が難しい段階で委託業者の問題についてのみまた罰則を考えるということもなかなか難しい。今後そういったプライバシー侵害で委託業者の問題を含めました何か制裁的なものを考えるとすれば、プライバシー概念そのものの確定というものがやはり先決になるだろう。それまでの間は、委託業者に対する処理といたしましては、地方公共団体と業者との間の私法上の契約上の制約、こういったもので処理する以外ないだろうと、こう考えましたのがこの第三十六条の趣旨でございます。
#225
○中野明君 今の答弁でもありましたように、問題が起こったら契約解除とか損害賠償という、それだけでいいかという疑問を私は持ちます。要するに市町村の事務の基礎資料でございますから、それが住民のプライバシーにかかわる重大なものである基本台帳を委託された者がいいかげんなことをしている。片方、移動等の届け出を二週間以内に出せということになって、これを怠った住民には行政罰とともに過料を取られることになっております。しかも、今回五千円に値上げされることになっています。それなのに、これらは私法上の義務地違反しか問えないというのは、これは均衡を失しているのじゃないかと、こういう疑問が出てくるわけでして、公務員はこれは守秘義務とか服務規律というものがあるわけですから、その公務員の仕事を委託されてやっているんですから、それなりのやはり罰則というものを科すべきじゃないかと、こう考えるんですが、この辺はどうですか。
#226
○政府委員(大林勝臣君) 確かに感じといたしましては私どもも同じ感じを持って勉強をしたわけであります。
 ただ、法律の構成といたしまして、一定の届け出義務を課するというのは、これは住所移転をするその移転をした者全体に一定の義務を課しておるものでありますから、非常にその構成要件もたやすく考えられるわけでありますけれども、このプライバシー侵害というものが非常に内容が区々さまざま、個人によって皆違う、こういう性質を持っておるものでありますので、なかなかプライバシー侵害についての罰則の構成要件が書きにくいというのが実情でございます。
#227
○中野明君 結局、今のお話をじっと聞いておりますと、委託業者に対しては非常に寛大な、いわゆる信用して、一般的に委託を引き受けるような業者は悪いことはしないだろうという、そういう前提のもとに物を考えておられるような気がするんですが、これはその業者がまじめであったとしても、そこで使われている人、そういう人が漏らすこともまた当然考えられることでございます。こういう人たちにも問題がありますし、今私申し上げましたように、住民の届け出遅滞についてはちゃんと罰則まで設けてやっているのですから、公務員が本来行うべき義務を受託しているのですから、公務員と同等の責めを負わせるということに一応規定の上でした方が正しいのじゃないか、整合性がとれていくのじゃないかと、こういう気がするんです。プライバシーの保護が云々ということよりも、いわゆる公務員の仕事を受託しているわけですから、それは守秘義務とか何とか、そういうことから公務員と同じ責任といいますか、それをここでやはり規定しておくべきじゃないかと、こう思うんですが、もう一度御答弁いただきたい。
#228
○政府委員(大林勝臣君) 確かにプライバシー問題というものを頭に置いて考えます場合に、一般の行政罰がいろいろあるにもかかわらず、委託業者のいかんによりましては不当な目的に使用されるようなケースに全く制裁あるいは罰則措置がないのは均衡をとれない、そういう気持ちはまことによく私どもはわかるわけでありまして、それなりにいろいろ勉強したのでありますけれども、法律の上で、つまり日本語としてなかなか構成要件が書けない。結局は、現在の段階におきましては委託契約上の厳しい措置というものを考えざるを得ない。したがいまして、今後こういった委託の問題につきまして、電算化されましたテープ等の保護の問題と同じ問題としまして、この施行までの一年間にこういった電算化の委託についての委託基準というものを、省内に研究会をつくっておりますので、そこで具体的に勉強いたしまして指導をいたしたいと考えておるわけであります。
 そういった制裁措置あるいは罰則の整備につきましては、今後のプライバシーの研究自体の推移を見ながらさらに勉強をしてまいりたいと考えております。
#229
○中野明君 最後に大臣、先ほど私ちょっと申し上げましたように、その本に各団地のもう全部の一軒残らず出ているわけです。そして電話番号も出ています。部屋の番号も出ているんです。それで、自分らに許可なしにこんなことを出されて困るという声も聞いたのですけれども、これは直接住民台帳とは関係ありません。しかしながら、そんなものとこの住民台帳と全部これが複合してくると大変な問題になってくる。しかも、それは有料で販売されております。ですから、そういうことを考えて、今回の法改正で今局長が答弁しておられますが、「不当な目的によることが明らかなとき」またはこの「不当な目的に使用されるおそれがある」という判断というのは、現場ではなかなかしにくい改正になっております。ですから、ぜひこれは政令を出されたり通達を出されたりするときに、まず基準を幾つか箇条的に出されて、そして現場でも容易に判断ができるようにしたらトラブルも少ないと思います。これがどこが不当なんだと言われたら現場の人が返事ができないということで従前どおり全部出さなきゃならぬという、こういうことになってもいけませんので、その辺を含めて、最後に大臣から御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
#230
○国務大臣(古屋亨君) この「マイタウン葛西」というのを拝見いたしまして、これだけ全部書かれておっては、やはり当該対象者の中でも困る、電話番号なんか知られたくないというようなことが多々あると思います。でありますので、これは政令または省令の場合におきまして、今のお話にありましたような点につきましてなるべく具体的に基準を示しまして、そうして現場が混乱しないように、ぜひ私もそういう点は注意いたしまして措置をしてまいりたいと思います。
#231
○神谷信之助君 先ほど大臣の提案理由の説明の際にも、「近年における社会一般のプライバシー意識の高揚や情報社会の進展等の社会情勢の変化に伴い、国民のプライバシー保護に対する関心が高まりつつあり、」というのが本改正案を出す背景にあると思います。そこで、そういう背景のもとに今度この法案の改正案を出されたのだけれども、先ほど大林行政局長も、プライバシーについての概念がまだ明らかでない、したがって一部改正なんで、試行錯誤を重ねざるを得ない、あるいは今ありましたように、罰則を適用するにしても構成要件をもうひとつ明確にできない、いろいろな問題が言われています。これはやっぱり政府としての情報公開法とプライバシー保護法といいますか、これの制定がまだできていない、そういうところに問題があるのじゃないかと思うんです。
 国及び地方公共団体を含めての行政機関の収集をしている情報データ、これについての国民の知る権利の問題がある、それから一般の企業やいろんな団体が収集をしている情報も今は物すごい量になってきている、その双方に通じて個人に関する情報が入りまざってある、そういう状況であります。しかも、電算化がどんどん進んできている状況の中で、情報公開法とプライバシー保護法の必要性というのは非常に重要なことになっているのじゃないかと思うんです。既にアメリカではプライバシー法やサンシャイン法がつくられていますね。アメリカの場合は一九六六年以来こういうシステムが出て、情報の自由化と同時にプライバシーの保護という問題とが何回か法改正をやって、つくられてきているのだけれども、その点日本の方はまだ出てきていない、そういう段階でこの基本台帳法のみについてその部分的な一部改正でありますから、いろんな矛盾が起こってくるんです。だから、この点やっぱり基本になる情報公開法とプライバシー保護法、これの成立へ向けての総務庁を中心にした取り組みの状況を、まずちょっと御報告願いたいと思います。
#232
○説明員(藤澤建一君) お尋ねでございますが、先生御指摘のとおり、行政機関の保有します個人データの保護ということにつきましては、国民の権利、利益の擁護及び行政運営の一層の効率化というような観点から見まして重要な課題であると考えております。また、情報公開につきましても重要な問題であると認識いたしております。いずれの課題につきましても、政府といたしましては、臨調の最終答申をも踏まえまして、閣議決定でございます行革大綱におきまして、その検討の推進を行うというように盛り込まれております。これに基づきまして、私ども各省庁と協力しながら、現在政府部内において鋭意検討を行っているところでございます。
 しかしながら、これらの二つの課題と申しますと、先ほどからもプライバシーについていろいろ御議論もなさっておられますけれども、いずれも我が国の現行の諸制度といいますか、それにない新たな分野の問題であるということもありますし、また非常に広範多岐にわたる関連領域といいますか、そういう分野との調整の問題、いろいろ新しい非常に検討すべき問題が広うございます。そういうことで、私どもはこれについては慎重な配慮と手順を要請される問題であるということで検討を行っているという段階でございます。
#233
○神谷信之助君 一体いつごろまで検討をやるのですか。だから、逆に言うと、大体いつごろ法案として提案ができる、そういう状態になる見通しなんですか。
#234
○説明員(藤澤建一君) ただいま申し上げましたような非常な新しい問題やあるいは関連調整領域といいますか、そういう問題が非常に多いというようなことから、鋭意検討を行っておりますけれども、現時点で今申されましたような法制化等の見通しを申し上げる段階にはないというように考えております。
#235
○神谷信之助君 それで、大臣、今お聞きのような状況で、国のこの問題についての基本的方針というか、考え方がはっきりしてないわけです。しかし、現実の事態はどんどん進行します。事態が進行してこっちの行政の方が立ちおくれるということでは、これは行政の怠慢が問われるわけであります。
 きょう衆議院の本会議で成立した労働者派遣法じゃないですけれども、職安法四十四条違反の疑いがあるものを、事態をほうっておいて実態ができて、実態ができたからしようがないという形でああいう法律をつくってしまうということもありますので、問題だというように思うのです。現に自治体の方では情報公開の条例やらプライバシー保護の条例をつくったりしている。とりわけ、先ほども話がありましたように、川崎市の条例なんかも非常に今度はある意味では斬新なといいますか、思い切ったいろんな要素を入れて出してきています。しかしこれも、例えば川崎の条例を見ても、民間の協力を頼むにしても担保がありませんから実効が上がらぬわけです。
 国の方でプライバシーの保護の定義なり保護の基準なり、こういうものを決め、それに対する担保すべき罰則なり何なりが決まれば、それに基づいて川崎の条例でも一定の実効を上げることができる。今の場合ですと、単に協力を依頼する以外にないという状況ですから、この点は閣僚の一員としての大臣としても、特に実際のそういう条例をどんどんつくらざるを得ないし、やっているそういう状況の中で、実際に効果を上げるといいますか、実効を上げる上からもこの情報公開法とプライバシー保護法、これは必要だと思うんです。ますます秘密を多くするような国家機密を片一方では出しながら、国民の知る権利の方はなかなかどうのこうのと言って実際には保障されないというのも問題ですし、同時にプライバシーの保護の問題、この関係をどう日本の法制として体系化するかということは非常に急がれておると思うんですが、この点についての大臣の見解を、まず聞きたいと思います。
#236
○国務大臣(古屋亨君) 先ほどお話し申しましたように、これは国の情報公開と地方の条例との関係ということについてどう考えておるかという問題でございますが、やはり情報の公開ということとプライバシーの保護というのは、両面において私は必要の面が非常に多いと思いますので、そういう点も国において何とか早く検討して始末をつけるといいますか、そういうものを公布するとか、そういうことを制定するということも一つの方法だと私は考えております。そうしないと、いままでのいろいろないきさつでこういう法律を出しましても意味なくなる場合ということがあるわけでございます。ひとつこれは私どもといたしましても総務庁その他と十分連絡をとりまして、今のお話のような点につきましては総務庁で検討中ということでございますが、やはり何とか政治的な面からもこれを推す努力をしなきゃならぬというふうに考えております。
#237
○神谷信之助君 大臣もそういう点は御認識いただいておるわけなんで、総務庁の方も、これはきょうずっと議論をしていますが、あいまいなところ、不明確な点、いろいろ各委員から問題点が指摘されておるけれども、結局プライバシーの概念なり定義が明確でないし、したがってぴちっとしたものができない。したがって、この改正をやってから後、とにかくやりながらやっていこうかという試行錯誤しかもうないという状況ですから、これは私は法治国家としてはちょっとぐあいが悪いと思いますから、今大臣もおっしゃったように早急にひとつ成案を得ていただくように、もちろん権利にかかわる問題ですから慎重にしなきゃいけませんが、その点を一つ申し上げておきます。
 それで、あと具体的にありますが、皆さんも今までにいろんな面で質問なされておりますから、できるだけ重複を避けていきたいと思うんです。
 一つは、請求事由について理由を述べないで閲覧できる者、いわゆる自由閲覧者といいますか、この範囲が広過ぎるのじゃないかという感じもするんです。これは、省令で戸籍法の施行規則十一条に準ずる内容とするというようにお考えですが、本人、配偶者、親族以外に、国、地方公共団体及び公社、公団の職員、それから弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士などが考えられておるようですが、この基準は大体どういう基準でお決めになるわけですか。
#238
○政府委員(大林勝臣君) 今回、住民基本台帳の閲覧をいたします場合には、一般的には請求事由その他氏名、住所あるいは閲覧の範囲というものを具体的に明らかにして請求をしていただくという措置をとっておるわけでありますけれども、今回改正いたしましたのが、こういった住民基本台帳の閲覧なりあるいは抄本の交付を不当な目的で使用するということをチェックするのが目的でありますために、一般的に本人あるいは家族、さらには国、地方団体の公務員その他、法律上いろいろの制約を受けております弁護士でありますとか行政書士でありますとか、そういった公的な資格者の職務上の請求だということになりますと、そこまで具体的な請求事由を一々書いていただかなくとも危険はないであろう。したがいまして、職務上の請求ということが明らかであれば請求事由というものを省略してもいいであろう、こういう考え方に立っておるわけであります。
#239
○神谷信之助君 本人、配偶者、親族関係は別にして、それ以外の自由閲覧者の範囲ですけれども、公務員その他弁護士あるいは司法・行政書士に至るまでずっとあります。しかし今のお話ですと、これは少なくとも職務上必要であるということは確認しなきゃならぬわけです。
 そこで、具体的に手続の問題に入るのだけれども、これは実際は今市町村の窓口ではちょっとばらばらな形式もあるようなんだけれども、いわゆる公用請求の場合は無料ということで、それから、多くのところでやっているのは一般請求のやつで、本人の住所氏名書いて、そして必要とするものを書いて、あとその理由をずっと幾つか挙げて列記してあって、そしてそれの該当するところに丸をするとか、そういう形でやっていますね。弁護士だとかそういう人あるいは公務員の場合は下の理由は書かんでよろしいと、こういうやり方でやっているのが多いようなんですけれども、今度これができますと、ある程度、ある意味では政令に応じて統一基準をつくり、統一様式をつくっていくということが必要になるのではないかと思うんですが、この点はどういうようにお考えですか。
#240
○政府委員(大林勝臣君) 請求事由その他自治省令で定める事項を明らかにするという作業がまだ今後残っております。
 さらに、先ほど御質問の、特定の目的のための請求についてはそれを省略をするというような考え方で政令を考えるわけでありますけれども、政令の内容についてできるだけ各地方公共団体の窓口で統一処理ができるように考えてまいりたいと思っております。
#241
○神谷信之助君 そうすると、ここで自由閲覧者になっている対象の人、これは職務上に必要な調査あるいは請求であるということは、そのことも明記できるそういう記載方法を考えるということになるのかどうかということが一つ。それから、その身分を証明するもの、これの提示を求める必要があるのかどうか。この辺はどういうことになりますか。
#242
○政府委員(大林勝臣君) 公用請求などの場合には、請求書を見た場合にこれは大体すぐわかるというケースが非常に多いであろうと思います。ただ、そういった書式でない場合にも、もちろん職務上のためということは書いていただくわけでありますし、さらにそういった請求書の記載自体からは請求者の資格が疑わしいという場合には、質問をいたしますなりあるいは身分証明書の提示を求めたりすることなど、いろんな確認方法が考えられますけれども、そういったこともあわせて指導してまいりたいと考えております。
#243
○神谷信之助君 なかなか難しいんですよ。例えば私は今参議院議員ですが、参議院議員であることを証明するものいうて考えたら、つけておるバッジ、それから国鉄の無料パスを持っている、これも紛失をする場合があるわけです。あとは名刺ぐらいのものでしょう。だが、これは自由につくれるんです。それで、弁護士の場合も、弁護士会に登録すると弁護士の記章くれます。しかし、聞いてみたら、やっぱり身分証明書というものはないんですね。弁護士会は発行してないんです。
 だから、これも実際問題、ある程度わかっている人の場合と全く未知の人が来た場合と――警察官でも制服着ておってもにせものというやつがこの間あったわけですから、制服着ておるから大丈夫やということにもならぬということにもなります。だから、警察官の場合は少なくとも例えば警察手帳を見せただけでよろしいということにもならないだろう。やっぱり書式はちゃんと書式で、先ほど言った公務用請求の書式でやってもらう、それぞれみな公務員もそうだと思いますが、そういうことになるのだろうと思いますが、その辺も含めてどういうようにお考えか。これもちょっと窓口で場所によってはごたごたする可能性のある問題です。
#244
○政府委員(大林勝臣君) 相手方の確認の問題で、そういった窓口でわからない、そのために混乱するということは確かに考えられるわけであります。そういった場合に、具体的に臨機応変にどういう措置をすべきかということを含めまして、この十年間同じような取り扱いをしてきております戸籍における具体的な事例、こういったものを集めて、あわせて指導の参考にしたいと考えております。
#245
○神谷信之助君 それからもう一つ、不当な目的か正当な目的かというものの判断、これは先ほどからも同僚議員がおっしゃいましたが、非常に難しいんですけれども、これはプライバシー権の定義がはっきりすれば明確になってくるんでしょうが、知られたくないという権利もあります。
 例えば私の住民票を閲覧する、あるいはとった、しかし、だれがとったかわからぬわけです。だから、何かに使われたらしいということがわかった場合に、一体だれが請求をしたのかということを役所の方に言う。しかしこれは、この間起こった例では拒否されて、裁判でも却下されたですね。だから、そうするとだれが自分の住民票をとったりあるいは閲覧をしたのか、そのことを知ることはできない、自分のことは自由に知られると、こういう状態が起こります。この辺についてはどういうようにお考えですか。
#246
○政府委員(大林勝臣君) まさにごく最近におっしゃったような事件が裁判まで進展をいたしました。私どもも今後どう考えていくべきかと考えておったところでありますが、確かに自分のことは知られるけれども、自分のことを知ろうとした相手の情報はわからぬでは、まさにこれ不均衡ではないかということがすぐ頭に浮かびます。ただ反面、同時に自分の住民票をだれがどういう理由でこれをとったかということを調べます場合には、相手が自分の住民票を請求した理由というのをまた調べるわけであります。そうしますと、相手が自分の住民票を請求した理由が、あるいはそれは債権債務関係であるかもしれません、あるいは訴訟でも起こそうかというようなことでそういう請求をしたのかもわかりません。そこで問題は、今度は相手の行動を調べることが相手のプライバシーとどういう関係になってくるのだろうかというようなまた疑問が出てまいりまして、非常に私どもも、そこまでなかなかぴしっとした回答が現在の段階でまだ出せておらない状況であります。
#247
○神谷信之助君 今、こっちの方は一方的に知られて、知ろうとした者がだれかということは我々の方はわからぬという状態というのはやっぱりおかしいというように私も思うんです。だから具体的に、それはやっぱりプライバシー保護法で保護すべき権利と、それからその範囲といいますか、こういったもので相互の関係も含めて権利関係の基準というものを決めないと、この辺却下されていますから今の法体系では却下されざるを得ないのかもしれませんけれども、しかし常識的にいっても、これはちょっと矛盾を感じます。この点を一つ今後の研究課題として申し上げておきたいと思います。
 それから、その次の問題はコンピューターの問題です。三十六条の問題ですが、公務員の場合はもし三十六条のような行為をした場合には守秘義務違反で処罰されることになりますか。
#248
○政府委員(大林勝臣君) 一般的に公務員には守秘義務というのが義務づけられておるわけでありますが、問題はその場合の義務化された秘密の内容ということになるのだろうと思います。
 そこで、結局はこのプライバシー問題は具体的なケースケースでプライバシーの侵害になる場合もあり、必ずしもそうならない場合もあるという非常に多種多様なケースが起こってくるものでありますから、一般的に住民台帳の記載事項を公務員が公にしたからといって直ちにそれが公務員の守秘義務違反になるとは言えないと思います。と申しますのは、一応現在の段階でもまだ原則公開という建前をつくっておりますから、そこで今回の改正によりまして、不当な目的でこれを利用してはいけない、こういうチェックをしたわけでありますが、そういう身分差別につながる問題でありますとか続き柄を不当に利用するというようなケースにおきましてこれを漏らすということは、当然これは守秘義務違反ということになろうかと思います。
#249
○神谷信之助君 そうすると、今おっしゃったその部分は守秘義務違反になる、こうなれば、受託した業者に対してもその部分についての守秘義務を課すことは可能ではないか。だから、処罰の対象になるその要件が確定をしないものは、これは公務員でも確定できないのだから守秘義務違反というわけにいかぬでしょう。しかし、今おっしゃったように、差別につながるようなそういう目的に利用した、あるいは漏らしたということであれば公務員にその守秘義務違反を問うことができるとするならば、受託業者についても問うことができるのではないか。例えば風営法で少年指導委員というのをつくりましたね。これはボランティアなんです。ボランティアの人を委嘱するわけです。しかし、少年のいろんなプライベートの問題を知りますから、これには公務員に準じた守秘義務を課していますよ。
 そうすると、この受託業者についてはそういう意味では課す、ただ現行のまだプライバシーの定義なり基準なりがはっきりしていない段階では、差別にはっきり明確に利用したとか、そういうことで漏えいしたという部分については犯罪要件を構成する、それ以外でわからぬところは、これはわからぬのだから犯罪要件を構成しているかどうかわからないから、これは守秘義務を問うわけにはいかぬと、こうなりますね。
 だから、何でそんなことを言うかというと、プライバシー保護法なり情報公開法というのは確かに早くつくらなきゃいかぬけれども、なかなか難しい問題ですから、その間の空間ができる。これは一年以内の施行ですけれども、しかしその間にやっぱりそういう点も検討する必要があるのではないか。全くこの三十六条違反がノー担保、全くの訓示規定というのでは、これからの電算化どんどんしていく状況の中で、私は大変個々人の権利を守るという点でいかがなものか。とりわけ今回の改正は一定部分、四項目でしたか、それは見せるけれども、あとのやつは見せないのを原則にしているわけですから、今までと違ってそういうように秘匿をする条項というのを法律上明確にするわけですから、それとの関係でいかがなものかと思いますが、どうですか。
#250
○政府委員(大林勝臣君) まことにおっしゃるとおりであろうと思います。そこで、いろいろ委託をいたしました場合のプライバシーの侵害のケースについての制裁措置はないかと、いろいろ法制局とも相談をし、議論をしてみたのでありますけれども、公務員の場合には一般的な守秘義務というのが全部網がかかっておるものでありますから、その中でケース・バイ・ケースで適用するということも可能なんでありましょうけれども、委託業者、民間人の場合に一般的に守秘義務の網をかぶせるということもなかなか難しい。それではやっぱり具体的に個別の守秘義務というものをかぶせざるを得ない。そうなりますと、やはりプライバシーというものの確定した概念がないものでありますので、なかなかその構成要件がかけにくい。これが訓示規定にせざるを得なかったいきさつでございますが、今後の住民基本台帳電算化に伴います事務管理上、今後考えるべき問題としての一番大きな問題点であるという認識は持っております。
#251
○神谷信之助君 これも重要問題というように思います。
 その次ですが、今度のこの法案とは直接関係ないんですが、大臣にちょっと見解を聞いておきたいと思うんです。いずれにしても、プライバシー問題というのは緊急にその基準といいますか、基本を確立しなければいかぬわけですけれども、その場合一般人と公人ですね、公務員あるいは公選による候補者とか我々政治家なんかも含めまして、一般人のプライバシーの保護に対してそういう公人といいますか、政治家のプライバシーというのは、一般論としましてその保護について一定の制限を受けるというのは当然ではないか。これは憲法十五条で「公務員は、全体の奉仕者」という規定になっています。したがって、刑法の二百三十条ノ二の一項なり三項で、これは戦前になかった部分ですけれども、憲法との関連で公務員に対する免責条項というのが加えられる、こういうことにもなります。最近は政治家の資産公開というような問題も出てきて、政治家、そういう公人といいますかについてのプライバシーに対する一定の制限というものが全体の風潮になってきているし、そのことについては一面では甘受しなければならないという状況が、この名誉棄損罪で言うならば「月刊ペン」事件の最高裁判例も出てきているわけで、こういったことについての大臣の見解を聞いておきたいと思います。
#252
○国務大臣(古屋亨君) 一般論で申し上げますと、そういう公人というものは、特に政治家というのは国民の洗礼を受けてそういう地位につくのでございますから、私は一般の方と比べますとやはりプライバシーの範囲はおのずから狭くなってくるのじゃないだろうかという感じがいたします。
 なお、住民基本台帳の閲覧とかあるいは住民票の写しの交付問題については、私は特に一般人と公人とに特別に区別しておく必要はないと思います。やっぱりこれは政治家とかそういう者の問題はおのずから常識的に考えなければならぬという意味におきまして、さっき言いましたように範囲は狭くなってくる。ただ、そういうような閲覧とかあるいは写しの問題だけにつきまして言いますと、そう特別な差別はなくてもいいのじゃないかという感じがいたします。
#253
○神谷信之助君 基本台帳に記載されている十四項目ですか、それ自身が直接政治家なら政治家個人の資産状況を示すとかどうとかという問題ではありませんから、別の方法も幾つもあるわけですから、別にそのこと自身を私は直接には言ってない。先ほど冒頭にも言いましたプライバシーとの関係では、我々はそのことは考えなきゃならぬ問題だろうと、こういう意味で申し上げておいたわけです。
 次に、今度はこれに関連しますが、戸籍の記載の問題です。実はこれ私自身も関係をしたので驚いたのですけれども、このごろ核家族化で、本籍地を離れて新しい住所に移っている。そこで子供が生まれて出生届を役所へ出します。そうすると、そこから本籍地の役場へ送致されるんですね。そして、そこで受け取った役場が戸籍簿に記入するんですが、この記入漏れが年間に案外あるんです。この辺、記入漏れがどういう状況かわかりますか。
#254
○説明員(細川清君) お答え申し上げます。
 御指摘のような事案は、戸籍制度上は非常に問題な事案でございますが、事例といたしましては非常にまれな事案でございまして、私どもに公式に報告がございますものは 数年間に何件ということでございます。ですから、ございましても毎年一件前後ではないかというふうに考えております。
#255
○神谷信之助君 ところが、戸籍漏れになっていると気がつくまで、そのことが判明をするまで、言うたら戸籍簿に載っておらぬ、無国籍者ということになるんですかね。こういう状態になるわけです。だから、例えば結婚のときに調べて、戸籍に載っておらぬ、一体どうなっておるのかということで、先方からそれで破談になれば大変なことだし、言われてみたら泡食わにゃいかぬと、こうなります。
 それで、たまたま去年私がタッチをした事件は、生まれて八年ほどたっていましたか、もう小学校へ行っていましたから八年ぐらいになるんでしょう。たまたま役所の戸籍の人が気がついて、あそこの子供さんはもう学校行ってはるのやけども載ってへんなということで、知らせてもらって判明したわけです。入学のときはどうやってやったのかというと、入学は住民票でいいのだと、こういうぐあいに言いますから、戸籍というのは、普通の人は自分の戸籍がどうなっているのか、余り見ないですね。それでわかって、それじゃすぐ役場の方のどこに落ち度があったのか調べてもらえということになって調べてみましたら、そのときそこの役場から本籍地の役場に送致をした件は二件なんで、一緒の一つの封筒に二件を入れて送致をした。ところが、二件送られたうち一件は記入されましたけれども、一件はどういう事情か記入漏れになりまして、これはそれぞれ当時の送達簿を点検して、それで判明しました。そうすると、これは責任が役所の側にありますね、親はちゃんと出生届出したわけだから。その場合、誤記を正しく訂正をしてもらう、これについてはどういう手続をとっていますか。
#256
○説明員(細川清君) 適法な出生届がございまして、これが受理されているにもかかわらず戸籍に記載をされていないという場合には、原則といたしまして御本人からそういった申し出がございますと、これによりましてもう一度事実を確認いたしまして、それに基づいて戸籍に記載するということになるわけでございます。
 戸籍に記載する場合には仕方には二種類ございまして、通常の出生の事項は、年月日どこどこで出生、それから年月日だれだれ届け出。非本籍地に届け出た場合は、年月日どこどこ首長から送付入籍と、そういう記載になるわけでございます。
 御指摘のような場合には、これは責任が役所の方にあるわけでございますので、関係者の中には、役所の方に責任があるのだということを明らかにしてほしいという御要望がある場合もございます。そういう場合には、年月日どこどこ首長からの届け書の送付が未着につき記載遅延ということを記載いたしまして、役所の方に責任があるということをいわば明らかにすることができるようになっているわけでございます。この記載のうちどちらかを選ぶかというのは、関係者の心情にもいろいろございますので、基本的には御本人の御判断を尊重いたしまして、これによって決めているというのが実情でございます。
#257
○神谷信之助君 その訂正の申請をするのはその子の父が出すわけで、それでそれが記載されていないのでひとつ記入してくれとか何とかその程度。だから、それはもうおかしい。当該役所で発見をして、そして調べて記入漏れであったことが判明した、したがってそのことを御通知いたしますと言うてこっちへ通知しているわけだ。それについて誤りを認めたことについて了承するということにして戸籍を訂正してもらったわけです。ところが、法務省が言うている手続でいうと、本人に責めがあるような形で本人の方からまず申請をして、それでやるという形になっているんです。だから、私はこれはちょっと不当だと言うて、大分話をして法務局の出先の地方法務局を含めて了承され、そういう手続にしてもらったのですけれども、これはそれで一件落着しました。ただ、その手続のやり方についてはちょっと検討してもらいたいというように思います。
 問題は、年に一件か二件でわずかだとおっしゃるのだけれども、これは当人の親にとっては大変なショックです。何でそういうことが起こるのかというと、片一方、送達した方は送達しただけで、記載済みか記載済みでないのか、記入してくれたかどうかという返事がないわけです。だから、もう当然記載済みであろうというように思っているということで、したがって、たまたまそういうことで気がつくか、あるいは何らかの理由で戸籍謄本を取ったときに記入漏れがわかると、こういうことになるんですが、これは本人の身分にかかわる重要な証拠物です。だから、戸籍の記入の厳格さというのは厳しく言われているし、一々判こも押してちゃんとやっている戸籍簿ですから、この辺は、送致をして、そして送致されたところが記入をして、記入をしましたよという返事ができるようなシステムでいく何らかの方法を考えない限り、こういう事故というものはなくならないというように思いますね。
 それで、新興都市ですと、京都でも京都府下ほとんど全市町村に年がら年じゅうばらばら送りますし、他府県にももちろん送る場合もあって、非常に多いわけです、集中してきていますから。だから、この辺はひとつ法務省で検討してもらえないかというように思うんですが、いかがでしょうか。
#258
○説明員(細川清君) お答え申し上げます。
 御指摘のように、戸籍は非常に大事なものでございますから、こういった事故がないように常々監督の法務局、地方法務局を通じて市町村の方々には注意を喚起申し上げているところでございます。
 御指摘のように、届け書の送付を受けた市町村からそれを受け取ったという文書を、送付をした市町村にお送りしますれば、それは非常に有効な方策であることは間違いないと思うわけでございますが、他方、年間に他の市町村に送る届け書の数は二百二十万件ございまして、これをすべて先ほどの方法によりまして厳格な方法で行うということになりますと、それが確実に行えるかどうかという問題もございます。また、市町村の方の実際事務処理している人たちの負担というものも相当あるものではないか。ですから、直ちにそういう方向が実行できるかどうかというのはもう少し研究が要るのではないかというふうに考えております。
 先ほどの事案のような場合でございますと、これは受理した市町村が通常の文書の扱い方を厳格にしていれば起こらなかったものではないかというふうにも思いますので、そういった点の指導も今後してまいりたいと思いますし、より抜本的な方策を今後関係の市町村とも十分協議いたしまして、私どもも研究させていただきたいと存じます。
#259
○神谷信之助君 そのことで言えば、今おっしゃったように郵送料もばかにならぬことでありますから、一年間まとめて記入しますよといったって、個別に出すか、どういう方法がいいか、やり方はちょっともう少し検討してもらいたいと思いますが、そういう事故の起こらないように対処してもらいたいということを最後に申し上げて終わります。
#260
○委員長(金丸三郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト