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1984/01/30 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 本会議 第6号
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1984/01/30 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 本会議 第6号

#1
第102回国会 本会議 第6号
昭和六十年一月三十日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  昭和六十年一月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。鈴木一弘君。
   〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#4
○鈴木一弘君 私は、公明党・国民会議を代表して、施政方針演説に対し、総理大臣並びに関係各大臣に経済、財政を中心に若干の質問をいたします。
 中曽根内閣が発足して以来、政治の方向に大きな変化が生じております。それは、政治倫理問題を放置していることであり、また、戦後政治の総決算の名のもとに、増税と低福祉と軍拡の路線が強引に推し進められようとしていることであります。
 総理、今国民が求めている政治改革とは、増税、低福祉、軍拡によって国民に負担を増大させることではなく、清潔な政治、福祉社会、公平な社会制度、景気振興による活力ある社会であります。また、二十一世紀に向けての明るい社会建設への展望を示し、そこまでの具体的手順と方法を明らかにすることではないでしょうか。しかるに、総理の言う戦後政治の総決算とは、六十年度予算での社会保障費の補助金の一律削減とか、児童手当の縮小方向あるいは国立大学入学金の引き上げなどに見られるように、福祉から教育に至るまであらゆる分野への弱者切り捨てであり、国民に二重三重の負担を強いるものでしかありません。
 総理は、昨年の第百一国会での所信表明の中で、政治倫理の確立について公約しました。一昨年の総選挙直後でも、国民に政治倫理の確立をすると総裁声明で誓ったのでありますが、そのまま放置したままであります。その不誠実な政治姿勢については、さきの総裁再選劇においても如実に示されたごとく、与党内からさえ厳しい指弾の声が上がったのであります。田中元総理に実刑判決が下ってから一年余、この間、国民の代表たる国会議員の政治倫理確立という政治の根幹となる問題について、みずからの責任を放棄し、その対応をあいまいにした総理の態度は、明らかに金権腐敗政治を容認するものであり、議会制民主主義を踏みにじったものと言わざるを得ません。総理は国民の声に再度謙虚に耳を傾け、政治の主権者たる国民に対し、政治的、道義的責任を明らかにするため、今国会で政治倫理問題について、国民の納得できるよう明確なけじめをつけることを要求するものでありますが、決意のほどをお聞かせいただきたい。
 総理、あなたは施政方針演説の中で、世界平和の促進をうたい、我が国の平和憲法下での平和と安全を確かなものにすると言っておられます。しかし、今まで中曽根総理が行ってきたことを見ると、それは、ただ言葉の上だけの平和としか思えません。つまり、一昨年の第一回訪米の際の「日米運命共同体」とか「不沈空母」、さらには「四海峡封鎖」などの発言にこそ総理の本音がよく示されているからであります。今まで我が国は、平和憲法のもとに、平和への基本原則というものがありました。非核三原則、防衛費の一%枠、さらには武器輸出三原則、集団的自衛権行使の禁止、自衛隊の海外派兵禁止などでありますが、中曽根内閣になってから、これらの原則が空洞化されたり破られつつあります。総理は、我が国の平和への基本原則をどう考えておられるのか、決意のほどを伺いたいのであります。
 特に、米国の戦略防衛構想や日本の防衛力増強は、総理の言う「平和と軍縮」とどのように一致するのかお伺いいたします。
 次に、経済問題について伺います。
 我が国は、現在、国際社会の中で確かに経済大国であります。本年半ばごろには米国を抜いて世界で最大の債権国となり、対外純資産は七百億ドルにもなろうと言われており、その経済的影響力は甚だ大きいものがあります。このようになってきたのも、戦後四十年間にわたる国民の大変な努力と知恵がもたらしたものであり、その工夫と努力の成果を税という形で摘み取って政治が行われているのであります。それだけに、政治が経済に課せられる責任は重大と言わざるを得ません。しかるに総理は、外交とか防衛問題については極めて積極的に行動し、今後の方向を示されておりますが、経済の分野に関しては、何か成り行きに任せて、何らの施策も示さない無責任な姿勢そのものと言っても過言ではないと思います。
 現在の国際経済社会を見ますと、先端技術分野での各国の激しい競争、鉄鋼、造船分野での中進国と言われる国々の追い上げ、OPECなど石油輸出国の地盤沈下、累積債務問題、さらには国際通貨面での米国のドルの際立った強さなど、まさしく国際経済社会の大きな変革期にあります。この変革期の中で我が国の進むべき方向を示し、そのための具体的施策を施し実行することが、今、政治に課せられた責務であります。一昨年来の経済の拡大も、アメリカ経済の予想外の成長と、それによる輸出の急増にあり、中曽根内閣の政策の成果でないことは明白であります。しかし、これまでの過度と思えるほど抑制的な政策姿勢を求めたはずの増税なき財政再建が、現在破綻に瀕し、総理自身が否定してきた大型間接税の導入を意図する税制の見直しを取り上げざるを得なくなったことは、中曽根内閣の政策の失敗を証明したと言わざるを得ません。
 総理の進めてきた政策の根本的欠陥は、経済の適度な成長なくして財政再建が不可能であるにもかかわらず、財政からの行き過ぎた抑制を続けて、経済の安定成長のための政策手段を捨てたことであります。経済の手段であるべき財政が、その再建を強調する余り、経済への効果ある政策を抑え、経済を低成長に陥らせ、財政再建の基盤を崩壊させるという本末転倒した経済運営は是正さるべきであると思いますが、総理の見解をお伺いいたします。
 五十九年度の経済は、五年ぶりの五%台の実質成長が実現されようとしておりますが、さきに指摘したとおり、それを引っ張っているのは輸出拡大によるものであって、政府が内外に公約した内需主導にはほど遠いものがあります。そのため、国内経済においては業種間、企業間で著しく進んだところとおくれたところが出るという光と影が生じ、百六十万人に上る失業者の高どまりと、月間千八百件に達する企業倒産を生み出す一方、対
外的には年間三百億ドルを上回る経常黒字による激しい経済摩擦の発生というひずみを生み出しております。
 このような結果、我が国は過去最高の資金余剰を持つに至ったのであります。外国への企業の進出とか直接投資、また海外資源開発などの需要に応ずるためには、経常収支のある程度の黒字は望ましいものであります。しかし、年間で約五百億ドル、円に換算して実に約十二兆円もの資金が海外に流れていることは、我が国の内需を拡大する投資機会が少なく、消費が不足しているからにほかなりません。それに対し米国は大変な財政赤字でありますが、世界じゅうから資本が大量に入ってきております。それは国内の消費意欲が高く、また投資しやすい経済政策がとられており、内需拡大の投資機会が多いのは米国だけだからであります。総理、今こそ我が国へ投資しやすくできるように経済政策を改めるときではありませんか、お伺いいたします。
 我が国の産業構造は、急速なサービス経済化へと転換しつつあり、新たな産業社会に対応するためにも、技術革新への対応と雇用の確保、中小零細企業対策と従業員対策の強化、あるいはGNP世界第二位の経済大国にふさわしい生活基盤中心の社会資本の整備等が必要であります。国内で消費する機会が少なかったため、大きくなった貯蓄の超過を海外への資本流出にしてしまうのは、我が国の経済運営の無策を如実に物語るものであります。日本経済は、国内需要中心の経済成長を可能にする体質改善を求められております。その方向に政治路線を切りかえるべきであると思うのでありますが、重ねて総理の所見をお伺いいたします。
 昭和六十年度政府経済見通しでは、内需主導型による四・六%の実質経済成長率を実現することを表明しております。そしてそれを実現するための個人消費や住宅投資増大等、内需拡大をうたっておりますが、もし現状のままで放置すれば、五十九年度に続いて大幅な対外不均衡を生み出すことは火を見るよりも明らかであります。抑制的な昭和六十年度予算のもとで、どのようにして内需主導型へ転換させるのですか、具体的な手段を示していただきたいのであります。
 また、外需依存の原因は国内の需要不足、なかんずく家計消費の不振にあります。GNPの実に六割を占める国内最終消費支出は、低い賃上げによる所得の伸び悩みに加え、税、社会保障負担のいわゆる非消費支出の増大によって抑えられております。景気が回復すれば逐次消費も回復するという政府の希望的観測は、完全に予測を間違えたと言わざるを得ません。所得税の減税によって、家計で自由に使えるお金、可処分所得の増加こそ内需拡大の決め手であります。このため我が党は一兆円以上の所得税減税を強く要求しておりますが、総理、経済企画庁長官の率直な見解を伺いたいのであります。
 五十九年度における通関統計による輸出超過額は過去最高の三百三十六億ドルであります。特に対米分だけで三百三十一億ドルの輸出超過となっております。このことは、我が国の景気回復はもっぱら米国への輸出依存によってもたらされたことを裏づけております。このままの状態では、日米経済摩擦の再燃はますます避けられないのであります。米国は、年初のレーガン大統領と中曽根首相の会談で、従来の我が国の市場開放策が看板倒れに終わっているとして、個別案件ごとの具体策の実行を求めてきております。政府は具体的な開放策を提示し、早期に実施する必要があるのではないか、総理にお伺いをいたします。
 近年の経済低迷化で国民意識にも大きな変化が生じております。一見、国民生活は満たされているように思われますが、その内容を探ると、少数の高価な億ションの購入者がいる反面、大多数の国民は住宅のローン返済に四苦八苦し、主婦までパートで働かざるを得ないのが実情であります。すなわち、資産を持てる者と持たざる者との間に格差が生じ、かつて所得分配の不公平が最も少ないと言われた我が国も、今や貧富の差が目立ち始めております。これまで国民の大多数が抱いてきた中流意識は、今日、それが虚構であり、幻にすぎなかったことが明らかになりつつあり、まさに数年前のアメリカと同じように中流意識層の崩壊が始まろうとしているのではないでしょうか。政府の国民生活安定化と逆行した経済政策がこのような危機を招いていることは明白であり、今後政府は、国民の間に広がりつつあるこの格差是正のために、財政、税制等あらゆる諸施策をとっていくべきと考えますが、政府の見解を伺いたいのであります。特に総理の見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、財政問題について伺います。
 まず、当面の最緊急課題である財政再建について伺います。
 今日の財政窮迫の実態を政府は正確に国民に伝えていない危険はありませんか。一例を挙げれば、昭和六十年度末の国債残高は百三十三兆円と言っておりますが、実は償還までには六十年を要し、その元利を合わせた国民の負担は実に四百三十兆円にも膨らむものと思われます。これは国民一人当たり、赤ちゃんまで含めて三百六十万円の借金となり、四人家族で何と一千四百万円を超える過大な負担となるのであります。したがって、昭和六十五年度赤字公債からの脱却は、政府の公約中最大のものと言わざるを得ません。このためには五十九年度以降、毎年度約一兆円の赤字公債の縮減が必要でありました。しかし、昭和六十年度予算においても赤字公債の減額は七千二百五十億円にとどまり、昨年度に続いて目標の未達成となっております。赤字公債の減額幅はそれだけ後年度に負担をしわ寄せし、今後五年間に毎年度一兆一千億円以上の削減が必要となってまいりますが、二年続けてできなかった以上の削減を今後本当にできますか、総理に確認いたします。
 政府は、昭和六十年度予算の圧縮に努め、一般歳出を三年連続伸び率ゼロに抑えたと国民に宣伝をいたしております。しかしその実態は、支出の先送り、後年度負担への転嫁等、いわばツケ回し、後回しによる一般歳出の圧縮であり、歳出の構造を見直し、後年度負担を軽減するという財政再建に役立つ削減とはなっていないのであります。すなわち、年金の国庫負担の繰り延べを初め、住宅金融公庫補給金の後送り、政管健保からの借り入れ等による新規債務負担等、先送りの金額は実に八千六百七十億円にも達しております。まさに一般歳出の減額と言っても、その実態は見せかけにすぎないのであります。逆に六十一年度以降の負担の増大を招いており、財政の健全化に逆行するものとなっております。大蔵大臣の見解
を伺うものであります。
 六十年度予算に見られる巨額な歳出のツケ回しは、政府が進めてきた一律削減による予算編成方式の限界を示すものであります。従前から政府・与党内部にさえ批判が上がったのは、けだし当然と言わなければなりません。しかし、その自民党による党主導型の六十年度予算編成においては、道路特定財源の制度改革を放棄しながら、要求圧力の強い道路予算をふやすためガソリン税の一部を直接特別会計に繰り入れるという手品まがいの予算技術を悪用し、財政をますますいびつなものにしております。このことは政府・与党による財政改革の失敗と言わざるを得ません。真の財政再建のための改革は、税の自然増収をもとに広く浅くばらまいてきた高度成長型の財政配分を、効率かつ公正に、そして重点的資金配分を行う安定成長型体質に改めることであります。このためには、政府の進めてきた一律削減の予算編成を改め、制度、政策の根本までさかのぼり、予算の根雪部分までも検討するゼロベース的予算編成が必要と考えますが、総理の御見解を伺います。
 さらに、制度改革の点から具体的に二点伺います。
 道路やエネルギーに見られる特定財源は、ともすれば既得権化し、惰性的支出に陥りがちであります。そこで、一般会計の窮迫しているときに、総合的な財政再建の視点から、この制度について見直す考えはございませんか。
 また、現在、一般会計から特別会計や公庫、公団、事業団等にさまざまな名目で巨額な繰り入れがなされておりますが、これこそ高度成長時代の財政の遺物であり、自助努力により、安易に繰り入れや補助金などに依存する体質を改めさせるべきであると思います。すなわち、社会保障的機能を持つ繰り入れなどを除き、みずからの予算をみずから支弁する自己努力をさせるべきだと思いますが、総理の見解をお伺いいたします。
 財政の第二は税制構造の見直しについてであります。
 中曽根総理は施政方針演説で税構造の見直しを表明されました。私も、シャウプ勧告以来の戦後税制が三十数年を経過し、実態とかけ離れ、その見直しに反対するものではありません。しかし、税制の改革や執行は国民の信頼のもとに実行されるべきであり、現行税制に対する不公平、不公正の不満を棚上げにし、単なる財源あさりのための便宜的な見直しであってはならないと思うのであります。総理、現行税制への国民の不満は、勤労所得に比べて異常に優遇された資産所得に対する不公正感と、トーゴーサンと言われる所得捕捉率への不信さにあります。これら国民の不満を解消する税制の見直しこそ最優先されるべきと思いますが、総理の基本的見解をお伺いいたします。
 個人に対する課税は、総合累進での制度により個人の所得に応じ行うべきであります。しかも、所得税の最も重要な原則は勤労所得を資産所得よりも有利に扱うことでありましょう。ところが、利子配当に関する選択分離課税を初め、土地の譲渡所得に対する例外扱いなどによって総合累進課税が妨げられる結果、現在の税制は優遇されるべき勤労所得が逆に資産所得より不利な扱いをされているのであります。一般に高額所得者ほど資産所得があることを考えれば、明らかに現行税体系は富める者に優しく、貧しい者に冷たいと言わざるを得ません。このような差別課税をなくすには、各種資産所得に対する例外措置を改め、歴代自民党政府が骨抜きにしてきた総合累進課税の原則を改め、新たに強化する以外に方法がなく、これこそ税制改革として何よりも優先して行うべきと考えますが、総理、大蔵大臣の見解を伺います。
 この具体的手始めとして、資産所得課税と捕捉率改善の第一歩であるグリーンカード制は従前の形で実現すべきと思いますが、総理の決意をお伺いしたいのであります。
 第三は、国債管理政策についてであります。
 政府は、六十年度予算においても、財源難を理由に一兆八千六百億円の国債償還のための定率繰り入れを停止いたしました。五十七年度以来続いている停止措置で、償還のための財源である国債整理基金の残高は六十年度の国債の現金償還に辛うじて対応できるだけのものになりました。六十一年度以降本格的に始まる償還に資金が不足することは明らかであります。まさに現行の減債基金制度は完全に破綻したと言わざるを得ません。六十年度はいざ知らず、六十一年度一兆六千億円と見込まれる国債の現金償還にどのような対策を講ずるつもりですか。仮に電電公社の民営化による株売却によって六十一年度の国債償還ができたとしても、さらに翌年度以降に問題は先送りされるだけでありましょう。政府の反省をお伺いしたいのであります。
 同時に、赤字国債の償還期間を建設債と同様六十年間とする意向と言われますが、財政規律の点からも、従来の政府の言明からも償還期間を圧縮すべきと思いますが、あわせて伺います。
 今回の財政演説によれば、国債の大量償還、借りかえを円滑に進めるために、借換債の年度越え前倒し発行や短期国債の発行を昭和六十年度からできるよう制度を改めると述べておりますが、金融市場の動向に見合った柔軟な借換債発行を行うことは十分理解できることでありますが、一歩誤れば行政裁量による過度の乱用によって財政の紊乱を招くおそれさえあります。政府は国債管理の弾力化による乱用の歯どめを一体どのようにお考えですか。また、以上の点から現行の国債償還計画の内容を改める必要はありませんか。総理、大蔵大臣にお伺いをいたします。
 最後に、児童手当制度への取り組みについてお伺いいたします。
 我が国の将来を考えるとき、現在の児童を健全に育成し、その資質の向上を図ることは、日本のみならず全世界が将来にわたって活力にあふれて発展し続けるためには欠かせない問題であります。そのような観点から見ますと、我が国の社会保障制度の中で諸外国に対し最も見劣りするのが児童手当制度であります。我が国の児童手当は、「小さく産んで大きく育てる」との約束で昭和四十六年度に発足いたしましたが、その後の政府の取り扱いは、その約束とは異なり、我が国の社会保障制度の落ちこぼれ的存在となっているのが実態であります。その上、五十七年度から財政再建の名のもとに所得制限の強化が行われ、六十年度もそのまま凍結が続けられております。したがって、その犠牲となって支給を停止させられた児童の数は実に約一〇%を超え、十四万人以上いると思われております。
 政府はかねてから財政の負担になることを恐れて、「児童の養育費について、我が国はヨーロッ
パと違って親子の結びつきが強いから社会的に負担するといった考え方はとりにくい」として、全く消極的であります。親子の結びつきが強いからといって、国や社会が応分の責任を果たしていかなくてよいと言えるでございましょうか。長期的な展望に立って考えたときに、この児童手当制度が財政の犠牲になるとしたら、我が国の社会保障制度に大きな汚点を残すことになることを強く指摘しないわけにはまいりません。児童手当制度の充実に向けてどのように取り組んでいくか、総理並びに厚生大臣に御答弁をお願いいたします。
 以上、主として経済、財政について中曽根内閣の抱える問題点を指摘いたしましたが、国民の不安を除くためにも誠意ある回答を求めて、質疑を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(中曽根康弘君) 鈴木議員にお答えを申し上げます。
 まず、私の政治姿勢の問題でございますが、私は、戦後政治の総決算ということを申し上げておりますのは、二十一世紀に向かっての渡り廊下をつくろうと、そういう次の時代を目指して大きく申し上げておるのでございます。そのために現在を地固めする必要がある。そういう観点から行政改革、財政改革あるいは教育改革、あるいは国際国家日本を目指そうということを御提唱申し上げて、その実現に一歩一歩努力しておるところなのでございます。
 防衛費その他の問題で軍拡路線ではないかと言われますけれども、しかし国を守るということは政治の中でも非常に重要な部分であると思うのです。今の憲法を我々が守っていくためにも、また国民の生命財産を守っていくためにも、この国家を独立の完全な状態にしておかなければ守ることはできません。その一番基本的な重要な問題を無視して政治はあり得ないのであります。しかし、それは汗をかくつらいことであります。つらいことであるからといって逃避してはならないのであります。それが政治家の宿命であります。そういう意味におきまして、防衛問題も閑却しないで、しかしほかの社会福祉や教育その他とのバランスをとりながら、国民の皆様方の御理解を得つつ調和ある政策を実行しよう、こういうことで非核三原則あるいは専守防衛、そのほかの国民の皆様方の御共感をいただいておる諸原則を堅持しつつ、必要最小限の防衛費を計上し、また御協力もいただいている、このように御理解願いたいと思うのであります。
 政治倫理の問題につきましては、私も新たなる決意を持って力強くこの問題を解決すべく努力してまいりたいと思っております。民主政治の基本は国民の信頼にございまして、国民の信頼はやはり政治の道徳性にあると思っております。そのためにも、個人としても政党といたしましても、この道徳性を常に向上させるように反省もし、切磋琢磨もしていかなければならないと思います。そういう意味におきまして、一方においては個人の精神面における我々の反省、それと同時に制度としての問題もございまして、国会で政治倫理協議会を中心に御論議を願い、あるいは行為規範をつくり、あるいは審査会をつくろうと、こういうことで各党とお話を願っておるところでございまして、これらの問題が速やかに結論を得られるように我が党としても努力してまいりたいと思っております。
 安全保障の基本原則に関する御質問をいただきましたが、核兵器を廃絶するということは日本全国民の悲願であると思います。広島、長崎のこの悲痛な体験を受けた日本国民は、世界のどの国民にも増して核兵器を廃絶しなければならぬという強い熱願と意思を持っていると思います。政府はこの国民の強い熱望にこたえて、誠実に一歩一歩その道に向かって進んでいかなければならないと確信しております。
 しかし、それを実現していく方法が問題なのであります。私たちは、やはり現在の国際情勢を見ておりますれば、アメリカとソ連がテーブルに着いて、核兵器をやめていく話し合いをまず始めさせることが大事だと。なぜ話し合いができないか、なぜ対立状態が続いているかということを科学的に分析してみますと、やはり現在は、戦争を起こさせないために力による均衡と、それによる抑止によって戦争は起こらないのであると、こう我々は認識しておるわけです。したがって、その現実の上に立って、理想を持ちながら一歩一歩現実的、具体的政策を積み重ねつつ核兵器廃絶に向かっていく、その端緒は米ソ会談を実現させる、こういうことで今まで努力してまいったのであります。
 それと同時に、この核兵器を廃絶し、戦争を起こさせないようにするということは世界的関心事であって、世界的視野でこれはとらえなければもはやできないのであります。一国だけの努力でできるものではないし、一国の独善的発想によってまたできるものではありません。世界の各国民が現実的に科学的にそうだと思われるような方策を提示しなければ現実的にはできない。特にまた日本の場合におきましては、この核兵器の問題がアジアや日本の犠牲においてなされてはならないという大きな政治的課題もあるわけであります。そういう考えに立ちまして現実的な方策を講じ、また我が国みずからも必要最小限の防衛力を全うし、アメリカと提携することによって日本列島を中心に戦争を起こさせないような措置もまた講じて、責任も果たしているゆえんであります。こういう考えに立ちまして、今後とも防衛政策を推進してまいるつもりであります。
 国際経済が今大きな変革期にあるという御指摘は私も同感でございます。そして、最近の模様は、アメリカ経済が牽引力になりまして世界経済が回復しつつあるということも御指摘のとおりであると思いますが、しかし世界的景気の回復には、アメリカ経済だけの力に頼っているというものでもありません。石油危機を二度も経験してしばらく停滞しておりました世界に、やや時間的経過において在庫も少なくなったりいたしまして、そして自立反転の力がようやく芽生えてきたと、日本もそういう状況で日本独自の回復力も出てきた、そういうふうに考えます。
 現に、設備投資あるいは消費の増大の中には、輸出の関係もありますけれども、輸出の関係でない面もまた多々出てきておるのであります。それと同時に、発展途上国の力がようやく回復しつつあるということも顕著でございますし、新しい科学技術の開発、特にエレクトロニクスの面において、これは日本において特に顕著であり、アメリカにおいても顕著でございますが、新しい需要が起きつつある、新しい経済の分野が開かれつつあ
る、こういう面もあると思うのであります。
 これらの問題を総合的に考えつつ、我々は今後物価の安定をあくまで堅持しつつ、民間活導あるいはそのほかの諸般の政策を行いまして、景気の回復に努め、それと同時に行政改革の政策を推進して、小さな政府、国民に負担をかけない安上がりの政府という方向に努力してまいりたいと思いますし、何といっても経済は拡大発展が我々の目標でございます。日本の場合は貿易国家であり、貿易立国の国でありますから、何としても自由経済、自由貿易が第一義でありまして、保護主義に対する徹底的な闘いと申しますか、抑制ということを、我々は終始熱心に各国を引きずり込んで努力していかなければならぬ立場にあるのでありまして、そういう点についても努力してまいります。そして経済社会の中長期的な展望、それに対する基盤の醸成という長期的視野も持ちつつ努力してまいりたいと思っておるのでございます。
 財政運営につきましては、何といっても高齢化、国際化あるいは高度情報社会という新しい状態が出てまいりまして、この老人問題、高齢化問題とというものが最大の我々の大きな課題に今なりつつあります。財政的負担の大きな要因の中にもこの高齢化の問題があるのであります。しかし長寿ということはおめでたいことでございまして、大いに歓迎すべきことであるのであります。しかし、長生きするということが実は目的そのものだけではない。長生きした生活がどうであるか、喜びがあるかどうか、生きがいがあるかどうかということが政治の大きな目標なので、何も八十、九十に生きても悲しい生活であったらそれは決して喜ぶべき現象ではない。
 そういう意味におきまして、この長生きに伴う生きがいの問題という問題が我々の大きな課題に登場してきて、このために財政的にも非常に厳しい状態が出てきていることも否定できない。しかし、これに勇敢に取り組んでまいりまして、今まで経験しなかったような未到社会に向かって、日本が独自の解決策をつくり上げて、在宅福祉等を中心にする新しい体系を創造していくということは、政治にとってまたやりがいのあることでもあります。そういう意味におきまして、今後とも努力してまいりたいと思います。今の状態では財政が積極的役割を大きく演ずることはできません。しかし、二十一世紀を見据えまして、制度全体の長期的な安定、あるいは世代間の公平、それから将来におけるそのような生きる喜びというものを中心にした質的な改革というものは今後も考えていかなければならないと思っております。
 経済摩擦の問題につきましては、最近の数字によりますと、一年間で大体日本の貿易の黒字が経常で三百五十億ドルぐらいにもなりそうであります。しかし、長期資本収支においては約五百億ドル近くが海外に流出しておる。こういうような状況で、この事態は異常であると考えざるを得ません。しかし、これをいかに正常な状態に復元していくかということは急にはできない。外国の協力も必要であり、また自分でやることもなければなりません。
 そういう意味におきまして、私はレーガン大統領とも会い、アメリカのやること、日本のやること、今後世界経済をどういうふうにしてやっていくかという基本的な話し合いを実は年初にやったのであります。それを年初に約束しておくことが、これからの経済運営についてお互いを信頼しながらやらなければなりませんから、大事なことなので、特に強調した点は、いわゆるソフトランディングをやってくださいと、ニクソン・ショックのようなことを起こさないようにしてもらいたい、それから課徴金のような保護主義と徹底的に闘ってもらいたい。実は去年の秋のアメリカの国会で通商法の改正がありまして、いろいろな問題で大統領は授権されまして、大統領の独断で何でもできるように法律が改正されてしまっておる。したがって、この日本とアメリカとの輸出状況、超過状況を見て議会からの圧力が来ると大統領は発動せざるを得ぬという立場にもあるのであります。発動されては困るという場面が日本に出てくるかもしれぬ、それを実は考えておりまして、我々みずからの努力もあるし、保護主義に対する徹底的闘いをアメリカもやってもらいたい、やりましょうと、お互いにやりましょうと。そういう約束をやってまいったのでございまして、今後も真剣に努力してまいります。
 また、一面におきましては、最近対米の資本投資が盛んになってきまして、各州の知事さんなんかも日本へ相当来て工場の誘致に努めておりますが、これが盛んに今動き出しました。これをさらに促進してまいりたい、そして均衡と公正競争ということで努力してまいりたいと思っております。
 最近の経済情勢につきましては、物価の安定というものが何よりも心強いことであり、雇用面におきましてもやや安定的状態でありまして、この雇用と物価の問題に最大限に関心を持ちつつ、さらにこの景気拡大のばねを強くしていくように努力してまいりたいと思います。具体的な問題は経済大臣から御答弁をお願いいたしたいと思いますが、昭和六十年度におきましても名目で六・一%、実質で四・六%の成長は確保する考え方でおります。
 減税につきましては、御熱心な御主張をお聞きしましたが、昨年度、初年度一兆千八百億円の減税をやりまして、政府税調におきましても、この厳しい状態ではことしはその余地がないという御指摘もありまして、まことに残念でございますが、ことしはできない状態にあります。
 次に、市場開放の問題につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、現実問題として、対米関係におきましては、対米関係だけではございませんけれども、閣僚協議会をまず設置いたしまして、国内調整は河本国務大臣に主宰をお願いをしております。それと同時に、民間の諮問委員会を今度つくりまして、その諮問委員会の特別参考人に外国人を今度は入れました。これはアメリカ人、それからタイの方でしたか、それからヨーロッパのオランダの方であります。これらはクレームは全部言ってきてくれと、その方々が窓口になってすべてクレームを持ち込んでもらって、それを一つ一つ各省が点検しつつ、どちらに理があるか、直すべきものは直させる、そして透明性、それから日本の態度が公正であるということを現に見てもらおう、これが私のねらいでございます。
 今まで我々がいかに努力しても、いわゆるカルチャーラルギャップとかソーシャルギャップという面から、善意で一生懸命やっておっても、相手方が誤解しておることもあるし、日本の努力が
よくわからない面もあるのであります。そういうような点を払拭するために今回そういうことをやりましたし、また情勢によっては、この民間の諮問委員会は海外へ出てもらって公聴会のようなこともやって、現にいろいろ苦情も聞き、また改善策も考えていただくということも考えておるのでございます。
 さらに、所得分配の問題でございますが、我が国の所得分配構造につきましては、所得の平準化は外国よりも非常に進んでいると考えております。政府といたしましては、今後とも皆様方が中産階層意識を堅持して、それを拡大さしていくように所得分配機能も考慮してまいりたいと思います。
 ちなみに、政府の資料によりますと、所得最上層と最下層間の推移を見ますと昭和三十年においては四・一倍でありましたが、五十八年には二・五倍というふうに縮小しております。これを可処分所得で見ますと、五十八年においては月間で二十万九千円と五十一万六千円ぐらいになって、やはり二・五倍ぐらいになっております。
 一つの例として私記憶しておりますのは、例えば水兵さんの給料を見てみますと、海上自衛隊の給料とアメリカの海軍の給料を見ますと、大体曹長ぐらいまでは日本の方が高いのです。しかし、将官になるとアメリカの方が三倍ぐらい高くなっておる。この状態を見ましても、やはり日本の方がはるかに平準化しているということが言えるのではないかと考えております。
 次に、赤字国債の減額の問題でございますが、一兆円減額を赤字国債あるいは建設国債含めて実行いたしました。これは六十五年度の赤字国債依存体質脱却という目標に向かって実は精いっぱいの努力をしておるわけでございまして、この脱却の目標をあくまで達成するように努力してまいります。今回、電電公社や専売公社の可処分株式を国債整理基金特別会計に繰り入れましてそれに備えたというのも、その一歩前進であると考えておるのであります。
 予算編成につきましては、聖域がなくこれを実行しておりますが、しかしゼロシーリングあるいはマイナスシーリングの例外規定、枠外、それは前から重点的につくっております。一つは国際関係でありまして、ODAとかあるいは防衛関係がそうです。第二番目がエネルギー備蓄の関係であります。第三番目が人件費の関係です。第四番目が年金の関係です。これらはスライドアップしていくという関係になっております。そういうわけで、ゼロあるいはマイナスの例外にしてきております。そういうことはやっておりますけれども、それを行いつつもできるだけ全面的にバランスのとれるように、国民の公平感を維持するように実は努力してまいってきておりまして、今後もその努力をしてまいろうと思っておるところであります。
 特定財源の問題につきましては、これは特定される公共サービスの受益と負担との間にかなり密接な対応関係が確認される場合にはやはり一定の合理性を持ち得る、しかしそれが資源の適正な配分をゆがめたり、財政の硬直化を招くことがないように今後も十分注意してまいりたいと思っております。やはり財政には資源配分機能というものがございますから、これが硬直性を持つことのないように今後も十分配慮してまいるということであります。
 特別会計の問題については、御指摘の特別会計の中の公庫、公団、事業団の予算につきましても、臨調答申の線に沿いまして、経済状態の変化に相応してそれぞれ事業目的等に照らして事業の運営状況を検討しながら厳しく見直しをやっております。今後とも見直しを厳重に行ってまいるつもりであり、独立採算制に向かってこれを激励せよというお考えは私も全く賛成でございます。
 税負担の問題でございますが、前から申し上げますように、シャウプ税制以来この戦後約四十年の間に、税制構造自体に相当なひずみとか不公正、国民の不満感というものが非常に醸成されてきているように思うのです。したがって、それらの国民のお気持ちをわきまえて、公平、公正、簡素、選択という感覚に立ちまして国民の不満を解消して、その御期待にこたえるような税制改正、抜本的改正というものをいよいよ課題として検討する段階に至った、そういうふうに考えておるところでございます。その内容をどうするかということは、それは政府税調や党税調等でこれから検討していただくので、政府としては白紙の状態であると申し上げるのでございます。
 次に、総合累進課税原則の強化のお話でございますが、現在の所得税制におきましては、各種の所得の性格に応じて、あるいは政策的要請を踏まえまして課税方式がおのおのとられておるわけであります。
 勤労所得に関する御指摘がございましたが、これらにつきましても、つとにいろいろ御不満を聞いておるところであり、今後の税制の改正につきましては検討すべき一つの大きな問題点ではないかと考えております。
 グリーンカード制につきましては、これは各層の理解と受け入れ態勢が必ずしも心理的に国民の間に整っていない、そうして、そういうような状態でこれを強行するということは必ずしもいい結果を生まないということから、国会でも御措置をお願いしたところでございます。こういう観点から、六十年度税制改正におきましては一たん廃止するという措置を講ずることにいたしました。しかし、非課税貯蓄に関する本人確認の厳正な執行等々につきましては、郵政当局も非常な決意を持って諸般の対策を講じておるところでありまして、我々もこの政策を厳正に推進する考えでおります。
 次に、特例公債の減額に関する定率の問題でございますが、六十年度におきましては、やむを得ず定率繰り入れを停止した次第でございます。しかし、電電株式会社の株式あるいはそのほかの売却可能なものにつきましては、国債整理基金特別会計に帰属させ償還財源として充てるようにして、また側面からも充実さしておるわけであります。
 次に、公債の償還期間の問題でございますが、特例公債の償還財源として借換債を発行する場合の具体的な償還方法については昨年国会で御審議をいただきました。その結果、現下の厳しい財政事情のもとで、六十五年度までには特例公債依存体質から脱却することに全力を傾けなければならないことを考えると、特例公債の償還ルールについては、当面、四条公債と同様のいわゆる六十年償還ルールによることが現実的選択として、まことにやむを得ない選択として採用せざるを得ないのであります。しかし、特例公債につきましても
できるだけ残高を速やかに減少させるように今後の財政事情の中でできるだけ努力して早期償還に努めてまいるつもりでおります。
 借換債の問題でございますが、今回の制度改正は既発債のみに限ったものであります。借換債の前倒し発行につきましては、翌年度の償還のため、それから予算をもって国会の議決を経た金額の限度内であるということ等により、また年度内の短期の借換債につきましても、従来の借換債と同様に、その発行額は当該年度の償還額の範囲内に限られるという内容にする、こういうような歯どめをつくっておりますので、御指摘のような懸念はないと考えております。
 償還計画の問題でございますが、今回の改正は既発債の借りかえに係るものであり、新たな債務残高の増加をもたらす新規財源債については従来と同様の取り扱いをしておるわけであります。したがって、新規財源債に係る国債償還計画表を改める考えはございません。
 児童手当に対する御質問がございましたが、昨年十二月の中央児童福祉審議会の意見具申を参考として今回見直しを行い、所要の改正法案を提出する予定でございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(金子一平君) 鈴木議員にお答え申し上げます。
 今日の財政の現状が、大幅な所得税の減税や公共事業費の大盤振る舞いのできない状況にありますることは御承知のとおりでございますが、そうした中で、財政面では、一般公共事業の事業費について前年度を上回る水準を確保したり、また税制面でも、五十九年度に創設しました投資促進税制にあわせまして、新たに基盤技術の研究開発促進や中小企業の技術基盤強化等の措置を講ずることとしております。さらに、民間活力が最大限に発揮されるような環境を整備することが最も大切なことでございますので、このために必要な各種規制の緩和の措置を強力に推進することといたしておりまするから、今後の景気拡大は着実に進行するものと考えております。
 特に、最近内需中心の設備投資が活発になりまして、輸出関連のものから素材産業にまで波及し、また製造業から非製造業やサービス部門にも広がりまして、しかもこの傾向は大企業から中小企業にまで及んでおるのが現実の姿でございます。稼働率の上昇によって、最近企業収益が著しく改善され、企業が景気の先行きに自信を深めておりまするが、こうした状況を背景にいたしまして、六十年度の雇用者所得は、前年に比べ一人当たり五%、全体で六・八%程度の増が見込まれることによりまして個人消費の先行きにも明るさが増しまして、しかも物価が非常に安定しておりますので、こうした状況を総合勘案いたしますると、実質成長率四・六%の実現は確実なものと私どもは考えておる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問でございますが、まず最初は、六十年度予算につきまして、支出の先送りあるいは後年度負担への転嫁等々の御批判を交えた御質問でございます。
 六十年度予算は、行財政改革を強力に推進するという従来からの方針に立ちまして、歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本として編成したものでございます。したがって、すべての経費につきまして、それぞれ制度、施策の見直しを行って、また、極めて限られた財源事情のもとで、さまざまの工夫を行いながらぎりぎりの努力を払ってきたところでございます。そこに、いわゆる一般会計とまた特別会計の財源の調整でございますとか、あるいはまた新たに特別会計を設けますとか、あるいはまた、お願いを申し上げまして特例措置を延長いたしますとか、そうしたもろもろの工夫を行って編成したものであります。その中に、国、地方との負担区分等々にも工夫を行ってきたところであります。
 それから税制の問題で、鈴木議員は、いわゆる勤労所得と資産所得の問題を比較しながらの御質問でありました。
 現行所得税制におきましては、各種所得の性格に即し、あるいは政策的な要請を踏まえて各種所得に応じた課税方式がとられてきております。したがって、我が国の税制につきましては、今御指摘のような議論も含めまして、社会経済情勢の変化によりさまざまの問題が指摘されるようになってきております。そこで、国民各層における広範な議論を踏まえながら、幅広い視点から税制全般にわたる改革をこれからの課題として問題意識を持って対応しようということを申し上げておるわけでございます。したがって、今のような御議論も、所得税制のあり方についての税制全般にわたる検討の中で議論が重ねられていくべき課題だというふうに私も認識をいたしております。
 それからいわゆるグリーンカード制の問題でありますが、これは一つには、各層の理解と受け入れ態勢が十分整っているとは必ずしも言いがたかったことと、そして二つ目には、法的安定性や税制に対する国民の信頼感を確保する見地から、このままで再延長ということほ適当でないというふうにこれは税調等でも指摘されております。そうした観点から一たん廃止するという措置を講ずることにしたわけでございます。
 それからその次は、国債管理政策全般についての御意見を交えた御質問でございました。赤字国債の償還期限、この問題でございます。
 特例公債の償還財源として借換債を発行する場合の具体的な償還方法につきましては、去年一月の財政審の報告を受けまして、国会での御議論をも踏まえ、幅広い角度からの検討を行いますとともに、昨年秋からの財政審においてさらに検討が重ねられてまいりました。その結果、六十年度以降における特例国債の償還ルールにつきましては、当面、御指摘がありました四条公債と同様のいわゆる六十年償還ルールにすることとしたわけであります。
 特例公債は、本来、可能な限り早く残高を減少させるべき性格のものであります。したがって、原理的にある一定年限で償還すべきとする方式を決めることは非常に難しい面がございます。したがいまして、私どもといたしましては、より短期の一定期間で償還するルールを仮に設定をしたといたしますならば、そのことを下敷きに国債費の増加ということが一面に出てくるわけでございますので、それはさらに財政事情を厳しいものとするということになりますから、やはり現実的な選択としてやむを得ないものであったというふうに御理解を賜りたいと思います。
 いずれにいたしましても、今、鈴木議員が御指摘なさったとおりであります。百三十三兆、これは特例公債、四条公債含めての残高でございますが、これは仮に仮定計算として七%の金利を付し、そして十年ごとに六分の一の償還をして六十年掛けましたら、おっしゃいますおよそ四百三、四十兆ということに、後世代への負担が残るということは事実でございます。それだけに、これが残高の縮小というものも六十五年度以降私どもとしては最も大きな課題として取り組まなければならないことであると考えております。
 それから借換債の年度越え前倒し発行等についての御意見を交えた御質問でございます。
 六十年度以降における国債の大量の償還、借りかえに円滑に対応するために、財政審にお諮りいたした上で、借換債についての短期債の発行を含めて、金融情勢に応じて弾力的にその発行を行うことができるよう所要の制度改正をお願いすることといたしております。今後とも適切な国債管理政策の運営に努めてまいりたいと考えております。
 御指摘の点につきましては、まず借換債の年度越え前倒し発行の問題は、翌年度における国債の償還のため、予算をもって国会の議決を経た金額を限度とするという歯どめを一つ設けます。また、年度内の短期の借換債についても、従来の借換債と同様、その発行額が当該年度の国債償還額の範囲内に限られるという内在する歯どめというものがございます。
 それから定率繰り入れ停止の問題についてでございます。
 今回の制度改正は、既発債の償還のための借換債の発行を弾力的に行うこととするものでございます。したがって、新たな債務残高の増加をもたらす新規財源債につきましては従来と同様の取り扱いを行います。したがって、新規財源債について提出することとされております償還計画表を改めることは考えておりません。満期の到来します国債の償還を円滑に行うためには、金融情勢に応じて適切な償還年限の借換債を発行する必要があると申し上げたわけでございますが、借換債の発行については、国債管理政策上、機動的、弾力的に行う必要がありますので、これはあらかじめ償還計画表を提出するということにはなじまないというふうに考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(増岡博之君) 児童手当制度問題についてお答え申し上げます。
 我が国では、高齢化社会が急速に到来しつつある中で児童数が減少傾向にありますことは御承知のとおりでございます。したがって、児童手当制度は、次代を担う児童の健全育成に社会全体が関心を持ち、その養育に関与するという趣旨においても重要な意味を持つ制度であると考えております。
 現行児童手当制度につきましては、臨調並びに行革審から制度の見直しを行うよう要請されております。さらに、昨年十二月には中央児童福祉審議会から「児童手当制度の当面の改革方策について」の意見具申をいただいたところであり、これを参考として制度を抜本的に見直し、所要の改革法案を今国会に提出する方針で鋭意努力しているところであります。
 以上でございます。(拍手)
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#9
○議長(木村睦男君) 立木洋君。
   〔立木洋君登壇、拍手〕
#10
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、総理に質問をいたします。
 今年は広島、長崎の被爆四十周年であります。この四十年間、日本国民の強い願いにもかかわらず核兵器は増大の一途をたどり、核戦争による人類絶滅の危険すら強まってまいったのであります。一たん核戦争が起これば、人類の生活と文明そのものが崩壊するのであります。核戦争の阻止と核兵器の脅威から人類を解放する核兵器の完全廃絶は、今日、すべての政治家にとって最重要の課題であります。
 私は、今日の核兵器問題の重要性にかんがみ、ほかの重要問題は今後予算委員会その他での同僚議員の質問に譲ることといたしまして、この問題に絞って質問をすることといたします。
 総理は、昨日、我が党の不破委員長の質問に対して、自分の方が核兵器廃絶に熱意を持っている、宮本議長はクレムリンに行って核兵器を廃絶しろと言ったかどうか知らないが、ソ連は一方的に核兵器を廃絶するなどと言わなかった、恐らく問題は棚上げになったのだろう、違いますか、などと述べました。あなたの議論は全く成り立たないのであります。一体、あなたの言う核兵器廃絶とは、特定の国の一方的な核兵器の廃絶ということなのでしょうか。もしそうであるなら、あなたがアメリカに行ってレーガン大統領に、アメリカは核兵器を一方的に廃絶せよと言ってごらんになったらどうでしょうか。レーガン大統領がオーケーと言われるでしょうか。
 私は、総理の答弁を聞き、総理が核兵器廃絶について初歩的な理解すら持っていないのではないか、疑わざるを得ないのであります。このような総理の主張は全くの空想的な議論であります。すべての核保有国が同時に核兵器を廃棄するという方向以外に核兵器の廃絶の道がないことは明白ではありませんか。その点、総理はどうお考えでしょうか。明確な答弁を求めるものであります。
 日ソ両共産党の会談について言いますと、私はその当事者であります。私は昨年末、宮本議長とともにソ連を訪問いたしました。そして、アメリカと並ぶ核保有大国の国家元首であり、ソ連共産党の最高責任者であるチェルネンコ書記長との核兵器問題に関する会談に参加をし、また、その共同声明の作成に直接関与したのであります。私はそうした当事者の一人として事実を明確に述べますから、総理はよく聞いて、冷静に私の質問に答えていただきたいのであります。
 日ソ両党首脳会談の共同声明は、核兵器を不法なものと宣言する必要性を確認するとともに、核戦争阻止、核兵器の全面禁止、廃絶を実現することを「人類にとって死活的に重要な緊急の課題」、「世界政治全体における中心課題」とみなすことを厳粛に声明をいたしました。そしてそれを国際連合でも、二国間交渉やその他の国際的会議でも第一義的に提起し、その実現のために一貫して奮闘する決意を表明したのであります。その努力の具体的な目標として、核兵器の開発、製造、実験、保有、配備、使用の全面禁止を内容とする核兵器全面禁止、廃絶協定の速やかな締結とその実現を
明確にうたっているわけであります。
 総理、この核兵器の全面禁止、廃絶協定をすべての核保有国が参加をして締結し、それに基づいて同時的に廃絶する以外に核兵器廃絶の具体的な道があるとあなたは言われるのでしょうか。まさにこれこそが核兵器を世界からなくすための最も具体的な目標ではありませんか。あなたは核兵器の廃絶に熱心などと言われますが、では、これ以外にどんな目標を具体的に持っておいでになるのでしょうか、はっきりと言っていただきたいのであります。
 どんな政府、政党と核兵器保有国の政権党とこのような共同声明を結んだ例がないのでありますが、ソ連共産党はアメリカと並ぶ核保有大国、ソ連の政権党としてこの目標に向かって努力することをはっきりと表明したのであります。これほど明確な日ソ両共産党会談の合意を無視して、廃絶問題を棚上げしたなどという総理の見解は全く冷静さを欠いた中傷のたぐいではありませんか。核兵器廃絶の問題とはそもそも何か、その根本すらわきまえない見方と言われても仕方がないのではないでしょうか。
 日ソ両共産党共同声明が核兵器廃絶問題で実効を持つものであったことは、両党会談の三週間後に行われたジュネーブでの米ソ外相会談の共同声明が、米ソ交渉の目的として「核兵器の完全廃絶」を明記したことでも明白であります。米ソ交渉の目的に核兵器廃絶が掲げられたのは、これが歴史上初めてであります。この事実を総理はお認めになりますか。
 総理、あなたが核兵器廃絶に熱心かどうかは行動で試されるのであります。あなたは核兵器廃絶の課題をこれまで国際的にまともに提起したことが一度でもおありになるのでしょうか。あったなら根拠を挙げて示していただきたい。施政方針演説にも、核兵器完全廃絶を緊急のものとして、その実現を目指すような具体的なイニシアチブの提起など全くないではありませんか。あなたは、我が党の主張を「空想的核廃絶論」などと言い、あなたの主張が「現実的」「科学的」核廃絶論などと昨日あなたは述べました。しかし、核兵器廃絶の課題をまともに一度も提起をせず、どうして科学的などと言えるでしょうか。核兵器廃絶の課題が課題として明確に位置づけられてこそ、初めて具体化や方法が明確になるということは国際政治のイロハではありませんか。あなたにはその位置づけすらないのであります。
 次に、米ソ交渉に関連して質問をいたします。
 総理は、米ソがまずテーブルに着かなければならないと強調しました。しかし、何を目的として交渉するかが大前提でなければなりません。言うまでもなく、交渉そのものはこれまで無数に行われてきたのであります。これらの交渉は、しかし核兵器の廃絶を目的とせず、総理が述べたような均衡と抑止の立場に立って行われてきたものであります。この立場に立てば、核兵器の存在を前提にし、相手に対して劣勢になるまいとして結局核兵器の増大に向かわざるを得ないのは当然であります。
 実際に、さまざまな交渉にもかかわらず、世界の核兵器の数は五万発にも達し、三十年間を見れば実に二十五倍にふえたというのが歴然たる事実なのであります。この事実をあなたは否定できるでしょうか。米ソがただ交渉のテーブルに着けばよいというものでないことは明白であります。それともあなたは、従来の経験とはかかわりなく、ともかく交渉が行われさえすればよい、これまでの交渉の繰り返しでよいと言われるのでしょうか。それで核兵器の廃絶ができるとでも思っておいでになるのでしょうか。
 これまでの交渉が何ら成功せず、核兵器が増大の一路をたどったのは、核兵器廃絶を目標にしなかったからであります。これまでの米ソの交渉で核兵器の廃絶が目標に掲げられた例は一つもありません。それをはっきりと目標に掲げない限り、均衡と抑止に基づく交渉では核兵器廃絶は実現できず、むしろその逆になるというのがこの戦後四十年間の明白な教訓なのであります。この過ちを繰り返さず、廃絶を明確に目標に掲げて、そのために努力することこそ、これこそが核軍拡競争の悪循環からの唯一の出口なのであります。総理はこの点どのようにお考えになりますか。その点で、今度の米ソ交渉の最大の意義は、何よりも初めて核兵器の廃絶を目標に掲げたことであります。総理はこの点をお認めになるかどうかお聞きしたいのであります。
 米ソ交渉の目的に核兵器の廃絶が掲げられたのは、これまでの抑止と均衡の立場の交渉が全く行き詰まったからにほかなりません。一九七〇年代までの交渉は、何とか軍備管理的な条約や協定としてまとまったこともあったとはいえ、実際核軍拡をストップさせたり、核兵器廃絶に向かうというようなものでは全くありませんでした。一九八〇年代に入ってからの戦略兵器削減交渉や欧州中距離核戦力交渉は、何らの合意すら見出すことがなく決裂したのであります。従来型の交渉には何の出口もないということがこうした経過からも明白なのであります。総理はこのことをお認めになるでしょうか。
 ここであなたの抑止と均衡の立場についてさらにお尋ねをします。
 核抑止力論の立場から西側の力を結集したことが今度の米ソ交渉を可能にしたという総理の抑止と均衡に基づく議論は明らかに誤りであります。米ソ戦略兵器制限交渉のアメリカ代表を務めたポール・ウオンキ氏が何と言っていますか。彼は、「アメリカ側の対応には、実効ある核軍縮交渉を求める広範な分野のアメリカ国民世論の働きかけが影響している」とはっきり述べているのであります。実際、力の立場一本やりのレーガン大統領の姿勢は、西欧諸国やアメリカの反核運動の高揚を招き、またNATOの同盟国などの動揺を呼び起こしたではありませんか。
 昨年、日本で行われた原水爆禁止世界大会は、三十六カ国の代表も参加をして東京宣言が採択をされました。その宣言の中で、「核戦争阻止と核兵器全面禁止は、いまや、全人類の死活にかかわる最も重要かつ緊急の課題となっている」と宣言をいたしました。日ソ両共産党会談は昨年一年間に都合四回行われました。私自身その全過程に参加をしましたが、そこでは従来型の交渉からの脱却の方向が真剣に探求されたのであります。その結果、両共産党の共同声明では、さきに述べたようは、核兵器全面禁止、廃絶が緊急、重要な中心課題であることを確認したのであります。
 このような一連の事態が今度の米ソ交渉の背景にあることは明らかであります。それだからこそ核兵器の完全廃絶が交渉の目的に掲げられたので
はありませんか。総理はこのことをお認めになるのかどうか、お尋ねをしたいのであります。
 レーガン大統領は、明日な核抑止力論者、核兵器先制使用の可能性さえ否定をしない核兵器必要論者であります。この点は総理、あなたも全く同じ立場のようでありますが、一般教書という公式の文書で「核兵器廃絶」を述べているという点では、あなたよりレーガン大統領の方がずっと進んでいるようであります。現にレーガン大統領は日本の国会演説で核兵器廃絶の夢を語っただけではなく、昨年一月の一般教書の中で、かつての言明とは全く違って、「核戦争に勝利者はあり得ず」「核兵器はすっかりなくした方がよい」と述べるなど、しばしば核兵器廃絶について語っているのであります。総理、あなたはこの発言をどう考えられるでしょうか。真剣に考えているものだとお思いになるでしょうか、それとも単なるゼスチャー、世論を欺くレトリックにすぎないとお考えでしょうか、明確にお答えをいただぎたいのであります。
 レーガン大統領自身、米ソ共同声明発表後の記者会見で、核兵器をゼロにするのが一番検証しやすいと言っております。このレーガンの発言にあなたは賛成なさるかどうかお答えをいただきたい。世界じゅうで核兵器をゼロにすれば、核兵器に関してはこれが最も平等であり、またこれ以外に全当事者が納得する平等があり得ないことは理の当然であります。
 今、核兵器廃絶を米ソ交渉の目標にするという米ソ共同声明が既にあります。またさらに、中国も核兵器全面禁止を国連の場で明確に公約しているのであります。抑止と均衡などという核軍拡の論理を捨てて世界をあなたが多少なりともまともに見るならば、核兵器全面禁止協定を締結する政治的な条件が今はっきりと生まれているということを明日に理解できるはずであります。この条件を生み出す上で応分の寄与を行ってきたと確信する我が党は、このことを声を大にして私は強調したいのであります。総理はこのような条件が生まれていることをどのようにお考えになるのか、はっきりとさしていただきたいのであります。
 あなたは、これまで、国際的に核兵器の廃絶に関する努力を全く行ってきませんでした。施政方針演説も、また昨日の答弁も、抑止と均衡という核軍拡路線、核兵器は必要で西側はそれを強めなければならないという主張、これへの固執を示すものでしかありませんでした。こういう立場だからこそ、ニュージーランド訪問などでアメリカの艦船を受け入れよと総理が説いたと伝えられれば、総理がどのように否定しようともたれもが真実と考えるのです。また、非核三原則を守るというあなたの約束も国民の大部分が疑うのは当然ではありませんか。
 総理は、アメリカのスターウオーズ構想に対して、それは核兵器の攻撃を防御するもので、結局は核兵器をなくすための一環だと述べて、完全な理解を示したということであります。ところが総理、よく考えていただきたい。これまでも攻撃する武器がつくられてそれに対して防御する武器が開発されれば、さらにそれをしのぐ攻撃用の武器がつくられるという悪循環を繰り返してきたのがこれまでの現実ではありませんか。あなたがどのように主張しようとも、あなたの論理は核抑止力論に基づく軍拡助長の論理以外の何物でもありません。
 核兵器の完全廃絶という米ソ交渉の目標を本当に達成させようというのであるならば、攻撃用の核兵器を廃絶するのですから、それを防御すると称する新兵器の研究開発も全く必要でないことは明白ではありませんか。この米ソ間の合意した核兵器の完全廃絶という交渉の目標を見失って抑止力論、均衡論、こうした立場に立つならば、これまでの歴史の事実が示しているように軍拡の泥沼に陥ることになるのであります。
 総理は、米ソ共同声明後の新たな情勢のもとで、核兵器完全廃絶との交渉の目標を実らせるためにも、新たな武器の開発を推進するスターウオーズ構想に対する理解や支持は直ちにやめるべきではありませんか。スターウオーズ構想に理解を示すことに力を注ぐのではなくて、米ソ交渉で核兵器廃絶へのめどが、せめて被爆四十周年のことしじゅうぐらいにははっきりするようにアメリカのレーガン大統領に訴えて、そのために努力をされたらいかがでしょうか。
 核兵器の廃絶の問題に関連して、最後に四点質問をいたします。
 一つは、これまで一九六二年以降、国連で核兵器不使用決議が繰り返し提案されたにもかかわらず、日本政府はただの一回も賛成をいたしておりません。その理由について、政府はこれまで一貫してその実効性がないということを問題にしてきたのであります。それならば政府自身がみずから実効性のある核不使用決議を提案しないのは一体なぜでしょうか、はっきりとしていただきたいのであります。
 さらに今日、国際政治に核兵器廃絶がはっきりと日程に上っているという状況のもとで、唯一の被爆国の政府として、国連の場において核兵器を不法と宣言し、核兵器完全禁止・廃絶の協定に関する決議を提案し、その実現に力を尽くすべきではありませんか、明確な答弁を求めるものであります。
 次に、「広島デー」の国際的世論についてであります。人類史上最初の原爆投下の日、八月六日を「広島デー」とし、核兵器廃絶のための国際的な共同行動の日にしようではないかという世論が国際的にも高まっているのであります。総理はこれをのようにお考えでしょうか、伺いたいのであります。
 もう一つは、国家補償に基づく被爆者援護法の制定についてであります。被爆四十周年のことしこそ、政府は、長期にわたって苦しんでおられる被爆者のことを考え、被爆者の久しい以前からの要求である国家補償に基づく被爆者援護法の制定に断固として踏み切るべきであります。原爆病院に必要な予算をふやすこととあわせて明確な見解を求めるものであります。
 総理、核兵器の廃絶は我が日本民族の悲願であり、世界の多くの人々の要求であります。今日、アフリカで飢餓に苦しむ一億五千万人以上の人々の状況を想起し、おくれた経済地域で幾多の問題を抱えている開発途上国のことを考えるとき、膨大な資金が核兵器に投じられているという事態を一掃するならば、世界経済についても大きな転換の道が切り開かれることは明白であります。ところが政府は、核抑止力論の立場に立って、アメリカの核の傘のもとで西側の結束をうたっているのでありますが、これこそ核つき日米運命共同体の実態であり、日米安保体制によるアメリカの核戦
力の補完という立場ではありませんか。
 これが軍事費の連続突出という来年度予算案の中にも典型的に示されているのであります。それは国民生活のあらゆる分野で、福祉切り捨て、勤労者の失業、中小企業の戦後最悪の倒産、農業の衰退、教育環境の荒廃、地方自治体の財政危機等々としてあらわれているのであります。しかもこの路線は日本を核戦争の危険に直結させるという点で、国民にとって致命的なものであります。
 日本共産党は、核戦争と核兵器に名実ともに反対するすべての勢力、すべての人々と手を結んで、この核を好む政府、好核政府にかえて非核の政府を実現するために奮闘する決意であります。これこそが国民の安全と幸福への道であり、また核兵器廃絶への道であることを力強く強調して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(中曽根康弘君) 立木議員にお答えをいたします。
 今、立木議員の御演説を拝聴いたしまして、どうも演説の中にわけのわからぬところがある。それは、米国を非難した点があると思うと、今度はレーガン大統領の声明を非常に賛美したり、あるいはジュネーブ声明がいいと言っておりながら、テーブルに着くのは悪いと言ったり、どうしてこういう部分的な、わけのわからぬことがあるのだろうかと考えてみますと、結局は核兵器を廃絶していくための具体的な方法、実効性のある方法論がないから、だから空想的廃絶論だと、そういうふうに私は申し上げるのであります。我々はそういう点については、具体的にテーブルに着いて、一歩一歩着実に、そうしてこの均衡をレベルダウンしながら最終的にはやめるところまで持っていけというので、実際やめさせる方法はこれ以外にはない、だから科学的廃絶論であると、そう私は申し上げているのであります。
 前から私申し上げておるように、核兵器というものは業の兵器である。これを一たん握った者は相手が握っている間は放せられない、相手がふやすのではないかと思ってまたこっちもふやす気持ちになる、この業の連続を断たなければいかぬと私は前から申し上げておりまして、核兵器廃絶を日本の国会の中でも早くから考えた一人です。これは十数年前に書いた「新しい保守の論理」という私の本をごらんになれば、明確にこのことは書いてあるのであります。政治家になりましてもそのことに心がけてきて、じゃ現実的にどうしてこれを実行できるかということを科学的に研究してみると、現になぜこういう状態が続いているかといえば、相手が持っているからこっちも対抗して持たなければ危ない、これで均衡して戦争が起きない、これが悲しい現実なのであります。
 したがって、このような悲しい抑止と均衡によって平和が保たれているという状態をできるだけ早く解消していくには何が大事か、抑止と均衡の力を下げていく以外にない。だんだん、だんだん下げていく。五万発を一万発にし、千発にし、二十発にし、三発にしていく、それでなくしていく。こういう具体的な方法以外に現実政治としてはあり得ないでしょう。現に力と抑止で世界の平和が維持されているということは、なぜジュネーブ会談が行われたかという背景を見ますと、これは我々の解釈でありますけれども、やはりソ連がパーシングIIをずっとヨーロッパに展開した、そこでヨーロッパの方は恐怖におののいた。そこでヨーロッパはやむを得ずNATOが集まって、いわゆるパーシングII……いやソ連のSS20です。それに対してヨーロッパのNATOの国々は、じゃあやむを得ずパーシングIIを展開して均衡を回復しようと。しかしそれだけではいけないから、ソ連が話し合いに応ずるならば、このパーシングIIの展開や地上、グラウンドミサイルの展開も考えましょうと、そういう提起を一九七九年にいわゆるダブルトラッキングデシジョンというので決めたわけです。
 ところが、ソ連はそれに応じない。そこでやむを得ずパーシングIIやあるいはグラウンドミサイルを展開したわけです。そうしたらソ連は、相当平和攻勢でそれを妨害したけれども、ついにやった。やって、現にそういう力の均衡が出てきて、そうしてこれは危ないと思ってきたから、今度はソ連の方は、じゃあジュネーブで話し合おうと、こういうふうになったのではないか。もしパーシングIIの展開やグラウンドミサイル、クルージングミサイルの展開がなかったらジュネーブ会談が果たして行われたであろうか。
 こういうことを考えてみると、やはりソ連もアメリカも相手を警戒しながらじっと現実政治の動きを見ておる。しかし両方とも核兵器をやめたいという気分は心の中にあると思うんです、なぜなれば業の兵器だから。核兵器を持っておるあの超大国の政治家ぐらい苦しい政治家はないです。だれもボタンを押そうという人はいないでしょう、押したいという人は。しかし、持たざるを得ぬという立場にありながら、何とかこれをしなければならぬと今でも私は思っておると思うんですよ。だから、それを現実的に下げる方向に持っていってあげる環境をつくっていきながら、一歩一歩なくしていくというのが我々の考えであって、だから科学的な廃棄論であると、こう申し上げておるのであります。
 立木さんが宮本議長と一緒にモスクワへ行っていろいろお話しになったことを私は新聞で読んで、その労苦を多としておる一人であります。行かないよりは行った方がはるかにいいと、こう私は思っておる。それで、いろいろな今までの経過を前から新聞で勉強しているところによれば、やはり核軍縮に関して、核軍拡についてどっちが責任があるか。アメリカに責任があるのかソ連に責任があるのか、その辺よくわかりませんが、あなた方は恐らく両方責任があるというふうにおっしゃっていたんでしょう。ソ連の方は、いやおれの方は責任がないと、アメリカの責任だという点でお話が合わなかったのではないかと推察しておりますが、これは違いますかね。私はそういうふうに推察している。
 恐らく宮本さんのことでありまするから、そういうことは頭に置きながらクレムリンにおいでになったけれども、しかしまあ話し合いをして、テーブルに着くことが大事ですから、ですからクレムリンへ行ってテーブルに着いて、そうしてそういう問題は棚上げにして、そして廃絶ということだけでは一致しようと、そういうお話でお帰りになったのではないかと私は思っておるんです。それは本当であるか、私わかりません。しかし、これでもわかるとおり、ともかく両方が話し合いのテーブルに着かなければだめだということは、あなた方、現におやりになっているじゃありませんか。
だから抽象的に廃絶廃絶と演説しているだけでは廃絶にはならないので、テーブルに着くということから始まらなければならぬということはこれでもおわかりになっていただけたと、私はそう思っておるので、我々の方が現実的であり科学的である、そう思っておるのであります。
 次に、この核廃絶の問題につきましては、やはり今までの諸条約でかなりうたっておるのです。完全軍縮ということを言っておるのは核廃絶を意味しておると私は思いまして、ABM条約でも、あるいはNPT条約でも、あるいはSALTIIの草案でも、みんなそういうことを目指してやっておるのです。だから共産党の皆さんがクレムリンへ行って初めてこういうことができたのではないんです。それは、アメリカもソ連も初めからそういうふうにしたいと思っている、私はそう思って、それらがやはり今言った条約の文章にも出てきておるし、我々はそれを歓迎しておると、それを具体的に実践する方法をみんなの協力で探求していこう、そう私は思っておるのであります。
 次に、私が核兵器廃絶を訴えたことがあるかという御質問でございますが、私は外国首脳の訪日のたびごとに言っておる。レーガン大統領が日本へおいでになって、国会で核兵器を廃絶しよう、核戦争には勝者も敗者もないと演説した、あのときにもこの問題は話しております。コール首相がおいでになったときにも話しております。先般、また一月二日にロサンゼルスでレーガン大統領と会ったときもそれを目指してやろうと。ジュネーブ会談はそれが中心で、その目標でいきましょうと話もしているし、大洋州へ行って、オーストラリアのホーク首相や、あるいはニュージーランドのロンギ首相と会ったときも、平和と軍縮の問題、平和と軍縮の年にしようということを言って、それを中心に話しておるのであります。また、八三年にジョンズ・ホプキンス大学で演説をいたしたときも、やはり核兵器の廃絶を人類の目標としてやろうではないかということも言って、核兵器というものはダモクレスの剣である、今我々はその剣の下でおののいているんだという演説を現にやってきておるのであります。そういうわけで、あなた方以上に熱心であるということを御了解願いたい、こう思うのであります。
 それから米ソ交渉につきましては、先ほど申し上げましたように、いよいよ三月から三つのセクションに分かれて交渉が開始されますけれども、私はもう全力を尽くして粘り強く、テーブルから離れないように、モスコーやワシントンへ帰ってこないように、ともかく粘り強くこれをやっていただきたい。両方がテーブルに着いているというだけでも安心感があるんです。これが離れてしまって隔絶しているということぐらい不安なことはないんです。日米戦争だって、日米交渉を野村さんとやっている間は大丈夫だったんです。あれが途絶したときにああいう悲劇が起きたんです。それを考えてみれば、やはりテーブルに着いて粘り強く話し合いを続けて模索していくという努力をぜひとも続けていただきたいし、そういう方面に向かって私は努力してまいりたい、そう思っておるのであります。大体これで抑止と均衡のお考えは御理解いただけたと思っております。
 次に、核兵器の全面禁止協定の問題でございますが、これは人類共通の究極目標であると我々は考え、全面完全軍縮というものを支持しており、これが実効性ある具体的措置を一歩一歩進めるために今後も努力してまいりたいと申し上げる次第であります。
 中国も私はこの抑止と均衡理論に基づいておるのではないかと想像しておるのであります。それは、やはり米ソが大幅な削減をやれ、まず削減をやれ、そして最終的には廃絶に向かって進めと、そういうふうに中国は、趙首相は私訪問したときにおっしゃっておりました。そのいろいろな議論の内容等を自分で想像してみると、やはり中国は科学的、現実的な立場をとっていますから、抑止と均衡の立場でレベルダウンを考え、廃絶を考えていると、そう思っておるのであります。やはりこれが世界的趨勢ではないかと思うのであります。
 SDIにつきましては、前から申し上げましたようにこれは非核であり、防御的な兵器体系であり、核兵器の廃絶を目指すものであり、長期的な研究段階であると、そういうことで非核と防御的兵器という点に私は非常に魅力を実は感じたのであります。しかし、これが内容がどういうふうにこれから発展していくか、そういうこともわかりませんから、これは研究には理解を示した、しかし随時協議、情報の提供、これを要望いたしまして、先方は承知していただいたのでございます。
 次に、核不使用決議の問題でございますが、核兵器は使用さしてはなりません。その使用さしてはならないことをいかに具体的に担保するかという問題なんです。みんなが、両方が安心し得る、また世界が安心し得る、信頼できるような措置が伴わなければ、抽象的な文章だけでは心配で、そんなことはなかなかできにくいのです。だから具体的にみんなが安心して、信頼して、使用させないという方法をそれにちゃんとくっつけながら現実的に進めていきたいというので、それは一番いいのは検証であります。だから、両方の代表がアメリカへ入り、ソ連に入り、あるいは基地を見て回って、ないということを確かめたら、これなら安心できますね。そういう方法を我々は推進して、本当に安心してやれるように持っていきたい。中途半端な演説だけでは我々は信用できない、こういう立場をとっておるのであります。
 それから広島デーのことでございますが、核兵器の惨害を再び繰り返してはならないという考えについてはあなたと全く同じであります。広島の、あるいは長崎の原爆記念日というものは、私はこの際こういう日は厳粛な日にして、全国民がみたまを弔って祈りをささげ、そして将来に向かって核兵器廃絶を誓うという静かな我々の反省と瞑想とそして祈りの日にして、余り政治的にこれを関連を持たせることは適当でないと私は考えておるのでございます。
 あと、原爆病院の問題がございました。
 原爆被爆者対策につきましては、被爆者の受けた放射線による健康被害という特別の犠牲に着目しまして、広い意味における国家補償の対策を講じておるというところでございます。現在も原爆二法によって対処しておりますが、原爆病院につきましても、研究費あるいは特殊診療部門運営費等に対して助成を行い、今後も誠意を持って努力していくつもりでございます。
 以上で答弁を終わります。(拍手)
#12
○議長(木村睦男君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時六分開議
#13
○議長(木村睦男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。小西博行君。
   〔小西博行君登壇、拍手〕
#14
○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、先般の総理の施政方針演説に対して質問をいたします。
 率直なところ、二期目を迎えた総理としては、大変に自信に満ちあふれた態度のように感じました。目標を高く掲げて国民に期待を抱かせることは、それ自体悪いことではありません。しかし、目標を高く掲げるなら、具体的な実行力で裏づけされなければなりません。そうでなければ、国民に対しこれほど罪の深いことはございません。今国民が総理に期待しているのは、花火を高らかに打ち上げることではなく、当面する困難な諸課題を一つ一つ誠意を持って解決していくことでございます。その意味で、総理の施政方針演説を読み返してみますと、「改革」とか「全力で」とか「努力をする」とかというような決意の言葉が多く並んでおりますが、その決意を実行するための具体的な道筋は何ら明らかにされておりません。言いかえれば、美辞麗句だけが先行して、具体的な政策はすべてそぎ落とされているのが総理の施政方針演説の最大の特徴ではないかと思うわけであります。
 例を挙げて申し上げます。
 今日における我が国の最大の政治課題は貿易摩擦への対応であり、米国の高官は、少なくとも年間百億ドルの貿易黒字を減らしてもらいたいと言っているそうであります。三百五十億ドルを超えると言われている対日赤字を抱えた米国政府として、せめて百億ドル減らしてほしいという願いには切実なものがありましょう。そこで総理にお尋ねしたいのは、米国政府との各級レベルでの協議さえ続けていれば対米貿易黒字が減らなくともやむを得ないとお考えになっているのか、あるいは米政府との協議のいかんにかかわらず、結果として貿易黒字が減らない限り問題は解決しないとお考えになっておられるのか。そして、もし仮に貿易黒字が減らず推移した場合、米国政府はいかなる対抗手段に出てくると予想されているのか。以上の点について、総理の判断と対応策について具体的にお伺いしたいわけでございます。
 米国では、既に通商法を改正し、輸入課徴金を課する権限が大統領に与えられていると聞いておりますが、この点もお尋ねいたします。
 また、税制の抜本的な見直しについてお伺いいたします。
 問題の核心は、税制の見直しの結果、税収がふえるのでしょうか、減るのでしょうか。行政改革を進める唯一のてことして、総理は「増税なき財政再建」の旗印を掲げられてこられました。だとすれば、総理が新たに提起した税制の見直しとは、税収としては横ばいもしくは減少を期待していると理解せざるを得ませんが、それでよろしいのでございましょうか。六十年度の予算編成に当たって、ある自民党幹部は、要するに税の不公正是正とは増税であると断言しております。政府は六十年度予算の審議に当たっても財政の中期展望を提出するそうであります。そして、その展望の中に記されている要調整額は、増税なくしては特例公債依存体質からの脱却は不可能だと言わんばかりの内容になるでありましょう。
 そこで、国民が総理に聞きたいのは、税制の見直しという名目で増税をするのかしないのか、また増税をしないとするならば、どのような方法で六十五年度末までに約百三十三兆円にも上る赤字国債の返還が可能なのか、それとも思い切った歳出削減を行うつもりなのか、その場合の景気対策は十分なのかについて納得のいく説明を求めるものであります。
 また総理は、昨日、本院における同僚議員の質問に答えて、「増税なき財政再建」は「理念である」とお答えになりましたが、理念とは一体何を指すのでございましょう。理屈が立てばいつでも増税に踏み切るということでしょうか。ますます国民に不安と戸惑いを与えたことになると思いますが、あわせて総理の答弁を求めるものであります。
 以下、具体的な問題についてお伺いいたします。
 経済、財政問題については、我が党初め各野党が、それぞれ若干の違いはあるものの積極政策への転換を要求しているところでありますが、政府はかたくなにこれを拒み、緊縮予算を編成されました。政府は、将来の大増税をうかがわせつつも、増税なき財政再建を口にするほか、赤字財政の最大要因である経常支出の効果的な削減も講ぜずして諸税で増収を図ろうとするなど、非合理であり、国民に大きな疑念と不安を与えているのが現状であります。
 総理は、今回も増税なき財政再建を明言されました。私もそのことについては歓迎するものでありますが、一方で、昭和六十五年度を目標に赤字公債に終止符を打つという方針からすれば、経常支出の大胆かつ大幅な削減を図るのか、それとも税の自然増収が年々大々的に図られるようにするのか、いずれかだと思うのであります。政府は、積極政策、つまり拡大均衡政策はとらないと言うのでありますから、経常支出の大幅削減しかないのでありましょう。しかし、財政当局の試算予算案ではその削減が極めて微額であり、到底財政再建に役立つものとは言えません。そうなりますと、いずれ大型増税の挙に出ざるを得ないと思うのは小学生でもわかる論理であります。総理が言われる増税なきとは、中曽根内閣の間はとにもかくにもやらないが、その後のことは知らないよ、そして六十五年度目標達成も責任を持たないというのではないでしょうか。そうではないというのであれば、後継内閣に確実に引き継いでいかざるを得ないところの政策上の仕組みを一般国民が容易に理解できるよう説明していただきたいのであります。
 これまでの私の質問は政府施策に対する疑問から行ったものでありますが、この際、私は、国民生活にゆとりを持たせる結果、個人消費の安定的伸長を図ると同時に、我が国経済が真に自律的回復と発展を期すためにも、とりあえず所得税、住民税の大幅減税を初め産業活性化に資する投資減税など、国民が要求してやまない一連の減税政策を断行するとともに、政府の財政負担を軽減するためにも、公正な秩序のもとに公的事業の好まし
き分野に民間活力の早急な導入を図るなど、民間経済のビヘービアを拡大し、新しく好ましい市場経済体制の発展を図るため、政府が我々の提案を真剣かつ積極的に検討され、将来が明るく展望されるよう政策転換を求めてやみません。政府は真摯な態度で受け入れるよう重ねて提案するものであります。総理の誠実な答弁を得たいと思います。
 次に、産業政策についてお伺いいたします。
 自由競争社会における企業は、技術改革、経営体質、体制の改善に生存をかけた努力をしておりますが、官僚論理の中から生まれた産業規制によって既得権益が生まれ、意欲ある産業の介入を許さないことがあることは御存じのとおりでありますが、最初から民間が寄りつくことすらできないのが各種公団、事業団の分野であります。もちろん、このほかにも一般的経済の分野では現実の経済活動そのものにも多くの規制が設けられていますが、自由化、開放経済が唱えられている反面、こうした公的規制が数多く行われていることは許されないはずであります。政府が本当に民間活力の活用を図らんとされるならば、こうした規制を早急に、しかも産業進展にとって合理性なきものは全廃するぐらいの強い方針で対処すべきであり、それなくしては民間活力活用政策も絵にかいたもちに等しくなります。総理の方針、見解をお伺いいたします。
 政府は、我が国が高度情報社会の先駆け段階に入ろうとしていると評価し、これからの産業、経済、文化、生活などの進展に寄与すると期待しておられます。私もほぼ同感でありますが、情報社会にしろ、ハイテク時代を迎えたといっても、それらはまだ国民生活の実態の中で熟成されておらず、科学技術分野にも未解明の問題が多くあります。政府は、今後こうした分野の情報を発展段階に応じて国民に提供し、先端的科学技術が人間、社会、世界の利益と無縁にひとり歩きすることのないよう適切な措置を誰ずべきであると考えますが、総理の御見解を伺います。
 また、先端的な高度科学技術産業の進展に伴い、雇用の安定化対策が重要であり、わけても労働の質的な向上を図ることが要請され、技術の教育、訓練を強化するとともに、総労働時間を産業構造の質的変化に対応して短縮するなどの施策を講ずべきであります。また、プライバシーの保護、さらにはハイテクの成果が高齢者や身障者にも活用されるようにするなど、幅広い国民的コンセンサスづくりが急務であります。私は、以上の見地から政、労、便、学から成る審議会を政府がこの際設置すべきであると考えますが、総理の見解を求めます。
 新産業分野の華々しさに比べ、戦後日本経済の発展を支えてきました鉄鋼、重化学工業、造船、繊維産業などの分野は影が薄れたように思われがちでありますが、技術改革が大きく進み、内部的変革がかってなく進展しているのであります。しかし、需要の全体的不振から構造的不況の域を脱し切れず、これらの産業に関連する中小企業は暗い夜の明けない毎日を過ごしているのであります。政府は、景気が着実に回復し、持続的安定成長の定着化を主張されますが、これら構造的不況産業地域にはそうした気配は見られず、社会問題まで生ずる状況であります。これら地域の中小企業に対し、金融対策の充実のほか、技術の向上、開発を促進する指導対策の推進、公共投資を積極的に行うとともに、新規産業の誘導施策をきめ細かく実施するなど、政府が本格的に不況産業地域対策に取り組むよう強く要求してやみません。総理から誠意ある答弁を求めるものであります。
 次に、行政改革についてお伺いいたします。
 政府は、本年度予算において高率補助金を一割カットいたしました。また、行政改革特例措置を延長いたしました。それぞれ昭和六十年度だけの臨時措置であります。その結果、歳出の減少は五千八百億円でありますが、では一体昭和六十一年度にはどうされるのでしょうか。歳出を繰り延べ、あるいは一年間の臨時措置で歳出をカットしたからといって、これでは行政改革とは言えません。地方へのツケ回しあるいは後年度への繰り延べで年度予算が編成されたのでは一体どうなるとお考えでしょうか。今国民が感じているのはこの不安でありまして、施政方針演説で触れられた、中曽根行革の道もようやくその半ばに達したとの現実離れをした発言では国民は納得できません。本来の行政改革の基点とも言うべき地方支分部局の抜本的な整理、既に役割を果たした補助金の全面的な撤廃、陳情政治の弊害の打破について政府は具体的にどうするつもりでありますか。
 政府は今年度いよいよ地方の行革を推進するのだと言っておりますが、具体的にどの部分をどのように改正するのですか。例えば割高な地方公務員の給与に対して、地方公務員給与の適正化臨時措置法を制定して具体的に取り組む姿勢はおありですか。
 特に、今年後半の重要な問題になると思われる国鉄再建について、政府の具体的な施策について所信を伺います。
 特に整備新幹線に道を開いておいて国鉄の再建が可能ですか。それとも国鉄監理委員会の答申が出るまで何の対策もとらないのでございましょうか。国鉄が抱える現在二十二兆円もの債務を一体だれがどのようにして負担していくのか、分割民営化の是非は別として、再建合理化のために職場を失う七万人の国鉄職員の職場をだれがどのようにして保障するのか、お伺いいたします。
 次に、人事院勧告についてお伺いいたします。
 政府は財政難を理由として人事院勧告の完全実施を見送ってきました。しかし今、経済成長を図ろうとしたら、なくてはならないのが適正な生産性向上に見合った賃金上昇率であります。しかし、政府が勧告の完全実施を見送り続けたことは、結局、民間部門の賃金上昇にブレーキをかける結果になったのではありませんか。というより、むしろブレーキをかけることを目的とした政府、財界の合意が人勧の不完全実施となったのではありませんか。もともと人事院勧告制度というのは労働基本権の代償措置であります。果たして正しい対応であるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
 次に、科学技術の振興についてお伺いいたします。
 創造的な科学技術の創出をしていくことが我が国の将来にとって欠くことのできない重要課題であると総理も強調されております。我が国産業の主役になりつつあるハイテク産業に代表されるように、まさに創造的な科学技術の開発こそが我が国の将来にとって大変重要であります。残念ながら、ハイテクの代名詞のように言われている
IC、LSIの基本設計は米国からの技術輸入であり、我が国の独自開発ではございません。産官学の優秀な研究員によって今日の隆盛を見るに至ったことは幸いでありましたが、近年、基礎、応用段階の海外からの技術導入が困難となり、我が国独自の研究機関の活躍が大いに期待されるところであります。しかし、欧米との比較において、予算では米国の三分の一、ソビエトの二分の一と言われるようにその額は少なく、研究システムにおいても格段の差がございます。現状では総理の期待に十分沿うことができない状況でございます。産官学などすべての研究機関について再検討する必要があります。
 申すまでもなく、先端技術の開発はリスクも大きく、一民間企業では社運にかかることもあり、思い切った研究ができない状況にあります。したがって、政府として民間活力に期待するならば、五十六年に発足して多大の成果を上げつつある流動研究システム、この方式を導入、拡大すべきであると考えますが、いかがでしょうか。そのためには、政府として研究開発予算の計画的な拡充を図り、民間では開発リスクの共済制度を創設するほか、リスクマネーの円滑な調達も図られるような諸施策を講ずることを提案いたします。いずれにせよ、資源の乏しい日本の将来を考えるとき、技術立国の名にふさわしい諸施策が必要であると考えますが、総理の御見解を伺います。
 次に、教育改革についてお尋ねいたします。
 今日、教育の全般を見直し、その改革を図っていくことは国民的な最重要課題の一つとなっております。昨年九月には、私ども民社党の提唱による臨時教育審議会が発足し、二十一世紀を目指した教育のあり方について精力的な審議が開始されたところであります。言うまでもなく、教育は人づくりであり、我が国社会を支える基盤となるものであります。その意味から、教育改革は国民の総知を結集して行われなければなりません。臨教審の審議は可能な限り公開されるとともに、学校現場や父母など幅広い声を反映するものでなければなりません。公聴会の開催など各方面からの意見聴取、国民からの投書募集など国民に開かれた審議を期待するものであります。
 総理にお伺いいたします。総理は今年の内政の重要な柱として教育改革を挙げられております。教育政策の中でも偏差値教育の是正や共通一次試験制度の改革、青少年の非行対策などは緊急に実施しなければならない課題でありますが、総理は今年実現したい教育改革についてどのような課題を考えておられるのか。また、それらは臨教審の中間答申を求め、実行に移すという意味なのか、それとも答申の有無にかかわらず実行したいということなのか、具体的にお答えいただきたいのであります。
 既にマイコン、パソコンが小学生にまで普及しており、各種のニューメディア開発が進行し、高度情報化社会へ発展することが必然となれば、子供も大人も家にあって、否、部屋にあって学習も対外用務の大部分を処理することができるようになるでしょう。そうなれば、現在社会の悩みである人間の孤立化がますます進展し、人と人との触れ合いがなくなり、個人と機械との関係で生きることとなって、人間としての豊かな情緒や心がいよいよ失われるのが必至でございます。したがって、高度情報化社会に対応する教育は、家庭、学校、社会を問わず、温かい血の通う心を養う教育が絶対的に必要であります。そのためには、これまでの教育制度を中心とした改革の範囲を超える意識革命が国家、国民全部を包含して行われなければなりません。その端緒として倫理、道徳に関する教育の養成など精神文化を高揚させるべきであります。
#15
○議長(木村睦男君) 小西君、時間が参っております。
#16
○小西博行君(続) 教育臨調はこうした面まで検討し、答申を出すべきであります。
 総理の御見解をお伺いいたしまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(中曽根康弘君) 小西議員にお答えをいたします。
 まず、貿易摩擦への対応でございます。
 まず何といっても、日本側は日本側としてやるべきことについて最善の努力を尽くす必要があると思います。そして実効性を上げることが大事であると思います。しかし、一面におきましてはこれは相互主義的なものでございまして、アメリカ側に責任のある問題はアメリカ側においてこれを解決してもらわなければならぬと思います。
 ポイントは、市場開放あるいは基準・認証制等の透明性の問題、それから内外無差別措置、こういうような問題について公正、公明な政策を推進するということでございます。これらにつきまして、一部外国に日本に対する誤解もあり、あるいは日本側においては無意識においてそういう欠陥を実行しているかもしれません。それらにつきましては我々も誠意を持って細かく点検もし、改むべきものは改め、また外国に対して要求すべきものは要求してまいりたい、こう考えておるところです。我々が一生懸命外国並みの開放政策をやりまして、それでも向こうが入ってこれないというのは、向こうの輸出努力の欠陥あるいは力がないというところから来ているので、日本の責任ではありません。我々としては国際的水準において当然やるべきことをやり尽くしておく、そういう態度でまいりたいと思っておるところでございます。
 次に、税制改革の問題でございますが、これは前から申し上げますように、増税のためにやるのではない、増税なき財政再建の理念を堅持する、そしてこれから行おうと心がけておる課題として取り組む税制改革というものは、公平、公正、簡素あるいは国民の選択というような考えに立って国民の不満を解消し、そしていろいろ国民が熱望している体系に円満に皆さんの合意を得て到達し得るような大きな根本的改革を心がけたい、そういう考えに立って行うものでございます。今後、税制調査会やあるいは我が党内部におきましてもいずれ検討が開始されると思いますが、政府は内容につきましては白紙の立場で臨んでおります。
 特例公債六十五年度依存体質脱却というこの目標は容易ならざるものでありますが、営々として今後も努力してまいります。歳出面におきましてもできるだけの節減を行うと同時に、政府と民間の役割分担、国と地方の機能分担、費用負担の見直し、あるいは歳入面におきましても、税外収入の確保とか、あるいは将来税制全般にわたる広範な角度からの論議を踏まえて改革を行う、そういうような点、国会の御議論等も通じ幅広い角度か
ら我々は政策を推進してまいりたいと思っております。
 増税なき財政再建の理念とは何ぞやという御質問でございますが、これは我々が政治家として施政を行う心構えであり、そういう覚悟を決めてやっていると、そういうふうにお考え願いたいと思います。その結果、これがてことなり、あるいはかんぬきとなりまして、歳出カットを大幅にできるわけであります。こういうかんぬきやてこを置かないというとどうしても安易に流れまして、経費の乱費というものが出てきやすいのでございまして、今後ともこのような覚悟、心構えを持って処理してまいりたいと考えておるところでございます。
 所得税減税については、申し上げましたとおり、昨年度一兆千八百億円の減税をやりまして、本年度はまことに残念ながらその余裕がございません。政策につきましては、民社党のお考えは我々よりも高目の成長をお考えになり、それから来る税収増もお考えになっておるようでございますが、我々は成長率四・六%程度と考えておりまして、この成長率に対する認識の差から多少来ているのではないかと思います。我が方はある程度慎重かつ着実な態度をとっていると思いまして、政策転換の必要はないと考えておる次第であります。
 投資減税につきましては、六十年度におきましても試験研究促進のための基盤技術研究開発促進税制及び中小企業技術基盤強化税制を創設いたしまして、一生懸命努力してまいる予定であります。
 公共投資につきましては、六十年度におきましても一般公共事業の事業費についてはいろいろ工夫いたしまして、昨年を上回る水準を確保するように努力しております。
 それから増税なき財政再建という理念はあくまで堅持してまいりますが、どの内閣までやるのかというお話でございますが、やはりこの目標を達成するまで、歴代相受けてやるべきものではないかと思っております。
 次に、公的規制の問題でございますが、公的規制の緩和、国公有地の活用、こういうようなものは、例えば関西空港の設立に見られますように、あるいは新宿西戸山の国有地開発に見られますように、民間活力を活用した方法を積極的に推進して、さらに思い切って実行していきたい。また、今の規制緩和、解除等につきましては、行革審及び総務庁におきましてさらに検討中でございまして、これらの御議論も踏まえて政府はさらに積極的に努力してまいりたいと思います。
 先端科学技術及び科学技術と人間の関係でございますが、これは非常に重要な問題に発展していくと考えております。科学技術は結局人間が行うものでありますから、やはり人間を中心に据えて科学技術と人間及び社会の調和を考えていかなければならぬと思います。今回の筑波博も人間、環境、社会及び科学技術というふうな考えに立って行わんとしておるのも、おっしゃるような発想に基づいて行っておるものなのであります。科学技術会議の答申でもその面が指示されておりまして、この科学技術会議の答申に従いまして今後も努力してまいります。
 技術革新と労働の関係でございますが、マイクロエレクトロニクスそのほかロボット等の発展というものは、労働についても非常に大きな影響力を持っております。昨年四月の政労使、学識経験者から成る雇用問題政策会議から、雇用の安定、労働能力の向上、労働時間の短縮など労働者福祉の向上に努めるよう提言されております。今後ともこれに沿って国民的コンセンサスが形成されることを期待するとともに、政府も具体的な政策を調和あるように発展させてまいります。
 科学技術と国民的合意の問題でございますが、この問題につきましては、特にライフサイエンスと人間の尊厳との関係等重大な問題がありまして、関係各省庁で検討しておるところでございます。政府もサミットでこの生命科学と人間という考えに立った国際会議招集を唱えまして、昨年三月実行し、また本年も今度はフランスが引き受けまして、フランスで第二回会議を行うことになっております。これは中長期的な非常に大きな問題を包蔵しております。特にバイオケミカルあるいは遺伝子組みかえと人間との関係というものについては、よく皆さんの御議論を拝聴し、国際的な水準も踏まえて慎重に対処してまいりたいと思っております。
 中小企業対策、特に不況地域対策、鉄鋼、造船、石油化学等のこれらを中心にした対策、あるいはいわゆる企業城下町法に基づく政策につきましては、懸命に不況対策として実行もして、全国で五十三地域を特定地域として指定して、信用補完措置等経営安定対策、税制措置等による企業誘致対策、特定地域における経済の安定の見地からの公共事業の実施に関する措置、あるいは補助金、税制、金融措置等による新商品、新技術の開発、需要開拓等の振興対策等を実行しておるところでございます。
 行財政改革について御質問をいただきましたが、六十年度予算は極めて厳しい中におきましても経費を切り詰めましてぎりぎりの努力を行い、人員削減につきましても六千数百人に及ぶ人員削減を行ったところでございます。特に補助金等の整理合理化に積極的に努めまして、地方負担の増加に対しましては、交付金あるいは起債等の措置によりまして万全の措置を講じて、迷惑をかけないようにしておるところでございます。
 行革関連特例法につきましては、現下の厳しい財政事情にかんがみまして、所要の継続措置を講ぜざるを得なかったことは遺憾でございます。同特例法については、行政改革の第一歩としての使命を果たしてきているという意義は十分あったと思っております。政府といたしましても今後とも中長期的な見地から制度、施策の見直し等につきまして真剣に検討してまいりたいと思います。
 出先機関や補助金の整理等につきましては、行革の本旨に沿いまして今後とも努力してまいります。地方支分部局、ブロック機関、府県単位機関等の整理合理化も推進しておりますし、補助金につきましても洗い直しをし、人件費補助の見直し、あるいは高率補助の再検討、あるいは廃止合理化そのほかの措置を今実行しておるところでございます。公正、公平を旨として、しかも温かい思いやりのこもったやり方でこれらは丹念に処理していかなければならないと思っております。
 公務員の給与の問題でございますが、地方行革大綱に沿いまして、地方公務員の給与については自治省において是正措置を強力に指導しておるところでございます。しかし、最近はかなり改善し
てまいりまして、ラスパイレスを見ましても、昭和四十九年が一一〇、五十四年が一〇七、それが五十八年は一〇五・九まで前進してまいりました。今後ともこの努力を継続してまいります。
 整備新幹線につきましては、昭和六十年度予算においてとりあえず事業費を計上しておりますが、今後、国あるいは地方の地域負担あるいは事業実施方式等、国鉄再建監理委員会の答申との関連等を調整を行って、その結果をまって適切に処理していくつもりでございます。
 国鉄の長期債務につきましては、昨年八月の国鉄再建監理委員会の第二次緊急提言において、長期債務の処理に当たっては用地を最大限債務償還の財源に充てる等可能な限りの手だてを尽くした上で、最終的には何らかの形で国、すなわち国民の負担を求めざるを得ないということが明らかにされております。現在、同委員会において効率的な経営形態のあり方等とあわせて検討中であり、その結論を見守ってまいりたいと思っております。
 国鉄の余剰人員につきましては、現在いろいろな対策が進行中でありますが、政府も一体となりましてこの対策を講じてまいるつもりでございます。
 人勧と労働基本権につきましては、国家公務員の給与について、第三次公務員制度審議会の答申及び第二次臨時行政調査会の答申等におきまして人事院勧告制度によるべきものとされており、政府としては、勧告を尊重し、この制度を維持してまいりたいと考えております。労働基本権制約の代償措置の一つである人事院勧告制度が実効を上げるよう今後とも最大限の努力を行う所存であり、公務員の労働基本権の問題についても現行制度によって対処する方針には変わりはございません。
 創造的な研究開発機構の問題でございますが、御指摘の流動研究システムによる創造科学技術推進制度は、昭和五十六年度発足以来研究テーマをふやしまして、現在七テーマについて取り組んでおります。昭和六十年度は、この研究テーマを二テーマ新たに加えるなど創造的な研究開発の充実を図ってまいります。
 民間の技術開発に対する助成につきましても、リスクマネーの供給とか環境条件の整備とかその他の方法によりまして、民間活力とあわせて技術開発について政府も協力してまいりたいと思っています。今回の予算におきまして、基盤技術研究促進センター(仮称)の設立の施策を積極的に実施してまいります。
 教育につきましては、豊かな人間形成を目指す上で道徳教育の充実は極めて重要であると考えております。今後とも国を愛する心を含め道徳教育の充実に努めてまいります。御指摘の問題につきましても、初等中等教育のあり方に関連して今後検討は行われるものと承知しております。
 臨教審の審議につきましては、できるだけ国民に明らかにするように、その概要の報告をその都度行っていただいてまいりたいと思っております。そのほか、学校現場などの皆さんの声を直接お聞きする、公聴会の開催、参考人の招致、それから意見、論文の募集、現場視察等を実施していると承知しております。
 青少年の非行や入試改善等のさまざまな問題については、答申が出次第、また答申がなくとも文部省でやれる問題については文部省独自に実行してまいりたいと思っております。例えば、共通一次試験の期日をことしから二週間繰り下げて実行いたしました等はその例であります。また、審議会から答申が出てくるに従いまして、逐次答申に従って最大限に努力してまいります。
 高度情報社会の時代になりますと、心の問題がまた非常に重要になってくると思います。特に、豊かな優しい、そして国際性を持った心を育てる教育は非常に重要であると思い、臨教審におきまして今鋭意検討中でございますが、これを期待しておるわけであります。
 同時に、国際化の問題も非常に重要であり、日本人の心を国際的に窓を開くということと同時に、留学生の受け入れ、国際交流等につきましても大いに努力もしたいと思いますし、研究者の交流、それから海外子女教育の推進等についてもこれから努力してまいります。大学の九月入学制については現在臨時教育審議会において検討中でございますが、これらの推移を見守ってまいりたいと思っております。
 以上で御答弁を終わりにいたします。(拍手)
    ─────────────
#18
○議長(木村睦男君) 鈴木和美君。
   〔鈴木和美君登壇、拍手〕
#19
○鈴木和美君 私は、日本社会党を代表して、中曽根総理を初め関係閣僚に質問いたします。
 総理は、一昨年、初の施政方針演説以来一貫して、次の時代を担う世代に何を引き継ぐかを重視され、あたかも中曽根さん二十一世紀を行くといったイメージづくりをねらっているかのようであります。「国際国家日本」と言い、また「たくましい文化と福祉の国」と言い、未来はまるでユートピアのようであります。しかし、現実に総理が進めているのは、福祉の削減に対して防衛費の拡大であり、公的なサービスの撤退に対して民間活力の培養というもので、決して総理演説のような、あれもこれも式の総花的ではないと思うのであります。
 総理、あなたが後の世代に残そうとしているのは、健康と平和よりも借金と大砲ではないのですか。自然と人間ではなくて、コンクリートとロボットではないですか。福祉と人権ではなく、いじめと孤立ではないですか。このような疑問をただすため、以下、順次お尋ねしてまいりたいと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 総理、あなたが後の世代に引き継ぐもののうちで最も大きいものが、百三十三兆円に及ぶ国債というツケに加えて、防衛関係の装備費二兆三千億円という後年度負担の累積であります。国民は、このことについても一人一人が将来の負担のあり方について真剣に考え始めていると思います。けれども、まだまだ増税の時期ではないと感じているのではないでしょうか。なぜならば、国民に負担増を求める前に、もっとやるべきことがあるからであります。
 総理、あなたは国民が進んで負担や拠出に応じられる条件を整え、これを次の世代に引き継ぐ責務があるのではないでしょうか。その条件として、少なくとも次のことがあると思うのであります。
 第一に、不公平税制を徹底的に正すことであります。間接税は、社長さんもパートの奥さんも同
じ物を買えば同じ税額を負担することになるため不公平感が強く、政府・自民党が大型間接税の導入を検討すれば検討するほど、国民はかたくなな増税反対派に傾くと思われますが、いかがですか。
 顧みて、増税なき財政再建という政府方針は、国民に負担の増大を求める前に、前提となる条件をしっかりと整備しておこうという考えに裏打ちされていたと思われます。総理はいわゆる直間比率の見直しであって増税ではないと言われますが、税の公平感を育てるという見地から見れば、それは一体どんな効果が期待できるのですか、見解を承りたいと思います。
 増税にコンセンサスを得る第二の条件は、その使い方であります。老後や、いざというときの不安のために自分で貯金したり民間の保険を頼りにするようでは、税金や社会保険料を出し渋るのは余りにも当然と言わなければなりません。この見地に立って、政府はこれからの国民生活についてどこまで責任を持つのか、公的な底支えのプログラムを明らかにすべきであると考えますが、いかがですか。
 ところで、財政再建のもう一つの課題は、税収の安定した伸びを確保するためには、内需拡大の主導型経済に徹するべきだと思うのです。そのためには、勤労者の実質増税を防ぐ所得税減税を実施すること、二つには、限られた公共事業費を住宅、公共下水道などといういわゆる生活基盤整備に重点配分することであります。三つには、最近の好調な企業収益を勤労者の賃金引き上げに結びつけることなどが必要不可欠ではないでしょうか。
 総理は、これらの措置には極めて冷淡な態度をとる一方で、内需拡大のために民間活力の導入を提唱し、目先の財源対策として大都市における国公有地の売却を進めるとの見解を明らかにしているのでありますが、私は、これは国家大計を失うことにもなりかねませんと考えているのであります。加えて政府は、財界の求めに応じて、空中の利用、公有水面の埋め立て、地下の開発などに関する規制の緩和を目指しているのは周知のとおりであります。
 このかけがえのない国民共有資産について、政府がこれを保全して次の世代に残す使命があると考えるのが常識と言うべきであります。国公有地についても、過密都市におけるゆとりの広場として尊重すべきでありますし、処分する場合といえども、あくまでも自治体の優先利用を基本とすべきと考えますが、いかがですか。
 しかるに、中曽根内閣の政治は、国民的資産を残したり育成するどころか、民間企業の手にどんどんと売り渡していこうというものであって、これを国民的資産投げ売り内閣と言わずして何と言うべきでしょう。
 政府は、国鉄についても分割民営化を進めようとしております。二十一世紀を行く中曽根さんにお尋ねしますが、あなたは一体どんな交通体系を将来に残そうとしているのですか、今こそ明らかにしてほしいと思うのです。
 国土庁の四全総中間取りまとめによりますと、二十一世紀初頭には、旅客も貨物も国内総輸送量は現状の二倍になると見込まれているのであります。一体これをどのような手段で輸送しようというのですか。我が国の山林、河川を除く人の住める土地面積当たりの自動車台数は、第二位の西ドイツの三倍近い水準で、断然世界一です。さらに、歩行中の者や自転車に乗っている者が自動車に殺傷される割合も世界一。総理、あなたの言う心の豊かさやゆとりのためにも、むしろ鉄道の重要性を見直さなければならないのではありませんか。この立場から、国鉄つぶしの中曽根と言われないようにした方がよいのではないでしょうか、いかがですか。
 政府は、国鉄再建監理委員会の答申待ちということで、具体的なことに何も答えていません。これだけ注目を浴びている重大事を審議するに当たって、監理委員会は議事録も公開せず、すべてを密室の中で進めるとは何事ですか。また、七月の答申の前に、例えばこの三月末までに中間報告を求めてしかるべきだと考えますが、いかがですか。
 次に、国民的資産を保全育成する責務を怠り、荒廃させた典型的な事例として、森林、河川、それに農地を挙げなければなりません。
 この冬の異常渇水は、昨年台風がなかったことや秋の長雨が少なかったことが原因に挙げられていますが、我が国の政策は、伝統的に水は天からという雨待ち主義で、積極的に水源を涵養する努力に欠けていたのではないでしょうか。例えば、建設省の管理ダム七百六十九を初めとして全国のダムの集水区域ごとに、ダム水源を涵養するための森林整備計画や水源涵養保安林がありますか。その実態さえ把握されていないのが現状なのであります。より安定した貯水量を確保するためにも、ダムに流れ込む土砂の量を減らすためにも、絶対に山を荒廃させてはならないのであります。今、政府は水源としての森林整備の資金の調達を流域自治体や地域住民に協力を求めていますが、この際、ダムの開設者にも拠出を求めないならば、それは片手落ちと考えますが、いかがでございましょう。
 山や森が国民、いや人類共有の資産であるあかしとして、私はそれが現代人の心のふるさとになっているという事実、緑を失ったとき文明さえ滅びたという歴史的な事実を指摘しなければなりません。この立場から二十一世紀を展望し全地球的規模で対策を考えるならば、何よりもまず外材の輸入を見直すことであります。我が国の国土の七割が山林であるのに、なぜ世界一の木材輸入国でなければならないのですか。国際的にも疑われるところであります。また、我が国のために東南アジア熱帯雨林の大規模な皆伐が進み、地球の砂漠化に日本が手をかしているとさえ言われているのであります。これに対して政府はどう反論できますか。また、今でも主要諸国よりも低い関税をさらに引き下げたりせず、間伐期であるのに少しも手が入れられず、モヤシのような山がむせび泣いている現状を改めて直視し、国内の育林事業の充実を図るとともに、国産材の需要喚起に力を入れるべきだと考えますが、いかがでございましょう。
 農地もまた国民的資産であり、この荒廃は許されるものではありません。政府は口を開けば農業は国の基幹産業であり、最も大切にされなければならないとは述べています。しかし、どうでしょう。総理の施政方針演説におきましては、食糧の確保という課題を「国際社会における積極的貢献」という中で位置づけただけでありまして、内政に
おける農林漁業の振興には事実上何も触れていないのであります。
 あなたは、食糧の供給をできるだけ輸入に頼ることがアメリカを初め農産物輸出国に貢献する道だとまさか考えているわけではないでしょう。もしそうだとすれば、総理は、かねて各党挙げて一致した食糧の国内自給率向上の国会決議に背き、その諸施策を放棄するなら、農業つぶしの二枚舌という汚名を歴史に残すことになりはしないでしょうか。明確な答弁を求めるものであります。
 総理、あなたがもし本気で次の世代に「明るく、力強い時代のたいまつを引き渡す」と言うのであれば、老いた体にむちうって働く農林漁業の従事者にどんなあすがあるのか、またその後継者たちにどんな二十一世紀があるのか、今ここで示すべきであり、それがない限り私はこの壇上からおりることすらできないような気がするのであります。総理、せめて二十一世紀の農林漁業を担う後継者づくり基本計画をつくるぐらいのことだけでも、今ここで表明できませんか。
 その際、ぜひ農業問題として採用すべき三つの提案をしたいと思うのであります。
 その一つは、主要農作物を中心とした食糧の備蓄制度を確立することであります。特に、米については需給計画の単年度主義を改め、三カ年を単位として三百万トンの備蓄ができるようにすることであります。その二は、アジア、アフリカなど食糧危機に直面している諸国に米による援助を拡大することであります。その三は、減反政策をやめ、休耕田を活用して、例えばその一部を飢餓諸国援助用水田とか無農薬土づくり奨励水田などに指定して助成を図るとともに、一般市民の参加協力を求めることなども考えてはいかがでしょう。
 以上の提案に対する政府の見解を承りたいと思うのであります。
 ところで、佐藤農水大臣は急遽、けさの便でモスクワに立たれました。現在難航している日ソ漁業協定の交渉は、これに直接関係する漁民はもとより、伝統的に魚好きな国民の共通した関心事であります。この際、何としても昨年実績を確保するために大臣の努力を期待しています。そこで、改めて今回の訪ソの目的とその見通しについて明らかにしていただきたいのであります。
 そして、かねて問題となっているソ連漁船の国内寄港地の安全については、いやしくもそれが一部の右翼によって攪乱されることのないようにすべきと考えますが、総理の責任ある答弁を期待するものであります。
 さて、私たち政治家が後の世代に残さなければならないのは、人間の顔をした町や村を百年や二百年ではびくともしないような観点から整備することではないかと思うのであります。人間復権の町や村の課題は、第一に福祉と人権、第二に健康と環境、第三に自由と自治であって、政府の重視する高度情報化は、あくまでもこれらを前進させる手段として位置づけられるべきであると思うのでありますが、総理の所信を承りたいと思います。
 まず、福祉と人権の町をつくるためには、国際社会で経済大国にしては人権意識の低い国と見られている現状を克服する必要があります。国際社会からの糾弾は、本人の同意なし入院を原則とした精神医療という最近のトピックスだけではありません。自分の国で安全性に疑問ありとして使用禁止にしている危険な製品や技術を発展途上国に輸出している現実、在日外国人への社会保障の不徹底や指紋押捺の強要、婦人の雇用条件が悪いために女性差別撤廃条約さえ批准できないという後進性、さらには寝たきりやひとり暮らしの老人に対する福祉サービスの貧しさ、母子家庭の生活苦、子供たちの弱い者いじめや普通教室からの障害児の排除など、国際感覚に照らして批判されている事例は枚挙にいとまがないのであります。一体これらは、国際人をもって任ずる中曽根総理の感覚にはどのように映っているのか、伺っておきたいのであります。
 いわゆるいじめの問題は、文部省の小学校生徒指導資料によりますと三つの背景があるとされています。第一は対人関係の未熟さ、第二は欲求不満の増大、第三はストレスを解消する手段の乏しさというものであります。しかし、弱い者、おとなしい者、体の不自由な者を取り囲んでいたぶるといういじめの最大の背景は人権感覚の立ちおくれであり、思いやりの欠如ではないでしょうか。学校教育において人権意識を育てるために政府はどのような努力をされるのですか。また、人権教育に弾みをつけるためには、障害児を特殊教育の場に隔離してしまうということをやめまして、できる限り普通学校で引き受けていく方向が望ましいと考えますが、政府の見解をお伺いしておきます。
 次に、健康と環境の町をつくるためには、自然と人間の関係を見直し、自然のおきてに人間が背けば必ず復讐をこうむるという事実を踏まえる必要があります。
 総理、ヨーロッパの都市がなぜ落ちつきがあり、ゆとりと潤いを与えているかを考えてみたことがありましょうか。私は、一口で言うと、それは日本は短距離選手、あちらは長距離選手のタイプだからと思うのであります。例えば貨物輸送で見ると、こちらはかつて水運を見捨てて鉄道にほぼ全面的に切りかえ、そして今、政府は鉄道から自動車輸送に切りかえようとしているのでありますが、ヨーロッパにおいては、水運、鉄道、トラックの三者を共存させる方向をとっているではありませんか。いかがですか。
 また、健康と環境の町づくりで見逃してならないのは、そこに住む勤労者の生活状態であります。心の豊かさ、ゆとりをこれから求めるとするなら、緑に包まれた環境で、家族との交わり、そして教養、趣味を拡大し、高齢化社会に向けて仕事を分かち合うためにも、労働時間の短縮は何よりも大切だと思うのです。それでなくとも働きバチという国際批判にどうこたえるのですか。この立場から、政府はいつ四十時間、週休二日制を実現するのか、そのめどを明確にしていただきたいと思います。
 健康と環境を守るには、その国の伝統と文化になじんだ町づくりをしなければなりません。この観点から、私は四つの提案をしたいと思います。
 その一つは、人と車を完全に分離する方式を採用することであります。欧米のいわゆるラドバーン方式の応用であります。
 その二つは、木造建築を見直し、学校、図書館、コミュニティーセンターなど公共施設は木造建築でも補助の対象とする道を広げることであります。ちなみに、五十七年度から五十九年度の三年間に木造校舎を建築した公立の小中高等学校は
全国で十校しかありません。
 さて、その第三は、地下水の涵養を図ることであります。日本では水は早く海まで運び出せばいい、飲み水はその途中で急速なろ過を行い、それでもだめなら塩素や凝集剤をたっぷりほうり込んで、臭くてまずい水でもとにかく飲めるようにすればいいといった手っ取り早い技術に頼ってまいりました。しかし、生水を余り飲まないヨーロッパでさえ、わき水や地下水をいまだに重視し、河川水の場合でも原水の浄化に努めるとともに、長い時間をかけて砂れきを通す緩速ろ過方式を基本としているのであります。
 第四は、廃棄物として適正に処理できない物質は生産も使用も規制することであります。
 以上、健康と環境を重視した町づくりのための提案について政府の所信を承りたいと思います。
 次に、自由と自治の町をつくるためには、分権の推進と行政情報の公開が急務ではないでしょうか。
 まず、分権の推進に当たっては、少なくとも次の三つのことが必要不可欠であると考えます。
 その一つは、国庫負担分を自治体負担に切りかえる際は、制度のあり方を先行させて個々の施策項目に関する権限もまた自治体に移転し、財源と権限とをセットで動かすべきであると思います。この考え方とは全く異なる今回の高率の補助率一割カットは、国の帳じりだけを合わせただけで全く納得がいきません。撤回を求めるものであります。二つには、地方債の内容にまで踏み込んだ干渉をやめることだと思います。そして三つ目には、公営事業の効率化に当たっては、民間委託を考える前に、その関係している人と住民の参加によって経営改善を図ることなどが前提条件ではないでしょうか。責任ある御答弁を承りたいと思います。
 行政情報の公開に当たっては、今総務庁で調査研究を進めているのでありますが、何よりもまず、各省庁がどんな秘密文書の管理規程のもとに情報を処理しているのか、この際まとめて報告していただぎたいのであります。
 また、お役所はどうしてこんな資料でさえ公表できないのか、かねがね疑問に思っている実例を幾つか申し上げたいと思います。その一つは、大蔵省は民間活力導入検討対象財産としてリストアップした全国百六十三カ所、六十五ヘクタールの国有地について、その全貌が公表されていません。もう一つは、厚生省並びに農水省の関係で、医薬品、食品添加物、農薬などの製造承認もしくは再評価に当たって使用した学術論文や実験データが公表されないのはなぜですか。もう一つは、文部省であります。幼稚園における障害児の就園実態調査があるのに、なぜ小中学校における障害児の就学実態がわからないのですか。
 これら特徴的な例を挙げましたが、政府の見解を伺うとともに、総務庁による調査研究は一体いつをめどにするのか、この際、作業日程を明確にしていただきたいのであります。
 今、自立した市民グループはもとより、労働組合もまたあすの企業と職場、あすの社会を考え、地域や職場の一角から新しい方向を模索し実践する運動に向かおうとしているのであります。総理、あなたが頼りにされる民間活力とは、本来民間企業のことではなくて、その企業をも支えているこのような自立した市民や労働者の実践であるべきではないでしょうか。つまり、二十一世紀は自立した市民活力の時代であるのであります。その主体に行政情報をマル秘にするなどということは、民主政治の大道を子孫に伝えたいという総理の姿勢とは余りにも大きな矛盾があるのではないでしょうか。
 市民の活力でなくて企業の活力に依存し、その市民の共有資産を次々と企業に投げ売りする総理の姿は、失礼でございますが、悲しいかなハゲタカに食い荒らされる風見鶏、その一言に尽きます。
 私は、総理の施政方針をお伺いして感じた所見と、幾つかの質問及び幾つかの提案を行いましたが、政府の答弁を要請して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(中曽根康弘君) 鈴木議員にお答えを申し上げます。
 まず、私の政治の基本姿勢についてお話をいただきましたが、やはり文化と福祉の国を目指しまして、戦後政治の総決算に励んでまいりたいと思っております。今はその基礎づくりの時代で、最も苦しい汗を流して基礎をつくっているときでございます。
 御指摘のように、来年三月には百三十三兆に及ぶ国債の累積が予想されております。一人に直しますと百八万円、一家族にすれば約四百万円、オギャーと生まれた赤ちゃんも百八万円借金を背負うということになっておるわけです。これはしかし、二回にわたる石油ショックを受けまして、景気を維持し、失業を増大させない、雇用を確保しよう、こういうために必死に努力して、公債政策その他によって景気を維持した結果なのでありまして、そのために経済の推移は外国に比べて良好であったのでありますが、今そのツケが来ておるわけであります。しかし、このツケは、現代の我々がこれを始末して子孫に渡さなければならないのであります。そういう意味におきまして、行政改革、財政改革に懸命に励んでその基礎づくりをやろうと、こういうときでありますから、いろいろ御無理をお願いし、国民の皆様に御迷惑もお願いしておるのでございますが、事情をよく御了察の上、御協力を賜りたいと思う次第なのでございます。
 税制につきましては、先般来申し上げておりますように、シャウプ税制以来のゆがみやあるいは不合理化、そういうような面を直す必要がある、国民の不満をこの際十分聞き届けて合理的なものに改革する必要がある、そういう考えに立って根本的な大改革を念願して、それを課題として受けとめよう、こういう考えでおるわけでございます。これもやはり一種の戦後政治の総決算の一つになるのではないかと、そう考えております。
 それから福祉の水準についてお話をいただきましたが、いわゆるナショナルミニマムの水準につきましては、いろいろ御議論がありますが、負担と給付の関係を踏まえた国民のコンセンサスに裏づけられた保障すべき必要な水準である、こう認識しております。公的な社会保障の水準としては、国民が不安なく生活できる基礎的条件を満たすものであることが適当であると考えており、年金につきましては、老後の生活を支える中核となるような保障水準を確保する。医療については、必要な医療保障が受けられるような保険制度
を確保する。福祉についても、在宅福祉政策を中心として必要な施策の整備促進を図っていく。雇用についても、労働者が有する能力を有効に発揮できるように雇用の機会の確保に努める。特に男女の平等の機会の確保に努める。特に、今後の高齢化社会に備えて着実に制度の安定や必要な施策を事前に準備していく、こういうことを今後とも努めてまいりたいと思っておる次第です。
 国公有地の活用につきましては、都市部における国有地等は貴重な空間資源であり、都市の再開発等に資するよう有効に活用する。大体大きいところは府県、市町村がみんな目をつけまして、大蔵省に申し入れ等をしておるようであります。やはりそのような地方公共団体を優先するというのが妥当な考えではないかと思います。あわせて税外収入を確保するということが基本的な方針でありますが、国内需要の拡大、経済の活性化等のために民間活力の活用にも十分また一方配慮してまいりたいと思います。
 土地利用の高度化については、公共性にも配慮しつつ有効利用の観点からも促進してまいりますが、公有水面の埋め立てにつきましては、昭和四十八年の公有水面埋立法の改正により慎重に対処してきておるところでございます。これは経済的効率性という面がありますが、一面においては環境保護という面もございまして、その点はよく調和させるように努力しておるということでございます。
 二十一世紀の交通体系について御質問がございました。量的拡大ということと同時に、高速性、信頼性、快適性、こういうことが要請されております。したがいまして、二十一世紀への展望に立って、各種交通機関の特性を生かした相互補完的な交通体系を目指して、いわゆる第四次全国総合開発計画策定の中で検討中でございます。
 国鉄につきましては、今後の交通体系は交通機関がその特性を生かして相互補完的に、全体的な有機的調和のもとに行われることが望ましいと思います。鉄道の特性が失われた線区を廃止するいわゆる特定地方交通線対策はこのような認識に基づくものであり、効率的な地域交通体系の形成を図る、こういうことも大事であると思います。今後長期にわたり国民に真に有用な鉄道がその特性を発揮し運用されていく、そういうために今国鉄の経営形態について健全な事業運営の仕組みを確立するということで検討しておるところであり、国鉄再建監理委員会の検討をお待ちしておるところであります。国鉄つぶしの中曽根ではなくして、交通体系再建の中曽根ということにしたいと思っております。
 次に、森林問題でございますが、国連機関の報告によりますと、熱帯アジア地域においては年間約二百万ヘクタールの森林が減少している由であります。そこで国連、特に国際森林年というふうに指定されまして、各国の協力を約束し合っているところでございます。
 この熱帯アジア地域の森林問題の主な原因は、焼き畑移動耕作、入植とか、それらが大きな原因であるようでもあります。我が国は林業の先進国及び主要木材輸入国としてこれらの地域の森林資源の保全涵養に大きな関心を持ち、造林や森林保全等の林業政策に対して協力をさらに推進してまいるつもりであります。
 外材輸入に関する問題につきましては、我が国の林産業、木材の需要は御承知のように低迷し、長期にわたって非常に深刻な不況下にございます。林産業の不振は、結局は森林や林業及び国土保全、水資源の涵養に大きな影響を及ぼし、災害のおそれも出てまいります。木材製品の関税引き下げ問題につきましては、こういう情勢も十分考慮して慎重かつ適切に対処してまいるつもりでおります。
 米による海外援助の問題でございますが、これまで国内産米の援助用輸出は過剰米処理との一環で処理してきましたが、過剰米処理は既に終了いたしました。新たに国内で援助用に米を生産し輸出することは、財政問題やあるいは伝統的な米輸出国、例えばタイであるとかビルマであるとか、そういう国との関係からなかなか困難な問題なのであります。食糧不足の解決には開発途上国自身による食糧増産、農業振興が重要であり、そのような農業技術指導等について今後積極的に努力してまいるつもりであります。
 次に、佐藤農林水産大臣の訪ソの問題でありますが、日ソ間の二百海里漁業交渉は、漁獲割り当て量、操業条件等におきまして、今実に苦しい、厳しい状況にございます。しかし、政府といたしましては最善の努力をあくまで尽くすという観点から、今朝、佐藤農林水産大臣を出張、訪ソさせたところでございます。漁獲量を昨年並みに確保する、そのほか沿岸漁民あるいは漁業の皆業方に心配かけないように、特に北洋漁業に従事する多数の漁業者の切実な気持ち、あるいは三陸や関東にかけての沿岸漁業等に従事する漁業者の立場等も十分考えて対処しなければならないのであります。
 ソ連漁船の寄港地の問題といたしましては、これが決定されれば、情勢に応じて安全確保のためには政府は万全を期するつもりであります。
 次に、農林水産業の振興の問題でございますが、前から申し上げるように、農は国のもとであり、農業は生命産業であると申し上げるように、重視しておるのであります。食糧の安定供給という面が一面ありますが、やはり健全な地域社会の形成、あるいは国土、自然環境の保全その他極めて重要な役割を持っております。国会の食糧自給力強化に関する決議等の趣旨を踏まえまして総合的な食糧政策を展開しております。
 後継者対策につきましても、農林水産業を志す青年に対して、技術の指導、資金の援助等各般の施策を計画的に持続的にやっておりますが、今後も充実してまいります。
 高度情報化の位置づけの問題でありますが、今後経済発展あるいは文化的な面におきましても非常に大きな影響を持ってまいると思います。豊かな国民生活、個性的で魅力ある地域社会の実現に向かって大きく寄与するように我々はこれを誘導してまいりたいと思います。また一面におきまして、政府としては個人のプライバシーの保護あるいはシステムの安定性等に配慮しつつ、積極的に高度情報化を推進してまいる予定であります。
 国際社会における日本の評価はどうかという御質問でありますが、この狭い国土に一億二千万の国民が共存して、高度の科学技術を駆使し、所得の水準が割合に格差が少なく、教育程度も高く、福祉の水準も西欧並みには到達しておるし、労使の協調、犯罪の少ない点、こういう点から見ても非常に高い評価を日本は受けている、こう考えて
おります。これはやはり、日本国憲法が施行されて四十年間にわたりまして、皆様方や国民の皆様方のたゆまない御努力によりまして、言論の自由とかあるいは人権が確保され、良好な治安状態の中で労使協調が行われておるという成果であり、我々はこれらの成果をさらに拡大し、子孫に伝えてまいりたい。その中でも、特に基本的人権の尊重、言論の自由の尊重というようなことは大変大事なことではないかと思っております。
 労働時間の短縮の問題については、これは労使の自主的努力によるものが基本であると思いますが、それをさらに援助促進することによりまして、労働時間の実態が先進工業国としてよりふさわしくなるように努力したいと思っております。この点については、山口労働大臣が精力的に努力しておるところであります。
 次に、町づくりの問題でございますが、市街地において自動車の通過交通を排除して歩行者の安全を図るための設計は、我が国においても近年計画的に都市開発を行った地域においてかなり前進しておる次第であります。今おっしゃいましたラドバーン方式を取り入れたものがかなり出てきておりまして、我々はこれを大いに助長してまいりたいと思います。今後も土地区画整理事業等計画的な市街地整備の手法によりまして、車の危険を防止し、住民の安全を守るようにしたいと思っております。要するに、町づくりというようなものは日本は短距離選手だという御指摘でありますが、私は十種競技の選手にしたいと、そう考えておるわけであります。
 地下水の問題でございますが、地下水の涵養と水道のろ過方式については、良質な飲料水の確保のために今後とも水源の保全に努めるとともに、地域の実情、水源の水質等を踏まえまして適切な浄水処理に努力してまいります。
 廃棄物につきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づきまして処理基準を設けて適切に対処しておるところでございますが、特に事業者について、その製造等に係る製品等が廃棄物になった場合、適正な処理が困難にならないようにしなければならない旨の責務を規定しておりまして、この監督を厳重にしてまいりたいと思っております。
 地方分権は、憲法に明示する地方自治の本旨に基づきましてあくまでも尊重さるべきものであると思います。負担区分等におきましても、おっしゃるように権限や財源問題もセットにして考慮すべきであるということは、十分我々も考うべき点の御指示であると思います。
 昭和六十年の地方財政対策におきましても、地方公共団体の自主性、自律性を向上させるべく財政措置の充実に努めたところであり、国の関与、必置規制の整理のための法案も今国会へ提案すべく準備しております。引き続いて機関委任事務の整理、地方への権限移譲も推進する所存であり、地方行革大綱も住民の協力を得て推進する予定であります。
 情報公開につきましては、これは臨調最終答申に指摘されておりまして、一層公正で民主的な行政運営を実現して、国民の信頼を確保する観点から取り組めと言われておるところであります。公開につきましては、六十年行革大綱において、「文書閲覧窓口制度の整備・充実、基礎的条件としての文書管理の適正化等行政運営上の改善に関する具体的方策を引き続き推進するとともに、制度化の問題についても、関連する諸制度、外国の制度運用等の調査研究を進める。」と閣議決定しております。この問題については、総務庁において情報提供の改善措置等についての推進を図ってきておりますが、今後ともこの閣議決定に即して引き続き所要の改善充実を図るとともに、制度化の問題についても幅広く調査研究を進めて対処してまいるつもりでおります。
 次に、文書の秘密扱いの問題でありますが、昭和四十年四月十五日の事務次官等会議におきまして、秘密文書等の取り扱いについて申し合わせを行っております。秘密文書の指定及び作成は必要最小限にとどめることと、秘密文書は原則として極秘と秘の二種類に区分することなど各省庁がとるべき準則を制定し、各省庁においては事務次官等会議申し合わせに即して、各省庁の文書管理規程等の中で秘密文書の取り扱いに関する規定を置いて適切に対処しているものと判断をいたします。
 医薬品その他に関する御質問がございましたから、関係大臣から御答弁があると思いますが、特に医薬品の製造承認については、その申請にデータや論文の公表を指導するなど、医薬品、食品添加物の安全性に関する必要な情報の公開に努めているところであります。
 農薬につきましても、安全性試験成績の公表の可否については、第一次的には農薬登録申請者みずからが判断するものでありますが、可能な限り今後はその公表を指導するなど、農薬の安全性等に関する情報の公開に努めてまいりたいと思います。
 民間活力につきましては、経済社会全体及び我が国民の活力をさらに増加させる、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を図りつつ持続的な安定成長を達成していくためにもまた必要であります。このためにも都市整備、社会資本の整備その他各種事業活動の分野や科学技術の分野におきまして、民間活力が最大限に発揮されるように環境整備を促進してまいります。また、社会的サービス、緑の国土づくりなどの新たな分野におきましても、これらの積極的な活用を図るようにいたしたいと思います。民間企業のみならず、市民も含めてまた国民全体の括力を回復し倍増して、これをふやしていくということにも一層努力を払っていく所存でございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(竹下登君) まず、私に対するお尋ねの一つは、不公平税制是正の徹底と、そしてまた大型間接税等々についての御意見を交えた御質問であります。
 税制の基本が公平確保にありますことは言うまでもございません。従来より、毎年度の税制改正に当たって税負担の公平化、適正化、これに努めてまいりまして、租税特別措置とかあるいはそうした問題につきましては、従来から社会経済情勢の推移に応じてそれぞれ見直しを行ってまいりました。昭和五十一年度以来、その主要な項目のほとんどにつきまして改善措置を講じてきておりますが、さらに合理化を進める余地というのは限られた状態にはございます。しかし、六十年度の税制改正におきましても、各種準備金、特別償却制度、そして全体として相当程度の縮減合理化を図
ることとしております。今後とも税負担の公平確保の観点から、社会経済情勢の変化に対応した必要な見直しは絶えず続けていかなければならないと考えております。
 そこで、それにつきまして税制調査会の六十年度答申、これでは「社会経済情勢の変化に即応し」「幅広い角度から抜本的に見直さなければならない」と述べられた上で、「既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる。」として、「既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期に来ていると考える。」と指摘されたところでございます。
 これにつきまして、政府としては税制調査会の答申の趣旨を踏まえ、税負担の公平化、適正化を推進する観点に立って、税制全般についての広範な角度からの論議を行うべき問題であるというふうに意識をいたしております。したがって、税制の抜本的な見直しは単なる増収を目的とするというものではなく検討しなければならない問題であると御理解をいただきたいと思っております。
 税体系のあり方は、究極的には国民の合意と選択によって決められるべきものでございますので、今後税制調査会を中心とした国民各層、各方面の広範な議論、なかんずくただいまも御議論のありました国会の場等における広範な議論を参考にして検討していくべき課題であるというふうな事実認識を十分いたしております。
 次に、内需拡大等の問題についての、まず減税問題が一つございます。
 所得税につきましては、五十九年度税制改正におきまして初年度八千七百億円、住民税を合わせますならば一兆一千八百億円のいわゆる本格的な減税を行ったところであります。現下の厳しい財政的事情にかんがみますならば、政府税調答申にも述べられておりますように、昭和六十年度において所得税の減税を行う余地はない、このように御理解を願いたいと思っております。
 なお、我が国経済につきましては、国内民間需要を中心に着実な拡大が見込まれるところでございますので、この機会こそまさに財政改革をさらに進めるべき適当な機会ではなかろうかというふうに思っております。
 それから公共事業の生活基盤への重点配分、これを内需拡大施策として御意見、御提言を交えての御質問でございました。
 六十年度の公共事業予算におきましては、極めて厳しい財政状況から総額として前年度を下回る水準にとどめたわけでございますけれども、一般公共事業の事業費は、種々の工夫によりまして前年度を上回る水準を確保したところでございます。
 公共事業費を国民生活基盤へ配慮すべきであるという御意見でございます。国民生活充実の基盤となります社会資本の整備については従来から配慮しておりますが、六十年度予算におきましてもきめ細かく配慮いたしまして、住宅対策でございますとか防災安全対策、生活基盤施設整備等について、制度の充実を含めてその推進を図ることとしていきたい、このように考えております。
 それから木造建築の問題でございますが、確かに木造建築でありましても制度上、補助対象となっておることは事実でございます。しかし一方、建築基準法によりまして、主として防火上の観点から、防火地域内に建築する場合、建物の規模が一定以上の場合等におきましては木造建築が制限されていますところから、実際上は近年建築される公共施設ほぼとんど鉄筋コンクリートまたは鉄骨となっております。今鈴木先生の御指摘になりました昭和五十七年から五十九年度に木造校舎を建築した公立学校一つ見ましても、十校とおっしゃいましたが、そのうちの七校は分校でございます。そして平均は百五十三平米というような実に小規模のものでございます。
 それから売却対象百六十三件、六十五ヘクタールの国有地についてのいわゆる全容公開の問題でございます。
 民活対象財産につきましては、関係省庁等と所要の調整を図りまして、調整が整ったもの、すなわち関係省庁の同意が得られたもの、これは順次公表することとしております。多くが、宿舎の問題を例にとりますならば、公表すれば入居者に無用の不安を与えるおそれがあるというようなこともございますので、入居者の移転のめどがつくまでは公表することを差し控えておるというのが実情でございます。今いろいろ調整をしておりますだけに、整ったものからは当然のこととして逐次公開すべきものであるという考え方に立っております。(拍手)
   〔国務大臣山下徳夫君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(山下徳夫君) 国鉄再建監理委員会の審議を公開にするか否か、また基本答申の前に中間報告を行うかどうかにつきましては、最終的には再建監理委員会のみずからの御判断にお任せすべき問題であろう、かように考えておる次第でございます。
 ただ、再建監理委員会では、従来から委員の方々に自由濶達な議論をしていただくために審議は非公開にしてきており、また昨年八月には、いわゆる第二次緊急提言において国鉄事業の再建に関する委員会としての基本的な認識を明らかにされ、現在基本答申に向けての検討が進められていると承知をいたしております。
 以上の諸点から勘案いたしますと、現在進められております再建監理委員会の審議につきまして、特段の意見を申し上げる必要はないかと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(金子一平君) 鈴木議員にお答えを申し上げます。
 御質問の第一点は森林の整備についてでございますが、森林の有する水源の涵養、国土の保全などの機能の向上を図るために、農林水産省といたしましては、流域を単位として地域森林計画を立て、これに基づいて森林の整備に努めてきたところでございます。これに加えて、適切な施業の行われていない森林の整備を図るために、昭和五十八年には森林整備計画制度を、五十九年には特定保安林制度を導入したところであります。ダム、集水区域にある森林につきましては、これらの制度と造林、治山関連施策の適切な実施を通じまして、今後ともその整備に努めてまいりたいと考えております。
 また、森林整備のための費用の負担問題につき
ましては、近年水資源の涵養、国土の保全等森林の有する公益的機能を高度に発揮することに対する国民的要請はますます高まっております。このような要請に応じていくためには、国、地方公共団体、森林所有者、受益者等が一体となって積極的に森林の整備を進めることが肝要であると考えております。このために、これまでも分収育林の制度化等の方策を講じてきたのでありますが、今後さらに広く関係者の理解を得つつ、水源林の整備等のための費用調達のあり方についても検討を行う考えであります。
 次に、育林事業の充実につきましては、戦後営々として造成された人工林の大半が保育や間伐の必要な森林となっており、その健全な育成のためには、育林事業の適正な促進が重要な課題となっております。このため、間伐促進総合対策や森林総合整備事業等、補助、融資にわたる諸般の施策を積極的に推進いたしまして、健全な森林の維持造成に努めているところでございます。
 また、国産材の需要喚起につきましては、木材需要の大宗を占める木造建築物の建設促進や、木材利用の技術開発と普及啓発等に努めているところでありまして、今後ともこれらの施策を充実してまいる所存でございます。
 次に、主要農作物の備蓄の問題でありますが、この問題につきましては、国内の不作や輸出国の港湾スト等による一時的な食糧供給の減少という不測の事態に対処するために、従来から適正な在庫備蓄水準の確保を図ることとしております。具体的には、後ほど申し上げますとおり、米について適正な在庫積み増しを行うこととしておりますほかに、輸入減少の事態が生じた場合に重大な支障を生じる小麦、飼料穀物、大豆を対象として所要の備蓄を実施しておるのであります。
 国民の主食であり、かつ我が国農業の基幹作物である米につきましては、国内自給を基本としつつ、適切な需給計画のもとでその安定供給を図っていくことが重要であると考えております。昭和五十九年度から三カ年間を対象として発足した水田利用再編第三期対策におきましても、現下の需給実勢を踏まえつつ、在庫保有につきましては計画的な在庫積み増しを図ることとし、六十年度におきましても、ゆとりのある米管理の確保と三回にわたる過剰の発生防止との両面に留意しながら、所要の在庫積み増しを予定しておる次第であります。
 なお、米について三百万トンの備蓄を行ったらどうかということにつきましては、消費者への古米供給が過大となり、消費の減退、ひいては過剰米の発生をもたらすおそれがあること、その結果財政負担が莫大となること等から問題があると考えております。
 最後に、休耕田を対外援助等に活用したらどうかという御質問でございますが、米については生産力が依然として需要を約三百万トンと大幅に上回っており、今後とも水田利用再編対策の着実な推進が必要であると考えております。また、休耕田を海外援助用や無農薬土づくり奨励用の水田として用いることは、その生産の効率性や技術的側面等において問題が多く、水田利用再編対策の趣旨からも疑問があると考えております。ただ、我が国の水田の有効利用や健康な土づくりの推進につきましては今後とも一層の努力をしてまいる所存であります。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(松永光君) 鈴木先生の御質問にお答えいたします。
 まず、いわゆるいじめの問題、そしてそれに関係しての人権意識を育てる教育の問題についてでありますが、今日大きな社会問題となっておるいわゆるいじめの問題は、その背景として子供の家庭環境の問題、社会環境の問題などさまざまな要因が考えられるわけでありますが、その根底には、御指摘のように他人に対する思いやり、あるいはいたわり、そういった心の欠如といった人間尊重にかかわる問題があると思われます。
 そこで、学校教育において児童生徒に基本的人権尊重の精神を正しく身につけさせることが極めて重要な課題であるという認識のもとに、従来から道徳や社会科を中心に学校の全教育活動を通じてその指導に努めてきたところでありますが、今後とも道徳教育の充実、家庭と学校との連携事業の推進など、心の教育に関する施策を一層充実させまして、児童生徒に人間尊重の精神、他をいたわる、あるいは思いやる心を身につけさせるよう努めてまいりたい、こう考えておるわけであります。
 次は、障害児の就学問題でございますが、心身障害児の教育については、障害の種類と程度に応じて、障害の程度の軽い子供は小中学校の通常の学級または特殊学級に就学をさせる、障害の程度の重い子供は盲・聾・養護学校に就学をさせて、それぞれにきめ細かい教育を行って、その障害の改善、克服を図っていくことが必要であると考えております。
 なお、盲・聾・養護学校の児童生徒が一般の小中学校の児童生徒と交流を行うことは、心身障害児のみならず、障害のない一般の子供にとっても極めて意義深いことであると思いますので、今後とも引き続きその推進を図っていきたいと考えております。
 最後に、小中学校の障害児の実態調査の問題でございますが、御承知のように、義務教育段階の子供については、その子供の就学に当たって毎年各教育委員会で就学時の健康診断を行って、心身に障害を有する者については、先ほども申し上げましたとおり障害の種類と程度に応じて盲・聾・養護学校または小中学校の特殊学級等で適切な教育を行うことにしておるところでありまして、したがって、現に小中学校の通常の学級に在学する心身障害児について、さらにその障害の種類や程度などを精査するような調査を行う必要はないと考えております。それは一面においては個々の心身障害児及び関係者のプライバシーにも深くかかわるからであります。
 以上で答弁を終わります。(拍手)
    ─────────────
#25
○副議長(阿具根登君) 中西珠子君。
   〔中西珠子君登壇、拍手〕
#26
○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、特に国民会議の立場から政府の施政方針演説に対して質問いたします。主として国際協力問題、婦人問題、老人問題などについて伺います。
 まず第一にお尋ねしたいことは、総理の国家観であります。総理はどのような国家観をお持ちなのか、お伺いいたします。
 総理は、国内的には二十一世紀の「たくましい
文化と福祉の国」づくり、対外的には「国際国家日本」の実現を図ると言われますが、毎年文教及び科学振興費、社会保障や福祉関係予算を削減、抑制しながら、たくましい文化と福祉の国づくりができるのでしょうか。
 六十年度予算においては、文教及び科学振興費は五十九年度に比べ〇・二%の伸びにすぎないのに、防衛関係費は六・九%の伸びで、GNPの一%の歯どめを近く突破することは目に見えています。日本の防衛費は過去四年間に約五〇%増加しました。国際国家日本とは、経済大国となった日本が平和と軍縮を唱えながら実質的には軍事大国、政治大国となることなのでしょうか、総理の明確なお答えを期待いたします。
 防衛費問題はどの政府演説の中でもほとんど触れられず、経済協力費の増加のみが強調されていますが、経済協力費は防衛費の五分の一以下にすぎません。特に開発途上国に対する、ODA、政府開発援助を一〇%ふやしたと外務大臣は力説されましたが、一九八一年から八五年までにその前の五年間の実績の二倍にするという国際公約は果たされておりません。一九八三年における日本のODAの対GNP比は〇・三二%にすぎず、DAC加盟国十七カ国の中の十二位であります。国連では、援助の最低基準としてODAの対GNP比〇・七%の目標が設定され、これの早期達成が要請されています。政府は国連のこの要請に対して留保した上、政府みずからが課した国際公約である中期目標も達成しないということであれば、日本の責任問題ではありませんか。
 開発途上国の経済社会発展への自助努力を助け、民生の安定と福祉の向上を図るための援助と協力は、人道的見地からいって重要であるばかりでなく、我が国の平和憲法に基づく国是であります。軍事力の増強よりも国際協力、特に経済、技術協力などによる開発援助を質量ともに改善強化し、世界のどの国とも共存共栄を図ることこそ平和国家日本の責務であると考えますが、総理の御所見を伺います。
 次に、開発援助のあり方について、また今後の政府の方針について質問します。
 まず第一に、援助対象国の選択の基準について伺います。去る一月二日、外務大臣と米国のシュルツ国務長官の会談で、米国側は日本の戦略的援助に賛意を表し、日米の調整を図ることが合意されたとの報道がありますが、日本の戦略的援助とは何ですか。今後は戦略的見地と軍事的安全保障面から援助対象国を選別するお考えなのかどうか、総理と外務大臣から明確にお答え願います。
 次に、ODAの質的改善のため、政府はどのような努力をされていますか。我が国のODAは他の先進国に比べ贈与比率や借款のグラントエレメントが低く、後発開発途上国向け援助の割合も他の先進国より劣っており、全般的にひもつき援助が多いと批判されています。特に、開発援助に占める技術協力の割合は、一九八三年は一〇・二%であり、DAC加盟国平均の二一・三%に比べると格段に低い状況にあります。
 日本の技術協力専門家の派遣や研修生の受け入れも、また我が国の高等教育機関における留学生の受け入れも年々増加してはいますが、欧米に比べると圧倒的に少ない上に、日本に研修や留学に来た開発途上国の若人たちの中には、日本に対する反感を持って帰国し、反日運動の急先鋒になったりする者が多いのはなぜなのでしょうか。政府は人づくり計画を推進するに当たり、これまでのやり方を根本的に見直し、もっと心の通ったものにする必要があると思います。また、国際技術協力を行うための日本の人材の育成も急務であると思いますが、総理と外務大臣のお考えをお聞かせください。
 限られた予算を有効に使ってODA、すなわち政府開発援助を効果的に行うには、事前の調査が徹底的に行われる必要がありますが、ODAの個々の事業のあり方や効果につき、プロジェクト進行中並びに事後の評価も肝要であります。現存の評価の仕組みでは、ほとんどが関係機関内部の自己評価に終わっている感がします。国民の血税で賄われているODAなのですから、国民の代表や関係分野の専門家を交え、客観的で公正な総合的評価が行われることが望ましく、そのような評価のための常設的、恒常的な第三者機関の設置と、フォローアップとアフターケアの体制づくりをあわせて提案したいと思いますが、総理と外務大臣のお考えを伺います。
 次に、経済摩擦、貿易摩擦との関連で、婦人問題、労働問題などについて伺います。
 私は、一昨年来数回にわたりアメリカやヨーロッパに出かけましたが、そして各国の行政府、立法府、民間団体の人々に会いましたが、日本の女性の低賃金と雇用上の差別問題や、年次有給休暇もろくにとれないような日本の長時間労働の実態が世界各国で報道されているらしく、日本は公正な国際競争をしていない、失業を輸出しているとの批判にたびたび遭遇して困ったわけでございます。
 現在、世界じゅうの国で男女賃金格差は縮小しているのに、日本だけはここ数年来、年々男女賃金格差は拡大しています。特に、輸出花形産業である電子機器や電気機器においては、五十八年度の女性の平均賃金は男性の四二%にすぎません。韓国の四五%より低いのです。
 国連の婦人差別撤廃条約を批准した国は――私は婦人差別撤廃条約とここで言います。政府は女子差別撤廃条約とお変えになったらしいけれども、婦人差別撤廃条約の方が人口に膾炙しておりますので、ここではこれを使わせていただきます。国連の婦人差別撤廃条約を批准した国は既に六十三カ国、ILOの職業、雇用上の差別禁止条約を批准した国は百七を数えているのに、日本はまだどちらも批准していません。欧米先進国は、一九八〇年代の初期までに同一労働同一賃金法や男女雇用平等法を制定し、女性の労働の権利を基本的人権として確立し、雇用上のあらゆる差別を禁止しています。
 ところが、日本では、政府がやっとお出しになった男女雇用機会均等法案は、重要な募集、採用、配置、昇進における差別を禁止していません。日本でも雇用のあらゆる段階における差別を基本的人権の侵害として禁止し、効果的な救済措置と不利益処分禁止条項などを盛り込んだ真に実効性のある雇用平等法の制定と、婦人差別撤廃条約の批准と全面実施が必要と考えます。同条約は決して婦人の家庭における役割を軽視するものではなく、家事、育児に専念するか否かは婦人の自由な選択の問題でございます。しかし、職業について働かなければならない婦人に対しては、均等
な雇用機会と待遇の平等を基本的な人権として確保することが今や世界の潮流になっております。
 経済大国日本が世界の潮流に置き去りにされないように、政府提案の男女雇用機会均等法案を多くの働く婦人が願っている方向に向かって、かつ国際的な潮流に沿って前向きに修正し、同条約の批准と全面実施に向けて努力するお気持ちがおありになるかどうか、総理と労働大臣にお伺いします。
 ことしは国連婦人の十年の最終年に当たりますが、この十年が終わりましても、まだまだ婦人問題は山積しています。婦人に対する偏見や差別は現存し、意思決定の場、政策決定の場に参画する婦人の数は依然として非常に少ないのであります。
 現在、女子雇用者は雇用者総数の三五%を占めていますが、その大多数は中小企業で雇用され、低賃金で現行の労働基準法の最低基準すら守られていない状況の中で働いています。パートや家内労働者の大部分を占めているのも婦人ですが、この方々の収入に対する課税最低限度額の引き上げも、公明党などの要求にもかかわらず、十分には行われていません。
 欧米におきましてもパートで働く婦人が急増していますが、賃金が日本ほど安くないにもかかわらず、雇用の安定と年金などの適用を求めてパート労働法制定の必要性が叫ばれており、昨年十月の国連の欧州経済委員会の会議でも、パート労働法の制定を加盟国に対して勧告しました。高齢化社会の到来で男性のパート労働者もふえてくると思います。日本でもパート労働法制定は急務であると思いますが、労働大臣の見解を伺います。
 総理は施政方針演説の中で、今国民が求めているのは心の豊かさであり、心の触れ合う地域社会の建設を目指すと言われましたが、年次有給休暇も細切れにしかとれない上、残業が多く、年間労働時間が二千時間を超える日本のサラリーマンにとっては、まず労働時間の短縮がなければ心の豊かさを得ることは大変困難なのではないかと思います。地域社会との触れ合いどころか、自分の家庭内における団らんも、子供との心の触れ合いも乏しく、子供の養育も母親に任せきりにせざるを得ないような状況では、健全な次の世代も育ちにくいのではないでしょうか。今こそ家庭教育の重要性を再認識し、心身ともにゆとりのある人間らしい生活を確保するために労働時間の短縮を図るべきだと思います。
 また、時間短縮は国際経済摩擦の解消のためにも急務であります。婦人の時間外労働規制を大幅に緩和して、国際的に批判されている男性の長時間労働のレベルに持っていくなどということは、アナクロニズムであると言わざるを得ません。この点並びに時間短縮に関する総理と労働大臣の御見解を伺います。
 次に指摘したいことは、老人介護や福祉対策の立ちおくれであります。
 人口の高齢化に伴って急増している寝たきり老人や痴呆性老人の介護対策は緊急課題であります。政府は、自助努力を奨励し、受益者負担と在宅福祉を強調しておりますが、老人問題には個人の力の限界を超える問題が余りにも多く含まれています。寝たきり老人や痴呆性老人の介護者の九割は、妻や娘や嫁である中高年の婦人なのです。老人介護問題は婦人問題と言ってもよいくらいです。介護者の高齢化、老人病院や特別養護老人ホームの不足、在宅介護への社会サービスの立ちおくれなどによって、介護する人々の肉体的、精神的負担、介護疲れに起因する病気や死亡、経済的負担による家計の破綻、また家庭そのものが崩壊するなど、そういった現象が増加しております。
 年金制度と医療保障制度の充実、老人専用病院や養護施設、リハビリテーション施設などの増設、また在宅介護に対する公的サビースの強化と多様化などを含む総合的な老人福祉の拡充とシステム化が緊急の課題であると言えましょう。この点に関し、政府の見解と対応を厚生大臣に伺います。
 福祉の切り捨てを行わないなどと言いながら、母子家庭の児童扶養手当を切り下げたり、未婚の母には支給しない、義務教育終了時で支給打ち切りにするなど、弱い者にしわ寄せして財政のつじつま合わせばかりを図るのは、全く国民不在の行財政改革と言わざるを得ません。「たくましい文化と福祉の国」づくりは美辞麗句にすぎないのではないでしょうか。今こそ民主主義の原点に立ち返って、心の通った血と涙のある施策を国民のために、また日本及び世界の平和と繁栄のためにとらねばならないのではないでしょうか。総理の所信を伺い、私の質問を終えます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(中曽根康弘君) 中西議員にお答えいたします。
 ただいま熱情あふれる御質問に感銘いたした次第であります。
 まず、国家とは何ぞやと国家観の御質問がございました。法学的定義と社会学的定義があるように思いますが、法学的には、主権、領域、国民というものを要素とする国際社会の構成単位である一つの統治組織である、こういうふうに言われるのでしょう。しかし、私はむしろ、国際社会の構成単位である祖先から子孫へ引き継いでいく運命的な文化共同体である、こういうふうに定義したいと思っております。もちろん国家を構成するのは国民でありまして、その基本的人権や国民の活動の上に民主政治が確立され、国家が運営されるものであります。したがって、国家の盛衰は国民の選択と努力にかかっていると思いますし、また国家の栄枯盛衰が国民個人個人の運命にも大きく影響してくる、こういうことであると思います。
 しかし、戦後の日本を見ますと、国家と個人の間の距離が非常に広がってしまった、そういう感
じがいたします。余り近くなり過ぎても困りますが、余り離れ過ぎても困る。適当な距離において相互作用で、両方がお互いに切磋琢磨すると申しますか、共存機能を高めていくという関係が望ましいのではないかと思います。
 二十世紀は新興独立国が随分できまして、ある一種の新しいナショナリズムの時代でもあるように思いますが、日本としては、過去の過重なナショナリズム、ウルトラナショナリズムに災いされた過去も反省をし、健全なナショナリズムの上にインターナショナリズムを確立する世界的日本人になろうではないか、こういう考え方を持っているわけであります。
 次に、防衛問題等の御質問でございますが、昭和六十年度予算におきましては、先ほど来申し上げる財政再建のこの厳しい中で、いろいろな福祉、教育あるいは老人政策あるいは心身障害者、あるいは地方、あらゆる方面に目を配ってバランスのとれた予算をつくったつもりでございまして、防衛費も、国家存立、日本の文化と独立を守るための必要最小限の経費はやはり持たなければなりません。そういう意味において配慮もしたところであり、防衛費が突出しているということではございません。
 対外経済協力につきましては、日本が国際国家として生きていく上については、これだけ経済的繁栄をしているのは世界のおかげであります。したがって、今度は世界にお返しをするという面も日本がなければ、永続的に存続できません。そういう意味におきまして、経済協力も日本の責務であると私は考えておりまして、積極的に今後とも努力してまいりたいと思います。特に、発展途上国あるいは貧しい国々、あるいはアフリカその他の飢餓に悩む国々、難民を抱えている国々、これらの国々に対しては特段の考慮をしなければならないと考えております。
 援助対象国の問題については、南北問題の根底にある相互依存と人道的考慮、これを基本として我々は社会経済開発に対する自助努力を支援しつつ、民生安定、福祉向上のために協力する、こういう考えでございます。しかし、対象国については、相手の体制いかんによってこれを差別するという考えはありません。相手国のニーズ、我が国との全般的関係等を考えて福祉と安定のために協力するという我が国独自の政策を進めているわけであります。
 人づくりにつきましては、ODAの量的、質的拡充を人づくりの上においても考えてまいります。また、ODAの質につきましては、贈与相当部分の改善に向け努力をいたします。そうして、特に今後は技術協力あるいは人材開発、こういう面について努力することは大事であると思い、国内の研修体制とか専門家の派遣とか、そのほか諸般の政策を推進してまいります。
 援助の評価という点も非常に重要でございます。第三者の積極的な活用を含めて援助の評価を公正、客観的に行われるようにし、反省もし、改善してまいりたいと考えております。内閣総理大臣の諮問機関として、民間各界の専門家、有識者をメンバーとする対外経済協力審議会を活用してまいりたいと思います。
 婦人問題につきましては、男女雇用機会均等法案、これをぜひ成立させまして、条約の早期批准に向けて努力してまいりたいと思います。これにつきましては御協力をお願いいたしたいと思います。
 労働時間の問題、貿易摩擦の問題等につきましては、我々も先進国並みの努力を今後とも努力していかなければなりません。労働時間の短縮は、労働者福祉の向上のみならず、国際協調等の確保の観点からも必要であり、週休二日制の普及、年次有給休暇の消化促進、御指摘の点は今後とも重点を置いて推進してまいりたいと思います。
 男女雇用機会均等法案における女子の時間外労働の規制の緩和、これは現段階においては男女の均等な機会及び待遇を確保するという観点から必要な措置であります。女子差別撤廃条約の趣旨に沿うものであると考えております。
 六十年度予算におきましては、いろいろ苦労して、先ほど申し上げましたような周到な配慮のもとに行ったものでありまして、福祉切り捨て予算と呼ばれるものでは断じてありません。この点を強調しておきたいと思います。
 最後に、民主主義の原点に立った国民本位の政治をこれからも実現し、民主政治の花を咲かせるように、お互いに努力してまいりたいと思っております。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(安倍晋太郎君) お答えをいたします。
 まず、我が国の援助をアメリカの戦略的な援助に使われるのではないか、こういうふうな御指摘でございます。
 確かに、今回の日米外相会談におきまして、日米で協力をしていわゆる海外に対する援助問題を進めていこう、そのための協議機関も設けようという合意は見たわけでございますが、しかし、これについては、あくまでも日本の援助は、先ほど総理が答弁いたしましたように人道的なものでなければなりませんし、あるいはまた相互依存に基づくものでなければならないことはこれははっきりしておるわけでございますから、その線を逸脱して日米で協力して経済援助を行うということは決してないわけでございます。ましてや、アメリカの戦略援助に日本の援助を使うということは、日本の援助の基本方針、建前からして絶対にあり得ません。我が国の援助の基本方針は一貫したものでありまして、日米の協議によりまして変更されるというものでないことをはっきりと申し上げておきたいと思います。
 次にまた、我が国における研修あるいは留学に
つきまして、研修制度あるいは留学生交流が行われておりますが、これは大変国際交流であるとか諸外国との相互理解の増進に役立っておるわけでございますが、しかし、先ほどお話がございましたように、確かに、日本で研修を行いあるいはまた日本で留学生として勉強をした人たちが、国に帰りまして反日運動の先頭に立っておるという例もないわけではございません。それについては私たちも十分承知をいたしておりまして、こうした事態を防ぐためには、やはり来日する研修生や留学生が我が国国民との交流を深め、可能な限り満足のいく学習環境のもとで、目的を十分達成し帰国できるような条件整備に努めていかなければならないと思っております。この点についてはいろいろと検討も加えながら、今お話しのような事態を防ぐためのこれから努力を積極的に行っていきたいと考えております。
 また、我が国の経済協力の重点分野であります人づくり協力の推進に当たりましては、御指摘がございましたように、我が国人材の育成が急務であります。政府としましても、昭和五十八年に国際協力事業団に国際協力総合研修所を設置するなど、派遣専門家の育成に一層努めてきておるわけでございます。
 最後に、我が国の海外援助の評価の問題でございますが、確かに御指摘のとおり、この点についてはフォローアップであるとか、あるいはまたアフターケアが大事であろうと思います。そして援助が効果的に、効率的に実施されなければならないことはこれは当然のことでございまして、その点につきましてはこれまでも外務省自体としても努力を続けておるわけでございますが、しかし、今後はさらに文化人であるとか有識者等にもいろいろと御意見をいただき、また評価あるいはアフターケア、フォローアップ等にも御協力をいただきまして、援助が公正に行われるように客観的な評価の実施に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣山口敏夫君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(山口敏夫君) 男女雇用機会均等法案への御質問でございますが、御質問いただきまして大変ありがとうございます。
 と申しますのは、本法案は女子差別撤廃条約の雇用の分野における要請を満たしておりまして、同条約の早期批准を図るためには、本法案の今国会での早期成立を強く期待しておるところでございまして、御審議のほどもあわせてよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 特に、政府の男女雇用機会均等法案は、六年にわたりまして、公労使三者構成の婦人少年問題審議会の建議や多くの婦人団体、中西先生も婦人問題で御活躍でございますが、各界の婦人の皆さん方の御意見も踏まえながら作成した経過もございまして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するため、現段階においての理想と現実の接点、最大公約数として適切なところであると、こういうふうに考えておるところでございます。
 また、パートタイム労働者でございますが、年々増加の傾向にございまして、五十八年には四百三十三万人、そのうち女子が三百六万人でございまして、女子雇用者数千五百万人の中に占める割合は約二〇%強となっております。このようなパートタイム労働者の増加は、家庭責任へのロイヤリティーを持つ主婦の生活、家庭経済でのニーズと企業側のニーズがマッチした結果でもあると考えておりまして、労働省におきましても、パートタイム労働者について、労働基準法等現行法規の履行確保等を通じて、その労働条件の確保を図っていきたいと考えております。
 さらに、昨年十二月、パートタイム労働者の労働条件等について、労使が考慮すべき事項を示した指針、労働省の施策を盛り込んだ総合的なパートタイム労働対策要綱を策定したところでございまして、これに基づいて労使に対する行政指導を進めてまいりたいと考えております。
 また、最後の御質問は、労働時間短縮と婦人の時間外労働規制緩和の問題でございますが、日本人の勤勉性、技術革新の進展による我が国産業の国際競争力の優位が、労働時間の実態と相まちまして、貿易摩擦の問題等を論ずる際に、日本人は働き過ぎである、こういう誤解も招いている点もございます。しかし、労働時間の短縮は、本来、労働者福祉の向上とともに、長期的に見まして、雇用の維持確保の観点からも推進すべきであるというふうに私考えております。
 特に、技術革新の時代、ロボット化、オフィスオートメーション、そうした中での雇用の変動にいかにマッチしていくか、また人生八十年代におけるライフサイクルの立場から見ましても、雇用の延長、定年延長を進めていかなければなりません。昭和六十年の六千万人の労働人口がさらに五百万人の増加が見込まれておるわけでもございまして、これらの人々に仕事を確保、分配することが、社会の安定、国民の安心の基本と考えますし、またそのことが自由経済、流通経済を守り、発展させることにつながると確信しております。
 産業政策の推進の面と一人当たりの労働時間の短縮の中に、労働力人口の増加吸収を今から真剣に取り組む必要があると考えております。したがいまして、労働時間短縮の解決は、本来、年次有給休暇の完全消化が望ましいのでございますが、何せ国民の勤勉によって今日の日本の安定が成り立っておるわけでございますし、国民の先頭に立つべく内閣総理大臣がみずからの内閣を仕事師内閣と命名し、正月元旦早々からアメリカまで出かけ働いているわけでございますし、また受ける国民の皆さん方も働き好きでございます。したがいまして労働時間の短縮と休暇の拡大を進めておる労働大臣といたしましては、ひたすら、労働問題と雇用問題の置かれている現状を御理解いただ
き、国民の皆さん方に御協力をお願い申し上げているところでございます。
 労働省といたしましては、当面週休二日制の普及とゴールデンウィークにおける休暇の拡大等の普及に重点を置いて、労使の自主的努力を援助促進したいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
 老人に対する各種施策の拡充についてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、我が国の人口構造は急速に高齢化しており、老人に対する施策の充実はますます重要になっております。
 医療保障の面については、老人保健法に基づき医療費の保障を行うとともに、壮年期からの保健事業を総合的に実施しております。
 また、老後の所得保障の中心となる年金制度については、高齢化のピークを迎える二十一世紀においても安定的に運営できるよう、現在年金改正法案を参議院で御審議いただいているところであります。この法案の一日も早い成立をお願いいたします。
 寝たきり老人等の介護の問題については、家庭での介護を援助するための家庭奉仕員の増員、ショートステーの拡充を図ると同時に、御指摘のような家庭において介護できない老人については、特別養護老人ホームの整備等施設福祉対策を進めてまいります。
 また、老人専門病院については、社会福祉・医療事業団の融資や公的病院のデーケア部門に対する補助を行うことにより、その整備を推進してまいる考えであります。
 これらの施策については従来から特に意を用いているところでありますが、今後ともその充実に努力してまいりたいと思います。さらに、医療と福祉、施設と在宅との中間的機能を有するいわゆる中間施設のあり方についても検討を行うなど、このような老人の処遇の充実の観点に立って幅広い検討を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
#31
○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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