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1984/06/07 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 本会議 第20号
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1984/06/07 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 本会議 第20号

#1
第102回国会 本会議 第20号
昭和六十年六月七日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十一号
  昭和六十年六月七日
   午前十時開議
 第一 米州投資公社を設立する協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)
 第二 半島振興法案(衆議院提出)
 第三 国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第五 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第六 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第八 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件(衆議院送付)
 第九 行政書士法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
 第一〇 住居表示に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
 第一一 米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 岩動道行君から海外旅行のため来る十二日から九日間の請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ─────・─────
#5
○議長(木村睦男君) この際、日程に追加して、
 昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。竹下大蔵大臣。
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
 御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあり、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定向上を図るためには、引き続き財政改革を強力に推進し、財政の対応力の回復を図ることが緊要であります。
 このため、政府は、昭和六十年度予算におきまして、特に、歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本とし、あわせて歳入面についてもその見直しを行い、これにより公債発行額を可能な限り縮減することとして編成したところであります。
 まず、歳出面におきましては、既存の制度、施策の見直しを行うなど徹底した節減合理化を行い、その結果、一般歳出の規模は前年度に比べ三億円の減額となり、これは昭和五十八、五十九年度に引き続き三年連続の対前年度減額であります。
 他方、歳入面におきましては、税負担の公平化、適正化を一層推進するとの観点から税制の見直しを行うとともに、税外収入について、極めて厳しい財政事情にかんがみ、可能な限りその確保を図ることといたしております。
 しかしながら、これらの措置をもってしてもなお財源が不足するため、昭和六十年度におきましては、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等の停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。
 本法律案は、以上申し述べましたうち、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置として、同年度における特例公債の発行、国債費定率繰り入れ等の停止、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例について定めるものであります。
 次に、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は、今後の国債の大量の償還、借りかえに円滑に対応するため、国債整理基金特別会計について所要の措置を講じようとするものであります。
 すなわち、年度内に償還される短期の借換国債の発行及び償還をこの会計の歳入歳出外で行うことができることとするとともに、翌年度における国債の整理または償還のため、借換国債を前倒し発行することができることとしております。
 また、政府に無償譲渡された日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式のうち売却可能分を、国債の償還財源の充実に資するため、この会計に帰属させることとするなどの措置を講ずることとしております。
 最後に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は、ただいまも申し上げました政府に無償譲渡された日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式のうち政府の義務保有分を、産業投資特別会計の資本の充実に資するため、この会計に帰属させることとするなどの措置を講じようとするものであります。
 以上、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ─────────────
#8
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。大木正吾君。
   〔大木正吾君登壇、拍手〕
#9
○大木正吾君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました三法律案について、中曽根総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 国債の累積残高が百三十三兆円、その利払い費が歳出総額のほぼ二割に当たる十兆円近くに達し、社会保障費をも上回る事態に至りました。そして、福祉抑圧の反面、防衛費のみを突出させる予算を断じて許すわけにはまいりません。これまでの国会論議を通じて、財政再建にビジョンなき発言を繰り返してきた中曽根総理に対し、私は改めて将来の財政運営についての基本認識を問い直さざるを得ないのであります。
 第二次石油危機以後の自民党内閣、とりわけ中曽根内閣の経済運営は、言葉では内需拡大を唱えながら、現実には国民各層の負担増や福祉減退を顧みることなく、結果として国内需要を抑制し、外需依存の政策運営を行ってまいりました。それは、政府経済見通しにおいて、その実績が当初見込みに対し、常に外需の寄与度が増大してきたことに如実に証明されております。
 その結果、対外経済摩擦に関しての米国議会の行動に象徴されるごとく、厳しい対日要求が打ち出され、市場開放策の早期実現の要求に加えて、純然たる国内政策であるべき内需拡大策の実行を海外から要請されるというぶざまな状態に立ち至っています。厳しい財政事情を理由に、財政面からの内需拡大策を講ずる余地がないというのは、一行政事務官の発言ならともかく、一国の政策運営の頂点に立つ総理、あなたの発言としては余りにも無策、無責任と指摘せざるを得ません。また、大蔵大臣、あなたは財政運営の責任者としてどう考えておられますか。
 今必要なのは、それすらも実現することができなかった機械的な赤字国債圧縮計画に固執して、一般会計を見せかけ粉飾し、後の世代や地方公共団体に負担のツケ回しを行い、数字合わせをすることではないでしょう。事実上、死に体となっている財政再建計画を、経済実態に適合し、実効の上がるものに組みかえ、その実現を着実に推進することではないでしょうか。私はこのような立場に立って質問を行いますが、まず総理、大蔵大臣の財政再建に対する基本認識を承りたいと考えます。
 五十年度以降の赤字国債の大量発行下において、これまで政府が取り続けてきた行政改革の名のもとでの各種の措置によって、小さな政府による効率的な運営のもとで良質な行政サービスを供与するという当初の目的が達成されつつあると言えるでしょうか。現実は全く逆ではありませんか。去る五月十七日、各野党の反対を押し切って成立を見た補助金一括削減法に象徴されるように、補助金そのもののあり方や国と地方の財源配分を抜本的に見直すことをせず、ただ単に六十年度の国の財政収支じりを合わせるためにきゅうきゅうとして地方への負担の肩がわりを強行するなど、国、地方の行財政の簡素合理化という行財政改革の基本理念に反する方向をとり、国と地方との正常な財政秩序を乱していることは極めて遺憾であります。
 また、五十九年度の財源確保法では、政府は、政策転換の名のもとに、それまでかたく公約し、かつ各年度の特例公債発行の根拠法に法定してきた借換債発行の禁止規定を過去にさかのぼって削除することによりまして、建設公債と同様に借りかえるという、財政節度を守るための最後の歯どめをみずから放棄したのであります。これにより、財政再建の一つの目標であった特例公債依存財政脱却からの目標年次が、五十九年度から六十五年度に、単に六年先送りされるだけでは済まなくなったのであります。すなわち、特例公債を借りかえないという条件下での五十九年度脱却の持つ意味は、特例公債の残高は昭和六十八年度にゼロとなるということでございました。しかし、借りかえ禁止規定を削除したことによりまして事態は一変いたしました。
 国債の借りかえは、一般会計ではなく国債整理基金特別会計において行われるのであります。したがいまして、一般会計における新規財源補てんのための特例公債の発行は、六十五年度脱却を目指して減少させていくことができたといたしましても、借換債の発行は国民の目の届かない特別会計において行われ、しかも六十年間にわたってこれが繰り返されるのでありまして、その結果、特例公債は最後の発行年度である昭和六十四年度からさらに六十年間も存在し続けることになったのであります。これはまさに見せかけだけの財政再建と言うべきでありまして、国の財政の深刻な危機的状況を国民の目から隠ぺいし、もって赤字財政の病根を我が国財政の体質にさらに深く根づかせることとなったと言わざるを得ません。
 昨年、この法案は、委員会での審議に一月半を要し、今後の公債政策に対して厳しい注文をつけた異例の附帯決議を付することを条件にようやく決着を見たのでありますが、ここで決議された財政再建の手順と方策の具体的明示、公債の償還方法と減債基金への繰り入れのあり方の見直しなどについて、一年を経た今、どのような検討をなされたのか、明確な答弁を求めるものであります。
 このように財政の実態がますます悪化の一途をたどる中で、総理は税制改革について並み並みならぬ意欲を見せておられます。総理のおっしゃる税制改革とは何なのか。そもそも制度の改革とは、まずもって現行制度の欠陥に着目をして、これを除去することから始められなければなりません。現行税制や税務執行面において、積もり積もった不公平や不公正の根を抜本的に掘り起こし、その根を断ち切ることによって、国民が納得をして納税できる制度、環境に改めることではありませんか。しかるに、これまでの総理の国会答弁では、六十一年度以降の要調整額を増税によって穴埋めしようとの考え方を含めての税制改革を受けとめざるを得ないのであります。
 また、総理の言う公平、公正、簡素、選択、そして活力とは一体何なのでしょうか。具体的な改革の中身を示さず、単なる美辞麗句、単語の羅列では、その内容を国民は理解することはできません。近い将来における増税時代の到来、それもインフレを刺激し、所得の低い層にいくほど逆進的になる大型間接税の導入必至と国民は不安を抱いているではありませんか。国民は現行税制についての不公平、不公正に強い怒りを持っているのであります。
 四月に発表された国税庁の税務調査によると、申告所得税についての調査対象件数十五万五千件のうち、その九四・六%、十四万六千件に申告漏れがあり、その申告漏れの金額は五千三百億円に達しているのであります。この傾向は法人についても同様であります。このような不正の事実が法治国家において恒常的に発生している現実を放置していいものかどうか、大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 また、去る三月二十七日のサラリーマン税金訴訟の最高裁判決は、給与所得者と他の事業所得者との所得の捕捉率の格差が厳然として存在する事実を認め、租税公平主義の見地から税務当局に対しその是正を厳しく迫っているのであります。いわゆるクロヨン問題解消のためにどのような方策をとろうとされるのか、具体的にお示しを願いたいのであります。
 さらに、企業に対する各種の準備金、引当金等の特別措置、そして法人の配当に係る法人擬制説に基づく各種の税の軽減制度等々、経済的強者にして初めて利用できる制度はまさしく租税公平主義に反するものでありまして、これら不公平の源は、現行の税制度、そしてさらにゆがめてきた特別措置にあることは明らかであります。
 重ねて申し上げますが、税制改革とは、国民の重税感の源となっているこれらの不公平、不公正の根を断つことではありませんか。シャウプ税制の精神に立ち返って租税特別措置を全廃し、改めて国民生活、国民経済の実態に即した政策税制に組み直すことが税制改革ではないでしょうか。そのための積極果敢な税務当局の行動がとられなければ、サラリーマンや正直に申告している中小企業にうっせきしている不満は爆発して、深刻な納税忌避運動に発展しないと言い切れましょうか。また、最近アメリカ政府は税制の画期的な改革を打ち出しました。所得税三段階、法人に関する特別措置の全廃がその骨格となっています。それらと関連し我が国の税制の見直しをどう進めるのかをあわせて、総理、大蔵大臣の見解をお伺いいたします。
 財源確保法案では、特例公債の発行のほか、歳出削減の一環として厚生保険特別会計への繰入額を九百三十九億円削減し、将来これを繰り戻すことといたしております。つまり、同特別会計において生じた五十九年度の黒字分をそっくりそのまま一般会計に取り込み、その返済は後年度にということであります。この措置は、厚生保険特別会計に無利子の赤字国債をある時払いで引き受けさせるという安易な借金政策にすぎず、特例公債の減額努力の至らなさをここでも粉飾していると言わざるを得ません。問題はそればかりではありません。この特別会計の政管健保の勘定は、六十年度末において五千七百四十二億円の累積赤字を抱えているのであります。単年度において黒字が生じたからということで、これを直ちに一般会計に取り込んで費消してしまうということが許されることでしょうか。保険勘定において黒字が生じたすれば、保険料率の引き下げをこそ図るべきではありませんか。今回の措置は全く理解できないのでありまして、大蔵、厚生両大臣の説明を求める次第であります。
 また、この法案は、国債整理基金特別会計への国債費の定率繰り入れを本年度も停止しようとしております。この定率繰り入れは、国債の償還財源を確保するための減債基金制度維持の最重要な柱でありまして、国債に対する国民の信頼を保持し得てきたのもこの制度が機能したからと言えるでありましょう。
 しかし政府は、昭和五十七年度以降、財源不足を理由に定率繰り入れを停止し、ために国債整理基金の償還財源は六十年度末においてわずか九千五百億円を残す状況となり、六十一年度の現金償還額一兆九千五百億円は六十一年度の定率繰り入れをもってして初めて償還可能となるという、減債基金としての機能はもはや果たし得ない窮状を呈しているではありませんか。減債基金制度をこのような状態に至らしめた政府の責任は重大であります。国債に抱かれた財政と言われる今日において、国債の償還財源を枯渇させるに至った責任をどのように感じておられますか。そして、六十一年度は定率繰り入れを停止することはないということを断言できますかどうですか、大蔵大臣の見解、所信を伺います。
 次に、日本電信電話株式会社及び日本たばこ産業株式会社の株式問題についてであります。
 電電株七千八百億円、たばこ産業株一千億円の株式すべてが政府に無償譲渡されたのであります。今回の法改正におきまして、売却可能分は国債整理基金特別会計に帰属させ、その売却収入を国債償還に充て、政府保有が義務づけられている分は産業投資特別会計に帰属させ、その配当収入を技術開発に充てることといたしておりますが、特に電電株式については、これまでの民間移行に関しての審議経過や衆参逓信委員会の附帯決議から見ても極めて重要な問題点を含んでおります。
 すなわち、株式の売却方法や公開のあり方がこれから検討されるという段階であり、かつ六十年度予算にもその売却収入が計上されていないにもかかわらず、今回の法改正により一方的に政府が結論を出したことの責任は重大であります。衆議院段階においてこの問題についての責任はついに明確になされませんでした。改めて売却収入の使途のあり方の変更を求めるものであります。
 新会社の資産形成の経緯にかんがみ、また巨額の負債を背負ったまま発足することを回避するために、売却益をまずもって電電債の償還に充てるべきではありませんか。原案から電電株式に関する部分を削除し、特別立法とすべきであります。そして売却収入の一定額が電電債の債務償還に充てられるよう修正すべきでありましょう。総理の責任ある回答を求める次第であります。
 また、電電公社の資産が国民共有の財産であるとの共通の認識を尊重して、その売却のありようによっていやしくも利権が生じたり、特定の個人や法人への株の集中が行われるような事態は絶対に排除されなければなりません。一切の不明朗な動きを遮断して、ガラス張りの中で売却が実行されなければなりませんが、政府としてどのような手段、方法をとられるかが明らかでありません。株式を広く国民が所有できるよう電話加入者から募集するとか、安定株主確保の観点から地方公共団体に保有させ、また経営民主化を図るため、社員持ち株制度を存分に活用すべきではありませんか。そして、これらの売却のあり方について万全を期するために、さらに新会社の財務状況や決算の状況を参考とするためにも、株式の売却を少なくとも二年程度凍結をし、論議を深めるべきと考えます。総理、大蔵、郵政三大臣の所信を承りたいと考えます。
 以上、私は、中曽根内閣がとってきました。また今後とろうとしている経済財政政策に対し大いなる疑問を呈しつつ、税制改革を含めて財政再建のあり方について、また本年度の財源確保のための法案外二法案に対し質疑をしてまいりました。私が冒頭、総理の財政再建の基本理念についてその所信を求めましたのは、今こそ新しい観点からの財政改革が必要だからと考えるからであります。我が国の財政がフイスカルポリシーの名のもとにそれまでの均衡財政主義を破って国債を導入してから二十年となりますが、事態は悪化の一途をたどってきています。
 時あたかも貿易摩擦はアメリカを中心に燎原の火のごとくヨーロッパ、東南アジア等世界の各地に広がり、日本が集中砲火を浴びています。今こそ内需拡大への政策転換をなすべきではありませんか。また、この間巨大な利益を得た階層に負担を求めるべきではありませんか。一般会計の財政収支じりのみにとらわれた経済財政運営を改めて、内需拡大策による税収増を図る本来の経済財政政策を今こそ打ち立てなければ国民は救われません。赤字財政亡国の道を歩むこととなることは明確であります。総理、大蔵大臣の見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(中曽根康弘君) 大木議員にお答えをいたします。
 まず第一は、財政再建の基本認識でございます。
 我が国の財政事情は、昭和五十年代の二度の石油危機を受け、また世界不況のあおりを受けまして極めて厳しい状況にございます。そういう意味で、前内閣におきましては、五十九年度赤字公債依存体質脱却という大きな旗を掲げまして全力を尽くしてまいりました。現内閣におきましても、六十五年度赤字公債依存体質脱却という大きな目標を掲げまして全力を振るっておるところでございます。これがためには、やはり歳出歳入全般にわたる総点検、あるいは税外収入の確保、あるいは弾力的な経済運用の方策等々、適切な政策を複合的に適用しまして、これらに対する対策を続けてまいりたいと思っておるところでございます。今後とも来年度の予算編成等におきましても、同じような考えに立ちまして厳しい環境に立ち向かってまいるつもりでございますが、また一面におきましては税の問題も出てきております。
 しかし、税の改革というものは、御指摘のように、公平、公正等の原則を適用して新しい税の体系をつくろうというので、増収を目的にやるものではないのでございます。シャウプ税制以来の長い間の日本の税構造にひずみができ、あるいは不公平感、重税感が広がりつつございます。これらを一掃して、そして簡素な、公平な、公正な、選択を重んじた、民間活力を考えた税体系に変えていこう、そういう考えに立ちまして、一つの長期的な問題、課題としてとらえてこれに取り組んでまいりたい、そのように申し上げておるところなのでございます。
 次に、特例公債の借換債発行の問題でございますが、昨年の本院大蔵委員会における五十九年度財確法の審議の際、特例公債の借換債発行の問題についていろいろ議論させていただいたこともよく記憶しております。中期的に見まして、我が国の財政事情は極めて厳しい状況に置かれており、経済や国民生活への影響を考慮しつつ財政改革を進めていくためには、特例公債の借換債発行を行わざるを得ないと判断いたしたものでございまして、正直に申し上げれば、遺憾なる事態であると申し上げざるを得ません。しかし、その残高をできるだけ速やかに減少させるように努めていくべきものであり、今後の財政事情の中でできるだけ早期償還に努力してまいるつもりでございます。
 次に、五十九年度の財確法の附帯決議の検討状況でございます。
 政府としても、この附帯決議を真剣に受けとめまして、財政制度審議会における御審議を特にお願いいたしましたほか、関係資料を提出する等その御趣旨に沿って最大限配慮、努力をしてまいったつもりでございます。大蔵大臣からも御答弁がございます。
 次に、税制改革につきましての御質問でございますが、ただいま申し上げましたような観点に立ちまして行いたいと思っております。この際、レーガン大統領が提出いたしました税制改革案というものについては大きな関心を持っておりまして、アメリカにおける議会審議の状況等も十分見守って参考にいたしたいと思っております。率直に申し上げて、私は、今のような重税感あるいは公平感回復という面から所得税、法人税等の減税を行いたいと念願をいたしておるものでございまして、そういう観点を踏まえましても、今後いろいろ検討してまいりたいと思っております。
 次に、電電株式の処理の問題でございます。
 電電の株式は国民共有の資産であります。そういう意味におきまして、これを国民共有の負債である国債の償還財源とすることが適当である、そのように考えました。なお、電電株式会社法により既に国に帰属した株式の売却収入で株式会社の債務償還を行うことは、いわば補助金を交付するという形にもなります。そして新規参入者と競争上のアンバランスともなります。そういう意味におきまして、今回の改革の趣旨に反すると考えざるを得ないのであります。なお、電電株式の売却方法につきましては、今後、民間有識者等の意見も聞きながら、公正かつ厳正に、適切に対処してまいるつもりでおります。
 財政政策の転換の御質問でございますが、サミットにおきましては、各国がインフレなき持続続的成長を図る、このために財政金融政策を節度あるものにして財政赤字の克服、削減に向かって皆共通に努力する、そして民間活力の増大等を期して行うというような点が私たちの頭に残った政策であると思っております。現在の厳しい状況からいたしまして、このようなサミットにおける合意を踏まえまして、かつ対外経済問題諮問委員会の諸提言も十分尊重いたしまして政策運営に当たりたい。もちろん今後とも内需中心の経済成長の達成も十分考慮してまいらなければならないと思っております。従来も、行財政改革を進めつつ、景気にはできるだけ配慮したところでございまして、六十年度の予算におきましても、一般公共事業の事業費については前年度を上回る水準を確保しておるものなのでございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(竹下登君) まず、私に対する御質問の第一、第二は、財政再建に対する基本認識、そして昨年の大蔵委員会等での野党の追及に対しての認識。これにつきましては総理からもお答えがございましたが、いずれにせよ歳出面においては、政府と民間の役割分担並びに国と地方の機能分担及び費用負担のあり方、これを見直すなどをして、連年の努力を踏まえて節減合理化に今後とも積極的に取り組んでまいらなければならぬと考えます。そして一方、歳入面においては、税制調査会等からの指摘、そして本国会等での御議論を踏まえまして、税制調査会で今後御検討をしていただきつつ、税制全般にわたる広範な角度からの議論と検討を今後とも進めていくべき課題だと思います。そういう考え方の上に立って、最終的には国民の選択がどのようなものであるか、これを国会の議論等を伺いながら、幅広い角度から検討を進めていくべきであると考えます。
 昭和六十五年度までに特例公債依存体質から脱却する、この努力目標達成には容易ならざるものがございます。しかし、今後とも各方面にわたって最大限の努力を払って、財政改革を強力に進めていかなければならないと意識しております。
 次は、前国会の批判に対してでございますが、私の脳裏にも強烈に焼きついております。御承知のとおり、我が国の財政事情は中期的に見ても極めて厳しい状況に置かれておりまして、こうした財政事情のもとで今後六十五年度脱却を目指して財政改革を具体的に進めていく、そうなると特例公債についても、当面、四条公債と同様、借換債の発行を行わざるを得ないということから、御指摘なさいましたように政策転換を行ったわけであります。しかし、あくまでも特例公債は、本来その残高をできるだけ速やかに減少させることに努めるべきものであります。おっしゃいましたとおり、六十年間にわたって今後、子や孫やひ孫の時代にツケを回すという、そういう考え方を何とかぬぐい去っていくぎりぎりの努力を払って早期償還に努めてまいる所存であります。
 それから財確法の附帯決議でございます。
 このときに私は大蔵委員会で正確にお答えをしております。「具体的な歳出削減計画とか、増税計画といったものを策定してお示しすることは無理だと思われますが、目標達成に至るいろいろな道筋についてどのようなものができるか、今後工夫してまいりたいと存じます。」、このようにお答えをしたわけであります。したがって、その附帯決議に沿いましていろいろ考えてみました。結果として、財政改革を進めるに当たっての基本的な考え方、そして中期展望、これらを引き続き国会にお示しするということになったわけであります。
 しかし、新たに加わったこととして、税制全般についての幅広い角度からの今後の検討、補助金のあり方についての抜本見直し、そして国債償還財源の充実に資するために電電株式を国債整理基金へ三分の二帰属させる、そういう将来の方向というものを少しでも明らかにしようという精いっぱいの努力が今次の法律案となって御審議いただく段階に至ったわけであります。そしてこの問題につきまして、さらに国債整理基金特別会計への繰り入れのあり方につきましては、これまた本附帯決議を踏まえ、財政制度審議会において御審議、御報告をいただいたところであります。政府としてもその御趣旨等を踏まえて対処してまいる所存であります。
 それから次が税の問題でありました。
 クロヨンという言葉に象徴されるような不公平感や不満感があることや、税務調査事績等を見ますと過少申告を行う不誠実な納税者がいることも事実であります。しかし、大多数の納税者は誠実に申告しているものという基本認識に立っております。したがって、私どもといたしましては、課税の公平確保は税務行政における最も重要な課題だ、こういう認識の上に立ちまして、税務調査の充実、執行面における納税環境の整備、地方税当局並びに税理士会やら関係民間団体等との協力関係の確保、そして内部体制の整備、これらにできる限りの努力を重ね、実調率等も上げることによって重ねて努力を進めてまいりたいと考えます。
 それから我が国の税制改革の基本方針、これは先般のレーガン提案と比較しての御意見を交えての御質問でありました。
 この問題につきましては、まさに既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期に来ている、この異例の指摘をまずいただいた。そこで、国会の議論等を踏まえまして、公平、公正、簡素、選択並びに活力という基本的考え方をお示ししておるわけでございますが、単なる増収を目的とするということではなく、まさに社会経済情勢の変化に即応する税制のあり方を国民的課題として取り上げていこう、こういう考え方で対応してまいりたいと思います。政府として、現段階で、したがって税体系の具体的なあり方について予断を与えるような論議をすることは差し控えております。
 レーガン大統領の税制改正構想についての御意見がございましたが、これは現段階ではまだ詳細には承知していない点もございますものの、また今後のアメリカの議会での論議等の推移を見なければならないことでございますけれども、昨年十一月の財務省が提出しました税制改正案の基本的考え方がおおむね盛り込まれておると思います。そして今度の場合には、要するにアメリカ政府が、連邦税収の九割を占めております個人所得税と法人所得税について、まさにこの制度の基本的な仕組みの変更を含む大胆な改革の方向を示したということは、非常に興味深く受けとめておるところでございます。したがって、今後の税制議論の中にも、この問題はいろいろな角度から議論が出てくるであろうと予測される課題であると認識しております。
 それから政管健保の繰り入れの問題でございます。
 これは、非常に一般会計が厳しい状況のもとで、一般会計から多額の給付費補助等を受けております政管健保において単年度収支差が生ずることに着目をいたしまして、いわば会計間の繰り入れの特例という調整措置としてこのことをお願いしたということでございます。したがって、この問題については、あくまでも会計間の調整措置であるという事実認識に立っております。
 次の定率繰り入れの問題でございますが、まさにやむを得ないと考えてお願いをしておるところでございますが、やはりこの減債制度の根幹は将来とも維持すべきものであるというふうに考えております。したがいまして、この問題、六十一年度はどうするか。これは御指摘のように国債整理基金の資金状況、これを見てみますと、確かに問題をはらんでおります。したがって、この基本的考えを踏まえながら、今後ぎりぎりの六十一年度予算編成に対応して適切な処理を行うべき課題だと思っております。
 次が電電株の売却問題であります。
 売却収入を新会社の債務の償還に充てるべきだという意見があることは私も承知しております。一方、私どもとしましては、国民共有の資産である電電株式の売却収入は国民共有の負債である国債の償還財源とするのが適当であるという結論に立ったわけであります。なお、電電株式会社法によって既に国に帰属した株式の売却収入で株式会社の債務償還を行うことは、これは考え方によれば補助金を交付するということにもなるわけであります。そして一方、新電電は、債務だけでなく資産もすべて一括して継承しておりますほか、新規参入する電気通信事業者の方はみずから資金調達を行って設備投資等を行うということになっておるわけであります。したがって、いわば民営にいたしました原点の、競争上の問題のアンバランスというものも生ずるではないか。したがって、ぜひ御議論の上、原案のとおり御議決を賜りたいという気持ちであります。
 それから今度は売却方法、公開のあり方という問題、御意見を交えた御質問であります。
 電電株式の売却収入の使途につきましては、国会での御審議等を踏まえまして、予算編成過程におきまして政府部内で検討を行いまして、先ほど申し上げましたように、国民共有の資産を国民共有の負債へと、こういう判断の上に立って、この売却可能分を国債整理基金特別会計に帰属させることにしたわけでありますが、一方、政府保有の義務づけられている株式につきましては、産業投資特別会計に帰属させて、その配当金を技術開発等に活用させることとしたところであります。そして、電電株式の売却方法、これにつきましては、これは何分初めてのことでございますので、今後、民間有識者の方々の意見等を聞きながら、また国会での議論等を踏まえ、まさに厳正、公正、適切に対応すべき課題であると思っております。
 それから売却の方法についての一つの考え方が述べられました。今回の電電公社の民営化というのは、将来の高度情報社会に向けて、事業の公共性に留意し、民間活力を導入して事業経営の一層の活性化を図ることを目的としておるわけでございますから、その趣旨から見れば、政府がいつまでも全株式を保有するのは望ましいことではないという前提の上に立っております。
 さて、具体的な売却時期はどうか。これは会社の運営、経済の動向等を総合勘案して決定していく必要がありますので、現段階で確たることを申し述べることはこれはまさに困難でございます。だから、今後こういう点を十分に検討を加えて、適切な時期を模索していきたいというふうに考えるわけであります。そして、たびたび申しますように、いささかも国民に疑惑を抱かせることのないよう、また、いささかも国益を損ずることのないよう、まさに公正かつ適切な売却方法等について慎重に検討をしなければならないと考えておるわけであります。
 次が内需問題であります。
 我が国の経済は、設備投資等国内民間需要を中心とする自律的拡大局面に今日ございます。他方で我が国財政が巨額の公債残高を拘えておる、そういう厳しい状況にあります。したがって、内需の拡大に財政が積極的な役割を果たすという環境にはないと言わざるを得ません。総理からもお答えがありましたように、先進国全体の考え方というものは、ボン・サミットにおきましても示されましたように、インフレなき持続的成長を維持する、そのための節度ある財政金融政策を維持強化するということが日本についても私は必須の課題であると考えるわけでございます。したがって、いろいろな御議論がございますけれども、それそのものについては慎重に検討すべき課題であると考えるわけであります。
 以上をもって私のお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
 お尋ねの今回の措置につきましては、一般会計が極めて厳しい状況のもとで、政府管掌健康保険におきましては単年度収支差が生ずることに着目いたしまして、特例的に会計間の繰り入れ調整を行うものであります。この減額分につきましては、今後の財政状況を勘案して繰り戻しを行うこととしておりまして、政管健保の適正な運営を損なうものではございませんので、御理解をいただきたいと存じます。
 また、政管健保の黒字が今後とも継続するものであるかどうかは、いましばらく時間をかけて見きわめることが必要でございまして、将来的には人口の高齢化、医学医術の進歩等によりまして医療費は増加の傾向にあることから、現時点におきまして黒字が生じたことをもって直ちに保険料率の引き下げを行うことは適当ではないと考えるものでございます。(拍手)
   〔国務大臣左藤恵君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(左藤恵君) 大木議員の電電株式の売却に関する御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 電電株式は、国民共有の貴重な財産であって、その売却に当たってはいささかも国民に疑惑を抱かせることのないよう、今後、公正適切な売却方法や時期等について十分検討さるべきものと考えております。
 この問題につきまして、ただいま所管大臣であります大蔵大臣からお答えがありましたが、郵政省といたしましても、電電株式の持つ重要性にかんがみまして、深い関心を持って大蔵省とも十分意思を疎通させてこの問題に対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。(拍手)
    ─────────────
#14
○議長(木村睦男君) 桑名義治君。
   〔桑名義治君登壇、拍手〕
#15
○桑名義治君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案外二法案につきまして、総理並びに大蔵大臣に対して若干の質問を行うものでございます。
 まず、財政再建に対する中曽根内閣の基本姿勢について伺います。
 国の一般会計予算の一般歳出は三年連続して据え置いたり、国債発行額の一兆円減額を行うことで、中曽根内閣は、国民に対してあたかも行財政改革が進められているかのように誇示しております。しかし、それには重大な問題をはらむ粉飾的会計が含まれているのであります。すなわち、国債費定率繰り入れの停止による財源の大幅な先食いや、特別会計、地方財政、財政投融資等の広範囲にわたってのいわゆるツケ回しによって、形の上だけのつじつま合わせがとられているのであります。国の財政の根幹である一般会計は、本当の国の財政事情を示さないものになっているばかりでなく、財政全体の姿も不明瞭となり、行財政改革のスローガンのもとで財政制度を乱すこと甚だしいと言わなければなりません。
 また、我が国財政は、今年度末で百三十三兆円の国債残高を抱え、さらに毎年巨額の国債発行を続けざるを得ないという危機的状況にあります。その上、今年度は赤字国債の借りかえがなされる最初の年であります。赤字国債の借りかえは、従来、政府の公約とされ、法律にも明文化されてきた赤字国債の借りかえ禁止の歯どめを一挙に放棄することによって実施されるものであり、政府みずからの財政運営の節度を踏みにじるものであります。財政再建がことごとく失敗したその責任と、今後の財政再建に対する総理の基本的見解をお伺いしたい。
 次に、六十年度に満期の到来する赤字国債は約二兆三千億円でありますが、同年度に予定している赤字国債分の借換債発行予定額は一兆九千億円であります。満期到来分の約八三%を借りかえようとしております。これは建設国債と同じ償還ルールを適用するものであり、経常経費に充当すべく発行された赤字国債を今後六十年間にわたって残存させようとするものであります。財源確保法において赤字国債の借りかえは「できる限り行わないよう努める」という規定が設けられているにもかかわらず、今年度の予算措置は事実上それをほごにするものであり、国債残高の減少に向けての政府の努力の姿勢は全く認められず、断じて容認できない措置であると考えます。赤字国債を含めた国債の残高を削減する具体的方途を国民の前に明示する責任があると考えますが、政府の御所見をお伺いいたします。
 次に、減債基金制度について伺います。
 政府は、五十七年度より四年連続して、減債基金制度の根幹であります国債費定率繰り入れを停止するという安易な財源調達策を強行し、国債償還財源を枯渇させることによって財政危機を一層推し進めてきており、財政当局の責任は極めて重大であります。定率繰り入れを基本とする現行の減債制度については、財政制度審議会においても基本的には現行の仕組みはこれを維持するのが適当であるとの報告がなされている一方で、四年連続の定率繰り入れ停止が行われているのは、国債政策の将来に関して国民に不安の念を抱かせる以外の何物でもありません。国債整理基金特別会計法の改正により、今回、日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式のうち、売却可能分を国債償還財源に充てるという窮余の策がとられようとしておりますが、この措置が定率繰り入れを六十一年度以降も停止させる誘因となることが危惧されています。その対処方法を明確にしていただきたい。
 また、六十年度からは大量の借換債発行が本格化し、それを含めた国債発行額が二十兆円を超すこととなる。また、法律改正により借りかえの円滑化のための一年未満短期国債の発行が予定されている。期近債を含めた短期性の証券が市中に常時豊富に滞留することになり、こうした状況は新たな金融商品開発の誘因となることが避けられません。それは規制金利下にある銀行預金と真正面から競合し、金利自由化を加速させることとなると思われるが、特に短期国債の発行形式のあり方を含め、今後どのようにして全体の金融システムのバランスを保ちながら自由化を進めていくのか、財政当局の見解をお伺いいたします。
 また、市中に滞留する長期国債残高の累増と多様化が進み、借りかえ操作が日常化するという事態に至っているのであるが、政府は国民の国債に対する信頼を得るためにも確固とした国債管理政策を確立すべきであると考えるが、その具体的方策についてお伺いいたします。
 また、国債償還のための短期国債の発行額は歯どめなく累増することが心配されると同時に、新規の財源調達とはならない借換債であるという理由から、現行の乗りかえ方式と同機、日銀引き受けが行われることも危惧されるのであります。さらには、借換債の年度越え前倒し発行は、財政法の要請する会計年度独立の原則から逸脱するものであり、極めて重大な問題を含む措置であります。日銀引き受けを行わないことを確約できますか。また、短期国債の発行累増に対する具体的歯どめ策についてどのようになされるのか、お伺いいたします。
 次に、日本電信電話株式会社及び日本たばこ産業株式会社の株式問題についてお伺いいたします。
 新電電株式の売却収入を国債の償還財源とすることは極めて財政中心主義的な措置であり、今回、株式会社としたことは、事実上財政再建の手段になっていることを如実に示しております。永年にわたって蓄積されてきた公社資産が、行財政改革の一環としてではなく、自民党政府の失政によってもたらされた財政破綻の後始末のために費消するということは容認しがたい措置であると考えますが、政府の明確な答弁をいただきたい。また、株式の売却方法については、国民にいやしくも疑問を抱かせることのないよう、公正かつ適切な方法によってなされるべきと考えるが、その具体的方策について財政当局はどうなさるおつもりか、お伺いいたします。
 産業投資特別会計に帰属することとなる株式に係る配当収入の使途については内容があいまいでありますが、国民生活の向上に役立つ基礎的研究等に重点的に配分されるべきであると考えますが、政府の今後の方針についてお伺いいたします。また、産投会計からの一般会計への繰り入れを恒久化するなどして、一般会計の財源補てん機能を持たせるような同特別会計の根本的な性格の変更をもたらす法律改正を行おうとしておりますが、産投会計の財政投融資における原資供給機能について政府はどのように位置づけようとされているのか、御見解を伺いたいと思います。
 以上、提案されました三法律案につきまして質問をいたしましたが、その中には財政の帳じり合わせに腐心した糊塗策が多く含まれ、財政再建どころか後世に限りない負担を押しつけるものと言わざるを得ません。
 以上の諸問題について総理並びに大蔵大臣の誠意ある答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(中曽根康弘君) 桑名議員にお答えをいたします。
 まず第一は、財政改革の理念と評価の問題でございます。
 先ほど申し上げましたように、五十年代におきまする二度の石油危機に遭遇いたしまして、国民経済も世界経済も不況のもとにさらされまして非常に厳しい財政状況になりましたので、前内閣から引き続いて今財政再建あるいは財政改革に懸命に努力しておるところなのでございます。与えられた条件のもとでは最善を尽くしておるつもりでございますが、しかし不十分である点も多々あると反省はしておるところでございます。大体におきまして、六十五年度赤字公債依存体質から脱却するという大枠をつくりまして、その大枠を一つ一つ実現していくために毎年度具体的に一つ一つ物事を処理していきたいと思っております。
 しかし、これらの厳しい財政事情のもとにおきましては、必ずしも理念どおり、あるいは理論どおりいかない点もございまして、ある程度の妥協を行いつつ、しかも急激なショックを避けていく。金融や経済の問題につきましては急激なショックが一番禁物でございますから、そういう配慮をもちまして一つ一つ段階的に処理さしていただいておる。そういうことでございまして、単なるつじつま合わせとは考えてはおらないものなのでございます。
 赤字国債の借換債発行の問題でございますが、厳しい財政事情のもとで、経済や国民生活への影響等も考えながら、特例公債についての借換債の発行を行わざるを得ない段階であると判断をいたしました。しかし、六十五年度赤字公債依存体質脱却に向かっては全力を注いでまいるつもりであります。これらも急激なショックを避けるという措置としてやむを得ざるものと御了承していただきたいと思うのでございます。
 財政改革に対する認識と今後の進め方につきましては、ただいま申し上げましたとおりでございますけれども、歳出歳入全般を厳しく見直し、あるいは税外収入の確保、あるいはそのほか経済政策の運用等もまちまして努力しておるところでございます。赤字公債の依存体質からの脱却も、五十四年度におきましては、予算におきましては赤字公債依存が大体三四・七%依存しておったのでございますが、六十年度におきましては二二・二%に下げてまいりまして、こういう面におきましてはやはり前進をいたしておるものなのでございます。
 それから六十年償還ルールの問題でございますが、今後、六十五年度赤字公債依存体質脱却を目指して財政改革を具体的に進めていくために、厳しい財政事情のもとで急激な変化を避けるために、特例公債についても、当面、四条公債と同様のルールにより借換債の発行を行わざるを得ないということになりましたのは遺憾でございます。しかし、特例公債は本来その残高をできるだけ速やかに減少させるよう努めていくべきことは御指摘のとおりでございます。今後の財政事情のもとにおきましても、できるだけ行わないように努力すること、そうして速やかにこれを減債させるという方向で努力すること、早期償還に今後も努力してまいるつもりでございます。
 次に、公債償還財源についての具体的計画でございますが、現行の定率繰り入れ制度を維持することを基本として対処してまいりたいと思っております。
 次に、短期国債の歯どめと日銀引き受けの問題でございます。
 短期の借換債も、償還のために発行される情換債の一種でありまして、発行額が償還額の範囲内という内在する歯どめがあります。国債残高の累増をもたらすことはないと思います。また、その発行は適切な国債管理政策の観点から行われるべきということは御指摘のとおりでございます。今後とも短期の借換債を含め、日銀信用を現行以上に拡大する考えはございません。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(竹下登君) 桑名さんにお答えいたします。総理からもお答えのあった点、できるだけ重複を避けるようにお答えしたいと思います。
 特例公債の償還ルールにつきましては、国会での御議論等も踏まえて、幅広い角度から検討を行いますとともに、財政審において議論を重ねていただきました。その結果が、当面、四条公債と同様のいわゆる六十年償還ルールによることと、これは現実的な選択としてやむを得ないというふうに判断をしたものでございます。したがって、特例公債については、本来その残高をできるだけ速やかに減少させるよう努めていくべきであるということは申すまでもないことでございますので、この特例公債を将来にわたり六十年かけて償還するということではなくて、今後の財政事情の中で、努力規定の趣旨を踏まえ、可能な限り早期償還のための努力を続けなければならないと考えております。したがいまして、最大限の努力を重ねて、六十年度予算編成も発行額そのものを一兆円減額するということにしたわけであります。今後とも毎年毎年の努力の中で財政改革の推進に全力を挙げなければならぬと思います。
 それから今後の国債償還額は巨額なものとなる見通しでありますが、今後の償還財源の確保については現行の定率繰り入れ制度を維持することを基本とする、この考え方はいつまでも持つべきであると思っております。それで、公債の残高については、特例公債は本来その残高をできるだけ速やかに減少させるよう努めていくべきものであることは言うまでもありません。したがって、先ほども申し上げましたように、将来にわたり六十年というものの償還方法を定着させようというようなことは考えておりません。
 ただ具体的に、では今からその計画を示すということになりますと、なかなか困難な問題があるわけであります。公債残高の対GNP比は、これまでのような上昇をさせるようなことのないようできるだけ低い水準にとどめる。そうして今度はどの程度対GNP比というものをめどにするかということになりますと、経済情勢や財政事情に不確定な要素が多いために、具体的な数字で示すことは非常にこれは困難な問題でございます。したがって、毎年着実に発行の縮減を図るというところから始めていって、公債残高の対GNP比の上昇テンポをまず落として、次は可能な限りそれを引き下げていくという方向にわたって長期の努力を要することであろうと思うわけであります。
 それから定率繰り入れを四年も連続停止したではないか、これは国民に不安の念を抱かせると。確かに、やむを得ざる措置として御理解を賜りたいと思います。やはり減債制度というものは国債の国民に対する信認を維持するためのものでございますので、したがって今後の問題ということになりますと、それこそ六十一年度以降の償還財源の確保については、現行の定率繰り入れ制度を維持することを基本として、そしてまた将来にわたる償還財源の充実に資するためには、今般の電電株式等の売却可能分を国債整理基金特会に帰属させていただくことでお願いしようと、こういうことになっておるわけであります。
 しかしながら、その次の問題は、電電株式とかたばこ株式の国債整理基金特会への帰属というものができれば、言ってみれば定率繰り入れ停止ということに対してイージーになるではないか、こういう御指摘であったと思います。
 しかし、やはり何回も申し上げますように、総合減債制度の基本、この基本は維持していくべきであるというふうに考えておるわけであります。それで、この電電株式の売却収入等を将来の国債償還財源に充てるということは、国債の償還を進める上で大変心強い支えとなることは言うまでもないことでございますけれども、電電株式の売却につきましては、一体、株式市場にどのような影響を与えるのか、いろいろな角度から慎重に進めていく必要がございますので、したがって現段階でそれを確たる見通しとして申し上げることは困難な点が多いということでございます。六十一年度以降、やはりこの定率繰り入れの取り扱いは、まさにそのときどきの財政状況と国債整理基金の資金状況、これらを考慮しながら現行の減債制度の仕組みを維持していくという基本認識の上に立って対応すべき課題であると思っております。
 それから短期国債についてお触れになりました。
 預金金利の自由化につきましては、目下、CDの発行条件の弾力化、MMCの導入等大口預金から着実に実施しております。短期の借換債の発行が金利の自由化や金融市場等へ与える影響は、その具体的細目によって異なってくると考えられますけれども、これについては法案の成立後、金利自由化の進展状況あるいは既存の金融商品との競合とか資金シフト、そういうことから市場に及ぼす影響に配慮して、関係方面の意見も十分聞きながら検討することとしておるわけでございます。
 それから次が、国債管理政策にもっときちんとした確固たる方針を立てよという御指摘でございました。
 五十年度以降大量に発行された国債の満期が到来するということになりますので、大量の国債の償還とこれに伴う借換債の発行、消化、これを先ほども申しましたように市場への影響、これらに配慮して国債管理政策を行っていくということは大変重要な課題でございますので、これまでも巨額の国債が発行、消化、流通などの各局面において国民経済に円滑に受け入れられるように、発行条件の弾力的改定とか国債の種類及び発行方式の多様化、これらに工夫を重ねてまいりました。
 そこで、新たに金融機関におきまして五十八年からは国債の窓口販売、それから五十九年六月からいわゆる国債のディーリング業務が開始されて、これらによって今後一層の円滑な消化が図られることの期待が持てるというふうに考えておるわけであります。国際管理政策の基本は、やはり新規財源債の発行額を縮減していくということを基本に考えていかなければなりません。その上で、その市場の条件等を的確に把握して機動的、弾力的に対応していきたい。そこで、この短期の情換債の発行や年度を越えた借換債の前倒し発行といった新たなる方策を六十年度から実施ができますように、いわば制度改正の法律案を今お願いした、こういうことになるわけであります。
 それから会計年度独立の原則といわゆる短期借換債との問題についてであります。
 財政法第十二条はいわゆる会計年度独立の原則を定めております。これはいかなる例外も認められないものではなく、合理的な理由があれば年度越えの措置をとることも可能であるとされておりますが、繰越制度等の例外がそれでございましょうが、借換債の年度越え前倒し発行、これは年度当初に見込まれます大量の国債償還に円滑に対応するためぜひとも必要な措置でございます。どうしてもあるときに片寄ってまいりますが、しかし予算をもって国会の議決を経るという歯どめも設けておりますので、会計年度独立の原則の例外として特に問題があるというふうには思っていないところであります。
 それから短期国債の発行の歯どめの問題と日銀引き受け。このことは、まさに私どもといたしましては、短期の借換債にはその発行額が償還額の範囲内に限られるという内在する歯どめが一つあるわけです。したがって国債残高の累増をもたらすものではない。そして、実際の発行に当たっては、国債管理政策の適切な運営という観点からこれを行っていく所存でございます。そして、もとより短期の借換債を含め、国債の消化に当たって日銀信用を現行以上に拡大する考えは、これは全く持っていないところであります。
 それから電電株の問題でございます。
 これは先ほども申しておりますが、国民共有の資産である電電株式の売却収入は国民共有の負債である国債の償還財源とするということにつきまして、種々の議論を重ねた結果、法律でお願いをいたすことになったわけであります。したがって、その売却方法はまさに公正適切に行われなければならぬ。今後、本当に国会の議論を聞き、そして民間の有識者の意見を聞き、経験のないことでございますだけに、慎重な上にも慎重を期して対応したいと思います。
 それから産投会計についての御議論でございました。
 産投会計に帰属することになるこの株式配当金は、六十一年度以降、産投会計の運用収入として受け入れられて、他の収入と合わせて、この会計の投融資財源として技術開発等に活用するというのが基本であるというふうに申し上げます。
 そして、今後の財投原資における産投会計のあり方につきましては、産投会計は、今度の会計法の改正によりまして電電、たばこの株式がこの会計に帰属する、今後、原資の充実がそれによって見込まれる。そこで技術開発、中小企業対策等産業の開発等という目的に即した投融資を行うことによって、財政投融資計画の中で重要な私は役割を果たしていくではないかというふうに考えておるわけであります。
 産投会計というのは、御案内のようにガリオア・エロアから始まりまして、社会経済の推移に伴っていろいろ目的が変わってきておりますだけに、今後これが運営につきましては、時代に即応した現実的な対応をすべきものという基本認識の上に立っておることをさらにつけ加えさしていただきます。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
    ─────────────
#18
○議長(木村睦男君) 柄谷道一君。
   〔柄谷道一君登壇、拍手〕
#19
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となりました昭和六十年度の財源確保特別措置法案等三法案に関連し、まず政府の財政運営全般について、総理並びに関係各大臣の御所見を伺います。
 昭和五十九年度末、我が国が抱えている国債発行残高は約百二十二兆円にも達し、その利払い等の国債費は六十年度予算ではついに社会保障費の総額を超え、これが大きく財政を圧迫しております。このような事態を今後も放置し続けるならば、財政の弾力的対応を阻害し、民間資金の締め出しや財政インフレを招いて我が国の経済に混乱をもたらすばかりか、早晩、大増税を余儀なくされ、臨調答申の二大目標である「活力ある福祉社会の建設」と「国際社会に対する積極的貢献」を根底から崩壊させるおそれのあることを憂えるものであります。
 しかるに、最近、その財政再建、経済財政運営の方策をめぐって、行政改革、緊縮財政万能論と、行革棚上げ、経済拡大万能論という両極端の議論が展開され、政府・与党内にすらコンセンサスが得られず、有効な予算編成や経済運営の確たる方向が見出されていないことはまことに遺憾と言うほかはありません。前者の論をとれば、経済の縮小均衡につながり、不況と国民生活の停滞という五十五年以来証明済みの失政を繰り返すだけであり、後者の論は、それでなくても実効を上げていない行政改革をつぶし、その行きつく先は大増税しかないからであります。今、政治に携わる者に求められているのは、財政破綻の原因を客観的に峻別し、それに基づいて有効な対応策を速やかに確立することであります。
 私は、財政赤字の要因は、高度経済成長時代が終わりを告げたにもかかわらず、行財政の改革を怠って経常支出の増大を続けてきたことと、中期的視野を欠く単年度単式簿記的発想で予算の帳じり合わせにのみ終始し、我が国の潜在的経済成長を引き出せなかった経済財政運営の失敗が複合したものであり、両者を短絡的に混同させることなく、これを並立させる政策の展開こそ求められていると思うものでありますが、総理、大蔵、経企庁の各大臣と河本国務大臣のしかとした認識を明らかにしていただきたい。
 総理はこれまで幾たびか、「臨調路線を踏襲している政府としては拡大均衡というわけにはいかない」との見解を明らかにされているが、失礼ながら、これは財政破綻の要因を混同し、行財政改革の本旨を忘れたものと言うほかはありません。総理は、去る四月九日の対外経済対策についての記者会見の席で、「貿易は拡大均衡でなければならない」旨の発言をされていますが、貿易についての拡大均衡についてはその必要性を認め、かつそれを達成しようとされるにもかかわらず、国内の経済財政政策においての拡大均衡は頭から否定され、その実現のための努力をされようとしないのは不可解であります。総理の真意をただします。
 行革与党をもって任ずる我が党は、もちろん肥大化した行政機構を簡素合理化し、効率的な仕事減らし、人減らしによって行政コストを減らすために今後も全力を傾ける決意でありますが、これと並行して積極経済政策を採用することは何ら相矛盾するものとは考えておりません。総理は今も臨調路線と拡大均衡経済財政運営とは相入れないものとお考えでしょうか、総理の明快な御説明をいただきたいと思います。
 同時に、財政赤字要因を峻別する上に立って、大幅所得税減税や投資減税の実施、公共投資の拡充、住宅減税の充実などの積極的経済政策を推進し、もって増税なき財政再建を達成しようとする我が党の提唱をどのように評価されているのか、総理及び大蔵大臣、経企庁長官並びに河本国務大臣の見解を求めます。
 次に、中期経済財政計画について伺います。
 具体的数字の裏づけのない計画はおよそ計画という名に値せず、目標達成のための計画なき公約は空理空論にしかすぎません。私は、予算委員会において政府に対し、今後あるべき経済財政の目標値や政府の政策選択を具体的に盛り込んだローリングシステムによる中期経済計画並びにそれと政策的連続性と整合性を持った中期財政計画を早急に策定するよう要求し、みずからも中期経済財政計画の骨格と政策方針を提示するとともに、与野党間でこの問題について真剣に討議を深めるため、財政の中期展望の主要経費別内訳を提出するよう求めました。しかるに総理は、民間活力の活用を声高に述べるだけで、政府の政策選択に言及することを意図的に回避し、その中期的視野を全く示さず、今後の財政再建のための具体的計画や対処方針を何ら明らかにしないまま、今年度も財確特例法等によって見せかけの帳じり合わせをしようとしております。
 また、昨年末の与野党予算案折衝の際に自民党の藤尾政調会長も前向きの検討を約されているにもかかわらず、我々の要求した資料の提出を拒み、財政再建にかかわる与野党間の本格的政策協議の扉を大きく開こうとはしておりません。私は、先見性と実効性を持たず、ただ、増税なき財政再建とか六十五年度赤字国債脱却という公約を並べ立てるという姿勢は無責任であり、国民に将来に対する不安感、不透明感を与え、民間の経済活動に対する足かせとなり、今後の持続的な適正成長の実現を妨げるおそれがあると指摘するものでありますが、さきに述べた政府の二大公約を達成するための具体的裏づけとプロセスを明らかにするよう求めるとともに、ローリングシステムによる中期計画を策定、提示する用意ありや否や、総理及び大蔵大臣、経企庁長官の見解を求めます。
 政府はこれまでにも制度の根本的改革につながらない表面的な赤字抑制措置を多用してきましたが、それは六十年度においても、政管健保の国庫補助の繰り延べ、住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べ、住宅・都市整備公団補給金の当初予算計上見送りなどの形で多く見受けられます。このような措置は、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりでなく、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味で極めて問題であり、我が党は、このような措置は今後行わず、既往の措置は早急に解消するよう政府に求めるものでありますが、大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。
 最後に、来年度予算編成、内需拡大の二点についてお伺いいたします。
 まず第一に、来年度予算編成に向けての概算要求基準の策定に際し、政府は、今年度の場合と同様、経常部門マイナス一〇%、投資部門マイナス五%の方針で臨まれるのか否か、またその際例外項目は設けるのか、設けるならばその対象は何か、さらに来年度の定率繰り入れ等は行う方針なのかどうか、行わないとすれば予算繰り入れによって対処するつもりなのか、同時に、来年度予算編成においては一兆円の赤字国債減額を最優先課題とするのか否かについて、総理並びに大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
 第二に、内需拡大問題に関連して、我が国における輸出課徴金制度の導入、機械に対する輸入促進税制の創設、赤字国債とは性格の異なる建設国債の適度な増発のおのおのの是非について、総理、大蔵大臣、通産大臣、河本大臣のお考えを承りたい。
 また、いわゆる無税国債の発行についての総理、大蔵大臣、河本大臣のお考えをあわせてお伺いいたします。
 以上について、政府の率直かつ誠意ある答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(中曽根康弘君) 柄谷議員にお答えをいたします。
 関係大臣が多うございますから、要点をお答えいたします。
 まず、財政赤字の原因の御質問でございますが、やはり二度にわたる石油危機によって世界経済及び我が国経済が冷えてまいりまして、成長が低下し、税収の伸びが大幅に鈍化したということ、それからいわゆる福祉元年に象徴される社会保障等の公共サービスの拡充がたまたまこの時期に遭遇して、当時見通した予定収入の激減が出てきたという点等が大きな原因ではないかと思います。近年におきましては歳出を極力抑制してきておりますが、これらの結果、公債残高累増、結局、公債の利払い費の急増ということが新たな歳出増加の大きな要因になっておりまして、財政体質の改善を困難にしてきているというふうに考えておる次第であります。
 次に、積極経済政策と行政改革の両立の問題でございますが、政府といたしましては、行財政改革を強力に進めると同時に、その枠内におきまして内需中心の経済成長の達成を図っていくということは矛盾するものとは考えておりません。今後とも景気動向等に応じまして適切かつ機動的な経済運営を図ってまいる所存でございます。
 次に、対外経済政策の問題でございますけれども、やはり保護主義の抑止、貿易の拡大均衡を目指して内需中心の持続的成長を図る、それと同時に、我が国市場へのアクセスの一層の改善、輸入の促進等を図り、一方においては米国の高金利やドル高の是正を主張していく、こういうように総合的な政策として内外政策を調和させて行うべきものであると考えます。
 民社党が御提唱なさっておりまする積極経済政策への所感でございますが、ただいまのような行財政改革の理念のもとに適切に行うことは、私は価値あることであると考えておるのでございます。
 次に、増税なき財政再建及び六十五年度赤字公債依存体質脱却の中期計画の問題でございます。
 六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標の達成は容易ならざるものでございますが、我々は懸命に努力してまいりたいと思っております。歳出歳入の総合的な見直し、あるいは税外収入の確保、適切な経済運営、民活、こういうようなものを幅広くあらゆる角度から複合的に行いまして努力してまいりたいと思います。なお、増税なき財政再建は財政改革の基本理念であると考えており、財政改革を進めるに当たっては、この理念の果たしてきている役割をも念頭に置きつつ対処してまいるつもりでございます。
 中期経済計画の問題につきましては、一昨年、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を策定いたしました。この中におきましては、事態の変化と時代の要請に適合した柔軟なローリングプラン的な考え方に沿って毎年見直しを行う、そして内容をより具体化していくということを決めておるところでございまして、今後ともこの線に沿って努力してまいるつもりでおります。
 中期財政計画につきましては、政府におきましても、中期展望及び仮定計算例等を国会に提出して御批判をいただいておるところでございます。歳出歳入の各項目のあるべき水準や国民負担率等の目標値を含んだ定量的な財政計画の策定は、経済全体が流動的である中で極めて困難であると考えております。
 概算要求の問題でございますが、我が国を取り巻く環境は依然として厳しい。高齢化社会あるいは国際社会に対する責任の増大等もございます。そういう意味におきまして、財政の改革を強力に推進して、その対応力の回復を図ってまいる必要がございます。六十一年度予算編成に当たりましては、歳出歳入両面にわたってぎりぎりの努力を行う必要があり、概算要求についても厳しい基準を設定せざるを得ないと考えております。
 定率繰り入れの問題でございますが、六十年度末になりますと、大体来年一兆六千億円の繰り入れをしなければならぬのに残っておる国債整理基金の金は九千億円しかない、こういう状況になる可能性がございまして、この取り扱いにつきましては、六十一年度の財政状況あるいは国債整理基金の資金状況等を考慮する必要がありますが、現行の減債制度の仕組みを維持するという基本的考えを踏まえて適切に対処したいと思います。
 公債の減額の問題でございますが、これにつきましては、六十五年度特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げという努力目標のもとに、最大限の努力を積み重ねてまいります。今後の財政事情等諸般の情勢を総合的に勘案いたしまして、公債の減額については努力してまいるつもりでおります。
 さらに、輸出課徴金の問題でございますが、輸出課徴金構想については、自由貿易にもとる措置であること、変動相場制のもとでは所期の効果を達成し得るか疑問であること、これを日本がやろうという空気が出てくると、米国側において輸入課徴金を先にやろうという導入の引き金となるおそれがあること、輸出に依存している中小企業に対して甚大な影響を及ぼすおそれがある等の問題がありまして、これを導入する考えはありません。
 輸入促進税制につきましては、現行の法人税制は何らの内外の差別を行ってはおらず、現行制度が輸入面における障害となっておるとは考えておりません。税制面における特別措置によってどれほど輸入拡大効果があるかは疑問の点もありまして、輸入業者等に単なる恩恵を与えるおそれもなきにしもあらずであり、慎重な検討が必要であると考えております。
 次に、建設国債、無税国債の問題でございますが、公共投資等の景気拡大効果は、近年、経済社会構造の変化等から低下していると考えされており、その財源を建設公債の増発によることとすれば、金利の上昇要因となって、かえって景気に悪い影響を与えるおそれもなきにしもあらずであります。こういう点から慎重を要すると思います。
 また、無税国債といえどもあくまでこれは借金でありまして、真の財源にはならないという基本的な問題があるほか、税制上の問題や金融市場への影響等の問題がありますので、これも慎重な対応を要するものと考えております。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(竹下登君) 財政赤字の要因は何ぞと。これは総理からもお答えがございましたが、私は財政制度審議会から五十九年の一月にちょうだいしました答申に表現がよくあらわされておると思います。「より基本的には、経済の趨勢の変化に伴い税収の伸びが大幅に鈍化した中で、既存の各種制度、施策の見直しが十分行われなかったことにもよる」と、これは総理のお答えのほかに私はいつも念頭に置いておる指摘であると思っております。
 それから第二番目の行革の問題でございます。
 これも総理からお答えがございましたが、行財政のあらゆる分野において聖域なき見直しを行う、こういう基本姿勢でこれからも臨まなければならぬと思っております。それから今の設備投資等をどう見るかということにつきましては、自律的拡大局面にあるではないかというふうに見ております。一方、財政は巨額な公債残高を抱えておる、そこにいわゆる財政出動という環境にはないと言わざるを得ないわけでございます。したがって、一刻も早く対応力の回復を図ることが必要であると考えます。
 それから所得税減税、投資減税、住宅減税等々あるいは建設国債等に対するこれはまさに御意見を交えた御質問でございました。
 今のような状況のもとに、私は財政が積極的役割を果たすという環境にはないと申し上げたわけでありますが、所得税減税問題ということになりますと、基本的に言えることは、それが後世代に負担を転嫁するところの赤字公債の増発によって賄われてはいかぬということでございますが、それ以上は今、国会の御議論等を正確に整理して、今後、税制調査会あるいは各党間の話し合い等がございますので、具体的に評価するのは控えておきたいと思います。
 それから投資減税につきましては、国内民間需要を中心に着実な拡大が今見込まれておるという段階でございますので、投資、そして費用対効果というような点からいろいろ考えて、六十年度の試験研究促進のための減税、これが現段階では精いっぱいの配慮であったというふうに思います。
 それから住宅減税、いわゆる住宅ローンの返済額に対する所得税制上の特例の問題でございますが、これは御案内のように五十八年改正で引き上げた、そしてこれは今日四百数十万円の所得の方の税額に匹敵する、こういうことになるわけであります。
 それから建設公債の増発でございますが、確かに最近は景気拡大効果は落ちてきておりますが、これそのものが一時的に税収増を見込めるということも十分承知しております。しかし問題は、一度それだけを増発いたしますと、それが定着した場合に、やはり一時的な増収のほかの、残高としてはやはり後世代に三・七倍の負担を負わすことになるという点に留意しなければならぬと思うわけであります。
 それから財政再建計画の問題、具体的な手順、これはもう国会のたびたびに御指摘いただくところでございます。したがって、一生懸命これは勉強いたしてみました、半歩でも一歩でもそうしたものを出したいと。しかし結果として、なかなかこのことは、経済が流動的な中でその一部分であります財政の面において定量的なものを出すのは非常に難しい問題でございます。しかし、いろいろな角度から、法律を改正したり、あるいは今度もお願いしておりますいわゆる電電株の売却益の処理の問題でありますとか、あるいは今後の税制改正の問題でありますとか、そういう方向を明示することによって、少しでも御要請に応じていく努力はこれからもしなければならないというふうに考えておるところでございます。
 それから財政操作によっていわゆる赤字隠しをやっているのじゃないかと、こういうことでございます。
 やはり予算をつくりますに際しましては、言ってみれば、それぞれの施策をめぐる状況からして、各種会計間のいわば調整措置とかいうようなことはこれは通常行われるべきことでございますので、意図的に赤字隠しの措置というふうには私どもは考えておりません。
 それから六十一年度予算のシーリング問題についての御質問でございました。
 これはまだ決めたわけではございませんが、総理からもお答えがありましたように、いずれにしても容易ならざる六十五年度までの特例公債依存体質からの脱却、そして公債依存度の引き下げに努めるということになると、これは厳しい厳しいものにならざるを得ないというふうに考えております。
 さらに、その際の定率繰り入れ問題でありますが、いわば国債整理基金の資金状況等を考慮する必要がございます。それで、減債制度の仕組みは基本的に維持するという考え方で、ぎりぎりの際に私は決定すべき問題だというふうに思っておるわけであります。
 それから特例公債の一兆円減額、これも決めたわけではございませんが、御案内のとおり、単純平均いたしましても一兆一千五百億円ずつ、機械的に計算すればそういうことになります。したがって、今決めたわけではございませんが、いわば毎年毎年の予算編成の中でこの減額には努めていかなければならぬというふうに考えております。
 それから輸出課徴金の問題は総理からお答えがありましたが、私の角度から、変動相場制のもとでは輸出抑制の効果を達成し得るかどうか疑問だという議論も一つつけ加えておきます。
 それから機械に対する輸入促進税制、これもいわゆる内外平等の議論というものから考えましたときに、税制上なじむかどうかという問題がございます。それから仮に一度導入しますと、その改廃をめぐって相手国と申しますか、外国からいろいろ介入がなされるという可能性というものも留意しておかなければならない問題だと思います。
 それから無税国債の問題がございました。
 この無税国債というのは、一般的に無税国債と言われますが内容はいろいろあろうかと思います。要するに問題は、相続税の負担の公平を著しく失うこと、相続税というものに対する考え方が優遇措置として念頭にあったとすれば。これは我が国の相続税は児孫のために美田を買わず式な思想がありますだけに、この相続税負担の公平を全く失することになる。それから相続税の意図的な回避手段となる、だから相続税の根幹を崩すと。それからもう一つは、国民に与える印象として、アングラマネー保有層を対象に国が施策をとるということになりますと、これは国民全体に与える印象というのはよほど注意しなければならぬ問題だと思います。
 消化面での問題では、金利で魅力をつけて大量発行、消化すれば、今度は他の金融商品とのいわば急激な資金シフトが起こってしまうというようなこともございます。今度は少量にとどめたらどうかという意見もございますが、そうすると、だれが買うかと、いわゆる国民全体の中からは不公平感が出てまいります。それから国債に向かう総資金が、それができたからといってそれだけのものがふえるかということも疑問視される点があるということであるわけでございます。が、基本的には、今総理からもお答えありましたように、無税であろうと有税であろうと借金は借金だということをやはり心して対応すべき課題であると考えます。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(金子一平君) 柄谷さんにお答え申し上げます。
 財政赤字の原因につきましては、既に総理、大蔵大臣からお話がございましたので簡単に申し上げますが、一番大きな原因は、やはり二回にわたる石油ショックで税収が鈍化したところへもってきて、景気回復のために財政が積極的な役割を果たした、これが一番大きな原因であると私は考えております。
 次に、行政改革と積極経済政策の並立が必要と考えるかどうかという点でございまするが、国際収支の不均衡の是正を図り、世界経済への積極的な貢献、あるいは国民生活の質的向上を図るという点から申しますると、経済の潜在的な活力を十分発揮させて、物価の安定基調を維持しながら、内需主導型の持続的経済成長の達成を図っていくことが最も大切であると考えております。かような経済運営は、景気の拡大による税の自然増収をもたらし、行財政改革にも大きく役立つものと考えております。
 次に、民社党の積極経済政策をどう評価するかという点でございますが、お話の点はしかと承って心に受けとめております。ただ、景気の動向につきまして申し上げますと、なおばらつきが残っておりまするけれども、全体として景気は拡大を続けております。今後とも適切かつ機動的な経済運営に努め、内需中心の経済成長の達成を図ることが必要であると考えております。四月九日に発表になりました対外経済問題諮問委員会の報告書において、この内需中心の経済運営のための手段として、公的規制の緩和でございまするとか、週休二日制の一層の普及、あるいは公共的事業分野への民間活力の導入による重点的、効率的な社会資本の整備、あるいはまた貯蓄、消費、投資のバランスを図る観点からの税制の見直し、この四つの点を挙げております。政府といたしましては、この提言を最大限に尊重いたしまして今後の経済運営に当たってまいりたいと考えております。
 それから最後に、ローリングシステムによる中期計画を策定、提示する用意はないかという御質問でございますが、昭和五十八年に決定いたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」におきましては、事態が流動的でございまするため、今後の我が国経済社会の基本的な展望や政策運営の大まかな方向を示しているにとどめております。こうした基本的枠組みのもとで、事態の変化と時代の要請に柔軟に対応し得るように、昭和六十五年度を最終年度とするローリングプラン的な考え方に沿って、毎年、経済社会の展望と政策運営の指針について見直しを行い、計画の内容をより具体化してまいりたいと考えておる次第でございます。この趣旨に沿いまして、昨年十二月に五十九年度のリボルビング報告を取りまとめて発表いたしましたが、今後とも行財政改革等の諸改革を進めながら安定成長の持続を図っていくために、毎年リボルビングを行う中で、経済社会の展望と政策運営の指針全般について幅広く検討してまいりたいと考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(河本敏夫君) 財政再建のためには、行財政の改革ももちろん必要であるが、同時に経済全体の活性化、拡大均衡、これが必要ではないか、そういうお話がございましたが、私は全く賛成であります。そのとおりだと思います。
 それから第二点は、今後の景気対策として所得税の減税、投資減税、住宅減税が必要である、こういう御意見がございましたが、これも賛成でございますけれども、ただ、このためには税制の抜本改正をする必要があろうかと存じます。
 それから景気対策の第二点といたしまして、社会資本投資の拡大についてのお話がございました。これも賛成でありますけれども、そのためには財源の工夫がこれから必要だと、このように考えております。
 第三点の御質問は、輸出課徴金、機械を輸入するための輸入促進税制、それから無税国債、この三点についての御質問でございますが、これはいずれも慎重に対処する必要があろうかと存じます。(拍手)
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(村田敬次郎君) 柄谷議員からは輸出課徴金についての問題、そしてまた機械に対する製品輸入問題、二点についてお尋ねがございました。
 第一点の輸出課徴金構想の問題でございますが、総理から取りまとめての総括的な御答弁があり、また大蔵大臣から変動相場制に関連してのお答えがあったところでございます。第一点は、自由貿易主義、そしてまた新ラウンドの推進等の精神にもとる措置であるということ。第二点は、変動相場制のもとでは円相場の変動等によって所期の効果を達成し得るかどうか疑問であるということ。第三点は、米国における既に伝えられております輸入課徴金導入の動き、これに引き金を与えるおそれがあるということ。第四点は、輸出に依存をしております我が国の中小企業に対して甚大な影響を及ぼすおそれがあるということ。こうした種々の問題がありまして、これを導入すべきではないと考えております。
 第二点は、機械に対する製品輸入の問題でございますが、柄谷議員御指摘のように、機械の製品輸入は、我が国の製品輸入全体の三割を超える非常に重要な部分を占めております。したがって、機械輸入についてその促進を図るため種々の対策を政府としては講じてまいる所存であり、既に四月九日の総理の決定に基づいて、日本輸出入銀行の製品輸入金融制度については金利条件の引き下げ、改善を図ったところでございます。さらに、今後とも金融、税制面における措置の拡充、創設の可能性につきましては、大蔵大臣、そしてまた河本大臣からもお述べになられましたが、関係省庁との協議を含め、十分検討してまいる所存でございます。
 以上二点お答え申し上げます。(拍手)
#25
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#26
○議長(木村睦男君) 日程第一 米州投資公社を設立する協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長平井卓志君。
   〔平井卓志君登壇、拍手〕
#27
○平井卓志君 ただいま議題となりました米州投資公社を設立する協定につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 この協定は、中南米地域の経済開発を促進するため、米州開発銀行の活動を補足し、民間の中小企業を支援する米州投資公社を設立することを目的とするものでありまして、公社の設立、その目的、資本、業務、組織及び運営等について定めております。
 委員会におきましては、中南米地域の政治経済情勢と我が国の中南米政策、公社の融資条件、米国の出資比率と公社における地位、武器製造業への資金供与の禁止等につき質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終え、討論に入りましたところ、日本社会党の久保田理事及び日本共産党の立木委員よりそれぞれ反対の意見が述べられ、次いで採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#28
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#29
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本件は承認することに決しました。
     ─────・─────
#30
○議長(木村睦男君) 日程第二 半島振興法案(衆議院提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長本岡昭次君。
   〔本岡昭次君登壇、拍手〕
#31
○本岡昭次君 ただいま議題となりました半島振興法案につきまして、建設委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 本法律案は、半島地域における産業基盤及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある実情にかんがみ、これらの地域について広域的かつ総合的な対策を実施して、地域住民の生活の向上と国土の均衡ある発展を図ろうとするものであります。
 その主な内容は、第一に、内閣総理大臣は、都道府県知事の申請に基づき、二以上の市町村の区域からなり、一定の社会的・経済的規模を有する等所要の要件に適合する半島地域を半島振興対策実施地域として指定すること。第二に、その地域指定があったときは、関係都道府県知事は、振興の基本的方針に関する事項、基幹的な交通、通信施設の整備に関する事項等を内容とする半島振興計画を作成して、内閣総理大臣の承認を受けなければならないこととすること。第三に、国は半島振興計画に基づく事業の実施に関し必要な財政金融上の措置を講ずるよう配慮しなければならず、また、事業の実施に要する経費について、国の財政の許す範囲内において、その事業の円滑な実施を促進することに努めなければならないこととするとともに、地方債についての配慮、税制上の措置、地方税の不均一課税に伴う措置に関し、所要の措置を講じようとするものであります。
 なお、本法律案の有効期限は昭和七十年三月三十一日までとしております。
 委員会におきましては、本法律案の提出者である衆議院建設委員長より趣旨説明を聴取した後、振興対策実施地域の指定基準、振興計画に定められる事項、振興事業実施の財政措置及び半島地域が抱える問題点等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 質疑を終わり、日本共産党を代表して山中郁子君より修正案が提出され、修正内容が予算を伴うものでありますので政府の意見を徴しましたところ、河本国土庁長官より反対である旨の発言がありました。
 続いて、討論に入り、日本共産党を代表して上田耕一郎君より、原案に反対、修正案に賛成の意見が述べられました。
 討論を終わり、順次採決の結果、修正案は否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#32
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#33
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ─────・─────
#34
○議長(木村睦男君) 日程第三 国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案
 日程第四 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案
 日程第五 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案
 日程第六 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案
 日程第七 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 日程第八 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件(衆議院送付)
 以上六件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長遠藤政夫君。
   〔遠藤政夫君登壇、拍手〕
#35
○遠藤政夫君 ただいま議題となりました五法律案及び承認案件につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案について申し上げます。
 国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案の主な内容は、厚生年金保険及び船員保険、拠出制国民年金について、三・四%の特例的な物価スライド措置を行うとともに、福祉年金、特別児童扶養手当及び福祉手当の額を引き上げることであります。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の主な内容は、戦傷病者、戦没者遺族等に対する障害年金、遺族年金等の額を恩給法に準じて引き上げること、公務扶助料、遺族年金等の支給を受けている者がいない戦没者等の遺族に特別弔慰金を支給すること等であります。
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案は、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当及び保健手当の額を引き上げるものであります。
 委員会におきましては、以上三案を一括議題として審議を進め、年金スライドのあり方、一般戦災者の援護、中国残留日本人孤児の受け入れ対策、被爆者に対する援護等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案について、自由民主党・自由国民会議を代表して佐々木理事より施行期日等に関する修正案が提出され、次いで、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案それぞれについて、日本共産党を代表して安武委員より修正案が提出されました。
 次いで、討論に入りましたところ、日本共産党より国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について反対、自由民主党・自由国民会議より三案について、原案賛成、日本共産党提出の修正案に反対、自由民主党・自由国民会議提出の修正案に賛成する旨の意見が述べられました。
 討論を終わり、まず、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案について諮りましたところ、日本共産党提出の修正案は賛成少数で否決され、自由民主党・自由国民会議提出の修正案並びに修正部分を除く原案はそれぞれ多数をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと決しました。
 次いで、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について諮りましたところ、日本共産党提出の修正案は賛成少数で否決され、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について諮りましたところ、日本共産党提出の修正案は賛成少数で否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、附帯決議が全会一致をもって付されております。
 また、恒久平和への決意及び被爆者対策の充実に関し、本委員会は、二度とあのような惨禍に見舞われることのないよう改めて恒久平和への決意を表明するとともに、政府は、死没者を含めた実態調査を行い、さらに被爆者の被害の実態に即応した対策の充実に努めるべきである旨の決議を行いましたことを申し添えます。
 次に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案の主な内容は、労働者派遣事業を、常用雇用労働者のみで行う特定労働者派遣事業と、一般労働者派遣事業に区分し、前者は届け出制、後者は許可制とすること。労働者派遣事業は、港湾運送業務、建設業務等を除き、専門的な知識、技術、経験を要する業務及び特別の雇用管理を要する業務のうち、中央職業安定審議会の意見を聴いて政令で定める業務に限って行うことができることとすること。労働者派遣事業を行う者についての欠格事由等を定め、事業停止命令等の措置を講ずることとすること。労働者派遣契約に派遣労働者の具体的な就業条件を定めることとし、正当な組合活動を行ったこと等を理由とする派遣契約の解除を禁ずること等の措置を講ずることとすること。派遣元事業主に、派遣労働者の就業・教育訓練の機会の確保等のための努力、派遣労働者に対する就業条件の明示等適正な雇用管理を行わせることとし、派遣先に派遣先責任者の選任等適正な就業管理を行わせることとすること。労働基準法等の使用者責任を明確化することとし、基本的には派遣元の事業主が使用者責任を負うという原則を維持しつつ、派遣先でなければ履行の確保が困難な労働時間の管理等の事項については、派遣先の事業主に使用者責任を負わせることとすること等であります。
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案の成立、施行に伴って必要とされる関係法律の整備のための規定及び経過措置を定めるほか、これにあわせて、民間の職業紹介事業、労働者募集及び労働組合が行う労働者供給事業につき、その労働力需給調整機能が効果的に発揮されるよう現行規制の簡素合理化等の改正を行うものであります。
 委員会におきましては、以上二案を一括議題として審議を進め、参考人からの意見聴取を行うとともに、終身雇用との関係、派遣先における団体交渉・協議、派遣先の使用者責任、派遣に関する料金、派遣的労働の実態等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案について、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して佐々木理事より、労働者派遣期間についての制限措置、派遣先における派遣労働者の苦情の迅速な解決のための措置に関する修正案が提出されました。
 次いで、討論に入りましたところ、日本社会党及び日本共産党よりそれぞれ原案並びに修正案に反対、自由民主党・自由国民会議より原案並びに修正案に賛成する旨の意見が述べられました。
 討論を終わり、まず、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案について諮りましたところ、自由民主党・自由国民会議、公明党・国民会議及び民社党・国民連合提出の修正案並びに修正部分を除く原案はそれぞれ多数をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと決しました。
 次に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について諮りましたところ、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、二法律案に対し附帯決議が付されております。
 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件について申し上げます。
 本件は、労働省の所掌事務の円滑かつ効率的な遂行を図るため、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等を行うことについて、国会の承認を求めるものであります。
 委員会におきましては、採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#36
○議長(木村睦男君) ただいま委員長報告がありました議案のうち、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。高杉廸忠君。
   〔高杉廸忠君登壇、拍手〕
#37
○高杉廸忠君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業に関する二法案並びに修正案に対し、反対の討論を行うものであります。
 本法案は、政府の言うところの労働者の保護と雇用の安定に配慮した上で労働者派遣事業を制度化することとは全く逆であります。しかも派遣労働者のみならず、正規雇用労働者の労働条件の保護、労働基本法の保障など、我が国の労働法制にとって重大な影響を及ぼすものであると言っても過言ではないのであります。
 私は、その重要な点をここに指摘し、反対の理由を具体的に以下述べるものであります。
 まず第一に、現行の労働法制に違反する労働者派遣事業への歴代政府の姿勢、すなわち法運用の消極的かつ現状の容認、さらにはその追認といった姿勢をここに基本的な問題点として指摘をするものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 御承知のとおり、戦後我が国は、労働基準法や職業安定法などの民主的な労働関係法が制定をされ、すべての労働者が直接雇用されてきたのであります。しかるに昭和二十七年、関係業界の要請等もあって職業安定法施行規則が改悪されたことにより、社外工等の事業場下請事業が公然と復活をし、次第に増大する結果を招いたのであります。さらに政府は、最近の労働力需給の両面にわたる変化と称して、事務処理請負業とも言われる労働者派遣事業を容認し続け、今日、百万人とも二百万人とも言われる派遣労働者を招来せしめ、かつこれを新たな労働力需給システムとして制度化しようというのであります。これにより、労働者の雇用契約関係というのは一層複雑となり、また野放し状態となることは必至であります。したがって、我々は、職業安定法施行規則を厳格化し、法律として本則で規定するとともに、偽装請負事業を厳しく取り締まることをここに強く求めるものであります。
 第二に、対象業務が今後無限定に拡大するのではないかという懸念であります。
 対象業務は、当初の四業種から十四業務に増加しておりますけれども、本法案では、特に限定する規定はなく、今後、政府の定める政令によって広く対象業務とされる可能性が残されているのであります。対象業務は法律上明確にし、最小限に限定すべきであります。我が党は、技術革新に対応するソフトウェア業務に限定すべきことを提案してきたところであります。
 第三に、政府案においていわゆる登録型をも認めようとしている点であります。
 これらは、実態的には職業紹介にほかならず、また登録型派遣労働者の身分は極めて不安定そのものであります。登録型について言われる労働者側のニーズについては、公共職業安定機関の拡充や民営職業紹介事業の見直し、またその活用によって対処すべきであります。
 第四として、仮に一定の業務について労働者派遣事業を認めるとしても、労働者の保護、権利の保障、その観点に立った規制措置を講ずる必要があります。
 しかるに、政府案では、いわゆる常用雇用型については、単に届け出制とし、中間搾取への規制、派遣先における派遣労働者の利用制限、派遣労働者側との団体交渉応諾義務等の措置、これは全くなく、このため、派遣労働者が安上がりで雇用調整に都合のよい労働力として派遣労働者を利用する企業がふえる一方、低賃金、長時間労働等、劣悪な労働条件のもとで働かされる不安定雇用労働者が増大する結果を招くことは必至であります。さらに、派遣先における常用労働者の労働条件、労働基本権も制約されることになることは明らかであります。
 第五に、政府案により制度的に認められることになる業務以外の労働者派遣事業に対する規制措置が講じられていない点であります。
 御承知のように、労働者派遣事業は、その違法性を指摘されてきたにもかかわらず、業務請負の形式をとって増大してきたものであります。行政当局は、形式的には職業安定法に違反していても、中間搾取が明確でない限り告発できないという態度をとってきたのであります。したがって、この問題を解決しないまま本法案を制定することは、ここに認めるわけにはいかないのであります。
 以上が本法案二法案並びに修正案に対する反対の理由であります。
 最後に、本法案は、我が国の雇用慣行及び労働市場に重大な影響を及ぼすものであり、しかも今後の展望を欠いたまま本法案を可決することの責任の重大性は私はここに強く政府に警告して、反対討論を終わるものであります。(拍手)
#38
○副議長(阿具根登君) 安武洋子君。
   〔安武洋子君登壇、拍手〕
#39
○安武洋子君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる労働者派遣法案に対する反対討論を行います。
 本法案は、幾千万の我が国労働者の基本的人権や労働条件にかかわる重大な法案であります。それは、戦後営々として労働者が築き上げてきた民主的労働法制を根底からゆがめ、資本の飽くなき合理化と利潤追求の前に無権利状態の労働者を大量につくり出すものであります。これが全労働者の労働条件の劣悪化を招くことは必至であります。ところが、これほど重要な法案であるにもかかわらず、我が党の本会議趣旨説明要求を封殺した上、本院社会労働委員会における審議時間はわずか十三時間、まだまだ重要問題が解明されていないにもかかわらず、我が党以外の合意で審議が打ち切られたことは、国権の最高機関である国会の責任をみずから放棄するものであり、怒りを禁じることができません。私は、まずこの点について厳しく指摘するものであります。
 そもそも、労働者供給事業と中間搾取を禁じた職業安定法等は、労働者を奴隷的拘束のもとで不当に搾取してきた戦前の反省に立って制定されたものであります。ところが、我が国の財界は、高度成長期はもちろん低成長期においても、多大の利潤を確保するために、社外工や臨時工の活用とともに、本来、法で禁じられている労働者供給業を請負の名のもとに大々的に取り入れてまいりました。一方、政府は、これを厳しく取り締まるどころか、むしろ放任してきたのであります。そして今日、政府はみずからの責任を棚上げして、法が実態に合わなくなった、こういう口実で人貸し業法とも言うべき本法案を強引に成立させようとしているのであり、言語道断であります。
 本法案は、技術革新に対応して大がかりな人減らしを目指す大企業の要請に全面的にこたえようとするものであります。私が委員会で指摘したように、財界は、余剰になった労働者を他企業に供給したり、正規労働者にかわる大量の短期雇用労働者の導入を職業安定法四十四条に触れることなく行えるよう、法改正を求めていたのであります。現実に多くの大企業は、中核的な仕事以外は派遣労働者や臨時労働者で賄う雇用戦略を立て、既に大手銀行や保険会社なども派遣会社を次々とつくり、社員の派遣労働者化を進めております。まさに本法案は、この大企業の求める安上がりの労働者需給システム、これを法的に認知しようとするものにほかなりません。
 さらに政府は、本法案の目的が労働者保護にあると述べていますが、これこそ国民を欺く詭弁と言わざるを得ません。すなわち、正規労働者にとっては、終身雇用制など我が国の雇用慣行が破壊され、いつでも派遣労働者にされる危険な道が開かれるのであります。さらに、派遣労働者は、派遣先企業の不当な契約料金の押しつけによって解雇されたり、労働条件を一方的に切り下げられても、その元凶である派遣先企業に対し、団体交渉権も争議権も保障されず、何一つ抗議の表明もできないではありませんか。
 一方、派遣先企業は不当労働行為を行っても何の制裁も受けず、野放しにされるのであります。これでは派遣労働者は、甚だしい低賃金や長時間労働、社会保険もないというみじめな労働条件を押しつけられても、何一つ文句も言えないという、まさに戦前のような無権利と屈辱の状態に置かれることは明白ではありませんか。これは憲法の規定する基本的人権のじゅうりんであると言わねばなりません。
 このことは、既に一九七〇年代前半から労働者派遣事業制度を導入してきたEC諸国の間でも厳しく批判され、そのため各国で制度の改善が進められてきております。派遣労働及び臨時労働に関するEC指令提案、これでは、派遣労働者の賃金を派遣先常用労働者と同水準にする規定や、派遣期間中は派遣先企業の就業規則を適用するなどの労働者保護条項を設けざるを得なくなったのであります。ところが本法案は、ここから教訓を引き出すどころか、逆に派遣先企業の利益を優先させ、派遣労働者のみに犠牲を押しつけるものであって、このような政府の無責任な態度は断じて認めることはできません。
 さらに指摘すべきことは、本法案の登録型派遣事業が我が国も批准しているILO九十六号条約に違反していることであります。そのため、既に関係労働組合は、本法が成立するならばILOへの提訴を行うと通告しているのであります。このような重大な疑義については当然ILOに照会すべきであります。しかし、それもせず、本法案を強引に成立させようとする態度は、誠実に条約を尊重するという国際的な義務をないがしろにするものと言わねばなりません。
 以上、本法案に反対する基本的な理由を述べてまいりましたが、わけても許せないのは、本法案が労働者の人間としての尊厳をも奪うということであります。大企業の支配のもとに従属させられ、一言の抗議もできず、企業から企業へとあたかも流浪の民のどとく移動させられるような労働関係のどこに憲法が保障する労使対等の近代的理念が生きているのでしょうか。請負という口実で派遣労働者を競争入札にかけたテレビ朝日の事実こそ、奴隷市場の再来でなくて何でありましょう。どこに人間としての尊厳と誇りを持って労働し得る余地があるのでしょうか。
 本法案は、まさに国家機密保護法が戦前の暗黒政治への歴史の逆行をねらっていることと軌を一にした、労働分野における中曽根内閣の戦後政治の総決算そのものであり、強く抗議をし、反対をするものであります。我が党は、革新的労働運動の潮流が必ずやこの攻撃を打ち破って前進することを確信し、今後とも憲法の保障する労働者の基本的権利を擁護し、奮闘することを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
#40
○副議長(阿具根登君) これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
#41
○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。
 まず、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
 本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#42
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。
 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#43
○副議長(阿具根登君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。
 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#44
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 次に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案の採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
 本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#45
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。
 次に、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#46
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件の採決をいたします。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#47
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本件は承認することに決しました。
     ─────・─────
#48
○副議長(阿具根登君) 日程第九 行政書士法の一部を改正する法律案
 日程第一〇 住居表示に関する法律の一部を改正する法律案
 (いずれも衆議院提出)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長金丸三郎君。
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#49
○金丸三郎君 ただいま議題となりました二法律案について御報告申し上げます。
 まず、行政書士法の一部を改正する法律案は、行政書士の登録事務を日本行政書士会連合会に移譲すること、登録の拒否及び取り消し等の制度を整備し、資格審査会を設置すること、報酬規定の改正及び自治大臣の行う援助について規定すること等を主な内容とするものであります。
 次に、住居表示に関する法律の一部を改正する法律案は、住居表示の実施に伴い新たな町名等を定めるときは、従来の名称に準拠することを基本とすること、住居表示の実施に伴い変更された由緒ある町名等の継承を図るため、必要な措置を講ずること等を主な内容とするものであります。
 委員会におきましては、以上二法案を一括して議題とし、衆議院地方行政委員長代理愛知和男君より趣旨説明を聴取した後、それぞれの法案について採決を行いましたところ、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、住居表示制度の改正案に対し、町名等の保存及び継承に関する附帯決議が行われました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#50
○副議長(阿具根登君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#51
○副議長(阿具根登君) 総員起立と認めます。
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ─────・─────
#52
○副議長(阿具根登君) 日程第一一 米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長藤井裕久君。
   〔藤井裕久君登壇、拍手〕
#53
○藤井裕久君 ただいま議題となりました米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、米州投資公社を設立する協定に基づき我が国が米州投資公社に加盟することに伴い、政府が同公社に対し六百二十六万ドルの範囲内において出資できることとするほか、予算で定める範囲内において追加出資ができることとしようとするものであります。
 委員会におきましては、米州投資公社の国際開発金融機関としての位置づけ、最大の出資国であるアメリカの同公社等国際開発金融機関への影響力、開発途上国の累積債務問題の解決策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、討論なく、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#54
○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#55
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ─────・─────
#56
○副議長(阿具根登君) 日程第一二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。文教委員長真鍋賢二君。
   〔真鍋賢二君登壇、拍手〕
#57
○真鍋賢二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、コンピュータープログラムの法的保護の重要性と国際的な動向にかんがみ、プログラムが著作権法で保護される著作物であることを明らかにするとともに、その特性に応じた規定の整備を行うことにより、プログラムの著作物の公正な利用に留意しつつ、その著作者の権利の適切な保護を図ろうとするものであります。
 委員会におきましては、コンピュータープログラムを著作権法の保護対象とした背景、理由とその是非、法人著作、複製・翻案権、保護期間、登録制度等プログラムの特質を配慮した規定の趣旨と中長期的な検討課題、私的録音・録画及び文献複写の実態と早急な対策、ニューメディア等の開発に対する速やかな対応などの諸問題につきまして熱心な質疑を行うとともに、参考人の意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終わり、日本共産党を代表して吉川委員より反対の討論が行われた後、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、仲川委員より、著作権思想の一層の普及努力の必要性などについて、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合の四党共同提案による附帯決議案が提出され、多数をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#58
○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#59
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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