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1984/05/15 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 決算委員会 第6号
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1984/05/15 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 決算委員会 第6号

#1
第102回国会 決算委員会 第6号
昭和六十年五月十五日(水曜日)
    午前十時六分開議
出席委員
  委員長 安井 吉典君
   理事 糸山英太郎君 理事 白川 勝彦君
   理事 東家 嘉幸君 理事 林  大幹君
   理事 森下 元晴君 理事 井上 一成君
   理事 新村 勝雄君 理事 貝沼 次郎君
   理事 玉置 一弥君
      小山 長規君    桜井  新君
      渡部 恒三君    春田 重昭君
      滝沢 幸助君    中川利三郎君
      阿部 昭吾君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 嶋崎  均君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      前田 正道君
        法務大臣官房長 岡村 泰孝君
        法務大臣官房会
        計課長     清水  湛君
        法務省民事局長 枇杷田泰助君
        法務省刑事局長 筧  榮一君
        法務省矯正局長 石山  陽君
        法務省保護局長 俵谷 利幸君
        法務省入国管理
        局長      小林 俊二君
        外務省アジア局
        長       後藤 利雄君
        厚生省保健医療
        局長      大池 眞澄君
        厚生省保険局長 幸田 正孝君
 委員外の出席者
        警察庁交通局交
        通指導課長   山崎  毅君
        警察庁交通局交
        通規制課長   越智 俊典君
        警察庁警備局公
        安第二課長   菅沼 清高君
        外務省アジア局
        北東アジア課長 渋谷 治彦君
        外務省国際連合
        局人権難民課長 増井  正君
        大蔵省主計局司
        計課長     西澤  裕君
        厚生省健康政策
        局総務課長   多田  宏君
        厚生省薬務局監
        視指導課長   中井 一士君
        厚生省社会局老
        人福祉課長   阿部 正俊君
        通商産業省産業
        政策局消費経済
        課長      糟谷  晃君
        運輸省地域交通
        局陸上技術安全
        部技術企画課長 福田 安孝君
        運輸省貨物流通
        局陸上貨物課長 植村 武雄君
        郵政大臣官房人
        事部保健課長  楠  忠興君
        消防庁危険物規
        制課長     志村 哲也君
        会計検査院事務
        総局第二局長  天野 基巳君
        会計検査院事務
        総局第二局審議
        官       佐藤 龍雄君
        最高裁判所事務
        総長      勝見 嘉美君
        最高裁判所事務
        総局経理局長  川嵜 義徳君
        最高裁判所事務
        総局民事局長兼
        最高裁判所事務
        総局行政局長  上谷  清君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  小野 幹雄君
        決算委員会調査
        室長      大谷  強君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十五日
 辞任         補欠選任
  塚本 三郎君     滝沢 幸助君
同日
 辞任         補欠選任
  滝沢 幸助君     塚本 三郎君
同日
 理事森下元晴君同日理事辞任につき、その補欠
 として林大幹君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算
 昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算
 昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和五十七年度政府関係機関決算書
 昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算
 書
 昭和五十七年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (裁判所所管、法務省所管)
     ――――◇―――――
#2
○安井委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事辞任の件及び理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 まず、理事森下元晴君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○安井委員長 御異議なしと認めます。よって、林大幹君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#5
○安井委員長 次に、昭和五十七年度決算外二件を一括して議題といたします。
 本日は、裁判所所管及び法務省所管について審査を行います。
 この際、お諮りいたします。
 裁判所所管の審査に関し、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所長官の指定による代理者から出席説明する旨の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議、ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
#7
○安井委員長 それでは、順次概要説明を求めます。
 まず、裁判所所管について概要の説明を求めます。勝見最高裁判所事務総長。
#8
○勝見最高裁判所長官代理者 昭和五十七年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は、千九百八十一億九千三百二万円余でありますが、これに、大蔵省所管からの移しかえ額六億七千三百四十九万円余、昭和五十六年度からの繰越額五億八千六百三十九万円余、予算補正修正減少額二十億一千五百四十四万円余、差し引き七億五千五百五十六万円余が減少されましたので、歳出予算現額は、千九百七十四億三千七百四十六万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は、千九百七十億八千六百七十三万円余であり、不用額は、三億五千七十二万円余であります。
 不用額となった経費は、人件費二億八千八百六十九万円余と、その他の経費六千二百三万円余であります。
 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は、十五億七千七百四十六万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は、二十億九千六百九十九万円余であり、歳入予算額に対し、五億一千九百五十二万円余の増加となっております。
 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金等の増加によるものであります。
 以上、昭和五十七年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
#9
○安井委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。天野会計検査院第二局長。
#10
○天野会計検査院説明員 昭和五十七年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、職員の不正行為による損害を生じたものであります。
 この事態は、那覇地方裁判所石垣支部及び石垣簡易裁判所におきまして、庶務課会計係員が、歳入歳出外現金出納官吏の補助者として民事執行予納金などの保管金出納事務に従事中、保管金提出者から受け入れた保管金のうち三百九十一万八千六百三十円を領得したことによって生じたものであります。
 なお、本件損害額については、昭和五十八年三月、全額が不正行為者から返納されております。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
#11
○安井委員長 次に、法務省所管について概要の説明を求めます。嶋崎法務大臣。
#12
○嶋崎国務大臣 昭和五十七年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。
 法務省主管の歳入につきましては、予算額は七百十三億千九百三十万円余であります。
 これに対しまして、収納済み歳入額は七百八十四億五千二百八十四万円余であり、歳入予算額に比べると、七十一億三千三百五十三万円余の増加となっております。
 この増加しました要因は、罰金及び科料三十五億七千九百三十八万円余、刑務所作業収入二十四億三千五百三十九万円余が増加したことによるものであります。
 次に、法務省所管の歳出につきましては、当初予算額は三千五百九十五億四百十六万円であります。これに予算補正修正減少額六十二億九千八百四十二万円余、前年度からの繰越額六億八百八十五万円、予備費使用額七億四千三百十九万円余、差し引き四十九億四千六百三十九万円余の減少がありましたので、歳出予算現額は三千五百四十五億五千七百七十六万円余となっております。
 これに対しまして、支出済み歳出額は三千五百三十七億三千六百二十二万円余であり、その差額は八億二千百五十三万円余となっております。
 この差額のうち翌年度へ繰り越した額は一億三百二十四万円余であり、不用額は七億千八百二十九万円余で、不用額の主なものは人件費であります。
 支出済み歳出額のうち主なものは、人件費二千八百五十一億二千七百二十二万円余、外国人登録事務処理経費十一億三千四百六十一万円余、登記事務等処理経費四十三億四千二百五十三万円余、検察事務処理経費二十六億五千百九万円余、矯正施設における被収容者の収容、作業等に要する経費二百五十一億五千二百四十八万円余、補導援護経費三十六億千九百七十万円余、出入国審査・難民認定及び被退去強制者の収容、送還等に要する経費六億六千八百三十八万円余、暴力主義的破壊活動団体等の調査に要する経費十八億千九百三十万円余、施設費百十三億四千四百十七万円余となっております。
 以上、昭和五十七年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
#13
○安井委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。天野会計検査院第二局長。
#14
○天野会計検査院説明員 昭和五十七年度法務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、職員の不正行為による損害を生じたものであります。
 この事態は、大阪入国管理局神戸支局におきまして、総務課会計係長が、資金前渡官吏の補助者として小切手及び国庫金振込請求書の作成、交付等の事務に従事中、日本銀行において、債権者の指定する預金口座への国庫金振り込み手続をする際、小切手に添えて交付する国庫金振込請求書に添付されている国庫金振込明細票の一部を抜き取り、自己名義の預金口座を振り込み先に指定したものと差しかえて振り込ませ百九十九万二千八百二十円を領得したことによって生じたものであります。
 なお、本件については、昭和五十八年五月、不正行為者が全額を債権者に支払っております。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
#15
○安井委員長 これにて説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#16
○安井委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
#17
○井上(一)委員 帝銀事件の死刑囚平沢貞通元被告の人身保護請求に関して準備調査が行われているわけであります。近い将来判決が出るというわけでありますけれども、もし請求が却下された場合、大臣は、死刑執行の署名を歴代の大臣がなされなかったように署名をなされないのか、あるいは死刑執行の署名をされるのか、大臣の素直な御意見、お考えを聞かしていただきたいと思います。
#18
○嶋崎国務大臣 ただいま御質問の平沢の問題につきましては、御承知のように、人身保護請求で東京地裁で現在審理が進められております。既に御承知のように、予備的な調査段階として審尋が行われておるというような段階にあるわけでございます。これらの処置につきましては、裁判所の御判断の問題でございますから、私がここでとやかく申し上げる必要はないと思いますが、今御質問のありました件につきまして、御承知のように、この問題につきましては現在までに十七回に及ぶ再審請求が行われております。現在四回目の恩赦の請求が行われ、またあわせて五回目も提出をされておるというような状況にあるわけでございます。したがいまして、その処理を前提に置いてのお話でございますけれども、死刑の判決を受けた場合におきまして、そういう恩赦の処理あるいは再審の審理の結論を待って処理するほかに方法がないように私は思うのでございます。
 と申しますのは、何しろ御本人は九十三歳というような年齢にもなっておられますし、いろいろそういうようなことを考えましてさきに八王子の医療刑務所に移送した。たまたま人身保護請求があったということとちょうどマッチしたものですから、そういう処置を講じて今日まで参った次第でございます。したがいまして、現在の段階で、死刑の判決のあった平沢につきましてはそれらの手続がどういうぐあいに進むのかということを慎重に見きわめて判断をするということに相なろうと思うのでございまして、この人身保護請求の問題だけの処理だけで判断ができるものであるというふうには考えておりません。
#19
○井上(一)委員 大臣、私はもうその審理の過程を論争したりあるいはそういうことを申し上げているのではなく、歴代の法務大臣が死刑執行の署名をされてこなかった。あなたも同じように、どういう状況の変化があろうともそういうことと同じようなプロセスをとられようとするのか、もし却下されたらあなたは死刑執行に署名をされるのですか、こう聞いているだけなんです。あなたはどっちなんですか。
#20
○嶋崎国務大臣 御承知のように、法務大臣の仕事というのは、捜査をし、調査をし、公訴を維持し、その間の処理をするというのが法務大臣の仕事であるわけでございまして、確定的な判決が決まっておる、それについてのいろいろな手続というのは存在することは事実でありますけれども、それらの事実の結果を見て判断をするということでありまして、今この段階でどちらかという御判断を申し上げるのは適当なことではないというふうに判断をしております。
#21
○井上(一)委員 それじゃ、私は指紋押捺の問題について質問をしていきたいと思います。
 法務省は昨日、「外国人登録事務の適正な運用について」という通達の骨子、いわゆる法務省入国管理局の通達でございますけれども、指紋押捺問題に関して、押捺制度の運用上の緩和、と同時に押捺拒否者告発の徹底化を打ち出されたわけであります。
 そこで、外務省にお聞きをしたいのでございますが、この法務省の打ち出された昨日の指紋押捺問題に対して韓国外務省は談話を発表されました。その内容の骨子をお教えいただきたい。そして、できれば外務省のそれに対する見解も聞かしていただければありがたいと思うのです。
#22
○後藤(利)政府委員 お答えさせていただきます。
 ただいま御質問の、御照会のございました韓国側の反応でございますけれども、直接私ども大使館等への反応と申しますより、昨日の午後韓国外務部が次のような要旨の発表を行っております。要旨だけ申し上げますと、「このような運営上の改善努力だけでは本問題に対する根本的な解決にはならないのであり、指紋押捺制度自体が速やかに改善されるよう日本側の継続的努力が期待される。」というのが、昨日韓国外務部が発表いたしました論評の要旨でございます。
 これにつきまして、ただいま外務省はどういうように考えるかという御質問でございますけれども、ざっくばらんに申し上げさせていただきますと、今回の韓国側の一つの論評は、韓国側の従来の要望等から勘案いたしますれば、ある意味では予想されたと申しましょうか、そういう内容ではないだろうかと考えております。
#23
○井上(一)委員 本来このような問題は、外交的な配慮というのでしょうか、そういうものも踏まえて、指紋押捺問題については、何々の問題については日本の努力を多とすると、いわゆる一定の外交辞令として評価を何らかの表現で示されるわけでありますけれども、今お答えがありましたように、まさに本質的な問題解決にはならない。
 外務省としては、今回のいわゆる運用上の緩和と拒否者の告発の徹底化という法務省が打ち出した取り組みについては、これは韓国側と同じような、あるいはまた継続して努力して、さらに韓国側の意見を十分参考にというか尊重していこうという、外務省はそういうことだと思うのですが、今も申し上げたように、改善の跡が見られない、あるいは問題解決にはならない、こういうことになっているわけです。
 いわば今回の韓国外務部のコメントは、外交的配慮というのはそこに見られない。そのことは韓国側が非常に強い不満をあらわしている、私はそう思うのです。外務省は私と同じようにそう受けとめていらっしゃるのかどうか、このことも念のために尋ねておきたい、こう思います。
#24
○後藤(利)政府委員 お答えいたします。
 指紋押捺制度をめぐります制度上、運用上の問題につきましては、ただいま御指摘のように韓国、主として韓国でございますが、いろいろな要望がございます。また国内にもいろいろな事情があることも先生御案内のとおりでございまして、この点につきましては関係省庁間でいろいろと鋭意検討してきたわけでございます。
 今般法務省におきまして、政令改正等の形で運用上の問題について可能な範囲で改善を図るということで、昨日のような発表があったわけでございます。私どもとしましては、制度の改正という点につきましては、五十七年に改正したばかりという事情があります。その事情を考えますれば、今次の政令改正の形での運用上の改善ということは、それなりに理解されるべきだろうと思いますし、そのような私どもの政府としての努力に対しては、韓国側においても評価は得たいということで、私どもは韓国側に説明し、またそれなりの理解を得るように今後とも努力をしてまいりたいと思います。
 ただ、韓国人の待遇、法的地位につきましては、率直に申し上げまして、今回の措置で韓国から見て完全に解決されたというわけではないわけでございますし、また昨日、我が方の外務大臣も、主管はもちろん法務省ではございますけれども、外交的にも大きくかかわる問題でありますので、今後とも時間がかかっても、研究、検討は、日本の自発的な課題として検討、研究していく必要はあろうというように考えております。
#25
○井上(一)委員 韓国は在外韓国人の法的、社会的地位に関する在外国民政策審議委員会を設置することを決めたそうであります。それは事実なのかどうか。
 それから、指紋押捺問題は、単に法務省の国内問題にとどまらずに、私は外交問題と見てもよいのではないだろうか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
#26
○後藤(利)政府委員 御質問の第一点でございますが、確かにそのような報道がきょうの新聞にございます。ただ、公式的に私どもまだ確認しておりませんので、この点、どういう経緯で、またその諮問委員会というものはどういう内容を持つものか、少し調べてみたいと思っております。
 それから第二点でございますが、先ほどもお答えさせていただきましたように、単に法務省の主管ということにとどまらなくて、外交的にも大きなかかわりのある問題であるということは十分承知しておりますので、私ども外務省といたしましては、関係省庁とも十分お話をしつつ、今後とも研究、検討させていただきたいと考えております。
#27
○井上(一)委員 法務大臣にお聞きをしたいんですが、外務省の見解が今答弁されたわけです。それで、この指紋押捺問題は国内制度上の問題であると位置づけて、他国がいろいろ意見を言うことはむしろ内政干渉である、こういう認識に立たれるのか、いや、そうではないというお考えを持っていらっしゃるのか、大臣からお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
#28
○嶋崎国務大臣 指紋制度を含む外国人の地位及び待遇の問題につきましては、これはそれぞれの国の政策の問題であろうと思います。したがいまして、十分そういう立場から日本独自の考え方で対処すべきものであるというふうに思いますけれども、事柄の性質上、これらの問題は外国人に絡む問題でありますから、単に国内的な事情のみならず、国際的な事情というものを十分参酌して判断をしなければならない問題であるというふうに理解をしております。
#29
○井上(一)委員 と申されることは、外国の意見も十分参考にし、配慮を加えるべきだ、こういう受けとめ方をしてよろしいでしょうか。
#30
○嶋崎国務大臣 今申し上げましたとおり、日本に在留する外国人についての取り扱いの問題でございますから、外国人に対するところの地位なり待遇なりというものについての日本独自の対処の仕方というのはあるのだろうと思いますが、事柄の性質から考えまして、国際的な面というものを十分考えて対処しなければならぬというふうに思っております。
#31
○井上(一)委員 そういたしますと、今回の韓国外務部のコメント、談話を法務大臣はどう受けとめられますか。
#32
○嶋崎国務大臣 昨日の閣議におきまして全会一致でこの処理がなされたという経緯があるわけでございまして、今回の取り扱いにつきましては、関係各省全く意見が一致をして処理されておるものであるというふうに私は理解をしておるわけでございます。
 ただ、この問題につきましては、御承知のように、先ほど申しましたようないろいろな点を考慮してやらなければなりませんけれども、最近この指紋押捺問題につきましていろいろな御議論があるということは、私たちも十分承知をしておるわけでございます。しかし一方、御承知のように昭和五十七年に外国人登録法の改正を行っておるわけでございまして、その際に、最初の指紋を押す時期を十四歳から十六歳に繰り上げるとか、あるいは三年で登録証を再交付する手続をやっておりますが、それを五年に延ばすとか等々の改正を行っておるわけでございまして、その際は国会全会一致でその法案を通過させていただいたというような経緯もあるわけでございます。そういう両方の事実というものをよく踏まえまして、御承知のように昨年の九月に日韓共同声明がありまして、地位及び待遇の問題については引き続き努力をする、こういうことになっておるわけでございまして、それ以後いろいろとこの問題について検討をして今日まで参ったわけでございます。
 御承知のように、国会においてその改正をすることはできない。また、実は我々随分苦心をして、この問題については今後制度上あるいは運用上いろいろな検討を続けていきましょうというような話をしますと、逆に、そういうことを言っているんだから少々告発をしなくても済むんじゃないかというような論理の立て方をされるというケースもあったわけでございまして、そこの辺はけじめをつけて考えていかなければいけない。私たちはそういう意味では引き続き検討に努力するということで、いろいろな努力を重ねてまいったわけでございます。
 実は、昨日の政令改正というのはいろいろな評価はあろうと思いますけれども、ともかく回転指紋を平面指紋に変える、これは犯罪捜査ということと余り関係がないということを明らかにする一つの方向だと思うのです。それから、黒色のインクをつけてやっておりました。それを随分いろいろな面を研究いたしまして、特殊の用紙を使ってその上に無色のものを手につけてやっていただく、そういう手続をとったわけでございまして、それなりに努力をしてこの答えを出したつもりであるわけでございます。
 どうかそういう意味で、我々の苦心をしてきたという、皆さん方から見られるとあるいはいろんな評価はあると思いますけれども、そういうことをひとつよく御勘案願いまして、在留外国人の方はもちろんのこと、この制度を支えていただく地方自治団体の方々にも積極的に御協力を願いまして、五年切りかえ時を迎えておる今度の夏の処理について、それが的確、円滑に運用されるように御協力を賜りますことを心から願っておる次第でございます。
#33
○井上(一)委員 大臣、答弁はやはり私の質問の趣旨に沿って答弁をしてほしい。いろいろな経緯も説明をしていただいておりますが、私も十分心得ている、承知している部分がある。時間がありませんので……。
 今その中ででも継続して協議を重ねてきた。そして、そういうことがきのうの政令の、一定の運用上の緩和措置と拒否者の告発という、私はむしろそれは非常に厳しい対応である、こういう受けとめ方をしているわけなんです。これで七月、八月の大量更新が、協力をしてくれと言ったって、さっき言う韓国外務部が見解を示されたような、そういうことを真剣に受けとめるなら、あるいは外務省がいかに外交的な努力を重ねようと、そんなことはできっこないし、そこに大きなトラブルが起こり得るであろうと予測するのが私は当然だと思うのです。
 それで質問をします。逆に言うと、昨日のいわば厳しい対応に対して、今後各省庁間で意見がばらばらというんでしょうか、少し食い違いがあります。今外務省と法務省との見解でも違うわけであります。そういうことで、近くは二十三、二十四日に、在日韓国人の待遇問題等について日韓外務省の事務レベルでの協議があるわけなんです。それで、昨日の結果だけをその会議に押しつけようというんでしょうか、申し入れをしていくんだということで法務省は外務省と話し合いをしたのか、あるいはさらにその会議の中で、今後時間を置いて検討を加えていきたいということにまで配慮が払われるような会議に発展をさせていこうとされているのか、その点についてお聞きをしたいと思うのです。
#34
○嶋崎国務大臣 今回の改正については、昨日の改正で対処をいたしたいと思っております。
#35
○井上(一)委員 それでは、各関係省庁の会議というか協議というものはこれで終えた、こういう認識なんですか。それとも、今後またこの問題については継続的な協議というものを持つんだという、そういうことでございましょうか。
#36
○嶋崎国務大臣 もう終えたと考えております。
#37
○井上(一)委員 終えたとするならば、その二十三、二十四日、いわゆる日韓両国の外務省実務者レベルにおいて、ただそれを、これはもう通達済みでありますからそのことを形式的に、そういうことだけで外交的な配慮が十分だ、日韓の実務者レベルの会議が成功する、こういうふうに中身のあるものだとあなたは思われるのですか。
#38
○嶋崎国務大臣 我々のとってきた措置につきまして十二分に説明をして、御理解を得たいというふうに思っておるような次第でございます。
#39
○井上(一)委員 さっきも大臣が答弁されたように、国内の制度というのは国内の方の問題であるけれども、指紋押捺の問題については、外交的な配慮、外国の意見も十分尊重していきたいというお答えがあったわけなんですね。だから、相手側との話し合いの中から生まれてくるものを大切にしていこう、そういうことが外交になるわけなんです。こちらで決めたことだけを一方的に押しつけていくこと、これは必ずしも友好外交にはならないわけなんです。そういう点について、法務大臣の立場としておっしゃられるという、法務大臣の立場ということも私は十分理解をしたい。しかし、さらに前進して、両者が、あるいは関係者が、あるいは関係省庁すべてが、この問題については引き続いての協議が必要ではないだろうか、そういう姿勢こそ両国の友好関係を深めていくし、外交的な信頼というのはそこに生まれてくる、こういうふうに私は思うのです。
#40
○嶋崎国務大臣 私たちがこの判断をとるまでに、いろいろな意味での御議論を聞いて今日まで経過をしてきたことがあるわけでございまして、国際的な配慮を全くなしに判断、処理をしたというような感覚ではないつもりでございます。御承知のように、この外国人登録事務というのは地方自治団体に対する委託の仕事でありまして、この仕事を的確に処理をしていく、しかも、この七月一日から九月にかけまして一つの山場が来るわけでございまして、そういう時期を迎えて、ぎりぎりこの判断をするべき時期はいつであるかというようなことも十二分に考えた上で、この処理を行ったつもりであるわけでございます。
 したがって、その交渉の中身は私は余り承知はしておりませんけれども、御意見は御意見としていろいろあるでしょうけれども、我々の考え方というのは、こういうことで今まで努力をしてこういうことになったのだというようなことについて、御理解をしていただくように努力をするということを申し上げている次第でございます。
#41
○井上(一)委員 さっきも外務省が答弁されたように、韓国側としては不満であり、第二の教科書問題だというくらいの厳しい受けとめを私はしているわけなんです。これはこのままでは大変な外交問題に発展する。だから、そういう意味では、さっきお答えの中で、継続努力を期待したいということを韓国外務部がコメントされているわけなんです。私は、やはりそういうことに期待される日本の外交であり、日本の政府であってほしい。
 直接の主務官庁である法務省でございますから、やはり法務大臣がそのことを理解することが両国政府の友好親善になり、あるいは昨年の全斗煥大統領訪日により両国がお互いに友好を深めようと誓い合った精神そのものではないだろうか、こういうふうに思うのです。ひとつそういう点について、きのうのきょうだからお答えがしにくいだろうと思うのです。しかし、思い切ってそれはやはり継続検討――外務大臣は、秋の日韓外相会議までにこれは継続検討をしていきたい、努力していきたいということを答えていらっしゃるのですよ。
 では、さらにつけ加えてお聞きしますが、日韓閣僚会議にあなたは出席をして、法務省の見解あるいは先方の意思を十分聞く用意があるということでも約束できますか。その前段の問題、そして今の質問にひとつお答えをいただきたいと思うのです。
#42
○嶋崎国務大臣 外務省の御発言の詳細というのは、私、承知をしておらぬわけでございますが、少なくとも、先ほど申し上げましたように、この夏の切りかえというようなことを考えてこの処理を行ったわけでございます。
 御承知のように、この引き続き検討するという項目というのはいつまで生きていくのかというような問題があるわけでございまして、社会情勢というものもどんどん変わっておりますし、ことしの切りかえというようなことの実態というものも明らかになっていくようなこともあるわけでございます。状況の変化に応じて行政というものは常にいろいろな意味で対応していかなければならぬことは当然のことだと私は思っておるわけでございまして、そのこと自体を何も否定をしているわけじゃない。しかし、今度の切りかえのときにこれ以上のことをやれと言われても、そのことはもう全くやる余地はないでしょうということを申し上げておるわけでございます。
 それからもう一つは、何か閣僚会議へ出てどうのこうのというお話でございますけれども、そういうお話はお聞きもしておりませんし、そういうところに出るようなつもりは全然持っておりません。
#43
○井上(一)委員 前段の、情勢は刻々変わっていくのだという認識は、外務省のいわゆる外交的配慮に努力をするということと同じ方向を向いている。あるいは行政的な対応は、今言うように外から国際環境の問題もありますから、そういうことも含めてこれで今回は一応協議は終結した、しかし、行政は情勢の変化を見て対応していかなければならない、こういうふうに今お答えだったと思うのですが、それでよろしいでしょうか。
#44
○嶋崎国務大臣 外務大臣の御意見がどういう御意見であったかということは、私よく承知しておりません。ただ、今申し上げたように、やはりこの大量切りかえというものを前提にしまして、ぎりぎり事柄を判断をしてこの処理を行ったわけでございますから、これを途中で変更するというような考え方は全然ありません。
 ただ、一般論として申し上げまして、行政を行う場合に、いろいろな事態の推移というものを見ながら判断をしていくということは当然のことであろうというふうに思いますし、また、日韓共同声明の中で引き続き努力をするということを述べられておるわけでございますから、そのことを度外視して物を考えるような気持ちは全くない。だから、そういうことに柔軟に行政というものは対応しなければならぬということはよく承知をしております。ただ、冒頭に申し上げましたように、ことしの段階でそういうことをとやかく言うような気持ちは全然ないということを申し上げているわけです。
#45
○井上(一)委員 重ねてお聞きします。
 日韓共同声明の中で、引き続き努力をするというその声明の精神は今日も生きている、こういうことに理解してよろしいですね。
#46
○嶋崎国務大臣 私はそう思っております。
#47
○井上(一)委員 さらに第二点目の、いわゆる閣僚会議が秋にあるわけでございますが、あなたは今、招聘もないし、あるいはそういう話はどこからもないから出席する意思はないということでございますけれども、もし韓国側があなたの訪韓を希望すれば、あなたはそれにこたえる用意がありますか。
#48
○嶋崎国務大臣 私は、最後のこの登録事務に関する責任者でありまして、そういう問題というのはまさしく外交的な問題でありましょうから、外務大臣が出られて処理されるのが一番の事柄の筋であるというふうに思っております。
#49
○井上(一)委員 それではひとつ、もし法務大臣自身が、大臣ということよりも一個人として、指紋押捺を強制されたら、その屈辱感というのでしょうか、人格を踏みにじられたという悔しさを感じないのですか。感じますか、感じませんか。
#50
○嶋崎国務大臣 これは少し話は脱線するかもしれませんが、私は昔、中学の授業料を持っていくのに少しおくれるというようなときには、平面指紋を押して金を納めたというようなことが再々あるわけでございまして、私はそのこと自体について、今度の平面指紋と絡めて事柄を整理すべきことであるというふうに思いませんけれども、個人として聞かれるなら、私自身の存在というものを明らかにするというような意味で、一向に差し支えをいと思っています。
#51
○井上(一)委員 僕は、法務大臣の人権に対する意識というものの低さというのでしょうか、人権に対する意識の低さということ、あえて言葉を重ねます。私なりに強い不満を持ちますし、こんなことで本当にいいんだろうか。
 さらに、現在国連人権委員会にこの指紋押捺の問題が請願として取り上げられているわけです。国連の場でこんな問題が取り上げられてきたということに対して、さっきあなたが答えられた外交的な配慮ということも含めて、答弁と本当の取り組みがやはり同一でないといかぬ。これは大変な国際的な人権問題として、在日外国人の大半が韓国人、いわゆる朝鮮人であるということで、今、日韓の問題が外交の重要な課題として取り上げられていますけれども、国連の場で国際的な人権問題としてこの問題が持ち上がってきたということに対して、法務大臣はどのように受けとめられているのでしょうか。――いや、法務大臣。僕はこれは役人の答弁を求めていませんよ。
#52
○嶋崎国務大臣 人権委員会にどういうような手続をされているかという具体的な内容について私は承知しておりませんものですから、事務当局から御説明をお願いしたわけでございます。別に拒否をしているつもりはさらさらありません。
 ただ、御承知のように、指紋制度というのは、その国の刑事、刑法関係のいろいろな体系あるいは警察のいろいろな体系等々、長い歴史を持って発生してきておるものであるというふうに思っておるわけでございまして、また、自由圏の国々についていろいろ調査をした結果等におきましても、相当の国というか、指紋制度を実行しているところが多いわけでございます。日本の場合には、いろいろな特殊事情というのはもちろん私もあると思いますけれども、そういうことを十分踏まえて事柄を判断しなければいかぬと思いますが、指紋制度そのものにつきましては、日本だけの希有な事例ではないということだけは御理解願いたいと思います。
#53
○井上(一)委員 日本だけではないというが、日本は人権を尊重する国であり、国際人権規約も批准し、世界の先進国としての人権擁護の立場を明確にしてきているのですよ。
 そして、あなたは歴史的な背景があるという。まさに大臣、昨年の天皇陛下のお言葉の中にも、「今世紀の一時期において、両国の間に」、これは韓国とですね、朝鮮との関係でありますけれども、「両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います。」ということ、さらには日韓共同声明の中に、「在日韓国人の特殊な歴史的背景を考慮し、その法的地位及び待遇の問題が両国民間の友好関係の増進に深くかかわっていることに留意した。」こういういわゆる素直な反省を表明しているわけなんですよ。
 やはりその素直な反省の表明がしっかりと向こうに受けとめられて、信頼関係も増していく。ところが、今回のこの問題で、せっかくの天皇陛下のお言葉あるいは両国の共同声明の精神がただ単なるリップサービスである、そういうことに受けとめられたらこれは大変なことであり、今回の問題は非常に重大な問題として受けとめて対応していかなければいけない。
 きのうのきょうだから私はあえて言うのですが、あなたは七月、八月の大量更新に、昨日のこんなものは私から言うたら厳しいのですよ、拒否者を告発せよ、そんなことで乗り切れるなんという認識それ自体が間違いであり、授業料がおくれたから指紋を押しました、そんなこととは違うのです。それはあなたが受けた教育です。今の戦後の平和教育、人権尊重の教育の中でそういうふうなことがあり得るのかどうか。あなたのそういう答弁を聞いて僕はがっかりしましたよ。
 法務大臣というのは人権を尊重する一番の総元締めでなければいけないのに、戦前の、それはいろいろなことがあったでしょう、そのことを深く反省した上に立って日韓の友好を深めていこうというのが昨年の天皇陛下のお言葉であり、日韓共同声明の精神だ、そういうことであれば、今後なお一層その線に沿って努力をしたい、それくらいの考えを国会の中で表明しなければ、この問題は大変な取り返しのつかないことになるから、あえて私はそういうことを強く訴えたいわけです。
 日本にいらっしゃる全外国人の人たちを含めて、人権という立場から、さっきの自分が指紋を平気でこうだという、まあ時代の推移がありますが、そんなことも含めて、法務大臣、もう少しあなたの認識を改めてもらいたいという強い期待を含めて質問をしたわけです。
#54
○嶋崎国務大臣 さきの陛下のお言葉につきましては、これは十二分に承知をしているわけでございます。また、一番近い隣国である国々との関係の重要性というのは、御指摘をされるまでもなく十二分に承知をしておるつもりでございます。個人的にということを聞かれましたから、先ほどそういうようなお話を申し上げたわけでございまして、この問題は、最初に少し丁寧に申し上げ過ぎたというので、話は端的にやれと言われるものですから、少し端的にやり過ぎたところがあるかもしれませんけれども、国内的な事情あるいは国際的な事情というものを十二分に判断をして事柄を処理するという考え方を何も捨てているわけではありませんので、その点は御了承願いたいと思います。
#55
○井上(一)委員 この問題は同僚議員からもきょうは質問が出ると思います。質問が出ると思いますが、今の法務大臣のお答えの中で、私は大変遺憾な点が余りにも多過ぎるわけです。
 さらに、これは外務省に聞いておきたいのですが、指紋押捺制度は、日本の加盟する人権規約のA規約の第二条の二項になるわけですし、B規約の第二条の一項に当てはめても、これはまさに違反をしているという私の見解であります。差別と抑圧の象徴である、こういう観点から、まさに人権擁護の立場に立ってもこの指紋押捺制度は人権規約に反する、私はこういう見解を持っているのですが、外務省の見解を聞かせていただきたいと思います。
#56
○増井説明員 ただいま先生御指摘の人権規約、A規約及びB規約両方ございますけれども、御指摘の点は法の前の平等をうたったくだりであろうというふうに私は理解するわけでございますけれども、純法律的に申し上げまして、あらゆる差別待遇を絶対的に禁止するというものではない、それから不合理な理由によります差別を禁止し、合理的な理由ということでございましたら、それ自体は差別待遇は禁止していないというふうなことでございます。
 そこで、指紋押捺制度につきましては、合理的な理由と必要性ということに基づきまして内外人の取り扱いに差を設けるものでございまして、B規約で、特に第二条の一項だとかそれから二十六条に違反するものでは必ずしもないというふうに考えておる次第でございます。
#57
○井上(一)委員 外務省がそんな答弁というか認識では、私は、内外人平等の権利の実現という意味ではこれは国際人権規約に違反している、こういうふうに特に強く指摘をしておきたいと思います。
 法務省に、日本弁護士連合会、日弁連ですね、その中に人権擁護委員会があることは御承知だと思いますけれども、日弁連の人権擁護委員会の位置づけというのでしょうか、評価というのでしょうか、それはどのように位置づけ、かつ評価をされていらっしゃるか、まずそれを聞いておきたい。
#58
○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。
 私どもも、何ら合理的なあるいは正当な理由なしに個人が指紋の押捺をその意思に反して採取されるということは、憲法の保障する個人の自由を侵害する行為であると考えております。しかしながら、私どもは一方において、外国人登録法に基づく指紋の採取は、正確な外国人登録の維持のために必要であるというふうに確信いたしておりますし、このような合理的な理由のある限りにおきまして、指紋の押捺そのものが直ちに憲法の保障する個人の自由を侵害するものではないと確信する次第でございます。また、この点につきましては、既に幾つかの裁判所の判決においても判示されているところでございます。
#59
○井上(一)委員 今のお答えは国際人権規約に対する違反ではないかということに対するお答えであって、今外務省から聞きましたし、私の意見も申し上げたわけですが、今度は、日弁連の人権擁護委員会の位置づけというか評価というものに対してのお答え、どなたがするのですか。大臣、してください。
#60
○嶋崎国務大臣 私はその内容の詳細は存じておりませんけれども、御承知のように法務省の中にも人権擁護局というのがあるようなことでございまして、人権については十分配慮して事柄を処理していかなければならないと思っております。
#61
○井上(一)委員 いや、私は内容を承知とか内容のことを聞いていないのです。日弁連、日本弁護士連合会をどう評価し、そしてその中にある人権擁護委員会というものをあなた方はどういうふうに評価していらっしゃいますかということを聞いているのです。
#62
○嶋崎国務大臣 日弁連につきましては、御承知のように自主的な団体として存在している弁護士の連合会でございます。その中の人権擁護委員会というものにつきましては、先ほどお答えしたとおりでございまして、私はよく内容を承知しておりません。
#63
○井上(一)委員 ともあれ、日本弁護士連合会の人権擁護委員会が、指紋押捺は人権を無視している、憲法、人権規約違反の疑いが強い、こういう判断を示されているわけなんです。私は、それを承知していないとかそういうことを十分認識していないということについて大臣に少し――あなたの主管であり、あなたと法務省とは常に関係深く、その動向というのでしょうか、努力というのでしょうか、人権擁護に対しての取り組みには連絡があり、あるいはまた独自性、主体性を尊重しながらお互いが人権擁護に向かって共同して取り組んでいかなければならない日弁連の人権擁護委員会がそういう強い意見を出しているわけなんです。このことについてもう一度、大臣、知らないで済まされるのか。
 今私が申し上げたように、日弁連の人権擁護委員会が、人権を無視した、いわゆる個人の尊重、あるいは法のもとの平等、あるいは品位を傷つける扱いを禁じた国際人権規約に違反する疑いが強い、こういうことを意見として出しているわけなんです。日弁連のこういう国内の動きというものは、法務省の一つの大きな参考というのでしょうか、尊重すべき意見ではないだろうか、そして、外では韓国を含めた国際的なそれぞれの国の対応というものも考慮していくべきではないだろうか。もう一度、日弁連のこの動きに対しての評価を大臣から答えていただきたいと思います。
#64
○嶋崎国務大臣 先ほどもお答えしましたが、日弁連というのは自主的な組織でありまして、監督官庁を持っていない組織であるわけでございまして、法務省がその行動についていろいろな意味で、法曹の三者でありますから連絡関係は十分に保っていかなければならぬという気持ちで着任以来私は対処しておるつもりでございますけれども、そういう自主的な団体であるということはひとつ御了承願いたいと思います。
 なお、その御意見につきましては、先ほど来外務省なり、また我が方からも説明をしたとおりでございまして、そういう御意見は随分方々からたくさん私もいただいておるし、また、そういうこと自体について全く知らないわけじゃありませんけれども、そういうことの一環として意見を承知しておる、理解をしておると思います。
#65
○井上(一)委員 中曽根内閣の閣僚として、ボン・サミットにおいて政治宣言をされた中身は十分御承知ですね。
#66
○嶋崎国務大臣 十分に知っておるかといいますと、私は法務大臣でございまして、ボン・サミットというものの性格は主として経済的な問題を中心にしてやり、最近政治的な問題についてもある程度の発言をされていることはよく承知しておりますけれども、十分に承知しておるという部類には属しないかもしれないと思います。
#67
○井上(一)委員 中曽根総理があえてボン・サミットで強く主張をしたことの一つは何でしょうか。
#68
○嶋崎国務大臣 声明文自体は読んだことがありますけれども、主要な点がどこにあるかという点については、この席で私が説明するほど自信を持っておりません。
#69
○井上(一)委員 総理が特に強調された、指摘をされたことはたくさんあろうと思います。いろいろ努力をされてきたわけです。しかし、とりわけその中に、「我々は、アジアにおいては、当事者が朝鮮半島の分割を自由のうちに克服することを可能とするような政治環境が創られることを切望する。」この一節というか、文章をあえて中曽根総理は提起されたわけです。
 ということは、その意を体して政治環境、いわゆる朝鮮半島における政治環境をつくっていこうということは、朝鮮半島、いわゆる韓国と日本との信頼関係を深めていこうということにもなり、日本もそのために努力をしていく、こういうことになるわけで、そういうことから考えたら、先ほどから指摘をしている指紋押捺制度の問題について、韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国を含めて、あるいはその他の外国人を含めて、このボン・サミットでの政治宣言の意を十分酌むべきではないだろうか、私はこういうふうに思うのです。その点について少し大臣からお答えがいただけるなら答えてください。
#70
○嶋崎国務大臣 その点につきましては、政治宣言の中で読んでおりますし、また総理自身もお帰りになりましてそういう趣旨の国会報告もされたということを、私も列席して十二分に承知しておるわけでございます。一般的な問題としまして、アジア各国との関連を非常に密接化する、特にサミットにおいては日本だけがアジアの国の代表みたいな形になって参加をしている形をとっておるわけでございますから、そういう点については十二分に配慮をしてやっていかなければならぬということは、当然のことだというふうに私は思っておるわけでございます。
 この問題と指紋制度がストレートに結びつくのかどうか、私はその辺の判断はよくわかりませんけれども、一番大事なことは、アジアの一国としての我が国であります。また、そういう中で日本の存在というものが非常に重要な位置を占めているということも承知をしているわけでございまして、そういう観点から事柄を考えていきたいというふうに思っております。
#71
○井上(一)委員 それじゃ、今度法務省に、これは大臣でなくて結構です。
 ちょっと一般論として聞いておきたいのですが、国家公務員または地方公務員が、その職務内容に関連してというのでしょうか、犯罪を発見した場合にはどういうことをしなければいけないのか。あるいはそれは条文は、どういう法律の第何条にそういうことが明記されているのか。犯罪を察知した場合というか、承知した場合というか、知った場合、法務省にちょっと御答弁願います。
#72
○筧政府委員 お答え申し上げます。
 今御指摘の点は、刑事訴訟法の第二百三十九条にございまして、その第二項において、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定められております。
 これは、およそ行政が適正に行われますためには、国または地方公共団体における各種の行政機関が相互に協力し、一体として行政機能を発揮することが極めて重要でありまして、犯罪の捜査ないし公訴権の行使等の刑事に関する行政作用につきましても各種行政機関の協力が必要であるという見地から、官吏または公吏に対し、告発につき一般的な義務を課することとしたというふうに解しております。
#73
○井上(一)委員 これは義務条件、義務だ、こういうふうに決められているわけなんですが、そのとおりですね。
#74
○筧政府委員 これは義務規定と解しております。
#75
○井上(一)委員 それじゃ、次に厚生省関係に入るわけでありますけれども、私は当委員会で、いわゆる京セラが薬事法に違反していた、こういうことが指摘をした中で明らかになったわけです。薬事法に違反していた京セラ、企業側は、この人工骨について、その後何らかの反省を含めてどのように対応をされたのか、厚生省は承知している範囲内を聞かしていただきたいと思います。
 それじゃ、答弁が少しなんですから、私の方の情報というか、一部報道には、人工関節については、同社長は、承認以前に販売したのは弁解の余地のない薬事法違反行為であるということで、これは十日の午後、京都でそういうことをコメントして、多大の御迷惑をおかけし、深く反省している、こういうことを述べられたと報道されています。厚生省はこういうことは承知しているのかどうか。
#76
○中井説明員 先生御指摘のそういう声明を発表したということを聞いております。
#77
○井上(一)委員 そこで私は、いわば未承認の治療材料を使っていた、これは大変な莫大な数量になり、それに要した医療費というものは莫大な額だ、こういうふうに思うのです。そのような未承認の治療材料を使って保険請求をしたのは、これはどういうことになるのか、不正請求に当たるのか、あるいはそうでないのか、そういう点についてはどうなんですか。
#78
○幸田政府委員 お答えを申し上げます。
 薬事法上承認をされているものを用いないで医療保険の請求を行いました場合には、結論的に申し上げますと不正請求に当たるものでございます。
 医療機関が診療報酬請求をいたします場合には、健康保険法第四十三条ノ九第二項によりまして、厚生大臣の定めるところ、すなわち診療報酬点数表に基づいて算定をいたし、請求をいたすことになっておりますが、その診療報酬点数表で言っております特定治療材料、今御指摘の人工骨、関節はこれに当たるわけでございますが、これは当然に薬事法上の承認を受けているということを前提にいたしておりますので、先ほど申し上げましたいわゆる不正請求に当たるものと考えております。
#79
○井上(一)委員 不正請求であるということになれば、これはもう大変なことだ。だから厚生省は、その不正請求に対してどうするのか、非常に初歩的な質問かもわかりませんが、念のためにこれは聞いておくのです。不正な請求に基づいて保険によって給付がなされた場合には、当然医療機関はこれを返還をしなければいけない、こういうことなんですね。そうでしょう。
#80
○幸田政府委員 御指摘のとおりでございます。医療機関に診療報酬を支払っておりますのは、各医療保険の保険者でございますから、保険者に医療機関から返還をさせることにいたすわけでございます。
#81
○井上(一)委員 それじゃ、さらにお聞きをしますが、現在これは全国に出回ってしまっているわけでありますから、過去五年間というか、承認を受けていない、現在も受けていないものがあるわけですが、少なくとも国立病院における未承認の治療材料を使った実態、これはどういう状況なのか、あるいはその材料を購入した額は一体どれぐらいなのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
#82
○大池政府委員 お答え申し上げます。
 先般御指摘をいただきまして、全国の国立病院、療養所につきまして、これまでの購入、使用の状況を照会いたしたところでございますが、その結果、五十五年度から五十九年度までの五年間に該当のある施設が六十一施設あることが判明しております。ほとんどの施設におきます数量は少ないわけでございますが、施設数が多い関係上、合計いたしますと数量は千六十三個に及んでおりまして、これらが未承認の人工関節、人工骨あるいはその付随する部品ということでございます。これらの中で、材料の購入の金額の合計は約三億六千万と承知しております。
#83
○井上(一)委員 国立病院だけで、材料費だけでそうだ。全体、全国的にこの人工骨を使って治療をしていた、そしてそのことによって不正請求を行った、そういう病院はまだほかにあるわけなんですね。だから、それの全体の数あるいは不正請求額、治療費も含めてこれは一体どれくらいになるのか。あるいは先ほどもお答えをいただきましたけれども、不正請求については医療機関に返還を求めることになるわけなんですけれども、そういうことをこれは当然やられると思うのですが、これもまた念のために聞いておきたい、こういうふうに思います。
#84
○幸田政府委員 四月十一日に先生から御指摘を受けまして、私ども直ちに京セラに対しまして担当重役の出頭を命じまして、京セラが販売をしております、あるいは京セラの卸関係を通じまして販売をしております病院の名前、それからどの程度の数量を販売しているか、その金額はどのぐらいになるのかということの調査を命じまして、関係資料を早急に提出いたすように指示をいたしたのでございますが、約一カ月たちますけれども、現在のところまだ私どもに提出がなされていない、こういう状況でございます。
 私ども、できる限り早く提出をしろと、五年間分全部を洗い直すのが時間がかかるのであれば、一年間分なり直近の二年間分なりでも提出をしろ、こういうことを督促を重ねている状況でございます。こういった相手方の態度につきましては私も非常に遺憾に思っておるわけでございまして、早急にさらに督促を重ねまして実態を把握いたしたいと考えておるわけでございます。
#85
○井上(一)委員 十日の日に、もう弁解の余地がない、大変迷惑をかけて深くおわびを申し上げたい、こういうことを社長が言われたということが報道されているわけなんですが、今の答弁では、全体の不正請求額もまだ厚生省では把握ができない、こういう状況で、私が指摘してからもう一カ月過ぎたわけですから、これはきっちりと処理してもらわないと困るわけです。医療費の問題がなかんずく大きな社会問題になっています、とりわけ不正請求ということが。国立病院だから許されるわけじゃありません。
 今、京セラの未承認人工骨の販売額が、いわゆる材料費が国立病院だけでお答えがあった数字、現在つかまれている数字で三億六千万、これはもちろん材料費だけでありますから、治療費を含めると通常相当な額に、大変な多額になってくると私は思うのです。
 これは医療保険で返還を求める場合、どこまで医療保険の返還請求ができるのか、大変難しい問題だと思うのですよ。しかし、材料費だけで事が済まされる問題ではない。非常にとらえにくい、難儀な仕事が残されているわけなんですけれども、一つ、この返還請求、医療保険での返還を求める場合はどれぐらいまでを考えて検討していかれるのか、その点についても少しく聞いておきたいと思います。
#86
○幸田政府委員 返還を求めます医療費の範囲の問題でございますけれども、材料費のほかに、その材料に係ります手術料あるいは検査料等いろいろなものが考えられるわけでございます。ただ、その医療費全体を見ました場合に、恐らくこの御指摘の事例の場合には平均いたしまして月に百万円を超える金額がかかっていると思いますが、そのうち、例えば検査料をとりましても、手術をするための検査であったのか、あるいはその病気を特定するための検査であったのか、いろいろな難しい問題がございます。私ども、考え方の上では、少なくとも材料費については返還を求めるべきものは当然でございまして、それ以外にどの程度のものが考えられるか、その辺は実態をもう少し把握いたしまして、実際上の問題として検討をしてみたいと考えているわけでございます。
 従来、この種の問題につきましては、医薬品でございますとかあるいは歯科の材料等について例がございます。薬事法の承認を受けない医薬品を使用した、あるいは薬事法の承認を受けない歯科材料を使用した例がございますが、そういった場合におきましても、最低限、材料費の返還を求めているのが従来の例でございますので、そういったことも踏まえまして今後検討いたしたい、かように考えております。
#87
○井上(一)委員 一件月百万ということ、まあまあ標準的なことですからね。それはさっきの国立病院だけでも、千六十三ですか、お答えがあったようにこう使用している。必ずしも一人に一つということじゃありませんけれども、単純な計算でいつでも十億からになってしまうわけですが、それは今言われるように今後の全体的な調査を待ってということでございますから、それじゃ、とりあえずの措置として、少なくともさっき指摘があった国立病院が購入した材料費三億六千万円については、これは返還をさせるんでしょうね。
#88
○幸田政府委員 実態を把握しております国立病院につきましては、御指摘のとおり保険者に返還をいたさせるようにいたします。
#89
○井上(一)委員 それじゃ、その三億六千万円を返還させる返還分の財源、これはどうするんですか。
#90
○大池政府委員 まことに遺憾な出来事であると承知しておるわけでございますが、国立病院といたしましては、返還に当たりましてこれを患者さんに転嫁させるようなことは適当でないと考えておるわけでございまして、京セラの負担ということで対処してまいりたいと考えております。
#91
○井上(一)委員 今のお答えで、患者に転嫁させない、京セラに負担をさせたい。
 それじゃ、もう一度念のために確認をしますが、この国立病院の購入した少なくとも材料費の三億六千万円については、京セラに返還請求をするということなんですか。それは京セラに返還請求をする、こういうことに受けとめてよろしいのですね。
#92
○幸田政府委員 手続の上で申し上げますと、不正請求をいたしましたのは病院でございますので、病院に対しまして各医療保険の保険者の方が返還を請求いたしまして、国立病院と京セラとの話し合いで、その分については実質的に京セラが補てんをする、こういう格好で取り扱いを指導してまいりたい、こういうことでございます。
#93
○井上(一)委員 さらにもう一点、それじゃ、国立病院以外の一般病院における取り扱いについてはどうなさるんだろうか。
#94
○幸田政府委員 国立病院と同様に、保険医療機関と京セラとの関係、両者の問題ではございますけれども、私ども、材料の提供者として京セラがやはり責任を負うべきものと考えておりますので、そういった観点から必要な指導を京セラに対してやってまいる考え方でございます。
#95
○井上(一)委員 厚生省として、京セラに対してそのような意思はもう伝えたのでしょうか。あるいはそういう意思を早急に伝える準備をなさっていらっしゃるのでしょうか。
#96
○幸田政府委員 先ほど申し上げました京セラの担当重役に対しましては、そういうことになるということを私どもの方から申しておりますが、具体的な額につきましては、先ほど申し上げましたような実態調査の結果を待ちまして、さらに京セラに対して必要な指導を行ってまいりたいと思っております。
#97
○井上(一)委員 本来、こういう不正請求の場合は、医療機関に対する行政処分がありますし、そして、その医療保険の返還請求は、先ほど言われたように、材料を売った企業が負担するわけではないわけなんです。しかし、トラブルを恐れて国立病院は、患者との民事訴訟がそこに起こってきますね、そういうことを恐れて企業に、いわば緻密な積算はされると思いますけれども――もちろん、私は京セラの企業姿勢を鋭く批判しているわけです。よくないことである。慢性の関節リューマチ炎でそこの材質で完治したという喜びを持った人たちもたくさんいらっしゃるであろう、しかし反面、十回手術したけれども完治しなくて大変困っていらっしゃる方もいらっしゃるわけです。だから私は、そういう疾病に悩む人たち、あるいは治療を受けた後に悩み苦しんでいる人たち、そういう人たちのことも十分勘案していかなければいけないけれども、行政というのはやはり毅然とした、きちっとした対応をしてほしい、すべきである。国立病院だけは別格であるというような、そういうことは許されないし、一般病院もあわせて適正な、企業に対して、責任の全部、全体を企業が負うんだ、負ってしかるべきだという強い姿勢が必要ではないだろうか。そういうことで、三億六千万円については今お答えがあったとおりでありますけれども、その全額の治療費を含めた不正額総額は時間が必要でもありますし、これは今後の対応を見守っていきたい。
 さらに、こういう未承認のいわゆる人工関節、医療器具を使用して保険請求を行った保険医療機関、通常ならこれは保険業務の取り扱い停止だとかいろいろなことがここになされるわけです。私は、国立病院の果たす地域医療でのその貢献する役割というものも多大に評価をし、そのことについての一定の役割は今後も続けてほしい。だから、決してそういう配慮なく、ただ単なる行政処分を求めるものではありませんけれども、国としても、厚生省としても、あるいは病院としても、一応この問題についての反省、責任をやはり明らかにして、国民にその姿勢を示していくべきである、そういうふうに思うのですが、そのことについてどうお考えなのか、ひとつお答えをいただいておきたい、こういうふうに思います。
#98
○幸田政府委員 私ども、この問題の処理に当たりましてまず第一に考えなければならないのは、御指摘のとおり、やはり患者の立場であると思います。患者の立場を十分に配慮をし、患者は一部負担金をお支払いをしているわけでございますけれども、幸いにいたしまして高額療養費制度がございますから、患者からの返還請求ということは事実上は起こってまいらないと思っておりますが、いずれにいたしましても患者に対する配慮ということを第一義に考えてこの問題の処理をいたしたい、それが私どもの基本的な考え方でございます。
 あわせて、医療機関につきましても、保険の不正請求ということになりますと、御指摘のとおり保険医療機関の指定の取り消しというような問題が起こり得る可能性がございますけれども、本件の場合には、恐らく医療機関は未承認のものであるということを承知をしないで使っていた、こういうことではなかろうかと私ども推定をいたしております。そういった事情を勘案をいたしまして、関係の医療機関に対しましては、二度とこういうことのないように十分な注意を喚起をするといったようなことを考えてまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、国民医療の確保の上で御指摘のような混乱なりそういうものが起きないように、十分心してこの問題の処理に当たる所存でございます。
#99
○井上(一)委員 患者の立場、特に治療費の負担という問題で迷惑をかけてはいけないし、ただ単に高額医療費の適用があったということだけでは済まない。そういうことは国会の中で医療費の負担の問題で議論があって、国立病院がこんなことをするから医療費の問題が、片側で入院費や初診料や、そういうことで微々たる額が問題になる。私たちはそのことには反対をしてきた。こういう金はどこへ入っていったんだ、企業だけが利益を優先する。きつい言い方かもわかりませんけれども、材質の評価というのは別にしてでも、そういう点について強い反省が必要である。
 実際は病院もだまされて買ったんだ、まさかそんな未承認のものを売りに来るとは思っていないんだ、病院も被害者なんだ、こういう立場に立っているんだというふうに僕は理解したい。痛い患者を助けるために未承認のこの材質を使った、それは喜ばれた人、苦しんでいる人、これはありますよ、ありますけれども、医者の良識で使ったんだ、むしろ病院は被害者だという立場に置きかえたい、私自身はそう思うのですけれども、そこらはどうでしょうか。厚生省の方はどう理解をされているのか。
 もしそういうことであれば、それに対する厚生省あるいは病院としての企業に対する一定の何らかの対応がまた必要になってくる、こういうふうに思うのです。だまされて買わされたんだ、おまえらだましたんじゃないか、そういうことの申し入れもできぬような状況なのかどうか、そんな状況があるのかどうか。
#100
○大池政府委員 患者さんの立場に立ち、よりよき医療を追求していくという国立医療施設におきまして、それと気づかないまま購入したということではございますが、六十一施設にも及んでいるというのは甚だ遺憾な出来事でございます。施設側にも注意を払うべき点はあったといたしましても、基本的には未承認の治療材料を販売してはならないという、そういうものを販売をしたというような、あってはならない、常識を超えた京セラの行為はまことに遺憾であると考えておるわけでございます。国立病院の立場からいたしましても、同社に対しまして、今回の厳しい反省に立って適切に対処するとともに、今後決してかかることのないように厳重に注意を促してまいりたい、かように考えておるところでございます。
#101
○井上(一)委員 そういう答弁をされますけれども、中身は一体どうなんだろうか。京セラが研究開発費という名目で病院に金を出しているではないですか。もらっておって、未承認のものを使って、そんなことが本当に被害者の立場でございますと言えるのだろうか。それがどういうふうに使われて、どんなことがされておったのか。国会でもこういう問題についてはいろいろ議論があって、五十七年度からは病院の予算の中に計上されてきた。しかし、そういうものはトンネルじゃないか。そして、たまたま京セラが承認を申請し、一部材質については五十七年に許可がおりた。
 僕は別に、そこによこしまな考え方があってどうだこうだという疑いを持ちませんよ。持ちませんが、どうもそこらはすっきりしない。だから、逆にすっきりさせなければいけない。研究開発費をもらって、たまたま五十七年に一部承認をおろした。使っておるのは五十五年ですからね。五十五年から使っておるわけです。
 そんな未承認のものを保険請求するという内部の事務組織、これにもいろいろと問題がある。それは京セラ、企業が発生源であると言えばそれまでだけれども、それだけでこの問題をとらえては、これはすべての次の問題への取り組みにつながっていかない。医療というのはなかなか難しい面もあると思いますし、新しい医療への試薬、医療器具も含めていろいろなことがあると思いますけれども、どうもすっきりしない。
 時間が来ましたので、きょうはこれ以上申し上げませんけれども、厚生省のこの問題に対しての毅然たる対応、きっちりとするという約束をここであなた方ができなければ、しかるべきできる人たちにやってもらわなければいけないわけです。その点について厚生省の決意というか取り組みの考えをお聞かせいただいて、きょうはとりあえずこれで終えておきたい、こういうふうに思います。
#102
○大池政府委員 先生御承知のとおり、臨床部門におきます研究開発、これは医療の向上にとって大変大切な分野として国立病院もこれに取り組んでいるところでございますが、御指摘のような疑惑を招くことが一切ないように、今後とも厳正に指導をしてまいりたいと考えております。
#103
○安井委員長 次に、新村勝雄君。
#104
○新村(勝)委員 最初に法務大臣にお伺いしますが、きょうの報告によりますと、法務省所管の事務処理の中で、一件ではありますけれども、不当事項が報告されておるわけです。これは残念ながら、各省ともにこういう事例が散見をされる。
 法務省においては、特に法の守護者という立場からしても、各省庁に先んじて模範的な事務処理、特に経理上の処理をしなければいけない立場にあると思うのですけれども、ただ一件ではあるけれども、大変性質のよくないことが報告をされておるわけでありますが、これについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
#105
○嶋崎国務大臣 法務大臣としまして、今回不正のありました大阪入国管理局神戸支局の問題につきましては、非常に遺憾に存じておるわけでございます。御指摘になられたとおり、法務省の仕事というのは、いろいろな関係の業務はあるにしましても、基本は法秩序を維持するという立場をとっておる役所でございまして、そういうところでこういう被疑事実があったということは、非常に残念なことだと思っておる次第でございます。
#106
○新村(勝)委員 残念だということではなくて、もちろん残念だと思いますけれども、今後どうするかという問題も含まれるわけです。
 それで、こういう官庁の内部における不当事項あるいは不正事項を未然に防ぐという趣旨から、前委員長の時代に、各省庁において内部監査を強化すべきだ、こういうことが委員会の意思として決定をされておりますし、もちろん理事会においてもそういう趣旨が決定をされておるわけです。そして前委員長の時代に、各省庁に対して内部監査の現状、それからそれがどういうふうに運用されているかということについての報告も求めておるはずです。こういう点からして、今後会計検査院にすべてをお任せするというだけではなくて、その前に各省庁の内部における自律的な内部監査、これを強化することがどうしても必要であると考えます。そういう点での大臣のお考えを伺いたい。
#107
○嶋崎国務大臣 これらの問題につきましては、犯罪を未然に防止をするということは基本的に非常に重要なことであり、そういう意味で、官庁の内部事務の運営につきましては、いろいろな意味で監査を的確に行うとともに、その発生を未然に防止するための努力というものを積み重ねていかなければならぬと思っておるわけでございます。詳細はあるいは事務当局から答弁させた方がいいかと思いますが、今後ともそういう気持ちで対処をしていきたいと思っておる次第でございます。
#108
○新村(勝)委員 この点について全省庁に対して報告を求めたことがございます。そのときの報告がどういうものになっておるのか、特に法務省の内部における自律的な内部監査の体制がどうなっているかについて伺いたいと思います。
#109
○清水政府委員 お答え申し上げます。
 法務省におきましては、官房会計課を中心といたしまして、適時各組織に出張いたしまして事務監査を厳格に行うことというようなことをもちろんやっておりますとともに、各種の会同あるいは会議の機会を通じまして、さらに徹底して会計事務の厳正な処理を行うように、常日ごろから指導しておるところでございます。
#110
○新村(勝)委員 その体制が現在望ましい状態になっているかどうか、それから、そのことによって不正、不当、そういったことが阻止をされているか、内部監査の実効を上げておるかどうか、その点はどうですか。
#111
○清水政府委員 今回御報告いたしました事件、まことに私ども残念に思っている事件でございますけれども、とにかく常日ごろから徹底した監査を行うことに努めてまいっておるわけでございまして、その成果というわけではございませんけれども、このような不正事故というのは、まことに例外中の事故として起こっているというふうに私どもは考えております。なお今後とも、この種の事件がたとえ一件であっても起こってはならないことでございますので、私どもこの点についての配意に一層努めてまいりたい、努力をしてまいりたい、かように考えております。
#112
○新村(勝)委員 この件については、不正行為者が全額を債権者に支払ったということになっておりますけれども、そのほかの処置はどういうことになっていますか。
#113
○清水政府委員 当該不正行為をした人間につきましては、停職六カ月の処分を行いました。それから、関係の上司につきましては、戒告あるいは訓告等の行政処分をいたしております。
#114
○新村(勝)委員 検査院にお伺いをいたしますけれども、検査院が日ごろ大変御努力をなさっていること、それから定員等についても必ずしも十分でない条件の中で大変御精励をなさっていることについては敬意を表するわけでありますが、やはり検査院の検査をより一層有効ならしめるためには、内部監査の体制がどうしても必要であると思います。そういった趣旨から、委員会においても前回そういう決定がなされたわけでありますけれども、検査院の立場からして各省庁の内部監査の状況、それについてのお考えはいかがですか。
#115
○佐藤会計検査院説明員 ただいま先生御指摘のとおり、不正の防止などにつきましては、内部監査というものは非常に大事なものだという認識を私ども持っております。そういったことで、各官庁の内部監査組織の充実強化を図っていただきたいということをたびたび要請申し上げているところでございます。
 現状について申し上げますと、各官庁の内部監査組織、人員等につきましては、必ずしも十分なものではないという認識を持っております。
 以上でございます。
#116
○新村(勝)委員 十分でないというお話でありますけれども、現在の状態がどの程度であるかということの把握、具体的に把握をなさっていらっしゃいますか。それから、その不十分な点については、これは検査院が総括的に監督指導ということができるかどうか、それは問題があるにしても、各官庁にその体制の整備を要請することはできると思うのですけれども、今後のやり方としてはどうなさっていくおつもりであるか。
#117
○佐藤会計検査院説明員 内部監査の充実強化につきましては、検査を通じまして要請しているところでございます。
#118
○新村(勝)委員 検査の都度、問題が起こる都度要請をするということは必要だと思いますけれども、そのほかに、各省庁の中には内部監査の規定があるはずですね。その規定がどの程度活用されているかということの監査といいますか指導といいますか、それをする必要があると思うのです。それはいかがですか。
#119
○佐藤会計検査院説明員 先ほどちょっと答弁を落としましたが、各官庁の内部監査の状況につきましては、私ども、会計監査に限りますけれども、毎年調査をいたしまして、人員なり人日数なりを把握いたしております。
 それから、数年前になりますが、いろいろ公団等でやみ給与とか空出張とか、ああいう事件がございまして、監事監査の充実強化につきましては、私どもの方で意見を内閣官房に対して申し上げたこともございます。
 以上でございます。
#120
○新村(勝)委員 この問題についての最後ですけれども、大臣にお伺いをしますが、現在の法務省としての自己監査体制は万全であるとお思いであるのか、万全でないとすれば今後どういうふうに運用をされていかれようとするのか、お伺いします。
#121
○嶋崎国務大臣 常日ごろ内部監査の充実について的確にやるようにという指示をしておりますし、それに基づいてきちっとした整理をやっておるというふうに思っておりますけれども、非常に不幸なことに、現にこういう事件が発生をしておるという現実があるわけでございますので、今後とも間違いのない内部監査を進めまして、こういう非行が出ないように事前に防止をするように努力を続けていくように、さらに強く指示してまいりたいと思っております。
#122
○新村(勝)委員 次に、衆議院の定数是正の問題、これが今大きな問題になっております。現内閣としても政府としても大きな懸案だと思います。
 そこで、現在定数の配分については違憲状態だという最高裁の判断が既に示されておるわけですが、これについて大臣はどうお考えですか。
#123
○嶋崎国務大臣 私は参議院の出身でありますから、衆議院の定数問題についてとやかく言うのはなんでございますが、法務省として、自治省の所管の事項でありますけれども、訟務案件としましてこれを引き受けて処理をしておるという現実があるわけでございます。
 いろいろな立場でこの問題を処理してきておりますけれども、事実上は法の技術的な運用、処理、対応というようなことで解決ができなくて、違憲の状態であるというような判決が出ておるという実態であるわけでございます。したがいまして、そういう意味で事情判決ということで事柄は処理をされ、今度の場合もたしか五十八年の十一月に裁判の結果が出て、五十八年の十二月に選挙をやっておるという時期的に非常に接近した事案でありますから、その御判断はまた少し後に判決が行われるというようなことになろうと思うのでございますけれども、いずれにしても、先例から考えまして的確に処理をされることが望ましいということを強く考えておる次第でございます。
#124
○新村(勝)委員 五十八年十一月に、定数配分が違憲状態である、ただし、五十五年の選挙は違憲とはされなかったのですね。しかし、定数配分は違憲状態である、こういう判示があったわけであります。それにもかかわらず五十八年の選挙はそのまま行われた。
 そして、五十八年の選挙に対する第一審は、いずれも各高裁ともに、憲法違反である、選挙そのものが憲法違反であるけれども、事情判決で選挙そのものは無効としない、こういう一審の判決が、各高裁ともこぞって一致した判断が出ておるわけですね。それで現在は最高裁において審理中ということでありますけれども、そうしますと、現在の状況というのは、憲法あるいは三権分立、そういった政治の原則から考えてどういう状況なんでしょうか。
#125
○嶋崎国務大臣 今申し上げましたように、五十八年十一月の判決後すぐ選挙が行われたというような事情にあるわけでございます。そういうようなことがいろいろ判断をされまして、違憲状態でありますけれども事情判決をいただいておるという経緯があるわけでございます。それから相当の日時もたっておるわけでございまして、今衆議院あるいは各党の中でこの問題の処理について大変な御苦心もなさっておられるというようなことを聞いておるわけでございますが、できる限りそういう状態が改められるような対策を講じられるということが大切なことであるというふうに思っておる次第でございます。
#126
○新村(勝)委員 ですから、現在の状況は、第一審ではあるけれども、そういう判断が出ている。それで、その是正はなされていないという状況は、三権分立の原則から考えてどういう状況であるか。違憲の状況であるのか、あるいは日本の三権という、お互いに並立をして他の領分を侵さない、それで三権が調和を保って政治が運営されているということが望ましいわけでありますけれども、そういう三権分立の原則からしての調和が保たれた状態にあるのかないのかということですけれども、いかがでしょう。
#127
○嶋崎国務大臣 今までるる説明申し上げましたように、その時点から経過はしておるという実態があるわけでございます。そういうことを前提にして考えるならば、早急に定数の是正が行われるということが望ましいと私は考えておるというふうな次第でございます。
#128
○新村(勝)委員 そうしますと、現在は正常な状態ではない、こういうことですね。正常な状態でないからこれを是正をしなければいけない、こういうことだと思いますけれども、ところが行政府の見解とすると、違憲状態にあっても解散権は制約されないということを総理は言っておりますね。それで、司法が行政権を制約することは行政権への介入だ、こういうような見解が述べられておるわけでありますけれども、この点については大臣はどうお考えですか。
#129
○嶋崎国務大臣 御承知のように、違憲状態であるのですけれども、事実工事情判決をいただいておるというような経過になっておるわけでございます。したがいまして、その処理につきましては、そういう事態であるわけでございますから、そのことを十分踏まえて定数是正を行っていただきたい。もちろん訴訟の過程では、うちの訟務局の中ではいろいろな議論を実はやっている。私はその詳細については、ここに資料を持ってきておりませんから御報告を申し上げるあれはありません。しかし、今までの経過から考えまして、日時的にもその後大分経過をしておりますから、そういう意味で今の状態というのは余り正常な状態にあるというふうに判断されない事態にあると思われますので、そういう意味で改正を行わなければならないというような事態に至っておると考えております。
 ただ、純粋に理論的な問題から申しまして、解散権の問題についてそれを制約するものであるかどうかというようなことになりますと、これは法理論的には、既に法制局なりあるいは総理が言っておられるような説が成り立つのではないかと私自身は思っております。
#130
○新村(勝)委員 大臣は、現在の状況は正常なものではないとお考えになっておるわけですね。そうしますと、最高裁の判決が最終の判断でありますから、仮にその最終の判断が、違憲である、しかもこれは解散権を制約するものであるという判断が出た場合には、これはその段階では、状況は現在とはかなりまた変わってきますね。その場合には完全に違憲状態あるいは違法な状態が存在する、こういう状況に変わってくると思うのですけれども、いかがでしょうか。
#131
○嶋崎国務大臣 最高裁の判断がどういう方向で出ていくかというようなことにつきましては、私から意見を申し上げるべき事柄ではないというふうに思っております。したがって、この解散権が行われないというようなことが論議をされるのかどうかということについては、そういう意味で私の意見を申し上げることはないと思いますが、今までの状態から見まして、この裁判につきましては一応の事情判決がいただけるのではなかろうかと思っておりまして、今御指摘になられたようなことにつきまして判示が及ぶのではないのではないかと、これは個人的な考え方ですが、そういうぐあいに思っておる次第でございます。
#132
○新村(勝)委員 大臣は法の守護者という立場でいらっしゃるわけですね。政府はもちろん憲法を遵守しなければいけないという憲法上の明文がありますけれども、その政府の中でも、特に大臣のお立場は憲法体制を維持するという直接の責任でいらっしゃるわけです。ですから、仮定の答弁はできない、仮定の質問には答えられないということではなくて、これは仮定の問題ではなくて既に事実は進行しているわけでありますから、現在もそういう状態にあるし、その状態はますます確定的な事実に向かって進行しているわけです。ですから、これは決して仮定の質問ではないのです。
 仮定の質問ではなくて、この問題については大臣としては一定の見解をお持ちにならなければならない、こういうお立場だと思うのです。そういう中で、司法が違憲判断を下したにもかかわらずなおかつ解散、総選挙をすることができるのかどうか、それが三権分立の原則やそれを基礎とした法体系あるいは法理にかなっているのかどうか、これを伺っているわけなんです。
 この問題については、東京高裁では、違憲の状態のもとでは解散権も制約されると考えざるを得ない、こういう意味のことを言っておるわけです。これらとの関係で大臣のお考えをもう一回伺いたいと思います。
#133
○嶋崎国務大臣 解散権が違憲であるかどうかということにつきましては、まず最高裁の判断、将来の問題でございますから、私が言及すべきことではないと思うのでございますが、その点につきましては、従来法制局なり総理からもあるいはそういう面の答弁があったかと思いますが、基本的にはそこまでに及ばないのではなかろうかと私は思っておりますし、また解釈としましては、法制局が言っているような考え方が、政府の基本的な考え方として整理されている項目であると思っておるわけでございます。
 現在の状態が違憲的な状態にあるということにつきましては、御指摘のとおりそう考えておるわけでございまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、早急にそのための対応がなされることが望ましいと思っておる次第でございます。
#134
○新村(勝)委員 現在の状況は不正常な状況だということは、大臣お認めになったわけであります。そうしますと、三権分立の現在のもとで司法の判断が出た場合には、その司法の判断に行政府は従わざるを得ないと思うのです。そうじゃないですか。
#135
○前田政府委員 憲法第八十一条に、最高裁判所が法令審査権を有する最終審判者であるという規定がございます。それから憲法九十九条に、憲法の尊重擁護義務というものが定められております。このような点からいたしまして、最高裁の最終的な憲法判断が示されました場合には、行政府としてこれに従うことは当然であると考えます。
#136
○新村(勝)委員 そうしますと、最高裁の判断が出る場合に、現在の定数配分では選挙は違憲であるという判断が出ることは間違いないですね。というのは、五十八年の最高裁の判断で、定数は違憲状態であるということが言われております。そのときに選挙は有効としたのは、その間において是正をする時間的余裕がなかったから、違憲状態ではあるけれども選挙は違憲ではないと言ったのです。
 ところが、五十八年の選挙に対する訴訟の第一審の判決では、各高裁とも全く同じような趣旨で、五十八年の選挙は違憲であるという判断が出ておるのです。そうしますと、今の最高裁の判決を予想することは不謹慎かもしれませんけれども、流れからいっても、いわゆる法的安定性からいっても、次の最高裁の判断が違憲と出ることは間違いないわけですね。合憲と出れば、これはかえって法的安定性を損なうわけですから、素人が考えてもおかしいわけなんです。ですから、そういう事実に向かって着々と時間が進行しているわけです。こういう中で政府の是正に対する現実の努力はあらわれていないわけです。
 そういう中で、法の守護者でいらっしゃる法務大臣はどういうお考えであるのか、あるいはこれからどう努力されていかれるのか、どういう努力をされてきたのかということもお伺いしたいわけでありますけれども、法制局にお伺いしますけれども、そうしますと、今の御説明によって、政府は司法の判断には一〇〇%全面的に従わざるを得ないというのが憲法の趣旨ですね。そうすると、定数が違憲状態の選挙は無効だ、違憲だという判断が出た場合に、解散、総選挙ができるのかどうか、それは理屈からいってどういうことになりますか。
#137
○前田政府委員 昭和五十八年十二月に行われました総選挙に対する最高裁の判決はまだ出されていない段階でございますので、その判決の内容をあれこれ予測して申し上げることは適当でないと存じますので、現時点ということでお答えさせていただきたいと存じます。
 御承知のように、またただいま御指摘がございましたけれども、現行の定数配分規定につきましては、去る五十八年の最高裁判決におきまして、「できる限り速やかに改正されることが強く望まれるところである。」と述べられているところでございます。このことからいたしましても、できるだけ速やかに定数配分規定の改正が行われることは言うまでもないと存じますし、また何よりもその法改正の早急な実現が期待されるところであるわけでございます。その点につきましては、先ほど来法務大臣からお答えがあったとおりだと存じます。
 それはそれといたしまして、最高裁の違憲判決が出された場合に、定数是正前の行政府の解散権の行使についてどのように考えるのかというのが、お尋ねの趣旨であろうかと存じます。
 ただいま申し上げましたように、何よりも早急な法改正が行われるべきであるという大前提は大前提といたしまして、そのような定数配分規定の改正に対する努力がされておる段階におきまして、緊急に国民の意思を問う必要が生じたというような事態におきましては、後ほど申し上げますような理由、それは要約して申し上げますならば、私は憲法全体の趣旨と考えておりますが、そのような趣旨からいたしまして、定数配分規定の改正前におきます内閣による解散権の行使は、否定されることにはならないのではないかと考えております。
 その理由といたしましては、第一に、衆議院の解散制度というものは、議院内閣制度のもとにおきまして行政府と立法府の意見が対立するような場合、あるいは国政上の重大な局面が生じたような場合に、国民の意思を問う手段として憲法が内閣に付与しました国政上の基本的で重要な機能である、憲法上これを制約します特段の規定も置かれていないというようなものであるということでございます。
 第二に、仮に定数配分規定の改正前におきます解散が認められないといたしますならば、憲法六十九条に基づきまして内閣不信任決議がされたというような場合におきましては、内閣は総辞職しなければならないということになるわけでございます。そういたしますと、その内閣に総辞職か解散かの選択権を認めました憲法六十九条の規定の趣旨が全うされないということになるのではないか。
 第三には、国民の意思を問うべき事態が生じたにもかかわらず、定数配分規定の改正前であるということを理由にいたしまして解散を抑制いたしまして国民の意思を問わないというようなことは、国民主権主義を基本原理の一つとしておりまして、国政が国民の意思に従って行われることを予定しているという憲法の精神にもむしろ反することになるのではないか。
 こういったような点から申しまして、憲法全体の趣旨からいたしますれば、御指摘の場合におきましても内閣による解散権の行使が否定されることにはならないのではないかというふうに政府としては考えております。
#138
○新村(勝)委員 内閣の統治権といいますか、これは今のお話ですと、司法よりも上にあるというふうに考えられるわけです。ところが、内閣の統治権、行政権のそもそもの源泉は、主権者である国民であるわけです。したがって、主権者である国民から発生する統治権というもの、その発生する過程は選挙を通じて統治権が発生するわけですから、統治権のそもそもの源が狂っているということが裁判で判示されておるにもかかわらず、なおかつ内閣の行政権あるいは統治権が完全な形で機能できるのかどうかという根本的な疑問が出てきます。
 一方では、司法の違憲という判断があるにもかかわらず、それが長期にわたって放置されているという事態は、憲法も予想していない事態じゃないでしょうか。三権分立の原理からして法が予想しなかった事態が今日本には存在する、こういうふうにも考えられるわけであります。
 そういう意味からいっても、こういう不正常な事態を放置しておくことは、現在の総理以下内閣が民主主義の最大の根本である問題を放置しておる、これに対する有効な手を打たずにじんぜん日を送っていると言われてもやむを得ない事態ではないかと思うのです。そういった点で、憲法体制という観点からの問題の把握が皆さん方に軽く見られているのではないかというふうな気がするわけですが、いかがでしょうか。
#139
○嶋崎国務大臣 既に御説明申し上げましたように、そういう事態でありますから、できる限り早急にその改正につきまして努力をしていただきたいという気持ちを持っておりますし、またそういうことを背景にして党の中でもそういう努力を積み重ね、また総理もその体制に踏み切らなければならぬというようなことで、御努力されておるというように承知をしておる次第でございます。
#140
○新村(勝)委員 法制局に伺いますけれども、政府の見解としては、仮に違憲状態であっても解散、総選挙はできる、こういう見解であるとすると、その違憲状態はいつ是正されるのか。これはそういう論理がまかり通るとすれば、いつになっても是正されない、そういう不正常な状態がいつまでも続くということも考えられるわけですね。いつになったらその違憲状態を阻止するという保証は、どこにもないということですか。
#141
○前田政府委員 先ほどもお答えしたつもりでございますけれども、あくまで議論の大前提といたしましては、あのような最高裁判決が出されております以上は、定数配分規定の改正が早急に行われるべきである、そのような状態の是正が図られるべきであるということはあくまで大前提でございます。そして、そのための努力がされております段階におきまして国民の意思を問う必要が生じたような場合に、それならば改正後でなければ国民の意思を問うことができないか、あるいは解散権を行使することができないかということになりますれば、憲法全体の秩序あるいは憲法全体の精神ということを考えますればそれは否定されることにならないだろう、こういう趣旨で申し上げたつもりでございます。
#142
○新村(勝)委員 最後に大臣に伺いますが、最高裁の最終判断が出た場合に、政府はどういう対応をなさるのですか。
#143
○嶋崎国務大臣 その判決の内容というものを十二分にそしゃくをしまして、適切に対応するように努力をしなければいけないというふうに思っておる次第でございます。
#144
○新村(勝)委員 違憲状態を直ちに解消するような措置を、政府として責任を持っておとりになりますか。
#145
○嶋崎国務大臣 そんな気持ちで対処しなければいかぬと思っております。
#146
○新村(勝)委員 それから、最高裁、選挙の裁判は、これは事の性質上迅速を要するということが要請されているわけですね。いわゆる百日裁判というようなことも言われております。ところが、実際にはなかなかそういかないわけです。特に、定数問題とか国政の根本にかかわる問題については、ぜひこの百日裁判を実際にやっていただかなければ、国政に大変な障害を起こす場合があるわけですけれども、その点のお考えはいかがですか。
#147
○上谷最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、選挙関係の行政訴訟につきましては、公職選挙法の第二百十三条で、いわゆる百日裁判の規定が定められております。この種の訴訟については百日以内に判決をするように努めなければならないとされておるところでございます。
 ただ、実際問題といたしましては、この規定を実行することは甚だ困難な実情にございます。具体的に申しますと、やはり訴訟は当事者の御協力を得なければ進行できないわけでございますが、いろいろと事実関係の争い等がありまして証拠を調べなければならない、当事者の主張をまたなければならないというわけですが、やはり複雑、困難な問題が介在いたしますために、必ずしも十分な協力が得られない場合もございます。
 それからもう一つ、殊にこのような定数配分訴訟ということになりますと、事柄が憲法に違反するかどうかという極めて重要な法律問題を含むわけでございまして、裁判所の判断にも極めて慎重を要する問題であるということも、この種の事件が必ずしも公職選挙法に定められた理想どおりには行われない原因であろうかというふうに考えられるわけでございます。
 ただ、そうは申しましても、もちろん公職選挙法の規定に定められておりますとおり、極めて重要な訴訟でございますので、裁判所といたしましても精いっぱいの努力は続けているわけでございまして、具体的な数字で申しますと、この種の選挙訴訟、これは高等裁判所が第一審として訴訟を担当いたしますが、その平均審理期間を見てみますと、おおむね十カ月程度で処理されているのが実情でございますし、上告審でございます最高裁判所におかれましても、大体四カ月ないし八カ月程度で判決をされるのが通常の例というふうになっております。もちろん、百日という点から比較いたしますと若干時間を要していることは事実でございますが、通常の行政事件に比べてよほどスピードアップはできておるわけでございまして、裁判所の努力もぜひともひとつ御理解いただきたいと考えておる次第でございます。
#148
○新村(勝)委員 上告審の最高裁の段階では、事実認定とか証拠調べとかということはないわけですね。それまでの下級審の内容をごらんになって、そして最終的な判断を下すわけでしょうから、もっと早くできてもいいんじゃないかと思いますけれども、今のお話では四カ月から八カ月ということになりますと、とても百日裁判は期待できないということでありますが、現在各高裁から最高裁に上がっております違憲訴訟については、この判断はいつごろお出しになるのですか。
#149
○上谷最高裁判所長官代理者 昭和五十八年十二月に行われました衆議院の選挙に関するいわゆる定数訴訟は、去る四月の二十四日に大法廷で弁論が開かれたわけでございますが、この事件の判決の言い渡しということになりますと、民事訴訟法の第百五十二条に定めがございますとおり、裁判長が指定されるということになっております。したがいまして、当該言い渡し期日が指定されますと、私ども事務局を含めまして一般の人が言い渡し期日を知ることができるようになるわけでございますが、いまだその指定がございませんので、私ども事務当局といたしましては、現実に期日が指定されるまでは言い渡しの日がいつになるかというのは全くわからない状況でございます。
 それから、先ほどちょっと最高裁判所の審理期間のことでお話がございましたので、一点だけ申し添えさせていただきますと、御承知のとおり最高裁判所への上告につきましては、上訴期間、あるいはまた上告受理手続、それから上告理由書の提出期間というふうに、法律及び規則で定められたやむを得ない期間もございますので、実際問題として最高裁判所が現実に審理を始めるまでに若干の日時がかかる、そういう事情も含めてお考えいただきますと、先ほど申し上げた数字は裁判所として精いっぱいの努力をしている数字であるということは、何とか御理解いただけるのではないかと存じます。
#150
○新村(勝)委員 大臣、今のお話で、最高裁段階は四カ月から八カ月というお話でありますから、恐らくことしの秋には最終判断が出ると思います。これを展望されて十分万全の対策をひとつとられるようにお願いしたいと思います。これは国民の声であり、日本の民主主義の根幹でありますから、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、さきにも同僚議員から質問がありましたけれども、平沢貞通についての人身保護請求があります。それに関連してお伺いしたいんですけれども、刑法には時効という規定がございます。時効というのはどういう原理というか、どういう概念に基づいて設置されているわけですか。
#151
○筧政府委員 刑の時効に関してでございますが、刑の時効につきましては、一定の期間国家刑罰権が行使されないことによりまして、これを消滅させるという制度でございます。
#152
○新村(勝)委員 ですから、その一定の期間刑を執行しないことによって罪は消滅するというのはどういう原理から来るのか。行刑学というのですか、そういう学問ありますか、行刑学あるいは行刑政策の上からどういう考え方のもとにそういう制度が設置されているのかということです。
#153
○筧政府委員 時効の制度の趣旨、本質等についていろいろ説がございますけれども、簡単に申し上げますと、時の経過によって、刑の場合ですと社会の被害感情も薄らぐというのも一つございます。しかし、基本的には、やはり長期間にわたって刑が執行されないという状態で事実関係が続く、それによって社会に一つの事実上の秩序が形成される、その秩序を尊重すると申しますか、時日の経過によってその事実を尊重するということで、国家刑罰権を消滅させるというのが刑の時効でございます。
 これをほかの例で申し上げますならば、民事の場合でもいろいろ時効はございますけれども、一定期間自分のものでないものを所有しております場合でも、自分のものとして所有しておるという状態がある期間続くと、それをもとにして社会関係といいますか事実関係、秩序関係が形成されていく、それを尊重するという意味でその人の権利として承認されるというようなことでございます。
#154
○新村(勝)委員 大臣、今のお話で、時間の経過によって社会的な状況も変わる。したがって、その時間の経過の中で犯罪に対する考え方あるいは判断、そういったものも変わるということですね。時間というのは絶大な力を持っておると思うのです。一つの事実を社会的な現象という観点から考える限りは、時間の経過によってその事実が変わるという今の御答弁があったわけですけれども、そういう点からすると、時間の経過によって社会的な事態が変わるということである限りは、平沢貞通の三十年間の時間の経過というものは、拘禁されていようがいまいが、ほとんど変わらないと思うのですが、その点はいかがですか。
#155
○筧政府委員 今の点に関して補足して御説明申し上げたいと思います。
 事実関係が長期間継続することによって、その事実関係をもとにした社会秩序なり事実秩序というものが形成される、それが尊重されるという趣旨で申し上げたわけでございます。ですから、拘置されていようがいまいがという御指摘でございますけれども、逃亡している場合には、その者は社会的には刑を受けるべき者でないという関係での事実関係が一定期間継続する。平沢死刑囚の場合には、刑を受けるべき者として、刑の執行として、確定裁判の執行として拘置されているという状態が長く続いておるわけでございます。したがいまして、その間には国家刑罰権が行使されているかいないかという点、あるいは刑の執行を受けるべき者としての立場でずっといた人とそうでない者、そこに差があるということを申し上げたいと思います。
#156
○新村(勝)委員 そうしますと、犯罪を犯した者が逮捕されないで三十年間、時効の期間中自由な身であったということは、処罰されるべき状態にはないということですね。したがって、拘禁されていないということの事実は、それによって罪に対する刑が免責される、こういう考えにもつながっていくと思うのです。
 先ほどの御答弁では、時間の経過というものが罪そのものを、早く言えば風化させるということだと思うのです。ところが、拘禁をされている場合には時効が進行しないということになると、その間に矛盾が生ずるのではないか。逮捕されないで自由な、公権力の支配のもとにない場合には時効が成立するということになりますと、その区別をする論理はどこにあるのでしょうか。拘禁されている場合には時効が進行しない、拘禁されていなければ時効が進行するという、その論理の根拠はどこにあるのでしょうか。
#157
○筧政府委員 刑の時効の場合には、執行を受けない間が、死刑の場合三十年、その他の場合いろいろ期間がございますけれども、経過するごとに完成するわけでございます。ところが、平沢氏の場合に、拘置されておりますのは、死刑を言い渡した確定裁判の執行として拘置されておるわけでございますから、そもそもその時効の要件が始まっていない、時効の要件を満たしていないということでございます。
#158
○新村(勝)委員 たがら、それはお答えになっていないのですよ。所定の手続をして拘禁しておる場合には刑の時効は進行しない。それがない場合に、仮に逃亡とかの状態でいる場合には進行するということの、なぜそういう区別をしたかという論理がはっきりしないわけですよ。逃亡している場合には、これは国の力が足らないで国の怠慢だから、国の怠慢を自省するという意味なんですか。そこのところの論理が明快でないのですけれども、なぜ拘禁中は進行しないで逃亡している者に進行させるのか、その区別をどうされるのですか。
#159
○筧政府委員 基本的には、最初申し上げましたように、刑の時効そのものが、国家の刑罰権の行使を受けているかいないかによって、つまり受けていないことによって進行するわけでございますから、私どもの考えでは、そもそも時効を論ずる余地がない。比較の問題ではなくて、そもそも時効を論ずる余地がないという考えでございます。
 ただ、今先生御指摘の、同じように時日が経過したのに差が生ずるのはどうか、一見不公平ではないかというような御指摘であろうかと思いますが、国家の刑罰権が行使されないまま一定の期間を経過をしたとき、その場合には通常、つまり逃げているような場合には、社会においては刑の執行を受けるべき立場にない者と同様の社会的関係が、三十年間なら三十年間、あるいはその年ごとに生ずるわけでございまして、そこに結局、繰り返して申し上げますと、社会においては刑の執行を受けるべき立場にない者と同様の社会的関係が生ずるなど、そこに事実上一定の秩序が形成されるというところから、その秩序を尊重する必要があるということでございます。
 したがいまして、平沢氏の場合、死刑の確定裁判の執行として拘置が行われていることによって、この場合は現に国家刑罰権の行使を受けているわけでございますし、死刑の執行を受けるべき者として取り扱われているわけでございます。したがいまして、その場合にはもともと時効制度の適用の対象としては考える余地がないということでございます。
#160
○新村(勝)委員 時間でありますから以上で終わりますけれども、そうしますと、国家権力を逃れた者についてはもうあきらめる、そういう論理になると思うのですけれども、その点については改めてまたお伺いしたいと思います。終わります。
#161
○安井委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。
    午後零時三十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
#162
○井上(一)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
#163
○貝沼委員 午前中もいわゆる平沢死刑囚問題につきましていろいろと質疑がございました。私もわきで聞いておりまして、主張なさることと、それから当局の答弁と、わかるようなわからないような点があるわけでございます。そこで、同じようなことを余り蒸し返しても意味がありませんので、ただ、今まで法務委員会その他で議論された議事録をずっと眺めてみますと、いわゆる専門家同士の質疑が多いわけでありますので、一般の我々からちょっと意味がつかみにくいという部分がございます。そこで、その確認を兼ねまして二、三お尋ねしたいと思います。
 その第一点は刑法の死刑の時効の問題でございます。
 刑法第十一条、いわゆる「死刑」というところには、「死刑ハ監獄内ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス」、こういうふうにあります。また「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス」、こうなっているわけでございますが、「死刑ハ監獄内ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス」というこの執行という意味は、これは何を執行するのでしょうか。これをまずお答え願いたい。
#164
○筧政府委員 死刑そのものの執行でございます。
#165
○貝沼委員 この死刑執行の執行は、具体的には絞首ということでしょうか。
#166
○筧政府委員 そのとおりでございます。
#167
○貝沼委員 それから、二項目の「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ」という、この言い渡しの内容でありますが、これは具体的には死刑であり、つまり絞首ということでしょうか。
#168
○筧政府委員 絞首といいますか、まさしく死刑の言い渡してございまして、死刑を執行するには絞首してこれを行うということでございます。
#169
○貝沼委員 さらに、それを「受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス」、こうなっておりますから、「受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ」というこの執行は、一項の「絞首シテ之ヲ執行ス」という執行と同じ意味の執行ですか。
#170
○筧政府委員 そのとおりでございます。
#171
○貝沼委員 そうすると、「其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス」という拘置でありますが、これは執行に至るまでこれを拘置するわけでありますから、拘置と執行の中身は異なるというふうに読んでよろしいですか。
#172
○筧政府委員 刑法第十一条二項に言う「執行ニ至ルマテ」という執行は、一項にございます「死刑ハ」「絞首シテ之ヲ執行ス」という、その執行でございます。
#173
○貝沼委員 その執行はわかりましたが、それに至るまで「之ヲ監獄ニ拘置ス」という、この拘置の意味でありますが、この「拘置ス」という内容は、言い渡しが入るのか入らないのか。拘置するのは、「死刑ノ言渡」という言い渡しまで含めての拘置なのか、そうでないのかという説明をいただきたい。
#174
○筧政府委員 言い渡しを含むかどうかということでございますが、拘置するのは「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者」、つまり死刑の裁判を受けてその裁判が確定した場合でございますから、死刑を言い渡した裁判が確定した場合に、その後拘置するということでございます。
#175
○貝沼委員 それから、語句の解釈で大変恐縮ですけれども、三十一条で「時効の効果」というのがございます。「刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ時効ニ因リ其執行ノ免除ヲ得」、こうなっておりますが、この執行はどういうふうに読んだらよろしいですか。
#176
○筧政府委員 刑を言い渡した確定裁判の執行でございます。
#177
○貝沼委員 確定裁判の執行ということは、具体的には絞首になるのですか。それとも拘置も含むのですか。
#178
○筧政府委員 死刑の場合は拘置も含む。自由刑の場合はそういう概念がございませんから、自由刑の場合は、刑の執行といいますと、拘束して懲役あるいは禁錮に付する場合を言うわけでございます。
#179
○貝沼委員 そうすると、この執行のところが、拘置も含むというのが今までの執行と読み方が違っておるところですね。ここのところが解釈の相違になってくるのだろうと私は思います。このときに拘置が含まないのであれば時効の計算をしなければなりませんし、この拘置がここで含むのであれば、当局の言うように時効の計算は初めから成り立たないということになるのだろうと思いますが、これはそのように読まなければならないというのは、どこかに決めてあるのでしょうか。
#180
○筧政府委員 どこかに決めてあるということではなくて、基本的には刑の時効の趣旨、本質等からそのように解釈しておる次第でございます。
#181
○貝沼委員 それから、三十二条の「時効の期間」でありますが、「刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス」、こうなっておりますが、この「刑ノ言渡」というのは先ほど確認をいたしました十一条の言い渡しだろうと思います。そして「左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス」とありますが、「其執行」という言葉ですが、これはそうすると、三十一条の「其執行」と同じように読むという意味ですか。
#182
○筧政府委員 そのとおりだと思います。
#183
○貝沼委員 一つの法律のたかが三条の中にあって、特に時効問題のところに来ますと、同じ言葉でも執行という中身が、あるときは刑のみ、あるときは拘置も含む、こういうふうに三十二条では拘置も含まれて読むようになっているわけですね。ここに時効問題の議論の分かれ目があるのじゃないかと私は思います。
 午前中説明を私なりに聞いておりますと、「其執行ヲ受ケサル」というここのところで既に拘置されておるから、これはもう計算には入らないのだ、だから時効は計算できないのだ、始まらないというふうな意味に聞こえましたが、恐らくそういうつもりでおっしゃっているのだろうと思いまずけれども、この執行ということを私はどうも疑問に思いまして、それで議事録をずっと読ましていただいたのですが、かなりの専門家がやはりここのところで意見が分かれておる。ということは、それなりにここには問題があるのではないか、こういうふうに思ったわけでありますが、その点は何か感じておりませんか。
#184
○筧政府委員 いろいろ法律の解釈、特に刑法等片仮名で、しかも極めて簡潔に明治時代の言葉で書いてございますので、これを解釈する場合には、だれが見ても一義的ということでない、文面上はそういう場合があることは事実でございますし、この点についてもいろいろ違う御意見もあろうかと思います。ただ、そういう場合にどう解釈するかという点については、やはり時効制度の本質とか趣旨等を十分考えた上で、合理的な解釈をなすべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
#185
○貝沼委員 それからもう一点は、したがって時効というのは、先ほど来の答弁を聞いておりますと、逃亡した者が時効の計算をする、拘置されておる者は入らない、こういうことですから、逆に読みますと、死刑を免れたい者は逃亡するしかありませんよ、時効になりたい人は逃亡する以外にはありませんと、いかにも逃亡を奨励しているかのごとく見えるわけでありますが、それはどういうことになりましょうか。
#186
○筧政府委員 逃亡とそうでない拘置されている者というふうに対比されがちでございますけれども、その場合には、やはり拘置ということは刑罰権の行使を受けている者でございます。刑罰権の行使を受けている者であるかそういう者でないか、受けていないかという点に差があるわけでございまして、ただ、その刑罰権の行使を受けていない者というのは、通常考えられるのは逃亡している場合であろうということでございます。別にそれによって逃亡しろといって奨励するわけではございませんで、本来確定裁判がありますれば、あくまでもそれは執行さるべきが、国家刑罰権の行使あるいは国家全体の秩序維持としては当然法が予定しておりますし、当然のことであろうかと思います。死刑にしても自由刑にいたしましても、何十年たった後でも執行するのが、確定判決を前提とする以上当然であろうかと思います。
 ただし、それに例外的事柄として時効という制度が設けられておるわけでございまして、その例外的に時効制度を設けるにはそれなりの理由がある。ただ、これはあくまで例外でございまして、国家刑罰権の行使を受けていないというのが大前提で、そこに時効が始まるか始まらないかの基本の差別があるわけでございます。国家刑罰権の行使を受けていないというのの大部分は、逃亡しておる場合であろうということは言えようかと思います。
#187
○貝沼委員 ですから、逃亡して三十年間社会でいろんな役目で働いているなり何かの役目をなしておるという人の権利というものを主張したりして行われておるのでしょうけれども、ただ、じゃまじめに拘置されておった人は、逃げようともしない、逃亡しようとしないでまじめに拘置されておった人は、これは初めからもう時効というものは存在しないんだということになってくると、これはやはりまじめに対応する方が利口なのか、それとも逃亡を計画する方が利口なのかと考えると、非常にややこしいですね。非常に難しい問題があると私は思います。
 しかも、この平沢さんの場合は三十年、恐らくこれは、三十年後こんな議論が行われるということは、当時予想できなかったんじゃないかと思うのですね。三十年といえば相当長い期間ですから、恐らく予想できなかったんじゃないかと思いますが、現実にこれが起こっておる。そうして、ただ絞首執行のための拘置というふうにして三十年たったんだというけれども、しかし彼から見れば、死刑囚から見れば、常に絞首、死というものが背中にくっついているわけですね。常に同居しておる。いつどうなるかわからない。それで三十年たった拘置と、それから刑が執行されるのをただ待つ拘置と比べたら、私はこの三十年というのは相当従来のものとは意味が違うんじゃないか、重みが違うんじゃないかという感じがするわけでありますけれども、この点はどういう感触でおられましょうか。
#188
○筧政府委員 判決確定後三十年を経過したわけでございますが、その間、先ほども申し上げましたように、死刑の判決があれば当然一定といいますか、ある時期に執行をされるのが本来あるべき姿だと思います。それがこの平沢氏の場合には、お話し申し上げておりますように、十七回に及ぶ再審請求あるいは五回の恩赦というようなもの、それが繰り返されておりまして、その間、死刑の重大性といいますか、深刻性にかんがみまして、執行が差し控えられて現在に至ったという状況でございますので、特に今先生御指摘のように、絶えず死に直面してどうこうというふうに表現すべきものかどうか、疑問に思っておる次第でございます。
#189
○貝沼委員 それで、私はなぜこんなことを申し上げるかといいますと、新聞報道で、これは中身はどれだけ正確であるか私はわかりませんが、「歴代法相胸のうち」というのが出ておるのですね。この中で、法務大臣を五十二年十月から一年二カ月間務めた瀬戸山前法務大臣でありますが、この方のコメントだろうと思うのですが、「仮に判を押せといわれても押さないし、釈放もしない。高齢と三十年間の苦しみを考えると、今さら強制的に命を絶つことはできない」、こういう感触の話ですね。それからさらに、奥野前法務大臣は、「「すでに法務省内でも執行の意思はなくしていた」と言い、「執行も釈放もしない、というのが妥協点のようになっていた」と振り返る。」こう書いてあります。それから、昨年十一月まで大臣だった住前大臣でありますが、「すでに執行のタイミングは失していた。二十年も二十五年もたった段階では、もうどの大臣だって判を押すのはいやじゃないか」、こういうことを言っておるわけでございます。
 したがいまして、私はこの裏には、やはりそれなりに平沢は、刑とは言わないけれども、刑に類したものを既に受けておるのではないか。法的に刑でないかもしれませんよ、拘置ですからね。しかしながら、それに該当するような、それに匹敵するような実質的刑というものは受けておるのではないかという感じがするわけでございます。この点について法務大臣、どういうような御感触か、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#190
○嶋崎国務大臣 平沢の場合につきましては、御承知のように、現在年齢が九十三歳にも達しておるわけでございますし、今までの経過を考えてみますと、先ほど刑事局長から説明がありましたように、十七回に及ぶ再審請求があり、また五回に及ぶ恩赦の請求があるというような状態で今日までまいっておるわけでございます。
 そういう点から考えますと、法務大臣の仕事として捜査あるいは公訴の維持、あるいはその後のいろんな執行というのをやらなければならぬのは当然の責務であると思うのでございますけれども、現在の段階、なお十七回目の再審があり、恩赦が二つ重なってある、加えて御承知のように人身保護請求というようなこともあわせて行われているという段階になっておるということを考えてみますと、これらの結論を見て判断をしなきゃならぬと思っておるわけでございます。私、現に法務大臣であるものですから、それらの具体的な事案についてどうするかという考え方を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、そういう状態にあるというふうに思っております。
#191
○貝沼委員 あとは結果を待つのみでありますので、この問題はこれで終わりたいと思います。
 それから次に、外国人登録法の指紋押捺制度の問題で若干伺っておきたいと思います。
 初めに、この外国人登録法の指紋押捺制度、これはもともとどういう趣旨のもとにでき上がったものであるか、これを御説明願いたいと思います。
#192
○小林(俊)政府委員 指紋押捺制度は昭和三十年から実施に移されたわけでございますけれども、外国人登録の正確な実施、維持を担保するために、同一人性の確認あるいは登録される人物の特定のために導入されたものでございます。
#193
○貝沼委員 それでは、一点だけ確認させていただきたいと思いますが、この制度は戦後の混乱期に治安対策上つくられたという、当時の法務大臣の認めた発言があるようでありますが、それは事実でしょうか。
#194
○小林(俊)政府委員 治安対策という言葉の意味の説明が必要かと存じますが、当時の大臣の御発言の御趣旨は、外国人登録法あるいは出入国管理令の違反にかかわる事例、あるいは犯罪の防止を目的としたものであるということを言われたものと解釈いたします。当時は極めて混乱した事態の中で、密入国あるいは二重、三重登録といった事例が横行しておりました。その点が治安対策の一環としてとらえられたものと存じます。
#195
○貝沼委員 治安対策上の一環としてとられたとすれば、今はその必要性はあるのでしょうか。
#196
○小林(俊)政府委員 外国人登録法は、昭和二十七年に制定されましてから今日に至るまで、十数回にわたって改定されております。これらの改正のうち指紋にかかわる改正は、少なくとも五回ございます。これらの改正は、いずれも例外なく被登録者の負担を軽減する方向で行われてきたものでございまして、最後の改正は、御承知のように昭和五十七年に行われております。これらの改正は、社会的な情勢の改善と申しますか、鎮静化と申しますか、そうした情勢の推移を密接ににらみ合わせて行われてきたものでございます。
#197
○貝沼委員 それで、いろいろと五十七年まで手は加えられてまいりましたが、この押捺制度そのものは、先ほどの社会党の質問にもありましたように、大変な人権問題その他がかわっているにもかかわらず、ずっと続いてきております。
 指紋というと、我々が反射的に思いますのは、犯罪ということでありまして、今、墨をつけて指紋をとるのは大体いいのはないんですね、交通違反だとかああいうのが多いのですけれども。そういうところから、この押捺というものがずっと続いてきておるということはどこか釈然としない。外国人というのは犯罪を犯すおそれがあるというふうに思っている何かがあるのか、そういうところがいつも危惧されるわけでありまして、当局はその辺を、外国人は犯罪を起こすおそれのある人間と決めてかかっておるのか、それとも、そうではないけれども別の理由があるのか、その辺のところがどうもはっきりしないわけでございます。
 今、人権問題ということでいろいろ言われておりますのも、やはり民族差別の問題とか押捺の問題以外に、実は、先ほど来話が出ております在日韓国人、朝鮮人の問題では、例えば教員の就職の問題だとかあるいは公営住宅の問題だとかいろいろなのがありますので、何かそういうふうに思われてもいたし方ないような部分もあるのではないかというふうに私は考えまして、こういうものは早く納得のいくような対策を講じなくちゃならぬのじゃないかと思っているわけでありますが、当局は、この外国人に対して指紋押捺をするというのは、そういう犯罪を犯すおそれがあるというふうな見方をしておるのでしょうか。
#198
○小林(俊)政府委員 ただいま申し上げましたように、外国人登録法に基づく指紋の押捺は、外国人登録法及び出入国管理法違反の疑いのある、あるいは違反を防止する、違反を摘発する目的のためのみに行われておるのでありまして、そのために必要な登録者の特定あるいは同一人性の確認に供されるのみであります。したがいまして、先生が御指摘になられたような一般犯罪の捜査にこれを用いるということは、現に行われておりません。
 また、この際一言御説明申し上げますれば、一般犯罪に指紋が照合によって利用されますのは、いわゆる犯罪現場における遺留指紋との照合であります。遺留指紋との照合を行うためには十指の回転指紋をとっておくことが必要でございまして、単に左手の人さし指一本の、しかも、今回改めましたように平面指紋をとっておっただけでは、遺留指紋との照合ということには実際上ほとんど役に立たないという事実がございます。
 そういった事実はまずございますけれども、さらに加えて、今回、昨日付で各地方公共団体に発出いたしました通達におきまして、指紋の取り扱いをこの上とも慎重にするようにということを明記した次第でございます。
#199
○貝沼委員 ただいまの御説明によりますと、ほとんどこの指紋も使い道がないみたいな話でありますが、余り重要性がないものなら、こう大騒ぎしてまで必要ないのじゃないかという感じが私はしますね、今の御答弁ですと。
 それからさらに、昨日の閣議決定その他も報道によって読ましていただきました。これによって、例えば韓国側などは随分と硬直をしておるようでございます。また、先ほど午前中の委員会でも、外務省は、今後時間がかかってもさらに検討していきたい旨の答弁もありましたし、そういうことから考えますと、この外国の反響というものをまず我が国の法務省なり外務省がどう受け取っておるのかということをはっきりしておかなければなりません。その後でそれに対してどう手を打つかということになるんだろうと思います。
 そこで、外務省とそれから法務省に対しまして、韓国の対応、反応をどういうふうに受けとめておられるのか、これをお尋ねしたいと思います。
#200
○渋谷説明員 十四日の午後、韓国の外務部が次のようなコメントを発表しております。「日本政府は在日韓国人に対する待遇改善策の一環として外国人登録法に関連し、指紋押捺制度運営上の問題点を一部改善する措置を採ったが、このような運営上の改善努力だけでは本問題に対する根本的な解決にはならないのであり、指紋押捺制度自体が速やかに改善されるよう日本側の継続的努力が期待される。」以上が公式の反応でございますけれども、従来の経緯あるいは韓国側の態度からいたしまして、このような反応は予想されたところでございます。
#201
○小林(俊)政府委員 外国人登録法に基づく指紋押捺問題について、韓国政府が在日韓国人の処遇等の観点から強い関心を持っておることは従来からよく承知いたしておりましたし、また、昨年秋の日韓共同声明における総理の発言もあるわけでございます。したがいまして、指紋押捺制度を考える場合に、外交という観点から、特に対韓外交という観点から行うべき考慮が重要な要件の一つであるということは、私どもはよく承知いたしております。こうした認識のもとで今日まで検討を種々行ってきたわけでございます。
 しかしながら、問題の根幹は人権とのかかわり合いでございます。と申しますのは、この制度の改廃を求めておる人々の主張の根幹がそこにあるからであります。被登録者が指紋押捺するに当たって受ける精神的な負担というものが、問題の中心となっておるということは間違いないところでございます。したがって、この観点から、私どもとしては指紋を押捺する際に少しでも心理的抵抗感を和らげるようにという観点で、できる限りの運用上の改善、緩和を図ったわけなのであります。したがいまして、この措置そのものが問題の根幹に触れるということは疑いのないところだろうと信じますし、こうした政府の努力あるいは意図を被登録者は十分に理解されて、今後円滑な登録の業務の遂行に協力されることを切に希望している次第であります。
#202
○貝沼委員 そこで、外務省の方はその反応は予想された内容だったと思うというふうに言っておりますが、午前中の答弁では、さらに突っ込んだ質問に対しまして、今後時間がかかっても検討していきたいとか、外交的にも大きくかかわりのあることだから説明をしていくというような話がございましたが、これは具体的にどういうふうにやるということでしょうか。
#203
○渋谷説明員 今後とも我が国の自主的な立場から、関係当局との間で研究、検討を行っていく必要があるというぐあいに考えております。
#204
○貝沼委員 そうすると、これは具体的に今月の二十三日、四日の両日、在日韓国人の待遇問題に関する日韓実務者非公式会談というのが予定されておるようでありますが、このときに具体的に話が出るということですね。
#205
○渋谷説明員 五月二十三日、四日の非公式な意見交換におきましては、主として在日韓国人の問題が取り上げられますけれども、そのほかの二国間の問題につきましても意見交換が行われる予定になっております。
 その際、指紋問題が取り上げられることは当然予想されます。我が方といたしましては、日韓双方の相互理解を一層深めるということを目的といたしまして、韓国側の本問題に関する考え方を聞く、再確認するということとともに、我が国の基本的立場を向こう側に説明する考えでございますけれども、その際、今次の改正につきましても韓国側の理解と評価を求めていく考えでございます。
#206
○貝沼委員 今、閣議決定した分については韓国はコメントを出しておりますね。先ほどおっしゃったコメントですね。それをそのまま言っても、これは押し問答になるわけですね。したがって、それ以上の理解を深めようとすれば、何らかのものを持っていかないとなかなか話は進みません。したがって、それを進めようとすれば、この閣議決定以外の、もう少し前向きのものを持っていかないと難しいだろうと思うのですね。そういうものはまず考えておるかどうか、もし考えておるとすれば、それは閣議において既にまた話し合いが通ってなければならない問題でありますから、外務省だけで何かをやるということはできないでしょうから、そうなってまいりますと、具体的に閣議において何らかの提案なり主張なりを外務省はなさるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
#207
○渋谷説明員 今回の改正措置につきましては、法務省においてその政令改正等の形で、運用上の問題について可能な範囲での改善を図ったというぐあいに私どもは承知しております。この努力に対しては韓国側からしかるべく評価が与えられるべきであるという立場から韓国側と話し合いをいたします。しかし、それ以上の例えば改善策について外務省が具体的な案を出すとか、あるいは具体的な話をするということは考えておりません。もともとこの非公式な意見交換の場は、交渉を目的とした場ではないということは韓国側も承知していると思います。
#208
○貝沼委員 交渉を目的とはしていないけれども、だからこそ微に入り細に入り話し合いがなされるのであって、公にできないことまでも場合によっては話し合いができるはずであります。
 やはり韓国が求めているのは根本的な制度の見直しなんですね。それがなされていないというので硬直しておるわけでありますから、やはり何らかの姿勢というものはあっていいんじゃないかと思うのですけれども、法務大臣、いかがなものでしょうか。午前中は、法改正など考えないという答弁でしたけれども、やはりニュアンスは何かあっていいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#209
○嶋崎国務大臣 在日外国人の地位なり待遇なりにつきまして、その制度をどういうぐあいに持っていくかというようなことにつきましては、国内的な事情のみならず、国際的な事情というようなものも十分加味をして判断をしていかなければならない、そういう問題であろうと思うのでございます。また、この問題をめぐりましては従来いろいろな御議論があったということを我々も承知をしておるわけでございます。また御承知のように、昨年九月に日韓共同声明の中で、これらの問題については引き続き努力をしていこうということがうたわれているということも承知をしておるわけでございます。
 そういう事態を踏まえまして、何とかこの問題を解決しようということで、この国会に入る前に十分我々も論議を重ねて今日まで参ったわけでございますが、そういう中で抜本的な制度改正というものはなかなか難しい状態にあるというふうに判断をしたわけでございます。そういう中でも、そういう事態を踏まえ何とか工夫ができまいかということで努力をいたしまして、昨日行われましたような、回転指紋を平面指紋にかえる、しかもそれに使うのは特殊の用紙を使って、黒とか赤とかいうようなものが指に残らないような工夫もやったらどうかというようなことで問題を処理したわけでございます。そういう苦労の跡をひとつよく御理解を願って、この大量切りかえのことし何とかうまく御協力を賜りたいというふうに我々は思っておるわけでございますし、また、そういう気持ちというものを十分向こうにも理解をしていただくように努力をしてまいりたいと思うのでございます。
 もう一つは、それとともに、実は三千を超える市町村がこの問題の処理を末端でおやりになっておるわけでございます。その間にいろいろな御議論がありますし、いろいろな動きがあったことは事実でございます。そういう事態を踏まえまして、何とか地方自治体の責任者の方あるいは担当者の皆さん方の御協力も得て、やはりこの問題をうまく運用していかなければならぬ。しかも大量切りかえの時期を迎えるぎりぎりにそういう判断を詰めて、通達を出すというような事態に至ったというのが実態であるわけでございます。
 そういう意味で、我々の苦心をしてきた努力というものもぜひ韓国の側でも評価をしていただき、また、在留される外国人の方々にもそれを御理解いただきたいと思うのでございます。拒否をして指紋をされない人は別でございますが、少なくとも指紋をやっていただく人には、ともかく回転指紋を平面指紋にかえるというようなことになり、また、犯罪捜査あるいは人道上の理由というようなことをいろいろ言われますけれども、これらの点につきましてもそういうことを十分配慮した上での対策であるというようなことにもぜひ御理解を賜りたい、そう思っておる次第でございます。
#210
○貝沼委員 いろいろありますけれども、具体的には例えば日韓会談の精神の問題もありますから、永住権を持っている者に対する配慮であるとか、あるいはただいま大臣がおっしゃいました告発強制、積極的に努力を願うという言葉なんですけれども、わきから見れば強制と受け取られるような言葉ですね。こういうことをやったために、かえって自治体の良識が侵害されたりあるいは無用の混乱が起こるようなことがあってはならないと思いますので、その辺は十分ひとつ御配慮並びにお考えを願いたい、こういうふうに思う次第でございます。
 時間の関係がありますので、次の問題に移らせていただきます。
 次は、死の問題であります。
 人間が人として生まれる、人格を持つということについては、法律は大変詳しく定めてあるわけでありますが、事死の問題になりますと、なかなかはっきりいたしておりません。医師が死亡診断書を書くときに死と判定するときなどはそうですけれども、あとは余り、どうなった場合が死であるという法的な決まりはどうも見当たらないようでございます。
 そこで、この死の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、まず、我が国において死に対する法的な決定、判定はどういうふうにあるべきとなっているのでしょうか。医学的じゃなしに、法的にどういうときに死と定めるようになっているのでしょうか。
#211
○筧政府委員 私は刑事法が所管でございますけれども、一般に法律にどういう場合に死と言うのかというような定義はないかと思います。結局、「死ニ致シタル者ハ」とか「死亡したときは」という表現でございまして、どういうときが死であるかという定義を定めた法律は承知いたしておりません。
#212
○貝沼委員 これはないのですね。私も一生懸命探したけれども、ないのです。相続が死亡した場合に発生するものですから、相続のところに死という問題が出てくるのですけれども、自然的死亡の時期は医学的に呼吸が停止した瞬間と、こう書いてあるのですね。これは解説です。だけれども、今呼吸なんかとまっても生きている例が何ぼでもあるわけです。それから心臓死を言う人もありますが、心臓が脈を打っておっても脳が死んでおれば、これはやがて死ぬわけですね。脳死の問題。それから、人工心臓というのができてまいりまして、たとえ死んでしまっても、土葬しても心臓は動いておるわけですね。したがって、どこで死というものを決めるかによって、法律の適用が非常に難しくなってくるわけですね。
 今具体的には臓器移植の問題でクローズアップされておりますけれども、相続の問題とかあるいは死の問題は、例えば脳死というものを死と決めますと、その後心臓が動いておりますから、その間病院で点滴をやったとか健康保険で何かやっておる場合は、健康保険の趣旨と合わなくなるわけですね。死体に対する治療というのか何というのか知りませんけれども、そうすると、これは打ち切らなければいけなくなってくる。打ち切らないとすればだれが負担するのかという問題が出てくるし、さらに、それを例えば死体というふうに判断すれば死体の扱いをしなければならないのであって、これは死体の扱い上また問題が出てくるわけですね。
 したがって、どれを死と定めるかということが非常に重大な問題になってくるわけであります。心臓死をもって死と定めるというふうになると、臓器移植をしたのは殺人になってくるわけですね。ですから、その辺のところはこれから法的に難しくかかわってくる問題ですけれども、法的にどこをもって死と定めようとされておるのか、そういう研究は合されておるのか、されてないのか、またされておるとすればどの辺まで来ておるのか、その辺のところをひとつ御説明願えたらと思います。
#213
○嶋崎国務大臣 非常に難しい問題でございますが、三兆候説というのですか、脈拍がなくなり呼吸がとまり瞳孔が開くのを、原則的に死というような考え方で従来対処をしてきておるというようなことが事実であるわけでございます。しかし、最近、今御指摘になりましたような問題を含めまして、脳死問題というのが非常に重要な問題になってきておるわけでございます。これらの点につきましては医学的な分野のことでございますので、厚生省の中でもどういうように判断をしようかというようなことについて、委員会を設けて検討をしておるというような状況でありますけれども、まだ決定的な答えが出ておるというような段階に至っておらないというふうに承知をしておるというのが現実でございます。
#214
○貝沼委員 厚生省にお尋ねいたしますが、厚生省としてはこの死の問題をどういうふうにとらえておられますか。
#215
○多田説明員 先ほど先生御指摘のように、死というものの法律上の定義がないということでございまして、従来から医学的には心臓死の段階をとらえて死というふうに処理をしているわけでございますが、最近脳死という問題が非常にクローズアップされてまいりまして、脳死という状態はいかなる状態であって、それはどういう客観的な判定方法によって判定できるかということについて、現在研究班で研究をしていただいておるわけでございますが、これを社会的な死と評価するのかしないのかという点については、宗教的な感覚とか国民感情とかいう幅広い角度から検討をしなければならない問題であろうということで、私どもの考え方としては、この研究班の研究は、医学的なサイドから見て脳死という状態を客観的に判断するのはどういう方法があるかということを詰めていただいているという状態に今あるわけでございます。
#216
○貝沼委員 それはわかるのです。それを研究しているのはきのうも新聞に出ておりましたから、脳死の判定基準の見直しという問題は、それはわかるのですが、医師は死亡診断書を書かなければなりません。その死亡診断書を書く死亡の基準はどれになっておりますか。
#217
○多田説明員 現在のところでは、三兆候説という先ほど大臣からお答えがございましたような基準を用いているのが一般的な扱いでございます。
#218
○貝沼委員 これは心臓の拍動の停止、呼吸の停止、あるいは瞳孔が開いて対光反射がないことということですね。瞳孔を見て光をぱっと当てると動くわけですね。だけれども、これは人工心臓の場合は心臓はとまらないのですよ。コンセントで差してあるのもある。だれかがそれを抜いたら死ぬわけですね。そういう時代になっておるので、これだけではちょっとぐあいが悪いですね。
 では、現実に死というものはこれで判断するのであれば、臓器移植というのは現在は行われないというふうに見てよろしいのですか。難しい。要するに心臓がとまらなければ臓器移植をしてはいけない、こういう判断なんですか。どうなんでしょう。
#219
○多田説明員 先生の御質問に直接お答えするとすれば、臓器のうち心臓みたいなものは、おっしゃるとおり、それをとってしまうとこれは全く死になるということでございますから。ただ、例えば腎臓ですと一つとっても問題ないとか、角膜みたいなものはいろいろまた考え方があるとか、臓器移植全般を否定することには必ずしもならないのだと思います。例えば、角膜ですと死体からとっても十分機能できるというような臓器もたくさんあるわけでございます。
#220
○貝沼委員 いや、今の答弁は大変重大なことを言っているのですよ、心臓移植のことでこの間から問題になっておったわけですから。それが現段階で心臓をとることができないとなってくると、これはややこしいいろいろな問題が出てきますね。答弁はそれでいいのですか。
#221
○多田説明員 現在、一般的に認められているのは三兆候説であるということを申し上げたわけでございまして、そうでなくて脳死の段階、脳死ということを確認する手だてというのがまずどういうことかということもいろいろ問題がございますが、脳死の段階で仮に心臓の摘出を行ったというような場合に、それが殺人罪になるかどうかということにつきましては、これは具体的な司法の場での検討の結果を待つような状態に今はあるというふうに認識しておるわけでございます。
#222
○貝沼委員 私は非常にきょうは意外な答弁を聞いておりますが、それでいいのかどうか、私は尋ねておる方ですから。そういうふうに大臣、僕はここで白黒をつけようとは思いません。ちょっと余りにも問題が大き過ぎます。
 そこで、法務省としても人間の死というものを、とにかく人間が生まれることについては親の胎内にあったときから人間、一個の人格が認められ、さらに、指とか足とかがちょっと出た段階で今度は相続とかいろいろな問題が細かく定められているにもかかわらず、死という問題は、これが法律で定めるのが正しいのかどうか、これも私よくわからないのですけれども、その辺、大臣はこれを法で定めるべきと考えるかどうか、それともこれから検討に値するとお考えなのかとか、その辺のところの感触、それからさらに、死というものについて将来どうあるべきと思うか、この辺のところについて大臣のお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
#223
○嶋崎国務大臣 この問題については非常に難しい問題であろうというふうに思っておるわけでございます。先ほど御答弁申し上げましたように、三兆候説というようなことで従来の処理が行われてきておるわけでございますけれども、最近脳死の問題というのが真剣に取り上げられてきている。一方、いろいろな宗教的な物の考え方等々によりまして、死というものをどう考えるかということを非常に慎重に考えなければならぬというような御主張の方もあるわけでございます。しかし、再生不可能な状態になっているということが決定的に医学的に明らかになってきているというようなものについてどういう対処をするかということは、非常に難しい問題だというふうに私は思います。
 これらの問題については、今の進歩した医学的な環境その他のことも考慮に入れなければならぬと思いますし、かつまた、将来の問題としまして、そういうことが一般的な国民の理解というのですか、そういうものを得られるような環境が持たれるかどうかというようなこともよく見きわめて判断をしていかなければならぬと思います。しかし、具体的に今もうぎりぎりで問題になっているようなケース等につきましては、やはり十分そういういろいろの環境、あるいは国民一般の理解の仕方、あるいは宗教的な考え方というものも入れながら、個別具体的に判断をしていかなければならない、そういう性質の問題ではなかろうかというふうに思っている次第でございます。
#224
○貝沼委員 それから厚生省の方、もう一回私、聞いておきますが、厚生省は今度、脳死に関する研究班が脳死判定基準の見直しを進めるというふうにきのう出ておりましたが、このことは将来、脳死を基準にするのではないかということを示唆しておるように私は思うわけでありますが、そういう意図はありませんか。
#225
○多田説明員 脳死をめぐりまして非常にいろいろな議論が起きつつある状況にあるわけでございますので、どういう状態を脳死といい、そしてそれがどういう手続で確認すれば正確にできるかということをはっきりさせるということが、それを死と扱うか扱わないか、どちらにしても適切な議論の一つの土台になるという理解でございまして、必ずその脳死を死として扱うんだという前提に立ってこの作業を進めているというところまではいっておりません。
#226
○貝沼委員 この問題、余りにも難しい問題ですので、この辺でもうやめておきたいと思います、いろいろ反響が大き過ぎますので。
 そこで、次の問題として、今度は老人の置かれておる環境の問題でございます。
 民法が新しくなりましてから相続の関係などが変わってまいりまして、随分と今度は高齢化社会になって影響が出てまいりました。昔であれば家長とかあるいは親族が寄っていろいろ決められたことが、今回は殊に老人でも――これは説明するよりも読んだ方が早いですが、こういう記事がございます。
  先日の読者欄にも、考えさせられる投書があった。長男の嫁が長い間、舅や姑の世話をし、その舅、姑が死んだ時、嫁に実子がなく夫とも死別している場合は、婚家の遺産は一円ももらえず、家を出た娘や二、三男が遺産を相続することを挙げ、法改正の必要性を訴えているものだった。
 さて、あなたが娘や二男の立場だとしたら、長男の嫁に遺産を譲りますか、それとも当然の権利≠ニして、すべて相続しますか?
こういう話で、幾ら面倒を見ても相続権がないわけですね。だから、おじいさんかわいそうだけれどもここで帰らせてもらいます、さようならと帰ってくるのか。そうなると、これは老人が生活していく上において環境が非常にすさんでくるわけですね。
 こういったことがありますので、簡単に言いまして、こういう場合、やはりその嫁が一生懸命面倒を見てやろうということは美しいことだろうと私は思うのです。そういうことが実現するためには、やはりそれなりの特典が考えられてしかるべきではないか。ところが、相続権がないわけですから相続することはできない。あとは遺言による贈与とかそういうことが考えられるかもしれませんが、贈与税と相続税というものを考えた場合に、果たしてそれでいいのかということになってまいりますので、そういう献身的に親を本当によく面倒を見てきてくれたような場合は、その遺言によって相続税並みの扱いをされるような方法があってしかるべきではないか、一つの考え方としてそういうふうに考えるわけでありますが、こういう点はいかがでございましょうか。
#227
○枇杷田政府委員 税金の関係は、私どもの所管ではございませんので、お答えいたしかねますけれども、先ほどの相続の関係につきましては、ただいま挙げられました例のような場合には、何がしかのものがその嫁ということになっておる方に行くということが妥当であろうということは言えようかと思います。そういう面で、過般の相続法の改正の際にもそのような議論が出たわけでございます。
 しかしながら、また一方、そのような制度というものを取り込みますと、遺産分割そのものの仕方というものが非常に難しくなるというようなことから相続全体が問題が生ずるのではないかというふうな観点から、実は相続人である者についての寄与分というところに限定をした改正がおされた次第でございます。しかしながら、御指摘のような問題はありますので、その他、ほかのいろいろな法制度等総合的にいろいろ妥当な結果を導き出すようなことを考えなければなりませんが、私どもとしては一つの研究課題だという受けとめ方はいたしておるところでございます。
#228
○貝沼委員 大変ありがとうございました。ひとつうんと研究していただきたいと思います。
 それでもう一点は、やはり老人で痴呆性老人、どれぐらい痴呆性なのか、わきで眺めただけではそれはわからないですね。あるとき正気であり、あるときおかしいというような人、それでもこれは自由な取引やその他できるわけでございまして、このお年寄りを対象にしたいわゆる悪徳商法というものが随分と出ております。いわゆるSF商法、新製品普及商法というのがSFという頭文字になるそうですが、こういう悪質なもの、それからさらに、これはもう有名ですから一々私、言いませんけれども、俗に言う悪徳シルバー商法というのだそうですが、こういうのでお年寄りはねらわれておるわけでございます。
 先般来いろんな記事が出ておりまして、例えば金取引のものとかあるいは霊感商法とか、あるいはお年寄りを連れてきて何時間も話をして、そうして買わせる。クーリング・オフという問題もあるのですけれども、クーリング・オフも、その間だけ買わした方が黙っておれば、これはもう全然効力を発揮しませんので、後で気がついたときはもう大変なことになっている。
 それで、さらに今度は、おじいさんが例えば会社などを経営しているときは、会社で個人の財産も使っている場合があるわけですが、そういうのをそのまま会社にやってしまうとか、あるいは自分の財産は末の娘に全部やると遺言してしまったり、いろいろなことがある。ところが、それは後で気がついて、あれは少しおかしかったのだと言ってみても、これはどうしようもないわけです。それで大騒ぎをする。しかもそれが身内同士でやる場合はまだしも、他人の手に渡るということになってくると問題が非常に大きいというところから、この痴呆性老人を抱えておるところの家庭の財産保護という立場から何らかの研究をすべきではないのか、こう考えるわけでございます。
 そこで、まず一つは、そういうことについて通産省の方としてはどういうふうな対応をお考えになっておるか、これは消費者保護の立場から恐らくあると思います。
 それから、さらにこういう財産保護の立場から、法務省といたしましてはどういうお考えをお持ちなのか、これを伺っておきたいと思います。
 通産省からお願いいたします。
#229
○糟谷説明員 通産省には消費者相談室というのがございまして、そこでは年間約八千件程度の苦情とかトラブルの相談を受けているわけでございますけれども、それは特に年齢別に分けておりませんので、今先生御指摘の高齢者についてどのくらいの比重があるかというのは、定量的にはわからないわけでございますけれども、ただ最近の感触といたしましては、高齢者をめぐるトラブルが目立っているという印象はございます。
 この原因といたしましては、今先生のお話しになったようないろいろな環境の変化と同時に、高齢者の方は世間の情報に疎遠になっていることが間々あるとか、あるいは判断力に衰えがあるということから、セールストークに乗りやすいということでトラブルが目立つということではないかと考えております。
 こういう問題に対応しまして、私ども消費者行政の一環としていろいろな手を打ってきているところでございます。まず第一は、基本的なものといたしまして、法律の規制のかかるものにつきましてはそういう法律を厳正に運用するといったことで、消費者の被害を未然に防ぐということをやっている次第でございます。それから第二番目には、消費者の啓蒙といいますか消費者の自覚、お年寄りの場合にはこれがなかなか難しいわけでございますけれども、新聞とかテレビ、パンフレット、こういったものを通じていろいろな広報、PRを地道にやっている。それから第三点としましては、企業あるいは産業の自主的な対応を促すといったところで、例えば訪問販売につきましてはいろいろな自主規制をやらせるといったことで、企業、業界の自主的な対応を促す。こういったところが私どものとっております主な施策でございまして、これからもできるだけきめ細かくこういった対応をしてまいりたいと考えております。
#230
○枇杷田政府委員 いわゆる老人ぼけになっておられる方の取引関係につきましては、それが極端な場合には、意思能力がないということで当然に無効になるわけでございますが、そういうケースは比較的少なかろうと思います。しかしながら、そうはいたしましても、思慮分別がかなり十分でないという状況になっておるということが言えようかと思いますので、その場合には詐欺による取り消しであるとかあるいはまた要素の錯誤による無効であるというふうなことで、個別の取引については、現在の民法におきまして無能力者に対する保護の規定で賄える体制ができていると思います。
 ただ、個々の取引でなくて一般的にそういう方を保護するということになりますと、準禁治産の宣告をしていただくというふうなことになりますと、これは保佐人の同意がなければその行為が有効に働かないことになりますので、そういうふうな準禁治産宣告を受けることが一番いいことだろうと思います。ただ、現在の実情から申しますと、そういう準禁治産宣告手続をとることをなかなか思いつかれないとか、そういうことをするのが親族の者からしてみるとちょっと気が引けるとかいうふうなことがあろうかと思います。そういう面で働いておりませんけれども、そういう法制度がありますので、むしろそれを十分に活用していただくというふうなことでやっていただければいいのではないか。
 少なくとも民法の制度としてはそういう場合保護する体制が整っておるので、ただそれを利用するかしないかという実際問題が残っている点だろうと思います。そういう点につきましては、個別の問題につきましても十分周りの方が理解して、法律的な手続がとれるようなことを十分認識していただくように努めていかなければならない点だろうと思います。
#231
○貝沼委員 それは非常に難しいのです。私は、それは言葉としてはわかるのです。それはそのとおりなら結構なことなんです。例えばおかしくなったら色がぱっと変わるとか、それはわかるのです。だけれども、痴呆性の人はわからない。何を基準にしてこの人は痴呆性なのかそうでないのか、わからない。厚生省に聞きますが、痴呆性老人の定義がありますか。
#232
○阿部説明員 十分なお答えになるかどうかわかりませんが、お尋ねでございますので……。
 痴呆性老人の定義いかんということでございますけれども、先生御承知のとおり、すべての社会現象といいましょうか、社会的な事象に一律的に対応できるような定義というのはございません。したがいまして、例えば私ども福祉サイドではどういうふうな考え方に立っているかというふうなことで申し上げてみますと、一般的には脳の種々の器質的な障害のために一度獲得した知識が低下しまして、そのために周囲の状況への正しい判断ができない、対応ができなくなったということで、一人で日常的な生活を営むことが大変困難になって、何らかの介助が必要になったお年寄りという理解に立っておるわけでございます。
 されば、そういうふうな状態になったというのを判断する一つの指標は何をもってやっているかといいますと、これは医学的にもまだ確立されたものはないのでございますけれども、一般的にはいわゆる見当識障害というふうなものを中心に、その方が正しい状態にあるかどうかというのを判断しているわけでございまして、例えば今の日時の確認だとか今どこにいるかというふうな場所の認定だとか、だれでも知っているような一般的な、例えば総理大臣のお名前はどうだとかいうふうなものを聞きまして、そういった知識がどの程度あるかということによって判定しているのが現状でございます。結論的になりますけれども、一般的な意味でどんな場面にも通用するような一義的な定義は、私ども持ち合わせておりません。
#233
○貝沼委員 そういうふうに、ないのですよ。それでわからない。昔のことはよく覚えているのです。高等数学はちゃんとやるのです。だけれども、今見たことを忘れるのです。今御飯を食べたことを忘れるのです。今何を食ったか忘れるのと、食べたこと自体忘れるという違いがあるのですが、そういうふうに差があるのです。あるときは正気になるのです。あるときはそうでないときがある。そのちょっとしたときに、今度は末の娘に全部財産をやるよとぱっと遺言を書いてしまったりして渡してしまうわけです。それで死んでから大騒ぎするわけです。そういうふうに遺言あるいは相続といった問題について、やはり何らかの手当てをする必要があるのじゃないか。答弁は要りませんけれども、それを私はきょうは御検討していただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。
#234
○井上(一)委員長代理 次に、滝沢幸助君。
#235
○滝沢委員 滝沢幸助であります。
 大臣、どうも御苦労さま。委員長、御苦労さまです。
 初めに、私は、このほど話題のかまびすしくしておりますいわゆる帝銀事件の死刑囚平沢貞通をめぐる死刑の刑の時効ということにつきましてお伺いしてみたいと思います。
 実は、これは三月八日に予算委員会の第二分科会でも若干取り上げさせていただいたのでありますが、まずここで改めて最初に、この事件の発生から逮捕、そして起訴、そして一審、二審、三審を経まして刑の確定、そして再審の請求ないしは恩赦の申し立て、あるいはまた人身保護請求という今日に至りますまでの経過を、ごく簡単に御説明願いたいと思います。
#236
○筧政府委員 ちょっと長くなるかもしれませんが、最初から申し上げますと、平沢は、昭和二十三年八月二十一日にいわゆる帝銀事件に関する強盗殺人事件で逮捕され、勾留の後九月三日釈放の上、別件の文書偽造、同行使等で東京地方裁判所に起訴され、さらに勾留が続けられ、同年十月十二日、帝銀事件に係る強盗殺人ほかについて起訴されまして勾留されたわけでございます。そして、昭和二十五年七月二十四日に東京地方裁判所におきまして死刑の裁判を受けた。そして、昭和二十六年九月二十九日に東京高等裁判所において死刑の裁判を受け、同三十年四月六日、最高裁判所において上告棄却の裁判を受けた。そして、死刑を言い渡しました東京高等裁判所の判決が、上告棄却の裁判に対する判決訂正申し立ての棄却決定を経て、昭和三十年五月七日に確定したわけであります。それ以後、同人は東京拘置所、宮城刑務所等に拘置されて現在に至っておるわけでございます。
 それで、確定後、右の確定裁判に対しまして再審請求がなされております。再審請求は、昭和三十年六月二十二日になされましたのが第一回でございます。その後第十六回が昭和四十九年九月二十五日に出され、一回から十六回までの再審は、いずれも棄却されたわけであります。裁判所は東京高裁、東京地裁、最高裁と三つに分かれております。そして、その後第十七回目といたしまして、昭和五十六年一月二十日に東京高等裁判所に再審請求がなされました。現在同高裁で審理中でございます。
 それから、恩赦の関係でございますが、昭和三十七年十二月六日の第一回の恩赦出願がございまして、その後第三回目が昭和四十六年七月九日出願でございますが、この三つは、いずれも不相当の議決がなされております。第四回目が昭和五十五年十二月二十二日になされ、さらに第五回目が昭和六十年二月十四日に出願がされまして、この二件は現在審査継続中でございます。
 なお、最近に至りまして人身保護請求事件が東京地方裁判所に提起されまして、現在審理中ということでございます。
#237
○滝沢委員 そこで、このことにつきましては、今日いわゆる議論されておるものは時効のことでございます。御存じのとおり、時効につきましては、刑事訴訟法の二百五十条によりますところの公訴の時効ということと、このたび問題になっております刑法三十二条の刑の時効ということになってございます。
 この刑の時効につきましては、「時効ハ刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ国リ完成ス」と規定されておりまして、御存じのごとく、一号におきまして「死刑ハ三十年」、二号におきまして「無期ノ懲役又ハ禁錮ハ二十年」、三つ「有期ノ懲役又ハ禁錮ハ」十年以上につきましては十五年、三年以上につきましては十年、三年以下につきましては五年、罰金につきましては、四号としましてこれは三年、五号としまして拘留、科料、没収等につきましては一年ということになってございますが、ここで問題なのは、「受ケサルニ因リ」とはどういうことであるかということにおいて、この時効ということの解釈が分かれてくるわけでありますけれども、しかし大体今このような議論がされているよって立つものは法文のあいまいさにあろう、こういうふうに私は思うのであります。
 御存じのごとく、学界の今日のこのことについての定説はないと言ってもよろしいでありましょう。この法律をつくる最初の精神においては、今回のようなケースは考えていなかったということでございましょう。中央大学の渥美東洋教授のごときは、これは逃亡等による場合のことを想定して時効という規定をしているのでありまして、適法に収監されている者についてはこれは該当しないということを言っておるわけであります。このようなことにつきましての見解はいかがですか。
#238
○筧政府委員 時効の問題でございますが、御指摘のように、刑法三十一条、三十二条というところに規定があるわけでございます。午前中も申し上げましたように、これらの規定、明治時代の片仮名の法律でございますので、微に入り細をうがって書いてあるわけではないという意味では、わかりにくいといいますか、いろいろ解釈の余地がある部門もあろうかと思います。そうすると、この法律を立案いたしましたときにどういう想定でつくられたか、現在となってはつまびらかにいたさないわけでございまして、この点についてもいろいろ学者が言われているところでございます。
 私どもといたしましては、この条文に即し、かつ時効の本質、趣旨等から考えて、午前中に繰り返し申し上げましたような解釈をとっておるわけでございまして、特に法の不備で立法措置を要するとまでは考えておらないわけでございます。
#239
○滝沢委員 今のお話のように、明治四十一年の十月一日に刑法が公布されまして以来、今日までこの条章については改正が行われておらぬということでございます。しかし、これはつまり再審請求、再審請求というものを少しずつ模様を変えたものを出して継続するならば、二十歳にして死刑の判決を受けた者は五十歳にして青天白日の身となるということでありますから、現実としては無期懲役とほとんど同様なもの、こうなってくるということでありますが、このようなことで厳正なる刑法が私は全きを得るとは思わないわけであります。
 実は、私がこのように申し上げておりまする思想は、平沢をここで釈放しなさいとかないしは刑を執行しなさいというような結論を持って言っているのではなく、いやしくも刑法の、しかもその最も厳しきはずの死刑ということにつきましての時効の規定がこのようにあいまいなものであってはならない、こういうふうに私は思うわけです。もちろん、これは文章を読む限りにおいてはわかりやすいのでありますが、現実は非常にわかりにくくなってきたというのが今日の現状でありましょう。
 私は、法律はすべからくわかりやすいというのが望むところであろうと思います。今日我々が直面しているこの条章のごときは、実は非常にあいまいもこであります。千里もうろう、簡に過ぎて要を得ず、こう言ってもよろしいでありましょう。ゆえにこそ歪法曲学のやからが、今申し上げましたように、手続的に合法なるものを繰り返しいくならば事実を消滅せしめ得ることができるということであろうと存じまして、私は速やかにこの刑法の改正を用意されることが政府の責任であろう、このように思うわけですが、いかがですか。
    〔井上(一)委員長代理退席、委員長着席〕
#240
○嶋崎国務大臣 平沢の場合につきまして、ともかく判決を受けましてから今日まで三十年を経過をしたというような実情にあるわけでございます。法務省の関係の仕事としましては、捜査あるいは公判の維持あるいはその後のいろんな刑の執行、更生等々と非常に重要な仕事を持っておるわけでございまして、こういう事態で今日まで推移したこと自体が、全く異例なことであるというふうに私も思っておるわけでございます。ある意味では非常に深刻にこの問題を考えさせていただいておる人間の一人であろうというふうに思っておるわけでございます。
 御指摘のようにこの問題の解釈について本当にいろんな説があるということは、私も承知をしておるわけでございます。そういう非常にわかりにくい状態ですから、何か刑法をきちっと整理したらどうかというような御意見なんですが、本当にわかりやすいことが望ましいということは事実であるわけでございます。しかし、御承知のように、法務省といたしましては、国の刑罰権にかかっておる人たち、そういうことについては時効が進行しないという考え方をとって今日までやってきた経緯があるわけでございまして、しかもこの問題をめぐって、時効の問題で現在人身保護請求というようなものが出ているというような事態になっておるわけでございます。近くいろんな意味で裁判所の判断というようなことも出てくるだろうというふうに思っておるわけでございますが、御指摘の点については、今後刑法をどういうぐあいに改正をしていくかというようなことの中で検討していかなければならぬ事柄じゃないかというふうに思っております。
#241
○滝沢委員 今現に刑法改正の動きもございます。聞くところによりますると、その草案も用意されているがごとく聞くわけでありますが、そのようなものにもしも了知しておられるならば、その草案なるものの中ではこのようなことはいかに取り扱われているか。――見ていただいているうちに、それじゃもう一つ質問いたします、時間とりますから。
 実は大臣、私はいささかよそ様と考えが違うかもしれませんけれども、大衆運動、デモンストレーション的な、ないしは示威運動というようなことで、裁判につきまして、その裁判の衝に当たる人以外の者でこれをきわめようないしは要求しようという動きにつきましては、私は極めて批判的な立場をとっているものでございます。例は適切かどうか知りませんけれども、私は、病人が手術室に入った場合と事件が裁判に持ち込まれた場合は、もう素人は一切手を引いて、冷静なよい状況の中で専門家が仕事ができるように協力することが望ましい、こういう気持ちを持っているものでございます。
 そのような思想に立って申し上げるのでありますが、これはまことにそのとおりというお答えは立場上出てこないと思います。かつて松川事件ないしは免田事件、白鳥事件につきまして、数々あったことでありまするけれども、そのような大きな世論が喚起されて無罪をかち取るというようなことになってきまするときに、裁判官ないしは判事、検事というような、それは弁護士をも含めてでございましょうけれども、これが精神的に、心理的に、情緒的に影響されることがあるものか。ないならば大衆運動の効果極めて少なしとするものであり、あるならばその効果極めて顕著なりと言うべきであります。しかし、あると答えにくいでありましょうけれども、この間を通じては、最高裁からもおいで願っておりますが、いかがなものでありましょうか。
#242
○筧政府委員 最初の草案の関係についてお答え申し上げます。
 刑法改正草案の規定によりますと、九十一条で「刑の時効」、これは現在の三十一条とほとんど同じでございます。「刑の言渡を受けた者は、時効によってその執行を免除される。」それから第九十二条、今の三十二条の趣旨でございますが、「刑の時効は、刑の言渡が確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。」「死刑は三十年」云々でございますので、現在準備されておりますというか、法制審議会で答申をされました刑法改正草案の条文では、現行法と書き方、趣旨は同一のように見受けられます。
#243
○小野最高裁判所長官代理者 御承知のとおり憲法の七十六条三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」こう規定されているわけでございまして、これは裁判の独立を保障しておると同時に、裁判官といたしましては、それは裁判官の重大な職責であるというふうに自覚しているわけでございます。したがいまして、裁判官がその職務の遂行に当たりまして外部の圧力に屈したり、あるいはそういう世論におもねるというようなことがあってはならないことは当然のことでございます。裁判官は、その職責の重大性に思いをいたしまして、日々自戒して努力しているところでございまして、御指摘のような、運動によって不当に影響を受けるというようなことは一切ないものというふうに確信しております。
 なお、いろいろな裁判に対する運動等につきまして、表現ないし言論の自由というものも十分に尊重されなければいけません。そういう意味で、裁判が係属中であってもこれに対する言論というようなものは尊重されなければならないわけでございますけれども、他方、裁判の独立というようなことも憲法上保障されているわけでございます。ただいまも申しましたように、裁判官はその職責上、またそういう運動等に影響を受けるというようなことがないということを私ども確信してはおりますが、それに対して何か不当な影響を与えるのではないか、あるいはそういう誤解を受けるというようなこともないわけではないわけでございまして、裁判官としてはそういうことによって影響を受けることはございませんけれども、そういう誤解を受けることがないように、そういう運動というようなことにつきましても十分御理解をいただきたいというふうに考えております。
#244
○滝沢委員 まことに教科書のような御答弁をいただきまして、さもあろうと思うわけであります。しかし大臣、これは最高裁の長官が見えておればなおありがたいのでありまするけれども、今いやしくも裁判の衝に当たる者、外圧等により何らの影響を受けることはないとおっしゃいまして、そうあるべきはそのとおりでございます。しかし、裁判の衝に当たる者どもといえども、これは血の通った人の子、喜怒哀楽、恐ろしきものに対しては恐れを感じ、麗しきものに対しては喜びを感ずるでありましょう。そのような意味では、日々毎日、新聞、テレビ、そして町の至るところにこれが叫ばれていることになりますれば、これは心理的影響を大なり小なり受けざるはずがない。受けるところに大衆運動の目的があるでありましょう。
 そこで、私は今教科書のような御答弁をいただきましたけれども、これとともに実はお願いをしたいことは、これら裁判の衝に当たる者がこれらの外圧等に屈せざるための何らかの措置が必要ではないのか。それをただ彼らの良心に期待するだけでは不十分、かつその衝に当たる人々に対しては不親切のそしりを免れないだろう。私は、裁判というものは厳正に、他の者は一切手を触れずに、批判をせずにこれを見守る、そこにおいていやしくも裁判官としてあるまじき者があるならば、これは憲法によって最高裁判所の判事の例の審判制度もあるわけでありますから、それこそ厳正なるもの、これ一筋に頼るべきだ、こういうふうに思うのでありますが、いかがですか。もう一回その点、このままただ良心と勇気に期待するだけではいささか酷に過ぎましょう。どなたでも結構です。
#245
○嶋崎国務大臣 我が国の現状を見ますと、司法権につきましては割合きちっとした政策が保たれており、またそういう中で運用されているというのが客観的な事実でなかろうかというふうに思っておるわけでございます。ただいま答弁がありましたように、本当に司法権が良心に従ってきちっと整理をされていくという運用が大切であろうと思います。
 また、我々法務関係におるところでも、御承知のように検察庁法の十四条の規定がありますように、司法権が独立しておるということに絡みまして、個々の案件等につきましては本当に検事総長だけに対して私が指示をするようなチャンスを持つというような制度になっておるわけでございます。厳にこういう気持ちというものを踏まえまして、司法権が本当に適切に運用されますように我々も努力をしてまいらなければならないと思っておる次第でございます。
#246
○滝沢委員 御答弁を了としまするが、重ねて申し上げます。今日、ある意味では司法権も大変なあらしの中に立ち置かれている。これの衝に当たる人々に対して保護、奨励の措置がもう一つ検討されるように要望しておきます。
 さて、次に話を変えさせていただきますけれども、実は四月二日に、私は「戸籍法第五十条に関する質問主意書」というものを提出させていただきました。そして、法によって一週間以内にこの答えをちょうだいしたことであります。また四月十七日は、文教委員会におきましてこのことについて質問させていただきました。
 ところで、今日まで私は、たびたびにわたりまして実は戸籍法の五十条、つまり子供さんが生まれましたときにその名前を登録する、出生の届けをするというときに、使用する名前の文字を制限されるということは憲法違反であるというふうなことを申し上げておるわけであります。また国情、民情にも非常に合わぬということを申し上げているわけでありますが、このことの議論の結論としまして、再確認させていただきまするが、戸籍法五十条並びに施行規則六十条、これによりまして、文部省が定めました常用漢字の千九百四十五字と、そのほかに特に定めました人名用の漢字の百六十六字、合わせて二千百十一字以外は使ってはいけません、仮名はいいですけれども漢字はこれ以外に使ってはいけませんとなっているのだけれども、これを変える意思はない、変える必要を感じられないというのが大臣の結論と理解していいですか。
#247
○嶋崎国務大臣 ただいまの問題につきましては、さきに滝沢委員の方から質問書が出ておりまして、その中で政府としての公式的な見解を申し述べておるわけでございます。もう既に御承知のとおりでございますが、戸籍法第五十条は、難解な文字による名によって生ずる自他の社会生活上の不便を避けるための合理的制限であり、かつ、戸籍制度との関係以外における社会生活一般において、戸籍上の名と異なる名を使用することまでを禁止する趣旨ではないから憲法に違反するものではなく、同条を改正する必要はないという答弁を差し上げたと思うのです。
 既に私も、二月二十五日ですか、また分科会におきまして御答弁を申し上げたところでございますが、いろいろな経緯はあるのですけれども、非常に難解な文字を使われることによって、社会的にもこれで十分でないというような議論がありまして、ああいう改正に至ったような次第でございます。したがいまして、その実施を見ておるところ、一応社会的な不便を避けるためやむを得ない措置だというような判断になっているのではないかというふうに思いますけれども、しかし、その際も申し上げておきましたけれども、なお、先生の方からそういう御意見があったというようなことを十分踏まえて、今後そういう議論を紹介をし、処理をしてまいりたいと申し上げたところでございます。今後とも、御意見につきましては十分それを参酌して、何かの機会にそういうことを明らかにして、その対策というか、処理を考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
#248
○滝沢委員 ありがとうございました。
 そこで、私は、このようなことは憲法に言いますところの十九条、二十条、二十一条、思想、良心、信教の自由を侵すものである、そしてまた、憲法の定める幸福追求の権利というようなものを否定するものである、こういうふうに申し上げているわけであります。しかし、これを今おっしゃるように、戸籍に用いた名以外の名前を用いてもよろしいのだから憲法違反でない、こうおっしゃることは語るに落ちるというものでありまして、つまり戸籍法のあの規定そのものの文言は憲法に違反しているわけですよ。ですから、それ以外に使うことを禁じていないから違反じゃないのだ、こうみずからおっしゃっているわけです。しかし、私はここで憲法論争をする気持ちは毛頭ございませんけれども、それ以外の名前、つまり通称、雅号、ペンネームのようなものをどんどん使ってもよろしいですよというならば、その人の戸籍にその名前が登録されていてもちっとも違いはないのではありませんか。
 つまり、例えば私は「幸助」と申しまするけれども、これは幸いに文部省が認めてくれましたのでまともに使えまするけれども、そのほかに私が難しい雅号をどんどん使っているならば、それが社会に使えているのですから、戸籍の方を簡単にしておいても実益はないのではありませんか。逆に、本名は非常に難しいのだけれども、人様に御迷惑をかけてはいかぬと思って易しい「幸助」という名前にしているのとどこが違うのですか。実情は全然違わぬじゃないですか。
 つまりこのことは、次に申し上げます名字を取りかえること、姓氏を取りかえること、氏を取りかえることができないのだから、同じではありませんか。現に、大臣の「嶋崎」の「嶋」という字に「山」がついている。「山」を取られれば、やはり余りおもしろいことはないのだと思いますよ。自分の名前を間違ったのを書いてこられるというのは、非常に感じの悪いものです。しかし、これは姓だから取りかえることはできないでしょう。姓を取りかえることができない。現に、四十代になって、既にあの法律施行以前に生まれている人の名前を取りかえることはできない。
 御存じのように、織田信長からイザナギノミコトまで、亡くなっても名前というのは用いられるものなんです。ですから私は、今生まれている子供に制限をしても何らの実益はない、こう言っているわけです。そうしましたら、いつか答弁の中で、氏はこれ以上ふえる可能性はありません、名前はどんどん人口がふえればふえるから、これを制限すれば有効だと言いますが、実益がないことです。
 そして、これをどんどん昔のように、お父さん、お母さんが祈りを込めて真剣に選んでいただきました名前を、そのまま素直におめでとうございましたと言って受け付けていっても、何ら実害がない。大変な国の予算を使うというのでもないのです。実損がないのです。制限することによって実益がなく、自由にすることによって実損がないならば、私は、昔のように、お父さん、お母さんが選んでくださった名前を素直に受け付けた方がいいのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
#249
○枇杷田政府委員 ただいまの御意見はかねがね拝聴しておるところでございますし、そのような御意見の方も国民の中におられるということも承知いたしておりますが、しかしながら、過去のいろいろな事象から考えまして、ある程度の制限をした方が、本人のためにも、それからその人と交際といいますか、関係のある人にとっても利便であるというふうなことから、ある程度の制限はやむを得ないというような考え方を持つ方もかなり多くおられるわけでございます。
 そういう多くの人の御意見をお伺いをした上で、民事行政審議会において、常用漢字表を中心としながら、ある程度幅広く認めてもいいというお考えの方のそういう御主張の字などもいろいろ取り込みまして、そして現在の二千百十一字ということにいたしておるわけでございます。これはいろいろな物の考え方によって受け取り方が違うだろうと思いますけれども、多くの方々にとってみますと、現在のような制限は、これはやむを得ないし、むしろ必要なことではないかというふうな御意見があるものですから、私どももそれに従ってやっておる次第でございます。
 なお、具体的な文字については、こういう文字まで制限するのはどうかというふうな御指摘が時々ございます。そういうようなものは、ある一定の時期にまた審議会の御意見を伺って拡大をするということは、私どももやぶさかではないのでございますが、全体として名前の制限をするというのは、ただいま御主張のように、氏が制限されていない、過去の方についても制限されていないというところからすれば中途半端ではないかという御指摘は、これはごもっともな面がありますけれども、それでもなおかつ、昭和二十年代以降生まれられた方々について、戸籍上の名前をこのように制限をしていることの方がよかったんだというふうな感触の方が多いし、また私どもも、ある点ではそうだろうということでございますので、そういうようなことで、私どもは、両方のお考え方を具体的にどのようなところで線を引いていいかということがこれからの検討課題でございますけれども、基本線とすれば、現在の使用制限の線は維持していくのが適当だろうというふうに思っておる次第でございます。
#250
○滝沢委員 だから、あなたのようなお考えの人は、御自分のお子さんに簡単なお名前をつけなさったらいい。だけれども、そういう方だけじゃないのです。
 話がちょっとやわらかくなりますが、小倉百人一首に、「名にしおはば逢坂山のさねかづら人にしられでくるよしもがな」というのがあるのです。これを有名なというふうに解釈する向きがあるが、そうじゃない。あなたは名前と実体が同じならば、逢坂山のサネカズラという草について、あの人に人に知られずに会う方法がないか、こう言っているわけです。名は体をあらわす、武士は命よりも名を重んじたものです。
 名前というものは、役人の皆さんが考えていらっしゃるような記号だけではないのであります。だから、どこの世界に、自分の子供が苦労をして不幸になれといって、難しい名前を康煕字典から拾ってきてつけて喜んでいる親がありましょう。相当難しい名前もありますよ。だけれども、その親御さんにとってはそれなりの意義があるから、その子に祈りを込めてそのようなお名前を選びなさるわけです。
 現に、浄土真宗の信者で、親鸞上人の「鸞」という字をおかりして、これをおかりするには、それはお経を上げ、数珠をつまぐり、祈りを込めてお選びになったでありましょう。「鸞子」とつけようとした。しかし、市役所に行きましたならば、あの花の咲いている「蘭」にされた。花の咲いている「蘭」をつけられて、浄土真宗の信者が、これは親鸞上人様のお名前をおかりしたんだという気持ちになれますか。そういう符号じゃないんですよ。命にかえてもこの名前をという親が世にはたくさんいらっしゃるわけです。私の名前は先ほど申し上げましたが、名前の方は合格しましたけれども、「瀧澤」という字はどっちもペケですわな。これは簡単な方を選んで「滝子」ちゃんといっても、それはそういうわけにはいかないのであります。
 これもある宗教でありますが、入信しますと、教祖様の御選名によりまして名前を変えます。しかし、これは家庭裁判所が通らない場合は、おっしゃるところのいわゆる通称になるわけです。しかし、このときに、決してその教祖様は人名字典を引くわけではありませんよ。そのような命にかえた行為として自分の名前を選び、子の名前を選び、それを誇りに思って、その一代だけではなくて、うちにはおじいちゃんにこういうお方がいらっしゃったんだということが残るわけです。名前というのは尊厳なものです。そのことをどうかひとつ御理解をちょうだいしたい。
 卑近な例でありますけれども、道子さんという人が私の身内に花嫁に来てくれました。ところが、これはお父さん、お母さんがお選びになったのは、田んぼの「田」の真ん中が出ている「由」という字にしんにゅうをつけた「迪」です。ところが、これが道路の「道」という字になった。まあ「道」だからいいんで、これは道徳の「道」にもなるというようなことにもなるけれども、「路」という字にしたらどうなりますか、アスファルトになっちまいますよ。ところが、ジャクまたはテキと読むこの「迪」という字は、「あるところから始まる道、ひとすじの道」あるいは「ひとすじの道にそって教えみちびく」、こういうふうになりまして、これを「すすむ」というようにも読む。そして、踏み行っていく、「そのとおりに実行する」という意味にもなっているというふうに、学習研究社の漢和大字典の五十六年度版には書いてある。こういう名前を選ぼうとしていただいた花嫁さんが、まあ「道」だからいいけれども、道路の「路」だったり、「径」だったり、道路交通法の「通」だったりしても、みんなミチなんです。どれでもいいよというようなことにはならないのです。
 特に私は大事だと思うのは、おじいちゃんの一字、おばあちゃんの一字、お父さんの一字とお母さんの一字をもらって名前をつけたという場合に、ペケになったらこれはどんな気持ちですか。私は、このような実例を二千でも三千でも経めくって持ってきて、皆さんに御判断を仰いでもいい。
 政治に強弱あってよかろうはずはありませんけれども、これはGNP一%よりは大事な議論じゃないかな、これは大変なことだと私は思うんですよ。あるいはまた、ベースアップのことを言うと組合にしかられますけれども、ベースアップがことし高い安いということよりも、この名前の問題は大事なこと、これは命に通ずること、こういうように理解をいたしまして、このことに私は情熱を傾けているわけです。きょう簡単に解決はできないでしょうから、また機会を選んで申し上げさせていただきますけれども、最後に、そのようなことでありますから、大臣、どうかひとつ真剣にこれを一つの政治の課題として取り上げていただくわけにいきませんか。
#251
○嶋崎国務大臣 先ほど来御説明申しておりますように、民事行政審議会の中で、これらの問題は非常に多くの人の議論を積み重ねてああいう改正になってきたという経緯があり、その後相当の日月もたちまして、委員のような御議論をされる方というのは、実は余り多くなくなっているという現実もあるのかもしれないと思っておるわけでございます。しかし、先般来申しておられますように、これは三回目になりますか、非常に御指摘を受けておるわけでございまして、これらの問題については、そういう機会がありましたら十分議論をしていただくようにやっていきたいと思っておる次第でございます。
#252
○滝沢委員 大臣、あなたが法務大臣、私が議員であることもこれ緑かと心得て、私はこのことはもう再三再四実現するまで叫び続けよう、そして世の隅々を緩めくって、これらのいわゆる被害者を拾い出してきまして世の反省を促そう、こう思っておるのであります。
 最近、地名につきましては、そのような思想が大変高まりまして、由緒ある地名を残そうという動きがたくさん出てきております。現に宇野宗佑先生を会長さんとするそのようなことの議員連盟おいしは木内信胤先生の地名保存連盟というようなものもできまして、由緒ある地名を残そうではないか、いわゆる記号としてわかればいいんだ式ではだめだなという動きが、総理大臣がおっしゃっておりまする戦後の総決算、戦後過てるものはこれをここで直そうという動きがようやくにして出てきたことを、私は大変うれしいことに思っておるのであります。しかし、地名と同様、またはそれ以上に人名というものはとうといものだと存じまして、私はこれを申し上げているわけであります。
 そこで、私はいつか、漢字の制限をされたことに対して文部大臣に、いつあなたたちの内閣は社会主義になったのですかと、こう申し上げました。そう言っておるうちに彼は、日本よりも古きものをとうとぶはずの隣の中国が漢字をあのように簡単にしたんじゃありませんか、こうおっしゃった。私は、だから言っておるんじゃありませんか、あれは共産主義の社会だ、あの政治体制だからできたんですよ、どうして自由民主党の中でこれができるのですか、こう申し上げた。
 そこで、私は特に申し上げたいことは、まあよその国のこれは悪口じゃありませんから申し上げるわけでありますが、中国は十億とも言われ、十二億とも言われる、人口もわからぬほどの、大きいと言えば大きい、おくれていると言えばおくれている国なんです。孔子様その他李白も偉い学者もいらっしゃいますけれども、国民の大半はつい最近までは無学文盲でしょう。そういうところでは文字というものは大変簡単に取り扱われて、古い深い学問を少数の人に奨励するよりは、全人民に簡単な文字を教えた方がいいということになりましょう。しかし、日本は全く事情が違いまするから、私は文部大臣に対しては、漢字の制限、仮名遣いの改正をやめなさい、もとに返しなさい、歴史を尊重しなさいということを言っておるわけでありますが、同様な思想に立って、この人名のことを申し上げているわけでございます。
 それは、役人という立場に立ては今の状況を擁護する以外ありませんが、しかしそれはあなたの人格がおっしゃっているのではなくて、そのいすが、役職が言っておるわけですから。ということでありまするが、しかし役所の役にとどまる日は短く、生きる日々は長いわけです。どうかひとつその点、役人の頭ではなくて、人間として親御さんとしての頭でもって、人名のことをもう一回真剣な議論をしてちょうだいできますように、大変回りくどくなりましたが、大臣、あなたの「嶋」という字がやまへんがついているのも因縁ですわ、どうかひとつもう一回、あなたからこのことを政治日程に上げてちょうだいできるような道はないものかどうか、承らせていただきたい。
#253
○嶋崎国務大臣 この問題につきましては、いろいろな御議論がありますが、先ほど来十分御説明申し上げたような長い経過があるわけでございまして、そういう経過の中で民事行政審議会等で一度御議論をしていただくというようなことでありまして、どうも私の立場から、何か政治的にそういうものを取り扱うというような部署でもないような気持ちもしますけれども、ともかくこの名前の問題につきましては、今ある法規制、戸籍法の中にあるわけでございますので、そういう面については一遍論議をさせていただきたいと思います。
#254
○滝沢委員 いま一つ歯切れがなにでありますが、これは大臣、決してお互いに議員の職にあるうちとか大臣の席にあるうちというようなことではなくて、日本の大きな歴史、そして、今ここに我々がどのような生きざまをするかということは、我々の子々孫々につながることでありますから、ひとつ視野を広めていただきまして、このようなことについて――実は先ほども廊下をこの委員室に急いでおりましたら、ある自民党の先生が私に、あれはそのとおりだ、おめえ言うとおりだからしっかり頑張れとおっしゃってちょうだいしまして、これは政党政派を超えて大きな世論になり得ると私は信じて疑いません。どうかひとつこの人名の制限を廃止するということにつきまして、今後の課題として検討してちょうだいできまするように重ねて要望しまして、私の質問を終わらしていただきます。
#255
○安井委員長 次に、中川利三郎君。
#256
○中川(利)委員 ロッキード事件の被告である田中元総理の退院問題について、まず法務大臣に聞きたいのであります。
 この問題は、単に田中元首相が入院先の病院を抜け出したとか、あるいは病状がどうであったか、こういうことだけではなくて、これに派生する問題として要人警護のあり方や、入院先の病院長がうその発表を強いられたことや、あるいはいろいろな事情があるにせよ、こうしたうその発表に一部の閣僚や有力政治家が合唱に加わったことやら、非常に遺憾な問題が派生いたしておるわけでありますが、このような事態について法務大臣はどのようにお考えになっているか、まずお聞きします。
#257
○嶋崎国務大臣 お尋ねの問題につきましては、病院側あるいはその他の関係者がそれぞれのお立場に立たれまして対応されたものであろうというふうに思っておるわけでございまして、私の方として特別の所見を申し上げるような事柄ではないように思っておる次第でございます。
#258
○中川(利)委員 いろいろな事情があるにせよ、遺憾だという言葉もなかったようであります。
 それでは引き続き聞かしていただきます。
 まず、郵政省にお聞きするのでありますが、東京逓信病院というのは、郵政省の所管病院ですね。院長さんが五月五日の記者会見の席上、田中元首相は三日に病院に帰ったと述べましたが、十一日の記者会見で公式に在宅していることが判明いたしました。十一日の会見の席上でも明らかになったのでありますが、五日の病院長の発表というのはうその発表で、しかもその発表を強いられた、こういう状況が初めてわかったわけであります。
 御承知のように、東京逓信病院は国立病院的な存在でございますし、病院に従事する人たちは国家公務員でございます。外的圧力にせよ、病院長が虚偽の発表を行ったということは、病院に対する信頼感を社会的に大変傷つけたものだと存じますが、この点について郵政省はどのような御見解をお持ちでしょうか。
#259
○楠説明員 逓信病院を利用される方の入退院あるいは一時帰宅につきましては、患者さんの症状等総合的に勘案して現在行われているところでございます。また、その事実関係につきましては、患者のプライバシー等にもかかわる点がありますので、慎重に対処するよう常々配意しているところでございます。
 先生御指摘の今回の一時帰宅の発表につきましては、秘書さんからたび重なる要請がございまして、これを受けて院長が判断したものと聞いております。しかしその後、病院側におきまして諸般の事情を考慮して、先生御指摘の十一日の訂正の発表を行ったところでございます。事の経緯はともかくとしまして、結果として各方面に御心配をおかけすることになりましたことにつきましては、さきに病院長も遺憾の意を表しているところでございまして、今後私どもこれを教訓といたしまして、さらに慎重に対処していくよう努めてまいりたいと考えているところでございます。
#260
○中川(利)委員 病院に対する信頼感を社会的に大きく損なったのじゃないか、これについてどうかということをお聞きしたわけでありますが、今のような答弁の限りでは、私は非常に遺憾だと思います。
 さらに追加してお聞きしたいのは警察庁でありますが、要人警護のあり方が改めて問われたわけでありますが、四月二十八日、田中さんが病院を出て、またお帰りになった、これは当然SPとしては御承知になっていらっしゃると思いますが、四月二十九日の帰宅についてはどのように把握しておったか、御参考までに聞かしていただければありがたいと思います。
#261
○菅沼説明員 お答えいたします。
 田中元総理の入院以来の警護・警備につきましては、その身辺の安全確保のため必要な措置を、そのときどきの情勢に応じて適切に実施いたしてきたところであります。
 なお、警護に従事する者は、警護上必要な事項は必要な範囲内において承知いたしております。
#262
○中川(利)委員 二十九日の帰宅についても全部承知しておった。二十八日はもちろんですね。その時点でわっとどこへ行ったか騒いでいたが、皆さんは承知しておったということ、それを聞いただけで結構でございます。
 今お話がありますように、警察がそういう格好で承知しておった状況の中で、一時的であるにせよ、その行く先が病院だとか、いや自宅だとか、さらには転地療養だとかいろいろな憶測が流れたわけでありますが、御承知のように田中元総理は保釈中の身でございます。刑事訴訟法の第九十三条の三項で、保釈を許す場合、住居を制限するなど条件を付することができるとなっております。
 法務省にお聞きしたいのでありますが、田中元首相の保釈条件はどんな内容であるのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
#263
○筧政府委員 お尋ねの事件、現在東京高裁に係属中で、現に公判中でございます。その公判の過程でその間になされた裁判所によります保釈許可決定でございますので、その内容について私どもで言及する立場にないことを御了解いただきたいと思います。
#264
○中川(利)委員 私どもの理解では、田中元首相の場合、住居の制限がついており、なおかつ、届け出住居を三日以上離れる場合、裁判所に申し出、許可を受けなければならないということになっているはずでございますが、今裁判中の問題だから云々ということで、答弁を控えられたようであります。
 それでは、一般論としてお聞きするのでありますが、刑事訴訟法によって保釈を許す場合、住居制限等々の条件がつけられる、こう理解してよろしいですか。
#265
○筧政府委員 住居の制限その他必要な条件を指定することができるとなっておりまして、一般論で申し上げれば、多くの場合に制限住居の指定があるわけでございます。
#266
○中川(利)委員 しかし、田中さんの場合はそういうわけだから申し上げるわけにいかない、こういうことのようであります。
 法務省にもう一回お聞きするのでありますが、一時的であるにせよ、所在がわからず、こういう状態で行方不明になったわけでありまして、法務省としては保釈中の田中元総理の所在を確認するための手だてをあの当時どのようにとったのか、どのように把握しておったか、ちょっとお聞きしたいと思います。
#267
○筧政府委員 保釈中の被告人でございますから、四月二十八日以降いろいろ新聞報道等に田中被告の今回の件に関することが出ておりましたので、その点について検察当局でも関心は払ってきたところであろうかと思います。ただ、保釈中の被告人の動静につきまして、検察官が常に一々把握するというところまでは、実際の状況といたしまして、保釈の条件を守っておるかどうか監視するといっても、その監視の仕方には限度があろうかと思います。その意味で、数多く保釈中の被告人はございますが、一々それの動静を監視するというところまではいたしていないのが現状であろうかと思います。
#268
○中川(利)委員 それでは、この問題の最後に法務大臣にお聞きしますが、ロッキード裁判について一審の結果を維持するためにどのような決意を持っていらっしゃるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
#269
○嶋崎国務大臣 最近、田中元首相が病気で入院をされておるというようなことがありまして、その御回復を私も祈っておる一人であるわけでございます。
 しかし、御承知のように、ロッキード事件というのは非常に重要な案件であるわけでございまして、検察当局といたしましては、あくまでも厳正公平の立場に立脚をして訴訟活動を続けていくものであろうというふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、私としましては検察当局を十分信頼をしておりますので、その事件の処理につきまして、的確に処理が行われるであろうということを確信をしておるというのが実情でございます。
#270
○中川(利)委員 それでは、タンクトレーラーの事故問題についてお聞きするのでありますが、去る六日、目黒区柿の木坂、環状七号線でのガソリン、軽油を満載したトレーラー式タンクローリーの横転、炎工事故がございましたが、これは、一つ間違えば大都会の住宅密集地帯での大惨事になりかねない、その恐ろしさをまざまざと示したものだと存じます。
 まず最初に、警察庁にお聞きするのでありますが、新聞報道等で事故の概況は私も十分把握しておるつもりでございますので、今調査中だとありますが、やはり今後の安全対策に生かすためにも、一刻も早い調査結果が待たれていると思うのですね。そういう点で、今後の調査がいつごろまでかかるのか、大体いつごろ結論が出るのか、この点だけで結構でございますから、お答えいただければ大変ありがたいと思います。
#271
○山崎説明員 お答えいたします。
 現在、本件事故につきまして警視庁におきまして鋭意捜査を進めておるところでございまして、私ども、可能な限り早期に結論を得たいということで努力をいたしておりますが、現段階では終結の見通しについてまだ申し上げられる段階ではございませんので、あしからず。
#272
○中川(利)委員 大韓航空機の例なんかは、今もってなかなかはっきりしていないという例もありますが、こういう問題は、今おっしゃった早期にそういう格好でおやりになるということですから結構でございますが、あわせて、さらにやはり国民をいっときも早く安心させていただきたいということと、この問題は、東京都内は一番危険でございますけれども、全国的な課題でもあると思いますので、この点をさらにつけ加えさせていただきたいと思います。
 それでは、消防庁にお聞きするのでありますが、普通のタンクローリーの場合、側面枠、つまり肩と一般に呼ばれているのですが、普通のタンクローリー、今回事故を起こしたのはセミトレーラーのタンクローリーでございますが、肩がついているのですね、これは転んだ場合でもひっくり返らないためだ、こういうことが義務づけられているわけでありますが、今度の事故は、セミトレーラーにはそれがないんですよね。なぜないのかということをいろいろお伺いしましたら、重心が低いからひっくり返ることがない、こういう理由でございました。しかし、今度の場合、横転であっても、その衝撃で大量の油が漏れ、火災、爆発を起こしておりますが、それだけでなくて、皆さんの安全基準によれば壊れるはずのないタンクにひびが入ったり、またバルブの損傷だとかパイプが壊れて、油が流れ出しているわけでありますね。
 このため消防庁は、この事故を契機に検討委員会を設けて改めてこれを調べ直す、こういうことを聞いているのでありますが、やはり危険物の運搬であります以上、政令第十五条で定める基準がございますけれども、より安全に安全に、こういうことの方向を考えるのが適当だと思うのですね。したがって、基準の見直しを含めて今後の対応についてどうお考えになっておるのか、この点をお答えいただきたいと思います。
#273
○志村説明員 お答えを申し上げます。
 危険物のタンクローリー、いわゆる移動タンク貯蔵所でございますけれども、これの安全基準につきましては、消防法によりまして、例えばタンクの本体ですと板厚が鋼材の場合には三・二ミリ以上でありますとか、それから安全装置を設けなければならないとか、さまざまの安全基準が施されているところでございまして、通常の運行状態ないし通常の横転事故においては破損はしない、このような前提で施行がなされているわけでございまして、すべてこれまでの走行中の交通事故等による事故事例を見ましても、今までは大事に至っていなかったというのが実情でございました。しかしながら、今回このような事故が起こったわけでございまして、私どもとしては極めて重大に受けとめているところでございます。
 したがいまして、再びこのような事故が起こることのないように、消防庁におきましては、タンクローリーに関しまする現行の構造上の基準でありますとか、あるいは消防活動などに関して新たに今後検討する必要がある事項を洗い出すといいますか、問題点を整理することを目的としまして、早速庁内に消防関係者から構成する消防対策検討会を設置して検討を始めたところでございます。今後、原因の調査が、現在東京消防庁においても火災原因の調査が進行しているわけでございますけれども、これらの調査結果と相まちまして、この検討会において問題点が洗い出され、整理されたならば、この問題点の解明を、改めて学識経験者等も含めた研究会等を設置して解明をしてまいりたい、かように考えております。
#274
○中川(利)委員 今の御答弁によりますと、さまざまの安全基準があるから、通常の状態ではひっくり返るはずがないんだ、壊れるはずがないんだ、漏れるはずがないんだ、そういうことをおっしゃっているわけでありますが、にもかかわらず、若干の雨、日曜日は午前中雨が降っておりましたね、そして急ブレーキをかけたらこうなって、このいきさつは時間がかかるからやめますけれども、そういう事故が起こったということですね、事実関係からいえば。ですから、通常こうあるから大丈夫だといっても、これは特殊の事例ではないわけですね。
 そういう点で、先ほど質問いたしました例えば普通のトラック式のタンクでは、前部の肩、出っ張り、これも一つが五、六キロぐらいあるのですね。あれを前部と後部につけて、ひっくり返ってもそれが何かの突っかい棒になって内部が損傷しない、こういうふうになっているわけですね。ところが、トレーラー式のセミトレーラーのこういう場合は、そういうあれがない。なぜないのだ、重心が低いから大丈夫です、そういうことは心配ないのだと言うんだな。しかし、心配ないと言いながらこういう事故が起こって、さらにそれから派生していろいろな事故が起こっているわけでありますから、そういうものを含めて、やはり安全に安全にということでやるのかどうか、これが基準の見直しになるのだろう、こういうことを聞いているわけでありますから、簡単で結構ですから、もう一回。
#275
○志村説明員 お答えを申し上げます。
 先ほども御答弁申し上げましたように、私どもとしては、現行の構造の基準上どういう点に問題があるかということを現在検討しておるところでございまして、それらも含めまして、今後安全基準につきまして十分に検討してまいりたい、かように考えております。
#276
○中川(利)委員 それでは、運輸省にお聞きいたしたいと思います。
 私、この問題で、実際に運転する労働者だとか付近の住民の皆さん方の声を若干お聞きしたわけでありますが、やはり共通して言えることは、何でこんな危険なセミトレーラーを住宅密集地帯の真ん中を、ガソリン、軽油を積んでいるのですから、それを走らせるのかということが、押しなべて言う言葉でございました。
 先ほどもちょっと触れましたように、セミトレーラーというのは一台の車じゃないのですね。二台なんです。それぞれナンバーが違う車が二台連結されて、前の運転する車が後部についたタンク、このタンクも単なる後輪だけがついて前輪がないのですよ、それを引っ張っていくという特殊な車なわけですね。しかも、長さが全部を合わせますと十七メートルというようなものでありまして、普通のトラックにすぐくっついておるタンクとは全く違うのですね。しかも、ガソリン、軽油の容量が、通常は大体一万四千リットルから五千リットルぐらいですか、これは二万リットル乗っかるのですね。
 それだけ危険だということと同時に、運転が非常に複雑で難しいということですね。そういう格好で、特別な車なわけでありまして、運転手の方々はほとんど腰痛でやられて、しかもそういう危険なカーブだとかバックなんというのは大変なあれで、ほとんど腰痛にやられているというようなことも言っておりました。
 ここで私がお聞きしたいのは、このセミトレーラーの場合、LPGの輸送について、かつてはやはりこういう車でやったわけですね。ところが、これは危険性が極めて強いという理由で、昭和五十一年に政令改正が行われまして、普通の単体式のタンク車に変えられまして、容量も十八キロリットルですか、私はよくわかりませんが、普通のあれになってやったという経緯がございますね。ですから、ガソリンの危険性もLPGの危険性もそんなに変わらないと思うのですね。そういう意味からいたしますと、今度の事故を踏まえまして、この点をあわせて、やはりこういう危険物をそういう住宅密集地帯を走らせることについて再検討するようにすることが必要ではないか、こう思うのですが、運輸省はいかが見解をお持ちでしょうか。
#277
○福田説明員 御説明いたします。
 ただいま先生からもお話ございましたように、セミトレーラーというものは、やはり一般的に重心が低くなるという点、それから一般の車に比べまして複雑な挙動、動きというものをするというような特徴がございます。そういうような点から、運輸省といたしまして、道路運送車両法の保安基準というものにおきまして、一般車両の規定に加えまして、別途、トラクターと連結いたしました状態におきまして制動装置に作動おくれが発生しないというような構造とするなどの付加要件をさらにつけておるようなわけでございます。そのような点から考えまして、セミトレーラーにつきまして特段に安全上の問題があるというふうには、現在のところ考えておらないわけでございます。
 あと、危険物を運送する自動車につきましては、通常の貨物自動車にかかわる要件に加えまして、電気装置等そういうようなところにざらに付加要件を加えて規制しておるような状態でございます。
#278
○中川(利)委員 付加要件をつけている、こうおっしゃる。そういう中でこういう事故が起こった。しかも、これまで余り事故がなかったようなことも先ほどちょっとどなたかお答えあったようでありますけれども、これは全国で走っておるのはまだ五百台ぐらいなんですね、何万台とある中でこのセミトレーラーは。つまり、今の元売の連中が少しでも多く運ばせよう、また運送会社もそれで効率を上げようということで、こういうセミトレーラーというものを発明したわけです。アメリカから来たものですね。アメリカのような、大きな道路があって、ばあっと行って、スタンドもそういうところにある状況と違って、これは東京都内の人口密集の居住地帯、そういうところのスタンドに行くわけでありますね。ですから、運輸一般の皆さんのお話ではありませんが、何大要求という要求の中の六番目に、こういう車で都市を走らせるともう必ず事故が起こるということは、かねて指摘しておったところなんですね。
 今あなたの話を聞きますと、そういう付加要件があるからとりたてて考える必要はない、こうおっしゃいますが、先ほど申し上げましたように、前部で運転するエンジン部分のナンバーの車は非常に軽いです。後ろの油を積んでいるやつはでっかいですね。しかも、後輪だけあって前輪がないわけですから、運転する立場になればこれは大変危険だということです、つながっているだけの話ですから。長いですね。そういうことで、カーブした場合、ばんとぶつかって、泡食って左にカーブ切ったらどこかの車と接触して、大変だというので右へ行ったら左に横転したというのが今度の事故ですね。その教訓から何を学ぶかということは、当然あなた方の答弁として出てこなきゃならないはずなのに、全然そういうことが認められないというような御趣旨の御答弁というものは一体どういうものか、私は甚だ遺憾だと思うわけであります。ここで論争する暇もありませんけれども、私は、これはもう厳重に、けしからぬじゃないか、こう申し上げたいと思います。
 同時に、警察庁に聞くわけでありますが、さしあたって私、全然この車は通るなということじゃなくても、今のこのようなセミトレーラー式のタンクローリーの運行は、人口密集だとか交通量が頻繁だとか、いわば何か事故発生の際不測の大災害だとかそういうものをもたらすような地域は通させないように交通規制するというか、今でも歩行者天国なんてときどきありますし、特殊な車両についてはここを通るなとかというやり方は、公安委員会のあれでやっておるわけでありまして、当然これは考えていいことだと思うのですが、セミトレーラーの場合いかがでしょうか、警察庁の御見解をお伺いします。
#279
○越智説明員 道路交通法では、交通の安全と円滑、あるいは交通上の支障を防止するために交通規制をすることができるということになっております。
 お尋ねの危険物を輸送するセミトレーラーですけれども、こういう危険物車両が特定の道路を通る場合、その特定の道路の環境と事故発生の可能性との間に合理的な結びつきというのは極めて薄いのではないかと考えられます。また、ガソリンスタンドへの通行の必要性というものも否定できないものがございますので、現在の段階で特定の道路について危険物のセミトレーラーを通行禁止することはちょっと問題があるのではないか、そういうふうに考えております。
#280
○中川(利)委員 先ほどちょっと私、運輸省の方に聞き忘れしておったのですが、LPGは、大きいやつが危険だということで今走っていないのですよ。そうすると、結局、LPGは危険だけれども、ガソリンや灯油、軽油は何でもないということなんですかね。少なくとも安全を守るためには、LPGにそういう事例があるわけでありますから、そういう立場でやはり再考慮というか、基準の見直しをやるとか、何かそういったことは当然だと思うのです。この点がどうかということが一つですね。
 それから、警察庁にもう一回お聞きするわけでありますが、北海道だとかそういう大きい土地柄はともかくとして、まだ全国で五百台くらいしかない状態の中で、こういう大事故につながるような、大変な事故が予測されるあれが発生したわけでありまして、比率からいえばこれは大変なものだと思うのですよ、今何万台というタンク車が走っているけれども。このトレーラー式というのは、これをやればとにかくもうかるから、そういうことでやられているわけでありますので、そういう点でやはり何らかの状況、そういう地域の事情だとか交通事情を勘案しながらお考えを、先ほど御答弁いただきましたけれども、重ねて、どうにもならないんだ、こういうことですか、もう一回お聞かせください。簡単でいいです。
#281
○越智説明員 交通規制の問題でございますけれども、具体的に環状七号線というのを想定した場合、これは都内を通過する最大の幹線道路でございまして、中央分離され、片側三車線ある道路はほかにはないわけでございます。走行環境としてはこういう幹線道路の方がより適している、かえって裏通りにこういう危険物車両を追いやるというのはいかがなものか、そういう観点からしますと、現在の段階でこの車両の通行禁止を考えることは極めて難しいと思っております。
#282
○中川(利)委員 LPG。
#283
○福田説明員 どうも舌足らずで申しわけございませんでした。
 ただいま御指摘になりましたように、石油の輸送、それからLPGの輸送に関しまして、現在、先ほどの事故というものを調査中でございますので、その調査結果等をよく見まして、保安基準というもので規制していくようなものがございますれば検討させていただきたいというふうに考えております。
#284
○中川(利)委員 じゃ最後に、この事故の背景について若干お聞きしたいと思うのです。なぜこういう事故が起こったかということについて私なりにいろいろ検討したわけでありますが、一つは、この事故を起こした元売のメーカーはエッソであります。このエッソという会社は、運送会社に入札制度をとっているということが一つ挙げられると思うのです。つまり、石油等関連製品の伸び悩みの中で、元売メーカー側は輸送の合理化といいますか、そのために中小運送業者あるいは労働者へのしわ寄せを強めながら、ペナルティーや監督を強化したり、あるいは大型化や減車、代車などへ追い込んでいるわけでありますが、その一つのあらわれが今日の入札制度だと思うのです。
 若干この問題を申しますと、エッソがとっている入札制度については、今業者間でもさまざまな大問題になっておるのです。入札によって従来の契約を解消された業者だけでなくて、新たに落札した業者や一度失った取引を再び取り返した業者の中でも一様に言っていることは、入札は好ましくないということを言っておるのです。
 私はある会社を調べたわけでありますが、こう言っているのです。最初の入札で全く新規の業者が低い価格で落札した、その結果、次の入札まで車が遊んでしまう、何よりも資金繰りに困ってしまった、それで、困ってダンピングをせざるを得なかった、こういう言い方なんです。
 また、別の会社は、安い運賃で落札できた背景として、こう言っているのです。これは非常に重要だと思うのですが、償却し終わった車を使うことにしたので安く応札できた。このエッソのは新車ではとても採算がとれる運賃ではないんだ、今後とも新車はほかの石油元売に回して、エッソ関係は償却済みの古い車を回すしかないんだ、こう言っているのです。
 このことは一体何をもたらすのか。現に同じ業者の中でも、とんでもない、安全をより大事にしなければならない危険物の運搬について、入札というのはもってのほかだという意味の声もございまして、ある会社では、業者の質の問題や安全面から、現状では入札制の導入を考えておらない、あるいはローリーは客との接点で、運送会社の質だとかドライバーの質が問われるんだ、安全性や会社のイメージから、単に運賃が安ければいいというのはどうか、こういう批判も言っているのです。こういう入札制度のあり方は、やはり大変な今日の事故と結びつくと思うのです。
 もう一つの問題は、この事故を起こした会社は、中央運輸という会社でありますが、前歴からいくと、かつて何人かの運転手さんを死なせております。しかもこの会社は、運転手の賃金をどうして計算するかというと、一キロ当たり幾らということなんだね。一キロ走るごとに何ぼの賃金を払うということです。ですから、普通ならば時間当たり給だとか、何かいろいろ方法がありますけれども、一キロ走るたびに何ぼもらうんだという仕組みになっておりますから、これは大変なことなんですね。当然スピード違反だとかいろいろなことを余儀なくされるという状況が生まれて、まさに人間よりも道具扱いされているという問題が、私は一番大事な問題じゃないかと思うのです。
 したがって、運輸省が元売のメーカーなり運送会社に対して、単なる見直し、安全基準がどうだ、保安基準がどうだ、こういう問題もありましょうけれども、そういう連中に対する指導を含めて強化しなければ、こういう問題は決してなくならないということですね。そして、運転手にしてみれば、ぼんとやられて警察に逮捕されてバンザイしてしまう。こういうことでこの件は落着したなどということにならないように、私はそこが一番大事なところだと思うのですけれども、これらについて、その指導の見直しのあり方としてこういう問題も当然考慮に入れるべきだと思うが、お答えいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
#285
○植村説明員 今回ああいう事故が起こりましたこと、まことに残念なことと思っております。トラック運送事業の安全確保というのは、何にも増して大事な一番の課題であろうと思っておるわけでございまして、従来から安全確保のために私どもとして精いっぱいの努力をしておるところでございます。
 御指摘の今回の場合の荷主さんの入札の話でございますが、契約そのものはやはり自由な契約というものが認められておるわけでございまして、私どもの立場からいいますれば、それによって認可運賃が守られない、こういう場合は認可運賃違反でございますので、厳しく対処したい、こう思っております。ただ、認可運賃といいますのは福運賃になっておりまして、基準運賃、その上一〇%、下一〇%、全体で二〇%の幅がございますので、その幅の中でいわば競争があって、その幅の中で落札したという場合には道路運送法上問題はない、こういうふうに道路運送法上はなるわけでございます。
 ただ、事故の背景としていろいろなことがあろうかと思いますので、本日、特別監査を中央運輸にやっておりますので、その結果なども見ながら、また、荷主を監督しておられる官庁とも相談しながら適切な対処をしてまいりたい、こんなふうに考えております。
#286
○中川(利)委員 終わります。
#287
○安井委員長 次回は、来る十七日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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