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1984/02/07 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 予算委員会 第6号
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1984/02/07 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 予算委員会 第6号

#1
第102回国会 予算委員会 第6号
昭和六十年二月七日(木曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 天野 光晴君
   理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君
   理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君
   理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君
   理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君
   理事 吉田 之久君
      相沢 英之君    伊藤 公介君
      伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君
      上村千一郎君   小此木彦三郎君
      小渕 恵三君    大村 襄治君
      奥野 誠亮君    海部 俊樹君
      亀井 静香君    倉成  正君
      砂田 重民君    住  栄作君
      田中 龍夫君    中川 昭一君
      葉梨 信行君    原田  憲君
      武藤 嘉文君    村山 達雄君
      山下 元利君    井上 一成君
      上田  哲君    大出  俊君
      川俣健二郎君    佐藤 観樹君
      堀  昌雄君    松浦 利尚君
      矢山 有作君    池田 克也君
      近江巳記夫君    神崎 武法君
      正木 良明君    大内 啓伍君
      木下敬之助君    小平  忠君
      柴田 睦夫君    瀬崎 博義君
      野間 友一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  中曽根康弘君
        法 務 大 臣 嶋崎  均君
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
        大 蔵 大 臣 竹下  登君
        文 部 大 臣 松永  光君
        厚 生 大 臣 増岡 博之君
        農林水産大臣  佐藤 守良君
        通商産業大臣  村田敬次郎君
        運 輸 大 臣 山下 徳夫君
        郵 政 大 臣 左藤  恵君
        労 働 大 臣 山口 敏夫君
        建 設 大 臣 木部 佳昭君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長     古屋  亨君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長官)藤波 孝生君
        国 務 大 臣
        (総務庁長官) 後藤田正晴君
        国 務 大 臣
        (北海道開発庁
        長官)
        (国土庁長官) 河本嘉久蔵君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 加藤 紘一君
        国 務 大 臣
        (経降企画庁長
        官)      金子 一平君
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      竹内 黎一君
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 石本  茂君
        国 務 大 臣
        (沖縄開発庁長
        官)      河本 敏夫君
 出席政府委員
        内閣審議官   海野 恒男君
        内閣法制局長官 茂串  俊君
        内閣法制局第一
        部長      前田 正道君
        人事院総裁   内海  倫君
        人事院事務総局
        給与局長    鹿兒島重治君
        内閣総理大臣官
        房審議官    田中 宏樹君
        臨時教育審議会
        事務局次長   齋藤 諦淳君
        警察庁長官官房
        長       鈴木 良一君
        警察庁刑事局長 金澤 昭雄君
        総務庁長官官房
        審議官     佐々木晴夫君
        総務庁人事局長 藤井 良二君
        総務庁統計局長 時田 政之君
        防衛庁参事官  古川  清君
        防衛庁参事官  古川 武温君
        防衛庁参事官  池田 久克君
        防衛庁参事官  筒井 良三君
        防衛庁長官房
        長       西廣 整輝君
        防衛庁防衛局長 矢崎 新二君
        防衛庁教育訓練
        局長      大高 時男君
        防衛庁人事局長 友藤 一隆君
        防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君
        防衛庁装備局長 山田 勝久君
        防衛施設庁長官 佐々 淳行君
        防衛施設庁総務
        部長      梅岡  弘君
        防衛施設庁施設
        部長      宇都 信義君
        防衛施設庁建設
        部長      大原 舜世君
        経済企画庁調整
        局長      赤羽 隆夫君
        経済企画庁総合
        計画局長    大竹 宏繁君
        科学技術庁研究
        調整局長    内田 勇夫君
        科学技術庁原子
        力局長     中村 守孝君
        国土庁長官官房 
        長       永田 良雄君
        国土庁長官官房 
        会計課長    北島 照仁君
        国土庁長官官房
        水資源部長   和気 三郎君
        国土庁計画・調
        整局長     小谷善四郎君
        国土庁土地局長 鴻巣 健治君
        国土庁大都市圏
        整備局長    佐藤 和男君
        国土庁地方振興 
        局長      田中  暁君
        法務省民事局長 枇杷田泰助君
        法務省刑事局長 筧  榮一君
        外務省アジア局
        長       後藤 利雄君
        外務省北米局長 栗山 尚一君
        外務省欧亜局長 西山 健彦君
        外務省経済協力
        局長      藤田 公郎君
        外務省条約局長 小和田 恒君
        外務省国際連合
        局長      山田 中正君
        大蔵大臣官房審
        議官      大橋 宗夫君
        大蔵省主計局長 吉野 良彦君
        大蔵省主税局長 梅澤 節男君
        大蔵省理財局次
        長       中田 一男君
        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君
        大蔵省国際金融
        局長      行天 豊雄君
        国税庁直税部長 冨尾 一郎君
        文部大臣官房長 西崎 清久君
        文部大臣官房審
        議官      菱村 幸彦君
        文部省初等中等
        教育局長    高石 邦男君
        文部省教育助成
        局長      阿部 充夫君
        文部省高等教育
        局長      宮地 貫一君
        文化庁次長   加戸 守行君
        厚生大臣官房総
        務審議官    長門 保明君
        厚生大臣官房会
        計課長     黒木 武広君
        厚生省健康政策
        局長      吉崎 正義君
        厚生省保健医療
        局長      大地 眞澄君
        厚生省社会局長 正木  馨君
        厚生省児童家庭
        局長      小島 弘仲君
        厚生省援護局長 入江  慧君
        社会保険庁医療
        保険部長    坂本 龍彦君
        社会保険庁年金
        保険部長
        兼内閣審議官  長尾 立子君
        農林水産大臣官
        房長      田中 宏尚君
        農林水産省経済
        局長      後藤 康夫君
        農林水産省構造
        改善局長    井上 喜一君
        通商産業大臣官
        房審議官    矢橋 有彦君
        通商産業省立地
        公害局長    平河喜美男君
        資源エネルギー
        庁長官     柴田 益男君
        中小企業庁長官 石井 賢吾君
        運輸省港湾局長 藤野 愼吾君
        運輸省航空局長 西村 康雄君
        郵政省貯金局長 奥田 量三君
        郵政省通信政策
        局長      奥山 雄材君
        郵政省電気通信
        局長      澤田 茂生君
        労働省労働基準
        局長      寺園 成章君
        労働省職業安定
        局高齢者対策部
        長       小野 進一君
        建設大臣官房長 豊蔵  一君
        建設大臣官房総
        務審議官    松原 青美君
        建設大臣官房会
        計課長     望月 薫雄君
        建設省建設経済
        局長      高橋  進君
        建設省都市局長 梶原  拓君
        建設省道路局長 田中淳七郎君
        自治省行政局長 大林 勝臣君
        自治省税務局長 矢野浩一郎君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (日本銀行総裁)澄田  智君
        予算委員会調査
        室長      大内  宏君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月七日
 辞任         補欠選任
  石原慎太郎君     亀井 静香君
  小杉  隆君     伊藤 公介君
  藤田 スミ君     柴田 睦夫君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤 公介君     小杉  隆君
  亀井 静香君     中川 昭一君
  柴田 睦夫君     野間 友一君
同日
 辞任         補欠選任
  中川 昭一君     石原慎太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和六十年度一般会計予算
 昭和六十年度特別会計予算
 昭和六十年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
#2
○天野委員長 これより会議を開きます。
 昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算、昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
#3
○稲葉(誠)委員 最初に、戦後政治の総決算ということについて、私は質問主意書を出したわけですけれども、それに対してお答えもありましたので、その関係でお聞きをいたしていきたいというふうに考えております。
 私の質問は、戦後政治の総決算ということですから、二十一世紀を目指すとかそういうことは別として、まず、この対象物がなければならない、こう思うのです。総決算さるべき、まあ、さるべきと言うと語弊があるかもわかりませんが、総決算の対象となるものがなければならないというふうに考える。その中から、いいものは残すとか、悪いものはあれしていくとかという形になるんだ、こう思うわけです。そうすると、その総決算の、さるべきという言葉はちょっとまずいかもわかりませんけれども、総決算の対象となるものについてはどんなものがあるのでしょうか、こういうことをお聞きしたいわけです。
#4
○中曽根内閣総理大臣 稲葉議員に対する内閣に対する質問書の答弁書で申し上げましたように、やはり現在の憲法の理念、民主主義、平和主義、基本的人権の尊重、国際主義等々のこの理念を堅持する、これがまず前提でございます。その上に立って、そして戦後、政治、経済、文化、社会、森羅万象にわたっていろいろ見直しを行い、そして二十一世紀を目指した日本の基礎工事、土台づくりをやろう、こういう趣旨でございます。
#5
○稲葉(誠)委員 戦後の政治を、支配してきたと言うと言葉が悪いかもわかりませんけれども、それをしてきたのはやはり憲法だと思うわけです。そうすると、憲法も当然、戦後政治の総決算の中の対象というものになる。どういうふうにするかは別ですよ、対象になる、こういうことに承ってよろしいでしょうか。
#6
○中曽根内閣総理大臣 私は「中曽根内閣は、憲法改正問題を政治日程にのせない。」こういうことを申し上げているので、その点についてはこういうことでございます。
#7
○稲葉(誠)委員 政治日程にのせないという意味は、お聞きしますというと、政治日程にのせないという意味だという答えしか返ってこないんですよ。
 何回やってもこれはあれですから、私は変えまして、自由民主党の今度の大会が二十二日にございましたけれども、その中で、憲法改正問題では、具体的に改正の検討を進めるとともに、憲法論議を高め、国民の間になお一層正しい理解が深まるよう世論の喚起に努める、こういうふうにあるというふうに報ぜられているわけですけれども、これがまず事実か、こういうことをお聞きをいたしますが、それが事実といたしますというと、政治日程にのせないといたしましても、この自由民主党の運動方針から見て、その政治日程を、まあめどとしてと言うと語弊があるかもわかりませんけれども、あるいはそこに至る一つのプロセスというかそういう面で、この運動方針というものができておられるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、その点はいかがですか。
#8
○中曽根内閣総理大臣 運動方針は事実でございます。しかしこれは、今お読みになりましたように、見直し、研究をやろう、そして憲法に関する国民的関心を高めよう、そういう趣旨であると思いまして、私は前から申し上げているように、あらゆるいかなる制度といえども常に見直しを行い、よりよきものへ志すということは当然のことだと申し上げているその一環であるだろうと思います。
#9
○稲葉(誠)委員 ここには「具体的改正の検討を進めるとともに、」というふうにあるわけですね。そうすると、あなたは総裁ですから、具体的な改正の検討を進めることに対して、責任者としての立場に立たれるわけではございませんか。
#10
○中曽根内閣総理大臣 自民党は、立党の精神、綱領、政策等において、やはり憲法の問題についてはっきりしたことを考えているわけであります。その基本的なものに基づいて、こういう運動方針もできておるのでありますが、しかし一面において、そういう政党が行動を起こすについては、国民に対する理解力、国民の側の消化力、そういうようなものも当然政党としては考うべきもので、そういうような意味において、今のような表現になっておるのではないかと思います。つまり、自民党だけで単独に突っ走るということはしない、国民合意を形成するために努力していく、そういう趣旨であるだろうと思います。
#11
○稲葉(誠)委員 そうすると、療法改正の検討を進めて、国民の合意を得るためにあなたも、総理大臣としてやられるのではないかもわかりませんけれども、自民党の総裁としてはやられるということになるわけですか。
#12
○中曽根内閣総理大臣 自民党としてはそういうことでありますから、自民党総裁という立場にありますと、そういうような関係のある政党組織の頂点に立っている、そういうことは言えると思います。
#13
○稲葉(誠)委員 後でまたお尋ねすることになると思いますが、そうすると、今そういうような運動を進めていかれるということは、中曽根内閣が憲法改正を政治日程にのせないということとは、目指しているというわけではないかもしれませんけれども、結果としてそこに行き着くことがあるかもしれない、そのことはこれはまた別だ、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
#14
○中曽根内閣総理大臣 議院内閣制でございますから、党の上に内閣は立脚しておりますけれども、内閣としては、政策を実行し、選択していくという場合には、これはまた別の立場に立って自由に行っていくということでございます。
#15
○稲葉(誠)委員 そうすると、自由民主党がこの運動方針の中で、憲法改正の検討を進めて、国民の間に理解を得られるような合意を進めるけれども、仮にその結果がどう出ようと、そのことと中曽根内閣とは考え方は別に立つ、こういうことになるのですか。
#16
○中曽根内閣総理大臣 まあ、そういうことであります。
#17
○稲葉(誠)委員 それは政党政治からいっておかしいのじゃないかと私は思うのです。政党政治からいえば、そういう状況になれば、それを当然表に出してやるのが筋ではなかろうか、こう思うのですが、これはまあ内政干渉と言われるかもわかりませんからこれ以上あれしませんけれども、それが筋ではないでしょうかね。
 それから、お聞きをいたしたいのが、あなたが憲法改正論者であるということはもうお認めになっておられるわけで、そうすると、あなたとしても自主憲法制定ということを――党の綱領にできているわけですね、綱領というのですか何ですか、できているわけですから、そうすると、あなたとしては、憲法改正論者である中曽根康弘は自主憲法を制定するために努力をする、これはそういうように承ってよろしいですか。
#18
○中曽根内閣総理大臣 私も自由民主党の党員でございますから、党員であるという立場におきましては、党の綱領や政策のもとにあると言えると思います。
#19
○稲葉(誠)委員 そうすると、結論的に言うと、あなた自身は、自民党の運動方針というものの責任者であるしするから、だからその運動の先頭に立って憲法改正について国民の理解を得られるように努力を続けていく、これが政党人としての中曽根康弘の務めである、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか、これは当たり前だと思いますけれどもね。
#20
○中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣という立場は別であります。自民党の総裁としては、やはり運動方針に沿って党員と一緒に努力するということであると思います。
#21
○稲葉(誠)委員 この点については、戦後政治の総決算ということの内容に教育の問題も入ってくるでしょうし、税制の問題も入ってくる、いろいろな問題が入ってくるのではないかというふうに私は考えますので、教育の問題はまた後からお尋ねをいたしたいと思うのです。
 私は、今度の国会の大きな柱は二つある、こう思うのです。一つは、GNPの一%枠を中心としまする防衛の問題、これは田邊さんもやられ、きょう後から上田哲さんもそれ専門にやられるわけです。
 私はきょうは、税制を中心として財政の問題です。これは率直な話、私は一番不得意なところなんですよ。私、専門じゃありませんし、不得意なところなんでして、中曽根さんは非常に専門家ですけれども、素人同士と言うと語弊があるけれども、かえって失礼な言い方だったらお許し願いたいと思いますが、非常に専門家である中曽根さんなりとお話しさせていただきたい、こういうふうに思うわけです。
 そこで、私の第一の質問は、率直に言うと、税制の問題に入っていくのだけれども、第一の質問をどういうふうにやったら一番いいだろうかというので大分考えたのですよ。どれが一番いいかと思ったのですけれども、きのうの中曽根さんの話を聞いておりまして、昭和二十二年に取引高税が制定されて、これは廃止されましたね、そのことについてのお話が中曽根さんからありました。私はあれを聞いておりまして、ははんと思ったのです。問題はそれじゃなくて、昭和五十四年の一般消費税の導入の問題がなぜ失敗をしたか、その辺についてどういうように総理がお考えなのかということを最初に承らせていただきたい、こういうふうに思います。
#22
○中曽根内閣総理大臣 私は、一般消費税が唱えられましたときに、これはよくないと、賛成はしなかったのです。むしろ消極的態度を持っておりました。その背景には、取引高税で懲りたものですから、これはなかなか国民の皆さんの御理解を得るのは難しい、そう思って、やはり根底には取引高税というものがございましたね。
#23
○稲葉(誠)委員 大蔵大臣もそうですか。あの一般消費税というものは、今総理が言われたように、悪いというように思っておったのですか、どうなんですか、あの当時大蔵大臣でなかったかもしれませんけれども。
#24
○竹下国務大臣 いわゆる一般消費税(仮称)というものが選挙のテーマになりましたのは、五十四年選挙でございます。その選挙が終わりまして、私は大蔵大臣を拝命をいたしました。
 私は、選挙の結果というものも大きな要因であったと思うのでありますが、早速国会で、やはり財政再建の手法としてはこの手法は適当じゃないじゃないか、こういう御議論がございまして、私もその議論の中へ加わりましたが、税理論としてこれは成り立たない論理であるという意味ではなく、今これが国民の理解と協力を得るに至らなかったという判断においては、私は各党の皆さん方と私の考えは一致しておったということに、結論からいえばなると思います。
#25
○稲葉(誠)委員 そうするとあれですか、一般消費税の問題で自由民主党は失敗をした、結論的に、選挙のあれが影響したわけでしょう。そうすると、今として考えれば、総理の方はこれは悪いものだというふうに考えておられたというふうに言われるのだけれども、あなたの場合だと、必ずしも悪いものだというふうに考えておられたというふうにはとっていないですね。そうなると、どうしたらよかったというふうにお考えなんでしょうか。
#26
○竹下国務大臣 やはり国会で、悪いものだという表現は別としまして、財政再建の手法として今これはとるべきでないという結論が出たものに対して、いいものと考えておる、あるいは悪いものと考えておるという評価は、私の側からは慎むべきものだと思うのです。
 ただ、いわゆる一般消費税(仮称)というものは、説論理の上ではこれは成り立つ論理であったと思う。それは、やはり税体系そのものを学問の範疇で否定することはできないじゃないか。要は、私も素人でございますが、税というものは何に着目するかと言えば、三つでございます。結局、所得の段階で担税力を求めるか、資産の段階で担税力を求めるか、消費の段階で担税力を求めるか、この三つの段階にどのようにして担税力を求めるかということでございますから、その消費の段階に着目して担税力を求めて描かれた一つの構想であった。ですが、少なくとも国民の理解と協力が得られないということでは国会で合意されたんじゃないか。選挙の結果、それだけであるかどうかは別でございますが、当時の新聞論調を見ましても、これが影響したというふうには確かに書かれたことも事実でございます。
#27
○稲葉(誠)委員 そうすると、国民の理解と同意が得られなかった理由というのはどういう理由だというふうにお考えでしょうか。
#28
○竹下国務大臣 あの際国会で、各党が共通認識の上に立って、財政再建の手法としてはこれはとりなさいますなという決議ができたというのは、やはり国民の理解と協力が得られなかった代表的なそれが姿じゃないかなというふうに考えます。
#29
○稲葉(誠)委員 私のところといいますか、私が大蔵省からいただきました、大型間接税といいますか一般消費税といいますか、それの資料をいただきましたときに、題がこういう題になっているわけですね、「課税ベースの広い間接税の諸類型」、こういうふうになっておるわけです。そこで、単段階説と多段階説、こういうふうにあるわけですね。そして、多段階説が一、二。一が取引高税、二がEC型付加価値税、西欧諸国。単段階説が、一が製造者消費税(カナダ製造者消費税)、二が卸売売上税(オーストラリア卸売売上税、スイス卸売売上税)、三が小売売上税(アメリカ州小売売上税、カナダ州小売売上税)。こういう分け方になっておりますね。ところが、大蔵省がほかの官庁なり何なりへ出した書類によりますと、内容は同じなんです。五つに分かれて、内容は同じなんですけれども、題が違うのはどういうわけでしょうか。
#30
○梅澤政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたように、五十五年の十月当時の税制調査会の資料でも、一般的な消費税というふうに言葉を使っておるわけでございますが、ちょうど国会の御決議がございまして、五十五年の中期答申で、国会でいわゆる一般消費税(仮称)について決議があったということも踏まえて今後検討すべきである、そこが一つの区切りになっております。したがいまして、言葉の使い方としては、一般的な消費税と書いてあるはずでございますが、それと、いわゆる一般消費税(仮称)という言葉が非常に紛らわしいので、五十五年以降の答申では、課税ベースの広い間接税という言葉遣いに改めておるわけでございます。したがいまして以後、税制調査会におきましても税制当局におきましても、課税ベースの広い間接税ということで言葉を使い分けをさせていただいておるわけでございます。内容は同じでございます。
#31
○稲葉(誠)委員 昭和五十五年十月七日の企画四−一というものですね、これは「一般的な消費税の諸類型について」、内容は全く同じです。表題が変わっただけですね。これは単段階が三つ、それから多段階が二つ、こういうふうになっているわけですが、そうすると、国会で否定されたといういわゆる一般消費税ですね、これはこの大蔵省からの資料の中には入ってないわけですか。
#32
○竹下国務大臣 きのう五類型と言っておりますのは、あのとき国会から求められて資料を提出しまして、そのときは六類型で出しております。その六番目がいわゆる一般消費税(仮称)としてお出ししておるわけです。ただ、矢野委員との問答の中で、これはもう国会決議があるとおっしゃって、五つを五類型として論議をなさいましたから、したがって私は、六類型を抜いて五類型でお話を申し上げておるということでございますから、厳密にあのとき出しました資料で申し上げますならば、単段階課税のものが一、二、三、それから多段階課税のものがいわゆる取引高税とEC型付加価値税と三番目がいわゆる一般消費税、だから、正確に申し上げますと六類型を国会へは御提示申し上げた、こういうことになります。
#33
○稲葉(誠)委員 しかし、資料の中には六番目が入ってないわけですけれども、私がいただいたものには。それはもう税制調査会へ諮問するときにもその六類型のものは外すわけですか。
#34
○竹下国務大臣 委員長、ちょっと事務的なことですから。
#35
○梅澤政府委員 ただいま大臣の御答弁にもございましたように、学問的には六類型というふうに分類できるかと思いますが、先ほど私が申し上げましたように、国会の決議がございまして、税制調査会の五十五年以降の審議の過程で、税制当局といたしまして、類型の資料といたしましては、一般消費税(仮称)は外しまして、五類型で議論をしていただいておるわけでございます。
#36
○稲葉(誠)委員 今の話の中で一般消費税、六番目で外したものですね、それと欧州型の付加価値税との違いは一体どこにあるんでしょうか。私の聞いているところでは、勉強したところでは、インボイスをやるということとそれを保存するということ、そういうことが中心なわけですね。そのほかもあると思いますけれども、全部でどこが違うのですか。
#37
○梅澤政府委員 税の類型といたしましては、ただいま委員が御指摘になりましたとおりでございまして、前段階の税額を控除する方式としてインボイスの方式をとるのがEC型の付加価値税でございます。売り上げから仕入れという計算方式でやるのが一般消費税、そこがポイントであると思います。
#38
○稲葉(誠)委員 そうすると、いわゆる一般消費税というものが国会で否定されて、あなた方は国会へ出す資料の中から省きました、今の話では。それは、欧州型の付加価値税の中からインボイス方式というものだけをとって、いわゆるアカウント方式というものにしただけの話ではないのですか。
#39
○竹下国務大臣 国会は六分類で出しまして、しかしそれは分類してみると言われたから出したわけですが、税制調査会へ出しましたときには、第六番目は外して資料としてお出しした、こういうことで今御説明したとおりでありますが、基本的には今おっしゃいますとおりでございますけれども、ただ、EC型付加価値税と申しましても、要するに付加価値税と申しますのは、いわば税率をどうするか、あるいは課税範囲をどうするか、免税点をどうするか、いろいろ結果としてイギリスであろうとフランスであろうと、皆それぞれの国によって違います。したがって、いろいろな体系が現実問題としては出てくるであろうと思われますので、だから課税ベースの広いという言葉に直しましたのも、大型という言葉になりますと、何に比べて大型か中型か小型かというのは、定量的に定義づけが難しいというので苦心して、大体御理解いただけるところで課税ベースの広い間接税、こうして類型をしたわけでございます。
 だから、原則的にはEC型付加価値税の仕送り状方式、インボイス方式を引いたものと申しますか、それを採用しなかった一つの仕組みとしていわゆる一般消費税(仮称)が存在をしておりますが、しかし、いわゆる付加価値税というものは、多段階でありましても、税率あるいは範囲、免税点というようなところで形態そのものが大変多様にわたっておる。だから一概に、あのものはEC型付加価値税引くインボイス、イコールいわゆる一般消費税であるというふうに言い切れるとは必ずしも言えないのじゃないかなと思います。
#40
○稲葉(誠)委員 木下和夫さんですね、教授、今税制調査会の会長代理ですか、あれは大阪大学でしたっけね、そうですね。その先生が昭和五十四年に、一般消費税はヨーロッパで実施されている付加価値税とどこが違うのですか、こういうのを書かれておるわけですが、それを見ますと、結局日本の場合には、そういうようなインボイスの発行や保存を義務づけるというようなやり方は、やはり日本にはなかなかなじまないというようなことで、そこのところを変えたというふうなことを言っておられるわけですね。もちろん年間二千万円のところで制限を設けるとか、それからヨーロッパの場合は大体四、五百万だとか、税率が日本の場合五%、向こうは一〇%だとかの違いはありますけれども、だから、本質的にはもう違わないのじゃないですかと私は理解するのですけれども、どうなんでしょうか。――いや、ちょっと待てよ。だめだよ、あなたでは。
#41
○梅澤政府委員 制度の議論だけ先にさせていただきまして、あとまた大臣から御答弁があると思いますが、ただいま委員がおっしゃいましたように、基本的には前段階の控除の方式としてインボイスを義務づけるかどうかということでございますが、先ほど大臣からも非常に丁寧な御答弁がございましたように、一般消費税(仮称)といいますものは、五十四年の税調の答申で税率とかあるいは課税範囲、それから納税者の範囲、具体的に限定をされたあの制度そのものを国会決議で否定されておるわけでございまして、その辺をどう考えるかという問題でございます。
 学問的には、やはりインボイスを義務づけるかどうかということがポイントになりますけれども、実際の税制といたしましては、課税範囲をどういうふうに仕組むか、あるいは納税者の範囲をどのようにするか、あるいは税率をどうするかということによって、個々の具体的な類型に沿ってやはり議論はされるべきものであろうと思います。
#42
○稲葉(誠)委員 それは個々の具体的類型に従って判断されるべきは、これは当たり前のことで、そんなことを言うことがおかしいくらいですよね。
 そこで、実はこの問題につきましては、去年の二月二十三日に参議院の予算委員会、補正予算のときに和田静夫さんが質問しているでしょう。それから、三月十三日は衆議院で岡田先生が質問されている、こういうことになっているわけですね。その両方の質問応答があったわけでしょう。これは今訂正されるつもりはあるのですか、ないのですか。あなた方も細かく分析されておられるでしょうけれども、そこはどうなんですか。
#43
○竹下国務大臣 ここで岡田さんにお答えして、それから和田静夫さんに参議院でお答えしました。その答弁の内容を訂正する必要はないではなかろうかというふうに理解しております。
#44
○稲葉(誠)委員 そうすると、まず和田さんの質問は、一つ一つ聞いていっているわけですね。単段階ですか何か、ずっと聞いていっているわけでしょう。そのときに、これは一つ一つやるのもいいのですけれども、じゃこういうふうにお聞きしましょうか。そうですね、時間の関係もありますから、一番最後の西欧諸国のEC型付加価値税について、これをおやりになりませんね、こう聞いているわけです、和田議員が。それに対してあなたの答弁は、「これも勉強の課題といいますか、かなりこれは勉強した問題でございます。それからいろいろ勉強した結果として、かつてのいわゆる一般消費税(仮称)ということがとられたわけでございますから、一応は勉強済みの問題ではないかというふうに理解しております。」こういう答弁があるわけですね。これはどういう意味なのか。わかったといえばわかった、わからないといえばわからないのですが、私の理解は、先に言うのはよしましょう、それじゃあなたのを先に聞いてからにしますか。
#45
○竹下国務大臣 私は同僚の後藤田大臣から時々、君は言語は明瞭であるが、意味は不明なことが多い、こう指摘されるのです。もっともだなと思うこともございます、これはある種の反省を込めて申し上げたわけでありますが。
 あのとき申しましたのは、確かにEC型付加価値税というものを随分勉強して、いろいろな仕組みで、いわゆる一般消費税(仮称)というものを税調で御答申いただいたんですから、そういう意味においては、それは勉強済みであるということは言えると思っております。ただ、EC型付加価値税といっても多少違いがございますけれども、それらの仕組みを一つ一つ、おまえ勉強をしたかと言われれば、それはそこまで勉強したわけではございません。イギリスのものを勉強したか、フランスのものを勉強したか、こう言われますと、それはそこまで勉強したとは申せません。当時また私、否定される段階では大臣でございましたが、勉強途中では何をしておりましたか、選挙制度調査会長か何かしておりましたので、余り詳しくございません。
#46
○稲葉(誠)委員 そうですね。なるほど議事録を読むと「一応は勉強」、「一応」というのが入っていますね。だから、なかなか正確なんですよ。だけれども、いいですか。質問は、「西欧諸国のEC型付加価値税、これもおやりになりませんね。」という質問なんですよ。だから、それに対してあなたのお答えは、いろいろ勉強したんだ、勉強した結果としてかつてのいわゆる一般消費税ということがとられたんだ。これは西欧諸国のEC型付加価値税というものが、勉強された結果として日本になじまない。これは総理もきのう言われましたよね。日本の場合、中小企業が多い、小売業者が多いとか、流通機構がヨーロッパと違うでしょう、違うからなじまないという意味のことを言われた。
 それから国民の、どういう言葉を使われましたかな、共感という言葉を使われたか、心裏という言葉でしたね、心の裏というのかな、心裏という言葉を使われましたが、それを考えたというようなことをいろいろ言われましたけれども、そうすると、だから、このときにはEC型付加価値税というのは、これは日本にはいろいろな意味でなじまないということで勉強の結果捨てられて、そして、いわゆる一般消費税というインボイスのないものが、日本の場合にはそういうようなものはあれだということで出てきたんじゃないですか。そういうふうにこの答弁はとれるのですよ、言語が不明瞭かどうかは知りませんけれども。そんなことはないですよ。けさなんか元気よかったじゃないですか、これは失礼な話だけれども。ちょっと余計なことがいつも多いものですから、大変恐縮です。そういうふうにとれるのですよ。そうじゃないですか。だから、EC型付加価値税というものは政府税調でも捨てられて、勉強の結果捨てられたものじゃないですか。そういうふうに理解していいのじゃないですか。どういう点で日本に合わなかったのですか。そこら辺のところをちゃんと答えてくださいよ。
#47
○竹下国務大臣 当時の税制調査会の経過は私、必ずしも詳しくございませんが、いわゆるEC型付加価値税というものが多段階の付加価値税というので、日本で経験しておるものは取引高税の議論は経験しております。それと付加価値税というものが、当然税の議論をされますときにはやはり出てくる議論だろうと思うのであります。それは確かに単段階で、例えば小売段階だけでやりますならば税率を高くしなければならぬでございましょうし、それから蔵出し、卸の段階でやりますとサービスは入らないようになるでございましょうし、したがって、最も薄く広くという立場から考えると、流通の各段階で、こういう税制上の論理は一応成り立つと思うのです。
 そういうことを念頭に置かれて議論されて、そこで、日本で一番なじむではないかという考え方で、インボイスの義務づけをやめた形において御答申があったということではないかな。だから、ヨーロッパ型付加価値税というものは、もちろん議論のときにはいろいろ対象になったものだと思いますけれども、ヨーロッパ型付加価値税は皆否定して、それでこれができたということではなく、それらも勉強しながら、結果としていわゆる一般消費税(仮称)の仕組みができてきた、こういうふうに理解するのが真っ当ではないかなと思います。
#48
○稲葉(誠)委員 そうすると、あなたの方では、あなたというか大蔵省は、EC型付加価値税というものについてまだ多分な執着を持っておられる。未練というか、未練という言葉は悪いかな。未練というのは小説にあるな。シュニッツラーの小説に「みれん」というのがあるけれども、それはドイツ文学。それは別として、どうなんですかね。EC型付加価値税というものについてまだ、執着というと言葉は悪いかもわからぬけれども、とにかく何とかこれにしがみついていたいというのも、言葉が、言語が明瞭ではないですね。どういうふうに言ったらいいのでしょうかな。貴重なものとして残しておきたい、こういうことですかな、あなたのお話では。捨てられたものではないというのですね。だけれども、これを見ると、当時、少なくともそのときは否定されたんじゃないですか。どういうことなんですか。その点をもう少しはっきり言っていただきたいのです。
 これは歯切れが悪いという理由はわかるのです。それはわかるのです。今あなたが、一番大事なところで、主税局長なんかこのことについて一生懸命心配しているところですから、あなたがどういう答弁をするかというので、大蔵省の人たち、みんな心配しているのですよ。これを否定されてはかなわないというので、大変な騒ぎになるというのでやっているところですから、話はわかるのですけれども。これから見るというと、少なくともその当時は否定されているのですよ。そういうふうになるのです。これはどうですかな。
#49
○竹下国務大臣 五十四年の税制調査会の議論は、EC型付加価値税の議論もあったと思いますが、総合して、いずれにしてもこのいわゆる一般消費税(仮称)の仕組みがいいという結論に達したわけですから、何が否定されて何が肯定されたというものではなく、そういう議論をいろいろした結果、現状はこれがいい、こういう結論になったというふうに理解するのが素直ではないかな。
 木下先生が学問的に言われますと、それは一側面から見たら、その説明の仕方は実にわかりやすい説明の一つであると私も思います。ですから私、未練とかという意味ではなく、気をつけておりますのは、要するに国会決議というものであの手法はとるなよと言われた、いわゆる一般消費税(仮称)というものは非常に明らかになっておりますけれども、学問的に多段階付加価値税というのは存在するわけですね。そして現実、ヨーロッパの各国で、それはいわゆる法定されて行われておるわけですから、そういう現実に存在し、しかも学問的にあり得るものを勉強の対象から全部否定して外してしまうというのは、やはり経済情勢も変化していろいろな議論が行われるでございましょうから、昭和六十年に竹下登という大蔵大臣がおって、あれは税制の基礎を知らなかったから学問的なものまで皆否定してしまったと言われては、これは後世に汚名を残すということで、先生決してそういう気持ちじゃございませんが、誘導尋問にもひっかからないように、ひっかからないように丁重にお答えをしておるということでございましょう。
#50
○稲葉(誠)委員 僕は誘導尋問なんかしてないですよ、昔はやったかもわからないけれどもね。これは今はやってないのだよ。いや本当だよ。私の聞いているのは、学問的に存在するのは当たり前の話ですよ。ヨーロッパに現実にあるのも当たり前の話だけれども、あなたの言われているのは、だから、ここにはっきり言っているじゃないですか。いろいろ勉強した結果としてかつてのいわゆる消費税ということがとられたのだというから、ほかのものはその当時は捨てられたのでしょう。捨てられたという言葉はちょっとあれかもわからぬけれども、まだ生きているということですか。学問的に生きていることはわかりますよ。ヨーロッパにあることもわかりますよ。いいですか、生きているのだから。大蔵省に生きているのですか、どうですかと聞いているのです。それが答えじゃないですか。
#51
○竹下国務大臣 これは学問的には生きておる。ヨーロッパにも現存しておる。(稲葉(誠)委員「大蔵省に」と呼ぶ)大蔵省の建物の中に生きておるのか、一人一人の個人の中に生きておるのか、これもなかなか難しい質問でございますが、税体系としては、私は、税に携わる者、だれの頭の中にも生きておるものではないかと言わざるを得ないと思っております。
#52
○稲葉(誠)委員 大蔵省の建物の中に生きているかどうかを聞いているわけじゃないのですよ。それは幽霊の話でね。「幽霊西に行く」という映画があったでしょう。面白い映画でしたよ。私は、大蔵大臣の頭の中にEC型付加価値税というものに対する郷愁が、ノスタルジアがあるのですかという意味でこういうふうに聞き直しているのですが、これは誘導尋問じゃないですよ、ストレートな質問。ありますと答えればいいじゃないですか。
#53
○竹下国務大臣 ノスタルジアと税体系というものとはちょっと調和しにくい言葉ではないかなと思います。が、私の頭の中に、EC型付加価値税というのは現存する法律としても学問としても、それはやはり多少でも税に携わったとしたらそのものが頭の中にあることは事実でございます。取り上げる、取り上げないという問題は別でございますが、頭の中にあることは事実でございましょう。
#54
○稲葉(誠)委員 頭の中にあるということはまだ生きているということでしょう。まだ幽霊になってないということじゃないですか、それは。そういうことでしょう。大蔵省の建物の中にどこかにいるのでしょう。いるかどうかわからぬけれども、とにかくまだ生きているのでしょう。で、折あらばリバイバルしたいということを考えているのじゃないですか。これはあなた、リバイバルばやりなんだから、このごろは。そういうことじゃないですか。
#55
○竹下国務大臣 社会情勢は時々刻々変化してまいりますときにいろいろな議論が出てくるわけでありますが、したがって、学問的にも現存的にもあるものを全部、今の言葉をおかりすれば生きておるの反対は死んでおるでございますから、死なしてしまうということは、これは税に携わった者としてはできないじゃないか。採用するか採用しないかというのはその経済、社会の変化の中で、それは国会の議論を聞きましたりして税調等で専門家に議論してもらうことであって、学問的にこれは消すことはやはりできないと思っております。
#56
○稲葉(誠)委員 学問的な話をしておるのじゃないともうさっきから何回も言っているでしょう。学問的には何だって皆学説というのはあるのですから、少数説だって何だってあるので、私はそんなことを聞いているのじゃない。
 今、生きているとか死んでいるとかという話が出ましたから、じゃ、これは総理にお聞きしますが、去年の三月十三日に岡田利春議員が総理に対して、「中曽根内閣におきましては、大型間接税と称するものを導入する考えは持っておりません。」それは「中曽根内閣の公約である、こう明確に言い切っていいですね。」と聞いたら、総理は「結構であります。」と、こう答えていますね。これは今でも生きているのですか、死んでいるのですか。
#57
○中曽根内閣総理大臣 その大型間接税というものについていろいろな条件がついているわけです。そういうような大型間接税は導入いたしません、そう申し上げた。それは生きております。
#58
○竹下国務大臣 ちょっと、いいのがありましたから。
 不勉強でございまして、国会決議が行われました後の答申というのは、昭和五十五年十一月の答申がございました。簡単でございますから、これを読み上げます。
 全体として実質的公平を確保できる税制を維持していく観点からも、課税ベースの広い間接税は避けて通ることのできない検討課題であり、引き続いて論議を重ねることが適当である。昭和五十四年度の税制改正に際してとりまとめた一般消費税大綱については、旧和五十四年末、国会決議が行われ、また、各方面から批判や指摘が寄せられている。こうした諸点については十分配意し、今後、新たな観点から、諸外国の立法例や沿革等も参酌しつつ、課税ベースの広い間接税について我が国の経済取引の実情に即した仕組みを具体的に検討していくことが必要とされよう。
こういうことが五十五年にちょうだいした答申の中に書いてございます。
#59
○稲葉(誠)委員 そうすると、今の話で総理は、生きているものとしてのいろいろな条件を挙げられましたね。その条件は、矢野議員に対して答弁をされました、多段階、包括的、網羅的、普遍的なということを言っておられますが、それが全部がからないといけないという意味ですか、一つでもかかるものはもうやらない、こういう意味でございますか。
#60
○中曽根内閣総理大臣 きのうの矢野書記長に対する御答弁で申し上げましたが、稲葉さんはここのところを聞きたいと思って、私、想像しているのですが、三項の、「ただ、私がただいま申し上げたとおり、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますが、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくないと考えております。」こういうことです。
#61
○稲葉(誠)委員 そうすると、多段階でない大規模な消費税というものもあるのですか、これは。
#62
○竹下国務大臣 それは理屈としては大規模という言葉がそもそも問題でございまして、何が大規模で、何が中規模で、何が小規模が。だが、一応議論されております中で言葉として整理しますと、課税ベースの広い間接税は避けて通ることのできない検討課題だ、そういう課税ベースの広い間接税というものには多段階のものと単段階のものとがあるということが理論的には言えると思います。
#63
○稲葉(誠)委員 そうすると、結局岡田議員に対して答えられていることについては、これは生きている、こういう理解。ただ、その条件はいろいろあるかもわかりませんけれども、生きている、こういうことでよろしいわけですね。そのことによって大蔵省は、政府というか、来年度は六十一年度ですが、来年度は選挙があるからなかなかあれかもわかりませんけれども、来年度の意味は六十二年度でもいいです、両方ね。今あなたが答えられたことによって、大蔵省当局、政府当局が歳入を見積もる決定をするということについて制限を受ける、制約を受けるというようなことはございませんか。道が狭まるというようなことはありませんか。
#64
○竹下国務大臣 歳入の見積もりということになりますと、いわゆる税制改正があるかないかということが一つは先頭に立つと思うのでございます。
 今、中期答申としてやや中長期に答申を受けておるものは、五十八年の十一月の中期答申というのがバイブルとして一つ存在しております。それから、いわゆる六十年度税制のあり方ということについて答申を受けているのが一つございます。ですから、六十一年とおっしゃいますと、六十一年度予算編成までに六十一年度税制のあり方についての御答申をちょうだいするわけでございます。したがって、その六十一年度税制のあり方というのはどういうふうな形でいくかということになりますと、それこそ、まず国会ありきできょうのような議論を整理して税調に伝え、そこで専門家の方がいつでも、五月ごろからでございますか夏にかけてずっと勉強していただいて、大体予算編成に間に合うように御答申をいただく、こういう筋道になります。
 それからもう一つ、六十二とかちょっとおっしゃいましたので、いつもの例でいきますと、税制調査会というのは三年任期でございまして、まず最初出発いたしますと、難しい言葉は別としまして、国税、地方税のあり方についてというだけの諮問をするわけでございます。したがって、三年の終期までには、やはり例年の例で見ますと、そのときの中長期の答申をやはり結果としていただいておる。それはいつかということになりますと、半年延ばさしていただきましたから、五十九年の六月から発足しておりますから、六十年、六十一年、六十二年といってもまあ六月ごろ、六十二年の終わりぐらいでございましょうか、そういう中期答申みたいなもの、これも初めから出るということをこっちで確定するわけじゃございませんが、過去の例でいうと、任期終わりのときには三年間勉強した一つのまとめをちょうだいしておる。毎年毎年のものと、もう一つはそういうものがある、こういうことでございます。
#65
○稲葉(誠)委員 そうすると、ここにあります「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はとらない」ということを言っておられるわけですけれども、これは具体的にはどういうようなものを頭に描いて言っておられるわけですか。
#66
○竹下国務大臣 広辞林を引いてみましても、網羅的、包括的というのは必ずしもきちんとした訳はございませんが、ざっと言うと、網羅的、羅列的、包括的というようなことは例外がないというふうな意味に日本語の字引には大体書いてあります。したがって、総理のおっしゃいましたのは、私は総理の頭の中を推測して言うのも非礼だと思いましたが、今答弁なすったように定量的に何が、この網羅を定義づけよとか包括を定義づけよというのはこれは難しいと思うのです。やはり政治家として、しかも行政の最高責任者としてのいわゆる感じ方としての受けとめ方として今のようなお言葉をお使いになった。それで、一番頭の奥には、私が先般推測しましたように、あの国会決議でこの手法をとるなよと言われたいわゆる一般消費税(仮称)というものが念頭にはあったであろうと御推測を申し上げておるというところでございます。
#67
○稲葉(誠)委員 今のような国会決議にあったいわゆる一般消費税(仮称)というものが頭の中にあったというなら、こういうようなことをわざわざ答弁する必要はないのじゃないですか。おかしいですよ、それは。当たり前の話じゃないですか。そんなことは国会決議で決まっていることなんで、ここでわざわざ答弁する必要はないですよ。これは違うのですよ。それは話がおかしいです。それは違わなければおかしいですよ。別のことを考えていてやらないというなら話はわかるけれども、国会決議どおりだというなら、そのことはあなた、前から決まっていることです。そんなことを言うのは筋が通らないですよ。それは当たり前のことじゃないですか。
#68
○竹下国務大臣 それは私どもも答えますときに、やはり国会決議のあるいわゆる一般消費税(仮称)というのはいつも頭にございます。いわゆる一般消費税(仮称)というのを何回国会で、五年間答え続けておりますからそれはやはり絶えず頭の中にございます。それで、網羅とかそういうものはああいう形のものというのを抽象的にだれも念頭に描くものではなかろうか。厳密にあの中で、さて、されば課税範囲が一つだけ違えばそれでいいものかどうなのかとかそういう議論でなく、まさに政治家としての議論としてああいう感じのものはいけないな、定量的に何が、こういうことではないでございましょうが、そういうことをおっしゃったということであって、その網羅とかそういう言葉そのものはまさにそういうものをお考えになってお使いになった言葉であるというふうに思っております。
#69
○稲葉(誠)委員 そうすると、今言ったことは、大蔵大臣、非常に重要なことを言われたと思うんですよ。国会決議で否定されたものと同じものだと、それはできないんだ、やらないんだということですか。それならわざわざこういうふうに審議をあれして矢野さんに答弁するような原稿までまとめる必要はないのですよ。そうじゃありませんか、そんなことわかっているんだから。第一、今までの和田さんの質問なりそれから岡田先生の質問に対してだって、国会決議を引用しているということについては総理は一言も言ってないじゃないですか、そんなこと。そうでしょう。そうじゃないですか、総理は。そうでしょう、総理。ちょっとその事実関係だけ。
#70
○中曽根内閣総理大臣 私の頭の中には国会決議型のいわゆる一般消費税型大型間接税、それは頭にもちろんありました。だから、そういう答弁もしておるのです。しかし、大型間接税というジャンルを考えてみますと、一般消費税あるいはEC型付加価値税あるいは取引高税型と幾つかタイプがございますね。そういう中で、私の実感から言いますと、稲葉さんですから素直に申し上げますと、やはり取引高税というものが非常に頭の中にあったわけです。これは昭和二十二年それができて、その後の選挙で我々当時の民主党、惨敗したわけです。そういう経験がもう実に頭に残っておりまして、それがあったわけですね。今の問答を聞いておりまして、きのう矢野さんにお答えしたのが私の今の現段階における最終的な考え方であると申し上げられる。
 あの中で問題は、大規模という言葉がどういうことか、それから網羅的とはどういうことであるか、多段階とはどういうことであるか、これはこれからみんなできわめていく問題ですが、大体感じで、私の実感で申し上げますと、上下関係ですね。だんだん下がってくる、この上下関係、それから横の広がり、面の広がりですね。これ全般にわたって、そして大規模にすべてカバーするような程度、そういうのが頭の中にあるわけですね。そういうことであると御了解願います。
#71
○稲葉(誠)委員 そうすると、縦の広がり、横の広がり、大規模にカバーするというふうなものは日本の現在の財政の中では税収として何兆円ぐらいを取れるものを言う、こういうふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
 私は昭和五十五年の二月十二日に予算委員会で一般消費税のことについて質問しているわけです。そのとき主税局長、高橋さんでしたけれども答えておりますのは、全体の国民消費が約百二十兆ある、それから輸出は課税されないので輸出を引いて、食料品の消費というようなものを除いて、個別消費税がかかっておる自動車や酒、こういうものを除いて、マクロの統計から出てきた消費支出が約四十二兆、四十三兆の一%で四千三百億、したがって五%で二兆一千五百億、これは五十一年なんでこれを三年延ばして五十四年に置きかえるというとおおむね三兆円、こういう答弁があるわけですね。
 まず一つは、これを現在の一番新しい資料に置きかえたときに何兆円になるのでしょうか。これが第一点ですね。
 そうすると、こういうようなものについてはどの程度をもって財政規模との関連において大規模と言うのか、その限界はどこにあるのでしょうか。第二点。
#72
○竹下国務大臣 置きかえた場合の単純計算は後から事務当局が答えますが、大体大規模とか大型とかという定量的な定義づけというのは、私は非常に難しいと思います。したがって、歳入の中の税の占める比率の中のどれくらいまでが大規模と言えるかということは、ちょっと定量的には申し上げられないじゃないか。
 それから、もう一つ大事なことは、今度税制調査会から指摘されておりますのは、いわば長い間にひずみができておるから直接税であれ間接税であれその抜本的な見直しをする時期が来た、いわゆる増収ということを念頭に置くことなく税体系そのものの見直しをする時期ですよ、こういう御答申をいただいておるわけですから、入り方としてはそういう入り方で検討は続けなければならぬじゃないかな、こう思っております。
#73
○梅澤政府委員 先ほど委員が引用されました五十五年の予算委員会での当時の主税局長の答弁、五十一年の国民所得統計からはじきまして一%当たり四千三百億ということでございますが、自後一般消費税タイプで今落としてみたら幾らになるかという計算は私ども一切やっておりません。やっておりませんが、五十一年当時と六十年度の経済企画庁の経済見通しにおける個人消費の規模がおよそ倍になっておりますから、大体そういう見当で御判断を願いたいと思います。
#74
○稲葉(誠)委員 そうすると、私が質問したときから見ると倍になっておるということは、このときで五%掛けて三兆円でしたから約六兆円取れるわけですね。そうすると、こういうのはやらない、こういうことですか。
#75
○竹下国務大臣 あのときの仕組みを基礎にして計算したものが今稲葉委員御指摘の三兆で、経済規模が倍になっておるから六兆としますれば、あのときの仕組み自体はやらないわけでございますから、金額で今規模をまず増収ありきとかまず金目ありきではなくて、税体系のゆがみ全体をどうするかというところから入ろう、こういうわけですから、今金目であらかじめのめどをつけてとかいうような立場からこの検討に入れとは言われていない、またそういう考えで入ってはいけないと私は思っております。
#76
○稲葉(誠)委員 税体系のゆがみを直すとか、それから、増収を目的にするものじゃないというようなことを言っておられるのは、増収を目的としてストレートに出してやったから一般消費税というものはこの前失敗したんじゃないですか。そのことについてはあれですよ、前の主税局長の福田さんが書物の中ではっきりそういう意味のことを言っておられますよ。あのときからいろいろな教訓を得たんだ、その教訓というものを十分あれしなくちゃいけないんだ、その教訓というのは、ゆっくり準備期間を置いて国民にちゃんとPRして納得してもらうようにしておいて、そして増収ということを表に出さないでやっていく、これでなければ一般消費税なり何なりというものは効果を上げませんよ、こういうことをはっきり言っているのじゃないですか。だから私は、一般消費税が失敗したところからどういう教訓を得たかといえば、あなた方が得た教訓というものは、まず第一に増収ということを先に出してはいけない、これをやると国民に抵抗感を与えて失敗をする、そして、短い期間では問題があれだからいけない、ある程度長い時間をかけなくちゃいけない、こういうことが一般消費税の失敗から得られた教訓である、こういうふうなことではないのですか。私はそのことをお聞きしている。それに従ってあなた方はこれからその問題にタッチしよう、こうされているのじゃないですか。
#77
○竹下国務大臣 今稲葉委員おっしゃいましたいわゆる一般消費税(仮称)が国会において決議された。そしてまた各方面から批判や指摘が寄せられたということは税調の翌年の答申にもありますから、明らかにそれはそのとおりであると私も思っております。
 したがって、今度はいわゆる税調の答申というのは「社会経済情勢の変化に即応して、」「幅広い角度から抜本的に見直さなければならない」と述べられた上で、「既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、」最初、所得の段階、資産の段階、消費の段階と申しましたが、「所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる。したがって、既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、」これが、今やっておるのが大変広範な議論でございますから、「幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきていると考える。」こう指摘されておるわけでございますから、我々にまず増収ありきという指摘じゃないわけでございます。
#78
○稲葉(誠)委員 だから、それは一般消費税の失敗の結果から得られた教訓ではありませんか。それを聞いておるわけですよ。
#79
○竹下国務大臣 これは税調の答申でございますから、今度の答申と前の答申と六年間かかっておりますから、その税調の委員の先生方でもかわった人も残った人もそれはいらっしゃいますけれども、この答申が反省から来たかどうかということになりますと、ちょっと私が論評するのは失礼じゃないかな、そのときどきのまじめな議論の中で出ていくわけでございますから、そのまじめな議論の経過の中にそのような反省も含まれておったであろうと私が開き直ってお答えするというのはちょっと失礼かな、こう思っております。
#80
○稲葉(誠)委員 主税局長の福田さんがこういうふうに言っておるのですよ。「税とデモクラシー」という本があるでしょう。これはやめてから書かれたのでね、在職中この本を書いてくれればよかったと思っておるのですけれども、やめてから苦かれた。あの人の書いた本の中に「税制改正を顧みて」ということで一般消費税の導入に関連して――あのときこの福田さんは審議官じゃなかったですか。たしか主税局の何かやっておられたですね。「ただ、時期的にその導入を急いではいけない。十分にプロセスを踏む必要がある。短期的に財源が足らないから、来年度または再来年度からという歳出本位の短絡的な考え方は、もうやめた方がいい。そして、この一般消費税の失敗という反省の上に立って、将来の展望を示し、国民の納得を十分得るという努力を払わなければならないと思う。」こういうふうにはっきり言っておるのですよ。この線に沿って大蔵省は今やろうとしておるのじゃないですか。当たり前じゃないですか。そうでしょう。そうならそうとちゃんと言われたらいいのですよ、別に何も誘導尋問しておるわけでも何でもないのですから。
#81
○竹下国務大臣 福田元主税局長の考え方というのは私ももっともだなと思って読んでもおりますし、今も聞かせていただいた。が、今私が土台にしてお話ししているのは、税制調査会の答申がこうなっておりますという形でお話ししておりますから、したがって、その税制調査会には私どもの恣意が働く性格のものじゃございませんので、それで答弁におのずから限界をつけておる。おまえはあの後大蔵大臣になってみて福田さんの言っていることに対してどうかとお思いになれば、もっともだと私も肯定します。
#82
○稲葉(誠)委員 今大蔵大臣が言われたことは非常に重要な問題です。私が今読んだことについてもっともだと思うと言ったことは非常に重要だと私は思っておるのです。一般消費税の失敗ということを、導入を思いじゃいけない、プロセスを踏む必要がある、財源が足らないから云々という短絡的な考え方じゃいけないんだ、それで失敗したんだ、だからあなた方は税制のゆがみがどうであるとかねじれがどうであるとかいろんなことを言われて、そしてこの問題が増収のためではないんだということを言われて、そして、この一般消費税ではない、今度はこれにかわるべきものを導入をしたいと考えておられるというのがあなたの頭の中にあるというのが筋だ、良識的な筋であろう、こういうふうに今のあなたのお答えで私は思ったし、聞いておられる方も恐らくそういうふうに思われたのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。
 そこで質問は、時間の関係もありますから次の質問に移ってまいります。
 ただ、私は質問のときに、ちょっとあれなんですけれども、時間が足りないから次の質問に移りますと言うのは、質問者が質問について物事を追及していく能力がないから次の質問に移るんだというふうに理解するものですから、そういうことは余り好きじゃないのですけれども、どうもしようがないですね。私もこれをどんどん徹底的に追及していってとっちめるだけ、とっちめると言うと語弊があるのですけれども、ちょっと今の問題では、今の瞬間ではあれするだけの能力がまだ僕に足りないですね。だから、次の質問に移らしていただきます、こういうことになります。
 そこで、私が前々から問題にしておりますのは引当金ですね。貸倒引当金、退職給与引当金あるいは準備金、いつも私、前から問題にしておることなんですけれども、今度貸倒引当金の繰り入れ率を引き下げまして、そして二千億税収をあれすることになりましたね。そうですね。そこで、私がお聞きいたしたいのは、一番新しい資料で貸倒引当金の残額が、残額というか引き当て額が今どのくらいあるか、大体四兆円近くあるのじゃないか、こう思いますが、それが全体の会社の何%くらいが利用しているか。それから資本金別にどういうふうになっておるか、こういうこと。――ちょっと失礼しました。今のは退給と間違えました。貸倒引当金というものは実績主義ですね。実際今三兆か四兆近くあると思いますが、実績は大体三分の一というのが今までの答弁です。だから、実績主義でどうしていかないのか。これは福田さんもまたそういうことを言っているわけですね。実績主義でいくのが筋ではないかということを言っておられるわけですけれども、外国は金融機関を除いてはほとんど実績主義だ、こう言っていますね。だから、その点について現在、一番新しい資料で、幾らぐらいあって、どの程度が利用していて、そして実績はどのくらいか、こういうことですね。実績主義でいった場合にどの程度の増収ということが考えられてくるのか、こういうことです。
#83
○梅澤政府委員 現在、実績が判明いたしておりますのは五十八件度の実績でございますけれども、五十八年度末での累積残高がおよそ三兆二千億でございます。それから、利用している割合でございますけれども、全法人がおよそ百六十万社ございますが、そのうちこの制度を利用しております法人の数がおよそ四十五万でございます。
 それから、貸倒引当金は二十五年に創設された制度でございますけれども…(稲葉(誠)委員「法人数の中で利用しているものの割合」と呼ぶ)百五十万のうちの四十五万でございますから、およそ三分の一弱でございます。二十五年にこの制度が創設されたわけでございますけれども、これは企業の所得の計算各期に費用を配分するという観点から、引当金としては評価性の引当金と言われておるわけでございます。計算上いろいろな手法がございますが、我が国では業種別に法定の繰り入れ率を定めておるわけでございます。ただ、今委員が御指摘になりましたように、この法定繰り入れ率と実績の割合が余り開いておりますと、これは税制上も的確な所得計算とは認めがたいということでございまして、昭和五十年代に入りまして、累年この法定繰り入れ率を引き下げております。前回は金融保険業以外の業種につきまして五十七年に引き下げをいたしました。その水準が現在実績に対しましておよそ三倍ぐらいの数字になっておりますので、今回はおおよそそれが二倍見当になるめどで引き下げを行ったところでございます。
#84
○稲葉(誠)委員 外国では、金融機関を除いては法定繰り入れ率は認められておらず、個別の債権につき具体的に判定する方法をとっておる、こういうふうに言っているのですね。私も調べてみましたけれども、ほとんどのところが実績主義ですよ。だから、実績主義でいくと、差額が今のあれでいくとどのぐらいのあれになりますか。大ざっぱに言うと、例えば三兆なら、実績が一兆だとすれば二兆残る、二兆に四十何%掛ければ幾らだ、八千億ぐらいの数字が出てくる、こういうことになりますか。どういうふうになっておりますか。
#85
○梅澤政府委員 仮定の話でございますけれども、一挙に繰り入れ率を引き下げまして、それを単体度で益金に受け入れますと今委員がおっしゃった計算も成り立ち得ると思います。
#86
○稲葉(誠)委員 だから、これはおかしいのですよ。今お話があったとおり三兆二千億というのも、これは五十七年度の数字なんで、その数字があれですけれども、もっと私はふえていると思いますけれども、どうでもいいのですけれども、実際は、実績は三分の一くらいなんですよ。今二兆が内部留保になるのですよ。これはおかしいですよ。それで実際利用しているのは三割くらいのものですからね、全体の法人の中の。今度は二千億入れますけれども、これはさらに検討する必要がある。これは何回も言われていることですから、さらに検討する必要がある。この点についてはどうですか、大蔵大臣。結論だけでいいです。細かい点はいいです。−では後で一緒でいいです。ちょっと時間がないから、退給と一緒にやるから。
 もう一つの問題は退職給与引当金です。これはまず第一に、もう七兆幾らから八兆近いのじゃないですか。これはどういうふうになっているのですかね。そうすると、利用の割合が、大体全体の法人の七%ぐらいしか利用してないのじゃないでしょうか。そして、これは大法人の利用が非常に多い、こういうことですね。これは退職給与引当金という名前から来る誤解があるのですよ。これだけの金が退職給与引当金として残っていて、退職の場合にそれが確保されるのだという誤解があるのですけれども、これはそうではないのですね。その点、説明してください。それが一つです。だから、これをどういうふうに改善をしていくべきか、こういうことになるわけですね。その点をこれは大蔵省から答えてもらいたい。
 それから労働省にあれしていただきたいのは、退職金についての現状といいますか問題点がどこにあるかということと、引当金は、これは全然支払い保全がないわけです。今の大企業関係に、いわゆる七兆幾らというのはないのですよ。だから、支払い保全のある外部拠出の年金制度に切りかえる、こういうやり方が必要なわけですね。ドイツでは年金引当金という形になっていますけれども、そこのところは一体労働省としてはどういうふうに考えているのか。
 そういうことを大蔵省と労働省からお答えを願いたいというふうに思います。
#87
○梅澤政府委員 退職給与引当金でございますが、この利用割合が大規模の企業に比較的ウエートが高いということでございます。
 これは私ども毎度申し上げておるわけでございますけれども、退職給与引当金といいますのは、労働協約とか就業規則できちんと企業として確定債務を負っているわけでございますね。これを税務上当期の損失としてどういうふうに見るか。その場合に、退職給与引当金の場合は内部に留保されるものでございますから、昭和三十年代の税制調査会の答申に基づきまして、年金数理で確定債務全額について現在価値に割り引くという手法をとっているわけでございます。一方、中小企業等は、労働協約とか就業規則というものがございませんけれども、これは退職金共済制度がございます。これは各企業が毎期外部に拠出いたしますから、税法上も全額当期の損金として経理されておるわけでございます。したがいまして、退職給与引当金の局面だけを見て、それが大企業に使われているからどうこうという議論は、必ずしも当たらないのではないかと私どもは考えております。ただ、この引き当て率の水準につきましては、企業のそれぞれの予定在職年数といいますか予定退職年数といいますか、そういうものできちんと割り引きまして的確な水準に持っていくということでございます。五十五年、当時五〇%でございましたものを四〇%に引き下げたわけでございますが、昨今定年制延長等の関連でこの年数が延びておりますので、実態に即してその水準を見直していく、これは私ども今後ともこの態度は変わらないわけでございます。
#88
○山口国務大臣 退職金の制度は九制近い企業が採用しているわけですし、特に企業年金制度を採用する企業も非常にふえてきておる、こういうことで、大蔵に対しましても退職給与引当金の損金算入率を引き下げずに現状にとどめておいていただくように、特にまた全民党協とかそうした労働団体もこうした問題を一つの支えにしておる、こういうこともございまして、大蔵省にも強くこの予算においてもお願いをした、こういう経過もございます。
 それから、そうした退職金の保全のためにも新たな法律的な措置等を六十一年度をめどにいろいろ見直し、検討さしていただいておるということで、現在は、社外積立金の方の安全性というものが非常に高いものですから、そういう点の行政指導を通じて六十一年度までのつなぎで行政指導を続けさしていただいておる、こういうことでございます。
#89
○稲葉(誠)委員 大蔵大臣、今お話がありましたけれども、これは大企業だけが多く積んでいる、それが必ずしもああだこうだといった話がありましたけれども、これは支払いの保全措置というのは、支払いに充てられるという保証はないんでしょう。それを答えてくださいよ。
#90
○竹下国務大臣 去年稲葉さんと議論して、税調に報告して、それのやや答えともいうべきものですので、簡単にここのところだけ読ましていただきます。
 「引当金」、引当金は、費用収益対応の考え方に基づいて法人税の課税所得を合理的に計算するため設けられたものであり、この制度自体を政策税制と考えることは適当ではないが、その繰り入れ率等については実態に応じて常に見直していく必要がある、これが第一です。
 それから貸し倒れにつきましては、今御指摘なさいましたように、「貸倒引当金の法定繰入率については、現行の法定繰入率がなお平均貸倒実績率に比べ相当上回っていると認められることから、更にその適正化を図るべきであり、この際、法定繰入率を引き下げることが適当である。」それを若干指摘をしている。
 それでその次のお答えが、退給については、「勤労者の平均予定在職年数は長期化する傾向にあり、また、大規模の企業に雇用されている勤労者については全体の平均よりも平均予定在職年数が長いと認められるので、その動向等を見極めつつ、現行の累積限度のあり方を引き続き見直していく必要がある。」というのが稲葉さんに対する税調の答えというとちょっと表現がおかしいのですが、報告したものに対する六十年度税制の段階ではこれが答えですと、こう言って出ておるわけです。
#91
○稲葉(誠)委員 私が聞いているのは、この退職給与引当金は七兆幾らあるけれども、それが退職するときの退職金の法律的な担保になっていないんでしょう、こう言っているわけですよ。そうでしょう。そこどうですか。いや、それだけでいいですよ。イエスかノーかだよ。それはなってないに決まっているんだから。
#92
○竹下国務大臣 そのとおりです。
#93
○稲葉(誠)委員 そういうふうに答えれば非常に簡単なんですよ。だから問題があるんですよ、これは。おかしいんじゃないですか。これだけの七兆幾らの金が積んであって、それが内部留保で動いているんでしょう。だから、退職金の担保になっていないんですよ、法律的に。これはおかしいんです。だから、これは外部に対して拠出をして、厚生年金の積立基金なら基金に拠出して、そして掛金を払って、そして退職金をもらうときには厚生年金の方から、基金からもらうとかなんとかという制度に変えなければだめなんですよ。それが一番大事なんですよ。いいですか。そういうふうにすべきなんですよ。
 税調の委員で泉さん、おられるでしょう。主税局長やられた、非常にまじめな方ですよね。あの方が何と言っておられるかというと、こういうふうに言っておられるのですよ。いいですか。税経通信の二月号ですけれども、百四十ページ。この問題で、
  ただ、困ったことに、大蔵省のほうは「大企業は勤続年数がだんだん延びてきている。しかも、資本金一億円超の法人の引当金の積立率が相当高い」というような資料を出したんですけれども、労働省が「必ずしもそうではない。資本金の小さいところでも引当金の率の高いところがある」といったようなことで、どちらが信頼されるかとなると、大蔵省のほうの資料は「税金を取りたいためにかつてにつくった資料ではないか」というふうにとられてしまって、あまりうまくないわけです。
 そこで退職給与引当金については今年も見送りということになったわけですが、これは労働省ともう少しきちんとした話合いをしていかないことにはいつまで経っても片付かない問題だろうと思うんですね。
こう言っているのですよ。泉さんが言っているんですよ。泉さんは非常にまじめな方ですよ。皆さんまじめだけれども、非常にかたい方ですよ。主税局長をやられた、その人がこう言っているんですよ。だから、労働省と大蔵省が政府税調に出した資料というのを後で出してくださいよ。みんな都合のいいような資料を出す。それはしようがないけれどもね、みんな。だからこういうふうに言っている。労働省と大蔵省とよく話し合って、そうしなければいつまでたったって片づかないと言っているじゃないですか。現にことしは退給の繰り入れ率のあれが見送りになりました。しかし、理由は別の理由ですよ。理由は、これは経団連からの話か何かわからぬけれども、それによって繰り入れ率が、四〇%のものが下げられるのが一たん出されたんだけれども、大蔵省としては引っ込めざるを得なくなった。それはそれとしても、大蔵省と労働省とよく話し合ってしっかりしなければいつまでたったって片がつきませんよと、あのまじめな泉さんが、主税局長をやった泉さんが政府税調で言っているんですから。出した資料は違う資料を出してくると、こう言っておられるのですからね。これはよく話し合ってちゃんとしてくださいよ。どうですか、大蔵省。
#94
○竹下国務大臣 泉さんの論文を私読んでおりませんが…(稲葉(誠)委員「論文じゃない、対談」と呼ぶ)座談会ですか、読んでおりませんが、そういう問題の指摘があるからそんな座談会で議論がなされたのでございましょうから、労働省と、在職年数とかそういう基本的な問題に対しては十分すり合わせするにはやぶさかではございません。いや、すり合わせすることが御指摘のように適当じゃないかと私も思います。
    〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
#95
○稲葉(誠)委員 税調へ両方が出した資料を出してください。泉さんは違うと言っているんだ。それは多少みんな自分に都合のいいものを出しますからしようがないとしても、違うと言っているんですよ。だから両方の資料を出してくださいよ、僕の方で判断するから。委員長、約束してください。
#96
○大西委員長代理 資料ですか。――大蔵大臣。
#97
○竹下国務大臣 あるかないかも含めまして、どういうものを出したか、それを含めまして調査して、それで委員長の指示に従います。(稲葉(誠)委員「出させてください、委員長」と呼ぶ)
#98
○大西委員長代理 後で理事会で諮ります。
#99
○稲葉(誠)委員 私は、きょうはほかのものもいろいろあるのですけれども、なかなかあれになってきて申しわけございませんが、総理、教育の問題について私に質問をということが党の方からの話なものですから、教育の問題についてやらしていただきたい、こう思うのです。
 総理の所信表明演説を聞きまして、それからこの議事録を見ておるのですけれども、教育の問題について、教育の現状についていろいろ言われて、教育改革について言われておるのですが、総理自身の教育改革についてのお考えはどういうふうなお考えなんでしょうか。
#100
○中曽根内閣総理大臣 何回か述べておりますように、二十一世紀に向かって世界的日本人をつくっていただきたい、その基礎として、やはり日本の精神文化の上に立って、非常に視野の広い、しかも全人格的な修行と申しますか、教育体系、教育を受けた、そのような豊かな心情を持った日本人をつくっていただきたい、そういう念願を申し上げております。
    〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
#101
○稲葉(誠)委員 あなたが言われています「たくましい文化と福祉の国」づくりという、この意味がちょっとよくわからないのですよ。「たくましい」というのはどへかかるのか。両方へ、「文化と福祉」にかかるのかわかりませんけれども、「たくましい文化と福祉の国」という、こういう意味はどういうふうな意味を言われておるのでしょうか。これは恐らく総理が所信を吐露してお話しされるんじゃないかと思いますけれども、どうぞ。
#102
○中曽根内閣総理大臣 「たくましい文化と福祉の国」の「たくましい」という意味は、私は、一言で言えば自主と創造ということを言ってきておるのであります。昔、稲葉さん、我々が学生のころは、いわゆる青白いインテリという言葉がありましたね。ああいうようなものではないと思います。やはり精神的にもあるいは肉体的にもバイタリティーにあふれた、そして礼節を重んずる、国際的にも通用できる日本人をつくってもらいたい。「たくましい」という言葉の中には、私は、自分の哲学として生命力とかあるいは創造力とかという考え方を持っておるのです。そのような生命力、創造力にあふれた人間像というものを頭に描いておるわけでございます。
#103
○稲葉(誠)委員 いや、その「たくましい文化」はわかるのですけれども、「福祉」というのがちょっとよくわからないですな。「たくましい」と「福祉」とどういう関係があるのでしょう。
#104
○中曽根内閣総理大臣 自主、創造ということを申し上げましたが、やはり福祉においても、例えば障害者の皆さん方にしてみても、生きがいとかあるいは自分も仕事をやりたいとか、そういうものにあふれておるので、必ずしも国や公共団体から恩恵的に物を受けるということには満足していないのであります。自分たちも戦列に入って同じようなことをやりたい、やはりそこにたくましさというものがあるわけなのであります。そういうものを尊重していかなければならないという考えに立っておるわけです。
#105
○稲葉(誠)委員 私も教育の問題については素人ですし、あれですが、今教育自由化ということが言われておりますね。自由化という言葉は経済学の関係から出てきたので、ある人に言わせると、これはアメリカのフリードマンの、フリードマンというのはあれはマネタリストですね、あの著書から出てきたんだと言う人もいるのですが、まあそれはそれといたしまして、あなたが、総理が考えておられる教育自由化ということのある程度の青写真というものが示されないと、いやそれは臨調でやっているんだということになるかもわからぬけれども、しかしあなたの考えているもの、ある程度のものが示されないと混乱に混乱を重ねることになるわけですから、だからあなたのお考えになっておりまする教育の自由化というのは具体的にどういう点を指して言われるのか、こういうことについてお話のほどをお願いをいたしたい、かように存じます。
#106
○中曽根内閣総理大臣 自由化という言葉を考えました反面には、今の教育体系というものは硬直性を持っておるあるいは閉鎖性を持っておる、そういうものに対してこれを直そうという反対概念として自由化という言葉、弾力化という言葉、そういう言葉を用いておるわけであります。硬直性とか閉鎖性というのがどこにあるかと言えば、例えば今の入学試験制度あるいは稲葉さんも前に指摘になりました偏差値のやり方、数字や記号で人間を支配しようという考え方、極端に言えば。そういうような閉鎖性あるいは硬直性というものを打破したいという考えで申し上げておるわけであります。
#107
○稲葉(誠)委員 その硬直性とか閉鎖性というのはどういうところの原因から生まれているというふうにお考えなんでしょうか。
#108
○中曽根内閣総理大臣 戦後六・三・三制が築かれまして新しいスタートをしてからもう四十年近くになりますから、その間にいろいろな試行錯誤を重ねつついろいろやってきましたけれども、やはり制度というものも相当長年月を経ますと、パーキンソンの法則じゃありませんが、みんな硬直性やら閉鎖性を持ってくるもので、教育もその例外ではないと思うのであります。
#109
○稲葉(誠)委員 そうすると、それは文部省に任せておいたのではできないのですか。何か文部省不信論みたいに、僕も一〇〇%信用していないですよ、文部省というのは。僕は文部省というのはなぜ必要なのかという点をいつも疑問に思っているのです。思っているのですけれども、それはそれとして、松永さんにあんまり悪いからあれですけれども、文部省だけに任せておくわけにはいかない。そうすると、今言った教育の閉鎖性とか硬直性というものを生んだ原因はやはり文部省自身にも一つある。こういうことでしょうかね、どうなんでしょうか。
#110
○中曽根内閣総理大臣 文部省だけを責めるわけにはいかないと思うのです。制度に随伴するものがあるのです。これはどんな制度でも長い間続くとパーキンソンの法則じゃありませんがと申し上げたとおり、宿命的に随伴して出てくるものがあると思うのです。しかし、文部省の中にも頭のかたいところがないとは言えない。もっとやわらかくなってもらいたいという点もあります。そういう面で総合的に申し上げてわるのであります。
#111
○稲葉(誠)委員 文部省の中にも頭のかたい人がいるということの具体的な例はどんな例なんでしょうか。
#112
○中曽根内閣総理大臣 いや、一般的に申し上げているので、つまり制度というものが長続きすると人間も制度もだんだん頭がかたくなってくる、そういうことを意味しておるのです。
#113
○稲葉(誠)委員 そうすると、政治の世界でも同じでしょうかね。あんまり長続きするとやはり頭がかたくなってきちゃうというので、だから政治の世界でももっと若返っていくというか、若返りだけでもないと思いますが、まあとにかく若返っていくということも当然考えられてくるんじゃないですかね。ちょっと脱線みたいになるけれども、せっかくきょうは意義深い日でしょうから聞くわけですけれども、どうなんでしょうか。
#114
○中曽根内閣総理大臣 やはり新しい道を模索したり、あるいは基本的な立脚点をもう一回洗い直したり、年じゅう人間としてはそういう努力をする必要があると思います。
#115
○稲葉(誠)委員 大蔵大臣というよりか竹下さん、今総理がいろいろお話しになったでしょう。日本の政治というものはもっと若返らなきゃならないというのが僕の考え方。それに対して総理がいろいろ答えられたけれども、はっきりした答えのような答えでないような考えですが、日本の政治の若返りというか硬直化を防ぐということについては竹下さんはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#116
○竹下国務大臣 私みずからが硬直化してはいかぬと自分に絶えず言い聞かしております。
#117
○稲葉(誠)委員 せっかくあなたにいいチャンスを与えたのですよ。もう少しあなたは自己の信念というものをちゃんと吐露しなきゃだめだな。と私は思うのだけれども、それは個人の自由だから、これはしようがないですね。私はせっかくここまで…(「外務大臣に」と呼ぶ者あり)うん、外務大臣に聞かなくちゃ悪いかな。じゃ河本さんにも聞かなくちゃ悪いな。まあ話はそういうことで、冗談話じゃなくて全体が若返りしなきゃならない、硬直性を持っちゃいけない。これはどこでもそうですね。だから、僕らの方もニュー社会党ということになった。そういうわけでしょう。変わっているのだよ。
 そこで、時間がだんだんなくなってきましたので、私の専門といいますか、そういう方面の質問を少しさせていただきたい、こう思うのです。これは全く、私は今までの質問と答えを聞いていて、十分満足しているわけではありません。満足しているわけじゃなくて、何を感じるかといいますと、やはり質問をしている中で、質問者、私自身が何となく、言葉はどういうふうに言ったらいいかな、自分の力、能力が足りないという点と、何かむなしいというか挫折感というか、いつもそういうものを味わうのですよね。きょうもそういうものを味わっています。やはりもっともっと勉強しなくちゃいかぬというふうに思います。
 それから、これは政府委員がおられますけれども、きょう政府委員にもっと質問したかったのですけれども、一言言っておきますと、梅澤さんの答弁は必ずしもそうでもないのですが、政府委員の答弁で一番いい答弁というのはどういう答弁だか知っていますか。知ってる、みんな。一番いい答弁というのは、聞いているときはもっともらしく聞こえるけれども、後で議事録を読んでみたら何を言っているかよくわからないというのが一番いい答弁だとされているのです。しかし、これは違うのですよ。これは旧憲法のときの話ですよ。帝国議会の話であって、今の憲法のもとではそれではいけないので、もっとストレートにわかりやすく答弁してもらわないと困るのです。きょうは余りそういう場面がなかったのですけれども、そういうことを私も考えているのです。ちょっと余計なことですけれども、そういうふうに考えておるわけです。
 そこで、私がお聞きいたしたいのは、刑事訴訟法の解釈というか運用の問題の中で、これは法務省にお聞きしたいわけですけれども、憲法の三十七条二項で反対尋問権が与えられている。「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、」云々、こうあるわけですね。そうすると、この反対尋問の権利というものを与えない、経ていないという場合はあらゆる場合が憲法違反になる、こういうことになるのですか。そこら辺のところをひとつ御説明を願いたいというふうに思います。これは、今進行している事件とかなんとかということには関係ない、一般論として質問いたしておきます。
#118
○筧政府委員 あくまで一般論として、刑訴法等の解釈としてお答えいたしたいと思います。
 今、先生御指摘のように、憲法三十七条には反対尋問権についての規定がございます。しかし、この憲法の規定は絶対にその例外を許さないというものではなくて、必要かつやむを得ない事情がある場合には、反対尋問を経ていない第三者の供述調書でありましてもこれを証拠とすることを許しているというふうに解しております。そして、刑事訴訟法三百二十一条一項あるいは二項、同じでございますが、三百二十一条以下の規定は、今申し上げました必要やむを得ない場合における供述調書の証拠採用について定めたものでございます。したがいまして、この刑事訴訟法の規定は憲法三十七条には違反するものではないということは、累次の最高裁判所判例によって確立されているところというふうに解釈いたしております。
#119
○稲葉(誠)委員 その中で、海外にいるときというのがありますね。これは具体的にどういう場合を指すのですか。初め日本にいて、それから海外に行ったという場合を指すのか、初めから海外にいる場合をも含むということなんですか。どういうふうに理解をしたらよろしいのですか。
#120
○筧政府委員 刑事訴訟法三百二十一条一項各号に、国外にいるときという定めがございます。これは、受訴裁判所が当該の供述録取書等の書証を証拠として採用するか否かということを決定するその時点で、その原供述者が我が国の領域外にいる場合をいうものというふうに解しております。
#121
○稲葉(誠)委員 そうすると、初めから海外にいる場合でも含まれるのですか。
#122
○筧政府委員 含まれるわけでございます。
#123
○稲葉(誠)委員 それからもう一つの問題は、裁判所と検察庁との関係で、これはもちろん権限は違うわけですけれども、裁判所が検察に加担しているとかなんとかという議論をする人もあるわけですが、加担という言葉は悪いのですが、そういう、捜査の段階で裁判所が捜査に協力するとかなんとかが法律的に認められておるというのは、どういう場合にあるわけですか。
#124
○筧政府委員 具体的に申し上げますと、逮捕状その他の令状の発行は、これは裁判官が発行するわけでございます。それから刑事訴訟法の二百二十六条あるいは二百二十七条は、裁判山の面前における証言といいますか、供述の規定でございますが、これもあくまで捜査段階の規定でございます。いずれの場合におきましても、捜査段階における捜査手続と申しますか、それについての司法のコントロールという意味で、裁判官がこれに関与すべきものというふうに定められておるわけでございます。
#125
○稲葉(誠)委員 刑訴の二百二十六条で、公判前に裁判官の前で証人尋問が行われて、その調書が証拠に採用されるという場合があるわけですけれども、この二百二十六条は今は余り使われてないのではないですか。使われてないとすればどんな理由からですか。
#126
○筧政府委員 最近でも、二百二十六条あるいは二百二十七条の規定を活用した事例は幾つかあるわけでございます。必ずしも数は多くございませんが、そこまでの必要性がないということに尽きようかと思います。
#127
○稲葉(誠)委員 そうすると、反対尋問の機会を与えないから憲法違反だというのは例外がある、それから、裁判官が検察官に、言葉はどういう言葉がいいのですか、あれしたということが、それが直ちに調書なり何なりの証拠能力の否定にはつながらない、こういうふうなことに結論はなるわけですか。
#128
○筧政府委員 三百二十一条等につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、具体的な場面におきましては、当該反対尋問を経ていない供述証拠等が証拠能力があるかないかという三百二十一条に当たるかどうかという解釈によって運用されるべきものと考えております。
 それから、先ほどの二百二十六条、二百二十七条の例でございますが、統計はございませんが、昭和五十七年中ということで調査いたしました結果は、合計二十件ございます。
#129
○稲葉(誠)委員 二、三日前に、札幌高裁で梅田という人の再審の事件があって抗告が棄却されたわけです。それについて、最高裁に特別抗告するというのはこれは憲法違反の場合だと思うのですが、従来の例では、同じような場合には、私の聞いたところでは最高裁に対して特別抗告というのはしてないように思うのですが、その点はどうなのかということが一つ。
 それから、私はこれはまた一般質問か何かでやりたいと思いますが、再審の場合に検察官の抗告権というものは法律ではっきり禁止した方がいいのだと、こういうふうに考えておるのです。これは、抗告権があるということになってまいりますと、もし抗告しないということになると、いや、もうそれじゃ事件は捨ててしまって無罪だということを検察官の方も決めてかかっているのだと、こういうふうにとられますから、だから、むしろ抗告権がないのだと、否定するという形を法律の中でしっかりしておいた方がいいのだというふうに私は考えておるわけです。ドイツの刑事訴訟法は、政府が提出した場合にはその検察官の抗告権というものを認めておったのですけれども、議員立法の中で、事件を一日も早く解決をする、争うのは再審の法廷の中で争うという形で抗告権を議員修正をいたしまして否定をいたしました。こういう事実関係がありますので、今言った点についてお答えのほどをお願いをいたしておきたいと存じます。
#130
○筧政府委員 第一点でございますが、この四日に札幌高裁で抗告棄却の決定がございました。現在検察当局においてその内容を慎重に検討中でございます。早急にその内容を検討した上、適切な措置がなされるものというふうに考えております。
 それから第二点の抗告権の問題でございますが、稲葉委員御指摘のように、一九六四年でございましたか、ドイツの刑訴改正の際、議員立法で抗告権が削除されたというふうに承知いたしております。ただ、これにつきましては、一つは違法不当な再審開始決定に対して争う道を閉ざすということが法的安定性の観点から問題があるのではないかということと、これも稲葉委員十分御承知のところでございますが、ドイツの法制、重要事件については事実審は一回しかない、原則として一回であるという点、我が国とは全くといいますか相当違っておるわけでございます。そういう司法制度全体の中でその抗告の問題も検討されなければならないということで、私どもでもその点検討を続けているところでございます。
#131
○稲葉(誠)委員 その梅田さんの件については適切な措置という言葉が出ましたけれども、私どもの言わんとしていることは、一日も早く確定をさせて、そして争うならば裁判の中でやるということにして、一日も早く無罪が確定するように、裁判の中であれするようにということを祈ってといいますか、そういう意味で質問いたしておるわけです。その他のことは法務委員会で詳しくといいますか、いたします。
 きょうの新聞に警察官の偽証の件の問題が出ていましたね。あれは時効にかけてしまいましたけれども、検事が送られた事件を時効にかけるということはほとんどあり得ないことなんです。あの新聞記事だけではわかりませんから、そうしたら検事は左遷されるというか、非常なあれを受けるわけですからね、左遷までいかなくても受けるわけで、ちょっと実情がわかりませんからよく調べていただいて、警察の方も、朝日新聞に出ておる件ですね、警察官の偽証の問題の件、メキシコに行っちゃって何とかかんとかというのですね、あの件と、それから外国人登録の問題、これはまた別な法務委員会や何なりでお聞きをいたしたいと思います。
 公安委員長ですか、あるいは警察ですかにお聞きをいたしたいのは、今大きな問題になっておりますグリコ・森永事件の捜査がどういうふうに進んでおるのかということを国民一般が非常に大きな関心を持っておるわけですね。その点について、これは捜査ですから差し支えない範囲で御説明を願いたい、こういうふうに存じます。
#132
○古屋国務大臣 グリコ・森永事件がまだ検挙されていないことは、まことに申しわけない、残念なことでございます。こういうような国民の生活を盾にとって毒物をまくというような事件は何としても一刻も早く検挙しなければならないということで、警察庁では一一四号事件といたしまして今、京阪神を中心に、そして全警察官を動員いたしまして努力しているところでございます。
 その捜査の状況につきましては、差し支えない範囲で刑事局長から申し上げます。
#133
○金澤政府委員 捜査の概要につきまして御説明をいたします。
 現在二つの面から捜査を行っておるわけでございますが、一つは基本的な捜査でございまして、これは人に関する情報の捜査、それからいろいろあります物に関する情報の捜査、それともう一つの面といたしましては、現金受け渡しの現場におきまして犯人を逮捕するというのが一番確実なわけでございますので、この現金受け渡しの場合の犯人逮捕、これにつきまして各府県警がいろいろと対策を練っておるわけでございます。
 相当長期にわたっておりますけれども、この長期にわたっております理由としましては、この犯人グループが非常に計画的であり、緻密に現実の問題として現場を調査をして犯行に移るということがありますし、また、犯行現場におきましては、ちょっとでも警察が関与しているというような点が見受けられますと現場にあらわれてこないという面がございます。それと、いろいろと残っております物の関係につきましては、大量生産、大量販売の物ということで捜査に非常に時間と手間がかかっておる、こういうことでございますけれども、いろいろと公開捜査をやりまして国民からの情報を多数受けておりますので、鋭意その捜査を進めておる、こういう状況でございます。
#134
○稲葉(誠)委員 警察庁には、今後の見込みですね、期待を込めての見込みについてお話を願いたいことが一つと、それから、これは法務省の方になりますか、このことに関連をして新しい法律をつくろうという動きがあるのですが、私はこれは反対なんですが、そういうことをやったって遡及するわけでありませんし、今の法律で十分適応できるというふうに考えておるのですけれども、今の法体系のもとで、どの条文にどういうふうになってきて、法定刑は一体どういうふうになるんだろうというふうに考えられるのか、そこら辺のところは、これは法務省からでも御説明願いたいと思います。
#135
○金澤政府委員 犯人逮捕の見通しといいますか状況でございますが、この前公開をいたしました似顔絵につきましては、これは非常に確度の高いものというふうに考えております。これにつきましては二千件を超える情報が現在集まっておりますし、これは警察そのものがつくりました似顔絵でございますので、これにつきましては今一つ一つつぶしておる。したがいまして、できるだけ早い機会に、近い将来において犯人を逮捕したい、こういうことでやっております。
 以上でございます。
#136
○筧政府委員 グリコ・森永事件、まだ未検挙でございます。もしこれが検挙された場合に現行法でどういうふうになるかというお尋ねでございますが、何分その具体的な事実関係がわかりませんので断定的なことは申し上げられませんが、今まで報道等にあらわれました外形的な事実等をもとにして一応考えてみますと、まず身代金目的拐取、それから拐取した者を利用しての身代金要求、いずれも無期または三年以上十五年以下の懲役というのが法定刑、御承知のとおりでございます。それからあと強盗あるいは監禁致傷、それから業務妨害、恐喝未遂。恐喝未遂は数件にわたっております。それから放火等でございます。それからあと殺人未遂という点につきましては、実行の着手とそれから犯意の点でいろいろ問題があるかと思いますが、場合によっては成立する場合もあろうというふうに考えております。
 したがいまして、法定刑としては、放火、殺人未遂は死刑までございますが、かたいところの身代金目的拐取あるいは要求、これは上は無期でございます。その範囲内で、その犯情等は判明いたしませんが、その犯情等に応じて相当の重刑が科せられるものと考えております。
#137
○稲葉(誠)委員 今の警察の問題の中で、実は鈴木達也という、この人は管区長をやった人ですね。四国の管区長から、それから広島の管区長ですか、中国というのですかな、中国の管区長ですか、管区長というと検事でいうと検事長ですねをやられた方で、この人が本を書いておられるわけですね。この人の書いたものを見ると、今や刑事警察はこれまでにない危機に直面している、一言で言えば、人も金も組織も治安警備警察に偏重してきたためこうなったと断言できるというようなことを言っておられるんですよね。私もちょっとこれを中を読みました。いろいろな具体的な事例を挙げているのですけれども、これは後藤田さんに聞くのが一番いいかもわからぬね、後藤田さんが専門かもわかりませんけれども。いやいや、あなたに聞くのじゃないから大丈夫だ。
 警察の管区長をやった人がこういうことを言っているんですね、はっきり書物の中で。初めにというのと終わりにというのと両方言っているんです。どこかに問題があるんですね。それは予断と偏見かもわからないけれども、管区長までやった人がここまで言っているということは、いかに日本の警察が警備警察中心であって、刑事警察がそこまでいっていないということを物語っていて、刑事警察に従事する人たちの大きな願望がここに込められているというふうに理解した方がいいと私は思っているんですね。だから、今後刑事警察に従事している人の処遇の問題とか予算の配分の問題いろいろな問題があると思うのですが、もっと刑事警察に従事している人を、警備ばかりを重要視しないで、歴代警察庁長官というのは警備をやった人がほとんどなんですね。だからそうじゃなくて、刑事警察の方をもっと重要視する方向に人も金も物も組織もいくような方向に切りかえていかなければいけないんじゃないか、これはこういう人が言っているのですから。そのことについて国家公安委員長から最後にお答えを願って、私の質問を終わらしていただきます。
#138
○古屋国務大臣 稲葉先生から今、鈴木という元中国管区局長の方が最近本を出版されまして、私は実はまだ、その本が出版されたことは聞いておりますが読んでおりませんが、一般的な話として、どうも今の刑事警察が公安よりも何といいますか力が入れられていないんじゃないか、人事その他についてということでございます。私の知っている限りにおきまして、私は公安はやったことはありませんで刑事が中心でございましたけれども、今の長官は警視庁の刑事部長、警察庁の刑事局長もやっておりまして、刑事についても相当な専門家であると私は考えております。
 ただ、その人本人じゃなくて、一般的な問題で考えますと、時代によりましては、それは見る人によっていろいろ違いますが、公安の方を重視しておるということもないではないというような感じもいたしますけれども、私自身もそういうことで損したか得したかということを考えますと、これはちょっと先生、私も判断できぬところでございますが、まあ刑事警察の刷新といいますか、刑事の方をどんどん、長い経験と努力によって頑張られたあの背の刑事の姿を思い出しますと、やはり科学的ないろいろのものが変わってきたということもございまして、そういう整備もしなければならぬということを考えておりますが、一般的にはそういう御指摘もありますし、私も刑事警察の経験ありますが、とにかく職人気質で一生懸命で一生頑張ってきた刑事の気持ちというのは私どもよく、先生もそういう方の御経験者でございますからよくおわかりと思っておりますので、刑事警察の振興ということもひとつ十分頭に置きまして、警察当局に命じまして、そういう点の再検討も努力をしてみたいと思っております。
#139
○天野委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。
 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
#140
○天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。正木良明君。
#141
○正木委員 それでは、質問通告の項目を書いてございますが、最初に、今問題になっておる大型間接税問題から入りたいと思います。
 午前中の質疑応答を聞いておりましたけれども、大方一時間かかって余り内容がはっきりしない。稲葉委員も相当お困りになったと思いますけれども、どうかひとつ本音で物を言っていただくと、竹下大蔵大臣の言語明瞭、意味不明というのが言語明瞭、意味も明瞭になってくるだろうと思いますので、よろしくお願いします。
 それで、総理は税制の見直しについて、これは財政再建のためでもなければ増税を意図したものでもない、増収というふうな言い方をおっしゃいましたが、そうではなくて、むしろ現行税制のゆがみ、ひずみを正すのである、簡素、公平、公正、選択の観点から見直すというふうに言われておるわけでございますが、大型間接税の検討を始めるということは、これはもう紛れもない事実でございまして、少なくとも税調に諮問をしてあるわけでありますから、税調はこの検討をどんどん進めていくでしょう。その結果導入するか導入しないかは、中曽根内閣ではむしろ導入しない方向だという答弁があったわけでございますが、中曽根内閣以後については責任は持てぬということでありましょうから、これはやがては導入されるであろうというふうに考えておりますし、同時にまた現行税制のひずみを直すということになってくれば、片方にひずみを直すための減税が行われれば、当然それに対して片方でその財源となるべき増収が期待されていかなければならぬだろうと思います。そういうことからいろいろ考えてまいりますと、国民にとっては非常にわかりにくい論理で話が進められているような気がして仕方がありません。
 そこで、この税制の見直しということについては、いわゆる入り口では増収は考えてないけれども、出口では結果的には増税になったというようなことになるのじゃないかというふうに懸念いたしますが、この点どうですか。
#142
○竹下国務大臣 総理からもたびたび申しておりますように、税制の抜本的見直しは単なる増収を目的とするものではない、これを御理解いただきたい、こういうことをたびたび申されておるわけであります。だから、まさに今後税制調査会を中心として、国会を初め国民各層、各方面の広範な論議を踏まえて幅広く検討していくべき問題である。そこで、総理が昨日お答え申しましたように、その場合には、いわゆる国民負担率、租税負担率等を念頭に置いた場合に、増収になるものもあれば、いわば減税になるものも結果としては出てくることはあるというふうに私も考えております。
#143
○正木委員 そうすると、大蔵大臣のいつも使われる言葉で言うと、最初に増収ありきということではなくて、出口の方では増収があるということはあり得るということ、こういうように理解していいですね。
#144
○竹下国務大臣 結果として増収になる税目も出てくるだろうし、あるいは減税になる税目も出てくるであろう、だが、総理からも申されておりますように、検討に当たってはまず増収ありきというところからではなく、まず抜本見直しありきというところから入って、結果としておっしゃるようなことが生じてくるということではなかろうかと思います。
#145
○正木委員 そうすると、これは「増税なき財政再建」ということとどんな関連に位置づけられますか。
#146
○竹下国務大臣 この問題は、「増税なき財政再建」というのは、これは理念として堅持しておりませんと、総理の言葉をかりれば、一たびそのかんぬきというようなものが外れてしまった場合に、いわば歳出増圧力が無制限に働いていく。だから、これは理念としてはあくまでも堅持すべきものである。一方、臨調の答申等からいたしますならば、大きく租税負担率が変わるような新しい税制上の措置というものは概念的にいわゆる「増税なき財政再建」に反するんだという指摘がございますので、総体としての租税負担率というようなものはやはり絶えず念頭に置いて、いわば一つの特別措置等におけるでこぼこの調整でなく、今度はあるいは消費、そして所得、資産、そういうものにどのようなバランスが一番いいか、こういうところから議論していただくわけでございますから、いわゆる「増税なき財政再建」の問題に反するということはないというふうに考えております。
#147
○正木委員 それは臨調の言っている、いつもあなたも口になさるし総理も口になさるのですが、新しい税制によって増収があるということが増税で、これは矢野書記長の中にもありましたけれども、要するに課税範囲を拡大したり税率を上げたりするということによって生まれる増収並びに自然増収、これらは新しい税制によってしたのではないから「増税なき財政再建」には違反しないんだということですが、しかし今の話だとその面が抜けちゃっているから、新しい税制によって増収が結果的に出てくるということになると、「増税なき財政再建」の臨調の精神に反するのじゃないですか。
#148
○竹下国務大臣 その答申の中でいま一つ、当面そうしておって、しかし中長期的にはやはり租税負担率も上がってきて、それはヨーロッパの、当時は五〇%で、今はもう五五になっておりますけれども、それをかなり下回るところということを念頭に置いてやれ、こういうことになっておりますので、今度はそのいわば税制の、総理の言葉をかりますならば、公正、公平の見地から、言ってみれば所得の段階、資本の段階、消費の段階、それぞれのバランスを見ながらの検討を始めるわけでありますから、結果として増になるものもそれは私は結果としては出てくるであろう。しかし、それは全体として租税負担率ということを念頭に置く限りにおいては、私は臨調の中長期に見直すべきであるといういま一つの指摘からして、いわば今まで概念づけられておる「増税なき財政再建」というものに違反するということにはならないし、また、ならないということを念頭に置いて検討も進めていかなければならぬ課題だというふうに思います。
#149
○正木委員 つまり、こういうことですか。要するに、今まで税制の根本的な改正というようなことを考えてなかったときには、税の増収があっても、その増収というのはいわゆる「増税なき財政再建」ということには背反しない。それはなぜかというと、新しい税制というものが加わっていないからだ。今度は税制の根本的な見直しをするということになって、資産だとか所得だとか消費だとかという各部面にわたっての担税力を図って、そして新しい税制をつくり上げていくということ、これは新しい税制をつくるんだけれども、新しい税制をつくることが「増税なき財政再建」とは背反しないんだ、こういうふうな論理に変わってきたわけですか。
#150
○竹下国務大臣 これは私も、税の議論がこれから行われるわけでありますが、いわば今おっしゃいましたように、御指摘がありましたように、所得、資産、消費の段階、それぞれ担税力の求め方によってバランスが違った場合に、新しい措置の範疇に入るものがあるいは出てくるかもしらぬというふうに思います。その際は、私は臨調の精神に反しないという、総体的なバランスにおいて反しないということは念頭に置いておかなければならぬだろうな、そしてその場合、税目の名称が一つついたといたしますと、それは総体的な中でのバランスとして臨調等にも、そのフォローアップとすれば行革審でございますか、そこらにも理解を求める努力は務めとしてはしなければならぬというふうに思っております。
#151
○正木委員 要するに「増税なき財政再建」の理念というもので、そこにかかっている歯どめというのは幾つか外されてしまって、最後に残っているのは租税負担率の問題だけだ、こういうふうに理解していいですか。
#152
○竹下国務大臣 今から租税負担率だけでございますと言うのは早計であろうと思っております。国会の議論等を通じながら、結果として出ます直間比率でございますか、あるいは消費の段階と所得の段階とで担税力の求め方等が、そのバランスが変わってきた場合、それが新しい税目を、名称を打つ場合というようなことになった場合には、やっぱり私は行革審等に理解を得る努力はしなければならぬことであろうというふうに考えております。
#153
○正木委員 行革審が答申を出したわけですから、行革審の了解を求めるということも必要だと思いますけれども、しかし行革審が了解しただけじゃ済まぬのであって、やっぱり税金を納める側の了解ということをまず第一に考えてもらわないと困りますよ。そういう立場からいうと、「増税なき財政再建」といわれたいわゆる臨調、行革審の精神というものはやはり単なるスローガンとして、あなたは理念という立派な言葉を使ったけれども、要するにスローガンで、中身はどんどんどんどん変えるということのように私は考えられるわけなんで、この点は、やはりよく認識をしてもらわないといけないし、我々の党としてはそういうやり方というものについては反対である、これは明確にいたしておきます。
 そこで、こっちも土俵へ上らないと話が詰まってまいりませんので、大型間接税の土俵へ上りますが、これは導入を認めたという意味で上がったわけではありません。
 そこで、一般論として大型間接税、これは六種類があり、一種類は、これは国会決議でもうできない。総理のお考えから言うと、もう一つは昭和二十二年の取引高税というものも過去の実績から見て国民の同意を得られないだろう。後に残ったのは四種類ということになるわけなんですけれども、これらを通じて、一般論としてそれを総括して大型間接税という言葉を私は使いますが、大型間接税のいろいろなデメリットというのがあるわけですよ。幾つかあるわけなんです。そこで、これを一つ一つどういうふうに克服するかということを、導入される大型間接税の態様によっても違うかもわかりませんけれども、一つはデメリット、これは幾つもあるんだけれども、先に言いやすいでしょうからメリットから言いましょう。
 極めて安定的に歳入を確保することができるというメリットがある、こう言われているけれども、これはそうですか。
#154
○竹下国務大臣 これは、メリットの中の一つだとして絶えず議論されておるところであります。
#155
○正木委員 もう一つは、この課税客体を捕捉するのが非常にやりやすくなる。この場合、限定されて、多段階でないといけません。多段階でないといけませんが、この場合には、要するにクロヨンとかトーゴーサンといわれるような課税客体の捕捉について大きな格差があると言われるいわゆる不公平な税負担ということについて、サラリーマンからも強い反発のあるこの問題は、メリットとして考えていらっしゃいますか。
#156
○竹下国務大臣 議論として、メリットの範疇にとらえられておると思います。
#157
○正木委員 そのメリットは生かしたいと考えていますか。
#158
○竹下国務大臣 メリットは、実施するかしないかの問題は別といたしまして、議論の中で今おっしゃったような考え方で議論されるであろうというふうに想像します。
#159
○正木委員 いや、そうじゃなくて、あなたはそのメリットをこの際生かしたいと考えているかどうかということです。
#160
○竹下国務大臣 今の正木さんの角度からする、いわゆるクロヨンとかそういうのが現実にあると大蔵大臣が言うわけじゃございませんけれども、そういう言葉が存在しておるという意味において、このメリットがある場合は多段階であるな、こういう裏打ちのための質問じゃないかという感じがして非常に慎重に構えているわけでございますが、そういう議論は大いにある議論だろうというふうに思っております。
#161
○正木委員 それはお見通してございますけれども、事実、多段階でインボイスがつかなければ恐らくできないでしょう、これは。そして、大平内閣がやろうとした一般消費税のように、年商二千万以下は免税の対象にするとか生鮮食料品は免税の対象にするとかいわゆる非課税対象とするというような形だったら、僕は、しり抜けになってしまうでしょうから、これはちょっと無理かもわかりませんね。しかし、恐らくそれをメリットのうちに勘定して、副次的な効果と言うべきでありましょうか、副次的な効果になるにせよ、大型間接税のメリットの中の一つに指を折られているということになると、私は考えていることは大体多段階で、要するに蔵出しじゃこれはもう話にならぬし、しかも薄く広くというわけにいきませんからね、サービスが入りませんから。それは卸の段階も同じことだし、そして小売だけの段階ということになってくると、それまでの流通の段階におけるところの課税客体は捕捉がしにくいということがありますからね。だれが考えたって、どこへ行き着くかということは大体わかっているのですよ。だから、あなた方が考えている大型間接税というのはEC型。これは態様が幾つもあると総理はおっしゃったけれども、それは態様というのは、税率の問題であるとか対象品目であるとかを変えれば、もう態様が変わったと言えるのですから。しかし、大体理想的な姿としてはこれだ。これでインボイスを取ってしまえば国会決議で禁止されている一般消費税(仮称)になるわけですから。大体その辺へいくだろうというふうに考えておる。
 だから、それは一般論として話しましょう、一般論として。そうすると、一つはデメリットが出てきますね。いわゆる逆進性、収入の高い者も収入の低い者も同じように税金を払わなきゃいかぬ。同じ品物を買ったときには、同じサービスを受けたときには同じ税金を払わなきゃいかぬ。いわゆる世に言う逆進性が強い。この問題、どうします。
#162
○竹下国務大臣 これは、今おっしゃった意味における逆進性というものは、デメリットの中でいつも指摘されておる問題であるというふうに思っております。そして一方、いわゆる選択の自由というメリットとそういう逆進性の問題とがどのような形で調和されていくかというような議論も、恐らく行われる議論ではなかろうかというふうに考えております。
#163
○正木委員 私は、恐らく大蔵大臣は、そのために所得減税を片方でやりますからこの逆進性は相当緩和されるでしょうというふうな言い方をするだろうと思ったけれども、それは言わなかったね。言わなかったが、この逆進性の問題は、いかにも選択性がある。選択性があるということは、要するに買うか買うまいかはその消費者本人が選択できるということです。しかし、買わなきゃならぬものがあるでしょう、受けなきゃならぬサービスがあるでしょう。これに対してやはり税金がかかるということになってくると、選択の余地というのは非常に少なくなってくる。だから、でっかい耐久家庭電気製品を買うとか買わないとかということの選択とは違って、日常生活でどうしても買わなきゃならぬというもの、受けなきゃならぬサービスということについては、これは逆進性というものは生じてくる。あなたは答えなかったけれども、答えたものとして言いますが、これは免税点以下の人、要するに税金を納めていない人というのは、これは所得税減税では救われないわけだ。この問題がありますね。これが一つ。
 もう一つは、何%の消費税をかけるのかよくわからぬけれども、恐らくそれだけ物価が上がりますね。どうですか。
#164
○竹下国務大臣 物価は、総合的な経済情勢、需要と供給のバランスというものがもちろん大きな要因になりますが、単純にそれだけ考えた場合、消費者への転嫁であるという意味においては上がる要因ではあるというふうに私も思います。
#165
○正木委員 それで、先ほどおっしゃったように選択性がある。買うか買うまいか。要するに税金がかかっているからもう買わないということになってくると、デフレ効果というのが出てくるのです。これ、どう思います。認めますか。
#166
○竹下国務大臣 それ以上に、国民所得なり経済情勢等々が成長率等々でそれを消化する場合もあるかもしれませんが、今おっしゃったデフレ効果というのは、私も理論的には存在するというふうに思います。
#167
○正木委員 実は私は、この問題も大きいと思うのだけれども、各流通の段階で、仮にもう単段階で、最終的に小売業の売上高税にしたって同じことだと思いますけれども、要するに中小零細企業というものの、納税義務者になりますから担税はしないと思う、要するに、税金は払わなくても取って渡さなきゃいかぬわけだから、その事務手続というものについて大きな負担がかかると思いませんか。
#168
○竹下国務大臣 これはかってのいわゆる一般消費税(仮称)の場合、いろいろな範囲の問題についての議論が行われたようでありますが、いわば徴税コストとか、あるいはそういう仕組みになれば、確かにそれだけの労力を余計割かなきゃいかぬようになるということは事実だろうと思います。
#169
○正木委員 私は、デメリットの中で一番大きい問題は、間接税が持っている宿命的な、租税弾性値が低いということなんです。
 これは、大蔵省からもらった資料があるのです。これは五十七年度までのしかありませんけれども、ここにずっと租税弾性値が書いてあります。直接税、昭和五十三年から言いますと、昭和五十三年は直接税は一・一一、五十四年二・〇五、五十五年一・七九、五十六年〇・六〇、五十七年〇・九〇になっている。ところがこの直接税の中で、直接税の中には所得税と法人税を入れておりますけれども、ここの中でも所得税というのはべらぼうに高い。五十三年が一・二八、五十四年二・三一、五十五年一・八八、五十六年二・○四、五十七年一・三六。法人税はそれに比べて極めて低い。だから平均値が低くなってくる。ところが、間接税はほとんど全部一を割っているのです。ただ、昭和五十四年だけ一・六八になっている。これはいろいろ調べてみると、第二次石油ショックで石油の値段が上がって、石油はもちろん御承知のとおり従量税ではなくて従価税ですから、石油の値段が上がったために間接税がぐんと収入が上がったから一・六八になっているが、ほかは全部一を切っているのです。
 こういうふうに、間接税が持っている宿命的な、租税弾性値が低い。これは恐らく、所得税だけが租税弾性値が高いというのは、いわゆる累進税率を持っているからだと私は思うのですけれどもね。これはお認めになりますか。
#170
○竹下国務大臣 累進性がなかったら、大体租税弾性値はまさに一だと思います。それが平均して一・一になり、あるいは地方税は一・二でございますか、それはやはり累進性というものがあるからであって、いつも体験いたしますけれども、あるときのいわゆる結果的に生ずる直間比率というものを見ても、数年たてば、それは間接税の方が比率はダウンして、直接税の方が毎年毎年アップしていくという傾向をたどるというのも、宿命的に持っておる仕組みではないかなというふうに考えております。
#171
○正木委員 これはまさにそのとおりなんです。ですから、この間矢野書記長が質問した中にも、昭和五十九年度で減税をしたけれども、しかし、昭和五十八年から五十九年、確かに減税分だけは減っているようだけれども、昭和六十年にはそれを回復して余りあるぐらい所得税は伸びている。これは直接税が、特に所得税というものが租税弾性値が非常に高いということを意味しているわけですよ。したがって、要するに、累進税率を持っているというその税構造それ自体がこれだけの大きな収入をもたらしているわけです。
 したがって、今大蔵大臣がおっしゃったことは確かにそのとおりであって、仮に今七対三という直間比率を五対五にしても、すぐこの格差は開いてくるのです。そのときに所得減税をやって五対五にまた戻してくれればいいですよ。これをやらないで、必ずやっていることは何かというと、間接税の税率を上げるという形において直間比率を維持しているのですよ。これが一点。
 もう一点は、租税弾性値が一を割るというようなことでありますから、要するに租税弾性値の計算というのは国民所得に対しての租税弾性値の計算でありますから、大体名目総生産の八〇%ぐらいが国民所得になりますね。そのうちの五十数%というのは個人消費ですね。恐らく課税の対象になるのは、この個人消費のうちの半分ないしは六〇%ぐらいだろう。これは順次上がっていくと思いますよ。がたんと個人消費だけ下がるということもあり得るけれども、大体総体的に上がっていく。しかし、上がっていくけれども、弾性値が一を割ってくるというようなことになってくると、いわゆるこの大型間接税による収入というのは、確保しようと思うだけのものが確保できないということになってくると、これは税務当局が何を考えるかというと、必然的に大型間接税の税率を上げていくことを考えていくということになる。現に、ヨーロッパにおいてこの大型間接税が導入されているところの税率を調べてみると、明らかにそういうことが言えるわけなんです。例えば、西ドイツは一〇%から一三%になっている。イギリスは一〇%から一五%に上がっている。フランスは一六・七%から一八・六%に上がっている。イタリアは一二%から一四%に上がっている。カナダの場合には、これは多段階じゃありませんけれども、六%から九%に上がっている。こういうふうに税率がどんどん上がってくる。それは、租税弾性値が低いという間接税の持っている宿命的な立場から、一たんこの制度が導入されてくると、最初は低率であった、こういうふうに国民に納得してもらっても、順次それが税率が上がってくるということが、これはもうこれを採用した国においても明らかに実績においてそういうことが言えると思うのですが、この点は認められますか。
#172
○竹下国務大臣 これは、私もそれは認めます。それに対する、今度は税制調査会での議論じゃございませんが、私なりに勉強してみますと、やはり間接税というのは、あるなれを生じた場合には、痛税感、税の痛みという意味でございますが、これが比較的薄くなる。直接税というのはやはり、痛税感という言葉が正確な言葉としてあるかどうかは別として、税の痛みを感ずるものである。したがって、歳出に対する監視の眼というものは、痛税感があるから余計きつく行われる。痛税感が薄らぐと、歳出に対する監視というものがまあ言ってみれば薄らいでまいりまして、そこで安易に税率アップに手をつけたのがヨーロッパの国であり、それが、極端な言い方をすればヨーロッパ病を生んだ一つの要素ではないか。だから、この安易さというものは、一遍やったら直間比率を維持するために上げていくという安易さのほかに、いま一つは、痛税感がどちらかといえば薄らいで、監視の眼が薄らくことによって、歳出圧力に抗し切れなかった結果がそっちへ行っておるのではないかという一つの見方もあるな、こんな感じがしております。
#173
○正木委員 いや、感じだけじゃちょっと問題なんでね、そういう経過をたどるだろうと私は思いますよ、一たん導入すると。だって、一たん導入したら延ばすじゃないですか。あの行政改革の特別委員会でやったあの法律だって、厚生年金の問題にしたって、今度また延ばすわけでしょう。これはまた後であなたにも主税局長にも聞かなければいかぬと思うけれども、恐らく法人税だって、近々二回上げて、最後の昭和五十九年度一・三%上げたものについては五十九年と六十年だけだと言っていたやつが、これは後でちょっとまとめて聞くから今答えなくてもいいですけれども、これだって、恐らく六十一年度からもどのように一・三%逆戻りさせます、もとのとおりに引き下げますというような約束を恐らくせぬだろうと思いますよ、あなた方は。ないしは検討するかどっちかだろうな。
 ですから、これだけの大きなデメリットがある。片方にはやはり確かにメリットがありますよ。要するに法人税のように好況、不況に左右されて税収が極めて不安定であるという税目に比べて、これは確かに安定的に歳入を確保することができるということについては大きな魅力だろう。恐らく大蔵省は宿願だったと思います、こういう歳入を持つということは。それと、副次的にクロヨン退治ができるというようなこともあるかもわかりません。ここは比較考量の問題だけれども、しかし、私が今申し上げたこんなに幾つも大きなデメリットを抱えた大型間接税というものについて、私はやはり導入すべきじゃないと思いますよ。そう言ったって、これから検討するわけでありますからという答弁が返ってくるに違いないから答弁は要りませんけれども、これは反対だけはっきりしておきます。
 それともう一つ、これは大蔵大臣に聞いておきたいんだけれども、十二月の二十何日かに毎日新聞のインタビューであなたは答えているんだが、この中で、この大型間接税を福祉目的の財源にしたいというような考え方、これは一つの方法だということでお考えになっているのかもわかりませんけれども、野党の反対が少ないかもしれないということも勘定に入っているのかわからぬが、これでも我々は反対ですよ。反対ですが、そういう考えはちらりとでもありますか。
#174
○竹下国務大臣 福祉目的税というような物の考え方の御意見をちょうだいしたことが過去においてもたびたびございます。
#175
○正木委員 あなたはどう思っているかです。
#176
○竹下国務大臣 やはり目的税ということになりますと、それは税制全般からいえば、いわば色のついた歳入財源というものにつきましては税制全体の中では原則的には避けるべきだという議論が当然あるでございましょうし、それはまさにいろんな議論の中で出てくることであって、私程度の者があらかじめ予断をすべき問題ではなかろうというふうに思っております。たびたび意見として聞かされて、感心しておるといいますか、なるほどなと思っているというわけでございます。
#177
○正木委員 禅問答みたいになってしまいましたけれども、私はもう一つ問題があると思うので、これはひとつ検討してもらいたいと思うのです。要するに我々のやりとりとか我々の考え方というのは直ちに、直ちにはどうかわからぬが、そのまま税調にお伝えしますという再三の御言明がございましたから、そういう意味で申し上げるのですが、私はますます予算が硬直化するのじゃないかという心配をしているのです。例えて六十年度予算で申し上げますと、このうちの一八・二%が社会保障費なんです。この一八・二%、これ全部を目的税で賄うかどうか、これは別の問題として、そのほかに要するに政府が小手先でどうにもできないものがあるのですよ、もう決まったものが。要するに数字が出てくればそれらを計上しなければならぬというものがありますね。これは国債費です。これが全体の一九・五%ある。もう一つは、これは三税の三二%地方交付税を出さなければいかぬ、これが全体の一八・五%です。この社会保障費全部を仮に大型間接税で賄う、しかも、目的税として賄うということになりますと、この三つを合わすと五六・二%になるわけです。そのほかにも主なものは何かというと、公共事業の一二・一%、文教の九・二%、防衛の六%というようなものがあるわけなんですが、こう考えできますと、要するに政府の政策判断が入り込む予算編成の部分というものは極めて小さくなってくるわけですね。だから、三つ合計五六・二%といたしますと、これはまさに四三・八%の部分だけ政策判断の入る予算ということになってくる。これは六十年度でパーセンテージを出していますけれども。こうなってくると、仮に一八・二%社会保障費全部をやらないとしても、これの二分の一を目的財源で賄うということにしたって、大体予算の半分というものは政策判断の余地のない予算の各項目になってくると思うのです。構成の問題になってくると思いますが、どうでしょうか。
#178
○竹下国務大臣 確かに予算編成のときに、一番悩みでございます。とにかく政策判断の全くきかないもの、利払い費でございます。これがもう既に社会保障を超した。そうして、これはある意味において、富の再配分からいえば意図せざるところへその富が再配分されていく、こういうことになりますので、この国債費というものをどうして減していくかということになれば、まずは六十五年までは赤字公債を財源としないようにすることを第一義の目的としておりますが、当然今度は対GNPあるいは予算に比しての国債費そのものをいかに減していくかということを考えなければいかぬ。これはほんの一つの、ワン・オブ・ゼムとでも申しましょうか、いわゆる電電株式会社の政府が売ってもいい株というものが将来売られたときに国債整理基金へ直入されるということになれば、これらが公債残高を減すための一つの考え方だな、こんな感じにもなります。
 それから、二番目の社会保障の問題でございますが、ますます高齢化社会になって、ちょうど私が国会へ出ましたときは男性六十三、女性六十九と言っておりましたのが、今や七十四・二〇歳と七十九・七八歳でございますから、十一歳延びております。これは必ずやってくるということになればそれだけで、若干の相違があるとしたら負担区分の問題でそれは幾らか政策判断のものが余計出てくる場合もあり得ましょうけれども、その問題は別にして、現在の制度、施策をそのままにした場合、それは確かに硬直化要因になるわけです。それから地方交付税もそのとおりです。そうすると本当に、毎年予算を組みますと、政策という考え方から考えた選択の幅というのは大変狭くなってきたなという感じは受けます。その中で努力しなければならぬわけでございますから容易じゃない、こういうことでございます。
#179
○正木委員 ちょっと問題を変えますが、財政再建のために増税しないと言っているけれども、大型間接税はやらないと言っているけれども、それを当てにしないで財政再建というのはできますか。
#180
○竹下国務大臣 財政再建ということになると、まずは「増税なき財政再建」というもので、この理念が失われたら歳出圧力に抗し切れなくなるぞというところで、それを一生懸命でやっているわけです。したがって、今、要調整額等でたびたび示しておりますが、その要調整額というのはどういう形で埋めていくかということになれば、増収措置を考えるというのも一つの方法だというコンセンサスができるにはなかなかこれは時間のかかる問題だなと思いながら、おととしよりも去年、去年よりもことしと、お出ししております要調整額の出し方は何の相違もございませんけれども、議論がその中身の中で濃密になってきておるなという感じを受けながら御議論を承っておるというところであります。
#181
○正木委員 だんだん意味不例になってきましたな。
 具体的に聞きます。
 大蔵省が国会へ提出されているところの財政事情の仮定計算例というのがありますね。この資料のうち、最も実体の財政に近いと思われる借換債発行、一般歳出の伸び三%、このケースで答えてもらいたいのですが、私は、どう考えても大型間接税を導入して赤字国債の発行を減らすために要調整額を増税で穴埋めするということしか考えられぬと思うのだけれども、政府委員でもいいですから、六十一年度と六十五年度の場合、数字で答えてください。
#182
○吉野政府委員 ただいま御指摘のございました仮定計算例におきまして、一般歳出を六十一年度以降毎年度機械的に三%ずつ増加をするという仮定での計算によりますと、六十一年度におきます要調整額が二兆六千三百億円、六十五年度は三兆九千三百億円という試算になってございます。
#183
○正木委員 借換債の発行を含む公債の総発行額は、六十年度予算は幾らで六十五年度は幾らですか。
#184
○吉野政府委員 このケースにおきますと、六十五年度の新規の公債発行額が、これは四条公債だけでございますが、五兆九千五百億円でございます。同じ仮定計算におきまして予定をいたしております六十五年度におきます借換債収入、これが十六兆三千九百億円でございます。合計いたしまして二十二兆三千四百億円になろうかと存じます。六十年度は、現在御審議いただいております予算で公債発行額を十一兆六千八百億円お願いしてございますが、同時に借換債収入といたしましては八兆九千六百億円を予定をさせていただいておりますので、合計いたしますと二十兆六千四百億円ということになります。
#185
○正木委員 ちょっとそこにおってください。
 公債残高は、六十年度末が幾らで六十五年度末はどう見ていますか。
#186
○吉野政府委員 年度末の公債残高でございますが、六十年度末におきましては百三十二兆九千億円、それから六十五年度におきましては百六十五兆九千億円という試算になっております。
#187
○正木委員 国債費は、六十年度予算が幾らで、六十五年度は幾らですか。
#188
○吉野政府委員 国債費は六十年度におきましては十兆二千二百四十一億円、六十五年度でございますが、十五兆六千二百億円という試算になってございます。
#189
○正木委員 国債費の一般会計に占める構成比は、六十年度予算では幾らで、六十五年度は幾らですか。
#190
○吉野政府委員 国債費の一般会計予算に占めますウエートでございますが、六十年度予算におきましては一九・五%でございます。六十五年度でございますが、六十五年度につきましてこれは予算の総額が実は予定されていないわけでございます。御承知のように歳出、歳入それぞれ計算が出ておりますが、その差額が要調整額として示されておりますので、六十五年度に予算の規模が具体的にどの程度になるのかという計算はしてないわけでございます。
#191
○正木委員 仮定計算でわかっているでしょう。
#192
○吉野政府委員 仮定計算におきまして、歳出と歳入とがギャップを生じてございます。したがいまして、この計算におきます歳出総額に対する比率あるいはこの計算におきます歳入総額に対する比率、これはそれぞれ計算ができるわけでございますが、両方ともそれぞれ数字が違ってまいるわけでございます。
#193
○正木委員 うちが計算すると、歳出総額に対する比率は二三・二%になっているんだ。――よくわかりました。
 それで大蔵大臣、要するに表の一般会計では赤字国債の発行はゼロになっても、借換債として裏で国債整理基金特別会計を含めて赤字国債を発行され続けて、国債費の構成比は六十年度よりも高くなって、財政の硬直化は進んでいるということになる。これでは本当の財政再建というのは六十五年度以降もずっと続くということになる。言いかえると、要調整額を増税で賄ったとしても財政再建はまだ遠いということになるが、どうですか。
#194
○竹下国務大臣 どこをもって財政再建の終期か、こういうことになりますと、私いつも思いますのは、昭和三十九年まではいわば公債を抱えない財政であった、四十九年までは赤字公債を抱えない財政であった、そして五十年からこの十年間で百三十二兆のうちの百二十四兆ぐらいが発行されたわけでありますから、いわば公債残高を抱えない、言いかえれば利払い費ということを除いた財政というのは、早急に解消することはこれは難しい問題だと思っております。これは臨時的な歳入等によって減額させる努力はしていかなければならぬが、されば、非常に大ざっぱに言いまして――今百六十五兆九千億と言いましたが、わかりやすく昭和六十五年で大体公債残高が百六十五兆になって、百兆がもとをただせば建設国債で、六十五兆が大ざっぱにいって赤字国債だな、そうすると考えをひとつ固める骨子として、その六十五兆分というものをまずは全部返してしまうということになるとどれぐらいかかるだろうかということについて、ある人はやっぱり十年間かかってやったんだから十年間ぐらいで返したらどうだという議論をする人もありますし、いや、やっぱりこれは二十一世紀というものまでにらんで議論をしなければならぬと言う人もございます。
 そこで、いずれにしても貯蓄の多い日本の国でございますからこれだけのものが発行できたんですが、荒っぽい措置でもって、三十九年以前の、公債残高を抱えない、また、利払い費を抱えない財政体質にするというのは確かに難しいと思いますが、そこまでなりたいなということは私の気持ちにはございます。が、それはちょっと、生きとし生けるもの、この世に生のあるうちにそこまでやれるかということになると、これは容易じゃないな、それは本当に孫子のツケだけはなくしておきたいと思いますけれども、なかなか大変だな、こう実感を素直に申し上げます。
#195
○正木委員 これも大分内容が変わってきているんですよね。最初は、福田内閣が財政再建と言い出したときには、赤字国債の発行をゼロにするということが財政再建だと言っていたわけです。そのときにはまだ赤字国横の借りかえなんということはつゆほども考えていらっしゃらなかった。建設債の方は何しろ公共投資の原資でありますから、要するに公共投資の結果として、道路も残っていれば、橋も残っているし、ダムも残っているしということで、これはそのサービスを子孫が受けることができるんだから、その借金を子孫が払うということについては、それはない方がいいけれども、その程度はいたし方なかろうというような考え方であったわけですね。だから、せめて何も生んでいかないいわゆる赤字債というものについては、発行をゼロにするということが財政再建のめどであるというふうに言われていた。ところが、それがいつの間にか国債の整理基金の方の繰り入れもやめる、そうして赤字債まで借りかえをしていくというようなことになって、態様が変わってきたということで、こういう結果が出てきたと私は思うわけです。
 したがって、私がここで申し上げたいことは、こういうふうな状況の中で、いわゆる国民に負担を求めて大型間接税というような形でそれを穴埋めするというようなことでないことを財政再建の道として考えていかなければならぬ。その一つは何かというと、一番理想的な形は、いわゆる安定成長というのは、少なくとも五%台に乗せて、しかも、その主軸になるのは内需であるという理想的な姿をつくり上げながら、そうして、景気の維持をしながら、そこで税の自然増収をもたらして、その税の自然増収で赤字分を消していくというようなことが一番理想的な形だと私は思うのですよ。現に、八〇年代の経済の指針の中にも出ているように、私はこれは何遍も言っているけれども、要するに赤字の中で割合から言うならば六〇%が構造的な赤字、要するに行政機構の肥大化とか行政の非能率から起こってくる赤字、四〇%が循環的赤字と称せられる、いわゆる不況が長続きしたために、要するに企業の収益が上がらず、それによって税の伸びが非常に低い、このことによる循環的な赤字である。これをあなたの政府は全部ごっちゃにしているんだ。あなたの政府だけではなしに、前の政府もそうだけれども、ごっちゃにしてしまって、何でも削ればいいという形をとっている。確かに行政改革という面は、その六〇%の構造的な赤字を減らすためには、どんどん進めていかなければなりませんよ。これについても余り成果が上がらない。そうして片方の循環的赤字を消すためには、これは河本さんの得意中の得意だけれども、要するに税の自然増収を生むような経済成長というものを確保するための財政的な、金融的な措置を講じていくということ、両方両立させた形でやっていかなければならぬ。ですから、これをやってやはり財政再建をしていくというのが理想的な姿でありますけれども、そういう我々の、これは民社党の大内さんももうしょっちゅう言っているけれども、そういう提言を一向に政府は受け入れないで、何でもかんでも削ればいい、削ればいい。言葉は悪いけれども、みそもくそも一緒にしているというような形で政策遂行をしてきた結果がこういう結果になったんじゃないかと私は思うのですよ。そういうときに、片方の構造的赤字を消すというための努力ということが一向に行われず、成果が上がらずに、そうして大型間接税を導入するという形で、これはもう口では言えないけれども、腹の中ではこれよりほかに赤字を消す手はないなという考え方になっているということが国民にとっては最も不満なのであります。この辺が、一般消費税(仮称)とEC型付加価値税と、これは名前は確かに違うけれども、精神としては、やり方としては、考え方としては、その置かれている客観情勢というのは同じことなんです。要するに、もう増税よりほかに手はありませんというようなところまでもっと行政改革を徹底してやっていく、そのほかの適切な最気回復のための、最気維持のための政策というものをどんどんやっていく、そういう姿をはっきりと国民に誠意として見せない限り、国民はこんな大型間接税なんといったって全然受け入れる気はありませんよ。これやったらまた自民党は選挙に負けますよ、変な話だけれども。その辺、非常にわかりにくく、わかりにくくするような行政で、ただ漫然と大型間接税を導入するよりほかに財源がない、減税の財源だってないじゃないかというようなところへ世論を誘導しようとしているけれども、それは大衆は賢明ですよ。そう簡単にはこれを受け入れられないというのが当たり前のことだと私は思っているのです。
 そこで、時間がありませんから、もっとみっちりやりたいところがあったんだけれども、すごい脱税がありますね。不正預金というのがありますね。国税庁、来ていますか。国税庁がまとめた五十八年度の源泉所得税白書と言われる報告では、全国の金融機関の一割を調査した結果、ほとんどの店舗でマル優制度を悪用した不正預金が見つかって、その額は実に六千七百億円、追徴額が三百億円にもなったと伝えられておるけれども、本当にこんな実態ですか。
#196
○冨尾政府委員 お答えいたします。
 国税庁では、金融機関の約一割に当たります四千店前後の店舗につきまして、毎年マル優。預金の、適正に実行しているかどうかということを中心にした調査をいたしておりまして、これによります不正預金のものにつきましての追徴税額、昨年、昭和五十八年度の場合約二百億円追徴してございます。
#197
○正木委員 この税金、どこが払っているのですか。
#198
○冨尾政府委員 銀行預金の利子は源泉所得税、源泉徴収の対象でございますので、私どもとしては金融機関の方からこれを徴収してございます。
#199
○正木委員 銀行局長、これは銀行はその不正預金をしたところから取っているのですか。
#200
○吉田(正)政府委員 ただいま直税部長が申しましたように、源泉徴収義務者としましては、私の理解では所得税法上源泉徴収義務者が取ってなかったということでございますから、源泉徴収義務者からまず納めまして、その上で預金者にそれを請求する建前になっております。
#201
○正木委員 建前になっているけれども、実際はどうなんですか。
#202
○吉田(正)政府委員 ややつまびらかにしない点もございますけれども、一応立てかえ払いということになるわけでございますので、請求権は銀行が保有してやりますけれども、過去の預金について調査される場合が多うございますので、預金が消えている場合が多いわけでございます。そういう場合は、実際は銀行が負担する例が多いというふうに理解しております。
#203
○正木委員 それは損金になるんでしょうね。そんなことは主題じゃないんだ。それぐらい不正預金があるということです、総理。
 それで、大蔵省か総理府がどちらかでいいですから、国民の貯蓄状況、これについて聞きます。
 勤労世帯の貯蓄保有状況について、平均及び第一分位から第五分位までの階層別の保有金額、そして年間収入に対する貯蓄額の比率、これはどうなっているか。もう一つ、同じく一般世帯の平均及び商人、職人、個人経営者、法人経営者、自由業者について、貯蓄の保有額と年間収入に対する比率、どうなっているか、わかりますか。
#204
○吉田(正)政府委員 世帯別で申し上げさせていただきますと、私どもが持っております資料は貯蓄増強中央委員会調べでございますけれども、勤労者世帯は六百万円、農林漁業世帯は五百九十九万円、自営業世帯は六百七十九万円、自由業世帯は九百七十四万円、その他世帯という概念がございますが、これは無職の高齢者が主体になっておりますが、その世帯は八百四十万円と推定されるわけでございます。自由業、その他、それから自営業の世帯の貯蓄額が全世帯平均を上回っているということでございます。(正木委員「税調の資料で僕のところへ来ているのがあるんだけれどもね」と呼ぶ)それでございますと…
#205
○正木委員 いいや、もう言っちゃう。
 これは大蔵省が税調に提出した資料によるもので、五十九年に使用したものです。「五十八年度の貯蓄動向」という数字です。これによりますと、平均して九百四十八万一千円の貯蓄額。商人だとか職人、こういう分け方をしてあるらしい。商人、職人が七百二十九万三千円、個人経営が千三百九十四万三千円、法人経営が二千百十五万六千円、自由業者が千三百五十五万五千円。そして片方、勤労世帯、サラリーマンの貯蓄保有状況、第一分位から第五分位まで。第一分位が二百七十一万、第二分位が四百十九万、第三分位が五百四十二万、第四分位が六百九十二万、第五分位が千百二十八万。年間収入に対しての貯蓄額の割合からいうと、平均で六百十万八千円で一一六・一%、第一分位が一〇一・五%、第二分位が一〇八・七%、第三分位が一一二・六%、第四分位が一一五・三%、それから第五分位が一二六・一%になっているのです。
 要するに、勤労者の貯蓄額というのは非常に低いのです。なぜこんなことを言っているかというと、さっきの不正預金というのはどの辺のクラスにあるかというと、この数字の上から見ると、勤労者の世帯にはほとんどないと言って過言じゃないのです。一人で九百万できるのですから、無理してそんな不正預金、匿名預金なんかしなくたっていいのです。財形貯蓄を入れると千四百五十万円までできる。そういう状況でありますから、サラリーマンは一番税金を取られて、一番貯蓄が少ないということになっている。不正も何もしない。要するに、別な言葉で言うと、資産による利殖の道というのはほとんどないということです、ストックがないんだから。
 こういう中でグリーンカードが廃止されて、分離課税が温存されて、そして限度額管理なんということが言われているわけだけれども、こういう状態の中でサラリーマンに減税を我慢しろなんて言えますか、こんな過酷な状況に置かれているというサラリーマンに対して。だから、やはり私たちは、最初に増税をやるというような考え方ではなしに、減税ということをまず考えていかなければならぬのじゃないかというふうに考えているのです。どうですか、大蔵大臣。
#206
○竹下国務大臣 これはきのう総理からもお答えがあっておりましたが、いわゆる所得減税という要求の強いということは、私どももこれは十分に承知をいたしておるところであります。しかし、いわゆる本格減税というものを五十九年度にやらしていただいたわけでございますので、今この六十年度さらに減税というようなことはその環境にない。これは政府税調も、六十年度にこれを行う余地はないという答申をちょうだいしておりますが、現実の実態は、所得減税というものを六十年度において行う、そういう環境にはないので御理解を賜りたいというのが、これはやはり正確な答弁だと思います。
#207
○正木委員 できないことをどんなに正確に言われても困るのですけれども、今ちょっと資料を皆さん方にお配りしましたから、いかにひどい状況に置かれているかということを、この試算表でごらんいただきたいと思うのです。
 昭和五十六年の十月にこれと同じようなものを出しました。今度は五十九年度の所得減税を含めてこの中に書いてございますが、今回同じように五十八年の九月と五十九年の九月を比べてみたのが最上段です。
 まず第一に、五十九年度に減税が実施されたものの、勤労所得税の伸び率は、五十二年度を基準にした場合、五十八年も五十九年も全く同じ一六一%の増加。減税があってもなかったのと同じだということです。「平均」というのがありますね。このことは金額で見ても、五十八年分が一万一千三十八円。これは、一番下の「参考資料」と書いた欄の一番下の「平均」というところです。五十九年分も一万一千四十八円とほとんど同じであります。
 もう一つの大きな特徴は、平均のふえ方は一六一%ですけれども、所得階層別に見ると、最も所得の多い第五分位、これは一番上段の欄のT、U、V、W、Xと分けであるところの最後です。一二七%のふえ方でありますけれども、最も所得の低い第一分位は三〇五%も税金がふえているということです。特に、実収入や非消費支出のふえ方が階層別に見て大きな格差はないのに、勤労所得税のみ低所得者ほどふえ方が多いのは異常と言わなければなりません。また、我々が五十六年分で試算したときは、勤労所得税の伸びは実収入の二・六倍でありました。ところが、五十九年は三・二倍になっているのです、これはちょっとそろばんを持たぬと出てきませんけれども。総理、これはうそも隠しもしない数字ですから、こういう家計の実態を見てどういうふうにお考えになりますか。
#208
○中曽根内閣総理大臣 勤労者の実態について今表をお示しいただきましたが、実際これを拝見いたしてみまして、生活の重圧感というものは軽くなってないということを知らされました。
#209
○正木委員 大蔵大臣、どうですか。
#210
○竹下国務大臣 これは、いわゆる家計調査の点で見れば、やはり重圧感とでも申しますか、そうした感じであろうというふうに私も推測をいたします。
#211
○正木委員 これほど所得税の重圧というものは低収入者ほどひどい。いわゆる免税点ぎりぎりの人たち、こういう人たちが非常にひどい。だから、やはり減税という問題はこういう実態から考えても、どうしても考えてもらわなければならぬということを特に要望をいたしておきます。
 それでは、ちょっと法人税の問題をやろうと思ったけれども、時間がありませんから、日銀総裁もおいでいただいているので、金融の自由化問題の方へ入ります。
 時間がなくなってしまうといけませんので、ちょっと総裁に先に一問だけ、あとまたまとめていたしますけれども、総裁就任おめでとうございます。
 そこで、実はけさの新聞を見てびっくりしたのです。確かに実勢から言うならば一ドル二百十円台から二百二十円台だと言われている日本の円が今や二百五十円台きりぎり、きのうなんか二百六十円を超えるというような物すごいドル高・円安になってしまいましたが、この傾向はどんな原因によるのだという御認識であるか、これをまず総裁にお聞きしたいのです。
#212
○澄田参考人 ただいま御質問のドル高・円安の原因でございますが、これはいろいろの原因が総合しているということになると思いますが、日本とアメリカとの間の金利の差というものが、特に長期金利において五%程度の金利差というものが相変わらずずっと続いておる次第でございます。五%の金利差がありますと、どうしても資金は高金利を求めてドルに向かうという傾向は否定できません。そのためにドル買いの需要が多くなる、こういうことになるわけでありまして、そういう意味からいってもドル高になりやすい環境が続いている、こういうふうに思われるわけであります。
 先週末あたりからまた一段とドル高になってまいりましたが、その原因は、これは先週発表になりましたアメリカの通貨供給高、マネーサプライの数字が予想より高かった、その他アメリカの連邦準備当局者の発言等が慎重な、若干金融を締めるようなそういうニュアンスのうかがわれるような言動があったというようなことも加わりまして、市場に金利先高感、そういうのが高まってきた、これによってまたそこで一段とドル高の傾向が強くなった、そういうふうな状況であると思っております。円はヨーロッパ通貨等に対しましては堅調であります。円高を維持しております。したがいまして、現在の状態はドル高によるもの、そういうふうに判断をいたしております。
 以上でございます。
#213
○正木委員 重ねてお尋ねしますけれども、総裁がきのうの記者会見で、ドル高・円安による物価上昇というものを非常に懸念されて、要するに輸入物価が非常に上がるということでしょう。市場介入のほかにも、ドル高・円安の抑制策として、公定歩合の引き上げや基準外貸し付けの発動など金利引き上げ措置を検討するというふうにおっしゃっておるわけでございますが、総裁が懸念され、新しい対策をとる必要があるというふうに考えておられる水準というものは、現在は一ドル二百五十九円台でございますが、どの程度というふうにお考えになっておりますか。
#214
○澄田参考人 昨日新聞記者からの質問に答えまして、現在のドル高・円安の状態は懸念はないのかという質問に対しましては、現在のところ非常にシリアスな状況であるというふうには見ていないが、しかし、このままさらにドル高が加速をする、そしてそれが続いていくというようなことがあれば、それは輸入物価を通じて国内の物価に対しても懸念を感ぜざるを得ない、こういうことを申したわけでございます。
 それから、今お尋ねの水準の問題でございますが、これはいかなる水準を考えるかということを中央銀行の立場から申しますことは、これはいろいろの影響も予想されることでございますし、控えさせていただくわけでございますが、現在の、昨日のことでございますが、現在の状況がさらに加速をして今後続いていくようなことがあれば、やはりシリアスな影響があるのではないか、こういうようなことを申した次第でございます。
#215
○正木委員 さらに、公定歩合の引き上げというのはなかなか面倒だろうと思うのです。これは預貯金利子の問題も連動してまいりますからね。ところが、この基準外貸し付けの発動というのは、これはたしか五十七年の夏と五十九年の夏に検討されたことがあるようでございますけれども、この基準外貸し付けの金利引き上げ措置というものの持つ副作用というものが非常に大きいということで見送られているわけですね。
 それにもかかわらず、総裁がこのことについて言及されたということは、現在のドル高・円安の深刻さというのは、そこまで言わなければいかぬほど相当深刻になりつつあるのかということ。これは今おっしゃったように、先行き円安・ドル高が加速された場合かもわかりませんけれども、その点については、物価に対する影響というものを非常に心配なさっているようでありますけれども、この辺のお考えをお願いしたいのですが。
#216
○澄田参考人 現在はまだ卸売物価の前年に比べる上昇率は一%に至っておりません。したがいまして、安定をして落ちついている、こう申せる状況でありますが、輸入物価だけとりますと、そしてしかもごく短いところを年率に直してみるというようなことをいたしますと、それよりは高い上昇率になるわけでございます。現に日本以上にドル高によって自国通貨の下がっておりますヨーロッパの主要国等においては、卸売物価が前年に比べまして数%、国によって違いますが、そういった上昇を見ているわけであります。消費者物価よりも卸売物価の方が先行して上昇している、そういう状況が出ているわけでございます。
 したがいまして、私は現在の状況が直ちにどうこうと申しているわけではございませんが、これがさらに加速して、しかもそれが継続して上昇してドル高が続いていくというようなことがございますと、やはり輸入物価を通じて国内物価にも影響がある、こういうふうに申した次第でございます。
#217
○正木委員 公定歩合のこともおっしゃっているわけですが、公定歩合の引き上げということよりも、基準外貸し付けの発動の方にウエートがかかっているような気がするのですがね。こういうものを検討する、基準外貸し付けの金利を引き上げるというこの問題は、単に機動性ということから来ているのか、それとも現在審議中の昭和六十年度予算案に非常に影響があるからというので、公定歩合のことについては非常に消極的なのか。どうですか。ちょっと言いにくいかな。
#218
○澄田参考人 私は、現在の状態が、基準外貨し出しの金利にしろ公定歩合にしろ、引き上げを必要とするような状態であるというふうには見ておりません。きのうもそういうふうに申しました。
 ただ、今後加速をしていくというような場合のことを聞かれましたし、そうしてそういう場合には検討をしているのか、こういう質問に対しまして、基準外貨し出し及び公定歩合を例に引きまして、検討は、私の立場上常時検討をしている、そういうことを申した次第でございます。
#219
○正木委員 企画庁長官、この物価問題が今円安・ドル高の一つの焦点になってきているのです。これは御承知のとおり、輸入物価が円安分だけ日本が高く買わなければいかぬということから出てきている問題ですが、これは非常に基礎資材部分において輸入が多い日本にとっては非常に憂慮すべき問題であると思うのですけれども、経済見通しを変えるかどうかと聞いたら変えないと言うのに決まっているから、そんなやぼな質問をしませんけれども、その点についてあなた、御関心はおありですか。
#220
○金子国務大臣 ただいま日銀総裁からお話のございましたように、今すぐ直ちに卸売物価に大きくはね返るような段階にまで来ておりません。これは、国際商品価格全般が下落しておりますのと、それから石油の価格も落ちついておるものですから、すぐ今直ちにどうこうということはございませんけれども、仮にこれが長期化するようなことになりましたならば、やはりそれが消費者物価にはね返りますから、厳重に今その推移を見守りながら、適切な機動的な対処をしなければならぬようなことも考えておる次第でございますが、今直ちにどうこうということはございません。
#221
○正木委員 このことが、物価問題だけではなくて貿易摩擦にも相当大きな影響が出てくるだろうと思うのですがね。
 これは予算案の審議中だけれども、内需拡大について、私に言わせればもう大した手が打たれていない六十年度予算からいって、貿易摩擦の問題を解決するための内需拡大、外需依存からの脱却ということは非常に大きな命題なんだけれども、貿易摩擦問題、この円安問題と関連して外務大臣、どんな見通しを持っていますか。
#222
○安倍国務大臣 これはやはり円安・ドル高というのは正常な貿易が行われるに当たっては非常に大きな阻害要因といいますか、そういうことになっておる。やはりドルが高いというのが、それはもちろんアメリカの景気とも絡んで出超をさらに加速させることになりますし、さらにまたこのドルが高い、円が安いというのは、輸入に当たって製品輸入をしなければならぬ、そういう面からやはり相当な問題が起こってきておる、こういうふうに思いますし、全体的に見れば、今、金子企画庁長官のおっしゃるような状況で、我々としては心配せざるを得ないわけです。しかし同時に、そうした問題とともに、日米間では根本的に市場開放等の問題もありますから、そういう面も含めてお互いに相協議をしていかなきゃならない、こういうふうに思っております。
#223
○正木委員 金融の自由化問題、時間が足りないが、時間があるだけちょっとやりましょう、大蔵大臣。
 あなたは財政演説で、金融の自由化という問題について相当力点を置いていろいろとおっしゃっているわけですね。金融の自由化及び円の国際化を進めていくということを言明されたわけでありますけれども、これはちょうど去年、五十九年の五月に、大蔵省が消極的な姿勢を一変させて「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」を発表したときには、我が国の金融制度や政策の歴史的な転換を示す画期的なものと言われたことから考えても、非常に重要な意味があると考えております。
 そこで、こっちで言っちゃいますけれども、大蔵大臣の演説の内容ですが、要約すると、金融の自由化及び円の国際化というのは、まず第一に、我が国の経済及び世界経済の発展または国民生活の向上から見て極めて有益なものである、その方向は、大蔵省が「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」や日米円ドル特別会合報告書に示されている内容に沿って進めるとか、三番目に、これまでの金融政策の中心に据えてきた信用秩序の維持に努めるが、国民も個人の自己責任について強く認識しなさいとか、四番目に、それぞれの金融機関は自由化時代でも生き残れるよう経営努力をしていきなさい、こういうふうに言われたというふうに聞こえているのですが、こういうふうに理解していいですか。
#224
○竹下国務大臣 ことしの財政演説に特にページを割がしていただいたのも、昨年来展望を出して取り組んできて、現実、金融王国というと少しオーバーでございますが、あれだけの資本流出、言い方によれば海外に対する資本提供というようなものを行っておる日本の国として、国際化、自由化は原則的にまずいいことだという認識に立っております。したがって、今おっしゃいましたことについて触れさしていただいたわけです。心配はございます。いわゆる漸進的にやらなきゃならぬ小口預金の自由化とかいう問題は残っておりますし、今後まだまだ残された問題はございますけれども、原則的に日本のためにいいことだという考え方の上に立っておるからあえて主張したわけであります。
#225
○正木委員 質問がこれだけあるのですよ。これはとてもできませんから、一つだけ要望いたしておきます。
 それで、金融の自由化で非常に重要なことだと私が考えていることは、政府が明確なビジョンを示してもらいたい、そして金融機関や国民がそれに対して対応策を求めていくということではないだろうかと思うわけであります。つまり、やれるところからやっていくのだという考え方ですと、自由化による摩擦というものが起こってくるわけです。自由化で金融機関同士の摩擦であるとか国民と金融機関との間の摩擦であるとか、また観点を変えると、自由化されたものとまだされないものとの摩擦というようなことが起こってくるわけですね。こういう意味では、大蔵省の現状と展望は、預金金利の自由化を初めとして不明な点が多数あるのです。政府は、金融自由化のゴールとタイムスケジュール、こういうものを示す必要があるというふうに考えているのですが、これは今後そういうふうになさいますか。
#226
○竹下国務大臣 いわゆる自由化、国際化の問題、資本市場の問題あるいは業際、制度問題等々、ある種のタイムスケジュールを持ちながら進めてきておることは事実でありますが、今おっしゃいました金融自由化の見通しの中の預金金利規制の緩和、撤廃というのは、今大口から始めてきておりますので、されば小口預金の金利の自由化はいつまでということはまだ決めておりません。これは検討であります。
#227
○正木委員 ですから、そういうものを具体的にはお示しになりますか。
#228
○竹下国務大臣 今日までに示しておりますところは、今自由化への検討でございますから、その検討の結果として、タイムスケジュールとして示したいと思っております。
#229
○正木委員 それ以外の自由化に対する考え方についてお聞きしたかったことがたくさんあるのです。そのために日銀総裁までおいでいただいたのですけれども、ちょっと時間がありませんので、総裁、結構です。ありがとうございました。きょうはこれでお引き取りいただいて結構です。
 それで、民活の問題ですね、民間活力を活用するという問題であります。これも社会資本の整備の問題と絡んでたくさんあるわけであります。私は、民間活力を活用するということについては決して反対ではありません。むしろこれを積極的に進めるべきであるという立場にあるのです。ところが、どうも民間活力の活用という面については、議論やスローガンだけが先走りをして内実が伴っていないような気がしてしようがないのです。
 確かに、非常に財政的には窮屈になりまして、財政力が枯渇してきた。我々も、先ほどもちょっと申し上げましたが、循環的赤字をなくしていくためにはどうしても社会資本の蓄積というところから財政配分をして、そして経済成長の維持に努めなければならぬというふうに考えているわけでありますけれども、これが御承知のとおり公共事業費さえああいうふうに削られてくるというような状況の中で、しかしそういう声にも耳を傾けなければいかぬ、どうしたらいいだろう、金のないところはどこで金を調達すればいいだろう、そういう窮余の一策として民間活力の活用ということが総理の口から出ているんじゃないだろうかというような気がしてしようがないわけですね。そういう意味で、民間活力を活用するという問題について、河本大臣が特命相となってこのことについて一生懸命おやりになっているようだけれども、これもああなるほどというようなものも余り出てきていないようだし、まだ検討中なのかもわかりませんが、その点ではちょっと言われ過ぎて実体が伴っていないような気がしてしようがないのです。
 そこで、いろいろ質問があるのですが、ちょっと典型的なものを申し上げます。
 総理の口にかかると何か民間活力の活用のお手本みたいに、モデルのように言われているのが、実は私の地元の関西国際空港株式会社なんです。これはいろいろ調べてみると、形式的なことかもわかりませんし、ちょっと私も党首会談のときにも申し上げましたけれども、これは関係省からもらいますと、全職員数が百三十九人、六十年一月十七日現在。全部お役人なんですよ。このうち民間出身四人だけです。官庁出身の皆さん方が無能力であるということを言っているわけじゃありませんよ。しかし、民間活力を活用するということは、一つは民間の資金を使うということ、同時にまた、民間が持っている知恵だとか働きだとか経営能力だとか、こういうものも、まあこう言ってはなんだけれども、よく言われている言葉では親方日の丸というような経営の中へそういう新しい血を入れて、そして賦活させて、そして民間の持つすばらしいバイタリティーをここで活用していこうというのが民間活力の活用だと思うのだけれども、そうなってくると、これは余りにもちょっとこう腑に落ちぬというか納得できないというか、なるほどこれで民間活力が活用されるんだなという形にはなってない。これから私は考えると、金は一応民間からも出させたけれども、実際の経営ということについては、民間の活力というもの、民間の能力というもの、民間の力というものをどういうふうに利用していこうと考えていらっしゃるのかということで疑問を感じているのですが、総理、どうですか。
#230
○中曽根内閣総理大臣 私もでき上がりのとき名簿を見まして、正木さんと同じようにちょっと投入出身が多過ぎるなと思いました。
 ただ、今の仕事の内容を見ますと、一つは島づくりでありまして、それからアクセスの問題とか、割合に行政官庁との連絡やら交渉の仕事が多い模様なのでございます。島づくりという点では、三建におった権威者が、国際的にも目の肥えているのが社長になりまして、これはまあこれでいいだろうが、しかし、彼の周りに民間の本当の知恵やら才覚を建言できる人間がいるのかいないのかということが問題だと思いますが、ちょっとその点は弱いという気がいたしました。それで、ほかの官庁やら公共団体との連絡という面ではそれはよきそうだという気がいたしまして、プラス・マイナスすると、私の期待から見れば民間人が少なかった、正直に申し上げてそういうふうに思いました。
#231
○正木委員 できているのですから、これをどういうふうに入れかえろとかなんとかというような要求はしませんけれども、要するにそういう民間の持っているバイタリティーというものがこの会社の経営の中に発揮されるということが大事だと思うのですよ。
 監督官庁と言うと語弊がありますけれども、直接これと関係の深い官庁というと運輸省になるわけですね。この後、運輸省、関西国際空港株式会社の運営について非能率、非効率にならないようにしっかりやってもらわなければいかぬと思うのですけれども、どうでしょうか。
#232
○山下国務大臣 ただいま総理から答弁がございましたとおりでございますし、またこの問題につきましては、関西における財界あるいは地方公共団体こぞって非常な注目の中で行われる、また御協力をいただいて行われるプロジェクトでございますから、かねがね総理からも民間活力を十分活用するようにという御指示はちょうだいをいたしております。
 ただ現段階は、今総理からお話がございましたように、比較的海の深いところに島をつくるという、しかもその鳥自体がかつてないような大きなものでございます。したがいまして、これらのノーハウは現在やっぱり国が持っている、あるいは一部地方公共団体も捲っておりますけれども、まずこれを生かしていくということでございます。同時にまた、民間活力も必要でございますけれども、経費その他の面から少数精鋭主義という建前をとり、またそのように督励いたしておりますので、現段階におきましては、そういう少数精鋭というのはノーハウを持っております国が中心となるべきである。しかし、これから逐次これらの施工に関する設計とか策定に当たりましては、民間のコンサルタント等も導入しますし、あるいはまた技術研究会等もつくってどしどしこれらを取り入れながら肉づけをしていく、そういう方向ではやってまいる、ただ、現段階ではそういう時点でございますから、ノーハウ等の関係からしてもやはりこれは園の責任で、国が持っておる技術でもうてまずやるべきである、こういう段階であるということでございます。
#233
○正木委員 それと同時にやっぱり国の方も相当な関心を持って、いわば民間活力活用の一枚看板というべきことでありますから、総理にとっても重大なプロジェクトであろうというふうに考えます。
 そこで、幾つかの問題がまだ未解決のまま残されているのです。これは質問通告しないで突然だけれども、環境庁長官いけますかな。向こうに前島、今は沖出し案になっておりますけれども、沖へつくる島との接点になる、内陸にくっつけて沖出しの鳥をつくりますけれども、これが瀬戸内海の環境例とか法との関係で環境庁の許可をもらわなければいかぬ問題があるわけです。これは島それ自体は環境庁の方でお許しをいただいたのだけれども、この沖出しの島についてはまだなんですけれども、これは出していただけるのでしょうね、わからなかったら政府委員でも結構ですよ。
#234
○石本国務大臣 十分のお答えになりますかどうかわかりませんが、瀬戸内海環境保全特別措置法がございますので、この前島の問題につきましては、まだ具体的な相談を受けておりませんけれども、我が庁としましては目下検討を続けさせていただいておりますし、また意見を求められましたら、それに適応できる回答をするべく努力をいたしておるところでございます。
#235
○正木委員 これは実はそこへ連絡橋がかかるわけで、どうしても沖出しの島が必要なのであります。したがって、空港本体の島はもう許可はもらっているのだから、あの島は許可するけれどもこれは許可しないなんてことを言われると、これはもうはちゃめちゃになってしまうわけで、この点はひとつ同じ条件だということでお考えをいただきたいことを御要望申し上げておきます。
 それからもう一つは、これは総理に答えていただくことがいいかどうかなんだが、総理に答えてもらうとありがたいのですが、やはり積極的に推進するという形で、先ほど申し上げたように民間出資の希望が非常に多くて、二百億円という予定額を超えて四百八十億に達したというふうに聞いておりますけれども、政府はこの民間出資を二百億に限定せずに、出すというものは出してもらって民間活力の活用の実を上げた方がいいんじゃないかと思うのですが、これはいかがなものかということ。
 それから、今まだ空港のアクセスが、交通アクセスの問題が解決していないのです。これは湾岸道路であるとか、鉄道で言うなら外環状線の問題であるとか、ないしはお客さんを運ぶための鉄道を国鉄阪和線とそれから南海本線を使うとか、それを島へ折り曲げて入れなければいけませんが、この問題であるとか、そのほか近畿自動車道という道路の問題であるとか、いろいろ交通アクセスの問題があるのですが、これは相当国が助けてやらないと、地方貞治体任せでは恐らく解決しない問題があるわけです。この二ついけますか。
#236
○山下国務大臣 まず民間出資の問題でございますけれども、先ほども申し上げましたように、関西新空港というのは関西地域における地域開発の最も大きなプロジェクトでございます。したがいまして、これも総理からもうかねがね何回となく私も仰せつかっておるのでございますけれども、民間活力をそういう面において取り入れるべきだ、私も全く同感でございまして、これにはあらゆる地域の力をまたおかりしなければならぬということで、政府の出資のほかに地域の経済界を中心とする一般の万々、そしてまた地方公共団体、こういう三者を一体として資本を構成するという形で進んでおります。現在、一応千二百億円ということを予定をいたしておりまして、政府が八百、それから民間から二百、それから地方公共団体から二百ということでございますが、その二百という民間の分が四百八十億、おっしゃるとおりでございます。ただ、法律によって五〇%以上国が取得するということになっております。これはこういった公益性の高いものは当然だと思いますので、したがいまして、そういう面からしますと、一挙にこれを全部吸収することがいいのか悪いのか。と申しますのは、地方公共団体もいろいろまたお考えがおありのようでございまして、そのために地方公共団体とのバランスをとっておりますから、それから一階に出資するとかいうその出資の仕方についてもいろいろと今詰めておる段階でございまして、民間活力導入ということは十分承知いたしておりますから、なるだけひとつ取り入れていきたい、現段階においてはそのように存じておる次第でございます。
 なお、アクセスの問題につきましては、これも、大体今飛行機の利用者がだんだんふえてきたというのは、これは距離よりもやはり時間価値を非常に評価する時代になってまいりまして、距離というよりも、いわゆるどこからどこまで何時間かかるかということでございます。したがって、大阪の空港を利用される方は、大阪から京阪神というのは一つの都心と申しましょうか、そういうところまでを含めた時間を計算されるわけでございますから、このアクセスが非常な機動性を持ったものにならなければ、いわゆる航空の価値というのは私はないと思うのです。成田をつくりましたときに、このアクセスが成田に対して十分の機能を発揮するような状態ではなかったという、そういった前車の轍を踏まないように、国がひとつ民鉄等に至るまでいろいろと私の方で指導しながら、また国鉄の問題もございますけれども、全般にわたって今申し上げましたような立場から推進してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
#237
○木部国務大臣 正木先生御指摘のとおり、関西空港の建設の促進に当たりまして、公共投資の整備ということが大変大きな問題であることはよく承知をいたしております。そういう意味で、御承知のとおり財政が大変厳しい中でありますけれども、私どもは、そうした基盤整備やアクセスの問題につきましては最善の努力を尽くしてまいりたい。
 特に一番大きな問題になりますのは、近畿自動車道の和歌山線のアクセスにつきましても、これはもう最重点で整備をしなければならぬ。それからまた、下水道その他の基盤整備の問題、それからまた従業員の皆さん方の住宅の建設の問題、そういうふうな幾多の基盤整備を実行しなければならぬことがたくさんございますが、予算も大変厳しい中でございますけれども、特にアクセスにつきましては、最重点で開港までに少なくも和歌山線だけは整備できる、そういう方針で最善の努力を尽くしてまいります。
#238
○正木委員 交通アクセスの問題は、空港を利用する人たちにとって非常に重要な問題なのです。しかし同時に、空港は利用しないけれども、その空港の周辺に住んでいる住民というのがいるわけで、こういう人たちは、今まで強い反対運動が起こっていた中で空港を受け入れるというふうに腹を決めてきたわけなのであって、そのためにはやっぱり私は、公害ゼロというふうに大阪府の知事は言っているけれども、公害ゼロの空港なんて存在しないだろうと思う。ゼロに近いという意味だろうと私は思うのですがね。そういう問題についてもいろいろと耐えていこうとしておる。それは大阪府で言うならば、大阪府の北の方は万博以来随分公共投資が入った、ところが南の方はその点では非常に消極的であった。だから大阪では北高市低という言葉があるぐらいでありまして、岸知事になってからその点は大いに改善されて南の方にも力を入れてくれるようになってきたけれども、しかし、やっぱりそれは一つはこの空港というのがてこになっているわけで、こういう点では、建設大臣にもぜひお願いしておきたいことは、その周辺整備、周辺の住民のためのいわゆる住みよい空港周辺の状況をつくり上げていくというためには相当頑張ってもらわなければいかぬと思うのです。今大阪府でこの計画を立てておりますけれども、これの実行に当たっては、どうしてもやっぱり国の力をかりなければできない部分というのが多方面にわたってあるだろうというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 近畿自動車道の問題について建設大臣は言及されましたけれども、もう一つは湾岸道路の問題もあるわけです。この湾岸道路は大阪湾をずっと北から南へ来るわけだけれども、できれば北から南へ来るだけではなくて、まだ泉大津というところまでしか来ておりませんから、空港までは相当な距離をやっていかなければいかぬわけなので、できれば空港から逆に北上していって、北から南へ下がってくるということでドッキングするというぐらいのことはやってもらわないと、交通アクセスとしては開港時までに間に合わないだろうと言われているぐらいの緊急の問題でございます。
 いずれにせよ、日本で初めて二十四時間開港と言われる画期的な海上空港ができ上がるわけでありますから、これにはぜひ皆さん方のお力を結集していただいて御援助いただかなければならぬだろうと思います。特に民間活力の活用ということについて力を入れていらっしゃる総理のいわば看板的なプロジェクトですから、総理からもひとつ力強い御支援のお言葉をいただきたいと思います。
#239
○中曽根内閣総理大臣 関西新空港の建設は、民間活力の第一のモデルのケースとして私とらえておりまして、民間活力を十分に活用した立派なものとして仕上がるように懸命の努力をいたします。
 御指摘の人的面あるいは資金面あるいはそのほかのアクセスの整備等につきましても、御趣旨に沿いまして全力を尽くしたいと思いますので、よろしく御指導をお願いいたしたいと思います。
#240
○正木委員 ちょっと時間がありますな。総理の後から答弁しにくいだろうと思って、これは非礼であるかわかりませんけれども、何しろお金を握っている方は大蔵大臣ですから、この点どうでしょうか。
#241
○竹下国務大臣 今総理のお答えになりました方法で、あらゆる調整努力をしたいと考えております。
#242
○正木委員 あと五分か。山口さん、五分でやれるかい。連続のお休み、あなたの得意とするもの。あれは法制化の方向でいくんですか、それとも行政指導でいくんですか。
#243
○山口国務大臣 公明党や民社党の皆さんと労働団体との協議等におきましても、ゴールデンウイークの連続休暇の法制化が強く要望されておるところ、十分承知しておるわけでございますが、中小企業とか小規模企業あるいは商工業者、流通業等がいきなり法制化でがばっとこうなりますと、その対応等につきましても非常にまじめに真剣に対峙していただいているということもございまして、まずその環境づくりを進めていかなければならないということで、我々としてはパンフレット等をつくりながら、行政指導で休暇の拡大、時短に対する認識、いわゆるよく働きよく英気を養う、こういう一つの意識革命、経済的認識を深めていただくということで今進めさせていただいておるわけでございます。
#244
○正木委員 私もそれに賛成ですよ。これはやっぱり中小零細企業はなかなかそう簡単に休めないのですよ。それを、法律でないと休まないから法律をつくって休まそうという考え方は、ある一面ではわからないこともないけれども、まだ私のところなんかやはり小企業のところが多いですけれども、日給月給というところがあるんだよ。要するに、出勤したら一日幾らで、一カ月まとめて給料をくれるというところがあるんですから、それは有給休暇じゃないわけですね。だから、そういうところは有給休暇にするということから始めていかないと、なかなか休めない。それから、下請産業が非常に多い。下請産業には、このごろ大量に相当時間的な余裕を持って元請企業からの発注というのはないのです、部分品なんかつくっているところは。あすの朝までに何個つくって持ってこいなんというような話が非常に多いわけですね。そういうところは、親企業の方でそういう点は配慮しない限り休もうにも休めない。それはできません、休みですからできませんと言ったら、その仕事はよその方に回ってしまうというのでそれを断れないというような状況がありますよ。特に流通だとかいわゆるレジャー産業というのは、むしろ休みの日が書き入れどきなんだから、これも一斉に休ますというわけにはいかない。またそんなところがなくなってしまえば、休む価値なんか全くなくなってしまって、家で寝転んでいるよりほかに道がないということになっちゃうからね。
 そういう点ではまだまだ調整する分野というのは物すごくたくさんあるだろうと思いますので、あなたはあなたで一生懸命やっておられるのは私は敬意を表しますけれども、実情に沿うように、みんながよくやってくれたと言えるような形のものに持っていくために、なお検討をして頑張ってください。
 以上です。ありがとうございました。これで終わります。
#245
○天野委員長 これにて正木君の質疑は終了いたします。
 次に、上田哲君。
#246
○上田(哲)委員 私は、GNP一%枠問題に絞ってお伺いをいたしたいと思うのでありますが、その前に一つ、行政府の長としての総理大臣の政治見識を問いたい問題があります。
    〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
 昨年の十月十九日の東京高裁の判決、例の違憲判決でありますが、内閣の解散権が事実上制約されることがあってもやむを得ない、この判決を受けて、総理は二回にわたって、特に昨年十一月一日の記者会見で次のように言われたのであります。「行政府である内閣に、最高機関である衆議院の議員の首を切る権限が与えられている」。「一種の統治行為、統治権の断面といえる。その点から見て、先の東京高裁判決はいかがなものか。」総理、解散権というのは衆議院の議員の首を切るものでありますか。
#247
○中曽根内閣総理大臣 それは俗っぽい表現で申し上げたので、少し荒っぽ過ぎると思いますが、衆議院解散はお互いが経験しているように、やはり衆議院議員としての任務ができなくなる状態をつくる、そういうことになると思います。
#248
○上田(哲)委員 しかし、この表現はちょっと問題がありますね。御訂正になりませんか。総理大臣が首を切るための解散ではない、内閣の信を国民に問うものだと私は思うのですが、違いますか。
#249
○中曽根内閣総理大臣 政治的には信を問うということでありますが、やはり任務がそれで終了する、そういう結果になる、そういうことであると思います。
#250
○上田(哲)委員 御訂正にならないので、どうも私はこれはひとつラフ過ぎる見解だと思うのでありますが、私がお伺いしたいのは実はそこではないのでありまして、統治行為論であります。
 統治行為論と呼ばれるのは、「ある種の国家作用は、そもそも司法審査の対象として適合的ではなく、かりに「法律上の争訟」のかたちをとって、その法律上もしくは憲法上の効力が問われることがあっても、裁判所はかかる国家作用について法的判断をくだしてはならない、」という、そういう主張である。私は奥平学説をとるものでありますが、この東京高裁の判決は、総理が本会議等で答弁されましたように、確かに法的に解散権を縛るものだとは思いません。また一九六〇年六月八日の大法廷判決でそうした判例もあるのであります。しかし、この東京高裁の判決があえて言っているものは、つまり事実上制約されるという意味は、選挙権という国民の基本権というのは行政権に優先させるべきだ、つまり行政権は選挙権という国民の基本権の上にあるものではない、こういうことを言っていると思うのであります。
 この際、司法側が統治行為論をとって、憲法上の諸利益の比較考量による一種の司法政策というべきものだと考えて、行政権が司法権の上にあるということを意味しているわけではないわけでありますから、司法が統治行為論を司法の側から述べることによったとしても、それで行政権を侵さないという立場をとったとしても、私が言いたいことは、行政の側がみずから統治行為論を振りかざすというのは越権ではないか。しかも「高裁判決はいかがなものか。」と統治行為論を背中に背負って総理が言われるということは、問題ではないか。
 もし行政権というのが統治行為論によって三権分立の頂点に立つということになれば、総理は何でもできることになってしまう、ファッショになると思います。私は、統治行為論は、行政権がもちろん憲法四十一条に言うところの国会、最高機関の上に立つものではない、いわんやその意味での国民の基本権である選挙参政権の上に立っているものではない、そういう意味で、総理は法的に縛られるかどうかの問題ではなくて、三権分立の原点に立って統治行為論を行政の側から言われるというこの御見解は撤回さるべきだと思うのですが、いかがですか。
#251
○中曽根内閣総理大臣 行政の側からいたしまして、行政が憲法上最も重要な機能として付与されている機能が我々の側から見まして侵食される、そういう危険がある場合に、やはり憲法の筋に従って防衛するということは私は許されることではないかと思うのです。要するに火の粉が振りかぶってきたんですから、やはりそれは火事にならないように防衛しなければならぬ。そういうふうな立場が行政の側にはあると思うのであります。
#252
○上田(哲)委員 私がこれから防衛論争をやるからといって、防衛しなければならぬとか火の粉がかかるとかというふうに総理が統治行為論を振りかざされるということは非常に問題だと思うのです。三権分立はお互いに侵すべからざるものであり、しかもその三権分立の上に立って司法側が統治行為論を打ち出すことは、司法からする行政へのわきまえの問題であって、それを乗り越えて、やれ攻撃を受けたとか火の粉がかかったとか、統治行為論を振りかざせば何でもできるんだというような考えというのは、私はファシズムに通ずる、議会民主主義というものをわきまえない言い方だと思うので、これはひとつ御撤回を要望しておきたいと思います。
 いわんやまた、これまでの団藤判決などの中で、少数意見でありますけれども、さまざまな意見があります。この判決の中でも言っているのですが、内閣の解散権を確保するために違法の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈を行うことは、本末を転倒するものである、こういう見解が出ています。私は、陸続として出される各高裁の判決や、さらにこの後予想される最高裁の判決も、今日の不平等の選挙は明らかに違憲なりと打ち出されると思います。そういうことがわかっていて、しかもこれ以上いった場合には選挙の結果の無効も判決しなければならぬというふうな意見が出ている中で、私は、法理の問題ではなくて、政治のあり方として、総理はそうした判決を向こうに見ながら定数是正を行わない。では解散というものはできないのだ−法理ではありませんよ。政治見識としてできないのだということを明確にされるべきだと思います。いかがですか。
#253
○中曽根内閣総理大臣 解散というものは、先ほど来申し上げますように、憲法上行政に認められた国政運用上の重大な機能でありまして、憲法の筋に従ってそれは適正に行使さるべきものである、そう考えております。
 裁判所側の判決等を見ましても、違憲あるいは違憲状態にあるというような文字の指摘がありましたが、しかし、あの高裁判決に関する限りのものでは、要するに、憲法上の機能である解散という問題と選挙法上の、つまり定員の配分という選挙法上の法律に基づく均衡性、公平性の確保という問題とは次元が違う問題なのですね。私はそう思います。だから、それは法理的には分けて考えられてしかるべきである、そう思っております。
 私は素人でありますから、これ以上は法制局長官から答弁させます。
#254
○上田(哲)委員 いや総理、だから縮めて最後の結論を聞いているのです。そういう法的な解釈の問題として言えば、私は法的に解散権が縛られているというふうには思いません。しかし、少なくとも判決がこうした形で方向性を示しているということになれば、総理としてはその与件の中で、定数是正を行わないでこのまま解散を行うことは政治の見識として許されないとお考えになっているか、この一点をお答えいただきたいのです。
#255
○中曽根内閣総理大臣 そういう環境にある、高裁判決あるいは最高裁判決が出たという環境にあるということは、もちろん自覚してやるべきであると思います。
#256
○上田(哲)委員 私の見解と同じ立場にお立ちになったのだと理解をいたします。
 そこで、一%論でありますが、私は一%問題について、まず基本的にこの一%枠の意味というものをはっきりさしておかなければならないと思います。そこで第一に、大綱と一%枠という関係でありますけれども、総理は今国会の本会議等々で、一%枠より大綱達成が重要である、こういうふうに再三答弁されておられますが、そのお考えに変わりはありませんか。
#257
○中曽根内閣総理大臣 五十一年の三木内閣のときにこれができた経緯を見ますと、たしか秋にまず大綱ができまして、そしてそれから一週間後にあの一%をめどとするという閣議決定が行われた。やはり大綱というものが中心にあって、そしてこれを運用していくについてこういう注意が必要だというので、次いであれが追加的に行われた、私はそういうふうに解釈しております。
#258
○上田(哲)委員 だから、その二つは別だということですね。したがって、一%か大綱かということになれば大綱をとる、こういうことですね。
#259
○中曽根内閣総理大臣 その後歴代内閣を見ますと、たしか福田内閣でもどこかの委員会で、それから大平内閣、鈴木内閣、今の私の内閣に至る間、その三代の内閣では明確に大綱の水準達成に向かってまず努力いたしますということを相次いで言ってきております。ですから、大綱の水準達成というものがやはり努力の中心目標であると思います。それをやるについてこういう注意をしてやりたい、そういうことだろうと思います。
#260
○上田(哲)委員 やはり一%より大綱という考え方なんですね。総理は大綱の決定が昭和五十一年十月二十九日で一%枠決定よりも一週間早かったということをしきりに言われるのですけれども、これは違うのです。これは同じものなんです。例えば、今防衛次官の夏目さんが五十七年七月の国会で答弁しております。「今回の一%が昭和五十一年に決められたのは、「防衛計画の大綱」が決められて、しかもその中には経費についての規定というのは何もなかった。それまでの一次防から四次防までの政府決定の計画には、一応経費計画というものがあったわけでございます。そういったものがなかったことに対する御批判、」「もちろん一%以下に抑えたいというふうな御意見もあったと思いますが、そういうふうな経緯を経て、あの五十一年の国防会議、閣議の決定がなされたというふうに記憶しております。」どうです、同じなんです、これは。一次防から四次防まではずっと経費がついていたのです。大綱には経費がついていないから、その経費をここでやろうじゃないか。同じ内閣が一週間で、表裏一体のものとして決めるというのは当然なことなんでありますから、一%と大綱が違うのだという考え方は、はっきり間違っているわけです。それなのに一%と大綱を別なものと考えて、一%も守りたいが、大綱の方があるのでこの大綱のためには仕方がないという考え方は、そもそも策定の精神を変えるものですね。一%と大綱とはそもそもスタートにおいて同じものであったということを確認してください。
#261
○中曽根内閣総理大臣 防衛庁長官をして答弁させます。
#262
○上田(哲)委員 防衛庁長官ですか、それじゃいいです。そういう時間のむだ遣いをしてもらっては困る。これは明らかにはっきりしていることなんであります。スタートにおいて一%と大綱が表裏一体のもので、別なものだということは、これは詭弁なんです。
 一%の意味の重さというのはもっとほかにもあります。一%は歴史的にいって非常に大事な経過をたどってここまで来た十年近い国会の論議があるのです。この論議は三十年代は国民所得の比較であった。四十三年十一月十二日に増田長官が衆議院の内閣委員会で、GNP一%くらいということを初めて言われた。私の調べではこれが初めですが、四十五年九月二十九日の参議院内閣委員会では中曽根防衛庁長官が国民経済その他との関係で一%、これはあなたが私にお答えになったのです。そして四十七年三月七日の衆議院予算委員会では江崎防衛庁長官が、一%は三次防当時からの不文律だと答えられた。そして四十七年に四次防が決まって、このときに一%というのがはっきり出てまいりました。そしてその秋、田中総理が訪中をされて、北京で一%以内だから中国への脅威にはならないと演説された、こういう事実もある。そして田中総理は四十七年十一月十日に参議院予算委員会で、平和時における限界というものは一案政府としてつくるべきであると約束された。これは私に答えたのです。こういうものがあって、四十八年二月一日には増原防衛庁長官が平和時における防衛力というのを衆議院予算委員会にお出しになった。これは一遍撤回されましたけれども、五十年九月に坂田防衛庁長官が防衛を考える会をおつくりになって、「国民支持の限界は一%以内」こういうことで一%が閣議で決まっているのでありまして、一%の意味というのが無性格であるなどというようなものではない。長い国会論議の結果、結晶としてこういうものができ上がったということは、事実の問題として総理、お認めになりますね。
#263
○中曽根内閣総理大臣 ただその背景には、社会経済あるいは国際情勢の当時の背景というものがあるのです。ですから、あの当時の人々の言動等を見ますと、大体あのときつくった経済計画では成長率が約一三%前後であったと思います。これが続くという予想で一%というものが論議されておる。国際情勢はデタントという状況で、割合に緊張が緩和されているという状態であったわけです。
 しかもあのころ、その後の、ここにいらっしゃる三原元防衛庁長官の御答弁等を見ますと、一体どれぐらい続くのかという質問に対して、たしか四、五年というふうにみんな答えているようですね。金丸さんもそうでしたし、三原さんも大体四、五年の見当だと。それはあのころの経済成長力を見て水準達成がそれぐらいでいける、そういう考えであったのであると思います。ところが、その後石油危機その他によって経済成長率がぐっと落ちてしまって、なかなかそのとおりいかなかった、そういうような歴史的背景もまた別に存在するのであります。
#264
○上田(哲)委員 これは歴史をゆがめるものであります。これは後にまた明らかにしますけれども、経済成長の関係について言えば、総理自身が四十五年の段階で、国民経済との関係、その他の政策との関係を見て一%ぐらいというのが妥当だろうということを将来を見通して言われているし、あるいは増原長官も、経費がGNPの一%の範囲内で適切に規制されることを予想し云々、無理なく整備されるものだということを言っているわけでありまして、まあそれは後ほど明らかにしましょう。
 私は一%の意味の重さについてさらにもう一つ、三つ目に言いたいことは、これこそ戦後最大の国民合意だ、こういう重みがあるということを言っておきたいのであります。大綱決定以来九年間になりますけれども、各総理はそれぞれ、これを守るということを言わざるを得ない状況が続いていたわけでありますし、最近の世論調査、例えば朝日新聞の八四年五月二十四日の世論調査では八〇%、毎日新聞では同年十二月十三日の調査で七二%、圧倒的な国民が一%を厳守するべきだと言われているわけです。この世論の重みというのは、戦後の総決算と言われる総理といえども、非常に重みのあるものだとお受け取りにならなければならぬと思うのです。この世論の重みをどうお考えになりますか。
#265
○中曽根内閣総理大臣 一つの大事な資料として考えております。
#266
○上田(哲)委員 大事なというところの意味が非常に危ういのでありまして、戦後のこの十年近くに及ぶ国論、私はそれをもっと大事にしていただかなければならないと思うのです。そもそも我が国の防衛費の費目構成というのは、例えばNATO方式やアメリカとは非常に違うのです。NATO方式などというのは、軍人恩給を入れていますから、その方式で計算すれば一・数%以上になりましょう。アメリカは軍事費が非常に大きいけれども、NASAの科学研究費などというものをどんどん入れているわけですから、そういう意味では枠組みが違うのです。もしそういう議論をするならば、我々は今一%なんというのは全く意味のない数字だということになってしまうのだが、日本の特殊性に基づいてこうした長い世論や国会論議というものから積み上げた、例えば戦後一番初めに組まれた防衛費というのは、保安庁費と日米安全保障条約に基づく支出金というものであって、非常に軍事費というものを絞って制限していこうという発想の中に積み上げられた、極めて日本的防衛費という形式があるのです。こういうものの中に戦後四十年をかけて七割、八割を超える国論が集中して一%を守れと固まっていったということは、一%という数字が意味があるかないかなんていう議論をするのはまことに不見識であって、この一%という歯どめに日本的防衛費というものの性格と内容、形式を国民がしっかり寄せ集めてきたという重みがある、このことを私は大事にしなければならぬと思うのです。これを、単に天井まで来たからもう数字を無意味なものにしてしまおうというのでは、国論の趨勢なり国会の議論というものは何の意味もなくなってくると思うのです。
 私は、総理に特に言いたい。総理と私たちとは安全保障論について根本的に違います。違いますが、こうした今のような経過をとらえるならば、また当然ながら国論の上に安全保障論が立たなければならないというものである以上は、この一%というものを形成してきたナショナルコンセンサス、この認識を今大事にして、意見は違うけれども共通の広場をここにつくって、安全保障論争というものを建設的な、内容のあるものにしたい。そういう意味で、一%を守るべきだという観点をどうお考えになりますか。
#267
○中曽根内閣総理大臣 ですから、守りたいと申し上げておるのであります。
#268
○上田(哲)委員 まじめさが足りません。中曽根さん側の中でも、例えば去る一月三十日には、有志の軍縮委員会で、三木元総理や赤城元防衛庁長官や鯨岡元環境庁長官らが集まって一%堅持の決議をしていますよ。あなたが率いるすべての人たちが、今のようなそっけない言い方で、守りたいと言いながら守らずにいこうなどというような考えには立っていない。これには広い国論が後ろにあるのです。私はそういう意味で、もっとまじめな論議をしていただくことを、一%論議はいつどういうふうに発展できるのかという懸念を持ちながら申し上げておきます。
 一%問題についてのもう一つ大事な整理しておかなければならない問題は、人件費との関係です。総理は事あるごとに、一%の遵守は人件費の膨張によって損なわれてしまうということをおっしゃる。六十年度の人件費、糧食費は一兆四千百三十九億円でありまして、防衛費の四五%です、これを大変だ大変だと言われる。四五%なんというのは昔からちっとも変わっていないのであります。人件費は大体こんなものであります。特に、五十一年度は五六%もあった。五十五年度は四九%、五十八、五十九年度は四四%になり、ことしは四五%という程度です。人件費、食糧費の構造というのは基本的に変わってないのですよ。だから、人件費が問題ではない。あくまでも装備費なんであって、装備費の後年度負担が高まることによって実は人件費の比率はじわじわと落ちておるんですよ。ここのところが問題なんでありまして、その後年度負担による歳出化の推移というのは、五十二年二〇・八%だったものが五十九年三三・五%、六十年三四・二%、そして六十一年には三五・二%になろうという姿なのであります。
 また、人勧を大変目のかたきにされるんだけれども、人勧を一%突破の理由にされるというのは、まさにこれは絵にかいたような本末転倒でありまして、昭和五十三年度までは五%を当初予算に計上していたのです。それが五十四年度に二・五%になり、五十五年度に二%になり、五十六年度以降一%になった。本年度は一%分が百三十二億円です。これは本来、当初予算に五%を積んでいけば問題がないのであります。それが六十年度予算では八十九億円のすき間しかないわけだから、一・六七%が積まれたらこれで一%を超えてしまう。そういう時間的なずれを使って人勧のせいにされる。これはおかしい。当然政府の中にもこれではおかしいという意見があってしかるべきであって、新聞報道によると、この議論の中では後藤田長官は、人勧の積み残し分を三年間で解消ということを約束されたから、その約束を守るためには平年度分一・四%を積んで六・五%増にしておかなければ筋が通らぬと言われたと報道されている。もし本当ならば、私は後藤田長官の意見は正しいと思うのです。どうですか。
#269
○後藤田国務大臣 防衛庁の予算の中に人件費が入っておるわけですから、公務員の給与改善に伴う人件費の増が実質的にいわゆる一%問題を論議するときに当然影響があることは当たり前のことだろうと思います。(上田(哲)委員「あなたを褒めているのですよ」と呼ぶ)幾ら褒められてもそうはいかない。公務員の人事院勧告を尊重してやらなければならぬというのは、労働三権制約の代償措置ですから、政府は毎年人事院勧告を尊重していかなければならぬ。しかし、給与を取り巻く客観情勢は厳しいわけですから、たとえ六十年度努力しても巻いていけなければ、これは官民較差の中に残っておるのだから、それでもいつまでもそのままほっておくというわけにいかぬから、少なくとも一・四%程度のことは改善をして三年を目途に人事院勧告を完全実施する、こういう政府の方針を決めているわけです。
 そこで、今お尋ねの一%問題の関連で、六十年度の当初予算ではいずれにせよ一%以内に防衛予算を組む、こういうことですね。そのときに、ことしの給与勧告を入れてみてもこれはその中におさまっているわけですね。それから一・四%を仮に組んだらどうだ。組んだ場合でも三十五艦ぐらいはすき間がありますから、だから私は、当初予算ではGNPの一%以内におさめるということはきちんと守っているつもりなんですね。ではその後どうなるんだということになると、これは分子、分母の関係があるのですから、そのときにならなければわからぬ、こういうことであります。
#270
○上田(哲)委員 せっかく褒めたのだから、褒めたところを答えてもらわなければ困る。後藤田さんが平年度一・四%というのをすき間をあけておかなければ説明がつかないだろう、そう主張されたことは正しいと言うのですよ。主張されたことは正しいのにそうならなかったのだから、やはり最後は褒められないのだけれども、それを守っていただかなければ、政府は一番大事なところで筋を通していない。これをやらないで人件費のせいにする、人勧のせいにするということは間違いだということを言いたいのです。これはそうだと答弁したら困るでしょうけれども、腹の中でそうだと言っているに違いない。筋はこういうものだと思うのです。本来当初予算に五%は組んでおくべきものだ、今までやってきたんだから。
 そこで少なくとも二点、総理、しっかりひとつお答えいただきたい。
 六十年度中に人勧実施によって防衛費が一%を超える場合には、三兆一千四百六十億円を超える分、この分は人件費、糧食費以外で節約をすべきだ、これは政府の当然の任務だと思います。もう一つ、三年間の約束があるんだから、六十一年度には当初予算に平年度分で言う一・四%を最低計上すべきだ。この二つは最低の義務として、お約束として守るべきだと思います。よろしいですね。
#271
○中曽根内閣総理大臣 この間、私、矢野書記長にこういうふうに御答弁したわけです。「政府はGNP一%を超えないことをめどとする方針を今後も守りたいと考えているので、現時点ではたとえ仮定の問題としても一%を超えた状況でいかなる措置をとるか決めていない。仮にそのような状況になった場合には、その時点において矢野委員御指摘の考え方等、国会における各般の御論議や過去の政府の答弁等を踏まえて、慎重に対処いたしたいと存じます。」こういう考えに立ってやっていきたいと思います。
#272
○上田(哲)委員 私の意見にはどうなんですか。
#273
○中曽根内閣総理大臣 この中に尽きる、そういうふうに御解釈願いたいと思います。
#274
○上田(哲)委員 まるっきり尽きないのですよ。それでは全然逃げになっている。引き延ばしてはなくて、だめならだめと言うべきですよ。私は具体的に言っている。あなたが守りたいと言うのが言葉でなくてうそでないなら、六十年度中に出てしまうなら、当初予算編成上に問題はあっても、これは途中経過としての問題なんだから、三兆一千四百六十億円を超える分は人種費以外で節約するというのが、守りたいということの具体的な方法ではないか。六十一年度については当初予算に一・四%を計上していくのは当たり前じゃないか。イエスかノーなんですよ。その中に含まれていませんよ。
#275
○中曽根内閣総理大臣 この文章をお読みいただいて御検討いただいていれば、大体中身は傾向としてわかるんじゃないかと思います。一番のポイントは、今、後藤田長官が申し上げましたように、GNPの関係や人事院勧告がどう出るかというようなことにも非常にかかっておるということなんです。
#276
○上田(哲)委員 私は、これだけ具体的に主張して、この中にそれが含まれているという御答弁は、文脈としてそのようにやるということでなければなりません。そのように受け取っておきます。
 総理が、もしそうでないなら、一%を守りたい、守りたいと言いながら、まさに逆のむちゃくちゃだ。表面の言葉でそう言いながら、実は守りたくないということをほかの言葉で言っていることになる。何とかしてこの機会に一%を崩したい、これは政治家として正しくありませんよ、本当に守りたいのだということを改めて前提として、国会の議論が国民に向かって、総理大臣が先頭に立ってうそをついているというんじゃ話にならないから、本当に守りたいのだということを前提にして、私は具体的な提案をいたします。
 三点です。もう予算の幅が狭いからたくさんのことはできないけれども、そこから具体的な提案をしてみる。守りたいと言うならぜひ受け取っていただきたい。
 まず第一ですが、防衛費は大蔵省原案前年比五・一%から政府案最終案六・九%まで、五百十三億九千八百万円復活しているわけであります。復活折衝の調整財源八百億のうち実に六四%をここで取ったわけであります。緊縮財政の大変な事情を越えて、これだけの五百十三億九千八百万円の復活をされた。これは最終的には総理がおやりになったわけですね。私は、その総理裁断というのはどういうふうに行われるのか知りませんけれども、新聞によると、何時何分とかに電話がかかって、総理がこれだということで最後に決まった、こういうことだそうであります。総理がお決めになるわけですね、総理裁断というのは。――総理がお決めになるという御確認でありますから、それでは総理、一体その五百十二億九千八百万円の中のあなたが復活されたのは、例えばこんなものだという中身を説明してください。
#277
○中曽根内閣総理大臣 私が重要視しましたのは、やはりこれは将来のことにかかわりますけれども、隊員の人件費の関係とか、あるいは継戦能力の問題であるとか、あるいは練度の維持の問題であるとか、そういうような問題についてこれはお金が要るな、そういうふうに考えたわけなんであります。
#278
○上田(哲)委員 報道によりますと、主力兵器が、次官、大臣折衝で続々復活しておるわけです。総理の今のお話は大変抽象的です。予算というのは抽象論の上につきません、考え方という予算費目はないのです。具体的にこれとこれとこれの費目の上に金額がついたというのが予算なんだから、総理が自分で御裁断になったんだから、一つでも二つでもいい、こんなものを復活したんだということをひとつ例示していただきたい。これは総理です。
#279
○中曽根内閣総理大臣 私は、前から防衛庁の予算について気をつけておりまして、昨年度やはり自分で裁断を下したときも、継戦能力とかあるいは練度の向上、そういうようなことを指示しておるのであります。ことしも、昨年と比べてみてそれほど強化されていない、我々が一番最大の欠陥として考えておる点が心配でありました。したがって、私は何円何銭つけろなんということを言う立場じゃないのであって、方針を指示するという立場にあるのです。
#280
○上田(哲)委員 五百十四億円もつけているわけですから、一つでいいから、例えばこんなものをやった、例えば兵器を一つ挙げてみてください。一つでいいです。――いや、防衛庁長官、あなたが裁断したのじゃないんだから、あなたはその次聞くからお待ちなさい。
#281
○加藤国務大臣 所管大臣でありますから、委員長の指名でございますのでお答えいたします。
 復活折衝の段階で…
#282
○上田(哲)委員 こんなばかなことがありますか。私は総理に聞いている。総理裁断を総理が何で答えないんだ。
 それでは、防衛庁長官には改めて別に聞く。委員長、改めて聞かしてください。
#283
○大西委員長代理 別の聞き方をなさるのですか。
#284
○上田(哲)委員 防衛庁長官には別に聞きます。
#285
○大西委員長代理 今、指名をいたしましたので…
#286
○加藤国務大臣 その点は具体的なことでございますので、お答えいたします。
#287
○上田(哲)委員 いや、聞きますから、あなたに今。(「委員長が指名したんだよ」と呼ぶ者あり)いや、委員長の指名がおかしいじゃないか。(発言する者あり)わかった、わかった。私が防衛庁長官に聞くから、それに答えてください。
#288
○大西委員長代理 それでは、改めて指名いたします。
#289
○上田(哲)委員 防衛庁長官、それだけ言いたいなら、ぜひあなたに伺いますからきちんと答えてください。
 新聞報道その他によると、あの五・一%からどんどん復活されている。きのうはこれが復活された、きょうはあれが復活された。地対空ミサイル・パトリオット、主力戦闘機F15十四機、対潜哨戒機P3C十機、どんどんこうくるわけです。
 では防衛庁長官、あなたに伺うが、あなたの大臣折衝の中ではどれが復活されたのですか。
#290
○加藤国務大臣 復活折衝の段階で、一番重要な問題で私たちが重視いたしましたのは、実は本年度は特殊でございまして、隊員の処遇の問題でございます。特に、一般に自衛隊員は九・五坪住宅、家族持ちで九・五坪の住宅に入っている。これが千八百戸ある。これを何とか解消したい。それから二段ベッドに曹士、若い隊員は住んでいる。これではとても、最近隊員を自信を持って集められない。せめて青春時代に隊員の生活をするときには、二段ベッドではなくて、そういうしっかりとしたベッドを置けないか、そういうところでございます。
 御承知のように、先生御指摘のパトリオットとかそういうものは復活いたしましたけれども、本年度の歳出予算としては少ない金額でございます。
#291
○上田(哲)委員 新任だからしようがないけれども、全然わかってない。パトリオットなんて本年度は何も入っていませんよ。ゼロですよ。
 私が聞いているのは、そんなことじゃない。主要装備であなたが復活したものは何かと聞いているのですよ。いろいろありましょう。例えばF15二億七千八百万円とか、対戦車ヘリ九千八百万円とかいろいろありますね。こういうものをあなたの折衝では、隊員の宿舎はいい、主要装備ではどんなものを復活されたかと聞いているのです。ほかのことは言わないでちゃんと答えてください。
#292
○加藤国務大臣 歳出予算の面では、主要装備では御承知のようにほとんど金額が少ないものでございます。先生がおっしゃいます後年度負担の問題は、一気に決着いたしましたので、そのときは四役折衝を終わった段階で一気に出てきたということでございます。
 私が申し上げましたのは、いわゆる一般歳出予算としては、先ほど言いました待遇の改善の問題とか、それから一番大きいのはいわゆるパイロットの航空時間の延長とか訓練時間の延長、そういうものでございます。
#293
○上田(哲)委員 聞いてないことを答えてもしようがない。ちょっと勉強してきてくれないと時間がむだなんですよ。
 どんな主要装備を復活したかと聞いているのです。いいですか、主要装備の中に隊舎だとかが入りますか。建物なんて、トタン屋根なんか入らないでしょう、主要装備に。それぐらいの勉強をしなければいけない。(加藤国務大臣「委員長」と呼ぶ)私が質問中じゃないですか。いいですか、勉強するならほかでやってください。
 私が言いたいのは、長官の主要装備についての復活はわずかでありますという答弁。これもうそです。主要装備の復活は一文もないのですよ。無論、パトリオットもついちゃいない、これはゼロですよ。みんなついてないのです。大臣折衝でつきました、つきましたというのは、官房調整費か何かの中に前から入ってていたものをぐりぐりっと回しているだけで、大臣は折衝に出ていってテレビに映されて手をこんなにしてやったやったというが、あれは違うのですよ。全部前にできているのですよ。
 総理、だから私はそれを聞きたかったんで、長官が一生懸命答弁に出たがるから聞いてみたが、見てごらんなさい。次官折衝だ、大臣折衝だというけれども、言葉は憩いけれども一生懸命汗流していらっしゃるが、大臣折衝で復活した主要装備は何にもない。ところが、これは帳づらでは六億数千万円復活したことになっておるのです。なっておるだけで、実はそれは実際には復活してないのですよ。ここには主要装備はないのです。だから、総理が最終的に六・九%までお上げになった中にも主要装備は何にもないのですよ。だから、一つでもいいから挙げてほしいと言ったら挙げられない。挙げられるはずがない。じゃ一体これは、何で六・九%になったのか。総理、どうですか。
#294
○中曽根内閣総理大臣 予算編成の過程というのは、これはいろいろな人が出ていって主計局やあるいは大臣と折衝してやるものでありますから、それは役所には役所の手順というものがありましょう。混乱なく進めるためにいろいろな折衝の形態が行われるのであります。大臣が行って何にもなかったということはないんで、それはちゃんといろいろ事前に折衝もするし努力もしてそういう成果が出てくる、そういう問題なのであります。
 私に関する限りは、ともかく今まで重要視してきたのは、継戦能力とか隊員の練度の向上とか、そういうような、今まで申し上げたようなことについて非常に心配していたのだ、そういうことを申し上げている次第です。
#295
○上田(哲)委員 全然事実と異なるのですよ。そこまで言うと余りえげつないのですがね。大臣が行って折衝するのはでき上がっているシナリオであって、じゃ財源どこから来ているかといったら、官房調整費二百八十億の中からやりくりしているのです。大臣が行って頑張ったから、そこでこの兵器がついたなんというのはないのですよ。あったら出してごらんなさい。だから具体的に出してみよと言ったら、全然出てこない。見てごらんなさい。私が出してくれと言ったら、十日間かかってこれ一枚が出てきた。いいですか、練度だ、どうだといろいろおっしゃるけれども、これは驚いたことに少額だ。住宅とか防音とかというのはありますけれども、問題の練度とおっしゃるが、教育訓練費というのは五億円ですよ。五百十四億のうちのこれは五億円ですがね。大きい小さいの議論はともかくとして、私が言いたいことは、十日間かかって一生懸命聞いて、結局出てきたのはこの紙切れ一枚です。どうぞひとつ総理、見てください。こんなことじゃ、総理が裁断したというのはわからぬじゃありませんか。そこで、どうにもしようがないから…。じゃ聞きましょう。どういう感想ですか。――総理だ。あなたは総理じゃないだろう。
#296
○加藤国務大臣 委員の御質問の中で、最後は六・九%になったではないか、そしてそれが五百何十億の復活はあったんだけれども、それは内容はどういうものかということをお尋ねになりましたですね。それにつきまして、そういう内容は、例えば宿舎の問題だとか、それから定年対策がいろいろな…(上田(哲)委員「僕は主要装備しか聞いてないですよ、主要装備しか」と呼ぶ)主要装備のことは、六・九%の範囲の話ではございませんで、後年度負担の問題でございます。それは大臣折衝の中で幾つか認められたものがあると言いましたけれども、これはキャッシュの方ではなく、後年度負担でございますね。これはパトリオットの〇・五群とか、それからF15、これはたしか十四機だったと思いますが、それが私の大臣折衝で認められております。
#297
○上田(哲)委員 長官、全然勉強してないからこれ以上追及はしませんよ。しかし、全然違うじゃないですか。初めから聞いているのは主要装備だし、主要装備が復活したというのは、帳づらの上ではそうなっている、大臣折衝というものが。実際のやりくりの中ではそんなものじゃないのだから、もうちょっと勉強してこないと、その程度では困るのです。出てきたのはそれだけしかないじゃないですか。何でもっと数字が出せませんか。
 しようがないから私の方が調べた。(加藤国務大臣「委員長」と呼ぶ)もう質問を妨害しないでください。一生懸命私の方で調べたら、なるほど今おっしゃったような、古くなった車両の更新とか隊舎や宿舎の建てかえもある。しかし、見ていくとどうにもわからなくなってしまう。蚊取り線香とか蚊帳とかむしろとかというのが出てくるのです。私は自衛隊員に蚊取り線香は要らないとは言いませんよ。そんなことを言っているのじゃありませんが、どう考えても、予算というものは大事なところからつくっていくべきものだと思う。しかも、教育や福祉やそういうものを横で抑えて、最後に六四%も復活折衝で防衛庁だけへ持ってきたというのであれば、これはどう考えたっておかしいじゃないですか。しかも、何だといって。聞いてみたら、幾ら聞いてみても、五百十四億のうち三百億そこそこしかどうしても出てこない。あとの百五十億円余りは潜っていて、どこに入っているかわからぬのですよ。苦笑している大臣もいらっしゃる。そのとおりなんだ。これを何か物語りのようにだんだん積み上げてきて、総理がぽんと最後にボタンを押したら、ここで六・九%のぎっしり内容の詰まった必要最小限の軍備が整ったなんという話は、これはとんでもない話なんだ。こうなってくると、はっきりしていることは、積み上げがあった、何があったではない、必要最小限の防衛力でもない、初めに数字ありき、七にするか六・九にするかいろいろやって、総理はなるほど細かいことは御存じないだろうが、一番大きいところで考えたのは、アメリカに向かって六・九でいこうということだけですよ。これは明らかにおかしいじゃないですか。私は、蚊取り線香がいけないなんて言いませんよ。バランスの問題からいうとどうしても納得できないと言うのです。行財政改革が大事だと言っている総理からすれば、少なくともここで出てきている五百十四億の大部分は――大部分でないとおっしゃるなら数字をお出しなさい。私の調べた限りの大部分は、ほかの省庁ならば行革の対象になっている。それを防衛庁ならば、初めに数字ありきでぽんと六・九%が出てきて、あとはまだ、今になっても二百億近いものの行方がわからないで、一生懸命計数整理をしているようなこういう状況というのは、国民のための防衛力整備とは言えないんじゃないですか。私は、こういう数字というものはもっときちっとしてもらうということでないと納得できない。それでもこの態度をお改めにならないならば、総理は、日本の防衛ではなくて、行革でもなくて、アメリカに向かっての顔だけが大事だということになってしまうのです。私は、直ちに、この五百十四億円も積み上げた分を、全部とは言いません、この分を少なくとも一定の金額は削減することによって一%枠の筋道を通せ、こういうふうに言いたいのと、今この問題についての資料を一括して提出すること、この二点を求めます。総理、いかがですか。――いや、防衛庁長官は要らない。時間がむだだ。
#298
○中曽根内閣総理大臣 今あなたが出されたこの数字を見ましても、施設の整備費で百五十億とか、油の購入費で九十億とか、あるいは車両の整備費で五十億とか、そういう数字が載っています。これらはみんな継戦能力、油は継戦能力でしょうね、施設は訓練を充実するためでしょうね。そういうような意味において、やはりその趣旨に沿っていると私は思うのです。
 細かいことは、加藤防衛庁長官から答弁させます。
#299
○上田(哲)委員 じゃ総理、そこのところは水かけ論になりましょうから、あなたがこれは必要だったとおっしゃるなら、今はそこのところは譲ってもいい。しかし、幾ら時間がかかって資料を求めても、出てきたのは五百十四億円の中で三百五十億、残り百五十億余がわからない。わからないものが必要だということにはならぬでしょう。これは削減しろということについて、総理。――これは総理ですよ。防衛庁長官の各論説明はむだだから、要りません。
#300
○大西委員長代理 そういう事実があるかないか、どうですか。
#301
○上田(哲)委員 要らないですよ。求めてないのに、なぜ答えさせるのですか。
#302
○大西委員長代理 まだ許してないです。そういう事実があるかないかを、責任者として答えることはいかがですか。
#303
○上田(哲)委員 百五十億を削除しなさいということを総理に言っている。
#304
○大西委員長代理 それを答えておいて、総理が答えられると思いますから。どうなんでしょうか。――加藤防衛庁長官。
#305
○加藤国務大臣 二百億といったら、国民にとりまして大変な多額の血税だと思います。その二百億の予算復活折衝の内容が不明確だと言われては、防衛庁としては、そんな仕事はやっておりません。したがって、この次まで、復活折衝でなぜ五百数十億積み重なったか、資料をちゃんと提出いたします。――もしあれでしたら、今ここでお答えいたします。(発言する者あり)
#306
○上田(哲)委員 いいです。質問を続けます。
#307
○大西委員長代理 ちょっと待ってください。
#308
○上田(哲)委員 どうして私が質問するのに質問を封じるのですか。おかしいじゃないですか。
#309
○大西委員長代理 いやいや、何もまだ指名していませんよ。指名してないが、今の事実を明らかにすることは必要ではありませんか。
#310
○上田(哲)委員 だから、答えられないものをどうして答えられますか。
#311
○大西委員長代理 だから、あなたにお聞きしておるのです。お聞きいたしておる。
#312
○上田(哲)委員 私は、もう十日前から資料を毎日求めた。それが出なくて、百五十億がどうしても出なくて、それが今ならさっと出るなんということは、一体審議権をどう考えているのですか。
#313
○大西委員長代理 いや、私は指名しておりませんよ。
#314
○上田(哲)委員 いや、私は、ここでまた全く無意味な資料をぐるぐる繰り返されたら時間のむだです。これは理事会なりで出してくれるということを今防衛庁長官が約束されましたから、それでいいから後で出してください。私は審議をとめたくはない。
#315
○大西委員長代理 それじゃ、後で理事会で諮ります。
#316
○上田(哲)委員 あらかじめ総理に伺っておきますが、あと百五十億余というのが、十分な説明をするだけの資料が出なかった場合にはこれを削除する、これは当然なことですね。そのことだけは約束をしておいてください。
#317
○中曽根内閣総理大臣 ともかく資料を提出するということをお約束いたしました。
#318
○上田(哲)委員 私は審議をしたいのですから、委員長、どうか、私が質問しているのに無理やりに答弁させないでください。
 二番目の問題です。私は研究開発費の問題を例にとりたいのです。(発言する者あり)じっくりやろうじゃないですか、じっくり。どうして邪魔するのですか。わずかな時間を一生懸命審議するんだから、静かにひとつ私の聞きたいことに答えていただいて、時間延ばしをしないでいただきたい。委員長にお願いしておきます。まじめに、一%を守りたいとおっしゃるから、守るにはこうしてみたらどうかということを申し上げておる。私も静かにやるから、どうか静かにさせてください。
 研究開発費は、これまで前年比で二十億とか三十億増でずっときたものが、五十九年度、六十年度ぐっとふえているのです。六十年度は百四十一億円、これはもう大変なふえ方なのです。これはまた細かく聞くと切りがないからやめますけれども、ずっと研究開発費の新規分を見まして、例えば爆撃機のF1から五百ポンド通常爆弾を投下する際に、命中率を高めるための爆弾用誘導装置というのがあるのです。これは大して精度も高くない上に陸上でも使えない。私の考えでは、これだけ研究開発費を一気にふやしてやらなければならないものがどれだけあるかと思うと、このバランスの上ではどうも納得できないものが多いのです。一々その問題を指摘することはやめますけれども、こうした資料はいっぱいあるのです。
 そういう中で私が大変気にしていることは、ちょうど経団連の防衛生産委員会の要求が研究開発費の増額に今集中しているわけです。主要兵器メーカーの八十社が集まっている経団連の防衛生産委員会が研究開発費の増額に力を入れている。研究開発をするとそれが実用化される、受注がふえる、当然な成り行きでありますが、非常に閉鎖的な兵器メーカーから強い要求が研究開発費にくる。ここに符節を合わせるように、年々三十億、二十億増だったものが一気に百四十億増にもぽんとはね上がっていくというところは、どう考えても常態の予算配分とは思えない。私はこれを、例えば前年度並みにする。緊急性があるかないかは水かけ論でしょうが、平年度並みにやるということによって一%ラインヘ向かっての努力というものがあるべきじゃないか、こういうふうに思うのです。そこで、ぜひ前年度並みくらいのところに研究開発費を抑えるということが事の緊急性からして正しいのではないか。総理は本会議で否定されたけれども、仮にも日本の防衛産業というものを育成するということがあるとすれば、大変素直ではないのじゃないか、こういう気持ちもしますから、私は研究開発費の削減、前年度並みにするということに意味があると思いますが、いかがですか。
#319
○中曽根内閣総理大臣 その考えには反対です。私は前から防衛庁に対しましては、研究開発費を強化せよと指示してきておるのです。これは科学的な近代的な装備、兵器体系に前進していくためには、どうしても自力で日本の防衛に適切な諸般の研究開発を進める必要がある。これは私、四次防をやりましたけれども、そのときから強くこれは言ってきたところであり、総理になってからも、防衛庁長官に対しまして研究開発費を重視せよ、継戦能力その他とともにこのことは強く指示してきたところであり、私の趣旨に沿ってこれはふやされてきているものと考えております。
#320
○上田(哲)委員 これは見解の相違になってしまいます。
 三つ目の問題として歳出化の問題。さっきも人件費との関係で申し上げたけれども、歳出化が非常にふえている。つまり後年度負担ですね。後年度負担がこんなにふえているということは、膨張のメカニズムそれ自身です。これはもうお認めになるでしょう。否定はできない。だから、このままいきますと大変な後年度負担、六十年度は既定の後年度負担分として一兆七百三十億円、こういう大変な後年度負担の歳出化というものがどんどん重なっていくことを防がなければならないということになると、さっきから話題になりましたように、パトリオットはやがて価格変更していくと全部で一兆円ぐらいになるということが言われておるわけですが、これが導入と決められても全額後年度負担、こういうことになっていく。そこでこの膨大な後年度負担の上で一%を守るというのであれば全部とは言いませんから、せめてパトリオットとP3Cの十機分、これぐらいは後年度負担分を一年ずらす、こういうふうな努力というものがあるべきではないのでしょうか。
#321
○中曽根内閣総理大臣 詳細は防衛庁長官から答えてもらいますが、後年度負担というのは波がありまして、たしかことしは前年よりは減っているのではないか、私の記憶ではそうなっております。これはやはり防衛の体系の整備の関係でいろいろ波が動いてきておる、そう思っております。
#322
○上田(哲)委員 ここは了承されないというのであれば、もうちょっと細かい問題で申し上げていきたいのですが、今はまだ五十九年度です。五十九年度も大変膨大な後年度負担、歳出化分があります。この膨大な五十九年度歳出化分を見てみますと、大変驚いたのですが、これは実は後年度負担分の一覧表です。これは防衛庁から出されたものです。こんなにたくさんありますが、こんなに項目が何枚にもわたってあるのですが、現在ただいま、五十九年度分の歳出化を決められている分、この分の中で契約が済んだのが七五式百五十五ミリ自走りゅう弾砲十三門ほか一、二、三、全部で四件、たった四件なんですよ。例年はどうかと見ますと、みんな三月三十日近くになってからどっといくのです。それにしても現在これだけのものがありながら、契約済みのものが四件しかないのです。一年間使うべきものが年度末になって四件しかないということになると、これを、簡単に言ってあと一週間か十日向こうへずらせば、この歳出化というのは一年ずれるのです。納入期間がどうなるわけでもないでしょうから、非常の処置かもしれませんけれども、こんなにたくさんある中でかなりの分をこれは後へ譲ることができるんじゃないか、私はそう思います。
 これはちょっとまた総理、見てもらいたいのだが、こういうことですよ。こんなにあるのです。これだけの資料の中で四件しかないというのであれば、これから先の分というのは、一週間か十日、歳出を手続的に次の年度にずらすことによって、一%枠を守っていくというふうな努力はありませんか。
#323
○中曽根内閣総理大臣 大体、後年度負担分というのは、年度末近くになって今までずっと契約をぱっとしてきている、そういう情勢で流れてきていると思います。そういう形で、一つのリズムと申しますか、防衛の体系の整備が今まで行われてきておるので、ことしだけぱっとそういうふうにやるということになると、今までの計画遂行に支障を来すのではないか、こう思います。
 詳細は長官から答弁させます。
#324
○上田(哲)委員 それは違うのですよ。支障を来さないのです。なぜ来さないかというと、既に防衛産業というのは一定のシェアと構造を確保しているわけでありまして、もうこれは四年目を迎えた一兆円産業です。それは非常に閉鎖的だとさっき申し上げた。しっかり固定的なんです。
 例えばで申しましょうか。三菱重工の相模原製作所で七四式戦車ができている。この戦車というのは今までに五百三十七両ができて、これから百九十三両が出てくるのです。一台、去年の価格で三億八千万、ことしの価格で三億八千三百万。これが、昨年でいったら二百二十七億九千二百万円、六十年度予算で二百二十九億円、こういう形でもって支出されるのです。これが相模原工場で、のろのろとと言ったら悪いけれども、毎月五台ずつきちんと来るのですよ。これが実に安定的にいっているのです。これは一例ですけれども、こういう形のものであれば、例えばこのトップの三菱重工を例にとりますと、防衛産業全体では五十七年から発注額が一兆円産業になりましたけれども、この一位の三菱重工ではこの年に五年前と比べ三倍近い二千七百億円の受注に膨れ上がっているのです。ちょっとずらしたからといって、調達計画が狂うなどというものではないのです。これは実例としてはっきりしているのです。ですから、一%を守りたいというのが本当であれば、ここでひとつそれぐらいの操作をすることによって、いささかも支障を来さずにやることができるのじゃないか。総理、どうでしょう。意見はお変わりになりませんか。
#325
○山田(勝)政府委員 ただいま総理あるいは防衛庁長官からお答えをいたしておりますように、先生御指摘の防衛庁の主要装備品は、大体二年、三年、四年、五年の国庫債務負担行為で長期間にわたって清算を要するものでございます。見積額というものは当初大体決めますけれども、それは調達契約が円滑、確実に履行される最小限というものを決めまして各企業と契約を結んでいるわけでございます。したがいまして、これを毎年毎年自由に変更するということになる、あるいはそれを先に延ばすということになりますと、その契約の締結や履行というものが非常に不確実、不安定になるおそれがございます。したがいまして、過去の既契約分につきましていろいろ見積もり、各年度ごとの金額がありますが、できるだけそれを守っていく、先送りしないようにするというのが私どもの契約の方針でございます。最小限の金額を計上しているつもりでございます。
#326
○上田(哲)委員 こんな答弁を聞くのだったら、一%を守ろうじゃないか、何とかしようじゃないかという提案が泣きますよ。時間を大事にしますから、どうかああいう答弁はしないでください。そんなことは言い分としてはわかっているけれども、総理が一%を何とか守りたいというのがうそでないなら、国民の八割を超えるこの願望を満たすために、そうしたこれまでの常識を多少でも効果的に変えてみる方法はないかということを一生懸命我々は提起しているのだから、木で鼻をくくったような言い方で今まで十年も聞いてきたような話を官僚がするために時間をとりたくない。私は、どうしてでも一%を超えようとしているのだというふうな感覚を肌に感ずる。とすれば、これはもう一%枠を議論する機会はこれが最後じゃないかという非常につらい気持ちになりますよ。まじめにやろうじゃありませんか。
 今のお話そのものは、かつて四次防計画まで来て、それから単年度計画を経て中業で進んでいこうという日本の防衛計画が、我が身知らずの膨張メカニズムの中にみるみる足を踏み込んでいくということを告白をした言い方なんですよ。そうあってはならぬじゃないかということを、「守りたい」という言葉にかけて私は具体的にこれから問うてみたいと思います。
 まず、大綱を守ると総理も言われておる。大綱を守るということは何か。具体的に総理、あの大綱本文を守ることですか、別表を守ることですか、そのどちらかですか。これは総理、答えられないのですか。
#327
○加藤国務大臣 本文とそれから別表とが一体となって大綱となっておりますので、その全体を守りたいということでございます。
#328
○上田(哲)委員 当たり前のことですよ。これは国防会議議長の総理が自分でお決めになった大綱をひっかけてやろうというのじゃないのですから、ちゃんと答えていただきたい。余り細かい答弁は求めますまい。
 そこで、防衛力整備計画という言葉の中でずっと見てまいりますと、三つのレベルがあると思います。一次防から四次防までの水準、それから今言われている大綱という水準、そしてあえて言えばシーレーンという水準。シーレーンの水準というのは言葉としてはなじまないかもしれないけれども、具体的にはワインバーガー長官が年次報告、「共同防衛に対する同盟国の貢献」という中で、一九九〇年までにやれと言っているシーレーンという意味でのシーレーンレベル、あるいは八一年六月のハワイ会談でアメリカ側から出されたレベル。ミサイル護衛艦一七%増、潜水艦五六%増、対潜哨戒機二五%増、これを合わせて海上自衛隊で三三%増、航空自衛隊は全体で七三%増のものと言ってもいい。あるいは、元金丸防衛庁長官がおつくりになっている日本戦略研究センターで出された「我が国が整備すべき防衛力の目標水準」というもの、これはハワイ会談で出た水準とほとんど同じです。こういう言い方どれでも結構だが、一次防から四次防までの水準、大綱の水準、それから今言った第三の水準とでも言いましょうか、この三つの水準があると思います。
 これは当然な認識として、常識の問題でありましょうから一々確かめませんけれども、この三つの水準があるという理解の中で私がまず指摘しておきたいのは、実は一%と大綱が同じものであったように、四次防の水準と大綱の水準は実は同じものなんです。これは今守ると言われた大綱の中にちゃんと書いてある。時間が惜しいからたくさんは言いたくないけれども、「前記のような構想にたって防衛力の現状を見ると、規模的には、その構想において目標とするところとほぼ同水準にある」こう書いてあるのです。「防衛計画の大綱」とおっしゃるものは、これは四次防なんです。一たん出して引っ込められたが、増原長官が出された「平和時の防衛力」の中でも、国会で答えられている。「平和時の防衛力水準のめどといたしましては、おおむね四次防五か年計画完了時に整備されることになるもの」と言っているのです。あるいは夏目さんもそういう答弁をされています。一々読み上げません、ハンドブックにもそう書いてあります。
 私は今別に手品をやっているつもりはないので、四次防というもの、これはもっと具体的に言いますと、五十年の十二月三十日に、四次防がまだ完成されていなかった段階で閣議が足切りをいたしました。それを五十二年度以降で整備するのだということを決めた。そしてその途中の五十一年に大綱ができて、五十二、五十二、五十四年度は単年度防衛計画でいって、五十五年度から五三中業が実施された。この中に入っていますから、大綱と四次防というのは同じものなんですね。防衛庁長官、それだけはちょっと確認してください。
#329
○加藤国務大臣 大綱といいますと何か種々の議論で大変な防衛力を整備するような印象をいろいろ新聞等で与えておりますけれども、これは先生御指摘のように、その以前の三次防、四次防等から比べまして特段に大きな防衛力を整備するというものではなくて、もとよりその発想からいいますと、我が国の現状、それから国際情勢から考えて、我々の国が整備できる防衛力というのも限界があるのではないか。その限界がある部分につきましては、そのリスクは政治が負おうというような節度のあるものだと思っております。そして委員に対しては釈迦に説法でございますけれども、我が国が最終的にどこまで防衛力を整備するのかという非常に疑問があるのにも答える形をとっておりますので、水準としては御指摘のようなことがあろうかと思います。
#330
○上田(哲)委員 ところがだ。これが変わってきているのですよ。同じものであったものが変わってきている。つまり、「防衛計画の大綱」の変質が問題なんです。これこそ膨張のメカニズムなんですよ。今、同じものだと言われた。これは恐らく一般の人々、相当な専門家でも、同じものだという意見はびっくりしますよ。四次防があって大綱があって、もう一つ平和時がある。それらが同じものだということはびっくりする。実感としてそういうことがないからです。実は変わってきたのです。
 一例を挙げます。五十二年の十二月二十九日、大綱ができて早々ですが、閣議了解でP3Cは四十五機、F15は百機だったのです。ところが、五十七年七月二十三日の閣議及び国防会議では、つまり八一年、五十六年のハワイ会談以降ですが、P3Cは七十五機、F15は百五十五機と一気にふえたのです。これは大変なものですよ。どんなふうに大変かというと、P3Cというのは大体単純計算で一機で四国ぐらいの広さを哨戒できるというのですから、普通の計算では今の一千海里海域と言われるあの三角海域、一千海里グアム、一千海里バシー海峡、あの大きなものが四十機から五十機でできるのです。それが七十五機も買うことになった。これは大変なことですね。F15というのが百機から百五十五機、五割以上ふえた。F15なんというのを持っているのは日本を含めて世界に四カ国しかない。アメリカと日本と、あとはサウジアラビアとイスラエルです。それがそれぞれ六十機ですよ。いいですか。六十機に対して百五十五機なんというのは大変な戦力だということ、これははっきりしていますね。私はまさにこういうふうに四次防と同じだった大綱の水準が、これは一例ですけれども、具体的に質的な変貌を遂げた、戦略構想が変わった、大綱の内容が変わった、目的が変わった、こういうふうにしか言えないと思います。
 もう一つ言います。航空自衛隊の要撃戦闘機、大綱は十飛行隊となっていますが、十飛行隊は変わらないが編成が当時の十八機から二十五機になろうとする。支援戦闘機も三飛行隊が十八機から二十五機編成になろうとする。航空関係の専門誌はことしの予算でF15が二十二機の編成になるということをすっぱ抜いていますが、こんな細かいことは私たちには発表されないからわかりません。海上自衛隊で言うと、四個護衛隊群を五個護衛隊群にするなどいろいろな案が出ているようです。もし当初の大綱の目標で言うなら、海上自衛隊はほぼ達成しているのです。それをなお増強していこうということは、根本的にこれが変わったのです。「防衛計画の大綱」は、同じ大綱という名前だが、四次防と同じものを指した大綱からこの期間に別なものに変わった。こういうことが大きな問題だと思うのです。これは総理、防衛庁長官もずっとやってこられたのですし、四次防も策定なすったわけですから、この変質というのはやはりお認めになりますか。
#331
○中曽根内閣総理大臣 具体的には政府委員から答弁させますが、大綱というものは枠を決めておるので、その中身の質というものは、兵器の進歩等に応じて精鋭な、しかも効率的なものを選ぶのが防衛庁の国民に対する責任である。そういう意味において、がらくたな兵器を選ばれたら困るので、私は最も精鋭な、科学的な、近代的な、しかも効率的な兵器を選ぶ、そういう過程でこの大綱は評価されておる、そう考えております。
 詳細は政府委員から答弁させます。
#332
○上田(哲)委員 詳細はいいのです、一番大事なところですから。つまり私が聞きたいのは、「防衛計画の大綱」の変質です。なお同じなものだとお考えになるのか。具体的に量がはっきり変わっているのです。だからこれは私は変質だ、量的、質的変化だと言わなければならないと思うのですが、国防会議議長として総理はそうお考えになるかならないか。
#333
○中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように、質については兵器の変化あるいは外国における性能の状態、あらゆるものを調査して日本に最も適する、また財政も考慮した、そして精鋭な、効率的な兵器を選ぶ、そういう弾力性は大綱の中には入っておると考えております。
 政府委員から答弁させます。
#334
○上田(哲)委員 どうも総理は変わってないというふうにおっしゃりたいようでありますから、質問を変えます。
 そうすると、この「防衛計画の大綱」という整備計画の中を流れる防衛構想。この防衛構想はどうなっているのか。総理は今国会の答弁でも、基盤的防衛力構想の中でいくのだ、基盤的防衛力構想は全然変えないと答弁されております。それでいいですね。
#335
○中曽根内閣総理大臣 この大綱の基礎になっている発想というものは基盤防衛力という発想だと思います。したがって、その線上において行われていると申し上げてまいりました。
#336
○上田(哲)委員 これは総理もそう答弁されておられるし、五十七年七月二十九日の衆議院でも当時の伊藤防衛庁長官がはっきり答えられています。問題はこれと一%です。「五六中業の作業は、昨年の国防会議で了承されたときに、この期間内に「防衛計画の大綱」を達成することを基本として作業すべしという了承のもとに始めました。それとGNP一%というのは、長い間の積み重ね、先輩諸兄の積み重ねの中から出てきた重要な閣議決定でございます。この両方が矛盾することのないように、最大限の努力ということで今回お示しを申し上げております五六中業がありまして、その作業の中身も現在のところ閣議決定を変更する必要はない。基本的には、われわれは、GNP一%の閣議決定は変える必要はない」云々、「将来についてというのなら、一%を変えることは必要ないというふうにはっきりと申し上げます。」こういうふうになっているわけです。
 こういうわけで、五六中業まで踏み込んでいる今日の姿は、つまり大綱は、基盤的防衛力構想というものから変わっていない、そして一%というものの範囲でやるんだということは明確になっているのです。ところが果たしてそれができるか。私が先ほど来申し上げているいろいろな面、正面装備や経費や予算の組み方などの状況からいいますと、これは明らかに基盤的防衛力構想を超えているからだ、こう思います。率直にお認めになる方がいいのだが、言葉としては基盤的防衛力構想だ、一%枠内だと言い続けておられる。
 そこで、ちなみにお伺いするのだが、基盤的防衛力構想というのは、戦時の防衛力構想、緊急時の防衛力構想、その下のものとしての基盤的防衛力構想というのが決定されていますね。今も基盤的防衛力構想だとおっしゃるのであれば、具体的な戦力として緊急時の戦力というのはどういう数字のものか、戦時の戦力というのはどういう数字のものか。従来から説明されているのは、必要最小限というのは、小型空母、原子力潜水艦なども持てる、しかしそれは持たないのだというレベルから始まっていますから、非常に局限されたものであります。そうすると、基盤的防衛力構想というものは何か。つまり私が言いたいことは、基盤的防衛力構想だと言いながら、もう基盤的防衛力構想などというものではない、はるかに高い所要防衛力構想、戦時構想になっているということ。基盤的防衛力構想というのは平時の構想ですから、平時の構想ではなくて戦時の構想まで上がっているのだ。そうでないとおっしゃるならば、今の姿が基盤的防衛力構想というなら逆に日本の持ち得る戦時防衛力構想というのは数量的にどんなものかということを示されますか。示されるのであればその数字を見せてください。
#337
○矢崎政府委員 お答え申し上げます。
 基盤的防衛力構想と申しますのは、現在の内外の諸情勢…
#338
○上田(哲)委員 基盤的防衛力構想ではないのだ。戦時防衛力構想というのは別にあるかと言っているのです。
#339
○矢崎政府委員 現在の「防衛計画の大綱」で考えております別表の規模を中心とした防衛力と申しますのは、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るもの、これを目標にしていることは御承知のとおりだと思います。したがいまして、そういったような限定、小規模の侵略に対しては、有事におきましても原則として独力で対処し得るという力を持ったものであるというふうに御理解をいただいていいかと思います。
#340
○上田(哲)委員 私はそれを数量的に示せるかと言っているのです。大綱は数量的に示しているのです。ところが今や具体的にF15は百五十五機だ、P3Cは七十五機だ、護衛艦隊は幾つだということを数量的に示している。これは私は所要防衛力構想、戦時体制に入っていると言っているのです。それを平時体制だというなら、それを超えて憲法の制限下でなお持ち得るすき間がないだろう、だから数量的に示せるかと言っているのです。示せないでしょう。それは既に基盤的防衛力構想というものが破綻しているということなんです。今の大綱は基盤的防衛力構想では成り立たないところに来てしまっているのだということを率直に私は申し上げておかなければならないと思います。
 そこで、一%問題です。
 その一%は、日米同盟関係の中で全く一%というものではできない状況にあるのだが、それを端的に示しているのが日米共同訓練です。
 総理は、昨年のこの予算委員会で、日米関係は同盟関係だと明言をされました。これはまさに五十六年の鈴木・レーガン会談の日米共同声明以来はっきりしていることですから、そのとおりでしょう。私はここで抽象的な構想とか用語あるいは意識の問題を議論しているのじゃありません。ドンパチ音のする演習の中で、日本の軍事力というものが既に、今も御答弁になっているような基盤的防衛力とか一%内とかというものではないところに来てしまっているということを申し上げるのです。
    〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
 去年の秋のリムパック84というのは艦艇八十隻、航空機二百五十機、人員五万、史上最大であります。ここに参加をした日本の自衛隊は、小西海将補が実質的な空母機動部隊の次席指揮官。この位置づけでもわかるように、終わってから大変に褒められて帰ってきた。ごく最近に行われた本州の東南方海域の日米共同対潜特別訓練には、アメリカ海軍が独自にやっているものとはいいながら、フリーテックス85の米三個空母群三十隻、全部ではありませんけれども、実質的な参加を得ました。また吉田海幕長は、海上自衛隊のフリーテックス参加の希望を公式に明らかにしている。これはもう集団自衛権ですよ。こういう状態まで飛び込んでしまっている。
 法制局長官、後でしっかり答えていただきたいと思っていますが、海が大変はっきりしていることなんだが、陸で見ても明らかです。みちのく84ではアメリカ本土から歩兵大隊、砲兵大隊が派遣されて、フィリピンの米空軍基地のF4が対地支援攻撃のために初参加する。津軽海峡通峡阻止を破ってソ連軍が東北に上陸してくるのを、白河で必死に防ぐなんというようなことになっている。沖縄駐留の海兵隊の初の実動訓練が北海道で行われる。航空自衛隊は統合演習の中で、侵入した仮想敵機へのスクランブルに日米の管制宮が共同して当たるということになっている。これはもう明らかに実動訓練の中で日米軍事同盟というものが具体的に共同対処ということになっているわけです。防衛庁は、言葉として連係要領の訓練なんという言葉を使っていますが、明らかに共同対処。しかも日本有事だけではない。この共同対処に踏み込んでいるということ、これは法制局長官、明らかでありましょう。ことしの秋には日米統合レベルの共同指揮所訓練に入ります。これは間違いなく入る。ほかのことは聞きませんよ。防衛庁の中央指揮所、この間私たちはやっとのことで視察いたしましたが、あの防衛庁の中央指揮所に、この秋日米統幕レベルでの共同指揮所訓練が行われる場合にはアメリカ軍の幹部が入ることになりますか。
#341
○大高政府委員 お答え申し上げます。
 本年秋に行われます日米共同指揮所訓練でございますが、これにつきましては現在計画中でございまして、まだ具体的なものを申し上げる段階ではございません。
#342
○上田(哲)委員 法制局長官、そこへアメリカ軍の幹部が入ってくるとしたら、これはどう考えますか。
#343
○茂串政府委員 私は、そういった具体的な日本あるいはアメリカ側の行動等につきましてつまびらかにしてはおりませんけれども、いずれにしましても日米安保条約というのがありまして、そこで日本がもし武力攻撃を受けた場合には、日本とアメリカが共同してこれに対処するという厳然たる規定があるわけでございます。したがいまして、日本としましては、あらかじめ有事にも備えて日本とアメリカとの間でそういった共同対処の訓練をするということは、これは当然のことでございまして、あくまでも日米両国でそういった練度の向上を図る意味で訓練を行うという必要性は当然であると思います。決してこれは集団的自衛権ではないと思います。
#344
○上田(哲)委員 極東有事でもですか。
#345
○茂串政府委員 今申し上げておる私の認識からしますと、極東有事なんということは全くない。日本が有事になった場合に日本とアメリカが共同して対処する、そのための練度の向上を図るための訓練と私は心得ております。これは詳しいことはさっき申し上げたように私存じませんが、詳しいことは防衛庁長官の方からお答えをいただきます。
#346
○上田(哲)委員 これも時間のむだ遣いですね。あなたに勉強しておいてもらいたいのだが、今問題となるのは、簡単に言えば照とやりと言われてきたこれまでの個別自衛権と集団自衛権、その層とやりの関係というのが区別がつかなくなってきているのですよ。もう少しわかりやすく言えば、戦術と訓練と装備、こういう各面でのエスカレーションなんです。装備については、さっき申し上げたようにF15、P3Cなど、訓練については、実動訓練がもう軌道に乗って、これができるところまで来た。そうして、戦術についてはシーレーン防衛等々で完全に一体化している。アメリカに、日本有事の場合だけにしか動かないという第七艦隊があるなら話は別だ。洋上の米艦護衛について、明らかに前の法制局長官角田さんは、これは一〇〇%個別自衛権とは言えないぞということを言われた。どうやら今のお話では、わしはわからぬと法制局長官は逃げられるようでありますから、聞くことはやめましょう。
 問題は、層とやりの区別がわからなくなっているのですよ。ガイドラインでは、盾の自衛隊は主として日本の領域及びその周辺空海域で作戦を行う。やりとして、米軍は自衛隊の能力の及ばない機能を補充するとなっている。ところが、最近の訓練でも明らかなように、主力となるアメリカの空母機動部隊は日本海やオホーツク海には入らない。太平洋側で行動し、日本列島を盾として、三陸沖や伊豆や小笠原諸島周辺で展開しているのです。これに自衛隊が共同するのに、これが日本有事以外はありませんなんということを言っているのは、法制局長官は、六法全書だけ持っていればいいのか、しっかり勉強しておいてくれないと、盾とやりが区分がなくなってきているということがわからぬじゃありませんか。明らかに自衛隊の米艦護衛には限界がある。これは前法制局長官がくぎを刺したんです、防衛庁の答弁に。これを後退させるということは非常に問題であって、私は集団自衛権と個別自衛権の区別をあなたは持っておられるのかということをあえて問わなければならない。答弁を求めても、これは違った言葉でのらりくらりになるでしょうから、問題として提起をしておきます。
 次に、五九中業と一%の問題について聞きます。
 五九中業はいつまでに策定するのですか。
#347
○矢崎政府委員 お答え申し上げます。
 中業は、御承知のように防衛庁の内部資料でございまして、概算要求等の参考資料としてつくるという性格のものでございますが、五六中業の例で言いますと、これは五十七年七月に国防会議に御報告し、了承を得たという経緯がございます。私どもはできる限りそういった例を頭に置きまして作業を進めていきたいということを考えておるわけでございますので、現在のところ、本年の夏ごろには何とか結論を得たいという気持ちで作業をいたしております。
#348
○上田(哲)委員 総理は、この国会の答弁でも五九中業について、国際情勢、大綱の背景に変化があったのは事実だが、基盤的防衛力構想の考えは現在も維持されている、こう御答弁されておりますね。これは変わりませんか。
#349
○中曽根内閣総理大臣 五九中業の期間においても防衛計画の大綱水準の達成に努力する、そういう形でいきます。したがいまして、今の基盤的防衛力というものの延長線上において行われる、こういうふうに考えて結構だと思います。
#350
○上田(哲)委員 これが大きく違ってきているのですよ。総理は、基盤的防衛力の中でいく、つまりこれは一%内でやるということになるのです。ところが、五六中業から五九中業の間に大きな変化があった。さっき私が読み上げたように、五六中業のときは、伊藤防衛庁長官は断固として一%内でやりますと言った。ところが五九中業の長官指示に当たって、粟原防衛庁長官は五九中業の作成とGNP一%は切り離していく、こう言っているわけです。総理のおっしゃることと違うのです。今までは一%を守っていたのです。五九中業からこれは変わったのです。一%とここで切り離すということを政府ははっきりしたのです。これは違うじゃありませんか。変わったんじゃありませんか、総理。
#351
○中曽根内閣総理大臣 一%問題というのは、私がここで先ほども申し上げたとおり、矢野書記長に対する答弁、これが一%問題の考えてあります。
 それで、基盤防衛力すなわち一%と、あなたは自分で勝手に結びつけておられるけれども、これはそういうふうに必然的に結びついているものではないのです。今までいろいろくどくど申し上げたとおりのことなのであります。
#352
○上田(哲)委員 歴史を改ざんされては話にならぬ。だから水かけ論でやってもしようがないから、歴史的事実をしっかり明らかにしなければならないと思って私は申し上げておるのです。解釈の問題じゃない、事実の問題です。全部文言を並べてみればはっきりするのです。そうしたふうに一%というものが結びついていたものであった。一%、そして基盤的防衛力、そして大綱、これらはぴったり結びついて出発したのにこうやって切り離してきた。なぜ切り離さなければならなかったかと言えば、例えばその具体的な証言は、昨年の六月十九日、ワインバーガー国防長官が米議会に行った年次報告でも明らかです。五九中業に十分に配慮して、一九九〇年までにシーレーン防衛の達成をということをはっきり言っているのです。また、日本は昨年一年間に防衛姿勢を明確にし、日本自衛隊は米軍を補完する形で効果的な作戦を行い得るに至った、と褒めているのです。
 総理に申し上げたいのだが、五九中業がまだ決まってないのに、五九中業についてアメリカの国防長官が注文をつけるということは、同盟関係ならば許容されることですか。また、大綱を達成するということを在来中心とされている日本政府の方針に対して、アメリカの国防長官が大綱を全く無視して五九中業に言及する、これは大変おかしいことだと思うのですが、総理はいかがですか。
#353
○中曽根内閣総理大臣 アメリカの国防長官が日本の防衛方針をいろいろ侵犯しているというようなことはございません。
#354
○上田(哲)委員 私は、総理が外国の国防長官からいろいろ言われてのことだと、おっしゃられるとは思っていませんが、そういう背景、具体的な系譜の中にあるということはしっかり立証しておかなければならないと思って申し上げております。
 私が言いたいことは、こういう経過の中で、本来の姿の「防衛計画の大綱」自身が変質して今日の状態になっている。大綱という名前を使いながら、羊頭を掲げて狗肉を売るというような形での膨張メカニズムというものがこのままいっていいのだろうかと懸念せざるを得ないのです。
 この中での幾つかの問題を取り上げますが、五九中業期間中にクローズアップされるのはインターオペラビリティーです。八四年の六月二十六日にケリー国防次官補代理がそのことを注文して以来――八四年の五月十一日にはフィンバーガー長官がインターオペラビリティーについては理解が深まってうれしい、栗原長官はどんどんやっていく必要があると言われた。インターオペラビリティーというのは、例えば対馬海峡の東側を日本が、西側をアメリカが封鎖する、宗谷海峡は両軍でやる。日本の防空体制、これはバッジシステムやE2C、F15、F4、この日本の防空体制にアメリカ軍の海上防衛能力が統合的に運用される、こういう形をいうのですから、この相互運用の形は、先ほども指摘したように明らかに層とやりという関係の区分がなくなってしまう。これはまさに集団自衛権の段階に入るということになると思います。このインターオペラビリティーの段階で集団自衛権に踏み込んだ、少なくともこれは怪しい、懸念があるということは、法制局長官、言えませんか。
#355
○茂串政府委員 お答えいたします。
 私、そういったいわゆる実務のことにつきましては余り詳しくございませんけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げました法理といたしましては、日米安保条約に基づく日米間の共同対処というそういった必要性、それからまた有事に備えての訓練、こういったものが必要だということを私申し上げておるつもりでございまして、そういった具体的なことにつきましては防衛庁の方からお答えを願いたいと思います。
#356
○上田(哲)委員 じゃ、いいです。何回聞いても、これは後の歴史の批判にまつ以外にないのです。それならばいよいよ問題となるのは、去年の十二月二十六日に防衛庁で調印をされた日米共同作戦計画、渡部敬太郎統幕議長とE・L・ティシエ空軍中将。内容については詳しくいたしませんけれども、これまで日米両国の間で軍事問題担当者の中でいろいろな協定や調印がなされた中で、統幕議長と相手の中将と調印をされたという共同作戦計画というのはなかったのではないか。この種のものは私の知る限りでは、松前・バーンズか久保・カーチス取り決めだと思います。今回は少なくとも松前・バーンズ、久保・カーチスよりも重いのですか。
#357
○矢崎政府委員 お答え申し上げます。
 御指摘の日米共同作戦計画の研究と申しますのは、先生御承知のとおり、五十三年に日米両国間で合意いたしましたガイドラインに基づきまして、日本有事の際に、我が国防衛のために必要な共同対処行動をいかにしてやっていくかということを研究するために始めたものでございまして、五十三年から始めております。これは五十六年に一応概成をいたしまして、そのときにもやはりサインをしたことがございます。今回はそれが本格的に詰まりまして、一応の区切りがついたものでございますから、その研究内容を確認する意味でサインをしたという経緯がございます。
#358
○上田(哲)委員 何にも質問に答えない。答えるはずがないかもしれないけれども、日本の統幕議長とアメリカの空軍中将が調印するようなものがこれまで日本にはなかったと私は思うのですよ。それが極秘ではなくて、機密だ。今、ガイドラインと防衛局長は言ったけれども、ガイドラインでは、両国の、つまり日米の立法、予算、行政上の処置を義務づけないとなっている。それであれば、我々は国会でこのことが知られないというはずはないのです。これを国会に提出すべきだという議論が前にもありましたけれども、これはどうしても出せないということであれば、シビリアンコントロールなんてどこにもない。大変危険な状態である。
 押し問答することは省くから、提案をいたします。国会に提出できないでは困る。せめて安全保障特別委員会に、いろいろな条件をつけてもいい、理事会とか、そういうところに提出するということは最低限あるべきだと思いますが、いかがですか。
#359
○矢崎政府委員 この日米共同作戦計画の研究につきましては、ただいま申し上げましたような経緯を踏まえて、極めて厳格なるシビリアンコントロールのもとに管理をされている作業でございます。
 本件は、内容としては高度の機密に属するものでございまして、有事における作戦を明らかにするということはどこの国もやってないことでございますので、我々としてはこれはとても公表することはできないというふうに考えておりますが、先般、本件につきまして同様の問題提起がございまして、ただいま当委員会の理事会で御検討いただいておるという経緯がございますので、そちらの方での御検討の模様を待ちたいというのが現在の姿勢でございます。
#360
○上田(哲)委員 これは、もし機密を漏えいした場合には、日本で処罰できるのは国家公務員法ですが、実はアメリカの法規に触れるのです。こういうものが国会、予算委員会でも直ちに理事会の結論が出せないということは問題だと私は思っていますから一つの提案をしてみましたが、ぜひ当委員会に提出されることを改めて望んでおきます。
 そこで、一%枠というものを最終的に突破してしまうものはシーレーン構想なんです。シーレーン構想とは何だということをきょう具体的に論ずる時間はありません。少なくとも今日の核戦力というのが、陸上の固定サイロから潜水艦に積まれて海に沈む水中発射弾道ミサイルに移った。こういうところから北西太平洋、日本周辺が米ソ核緊張の主戦場になった、シーレーン防衛構想はここから生まれてくるものです。
 これについてはさまざまな議論がありますけれども、水かけ論にならないために私は昨年のこの予算委員会で、総理の言葉を続き合わせてシーレーン防衛構想とはということを確認いたしました。こういう立場ですれ違いにならない議論をしようじゃないかということですから、五十九年三月十三日の予算委員会の議事録の中にある言葉をもう一遍確認しておきます。
 日本周辺数百海里において、哨戒、護送、沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛など、その総合的、複合的効果を目指すもの。なお、この構想を航路帯、海上輸送路、海上交通路とする用語は適切でなく、もし将来航路帯を設ける場合には大体一千海里の範囲で設ける意図を持つ、これは総理が御確認をなすって、これからシーレーン議論はこれでいこうじゃないかと御確認になっておりますから、そのことだけをきょうは確認しておきますが、これはよろしいですね。
#361
○中曽根内閣総理大臣 一言で言えば海上警備活動、そういうふうに言えるもので、内容はおっしゃったようなものだと思います。
#362
○上田(哲)委員 この中身には入りませんが、きょう伺っておきたいのは、この総理の規定されるシーレーン防衛というものとアメリカの言っているシーレーン防衛とは同じものですか、違うものですか。
#363
○矢崎政府委員 我が国が、ただいま総理からもお答え申し上げましたような考え方によってシーレーン防衛を考えているということについては、米国側もこれを十分に理解をいたしております。
#364
○上田(哲)委員 同じものだと言われるそのシーレーン防衛は五九中業に含まれますか。
#365
○矢崎政府委員 五九中業におきましては、大綱水準の達成を期するということで作業いたしておりまして、その中に当然このシーレーン防衛能力に関連をいたします防衛能力の整備の問題も含まれているわけでございます。
#366
○上田(哲)委員 そうすると、五九中業でシーレーン防衛を完成するのですか、あるいはどこまで行くのですか。
#367
○矢崎政府委員 五九中業におきまして大綱水準の達成ということを期して作業されておるわけでございますが、この大綱水準が達成された場合のシーレーン防衛能力というものは、これは相当な力になってくるであろうというふうに私は考えております。(上田(哲)委員「やるの」と呼ぶ)五九をもう少し申し上げますれば、大綱の中で考えております防衛力の水準と申しますのは、有事におきます限定的かつ小規模な侵略には原則として独力で対処し得るというものを考えておりますので、シーレーン防衛につきましても、そういった能力が実現できるものというふうに私どもは考えております。
#368
○上田(哲)委員 わかりました。シーレーン防衛というのは、総理の言われるシーレーン防衛構想とアメリカの言うのと同じである。それを五九中業の中でやっていく。これでは一%を守っていくなんということはできるはずがないのです。これはひとつ今後の大きな議論の入り口として押さえておかなければならぬと思います。
 時間の問題がありますから具体的な例で一つ伺いたいのだが、このシーレーン防衛の中で非常に問題になってくるのが硫黄島、三宅島、つまり南東航路の拠点であります。これは硫黄島が今二千六百メートルの滑走路、あるいは海自二百五十人、三次元レーダー等々。F15もやがて加わる基地になっていくわけですが、これと三宅島の空母ミッドウェーの夜間訓練飛行場と称する基地、こうした問題が一体となっています。しかも、今年初めの日米首脳会談でこの三宅島飛行場問題が出たというので、私はその重さに驚いておるわけであります。この硫黄島について、さくら二号aの問題やランドサットの問題やフリートサットの問題、いずれもこれは外国の衛星であるか汎用性であるかという問題ではなくて、宇宙を軍事目的に使うことが国会決議に違反するのだという問題として、私はいずれもこうしたものの使用をやめるべきである、予算削除すべきであるということを強調いたしますが、この際、ひとつ硫黄島の問題だけについて掘っておきたいと思います。
 硫黄島は、ことしの政府予算の中で七千六百万円の予算がついて、小笠原の父島に一DK八戸の建設予算がついた。これは何か。実は硫黄島に帰りたいという人々を帰さないで、そこで住まわせようということなんであります。驚いたことに――この硫黄島問題を簡単に申し上げると、十九年四月三日から七月までに千二百五十六人の島民が強制疎開させられて、今五百五十八人の生存が確認をされています。みんな帰りたいと言っていた。ところが、ここへ来て急に話がとんとんと進んでいったのは、五十八年九月になって東京都の鈴木知事が硫黄島に行かれて、鎮魂の丘というのをつくった。さくら二号aもそこですぐ始まる。そして、五十九年五月には硫黄島問題小委員会が、火山活動が激しいというような理由をつけて、ここは人間が住めないという答申を出した。そうしたら、するするっと話が進んでいって、五十九年九月に東京都議会の意見書、そして五十九年十二月、五億六千二百万円の見舞い金という話が出てまいりまして、これが東京都でも二月四日に決まり、実はこれが今度の補正予算に出てくるのですけれども、こういう先づけの中で、もう三月までには一人頭四十五万円を均等に配るという話が進む。硫黄島に帰りたいという人はこれまで二百六十四世帯、七百五十五人の調査をしたら、二百四十四人も帰りたいと言っている。四十五万円配ってくれることは結構だが、強制立ち退きをさせて、今四十年たって帰りたいという人に、土地が隆起するだのなんだのという理由をつけて、急に帰れないようにする。島民に聞いてみると、そんなことは昔からそうだったというのです。現に二千人近く住んでいたし、戦争中は二万人もいたんだ、水もないといったって我々は暮らしてきたんだ。帰りたいのは父島じゃない。小笠原の安藤村長は言っています、そんなにしても父島に住む人はないでしょう。そんなものをつくって、いかにも硫黄島の軍事基地化、シーレーンのために人を住まわせないというふうにする、これはまことに本末転倒ではないかと私は思うのです。
 こういう形での補正予算を急いで組んで、普通の場合だったら随分時間がかかるのに、この場合はとんとんと話が進んで、こういう性格の金が出ていくということは、このシーレーン問題の裏側の非常に大きな問題だと思うのですが、いかがですか。
#369
○河本(嘉)国務大臣 小笠原諸島振興審議会におきまして定住不能という結論が出て、今先生のおっしゃるような見舞いをまず四十五万あて、五億六千二百万を補正で組んでおるところでございます。これは見舞い金でございますので、将来またいろいろな問題が起こると思いますが、集団移転に関する措置という結論が出ましたならば、それに沿って対応していかなければいかぬということを考えております。
 問題点は、軍用基地の所有主に対する地代が、三百二十万平米、約百万坪になるわけですが、これの地代が平米当たり二十九円ですから、毎年一億というお金が払われておるわけですが、払われておるところと払われてないところが問題点になっておるんじゃないかというふうに私は考えます。
#370
○上田(哲)委員 全然話のとらえ方が違うのです。私は、これはむごいじゃないかということを言っているのです。実は接収のときも六百万ドルが、アメリカ側から支給されているのです。そのときも非常に不公平な配分の仕方があったから問題だということになっているので、今度は公平にやってくれというのがささやかな要求になっている。だから、今生存のわかっている人々に全く均等に一人四十五万、大体一世帯二百万というようにやろうじゃないかということは、それはそれでいいのです。いいんだが、これで帰りたいという人を追っ払ってしまうみたいなことはむごいじゃないか、やり方がいけないじゃないかということを言っているのです。あえて言えば、今数字が違うのでありまして、この中に民有地が三百二十三万平米あります。この三百二十三万平米、一平米当たり二十七円だ。そして、これが年間に八千六百万円の地代をこれからも払うのです。ところが払うというけれども、実際にはここは硫黄島産業株式会社という、実際は何にもしてないそういう名前の地主があって、この八千六百万円のうちの八八%、七千五百万円は全部こっちに行くのです。こういう形の中でぽんと押えてしまったのではむごいではないかということを私は言いたいのです。
 では具体的に言っておきますが、今この人たちは、見舞い金をやったから出ていけと言われたって、耕作権はなくならないのです。所有権はなくならないのです。そこで、この人たちが今自分の耕作権を主張して、途中時効中断していますからね、島へ行ってすぐ耕作をする、家を建てる、建築基準法があっても、危険地域、区域でも十平米以下ならば禁じられないんだから、十平米以下のプレハブをつくって民有地で耕作をして住んだら、追い出すことができますか。できませんね。できるかできないかだけはっきり言ってください。
#371
○田中(暁)政府委員 御指摘のとおり、見舞い金の支給によりまして旧島民の方の所有権なり耕作権なりというものが失われるものではございません。ただ、非常に危ないものでございますから、定住不能という結論に基づいて説得いたします。
#372
○上田(哲)委員 拒否はできないのです。
 この問題は、補正予算の――まだ予算も出てないのですが、それが配られるなんて話になっているので、先取りとは言いませんけれども、こういう大きな問題がある、これはヒューマニズムではなくて、むごい話なんだということを補正予算論議に引き継ぎます。
 もう時間がなくなりましたから、最後の締めくりに申し上げたい。私はたくさんのことを申し上げたかったが、ぜひ三点にわたって総理に申し上げておきたい。
 第一は、今るる申し上げたように大綱達成に名をかりた単価増強、これがさっき申し上げた四次防、大綱そして第三段階へのとめどもない軍拡に走り込んでしまう状態に今既に来ていると思います。そして、ここで明らかにしましたように、一%突破というのはすなわち大綱の見直しそれ自身なんであります。大綱見直しをするか、いや、しないという論議がここ数年来続いてまいりましたが、一%枠突破ということはすなわち大綱の見直し自身なんであります。こういう状況にあることを私は幾らか論証し得たと思うのですが、本当に総理が一%を守りたいとおっしゃるのであれば、それはこの膨張メカニズムのもとにある戦略構想や予算の形態等を基本的に変えなければならない。総理にその決意があればできることでありますから、ぜひその決意を承りたいことが一点。
 その二つは、もしこの秋――仮定の問題だからわからぬと言って先送りするんではなくてはっきりお答えいただきたいが、もしこの秋、人勧を理由に一%を超えた場合、総理は閣議や国防会議で一方的に五十一年閣議決定を変更することがあり得る。しかし、それはまず少なくとも国民世論を踏みにじり、国会を無視するものだと思います。再三御答弁されているように、守りたいとおっしやる以上は、その際国会の論議をどのように保証されるのかということをしっかりお答えをいただきたいと思います。
 最後に、大変不親切な、不誠実な御回答ではありましたけれども、私は十数年の防衛論争を懸命にひっ提げて、防衛論争がこの二十年すれ違いになってきたものを何とか一つの土俵に乗せたいという立場で議論をしてきたつもりであります。そのためには一%堅持という、私たちは非武装中立の党でありますから一%でも半%でも認めるものではないけれども、今この一%を堅持するということを建設的な防衛論争の土俵に乗せたいものだと考えてきたのです。安全保障論争を何とか国民のもの、健全なものにする努力をしなければならない。率直に言って、抑止論というものにも多くの支持があることは認めなきゃなりません。しかし、抑止論は絶対ではない。そうであれば、我々の言う非同盟中立政策というものとともにどちらが優位かを問う立場で、広範に建設的なフランクな議論がなければならない。そのことが一%をじっと今守っていくという政府側の決断の中で、大きな世論の支持の中で確保できるのではないかという気持ちがする。そういう立場で、どんな事情をあげつらわれようとも、一%に届かないときはやりたいほうだい、一%にぶつかったときはすぐ突破では困る。今こそ広範な国民の安全保障論争を発展させるために、政府が断固としてここでさまざまな非財政技術論的な部分を超えて一%堅持を貫かれることを特に要望をしたい。私は、百人の齋藤隆夫よりもすぐれた、抑制のきいた一人の英明な総理が今出現すべきであることを強く申し上げて、総理の答弁を求めます。
#373
○中曽根内閣総理大臣 上田議員の長い間にわたる防衛問題に対する御熱意については、改めて敬意を表します。
 それから、一%問題に関する私の考えは、矢野書記長に対する御答弁で申し上げたとおりでございます。この一%と大綱というものは、上田議員が申されるような形で必然的に結びついているものではないと思っております。
 それから、残余のいろいろな諸問題は、あなたの御高見として拝聴いたしておきます。
#374
○上田(哲)委員 大変残念でありますが、この論議を今回によって終わらしめるのではなく、広範な、建設的な国民的安全保障論争として出発させるための決意を強く総理、内閣に求めて、終わります。
#375
○天野委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明八日午前十時より開会し、昭和五十九年度補正予算の審査を行います。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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