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1984/03/26 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第9号
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1984/03/26 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第9号

#1
第102回国会 社会労働委員会 第9号
昭和六十年三月二十六日(火曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 戸井田三郎君
   理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君
   理事 丹羽 雄哉君 理事 浜田卓二郎君
   理事 村山 富市君 理事 大橋 敏雄君
   理事 塩田  晋君
      愛知 和男君    伊吹 文明君
      古賀  誠君    斉藤滋与史君
      自見庄三郎君    谷垣 禎一君
      友納 武人君    中野 四郎君
      長野 祐也君    西山敬次郎君
      林  義郎君    藤本 孝雄君
      箕輪  登君    湯川  宏君
      網岡  雄君    河野  正君
      多賀谷眞稔君    竹村 泰子君
      永井 孝信君    森井 忠良君
      沼川 洋一君    橋本 文彦君
      森田 景一君    森本 晃司君
      小渕 正義君    塚田 延充君
      浦井  洋君    小沢 和秋君
      菅  直人君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 山口 敏夫君
 出席政府委員
        労働大臣官房審
        議官      白井晋太郎君
        労働省労政局長 谷口 隆志君
        労働省労働基準
        局長      寺園 成章君
        労働省婦人局長 赤松 良子君
        労働省職業安定 加藤  孝君
        局長
 委員外の出席者
        人事委事務総局
        管理局法制課長 武政 和夫君
        公正取引委員会
        事務局取引部下
        請課長     鈴木  満君
        経済企画庁調整
        局調整課長   西藤  冲君
        経済企画庁調整
        局財政金融課長 服藤  収君
        経済企画庁調査
        局内国調査第一
        課長      加藤  雅君
        中小企業庁計画
        部下請企業課長 高梨 圭介君
        労働大臣官房国
        際労働課長   佐藤ギン子君
        日本国有鉄道常
        務理事     太田 知行君
        日本労働委員会
        調査室長    石黒 善一君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月八日
 辞任          補欠選任
  沼川 洋一君      二見 伸明君
  橋本 文彦君      神崎 武法君
同日
 辞任          補欠選任
  神崎 武法君      橋本 文彦君
  二見 伸明君      沼川 洋一君
同月十二日
 辞任          補欠選任
  愛知 和男君      石原健太郎君
  竹村 泰子君      角屋堅次郎君
同日
 辞任          補欠選任
  石原健太郎君      愛知 和男君
  角屋堅次郎君      竹村 泰子君
    ―――――――――――――
三月十二日
 雇用保険法の一部を改正する法律案(池端清一
 君外三名提出、衆法第一〇号)
同月十三日
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(中村
 茂君紹介)(第一九四八号)
 同(森田景一君紹介)(第一九四九号)
 同(橋本龍太郎君紹介)(第一九七七号)
 同(沼川洋一君紹介)(第二〇二二号)
 退職者医療制度の国庫負担等に関する請願(浦
 井洋君紹介)(第一九六八号)
 同(東中光雄君紹介)(第一九六九号)
 同(東中光雄君紹介)(第二〇二三号)
 保育所制度の充実に関する請願(橋本龍太郎君
 紹介)(第一九七〇号)
 同(石川要三君紹介)(第二〇一五号)
 社会福祉の充実等に関する請願(小沢和秋君紹
 介)(第一九七一号)
 同(池端清一君紹介)(第二〇一六号)
 同(河野正君紹介)(第二〇一七号)
 同(永井孝信君紹介)(第二〇一八号)
 同(沼川洋一君紹介)(第二〇一九号)
 同(森本晃司君紹介)(第二〇九四号)
 身体障害者の雇用対策等に関する請願(浦井洋
 君紹介)(第一九七二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一九七三号)
 同(菅直人君紹介)(第二〇二〇号)
 同(菅直人君紹介)(第二〇九五号)
 国立療養所長寿園の存続等に関する請願外二件
 (浦井洋君紹介)(第一九七四号)
 同外一作(小沢和秋君紹介)(第一九七五号)
 健康保険本人の十割給付復活に関する請願(瀬
 崎博義君紹介)(第一九七六号)
 同(東中光雄君紹介)(第二〇二一号)
 老人福祉の改善に関する請願(浦井洋君紹介)
 (第一九七八号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一九七九号)
 公共事業による失業対策推進に関する請願(阿
 部未喜男君紹介)(第二〇六七号)
 同(浦井洋君紹介)(第二〇六八号)
 同(小沢和秋君紹介)(第二〇六九号)
 同(小澤克介君紹介)(第二〇七〇号)
 同(川俣健二郎君紹介)(第二〇七一号)
 同(経塚幸夫君紹介)(第二〇七二号)
 同(左近正男君紹介)(第二〇七三号)
 同(渋沢利久君紹介)(第二〇七四号)
 同(瀬崎博義君紹介)(第二〇七五号)
 同(田中美智子君紹介)(第二〇七六号)
 同(田並胤明君紹介)(第二〇七七号)
 同(辻第一君紹介)(第二〇七八号)
 同(中川利三郎君紹介)(第二〇七九号)
 同(野口幸一君紹介)(第二〇八〇号)
 同(野間友一君紹介)(第二〇八一号)
 同(林百郎君紹介)(第二〇八二号)
 同(東中光雄君紹介)(第二〇八三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二〇八四号)
 同(藤田スミ君紹介)(第二〇八五号)
 同(正森成二君紹介)(第二〇八六号)
 同(三浦久君紹介)(第二〇八七号)
 同(矢山有作君紹介)(第二〇八八号)
 年金制度の充実改善に関する請願(天野等君紹
 介)(第二〇八九号)
 同(上野建一君紹介)(第二〇九〇号)
 同(加藤万吉君紹介)(第二〇九一号)
 カイロプラクティックの立法化阻止等に関する
 請願(後藤茂君紹介)(第二〇九二号)
 同(堀昌雄君紹介)(第二〇九三号)
同月十九日
 児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(多賀
 谷眞稔君紹介)(第二二五八号)
 同(河野正君紹介)(第二三二八号)
 同外二件(新村勝雄君紹介)(第二三二九号)
 同(竹村泰子君紹介)(第二三三〇号)
 社会福祉の充実等に関する請願(多賀谷眞稔君
 紹介)(第二二五九号)
 同(村山富市君紹介)(第二二六〇号)
 同外一件(竹村泰子君紹介)(第二三三一号)
 身体障害者の雇用対策等に関する請願(村山富
 市君紹介)(第二二六一号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(柴田
 睦夫君紹介)(第二二六二号)
 同外一件(田邊誠君紹介)(第二二六三号)
 同(江藤隆美君紹介)(第二三〇四号)
 同(水平豊彦君紹介)(第二三〇五号)
 公共事業による失業対策推進に関する請願(岡
 崎万寿秀君紹介)(第二二六四号)
 同(工藤晃君紹介)(第二二六五号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第二二六六号)
 同(村山富市君紹介)(第二二六七号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第二三三四号)
 同(P長亀次郎君紹介)(第二三三五号)
 同(武藤山治君紹介)(第二三三六号)
 年金制度の充実改善に関する請願(田邊誠君紹
 介)(第二二六八号)
 同(小川国彦君紹介)(第二三三七号)
 同(沢田広君紹介)(第二三三八号)
 同(新村勝雄君紹介)(第二三三九号)
 民間保育事業振興に関する請願(永末英一君紹
 介)(第二三〇三号)
 カイロプラクティックの立法化阻止等に関する
 請願(岡本富夫君紹介)(第二三〇六号)
 同(砂田重民君紹介)(第二三〇七号)
 同(谷洋一君紹介)(第二三〇八号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二三〇九号)
 同(西山敬次郎君紹介)(第二三九六号)
 高齢者の雇用確保に関する請願(小沢和秋君紹
 介)(第二三二六号)
 ホームヘルパー派遣制度の有料化反対等に関す
 る請願(小沢和秋君紹介)(第二三二七号)
 健康保険本人の十割給付復活に関する請願(瀬
 崎博義君紹介)(第二三三二号)
 老人福祉の改善に関する請願(多賀谷眞稔君紹
 介)(第二三三三号)
 福祉予算の増額等に関する請願(瀬崎博義君紹
 介)(第二三九二号)
 同(藤田スミ君紹介)(第二三九三号)
 同(正森成二君紹介)(第二三九四号)
 健康保険本人の十割給付復活に関する請願(石
橋政嗣君紹介)(第二三九五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○戸井田委員長 これより会議を開きます。
 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。
 ただいま大蔵委員会において審査中の内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、大蔵委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○戸井田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等は、大蔵委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。
#4
○戸井田委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
#5
○村山(富)委員 きょうは主として春闘問題について議論をいただくということで、きょうの委員会を開いてもらったわけですが、時間の関係もありますから、端的にお尋ねしたいと思うのです。
 今日、働く人々、労働者の暮らしの状況というものは、ここ数年を振り返って考えてみて、よくなったと思いますか。現状はどういう状況にあるというふうに端的に思いますか。
#6
○山口国務大臣 諸外国に比べまして経済政策もまあまあ安定している、物価も落ちついておる、いわゆる求人倍率、雇用の問題も一応二%ラインで完全就業に近い状況にある、数字的に見ればそういうことでございますが、しかし、実際問題としては、労働者の生活状況ということは決して周りの環境の割には豊かでない、一言で言えば非常に厳しい環境の中にある。特に、中小企業に働く労働者でございますとか、そういう地方と都市の格差の問題、業種別格差の問題、こういった問題が個々の労働者の生活条件とあわせて一つの問題であろうと思いますし、我々が今後取り組むべき問題の一つの課題だというふうに認識しております。
#7
○村山(富)委員 最近、金融機関やらいろいろな団体がアンケート調査をいたしておりますけれども、これは昨年十月のある金融機関が調査をした結果ですけれども、「非常に苦しい」というのが一一・三%、「少し苦しい」というのが五三・〇%、全体として三分の二弱が苦しいということを意思表示しているわけです。こういう状況になってきた背景には、いろいろな理由があると思いますし、またその苦しいという実態を裏づけるいろいろな統計資料なんかも出ているわけですが、それを逐一挙げて検討してみたいと思うのです。
 例えば、一九七五年を一〇〇として、一九八三年の労働者の暮らしの収支の状況というものを見てまいりますと、GNPは一三三・一伸びておる。実質収入は一一四・一、実質可処分所得は一〇六・一、実質消費支出が一〇八・九、これは総理府の家計調査年報がこういう数字を示しているわけですが、実質可処分所得はこの七五年から八三年までの八年間にわずかに六%、年にしますと一%にも満たない伸びしかないわけです。こうした状況を考えてみますと、数字から見ても家計にゆとりがなくなって、だんだん低下しておるということは当然指摘できると思うのですね。
 さらに、収入と所得税あるいは住民税等々の関係を見てみますと、一九七七年と一九八四年とを比較してみると、七七年と八四年の収入は、三十歳台で三六%、五十歳台で四五%、これは年代によって違いますからね。これに対して、所得税、県民税、市民税等々を見ますと、三十代が八〇%、五十代が一二九%、言うならば、収入を上回って税金の方は伸びてきておる。それだけやはり実質可処分所得を圧迫するわけですから、苦しくなってきておる。
 加えて、社会保険等々の負担が上がっていく、あるいは教育費が上がっていく、あるいは住宅のローンの返済に困る、こういう状況の悪循環を繰り返しているのじゃないかというふうに思われるわけですね。そのために奥さんも勤めに出て働くということで共働きがどんどんふえていく。したがって時間外労働なんかもやって、やはり稼ぐ。さらにまた、疲労が蓄積をされる、家族のコミュニケーションがだんだん減っていく、こういう状況になっておるのじゃないかと思うのですね。かてて加えて技術革新によって職場環境がどんどん変わっていく。したがってストレスがたまって成人病や慢性病がふえていく。
 こういう全体として悪循環を繰り返している実態というものを大臣はどういうふうに受けとめておられますか。
#8
○山口国務大臣 今、日本の経済の状況の割には、非常に国際摩擦、貿易摩擦等が指摘されているわけですけれども、そうした問題から内需喚起ということを政府みずからが先頭に立って進めておりましても、笛吹けど踊らず、こういう状況で、なかなかいま一歩個人消費が伸びないという一つの実態の中に、今村山先生が指摘された幾つかの問題点等々もあろうと思うのです。我々は、そういう一つの税負担の問題にいたしましても、こういう厳しい財政事情の中でどう財政再建を図っていわゆる勤労者の税負担率というものを低くしていくかということも、労働省、労働大臣の非常に大きな課題の一つだというふうに思いますし、社会保険等の問題はなかなか個々の勤労者の福祉との関連という問題もございますが、いわゆる家族の中における教育費の負担も、これはやはり文部省が今大蔵といろいろ調整しておりますけれども、我々も、政府部内で論議の中においてはいろいろともに論議しなければならない一つの責任もあるというふうに思います。
 そういう中で、いわゆる労働者の家計動向調査というものを労働省としても十分分析をして、そして生活実態の中のどこのポイントを政府として率先して改善に取り組むか、あるいは今政府全体として、日本経済全体として取り組んでいる内需喚起、こういうような問題に対しましても、例えばローンの負担の年度を、例えば二十五年物を三十年にする、三十五年にする、こういう点の負担等の問題も含めて――一つの例ですけれども、そういう個人生活にこれが回せるように、いわゆる人生八十年時代に合わした勤労者の支払いに伴う負担というものをどう延ばしていくかということも一つの生活条件の改善にもつながる。先生が御指摘になったそういう個々の問題と、いわゆる人生八十年時代における家庭経済のトータルなプランとの抱き合わせの中で、トータルとしてそういう労働者の生活条件の改善を進めていくということが今緊急な一つの課題として、我々の宿題といいますか、課題としてそこに横たわっている、こういう問題認識で取り組むことが大事なんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
#9
○村山(富)委員 今、私はいろいろな数字を挙げて今の実態というものを裏づけてみたわけですけれども、労働者というのは働いて所得を得る、その所得によって家族の生活を養うあるいは子供の教育費を出す、家賃を払うあるいはローンを払っていく、したがって、入る金よりも出る金の方がふえていけばそれは苦しくなるのは当たり前なんで、しかもその苦しさを何とか抜け切ろうとすれば、所定外時間に働いて収入を稼がなければならない、こういう状況に置かれておるわけですね。それがまた人間の体を壊していくという悪循環をもたらす、あるいは家族の不和をもたらす悪循環になる、こういう実態にあると思うのです。したがって、それぞれのステージに労働政策としてやらなければならぬことがあるというように思いますから、逐次そうした問題についてお尋ねをしていきたいと思うのです。
 特に、後で触れますけれども、労働時間の問題にしても、いろいろな労働条件の問題にしても、外国に比べて日本は若干の批判も受けておる、こういう状況にあるのは、やはり労働者の中で中小零細企業で働いている労働者が圧倒的に多い、しかもここは未組織の労働者だ、したがって労使の関係というのは正常に存在していない、したがって、ある意味からしますと労働基準法も一方的に無視をされてどんどんやられている、その上にさらにパートがふえている、こういう状況に置かれているところにやはり全体としていろいろな条件を比較でき得ない社会的要因があるのではないか、こういうふうに私は思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
#10
○山口国務大臣 私も全くそういう問題認識においては先生の御指摘のとおり考えている一人でございまして、特に労働条件改善とか労働福祉の問題を考えますときに、大企業と中小零細企業との諸条件の格差、こういう問題が、労働時間の問題にいたしましてもあるいは賃金の問題にいたしましても、他の労働福祉諸条件の改善の問題にいたしましても、極端に言うとすべてそこに集約されるような部分があるわけですね。
 結局、大企業とか組織されている労働組合、労働団体の政策要求というのはどちらかというと欧米の水準あるいは国際間における日本の立場、責任、こういう立場からの政策要求が多いわけですね。それを実現しよう、一気がせいにこれを進めていこうということになりますと、いわゆる中小零細企業の経営本体にもこれが打撃を与えかねない、そうすると新たな雇用の不安を生み出すような問題もある、したがって労働時間短縮の問題も我々が一生懸命推進しておりましても、経営者側からの反発もさることながら、いわゆる個々の労働者の批判も非常に多いということもこれは事実なんですね。長時間労働とかあるいは時間外労働によって、今村山先生の問題提起のように、いや、それが家計の一つの足しになっているという問題が一つと、それからまた彼ら自身も経営者と同じように中小零細企業はそんなことじゃやっていけないんだ、こういう一つの職人かたぎといいますか、長い慣行におけるプライドといいますか問題の認識を持っている、こういうことでございます。
 そういう現実の中で、しからばどうするかということになりますと、今労働省の中にもプロジェクトチームをつくりまして、大企業と中小零細企業におけるいろいろな諸条件の一つの比較ですね、中小零細企業の労働条件に日本全体を合わせるというわけにいかないわけでありますし、かといって一気がせいに大企業に合わせたらこれまた問題が起こる、その辺のバランスとオルグをどう一歩一歩改善していくかということをやるべく、今ようやっとチームをつくり、遅まきながら取り組みを始めた、こういうのが実態でございまして、今先生の御指摘のように、中小零細企業の労働条件というものの改善が国民福祉、労働福祉の向上の一つの大きなかぎである、要素につながっている、こういうふうに考えておりますので、ひとつ積極的に取り組んでいきたい、こういう考え方を持っております。
#11
○村山(富)委員 僕は、今言ったような問題についてももう少し本気になってやってもらいたいと思うのですよ。と申しますのは、今申し上げましたような労働者の暮らしの実態と関連をして景気の動向なんかを見てみますと、ついせんだって経済企画庁が五十九年十月から十二月期の国民所得統計速報というものを出していますね。それを見ますと、この期間のGNPは実質成長率が前期比二・三%伸びているわけですね。したがって、五十九年度の実質成長率は政府経済見通しの五・三%を〇・三%上回る五・六%に上方修正する。言うならば、景気は政府の見通し以上に伸びてきているわけです。
 ところが、残念ながらこの伸びている中身を見てみますと、さっき大臣から内需を喚起する、こういうお話がありましたけれども、政府は内需を中心にして景気の拡大を図っていくということを盛んに言っておりますけれども、こうした成長率が伸びておる、景気が上向いてきておる実態というものを見ますと、例えば今申しました二・三%の実質成長に対して寄与度を見ると、内需が〇・四%です。外需が一・九%ですから、全く外需中心の景気の伸びになっているわけですね。これは私はやはり問題だと思うのです。特に世界の国々から日本の黒字は一けた多過ぎる、もっと内需を伸ばすべきだ、こういう声がある。これはOECDの閣僚理事会もあるし、サミットを控えて政府は貿易摩擦の問題と関連をして頭の痛い問題だと思うのです。
 そこで、そうした問題を打開する一つのかぎは、言うならば個人消費をどう拡大していくかということが不可欠だ、その個人消費を拡大する決め手は、この春の労働組合の賃上げがどの程度におさまるかということにかかっておるというような見方をする者もあるわけです。そういう見方に対して労働大臣はどういう見解を持っていますか。
#12
○山口国務大臣 今、村山先生の指摘されたような立場からの論議というものは非常に強いわけです。そういう意味で、日本の貿易摩擦との絡みで、ぜひ内需移行するためには春闘相場が非常に大きく意味するんだ、こういう論議がございます。私は一つの大事な考えだと思うのですね。一方、経営者側は、いや一兆円減税をやったけれども、結果的にはみんな預金に回ってしまって必ずしも内需にこれが連動しなかったじゃないか、したがっていわゆる春闘相場と内需政策とは別なもので二本立てで本来考えるべきものだ、こういう意見もございます。
 いろいろ意見があろうと思いますけれども、いずれにしましても春闘の賃上げの問題は労使双方がどう公平に分配するか、こういうことで、政府や労働大臣が幾ら幾らがいい、こういうことを言える立場にはないわけです。しかし、会社と労働側に日本経済全体を考えていただく、また、国民福祉、労働福祉の向上分も考えていただいて、ぎりぎりのところで円満かつ公平に妥結していただくということが非常にありがたいと私は期待をしているわけです。
 今、総理も予算委員会等におきまして、たびたび、今の日米関係は、例えて見ればイランの米人人質事件でアメリカの世論が沸騰したときに日本だけがイランと取引をしていた、そういう日本に対する不満や反発と同じぐらいの状況にある、こういう例えで説明しておりましたけれども、私は、村山先生がおっしゃるように、日米関係に限らず諸外国との貿易摩擦というのは大変深刻だと思うのですね。ですから、内需を喚起するためにあらゆることを考えなければならない。春闘の相場形成の中でそういう問題が論議をされるということも一つの大事な考えだと私は受けとめております。
#13
○村山(富)委員 いや、私が今までずっと述べてきたのは、今の日本の経済の実態から考えてみると、外国と比べてみて、欠陥は、日本の労働者の暮らしというのは、やはりいろいろな条件が悪過ぎるというところに問題があるのだ。それが内需を伸ばさない、停滞させる一番大きな要因になっておる。したがって、それを打開するためには、やはり今度の春闘で何ぼ賃金が上がるかということにかかっておるというふうに言われているわけですね。
 今、大臣は答弁の中で、減税をやってみても減税分は貯蓄に回るという話があったけれども、これは余裕があって貯蓄に回るのじゃないのですよ。病気をしたときに困るとか、子供の教育費とかローンの返済とか、自分の生活をある程度犠牲にして貯蓄に回して備えている。それは国がやってくれぬから自分で守る以外にないというところに問題があるわけです。そういう問題をずっと整備していけば私はそうはならぬと思うのですね。ですから、それは労働者の側に問題があるのではない。したがって、そういうことにならないようにするために労働政策を一体どうするのかという質問をしているわけです。
 したがって、私は端的に聞きますけれども、内需を喚起して正常な姿に直していく、同時に貿易摩擦の解消の一助になる、そのためにはやはり賃上げは必要なんだというふうに大臣は思いますか、思いませんか。
#14
○山口国務大臣 労働省及び労働大臣は、春闘が労使双方にとって極めて円満かつ実効を上げるべくそういう周りの環境づくりをひたすらさせていただく、これは官民双方に限らずそういう意味におけるお役に立つべく努力はさせていただいておるわけですけれども、賃金の問題については、先生御承知のとおり、特に民間の場合は労使双方がどう生産効果を配分するかということで、労働省や労働大臣が幾ら幾らがいい、こういうことに数字あるいは目標数に対して踏み込むということはいろいろ問題があって、公共企業体でも、労使で決めろ、政府は余計なことを言うな、こういう一つの原則もあるわけです。
 そう考えますと、それはなかなかそこまで言いたくても言えない側面があったわけですね。しかし、きょうの問題は別として、中長期的には、今先生と議論しているやりとりの問題もありますけれども、労働省というのは、そういう賃金の問題、労働者の生活条件のいろいろな問題に対して、経済企画庁じゃないけれども、こういう見通しとか、大体トータルとしてはこういうところが水準としてどうだということで一つの考え方を示すということも必要なんじゃないか。政府主導とか、あるいは自由経済の立場に踏み込むとかいう問題は別として、いわゆる労働者の生活権をどう守るかという立場においては、多少そういう踏み込んだ意見をもっとオープンに述べても、それはそれで、それが決定だ、また民間労使にとってもそれが一つの最低基準になったのだとか、これに沿ってやらなければいかぬということとは別として、もっとオープンに、国会でのやりとりなんかを受けて発言するということの許容範囲をだんだんつくる必要があるのじゃないかと思うのですね。そういうことで、政府としては日本経済、国民経済全体の中からの立場で一つの問題点を指摘する、こういうことが大事なんじゃないか。
 ただ、今そういうふうに私は考えておりますし、これからそのための努力も行政の中で進めていくつもりでおりますけれども、きょうのこの春闘の段階において私が今ここで言うということは余りにもリアクションが大きいということもございますので、そういう考え方の姿勢でこの春闘も見守っておるということで御理解いただければ大変ありがたいと思います。
#15
○村山(富)委員 時間が余りありませんから、簡単に御答弁願いたいと思うのです。僕は、山口大臣は異色の存在だからある程度思い切ったことを平気でさらっと言うのじゃないかと思ったのだけれども、余り変わらない。僕は、それはいいと思うのですよ。民間の場合には労使の話し合いで決めるのだから、それに対して政府は介入できません、だけれども、今の客観的な状況を見た場合に、労働大臣としてはこう思いますというくらいのことをちょっと言えばいいんだよ。それが言えなければ私は労働大臣は務まらぬと思いますよ。それだけ指摘しておきます。
 さっきもちょっとお話がありましたけれども、民間と違って特に公労協や公務員の場合は、仲裁裁定、人事院勧告の扱いというのはある程度政府が決めるわけですから、これは政府の責任でやはり処理しなければならぬ。御案内のように、公労協の仲裁裁定も、一時金等の手当が削減をされて、実態的には抑制をされているわけですね。公務員の場合には、なおさら一年凍結までされたわけですから。そういう状況を考えてみた場合に、こうした日本政府のやり方に対して、ILOの条約勧告適用委員会等におきましても、例えば、人勧は完全実施すべきだという勧告を出して、さもなければ制度それ自体の見直しをすべきだという見解を表明していますね。なおまた、十一月の結社の自由委員会では、公務員労働者が雇用条件の決定に参加し得る公務における賃金及び労働条件の決定手続を確立することの必要性を表明して報告書に発表されておる。
 こういう世界的な世論等を考えた場合に、スト権の代償機関としてつくられておる人事院、その勧告に基づいて公務員の給与というのは決まっていくわけですから、これは制度からいっても、手続からいっても当然完全実施をされるべきものだ。ましてこれまで抑制をされ凍結をされたその積み残し分も含めて、私はことしはやはり完全実施をすべきものだと思うのですが、大臣はどう思いますか。
#16
○山口国務大臣 私もかつて石田博英さんが労働大臣のときに秘書官をしておりましたけれども、池田総理に対して、人勧の完全実施ということをルール化した、やはり労使双方がルールを守る、政府みずからがルールを守るという習慣をつけなければいかぬ、こういう考え方の上に立って大変努力をされたということに立ち会っておったわけでありますけれども、やはりそういう考え方で今日もいかなければならぬ、こういう気持ちは強いわけです。
 ただ、当時と違って財政事情が非常に厳しいということは先生も御承知のとおりですし、いろいろな国民世論でありますとか他の民間との兼ね合いとかいう中で今まで完全実施が滞っておったわけですし、村山先生御指摘のように、それが国際機関からもいろいろ注文されるところにもなってきているわけでもございます。そういうことで、ことしは、総務長官も官房長官も、官房長官談話にございますように、これは完全実施に向けて最大の努力をしなければならない。特に労働大臣としては、財政当局とかあるいは官邸とも連絡をとって完全実施のために必要な要求を提言していくということで、ひとつ政府見解を実行せしめるために、官房長官談話を実行せしめるために我々としては最大の努力を払いたい、かように決意しております。
#17
○村山(富)委員 それはそういうふうに言わざるを得ないと思いますけれども、ただ言葉で言うのではなくて、私は、やはりこの問題については、労働大臣としてはどこの閣僚よりも責任が重いと思うのですよ。ですから、今話を聞けば、石田労働大臣のときに完全実施をするときに秘書官をやっておったというようなこともある。経過は十分承知の上ですから、やはり承知をしておるだけに、この際、労働大臣の職を賭してでもこの人勧、仲裁裁定の完全実施はやらせるというぐらいの決意でやってもらわなければいかぬ。それが新自由クラブから一人閣僚に入っておる山口大臣の任務でもあると私は思うのですよ。そうすることによって政治や政府に対する信頼というものも高まっていくというふうに思うのです。やはりそれぐらい面目躍如たるところをこの際見せる、もしこれを大臣がやったら後世に名が残りますよ。それぐらいの決意でやってもらいたいと思うのですが、どうですか。
#18
○山口国務大臣 そういう御指摘、激励も含めまして、我々が、党としてあるいは個人として云々という立場を超えて、今、村山先生からも御指摘がございましたように、これはやはりルールをどう守るか、まず政府みずからがルールを守るための最大最善の努力なしに、あるいは公務員の違法ストであるとか、他のいろいろなストその他の問題に対して四の五の指摘できる立場にはなくなるわけですから、やはりまずは政府がきちっと制度上の慣行を守って、そして労働者側にもその信頼をかち取る、そこから今の行革とかその他の民営移管の問題も理解と協力を得られる、こういうことだと思いますので、私も、在任中当然そういう問題が出てくるわけでございますから、これは今まで以上に真剣にこうした問題に対しての実施方に対して、財政当局ともひとつ要求を、実施のための努力をさせていただきたいというふうにお答えを申し上げておきたいと思います。
#19
○村山(富)委員 今申しましたように、これはやはりある意味では労働大臣の責任でもあると思いますから、職を賭してやらせるというような決意で頑張ってもらうということを特に要請しておきます。
 それから、ちょっと前段で触れましたけれども、やはり私は、今の日本の低賃金構造とか労働時間が先進国に追いつかないとか、年次有給休暇がとれないとか、いろいろな悪条件がありますけれども、その悪条件の基盤になっておるのは、今の層から申し上げますと中小企業に問題があると思うのです。
 そこで、時間の関係がありますから、端的に私は大企業と中小企業のいろいろな格差の現状についてちょっと指摘をしてみたいと思うのですけれども、例えば賃金の格差の状況を見ますと、これは労働省が発表しておる賃金構造基本統計調査による数値ですが、間違いがあったら間違いがあったというふうに言ってもらいたいと思うのですけれども、製造業男子千人以上を一〇〇として格差がどの程度にあるか。これは、最近ずっと格差が拡大する傾向にあるというふうに見られるのですが、これを見ますと、一九六〇年、百人から九百九十九人までの事業所においては、千人以上一〇〇に対して七三・七%、十人から九十九人のところは五九・六%。それが六五年には若干是正をされまして、格差が縮んでおるわけです。百人から九百九十九人までが八五・一%、それから十人から九十九人が八一・二%と、相当是正をされておるわけですね。これは高度成長という背景もあったと思うのです。
 ところが、それがだんだんまた拡大する傾向にあるというのは、例えば八〇年を見ますと、百人から九百九十九人が八五・二%、十人から九十九人までが七七・九%というふうに、また逆に拡大しつつある。これが賃金格差の実態です。
 それから、これをさらに年間賃金で見ますと、一九七五年が百人から九百九十九人までが八三・三%、十人から九十九人までが七〇・五%。これが八三年になりますと、百人から九百九十九人の中規模以上のところは七八・四%というように、それでもやっぱり格差がついておる。さらにこれを十人から九十九人までの事業所で見ますと、六六・二%というように一層格差が拡大しておる、こういう状況になっておりますね。ですから、大企業と中小企業との賃金格差というものは、一時ちょっと高度成長の時代に縮んできたけれども、またそれがさらに拡大する傾向にあるということがこの数字では指摘をできると思うのです。
 さらに、これを一時金、退職金等で見てみますと、千人以上を一〇〇とした場合、一九七五年に、百人から九百九十九人までが六九・四%、十人から九十九人までの事業所が四四・五%。半分にも足らないわけですね。それが八〇年には、若干伸びて、百人から九百九十九人が六七・六%、それから十人から九十九人が四五・〇%というふうになっているわけです。これが八三年になりますとさらに拡大して、百人から九百九十九人が六六・四%、十人から九十九人が四二・三%というように、一時金の格差もさらに広がっておる。退職金を見ますと、これは五千人以上の規模を一〇〇とした場合、もう時間がありませんから八二年だけ申し上げますと、千人から四千九百九十九人までのところが八〇・五%、それから三百人から九百九十九人までのところが五六・五%、百人から二百九十九人が三九・六%、三十人から九十九人の事業所では三五・六%。規模が小さくなるに従って格差は拡大しておる、こういう現状にあるわけです。
 私はこれが、冒頭に申しましたようにやっぱり圧倒的に数が多いわけですから、したがって、労働時間も年休も、あるいはいろいろな労働条件というものが立ちおくれておる大きな背景になっておるというふうに言わざるを得ないと思うのです。しかも中小企業の場合には未組織が大変多い。したがって期待するような労使関係の協議なんというものはないわけです。こういう現状にあるわけです。今労働省は、いろいろな対策を立てて、時間短縮の問題とかあるいは連休の問題とかあるいは週休二日制の問題とか、いろいろ取り上げておりますけれども、こういう現状が根っこにある限りは、私はやはりなかなか是正できないと思うのです。これは、単に労使関係だけに期待をするのではなくて、やはり労働政策として何らかの対策が考えられていいのではないかというように思いますが、そういう点についてはどういうふうにお考えですか。
#20
○山口国務大臣 確かに大企業と中小零細企業の間で賃金あるいは賞与の問題、また退職金、労働時間、あらゆる問題が非常に格差が広がり過ぎている。これは大企業と中小零細企業の一種の国内における南北問題といいますか、経済問題、あるいはそれに伴う労働福祉の格差の拡大、これは非常に大きな、経済問題のみならず社会問題にまで発展していく危険性がある、これ以上の大企業と中小零細企業の格差の拡大というものは国内的にも非常に大きな問題を生むと私は思うのですよ。
 例えば極端な話が、大企業が一カ月近く連続休暇をとって休んでいる間に、その間下請企業、中小零細企業は一生懸命大企業が夏休みの後稼働するときのためのねじをつくったり下請の仕事に汗をかいている、そして給与の問題はそれに比べて半分に満たない、こういうような状況がありますので、村山先生御指摘いただいたわけですけれども、この問題にどう取り組むかが日本のこれからの国民生活、国民経済、日本経済の問題の中で非常に大事なポイントだ。特に労働時間短縮とか借金、内需の問題等を含めましても、私はある意味においてはここにすべての要因といいますか、その大きな部分がそこに込められておるんじゃないかというふうに考えます。
 そこで、しからばこの中小零細企業と大企業の格差是正のためにどういう手だて、施策が必要かということにどう取り組むかということで今いろいろ通産省やなんかとも二省間協議を始めまして、そして労働省だけでは解決つかない問題でもございますので、通産省と労働省の二省間協議の中にもこの中小企業問題というのは非常に大事に取り上げている。
 それからいま一つは、高齢化時代を迎えますので、高齢者の雇用の問題とか、そうした問題の中にも中小企業問題というのは非常に大きく位置づけられる。こういう点からその格差是正のために労働省としても具体的な施策を早急に検討したい、そしてそれを二省間協議でさらに拡大して検討したいというふうに考えております。
#21
○村山(富)委員 もうだんだん時間がなくなるので、簡単に答弁をしてください。
 具体的にお尋ねしますけれども、労働基準法第四十条の規定に基づく特例業種に設けられた労働時間の特例の廃止問題というのがありますね。これはもう時間がないから多く申しませんけれども、かつて出されました基準局長の通達を見ましても、これは廃止さるべきものだ、廃止さるべき性格のものだというふうに規定づけていますね。そして今回労働大臣から中央労働基準審議会の方に諮問をして答申をもらっておるようですけれども、この内容については極めて不満があるわけですけれども、どうしてこういうことになったのか、この際、全部廃止をすべきでないかというふうに私は思うのですが、その理由をちょっと聞かせてください。
#22
○寺園政府委員 労働基準法四十条に基づきます労働時間の特例につきましては、五十六年以降段階的に廃止をしてまいったところでございますが、残されましたのは、御指摘の十人未満の商業・サービス業、それから私鉄関係の一昼夜交代勤務の人たちの特例が残されておったわけでございます。それらにつきましては、本年三月三十一日までに基準審議会の意見を聞いて延長の要否について決定をするということにされておったところでございますが、私鉄関係の一昼夜交代勤務につきましては労使とも十分に対応できるということでございましたので、三月三十一日をもって特例措置を廃止するという措置をとることにいたしました。
 御指摘の十人未満の商業・サービス業の関係でございますけれども、これにつきましては、五十九年に実態調査をいたしました。その結果、五十六年以降段階的に廃止をしてまいりました商業・サービス業の五十五年当時の労働時間の実態に比べてかなり長い実情にございました。したがいまして、直ちに八時間労働制に移行することには困難性が高いのではないかというふうに考えられたところでございますが、八時間労働制の特例の廃止に向けて着実に進めていくという観点から、まずは五―九人の規模につきましては三年後に特例を廃止をする、それから一―四人規模につきましては八時間以内におさまっております事業場の割合が七〇%強という状況でございますし、また時差勤務、交代制勤務などの勤務形態上の工夫がなかなか難しいというような実情もございますので、現段階において廃止の時点を明確にすることは難しかろうというふうに考えまして、六十三年三月三十一日までに再検討をする、そういう考え方のもとに省令案の要綱を中央労働基準審議会に諮問をいたしました。その答申を得まして省令改正を行ったという経緯でございます、
#23
○村山(富)委員 この特例を直ちに廃止することは、四人以下の事業場の場合には現状に照らして難しいという話ですね。ところが、私が調べた資料によりますと、大体そういう事業場においても八時間未満の労働時間、所定内時間でもってやられているところが三八・三%、それから八時間限度ぐらいでやられているところが四二・八%、言うならばもう八〇%が実際には守られているわけですよ。わずかに一八・六%ぐらいですよ、八時間を超えているところは。こういう実態を見た場合に、これを理由にして六十三年まで延ばすなんということは労働時間短縮をやっているという労働省の方針と違うじゃないですか。
 何ぼうまいことを言ったって、こういうところにどんどん現状に妥協していっておくらせていくようなことをしていけば、これは、言うように時間短縮ができませんよ。しかもこれは基本的には廃止すべきものです。労働基準法には八時間労働制というものが制度としてできているわけですから。それを超えて特例を認めているわけですから。この特例は特別な背景があって、原因があるから認めているわけです。その背景と原因がなくなれば廃止すべきものだというのが筋なんで、こんなものにいろいろ逡巡しているところになかなか労働時間制短縮も進まない労働省の姿勢があるのじゃないですか、どうですか。
#24
○山口国務大臣 この問題は、今基準局長から答弁申し上げましたように、中央労働基準審議会の議を経て一つの特例措置としてこういう今局長の御説明のような結論を出したわけでございますけれども、正直に申し上げて、労働時間短縮問題を進めている過程においてそういうものをトータルとして進めるべくいろいろ中小零細企業はどうするんだということで、先生御指摘のように数はだんだん一八%という形で守られるようになってきたわけで、残っているものの方が少ないわけですけれども、逆に、特にそういう残っている部分からの強い反発や不満や、それから実情をぜひ御理解いただきたい、こういういろいろな実情説明もこれあり、審議会でそういう一つの結論が出された、こういうことでございます。
 労働省としては、先生の御指摘のように本来はこういうことを認めるべき立場であってはならないわけでありますから、この期間における行政指導を徹底して再びこういう特例措置を講ずるということがないように、そしてまたそれは労働時間短縮運動への一つの最後の、言葉はいいか悪いかわかりませんが、妥協点ということで私も最終的に審議会の議決を承認させていただいてこういう措置を講じさせていただいた、こういうことでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
#25
○村山(富)委員 これは、六十三年などということにこだわらないで本気になって時間短縮をやろうという気があるなら、若干の無理があっても、守るものは守らせるというぐらいの決意でやってもらわなければ困るというように思いますから、そういう意見を申し上げておきます。
 それから、中小企業の退職金共済制度の問題です。これは五年に一度制度の見直しをする。六十年度がちょうどその時期に来ているわけですね。中小企業退職金共済審議会等々からも建議が出ていますね。私は、この際いろいろな条件を考えて、今まで議論もありましたような背景も考えて、六十年にはこの制度の見直しをしてやはり改善をしていくということが当然だというふうに思っていましたけれども、六十年度にはやるのかやらないのか、もしやらないとすればその理由は何か、その二点について簡単に答えてください。
#26
○寺園政府委員 御指摘がございましたように、昨年の夏に中小企業退職金共済審議会から建議が出まして、それを受けまして六十年度に中小企業退職金共済法の改正を図ることを目途に検討を進めてきたところでございますが、その過程におきまして、国庫補助を含みます中小企業退職金制度の基本的なあり方につきまして、社会経済情勢の変化あるいは今後の財政経済の実態や見通しなどを踏まえましてさらに検討を深めることが必要であろうということを考えるに至ったわけでございます。
 そこで、昨年に引き続きまして審議会に検討をお願いをいたしておるところでございます。私どもといたしましては、その検討結果を踏まえまして、明六十一年度を目途に中退法の改正を図りたいというふうに考えておるところでございます。
#27
○村山(富)委員 全体として労働政策が期待どおりに進まない要因というのは、さっきから指摘しているようにそういうところにあるわけですから、それをできるだけ制度的にも改善していく、そして引き上げられていく条件をつくっていくというのが労働政策の一番大事な点ですから、五年ごとに見直しをしてやるというなら六十年に改善をするというのが当然の話であって、そういうふうに努力をすべきだというように思います。時間がもうありませんから、そういう意見だけ申し上げておきます。
 それから、次にお尋ねをしたいのは、日本政府は労働時間に関するILOの条約については一つも批准していないのですね。日本はILOの常任理事国でしょう。しかも、その経費は一割負担しているのです。金だけ負担をして、そして貢献をするというだけではなくて、現実に内容でもって示していくということもやはり先進国の任務だというふうに思うのです。日本は一つも批准をしていないというのは一体どういうわけですか。
#28
○寺園政府委員 ILO条約のうち労働時間に関する条約につきましては、我が国はまだ批准をいたしておりません。その理由でございますけれども、ILO条約のうち、幾つかの労働時間関係の条約がございますが、まず四十七号条約、これは労働時間を一週四十時間に短縮することに関する条約でございます。また百三十二号条約、これは年次有給休暇に関する条約でございますが、これにつきましては基準法と格段の相違のある条約でございます。我が国といたしましては、ILO条約を批准するに当たりましては国内法制の整備を確保した上で批准するという方針でございますので、この両条約については、基準法上かなりの差があるということで批准をいたしておらないということでございます。
 また、第一号条約、それから第三十号条約につきましては、この条約で定めます基準は基本的には我が国は満たしておるというふうに考えておりますが、労働時間制度のあり方はそれぞれの国の労働慣行あるいは社会慣行等と密接に関連をする問題でございますので、例えば我が国の場合は、時間外労働につきましては三六協定によってなすことができるということでございますが、これらの点につきまして第一号条約、第三十号条約に適合しないという部分がございますので、これについてまだ批准をしておらない、こういうのが批准をしておらない理由でございます。
#29
○村山(富)委員 公取見えてますね。ちょっと時間の関係がありますから先にお尋ねします。
 さっき中小企業の問題についてるるお話しをしてきたこともお聞きになったと思うのですけれども、一つは、やはり中小企業の場合には下請が大変多い。下請が多いから、中小企業の経営者の方も人並みに改善をしたいと思ってもなかなかできにくい条件がある。それは元請と下請の関係だと思うのです。それをできるだけ是正するために下請代金支払遅延等防止法なんという法律をつくってやっているのですけれども、この法律に照らして、五十六年、五十七年、五十八年でいいのですけれども、法律に違反をしている案件というのは何件ぐらいあるのか、その中身は一体どういうものが多いのか、ちょっとそれを説明してください。
#30
○鈴木説明員 公正取引委員会は、下請法九条一項に基づきまして毎年定期的に親事業者とか下請事業者に書面調査を実施しまして違反行為の発見に努めております。これらの調査結果によりまして違反被疑事実が認められた親事業者については立入検査等、調査を行いまして、違反事実が認められた場合には法七条に基づきまして勧告を行う等、所要の是正措置を講じさせております。
 昭和五十七年から五十八、五十九年度の調査件数は、五十七年が親事業者、下請事業者、延べ三万六千五百五十八件の事業者を調べまして、違反が認められましたのは千十四件、調べて認められなかったのが二百七十一件、合計千二百八十九件を調査いたしております。五十八年は、同じく書面調査を三万九千四百八十四件やりまして、その結果違反が認められたのが千百十九件、認められなかったのが三百十七件、合計千四百三十六件調査をいたしております。それから五十九年度でございますが、五十九年四月からことしの一月まで、延べ三万六千二百八十五件調べまして、違反が認められましたのが八百八十九件、認められなかったのが四百八十九件、都合千三百八十七件調べております。
 違反の主な類型でございますが、最近非常にふえておりますのが不当値引き事件でございまして、昭和五十七年六十三件でございましたが、五十九年度、五十九年四月からことしの一月まで二百三十三件、全体の違反事件の中で一七・九%を占めております。支払い遅延関係は、五十七年が百九十六件でありましたが、五十九年度、五十九年四月から六十年一月まで百五十九件、全体の比率は一二・二%ということで、支払い遅延関係は減っておりますが、不当値引き事件はふえておる、こういうのが特徴でございます。
#31
○村山(富)委員 これは公取も一生懸命調査もし、違反に対する適正な措置も講じられていると思うのですけれども、実際には表面に出てこない、泣き寝入りする層が大変多いのじゃないかと思うのです。これは皆さん方の目に触れない部面でやられている面が大分ある。そういう実態を考えた場合に、違反を一掃して是正をするというのは、今の制度、今の公取のやり方、予算面から人員から考えてみて、適正にやれるのかどうかということを考えた場合に、やはり問題があるのじゃないかというように思いますから、今の制度を若干でも改善をして、そしてもう少し適正にきちっとやれるような状況をつくっていくということも必要ではないか。
 一説には、知事あたりに立入調査権を認めるとかなんとかして国と地方自治体が力を合わせてそういう部面の是正を図れるようにしたらどうか、こういう意見もあるようですが、そういう点も含めて是正の考えはあるかないか、ちょっと聞きたいのですが。
#32
○鈴木説明員 公正取引委員会は、現在この調査をするための予算は大体千九百万ぐらいでございます。こういった限られた予算を十分効率的に使いまして、できるだけそういった問題の発見、それから是正に努めていきたいと考えております。
 また、一部の都道府県からは下請法の権限を付与してほしいという旨の要望がなされておりますか、現存すべての都道府県が法的な権限を発動できる体制にあるとは言えないと考えられますので、まだちょっとその権限を都道府県に付与することは機が熟していないと考えております。しかし、幾つかの都道府県からは、地域の中小企業対策といたしまして下請取引の適正化のため公正取引委員会と協力体制をとりたい旨の申し入れがなされておりますので、公正取引委員会といたしましては、昭和六十年度、すなわちことしの四月から下請法の普及啓発、事業者に対する指導、相談等の業務について都道府県と相互協力体制を整備していくこととしております。
#33
○村山(富)委員 今のような現状を考えて、ひとつ本気になってやってくださいね。お願いします。
 それから、前の質問に戻りますけれども、労働基準法の研究会なんかをつくって今研究をやっているわけですね。やはりILOの基準にできるだけ到達するような方向でこの労働基準法の見直しをするということが必要ではないか。少なくとも日本の国が時間短縮に関連する条約については一つも批准していないなんということは私は許されないと思うのですよ。そういう意味で、もう時間がありませんから、そういう意見を申し上げておきます。
 そこで、次に御質問申し上げたいのは、先般御質問申し上げました労働基準法研究会と中央労働基準審議会との委員がダブっている。特に会長が同じなんです。そうすると、研究会で出されたものを労働省はさらに検討を加えて、そして一つの成案を得て基準審議会に諮問する。諮問を受けて答申をするこの審議会の会長と、その素案を出した研究会の会長が同一の人間、これはその人に対して言うのではないですよ、制度としてのあり方について私は問題があるのではないかというように思いますから、この点はひとつ指摘をしておきます。
 そして、時間がないからお聞きしたいのですが、その研究会から先般中間報告が出されましたね。その中間報告を見ますと、一日九時間、週四十五時間とする、こういう中身があるわけてす。今、国際的に一週四十時間が常識になりつつあるというときにこういう報告が出されるというのは、私は時代逆行ではないかと思うのだけれども、端的に、大臣はこの中間報告、この問題についてどういうふうにお考えですか。
#34
○山口国務大臣 労働時間短縮が、今日の労働福祉の改善、高齢化時代、技術革新の時代、いろいろな意味で必要だ。特にILOの問題も含めまして国際的な立場からもあるいは労働摩擦の問題も含めて進めなければいかぬということで、労働時間短縮ということは労働省としても一生懸命取り組んでいるところでございますけれども、週休二日制の問題とか、いろいろな絡みの中で基準研究会が一日九時間というような問題も含めて議論した。これは労働大臣の私的諮問機関として今御論議いただいているわけですから、その中間答申の過程でこれがいいとか悪いとかということを私の立場としては現在言えないわけで、最終的にはこの七月に最終答申が出ますけれども、私の考えとしては、先生やいろいろな皆さんの御論議を聞いておりましても、もう一日八時間が主流になっているものがまたここで九時間ということはなじまないのではないかというふうな認識は持っております。
 しかし、私の方で、大臣としての諮問機関で研究してくださいと言って自由に御論議いただいているときに、これはいい、これは悪いとかという結論はまだ出せませんので、いましばし最終答申を待った後、国会の御論議も十分踏まえていろいろ最終的な取りまとめをしたいというふうに考えておりますので、その程度に答弁をとどめさせていただきたいというふうに考えます。
#35
○村山(富)委員 それは、私の質問もその程度にとどめておきます。
 それから最後に、先般この委員会でも御質問申し上げたのですけれども、金融機関の週休二日制の問題です。これはもう長年苦労してやっと四週五休制が実っておったのですけれども、本年二月に郵政省が三連休に当たって第二土曜にCDを稼働した。そのことがまたいろいろな金融機関にも影響して話題を提供しておる。これは同調を表明するところもあれば反対するところもある、こういう状況で、先般も大蔵やら農林やら郵政やら御出席をいただいて御意見も聞いたわけですけれども、九月の三連休にはどこも同調してやりたい、特に農協関係は機械の設置が少ないですから若干反対だというような意見もあって、必ずしも一致しておらないようですね。
 ただ、全体として九月の三連休には稼働させられるのではないかというふうに見ていますけれども、そうしますと、先般も指摘しましたように、四週五休というのは実質的には後退するわけですから、やはりそれではいかぬのではないかというので、全銀協あたりではこの際あわせて四週六休にしたらどうかというような意見も決議されているようですから、労働省は大蔵省や農林省や郵政省等関係機関の話のあっせんをしながら幹事役を務めておるという立場もありますから、その現状は一体どうなっておるのか、労働省の方針としてはどういう方向に持っていこうとしておるのか。少なくとも全体として週休二日制を前進させようという状況にあるときに後退は許されない。それならば、せめて四週六休ぐらいはこの際みんなにやってもらうというぐらいの決意で取り組んでおるのかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。
#36
○山口国務大臣 今度のCDの稼働についての農林、大蔵、郵政の調整も労働省で進めたところでございますけれども、ああいう結論になったわけでございまして、週休二日制を拡大するためにはどうしてもCDの稼働が必要条件だ、こういう意味で九月には足並みがそろう。村山先生御指摘のように、やはり金融機関が週休二日制の先頭に立ちませんと、現実の問題としては週休二日制というのはなかなか普及しない、こういうことでもございますので、私の方も大蔵大臣及び大蔵省銀行局とも十分意見調整をして、週休二日制が拡大する方向とCDの稼働とを連動させてこの調整を進めたい、かように考えておりますので、そういう方針をひとつ御理解いただきたいというふうに思います。
#37
○村山(富)委員 この四週六休をやるべきだという意見は今の体制の中では多いわけですね。そこで、その四週六休をいつからやるかということも問題になると思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
#38
○寺園政府委員 本年二月の三連休のときに、機械を稼働させるかどうか関係各省あるいは金融機関の中で意見の調整を行ったところでございますが、全銀協の見解といたしましては、九月には試行的に機械を動かす、それと関連をいたしまして、機械稼働と週休二日制の拡大というものはあわせて行うべきであって、その時期につきましては六十一年八月ごろを目途に実施をいたしたいという考え方でございます。
 なお、そのような問題についての具体的な時期なりあるいは方法につきましては、本年九月ごろまでに関係者と協議を行って結論を得たいということでございます。
 私どもはそのような意見も背景にしながら関係各省と十分意見の調整を進めてまいりたいというふうに考えております。
#39
○村山(富)委員 時間が来ましたので、これで終わりますが、先ほど来お話を申し上げておりますように、今の労働者の暮らし、経済全体の動き等等を勘案した場合に、日本がもっと正常な姿になり、国際的にも批判を受けないような状況をつくっていくためには、何といっても暮らしをよくする、そのためには賃金も上げる、時間も短縮する。いろいろな春闘要求が出ているわけですから、そうした労働者の率直な要求に対して労働省も十分こたえて、できるものは可能な限り努力していく、積極的に本気になってやるという構えで取り組んでいただきたいということを最後に申し上げて質問を終わります。
#40
○戸井田委員長 永井孝信君。
#41
○永井委員 今、村山委員から質問がされましたことに関連をしまして、そこから質問をしていきたいと思うのであります。
 ことしも春闘の山場が四月の十日前後と言われておるのでありますが、大企業が春闘が妥結をしたとしても、例年中小零細企業というのは五月、六月、七月とずっと延びていくのですね。なかなか労働組合の要求を通すことができない。非常に厳しい条件に置かれているわけでありますが、今、村山委員からも言われましたように、大企業と中小企業の格差問題が触れられました。その同じことは私はあえて重複して申し上げることは避けていきたいと思うのでありますが、まず初めに、公取にお見えいただいておるのでありますけれども、いわゆる下請法に違反することについて調査をしているということで件数も触れられました。
 これはことしの三月六日の予算委員会でも公取の委員長から同じことが答弁されているわけですね。今触れられましたように、件数で言いますと三万六千三百件ぐらい調査をした、こう言われておるわけですね。そして違反件数が千三百五十四でございますと、こう公取の委員長も答えられているわけでありますが、私は幾つかの事例を具体的に申し上げて、公取としてもあるいは中小企業庁としても対応してもらわなくではいけないと思うのです。
 その一つの例を申し上げますと、公取が書面調査をしても事実が言えない企業がある。立入調査をしてみても実際のことをなかなかそこで訴えることができない。そういう企業が随分あるということなんですよ。
 一つの例で言いますと、ある大企業の下請の例でありますけれども、毎年二回下請の単価を引き下げる交渉が定期的に行われている。そうして例えば材料の有償支給方式というものがあるのですが、この材料の有償支給方式によって、例えば一つの部品が百個要るとする。百個もらえばその月に受注をした分は全部できるのですが、実際に大企業からは時たまその倍の二百個分ぐらいの材料を支給されるわけですよ。百個分余るわけですね。余ったとしてもその分は返すのではなくて売上代金で相殺をされてしまうというケースがあります。
 これは私、現にその企業へ行って調べてきました。これに文句を言うと、おまえのところは仕事を切ると言われるのです。じゃ下請法があるから公取に訴えろ、こう言うと、そんなことをやってばれたらまた私たちは切られてしまう、こういうケースが随分あるのです。
 だから、今言われておったように、三万数千件に及ぶ調査をやって千数百件の違反事実があるものを摘発した。だから公取としては十分に対応しているとはいえないのですよね。そういうことの実態から、下請企業では幾ら春闘で頑張ってみても大企業のようには簡単に妥結することはできない。ましてや労働組合の存在しないそういう企業においてはなおさらのことである。この事実を公取やあるいは中小企業庁も承知をされて、実態を把握できるような調査をすることが皆さんの責任じゃないですか。公取と中小企業庁、それぞれ答えてください。
#42
○鈴木説明員 先生から今二つの行為について御指摘をされまして、まず第一点が、年二回下請単価を定期的に引き下げられておるという問題と、それから有償支給原材料の相殺の問題、二つございました。
 前段の著しく低い下請代金の額の問題でございますが、その引き下げそのもので問題にすることはできませんで、下請法では著しく低い下請代金の額を不当に定める場合には下請法の四条一項五号で規制をすることができることになっております。今御指摘の事例がそういう不当に定める例と言えるかどうかというのは、中身をもう少し子細に検討しませんとわかりかねるわけでございますか、不当に定める一つの例としますと、一方的に親事業者の予算単価により下請代金を定めたような場合、「不当に定める」に該当する例でございます。
 それから、次の有償支給原材料の代金を下請代金から差し引くという問題ですが、当月に納入する製品分の原材料代金、これを差し引くということは問題ないわけですが、そのまた納入されていない製品の原材料代金まで下請代金から相殺する場合は、これは下請法四条二項一号に違反する行為でございまして、もしそれが事実であれば、その規定に違反して規制し得ると考えております。具体的に事実を教えていただければ当方で厳正な措置をとりたいと考えております。
#43
○高梨説明員 今先生御指摘ございましたように、一般的に下請事業者というのは親事業者に対して弱い従属的な地位にあるということでございますから、場合によって実際に親事業者のやっている行為につきまして公正取引委員会なり中小企業庁に通報するということがしにくいことがあることは十分承知しておるつもりでございます。下請代金法の第四条一項第七号というのがございまして、ここでは親事業者が違反の行為をしているという場合に、下請事業者が公正取引委員会または中小企業庁長官に対してその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取り扱いをしてはならないという条文がございまして、一応法律の上ではそういう担保になっておるわけでございます。
 もちろん、これで十分とは考えておりませんけれども、中小企業庁といたしましても公正取引委員会と協力しつつ、可能な限り親事業者に対する調査あるいはそれに基づく立入検査等を充実してなるべく取り締まりを強化してまいりたいと考えております。
#44
○永井委員 今言われておりますように、法律では担保してあっても、具体的にそれが実態に合わせて機能していかないというのは、公正取引委員会も中小企業庁も、あるいは労働省も含めてそうでありますが、なかなかその機能を持たせてもらっていないというのが大きな原因ではないかと私は思っているのです。しかし、いずれにいたしましても下請法があって、それで保護されるべき下請業者が結果として大企業の食い物にされてしまう。それが下請で働く労働者の労働条件に大きな影響を与える、こういうことがあってはならないので、あえて私は村山委員の質問をされたことについてさらに補足的に再度申し上げたわけです。
 中小企業庁も立入検査ができるわけでありますから、ただ単に件数を何件を対象にして調査をした一ということだけの件数にこだわるのではなくて、実際にそういう問題点が解消できるようにしてもらいたい。私の地域でも随分と中小零細企業があります。中にはそういう大企業のいわば横暴によってやむなく倒産をしていったという企業もあるのです。もう半年の間に、見ている間に単価を切り下げられてとうとうバンザイしてしまった。それは大企業の一つの方法かもしれません。下請を頭から切ることができないもので、そういうことを理由にして整理をしていくということもあるのでしょうけれども、それでは下請に働く労働者はたまったものではない。これは強く要望しておきたいと思います。時間がありませんからこれ以上突っ込んで言いませんけれども……。
 労働省に同じことで聞くのですけれども、例えば親企業が下請企業の賃金引き上げ問題に実際に介入する例があるのですよ。それは、もしこの春闘で賃金を引き上げる余裕があるとするなら下請単価を切るぞと。具体的にはそういう例が随分とあるのです。あるいは、下請企業が労使で妥結した内容について、その協定書を全部事前に親会社の方にこういう協定を結ぶのがいいかどうか了解を求めてこいというところだってあるのですよ。それを、じゃ、どこの大企業でどこの中小企業でと具体的な名前を挙げてやろうじゃないかといったら、それを言われたらまたたたかれてしまう、こういう問題なんですね。非常に陰湿なんです。
 だから、この春闘は四月十日前後が山場と言われているのだけれども、むしろ中小零細企業というのはそれから以降へずっと残っていきますので、労働省としては、こういう問題についてむしろ中小零細企業に積極的な行政側の、金の面じゃなくてそういう面での援助を行政的に与えていくということについて、労働大臣としての決意だけ最初に伺っておきたいと思います。
#45
○山口国務大臣 私は永井先生の大企業と中小零細企業の問題の論議を承っておりまして、大企業がいろいろつながりのある中小零細企業に対しての改善、発展のためにどういう協力ができるか、あるいは協力義務ですね、それが自由経済社会の仕組みの中で可能かどうか、こういうことも一つの問題点だなという気持ちで伺っておりましたら、その逆で、むしろ大企業がその取引先の中小零細企業の賃金の問題とかいろいろな労働条件の問題に、そういう不当な賃上げはいかぬとか干渉がましいことをしている例もあるということを聞きまして、もしそういう実態があるとすれば、これはとんでもない話だと私は受けとめたわけでございます。
 そこで、先ほども村山先生の御質問の中で御答弁申し上げたわけですけれども、私は率直に言って、日本の国民経済やあるいは労働者の労働福祉の問題を考えたときに、大企業と中小零細企業の格差をあらゆる面でこれ以上拡大することは一つの社会問題にも発展する。ですから、大企業は国際水準もいっているわけですから、中小零細企業のレベルアップというものをどうしていくかは政府にとっても国会にとっても一番緊急かつ重要な課題だと思うのですね。
 そういう意味で、私の方といたしましては、通産省と労働省との二省間協議を提唱して、そして通産省マターの問題、労働省マターの問題等あわせながら、今公取の課長さんからも御説明ございましたけれども、そういうあらゆる中小企業の置かれている現状というものを、まずは今の永井先生の御指摘の分も含めて情報をしっかりと把握して、そして問題を整理して、一つの政策としてどう取りまとめが可能かということで真剣に取り組まないと、これはすべての問題の一つの大きな要因をそこでなしているという認識を私は持っております。そういう決意を持って、労働省の立場のみならず大企業と中小零細企業の経済的な問題、あるいは雇用的な問題、労働条件の問題含めて取り組みたいと考えておりますので、一つの成案がまとまる、どういうことが可能かということまで少し時間をおかしいただけたらありがたいというふうに考えます。
#46
○永井委員 具体的な企業名を挙げることはやはり問題があろうと思いますので、一般的な言い方で申し上げたのですけれども、ひとつ十分にそういう問題が起きないように行政面の強力な指導をお願いしておきたいと思います。
 そこで、これまた最前村山議員から質問がありました関係ですけれども、少しILOの問題に触れておきたいと思うのです。
 失礼しました。その前に、実はこの間長野で三重交通のバスが転落事故を起こしまして二十五名という大変な犠牲者を出しました。私は、現地に我が党から調査団を編成して調査に入りました。そして、三重県の方でも労働基準局あるいは運輸局などにも来ていただいて、あるいは警察署にも来ていただいていろいろな調査をしたのですが、労基法の違反として害類送検をしたわけですね、労働基準局が書類送検をいたしました。その中でも触れられているのでありますけれども、転落事故を起こした運転手本人には違反事項に該当する項目がなかったと言われているわけです。私も調べてみましたらそのとおりでありました。
 したがって、たまたまバスの転落事故を起こしたけれども、その事故に関しては労働基準法に違反することはなかったが、他に違反事項があったということで書類送検されているわけですね。そして、その事故の起きた事業所に対して、今までの経験からいくと特別監査が行われる。それはそれでいいのですけれども、そこだけがスケープゴートになってしまってクローズアップをされるといいますか、そういうことだけで終わらせてはならぬと思うのですね。
 だから、労働基準法というのはあくまでも最低の条件を決めているのでありまして、本来それ以上のよいものにしていかなくてはいけないわけですね。そして、労使の協定がされているから、その枠組みの範囲でいろいろな労働時間の延長問題も決められていくわけであります。しかし、書類送検をされたという事実からいくと、企業の姿勢はやはり厳しく指弾されなくてはいけないだろう。いわゆる労使協定を越えて労働組合が知らぬ間にやっておったということですから、それは非常に問題がある。そのことを私はここで弁護するつもりはもちろんありませんし、これは単に三重交通だけではなくて、全体の、そういう人命を預かる企業についてはとりわけ厳しく日常から監視監督業務が現地の労働基準監督署などを通してやられておらなきゃいけないと思うのですね。
 そういう立場で聞くのでありますが、労働基準法に違反をしているから書類送検をしたというのだけれども、労働基準法そのものにも実際はまだまだ問題が多い。村山議員が今質問されたとおりでありまして、勤務時間にしてもそうであります。そう考えていくと、三重交通の事故を教訓にしてこれから労働基準監督署も地域で積極的に対応してもらわなくてはいけないのでありますが、今の公正取引委員会と同じようになかなか陣容が足らないという問題もありましょう。だから、行政改革の関係でそういう出先機関の機能が低下することがあってはならぬ。ましてやそのことが労働者に影響を与えることであればなおさらのことでありまして、そういう出先機関の機能を低下させないようにすることをまず考えてもらう。そして労働基準法はもっと前進的に改正をすることが必要なのではないかと、私、この教訓から強く感じているのですが、これについて一言お答えいただけますか。
#47
○寺園政府委員 自動車運転者の労働時間等労働条件の改善の問題につきましては、行政といたしましてもかねてから重点の一つとして取り組んでおるところであります。自動車運転者の労働時間等の改善基準といたしまして二・九通達あるいは二七通達というものを策定いたしまして、特に春、秋の交通安全連動の時期を一つの節目といたしまして重点的な監督指導を行っておるところでございます。
 御承知のように、現在改善基準として指導の基準といたしております二七通達は、労働基準法では定めておりません拘束時間あるいは休息時間等につきましても規定をいたしまして、これに基づいて強力な指導をいたしておるところでございます。なお、指導しまた監督するに当たりましては体制が十分確立しておらなければならないわけでございますので、そういう意味で、体制整備につきましては、行政改革という大変厳しい環境の中ではございますけれども、私どもとしては最大限の努力をいたしておるところでございます。
#48
○永井委員 そこで、労働基準法に関係するのでありますが、いわゆるILO条約について、今も話が出ておりましたけれども、日本の国は極めて批准率が低いわけですね。今申し上げましたように、労働時間に関係するものだけでも、一号条約、四十七号条約、百三十二号条約などはまだ批准されておりませんね。労使関係あるいは安全衛生関係、雇用、社会保障関係、基本的人権関係などといいますと、軒並みにILOの条約はまだ批准がされていないのですね。だから、今のような問題もなかなか改善ができないということになってくるのでありまして、むしろこれを契機にILOの条約の批准を促進してもらいたい、労働省としてもそのための積極的な役割を担ってもらいたいと思うのですが、どうですか。簡単に答えてください。
#49
○佐藤説明員 日本政府といたしましては、ILO条約の批准に当たりましては、国内法制との整合性を十分確保いたしました上で批准することにいたしておりますけれども、そのためにもこれからも労使の関係者の方々の御意見を十分に伺い、また、私どもも御意見を申し上げながら条件の整備に努めてまいりたいと考えているところでござ
 います。
#50
○永井委員 だから、言っているのですよ。国内法との整合性、こう言うわけだ。じゃ、労働省の関係だけでも幾ら残っていると思うのですか、ILOの条約の批准されていないものは。今まで長い期間をかけて真剣に国内法の整備にもし着手しておったら、こんな条約は全部批准できているはずです。常にあなた方が言うのは、国内法の整備との整合性ということで、それを裏返して言えば、国内法の整備にいわばふまじめだったからこういう問題が残っておるのでしょう。今のような答弁は納得できませんよ。
#51
○佐藤説明員 私どもといたしましては、やはり国内法制との整合性ということは確保しなければなりませんので、これまでも精いっぱい努めてきたわけでございますけれども、これからは、労使の方々の御意見を伺う場もつくりましたので、こうした場を活用しながら、さらに努力をいたしていきたいと思っております。
#52
○永井委員 このILO条約は主として労働省の所管に係ることが多いわけですね。それだけに労働省はまなじりを決して国内法の整備を進めるように対応すべきだと思うのですね。それは努力はされてきたでしょうけれども、結果的に何もできなかったら努力をしたということにならないのであって、結果が生まれて初めて努力をしたことが裏づけられるのでありますから、ひとつ積極的な。対応を求めておきたいと思います。
 これに関連して、人勧問題も最前出ておりましたけれども、去年の十一月十二日にILOが勧告をしておりますね。この勧告の中に「一九八一年以降人事院勧告が完全に実施されていないという前提にたって、公務における現在の雇用条件決定制度が関係当事者の信頼を確保するものであるということに、本委員会は疑問を表明しなければならない。」そして「本委員会は一九八三年の人事院勧告が再び完全実施されなかったこるに遺憾の意を表明する。」「そして、労働者が現在享受していない基本権にたいして、これらの労働者に適切な代償を与え、かつ労働者がその雇用条件の決定に参加しうる、公務における賃金および労働条件の決定手続きを確立することを政府が可能ならしめるよう、本委員会は固い希望を表明する。」ということになっているわけですね。
 これは時間の関係で深く掘り下げては言いませんけれども、このILOの条約だけではなくて、そのときどきに起きてきたこういう問題について日本の労働側から提訴した問題でこのように勧告がされている、これを労働省としてどう受けとめられるか、お伺いいたしたいと思うのであります。
#53
○山口国務大臣 永井先生から今御指摘いただいたILOの勧告の問題は、日本の人事院勧告制度そのものの否定ということではなくて、その完全実施をすべきである、こういう制度の維持発展の重要性を強調する上での一つの指摘である、私どもこういう受けとめ方をさせていただきまして、先ほど村山先生への御答弁でも申し上げましたように、人勧、仲裁裁定の完全実施に対していわゆる国際機関からもいろいろ勧告、指摘を受けている。したがって、今までのような不完全実施という状況があっては国際的にもいろいろ批判を受ける、こういう立場で労働大臣としても、大蔵大臣でございますとか官邸サイドに対しましても完全実施を強く要求している、こういうことでございますので、今後とも、労働基本権の制約の代償措置としての人事院勧告でございますし、ILOの勧告、指摘を待つまでもなく、完全実施ということを一つのてこにしなければならない、かように考えております。
#54
○永井委員 時間の関係でこれ以上触れませんけれども、完全実施をしたいしたいということだけではなくて、ILOも指摘をしておりますように、どうしてもそういうことになっていくとするなら、公務員が直接みずからの労働条件について決定をし得る、そういうことに参画できるルールをつくりなさいということを意味していると思うのですね。これは公務員の皆さんの労働組合からも政府に対して要求書が既に出ているはずでありますけれども、労働組合の参加を保障する賃金及び労働条件の決定手続を確立することということを求めているわけでありますが、まだ出ておりませんか。−−そういうことが三月八日に総理大臣あてに出されていますね。したがって人勧が形骸化しないように、そして完全実施がされるように、あるいは労働者がそういうことに直接参画できるようにということも含めて、これから労働省としても積極的に対応してもらいたいということを強く要望して、時間があればこれについてもっともっとやりたいのですけれども、きょうは中身についてはこれ以上触れないでおきたいと思います。
 次に、雇用問題についてお伺いしてみたいと思うわけでございます。
 労働省は、昭和六十年までにいわゆる六十歳の定年制を確立したい、法制化ということはさておいても、現実に昭和六十年に六十歳、これは歴代の労働大臣が私の質問に対しても答えてきているわけですよ。ところが現実は、この六十歳の定年制というのはなかなか具体化されていない。これについて労働大臣はどうお考えですか。
#55
○山口国務大臣 歴代の労働大臣が六十歳の定年制をすべく前向きに答弁をしておった、こういう御指摘でございますが、まさに人生八十年時代がもう現実のものとなって、定年延長の問題は待ったなしである。特に年金との絡みもこれございますし、人生これから九十年時代、あるいは二十一世紀までには人生一世紀時代になる可能性はあってもこれが人生七十年時代になるということはないわけですから、そういう意味でも、これは今まで以上に六十歳の定年の延長、あるいはそれ以降の雇用の延長という問題は、やはり高齢化時代、特に健康な高齢化時代にとって不可欠な要件である、こういう認識を持っております。そういう中で今加藤職業安定局長のところで、雇用審議会、中央職業安定審議会等で御論議をいただきまして、ことしの夏ごろまでに一つの結論が、答申が出される。それを踏まえまして、国会の論議ともこれあわせて一つの法案として取りまとめていこうという作業日程を今考えているところでございます。
#56
○永井委員 今、大臣は、これからの検討も加えてという話でありますけれども、法制化をどのようにしていくかということを含めて結論を出したい、こういうお話でございました。そうすると、これを素直に受け取れば、六十歳の定年制ということを法制化するということを言われているわけですね、念を押して悪いのですが。
#57
○山口国務大臣 六十歳の定年延長の法制化という問題は、今申し上げましたように、いろいろ審議会で今御論議いただいておりますので、その審議会の結論も十分待たねばならない、こういうことですけれども、私は、率直に言って、使用者側等からも定年延長の法制化の問題についてはいろいろ意見がございます。ございますけれども、やはり社会的な趨勢から考えて、行政指導とか、いろいろ定年延長に伴う措置を進める中でどうにも達成率というものがなかなか伸びが足らない、こういうような場合は、当然法制化も含めてこれはやはり考えなければならない一つの重要な課題であるという認識でおります。したがって、今ここで、法制化をします、こういう結論ではなくて、ことしの秋からの審議会の答申、国会の先生方のそういう御論議を踏まえて、法制化の形で進めていくかどうか、そういう最終結論を出したい。
 したがって、結論的に申し上げますと、今ここで法制化するということではなくて、もう少し秋までの時間を様子を見ながら、また行政指導で定年延長の拡大を進める、同時進行で最終結論を出したい、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。
#58
○永井委員 そこが非常に大事なところでして、雇用審議会の主な論議を見ましても積極論、消極論があるのですが、労働省が今まで六十年に六十歳定年制をということを基本方針に掲げてきたことは間違いないわけですね。そしてそれは、当面は行政指導を強めることによってそれを一般化していきたい、こう言ってきた。今の法制化の問題ですけれども、六十歳定年制というのが一般化されたから、それを法制化によってきちっとコンクリートに固めていくということなのか、あるいは、なかなか六十歳定年制が実現していかないので、法制化をして一挙に六十歳定年制を具体化させていくという二つの方法があると思うのですね。これはどちらなのですか。
#59
○加藤(孝)政府委員 今先生が御指摘になりましたまさにそこの点をめぐりまして、雇用審議会の場では、とにかく五二%まで六十歳定年制というものが普及した、そして近く六五%の企業がやるという形になってきておる、だから、もうこれをコンクリートにするために法制化していいじゃないかという議論と、行政指導でここまで来たのだから、これはもうやれないところというのはそれなりにまたいろいろ問題があってできないという、例えばどう賃金体系を直していったらいいか、あるいはまたコストの問題をどうしたらいいかとか、いろいろ問題があってできないところというのを、できない事情がいろいろあって、できないものがあってこうなっているのだから、これを一挙に法律でがんとやっちゃうのは問題じゃないかという両論が今審議会の場で激しく論議をされておる。今こういう現状でございまして、まさにそこの先生御指摘の点をめぐって雇用審議会で法制化の是非で今論議が行われている、こういうことでございます。
 法制化の今後の問題としては、この六十歳定年制を法制化するかどうかという問題は雇用審議会に預けておりますが、あと六十から六十五歳の雇用の場をどう確保していくのか、あるいはまた、今シルバー人材センターというようなことでやっておりますような、こういう任意就業的な形でも高齢者の雇用の場を確保することをしなければいけないのじゃないか、そういうような問題についてやはり法制的に何らかの手当てをしなければいかぬじゃないかという問題を、これは今度職業安定審議会の方で御論議をいただいておる。こんなような全体の状況を踏まえて、我々も秋以降法制化の問題に基本的に取り組んでいかなければならぬだろう、こんなふうに今申し上げているわけでございます。
#60
○永井委員 その審議会の中でもいろいろな議論があることは私も承知しているのです。その中で、例えば中小企業などは大企業がやれないような経営の個性を発揮することによってもっているんだ、こういう主張があるわけです。その中身というのは長時間労働であり、低賃金なんですよ。大臣、いいですか。大企業にない経営の個性を発揮するということが、結果的に今の場合は長時間労働であって、低賃金であって、そしてやっと、今下請論議がありましたように、何とか経営を成り立たせることになっているんですよ。そう考えていくと、その消極論に言われているようなことで法制化をおくらせるということは決してプラスになっていかない。
 しかも今福祉が、中曽根首相の提言じゃないけれども、福祉も聖域でないということでどんどん切り込まれているわけだから、それがまたいろいろな意味で高齢者にもしわ寄せを持ってきているわけだから、高齢者の方々の職場を確保するということは極めて大切なことだということなんですね。
 そこで、私は一つの問題の提起でありますけれども、行政指導で六十歳定年制をもっともっと一般化していくといってみても、今言われたように五二%ちょっとなんですね。企業の良識だけに期待しておったのでは、このことはなかなか前進していかないと思う。
 問題はちょっと変わるのですけれども、身体障害者の雇用率というのがありますね。高齢者の場合も六%の雇用率ということは定めているわけですね。中高年齢者の雇用の問題で、施行規則でありますが、そのことが明確に出されております。この六%問題は、これまた現実はなかなか前進をしていない。大企業ほどその雇用率の六%を達成しておるところは少ないんですね。ここにも資料がたくさんありますけれども、数字を今やれば初りがない。時間がかかりますから省略いたしますけれども、大企業ほど雇用率は達成していないんですよ。
 そうすると、身体障害者の雇用率達成と同じように、場合によってはペナルティーを与える。この身障者の場合も、ペナルティーということではないと政府は言うんだけれども、納付金制度がありますね。同じようなことぐらいをひとつ強制をして、そして雇用率の達成を図っていく。そして、そこでもし雇用率が達成できないところは納めた納付金によって、その納付金がそういう高齢者対策に活用できるということも考えていいんじゃないですか。そこはひとつ大胆に対応したらどうですか。
#61
○山口国務大臣 障害者の雇用の問題で、確かに永井先生御指摘のように大企業ほどその達成率が低い、こういう点の改善を安定局長に指示して、その改善方を指示したばかりでもございますが、これはこれで拡大をしていかなければならないというふうに考えます。
 しかし、そこで六十歳定年も、これがいわゆる就業、雇用の場が広がらないという状況であれば、何らかの納付金のような形で雇用達成のためにさらに推進のてこにしたらどうか、こういう御指摘でございますけれども、先ほど加藤局長からも答弁ございましたように、今雇用審議会と中央職業安定審議会と両方の審議会において六十歳までの定年の法制化の問題、それから六十歳以降の前半層の雇用の拡大の問題、雇用の延長の問題ですね、これについていろいろ論議をいただいております。
 私は、先ほども答弁申し上げましたように、六十歳の定年の延長の法制化という問題については非常に大きな関心を持っておりまして、これはやはり健康な高齢化時代のためには、政府がある程度労使双方の論議を踏まえて、あるいは努力目標を踏まえて、何らかの法的なサポートは必要なんじゃないか、こういう結論が出れば、これは夏以降そういう方向を土台とした、念頭に置いた論議をいろいろしていかなければならない、こういう気持ちでございますので、納付金の問題についてはそういう経過を踏まえた上でひとつ考えさせていただきたい。
 ただ一つ、例えば今、もう先生には釈迦に説法ですけれども、民間の労使が協定をして、六十歳定年に至るいろいろな制度的な、賃金の問題とか年間所得の問題とかいうものを、個々の勤労者がこれを裁判にかけて、これが不当、不法であるとかというような形で六十歳定年を労使双方が努力しながら積み上げていく作業の中においてもいろいろ困難、試行錯誤があることも事実ですし、それからまた、ヨーロッパ等においては、逆に、若年者の失業者を雇用させるためにむしろ六十歳定年を五十五歳まで引き下げている、こういうような経済的な実情の国もある。
 ですから、そういういろいろな問題点を、今最終的な論議の段階に来ておるということでもございますので、こういう国会の議論も私ども十分念頭に入れながら、この夏以降の六十歳定年の問題についての最終的な腹構えといいますか状況判断をしなければならない、かように考えておりますので、ひとつもう少し時間をかしていただきたいと思います。
#62
○永井委員 時間がなくなってきましたので、考えておったことを全部は質問できないのですけれども、もうあと一つ二つだけ触れておきたいと思うのです。
 労働行政の対象を、雇用確保という観点からいくと、労働省は六十五歳というところに一定の線引きをしていますね。これは労働省の第五次雇用対策基本計画の中にも出ておるのですが、六十五歳以上で就職を求めるというのは三八・八%、世界の中でも類を見ないほど高いのですね。これは、今言ったように福祉の面が十分でないということもあると思うのですが、非常に高い。したがって、六十五歳で線引きをするというのではなくて、今少し上の高齢者まで考えて対応すべきではないかということがまず一つ。
 もう一つは、完全雇用の達成のために、いろいろな検討をするための審議会とかあるいは検討機関もあるのですけれども、もちろん労働者の代表も入っていることもあります。ありますけれども、労働側の意見がもっと率直に具体的に政策立案の場に反映できるようなことを労働大臣として考えてもらいたい、これが二つ目。
 時間がありませんから項目で走って恐縮でありますが、もう一つ、三つ目は、失業率を昭和六十五年に二%に抑え込みたいというのを同じ雇用対策要綱の中で触れているわけですね。触れているのでありますが、他の国と比べて雇用率は極めて良好な状態にあるという他国との比較で論議すべき問題ではないのでありまして、現実に日本の国内で完全失業者というのが百五十万人を超えているという現状から考えて、六十五年に二%に抑えるという悠長なことではなくて、今この時点で、少なくとも労働省の対応の仕方としては昭和六十年度中には二%に抑え込むぐらいの決意を持ってやらないと、五年も先のことを考えて二%と言っておったのじゃ、こんなものははるかかなたの雲の上の問題を論じているようになってしまいますので、この三つについて、時間があればもっと詳しく触れたいのでありますが、時間がありませんので、まとめて労働大臣としての見解と決意を伺っておきたいと思うのです。
#63
○山口国務大臣 六十歳定年の延長、さらに六十五歳までの雇用の延長の問題を永井先生からいろいろ御指摘いただいて、そういう御意見も踏まえて今後の取りまとめの段階の参考に供したいと考えておりますけれども、六十五歳以降の就業の問題につきましては、これは率直に申し上げて、かなり任意の就業の形態でありますとか、あるいは時間的に一日何時間という、どちらかといえば御自分の趣味と実益といいますか、そういうものを兼ねた労働というものの対象として考える。特に、これまた先生御承知のとおり、やはり六十歳以降まで働こうというのは日本人を除いては余り――各国はむしろ年金で第二の人生ということで家族や奥さんと、こういうことでもございますので、私どもとしては、当面六十歳までの定年の延長と六十五歳までの就業機会、雇用の延長という問題に最大のエネルギーを注ぎたい。六十五歳以降については、今申し上げたような形でその窓口は開いておくけれども、任意の就業という形で当面やらざるを得ないのじゃないかというふうに考えます。
 それから二%の失業の問題は、六千万を既にもう超えまして六千二百万規模の労働人口の中における失業率の二・四%でございますから、これはいわゆる本当の失業者と、特に若年労働者なんかは昔の終身雇用のイデオロギーと違いまして、かなり職場を移動する、よりよい自分の能力とか賃金とかいうことで職場を移動する、あるいは主婦のパート労働者が、家族の事情とか育児の問題とか、いろいろな個人的な事情も含めて就職したりあるいは休んだり、こういう微調整部分を入れますと、今までと違って二%台というものが一つの完全就業に準ずるような雇用率ということでございまして、これ以上二%を切り込んでいくということは、実際上の国全体の労働人口との兼ね合いからいうと、これは答弁はいろいろ申し上げ方がありますけれども、実際は難しい点もあるのじゃないか。
 したがって、二%から二・四%ラインの失業率というものを何としてもふやしてはならない。この辺をもっと切り込むべく努力をするという一つの目標設定にさせていただいておる、こういうことで御理解いただけたらありがたいと思うわけでございます。
#64
○永井委員 終わりますが、賃金の問題、雇用の問題、時間短縮の問題、いろいろあります。そして、今言ったように、大企業と中小企業の格差の問題もあります。こういう問題が毎年春闘の時期に一つ一つ前進をして労働者の労働条件がよくなって、それが結果的に内需の拡大ということにつながっていくということで労働省挙げて取り組んでいただきますように最後にもう一回要望しておきまして、質問を終わりたいと思います。
#65
○戸井田委員長 多賀谷眞稔君。
#66
○多賀谷委員 私は、国鉄の労働問題について質問したいと思います。
 御存じのように、国鉄は今非常に厳しい情勢下に置かれております。言うならば、こういうときこそ労使相携えて、そうして協力をしながら外部のいろいろな圧力をはね返して、そうして真の国鉄再建に向かわなければならぬ、こういうように私は考えるわけです。ところが、現場の実情を見ると、まことに憂慮すべき問題が多々出ておる。一体、こういう情勢にしてしまって国鉄再建ができるだろうか、こういうように思うわけです。
 そこで、私はごく簡単に質問いたしたいと思いますが、今、国鉄労働組合に対して提案をしているものは何か、大きな問題で結構ですから、三つなら三つの提案はどういう提案をされておるのか、これを改めてお聞かせ願いたい。
#67
○太田説明員 たくさんございますが、ウエートの高いものから申し上げますと、余剰人員にかかわる分野と合理化にかかわる分野、この二つかと存じます。さらにそれを細分してまいりますれば、余剰人員の問題であれば退職制度の見直しの問題と、それから我々別紙2、3と俗に言っておるのでございますけれども、派遣と休職にかかわる問題。合理化の方はたくさんございますので一一は申し上げませんが、主要なものは以上かと存じます。
#68
○多賀谷委員 退職、派遣、それから休職ですか、この問題は労働者にとっては最大の労働条件ですよ、これ以上のものはない。ましてや日本のように終身雇用制の状態の中では、まさにそのことが死活問題。これが賃金が上がる、上がらないという以上の生涯を左右する大きな問題ですね。日本の終身雇用制というのは、一番典型的なのは中途に入ってくる人は特殊の専門家以外は極めて冷遇されておる。中途採用は労働条件もほとんど全部下がっていくという状態、これが日本の終身雇用制なんですよ。ですから、今退職、派遣、休職とおっしゃいましたが、これは全部労働条件にかかわる最大の問題である。
 そこで労働大臣に質問をするのですけれども、あなたは先ほど石田労働大臣の秘書官という話をされた。石田さんは就任されてすぐ、モーニングのままで中労委へ飛び込んであっせんしたという話がある。
 そこで、三池闘争というものがなぜあれだけ熾烈に行われたのか。これはもちろんチャンピオン闘争であるとも言われた、炭鉱の運命を左右するとも言われたが、もう一つ、同じ三井の中でも三池は非常に熾烈であったけれども、田川とか山野、美唄、芦別、砂川というのは比較的スムーズにいっておる。これはいろいろな見方がある、意識の問題、いろいろありますが、大牟田というのは雇用事情の問題があるのですよ。
 というのは、呉、大牟田はそのころ一番失対労働者の多い地域です。今は筑豊も随分あるのですが、筑豊はそのとき、炭鉱労働者は整理されて失業保険が切れるとどこかへ入ってしまうんだ。ところが大牟田というのは三池三井以外の企業には入らない。三井以外の企業はないのです。九州電力とか電気化学しかない。そこで、大牟田で整理される者は六カ月たちますと皆失対事業に出てくる。こういう非常な特徴があるのですよ。ですから、私はそういう特徴を踏まえないでこの労働問題を論議することはできない。自分たちの先輩は皆失対労働者になっておるのです。だから、あれだけ熾烈な闘争が行われておるのです。
 そこで、今度過員対策という中で、退職、休職、派遣というものは皆解雇につながる問題ですよ。だから、この問題を一方的にやることは本来間違いではないか。管理運営の事項だと言うけれども、そんなものじゃないですよ。そんなしゃくし定規に決める問題じゃないですよ。民主主義というのは随分時間がかかるのですけれども、こういう離職をする前提の話が十分出てなくて一方的に協約が切れた、協定が切れたということで行うべきではないと思うのですが、どうですか。
#69
○山口国務大臣 今、国労と国鉄当局で就業規則の問題をめぐっていろいろ交渉していただいておるようでございますけれども、各労働団体、労働組合と国鉄当局との話し合いの中で、国鉄再建のための余剰人員対策の一つの柱として、今先生御指摘の派遣の問題とか退職の問題を労使双方でいろいろ話し合いをしていただいている。もちろん、一方的に経営者側がこうすべきだという宣言のもとで行われることはルールにもとるわけでございますけれども、労使双方で国鉄をどうすべきか、とにかく戦後復興の大きな柱、また牽引車としての役割を果たしてきた国鉄マンの誇りの立場の中で今労使双方が話をしていただいている。
 その合意の上に立った再建の一つの努力義務といいますか目標として、経営者のみならず労働側からもそういう理解と協力をいただける、こういうことでございますと、我々も労働省は労働省の立場で、国鉄の問題は国鉄当局だけの問題だということじゃなくて、今多賀谷先生御指摘のように、三井の問題とか、労働問題に対する政府側の一つの責任を持つ役所としてこういう国鉄再建の問題、そのかぎを握る余剰人員問題等についても労働省としてはでき得る限りの協力をともに果たさなければならない、こういうことで今労使双方とも十分に連絡をとりながらいろいろ対応させていただいておるところでございます。
#70
○多賀谷委員 抽象的にお話しになりましたけれども、現実に職場に参りますと、中央からといいますか国鉄本社から出された通達の中で「現在余剰人員の調整策を強力に推進している中で、五十五才以上が一人でも残るようなことは絶対あってはならない。」こういう指導が行われているのです。これだけ人生で一番重大な問題をむしろ推進しろ、この職場には五十五歳以上の者を残してはならぬ、これは民主主義の時代にあり得ないと私は思うのです。あなたは先ほどから六十歳だとか六十五歳だという定年制のお話をなさった。これは一体どういうことですか、国鉄は。
#71
○太田説明員 ただいま年度末を控えておりまして、いわゆる特別退職の勧奨を行っている時期でございます。この退職制度につきましては、国鉄は長い伝統がございまして、労使協約で独得の制度を結んで実施してまいりました。その協約の中にも、強制強要にわたらないように気をつけながら勧奨する、こういう条項もあるところでございます。従来からその勧奨に応じて大体過半数以上の、年によって若干の差はありますが、少なくとも七〇%以上、多い年には八〇%を超す当該年度五十五歳に到達する者の中から特別退職に応ずる職員が出ている状況でございます。
 本年度は、そういう状況の上にさらに重ねて問題になっております余剰人員の問題を抱えておりますだけに、後進に道を譲り余剰人員問題の解消を図るという観点から、この特別退職制度の運用がさらに前進されることを望んでおりまして、そういう意味で退職の勧奨についても意を用いて進めておるところでございます。その際、いやしくも強制強要にわたらないように留意して進めるということは当然のことでございます。
 それから、先生おっしゃいました門司局で出しております書面は私も見たのでございます。これは、退職制度の解説とか本年度の運用について現場の長、幹部を集めて指導の会、勉強会をやる際に、退職制度の運用に臨む心構えとして門司局で会議資料として出したものだと聞いている次第でございます。
#72
○多賀谷委員 情勢を十分把握してやらなければ、かつては退職勧奨をして、しかし、現実には大部分が国鉄の関連に行っておったでしょう。あなの方はそういう余地があったのです。勧奨して退職をさせても共済が入る、だから差額の賃金をもらえば収入が変わらないじゃないかといって、そういう余地のあった時代と今日のような情勢とは違うのですよ。こういう情勢下において五十五歳以上は職場に一人も残してはならぬというような指導をするということは、助役とかいろいろな人が現実に何度も何度も足を運んで、強制と考えられるような勧奨をしておるのですよ、例を挙げてもいいのですけれども。でありますから、かつてはあった。それはそうでしょう、ずっと前は五十五歳が定年ですから。そういう情勢と今日違うのだ。どこも受け入れる余地がないのです。そんな余裕は関連にもない。むしろ、関連の仕事を国鉄本社が取り返そうという時期に、行くところはないのですよ。
 でありますから、十分話をしてルートをつけてやらなければ――五十五歳で首を切られるという。五十五蔵というのは、大体子供がまだ学校へ行っているのが三割以上いるのですよ。そういうときに退職をさすということについては、私どもは絶対に承服できない。この通達といいますか、指導はもう撤回されたのですか。
#73
○太田説明員 これは別に通達とか指示とかいう性質のものじゃないようでございまして、指導の際の心構え、この退職制度の運用に臨む心構えということで出したものでございまして、その後さらにいろいろな機会に口頭で強制強要にわたらないようにということは十分に指導をしておる、全体として心構えについての徹底を図っている、こういう報告を聞いている次第でございます。
#74
○多賀谷委員 予算委員会を通じて就業規則問題が大きな論点になり、本委員会においても質問をされたわけであります。しかし、現実には何も変わっていないのですね。国鉄総裁が御答弁になって以来、何も変化がない。すなわち、派遣先はこういうところがあります、直方において池田スイミングクラブとか丸和がありますという募集をしているのです。全然変わっていないのですよ。肝心かなめなときにぴしっと約束をしないでおいて、ぐんぐんと既成事実をつくっていくようなやり方をされれば、反発が起こるのは当たり前でしょう。国鉄総裁が国会で答弁をされてから現場ではどう変わっているのか、お聞かせを願いたい。
#75
○太田説明員 二つ側面がございまして、国会で御答弁を申し上げている面と、労使問題でございますから、労使でいろいろ話し合っている面とあるわけでございます。
 両者にそごがあってはいけないわけでございますが、順番が変わりますが、時期的に労使の問題の方が早いものですから、そちらから申し上げますと、三月一日に国鉄労働組合が時限ストを構えてこの問題の解決を迫った、こういう事態がありまして、私ども、こういう国鉄の緊迫した状況のもとでストを構えるのは非常によろしくない、これはぜひ回避すべきであるという立場から、もとになりました事案の解決に向けて何回も徹夜しながら努力を重ねてまいりました。
 その結果、三月一日の未明になりまして、労使の間にたくさん懸案事項を抱えているのでございますが、一挙にというわけにまいりませんので、引き続き誠意を持ってその解決に努力するということを申し合わせまして、中でも一番重い問題であります派遣と休職の問題、私ども別紙2、3と言っているのでございますけれども、それについては「強制強要にわたらないこととして自粛し対処する。」こういう当局側のスタンスを明示いたしまして、組合がそれを評価してストライキを回避した、こういうケースがございました。
 翌二日、早速その経緯並びにその回答の趣旨を説明、徹底するために急速、土曜日でございましたけれども、総務部長を招集いたしまして趣旨の徹底を図ったところでございます。その後三月六日に、先生御指摘になりましたような予算委員会におきまして自粛……(多賀谷委員「経過はわかっていますから」と呼ぶ)趣旨を総裁が述べた、こういうことでございまして、まず第一に趣旨の徹底を図っているということでございます。
 門司局におきましては、具体論で申し上げますと、もう既に派遣の受け皿を二月時点までに大半用意しておりまして、既に募集行為が始まっておりますので、それは継続いたしておりまして、今かなりな職員が応募してまいりましてそれを充足しております。その後、今お話にありましたような二、三件の具体的な引き合いがありまして、それに応ずることといたしまして、ただいまその点の具体的な細目の周知を図り、希望者の申し出を求めているところでございます。それは派遣でございます。
#76
○多賀谷委員 現実に我々三月十一日に現場を見たわけですけれども、その際も二つの企業から派遣要請が来ているということを言っておりました。そして、現場長に会って「じゃ、変わったのですか」と言いましたら、「いや、今までどおり何も変わりません」。ですから、国鉄総裁が答弁してから何も変わっていないのですよ。こういう点が問題だと私は思うのです。当然何らか事態の変化がなければならぬ。変化がないでしょう。私は非常に残念に思う。
 それから、休職した人が四名日産自動車に行った、そして三名はやめておるのです。こういう事実だって把握してないでしょう。あれは休職中だから関係ないのだと言う。全然調査もしてない。そういう実態で一体労務管理ができておるのかどうか。
 もう時間の制限が来ておるのですが、そこで、私はこれも国鉄総裁が答弁をしたら現場に変化があったというようにしてもらいたい、トラブルの起こらぬようにしてもらいたい、太田常務、それをはっきり確約してもらいたい。
#77
○太田説明員 総裁の答弁、先生御承知でいらっしゃいますので、くどくは申し上げませんけれども、一つは、就業規則の手続上の問題にっきましては、これは本社のやる仕事でございますけれども、鋭意準備を進めておりまして大体目鼻がついておりまして、なるべく早い機会に手続の是正をやる見通しがついております。
 それから、現場の実態面でございますけれども、まさに強制強要にわたらないということを十分に配慮しながらこれを実施するというスタンスで、さらに、あの三月二日のみならずいろいろな機会にその趣旨の徹底を図っているところでございまして、百十年の歴史の中で派遣とか休職というのは初めての経験でございますから、労使双方に戸惑いも多少ございますけれども、このやり方に大分なれて成熟してきたように存じますし、随分と気を使いながらやっていく構えができつつあると思っておりますし、その体制をさらに一生懸命進めてまいりたいと存ずる次第でございます。
#78
○多賀谷委員 依然として進めていきたいというところが我々は承服できないですね。現場の方が今までと変わりません、こういう話がありました。現場は今までと変わりません。この態度ではトラブルが起こってもやむを得ない。非常に残念に思うのです。
 そこでもう一点質問をいたしますが、この約束をしたことがほごにされるというのは、僕は極めて遺憾だと思う。というのは、この前も私は質問いたしましたが、自分のもとの職場から今度は講習室に教育だというので移した。心細くなった。過員だ、おまえは過員だということで移したのですね。前の机も腰かけも全部山積みにした。そうして、その講習室では何を教えたか。ほとんど教えてないのです。小学校のように机を並べているだけですね。こういう環境にしてしまったというのは非常に問題ですよ。そして言うことは、おまえは過員センターに送るぞと、こう言う。過員センターに送るぞという言葉。ですから、過員センターにおまえは悪ければ送りますよ、そういう言い方ですな。過員センターを何と心得ておるのか。
 それから過員センター、あるいは過員の講習でもいいのですが、これらの人々は三カ月に一回交代をするのです、こういうことを言っておるけれども、固定化しておるでしょう。ですから、過員として扱われるというのは大変不名誉である、こういう感じを現場には与えておるのですよ。これは問題だと思うのですよ。
 僕は一緒にいろいろ話をしましたけれども、一つは、約束どおりこの詰所の問題は処置してもらいたい、これは話し合いが一応できておったのですから、それを壊したのですから、そういうことをするのはいかぬですよ、この重要なときに。それをもとへ返してもらいたい。それから過員センターとか、そういうところを何か大変懲罰的といいますか、そういう箇所であるという扱いをするのは非常に残念ですね。それから人間は三カ月でローテーションを設けて交代するのだと言いながら、ずっと固定している。これも私は現場でいろいろのトラブルが起こる原因をつくっておると思うのですね。以上、三点質問をしたいと思う。
#79
○太田説明員 最初の詰所の問題でございますが、これは九州地区のある機動車区の問題かと存じますので、その観点から申し上げますと、一回、二回、二度詰所が変わりまして、いろいろ要望等これあり、その後、当方としても検討いたしまして移すべく準備を整えておりまして、大体もう工事も終わったようでございますので、今その準備に入っているようでございます。今、いつという正確な期日は申し上げかねますけれども、近い将来、ごく近い間に実現する運びと聞いております。
 それからローテーションの問題でございますけれども、これは全国に全部共通しておるのでございますが、特定の者を余剰人員というふうに定めておる事例はございません。大体、全国で三十三万人、特別退職が出る前に職員がいるわけでございますけれども、二万五千人くらい余剰人員がおります。そんな割合で、十一、二人につき一人という余剰人員になるのでございますけれども、二万四千五百名に特定をするということは一切いたしておりません。必ずローテーションをとる、こういうことでございます。大体の目安としまして三カ月、半年、一カ年という見当をつけまして、職場ごとに運用しております。
 ただ、なかなか画一的にまいりませんのは、その必要とする人員、我々は所要員と言っておるのですが、所要員に対しましてそこに存在している余剰人員の割合が違うものですから、余剰人員の倍率が非常に高いとなかなかローテーションが短期間に行われない、こういうケースがございますけれども、したがいまして、どのくらいの期間でローテーションをとっているかということを一概に言えないのですけれども、必ずローテーションをとるようにそこはしておる次第でございます。それから余剰人員センターでございますが、これも各局によりましてその持ち方は違うのでございますが、九州地区のある局では余剰人員開発センターでありますとか、能力開発センターとか、こういう言い方をしているのでございますが、その両方、片方はセールス主体、片方は技能習得主体というようなことでございますが、いずれにしましても非常に大事な拠点、ポイントであるという見方、位置づけをしておりまして、ローテーションをとりながら、そこに入る職員については誇りを持って仕事に頑張ってもらいたい。デーリーワークじゃないものですから、大変創意工夫を必要としますけれども、そういうことで大事にしながら運用の充実を図ってまいりたい、こういう次第でございます。
#80
○多賀谷委員 常務がおっしゃるのと全然違うのですよ。おまえ、そんなワッペンなんかつけておったら余剰センターに送るぞ、こう言っておるのだよ。全くそういうように言っているのですよ、現場は。ですから、ここでお話しになるのと現地とは全然違う。そうしてあんなにもめるはずがないんだよ、我々が考えれば、あなたがおっしゃるとおりでいけば。ところがぎすぎすしておるでしょう。これはどこに責任があるのかね。僕はあんな今の大事な時期に、本当に一体にならなければならない時期に、何かあそこでぎすぎすでやって、再建なんかできるのだろうかという不安を持つ。
 そこで、私は、もう時間がありませんから、これで終わらないでいずれ何度か質問をしたいと思いますが、一つだけ例の研修詰所の改造の問題、これはひとつぜひ組合員の意見を聞いてもらいたいと思うのです。一回約束したのがほごになって、そうして今度は当局が独自でやっておるのですよ。わずかなことですから、このぐらいはひとつ十分意見を徴して円満にやってもらいたい。ひとつこれだけ御答弁願いたい。
#81
○太田説明員 既にさっきちょっと申し上げましたように、工事は終わっている、こういうふうに聞いている次第でございまして、前回一回やりかけて中止したのですが、そのときの内容と図面を見ますと多少違っているようでございますが、ほぼ同じ、同一だというふうに申し上げて差し支えないと思いますので、これは工事の終わった状態で、詰所をなるべく早くに使えるように、移すようにそちらの方に精力を注ぐようにさせていただきたいと思います。
#82
○多賀谷委員 それじゃだめなんですよ。そういう言い方がだめなんですよ。ちょっと聞けばいいじゃないですか。そういう行き方が、もう改造は終わりますから、もう後は移ることを推進したい。これじゃ話にならぬです。そういう態度が私はいかぬと思うのですよ。今度はこういう図面で改造したいと思うかどうか。そんな大して意見は違わないのですよ。それを一方的にやりますよ、もう工事は終わりましたから、ひとつ推進していきたい。これはひとつ考え直してもらいたい。これは簡単なことなんですよ。こういうところに官僚的というか、既成の事実で突破していくというか、我々が考えられないようなことが現場で起こっておる、こういうように思う。これは要望しておきます。
#83
○太田説明員 それなりの触れ合いはあろうかと思いますし、それぞれ知恵は出してやったのだと存じます。やはり幾らかもちろんお金をかけ、時間もかけてやった工事でございまして、完了しているという報告を受けておりますので、それなりの利用勝手、使い勝手のいい詰所になっているものと私は期待します。ここでやはりつくり直しますとか見直しますと言いますと、これはまた新たな火種にもなりますし、ここはいい詰所であるということを期待させていただきたいと存じます。
#84
○多賀谷委員 だめだよ。ひとつそういうことは配慮して十分やりますという答弁ができぬのですか。どうもそういう点がこの問題がスムーズにいかない原因をつくっておると僕は思うのですよ。それがそういう答弁ができない。現場が強くてあなたの方ではどうにもならない、どうですか。
#85
○戸井田委員長 太田理事に申し上げますが、ここは論戦するところではないので、そのつもりでひとつお答え願いたいと思います。
#86
○太田説明員 既に十分配慮しているというふうに聞いておりますし、それに予算の執行その他もいろいろございますので、その点はひとつ御配慮いただきまして、それは中の使い勝手や何かはいろいろあろうと思いますけれども、工事となるとお金がかかるものですから、そこはひとつ御了承いただいて、決して決まったからという意味じゃなくて、そこはそれなりの触れ合いなり知恵は信頼していいのではないか、こういうふうに存ずる次第でございます。
#87
○多賀谷委員 わかりました。
 最後に、こういう状態ではだめですよ。あなた方は指示をしておる。もし中央からこういうふうにしなさいと言うと現場は反発する。それを今恐れておる。その火種はあなた方がつくっておるのですよ。中央が、変えたら承知せぬぞ、そういう空気をつくっておる。これではいつまでたっても解決しませんよ。ですから、その答弁の端々にそれがあらわれておるでしょう。ここが難しいところなのですよ。あなたの方は少し直したらどうかと思うけれども、何を言っているんですかという反発を恐れる。そうすると、それは現場では解決しない。これは、中間のそういう管理者というものが今度は中央に向かってくるのですよ。その一番の火種はあなた方がつくっておるのですよ。こういう配慮をしないでこの大きな国鉄問題が解決するはずがない。ですから、あなた方は十分慎重に対処しなければ解決できない。
 私は、これはこれで終わらないでまた別の機会に質問しますけれども、こんな質問を我々は委員会でしたくないですよ。我々がしなきゃならぬということが本当に情けないですよ。十分反省をしてもらしたし
 以上で終わります。
#88
○戸井田委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十七分開議
#89
○戸井田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
#90
○大橋委員 いよいよ春闘もたけなわになってまいりましたが、勤労者にとりまして賃金というものは生活に直結するものでありますだけに、そのベア率がどうなるかということに対しては最大の関心といいますか、問題視しているわけであります。当然使用者側、経営者側はできるだけ抑えたい、労働者側はできるだけ高い率でということはわかるわけでございますが、その賃金の引き上げに当たりまして、実はどのような要件で決定されていくものなのか、やはり何かそこに基準らしきものがなければ、妥当な賃上げであるかあるいは不当であるかということも言えないわけでございます。
 そこで、私は、労働大臣にまず賃金の引き上げに当たってのそうした決定要件というものについて労働大臣の御認識といいましょうか、あるいは御見解を承りたいのであります。
 一つの参考意見としまして、日経連がよく主張しております生産性基準原理という物の考え方がございますね。私は、この日経連が主張している原理なるものについては多少の疑問を挟んでおります。大臣はどういうお考えであるか、まずお尋ねをいたします。
#91
○山口国務大臣 今大橋先生の御指摘の賃上げに対する経営者側、特に日経連の生産性基準原理、これは一人当たりの人件費の上昇率を国民経済生産性上昇率の範囲内にとどめるべきだ、こういう考え方の上に立っているわけですけれども、また一方、労働側からいたしますと、実質可処分所得の立場で、生活の向上、特に内需の問題も今議論されておりますから、そういう意味でも賃上げ率を高めるべきだ、こういう両方からいろいろ今春闘相場をめぐって論議されておるのは御承知のとおりでございまして、やはり賃金の問題について、特に春闘相場等については労使双方がそれぞれ汗して稼いだ利益をどう公平、平等に分配するか、こういう問題であるから、特に政府が余り口を出すという立場であってはならない、こういう考え方が一貫してあったわけですね。
 しかし、これからの労働問題や労働行政の立場においては、前に村山先生からも御質疑がございましたけれども、今大橋先生御指摘のように、ある程度こういう基準的な、労使はいろいろこういうふうに賃金の額をめぐって甲論乙駁あるけれども、一応政府としてはこういう考えもどうかというようなものに対して、ことしの春闘あるいは来年の春闘にということはあるいはすぐには影響が大き過ぎるかもしれませんが、やはり政労使がそれぞれ国民経済、国民生活の立場でそして忌憚のない意見交換あるいは賃金の決定に対してそれぞれ議論ができるような雰囲気も必要なのじゃないかというふうに私は考えております。おりますが、現状においては労使双方が今年度分の分配をどうするか、こういうことで、今国民経済の立場を踏まえて公平に決めていただくことを期待しているというところでございます。
#92
○大橋委員 私は賃金決定は労使交渉が原則であることは十分承知しております。それに政府が介入する余地はないわけでございますが、物の考え方としてどちらが正しいのだろうか、そういう認識をお尋ねしたかったわけです。
 というのは、日経連が言う生産性基準原理というのは、簡単に言えば生産性よりも賃金が上回ってはいかぬのだ、生産性の範囲内で賃金を抑えていくべきだという考え方なのですね。しかし、私は、賃金の引き上げの要件というのは単なる賃金だけではないのだ、要するに労働市場の需給関係が一つ、あるいは企業の収益状況あるいは消費者物価の上昇率、そして労使の関係要因といいますか、そういうものが総合的に勘案されてそこから決められていくものだ、それが交渉の土台になるのじゃないか、こう思うわけです。
 したがいまして、日経連が言っている生産性基準原理というものはちょっとおかしいのじゃないだろうかという私の考えがあるわけですね。それに対して労働大臣はどうなのだ、こう私は聞いたわけです。
#93
○山口国務大臣 ですから、私の立場で、今、日経連の主張が是であるとかあるいは非であるとか、こういう見解を申し上げますと、春闘の相場に非常に大きなかかわりが出てきて、早い話が、公共企業体の期末手当とかいろいろな問題に対しても政府が口を出すな、労使双方でこれは決めるべきものだ、こういう形で枠を、原則をはめられているわけですから、まして民間の労使の賃上げ問題に労働大臣が何らかのサゼスチョンを与えるということは現状では全くタブーとされているわけですね。
 ですから、そういう意味で感想を求められていろいろ私なりの感想も申し上げたいという気持ちもございますけれども、現状は、労使双方でひとつ日本経済、国民生活の責任を十分踏まえてひとつこの相場づくり、賃金決定をしていただきたいということを期待しているわけでございます。
#94
○大橋委員 それでは賃金と物価との関係性なんですが、生産性よりも賃金が上がると物価がぐんぐん上がっていくんだ、そういう賃金を決めていくと物価に悪影響を及ぼすんだという考え方はおかしいと思うかどう思うか、それはどうなんですか。
#95
○山口国務大臣 第二次石油ショック以来いろいろ賃金が抑制されてきたことは先生も御承知のとおりですけれども、そういう中で、確かに可処分所得に目減りがあるといろいろな角度からの指摘もございます。しかし、辛うじてこの間、ストなしで、また必要最小限度の賃上げの中で労使双方が妥協してこられたということは、やはり物価が安定しておった、これは私は国民生活の安定の上においては一つの非常に大きな役割を果たしていると思うのですね。
 ですから、今の国民生活あるいは国民の世論調査から見ても、賃上げと同じように、むしろそれ以上に物価の問題がある。そういう意味で、生産性を上回る賃上げということになると、確かに経済学者は、これが物価に影響してくる、こういう指摘をする部分もあるわけですけれども、我々政府としては、とにかく物価の安定ということは最重要課題である、そういう立場からも、労使双方がひとつその点も踏まえて一つの合意点を求めていただきたいということを望んでいるわけでございます。
#96
○大橋委員 労使双方がいろいろ交渉をしていくことは当然なんですが、今、私は物の考え方を聞いているわけですよ。
 今、財界の方には、生産性よりも賃金を上げると物価もそのまま上がっていくぞという意見があるという話ですけれども、現在は、最近の経済の状況を見ますと、必ずしもそうでなくなったわけですね。それは労働省の出している資料にも明確にその数字があらわれております。後でゆっくりとお示しいたしますが、要するにそういうものじゃないんだということですね。物価というものも単に賃上げだけではなくて、為替などの交易条件といいますか、あるいは利潤などの資本分配率等等の動きによって物価に大きな影響が出てくるわけだと私は思うわけであります。
 そこで、大臣は中途半端な答弁しかなさいませんけれども、私は、あくまでも生産性基準原理がだめだと言っているのじゃないのですよ。現在の経済の動きの中からいってその論理はもう崩れましたねと、それはまた後でゆっくり資料を示しますから。
 今、私が後段で申し上げましたような条件で当然賃金というものは決められていくものだ、こういう私が後で申し上げた内容についての認識と大臣の考えはどうですか。
#97
○山口国務大臣 ですから、それは私の立場の答弁としては大変難しい問題です。例えばアメリカのレーガン大統領の経済政策はおよそ経済学者の理論の枠を超えたところを大胆に打ち出して、それなりにアメリカの経済成長、景気の拡大に成功しておる、こういう問題もありますから、今大橋先生から再三御指摘いただいているように、生産性基準原理の中で春闘相場を決めるということはむしろ間違っているのじゃないか、必ずしもそれが物価の上昇には連動しないんだ、こういう御指摘もあります。
 しかし、そういういろいろな経済理論や方法論についての論議はあるのですけれども、賃上げの相場そのものに政府が今四の五の言うと、労使双方の自主的な判断で決められていくべきものだという原則、枠がはめられておるわけでございますから、私が、そういうお考えもございますかという受けとめ方、聞き方はできますけれども、私として、日経連の主張は否定されるべきものだということは立場上申し上げ切れないということもひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
#98
○大橋委員 ちょっとかみ合いませんね。
 今私が手にしているのは三月二十日付の日本経済新聞なんです。横浜国立大学教授の神代先生の論文が「経済教室」というところに載っておるのです。その中身を見ますと、賃金を決定していく場合の要因というものはこういうものですということが書いてあります。それは「(1)消費者物価上昇率(各年一―三月平均)(2)効求人倍率(同)(3)各業種の従業員一人当たり経常利益額(4)労使関係要因」、大体この四つの要因で決まっていくんだ。ということになれば、日経連が言うような論理では本当は決められていくものではないという裏づけになるのです。しかし、こればかりを話していると次の問題に進みませんので、次に参ります。
 今言う通常の決定要件に従って六十年度の春闘の立場を見るならば、ことしはいいぞ、六十年度の春闘はかなり明るい期待が持てるんじゃないか、そういう客観情勢になっているぞというふうに判断して差し支えないかどうか。
#99
○山口国務大臣 大橋先生御指摘のように、最近の経済情勢は好転してきている、政府の月例経済閣僚会議等の経企庁の報告でも着実に景気は上向いてきている、こういう状況であることは事実です。そういう経済的要因が賃金との関係についていろいろ議論されるわけでございますけれども、ああいうことを背景として現在春闘でそれぞれ相場づくりに取り組んでいただいておる。
 ただ率直に言って、我々の報告では、例えば大企業と中小企業とか業種別格差あるいは大都市と地方の格差、こういう面でことしの春闘は非常にデリケートな部分が多いということが一つあるのと、それから我々が心配していますのは、ここ何年間がむしろ低く抑えられているという労働側の勢いの中で、何とか労使の円満な話し合いの中である程度の高い水準での決着がつくものであるかどうだろうかということでありまして、今非常に関心を持って見守っておるところでございます。
#100
○大橋委員 大臣は頭がよ過ぎてしゃべり過ぎますですね。時間が限られておりますので、要領よく答えていただきたいのです。私が、今回六十年度の春闘の環境はよくなりましたね、期待が持てる環境ですねと言いましたら、そうだとおっしゃればそれで終わるわけなんでございますよ。
 私もいろいろ資料を見てみましたら、五十九年度の経済成長率は大変な向上でございますし、企業収益も著しい向上ですね。労働市場も若干の好転でございますし、物価も上昇ぎみであります。こういう状況をずっと見てまいりますと、いよいよことしは労働者側にとって明るい賃上げがなされるな、このように期待しているわけでございますので、労働省もそういう状況を素直に受けとめて、一々介入するわけにはいきませんけれども、それに側面的に協力してもらいたい。労働省というのはやはり勤労者、労働者の生活安定をしていくというのが最大の使命だと思いますから、そういう意味でよろしくお願いしたいと思います。
 そこで、私は、日本の勤労者というものは先進諸国の中で見ますと非常に厳しい状況下に置かれているということを言いたいのです。そういう勤労者、労働者の姿を見ると私は非常に遺憾に思うわけです。その勤労者を守ってくれということで、私具体的に申し上げるわけですが、例えば五十八年度の春闘は四・四〇%でしたね。これは史上最低ですよ。抑制されました。五十九年度は多少景気回復基調になりましたので、これは賃上げがあるぞと期待したわけです。ところが結果的には四・四六%、ほとんど同じような率で抑制されてしまったわけであります。
 五十九年においては、労働市場の需給関係では見るべき改善の姿は確かにありませんでしたけれども、企業収益の方は本当にすばらしい改善がなされたのですね。五十八年度の経常利益を見てみますと、全産業で二〇・二%、製造業で一七・六%。五十九年の一月―三月期の経常利益を見ますと、全産業で二五・四%、製造業で四一・八%ですよ。また五十九年四月―六月期の経常利益を見ますと、全産業で二三・〇%、製造業で四二・〇%でしょう。すごく収益が上がってきておりますよ。改善でございます。
 また消費者物価も、五十八年度は一・九%ですか、一%台でしたね。五十九年度は見込みになりますけれども二・四%。五十九年十二月は前年同月比で二・六%、六十年一月は同じく二・九%。物価もずっと上がりぎみですよ。
 企業は大変な高収益、物価も上がるということで、当然それに見合った賃上げがなされなければならぬと考えられたわけでございますが、四。四六%に抑え込まれたというのは納得がいかぬですね。
 そういうことで、我が国の勤労者が非常に過酷な状況下にあるということを大臣は認識していらっしゃるかどうか。
#101
○山口国務大臣 大橋先生から答弁を簡潔にということで言われたのですけれども、そういう形で言いますと、五十九年の賃上げについては国民経済的視野に立って十分議論を尽くした結果というふうに承知しております、こういう紋切り型の答弁しか言えないわけであります。
 労働省というのは政府機関の中で、確かに労使双方で決めるべき賃金相場であるけれども、今大橋先生も言われたようなそういう政府としての一つの考え方とか見通しとか、一つのバロメーターというものを、それがすべて労使の憲法だというのではなくて、それも踏まえて労使双方もいろいろ議論してもらうという位置づけの何らかのアドバルーンというものがもうそろそろ議論されてしかるべきではないかという考え方を私は持っているわけですよね。ですから、それを今までの仕組みの中で取り入れる方法があるかどうかということを考える時期に来ているのではないか。それが国民経済や国民生活、特に内需とか、いろいろな経済の個人消費がとにかく百八十兆という三百兆円経済を支えるためにはそれが必要なのではないかという考え方を持っておりますので、それにどう取り組むかということをいろいろ考えたいという気持ちをお伝えしたいわけでございます。
#102
○大橋委員 それではお尋ねしますけれども、日経連が主張しております生産性基準原理というものに仮に従ったとしましょうか。そうしますと、今度の経済計画を見ますと、六十年度の実質経済成長は四―六%が見込まれております。就業者増加率が一・一%ですから、これを引かなければいけませんね。そうしますと、生産性上昇率というのは三・五%になるわけですよ。
    〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
 今回の春闘は少なくとも最低五%以上だろう、五%か七%ぐらいだろうと言われているときなんですよ。だけれども、今言うように、生産性基準原理に従えば今のような計算になる。しかも、生産性上昇率というのが三・五%ですから、それ以上になってはいかぬという考えですから、むしろ三・五%から物価の上昇分を引かなければならぬわけです。今度政府は二・八%を見込んでいますけれども、そうなると実質賃上げ率は〇・七%なんという計算になるわけです。これはやはり、幾らそれを参考にしてどうのこうのとおっしゃってみても、余り参考にすべき内容ではないのじゃないかと私は思うのです。
 また、大臣がおっしゃっていましたように、日本の労働分配率は先進諸国の中で一番低いですね。これも問題だと思うのですよ。だから、労働者を援護する施策といいますか、そういうものをぐんぐんと推し進めていっていただきたいということを強く要望しておきます。
 そこで、今申し上げました日経連が主張しております生産性基準原理の考え方が論理的に否定されたなという資料が、経企庁あるいは労働省等の統計資料に明確にあらわれております。経企庁物価局の八四年の物価レポートというのがあるのですけれども、これは国民所得統計から算出した賃金と生産性と物価の推移を示したものでございますけれども、五十九年の一月から三月期以降は、生産性が賃金を上回っていても物価は上昇しているわけですよ。五十八年度の賃金は二・五%、生産性は二・四%、物価は一・九%、このように賃金の方が生産性より上ですね。物価は、前年の二・四%から一・九%に下がったわけです。日経連の考え方はこれで破れたでしょう。五十九年度、これは暦年ですけれども、賃金が四・一%、生産性が五・一%、物価が二・二%です。これは賃金の方が生産性よりも下がったけれども、物価は一・九から二・二に上がったじゃないですか。というのは、賃金が生産性より下回っても物価は上がるし、あるいは賃金が生産性より上回っても物価が上がるというのを示しているわけですね。
 これは労働省の予算委員会に出された資料の中にも明確にそういう数字が示されております。五十八年度以降は賃金コストも下がる傾向で推移しておりますし、物価の安定に対しても最大の貢献をしておりまして、日経連か言っている理論というものは完全に壊されたと私は言いたいところでございます。この点いかがですか。
#103
○山口国務大臣 確かに、今大橋先生の御指摘いただいた数字を見ますと、いわゆる日経連の生産性基準原理の根拠があいまいではないか、こういう数字を示されていると思うのですけれども、一面、そういう厳しい認識のもとでの労使双方の相場観というものが諸外国に比べて完全就業に近い雇用の安定も生んでおる、こういう側面もこれは無視できないと思うのですね。
 今、私は、幸いにして国会等の問題点の指摘等もこれあり、雇用の安定が図られているわけでありますから、そこへ今度は、これからの問題はやはり賃金の問題が一つの大きな労働政策の中における位置づけだと思う。そういう中で、今先生の指摘されたような問題も含めて、民間企業等においてもそういう考え方を参考にする会社も当然出てくるでしょうし、我々としてはそういう相場づくり、周りの環境づくりのために努力するという一つの責任があろうかというふうに考えます。
#104
○大橋委員 それでは話を変えまして、公務員の給与についてお尋ねしたいわけでございますけれども、労働某本権の代償措置としまして公務員の給与というものは人事院によって勧告される、あるいは公企体の職員については公労委による仲裁裁定が行われるわけですね。政府はこれを尊重して実施していかねばならない建前にあるということでございますが、この認識は間違いないですね。
#105
○山口国務大臣 十分その認識を持って取り組んでおります。
#106
○大橋委員 その認識はしているけれども、現実は随分違いますね。というのは、昭和五十七年の人勧は四・五八%でしたね。これは凍結されましたね。これは尊重して実施されたわけじゃないですね、凍結ですよ。それから五十八年度も六・四七%が結局二・〇%に抑え込まれたんですよ。これは三分の一程度ですものね。五十九年度も人勧は六。四四%ですよ。これが三・三七%で、半分ですよね。尊重し実施してまいっておりますと、今大臣おっしゃったのですけれども、現実はこうして尊重されてないですね。
 公務員の給料というものは、景気がよくなったから悪くなったから、あるいは税収が多かったから少なかったからといって一々それによって上げたり下げたりするものじゃないでしょう。労働のスト権もないわけですから、あくまでも人事院の勧告あるいは仲裁裁定を頼りに公務員は生きているわけですよね。この点についてはどう思われますか。
#107
○山口国務大臣 人事院勧告は完全実施、こういう前提の上で国家公務員の労使の信頼関係が成立しているわけでございますから、公務員の職場における士気の問題、いろいろあります。そういう点で完全実施というものに政府は最大限の努力をしなければならない。ただ、先生も御承知のとおり、厳しい財政事情の中で国家公務員の給与のみならずいろいろな国民生活の予算面においても切り詰められておる、こういう国民的な事情もあります。それからまた、完全実施への努力と裏腹に、そういう財政上の事情もある。そういう中で、ILO等国際機関からもいろいろ制度上の疑問を呈されているような部分もこれある。
 こういうことで、政府としては官房長官談話という見解の中に、完全実施に対して最大の努力をするということで総務庁、労働大臣、みんな話し合いまして、そういう官房長官の談話を発表したわけでございますから、これが守られるべく労働大臣としては今年度最大の努力をする、こういうことで受けとめております。
#108
○大橋委員 先ほども話したように、六十年度は賃上げについては、その決定要件というものはすべて大体引き上げの可能性を秘めた好条件に変わってきているわけですね。今、おっしゃるとおり、政府としては完全実施をしたいのだ、しかし、いろいろ事情があるので、今まで抑えてきたけれども、じゃ完全実施できる状況になればなさるということですね。
#109
○山口国務大臣 ですから、予算委員会でも総理を初め私どもも答弁申し上げてきたように、やはり人事院勧告の完全実施という問題について最大限の努力をするということを官房長官の談話等を通じて政府見解を表明しておりますので、それが守られるべく労働大臣としては最善の努力を図りたい、かように考えているところでございます。
#110
○大橋委員 じゃ、閣僚会議で完全実施は六十一年度からするのだというような趣旨のことを決められたように思いますけれども、ということは六十年度も不完全実施ですよ、こういうことですか。
#111
○谷口(隆)政府委員 人事院勧告が例えば来年度につきまして出された場合におきまして、政府がその完全実施に向けて最大限に努力することは当然でございますが、今年度の人事院勧告についての取り扱いを決めます際に、官房長官談話において本年度も含めおおむね三年をめどとして勧告の完全実施を実現し得るよう努力する、こういう意思を表明いたしましたのは、ここのところ、先ほど御指摘のように人事院勧告が見送られるとか抑制されるということが続いておりますことが公務員の士気とか生活に与える影響等も考え、それからそういう経緯も踏まえまして、やはり公務員が将来展望をはっきりするような形にする必要があるだろう、こういう判断からでございます。
 冒頭に申し上げましたように、来年度の人事院勧告が出ましたら、その完全実施に向けて最大限の努力を尽くすことは当然ですけれども、ぎりぎり仮に来年度以降においてできない場合、完全実施できない場合においても、今年度を含めて三年の間にはいわゆる格差あるいは積み残しが解消されるよう鋭意努力するという考え方を示したものでございます。
#112
○大橋委員 じゃ確認しますけれども、これまで五十七年度は凍結されましたね。四。五八%でしたか、それから五十八年度もそれなりに人勧が行われて抑えられました。その差についてはちゃんと埋められるというふうに理解していいですか。
#113
○谷口(隆)政府委員 たびたび申し上げますように、来年度の人事院勧告が出されましたら、その時点で人事院勧告の完全実施に向けて最大限努力をするということは一つ当然ございます。仮にそれができない場合でも、いわゆる積み残し分といいますか、その差につきましては今年度を含めおおむね三年を目途として解消されるように努力をするということを明らかにしておるわけでございます。
#114
○大橋委員 それじゃ人勧から出されたその率については、三年以内には全部凍結分は埋め合わせされるのだ、こういうふうに理解していいのですね。
#115
○谷口(隆)政府委員 そういうようになるよう鋭意努力するということの意思表示を官房長官談話でされたものでございます。
#116
○大橋委員 大臣、これはよろしいですかね、それで。
#117
○山口国務大臣 労政局長から答弁申し上げたとおりでございます。
#118
○大橋委員 それならば私はまだ理解できますけれども、そうでなければまだ六十年度の人勧も出ない前に、六十一年度から完全実施するのだなんということになれば、これは誠意がなさ過ぎる。本当に腹立たしい思いでございましたけれども、幾らか留飲は下がりました。
 次に一参りますけれども、人勧の凍結などに関いたしまして労働組合がILOに提訴したわけですね。ILOは一九八三年三月に結社の自由委員会で、日本の経済危機を理解して、今後人勧凍結など繰り返してはならないぞ、スト権の代償措置であり、公務員に確保すべきだ、このように述べたわけでございますが、その後ももっと厳しい指摘がILOの方からあっていると思うのですけれども、どうでしょうか。
#119
○谷口(隆)政府委員 公務員共闘等総評系の公務員の組合から、人事院勧告が見送られたり抑制されておることにつきましてILOの結社の自由委員会にいわゆる提訴がなされておるわけでございますが、五十七年度の見送りについて提訴がされましたときの報告、それから翌年の五十八年の一部抑制についての結社の自由委員会の報告、その間にILO条約勧告適用専門家委員会の意見、それぞれの段階で示されました見解の基調は、従来からILOがとっております原則を示したもの、すなわち労働基本権が制約されるような場合は代償措置が適切に行わるべきであるということを示したものであるということでございますが、その間のニュアンスのようなものといたしましては、見送りないし抑制が続いておりますので、人事院勧告の制約が続いて労働基本権に対する制限を維持するのであれば、賃金決定のための手続、仕組み等を再検討するであろうという希望表明をいたされておるところでございます。
#120
○大橋委員 ILOからこのように厳しい指摘が順次なされているわけですから、国際的にも、日本の立場として公務員に対する人勧の完全実施はもう一刻も早く実現しなければならぬと思うのですね。ぜひ大山その方向で努力していただきたいと思います。少なくとも六十年度は完全実施になるようにお願いしたいと思います。
 そこで、先ほども申しましたように、公務員の給与というものは民間と違いまして景気のよしあしあるいは税収のよしあし、そういうもので一々変更される性質のものではない。しかしながら公務員の給与総額が余りにも高くなって、その是正、改善が政治の重要課題となっていることも事実でございます。私はこういう中で官民格差論議も出てきていると思うのですけれども、五十八年一月十四日に臨調第二部会が報告をしている内容を見てまいりますと、人事院の見直しの論議がなされておりますね。その報告が一般新聞等にも実は出されたわけでありますが、不思議に思うのは、最終答申にはこの問題はきれいになくなっているのですよ。同時に、五十七年秋ごろから五十八年の初頭にかけまして、財界の方から公務員にもスト権を付与すべきだという声が盛んに上がりましたね。この人事院の見直し論議あるいは財界からのスト権付与謝なんというものの真意は一体どこにあったんだろうか、そして、その論議は今どうなっているんだろうかということです。昭和三十年に公務員制度調査会が、公務員の身分について国家公務員と国家労務員と二つに分けて対処すべきではないかという趣旨の答申を行っているわけでございますけれども、この問題はいまだに決着はつけられておりませんですね。そういう問題が底流に流れているのではないだろうか。恐らくそれが基本となってあいまいなそういう答申が出たのではないかなというふうに感ずるわけでございますが、これは人事院の方にその点ちょっとお尋ねしたいと思います。
#121
○武政説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、臨調の第二部会で報告された内容が最終答申に盛り込まれなかったということの経緯はございます。さらに、財界等から公務員のスト権問題についての発言があったことも御指摘のとおりであります。ただ、これらにつきましては、昭和五十七年の人事院勧告の実施が見送られたという異例の状況の中で行われた議論であろうかと思います。したがいまして、その真意というものは必ずしも明らかではないというふうに私どもは見ておるわけであります。こういったスト権問題というものが、昭和三十年の先生御指摘の公務員制度調査会の国家公務員と国家労務職員でございますか、これに二分するといいますか、そういうこととどういうつながりがあるのかということでございますが、臨調の議論の中では種々あったかとは思いますが、私どもが最終答申を公務員の給与のあり方に関する部分で見る限りにおきましては、直接つながっているものとは理解しづらいな、かように思っておるわけであります。
#122
○大橋委員 私も官民格差を是正していくことは大賛成でございますが、さりとて、よく議論されているように、そういう今のようなやり方で果たして国家公務員の優秀な人材が集まってくるだろうかという心配が一面にあるわけです。私は、昭和三十年の制度調査会の答申の趣旨がまだ完全に整理されていない状況の中にあって、不思議な、また複雑な動きがなされているんじゃないかなと実は思ったものですから、ちょっと聞いてみたかったわけです。これはまだまだ重大な論議として続くでありましょう。きょうは限られた時間でございますので、人事院の方はこの辺で結構です。
 では、次に移りますけれども、五十九年度の経済成長率、企業収益、経常利益といいますか、あるいは消費者物価について五十八年度、五十九年度、六十年度、簡単に教えていただきたいと思います。
#123
○服藤説明員 お答えをいたします。
 五十九年度は間もなく終わるわけでございますが、この年度の実質成長率は五・三%程度というふうに見込んでおります。六十年度につきましては実質四・六%程度の成長を見込んでいるわけでございます。
 消費者物価につきましては、五十九年度実績見込みで二・四%程度、六十年度は二・八%程度を見込んでおります。
 それから企業収益でございますが、これは新聞紙上等で報道されますいわゆる上場会社等の企業収益の動きとは若干そのカバレージが違いますので、そのままの比較は無理かと思いますが、国民所得上の概念の企業所得、これは法人企業のほかに個人企業等も入っておりますが、そのベースでの伸び率を申し上げますと、五十九年度実績見込み七・二%、六十年度見通し四・四%というふうになっております。
#124
○大橋委員 三月十五日に発表された国民所得統計速報によりますと、五十九年十月から十二月期ですけれども、国民総生産は二・三%、年率換算で九・六%、いわゆる瞬間風速九・六である。もう一―三月期が出ないまでも五・三%達成されることは間違いない。それよりももっと伸びるであろうという予想がなされているわけでございますが、この十―十二月期の成長率二・三%の内訳を見ますと、内需が〇・四%、外需が一・九%ですね。あくまでも外需主導型の経済成長ですよ。十―十二月期の内容だけでも、経常海外余剰が二三・八%に対して民間最終消費支出、前期比ですけれども〇・三%ですね。このようにあくまでも、経済成長しているとはいうものの、それは外需依存による経済成長でありますね。
 そういうことで貿易摩擦はいよいよ激化してきておりまして、連日新聞にもその問題が今話題に取り上げられております。また経常収支も、五十八年以降は伸び続けて五十九年からは二けた台になっておりますね。それから消費者物価も上昇ぎみですし、六十年春闘の賃上げ交渉は非常に有利な状況下にあることは先ほども申し上げたとおりでございますが、貿易摩擦解消の立場からも、賃上げに対しては労働省としても前向きの姿勢であるべきではないか。
 貿易摩擦の実情を見てまいりますと、これも経済企画庁の方から説明をいただきたかったのですけれども、時間の関係で私の方から申し上げますが、もし間違いがあれば訂正していただきたいと思います。日本の場合は五十八年度二百四十二億ドルの黒字、五十九年度見込みですけれども三百四十億ドルの黒字、六十年度も同じように三百四十億ドルの黒字の見込みということになっているわけですけれども、この三百四十億ドルはさらにふえる見通したと言われておりますね。それに比べましてアメリカは、経常収支は一千億ドルの赤字ですね。それから財政赤字の方も二千億ドル。双子の赤字と言われているわけでございますが、まさに日米戦争前夜的な状態にあると言われておりますけれども、この解消策は日本経済が内需主導型の経済成長にならざるを得ない。だから、内需拡大施策というものは緊急課題の重要問題であると私は思うのでございますが、いかがですか。
#125
○山口国務大臣 日本の経済が、神風ともいえるように、輸出増によって大変景気が回復をした、輸出の増加が国内景気を多少とも引っ張り始めてきた、こういう状況にあるわけでございますけれども、しかし依然として内需がいま一つ盛り上がらない。こういう実態の中で、確かに大橋先生御指摘のように日米経済摩擦、貿易摩擦が極めて深刻な状況にある。八兆円近い輸出超過ということは、これは失業の問題がアメリカから見れば問題にもなりましょうし、ただ日本側からすると、三百五十億ドルを超える、四百億ドル近い金融輸出があるということでございますけれども、それは余り評価されておらない、こういうことでございますから、内需をどうしても刺激しなければならない。
 さて内需はどうしたら刺激がつくかというと、これがいろいろ春闘の議論にもなっておるわけでございますけれども、我々労働省としては、勤労者の家計動向調査等も今いろいろ調べておるわけです。例えばローンの支払いがどのくらい負担になっておるか、これを何年か期間を引き延ばして、ローンの負担を延ばすことによって内需が刺激されるのだろうか、あるいは貯蓄に回るのだろうかということも含めて今いろいろ検討、分析している、こういう状況でございます。
#126
○大橋委員 労働大臣も内需拡大政策の実行が至上命令だという認識に立っておられることはもう間違いないですね。五十九年度はアメリカの好景気に支えられまして五%を超える経済成長がされたわけですけれども、六十年度はアメリカの景気は大幅に落ち込むだろう。現に一―三月期を見ますと、年率で二・一%にとまっておりますね。こういうアメリカの経済の落ち込みを見ていきますと、外需にも期待できない状況にありますし、それだけにもういよいよ内需拡大政策に本気になって取り組まねばならないということですね。
 そこで、私は、内需の中心は個人消費にある、つまりGNPの六割を占めているわけでございますから、この個人消費の刺激が肝心だと思うわけでございますけれども、これをやるということは、やはり大幅な減税をやるか、あるいは大幅な賃上げをやるか、私はこれしかないと思うのですけれども、いかがですか。
#127
○山口国務大臣 やはり三百兆円経済の六割たる百八十兆円近い内需は、私は一つには日本の雇用の安定というものがもたらす経済的効果だと思うのですね。
 あと一つ、いま一つ内需が盛り上がらないということは一体どこに原因があるのだろうかということなんですけれども、まさに、例えば今労使双方で春闘相場を決めておりますけれども、その議論の中で、一兆円減税をやっても結果的にはみんな貯蓄に回ってしまったじゃないか、内需につながってないのじゃないか、こういう議論もある……(大橋委員「ちょっと時間の関係がありますので、済みません」と呼ぶ)では、そういうことで、ですから、どうやったらそれが内需につながるかということの政策的な工夫がいま一つ必要だと……。
#128
○大橋委員 これは、結論から申し上げますと、中曽根内閣の経済政策の失敗だ、私はこう思うわけです。なぜならば、財政難を理由に内需拡大に逆行する政策をとっているのじゃないかということが言えるのですよ。これは早急に改めるべきだと思いますね。一般会計予算はシーリングというものによって抑制して、特に公共事業費は五十六年度以降横ばいでしょう。あるいはマイナスですね。もう五年間も続いているのですよ。あるいは公務員の給与は先ほど言いましたように凍結したり不完全実施、あるいは民間の賃金も史上最低に抑え込んでいるし、年金、恩給も抑制しています。あるいは、五十九年度一兆円減税されましたよね。しかし法人税等で一兆円また増税したから、プラス・マイナス・ゼロでしょう。あるいは今度の六十年度においても本格的な減税をしようとしておりません。
 若干の投資減税はされるようになっておりますものの、要するにこうした逆行政策というものがいろいろな面で悪影響を及ぼしてきておるわけですよ。基本的に中曽根内閣の経済政策を改めなければいかぬと思うのです。五十九年度の企業倒産を見ますと史上最高ですよ。二万件を突破しております。負債額も三兆円を超えたですね。この倒産している内容を見てみますと、衣食住、家計部門関連の企業が圧倒的に多いわけですよ。また、五十七年度中曽根内閣になってから「増税なき財政再建」と言いながら、租税・社会保険料負担はますます増加しております。五十七年度は租税が二三・九%だったのが六十年度は二五・二%を見込まれております。あるいは社会保険料も、五十七年は一〇・四%だったのが一〇・八%、このように非常に租税・社会保険料負担が大きくなってきて可処分所得が停滞するわけです。そのために消費が停滞して内需不振につながっていくという悪循環なんですね。
 とにかく、労使の立場というよりも政府の経済政策あるいは財政対策が誤っているということなんですよ。根本的に考え方を改めて内需拡大政策に大きく踏み出さなければいかぬ。それには、大幅な減税を実行し、あるいは賃上げをやる、その方向に進んでいくように、また人勧あるいは仲裁裁定は完全実施をするのだ、こういう方向に切りかえていかなければ大変なことになるのじゃないか、私はこう思うのですけれども、いかがですか。
#129
○山口国務大臣 大橋先生の御発言の趣旨は十分理解できるわけなのですけれども、厳しい財政事情で、これは率直に言って、労働省なんかでも予算を一律一割削減でやっていて、予算を削られると役人の政策立案意欲というのが損なわれて、どうも一つ停滞しているのじゃないかと、私、批判したことがあるのです。ですから、ましてや公共事業みたいなものをやっている建設省としては、もっともっといろいろな社会資本その他のためにもやりたいという気持ちがあると思うのですけれども、しかし御承知のとおりの財政事情ですから、じゃ、これを赤字国債でやるのかというわけにも、これまた恐らく先生の方もいかない。そういうことで、今総理も、減税ができ得るような税制改革ということもいろいろ議論しています。
 今中曽根内閣が民間活力ということを言っていますけれども、仮に建築基準法その他の問題で十万戸家が余計建てば、それだけで二兆円近い経済効果というものも、上回るものがあるわけですから、そういういろいろな総合的な施策をしながら、今大橋先生のおっしゃるような内需の問題の活力をどこに求めるかということと、一つは人勧等におけるそういう公約、ルールの実行、これは当然なさなければならない。それからまた政府機関においては、予算は予算として、厳しく絞られても、それをどう膨らまして国民経済や生活に奉仕でき得るようなことをやるか、それぞれの立場において、この財政状況の中においては、ないものを最大限に生かしていくという意欲といいますかアイデアといいますか、その政策努力と兼ねて今の先生の御助言をあわせるということが大事なことじゃないかというふうに考えます。
#130
○大橋委員 もう時間が参りましたのでこれで終わりますが、本当は我が国の勤労者の生活が実態的に非常に苦しいのだということを、労働省の資料その他厚生省、あらゆる資料を私案は持ってきてその実態を示したかったのですよ。経済企画庁の方をわざわざお呼びしたのですけれども、もう時間が参りましたので、きょうはこれで――私、勘違いしていました。どうもすみません。もう少しやらせていただきます。
 それでは、先ほど申しましたように、勤労者の生活の安定を図っていこうというのが労働省の最大の使命だと私は思うわけです。それを基本にいろいろな手だてをしていくのが労働省の大きな役割ではないか、こう思っているわけです。ところが、我が国の勤労者の生活の実態というものは非常に苦しい、そういう状況に追い込まれております。
 それを今から私、具体的に申し上げてまいりますが、五十九年度の労働白書を見ますと、労働者の生活が非常に苦しいというのが四十代後半から五十代前半の勤労世帯である、すなわち消費支出に必要な賃上げが行われていないためだ、こうありますね。そして、生活は赤字が続いている、こういうことが労働白書の中に出ているわけでございますけれども、そういう実態に対して労働省としては、じゃ、こういう対策をしましょうということは白書の中には書かれてないのですよ。ただ、労働者は大変な苦しい状況にあるという中身は示されております。それから、総務庁の統計局の家計調査によりましても、実収の伸びは五十三年以降一けた台でございます。ちなみに五十八年度は三・二%ですね。その反面、消費支出、税金や社会保険料というものは二けた台に伸びていっておるわけですよ。したがいまして、消費支出の実収入に占める割合は、昭和四十五年で八・二%だったのですけれども、それが五十八年度には一五・一%と大幅な伸びを示して、生活の苦しさが如実に示されておるわけです。また、家庭生活は大変苦しいというので、奥様たちが大変な就労の実態を示し始めているわけでございますが、こういう実収入に占める妻の収入というものは、四十九年度で六%だったのが五十八年度ではもう七・九%と、実収入に対して奥さんの収入がかなり大幅にウエートを占め始めております。
 あるいは全国消費実態調査、これは五十四年の実施でございますけれども、この資料を見てまいりますと、高校生や大学生を抱えている家族の家計というものはほとんど赤字なんです。そして貯金を取り崩して生活しているというのが実態であるということが示されております。
 また、厚生省の国民生活実態調査というのが五十八年九月一日に実施されておりますけれども、生活が苦しいというのが三八・六%、その中に三十歳台が四四・九%、四十歳台が四二・九%、こうなっております。これは五十八年九月の調査でしたけれども、五十九年度の調査になりますと、苦しいと言っていた人が三八・六%から四二・四%にぐんと上がっています。五十八年九月の調査で妻が働いている世帯が三四・三%、それから妻の平均所得が百三十八万六千円ということになっておりますけれども、その妻の就労の実態は、三十歳台が三四・五%、四十歳台が四四・八%、有十歳台が三一・七%。そして働く理由は何かというと、家計の補助が五四・六%を占めているのです。
 いかに今勤労者の生活が重苦しい状況の中にあるかというこの実態を大臣は知っておられるかどうかということです。簡単でいいです。
#131
○山口国務大臣 中小企業の労働者等を含めまして大変勤労者の家計は厳しい状況にある、こういう認識を持っております。
#132
○大橋委員 そこで我が国の経済力というのは世界のGNPの一割を占めていますね。つまり世界第二の経済大国にのし上がったわけでございますけれども、国民所得では十五位ないし十六位ですよ。勤労者の賃金はどうかといいますと、先進国中一番低くはないですけれども極めて低いです。例えば、これは労働省の資料です。一九八二年における各国賃金は、一時間当たり日本を一〇〇とするとアメリカは一九一・〇、西ドイツ一二一・二、フランスが九一・六、フランスよりちょっと日本はいいですけれども。今のは賃金の問題です。
 今度は労働時間の問題、過当たり労働時間は日本は非常に長いですよ。一九八二年の調査でございますけれども、これは労働省の資料です。日本は四十一・一時間、アメリカは三十五・六時間、西ドイツは三十二・三時間、イギリスは三十六。三時間、フランスは三十二・八時間、とにかく日本は、賃金は安いわ就労時間は長いわで、非常に厳しい労働条件の中に追い込まれているということです。
 そこで、経済企画庁の方にお尋ねいたしますが、五十九年度の経済見通しで一人当たりの雇用者所得の増加率を当初四・七%と見込んでおられたわけでございますが、実績見通しでは四・七が四・四%に落ち込んでおるように思われます。にもかかわらず六十年度の見通しでは五%となさっているのはどういう根拠によるものなのか、これをお尋ねしたいと思います。
#133
○服藤説明員 お答えいたします。
 五十九年度の見通しの数字に比べまして六十年度が大きくなっている、その理由いかんということでございますが、これは、その背景に我が国経済の間もなく三年目に入ろうとする景気拡大の継続というのがあるわけでございます。御案内のように、アメリカ経済が三年前に底入れしまして拡大に向かった、それに伴って日本の輸出もふえて、これが企業収益の拡大、そしてそれが設備投資に結びつくという形で日本経済は現在の好況と申しますか景気拡大を持続しているわけでございます。
 従来の例からいきますと、こういうふうに企業部門におきまして好況になりますと、それがいずれ所得の増加等を通じて家計部門にも及んでくるということで、そういった過去の実績等を踏まえまして、先ほど先生がおっしゃったような数字をはじいた、そういう数字を見込んだわけでございます。
#134
○大橋委員 要するに各省庁の統計資料、特に経済企画庁等が出していく資料というものは非常に的確であると思いますし、そういう内容から参りますと、六十年度は勤労者にとっては非常に期待を寄せられる状況下にあるということが一つです。にもかかわらず日本の勤労者、労働者というものは非常に厳しい状況下に置かれているということを労働大臣は改めて認識を深めていただきたい。
 そこで、最後にお尋ねいたしますが、労働時間短縮の問題でございますが、これも重要な課題の一つとなっております。当面週休二日制の普及にあるわけでございますけれども、これに関連しまして銀行あるいは公務員に非常に影響していくものと思いますけれども、これはどうなっていくかということと、四月の末からのゴールデンウイークを緑と太陽の週にとの運動が今起きているわけでございますが、当面五月四日を休日にしたらどうかというお話もあります。これは、労働大臣は大変熱心に取り組んでいらっしゃるようにも承っておりますが、改めてこの際にお伺いしておきたいと思います。
#135
○山口国務大臣 労働時間短縮の問題は、労働者の労働福祉、労働条件の改善、高齢化時代における雇用の問題、また技術革新時代におけるストレス等の勤労者の健康管理の問題、また大橋先生御指摘の労働摩擦の問題、あらゆる面から労働時間短縮というのは早急に検討して、そして一歩一歩進めていかなければならない。そのためには、週休二日制の問題も、金融機関等を通じてCDの稼働等の絡みの中で一日ずつ実行の枠を広げていく。こういう考え方で今進めておりますし、それから有給休暇の完全消化がなかなか進まない現状でございますので、連続休暇方式ということを今行政指導やっておりまして、特にゴールデンウイークの連続休暇という労働団体からも強く要望されている点も踏まえて今進めておるところでございます。
 特に、時短と休暇の問題は各党間の政策責任者会議でこれから論議をするということでございますので、ぜひその成果を注目したいというふうに思いますし、また、四月二十九日から五月四日まで連続休日法制化という各団体の強い要求がありますけれども、一遍にやると、やはり中小企業、零細企業、流通業の問題もありますし、経済は生き物ですから、ですからそういうことも踏まえて御論議いただいて、一日ずつ時短の問題、休暇の問題を実行していくということが一番理想的ではないか、かように考えております。
#136
○大橋委員 時間が来ましたから終わります。
#137
○丹羽(雄)委員長代理 塚田延充君。
#138
○塚田委員 毎年度出されております「経済見通しと経済運営の基本的態度」というものでございますが、これは単なる経済予測なのか、それとも経済運営に関して経済企画庁なりが関係省庁をも拘束し、または指導するというような性格を踏まえて閣議決定されているのか、企画庁の考え方をお聞かせください。
#139
○服藤説明員 お答えいたします。
 政府経済見通しと申しますのは、これは文字どおり政府の経済見通しでございまして、経済を取り巻くいろいろな環境、これについての推移、その見方を前提といたしまして、翌年度の経済運営に当たって政府がどのような基本的方態度をとるのか、また、そのような基本的な態度に基づいて経済を運営することによりましてどのような経済の姿になるのかといったような点につきまして政府の見解を示すものでございます。したがいまして、当然のことながら政府の各機関は、政府の経済見通しで明らかにされました経済運営の基本的態度に沿いまして政策の運営を行っていくということになろうかと思います。
#140
○塚田委員 この経済見通しにつきまして、五十六、五十七、五十八年、三年間について、そこで出されました雇用者総数、それから雇用者の所得及びそこから割り出され計算し得る一人当たりの雇用者所得の対前年度伸び率はそれぞれどのような数字が出ているのか。そしてその予測値が実際の結果と比べてみてうまく当たっていたのか、それとも乖離しておったのか、この三年間の実績について結果を御報告いただきたいと思います。
    〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕
#141
○西藤説明員 お答え申し上げます。
 お尋ねの五十六年度から五十八年度につきまして、雇用者総数、雇用者所得、一人当たり雇用者所得、この順番で当初の見通しと実績とを比較させていただきたいと思います。
 まず五十六年度ですけれども、雇用者総数が当初見通しでは一・六%程度、実績が一・三%、雇用者所得につきましては見通しが九・二%程度、実績が七・六%、割り算をいたしました一人当たり雇用者所得は、見通しで七・五%程度、実績六・三%。五十七年度でございますが、雇用者総数の見通しが一・六%程度、実績が一・九%、雇用者所得は見通しが八・六%程度、実績が五・八%、一人当たりの雇用者所得は見通しが六・九%程度、実績が三・九%。五十八年度でございますが、雇用者総数の見通しが一・三%程度、実績が二・四%、雇用者所得は当初見通しが六・六%程度、実績が五・〇%、一人当たり雇用者所得は風通しが五・二%程度、実績が二・六%というふうになっておりまして、御指摘のように雇用者所得、特に一人当たり雇用者所得につきましては、第二次オイルショック後の後遺症がかなり長引いておりまして、見通しに比べまして実績がかなり下回っているという実情にございます。
#142
○塚田委員 私は一人当たり雇用者所得の伸びについて言及していきたいと思っているのですが、この伸びというものは、まず残業収入がどうなるのか、また夏期及び年末の一時金の伸びがどうなのか、そしてこれは最大の要素になるのじゃないかと思いますが、春季賃上げ、この三つの要素の合算で大半が決まってくるのじゃないかと思うわけでございます。この六十年度の一人当たり雇用者所得の伸びを割り算で計算してみますと五%という数字が出るわけでございますが、今申し上げました三つの要素それぞれの寄与率が現在の経済環境などを勘案しますとどうなると思われるのか、御教示いただきたいと思います。
#143
○西藤説明員 御指摘のとおり、六十年度の一人当たりの雇用者所得の伸びにつきましては五・〇%程度というふうに見通しております。実は、この雇用者所得の見通しは、今先生が御指摘ありましたように残業収入でありますとかボーナスでありますとか賃上げというような、そういう要因別に推計をしておるわけではございませんで、経済成長率でありますとか、労働力の需給の状況でありますとか、消費者物価といったようなマクロ的な面から推計しているものであります。したがいまして、賃上げについてどのくらいのものを見込んでいるかということは、政府見通しでは推計をしていないというふうに御理解いただきたいと思います。
 なお、どの程度の寄与度になっているかということは、今申しましたようなことで見通しとしては非常に困難なわけでありますが、最近の状況を見ますと、一人当たり雇用者所得に対しまして現金給与の割合が八七%ぐらいになっておりますし、その現金給与の七割近くが春闘の対象になる所定内給与になっておりますので、一人当たり雇用者所得の相当な部分が所定内給与であることは間違いないと思いますが、先ほど申しましたような推計方法でありますので、個々のボーナスや残業手当や賃上げの寄与度というものは見通しの中では推計していないということでございます。
#144
○塚田委員 残業収入であるとか一時金につきましては確たる予想がつけられないということですが、同時に、常識的に考えてもそんなに寄与率の程度が高いとは期待できないのじゃないかと推定されるわけでございます。となりますと、理の当然といたしまして春季の賃上げの率が相当程度にないと五%のいわゆる一人頭雇用者所得の増加というものは実現し得ないことになるわけでございます。
 この見地から、労働省としましてはいわゆる春闘、この春季賃上げ闘争の意義をどう考えているのか、見解をお尋ねしたいと思います。
#145
○山口国務大臣 春闘は政府にとりましても極めて重大な関心を持ってその成り行きを見守っておるわけでございます。それは、日本経済、国民生活の上において非常に重大な一つの方向を決定づける、こういう受けとめ方であるからでございます。
 しかし、再三各委員にも御答弁申し上げておりますように、労働省とか労働大臣が春闘相場のパーセントを占うような立場にない、また極端にそういう立場をとるべきでない、こういう今日までの慣行もございますし、生産性の分配を含めまして第一線でともに汗している労使双方がその整合性等の中で決めていく。ただ、我々としては、こういう時代でございますから、日本経済とか国民経済の立場で、全体的にグローバルな立場に立っていただいて労使双方がひとつ公正な立場でこの相場を形成していただくということを期待をし、注目しておる、こういう考え方でございます。
#146
○塚田委員 御承知のとおり、いわゆる春季賃上げ闘争に参加する組織労働者というのは全雇用労働者のうちの約三割でございます。この闘争結果に連動した形でいわゆる未組織労働者の賃金もアップする形になるわけでございますが、実際は未組織労働者の大半というのは中小零細企業の労働者のため、最低賃金の引き上げがないと思うように賃金が引き上がらないというのが実態じゃないかと思うのです。この全体の七割を占める未組織労働者の賃金上昇がない限りは、前に述べました一人当たり雇用者所得の五%アップが実現できないことになってしまう。そうしますと、結果的には国内消費の向上などすべての予想されている経済指標が狂ってきてしまうことになるんじゃないかと思います。
 となると、このいわゆる最低賃金の決め方というのが非常に重要な役割を示すわけでございますが、この観点から労働省の最低賃金の引き上げに関する考え方をお聞きしたいと思います。
#147
○寺園政府委員 最低賃金につきましては、公労使三者構成から成ります各都道府県の地方最低賃金審議会におきまして各地域の中小企業の賃金実態を調査し、あるいは関係労使からの意見を聴取するといったような非常に慎重な手続を経まして審議会で決定をし、それを地方局長が告示をするという手続になっておるところでございます。その中にありまして最低賃金法におきましては、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力というものを十分考慮しながら、先ほど申し上げましたような手続を経て決定をしておるところでございます。
 私どもといたしましては、地方の最低賃金審議会におきまして公労使各側委員が十分に議論を尽くされますように審議会の運営あるいは資料の整備に十分な努力を今後ともしてまいりたいというふうに考えております。
#148
○塚田委員 春季賃上げは単に労働者と経営者側の闘争ではなくて、国内消費に大きな影響を与える経済運営の出発点としての要素じゃないかと私は考えます。そうなりますと、この要素がいわゆる経済見通しを下回ることになると、消費者でもある労働者の可処分所得が伸び悩んでしまう。すると消費支出が伸び悩む。結局は経済成長が阻害されるというような低成長の宿命から脱却できないことになるわけでございます。このような経済運営全般の立場から、この春季賃上げ闘争の意義について今度は経済企画庁の考え方をお聞きしたいと思います。
#149
○西藤説明員 春闘の賃上げが見通しを下回ると低経済成長になってしまうという御指摘でありますが、春闘の賃上げそのものについては私どもの見通しでは何も示していないわけでございます。
 御質問の合意としては、雇用者所得が順調に伸びない場合には消費や住宅投資といったようなものが伸びなくて内需が拡大しない、内需中心の成長にとって支障があるという観点からの御質問だと思いますが、その点は御指摘のとおりだと思います。
 雇用者所得の伸びというものが内需中心の成長にとって重要な意味を持っているというふうに我我は考えております。したがいまして、見通しで考えておりますような消費や内需の伸びを可能にするような一人当たりの雇用者所得の伸びが必要であるし、また期待したいということが政府の予測の含んでいる意味であろうかと思います。
 ただし、くどいようでございますけれども、賃金決定は労使の自主的な話し合いのもとに行われるべきものでありますので、政府の介入ということはあり得ないわけだと思います。見通しという立場から見ますと、やはり労使が国民経済的な視野に立って適切な賃金決定が行われるということが必要であろうかと思います。
#150
○塚田委員 四十八年及び四十九年のオイルショックで我が国の企業収益はパニック的な打撃を受けたわけでございます。労働者もその苦しい状態を理解しまして経営者と苦しみをともにする、いわば「おしん」の時代をずっと過ごしてきたわけでございます。ところが、五十四、五年からその効果が出たわけでございましょう、企業収益は急上昇いたしまして、もはやオイルショックの後遺症の時代は終わったと言われ、現在に至っているわけでございます。ところが、経営者側は今なお賃上げを抑え続けていまして、苦しみを分かち合うべきだという哲学を押しつけたままで、成果をともに分かち合うということを拒否しているような状況がこの二、三年続いていると判断しているわけでございます。
 その状況を数字で示しますと、五十年から五十八年の九年間の平均実質成長率は、私の計算によりますと四・四三%であるのに対して現金給与総額の平均伸び率は一・三三%しかない。家計調査による可処分所得の平均伸び率になりますと、たったの〇・八七%になっている。これは日本株式会社全体で見ますと、年平均四・四三%の利益の伸びがあったとすると九年間で四八%成長したわけですけれども、苦しみをともにしたはずの従業員たる労働者はたった一二%しか配分の増がない。すなわち四分の一しか苦労の結果たる報酬が伸びていないということになるわけでございます。
 そこで経済企画庁にお尋ねいたしますが、オイルショックの前であります九年間、すなわち四十一年から四十九年の年平均実質成長率、それから同様平均値でございますが、現金給与総額の伸び率及び可処分所得の伸び率、これはどうなっておりますか。
#151
○加藤説明員 お答え申し上げます。
 先生の御指摘の四十一年度から四十九年度までの平均の実質国民総支出の伸びは八・四%、実質現金給与総額の伸びは七・八%、実質可処分所得の伸びは五・二%でございます。
#152
○塚田委員 今お答えいただきましたデータによりますと、オイルショックの前はGNPの伸びも労働者の賃金関係の伸びも余り大きな差がなくて、整合性を持って伸びていたということが言えるんじゃないでしょうか。言いかえますと、経営者側から見れば配分を分かち合うようにしたという形になっておりますし、労働者側から見ますと賃金の伸びを消費の伸びに連動させてGNP高成長の原動力になったとも言えるような、そういうお互いにいい形になっていたんじゃないかということが明らかになっておると思うのです。
 今明らかになりましたオイルショック前と後の経済成長率と賃金関係の伸びの相関関係、すなわちオイルショック前は両者がともにいい関係を持ちながら伸びておったのに、ショックの後は賃金関係は不当に低い伸びに抑えられるような関係になってしまっていること、この事実を経済企画庁はどのように解釈されておるでしょうか。
#153
○加藤説明員 お答え申し上げます。
 御指摘のように、四十一年度から四十九年度をとりますと、実質経済成長率は八・四%、現金給与総額の伸びは七・八%ということでございます。そして五十年度から五十八年度をとりますと、それが四・四%から一・三%というふうに大きな差が出るということでございますが、実質経済成長率というのはマクロ、経済全体の数値でございますし、賃金上昇率というのはこの現金給与総額の統計では三十人以上規模事業所の常用雇用者一人当たりという数字でとられております。したがいまして、この間に就業者数が増加するという要因が入ってまいります。したがいまして、我々としてはこの就業者数の増加を含めた実質雇用者所得の伸びで比較した方が適切ではないかというふうに考えておるわけでございますが、もし実質雇用者所得の伸びということで比較いたしますと、オイルショック後の五十から五十八年度の実質雇用者所得の伸びは三・五%でございまして、実質経済成長率は先ほど申し上げたように四・四%でございますので、その差は〇・九%ポイントということでございまして、先ほどの約三%ポイントよりはかなり縮小するわけでございます。
 かつまた、先生先ほど御指摘でございましたので四十九年度までの数値を申し上げましたが、実際は四十八年の十一月にオイルショックが起こっておりますので、四十九年度をオイルショック前と考えることにはやや問題があると考えられます。もし四十九年度以後を全部オイルショック以後と考えまして実質経済成長率と実質雇用者所得の伸びを比較いたしますと、成長率は四・〇%、実質雇用者所得は三・七%ということになりまして、差はかなり縮まるということでございます。
 いずれにいたしましても、オイルショックを契機といたしまして大きな経済変動、構造変動が起こっておりますので、その前後を単純に比較することはかなり困難であるというふうに考えております。
#154
○塚田委員 私が強調したいことは、オイルショックによって労働者側が我慢の哲学を強いられたままである、そしていわゆる生産性の伸びなり何なりについての成果の配分がそこから狂ってしまったというか、労働者側が非常に低位に抑えつけられてしまったということを、余りきちんとした数字じゃないかもしれませんけれども、かなり数字の面で出ているのじゃないかという方向性を指摘したかったわけでございまして、これが経済理論上正しいというようなつもりは私自身も持っておりません。
 そういうような大ざっぱな推論に対しまして労働大臣はいかが見解をお持ちでしょうか。
#155
○山口国務大臣 石油ショック前と役との問題における実質賃金の上昇率、また可処分所得の問題、それが消費にどうつながっているか、内需にどうこれがかかわっているか、こういう立場からの御指摘は私非常に傾聴して今伺っておったわけでございますし、そうしたデータも踏まえて、今私どもで労働者の家計動向の追跡調査というようなことを考えておりますので、その点の作業の中で今先生御指摘の点も踏まえて十分研究させていただきたい、かように受けとめております。
#156
○塚田委員 最近の経営側の新規賃上げに対します対応は、単に個別企業であるとか個別産業側から見た近視眼的なやり方で表面的な企業利益が大きくなればそれでいいんだということにのみ精力を集中しまして、本来自分たちが恩恵を受けているマクロ的な経済成表、マクロ的に経済成長があれば自分たちの企業もいろいろ収益を伸ばすことができるんだというような、そういう大きな経済環境をよくするということの観点、視点に欠けているような感じを受けるわけでございます。
 これはまさに格言でもございますように、角を矯めて牛を殺すといったたぐいのやり方になってしまうのじゃないかというような心配があるわけでございまして、経済企画庁、そして労働省ともに経済見通しで挙げておるように、一人当たりの雇用者所得を五%上げるんだ、そしてねらっておるGNP成長率をここまで達成するんだというようなことをきちんと実現させるためにも、経営者側に対して、このようなマクロ的な見地から出せるものはあくまでも出す、すなわち成果をともに分かち合うというようなことについて、これは行政指導になかなかなじまぬということではありましょうけれども、御指導をいただけたらと思っております。
 そして特にこの件に関連しまして注文をつけておきたいことは、GNPの伸びに比べまして極端に可処分所得の伸びが低いということでございます。これは既に当委員会でも何回か指摘されているわけでございますが、所得税減税がほとんどこの九年、十年の間になかったということが大きな原因、理由になっているのじゃないか。そのために可処分所得がほとんど伸びない。だから国内消費が伸びない。そのために低成長という悪循環、これを繰り返している、その大きな原因、理由だと思います。この問題につきまして、経済企画庁、労働省ともに政府部内で、減税というのは単に労働者が頼み込んでいるからそれをやってやるんだというのじゃなくて、経済政策上意義のある前向きの措置なんだということをぜひ理論的にも解明して主張してほしいな、このように思うわけでございます。
 それでは、質問の方向を変えます。
 昨年六月に開催されました第七十回ILO総会におきまして、我が国の労働者側代表の全日本総同盟の田中書記長がILOの重要な諸条約の批准について、日本政府が極めて消極的であると指摘した演説を行っております。
 そこでお尋ねいたしますが、労働時間に関係するILO条約に今回は焦点を絞って議論を進めていきたいと思いますが、労働時間に関連する条約は何本あって、そのうち批准が終わっているものは何本あるのか、お聞きしたいと思います。
#157
○寺園政府委員 ILO条約で労働時間に関係いたしますものといたしましては、労働時間の本則に関するものが十本ございます。それから休日、休暇に関係するものが六本ございます。そのうち、我が国が批准したものはございません。
#158
○塚田委員 何回も指摘されておるようですが、余りにもひどい結果になっている。
 そうしますと、ILO関連条約で時間短縮に関連するものの一番最初の条約というのは、第一号条約でございますね。これは一九一九年、大正八年に調印されたものでございまして、一日八時間労働制に関するものでございますが、これも今なお批准されていない。今から六十六年前の条約ですよ。これは山口労働大臣がお生まれになる前の調印でございますね。このような状態につきまして、労働大臣いかがお考えでございましょうか。
#159
○寺園政府委員 ILOの第一号条約、すなわち工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約につきましては、その内容で規定されておりますことは、我が国におきましても基本的には満たしておるというふうに考えております。
 しかしながら、労働時間制度のあり方は、それぞれの国の労働慣行あるいは社会慣行等と密接に関連を有するものでございます。例えば、我が国におきましては、時間外労働は終身雇用慣行のもとで景気変動に対する雇用調整機能を有しておる。したがいまして、経済情勢の変化に応じてある程度の弾力性を付与することが必要であろうということで、現在の我が国の法制におきましては、時間外労働は労使の協定によってでき得る法制をとっております。そのことがILO第一号条約に適合いたしておりませんので、現在、批准をしておらないということでございます。
#160
○塚田委員 私がただいまお尋ねしたのは、このように批准が全然進んでおらない、そして例えば六十六年前の第一号ですらどうなんだという例を挙げたわけでございまして、御丁寧にもなぜその第一号が今なお批准できないのかというような言いわけについて今お聞かせいただいたのですが、私としては全体なぜこのように進んでないのか、一番ひどいやつは六十六年もほっぽりっ放しである、こういうような状態について、担当大臣として労働大臣はいかがお考えになるのか、この見解をお聞きしたかったわけでございます。
#161
○山口国務大臣 労働時間短縮につきましては、広く国際的な立場からも我が国の長時間労働が指摘をされておる。極端に言と、日本はその長時間労働で失業を輸出している、こういう批判もあるわけでもございます。国内的にもME化、オフィスオートメーション等の中で、労働者の労働福祉改善の立場からも労働時間短縮というものは考えなければならない。また雇用の延長から、定年延長等から来る長期的な雇用の安定からも労働時間問題を考えなければいかぬ、こういうことで、塚田先生も御指摘いただいていますが、労働団体等も時短元年、こういう認識で、今からひとつ労働時間短縮の問題について一歩一歩これを改善に向けて取り組もう、こういうことでございまして、労働省としてもそうした皆さんの御批判や御指摘等も踏まえてさらに経営側にも労働側にもその点の認識をひとつ深めていただいて、労働時間短縮の問題にひとつ懸命に取り組みたい。
 それから、一つ余談でございますけれども、この問題に関連していろいろ小学校の休暇の問題を調べさせましたら、イギリスやフランスなんかは冬休み、春休みは一カ月、夏休みは三カ月、こういう形になっているわけですね。日本は冬休み、春休みは一週間、夏休みが一カ月、こういうことで子供のころからそういう働く時間、勉強する時間と、自分で自主的にいろいろ物を考える時間、こういう訓練がなされておる。そういういわゆる社会的習慣の問題も含めて、日本が長時間労働という問題との関連がなかなか改善されないという点もあろうかと思うのですね。ですから、そういう総合的な立場で我々は今この問題を一歩一歩ひとつ改善すべく取り組まなければならない、かように考えておるところでございます。
#162
○塚田委員 今の大臣の御答弁は、労働時間短縮について一生懸命に取り組むという姿勢はもう心しひしと感じられるわけでございますけれども、しかし結局のところいわゆる行政の立場という制約があって、この問題は労使間の自主的な交渉に任せざるを得ないという要素が強いということで、結局は言いわけになってしまう面が多いのじゃなかろうかと私は危惧するわけで、ならば、行政の面としていわゆる義務を負うべきことは、国際条約の面から、これは経営者が責任を負うとか労働者が責任を負うのじゃなくて、政府として、行政として責任を負わなければいけない。
 そうすると、労働時間短縮について政府として責任を負うべきILO関連条約が何本もある。それがほとんど批准されていない。それを促進する。これ自体が今大臣がおっしゃった労働時間短縮を進めていくという、政府としてやり得る唯一に近い直接的な方法じゃないかと思うのです。そういう意味で、このILOの時短関連条約について今後どのような対応をされていくのか、大臣の見解をお聞きしたい、こういうわけでございます。
#163
○山口国務大臣 先ほども国際労働課長が御答弁申し上げましたが、国内法との関連という問題が一つございます。
 そこで労働省といたしましては、塚田先生も御承知いただいていますように、今労働基準法研究会等で労働時間問題をいろいろ御論議いただいておる。これは労働大臣の私的諮問機関ということで御論議いただいておるわけでございますが、その最終的な答申が出ました段階で国会等との御論議も踏まえて、労働基準法改正の必要性、その中身等についてひとつ成案をまとめていきたい、かように考えております。
 そういう中でひとつ労働時間問題を具体的に取り上げるということが一つと、現在は連続休暇の問題について行政指導で全国の労働基準局長が先頭に立ちまして、各企業体、特に中小小規模企業に対しても労働時間短縮と連続休暇の問題の普及に対して鋭意取り組まさせていただいておる、こういう現状でございます。
#164
○塚田委員 このILO条約につきましては常に前向きの御答弁はいただいているわけですけれども、なかなか実際は批准が進んでおらない、そのための体制が整わないということの繰り返しのような気がするわけです。
 それでは、ずばりお伺いいたしますが、そういうようないろいろな政府部内での努力をされておる成果といいましょうか、進みぐあいを具体的にお示しいただきたいのですが、現在批准のために準備を進めておるILO条約は何があるのか、昭和六十年度中に批准可能な条約は何なのか、お答えいただきたいと思います。六十年度内ですよ。
#165
○谷口(隆)政府委員 ILO条約の批准が概して進んでいないということは先ほど来御指摘のとおりでございます。その点につきまして労働組合の方から特にいろいろな御指摘も受けておりますし、先ほど国際労働課長もお答えしましたように、少し労使で意思の疎通を図りながら取り組んでみようというようなことで、労使の関係者の方方との会議を定期的に持って批准のための検討を進めるという作業を改めて始めたところでございまして、今御質問のございました、それではどういう具体的な条約を批准のために検討しているかということにつきましては、具体的にこれというよりも総括的にずっと洗い直してみている。それも労使関係者にお集まりいただいて意見を交換しながら進めていくということで、最近それを何回か続けておるところでございます。
#166
○塚田委員 この問題につきまして労使の意見を聞き、また調整を行うということは必要ですけれども、私が強調したいのは、最終的には、条約なんだから行政の問題そのものである、例の賃上げ闘争とかなんかとは違うのだということをしかと労働省としては認識し直さなければいけないのじゃないか、このような気がするわけでございます。
 先進諸国のうちで我が国の労働時間が異常に長いということは世界周知のことでもあり、それが批判の的となって経済摩擦の大きな原因、理由となっているわけでございます。となりますと、我が国の労働者が英知を集め、また真心を尽くしてよい物、安い物をつくって世界に供給しておっても、それが非難の的となっているのでは、このまじめな労働者は浮かばれない話でございます。
 この世界的な非難というのは、我が国がILO条約未批准でわかるように、結局国際的な約束事、すなわち当たり前の義務を守っておらない、そしてこのような国際的な守り事ということは行政そのものである。労使の問題じゃない。翻って考えてみますと、我が国は言うまでもなく貿易立国以外に生きる道がない。地球上に存在する世界国家であるわけでございますから、その世界国家、地球国家日本としての義務として、政府の義務としてこの労働時間短縮に取り組む必要性がかる。労使の問題を超えて、国際間、地球上に生きる者としての義務だということを政府は認識していただきたいと思っております。この件について、くどいようですが労働大臣、もう一言。
#167
○山口国務大臣 今年度の予算の成立過程にお麦まして、各党間の政治折衝の中で具体的な減税のような経済政策と並行して労働時間短縮の問題あるいは連続休暇の問題、こうしたものを各党間でひとつ忌憚のない意見交換をしてその方向づけか決めよう、こういうことはちょっと国会の中においてもなかなか画期的なことだと私思うのですね。こういう国会の先生方の、各党間の御努力がいただく経過の中で、政府としても、塚田先生に御指摘いただいたような労働時間短縮の問題については、特に労働省として、この労働時間短縮というものは単に労働者の生活条件の改善にどとまらない非常に大きな二十一世紀的な諸課題を含んでおるわけでございますから、これはもう真剣に最重点政策課題として取り組む、こういう決意でおります。
 ただ、一般の労働者の方々も、年次有給休暇等がもう既に基準法内で定められている権利でありながら実際問題として完全消化が非常に進んでおらない。経営者のみならず、政府部内のみならず、こういう一般的な国民の中においても労働時間短縮と休暇の問題に対する大きな意識変革というものがともども連動していきませんと、中小零細企業等からも非常にいろいろな問題点等もございますので、その点も政府としては考えながらやらなければならないという一面はひとつ御理解もいただければ大変ありがたい。いずれにしましても、労働時間短縮問題は最重点の政策課題として取り組みたい、かように考えております。
#168
○塚田委員 ところで、山口労働大臣、サミットの直前に開催されておりますレーバーサミット、これは御存じですね。――政府としてこのレーバーサミットの意義をどう評価されているか、簡単に一言お願いします。
#169
○山口国務大臣 これは、先進国首脳会議と並行して毎年労働サミットが開かれて、我が国の労働界の代表の方々も随時御出席いただいて議論されておる。その中身について私も報告を受けておりますが、世界の労働経済の立場から大変有意義なことであり、私としては、いわゆる先進国首脳会議における総理の代表としての立場、労働サミットに出席する皆さん方と率直に意見交換をするような場面もことしはぜひつくったらどうだろうか、ともに日本国民あるいは世界の中における日本の責任、役割を果たす立場でございますから、そういう場所をつくることも労働大臣としての一つの役割ではないか、こういう位置づけで労働サミットを認識しております。
#170
○塚田委員 OECDの下部機関と申しましょうか、そこにTUAC、労働組合諮問委員会というものがあるわけでございますが、これはボン・サミットに向けましての声明をこのほど作成したそうでございます。これによりますと、この声明は0ECDの閣僚理事会に出され、結果的にはレーバーサミットに行き、今度は中曽根総理も出席されるサミットそのものに出される筋合いのもののはずでございます。
 そのTUACの声明の中身でございますけれども、今各国に蔓延しつつある失業問題、これが国際社会全体のガンであると鋭く指摘した上で、先進国のうちで、日本を名指しはしていないけれどもだれが見てもそれとわかる言い回しで、我が国の労働時間が異常に長いことが不公平な国際競争条件であると批判しているわけでございます。
 そういうわけで、結局は中曽根総理御出席のサミットまで出されるということは、あのサミットというのは、西側諸国の間ではございましょうが、今の国際政治の上で最も大事なことを額を集めて、英知を集めて解決する、その中の議題の一つに近い形で提案される。それだけ我が国の労働時間の長さというのが国際的に問題になっておる。
 だから、私たちが労働者の福祉の立場から労働時間短縮を主張することは当然でございますが、先ほど申し上げたように、これは国際条約面から国際的な義務であり、それから国際政治を丸くおさめる、そういう仲間内の一人としてもこの労働時間短縮を政府が指導的な立場で解決しなければいけない問題だ。そういうことで、賃上げ問題は労使間のあれで決まり、また労働時間短縮も確かに労使間の交渉ではあるといっても、行政そのものであるということをきっちりと認識していただきたい、私はこのように思います。
 このTUACの声明に関しまして、労働大臣の見解を一言お聞きいたしまして、私の質問を終わります。
#171
○山口国務大臣 国際的な経済摩擦、貿易摩擦の中で、具体的に労働時間問題あるいは労働摩擦の問題が取り上げられておるというのは、現状、非常に深刻な大事な問題と受けとめております。現にアメリカと日本の関係を見ましても、八兆円近い輸出超過、これをアメリカ国内で生産すれば数十万の労働者の職場が獲得される。私は日本人だけが勤勉とは思いませんけれども、しかし、端的に言って、長時間労働で失業を輸出しているという言い方はわかりやすいわけですし、そうした問題が非常に批判の中心になってきているということも事実でございますので、労働時間問題については政府としても、当面は行政指導ということでございますけれども、避けて通れない大事な問題だ。
 現に、我々就任しましてから労働時間問題を執拗に取り上げますものですから、経済界とか中小企業団体から非常に強い抵抗といいますか、これは労使の問題だといって想像以上の批判を受けている部面もあります。それから、個々の労働者の立場から、これも逆な意味で、働きたい我々の要望を時間外労働の問題と生活の問題をあわせてなぜ政府が口出すんだ、こういう批判もございます。しかし、塚田先生御指摘のように、広いグローバルな立場から、あるいは中長期的な日本の雇用問題、労働問題の立場から一歩一歩取り組み、改善への実を上げていかなければならない、かように決意しておりますので、今後とも御鞭撻のほどもまたぜひお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
#172
○塚田委員 ありがとうございました。
 これで終わります。
#173
○戸井田委員長 小沢和秋君。
#174
○小沢(和)委員 まず初めに、春闘のことで一言大臣にお尋ねしたいと思うのです。
 春闘十連敗というようなことが言われる中で、ここのところ賃金が余り上がらないのに税金や社会保険料がどんどん上がり、住宅ローンや教育費がかさむ、労働者の生活がそのために非常に厳しくなってきていることは先ほどから指摘されているとおりであります。
 一方、多くの企業が近来にない利益を計上しておる、また国際的にも輸出依存型の景気に日本が依存しておって、内需については、それを拡大するためにさっぱり力を入れていないということが非難を浴びる、こういうような状況もあります。
 私はこういうような状況をいろいろにらんでみると、ことしはどうしても労働者の生活を大きく引き上げるような賃上げを実現しなければならないと思うのです。先ほどから大臣の御答弁を聞いておりますと、相場に影響を与えるような発言は慎まなければいかぬというような非常な消極性を感ずるわけでありますけれども、むしろこういうような状況の中でありますだけに、労働組合が掲げている要求は非常に控え目なものであるから、これぐらいは日本の経済のためにもどうしても実現する必要があるというような積極的な発言が必要じゃないかと私は考えますが、いかがでしょうか。
#175
○山口国務大臣 小沢先生の御指摘は大変ありがたいと思うのですが、私は先ほどからの答弁で、春闘に関する発言は、労働大臣として少し枠を踏み外しているのではないかと多少気にしながら、少し賃金の問題に踏み込み過ぎているのじゃないか、むしろこういう気持ちで答弁しているような状況でございまして、ただ私の気持ちとしては、村山先生初め各先生方からの御質問にお答えいたしましたように、ことしの春闘相場に四の五の発言をする立場にはありませんけれども、政府として一つの意見を言うことに今までのような形で極端に制約を受けるということは果たして国民経済や国民生活の立場上いかがなものか、こういう認識はございます。
 したがって、どういう角度、どういう立場からこういう取り上げ方がいいかという点を踏まえて、今後そういう問題に対しても政府としての一つの責任あるいは参考ということで何らかの考え方を示すことは大事なことだと思いますし、それを労使双方が金科玉条のような形で、政府がこうだからこうだということになると、また政府は黙ってる、こういうことにもなりますので、それも踏まえて、第一線で汗している労使双方が国民経済の立場も踏まえて全体として一つの結論を出していただくことが大事なんじゃないか。
 それから、いま一つ申し上げたいと思いますのは、十連敗という御指摘もございましたが、サッチャー政権の炭鉱ストの決着のときも、サッチャーが勝ったとか労働側が負けたとかという新聞活字がございましたけれども、本来労働問題とか労使問題は勝った負けたという野球や相撲と違うわけでありますから、そういう問題ですべて分類するという感覚は非常に労働問題、労使問題に禍根を残す、こういう気持ちでおります。したがって、どう分配をするかということについては双方が最大の英知とエネルギーを結集して、国民にも役立つ春闘相場を形成していただきたいというのが私の基本的な考え方でございます。
#176
○小沢(和)委員 質問の時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いしたいと思うのです。
 具体的な質問を少ししたいと思うのですが、我が国の賃金の一つの特徴として、大企業と中小との賃金格差が非常に大きいということが言えると思いますが、それだけに私は零細企業で働く労働者の賃金を底上げする上で最低賃金制の果たす役割は大きいと思っております。私は、この最低賃金制は全国一律でなければ強力な底上げ効果を期待することができないと考えますけれども、残念ながら現在は府県単位、むしろこれが低賃金を固定化するような結果になっているのではないかと考えるわけであります。
 特にきょう申し上げたいと思いますのは、五十三年度から中央最低賃金審議会がいわゆる引き上げの目安を示すようになりました。私どもは、この目安がまさにその積極的な底上げの効果を及ぼすような目安になってほしいと期待しておったわけでありますけれども、ここ数年の経過を見ますと、この目安の方が春闘の主要企業、つまり一千人以上の大企業の平均賃上げ率などを下回るような状況になってきております。
 ちょっと数字を挙げてみますと、五十六年の春闘では大企業の平均が七・七%に対し地域最賃は六・五%、五十七年は七・〇に対して五・四、五十八年は四・五に対し三・二、五十九年は四・五に対し三・一と、ずっと下回るようになっている。これではむしろ格差がずっと開いてくるということにしかならない。
 これでは最低賃金制度が全体として大企業と中小零細企業の間に大きな格差のある現状を是正するような底上げ効果がさっぱり生まれてこないのじゃないかというふうにしか考えられませんけれども、どうでしょうか。
#177
○寺園政府委員 最低賃金制度は我が国の低賃金労働者の労働条件の改善に役立っているものというふうに考えておりますが、最低賃金の決定の仕方といたしましては、御承知のように、公労使三者構成の各都道府県の最低賃金審議会におきまして各地域の中小企業の賃金実態を調査し、あるいは関係労使の意見聴取、さらには実地視察等を行った上で慎重に審議をし、そこで答申を得ましたものを地方局長が決定をするという手続を踏んでおるところでございます。
 先生御指摘のように、五十三年以降、中央の最低賃金審議会から地方に参考として目安を示す制度を設けて、そこで運用をいたしておりますが、そのような制度をとりましたゆえんのものは、それまで各地方におきまして必ずしも整合的な最賃の改定ができない、一円、二円のことで大変にもめる、さらにはそのために審議がおくれるというようなことがございましたので、中央におきまして、地方の最低賃金審議会が賃金実態等を参考にしながら審議決定するに当たっての一つの参考として目安を示しておるところでございます。
 確かに、組合のございます主要企業におきます賃金の引き上げ率と最近におきます最低賃金の改定額の率を比較いたしますと、お述べになりましたような差がございます。その問題は、一つには、主要企業におきます賃上げ率というものはいわば定昇込みの賃上げ率でございますし、また地方におきます最低賃金の参考にする目安につきましては、各都道府県におきますいわば最低賃金の対象になり得るような小零細の企業の賃金実態というものを調査をいたしまして、それに基づいて目安を策定をしておるという関係からそのような乖離が出ておるというのが実態でございます。
#178
○小沢(和)委員 全体としての整合性を確保するためにこの目安を設けたんだという今のお話でありますけれども、実際にはそういうようなことをやる前の方が春闘の大手の企業の平均よりもこの最低賃金のアップ率の方が高かったというのが実績として出てるのじゃないですか。だから、目安が出るようになったら逆にそれが低く抑えられるようになった、こういうことでは私は期待外れだったと思うのです。
 ところで、もう一つこの機会に言いたいと思いますのは、この地域最賃以上に問題だと思うのが産業別の最賃です。今、地域の方が春闘の平均アップ率より常に低くなっていると言いましたけれども、産業別の最賃の方はそれよりさらに常に低く抑えられているのですね。五十六年が六・四、五十七年が五・一、五十八年が二・八、五十九年が二・七と、地域最賃とのアップ率の差はむしろずっと広がるばかりなんです。このため、以前は産業別最賃の方がある程度地域別最賃より高かったのですけれども、最近は水準が接近してきた。
 そうしたら日経連は何て言い出したかというと、それを逆手にとって、六十年から産業別最賃は廃止せよ、もうそっちの歴史的な使命は終わったと。私は、これは全く居直りじゃないかと思うのですね。むしろ今必要なことは産業別最賃を積極的に引き上げさせるような指導じゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
#179
○寺園政府委員 現行の産業別最賃は、できるだけ早期に多くの労働者に最低賃金側の適用を受けさせるために、まずは産業別最賃という形で発足をしたものでございます。現在では地域別最賃が全都道府県に普及いたしておりますので、そういう意味では現行の産業別最賃はいわば経過的な役割は終わったのではないかという認識、これは中央の最低賃金審議会公労使の委員の全員の一致した認識でございます。
 その問題はともかくといたしまして、産業別最賃と地域最賃とのアップ率の差というお話でございますけれども、産業別最賃につきましても、先ほど申し上げました地域別最賃と同じように、各地方におきまして賃金実態を調査し、あるいは実地調査、参考人の意見などを聴取しながら、各地方の審議会において慎重に審議をしていただいたその結果としての答申を受けて各地方の局長が決定をしておる、こういうことでございますので、そういう意味では産業別最賃も最賃制としては適正な決定がなされているというふうに私どもは確信をいたしております。
#180
○小沢(和)委員 現実にもう数字が物語っておるように、一貫してずっと地域別に比べて低く抑えられて、底上げ効果はそれだけなくなってきているというはっきりした数字が出ているんですよ。それを、手続が慎重にやられるようになっておるからそれでいいんだなどというようなことを言ってもらったのではいかぬと私は思うのです。
 次に、もう一つお尋ねしたいと思うのですが、私は現実の最賃額が低過ぎて底上げ効果が弱いというようにさっきから言っておるのですが、最賃の履行確保を主眼とする監督が労働基準監督署によって行われていますが、驚いたことに、その結果を見ると、違反率が五十六年一七・〇%、五十七年一八・○、五十八年二〇・一、五十九年一八・力と、むしろ増加傾向にあるんですね。違反経営者の七〇%以上は最賃の金額を知らなかったり、そもそも最賃制があることを知らないという状況であります。
 現行制度になってからでも十七年たつわけですね。しかも使用者には、最賃法の十九条で労働者に最賃額などを周知させる義務まで課されているわけでしょう。その使用者がこういうような状態だ。これは私は労働省など行政の重大な責任問題じゃないかと思うのですが、一体どういうような指導あるいは周知徹底の努力をしておるのですか。
#181
○寺園政府委員 最低賃金は決定をすることももちろん重要なことでございますけれども、さらに重要なことは、決定されました最低賃金が確実に守られるということが重要な事柄であると思います。
 そういう意味で、従来から最低賃金の周知徹底については私ども重点の一つとして力を入れてまいったところでございますが、具体的には、最低賃金が決定されました時点におきまして説明会の開催あるいはポスターの掲示、リーフレットの配布等々をやっております。また、この周知徹底につきましては通年的に行政として取り組むべき課題であるというふうには思いますが、一つの節目といたしまして、十一月の下旬に最低賃金周知旬間というものを設定をいたしまして、そこで重点的に周知活動を実施をしておるところでございます。
#182
○小沢(和)委員 最賃の問題についてはさっぱり納得がいきませんけれども、時間の関係もありますから、この問題はこれで終わります。
 次に、池員鉄工という会社がありますけれども、ここで起こっている不当な解雇の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 先日、山口労働大臣に、池貝鉄工が指名解雇を撤回し、三十八名を職場に戻すことなど五項目の要請書が全金池貝鉄工支部被解雇者団あるいは池貝支援共闘会議などの人たちから出されております。あるいは大臣にもごらんいただいているかもしれませんが、私もその写しをもらいまして、その機会にその実態を聞いて、こういうひどいことはとても許されないのではないかというふうに感じたわけであります。この人たちは八三年六月九月に、会社が企業再建のためにということで二百八十五名の希望退職を募集したのですけれども、それが足りなかったということを口実にして一方的に指名解雇で首を切られたわけであります。
 私が聞いてまず驚いたのは、この人たちのほとんどが労働組合の幹部、活動家だというのですね。こういうような人たちをねらい撃ちで切るということは、幾ら会社が気に入らなくてもこれは不当労働行為に当たるのじゃないか、そもそもそのこと肉体が許されないのではないかというふうに私は考えるのですが、労働省はどうお考えでしよう。
#183
○谷口(隆)政府委員 昭和五十八年四月に池貝鉄工株式会社が経営再建のための合理化の過程で希望退職を募り、さらに四十四名の労働者の方の指名解雇をされております。
 この問題につきましては、御存じのように五十八年六月二十八日に指名解雇された方から指名解雇の取り消し等を求めて神奈川地方労働委員会に不当労働行為救済の申し立てがなされておるところでございまして、現在神奈川地方労働委員会で審理中でございますので、そういう係属しておる案件についての見解については差し控えさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
#184
○小沢(和)委員 いや、私は、そういう今地労委にかかっている中身のことについて聞いているのじゃないのですよ。四十四名の指名解雇された中のほとんど大部分がかつて組合の三役とか執行委員とか、あるいはさらに全金の上部組織の主要な役員やらをしておった人たちだ、こういう人たちばかりをねらい撃ちにするような首切りというのが、そもそもそのこと自体が不当労働行為に当たるようなケースじゃないかと言ってあなたの方の見解をお尋ねしているわけです。
 それで、もう少し質問を進めたいと思いますけれども、この人たちは八一年九月までが今申し上げたような役員だったのですよ。ところが、このときの組合役員選挙で、会社が職制などを総動員してこの選挙に介入して一挙に組合役員を、もう組合長から末端の職場委員まで全部総入れかえというぐらいのむちゃくちゃな選挙をやったわけなんです。その後この人たちが職場に帰ってさらにいろいろ活動するものだから、会社は組合の機関からほうり出しただけではだめだというので、今度は職場そのものから追放しようということでこういうことを計画したわけなんです。
 実は、会社はこの八三年四月の段階で公然と指名解雇を持ち出したわけであります。希望退職を募集して足らなければ指名解雇をする、こういう提案をしてきた。そこでこの人たちが神奈川地労委に対して、組合活動家に対して指名解雇や退職強要などを行わないようにという不当労働行為の救済命令を申し立てたわけです。その結果、同地労委から勧告が出されているのですけれども、その勧告はどういう内容のものでしたでしょうか。
#185
○谷口(隆)政府委員 全金神奈川地木池貝鉄工所支部組合員六十五名の方が神奈川県地方労働委員会に対しまして昭和五十八年五月十八日付で退職勧奨強要の禁止等に関する不当労働行為救済の申し立てを行われました際に、あわせまして労働委員会規則の三十七条の二の審査の実効確保の措置勧告の申し立てが行われております。
 神奈川県地方労働委員会は、この申し立てに対しまして同年六月三日に次のような内容の勧告を行っておられます。
 それは「希望退職募集については、募集期限である六月二日までに、予定人員二百八十五名にはなお七十六名不足している状況であった。このような場合、会社の再建施策によれば、指名解雇の実施もありうることが認められる。しかし、会社の再建施策を円満に遂行するためには、この段階で、一挙に、指名解雇を実施することは、労使紛争を拡大し、長期化させる倶れもあり、好ましいことではない。従って、会社としては、なお、希望退職の募集、その他の方法を検討するなどして、合理化の目的を達成することが望ましいと考える。」という前提のもとに、「今回の希望退職募集の結果にかかわらず、会社としては、申立人らに対し指名解雇を実施することのないよう、格段の努力を尽されたい。」という勧告を出されたと承知をいたしております。
#186
○小沢(和)委員 今言われたとおりの勧告が出されたわけですね。組合の方も指名解雇には最後まで反対をしましたために、会社は、その指名解雇の部分を削って希望退職の募集だけやるということで労使の合意が成立をして、それでその希望退職の募集がやられたわけであります。ところが、六月九日正午までがその期限だったわけですけれども、やってみたらやはり足りないということを口実にして、もうその日の午後二時には組合に対して一方的にやはり指名解雇をやらしてもらいますというふうに通告をして、もう午後三時には本人たちに通告をして職場から独制的に追い出すというようなことをやったわけなんです。
 組合員に対しても、指名解雇については、あなた方が反対と言うなら、それでは希望退職だけ募集やらしてもらいましょうというように言っておいて、そして希望退職をやったその締め切りの途端にこういうようなことをやる、これは私は正常な労使の関係から見ても、とても許されないような一種のペテンみたいな行為じゃないかと思うのですね。労政の担当者の目で見ても、こういうようなことは私は許されない行為じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
#187
○谷口(隆)政府委員 一般的に申しますと、労使間の問題、特に解雇のような重要な問題につきましては、やはり労使で十分話し合いをされまして、意思の疎通を図りながら円滑に解決されるべきであるということだと存じます。
 ただ、この事案につきましては、先ほども申し上げましたことの同じ考え方で恐縮ですけれども、現在地方労働委員会に係属している事案でございまして、労働省としてこの事案についてどうこうという意見は差し控えさせていただきたいと思います。
#188
○小沢(和)委員 いや、だから私はあなたに、この事案についてということで答えにくいのならそれでは今言ったような一般的な状況のもとで、労使の間で、一たんそれではそれは取り下げて希望退職だけ募ると言っておいて、いよいよその期限が来たら途端に手のひら返したみたいに指名解雇やりますと言って、ぱっと二時間後にはそのことを言い、そしてさらにその一時間後に本人たちに言って本人たちを追い出してしまう。こんなことが一般的な意味で言っても許されるかと私は聞いているのですよ。そういう点についてあなたはどう思いますか。
#189
○谷口(隆)政府委員 その点は先ほどお答えいたしましたとおりでございまして、一般論として言えば、労使間の問題、とりわけ解雇というような重要問題につきましては労使が十分話し合いを行われるとかあるいは意思の疎通を図られながら円満に解決されることが望ましいという考え方でございます。
#190
○小沢(和)委員 この首切りのやり方は、私は実際に切られた人から話を聞いたのをちょっとここにまとめてきているのですが、本当にひどいものですよ。
 今申し上げたように、正午に希望退職募集が締め切られた。その直後、午後二時、労働組合に対し、事前協議も一切なく指名解雇を一方的に通告した。その上で一時間後、午後三時に該当者である我々に解雇通告をしてきた。職場で仕事をやっている最中、職制がヘルメットに身を固めて部長や課長が該当者一人につき二人ついて解雇通告書を突きつけて、あなたは会社の従業員でなくなったから直ちに私物をまとめて退去しなさいというやり方だ。したがって、仕事の引き継ぎもやらせなかった。何十年と勤めてきた職場の仲間に対するあいさつも一切やらせなかった。私物をまとめさせ、ロッカーで着がえさせて、門のところまで職制がついて門外にほうり出した。
 これは今の社会の常識から見ても、一体こんなことがまかり通るかということですよ。あなたはさっきから係争中だからということの一点張りで一切答えようとしないけれども、こういうようなことについて許されるかどうかくらいの一般的な判断でも言い切らないような労政の担当者では、私は労政は預けられないと思いますが、どうですか。
#191
○谷口(隆)政府委員 一般論ということでのお答えでございますけれども、取り上げられている出身がそういう具体的なケースをもとにしての御質問でございますし、また、したがってその具体的な中身は現に準司法附な機関あるいは数判所の方にも係属しているようですが、そういう司法機関に係属いたしておりましてそこでの審理が係属しているわけでございますから、やはり行政の立場としてそういうことを申し上げるのは適当でないということで再々申し上げているところでございます。
#192
○小沢(和)委員 では、次の質問をしますが、この全金池貝鉄工支部の規約では、こういう会社の一方的な首切りをやられたときは組合員の資格を保証されているのです。そこで首切られた人たちがその労働組合の事務所に出入りしようとしても、それが会社の敷地内にあるために会社が妨害して入れなかったわけであります。
 そこで、この人たちは横浜地方裁判所に対して組合事務所立ち入り等妨害禁止仮処分命令を申請したのです。その結果、仮処分命令が出たというふうに聞いておりますが、どういう命令が出たのでしょう。
#193
○谷口(隆)政府委員 ただいま御指摘のありましたような事実関係でございまして、組合員から五十八年七月十五日に横浜地方裁判所に対しまして会社及び組合執行部を被申請人として組合事務所への立ち入り妨害の排除を求めるための仮処分の申請を行いまして、当裁判所は、同年八月十一日に申請どおりに決定したというふうに承知をいたしております。
#194
○小沢(和)委員 裁判所に対して会社は別に異議の申し立ても何もしなかったのですよね。だから、当然会社はこの命令に従うのが法治国では義務だと私は思うのです。
 じゃ、果たして本人たちがその後自由にこの労働組合の事務所に出入りできるようになったでしようか。
#195
○谷口(隆)政府委員 当該仮処分後、会社側が妨害をやめたかどうかということについては、残念ながら詳細について承知をいたしておらないところでございます。
#196
○小沢(和)委員 全く変わらずに妨害をし続けて、この人たちは全然組合の事務所に今でも立ち入ることができないのですよ。
 私、さっきからいろいろなことを言ってきましたけれども、要するに池貝鉄工という会社は、地労委で何と勧告されようと裁判所がどういう仮処分をしようと、とにかくそういうようなことにはお構いなしに、労働組合をとにかく事実上たたきつぶしてしまえばこっちの勝ちだ、裁判やらでこれから十年、二十年争って最終的に負けても、もうそのときには組合が事実上ないような状態になっていればこっちの勝ちだ、こういうひどい考え方でごり押しをしているとしか私は言えないと思うのですね。
 こんなようなことがもしも池貝というところでまかり通るということになるなら、私は、うちの労働組合は気に入らない、この機会に全部組合の役員を首切って組合なんてたたきつぶしてしまえという式のことが日本じゅうあっちでもこっちでも、どこの企業でもやられるようになっても防ぎようがないのじゃないかと思うのです。こんなようなことで、一体今後日本の労働運動がまともに発展していくものでしょうか。この点について私は労働大臣の見解を伺いたいと思います。
#197
○谷口(隆)政府委員 まず事務的に答えさせていただきますが、先ほど来御指摘がありましたけれども、「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱をすること又は労働者が労働組合に加入せず」云々という労働組合法上取り上げられております不当労働行為は法律上禁止されておるところでございまして、それはそういう形で使用者側も十分守ってもらわなければならぬことだと存じます。
 たびたび申し上げておりますが、ただ、具体的に係属しておる事案、労働委員会に係属しておる事案についての判断は控えさせていただきますけれども、そういう組合員のゆえをもっての不利益取り扱いとかあるいは不当な介入とか、そういうことは当然法律上違法行為とされておりますし、あってはならないことだと存じます。
#198
○戸井田委員長 ちょっと待って。
 それでは、今時間が過ぎておりますから、ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#199
○戸井田委員長 速記を始めて。
 小沢君。
#200
○小沢(和)委員 では、今の問題について最後に大臣の見解をお尋ねしたいのです。
 今いろいろと聞いていただいたと思うのですが、私は、こういう池貝の状態というのは日本の今の法治国の常識を逸しているのじゃないかと思うのですよね。それで首を切られた人たちは本当に経済的にも大変な状況になっているわけですから、近く地労委から必ず救済の命令も出るのじゃないかと私は思うのです。それをまた裁判所に持っていくなどということをされては本当にたまらぬし、ぜひその一つのきっかけにしてでも何とか打開できるように労働大臣としても積極的に動いていただきたい、そういう気持ちを込めて答弁をお願いいたします。
 これで終わります。
#201
○山口国務大臣 いろいろな紛争が円満に解決されて信頼のある労使関係が築かれるということが労働問題にとって一番大事なことでございます。今先生と労政局長のやりとりを聞いておりまして、地方の労働委員会の方に調停がかかっておる、こういうことでもございますし、そういう先生の御指摘のような立場での不当な行為があれば当然一つの結論も出るわけでございます。我々としては、そういう審理の結末を待ちながら今後の問題をいろいろ考えてみたい、かように考える次第でございます。
#202
○戸井田委員長 次回は、明二十七日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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