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1984/04/12 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第14号
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1984/04/12 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第14号

#1
第102回国会 社会労働委員会 第14号
昭和六十年四月十二日(金曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 戸井田三郎君
   理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君
   理事 丹羽 雄哉君 理事 浜田卓二郎君
   理事 池端 清一君 理事 村山 富市君
   理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君
      伊吹 文明君    斉藤滋与史君
      谷垣 禎一君    友納 武人君
      中野 四郎君    長野 祐也君
      西山敬次郎君    野呂 昭彦君
      林  義郎君    箕輪  登君
      湯川  宏君    網岡  雄君
      大原  亨君    河野  正君
      多賀谷眞稔君    竹村 泰子君
      土井たか子君    森井 忠良君
      沼川 洋一君    橋本 文彦君
      森田 景一君    森本 晃司君
      小渕 正義君    塚田 延充君
      小沢 和秋君    田中美智子君
      菅  直人君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 増岡 博之君
 出席政府委員
        厚生省児童家庭
        局長      小島 弘仲君
 委員外の出席者
        議     員 森井 忠良君
        議     員 大橋 敏雄君
        議     員 小渕 正義君
        議     員 小沢 和秋君
        議     員 菅  直人君
        総務庁行政管理
        局管理官    八木 俊道君
        外務大臣官房外
        務参事官    瀬崎 克己君
        自治省財政局調
        整室長     鶴岡 啓一君
        社会労働委員会
        調査室長    石黒 善一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十二日
 辞任          補欠選任
  自見庄三郎君      東   力君
  多賀谷眞稔君      大原  亨君
  永井 孝信君      土井たか子君
  浦井  洋君      田中美智子君
同日
 辞任          補欠選任
  東   力君      自見庄三郎君
  大原  亨君      多賀谷眞稔君
  土井たか子君      永井 孝信君
  田中美智子君      浦井  洋君
    ―――――――――――――
四月五日
 原子爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外十四
 名提出、衆法第一五号)
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労
 働者の就業条件の整備等に関する法律案(内閣
 提出第五九号)
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労
 働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に
 伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提
 出第六〇号)
同月十二日
 定年制及び中高年齢者の雇入れの拒否の制限等
 に関する法律案(村山富市君外九名提出、衆法
 第一六号)
 家内労働法の一部を改正する法律案(大橋敏雄
 君外四名提出、衆法第一七号)
同月十日
 社会保障の充実等に関する請願(梅田勝君紹介
 )(第二七六五号)
 労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法
 制定等に関する請願(不破哲三君紹介)(第二
 七六六号)
 社会福祉の充実等に関する請願(佐藤祐弘君紹
 介)(第二七六七号)
 同(村山富市君紹介)(第二八五一号)
 国立腎センター設立に関する請願(奥田敬和君
 紹介)(第二七六八号)
 同(稻村佐近四郎君紹介)(第二八五二号)
 同(坂本三十次君紹介)(第二八五三号)
 同(中山正暉君紹介)(第二八五四号)
 同(浜田卓二郎君紹介)(第二八五五号)
 公共事業による失業対策推進に関する請願(佐
 藤祐弘君紹介)(第二七六九号)
 同(中西績介君紹介)(第二八一四号)
 児童扶養手当制度の改悪反対に関する請願(上
 円卓三君紹介)(第二七七〇号)
 同(井上一成君紹介)(第二八一五号)
 カイロプラクティックの立法化阻止等に関する
 請願(佐々木良作君紹介)(第二八五六号)
 同(永江一仁君紹介)(第二八五七号)
 福祉予算の増額等に関する請願(佐藤祐弘君紹
 介)(第二八五八号)
 同(中島武敏君紹介)(第二八五九号)
 同(不破哲三君紹介)(第二八六〇号)
同月十二日
 年金の官民格差是正に関する請願(石橋政嗣君
 紹介)(第二八九二号)
 同(上野建一君紹介)(第二八九三号)
 同(岡田利春君紹介)(第二八九四号)
 同(田邊國男君紹介)(第二八九五号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二八九六号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二八九七号)
 在宅重度障害者の暖房費支給に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二八九八号)
 同(上野建一君紹介)(第二八九九号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九〇〇号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九〇一号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九〇二号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九〇三号)
 在宅重度障害者の介護料支給に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九〇四号)
 同(上野建一君紹介)(第二九〇五号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九〇六号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九〇七号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九〇八号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九〇九号)
 重度障害者の終身保養所設置に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九一〇号)
 同(上野建一君紹介)(第二九一一号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九一二号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九一三号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九一四号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九一五号)
 労災年金と厚生年金等の完全併給に関する請願
 (石橋政嗣君紹介)(第二九一六号)
 同(上野建一君紹介)(第二九一七号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九一八号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九一九号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九二〇号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九二一号)
 重度身体障害者の雇用に関する請願(石橋政嗣
 君紹介)(第二九二二号)
 同(上野建一君紹介)(第二九二三号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九二四号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九二五号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九二六号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九二七号)
 身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九二八号)
 同(上野建一君紹介)(第二九二九号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九三〇号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九三一号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九三二号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九三三号)
 国公立病院における脊髄損傷者の治療に関する
 請願(石橋政嗣君紹介)(第二九三四号)
 同(上野建一君紹介)(第二九三五号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九三六号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九三七号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九三八号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九三九号)
 労災被災者の脊髄神経治療に関する請願(石橋
 政嗣君紹介)(第二九四〇号)
 同(上野建一君紹介)(第二九四一号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九四二号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九四三号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九四四号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九四五号)
 健康保険・国民健康保険による付添介護人派遣
 等に関する請願(石橋政嗣君紹介)(第二九四
 六号)
 同(上野建一君紹介)(第二九四七号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九四八号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九四九号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九五〇号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九五一号)
 労災年金のスライドに関する請願(石橋政嗣君
 紹介)(第二九五二号)
 同(上野建一君紹介)(第二九五三号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九五四号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九五五号)
 同(多賀谷員稔君紹介)(第二九五六号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九五七号)
 身体障害者の福祉行政改善に関する請願(石橋
 政嗣君紹介)(第二九五八号)
 同(上野建一君紹介)(第二九五九号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九六〇号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九六一号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九六二号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九六三号)
 脊髄損傷治療技術の研究開発に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九六四号)
 同(上野建一君紹介)(第二九六五号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九六六号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九六七号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九六八号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九六九号)
 労災年金の最低給付基礎日額引き上げに関する
 請願(石橋政嗣君紹介)(第二九七〇号)
 同(上野建一君紹介)(第二九七一号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九七二号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九七三号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九七四号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九七五号)
 労災脊髄損傷者の遺族に年金支給等に関する請
 願(石橋政嗣君紹介)(第二九七六号)
 同(上野建一君紹介)(第二九七七号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九七八号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九七九号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九八〇号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九八一号)
 労災重度被災者の暖房費支給に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九八二号)
 同(上野建一君紹介)(第二九八三号)
 同(岡田利春君紹介)(第二九八四号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九八五号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九八六号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九八七号)
 労働者災害補償保険法の改善に関する請願(石
 橋政嗣君紹介)(第二九八八号)
 同(上野建一君紹介)(第二九八九号)
 同(岡田科春君紹介)(第二九九〇号)
 同(田邊國男君紹介)(第二九九一号)
 同(多賀谷眞稔君紹介)(第二九九二号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二九九三号)
 医療保険の改善に関する請願(浦井洋君紹介)
 (第三〇二六号)
 カイロプラクティックに関する請願(鯨岡兵輔
 君紹介)(第三〇二七号)
 国民医療の改善等に関する請願(辻第一君紹介
 )(第三〇二八号)
 国民医療の充実改善に関する請願(梅田勝君紹
 介)(第三〇二九号)
 同(浦井洋君紹介)(第三〇三〇号)
 国民医療の充実等に関する請願(中林佳子君紹
 介)(第三〇三一号)
 児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(浦井
 洋君紹介)(第三〇三二号)
 同(田中美智子君紹介)(第三〇三三号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三〇三四号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(山原
 健二郎君紹介)(第三〇三五号)
 国立腎センター設立に関する請願(浦井洋君紹
 介)(第三〇三六号)
 公共事業による失業対策推進に関する請願(不
 破哲三君紹介)(第三〇三七号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三〇三八号)
 カイロプラクティックの立法化阻止等に関する
 請願(新井彬之君紹介)(第三〇三九号)
 同(浦井洋君紹介)(第三〇四〇号)
 健康保険本人の十割給付復活等に関する請願
 (浦井洋君紹介)(第三〇四一号)
 同(岡崎万寿秀君紹介)(第三〇四二号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第三〇四三号)
 同(田中美智子君紹介)(第三〇四四号)
 同(中島武敏君紹介)(第三〇四五号)
 同(林百郎君紹介)(第三〇四六号)
 中間施設の制度化に関する請願(玉沢徳一郎君
 紹介)(第三〇六四号)
 輸入食糧の安全確保に関する請願(玉沢徳一郎
 君紹介)(第三〇六五号)
 原爆被爆者の援護に関する請願(玉沢徳一郎君
 紹介)(第三〇六六号)
 労働時間短縮促進に関する請願(玉沢徳一郎君
 紹介)(第三〇六七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外十四
 名提出、衆法第一五号)
 児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、第百一回国会閣法第四一号)
     ――――◇―――――
#2
○戸井田委員長 これより会議を開きます。
 森井忠良君外十四名提出、原子爆弾被爆者等援護法案を議題とし、趣旨の説明を聴収いたします。森井忠良君。
    ―――――――――――――
 原子爆弾被爆者等援護法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○森井議員 私は、ただいま議題になりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党・護憲共同、公明党・町民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合を代表いたしまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
 昭和二十年八月六日、続いて九日、広島、長崎に投下された人類史上最初の原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。
 この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能と熱線と爆風の複合的な効果により、大量無差別に破壊、殺傷するものであるだけに、その非人道性ははかり知れないものがあります。
 たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦に悩まされながら、今日までようやく生き続けてきたのであります。
 あれから四十年を迎えました。
 国は、原爆で亡くなられた方々やその遺族に一本のお線香代も出さず、全く弔意をあらわしておりません。一家の支柱を失い、途方に暮れる遺族に、一円の生活援助もしておりません。ここに現行二法の最大の欠陥が指摘できるのであります。
 国家補償に基づく被爆者援護法を求める広範な国民の不満は、なぜ軍人軍属など軍関係者のみを援護し、原爆の犠牲者を差別して処遇するのか、戦時諸法制から見て全く納得がいかないという点にあります。
 本法案提出に当たり、私はこの際、まず国家補償法の必要性について明らかにしたいと存じます。
 国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下は国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反の犯罪行為であるということです。したがって、たとえサンフランシスコ条約で日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利があると考えます。
 しかも、原爆投下を誘発したのは、日本軍国主義政府が起こした戦争なのであります。我々がこの史上最初の核爆発の熱線と爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、被爆国としての日本が、恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。
 第二の理由は、この人類史上未曾有の惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限と責任が日本国政府にあったことは明白であるからであります。
 特にサイパン、沖縄陥落後の本土空襲、本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでも、なく、旧防空法や国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民は国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。今日の世界平和が三十万人余の犠牲の上にあることからしても、再びこの悲劇を繰り返さないとの決意を国の責任による援護法によって明らかにすることは当然のことと言わなければなりません。
 第三の理由は、既に太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨さは忘れ去られようとしている現状であります。原爆が投下され、戦後既に四十年たった今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法が制定されることによって初めて戦後が終わるのであります。
 私たちは以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害の特殊性を考慮しつつ、現行の軍属、準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法を提案することといたしたのであります。
 次に、この法律の内客の概要を御説明申し上げます。
 第一は、健康管理及び医療の給付であります。健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断や成人病検査、精密検査等を行うとともに、被爆者の負傷または疾病について医療の給付を行い、その医療費は、七十歳未満の被爆者については現行法どおりとするとともに、老人被爆者についても、老人保健法にかかわらず、本人一部負担、地方自治体負担を、国の負担といたしました。なお、治療並びに施術に際しては、放射能後遺症の特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせて行い得るよう別途指針をつくることにいたしました。第二は、医療手当及び介護手当の支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として月額三万円の範囲内で医療手当を支給する。また、被爆者が安んじて医療を受けることができるよう月額十万円の範囲内で介護手当を支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。
 第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断、医療の給付及び医療手当、介護手当の支給を行うことにしたのであります。
 第四は、被爆者年金の支給であります。全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて、年額最低三十一万八千円から最高六百二十七万八千円までの範囲内で年金を支給することにいたしました。障害の程度を定めるに当たっては、被爆者が原爆の放射能を受けたことによる疾病の特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。
 第五は、被爆者年金等の年金額の自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。
 第六は、特別給付金の支給であります。本来なら死没者の遺族に対して弔意をあらわすため、弔慰金及び遺族年金を支給すべきでありますが、当面の措置として、それにかわるものとして百二十万円の特別給付金とし、五年以内に償還すべき記名国債をもって交付することにいたしました。
 第七は、被爆者が死亡した場合は、二十万円の葬祭料をその葬祭を行う者に対して支給することにしたのであります。
 第八は、被爆者が健康診断や治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者の国鉄運賃は無料とすることにいたしました。
 第九は、原爆孤者、病弱者、小頭症その他保護、治療を必要とする者のために、国の責任で、収容・保護施設を設置すること、被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置・運営の補助をすることにいたしました。
 第十は、厚生大臣の諮問機関として原爆被爆者等援護審議会を設け、その審議会に被爆者の代表を委員に加えることにしたのであります。
 第十一は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに必要な助成を行うことといたしました。
 第十二は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することにしたのであります。
 第十三は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことにいたしました。
 なお、この法律の施行は、昭和六十一年一月一日であります。
 以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。
 被爆後四十年を経過し、老齢化する被爆者や遺族に、五十周年はもうないのであります。再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げます。(拍手)
#4
○戸井田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
     ――――◇―――――
#5
○戸井田委員長 内閣提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大橋敏雄君。
#6
○大橋委員 このたび改正案が提出されたわけでございますが、先月の二十八日から実質審議に入ったわけでありますが、もう既に問題のあらゆる内容が浮き彫りになったわけであります。正直申し上げまして、私も今回の法案に対してこのような感想、所感を持っております。
 というのは、まず社会保障の理念といいますか、あるいは社会福祉の精神、こういうのをもう棚上げしてしまいまして、要するに財政難であるというのを理由に給付を引き下げまして、恥も外間もかなぐり捨てて、とにかくそのつじつま合わせをしたにすぎないいわゆる改悪案であるわけですね。これは財政再建の一環として行革の趣旨に沿ったものだという言い方もされておりましたけれども、行革というのは不要あるいは不急のものを整理をしまして、それを省いていこうという改革であって、必要なものを削り取っていこうというものじゃないわけですね。そのことをまずしっかり認識をしてまいらなければならぬと思うわけであります。
 そこで、今度の改正案の内容を見ますと、政府側も、従来の児童扶養手当は根本的な基本的な見直しをやるんだということでございますが、いわば社会保障制度の重大な変更であると私は思うのであります。にもかかわらず、肝心の中央児童福祉審議会への諮問は行われていないのであります。つまり、手抜き工事ですね。あるいは、社会保障制度審議会にかけられたのはかけられたんですけれども、日程的に見まして十分な討議あるいは検討が行われたとは思われない。単に手続、形式を踏んだだけだ、こう私は指摘したいわけであります。厚生大臣の私的諮問機関については、これはそれなりに論議、協議がなされたように思いますけれども、これはあくまでも御用機関でありまして、私は妥当性はないと思うのでありますが、今私が述べましたようなことについて、厚生大臣はどう考えられておりますか。
#7
○増岡国務大臣 この児童扶養手当の制度につきましては、先生御承知のように、従来死別の母子世帯に支給されておりました母子福祉年金を補完するものとして昭和三十六年に発足したわけでございます。しかし、その後年数がたちますにつれまして母子福祉年金の受給者が今ではほとんどいらっしゃらなくなる一方であります。一方、離婚の件数の増加に伴いまして、いわばこの法律の対象であります母子世帯の形態といいますか、姿が変わってきたわけでございます。
 したがいまして、従来からの福祉年金の補完的制度から、母子家庭の生活安定と自立促進を通じて児童の健全育成を目的とする純粋な福祉制度に改めることが対象でございます母子家庭の実態に即しておるものという判断から行ったものでございます。財政調整の観点のみから行ったものではないと思っております。
#8
○大橋委員 じゃ、まず法の目的条項の変更がございますね。現行法では、第一条の中には「児童の福祉の増進を図ることを目的とする。」第二条では「児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨として支給される」いわゆる手当が児童の権利として規定されているわけですね。つまり社会保障政策としての位置づけが明確でございます。ところが、改正案では第一条の目的を「この法律は、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もって児童の福祉の増進を図ることを目的とする。」こう変更された。
 これは従来は児童が健やかに成長する権利の保障として把握されていた制度を不安定で自立ができないいわゆる母子家庭への恩恵的給付費的な福祉制度へと法の性格を根本的に変えたものだ、このように我々は理解するわけでございますが、この点いかがですか。
#9
○小島政府委員 改正におきましても、第二条の趣旨は全く変わっておりません。また第一条におきましても、児童の福祉の増進を図ることを目的として支給されるものであることは変わっておりません。
 ただ、今回の改正によりまして、これは有期の支給制度、七年間の支給制度といたしました。これはどういうことかと申しますと、離婚等によって生計の中心である夫の収入に頼ることのできなくなった母子家庭がその離婚ということを契機とした生計の激変という事態に対処する制度、その緩和するための制度、そういうような生活の激変があっても児童の福祉が損なわれることのないように、その母子家庭が自立するまでの間その児童のためにこれを出そうという制度にいたしましたので、その趣旨は「児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため」という文言によって明確にしたものでございまして、出す趣旨、それから目的は変わっておりません。
#10
○大橋委員 要するに、先ほど大臣も今回の改正案は決して財政的な立場からのみ改正したのではないんだ、今局長も従来の趣旨は変わっていないんだ、あくまでも児童を健全育成し、そして福祉を向上させていく、その趣旨は同じだということをおっしゃったわけでございますが、それではここでちょっとお尋ねするのですけれども、児童扶養手当、それと児童手当、名前はちょっと紛らわしいのですけれども、これとの性格の違いはどこにあるのですか。
#11
○小島政府委員 児童手当は、これは一般施策と申しますか、一般的に児童一般を対象とする施策でありまして、どういう家庭の状況にある者、あるいは母子家庭、父子家庭、両親がそろっている家庭ということを一切問いません。一切問わないで、これは児童の養育を親の責任だけでなくて、社会、国民全体がその養育に携わろう、これは全部を肩がわりというわけではございませんが、その両親の援助、養育のお手伝いをしていこうという制度の趣旨でございます。これはやはり子供が次代を担ういわば人的資源である、我が国の社会を安定させていくための貴重な人材でございますので、両親の責任だけではなくて社会全体がその健やかな生育に力をかそうという趣旨の制度でございます。
 一方、児童扶養手当、先ほども大臣からお話がございましたように、発足は、国民年金制度ができましたときに母子福祉年金というものができました。それは死別の母子世帯を対象とするものでございましたので、母子福祉年金の対象にならない母子世帯、いわば生別の母子世帯が中心でございますが、その方々にも、同じ母子世帯だという状態に着目いたしまして、いわば母子福祉年金を補完する趣旨で設けられたものでございます。したがいまして、母子家庭の生計の基盤の安定対策という性格のものでございます。このような違いがございます。
#12
○大橋委員 今説明がありましたように、児童扶養手当は国民年金における母子福祉年金を補完する制度として設けられた。それで、児童の養育者に対して養育に伴う支出についての保障を行っている児童手当と性格は違うのだ、こういうことでしたね。
 しかし、今回の改正で児童の健全育成、資質の向上を目的とする福祉制度に改められたということは、児童の福祉の増進を図るという理念の上からは、児童手当も今回改正の児童扶養手当もそういう立場では基本的には同一の性格を有した、このように理解してよろしいですか。
#13
○小島政府委員 終局の目的が児童の福祉の増進、その健全育成対策であることには変わりはございません。
#14
○大橋委員 私がくどく聞いているのは、先ほど厚生大臣は、決して財政的な問題ではないのだ、今度の改正は基本的な改革なんだということをおっしゃったわけですけれども、どうも私はそこが理解できない。つまり、福祉年金といえども公的年金の一種ですから、これを補完した場合の児童扶養手当の支給額と、今度改正なされる福祉制度に変わった児童扶養手当が変わってくるわけですね。これはどうも私は理解ができないのです。なぜこうして段差をつけるのだと言いたいのですけれども、いかがですか。
#15
○小島政府委員 母子福祉年金も、これは年金でございます。年金とは本来拠出を前提といたしまして、母子福祉年金の場合は、夫の死亡という保険事故に着目して、夫が死亡しても生活状態に激変を来さないようにという趣旨の給付を行うのが母子福祉年金でございます。一方、今回見直しました児童扶養手当につきましては、母子世帯が離婚を契機として生活が激変する状態に着目しまして、必要の度合いに応じまして援助申し上げよう、こういう観点から、支給額もその家庭の収入の状況に応じまして二段階に必要度を勘案しながら給付額を定めている、こういう趣旨でございます。
#16
○大橋委員 簡単に言えば、年金としてとらえていたときには社会保障の立場だから同じ給付のレベルでいかなければならぬのだ、しかし、一方は福祉制度にしたのだから格差がついてもやむを得ないのだ、これは財政的な面もあってそうせざるを得ないのだ、こういうふうにとらえたのではないかと思うのです。その辺はどうですか。
#17
○小島政府委員 本来、年金でございますと、収入のいかんを問わず一定の条件があれば所定の年金が払われる。福祉年金にっきましては所得制限を設けておりますが、その所産制限の範囲内であれば同一の年金額ということが年金の性格上妥当であろうと考えます。ただ福祉の制度ということになりますと、いろいろ措置費に関します徴収金を見ましても、収入の度合いに応じてそれを定めておりますので、この児童扶養手当につきましても、その支給額はやはり家庭の経済状態に着目して、それに対応した額にするのが妥当であろうという観点からこのように改めたものでございます。
#18
○大橋委員 福祉というのは社会保障よりもぐっと下がるものじゃないんですね。同じレベルです。これははっきりしておかなければいかぬですよ。そうなりますと、母子福祉年金における児童と児童扶養手当における児童、その児童は母子家庭という条件は同じですね。
 ただ制度が変わったからといってがくんとその支給率に段差をつけることはどうも私は納得がいかぬ。あくまでも、先ほど申しましたように、社会保障の理念も社会福祉の精神も棚上げしてしまって、とにかく財政が苦しい、何が何でもしようがないんだといって財政のつじつまを合わせたと言われても仕方がないでしょう。
#19
○小島政府委員 そこは御理解願いたいところなんですが、年金につきましては本来保険料納付を条件といたしまして、一定の事故が生じた場合にその事故を救済する、補てんするという趣旨であらかじめ保険料を徴収いたしまして、それをプールして集団で生活の保障を保っていこうという制度でございます。一方、福祉の措置というのは、保険料とか何か前提にしません、一般財源を内容とするものでございまして、それぞれその必要の度合いに応じて給付額を決定していくのが妥当であろう。
 また、ちなみになぜ今回かということになりますと、補完していた母子福祉年金という制度はもうなくなるわけでございますので、そこと関係が切れる、なくなる、そういう時期に、この際もう一度社会保障全体の体系の中でこの児童扶養手当制度の位置づけを見直してみよう、見直した結果、検討結果でございます。なるほどここで一部費用を削減されるみたいなところがあります。額も切られるところもあります。ただ社会保障全体としてはまずます大きな行政需要が出てまいっておりますので、それぞれの施策につきまして最も効果が出るように、あるいは必要な施策を行うことができないというような事態が生じないように全体のバランスを考えながら講じてまいらなければなりませんので、その中の見直しというものもやむを得ない措置であると御理解願いたいと思います。
#20
○大橋委員 時間の関係もありますので次に進んでいきますけれども、多少の差と言いますけれども、多少じゃないですよ。福祉年金の給付額に準じて同額で今まで支給されてきた。六十年度改正されたという立場で見た場合は、母子福祉年金の月額は三万四千五百円です。児童扶養手当はどうなるかと言えば三万三千円と二万二千円。そうでしょう。つまり千五百円の段差、一万二千円の格差がつくわけです。これは、ちょっとの差しゃないですね。しかも制度が発足するときに、従来母子福祉年金と同額で来たものががくんとこんなに開くということは、どうも改革していく物の考え方に余りにも違いがあるのじゃないか。こんな激変ということはよくないですよ。大臣、この辺どう思いますか。千五百円から一万二千円も違ってくるんですね。
#21
○小島政府委員 先ほど申し上げましたように、年金と切り離して、確かに現在の段階では年金と比べますと千五百円の差があります。一方、二段階にしました結果、三万三千月、これは所得税非課税のグループでございますが、それと、三百万から非課税までの間の層につきましては二万二千円、一万一千円の格差が出ます。ただこれはあくまでも母子家庭に対する現金給付でございますので、経済援助を通じて児童の健全育成を図ろうとする制度でございます。ですから、家計の状況ということに着目して格差をつけるのが妥当な措置ではなかろうか。ちなみに低所得者階層でありましても、父子家庭なり一般家庭は、三百万を下回る状態にありましても、同じように経済状態がきつくとも、税金を納めながら、しかし給付は受けられないという実態があるわけでございます。その辺のバランスを考えますれば、やはり家計の状況に応じて手当額に差をつけるのも御理解願える措置ではないかと考えております。
#22
○大橋委員 それでは百歩譲って多少の差はつけてもやむを得ないのではないか、しかし、私は今後この児童扶養手当の支給額というのは一体何を基準に決めていかれるんだろうかな、その疑問が出てきているのです。なぜならば、これが仮に五十九年度の審議のときに成立しておれば三百円の差だったわけです。ところが継続になったわけでしょう。だものだから、そのまま金額が据え置かれてきているから今度は千五百円、一万二千円、こういう差がつくわけです。多少の差はついてもいい。その気持ちは百歩譲りますよ。しかし、これは一体どうなんだろう、何を基準に手当の額を決めていくんだろうか、ここはどうなんですか。
#23
○小島政府委員 やはりこれは一般の生活水準、あるいはそのときときの児童の養育に要する費用ということを勘案しながら決めていくという形になろうと思います。
#24
○大橋委員 一年前三百円だったけれども、たった一年で今度は千五百円になった。これはちょっと考えられぬですな、そういうことですか。
#25
○小島政府委員 年金の方は年金の額の改定の一定のルールに従ってやっておるわけでございます。こちらの方は、現に児童に要する費用あるいは一般の生活状況ということを考えていくのがやはり福祉の措置であるということであります。
#26
○大橋委員 要するに、児童扶養手当は福祉制度になったのだからもう年金みたいにルール的に引き上げていくことはないんだ、財政が苦しければ苦しいなりにそのまま据え置いていくこともあり得るんだ、こういうことですか。
#27
○小島政府委員 これは一定の趣旨、目的を持って支給する制度でございますから、財政状況に左右されないと言い切れない面もございますが、その趣旨、目的が損なわれることのないような額を確保してまいるのが我々の責任だと考えております。
#28
○大橋委員 平行線ですが、児童扶養手当が今言ったように福祉制度とはなったものの、やはり物価が上がったり賃金も上げられたりしていく時代なんですから、当然児童扶養手当はこういうときにはこう上げていくんだという基準といいますかルールはつくらなければならぬと思うのですが、大臣いかがですか。
#29
○増岡国務大臣 この手当の額につきましては、年金制度と違いますので、御指摘のようなことがあろうかと思います。しかし、社会福祉の重要な一環でもありますので、直接連動することはないにいたしましても、社会情勢の変化によってはそういう措置を考えていかなければならないと思っております。
#30
○大橋委員 とにかく今回の大幅な引き下げは納得いきません。
 今回の改正というよりも改悪の第一は何かと言えば、支給要件の後退だと思います。
 まず未婚の母の児童には支給しない、こういうことですね。先般の審議を通じまして問題がぐんぐん掘り起こされてこの点の重要性に気づかれたんでしょうか、従来どおり支給できるようにしようというような趣旨のことがおとついですか、テレビで報道されたそうですよ。その修正の話がテレビに出たそうですけれども、それは御存じですか。
#31
○小島政府委員 たまたまそのテレビを視聴する機会がございませんでしたが、そういう報道があったということを聞きました。
#32
○大橋委員 私もあなたと同じように直接には聞かなかった。ところが関係の御婦人からもう次々と電話が入ってきた。一体どうなんですか、本当ですか、うそですか。未婚の母を切ろうとすることをもとに戻すということは当然のことですけれども、六百万を七百万にするようなああいう修正では話にならぬですよと、続々と電話がかかってくるわけです。
 やはりすごい関心だなと私は改めて認識し直したわけでございますが、離別の未婚の母であれ死別の母であれ児童にとっては関係ないことであります。不支給、つまり支給しないということは児童の権利を侵害する結果となりまして、これをもしこのままでごり押ししてまいりますと必ず訴訟問題に発展していくのではないかと私は思うわけでございます。その点はどうお感じになっていますか。
#33
○小島政府委員 未婚の母を今回支給対象にしなかったというのは、児童扶養手当制度を離婚等による母子家庭の生活の激変に対処する経済的な援助措置としようという趣旨のものでございますから、その激変がない、初めから夫によって生活を支えられたというような状態のなかった未婚の母は対象にならなかったということで、制度の政策目的から言って対象にならなかったところでございます。
 仮に訴訟という御指摘のような事態がある場合もあろうかと思いますが、我々としても、法制的にも十分詰めましてそのような違法の問題が生じないという確信のもとに提案しているものでございますので、御理解願いたいと思います。
#34
○大橋委員 先月からの審議を通しまして、自民党の先生もじっと聞いておられて、これは大変な問題だな、社労の先生は常識豊かな先生が多いですから、これは修正すべきだ、もとに戻すべきだというお考えが出たのではないか、そういうのがたまたまテレビで報道されたのではないかなと思うわけでございます。
 例えば、今児童扶養手当の中には事実婚の母は児童扶養手当の支給対象になっております。婚姻の届け出をしていないけれども事実上婚姻関係と同様の事情にある場合は支給します、こうなっておりますね、間違いないでしょう。
#35
○小島政府委員 これは事実婚の場合も婚姻と全く同様に取り扱っています。したがって、事実婚の継続中は出ません。事実婚が解消した、いわば離婚があったという場合に出るわけでございます。
#36
○大橋委員 それでは、事実婚と未婚の母とどこでどう判断していくんだ、これはえらいことになっていきますね。私は未婚の母じゃありませんよ、事実婚だったんですよ、だれがどのように証明していくんだとさまざまな弊害が発生するのではないかと思うのです。そういうことも含めまして、今回の未婚の母の児童を差別するということは憲法第十四条違反である、「法の下に平等」ということに抵触する。大臣、これはよく聞いておってください。また、憲法第二十五条、最低生活を営む権利並びに児童憲章の一の「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。」これにも違反します。あるいは児童権利宣言の第一条、第二条、第四条にも違反すると私は考えます。また、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十四条第一項にも違反します。また、女子差別撤廃条約第十六条一の(b)項にも違反する。このような重大な改悪になっているということを大臣は御承知なんでしょうか。
 そこで、今児童扶養手当受給中の未婚の母子世帯は何人いるか、全体の何割を占めているかも含めまして、まず大臣のお気持ちを潤いた後で説明していただきたいと思います。
#37
○小島政府委員 今、先生いろいろ憲法問題御指摘いただきましたが、これはすべての児童を対象とするという一般制度でございません。したがって、これは父子家庭の子供も両親そろっている家庭の子供も対象になっていない、母子家庭の子供だけを従来から対象にした制度でございます。今回、そのすべての母子家庭が対象になるわけでございませんで、今回の見直しによりまして、生活の激変があったというような、そういう事態を救済しようとする制度でございますので、そういう要件に該当しない母子世帯を除外いたしましても、憲法違反、法のもとの平等というような問題を生ずるおそれは全くないものと確信しております。
#38
○大橋委員 大臣、先ほど僕が言いましたようないろいろな条項に違反と思われる内容になるわけでございますが、大臣はこの点についてはどのような見解をお持ちですか。
#39
○増岡国務大臣 法的なことを申しますと、ただいま局長が説明したとおりであろうというふうに思います。
 そういう観点から考えますと、今回の法律改正は離婚ということに着目をいたしておるわけでございます。したがって、事実婚であれ、一たん法的な保護を受けた結婚であれ、そういう家庭が崩壊をして激変をするということに着目をいたしておりますので、その結果、未婚の母、いわば先生御指摘のように、その確認は難しゅうございますけれども、未婚の母というものはそういう実態がなかったという判断からこのような措置をとろうといたしておるわけでございます。
 先ほど先生御指摘になりましたテレビその他のことにつきましては、私どもは一切関知いたしておりませんので、御理解をいただきたいと思うわけでございますけれども、しかし、この問題につきましては本委員会並びに予算委員会等でも相当御意見のあることはよく承知をいたしておるわけでございまして、十分御論議をいただきたいというふうに考えております。
#40
○大橋委員 今の大臣のお言葉の裏には、これは確かに審議をしていく過程においては問題だったんだなということを気持ちの奥には感ぜられているような答弁であったと私は思います。これは是が非でも改めてもらわなければならぬ箇所であります。
 実は、障害福祉年金と児童扶養手当との併給禁止問題で昭和四十年代に堀木訴訟というものが大変な話題を呼んだことがありましたね。この人の本名は堀木文子さんでございますが、全盲の視力障害者で、国民年金法に基づく障害福祉年金を受給し、夫と離婚して以来次男を養育したことから、昭和四十五年に兵庫県知事に対して児童扶養手当法に基づき認定申請をしたところが、児童扶養手当法の四条三項三号、今これは改正されておりますけれども、当時改正前のいわゆる併給禁止規定に該当するという理由で却下をされております。それでまた異議申し立てをしたところ、同じような理由でまた却下された。
 そこで、堀木さんは、この併給禁止規定というものは憲法第十四条一項あるいは二十五条二項、十三条に違反しているのではないかということで訴訟を起こしたわけであります。その結果は、第一審の神戸地裁判決では、併給禁止規定が憲法第十四条に違反し無効であると堀木さんの請求を認めたわけですね。その後、厚生省は併給禁止規定がまずいということで改正したので、障害福祉年金の受給者であっても児童扶養手当の支給を受けることができることになった、私はこう認識しているわけでございますが、その訴訟は控訴されまして、控訴審では反対の判決も出ましたけれども、司法界から大変厳しい批判の声も上がっておりました。
 これはどういうことで法改正をなされたのか、そのときの状況と気持ちを聞かしていただきたいと思います。
#41
○小島政府委員 お尋ねのありました堀木訴訟、先生おっしゃるように第一審では原告勝訴、四十七年九月二十日でございますが、その後高裁、それから最高裁と争いまして、国側の併給禁止の措置は憲法違反でないという御判断はいただいておるところでございます。
    〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
 ただ、その後児童福祉全般の中での手当の支給範囲、対象者ということの見直しを行った結果、やはり非常に生活の苦しいという状態が続くであろうと予測される老齢福祉年金とか障害福祉年金の受給者とは併給するのが妥当であろうという政策判断に立ちましてこれを変えたという次第でございます。
#42
○大橋委員 あくまでも行政の裁量で行ったということでございますが、これはやはり堀木さんは権利として主張なさいまして、第一審では見事に勝訴なさったわけであります。
 そこで、児童扶養手当は離別世帯にとってとにかく生活に必需的な費用だ、ここは非常に重要なところなんです。絶対に後退を許されないと私は思うわけですね。先ほどから、あくまでも生活を援助するための、児童の健全育成のための手当であると口を酸っぱくするほどに述べておられますが、それほどに児童扶養手当というものは離別母子世帯にとっては非常に重要な生活必需的な費用であるということです。したがいまして、これは後退させてはいかぬということを私は強調したいわけですが、厚生省の「全国母子世帯等調査結果の概要」という五十八年八月一日現在でのデータがございますけれども、それによりますと、いろいろと出ているんですが、母子世帯平均年収、離別世帯の平均年収、一般世帯の平均年収が示されておりますが、厚生省の資料ですから、そちらの方で述べていただきたいと思います。
#43
○小島政府委員 これは五十八年調査でございますので五十七年当時の状況でございますが、一般世帯が四百四十四万、それから母子世帯が二百万、それから父子世帯、父親と子供の世帯が二百九十九万というような状態になっております。
#44
○大橋委員 離別世帯百七十七万でしょう。
#45
○小島政府委員 御指摘のとおり、離別世帯の方は母子世帯の平均を下回っております。
#46
○大橋委員 そこで、やはりこれも厚生省の資料を見て驚いたのですけれども、さらに離別後夫から養育費を受けているものというのはわずかに一一・三%と出ておりますね。過去に養育費を受けたことがあるというのがわずかに一〇二%・全く受けたことがないというのが七八・六%なんですよ。大変離別世帯は苦しい。あるいはまた年収の中で養育費は来ていないという実態がここにあるわけです。
 また、所得制限の変更にも私は問題があると思うのですね。年収三百六十一万円が三百万円に切り下げられて、また百七十一万円以上と以下ということで二段階に仕分けされたわけでございますが、一体この根拠は何だろうか、理由は一体何だ、こう思うのですけれども、いかがですか。
#47
○小島政府委員 これは三百万というのは二人世帯の基準額で三百万でございますので、これは家族数がふえればふえるほどまた基準額は増加いたしますが、この二人世帯で三百万という額は、国民生活実態調査をもととして勘案したものでございまして、この調査によれば、生活程度が普通としている階層の平均年収が大体三百万というところでございます。ですから、生活程度が普通だというところまでは対象にしよう、それ以上のところは対象から外してもそれはそう不合理なものではないんじゃないかという判断でございます。
 それから、年収百七十一万という数字は、これは当時は百五十万程度の数字で申し上げていたかと思いますが、百七十一万というふうに今回改めて御説明申し上げておりますのは、これは二人世帯での所得税の非課税の収入の限度額でございます。したがいまして、これも家族数が増加すればこの限度額は逐次それに応じて上がるという仕組みになっております。したがって、所得税の非課税世帯については月額三万三千円、それを上回るところから普通世帯、二人世帯で年収三百万までのところは月額二万二千円の支給額にするというのが今回の趣旨でございます。
#48
○大橋委員 それではちょっとお尋ねしますけれども、生活保護一級地ですね、例えば母が三十四、五歳で、長女が十歳、長男が五歳という人がいたと仮定します。そういう場合、いろいろ生活扶助とか児童加算だとか住宅扶助、教育扶助が出てくるわけでございますが、この年額は合計しますと幾らぐらいになりますか。
#49
○小島政府委員 お尋ねのような状況、一級地の場合で母の年齢が三十四歳程度、長女十歳、長男五歳という三人家族でございますと百八十四万二千円程度になろうかと思います。
#50
○大橋委員 今いみじくも百八十四万とおっしゃったわけでございますが、先ほど平均ではございますけれども母子世帯は百七十七万でございましたね。また、仮に年収が百七十二万円だとしますね。今、年収百七十一万円が所得制限になりますから、年収が百七十二万ある人と仮定します。その人には二万二千円の児童扶養手当がつきますね。それが十二カ月ですから二十六万四千円になります。合計しますと百九十八万四千円、それと百八十四万といったらほとんど一緒ですね。
#51
○小島政府委員 先ほど申しました生活保護の百八十四万二千円というのは三人家族でございます。したがって、児童扶養手当の場合は、同じような状態で母と子供二人ということになりますと所得制限の限度額が二百二十三万円になります。それから、全部が停止される額、三百万の額が三百四十五万になります。したがいまして、先生の御心配いただいたようなケースは家族数がふえるほどこちらもふえてまいりますので、その心配はなかろうと存じております。
#52
○大橋委員 それでは、今度の所得制限を設けたことによる財政効果といいますか、あるいはその配分、人数の配分ですね、これはどのように予測されているのですか。
#53
○小島政府委員 これも、所得制限につきましては初年度はほとんど出ません。と申しますのは、三百万の限度を超える方につきましても一年間は、低い額の方でございますが二万二千円の手当を従来の受給者につきましては支給しましょうという仕組みにしております。あと、新規の受給者の状態がどうかということでございますが、従来の経験から申しますと、大体支給を受けられないという方が三%ぐらい、それから三万三千円の手当を受けられる層が八七%ぐらい、それから二万二千円の支給額となるところが一〇%程度、従前の受給者を分析しますとそういう結果が出てまいります。
#54
○大橋委員 いずれにしましても、私はとにかく今回は財政のつじつま合わせのためにこういう所得制限の引き下げをやったんだと非常に不満でなりません。
 また、次に移りますが、離婚してしまえばその夫は母子の養育費を見ない、こういう実情が浮き彫りになってきていると私は思うのですけれども、それだけに児童扶養手当の意義と影響は大きいものがあると思います。そこで、これも厚生省の調べでございますが、児童扶養手当の使途について調べられた。これは児童家庭局調査ですね。これも五十八年度のものですけれども、生活費に使っているというのが六一・五%、教育費が二六・九%、したがいまして、私は児童扶養手当はやはり大変重要なものだな、こう思っているわけです。したがいまして手当額の後退というものは極めて深刻なものになる。どうかもとの水準に戻すべきだ、こう思うわけであります。
 また文部省が五十八年度に保護者が支出している教育費は幾らかというのを調査しているのを見てみましたところが、母子家庭における教育費負担は、これも大きいですね。小学校、当然公立ですが、十六万五千二百二十円、中学校が十九万九千七百二十五円、高校になりますと、公立が二十五万九千七百二十八円、私立五十四万二千五百八円、幼稚園になりますと、公立で十六万九百三十円、私立で三十万一千六百二円。先ほどの母子世帯の年収平均でいきますと、これは二人のものですけれども、母子世帯の平均年収百七十七万に対して、仮に高校、私立に行ったとすれば五十四万二千五百八円ですから、百七十七万に占めるのは三〇・六%になります。教育費だけでですよ。あるいは幼稚園は三十万一千六百二円ですから一七%も占めます。そういうことでございますので、今回のように手当額を大幅に引き下げるというのはどう考えても納得いかないということですが、いかがですか。
#55
○小島政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、経済状態の低所得者ということに着目いたしますれば、父子家庭とか一般家庭でも低所得者については子供の教育費なんかには困っている例もあろうかと思います。
 ただ、最低限は我が国の場合は生活保護で保障する、その他のもろもろの施策は生活保護を踏まえながらも、そこにいかないまでも、より救済の度合いとか援助の必要な層に事由を特定しながらそれに対応したふさわしい給付を行ったり経済的な援助を行っているということでございますので、その辺は低所得者の父子家庭、一般家庭の児童とのバランスも考慮いたしますれば、中程度の生活程度の方までを対象としながら、しかも所得税非課税という低所得者層にはより手厚い額の給付を、それから所得税非課税から中位程度の者につきましては、現在より下がりますけれども二万二千円程度の額を支給するというこの考え方は、母子家庭だけを見ますれば多ければ多いほどいい、それはまた今までの額を引き下げる我々としてもそこの面に限っては非常に遺憾な残念なことでございますが、他の世帯とのバランスということを考慮すればこういうととが合理的ではなかろうかと考えて提案したわけでございます。
#56
○大橋委員 バランス的に考えると、不満で不満でならぬということを私は言いたいわけです。
 次に、改悪の第二でございますけれども、離別した父の年収の額によりて支給制限をする、こうありますね。この前からたしか年収六百万円でした年これを超えた場合は支給停止だ。当然その親の養育責任はあるわけでございますけれども、しかし、別れた夫から養育費が支払われると考えられての改正だろうと思うのですけれども、これはとんでもない考え違いだと私は思うのです。なぜならば、別れた夫から養育費が来るなんて極めて少ないわけですよ。それは御承知ですか。
#57
○小島政府委員 先ほど先生御指摘いただきました我が局で行いました母子家庭の実態調査についても、残念ながら、過去に養育費を支払った者を含めて二割強というくらいの数字でございます。非常に残念な数字であるとは思います。
 ただ、福祉の措置等に関しましては、あくまでも民法上の親の養育責任というものはやはり優先して考えてしかるべきものと考えております。これは親としての当然の責務でございまして、これは離婚したからといって父親の養育責任がなくなるものではございません。したがいまして、今回は、父親一人の場合で年収六百万という、所得の十分位法で計算いたしましても一番最高の所得の階層でございます。したがって、そういうところは払いやすい――払いやすいという言葉はなんでございますが、払い得る条件は十分あるわけでございますので、まずその父親の扶養責任を果たしていただきたい。月収に置き直しますと五十万でございますので、十分実行できる経済的基盤がある、そういう方にはまず父親の養育責任の実施を期待してもいいのではなかろうかという判断でございます。
#58
○大橋委員 私、先ほど言いましたように、親の扶養責任は当然あるわけですよね、生んだ責任があるわけですから。それは当然なんですけれども、それはあくまでも収入のある者から養育費を取りたい、養育をさせたい、これは理論的にはわかるのです。机の上ではわかるのですけれども、実態的にはそういうものがなされていをいというわけですね。
 これは、昭和五十六年度の養育料の支払いの状況調査をなさった最高裁の司法統計がございますけれども、協議離婚――協議離婚というのは離婚の九割を占めておるそうですね。養育料を支払った者は三〇%未満だというわけです。また、調停、審判による離婚のうちに養育料支払いの取り決めがないというのが三〇%、取り決めたというものが子供一人の場合は二万円未満でわずか三四%。それから取り決めた中で、子供二人、これは四万円程度の養育料というのが五三・四%。このように養育料の支払いを取り決めないというのが三〇%おるということがまず一つ。取り決めたものが今言った三四%、五三・四%と。こう示されているけれども、取り決めたけれどもそれが果たして履行されるかどうかということになるとまたぐんと下がるわけですよね。
 そこでまた、養育料の負担について昭和六十年の一月から二月にかけまして日弁連がアンケートをとっておりますよ。大阪弁護士会所属の弁護士百二十名を対象に行っているわけでございますが、その資料を見てまいりますと、すべて履行されたというのがわずか二五%ですよ。まあまあ履行したというものを加えても三六%だというわけです。しかも一括払いを求めるとその養育費というものはがくんと値切られるそうですね。
 また、五十七年度の司法統計によりましても、裁判所に養育費の支払いを履行させるように勧告してくださいと申し出た者が九千八百二十五件あったわけです。その中で、支払いなさいよ、支払いなさいよと勧告したのが二万九千八百十七回。これは一件当たり大体三回勧告した計算になるそうですが、そうして、裁判所の方から一生懸命勧告をして、その出てきた結果がどうかというと、すべて履行しましたというのが三一・七%しかいないのです。一部履行したというのが三九・五%、全く履行しなかったというのが二八一八%。ここまで裁判所を通じて合法的に勧告をしても、なおかっこういう姿が出ているわけです。しかも、一部履行、全く履行していない、それは三九一五%、二八・八%ありますけれども、それは一生懸命勧告したときの数字であって、その後どうなったかという調査は不明なんです。
 いかに養育費が支払われていないかということが明らかになったわけでございますが、さりとて強制執行して養育費を取ろうかといっても、手続的あるいは時間的、費用的に困難、あるいは差し押さえる財産がない、前夫が再婚した場合などは社会的、心理的な制約が出てきて、養育費の要求は極めて困難だ。こういう状況の中で、すなわち別れた夫に確実に養育責任を果たさせる国の保証もない現状の中で、年収の程度をもって機械的に手当を打ち切るということはどうも納得いかないと私は思うのです。短期間ではございましたけれども厚生省が社会保障制度審議会に諮問した、その答申の中で審議会もこの点に対しては厳しく指摘をしていると思いますけれども、どう指摘をしておりますか。
#59
○小島政府委員 これは御答申の第二項で触れられているところでございますが、「福祉の制度として地方負担を導入することは、運営の適正化を図るものとしておおむね了承する。また、婚姻解消時の夫の所得によって支給要件を定めることも理解できるが、民法上の扶養義務が十分に履行されるような手だてなしには、児童の福祉が確保されないことにもなりかねないので、この方面に対する検討を別に行われたい。」というふうになっております。
#60
○大橋委員 このように社会保障制度審議会も厳しく、」の問題点を指摘しておりますね。したがいまして、もし社会保障制度審議会の答申を厚生省が尊重するならば。まずその手だてをきちっとしなければならぬわけですよ。ところが、前夫が養育費を支払わない場合の救済措置について一体厚生省はどう考えておるのか、お尋ねしたいと思います。
#61
○小島政府委員 制度審の答申でも、親の所得によって支給しないということには一応理解を示されております。ただ御指摘のように、そういうような親の養育責任の保証もあわせて考えるべきだ、これは別に検討ということでございますので、こういう制度を実施するなら今後そういうことを検討していけ、こういう御趣旨だと思いますので、早速省内にそれぞれの道の専門家の方々、学者の方々、家庭裁判所関係の方々あるいは司法関係者の方々、福祉関係者の方々に御参加願いまして、これらの問題についての対処方針を現在検討中でございます。
#62
○大橋委員 それは本当は法案を提出する前にやるべきだったんですね。しかし、今、おくればせながらもそれを検討する機関をつくるというお話でございますので、参考的に申し上げますが、スウェーデンでは養育費の立てかえ払い制度がございますね。アメリカでは養育費を支払わないときは身柄を拘束するという厳しい制度もございます。またソ連を見ますと、養育費を支払わない場合には養育費を給料から天引きをしていく、こういう制度があります。
 とにかく児童の健全育成、福祉の増進のための手当というものは国がまず支給しなさい、そして高額所得、今六百万ということが一応出ているわけでございますが、そういう夫は養育責任として国に納付する、このような制度を工夫すべきじゃないか。要するに児童扶養手当というのは、子供の健全育成、資質の向上、福祉の向上に充てられるわけですから、もうこれは文句なし、どんと支給をしまして、もしそれだけの余裕のある夫であるならば、それはむしろ国の方に払いなさいということを何かの形で工夫をしてつくるべきだと思う。
 というのは、現に身体障害者雇用促進法というのがありますね、この中には身体障害者の雇用率というのがあるのですよ。その雇用率を達成しない企業については、その事業主からペナルティーとして納付金を徴収しているわけですね。事実こういうふうな納付制度ができ上がっているわけですよ。同じように工夫すれば、別れた夫から国の方に所要の額を徴収するということは私は可能だと思うのです。いかがですか。
#63
○小島政府委員 これは我が国の場合、スウェーデン、アメリカのような措置がとられませんのは、これは離婚制度の大きな違いでございます。先生御指摘のように協議離婚が九割ということでございますが、これはお互い同士の話し合いで別れるという、いわゆる何も公的機関の関与を経ない離婚が九割を占めているわけであります。諸外国の場合で見ますと、どこでも少なくとも子供のいる家庭については協議離婚は認められておりません。必ず裁判所が関与する。そこで必ず児童の養育費の取り決めが行われます。法律的にその支払い義務がそこで確定するわけでございますので、かわって取り立てるという方法も可能なことでございますが、何らの法的な取り決めのない者につきましては、国がかわって請求する権利がございませんので、その辺は婚姻制度、離婚制度の仕組みとの兼ね合いで考えてまいらなければなりません。
 一方、諸外国でも、ある程度カトリックの影響の低下とか何かと兼ね合いがあるのかもしれませんが、離婚をできるだけ認めていこうという方向にもあるようにも感じられておりますが、少なくとも子供のいる場合の離婚というのは非常に厳しい法的な規制のもとに行われております。ですから、我が国の場合、そういうことは国民の合意を得られるのかどうか、十分制度の今後のあり方と仕組みを考えながらそこは考えていかなければならぬかと考えております。
    〔丹羽(雄)委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
#64
○大橋委員 我が国の実情は協議離婚がほとんどだ、それはそのとおりだろうと思いますが、だからといって親の扶養責任がなくなるわけじゃないわけです。ですから、そういう現状の中で何か工夫をして納付させる制度を考えていくべきだと、私はこう言っているわけですよ。大臣、それはおかしくないでしょう。どうでしょうか。
#65
○増岡国務大臣 今の養育料の納付についての先生の御提言はごもっともなことだと思います。
#66
○大橋委員 大臣、これはぜひ大臣が厚生省を所管していらっしゃる時代に必ずその問題が解決するようにきちっとしていただきたいと思います。
 そこで、私はそれが前向きに検討され、実現されるという理解のもとに次の質問に移りたいのですが、年収による所得制限というものは、離婚前の所得によって判断されるというふうになっておりますね。じゃ、離婚後に相手の夫がその所定の収入額が減少した場合、そういう場合はどうなるのでしょうか。
#67
○小島政府委員 一応これは毎年毎年別れた夫の所得をとることも非常に困難ではないかということで、離婚の前年の所得によって、六百万以上の場合にはその者には支給しないという仕組みになっております。ただ、その場合でも、父親の経済状況に激変を来した、あるいは父の所在が長期間不明になった場合等々については、もう扶養義務の履行を求めることが困難な事情が出てまいったという認定のもとに手当は支給することにいたしております。
#68
○大橋委員 今私がお尋ねしたのは、離婚前の所得を把握して、六百万以上ある者は支給しませんよ、こうなって、仮にこれが実現させられたとしますよ。そうなって、もしそういうふうにあなた支給しませんよという状況に置かれている母親が、その後相手の収入が減った、それじゃ今度は出てくるか、支給されるようになるのか、その辺を聞いているのです。
#69
○小島政府委員 これは要するに、六百万程度従来あれば扶養義務の履行が一応可能だと考えているわけでございますので、減り方にもよろうかと思います。これは二万減った、十万減ったというような状態で支給するというわけにはまいりません。そこはやはり減ったというのは、もう今後扶養費の履行を継続することが困難な程度まで減った、激減ということに考えざるを得ないと思います。
#70
○大橋委員 いずれにしましても、離婚後の夫の所得をだれがずっと監視していくのだろうかという問題ですね。これも重要な事柄です。
 それからもう一つ、今もいみじくもおっしゃったわけでございますが、手当の支給要件の二の項の中に「扶養義務の履行を求めることが困難であると認められるときは、」もうだめだ、支給しないとしている人にも支給いたしますよ。それは外国に行っているとか、あるいは長期間所在が不明だとかというような状況のときにはこれは支給しますよ、こういうことだと私は思うのでございますが、むしろ履行を求めることが困難ということよりも、履行を得ることが困難なときの方が私は適切ではないのかな、こう思うわけでございますが、いずれにいたしましてもこの困難性の基準といいますか、これは非常に不明確と私は思うのですが、いかがですか。
#71
○小島政府委員 その点は、事実判断に属する分野でございますので、できるだけ具体的な基準をつくりまして、運営が混乱しないように、支障を来さないように十分配慮をしてまいらなければならないと考えております。
#72
○大橋委員 どうもそれは納得いきません。いわゆる履行できるかできないか、その判断あるいは証明は一体だれがやるのだろうか、この辺がはっきりしないと、今回の出されている法案は基本的に間違いだと私は思います。大臣、この点はどういうふうに思われますか。
#73
○小島政府委員 お尋ねのだれがそういうことを挙証するのかということでございますが、一応今までその養育費の仕送りを受けておられた母親の方が、やはりこういう事由で父親から今後扶養費の履行を期待することが困難になりましたという届け出をいただきまして、それをもとに都道府県知事が認定を行うという仕組みになります。
#74
○大橋委員 時間の都合がありますので、もう次に移りますが、きょうの質疑をやっていて、納得できかねることばかりです。児童の扶養は基本的にはその家庭の責任ですけれども、我が国の児童を取り巻く環境というものは極めて深刻な状態になっていると私は思うのであります。
 中央児童福祉審議会が五十九年十二月十二日付で「児童手当制度の当面の改革方策について」という意見書を出しておられますが、その中を見ましても、大変な内容が記されております。
 「平均寿命の伸びにより、高齢者人口が増加する一方で、出生数が減少していることは、高齢化社会の進展に一段と拍車をかける要因となっている。我が国では、ここ十年来、出生数が予想以上に減少し、出生力の指標である合計特殊出生率でみても、近年は、人口の置き換え水準の二・一を大きく下回る一・八程度で推移しているという状況にあり、昭和九十年には、生産年齢世代(二十――六十四歳)二・六人で高齢者(六十五歳以上)一人を養うという重い負担を担うことになる。」
 こういうことで、続けておっしゃっていることは、「高齢者に対する生産年齢世代の扶養内客の一つである年金制度では、被保険者は、親あるいは子の有無に関係なく定率又は定額という一定の負担を行っている。高齢化社会を控え、今後、高齢者についての扶養負担は、より重くなろうが、そうであればこそ、その重い負担を担う現在の児童の扶養についても、生産年齢世代が子供の有無に関係なく一定の負担を行うことが、社会的公平からみて必要であろう。」このように言っているわけでございますが、とにかく我が国は児童というものがどんどん今減少し、お年寄り――平均寿命が伸びましたから大変な高齢化社会になっているわけですよ。それだけに今は日本の児童というのは希少価値、この児童についてお金を惜しんじゃいかぬ、私はこう思うのです。いかがですか。
#75
○小島政府委員 確かに御指摘のように、今、合計特殊出生率は直近の数字で一・八でございます。二・一三という置きかえ水準から見て低い。今後、人口推計によりましてもさらにそれが一・六五ぐらいまで落ちる事態もあるではなかろうかと非常に憂慮される状況でございます。
 したがいまして、子供というものにつきましては、今後やはりある程度の出生数を確保するということについては社会的にも十分関心を払っていかなくちゃならぬというふうに考えておりますし、これは子供の育成過程そのものにも非常に人格形成上、家庭や地域によってある子供同士の交流がなかなか従来ほど期待できない、それは人格形成に非常に大きな影響を及ぼしている面もございますので、子供の問題に対する社会的な関心をやはり一層高めながら、この意見具申にもございますように、その子供の養育を親だけの責任でやることなく、やはり社会的に支えていくという制度を確立してまいらなければならない。そのためには、今後十分な国民全体の合意づくりと申しますか、御理解を得るような方途を十分努力してまいらなければならないと考えている次第でございます。
#76
○大橋委員 人口動態で見る出生率の急激な低下を見てみたわけでございますが、私は大正十四年でございますが、そこからまず見てみたんですけれども、そのときの出生は二百八万六千九十一人で、人口千対で三四・九でしたね。それが昭和元年では二百十万四千四百五人で人口千対で三四・六、そう変わりません、そのころは。二十五年になりますと二百三十三万七千五百七、二八・一でぐんと下がりましたですね。五十八年は百五十万八千六百八十四人で人口千対で一二・七と、ぐんぐんと出生率は落ちていっているわけですね。
 例えば、普通の家族で子孫が絶えたならば、これは養子を迎えれば別ですけれども、その家族は自然消滅していくわけですね。もうどんなに子供を大事にしようと思ってもいないものはどうしようもないのですから、ということを考えれば、今、社会全体から見る我が国の児童というものは単なる夫婦の子供ではないのだ、あくまでも「社会の子」という立場に立って見ていくべきだということは早くから指摘されていると思うわけですね。
 そこで、我が国は児童を「社会の子」として社会的に配慮せよということが昭和五十五年の中央児童福祉審議会「児童手当制度の基本的あり方について」の意見具申の中にも述べられております。
 児童の出生数がその後予想以上に減少していることから高齢化社会へのテンポはさらに速まるものと推測される。
 児童手当制度の意義は以下のようなものと考えるが、その意義は高齢化社会においてはさらに重みを増してくるであろう。
 (一) 世代間の信頼と連帯の醸成に資するものである。
 今日、老人扶養は年金等によりかなり社会化されているが、このような社会的扶養が円滑に維持されていくためには、将来の社会の担い手である児童を「社会の子」として社会的に配慮していくことが当然必要となる。特に、高齢化社会においては老人扶養の負担は極めて重いものとなるので、この配慮はなおさら重要である。
このように、とにかく児童というものに対して社会全体で大事に健全育成、資質向上のために手をかしていこうではありませんかという時代に、児童扶養手当制度は後退していっているわけですね。ですから、時代逆行と思うのですけれども、いかがでございますか。
#77
○小島政府委員 御指摘の意見具申は、趣旨は児童手当についての御提言でございますし、この制度についても直接我々としても今後十分機能するような方向に拡充してまいりたいと考えております。ただ、残念ながら一般的な児童手当制度に対する国民の理解や関心は決して高い状態ではございません。それは我々の努力も不足しているせいだと反省しておりますが、やはり関心を高めながら、国民全体が応分の費用を出し合って子供の育成を図っていこうという組織を御理解を得ながらつくってまいらなきゃならぬと考えております。
 それは、児童手当はいわば児童に対する一般制度でございますが、今御審議をお願いしております児童扶養手当は母子家庭という状況、そういう状況に着目して、どういう経済的な助成措置が必要か、子供のためにどういう措置が必要かという政策判断に基づきまして行っていることでもございますし、全部の子供を対象としてではなく、まさしく母子家庭の子供に限っての対策でございますし、その援助の必要な度合いは全社会保障体系の中でどういうぐあいかということを考えて、現在御提案申し上げているような制度に組みかえるのが社会保障全体を円滑に伸ばしていくためには必要な措置であるという判断に立って御提案しているものでございますので、御理解いただきたいと思います。
#78
○大橋委員 私は、今、日本の現状から児童の姿を見た場合、出生率の低下等から考えて非常に重要な存在になっているのですね、だから、これはもう分け隔てなく大事に健全育成のために金を惜しまず持っていくべき時代になってきておりますよ、こう言ったつもりなんです。だけれども、今局長は、確かに制度の違いはあるけれども、児童というものから見れば同じ状況下にあるわけですから、局長の考え方でいくと、児童の胸かなんかに私は児童手当の子供だ、私は児童扶養手当の子供だとか、いや私は母子福祉年金の子供だとか、何か看板を掲げて歩かなきゃいかなくなるような感じが私はしてならぬのです。
 そうじゃなくて、今、私は理念、精神を言っているのであって、そういう理念や精神に立てば後退するようなことであってはいかぬ。特にお年寄りに対して極めて政策が充実されていっている中に、一方、児童の方はこれほど重要な位置にありながら無視、軽視されている感じているところに問題があると私は言っているわけです。大臣そうじゃないですか。どうです、大臣の気持ちもひとつ聞かしてください。
#79
○増岡国務大臣 次の時代を担う児童を大切にするということはもちろん御指摘のとおりでございます。今御提案申し上げております児童扶養手当につきましても、一般の児童手当と並行してそういう趣旨も担っていかなければならないと思っております。
 ただ、私どもが行政サイドとして御提案申し上げますからには、やはり永続して安定をした制度でなければならぬという意味合いもあるわけでございまして、なおかつ、この課題はここ五年や十年で解決する問題でもございませんし、将来にわたってその措置は改善されなければならないであろうということは考えておりますけれども、今すぐそのような拡大策がとれないという現状につきましても御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#80
○大橋委員 もうとにかく納得できないことだらけでございますが、手当の請求の時効を今度設けましたね、何か五年たてばもうだめだ。これも私は問題だと思うのですね。じゃ、仮に時効を設けた場合、四年目に気がついた、そして請求手続をした。そうしたら四年前にさかのぼって支給してくれるのですか。どうなんですか。
#81
○小島政府委員 こういう福祉の措置につきましては、年金と違いまして遡及して支給するということは一切ありません。これは生活保護や何かも同じでございます。ただ、四年目に請求がなされればその時点から七年間あるいは義務教育終了時まで出す。四年をそこから差し引くというようなことはいたしませんが、請求後の期間だけ支給できるという形になります。
#82
○大橋委員 そうでしょう。遡及はしないということなんですね。
 これも資料にはっきり出ていたのですが、現在でも、受給する権利がありながら受給していないという人のうちに、四六%の人は制度のあることすらも知らない、こういう人がいるというんですよ。そういう現状にあるというんですよ。いいですか。現在でも、受給する権利がありながら受給していない人の中に制度すら知らなかったというのが四六%もあるんですから、これはもう五年なんというものをつくる必要はないと思うんですよ。だから、気がついて、あるいはその必要を感じられた人は当然その場で請求なさるわけですから、その必要な方には支給する、こういうふうにした方が妥当だと私は思いますよ。
#83
○小島政府委員 今御指摘の、四六%の者が制度の存在を知らなかった、日本弁護士会の資料の中にその御指摘がありましたが、我々それを調べましたところ、どうも出典が明らかでない、その実態を明確にすることができません。またさらに調べてみたいと思いますが、先ほどからの五十八年の全国母子世帯調査によりますと、児童扶養手当制度があることを知らないという方は全体の四・六%でございます。
 それから大阪府の母子福祉連合会が行った調査では、児童扶養手当制度を知らない者は何%という調査はございませんが、児童扶養手当を知っている者が九八%、無回答が二%ということでございますので、我々としてもPRに努め、こういう制度の存在をあまねく周知願うということは大切なことだと思って周知徹底に努めておりますが、残念ながらまだその存在を知らない方がいらっしゃることも否定し得ません。ただ、そんなに高率ではないんじゃないかという判断を持っております。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
 ただ、今回五年間という期間の制限を設けましたのは、この制度が一つには離婚による激変緩和の措置である、五年間くらいたってまた激変ということはあり得ないのではないか、ですから五年間という期間。もう一つは、いろいろな父親の所得とか何かの調査を確実に行いますためには、余りそこが長期になりますとその調査の実施が不可能になるというような問題もありましてこういう制限を設けさせていただくことにしたわけでございます。
#84
○大橋委員 私はやはり必要ない、こういうふうに思います。
 それから、時間もだんだん迫りましたが、手当の支給期間、原則七年間として義務教育終了まで、こうなさったわけでございますが、これは法案の名前にもありますように児童扶養手当、児童というのが基本ですよね。児童福祉法第四条に「児童とは」と示されているのを見ますと、児童というのは十八歳未満である、定義がくっきりしておるのですが、これを十五歳までで打ち切るなんという考え方はよくないと思うのですけれども、いかがですか。
#85
○小島政府委員 これはいろいろ御批判、御意見のあるところかと思いますが、先ほどから申し上げておりますように、本制度の担う役割といたしまして、離婚というようなことに起因いたします母子家庭が従来の経済状況からの激変を来している、家庭が非常に激変している、そのときのその激変の状態に着目はたしました子供のための経済的な助成措置として位置づけたものですから、一般に母子世帯が自立なされるまでの期間として一応七年間という期間を選択したわけでございます。
 この根拠といたしましては、母子家庭が生活保護などを受けられてそこから脱却なさるまでの期間が、大体五年から七年で大部分の方がそういう状態を脱せられる、あるいは母子寮からの退所の状況を見ましても、七年という期間があれば九割以上の方がそこを退所できるというような経済状態にまで回復なさっているんだろうという推察ができますし、また、児童扶養手当そのものの平均的な受給期間を見ましても、大部分の方は七年程度ということでございます。自立を促進するという趣旨で七年間の有期の期限を設けさせていただいたわけでございます。
#86
○大橋委員 今の問題も僕は納得いかぬですよ。
 もう時間がいよいよ迫りましたので、最後に、大臣、政治の目標は一体何だ、私は、大衆福祉社会というものを実現していくんだ、これが政治の終局的な目標でなければならぬと考えるわけですね。と同時に、厚生行政に占める社会福祉関係予算というものが福祉国家であるかどうかという一つのバロメーターに実はなるわけですね。
 そこで、五十九年度の内容になるわけですけれども、当初予算五十兆六千二百七十二億円、これを一〇〇とした場合、社会福祉費予算は一兆九千九百九十一億円、構成比は三・九%ですね。児童扶養手当給付諸費を見るとわずかに二千四百九十億円です。〇・四九%。そこで、六十年度もどうかと見てみましたら、予算は五十二兆四千九百九十六億円、これを一〇〇としまして、社会福祉費は二兆四十二億円、三・八%、児童扶養手当給付諸費で二千六百五十二億円、〇・五%。とにかく我が国の福祉、特にまた児童に対する諸費というものは微々たるものです。
 我が国の将来を背負っていく重要な使命を持っている児童に対する国の手当てというものは非常にお粗末であるということを私は指摘したいし、厚生大臣に特に今後そうした立場に立って福祉予算を必ず上向きに盛り上げていっていただきたいことを強く要望しますが、最後に大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。
#87
○増岡国務大臣 大橋先生から御激励のお言葉をいただいたことと思いまして、今後も我が国の福祉増進のためにできる限りの努力をしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
#88
○大橋委員 終わります。
#89
○戸井田委員長 土井たか子君。
#90
○土井委員 今回の政府提案のこの法案を見ますと、見れば見るほど一体政府はどういう感覚でこういう法案をお出しになったのか、理解に苦しむのですね。一片の人間としての常識があるならばこの法案というのは恐らく速やかに撤回をされるのが私は順当であろうと思います。
 大臣にまず申し上げますが、今回のこの法案を提案されるときにどういうことを念頭にお置きになったか、今まで母子福祉年金を補完するものとしてこの制度は創設された、こうなっているのですが、今回の改正で、年金にこれは今まで関係してきた問題なんですから、したがって、国民年金法の六条からするとかけなければならないところがあるはずですが、国民年金審議会におかけになったのですか、いかがですか。
#91
○小島政府委員 これは制定当初から、年金の補完でございますが、年金制度ではございません。したがって、国民年金審議会にはかけておりません。
#92
○土井委員 従来は国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案ということで国会に提案をされてきたということが一たびならずございます。年金そのものでなくても、この六条を見ますと、「国民年金事業の運営に関して」と書いてありますよ。年金法そのものをいじくるのでなくても事業の運営に関しているじゃないですか、これ、いかがですか。
#93
○小島政府委員 児童扶養手当は国民年金事業には関係ございません。国民年金事業の運営にも関係ございません。
#94
○土井委員 それでは、そういうふうなことからいたしますと、今度は全面的に制度の改正ということになるのですか。どうなんですか。
#95
○小島政府委員 従前いわば年金の補完的制度としてこれを位置づけ、そういう形での運営を図ってきたことは事実でございますが、一方、母子福祉年金というものはもはや消滅いたします。こういう時期をとらえまして、今後の社会保障全体の中での児童扶養手当というものがどういう役割を担うべきかということを再検討した結果、制度の中身を変えた、こういうことでございます。
#96
○土井委員 制度の中身を変えるということになるのに、この制度そのものの根幹に触れる問題になってまいりますと、法律案の立法趣旨そのものが変わるということでありますし、場合によったら法律の名前も変えなければならないということになってくる場合が多々ございます。そうでしょう。
 今回の場合を見ておりますと、児童扶養手当法という法は変わらないのですから、その一部を改正するというふうに認識していいのかどうか、私は読めば読むほど疑義を持ちます。本来は、こういうふうな、今回のようなやり方で政府がおやりになるのなら別の法律をつくっておやりになる、これが必要でありまして、児童扶養手当というのは相変わらず変わらないで保障していこうということですから、そういう点からすると、どうも違ったものを今回は一部改正と称しながら持ち込まれているというふうに考えざるを得ない。
 そこで、今回政府がお出しになりました提案理由説明を見ておりますと、「現行制度を基本的に見直し、これを母子家庭の生活安定と自立促進を通じて児童の健全育成を図ることを目的とする」こう書いてあるのですが、これくらい大きな問題を取り上げて、福祉の根幹にかかわる問題ですよ。場合によったらもっと大きく福祉政策全般をどう考えていくかという基本姿勢をはっきりさせないと、こういう問題に対して対応することは私は難しかろうと思うのです。
 そうなってまいりますと、これはいかがでございますか、児童福祉法というのを見てまいりますと、かけなければならない審議会が、これはありますよ。児童福祉法の中に児童福祉審議会というのがあって、その八条ではちゃんと中央児童福祉審議会というのが置かれておりますが、ここにおかけになりましたか、どうですか。
#97
○小島政府委員 児童福祉審議会には諮問しておりませんが、成案に、つきまして御報告申し上げ、御理解をいただいたところでございます。
#98
○土井委員 大臣、これはどうですか。児童福祉法というのは、先ほどももう御質問がありましたから、繰り返し一条だ三条だと言いませんけれども、児童福祉法からすると、当然これはもう児童問題に対する福祉の根幹を揺るがす問題ですよ。どうして大臣おかけにならなかったのですか。これは大臣にお尋ねします。これはもう事務レベルの話じゃない。
#99
○増岡国務大臣 私は当時の大臣でありませんけれども、当時の考え方は、死別の母子家庭をお手伝いする法律である、ところがその方々がうんと人数が減って、離婚の母子世帯をお手伝いする、その方々がほとんどになった。そういう母子家庭の実態に法律の方を合わしていこう、そういう考え方で行われたものと思います。したがいまして、手順その他の点につきましては御指摘の面もあろうかと思いますけれども、母子家庭の実態、いわゆる離婚の方々中心という考え方からいけば、社会を法律の方が後から追っかけたという格好になろうかと思います。
#100
○土井委員 大臣、この問題を取り扱われるに当たりましては、子供の問題なのか家庭の問題なのか、もうちょっと整理をしていただく必要がございます。児童扶養手当というのは、いかがなんですか、本来児童を対象に考えているのですか、家庭を対象に考えているのですか。大臣、どうお考えになりますか。
#101
○増岡国務大臣 離婚その他によりまして激変をしておる、そういう家庭に育っておる児童を対象としたものだと思います。
#102
○土井委員 そうすると、児童を対象にしているのでしょう。今の大臣の御答弁を聞いておりますと、あたかも家庭の方に重点を置いていろいろ御答弁なすっているのです。――それはお笑いになるはずなんです、自分で言っていておかしいとお思いになっているのですから。あくまで児童なんです。そうすると、外してもらっては困るのは、現行法としては児童福祉法という法があるのですよ。この法の中では、児童に関する福祉に関して、以前と違って今度は政府の政策によって異変をもたらそうというときには中央児童福祉審議会にかけなければならぬ。法がこれを命じてますよ。――後ろからそういう紙を渡しなさんな。大臣は政治家なんです。政治家として政治的判断というのをどう持つかということを大臣は自分で考えて自分で責任を持って自分でお答えになるのが政治だと私は思っております。
 よろしゅうございますか、大臣。私は厚生大臣に期待をかけておるのですよ。だから、このように言っておるのです。大臣、どうですか。大臣は残念だとお思いになりませんか。これ間違っていたなとお思いになりませんか。本来かけるべきところをかけてない。福祉に対して非常に大事な問題だ。これは基本的な問題ですよ。福祉政策に対して問われている問題です。事務レベルは結構。大臣、いかがですか。
#103
○増岡国務大臣 先ほど申し上げましたように、社会の実態に合わした法律に変更しておるわけでございますから、実際にやってきた仕事の中身ということについての基本的な変更ではないという意味で児童福祉審議会の方は御了解をいただいたことであろうかと思います。また、社会保障制度審議会には諮問をいたしまして御答申をいただいているところでございます。
#104
○土井委員 大臣、この法案をよくお読みになってこの席にお立ちなんでしょうね。確かにいろいろな事情に対しては社会の変化ということを無視はできません。しかし、この法案の中心はだれに対して何を考えるべきかという基本姿勢が厚生大臣としては問われるのですよ。児童に対しての福祉の問題でしょう。扶養手当ということをどう考えるかという基本姿勢の問題でしょうが。
 今度の法案の第一条というところを見ますと、従来の、今の現行法と今度政府がこれは考え直したいというふうに出されてきた中身は、そこのところがまるで違うのですよ。従来はこの点は児童ということをあくまで認識して考えてきた法であり、現在もそうであります。今度はその法の目的を家庭生活の安定と自立の促進に寄与するということに置きかえられたんじゃないですか。大臣、どうですか。以前とその考え方は変わらぬとおっしゃるのなら、社会がどういうふうに変動しようと、この法の基本というのは児童である、児童の福祉である、この線ははっきり考えていらっしゃいますね。――いや、それはあなた、手を横に出して事務レベルが答える問題じゃない。
#105
○増岡国務大臣 先ほど申し上げましたような特別な環境にある児童でございます。
#106
○土井委員 特別な環境にある児童であるがゆえに、余計にその児童に対して福祉を考えなければならないという児童であります、こういうふうに言いまして間違っておりませんね、大臣。どうですか。はいとおっしゃってください、それは。首振ってないで。
#107
○増岡国務大臣 従来からそういう制度でございます。
#108
○土井委員 ところが、その制度が今回なぜこういうふうに変えられなければならなかったか、この沿革はもう今まで何遍も取り上げられておりますから、もう私は繰り返し言う必要はないと思いますけれども、臨調の最終答申から事は出発しているのですね。そうして厚生大臣の私的諮問機関である児童福祉問題懇談会、ここが中心になって臨調の最終答申の線に従って案を考えられたわけでしょう。そうでしょう。この児童福祉問題懇談会というのは、大臣がまたまた答弁の中で、私はそのとき大臣でなかったとおっしゃるかもしれませんけれども、厚生大臣の私的諮問機関なんですよね。
 私は前の予算委員会の席でもこれを取り上げたのですけれども、児童福祉問題懇談会の中に女性が一人もいないのです。懇談会のメンバーが六人ございますけれども、例えば中外製薬株式会社副社長、どうして製薬会社の副社長が出てこられたのかよくわかりませんが、それから公営企業金融公庫の総裁、国民金融公庫の総裁、成蹊大学の教授、埼玉県の副知事、一橋大学の名誉教授、言っちゃ失礼かもしれませんけれども、平均年齢も相当高うございます。大日本帝国憲法の教育を受けた男性ばかりです。こういう方々が寄られて、どういう認識でこういう問題に当たられるかというのは大問題ですよ。わけても、金融公庫だのということを重視なすっているというのは、金銭上の問題ばかりをこれは念頭に置いて、国の赤字対策のためにどのようにぶっ切ったらいいかばかりを先立つ問題として考えられているのは明々白々なんですが、大臣、どうですか。
 これ、私的諮問機関なんだけれども、あなたね、内閣は一貫性というのを問われているのです。大臣のがん首がどうかわろうと、厚生大臣の行政というのは一貫してずっとあるんですよね。私は今回のこの大臣に対しては非常に期待をかけていますから、そういう点からすると、このメンバーというのは女性が一人もいない。特に母子家庭の問題に対して直接考えなければならない問題としては、順当なメンバーとは言いかねると私は思いますが、いかがでございますか。
#109
○増岡国務大臣 このメンバーは、いわゆる厚生省OBでありますとか各省のOBの方々に入っていただいて懇談会をやっていただいておるのでございますけれども、御指摘のように婦人の委員がいないということは、私も同感でございます。今、厚生省の中で大分ふやしてまいりましたけれども、まだこの懇談会に入っていないということでございますので、今後検討させていただきたいと思います。
#110
○土井委員 今後検討といって、それでは遅いんです。――わかりました、今後それは検討して、もう一度これをやり直すという意思表示というふうにお聞かせいただいたと私は理解をさせていただきたいと思います。それはそう理解しますよ。非常に明るみが出てきましたね、これは。
 やはり当たり前のことを当たり前にやっていただかないと困るんですよね。そうしてこの私的諮問機関から、次には、大慌てですわ、これ。ここにも浜田先生がいらっしゃいますから、浜田先生もメンバーのお一方なんでございますけれども、社会保障制度審議会に諮問をされた。昭和五十九年二月十日に諮問されているのでございますけれども、そして報告がわずか一週間ですよ。
 これはむしろ浜田先生にも質問したいような気に私はなってくるのですけれどもね。(「森井先生もだよ」と呼ぶ者あり)ああ、森井先生もそう。失礼しました。森井先生もそうですが、これはどうなんですか、一週間で福祉問題に対して、あり方をこれは徹底討議できますか。三の間に会議は何回持たれたのですか。これは恐らく書面でほっと見て、余り討議を重ねる時間的余裕なんてなかったと私は思いますよ、良識的判断からいたしまして。わずか一週間。これについて事務レベルからの弁解は要りませんが、これもまた大臣、見てまいりますと、恐らくこれは内閣総理大臣の諮問機関でございますから、そっちがお決めになることとおっしゃるかもしれませんが、社会保障制度審議会も厚生省の出向の形でいろいろ人選に対しても関与されるということも私はわかっております。
 それで、これは何人なんですか、三十五名ですね、委員が。国会議員も言うまでもありませんが、学識経験、関係団体、関係官庁、臨時委員、全部これまた男性なんですよ。これは大臣、どうお思いになりますか。ここでわずか一週間しかかけられていない。あっと言う間です。何か答弁聞くと、いつでも、そこからも御了承いただいた、鬼の首をとったようにおっしゃるけれども、これは格好づけも甚だしいと私は思うのです。大臣、どうでしょう。社会保障制度審議会、これは大事ですよ。どうお思いになりますか。
#111
○増岡国務大臣 最初一週間という話を聞きましたとき、私もびっくりしたのですけれども、しかし、その短い期間の中に回数を精力的に重ねていただいておりまして、普通の順序どおりの手順を踏んでいただいたものと思っております。
#112
○土井委員 そこで……(「この審議会に女性がいないというのは致命的な欠陥だ」と呼ぶ者あり)そうです。それは横からも声が出ておりますけれども、それは、大臣は今御答弁なさらなかったのですが、大臣も御同様に、男性ばかりが集まって社会保障の問題を審議するというのはへんぱである。特にこれは、まあ一言申し上げておきますけれども、ことしは国連婦人の十年最終年なんですが、婦人問題企画推進本部の方が後期重点月標として、あらゆる審議会に女性の数を少なくとも一〇%は入れるべきであるというのをきちっと出しているのですよ。先日、去年六月現在で全体の審議会を見たときに、残念ながら五・二%しかまだないというのです。
 しかし、いろいろな審議会がございますけれども、事社会保障なんというのは、これは女性の立場からしたら大事ですよ。男性、女性、同数あって不思議はない。大臣、これはどのようにお考えになりますか。こういうところで考えられたんですよ、この法案は。女性として、これは何だと思いますよ。いかがでございますか。これはみんな男性ばかりが寄って考えられている。大臣、ちょっと一言言ってください。
#113
○増岡国務大臣 御指摘のように、女性の委員がいらっしゃらないということでございますけれども、男性ばっかりが集まりましても、男のことばっかり勝手なことを考えるものでもなかろうと思います。女性の立場というものも十分御勘案いただきましてこういう御結論をいただいたのだと思うわけでございます。何にしましても、政府全体として女性一〇%という目標がございますので、あらゆる機会に努力してまいりたいと思います。
#114
○土井委員 あらゆる機会にじゃなくて、ひとつ大臣が御在任中に、その点については鮮やかに変わったなというところを見せていただかなければ困ります。と同時に、これからじゃないので、もう既に出ているこの法案をつくられる段階でそういう過程があるということ、これは忘れてもらっては困りますよ、大臣。さっきも、これは知らなかった、おかしいとおっしゃいますけれども、それはおかしいような格好でつくられたのですよ。よろしゅうございますか。まずそういうことなんですね。
 それで、男性ばかりが寄っておつくりになったということが必ずしもこれは怪しげではないという気持ちも含めておっしゃった。それはそのとおりかもしれません。男性にもいろいろな方がございます。女性だからいいとも言えません。だから、その辺はひとつ社会保障に対して熱意を持って考える人が男女とも同数で構成されるのが理想である、本来あるべき姿である、このことをひとつお忘れなく、はっきり念頭に置かれまして御努力方を私は切に願っております。それは当然でしょう。当然の姿ですね。だから、そういうことからすると、今回の法案提案までにいろいろな審議会の議を経てでありますけれども、審議会そのものは当然の姿形とは言いがたい、こういうことに相なるわけでありますから、ここのところもはっきりさせておきたいと私は思います。
 さて、これはさっきの質問で少し出てきていたのですけれども、児童手当と児童扶養手当というのは、基本理念は同じですね。同じと考えていいでしょう。児童福祉法の二条なんというのを見ておりますとそう思いますが、いかがでございますか。
#115
○小島政府委員 すべて児童の福祉のため、健やかな育成のための制度としてつくられておりますので、究極の目的は同じでございます。
#116
○土井委員 そういうことからすると、中央児童福祉審議会におかけになっていらっしゃらないという事情は、さっきもここで他の議員が質問で取り上げられておりましたけれども、つまり、子は「社会の子」であるという考え方が中央児童福祉審議会の方からは出てまいっております。恐らくはそっちにかけると今回のこの法案はこういうことにならぬから、中央児童福祉審議会にかけることを敬遠して、ちょっとやめておこうという気配があったのではなかろうかという憶測が世の中にございます。私は当然だと思う、こういう考え方が蔓延するというのは。そんなことを言うと、大臣は、それは違います、痛くもないおなかを探られるようなものだ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、そういうふうに思われますよ、これは。子供は「社会の子」である、社会は責任を持って子に対する育成というのをやっていかなければならない、これは大臣も同様にお考えになるでしょう。どうですか。そして、今も中央児童福祉審議会の方が出している中身についても大臣は御検討なすっていらっしゃると思いますが、あの五十五年九月十日の中身について、大臣の御所信を一言承りたい、こう思います。いかがでございますか。
#117
○増岡国務大臣 従来から言われておりますように、将来の日本国の人口構成というものを考えました場合には、必ず次代を担う子供、あるいは世代と世代との間の連帯ということで言われてきたことでございますし、また、そういう審議会その他の機関からそういう御意見を発表されておるわけでございまして、私といたしましても、そういう観点から今後の児童福祉の問題に取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
#118
○土井委員 大臣のお気持ちは、今私の申し上げております「児童手当制度の基本的あり方について」という中央児童福祉審議会の方から出されている中身でありますけれども、その基本的な理念は同じだということが、先ほど事務レベルからも御答弁の中にございましたから、そこでこの問題を取り上げて私は質問したのですが、その中身を見ますと、この意義のところで、これは、私は言っておられることは非常に大事な点だと思うのですけれども、非常に視野の広い観点から問題にされているように思います。資源エネルギーに恵まれない我が国が、厳しい国際経済環境の中で今後とも発展していくことのためには、国民の間における強い連帯感が必要だ、児童の養育は基本的にはその家庭の責任だけれども、将来の命運を託す児童の健全育成については、社会の構成員全体がすべてこれに強い関心を寄せて協力をする必要がある、こう述べているわけなんですね。
 私は、外務省にも御出席をいただいているのでございますけれども、今回の法案の審議というのをやっておいて、後で外務省にその点を問いただすということの方が順序としては順当であるかもしれませんが、外務省、御出席ですね。
 国際人権規約というのは日本は批准をいたしておりますけれども、この国際人権規約のA、Bそれぞれに児童に関することを決めている部分がございますか。あると思います。それは何条であって、どういうふうに決めているかということをここで御指摘いただきたいのです。
#119
○瀬崎説明員 お答え申し上げます。
 国際人権規約にはA、Bとございますが、主として先生が御下問になっておるのは、A規約の方の経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約のことかと思います。その第十条では家庭、母親、児童の保護規定を置いておりまして、その第一項におきましては、扶養年少者を抱えている間、できる限り広範な保護、援肋を与えるべきであるということを規定しておりまして、その第三項では「保護及び援助のための特別な措置が、出生その他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。」このような規定を置いておるわけでございます。
#120
○土井委員 それはAの方でしょう。Bの方はどうなんです。
#121
○瀬崎説明員 お答え申し上げます。
 市民的及び政治的権利に関する国際規約の方におきましては、第二十四条に規定がございまして、その一項では「すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、財産又は出生によるいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、社会及び国による措置についての権利を有する。」このような規定が置かれております。
#122
○土井委員 これは権利なんですよね。児童の権利なんです。今の国際人権規約のAの第十条の、具体的に外務省としてはおっしゃいませんでしたけれども、一も関係しますし、三も関係すると思います。そうでしょう。第十条の一は「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し」云々とありまして、「扶養児童の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。」こう書いてありますよ。三には「保護及び援助のための特別な措置が、出生その他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにとられるべきである。」こう書いてあるのです。
 憲法の九十八条からしますと、締結した条約は遵守する義務が日本の国にはございますね。外務省いかがでございますか。
#123
○瀬崎説明員 国際人権規約のみならず、日本国政府が締結いたします条約について服すべて誠実に遵守するというのが日本国政府の立場でございます。
#124
○土井委員 外務省は所管が違うからとおっしゃるかもしれませんが、今回のこの法案の中身を見ますと、ほかにも問題点はいっぱいあると思いますが、基本的な物の考え方がそもそも問題であると同時に、先ほど申し上げたとおり、児童を対象に考えなければならないところが今度は家庭にすりかえられていっているのです。と同時に、所得による二段階制の導入や手当の額について支給額を減額する、削減する、離別した父の所得によって、離別したときに六百万所得を持っている場合には支給を全部やめますという問題、今度は支給期間を以前と比べると七年というふうに限定をして短縮するという問題、そうして、未婚の母子世帯に対しては一切支給をいたしませんということに決めるというこの中身は、この条約に違反しませんか。私はすると思います。条約違反だと思いますよ。いかがですか。
#125
○瀬崎説明員 条約の規定では出生その他の事情を理由として差別することは禁じられておるわけでございますが、当該法案につきましては、厚生省と十分協議いたした際に、いわゆる合理的な範囲の中で、差別すると申しますか、若干の扱いを異にする点につきましては、実態的な保護と相まって判断するということから見まして、この法案自体がその条約に直ちに違反するということにはならないという解釈をとったわけでございます。
#126
○土井委員 それは外務省、あなたおかしいことをおっしゃいますね。それではまた外務委員会に出かけていって徹底的に外務省相手に搾り上げなければならなくなる。私はこの国際人権規約の審議をやったときには質問者の一人でした。そして、Aに対してもBに対してもそういう御答弁じゃなかったですよ。
 母子家庭の中でもいろいろございます。死別家庭もあれば離別家庭もあり、さらに未婚の母家庭もあるんですよ。今回はその母子家庭のありようによって差を設ける、差別しているんですよ、これは。そのことを法律の上で認めようという法律なんです。真っ向から条約違反じゃないですか。今、その法律のどこが条約に違反しないということが言えますか。いろいろ実態の問題とおっしゃるが、今法案がどう考えられ、法律がどう変わるかということを問題にしただけで私は条約違反だということを言っているんで、実態の問題を外務省御存じなんですか、それでは承りますけれども。
#127
○瀬崎説明員 この差別の点でございますが、私どもとしては、合理的な範囲であれば許容されるという立場に立っているわけでございます。合理的な根拠かどうかということはその制度の趣旨、目的あるいは実態的な措置等総合的に勘案いたしまして判断することでございますので、この内容につきましてはもちろん外務省の所掌でなくて厚生省の所掌に係る事務でございますけれども、これを詳細お伺いした際には、私どもとしては、実態的にこれは直ちにその条約の規定に抵触するという考えには立たなかったわけでございます。
#128
○土井委員 外務省はよくこの条約の十条というのを見てくださいよ。出生その他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のために保護、援助がとられるべきであると書いてあるんですよ。素直に読んでくださいね。素直に読んで外務省はどのようにお考えになりますか。何も厚生省に遠慮は要らないんです。都合がよければ縦割り行政とおっしゃり、都合が悪くなるとこういうことをおっしゃる。外務省としての所信を私は聞きたい。どうです。
#129
○瀬崎説明員 条約の規定と国内法の規定を文理解釈する場合と実態的に総合的に判断する場合があるわけでございますけれども、やはり条約というのは、特に多国間の条約につきましては、いろんな国の制度を集約して規定を置いているということもございますので、やはりこの解釈につきましては、実態的な判断と総合的に勘案いたしまして判断を下すということが必要でございまして、文理的に文字の上だけの比較におきまして解釈を下す場合と総合的に判断するというのはおのずから違うわけでございまして、このような多国間の条約につきましては、やはり実態を踏まえました国内法の総合的な判断との兼ね合いで判断すべきであるというふうに考えているわけでございます。
#130
○土井委員 総合的な判断の中に、国内法の中で母子家庭の間に差別を設けるということを認めている場合もよろしいということになるのですか。それならば、どうしてこの条約を日本は締結したんです。一たん締結すればこれを守るという国の義務があるんですよ。したがって、国はあらゆる法制度の上でその条約に違反すること、矛盾することをやってはならないということになるんですよ。
 今この条約に矛盾する、私に言わせると真っ向から違反していると思っています。世の多くの人はそう思うでしょう、この条文を素直に読む目を持っていれば。その法律案を厚生省が出してこられておるのです。実態はほかにありません。厚生省がこういう法案を出してきたということが実態なんですよ。この実態に即応して、外務省とすれば、条約を見た場合これはおかしいと考えるのが普通だと思いますよ。外務省の責任というのは、条約を守るという国の責任を果たすことでしょうが。もう一度答えてください。あなたは、きょうはどうもおかしい。
#131
○瀬崎説明員 この法案は確かに厚生省所掌の法案でございますが、閣議にお諮りする前に厚生省から十分に御説明は受けているわけでございます。その際に、次官会議、閣議等を経まして政府の意思が固まったわけでございまして、その段階におきましては厚生省からの実態的な御説明を十分受けた上で、先ほどから申しておりますように文理解釈、実態の判断、これらを総合的に勘案いたしまして特に問題はない、直ちに条約に抵触するというふうには考えてないわけでございます。
#132
○土井委員 外務省としては、しかし、これは人権規約の十条や二十四条にひっかかるなということをお考えになって逡巡されたということであるのかどうかというあたりはどうですか。そんなにすんなりとこれは大丈夫と初めからお思いになったんじゃないでしょう。どうです、外務省。
#133
○瀬崎説明員 確かに人権規約の十条を見ますと、出生その他いかなる事由を問わず差別してはいけないと書いてあるわけでございまして、国内法の中で従前と比べまして欠落する部分が出てきているという点がございますので、これは相当慎重に判断したわけでございます。ただ、その際に法案の条文解釈とあわせまして厚生省から実態上のいわゆる未婚の母子家庭に対する保護措置というものをお伺いした上で総合的に判断して、結果的には直ちに条約に抵触するというふうには判断しなかったわけでございます。
#134
○土井委員 外務省の考え方というのは全く釈然としませんね。これは幾ら条約を締結したって、そういうことを国内でやっていたんじゃ国際信用の上から言ったって怪しげなものになりますよ。そういう御答弁をなさるんだったら、今後、条約審議に対して考えさせてもらう。非常におかしいですよ。わざわざこういう条約を締結したという意味を国内的に生かさなければならない、そういう義務が日本としてはある。外務省としてはこれに対してやはり誠実に対応なさるということが問われていると私は思うのです。
 さて、あのような説明を幾ら承っていたって、これは時間のむだになりますから。厚生省がどういう説明をされたかというのは認識が大分おかしいと私は思っておりますけれども、今回の法案の中身を見ると、児童ではなくて母子世帯ということで世帯を対象に考える方向に変わっていっておりますが、離別母子世帯の経済的な実情というものは児童扶養手当がなくてもやっていける水準になっているというふうなことを示すデータがあったら言ってください。私は厚生省が出されている統計資料とかいろいろ見たんですよ。見ましたけれども、こんなものは一つもないですね。むしろ母子世帯というのはいよいよ経済的には困る、やっていけない、そういうことが現実の問題として出てきているデータばかりであります。
 もし児童扶養手当なしにやっていけるということ、もう既に大丈夫ですというふうな水準に達しているということを示すデータがあったら言ってください。
#135
○小島政府委員 五十八年に行いました全国母子世帯等調査によりましても、母子世帯の平均収入は、家族構成等多少の差はありますが、五十七年の状態でございますが、一般世帯、両親のそろっておる世帯が四百四十四万でおるのに対し、母子世帯は平均年収が二百万、それから父子世帯は二百九十九万という状態で、母子世帯の収入状況が一般世帯に対しましてそれより低いという状況は変わりありません。また、最も困っている状況を聞きましても、母子世帯のうち六四%が何らかの困っていることを持っているわけですが、その中の三八・九%がやはり家計が苦しいという悩みを持っておりますので、経済的に苦しいという状況には変わりないものと考えております。
#136
○土井委員 それはもうどこから推したってそうなんです。私は、厚生省の実態把握よりも、現実に母子世帯の方がどういうふうな生活を今送っていられるかというのを、たくさん手紙を持ってきたのですけれども、一々これを読んでいる時間がないのが悔しいです。中身を読めば読むほど、これは本当に人ごとではないのですよ。どうしてこれは今まで営々として体も壊さずに母子家庭の中でお母さんが頑張ってこられたかということを考えると、本当にいたたまれぬ気になります。今おっしゃったのは、数字としては厚生省が机の上で掌握された数字によるところの御答弁だったと思うのですけれども、その厚生省ですら出していらっしゃるのが、平均世帯というのが、五十七年の年間収入について言うと、母子世帯の場合二百万で、一般世帯の平均四百四十四万の半分以下だ。ところが、離別母子世帯の場合は平均百七十七万と一段と低いという数字が出ていますね。聞いてみると、生活保護世帯よりも可処分所得は低いです、働くことができるという前提でこれは問題にされますから。
 それで、いろいろなデータを見ていきますと、いろいろな声が出ているのですけれども。それではどういうふうに働いてその百七十七万あるいは二百万というふうな所得になっているかというと、おおよそはやはりパートが多いですね。母子世帯のお母さんの働いていらっしゃる雇用の窓口なんかに行きますと、職業訓練校に行って一生懸命に励んで、それからいよいよ仕事を求めていったときに、母子家庭であるということを聞いて嫌な顔をして、うちはそれは雇うわけにいきませんと言われ、暗たんたる気持ちになったということが書かれていたり、それから離婚したということを問題にして、そういう人間にうちで働いてもらうわけにいかないということを面前ではっきり言われる使用者があってみたり、いろいろこれもつらいつらい目に遭いながら、結局はパートタイマーであるという人たちが多いことも考えていただかなければならぬのです。これは世間の風当たりというのはきついですよ。冷たいですよ。男性の皆さん方がお考えになるよりはるかにこれは冷たい。
 第一、男性の方からそういう冷たい風を送られる場合が大半ですから、自分ではよくわからない。被害者についてはその思いはきついですけれども、加害者は一向にそのことに対して自覚しないということが世の中によくあるのを大臣もお気づきであり、御存じであろうと思いますが、その中で母子家庭というのは苦しい思いをしながら、そしていろいろなアンケートを見ると、今まで児童扶養手当のために子供を高校までやれたということにどれほど私は感謝しているかわからないという声もあるのです。今この児童扶養手当がぶっちぎられる。これはどういうことになりますか。大臣、お考えになって、切られて後、自分は恐らくは今回の対象から外れるであろうと思っているお母さんが、それじゃどうするかを聞かれた場合に、どういうふうに答えると大臣はお考えになりますか。ちょっと大臣考えてみてください。
#137
○増岡国務大臣 厚生省がこの問題について対処しておりますのは、児童扶養手当の法律だけではございませんで、母子福祉貸付金でございますとか、相談事業でありますとか、母子寮への入所とか、保育所に対する問題でありますとか、いろいろございますので、特にその中での母子福祉貸付金にっきましては特段の配慮を払っていかなければならないと思っております。
#138
○土井委員 それは御答弁じゃないでしょう。そういう立場に大臣がお立ちになったときには、まずぶっちぎられるとなるとどうしようとお考えになるかということを私は質問しているのですよ。今のはまるで違う御答弁なんだ。今、何をお考えになっていらっしゃるのですか。もう一度御答弁ください。
#139
○小島政府委員 事務的に説明申し上げなければならぬ箇所がありますので……。
 打ち切るという今御指摘でございますが、所得制限で切られる方については、一年間の猶予措置を設けております。また、今回支給対象にならなくなりますいわゆる未婚の母につきましても、現在受給なさっている方はそのまま支給するという措置を講じております。
#140
○土井委員 こそくなことをおっしゃってもそうはいかないのです。だから、あなたの答弁要らないと言っているのです。
 それならば大臣に申し上げましょう。それはお考えになる材料にしていただくために私は申し上げましょう。
 厚生省が掌握されているかどうかわかりませんが、各地域で母子福祉連合会などが、今回のこの政府から提案される法案の中身を見て、もうこれは大変だ、とんでもない、実態に対してどういうことであるかということをひとつきちっと自分たちの側で掌握するということをいろいろ今までやってきておられる。データも多いですし、実態に対して掌握されていることも多いです。それが文書になりますと、人の心というのはこの中では百万分の一か千万分の一にしか生かされないのでもどかしさを感じつつ、私もこれを読ましてもらったのですけれどもね。
 大体、今回大阪の方で調査をされた結果を見ますと、減額される世帯が一四・六%、打ち切られる世帯が一八・一%、全部合わせて三四・五%が現状のままということになるわけですけれども。しかし減額される、打ち切られる世帯と現状のままというのの以外に、わからないと答えている人たちがなおかつ多いのです。自分で考えてみると、改正基準というのは複雑で理解しにくいということと同時に、これはどういうふうになるのかさっぱりわからないという、まことに不安な気持ちのままでこのことに対して回答を出されたと思いますが、減額世帯一四・六、打ち切られる世帯一八・一、これはただごとじゃないですよ。
 この数字から、それではどういうふうにするかといったら、これがまた悲壮なんです。子供に進学をあきらめさせるというパーセンテージが強いです。子供にアルバイトをさせるというパーセンテージが非常に高いです。もちろん自分は内職をさらに体にむちうってするというパーセンテージも高いです。大臣、どうお思いになります。進学をあきらめさせる、悲壮ですよ。特に高等学校への進学をあきらめるなんというのは、その後の人生に全部、教育というのは中学校卒か、高校卒か、大学卒かというのは結びついていくわけですからね。これ自身大きな問題だということを言わざるを得ませんが、それをあきらめさせる。それでも考えて、歯を食いしばって考えることは、自分はもちろん内職するけれども。子供のアルバイト、未成年のアルバイトを大臣お認めになりますか。こういう悲壮な気持ちですよ。母子家庭の中から出てきている声です。大臣、どう受けとめられますか。
#141
○増岡国務大臣 そのような立場に立たされる方が私はゼロだとは申しませんけれども。どの程度の数字になるかは把握しておりません。しかし、そういうことを考えました場合、やはり常識としては、働くか学校へ行くのをやめるかということをまずお考えになると思います。したがって、私どもはそのことを予期しておるわけではございませんけれども。母子福祉貸付金におきましては、進学の際には無利子のお金を長期で返済をしていただくようにという制度もあるわけでございますので、それの活用を、これはまた母子家庭の方々がそういう方法を御存じない場合もあろうかと思いますので、周知徹底方も努力をしてまいらなければならないと思います。
#142
○土井委員 大臣、もうちょっと母子家庭の実態を−−私も大臣と同じように母子家庭じゃないですよ。特に私は母親の立場でもないのです。女性ですけれども、私は結婚したことがない。しかし子供は大好きで、子供を一生持つことができなかったというのは悔やまれてなりません。そういうことからすると、この母子家庭の実態というのを見たときに、今非常に軽い言葉で、進学をあきらめさせるかアルバイトか内職ぐらいしかないだろう、それで済む問題じゃないように私は思うのです。血と涙のある政治家として、大臣、考えてくださいよ。貸付制度があるじゃないかと言われるかもしれない。貸し付けのときには、これは保証人が二名以上必要なんです。だれが母子家庭の保証人になってくれますか。母子家庭の保証人になってくれる人がない。母子寮の寮長さんに頼んでもだめだった。地方から仕事を求めて都市に出てきて、路頭に三日迷って、どうしていいか途方に暮れたという手紙すら来ていますよ。
 修学資金があると言われるけれども、修学資金も私立の学校に行かせるような子供には貸さないと言われるのがこれは通常なんです。児童扶養手当が切られたら、就学援助金も打ち切られるのが普通です。大臣、どうでしょう。こういう実態を考えられたら、もうちょっと血と涙のあるようなこの問題に対する対応をしてくださいませんか。
 母子家庭の実態について調査をやっておりますかと聞いたら、この前、厚生省は、やっております、やがて発表しますと言って、発表されたんだけれども。私はその数字や何かを見ていって、今私が申し上げたようなことがその数字の行間にあるんですよ。母子家庭の実態というものに対して、もうちょっと自分自身が人間の気持ちになって考えてみるということから出発していただけませんかね。これは事務レベルの話ではないんです。大臣、いかがですか。
#143
○増岡国務大臣 私が先ほど就職や学校のことをあきらめると申しましたのは、先生の御指摘のような、そう軽く考えて言ったわけでは決してございません。それだけ深刻な問題であるという意味で申し上げておるわけでございます。
 また、進学あるいは雇用の問題にいたしましても、雇用は私の所管内ではございませんので、先ほど先生から、離婚した人はどうだこうだというような侮べつをしたような言葉を聞かれたということ、この点については、そのようなことはあってはならないことだと思いますので、そういう機関にも申し入れをいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
 私どもといたしましては、母子家庭の方々に対する気持ちは先生に劣らないと思っておるわけでございます。しかし、やはり行政の立場ということになりますと、今後永続をする制度を確立していくという責任のある立場でありますし、また、お手伝いをするということも、私個人でございましたら、何でもして差し上げなければならぬと思いますけれども、現在ある制度というものをやはり活用していかなくてはならない、これが行政にある立場でございます。
 今、私学のことをおっしゃいましたけれども、私はそのようなことはあり得ないことだと思います。学校はどこへ行こうと、そんなことで貸付制度で貸すか貸さぬかということはないと思います。(土井委員「あるんですよ、それは」と呼ぶ)もしありましたならば、それについては厳重な指導をしてまいりたいと思います。
 それから、保証人のことでございますけれども、これも民生委員でありますとか母子福祉連合会でございますとか、そういう方々に積極的になっていただくように指導してまいりたいと思います。
#144
○土井委員 積極的指導、指導とおっしゃいますけれども、それは確かに指導はないよりもあった方がよくなるのかもしれません。しかし、現在の母子世帯の実態ということに対して、もうちょっと痛みを持って指導ということをしてくださらないと、大臣、それは指導も血の通った指導には恐らく生きてこないと思うのですよね。
 今の、別れた夫の年収六百万、これの取り立てはどういう方法を講じられるというふうに厚生省として考えられていますか。
#145
○小島政府委員 今回、父親が六百万以上の収入がある場合には、まず実質的な扶養義務が優先するわけでございますので、その履行に期待するわけでございますが、その取り立てということにつきましては、母親が請求し、父親が払うという形を考えております。
#146
○土井委員 それをやってきて、現状、だめなんですよね。それをやってきてだめなんです。これは何というお答えなんですか。
#147
○小島政府委員 ですから、一般的に別れた夫が扶養義務を履行していないという実態は、先生御指摘のとおりでございます。今まで、過去のやったことがあるという者を含めて、我々の調査では約二割ぐらいしかございません。
 ただ、六百万という層は、所得の十分位法によりますと一番上の層でございます。これは一人の場合で六百万ということでございますから、その別れた夫一人が月収五十万ぐらいある状態でございますので、当然に経済的には十分履行できる状態にあるわけですから、そういう義務の履行をお願いして、またお母さんにもそういう努力をしていただくということでございます。
#148
○土井委員 大体考え方というのが、全部万事お金の問題なんです。現在も六百万以上離婚時に所得がある人でも、この子供に対する扶養料、養育費というのが入ってこないという家庭が多いんですよ、これは今の御答弁のとおりで。お母さんに努力してもらうと言ったって、今までやってこられてそうだったのです。国として何かの手だてをしないでおいて、今度、六百万離婚時の所得がある人に対しては児童扶養手当を打ち切りますというのは、これはもう逆立ちしたありさまでしょうが。何とかの手だてを講じた上でやるんだったらいいですよ。全くそこは欠缺したままで打ち切りますじゃ、これは打ち切られっ放しですわ。大臣、どうお考えになりますか。これは何らか手だてというのは講じる必要があるんです。何もないですよ、現に。
 私はこれは予算委員会で協議離婚と調停離婚の問題についても言いましたし、どれくらいのパーセンテージかも言いましたし、強制執行がどういうことかということも言いましたし、全部言ったから、きょうはもう繰り返し言いません。今何も手だてがないでしょうが。厚生省としてどういうお考えが手だてとしてあるんですか。外国ではいろいろ手だてを講じている国はありますけれども、日本は何もないのです。
#149
○小島政府委員 御指摘のように、外国の場合は少なくとも未成年の子供を抱えた家庭が離婚する場合には、必ず裁判所が関与するという形で、そこで父親の扶養責任、扶養額等を特定し、そこではっきり債権と申しますか、その額が確定されております。日本の場合は九割が協議離婚でございまして、なかなかそこの扶養義務責任が明確になっていないという問題があります。これらにつきましては離婚制度そのものとも密接な関係がありますので、直ちに外国のような制度をとることは我が国の法制上は困難でございます。したがいまして、現在制度審議会の御指摘もございましたし、厚生省内部に家庭裁判所の方とか、それから法律専門家とか、法務省の方とか、福祉関係の方という方々に参加願いながら、この実行方法についての検討を急いでおるところでございます。
#150
○土井委員 実行方法についての検討を今急いでおられるの。じゃ、それを検討してやってから法案を新たに出し直してください。もうこの法案は後回しにして――だから、順序からいったら、まだできてもいないものを、先に中身のない法案を出した格好ですよ。こんなのは、法案自身が審議の対象になり得ない。大臣どうですか、これは。
#151
○増岡国務大臣 離婚に伴いまして養育費を払うということは、我が国の民法上父親の義務であるわけでございます。しかし、先生御指摘のように、現実にはそのとおり行われていないということから来る矛盾の問題であろうと思います。
 ところで、我々が法律案を出します際に、そういう本来払うべき父親の義務、それを払わないでいいよというふうなことを暗に認めるような法体系は私はとり得ないと思います。したがって、依然として父親は義務として払いなさい、しかし、実際にはそれが取れないんだということで、こういうふうな妥協みたいな格好になっておると思うわけでございますが、この点につきましてはいろいろ御議論のあることでございますので、本委員会で十分御審議をいただきたいと思います。
#152
○土井委員 審議をすると言ったって、あなた、法案にそれを審議する対象がないのじゃないですか、大臣。外国のこういう問題に対する対応というのは、子供の問題である、児童に対する扶養を国がどう考え、社会がどう考えるという問題であるということを徹底して考えた上でつくられた制度なんですよ。先ほどの御答弁からすると、お母さんに取り立てをしてもらう、あくまでそればかりおっしゃいますけれども、今回は、そういうことを考えた上で、何の手だても講じないでぶつ切って、被害を受けるのは子供なんです。子供の問題なんですよ。大臣、その手だては何もないままに法案を出して、審議を十分してください、これは無理難題というものです。ちょっと順序が逆であります。大臣もそれはお認めになると思う、さっきからにやにや笑っていらっしゃいますから。
 さて、自治省、御出席をいただいていると思いますが、五十八年七月七日に決算委員会で自治省の石原財政局長がこういう答弁をされております。「現在の児童扶養手当、特別児童扶養手当、これは内容的には、福祉年金でありますところの母子福祉年金あるいは障害者年金との均衡を図るということでできた制度でありまして、給付の条件とか給付の内容とか、すべてこれらの年金と全く同一であります。したがいまして、そういう実態にかんがみまして地方の負担はない、全額国庫負担として今日までこの制度は実行されてきたもの、このように理解しております。したがいまして、この制度の実態が全く変わらないままに、単に財政上の理由その他で地方の負担を導入するということは、われわれとしてはどうしても納得できない、こういう考え方でおります。」実にきっぱり言われています。
 自治省としてはこういう考えに変わりありませんね。
#153
○鶴岡説明員 この問題につきましては長い経緯があるわけですが、当初都道府県負担というのを制度の改正なしに御提案があったと思います。その当時、私どもはそういう主張をしてきたわけでございます。今回の法案は、児童福祉問題懇談会の報告を踏まえまして、今も御議論されておりますように制度が見直しされたわけでございまして、私どもは、見直し後のこの制度と保育所行政等値の児童福祉施策における国、地方の財源負担区分等を勘案しまして今回地方負担を導入することといたしまして、そのため所要の財源措置を地方財政計画上とることにしたわけでございます。
#154
○土井委員 この考え方については変わりないでしょう、どうですか。私の聞いているのはその点なんです。
#155
○鶴岡説明員 私どもは、今回の法案で児童扶養手当につきましては制度が変わったと理解をしております。
#156
○土井委員 そうですか、今回の法案の提案で制度が変わった。そうすると、制度が変わる以前は母子福祉年金と児童扶養手当というのは、この答弁からすると同額でなければならない。既に五十九年度は年金と手当の中身が違っていますよ。年金よりも手当の方が三百円低くなっていますよ。そうでしょうが。ことしに至っては、まだ法案は通っていませんよ、法案も通っていないにもかかわらず、額を見ていくと千五百円も低くなっている。これはどういうことですか。国会無視も甚だしいとしか言いようがないです。まだ法律になっていないのですよ。法案の段階でこんなことを先行して、一体これは何をやっているのですか。
#157
○小島政府委員 今お読みになったのは、自治省の幹部職員の御見解であります。確かに、これは補完する制度としてやっておりましたが、所得制限等についても差異があったり、必ずしも母子福祉年金と同額である絶対的な必要性はないと思います。同額でないという方の問題は生ずるかもしれません。
#158
○土井委員 お取り扱いの上でそういうことをやってこられていたのです。それが昨年から差が開くようになったのですね。首を縦に振ってはい、はいとおっしゃっていますから、声にはなっておりませんけれども、それはお認めになっているわけでありまして、まだ法律になっていないにもかかわらずそのことを先行して、既にそういうことを打ち出しておられるということが現実の問題としてあるのです。
 それで、今度は自治体が二割負担ということで窓口の方からの手紙がたくさん来ています。自治体の各議会でも、こんな法案を通してもらっては困るというふうな決議も届いています。自治省の方にも、こういう法案はまかりならぬというふうな各自治体からの要求が来ていると思います。県レベルや市レベルで来ているでしょう、自治省。
#159
○小島政府委員 先生御指摘のように、地方公共団体の状況を見ますと、五十九年度に県議会レベルで六件、市町村議会レベルで百七十八件、六十年度で県議会で一件、市町村議会で十三件、合わせまして百九十八件のそういう意見書を厚生省で受け取っております。
#160
○土井委員 簡単に数字をおっしゃいますけれども、満場一致でないとそうならないのです。与党も野党も全部がこぞってこれはお断りだということにならないとそうならない。国会決議でもそうですけれども、決議をするなんてよくよくのことですよ。自治体からの手紙も来ておりますけれども、窓口の人たちも困っておられます。今までだって取り扱いの上でいろいろ難渋した、身上調査をやってプライバシーの侵害にわたらないように自分は配慮しながらやってきたけれども、それでもやはり母子家庭の場合には、源泉徴収票や所得証明を出せる人は二割くらいしかない、あとの人たちは、八割方が未申告だという実態を抱えて、今度は自治体によってはでこぼこがございます。実際の税収の多いところとそうでないところと差が大分開くでしょう。取り扱いの上でも、今までに比べると厳しくなることがあっても緩和することは絶対にないのですから、これだけは。
 したがって二割を金額の上だけで地方自治体にというだけの話じゃないのです。実権が今度は自治体に、知事に移るわけですからね。今までは機関委任事務だったけれども、今度は知事が大体全部取り扱いをされるわけです。今まで国の方が一〇〇%負担というときには郵便局が窓口になるということになっていたようでありますが、そうですか。
#161
○小島政府委員 今までは一〇〇%国負担の機関委任事務でございました。今度は二割が都道府県負担の機関委任事務でございます。機関委任事務である性格には変わりはございません。
 第二のお尋ねの、支払い窓口として従前郵便局を活用していたということでございます。
#162
○土井委員 郵便局の窓口にもいろいろな嫌がらせもあるようですよ。今度は全部を自治体という格好になっていくと、そういう実態について厚生省は掌握できますか。今までよりもっと難しくなると私は思う。肝心な、それを受け取る児童の立場を考えてみてください。児童の間に差別をつくるのですよ。受けられる子、受けられない子、受けられる子でも母子家庭の子だという認識、それはいろいろなところで苦しみながら、それでも歯を食いしばって頑張っておられるそれぞれの子供、お母さんに対して差別を設けるという格好になるのです。
 私は、この自治体の二割負担の問題について、るる申し上げるということが必要かもしれませんけれども、時間の関係で、ちょっと言いますが、今回地方の二割負担も含めまして、政府が提案されている法案の中身からすると、どれくらいの費用の減額を見込みとして持っていらっしゃいますか。
#163
○小島政府委員 地方負担をお願いしますのは、新制度が発足後の新規認定分からでございます。したがいまして仮に本年六月から実施をお願いするといたしましても地方負担は三億八千万ぐらいになろうかと思います。この制度が満年度化いたしますのは十五年ばかりかかろうかと思います。満年度化した場合の地方負担は三百六十億程度になろうかと一応推計いたしております。
#164
○土井委員 地方の二割負担で減額三億八千万ぐらいと今言われましたね。その地方の二割負担の三億八千万を含めて、離別のときに夫が六百万以上の所得があったということが考えられる人たちに対して支給しないという条件や、今度は二段階による支給の規制の問題や未婚の母に対しては支給しないということを全部含めますと、どれくらいの減額になるんですか。なぜそういうことを言うかというと、この法案というのは万事財政上の理由によって考えていくという基本姿勢があるからです。
#165
○小島政府委員 今度の改正によりまして、地方負担を除きます減額分というのは一先ほど六月実施と申しましたが、八月実施の間違いでございます。八月実施ということで考えますと、六十年度は三十億程度と考えております。
#166
○土井委員 三十億程度と不確かなことをおっしゃいますから、私の方で試算をした中身を申し上げましょう。そんなあやふやなものじゃない。地方の二割負担、確かにさっきおっしゃったとおり、減額は三億八千万です。それから離別のときの夫の所得が六百万円以上については支給しないで八千万の減額。今度は二段階によるところの支給制限、これで二十九億ですよ。未婚の母に対して支給しないというのは六千万円です。都合、トータル三十四億円なんです。ことし計上されている予算というのは二千六百五十一億円でしょう。二千六百五十一億という予算は、今申し上げた三十四億円というのを差し引いて、削減して考えられた予算が予算案として計上されているんでしょうが。大臣、これはおかしな話で、既に、こういう問題に対して法案が法律になっていないときにこんな予算を予算案として計上して通してくれ、通してくれといって強力にそれに対して強行を迫られるというのはいかがかと思われますが、ここで一つ大臣にお尋ねをしたいことがある。
 大臣は厚生大臣ですからね、福祉優先ですか、軍事優先ですかと聞かれたら、どうお答えになりますか。大臣はそれに対してどういうふうにお答えになりますか。大臣の大臣としての御所信と、おやりになるお仕事は福祉優先で臨んでいらっしゃるんですか、軍事優先で臨んでいらっしゃるんですかという質問に対して、一体どうお答えになりますか。
#167
○増岡国務大臣 厚生大臣であるからには福祉優先であることはもちろんでございます。しかし、国務大臣といたしましては、全国のことも考えていかなければならないと思います。
#168
○土井委員 福祉優先であるけれども、何だかそれからが歯切れが悪くてわけがわからぬ。そんな程度の考え方で厚生大臣をやってもらっては困るんです。やはり徹底して福祉ということに生きて生きて生き抜くべきですよ、厚生大臣というのは。
 それからすると、ことしの予算の上でも見ていきますと、地方の二割負担というのは減額三億八千万円、びっしり当てはまるのが七四式戦車一台分です。七四式戦車一台が三億八千三百万円ですよ。これはびっちりです。戦車一台やめれば、自治体に対して二割負担を迫らなくて済む。全額国庫で負担すればいいんです。戦車一台ですよ、わずか。七四式戦車というのが一台あるかないかで国の運命というのは左右されますか。
 厚生大臣は、国民の血税であるから使うことに対しては責任を持ってやらなければならぬ、そういうお立場であることもわかります。福祉問題というのにもこれはやはりそれだけのお金がかかる、したがって、心してその中身に対しても考えなければならぬ、これもわかります。しかし、今申し上げているのは、これはそうなんですよ。そうして三十四億というのは、この七四式戦車を十両やめればできるんです、これ全部が。ことしは一体どれぐらい考えたか。六十両考えているんですよ、七四式を。福祉優先とおっしゃるんだったらその姿勢を貫いてもらいたいと思いますよ、戦車十台分ぐらいやめてほしいと。
 児童扶養手当に対してそれならば現行のままで、さらに整備することが必要ですよ、しかし現行のままで少なくともやっていける、それぐらいの執念を、大臣、持ってくださいよ。F15やP3Cに至っては、一機分というのはF15は百一億五千六百万円、P3Cは百十四億八千二百万円です。三十四億といったら、あの飛行機の翼だけぐらいなものです。そういうことを考えられたら、大臣、一体これはどうなります。
 大体、委員長でもそう、大臣でもそう、自民党の皆さん、そうですよ。選挙になったらこれは全然だめですな、これでやられると。福祉優先なんて何を言うとるかと言われますよ。それは少なくとも非常に女性からのこの問題に対しての不信を買うということになると私は思うのです。母子世帯からは見限りをつけられるでしょう。厚生大臣の立場からしたら、まず母子世帯の人が、大臣ようやってくだすった、そういう大臣で初めて厚生大臣の値打ちがあると私は思っているのです。どうです、これをお聞きになって。
#169
○増岡国務大臣 制度が変わりましたがためにそれだけの減額になるわけであります。私は、先ほど申し上げましたように、福祉優先ということを貫いてまいりたいということでございまして、ことしの予算は厚生省全体といたしましては二・七%増、二千五百億円の増加をとっておるところでございます。
 戦車十両とおっしゃいますと、まさにその数字に当たるのかと思いますけれども、まだ依然として厚生省は防衛庁の三倍の予算を持っておりますので、その中でやりくりをしながらいろいろ工夫をして、今後とも福祉の増進に努めてまいりたいと思います。
#170
○土井委員 その中のやりくりとおっしゃいますけれども、基本姿勢が大事なんですよ、基本姿勢が。どういうふうな基本姿勢で事に臨むかということが大事だと思います。
 今回のこの児童扶養手当の問題に対して、母子家庭の中で特に今度は差が出てくるのです。差をわざわざ厚生省がつけたのですよ。つけて、そしてしかも減額をする。今まで支給されていたものを支給しないようにする。こういう方向でやることが基本姿勢として大事なんですか。そうではないでしょうが。児童の福祉ということを考えていく、あくまでそれを大事に思うという基本姿勢からすると、今度のような法案は出てくるはずがないと私は思うのです。
 もう時間がそろそろ来ていますから、最後に二つ私は尋ねたいと思いますけれども、父子家庭に対しての調査はどのようにされていますか。先日、私は兵庫県の方から、父子家庭の取り扱いを福祉対策としてしたい、どういうことになっているかということを問われて、そして厚生省の方にお尋ねしたら、心もとない限りでしたよ。父子家庭に対する実態も、よくそれは取り扱い方としてなさっていらっしゃらない。
 この今回の法案に当たっては、ひとつ父子家庭の問題をまず法案を出す出さないにかかわらず、やはり対応を社会保障、社会福祉という点で充実させていくというのは、これは考えなければならない問題だと思います。
#171
○小島政府委員 父子家庭につきましては、御指摘のように従前は父子家庭というものの調査というのは極めて不完全なものでございまして、全国的な調査というものはございませんでした。
 この五十八年の母子家庭調査にあわせまして父子家庭につきましても母子家庭と同様の調査項目で調査をいたしております。
 父子家庭の状況を見てみますと、母子家庭では先ほど申し上げましたようにやはり経済的な困難を訴える層が一番多いわけでございますが、父子家庭の状況を見ますと、経済的な問題というよりも子供の世話とか家事に悩みを持っている方が多いという傾向を把握しております。したがいまして、父子家庭につきましては家庭奉仕員派遣事業の拡大あるいは必要な保育所の整備というようなことを通じまして必要な対策を講じてまいりたいと考えている次第でございます。
#172
○土井委員 それは教科書みたいなことをおっしゃいますけれども、大臣は先日来もう幾たびかこの問答集について質問をお受けになって、その都度、問いの十のある部分が非常に思わしくない表現で、これは困ったという思いに何回かおなりになったと思いますが、困ってばかりいないで、その後の措置はどうなさいました。「いわゆるおめかけさん」と書いてあるのです。あそこの部分、どうなさいました。その措置について、どうなすったかだけを言っていただきたい。大臣は御答弁の立場でいらっしゃいましたから。
#173
○小島政府委員 確かに不適切な、また不正確な表現を用いて誤解を招いたり、大変御迷惑をかけておる部分もあったかと思いますので、これは課長会議を通じまして、配付先が都道府県でございますので、そういうことを通じまして、適切さを欠く表現があったので、あそこはこういう趣旨であるということで理解を求めたところでございます。
#174
○土井委員 こういう趣旨で理解を求めてって何ですか、それは。間違っていたら、削除したり撤去したりするのが普通でしょうが。そういうことだからだめなんです。厚生大臣だって、こういう問題に対してのこの認識というのは、単にこれは字面の問題だ、表現の問題だじゃないですよ。物の考え方です、これは。取り扱いについての基本姿勢ですよ。これがにじみ出ているのです。いろいろぐずぐずと言いわけめいたようなことを、この一回出してしまった皆さんの物の考え方に対してされる必要ないんで、あれは撤去します、あれは撤回しますということが普通でしょうが。それをやっていられるのですか、やっていられないのですか。
#175
○小島政府委員 あのパンフレットは、理解を得るためということがかえって誤解を招くようなところがありましたので、そこは何ゆえに今回未婚の母子家庭が対象にならなかったという正しい説明に変えさせていただいたということでございまして、したがって、あの部分は結果的に撤去されております。これは新しい部分に訂正さしていただいております。
#176
○土井委員 新しい部分に訂正したというのは、どんなに訂正したか、出してください。正しく訂正したと言われている、その正しい訂正というのを出してください。
#177
○小島政府委員 これは口頭説明でございますが、未婚の母が今回対象とならなかった理由は、今回の改正によりまして、児童扶養手当というものが離婚等による母子家庭の生活の激変緩和を図りながらその母子家庭が自立できるまでの間の母子家庭という状態にある児童の福祉のための措置である、手当制度であるということで、そういう観点からいたしますと、従前夫によって生計を支えられてきたという事実のない母子家庭については、離婚等によると同様の生活の激変がないわけでございます。そういう観点から対象にならなかったという説明でございます。こういうことでございますということで、あの箇所を訂正いたしております。
#178
○土井委員 それは訂正になってない。役所仕事では、文書で出したものは文書で訂正するなり、撤回するなり、削除するなりするのが仕事なんです。今のは口頭でと、恐らく電話でしょう。電話であってもなくてもいいです。現実、口頭では訂正になっていません。だから、訂正してないというふうに私はまだ受けとめています、その辺は。よろしいか。
 大臣、総じてこの法案は、少なくとも大臣は、既にこの法案のままじゃいかんなというお気持ちだろうと思う。これからどういうふうに対応されます。これ、いかがですか。頭ばかりかいてないで、ちょっと肝心のところだから、私はそれをお伺いして、もう時間が来たようですから……。
#179
○増岡国務大臣 私どもといたしましては、御議論のある箇所はよく承知しておるわけでございますけれども、法律全体といたしましては、現在の事情のもとでは、原案がまあまあ考えられる線かというので御提案を申し上げておる立場でございますので、これ以上の御議論はお許しをいただきたい。
#180
○土井委員 それで、御批判はそれはいろいろというふうなことをおっしゃいますけれども、大体今まで出てきた議論の中では、それは厚生省とされてはここがポイントというふうに考えられた点、全部問題だったのでしょう。全部実情から考えると、この法案自身に問題があるということに相なったわけでしょうが。考え直しが必要なんですよね。過ちは正すことをやっぱりはばかってはいけないと思うので、大臣、大臣の真骨頂をここで示すときが本当に来ていると思うのです。英断をもって臨まれることが、この節大臣に問われていると思うのですよ。大臣は、率直にこのことに対してちょっと答えてくださいませんか。この法案に対しての取り扱い方を、自分としたら少なくともどういうふうに考えたいと思っていらっしゃるか。いかがです、御所信は。
#181
○増岡国務大臣 大変恐縮でございますが、私としては、委員会の御審議におゆだねする以外にないと思います。
#182
○土井委員 しかし、大臣とすれば、少なくとも原型のままでは、いろいろ問題が出てきている、このままやり切れない。やっぱりちょっと法案としてはよい法案ではないということをお考えだろうと私自身は思うのです。これはもういろいろ今まで、与党の中でもこれに対して、これはこのままでは困るというお声があるわけですから、だから、そういうことからすると、大臣、それは大臣自身がそれは審議に全部ゆだねるとかなんとかでなしに、大臣の御所信というのはやっぱり大事です。一言言っておいていただいて終えたいと思います。
#183
○増岡国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますので、十分御審議をいただきたいと思います。
#184
○戸井田委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三分開議
#185
○戸井田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大原亨君。
#186
○大原委員 今までかなり各委員から突っ込んだ御質問があったと思うのですが、私も独自の立場でひとつ質問を続けていきたいと思います。
 私は大体二つに大きく分けまして質問をいたしたいと思いますが、昭和三十六年に児童扶養手当の制度ができたわけですが、その児童扶養手当ができた立法の趣旨と、それから児童扶養手当の対象となる項目と人員の現状につきまして答弁をいただきたいと思います。
#187
○小島政府委員 児童扶養手当、御承知のように、三十六年に御立法願いまして三十七年度から実施しておるわけでございますが、これは三十四年に国民年金法が制定されまして母子福祉年金という制度ができました。しかし、これは年金制度でございますので、死別という保険事故に着目して、残された母子家庭にその生計を助けるために福祉年金を支給するという制度でございますが、離別というものは年金の保険事故になじまないものでございまして、そこに入らなかった。施行後、母子家庭という状況は生別、離別を問わず同じような状態ではなかろうかというような観点から、生別の母子家庭につきましても、いわば母子福祉年金制度を補完するような形でこの児童扶養手当制度が創設されたわけでございます。したがいまして、これは父と生計を同じくしない児童の福祉の増進を図りますために、父と生計を同じくしていない児童、すなわち母子家庭という状況に着目いたしまして、その家庭に手当を支給することによりその児童の福祉を増進しようとする制度でございまして、そういう趣旨は現在も変わっておりません。
 ただ、今改正法案で申し上げておりますのは、この児童扶養手当法が、先ほど申し上げましたように母子福祉年金制度の補完的制度として発足したわけですが、既に母子福祉年金というものはなくなるという事態を迎えておりますので、この際、社会保障制度全般の中で児童扶養手当制度のあり方を検討した結果、純然たる福祉の措置としての制度という形で機能を覚ましていこう。そういう観点から考えました結果、離別等によりまして生計の支え手である夫からの援助がなくなったというような家庭について、その状況に移ります家計上の激変の緩和を図りながら、その母子家庭の自立促進ということを通して児童の福祉の増進を図っていこうという制度に組みかえたわけでございます。
 受給者数の状況等につきましては、これは制度発足からの推移でございましょうか。(大原委員「現状です、対象別の」と呼ぶ)現状で児童扶養手当を受給なすっている母子家庭は六十一万世帯でございます。このうち離婚の世帯が四十四万四千世帯、全体の七二・八%を占めております。死別の世帯が三万五千世帯、五・七%、いわゆる未婚の母子世帯が三万六千世帯、五・九%、父が障害者であるということによって受給されている世帯が三万三千世帯、五・四%、父の遺棄という状況で受給されている世帯が五万一千世帯、八・四%、その他一万一千世帯、一・八%、合計六十一万世帯となっております。
#188
○大原委員 後段の答弁で明らかなように、今は生別の母子世帯、離婚の問題を中心に議論をしておるわけですが、制度が昭和三十六年に法律が施行をされました当時は、つまり日本において一応は皆年金体制ができて、そして遺族年金、母子年金もできて、母子福祉年金もできた。これは経過措置としてできた。その経過措置の母子福祉年金は、当然のことですが、時間がたつに従って現在においては少なくなった。ただし、そのときに社会的に考えて、社会的な事故と同じような残っておる問題点を全部児童扶養手当法で吸い上げてやったわけでありまして、今の御答弁がありましたように、生別母子世帯、それから死別の母子世帯の中で母子福祉年金等のないものを対象にしたわけですね。それから未婚の母子世帯、障害者の世帯、遺棄世帯、これは父が蒸発したという場合等でしょう。そういう問題等全部拾い上げてやったわけですね。例えば所得においては若干有利な立場に立つのですが、生別の父子世帯もあるわけです。こういう点についてはなお検討中のものもあるわけです。
 しかし、今この委員会で議論になっているのは、生別の母子世帯を中心として議論になっておるし、質問もそこに集中しているわけです。ですから、今私が申し上げております点について、皆年金体制の中で、生別世帯、蒸発やその他全部含めて、障害者も含めて年金の網にかからなかった人をすくい上げたのです。救済したのです。ですから、この問題は、言うなれば一つは経過的な措置であると言ってもいいのですけれども、生別、離別の場合にこれを社会的な事故として見られるかどうかという問題であります。これは単なる福祉なのか、あるいは言うなれば社会的な助け合いなのか、保障なのか、こういう論点の分かれるところでもあるわけですが、そういうことが一つの問題であったわけです。これは社会的な事故ではないのですか。どうなんですか。
#189
○小島政府委員 離婚というのは社会的現象でございますし、社会的な事故であろうと思います。ただ、これは本人の意思が関与するところが大きいところでございますので、いわば社会保険で行っておる保険事故というようなもの、保険数理の上には乗りがたい事故である。そういう意味で死亡というような事故とはちょっと性質を異にするものであると。いうふうに考えております。
#190
○大原委員 一定の年をとるとかあるいは働き手の主人が亡くなるといった場合における遺族の保障とかあるいは障害事故というふうな社会的な事故、そういう年金の制度の上に乗っかっていくところの社会的な事故とこの場合とは若干ニュアンスの差がある、しかし社会的な事故に違いはない、こういうふうに私は考えるのですが、いかがですか。
#191
○小島政府委員 おっしゃるように社会の一つのいわば病理現象と申しますか、事故であることには変わりなかろうと思います。
#192
○大原委員 それはどういうところが社会的な事故なんですか。
#193
○小島政府委員 普通、結婚して共回生活を営んでいる、それが何らかの理由によりましてお互い別れる、その場合に問題になってまいりますのが特に子供のある家庭の場合というようなことで、社会的な対応が必要とされる場合が生じてくることになろうと思います。
#194
○大原委員 どうもあなたの答弁はあいまいなんですよ。社会的な事故というのは、一体どういうことが事故なんだ。年金制度になじまない点があるけれども、社会的な事故である、こういうふうにあなたも言っておるし、私も主張しているわけですが、社会的な事故とはどういうことなんだ。何が社会的な事故なんだ。
#195
○小島政府委員 事故というそれぞれ定義の仕方、先生のお考えになっているのと、私、違うかもわかりませんが、通常の一般的な状態が変わったというのを一つの事故と見るか変化と見るか、用語の問題はあろうかと思いますが。
#196
○大原委員 それはどういう人にとって事故なの。
#197
○小島政府委員 それは、離婚の場合ですと、夫にとっても妻にとってもまた子供にとっても、そういうことによっていろいろな生活上の変化が生ずるあるいはいろいろな困難が生ずる、問題が生ずるという意味では、それぞれの問題が生じているものだと思います。
#198
○大原委員 私は、そこらを大臣の見解も聞きたいのだが、父にとっても事故だ、母にとっても事故だ、子供にとっても事故だ、こういうふうなことを言うから政府のような改悪案になるわけだ。そうじゃないのだ。それは児童にとって事故なんですよ。児童にとっては、働き手の主人が死ぬる場合と、夫の方がアルコール中毒だったりサラ金であったりばくちで突っ込んだり、そういう蒸発等あるいは社会的に非常に精神的な過労が強くなってそれに耐えられなくて家庭が破壊されるということなんですけれども、そういうことを含めて、児童にとっては生き別れであろうが死別であろうが同じなんです。それをほとんどがお母さんが扶養している。こういうことから、母子福祉年金に言うなれば対応して、皆年金制度を補完をしてやった。ですから、生別の家庭だけではなしに、児童の扶養という観点から幾つかの問題点を全部挙げて、児童扶養手当法で吸い上げたわけです。私はそういうふうに考える。
 社会的な事故は児童にとって社会的な事故である。実質的には年金制度になじまないという点もあるけれども、社会的な事故であることについては変わりはないと思うのです。いかがですか。
#199
○小島政府委員 確かに、社会的にそういう事故と申しますかそういう離婚というような事象が生じた場合に、どこに社会的な対応として一番関心が集中するか、また行政上考えなくてはならぬかという場合には、おっしゃるとおり子供の問題であろう、こう考えております。
#200
○大原委員 だから、そういう観点から言うと、あなたが御答弁になった点にもあるけれども、私が指摘した点にもあるのですが、その中で、今件数は挙げませんけれども、どんどんふえているのは離婚なんですよ。それから、死別の母子世帯で無年金状況、年金の網にかからなかった人も、激増はしておりませんけれどもふえておるわけです。これは必ずしも減るとは限らない。今の年金制度は非常に欠陥がありますから、新しい制度は特にそうですから、それから漏れている人が出てくるかもしれない。これはそういうことです。それから未婚の母子世帯というのはどんどんふえる傾向にあるのです。
 これは、めかけに子供を産ませたとかあるいは勝手に子供をつくったんだからというふうな議論を、男ばかりの世界で議論したということがいつも問題になっているようだが、質問の中にも出てきておるようですが、未婚の母子世帯がふえるというのは社会的な客観的な事実なんです。これは昭和四十五年程度から比較をいたしますと、一万七千五百九十四名であったのが三万六千名を超えているわけですから、どんどんふえている。どんどんふえていくのは世界的にもそういう傾向なんです。これを子供の立場に立って社会的に受けとめていこうという制度としてあったわけです。他の制度との関係については私はまた改めて質問事項を変えますけれども、そういうことであります。
 障害者世帯の児童についてもやはりふえる傾向にあります。障害が複雑化、高度化いたしますからね。そして遺棄世帯に至りましては昭和四十五年を基礎といたしますと二万四千名が、昭和五十八年の六月ですが、五万三千人くらいになっているわけですから、もっとふえているはずでありますけれども、倍増しているわけですね。
 そういう観点で、社会的に言うなれば死別の母子世帯と同じような状況にある児童、あなたが御答弁になった児童、そういうものは今日の社会的な条件の中では、母子福祉年金のように年金制度が整備すると減るものもあるけれども、そうでなくて、どんどんふえるという傾向のものが非常にたくさんあるわけですよ。それに対してどういう施策をするかということを年金制度との関係を考えながら政策を進めていかなければ、本当の意味における児童憲章とか憲法とか、子供を尊重するとか、人権、人格を尊重することにならぬと思うのですね。私は、そういう問題に対するとらえ方が足りないのではないかという点を指摘しますが、いかがですか。
#201
○小島政府委員 御指摘いただきました母子世帯の形態別と申しますか、類型別を見ますと、離婚による母子世帯はどんどんふえております。その他死別、未婚の母子世帯、障害者世帯と、近年はほぼ先ほど申し上げたような数字の前後で安定的に推移してはおります。
 先ほどから先生御指摘のように、年金になじむ事故となじまぬ事故とがあろうと思います。やはり偶然に生ずるもの、必然性のあるものというようなものが年金でございまして、本人の意思によって左右されるようなものについては、なかなか年金制度には乗りにくいということでございます。したがって、本来的に年金は拠出金を、保険料をもとに、国庫補助もありますが、それを財源といたしまして、所定の保険事故が出た場合に、一定額の所定の給付をしようという制度でございます。こちらは、全く一般財源といいますか租税収入等を基礎といたしまして、どのような対象の家庭の児童に着目して、あるいはどのような家庭に着目して必要な援助をどういう形で出そうかという、やはり福祉の観点から考えていい措置ではなかろうかという見地から、年金と切り離した形での見直しを行ったのが今回の改正案でございます。
#202
○大原委員 民主主義の社会ですから、だんだんと政治が成熟してくるにしたがって、やはり考え方もちゃんと個人的な問題とか家庭的な問題とかということと離して社会的に問題をとらえていく。社会的に問題をとらえていけば、社会的な事故によって主たる被扶養者が、働き手がいなくなった場合に子供がどういう立場に立つかという点を事故の原点と考えて施策をする場合に、私は、あなたが言うように、福祉とはどういう意味を言っているのかわからぬけれども、今まで何回も答弁されているようだが、どういうことを言っているのかわからぬけれども、福祉の範囲内でこの施策をやるというのは一体どういうことなんですか。年金の補完的な制度としてやるのではなしに、福祉としてやるというのはどういう意味ですか。
#203
○小島政府委員 年金の補完的制度として、給付額につきましても母子福祉年金とほとんど同じように考えてきた。福祉の措置になりますれば、やはりある一定の水準以下の世帯を対象とする手当でございましても、その生活の困窮度に対応して手当額を考えるというのは、年金制度と違いまして、一つはやはり福祉のあり方ではなかろうか。
#204
○大原委員 それでは、ひとつ論点をちょっと変えますけれども、外国では児童扶養手当の制度が、日本のような制度がないです。ないのはなぜですか。
#205
○小島政府委員 一つには児童手当制度が諸外国では完備しておる。相当額の給付を行っておるのが第一の原因であろう。第二の原因といたしましては、離婚制度が日本と大きく違いまして、日本の場合ですと協議離婚が約九割でございます。諸外国の例を見ますと、特に未成年の子供を持っている場合の離婚につきましては大きな制約がございまして、必ず裁判所が関与する。そこで子供の養育責任を明確にしたり、あるいは父親の毎月なり毎年送る養育費の額を特定したりという形で、そういう特定を通じまして公的にもそれを援助できるような措置を組み込んでいるところもございます。そこが大きな違いだと思います。
#206
○大原委員 一つは、児童手当の制度です。一つは、婦人の年金権にも関係しますけれども、年金の制度と、その他、今のように離婚の手続の問題ですね。そこで一つは、児童手当については外国ではほとんどが所得制限なしですね。それから第一子がほとんどでしょう。金額についても第一子、第二子、第三子、第四子となるに従って支給額をふやすとか、あるいは全体を見てみますと、やはり社会的に自立の基盤となり得るような、子供を抱えておって費用がたくさん出るわけですから、それに対してそれが障害にならないような、そういう条件を整備して児童手当制度をやっているわけです。
 日本の社会福祉の国民所得に対する給付率が一三%程度と低いのはなぜかというと、一つは児童手当の制度というものが日本にはないからです。今、外国の児童手当について私が申し上げた点であなたがこれにつけ加えて説明することがありますか。いかがですか。
#207
○小島政府委員 ほとんど先生今お話しいただいたとおりであろうと考えております。
#208
○大原委員 今度は児童手当について、昨年末に児童手当審議会が答申しましたね。これは、出生から三年間で乳幼児を対象にして、打ち切ってしまうというわけですね。第二子から始めるのでしょう。児童手当を政府が改正するといって、非常に内外で議論が起きてまいりましたが、児童手当については、改正案については政府はどういう措置でおるのですか。
#209
○小島政府委員 児童手当については五十五年に中央児童福祉審議会の意見具申をいただきまして、その後第二臨調の場においていろいろ御指摘をいただいたり、また各方面からいろいろな議論のあるところでございます。現在の日本の児童手当制度は、三人以上子供のいらっしゃる家庭を対象に、手当の支給の方法としましては三番目以降の子供さんに月五千円、低所得者階層は七千円ということになっておりますが、それを生まれたときから義務教育終了時まで出すという制度で現在まで参っております。手当額は制度発足当初は三千円、あるいは制度発足当初は五歳未満でしたが、それを上げてきたということも経過としてはございましたが、そういう形で動いております。
 そういたしますと、現在の児童手当の支給対象になっている家庭が非常に限られてくる。現在子供の数を見ましても、三人以上子供を育てていらっしゃる家庭は少のうございますから、数少ない家庭に支給されているというようなこともありまして、一般的な児童手当に関する国民の関心あるいは理解も決して高いという状況ではございません。五十二年当時の調査によりましても、一般世帯あるいは有識者、いろいろやりましたが、多少のずれはありましても賛否両論というような状態でございます。
 したがいまして、こういう状況を勘案し、しかも昨年末、十二月十二日にいただきました中央児童福祉審議会の御意見によりますれば、将来はやはり第一子から所得制限がないような形で支給する制度を日本も今後の高齢化社会あるいは児童数の減少という状況を考えればこれは整備する必要がある、しかし、現時点で考えてみると、そういう国民の理解の状況でございます。
 また、これは第一子から全児童に所得制限なしで義務教育終了時まで支給するということになりますと、ざっとした試算で一兆数千億の金を要する形にもなります。したがいまして、この児童手当制度の拡充を図ってまいりますためには、国民全体としての理解を基礎としながら財源対策も含めて考えてまいらなければならないという問題がございます。
 先ほど申し上げましたように、国民のこの制度に対する理解の状況は、それを積極的に支えるほどには熟していないというふうに判断せざるを得ない状況にございますので、当面は最近の人口状況等も勘案いたしまして、まず第二子以降、二番目の子供も対象に取り上げていきたい。そういたしますと、子供を持っていらっしゃる家庭の約九割が二人以上子供を持っている家庭になりますので、相当手当を受給される方が広がってくる。そういうことで支給対象者を多くしながら、国民の関心をお寄せいただき、また、このあり方について議論を深めながら次の発展を目指そう、こういうふうに考えたわけです。
 そういたしますと、現時点で新たな国民の負担を求めることが困難な事情ということになりますと、現在の財源の枠内、国の財政状況も勘案いたしますと、現在の財源の枠内で賄えるような制度改正が当面の措置としてはやむを得ないかということで考えまして、いろいろ御議論ありました。昨年末の中央児童福祉審議会のこの答申もそういう趣旨でございます。
 そういたしますと、財源問題があるのですが、多少支給期間――多少でもございませんが、支給期間を短縮してでも、まず第二子に拡大するという措置をとるべきではないか、そうすれば、生まれてから一定期間ということでやってはどうだ。いろいろ議論はございましたが、最終的にきょう制度審議会に御諮問申し上げた案では、第二子以降の児童を対象に小学校にお入りになるまで、その就学前までの期間手当を支給するという制度で考えております。
 ただ、そういたしますと、財源の枠も限られておりますので、第三子以降は現在並みの五千円の月額の手当でございますが、新たに拡大いたします第二子につきましては二千五百円というような額で当面出発せざるを得ないか、こういうふうに判断しております。
#210
○大原委員 それは制度審に出したのですか。
#211
○小島政府委員 制度審です。
#212
○大原委員 今のような政府の案、昨年の中央児童福祉審議会がいろいろな意見を付して答申をしたのを若干修正して、第二子から二千五百円、第三子は五千円、それから就学前ですから五歳まで、こういう案を出したわけですか。
#213
○小島政府委員 昨年末の中児審の意見具申を踏まえて出したものでございまして、全くそこは抵触するものではないと考えております。例えば支給対象児童の範囲につきましても、本来第一子からだけれども、現在の財政状況あるいは最近の出生数の動向を勘案すれば、当面第二子からを支給対象とすることにも政策的妥当性が認められるという事項でございます。
 支給額は、児童の養育費を公的に分担するという観点から、ある程度価値ある額を確保することが妥当であろう。
 それから支給期間につきましては「このように、第一子又は第二子から現行水準程度の手当を支給するということとすれば、支給対象児童数は、飛躍的に増加することは、不可避であり、現行財源枠内で対応しなければならないという厳しい前提の下では、遺憾ながら、本来、義務教育終了時までであるべき支給期間を相当絞り込む等により、給付の重点化を図らざるを得ない。」「この場合、いずれの年齢層に重点化して支給するかということが問題になるが、次のような理由から、出生の時から一定期間支給するものとすることが妥当であろう。」こういうような御意見でございますので、これを踏まえた。
 ただ、手当額につきまして、例えばさらに支給期間を短縮してもっと支給額を大きくするか、あるいは義務教育に入るまで、ここら辺が精いっぱいのところですが、そこまでにして額では多少拡大分について減額するかという選択の問題でありましたが、いろいろ政府・与党内でも御議論をいただいたのを参考としながら、第二子については月額二千五百円、第三子以降については現行どおりの五千円、それを義務教育に入るまで、就学前の児童に対して支給するという制度で御諮問申し上げたわけであります。
#214
○大原委員 期間については絞って、そして支給対象については第二子からも二千五百円出す、こういう制度だね。
 第二臨調の答申や推進審議会の意見というのは、児童扶養手当も児童手当も、言うなれば切り下げ、抹殺論ですよ。抹殺論なんです。しかし、そういう制度が今のような社会的な状況で、児童の人格や人権を尊重するという観点で許されるのかどうかということですね。答申案はそういう趣旨でしょう。
 第二臨調の答申の趣旨を言ってごらんなさい。どういうふうに理解しているのですか。きょうは総務庁からも来ているはずですから、答弁してください。その後は大臣に聞きますから。
#215
○八木説明員 第二臨調でございます。
 第一次答申で児童手当に触れてございます。「児童手当については、公費負担に係る支給を低所得世帯に限定する等制度の抜本的見直しを行う。」こういうことでございます。抹殺とい至言葉ではございませんけれども、社会経済情勢の変化とか、当面の厳しい行財政環境の中においてこの制度の見直しを行っていただきたい、こういう答申があったわけでございます。
 それから次にお尋ねの児童扶養手当でございますが、これにつきましては実は五十八年三月十四日の最終答申、第五次答申におきまして「不正受給を防止するため、認定申請の支給事由の確認及び受給者の受給資格継続の有無の確認につき適正化措置を強化するとともに、これらの事務の監査指導を強化する。」こういう当面の対策と、もう一つは制度の問題でございますが、「離婚の増加、女性の職場進出の進展等の変化を踏まえ、児童扶養手当の社会保障政策上の位置付けを明確にし、手当支給に要する費用の一部についての都道府県負担導入問題について、早急に結論を得る。」この二点を述べているわけでございますが、全体の答申の流れからいたしますと、やはり当面の厳しい行財政環境の深刻化という事態に対応して、国の社会保障の諸制度がどのようにすれば安定的に運営できるかという点を政府において具体的に検討せよ、こういう趣旨であったかと存じます。
 以上です。
#216
○大原委員 狂った話があったのですが、その基本的なところが間違っていると思うのです、基本的なところが。それは私が言ったように、児童手当についてもそうですし、絞れ、見直せ、児童扶養手当についても、むだがいっぱいあるじゃないか、こういう議論なんですよ。そういう議論というものは、日本の社会保障制度を質的に後退させるものなんです、今議論を私がしておるように。
 つまり、外国には児童扶養手当に類するものが少ないというのは何かというと、児童手当というものが所得保障の大きな柱として充実しているわけです。これは中央児童福祉審議会が五十五年に答申を出しまして、財源について所得税の中の扶養控除を振りかえる、思い切ってやれ、こういう議論を出したことがあるのですが、これはフランスなんかやっているやつをやれ、そうしてやれということなんです。
 つまり、全体から見ると日本の経済は大きくなっているのですよ。世界第二位になっている。だから、これは所得の再配分ということをうまくやれば社会保障の水準を質的に低める必要はないわけだ。軍事大国との関係云々の議論はしないけれども、言うなればスモールガバメントという風潮の中で、とにかく児童手当も児童扶養手当も見直して国庫負担を縮小しろ、財政危機だ、こういうことを言っているんですが、所得を公平に再配分をして、社会保障は質的に後退させないで充実させるということを考える中において児童扶養手当の議論をするとするならば、日本の児童手当をどうするかということを議論をしないでこの議論をすることは基本的にできないと私は思うのです。
 それを全く逆の方向で進めておるのではないかと思うのですけれども、主管大臣として厚生大臣は、そういう問題については主張すべき点は敢然と主張することがなければ日本の社会保障は歯どめなく後退をして、国民の中における連帯というものはずたずたになってしまいますよ。弱肉強食になるのですよ。経済は大きくなっているのですから。低成長に入っていますが大きくなっているのです。そこでむだを省くことは必要だけれども、申し上げたように、所得を公平に再配分をして、福祉に対しても質的な充実を図る余地は十分あるのですから。これは政治が悪いんです。
 ですから、そういう点を考えて、何が必要かということを考えるならば、皆年金制度の中において、年金と同じように、所得保障の重点は児童手当ですから、児童福祉ですから、児童福祉を後退させたならば、民族の将来はないですよ。高齢化社会の将来はないですよ。時間があれば後で議論しますけれども。そういう問題について、ここはこうだけれどもここはこうあるべきなんだ、こっちも削り、こっちも削って、そして後退した案を今両方とも出そうとしているわけです。これは私は日本の政治の方向としてはとんでもない間違いであるという点を指摘をしておきたいと思います。基本的な問題ですから、厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
#217
○増岡国務大臣 ただいまお話のありましたような将来の日本の人口構成ということを考えますと、先生おっしゃるとおり、今日児童に関しましての対策が重要であることは間違いないことだと私も思います。
 したがいまして、なぜこういうことを取り上げなければならないか。こういうことというのは、先ほど先生が御指摘になりましたような、いわば見方によっては退歩ではないかということについてでありますけれども、ずっと長い百年の大計ということを考えますと先生御指摘のとおりでございます。しかし、この数年間において我が国の財政改革を行いませんことには、将来の大計ということもなかなか議論しにくい状態であることも事実でありますので、臨調におかれましても不正受給その他のことを付言されておるのだというふうに思います。
 しかし、やはり基本は前向きな福祉政策でなければならないと思いますから、先生の御趣旨には私は全く同感でございますけれども、今日の厳しい財政状況の中では安定をして長続きするものをやっていかなければならぬということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
#218
○大原委員 ちょっと時間がないから時間をかけて議論できないのだが、今度出てくる児童手当は所得制限はないんですか。
#219
○小島政府委員 二子に拡大し、先ほど申し上げたような手当額を確保していきますためには、やはり現在程度の所得制限を継続せざるを得ない、財政再建期間中、六十五年度まではそういうことでいくというふうにせざるを得ないと考えておりますが、その間は行革特例法で設けられました全く全額事業主の拠出によります特例給付を組み込みまして制度を実施してまいりたい、こう考えております。
 そういたしますと、例えば六十年度で新制度に切りかわった場合で計算してみますと、支給対象児童数は現在の二百十九万から四百四万に拡大いたします。それから支給総額も現在の千五百十三億から千五百八十二億に、これはわずかでございますが拡大するということで、ほぼ現行どおりの財源の枠内でこの制度を精いっぱい組み直しまして、こういうことを基礎といたしまして国民の真剣な論議をお願いし、次の制度の改革を図ってまいりたい、こういう趣旨でございます。
#220
○大原委員 今、私の主張に対して厚生大臣も大筋で賛成である、こういうことなんですが、つまり、こういうことなんですよ。児童手当というものは普遍的な制度なんですよ。これは年金と同じような所得保障の柱なんですよ。これは高齢化社会とか就業構造とか、いろいろ経済にも関係するもので、目先の質をどうこう言うような財界の議論とは別にそうなんですよ。児童手当は普遍的な制度なんです。それで、児童扶養手当というのはその制度の中における特殊的な制度なんですよ。だから、児童手当の普遍的な制度の水準が上がってくると、児童扶養手当というものは形を変えてもいいのですよ。単に財政が云々と言ったら、それは承知できないですよ、年金の議論でも同じですけれども。
 日本の経済は適正に立派に成長しておるのですよ。世界第二位になっているのですよ。しかしながら、所得の再配分の仕方が制度的になっておらぬものだから、言うなれば労働条件の問題だって同じですけれども、国際的にもやっぱり批判をされるんですよ。内需の問題、税金が高いとか保険料が安いとか言うけれども、税金を安くしておいて保険料を上げるというのは国民にとっては意味がないのです。
 児童手当をやると一兆円と言いましたけれども、それをできるだけやるとするんなら、今度出してこようというのも、この国会に出すのかどうかわからぬけれども、もう案としてはまとまりつつあるのですから、出して一緒に議論すべきだと私は思うのですよ。
 外国の児童手当というのは、ほとんどが例外なしに全部十六歳ですよ。日本の場合には今度は五歳か六歳にするんでしょう。それを切っちゃうわけでしょう。切って第二子まで広げるというんでしょう。対象者を広げるんでしょう。対象者を広げるのはいいけれども、こっちを切ってしまうと児童扶養手当について整理をする条件がなくなってしまうんですよ。そういう特殊な政策である児童扶養手当を、経過的な手当というものを見直していくところの条件をそれは切っちゃうわけだ。十五歳、十六歳、十七歳、十八歳と、こういうふうにやってきたわけですよ。
 昭和五十四年の当時、広島の関係者の強い、ずっと継続した運動であります十八歳の児童扶養手当の問題で、そのときに十八歳というふうにだんだんと上げてきたんですが、高等学校はもう九四%まで入学しているんだから、非常にハンディを背負うておる生別や障害者その他の児童に対して、せめて高等学校を卒業できるまでは十八歳の運用の枠を広げてもらいたい、こういう強い要望があったものですから、私が昭和五十四年四月九日の社会労働委員会で当時の橋本厚生大臣に対しまして質問をいたしました。そのときに橋本厚生大臣は「非常に現在の諸制度に縛られて、」これはだんだんと苦しくなっておるときですよ。「関係各省との折衝の時間もないというような中では、否定的なお答えをせざるを得なくなりますので、むしろ多少時間の余裕をいただきたい、」と答えられて、御指摘の点は不合理な点があると思うので、是正をするために努力をしたい、こういうことを重ねて橋本厚生大臣は答弁しておられるわけです。
 つまり、特殊的なこういう制度についてはいろいろな方式があるのですが、(発言する者あり)今、財源の問題を後ろの方から言っているから、社会保険でやるのがある、これは年金制度、それに国庫負担を入れる。それから公的な扶助、つまり所得が一人一年間百七十七万円というふうに全体の世帯より低い人が苦労して児童を育てていきますと、そうすると児童扶養手当がだんだんと厳しくカットされますと、結局生活保護へ転落することになる、公的な扶助になる。そうすると、そこで税金を食うわけですから、国費を。そういう食い方というのは人間的でないわけですよ。だから、社会保険にはなじまない、皆年金体制になじまないから特別な制度をつくった。そうすると、ほっておけば、悪くすればだんだんと公的な扶助がふえていきますよ、生活保護は。それをまたぶった切るんだという話なら別ですよ。
 そうすると、第三の方法として、社会的な手当として公費をもって出したわけです。第三の方法をとったわけですよ。であるならば、年金についてもそういう配慮をすることが必要なのですが、後で申し上げるように、ともかくも今までずっと積み上げてきたやつをがらがら崩していって、児童手当の方の土台も崩していくというふうな、そういう政策を中曽根内閣はとるのですか、自民党内閣はとるのですか、増岡厚生大臣のときにそういうことをやりますか。それは私は非常に重要な問題ではないかと思うのですよ。
 児童手当の問題を含めて、私はもう一回私が指摘いたしました点について厚生大臣が児童扶養手当の問題について基本的にどう考えておるか、あるいはこの国会の審議、私どもの意見を聞いてこれにどう対応しようとするか、修正しようとするかという問題を含めて御所見をお聞かせをいただきたいと思います。
#221
○増岡国務大臣 児童手当と児童扶養手当の相関関係につきましては、私も先生と同じような考え方を持っておるわけでございます。しかし、この児童扶養手当が原案ができました歴史的な経過、あるいは先ほど御指摘もございましたけれども、離婚がふえて、その方々が対象になっておるという一点に集中しておるものでございますから、御指摘のようないろいろな御批判もあるわけでございますけれども、私といたしましては、やはり何としても安定して長続きのする制度をこの際確立をしておきたいという気持ちもございますので、その点を御考慮に入れていただきまして、十分御審議を尽くしていただきたいと思います。
#222
○大原委員 厚生大臣はちょっと味のある答弁をされたのですが、かなり審議は尽くしておると、政府が提案したことについてはやはり非常に足りない点がある、特に私とは意見が一致したというふうに表明になっておるし、これは児童手当の問題について、これをやらなかったら私は日本の高齢化社会で一児童手当だけじゃありませんよ。ありませんけれども、フランスでもスウェーデンでもどこでも最近合計特殊出生率が一・四から万ぐらいに下がっておるわけですよ。それで児童手当の改善についても注目しているのです。保育所もあるし、いろんなものがあるのです。児童福祉全体ですよ。その核になるものは児童手当なんです。日本の社会保障は伝統的に児童福祉、特に児童手当を非常に厄介者扱いにしてきたのです。
 それは、一つの封建的な考え方がある。家庭に閉じ込めるという考え方もある。しかし、これは社会的には事実というものを避けて政治はないのですから、そういう問題について児童手当に対する特に財界等の認識というものが非常に欠けておる。それが行政改革の波に洗われまして、非常にゆがんだ形になっておる。恐らく厚生省の諸君なんかは、ずっとやってきた諸君は非常に不本意な点があるんではないかというふうに思う。少なくともあなたの前の局長ぐらいまでは非常にそういうことを感じておったと思う。
 あなたは非常に無神経だからわからぬけれども、あなたは何とかして議案を通そうとか、強弁をしてこじつけようというふうな気持ちが強いかもしらぬが、しかし、基本的なことを言えば、こういう社会的な原因による児童の立場というものは、これは社会的な事故なんだ、あなたの意見、そう言った。父も母もこれは社会的な事故だ、子供も事故だ、災難だというようなことを言っているが、確かに別れるということはどっちも災難よ。それはそうだけれども、児童という立場に立ってみると、これが一番の事故なんだ、死別も生別もないんじゃないかという議論。
 もう一つの議論は、児童手当が土台になっておるのだから、外国で児童扶養手当的なものがないのは、児童手当がどんどん水準を上げていっておるから、そこでなっておるのだ。特に日本の児童福祉について考えていかなければならぬのは、高齢者がどんどんふえている、そして出生率が下がっているのです。
 厚生省の所管のあの人口問題研究所、厚生大臣、よく監視してくださいよ。あの人口問題研究所の推計なんというのは当たったことがないんだ。もう大体二・〇九、置きかえ水準ぐらいまでずっと保持できるということを五年前は皆推計しておったのです。しかしながら、慶応大学の安川推計とか日大の黒川日大推計などというようなのは違った推計を出しておった。安川推計のとおりにだっと下がっていった。
 共働き、高学歴化、あるいは住宅ローン、教育費の負担というものがどんどんふえていくでしょう。だから、これは出生率は下がっていくのですよ。じゃ、児童に対する社会的な配慮というものをやはり近代的な民主的な形で整備をしていかないと、合計特殊出生率がどんどん下がっていくと、あるいは一・七の台が変わらないということになると、二子が一番多くて、そして一子がふえてきて三子が少なくなってくるという状況になるわけですから、これは家庭の中における子供の養育や教育問題にはね返ってくるわけです。ですから、民族の将来を考えてみたならば、人口構造が逆ピラミッドになるということは、これは将来日本の就業構造なり産業が活力を失うことになる、社会保障が成立しないことになるのですから。
 ですから、児童福祉の中核である児童手当について普遍的な基礎としての制度というものを計画的に充実させるということは、日本の中期、長期にわたっての考え方の上において絶対に必要なんだ、こういうことを臨調などは言わなきゃいかぬです。つまらぬことでああいう答申を出すものだから、その旋風の中であちらもこちらもぶった切られてむちゃくちゃになる。児童手当出す、出すと言ったってなかなか出せぬでしょうが。出して児童手当と児童扶養手当とは一緒に議論したらいいんですよ。児童扶養手当なんかは全然早く通す必要ないんだ、この国会なんかで。それはもう少し中長期の考え方でやる。
 今までずっと例えば十八歳の子供とは何かということで、高等学校を卒業するまで、そしてその制度ができるまでは無利子の融資の制度をつくります、こう言うてずっと積み上げたものを土台と一緒に崩してしまうということは、これは児童福祉の体系を根本的に崩壊させるものである、私のこの主張に対しましては、厚生大臣は同じ広島県ですから、私と同じ意見であるということを今答弁になったわけでありまして、私はそれは非常に欣快であって、みんなにそのことを宣伝しようと思います。しかし、その言葉はよくても実際にはまるで逆になって、増岡厚生大臣のときにこんな悪いことをしたということになると、私は同じ広島県として遺憾にたえない。
 それは、児童扶養手当の問題は、個別の問題はみんなが議論したとおりでありますが、私も時間があるまではやります。でありますが、これも後退させるというのでなしに、これは修正するところは修正する、それならば、じゃ通そうかという議論になる。今度児童手当が出てきたならば、こてんぱんではないが徹底的に議論をするということになるということであります。それで国会としても審議の責任を果たす、まさか出してきたからすぐ児童手当を通してくれというわけじゃないだろうから。しかしながら、それをやらないということであるならば、児童扶養手当もこれはお預けだ、保留である。それは国会としてはそういう判断をすることは私は当然だと思うが、その主張に対しましては厚生大臣は当然と思いますか。あなたは厚生大臣じゃない。あなたがそんなことは答弁する資格はないよ。
#223
○増岡国務大臣 中児審からも、あるいはきょう社会保障制度審議会にも御諮問申し上げておることでございますので、児童手当法案につきましてもできるだけ早く成案を得まして御提案申し上げ、御審議をいただきたいと思います。
#224
○大原委員 児童扶養手当を修正をやりますか、それとも継続審議で児童手当と一緒に審議するのが私はいいと思うが、あなたとほとんど意見は一致しておるけれども、この点はどうかと言ったのですけれども、いかがですか。
#225
○増岡国務大臣 私どもといたしましては、御提案を申し上げておるわけでございますので、この点に関しましてはぜひなるべく早く御可決をいただきますように、また児童手当法案も御提案申し上げますので御審議をいただきたいというふうに申し上げるほかちょっと、何といいますか、国会にお任せをいたさなければならないと思うわけでございます。
#226
○大原委員 議論を踏まえて児童扶養手当のやはり修正をやることについては、大臣としては反対ではない、賛成である、こういうふうに御答弁があったものと理解をいたします。
 それで、未婚の母をカットするなんかいうことは、例えばスウェーデンでは未婚の母が文部大臣になったりしておるのですよ。だれも言わないですよ。未婚の母には未婚の母のそういう社会的な理由があるわけですから、子供にとっては何も別に関係ないことですから。そうでしょう。おやじとおふくろがどうあろうがこれは関係ない、生まれたものは子供ですから。それが普通になっているのですよ、常識に。これは社会的に抹殺しようと思ってもできないわけですよ。そういうことの事実の前提で政策を立てないと、政策というものは政策にならぬわけですよ。日本の児童扶養手当や児童手当の審議や議事録の経過なんかを聞いておると、臨調その他の議論を聞いておりますと、これは聞くにたえぬですよ。国会でも議論を十分してない問題について全く傍若無人な議論をしている。そういうことでは私はいけないと思う。
 今度改正案に出ておりますが、七年間の期限つきとか、義務教育までで打ち切るとかいう選択制、そういうふうな問題なども、そんなことはいびつですよ。例えば児童手当について、こう計画的にやるんだ、そして、この場合に、児童扶養手当の対象となる特殊な社会的な問題についてはこれはこうするんだ、こういうふうにやらないで、何だか未婚の母の問題についてもカットする、それから期間についても打ち切っていく、こういうふうな考え方をやはり改めて、そして可能なだけこういう点については修正すべきである。特に未婚の母なんかというのは、こういう問題について大人の感情で議論して、そして政策を左右するというのは基本的に間違いである、この二つの問題について、時間も限られておりますから、厚生大臣、今までにもう何回もリハーサルされたと思うので、御答弁いただきたいと思うのです。
 いつも聞いておると局長ばかり答弁しているから、だめだ、そんなことじゃ。私は大体今までの答弁、全部聞いてきたのだから。あなた、何か手柄になることがあるのか、それ。
#227
○増岡国務大臣 それぞれ具体的な項目につきましては、私どもは私どもなりに理由づけをして考えておるわけでございますので、その点について言及することは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。したがいまして、私が先ほど申し上げておりますのは、この法律案全体につきましてよく御審議をいただき、その御結論にゆだねるという意味合いでございます。
#228
○大原委員 声がとぎれとぎれでよく聞こえなかったけれども、(「聞いてない」と呼ぶ者あり)いや、とぎれとぎれだけれども聞こえるのだ。私の考え方に賛成だ、こういうふうに理解しまして、前に進みます。
 一番いびつなのは六百万円問題ですよ。外国では、あなたが答弁したように、ちゃんと司法や行政が関与して、そして取り立てて出すようになっているのだよ、極端に言うと、はっきり言うと。しかし、たまたま六百万円の所得があったということで、離婚という事実について、母の方、母子家庭の方に責任を負わせるような、そういうふうな制度というものは、いろいろなことをあなたは答弁しておられるらしいけれども、これは基本的に組み立て方が間違っておるのですよ。別れた夫婦の中で子供の養育についてどういう保証をするか、そういう手続がきちっとあるならいいですよ。そうでなしに、六百万円という事実をここに決めておいて、そして制度を考えていくということは間違いであると思いますが、いかがですか。これはあなたから答弁してもらわなくちゃ。
#229
○小島政府委員 先生御指摘のように、我が国の離婚制度は、先ほども申し上げたとおり諸外国と違っております。したがいまして、諸外国、それぞれのところにおきましては、かわって国が取り立てるという制度もございます。あと多くの国は、直ちに裁判所が関与して扶養義務や扶養額を確定しておりますので、それがすぐ裁判上の請求になじむというまでにいっております。そこまで日本が、日本の離婚制度から来る結果でございますが、そういう措置はなかなかとり得ない状況でございます。
 ただ、民法上の父親の扶養義務というのは別れたことによって消えるものではございませんし、依然として残るものでございます。それで、我が国の父親の扶養義務の履行状況も極めて低いという状況も承知してはおりますが、特に所得の十分位法で見ましても一番上位にあるその別れた夫の一人の場合の所得が六百万、したがって、一人の生活で月額五十万ということでございますので、そのような高額の所得を有する父親についてはぜひその扶養責任を果たしていただきたい、また、母親もそういうような請求をしていただきたいという趣旨でこの制度を組み込みました。
 また、これも先般申し上げましたが、制度審議会に御諮問申し上げたときに、そういう考え方は理解できる、しかし、あわせて父親からの扶養義務を確保できるような措置も別に検討しろ、こういうことでございますので、早速省内に専門家の方々をお集まりいただきました研究会も設けまして、何とかその辺の確保を図るべく妥当な道を今検討中でございます。
#230
○大原委員 専門家を集まってもらって、いつもよくやる手だけれども、それをやって、そうして方法を探求しているのだというときに、どういう方法があるということを出さなければいかぬのだ。その答弁をしないで国会を通すわけにはいかぬよ、こういうことは。これはもう六百万円のやつは撤回しなければだめですよ。制度審議会がやっている一番大切な点について、検討しているから通してくれなんて、そんなばかなことはないよ。そういうことはだめですよ。そういうことは絶対にいかぬよ、国会の審議では。どういうことでこの制度審議会が答申をしたことをやろうと思っているのだ、その原案をはっきりしなさい。それでなかったらだめです。いかがです。
#231
○小島政府委員 いろいろな方途を検討しておりますが、研究会の内部でも検討中でございますので……
#232
○大原委員 何を検討しているんですか。検討している素材を言ってみなさい。
#233
○小島政府委員 広くいろいろな問題を検討しておりますが、今後の日本の離婚制度、これは厚生省だけでできませんので、最終的に離婚制度の法的な整備にまつ分野については関係省庁等にお願いするにいたしましても、当面父親の扶養義務の履行を担保できるようないわゆる行政措置としてどのようなものが考えられるか、またそういうことについての検討をしているところでございます。
#234
○大原委員 今の点では全然中身は納得できないですよ。つまり、国会は審議をして法律案を決定するのですから、国民の権利義務に関係することを決定するのですから、一番大切な点について方向も示されないような、そういう条項については、ここの六百万円の条項については、白紙に戻して撤回をすべきです。これは国会の審議にならぬじゃありませんか、そういうことでは。一番大切な点を専門家に任せておりますから、ここは通してくださいなんということは絶対だめです。そんなことは国会の審議じゃない。こんな審議は聞いたことがない。今までそういうことは例があるか。あれば例を言ってください、そんな例があるか。一番大切な点を保留しておいて、そしてお任せください、通してください、そんなことはないよ。
 これはいかに自民党が多数といえども、そういうことはできない。それは道理が許さないと思う。この六百万円みたいな便宜的な案はない、そんな法律は。(「一割」と呼ぶ者あり)それにしてもないですよ。たとえ一割でもない。そうすれば全体の制度を崩すことになるのだからだめですよ。これは中身をもう一回言ってごらんなさい。どういうことを中心に厚生省としては検討して、これがいいかどうか検討してもらっているというふうに言ってみなさい。
#235
○小島政府委員 御提案申し上げたのは、先ほど申しましたように、非常に高い所得を有しておられる夫はぜひその扶養義務を履行していただきたいということで対象から外しておるわけでございます。それについては、その履行の担保の方法等については、現在行政的にどのような措置を講ぜられるかを検討中でございまして、今具体的にこうこうこういう方法があるという段階ではございません。
#236
○大原委員 そういう不遜な答弁をするのだったら、この条項を削除してくるか、児童扶養手当制度自体をやはり本院としては採決しない、引き続いて審議をする、そういうことしかない。
 委員長、私の発言をどう処理するかということについて、理事会で十分やってください。そうしなかったら、質問が済まない、早く済ませようと思ったのだけれども。
#237
○戸井田委員長 追って理事会で協議いたします。
#238
○大原委員 結論ですが、申し上げたように、これは児童手当が土台にある。あるいは年金の問題は、一つだけつけ加えると、例えば西ドイツは日本の民法の規定に近いのですけれども、離別した母に対しては父の持っていた年金権も折半する、期間においても、金額においても。年金をもらっていれば折半する、あるいは期間において何年がやっておるということになれば期間も折半する。こういうふうにして別れた場合の母自体の年金権についても考えた上で、そして児童の加算はやる。そういうそれぞれ年金との関係、児童手当との関係で児童扶養手当的なものは解消をしているわけです。解消したり範囲が縮まっているわけです。
 私は、これはその土台についても絞っていく、それから児童扶養手当についても国庫負担をカットするという建前で次から次へとカットしていく、土井大先生の質問のときにも答弁があったらしいですが、三十数億円でしょう、カットしてカットしてわずか三十数億円のために質的な制度の改変をする、これは弁護士会が指摘しておられるように一つの児童福祉に対する、あるいは児童扶養手当制度の質的な転換をもたらすような、そういうことを今の段階で行政改革の名前においてやるということは真の行政改革ではない、こういう点を私は指摘をしておきたいと思います。
 所得制限、その他各項の問題やたくさんの問題がありますけれども、今までそれぞれ議論をされておりましたので、私は以上のことを申し上げて、最後に、あなたと見解はほとんど一致したわけでありますから、厚生大臣の児童福祉に対する所見を聞きまして、納得できるならば私の質問を終わりたいと思います。
#239
○増岡国務大臣 児童に対しましては、現在御審議いただいております法案、児童手当法等が肉となっておることも確かであろうと思うわけでございますけれども、先ほど先生も御指摘ありましたように、まだまだ保育所の問題でありますとか、いろいろな問題を包括的に最大限活用しながら健全育成を図っていかなければならないところであります。そのことは、今後、日本民族が永久に栄えていきますためにも、行政のみならず家庭、地域社会、国、一体となってその健全育成を図っていかなくてはならない問題でありますし、また、願わくは人口の減少を来すことがなく、今後の日本の発展のためにやらなくてはならない問題は非常に多いと思うわけでございますので、財政状況は大変厳しゅうございますけれども、今後そのような観点に立って力を尽くしてまいりたいと思います。
#240
○大原委員 終わります。
#241
○戸井田委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
#242
○土井委員 午前中、私は外務省に国際人権規約の問題で質問いたしましたが、もう一たびこの点を質問させていただきたいと思います。
 未婚の母の母子家庭における児童に対する養育及び教育に対する扶養、それからさらには、以前には児童福祉法に言う児童、つまり十八歳までに認めてきた扶養手当を今回は七年に限る、こういう行き方というのは条約の内容、さらに精神からすると許されないことだというふうに一般的に私は思うのですけれども、外務省いかがでございますか。
#243
○瀬崎説明員 国際人権規約につきましてはけさほど御説明したところでございますが、当該法案との関連では、いろいろ厚生省からの御説明をお伺いする限り、諸般の施策を伴うということでございましたので、直ちに問題はないというお答えをしたわけでございます。
 ただ、この人権規約、それから人権宣言、その他もろもろの国連におきます文書に流れております思想あるいは規定と申しますのは、出生の理由等を事由として差別するということは禁じられているところでございますので、一般精神論としては法がすべてに差別なく及ぶということが望ましいところかと考えるわけでございます。
#244
○土井委員 閣議の立場に一緒に入って、この法案に対しても外務省としては一回よろしいと言われた。このよろしいは、間違ったことを外務省としておやりになったというのが今の御意見からすると非常ににじみ出ているのです。よろしゅうございますか。国際的なそういう趨勢は言うまでもありませんよ。国際的な規約、条約、宣言、そういうことからすると、大臣、今回の法案の中に出ておりますそれぞれの厚生省として大事だと思ってそれをポイントにして出してこられたことは、全部これに対しては許すことができない中身であるということが国際的な観点から言えるわけです。
 国際人権規約に対して日本はAもBも批准しておりますから、そういうことからすると、これは今回の法案は許されないのですよ、守っていくという必要があるのですから。外務省もそこまで言われるのは、これはよくよくのことなんだ。政府提案という形で出ている法案ですからね、現に我我が審議しているのは。そういうこともひとつ念頭に置かれて、厚生大臣、これは種々問題が出ておりますけれどもさっきも大原先輩の方から非常に手厳しい質問の中で、保留ということにせざるを得ない点も厚生省としてお持ちになった。ほかの点からいったって、厚生大臣の胸の中には、このままではこれはちょっと困るという思いでいっぱいでいらっしゃるだろうと私は思っている。この法案、撤回をなさるというお気持ちはありませんか。撤回をしていただきたい。これは撤回すべき法案だと思います。
#245
○増岡国務大臣 この法律案の中身につきまして、個々の問題でいろいろ御批判、御意見があることは、この質疑を通じましてよく承知をいたしておるところでございますけれども、法律案全体といたしましてはなるべく早く御可決をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
#246
○土井委員 厚生大臣としては、そういうことについてひとつ大臣として責任ある政治的な決断というものをお持ちいただくということが非常に問われていると私は思いますよ。お役所の立場がこうだからとか、それからお役人の説明がこうだからということのむしろ後追いみたいな格好で大臣発言というのがあることというのは、私は本来大臣発言としては値打ちがないと思っています。やはり大臣の値打ちというのは政治的決断というところにあるんで、そういうことからすれば、厚生大臣としての政治的決断が今問われていますよ。
 そして最後に、もう時間ですから一言申し上げておきますけれども、さっきも外務省からああいうふうな御発言がございましたが、福祉政策に対してしっかりした基本姿勢というのをつくってくださいませんか。今回何だかうろたえたような格好で、臨調から出て、国の赤字のつじつま合わせを、財政的に削り取るということを大前提にして臨まれた法案なんですよ。その中で福祉が随分うろたえて、随分揺れ動いてきているのです。福祉政策は大蔵省が考えるのじゃないです。外務省が考えるのじゃない。厚生省をおいてほかにないのですよ。そういうことからすると、福祉政策というものに対して毅然たる姿勢というのをひとつしっかりつくってもらうことを私は切に大臣に申し上げます。
 だから、戦車の一台くらい予算の折衝のときに遠慮してもらいたい、そうすると、自治体の二割負担というのはしなくて済むんだからということぐらいは大臣発言としてあっていいんじゃないかということを私は思いますが、大臣はそういう御気分になられませんか。どうです。
#247
○増岡国務大臣 そのような気持ちで終始一貫対処しておるつもりでございます。今後もそのような力を尽くしてまいりたいと思います。
#248
○土井委員 最後の大臣発言で、ただいまのこの法案は、この法案の形のままで審議を急いで国会で早く採決をとは言われない大臣だということを確認させていただきます。この法案というのはできたら撤回したい、そういう気持ちも含めて、もう一度もとに戻して考えようという御気分でいらっしゃるということも、私は私として大臣の姿勢の中に拝見をして、これで質問を終えます。
#249
○戸井田委員長 塚田延充君。
#250
○塚田委員 私は実は母子家庭の出身でございます。そういう意味におきまして党派を超えまして言うなれば母子家庭党みたいなもので、国会の中では認められておりませんけれども、そういうことでこの児童扶養手当の改正案につきまして、いろいろ審議が進んでおりますが、母子家庭党を代表して陳情申し上げる、その陳情の趣旨というのは、やはり福祉の面の後退になっておる提案だから、ぜひこれは引き下げてほしい、このような厳しい思いを込めて陳情申し上げるわけでございます。
 我が国の年間の離婚件数は約十八万件となっておりまして、離婚率も三十九年以来上昇一途でございます。五十八年には離婚率が一・五一、米国、北欧ほどではないとしても、フランスや西ドイツ並みになってしまっている。これは厚生省の人口動態統計がはっきりと明らかにしているところでございます。したがって、母子家庭の半数を離婚家庭が占めるなど、離婚の急増が大きな社会問題となっているわけでございます。
 欧米の場合は裁判離婚というような形で、いわゆる前の夫が子供に対する扶養義務など非常にきちんとした形で保証されるに近いことになっておりますけれども、このような離婚制度がまだ確立していない我が国の場合では、家庭裁判所における調停離婚は比率は増しておるというものの、まだ一割に達していないのじゃないか。ほとんどが協議離婚である。協議離婚の場合は、どちらかというと残された方が厳しい状態になっておる。これはもう満天下が非常によく熟知しておる事実じゃないかと思うのです。そうなりますと、先ほども大原委員とのやりとりでございましたけれども、幾ら前の夫の所得が多かったからといってほとんど子供の扶養費がもらえない。そんな中で、資産家であったからというだけでそういう子供たちに対しての扶養手当が出ないということは大変な改悪じゃなかろうか、私はこのように判断しているわけでございます。そこで、昨年六月に厚生省が児童家庭局長の私的諮問機関として離婚制度等研究会を設けて、離婚が子供に及ぼす影響であるとかまた離婚しやすい家庭とか離婚しにくい家庭のパターンを分析するなどいろいろと研究し、また外国の制度との比較などを行って、これを報告書の形で一年以内ぐらいにまとめようということになっているわけでごさいます。ですから、この児童扶養手当改正案というのは、この研究会報告が出されてから提案するのが当たり前の話じゃないかと思うのですけれども、その報告に先立ってとっぴな形で、しかも福祉切り捨てのような形でこの法案を提案してきた理由はどこにあるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
#251
○小島政府委員 先生御指摘のように、母子家庭の状況を見ますと、死別と離別がもはや逆転しまして、離婚件数は逐年増加の傾向にあります。したがいまして、こういう状況を反映いたしまして児童扶養手当の給付額も毎年二百億ぐらいのオーダーで急増してきております。そういたしますと、厚生省全体としては社会保障全般の中で社会保障制度全体を円滑に推進する責務があるわけでございまして、何とか全体の施策のバランス、財源配分というものを考えなければならない状態でございます。で、たまたまこの児童扶養手当が補完しておりました母子福祉年金という制度そのものがもうなくなるときに来てまいっておりますので、その時点にこの制度の今後のあり方、社会保障制度全般の中での位置づけを考える、その検討結果に基づきまして今回のような改正案を御提案申し上げているところでございます。
 先生、今御指摘のように、確かに、例えば父の所得がどんなに高くとも扶養を実行するという担保があるのかと問われますと、現在の日本の制度の中では残念ながら母親本人の御努力にまつ以外の方法はございません。したがいまして、その辺も含めまして、離婚の実態あるいは法制の問題、さらには例えば履行を担保するにはどのような方法があるか、きょうも研究会で御検討いただいておるわけでございますが、先ほどの大原先生の御質問にも、まだ審議会で具体的に検討がそこまでいってないものですから、個々具体的な措置までの検討の段階に至っておりませんので御説明申し上げるに至らなかったわけでございます。
 いずれにしても、母親の請求を援助し、その実効を確保できるような方策をあわせて講じてまいりたいと考えておりますが、何よりもやはり民法上父には子供に対する重い扶養義務が負わせられておりますので、まず経済的に極めてゆとりのある階層につきましては父親のそういう扶養義務の実行に期待し、なおかつ、母親の努力にも期待する形で、今回一応所得十分位法の最上位であります六百万円以上というようなところにつきましては、私的扶養に期待するということで支給対象から除外する取り扱いにしたところでございます。
#252
○塚田委員 この離婚制度等研究会の報告書はいつ出される予定でしょうか。
#253
○小島政府委員 できるだけ早くということでお願いしておりましたが、広範な問題、複雑な問題もございますので、六月から一年程度をめどにということでお願いしておりますので、詰めた御検討もお願いしながら、六月あるいは遅くとも七、八月には出てくることを期待しております。
#254
○塚田委員 先ほどから担保という言葉を使われておりますから、私もその言葉でおこたえしたいと思うのですけれども、銀行で借金するのでも何でも、担保条件がはっきりしないでお金を貸すといいましょうか、契約が成立するということはあり得ない。そういう意味で、このような改正をするためには、その担保がはっきりして国民がみんな納得してから貸し出しというか実行が行われる。後先が余りにも逆過ぎると思うのですよ。というのは、六百万以上の所得があるからといって、子供の扶養費が払われているケースがほとんどないと言っていいくらい少ないということは、厚生省としてもよく認知しているはずです。
 ではお伺いしますけれども、六百万以上の所得の階層というのは、その分位でいきますとどのくらいの比率になるのですか。そして、その人数はどのくらいになりますか。
#255
○小島政府委員 現在の受給者総数が六十一万でございます。家計調査とか勤労世帯の定期収入で見まして六百万円以上の比率は、母子世帯の中で分かれてとっておる統計はございませんが、全世帯で見ますと約一二%弱というところでございます。
#256
○塚田委員 一二%ということですけれども、その一二%のうちで、今の裁判制度とか何かから推測して、養育費をきちんともらっておるパーセンテージはどのくらいになると思いますか。
#257
○小島政府委員 父親の所得階層別の扶養義務の履行状況を調査した資料はございません。ただ、全体で見ます士、一昨年、昭和五十八年八月に行いました母子世帯調査によりますと、現に扶養責任を果たしている者、父親から仕送りを受けている音あるいは過去にも受けたことのある者、合わせて二一%強という程度でございます。ただ、非常に所得の高い階層というのは履行しやすい条件はあるわけでございますので、まずそこの履行に期待するのが筋じゃなかろうかということで、こういう措置を今回組み込ませていただいたところでございます。
#258
○塚田委員 別れた前の夫の履行に期待するということですけれども、先ほど私申し上げたように、裁判によって保証されておるものはそういうケースのうちの一割あるかなしかだ。それで、そういうふうに裁判所の命令が出ておってもなおかつ履行しないものもあり得るということになりますと、幾ら前の夫に所得があっても養育費が母子家庭の方にほとんど入らないと見るべきじゃないか、私はこう考えるのですけれども、この辺についてはいかがでしょうか。
#259
○小島政府委員 これは先ほど申し上げましたように、お母さんの御努力にもまたなければならぬわけでございますけれども、支払い得る財政的なゆとりは十分ある階層だけでございますので、そこはやはり扶養義務の履行を請求していただきたいということでございます。
 そういうことを基礎に、行政的あるいは社会福祉の全体の仕組みの中でどういう御協力が最も妥当かについては十分検討させていただきたいと思います。
#260
○塚田委員 請求して取れるくらいだったらば、こんな苦労しませんわ、はっきり言って。いかにそれが現実的に行われてないかということは、皆さん百も承知のはずだ。だから、研究会をつくって研究してもらう。うまくいっているんならば、研究会をつくる必要なかったんじゃないですか。だったらば、研究会の答えが出て担保される方法が制度的に確立されて、お母さん方よ、安心ですよ、扶養手当もらえなくたって、きちんと政府が保証して夫から取れるようにいたしますから、だから今度は勘弁してください、これならわかる。それがあなたの言う担保じゃないですか。
 担保を出さないで貸し出しなんて、絶対あり得ませんよ。ということで、大臣いかがでしょう。いわゆる研究会の答えが出て、局長が言われる担保ができてから改正する、これが血も涙もある厚生行政と申しましょうか社会福祉行政ではないか、私はこう思います。
#261
○小島政府委員 現在の日本の離婚制度法制を前提といたしますと、どのように援助しようといたしましても、裁判上の請求を含めましてまず母親が請求していただきませんと、それをこちらでお手伝いするという道がございません。したがって、まず母親の請求ということをやっていただきまして、それにどんな協力援助の措置ができるかあわせて検討するという趣旨でございます。
 現在確立してないということは御指摘のとおりでございますが、どんな方法を確立するにいたしましても、まず母親の請求ということが前提となりませんとその実効を担保することができませんので、あわせてそういうことを検討しながら、その母親の御努力にもまつということでございます。
#262
○塚田委員 母親の努力にまつということですけれども、俗に女は弱いと言われておるわけでございます。
 それでは、今の制度で一応扶養手当をもらっておりながら、今の六百万以上ということで切り捨てになる、前の夫から扶養費をもらっているかどうかは別として、とにかく六百万以上になって今度からもらえなくなる人数はどのくらいになりますか。
#263
○小島政府委員 現在の受給者の中で見てみますと、これは離婚家庭だけの六百万以上というのはないものですから、一般勤労世帯等の家計調査に基づきまして先ほど申しました一一・九%という率を乗じて考えてみますと、八・六三%程度になろうかと思います。したがって、五万人程度になろうかと思います。
#264
○塚田委員 五万人の方々が泣くということになりますね、現実的には担保がまだないのですから。ということで、その担保の方法についてやはり研究会がある程度答えを出して、それを政府がちゃんと実行する、だからお母さんよ安心しなさい、そうなってからでもいいんじゃないかと思いますし、もしそういうふうにきちんと担保ができるならば、私も母子家庭党の立場で、ちゃんと夫からもらえるようになるんだから扶養手当などという、不名誉というわけではございませんけれども、国の財政に迷惑をかけるようなものは返上しませんかという運動を起こしたっていいと思うくらいでございます。
 それはそれといたしまして、私は研究会の答えが出てから改正案は再検討の上提出すべきだと思いますし、それが筋である、このように思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#265
○増岡国務大臣 現在の離婚が協議離婚が多いということ、それから父親にも扶養の義務があるということが民法の規定であることから、支払いを追求するということがなかなか困難であるということは事実だろうと思います。
 しかし、私ども法律をつくる立場から考えますと、民法上そういうふうにはっきり規定がありますものをいかにもそれを排除するかのような法律、すなわち本来ならば父親が払わなければならぬものを払わないでよろしゅうございますよという中身にはなかなかいたしにくいという面がございますので、このような条項が入ったと思います。
 そこで、御指摘のようなことでございますけれども、私は民法が変わらない限りはなかなかそのような訴求、追求するような手だてはそう早急には見つからない難しい問題だろうと思うわけでございます。
 したがいまして、今御提案申し上げておりますものは、そういうような法律制度と実態的な養育費の支払いかあるかないかというすり合わせの結果、第十区分であります六百万円以上の人ならば払いやすいし払ってもらえるような進め方も考えられるのではないか。元来、扶養の義務は所得に制限なく全部の父親にあるわけでございますけれども、その中でもそういう方々にはという気持ちで今日の法案立案になっておると思うわけでございます。したがいまして、私どもは先生の御意見につきまして決して抗弁するつもりもございませんし、現実はそうであろうと思っておるわけでございますけれども、現在の日本の法律制度のもとではこのようなことしか書けないのかな、そういうふうな考えを持っております。
#266
○塚田委員 それならばせめてこの六百万という線切りを八百万とか九百万とか上げていただくことについてはいかがでしょう。
#267
○小島政府委員 これは所得の十分位法で制定当時六百万ということでありますが、所得の状況が変われば今後実施する場合でもその見直しということは当然考えていく必要があるものだと思いますので、それは無理のない本当に実行しやすいところだけに限るという趣旨は制度実施後も維持してまいる所存でございます。
#268
○塚田委員 この六百万以上の所得があるかどうかは、離婚をされた方というのでしょうか、これが手当の申請をする際に、原則として離別した父親の離婚したときの前年の所得証明なり給与証明なりをつけて認定を受けることになる、こういうふうに思われるわけでございますが、これは実際のところなかなか困難なケースが多いのではないかと思います。別れた夫からそういう証明書をとるのは非常に難しいと考えるわけですけれども、これはどのような方法、対策を考えておられますか。
#269
○小島政府委員 先生御指摘のように、原則はあくまでも母親が別れた夫からその証明をもらうということでございますが、例えば、離婚の事情によりましても、母親が居どころを明らかにしたくないとか、請求しても送ってくれないというような自分で添付できないととに合理的な理由があります場合には、知事がかわって所要の証明を関係官署あるいは事業主からとるという制度は現在の規定を活用しても可能でございますので、そういう困難を不当に母親にかけることのないような運用を十分心がけてまいるつもりでございます。
#270
○塚田委員 今の制度をもう一歩進めて、別れた夫の所得の証明は地方自治体なり何なり行政サイドが原則として行うべきであるというふうに、言うならば挙証責任者は行政サイドである、その挙証ができない限りは原則として全部もらえることになるんだ、このような措置がとれないでしょうか。
#271
○小島政府委員 先ほども申し上げましたように、法制度の仕組みといたしましては、他制度等を勘案いたしましても、母親が一応請求願うという建前は保たなければならぬと思いますが、そこがみずからの請求の隘路になることのないような運用は十分心がけてまいるつもりでございます。
#272
○塚田委員 この問題はこのぐらいにしまして、もう大分審議が進んでいるわけですが、もう一度確認の質問をしてみたいと思います。
 いわゆる未婚の母の問題でございます。原則論のような論議になりますけれども、今回の改正では未婚の母を支給の対象から除外することになっておりますが、私としては、これ自体は改悪である、このように考えざるを得ないわけであります。
 児童の権利というのは、憲法であれ児童憲章であれ、児童福祉法等によって保障されているわけでございまして、これが母親が生き別れの形であれ死に別れであれ、また未婚であろうと、その母子世帯の中において子供には何のかかわり合いもない問題であるわけでございます。それが今回の手当支給の廃止というのは、未婚母子家庭の場合には、その児童について、死別したとか生別したという世帯の子供との間にいわれのない不合理な差がつけられる。これはやはり憲法に反するものだと私ははっきりと申し上げざるを得ないと思うのです。
 そういうことでございますので、この未婚の母を特別に区別するということはもうやってはいけないこと、違憲とまでは言えるかどうかわかりませんけれども、憲法の精神そのものを踏み外すものでございますので、大臣、もう一度考え直していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#273
○小島政府委員 今回の改正法案の考え方は、毎毎申し上げているわけですが、離婚等による残された母子の生活の激変を緩和する、経済援助を行いながらその母子家庭の自立の促進に資そう、それを通して最終的には児童の福祉の増進ということについては全く変わるところはございませんが、そういうことで対象者を拾っていった結果、離婚等の場合のように従前夫によって生計を支えられていた、それが離婚によってそういう支え手を失ったという事情のない、いわゆる未婚の母というものがたまたま対象に上ってこなかったということで、いわれない差別、出生によって差別をするというようなことでは毛頭ございません。
 我が国の場合、最低生活は生活保護で維持されております。それに、どのような状態の世帯あるいは児童に特別にどういう援助をするのが妥当かどうかというのは合理的な判断に立って行うべきものだと思います。いずれにしても現金給付ですから経済援助でございますが、同じように低所得であっても父子家庭には出ません。一般家庭にも出ません。しかし一般的に言って、母子家庭というのは離婚によるショックが大きい。生活の激変に緩和措置を講じようという趣旨で対象にしておりますので、差別をするなということになれば、父子家庭でも一般家庭でも同じじゃないかという議論もあろうかと思いますが、そういう合理的な理由で母子家庭を拾い、なお今度の制度の考え方から対象を拾った結果、未婚の母の家庭が対象にならなかったという事情でございますので、御理解願いたいと思います。
#274
○塚田委員 次に、支給期間の点についてお尋ねいたします。
 児童扶養手当は、昭和三十七年に制度が発足して、次の五十三年の改正において、それまでは十五歳までの子供が対象になっていたものを満十八歳まで引き上げられた。これはなぜ引き上げられたのかということを考えてみますと寸やはり高校進学率が非常に高くなってきておる。実際は高校進学そのものはもう義務教育と同じような形になって、国民総高校進学というような事態、これを考えて、高校卒業までは何とか保障しようじゃないかという非常に温かい思いやりの上に改正が行われたわけだ。これは非常に高い評価を受けておるわけでございます。
 ところが、その進学率が低くなったとか、もしくは義務教育と同じようになってしまって高校進学の費用が思い切り安くなったとかいうような特別な変化もない。一方、高校生の場合、教育費が非常にかさむから、教育減税もぜひしてほしいんだというような世論のバックアップを受けて、私ども野党が政府に今要求してございますし、政府の方としてもこの考え方については大分理解をいただけるような状態になっておる。
 ということは、裏返すと、高校進学費用がかなりかさんでおる、そういう事態の中でわざわざ高校には行きなさんなよ、実力がなければ無理ですよ、実力というのは財政的な実力がなければだめですよと言うに等しいような措置をとられるということは、母子家庭にとっては大変なショックと申しましょうか、特に子供にとっては機会均等といいましょうか、それだけそれが奪われるということで、ゆゆしき問題だと思うのです。こういうことで、高校教育が普遍化されている中で、しかも財政基盤、収入基盤の弱い母子家庭のことを考えたら、こんな弱いところにむちうつようなやり方だけは何とか避けてほしい。この件についてぜひ意のある御回答をいただきたいと思っております。
#275
○小島政府委員 今度の改正におきまして支給期間を原則七年、しかし、七年を超えてもお子様が義務教育終了時までは手当を出すことにいたします、こう言っておるわけでございまして、高校はいいんだと、これをカットする趣旨ではございません。その七年間というところの根拠でございますが、一般的に生活保護の受給世帯の母子家庭等を見ましたりあるいは母子寮で過ごされている母子家庭では、この手当の受給者の大部分の方が現に七年程度の受給で終わっておられるというような状況を勘案いたしまして、七年程度援助申し上げて、その間に自立の準備をなさって自立していただきたいという関係から、どうしても必要な期間というのはやはり七年じゃなかろうかということで七年に限定させていただいたものでございまして、高校はもう面倒見なくていいからという趣旨では全くございません。
 これは長ければ長いほどその母子家庭については手厚いことは先生御指摘のとおりでございます。できればそういう方法をとっていくのもまた妥当かと思います。ただ、我々厚生省が責任を負っております社会保障全体で新たな行政需要もどんどんふえてまいっております。そういうものを円滑に推進していくためにはやはり何とか七年程度で自立を願えるという期待のもとにこの七年ということで切らしていただいて、また必要な他の施策も十分に実施してまいりたいということでございますので、我々の一応の検討結果から七年が妥当だという数字が出まして提案申し上げておるわけでございまして、これは自立に要する期間ということでございますので、母子家庭のお子様方の高校までの援助を必要としないというようなことでは全くございません。
 また、このような状態で七年間で支給がとまり、まだ高校在学中、これから高校に入るというような御家庭につきましては、母子福祉費の中で無利子の特別貸付金という手当額と同額の貸付金の制度を設けまして、それをまた御活用願うという道も準備しておりますので、この辺のところも御理解をいただきたいと思います。
#276
○塚田委員 今度わざわざ七年で切ったということが、結果的に今まで七年だったから、それでいいだろうというように受け取れるわけですけれども、結果的に同じならば今の制度のままでいいんじゃないですか、いかがですか。
#277
○小島政府委員 いや、それよりも長い方もいろいろいらっしゃるわけでございます。ただ、我々が考えておりますのは、母子家庭で生活保護を受けておられる年限、これは三十−三十九歳くらいのお母様の年齢層の母子世帯でございますと、大体五年間で生活保護の状態から脱却される方が九二・五%、七年受給されておりますともう九七%の方が生活保護の状態から脱していらっしゃるというような状況もございますので、一応七年という期間御援助申し上げ、またお母様方の一層の御努力によりまして自立をお願いしたい、また、それ以上の期間に要する費用は他の必要な施策の実施に回させていただきたい、こういう趣旨で御提案申し上げておるものでございます。
#278
○塚田委員 ほとんどの母子家庭においてはお母さん方が自助努力で非常に頑張っておられる。さらにその自助努力のことを期待するということでございますけれども、今の母子家庭においては、努力しても努力してもどうにもならぬ、しかも高校生を抱えた場合には親子共倒れになってしまうというような危険性が非常にあるわけなんです。しかもそうなってまいりますと、今の状況でいけばかなりの者が自助努力によって離陸するといいましょうか、逃れておるのだから、今度の改正ぐらいやったっていいじゃないかということですけれども、ほんの数%とか数万人とか、いわゆる国の施策からどうしてもこぼれてしまう方々、今度みたいに厳しくするからその網の目から外れてしまう方がいるわけです。
 厚生省としてはマクロに物を見るから、その比率が少ないんだからマクロでもって納得すればいいんじゃないかというような考え方が強いでしょうけれども、それは大蔵省とかなんかがやることであって、厚生省というのは、一人でも二人でもこぼれている者があったらばそれを拾っていくという精神が必要じゃないか。今度の場合は、そういう者が何万人か知らぬけれども、わざわざこぼれる者をつくっていくというような改悪になっているわけですよ。
 そういう意味から、あの手この手の措置を、こぼした後で拾うといいましょうか、育英資金を与えるからとかなんか予定はするとは言うけれども、そもそもそういう者を出さないこと、これがより厚生省の社会福祉施策としての本旨じゃないか、私はそう思うので、財政的な負担も大した差がない、今までのマクロで見た数字と財政負担がそんなに差がないというならば、ぜひ今まで同様高校生をお持ちの家庭のところまでは、その終了まで扶養手当で面倒を見ていけるように気配りをお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。
#279
○小島政府委員 我が国の場合は、最低限の生活は生活保護法によりまして保障するという道を講じております。今、有期化によります財政効果はわずかではないか、こういうお話でございますが、これはこれから七年間という制度が実施されますので、その結果が満年度化しますのはしばらくかかります。しかし、満年度化しますと三百億程度の財政効果も出てまいります。どうしても七年間でお困りになる方については先ほどの貸付金の御援助もする。それからどうしてもという場合には最後の手段としては生活保護、これは不幸にしてそんなことになったら困るわけです、できるだけそういうことを避けていただきたいと思いますが、そういう制度も最後の手段としてはございますので、一応、一般的にほとんどの家庭の方が十分に自立できるというふうに期待し得る期間七年で手当の支給は終わらせていただきたい、その後の期間の必要な者については無利子の貸付金制度というようなものの活用をお願いしながら十分他の施策の面で努力してまいりたいと思っております。
#280
○塚田委員 最悪のときには生活保護という救いの手があるということですけれども、そんなことを言ってまでいわゆる扶養手当の改悪を行う、これはやはり為政として考えるべきじゃないと思うのですよ。何回か自助努力、自助努力と言っておる。本来ならば母子家庭の方々の一番楽な方法は、全部生活保護も受けたらいいでしょう。そこは日本民族のいいところです。歯を食いしばって何とか生活保護にならないように、これは国の財政がかわいそうだからやるんじゃない、精神的なものもあるかもしらぬ。このよい面を伸ばしていくために扶養手当という制度があるんじゃないですか。その扶養手当をつまらぬところでけちるからそういうように日本民族が今まで育ててきた自助の精神を摘み取ってしまう。ちょっとのところですから、ここのところ、ぜひ高校卒業までは自助ができるように、面倒見るんじゃなくて自助ができるように、生活保護にならぬで済むようにやってほしい。そのためにも高校を終わるまでやるべきじゃないか。
 それから、一応無利子の貸し付けがあるということでございますが、私自身も育英資金で育ってきた男でございます。就職してすぐなんというのはいかに金利は安くても借金返すのも大変なことですよ。しかも、いいところに就職して結構な初任給とかなんかもらっても、一人だったらば借金を返す力があるいはあるかもしらぬ。しかしながら母子家庭の出身の場合は、ここまで育ててくれたお母さんのためにいろいろな面でもって、年も老いてくる、親への仕送りに近いことまで母子家庭の子供はみんな考えているのです。そういう中で、いかに少ないといえども借金返済の責めを負うということは極めて厳しい状態なわけです。
 そういうわけで、自助努力という言葉があるわけですけれども、その自助努力というのが、与えずにあれするんじゃなくて、いわゆる初動資金のような、エンジンの最初の活力になるような形で与えているのが今の扶養手当、このように考えていただいて、児童扶養手当をもらったのはもう自助じゃないんだ、与えなければかえって自助の努力をするんじゃないか、これは考え方にちょっとした差があると私は思うのです。児童扶養手当というのはそういう意味で自助そのものを助ける手段である。となれば、自助を進める厚生省はそれをどんどん出さなければいけない、このように考えますが、いかがでございましょう。
#281
○小島政府委員 先生御指摘のように、まさしく今回もこの自助を助ける手段として位置づけたわけでございます。その必要な期間として一応考えましたのが七年ということでございますので、これは、母子家庭として生活の激変によりまして直ちに生活が困窮したりあるいは生活保護に陥るなんということのない、できるだけそういう事態を避けるようにという趣旨に立っていることは先生御指摘のとおりでございます。この件につきましては、一応自立までの準備期間として必要な期間が七年、その間の援助措置ということに考えておりますので、その辺を御理解願いたいと思っております。
 また貸付金は確かに返済を伴いますので、やりっ放しの給付金とは違います。したがって返済の御努力も願わなくてはならぬわけでございますが、それについては無理のない据置期間とか償還期間というものを定めて、決してそれが重荷になるようなことのないような運用にもぜひ心がけてまいりたいと考えております。
#282
○塚田委員 いよいよこの法案の審議も最終段階に至っているようでございますが、二段階制の導入、それから先ほど何回も申し上げましたが、所得制限の強化について、いろいろ反対しているわけでございますが、反対とは言いながらも、反対というよりももう絶対許せないと思っているわけでございますが、それはさておきまして、民主政治のルールに基づいて修正でもできるんならばというような気持ちから陳情申し上げるわけでございます。
 まず第一に二段階制の導入、これはやむを得ないと言えばやむを得ないような気もいたします。そうした場合、所得税が非課税のような下の段階の手当額、これをもっともっと手厚くすることができないか、このような形での修正をぜひお願いしたいと思っているのですが、前向きのお考えをお示しいただきたいと存じます。
#283
○小島政府委員 これを今回二段階制にいたしましたのは、年金と違いまして福祉制度ということになれば、先生御指摘のように経済状態に対応して必要額を考えてまいるのが合理的だと考えまして、所得税非課税というような世帯については一応三万三千円、それから母と子、二人の世帯でありますと現在所得税の非課税限度額が百七十一万になっておりますが、そこから三百万、三百万というのは二人家族の場合で中程度の生活を維持されている層でございますので、その層にはその三分の二に当たる二万二千円の片額の手当を支給するということを考えております。
 いろいろ御議論はあろうかと思いますが、現段階で考えた場合に、三万三千円という額は決してそう不十分な額ではなかろうと考えております。もとよりこれは経済状態なり所得水準の変動に合わせまして所要の見直しは必要な額だと思いますが、現段階で三万三千円というのはそう不本意な額ではない、一応御納得いただける十分な額ではないかと判断しております。
#284
○塚田委員 この児童扶養手当の支給対象としない母子世帯の所得線引き、これが今度の政府原案によりますと三百万円に引き下げたいというようなことでございますが、私としては、やはり今までどおり三百六十一方円、ぜひこの線を守っていただきたいと思っております。いかがでしょうか。
#285
○小島政府委員 確かに、現在見直しまして、従前の所得制限の三百六十一万を三百万に引き下げる案を御提案申し上げているところでございます。ただ、先ほど申しましたように、これは普通程度というふうな生活レベルの認識の収入レベルが、二人家族の場合ですと三百万ということでございますので、やはりそれ以上のところは御遠慮願ってしかるべきではないか。
 と申しますのは、同じように低所得世帯でありましても、父子家庭や一般家庭は低所得でもこういう手当は出ないわけでございます。むしろ、父子家庭の場合など、百七十一万を超えますと税金が取られる。その税金も、広く言えば児童扶養手当の財源に入るわけでございますので、そういうバランスを考えれば、御提案申し上げている所得制限あるいは二段階制というものについても、何とか御理解願えるのではなかろうかと考えております。
#286
○塚田委員 急に六十一万円も引き下げたということですから、これはやはり厳しいと思いますので、その半分ぐらいの線にあれするというような、足して二で割るような方法なんですけれども、少しでも緩和する、血も涙もあるというような方法はいかがでございましょう。
#287
○小島政府委員 私どもとしては、こういう所得制限のあり方が他の世帯とのバランス等を考えましてぎりぎりの線と考えていいのではなかろうかと判断しております。やはりこれが最も合理性のある姿ではないかと判断しておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
#288
○塚田委員 私は冒頭に、いわゆる父親の所得制限の問題を、非常にしつこくその改善を求めたわけでございますが、審議も本当に最終段階に煮詰まっておりますので、今まで各委員がいろいろと皆さん方に、政府に対して、できれば撤回してほしい、撤回が万一できないならば徹底して現行制度を守る方向に直してほしい、この今後の点については指摘されていると思いますので、ぜひ大臣も局長も、一たん出してしまったのだから、メンツでもこれを通してもらうんだなんということを言わずに、母子世帯の実態についてはこの審議を通じて嫌というほどわかったはずですので、それを踏まえて、メンツにとらわれないで考え直していただきたいと思っております。
 最後に、一番ポイントでございました別れた前の夫の所得の制限に関して、二つほどお伺いいたします。
 確かに、扶養義務があるということで裁判の結果とか何かに基づいて扶養費を受けておったけれども、何らかのことが起きて途中からそれがだめになってしまった、そういう場合に福祉事務所なり何なりにそういう母子世帯が訴え出た場合、それについて救済するような道があるのかどうか、具体的にどうしたらいいのか、その辺お教えいただきたいと思います。
#289
○小島政府委員 法律上も、事情変更ということで例を挙げておりますが、父親の所在が長期間不明になった、もう当然扶養義務の履行も期待できない、あるいは失業、倒産等で所得がなくなるという事態もありましょうし、あるいは所得がそのとき激変してもはや扶養義務の履行が期待できないという場合があろうと思います。そういう場合にはそういう事由を付して申し出をいただければ、それの事実を確認した上で支給を開始するという扱いは当然のところであります。
#290
○塚田委員 実際の運用について、ぜひその担当窓口に対して、とにかく母子家庭への温かい心を持って相談に乗る、できる限り道を広げてやる、このような御指導をいただきたいと思います。
 ところが、実際こういうような任に当たるのが福祉事務所及び民生委員が当たっているケースが多いわけでございますけれども、民生委員というのは非常に人格まろやかな人生経験豊かな方で、ゆえに母子家庭もその相談相手として評価している方々が多いとは私も承知しております。しかしながら、かなりのケースが生じておるわけですけれども、意地悪というわけではないけれども、民生委員のさじかげん一つ、報告一つで非常に苦しい目に遭っておるケースを耳にするわけでございます。
 その第一は、やはりプライバシーの問題ですね。これは民生委員として当たり前の守秘義務ではございますけれども、その辺がどのように保護されるのかということと、また、そういうふうに母子家庭の方もしくは調査対象となる別れた夫の方も、プライバシー侵害を恐れて申告したいことも思うように申告できない、それがために結果的には判定結果が悪くなるというようなケースが間々あるんじゃないかと思います。このプライバシーの点についてどう考えるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
#291
○小島政府委員 この行政を進めていく上で一つの本当に難しい問題がプライバシーの保護と不正受給の排除という問題でございます。したがって、我々としては、守秘義務がある公務員、これは民生委員も特別職の公務員でございますので守秘義務がある、そういう範囲で、なおかっこの前も御指摘をいただいた点もありますので、必要最小限度の調査を、しかも合理的な方法で行うということに配慮しながら、十分その調査方法等も常に見直して、無用のプライバシーの侵害問題とか、せっかくの制度でございますので、無用に受給者の方々に不愉快な思いをおかけするということがないような措置には十分配慮してまいりたいと思いますし、御指摘のような問題があるとすれば、選任の段階から民生委員という職務上その辺は十分考えておることでございまして、職務遂行上の注意事項についても必要の都度御連絡申し上げておることでございますので、そういう機会にさらに先生御指摘のようなことのないように配慮をしてまいりたいと考えております。
#292
○塚田委員 確かに、偽装的な不正受給、これを防ぐということは大切なことだと思います。しかしながら、それが変に厳しくなる、もしくは悪用に近い形になって、民生委員の聞き込み調査か何かによると、週に一回くらい別れた夫から電話がかかってくるとか、月に一回くらい母親のところに出入りがあったとか、その時間が数時間に及んだとかいうようなことを理由におかしな報告書が出されて、母子家庭のお母さんが非常に悩んでいるというようなケースもあるようでございますので、この辺、実際の指導の仕方が難しいと思いますけれども、とにかく十分気をつけていただきたいと思います。
 それでは、大臣に最後に一言だけお願いしたいのですが、繰り返しになりますけれども、確かに改正案として用意された、だから、それを通すのが大臣としての義務である、だから、野党の方にも何とかのんでくれというお願いの立場であるようでございます。しかし、実情は実情、非は非。それから、今度の改悪によって苦しむ方々が何人か何万人がわからぬけれども出てくる、これに対する救済ということを考えた場合に、あくまでも少数者を泣かせるようなことをしない、これが厚生行政、社会保障行政の最たるゆえんだと思いますので、ぜひ今この時点からでもいいから、もう一度この法案のこれからの行方について思い切り再検討していただきたい。
 そして、私がずばり提案申し上げたいのは、わざわざ離婚制度等研究会を設ける、そして担保の方法まで考えておるならば、担保ができるまでお待ちいただきたい、このように思うのですが、この件について大臣の母子家庭に対する誠意ある御回答をいただいて私の質問を終わらしたいと思います。
#293
○増岡国務大臣 母子家庭のことにつきまして、御経験を踏まえながら大変愛情あふれる御覧間でございます。私どもももちろんこのような家庭に対しましての対策を十分にやらなければならないと考えておるわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、養育料の請求その他につきましても現在の法律制度の中ではそれを確保することもなかなか難しい状態のもとでこの新しい制度が発足するわけでございます。また、先ほど社会党の先生からも、臨調は児童扶養手当をつぶそうとしておるのじゃないかという厳しい御指摘もございました。私はそのようなことではないと思いますけれども、しかし厳しい財政状況であり、その中で何とかやりくりをしていかなければならぬのが私どもの仕事でございますので、この案につきまして幾つかの点で御指摘を受ける面があろうかと思います。
 しかし、私どもは何としてもこれを早く成立させまして、新しいスタートをさせ、そしてまた将来大きく育てていこうという気持ちも持っておりますので、今回はできるだけ早く御議決いただきますように、また内容につきましては十分御審議いただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
#294
○塚田委員 終わります。
#295
○戸井田委員長 田中美智子君。
#296
○田中(美)委員 児童扶養手当の問題について質問させていただきます。
 児童扶養手当というのは、今までの制度を見ますと母子福祉年金を補完するものという形であったわけですけれども、その中身というものは、生活に困っていない人には手当は出さないけれども子供を育てていくのに困っている人には手当を出すんだというところから出発しているんだというふうに思いますが、そのとおりでしょうか。大臣、さつきのように目をつぶってじっとしていらっしゃるのじゃなくて、きちっとお互いに目を見合いながら話し合いたいと思いますので、答えていただきたいと思います。
#297
○増岡国務大臣 もちろん、離婚等のことで生活に激変ができた方々に対する、その子供さんに対する措置でございますから、普通の家庭よりもうんと難しい立場にいらっしゃるということは理解いたしております。
#298
○田中(美)委員 私は本来児童扶養手当というのは苦しいとか苦しくないとかというようなことで考えない方がいいと思いますけれども、これは今はそれに触れません。今の制度自体がそうなっているということですので、そこから質問を出発させていきたいわけです。
 今大臣もちょっとお触れになりましたし、衆議院の浦井議員や参議院の吉川議員に対してもその生活の激変ということが起きた場合にということを言っていられますけれども、激変するというのは具体的にはどういうことなんですか。
#299
○小島政府委員 これは従前から一般的には家計の中心は、父親が家計を支えているというのが現在の我が国では普通の形だと思います。離婚等によりましてその家計の支え手を失ってしまった。これからは母子家庭という状態で生活を維持していかなくてはならぬ。そこでその離婚という時点を限って生活状態が激変を来すわけでございますので、そういう状態に着目して、そのような母子家庭が自立なさるまでの間の援助措置としてこの制度を活用してまいりたい、こう考えておるところでございます。
#300
○田中(美)委員 例えば激変しない場合はどうなるんですか。
#301
○小島政府委員 したがって、一般的に激変が生じないと考えられるところがこの対象にならなかった。一般的なケースで考えてまいりますので、個々のケースの中では、例えば母親が従前から家計を支えていたという方々でありますれば離婚なすっても激変ということはないかもしれません。これはあくまでも経済状態のことでございます。
#302
○田中(美)委員 激変なんという言葉は抽象的な言葉で科学的な言葉じゃありません。例えば松下幸之助さんのようなお金持ちが田中美智子ほどの生活レベルになりましたら、これは大変な激変なわけです。ですから、激変なんということはどこに線を引くかということで、激変などとい三言葉で差別を中に入れてくるという姿勢自体が大変間違っていると思うんです。先ほども言われたように、子供を抱えて生活をしていけるかいけないか、生活するのが大変なんだ、こういう人に対して出すんだというのが本来の目的だということを初めからきちっとあなたは言っていらっしゃるじゃないですか。
 私はまだ未婚のことは言っていないのに、あなたはその先のことを言っているわけです。父親がいても生活すれすれの場合だってあるわけでしょう。それで死んだって、ろくに家に金を持ってきてない男だっているから、激変しないということだってあるじゃないですか。しかし生活は苦しいということだってあるでしょう。ですから、激変なんていうふうな非科学的なことであなた方がやっている母子家庭に対する残酷なやり方に対して、合理化するということはできないと思うのですね。
 問題は、未婚の母子に対して激変がないんだというわけですけれども、子供が生まれてきたということ自体はこの女性にとっては大変な激変なんです、あなた方の言う言葉で言えば。そうでしょう。今までは自分一人で食べていくのだって大変なんですよ。御存じでしょう。今の制度では女の賃金は男の半分しかないんです。間違っているんですよ。憲法違反がまかり通っているんです。女の賃金は男の賃金の平均五二%でしょう。それは人によって違いますけれども、全体に低いんですよ。それが特に若い女性が子供を、私のような年で子供を産むんじゃないんですから、若い人が子供を産んだということは生活に大変に激変があるんですよ。
 その人が子供を育てていくということに対して、これには生活が激変しないから扶養手当を出さないなどという理屈には全くならない。未婚の母の場合ですけれども、父がなくて一人の子供を育てていくという場合に、大臣よく聞いていてくださいよ、実際にはどうなるかというと、第一、夫がいる人で夫が亡くなった場合には、それだって大変だから、あなたの方では大変だからって扶養手当を出すわけでしょう。大変なんですよ。しかし、未婚の場合には遺族手当がないんですよね。それから、税金の控除の寡婦控除もないんですよ。遺産相続もないんですね。
 遺産相続は先のこととして、あれですけれども、すぐには遺族手当がありませんし、それから、税金の寡婦控除がありませんでしょう。その上に、お母さんが未婚の母の場合に、子供を保育所に預けて働きに行かなければならないわけですよ。そのときに、大臣、保育所に子供を預けるときには、税金で一人の保育料が変わってくるんですよ。大臣は御存じでしょう。ですから、例えば十五万ぐらい収入のある女性がいたとしますと、そうすると、これは十五万というといい方ですよね。しかし、実際には保育料が二万五千円ぐらい取られるんですね。しかし、同じ状態で、遺族年金をもらって、政府の言う児童扶養手当をもらえる対象の人にしますと、これは、保育所には一万四千円でいいというような、例えば−−一万四千円でいいって、これもいいことはないですけれどもね。保育料も未婚の母の場合には高くつくという状態になっているんですね。
 それから、母子寮はどうなっていますか。母子寮に入るのにまで差別するんですか。それだけはっきりしておいてください。
#303
○小島政府委員 母子寮入所については全く差別はございません。
#304
○田中(美)委員 絶対しないんですね。今は未婚の母は児童扶養手当をもらっていますからね。ですから、それは差別はないですよ。しかし、今度はもらわなくなるということにもしなったら、そうした差別をするんじゃないですか。しないですね。
#305
○小島政府委員 それはいたしません。
#306
○田中(美)委員 今言ったように、未婚で子供を育てていくというのがいかに大変かということは、これはいかに生活が激変するかということですから、ですからこれを……(発言する者あり)自民党、邪魔しないでください。まじめなことなんですから。黙っててください。委員長、言ってくたさい。邪魔で、うるさくてしようがないですよ。注意してください。――そういう中で、未婚を対象から外したということは絶対に許せない。これはぜひ撤回していただきたいというふうに思います。どうですか、大臣。
#307
○増岡国務大臣 今度の法律の物事の考え方がございます。母子福祉年金を補完する立場から今度は福祉政策に変わるわけでありますけれども、その際の対象の大方の方々が死別から生別の母子家庭に変わっておるということに着目をした法律の中身でございますので、したがって、離婚ということが一つの大きな対象になるための条件のようなものになっておるわけでございます。そういうことから、未婚の母が除外されておるわけでございます。私は一つの物の考え方としては、いわば論理としては合理的な面があろうかと思いますけれども、さて世の中の実態ということを考えますと、いろいろ御意見があることは承知いたしておりますけれども、本日撤回する意思はございません。
#308
○田中(美)委員 今、外務委員会で女子差別撤廃条約がかかっております。この七月には、ケニアで日本がこの条約を批准する、こう言っているときに、この十六条に――大臣はお読みになっていないんじゃないかと思うのですね。今のように離婚だけだとか、合理性だとか、こういうこと空言っていらっしゃるということは、この条約を読んでいないんじゃないかというふうにしか思えません。この十六条の(b)に「子に関する事項について」というところがあります。「子に関する事項についての親」についてですね。親の権利ですね。これは「(婚姻をしているかいないかを問わない。)」「子の利益は至上である。」ということが書かれているわけです。
 こういうことを考えますと、この批准を今日本がしようというときに、今まで未婚の母に対しては手当を出していたのに、それも、国連婦人の十年の最終年で、これからの成果を問い、さらに躍進しようというときに、こういう女性の中に差別をつくっていくということは許せないことだというふうに思うんです。
 今の大臣のお言葉で非常に大臣がわかっていないということは、生活が豊かな人には出さない、しかし苦しい人には出すんだ、こういうふうに初めから言っていながら、苦しい人の中でも、この何人かは出さないんだ、これは明らかに差別ですね。差別撤廃条約に違反しているんですよ。そういう意味で、今大臣は撤回しないと言われましたけれども、これは国民の大きな怒りを買うということだけは十分御承知おきいただきたいというふうに思います。これは恐らく国際会議でも日本がこういうことをしたということに対しては世界の批判も浴びるんだということを、厚生大臣として胸にとめておいていただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 大臣、おめかけさんというのと未婚の母とはどう違うのですか。
#309
○小島政府委員 これはいわゆる未婚の母というものにつきまして……(田中(美)委員「大臣に聞いているのです。未婚の母とめかけというのは」と呼ぶ)
#310
○戸井田委員長 田中委員に申し上げます。委員長は、小島局長を指名をいたしました。改めてまた大臣に御質問を……。
#311
○小島政府委員 未婚の母というものについては、それぞれ考え方があろうかと思いますが、現在御議論いただいておりますのは、児童扶養手当法上の未婚の母でございますので、それによりますと、施行令の第一条の第三号に定義規定がございます。「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童(父から認知された児童を除く。)」こういう子供を抱えていらっしゃる方を未婚の母と言っております。
 ここで問題になりますのは、「母が婚姻によらないで」というところで、事実婚を含む規定になっております。したがいまして、ここで婚姻の届け出をしていないけれども、婚姻と同様の事情がある、通常事実婚と称しております。
 ここで、一般に社会保険法規上等でございますと、事実婚の場合にはおめかけさんなんかは入らない解釈にしております。これは届け出をすればそのままできるような状態、おめかけさんとか、近親婚の禁止とか、重婚の禁止、これはおめかけさんの場合だと思いますが、それから年齢制限とか、そういうものは一応該当しない形になっておりますが、この法律は父と生計をともにしていない児童を考えておりますので、ここで……(田中(美)委員「聞かないことを答えないでください」と呼ぶ)いや、ですから未婚の母との違いを申し上げておるのです。
 ここで言う「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合」というのは、我々としては重婚も含めて考えておりますので、おめかけさんは未婚の母に当たらない。おめかけさんがその夫に相当する方と生計を同一にしている間は手当の対象になりませんが、そこが別れたという場合には離婚と同様に扱いまして、その後、手当の対象となる形になります。
#312
○田中(美)委員 あなたの今おっしゃったことはさっぱりわけがわかりません。一体、内縁と未婚の母と、そしておめかけさんというのの区別が、あなたの今言っていることでは私はよくわかりませんけれども、少なくとも厚生省の出した「児童扶養手当法の改正について(問答)」というのについては、これはいわゆるおめかけさんにまで税金による手当が受けられることについては批判もあるから何々、こういう形で、未婚の母と、おめかけさんという今現実としてはほとんど使われていない、テレビの中の昔の話としては朝のテレビドラマでやっていますね、ああいうのには使われていますけれども、現状では使われていない言葉を厚生省が使って堂々と印刷に出しているから、私は、一体ここに書いてあるおめかけさんというのは何を想定しているのか。これは明らかにこれで見る限りは、未婚の母をおめかけさんと想定しているから、これは今度外したんですよ、こういうことですね。こういうことになっているんじゃないですか。ですから、今のあなたの言っていることは何のことかさっぱりわからないのですね。
 それで、一月十一日と十八日の「フライデー」という週刊誌があります。これの合併号に出ていたのですが、これは現職の国会議員です。もう七十歳を超していられる方、この方がめかけの子と本妻の子、うちの子と外の子というような、これを平等に育てているということで、これは美談というのか、美談がましいような書き方でその雑誌が書いているわけです。こういうものは、これがいい悪いということを私今言おうとしているわけではありませんけれども、これは明治の生まれの方、そのときには、そういうめかけの子と本妻の子を平等に育てていたのだということで非常に自慢をしていられるというようなことが週刊誌に出ていたわけですね。
 しかし、現在の未婚の母というのは、そういうのとは全く違うんですよ。ですから、そういう点からしてこの発想はこの七十歳の現職の国会議員の発想とそっくりなんです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━(「そんなことを聞くのは失礼だよ、取り消しなさい、委員長、注意してください」と呼ぶ者あり)いや、そういう発想が出るから、こういう発想が出るということは……
#313
○戸井田委員長 田中委員に申し上げます。失礼にわたらないよう重言動でやっていただきたい。
#314
○田中(美)委員 発想が出るということは、そういうことがその中にあるんですね。これが不見識なんです。では、これを撤回しなさい。これが不見識でないと言うなら、これを撤回しなさい。こういう考え方というのはけしからぬと思う。(「失礼ですよ、委員長、注意してください、不見識じゃないですか」と呼ぶ者あり)邪魔ばかりしないでください。この言葉が不見識だと言っているのですよ。だから、あなたはこういう考えを持っているのかと聞いたのが何が不見識ですか。これこそ不見識じゃありませんか。なぜ未婚の母がおめかけなんですか。
#315
○戸井田委員長 田中委員に申し上げます。
 ここは質疑をするところで、論争するところではありません。その中でやはり現職の大臣がここにおられて、大衆の面前で、━━━━━━━━━━━━━━━━━━というような言葉はやはり行き過ぎだと思いますので、よろしくお願いいたします。
#316
○田中(美)委員 はっきり申します。私は、━━━━━━━━━━━━━━━そんなことは聞いていません。あなたもこういう発想を持っているのかと聞いたのですから、これだけは訂正していただきます。あれしないでください。大臣を中心にしたあなた方にこういう発想があるのかとあなた方の文章について言っているのです。個人を言っているのではないのですよ。ですから、横からのやじに対して物を考えないでください。私はそんなことを言っていませんからね。
 次に質問いたしますが、そういう意味で、未婚の母と、おめかけというかつての言葉とを一緒にしないでほしいと思うのです。それは、現在もいわゆる週刊誌にあるようなものもわずかにはあるかもしれません。しかし、それは問題にならないのです。実際に子供を抱えて生きようとしている婦人というのは大変なんです。
 例えば、どうして未婚の母になるかということは、結婚の予定でいたところがいろいろな形でだめになった。それは自分が心変わりした場合もあれば、相手の心変わりもあるでしょう。それから周囲の反対でそれがうまくいかなくなるとか、それから地理的なものもあるのです。自分の親のそばにいないと育てられない、ところが夫になる人が遠くに行く。こういうふうな形で、生活ができない、一緒になれない。いろいろな形で出ているのですね。それで私が今言いたいのは、未婚の母に対するペナルティーをかけているような、こういうニュアンスが、この文章を見ても、あなた方の書いた文章を見てもある、感じられるから、今私は言っているのですよ。委員長もそれはよくわかってください。これをお読みになっていらっしゃいますでしょう。
#317
○戸井田委員長 田中委員に申し上げます。ただいまの発言については、速記録を見て、その上で処理をいたします。
#318
○田中(美)委員 おめかけさんという、こういうことを書く、これはだれが見ても未婚の母を想定できるような書き方ですね。これに対して私は苦情を言っているわけです。
 厚生省に聞きましたところでは、今出生は百五十万ぐらいです。それが中絶は五十七万、これは届け出ているだけですよ、大臣。いいですか、届け出ているのが中絶が五十七万ですね。医者によりますと、二倍と言う人もありますし、五倍、十倍と言う人もあるのですね。これは二倍としても中絶が百万を超しているのです。中絶するということにはいろいろあると思いますけれども、育てられないのですよ。ここにありますのは、弘前大の先生方が、片桐先生などを中心にして十九歳未満の妊娠中絶というものの数をあれしているのですけれども、これは中絶が圧倒的に多いのですね、数としては。
 それで未婚の母になっているのは平均年齢も高いように、やはりけなげにも、すべてかどうかわかりませんが、たとえ自分一人でも、自分の子供というのはおろしたくない、これを育てようとしたという意味では、未婚の母の中にはけなげさというものもあるのです。それを別に私は奨励するわけじゃありませんよ。けなげさもあるのです。その前にいかにたくさんの中絶があるかということは、未婚の母になったら育てられない。それは精神的なものだけではない。経済的に育てられない。だから、中絶しているのですよ。ですから今のこの書き方を見ますと、むしろペナルティー的なものをかけて、おめかけさんにまで扶養手当は出せないぞ、そうならば未婚の母になるな、妊娠したら中絶した方がいいんじゃないかというところまで論理が、論理よりも、推定される。これで私は非常に怒りを持っているわけです。
 こういう書き方を現代の今の厚生省が書いた。大臣が書いたかどうだか知りませんけれども、女性に対する、全女性に対するべっ視だと私は思うのです。まして未婚の母に対するべっ視も甚だしいというふうに私は思うわけです。ですから、この未婚の母を扶養手当から除外するということに対しては本当に腹の底から怒りを持っている。未婚の母はめかけであって、どこかよその男から十分に養われているんだ、こういう書き方だけは絶対にやってほしくないし、これは撤回すべきです。そうでしょう。この点をはっきりさせてください。
#319
○小島政府委員 先日の御質疑、またその前の予算委員会等の御質疑でも御指摘いただきましたが、我々としては、これは本当に適切を欠く全く不用意な表現があったということでおわびをしたところでございます。これにつきましては、この配付先が都道府県でございますので、都道府県の関係課長に、これはこういう趣旨で書くべきところを、こんな形になって非常に誤解を招き、不適切な表現であったから、正しくはこういう理由で未婚の母は対象にならないのだという事情を説明いたしまして、事実上撤回する措置を講じたところでございます。
 また、先ほど申し上げましたように、未婚の母とめかけが同質だというようには考えておりません。
#320
○田中(美)委員 大臣もいいですね、それで。
#321
○増岡国務大臣 この問題につきましては、参議院の予算委員会でも御指摘を受けました。実は私が厚生大臣になってからできたものではございませんで、前からのものでありますけれども、政府一体でございますから、私としておわびを申し上げておきました。
 しかし、私は、その中でも第一項の方、いわゆる夫と離婚した場合に、あるいは死別した場合に、残された母子の生活の安定と自立を援助するためのものでありますという項目が本来の趣旨だろうと思います。
 そして二項目に、これは要らざることを書いたという御指摘を受けてもいたし方ないと思います。
#322
○田中(美)委員 次の質問に移ります。
 別れた夫が六百万円、それも前年の収入だという問題で、今までこういうことがなかったわけですけれども、どうしてこういうことを今度入れたのですか。
#323
○小島政府委員 一つには、制度全体を見直しまして、私的扶養に期待できる部分はその私的扶養で賄ってほしい、そういうことで制度の合理化を図りながら必要な施策もあわせて講じてまいりたいということで見直した結果でございまして、六百万というのは、先ほど来御答弁申し上げておりますが、所得十分位法によりましても所得の最も高い層でございますので、まずその層くらいは十分な扶養義務の実施をお願いしたい、また母子家庭の母親の方にも子供にかわってその父の扶養義務の履行を請求していただきたいというふうに考えておるところでございます。
#324
○田中(美)委員 六百万が多いと言いますけれども、多いか少ないか、これは別です。果たして別れた妻に対して本当に金を出すか出さないかという問題です。出すような制度になっているかということです。現状は、出しているのは一一・三%ですよ。それでは六百万になったらみんな出すということを思っておられるのですか、大臣。今は別れた妻に一一%しか出してないのですよ。今度六百万にしたら、こういう所得制限というのですか、これは変な制限ですね、とんでもない新しい制度が入るわけですけれども、この制度ができたらちゃんと別れた妻に金が出るということですか。
#325
○増岡国務大臣 このことにつきましては、本来父親の方が扶養の義務もあるわけでございますから、しかもそれが民法で定められております。そのことを履行しない男性の側に罪の大半、全部があると思います。しかし、民法でそういう規定をしております以上は、私どもがつくります法律案の中身で、いや民法でああなっているけれどもあなた方払わないでいいですよという姿勢はとれないと思うわけでございます。さりとはいえ、事実上支払いをしない方が大部分でございますので、そのすり合わせの結果、高額な所得の方は払いやすい状況にあるんだから払っていただこう、こういう趣旨のものであると思います。
#326
○田中(美)委員 払っていただこうというのですと、そちらでやってくれるのですか、取ってくださるのですか。
#327
○小島政府委員 現在の日本の法制のもとでは、知事なり厚生大臣がかわって請求するという形の仕組みはとれません。したがいまして、まず母親の方に裁判上の請求も含めまして請求をお願いし、それについてどのような協力−−こちらでその実効を担保できるかということをまず今検討しているところでございます。
#328
○田中(美)委員 今検討していると言われましたけれども、確かに離婚制度等研究会ですか、これが今やっています。その中に児童の養育ということについてどうするかという検討項目が入っているじゃないですか、大臣。だから、それができて、そうしてちゃんとした制度としてちゃんと女の手に入るようにしてからやったらどうですか。それができないうちに、どうしてそんなに先走ってこの六百万というのを入れたのでしょうか。
 この研究会が今検討しているのですから、そして今、児童家庭局長が今のような日本の制度では地方自治体などが強制執行したりすることはできないんだという点を言っているわけですから、今の制度ではできない。できないのにどうしてこういうものを入れてもっと縮めるのか。少しでもできるようにするのが改善なんですよ。これは一〇〇%改悪なんですね。今、研究会でやっているわけです。児童家庭局でやっているじゃないですか。その結論が出てからにしたらどうですか。それから考えたらいいじゃないですか。
#329
○小島政府委員 いずれにいたしましても日本と諸外国とは離婚制度の法構成が違うということから、諸外国、例えばスウェーデンでとっているような制度はとれない状況にございます。
 したがって、今後そういう離婚法制まで含めてどうするかという問題がありますが、これはとても厚生省の手に負えません。法務省等において、厚生省もこの研究会の結果そういう意見があれば、そこも含めて検討願うということで考えておりますが、現行法制を前提といたします限り、まず母親の請求というものが先行いたしませんと公的な役所の行政サービスというような面での出ようもありませんので、まずそういうことで御努力願う。また、そういう中でどのような協力ができるのかというのが第一段階だと考えておりますが、何といたしましても母親の請求がありませんとどうも手がつかない状態になっておりますので、こういう制度の改正にあわせまして、別途今検討を急いでいるというところでございます。
#330
○田中(美)委員 また問題になるかもわかりませんけれども、週刊誌はゴシップを書きますので、これが正しいとは私は思いません。しかし、現職の国会議員が名前を週刊誌に書かれて、その中で妻以外の女性の子供に対してきちっとしたことをしていないというようなことを書かれているわけです。これは三月の週刊誌です。これは正しいか正しくないか私は知りません。しかし、こういうものを見ても未婚の母をつくった男の側がいかに相手の女に対して冷たく、また金を出したがらないか。ですから、六百万以上ならば出せる、力があるんだから出せるんだという考え方は机上の空論であって、今の日本の男性がすべてとは言いませんけれども、たとえ国会議員であろうともどんな大きな会社の社長であろうとも、また一般庶民の中を見ても、いかに出してないか。
 おたくの方でやったんだと思いますけれども、母子家庭の実態というのを見ましても一一・三%、一割ぐらいしか払っていないというのを見たら、いかに母子家庭というのは大変なのか。それを下げるということは、こういうことをするということは非常に問題だと思いますので、これはぜひ撤回をしてほしいということを要求したいと思います。
 その次に、今度の制度は、母子福祉年金を補完する制度であるというふうに何か年金制度の中に入っていたようなものが抜け出て一般の社会保障制度のような感じに変わっていく、その考え方というのがいいか悪いかは別として、私はそのねらいが非常におかしいところにあるのではないかと疑うので質問しているわけです。
 というのは、もし年金制度ならば、今度遺族年金にしても母子年金にしても母子福祉年金にしても、これは本当なら物価スライドで四・四%上がらなければならないところですが、三・四%上がっているわけです。そうすればこの児童扶養手当も当然三・四%上がってもいいと私は思うのですげれども、そこから抜け出たということは、そうしないためにやっているんではないか。実際には三百六十一万の者を三百万までに下げている上に、この三百万の人たちに対しては約三二・七%ダウンしているのです、計算しましたら。そうでしょう。それから百七十一万までの人に対しては三百円上乗せしているんです。わずか三百円ですよ。これは〇・九%です。遺族年金だって母子年金だってみんな三・四%上がっているのに、上がったところでも〇・九%ですよ。
 今母子家庭の方たちがどういう生活をしているかということは今までいろいろな議員が何回もいろいろな話をしていますけれども、その中で例えばおふろのない家庭に住んでいる人が圧倒的に多いのです。それは御存じだと思います。この間からの返答を聞いていても母子家庭の方は大変なんだということは御存じだと思うのです。それなのにたった三百円。大臣、今銭湯が幾らか御存じですか。
#331
○増岡国務大臣 百五十円前後だと思います。
#332
○田中(美)委員 それは何年前の話ですか。現在、東京は二百五十円ですよ。名古屋だって二百三十円です。子供でも、小学生が百二十円ですよ。そうしますと、小学校の子供を抱えて二人で一回三百七十円。一回ですよ。ふろというのは月一回のものではないのですよ。毎日行けないにしても、それだけお金がかかるんですよ、ふろひとつ入るのに。住んでいるところといえば、母子寮の方たちは銭湯に行くわけですし、母子寮に入れなくて安いアパートにいても行くわけですから、そういう意味では三百円というものがいかに少ないかという例えばの事例を私は言っているんです。ふろだけのことを言っているんじゃないんです。ふろみたいなものでさえも母子家庭の方たちというのは考えながらでなければ行かれないという状態にあるんです。それを全面的にダウンさせる、そして幅も縮める。
 普通はよくあめとむちという言葉がありますけれども、どこかがちょっとよくなるけれども、どこかがちょっと悪くなる。私たちが質疑をするときに、さあどっちをとろうかと思うことがあります。ここはちょっといいからいいと言おうか、それともここが悪いから悪いと言おうか、こう迷うこともあります。そういう法案もあります。
 しかし、今度のはどこがよくなっているか。一〇〇%悪くなっているでしょう。所得制限は入る、別れた夫の金額までが影響してくる、その上に金額も下げられる。こんなことでは一〇〇%悪いわけですね。こういうものは絶対に私は認められない。その上に二割を地方自治体にそれを負担させるということですから、もう一〇〇%どころか一五〇%、二〇〇%ひどいんじゃないかというふうに私は思います。
 そういう意味で、これはこのままで国会を通すならば絶対に国民の大きな批判も受けるし、世界の批判も受ける。まして、女や子供の問題ですから、幾ら何に金を使いたいからといって、一番今弱い立場に置かれている、本当は一番強い立場になければいけない人たちなんですよ、その人たちが一番今弱い立場に置かれている、ここを踏んだりけったりということは許せないと思います。その点、大臣から見解をお願いいたします。
#333
○増岡国務大臣 私どもは、この母子に対しましての扶養手当の制度を今後長期安定をして維持をするためにという考えが一つございます。また、私どもと対抗いたしまして、やはり世の中にはいろいろ甘やかし過ぎるんじゃないかという声もなくもございません。しかし、私どもはそういう声に惑わされることなく、現在の厳しい財政状況のもとでできる限りの措置をしたつもりでおりますし、今後もするつもりでおります。
 ただ、残念なのは、この法律案がもう一年余り継続になっておるわけでございますから、その中に書き込まれた金額は一年余り前のものでございますので、その点も御配慮、御理解をいただきたいと思います。
#334
○田中(美)委員 社会保障制度審議会、ただこの一つの審議会にあなた方は答申を求めているわけですけれども、この中に書いてありますのは「財政対策にとらわれるあまり、」大臣、よく御存じだと思いますけれども、もう一度よく聞いてください。「財政対策にとらわれるあまり、真に援助を要する者が対象からはずされるおそれのないように十分に配慮されたい。」こう書いていることは、これは当然未婚の母やまた所得の三百万−三百万なんというのは決して多い所得ではないわけですから、十分にこれを考えて、もう一度法案を練り直していただきたいと思うのです。
 もう一つこの審議会に出ていますのは「父子家庭の問題も忘れてはならない。」と書いてあるわけですね。これは、私は父子家庭にも児童扶養手当は出すべきだというふうに思います。
 確かに男の賃金は女と同じではありません。全体としては、先ほど言いましたように女性よりもマスで見れば高い。しかし、子供を抱えてけなげに育てている父親もいることは、ふえていることは事実です。そういう父親が今の労働時間が長いために、まともな職場におりますとなかなか子供が養育できないというので、結局パートにかわらざるを得ないとか、賃金は安いけれども早く帰してもらうようなところにかわらざるを得ない、子供のためにかわらざるを得ないという実際も出てきている。
 そういう父と子を見ましたら、私は本当にけなげな父親だというふうに思います。こういう父親に対してもやはりきちっと扶養手当を出すということが、これが本当の意味の男女平等ではないでしょうか。どうしてこの点は答申にもあるのに、これを落とされたのですか。
#335
○小島政府委員 制度審議会の答申につきまして、御指摘のように「なお、離婚等に伴う児童の福祉の確保の観点から、父子家庭の問題も忘れてはならない。」これは必ずしも父子家庭には手当を出せという趣旨に限定されるものではないと思います。児童福祉の観点から父子家庭という状態に着目し、どういう施策が必要か、十分それは考えて、父子家庭問題を忘れるな、こういう御指摘だと理解しております。
 そこで、五十八年の母子世帯調査に合わせまして父子家庭の調査も実施しました。そこの面で困っている事由、これは一番大きな困っている事由というのは、母子家庭は経済面、生活面の困難さを訴えられる方が三八%でしたか、ありました。これにかわりまして父子家庭の場合の経済的困窮度というのは、順位は非常に低うございます。第一番に子供の世話、日常ということでございますので、こういう父子家庭につきましては、またお父さんではどうしても目の届かないところもございますので、保育所にお世話するとか、あるいは家庭奉仕員の派遣というようなことを五十七年度から実施してまいっておりますし、必要の度合いを勘案しながら、必要な施策は十分母子家庭、父子家庭を問わず充実してまいりたいと思います。ただ、その施策の中身はその状態によって変わり得ることが十分あることは御理解いただけるものと考えております。
#336
○田中(美)委員 これで終わります。父子家庭問題についても十分に検討して――今度の法案を、私としては一五〇%悪いということで撤回することを強く要求しまして、質問を終わります。
#337
○戸井田委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時八分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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