くにさくロゴ
1984/05/24 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第15号
姉妹サイト
 
1984/05/24 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第15号

#1
第102回国会 外務委員会 第15号
昭和六十年五月二十四日(金曜日)
    午前十一時三十分開議
出席委員
  委員長 愛野興一郎君
   理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君
   理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君
   理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君
      仲村 正治君    町村 信孝君
      山下 元利君    小林  進君
      竹村 泰子君    八木  昇君
      大久保直彦君    渡部 一郎君
      木下敬之助君    岡崎万寿秀君
      田中美智子君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房参事官    松本 康子君
        外務大臣官房審
        議官      斉藤 邦彦君
        外務大臣官房領
        事移住部長   谷田 正躬君
        外務省経済局次
        長       恩田  宗君
        外務省国際連合
        局長      山田 中正君
        労働省婦人局長 赤松 良子君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部防犯課長  石瀬  博君
        法務省入国管理
        局警備課長   書上由起夫君
        文部省初等中等
        教育局職業教育
        課長      菊川  浩君
        外務委員会調査
        室長      高橋 文雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十四日
 辞任         補欠選任
  河上 民雄君     竹村 泰子君
同日
 辞任         補欠選任
  竹村 泰子君     河上 民雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す
 る条約の締結について承認を求めるの件(条約
 第一二号)
     ――――◇―――――
#2
○愛野委員長 これより会議を開きます。
 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
#3
○土井委員 世紀の条約と私はこれを申し上げたいと思うのですが、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約についてただいまから、本日はまず皮切り質問でございますから、入り口のところを私は質問をさせていただくことにいたします。
 実は、この条約の中身は非常に重いものでございますし、女子に対する差別の問題を取り上げて審議を進めますと、これは時間は大変かかるわけです。何回審議をやったって、尽きるところはないと私自身は思うのです。特に、この条約の中から見ましても、「男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」こういうことになっているのです。この中身を十分審議しようとすると時間が必要なんでありますけれども、今回外務省とされては、会期末に非常にせっぱ詰まった時間になってからこの条約を出してこられた。まことにおくれているわけであります。なぜ、こういうふうにおくれたのですか。
#4
○斉藤(邦)政府委員 実は我々といたしましては、会期末に近く特におくれて出したという意識はございません。今月の初めには国会へ提出したわけでございまして、ここの審議がきょうようやく始まったというのは、提出時期がおくれたからというより、ほかの条約の審議との関連でおくれたというふうに我々は了解しております。
#5
○土井委員 挑戦的なことをおっしゃいますね。この条約は最後に出たんですよ、今国会の。予定よりもおくれて。そのあたりを率直におっしゃらないと、そういう挑戦的姿勢で答弁をこれからされるのなら、審議はスムーズに進みません。
#6
○斉藤(邦)政府委員 今私、今月初めと申し上げましたが、失礼いたしました、間違えました。四月の初めに提出しております。
 ほかの条約におくれて出てきたというのは、御指摘のとおりでございます。諸般の準備に思わざる時間をとりまして、ほかの条約よりおくれてしまったことは我々も遺憾と思っております。
#7
○土井委員 外務省は、この条約についてどれぐらいの時間を精力的にかけられましたか。余り長い時間じゃないと私は思う。集中的にかけられたのは一年ぐらいじゃないですか、約一年ぐらい。どうです、国内法の整備等々について。
#8
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 この条約を、先生御承知のように国連婦人十年の中期の一九八〇年のときに、署名いたす前に政府といたしましては、批准の方向で諸般の準備を進めることを決めたわけでございますけれども、その方針に基づきまして外務省といたしましては、二十二省庁との調整を鋭意進めてまいりました。先生おっしゃいますように、最終的な詰めと申しますか、そういう意味で非常に機運が乗ってまいりましたのは、昨年の国会で御承認をいただきました国籍法改正、それから政府が提出いたしました雇用均等法、この辺からではございますが、それ以前からも鋭意努力してきたところでございます。
#9
○土井委員 いろいろと修飾語もついておりますけれども、要するに機運に乗ってきてからは一年そこそこだということも、今の御答弁では出ているのですね。
 外務省が今回の条約についてお出しになった説明書を見ますと、「早期国会承認が求められる理由」という項目がございまして、そこを見てまいりますと、「昭和五十五年六月、内閣総理大臣を長とする婦人問題企画推進本部において「国内行動計画後半期における重点課題として、批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めるものとする。」」これは後半期の重点目標なんですね。五年あるのです、五年。その中で、やっとここ一年ばかりの間に大急ぎで、何だか中身についてばたばたと駆け込みのような格好で、格好だけ整備すればいいようなことで事が動いたと、私たちは実感として感じています。
 私は、この条約を審議するのに、ただ批准するというだけでは意味がないので、やはり条約の中身に対して、実質的に十分に日本は法制度の整備がなされるということに意味がある。そういうことからすると、いかがです、この条約の説明書を読んでいきますと、昭和六十年十二月にこの国内行動計画後半期は終了するところ、「批准のための国内法制等諸条件の整備を了し早急に批准を行うことが望ましい。」と書いてあるのですね。
 その次には、「昭和六十年七月にケニアのナイロビで国連婦人の十年最終年世界会議が開催されることになっており、この関係でも早期にこの条約を締結することが極めて望ましい。」終着駅はナイロビであるというふうな趣旨のことをここに書いてある。ナイロビにこれを批准して臨むということならば、どうしてもっと早くこの委員会でも時間をかけて、この条約の中身に対して実のある審議を考えるという姿勢が外務省になかったのか、この点は非常に私は外務省の姿勢に対して疑念を抱きますよ。いかがですか。
#10
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 先生今御指摘ございましたように、昭和五十五年に条約批准の節目と申しますか、めどといたしまして、国連婦人十年が終わる本年を目標に立てて、そしてそれに従った作業を進めてきたわけでございます。
 先生も御承知のように、国籍法につきましては昭和五十六年から法制審議会で検討いただいておりますし、雇用関係につきましてはそれ以前、五十三年当時から検討がされておったわけでございます。これらの条件整備に非常に時間がかかりましたことはそのとおりでございますが、先生御指摘のように、この条約が非常に重要な条約であるという観点から、国内の整備に時間が非常にかかったというのが現実でございます。私ども外務省といたしましては、その整備を進めていただくとともに、内閣で決定いたしました目標に間に合うように全力を尽くしてきたつもりでございます。
#11
○土井委員 全力を尽くされたのは、先ほどの答弁では一年そこそこだという格好に相なるわけでありますが、「男女平等の実現に関する我が国の積極的姿勢を改めて内外に示すこととなるのみならず、男女平等の実現のための国際協力に積極的に貢献するとの見地から」、この条約締結の意義は有意義だということが説明書に書いてある。
 これはどうなんですかね。この説明書を読んでおりますと、専ら対外的配慮ばかりが目立つのですよ。条約の格好づけをして、外に対しての日本の姿勢を格好よくしようという配慮ばかりが目立つわけでありますが、これはどういうふうにお考えになっていますか。この文章を読むと、そうとしか読み切れないですよね。
#12
○山田(中)政府委員 女子に対する差別をなくすること、これは第一義的にはやはり日本国内の問題でございます。日本の国内の発展を図る見地から、もちろんそれを日本国内の問題として取り上げるものでございますが、私どもが条約を締結いたしますのは、その日本の努力を国際的に約束の形で表明するという意味がございますので、その点から、条約締結について御承認を仰ぐに際しましては、国際的な面を強調させていただいておるわけでございます。
#13
○土井委員 重点は国内にある、しかしそれを国際的に鮮明にする、こういうことを今言われたのですが、その重点は国内にあるというところの説明書を読んでみると、「両性の本質的平等をその憲法の基本理念の一つとしている我が国としては、」こう書いてあるのです。また、「早期国会承認が求められる理由」のところにも同じような趣旨が書いてある。つまり「この条約の目的は、我が国の憲法の精神及びこれに基づく政府の施策と軌を一にするものである。」したがって、大丈夫だというふうな趣旨なんでしょう。
 そうすると、男女平等という問題は、日本国憲法では十四条、二十四条、既に規定がきちっとあるのです。新たにこの条約を締結するために駆け込むような格好で無理をして、しかも中身からすると、条約にそぐわぬ国内措置を大急ぎでやられる。これは異様としか言いようがないわけですけれども、憲法の規定があって男女平等の問題に対して、何で大急ぎで条約を締結するために新たに法制度を整備しなければならなかったのですか。
#14
○斉藤(邦)政府委員 この条約と我が国の憲法が目指すところが一致しているというのは、そのとおりでございます。
 なぜ、この条約を締結するに際して急いで国内法をつくったかという御質問でございますけれども、我々、今度この条約を締結するに当たりまして、この条約の要請するところを実施できるように、その必要と考えた法律を国会に御提案した次第でございます。他方、憲法の男女平等についての規定があるのは御指摘のとおりでございますが、憲法上我が国の解釈といたしまして、従来合憲とされておりましたことでもこの条約上は許されなくなるというものがございます。国内法の手当てといたしましては、こういうところも条約に入る前にやっておく必要があると考えた次第でございます。
#15
○土井委員 そうすると、日本国憲法の中身よりもこの条約の方が色濃いのですか。差別に対して撤廃する、平等則に対してさらに前進した条約であるという御理解ですか。
#16
○斉藤(邦)政府委員 一部の分野におきまして、この条約の方が我が国の憲法よりもより具体的な義務を課しているということが言えるかと思います。
#17
○土井委員 この条約に関係のある国際条約として、国際人権規約がございます。日本はもちろん締結しているのですね。国際人権規約の中では、私は少なくともこの条約に比較すると、男女平等という点からすると劣っていると思いますよ。この条約の方が男女平等という点では進んでいる。よろしゅうございますか。ところが、国際人権規約についても、この条約と同じように報告の義務があるのですが、日本は国際人権規約に入って今までに報告してきておられますね、どうですか。
#18
○山田(中)政府委員 条約の規定に従いまして報告いたしております。
#19
○土井委員 私は、ここにその報告書なるものを持ってきたんですが、国連局企画調整課が出しておられる国際規約第四十条に基づく報告であります。これを見てまいりますと、「第一部 一般的コメント」というところ、これは総括だと私思うのですが、この総括の部分の締めくくりの部分にこう書いてあるのです。それまでにずっと説明がございまして、「上述のとおり、本規約の各条に規定されている権利は日本国憲法及びこれを実施する法令により既に十分に保障されており、これらの法規に基づく行政上の保障措置も適切に実施されている。」こう書いてあるのです。
 男女平等という点からすると、国際人権規約の方は、今審議しております条約に比べましてその前身になる中身でありますけれども、日本がこれを報告されているのは五十五年十月二十七日なんですが、こういう報告を出されていますね。まず聞いておきましょう。
#20
○山田(中)政府委員 先生仰せのとおりの報告書を出しております。
#21
○土井委員 五十五年十月二十七日というと、国際人権規約からいたしましても、国籍法の改正とか男女雇用平等とかを整備しなければならぬことになっているのですが、この時期はどうです、まだ姿形、何にもないでしょう。にもかかわらず、ここにどうです、「本規約の各条に規定されている権利は日本国憲法及びこれを実施する法令により既に十分に保障されており、これらの法規に基づく行政上の保障措置も適切に実施されている。」こう書いてあるのですよ。これは、考えてみればうそっぱちの報告ですね。いいかげんな報告としか言いようがない。こういう報告じゃ困りますよ。どうですか。
#22
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 国際人権規約についての報告につきましては、国際人権規約を締結するに当たりまして国会で御審議いただきましたときに、その両規約と日本の憲法及びそれに基づく法令とのそごはないということを確認いたした上で御承認をいただき、批准いたしたものでございます。したがいまして、人権規約とそれから現在御審議いただいております条約ともに人権に関する条約ではございますが、少し側面が違う点があろうと思います。この人権規約の中では、例えば国籍の問題等は、当時の国籍法で人権規約に違反するというふうには考えておりません。そこで、このような報告になっておるわけでございます。
#23
○土井委員 雇用平等はどうですか。国籍法の問題についても違反するとは考えていないとおっしゃるのは外務省の見解でありまして、そういうふうな理解をされるのならば、もう人権規約なんというのは締結する意味ないです。憲法の九十八条からすると、締結をして国内法を整備するという義務が日本には生ずるのですよ。この報告を見ると、もうその後手直しを何にもしなくたってこれで十分だという報告なんです。
 特に、「これらの法規に基づく行政上の保障措置も適切に実施されている。」「日本国憲法及びこれを実施する法令により既に十分に保障されている。」こう書いてあるのです。じゃあ、わざわざ条約を締結する意味ないじゃないですか。憲法で実施すればいいのです。条約を締結すれば遵守する義務があるでしょう。国内法整備というのをやらなければいけません。私は、この五十五年の報告を見てあきれましたね。
#24
○斉藤(邦)政府委員 この人権規約は、人権全般に関しまして非常に幅広くその考え方を定めた、いわば総論的な条約でございます。これに対しまして、今御審議をいただいておりますこの条約は、その人権規約で扱われております各項目のうちの男女平等という点に限りまして、非常に具体的な規定を置いている条約でございます。したがいまして、この人権規約の義務は今までは果たしていたけれども、この条約に入った結果としては、今までの体制では不十分だという分野が幾つかございます。
 そのうちの一つが、例えば国籍の問題でございます。人権規約におきましては、国籍について具体的な規定というのは置かれておりませんが、今度の条約では、例えば第九条におきまして、「国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。」という規定がございます。これはこの条約を実施するためには、古い国籍法では実施ができないという観点から、国籍法を変えたわけでございます。
 そのように、人権規約の上では特段の法律の手当てをしないでも我が国として義務を果たせておれたものが、この条約に入る結果、より具体的な措置が必要になるということで、法律の改正を幾つかの分野にわたって行っているわけでございます。
#25
○土井委員 大分しどろもどろですが、人権規約のときにこういう報告をお出しになるのだったら、今度の女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の場合も、説明書を見たら、「我が国の憲法の精神及びこれに基づく政府の施策と軌を一にするもの」と書いてありますから、また今回の条約も報告の義務があるでしょう。報告のときに恐らくこれと同じように、「本規約の各条に規定されている権利は日本国憲法及びこれを実施する法令により既に十分に保障されており、これらの法規に基づく行政上の保障措置も適切に実施されている。」という報告をなさる可能性はなきにしもあらずなんですよ、これは。
 こんなことじゃ、これは条約に入るという意味ないのです。報告されるときには国会に報告されますか。中身はなかなかお出しにならない。きょうの新聞にも記事になっておりましたように、外交文書に対して出さなきゃならないものをお出しにならない。なぜかといったらお互い外国との間の約束があるからと言われるけれども、日本じゃ出しちゃならないと思ってそういう答弁をなさっている中身は、アメリカではすっぱり出るじゃないですか。なかなか、いろんな報告書とか文書というのを国会に提示なさらないという悪い癖がある。これは、報告は必ず国会に提示なさいますね。どうですか。
#26
○山田(中)政府委員 条約の実施に関します政府報告、これは公に公表する報告でございますので、私どもとしては、報告をいたしました場合には、それをいつでも、どなたにでも手に入るようにいたしたいと思います。委員会の方から御要望がございますれば、どのような形で御提出するかは御相談させていただきたいと思いますが、報告につきましてはいつでも、どなたにでも御入手いただけるようにいたします。
#27
○土井委員 これは今までの報告を見ていて、こんな報告じゃこれは報告の義務ということに意味がないというふうな感じがいたします。少し国会の方に報告書を提示していただいて、国会の方もそれに対して物を言うということをひとつさせていただきたいと思います。これは大臣、よろしゅうございますね。
#28
○安倍国務大臣 これはもちろん条約に加盟すれば、条約を誠実に守っていかなきゃならぬ義務が日本としてはあるわけでございますし、そういう立場から国会にもきちっと報告しなければならない問題であると思います。
#29
○土井委員 報告は結構ですが、それに対して、国会もひとつ報告に対して物を言いますよ。それも御覚悟はよろしゅうございますね。
#30
○安倍国務大臣 これはもうそのとおりだと思います。
#31
○土井委員 さて、既に発効している男女平等に関する国際条約があるはずであります。外務省、一回どういうものがあるかということをここで言ってみてくださいませんか。
#32
○山田(中)政府委員 必ずしも男女平等のみを対象としたものでないものも、その中に男女同等の扱いを入れております条約も含めて申し上げますと、既婚婦人の国籍に関する条約、婚姻の同意、最低年齢及び登録条約、教育差別防止条約、奴隷制度、奴隷取引等廃止補足条約、これは日本が入っておらない条約でございます。日本が入っておりますものには、婦人の参政権に関する条約、人身売買等の搾取禁止条約それから人権規約二件でございます。
 また、ILO関係に女子に関連する条約が約十件ございます。母性保護条約、ベンゼン条約、差別待遇に関する条約、雇用政策条約、人的資源開発条約、家族責任を有する労働者条約、白鉛条約、夜業条約、最大重量条約、障害、老齢、遺族給付条約等でございまして、これは日本が締結いたしておりません。我が国が批准いたしておりますILO関係の女子に関する条約といたしましては、坑内作業条約、同一報酬条約、社会保障条約がございます。
#33
○土井委員 読み上げられるのを精力的にやっていただけるだけに、批准をしていない条約の数がたくさんあるわけですが、これはそれぞれの条約が今回のこの女子差別撤廃条約のそれぞれ何条に該当するんですかね。何条に該当するかという点をちょっと言ってみていただけませんか。
#34
○山田(中)政府委員 既婚婦人の国籍に関する条約、これは国籍でございますので、今回の条約の九条関係でございます。婚姻の同意に関する条約、これは十六条に関係すると思います。教育差別防止条約は十条に関係すると思います。入っておらないのだけ申し上げました。
#35
○土井委員 ILO条約はどうなんですか。
#36
○山田(中)政府委員 ILO関係は労働条件、女子保護関係でございますので、非常に概括的になりますが、本条約の第十一条の雇用関係及び第四条二項の関係になると思います。
#37
○土井委員 今、局長、あなた母性保護条約だけをおっしゃったんですね。日本が批准していない条約はほかに十ありますよ、十条約。それぞれをひとつここで言ってみてくださいませんか。
#38
○山田(中)政府委員 四条二項でございますが、私、先ほど、日本が入っておらない、例えば白鉛でございますとか、坑内作業、夜業等、これは女子保護規定に関する条約でございますが、女子保護規定は現在御審議いただいておりますこの条約との関係ではむしろそれを認めない方向でございますので、四条の特定項目ということではなく、むしろ女子保護規定に関連する見直しといいますか、状況に応じて検討するというのが十一条にございますので、先ほど申しましたように、四条または十一条ということでくくって申し上げた次第でございます。
#39
○土井委員 それはすべての条約がみなそうなんですか、あと入っていないこのILO条約について。そうじゃないでしょう。さっきおっしゃったILOのベンゼン条約、百三十六号はどうなんです。差別待遇に関する条約、百十一号はどうなんです。雇用政策条約、百二十二号はどうなんです。順を言ってくださいよ。一つだけの条約を聞いているわけじゃない。日本が批准していないILO条約について関係する条約を言ったら、たくさん言われたでしょう。全部言ってみてくださいよ、どの条文に関係するか。
#40
○山田(中)政府委員 私、先ほど申し述べました条約、女子の労働に関するものでございますので、主として今回の御審議いただいております条約ではすべて第十一条に関連するものである、こう御理解いただいてよろしいと思います。
#41
○土井委員 雑ですね。点検すればそうじゃないですよ。そんないいかげんな答弁じゃ先へ進めませんわ。精査して出直してください。それまで待ちますから。
#42
○愛野委員長 ちょっと速記中止。
    〔速記中止〕
#43
○愛野委員長 速記を起こして。
 山田国際連合局長。
#44
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 それぞれの条約につきまして申し上げさしていただきますと、母性保護条約、これは四条二項でございます。ベンゼン条約は十一条の一項の(f)でございます。差別待遇に関する条約は十一条の一項の(b)でございます。雇用政策、人的資源開発条約もいずれも同じでございます。家族責任を有する労働者条約は十一条二項の(c)でございます。白鉛条約は十一条一項の(f)でございます。夜業条約は十一条一項の(f)、最大重量条約も十一条の一項(f)でございます。
#45
○土井委員 局長、あなたきょうは緊張していらっしゃるのかどうか、中には飛ばしておっしゃっているし、そして関係する条文についても違ったことをおっしゃっていますよ。きょうはちょっと緊張が過ぎるのじゃないですか。もう一度やり直してください。ILO条約についてこれだけが関係いたしますというのは、これは外務省の資料なんですよ。
#46
○山田(中)政府委員 失礼申し上げました。私、最後に一つ抜かしたと思いますが、障害、老齢、遺族給付条約につきましては十一条一項の(f)でございます。
#47
○土井委員 そうですか、十一条一項の(f)ですか、これまた違っているのです。そして、先ほどおっしゃった中にも、十一条でないのを十一条とおっしゃっているのがあるのですよ。それから、母性保護条約については四条だけを言われたけれども、当初は、さっきの御答弁では、十一条も関係するとおっしゃっているのですよ。それを後では四条だけおっしゃる。これは大変な混乱ですわ。ひとつきれいに整備して、もう一度初めから言い直すつもりで、ちょっと整理した上で御答弁願えませんか。
#48
○山田(中)政府委員 まず最初におわびいたします。
 先ほど訂正いたしました障害、老齢、遺族給付条約、これは十一条一項(e)でございます。私の誤りでございます。それから母性保護条約につきましては、これは主として四条二項の問題だと思いますが、十一条二項の(a)、(b)も関連してくると思います。
#49
○土井委員 これはまだまだ言うと、もう限りがないので申し上げますけれども、差別待遇に関する条約というのは、ILO百十一号ですが、私は一条にも関係があると思うのです、条約の条文を見れば。それから人的資源開発条約、ILO百四十二号条約、これは十一条じゃなくて、二条、五条に関係すると私は見ます、中身から見れば。それから家族責任を有する労働者条約、百五十六号ですが、これはこの条約の前文の箇所にも関係すると思うのです。このように理解をすることが正しいと思われますが、いかがでありますか。
#50
○斉藤(邦)政府委員 国連局長よりお答えいたしました関連条文というのは、それぞれの条約について直接関係のある条文をお答えした次第でございます。ただいま土井委員御指摘の第一条、第二条及び前文、これは条約全般についてそれぞれ定めているものでございまして、当然男女の平等ということにかかわりますILO関係の諸条約、これは十一条に具体的に関連しているわけでございますけれども、ただいま申し上げましたような全般的な性質を有する第一条、第二条及び前文、これらには当然関係があるというふうに考えられます。
#51
○土井委員 そうでしょうね。そういうことになってくると、それもはっきり正確におっしゃる必要があるのですよ。
 それから、人的資源開発条約というのは二条、五条でしょう。これはお答えの限りでなかったのですがね。
#52
○斉藤(邦)政府委員 御指摘のとおりでございます。
#53
○土井委員 これほど、この問題に対して時間がかかるとは思わなかった。さて、そうなってくると、これから先の質問に対しても、心もとない答弁が出てくるであろうと思われるわけでありますけれども、みんなこういう条約は日本としては入れるのですか。国内法を改正するなり、新しい法律を用意する必要があるのですか。すぐに入れるのですか、どうなんですか。
#54
○山田(中)政府委員 非常に総括的になりますが、先ほど我が国がまだ入っておらないと申しました条約につきましては、それぞれ問題がございます。例えば、既婚婦人の国籍に関する条約、これは帰化の場合に婦人を優先する、こういうものでございますので、これは今回の条約を御承認いただきますとむしろその理念と反するということで、締結の要がないものであろうかと思います。
 また、婚姻の同意に関する条約、これは要件が我が国の民法の定めております要件と異なりますので、これも難しいかと思います。
 教育差別につきましては、これは外務省としてはぜひ早く締結したい、こういう姿勢で検討を依頼いたしておるものでございます。
 奴隷に関します条約、これは我が国の刑法とのかかわりがございます。また、現実の問題といたしまして我が国にそのような実態がございませんので、これは今のところ締結を考えておらないものでございます。
 ILO条約、これはいずれも、先生御承知のように国内法を整備した上で締結する、こういうことになっておりますが、先ほど申しましたILO条約が定めております基準と、我が国の国内法上の基準が一致いたしておりませんので、現時点では締結は難しいものでございます。
#55
○土井委員 なるほどね。そうすると、国内法制度を整備しないと、それぞれの条約については締結するという条件がまだ日本にない、こういうことなんですね。その辺はっきり、はいと言っておいてください。
#56
○山田(中)政府委員 ILO条約につきましては、そのとおりでございます。
#57
○土井委員 ILO条約のみならず、さっきおっしゃった教育差別防止条約もそうじゃないですか。早くやりたい、検討しております、こう言われました。どういう検討をなすっていらっしゃるのかよくわかりませんが、これは国内法制度の整備をこの条約に合致するようにしなければ条約に入れないということなんでしょう、御答弁からすると。そのとおりでしょう。
#58
○山田(中)政府委員 教育における差別をしてはならないというのは教育基本法にあるわけでございますが、この条約を、全部条項を審査いたしております過程で、外国人学校の扱いの問題がございますので、その点を検討いたしておるところでございます。
#59
○土井委員 そうすると、ILO条約についても、ただいまの御答弁でお聞かせいただいたとおりであります。今回の差別撤廃条約に入ったからといって、日本が締結したからといって、この条約に入る体制は、まだ日本には国内体制としてはないという格好に相なると思いますがね。
 だから、それぞれのどの条文にこれは関係する条約ですかと尋ねた。その条文に関係する条約に対して、まだ批准する資格が日本にないのですよ。国内法整備がまだ成っていないのです。ひいては、この条約を批准する資格がまだ日本に、国内体制としてはないという格好に相なりますが、いかがでしょうか。
#60
○山田(中)政府委員 私、先生が仰せになったことの趣旨をちょっと誤解いたしておるかもわかりませんが、例えばILO条約につきまして、日本が未締結のものについてこの条約との関連の規定はどれかという御指摘につきましては、先ほどからお話があったとおりなんでございますが、今御審議いただいております女子差別撤廃条約のそれぞれの条項が、その関連するILO条約の内容までを具現しておって、それを、ILO条約に入らないとこの女子差別撤廃条約に入れない、そういうものではございません。私どもは、この条約の締結に当たりまして、この条約の各項が規定しておるところ、これを充足するような国内整備を整えるという努力をしてまいったわけでございます。
#61
○土井委員 どうも今の御答弁は、はっきりしませんね。この条約の前文のところにちゃんと書いてあるじゃないですか。「国際連合及び専門機関の主催の下に各国が締結した男女の権利の平等を促進するための国際条約を考慮し、 更に、国際連合及び専門機関が採択した男女の権利の平等を促進するための決議、宣言及び勧告に留意し、」云々とあるのですよ。したがって、ILO条約の締結は当然のこととして、さらにこの条約の中身に対して整備をしていくことがむしろ問われているようにもこれは読めるのですよ。
#62
○斉藤(邦)政府委員 あるいは御質問の趣旨を誤解しているかもしれませんが、現在御審議いただいております条約、これは男女の平等を実現するための条約でございます。それぞれの分野におきましてどの水準で平等を確保するかということは、この条約は直接規定していない次第でございます。他方、ILO諸条約につきましては、これは釈迦に説法でございますけれども、大部分の条約が絶対的な基準、一定の条件というものを要求しておるわけでございまして、いわばこの条約とILO諸条約はねらっているところが違うというふうに理解すべきではないかと考えます。
#63
○土井委員 ねらっているところが違って、さっき関係する条文ということに対してお答えになったというのは、どういう意味なんですか。
#64
○斉藤(邦)政府委員 その点は、先ほど国連局長からも申し上げましたけれども、関連する条文はどれだという御質問でございましたので、扱っている分野が同じだという趣旨で関連している条文をお答えした次第でございます。
#65
○土井委員 扱っている分野もその規定の中身の意味も、大体違ってないはずであります。あなたのその御答弁は解せませんね。
#66
○斉藤(邦)政府委員 私が申し上げましたのは、ILOの関係の諸条約と異なりまして、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は女子の差別の撤廃を目指している条約でございますので、何と申しますか、ILO諸条約と目標とするところが違うということを申し上げたつもりでございます。
#67
○土井委員 この条約が制定されるまでに至る経緯というものに、ILO条約は全く関係ありませんか。以前にあったILO条約の中身が、家庭責任というものについて、女性が果たさなければならないということを中心に考えていた点が男女平等ということからすると間違っているというので、ILO百五十六号が制定されたのではないですか。ILO条約どこの条約は全く関係がないのですか。ILO条約の百五十六号というのは無視できないですよ、この条約にとっては。この条約と表裏一体のものと申し上げていいんだ。あなたの答弁は絶対いただけない。こんなことになったのでは、審議はこれで中断です。委員長、もうこういう答弁では、ここで審議は中断です。しばらく問題を整理して出直していただきたいと思います。もうこれはABCなんですから、この条約について、差別撤廃条約についてもういいです。
#68
○愛野委員長 再答弁させますから。斉藤審議官。
#69
○斉藤(邦)政府委員 私は、ILO諸条約とこの条約が関係がないということを申し上げたつもりはございません。この条約が成立するに至る過程におきまして、もちろん国連憲章とか人権規約とか、ILO条約を含みます人権関係の条約が背景をなしていたということは、御指摘のとおりでございます。私、ILO条約の大部分が、この女子差別撤廃条約とねらっているところが違うと申し上げましたけれども、すべての条約、すべての規定が、全く違う方向を向いているということまで申し上げたつもりはございません。ただ、一般論といたしまして、ILOのねらっているところとこの条約の目指しているところは同じではないということを、繰り返して申し上げさせていただきます。
#70
○土井委員 そもそも、ILO条約というのがILO憲章のもとにつくられてきた経緯などを私、きょうは聞こうといたしておりません。よろしゅうございますか。今のようなまやかしのような答弁をやって、一般則といたしましてはとか一般論といたしましてはという説明は、それは何ですか、一体。これは委員長、少し問題を整理して外務省には出直していただきたいと思います。
#71
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 斉藤審議官が申しました、非常に法的な観点から少し御説明したのを私の方から補足させていただきますと、ILO諸条約どこの女子差別撤廃条約は、私は非常に密接に関連があるものだと思っております。先生御指摘ございましたように、女子差別撤廃条約の前文におきましてILO条約を引用いたしておりますし、また先生御指摘ございました例えば百五十六号条約、これはその条約の前文におきまして女子差別撤廃条約を引用いたしておりますので、そういう意味では非常に関連のあるものでございますし、また女子に対しての人権を男子のものと平等とする、女子に対する人権を確保するという大きい目的ではすべて一緒のものであろうと思います。
 斉藤審議官が違うと申しましたのは、それぞれの条約の実体規定におきまして決めておることが必ずしも一緒でないと申しますか、女子差別撤廃条約を締結するに当たって、それに関連するILO諸条約をすべて批准しておらないと入れない、そういう意味でのリンクと申しますか、それはないということを申し上げたのだろうと思います。
 ただ、ILO条約につきましては、この条約を御承認いただきまして締結いたしました場合、我々これですべてが終わったとは毛頭思っておりません。この条約の内容をよりよく発展させるために種々の努力が要ると思いますが、その努力の一環といたしまして、ILO諸条約につきましても、我が国について批准できるものについては批准する方向で対処いたしたいと思っております。
#72
○土井委員 それは今局長言われたとおりで、ILO条約を関係するのは必ず全部批准していないと、この条約を批准する資格がないというのはどこにも書いていないのですが、今最後に、この条約に関係するILO条約については、これは批准できるものはできる限り大急ぎで批准したいという御趣旨のほどを答弁されていますけれども、本来ならば、関係するILO条約も批准できるような国内体制でないと、この条約について締結するという国内体制はないというふうに一般的には考えていいのです、これこそ一般的に。そうでしょう。局長、それはお認めになっている、首を縦に振っていらっしゃいますから。
 で、局長、条約について批准できるものはとおっしゃっていますが、せめてこれはこの条約を締結するに当たって、外務省はそれくらいの御努力を払われるのは当たり前だと思うのだけれども、ILOのどういう条約について考えを進めておられますか。そして、批准する御用意がありますか。
#73
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 ILO条約、ちょっと先ほど申しました条約よりも幅を広げて申しまして恐縮でございますが、一般的に申しまして我が国の締結数がいまだ三十七でございますので、もっと広げたいという気持ちは外務省としては非常に強く持っております。ただ、先ほど来申し上げておりますように、個々の条約になりますと、現在の国内法制にある基準と合わないということがございます。したがいまして、現在の時点で具体的にどの条約をどの時期に提出申し上げられるという状況にないわけでございますが、私どもとしましては、例えば現在ILOが日本に、雇用政策の条約などは日本として入れないかという照会が参っております。ただ、この条約につきましては、ちょっとその雇用政策を決める範囲がどこか判然としておらないところがございますので、現在その検討をいたしておりますが、私が今述べました条約も含めまして、できるものから順次やらせていただきたいというふうに考えております。
#74
○土井委員 今の御答弁も何だか気があるようななさそうな、なさそうなあるような、さっばりわかりませんが、当条約を審議する間に必ずこれは具体的にはっきり出してもらいますよ。そして大臣、これはお聞き取りを願います。
 ただいまも、ILO条約の雇用政策に入れないかという要請が向こうから来ているとおっしゃる。そういうのがILOの機関から日本に対して寄せられるというのは意味があるのです。昨年の四月にそこにいらっしゃる斉藤さんが、これは社会労働委員会の場所で御答弁になっている御当人ですからよく御存じですけれども、ILOから報告が出ている中身を見ると、ここ十年の間に男女の賃金格差がずっと広がったのは日本だけという報告が出ているのです。他の国は、賃金格差を狭めることに対して大変努力を払っているのです。日本は、男女の賃金格差がずっと開いているのですよ、十年の間にどんどん。日本は先進国ですよ。
 そしてまた、労働時間に対しても、よろしゅうございますか、欧米の平均は年間総労働時間、大体約千七百時間くらいと言われています。もうヨーロッパでは、週四十時間というのは昔の話になってきているのです。日本はどうでしょう。二千時間をはるかに超えているのですよ、労働時間も。貿易摩擦の問題に対して対処することに大変苦労されている外務大臣でございますけれども、こういう雇用関係、労働条件というのは、日本は水準が高いとお思いですか。そして、ILOから男女の賃金格差が開いたのはただ日本一国と言われて、これはやはり名誉とお思いになりますか、この点いかがでございますか。
#75
○安倍国務大臣 まず基本的に、この女子差別撤廃条約は随分長い間かかりまして、私も何とかこれを早く批准したいということで、毎年その決意を述べてまいりましたけれども、この条約をこの国会で承認を求める、批准を求めるためには、やはり国内体制の整備が必要であります。それは、外務省が中心にいろいろと調整をしておりましたけれども、各省とのそれぞれの関係で調整もおくれたわけでございますが、ナイロビの会議にはぜひとも批准を間に合わしたいということで最大の努力をいたしまして、今回のこの承認を求める運びとなったわけでございます。
 この条約は、私は、男女差別撤廃のための非常に画期的な条約であると思いますし、この条約に入ることによりまして、日本としても男女差別を撤廃するための諸措置というものが促進されるわけでありますし、また、これによってさらに促進を図っていかなければならぬ。まだまだこれでもって十分だと思っておりませんし、さらに国内体制の整備を必要とする面もあると思います。法体制の整備も必要であると私は思っておりますが、それは今後とも引き続いて努力をしていかなければならない。国際的に約束した以上は、これを実行していくというのが日本の責任であろう、こういうふうに思っております。そういう中で、関連しているところのILOの諸条約等につきましても、今申し上げましたような基本的な立場で我が国としましても関係方面との調整を図りながら、漸次、基本方向に従って国会に提出できるものは、一日も早く提出するということを図ってまいりたいと思います。
 さらに、今の労働時間の問題でございますが、私も、国際会議等に出ましてこれはよく指摘をされるわけでございまして、今回のボン・サミットにおいてもそういう指摘があったことは事実でございます。これはやはり日本が、これからの国際社会において責任を果たしていく、あるいは国際社会の中で信頼される国として進んでいく以上は、国際的な水準というものにこれからも合わせていくことは必要であろうと思うわけでございます。それには、国内の体制をやはりそれなりに準備をしていかなければならぬわけで、我々はそうした外国の指摘を十分踏まえながら、今、時短の問題とかいろいろと関係省庁等でも鋭意努力、準備もいたしておりますから、そういう関係当局との間の連絡調整等も図りながらそうした国際的な指摘に対してはこたえていく、責任を果たしていくということが、これから日本の努力しなければならぬ一つの課題であろう、そういうふうに思います。
#76
○土井委員 大体が外向きに対して、対外的配慮というのが外務省としては気になるのですよ、国際社会に日本の窓口として責任を果たしていらっしゃるわけですから。したがって、そういうことからすると、女性の労働時間の短縮とか母性保護とか深夜業の禁止とか、それに関係する部門について日本はただの一つも条約に入っていないというこの異常な状況、これはやはり雇用政策、ILO関係の問題について、日本としてはもうちょっと積極的に考えてもらえないかという要請がILOから来るのは当然のことなんです。
 これは大臣、そういう点からすると、母性保護というのは国際的水準よりはるかにおくれている、女性の雇用関係についての水準は国際関係からすると低いところにまだ日本はある。と同時に、今回の条約を見ていきますと、男性の労働条件も、男女ともに家庭と職業の責任を持たなければならないという、その男性の家庭責任を担えるような労働条件になっていない。これは長時間です。日本の労働時間短縮というのは、必須の問われている条件なんですね。
 私はここに、経企庁ですけれども「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というのを持ってまいりましたが、この中に、「労働時間の短縮は、労働者生活の充実、国際協調の確保、」とちゃんと書いてあるのです。必ずやらなければならぬ。外務大臣、国内において労働時間の短縮に向けて国内法整備はどうしても必要な問題として問われていると思いますが、そのようにお考えでしょうね、今回の条約締結に当たって。ばっちり関係していますよ、これはいかがですか。
#77
○安倍国務大臣 これは確かに国際的な面からいきましても、今の貿易摩擦解消のための対外諸政策を日本政府として立案するに当たりまして、いわゆる労働時間短縮問題というのは一つの議論の対象になっております。これから七月にはアクションプログラムをつくるわけですし、さらに、その他対外政策についての具体的な措置を講ずる方針を打ち立てることになっております。そういう中で議論をするわけでございまして、私は外務大臣といたしまして、国際的な協調が大事だと思うわけでございますから、そういう面につきましての、既に国会でも答弁しておりますが、やはり日本が先進国家としての責任を果たすための調和のあるこうした労働時間等については、姿勢を打ち出すべきじゃないかということを言っておるわけでございます。これは政府全体の問題でありますが、責任官庁もあるわけでございますし、そうした立場の皆さんとこれから相談をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
#78
○土井委員 相談は相談として、大臣、それじゃ今回の条約審議に当たりまして、この条約に関係している問題なんですから、外務大臣としてきちっと責任を持って、閣僚の中で今の大臣のお考えを発揮して、労働時間短縮の国内措置に向けて具体的に実現するまで頑張っていただく以外にないのです。これは約束願えますね。
#79
○安倍国務大臣 とにかく、基本的な考え方は今申し上げたとおりでございまして、そういう基本的な考え方に基づきまして、これから外務大臣としての責任を果たすべく努力を続けてまいりたいと思います。
#80
○土井委員 午前中の時間がもうこれで経過しました。全く入り口の入り口であります。この調子でこの条約審議をやっていったら、何回審議をやったらここらあたりで何か少しは審議をしたということになるであろうかと、全く心もとない状況だと私は思いますよ。
 きょうは、実は条約の実施のための国内措置についても、それぞれの中身について外務省の考えを聞きたかったのです。これは、私は次回に譲ります。二回、三回、これから質問をいたしますという予告をして、午前中の入り口の質問を終わります。
#81
○愛野委員長 午後一時三十分から委員会を再会することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
#82
○愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。竹村泰子君。
#83
○竹村委員 今議題となっております条約について、与えられた時間内で質問させていただきますけれども、まずその前に、どうしても気になることが一つあるのです。これは女子差別撤廃条約とされましたね、なぜ女子という言葉を使ったのですか。
#84
○斉藤(邦)政府委員 この条約は年齢にかかわりなく広くすべての女子を対象にしておりますので、法令上使われております婦人とか女子とか女とかいろいろございますが、その中で、この条約で使われております英語で申しますとウイメンという話は、女子が最も適当であるという判断を下した次第でございます。
#85
○竹村委員 最も適当であるというのは、何に照らして最も適当なんですか。
#86
○斉藤(邦)政府委員 この条約で使われておりますウイメンという概念が、日本の法令用語としてどういう言葉を当てればいいかという、その観点から適当というふうに考えた次第でございます。
#87
○竹村委員 この法律の趣旨、精神に即して、適当であると思われたというのですね。私は、訳し方としては最も不適当な言葉だと思うのですけれどもね。女性といういい言葉があるじゃないですか。なぜ、これを男子、女子というふうにお呼びになったのですか。
#88
○斉藤(邦)政府委員 この話を決めるに際しましては、内閣法制局その他と非常に慎重な検討を重ねたわけでございます。その際、もちろん女性という言葉も候補の一つとして検討したわけでございますが、我が国の国内法におきましては女性という言葉が全く使用されておりません。それで、この条約の対象にしておりますような存在、これは我が国の法令におきましては女子というふうに従来より使われておりましたので、それで女子の方を選んだ次第でございます。
#89
○竹村委員 法律用語には、女性という言葉は余り使われないということなんですね。
#90
○斉藤(邦)政府委員 今まで使われた例が一つもないというふうに承知しております。
#91
○竹村委員 女子というのは、女と子供という字ですよね。法律は別として、一般の社会の中で女子というのは、女子高校とか普通の成人ではない未成年というふうに使われていることが非常に多いと思います。字からいっても女、子供と書くわけですから、この辺は慣習的に、民間企業なんかでも、うちの女の子とかお茶くみの女の子というふうな、べっ視的な意味を込めてよく使われていると思います。
 特に私がひっかかりますのは、昔、戦争中、天皇の赤子なんという言葉がありましたね。私たちより上の年代の人たちは、もう耳にたこができるほど使われていた言葉。今は戦前と違いまして、国民主権の民主憲法のもとにある日本なんですよ。そういう赤子というふうな言葉を思い出させるようなこういう言葉は、しかも女、子供と書くような言葉は使っていただきたくなかった。なぜ、これを女性ではなく女子と訳されたのか、非常に残念に思います。客観的な言葉として、女性そして男性という言葉を使うべきだと思います。
 今までの法律用語にもない、慣習にないということを言われるけれども、今問題となっているこの国連の条約は、男女平等の実際上の実現という非常に新しい画期的なことをやっているわけです。これから政府もやろうとしておられるわけです。こんな機会にこそ、今までの古い用語ではなく新しい用語に、なぜ女性差別撤廃条約というふうに訳されなかったのですか、そう思いますが、大臣いかがですか。
#92
○安倍国務大臣 これは今審議官から答弁しましたように、婦人ということになりますと、ある一定の年齢以上というふうな感覚を日本人は持つわけで、ウイメンというのを訳す場合には、そういう年齢に差別のない総称として女子という――私は、別に今おっしゃるような差別的なあれでも何でもないと思いますね。男女差別を撤廃していこうという条約ですから、内閣法制局でもそういうウイメンというのをどういうふうに訳したらいいかということで真剣に考えて、結局は男子に対する言葉として女子、男子というのは法律用語にもあるわけですから、男子に対して女子ということですから、これは全く客観的に、それこそまた男女平等法という立場から見ても筋の通った言葉ではないかと思います。ですから、そういうふうに思われるというのは非常に残念で、私は女子差別撤廃条約というのが非常に理にかなった、また法律、条約という立場から見ても筋の通った言葉であると思います。
#93
○竹村委員 こちらも大変残念に思うわけですけれども、一般的な、特に日本ではまだまだ男女が平等とは言い切れない状況が非常に大きなものとして横たわっている。その中で男子も――私は、男子がよくて女子が悪いと言っているのではないのですよ。男子も女子も、ともに一人前として扱っている言葉ではないのではないか、なぜ男性、女性と扱わないのか、そういうことを言っているわけで、このことは余り深く追っている時間がありませんので、批准されるまでにぜひ御一考いただきたいと思います。必ずしも女子でなくてはならない理由はないと思います。
 国連条約と国内措置について、先ほど土井議員が国連のさまざまな条約について非常に詳しく御説明をされました。けれどもこの条約、特に前文や第十一条は一九八一年に採択されたILOの百五十六号条約、百六十五号勧告に特に非常に深い縁を持っていることは、先ほどから言われているとおりですけれども、男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約や勧告、密接な関係がありますね。百五十六号条約も百六十五号勧告もその前文で、「男女の機会及び待遇の均等に関する文書が国際連合及び他の専門機関によっても採択されていることに留意し、」とあります。特に、一九七九年の女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する国際連合条約の前文第十四段におきましては、締約国は、社会及び家庭における伝統的な男女の役割の変更が男女間の完全な平等の達成に必要であることを認識する、こういうことを規定しているわけです。
 そこで、まずお聞きしたいのですが、女性差別撤廃条約の批准を提案されている政府としましては、当然このILO百五十六号条約の批准や百六十五号勧告の内容の実施についても、差別撤廃条約に続き積極的に取り組んでいかれるのだろうと先ほど土井議員も追及されておられましたけれども、それが論理的に言って当然だと思いますが、大臣、いかがですか。
#94
○山田(中)政府委員 先生、今御指摘ございましたように、ILO百五十六号条約は、現在御審議いただいております条約の前文、五条また第十一条二項(C)を発展させたものでございまして、非常に密接に関連するものであろうと思っております。
 この条約の批准の見通してございますが、現在の時点で確たる目標を申し上げかねるのでございますが、目下、種々の観点から検討をさせていただいております。ただ、先ほど申しましたように、この条約と非常に密接に関連しておるものでございまして、これを補足すると申しますか、より充実するものでございますので、労働省とも鋭意検討させていただきたいと思っております。
#95
○竹村委員 先ほども山田国連局長はそのようにお答えになりまして、鋭意検討いたしますと約束をされたわけですけれども、この差別撤廃条約は、その前文で、女性に対する差別は権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものだとうたっております。母性の社会的な重要性並びに家族及び子の養育における両親の役割、男女ともの役割、そして、出産における女性の役割が差別の根拠となってはならない、かつ、子の養育には男女間及び社会全体の責任の分担が必要であると明らかにしています。そして、第十一条では、男女ともに奪い得ない権利としての労働の権利や同一待遇についての権利、労働の質の評価についての取り扱いの平等などを規定しているわけですね。これは大臣もよく御存じと思います。百五十六号条約や百六十五号勧告はこれをさらに具体的に提起した、いわばもっと実行しやすく提起しているものと思われるわけですけれども、この両者とはそういう関係にあると考えてよろしいですか、大臣。
#96
○山田(中)政府委員 先生御指摘になりましたように、私どもこの両条約の間には非常に密接な関連があると思っております。
#97
○竹村委員 この百五十六号条約及び百六十五号勧告は、家庭責任を持つ男女の労働者の機会均等、均等待遇を実現するために必要な措置、課題、そういうことについていろいろ提起しております。
 きょうは私、時間が余りありませんので、その中の幾つかを御質問したいと思います。
 まず、労働時間についてです。
 ILO百五十六号条約は、前文で、「すべての労働者の直面する問題の多くが家族的責任を有する労働者の場合にあっては一層悪化していることを考慮し、家族的責任を有する労働者の特別の必要に応じた措置及び一般的に労働者の条件を改善することを目的とする措置によって家族的責任を有する労働者の条件を改善することの必要性を認識し、」少し長いですが、そう言っているわけです。「労働者の条件を改善すること」、女性のじゃないですよ。「労働者の条件を改善すること」がこの問題では重要であるわけです。
 そこで、お尋ねしますけれども、欧米の主要国と我が国の労働時間、所定労働時間など、あるいは年次有給休暇の日数、取得日数など、わかりましたら教えていただきたいのです。
#98
○山田(中)政府委員 私が今所持いたしております最近の、日本と欧米諸国の総労働時間について申し上げますと、一番最近の統計、一九八二年のものでございますが、製造業、生産労働者の年間労働時間でございますが、日本が二千百三十六時間、米国が千八百五十一時間、西ドイツが千六百八十二時間、イギリスが千八百八十八時間、フランスが千七百七時間となっております。
#99
○竹村委員 随分違いますね。欧米諸国、特にヨーロッパの国々、労働時間が随分格差があるわけです。我が国が差別撤廃条約を批准したとしても、実際にはこのような労働時間関係の格差が非常に大きい。これは大臣もよくおわかりだと思いますけれども、それが改善されないというのでは問題ですよね。これらについても、早急に欧米諸国並みに改善すべきだと思いますが、外務大臣、どうお思いになりますか。
#100
○安倍国務大臣 これは、我が国も先進国家の一員として国際社会に伍していくわけですから、やはり国際水準にいろいろなものも達しなければならないと思います。そういう意味で、労働条件についてもいろいろな角度からこれまでも改善をしてきておるわけですが、今後とも、労働条件について国際水準を確保していく、その改善のための努力は続けていかなければならぬ、こういうふうに思います。
#101
○竹村委員 外務大臣として、これは国際的に非常に恥ずかしいことですよね。各国が全部労働時間短縮のために鋭意努力をして、実際に実効を上げている。しかし、日本はそれが全然進んでいない。今、改善されているとおっしゃいましたけれども、ちっとも進んでいないじゃないですか。私がこの次に例として挙げます、例えば労基研の中間報告なんかでは、むしろ悪い方に持っていこうとさえ思われる。既に労基研では労働時間の中間報告が出されています。この中間報告は問題だらけ。全く問題だらけです。今審議している女性差別撤廃条約やILO百五十六号条約、百六十五号勧告などの趣旨に全く逆行しているわけです。そうお思いになりませんか。
 ここにILOの条約ありますけれども、お読みする時間がありませんが、せいぜい改善と言われるところは、年次有給休暇を現行の最低六日から十日間にふやす、それから週の労働時間を四十八時間から四十五時間に短縮する、そのぐらいのものでしょう。あとは一つもいいことないです。しかも、この四十五時間というのは、一日の労働時間を現行の八時間から九時間に延ばしてということなんですね。セットなんです。それにもかかわらず、日経連はこの中間報告に対して文句を言っているのです。言いたいほうだいのことを言っていますね。労働省はよくおわかりだと思いますけれども、年休十日はだめだとか週四十五時間もだめだとか、もっと働け、労働時間の規制を緩和しろとか、こういう言いたいほうだいのことを言っているわけです。知っていますか。外務大臣、これは御存じですか。
#102
○安倍国務大臣 労働時間が確かに外国との間に差があることも事実でしょうが、働くことは決して悪いことではないでしょう。日本があの敗戦の中から、資源がないのにこれだけ成長して今日の経済的な繁栄を確保した。そして、働くことによってそれぞれ各自の所得を上昇することができて、我々の国民生活の確保ができたわけですから、私はそれなりに意義があったことだと思っております。外国人は、日本人が働き過ぎだとは言いますけれども、しかし、働くことに対しては大変敬意も払っておるわけです。
 ただ日本として、これだけ国際社会の仲間入りをしてきておるわけでありますし、ですから今後の課題としては、労働条件の改善等を図りながらいろいろな面での条件を国際水準に一致させていくという努力は必要だ、こういうふうに思っております。これまでやったことと、それからこれからやらなければならぬこと、そういう点について我々は十分考えて、そして対処していくということではないか。ですから、有給休暇等について、あるいはまた休暇の拡大といったような問題、時短といったような問題についても、今政府の中でそういう点について検討しておるわけです。
#103
○竹村委員 外務大臣は、次の総理・総裁を目指す実力者でいらっしゃるわけですから、ニューリーダーにふさわしい国際的感覚、国際的な視野に立ってこういう労働界の国際的な批判を十分に受けとめて、それにふさわしい、日経連のアナクロニズムをしっかりと説得して、国連条約の趣旨に沿った労働時間の改善にあなたもぜひ労働省と一体になって御尽力いただきたいと思いますが、お約束いただけますか。
#104
○安倍国務大臣 これからの大きな課題の一つだというふうに認識をしております。
#105
○竹村委員 課題じゃ困るのです、課題はみんな持っているわけですからね。ぜひ、努力をお約束をしていただきたいと思いますが。いかがですか。
#106
○安倍国務大臣 これは外務大臣としても、あるいはまた政治家としても努力してまいりたいと思います。
#107
○竹村委員 次に、私ども女性にとりましては大変大事な育児時間のこと、育児休業のことについて質問をさせていただきます。
 四月に、東京都の田無市では、男性職員にも育児時間を認めた制度を発足させております。夫婦ともに田無市市役所に勤める場合には、限定されてはいますけれども、育児時間をとれることになった。市条例で決まっております。これは日本全国初めてのこと、非常に画期的なことだと私どもは喜んでいるわけですけれども、ILO百五十六号条約などの趣旨に照らしてこれをどう受けとめておられますか、外務省。
#108
○山田(中)政府委員 先生御指摘ございました田無市の施策でございますが、現在御審議いただいております条約の中で考えております育児というのは、むしろ母性保護の関係でございます。田無市のは、それとはちょっと違った意味のものであろうと思います。ただ、先ほどから先生御指摘になっております、広い意味で子の養育というものを男女共同の責任であるという観点から見ますと、そのためにはいろいろな施策があり得ようと思いますが、そして、それぞれの状況に応じて適当な施策をとることが条約の趣旨に合致すると思いますが、田無市の場合につきましては、いろいろそこの御事情があると思いますが、そういう施策の一つというふうに評価いたしております。
#109
○竹村委員 外務省としては、これを評価しておられるのですね。
 保育の問題につきましては、たくさんいろいろなことがあり、また、女性が子供を育てながら働くということの大切さ、さまざまな論議がありますけれども、原職復帰の保障や収入保障を定めて、男女のどちらでもが育児休業を選べる、選択できる、こういうことになっていけば大変よいことだと思いますけれども、今、夫婦の選択制を採用することは非常に勇気がある決断だったと思います。大臣は、育児のこと、保育のことをお聞きしてもお困りかもしれませんが、夫婦の共同の責任であり、そしてどちらが育児をしても許される、よいのだ、そういう選択制の問題についてはどう受けとめられますか。
#110
○安倍国務大臣 私は、こうした育児といったような問題については夫婦で十分話し合って、お互いに役割分担をして決めていけばいいのじゃないか、こういうふうに思います。
#111
○竹村委員 役割分担という言葉を使われましたけれども、家庭内の役割分担が差別撤廃条約あるいは機会均等法審議の中で非常に大きな問題となったことは、大臣御存じですか。
#112
○安倍国務大臣 今私が言っていることは、個々の男女平等、こういうことに徹した今の条約の基本精神あるいは宣言、そういうものを無視して言っているわけじゃありませんで、機会均等といいますか男女平等に機会は与えなければなりませんけれども、実際の実態面としましてはお互いに話し合って、そしてそれぞれ分担を決めていくということは家庭生活においてはあっていいことじゃないか。例えば妻が家庭を守る、夫が外で働く。機会としては、平等に与えられるのは必要だと思いますけれども、実際には、話し合ってそれがいいということになれば、そういう方法でやっていくということでいいのじゃないでしょうか。
#113
○竹村委員 どちらが育児をしてもよい、どちらが社会に出て働いてもよい、ある期間交代をしてもよい、そういうふうにお考えになっているとお受けしてよろしいですか。どうですか、大臣。何かちょっとけげんな顔をしていらっしゃいますけれども、お答えいただきましょう。
#114
○安倍国務大臣 それはお互いに一緒に出て働いてもいいでしょうし、どちらか一方が働いてもいいでしょうし、夫婦ということなら夫婦の間でそういうことは決めていけばいいのじゃないか。(竹村委員「育児をすることは」と呼ぶ)育児の問題についても、私自身はそういう経験はありませんけれども、これからの新しい夫婦のあり方として、やはりそういう話し合いによって生まれた協調といいますか調和、そういうことならばそれでいけばいいのじゃないでしょうかね。それ以上、法律で強制するとかという筋合いのものではないと思います。
#115
○竹村委員 どういう調和が、よくわかりませんけれども、大臣が本当に、真にそうお思いになるのでしたら、やはりこれは労働省と協力して育児休業制度の普及にもっと力を入れていただきたいと思います。
 それから育児休業制度ですが、外務省にお尋ねいたしますけれども、西欧諸国、特にEC諸国の中で育児休業制度を取り入れていない国、どこなんでしょうか。また、取り入れている国の内容など、簡潔にお答えいただけますか。
#116
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 先進国の例で申し上げますと、アメリカ、カナダには育児休業制度はないと承知いたしておりますが、ヨーロッパでは西ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、スペイン、オーストリア、それからソ連、チェコスロバキア、ハンガリー等が、この制度を取り入れておると承知いたしております。
#117
○竹村委員 内容についてもお聞きしたいのですが、ちょっと時間の関係がありますので。
 それらの国は育児休業法、法律として制定されているわけですね。ですから、普及率というふうにお聞きしましても、日本の場合と違いましてもし違反した場合は法律違反になるわけですから、法制化されている国というふうに考えてよろしいですね。
#118
○山田(中)政府委員 先ほどお答えさせていただきました各国につきましては、すべて法的な制度となっておると承知いたしております。
#119
○竹村委員 労働省にお聞きいたしますけれども、それでは我が国の育児休業制度の普及状況はどうなのでしょうか。
#120
○赤松政府委員 お答えいたします。
 我が国の育児休業の普及状況は、労働省が女子保護実施状況調査をいたしまして把握したところでは、全企業平均いたしますと一四・三%の普及状況でございます。
#121
○竹村委員 これは雇用均等法を審議しておりましたときにも私はお聞きいたしましたけれども、この普及の状況は非常に低いですね。十年前からだったと思いますけれども、ほかの国では、特にヨーロッパの国々ではもう法制化されている。労働省、今後の展望も含めてどう思われますか。
#122
○赤松政府委員 御指摘のように、普及率はまだ非常に低いと言わざるを得ない状況でございます。そこで、育児休業制度を請求権化法制化――法制化というのはもう少し厳密に言いますと、請求権をすべての女子労働者に与えることかと思いますが、そういうことを検討すべきであるということで、雇用機会均等法の審議をお願いいたしておりました婦人少年問題審議会の審議の過程でいろいろと御議論をいただいたわけでございますが、やはりもう少し実際に普及が進んだ上でないと、全国一律に請求権化するということは時期尚早であるという御答申でございましたので、その方向で一層普及に努力をする、その上で請求権化法制化をなお具体的に検討していくというふうな結論になったわけでございます。
#123
○竹村委員 外務大臣、これは今明らかにいたしましたように、日本とEC諸国の間の育児休業制度の普及状況は非常に格差があるわけです。これは条約との深い関連がありますので、労働時間の問題と同様に、国際感覚を身につけられました政治家として積極的に育児休業法制定に取り組むように、ぜひ労働省と協力をして、期間を設定し積極的に普及させていくように行政指導を強くお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#124
○安倍国務大臣 今、赤松局長も答弁いたしましたような、やはり基本的にはそういう方向で努力をしていくべきだと思います。
#125
○竹村委員 努力いただくことをお約束いただいて、ありがとうございます。私どもは期待しておりますので、女性労働者が一様に期待を集めていると思いますので、ぜひお約束を果たしていただきたいと思います。
 次に、少し問題を変えまして、条約の第六条では、「女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。」とあります。なるほど日本は、法律上は売買春は禁止されているわけです。売春防止法は一九五六年に決められたけれども、男を罰しない大変なざる法だと言われているわけです。これはもうよく御存じのとおりだと思いますけれども、公娼制度の廃止、これは女性の参政権、教育の機会均等、そして男女同権の近代家庭などと並んで、戦前から女性の運動が目指してきた非常に大きな問題でありました。売春等処罰法案は何度も出されて、その結果ここに実現を見たわけですけれども、これは今果たして外務省が、この条約第六条との関係でどうとらえておられるかをきょうはお聞きしたいと私は思うのです。
 韓国、台湾、東南アジアの女性たちを買う日本の男たち。これは別に目新しいことではありません。かなり前から問題にされていたことですけれども、一九八〇年のこの外務委員会では土井たか子議員が、セックスツアーを中止せよとフィリピン側から抗議文が届いているであろうということをただされて、問題になっております。このことは日本の旅行業界だけでなく、東南アジア現地にも非常なショックを与えたようです。これらのことを大臣、どのようにとらえておられますか。
#126
○安倍国務大臣 今お話しのような東南アジア各国から婦人を連れてきて売春させる、そういう行為を日本人がしておるということはまことに恥ずかしい話で、国際的にもまさに信用を失う恥ずべき行為だと思っております。こうした行為に対しましては、これはもちろん違法行為ですから、処罰をしていかなければならぬわけでございます。網の目をくぐってそういうことをやっておることは事実でございますが、これに対しましても外務省は査証といいますか、そういう面でのチェックができるわけでありますし、そういう面で努力していかなければならぬ。これは人権問題とも絡んでおりますから、一人一人入国査証について厳しく取り締まる、はっきりしておれば問題はないですけれども、なかなかその辺のところに難しい問題があるようでございます。
 国内におけるそうした行為については売春禁止法違反ですから、そういうものに対する処罰は治安当局がきちっとやってもらわなければならぬ課題だと思っておりますが、日本人全体がやはり反省しなければならぬ。そういう点での国民のこれに対する批判、あるいはまたそうした人たちの反省を求める国民的な一つの運動といいますか、そういうことも非常に大事じゃないか、こういうふうに思います。
#127
○竹村委員 きょうは余り時間がなくて、このことを追及できないのが残念なんですけれども、観光売春地である台湾、韓国、フィリピンなどへの渡航者数は男性が約八割を占めておるのです。きょう私は、外務省の方にそういうリストとか国別人数などいただきたいと思いましたけれども、ちょっと時間の関係ではしょりますが、八割を男性が占めておる。そして日本人旅行者の男性率という数字も、私はここに持っております。台湾九三・一%が男性です。韓国九四・三%、香港七〇・三%、フィリピン八四・三%。これは少し古い資料なんです。今はもっと多くなっていると思われます。
 これをどう思われるかなんですけれども、フィリピンの新聞は八四年三月に、日本のセックス産業の犠牲になっているフィリピン女性が警察に捕えられて、その姿を大きく載せて、日本のやくざたちが少女を集め興行師たちに売りつけている、少女たちは一銭も支払われずに強制送還されている。買った男は罰せられないで、買われた女性が罰せられているのですね。そして強制送還されている。
 特に触れておきたいのは沖縄の状況です。沖縄のじゃぱゆきさんなんという言葉が生まれているくらい、米兵相手のフィリピンの女性たちが非常に多い。フィリピンの女性は低賃金で雇える。正式な興行ビザを持っている場合でも月約三百ドルくらい、夜七時ごろから明け方まで十時間労働、こういうことはざらにあるのですね。その低賃金から、さらに旅券、ビザ、渡航費などが差し引かれている。それでも、彼女たちが自国で汗して働くのは容易じゃないのです。少しでも多くを短期間で稼ごうとする彼女たち、売春は常に隣り合わせです。これは公然の事実です。沖縄に行かれた男性の方々も多いと思いますけれども、まさに沖縄が一大歓楽地、売春地帯となっている、こういうことすらあるわけです。
 そこで、アメリカあるいは日本の男性がアジアの女たちを買う、大臣、この事実をどう見られますか。このままでよいと思われますか、条約との関連で。売春からの搾取を禁じている条約第六条、これはこのままで通用すると思われますか、どうですか。
#128
○安倍国務大臣 これはもう条約以前の問題だと思います。とにかく、そういうことを外国に行ってやるということはやはり日本人として恥ずかしいことですから、そういう点についての自覚、反省を求めていかなければならぬ。国民全体の問題として、反省しなければならぬ課題だろうと思います。また、外国からそういう女性を連れてきて売春を行わせる、これははっきりした犯罪行為ですから、そういうものに対しては徹底的な取り締まりが行われなければならない、こういうふうに思います。
#129
○竹村委員 この悪質な旅行業者のリストとかあるいは外務省の対応策とか、そういったものがありますか。
#130
○谷田政府委員 御指摘の点は、日本人旅行者の海外における不健全な行動についての規制の点だと存じますけれども、外務省といたしましては直接にできることは非常に限られております。一つ具体的な方法といたしましては、これは運輸省の方の所管でございますけれども、旅行業法というのがございまして、その中で、不健全な旅行等の防止のために、旅行業者及びその従業者が旅行地の法令に違反するサービスに関与することを禁止いたしております。これによりまして運輸省の方で、こういった悪質の業者に対しましては改善命令とかあるいは業務の停止、それから非常に悪質な場合には登録の取り消しというような行政処分を行うというふうに承知いたしております。
 また、在外公館におきましては、こういった邦人の好ましからざるツアーの行動等に留意するように訓令いたしておりますし、それから、今申し上げた法律が実効的に施行されるように努めておりまして、こういった在外からの報告に基づいて運輸省の方で先ほどの法律を実施するのをお助けしているという状況でございます。
#131
○竹村委員 そういう取り決めがおありになるけれども、今のところ何も効力を発揮していないという現状があるわけですね。これからもぜひ御努力をいただきたいと思いますし、もっと強力な方策をぜひ考えていただきたいと思います。
 もう時間が参りましたので、あと一つだけ聞かせていただいて終わりますけれども、個室付浴場です。正式名称を個室付浴場と言うそうですけれども、銭湯と同じ公衆浴場法の中にその設置基準が示されているわけです。都道府県知事による営業許可は簡単にとれるわけです。ただ、風俗営業法の規制で、文教地域、官庁街などでの新設は許可されないということなんですけれども、この「締約国は、あらゆる形態の女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。」これは他人の売春からの搾取にもろに当たるのではないですか、どうですか。
#132
○山田(中)政府委員 先生御指摘ございました個室付浴場につきましては、売春が行われる可能性があるということで、一層厳しい姿勢で臨んでいくとの見地から風俗営業法が先般改正されたわけでございますが、第六条との関係では、我が国の法整備と申しますか、それは売春防止法でございますので、この個室付浴場につきましても、売春防止法に違反するような場合には厳正に警察庁の方で臨んでいただくということでお願いしてございますし、その法的枠組みがございますので、条約上の措置はとれておるものと理解いたしております。
#133
○竹村委員 もう時間がありませんので深く追及できませんけれども、もちろんこれは外務省だけの問題ではなく、労働省も警察もみんなかかわっていただかなければならないことですけれども、外務省は何ら抵触しないと思っておられる、これは非常に大きな問題だと私は思います。このまま野放しで、恐らく条約の締結に当たってはそこまでは考えておられなかったというのが正直なところではないでしょうか、どうですか。
#134
○山田(中)政府委員 本件につきましては、外務省としてはもちろん問題意識を持っておりまして、先ほど私が答弁申しました趣旨、いわゆる売春防止法を厳正に実施していただくという点については、警察庁とも打ち合わせ済みでございます。
#135
○竹村委員 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 終わります。
#136
○愛野委員長 次に、大久保直彦君。
#137
○大久保委員 女性問題に関する条約につきまして、二人の女性議員の後を継いでいろいろ質疑をするというのはちょっと勝手が違っておりますけれども……。
 一九八〇年に、当時のデンマーク大使の高橋さんがこの条約に署名をされましてから五年が経過をいたしました。女性の社会参加、地位向上の問題については、昭和二十年の参政権が第一幕であった。そういう観点からしますと、今回のこの条約に署名をし、またそれを批准をし締約国となるということは、その意味においては第二幕の華々しい幕あけである、こういう論評をされる方があるわけでございますが、この第二幕のスタート、その幕をまさにあけんとするときに、当該大臣であります安倍外務大臣といたしましては、この条約批准にこぎつけたことについてどういうお考えをお持ちであるか、御意見があれば伺っておきたいと思います。
#138
○安倍国務大臣 男女平等というのは、私が申し上げるまでもなく、日本の憲法において明記されておりますし、国連憲章あるいはまた人権規約等国際的な戦後の大きな流れとなって今日に至っておるし、日本もそうした憲法に基づきまして、男女平等の参政権を初めとしていろいろな措置を講じてきたわけでございますが、ただ問題は、実態的にいろいろと残っておったことは事実で、そういう中で女子差別撤廃条約を批准していくということが、まさに男女平等を社会的にも経済的にも政治的にも確定をするという意味におきまして、促進をする意味において、まさにこれは条約の内容から見ましても画期的なものであるということで努力を重ねたわけです。
 ただ、条約は署名をしても、その条件が整わなければ、署名をし、国会の承認を求め、批准にこぎつけたとしても、内容は国内的な整備が整わなければ意味をなさないわけでありますので、今日に至るまで国内的にもいろいろと調整が続いたわけであります。
 私も、外務大臣になりましてから三年近くなるわけでございますが、国会が始まることに、女子差別撤廃条約を一日も早く批准すべきである、外務省は責任を持ってやるべきである、こういう非常に強い国会の要請がございまして、そのたびに外務大臣として各省庁との調整を図りながら最大の努力をするということをお答えをし、事実また最大限の力を尽くしたわけでございますが、ようやくにいたしまして大体国内的な法の整備も一応終わった、こういうことで今回条約を提出したわけでございます。そして、今回の条約が幸いにしてナイロビの七月の会議にまで間に合うことができれば、まさにこれはこれからの男女平等の新しい歴史をつくっていくスタートになるのではないか、こういうふうに認識をいたしております。
#139
○大久保委員 この条約は九十二カ国が署名をし、本年三月一日付で六十六カ国が締約国になっておるわけでございますけれども、女性についての差別云々という見地からしますと、最もレディーファーストであると言われているアメリカや、または西欧先進国の主導的立場にあるイギリスなどがこの条約をまだ批准しようとしていない。この辺に一つの疑義を持つわけなんですけれども、いろいろ今大臣の所見の中にもありましたように、女性の差別の問題については、この条約を批准することをぜひこの七月のナイロビの国際会議までに間に合わしたい、こういうことで幸いにも国内法の整備も整ってきたということでございます。
 我が党は八〇年以来、この条約署名以来から、この条約の早期批准を要求してまいりましたし、一日も早く締約国になるべきだという見解をずっと述べ続けてまいりましたけれども、今安倍外務大臣の立場で、この条約の締約国になりますと我が国外交にとってどういうメリットがあるのか、外交面から見てどういうプラス面があるのか。さらにまた、国際社会でのおつき合いとはいえどもこの条約を批准するということは、逆にそれなりの縛りを我々は受けなければならないのではないだろうか。締約国としての義務を果たさなければならないということ等々考えますと、日本の将来について、女性の差別という観点からどういうビジョンを持っておられるのか。非常に大ざっぱなお尋ねで答えにくいかもしれませんけれども、この条約を締約することについてのメリットなり、またこの条約の締約国になった場合の日本の将来のビジョンについて、何かもしお考えなり持つものがあれば、この際伺っておきたいと思います。
#140
○安倍国務大臣 この条約を締結して、同時にまたこれに伴うところのいろいろの国内体制を整備することによりまして、我が国の男女平等の実態的な、実質的な推進によって、我が国社会に非常に大きな活力というものが生まれると私は思っておるわけでございます。そういう中で、社会的なあるいはまた経済的な福祉の向上というものにもつながっていくことも十分期待ができるわけでございますし、同時にまた、我が国がこれだけの画期的な条約を世界に向けて批准をすることは、これから二十一世紀に向かっての我が国の外交を展開する上において、世界各国の近代国家としての信頼を高めていく上においては大変大きなメリットになるのじゃないか、こういうふうに感じております。
#141
○大久保委員 男女の平等云々という議論になりますと、特にいつもスウェーデンが引き合いに出されて、スウェーデンのあり方が議論の対象になるわけですけれども、私も直接見たわけではありませんけれども、スウェーデンの男性は、働く者の一〇%は育児休暇をとっているそうですね。育児休暇は女性の専売特許ではない、男性も育児休暇を要求して当然であるし、また要求すべきであるという風潮で、だんだん育児休暇を要求する男性の率がふえておる。
 私は、この条約は、世界の一つの大きな申し合わせという意味では、それなりに賛成する部分も多いのでありますけれども、しかし、その国々の風習、習慣とか慣行とかについては、それぞれの歴史なり伝統なり今までの経緯というものがある。今大臣のお話を伺っておりますと、我が国も近い将来、男性が育児休暇を要求するような日本の国家、社会になるかもしれないなという可能性を含むように伺うわけですけれども、そんなことですか。
#142
○安倍国務大臣 私は、この条約それからこれに伴う法的整備によりまして、そういう育児休暇なんかも男性がこれを共有し得る機会というものは、法的に与えられるということになるわけでありますし、それはやはり世界の大きな流れの一つであろうと思いますが、ただ実際にこれが行われるかどうかということは、それなりのその国の社会的な合意といいますか、コンセンサスが必要でなければならないのじゃないか、そういうふうに思っております。
 そういう中で、果たして今直ちにそれではスウェーデンのような形に、日本の育児休暇の問題を一挙に切りかえていけるかといったら、今の我が国の状況、社会的な合意というものが果たしてそこまであるかということになると、それはまだまだ問題はあるのじゃないだろうか。ただ、そういう機会というものは、法的にはきちっと与えられるというところに今回の意味があるのじゃないか。ですから、そういうふうに社会的な合意というのが熟してくれば、そういうことは十分あり得るのじゃないだろうか、こういうふうに思います。
#143
○大久保委員 これからいろいろ具体的な問題についてお尋ねをしたいと思うのですけれども、その前に、これから基本的な論議を進めていく上での考え方としまして、私たちは簡単に男女平等という言葉を使うわけなんですけれども、よく考えていきますと、男女平等というのは一体何なんだ、そもそもどういうことなんだという問題に逐一ぶち当たるわけでございます。この条約を批准するについて外務大臣は、男女平等というのはこういうものだという何か一つの定見なり御認識がございますか。
#144
○安倍国務大臣 これは日本の憲法にもありますように、人間というのは生まれながらにして平等である、男女についても同様に人間の尊厳と権利は認められなければならない、こういうのがこの条約を締結をし、批准を求める基本的な一つの理念になっておる、こういうふうに思っております。
#145
○大久保委員 今の日本の社会は、幸か不幸か男性社会と言われております。そういう男性社会ということを前提に見ますと、男女平等というのは、男性の方から手を差し伸べてその格差を縮めようということなのか。それとも女性の方から、今まで男性が独占をしてきた立場、それを今度は女性の方に取り戻すのだ、こういう意識改革である、こういう論議が、今男女平等論をよく詰めていきますと、どっちなんだ、いわゆる法律的にさえ男女平等が確保されているならば、ことごとく何か不平等感があった場合には、立法措置を講じてその格差を埋めなければならない、こういうふうに思いますけれども、このように立法措置でこれは期せ切るものなのか。それとももっと違うところに、男女不平等であるということならばその原因があるのか、この点はどんなふうにお考えでしょうか。
#146
○安倍国務大臣 やはりその国の歴史、社会の成り立ち、あるいは風俗、習慣、伝統、そういうものがあって、それぞれが独自の個性というものを持った国家でありますし、日本は日本なりの、そういう意味では西欧社会にない一つの個性があるわけでございますが、そしてまたその個性について、今おっしゃるような日本は男性優位の社会だ、こういうふうな批判も受けておるわけでありますが、しかし、こういうふうに国際的な社会、相互依存というのはここまで伸長してくるという時代になりますと、やはりお互いに、お互いの関係を国際水準に合わせていくということが、これからの二十一世紀に向けての国際社会においては非常に重要なことじゃないだろうか。そういうことで、やはり条約とかあるいは法律とかいうものは、少なくともきちんとした一つの男女平等という立場を明記させて、法のもとにおいてはそれがきちっと守られていくという体制をつくることが大事なことじゃないだろうかと私は思っております。
 私は、今度の条約の女子差別撤廃宣言と違うところの一つの大きな特徴は、やはり女子というものは肉体的に弱いから、これは保護しなければならぬ、そういう立場がむしろ宣言にはあったわけですね。今度の場合は、女子に対する保護というのは母性に対する保護、それ以外は男女全く平等であるという、極めて明確な一つの哲学的な思想がこの条約に盛り込まれておりまして、これはやはりこの条約の一つの大きな特徴ではないだろうか。ですから、女性が弱いから守るというふうな、だから権利を取り返すということじゃなくて、そういうものを乗り越えた、ただ母性という意味においての保護は、これは与えなければならぬ、しかし、それ以外については全く男女は平等である、こういうことをこの条約において明記されておるということが、一つの大きな特徴ではないだろうか、こういうふうに思っております。
#147
○大久保委員 同じ立場で、赤松局長がお見えになっておられますけれども、御意見がありましたら承りたいと思います。
#148
○赤松政府委員 先ほど来伺っておりましたが、この条約というのは、やはり今外務大臣がおっしゃいましたような一つの男女平等というものへの新しい世界観と申しますか、男女観と申しますか、そういうものを提示したものでございまして、大変意義の深いものというふうに考えている次第でございます。
#149
○大久保委員 それでは、条約の中身に大ざっぱに触れさせてもらいたいと思いますけれども、この条約にざっと目を通しますと、大きく十のカテゴリーといいますか、範疇に分けられるのだと思うのです。
 一つは、憲法その他法制的に男女の平等の原則がうたわれているかどうか、法律上の問題。それから政治活動の平等の問題、国際活動の問題、国籍関係の平等、教育の平等、雇用の平等、婚姻または母性を理由とする女子差別の禁止の問題、家族給付についての権利の問題、農村の女子に対する措置の問題、法律の前の平等の問題、これは前後重複しますけれども、大きく十に分けられている中で、大体我が国としてはほとんどクリアできているのではないか。しかし、雇用の問題、それから偏見、慣習、その他慣行の撤廃実現のために男女の社会的、文化的行動様式修正云々、これは一体何なのか、ちょっと後で聞いてみたいと思うのですが、さらに教育の問題、女子の専門教育をすることは差別につながるからけしからぬ、学校でも家庭科の教育をやってはいけないのだ、こういうことのようでございますが、この国際的な条約でその国々のいわゆる慣行なり風俗習慣にまで口を挟んでくる条約というのは、非常に珍しい条約だと思います。
 雇用の問題につきましては、先ほど赤松さんの御答弁もありましたけれども、いわゆる雇用の機会均等法で大変な努力をされたことはよく承知をしておりますし、私たちもそれについてはいろいろな意見がございますし、今回の均等法については極めて不十分という立場をとっておるわけでございますが、しかし、日本の歴史なり伝統なり今までの慣習ということを考えますと、これはなかなか一朝一夕にでき上がる問題ではない。
 これは一つの意見でございますけれども、日本の大変有名な雑誌に、日本の一流の学者が集まって「男女平等とはなにか」という論議を、討論会をされております。「社会・文化と女性」というこの論議の中でこんなことを述べておる。
  概論で長たらしくしゃべるとうまくないから簡単に申します。たとえば男女平等ということで、同一労働、同一賃金が主張されていますね。ところが、他方では、女は生理上違うから、生理休暇はよこせ、出産するから出産手当、出産休暇をよこせ、そういうことをいっているわけです。そういう点で私は非常に疑問を持つのです。なぜかというと、企業は何も子供を産ませるために人を雇っているわけではない。だから、子供が産まれるからといって、産まれる子供の面倒をみなければならない理由は、企業にはないわけです。要するに企業は、人を雇って働かして、働いた者にそれ相当の給料を払う、そしてその中から利潤を生み出していく、そういったてまえで企業はできている。その企業に何か社会事業みたいなものを背負わせようということになるわけです。それはちょっと無理ではないか。片一方では同一労働、同一賃金といって、片方では生理休暇をよこせ、出産休暇をよこせ、そしてそれを有給休暇にしろ、こういうわけです。それだったら、企業の側から見て、当然劣った労働力よりも、それと同じ労働力であるならば、なるべく女はとらないようにしよう、そういうことになる。すると、これは男女平等に反するから男と同じにとれ、というのでまた要求するわけです。
これ自体むちゃくちゃな要求です云々。
 これは私の意見ではありませんけれども、こういうことを言う人がおる。これが今の社会の中で、第一線のいわゆる情報社会の中でこういう論理がまかり通っておる。こういう状況の中で、赤松局長の御努力もなかなか大変だと思いますけれども、私は今、社会的にも歴史的にも民族的にも風土的にも、日本の労働問題一つをとりましても、雇用問題をとっても、こういうことが前面に一つの大きな障害となって、この条約の趣旨とは別次元の問題が多くあるのではないかということを考えますと、この条約を批准し、この条約の締約国になろうとしていることについて、外務大臣は外務大臣のお立場から、やはり日本の国内法について何かもう少し御意見があっていいのじゃないかな、こんなことを思いますけれども、いかがでしょうか。
#150
○安倍国務大臣 今、雑誌の中の意見、それは確かに日本の相当有力な意見でもあると思いますが、しかし、こういういわゆる経済合理主義的な考え方で人間社会を論ずることに基本的に問題があると思いますし、やはり社会というものはそうした経済合理的な面だけでとらえることのできない、もっと基本的に大事なものがあるのじゃないかと思うのです。やはり、男女平等がその一つであろうと私は思っておるわけでありまして、私なんか政治家で選挙に出ておりますと、男性の票と全く同じように女性の票をいただいておるわけですから、男女平等というのは全く我々は身をもって感じておるわけでございます。ですから、そういう今の発言を見ますと、我々は、非常に我々の考えと違った次元というとらえ方をせざるを得ないわけです。
 この条約は私は相当面期的なものであると思いますし、そのために国内体制を整備する。今の男女雇用均等法等についても、労働省を中心にいたしまして大変な苦労に苦労を重ねて生まれた、国会の御協力を得て生まれた法律でありまして、それ自身は評価していただいておると思いますが、しかしその中でこの条約という面から見れば、それでは完全にほかの体制ができたかというと、私はまだまだ十分でない点もあると思います。その他いろいろと教育の面とかあるいは先ほど言われましたその他の条約との関連の面とか、やはりまだまだこれから努力しなければならぬ点があると思います。
 私は、この条約のそうした漸進性というもの、ここでもってすべてを解決するのじゃなくて、この条約を批准することによって日本が国際的な約束をするわけですから、その約束に基づいてこれから整備していかなければならぬ課題があろうと思います。それをこれからやはり我々としては、条約が整備されたら、条約が批准されたからこれで終わりだということじゃなくて、これからも条約の真の精神というものを実現するためにいろいろな面で努力をしていかなければならぬと思いますし、また条約が批准された、あるいはまた法律が通ったからといって、完全にそれでは社会的にあらゆる面で男女平等が実現されたかというと、そうとも言えないのじゃないか。
 それが、日本の社会の中にそういうものがあるわけですから、これは条約あるいは法律というもので一つの形は整ったわけですが、これを実際的に実行していくには、条約の精神あるいは法律の精神というものが国民全体に行き渡ることが必要であろう。そのために努力を国としてもしなければならぬと思うわけでございますし、また、そういう点での論議は大いに活発化されるということが、条約や法律に対する、あるいは真の男女平等に対する国民の認識が生まれてくる、そしてそういう社会がこれから実現をしていく一つの大きな契機になるんじゃないだろうか、こういうふうに思っておりまして、この条約が批准されてすべて終わりだ、こういうふうな考え方は私は持っておりません。
#151
○大久保委員 今の大臣の御発言にありましたように、この条約を批准しますと今度いわゆる十七条委員会ですか、これに出かけていって、日本の国の代表が出ていって、ここでいろいろ審議の対象になるといいますか、日本国のあり方についていろいろな御意見が出ると思うのですが、そういう状況になった場合に、十七条委員会からいろいろ指摘され、また要求されたことについてはそれに対応するにやぶさかではない、こういうように伺いましたけれども、そのとおりでよろしいですか。
#152
○安倍国務大臣 これはいわゆる条約を批准するということは、それだけの国際的な責任を負うわけですから、国際社会、条約締結国に対しまして、我々はその責任を負った立場で報告もしなければならぬ、条約上のそうした報告もしなければなりませんし、あるいはまた国内的に指摘を受けた場合には、国内的な整備をやる義務がそこに生じてくるのは当然だと私は思います。
#153
○大久保委員 赤松局長、今大臣からお話がありましたように、この条約加盟によっておのずから日本の国内法も逐一整備されてくるであろう、こういうような認識を労働省も持っておられるわけですか。
#154
○赤松政府委員 国内法の雇用の面におきましては、先週金曜日に成立いたしました雇用機会均等法の中で、条約の要請しているところは達成されているものと現在の時点で考えられるわけでございますが、これが将来にわたってなお改善されていく余地というのは十分にあろうかと思います。
 そこで、審議会でも、適当な機会に見直しをするようにという御答申をいただきました。また、法案附則の中で、見直し規定という規定が参議院の修正で入りまして、これが必要に応じて見直しをすべしという規定も明記されたところでございますので、その方向でこの委員会に報告する、先ほどの十七条委員会に報告するような場合におきましてもできる限り、日本の法制としてはだんだんに整っていっている、だんだんに前進をしていっているというようなことでありたいというふうに考えております。
#155
○大久保委員 そこで、問題の社会的、文化的行動様式の修正の問題なんです。
 先ほども申しましたように、この国際条約のいわゆる本文の中で、各国別の伝統的な習慣ですとか慣行の撤廃のために、男女の生活様式、社会的、文化的行動様式を修正をしなければならない、この修正を求めている条約は今までは例が余りないと思いますけれども、参考のためにこんな話を聞いていただきたいのです。
 私はこの間、今テレビで父親役をやっております津川雅彦さんという俳優さんと、子育ての問題で座談会をやったことがあるのです。彼は子育てを生きがいにしている男でございまして、母親がわりに自分がおしめから育児からおふろまで全部、今十一歳の女の子と一緒に入っている。車に乗るのも、自分のひざの上に乗っけて車に乗っかっておる。こういうことで、なぜ男性が子育てをしないのかということを、しきりに世間に警告を発しておる男でございますけれども、こんなおもしろいものはないということで、私も彼の育児論なり子育て論には、非常に耳を傾けるところが多いのでございます。
 しかし彼は、自分が一言発言するたびに、これは私に限っての特殊な例だ、うちの家庭は奥さんが女優さんなものですから、我が家では母親はあこがれの的になっていて、父親が母親がわりの役を務めているのだ、こういうことを言いつつ、まだまだ我が家は特殊な例だと思いますよ、しかし、もっと男性が子育てに関心を持ってもいいのではないか、こういうことを述べるのです。私も、そうかな、しかし、残念ながらそちらの方に振り向ける時間がなかなかなくて、子育ては家内に任せっ放しというのが現状でございます。
 もう一つおもしろいことは、勤労労働者と言っていいのかわかりませんけれども、山口百恵さんという歌手がおります。日本のスーパースター、ヤングのアイドルで大変な人気を持っておられますけれども、この方は家庭へ入って、今、良妻賢母の先輩の道をひたひたと歩いている。そのことについて、今、うちの若い娘たちは心から拍手を送っておる。
 片や、男性が子育てに熱中するかと思いますと、今世のアイドルと言われておるスーパースターが家庭へ入って子育てをやっておる。これはいい、悪いは別にして、いろいろな置かれた環境の中で自然にそういう形がとられてきたのであって、このことをとらまえて、これはいいぞとか、そっちが正しいとかなんとかということではないと思うのです。やはり我が日本民族は、日本民族の長い歴史と伝統の中で、こういう社会的、文化的行動というのが律されるべきであり、受け継がれ、またそれを後世に託していくべきであって、これを条約や法律で、そういうものを変えなければならぬというのはどういうことなのか。安倍大臣は、どういうことを想定してこの文章を読み、また、この文章に対応されようとしているのか、聞かせていただきたいと思います。
#156
○安倍国務大臣 この条約というのは、一つの定型化されているものを打破していこう、定型化した概念ですね、例えば、今お話の中にありましたような女は家庭を守るべきだ、男は外に出て働くべきだ、こういう一つの定型化という概念をやはり打破していこう、これは私は一つの意味があるのじゃないかと思います。しかし、だからといって、その人たちの持っておる個性だとか適性だとか、そういうものまで否定するものでもないし、妨げるものではない、こういうふうに思うわけで、例えば婦人が女らしさというのを持つのは当然のことであると思いますが、それはそれなりにその人の個性、またその人の持っている一つの人格というものですから、そこまでを否定して、どうだこうだということじゃないだろうと思います。
 ですから、一つの平等の条件、機会均等の条件というものを与える、それに基づいてそれぞれが行動していけばいいわけであって、そうした一つの固定した概念を打破していかなければ、人間社会の男女平等という、憲法の精神に伴った本当の新しい将来に向かっての社会というのは生まれていかないだろう、こういうことにこの条約の精神はあるんじゃないかな。ですから、それぞれの個性に従った、そしてまた、夫婦なら夫婦においてもそれぞれの夫婦で話し合って、それぞれの生き方というのがあってそれはしかるべきじゃないだろうか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。ですから、いやもう、これは必ず男も女と同じように育児をしろとか逆にそういう概念とか、そういうことをここで規定しているわけじゃなくて、平等の機会とか平等の条件というもの、既成の固定的な概念を打破するというところに、この条約の一つの精神があるのじゃないかと私は思うわけでございます。これが強制されるということであってはならない、私はこういうふうに思うわけであります。
#157
○大久保委員 そうしますと、現在の日本社会の社会的、文化的慣行の中で、それを打破し修正をしなければならない問題は今のところ具体的には想定をしておらぬ、大臣の頭の中にはそういう問題はない、こういうことですか。
#158
○安倍国務大臣 今の日本の社会で、そうした固定的な概念というのはあるんじゃないかと思うのですね。例えば女性というのは家庭を守るべきだ、外へ出て働くのは男性だ、こういう一つの固定的な概念があったとするならば、日本にはむしろそういう概念はまだまだ牢固として残っているんじゃないだろうかと思うわけですが、やはりそういった概念を打破していく必要があるんじゃないだろうか。これを打破するための一つの条約であるし、一つのこれに伴うところの法律がここで生まれてくるわけでございます。
 平等な権利を男女に与える。しかし、実際にそういう中で具体的に、今の山口百恵さんの例ではありませんけれども、私は家庭を守っていくんだ、あなたはひとつ働いてください、そういうことで共同のあるいは協調の和に基づいた分担というものがそこに生まれれば、それなりに結構なことではないか。それが強制されたものであってはならないし、固定概念に基づくものであってはならない。それはやはり固定概念が打破されるということが、これからの日本の社会を考えるときに大事なことじゃないだろうかと思うわけであります。
#159
○大久保委員 私も相当進んでいる人間だと思うのですけれども、大臣の話を聞いていると何だかもっと進んでいるような感じを抱きまして、驚いていいのか称賛していいのかわかりませんけれども、しかし一般論はともかく、私の子供の場合、孫の父親が会社を休んで、育児休暇をもらっておるということで、朝から家にいて子育てに熱中しているような光景を目の当たりにしたときは、今の大臣のように非常に物わかりのいい、日本もいろいろな機会があってよかったんじゃないか、君にとっては貴重な体験だから育児のために頑張りなさいというようなことが言えるかどうか。なかなか私には難しいと思いますが、大臣の頭の延長線上には、将来、日本国男性もスウェーデンの男性のように、当面一割ないし一割五分の人間が育児休暇を要求して、会社を休んでそれに専念するような事態が日本の国にはあり得てもおかしくない、この条約に入る以上、そこまでの一応見通しを持ってこの場に臨んでおられるというふうに拝見いたしますけれども、そのとおりでしょうか。
#160
○安倍国務大臣 私自身はいわば古いタイプの男性で、大久保さんが言われるような決して新しい型ではないわけですし、やはり家内は家を守る、そして自分自身は外で働く、そういうことで合意が成り立って、自分は自分自身の家庭をやっているわけです。しかし、男女平等というこの条約に入って、これだけの進歩的といいますか画期的な条約を批准する以上は、これからの新しい社会に対応した型に日本もなっていくということを妨げることはできないのじゃないか、そういう流れがあってもこれを阻止してはならない、そういうふうに思っておるわけでございます。
 ですから私は、やはり一つの固定の概念というのは、基本的におかしいのじゃないかと思っております。だから、こうした日本にあるような固定概念、我々が生まれ育ったような固定概念を打破していくということは、これからの新しい時代において、まさに条約が言っているように、男女は生まれながらにして平等であるという基本的な観念のもとにこれをとらえていくということは、一つの大きな世界の社会の流れではないだろうか、こういうふうに思いますし、それまでを否定することはできない、こういうふうに思っております。
#161
○大久保委員 そうしますと大臣は、我が国は男女平等を憲法でも定めておりますし、男女平等の意識というものはかなり多方面に強いのだろうと思うのですけれども、しかし、そういう法律上の問題は別といたしまして、現状の生活の中では男女問題についてはかなり格差が大きくあるであろう、また根強い因襲等もあるであろうというようなことを今述べられておりますけれども、我が国は男女平等という問題については先進国なのか中進国なのか後進国なのか、どの辺に位置しているのか、大臣はどんな認識ですか。
#162
○安倍国務大臣 全体的に見れば私は、日本の場合は戦後生まれかわって、新しい憲法のもとにいろいろな制度も充実してまいりましたし、いろいろと問題点はまだ残っておるとしても、世界全体の中で見れば先進国の中に入っていくのじゃないか、そういうふうに思います。
#163
○大久保委員 今までの発言を聞いていますと、何だか日本は男女平等では後進国のような私は印象を受けましたけれども、赤松局長はどうですか。
#164
○赤松政府委員 世界にはやはりいろいろな国がございまして、日本はそう先進国とは言えないかと思います。やはりもっとすごい国もございますから。最低ということでもなくて、まあ中くらいか、あるいは、しかしなかなか日本も変化という点では大きいわけでございますので、かなりいい線に行けるのではないかと思います。
#165
○大久保委員 本院の本会議場にもことしから女性の職員の方が入るようになりましたし、最近驚いたのですが、私も十五年ぶりに外務委員会に来たのですけれども、外務の調査室にも女性の職員の方がおられる。随分十五年前とは変わったものだなと思います。男尊女卑というような考え方が国策としてとられてきたことを事実上経験した我が国が、戦後四十年間でこういう事態を迎えているというのは、ある程度一つのテンポといいますか、時代の進み方のピッチ等を考えますと、非常に順調に来ているんじゃないのかなという感じがするのです。
 先ほども質問しましたけれども、アメリカなどは連邦法や州法で男女問題の立法があるからといって、いまだこの条約を批准しようとしない。またイギリス等においては、最近何か前向きの動きもあるようですけれども、人権法等の絡みもあって、この女性差別撤廃の条約をイギリスは当面批准する動きは余り見られないということでございますが、そういう状況の中で、今大臣からは先進国である、赤松局長からは中の上か上の下ぐらいではないだろうかというようなことでございますが、私も、日本の国は男女の格差が広がる方向には決してない、むしろそれを詰めるために一生懸命おくれた時間を取り戻そうとして、あらゆる分野で精力的に取り組んでいるのが実情ではないかと思うのです。
 角度を変えて、もう一つの問題について最後にお尋ねをしますけれども、外務省からいただいた説明書の中で僕がびっくりしたのは、教育について文部省は、「家庭一般」における女子のみの必修などの家庭科教育など、男女異なる取り扱いを改めていくというので、条約の中を見てみましても、同一の教育課程、試験、教育職員、学校施設設備を享受する機会、または男女の役割についての定型化された概念の撤廃、こういうことをこの条約は求めておりますね。そうすると、女子の家庭科もいけないというのですから、女の子だけのいわゆる女子絞、これもこの条約の趣旨からいくとまずいことになっていくのではないか。ナイロビの国際会議に間に合わすために整った案件として、先ほどのいわゆる機会均等法の問題、それから国籍法の問題、それと同列にこの女子教育の問題が挙げられているわけですけれども、この問題については、きょう文部省の方はおられないと思いますが、外務省並びに労働省としては、これはどういう認識を持っておられるのか。
#166
○山田(中)政府委員 学校教育における家庭科の問題でございますが、今先生から御指摘ございましたように、十条の(b)で同一の教育課程ということが規定されておりますので、現在の学習指導要領では家庭科が女子が必須、男子に必須になっておらないというところから、この条項との兼ね合いがございます。そこで検討会議の結果、これを同じような方向で扱うという結論をお出しいただきまして、この条約を批准できる方向で文部省の方で御検討いただくことになっておるわけでございます。家庭科教育が悪いということではございませんで、同等の教育課程にするということでございます。
 なお、先生御指摘ございました女子校の問題でございますが、これは同じくこの第十条の中で男女共学を奨励するということはございますが、女子のみのための学校が残ります場合に、この条約に違反するということではないと思います。
#167
○大久保委員 赤松局長、どうでしょうか。
    〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
#168
○赤松政府委員 教育問題につきましては管轄外でございますが、女子についてだけ家庭教育ということでございますと、これは男は仕事、女は家庭というような、固定的な役割分担意識から直接出てきた制度ではないかというふうに考えて、適切ではないのではなかろうかというふうに考えていた次第でございますが、それは今後見直しをされるということでございますので、解決できるのではないか。
 それからまた、女子だけの高校ということでございますが、昔のように非常に程度の高い学校が男子のみで独占されていてそこへ女性が入れないというような制度は、これは明らかに男女の差別になって、そういう制度は改められなければならないと存じますが、そうでないということで、どちらでも選べるという状況であれば女子のみの学校があっても、それは必ずしもこの条約で言う差別になるというほどの状態ではないのではないかというふうに考えておりますが、これは素人の考えでございますので間違っているかもしれません。
#169
○大久保委員 今、赤松局長が御答弁いただいたのにちょっと関連でお尋ねしたいのですけれども、先ほど条約締結に関連して十七条委員会からのいろいろな要求なりまたは指導なり、そういったものを受けて国内法の整備に進むことについて非常に積極的な姿勢を示されましたけれども、あわせて、去る二十二日経済企画庁が、二〇〇〇年の我が国の雇用状態というものについて発表されました。その労働市場調査の報告書によりますと、年功序列体系が崩壊して企業内秩序は崩れていく、こういうことが一つの前提といいますか、柱になっているように私は読ましてもらいました。
 そういうことであるとすると、さきのいわゆる機会均等法そのものは、私どもは非常に内容的には不十分で反対をいたしましたけれども、この条約が求めている男女の雇用の平等という見地からしましても、また、日本の労働市場が年功序列を基盤に考えられておるというようなことからしますと、この機会均等法という法律は、条約に加入することとともに、あわせて日本独自の必然的な要素から、相当いろいろな面から見直される必要があるのではないか、こういうことを痛感いたしますけれども、このことについて御意見があったら伺っておきたいと思います。
#170
○赤松政府委員 雇用機会均等法の御審議に際しまして、たびたび私もお答え申し上げた経験がございますが、雇用機会均等法の中でいわゆる努力義務というものになった雇用、採用等のいわば緩い規定が、日本の年功序列、それは終身雇用を前提としていると思われるわけでございますが、そういうものを考えた上でのいわば現実的な措置であるということでございます以上、その前提になっております年功序列あるいは終身雇用そのものが変わると申しますか、人によっては崩壊するという言葉をお使いになっておられるかと存じますが、そういうものがなくなるということであれば、それはその時代にふさわしい規定のあり方というものが考えられるのは当然かと存じます。
#171
○大久保委員 毎年四月十日から一週間、婦人週間というものが設けられておりますね。このような女性の差別云々という条約を批准したからには、また、殊さらに婦人婦人と言うのもいかがなものかなと私は思うわけなんですけれども、しかし、今までの婦人週間のテーマを拝見してまいりますと、焦点はやはりナイロビの国際婦人の十年というものを大きなテーマに掲げて、今日までこの婦人週間を盛り上げてきておられます。婦人の権利意識の向上を背景に積極的に社会参加をしようという、この基本的な姿勢は変わらないと思いますが、この条約締約国になることと我が国の婦人週間のあり方に何か関連があるのでしょうか。もしかしたならば、また違うテーマで新しく発足させるのか、とりあえず当面の婦人週間の役割はここで完了した、こういうふうに思っておられるのか、その辺はいかがですか。
#172
○赤松政府委員 お答え申し上げます。
 婦人週間は、もともと、これは日本の女性が初めて参政権を行使いたしました四月十日を記念として、その後発足したキャンペーンの週間でございます。したがいまして長い歴史を持っておりまして、そのテーマも、始まったころは日本の社会から封建制をなくしましょうというような、いわばその当時の社会事情を反映したものでございました。国連の婦人の十年が始まってからは、この国連の婦人の十年が平等、発展、平和という三つの大きな目標を掲げているということを頭に置いたスローガンの設定などをしてきたわけでございます。そして昨年、ことしあたりは、国連婦人の十年が終わろうとしている時期だということを考えてテーマを設定しているわけでございます。
 そこで、国連婦人の十年が終わりましたならば、当然、国連婦人の十年に密着したテーマの選び方というのは考え直す必要があろうかと存じますが、では婦人週間そのものが任務が終わったかということになりますと、決してそのようには考えておりませんで、例えば先ほど先生が問題にされておりましたような慣行や習慣やそういうものを見直す、固定的な役割分担意識を見直すというようなことになりますと、これは法律の問題ではなくていわば意識の問題でございますから、婦人週間のようなキャンペーンというものは非常に有効ではないかと思うわけでございます。
 習慣や慣行を見直すということは、決して押しつけるということではなくて、問題点を提示し、新しい世界的な趨勢を国民の前にお示しするということも一つの大きな意義があるのではないかと思っておりますので、条約が目指しておりますところをよく考えて、婦人週間のテーマ選びなどは積極的に、前向きにいたしたいと思っている次第でございます。
#173
○大久保委員 時間が参りましたので終わりますけれども、冒頭に申しましたように、七月のナイロビの国際会議までに何とか本条約を批准し、間に合わせたいということについて、私どもも一九八〇年の署名以来、早期批准に賛成の意を表明してまいりましたので、その意味において、大臣からそのことについての御決意のほどがあればお伺いしたいと思いますし、さらに、最後に外務大臣と赤松局長にお尋ねをしておきたいのですけれども、先般の閣議で労働大臣から、公務部門における女子の採用、登用について各省庁において積極的にこれに取り組んでもらいたい、こういう御発言があったやに伺っておりますけれども、これを受けて外務省としてはどういうふうにこれを受け、対応しようとされておるのか、またはこの女子の差別云々条約の批准に伴って、外務省として関係省庁にこの問題について何か特段の要請をする御用意があるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
 あわせて、労働省にも同じような趣旨で、この労働大臣の御発言に対して今どういう対応をされようとしておるのか、また、そのことは労働省のみならず、各省庁に対しても何か働きかけをされようとしておるのかお伺いをしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
#174
○安倍国務大臣 まずお答えをする前に、先ほど私が男女平等について日本が先進国だと言いましたけれども、少し言い過ぎかもしれません。世界百六十八カ国ある中で、男女平等というのが憲法あるいは法律、そういう制度については私はまあまあのところへいっているのではないかと思いますけれども、まだまだ大きな欠点、問題を含んでおることもこれは事実でございますし、そういう意味において断定するということはちょっとはばかられる点があると思うわけで、これからも努力していかなければならぬと思います。
 それから、婦人の差別撤廃条約については、何としてもナイロビの会議に胸を張って出ていただくためにこれは批准をしなければならぬという決意のもとに、国会の審議をお願いをしておるわけでございまして、早く審議を終えていただいて、承認をしていただいて、そして七月までにはぜひとも批准を完了したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 女子職員につきましては、公務員の問題につきましては、制度としては完全に男女平等という立場で採用その他はいたしておる、こういうふうに認識しております。
#175
○赤松政府委員 先般、閣議で労働大臣が発言されましたのは、男女雇用機会均等法が成立した時期に当たりまして、この法律がいわば民間を対象とする法律でございますが、政府は、民間を指導して機会均等を進める立場にあるという認識でございますので、この法律が成立した機会をとらえて、政府の部内でもぜひその方向で各省におかれても努力をしていただきたいということを大臣から発言されたものというふうに考えております。そのようなことを申した以上、労働省内でも格別前向きに取り組むということは当然かと存じます。
#176
○大久保委員 以上です。
#177
○野上委員長代理 次に、木下敬之助君。
#178
○木下委員 ことしは国連婦人の十年の最終年に当たりますが、この十年間を振り返ってどういう感想を持たれておられますか、まず外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
#179
○安倍国務大臣 この国連婦人十年は、婦人の地位向上のために、各国におけるまた国際レベルでの諸活動を促進をする意味においては重要な意義があったと思っております。その弾みをつけたと私は思っております。この十年間に、世界行動計画の作成あるいはまた女子差別撤廃条約の採択を初めとして、国際レベルでのさまざまな分野における婦人の地位向上のための諸施策の推進に大きく寄与したものと考えるわけでございまして、我が国も、国連婦人十年の諸目標を踏まえまして、国内において積極的に婦人の地位向上に関する施策を推進をするとともに、国際的には世界婦人会議あるいは国連における婦人関係の審議等への積極的な参加も行いまして、あるいはまた国連婦人の十年基金への拠出、さらに開発途上国への婦人専門家の派遣、婦人研修員の受け入れの拡充、国際機関への婦人職員の送り込み等によりまして国際協力の推進に努め、相当な成果を上げたものと考えております。
#180
○木下委員 総理府の婦人問題担当の責任の方の御感想をお伺いいたします。
#181
○松本政府委員 国際婦人年に政府は、内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部というものを設けまして、関係省庁が十分連絡の上で国際連合の動きに沿いまして、婦人の施策を総合的に推進するような体制をつくりました。国内行動計画というものもつくりましたし、それに沿いまして法制上の婦人の地位を初め、あらゆる分野への婦人の参加を促進するというようなことなど、非常に広範囲な分野にわたって相当の成果があったと考えております。政府ばかりでなく、地方公共団体におかれてもあるいは民間の方も、相当婦人問題に対する認識を高められ、努力されたという意味でも、非常に効果があったというふうに考えております。
#182
○木下委員 労働省の方はどう考えておられますか。
#183
○赤松政府委員 婦人の十年の間に日本の婦人の地位の向上は、やはり目覚ましいものがあったというふうに感じております。雇用の場におきましても、多くの差別はまだ残っておりますけれども、十年前に比べればかなりの改善があったものというふうに考えますし、また、その改善をするに当たって行政指導でしてまいったわけでございますが、それはいわば余り根拠がなく行政指導をしなければならなかったという弱点がございましたが、このたび成立いたしました雇用機会均等法で、行政指導する場合にも十分な根拠ができたものというふうに考えている次第でございます。また、この条約が批准されれば、国連婦人の十年の最終年を飾るにふさわしい快挙だというふうに考えている次第でございます。
    〔野上委員長代理退席、委員長着席〕
#184
○木下委員 七月に開かれますナイロビ世界婦人会議では、どういったことが議題となることになっているのか、お伺いいたします。
#185
○山田(中)政府委員 ナイロビの会議で議題になります実質問題といたしましては、二つございます。第一点は、国連婦人の十年の成果の見直しと評価でございます。第二点は、西暦二〇〇〇年に向けての婦人の地位向上のための将来戦略及び十年の目標達成のための障害を克服するための具体的な措置。この二つが議題になっております。
 第一の議題のもとでは、現在の十年の国内、地域、国際レベルにおいて達成されました諸状況、またその障害等についての検討が行われます。第二の議題につきましては、新たな将来戦略をガイドラインのような形で定める文書を採択したいという方向で、現在準備が行われております。
#186
○木下委員 そのナイロビ会議には、今議題となっております女子差別撤廃条約の批准を済ませてから会議に臨むべき、このように思いますが、抜かりなくやれるとお考えでございますか。
#187
○安倍国務大臣 ぜひとも一日も早く、今審議していただいております女子差別撤廃条約の国会承認をいただきたいと思います。そうすれば、批准措置を行いまして、そして七月までには間に合わせる決意でございます。
#188
○木下委員 諸外国はどういう状況でしょうか。全部というわけにもいきませんので、サミットの諸外国はどういう状況でございましょうか。
#189
○山田(中)政府委員 説明書で御説明いたしておりますのは六十六カ国批准となっておりますが、実は四月に一カ国、セントクリストファー・ネイビスが入りまして、現在、六十七カ国でございます。
 先生御指摘ございましたサミット諸国につきましては、この条約を既に批准いたしておりますのはカナダとフランスでございます。西独、イタリーにつきましては、両国とも既に議会の承認を得ておりまして、近々に批准するものと思われます。そのほかのサミット参加国については、まだ批准に至っておりません。
 サミット以外の主な国といたしましては、北欧のスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、それから大洋州ではオーストラリア、ニュージーランド、アジアでは中国、フィリピン、インドネシア、韓国等が批准いたしております。
#190
○木下委員 アメリカがまだのようにお伺いしました。どういう理由でしょうか。
#191
○山田(中)政府委員 アメリカの場合につきましては、人権の問題が連邦法と州法の関連がございまして、その調整と申しますか、検討に手間取っておるというふうに承知いたしております。
#192
○木下委員 政府は、昭和五十五年に女子差別撤廃条約に署名して国内準備体制を整えてこられたようですが、ことしまでに批准するための準備を進めてきたと思いますが、批准要件を満たすためにどういう条件を整備する必要があり、どう措置してこられたのか、お伺いいたします。
#193
○山田(中)政府委員 今御指摘ございましたように、条約署名以来、関係官庁といたしましては二十二省庁と協議をさせていただきまして、準備の体制を整えてまいりました。法的な手続が要るものといたしましては、国籍がございまして、これは前国会で国籍法の改正を御承認、立法いただきました。教育につきましては、家庭科教育に関する検討会議の結論として、昨年の十二月に家庭科教育についての男女同一の方針を打ち出していただきました。さらに、この条約の非常に大きな部門を占めます雇用につきましては、先般、雇用機会均等法を成立させていただきました。その他、社会保障関係での諸手当、さらには公職関係での就職の機会を女子に平等に広げていく努力、こういうものをお願いいたしまして、各省の協力を得て現在に至ったものでございます。
#194
○木下委員 いわゆる雇用機会均等法は今国会で成立しましたが、この法律は条約の批准要件を満たすものであると考えておられるか、不十分であるという声も強いわけですが、どう考えておられるか、お伺いいたします。
#195
○山田(中)政府委員 先生今お話ございました雇用機会均等法につきましては、いろいろ御議論があったことは私どもよく承知いたしておりますが、成立させていただきました法律でこの条約を批准するに必要な要件、これが満たされたというふうに考えております。
 この雇用機会均等法の今後の運用に当たりましては、労働省におかれて、ただいま御審議いただいております条約を遵守するということを頭に置いて運用いただくことになっておりますので、先ほど申しましたように、この法律の成立によりまして雇用の分野についての条件は充足された、かように考えております。
#196
○木下委員 これはもっとはっきり入り口で禁止すべきだったのじゃないか、努力目標として努力しさえすればいいのか、こういう声もあるのですが、労働省としては、この法律が実効あるために具体的にはどういったことを考えておられるか、お伺いいたします。
#197
○赤松政府委員 御指摘のように、一部分努力規定で措置されている点がございますが、努力規定といえどもこれは社会規範でございまして、その方向で努力をすべきことであることはこの法律によって明らかになったわけでございます。
 また、その具体的ななくすべき差別というものがどういうものであるかということを、今後労働大臣の指針で明らかにすることになっておりますので、そのような点も今後の指針によって明らかにされ、具体的になくすべき差別をなくしていこうということが、これで法律上枠組みが整ったものだというふうに考えております。
#198
○木下委員 この法律は政省令にゆだねられた部分が多いと思いますが、法律が施行された後も条約の趣旨に沿うものであるかどうか、実態を見きわめる必要があると考えます。この条約に責任のあります外務省としてはどう対応していかれようとするのか、お伺いいたします。
#199
○山田(中)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、政省令も含めまして、この機会均等法の運用は条約の趣旨に合うものでなければならないのは当然でございます。外務省といたしましては条約遵守の見地から、先ほども申しましたように、この機会均等法が条約実施ということを頭に置いて労働省として運用していただくよう十分お願いもいたしておりますし、外務省といたしましても、条約に沿った運用がなされるように常に注意して見てまいりたいと思っております。
#200
○木下委員 次に、家庭科教育、現在女子のみに必修になっておる、これの見直しのためにどういう措置を講じてこられたのか、文部省にお伺いいたします。
#201
○菊川説明員 文部省におきましては、家庭科の取り扱いが女子差別撤廃条約の批准の妨げとならないよう対処することといたしまして、昨年六月に家庭科教育に関する検討会議を設けまして、家庭科に関係します幅広い分野の方々から御意見を伺ったわけでございます。その会議から、昨年十二月に報告をいただいたところでございます。その報告の中におきまして、今後中学校については、男女とも共通に履修させる領域と生徒の興味、関心等に応じて履修させる領域を設けること、高等学校につきましては、「家庭一般」を男女とも選択必修とすることと提言されておるところでございます。そして、その具体的な履修のあり方につきましては、中学校、高等学校の教育課程の全体的なあり方に関係しますので、今後の教育課程審議会の審議にゆだねるというふうにされておるところでございます。
 文部省としましては、次期の教育課程の改訂の際にその趣旨が反映されるよう、今後対処してまいる所存でございまして、これによりまして家庭科の問題につきましては、女子差別撤廃条約の批准に向けて条件整備ができたものと考えておるところでございます。
#202
○木下委員 そういうことで批准のための条件整備ができた、このように外務省は考えておられますか。
#203
○山田(中)政府委員 ただいま文部省の方から御答弁ございましたように、一定期間内に家庭科教育についての機会が男女同一になるというふうに判断されますので、外務省といたしましてはこれでこの部分についての条約の要件は満たされた、このように考えております。
#204
○木下委員 文部省にお伺いいたしますが、そういうことでこの次の文部省学習指導要領の改訂時には、家庭科教育の見直しを行う旨を政府の方針として内外にはっきりされるという予定でございますか。
#205
○菊川説明員 教育課程審議会は、社会の変化を踏まえましてはぼ十年周期で検討いたしておりまして、そういった意味で、もうそろそろ教育課程審議会の発足の時期を迎えておるわけでございますが、御承知のように臨時教育審議会におきまして、教育の改革に関します基本的方策につきまして検討が進められておるわけでございます。教育課程審議会は、それの審議の推移を見ながら発足させたいと考えておるところでございます。いずれにいたしましても、一年のうちには発足したいということでございまして、去る三月十八日の参議院予算委員会におきましても、松永文部大臣もその趣旨の御答弁を申し上げまして、その際に、この検討会議の趣旨を踏まえて教育課程を考えていきたいというふうに明言しておるところでございます。
#206
○木下委員 そういう答弁ですが、はっきり私の質問のとおりにお答えいただきたい。この次の学習指導要領改訂のときには、はっきりと政府の方針として出すおつもりですか。
#207
○菊川説明員 そのとおりでございます。
#208
○木下委員 今、その会の発足が近いうちとか一年とか言われましたが、発足して結論が出てくるのにもっとかかるのですか、いつごろの予定ですか。
#209
○菊川説明員 教育課程審議会の審議期間は、過去の例を見ますと一年半から三年というふうなことがございまして、そこで教育課程のあり方につきまして具体的に決まるということでございます。その後、学習指導要領の改訂等を経まして、施行に向かっていくということでございます。
#210
○木下委員 最終的に、学習指導要領の改訂ができなければ変わらないわけですか。
#211
○菊川説明員 そのとおりでございます。
#212
○木下委員 その改訂ができなければ変わらない。その改訂のできる時期の見通しを伺いたい。
#213
○菊川説明員 過去の例からしまして、教育課程審議会が終了して一年で改訂しておるという例がございます。
#214
○木下委員 ばらばらに言われたので、暗算で足し算してみましても、まず発足に一年ぐらい、それから三年、それからまた一年。何か早くて五年以上かかりそうな雰囲気でございますが、その間、この条約の要件は満たされてないと思うのですが、この間のことを外務省はどういうふうに考えられますか。
#215
○斉藤(邦)政府委員 確かにその五年ないし六年の期間というのは、教育課程が男女同一となっていないという事態になるわけでございます。しかしながら、この条約は批准時に、この条約の規定の全部を充足していることを要求しておりませんで、いわゆる漸進性というのが認められております。日本の政府といたしまして、ただいま文部省から御説明いたしましたように、合理的な期間内にこの教育課程が同一となるというプログラムで準備を進めておりますので、その意味から、この条約の要請は満たしているというふうに考えておる次第でございます。
#216
○木下委員 漸進的にやればいいということで、一遍ここでちゃんと決まり、方向も先ほどのように改訂するとはっきり言いながら、現実には五、六年も先になるという、このことが外務省は構わないと考えておるわけですか。
#217
○斉藤(邦)政府委員 そのとおりでございます。
#218
○木下委員 はっきりと一つの方向ができて、それはそれなりにちゃんと意義を認めた上で、そうならなければならないという論議の結論として家庭科の差別がなくなるわけですね。そのことが決まりながら、五、六年先しかできないということで放置するというのは、私は納得いかないのです。よく世の中で、待ってくれということがあります。済みませんけれども、いろいろ事情があるから待ってくださいと言われたときに、これほど明快なものを五、六年待ってくれと言って、黙っていますか。五、六年というのは、大変長い年月だと私は思いますが、文部省、どう考えられおりますか、また外務省もどう考えられておりますか。
#219
○斉藤(邦)政府委員 条約の要請上は、ただいま御説明いたしましたとおりはっきりした方向が出て、一定期間内にこういう結果が出るということになっておりますので、満たされているということでございます。
#220
○菊川説明員 教育課程の改訂に当たりましては、幼稚園から大学を通じましての教育を今後どう考えていくかという基本的な考え方の検討をいたしまして、その中で高等学校の位置づけをどうするか、それからまた高等学校の中で今後必要とされる教科、科目がどういうものがあるかというふうな検討をしていくわけでございますので、かなりの時間がかかるというふうに考えておるところでございます。
#221
○木下委員 時間がかかる、こういう差別の撤廃ですから、人の心の中に入り込んでしまったものを政府がいろいろ宣伝しても、どうしても差別はなくなったとみなされるまでに何年もかかるでしょうと、こういうのは構わぬですよ。しかし、学校の家庭科をそういう形で変えるということが決まって、そのことの意義を本気で認めたのならば、五、六年もかけるわけはないですよ。五、六年もかけてやるということは、そのことの意義を認めてないということだと私は思いますね。そういうことで、五、六年たっても構わないとしていること自体が大問題だと思いますよ。この問題の重さというものを考えてないのだと私は思います。
 ナイロビの会議に行かれるわけでしょうが、こういった問題をこういう扱いをしていて、それで平気だと言っていることが話題にならないのですか。女子差別撤廃委員会というのがあって、こういった問題は審査するというか、いろいろするのだというふうに聞いておりますが、このことをどう考えられると思いますか。
#222
○山田(中)政府委員 今先生から御指摘がございました委員会は、我が国が条約を批准しました後、最初は一年目、その後四年ごとの周期で報告いたすことになっております。そこでこの部分については、当然政府の立場を報告することになると思いますが、先ほど斉藤審議官の方から答えましたように、この条約についてはある程度の漸進性というものが認められております。そして、この家庭科教育の扱いについて、どうなるかわからないということでございますとこれは問題でございますが、文部省の方でもいろいろ御努力をいただきまして、方針は決定していただいたわけでございます。ただ、何分にも教育の分野のことでございますので、慎重な手続を踏む必要があるものと理解いたしております。
 外務省といたしましては、せっかく文部省で方針を出していただきましたので、できるだけ速やかにそれが実現するよう御努力していただきたい、かように考えております。
#223
○木下委員 これは納得のいく話じゃないですよ。子供の教育は大事だから時間をかけると言うけれども、もうはっきり方針が決まっているわけでしょう。改訂のときは変えると決まっていながら五年もやらないというのは、やる気がないというより意義を感じてないということだ、本気じゃないのだ、このように理解するのが普通の人の話だと私は思います。
 もう一度、ナイロビ会議ではこのことは取り上げられないのですか、大丈夫ですか。
#224
○山田(中)政府委員 ナイロビの世界婦人会議におきましては、先ほど申し上げましたような二つの大きな議題のもとでの審議が行われるわけでございます。これは国連婦人の十年の一つの大きな行事でございますので、女子差別撤廃条約についての議論が全くないということではもちろんございません。むしろ条約批准促進の議論が出ることと思いますが、先生御指摘のようなこの条約についての各国の個々の問題は、ナイロビでは出ないのではないかと思っております。この問題は、むしろ条約締約国となって報告をいたします委員会で議論されるべき問題であろうと考えております。
#225
○木下委員 納得いきませんけれども、時間もだんだんなくなりますから……。
 このほかに法律で整備すべき問題はないのか。例えば、婚姻の年齢等も違うようでありますし、再婚の禁止期間とか、こういった問題で何かほかに整備する問題を考えておられるか、お伺いいたします。
#226
○山田(中)政府委員 今先生から御指摘ございました婚姻の年齢の問題でございますが、婚姻適齢の男女差につきましては、男子と女子の生育度の差を考慮して設けられておるものでございまして、諸外国におきまして婚姻適齢を男女同一にする傾向が現在確かにございます。ただ、この条約締約国の中でも、例えば豪州は我が国と同じ男十八、女十六というのが適齢期になっておりますし、フランスにつきましても男十八、女十五というふうな例が見られます。この問題は、この条約第一条で言っております「女子に対する差別」にはならない問題、このように考えております。
 もう一つ、先生の御指摘がございました再婚の禁止期間でございますが、待婚期間は本来父子関係が混乱することを防止するために設けられておる制度でございます。我が国の民法第七百三十三条で女子のみに待婚期間を設けておるわけでございますが、この制度自体も、先ほど申しましたような制度の趣旨からいって、この条約にそごをするものではないと思います。ただ、最近諸外国で、待婚期間を短縮する動きがございます。法務省においても、そのような見地から本件を現在検討しておられる、このように承知いたしております。
 そのほかの法令の整備でございますが、ただいま国会において船員法改正についての御審議をいただいておるのがございます。当面、それ以外に新たな立法を考えておるわけではございませんが、ただ、先ほどから大臣が申しておりますように、この条約を批准いたしました後におきましても、この条約の内容をよりよく充実する必要が出てきたものについてはそのような措置を、必ずしも立法に限らないと思いますが、立法その他の適当な措置をとる必要があると考えております。
#227
○木下委員 時間がないのですけれども、婚姻の年齢の問題で生育度の差という表現ですが、生育度の差というのは統計とか能力比べをしたとか、何か提示できるものがあるのですか。
#228
○山田(中)政府委員 私、正確に承知いたしておりませんが、我が国の例は大体先ほど申しましたような各国の例と似ております。何か経験則に基づいておるのではないかと思います。
#229
○木下委員 そういうのが、固定概念をなくすという対象じゃないのですか。
#230
○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 先生の御指摘ございました固定概念をなくすこと、この条約に言っております固定概念と申しますのは、両性のいずれかの劣等性もしくは優等性の観念でございますとか、男女の定型化された観念、そしてこれが条約一条に規定するような「女子に対する差別」として働くもの、そういうものでございます。婚姻適齢の問題につきましては、女子の婚姻適齢期が低いということが、女子に対する差別として働いておるというふうには理解いたしておりません。
#231
○木下委員 その辺は、今のところまだ厳密に論議を詰めていられないと私は思いますので、この場でそれ以上言おうとは思いませんけれども、やはり最終的にはそういう答弁では納得のいく形にならない方向であろうかと私は思いますし、生育度に差があるなんという表現そのものが、劣等、優等がどうかはわかりませんけれども、間違いなく定型化された男女差の固定概念であると思いますし、その差があることが差別に当たるか当たらないかというものも、これは受けとめ方一つでございますので、それが差別に当たるとか当たらないとかいう判断よりも、なくて済む差別は皆なくすという概念でやられるのが、この問題について正しいかと私は思います。
 時間が参りましたからこれで終わりにしますが、その辺はもう少し深い論議にたえられるだけの資料を集めていただけませんか。どうぞよろしくお願いします。
#232
○愛野委員長 次に、田中美智子君。
#233
○田中(美)委員 先ほども出ておりましたが、この条約の批准国と加入国をまぜまして六十七カ国、そして西独、イタリアが議会の承認を得ているということで、日本が七十カ国目ぐらいになるのではないかということを考えますと、本当に遅かったというふうに思います。それに対しての不満を述べまして、質問に移りたいと思います。
 この条約の前文に、「女子に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則」と言って、「人間の尊厳の尊重」ということがこの条約の根底に流れる思想になっております。差別、それは人間の尊厳を傷つけるものであるということが主流になっているわけです。その中で、第六条に「締約国は、あらゆる形態の女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置をとる。」というふうにきちっと起こされていることは、安倍外相も御存じだと思います。その上に立っての質問をさせていただきます。
 最近、日本を訪れる外国人が史上最高の二百万を突破したということで、これが大変好ましいことのように報道されております。一面そうです。それはハンガリーのように、一千万の人口で毎年百五十万の観光客があって、その観光客の落とすお金がハンガリーにとっては大きな貢献をしている、こういう国もあるわけですから、外国人がたくさん来てくれるということは大変いいことだと思うのです。
 しかし、日本はハンガリーと違いまして、この中身に大きな問題点があるように思います。それは、アジア周辺の諸国から入管法違反として、例えば観光とか興行のビザで入ってくる。そして、資格外活動というようなものを期間内にも、また不法残留をしてもやる。こういう数が異常にふえているということを見ますと、必ずしもこの二百万突破ということは喜ばしいことではないのではないかと思います。
 先ほども売春の問題が多少出ておりましたけれども、これは前から買春ツアーとかいろいろなことが言われております。私は、この二、三年、急激に特徴的なものとしてあらわれたフィリピンから日本に入ってくる婦人、それが資格外活動をしているということの問題を質問したいわけです。特に、一九八一年から急激にフィリピンからの日本に対する入国がふえている。これは法務省からいただきました資料で、一々お聞きしたいのですが時間がありませんので、私が簡単にまとめて申し上げたいと思います。
 八一年ごろから急激にふえている。特に八三年、これはフィリピンのアキノ暗殺以後ですね、フィリピンからの入国は急増しています。そして去年、八四年は、四、五年前の五倍にも膨れ上がっているわけです。
 こうした人たちが何をしているのか。その中で女子だけを見てみますと、八四年は三万三千四百四十九名のフィリピン人が来ているわけですが、その中の十五歳から三十四歳までの女子で計算をしてみますと二万六千二百八十五人、圧倒的に若い女性が入ってきている。今のは十五歳から三十四歳ですが、特にその中で二十歳から二十四歳の若い女性がこの半分を占めている、こういう状態です。
 これは法務省に伺ったのですが、そういう人たちのほとんどが観光、興行ビザ、例えば歌手だとか踊り子になるというような形で、十五日とか六十日とか九十日とかそれぐらいの日にちで入ってくるわけですけれども、それが一年、二年というふうに残っている。その中での何人かが退去させられたり、また摘発されて国外に帰されるというようなことも起きているわけです。
 法務省に伺いたいのですが、この観光、興行ビザで来ている人たちのほとんどが、本当に観光や興行で日本に来ていると思っておられるのか。また、それならば一体、日本で何をしようということでこのように不法残留などをして資格外活動をしているのであろうか。この点を伺いたいと思います。
#234
○書上説明員 御説明申し上げます。
 ただいま委員お尋ねの件でございますが、おっしゃるとおりでございまして、私どもの統計資料によりましても、フィリピン等東南アジア出身の女性で、真実は日本に対して出稼ぎの目的で観光客を装って入国し、入国後にストリッパーであるとかあるいはホステスであるとか、そういったたぐいの風俗営業に従事して資格外活動であるとか、あるいは資格外活動に絡む不法残留という形で強制退去をさせられている女性が近年急激に増加しているということは、間違いのないところでございます。そのような女性の中に、さらに行き過ぎまして、売春であるとかあるいは公然わいせつの罪に触れるような行為を行っている者も少なくないということは、これまでの報告に接して承知しておるところでございますが、具体的な数は私どもの統計では把握しておりません。
#235
○田中(美)委員 特に、タイとか台湾、韓国などからもそういう形があったわけですが、今もまだタイは大分あるようですけれども、徐々に減少している傾向にあります。ところが、フィリピンだけが異常な形で八三年から激増しているというところに、現在の問題として大きな問題があるのではないかということで、フィリピンに絞って質問をしているわけです。
 フィリピンには、古い習慣ですが、長女が弟や妹の面倒を見るというような習慣が残っているということで、余りの貧しさのために、例えば看護婦さんのような専門職についても、弟や妹の面倒を見るだけの賃金をとても取れないということで、結構大学などを出た女性までがこうした形で、今言われたようなストリッパーとか売春婦のような仕事で日本に稼ぎに来る。それも観光ビザや興行ビザでやってくるということは、今法務省もおっしゃったとおりだと思います。
 それで、安倍さんにしっかり聞いていていただきたいわけですけれども、八一年に前の鈴木首相がフィリピンに行かれたときに、大変な抗議集会に遭い、抗議文をもらった。そして、売春窟に鈴木首相が入っていく姿を漫画にして出されるというようなことがありました。これは、買春ツアーの問題で大きな反撃を食ったようです。それから一昨年の五月四日、中曽根首相がタイに行ったときにも、日本の大使館で有名大学の男女学生六十名と懇談したときに、日本が東南アジア、ASEANと友好関係を持とうと思うならば、こういう問題は国際的にも大きな阻害の要因になるということを学生から強く言われたということも報告されております。
 それで、今のこうした買春ツアーもまだあるようですが、大分数としては、フィリピンには二十七万人も日本の中年の男性が行っていたものが今は十万に減った、まあ十万も大変ですけれども。その反対に、たくさんの向こうの女性がみずから来る場合もあれば、だまされて連れられてくるということもあるわけです。
 それで、この問題は、私が昨年ウィーンの婦人の地位委員会を訪れましたときに、東南アジアの婦人に厳しく言われました。来年は、来年というのはことしのことですが、ナイロビの世界会議でこれは問題になるであろう、特にNGOではこれが大きな問題になって、日本人は取り巻かれるのではないかというようなことを注意されてきたわけです。
 この点で安倍外相は、こうした日本の状態、貧しいフィリピンの婦人たちが日本の男性に結果的におもちゃにされ、特に、二十歳から二十四歳の若い清純な女性たちが身も心も傷つけられているという状態をこのままにせずに、差別撤廃条約を結ぶときには何らかの手を打たなければならないと思うのですが、まず外相のお考えと対策について、時間がありませんので、簡単にお答えください。
#236
○安倍国務大臣 外務省としましては、外国人の女性が我が国内におきまして風俗営業に従事するというようなことは国内的にも好ましくない、さらに国際的にも、対日イメージの観点から決して好ましくないというふうに考えております。
 当省としましては、東南アジアの在外公館長に対しまして、若い女性に対する査証発給を厳格に行うよう指示して、その実施に努めておるところでありますが、在外公館が査証審査の段階でこれらの活動を行うおそれのある者を見破るには、人権上の問題がどうしても出てくるわけでございまして、そこでおのずから限界もあって、いささかその点では困っておるという面もあるわけでございます。
 我が国における売春等の違法行為の取り締まりについては、これは関係省庁とも随時協議も重ねておりまして、特に法務省及び警察庁が、売春等の資格外活動の摘発に一層の努力を払っているものと承知をいたしております。
#237
○田中(美)委員 それは今までもやっていることですよ。ことしはケニアで会議があるんですね。日本人がそこにたくさん行って、国会議員であろうとも日本の国民は突き上げられる、政府も突き上げられる。そういうときに、今までやっていることをやっています、それでは済まないわけです。これはなぜかといいますと、世界に知られてないから構わない、知られているからいけないんだというわけではありませんけれども、これは有名なことになってきているわけです。
 例えばフィリピンに、フレディ・アギラという有名なシンガーソングライターがいるわけです。三十二歳のフィリピンの男性だそうですけれども、この人が作詞、作曲をして、いわゆるじゃぱゆきさんと言われる、日本に売春だとかストリッパーで出稼ぎに来る女たちの悲しみを歌った歌が、今フィリピンで大ヒットしているわけです。フィリピンでは、本当に日本の森進一か郷ひろみのように有名な歌手だそうです。大ヒットしているというのです。それがフィリピン語で歌われているわけですが、これが日本語に訳されまして、日本でもおととい、五月二十二日に日本語でレコードが発売される。この歌詞をちょっと読んでみます。私は女性として、涙なしにはこれは読めません。フィリピンの女たちがこの歌手の歌を聞いて、みんな泣くというのですね。大急ぎで読んでみます。
  君を人は皆 見下し呼ぶのさ
  マグダレーナマグダレーナというのは、じゃぱゆきさんのことを言っているのだそうです。
  ひくく飛ぶハトよ
  夜に咲く姿 親にも隠して
  哀しみは ただ一人の胸に
  灯りがまぶしい この欲望の街
  笑いがうずまく 街だからこそわびしい
  幼ない頃に 夢見た日々は
  音をたてて くずれてしまった
  貧しさが君の 全てを汚した
  雨に濡れた 人形のように
  今宵も気まぐれ 男に抱かれ
  声なく歌うは 故郷の子守唄
  マグダレーナ
  顔をそむけずに夢も捨てず生きてほしい
  マグダレーナ
  涙こぼさずあきらめないで生きてほしい
  友達は今日も 異国へ飛び立つこの異国というのは日本ですよ。
  ひとかけらの 夢を抱いて
  虚ろな瞳で 空を見上げる
  マグダレーナ
  ひくく飛ぶハトよ
  いつか望みが満たされる日が来てほしい
  いつか望みが満たされる日が来てほしい
この歌が、たとえどんなにリズムがよく、メロディーがいいにしても、これは日本の男たちがフィリピンの女たちを踏みにじっている歌として、東南アジアや世界でも、そして日本でも歌われている。それが大ヒットしている最中にナイロビで世界会議がある。この条約では、はっきりと売春の搾取を禁じているのに、そして日本の女性の尊厳をということで、日本政府が胸を張って批准しようとしているときに、今のような安倍さんの態度で、外相の態度でいいのでしょうか。簡単にただ、今まで取り締まっています、向こうの国も困っています、日本も取り締まりしています、それだけでいいのでしょうか。何らかの手を打たなければ、世界の婦人に対して申しわけないと思わないのでしょうか。お返事をいただきたいと思います。
#238
○安倍国務大臣 先ほど私が答弁したとおりでありまして、日本としましても、売春につきましては日本の法律でこれを禁じておりますし、そのための取り締まりは行っておるわけでございます。日本の治安当局としても、そういう点に対しては十分留意をして力を尽くしておる、私はそういうふうに承知をいたしておりますが、これからも外務省としましても、査証等の発給についてはさらに心がけるところは心がけていかなければならぬ。
 ただしかし、先ほど申し上げましたように、査証については行き過ぎというのがいつも問題になる。一般の人に対していろいろの厳しいチェックをするということが、またこれが人権問題につながるわけですから、その辺で外務省も査証発給について大変厳重な審査はしなければなりませんが、人権上の問題もあって、そうした限界の中でこれをしておるということは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
#239
○田中(美)委員 私は、何もビザや入管のことを厳しくやれと言っているわけではありません。今の人数で精いっぱいやっているのだろうと私は信じたいと思います。しかし、フィリピンのマルコス政権に対する日本の援助というのは、莫大な金ではありませんか。特に、アキノ氏が暗殺されてからというものは、フィリピンの不満というのが一気に吹き出しているわけです。そういう中で、日本の援助した金が何に使われている、大きな企業のために、フィリピンの企業が盛んになるようにという形でしているのだ、こう外務省の方は言いますけれども、しかし外務省の人に聞きたいわけですが、その大きな企業はほとんどマルコス一家が握っているではありませんか。そこのもうけは全部マルコス一家の中に入っていく。
 そして、日本から援助された金はすべて――すべてとは言いませんが、重税としてフィリピンの国民にかかっている。日本が援助すればするほど、これはますます貧困にフィリピンがなっていっている。そのマルコス政権にまだ援助するのですか。ただビザをやるというような発想しかできないのではなくて、なぜ、フィリピンから来るのか、来なければならない状態に彼女たちが置かれているのか、そこのところを考えたときに、今のマルコス政権のあり方というものを、外務省はもう一度しっかりと考える必要があるのではないかと思います。
 もう一つ、これは時間がありませんので後で外相にお答えいただきたいのですが、「じゃぱゆきさん」という本で、これはルポライターが記録的に書かれたものです。物語ではありません、事実に基づいたような記録で書いたものです。事実かどうかは確認はしておりません。その中の百四十ページに、警視庁の捜査課の調べでは、大ざっぱに言って、ロサンゼルスなど米国西海岸とハワイは住吉連合系、韓国は稲川会系、東南アジアは山口組系など、関西組織がそういう女たちを日本に連れ込んでくるということをしていると書かれておりますが、これは正しいのでしょうか。また、知っているのでしょうか。正しければ、これは知っているのでしょうか。
#240
○石瀬説明員 先ほど来、じゃばゆきさんについてのお尋ねがあったわけでございますが、フィリピンを含めまして、近年外国から来る女性による売春事犯が増加していることは御指摘のとおりでございまして、これらにつきまして、直接あるいは間接に暴力団が何らかの形で絡んでいるという実態も十分に承知しております。私どもとしましては、そういうお気の毒な女性の保護という観点もございますし、風俗を正すというような観点もございますし、暴力団の資金源を封圧するという観点からも引き続き強力に取り締まりをやっていきたいと考えております。
#241
○田中(美)委員 では安倍外相に伺いますが、マルコス政権にまだこれからも援助を続けていくおつもりなのでしょうか、お答えください。
#242
○安倍国務大臣 フィリピン援助に関する今の田中さんの発言は、全く間違っています。これは考え違いも甚だしいと思う。我々はマルコス政権を助けておるのではなくて、今のように女性を売らなければならないようなフィリピンの貧困な経済に対して、同じアジアの国としててこ入れをしなければならぬ、そしてフィリピンをもっと経済の安定した国に持っていかなければならないというので日本は援助しているわけですから、マルコス政権に対して援助しているわけじゃない。そして、日本の援助というものは、どういうものに援助しているかはきちっとプロジェクトごとにはっきり厳重に審査をいたしておりますし、その辺のところは調べていただければはっきりわかるわけで、今の認識は全く違うということははっきりと申し上げておきます。
#243
○田中(美)委員 そちらの方が間違っているわけです。もうちょっとしっかりとあなた方が、金をどこに渡したか、マルコスやイメルダにじかに渡したと私は言っているのではありません。どういう形で持っていっても、これは企業に対して、産業を興すんだ、大きな産業を興してそこから金をもうけるということが、私の調べたのではほとんど中の組織としてマルコス一派の方向に行っている。それを安倍さんは全く見て見ないふりをしているのでは、あなたが援助をした金というものが、恐らくその貧しい婦人たちを助けることになっているだろう、そう思っておられるだけであって、実際にはそうではない。そのことを一体何年やっていますか。もう四千億を超えているのですよ、援助は。
 これはこの間、土井先生が御質問になりましたので繰り返しませんけれども、その援助というものは莫大な金額です。これが少しずつでも、そういう婦人たちを生まない情勢になればいいけれども、急激に生んでいる。それも、アキノ氏が亡くなったのは八三年八月二十一日ですから、それからというものはもっとひどくなっているわけですね。それでもまだ、あの女たちの不幸を救うために援助しているとあなたははっきりと言われるのですか。お答えください。
#244
○安倍国務大臣 おっしゃることは全く間違いだ、こじつけだと私は思いますね。日本の援助は、人道主義そして相互依存、そういう基本的な姿勢の上でこれまでも援助している。そして、アジアには日本の援助の七割が行っております。特にASEANには三割近く、フィリピンだけじゃありません、タイとかインドネシアとか、そういう国々に対しても援助を行っているわけでございます。これはやはり、日本がアジアの一国であるということもありますし、あるいは第二次大戦中非常に惨禍を与えた、こういう反省もあるわけであります。
 そして、日本の援助は、相手の政府との間で十分精査をされまして、これは貴重な税金ですから、日本自身も一つ一つのものを選択し、精査をしましてちゃんと出しておるわけで、あくまでもアジアの国々の民生の安定とか経済の安定、福祉の向上、そういうものを主眼にやっておるわけですから、今のように何かマルコス大統領に間接的に行っているとか、イメルダさんに行っているとか、これは全然見当違いも甚だしいと思います。
#245
○田中(美)委員 私もそんなことは言っていませんよ。結果的に向こうのお金の使われ方をどれだけちゃんとチェックしているのかと。善意に解釈して、せっかくそのつもりで出したとしても、そのようになっていないのではないか。その証拠に、このところこうした婦人たちが四、五年前の五倍にもふえている。五倍にも貧困が進んでいると言っていいかどうかわかりませんけれども、貧困が進んでいる。こういうことが起きているときに、この差別撤廃条約を日本が批准する。そしてことしは七月に、ケニアのナイロビでこの問題が必ず出てくる。そのときに一体日本政府はどうするのか、恥ずかしいとは思わないのでしょうか。その問題を外相、きちっとお答えください。その金がどういう形でどこへ行ったかという話は、してももう始まりません、あなたの方が勘違いしているわけですから。
 こういう状態をそのままにして、今おっしゃったように暴力団がかんで、だまかしてたくさん連れてきているのですよね。そういう事実は、もう日本の政府もみんな知っているのです。国民もみんな知っているのです。それが急激にひどくなっている。ケニアのナイロビで婦人会議があるときに、これが世界から批判の的になる。私は日本国のために、これは何とかしなければいけない、日本が何か努力の姿を見せなければならないと言っているわけです。安倍さんは、そういう状態を恥ずかしいとお思いにならないのですか。
#246
○安倍国務大臣 これは、私も先ほどからもしばしば答弁しておりますが、全く恥ずかしいと思いますよ。ですから、日本としてもこれまでも努力しておりますし、また、取り締まり当局も全力を挙げてこれを取り締まっておるわけであります。日本の国の恥ずかしい問題として、日本の国が反省しなければならない問題である、これはもう率直にそういうふうに思っておるわけです。ですから、取り締まり当局も全力を尽くしておる、そういうことです。
#247
○田中(美)委員 それではこれで終わりにいたしますけれども、最後に一問言いますが、もしナイロビでこういうことを東南アジアの人たちやフィリピンの婦人たちから強く抗議されたとき、日本の外務大臣は、今までどおりの取り締まり以外には何もできなくて、お手上げたったという結果になるということでよろしいのでしょうか。お答えください。
#248
○安倍国務大臣 とにかく我々としては取り締まりには全力を尽くす。それから、今の男女の平等を確保するところの女子差別のこの問題は、これは日本にとって極めて重大な課題ですから、この批准はとにかくナイロビまでに間に合わせるように全力を尽くしたいと思います。
#249
○愛野委員長 次回は、来る二十九日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト