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1984/01/25 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第6号
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1984/01/25 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第6号

#1
第102回国会 本会議 第6号
昭和六十年一月二十五日(金曜日)
    ―――――――――――――
    開 会 式
午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
衆議院議長は、次の式辞を述べた。
    …………………………………
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百二回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はまことにきびしいものがあります。
  このときにあたり、われわれは決意を新たにして、外に対しては諸外国との相互理解と協力をいつそう深め、世界の平和と繁栄に寄与するとともに、内においては、わが国の現状と将来を広く展望し、適切な施策を強力に推進して、もつて国民生活の安定向上と国運の伸長に一段の努力をいたさねばなりません。
  ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。
    …………………………………
次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
    …………………………………
  本日、第百二回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。
  国会が、永年にわたり、国民生活の安定向上、世界の平和と繁栄のため、たゆみない努力を続けていることは、深く多とするところであります。
  ここに、国会が、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
    …………………………………
衆議院議長は、おことば書をお受けした。
午前十一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
次いで、一同は式場を出た。
    午前十一時七分式を終わる
     ――――◇―――――
昭和六十年一月二十五日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和六十年一月二十五日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 中曽根内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 安倍外務大臣の外交に関する演説
 竹下大蔵大臣の財政に関する演説
 金子国務大臣の経済に関する演説
    午後一時三分開議
#2
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#3
○議長(坂田道太君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、金子国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣中曽根康弘君。
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#4
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 第百二回通常国会の再開に当たり、内外の情勢を展望して施政の方針を明らかにし、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと思います。
 私は、内閣総理大臣の重責を担って以来、戦後政治の総決算を標榜し、対外的には世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国際国家日本の実現を、また、国内的には二十一世紀に向けた「たくましい文化と福祉の国」づくりを目指して、全力を傾けてまいりました。(拍手)このような外交、内政の基本方針を堅持し、国民の皆様の幅広い支持のもとに、これをさらに定着させ、前進させることが、私の果たすべき責務であると考えます。(拍手)
 昭和六十年、一九八五年は、昭和二十年の終戦から四十年、明治十八年の内閣制度の創設から百年に当たります。歴史の流れにおける大きな節目とも言うべきこの年に当たり、これまで我々日本国民がなし遂げてきた実績の上に立って、各分野にわたりさらに大胆な改革を進め、我々の次の世代へよりよい日本を引き継ぐために、一段と力を尽くさなければならないことを痛感いたします。(拍手)
 我々は、戦後、自由と平和、基本的人権と法秩序の尊厳等民主主義の意義と価値を深く学び、戦前の反省の上に立って、それを守り、さらに強く確立するかたい決意のもとに、その実践に努めてまいりました。このことが、戦後の日本の発展の基盤となっていると考えております。今、四十年の節目のときに当たり、我々は、ややもすれば民主主義の恩恵になれて、それに対する鮮烈な感激を失い、その何物にもかえがたい価値を忘れたりすることのないよう、常に、反復して、民主政治の正しいあり方を考え、その大道を実践し、これを子孫に伝えていきたいと考えております。(拍手)
 その際、基本的に重要なことは、政治の運営が、常に、国民に公開された場において、政策を中心として行われることであります。そのため、国会における各党、各会派との関係におきましても、対話と相互理解を深めることが肝要と考えるものであります。私は、近来、法案の取り扱い等をめぐって、与野党間の話し合い路線が定着してきたことを歓迎し、今後、一層政策中心の対話と協力が推進されるよう努力してまいりたいと存じます。
 また、議会制民主政治の基礎にかかわる国会議員の定数配分問題につきましては、各党、各会派間で十分論議を尽くしていただき、今国会において定数是正が実現するよう、政府としても最大限の努力をしてまいります。
 さらに、政治倫理の確立の問題につきましては、衆参両議院の政治倫理に関する協議会における議論等を踏まえ、具体的に実効性ある方策が講ぜられることを期待するとともに、私自身も心を新たにして、この問題に取り組んでまいります。
 以下、国政の各分野について、私の基本的考え方を申し述べます。
 国際情勢は、東西間における七〇年代の緊張緩和が後退して以来、厳しい状態が続き、国際的気圧配置は、厳冬の時期が続いておりましたが、近来、米ソ間を初め、朝鮮半島などの動きにも、やや薄日が差し始める気配がしてまいりました。
 もちろん国際情勢の実態は、依然として厳しい状況にありますが、今年こそ、東西間を初め、各地域の緊張緩和のために真剣な対話が行われ、さらに、世界経済の運営につきましても、国際協調の努力が一段と強められることにより、人類の未来に向かって、明るい希望の持てる年とすることが必要であると考えております。
 我が国もまた、戦後の経済発展が、世界の平和と各国国民の理解と共感の上に初めて可能であったことを銘記し、国際社会において重要な地位を占めるに至った今日、世界の平和と繁栄のため、積極的な貢献をしていかなければなりません。
 私は、こうした考えから、年初早々、米国及び大洋州諸国を訪問し、各国首脳と会談をしてまいりました。米国では、レーガン大統領との間で、世界の平和と繁栄に向けて、今後とも、日米両国が緊密に協力していくことを再確認しました。大洋州諸国では、世界の平和を確立していくことの重要性と、この地域の発展のために幅広い友好協力関係を増進させることについて、意見の一致を見ました。
 今日、世界の平和と安定にとって最も緊要なことは、相互に信頼し得る安定的な東西関係を構築することであります。そのためには、日米欧の自由民主主義諸国が結束を維持しながら、軍備管理、軍縮を中心とする東西間の対話を促進するよう努力することが重要であります。
 我が国は、これまであらゆる機会をとらえて、軍縮、なかんずく、核軍縮の重要性を積極的に訴えてまいりましたが、今般、米ソ両国間で、戦略核、中距離核及び宇宙兵器に関して、新たな交渉を行うことが合意されたことを歓迎するものであります。宇宙の軍備競争の防止と、地球上での軍備競争の停止、核兵器の削減、究極的にはその廃絶を目的としたこの交渉が、緊張緩和の重要な礎となることを信じてやみません。(拍手)東西間の話し合いが続けられていること自体、緊張の激化を防ぐ効果を持っておりますが、さらにその交渉が、相互に信頼し得る、実効ある検証措置の合意の上に、できるだけ早く実質的な成果を上げるよう、我が国としても最大限の努力をしていきたいと考えております。(拍手)
 他方、中東、インドシナ、中米等の地域における紛争につきましては、関係諸国との話し合いを通じて、その平和的解決を図るための環境づくりに努めてまいります。
 我が国の平和と安全を確かなものとするためには、総合的な安全保障の観点に立ち、外交、経済協力、資源エネルギー及び食糧の確保等の各種施策の推進に努めるとともに、厳しい国際情勢に対応して、他の諸施策との調和に配慮しながら、防衛力の適切な整備を図ることが必要であります。
 このため、日米安全保障体制の円滑、かつ、効果的な運用を図りながら、必要な限度において、質の高い、効率的な自衛力の整備を進めてまいります。もとより、平和憲法のもとで専守防衛に徹し、非核三原則とシビリアンコントロールを堅持し、近隣諸国に軍事的脅威を与えないという従来からの方針には、いささかの揺るぎもありません。
 世界経済は、全体として回復基調にありますが、西欧諸国の高水準の失業、米国の高金利、開発途上国の累積債務等の困難な諸問題が依然として存在し、これを背景に保護主義的な動きも根強いものがあります。
 国際的な相互依存関係がますます深まっている今日、自由貿易体制の維持強化及び世界経済の活性化への積極的貢献を行うことが、今や世界経済の一割を占める我が国の責務と考えます。
 このため、我が国は、景気の持続的拡大を図る中で、引き続き国内市場の一層の開放に努め、金融・資本市場の自由化、円の国際化等々を促進するとともに、新しい多角的貿易交渉の早期開始に向けて、積極的役割を果たしてまいります。
 また、開発途上国の経済発展に貢献するため、貿易の拡大や経済技術協力の一層の拡充に、最大限の努力をしてまいります。特に、食糧危機に苦悩するアフリカ諸国に対して、国民の皆様の御協力を得て、幅広い支援活動を強化していく考えであります。
 国際社会が幾多の困難を克服し、協調と連帯を原則とする、希望に満ちた二十一世紀の扉を開くためには、各国国民相互の理解と信頼関係の確立が不可欠であり、私は、今後とも、スポーツ、芸術、文化などあらゆる分野における国際交流の輪を広げていきたいと考えております。
 特に本年は、国際連合において国際青年年と定められておりますが、私は、これを契機に、みずからの社会的責任と世界における日本の立場を自覚する、国際性豊かな青年を育成するとともに、海外の青年に日本が正しく理解されるよう、青年交流を強力に推進してまいります。また、各国との留学生交流の充実に意を用いてまいります。
 さらに、地球環境の保全は、人類生存の基礎となるものであり、我が国は、これに積極的に貢献していきたいと考えます。本年は、国際森林年の年でもあり、地球森林資源の保全、涵養に積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
 次に、各国との関係について申し述べます。
 我が国は、自由世界の一員であるとともに、アジアの一員であり、これまでの歴史的経緯や、今日の国際社会における我が国の立場から、開発途上国や非同盟諸国との友好協力をも重視すべきであると考えます。
 まず、米国との友好協力関係の維持強化は、我が国外交の基軸であります。米国との同盟関係は、戦後の最も重要な、そして賢明な選択であり、日米関係の一層の発展は、アジア・太平洋地域、さらには世界の平和と繁栄にとって、極めて重要な礎石であります。(拍手)私は、先般のレーガン大統領との会談を踏まえ、経済関係の円滑な運営を含め、両国関係の一層の発展に努めてまいります。
 アジア地域におきましては、昨年中国を訪問しましたが、二十一世紀に向かって両国関係を安定的に発展させるとの決意を、中国指導者との間で確認することができました。今後、平和友好、平等互恵、相互信頼、長期安定の四原則に従って、揺るぎない両国関係を築いてまいります。(拍手)
 韓国の全斗煥大統領が、昨年九月、同国の元首として、初めて我が国を公式訪問されましたが、これは、長い歴史を持つ両国の関係において画期的なことであり、善隣友好関係を一層強固にする契機となったと確信いたします。(拍手)
 ASEAN諸国との間におきましては、友好協力関係を一層推進するため、経済関係のみならず、人物、科学技術及び文化の交流の拡大に意を用い、この地域の平和と安定のために、積極的役割を果たしたいと考えております。
 私は、昨年パキスタン及びインドを訪問し、両国指導者と忌憚のない意見交換を行い、今後の友好協力関係の強化について合意いたしました。
 太平洋地域は、今や世界で最も活力とダイナミズムに富み、二十一世紀に向けて大きな発展の可能性を秘めております。この地域が相互の交流を一層拡大し、連帯を深めていくことは、歴史的潮流であると確信いたしております。しかし、そうした域内協力の拡大は、当面は民間活動を主軸に積み重ねられ、経済、技術及び文化の交流や協力を中心とし、また、他の地域に対して排他的であってはならず、さらに、ASEAN諸国等を中心とする自発的意欲の盛り上がりに主導されたものでなければならないと考えます。我が国は、米国などとともに、こうした動きがあれば積極的に協力し、人づくり協力や情報の交流を初めとする、共同のプロジェクトの実現に努力したいと考えております。
 西欧諸国は、我が国及び米国とともに、自由と民主主義という基本的価値観を共有しており、私は、これら諸国との間で、引き続き緊密な連帯と協調を図ってまいります。
 ソ連との間におきましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的関係を確立するため、今後とも粘り強く努力してまいります。日ソ間には、近時、種々の交流が再開されてきておりますが、私はこの流れを歓迎し、それを次第に広げ、実りある両国関係を開き進めるよう努力してまいりたいと考えます。ソ連側におきましても、平和国家として発展している我が国の実情を正しく認識し、両国間の友好を深めるよう期待するものであります。
 今日、我が国の政治、経済、社会など各分野において山積している諸問題を解決し、来るべき二十一世紀に向けて、真に豊かな社会の基礎を固めるため、行政改革を初め、財政改革及び教育改革の三つの基本的な改革を、引き続き着実に推進してまいります。(拍手)
 政府は、行政改革を国政上の最重要課題の一つとして、臨時行政調査会及び臨時行政改革推進審議会の提言を踏まえながら、その推進を図ってきております。特に、さきの第百一回特別国会から今国会の冒頭にかけまして、医療保険制度の改革、専売公社及び電電公社の改革を初め、諸般の行政改革のための関連法律の成立を見ました。昨年来御審議いただいている国民年金等の改正法案につきましては、一日も早い成立をお願いいたしたいと思います。(拍手)
 さらに、今国会におきましては、共済年金の改革、地方公共団体に対する国の関与等の整理合理化などのための法律案を提出することとしております。また、国家公務員の定員につきましても、六千四百八十二人にも上る、これまでにない大幅な縮減を図ることとしたところであります。
 私は、今後とも、国民の皆様の御理解と御支援のもとに、行政機構、特殊法人等の整理合理化、国家公務員の定員の合理化など、行政改革の一層の推進に努めてまいります。また、地方公共団体の行政改革につきましては、その指針となる地方行革大綱を策定したところであり、政府としても、国民の皆様の強い期待にこたえて、その積極的な促進を図ってまいります。
 財政を改革し、その対応力の回復を図ることは、我が国の将来の安定と発展のため避けることのできない緊要な課題であります。このため、政府は、昭和六十五年度までの間に、特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めることとし、財政改革を推進してきているところであります。
 昭和六十年度予算につきましても、手綱を緩めることなく、すべての分野にわたって施策の見直しに努め、思い切った補助金等の整理合理化など、さらに歳出の徹底した節減合理化に取り組むとともに、歳入面におきましても、税負担の公平化、適正化を推進する観点から、税制の見直しにできる限りの努力を払うほか、税外収入につきましても、可能な限りその確保を図ったところであります。
 なお、地方財政につきましても、所要の措置を講じ、その円滑な運営を期することといたしております。
 このような歳出歳入両面にわたる努力の結果、昭和六十年度予算におきましては、公債を前年度の当初発行予定額に比し、一兆円減額することとし、また、新たに発足する日本電信電話株式会社等の株式のうち、売却可能な分を国債整理基金特別会計に帰属させ、公債償還財源の充実に資することとするなど、極めて厳しい環境の中で、財政改革の重要な一歩を進めたものと考えております。(拍手)
 昭和六十年度予算を含め、この三年間にわたって、一般歳出の伸びがマイナスになるという、過去にはほとんど例を見ない厳しい措置が続けられております。この間、国民の皆様には、時としていろいろな面で御辛抱をお願いし、厳しい施策に協力していただいていることに、私は、深い感謝の念を覚えるものであります。
 行財政改革を進めていく上での重要な課題として、米、健保、国鉄のいわゆる三Kが挙げられて久しくなりますが、米につきましては逆ざや解消への努力がかなり進み、健保財政もこれまでの健全化への努力がようやく実ってきております。今年は、日本国有鉄道再建監理委員会の意見を得て、いよいよ国鉄の抜本的改革に取り組むときであります。(拍手)
 こうした行財政改革の継続した努力により、国民の負担の増加を極力抑制し、政府規模の肥大化を防止するという、臨時行政調査会答申の基本方向に沿い得る展望が得られるものと考えております。また、その一方におきましては、公的規制の見直しや公社制度の改革等により、国民経済の基盤となる民間部門の活力の積極的展開が実現してきており、我が国経済社会が、二十一世紀に向けて構造的変革を遂げる基礎が固まりつつあると確信いたしております。
 また、我が国の税制につきましては、社会経済情勢の変化により、種々の問題が指摘されるようになってきており、国民各層における広範な論議を踏まえながら、幅広い視野に立った税制全般にわたる改革を、これからの課題として検討する必要があると考えております。(拍手)
 教育の現状につきましては、青少年の非行、学歴の過度の重視、教育に関する多様化、弾力化、自由化の必要性などの問題が指摘されており、これらに対応した適切な改革を行うことが求められております。また、産業構造の変化、情報化社会、高齢化社会の急速な進展などに伴って、生涯を通ずる学習への要請が増大してきており、さらに、教育の国際化も重要な課題となっております。
 このような教育に関する広範な課題に対して、臨時教育審議会を設置し、教育全般にわたる総合的な検討をお願いいたしているところであります。
 教育改革は、我が国固有の伝統的文化を維持発展させるとともに、日本人としての自覚に立って国際社会に貢献する国民の育成を期し、正しい生活規範を身につけながら、高い理想と強健な体力、豊かな個性と創造力をはぐくむことを目標として行わるべきものと考えます。(拍手)
 教育改革の実現は、歴史の節目である今日における、大切な政治の使命であると信じます。私は、臨時教育審議会の答申を得てそれを最大限に尊重し、二十一世紀を担う、たくましく、心豊かな青少年の教育が実現するよう、果断な教育改革に全力で取り組んでまいります。(拍手)
 最近の我が国の経済情勢を見ますと、なおばらつきが残されているものの、全体として景気は拡大を続けております。私は、今後、物価の安定基調を維持しつつ、この景気回復を国内民間需要中心の持続的安定成長として定着させ、また、雇用の安定を確保することに、最善の努力を払ってまいります。
 我が国経済社会の体質を常に活性化させ、適度の経済成長を達成していくためには、民間活力を最大限に活用することが必要であります。このため、公的規制について、公共性にも配慮しながら、民間部門の自由な活動領域を一層広げるようその抜本的な見直しを行い、また、関西国際空港株式会社の設立に見られるような新しい仕組みの導入を図り、さらに、社会資本整備の分野における国有地等の有効活用を引き続き推進するなど、民間活力誘導のための環境整備を促進してまいります。また、社会的サービス、緑の国土づくりなどの新たな分野におきましても、民間活力の積極的な活用が図られるよう努めてまいります。
 我が国が、二十一世紀の新たな発展を目指して前進していくためには、創造的な科学技術を創出していくことが重要な課題であり、また、国際的な科学技術協力の一層の展開により、世界経済の活性化、さらには人類の発展に寄与することが求められております。今後、民間活力が最大限に発揮されるよう基盤を整備し、また、産学官の連携を図りながら、科学技術の振興に一段と力を尽くしてまいります。
 本年三月十七日から、人間・居住・環境と科学技術をテーマとする国際科学技術博覧会が、筑波研究学園都市において開催されます。私は、この国家的事業をぜひとも成功させ、本年が、科学技術立国を目指す我が国の新たな飛躍の年となるよう、念願する次第であります。
 我が国は、情報通信関連技術の著しい革新と普及により、高度情報社会の先駆けともいうべき段階に入ろうとしております。高度情報化は、産業の活性化と経済発展をもたらすだけでなく、知的、文化的でより豊かな国民生活及び個性的で魅力ある地域社会の実現と、相互理解に支えられた国際社会の進展に大きく寄与するものであります。このため、関連基礎技術の研究開発や安全性、信頼性対策の確立など、高度情報社会の円滑な実現のための基盤整備に積極的に取り組んでまいります。また、さきの電電公社の改革を基本として、電気通信事業分野における競争原理の導入が本格化するよう努力してまいります。
 さらに、政府は、このような技術革新の急速な進展などの情勢変化の中で、雇用の確保に必要な条件整備を進めるとともに、引き続き、生産性の向上を中心とした農林水産業対策の推進、厳しい環境変化に積極的に対応し得る創意と活力ある中小企業の育成などにも、一層力を入れてまいります。(拍手)
 今日我が国は、いわゆる人生八十年時代を迎え、世界最高の長寿国の一つとなっております。長寿は古来人々の願いとするところであり、長寿国日本の実現は、大いに祝福さるべきことであります。こうした長い人生を充実した豊かなものとするためには、国民が生涯を通じて、生きがいのある生活を送ることができる社会システムを構築する必要があり、特に、生活を支える社会保障制度につきましては、先見性のある周到な配慮のもとに、先導的改革を行うことが強く求められております。(拍手)
 さきの国会で実現を見ました医療保険制度の改革は、その第一歩になるものであり、また、年金制度につきましては、現在御審議いただいている国民年金、厚生年金保険等の改革に加え、共済年金の改革を実施することにより、昭和七十年を目途として、公的年金制度全体の一元化を実現し、社会保障制度を、世代間の公平が確保され、また、将来にわたり安定した揺るぎない制度として、整備してまいる考えであります。(拍手)このような社会保障制度の改革により、今次行政改革の大きな柱が実現するものと考えます。これらの制度改革を根幹として、定年の延長など、高齢者の能力や経験ができる限り社会に生かされる仕組みを工夫し、その積極的な社会参加を促進することが重要と考えます。また、寝たきり老人や障害者など、社会的、経済的に弱い立場にある人々に対して、温かい手を差し伸べてまいります。
 すべての国民が、生涯を通じて健康な生活を送ることができるよう、心身の健康づくり等総合的な保健医療対策を推進してまいります。特に、我が国における死因の第一位を占め、国民の関心が極めて深いがんにつきましては、その制圧を図るため、引き続き対がん十カ年総合戦略に基づき、総合的、かつ、重点的な施策の推進を図ってまいります。また、難病対策にも特段の意を用いてまいります。
 今、国民が求めているのは、心の豊かさであります。このため、私は、心の触れ合う、礼節と愛情に富んだ地域社会の建設を目指し、着実な努力を重ねてまいります。生活の基盤であり、家庭の団らんの場である、住みよい、ゆとりのある住宅の供給に努めるなど、社会資本の整備を推進するとともに、地方公共団体と協力して、花と緑に囲まれた、安全で快適な生活環境づくりを進め、さらに、各地域が独自の創意工夫により、特色ある文化の花を咲かせた、魅力ある町づくり、村づくりを進められるよう努力してまいります。(拍手)
 本年は、国連婦人の十年の最終年に当たりますが、これまでの成果を踏まえて、婦人の地位向上のための施策を積極的に推進し、特に、いわゆる女子差別撤廃条約の批准に向けて最大限の努力をしてまいります。
 また、国民生活の安全を確保するため、治安の確保、災害対策や交通安全対策の充実に努めてまいります。広く社会不安をもたらすような、悪質な犯罪に対しては、国民の皆様の御協力を得て、その防圧、検挙に全力を尽くします。(拍手)
 我が国は、戦後四十年間にわたる国民のたゆみない努力により、風雪に耐え、幾多の困難を克服して、今日の繁栄と国民生活の安定を築き上げました。これを顧みるとき、国民の皆様それぞれが、はるばるとたどってきた苦闘の歴史に、深い感慨を禁じ得ないものがあろうかと思います。
 今日、高度成長のさなかに開かれた東京オリンピックの年に生まれた子供が、成人式を迎える時代に至っており、日本の国も、日本人の生活や意識も、あるいは国際的に見た日本の位置づけも、今や大きく変わってきております。
 我々は、この大きな時代の流れを正確に把握し、国際社会の中に根をおろして、その尊敬と信頼を受け、活力に満ちた豊かな日本をつくり上げ、次の世代に引き継いでいかなければなりません。(拍手)そのことは、我々の世代の使命であり、今や日本の各界各層が、二十一世紀に向けて軌道を敷設し、次の時代を担う世代に、明るく、力強い時代のたいまつを引き渡すことができるよう、全力を傾けるときであると信じます。(拍手)
 状況は厳しいものがありますが、我々は着実に前進してきております。行政改革の道もようやくその半ばに達し、財政改革もその緒につき得たと考えます。我が国経済はこの二年、第二次石油ショックの影響を脱して着実に活力を取り戻し、新しい発展の基盤を固めつつあります。国民が物の時代を越えて、心の時代へ前進しようとする熱意は、教育改革への強い期待となってあらわれております。国際社会に対する友好と連帯のきずなも、米国、近隣諸国を初め世界各国との間で、政治、経済及び文化の各面にわたって拡大強化され、日本の地位は、確実にそのすそ野を広げ、安定度を増してきております。
 もちろんこうした変革の動きは、過去と断絶し、幻想を未来に追うものであってはなりません。今日の日本は、我々の祖先や先輩たちが営々と築き上げてきた成果の日本であり、また、これから生まれてくる我々の子孫たちにとっても大切な祖国日本であります。(拍手)長い日本の歴史と伝統を踏まえ、その貴重な経験を生かし、未来に向かって独自の日本の文化をつくり上げていくことこそ、真の変革、真の国際化に通ずるものであると信じます。(拍手)
 二十一世紀は、もはや目前に迫ってきております。我々がとるべき道は、今たどりつつある道しかないと確信いたします。それがいかに苦難に満ちたものであっても、休むことなく、さらに、たくましく前進を続けようではありませんか。(拍手)
 重ねて国民の皆様の御理解と御協力をお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(坂田道太君) 外務大臣安倍晋太郎君。
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
#6
○国務大臣(安倍晋太郎君) 第百二回国会が再開されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 ことし、昭和六十年は、戦後四十年という節目の年に当たります。今や、我が国は、大戦の惨たんたる荒廃から復興し、自由世界第二の経済力を持つ安定した民主主義国家としての地位を確立し、政治的、経済的に国際社会において重きをなすに至りました。ますます相互依存の高まる今日の国際社会において、我が国が、経済的にも社会的にも世界に開かれた国を目指し、世界の平和と繁栄に一層積極的に貢献することは、我が国自身の平和と繁栄の維持のためにも欠くべからざることであります。
 最近の国際情勢については、ソ連の多年にわたる軍備増強とこれを背景としたアフガニスタンなど第三世界への進出などにより、米ソ関係を中心とする東西関係が依然として厳しい状況にある中、今般、ジュネーブにおける米ソ外相会談で米ソ軍備管理、軍縮交渉の枠組みが決定されたことは、我が国としても大いに歓迎し、その実質的進展を強く期待するものであります。他方、中東、アフリカ、中米、インドシナなどの諸地域では紛争や混乱が根強く続いております。
 世界経済は、全体としては先進国を中心に緩やかな景気拡大傾向にあり、その拡大速度は本年は若干鈍化するものの、基本的に拡大傾向は維持されると見込まれております。他方、構造的な財政赤字、深刻な雇用情勢、保護主義的圧力、累積債務問題など、世界経済には依然として多くの課題が存在いたします。
 このような厳しい国際情勢のもとにおいて世界の平和と繁栄を確保し、近づく二十一世紀に向けて明るい未来を切り開いていけるかどうかは、世界各国の決意と協力にかかっており、我が国として、積極的かつ創造的な外交をもって世界の平和と繁栄に貢献していくことが日本外交に課せられた使命であると考えます。(拍手)
 私は、このような基本的な認識のもとに、自由民主主義諸国の一員として、また、アジア・太平洋地域の国として、積極的な外交を展開してまいる所存であります。
 以下、当面する外交の諸課題について基本的な考え方を申し述べます。
 自由と民主主義を基本とし、自由市場経済によって繁栄を維持してきた我が国としては、世界の平和と安定の問題に対処する当たって、我が国と同じ価値観を共有する諸国と、緊密な協力関係を維持することが肝要であります。このような認識から、昨年のロンドン・サミットにおいては、ウィリアムズバーグ・サミットの政治声明の後を受けた、民主主義の諸価値に関する宣言を初めとする諸宣言に積極的に参加するなど、我が国は、主要先進民主主義諸国と緊密な協力関係を促進すべく努力してまいりました。
 自由民主主義諸国としては、基本的姿勢として、今後とも平和を確保するための十分な抑止力を維持するとともに、ソ連を初めとする東側諸国との対話と交渉を進めていくことが重要であります。
 我が国は、世界の平和が、核を含む力の均衡により維持されているという現実を認識しつつ、この均衡の水準を確実な保障のもとに可能な限り引き下げるべく、国連、軍縮会議等の場を通じ、実効的かつ具体的な軍縮措置の実現に貢献すべく積極的に努力してまいりました。特に軍縮会議については、昨年六月、私みずからもこれに出席し、この会議が世界の軍縮促進の一つのてことなるべきことを訴えたのであります。
 現在、世界の平和と安定にとって、米ソ両国が特に大きな責任を有していることは改めて申し上げるまでもありません。今月初めのジュネーブにおける米ソ外相会談の結果、今後の米ソ交渉の主題と目標について基本的な合意を見たことを高く評価し、歓迎するものであります。この交渉の先行きは、なお楽観を許さない状況にありますが、我が国としては、米ソ両国が真剣かつ積極的な態度で臨み、交渉ができる限り早期に実質的な成果を生むよう強く訴えていく考えであります。
 日米安保体制を基盤とする日米友好協力関係は、我が国外交の基軸であり、この関係が良好に保たれ発展することは、我が国の安全と繁栄にとってのみならず、アジアひいては世界の平和と安定にとっても重要な要素であります。このような認識のもと、先般ロサンゼルスにおきまして、総理と私は、世界の平和と繁栄をめぐる諸問題について、レーガン大統領、シュルツ国務長官と忌憚のない意見の交換を行ってまいりました。これは、日米両国間の信頼関係を一層強化する上で、極めて有益であったと考えます。政府としては、今後とも、この日米関係の円滑な運営のため一層の努力を傾注するとともに、国際場裏における日米協力をさらに推進していく所存であります。
 また、北米大陸のもう一つのパートナーであるカナダとの協力もますます重要となりつつあります。
 日欧関係においては、経済面にとどまらず政治面も含めた幅広い分野で協力を推進すべきだという認識が、日欧双方で一段と高まってきており、政府は、欧州との政治対話の緊密化を図ってきております。また、従来ともすれば、摩擦と対立の色が濃かった経済関係においても、昨年、日・EC委員会閣僚会議が初めて開催されるなど、対話と協力へと、その雰囲気の改善が図られつつあります。我が国としては、今後とも、日本と欧州がより広範な分野における緊密で幅広い対話と協力を推進し得るよう努力していく考えであります。
 国際社会におけるアジア・太平洋地域の重要性は、近年ますます高まっております。この地域の多くの国は、若々しいダイナミックな活力を発揮し、高い経済成長率を示しております。このような活力を最大限に引き出していくため、我が国は域内各国との友好協力関係を強化し、この地域の安定と繁栄のため、長期的視野から、緩やかで開放的な協力を目指して努力していく考えであります。特に、昨年のASEAN拡大外相会議で、太平洋の将来というテーマが初めて取り上げられたことを、我が国としても歓迎するものであります。
 韓国については、昨年の全斗煥大統領の歴史的訪日によって、日韓両国の関係史に新たな一章が開かれましたが、これを契機として、日韓両国が互いに成熟した友邦として、永遠の善隣友好協力関係を世界的な視野で構築していくことが重要であります。また、我が国は、朝鮮半島における南北両当事者間の対話の動きや関係諸国の動向に注目しつつ、同半島の緊張緩和のため、我が国として可能な努力を続けていく考えであります。北朝鮮との関係については、朝鮮半島に対するこれまでの基本政策のもとで、今後とも経済、文化等の分野における交流を維持していく考えであります。
 我が国と中国との関係は、昨年の総理訪中を経て今や最も安定した時代を迎えております。政府としては、現在の良好な両国関係を、二十一世紀に向け長期にわたり安定的に発展させるため、不断の対話による相互理解と相互信頼の確立を図るとともに、引き続き中国の近代化の努力に対しできるだけの協力を続け、広範な分野における友好協力関係の増進にも努めていく考えであります。
 ASEANは、昨年一月にブルネイを新加盟国として迎え、機構の基盤を拡大し、東南アジアにおける安定勢力としての地位を向上させました。我が国としては、ASEAN諸国の安定と繁栄のための努力を引き続き支援してまいる所存であります。
 インドシナにおいては、カンボジア問題が依然未解決ですが、我が国は、この問題の包括的政治解決へ向けてのASEANの努力を引き続き支援するとともに、ベトナムとの対話を維持し、問題解決のための環境づくりに今後とも不断の努力を続ける考えであります。
 南西アジア地域では、昨年、インディラ・ガンジー首相の暗殺という悲しむべき事件が起こりましたが、その後、インドの総選挙を初めとして、この地域の安定にとって好ましい動きが見られます。我が国としては、今後とも、この地域の安定的発展に対しできる限りの協力を行うとともに、域内諸国との伝統的友好関係の一層の強化に努力していく所存であります。
 私は、今般総理とともに、豪州、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーの大洋州四カ国を訪問いたしましたが、この訪問は、我が国とこれらの国々との間の関係強化に大いに貢献したものと考えます。我が国としては、今後とも、大洋州諸国との友好協力関係の一層の増進を図っていく考えであります。
 ソ連との関係については、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、我が国の重要な隣国であるソ連との間に、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが、従来の一貫した我が国の基本方針であります。昨今の日ソ関係は、北方領土問題が未解決であることに加え、近年の、極東、なかんずく北方領土におけるソ連の軍備増強などにより、依然として基本的に厳しい状況にあります。しかし、関係が厳しければ厳しいほど対話の道を閉ざさず、むしろこれを強化拡大していくべきであります。政府としては、昨年二度にわたり私とグロムイコ外相との会談を行うなど、種々の日ソ政治対話を進めてきており、今後とも通すべき筋は通すとの姿勢を維持しつつ、対話を通じて問題の解決に一歩でも近づくよう努力していく所存であります。ソ連側においても、我が国の考えを正しく理解し、関係改善を具体的行動で示すよう期待する次第であり、このような見地から、今後のソ連側の対応に注目していきたいと存じます。(拍手)
 東西関係において重要な位置を占める東欧諸国との関係は、引き続き着実な進展を見つつあります。我が国としては、各国の国情及び政策を踏まえたきめ細かい施策を重ねて、相互理解と友好関係の増進を図っていく所存であります。
 中近東では、依然として国家間、民族間の対立と紛争が続いており、情勢は流動的で予断を許しません。
 湾岸地域では依然としてイラン・イラク紛争が続いており、この地域の不安定要因となっております。我が国は、もとよりこの紛争の調停、仲介を行う立場にはありませんが、この地域の平和と安定を願う気持ちから、紛争の早期平和的解決に向けての環境づくりに独自の努力を重ねてきております。今後とも、国連及び関係諸国と密接に協力しつつ、粘り強くこうした努力を続ける決意であります。
 また、我が国は、一日も早くレバノンの国内諸勢力間の和解が達成され、外国軍隊の撤退が実現することを希望するとともに、中東和平問題の解決がこの地域の安定のため不可欠であるとの認識のもとに、引き続き関係当事者に柔軟かつ現実的な対応を示すよう働きかけていく考えであります。
 アフガニスタンでは、ソ連軍が、介入以来五年余を経過した今、なお撤退していないことは極めて遺憾であります。アフガニスタン問題解決のためには、ソ連軍の全面撤退、アフガニスタンの政治的な独立及び非同盟国としての立場の回復、自決権の尊重、並びにアフガン難民の安全かつ名誉ある帰還の四条件が満たされる必要があり、この実現に志を同じくする諸国と協力しつつ、努力を続けていく覚悟であります。(拍手)
 中南米地域では、近年民主化の進展が見られつつありますが、多くの諸国は累積債務問題を初めとする経済困難の克服のため多大の努力を払っております。我が国としては、他の先進諸国と協力して、このような努力に対し、できる限り協力していく考えであります。
 中米問題について、我が国は、コンタドーラ・グループ諸国を初めとする域内の和平努力を強く支持するとともに、域内諸国の民主化、国内融和の努力とも相まって、中米地域に平和と安定が早期にもたらされることを強く希望するものであります。私は、今月初めのコロンビア公式訪問の際にもこのような我が国の立場を説明し、コロンビア側からの高い評価を得ました。
 現在、アフリカは、食糧不足等の深刻な経済困難に直面しておりますが、昨秋のアフリカ月間の開催によりこの地域への官民の関心は著しく高まりました。私は、昨年の国連総会において、アフリカに対する国際社会の支援の重要性を強調し、私自身もアフリカの干ばつ被災地を視察し、帰国後アフリカ支援緊急アピールを発表いたしました。我が国のアフリカに対するこのような積極的な姿勢は、国際社会の注目するところとなっております。政府としては、今後とも経済協力を初めとした幅広い支援活動を展開するとともに、国際的にもアフリカ支援強化を訴えていく考えであり、これまで寄せられた国民各位の協力に厚く感謝する次第であります。(拍手)
 南部アフリカにおいては、ナミビアの早期独立達成のため、国連や関係諸国の間で努力が続けられております。我が国は、この問題の解決のため関係国の努力に対し引き続き協力していく考えであります。
 国際的な相互依存関係がますます深まっている今日、台頭する保護主義を抑え、自由貿易体制の維持強化、及び国際経済の発展に寄与することは、世界経済の重要な一翼を担う我が国の責務であります。また、我が国を取り巻く国際経済関係には、一層厳しいものがありますが、諸懸案の解決のため我が国としてできることについては最大限の努力をしていくことが、日本経済の健全な発展を確保する上から緊要であります。
 我が国は、このような観点から、昨年四月及び十二月、日本市場の一層の開放、金融・資本市場の自由化、投資交流の促進等について対外経済対策を決定しました。また、昨年末、対外経済問題に、より自主的かつ積極的に取り組むため、対外経済問題関係閣僚会議とその諮問委員会が設置されました。これらの精力的な活動を通じ、日本の経済社会を世界に一層開かれたものとすべく、私としましても努力してまいる所存であります。
 我が国が提唱した新たな多角的貿易交渉については、国際的に徐々にその機運が醸成されつつあります。今後とも関係諸国と協力して、その早期開始に向けて一層の努力を払ってまいります。
 本年は筑波において科学技術博覧会を開催する年に当たります。我が国としては、科学技術分野での国際協力の重要性を認識し、これを積極的に推進していくことが重要であります。
 近年の地域紛争や経済危機などの多くが開発途上地域に見られることから明らかなとおり、開発途上国の安定と発展は、世界の平和と繁栄にとって不可欠であります。したがって、我が国にとって、昨年のロンドン・サミットで確認された善意と協力の精神に基づいて、南北問題の解決に積極的に貢献していくことが、ますます重要となっております。
 我が国がその国際的な役割を担っていくためには、政府開発援助の一層の拡充が必要であります。政府は、中期目標のもとに、その計画的拡充に努めており、昭和六十年度予算においても、政府開発援助を対前年度比一〇%増とする特段の配慮を払いました。我が国としては、その経済力に見合った政府開発援助の計画的拡充に対する国際社会の期待にこたえるべく、今後とも最大限の努力を続ける考えであります。現下の厳しい財政事情のもとで、今後とも我が国の政府開発援助の拡充を図るに当たって、援助の一層効果的、効率的な推進を図っていくべきことは申すまでもありません。
 また、累積債務問題の解決を図ることは、開発途上国の健全な経済発展を軌道に乗せるため国際社会全体が取り組まなければならない重要な問題であり、我が国としては、国際機関を初めとする関係者と協力して、問題解決の努力に積極的に取り組んでいく考えであります。
 さらに、世界の各地で発生している難民問題に対する取り組みは、緊急を要する課題であります。我が国は、飢餓に苦しむアフリカ難民など世界の難民への資金及び食糧援助、並びにインドシナ難民の受け入れなどを通じ、今後とも問題解決のため貢献していく考えであります。
 国際連合は本年四十周年を迎えようとしておりますが、国連及びその関連諸機構を強化し、これらを真に実効性ある国際協力の場とすることが重要であります。したがって、国連諸機構の機能全般の活性化、具体的には、国連の平和維持機能の強化、開発途上国の開発支援機能の強化、国連全システムにおける行財政改革などに積極的に取り組む考えであります。
 また、本年は国連婦人の十年の最終年にも当たります。政府としては、署名以来準備を進めてきた、いわゆる女子差別撤廃条約の批准を、本年七月に予定される世界婦人会議までに実現すべく、最善の努力を払いたいと思います。
 私は、外交の重要な課題の一つとして、わかりやすい外交を展開するとともに、相互理解の不足に基づく諸外国との誤解を解き、お互いの国情について正しい認識を確立するように努めてまいりました。政府としては、外交に対する国民の理解と支持を求めるとともに、地方自治体や民間とも協力し、国民レベルで行われる国際交流の促進に努めていく所存であります。本年は、国際青年年に当たりますが、青少年の人的交流も一層促進していく考えであります。
 また、本年は、ハワイ官約移住百周年、すなわち我が国政府が海外移住事業を開始して一世紀という記念すべき年に当たりますが、広く海外において日系人が果たしている役割を改めて認識し、海外移住支援の努力を続けていく所存であります。
 我が国の外交は多くの重要な課題を抱えております。このような外交を強力かつ機動的に推進していくためには、外交実施体制を強化拡充することが急務と考えます。また、海外で活躍する邦人の生命、身体、財産の保護、海外子女教育などにつき十分な配慮を払っていくことが必要と考えております。
 以上述べましたように、厳しい国際環境のもとで、二十一世紀へ向けて、世界の平和と繁栄に積極的かつ創造的に貢献するという日本の国際的な役割を果たすため、外交に課せられた責務は重大であります。戦後四十年という節目に当たって、私は、この責務を全うすべく決意を新たにして、誠心誠意努力する所存であります。
 国民各位及び同僚議員のこれまでの御協力に感謝申し上げるとともに、今後の力強い御支援をお願いするものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(坂田道太君) 大蔵大臣竹下登君。
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#8
○国務大臣(竹下登君) ここに、昭和六十年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
 現在、我が国経済は、なお改善を要する分野や解決すべき課題を抱えておりますが、世界的に見ても、また過去との比較においても、総じて、恵まれた、良好な状態にあると言えるのではないかと考えられます。
 まず、物価は三年以上にわたり極めて安定しております。また、民間経済の創意と活力をあらわす投資を中心として、経済は順調に拡大しております。これらの結果、国民生活は着実に向上しております。すなわち、安定の中にあって力強さと豊かさを備えた成長の姿が見られるのであります。
 私は、我が国経済がこのような基調を中長期的に定着させていくよう今後とも努力を重ね、潤いと活力のある経済、社会を構築してまいりたいと念願するものであります。
 この目標の実現のためには、まず第一に、我が国経済、社会の特質である柔軟性を引き続き維持することが肝要であります。
 我が国は、戦後、高度成長を実現し、その後二度にわたる石油危機の悪影響を克服して今日の安定と繁栄を築いてまいりましたが、これは、国民のすぐれた英知とたゆみない努力に裏づけられた、我が国経済、社会の高い柔軟性によるところが大であります。今後においても、先端技術の開発等の面で創造力を発揮するとともに、人口の高齢化など社会構造の変化に適応していくためには、柔軟性の特質をさらに生かしてまいらねばなりません。
 第二には、我が国が国際国家として大きく成長することが必要であります。
 申すまでもなく、我が国経済の安定と発展は、世界経済との密接な関連の上に成り立つものであります。私は、国民の一人一人がこの点の認識を一層深め、世界の諸国民の平和と繁栄のために我が国が積極的に貢献するよう努力する必要があり、また、そのことが同時に、我が国の豊かで安定した経済、社会の持続を可能とする条件でもあると考えるものであります。
 以上の考え方に立って、私は、今後の財政金融政策の運営に当たり次の四つの課題を設定し、適切な政策運営に万全を期してまいる所存であります。
 それらの課題とは、インフレなき持続的成長の確保、財政改革の強力な推進、金融の自由化及び円の国際化の促進、そして世界経済発展への貢献の四つであります。
 まず第一は、引き続きインフレなき持続的成長の確保を図っていくことであります。
 物価の安定は、経済の発展と国民生活安定の大前提であります。冒頭に申し上げましたような戦後最良の物価安定の状況を今後とも維持し、持続的成長の基盤としてまいる所存であります。
 一方、景気の面では、引き続き国内民間需要を中心とする持続的な安定成長の達成に向けて努力してまいります。
 このため、昭和六十年度予算におきましても、厳しい財政事情のもとで公共事業の事業費の確保に努めるなど、景気の維持拡大にはできる限りの配慮を払っております。
 金融面では、我が国金融は、現在、量的に緩和した状態にあり、最近では長期金利も低下しております。今後の金融政策の運営につきましては、従来同様、物価、景気、内外金利の動向、為替相場の状況等を見守りながら、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。
 第二は、財政改革の強力な推進であります。
 我が国経済、社会の柔軟性を維持し、今後の内外経済の変化に適応していくためには、財政の対応力の回復が最も急を要する政策課題であることは、多言を要しないところであります。
 このため、政府は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」において、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めるという努力目標を示し、財政改革を推進してきております。
 特に近年においては、連年一般歳出を前年度同額以下とするなど、制度、施策の見直し等を通ずる歳出の節減合理化を中心として、財政健全化のための努力を積み重ねてまいりました。昭和六十年度予算においても、引き続き歳出歳入両面の努力によって、公債を前年度の当初発行予定額に比し一兆円減額することとしております。
 しかしながら、これらの努力をもってしてもなお、我が国財政は深刻な状態にとどまっていると申さざるを得ません。
 すなわち、公債の発行残高は、昭和六十年度末には約百三十三兆円にも達する見込みであり、その利払い等に要する経費は十兆円を超えるに至っております。これは、歳出予算の一九%強を占める大きさであり、社会保障関係費をも上回り、主要経費中最大の歳出項目となっているのであります。
 この利払い費の増高が、政策的な経費に充て得る財源を極度に制約しております。その結果、財政に本来期待されている諸機能を十全には発揮し得なくなっており、このままでは、今後における人口の急速な高齢化や国際社会における責任の増大など、社会経済の変化に対応する力が失われるだけでなく、さらには後代の国民に、高齢化に伴うさまざまな負担に加え、多額の公債の元利払い負担を負わせることになりかねないのであります。今後とも我々は、年々着実に財政改革を進めてまいらなければなりません。
 このため、歳出面におきましては、政府と民間の役割分担並びに国と地方の機能分担及び費用負担のあり方を見直すなど、連年の努力を踏まえ、その節減合理化にさらに積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 また、歳入面におきましては、税制調査会の昭和六十年度の税制改正に関する答申において、「既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきている」との極めて異例の御指摘をいただいているところであります。これについては、政府といたしましては、税制調査会の答申の趣旨等を踏まえ、税制全般にわたる広範な角度からの論議と検討が行われるべき問題であると考えております。今後、国民各位の深い御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
 なお、財政改革の問題は中期的な展望を持って幅広い視点から検討を行う必要がありますが、このような検討に資するため、本年度におきましても、中期的な財政事情の展望を作成したいと考えております。
 財政改革への道は決して平たんなものではありません。しかし、私は、今後ともさらに財政改革を推進するため、渾身の努力を重ねてまいりたいと存じます。
 第三は、金融の自由化及び円の国際化の促進であります。
 近年、経済構造の変化や経済全般にわたる国際化の進展、技術革新等を背景に金融の自由化及び円の国際化が急速に進展しておりますが、私は、これらの動きは我が国経済の発展と国民生活の向上に資するものであると同時に、我が国が世界経済の発展に貢献していく上で有意義なものであると考えております。
 このような考え方に立ち、大蔵省はつとに新銀行法の制定、外国為替管理法の改正等を行い、そのもとで諸般の自由化・弾力化措置をとってまいりました。とりわけ昨年には、「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」や、いわゆる日米円・ドル委員会の報告書を作成、公表し、金融の自由化及び円の国際化について、今後の展望や当面とるべき具体的措置等を内外にお示ししたところであります。今後、この展望等に沿って、金融の自由化、円の国際化を着実に進めてまいりたいと考えております。
 他方、金融行政並びに金融政策において、信用秩序の維持を図ることは、国民に対する重大な責務であります。こうした観点から、私は、今後における金融の自由化、円の国際化の促進に当たっては、信用秩序の維持に遺漏なきを期してまいる所存であります。
 もとより、金融の自由化といい、円の国際化といい、これらは、国民の間に自己責任原則の浸透が図られて初めて真に実現されるものであります。また、自由化・国際化の中にあって、金融機関等においては、経営の効率化がさらに必要となることは改めて申すまでもありません。
 さらに、金融の自由化や円の国際化の一層の進展を図りつつ、金融政策の有効性を確保するためには、従来以上に金利機能を重視する必要があり、この観点から、引き続き金融市場の整備等について検討してまいりたいと考えております。
 なお、我が国金融の自由化や円の国際化に対しては海外から強い関心が寄せられており、昨年は米国のほか英国の金融当局との間にも建設的な意見交換の場を持ったところであります。今後とも、金融制度や金融行政をめぐる諸問題について相互の協調と理解の増進に努めてまいる考えであります。
 第四は、我が国が国際国家としてさらに飛躍するため、世界経済の発展に貢献することであります。
 私は、昨年九月、ワシントンで開催されたIMF・世銀総会において、日本の大蔵大臣として初めて総会の議長を務め、我が国の戦後における経済発展の経験を踏まえ、IMF・世銀を中心とする国際協力の一層の強化を呼びかけてまいりました。今後ともこれらの国際金融機関に対し、資金協力のみならず、政策立案や運営などの面においても我が国の国際的地位にふさわしい貢献を行い、世界経済の健全な発展に寄与してまいりたいと考えております。
 また、十カ国蔵相会議においては、国際的な通貨の安定を図るため、国際通貨制度改善のための条件を明らかにする作業が進められており、私が議長としてその取りまとめを行うことを予定しております。我が国としては、現行の変動相場制を前提に、その漸進的かつ着実な改善が推進されるよう、今後とも本作業に積極的に貢献してまいる所存であります。
 なお、最近の為替市場の動きにかんがみ、先般ワシントンで開催された主要五カ国の蔵相会議において、為替市場の一層の安定に向けて各国が努力する旨合意いたしました。我が国としても、このような方向で引き続き各国と協力してまいりたいと考えております。
 一方、我が国の国際収支について見ますと、貿易・経常収支は大幅な黒字を続けておりますが、これは、米国経済の急速な拡大、ドルの独歩高や一次産品価格の低迷等の海外の要因によるところが大きいと考えられます。
 したがって、この不均衡を是正するためには、基本的に、ドルの独歩高の是正等の国際的な経済環境の変化が必要であると考えます。
 同時に我が国としては、自由貿易体制の維持強化を通じて世界貿易の拡大と世界経済の発展に貢献する見地から、率先して市場の開放と輸入の促進に努めることも等しく重要と考えております。このため、政府は昨年、二度にわたって対外経済対策を策定し、現在、それらの各種の施策の着実な実施に努めているところであります。
 この二つの対策に沿い、昭和六十年度関税改正においては、開発途上国の経済発展への貢献にも配慮しつつ、東京ラウンド合意にのっとった関税引き下げの繰り上げ措置を、米国・ECより一歩先んじて実施するとともに、諸外国の関心の強いワイン、紙製品等の関税率の引き下げ、特恵関税制度の改善等を行うこととしております。
 なお、経常収支黒字の反面、我が国の長期資本収支は大幅な赤字を継続しており、これによって世界の資本不足国に必要な資金が供給され、同時に、世界的な金利上昇圧力も緩和されている点にも留意する必要があると考えられます。
 経済協力につきましては、厳しい財政事情のもとではありますが、開発途上国の自助努力を支援し、もって世界経済の安定と発展に資するため、今後とも効果的、効率的実施に十分配慮しつつ、その充実に努める所存であります。
 また、累積債務問題につきましては、債務国において中長期的観点に立った構造調整を進めるとともに、それを支援する関係当事者の真剣な努力が引き続き重要であると考えております。
 次に、昭和六十年度予算の大要について御説明いたします。
 昭和六十年度予算は、引き続き財政改革を強力に推進するため、特に、歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本として、あわせて、歳入面についてもその見直しを行い、これにより公債発行額を可能な限り縮減することとして、編成いたしました。
 歳出面におきましては、既存の制度、施策の見直しを行うなど徹底した節減合理化を行い、その規模を厳しく抑制したところであります。
 概算要求の段階におきましては、前年度に引き続き対前年度マイナスの概算要求基準を設定し、各省庁において、それぞれ所管の予算について根底から洗い直し、優先順位の厳しい選択を行ったところでありますが、その後の予算編成に当たりましても、聖域を設けることなくすべての分野にわたり徹底的な節減努力を払いました。
 特に、補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、人件費補助等の見直し、高率補助率の引き下げ、その他廃止、合理化など徹底した整理合理化を積極的に進めました。これにより、補助金等総額においては、前年度に引き続き、真にやむを得ない増加要素を織り込んでなお、前年度に比し千三百四十四億円の減と厳しく圧縮いたしました。なお、いわゆる行革関連特例法による特例措置については、所要の継続措置を講ぜざるを得なかったのでありますが、現下の厳しい財政事情にかんがみ、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。これらについては、別途、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 国家公務員の定員につきましては、定員削減計画の着実な実施、新規増員の厳しい抑制のほか、定年制度の施行による退職者の後補充に対する適切な対応の結果、行政機関職員について、六千四百八十二人に上る大幅な縮減を図ることといたしております。
 以上の結果、一般歳出の規模は、三十二兆五千八百五十四億円と前年度に比べ三億円の減に圧縮いたしております。これは、昭和五十八、五十九年度に引き続き三年連続の対前年度減額であります。
 これに国債費及び地方交付税交付金を加えた一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ、三・七%増の五十二兆四千九百九十六億円となっております。
 次に、歳入面につきまして申し述べます。
 歳入の基幹たる税制につきましては、昭和六十年度においては、最近の社会経済情勢と現下の厳しい財政事情にかんがみ、税負担の公平化、適正化を一層推進するとの観点から、その見直しを行うことといたしました。すなわち、貸倒引当金の法定繰り入れ率の引き下げ、公益法人、協同組合等の軽減税率の引き上げ、利子配当等の課税の適正化、租税特別措置の整理合理化等を行うとともに、基盤技術研究開発の促進、中小企業技術基盤の強化等に資するため所要の措置を講ずることといたしております。
 なお、税の執行につきましては、今後とも、国民の信頼と協力を得て、一層適正公平な税務行政を実施するよう、努力してまいる所存であります。
 また、税外収入につきましては、極めて厳しい財政事情にかんがみ、可能な限りその確保を図ることといたしております。
 公債につきましては、以上申し述べました歳出歳入両面の努力により、その発行予定額を前年度当初予算より一兆円減額し、十一兆六千八百億円といたしました。その内訳は、建設公債五兆九千五百億円、特例公債五兆七千三百億円となっております。この結果、公債依存度は二二・二%となり、前年度当初予算の二五・〇%より二・八ポイント低下することとなります。特例公債の発行につきましては、別途、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 また、昭和六十年度においては、特例公債の借換債一兆八千六百五十億円を初めて発行することとなりますが、これを含め、八兆九千五百七十三億円の借換債の発行を予定しており、これを合わせた公債の総発行額は二十兆六千三百七十三億円となります。これらの公債につきましては国債引受団による引き受け、中期国債の公募入札のほか、特に資金運用部資金による引き受けの拡充により、円滑な消化を図ることといたしております。
 さらに、今後の公債の大量の償還、借りかえに円滑に対応するため、短期の借換債の発行や年度を越えた借換債の前倒し発行といった新たな方策を昭和六十年度から実施し得るよう、所要の制度改正を行うことといたしております。
 なお、昭和六十年四月から発足する日本電信電話株式会社の株式に関しては、そのうち売却可能な分については国債整理基金特別会計に帰属させ、公債償還財源の充実に資することとしております。他方、政府保有が義務づけられている分については産業投資特別会計に帰属させ、その配当金収入を同特別会計において活用することとしております。また、日本たばこ産業株式会社の株式に関しても同趣旨の措置を講ずることとしております。
 財政投融資計画につきましては、対象機関の事業内容、融資対象等を厳しく見直すとともに、資金需要の実態及び政策的な必要性を勘案し、重点的、効率的な資金配分に努めることとしております。
 この結果、昭和六十年度の財政投融資計画の規模は二十兆八千五百八十億円となり、昭和五十九年度当初計画額に対し一・二%の減額となっております。
 次に、主要な経費につきまして申し述べます。
 昭和六十年度予算におきましては、極めて厳しい財政事情のもとで、経費の徹底した合理化、効率化を図っておりますが、限られた財源の中で質的な充実に配意することとし、特に、真に恵まれない方々に対する施策等については、きめ細かな配慮を行うとともに、中長期的観点から充実を図る必要があるものについては配意したところであります。
 まず、社会保障関係費、文教及び科学振興費につきましては、今後における高齢化社会の進展等社会経済の変化に対応して、今後とも各種施策が安定的かつ有効に機能するよう制度、運営の不断の見直しが必要でありますが、昭和五十九年度予算で進めた医療保険、年金、雇用保険及び育英奨学事業等の本格的な制度改革の上に立って合理化、効率化を進めることとしております。また、老人や心身障害者に対する福祉施策の充実、保健事業の推進、高年齢者の就業機会の確保、教育環境の整備、基礎科学研究の充実など、施策の推進に努めております。
 経済協力費につきましては、国際情勢等を考慮しつつ、政府開発援助予算の増額について特段の配慮を行うこととし、防衛関係費につきましても、他の諸施策との調和を図りながら、質的充実に配意することとしております。また、エネルギー対策費につきましても、中長期的な需給見通しを踏まえ、各種施策を計画的かつ着実に推進することといたしております。
 中小企業対策費につきましては、中小企業を取り巻く環境の変化に対応し、その近代化、構造改善を促進していくための措置を講じております。また、農林水産関係費につきましては、需要の動向に即応した生産の再編成を行いながら、生産性の高い農業の実現を図ることを基本に、施策の重点的、効率的な推進に努めております。
 また、食糧管理費の節減合理化、国鉄経営の合理化等をさらに推進したところであります。
 公共事業関係費につきましては、厳しい財政事情にかんがみ、総額として前年度を下回る水準としておりますが、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備に重点的に配意することとし、一般公共事業の事業費については、前年度を上回る水準を確保することといたしております。
 昭和六十年度の地方財政につきましては、高率補助率の引き下げによる影響等を織り込んで五千八百億円の財源不足が見込まれますが、地方交付税交付金の特例措置等の地方財政対策を講ずることとし、その適正な運営に支障の生じないよう配慮しております。地方団体におかれましても、歳出の節減合理化を推進し、より一層有効な財源配分を行うよう要請するものであります。
 この機会に、昭和五十九年度補正予算につきまして一言申し上げます。
 昭和五十九年度補正予算につきましては、災害復旧費の追加、給与改善費、健保法改正の施行遅延等に伴う国庫負担増を初め義務的経費の追加等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。
 そのための財源としては、既定経費の節減、予備費の減額を行い、租税及び印紙収入、税外収入の増加を見込むとともに、さらに、特例公債の追加発行を避けるため、前年度の純剰余金二千五百六億円につきましてやむを得ずその二分の一を充てることといたしました。なお、純剰余金の二分の一につきましては、財政法の規定に基づき、公債償還財源として国債整理基金特別会計に繰り入れることといたしております。
 また、昭和五十九年の災害につきましては、早期にその復旧を図ることとし、これに要する経費につきましては、建設公債千八百五十億円を発行することによりその財源を確保することといたしております。
 この結果、昭和五十九年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し八千八百六十一億円増加して、五十一兆五千百三十四億円となっております。
 なお、一般会計及び特別会計において、景気の持続的拡大に資するため、一般公共事業に係る国庫債務負担行為二千四十六億円を追加計上し、これにより事業費として三千億円を確保することといたしております。
 以上、昭和六十年度予算及び昭和五十九年度補正予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)
 我々は昭和六十年代の劈頭に立っております。この新たな十年間において、我が国は世界の諸国民の平和と繁栄に貢献しながら、潤いのある、活力に満ちた経済、社会を築いてまいらねばなりません。
 このためには、我々は勇断をもって眼前にある課題の解決に取り組むことが必要であります。とりわけ、財政改革の推進こそは、我々の子孫に重荷を残すことのないよう、ぜひとも解決しなければならない課題であることは、申すまでもありません。(拍手)
 財政は国民のためのものであり、同時に国民によって財政は支えられているのであります。受益と負担はいかにあるべきか、今後の財政についてどのような展望を開いていくかなどの問題に、国民各位の御理解を得ながら取り組んでまいる所存であります。
 国民各位の一層の御支援と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(坂田道太君) 国務大臣金子一平君。
    〔国務大臣金子一平君登壇〕
#10
○国務大臣(金子一平君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的な考え方について、私の所信を申し述べたいと存じます。
 昭和六十年は、第二次世界大戦後四十年目に当たり、二十一世紀まで余すところ十五年という、いわば節目に当たる年であります。我が国経済は、その規模において、昭和六十年度には三百兆円台に達することになりますが、これは、十年前に比べて約二倍であります。我々は、戦後という歴史の時間的な広がりの中でも、世界という空間的広がりの中でも、改めてみずからの位置するところに思いをいたすとともに、未来を直視し、我が国が直面するもろもろの課題に対し、これまでにも増して真剣に対応を急がなければならないときに立ち至っております。
 第一次石油危機に始まったここ十年ばかりを顧みましても、内外経済情勢は不安定と不透明に満ちた激動と波乱の時代でありました。この間、我が国経済は、激動する波に洗われつつも、国民の英知とすぐれた対応力によって、物価、成長率、失業率等さまざまの面で、諸外国に比べて良好な成果を挙げてまいりました。
 今この時期を振り返ってみれば、既にその中にあって、新しい意識、新しい技術、新しい産業など次の時代に向けての離陸のための準備が始まっていたことを見てとることができるのであります。この新しい時代の入り口に立って、我が国の経済運営に求められている課題は、これらの動きを円滑に進展させ、これを経済社会の創造的再構築を伴った新しい成長に確実に結びつけていくことであります。
 ここで、内外経済の現状について申し述べたいと存じます。
 世界経済は、アメリカの景気拡大等に導かれ、国別、地域別の相違はありますものの、全体として景気回復基調にあります。インフレは鎮静化し、設備投資も総じて堅調であります。
 しかし、アメリカに端を発する世界的な高金利、欧州諸国を中心にした高水準の失業、世界的な経常収支の不均衡、発展途上国の累積債務等幾つかの懸念材料があり、こうした状況を背景として保護貿易主義的傾向は依然として衰えを見せておりません。
 我が国経済も、三年間にわたる景気後退局面を終えて、物価の安定が続く中で、一昨年春以降、着実な上昇を続けておりまして、その内容もアメリカの景気拡大を契機とする輸出の増加に依存した回復から、次第に内需と外需のバランスのとれた景気拡大過程に入ってきております。民間設備投資は順調に増加を続け、輸出も増加傾向を続けております。個人消費や住宅投資の伸びは緩やかではありますが、今後は次第に足取りがしっかりしたものとなっていくと考えられます。他方、対外面を見ますと、経常収支はかなりの黒字を示しており、また、長期資本の大幅な流出が続いております。
 このような内外経済の動向を勘案すると、昭和五十九年度の実質成長率は、昨年初めの当初見通しの四・一%程度をかなり上回る五・三%程度と見込むことができます。また、昭和六十年度経済は、次に申し述べますような政府の諸施策と民間経済の活力とが相まって、実質で四・六%程度の成長を達成するものと見込まれます。このうち、外需の寄与度は低下し、内需が全体として順調に増加するとともに、個人消費や住宅投資が寄与度を高めるなど、内需の中身も、よりバランスのとれた姿になるものと見込まれます。
 このような内外経済情勢のもとで、私は、特に次の諸点を基本として、今後の経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 まず第一は、国内民間需要を中心とした景気の持続的拡大を図るとともに、雇用の安定を確保することであります。三年にわたる長い景気後退のトンネルを抜けて、回復から拡大に転じ、将来に明るさが見えた今日、この内外経済情勢の好機をとらえて、景気の持続的拡大のため不断の努力を重ねてまいりたいと考えております。
 このため、引き続き行財政改革の推進に努め、民間経済の活力が最大限に発揮されるような環境整備を行うとともに、景気動向に即応した適切かつ機動的な政策運営に努めてまいります。
 財政政策の面では、厳しい財政事情のもとではありますが、昭和六十年度予算におきましては、一般公共事業の事業費について、前年度を上回る水準を確保することといたしましたが、今後とも、景気動向に即応した適切かつ機動的な財政運営を図ってまいりたいと考えております。
 また、金融政策の面では、内外の経済金融情勢等に即応しつつ、その適切かつ機動的な運営を図っていくことが重要であると存じます。
 同時に、民間活力の発揮の観点からは、特に、先端的あるいは基盤的な技術分野等における研究開発の促進の重要性にかんがみ、昭和六十年度におきまして、そのための所要の措置を講ずることといたしております。
 また、今日の緊急かつ最重要の課題である、いわゆる規制の緩和の問題につきましては、今後とも強力に推進してまいる所存であります。
 第二は、物価の安定基調を持続させることであります。物価の安定は、国民生活安定の基本要件であり、特に今後社会の高齢化が急速に進行する中で、最も重要な政策課題の一つであると考えます。
 今後の物価動向については、引き続き安定基調で推移し、昭和六十年度は卸売物価一・一%程度、消費者物価二・八%程度の上昇にとどまるものと見込んでおります。
 今後とも物価の動向に細心の注意を払いながら機動的な対応に努め、物価の安定基調を維持してまいりたいと考えております。公共料金につきましても、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して厳正に取り扱っていく考えであります。
 さらに、国民生活をめぐる条件変化に対応しつつ、生涯を通じて国民生活を豊かなものにすることを目指して、人生八十年時代にふさわしい経済社会システムのあり方など総合的方策について検討を進めるとともに、情報化、サービス化の進展等の新たな事態に適切に対応する消費者行政の充実など消費者利益の擁護、増進のための諸施策を推進してまいりたいと考えております。
 第三は、調和ある対外経済関係の形成と世界経済への貢献であります。国際関係における相互依存、相互浸透の深まりの中で、我が国は世界経済の一割を占める国家になりました。したがって、今や我が国は、みずから率先して保護貿易主義に対する巻き返しを図り、世界経済の均衡ある発展に向けて、その国際的地位にふさわしい積極的な貢献を行っていくことが必要であります。
 このため、政府は、累次にわたる対外経済対策を決定し、その推進に努めてまいりました。昨年十二月の対策におきましては、発展途上国の経済発展に貢献するとともに、OECD閣僚理事会の合意に従い、さらには、我が国が率先して自由貿易体制の維持強化を図ろうという見地から、他の主要先進国に先駆けて東京ラウンドにのっとった関税引き下げの前倒しを実施するほか、特恵シーリング枠の拡大など特恵関税制度の改善を図る措置を講じました。
 今後とも、これらの措置の着実な実施に努めるとともに、対外経済問題の解決に引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに、世界貿易の新たな拡大を目指すガット新ラウンドの早期実現のために引き続き精力的に努力するとともに、我が国が平和国家として国際社会に貢献していく見地から、昭和六十年度予算におきましても、政府開発援助について重点的な配慮を行ったところであります。今後とも経済協力につきましては、一層の拡充と効率的かつ効果的な推進を図ってまいる所存であります。
 以上、我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的な考え方について所信を申し述べました。
 我が国においては、エレクトロニクス等を中心とする活発な技術革新と、これらを背景とする高度情報化が急速に進展しており、新たな時代における経済社会発展の牽引力としての期待が高まっております。
 こうした中にあって、昨年暮れには、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」について、最初の見直し作業を行い、その結果を昭和五十九年度リボルビング報告として公表いたしました。
 今後、中長期の経済運営に求められている課題は、行財政改革を初めとするこれまでの諸改革を一層強力に進め、来るべき時代に備えた経済社会の適切な枠組みづくりに取り組むとともに、その基礎の上に適切な経済運営に努め、中長期にわたって、内需中心のインフレなき持続的成長を達成するよう目指すことであります。
 幸いにも、我が国においては、高い貯蓄率、旺盛な企業家精神、良好な労使関係、また何にも増して、変化に対応する柔軟な適応力に富んだ国民のすぐれた資質等が、今後も引き続き保持されるものと予想されます。我が国経済がこの潜在力を最大限に発揮することにより、新たなフロンティアの拡大と活力に富んだ経済社会の実現が可能であると確信するものであります。
 私は、このような経済社会の実現を目指して、我が国経済のかじ取りに全力を傾けてまいります。国民の皆様の御支援と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#11
○長野祐也君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十八日午後一時より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#12
○議長(坂田道太君) 長野祐也君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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