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1984/01/29 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第8号
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1984/01/29 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第8号

#1
第102回国会 本会議 第8号
昭和六十年一月二十九日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和六十年一月二十九日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続
   )
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
    午後二時三分開議
#2
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
#3
○議長(坂田道太君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。竹入義勝君。
    〔竹入義勝君登壇〕
#4
○竹入義勝君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の施政方針演説に対し、重点項目に絞って質問をいたします。
 総理は、本年が終戦から四十年の節目の年であるとし、戦後政治の総決算と同時に、二十一世紀に向けて軌道を敷設するときであると強調されました。私は、本年を二十一世紀への出発点とする総理のお考えに異論を持つものではありません。だがしかし、そうした発言の中身には危惧の念を持たざるを得ません。すなわち、中曽根総理が、我が国をいかなる政治理念のもとに、我が国をどのような方向に導こうとしておられるのかという問題であります。
 中曽根政権が誕生してからのこの二年間、国民の前に示されたのは、まず憲法改正を意図する発言でありました。就任直後の訪米時におけるいわゆる一連のタカ派的発言は、六十年度を含めたこの三年間の防衛予算の突出など軍事力増強政策と軌を一にするもので、その本質はいささかも改められておりません。
 さて、この二年間に国民生活は一体どうなったでありましょうか。行政改革の名のもとに、福祉政策は大幅に後退し、今や「増税なき財政再建」も棚上げとなり、大型間接税の導入が画策されているのが実情であると言わなければなりません。政治倫理に至っては、一昨年の総選挙後国民の審判を厳しく受けとめると言明しながら、今日まで政治倫理の確立に何一つ具体策を講ずることなく、国民の政治不信を増大させてきたのであります。したがって、総理が論ずる日本の将来は、平和と生活安定を願う国民に対していかなる説得力を持つのであろうか、そうした疑問を抱きながら、私は過日の施政方針演説を聞いた次第であります。私は、こうした視点から、総理の政治姿勢について見解をただすものであります。
 第一に、憲法への姿勢であります。
 私は、戦後四十年、戦前の苦い歴史に終止符を打ち、廃墟の中から幾多の困難を乗り越えて今日の平和と繁栄が確保できたのは、日本民族の英知と勤勉の上に、平和、人権、民主の現行憲法を堅持し、その枠組みの中で政治が行われてきたことに多くの要因があると考えますが、いかがでありましょうか。(拍手)もし総理がこうした認識を持たれるならば、総理の言う二十一世紀への出発は、現行憲法を原点とし、将来ともに現行憲法の精粋を堅持することを明言されるべきでありますが、あわせて総理の見解をお尋ねするものであります。
 第二に、政治倫理の問題であります。
 この数年間、政治全体のわだかまりとなっていることは、一審で有罪判決を受けた議員の政治的道義的責任があいまいにされ続けていることであり、国会は、その自浄能力を発揮して政治倫理を確立する責務があります。そのためにも政治倫理審査会を直ちに設置し、懸案事項の処理を速やかに行うべきであると考えます。また、政治腐敗を防止するためには、特に政治献金を個人の寄附に限るよう厳しくすべきであり、あわせて総理の見解を承りたい。
 第三には、衆議院の定数是正問題であります。
 定数不均衡が極限にまで達し、司法から違憲ないし違憲状態と指摘されている現状に対し、総理の決意、自民党総裁としての党の意見の取りまとめについて、その具体的構想並びに日程をお聞かせをいただきたい。公明党は従来から、公選法に定数法規の確立と第三者機関の設置によって、公正な定数配分の実現を主張いたしております。これらについて総理の所見を承りたいと思います。
 さて、政治姿勢の最後に、総理の私的諮問機関についてであります。
 総理は、歴代内閣の中でも、殊のほか私的諮問機関づくりに御熱心であります。しかし、その背景には、政府にとって都合のよい結論を導き出し、その出た結論を権威づけるために、私的諮問機関を隠れみのとして乱用している節があることを私はまことに遺憾に思うのであります。(拍手)私は、私的諮問機関の設置に関しては、行革推進の観点から何らかの歯どめが必要であると申し上げるものでありますが、総理の所見を伺うものであります。
 次に、外交問題についてであります。
 世界じゅうの注目の中で開催された年頭の米ソ外相会談の結果は、甘い見通しを持つことはできないとしても、少なくとも軍拡競争に歯どめをかけ、新しいデタントへの米ソの話し合いの出発点に立つことができたと思います。この米ソの対話復活という事態の中で、西欧諸国はデタントを模索し独自の対ソ外交を進めているのに対し、対ソ外交の改善策も見通しも持たない中曽根外交と言われておりますが、総理は日ソ関係の改善をどうされようとするのか。総理は、人類の未来に向かって明るい希望の持てる年にしたいと言われるが、本年を真に平和と軍縮の年にしようとするなら、その具体的な施策と方針を国民の前に明確に示すべきではないでしょうか。軍縮を進展させるためには、国際世論の結集と喚起こそが重要であり、特に第三回目の国連軍縮特別総会の早期開催を我が国が強く推進すべきだと思いますが、これらについて総理の所信を承りたい。
 総理は、さきの日米首脳会談で、レーガン大統領の宇宙戦略防衛構想いわゆるスターウオーズ構想に、一定の留保をつけたとはいえ理解を示したわけであります。しかし、この構想には米国内でも批判があり、新たな核軍拡、宇宙の軍事化につながるおそれのあるものであります。総理、日本の基本方針である宇宙の平和利用に大きく反するのではないでしょうか。国民が納得できるような御説明を願いたい。
 また、日米首脳会談では、市場開放策をみずから個別チェックすることを約束したのでありますが、具体的にどう取り組まれるのか、アメリカ側から公約違反と言われないような国内措置をとり得る成算がおありになるのか、具体的に伺いたいのであります。
 外交問題の最後として、朝鮮半島の緊張緩和を進めるためにどのような役割を果たされようとしておられるのか、また、深刻化しているアフリカの飢餓問題に対する政府の対応を具体的に御説明をいただきたいのであります。
 次に、防衛問題についてであります。
 超緊縮予算案において、防衛関係費が昨年の六・五五%を上回る六・九%増というのは、異常な事態と言う以外にありません。総理、防衛費はいよいよ三兆円を超え、国民総生産との比率も〇・九九七%であります。この夏の人事院勧告による給与改定で一%を突破することは確実であり、そこで防衛費の問題に限定して質問をいたします。
 まず第一には、福祉、文教予算、景気対策のかなめである公共事業関係予算がここ毎年厳しく抑制されている中で、なぜ防衛費だけを水膨れ予算とするのか、ここに国民は大きな疑問を感じておるのであります。(拍手)我が国の防衛費は、十年前にはフランスの二分の一、イギリスの二・五分の一でありました。しかし、この十年間をGNP一%の枠内で推移したにもかかわらず、現在ではこの両国の防衛費に急迫しつつあり、GNP一%突破を許すならば、やがてイギリス、フランス、西ドイツを追い抜き、まさしく軍事大国そのものとなる危険性を強めるでありましょう。すなわち、日本経済におけるGNP比率一%はまさしく巨額なものであるからにほかなりません。今なぜ毎年毎年このように防衛費を増大させなければならないのか、その必要性、その理由を、国民が納得のいくよう明確に説明されたいのであります。(拍手)
 第二に、昨日総理は、GNP問題を四点に分けて答弁をされましたが、一%枠を守りたいことと防衛大綱の早期達成とは、並列に並べて済まされるものではありません。総理は、どちらに重点を置かれるのか。すなわち、一%枠厳守の閣議決定を守る決意を持たれるのか、あるいは変更する考えにあるのか、この際、明確にしていただきたいのであります。
 GNP一%枠とは、現憲法を擁護しつつ軍拡競争の中で一定の歯どめを与え平和を守ろうとする国民的合意であり、かつ不戦の誓いとともに日本国政府がみずからを律する平和意思の表現である、日本の重要な平和原則の一つであります。総理は、国民世論をあえて踏みにじってまでもGNP一%枠を強行突破されるおつもりなのか、確たるお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 次に、経済、財政の問題であります。
 総理、私は六十年度の予算編成に与えられた課題をこう考えます。
 その第一は、我が国経済を内需主導の成長。パターンヘ転換し、内外需の均衡のとれた安定成長の軌道へと乗せること。第二には、「増税なき財政再建」を着実に推し進めること。このためには、見せかけの改革ではなくして、本来やらなければならない行政の改革を徹底断行することであります。第三には、高齢化社会への移行に備えて、新しい福祉制度の全体像を描きながら、その確かな一歩をこの六十年度で踏み出し始めることであります。しかし、まことに遺憾ながら、政府の予算案はこの課題に的確な答えを示しておらず、逆に解決を求められている課題に背を向けた予算案であると言わざるを得ません。そうした視点から、総理にお尋ねをいたします。
 まずは、景気動向とその対策であります。
 依然として内需の低迷が続いておりますが、この原因が個人消費と民間住宅などの内需の伸び悩みにあることは明らかであります。政府が内需拡大の具体策を講じないで、依然として外需依存型経済で事足れりとする姿勢は、景気の地域間、業種間格差を拡大させ、失業と中小企業倒産を放置する弱者切り捨て策であり、我が国の経済、財政をますます萎縮させるものと言わざるを得ませんが、総理の御所見をしかと伺うものであります。(拍手)
 また我々は、五十九年度に引き続き五%台の実質成長を確保し、安定成長を実現させるための具体策として、一兆円規模の所得税、住民税減税、一般会計における名目成長率程度の公共事業費の増額、中小企業に対する設備投資減税の拡充などの実施を強く要求をいたします。総理の誠意あるお答えを求めるものであります。
 総理、所得税の減税は五十九年度に実施されたとはいえ、課税最低限の引き上げ幅は、課税最低限が据え置かれてきた五十二年度以降の消費者物価の上昇率から見れば、約二分の一程度にすぎません。したがって、少なくとも今日までの物価上昇分をカバーし、その上に不公平税制の是正という見地からして、減税はこの六十年度においてぜひとも実施すべきであり、重ねて総理の所信を伺うものであります。(拍手)
 さて、あなたの公約である「増税なき財政再建」は、六十年度予算案で破綻を宣告したものと受けとめざるを得ませんが、それでも総理は、これまでどおり「増税なき財政再建」の公約を掲げ、それを堅持されるのか。もしそうであれば、総理が公言された税制全般にわたる改革は、総理公約の中身である大型間接税の導入はしない、また国民所得に対する租税負担率は引き上げないとの範囲を超えないと断言をすべきではありませんか。昨日、総理は一般消費税の導入を否定されたのでありますが、ならば、それ以外の形での増税を考えておられるのかどうか。改めて見解を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 政府税制調査会は、大型間接税の導入と見られる税制の抜本改革のほかに、所得税減税の見送りによる実質増税、年金課税の強化、公益法人に対する税率の引き上げ及び金融収益に対する新規課税、広告費課税の創設、赤字法人への課税化、物品税の課税対象の拡大など十項目を超える広範な増税を示唆し、まるで増税宣告書であるかのような答申を行っております。同時に、これらの増税が大型間接税の導入との二者択一を迫る形となっていることは、総理、これは明らかに国民に対する恫喝であります。これらの増税答申をいかに扱われるのか、我々は、大型間接税を初めあらゆる増税を断じて認めるわけにはまいりません。総理の見解をしかと伺いたのであります。
 また、総理の「増税なき財政再建」の公約が放棄、後退ないしは変更される場合には極めて重大な政治責任を伴うものと考えますが、総理の所見をお聞かせをいただきたいのであります。
 次に、行政改革であります。
 昨今、行政改革による歳出削減が限界に来ているとする声がありますが、私は、今こそ行政改革の原点に立ち戻り、第一に、中央省庁、特殊法人等の統廃合の断行、第二に、国家公務員の純減数の拡大、第三に、許認可事務の洗い直しを中心とした行政事務の簡素合理化、第四に、国と地方間の事務、財源の見直し等を徹底すべきであると考えますが、総理の確たる方針を改めて明確にされたいのであります。
 私は、基本問題をなぜ重ねて総理に迫るのか。それは、今後の行政改革の焦点が地方行革に移行するわけでありますが、現在の国、地方間の行財政構造のもとでは、国の制度見直し、その度合いいかんが地方行革の成否を決するからであります。とりわけ六十年度予算案では、事務事業の見直しを行わないままに高率補助金の補助率を一律削減し、地方に負担転嫁をさせようといたしております。このような措置は、本来あるべき行革と逆行するものであり、私どもは到底納得することができません。地方行革を進めるに当たっては、国、地方を通ずる事務事業の廃止、縮減、国の地方関与の是正及び国、地方間の事務、財源の再配分を図ることが必要でありますが、総理の基本理念並びに具体的展望を示していただきたいのであります。
 さて、国鉄再建問題は、総理も強調されるように行政改革の最重要テーマの一つであります。私も、ただしたいことが多々ありますが、国鉄再建監理委員会からの最終答申が提出されていない現状にかんがみ、総理が国鉄の分割・民営化を行う考えはあるのか、また余剰人員問題に対して特別立法を考えているのか、この二点について伺うものであります。
 次に、本年四月一日より実施される電電改革の残された課題についてであります。
 電気通信事業への競争原理導入によって遠距離電話料金の値下げが期待される反面、それに伴い市内料金や過疎地域の料金の値上げが懸念されております。これらの問題にどのように対処されようと考えておられるのか。私は、料金認可に際し利用者の声が反映できるよう電気通信審議会に利用者代表を加え、さらに公聴会設置を義務づける等審議会の充実強化を早急に行う必要があると考えますが、それぞれお答えをいただきたいと思います。
 次に、社会保障問題特に高齢化社会への対応についてお尋ねをいたします。
 高齢化社会、人生八十年型社会にあっては、さまざまな制度や社会的仕組みを組み合わせた総合的施策が確立されることがとりわけ重要な課題であります。しかし、六十年度予算は、こうした展望なきままに、ただ財政のつじつま合わせのために、社会保障関係費を中心とした補助金の一律削減によって地方自治体の負担増や福祉を後退させるものであります。したがって、高齢化社会における総合的な社会保障の基本計画の策定について、お考えをお示しいただきたいと思うのであります。
 高齢化社会を迎えるに当たって重要なものは年金制度であります。現在、基礎年金法案が参議院で審議中でありますが、制度が発足すれば、将来耐えられそうにもない高額な保険料負担の前に、現実に百二、三十万人と推定される無年金者に加え、さらに多数の不加入者が増加することが危惧されるのであり、この点の見直しは絶対に不可欠であります。また、高負担でありながら生活保護基準を下回るという給付水準についても再検討すべきであります。あわせて、痴呆性老人対策の早期確立についてどのように考えておられるのか、それぞれ具体的に御答弁をいただきたいのであります。
 次に、婦人差別撤廃条約批准のための国内法改正の最重要課題である雇用における男女差別の解消についてであります。
 政府が提出した男女雇用機会均等法案は、最も肝心な募集、採用時における差別の是正について、これを努力義務規定にとどめるなど条約の精神から遠く大きく後退したものとなっております。すべての労働団体、すべての婦人団体がこれに強く反対をいたしており、世論に従うのであれば、この法案は撤回されるべきであります。私は、四野党共同提案の男女雇用平等法案こそ実効ある男女平等を実現し得るものと考えます。総理の現状での御所見を承りたいと思います。(拍手)
 私ども公明党は、教育改革を進めるためには、政治の教育に対する介入を極力排除し、教育の中立性を確保するとともに、国民的合意の形成を前提とすべきであると提言し、総理もこれを確約され、臨時教育審議会が設けられました。しかしながら、今日までの臨教審を見るに、特に国民的合意の形成という面で疑問を持たざるを得ないものがあります。臨教審の委員並びに専門委員の顔ぶれは教育学者は少なく、専門委員にしても幼稚園、小中学校、私学関係者が含まれていないのに対し、総理のブレーンと言われる人々が顔を並べているのが実情であります。これでは、率直に言って国民的合意の形成を図る上に大きな不安がつきまとうことを、あえて申し上げなければなりません。教育現場に携わる専門委員の人選を積極的に行い、教育現場の生の声を審議に反映させるべきだと考えますが、総理の御所見を伺うものであります。(拍手)
 第二に、こうした不安を払拭させるためにも、審議会の議事録を公開し、国民の前に提示しながら改革案づくりを行うべきでありますが、総理の見解を伺いたいのであります。
 次に、本年は国際青年の年であり、各国の間で青年の交流をどう進め世界の平和に役立てるかが重要な課題となっております。この意味からも、留学生問題には大きな意義があり、総理の留学生受け入れ計画は評価するものであります。しかし、日本及び日本の大学が、外国の青年たちにとって来やすく、学びやすく、留学するだけの価値があるものになっているかどうかという現実の施策を見るにつけ、その実現には疑問を持たざるを得ないのでありますが、総理の考える具体的施策を伺っておきたいと思います。
 私は、留学生を量的にふやすことも重要でありますが、最も肝心な点は自分の費用で留学する青年の経済的条件を保障することであり、すなわち、奨学金制度の充実、アルバイトに対する規制緩和をさらに図ることが不可欠であると思うのであります。これらに対する政府の取り組みを示していただきたいのであります。
 次に、科学技術の進展という新たな時代の展開の中で特に留意していくべき遺伝子組みかえ等バイオテクノロジーについてお伺いをいたします。
 近年、このバイオテクノロジーのすぐれた技術は、例えば糖尿病薬のインシュリンや制がん剤のインターフェロンを初めとする保健医療、農業、化学工業、食品工業等多くの分野にわたり研究、開発、利用されており、いわば人類に果てしない夢を抱かせております。しかし同時に、歯どめなき推進が人間社会に悪影響を及ぼすものとして危惧されていることも事実であります。したがって私は、バイオテクノロジーの振興は、あくまでも人間生命の尊厳を大前提として、その平和利用、安全、民主、同意、公開の五原則を確立し、これを遵守し、用いられるべきであると考えます。
 今後、科学技術の振興に伴い、科学技術と人間社会との関係については深い洞察が必要であり、例えばバイオテクノロジーの人類社会への悪影響を未然に防止するため、遺伝子操作等の許容範囲や生物兵器への悪用の禁止、事前評価の確立など倫理的、法的、社会的問題について、科学者、行政、企業及び国民の広範な合意のもとに倫理的ガイドラインがつくられるべきであります。そのためには、科学技術会議の中にライフサイエンス部会とは別に、生命倫理委員会を設置すべきであると思いますが、あわせて総理の見解を求めるものであります。(拍手)
 また最近、情報の高度化、社会化は目覚ましいものがありますが、それに伴い、個人のプライバシーにかかわる問題が多く発生をいたしております。すなわち、詳細な個人情報が情報処理企業によってデータベース化され、売買されていることであります。これらプライバシーにかかわる個人情報は、本人の全く知らないままに収集され、本人の全く知らないままに利用されておる。政府は、こうした第三者に提供する目的でデータベース化を行う情報処理企業の実態及び売買の実態を掌握されておられるのか、国民のプライバシーをどのように守るのか、政府は何らかの法的規制を考えておられるのか、これらについてそれぞれお答えをいただきたいのであります。
 最後に、農業問題について伺います。
 我が国農業は、今厳しい環境条件の中にあって、みずからの体質を改善し強化しながら国際競争力の強化を目指さなければならないという大きな課題を抱えております。しかし、政府においては、この課題への対応について総合的な政策体系を確立していないのが現状であります。
 例えば、生産コストの低下とか構造政策を進めるに必要な生産基盤の整備とか価格政策を構造政策との関連でどう運用するかといった場合、農業者の自助勢力に期待すべきものは何なのか、農業者の自助勢力の限界を超え、社会全体の問題として解決しなければならないものは何か、さらには国を初めとする各行政の責任において対処すべきものは何か。このようにそれぞれの責任分担を明確にして、かつ、それが実現の可能性を持った総合的な政策体系として確立される必要があります。二十一世紀の我が国農業を展望した場合、回避できないこの重要な政治課題に対し、総理の明確な所信をお聞かせいただきたい。
 以上、中曽根総理の誠意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 竹入委員長にお答えを申し上げます。
 まず第一は、憲法問題でございます。
 私は、前から申し上げておりますように、現行憲法が戦後日本の発展に果たした偉大な役割については、非常に高く評価しておるものであります。特に、その基本理念であります民主主義、平和主義、国際協調主義、基本的人権の尊重等々のこれらの諸原理は、これは確かに人類不滅の原理であり、我々が擁護しなければならない大きな責務であると考え、これが果たしてきた役割について、戦後の日本の経過を見ましても、非常に高く評価しておる次第であり、あくまでこれらは護持していくべきものであると考えております。
 しかし、憲法といえども、これは人間のつくっておる制度の一つでありまして、これらの制度が常に見直され、さらによりよきものへと検討を加えられることは宿命であります。私は、かかる意味におきまして、憲法につきましても常に研究をし、この見直しを行うことは当然である、そのように考えておる。わけであります。(拍手)
 次に、政治倫理の問題でございますが、私は、政治の基礎には道徳性がなければならない、政治の使命が重大であればあるだけに、道徳性も高くなっておらなければならない、そのように確信しておる次第でございます。したがいまして、政治家一人一人の良心それから政党その他の団体、相ともに手を携えまして、政治倫理の向上に努力してまいりたいと思っておるところでございます。(拍手)
 まず、政治倫理審査会の設置につきましては、政治倫理協議会におきまして現在いろいろ討議がなされ、各党間でお話し合いがなされております。私は、既に行為規範もつくられつつあり、できるだけ早期にこの政治倫理審査会が成立するように努力してまいりたいと思う次第でございます。この政治倫理の問題については、政治資金の問題であるとかあるいはそのほか諸般の問題がございますが、これらの個人個人の政治倫理の問題あるいは団体、政党としてのあり方等についても、常に反省と点検を加えて改良してまいりたいと考えております。
 定数問題につきましては、これは緊急かつ極めて重大な課題になっておると申し上げておるとおりでございます。自民党では、最高裁の判決を踏まえまして、総定数をふやさない、最小限の是正にとどめる、こういう基本方針のもとに今全力を挙げて党内意見調整、成案の策定に努力しておるところでございます。定数問題は、議会政治の共通のルールづくりに関する問題でございますから、各党間で十分話し合いまして、速かやに定数是正が実現するように念願いたしたいと思います。
 なお、定数に関しまして第三者機関を置いたらどうかという御議論がございますけれども、やはり基本的には各党の協議によるものである、自分たちのグラウンドルールは自分たちでつくる、最終的にはそのようになると思います。これらの点については、今後とも十分各党で話し合っていただきたいと思う次第でございます。
 懇談会の設置についていろいろ御批判をいただきましたが、政治が独善に流れ、特に官僚独善という方向に流れるのを防いで、国民の皆様方の世論、反論のある場所を政府として探索いたしますために私的懇談会を設置いたしまして、いろいろ御意見を承っておるところなのでございます。したがいまして、これは行政運用上の一つの手法である、このようにお考え願いたいと思うのであります。しかし、これらはいずれも、いわゆるまとまって答申というような形のものではないのであります。委員一人一人が意見を述べ、その意見を総括し、多数意見あるいは少数意見として我々の参考のためにこれを聞かしていただく、そういうような性格のもので運用しておるわけなのでございます。
 日ソ関係につきましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結する、しかも、隣国であるソ連との間に友好関係を長期安定的に築いていくというのが私たちの基本的見解でありまして、今後とも粘り強く努力してまいるつもりであります。近時、日ソ間におきまして官民を通ずるいろんな交流が拡大しておりますが、これを歓迎いたします。そして、今後ともこのような交流を広げ、お互いが理解を増進するようにいたしたいと思います。ソ連側におきましても、日本のこの平和国家の姿、国民世論の動向等をよく理解していただきまして、積極的に取り組んでくれることを期待しておるものであります。
 次に、第三回国連軍縮会議の問題でございます。
 我々は、軍縮につきましては、実現可能で、かつ実効性ある具体的措置を伴った軍縮政策を着実に一つ一つ積み上げて、そして現実化していくという積極策をとっておるわけであります。第三回の軍縮特別総会は遅くとも一九八八年までに開かれることになっておりまして、その具体的な日取りは本年の総会で決定することになっております。我が国は、この特別総会が成果を上げるようにできるだけの努力、協力をいたすつもりであります。
 アメリカの戦略防衛構想について御質問がございましたが、これは前から申し上げているように、私が直接レーガン大統領から聞いたところでは、既に御存じのとおり、これは非核兵器である、防御兵器である、核兵器を廃絶させるための目的でつくられている兵器である、これは長期的計画のもとに、しかも研究の段階である、そういう話でありました。核兵器を廃絶するという、核兵器でない非核兵器、そして廃絶するという究極目的に向かってこれを進めるという考えについては、私は同感の念を禁じ得ず、そしてこれらの研究については理解を示した。しかし今後とも、いわゆるSDIというものは、どういう内容で、どういうふうに展開していくかということはわかりません。したがいまして、常にこの内容について情報の提供を求め、また協議をしていただく、そうして平和国家としての基本的な理念を踏まえて、政府としての対応を自主的に検討していくという所存なのでございます。これらの研究段階における我々の理解を示すということは、宇宙の平和利用に反しないと考えておるところでございます。
 日米貿易につきましては、関税引き下げあるいは日本が今まで実行してきましたいわゆる市場開放制度につきましては、アメリカは非常に高く評価したところであります。しかし、電気通信あるいはエレクトロニクス、医薬品、医療機器あるいは木材等について一層の努力を要請されたことは事実であります。
 政府といたしましても、アメリカに対しては、いわゆるニクソン・ショックのような急激な政策を行わない、いわゆるソフトランディング、軟着陸の政策をやってもらいたい、それから保護貿易に対しては徹底的に闘ってもらいたい、それから高金利の是正をしてもらいたい、これが日本の黒字基調の一つの大きな要素である、そういうことを強く申し入れを一方においていたしました。と同時に、我が国自体の努力についても一生懸命努力するということを約束してきたのであります。今回、関係閣僚会議あるいは同諮問委員会あるいはこれらを受けまして各省事務次官が先頭に立って、各省所管事項について、開放あるいは基準・認証制度の検討その他を勇断を振るって進めるように指示しておるところであります。
 朝鮮半島の緊張緩和という問題は、非常にアジアの安定にとっても大事な問題であり、南北両当事者の直接対話により平和が長期的に構築されるように念願をし、その環境醸成について我々も努力していきたいと思います。
 アフリカの飢餓の問題等につきましても、我々は人道的見地をもちまして懸命な努力をしておるところであります。先般は安倍外務大臣にわざわざ現地にも行っていただきまして、実情をつぶさに見、政府は調査団も出しまして、井戸を掘るとかあるいは農業計画を助言するとか、そのほかの政策を今推進しておるところであります。
 防衛費の問題につきましては、我が国の防衛方針は、平和憲法のもとに専守防衛に徹し、非核三原則を守り、近隣諸国に脅威を与えない、そういうような基本方針を堅持しつつ、「防衛計画大綱」に示された防衛力の水準にできるだけ早く達するように、正面、後方のバランスをとりつつ、しかも継戦能力を高めるように努力してまいりたいと思っておるところであります。六十年度の防衛費も、この方針のもとに行ったものであります。
 一%の問題でございますが、この問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ一%は守りたいのです。しかし今申し上げたように、大綱の水準にできるだけ近づけたい、早く持っていきたい。しかし、一%との関係は、経済の推移、一体成長力がどうなるか、人事院勧告がどうなるか、そういうような将来の不確定の条件と絡んでおりますから、今どうこう申し上げることはできない、こういうふうに申し上げており、もしそのような必要が出てきた場合には、国防会議あるいは閣議等において当然検討もし、節度ある防衛力のあり方についていろいろ検討すると申し上げておる次第でございます。(拍手)
 次に、経済の問題でございますが、昭和六十年度におきましては、昨年来消費水準がやや上昇し、かつまた設備投資も旺盛になってまいりまして、経済の自律反転の力が非常に強くなってきたのであります。これに我々は刺激を与えつつ、物価の安定を堅持して、そして国内民間需要を中心とした景気の拡大を図っていくつもりであります。民間活力を活用するという点も今後の大きな課題でありまして、これらの力を総合し、弾力的、機動的運営をもちまして、名目六・一%、実質四・六%の目的を達成するつもりでおります。
 減税につきましては、所得税減税については、昭和五十九年度の税制改正において所得税、住民税を合わせて一兆千八百億円の本格減税を行いました。本年度につきましては、厳しい財政事情下、政府税調におきましても、「所得税・住民税の減税を行う余地はない」、このように実は示されております。したがって、まことに残念でございますが、ことしは見送らざるを得ないのであります。
 公共事業費の問題については、厳しい財政状況下ではございますけれども、一般公共事業の事業費については、さまざまの工夫によりまして昨年度を上回る水準を確保するように努力しております。また、その上に民需を中心にする着実な拡大を図りまして、景気の底力拡大に努力してまいるつもりでおります。
 中小企業につきましては、中小企業の機械の特別償却制度等従来から税制面において種々配慮しておりますが、六十年度も中小企業の一層の基盤強化を目的として中小企業技術基盤強化税制等を創設する予定でございます。なお、我が国の経済につきましては、民間需要を中心に着実に拡大しておりまして、大体昭和六十年度経済見通しては、実質四・六%の成長は可能であると考えております。
 さらに、所得税減税との関係でございますが、先ほど来申し上げましたように、本年は見送らざるを得ないのであります。我が国の所得税の負担水準を見ますと、個人所得に対する負担割合はフランスに次いで割合に低い方であります。それから課税最低限は先進諸国中最も高い、極めて高い水準にある。そういうようにして、低所得者に対する配慮はほかの国以上に努力していると私たちは考えておるのであります。(拍手)
 「増税なき財政再建」、この理念はあくまで今後も堅持してまいります。この理念を離れればかんぬきが失われまして財政が放漫になる危険性が出ないとも限らないのであります。今までこのような三年間にわたるマイナスシーリングあるいは四年にわたるゼロシーリング、マイナスシーリングを行い得たのは「増税なき財政再建」というかんぬきが入っているからでもありまして、今後ともこの理念を守ってまいりたい、こう思っておるところでございます。(拍手)
 さらに、税制の改革問題でございますが、戦後四十年たちまして、シャウプ税制以来、日本の税体系を見ますと、さまざまなひずみとかゆがみとか不公正あるいはさまざまな不合理が出てきておると思います。直接税と間接税の比率にいたしましても、七三%でしたか七四%近くに直接税が広がってきておる。こういう意味におきまして、これで果たしてよろしいかよろしくないかということも検討の課題にもなってきていると思います。しかし、総合的に抜本的に、そして税制をまず公平に、そして公正に、そして簡素化して、国民の選択というものを考えた総合的な税制改革を検討する課題として受け取る時期に入ってきておると考えております。この税制の改革というものは、増税をやろうとか財政再建のためにやろうというのではなくして、税制の不合理を直して国民の求めるような税体系を検討していこう、こういう考えに立っておるものなのであります。(拍手)
 いわゆる一般消費税を導入する考えは中曽根内閣にはありません。今まで申したとおりでございます。
 さらに、国民負担の問題につきましては、臨調答申において、「今後、高齢化社会の進展等により、長期的には、租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率(対国民所得比)は、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要である。」と臨調で示されております。このような基本的認識を踏まえて財政運営を行ってまいりたいと考えております。
 次に、増税問題に関してでございますが、税制調査会六十年度答申におきましては、「既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、」「税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる。」こう言って、「税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきている」、こう言っておるわけです。
 これは、私が申し上げましたように、戦後四十年になりまして、さまざまなひずみやゆがみや国民の不満が出てきておる。それを素直に受け取って、政府はこれを課題として対策を講じようという考えに立っておるのであります。どのような内容にするかということは、政府税調や党の関係等のお考えも聞きまして、政府としては目下白紙の状態にあります。
 次に、行革の問題でございます。
 政府は累次の閣議で決めました行政改革大綱を着実に推進しているところであります。行政機構につきましては、昨年七月の総務庁の設置及び十省庁の内部部局の再編成を初め、思い切った改革をまずやりました。国家公務員の定員につきましても、今回は第六次定員削減計画にのっとりまして、六十年度においては実に六千四百八十二人の大幅な定員減を実行しておるところであります。そのほか、特殊法人等の整理合理化、許認可等行政事務の整理合理化等についても、今着実に政策を進めております。
 このような改革に、さらにいよいよ国鉄の大改革が出てまいります。恐らく夏ごろには監理委員会から中間答申が出てくると思いますが、それらの答申を踏まえまして、いよいよ国鉄の大改革に着手したいと念願しておるものであります。
 また、本年は地方行革推進の年でもございます。そして、地方行革大綱を策定いたしまして、各地方公共団体に行革推進本部をつくっていただき、機構、定員、給与その他について、いろいろ見直しをお願いしておるところです。地方におきましても、率先してやっていただいているところがございまして、非常に敬意を表しておるところでございます。また、中央におきましても、必置規制義務であるとか機関委任事務であるとかあるいは権限や許認可の移譲であるとか、中央がやらなければならぬ問題もあります。これらも着々と実行してまいるつもりなのであります。
 国鉄の分割・民営化の問題については、先ほど申し上げましたように、国鉄監理委員会においていよいよ答申が用意されつつある状況でございます。
 先般提出されました国鉄の監理委員会に対する意見書というものは、我々が見たところでは、新聞の論説や国民の皆さんがおっしゃるように、いわゆる親方日の丸とか甘えの構造がまだ多分にあるように思います。監理委員会の意見を尊重いたしまして、我々は監理委員会の答申を注目して待っておるというところでございます。余剰人員の対策の問題については、これまた非常に大事な、大きな課題でございます。我々は、その進捗状況に応じまして、第二次緊急提言の趣旨に沿って、政府一体となりまして強力な支援体制をつくって対処したいと考えております。
 電気通信関係の料金の問題につきましては、今回の改革によりまして全国的な電話サービスを継承する新電電会社は、競争原理の導入によりまして効率化、活性化が期待されております。低廉で安定的な電話サービス事業を継続し得るものと考えております。もちろん料金については認可制でございますが、電気通信審議会に諮問をし、ここで答申していただく。これは民意を反映するために公聴会等も開いて行うことになっておる次第でございます。
 社会保障の基本計画につきましては、確かに竹入委員長おっしゃるように長期的展望が必要であると思います。政府としては、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」をつくりました際に、長期的な年金の給付水準の適正化、保健医療サービスの確保等を含め、総合的な政策を推進する方向を示しておるのであります。今後とも長期的な方角を基本に置きつつ、国民のニーズの変化等を考えて制度を改革しあるいは整備してまいりたいと思っております。
 年金法案と保険料の関係でございますが、やはり人生八十年時代にふさわしいような長期安定的な年金体系を築くことが目下の急務でございます。今後発生する年金給付につきましては、現在の状態で見ますと、六十五歳以上の老人について見ますと、今、働く人七人で一人を養っているという数字が最も正確なようです。これが紀元二〇〇〇年になりますと四人で一人を養うという形になりまして、現在のままこのまま放置した場合には年金体系が崩れることは必至でございます。したがいまして、今のうちに将来の過重な保険料負担を避けるために長期安定的な見通しの改革を行おう、こういう考えで基礎年金の導入以下の政策を実行し、また法律も提出しておるところなのでございまして、できるだけ速やかに御審議、御採決をお願いいたしたいと思っておる次第でございます。(拍手)
 さらに、老人対策についてもう一つ最近忘れてはならないのは痴呆性老人の対策でございます。これは各家庭でまた非常に悩んでいる問題でございますが、これらにつきましても、昭和六十年度におきましても、老年期痴呆に関する総合的な研究を初め、これらの施策にホームヘルパーであるとかそのほかの政策を推進しておるところでございます。
 男女雇用機会均等法案につきましては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するため、現段階においては最も適切な法案であると考え、その早期成立を期待している次第であります。
 臨教審の人選の問題でございますが、これは教育に関する見識もあり広く国民の世論を反映し得るような見識のある方を選任したのでありまして、学校長など教育現場の関係者も相当数入っておるわけでございます。しかし教育改革につきましては、高い見識とそれから強固な意思とそれからある程度の個性を持った人があそこへ入らなければ、なかなか現在のこのかたい殻を破るわけにはいかぬのであります。そういう観点から、そのような見識と個性を持った人たちも考えて入れているということは申し上げる次第なのでございます。今後も審議会におきましては、あるいは参考人をお招きするとか現場の教師やPTAの皆さんの御意見を伺うとか、あるいは情勢によっては外国へ行って外国の制度や状況も視察してもらうとか、さまざまに幅の広い、視野の広いやり方で審議を進めていただきたいと考えております。
 議事録の公表につきましては、そのまま公表するということが言論の自由を制約するということで、私は前からちゅうちょしておると申し上げたとおりであります。しかし、その都度その概要が公表され、最近は御存じのように「臨教審だより」というものも発行されまして、国民に対するPRあるいは御理解をいただくように努力しておるところでございます。
 留学生の受け入れ問題に対する竹入委員長の御見識には私も全く同感で、敬意を表する次第であります。(拍手)日本が国際国家に前進していくためには、留学生問題をこの際抜本的に改革し進める必要があるように痛感しておるのでございます。大体英米等では十万人ぐらいの留学生を持っておりますが、日本は今一万二千人ぐらいであります。東南アジアその他におきましても、優秀な学生はみんなアメリカやイギリスヘ行くという傾向があります。優秀な学生を日本にどうして呼び寄せる力を持つかということは、これからの日本の大きな仕事であると考えておるのであります。
 そういう意味におきまして、この国費留学生の増員あるいは大学における受け入れ態勢の充実、宿舎の整備、これらについて、昭和六十年度予算においては昨年に比べて一三・一%の増を行い、百億五千八百万円の関係予算を計上した次第でございます。特に、私費留学生と国費留学生の関係について、私費留学生の問題を考えよという竹入委員長のお考えには私も全く同感でございます。これらの点につきましては、今後とも政策的に留意してまいりたいと考えております。次に、アルバイトの問題がございます。大学の留学生がアルバイトをしながら働けるということも、やはり外人については考えてやる必要もあります。五十八年七月の決定によりまして、一週二十時間以内、短大以上の大学生についてはアルバイトを認めております。これらの推移を見つつ、今後とも検討してまいりたいと思います。
 人間生命の尊厳とバイオテクノロジーとの関係に関する竹入委員長の御見識にも、全く私は同感であります。この問題はかねてから私も心配しているところでございまして、ウィリアムズバーグ・サミットにおいてもこれを提起して、昨年は日本が主催して「生命科学と人間の尊厳」という題で会議を行い、本年はフランスがこれを受け持ってくれまして、同じように続けてやるということになっておる、国際的な大きな問題になってきていると思うのであります。
 ライフサイエンスは、一面において、生命の神秘を解明して、保健や医療や農林水産業や鉱工業の分野で人類の福祉に深く貢献するところもあると思いますが、やり方によっては、DNAの組みかえの問題とかその他の問題によりまして人間の尊厳が傷つけられる危険性もなきにしもあらずなのでありまして、国民の人間としての生きる価値観に非常に大きく影響するものがあるわけでございます。これらにつきましては、深く検討していきたいと思います。
 政府の内部におきましても、学者を集めてこれらの検討会議も開いております。昨年十一月の科学技術会議の答申におきましても、科学技術と人間及び社会との調和を重視いたしまして、御指摘の生命倫理問題を含め、科学技術政策委員会でこれを検討する。特別委員会を設置せよという御指摘でございますが、当面はこの政策委員会でこれを検討していきたいと考えております。「生命科学と人間の会議」を我々がさらに強く推進していくということは申し上げたとおりでございます。
 それから、データ問題に関する秘密保護の問題でございますが、電子計算機等の発達によりまして、このプライバシー保護の問題は大きな問題になります。昭和五十八年十一月の調査によりますと、大体これらの事業者が百八十八、年間の売り上げが八百七億円と承知しております。今のところは、大体洋書のデータであるとかあるいは科学技術とかビジネスのデータというものが多いようであります。民間部門の保有する個人データの保護につきましては、個人情報の内容、規模、その処理方法が非常に多種多様であります。その実態を踏まえながら、関係省庁において今検討をいたしております。なお、行政機関の保有する個人データの保護につきましては、臨調答申におきましてこの方法が指示されておりまして、現在、行政情報システム各省庁連絡会議の場で、法的措置を含め制度的改革を検討しておるところでございます。
 農業問題について御指摘をいただきましたが、前から申し上げておりますように、農は国のもとであり、農業は生命産業であると私は認識しておるのであります。このため、農業者の自助努力を基本としつつも、すぐれた経営、技術力を有した生産性の高い中核的農家、生産組織の育成を図ってまいりたいと思います。つまり、農地の流動化による経営規模の拡大、それから農業生産基盤の整備、技術の開発普及、これらにつきまして特に重点を入れてまいりたいと思っております。
 以上で御答弁を終わりにいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(坂田道太君) 佐々木良作君。
    〔佐々木良作君登壇〕
#7
○佐々木良作君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、総理の施政方針演説に対しまして、意見を加えながら若干の質問をさせていただきます。
 まず、質問に先立ちまして、現在世間を騒がしているグリコ・森永事件について、一言政府の注意を喚起いたしたいと思います。
 この恐喝事件発生以来既に十カ月を経過し、その間、会社の行き詰まり、従業員やパート、さらに関連会社へのしわ寄せは甚大なものとなっております。それにも増して深刻なのは、この犯罪が直接に与えつつあるお母さん方への不安の深まりであり、一般国民の警察当局に対する不信感の高まりであります。法秩序の回復のため、関係当局の一段の努力を願ってやみません。(拍手)
 同時に、もう一つ憂慮にたえないのは、最近におけるいわゆる車内暴力事件の頻発であります。しかも、この事件の目撃者の多くが傍観者的態度をとったと報ぜられていることについてであります。この現世的世相にこそ、私は政治の責任を痛感するものでありますが、総理の御見解を承ります。(拍手)
 さて、最近の過去十カ年におきまして四回の総選挙が行われましたが、この中で、大平総理急死という異変のありました五十五年のダブル選挙を除きまして、自民党は三回とも敗れました。過半数の国民信頼を得られなかったのであります。そしてそれらの選挙で争われましたのは、三回に共通しまして、政治倫理と財政再建が主たるものでありました。このことは、明らかに国民が自民党の金権政治を批判し、増税による財政再建に反対の意思を明確に表明したものであります。(拍手)にもかかわらず、この二つの課題に対しまして、大変失礼でありますけれども、自民党はいまだ必ずしも反省を深め自己改革や政策転換に真剣な取り組みを行っておるようには見受けられません。私は、節目に立つ中曽根第二次内閣が自民党としての責任を痛感し、宿命的な政治倫理と財政再建というこの二つの問題に対しまして、国民的立場から勇敢、率直に取り組まれんことを強く要望し、総理の御所見を求めます。(拍手)
 経済、財政問題から具体的質問に入ります。
 私は、貿易摩擦、貿易不均衡問題は外交、内政を通ずる今年最大の課題であると考えますので、この問題を真っ先に取り上げることにいたしました。昨年一年間の我が国貿易黒字は三百三十六億ドルと最高を記録いたしました。しかも、このうち三百三十一億ドル、つまりその大部分はアメリカからの稼ぎ出しであります。また、OECDは、ことし一九八五年の経常収支につきまして、OECD全体の合計が八百六十億ドル余の赤字であるのに対しまして、黒字国のトップに立つのは日本であり、それは約四百億ドルの黒字であろう、赤字国のトップはアメリカで、千三百億ドルの大幅赤字と予測しております。今や我が国の黒字幅は、第二番目の西ドイツの七十数億ドルに比べましても、けた違いのずば抜けた額であります。問題は私は深刻だと思います。
 総理は施政方針演説の中で、世界経済の運営について国際的協調に触れられ、我が国もこれに積極的な貢献をしていかねばならぬことを強調されました。そしてまた、日米首脳会談や太平洋諸国の各国首脳会談におきましても、多分相手国の最大の関心事がこの貿易不均衡問題にあったことを痛感されたはずであります。しかるに、六十年度予算案を見る限りにおきまして、この問題解決へのかぎともなるべき内需主導への積極的経済政策はほとんどどこにも見当たりません。国際協調へ積極的に貢献するための政策的配慮は何も行われていないということであります。
 一部に、現在の設備投資や消費の動向から内需拡大への楽観論があります。ただいま竹入委員長の御質問に対しまする総理の答弁も、大体そのような言うならば楽観論に立っておられるようでありますが、私は、最近のこのような設備投資の盛り上がりも専ら輸出増加に誘発されたものであって、消費の伸びもその波及的効果と見るべきだと考えるのであります。我が国経済が内需主導に転ずる動きはどこにもないと思うのであります。このことは昨年の四半期ずつの経済指標を丁寧にごらんになれば一目瞭然だろうと思います。OECDも同様な見方に立っておりますので、その上で予測数字を明らかにしたものでありましょう。私は、特にこの点につきましては河本大臣の御所見を承ります。
 総理の国際協調に積極的に貢献するという先ほどの国際公約は、今後直ちにその具体策が要求されてまいります。輸出規制、輸入増加、徹底した市場開放など世界各国から強く迫られるでありましょう。しかもこれらの問題は、いずれも内政上の深刻な問題と絡まざるを得ないものでありますが、総理はこの国際的要求にどのように対応される方針か、具体的にその対策をお示しいただきたいと思います。
 さらに、最近アメリカ側に台頭しつつある品目ごとの収支均衡論とか排他的な二国間協定の締結とかといった自由貿易体制に逆行する考え方に安易に妥協することは許されまいと私は考えますが、総理のお考えを承りましょう。
 さらにまた、最近一段と重要性を増してまいりましたアジア市場におきまして、市場開放問題を中心に東南アジア諸国の対日批判が噴出しつつありますが、これにも十分な配慮が必要でありましょう。これらに対し総理はどのように対処されるつもりか、アメリカの高金利政策及びこれとの関連における最近の国際金融の流れに対する対策をも含めまして、具体的な方策を明らかにされることを求めます。私は、問題が問題でありますから、竹下並びに河本両大臣の御所見もあわせて伺いたいと存じます。
 二番目に、来年度予算案と財政再建の問題についてお尋ねをいたします。
 総理は、六十年度予算案におきましても、三年連続して一般歳出の伸び率をマイナスにとどめ、財政改革は着実に進んでおると自賛され続けております。果たしてそうでございましょうか。
 まず、六十五年度赤字国債脱却のためには、最初毎年度一兆円ずつの赤字国債の発行減額を行うという方針ではございませんでしたか。しかるに、五十九年度も本年度もこれに失敗して、合わせて約八千億円の赤字国債が予定よりも増加いたしております。これが前進と言えるのでありましょうか。
 次に、歳出削減につきましても、他の同僚から指摘がありましたように、伸び率をマイナスにとどめたといいましても、それは技術的操作による粉飾決算まがいの歳出抑制にすぎません。その上、今後当然増経費の発生を不可避にする措置が随所に講ぜられており、また相当規模の増税も行われております。
 このように、六十年度予算案には、中曽根内閣の基本方針と言われる歳出削減を基本として「増税なき財政再建」に取り組むという方針は貫かれてはおりません。何ゆえに従来の方針が貫けなかったのでありましょうか。それは歳出削減の限界にぶつかったということでしょうか。あるいは政策転換の必要に迫られたというのでありましょうか。総理の明快な答弁を求めます。(拍手)
 さらに、先ほど言われましたように「増税なき財政再建」方針に変わりはないからこれを堅持するというのでありまするならば、私は要求いたします。歳出面では従来と異なるどのような見直し削減を行うのか、歳入面ではどのような政策によって歳入増を確保するのか、その中期的展望を、基礎的数字の裏づけと採用する政策内容とを明らかにした財政再建計画の青写真をつくって国民の前に明らかにすべきであります。私は、ここに改めて政府に対し、このような中期経済財政計画を策定し提出することを要求し、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。(拍手)
 私はまた、今回の六十年度予算案は、今申し上げましたように、六十五年度目標の赤字国債脱却を不可能にするばかりでなく、増税による財政再建方針への転換を不可避にするものと考えますので、この際、内需中心の経済活性化を図るため、具体的に次のような積極政策を実施されるよう強く求めるものであります。
 すなわち、課税最低限度の引き上げによる所得税、住民税の減税のほかに、なお単身赴任減税、住宅減税、年金減税、教育減税、パート、内職減税など総額約一兆円の所得減税及び約三千億円の投資減税、法定耐用年数の短縮、中小企業承継税制の抜本改正などでありまして、これを具体的に要求いたしまして、総理並びに大蔵、通産大臣の御所見を求めます。(拍手)
 次に、税制見直し問題について伺います。
 総理も大蔵大臣も現行税制を根本的に見直す方針を明らかにされましたが、その根本的見直しを言われた当時におきましては、現行税制のどこをどのように改革するのか、その目的も方向も手段も、いずれについても一切触れられませんでした。そうして昨日からの討議を通じまして、ぼつぼつと、だんだんと、増税ではないということを盛んに、まあ言うならば陳弁これ努められておるようであります。しかしながら、抜本的改革をするとあのように大きく言われながら、ほとんど内容も方向も示されなかったことから、一般国民は、どうやらそのことは増税の方向をやるものに違いないと、こういう疑いを大変深めておるわけであります。私は、まずこの国民的疑い、疑問に対しまして、総理みずから国民に向けてここで明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 次に、総理は大型間接税は導入しないと言明されました。そしてそのときに大型間接税なるものの具体的な定義も明らかにされております。また、臨調答申は政府に対しまして「増税なき財政再建」を要請し、その中で「増税なき」という意味を具体的に説明をいたしております。さらに、一般消費税を導入しないという五十四年十二月の国会決議があることは御承知のとおり。このような三つの禁止的枠組みの中で、総理や大蔵大臣が行われようとする見直し税制の重点ほどのような内容を持つものか、重ねて明らかにされることを望みます。(拍手)
 先ほど来、我が国の租税負担率の問題やそれから国民負担率の問題につきましても触れられておるようでありますが、具体的にこれらの負担率は今低過ぎると考えられておりますか、それとも高いと考えられておりますか。もしこれを改めるとするならば、そのうち、租税部分と他部分との比率はいずれにウエートを置くべきか、また、どの程度が妥当であると考えておられるのか。さらに、常に触れられております我が国の直間比率に対してもどのように考えておられるのか。これらにつきまして、具体的でありますから、大蔵大臣の答弁を求めます。そして同時に、今度の税制の抜本的見直しにはこれらのようなことを検討したいという意味のものでありましょうか、そしてその改正の場合には、増税に結びつく租税の負担率は高めてはならぬという考えのもとに行われるのでありましょうか、重ねて具体的に御見解を求めるものであります。
 具体的な質問の第二は、福祉の充実についてであります。
 最近、財政事情からの福祉の圧縮が見直しの形で進められる傾向がありますが、これはまさに本末転倒であります。福祉の見直しは、今や急速な高齢化、技術革新という大きな社会変化に対応して、より高度の質の高い福祉社会づくりに向けて行われるべきものであります。外国では百年余もかかって進んだ高齢化が、日本では二十数年という驚異的スピードで進みつつあります。このような急速な高齢化に対しまして、我が国の対応は制度改革に追われまして、その実態は心の通う福祉などとはほど遠いものがあります。例えば、四十八万人と言われる寝たきり老人や痴呆性老人の介護が専ら家庭の主婦たちの手にゆだねられ、家庭崩壊の原因にもなっており、その対策が急がれております。これに対する総理の御所見を伺うのでありますが、同時に、このような制度の谷間に落ちこぼれている問題にも総合的に対処するため、政府は高齢者福祉計画を策定すべきであります。そして、高齢者の雇用、医療、年金、住宅、福祉サービスなどの政策の統合化と、国、地方、企業、家庭の役割分担の明確化を図り、高齢化社会の有機的構成を考えるべきであります。総理の御所見を承ります。(拍手)
 関連して、問題となっておる六十歳定年法の制定についても御所見を承りたいと思います。
 さらに、労働時間の短縮は、ゆとりある生活を築くためには不可欠の課題であります。この問題の解決は、また経済摩擦問題の上からも急がなければなりません。我が国の年間労働時間は約二千百余時間と言われますが、それは西独、アメリカ等欧米各国と大きな格差を持つものでありまして、海外からの非難の声が高まるのは当然でありましょう。政府の強いリーダーシップにより、早急に対処すべきであります。また、要望の強い四月末から五月にかけての太陽と緑の週設置問題についての総理の御意見も求めます。(拍手)
 質問の第三は、行政改革についてであります。
 行政改革についても、総理は実績を誇示されて自賛されましたが、行革全体の促進を図るため、少々の不満はこれを乗り越えて関係議案の推進に努力してまいりました我が民社党としては、総理のこのような高姿勢には不快の念を禁じ得ません。行革は総理が言われるほど進んではおりません。我が党としては、行革の現状に大きな不満を持っていることを表明するものであります。(拍手)
 本来の行革とは、肥大化し硬直化した行政機構を簡素で効率的なものに改め、時代の進展に機動的に対応し得る体制を整えることでありましょう。また、先ほどもお話がありましたように、許認可等による規制行政を改めて、活力と創意に満ちた福祉社会の基礎を築くことでありましょう。しかるに、まだこのような効果はどこにも上がってはおりません。国民から見て、どこにも効果は上がってはおりません。今後このような行革本来の効果を上げる改革の前面に立ちはだかるものは、実は行革の対象である現在の官僚機構及び官僚そのものであります。この抵抗を排除して真の行革を達成するには格段の努力が必要であることを自覚すべきであります。
 その意味で、次の三つの課題に取り組む総理の姿勢を承りたいと思います。
 第一には、中央地方の行政機構改革は現在程度にとどめおかれるつもりでありましょうか。公務員の定員削減も極めて不十分であります。先ほどの竹入委員長への答弁におきまして、この二つとも随分と進んでおるように言われました。行政機構改革が一時行われましたけれども、今、一般の国民が、ああ中央の行政機構は簡単になったと思っている人は一人もございますまい。これからどう進められるおつもりか。それから、ことしの公務員削減の内容に触れられまして胸を張られました。しかし、当初公務員削減は、約九十万人という公務員に対しまして少なくとも十万人は削減しなければなるまいということであり、そのためには、言うならば年に二万人か、二万人なら五年かかる、一万人なら十年かかる、少なくともそういう計画で進めなければならないというのが、臨調を中心とした討議の中心ではありませんでしたか。そのような方向で進んでおりましょうか。たまたまことしは定年法の改正があったものでありますから六千余人ということになっただけでありまして、この努力は決して十分ではありません。しかも、それは生首を切るのではありません。退職者は大体年に四万人あるはずです。四万人の充足を、これを半分にしてあるいは二万人ずつ、あるいはその四分の一に減らしても一万人ずつは減る段取りになるではありませんか。その努力が足らないということであります。したがいまして、今行われておるような程度では、国民が期待する行政の簡素化、効率化という行革とはほど遠いものであることを総理は十分認識されるべきであります。
 許認可等の規制監督行政の抜本的改革という問題も、ほとんど見るべきものはありません。これからどう対処されますか。
 さらに、ことしは地方行革の年とも言われますが、地方の時代にふさわしい地方行革のためには、むしろ中央権限の地方移譲こそ不可欠の条件だと思います。せんだっての予算折衝の際に地方側から、金ばかり、負担ばかり地方に押しつけて、権限はさっぱり譲らないではないかという苦情が圧倒的であったことは御承知のとおりであります。権限移譲についてどう対処されますか、伺いたいと思います。これから本番に向かう行革の本旨に照らして、これについて総理の確固たる方針をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
 次に、外交、防衛問題について伺います。まず、本年最大の課題である緊張緩和と核軍縮についてお尋ねいたします。
 質問に先立ちまして、私は、さきの米ソ外相会談によって両国の軍縮交渉の再開が約束されたことに対し、これを高く評価し、歓迎の意を表するものであります。あわせて、今後の交渉がその目的に向かって大いなる成果を上げられるよう強く希望してやみません。
 さて、私の質問の第一は、この交渉促進のために我が国としては何をなすべきかであります。米ソ核軍縮交渉の実りある前進のために我が日本外交が貢献すべき方策について、総理、あなたはいかなる構想をお持ちでありますか、御所見を承りたいと存じます。
 私ごとを申して恐縮でございますが、私は昨年十一月、仲間とともにソ連を訪問し、核軍縮の促進について、ソ連首脳と率直かつ真剣な話し合いを重ねてまいりました。その際、私は痛感したことが二つありました。その一つは、核の脅威を一番よく知っており、したがって核戦争を最も恐れている者は、ほかならぬ米ソ両国の政治指導部そのものであるということです。もう一つは、国際化の著しい現代社会におきまして、国際的孤立ということがいかに大きな意味を持つものであるかを再認識させられたことであります。このような認識から私は、今回の米ソ外相会談につきまして、少なくともその入り口においては、両国とも真剣かつ意欲的な取り組みを行うに違いないと予測いたしておりました。そして、その段階において日本としてなすべきことは、米ソ両国への直接の接触もさることながら、それよりもこの米ソ交渉を成功に導くための国際的世論づくり、国際環境づくりこそ重要であり、日本はその先頭に立って貢献することだということを痛感したのであります。私はこのことを強く要望いたしまして、総理の御所見を承ります。(拍手)
 第二に、総理は、日米首脳会談におきまして、先ほどから話がありますように、アメリカが進めようとしておるSDI、つまり戦略防衛構想について理解を示したと言われておりますが、そもそも総理はこの構想をどのようなものと考えておられるのか、また、どのような点に理解を示されているのか、その真意を明らかにされたいと思います。
 この問題に対しまして、竹入委員長に対しての答弁を私は承りました。しかし私は、この問題はその構想そのものがほとんど内容の不明のものであり、その上、この問題が米ソ交渉の初期の段階におきまして微妙な交渉戦術の一部にも使われるおそれのあるものでありますから、今第三者的立場のような形で軽々に触れるべきではないと考えるのでありますが、総理の御所信を承ります。(拍手)
 第三に、経済協力についてでございます。
 現在のODA五カ年倍増計画は六十年度で一区切りとなり、来期以降新たな方針に基づく援助が始まらなければなりません。中曽根内閣の援助計画についての基本構想を承りたいのであります。従来、我が国の経済援助の原則的な立場は人道的援助でありました。しかるに、最近この問題についてアメリカとの協議が約束されたという話でありまするし、その協議におきましては、いわゆる戦略援助の傾向が深まるだろうと伝えられております。総理の新援助計画策定に当たっての基本方針及び伝えられるアメリカとの協議目的を明らかにされることを望みます。
 第四に、環太平洋協力構想について伺います。
 環太平洋といっても、この地域に連帯のきずなで結びつけられているようなものは現在何一つ存在いたしません。私は、昨年夏、オーストラリア、ニュージーランドなどを歴訪いたしました。さらにまた昨年秋には、中国、韓国からさらに南太平洋島嶼国を含む二十数カ国に呼びかけ、ヨーロッパからのゲスト的出席も求めまして、「太平洋地域における開発と協力」と題する国際シンポジウムを主催いたしてみました。そして、総理が今手がけようとされておられる問題に直接ぶつかってみたのであります。そして、このシンポジウムにおきまして、太平洋各国から、互いには全くこれまで未知の関係であったのにかかわらず、それにもかかわらず三十数名もの各国代表が参加したこと、さらに、それらの人々がヨーロッパ人やアジア大陸の人も交えて親しく話し合ったこと、そのこと自体が最大の意味深きものであったと私は痛感いたしております。(拍手)
 そこにはまだ、南北問題の原点的視点から、さらに激しい東西の対立問題に至りますまで、まことに雑多に問題は存在し、問題の多様さは見事でさえありました。その中でただ一つコンセンサス的なものがあったとすれば、それは各国がみずからの伝統と環境を最も大切にし、互いにそれを尊重し合い、傷つけ合わないという原則的認識でありました。言うなれば、このことを前提とする取り組みが太平洋型の発展計画と称するものであろうと私は理解したのであります。総理の環太平洋構想にはこのような理解を根底に持つべきだと私は考えるのでありますが、御所見を承ります。(拍手)
 なお、総理御自身現地で感ぜられましたように、太平洋諸国は核の問題に極めて敏感であります。しかも、おのおのその対応がまちまちであります。この状態を総理はどのように理解されましたか、そして今後どのように対応すべきと考えておられますか、見解を承ります。あわせて、我が国の放射性廃棄物の海洋投棄停止に触れられたようでありますが、我が国内にはその代案はでき上がっておるのでありましょうか、伺いたいと思います。
 第五に、防衛費の問題について一点だけ質問をいたします。
 私が防衛費問題について最も懸念いたしておりますのは、いわゆるGNP一%問題のみがひとり歩きをして、防衛費の内容そのものや本来的な防衛費のあり方、ひいては日本の防衛力整備の実態やあり方に関する論議が全くなおざりにされているということであります。その間に、防衛庁内及び予算関係官のみによって一方的に装備のあり方まで決定され、積み上げられていくことであります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そのようになっておる。
 このような状況のもとで、GNP一%枠のみが唯一のシビリアンコントロールの代替的役割を果たす結果となっておるとすれば、一%枠を外すことに国民が不安を感ずるのは当然と言わなければなりません。一方、この一%枠があるがために防衛力なき自衛隊化が進みつつあるとも言われます。これが事実であるとするならば、国民にとってこれほど大きな不安はありません。中曽根総理、国民の立場から私は、本当にこの問題をどうされるおつもりか、はっきりとお答えをいただきたいと思います。この問題をこのような状態に放置してきた歴代自民党内閣の責任はまことに重大でありますから、それを含めて総理の御答弁を求めたいと存じます。(拍手)
 ここで、農政、食糧問題についてちょっと伺います。
 昨年度の我が国食糧の自給率は、総合で七一%、穀物で三二%と最低を記録いたしました。このように我が国食糧の自給率は年々じりじりと下がり続けておりますが、これをこのまま放置しておいてよいものではありますまい。少なくとも二つの問題が台頭いたします。
 一つは、言うまでもなく食糧安保の問題でありまして、説明の必要はございますまい。これには別に備蓄対策が必要でありますから、我が党も今国会に食糧備蓄法案の提出を準備しており、絶対にその成立はこれを期したいと考えております。(拍手)
 他の一つは、国際的立場からの問題であります。現在の状態が説きますと、数年を出ずして、我が国の輸入穀物量は世界の途上国の全輸入量に匹敵するほどに達するだろうとのことであります。今や飢餓人口が四億五千万人とさえ言われる世界食糧事情の中で、経済大国日本が金に飽かして世界じゅうの穀物を買いあさるようなことは、絶対に国際道義上許されるものではございますまい。私は、食糧自給率の低下に歯どめをかけるとともに、混迷を続ける我が国農業を健全な体質に再建することは急務中の急務だと存じます。総理は、農業はまさに国の大本と申されました。まさに言葉は結構でございますけれども、総理が本当に節目に立った中曽根内閣を意識され、中曽根政治を意識されるのでありまするならば、ここらで新たな営農集団の発想など農業のあり方について根本的に考え直すべきだと思いますが、そのおつもりはございますか、伺います。(拍手)
 最後に、いわゆる定数是正問題について伺います。
 この問題は、司法部内におきましても一定の見解がようやく定着しつつあるかに見えます。私は、この違憲訴訟の扱いに必ずしも全面的に賛成という立場をとっておりませんけれども、その判決の中におきましても、定数表の作成については、人口だけが必ずしも唯一の要素ではなく、当該地域の特殊事情もあり、これは原則的には国会の政治判断にゆだねらるべきものであるとして、国会の裁量権を明確に認めております。したがって、定数表改正に当たって国会は、司法部内の法理見解を十分に尊重しながらも、一方、政治判断を行う唯一の機関として、当該地域に関する国政の現状、さらに予見される将来的政治事情をも考慮して、国権の最高機関にふさわしい権威を持って決定を行うべきであります。いやしくも、改正後直ちに違憲訴訟が続発するような安易こそくな小手先措置は断じて許されないと考えます。また、各同僚も言っておられますように、問題の性質上、あくまでも自民党独走は許されますまい。超党派的話し合いを根本として進めらるべきであります。総理の御所見を求めまして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 佐々木委員長にお答えをいたします。
 ことしは民社党結党二十五年、まことにおめでとうございます。(拍手)
 まず、グリコ・森永事件でございますが、国民に不安感を与えておりまするこのような新型犯罪検挙のために、今全力を尽くさしております。また、これらの予防措置につきましても、今自民党におきまして法的措置を検討しておるところでございます。いずれにせよ、ともかく犯人を捕まえることが先決でございますから、今全力を尽くさしておるところでございます。
 車内暴力の問題につきましては、甚だ遺憾な事態でございました。しかし、最近におきましては、国民の皆様方の御協力特にジャーナリズムの非常な御協力をいただきまして、順次これが改善を見つつあることは御同慶の至りであります。しかし、責任はやはり国家や地方自治体等にもございます。政府といたしましては、警察官あるいは鉄道公安官その他を配置いたしまして、万全を期するように努力してまいりたいと思っております。
 政治倫理の問題につきまして、委員長は政治倫理の問題と財政再建の問題と二つお挙げになりましたが、まず政治倫理の問題につきましては、前から申し上げますように、政治の基礎には道徳性がなければならないし、政治の価値を高めるためには、その基礎にある道徳性を高めなければならない、このように考えておりまして、これは個人個人の良心の問題であると同時に、制度として改革していく問題でもあります。そういう意味におきまして国会全体として取り組んでおりまして、協議会ができ、あるいは今審査会をつくろうとしております。これらの努力を積極的に我が党としても継続して、実を結ぶようにしてまいりたいと思っております。先般来、例の資産の公開等も二度目を実行いたした次第でございます。
 財政再建につきましては、後でもいろいろ申し上げますが、非常に厳しい状態にあることは前から申し上げているとおりでございます。しかし、その厳しい中にあっても、何とかして六十五年赤字国債脱却、この目標を貫徹するように必死に努力してまいりたいと思っております。四年にわたりましてマイナスシーリングあるいはゼロシーリングに国民の皆さんが耐えていただいたのも、六十五年赤字国債脱却という目標に御理解をいただいているからでありまして、この国民の温かい御理解に対して十分今後もこたえていかなければならぬと思っております。今回この厳しい中で、一兆円の国債減額とかあるいは電電公社、専売公社の処分可能な株式を国債償還財源に組み込んだというようなことは、厳しい財政の中でもしかしそれをやったということは、六十五年を見詰めて実はやりつつあるのでありまして、今後あらゆる力を投入いたしまして、この目標実現に努力してまいりたいと思っておる次第でございます。「増税なき財政再建」の理念は、あくまでその間において堅持してまいるつもりであります。
 次に、日本の最大課題として黒字、輸出超過の問題をお挙げになりました。まことにそのとおりでありまして、政府として一番頭の痛い問題なのでございます。この問題につきましては、日本の責めに帰すべき部分と日本の責めに帰すべからざる部分とがあります。日本の責めに帰す部分につきましては、我々の責任において解決していかなければなりません。日本の責めに帰すべからざるものについては、相手側に対して要望もし、相手側の処理もまた強く実現するように申し入れしたいと思ってやっておるところでございます。
 日本側の問題としては、やはり内需の振興、これは非常に大事な政策で、今政府も懸命の努力をしておる。あるいは輸入の促進、これは御指摘になったとおりでございまして、政府は、民間財界人等も動員して、欧米に対しましてあるいはASEANの国等にも対しまして輸入ミッションまで派遣して、あらゆる品物の輸入について努力もし助言もしてきておるところでございます。内需の振興につきましても、この苦しい財政の中で公共事業につきましていろいろ配慮もいたしましたし、あるいはさらに、いわゆる設備投資増加促進のための税制の処理等についても、本年度も考慮しておるところなのでございます。
 さらに、国有地の活用、いわゆる関西国際空港方式によりまして民間の力を動員してこれを行うとか、あるいは純粋の民間だけでやれるような西戸山方式、東京の新宿区の西戸山国有地の開発であります。そういうあらゆる問題についていろいろな組み合わせが可能である。法的改革まで検討しつつ、今そのような民間活力の動員について努力もし、全国の国有地につきましても、約四千数百カ所ございます。大蔵省国有財産関係においていろいろ調査させまして、そして、そのうち利用可能なものは幾つあるか、その中で六十年度、六十一年度に処理可能なものが幾つあるか、今それを懸命に調査させておるところでございます。
 次に、国際的な経済関係と対米関係の処理でございますが、国際経済関係については、先進諸国と発展途上国に対する二つの政策があると思います。
 先進諸国につきましては、OECDやあるいは三極等の会議あるいはサミット等の会議等も通じて協調も行い、改革も相互に約束し合って実行していきたいと思っております。
 発展途上国につきましては、日本は特別の関心を持っておりまして、例えば昨年十二月十四日の市場開放等につきましては、東京ラウンドの最終目標二年繰り上げを実行しております。その中には、発展途上国を頭に置いた政策もあるのです。非常に多いのであります。例えば、農業問題については一年繰り上げにしてあるのです。しかし、発展途上国の要請する分については二年繰り上げにしたものも多いのであります。例えばエビなんかはそれに当たります。そういうようにして、発展途上国を常に頭に置きながらやりつつあるのでございます。そのほか、いわゆるGSPの問題、これらにつきましても、日本は枠の拡大を率先してやってきておる次第でございます。
 発展途上国との間では、例えばASEAN一つを見ましても個々の問題がございます。骨なし鶏肉であるとか、あるいはパパイアであるとか、あるいは国によっては合板であるとか、さまざまな問題があって、国内政策との調和において非常に苦しんでおる問題もあるわけでございます。しかし、それらにつきましても、最大限国内の調和を保つように努力しつつ、今後も継続的に努力していきたいと考えておるところでございます。
 もう一つ大事な点は、先進国や発展途上国に対する日本の資本投資の問題でございます。企業進出の問題でございます。これらは非常に要望されておりまして、最近は、ヨーロッパにもアメリカにもASEAN諸国にもあるいは中国にも、日本の民間資本の進出がかなり旺盛に行われております。これらはますます奨励してまいりたいと思っておるところでございます。
 次に、市場開放問題についてでございますが、ただいま申し上げたとおりでございまして、特に今対米問題が相当焦眉の問題になっております。アメリカからは次官クラスが四人ばかり参りまして、今も折衝しておる最中でございますが、相手に対して言うべきものも日本はありますし、相手の誤解もございますし、相手の言い分に合理性のあるものもございます。それらをよく仕分けまして、今回は、日本人がアンフェアであるとか隠し立てをして不透明であるとかと言われることは甚だ我が国家の名誉に関することでありますから、そういう誤解を一切解消せよ、正面からぶつかっていけ、胸襟を開いて話し合え、そしてやれることはやれる、やれないことはやれないとはっきり言いなさい、そういうことを事務次官等に指示して今やっておるところなのでございます。政府はこれをますます監督いたしまして、成果を上げるように努力しておるところでございます。
 財政緊縮の問題につきましては、三年連続でいわゆるマイナスシーリングを実行してまいりましたが、今後もそのように努力をしてまいります。一兆円の国債減額とかあるいは電電の株式処分可能なものを国債整理基金に回すとか、そういうような政策を懸命に行いまして、六十五年を目途にやっておるところなのでございます。
 歳入歳出おのおのについてそのような中長期計画が必要ではないかという御指摘でございますが、まことにそのような計画は必要であるとは思っています。しかし、計数的にそれを出すことは非常に難しく、かつまた自由経済のもとにおいてそれは必ずしも妥当ではない。余りにも過去の実績といろいろな条件が離れてまいりまして、それがかえって経済にゆがみを生じさせるという危険性もあったわけであります。そういう意味におきまして、大蔵省におきましては、今回、予算提出の時期におきまして、中期的な財政事情の展望等をつくって近くお示しする考え方でおりますが、大体、定量的できっちりとした財政計画の策定は極めて困難であるということを申し上げざるを得ません。
 しかし、一昨年、六十五年度までを対象とする「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を策定いたしまして、昨年十二月に、昨年度分がどういうような経過をたどったかということを再検討して、第一回目のリボルビングを行い、その報告を受けました。それに基づきまして、六十年度の経済運営というものを的確に行うように努力してまいりたいと思っておるところでございます。
 さらに、景気振興、内需拡大のための政策につきましては、ようやく景気は自律反転を拡大してまいってきたと思っております。しかし、今の財政状況のもとにおきましては、既に申し上げましたように、減税を行うということは難しい、政府税調においてその余地はないと報告されておるとおりで、御理解願いたいと思うのであります。
 さらに、税制の問題でございますが、いよいよ税制の抜本的改革を検討し、課題としてこれを取り上げるときに到達したと思っております。それらにつきましても、先ほど来申し上げますように、増収を目的とするとか財政再建のために行うという、そういう幅の狭い考え方ではなくして、戦後四十年の日本のシャウプ税制以来の税の軌道をもう一回洗ってみまして、どこにゆがみがあり、どこに不合理があるか、国民の不満がどこにあるか、そういうところを解消する、そういう観点に立ってこの税制の改革に取り組むべきであると思っております。しかし、その内容については、これは政府税調もございますし、党もございまして、これからいよいよ課題としてとらえようというのでありまして、私から予断を持って今申し上げることは差し控えたいと考えておるわけでございます。
 ただ、「増税なき財政再建」という理念を堅持すること、それから租税並びに社会保障費の負担率の問題につきましては、臨時行政調査会からの答申がありまして、西欧が今行っているレベルからはるかに低いレベルに日本はとどめよ、いわゆる軽くしなさい、そういう臨調答申の線に沿うべく努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
 高齢者の福祉対策につきましては、これはまさに二十一世紀にかかる最大の問題の一つであり、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中でもこれを指示されておるところでございます。政府においては、内閣総理大臣を本部長とする老人対策本部を設置いたしておりまして、いろいろな面について今努力しておるところであり、学識経験者等から成る老人問題懇談会も開催し、諸般の意見も聴取しておるところでございます。
 六十歳定年の法制化問題につきましては、昨年十二月に雇用審議会において審議が再開されたところであり、その結論を待っております。いずれにしても、六十歳定年一般化の早期実現に向けて指導援助を強化してまいりたいと考えております。
 次に、労働時間の問題でございます。
 労働組合の皆さんに会いますと、ともかく二千時間を切ろう、そういう努力を懸命におやりになっていることを私もよく承知しております。しかし、労使問題に政府が介入するということは適当ではないと思います。それから、いわゆる週休二日制の普及等とあわせまして、ゴールデンウイークの問題につきましては、これは民間レベルにおいて次第に拡充されていくべき筋のものであろう、そういうふうに思いまして、政府がこれを先導して行うということは、これは行うべき段階にはないと考えております。
 次に、行政改革につきまして。今まで行政改革について民社党や公明党や新自由クラブの皆さんの御協力には心から感謝を申し上げる次第であります。
 政府といたしましても、行政機構の問題については、例えば総務庁の設置とかあるいは国家行政組織法の改正であるとか、そういう基本的課題にも取り組み、十省庁の内部部局の再編成、附属機関及び地方支分部局の整理合理化等も今進めてきておるところであります。定員の問題についていろいろ御指摘がありましたが、六千四百八十二人の純減ということしのやり方は、かなり思い切ったやり方なのであります。と申しますのは、各県に医科大学を今つくっておりまして、その病院を一つつくれば三百人人間が要るのであります。そういう問題とか、ジェット機の拡充に伴う航空管制要員であるとかあるいは登記所の問題であるとかあるいは外交強化の問題であるとか、さまざまな増員要求もございます。しかし、それらを差し引きいたしまして六千四百人の減員に踏み切ったということは、これは総務庁の懸命なる努力なのであると申し上げたいのでございます。(拍手)
 さらに、規制監督行政等につきましては、民間活力助長の観点からも行政事務の簡素化の観点からも、許認可の整理とか規制監督行政の改善、あらゆる面について今行革審においてもお願いしておりますが、我々も取り組んでまいりたいと思います。
 それと同時に、地方への権限移譲、この問題も非常に重視しておるところでございます。我々としては、国の関与あるいは必置規制の整理合理化、これらについては今国会に関係法案を提出いたします。また、国、地方を通ずる許認可権限のあり方、機関委任事務の見直し等については、今行革審議会の結論を得て実効ある政策を推進してまいりたいと考えております。
 軍縮の環境づくりにつきましては、我が国は国策として、軍縮促進を国連におきましてもあるいは米ソ両国に働きかけ等を行うことにつきましても努力してきておるところでございます。これらの軍縮を実現していくためには、やはり今平和が維持されているという基本を考えますと、力の均衡によって実は維持されているのが、これは嫌だけれども現実であります。したがって、この力の均衡の関係をどういうふうにかげんしつつ軍縮をやって、核兵器、普通兵器をレベルダウンさせていくか、削減させていくか、そして廃止に向けていくかということが、軍縮問題の現実的な苦悩なのであります。我々は、そういう現実を無視して軍縮を言っても、それは空論に終わる危険性があると考えておるのであります。
 そういう意味におきまして、その現実に目をつけつつ、当面の大きな問題は米ソ関係の問題であります。米ソ関係の問題については、米国及びヨーロッパの諸国とも提携いたしまして、西欧陣営、自由主義陣営の結束のもとに米国が安心してソ連と交渉ができ、現実的に削減の方向に米国の努力を向けるように、私たちは今後も努力してまいりたいと思います。(拍手)
 この現実的成果を生む上において非常に大事なことは、検証措置の問題であります。実際、軍縮をやるといっても、相手が何しているかわからぬという不安な状態では軍縮はできないわけです。したがいまして、相手を信用できるような措置をいかに生むかということが、軍縮の具体的前進の大事なポイントであります。(拍手)そういう意味におきまして、我が国の科学技術力等も駆使いたしまして、この検証措置の強化促進について日本も協力していきたい。このことはレーガン大統領にも私は申しまして、検証措置についてもう少し我々は力を入れて研究もし、提携もしていこうということも申し上げたのであります。
 いわゆる米国の戦略防衛構想につきましては、先般来申し上げているとおり防御兵器であり、核兵器ではない、核兵器を廃絶するためのものである、長期的な研究段階である、そういうことで理解を示したと申し上げたとおりであります。それと同時に、これが将来いかに展開していくか、どういうような内容に展開していくか、こういう問題については将来の問題でありますから、情報の提供及び協議を要求いたしまして、先方も承認した、こういう状態で推移しているものでございます。
 次に、中期目標、ODAの問題でございます。
 ODA、政府経済協力は何のために行うかといえば、発展途上国等の福祉と社会安定のために貢献しよう、こういう目的のために行い、言いかえれば南北問題解決の一助にという配慮もあってこれは行っているということを申し上げる次第であります。昨年は九・七%、ことしは一〇%の増加を行いまして、既定の計画の実現に向かって今全力を尽くし、また既定計画実現の上は新しい目標についてもいろいろ検討してまいりたい。いずれにせよ、積極的に取り組んでまいるつもりでおります。この援助に関する日米協議についてお話がございましたが、我が国は我が国独自の国策に基づき、今申し上げたような考えに立って、重点的に我が国の国策を踏まえて実行し、協議もしていく、こういうふうに考えたいと思っております。
 太平洋協力につきましては、太平洋地帯は世界で最もエネルギーに満ちた、ダイナミズムを持った、将来性のある地域であるだろうと思います。そういう意味におきまして、この地域の協力関係を将来発展し展開させていくということは非常に重要な問題であると心得ております。ただ、日本やアメリカがこれに飛び出してやりますと非常な誤解を受けます。そういう意味におきまして、まず第一にASEAN諸国のイニシアチブを尊重する。特に、ASEAN拡大外相会議がありまして、これにはカナダ、アメリカ、日本、オーストラリアも入っております。そういう意味におきまして、ASEAN主導のもとにこれを行いたい、民間を中心に行うようにしたい、経済、文化、技術交流提携を中心に考えたい、政治、軍事的関係は考えない、そして排他的であってはならない、この四原則のもとに太平洋協力というものを今後推進してまいりたいと思っておるところでございます。
 南太平洋諸国は、南太平洋フォーラム等の会議がございまして、佐々木委員長御指摘のとおり、さまざまな固有のお考えをお持ちであります。非核地帯構想、その条約のドラフトも今つくりつつあるという状態であります。アジア全般を見ますと、宗教、文化おのおの変わっておりますし、また距離も非常に隔絶しておりまして、ECとは非常に違った条件があります。そういう意味におきまして、多様性の中の協調関係をつくり出していく、これが今後の我々の課題ではないか。南太平洋には南太平洋の考えがあり、あるいは東アジアには東アジアの考えがあり、あるいはアメリカ大陸の側にはアメリカ大陸の考えがあります。しかし、それらの多様性を尊重しつつ、緩やかな協調関係から逐次緊密化していくというのがやはり歴史の方向ではないかと考えておる次第でございます。
 さらに、原子力発電の低レベル放射性廃棄物につきましては、佐々木委員長の御助言もございまして、現地へ参りまして、現地の不安やあるいは了解を無視して日本が独善的にやることはしないとはっきり申してきまして、現地の共感をいただいてきた次第であります。
 GNP一%の問題に関する佐々木委員長のお考えには、私も全く賛成であります。言いかえれば、二%という数字あるいは兵器体系という問題以前の問題がある。それは何が必要かという問題だということであります。日本の防衛のために何が必要か。そういう意味において、防衛戦略体系の基本を洗えという佐々木委員長のお言葉は、非常に示唆に富むお言葉であると私は考えております。(拍手)その上に立って国民的理解をいただく、そうしてシビリアン・シュープレマシー、文民統制を完璧に行っていくということが、やはりこれからの我々の大きな仕事であると考えております、
 最後に、食糧問題について二つの点から御指摘がございました。
 二つは、食糧安保という観点からであります。これにつきましては、国会決議、食糧自給強化の決議を尊重いたしまして、この方向で努力してまいりたいと思います。構造政策、生産政策あるいは農村の社会環境の整備、こういう問題がこれからの課題であると思います。もう一つは、穀物輸入の世界に及ぼす影響の観点からも考えよという御指摘でございます。これは新しい観点からの御指摘でございまして、我々も大いに考えなければならぬ点であると思っております。これらの点を総合的に検討いたしまして、日本の食糧政策に遺憾のないようにやっていきたいと思っております。
 衆議院の定数配分の問題について、これは国会で決定せよ、政治的決断の問題ではないかという御見識は、一つの御見識であると思っております。いずれにせよ、立法府といたしましては、最高裁判所からある行動を要請されている状態にあると思っております。そういう考えに立ちまして、各党各会派の話し合いの上にできるだけ速やかに定数配分が実現するように、今後とも努力してまいりたいと思う次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#9
○国務大臣(竹下登君) 私に対する佐々木委員長の最初の質問は、国際協調政策との関連において、貿易経済問題の中でのいわゆる国際金融対策でございます。
 アメリカの高金利は、累積債務国への負担になりますと同時に、ドル高を通じまして各国の金融政策への制約要因となります。また、各国間の経常収支のインバランスの一因になっておりますことも御指摘のとおりです。したがって、このため我が国は従来から米国に対しましては、高金利、そしてそれも一つの大きな理由でありますドル高、この是正が必要であるということを指摘してまいっております。今後とも機会があることに指摘していく考え方でございます。
 なお、最近の為替市場の動きにかんがみまして、先般ワシントンで開催されました主要五カ国の蔵相会議におきまして、為替市場の一層の安定に向けて各国が努力する旨を合意をいたしました。我が国としましても、このような方向の中で引き続き各国と協調協力して対応していきたいというのが、この米国の高金利並びに国際金融対策についての現状でございます。
 それから、あとの問題につきましては、総理からそれぞれお答えがございましたが、「増税なき財政再建」のためのいおば歳出削減中心主義が政治の壁に突き当たったのではないか、こういう御指摘がございました。
 六十年度予算におきましても、一般歳出におきましては五十八、五十九に引き続きまして三年連続対前年度減額、これを行いましたし、そして行財政改革を強力に推進するという基本方針を貫くという考え方があったから、それも今日でき得たわけでございます。そして補助金の整理合理化、一般歳出を三年連続で対前年度減といたしますとともに、これを徹底した節減合理化を行いました。また歳入面では、税制改正のほか、税外収入の可能な限りの確保にも努力をいたしました。こうした結果、公債発行額を、御指摘のとおり全部特例公債ではございませんが、一兆円減額ができたということは、やはりいわば行財政改革の方針を貫いて一歩を進めたというふうに理解をいただきたいと考えております。
 それから、「増税なき財政再建」を貫くために、むしろ佐々木委員長の御指摘は積極的財政政策を主張しておるという、かねて党首会談等で民社党の主張される具体案をお示しになってのお尋ねであったと思います。
 今どういうふうに我が国の経済を見ておるかということになりますと、御指摘にもございましたが、設備投資が高い伸びを続けているほか、国内需要も緩やかに増加するなど、いわば自律的拡大局面にあるということが言えると思うわけであります。一方、財政は公債の累増を抱えております。したがって、財政が積極的な役割を果たす余力というものは残念ながら今日ないではないか。だから、その中で行財政改革を進めながら、景気に配慮した措置というものの一つとして、一般公共事業の事業費につきましては前年度を上回る水準を確保するなどの工夫を凝らしたところでございます。したがいまして、私どもは、国内民間需要を中心に経済が自律的拡大局面にあります今こそ、まさに財政改革を進める好機だというふうに理解をすべきではなかろうかと考えておるところであります。
 減税とかあるいは公共投資の拡大とか、そういうことの議論は私どももたびたび承らせていただいております。しかし、減税、公共投資の景気拡大効果というものが経済社会構造の変化等から低下いたしておりますし、いずれにしてもそれは建設公債の増発によるということになりますと金利上昇要因となりますし、そしてまた元利払いといたしましては後世代に対する大きなツケを回すことになりますだけに、慎重にならざるを得ないところでございます。
 それからその次の、戦後税制の抜本的見直しの問題であります。
 これも総理からお答えがございましたが、特に佐々木委員長は、直間比率というような問題についても具体的に説明してみるという御趣旨の御指摘もございました。私どもといたしましては、税制調査会の答申、たびたび申し上げますように、既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限りは、所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系にゆがみを生じさせ、また税制を一層複雑化させることとなる。したがって、既存税制の部分的手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ税制全般にわたる改革を検討すべき時期に来ておる、この御指摘でございますから、大事なところは、まさに今こそ国民各層における広範な論議を踏まえる、これが大切なことであろうと思っております。その広範な論議の場所とは、私は、まずはこの国会というものがその広範な論議の場所であるというふうに事実認識すべきものであると思っております。
 そこで、直間比率ということになりますと、直間比率は結果として示される数値でございますので、あらかじめこれを確定しておく性格のものではございません。しかし、仮に一定の数値を示したといたしましても、経済の推移によりまして、直の方が徐々に高まり、間の方が減っていくという推移は経過的に通るわけでございますから、したがって、私どもは、直間比率というものはあらかじめそれをアプリオリに決めるべきものではなく、税体系全体の中で、直接税すなわち所得、資産の段階に担税力を求めるか、いや消費の段階に担税力を求めるかという基本論からこの議論に入っていくべきものではないかというふうに考えておるわけでございます。したがって、総理からも申されましたように、税体系の具体的なあり方につきまして予断を与える論議というものは、現段階ではむしろ差し控えるべきであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
 それから次は、国民の租税負担率を国際比較した場合どうか、こういうことでありました。
 御案内のとおり先進国中で最も低くて、国民負担率のみで見ますと我が国は三〇%台半ばであるのに対しまして、ヨーロッパ諸国は既に五〇%台の半ばないし六〇%に達しております。いずれにしましても、国民が必要とする公共支出の水準の問題と裏腹をなすものでございますから、この問題は一概に確定できません。したがって、私どもが今念頭に置いておることを申し上げるならば、去る五十八年三月の臨調答申の、要するに「租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率は、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要である。」この基本認識を今日は持ち続けておるというのが現状でございます。
 それから、中期経済財政計画の策定の御指摘でございます。
 いつも御鞭撻をいただいておりますが、経済計画の問題については総理からお答えがございました。経済の一部門であります財政の将来について、あらかじめそれこそアプリオリな、リジッドな実行計画を策定することは大変難しい問題でございます。したがって、毎度毎度この御指摘をいただきながらいろいろ工夫を重ねておりますが、やはり六十年度予算を踏まえました中期的な財政事情の展望等を作成しまして、近くお示しして、それを参考にして御議論をいただく、これが現状としては御理解いただかなければならない限界ではなかろうかという感じを持っております。その準備を目下進めておるところでございます。
 以上でもって私のお答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣村田敬次郎君登壇〕
#10
○国務大臣(村田敬次郎君) 佐々木委員長の中小企業振興及び先端技術開発促進のための投資減税についての御質問にお答え申し上げます。
 中小企業の設備投資の促進は中小企業の振興を図る上で重要であり、このために中小企業の生産性の向上等をねらいといたしまして、技術進歩の著しいメカトロニクス機器、電子計算機等の導入を促進するために、五十九年度に中小企業新技術体化投資促進税制を創設し、現在実施中であります。また、五十九年度において創設をされましたエネルギー利用効率化等投資促進税制も、かなりの部分を中小企業が利用の見込みでございます。加えて、六十年度におきましては、中小企業の設備投資に関する最も基本的な税制である中小企業の機械等の特別償却制度を延長する方針でございます。
 また、先端技術開発の問題につきましては緊急に技術開発を促進することが必要であり、来年度税制改正では、我が国の経済発展の基礎となる技術分野、すなわち、新素材、バイオテクノロジー、先端エレクトロニクス技術、高性能ロボット等六分野に的を絞りました基盤技術研究開発促進税制度を創設いたしまして、試験研究用設備の取得の促進を図る方針でございます。特に中小企業につきましては、中小企業が今後の技術開発において果たすべき役割の重要性にかんがみ、中小企業の技術開発力の抜本的底上げを図るため、中小企業技術基盤強化税制を創設するとともに、中小企業者が共同で行う技術開発等を促進するために、現在準備中の中小企業技術開発促進臨時措置法案に基づく組合関連税制を創設する方針でございます。
 以上述べた税制上の措置等により、中小企業振興及び基盤技術開発促進機械等の特別償却制度を継続していく予定でございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#11
○国務大臣(河本敏夫君) ただいま、我が国の巨額の貿易黒字特にアメリカ向けの大幅黒字問題について御指摘がございました。
 先般の日米首脳会談で、アメリカ側から特に数品目を挙げまして我が国に善処を求めるという要請がございましたが、直ちにそれを受けまして、現在我が国ではそれに対する対応策を検討中でございます。ただ、これらの一連の対応策に目鼻がつきましても、私は、なかなか日米の貿易問題は根本的な解決には至らない、このように思いますのは、一つは、やはり先ほど御指摘がございました為替問題でございます。現在のようなドル高・円安、こういう状態が続きますと、なかなか問題の解決は難しいと思うのでございます。
 そこで、先ほども大蔵大臣からお話がございましたように、アメリカの高金利問題につきましては、機会あるごとに我が国からもこの是正を求めるように指摘をいたしておりますが、どうも現在の為替相場はこの高金利だけにあるのではない、私どもはこういう感じがいたします。それ以外に、最近のアメリカ経済が非常に強力になったということ、赤字問題は抱えておりますけれども、総合的に見た場合にはその力は非常に強大になりつつあるということ、そういうアメリカ経済の強さというものもその背景にあるのではないか、こういう感じもいたします。そこで、この為替問題は総合的に判断をしていく必要があろうと存じます。
 また同時に、市場開放対策が進みましても、我が国の国内の購買力が強くなりませんと外国から物を買うことができません。御指摘のように、内需の拡大が極めて重大な課題になるわけでございます。一昨年来やや我が国経済はいい方向に進んでおりますけれども、まだその力は十分ではない、このように思います。そこで、これからも継続的に内需拡大のための工夫の継続が必要であろうと思います。特に今、ややもすると世界で保護貿易が頭をもたげてきております。もし我が国がその保護貿易の台頭の引き金になる、こういうことになりますと、世界全体に大変な迷惑をかけることになりますので、この問題は御指摘のように世界的立場に立って真剣に検討していくことが必要であろうと存じます。
 以上です。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(坂田道太君) 不破哲三君。
    〔不破哲三君登壇〕
#13
○不破哲三君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、中曽根総理に質問いたしますが、質問に先立って、昨日未明、長野県で起こったスキーバス転落事故について、犠牲者及び御遺族に心からの哀悼の意を表するとともに、先ほど政府側に申し入れたように、このような事故の再発防止のため、直ちに万全の対策に取りかかられることを強く要望するものであります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
 総理、あなたは施政方針演説で、ことし一九八五年の歴史の流れの節目としての意味について語りましたが、日本国民にとって忘れるわけにいかないのは、総理があえて触れなかった問題、ことしが広島、長崎被爆四十周年の年に当たるということであります。四十年前の八月、広島と長崎に相次いで投下された二個の原子爆弾は、一瞬にして二十万の生命を奪い、それに数倍する人々を長期の、しかも次の世代にも及ぶ被爆の苦しみに陥れました。この惨害を目の当たりにして、核兵器廃絶の声が日本国民大多数の共通の悲願となったのは当たり前であります。
 人類史上に前例のない広島、長崎の悲劇は、国際政治にも深刻な衝撃を与えました。原爆投下の一カ月前に創設されていた国際連合は、翌年一月の総会で、その第一号決議を核兵器問題に当て、原子兵器及び大量破壊に応用できるその化すべての主要兵器を各国の軍備から廃絶することを国連活動の緊急目標として宣言しました。しかし、それから四十年、世界政治は残念ながらこの宣言とは全くかけ離れた道をたどってきました。核保有国とその同盟者の間では、核廃絶どころか、いわゆる核抑止力論が支配的な流れになりました。これは御承知のように、核兵器を持ち、有事にはこれを使うことを核保有国の当然の権利とみなして、相手より優勢な核戦力を持つことが戦争防止に役立つのだという立場であります。軍縮交渉でも核兵器廃絶の緊急目標は事実上忘れ去られ、核大国が巨大な核戦力を持って対抗し合う現状の枠内で、どうして互いのバランスを図るかが専ら主題とされてきました。
 その結果、世界は今どこに導かれつつあるでしょうか。繰り返しの軍縮交渉にもかかわらず、核軍拡競争は果てしない拡大の道をひたすら進んできました。四十年前に三発開発されたにすぎなかった核兵器は、六〇年代初頭には一万発を超え、今日では五万発以上にも達して、その破壊力は広島型原爆の百万倍を超えています。核抑止力論が核軍拡競争を推進し核戦争の危険を増大させる役割しかしなかったことは、この現実が何よりも雄弁に教えているのじゃないでしょうか。
 重大なことは、核軍拡が今や地球と人類の存続を脅かす地点にまで来たという事実です。一九八三年十月、ワシントンで米ソを含む世界の科学者が核戦争の結果と影響を研究する国際会議を開きました。その後の研究も含めた結論は、わずか百メガトン、世界の現保育量の一%足らず、原子力潜水艦数隻分の核兵器が使われただけで、上空に吹き上げられた大量のちりやばい煙が地球全体を覆い、北半球の大陸が零下数十度に氷結し、地上のすべての生命が抹殺されるというものでした。核攻撃が特定の国に向けられたとしても、その結果は、人類全体から生存の条件を奪い、核兵器を使った国自身もその運命を免れるわけにいかないのであります。危険がここまで来ているときに、このような兵器を抑止力と呼んでこれに平和を託すことができないのは当たり前ではないでしょうか。(拍手)
 私は、総理に質問したい。一週間前に採択された自由民主党の今年度の運動方針は、この現実に目をつぶって、力の均衡に基づく抑止力が世界の平和と安定の支えだと今なおうたっています。一体あなたは、抑止力論に導かれて核軍拡がこんな状況になっているときに、今でもこの現状に対して、世界の諸国民と憂慮や不安をともにしていないのか、西側陣営が核戦力で優位に立ては立つほど戦争の抑止になるというのが今でもあなた方の考えなのか、見解をしかと伺いたいのであります。(拍手)
 我が党は、今日の核戦争の危機からの活路はただ一つ、核抑止力論などのわき道からきっぱり離れて、日本国民の悲願であり国際連合の原点でもあった核兵器全面禁止、廃絶の問題に正面から真剣に取り組むことだと確信しています。(拍手)
 我が党は、この立場から一貫した努力を行ってきました。昨年十二月には、我が党の宮本議長とソ連のチェルネンコ書記長を中心に両党首脳会談をモスクワで行って、その責任ある結論として核兵器全面禁止の課題を人類にとって死活的に重要な緊急課題と位置づけ、国際政治の場でも国際連合でも二国間交渉やその他の国際会議でも、また反核・平和運動でも、これを第一義的に提起し、その実現のため一貫して奮闘することを確認し合った両党共同声明を発表しました。
 続いて本年一月に開かれた米ソ外相会談では、あらゆる領域での核兵器の完全廃絶を来るべき軍縮交渉の根本目標として明記した共同声明が発表されました。私たちは、この確認を、日本国民が先頭に立ってきた運動と世話が国際政治に反映した第一歩として、心から歓迎するものであります。米ソ間で核兵器廃絶を軍縮交渉の共同の目標として確認し合ったのは歴史上初めてのことですが、この点についてどのような評価をお持ちか、総理の見解を伺いたいと思います。
 もちろん核兵器の問題は、米ソ間の交渉だけに任せて前進するような安易なものではありません。前進のためには、世界の諸国民の運動と世論が決定的に重要であります。また、核戦争の危機打開を真剣に願う各国政府の積極的な活動が必要であります。
 私が特に強調したいのは、米ソ交渉の前途を考えたとき、交渉の出発点で合意した核兵器の完全廃絶の課題をほかの問題の陰に隠すことなく、この交渉の中で必ず具体化させる努力が重要だという点であります。レーガン米大統領は、外相会談についての記者会見で、核兵器ゼロの方が、単に数を減らし数を数え続けるよりもはるかに検証しやすいと述べましたが、これはけだし名言であります。米ソ交渉で取り上げる他の三課題、戦略核、中距離核、宇宙兵器などの問題は、それぞれのバランスの計算がつきものですから、これまでの経験からいっても今後の交渉の複雑さは大方が予想していることです。しかし、核兵器ゼロで合意ができるなら、例えば相手の核ミサイルを撃ち落とす宇宙兵器は開発の必要が全くなくなります。もし万一、あれこれの部分課題での意見の対立が理由となって、せっかく合意された核廃絶の目標が交渉の中途で見失われるようなことがあったら、世界は貴重な機会を取りこぼす結果になるでしょう。被爆四十周年のこの年、核軍縮交渉が人類にとって実りある結末を迎えるように、被爆国日本の政府として、核兵器廃絶を第一義の課題として関係各国に働きかける外交活動が今何よりも求められていると思います。その用意と決意をお持ちかどうか、お尋ねするものであります。(拍手)
 核廃絶を遠い未来の究極目標とせず当面の課題として位置づけるというのは、一九八二年五月、この国会でも本会議決議で確認された立場であります。しかしながら、これまでの実績に関する限り、政府自身の行動はこの立場と全く相反するものでした。
 第一に、国際政治の重要舞台である国連総会での行動であります。あなたが総理になってから二回の国連総会がありました。しかし、核兵器廃絶を積極的に提起した決議案を日本政府が提案したことは、ただの一度もありませんでした。また、この間の総会では、全会一致の決議は別として、採決で成立した核軍縮関係の決議は全部で五十四ありましたが、その中で日本が賛成したのはわずか十九です。被爆国でありながら核軍縮に最も消極的な国だというのが、国連の記録に残された冷厳な評価であります。
 しかも、日本が一九六二年以来一貫して不同意の態度をとっているものに核兵器不使用決議があることは極めて重大であります。政府は、実効性がないとか検証の手段が不明確だとか弁明しますが、昨年の国連総会で成立した核兵器不使用と核戦争防止の決議は、どの核保有国も核兵器を最初に使わない義務を負うという方向で法的拘束的性格の国際文書の作成を軍縮会議に求め、次の国連総会の議題とすることを内容としたものでした。すべての核保有国が最初に核を使わないことを国際的義務として承認し合えば、条約違反の国際的犯罪者という汚名を覚悟しない限り、どの国も核ミサイルのボタンを押せないわけで、これが核戦争防止、核兵器全面禁止への有力な一歩となることはだれにも明らかなことであります。実効性や検証のやり方に問題があるというなら、大いに日本自身の積極論をそこで展開したらよい。ところが日本政府は、この問題を軍縮会議などで検討すること自体に反対したのであります。一体反対の理由は何なのか、明確な答弁を求めたい。仮にも、核抑止力論の立場だから核兵器を使えなくすること自体に反対だというのが真意だとしたら、それは被爆日本国民の願いとは全く逆の核使用の容認論そのものではありませんか。私は、政府が核不使用問題を含め核問題での国連での態度を根本から転換させ、核兵器廃絶の国際世論を起こす先頭に立つべきことを、世界唯一の被爆国の政府の責任として強く要求するものであります。(拍手)
 第二は、日本と核軍拡とのかかわりの問題であります。
 よく知られているように、アメリカの艦船は、核の有無を明らかにしない灰色の状態で日本の港に自由に出入りしています。その内容も年ごとにエスカレートし、横須賀には、積んでいる核弾頭百発以上とも言われる原子力空母カール・ビンソンが昨年十二月には寄港し、続いてきのうは核トマホーク搭載確実と言われる攻撃型原潜ラホヤが入港しました。政府は、アメリカが事前協議を言ってこないから非核のはずだと勝手に推定していますが、この推定には信頼できる何の根拠もありません。昨年十一月の読売新聞の世論調査でも、回答者の六五%がこの弁明を信用せず、核持ち込みへの疑惑を表明しているではありませんか。こんな推定をもとに核艦船の日本寄港が野放しにされ、日本がアメリカの核兵器の発進基地となっているとするならば、政府の責任は極めて重大であります。
 総理は、施政方針演説で非核三原則堅持の方針に言及しました。この問題に政府が本当にまじめな態度をとるのであるならば、日本寄港は核を積んでいないことが明確な艦船についてのみ認める、核の有無を明らかにしない灰色艦船の寄港はお断りする、このことをアメリカ側にはっきり通告して、国民の疑惑の的となっている灰色状態に終止符を打つべきであります。(拍手)これは、総理自身が国是と認めている非核三原則からいえば当たり前のことである。核の有無を言わないのがアメリカの方針だからといって、それに拘束されるべき性質の問題ではありません。日本でも神戸港では、一九七五年以来市議会の決議によって実行されていることです。総理の見解を求めます。
 私は、このことに関連して、総理の最近の南太平洋旅行に触れなければなりません。
 訪問先の一つであったニュージーランドの政府は、核積載艦船の寄港を拒否する方針を決定していますが、あなたに同行した記者の一人は現地から、さきの日米首脳会談でレーガン大統領ら米首脳から、ニュージーランドの厳しい非核政策についてロンギ首相に柔軟化を働きかけるよう要請があった、このことを中曽根首相同行筋が認めた旨打電してきました。これはあいまいに済ませることはできません。総理は、一九八三年のサミットでは、アメリカの中距離核ミサイル配備断行論を唱えて、当のヨーロッパ諸国をさえ驚かせました。今度はさらに進んで、アメリカの意を体して他国政府に非核政策の変更を求めたかどうかという性格の問題であります。一体、日米首脳会談でどんな要請を受けたのか、ニュージーランド訪問に際してアメリカ側の要請にどんな形でこたえたのか、事実に立った報告を求めるものであります。(拍手)
 私は今、自民党政府の核政策の一連の問題点を指摘しましたが、これらはすべて、日本国民の核兵器廃絶の願いにも世界諸国民の核戦争阻止への希望にも逆らって、日本自身を核軍拡と核戦争の体制に組み込む極めて危険な問題点であります。政府が核抑止力論とか核の傘論などに固執する好核の態度をいつまでも捨てないならば、日本国民の非核の世論は、日本と世界の生存のためにもやがてはこの政府にきっぱりした審判を下すでしょう。私は、核問題をめぐる政治の発展の大道がここにあることを強く指摘するものであります。(拍手)
 次に、民主主義の問題について質問します。
 総理は民主主義の意義と価値について繰り返し力説しましたが、政権や政党のこの面での本当の値打ちは、抽象的一般論ではなく、その時点で提起されている重大問題にどのように対処するかによって決定されるものであります。その見地から、総理の基本姿勢にかかわるものとして三点に絞って質問します。
 第一は、田中・ロッキード問題です。
 総理は、一昨年十二月の総裁声明では、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったことを反省し、いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除することを天下に公約しました。しかし、以来一年間、あなたはこの反省や公約に値する行動を何らとってこなかったし、今回の演説には総裁声明での殊勝な表明の痕跡さえも感じられません。総理は、ロッキード問題が発覚した一九七六年に国会が国民に公約した政治的道義的責任究明の任務は既に果たされ、田中問題は国会の問題として決着済みとなったと考えているのかどうか、明確な答弁を求めます。(拍手)
 第二は、定数是正の問題です。
 昨年後半、八つの法廷で現状を違憲と断定した判決が一致して下されました。国民の投票権の平等は憲法に定める議会制民主主義の柱の一つをなすものです。十年間も必要な改定に手をつけず不平等を長期に放置してきたのは、何よりも国会の多数党の責任であります。その是正に当たっては、当座だけを取り繕う一時の糊塗策でなく、相当期間の試練にたえ得る抜本的な解決策が求められます。今用意されている自民党案なるものは、あなた自身最小限の是正を旨としたと言っているほどですから、こうした基準での検討にたえるものとは考えられません。自党案にこだわらず、格差は少なくとも二対一に抑え、選挙区細分化への足がかりとなる二人区はつくらないことを基本として直ちに問題を国会での協議のレールに乗せるべきだと考えますが、自民党総裁としての見解を求めるものであります。(拍手)
 第三は、政党法の問題です。
 この問題は、国会内諸党派の協議の中から生まれた問題ではなく、自民党の大会決定によって強引に国会に持ち込まれてきたものであり、その官民党自身、吉村試案なる原案を既に用意していたことは周知のところであります。政党を法律で規制し、現体制擁護の党か変革の党かを政党公認の基準とするがごときは、戦前の治安維持法と軌を一にするファッショ的構想である、民主主義の政治体制を持つ国で許されることではありません。ところが、政党法の自民党原案はまさにこの点を骨子としたものであります。私は、自民党総裁である中曽根氏に、憲法の枠内での政党法も考え得るといった一般論に逃げることなく、政党法制定の企てを潔く撤回するよう強く要求するものであります。(拍手)
 次に、予算の問題に進みます。
 自民党政府が臨調行革の旗を掲げて既に四年、我が国にはどんな状況が生み出されたでしょうか。一方では大企業の繁栄と軍備の特権的な拡大、他方では勤労国民大多数の生活と経営の困難の増大、この極端な対照が今日の日本社会の現実であります。若干の事実を数字で見てみましょう。我が国の大企業の繁栄ぶりは国際的に見てもずば抜けたもので、昨年は東証一部上場約四百社の経常利益合計でも、三月、九月決算とも二兆二千億円を上回るという史上空前の水準に達しました。ことしの三月、九月決算では、ともにさらに大きい数字も予想されています。これに対して勤労国民の状態はどうでしょうか。労働者の賃上げは昨年、一昨年とも春闘史上最低の率に抑えられ、失業率は三十年来最悪の高水準、しかも労働時間はヨーロッパ諸国より年間二百時間から四百時間も多いという状況です。中小企業の倒産は昨年史上最高の二万件を記録しましたが、国税庁の調査ではさらに中小法人の過半数が欠損企業に落ち込んでいます。農家の農業所得も最近の四年間に実質で四分の一以上低下しました。
 総理、あなたは施政方針演説で、現在の経済情勢を全体として景気は拡大を続けていると特徴づけましたが、これは我が国経済社会の現状のとらえ方として余りにも一面的ではないでしょうか。大企業サイドだけでなく、政府統計にも反映している勤労国民の生活と経営の現実を直視することは、経済政策を立案し執行する大前提であります。我が国経済のこの二極的な現状をどう認識しているのか、総理の見解をまずただしたいと思います。(拍手)
 この現状は、政府にとって決して人ごとではないはずです。行革の名のもとに国民の生活と経営に対する国の援助を次々と切り下げてきたのは政府自身だからであります。その典型として、焦点になっている四つの分野を取り上げてみましょう。
 第一は、社会保障の分野です。
 総理は、政府が進めてきた社会保障制度の改革を、世界最高の長寿国にふさわしい社会システム構築への前進だと言って大いに自慢しました。しかし、これらの改革なるものは、医療、年金などどの分野をとっても給付の切り下げ、個人負担の引き上げ、国庫支出の圧縮など社会保障の大後退そのものでした。社会保障の経費は、高齢化の進行などで年々ふえるのが当たり前で、現行の水準を維持するために必要な経費の増加分は、四年間で合計三兆一千億円に上るはずでした。ところが政府は、相次ぐ改悪強行でその四分の三をあっさり切り捨て、わずか七千三百億円しか支出しなかったじゃありませんか。
 総理、こういう改悪を先見的な改革だといって自慢するあなたは、日本の社会保障制度が現状でもヨーロッパ諸国に比べ極めておくれた地位にあることを御存じなのでしょうか。社会保障給付の国民所得に占める割合は、イギリスや西ドイツでは二〇%台、フランスやスウェーデンでは三〇%台、これに対して日本はわずか一四%です。年金に至っては、老齢年金受給者の三分の二が二万円台の年金しかもらっていないという国は、進んだ資本主義国では日本以外にほとんど見つからないでしょう。かつては政府自身も掲げたことのある、社会保障制度の面でヨーロッパに追いつくという目標を総理は放棄してしまったのか、日本の国際的到達点についてのあなたの認識とあわせて伺いたいと思います。(拍手)
 第二は、教育の分野です。
 教育基本法は、教育諸条件の整備確立を教育行政の最優先の目的として位置づけていますが、この面では、今日なお大きな課題が残されています。教師が生徒の顔も覚えられない大規模校は全国に千八百三十八校、危険校舎も約千五百校分、プールや体育館のない学校は合わせて一万二千五百校を超えています。これらは、教育の荒廃や非行化の解決のためにもゆるがせにできない問題です。ところが、臨調行革のもとで、公立文教施設整備費は四年間に四千六百億円から三千六百億円に減らされ、大規模校の場合など児童生徒の自然減を見込んでも解消には四十年近くかかると言われています。総理の教育臨調構想には私は多くの批判を持っていますが、教育に対する国の責任を真剣に考えるなら、少なくとも教育施設を貧困な条件のまま放置するこのような教育予算圧縮政策をこそ、まず転換すべきではありませんか。(拍手)
 第三は、中小企業対策の分野です。
 中小企業白書によっても、我が国の中小企業は、日本の従業者総数の八一%、工業出荷高の五一%、商業販売額の六三%を占め、文字どおり日本経済の主役であります。二十二年前、中小企業基本法が提案されたとき、形だけで中身がないという批判に対して、政府は、予算は大いにふやす、農業予算並みにするのが目標だとまで答弁しました。しかし、この公約は全く実行されませんでした。そればかりか、特に今日、中小企業が国の援助を最も求めている経営悪化のときに、ただでさえ少ない中小企業対策予算を毎年切り縮め、ついに今回の予算では二千百六十一億円、総予算に占める比重〇・四一%というところまで圧縮してしまいました。これは過去最悪の数字であって、つぶれるものは勝手につぶれろと言わんばかりのやり方ではありませんか。私は、我が国商工業の主役としての地位に照らしても、中小企業政策を抜本的に再検討し、予算面でもそれにふさわしい充実を図ることを強く要求するものであります。(拍手)
 第四は、地方自治体の問題です。
 臨調行革のもとで、全国の自治体は圧迫に次ぐ圧迫を受けてきましたが、今政府が計画している補助金一律カットは、民生関係だけでも二千六百億円に上り、その被害はこれまでの比ではありません。地方自治体の財政危機は全国的に深刻で、この負担増をこなし得る財政余力を持たないことははっきりしています。しかも、補助金カットの九割以上が生活保護や保育所、老人ホーム、障害者施設の維持運営費、失業対策などに向けられており、弱者に対するこうした攻撃は、どんな口実によっても正当化できるものではありません。私は、国が負うべき当然の責任を放棄して自治体の財政を悪化させ、結局は弱者に冷たい政治を押しつける今回の無謀な措置の撤回を強く要求するものであります。(拍手)
 政府は、国民生活へのこれらの攻撃を実施するに際して、財政危機を最大の口実としてきました。これは国民を納得させ得る議論ではありません。あなた方は、国民の求める予算は徹底して切り詰めながら、勝手に聖域とした一連の部門には、これまで以上の予算を惜しみなくつぎ込んできたではありませんか。レーガン政権の対外戦略に合わせた経済協力費、財界の要望に応じたエネルギー対策費や大企業補助金など問題は数々ありますが、何といっても聖域中の聖域とされてきたのは自衛隊の軍備拡大であります。一九七四年に一兆円台を、一九七九年に二兆円台を突破した我が国の軍事費は、この予算案でついに三兆円を超え、政府がみずから決めたGNP一%の歯どめなるものも、まさに風前のともしびとなりました。財政危機を口実に国民生活に全面的な攻撃を加えながら、国民世論にも逆らって軍拡突出の政策をなぜ強行するのか。総理は、多くの国民が持っているこの疑問にはっきりと答えるべきであります。(拍手)
 最も重要なことは、この突出軍拡がアメリカの要請とシナリオに基づく日米共同作戦のための軍備拡大だということであります。このような軍拡に予算をつぎ込み、自衛隊増強のテンポを上げれば上げるほど、日本はアメリカ有事の際の参戦体制により深く組み込まれ、国民と国土の安全が一層脅かされることを声を大にして強調せざるを得ないのであります。(拍手)
 そこで、総理に伺いたい。日米防衛協力のいわゆるガイドラインに基づく協議の結論として、昨年日本有事の際の日米共同作戦計画書が完成し、十二月に、あなたの承認のもとに、統合幕僚会議の議長と在日米軍司令官が署名を取り交わしました。この作戦計画書は、日米双方に対してどのような拘束力を持つものでしょうか。それが若干でも拘束力を持つものであるならば、日本がこれによっていかなる軍事的、行政的義務を負ったかについて国会と国民に報告するのが当然であります。しかもガイドラインによれば、この協議の次の段階は朝鮮有事など、日本はどの国からも武力攻撃を受けないがアメリカが戦争行動をとるという、いわゆるアメリカ有事の際の日本の軍事協力に充てられることになっています。こういう文書が国民に秘密のうちにつくられ、国会も国民も知らない間に日本が外国に対して軍事的な義務を負うようなことは、国民主権を原則とする主権国家として絶対に許されることではありません。総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 予算問題の最後に指摘したいのは、軍拡優先の臨調行革が財政再建に完全に失敗したという事実であります。
 国債発行残高は、起点となった八一年度末の八十二兆円から八五年度末の百三十三兆円へと、行革以前の時期をさえ上回る膨張ぶりで、財政再建の見通しは全く示されないままです。こうした背景のもとで、総理自身が最近では増税なしの声をだんだん小さくし、シャウプ勧告以来の大改革などと言って大増税計画の方向さえほのめかしている現状であります。臨調行革の出発点では「増税なき財政再建」を口実に福祉や教育、国民生活をさんざん痛めつけておきながら、財政再建に失敗したら今度は大増税を持ち出すというのでは、国民を欺く点でこれ以上のことはないではありませんか。(拍手)
 私は、国民への増税なかんずく大型間接税の導入はしないという公約を総理が厳守することを求めるとともに、昨年十二月の党首会談で詳しく要求したように、軍事費の大幅削減による軍拡から軍縮への転換、国民生活関連予算に最重点を置く、一兆円以上の所得減税の実行など、予算の優先順位を根本的に組みかえることを強く要求するものであります。(拍手)
 最後に一言したいのは、日本の進路の問題であります。
 あなたは、アメリカとの軍事同盟の締結について賢明な選択だったと強調しました。しかし、これはアメリカ占領下の一九五一年に中立化を志向した国民多数の意思を無視して押しつけられたものであって、自民党の選択ではあっても、日本国民の自主的な選択では決してありませんでした。そして今、あなた方の三十四年前の選択の結果は、日本の核基地化と日米共同作戦体制の進行、突出軍拡による福祉、生活、教育への重圧、市場開放の名によるアメリカ側の無法な圧力への屈従に次ぐ屈従等々となって、日本の主権を侵し、平和と民主主義、国民の生活をますます脅かしているのであります。日本が二十一世紀に向かって真に希望ある未来を開くためには、歴史は、核を好む好核政府から非核の政府への転換、さらには革新・民主の政府による日米軍事同盟の打破と民族主権の回復、非同盟中立日本への前進という新しい選択を求めているのであります。
 私は、日本共産党が輝かしい未来を約束する日本の進路の真に自主的な選択のために国民とともに奮闘する決意を表明して、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 不破委員長にお答えをいたします。
 まず第一に、核兵器の廃絶については不破委員長以上に私は熱意を持っておるものであります。(拍手)恐らく日本全国民は、広島、長崎のあの悲痛な体験を受けまして、全世界のどの国民よりも核兵器を一日も早く地球上から追放するように念願しておると信じております。しかし問題は、いかに具体的にそれを実行、実現していくかという問題なのであります。例えば宮本議長はクレムリンヘ行って核兵器を廃絶しろとおっしゃったかどうか知りませんが、先方は、では私の方は一方的に廃絶するなんて言いましたでしょうか。恐らくこの問題は棚上げにしようということになって、棚上げのままお帰りになったのじゃないでしょうか。違いますか。(拍手)私は、そういう点からいたしまして、やはり核兵器廃絶の問題は、現実的に具体的にいかに廃絶させていくかという方法の問題が大事であると申し上げるのであります。
 具体的に言えば、アメリカとソ連の代表がテーブルに着かなければ話は始まりません。問題は、世界じゅうの人々がいかにしてアメリカの代表とソ連の代表をテーブルに着かせるかということで今まで努力してきたのであります。(拍手)そのテーブルに着かせる方法について、我々も懸命に考えました。しかし、現実的になぜテーブルに着いたかといえば、これは均衡と抑止に基づいてテーブルに着いたんだと言わざるを得ないのであります。すなわち、アメリカ側は、SS20があれだけ配備された、そこで自由陣営の方がパーシングUを展開するあるいは巡航ミサイルを展開する、しかし話し合いをしよう、ソ連が話し合いに応じてくるならやめてもいいと、そういう二重決定をやって、ソ連の態度を見たわけです。しかし、ソ連は出てこないものだから、パーシングUを展開し、巡航ミサイルを展開してしまった。それを見てソ連が、これは大変だというので、ではジュネーブで会おうという形になったんじゃないでしょうか。
 残念ながら、国際情勢というものはそういう力のぐあいで今動いているということは、これは科学的であります。だから、不破さんのように一方的に演説されるのも結構でありますけれども、しかし、我々に言わせれば、我々の考えが科学的廃絶論であって、不破さんの考えは空想的廃棄論であると言わざるを得ない。(拍手)我々は、そういう現実的な実効力のある考えに立ちまして、今後とも核兵器を地球上からなくすために懸命に努力していくということを申し上げるものであります。
 第二番目に、国連決議の問題でございますけれども、国連決議というものに我々が賛否を決める場合には、理念の問題も大事であります。しかし、それがいかに実証性を持ち、実効性を持って現実的に行えるかどうかという点を見なければならぬし、国連の場はややもすれば国際宣伝の場に利用されているということも現実なのであります。そのような、あらゆる総合的な判定に立って日本の態度は決めているのであって、常に我々は科学的に実効性のある方法を求めて賛否を決めている、そういうように申し上げる次第なのであります。
 さて、核兵器不使用の問題についても同じであります。つまり、核兵器を使用しない、これはみんなが願っているところであります。しかし、使用させないようにするためには、お互いが使用しないというように安心感を持たなければ不安でしょうがありません。そのためには、信頼醸成措置が必要であるし、相手が安心できる検証措置も必要であります。実際に確かめ合って、相手が持たないと安心できる、そういう体制をいかにつくるかということが我々の課題であって、今後ともこの面で努力するということを申し上げるのであります。(拍手)
 さて、次に、非核三原則について御質問がございましたが、もちろん、もとより非核三原則は今後とも堅持していくものであります。
 ニュージーランドとの問題につきましては、アメリカからニュージーランドを説得してほしいなんという要請を受けたことは全然ございません。それから、私がニュージーランドでロンギ首相に対して何か暗示したとか説得したというようなことは全くありません。みんな主権国家でありまして、内政干渉を排除し、その点については慎重な態度をお互いがとって首脳部は話し合っておるのでありまして、もし一部の新聞報道にそういうことがあるとすれば、全くこれは事実無根の報道であります。(拍手)
 次に、ロッキード事件に関しましては、この道義的政治的責任究明に対しまして、国会でロッキード問題に関する調査特別委員会が設置され、また、続いて航空機輸入に関する調査特別委員会が設置され、慎重に審議がなされて、両委員会とも、その任務は終了したと承知しておるのであります。つまり、任務が終了したからもう設置されていないのであります。しかし、政治的道義的責任のあり方と関連して、政治倫理の確立をやろう、そういう関係になりまして、今各党で政治倫理協議会を持って盛んに御検討願っておる、早く結論を得るように我々も協力したいと申し上げておるのであります。政治にはこういうふうに流れがありますから、よくお確かめ願いたいと思うのであります。
 次に、定数是正の問題でありますが、衆議院定数是正は緊急を要する重大な問題であります。自民党におきましては、最高裁の判決を踏まえ、総定数をふやさない、最小限度の是正にとどめるという方針で今懸命に努力しております。いずれ御提案申し上げたいと思いますが、各党間で十分御論議を願いたいと思う次第なのでございます。
 政党法につきましては、民主政治を行う上について政党の機能というものは実に重大な機能を持っておるわけであります。したがって、議会制民主主義のもとにおいて政党がどういうふうにあるべきかという点については十分研究していくべき必要が今後もあると考えており、政党法も検討課題の一つであると考えております。
 日本経済の問題につきましては、最近個人消費や住宅建設、あるいはそのほか設備投資等が出てまいりまして、自律反転力が拡大してまいりました。これにはずみをつけて景気回復をいたしてまいりたいと思います。物価の安定が最大に重要でございますから、物価の安定と雇用の増大を図るという意味において努力してまいりたいと思います。
 社会保障につきましては、我が国の社会保障体制は皆保険あるいは皆年金制度が整備されており内容も充実されておりまして、西欧先進諸国に比較してほぼ遜色ないものになっていると思います。日本は世界でも最長寿国になっており、乳児死亡率が世界で最も低い水準にあります。これらは国民生活水準の向上とともに、社会保障が国民生活の中に幅広く定着していることによる成果でもあります。今後の課題は高齢化社会に備えるということでございます。そうしてこの制度が長期的、安定的、有効に機能し得るように今後とも検討を進め、政策を進めてまいるつもりでございます。
 公立学校施設整備費の問題は、主として児童生徒数が減少していることによって少し減ってきている、こういうことによるのであります。地方公共団体の計画を勘案した所要の事業量はあくまで確保しております。文教予算全体につきましても、今後とも十分配慮していくつもりであります。
 中小企業対策につきましては、従来から我が党は懸命の努力をいたしておるところであり、六十年度の予算につきましても二千百六十二億円を計上して、精いっぱいの配慮をしておるところでございます。
 臨調答申におきましては補助金の徹底した削減合理化が望まれておりまして、それを実行いたしております。しかし、地方に対する負担増については慎重なる対処を行いまして、交付税の一千億円の特例措置、それから地方債の四千八百億円の増発で補てんをいたしまして、地方公共団体の財政運営には支障のないようにしておるところでございます。
 次に、防衛費の問題につきましては、必要最小限の防衛費を今回も計上したものでありまして、ほかの諸般の社会福祉費や教育費その他等とのバランスもよく考えて実行したものなのでございまして、御理解をいただきたいと思っておるところでございます。
 日米の共同作戦計画というものは、これは安保条約の機能的遂行のための一つの計画研究でございまして、作戦計画そのものではございません。指針に基づく研究につきましては、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものでないとの前提条件で設けられておるものでありまして、その研究の成果は条約や協定のようなものではなく、法的拘束力は持たないと御承知願いたいと思います。
 次に、大型間接税の問題につきましては、税制全般の改革の課題を今や我々は持った、公平、公正、簡素、選択、これは税収を目的とし、財政再建を目的とするものではない、税制の不合理、国民の不満解消というものを頭に置いてこういうことに取り組みたい、そう申し上げているものでございます。そして、これをどういうふうな内容でやるかということは、政府税調や党においてこれから検討する課題でありまして、政府としては白紙でございます。
 予算の優先順位についていろいろ御質問をいただきましたが、政府としては十分慎重に考えまして、福祉や教育を優先させ、あるいは保健あるいは公共事業等にも配意したものでございまして、組みかえる必要は毛頭ないと考えております。(拍手)
#15
○副議長(勝間田清一君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#16
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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