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1984/04/02 第102回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第18号
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1984/04/02 第102回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第102回国会 本会議 第18号

#1
第102回国会 本会議 第18号
昭和六十年四月二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十五号
  昭和六十年四月二日
    午後一時開議
 第一 道路運送法の一部を改正する法律案(参
    議院提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 社会保険審査会委員長任命につき同意を求める
  の件
 日程第一 道路運送法の一部を改正する法律案
  (参議院提出)
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
  する外務公務員の給与に関する法律の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を
  図るための特別措置に関する法律案(内閣提
  出)、国債整理基金特別会計法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)及び産業投資特別会
  計法の一部を改正する法律案(内閣提出)の
  趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 社会保険審査会委員長任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(坂田道太君) お諮りいたします。
 内閣から、社会保険審査会委員長に河角泰助君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 道路運送法の一部を改正する法律案(参議院提出)
#5
○議長(坂田道太君) 日程第一、道路運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長三ツ林弥太郎君。
    ―――――――――――――
 道路運送法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔三ツ林弥太郎君登壇〕
#6
○三ツ林弥太郎君 ただいま議題となりました道路運送法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 最近、軽自動車を使用して貨物を運送する軽車両等運送事業者が有償で旅客を運送する行為を行い、このため、道路運送に関する秩序の維持を困難にしている状況にあります。
 本案は、かかる状況等に対応し、軽自動車を含め自動車による貨物の運送事業者が有償で旅客を運送する行為を禁止するとともに、これに違反した事業者に対して、運輸大臣が自動車の使用の停止または事業の停止を命ずることができることとするほか、これらの禁止措置等に違反した事業者を新たに処罰の対象とすることにより、道路運送事業の適正な運営及び道路運送に関する秩序を確立しようとするものであります。
 本案は、参議院提出に係るもので、去る三月六日本委員会に予備付託、二十日本付託となり、二十六日提出者を代表して参議院議員梶原清君から提案理由の説明を聴取し、二十九日質疑を行いました。
 その質疑の主な事項を申し上げますと、軽貨物自動車による旅客輸送の発生原因及び現状とその取り締まり状況、本法施行後の違反者に対する本法の適用問題、沖縄及び奄美地区における関係者に対する指導及び生業対策、既存タクシー業者のサービス向上の必要性等についてでありますが、その詳細は委員会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
#9
○長野祐也君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#10
○議長(坂田道太君) 長野祐也君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤
  務する外務公務員の給与に関する法律の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
#12
○議長(坂田道太君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長中島源太郎君。
    ―――――――――――――
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
  する外務公務員の給与に関する法律の一部を
  改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔中島源太郎君登壇〕
#13
○中島源太郎君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、在外公館に勤務する外務公務員に支給する子女教育手当の加算限度額を百分の百から百分の二百に改めること、中華人民共和国の瀋陽に総領事館を新設すること及び「在上ヴォルタ日本国大使館」の名称を「在ブルキナ・ファソ日本国大使館」に改めること等を内容とするものであります。
 本案は、二月五日本委員会に付託され、三月二十八日安倍外務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、米国の戦略防衛構想と我が国の対応、海外子女教育の充実、中国残留日本人孤児問題等広範多岐にわたる質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、四月二日質疑を終了いたしましたところ、施行期日の「四月一日」を「公布の日」に改める等の修正案が提出され、趣旨説明の後、採決いたしました結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出)、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#16
○議長(坂田道太君) この際、内閣提出、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣竹下登君。
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#17
○国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
 御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあり、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定向上を図るためには、引き続き財政改革を強力に推進し、財政の対応力の回復を図ることが緊要であります。
 このため、政府は、昭和六十年度予算におきまして、特に、歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本とし、あわせて歳入面についてもその見直しを行い、これにより公債発行額を可能な限り縮減することとして編成したところであります。
 まず、歳出面におきましては、既存の制度、施策の見直しを行うなど徹底した節減合理化を行い、その結果、一般歳出の規模は前年度に比べ三億円の減額となり、これは昭和五十八、五十九年度に引き続き三年連続の対前年度減額であります。
 他方、歳入面におきましては、税負担の公平化、適正化を一層推進するとの観点から税制の見直しを行うとともに、税外収入について、極めて厳しい財政事情にかんがみ、可能な限りその確保を図ることといたしております。
 しかしながら、これらの措置をもってしてもなお財源が不足するため、昭和六十年度におきましては、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等の停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。
 本法律案は、以上申し述べましたうち、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置として、同年度における特例公債の発行、国債費定率繰り入れ等の停止、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例について定めるものであります。
 次に、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は、今後の国債の大量の償還、借りかえに円滑に対応するため、国債整理基金特別会計について所要の措置を講じようとするものであります。
 すなわち、年度内に償還される短期の借換国債の発行及び償還をこの会計の歳入歳出外で行うことができることとするとともに、翌年度における国債の整理または償還のため、借換国債を前倒し発行することができることとしております。
 また、政府に無償譲渡された日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式のうち売却可能分を、国債の償還財源の充実に資するため、この会計に帰属させることとするなどの措置を講ずることとしております。
 最後に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は、ただいまも申し上げました政府に無償譲渡された日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式のうち政府の義務保有分を、産業投資特別会計の資本の充実に資するため、この会計に帰属させることとするなどの措置を講じようとするものであります。
 以上、昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保
  を図るための特別措置に関する法律案(内
  閣提出)、国債整理基金特別会計法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)及び産業投資
  特別会計法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明に対する質疑
#18
○議長(坂田道太君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。伊藤茂君。
    〔伊藤茂君登壇〕
#19
○伊藤茂君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま提案をされました三案件について、中曽根首相並びに関係大臣に質問いたします。
 まず、財政の将来への基本認識を総理に伺います。
 日本の将来に明確な責任を持っているかどうかは、財政の将来への責任ある展望を持っているかどうかに象徴的に表現される、私はそう思うのであります。言葉でいかに社会の将来を論じ二十一世紀を語っても、政策の柱となる財政の将来への責任ある見通しがなければ、すべては空論であります。それがなければ未来を語る資格はないと思うのであります。多くの国民は、今財政再建の名のもとに福祉は削減され、軍事費だけが異常に突出し、国債残高は急増し、大増税が迫っていることに強い不安、危機感を持って注目しております。総理、あなたが進めている政策の将来はどのような社会になるのかという国民の不安であります。今必要なことは、広く国民生活、国民経済との関連で長期的な目標、ビジョンを明確にして、財政再建、財政改革に取り組むことであります。
 私の主張を先に申し上げましょう。財政再建の目標は、政策不明の一律カットなどの収支合わせではなくて、将来日本の社会目標を支えるにふさわしい財政構造をどうつくるかということであります。八〇年代半ばから二十一世紀に向けた展望からすれば、目標とすべきものは、福祉、公平、平和、そして社会的成長の経済、世界への貢献という課題を支える財政構造をつくることであると思います。総理、あなたは今日の財政危機に至った責任をどうお考えになりますか。財政再建の中長期の目標をどう認識しておられますか。一体どのような財政構造を目標として目指すのですか。
 次に、財政再建の中期の見通し、具体的方途について伺います。それが政府の責任が問われる今日の中心問題であると思います。
 総理、予算は政府の顔と言われております。財政は政策の集中的表現だからであります。しかし、その顔はゆがみ切っております。国民から見て怖い顔になりつつあります。今、中曽根首相は六十五年度赤字公債脱却を目標としています。しかし、確かなプログラムはありません。財政再建の中期のプログラムなしに、場当たりで毎年の予算を組み、多額の要調整額を並べた試算表で増税をほのめかしております。抽象的な財政再建の「考え方」を提出をいたしまして、一層の削減を国民生活に押しつけようとしております。このような対応では国民の信頼はあり得ないのであります。
 私は、財政再建の中期計画について、四つの視点からの具体策が必要だと思います。第一は実質五%強の経済成長、第二は税制の徹底した不公平是正、第三は軍事費の削減など歳出構造の改革、そうして四番目は過度に中央集権的な今日の財政を分権型につくり直すことであります。それらを総合して中期のプログラムを組むべきだと思います。総理、財政再建は自民党歴代内閣の最重点課題とされてまいりました。私たちと政策は違いましたが、かつて大平元首相は真剣に取り組まれた首相だったと思います。鈴木前首相も、総理の座を退かれた一つの理由は、五十九年度赤字公債脱却の公約が不可能となったという現実への責任感であったと伺っております。あなたは今、どのような責任ある対応をなさるつもりですか、どのように中期の具体策に取り組まれますか。
 次に、税財政にかかわる若干の具体策について伺います。
 本国会における税財政の議論は国民の注目の的でありましたが、今日までの中曽根首相の答弁は誠実さに欠け、あいまいであり、無責任であります。総理、あなたが高く評価されているアメリカ財務省の税制改正報告書には、現在の米国の税制は複雑であり、不公平であり、経済成長を妨げている、そして進んで納税しようとする態度がひどく損なわれている、そういう極めて率直な反省から始まって改革案を出しております。あなたの言う投網をかけるような云々などという判じ物のようなごまかしの姿勢は一つもないのであります。これは、指導者の国民に対する誠実さのあるなしの問題という気持ちがいたします。率直に国政の責任者としてのあなたのお考えをお伺いをしたいのであります。昭和六十五年度赤字公債脱却とあなたの言うシャウプ以来の税制改革とはどういう関係、どういう位置づけになりますか。「増税なき財政再建」から「増税を含む財政再建」に転換されるのでしょうか。
 あなたと親友のアメリカ・レーガン大統領は、一般教書の中で、税制改革であり得べからざることの一つは、それが姿を変えた増税であってはならないということであると申しておりますが、あなたもレーガン大統領と同じように言い切れますか。大幅な所得減税は勤労市民の切実な要求であります。あなたは所得税も法人税も減税したいと言われているようですが、直間比率の変更、大型間接税でその財源をお考えですか。財源の裏づけのない言葉だけではだれも信用できませんし、かえって国民を欺瞞するものになると思いますが、いかがでしょうか。
 政府税制調査会の小倉会長は、課税ベースの広い間接税について本格的に取り組むことを表明しております。また、あなたの党のいわゆる村山調査会は、大型間接税へ検討を開始し秋までに税制改革案をつくると報道されておりますが、あなたはこれをどうお考えでしょうか。また、政府税調にいつ、どんな諮問をなさるおつもりですか。あなたは、シャウプ勧告以来のひずみ、ゆがみを是正すると言われておりますが、その具体的内容をどう認識し、どのように改革されようとするのですか。
 私たち日本社会党が強くあなたに要求してまいりました軍事費のGNP一%枠厳守について、政府の答弁もあり、またあなたの党の金丸幹事長は、守るために最善を尽くすと表明しましたが、政府としてどのような努力をされますか。
 過去十年余の財政政策を振り返りますと、戦後財政民主主義の表現であった財政法の精神がゆがめられ、次々と歯どめが失われていく経過であったと思います。竹下大蔵大臣に伺います。今後の国債累積、急増する借換債を見ますと、財政法第五条、日本銀行の引き受け禁止が空洞化され、インフレの道をたどるのではないかと懸念されるのであります。財政制度審議会の「国債の償還等に関する諸問題についての中間報告」は、いわゆる国債基金制度について早急に結論を出すのは適当でないとして、なお検討課題にされておりますが、今後いかなる態度で対応されますか。また、財政法を見直す考えがおありですか。さらに、国債整理基金への定率繰り入れを四年間連続して停止してまいりましたために同特別会計は極めて不安定なものとなっておりますが、六十一年度以降どうなさいますか。
 さらに、この法律では政管健保の黒字を口実にして九百三十九億円の国庫補助を削減しようといたしております。これは、政府が医療改悪を強行し、さらにわずかの回復の芽も切り取って医療保険制度改悪を財政的に推し進めようとするものであり、公的医療保険への国庫補助をなくしようとする意図のあらわれであります。厚生大臣、あなたはどのような対処をされたのですか、また今後なさいますか。
 私は、財政の将来が重大であるだけに、あくまでも民主的に国民の合意と協力を求めていくことが今後極めて重要だと思います。しかし、今提案された法案を見ますと、国会で表明をしたことと大きく食い違っている重大な問題があることを指摘しなければなりません。
 国債整理基金特別会計法の一部改正の中には、日本電信電話株式会社、日本たばこ産業株式会社の株式のそれぞれ三分の二、二分の一を編入することとなっております。総理並びに大蔵大臣、郵政大臣は、昨年の電電改革三法案の審議の中で、電電公社の民営化は財政再建を目的としたものではないと繰り返し答弁をしてまいりました。また、売却益はその資産形成の経緯や国会審議を十分尊重して結論を出すと表明をいたしてまいりました。また、昨年の逓信委員会における電電法案審議の大詰めの段階では、この問題について小委員会を設置する方向が与野党間で話し合われていたのであります。
 しかるに政府・自民党は、電電法案が成立をしたまさに直後にこれを覆すことを決めたのであります。今提案された法案は、明らかに昨年の政府答弁に相反するものであります。あなた方は、国会の場で国民の前に公式に表明してきたことを一体どうお考えになっているのですか。与野党間の国会約束をどう考えているのですか。本来、電電公社の資産が多くの利用者の協力によって形成されてきた事実を考えるならば、新会社が引き継いだ負債処理など十分討議した使途に充てられるべきであります。この問題については総理、大蔵大臣、郵政大臣、それぞれ昨年の国会における答弁とどうなっているのか答弁してください。(拍手)
 さらに、この株式の売却方法について、政府は、いやしくも国民に疑惑を抱かせることは断じて許されないので厳正かつ公正に対処すると答弁をいたしてまいりました。しかし、既にさまざまの疑惑が話題となっているのであります。私は、英電電(BT)の株式売却に当たっての英国政府がとった方式、すなわち特定なものに売却するのではなく、可能な限り幅広い国民、電話加入者等に公開、公正に買い取ってもらうことが最も民主的であり、特定の法人、個人の集中を規制をすることが疑惑をなくする方法だと思います。そのためにはさまざまの特例も必要でありましょう。政府は今後具体策を検討する計画のようですが、このような基本姿勢をまず今明確にすべきだと考えますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
 さらに、産投特別会計に編入される両会社の株式配当の使途について、内容があいまい、抽象的であります。基盤技術研究のためのテーマなどをどのように設定しますか。中小企業の技術革新も重要な視点であると思いますが、いかがでしょうか。また、日本たばこ産業株式会社の株式編入ということから見ても、厳しい環境でスタートするたばこ産業の分野への基礎的研究も重要なテーマだと思いますが、いかがでしょうか。
 以上、提案をされました三案件について質問をいたしましたが、今日、財政危機の新たな段階を迎えております。その打開の明確な対応と方策なき政府のもとでは、まさに国民の不幸であり国家の不幸であります。総理並びに関係大臣の率直な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#20
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 伊藤議員にお答えをいたします。
 第一問は、現在の国債の累積の状況に対する責任と返済の手順の質問でございます。
 石油危機後の経済の停滞と税収の伸び悩みの中で、政府といたしましては、景気を維持し雇用を維持していくためにやむを得ず巨額の公債発行に踏み切らざるを得なかったのでございます。その結果、経済の運営は、ほかの国に比べて良好の状態を日本は呈してきておったのであります。しかし、その反面、公債残高が累憎いたしまして、国債の利払いだけでも約十兆円に達しており、今後の財政の対応力の回復を図ることが必要であり、このような意味で特例公債依存体質からの脱却を図ることが極めて重要になってきておるのであります。政府としては、六十五年までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標をぜひとも達成いたしたいと念願をし、このために歳出歳入の見直し、税外収入の確保あるいは民間活力の活用あるいは適切なる経済政策の運営等によりまして、財政再建の目的を達していきたいと考えております。
 このような財政再建に関しましては、具体的に数字をもって長期的計画を示すことは必ずしも適当ではございません。経済の条件は極めて流動的でございます。毎年度の予算編成過程において慎重に検討し、国会にも御審議を願っておるところであります。政府としては、歳出面においては、政府と民間の役割分担並びに国と地方の機能分担、費用負担を見直すなど連年の努力を行うと同時に、節減合理化に努めてまいります。歳入面におきましても、税外収入の確保等に全力を尽くしたいと思っております。いずれにせよ、「増税なき財政再建」の理念及び六十五年赤字国債依存体質からの脱却、これを目標にして今後とも努力をしていくつもりでおります。
 次に、増税を含む財政再建に転換するのではないかという御質問でございます。
 財政は歳出歳入の二つの側面から成っておりますが、歳出歳入両面にわたって抜本的な見直しが要請されておるところでございます。税制に関しをしては、シャウプ税制以来長い時間が経過いたしまして、この間における租税のひずみやゆがみを直す。また重税感から解放せよという国民の声が熾烈になってきております。政府としては、公平、公正、簡素、選択並びに活力という基本的な原則をもって税制の抜本的な見直しを行いたい。しかもそれは増税や財政再建のためではなくして、むしろ減税を心がけてまいりたい。所得税、法人税等々の減税を心がける、こういう考えに立って、ゆがみやひずみや重税感の是正を考えておるものなのでございます。今後適当な時期に、税制調査会等を中心にして国民の広い御論議をお願いいたしたら適当であると考えております。
 次に、大型間接税の導入を考えておるのではないかという御質問でございますが、この税の種目については、今白紙の状態におります。政府といたしましては、国会でも御説明申し上げましたが、一般消費税とかあるいはいわゆる取引高税とか、このような網羅的な、投網をかけるような、ああいう煩瑣な税体系というものは考えておらない、やりたくない、国会でも御答弁申し上げたとおりなのでございます。
 次に、政府税調と党税調の関係でございます。
 今国会における予算、税法等の審議終了後、国会でなされた税制に関する御論議等すべて政府税調に報告をいたしまして、御審議の参考にしていただく予定であります。ただ、新しい政府税調への諮問の内容や時期については、現時点ではまだ決めておりません。適当なときに適当な内容をもって行いたいと考えておるわけでございます。自民党におきましても諸問題について勉強を開始されたことは承知しておりますが、その具体的内容についてはまだつまびらかにしておりません。慎重にやっておられるようであります。
 次に、税制のゆがみとは何を意味するかという御質問でございますが、税調答申でも、所得課税の所得再分配機能のあり方、所得の捕捉の問題、課税ベースの浸食、間接税の課税ベースや税率構造、これらの問題が指摘されており、さらに、近年は直接税に偏り過ぎるとの指摘も行われております。いずれにせよ、究極的には税の問題は国民の合意と選択により決められるべきものであると思います。
 防衛費の問題について御質問をいただきましたが、防衛費につきましては、従来から厳しい財政事情を十分に踏まえて、国の諸施策との調和を図りつつ、着実な防衛力整備を進める努力をしております。そして、必要最小限の経費を計上しております。今後の見通しについては、現時点においては不明確でございますが、いずれにせよ、防衛費の対GNP一%に関する閣議決定につきましては守ってまいりたいと考えております。
 次に、電電株式の処理の問題でございます。
 電電の株式は国民の大事な財産でございまして、この売却収入の使途についてはいろいろ御議論がありましたが、前国会で表明した政府統一見解に基づき、国会の御審議等を踏まえまして、予算編成過程で政府部内において検討したところであり、その結果、電電株式の売却収入は、国民共有の負債である国債の償還財源とするのが適当であると判断した次第であります。売却可能な株式、三分の二ですが、これを国債整理基金特会に帰属させることとしたところでありまして、従来の答弁に反するものではございません。これらの株式の処理につきましては、あくまで公正を旨とし、慎重に行いたいと考えておるところでございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#21
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問にお答えをいたします。
 まず、いわゆる国債資金構想について、財政審報告では早急に結論を出すのは適当でないとしておるが、どういうふうに対応するか、また財政法を見直す考えはあるか、こういうお尋ねでございます。
 議員御指摘の問題につきまして、確かに財政審の報告におきましては、今後慎重に検討を重ねるべき問題であるとして、一つには、新規財源債を含めて一元的、弾力的に発行することは、償還計画表の問題もあわせ、財政法第四条との関係で問題はないか、二つ目は、原則として日銀引き受けが禁止されております新規財源債及び借換債と、日銀引き受けが認められております蔵券等の資金繰り債とを、財政節度を堅持するという前提に立ちつつ、どのように一元化していくか、これらが挙げられております。したがって、政府としても、これらの問題を含め、今後なお幅広い角度から慎重に検討してまいる必要があると考えております。なお、財政法の見直しにつきましては、財政法が財政の基本法であるということから、長期的視点に立った慎重な検討が必要であると考えております。
 次の問題は、定率繰り入れ停止の問題であります。
 定率繰り入れを基本とする現行の減債制度につきましては、財政制度審議会におきましても、基本的には現行の制度の仕組みはこれを維持するのが適当である、このような御報告をいただいているところであります。今後の定率繰り入れの取り扱いにつきましても、この基本的な考え方を踏まえながら毎年毎年の予算編成に当たって適切に対処すべき課題であるというふうに考えます。
 次が、電電株問題でございます。
 新電電株式の売却収入の使途につきましては、前国会で表明しました政府統一見解に基づきまして、国会での御議論を踏まえ、国民共有の資産である電電株式の売却収入は国民共有の負債である国債の償還財源とすることが適当であるとの判断から、売却可能な株式を国債整理基金特会に帰属させることとしたところであります。これは公社の資産形成の経緯等から見ましても適切な結論であり、従来からの私の答弁と矛盾するものとは考えておりません。なお、電電債の償還に充てることにつきましては、株式のすべてが政府に所属するとされておりますので、この売却収入で株式会社の債務償還を行うことはできないというふうに考えておるところであります。
 それから、株式の売却方法につきましては、これはまずいささかも国益を損なうことのないよう、国民に疑惑を抱かせることのないよう、今後、公正かつ適切な売却方法について、民間有識者の方々の意見も聞きながら十分慎重に検討していくこととしております。また、売却に際して一般投資家が参加するという点についても十分配慮する必要があると考えております。なお、株式の額面金額につきましては、通常の株式取引は五十円額面の株が千株単位で行われ、実質的には一株五万円になっていること等の理由から、昭和五十六年の商法改正において五万円以上とされたと承知しておりまして、電電株式についてはこの商法上の原則に従い、先般の設立委員会において決定された定款の中でも一株の額面は五万円と定められておるところでございます。
 それから、最後が産投会計の問題でございます。
 産投会計に帰属することになります電電、たばこ産業の株式の配当金収入につきましては、六十一年度以降産投会計の運用収入として受け入れられて、他の収入と合わせて、この会計の投融資財源として技術開発等に対して活用することを考えております。なお、基盤技術のためのテーマをどう設定するか、中小企業の技術革新やたばこ分野の基礎研究をどのように取り上げるかとの御質問につきましては、六十一年度予算編成の過程において検討することとなりますので、これは具体的に今日の時点では申し上げるわけにはまいりません。
 以上、お答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣左藤恵君登壇〕
#22
○国務大臣(左藤恵君) 伊藤議員の新電電株式の処分に関します御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 新電電株式の処分問題につきましては、政府見解に基づいて、電電改革三法案についての国会の御審議の経過等を踏まえまして、予算編成過程の中で政府部内において検討いたしました結果、株式のうち売却可能な株式、すなわち三分の二でございますが、これは国債整理基金特別会計に帰属させて、その売却収入及び配当金収入を公債償還財源に充てるとともに、政府保有が義務づけられております三分の一の株式につきまして産業投資特別会計に帰属させて、その配当金収入をもって電気通信の技術開発等に活用するということにされたところでございます。
 郵政省といたしましては、かねて新電電の株式につきましては、電電公社の資産形成の経緯等にかんがみまして、その一部は我が国の電気通信技術に関する研究開発の推進等電気通信利用者の利便の向上のために活用されるべきものと考えていたところでありますが、この意味で、ただいま申し上げましたように、政府保有が義務づけられている三分の一の株式につきまして、これを産業投資特別会計に帰属させて、その配当金収入をもって電気通信の技術開発等に活用するということは、今日の状況下におきましてはとり得る一つの解決策だということで意義ある方策だ、このように考えているところでございます。(拍手)
    〔国務大臣増岡博之君登壇〕
#23
○国務大臣(増岡博之君) 政府管掌健康保険の国庫補助繰り入れの減額についてのお尋ねに対しましてお答え申し上げます。
 今回の措置は、一般会計が極めて厳しい状況のもとで、政府管掌健康保険において単年度収支差が生じることに着目いたしまして、一般会計の財源の確保を図るため、昭和六十年度予算において特例的に会計間の繰り入れ調整を行うものであり、国庫補助制度を含め医療保険制度自体につきましては何ら変更を加えるものではございません。また、この減額分につきましては、政府管掌健康保険の今後の財政状況を勘案して繰り戻しを行うこととしており、政府管掌健康保険の適正な運営を損なうものではございませんので、御理解をお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(坂田道太君) 古川雅司君。
    〔古川雅司君登壇〕
#25
○古川雅司君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和六十年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、いわゆる財確法外二法案について、総理並びに大蔵大臣に質問を行うものであります。
 我が国の財政は、六十年度末で百三十三兆円の国債残高を抱え、さらに毎年多額の国債発行を続けざるを得ないという危機的な状況にあります。その上、六十年度は五十年代に大量に発行された国債の償還、借りかえが本格化する最初の年であります。
 私は、まず最初に、財政再建に対する中曽根内閣の基本姿勢を改めて伺うものであります。
 政府は、本日の議題で明らかなように、近年、赤字国債の借りかえ、国債整理基金への定率繰り入れの停止など、みずからの公約を次々と放棄し、国民の政治不信と先行き不安を増幅させております。すなわち、今を去る十年前、昭和五十年度に特例公債が発行されたとき、当時の大平大蔵大臣は、特例公債の借りかえは行わないと明言し、五十一年度から五十八年度まではいわゆる財政特例法の中で、償還のための起債は行わないという規定を明文化しておりましたが、政府は既にこの財政運営の節度さえも踏み破ってしまったのであります。その上、大型間接税の導入を画策し、「増税なき財政再建」の公約をも放棄しようとしていることは、もはや言語道断と言わざるを得ません。昭和五十年度に赤字財政に陥って以来、歴代内閣がことごとく財政再建に失敗し、今日特例公債の償還を不可能にした背景を見たとき、最も顕著でありますのは、経済成長率を初めとする政府の経済見通しと実績の乖離が余りにも大き過ぎたという経済政策の誤りであります。この結果、「増税なき財政再建」に必要な税の自然増収も十分に確保できなかったのであります。さらには、行財政改革をかたく公約しながら、福祉、文教予算の削減に終始し、本格的な行財政改革が進んでいないことを指摘せざるを得ないのであります。一般消費税の導入を拒否する国会決議によって、大型間接税の導入など増税による財政再建は明確に否定されております。
 こうした経緯から見ても、中曽根内閣は、「増税なき財政再建」を一歩でも後退をさせることや、理念として守るなどというあいまいな姿勢は許されないはずであり、文字どおり景気対策と行政改革の両立て「増税なき財政再建」を貫徹し、大型間接税の導入を断念することを確約すべきであります。総理の前向きな答弁を要求するものであります。(拍手)
 また、政府は、財政再建論議の手がかりとして「中期的な財政事情の仮定計算例」を提示しておりますが、このうち最も現実の財政の姿に近い一般歳出の伸び率が三%、赤字国債の借換債を発行するケースの六十年度予算と六十五年度の財政を比較してみますと、その結果は、仮に要調整額と言われる財政赤字が解消され、赤字国債の発行がゼロになったとしても、国債の総発行額、国債残高、国債費及びその一般会計に占める構成比は、六十年度予算案より大幅に増加しており、財政は依然として憂うべき状態にあります。私は、財政再建の方法論という視点から見ても、安易な大型間接税の導入は、単に財政赤字の穴埋めに利用されるだけで、本格的な財政再建を先送りするだけのものと断言せざるを得ませんが、大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 さらに、赤字国債の借りかえを認めることは、赤字国債と建設国債の区別がなくなり、赤字国債の歯どめを失い、赤字財政の病理を隠し、財政運営の節度をさらに失うものであると言わざるを得ません。こうした実情を踏まえますと、今後の財政再建には、単に赤字国債の発行減額だけを指標とするのではなく、国債管理政策の整備、国債残高の減少など新たな財政再建の指標と対策を明示し、国民の理解を得ることが欠かせないと考えます。御見解と具体策を伺います。
 昨年赤字国債の借りかえのための立法措置をとって以来、政府が赤字国債の借りかえを抑制するためにどれだけの努力をしたかは極めて疑問であります。赤字国債の借りかえに踏み切らざるを得ない事情について国民の理解が得られるだけの努力をしたとは到底考えられないのであります。赤字国債の借りかえについての国民の不安や不満に大蔵大臣はどのようにこたえるか、明確なお考えを示されたいのであります。
 次に、減債基金制度について伺います。
 まず、政府は、五十七年度より六十年度まで四年連続して、金利のつく借金をしながら将来の返済資金を積み立てることはないとの理由で、国債整理基金への定率繰り入れを停止してきました。その結果は、国債償還財源が底をつき、赤字国債の借りかえという異常事態を招いたのであります。しかも政府は、五十八年度以降の三年間の予算編成では、最初は定率繰り入れを行うことを前提として歳入不足を計上し、財源難を強調しながら、編成途中で定率繰り入れを停止し、財政のつじつま合わせを行っております。これに対する財政当局の責任は極めて重大でありますが、どのように受けとめておられるのか、しかと答弁を願います。この間、定率繰り入れの停止は、国民に減税見送りや福祉、文教予算の削減を押しつけるための手段とされ、また、国民が財政危機の実態を直視する妨げになってきたのであります。
 以上のような観点から、国債管理償還政策及び減債基金制度のあり方は根本的な見直しを迫られておりますが、政府はこれらについてどのように考えているか、また、定率繰り入れは六十一年度以降においても停止を続けようとされるのかどうか、その対処を明確にしていただきたいのであります。
 六十年度予算案の最大の特徴は、国債費が五十九年度当初予算比一一・七%増の十兆二千二百四十二億円と歳出主要項目のトップに立ち、歳出に占める割合も一九・五%に達したことであります。六十年度以降の財政再建対策は、この膨大な国債残高といかに取り組み減額していくかが財政の柔軟性を保つ上において極めて重要であることは言うまでもありません。そこで政府は、売却可能な電電株の三分の二と専売株の二分の一を国債整理基金に帰属させ、国債の償還財源に充てるという窮余の策に出ました。それも一つの方法ではありましょうが、国債費の増加そのものを本質的に抑えるためには、まず赤字国債の発行から脱却するとともに、その借りかえをやめる一方、行財政改革を断行するなど不断の取り組みが要請されるのでありますが、政府はどのような対策を措置するか、明確な答弁を願います。
 ここで、当面する経済情勢とサラリーマンに対する所得税減税について質問いたします。
 内需の中でも、個人消費は実質雇用者所得の伸び悩みから低迷し、消費不在の景気回復とさえ言われています。長期にわたる個人消費の不振は、政府の景気対策の欠点を露呈するとともに、このまま推移すれば、さらに内需の低迷は深刻化し、対外経済摩擦を激化させることは必至であります。これらの経済情勢は、政府が我々の予算修正要求に対し、自民党が確約した政策減税の実施はもとより、所得税減税についても六十年中の早期実施の緊要性を証明しておりますが、総理が英断を持って見解をお示し願います。
 さらに、私がここで強く要求しておきたいことは、先日最高裁で判決があった必要経費問題などサラリーマンに対する課税問題であります。最高裁の判決も、現行の課税制度が給与所得者に不利であることは認めております。したがって、この問題の解決策は、まず所得税減税を断行することにあります。もしこのまま所得税減税が見送られ実質増税が続くならば、不公平が拡大し、まじめで勤勉な国民性と勤労意欲を阻害し、民間経済の活力をそぐことになりかねません。総理は、このサラリーマンと税金に関する問題にどう取り組み、解決されようとしているのか、明快な所信をお示しいただきたいのであります。
 最後に、政府が国民世論に背を向け、防衛費の伸び率を異常突出させ、GNP一%枠さえ踏み倒そうとする一方で、いたずらに財政の帳じり合わせに腐心する予算編成に終始している限り、我が国経済の活力を弱め、財政再建どころか後世に限りない負担の重圧を押しつけることになることは明らかであることを申し上げ、総理並びに大蔵大臣の誠意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 古川議員にお答えをいたします。
 第一問は、財政再建に関する基本姿勢でございます。
 我が国を取り巻く財政事情は極めて厳しいものがございます。それに加えて、高齢化社会あるいは国際化社会等々に対応するためにも、今後財政改革を強力に推進して財政の対応力を回復する必要があるのであります。このために歳出歳入全般にわたる見直しを行い、「増税なき財政再建」の理念のもとに六十五年度赤字公債依存体質から脱却する、そういう目標に向かって今後とも営々と努力してまいるつもりであります。
 次に、「増税なき財政再建」と大型間接税の問題でございます。
 財政を取り巻く厳しい環境に対応していくために、従来ゼロシーリングあるいはマイナスシーリング等を四年にわたって実行してまいりましたが、今後とも歳出歳入に関する厳しい見直しというものは続けていく必要があるだろうと思います。しかし、税の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、政府は、現段階では税体系の具体的なあり方については白紙の状態でございます。しかし、シャウプ税制以来のゆがみやひずみ、あるいは重税感というものから解放するために、公平、公正、簡素あるいは民間活力等々の原則のもとに税の体系全般を見直す、特に減税を志向して、これらの見直しを行いたいと先般来申し上げておるところでございます。いわゆる一般消費税やあるいはいわゆる大型間接税の問題につきましては、先般来申し上げておるとおりで、「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はとらない」と申し上げているとおりであります。
 次に、国債残高の処理の問題であります。
 連年、一般歳出を前年度同額以下とするなど、かなりの努力はしてきておるつもりでありますが、財政は、公債残高が六十年度末で約百三十三兆に達する見込みであります。六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力は今後とも続けてまいらなければなりません。そして、特例公債依存体質から脱却した後においては、財政改革の第二段階として、公債の残高をできるだけ速やかに減少さしていくように努力してまいりたいと思っております。
 次に、所得税・政策減税の関連でございますが、先般、各党の幹事長・書記長会談におきまして合意を見ました点につきましては、それぞれの経過を踏まえまして、それらの手続を経た結果に対しましては、これを尊重してまいりたいと思っております。
 次に、サラリーマン減税を中心といたしまして所得税の減税に関する御質問がございました。
 赤字公債を増発して減税するということは適当ではございません。結局、税制全般の見直しの中で、我が国の所得税制をどうするかという観点から、広範な検討課題の一つとして取り上げていくべきであると思っております。先般最高裁判所から、故大島正氏が給与所得課税の合憲性を争った訴訟につきましては合憲の判断が示されました。これは、現行給与所得控除制度の合憲性ないしは合理性が司法的に是認せられたものと受けとめております。
 最後に、防衛費と予算の関係でございますが、防衛予算については、他の諸施策との調和を図りつつ、我が国防衛に必要な最小限の経費を計上したところであります。昭和六十年度予算は、行財政改革を強力に推進するという基本方針のもとに、歳出歳入の徹底的合理化を行って算出したものでございます。なお、公債の発行残高は六十年度末には約百三十三兆となる等極めて深刻な状況にございます。後代の国民に元利払い負担を負わせることにもなりかねないので、今後とも財政改革を着実に進めてまいる所存ております。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇」
#27
○国務大臣(竹下登君) まず、古川さんの大型間接税の問題と財政再建、これは総理からも基本的なお話がございました。
 私どもは、歳出面において、政府と民間の役割分担あるいは国と地方の機能分担、費用負担の見直しなど連年の努力を踏まえて、その節減合理化にさらにこれからも積極的に取り組む所存であります。税制そのものにつきましては、現段階で税体系の具体的あり方ということに予断を与えるような論議は差し控えたいというふうに考えております。
 それから、財政再建は単に赤字公債の発行減額だけを指標とするのじゃなく、国債管理政策の整備なり国債残高の減少など新しい財政再建の指標と対策を示すべきであるという御意見であります。
 まず、一般会計が特例公債に依存しておる体質から一刻も早く脱却する、これがいわば財政改革の第一関門であります。六十五年までにこの体質から脱却するという努力目標に対して、これからも全力をささげます。そして中長期的には、いわゆる残高の対GNP比をこれまでのように急速に上昇させることのないよう、できるだけ低水準にとどめることが必要であります。したがって、これらを具体的な数字で示すことは困難でありますけれども、これからも毎年毎年の着実な努力によって、いわば新規債の発行の縮減を図っていくという努力を続けなければならないと思っておるところであります。
 それから、借換債の事情を国民は納得してないじゃないか。
 御案内のように第二次石油危機という予期せざる事態の発生を契機として、我が国の経済成長率は大幅に低下しました。税収の伸びも急激に鈍化いたしました。大変な厳しい環境ということで、大きな変化をもたらしました。そこで、五十九年度財確法におきまして、特例公債の借換債の発行を行わないとした従来の政策を遺憾ながら転換せざるを得なかったわけであります。現下の厳しい財政事情のもとで、経済や国民生活への影響を考慮しながら財政改革を着実に進めていくために特例公債について借換債の発行を行わざるを得ないので、この点はぜひ御理解を賜りたいのであります。
 国債整理基金定率繰り入れの問題であります。
 財政審建議におきまして述べられておりますように、昭和六十年度においては、極めて厳しい財政事情そして国債整理基金の資金状況、これらを勘案して、特例公債減額に最大限努力をしなければならないことを考慮いたしますならば、まことにやむを得ざる措置として定率繰り入れを停止せざるを得なかったところであります。この点も御理解を賜りたいと思います。
 それから、現行の減債制度につきましては、これは財政審でも、「基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当である」、このような御報告をいただいております。そういう基本的考え方を踏まえながら、各年度の予算編成に当たって適切な対処をすべき問題であると思っております。
 それから、六十年度以降の財政再建対策は、膨大な国債残高といかに取り組み減額していくかという問題でありますが、確かにそのとおりであります。
 とにかく、これからも、高齢化社会、国際社会の進展に対応するため、何としても財政改革を強力に推進して、その対応力の回復を図っていかなければなりません。したがって、歳出面におきましては、なおこれからも厳しい対応をしていきますと同時に、歳入面におきましても、これは税制調査会の答申を踏まえて、税制全般にわたる広範な角度からの論議と検討が行われるべきときであるというふうに考えております。最終的には、国民の選択がどのようなものであるか、各方面の議論を伺いながら、幅広い角度から検討を続け、コンセンサスを見定めていかなければならないと思います。
 所得税減税問題につきましては、総理からお答えがございました。
 いずれにしても、「負担の急激な増加や歪みをもたらさないよう、社会経済情勢の変化に対応して、数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」これがいわゆる中期答申の内容でございます。
 それから、防衛費問題につきましても総理からお答えがございましたが、諸施策との調和を図りながら、我が国の防衛に必要なぎりぎりの最小限の経費を計上したわけでございます。言ってみれば、ぎりぎりの努力を払った結果であるというふうに御理解をいただきたいと思います。(拍手)
#28
○議長(坂田道太君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#29
○議長(坂田道太君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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