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1947/10/02 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会海難審判法案に関する小委員会 第2号
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1947/10/02 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会海難審判法案に関する小委員会 第2号

#1
第001回国会 運輸及び交通委員会海難審判法案に関する小委員会 第2号
  付託事件
○海難審判法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月二日(木曜日)
   午前十時二十四分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○海難審判法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小林勝馬君) それでは只今から海難審判法の小委員会を開催いたします。小委員長に御指名頂きましたけれども、皆樣の絶大なる御協力によりまして職責を全うしたいと存じます。八月十三日第一回を開会いたしまして、本日は四回目と存じますが、只今から質疑の継続をいたしたいと思います。この前からの質疑の継続をお願いいたします。
#3
○丹羽五郎君 本案に関しまして、衆議院の方は本案に対して附帶決議を附けておりますが、どういう附帶決議を附けたかについて一應政府のお答えを承りたいと思います。
#4
○政府委員(有田喜一君) それでは衆議院附帶決議の文章を朗読いたします。
   附帶決議
 一、本法案第六十二條第六十三条の勧告は強制力を有しない缺点があるからこれを補うため被勧告者をして勧告の趣旨を嚴格に履行させるよう監督の措置を講ずること。
 以上でございます。
#5
○丹羽五郎君 今政府委員から衆議院の附帶決議を聞きましたが、衆議院としても、この第四條末項の勧告ということは相当重要に考えているらしいです。私共は当初から勧告ということに向つて、今日まで縷々論議を重ねて來て、この勧告に対しては相当この法案に重点を置いておる次第であります。衆議院の附帶決議の要旨を見ますと、第六十二條、第六十三條の勧告は強制力がないから、もつとこの勧告に対しては強制力を持たせるということ程、この勧告というものは重大視をしておるように考えられるのであります。私共この勧告に対しては強制力を附加するということには決して反対でもない。併しこの勧告に対して強制力を附けるならば、在來から私が申しておりまする被勧告者に対しての抗弁権をはつきり認めていることが、私はこの法案改正に最も民主的に即應した行爲じやなかろうか、かように考えております。大体この法案に勧告というものを今度置いたということは、恐らく新らしい行爲ではありまするが、この新らしい行爲を軽く考えておるということは、私この法案の最も遺憾なる点であると考えておる次第であります。私は当初この法案を手にした折から、被勧告者に対しては抗弁権を與えて、受審人と同樣に、二審制に持つて行けるようにやるのが一つ、又この被勧告者に対して特別海事補佐人というものを置くということを強く私は主張をして來たものであります。私は第四條の勧告に対して何とかこの被勧告者の立場を考え、又被勧告者が民事訴訟法による損害賠償の請求に対應することのできる途を開くことが最も進歩した、法の当然とならなればならん行爲であろう、私はかように考えますると同時に、この海難審判法の立法の精神は技術的にその事件の探求をして、そうして再びそういうような海難を起さない、海難防止の一つの方法としてこの法案が立法されたように考えておりまする上から眺めましても、この被勧告者に対しては、自己の立場の主張を十二分に切り開く、十二分に開陳のできる途を講ずることが最も必要だと、かように考えております。
 それから前の海難審判法の審議の折に、私はこういうお尋ねをしたのであります。これは二審を以て最終審とするかということ、この五十三條を眺めると、高等裁判所の方に異議の訴えを提起することができるということになつたおるが、この法案の精神というものは二審を以て最終審とするのかというお尋ねをした折に、政府委員からこういうお話があつたのであります。人が人を裁くのだから過ちがあつてもいかんから、これは二審によつて、尚且つその人が不服があれば今度は高等裁判所に提訴することができる途を開いておるのだ、これは何人も考えられる点であつて、これは人が人を裁く以上……。ところが、この勧告に対して一審でこの勧告を終結すべきものじやないということは、政府委員の答弁によつても明らかな事実であろうと私は考えるものであります。又政府委員の答弁から見ていつても、この被勧告者に対しては抗弁権を十分に認めて、これを第二審に訴をし、又不満足な場合に高等裁判所にこれを提訴するところの途を開くことが当然のことであろう、政府委員の答弁から見ても当然のことであろう、かように考えております。
 もう一つお尋ねしたいのは、さすればこれが最終審じやないというような前回の答でありましたが、五十五條の規定から見ますると、五十五條にかようなことが書いてあります。「第五十三條第一項の訴の提起は、裁決の執行を停止しない。」これは二審が最終審であるということを、ここに明らかに執行の上から言つて掲げられておるように考えられる次第であります。「裁決の執行を停止しない」、要するに二審で裁決した場合に執行を停止しないということがここに掲げられてあるところを見ると、過日の政府委員の答弁とこれとが非常に矛盾を來しておるように考えられる次第であります。
 それから第八章の裁決の執行ということの中の第五十七條には「裁決は、確定の後これを執行する。」ということが明示されてあるのであります。この五十七條の精神から見ると、この五十五條の「裁決の執行を停止しない。」ということは非常な私は法文上の矛盾がありはしないかということを考える次第であります。五十七條には明らかに「裁決は、確定の後これを執行する。」裁決の確定はどれを指すか、私はこの五十七條の裁決の確定ということはどれを指すかということをお尋ねをして見たい。一應その点を一つお尋ねをして見たい、かように考えています。
#6
○政府委員(有田喜一君) 海難審判所によります勧告を國の権力作用によつて強制的に実現するということは一應望ましいことであるのであります。併しながら國の強制権を行うためには、現代の國家制度の下におきましては必ず法律の根拠を要するということはこれは当然であります。然るところ、勧告のごとく、いかなる内容の勧告をなされるかということが予測できない事項に対して、非常に廣い法律を準備するということは、その反面におきまして國民の自由がそれだけ侵害を受けるということを意味しまして、今日の新憲法下民主主義と両立しないということに相成るのであります。從いまして、むしろ勧告は当事者の反省と、或いは社会の輿論、或いは行政官廳の指導ということによつてその趣旨の実現に務めるより外に方法がないという趣旨によりまして、この六十二條第二項及び第三項並びに六十三條のような規定を設けた次第でありまして、この点は前回の委員会にも他の政府委員から恐らく詳しく御説明しておると思うのであります。
 そこで然らば丹羽委員のお尋ねの被勧告者に対する一つの救済方法とか、行政指導によりましても、或いは社会の輿論によりましても、被勧告者に対して相当の法律問題ではないが事実問題として相当の制裁を受けることになれば、それに対する救済方法は何か考えなくちやならんというお尋ねのようでありますが、その点至極御尤もと考えるのであります。そこで私たちの立場といたしましては、先程申しました新憲法の民主化と両立しないという間を縫つて、いかに被勧告者を救済するかということをいろいろと考えまして、その点は実はこの法律の四十五條でありますが、「この法律に定めるものの外、地方海難審判所の審判の手続に関し必要な事項は、命令でこれを定める。」、こういうことが書いてあります。そこでこの命令の内容によりまして、法律の許される範囲におきまして、被勧告者を救済するというようなことをいろいろと考えておるような次第であります。
 然らば命令の内容をどういうように考えておるかといいますと、先ず理事官は審判開始の申立てをします場合に、單に法律第三十四條第二項の通告に外に、船舶所有者その他海難の原因について重大なる関係がある者があると認めましたときには、その者に対して、やはり第三十四條第二項の通告に準じて、審判開始の通告をなさなければならんということにいたしたいと思います。そうしますと、そこに関係人というものがどうしても審判廷に出席するということであります。その審判廷におきましても、被勧告者の立場から、いろいろと海難原因について、或いは自分に責任がないとか、責任があるとかいうようなことの趣旨の弁明ができる機会が與えられると思うのであります。尚補佐人につきましても、その命令によりまして海難原因について重大なる関係がある、即ち被勧告者になるであろうと思われる者につきまして、補佐人を選任して、審判期日に陳述させる機会が與えられるようにいたしたい、かように考えております。尚その審判期日に被勧告者或いはその補佐人が出廷できないというような虞れがありますときには、審判所はその期日を延期するという方法を採りまして、ともかく被勧告者の審判期日に間に合つて、いろいろと趣旨の弁明ができる機会を極力與えたい、かように考えておるのであります。
 そういたしまして、十分に被勧告者の意見も徴しまして、ともかく第一審といたしまして、やはり勧告をすべきだということが決まりまして、それでも尚且つ被勧告者がその勧告に対しまして不服があるという場合にはどうするかという問題が第二点として残るのであります。その場合におきましては、やはり第四十五條の命令内容に一つの方法を考えまして、勧告をなすべき旨の裁決をいたしますときには、裁決の言渡しの審判期日は必ずこれを被勧告者に通知しなければならないことにいたしまして、審判所が勧告をなすべき旨の裁決をした場合は、その勧告を受くべき者が、その勧告内容に不服がある場合には、直ちにこの理事官に申立てをする、そういたしますと、理事官は必ず高等海難審判所に第二審の請求ができるのでありますから、理事官が被勧告者の不服の申立てがありますときには、必ず直ちに第二審に請求ができるという方途を講じて万遺憾なきを期して行きたい、かように考えておるような次第でございます。
 ここまでは行政処分でありまして、我々が憲法問題とか或いは法律問題を離れまして、ともかくこの海難審判法の法律の範囲内で許されるところである。それ以上の高等裁制所に行くということは、これは或いは訴えができるかも知れません。併しそれは或いは棄却するかも知れません。これは行政官廳の及ぶところでないのであります。又冒頭に申しました憲法下の民主主義の立場からいろいろの問題がありますので、ここまではちよつと手が及び兼ねるかと思います。併しともかく出すことは自由である。それが棄却されるかどうかということは、これは私の方で責任を持つて答弁できないのであります。併しともかく高等海難審判所、ここまでにおきまして十分なる審査をやり、而も第一審、第二審共に被勧告人を呼び出しまして、いろいろと実情も聞き、十分なる審査もやることでありますから、行政処分としては全く万遺憾なきを期し得るという確信を持つておる次第であります。ここまでやれば、被勧告者も十分にその救済方法が講じられると、かように考える次第であります。
 尚最後にお尋ねの第五十五條の「第五十三條第一項の訴の提起は、裁決の執行を停止しない。」ということと、第五十七條の「裁決は、確定の後これを執行する。」、これに対して矛盾しないか、かようなお尋ねでありますが、とにかく高等海難審判所の裁決というものは、これは一つの行政処分であります。五十三條で提起されましても、やはりその行政処分は一應その通り裁決の執行を停止せずにやるのであります。やはりそれで裁決は確定しておると見るのであります。その確定後これを執行するのでありますから、五十五條、五十七條の間には、何ら矛盾を來さない、かように考えております。
#7
○丹羽五郎君 今の政府委員の御答弁は、大体私が勧告者の立場を力説して参りましたことに関しまして、これをよく勘案されてこの法令をそこに適用いたしまして、地方海難審判所から高等海難審判所に提訴する途は、四十六條の理事官によつてこれを提訴する橋渡しを考えられたということは非常に私も満足に感ずる次第であります。私は在來一番重点を置いておつたのは、この五十三條の末項の「地方海難審判所の裁決に対しては、訴を提起することができない。」、即ち地方海難審判所の裁決に対しては、今度は高等裁判所に訴えをすることができないという、ここを私は非常に虞れておつたのでありますが、この四十六條で、理事官によつてこれを高等海難審判所に橋渡しをいたしまして、高等海難審判所の裁決が若し被勧告者に不服の点があれば、これは高等裁判所に提訴する、高等海難審判所にこの事件を移すことを得るように私は今まで長らく力説をして來たのですが、今のことによつて橋渡しができた、できれば今度はそれを又被勧告者が高等裁判所に提訴ができるという途はここで開けるのでありまするから、その点においては私満足の意を表する次第であります。
 今政府委員が救済ということをいわれたが、私はこの勧告者に対して、救済という意味でこの被勧告者を眺めるということは、現在の立場からいつても、私は当然被勧告者には一つの抗弁権がなければならん、抗弁権に対して救済ということは、少し私この言葉の用い方に向つて遺憾の意を表して置きたい、かように考えております。檢事の主張に対しては、救済ということは私は生ずるべきものじやない、かように考えておる次第であります。
#8
○政府委員(有田喜一君) 別に言葉尻を云々するわけじやありませんが、私が救済と申しましたのは、いわゆる法律用語でいろいろな請求とか異議の申立というようなことを、私は少し古いかも知れませんが、行政訴訟法その他でいわれましたいわゆる救済という法律用語の救済で、別に助けてやろうとか何とかいう救済ではないので、その点は誤解のないように願います。
#9
○丹羽五郎君 分りました。それから政令でありますが、この政令が前の折もいろいろ多少論議をせられて來たのでありますが、九月六日総司令部の当局談として、新憲法下の立法権に対して便宜的政令はいけないということを、再び司令部の方から固い声明をされておるのでありますが、この法案にも、前にも申上げたごとく、政令が六つ程使つてありまするが、私の眺める政令の中でも一番我々委員として愼重に考えなければならん点は、第九條かと考えておる次第であります。この政令の使い方につきましては、委員長から一應、私は在來からこの政令問題をいつておりましたから、他の委員の意見を徴して貰いたい、かように考えております。
#10
○委員長(小林勝馬君) 只今丹羽委員からのこの第九條にございます政令の問題につきまして、外の委員の方々に御異議ございませんでしようか。
#11
○新谷寅三郎君 只今のは第九條の政令かと思いますが、裁判所なんかでは一般的に管轄区域でありますとか、そういつたことは法律で決めることが原則になつておると思うのであります。併しこういう懲戒裁判というような、懲戒審判というようなものにつきましては、必ずしも事柄の大小によつてすべてを法律に書かなければならんということもなかろうかとも思うのであります。結局問題の重要性によつて、或るものは政令に任せることも差支えはないのじやないか、私はそう思うのであります。
 序でに政令の問題について政府委員の方にお尋ねしたいのでありますが、それは先程丹羽君の御質疑に対してお答えになりましたが、内容については至極結構であります。併し政令か法律かの問題につきまして、若干この際にお伺いして置いた方がいいかと思うのであります。それは先程お話になつた勧告の処理に関する手続であります。審判所が勧告をなすべき旨の裁決をした場合に、その内容について不服があれば理事官に申立をする、理事官がその申立を受けた場合に、直ぐに第二審の請求をするというような手続をとるというようなお話でありましたが、これはこの法律案の四十五條に、非常に廣汎な委任命令の根拠の規定がありますから、形式的にはそれでいいかと思うのでありますが、事柄の内容が、異議の申立、その異議の申立に対する処理というような重要なものでありまして、本來ならば法律に書くべきことではないかという疑いを私は持つのであります。これも併しこういつた四十五條をお書きになりました趣旨は、勧告のごとき、法律的には拘束力のないものでありますから、手続はすべて命令で定めるという建前をとつておるので、そういう意味で命令で書こうという政府の御意見であろうと思うのであります。敢えてこの際に反対をするものではありませんが、そういう重要な内容であり、而も勧告の効果というものが、法律論を離れまして、実際上非常に大きな効果を及ぼす場合があるのでありますから、將來この法律案の改正の機会に、そういつた事項を法律に引上げて丁寧に書くというようなことについて、政府の見解を伺つて置きたいのであります。
#12
○政府委員(有田喜一君) 実は新谷委員のお尋ね御尤もでありまして、私も先程説明いたしましたときに、異議の申立ということは実はいわなかつたのでありまして、不服のある場合に限り理事官が取次ぐような手続をするというように、異議ということをわざわざいわずに説明したのでありますが、異議ということになりますと、法律的にやや問題がありまして、実は法制局ともこの用語について折衝中なんでありますが、とにかく今丹羽委員にお答えしましたようなことをやるということは法制的には問題はない、こういうことに法制局とも打合せができております。併し冒頭からいいましたように、勧告というものにつきましては、法律的に実効力はなく、而も事実上相当の効果があるわけでありまして、この問題につきましては、実は政府部内におきましても原案当時から相当問題がありまして、我々はむしろかようなことを法律化したいという氣持もあつたのであります。從いまして尚一層研究を重ねまして、若し本法律案が改正されるというような機会がありますれば、その機会により一層掘下げて最後の結論を得たい、かように思つております。
#13
○小野哲君 只今第九條の政令の問題が取上げられているのでありますが司法裁判所の場合におきましては、当然法律によつて名称、位置及び管轄区域を決めるということは、今國会においてもその例があるのであります。從いまして、この海難審判所につきましても同樣の見解が立つやに見受けられるのでありますが、この海難審判所の本質が一体何であるかということから判断いたしますというと、直ちに司法裁判所と同樣の取扱いをしていいかどうか、ということについては研究をいたさなければならない問題があるのではないか、かように思うのであります。特に今回の海難審判法の目的となつておるものが、第一條にありますように、海難の原因を明らかにして、その発生の防止に寄與するのである、こういうことになつておりまして、直接司法裁判権を目的としているものではありません。從つて本質的に司法裁判所とは異るものがある、從つて同時に行政部門の一機構として考えていいのではないかとも思われますので、この海難審判所の本質論から考えまして、必ずしも司法裁判所同樣に法律で以て規定しなくてもいいではないかという結論が出來て來るように考えられるのであります。併しながら、ただ單に便宜上の問題で、例えば、海難審判所の性格から考えて、又海員の関係から考えまして、或いは又海難の発生する場所その他から判断いたしまして、そういう便宜の考え方から法律で以て縛り付けて置くということが、却つて本法の目的を達成するのに困難になる、こういうようなことも便宜論としては一應考え得るのではないかとも思われるのであります。理論上の檢討並びに実際上の便宜の問題等から合せ考えますというと、海難審判所の名称、位置及び管轄区域につきましては、政令に委任するも差支えないであろうという一應の考え方ができると思いますが、この点に関しては、恐らく政府におきましても十分研究されておることと存じまするし、他の司法省或いは法制局等とも十分お打合せの上起案をされたものと考えますので、私共の意見を開陳いたしますと共に、政府の御所見をもこの際伺つて置きたいと思います。
#14
○政府委員(有田喜一君) 小野委員の御見解全く我々同感でありまして、実は我々が法制局その他関係各省との連絡におきまして、今小野委員の申されたような趣旨によつて、この法案ができたのであります。いうまでもなく海難審判所はその手続その他におきましては司法裁判所的なことをやりまするが、本質はやはり行政官廳でありまして、この採決とかいうものは、これは全部行政処分であるのであります。從いまして本質的に司法裁判所と海難審判所は違うことは明らかであります。のみならず、この現場におきましても、実は海難審判所といつて立派な行政官廳のごとく見えますが、実際は、中央におきましては、海運総局の一隅に一つの部屋が設けられたに過ぎない、又地方海難審判所におきましても、横浜、大阪、門司、小樽、それぞれ地方海運局の一室に審判所を設けておる、こういう程度であります、勿論その職責は全く重且つ大でありまするが、機構の面としましては比較的小さなものがあるのであります、而も相当これは機動性を持たせなければならん面もあるやに考えられるのであります。旁々これを政令に盛る方が妥当であるというように、政府部内としては見解が一致したのであります。恐らくこの海難審判所の実質をお考え下さるならば、法律にこれを盛るほどのものでないということがお分りになるだろうと思うのであります。全く小野委員のお説の通りのような見解で、政令に移すということに政府部内としてはいたしたような次第であります。
#15
○丹羽五郎君 政令問題について他の委員の意見も今拜聽いたしましたが、実は過日の参議院の本会議におきましても、その法律の施行日を政令で定めるということはいけないということで修正案を出して、参議院本会議におきましては、その法律の施行の期日を政令で定めるというのを修正をしまして、明らかにこの期日の明示を本会議で決議をしたのが過日の本会議のことでありますが、ここにも政令でこれを定めるということになつておりますので、敢えて私はこの政令という言葉にこだわりたくはないのですが、本委員会の委員の一人といたしまして、向後はこの政令の用語は余程よく研究をして、便宜的にならないようにして頂きたいということを、ここで御注意を申上げて置きたい、かように考えております。
#16
○委員長(小林勝馬君) 私からもこの期日の問題は、先般の厚生委員会の場合にございました通り、この政令で定めるという箇條があつたために、今丹羽委員からのお話の通り修正をしたような状態でございます。この際政府の御意見を承りたいのですが、可決した場合に、施行するまでの日数その他を若し今御答弁願えればお伺いいたしたいと思います。
#17
○政府委員(有田喜一君) 大体本法の施行は一月一日又は二月一日ということに一應考えておつたのですが、今日になつて來ますと、或いは二月一日ということになるかも知れません。かように考えております。
#18
○丹羽五郎君 ちよつと懇談に移りたいのですが、十分間程休憩をして頂けませんか。
#19
○委員長(小林勝馬君) 皆さんにお諮りいたしますが、丹羽委員からの御提案で懇談会にいたしたいといこうとに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○委員長(小林勝馬君) では只今から懇談会に移ります。
  午前十一時十分懇談会に移る
  ―――――――――――――
  午前十一時三十五分懇談会を終る
#21
○委員長(小林勝馬君) 懇談会を終りまして、これから再開いたします。質疑の続行をいたします。
#22
○丹羽五郎君 過日から自分が主張して來ました点は、今申上げたこの被勧告者の点と、それから四十六條の末項の「言渡の日から七日以内にこれをしなければならない。」、要するに異議の申立をしなければならんということについては、前來から通信の不備の点を力説をして、少くもこれを二十日又は三十日ぐらいにして貰いたいという要求をしておつたのでありますが、過日來いろいろ政府委員と折衝をいたしまして、政府の方では、この四十五條の「命令でこれを定める。」という、この命令に対する海難審判法施行規則要綱案というものを拵えられて、一應これについて檢討いたしたのでありますが、殆ど私の主張し要求をした点は、この要網案に全部盛られておるのでありまするから、これを施行規則として政府が命令によつてこれを施行して貰うならば、私の杞憂した点すべてはそれで一應解決ができるように考えておるのであります。一應この施行規則の要綱案について政府委員から説明をして貰いたい、かように考えております。
#23
○政府委員(有田喜一君) その内容につきましては、別途海難審判法施行規則要綱案を作つておりますので、これをお手許に差上げまして、担当官より尚詳しく説明申上げたいと思います。
#24
○委員長(小林勝馬君) それではその要綱案を一つ読上げて頂きたいと思います。
#25
○説明員(長屋千棟君) お手許に配りました海難審判法施行規則要綱案抄を朗読いたしまして御質問にお答えしたいと思います。
 一、(1)審判期日は、理事官の審判開始申立のあつた日より十四日以上経過した後でなければ、これを開くことを得ない。
 これは現行法にはこういう規定はございませんで、理事官が審判開始申立をいたしますと、審判所はその審判所の事務上の都合その他で、すぐできるものは、こういう緩和期日を置きませんで直ぐ開延してもよいということにいたしておりますが、先程來の受審人なり、重大な関係のある者が出延できないことがあると、審理が十分にできませんので、飽くまでそれを出延できるようにするために、こういう日にち、十四日以上経過しなければならん、この十四日の間に準備をさせる、必ずできるようにさせるという考えから、この條項を新らたに設けた次第でございます。それから大きな二、に移りまして、その
 (1)第二審の請求は、裁決言渡しの日から七日以内に原地方海難審判所に書面を以て申立なければならない。
 これは受審人なり、或いは重大な関係のある者が言渡しの日に出延しておりますれば、不服の場合に手続がすぐできますので、つまりその裁決を受けた原地方海難審判所に書面で出せばいいのだ、こういうふうに決めたわけでございます。それで、それのもつと緩和方法といたしまして、
 (2)原地方海難審判所は直ちに該申立書及一件書類を高等海難審判所に送付しなければならない。
 (3)第一項の申立は、電報を以てこれをすることができる。
 これは受審人若しくは重大なる関係のある者が言渡しを受けましても、その内容その他についていろいろ考え、又は自分の相談する相手にいろいろ相談をして見るというような場合で、直ぐその言渡しを受けた場所で、不服の申立ができないような場合、場所が離れておつたような場合、七日で足りないというようなことが起るといけませんから、場所が離れておつた場合には、電報でその第二審の請求の申立をしてもいいのだ、こういう工合に時日が遅れることを救済する意味で、こういう條項を設けたいと思います。
 (4)第一項の申立は、審判に於ては、口頭を以てこれをするこてができる。此の場合には、書記は、その旨を調書に記載しなければならない。
 第二審の請求をいたしますのに、早い方法といたしましては、裁決を受けました原地方海難審判所内の審判廷において、いや私はそれは不服であります、第二審の請求をいたしますと言えばいい、むずかしい書類を拵えて、その場で出さなくても第二審の請求は成立つという規定を設ける次第でございます。
 (5)第二審の請求をした者は、裁決言渡しの日から三十日以内は、第二審の請求理由書を差出さなければならない。
 これはどういうところが不服だ、どういう理由で自分は第二審の請求をするのかということをはつきりさせるために、これは刑訴、民訴あたりでも同樣でございまして必ず理由書を出すことになつておりますが、その理由書は七日以内に出せということは無理であります。いろいろとその文案なり手続なりをよく考えまして、書いて出さなければなりませんから、これは三十日の余裕を置いて三十日以内に出せればいいのだ、こういうことにいたした次第でございます。
 (6)第二審の請求理由書を提出しないときは、第二審の申立は、その効力を失う。
 これは、私は第二審の請求をいたしますと口頭で申立をいたしましたり、或いは電報を寄越して置いて、或いは書類で第二審の請求をして置きながら、そのままいつまでもずるずるべつたりに放つて置かれたのでは事務上因りますので、三日以内に申立の理由書を出さないと第二審の請求は効力はなくなるということに決めた次第でございます。
 大体この第二審の請求に関しましての施行規則の内容は以上でございます。
#26
○委員長(小林勝馬君) よろしうございますか。
#27
○丹羽五郎君 被勧告の取扱いについてさつき政府委員から答弁がありましたが、これに対する施行規則の御説明を願いたいと思います。
#28
○説明員(長屋千棟君) 事柄が二つに分れておりましたので、只今読み上げましたのは第二審請求の期日というものだけに止めましたが、今丹羽委員の御質問によりまして、勧告に関する施行規則の内容を読み上げます。
 一、(2)理事官は、審判開始の申立をした場合に、法第三十四條第二項の通告の他、船舶所有者その他海難の原因について重大な関係がある者があるときは、その者の対して右の通告に準じて、審判開始の通告をしなければならない。
 これは先程政府委員から詳しく説明いたしましたから説明は略しても皆さん十分お分りになつたことと思います。
 (3)船舶所有者その他海難の原因について重大な関係がある者で前項の通告を受けた者は、補佐人を選任して、その期日に出延し陳述をさせることができる。
 これも同樣でございます。
 (4)受審人又は船舶所有者その他海難の原因に重大な関係のある者若しくはその代理人が正当の事由に因つて審判期日に出延できないときは、審判所は、その期日を延期しなければならない。但し、その理由は、当事者に於てこれを疏明しなければならない。
 三、(1)勧告をなす旨の裁決をするときは、裁決と言渡の審判期日は、これをその勧告を受くべき者に通知しなければならない。
 (2)審判所が勧告をなすべき旨の裁決をした場合に、その勧告を受くべき者が、その勧告の内容に不服がある場合には、直ちに理事官に異議の申立をすることができる。
 この異議ということは、先程政府委員から申上げましたように、法律用語といたしまして、ちよつとここに使うということは疑問がございますので、適当なる用語を只今考慮中でございますが、まだ決まつておりません。從いまして「理事官に申立をすることができる」と御了解を願つて置きます。異議ということは一應文句が変るかも知れませんから、さよう御了解を願います。
 (3)理事官は前項の異議の申立があつたときは、直に、第二審の請求をしなければならない。
 この異議も前項と同樣でございます。
 (4)第二項の異議の申立をした者は、三十日以内に理由書を提出しなければならない。
 以上でございます。
#29
○丹羽五郎君 大体施行規則によりまして、私が杞憂をした点は全部織込んであるように考えておりまするから、私の前委員会以來ずつと質問をして來ました点は、これにて私の保留ということにして置きましたのは一應全部解きましてこの施行規則によるところの原案を然るべきものだとかように考えております。
#30
○新谷寅三郎君 一二お伺いいたしますが、審判をされる場合に輔佐入を置くことについてでありますが、御承知のように、これは相当の費用がかかるので、到底小さい船の船主では負担しきれない、又受審人自身では到底負担しきれない、而もこういう海難事故を起すのは必ずしも大きな船とは限つていない、むしろ小さい漁船とか帆船とかいうものが数としては多いではないかと思います。
 丹羽君の質疑にも多少の関聯はありますが、もつと海難原因を根本的に探求され、海難防止に寄與しようという趣旨から申しまして、言葉が惡いかも知れませんが、文字も十分に書けない、又自分の思つていることも十分に表明できないような乘組員を呼び出して、いろいろ事情を調べます場合に、どうしてもそれを輔佐する人が要るわけであります。今申したようにそれは事実上できないことであります。
 そこで海難防止の建前からいいましても、原因を十分調べるために、官選の輔佐人のような制度があれば非常に結構だと思うのであります。尤もこの問題は尚研究をしなければならん余地もありましようし、相当國家としては費用のかかる問題でありますから、直ぐには実行できないかも知れませんが、そういつた制度が望ましいと思うのであります。
 それに対する当局の意向を伺いたいのであります。
#31
○政府委員(有田喜一君) 官選輔佐人制度をとるかどうかということにつきましては、実はこの海難審判法を改正するための、官民合した改正委員会におきましても相当論議されたのであります。建前としては至極御尤もと思われるのでありますが、実は官選輔佐人に対しまして、甚だ遺憾でありますが、現在の國家財政の見地からいいまして、十分な報酬或いは費用というものが支拂われないような現状であるのであります。ややもすると、とかく官選輔佐人はその輔佐が形式に流れまして、実効が挙らない、こういう意見が非常に強く相成りまして、実は今回は官選輔佐人制度を採らなかつたような次第であります。実際問題としては、今日としてはむしろ海員組合のごとき船員團体におきまして、必要な場合は、相互扶助の見地から補佐人を選任するようにしたらどうか、その方が実際的の效果が挙りやせんかというような結論に相成つたのであります。併し官選輔佐人制度は、刑事裁判におきましても官選弁護の制度がありますように、我々といたしましては、予算が十分取れ、又官選補佐人がその手当によりまして十分なる補佐ができるというような見通しが付きますれば、かような制度を設けたいという氣持は持つておるのでありますが、遺憾ながら現在におきましては、さようのところまで手が廻らないような状態でありまして、今回はかような制度を設けなかつた次第でありますから、その点御了承願いたいと思います。
#32
○新谷寅三郎君 大体分りましたが、今のお話の中で、船員の團体にでも費用を持たして、團体から補佐人を付けるようなことにしたらどうか。これは勿論できるところもありましようが、地方の小さな漁業組合所属の船のごときに対して、一々海員組合が補佐人を付けるということは、事実上不可能であります。ですから補佐人を官選で置いてやらなければならないという必要のあるのは、むしろそういう地方の小さな組合について起つて來ると思うのであります。そういう意味からいいますと、官選補佐人の必要が、この法律の運用上是非必要になつて來ると私は考えるのでありますが、できるだけ近いうちにそういうことを考えるという答弁でありますから、この点はそれで質疑を打切ります。
 もう一つ簡單なことでありますが、実はこの法律案の趣旨から申しまして、最も重要であると思いますのは、第一回の委員会のときにも申上げましたが、すでに惹起された海難の原因を探求することよりも、進んで積極的に海難を防止する対策をとらなければならんということなのであります。資料の要求をいたしまして、当局から頂いた資料によりますと、この中には、平年度において実行せられておりまする燈台の予算でありますとか、又今後海上保安の必要上設置せられる保安廳というようなものに必要な経費とかが盛られて、並べられておるのでありますが、海難防止のために積極的に当局がどれだけの熱意を持つておられるか、実はこの表を見ますと、疑わざるを得ない状況なのであります。この点は先般政務次官から概略御説明があつたので、今後そういう方向に向うという誠意は了承するのであります。何かこれについて当局の方で具体的に考えられて、そうして予算が取れなかつたとか、何か他の理由で以て海難防止の方法が実行できないといつた事情があるのですか、どうですか。この点は、特にこの法律案を施行されました場合にまず必要なことではないかと考えるわけであります。この点について、成るべく具体的にお話を願いたいと思います。
#33
○政府委員(大久保武雄君) 最初のお尋ねの小型船舶の船員の問題でありますが、新谷委員の御心配のような点もなきにしも非ずと思いまするが、現状におきましては、小型船舶の船員も海員組合の中に入つており、又そうでない場合におきましても、いろいろな小型船舶の船員を繞る漁業協会その他におきましても、この保護につきましては、できるだけ御心配のような点がないように措置をして行くように指導いたしたい、かように考えておる次第でございます。
 それから只今、予算の点につきまして御質問がございましたが、今回の海難審判法を実施いたしますにつきましての予算が、比較的僅少でございまして、私共の最初考えておりました希望とは大変遠かつたことは甚だ残念でございます。國家財政の現状からいたしまして一應止むを得ないといたしましても、今後におきましては、できるだけ速かなる機会におきまして、本制度の十分なる活用ができますように、予算的措置を講じたい、かように考えておる次第であります。
 尚海難審判所直接の経費以外におきましても、或いは燈台、航路施設、掃海、その他海上保安に関する全体の予算につきましても、御指摘のような点が多々あると存ずる次第であります。海難審判法は、單に審判することを以て目的が終了するわけではありません。あらゆる海難防止の全機構が整備せられまして、有機的に相互協力することによつて初めて積局的に海難の防止ができるわけでございます。只今新谷委員の御質問の御趣旨を体しまして、今後本制度の完成に全力を盡して参りたい、かように存ずる次第でございます。
#34
○委員長(小林勝馬君) 外に御質問ございませんければ、時間も大分経ちますので、本日はこれにて閉会したいと思いますが、御異議ございませんか。
#35
○委員長(小林勝馬君) それでは本日はこれにて閉会いたします。
   午後零時八分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     小林 勝馬君
   委員
           丹羽 五郎君
           小泉 秀吉君
           大隅 憲二君
           小野  哲君
           新谷寅三郎君
  小委員外委員
   運輸及び交通委
   員長      板谷 順助君
  政府委員
   運輸事務官
   (海運総局長
   官)      有田 喜一君
   運輸事務官
   (海運総局船員
   局長)     大久保武雄君
  説明員
   高等海員審判所
   審判官     長屋 千棟君
ソース: 国立国会図書館
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