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1947/11/28 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 決算・司法連合委員会 第1号
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1947/11/28 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 決算・司法連合委員会 第1号

#1
第001回国会 決算・司法連合委員会 第1号
  付託事件
○最高法務廳設置法案(内閣送付)
○國の利害に関係ある訴訟についての
 最高法務総裁の権限等に関する法律
 案(内閣送付)
  ―――――――――――――
  決算委員
   委員長     下條 康麿君
   理事
           太田 敏兄君
           西山 龜七君
           山下 義信君
           岩崎正三郎君
           田中 利勝君
           吉川末次郎君
           今泉 政喜君
           北村 一男君
           中川 幸平君
           田方  進君
           竹中 七郎君
           谷口弥三郎君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           小川 友三君
           小野  哲君
           駒井 藤平君
           鈴木 憲一君
           伊達源三郎君
           帆足  計君
           山崎  恒君
           兼岩 傳一君
           千田  正君
           西田 天香君
  司法委員
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
           奥 主一郎君
           水久保甚作君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月二十八日(金曜
日)
   午後一時四十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○最高法務廳設置法案
○國の利害に関係ある訴訟についての
 最高法務総裁の権限等に関する法律
 案
  ―――――――――――――
   〔下條康麿君委員長に着く〕
#2
○委員長(下條康麿君) 只今から決算司法連合委員会を開きます。法務廳設置法案並びにそれに伴う他の一件の法律案を議題にして審議を進めます。最初に政府の方から説明を願います。
#3
○國務大臣(鈴木義男君) 只今上程に相成りました最高法務廳設置法案の提案の理由を御説明申上げます。この官廳の性質、地位に鑑みまして、内閣総理大臣から御説明申上げるのが適当と存ずるのでありますが、内閣総理大臣の命によりまして、主としてその立案の任に当りました関係上、私から御説明申上げることといたします。御了承を願います。
 御承知の通り新憲法においては、いろいろの制約と例外とはございまするが、立法、行政、司法三権の分立を大原則として樹立いたしたのであります。立法は國会が掌り、行政は内閣が掌り、司法は裁判所がこれに任ずるという建前であります。この三作用の分立を明確にいたしました結果、従來裁判所の人事、予算及び事務章程の制定等に関する権限が実質上司法大臣の手にありましたが、挙げて最高裁判所に委ねられたのであります。かくて司法省の任務、その在り方がいかにあるべきかということが再檢討されなければならないことになりましたのは当然のことと存ずるのであります。殊にこのことは去る九月十六日附マツカーサー元帥から内閣総理大臣に宛てられましたる書簡の中に強く示唆されたのであります。政府はこの必要に鑑みまして、内閣に、警察制度と共に司法省の改廃問題に関する調査審議委員会を設けまして、不肖私がその委員長に指名させられまして、愼重審議の結果、今回提案のごとき結論に到達いたしたわけであります。
 私共の考えでは、若しこれを司法省だけの改廃問題として考えますならば、裁判所が独立をいたしました後は、その残余のいわゆる司法行政事務だけを取扱う官廳として残すことも考えられまするし、又檢察事務は一個独立の事務でもありまするから、檢事総長の下にこれを独立の官廳とし、登記、戸籍等の事務、行刑及び司法保護等の事務もそれぞれ独立の官廳に委ねまして、司法省というものは解体してもよろしいとも考えられるのでありまするが、こういう消極的な解決だけでは不十分でありまして、更にこの機会に新憲法下における行政権行使の適法性を確保するために、行政部全体における法律事務を総合的に統轄して行くべき職責と任務とを有する新機関を設置することを構想したのであります。即ち新憲法は國民の不可侵且つ永久の権利として基本的人権を保障し、健全なる民主法政治國家の確立のために、最高裁判所に対し一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を與え、又裁判所に対し民事、刑事の裁判権の外、すべての行政事件その他の法律的爭訟を裁判する権限を與えているのであります。従つて、政府が憲法及び法律を忠実に施行するためには、政府自体においても、憲法及び法律の解釈適用を統一して、自主的に法に則つた政治を確保することが絶対に必要でありまして、このためには政治に一元的な法務に関する統轄機関を設け、法律問題に関する政府の最高顧問として、行政部門に対し法律上の意見の開陳又は勧告をさせることが適当と存ずるのであります。
 これが即ちこの法案にいわゆる最高法務総裁でありまして、この最高法務総裁の管理する事務は最高法務廳でこれを掌るのであります。こういう官廳は各省とは異りまして、行政部全体に跨る任務を遂行するのでありますから、一つの省として考えられるべきではなく、独立の綜合的官廳として内閣に設置せらるべきものと存ずるのでありまして、これを省と呼ばずして廳と名付けましたのもそのためであります。
 この制度を立案いたすにつきましては、英米におけるアターニー・ゼネラルの制度が参酌せられたのでありまして、殊に米國のアターニー・ゼネラルの制度が参考となつたのであります。役所を作るというよりは行政部全体に対する最高法律顧問たる最高法務総裁というものを設ける、そしてその最高法務総裁が仕事をして行く必要上諸々の補助官府を持つという建前でありまして、制度よりは人に重きを置くのでありますから、法案の建前は先ず最高法務総裁を置く、これが最高の権威と権限を持つという意味で特に最高法務総裁と名付けたのであります。そしてこの総裁の下に檢察長官、法制長官、法務調査意見長官、訟務長官及び法務行政長官の五長官を設けたのでありまして、この五長官は米國のサリシター・ゼネラル・アシスタント・ツー・ザ・アターニー・ゼネラル等に当り、それぞれ主管事務について最高法務総裁を助けるのであります。
 この最高法務総裁は極めて重要な官職でありまして、不偏不党、公正に職務を遂行する者でなければなりませんので、その選考を愼重にすることを期待いたしますために、その地位にふさわしい者の中から選ぶということを法文上特に明らかにいたしたのであります。併し又内閣の一員であります以上、常に國会に対して責任を負うものでなければなりません関係上、その者は常に國務大臣であることといたしておるわけであります。
 次に法案の具体的な内容についてその概略を御説明申し上げますと、最高法務総裁は法律問題に関する政府の最高顧問として、内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見の陳述又は勧告をなすと共に、政府における法務の綜合統括機関として、國の利害に関係ある爭訟に関する事項、内外法制の調査に関する事項、人権の擁護に関する事項等の外、従來司法大臣の所管に属した檢察事務及び檢察廳に関する事項、恩赦、犯罪人の引渡し、戸籍、登記、供託、行刑並びに司法保護に関する事項、従來法制局の所管に属した政府提出の法律案又は政令案の審議立案、條約案の審議に関する事項を管理し、尚これに関聯して昭和二十二年勅令第一号の規定による覚書該当者の観察等に関する事項、並びに従來内務大臣の所管に属した國籍、外國人の登録、昭和二十一年勅令第百一号の規定による政党、協会その他の團体の結成の禁止、聯合國最高司令官の要求に基く正規陸海軍將校又は陸海軍特別志願予備將校であつた者等の調査等に関する事項をも統合管理することといたしたのであります。この最高法務総裁は、先程申しましたように、その地位の重要性に鑑み、これにふさわしい者の中から内閣総理大臣がこれを任命し、その者は國務大臣として内閣に列するものとし、又この者はその担当する行政事務については内閣法にいう主務の大臣たるものとして、その職務権限については「省令」を「最高法務廳令」と読み替える外、行政官廳法第四條乃至第七條の規定を準用することにいたしたのでありまして、これらのことはこの法律の第一、ニ條に規定しているところであります。
 次に最高法務総裁の補助機関について申し上げますと、最高法務総裁の下に檢察長官、法制長官、法務調査意見長官、訟務長官及び法務行政長官の五長官を設けて、各長官総務室及び所属各局の事務を指揮監督される外、最高法務総裁官房長を置いて総裁官房の事務を指揮監督させることとし、又最高法務総裁の管理する事務は、最高法務廳でこれを掌ることとして、最高法務廳には総裁官房及び各長官総務室の外、檢察長官の下に檢察局及び特別審査局を、法制長官の下に法制第一局、法制第二局および法制第三局を、法務調査意見長官の下に調査意見第一局、調査意見第二局及び資料統計局を、訟務長官の下に民事訟務局、税務訟務局及び行政訟務局を、法制行政長官の下に民事局、人権擁護局、矯正総務局、成人矯正局及び少年矯正局を設けることにいたしたのであります。
 以下簡単にこれらについて御説明申し上げますと、先ず檢察長官の下にありまする檢察局は、従來司法省刑事局の所掌に属した檢察の指揮その他の檢察事務及び檢察廳に関する事項、恩赦、犯罪人の引渡し、犯罪捜査の科学的研究、司法警察職員の教養訓練に関する事項等の外、檢察事務に関聯する犯罪の予防、その他刑事に関する事項で他の所管に属しない事項を掌り、又特別審査局は昭和二十一年勅令第百一号の規定による各種團体の結成の禁止及び解散等に関する事項のうち民事局の所管に属する同勅令による政党、協会その他の團体の財産の接収及び処理並びに政党の登録に関する事項を除くその他の事項、聯合國最高司令官の要求に基く正規陸海軍將校又は陸海軍特別志願予備將校であつた者等の調査等に関する事項並びに昭和二十二年勅令第一号の規定による覚書該当者の観察等に関する事項を掌るのである。
 次に法制局長官の下における法制第一局、法制第二局及び法制第三局は、従來法制局の所管に属していた政府提出の法律案及び政令案の審議立案並びに條約案の審議に関する事務を掌るものでありまして、法制第一局は主として外事、財政又は金融その他法制第二局又は第三局の所掌に属しない事項に関するもの、法制第二局は主として産業、経済、運輸又は通信に関するもの、法制第三局は主として法務、文教、厚生又は労働に関するものをそれぞれ分担するものとし、ただこれら各局の事務は相互に関聯性を有しておりますので、法制長官は特に必要があると認めるときは、臨時に各局所掌の事務を変更することができるものとしたのであります。
 次に最高法務総裁は法律問題に関する政府の最高顧問として、行政部門に対し法律上の意見の陳述又は勧告をなし、その他法務に関する綜合機関として重要な機能を持つているのでありますが、これらの機能を十分に果すためには、平素より廣く内外の法制及びその運用の実情に関する基本的であつて且つ綜合的な調査研究をなし、又その資料を収集整備する必要があるのでありまして、このため規模の大きい調査機構を設けることが要請せられる次第であります。この意味におきまして、法務調査意見長官の下に調査意見第一局、調査意見第二局及び資料統計局を設け、調査意見第一局において司法制度、民事及び刑事に関する内外の法制並びにその運用に関する調査研究に関する事務を、調査意見第二局においてはそれ以外の内外の法制及びその運用に関する調査研究に関する事務を、又資料統計局においては内外の法令その他法制に関する資料の収集、整備及び編纂、法務に関する統計並びに法令の周知徹底に関する事務を掌らせる外、各局それぞれその所掌事務に應じて、内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対する法律上の意見の陳述又は勧告に関する事務を掌らせることといたしたのであります。
 更に訟務長官の下に設けられまする民事訟務局、税務訟務局及び行政訟務局について申上げますれば、これらの部局は國の利害に関係のある爭訟に関する最高法務総裁の権限を輔佐するために設けられたのでありまして、民事訟務局は租税及び関税に関する爭訟に関する事務を、税務訟務局は租税及び関税に関する争訟に関する事務を、又行政訟務局は税務訟務局の所掌に属するもの以外の一切の行政に関する爭訟に関する事務を掌ることといたしましたのであります。
 更に又その他の法務行政を担当する部局について申しますれば、民事局は従前司法省民事局の所掌に属していた戸籍、登記、供託、訟証、司法書士及び司法事務局に関する事項の外、これまで内務省の所管に属していた國籍及び外國人の登録に関する事項、昭和二十一年勅令第百一号の規定による、政党の登録ならびに政党、協会その他の團体の財産の接収及び処理等に関する事項並びに民事に関する事項で他の所管に属しない事項を掌るものであり、人権擁護局は新憲法によつてみとめられた基本的人権の確保のために、人権侵犯事件の調査及び情報の収集、民間における人権擁護運動の助長、人身保護及び貧困者の訴訟救助その他人権の擁護に関する事項を掌らせるため特に新しく設けられたものであります。
 又矯正総務局、成人矯正局及び少年矯正局は、従來司法省の行刑局及び保護課の掌つていた行刑及び司法保護に関する事務を統合してこれを一元的に取扱うものでありますが、最近における犯罪激増の傾向に鑑み、行刑及び司法保護に関する機構を整備するため新たに二局を設け、そのうち矯正総務局においては犯罪人に対する行刑及び保護に関する企画及び事務の調整に関する事項、刑務所、拘置所、少年審判所、矯正院その他の官公立の少年矯正施設に関する事項矯正職員の教養訓練に関する事項並びに犯罪人の指紋に関する事項、その他行刑及び司法保護に関する事項で他の所管に属しない事項を掌らしめ、成人矯正局においては成人に対する刑及び未決勾留の執行に関する事項、成人犯罪人の保護に関する事項並びに成人に対する司法保護事業に関する事項を、又少年矯正局においては少年に対する刑及び未決勾留の執行に関する事項の外、少年法の改正によつて設立しようと考えておりまする少年裁判所によつて保護処分に付された罪を犯した少年その他の少年の保護に関する事項、並びに少年裁判所によつて保護処分に付された少年に対する司法保護事業に関する事項を掌らせようとするものでありまして、以上の五局及びその事務を指揮監督せしむるため法務行政長官を設けたのであります。
 尚以上各局の外、各長官の下には、長官所属の各局の指揮監督に関する事務を掌らせるため各長官総務室を置くことといたしましたが、事務の統一保持の点からこの種の機関は必要と存ずるのであります。
 更に総裁官房について申しますれば、ここでは従來各省官制通則等で官房の所掌事務として定められていた機密に関する事項、総裁の官印及び廳印の管守に関する事項、所管行政の考査に関する事項、公文書類の接受、発送、編纂及び保存に関する事項、職員の身体身分に関する事項、経費及び收入の予算、決算、会計及び会計の監査に関する事項、並びに最高法務廳及びその所管各廳の管理に属する財産及び物品に関する事項の外、皇統譜令に基く皇統譜副本の保管に関する事項、弁護士法に基く弁護士及び弁護士会に関する事項、廳外機関たる最高法務廳研修所に関する事項、並びに聯合國最高司令部等との連絡その他の渉外事務に関する事項をも掌るものであります。
 以上最高法務総裁の主なる補助機関及びその所掌事項についいて申上げましたが、これらの事柄はこの法律の第三條乃至第十一條に規定しているところでありまして、若しこれらの規定によつて所掌部局の定まらない事務があるときは、その事務は最高法務総裁の定める部局がこれを掌るものとし、又この法律に定めるものの外、最高法務廳の職員並びに廳外機関である最高法務廳研修所の設置その他について必要な事項は政令でこれを定め、廳内各局、各長官総務室及び官房の分課について必要な事項は、最高法務総裁がこれを定めることといたしたのでありまして、これらのことは第十二條及び代十三條に規定しております。
 次に経過規定について申上げますと、この法律は施行の準備の都合上、公布の日の後六十日を経過した日からこれを施行することとして第十四條にその旨を規定いたしました。又従來司法大臣の管理に属した私立の矯正施設に関する事務及び罪を犯す虞れのある少年の保護に関する事務は、従來の実績に鑑み、暫定的には最高法務総裁にこれを取扱わせるが、將來はこれを最高法務総裁の権限から除外することとして、これに関する経過規定を設けたのでありまして、その詳細は第十五條に規定してある通りであります。
 以上この法案の提出の理由及びその内容の概略について申述べましたが、初めに申上げましたように、我が國が將來健全なる民主的法治國家として発展するためには、新らしい職責と機能を持つた最高法務廳のような機構が絶対に必要であるのでありまして、この点は十分に御了解を頂けるものと確信いたすのであります。尚詳細につきましては、御質問に應じお答え申上げることといたしまして、この辺で説明を終わりたいと存じます。何卒愼重御審議の上、御可決あらんことをお願いする次第であります。
 次に國の利害に関係のある訴訟についての最高法務総裁の権限等に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申上げます。
 最高法務廳設置法の制定により、國の利害に関係のある爭訟に関する事項は最高法務総裁がこれを管理することとなりますので、これに対應して、この種の爭訟に関する最高法務総裁の権限等を定めることが必要となつたのであります。
 従來は、中央又は地方の行政官廳の所管事務に係る民事訴訟については、関係廳の長官又はその指定する所属官吏が國を代表して訴訟を行なつていたのでありますが、この種の訴訟には事案の内容が複雑なものが多いため、関係各廳は人的物的に少なからぬ負担を余儀なくされて來たのであります。而も日本國憲法及び裁判所法の施行並びに國家賠償法の制定に伴い、國民から國に対する損害賠償の請求訴訟、國から職員に対する求償の訴訟等、國を当事者とする訴訟その他いわゆる行政事件の訴訟が従前よりも増加し、その内容も亦一層複雑となることが予想されるのであります。かような事態に対処するため、この種の訴訟については、法律問題に関する政府の最高顧問たる地位にある最高法務総裁が一元的にこの実施等の責に任ずることとし、以て関係各廳の負担の軽減を図ると共に、その実施の統一を期そうとするのが、この法律案の趣旨でありまして、かような制度を確立しますことは、他面これにより國の正当な利益の擁護に遺憾なきを期し得ると共に、訴訟のより迅速適正な遂行にも資することともなり、又國民と國家との間における法律上の紛爭を適正に解決する所以でもあると存ずるのであります。
 以下この法律案の要点を申上げますと、先ず第一は、右に申述べました趣旨から、國の利害に関係のある訴訟のうち、國を当事者又は参加入とする民事の訴訟については最高法務総裁が國を代表するものとしたことであります。
 第二は、最高法務総裁は、その指定する所部の官吏その他のものに國を当事者又は参加入とする民事の訴訟を行わせ得るものとしたことであります。最高法務総裁は、その指定する所部の官吏に右の訴訟を行わせます外、必要があると認めるときは、その訴訟となつている事務を所管する行政廳の職員をも代理人に指定して訴訟を行わせ得るものとし、これによつて所管事務に関する知識経験を訴訟の上に活用しようとするものであります。最高法務総裁が事宜により弁護士に訴訟委任することは固よりこれを妨げるものではありません。
 第三は、最高法務総裁は、國の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟においてみずから又は所部の職員により裁判所に意見を述べることができるものとしたことであります。これにより國の利益の擁護又は公共の福祉の確保に遺憾なきを期そうとするものであります。
 第四は、行政廳を当事者又は参加入とする訴訟の代理人に関する規定を設けたことであります。裁判所法の施行に伴い行政裁判法が廃止され、違法な行政処分についてはすべて裁判所に出訴し得ることとなつたのでありますが、この種のいわゆる行政事件の訴訟については、行政廳は弁護士を訴訟代理人に選任する外、その指定する所部の職員に訴訟を行わせることができるものとしたのでありまして、専ら行政廳の利便を考慮したものに外なりません。
 第五は、いわゆる行政事件の訴訟について最高法務総裁の指揮権等を定めたことであります。右の訴訟は実質上は國の事務に係る訴訟に外なりませんので、これについては行政廳は最高法務総裁の指揮を受けるものとし、最高法務総裁は必要があると認めるときは、その所部の官吏に当該訴訟を行わせ、又は行政廳の指定若しくは選任した者を解任し得ることとしまして、國の利害に関係のある訴訟の一元的な実施を期したのであります。併しながら公正取引委員会の審決に係る訴訟につきましては、昭和二十二年法律第八十五号私的独占及び公正取引の確保に関する法律の趣旨に鑑み、最高法務総裁の指揮監督を受けないものといたしたのであります。
 最後に第六は、最高法務総裁又は行政廳の指定した者の裁判上の権限を定めたことであります。訴訟手続の円滑確実を害することのないように、これらの者は代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする権限を有することといたしました。
 以上を以て只今議題となりました國の利害に関係のある訴訟についての最高法務総裁の権限等に関する法律案の大要の説明を申上げました。何卒愼重御審議の上、速やかに可決せられんことをお願い申上げます。
#4
○委員長(下條康麿君) どうぞ御質問がありましたらこの際お願いいたします。ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#5
○委員長(下條康麿君) 速記を始めます。
#6
○松村眞一郎君 私は法務廳のこの案を見まして、先ず疑問を起すのは、現在あります檢察廳との関係が極めて不明確であると考えます。檢察廳におきましては司法大臣のことが書いてある。ここにお廻しになつたものは抜萃でありまして、我々が疑問とするところは初めから抜いてある。この第二條の第三項には、司法大臣は必要と認めるときは云々と規定がありまして、司法大臣と檢察廳との関係は、檢察廳というものが現に行われておるのでりますから、私は檢察廳法というものと法務廳法というものは併せて研究しなければいかんと思います。従來私は憲法の改正のときに、委員会で木村司法大臣とも議論をし、現に鈴木司法大臣ともたびたび司法委員会で私は議論したのであります。元來司法大臣というのはおかしい、檢察大臣であるべきだ。元來司法省の事務というものは、先ず起訴の仕事とあとの行刑の仕事をやつて前後をやつておるのであつて、眞ん中の司法事務というものは裁判所がやつておるということを言つて、むしろ司法委員会における要望によつて私はこの法務廳という案ができたものと考えておる。司法委員会では初めに、司法大臣御承知のごとく現内閣は内務省を廃止することを論じ、司法省を廃止することを頻りに力を入れておるが、それよりも先決の問題は、行政と司法とを分離することであるということを私は力説したのであります。それで生れた法律案で、その時からアトニー・ゼネラルのことも私は申しております。ところが、そういう場合には、法務廳というものと檢察廳というものと、併せて考えなければ私はいかんと思います。大臣に先ず伺うのは、この法務廳の総裁なる者は、檢察官かどうかということを先ず伺いたい。檢察官であるか、いかがですか。
#7
○國務大臣(鈴木義男君) その点についてお詫びを申上げなければなりませんのは、当然その法律案も一緒に提案しなければならなかつたのでありますが、手違いがありまして、今日か明日……もう提案をいたしてありますから、お手許に廻ると思うのでありますが、最高法務廳設置に伴う法令の整理に関する法律案がお手許に廻る筈でありまして、それと併せて見て頂きますと、初めて問題が明瞭になると存ずるのであります。便宜上只今お答えいたして置きますが、檢察廳は無論この法律案を立案する時に問題になつたわけであります。結局いろいろ研究をいたしました結果、檢察廳は今のままでよかろう、大体多少の変更をいたす予定でありますが、檢察廳法によつて規定されております今の檢察廳の職務権限、仕事のやり方は大体このままでよかろう。檢事総長を廃止して法務廳総裁が一心に兼ねるという方が実は英米式のアトニー・ゼネラルの概念に近いものになるのでありまして、どうもよかろうという説もあるのでありますが、何分にも法務廳総裁の仕事は非常に多岐に亘り、やはり檢事総長を兼ねない方がよかろう。檢事総長は独立に置いて、そうしてその法務廳総裁の監督の下に檢察権の最高の長官として全國の檢事をその指揮の下に独立体としてやつて行く。こういう建前で行こう。そのために必要な檢事総長の権限の多少の変更ということは考慮いたしておりまするが、追つて御審議を煩わすつもりでありまするが、併し大きな変化はない予定であります。そういう建前でやつておる。従つて檢察廳につきましては、檢察廳法という独立の法律が現在ありまするから、これは根本的に手を着ける意思はないので、それと併せて一つ御考慮を願いたい、こういう趣旨でございます。
#8
○松村眞一郎君 私の尋ねておりますのは、この法務廳の総裁なる者が檢察官かどうかということをお尋ねしておるのであります。檢察官であるならば、それが最高の檢察官でありませんか。それならばそれは檢察廳の方の長官であつていいのであります。それが同時に法律顧問をやるということは私はおかしいと思う。檢察官ならば檢察官の最高という者があるわけで、それならばその人は檢察廳の長官であるべき筈であつて、檢察廳の長官が更に法務廳の総裁から監督を受けて、檢察事務を受けておるということは、従來の司法大臣が検事総長の上に立つたのと同じことなんです。それならば司法系統で一貫しなければいけないと思います。法律顧問という問題と檢察という問題とは全然違うのであつて、そういうことを混同して、ただ司法大臣の存在のためにこういう法務廳を作つたという感がするのです。司法省は廃止される。そこで行刑と檢察との二つの事務が残るが、裁判所が非常に強くなつた結果、頭と尻だけが残つた。ところが頭の方は檢察の事務ということになると極めて簡単である。そこで内閣にあるところの法制局をくつ附けて、それで司法、調査というものをくつ附けて、ただ厖大なる官廳というものを作つたということに私は帰着するのではないかという感を抱くのです。極く淡白に従來の檢察事務と司法大臣の事務とを綜合して、従來ありますところのこの檢察廳というものをもう少し大きくして、その長として司法大臣がおなりになればいいのであつて、調査とか法制というような問題は國会それ自身が非常な問題にしておる。併せて御考慮を願いたいということは、司法委員会のときに私は申したのです。政府が法制局をいろいろ考えておるのは何がために……立法府のいろいろな法制の事務であるとか、調査の問題ということを國務大臣としてお考え願いたいということを私は申しておるのでありまして、我々はこれは構いません。いわゆる内閣の部内にこういう法務廳というものができて、非常に厖大なる法制局ができ、調査局ができるということは國の進運に非常に結構なことでありますから、異議を言うわけではありませんが、國会がどうなるということを私は考えるが故に、國務大臣としては立法部のこともお考え願いたいということを私は委員会で申しておるのです。その点について、國務大臣としての全体の御観察がどうであるか、立法部における法政の調査であるとか或いは法務の立案であるとかいうようなことをどういうようにお考えになるか。立法部というものと内閣というものは一緒になつてもよいのではないか。殊に國会図書館というものは、そういうようなことを考えておるのです。ですから、そういう各般のことに影響のある問題でありますから、もう少し全般的に御考慮願いたいということを希望すると同時に、只今申しましたように、檢察廳の檢察官であるということをお認めになるならば、むしろ檢察廳の中にお入りになつたらいいのではないか。総裁は若し檢察廳で御一貫になるならば、法務廳の中では檢察のことはやらないということになると、檢察の権限を持つておらないということになる。檢察廳の上に今度は法務廳というものが横にあつて、それで檢察廳を指揮しておる。檢察官は檢察廳に含まれていないというような法制は、司法行政に対する従來のやり方とは全然違うやり方でやつておられると思います。従來は司法権としての裁判所があつて、それに対して司法省という檢察廳があつたわけなのです。それで一貫しておる。今度は法務廳というものの総裁が檢察事務をやる。檢察廳は区別にある。こういうやり方で果して行政上としても統一を得たものなりや否やということを疑う。ただこれは疑いとして申上げるのですが、全般的な私の考えについて司法大臣はどういうようにお考えになりますか。
#9
○國務大臣(鈴木義男君) 松村委員の仰せられることは一々御尤もでありまして、十分そういう点も考えたのであります。決して國会のことについて冷淡であるわけではないのであります。ただ私共は権限がないから國会のことについていろいろ立案したりなんかしないのでありまして、國会の方でも十分充実した立派な法制部と申しますか、法律を立案し調査し研究する部を一つ將來お持ちになることは、私共の希望するところであり、私も國会議員の一人として是非この法務廳などにずつと優る立派な國会専属の法制部を持ちたいということで、関係方面などにも熱心にこれを勧説いたしておるわけでありまして、立案いたして計画を立てれば必ずそれは現実するものであります。決してその点ついて冷淡であるというふうに誤解下さいませんようにお願いいたす次第であります。
 それから先程総裁は檢察官なりやという御質問に対して、檢察官であるというふうに答えましたが、それは言葉が足りない、間違いと申してもよろしいのでありまして、固有の意味の檢察官、即ち檢事というものは檢事総長で止まるのでありまして、法務総裁は只今の司法大臣と同じく単にこれを監督する地位にあるだけでありまして、みずから檢察権を持つておるわけではないのでありますから、そういう意味において、檢察官を監督するような役割或いは行刑を指揮するような役割と法律顧問的仕事とが一致しないじやないかというのも一つの御見解でありまするが、私共はそういう違つた類型の仕事を一身でいたしまして一向差支えない、観念的には十分区別すべきでありますが、法律の専門家でありますならば、英米においてもその通りやつておるのでありますが、実行できることであります。又別にそういう特殊の官廳ができても差支ない、こういう考えから立案をいたした次第であります。
#10
○松村眞一郎君 私の先ず疑問になるのは第五條に檢察長官というものがあるのであります。法務総裁の外に檢察長官というものがあつて檢察局というものを持つておる。これは相当の規模を持つておるわけです。そうして一方においては檢察廳というのがある。従來の司法大臣程度であるならば檢察局というようなものは、これは檢事局がやつておるのであります。私はその点において非常に重複があるという感じを抱くのであります。檢察長官は何をするのか。檢察長官は檢察官ではない。この檢察長官というものと檢事総長というものとどういう差異の事務をするのでありまするか。
#11
○國務大臣(鈴木義男君) それも問題となつたのでありまするが、御承知のように只今は司法省に刑事局というものがあるわけであります。いかなる狂罪の檢挙、或いは刑事政策を執るべきかというようなことについて基本的な研究をいたしておる部局であります。同時にいろいろな統計を取りましたり、特殊の狂罪について報告を徴しましたり、情報を蒐集いたしましたり、すべてこれはいわば政策決定の仕事に当るわけでありまして、檢察廳は現場において非違を檢挙し、犯罪人を逮捕し、現場の仕事をやつている役所でありまするから、それが同時にこの政策決定的な仕事をやる。やつても差支ないわけであります。檢察廳にそういう部局を附属させたらよかろうと仰せられるならば、それも一つの立て方でありましようが、とにかくそういう役所が必要であるということに決まりまして、そうしてやはり現場の仕事をやつておりまする檢察廳に対して、法務廳の内局として、今までの刑事局と同じ仕事をやるところの名前を檢察局と変えただけでありまして、部局を保存する、こういうことになつたわけであります。そういう部局が要らないと仰せられるなら別でありますが、要るならやはりこれは内局として存置するのが妥当ではないかと存ずるのであります。
#12
○松村眞一郎君 これは議論になりますから、これはこの委員会で御檢討になることと思いますが、実は第六條にあるわけです。檢察局の仕事は第二号以下これは従來の行刑事務に関係することと思います。従來の刑事局というのは檢察なり檢察廳に関する事務を系統ずけておつたとすれば、それは司法大臣の系統で檢察局になつているものと私は考えます。今度はやはり司法大臣の心持と同じような心持で、この法務廳はやるわけなのでありますか。司法大臣と同じ考えでやるわけなのですか。
#13
○國務大臣(鈴木義男君) そうです。その点では………
#14
○岡部常君 私は先ず第一に名称のことを御伺いしたいと思います。名称が綺麗に、又大きくなることは大変結構でありまするが、最高法務廳というと、いかにもものものしい感じがいたします。最高と申しますれば、何かそれに次ぐもの、下のものがありそうに思うのですが、どうも法案を拝見しただけでは、下のものもないようでありますし、又これは内容を見ればよく分ることでもありますが、これを世間的に見ますると、内閣と対抗するものであるかのような感じもないとは申せないのであります。その点いささか危まれる点があるのであります。又更に今回の新憲法によりまして、司法権が独立して、最高裁判所というようなものが確立いたしましたことは大変結構なことでありますが、この最高という言葉が又ここに使われますると、先程申しました政府に対する一つの対抗的な力ができたというだけに止らず折角できました司法権の尊嚴にいささか瑕がつくというような感じも免れ得ないのであります。最高裁判所に対してそれと何か対抗するような一つの役所が又新しくできたという感じから免れないように考えるのでありますが、この点に関するお考えを先ず承つて置きたいのです。
 その次には、これもやはり字句のことでございますが、最高法務廳設置法案となつております。できるまでは成る程設置するためのいろいろな努力も必要でありますが、法ができてしまえば設置法というその名前もおかしいというように感ぜられるのであります。この点は労働省設置のときに、あの法案が論ぜられましたときにもそういう問題があつたのでありまするが、又設置法というような、「設置」という余計なものが入つておるように考えるのでありますが、その点を御説明を願いたいと思います。
#15
○國務大臣(鈴木義男君) 「最高」というのはお言葉の通りでありまして、ややものものしいと考えられまするが、結局一方には最高裁判所というものがあり、又この下の部局にも最高檢察廳というようなものがありまするために、法律の問題については最高の権威を持つておる役所である、そういう意味を現わすために付けたものでありまして、別に他意はないのであります。そこまでにしてちよつと速記を止めて下さい。
#16
○委員長(下條康麿君) 速記を止めて……
   〔速記中止〕
#17
○委員長(下條康麿君) 速記を始めて。
#18
○深川タマヱ君 今度の法務廳では、法令の周知徹底ということをお図り下さるそうで誠に結構と存じますが、どういう方法でなさつて下さるか存じませんけれども、私の一つの考えといたしまして、我が國の法令は極めて難解にできておりまして、國民生活に必要なる法律の常識を備えますためには、どうしても大学の法科を出なくちやならない、大学の法科を出るのは國民の中の何%にしか該当しない、それでは法の趣旨に合わないと存じますので、國民学校在学中に、極めてやさしい言葉で、日本の法律の全体に亘つて一通りの常識を備えさせて頂くというようにして貰わなければ法治國の國民としては十分でないように存じますので、この点にどうお考えをお持ちになつていらつしやるかお尋ねいたしますことが一つ。その次は、今度の法務廳では、特に人権の擁護をなさつて下さるそうで、これも極めて結構と存じますが、それにつきまして貧困者の訴訟であります。法律は民法、刑法ともその底を調べて見ると、公序良俗というようなことが強く流れておりますし、相当の教養のある人間だつたら、常識で判断したならば、大して法律に背かないように考えますけれども、訴訟となりますとそう簡単には参りませんので、どうしてもやはり弁護士の鑑定を頼まなければならない。弁護士に頼めば早速鑑定料が要りますし、訴訟なれば尚更のこと、こうなりますと、折角憲法が人権を擁護してくれましても、その人権を擁護するためには、どうしても金が伴わなければなりません。今日は生命に食い込むほどの大衆課税もあつて、生活が貧困でございますので、私は法の解釈について疑義が生じましたならば、適当な官廳に飛び込みまして、そこで話をいたしましたならば、代書人に書いて貰う、金も出さなくてよいように、そうして又それは訴訟にしたならばよいとお考えになるんだつたら、先方さまで訴訟手続もやつてくれる。弁護士をつけたらよいとお考え下さるならば、適当の弁護士も付けて裁判をして下さる。但しその金は先方さま――お役所が持つて下さるのであり、その経費は國民の経済力に應じた租税で取立てて頂いて、訴訟を起こす人がその時直ぐ支拂わなくてもよいようにして頂かなくては將來の法治國民として十分でないと考えますが、その点に対してどうお考えでありましようか。
#19
○國務大臣(鈴木義男君) 只今の御質問は誠に適切な御質問でありまして、先ず法令の周知徹底に関する事項を資料統計局の仕事にいたしてあるのでありまするが、これは我が國において特に必要と信じまして、所管事務の中に入れたわけであります。法令を理解することが困難であることはお説の通りであります。昔は爲政者は法律を作るだけが能でなくして、どうしてそれを國民に理解させるかということに非常に苦心した者であります。或いは村の辻に貼り出し、或いは板に書いたものをずつと持つて歩いて、会う人ごとに見せて周知させる。或いは「一つとや」という歌に歌い込んで周知させましたり、ちよぼくれ、祭文の種に迄読み込んで、民衆教育として法令の周知に努力したことは法令史に残つておる通りであります。ところが今日の法令は、汗牛充棟も啻ならずでありまして、専門家すら実はどういう法律があるか、又ある法律の内容もよく分からない、読んで見ても理解に苦しむというような、これは立法技術の拙劣というところからも來ておりますが、そういうものが多いことはお説の通りであります。もう何とかしてこの法令の周知徹底を期したいということからこの部局を設けたわけでありまするが、その仕事といたしましては、できるだけ法令を類別して、適当に國民に提供するというようなことをいたす。或いは法令の適当な解説書のようなものを編纂して配布する。或いは法律相談所とでも申しますか、そこへ行つて聞けばどういう法律があつて、その法律の内容がどういうものであるかということが無料で直ぐ分るようになつておる。或いは民間の在野法曹の諸君に御協力を願つて、そして極めて低廉な方法で法律相談、殊に法律の内容を聞きに行つたら直ぐそれを答えるというような場所を拵らえて上げる。或いはいろいろな方法で映画を利用するとか、講演会を開くとか、これは今でもやつておるのでありまするが、周知の方法を講ずる。その他いろいろ考えられる限りの適切な方法を採つてやつて参りたい。こう考えておるわけでありまして、そのためにこの部局を設けた次第であります。それから第二の人権擁護についてのお尋ねでありまするが、これもこの新しい法務廳の最も特色とするところであり、或る意味においてはこれが中心的な任務であると申してよいくらい大切な意味を持つたものであります。裁判所は裁判の形において初めてこの人権を擁護してくれるのでありまするが、法務廳の方は行政部において人権の侵されないように、侵されたならば原状に回復するように、それぞれ人身の保護、人身の保護と申しますれば単に身体生命の保護だけでなく、名誉、信用その他抽象的な利益をも擁護する、こういう建前で行つておるのでありまするが、そういう仕事に任ずるわけであります。貧困で自己の権利を擁護することのできない者は、刑事上の場合には國選弁護人というものを付しまして無料で弁護してやるのであります。その弁護料は國家が拂つてやる。それから訴訟救助と申しまして、民事訴訟で爭いにおいて貧困なるために自己の権利を主張することができないという者に対しましては、やはり國家が弁護人、代理人を付けてやつて、そうしてそれに必要な費用は國家が負担してやる。そういうふうなことをやろうというのがこの人権擁護局の仕事の主なるものでありまして、恐らくはこれができました後は、深川委員の仰せられることが十分に目的を達せられることに相成るのではないかと存ずるのであります。
#20
○委員長(下條康麿君) 法制局長官がおられますが、何かお尋ねになる所がありましたらどうぞ………。ちよつと長官に伺いたいのですが、この法務総裁というものを設けられますが、その下の各長官というのは、従來の地位にするとどういう地位になるのですか。
#21
○政府委員(佐藤達夫君) ちよつと当りますかどうか知らないのでありますが、大体次官級の地位、要するに次官が五人できたというふうに申上げるのが、大体当つておるのでないかと思います。
#22
○委員長(下條康麿君) そうしますと、非常にこれは厖大な級の官廳でございますが、そういうふうに、例えば法制長官と外の法務調査意見長官と併立しなければできないでしようか。今法制局で間に合わんところが何かあるのでしようか。その点を伺いたいと思います。
#23
○政府委員(佐藤達夫君) これは間に合わんということは、実際に関聯しての問題になりますけれども、一應我々のここで狙つておりますのは、要するに相当理想に走つて、何と申しますか、法務関係の今までの行政において、無視と申しますか、余り重視されてておらなかつた、或いは空白のままで放置されておつたところをこの際十分整えまして、立派な法治國家を組立てて行きたいというところから、いろいろ新らしい例えば先程出ましたような人権擁護の部局が入つて來たのでございます。それらの事柄と同じように考えて、調査の面におきましても、十分充実した調査をやてつ行きたいということで、まあ法制背専門の部局の外に調査専門の部局を置いて、而もその調査関係におきましては、法令に出ておりますように、一條の二項に謳つてありますように、意見を述べ、勧告をするという関係の方面の責任を、ここに兼ねて受持たすということにいたしておるわけであります。
#24
○委員長(下條康麿君) ちよつともう一つ伺いたいが、檢察長官と訟務長官と法制長官と法務行政長官とは大体近似したような事務で、法制長官と法務行政長官とは近似したような事務に考えますが、二つを無理に附けたような感じがするんですがね、今のような司法省の関係の事務と法制局の関係の事務とは、今までの通りでも相当適当に行つておるのではないかと考えます。その点もう一つ……
#25
○政府委員(佐藤達夫君) 只今お話に出ました中に、訟務長官の所掌事項に属する事項は、これは法務行政長官が扱つております仕事即ちこれが割合今司法省で扱つておる事項に近いのでありまして、それは今の法務長官の所掌事項とははつきり違うと思います。訟務長官は現実の訴訟に携つて行く分野に属する、これははつきり違うのであります。従つて檢察関係におきましても、司法省で檢察関係、法務行政関係一括してやつておられますけれども、この間の分界は仕事の性質上あると思います。これらに法務行政長官の所掌事項が、今までに比べれば関聯性があるじやないかと思いますが、一應分立し得ることと考えます。
#26
○松村眞一郎君 この訟務長官の担当する事務というのは、三つの局があるわけでありますが、どのくらいの件数があるというふうに御想像でありますか。今日こういうような事柄について、特に國家関係の爭訟を引受けるそれぞれの専属者を置くということにしなければならんほど何か実際問題があるのですか。
#27
○國務大臣(鈴木義男君) お答え申上げます。國家を当事者とする爭訟は將來相当殖えるという見通しでありまするが、どれくらい殖えるかということは実はやつてみないと分らないので、そこでこの局では事務的に取扱うのでありまして、実際の仕事はやはり各省の役人、それから弁護士というものを使つてやるのでありますから、事務を執る者としてはそうは要らない。そこで局というのは仰々し過ぎませんかという議論もあつたのでございますが、併し建前からいうと、外と釣合が取れなくても工合が惡いから、局として置こう。そうしてその人数は或いは十五人の局もあり、二十人でやつておる局もあるが、それで差支なかろう、こういう建前でこれはできておるのであります。
#28
○委員長(下條康麿君) ちよつと速記を止めて……。
   〔速記中止〕
#29
○委員長(下條康麿君) 速記を始めて。
#30
○松村眞一郎君 そうしますと、この法務廳に併行した予算というものは同時に出ておるわけですな。どのくらいの予算を以てこういうことをないさますか。
#31
○國務大臣(鈴木義男君) それは只今予算の下組とでも申しますかをいたしておりますので、只今ここで発表する段階にはまだ達しておりませんが、この議会には到底間に合いませんで、次の通常議会で御審議を煩したいと考えております。そう予算というものは決して増大しない。ちよつと見ると、えらい大きな役所のように見えますが、人数が少ないこと、設備等も特に要らないということから、予算は決して大きくならないのであります。この点を一つ御了承置きを願いたいのであります。
#32
○松村眞一郎君 そうなると、今六人ですか五人ですか、次官級をお置きになる。それは立派な方をお集めになることは結構ですが、この法務廳なるものの大体の規模は一省ぐらいのお考えでおられるのですか。今の六人も次官を置くということになると、大変大きなものを考えておられるのでありますが、大体の規模は凡そ案があるものと思うのですが、いかがですか。
#33
○國務大臣(鈴木義男君) 大体は今の司法省と法制局と、そこへ調査局というのが加わつたという規模であります。省の大小によりまするが、あらゆる省に比べて、やはり人数からいつたら比較的少ない方だろうと考えます。
#34
○松村眞一郎君 私は初めに申上げましたるように、檢察という字が何となく目障りなんですが、何かお考えにならなかつたのですか。檢察廳との間の事務の何といいますか、分界が付かんような印象になる虞れを私は感ずる。檢察はもう檢察廳の方で徹底して行くということで、従來の司法大臣的の仕事であればよいと思います。併し従來の司法大臣というものは檢察そのものを相談しておるようですね。そういうことは私はいかがかと思うのですが、そこをはつきりしないと、檢察廳というものはそれ自身独立性がなくなるのでないかという感じがするのです。檢察の個々の事故について指揮監督するのでなく、檢察廳の人事の問題であるとかいうようなことについての系統の仕事をするのに、これをはつきりすることが私は檢察廳の外に役所のある所以でないかと思う。そこに檢察長官という字が、檢察総長といいますか、そういう問題と、官名とが世間に対する感覚も同じように混同する虞れがあるのではないかと考えておりますが、何かお考えになつて別の名前に改めた方がよいのじやないかと思います。それが第一の心配です。
#35
○國務大臣(鈴木義男君) その点も全く理由はあるのでありまして、私共考えたのでありますが、よい名前があれば一つお授け願いたいと思います。刑事局となつておりますが、これは関係方面で非常に嫌います名前で、どうしてもいけない。結局それじや檢察、一方は檢察廳で一方は檢察局であるが、まあそういう名前を使うしかないということで、こういうことになつたのでありまして、適当な名前があれば変えることに別に異議はないのであります。なかなか適当な名前が見付からないのであります。それから今度の法務総裁は、腹案で申しますれば、今松村委員の指摘されるような個々の事件を指揮する、指図するというようなことはやらんつもりなんです。そういう点は新しく法律で以て修正をして御審議を煩すつもりであります。
#36
○岡部常君 司法大臣が先程仰せられた中に、人員などは成るべく最小限度に止めるというお話でありましたが、この法案を見ますと厖大なものになります。その中の一つの例といたしまして、法務行政長官の下に五局ができておりますが、この内容などを見ますると、相当関係の深い極く密接な離れていけないようなものが沢山ありますが、こんなものはやはり初めは兼務でもなさるつもりでありましようか、どうでしようか。
#37
○國務大臣(鈴木義男君) この法務行政長官の下におけるものは、これは相当今までの司法省がそつくり残るような形でありまするから、これが一番部局では大きいもので、殊に刑務行政をやつておりますような現場の職員も入れたら、これが一番非常な数に上るわけです。それで実はこれを外局にでもすべきではないか、独立させて外局にしてはどうかという説もあつたのでありますが、私共それを希望いたしまするが、今非常に刑務所の設置その他に特別の努力を要するところでありまして、本省における会計課長といろいろな人との協力を得て、密接な関係においてこの設備の完備を図り、人員の充実を図り、一通り整つた上で独立させなければ、いきなり今の状態で独立して施設、行刑をやつて行く、保護事業をやつて行くということは容易でなかろうという見地から、暫く内局に止めるということにいたしたわけであります。それで兼務でやつて行くのがありまするし、それからこれはこの法務廳を作るということは無関係に、司法省として残る場合でも、同様に刑務行政、それから保護、それから民事局の司法事務局というようなものは、これは人員が不足なんでありますから、是非充実しなければならん。殊に労働基準法の適用等に伴いまして、一層人員を殖やさなければ法律を護ることができないような状態になつておりまするから、これは機構の改革とは別問題として、予算を請求し、皆さんにもたびたび御了解を得ておるつもりでありまするが、人員を増強する予定であります。併しこれは機構改革とは無関係であることを御了承願いたいと思います。その他はできるだけ兼任というようなことは避けて、できるだけ専心その仕事に従事できるような機構を採るつもりであります。その限度において若干の増員ということは止むを得ないことと御了承願いたいのであります。
#38
○松村眞一郎君 これは法務省としてあるのではありませんか。法務省としては……
#39
○委員長(下條康麿君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#40
○委員長(下條康麿君) 速記を始めて。
#41
○岡部常君 私は更に審議が進みまするに従つて、内容について更にお伺いしたい。その点は私予め留保さして置いて頂きたいのでありますが、今問題になりました法務行政長官のところだけを、表面から見ますると、こういう感じが免れないのであります。それは現在の行刑或いは保護という仕事と、民事局の仕事、これはもう非常に相容れないものであると私も考えます。世間さまもそう御覧になるだろうと思います。そこへ持つて來て新たに又人権擁護局という、本当に今までなかつたものが入つて参りまして、いかにもこれは雜然とした感じがどうも免れないのであります。私はこの新たに法制を作られるようなときは、すつきりしたものを作るのが本当ではないかと思うのでありまして、又その他の他の方面を見ましてもみんなそういうふうな傾向を取つておるにも拘わらず、折角大事なときに何だか五日飯みたいなものが出て來るということは、いかにも感じが惡いのであります。これに対して政府のお考えを承つて置きたいと思います。
#42
○國務大臣(鈴木義男君) 岡部委員の御質問も誠に御尤もの点でありまして、確かに理論的には一貫しない、雜然たる集合体をなしておることは政府も別に否認はいたさないのであります。ただ行政経済の原則に照して、余り長官が多いのもどうかと考えまして、できるだけ長官を儉約する意味で、せめて従來の司法行政といわれたところのものだけでも、雜然とはしておるが、これを一つに纏めて、そうして一人の長官の下に統轄することにしようということから、こういう形を採つたのでありまして、できるならばそれぞれにやはり民事局は一つの系統に置き、人権擁護局は一つの系統に置き、保護と行刑とは一つの系統に置くということは望ましいことであることは申すまでもないのであります。併し又それぞれに一人ずつの長官を設けるほど仕事が大きいかということも疑問でありまして、そういう意味から暫く妥協的な立案に落着いたわけでありまして、御了承を願いたいと思います。
#43
○松村眞一郎君 私は大臣のいろいろ御説明を承りますと、やはり雜然たる感がいたすのであります。それは内閣において各省に対するいろいろな仕事を掌るというところは、法律に関する顧問の点だと私は思います。法政と調査はそうでありましよう。併しここに書いてありますところの、大臣はもう申上げるまでもなく御覧でありましようが、法務行政長官の仕事にしましても、檢察局の仕事にしましても、こういうような仕事はすべて他の省には関係がない。従來のやはり一つの省で以て掌つていいことであると考えます。それであれば省として独立し得べきものと綜合的なものと分けて、そうしてやつた法が明瞭じやないか、内閣に置くべきものと、省として存置せしめるものとは別にしないと、ここにあります省令に当る法務廳令というものは、これは皆別なものであります。関係的なものではないのであります。どうもこれは独立の省として存置すべき理由のあるものと、又存置しなければならんものと、各省と共通点なものと混同した役所であつて、行政の機構としても甚だ当を得ないものじやないかと私は考える。各省の関係のことでいえば、例えば財務ということになれば、すべての点について、……予算ということになれば大蔵省で全部の役所のことをやつておる。予算のごときものは内閣に置いたらいいじやないかという議論もありますが、今日全般のことをやつておつて一向差支ないのであります。必ずしも廳としなければならんということも私は考えません。併しそれはいろいろ速記を止めてのお話の事情もありますから、それは別に考えてもいいと思いますけれども、本質的に違つておるものを無理にくつ附けたという感が私はするのでありますが、なぜこれは二つに分けては惡いのでしようか。この点一つお答えを得たいと思います。
#44
○委員長(下條康麿君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#45
○委員長(下條康麿君) 速記を始めて。それでは司法大臣の御都合もありますから、今日はこの程度に止めておきたいと思います。次回は、明日は午前は本会議がありますし、午後は速記が附かんそうですから、月曜日の午前に本会議と併行開くことを一應決めて置きたいと思います。散会いたします。
   午後三時十九分散会
 出席者は左の通り。
  決算委員
   委員長     下條 康麿君
   理事      太田 敏兄君
   委員
           岩崎正三郎君
           中川 幸平君
           平野善治郎君
           谷口弥三郎君
           深川タマヱ君
           小野  哲君
           駒井 藤平君
           鈴木 憲一君
           山崎  恒君
           千田  正君
           西田 天香君
  司法委員
   委員長     伊藤  修君
   理事      鈴木 安孝君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
          前之園喜一郎君
           岡部  常君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   法制局長官   佐藤 達夫君
   内務事務官
   (調査局長)  西村 直己君
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
   司法事務官
   (行刑局長)  岡田 善一君
   司法事務官
   (官房臨時企画
   部長)     岡咲 恕一君
ソース: 国立国会図書館
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