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1947/11/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会 第39号
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1947/11/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会 第39号

#1
第001回国会 財政及び金融委員会 第39号
   公 聽 会
――――――――――――――――
昭和二十二年十一月二十五日(火曜
日)
   午前十時四十四分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○所得税法の一部を改正する等の法律
 案
○非戰災者特別税法案
#2
○委員長(黒田英雄君) これより公聽会を開会いたします。公述人の方々に対しまして一言御挨拶申します。御承知の通り今回内閣から國会に提案されました所得税法の一部を改正する等の法律案、並びに非戰災者特別税法案は、目下衆議院に提出されまして、本院におきましては予備審査のために、財政及び金融委員会に付託されまして只今審議いたしておるのであります。御承知の通り、新憲法の下に制定されました國会法の第五十一條におきましては、重要は歳入の法案につきましては公聽会を開かなければならないということに相成つておるのであります。勿論我々國会議員といたしましては、國民の代表であるという自覚と責任とを以ちまして、法案を愼重に審議しておるのではありまするが、國民全般の利害に重大な関係を持つておりまするところの税制に関しまする法案につきましては、特にその審議を愼重にいたしまする意味におきまして、昨日は学識経驗のおありになる方々を選定いたしまして、その御意見をお聽きいたしたのであります。本日は廣々一般に公告いたしまして御希望の方を募りまして、その中よりいたしまして各方面に亙つて数人の方々を選定をいたしまして、本日お出でをお願いたしいたような次第であります。左樣な次第でありまして、皆樣の十分なる御意見を承わりまして、國民輿論の動向を正しく認識いたしまして、審議に過ちなからしめようと期しておる次第であるのであります。皆樣お忙がしいところをお繰合せお出で下さいましたことを感謝しますると同時に、どうぞ十分に皆樣の御意見をお述べになることを希望いたすのであります。御承知でありましようが、今回の提案は新税といたしましては非戰災者特別税であります。これは六十五億四千百万円の收入を期待いたしているのであります。又税率の改正、即ち増税をいたしておりますものは所得税、酒税、清凉飲料税、物品税、入場税、又印紙收入として印紙税、登録税、骨牌税等があるのであります。どうぞこれらにつきまして皆樣の御意見をお述べのことを希望するのであります。お述べになる時間は大体二十分ということでお述べ願いたいと思うのであります。多少は延びてもよろしいが、大体二十分を目標にお述べを願いたいと思います。
 それでは初めに水野卓君。
#3
○公述人(水野卓君) 今回創設されんとしている非戰災者特別税法案について若干反対理由を申述べたいと思います。
 租税制度において納税負担能力の公平ということは根本原則である。即ち税金はそれを拂える能力のある人々に対して民主的に公平に課税することは如何なる時代たるとを問わず、絶対に必要とされるところであります。然るに今回創設の本税は戰爭犠牲と税負担能力とを混同しておる点において致命的欠陷を有しておるものであつて、唯單に「非戰災者は戰災者より惠まれておるから」という誠に淺薄な感情論を根拠とする惡税の最たるものであると思います。それによつて戰災者が或いは若干の感情的満足が得られるかも知れないが、そんなことが徴税の目的であつてはならない筈であるし、本税が國民経済に及ぼす影響というものは決して軽くはないのであります、戰爭のため受けた犠牲の程度が税負担能力に影響を與えることは勿論でありますが、それと税の負担能力そのものとは又全然別問題であります。終戰後二ヶ年乱流を極めておる社会事情の下で、國民の経済状態は一変し、担税能力も根本から激変した今日において非戰災者が必ずしも税の負担能力があるとは絶対に断言できないのであります。この新税によつて政府は、戰災、非戰災の犠牲の均衡を図ると言うが、それには余りに時期遅れであり、財産税等ですでにその目的は半ば達せられておるのであります。又政府は臨時緊急の財政需要に應ずるため、又健全財政を守るため、本税を創設すると言うが、目的は手段を正当化し得ないのであつて、目的実現のためには愼重に手段を選ばねばならないと思います。そうしてあくまで國民の所得及び綜合的負担能力に対して正しく課税しなければならないと思います。目的のために手段を選ばず、不動産を対象とする徴税技術の簡便性を濫用するということは却つて國民の反感を誘致して、租税そのものに対して嫌惡的感情を更に昂じさせ、國家財政に対する正しき認識に障害を與えることになると思います。國家財政の苦しいことは國民の齊しく理解するところであり、又心配しておるところでありますけれども、財政政策が経済的発展過程に及ぼす影響は、殊に今日のごとき経済事情の下において著しく敏感でありますから、当局も租税徴税に際してはよく考慮しなければならないと思います。そして所得收入に應じて徴税するように努力し、又闇所得等の富正利得に対しては断乎鉄道槌を下さなければならないと思います。その日のパンにも餓えておる人々がある一方において、新興所得階級はますます豪奢な生活を享樂しておるのは万人の斉しく認めるところであります。國民はこれらの階層にこそ徴税の鋒先を向けることを期待しておるのである。それさえ利行できぬ政府の政治力の弱さでは、たとえ各目的にいかなる立派な新税を拵えても國民の協力を求めることはできないと思います。本税は終戰時の家屋の所有者に課税されるから、それらの該当者で近々半年前財産税納入の際物納した人々等には二重課税となるのであつて、又自分の家のみ所有しておるなら、或いは賃貸價格の数倍という税額は現有の物價からいえば大したことはないかも知れませんけれども、低い家賃で、廉い家賃で押えられた貸家を所有しておる人々、或いは働く能力とてなく、封鎖生活を余儀なくされ、その底も見えて來た年老いた人々、一家の支柱を失い、子供を抱えながらその日の生活に追われておる働く戰爭未亡人、そういう人々に取つては賃貸價格に数倍するという税率は決して軽くはない負担である筈であります。政府が財源を満たさなとするならば、このような誰にでも分るような惡税は断然中止し、戰災、非戰災たるを問わず、負担能力ある階層に税源を求むべきであると思います。又一律に賃貸價格の数倍という高率は非常に決定的であつて、絶対にこれは避くべきであると思います。若しもまあ、このくらいの税金はこの財政難國家として止むを得ないなどというならば官僚の独善はますます強化されるでありましよう。又流通秩序又徴税機構、こういうものを不備なままにして安易な租税政策、收入主義に恃み、それを美名化して実行するというならば、それは又大きな社会問題の一つであると思います。國家機能の経済的側面たる財政政策は眞にあらゆる方面において重要な岐路に立つておるのであります。このインフレ時代、國家目的のためなら無理でも何でも押し通すなどと言うなら、合理的思惟の存在というものを全然無視することであつて、合理的思惟の存在は全くの無用の長物である。それでもよいと言うなら私は何も言いません。以上私は種々の観点から見て、この法案に明から反対いたします。
#4
○委員長(黒田英雄君) 田安武君。
#5
○公述人(田安武君) 私はここで今日発言さして頂きますのは、唯單に一般の方がこういう考えを持つておられるのではないかという予測の下に発言しますのでありまして、唯自分の所属する團体とか、そういう方面の議を経て発言したことでないということを予め了解して頂きたいと思います。唯自分の個人の意見として皆さんに聽いて頂けば結構であると思います。
 第一の所得税法の一部改正案は、現在の現行法よりいたしまして、大体におきまして、勤労大衆に対しては免除率が低くなつておりまして、段々累進課税になりまして、高額の所得そのものに対して幾分重くなつております。これは一般大衆の方のためには僕はむしろよいのじやないか、現在の物價態勢及び社会状態を考慮いたしますと、非常に差異があります。差が出て来るのであります。今どの階級が一番に困つておるかといいますと、非常に善良なる勤労階級及び一部の労働者が非常に生活に喘いでおるのであります。そうしまして大衆の中でも中小工業者、つまり最近におきましては闇所得者と言うべきでありましようが、その階級は余り困つていないのであります。それは税務調整法の一部に不備欠陷もありまして、新興階級に対しては非常にその徴税困難もありましようが、それは今後政府当局は税制改革を行うに当りましてその徴税法の不備は固より改正されなければなりませんが、現在の状態からいいますと、非常に困つておりますのは勤労階級或いは労働者であります。私は労働者及び勤労階級のためにその生活権を擁護するだけの給料を與えてやるべきが至当であると思います。況して所得税を現在以上に引上げるということは全然反対であります。政府が提案されました今回の税制改革は固よりこの社会状態において我々は賛成するのでありますが、唯一部所得税法の第何條か今思い出せませんが、賞與及び給與に対する税率の欄があります。これは現在一六%の一律の課税になつております。大体この項に対しても或いは差別を設けるべきぢやないかと思います。それは現在賞與とかそういうものを頂く者につきまして、千円とか或いは一万円とかそういう差別があるものに対して一率に一六%を控除するということは不合理ぢやないか、大体において三階段程度の差を設けまして、三千円までは幾ら、五千円までは幾ら、一万円までは幾らというふうにその税率を五%程度に引上げて然るべきかと思います。よつてその点を改正して頂けば私はこの税制改正案に対して満幅の支持を惜しまないのであります。
 それから非戰災者家屋税の徴税でありますが、現在非戰災者であるから、戰災を蒙つてないからという区別はつかないからこれは惡税であるという方もありますが、私は大局的見地から考えまして政府がこの方面に財源を求めたということは私は万止むをやんぢやないかと考えるのであります。それはどういうことかといいますと、非戰災者と戰災との境は二年後の今日相当差を見出したことは間違いありませんが、燒けなかつたという名目のために家だけでなしに家の中に持つております什器、それから衣類、そういうものは現在まだ非常に残つております。中には生活のためにそういうものを賣られて生活して來ました今日、二ヶ年の間になくした人もありますが、まだまだその差別は残つておるじやないかと思います。そうして現在は燒けました者の中でも生活のために闇商賣をいたしまして非常に新円を獲得しておる方もありますが、それは別の方法を以ちまして調査いたしましてその新円階級に対しては別個に新円所得階級としまして、徴税の方法を講じられるがいいのじやないかと思います。現在政府は非常にその財源に対して困難を感じております。私たち戰災を蒙つてない一段の労働者及び労働者もこの際幾分なりとも政府の窮乏に対して援助しなければならないと思います。そうして現在非戰災者の中で一部の少数家屋所有者、つまり借家の持主でありますが、これは現在自分が賣ろうとしましても借家法によりまして賣られないことになつております。税金がかかるために自分は手離したいとこういうような考えを持ちましても借家人の方でそれを金がないたのに買えない。こういうような状態になつておりますがこれは非常にその持主に対して氣な毒なことでありますので、この階級の方に対してはあまり高い税金を掛けないように、借家人の方からでも氣の毒がつております状態でありますから、成るべくなら軽い税金で済みます。そういうような方法を取つて頂きたいと考えております。そうして一般のビルデイングの所有者であるとか、大きな住宅の所有者であるとか、そういう方に対しては現在政府が考えておられる税率を課せられてもいいのじやないか、こういうような考えを持つております。結局この非戰災者家屋税に対する私の考えは賛成であります。
 簡單でありますが、これを以て私の発言を終ります。
#6
○委員長(黒田英雄君) 石川恭三君。
#7
○公述人(石川泰三君) 結論から申上げますと、今回の税制改革の案は大体として賛成するものであります。
 先ず第一に一般所得税その他の改正案について申上げますと、所得税中家族扶助のための控除額を一人当り税額にして四百八十円というふうにいたしましたが、これは改正前現行の二百四十円を二倍にしたというような意味だと思われますが、こういうような極めて形式的な考え方は私たち國民として了解できないところであります。もう少しこの四百八十円というようにした根拠が生活の実態から斎らされたものでなければならないと思います。現在の物價状勢その他から見まして、從來の二百四十円を四百八十円にしたというようなことで必らずしも合理的な改正になるということはできないと思います。この問題につきましては、生計費その他実態調査に基ずいたいろいろな資料から來ることでありますし、賃銀問題というようなものも関聯があるのでありますから、これはここで詳しくは申上げませんが、そういうような極めて形式的なものであるということがこの所得税の改正案の中に見受けられるように思われます。その外低額給與所得に対して、低額のものに軽減して行くという方法は極めて当然なことであります、むしろ私はこの高額に対する逓増ということを更に強化しても低額者を救うべきではないかというように考えております。以上所得税について申上げました。
 次に非戰災者特別税について申上げますと、私はこれに大いに賛成するところであります。勿論一つの事をなしますと、その反対ということは起るものであると思いますが、併し考えて見ますと、この非戰災者税というものは、戰爭中における犠牲の不公平を是正するというような意味があります。これは勿論そのこと自体を承認すべきではありませんが、現在の國家財政の現状から見ますと、何かによつて非常收入を得なければならないのだという、そのとどのつまりのところまで來ておるというその実態を見ますと、そのことのために起る他の一面の不合理というものは忍ばなければならないのではないかと思われます。この非戰災者特別税に対して惡税であると言われる趣旨の多くは、これが時期を失しておるということと、そうしてそれ以外にももつと打つ手はないのかということとの二つが大きなものではないかと思われます。たしかに時期は失しております。すでに終戰以來二ケ年余を経過しておりますから、その点は紛れもなく当つております。併しその二の点につきまして、その外にもこれを補う数十億の財源を求める他のものがあるのではないかということを考えて見ますと、そう簡單に得られるものではないと思います。今度の改正によりまして、間接税が從來の全歳入における比率より非常に多くなつております。それは結局直接税が少くなつて、間接税が多くなつたということでありまして、直接税はその捕捉が困難なるが故に、自然に間接税の方にその財源を持つて來るというようになつたのであると思いますが、從つて何かの形で直接税を得なければならない、直接税を取らなければならないということは、これは当然だろうと思います。非戰災者税が外のものによつては代えられることのできないということは、所得税などによつて現在のところぎりぎりにまで取つておりますから、その外には実際取ることはできないのではないかということを私たちは卒直に認めなければならないと思います。ただ所得税に関しまして、闇成金その他の新円階級にもつと重税を課さなければならないというその点につきましても、それは言うべくして実際に行われ難いものではないかと思います。先ず実現可能な非戰災者税というものを設けることは、消極的な意味からしても止むを得ないものであると私は思います。更に非戰災者特別税が非戰災者家屋に課税せられるということの意味につきまして、この現在の衣食住の中の住という問題が國民の非常に大きな関心であるということは申すまでもありません。そうして現実に高い家賃、高い間代、そういうものがどれほど國民を苦しめておるかということはお互いよく知つておることだろうと思います。そういうような闇の根源であるもの、闇そのものを作つておるものは、すでに非戰災者家屋であるのであります。そうしますと、一面闇成金の方に税を課して、非戰災者家屋の方に税を課税することを止めたらいいのではないかということは、むしろこれは滑稽な論であると思います。実際に非戰災者家屋を有しておる者が、どれほど有利な経済的地位を現在持つておるかということは、我々もよく知つておる所でありまして、これを衝くということは決して不合理なものではないと思います。更にこの非戰災者特別税を設けるということの社会的意味について私は考えて見たいと思います。戰爭による犠牲を公平にするということが、これは戰爭を清算するための一つの理念でなければならないと思います。その戰爭の是非及び戰爭に対して國民が犠牲を拂わなければならないということの可否については、これは又別問題でありますが、実際の問題としまして、國民は戰爭にすべてを捧げるというように強いられて來ました。そうして戰爭が終つたときに、そこに戰爭中考えていたように、すべてのものが戰爭のために注がれていたかと言いますと、必らずしもそうではありません。それは本人の主観的な意思にもよりましようが、極めて偶然的な契機によつても齎された結果ではありますが、もとかくも全面的に國家と共に犠牲を拂つたということは言えないのでありまして、ここに大きな不公平が現われて來ております。その不公平というものを、戰爭の段階を清算して、新たな社会情勢に入る前にこれを公平に清算するといことは当然でありまして、而もそれが更に思想的な現在の段階からも大いに要求されておるものであると思います。そういうような意味からしまして、非戰災者税は当然課していいものだろうと思います。ただその実施に当りまして、一二注意しなければならないものがあると思います。それはこの非戰災者家屋が賃貸價格三十円までのものというように非常に低額なものになつておりますが、それは殆んどすべての家屋であるということを意味するものだと思います。そういうような極めて價値の低い家屋にまで税を課するということはすべきではないと思います。更にこの程度を引上げるということは当然だろうと思います。それに家屋並びに間代などにつてい統制價格というものがありますが、それが現実には決して行われていないというのが現実でありまして、この際この税を課することによつて闇の賃貸價格、闇室料、間代というようなものを徹底的に摘発するということは、流通秩序の維持と徴税秩序を租税の面から是正して行くという一つの意味があると思います。そういうようなことが実施に当つての注意すべきところではないかと思います。以上雜然と申上げましたが、私が今度の税制の改正につきましては大体におきまして賛成するものであります。
#8
○委員長(黒田英雄君) 檜山武夫君。
#9
○公述人(檜山武夫君) 私は現在東京都内に住んでおりまして、職業は埼玉師範学校教授、年齢四十歳であります。これから申上げますことは非常に教員の立場というような狹い範囲の意見であるかも知れませんですが、もともと本日の発言の機会を許されましたことは、一つには職場代表というような意味があるかと思いますので、余り分にも合わないような大きなことは申しませんで、極く狹い範囲の私共の身近にあることを取上げまして申上げたいと思います。それから尚申上げまする材料は、私共として手に入りまする材料、簡單に言いますれば主に新聞紙上に現われましたものを取上げて申上げますので、若しそれが間違つておりまするというと、私の意見も間違つているということになるかと思いますが、その点は惡しからず御了承願いたいと思います。
 先ず所得税の改正案について意見を申上げます。私としましても、この本案の趣旨であると言われております額低額所得者に対する減税、或いは高額所得者えの累進率の引上げ、或いは扶養家族控除の大幅引上げ、それらに対しましては勿論大賛成であります。併しながらその実行に当り細かい実施案につきましては、相当修正して頂かなければならないということがあると考えております。第一に勤労所得税の控除を年收三万円以上從來百分の二十であるものを五万円まで百分の二十五にするという点であります。現在皆様もうあきる程御存じと思いますけれども、官公吏は千八百円ベースということになつておりまして、千八百円ベースで計算しますというと、年收は僅かに二万一千六百円程になるのであります。この点から見まするというと、四万円、五万円などという收入のある方は、決して低額所得者ということはないと思います。政府の改正案によりまするというと、どうやら五万円までの人は低額所得者であるとあうようなふうに解釈して、この案をお立てになつたのではないかと思いますけれども、私どもから見ますれば五万円とつておるという方は、もう非常な高額所得者であるというふうに考えております。月收におきまして千円二千円というような差のあるものを同一に取扱うという点は、この改正点に非常に誤謬を含んでいるのではないかと考えております。即ち若し政府におかれまして低額所得者を救つて下さるというようなお考えがありましたならば、低額中の低額でありまするところの我々官公吏の千八百円ベースを先ず引上げて頂きたいのである。併しそれはもう税の問題外であるということでありますならば、この控除ということにおきまして、その所得によつて相当差を設けて、即ち三万円以下ぐらいの收入しかないものに対しては、百分の五十ぐらいに控除してやる、それから年收にして一万円、月收にして千円くらいの差のあるごとにその控除額をだんだん減らして行く、そういうような何と言いますか、実状に即したというか、非常に親切味のある政治をやつて頂きたい、そういうことを私は政府にお願いしたいのであります。第二番目に扶養家族控徐を倍額に引上げる、これも御趣旨大変結構であります。併し新聞紙に傳えるところによりますというと、今囘の案によつて扶養家族三人で個人所得平均十六万八千三百円、即ち月收にして約一万四千円の所得のあるものまでは、この扶養家族控除によつてすべて減税になる。そういうことを新聞紙は傳えております。これは私共から考えまして誠にどうも受取れない話であります。月收一万四千円などという人が減税になる、どこからそういうことを割出したか、どうも私貧乏な官公吏からは考えられない、そうして考えますというと、政府は或いは月收一万四千円くらいまでは貧乏人だ。生活困難だと考えておられるのではないか。但し一方では千八百円で食えるということで耐乏生活を唱えておられるのでありますから、千八百円、一万四千円、どちらが本当か、私共にはちよつと分らないのであります。この点におきましても一つ政府当局におかれましてはよく考えて頂きたい。即ち家族の控除を大いに差を設けて頂きたい、そう考えます。月收が三千円ぐらい年額にして三万円、四万円ぐらいしか收入がない者に対しましては、一つ大幅に、もつともつと一人百円ぐらいの控除をやつて頂きたい。月收三千円ぐらいの者から第一税金を取るということが、すでに私は間違いであると思います。昔から税を取る官吏は虎よりも恐ろしいという中國の言葉があるようであります。正に現在千円ぐらいの人から税を取るということは、虎より、ライオンより恐ろしいと私は思います。その代りに四万、五万円の收入が増すごとにその家族の控除を引下げる。終いにはもう月收にして八千円ぐらい、年收にして十万円ぐらいの人に対しましては、もう家族控除をする必要は全然ないと、こう考えます。月收八千円、九千円もある人に対して家族控除をしてやるというような、そんな話は到底受取れない、少ししかない者からは取らない、或いは少ししか取らない、ある者からは沢山取る。そういう主義でおつしやつて頂きたいと思うのであります。誠にお恥かしいような話を申上げますが、実情に即して申上げますために、私の收入を申上げますというと、私現在年齢四十歳でありまして、家族を五人抱えておりまして、月收本俸が九百五十円、一切の手当を含んで月收三千百十九円六十銭であります、その中で所得税としまして四百八十三円毎月差引かれております。年にして約六千円という所得税を納めておるわけであります。即ち收入が一日に約百円ぐらいしかないところから税を一日十六円ずつ差引かれておる。そういう勘定になつております。一日百円で以て家族五人抱えて食えるかどうか、現在何とか生きておるわけでありますけれども、更にこういうような困つておる者から一日十六円の税金を取つておるのが現在であります。私のお願いしたいと思いますのはこういう低額所得者からは税金を取らないで頂きたい。その代りに沢山取つておる人から沢山取つて頂きたいそういうことを申上げたいのであります。その他法人税の超過所得の税率の引上げということは中止、そういうようなお話を聞いておりますけれども、これも法人によると思います。使つて置く人たちに対しまして三千六百円平均だとか、四千二百円平均だとか、そういうような高い賃金を拂う法人に対しましては、何も遠慮なさる必要はない。納税は國民の義務でありますから、遠慮なく取つて差支ないのじやないか、そういう感がいたします。以上所得税の改正につきまして結論を申上げますと、結局政府当局の方はもつと親切に細かく考えて頂きたい。余り一樣に考えて、三千円でも五千円でも八千円でも大体同じだろう、そんなふうに考えて下すつては大変下々の者は困るのでありまして、三千円の者は三千円のように、四千円の者は四千円のように税金を取つて頂きたいと思うのであります。
 その次に非戰災者特別税について申上げます。私はこの税には絶対に反対であります。趣旨としまして、戰災者と非戰災者との犠牲の不均衡を是正する。そういうような趣旨に聞いておりまするけれども、これはただ名目でありまして、本当は第二次の財産税、而も第一次の財産税からは一部の者を除外して、一部の者には更に二重に財産税を掛けた。そういう結果になつていると思います。即ち政府は不均衡の是正という立派な羊頭を掲げまして、狗の肉どころか腐れ肉、或いは青酸カリの入つている肉を國民に食べさせんとしている。そういうふうに考えざるを得ないのであります。その理由の第一としましては。新聞紙の報道によりまするというと、税金は一律に賃貸價格の三倍である、そういうふうに聞いております。そう考えまするというと、戰災都市も非戰災都市も農村も同一であるということになつておると思います。勿論家を燒かれまして、戰災に遭われた方、そういう方のお氣の毒なことは、もう万々承知しております。併しながら戰災都市におきまして、或は大都市におきましては、たとえ家は燒けなかつたにしましても、あの頻々たる空襲の下において、どんなに精神的、物質的に犠牲を拂つたか、それはもうすでに議員の皆樣よく御存じのことであると思います。赤ん坊などを抱えまして、あの冬の寒い最中に、夜防空壕へ入つて一晩過す、そういうような犠牲をこの大都市、戰災都市の方々は、たとえ家が燒かれないでも拂つているのであります。然るにその間におきましては、小都市、或いは地方の農村などの方々は、ゆつくりと温い蒲團の中に入つておやすみになる。珠に大都市におきましては、防空のためだというので生垣や板塀を打壞わす。その内に学童疎開だといいまして、僅か十一歳か十二歳くらいの小さい子供を親の膝元から離して、家族生別れの生活をする。而も子供が先に死ぬか、親が先に死ぬか分らんというような、そういうような生活を送つておりました者も、家族揃つて悠々と温い蒲團の中に寝ていた人も同じ税率で以て、不均衡を是正するとおつしやられたのでは、我々國民としましては、どうも合点が行かんとそう申上げるより外ないのであります。その他第二に申上げますというと、大体賃貸價格というのを元といたしますというと、御存じの通り田舎と都会では賃貸價格に非常に差があるのであります。都会では大体新らしい家が割に多い。その他賃貸價格が非常に高い、私ちよつと調べましたのでは、私の近所で二十五六坪の家であるというと、三百円以上の賃貸價格になつている。ところが私の故郷でありまする栃木縣の東北本線沿線の町におきましては、その方は材木屋さんで金にあかして大変立派な家をお建てになつて、五十何坪というお宅でありまするが、その賃貸價格は二百三四十円であります。これに対して一律に三倍の税金だ、それで不均衡を是正するのだ、そういうようなお考えはどうも私共には分りません。どういうところからそういう不均衡の是正ということがいわれますか、判断がつかない次第であります。第三番目といたしまして、戰災者、或いは引揚者という定義が甚だはつきりしないと思います。私共の知つている範囲におきましても、家族や家財をすつかり疎開してしまつて、自分だけ著のみ著のままで親戚の家にごろごろしている、その家が燒けた、自分には損害はない、然るにその人は戰災者であるというので、戰災者の取扱ひを受けて戰災者の配給を受けられる。それとは反対に、或いは私の知つている者でありまするけれども、東京の家は危うく燒け残りました。併しながら宇都宮におかみさんと子供三人を疎開させて置きましたところが、丁度昭和二十年七月十二日の宇都宮の空襲によりまして、妻子四人が燒死したのであります。然るにその方は東京におられて、東京の自分の家は燒けていないから、戰災者ではない。今度の税金にいたしましても、この方は非戰災者であるというので、やはり三倍の賃貸價格によつて税金を納めなければならないのではないかと思います。或いは又引揚者にいたしましても、誠にお氣の毒なことは重々分りますが、中には金儲けをやろうというようなことで單身で南方へ出掛けまして、留守宅は田舎にあつて、なんら被害を受けていない、それで單身又引揚げて來た。そういう方が、これは引揚者だというので、引揚者としての実際の配給を受けている。そういう例が枚挙するに遑がないといつて差支ないと思います。こういう点を考えました場合に、どうも私はこの非戰災者特別課税というものは正当であるとは考えられない。その上に課税の対象が家屋、家財の二つだけに限つたということも、私共には受取れないのであります。それでは山林や田畑は一体どうしたのか、山林や田畑は戰災を受けたろうか、勿論山林や田畑へ燒夷彈が落ちた、爆彈が落ちたということもないとは限らないと思います。併しそれも戰災と目すべきかどうか、家だけに限るということが私は非常な誤りであろうと思います。而も御承知のように、家というものは收入が直接入つて來ない、家というものは一度貸したり、賣つたりすれば收入は入つて來るでありましようが、そういう場合は又議論が別になりますが、実際賣りもしない、貸しもしない、自分がおるという場合には、全然收入は入つて來ないのであります。この場合のおきまして、どうして政府に税金を納めたらよろしいか、結局家を賣るか、貸すか、着ているものを脱ぐか、そういう問題になるのではないかと思います。そういう点から申しましても、非戰災者特別課税というものは私はどうしても反対であります。若しもどうしても今の國家財政の立場から、これだけの收入を得なくちやならんというようなことであるならば、次のような修正をして頂きたいと考えます。一つには営業をしないところの住宅專用の家屋で、所有者が自分で住まつている場合には課税しない、或いは税率を引下げる。二番には大都市、殊に戰災都市、新聞でちよつと見ますと、廣島、長崎の場合はなにか減税するというように承つておりますが、廣島、長崎に限らない、とにかく戰災都市或いは大都市の場合は減税してやる。それで農村の場合には、これは賃貸價格も低いのであるからして。それを織り込んで大幅に税率を引上げる、そうして税の收入としては、大体現在の予定通り取るというふうに、ここにも細かい技術的な考案を廻らして頂きたいと思うのであります。三番に、その家屋を所有している者の收入によつてその税率に差を附ける、一律に三倍ということにしない。四番に山林田畑、そういうものにも税金を掛ける。五番に終戰後に家屋を買つた人、調査時期は昭和二十年八月十六日になつております。その後に家屋を買つた者は、これは税金を納めておらない。そういう終戰後に家屋を買つたような人こそ、これはまた租税を納めるべき十分なる能力のある人でありますから、そういうものに対して税金を掛ける。六番、扶養家族の控除をこれにも認める。以上のような方法を盡して下すつたならば、或いはこの惡税であるところの非戰災者特別課税も幾分救われるのではないかと、そういうように考えるのであります。
 以上はこの租税問題につきまして直接関係のあるところを申上げたのでありますが、後二三財政上の立場におきまして、こうしたならば國家の支出は減るのじやないか、こうしたならば國家の收入は殖えるのじやないかということを私共氣の付きました点だけを多少申上げたいと思います。一つは官公吏の地域手当というものを現在生活地本位でなしに、勤務地を標準にして支給しておりますが、生活地を標準にして支給して頂きたい。これを是非とり上げて実行して頂きたいと思います。この地域手当と申しますのは、御承知の通りに東京都の特地というのは收入の三割、六大都市を甲地として二割、市制施行地は乙地として一割、町村は丙地として全然地域手当はない。そういう三割、二割、一割、ゼロという建前になつております。この標準はすべてどこにあるかといいますと、これは官吏の勤めておる場所を標準にして支給しておるのであります。そうでありますから例えて申上げますと、その官吏が地域は埼玉なら埼玉の田舎に住んでおる。家族はみんなして百姓をやつておる。主人だけが毎朝電車に乘つて東京に勤めておる。そういたしますと、その人は特地に勤めておるからというので、三割の地域手当をとつておる。実際に配給を受け家族は生活をし、生計費を支出しておるのは純農村である。それにも拘わらずただ東京に勤めておるからというので、三割の地域手当を貰つておる。中には反対の人があります。住宅の関係でどうしても田舎には行けない。勤めは田舎で、東京から田舎に通つておる。それは省線電車の上り下りを御覧になりますればお分りになると思いますが、大体に上りが多いには多いのでありますが、下りも全然ないわけではないのであります。朝下りの電車に乘つて東京から田舎に勤めに行くという人も相当ある。その人はどうなるかと申しますと、家族を養う、自分は配給を貰つておるのは東京で貰つておりまして、遲配、欠配は東京と同じであります。東京に暮しておるのでありますから東京通りであります。然るにその御主人だけが例えば埼玉縣の川口であるとか、蕨などに勤めておりますと、勤めておる土地が乙地であるから一割、蕨町に勤めておりますと丙地であるから全然地域手当は貰えないという馬鹿々々しい結果を來たしております。こういうような不公平なことをやる半面におきまして、一方におきましては、國家として大変なこれによつて支出が殖えておるのであります。先にも申上げましたように、大体勤人は田舎から出てきて東京へ勤める人が多い。東京に限りません。京阪神の場合も同じだと思います。そういつた方は田舎に住んで都会の地域手当を貰つておる。これを私概算したのでありますが、本当の概算でありますが、恐らくこれを生活地を標準にして支給しましたならば、年額にして四億や五億の節約は十分できる、というふうに概算いたしました。年四五億の余裕が國家財政の上にできるということになりましたならば、この四五億を六・三制の実施なり、或いは官公吏の優遇なり、そのほかいろいろ有益な方面に使つて頂けるのではないかと思うのであります。これは是非一つ議員の皆樣におかれまして取上げて直して頂きたい。不公平を直すというばかりでなしに、國家の財政を減ずるという立場からしましても、是非取上げて頂きたいと思うのであります。その次に所得税を掛ける場合に、官公吏の出張旅費は全然所得税が掛つておらないのでありますが、これにも所得税を掛ける必要があるじやないか、民間などにおきましては出張旅費を以て、相当所得税の事実上の脱税をやる嫌いがあるのではないかと思います。官公吏等におきましても或る役所は出張旅費が非常に沢山ある。それで月收は月給二千円で出張旅費を混ぜると四千円になるという人が相当あるのであります。ところが出張旅費のない官廳に勤めております者は、それが全然ない。月給だけということになりまするので、そういう点も考慮して頂くと財政上有意義ではないかと思います。それから時間がありませんので急いで申上げますと、官公吏の予算面の人員と実際の人員との差が非常にある。例えば栃木縣の教員組合で調べましたところが、既に百二十万円の差があつたということを申しております。これも実際に調べましたならば相当節約ができるじやないか。
 そのほか申上げたいことがございますが、時間が切れましたので乱雜なことを申上げましたが、私の考えを終りといたします。
#10
○理事(波多野鼎君) 檜山公述人の公述に対しまして御質問のある方はどうか……御質問がなければ次に石川さんにお願いいたします。石川榮一君。
#11
○公述人(石川榮一君) 石川榮一、税務官吏であります、三十五歳、本日は税務官吏でなく全財の労働者として、実務に携わる面からお話したいと思います。
 大体租税の理想は所得税を主軸として、その度合いとしては應能負担が原則であつて、実際においてもそうあることが望ましいと思います。このことは彈力性に富む点、或いは古い日本的な道徳観からしますれば、日本古來の美徳たる大きい者が小さい者を保護してやるという考え方、この頃の社会主義的考え方よりすれば、社会的不平等の是正ということも言えるんじやないかと思います。事実近時における租税の所得の中における支出の割合の増大は、副次的な以上のような効果を果しておるということが言えると思います。今回創設或いは改正される非戰災者特別税及び所得税についても、この考え方が当てはまるものではないかと思います。前者は実質的には物税ではあるが、特定の人を対象とする点よりして一種の人税である。殊に犠牲の不均衡を是正するとの政府立案の趣旨よりいたしますれば、当然階級税率とすべきであります。最低生活の考えを大きく取入れて、免税点の決定をせらるべきであると思います。又この税金が物税の形を採る結果、この負担は戰災者に轉嫁されることは、当然考慮されなければならないのであつて、これらの点よりして免税点は相当引上げられるか、或いはこのような法案は無きは有るに優るということが言えるのではないかと思います。実際に家屋税が創設されました当時、賃貸價格を算定しました基準を申上げますと、私らが事実取扱つて參りまして、例えば坪その当時において、百円の建築費を要した建物と、坪二百円の建築費を要したものとでは、賃貸價格が使用價値であると、賃貸された場合に收入になる金額であるという建前から必ずしも倍の賃貸價格が設定されておりません。坪百円の賃貸價格の建築費の物に対して、二百円の建築費を要した建物は大体二割程度加算されておる状態であります。從つてこれが坪三百円、坪四百円、五百円と上になる程その賃貸價格というものが低減するという趣旨で、二倍で以て二割加算したものが、三倍では三割加算せずに二割五分というふうに漸次低減されております。この趣旨から言つてこれが一定の税率で加重されるならば上の者程軽い結果になるので、これが階級税率を用いて丁度建築費を基準にしたならば公平な負担になるということが言えるのじやないかと思います。又政府の考え方は、戰災者との均衡上、非戰災者を削るというような考え方でやつておるようですが、これはむしろ非戰災者に比して、戰災者の生活の基礎の回復のために、戰災者をこそ何年間かに亙つて免税その他の方法によつて援助すべきでありまして、所得はあれども住むべき家なく、物蔭に寝るより術ない日傭労働者等にも課税せられておることを政府は考うべきであります。
 次に後者の所得税についていいますと、勤労の担税力と資産の活動の結果による所得との担税力の差が勤労者の所得の二割五分控除によつて現わされる程度のものであるかという点であります。今日資本のある者と、少い者との收入の比較は、物價の上昇率を以ても明かな通り二倍の資本を持つ者は二倍でなく二倍以上の利益を擧げ得るのであります。資本皆無とも申すべき勤労者の所得が二割五分程度の差で現わし得ないことも当然のことでありましよう。比較の問題にはならないが、一應の目安として考えましても、四割控除としても尚至当とはいえない。從つて最低限度としても四割を控除すべきであります。
 次に基礎控除の問題でありますが、四千八百円という数字はいかなる根據であるかという点であります。これに関しては予算申告納税制の本税法が施行せられました当時、大藏省の立案者である事務官が説明したところによりますと、最低生活費という意味ではないから、最低生活費だけを引く必要は認めておらない。こういう説明でありました。併し今日の所得税は、昔年の所得税とは異つて相当高税率でありまして、若し最低生活費控除という考え方を取入れて考慮せられないならば、税金支拂いのために身の廻り品を賣却しなければならないような結果になつて、これは甚だ不合理であると思います。厚生省の立案であるところの生活救護法の方面より見ますと、要救護者の一世帶年額一人六千四百二十円、五人ならば一万八千円支給せられるのであります。然るに自己労力によつて働いて得る收入は年四千八百円を超える場合に課税せられる。この矛盾に対しては、同じ國家の名において行われる限り、所管が違うということだけでは済まされない問題ではないかと思います。そうしてこれらが常に衝突を起しておりまして、後の窓口で應接に一番國民の感ずる問題は、この矛盾を追及されるのが一番私らとしても困る問題なのであります、これが租税の賦課徴收の上に大きな妨げをしておるということが言えるのぢやないかと思います。これが政策の不統一を示した最もいい見本ではないかと思います。又これを昭和二十一年の所得税法によりますれば基礎控除年千二百円を控除せられておりまして、その後増税の決議をされておりません。然るに二十年の物價に比して、二十二年の物價は概ね十倍以上になつております。生活費よりいたしますれば少くとも十倍を超えております。これよりすれば一般的にいつて、担税力を減じたことを示すものであつて、この比率を以てすれば、現在における基礎控除は一万円以上としてもいいのじやないか。そうでなければインフレによつて物價の騰貴に伴う名目的所得額の上昇率以下の比率による基礎控除額の増加割合は、当議会において年々の物價に伴う基礎控除の改訂を行わない限り、議会の承認を得ないで行う実質上の増税と同じ意味になるのであります。或いは又基礎控除切下げを行つたと同じ結果となるのであります。いずれの面より見るも基礎控除は最低生活費を基礎として、控除額を決定し引上げられるべきであつて、ここに勤労者層より現行税法或いは政府改正案を大衆課税として我々全財が反対しておる大きな根拠があるのであります。又最低生活費は多人数家内程一人当りは逓減されるわけでありますから、基礎控除の最低生活費は、一人の意味で、少くとも今日においては一万円以上控除すべきであつて、外に扶養家族については年齢その他の條件を附せず、税額にて一人につき少くも最低税率で、一人に最低生活費と同額の金額を以て算出した税額に等しい税額を控除すれば、所得に税率の逓増分を乘じて得た税額に対比して、生活費の逓減額に等しい結果を得られると思います。併しこれに対して政府が減收すると言うならば、危懼であります。なぜかならば現在のごとき大衆課税が行われるならば、勢い第一線税務署としては、徴税の点よりして幹部が担税力或いは弾力性を持たせると称して、徴税の可能な範囲にて所得を逆算決定する等、税法の階級税率の趣旨を有名無実のものとするごとく、而かもこの多くが、大所得者に対して行われる実情であつて、納税費の苦痛度と徴税費の増大と調査手段に不利を與える効果あるのみでありまして、これでも尚徴税機関たる税務署は、滯納税金が山積し、その整理のために大量の人員をその方面へ振向けねばならないため、所得調査の方面の人手に不足を生じ両すくみの状況となりまして、常に不完全な調査しかでき得ない状態であります。この大衆課税を廃めて、併せて徴税技術の確促を図るならば、その人員と技術とを扼える階層の所得捕捉に振り向けることができる筈であります。勿論課税技術は單なる講習や一時の指導では到底できるものではありません。豊富なる経験と経済的、社会的事情の変化に即應した方法とが研鎖されるためには、先ずその生活の安定こそ第一でありまして、それなくしては業者のボスに依存する現在の調査方法より脱却することは不可能であります。これは組合における折衝などによりまして組合の上層幹部が常に聯絡をしなければ、所得の調査が不可能な状態であります。これは人手不足の現在においては止むを得ない状態でありますが、この人手不足というものが常に滯納の整理などに人員が取られるために調査方面の人手が不足となるのであります。政府は消極的な経費の節減としての行政整理を考えておるようでありますが、眞の意味の行政整理は課税の能率化にあるのでありまして、若しこの課税の能率化を立案しないならば、それは改正ではなくして改惡であるとこう考えます。経済安定本部では國家総所得を八千五百億といつておるようであります。これを國民一世帶に平均すれば約五万円くらいで、この税率四割五分、從つてこの税收入は少くも千四百億円以上の所得税が上る筈であります。これは平均所得よりした税率によつて算出したものでありますから、高額所得者を高税率にて算出する税額を考慮するならば、実際にはもつと多くなる筈であります。然るに政府予算によると、本予算と追加予算を合せ所得税は六百七十三億円にしかなつておりません。これを逆にいえば税金六百七十三億円の分の所得は、三千九百億円程度でありましよう。それ故に残る四千六百億円の所得は、人手不足と課税技術の低下とボスの介在のために、税收入を挙げ得ないということであります。又実際上勤労者の所得税を源泉徴收しておりますが、源泉徴收をしておらない従來の乙種勤労所得者は、これは今日殆んど課税が不可能の状態で、この人たちの方が実際は收入が多いのが通例であり、全く不權衡極まる現況にあるのであります。源泉徴收者の滯納並びに滯納の名の下に勤労者の負担により事業主が不当にこれを流用利益することは誠に言語道断なことで、新聞の傳えるところによりますと、この金額百五十億円というに至つては勤労所得税が勤労者の生産意欲に影響する逆効果の大きいことを思わねばならんと思うのであります。それと共に源泉徴收義務者の納期を、翌月において嚴重にこれを取立てないなら先、國家の損失において事業上に不当の利益を與えるということになるわけであります。次に税率は、所得税そのものの税率はいいとしまして、結果においては同一内容のものを課税の対象とする各種の地方税補完税、例えば営業税のごとき税率の調整を考えないならば、手取所得皆無というような状態になつて、不合理を生ずることになるのであります。所得税は積極的な課税を行えば、非戰災者特別税のごときは不要なものでありまするが、政府は自己の政治的な無能のために、勤労者の千八百円ペースを固持し、そのために徴税の第一線である税務署においては、平均勤務年数は三年前後といわれております。而も平均年数の基礎である各人について見るならば、高勤続年者は第一線の実働に直接加わらない財務局或いは、主任、課長でありまして、実働者としては殆んど平均年以上の者は二割か三割程度にしかなつておりません。この状態では課税技術はますます低下の外はないのであります。政府がこの技術低下の穴埋めとして、根本的方途を考慮せずに、技術的に安急で、立案に当つて論議が少く、対政府圧力を蒙むることの比較的少ない大衆課税、物税に偏傾することは必然の帰結であるし、今日財政の行詰りは白明の結果といわなくちやならないのではないかと思います。而もこの外に課税の大いなる妨げとなつている銀行貯金の調査をしないということは、大藏省の通牒は、銀行の闇資金の源泉保護と闇所得の温存助長の効果あるのみであることは周知のことであります。これに関して政府は、資金を吸收し、物價の昂騰を防ぐとし称ておりまするが、今日の所得税においては、一体正常なる課税が行われたならば、資本の蓄積の一部であるところの預貯金ということが可能の筈がありません。仮に一例を挙げれば、二十一年中に事業所得が二百万円という者は、前年実績の七分の一として三十万円と見て、この税金が百四十五万三千円、増加所得が二百万円の所得で、從つて七分の一としまして三十万円となります。この税金を算出しますと百四十五万三千円になるのであります。これに営業税は大体各府縣とも二割四五分を課税しておるのであります。これに対しては控除がありませんから、横浜の例から行きますと、四十八万円の営業税がかかるわけであります。合せますと百九十三万三千円になります。これでは残るところが六万七千円しかないわけであります。二百万円の收入の人が、六万円程の生活費でことが終えるでありましようか。二十二年分についても同じことがいえると思うのであります。これで預貯金をするという余地があるでしようか。或いは政府はこれに対してはインフレと所得收入のときと増税のときとの時間的なズレがあるというかも知れません。併しそれならば、現在もう増加所得税の延納期も過ぎ、営業税の納期も過ぎた今日、預貯金は大激動して減少したでありましようか。否逆に増しておるとさえ新聞では傳えております。事実徴税機関の眼より見ても、今日の滯納者の銀行貯金は、自由預金は殆んどなく、税金には足りない有樣であります。ここのことは別の面から見れば、滯納額より預貯金額の多いということは、預貯金者が滯納者と異なるということを意味するということがいえましよう。これは明らかに課税されない闇所得の一部である筈です。若し徹底的に課税が行われるならば、預貯金は皆無となる筈であるといえましよう。そしてそれ以上の税收入が挙る筈であります。この通牒は、その上徴税上一般に與える感情的惡影響は大きくて、國民の大多数にとつては、この通牒は殆んど縁のないような通牒なのでありますから、当然これに対する反發が多いのであります。食えない者たちにとつて、預金などということは夢のような言葉なのであります。政府は眞に公正なる課税を稔ずるならば、このような惡通牒は廃止さるべきであります。以上のような例によつて明らかな通り、補完税としての地方税諸税金の税率が、無規律乱雜で、國民所得を無視しております。予算上、仮に安定本部が計算した國民所得と税金の割合は、一見合理的に見えますが、実際は地方税並びに税以外の税、即ち税金の闇であるところの寄附金等を勘定の中に入れておりません。これを考えれば経本の諸計算も一片の取らぬ皮算用に終ることは白明であります。官公廳の寄附金や、可能性のない公定價格嚴守等が、各種の人事業家に対して官公署の依存度を大きくして、そのために課税上ボスに膝を屈しなければならないような場合が、事実として多いのでありまして、これらの点も考慮の上決定せられなければ、税收入予算を何程組んでもそれは一片の描ける餅に過ぎない結果になるのでありましよう。これを要するに今回の新税並びに改正税案は、この反省を無視したもので、大衆課税は不可避ではなく、政府は課税技術確保の方策を誤らず、税の理想具現化の政治的良心のいかんにあるということがいえるのであります。
#12
○委員長(黒田英雄君) 何か御質問がございましようか。御質問がありませんようですから……本日は八名の方にお出でを願うように通知を発したのでありますが、御病氣等のために三名の方はお見えにならないのであります。從いまして本日お見えになつて方の御陳述は、全部これで終りました。公述人の本日お見えになりました方に御挨拶を申上げますが、お忙しいところをお繰合せお出下さいまして、いろいろ御意見をお述べ下さいまして誠に有難うございました。ここに感謝の意を表します。これを以て本日の公廳会を終ります。
   午後零時九分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     黒田 英雄君
   理事
           波多野 鼎君
           伊藤 保平君
   委員
           木村禧八郎君
           下條 恭兵君
           椎井 康雄君
           森下 政一君
           西川甚五郎君
           松嶋 喜作君
           山田 佐一君
          尾形六郎兵衞君
           木内 四郎君
           深川タマヱ君
           星   一君
           小宮山常吉君
           高橋龍太郎君
           渡邊 甚吉君
           中西  功君
  公述人
   学     生 水野  卓君
   海員組合本部勤
   務       田安  武君
   文壽堂調査部員 石川 泰三君
   教     員 檜山 武夫君
   税 務 官 吏 石川 榮一君
ソース: 国立国会図書館
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