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#1
第075回国会 商工委員会 第4号
昭和五十年二月十八日(火曜日)
   午後一時十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり
    委員長         林田悠紀夫君
    理 事
                楠  正俊君
                熊谷太三郎君
                小柳  勇君
                須藤 五郎君
    委 員
                小笠 公韶君
                斎藤栄三郎君
                菅野 儀作君
                鈴木  力君
                対馬 孝且君
                桑名 義治君
                中尾 辰義君
                安武 洋子君
   国務大臣
       通商産業大臣   河本 敏夫君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        嶋崎  均君
       特許庁長官    齋藤 英雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。河本通商産業大臣。
#3
○国務大臣(河本敏夫君) 特許法等の一部を改正する法律案につき、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 わが国の工業所有権制度は、九十年に及ぶ歴史を有しておりますが、現在、物質特許制度及び多項制の採用、商法登録出願の処理の迅速化等幾つかの重要な問題を抱えております。また、近年における工業所有権制度の国際化の動きは顕著なものがあり、わが国もこのような動向に的確に対応する体制を整備する必要がありますが、そのためにも前記の諸問題を解決することが緊要となっております。
 すなわち、わが国が今後さらに国民の福祉水準の向上を図るとともに、国際社会における貢献を高めるためには、国民の知的活動の成果が十分に発揮される環境を整備することが必要不可欠であり、特許制度の重要性は従来にも増して高まりつつありますが、現在の特許法においては、化学物資、医薬、飲食物等の発明について特許を与えないことになっておりますので、研究開発活動のあり方がともすればゆがめられ、また無用の係争が生じております。さらに、わが国は、長年にわたり特許請求の範囲及び実用新案登録の請求の範囲について、いわゆる単項制を採用してきておりますが、工業所有権制度における国際的協調を図り、出願人及び第三者の便宜に資するという新しい時代の要請にこたえるため、多項制を採用する必要性が高まってまいりました。これらの事態に対処するため、昭和四十六年から工業所有権審議会において慎重な討議を重ねた結果、昨年九月に「物質特許制度及び多項制の採用に関する答申」が提出されたのであります。
 次に、商標制度につきましては、近年における出願の激増のため、増員、機構の拡充、予算の増加等種々の対策を実施しているにもかかわらず、審査に要する期間は著しく長期化するとともに、特許庁には未処理案件が累増しており、このままでは商標制度の意義が失われるおそれがあります。また、出願の迅速な処理は、商標制度の国際的協調の観点からも不可欠の要件となっております。このため、商標登録出願の迅速な処理を図ることが緊要となっており、その対策について工業所有権審議会において慎重な検討を重ねた結果、昨年十二月に「商標制度の改正に関する答申」が提出されたのであります。
 本法律案は、これらの答申に基づき、さらに関係各方面の意見をも取り入れて作成したものであり、いずれも可及的速かに改正を要すべき事項を内容とするものであります。
 次に、本法律案の概要につき、御説明申し上げます。
 第一は、物質特許制度を採用したことであります。
 化学物質、医薬、飲食物等につきましては、近年、これらの産業部門の技術水準に急速な向上が見られ、研究開発をさらに促進するためにはその発明の適切な保護を図る必要があること、わが国経済の発展に伴ってこれらの物質についても多種多様の商品が豊富に供給されておること等から、多くの先進工業国の例にならってわが国においてもこれらの物質の発明について特許を認めることとしたものであります。
 第二に、多項制を採用したことであります。
 従来、特許または実用新案登録の出願に当たって、出願人は、一つの発明または考案については単一の項目によってその請求の範囲を記載することとなっておりましたが、複数の項目によって請求の範囲を記載できる、いわゆる多項制によれば、特許権等の権利範囲を従来より明確にすることができ、また国際的にもほとんどの国が多項制を採用していること、現段階から多項制を採用しておけば近い将来発効すると見込まれる特許協力条約にも円滑に即応することができること等から、わが国においてもこれを採用することとしたものであります。
 第三は、登録商標の使用義務を強化したことであります。
 登録商標の中に使用されていないものが相当存在している状況にかんがみ、出願の迅速な処理及び使用されないこととなるような商標の出願の抑制を図る見地から、商標権の存在期間の更新登録の際過去三年以内に使用されたことがない登録商標については更新登録を認めないこととするとともに、過去三年以内に使用されたことがない登録商標の登録を取り消すことができる、いわゆる不使用取り消し審判における使用の事実に関する挙証責任を審判の請求人から被請求人に転換することにより、不使用取り消し審判を容易に活用し得ることとしたものであります。
 このほか、第七十四臨時国会において承認されましたパリ条約のストックホルム改正条約の批准に伴って必要となる特許法、商標法等の関連規定を整備するとともに、特許料・登録料及び手数料を最近の物価水準等を勘案して妥当な水準に改正することとしております。
 本法律案は、これらの事項について所要の措置を講じるため、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び不正競争防止法についてそれぞれ所要の改正を行うものでございます。
 以上が本法律案の要旨であります。何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#4
○委員長(林田悠紀夫君) 次に、補足説明を聴取いたします。齋藤特許庁長官。
#5
○政府委員(齋藤英雄君) 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び要旨を補足いたしまして御説明を申し上げます。本法案によります改正の第一点は、物質特許制度の採用であります。化学物質、医薬、飲食物等の発明につきまして従来特許が与えられなかったのは、これらの産業分野におきますわが国の技術開発力が弱かったこと、国民生活に関連の深い物資であること等の配慮に基づくものでございました。しかし、今日ではわが国の技術開発力は著しく向上しておりますし、模倣的とも言える製法の開発から脱して物質自体の研究開発を促進すべき段階に至っておりますし、これらの物質の発明に対して特許を与えても、多種多様な飲食物、医薬等が市場に提供されておりますので、国民生活上特に問題は生じないと思われますし、諸外国の状況、パリ同盟会議における勧告等の国際的な動向に対応する必要があること等の事情を勘案いたしまして、これらの物質の発明に対しても特許を認めることといたしたものでございます。また、物質特許制度の採用を契機といたしまして、後願特許権者等が先願特許権者等の発明につきまして通常実施権を設定すべき旨の裁定を請求いたしました場合には、先願の特許権者から後願の特許権者にも裁定を請求し得るという、いわゆるクロスライセンス制度、クロスライセンスの裁定を請求できることといたしております。これによりまして裁定制度の運用をより円滑なものとすることができるとともに、先願発明と後願発明が相互に利用されるようにいたしておる次第でございます。
 さらに、医薬の混合方法等の発明に対しまして特許を認めることに伴い、今後は薬剤師、医師等が混合医薬を自由に調剤できなくなるおそれがありますので、医薬の混合方法等の発明につきましての特許権の効力は、医師または歯科医師の処方せんによる調剤行為等には及ばないことといたしております。
 改正の第二点は、いわゆる多項制の採用でございます。
 特許出願の明細書には、特許付与の対象となる発明の範囲を明確に定めるため、特許請求の範囲を記載することとされております。
 従来は、この特許請求の範囲には、その発明の構成に欠くことができない事項のみを記載することしか認めておりません、いわゆる単項制の制度となっております。しかしながら、今回の改正により特許請求の範囲には、発明の構成に欠くことができない事項のほかに、その発明の内容をより具体的にあらわした実施態様を、幾つかの項を起こして記載することができるという、いわゆる多項制を採用することとするものであります。多項制は、発明が複数の項で具体的に表現されることとなりますので、第三者及び出願人にとって便宜でありますが、それ以外に出願手続における出願人の対応が容易になる等の効果も出てまいります。また、多項制の採用に関連しまして併合出願の範囲、補正の時期、異議申し立て及び無効の理由等に関する規定の整備を図っております。
 改正の第三点は、登録商標の使用義務の強化でございます。
 使用されることが前提となっております登録商標の相当数が実際には使用されておらないのでございますけれども、このような多数の不使用商標の存在及び使用されないこととなる多数の商標の登録出願が、出願の迅速な処理を困難にいたしまして、未処理案件の累増をもたらしている重要な要因となっておるわけでございます。このために登録商標の使用義務の強化を図りまして、現状を改善しようとするものでございます。
 方法として二つ方法が掲げてございます。
 まず第一点でございますが、商標権の存続期間は商標の設定登録の日から十年間となっておりますが、更新登録の出願によりまして存続期間を更新することができるわけでございます。
 従来、更新登録は、たとえば公序良俗に反すること、あるいは品質誤認のおそれがあること等、いわゆる公益的な要件に該当しない限りは認められることになっておりまして、その商標を使用しているか否かは問題にしなかったのでありますが、使用されていない商標の登録を何度でも更新することができる制度になっていたのであります。
 一方、現行法におきましても、三年間に使用されたことがない登録商標は、利害関係人の請求によってその登録を取り消されることとなっておりまして、このような意味におきまして登録商標を三年以内に使用する義務が商標権者に課せられていたと解されますので、今回この使用義務を強化をいたしまして、十年目の更新登録の出願時にその使用状況を新たに審査することといたしまして、出願前三年以内に使用されたことがないものにつきましては更新登録を認めないことといたしまして、使用されない商標の更新登録出願がされないようにするものでございます。
 第二の手段でございますが、また、現行商標法の第五十条におきまして、三年間に使用されたことがない登録商標は審判によってその登録を取り消される、いわゆる「不使用取り消し審判」について規定しております。この制度におきまして従来は登録商標の不使用の事実の挙証責任が審判の請求人側に負わされておりますが、その立証はきわめて困難でありますから、不使用取り消し審判制度は十分に活用されていなかったのでございます。しかし、登録商標は、使用されるという前提で権利が与えられたものでありますと同時に、使用に関する事実は商標権者が最もよく知っているはずでございますから、今回登録商標の使用に関する事実の挙証責任を審判の被請求人に負わせることとしたものでございます。
 改正の第四点は、ストックホルムで改正されました工業所有権の保護に関するパリ条約の批准に伴う関係法律の規定の整備でございます。
 工業所有権の保護に関するパリ条約は、工業所有権の保護に関する基本的な国際条約でございまして、その大もとの条約は、一八八三年に締結されたものでございますが、その後数次の改正が行われまして、わが国はその都度それらの改正条約を締約してきておりまして、一九六七年にストックホルムで行われた改正につきましても、先般批准を終えたところでございます。ストックホルムで改正されましたパリ条約は、ハリ条約の管理運営を円滑にするための規定を整備いたしますとともに、ソ連・東欧諸国等を含めました工業所有権制度の国際協調を進めるための規定を新しく加えたものでございます。この条約の批准に伴いまして、わが国は、従来のリスボンで改正されましたパリ条約にかえて、ストックホルムで改正されましたパリ条約に拘束されることになりますので、特許法、実用新案法、商標法及び不正競争防止法におきまして引用されておりますパリ条約の名称を改めまして、パリ条約の新たな規定が適用されるように措置したものでございます。
 改正の第五点は、特許料・登録料及び手数料の引き上げを行ったことでございます。
 現行の特許料及び登録料は、昭和四十六年に改定されたものでございますが、実際の水準は四十三年の水準になっております。それから七年ぐらいたっておりますので、物価水準がかなり違ってきております。そういう諸般の事情を考慮いたしまして、この際引き上げを行うことといたしました次第でございます。
 次に、出願の手数料につきましては、昭和四十六年に特許及び実用新案につきまして別途審査請求料を徴収することといたしまして、ある程度の調整を行っております。一方、商標及び意匠の出願手数料につきましては、昭和三十四年から据え置かれたままになっておりますので、そのような事情をも勘案いたしまして、それぞれ妥当な水準に引き上げることといたしております。
 以上が今回の改正案の趣旨及び要点につきまして御説明を申し上げた次第でございます。よろしくお願いいたします。
#6
○委員長(林田悠紀夫君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 本法案に対する質疑は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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