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#1
第075回国会 商工委員会 第8号
昭和五十年三月十八日(火曜日)
   午前十時十九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         林田悠紀夫君
    理 事
                楠  正俊君
                熊谷太三郎君
                小柳  勇君
                須藤 五郎君
    委 員
                小笠 公韶君
                菅野 儀作君
                吉武 恵市君
                阿具根 登君
                対馬 孝且君
                桑名 義治君
                中尾 辰義君
                藤井 恒男君
   政府委員
       公正取引委員会
       事務局長     熊田淳一郎君
       通商産業政務次
       官        嶋崎  均君
       特許庁長官    齋藤 英雄君
       特許庁特許技監  大谷幸太郎君
       特許庁総務部長  三枝 英夫君
       特許庁審査第一
       部長       土谷 直敏君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○藤井恒男君 本法の改正の趣旨が、特許法においては国際化ということが主要な眼目になり、物質特許制度及び多項制を採用するということになっておるわけで、なお、商標においてはあくまでも処理の迅速化ということを主眼にして本法が改正されるということになっておるわけです。
 そこで最初にお伺いいたしますが、特許庁から出ております「商標行政の現状と問題点」という資料並びにその他の付属書類によりますと、わが国の特許を初めとする商標に至るまでの出願件数、それは特許、実用新案、意匠、商標すべて網羅してきわめて出願件数が多く、しかも、歴年これが激増しておる状況にあるわけです。ところが一方、資料に記載されておりますように、イギリス、イタリア、スウェーデン、スペイン、ドイツ、フランス、アメリカ等先進諸外国における出願件数の状況は、昭和三十五年から四十七年に至るまでの間それほど変動を見ていない。わが国は、昭和三十五年から昭和四十七年までに、三十五年を一〇〇とするなら四六九もの商標に限っては出願件数がある。こういった特異な現象になっておるわけです。暦年の激増を示すだけじゃなく、出願件数もそれ自体が、諸外国と比べてけた違いに一けた多いという状況に置かれておるわけでございまして、この辺の諸外国とわが国の違い、それはどこに由来しておるのか。わが国におけるこの種の出願処理件数の能力の問題であるか、あるいは法体系による問題であるか、さらには、わが国における産業あるいは流通その他の経済機構の差異によるものであるか、この辺のところをひとつ長官の方からつまびらかにしていただきたいと思います。
#4
○政府委員(齋藤英雄君) ただいまお話がございましたように、わが国の特許、実用新案、意匠、商標、四つの制度と申しますか、法律についての出願は、諸外国に比べまして、いわゆる先進諸国と言われますものに比べまして非常に多いことはお話のとおりでございまして、私どももその対策に腐心をいたしておる次第でございます。ただ、制度が多少ずつ違う場合もございまして、一概には比較ができない点もございます。
 と申しますのは、たとえば特許、実用新案につきましては、実用新案制度のない国もございます。ある国もございます。それからそれ以外、たとえば商標につきましては、日本のように全部出願を審査しているところもありますし、あるいは公告をしまして異議申し立てがあるものだけを審査をするという、いわゆる異議審査制と申しております制度をとっておる国もありますし、というふうに制度が多少ずつ相違をいたしております点がありますので、一概に絶対数だけで比較をすることもできないかと思われるわけでございますが、それにいたしましても非常にわが国の出願は多いということは、お話のとおりでございまして、私ども実証的にいろいろこれを検討する、分析することは非常にむずかしいと思うのでございます。
 私どもが考えますところを申し上げますと、第一に、私どもの日本の国におきまして、少なくとも昭和三十年以降非常に経済成長も高うございましたし、かつ、産業の活動というのが非常に活発であったということは、これは事実であろうかと存じます。したがいまして、わが国におきましては、企業間の競争が非常に著しかったということは言えるかと思います。したがいまして、各社ともそれぞれで研究をいたしまして、ほかの会社と異なる製品、あるいはほかの会社よりももっといい製品をつくろうということでいろいろ研究をされまして、その結果があるいは特許の出願になり、あるいは実用新案の出願になりということで、非常に出願が多くなってくることではなかろうかと思われるわけでございます。
 それからなお、一時期言われておりましたように、日本のデザインというものは諸外国に比べて非常におくれておるということも、これはしばしば指摘をされておるところでございまして、その点から考えましても、いわゆる意匠というものにつきまして、その後日本の各界におきます認識は高まりまして、その結果非常に意匠の出願も多くなってきているということも言えるのではなかろうかと思います。
 それから、なお特許につきましては、ことに昭和三十年代、あるいは三十年代の後半から四十年代につきまして、いわゆる技術革新というものが行われました。したがいまして、それにつきまして非常に出願が多くなったということも言えるかと思いますが、ただ蛇足でございますけれども、その場合におきまして、わが国はやはり諸外国から技術導入をして、それに対するいわゆる改良発明と申しますか、そういうふうな発明がむしろ多かったようにも考えております。いずれにしましても、非常に技術革新の結果、出願が多かったということはこれは事実でございます。
 それから商標につきましては、これもいま申し上げましたように、非常に産業活動が活発化いたしますと同時に、国民生活の水準が向上いたしまして、各種の需要が多様化をいたしました結果、それに対応するためにいろいろ多種多様の商品が出てまいりました。その中には非常にライフサイクルの短い商品もございます。夏になりますと扇風機で「鈴虫」「松風」でございますとか、そういうふうなものが出まして、その次には別の名前のまた扇風機が出るというふうなことで、一例でございますがそういうふうなこともございまして、いわゆるライフサイクルが短くなっているような商品もしばしば出てまいります。ごく最近は消費者の節約ムードということで、多少はその点は違ってきておりますけれども、いっときにはそういうことが非常にあったのではなかろうかと思います。
 それと、なおまた私どもの制度的な問題もございまして、と申しますのは、一つはそういうふうな出願が多い結果、処理が追いつかないで未処理案件が非常に多くなってまいりまして、そのために急場に商標の権利化が間に合わないということで、あらかじめいわゆるストック商標と称するものをかなり出願せざるを得なかったというふうなこともあろうかと思いますし、また私どもの方で、これは審議会の小委員会で指摘をされましたけれども、商標の類否を判断をいたします、いわゆる類似の範囲の判断というものが、やや諸外国に比べては狭かったのではなかろうかという点も実は指摘をされております。
 それから日本の商標制度は、いわゆる出願のときには使用のエビデンスが要らないということになっております。したがいまして、使用強制、使用義務というものにつきましては、諸外国と比べてはややこの点は弱かったということも言えるのではなかろうかと思います。したがって、使用義務が弱いという結果、使用をするということがあらかじめ考えられない商標でも一出願をして権利を取るということがあるいは行われたのではあるまいかという点も考えられるわけであります。なお、日本の商標の出願手数料は二千円でございますが、この出願手数料が昭和三十三年以来であると思いますが、修正をされておりません。したがいまして、一般的に与えられた権利に比較して非常に低いのではないかということも言われておりまして、そういうことも問題になっておるのではなかろうかと思います。
 商標の点につきましては、実はアンケートを私の方で何回もとりまして検討いたしましたが、いま申し上げましたような点、制度的な面がやはり大体半分ぐらいの割合で回答が参っております。あとの半分は先ほど申し上げました需要の多様化に対応する取り扱い商品数の増加である、あるいはライフサイクルが短い、こういうふうなことを半分ぐらいの割合でお答えをいただいておる次第でございます。
#5
○藤井恒男君 先日も特許庁に作業の実態を私ども調査にお伺いしたわけでございますが、商標という点に限って言うなら、特許庁それ自体、それから商標制度の改正に関する答申、工業所有権審議会からも出ている文書等でも明らかなように、現在の状況をもってするなら、商標制度はその存在意義が問われるような危険な状況になっておる。出願件数が暦年増加する、出願処理が年を追って長期化する。したがって滞貨がふえる、滞貨がふえるから防衛的な意味でのストック商標を持つための商標登録がまた激増する。これはまさに悪循環であって、このままの状況で推移するなら商標制度が間尺に合わない、産業活動と機能しないという状況になって、法治国家としてのわが国の産業活動に多大の混乱を与えるということになりかねないと思うのです。そういった意味から、本法の改正ということに踏み切った点は私も理解するところでありますが、この審議会からの答申にもありますように、「制度改正及び運用改善を行うとしても、これを実際に運用するのは人間であるので、この点に十分な配慮を払い、審査官、審判官等の量的確保に努めるとともに、その質的向上を一層図るため研修の強化等の措置を講ずることが不可欠である。」というふうに結んであるわけです。
 私は、そういった点についてお伺いするわけだけど、確かにいままでの法それ自体の面での問題点があったといういまの長官の御説明でございますが、それはそれとして、法改正以前の問題として、たとえばこの商標なら商標の出願に当たるところの産業界の出願の自粛という、いわゆる行政指導、また産業界それ自体の規律の確立というような問題が私きわめて重要であろうと思うのです。そういう点を促すことによって、たとえばストックを一時期減じていくというような方途は講ぜられないものかどうか。お互いが商標というものを利用するわけだから、そういう前提に立って現在の特許庁のキャパシティーというものを考えるとき、もう少しぜい肉を落とそうというような努力がなされないものかどうか。私聞くところによれば、産業界の中では自粛申し合わせというものを行って、先日特許庁からいただいた資料などを見てみましても、その自粛を行った以降のデータなどによれば、出願件数は暦月これは減っておる。
 恐らくこの通産省のデータには、四十七年までしか印刷物にはならないのだけど、四十八年、四十九年の暦月の出願傾向というものを私先日特許庁からいただいたのです。この表によれば、四十八年は四十七年よりも、そして四十九年は四十八年よりも減少傾向をたどっておる。このことは法改正以前の問題としてこの出願する側の自粛によって行われておるもの、この辺のところは、特許庁としても十分注目すべきことじゃないだろうかというふうに思うのです。この辺についての状況をひとつお聞かせいただきたいのと、それから、これを処理する側の特許庁における処理のための努力、たとえば滞貨を減らすための努力、そして、審査をさらに合理化するための努力、こういった合理化努力というものがなされておるのかどうか。たとえが悪いかわからぬけど、これが民間産業であれば、いまの特許庁のような業務の状態であれば、早くこれは破産しておるわけで、事業としては成り立っていない。したがって、ここまでくるまでの間にもっと特許庁自体が、たとえば事務の機械化、あるいは標準作業動作その他また不必要な作業行程のカットなど、自主努力をする必要があったんではないだろうか、それがどのようになされておるのか。この辺のところをまずお聞きしたいと思う。
#6
○政府委員(齋藤英雄君) 最近の、ことに商標におきます出願の状況は先生のお話のとおりでございまして、重複いたしますが、四十九年の十二月には出願で一万九百三十七件、五十年の一月に入りましては一万一千六百九十七件、二月は一万一千二百五十三件。前年のたとえば二月は一万三千三百十一件でございましたから、それと比較いたしますと、四十八年度より四十九年度の方が出願が落ちついておるということはおっしゃるとおりでございます。これはお話もございましたように業界の皆様方の自粛というもの、これは非常にその方面に影響があるのではあるまいかと思っております。なお商標の出願は、これをやや長期的に見ますと、景気動向にかなり大きく左右をされておるわけでございまして、不況期としては昭和三十七年あるいは昭和四十年、昭和四十五年、四十六年、あの当時の出願の動向をその前後と比較をしてみますと、多少のズレはございますけれども実質GNPとの相関度がかなり高い傾向になっております。したがいまして、現在出願が減っておりますのは、業界の方で自粛をされることを、利どもも非常に賛成でございますし、かつそういうふうなお願いをしたこともございます。その結果であるとは思いますけれども、もう一つは景気動向によりまして、やはりかなり大きく左右をされておるのではあるまいかというふうな感じがいたすわけでございます。
 それから第二番目の、それでは特許庁において従来どういうふうな努力をしておるかという御質問でございますが、私どもまず定員の増加ということを、これは昭和三十五年当時に比べまして、現在はほぼ三倍以上の定員になっておりますが、というふうに努力をいたしてまいったわけでございます。しかしながら、この定員の増加によりまして、処理能力を際限なく向上させるということにつきましては、これはやはりおのずから限度もございますし、かつ国民経済的に見て、これが際限なく定員をふやすということがいいことであるかどうかということは、非常にやはり問題があろうかと存ずる次第でございます。したがいましてほかの手段でいろいろやる方法がないだろうかということを当然考えざるを得ないわけでございます。
 それで、私どもは商標の審査官の増員、これは量の問題でございますが、と同時に研修制度を強化をいたしまして、質の向上を図ることをいままで努めておりますし、今後もまたこれをやるつもりでございます。それから事務処理につきましては、いわゆるコンピューターを数年前から導入をいたしておりまして、これは出願から審査に行きまして、それから公報に出しまして、いいものは登録をするという一連のいわば流れ作業のような書類の流れがございますが、そのどこか一つ詰まりましてもこれは未処理案件としてたまるわけでございますので、まず私どもは出願の機械化ということを考えまして、これは数年前から出願関係にはコンピューターを導入をして、機械化の迅速な処理を図っております。先般ごらんをいただきましたような、あれは特許、実用新案の方だったかと思いますが、いわゆる自動起案と申しまして、一定の期間がきたら自動的に起案ができるような、そういうふうな処理、これは特実の方、特許、実用新案の方をごらんいただいたと思いますが、そういうふうなことで努力をいたしてまいったわけでございます。
 それからなお、出願が出ました場合には、こういう出願が出たという出願速報を関係の方面に配りまして重複の出願が出ないような、そういうふうな努力もいたしておるわけでございます。そういうふうないろいろなことをやっておりますが、今後といたしましては、やはり中心になります商標の検索自身、審査自身を機械検索でやろうということで、これを二年前から実は研究いたしておりますが、現在テスト中でございまして、来年の後半になりますと、ほぼ部分的ではございますけれども実用化されるのではあるまいかというふうに考えております。それ以外に登録関係につきましても、さらにコンピューター化を進めるように私どもは考えております。諸般の合理化努力を今後とも続けていきたいというふうに考えておる次第でございます。
#7
○藤井恒男君 私は非常に悲観的に物を見ておるわけですが、特許庁から出た書類をもとに見てみましても、仮に今度の法改正を行わず、現在の審査官の頭数で、現在の制度で推移したとするならば、あと五年後には滞貨がおよそ百五十万件になって、処理要件が、処理に要する期間がおよそ十年になるという試算が出ておるわけです。これはいまの状態がこのまま推移したとしたらそういうことになる。こうなればもう商標法というものは全く意味をなさない。特許庁はパンクするということになるわけで、そんなことになれば大変なことですが、仮にそれを除去して、諸外国に見られるように十五ヵ月に持っていこうというわけですから、天と地ほどの相違ですね。そのための法改正、ここに行われる法改正がいま言ったように十年を要し、百五十万件の滞貨を持つであろうと想定されるものを十五ヵ月に短縮するという珍手だと私は思う。その自信があるのかどうか、どれぐらいの見通しを持っておられるのか、その辺のところをお聞きしたいと思う。
#8
○政府委員(齋藤英雄君) 商標制度の現状につきましてはいまお話のございましたとおりでございますが、ごく最近の状況といたしまして、これも御指摘がございましたように、景気動向なりあるいは自粛ということで多少出願の数が減っておりますので、いまお話がございましたような状況にはそのままではならないかとは存じます。しかしながら私どもは、それは景気動向があるいは回復すればまた出願もふえるということも当然考えられますので、これに対しましてその対策を考えたわけでございます。それで、その対策を考えます場合に、実は商標の小委員会の中でもいろいろ御意見ございましたし、私どももいろいろ研究をいたしたわけでございますが、いろんな制度があります。たとえばドイツの制度でございますと、これはドイツは第二次大戦後、出願が非常にふえまして、審査官の質も集まらないということで、これは出願を審査をすることを放棄をいたしまして、全部公告をいたしまして、異議の出てきたものだけを審査をするという制度に切りかえました。いわゆる簡略審査制度ということをいたしました。
 それからアメリカにおきましては、これは使用義務というのが現在、日本の法律よりは非常にきついわけでございまして、出願をしますときに、使用しているという事実、証明書を出さなければ出願の審査をしないということでございますからして、その出願自体が使用の事実によってチェックをされているという事態もございます。そういうふうないろいろな制度がございますので、これらを私どもはいろいろ検討いたしました。しかしながら、現在の実情を考えますと、こういう制度につきましてはそれぞれいろいろ難点がございますので、それを採用することを私どもはやめまして、それにかわり、あるいはそれと同じような効果を持ついわゆる使用義務の強化という現在の制度を取り入れたらいかがであろうかというふうに考えたわけでございます。
 これによりまして、非常に大ざっぱに申し上げますと、私どもは現在の景気動向で落ちておる分、あるいは自粛して落ちておる分を一応査証しまして、平常の状態と申しますか、従来の延長線の出願数があると仮定をいたしました場合において、その数のおおむね三〇%ぐらいをこの制度改正によりまして減少するということを考えておるわけでございます。もちろん、これは先行きの問題でございますので、いろいろその辺の変化はあろうかと思いますが、各種の調査をいたしました結果、大体出願の減少効果が、更新登録出願のチェックでありますとか、不使用商標の不使用取り消し審判の挙証責任の転換でありますとか、あるいは料金改定でありますとか、あるいは出願時の業務請求でありますとか、そういうものを全部一応足しまして、おおむね三割ぐらいの出願減になるんじゃないかということを考えております。
 なお、これ以外に先ほど申し上げましたいわゆる類似範囲の拡大ということも、これは運用面において私どもは現在検討中でございます。そういうふうな効果もあろうかと思います。それがそれぞれ時期的に多少ずつずれて効果が出てまいります関係上、大体五十一年以降で出願としては二五%から二〇%程度ぐらいは平年度化する場合には減るというふうに考えております。それで一応出願の伸びと審査の能力の向上、と申しますのは、これはコンピューターで機械検索をやる場合において処理能力がふえるということでございますが、そういうことを双方勘案いたしまして、大体五年後には一年二、三ヵ月ぐらい、場合によりましては、状況いかんによりましてはもう少し短くなるというふうな計算をいたしておるわけでございます。
#9
○藤井恒男君 この昭和四十五年ですね、昭和四十五年に平均要処理期間というのが二年十ヵ月とここだけぽこっと落ちておるというか、短縮しておるわけですね。これは何か特別の商標を用いたものかどうか。どうですか、四十五年。
#10
○政府委員(齋藤英雄君) ただいまお話がございましたように、昭和四十五年は平均の要処理期間が二年十ヵ月になっておりまして、その前の四十四年が三年三ヵ月でございますからして、この期間は非常に短くなっております。詳しくこれの分析をいたしませんと出てまいりませんですが、処理の件数を拝見いたしますと、四十四年度がおおむね七万件で、四十五年度が九万五千件でございますから、このときにかなり処理の件数が上がっておるという結果であろうかと思います。
 なお、これは出願の伸びでございますけれども四十五年はいわゆる景気が悪くなりつつある年でございました。そういう関係で、四十四年の出願の伸びが二五・三%の伸びでございましたのに比べまして、四十五年は一三・六%でございますからして、ここではちょっと伸び率自身はやや少し縮まったということもあろうかと思います。そういうふうないろいろなことを総合しまして、平均の要処理期間が多少この点で縮まっておるというところではなかろうかと存ずる次第でございます。
#11
○藤井恒男君 これは別に審査の方法の考案だとか、そういった処理の短縮化という努力によるものじゃなく、自然現象として減っておるというだけのことですね。
#12
○政府委員(齋藤英雄君) 毎年合理化の努力はいたしておりますが、特にこの年だけ特別に何か施策を講じたということは、私聞いておりません。
#13
○藤井恒男君 それじゃ、話題を少し変えて、特許法の内容について御質問したいと思うわけです。
 一つは、裁定制度の強化ということについてでございますが、法案の九十二条第四項で、利用発明ケースの逆裁定の請求期間を答弁書提出期間に限っているわけですけど、この期間は、答申書にある手続のところで記載しておる期間と承知してよろしいですか。
#14
○政府委員(齋藤英雄君) ただいまお尋ねがございました九十二条の改正は、いわゆる従来後願者から先願者に対しまして実施権の裁定の請求ができるということになっておりましたものを、今回、先願者から後願者に対しましても実施権の裁定を請求することができるという規定の一環であろうかと存じます。その場合におきまして、後になりましてから、非常に長い期間たってから先願者からその請求が出るということになりますと、裁定自身が、手続が非常に遅延をするというふうに考えられますので、一定の期間を限ったわけでございます。したがいまして、いま御質問がございましたのは、裁定制度の運用要領試案の中にございます、期間を指定して答弁書の提出を求めるという、たとえば国内では四十日、外国では三ヵ月ということをお示しであろうかと存じますが、そのとおりでございます。
#15
○藤井恒男君 結局九十二条の第四項で、先ほども申したように、利用発明ケースの逆裁定の請求期間を答弁書提出期間に限っている。それは国内の場合では四十日であるということになると、この期間に利用発明の価値判断を下すというケースはむしろまれではないかというふうに思われるわけですが、この期間の制限というのは、四十日というふうにきちっとどうしても限らなければならないものかどうか。むしろ答弁書を提出する側に立てば、期間はある程度弾力性を持たしてもらわなければ、的確な答弁書の提出ができないというような希望もあるわけなんです。この辺のところについて、まさにこれは運用の問題だけど、どのように今後なさるおつもりか。どうしても四十日というのは、一日もこれは曲げることができないんだという性質のものであるか否か、お聞きしたいと思います。
#16
○政府委員(齋藤英雄君) 先ほど申し上げましたように、この期間が非常に長い場合には、裁定手続自身が非常に遅延をいたしまして、それぞれ請求者、被請求者双方に不便な点があろうかと存じますので、一定のやはり期間内にすることは非常に必要ではなかろうかと存じます。
 ただ、その裁定を出します前の前提といたしまして、双方の先願者、後願者それぞれいろいろ協議をいたしまして、協議をしてまとまらなかった結果、特許庁長官に裁定申請が出てくるわけでございますので、その前にいろいろな何と申しますか、特許権あるいはその実施権の価値でありますとか、どのくらいの対価が適当だとそれぞれ考えておるかとか、支払いの条件でありますとか、そういういろんなものにつきましては双方協議のうちに大体見当がついて、最後にどうしてもまとまらないという場合に特許庁長官に裁定申請がありますので、その期間がそれほど長く、その前に協議をしております関係上、それほど長い必要はなかろうかと存じております。しかしながら、この期間は、四十日というのは指定をするわけでございますので、これはあくまで運用でございます。したがいまして、その状況によりましては、いま申し上げましたような原則なり精神を考えました上で、四十日が一日でも過ぎたらだめだと、そういうものではないような運用にいたしたいというふうに考えております。
#17
○藤井恒男君 いま答弁にありましたように、利用発明の価値判断を下すということはなかなか内容そのものによりけりだけど、非常に複雑な場合などは、さらに日数を要する場合もあり得るわけですから、長官の御答弁のように、運用の面においてしかるべき措置をとっていただきたいと思います。
 それから多項制の採用についてですが、法律的には、この多項制の問題についてはきちっと解明されておるというふうに特許庁の方ではお考えのようでございますが、これを読む側から見ると、非常に混同しておるように思えてならないわけです。したがって、その辺についてお伺いしますので、よろしく御答弁願いたいと思うわけです。
 まず最初に、この多項制採用それ自体は、特許制度というものが国際化につながるものであって、これを採用することについては私も異論がないし、時宜を得たものであろうというふうに思うわけですが、この三十六条の第五項、一発明多項と、三十八条の一号から三号、これは併合出願、従来から書かれておる併合出願という条項になるわけですが、この一発明多項と併合出願と分離した。分離した概念として、多項制を導入するということは実務上混乱を招く懸念はないのかどうか。この一発明多項と併願出願というように二つの概念に分離して多項制をとらえて運用しておるという国は外国にはないというふうに私は聞いておる。長官の方では、元来わが国では単項制であった、そしてそのもとにおける長い年月を経た集積であるから、したがって、勢いわが国としてはこういった併用の形をとるんだというようなお話もあったように私聞いておるわけなんだけど、この辺実務の上においてもう少しすっきりしないものかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思うんです。
#18
○政府委員(齋藤英雄君) お話がございましたように、三十六条の五項にただし書きを加えまして、「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」、この規定で俗に言っておりますいわゆる多項制に移行しよう、こういうことでございますが、この三十六条に言っております特許を受けようとする者は、こういうふうな願書を特許庁長官に提出しなければいけないという、その願書の中の請求範囲の書き方の改正ということに相なっております。それで、この願書を出します場合に、日本の特許法におきましては一発明につきまして一つの願書を出すというのが原則でございます。後で三十八条の関係を申し上げますが、それがまず原則でございます。したがいまして、一発明一出願というのが大原則になっております。その一発明というものは特許法の二条によりまして定義をいたしております。
 それから、この発明というものの俗に言われます単位と言いますか、われわれカテゴリーと言っておりますが、そういうものが日本の特許法では物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明という三つにカテゴリーが分かれております。それもほかの国の法律にそういう定義をしたところは私どもの記憶ではないわけでございます。そういうふうに発明というもの、その発明の単位というものがこれとこれというふうにはっきり定義をしておりまして、その定義のもとに出願の様式なりそれ以外の審査なりというものが行われておりますと同時に、権利自身も一発明につきまして一つの権利ということで構成をされておるのが日本の特許法でございます。
 したがいまして三十六条の五項の「発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」という意味でございますけれども、これは一発明につきまして、まず請求範囲に発明の構成に欠くことができない事項を記載をいたしまして、そこにただし書きがついておるわけですが、書きまして、それに「発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」ということでございます。そうしますと、その発明でございますから、前に書きました発明の構成のその発明の実施態様でございますから、したがいまして、その請求範囲に書いてありますその範囲は一発明の範囲でございます。したがいまして俗に言います、その第一項に書きます発明の必須要件と同じその範囲におきます発明の実施態様を二項、実施態様が三つあれば二、三、四項というふうに記載をするわけでございます。したがいまして三十六条に関します限りは、多項になりましても、その多項のグループというものはあくまでもワングループでございます。ワングループ、一発明の範囲内のものでございます。
 ただ、その一発明の範囲内のものでございますが、そうしますと、それでは実施態様というものはどういうものかということになろうかと思いますが、要するに実施態様と申しますのは、そのいまの第一項で書きます一般的なものを引用をいたしまして、その発明の、一発明の範囲内ではございますが、第二項には第一項を引用しまして、その発明の構成に欠くことができない事項に、その全部または一部を限定した技術的事項を加えるというかっこうで実施態様を書くというのが第二項目に書く実施態様で、ございます。それで、二項、三項以下いずれも実施態様でございます。それが一発明でございます。で、一発明をかりにワングループとしますと、そのワングループである一発明と、三十八条にあります相互に関係のある、これは別発明であります。別発明でありますが、たとえば物の発明と、それを生産する方法の発明というふうな、そういう関係がありますものだけにつきましては、別発明であってもこれは一出願でできるというだけでございまして、要するに、発明としては別々のものがあわせて一つの願書でこれは出せますよというのが三十八条でございます。したがいまして、それぞれの一発明に多項がついておりますから、三十八条の場合には、そのツーグループなりスリーグループなり発明の違った発明がこうありまして、多項にそれぞれなっておるわけでございまして、あるいは場合によっては、それが実施態様を書く必要がなければあるものは単項になっているかもしれません。そういうふうなかっこうになるわけでございます。
 いま申し上げましたのが、今回私どもが改正しようと思っておりますその内容でございますが、いろいろ考え方がございまして、そうじゃなくて、日本のように物の発明なり一方法の発明なり、生産方法の発明という、そういうふうに発明のカテゴリー別にしないで、それを一つの技術的思想の総括と言いますか、一般的な技術的思想と言いますか、それでもって包含できるものは一発明と考えたらいいじゃないかと。そうすれば物なり方法なり何とかというものを一つにまとめたそれを一発明とすれば、いまのように併合出願というのは、それは併合の関係にある両方の発明というのは一発明というふうに考えて、併合出願をやめてしまって、三十六条のような一発明一出願の原則でいけるんじゃないかというふうな考え方もないわけではございません。
 しかしながら、もしそれを行います場合には、諸外国で私どもの例をいろいろ二年半かかりまして検討いたしましたが、外国にはその発明というものに対しますはっきりした単位あるいは概念と申しますか、それが必ずしもはっきりいたしておりませんで、これは判例によりまして逐次決まってきております。ある場合には方法だけで一発明として許されている場合もありますし、ある場合は、もっとそれを広いものも含めたもので許されている場合もありますし、簡単に言いますと、俗な言葉で恐縮でございますが、伸縮自在になっております。それで日本のように法律概念的にきっちり論理的に決められた場合には、外国、たとえばアメリカならアメリカのそういう伸縮自在というのは非常に言い過ぎかもしれませんが、そういう考え方は日本の法制にはなじまないのでございます。
 もしそれをとる場合には、日本の現在われわれがやっておりますいわゆる運用なり、あるいは裁判所の判決なり何なりを全部変えませんとそれはできないわけでございます。基本的な特許法の改正を要するわけでございます。そういうふうなことを考えまして、しかしながら、もしそれがどうしても必要である場合には、私どもはそれを考えざるを得ないわけでございますが、いま御説明申し上げましたような多項制で国際的にも十分通用をするものであると同時に、出願人あるいは特許庁内部の審査をする場合において、それとほとんど同様の効果を上げ得るというふうに判断をいたしましたので、現在の制度を私どもは採用したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
#19
○藤井恒男君 この三十六条がいわゆる一発明の多項制であって、三十八条が一発明一出願というものの併合であるというこの分離した法文の趣旨については、もうよくわかるんです。御説明のとおりだと思うんです。ただ運用の問題で、特に発明のカテゴリーが同一の場合に、一発明多項と併合出願とをどう区別して運用するのか、この両者の運用で明確に区別しようとするなら、せっかく今度法改正で、多項制への移行ということで三十六条第五項にただし書きが追加されたわけだけど、この多項制採用のメリットが失われるんじゃないか。発明の概念がわが国と諸外国で違う、そして、違う概念のもとに諸外国では多項制を現に採用してきておるし、わが国は単項制であったという、その違いもわかるわけです。しかし、諸外国とレベルをそろえていこうという趣旨に基づいて多項制を採用していこうとするなら、この多項制というものを諸外国と同じような、同一という概念までは持っていけぬとしても、前向きでとらえて三十六条と三十八条というものを一体化する、そして、料金体系も請求範囲数にスライドするというような方法も考えられると思うわけです。特にこの一カテゴリーの発明という場合には、私は、非常にこの運用上で混乱するんじゃないだろうかという危惧を持つんですが、重ねてその辺のところを解明していただきたいと思います。
#20
○政府委員(齋藤英雄君) ただいまお話がございました、特に三十八条のただし書きの一号の関係の御質問であろうかと思います。確かに一号は非常にむずかしい表現になっておりまして、同一カテゴリーのものにつきまして三十八条一号で多少それが――まあ言葉としては少しこう食い違っておるような、そういうものに関しての実は規定でございます。この一号は、しかしながら、それぞれ前の特定発明と言っておりますものとそれ以外の発明とは、あくまでもこれは別発明でございまして、同一発明ではないわけでございます。このところ、実務に当たりましていろいろその辺の混乱があろうかと思いますが、いま従来と一発明の概念は全く変わっておりません。したがいまして、まずその方面の混乱はないのではないかと思います。
 それから二番目に、多項になりました場合のその実施態様というものにつきまして、これは実施態様を書く場合に、いまのたとえば物の発明と用途発明との関係であるとかというものにつきましては、それが現在、物の発明と用途発明とは別発明でございますけれども、それが実施態様にまぎらわしいようなことになりゃしないかというふうなことも懸念されないわけではございません。したがいまして、その辺につきましては、私どももこれは運用要領なり、その他いろいろ各方面にもちろん十分御説明もいたさなければなりませんしそういう方向でその内容をもっと明瞭にいたしたいと存じております。事柄によりましては、ケース・バイ・ケースでいろいろ実際的に問題が出てくる場合も、当然、新しい制度でございますからある場合もあろうかと思います。私どもその辺いろんな角度から現在運用要領も考えております。運用要領によりこれを、私いま申し上げましたことをもっとブレークダウンして、あるいは実施例等、実際の例等も加えまして、わかりやすい運用要領もつくりまして、それを各方面にPRを大いにしたい、そういうことによりまして、制度が新しく始まります場合のいわゆる移行期と申しますか、そういうものに対処いたしたいというふうに考えております。
#21
○藤井恒男君 この三十六条の実施態様というのが、この多項制採用と同時に非常に重要な問題になるわけですが、この実施態様というのは、いまのお話ですと、運用の面で、事前にこの実施態様の説明等を行って遺憾なきを期したいというお話ですが、この実施態様それ自体を法文上に明確にしていくというようなことは全く考えられないことかどうかですね。
 それからもう一つ、その三十六条の第六項は四十九条の拒絶査定の根拠条文になっておるわけですが、「特許請求の範囲の記載は、通商産業省令で定めるところにより、」というふうになっておりますね。この件についても、この実体的事項を省令で定めるということについては、いささか多項制というものを目玉として取り上げたときに問題があるのじゃないだろうかというふうにも思われるわけなんで、その辺実務としてどういうふうに今後スケジュール的に行っていくのか、聞かしてもらいたいと思う。
#22
○政府委員(齋藤英雄君) 第一のお尋ねがございました「その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」というこのただし書きにつきまして、私ども、従来大正十年法にありました表現を使いましただけに、各方面でいろいろそれに対して御議論があることも承知をいたしております。したがいまして、その実施態様自身というものにつきましてのまあ概念といいますか、そういうものを一義的にといいますか、規定をすることはなかなかむずかしい点も表現上あろうかと思いますが、その点につきまして、適当な表現がもし私どもの方でも見つかり、あるいは各方面の御意見もお聞きいたしますし、あるいは委員会の御議論におきまして適当な表現、より適切な表現がございますれば、より適切な表現にすることにつきましては、私どもやぶさかではございません。
 それから、第二番目の省令でございますれども、六項の「通商産業省令で定めるところにより、しなければならない。」ということでございますが、これは先ほどお話がございましたように、四十九条の拒絶理由に今回はいたしてあります。それでこの省令の内容は、実はその「特許請求の範囲の記載は、通商産業省令で定めるところにより、しなければならない。」という規定に相なっておりまして、特許請求の範囲の記載について通商産業省令で定めるということでございます。したがいまして、この辺は非常に明確とまでは申せませんけれども、主としてその記載の方法を通商産業省令で決めるということでございますので、私どもは、その記載が非常に不備な場合は、現行法におきましても、たとえば現行法で方式違背というのがございまして、特許法十七条第二項第二号というのがございますが、そういうところで方式違背の場合にはこれは補正命令を出しまして、その補正で聞かなければ十八条で出願無効になるという規定がございます。そういうふうに、その方式自身は実はこれは委任省令ではありませんが、実施省令でございますが、特許法施行規則という実施省令で、たとえば日本語で書かなければいけないとか、そういうことでしなければいけないというのはいわゆる実施省令で、施行規則で書いてあります。その施行規則違反の場合には、方式違背ということで補正命令を出しまして、それでその補正に応じない場合には十八条で出願無効になるわけでございまして、出願はないことになってしまうわけでございます。そういうふうなことを考えますと、今回のこの「記載は、通商産業省令で定めるところにより、」という委任の方法は、それと比較いたしましても省令に大幅の委任をしたということにはならないのではあるまいかというふうに考えるわけでございます。
 なお、蛇足でございますけれども、各国の特許法令、これは必ずしも比較にはなりません。制度が違いますから比較にはなりませんけれども、大体こういうふうな請求範囲の書き方なり多項制のこの書き方自身につきましても、実は省令という制度で決めておるものが多うございまして、省令というものでほとんど決めております。
 それからなお、われわれが今後数年後に入ろうと思っておりますいわゆる特許協力条約――PCTでございますが、PCTの規定におきましてもほとんど、いま私どもが御説明申し上げております内容はいわゆるルールと申しまして、条文の本文ではございませんで、その付属規則と申しますか、付属規則に決めてあります。そういう次第でございますので、国際的に見ましても、記載を省令で決めるということにつきましては、私どもそれほど大幅な委任を省令にしたというふうには考えていない次第でございます。
#23
○藤井恒男君 それでは、時間の関係もありますので、商標の方に入りたいと思うのですが、不使用商標の取り消しに当たって挙証責任が商標権者に転換されることになるわけですが、いわゆる使用証明というものを今度は出すことになるわけですね。この使用証明というものはどういう形式になるのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
#24
○政府委員(齋藤英雄君) 今回は商標の使用義務を強化いたしまして、使用の証明書を出させることになるわけでございますが、今回の使用義務の強化は、御案内のように二つございまして、一つは、不使用――使っていない商標を取り消すという審判請求をするという、その場合における挙証責任の転換ということが一つでございます。この場合は審判でございますからして、商標権者、いわゆる被請求人である商標権者がどういうかっこうで立証するかということは、商標権者の随意でございまして、その出しました証拠によりまして審判官が確かにこれは立証をされておるという、その心証が形成されればよろしいのでございまして、形式あるいはその内容につきましては何ら規定をいたしてもおりませんし、自由でございます。
 それから、蛇足でございますが、第二番目の更新登録で、十年たちました場合に、使用しているかどうかをチェックをいたしますが、それは職権でチェックを、審査をするわけでございまして、職権で審査いたします場合には、当然これは審査促進ということを私どもは考えました制度でございますために、一定の期間内に定型的に処理をされることが望ましいわけでございまして、そのためにこれは書面審理というふうに考えております。書面審理の場合に、通常の更新登録出願の願書とともに、その証明をすべき、たとえば写真でございますとか、カタログでございますとか、あるいは場合によりましては広告でございますとか、そういう使用をしておりますという事実を証するものを添えて出していただければ結構であろう、こういうふうに考えております。
#25
○藤井恒男君 これは意地悪な質問かもわからぬけれども、従来と違って十年ごとの更新の折に、いまお話にありましたような、書面を整えなければならないということになってくるわけで、そのことが滞貨を減少さす道だということですが、そうなると、この更新登録をするより、新たに申請して出願すればいいじゃないか、その方が便であるというような発想が成り立たないかどうか。
#26
○政府委員(齋藤英雄君) 確かにお話ございましたように、更新登録をいたしました場合の方が、登録料が倍になりますから高くなります。したがいまして、新願をした方が二分の一の登録料で済むじゃないかというふうなことを考えられるかと存じます。しかしながら、この辺は出願者の随意でございますけれども、非常に危険があるわけでございます。と申しますのは、商標制度は言うまでもなく先願主義でございますからして、もしその間に、ペンディングになっております出願で同一のものがあり、あるいは類似のものがありました場合には、それが切れた途端に出願をいたしましても、その前にペンディングになっている審査中の同一または類似の商標がありますと、更新して新願しますと、それは後願でございますから当然拒絶になります。そういう非常に大きなリスクがあります。そのリスクを覚悟の上で出される場合には、それはそういう方法もあろうかと思います。
#27
○藤井恒男君 そういった意味で、この周知標章を保護するというような意味から、翻って出願件数の多発を招くのではないだろうかというような危惧も一部にあるわけなんです。その辺のところをどういうふうにお考えになるか。あるいは自己の商標を、いま言ったような形で防衛するということから、この特許庁から出ておる文書の中に、ブローカー出願の増加の傾向等について危惧する向きもあるんだけど、実態的にそれはどういうふうに推移すると見ておられるか。
   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
#28
○政府委員(齋藤英雄君) いまお話がございましたように、更新登録出願をしないで新願に回るのではないだろうかというふうな議論も、私ども審議会の小委員会で議論しておりますうちに、多少そういうふうな意見もございました。しかしながら、いま申し上げましたような、非常な危険があるということが一つと、それから十年間使わなかったということでございますからして、これにつきましては、十年間あるいは十年たったその時点における過去三年間使わなかったということでございますからして、大体その商標は、当該その方にとりましてはほとんど意味のないものであるというふうなことが考えられます。それで、そういうようなことを総合しまして、私どもの方はアンケート調査等を二回くらいいたしまして、やはりこの制度を採用いたしますことによりまして、全体的に差し引き数%の出願の減になるというふうに結果が出ております。そういうことを総合いたしまして、私どもの方はこの制度をとりますことによりまして、出願が全般的に減少するのではあるまいかというふうに考えておる次第でございます。
 それから第二点目の、商標のブローカーの問題でございますけれども、これは私ども第一に考えておりますのは、現在省令でやろうかと思っておりますが、商標を出願をします人の業務を願書に記載をさせまして、その業務と指定商品とを比較をいたしまして、その指定商品を当該業務によっては使用する蓋然性がないと考えた場合には、それを拒絶査定をするということを考えておりまして、これは答申の中にもそれが指摘をされております。そういうことによりまして、まあ真正でない出願をされる場合は別でございますが、もし真正な出願をされます場合には、その業務と指定商品とは結びつきませんから、当然これは拒絶査定になるというふうに考えております。それからなお、非常にいままで数年間使っておられまして、あるいはごく短期間でやめられたというふうな場合で非常に著名な商標、あるいは周知標章になりました場合には、これは答録がない場合でもその商標につきましては、後願者は商標法の四条によりまして拒絶査定になります。したがいまして、周知標章あるいは著名商標につきましては、登録がない場合でもそれはそれなりに保護される、そういうふうな法体系になっております。
  〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
#29
○藤井恒男君 このいまおっしゃった出願する人の業務の蓋然性の問題について記載せしめるということになると、それだけまた審査が複雑になるということ、あるいは挙証責任が転換されるということになるわけだから、悪く言えばいまのブローカー的な形での、何といいますか、裏での行為が頻発するというようなことも、悪く解釈すれば出てくるわけで、この辺のところは十分意を注いでいかなければせっかくの法の改正の趣旨が逆に作用して、審査事項は多くなる、また、その意味での遅滞を来すということになりかねない。この辺は十分注意していただきたいと思うわけです。
 それから、何といっても滞貨が多いということでございますし、それを減らしたいということだけど、登録を抹消する場合の放棄代は一件について五百円というのが現在かかっておるので、これは五百円というのは金額的には少ないけど、先ほどもちょっと私申したように、業界側で自粛すればがたっと何万件か出願が減るわけですね。したがって、業界に対する行政指導も必要だし、いま持っておる不使用登録を落とせ、また、それに協力すべきであるという趣旨の申し出を当然しなければいかぬわけだけど、その場合に登録を抹消すると五百円ずつ持ってこいよというのは、これはいかにもおかしいと思うのです。
 繊維産業なんかの場合には、過剰設備を廃棄すれば十八年間無利子の金を貸すというような制度すらあるわけなんだから、だから、奨励金を出せとまでは私は言いませんけど、奨励金を出したっておかしくないのですよ、これは現実にいまの状況を見ると、奨励金を出してでも減らしてくれということもおかしくないのだけど、せめて五百円は取らぬと。運用の面で所官庁が違うようです。大蔵省だということだけど、何か特許庁でその辺の便法を考えて、いまの五十万件の荷を仮に半分にでもすれば、ずいぶん目の前が開けてくるわけでしょう、その辺を考えるべきだと私思うのだけど、どうでしょう。
#30
○政府委員(齋藤英雄君) お説のとおり、登録を抹消いたします場合には、登録免許税法によりまして一件につき五百円の税金がかかるわけでございます。それで実は私どもの方も、これは関係の業界といろいろお話をいたしますときに、そういう御要望も少々出てまいりましたし、また、その御要望は現在の状況にかんがみますと、まことに無理からぬことじゃないかと実は思っておりました。それで、ただ、これはお話ございましたように税金でございます。
 それで、その方面で便宜的にできるかできないかということも実は部内でかなり検討をいたしました。しかしながら、これはまあいわば登録免許税を抹消する場合の、いわゆる一種の手数料的なものであるからという主張がございまして、この抹消手続だけを免除するのは非常にむずかしいという議論が一方で出てまいりました。これは当庁内で出たわけではございませんで、ほかのところから出てまいりました。したがいまして、現在そのことはそのままになっております。おりますが、このことにつきましては、私ども御指摘の点につきまして、十分これは考えなければいけないのではあるまいかとも考えます。したがいまして、今回の法律改正には間に合いません結果に相なりましたけれども、この点は私どもも前向きの方向で検討いたしたいというふうに考えております。
#31
○藤井恒男君 これは次官、私、大臣の質問は、きょう大臣お見えじゃないから留保するわけだけど、それは委員長よろしいわけですね。次官にお願いしておきますが、いまの問題ですね、これは大蔵省の管轄の問題で、やはり政治的な判断を必要とするものだと思うのです。だから法改正ということじゃなく、何らかの便法を講じて、とにかく、いまある滞貨というものを減らすというための特別な措置を特許庁で考えるべきだ。たとえば前向きのことでありますが、機械検索機を導入するということになれば、これはもう何億もの金もかかることだし、また、そのことは必要なことなんだけど、しかし、それは機械検索でこれからの出願処理を縮小し、短期間にやろうということと同時に、いまの滞貨を減らすということはそれと同じぐらいウェートとして大事なことなんです。五百円取られたっていいわけだけど、それ以外に奨励的な方法を行うということだって考えられないわけじゃない。したがって、その辺のところを一度よく大臣とも、次官、相談しておいていただきたい。私は改めてこの点については御質問申し上げたいと思う。よろしいですか。
#32
○政府委員(嶋崎均君) ただいま藤井委員からお話がありました商標出願の処理を促進するという意味合いから、商標登録の抹消登録料、現在五百円かかっているのですけれども、これを免除して、そういうことを背景に滞貨の処理を一歩進めることを考えていったらどうかという御趣旨。確かに登録手数料というものは、行政の手数料的性格のものであるという議論はありまするけれども、私、まだ十分その問題詰めておりません。仮にそのことが非常に抹消することの支障になる、あるいは少なくも奨励する場合にマイナス要件になるというようなことであるならば、一定の時期を限ってこれを免除するというような方向も一つの考えられるあり方であるというふうに、私も御議論を聞いていてそのとおりだと思うんです。したがってうちの中でもよく相談をし、また、関係官庁ともよく調整をして、できる限り御趣旨の方向で、少なくとも滞貨処理に支障があるというような事態がないように努力をしてみたい、大臣とも協議をして、相談をしてみたいというこうに思っておる次第でございます。
#33
○藤井恒男君 その面はひとつよろしくお願いいたします。
 それから、その次に、この商標法改正法案中のこの準備行為について、五十条関係についてお尋ねしたいと思うんですが、この商標法第五十条の規定が改正されて、不使用取り消し審判の制度が活用されるというようになるわけです。これは結構なことなんですけど、かといって、このことが行き過ぎにならぬようにする必要があると私思うんです。そこで、登録商標を三年間使用していないと言っても、三年間まるっきり何もしていない場合もあれば、その間に使用はしていないが、使用する準備をしている場合もある。たとえば、商標を使用する予定の商品の市場の調査中である。薬などの場合は、臨床試験をしている最中であるとか、あるいは厚生省に製造許可申請中であるとか、あるいは正式に商品としてまだ流通過程に乗っていない、そういった使用準備中のものは、これを今度の法に照らして取り消すということだけが私は能ではないと思う。本当に使用準備の段階に入っていることが証明されるなら、この法案五十条の第二項の「正当な理由」、一番末尾にある「正当な理由」というところに該当させて取り消しをさせないというふうにするのも、私は現在の産業界の実態に合致するものじゃないかというふうに思うのですが、この辺、二点についてどのようにお考えですか。
#34
○政府委員(齋藤英雄君) 商標法のたてまえは御案内のとおりでございまして、商標の単なるマークを保護するということよりも、むしろその商標を使用することによりまして、蓄積されたその企業なりあるいは個人なりの営業上の信用がその商標に加担をいたしまして、それと一体になっている、それを保護するのが商標法の本来の目的でございます。したがいまして、当然その裏返して申し上げます商標というのは、使用されるということが前提に相なっておるわけでございます。したがって、使用していないという場合には、やはりこれは本来なら、商標は、仮死状態にある商標とも称すべきものだろうと思います。したがいまして、そういう観点から考えました場合には、使用取り消し審判におきますそれぞれの問題につきましては、そういう観点から一応判断をせざるを得ないというふうに考えております。
 それでなお、正当理由をどの範囲に認めるかということにつきましては、私どもの方は当該商標権者の責めに帰するべからざるような事態でその商標が使われていないというふうな場合には、これはケース・バイ・ケースで審判官が正当な理由があるというふうに判断することになろうかと存じます。したがいまして、現在の御質問でございますが、私どもその辺そういうふうな精神と申しますか、そういうふうな方針でケース・バイ・ケースで判断をせざるを得ないというふうに考えております。
#35
○藤井恒男君 この「正当な理由」の範囲がどういうわけか、広くきわめて安意な言葉、すなわち、天変地変であるというようなことで流布されておる。それがゆえにいま私が申したような危惧がずっと広がっておるわけで、いま長官、弾力的な運用をするというふうにおっしゃったんで、その辺のところは十分考えていただけると思うわけですが、一つの例として、先ほど申した点に付随するのだけれども、医薬品なんかの場合は、準備的にどういうことがあるかと言えば、まず最初に、厚生省に、他省に製造承認を申請しなきゃならぬ。それから、製造承認の後であってもすぐに製品が出てくるわけじゃないので、承認があってから初めて製品をつくる。この間は商標の使用ができない。それから、医療用の医薬品の多くは健康保険の対象どなるものですから、製造承認後にいわゆる薬価基準に登載されなければならない。そうすると、登載されて初めて製品が発売されることになるわけだけど、厚生省では年に一回しか新規登載をしない。
 こうなってくると、本人の責めというよりも、厚生省がいま言うように、薬品の場合だと健康保険の対象になるように薬価基準に載せなければならない。そのためには年に一回しか新規登載しないのだ。こうなってくると、不使用ということについても、いま言うように、天変地変以外は、三年間使っていなかったらてんでそれはアウトだということになると、「正当な理由」ということで全く問題が別な角度で論ぜられることになる。したがって、ことに医薬品なんかの場合には、いまの法改正が大きなる問題になってくる憂いがあるわけです。したがって、いまのような厚生省管轄の問題であるというような状況のものであれば、当然私は「正当な理由」に準用されるものであるというふうに思うのですが、それでよろしいわけですね。
#36
○政府委員(齋藤英雄君) いまのお話しの点につきまして基本的な考え方は、先ほどの御質問にお答えを申し上げたとおりでございます。その場合に、更新登録出願の場合は、言うまでもなく存続期間が十年間ございます。十年間の一番最後の三年間の問題でございますので、その辺につきましていま申し上げましたそういうことも考えた上で、自分自身の責任でない問題でもしそういう事態がありました場合には、御趣旨のとおりであろうかと思います。しかしながら、十年のうちの最後の三年間でございますからして、その商標権は設定の登録がありましてからその前に七年間あるわけでございますので、その七年間の間にいまお話がございましたような厚生省の手続がとれるものかとれないものか、どういうふうになるものか、その辺私どもも厚生省ではございませんので、つまびらかには存じませんけれども、そういうふうな事情もやはり考慮せざるを得ないというふうにも考えております。
#37
○藤井恒男君 それからもう一つの問題は、いまはそのものずばりの準備問題だけど、その前の段階ですね、その前の段階でたとえば新製品の商標を決定する、それは少なくとも申請する側に立ってみれば、許認可制である場合には、製造承認申請の前にすでに商標というものを決めるわけです。そうして、そのための準備行動というものをそれぞれ行っていかなければならないわけなんだけど、この取り消し審判がいつ請求されてくるかわからないという不安定な状況の中で、なかなか実際に商標を使うことに踏み切るということがむずかしい。そうなってくると、勢い、決定の対象になる商標は、登録後、日の浅いものに限らざるを得ないということになって、結局若い商標をたくさん保有しておく。いわゆるストック商標を持っておくということが、まあ商標を利用する側にすれば有利であるというような解釈が成り立ってくる。そのことが結局出願件数を大きくするし、安全サイドを図るということで、商標が決まったら、もとの登録が取り消されても困らないように、同じ商標を特許庁に新たに出願するというようなことに、まあ、どっちかと言えば愚かしい繰り返しというものが現在まであったと私は思うんです。そういうことがないようにするためには、いま言う世当な事由ということをかなりきめ細かく運用しなければ、結局は出願の頻発を招くということにもつながるし、そこをうまく抜けていこうとする行為を誘うことになるというふうに思うわけですこれも先のことだから、どこまで特許庁がお考えになっておるかはわかりません。むずかしい運用上の問題だとは思いますけど、気をつけていただきたいと思うんですが、どんなものでしょう。
#38
○政府委員(齋藤英雄君) 御質問がございましたことに関連しまして、まず商標の無効審判におきます除斥期間といいますものの性格について御説明申しますと、これはその商標権自身にいわゆる瑕疵といいますか、傷がございましても、それは法律的安定という点も考えまして、その瑕疵があるということと、それから法律的安定ということを両方考えました末に、ある一定の年限――五年間たちました場合でも、さらにその瑕疵を追及することが法律的な安定を害するおそれが強いのではあるまいか。こういう点で除斥期間が一応設けられておるのでございます。したがいまして、そのことと、それから商標を使っているか使ってないかということは、実は考え方としては別のことになるわけでございまして、商標というものは絶えず使用されておるということ、その使用によってできた業務上の著積を保護するということは、先ほど申し上げましたとおりでございますので、その辺がいまの除斥期間の問題と、使用、不使用の問題とは問題のとらえ方の角度が違うのじゃないかと思うわけでございます。
 しかしながら、いまのお話もいろいろございまして、私どもも実際の運用につきましては、いろいろ円滑にいくように考えたいとは思います。ただ、しかしながら、いまのその角度が違っておるという点につきましては、やはりその違っておるということを考えて運用せざるを得ないというふうに考えております。
 それでなお、医薬品につきましては、現在、医薬品のメーカーの使用率がかなり低いものでございますからして、まあそういうふうな事態は、現実には余り起こらないんじゃないかというふうに考えております。
#39
○藤井恒男君 私は、今度の法の改正の五十条の結果によっては、いままで余り問題にならなかったことが、この運用いかんによっては、法律全体として結果して改悪になる。要するに出願を呼び込むことになる。そして結局は、滞貨をまたふやすことになりかねないというふうに私は危惧するわけで、そういった意味でのこの商標制度の円滑な運営、そのための利用する側の実情に合った弾力的な運営ということが、特に五十条の二項においては必要であろうというふうに私は思うわけです。で、いままでの実態から言うと、なるべく危険を避けるという意味から、登録を五年たってから使い出す、それまでに無効になるということになれば、結局、その間のロスを免れないということになるわけですから、そういったことがいままで現実に利用する側には行われておったと私思うんです。したがって、この辺の取り消されることを考慮に入れて、従来以上にストック商標をたくさん持つということになっては大変でございますから、準備期間というものについても、それぞれの内容に応じて弾力的に運営していかなければ、この条文解釈だけでやっていけば大変混乱になるし、予測しない問題が出てくるということを危惧しますので、十分、これから運用の面で適切な措置をとっていただきたいと思います。この辺のところを重ねてお聞きいたしたいと思います。
#40
○政府委員(齋藤英雄君) 正当理由の解釈につきましては、ケース・バイ・ケースで非常にいろいろ問題があろうかと思います。私、先ほど申し上げましたような商標法の基本的な精神なり基本的な制度にのっとりまして、その辺、円滑かつ適正な運用をいたしたいというふうに考えております。
#41
○藤井恒男君 それでは、先ほど次官にお願いした問題と、それから大臣に対する質問は留保さしていただきまして、時間になりましたから、きょうはこのぐらいで終わらしていただきたいと思います。
#42
○委員長(林田悠紀夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十三分開会
#43
○委員長(林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 午前に引き続き特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#44
○中尾辰義君 今回の特許法の改正の一つの柱になっております、物質特許制度の導入ということがうたわれておるわけですが、この制度は、従来は特許法に取り入れられてなかったわけですが、今回始めて化学物質、医薬等初め、飲食物、嗜好物の発明についても特許を付与する、こういうことであります。これには審議会の答申もありますけれども、いろいろ問題があるように思われますので、若干お伺いしますが、今日までこの制度を採用しなかった理由は、わが国の化学工業、医薬工業、飲食品工業など、技術開発力あるいは国際競争力が弱かったためにこれらの技術を外国企業による特許の支配から保護しようとする立場によったものと思われるわけであります。そこで今日、わが国の工業技術の水準というものが、まだ必ずしも欧米に比して格差がないとは言えない。技術格差がかなりあるんじゃないかという点があるわけですが、そういう状態の中で、あえてこの物質特許制度を導入することに踏み切った理由はどういう点にありますか、その辺からお伺いしましょう。
#45
○政府委員(齋藤英雄君) 現在、特許法におきましては、化学物質と医薬と医薬の調合方法、飲食物、嗜好物、これがいわゆる不特許事由として特許の対象にならないことになっております。そこで、その理由は、先生いま御指摘がございましたように、たとえば化学物質は大正十年法以来、不特許事由になっておりましたわけでございますけれども、その当時からごく最近に至りますまで、非常に国際水準に比べてわが国の技術水準がそれに及ばないという点がございまして、不特許事由になっておりましたわけでございます。
 これは経緯を簡単に申し上げますと、この前の前の改正の昭和三十四年法と称しますときにも、化学物質を特許すべきかどうかということについて議論がございました。工業所有権審議会におきましても、いろいろ御意見がございましたけれども、その当時アンケートも実はとりまして、世論調査を行いましたが、その当時のアンケートの結果等を見ますと、これはまだ時期尚早である、こういうことでございます。したがいまして、答申の中にも、今後の技術水準あるいは国際動向を改めて検討した上で対処すべきである、こういう答申をその当時いただいておるわけでございます。四十三年の工業所有権審議会の答申におきましても、同様に今後引き続き検討すべきであると、こういうふうなことが答申の中に付記をされておるわけでございます。しかしながら、そのときの改正法の国会の御審議におきまして、昭和四十五年の五月に当委員会におきまして化学物質及び医薬につきまして速やかに成案を得るようにという附帯決議もいただいております。それからなお、国際的には一九五八年、すなわち、昭和三十三年のパリ条約改正のリスボン会議におきまして、「同盟国は製造方法とは無関係に新しい化学物質を特許により保護することを規定する可能性を検討」すべきであるというふうな、そういう国際会議の勧告もございます。
 それで、それ以降、私どもの方は附帯決議もいただきましたし、こういうふうな国際的な勧告もございましたので、昭和四十八年以来、工業所有権審議会制度改正部会のもとに物質特許の小委員会を置きまして、随時検討を続けてまいったわけでございます。そのときに、私どもの方は、その小委員会におきまして関係の学識経験者、あるいは生産をする者、あるいはこれを需要する者等の意見を慎重に聞きました結果、現在に至りまして、ごく小部分につきましては国際水準にいまだ達しない部分もあるけれども、諸般のそういう情勢から考えまして、一般的にはいまの技術水準は国際的な水準に達しておるということでございました
 そういうふうな理由が一つと、次に二番目に、従来製法特許だけでございますと、これは物質特許がございませんので、たとえば発明をいたしました場合に、その物質自身を守りますためにいろいろな製造方法を合わせて出願いたしませんと、物質自身の特許を実質的に保護ができないということがございます。そういう点もありまして、したがいまして、出願の数がかなり、製法特許が三つあれば三つの出願ということで数が多くなる、こういうこともございました。それから、そういうふうに製法特許しかございませんために、研究者といたしましては、たとえば外国で新しい物質が出ますと、それに対しましてやはりその製造方法を少し変えて、いわば模倣的とも言える製法特許を研究をいたしまして、それでもって新しい物質をつくる、そういうふうな方向に走りがちでございまして、すなわち、いわゆる改良発明ということに研究の重点が置かれがちになります。そういたしますと、やはり、基本的に新しい物質をつくるという創造的なそういう研究がややもすればなおざりになる、こういうこともございます。これは技術水準のある程度の格差がある場合にはあるいはやむを得なかったかもしれないとも思いますが、現在のような状況になりました場合には、むしろそういうことよりも、進んで新しい物質をつくるという研究態度になるような段階になったのではあるまいか。制度としましても、それを奨励し、刺激するような物質特許という制度をつくる方が適当ではあるまいか、こういう審議会の御意見でございました。そういう答申もいただいておりますので、そういうことを考えまして新しく化学物質等につきましていわゆる物質特許の制度を設ける、こういうふうに考えた次第でございます。
#46
○中尾辰義君 この物質特許の導入ということで私どもが一番心配しているのは、従来になかったこうした医薬とか化学物質、それを独占の状態になるわけですから、当然価格等の問題で心配をされるわけですね。ですから、これはひとつ本当は通産大臣にお伺いしたいんですが、きょうお見えになっていないので政務次官にお伺いしますが、この特許法の第一条の目的に明示をされておりますように、発明を権利として保護することは工業所有権制度の基本的な思想であります。しかしながら、それと特許独占による大企業の独占利益を過度に保護することはこれは別の問題じゃないか。今回のこの特許法の改正によりまして、化学物質医薬、飲食物等にも特許を与えようとすることになるわけですけれども、今日におけるわが国の化学工業の実情、あるいは過去二年間の石油危機に続く経済情勢のもとで、この物質特許制度を採用するのがよいかどうか。まあパリ同盟なんかの勧告もあったといろいろいま答弁ありましたけれども、これはやはり慎重に検討すべき点が相当あるわけであります。また、この物質特許がすでに採用されましたアメリカでも、この物質特許制度が市場独占の手段として使われている、こういうような報告も耳にしておるわけであります。そこで、わが国の産業政策的な観点からの考察も必要じゃなかろうか、こういうことで、この物質特許の導入と独占価格の形成との関係についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、それをお伺いいたします。
#47
○政府委員(嶋崎均君) ただいまの中尾先生の御発言は非常に大事なポイントであるように私恩っておるわけでございます。もうすでに、物質特許を認めるに至った経緯につきましては、国際的な関連であるとか、あるいはわが国の科学技術の進歩の水準とかいうようなものを検討しながら慎重に審議会でいろいろ御議論を願って、われわれは、踏み切る段階に来ておるということで今回この改正をお願いを申し上げておるわけでございますけれども、御承知のようにこの特許法のねらいは、先生御指摘のとおり、第一条にありますように、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」んだということにあるわけでございます。やはり人間の創造的な能力というものを特許制度というものを通じてかき立てていきたい、そういう意味ではどうしても、特許を認められれば特許の認められている期間、その特許を保有することに伴う反射的な利益として、その権利に対する対価が保証をされるというような形に相なるわけでございます。
 そういうことでございますから、それが適切に運用実施されないでおる、あるいは非常に特許権の結果として高い価格が保持されるということが国民経済的に、あるいは人間の全般的な福祉の向上のためにマイナス要因になる心配もあるのではないか、こういう点が非常に御心配のところだと思います。実際に、それでは過去においてそういうことに伴って著しい事例がどの程度あったかという、特許を保護することに伴うところの、何というか、それが社会的に利用されなかったことの問題、あるいはそのことが非常に国民経済的にマイナスになっておったかというような具体的な問題になると、なかなか判断の分かれるところだと思います。
 静止的というか、あるいは消極的に考えますと、特定の特許を保護するということが当面非常に、何というか、科学技術の発達、あるいは国民経済全体の利益を阻害するような感じもしないわけじゃないですけれども、逆に、そういう特許が手厚く保護されておるということによってより新しい物質の発明、科学技術がそれを追うということに伴うところの利益、どんどん科学というものは進歩していくわけですが、その進歩をさらに誘導するという意味では、現在の制度は、あるいはこれは動的に見るというか、あるいは時系列的に見るというのですか、そういう感覚では、やはり特許の制度というものが新しい人間の創意工夫というものを奨励し、そうしてそのことが全般的な人類の利益に寄与をする、こういう考え方でこの特許法というものが考えられておるんだろうというふうに思うんです。したがって、特定の物質が、非常に利益をその特許を持つことによって確保できる、そういう事例を見て、もっといい物質をもっとうまい工夫でつくれないものかということの努力の積み重ねが動的に行われるということでこの特許法の精神というものが貫かれるということが必要なのではないか、また、現にそういうのがこの制度の予定しているところではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
 したがって、ただ、その特許を持っておることに伴ってそれが実施をされないというようなことで非常に問題が出てくる場合には、それは公共の目的に何らか使用しなければならないというようなことで、その実施権をどういうように設定させていくか、あるいは、今度物質特許ができていくことに伴って、その物質特許とそれを製造する特許との間にどういうぐあいに具体的に実施をさせていくかというような裁定の問題が具体的には出てくると思うのです。過去にはあまりそういうことのトラブルがなかったようにも聞いておりますけれども、しかし、公共の利益のためにそれがうまく活用されるようにどういうぐあいに配慮していくか、その辺が一つのポイントではないか。しかし、制度自体は私は、いまの特許法、その反射的な効果としての独占的な利益というものは、制度は逆に動的にはよりいい発明、よりいい人類の工夫の創造というのですか、そういうことを予定しておるもので、あまりにもそれは極端に心配することはないのじゃないか。ただ、具体的な特許権と独禁法その他の問題の運用については、まあ独禁法にも規定があるように、適切に国民経済、あるいは人類の幸福のために活用されるような工夫というものを別に配慮をしていくのがいい方法ではないかというふうに考えておる次第でございます。
#48
○中尾辰義君 まあ私は質問で申し上げましたように、アメリカ等のすでに物質特許制度を採用しておる国に、こうした特許権による独占の状態等が出てきておるということを聞いておるものですから、わが国においてもまた、そういうようなことが将来起こり得る可能性は私はあるように思うのです。それで聞いたのです。
 それで、これは逐次お伺いしますけれども、工業所有権審議会の答申の中に――公取がお見えになっておりますが、聞いておいてください。裁定制度の運用要領試案、これがありますね、これにその中に、特許法第九十三条の「(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)」について触れておるわけです。この試案には、「公共の利益のため特に必要であるとき」の主要なものとして、「特許権の独占により当該産業全般の健全な発展を阻害し、その結果国民生活に実質的弊害が認められる場合」、通産大臣は、裁定により通常実施権を与えることができるとされておるわけです。しかし、このような運用要領で果たして特許独占による国民的な弊害を防ぐことができるかどうか非常に疑問に思われるわけであります。また、この裁定制度がいままで全然活用されてなかった、このように聞いているのです。これで大企業の独占価格の形成をチェックできるのかどうか、その辺は政務次官いかがですか。
#49
○政府委員(嶋崎均君) まあ特許権というような形でその発明の利益を保護してやるということは、先ほど申しましたように、大きな人類の進歩発展のために必要であるというふうに思うわけでございますけれども、一方、できる限り公共の利益のためにそれが活用されるということが必要であるということは、もうもちろんのことでございます。
 九十三条の規定の趣旨も、できるだけ公共の利益のためにそれが活用されるということを前提にしまして、実施権の許諾についての協議という問題が取り上げられておるわけでございます。公共の利益ということをどういうぐあいに解釈するかという問題につきましては、先ほど先生が御指摘になりました特許問題についての答申の中に、参考という形をとっておりますけれども、これは制度改正を主としてねらったところでありますので、この制度改正のところは正式な答申になり、こちらは参考という形になっておりますけれども、これは一体として私は答申があったものであるというふうに思っております。
 そういう考え方からしまして、公共の利益というものをどういうぐあいに判断をするかという問題は、もちろんいろいろな、非常に社会制度が複雑になり高度化しておる現在、判断はむずかしいところが多いわけでございますけれども、また、ある意味では流動的ではありますけれども、この答申にありますような考え方、すなわち一番目としては、「国民の生命、財産の保全や公共施設の建設等国民生活に直接関係する分野で特に必要である場合」とか、あるいは「特許権の独占により当該産業全般の健全な発展を阻害し、その結果国民生活に実質的弊害が認められる」ような場合、そういうような場合にはやはり特許の実施がスムーズに、円滑に行われるようにできる限りの誘導政策をとり、また、その裁定についてもそういう考え方を基本にして運営をしていかなきゃならぬ、これは当然なことであるというふうに思っておる次第でございます。
#50
○中尾辰義君 それで裁定制度ということが現行法にも出ておるわけですね、九十三条あるいは九十二条、あるいは八十三条。ですから、この裁定制度が今日までどのように活用されてきたのか、具体的に数字を示して一ぺん説明してください。
#51
○政府委員(齋藤英雄君) 裁定制度が、申請がありました件数が非常に少ないということは先生御指摘のとおりでございまして、昭和三十五年法の施行以来、その不実施の場合の第八十三条の請求は九件でございます。それから、九十二条のいわゆる権利の利用関係と言われておりますものの請求は三件でございまして、九十三条の公益上必要な場合の請求はございません。したがいまして、合計で十二件ということでございます。
 裁定制度が、なぜこういうふうに少ないのであるかいうことにつきましてはいろいろ見解がございますが、この制度自身、諸外国の例もいろいろ実施権の制度がありますが、それほど多くはないようでございます。それで、考えますところ、やはりこういう制度があるということをもとにいたしまして、その制度を前提にして、まず当事者間で協議を行うことに相なっておりますが、協議を行いまして、それで協議が成立をいたしますれば、これは裁定ということにはならないわけでございまして、いわば一種のセーフガード的な役割りを果たしているのではあるまいかというふうに考えております。実際はしたがいまして、実施権の付与の場合に強制というまでに至らずして、当事者間の話し合いによって相当程度は解決をしておるというふうに私どもは認識をいたしております。
#52
○中尾辰義君 それで八十三条は九件、九十二条が三件とこうおっしゃったのですが、これは結論はどういうふうになったのですか。
   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
#53
○政府委員(齋藤英雄君) いずれの件につきましても、あるいは裁定に至ります前に当事者間の話し合いがつきまして請求者が積極的に取り下げをする、あるいは当事者間の話し合いが成立をするということで、裁定を実際に下すまでに至らずして問題が解決をいたしております。
#54
○中尾辰義君 ですから、私聞いているのは、八十三条が九件でしょう。九件の結論はどうなったのか、九十二条の三件は結論はどうなったのかと。そうあなた、一括してそういうような答弁じゃなしに、それをおっしゃってくださいよ、数字的に。
#55
○政府委員(齋藤英雄君) 利用関係の三件におきましては、二件につきましては裁定の請求を取り下げをいたしております。それで、一件につきましては和解をいたしまして、裁定請求に至りませんでした。
 それから不実施の場合でございますが、一件は、これは手続の不備のために却下をいたしました。それから三件につきましては、これは裁定の請求をいたしましたが、和解によりまして取り下げをいたしました。
 それから、失礼いたしました。取り下げをいたしましたのは七件でございます。それであとの一件は、裁定の請求をする前に和解をして取り下げをいたしました。
#56
○中尾辰義君 そうしますと、八十三条の九件の内訳が、一件が却下、一件が和解、七件が取り下げと、こういうことですか。
#57
○政府委員(齋藤英雄君) はい。
#58
○中尾辰義君 次は、九十二条の三件の件が、二件が取り下げ、一件が和解、こういうことでございますね。ところが、九十三条の「(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)」、これが一件もなかったということでありますけれども、まあ物質特許なんかがこれから出てくるわけでありますから、むしろこれからはこの九十三条に基づく裁定の請求なんかが出てくる可能性があるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。
 そこでこの際に、どうしてもこれは公共の利益というようなことが非常に大事になってくる、この解釈がですね。だからお伺いしますけれども、公共の利益、これは具体的にどういうことを言っておるのか、また、いかなる状態のとき裁定の申請者に特許権の利用が求められるのか、この辺はいかがでしょうか。
#59
○政府委員(齋藤英雄君) 先ほど政務次官の方から御答弁を申し上げましたように、例として審議会の意見として挙がっておりますのは、「国民の生命、財産の保全や公共施設の建設等国民生活に直接関係する分野で特に必要である場合」には、公共の利益のために特に必要であるというふうに考えられるものであるということが例示的に挙がっております。
 それ以外に、特許権のいわゆる独占によりまして、産業全般の健全な発展を阻害する、そのために、あるいはその結果国民生活に実質的弊害がある、こういうふうな場合につきましては、公共の利益のために特に必要であるというふうに例示的に挙がっておりますが、私どもは申請がありました場合には、こういうここに書かれておりますことが例に挙がります場合には、九十三条の通常実施権の許諾について裁定をする、こういうことになろうかと考えております。
#60
○中尾辰義君 いまあなたがおっしゃったのは、この工業所有権審議会の公共の利益に対する一つの解釈の例でありますからね、例でこれを答弁されたんじゃ困るわけです、こういうところでは。これは例だから、例ならほかにもある、こういうことにもなるわけです。この公共の利益ということをあいまいにしておきますと、これから非常に問題になってくるんじゃないか。公共の利益の解釈いかんによってどうにでもなると。あるいはまた、一方的に政府の考えを押しつけるというようなこともなきにしもあらずですから、この際にこの公共の利益、これを明確にする必要があるのじゃないかと思うんですがね。そういうことで聞いておるわけですが、いかがです。
#61
○政府委員(齋藤英雄君) 現在のところ、先ほど申し上げましたように、裁定申請という具体的な例もございませんし、かつそれに関する判例ももちろんございませんので、すべての例を網羅して云々と言うことはなかなかむずかしいかと存じますが、いわゆる特許権は一種の私有財産の一つでございます。したがいまして、当然これは、私有財産の制限というのは、基本的には憲法二十九条で決められております。したがいましてここで言います、憲法二十九条でいわゆる「公共のために」と、そういうことが書いてありますが、現在私どもは、そういうふうな解釈とほぼ同様な解釈で運用をいたしたいというふうに考えております。
#62
○中尾辰義君 それは運用をいたしたいとおっしゃっても、これが裁定の一番基本になるわけですからね。ですから、いままではなかったんだと。いままではそれはまあ技術の特許ですから、それはなかったかもしれませんが、これからは物質ということになりますと、アメリカ等にも例がありますように、仮に日本においてもたとえば石油たん白だとか、あるいはまたポリエチレンだとかそういったような、まあいまありますけれどもね、ああいったたぐいのものが新しく特許を申請して、それが特許権が得られたと。そうすると、ある大企業はそれを独占してどんどんつくる。しかもそれがもう国民生活に非常に大事な物質である、あるいは医薬の例をとっても、どうもその薬がないとその病気が治らないとか、そういう非常に大事な物質特許の場合に、当然これは特許ですから一社の独占になるわけです。その一社が大企業の場合、製法から製品から用途から、しかも外国貿易の輸出まで全部独占と。そして、自分の系列を利用してどんどん市場支配するというようなことも、これは考えられるわけでしょう、今回の場合は。
 そういう意味合いから、いままではなかったけれども、これからはそういうような問題が出る可能性もあるから、ただ抽象的な、どっちでも解釈できるような、あるいは審判官の頭でどうでも判断できるというようなことでなしに、何かの基準なり、あるいはきちっと明文化しておく。それをできたら法律等に明文化していけば、あるいは政令できちんとやっておくとか、そうしないと、どうもこれは「公共の利益」の解釈がこういうことでは、九十三条というものはこれを死文化してしまうんじゃないか。何せ通産大臣が裁定するんですからね。通産大臣はやっぱりどうしても、こんなことを、言っちゃあれですけれども、企業サイドに傾きやすいと、こういうことを心配しておるわけです。だからいまはどうなんですか、政務次官、長官、いま答弁できないですか。
#63
○政府委員(嶋崎均君) 非常にむずかしい問題でございますが、ここで、この法律の規定の仕方としまして、御指摘のように、「公共の利益のため特に必要であるとき」と、こういう抽象的な書き方ではなかなかよくわからないんで、「公共の利益」の中身を、実定法の中で具体的に判断の基準を書いたらどうかという御指摘だろうと思うんです。
 御承知のように、「公共の利益」が何であるかというのは非常に、一つ一つのケースにおいて具体的に判断をされなきゃならないケースが多いんだろうと思います。そういうことが特に最近の社会の情勢というものを考えますと非常に状況の、社会の変動が激しく、また、人間の価値評価の判断というのも非常に目まぐるしく変動をし、変わっておるという特色のある時代であるような気がするわけでございます。また、社会のいろんな分野でいろんな形で「公共の利益」というものをどう考うべきかという問題が出てくるわけでございます。もちろん、今回、物質特許の範囲というのは御指摘のようにやや、法律でお願いしておりますようにごく限られた化学物質なり医薬品なり、あるいは飲食、嗜好品といったようなものであるかもしれませんが、それを全体的にあらかじめ想定をして、非常に具体的に公共利益の中身を基準化するというのは、なかなかむずかしい問題ではなかろうかというふうに私は思うんです。
 もちろんその具体的な運用につきましては、すでに答申にありますような文言もあるわけでございますので、そういうものを取り入れながら、できる限り御心配になっておるような、特許が非常に独占的である、そのことが国民生活あるいは国民経済、人類の全体の幸福といったようなものから判断して過度にわたるということがないように、それぞれの法域、それで守られる利益がどうバランスするかということの判断は、どうしてもやはりある程度具体的に考えざるを得ない、ケース・バイ・ケースで考えざるを得ないものであるように思うんです。
 考え方は、すでに公共の利益という、あるいは答申にありますように、具体的にここにありますように国民の生命なりあるいは財産とか、あるいは公共施設の建設であるとかいったような、国民生活に直接関連する分野でどうしても実施権を設定したほうが適当であるというような判断なり、あるいは産業全体の健全な発達を特許が存在することによってもたらしておるかどうかという判断、そういうここまでのことは答申に書かれてあるわけでございますが、それをさらに具体的にやっていくというような場合になると、やはり問題がなかなか出てくる。やはりそういうこの程度の問題は、具体的にケース・バイ・ケースで考えていかざるを得ないような問題であって、これをどうも実定法の中に細かく、公共の利益とはかくかくしかじかのものであるというのは、やはりこういう変動の激しい時代、それから価値判断の非常に動きやすい時代においてはなかなかむずかしいんじゃなかろうか、そういう意味で、これはもう具体的に正しく運用するということで、政府は誤ってはならない厳しい姿勢でこの処理をしていかなきゃならぬ、また、そういう方向で問題解決するほうがより妥当なのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#64
○中尾辰義君 これはむずかしいといえばむずかしいんですがね。まあしかし、そうむずかしいからといって、あなた、このままほっといたんじゃこれはもう……。ここが問題になってくるんですから、うやむやになるもとなんですね。どうもこれから国内の特許権者だけではなしに、外国の商社が、企業が日本で新しい何か物質で特許を取ったような場合、これはまたややこしゅうなりますよ。しかも、こういうような公共の利益があいまいでありますというと、裁定者の主観ということになりますね。それはその裁定をやった、ところが、それでこれは気に食わぬということになりますと、また裁判ということになりまして、その間には五年も十年もかかっとるうちに、とっとことっとこ独占でやられたんではどうしようもないじゃないでしょうか。そういうところは心配をされておるわけですから もう政務次官のおっしゃることもわかりますけど、それは防衛の限界はどこだと、そういうのと同じようなことになるかしれません。しかし、これではこれからどうもこういう問題が起こりそうな気がしますよ。いままでは技術のほうだった、これからは物質ですからね、だからこれは、いまこの席であなた方が答弁できなければ、政府の統一見解なり何かこれしなければどうしようもないわけです。
  〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
うやむやになるこれはもとをなすんです。その辺はいかがです、再度ひとつ。
#65
○政府委員(齋藤英雄君) ただいまの裁定の問題に関しまして、「公共の利益のため特に必要である」という問題につきまして、非常に抽象的ではないかという御趣旨の御意見、御質問がございました。私どもは、現在いろいろ価値観が多様であり、かつそれが変動していく場合において、これを前もっていろんなケースを考えてきめることは非常にむずかしいとは思いますけれども、これの裁定申請がありました場合には、その裁定の案を付しまして、これは工業所有権審議会の発明実施部会に一応かけまして、その発明実施部会の結論を十分な参考といいますか、いたしまして、裁定をするかしないかを決することにきめておりますしたがいまして、通産大臣が恣意的な裁定をすることはもちろんないとは思いますし、またそうであると思いますが、それに加えまして工業所有権審議会の発明実施部会に一応諮問をいたしましてその結論を聞くということに相なっております。
 それから、先行きの問題といたしましては、私ども答申をいただきまして現在法案の御審議の最中でございますので、法案の御審議の最中に詳細な実施運用要領等を明らかに決めることもいかがかと思っておりますので、これはこの改正法案が幸いにして成立をいたしました場合には、私どもこれは当然工業所有権審議会の実施部会にはからなければいけないんでございますれども、はかりまして運用の要領を決めたいというふうに考えております。
 それからなお、蛇足でございますが、一応裁定が下りまして、実施権の許諾ということに相なりました場合には、実施権は強制実施権でございますから、それは訴訟に仮になりました場合でも、特許権者が、その実施権ほ私の方は不満である、それは公共の利益じゃないと。それにもかかわらず、通産大臣が実施権を与えたという場合がございますが、その場合には、これは強制力がございますから、まず第一に実施権を与えられて実施ができるようなことに相なると考えております。その後、それはその件について訴訟になるというふうに考えておりますので、実施権を与えるというその裁定が下りました場合には、当該請求人は実施ができる、こういうかっこうになるわけでございます。
#66
○中尾辰義君 それならば、この裁定の請求があったとき、どのくらいの期間内に結論にたどりつくのか、これも一つの問題です。これがだらだらとやられたんでは、これは効果ないわけです。その辺のめどというものも、これも全然ない、一年でも二年でも三年でもかまわぬですか、審議の次第によっては。この辺もやはりこれから予想される化学物質の裁定請求があったような場合、心配になるわけです。また、これに期間をつけたらどうだという要望も出ておるわけですが、これ、いかがですか。
#67
○政府委員(齋藤英雄君) 私どもがいただいております答申の参考資料といたしまして、裁定制度の運用要領試案がございますが、その試案の中に、一応各種の場合につきまして標準的な期間を、こういうふうにやったらどうだということは示してあります。たとえば、裁定の請求書の提出がありました場合には、これを被請求人、すなわち通常の場合は特許権者でございますが、特許権者に送付をいたしまして、期間を指定して答弁書の提出を求めるという通常の訴訟類似の手続になりますが、その場合には、国内の場合には四十日、あるいは外国の場合には三ヵ月、こういうふうな標準的な期間が一応ここに書いてございます。私どもは、こういうことに準拠いたしまして手続を進めたいと思っております。
 それから、答弁書の提出がありました場合には、その後原則として一ヵ月以内に裁定請求書、答弁書その他の資料を参考にいたしまして裁定案をつくりまして、これを請求人あるいは被請求人に提示をいたしまして、それの意見を求めまして、その意見を添えまして工業所有権審議会の発明実施部会に提出をいたしまして、審議をいたして結論を出す、こういうふうにこの要領試案に書いてございますが、私どもはこれに準拠をして一応手続を進めるようにいたしたいと考えております。
 ただ、この場合に、全体の期間をどういうふうに考えるかという問題がもう一つございますが、これは言うまでもなく、まず、両当事者の協議によってこの事件が始まりまして、その協議が整わない、あるいは協議をすることができないような事態に初めて裁定申請になるわけでございます。したがいまして、その事件の事案の内容によりましていろいろの場合がございます。それで具体的に、あるいはその裁定の手続の進行中に両当事者の協議が相整いまして、裁定を取り下げるというふうな場合もしばしば予想されますし、先ほど少ない例ではございましたけれども、そういうことのあることも申し上げたわけでございます。したがいまして、一義的にこれを何ヵ月で切るということにつきましては、事案によりましては実情にそぐわないこともあるのではあるまいかと考えますので、私どもは、なるべくこの期間に沿いまして手続を迅速に進めたいとは思いますが、事案によりましては、その辺いろいろ参酌をすることを考えざるを得ないというふうにも考えております。
#68
○中尾辰義君 それじゃ先ほどのこの「公共の利益」の解釈でありますが、長官の答弁じゃ、工業所有権審議会にはかってそれで運用のあり方というものを結論を出してもらう、こういうことですね。そうすると、この結論がこれからの一つの基準になる、こういうことですか。また、その基準は形の上では法律か政令か省令か、何かきちっと明文化しておくわけですか、どうなんですか、これは。
#69
○政府委員(齋藤英雄君) 工業所有権審議会の発明実施部会に御審議をいただきまして、そこで運用要領を一応決めていただくわけでございますが、運用要領が決まりました場合には、工業所有権審議会の答申あるいは決定というふうなかっこうで明文化されるわけでございます。
#70
○中尾辰義君 そうしますと、それが出ればこの裁定の基本的な基準になる、こういうことですか。
#71
○政府委員(齋藤英雄君) 御意見のとおりでございます。
#72
○中尾辰義君 それでは、公取の方が見えておりますからお伺いします。時間がありませんから。
 ただいまあなたお聞きのとおり、非常に問題もあるわけですね。それで、イギリスやアメリカなどでは、独禁法その他の法律によりまして、そういうような独占価格に対しましては、価格の引き下げ権あるいは特許権公開命令権などが、化学物質、医薬、食料品の価格の上昇に対するチェックシステムとして存在すること、また、わが国の裁定制度が必ずしも有効に働いてこなかったこと、さらには、特許法自体も究極の目的が国民生活安定や向上にあることを考えた場合に、特にこの化学物質について特別に法定実施権を考慮する必要があるのではないか、こう思うわけですが、これは通産政務次官と、できたら公取の局長にお願いします。
#73
○政府委員(嶋崎均君) 今度物質特許ができることに関連しまして、そのことが非常に独占的な企業の利益を守り、独占を助長するというような、逆にまたそういうことを通じて、国民生活に悪影響を及ぼすような価格上昇をもたらすんじゃないかという御心配がある。またひとつ十分理屈のあることであると思います。ただ問題は、この一番冒頭に申し上げましたように、ある程度特許というものに伴うところの利益の保護というものは、制度としては将来の発明というものをかき立てていくという制度の意味というものが別にあると思いますけれども、ともかく、そういう御心配があるのは当然だと思うんです。
 ただその場合に、おっしゃられたような法定実施権と言うんですか、どういう内容でお考えになっているのか私もよくわかりませんけれども、いまの裁定の制度は、この九十三条の規定にもありますように、その特許発明の実施をしようとする者が申し立てをしてくるという形になっておるわけです。そういうことがなしに、何か法定でだれかにやらすということなのか、あるいはそういうものがあったときに、そういうものについて裁定というルールを通してやらしていくのか、そこの取り扱いが必らずしも私はよく理解できませんので何とも言えませんけれども、できるだけそういう特許が眠るとか、あるいはそれが本当に国民経済あるいは国民、人類全般の幸福にマイナスになるような形の存在であるとするならばこれは非常に問題なので、できる限り円滑にそれが実施されていくという姿において運用しなきゃならないというふうに考えております。
#74
○中尾辰義君 まあ、意味が少し理解されなかった点もあるかもしれませんが、それは物質特許制度はメリットもありますよ。メリットもあるがデメリットもある。したがって、このデメリットのほうが大きくなりますと、国民はこれを排除していくわけですから、物質特許制度を採用する、これを守っていくためにおいても、デメリットという点を防除するように前向きで考えていかなきゃならぬわけです。そういうことで、特許法には、九十三条によりまして一応公共の利益のための通常実施権の設定の裁定はあります。ありますが、工業所有権審議会に諮って、その基準に基づいて通産大臣が裁定をすると形はなっておるんです。それが通産大臣、まあこう言うのはおかしいかもしれませんけれども、どうしてもやはり通産省の所管の大臣でありますから、なかなか裁定が、つまり裁定といっても、ある意味においては政治的な判断ということが働くわけでありますね。ですから、その上にその通産大臣の裁定をさらにチェックする、あるいは相互に連絡をとり合うなりそういう意味で、独禁法にさらに独禁法の立場から何かチェックするような法定実施権というものは必要ではないか、こういう質問ですよ。あなたの答弁は、それは要りませんとおっしゃるかもしれませんが、これは大事な質問なんですから聞いているんです。九十三条で結構でありますというならそれはそうでもいいでしょう。公取さんにひとつお伺いします。
#75
○政府委員(熊田淳一郎君) 独禁法とこの特許法との関係でございますが、独禁法は二十三条におきまして、特許権の正当な行使を適用除外いたしておるわけでございます。しかしながら、これはあくまでも特許権の正当な行使について適用除外をしておるわけでございまして、正当な範囲を逸脱をいたしまして特許権の乱用ということになりますと、これは当然に独禁法が働いてくる、こういう解釈をとっておるわけでございます。したがいまして、いまの問題も、この正当な行使の範囲から逸脱をしてくるというということでありますならば、私どもは独禁法によってあくまでも厳正に取り締まりをしていかなければならない。
 たとえば、そういう特許権を手段といたしまして私的独占を行うとか、あるいはカルテルを行うとか、または不公正な取引方法を用いるとか、こういうことになりますと、当然にこれは独禁法上の問題として私どもは規制をしていくことになるわけでございます。ただ、この独禁法上の問題でないということになりますと、これはもう私どもの手からは離れてくるわけでございまして、その場合に、先ほどからも問題になっております特許法九十三条によります通産大臣の裁定の権限、これはまあ従来は、公共の利益というような点の判断基準というようなものが明らかでない点もございましょうが、実際の事例も出ておらないということでございますけれども、この九十三条の趣旨というものは、私どもは、今後十分に活用されてしかるべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
#76
○中尾辰義君 おっしゃるとおりと思いますよ。ですから、九十三条の活用をすべきであると、こういうふうに言っていらっしゃるんです。ところがいままではこの九十三条の活用は一つもなかったと、こういうことで、さっきのあなたの答弁から見るときには、九十二条と八十三条かはあったけれども、九十三条はなかった。そういう点の危惧から私は申し上げておるのです。ですから、諸外国にもありますように、独禁法上の上から、さらに二重の独占によって、いわゆる特許権の独占による価格の引き上げ等があって、それが非常に国民生活に重大な影響を及ぼしておるような場合、独禁法の立場で価格を下げる命令権、そういったようなものは考えてないか、それをひとりお伺いしたいんです。
#77
○政府委員(熊田淳一郎君) ただいまも御説明申し上げましたけれども、特許権自体の正当な行使によります価格の引き上げということになりますと、これは独禁法上の問題にはなりにくいわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、その特許権の乱用ということによりましてたとえばカルテルを結ぶ、その結果価格が高騰する、こういうような場合がもしあったといたしますと、その場合に、まあ独禁法では直接価格に介入していくということはできませんけれども、そのカルテルを排除をする、独禁法によりましてカルテルを排除するということによりまして、間接的に価格に影響を及ぼすということは可能であるわけでございます。
#78
○中尾辰義君 独禁法の価格引き下げ命令、これは現行法にはありませんが、いま政府の方で検討中でありますから、まああなたの立場から言えないかもしれませんが、諸外国にあるものですからね、また、公取の最初の案にはあったわけです。あったんだから聞いているんであって、まあそれはそれなり公取委員長がいらっしゃいませんから、また後日通産大臣等にお伺いすることにして、独禁法の第百条、これにあなたがいまおっしゃったことがあるわけですが、「特許又は実施権の取消及び政府との契約禁止宣告」の中に「違反行為に供せられた特許権の特許又は特許発明の」「実施権は取り消されるべき旨」、こういうふうに書いてありますが、ここのところいまも説明ありましたけれども、再度もう少し詳しく説明していただきたい。
#79
○政府委員(熊田淳一郎君) この独禁法百条でございますが、これは特許権の乱用によります独禁法違反事件、この場合におきまして、裁判所が体刑とかあるいは罰金を科するほかに、付加的な制裁といたしましてこの特許権等の取り消しを命ずることができる、こういうふうにいたしておるわけでございまして、これは、たとえば通常の刑罰におきます没収等と性格が似ておるかと思いますが、いずれにいたしましても、独禁法違反行為の手段として用いられましたその特許権等、これを付加的な制裁として取り消してしまおう、こういう措置であるというふうに考えます。
#80
○中尾辰義君 ちょっとよくわかりませんが、「違反行為に供せられた特許権の特許」これはどういうことですか、通産省でもどっちでもいいです。「違反行為に供せられた特許権の特許又は特許発明の」 「実施権は取り消されるべき旨」と、こうあるわけです。
#81
○政府委員(熊田淳一郎君) ただいま申し上げましたとおり、これは独禁法違反事件の手段として用いられた特許権の特許などと、こういうことでございます。
#82
○中尾辰義君 そうしますと、特許権者がやみカルテル行為等をやったと、そういうようなことですか。
#83
○政府委員(熊田淳一郎君) その手段に特許権が使われておるという場合でございます。
#84
○中尾辰義君 それは例を言うてひとつ説明してもらいたい。
#85
○政府委員(熊田淳一郎君) これは具体的な例といたしまして考えられますものは、たとえば、特許商品の抱き合わせによります私的独占行為といというような例があるかと思います。これはアメリカの例におきましてもそういうような例があるわけでございますが、幾つかの特許を一括して実施許諾をいたしまして、そして個々別々の実施許諾には応じない、これはRCAの事件にそういう事件がありました。これは抱き合わせによる独占行為だというふうにアメリカではされまして、違反行為とされておりますが、まあこういうような例。あるいは、アメリカにおきまして同じくコダックの例がございますが、これはカラーフィルムに関する特許権の独占、これが特許でない現像行為にまで及んでおる。そういたしまして、現像込みのフィルム価格を設定したということがシャーマン法違反だ、こういうふうにされております。この場合に、カラーフィルムの販売に現像抱き合わせをさしておる、こういうような例があるわけでございますが、わが国の場合には、こういう抱き合わせの例はいままでにございませんけれども、想定される例といたしましてはそういうようなことが考えられるわけでございます。
#86
○中尾辰義君 そうしますと、特許法九十三条によりまして、特許権者が公共の利益に反するということで、ある人に通常実施権を与えた、それがAの人にも与え、Bの人にも与える、あるいはCの人にも仮に与えたとした場合、通常実施権を持っておるA、B、Cの三者がやみカルテル行為をして値段を談合で決めた、そういうようなケースもこれはなきにしもあらずですね。そういうことも当たるんですか、この違反行為に供せられる特許権の特許に。いかがですか。
#87
○政府委員(熊田淳一郎君) その場合、該当する場合あると思います。
#88
○中尾辰義君 それじゃ余り時間がありませんので、きょうは委員長見えておりませんから、通産大臣と公取委員長にまたこの問題は後でお伺いしようと思います。
 それで、さっきの私の質問に対しては政務次官はどうお考えになりますか。いわゆる独占の問題につきましてはもう特許法九十三条で十分である、何も独禁法なんかでさらに屋上屋を重ねたような、そういう独占価格をチェックするような法定実施権みたいなものは考えてない、こうおっしゃるのか、その辺ちょっと答えてほしい。
#89
○政府委員(嶋崎均君) お答えいたします。
 独禁法の二十三条の規定は、御承知のとおり、特許権等の無体財産権の正当な行使につきまして、その適用除外をする旨を規定をしておるわけでございます。いま公取事務局長に対する御質問の中でも明らかなように、一般的に無体財産権の正当行使は適用除外をしておるんですが、それが違法に使われたといったような場合に独禁法の百条の規定があるわけでございます。
 一方、九十三条の規定は、私先ほど申し上げましたように、「特許発明の実施をしようとする者は、通商産業大臣の許可を受けて、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。」という規定になっておりまして、どこまでも請求権者は特許発明の実施をしようとする者ということになっておるわけでございます。実施をしようとする者がそういう申し立てがあれば、この九十三条の規定で、先ほど来長官が説明しましたように、工業審議会の意見等も聞きまして、適正に公共の利益が守られるような形で実施をするように裁定をしている、こういう手続になるわけでございます。
 問題は、これは中尾先生のおっしゃるのは、多分そういう実施をしようとする者が申し立てをしてくれば、そういう手続にのりますけれども、してこないときにどうするのか、特許権の状態によっては、これを公益の目的に使えるように積極的に誘導するために、法定実施権とも称すべき何かそういうものでだれだれにやらせるというような規定を設けたらどうかということだとしますと、なかなかだれでもかれでも実施できるものではない。問題は、非常に心配なのは、ここの裁定に上がる時点以前のことが問題で、特許権者が非常に有力な企業であったといったような場合に、その裁定まで至らない間に問題がけりがついてしまって、結果的に特許権の実施状況が公益にマイナスになるような、そういう動きをした場合にどうするか、こういうような問題ではなかろうかというふうに思うんです。
 そういう問題だとしますと、なかなか特許全体についてその実施状況がどういうぐあいになり、どういう弊害がありというようなことまで積極的にとらえて運用するということがなかなかむずかしくて、やはり一般的にそういうことが議論になり、また、そういうことを背景にしてやっぱり実施権者が、この実施をしたいという者がこの九十三条の裁定に持ち込みやすいような、そういう形を見ていかなきゃならぬのじゃないかというようなことになります。どうもあまり過去においてうまい先例もないところでございますので、このごろ物質特許ができたことに伴って、それがどういうような運用になるのかということを見きわめて、具体的に問題を考えていく方が私はどうも適当なのではないかというふうに考えて、通常こう特許を実施しようとする者が出てくるならば、それ相当に九十三条の形で処理はできるのではないかというのが私の九十三条についての考え方でございます。
#90
○中尾辰義君 まあ、大体通産省はそういうような答弁であろうとは予想をしておるわけでありますが、それで聞いたんです。
 それじゃ質問を変えまして、裁定制度は長官もおっしゃったように、当事者間の協議ということがまず先決である、そういうことですが、この協議の問題で中小企業が実施権を請求したような場合、大企業等が権利を持っておる、大企業と中小企業の協議ということになる。その辺になりますと、どうしても対等という立場では非常にこれは弱いんじゃないか、中小企業の場合は。それはまず対価の問題とか、あるいは支払い方法だとか、実施時期だとか、ですから、そういうことで弱い中小企業のことを十分考慮をして裁定制度ともあわせて採用すると、そういうことはいかがです。
#91
○政府委員(齋藤英雄君) 裁定をいたします場合に、特許法上規定がございまして、通常実施権を与えますその範囲でございますね、どういう範囲で与えるかという、その設定すべき範囲でございますとか、あるいは対価の額、どのくらいの対価を払って通常実施権を与えるかというふうなことでございますとか、あるいはその支払いの方法、あるいは支払いの時期、こういうものもあわせまして裁定をいたすわけでございます。したがいまして、先生の設例でございます大企業、中小企業の場合でございましても、あるいは逆な場合でございましても、これは九十三条の場合は通産大臣でございますが、通産大臣が公平に判断をいたしまして、しかも、工業所有権審議会発明実施部会の意見も聞きまして、公平に判断をして裁定をするわけでございますからして、その辺につきましては裁定の範囲に一応入っておる。したがいまして、私どもは均衡のとれないような裁定が下ることはないのではあるまいか、こういうふうに考えておる次第でございます。
#92
○中尾辰義君 それじゃ、物質特許はその辺で終わりまして、次に、情報問題につきまして若干お伺いします。
 さきの六十一国会におきまして早期公開制度が導入されたわけでありますが、この早期公開制度によって発行される公開公報がその後どのような状況になっておるのか、その辺からお伺いをしてみたいと思います。
 まず、この公開公報の発行部数、これは資料によりますと、四十六年に始まってから公開公報の現在までの発行累計、これは実に三十一万二千百件、それから今後相当なかなりの増加をしていくことが示されておるわけであります。それから四十三年から見ると、わずか四年間で四倍にも発行件数が伸びておる。このような大量の公開公報が毎年発行されているわけですが、今後の見通しはどうなっておるか、その辺からお伺いします。
#93
○政府委員(齋藤英雄君) 公開公報は、言うまでもなく、特許につきましても、実用新案につきましても、出願がありましたものにつきまして一年六ヵ月を経過した後におきまして公開をされるものでございますからして、出願の件数によりまして公開公報の件数が決まってくるわけでございます。したがいまして、現在特許出願あるいは実用新案の出願につきまして数%、総合しまして五、六%ずつであろうかと思いますが、出願が伸びていきますので、それにつれまして公開公報の件数も伸びていくというふうに考えておる次第でございます。
#94
○中尾辰義君 それで、件数がふえるんですから、冊数もどんどんふえておる。しかし、これはあなたのところから資料いただいたんですが、「公告、公開公報の発行毎の有料配付及び無料配付冊数の推移」というのがありますが、これ見まするというと、公開特許の場合、四十六年度が有料配付が一千百八十三、四十七年度が四百六十三、四十八年度は三百九十六、四十九年度は三百七十四と、このように発行ごとに見まするというと、だんだん減っておる。これはどういうわけでしょう。
#95
○政府委員(三枝英夫君) お答え申し上げます。
 四十六年度の公開特許及び公開実用新案のそれぞれの公報でございますが、このときは四十六年一月一日からこの制度が採用されまして、その新法に基づきます出願について適用されたわけでございますが、遡及効として認められております外国を第一国といたします優先権主張に基づきまして日本に出願されてきたもの、これにつきましては、その出願――外国における第一国の出願時点にまで遡及して出願があったものと日本でも認められることになっておりますので、それが集中してここに出されたということでございます。したがいまして、その部数がそれだけたくさん出たということでございます。以後の経過において若干ずつ減少しておるという点でございますが、これは当初、新制度の採用に基づきまして、公開公報というのはいかなるものが出るのかという、やはり出願人、あるいは利害関係者等、全体の方の関心が非常に高かった。そういうことで有料の方の購入者数も多かったということが反映したものでございます。
#96
○中尾辰義君 そういう答弁もあろうかと思いますが、実際私は現物を見てみたんだけれども、これを見ますというと、非常に見にくい。これは写真版でとってそして印刷していますから、非常に字が細かくて見にくい。これはもう大企業なんか余り使ってないんじゃないですか。そういう声さえあるんですね。そういうことでこれは減ってきているんじゃないか、こういうふうに思ったりするわけですよ。つまり、公開公報の利用価値というものが、もう少し親切がない、大変でありましょうけれども。とにかく、出願した書類をぱっと写真に写してぱっとやっているものだから、どうも見えるところもありますが、虫めがねで見なきゃわからぬ、そういうところもあるように思います。この辺のところが問題にもなっているわけですが、どのようにお考えになります。
#97
○政府委員(三枝英夫君) ただいま先生御指摘のとおり、写真製版という形でやっておりますので、確かにその原版のできいかんによりまして、見苦しいあるいは見にくいという点があることはわれわれとしても認識してございます。それとまた、最近におきます技術内容の高度化等からいきまして、出願文書におきます発明の明細書等の中身、あるいはそのページ数、非常にふえておりますので、それを一年六ヵ月の間に処理いたしまして、その後、出願以後に出てまいりましたような補正というようなものまで含めまして、所定の期間にとにかく公開するというような形に運用しなきゃならぬわけでございますので、やはり期間的に写真という形でやらないと間に合わない。ただし、この制度採用の当時におきましては手書きのような、出願願書関係につきまして非常にもっと見にくい状態があったわけでございますけれども、その辺はタイプ印書というような形で統一してきてございますので、最近はかなり改善されてきておる現状にございます。
#98
○中尾辰義君 かなり改善しているとおっしゃるけれども、改善されてないから私はこう質問しておるわけでしてね。ですから、今度物質特許制度ができる、先ほどから私が質問したように、物質特許制度というのは非常に強大な権限を持つわけでしょう。それが今度公報に出るわけですから、かなりこれは関心もあろうかと思います。また、一面からいくと、そういう大事な公報でありますから、もう少し見やすく、親切にする必要があるんじゃないか、私はこう思います。
 それで、少し資料も集めてきたんです。政務次官も長官も御存じか知りませんが、こういう政府の出したやつは、これは大企業でも、さっき申し上げたような見にくい、虫めがねで見てみなきゃわからぬというので、あんまり利用してない。むしろ大企業では別にこれ見やすくつくっている。これは日本鋼管の公報ですが、こういうだれでも明瞭にわかるやつが民間にはできているんです。ですから、こんなものを一応は買っても倉庫の中にしまってあるそうですよ。そして大企業はこういうものをつくって、ここに要約と要部と入れて、これでもってちゃんと検索もするし、これは御存じでしょう。これ、あなた、長官が知らにゃ困りますよ。だから、そんなことかもしれぬなと思って私はこれ持ってきたんですがね。これ、一遍見てください。
  〔資料を手渡す〕
そういうことで、結論的には全文公開のそういう公報、それも大事でありますけれども、少し今回は処理を迅速にするということも一つの主眼であるわけでありますから、アメリカなんかに取り入れてありますところの公報の抄録とかそういうものを出願者に添付をさして、さらにそれをまた審議官がチェックする、そういう制度をとるということはいかがなんですか、長官。これは前回も質問ありましたけれどもね。
#99
○政府委員(齋藤英雄君) いま御指摘がございましたように、公開公報自身の印刷なりあるいは図面その他見にくいものがあるというお話でございまして、私どもの方も、今後それにつきましては注意をいたしまして改良するようにいたしたいと存じます。
 それから、公開公報要約を出すようにしてはどうであろうかと、こういう御質問であろうかと存じます。アメリカの例は公開公報ではございませんで、あれは公告公報の方でございまして、公告――要するに審査官が審査しまして、よろしいというものを公告いたしますが、それに対しての公報の抄録でございます。日本の場合は公開でございますから、当然審査前のものを、要するに、出出願したものを全部公開公報にいま出しておるわけでございますが、その要約ということに相なりますと、これは公開公報の要約というものとその公開公報の生のものと言いますか、原、オリジナルと申しますか、それとがどういうふうな関係になるかということが一つ問題点がございます。それで、公開公報の要約がまさにそのオリジナルの要部をあらわしておりまして、まさに発明の開示であるということでございますと、一つのこれは考え方になろうかと存じます。
 しかしながら、それにつきましては、一つはこれは出願人に当然負担をかけることに相なります。それから二番目には、その要約が適切であるかどうかということにつきまして、場合によりましては審査官の審査を要することになろうかと思います。したがいまして、審査官に負担がある程度かかることになります。現行法におきましては、言うまでもなく、審査をいたしますのは審査請求がありましたものだけでございまして、先般申し上げましたように、大体六割強のものをいま審査をするということになりまして、残りのものは実は審査をしないわけでございますから、その分につきまして、審査と同様ではございませんけれども、やはり全部一応相当程度の注意を持って見なければいけないと同時に、あるいは場合によっては修正をしなきゃいけないということになります。
 そういう負担の問題ございますと同時に、いわゆる発明の開示そのものに本当になるのかどうかという点につきまして、たとえば、私どもちょっとむずかしいことを申し上げて恐縮ですが、特許法の二十九条の二という規定がございまして、それは、最初に願書に添付された明細書の内容というものが非常に大きな要素になっておる条文もございます。そういうふうなことがございまして、これは前回の昭和四十五年法の改正の中間におきまして、実は実用新案と同じように特許も要部公開でいかがであろうかという案も一時出たのでございますが、以上いろいろな点――実際に出願人が出すといたしますと、たとえば出願人の実際のことを扱っておりますある程度の団体であります特許協会でありますとか、それの代理人であります弁理士会でありますとか、特許関係者の御意見等もいろいろございまして、最終答申では要部公開はやめまして、特許だけは全面公開に直したのでございます。最終答申には要部公開ではなくなって、全面公開に改正をされております。
 そういうふうな経緯もございますので、私どもこの考え方、やり方いかんによりましてはある程度の考え方ではあるまいかと、そういう言い方は非常に失礼でございますが、あるアイデアではあるまいかとも考えております。そういうふうな経緯と、それからそれに関係をいたします特許庁のみならず、その特許庁を取り巻く関係者一同の御意見も慎重に聞いて決めませんと、この問題は円滑に運行ができないのじゃないかということも考えられますので、私どもといたしましては、一つの考え方であろうかとは思いますけれども、その辺の意見を十分煮詰めまして、十分御意見をお聞きしまして、あるいは御意見を調整いたしましてその上で結論を出したいというふうに考えておる次第でございます。
#100
○中尾辰義君 まあ、長官の答弁も承りましたけれども、私は現実にそこに見せてあげましたように、現実は余り使っておらぬのですよ。現実ほど強いものはありませんよ、やっぱり。だから、せっかくつくるんだから、みんなが喜ぶようなものをつくって、情報は早くやって整備した方がいいんじゃないかと思うわけです。情報の問題につきましてはいろいろとお考えになっていらっしゃるようですが、将来マイクロ化するとか、マイクロ化するにしても、そういうものが当然これは要るんじゃありませんか、その辺いかがでしょうか。
#101
○政府委員(齋藤英雄君) 現在、公開公報のみならず、それ以外の諸外国の特許文献あるいは非特許文献等、いろいろ文献の数はますます多くなってきております。したがいまして、これを現状のままで置きました場合には、その整理と申しますか、あるいは分類と申しますか、あるいは審査官が審査をいたします場合につきましてのその審査、検索をする場合の手だてにどういうふうに使うかということ等をすべて含めまして、現状のままで推移することは私どもの方としてもいろいろ考えなきゃいけない問題が非常に多いかと存じます。その一つの方法といたしまして、マイクロ化ということも私どもは考えておりますが、その場合におきましても、いまの要約あるいはそれ以外の方法でその内容を的確にあらわし、かつコンパクトのものができますれば、スペースの問題もまた解決の一助になりますということも考えますので、そういうことにつきましては、いろいろ各方面の御意見を聞きまして、前向きの方向で検討いたしたいと考えております。
#102
○中尾辰義君 だからこの前の改正法のときも、これは情報の問題が問題になって、また、わが党の近江委員なんかも鋭く質問しておるわけです。それからもうすでに数年たって、何をやっていらっしゃったのか。工業所有権審議会の答申にも出てこなかったとおっしゃるけれども、最初から諮問したのかどうか。ですから、やはりあなたはいま前向きに検討するような意味の答弁がありましたけれども、これからどうなさるつもりですか。これからの計画といいますか、こういったようなものを取り入れていくのか、いくとすればどういうふうにするのか。意見は意見として当然聞かなければなりませんが、その辺のこれからの構想ですね。しかし、当分こんなものはだめだというふうに考えていらっしゃるのか、その辺のところはいかがでしょうか。
#103
○政府委員(齋藤英雄君) 先ほど申し上げましたように、内外国を問わず特許文献、非特許文献の量が非常にふえておりますと同時に、また、その質も非常に複雑になっておりますので、いまのままの状況でいくことはだんだんむずかしい事態になっております。したがいまして、たとえばマイクロ化一つの問題につきましても、私どもの方は、一部のものはすでに実施しておりますけれども、これから逐次計画をつくりまして、そのマイクロ化につきましても前進をさせていきたいと思っております。
 それからなお、この膨大な文献のいわゆる整理、端的に言いますと分類方法ということになりますが、そういうことにつきましても、現在のままの分類方法ではいろいろ問題もございますので、それにつきましてもこれは国際的に合わせるような分類の方法も考えておかなければいけない等、いろいろ諸般の情勢もございまして、現在庁内でその方面につきまして関係のスタディーグループをつくりまして検討いたしております。その検討の進み方と相待ちまして実現をいたしていきたいというふうに考えております。
#104
○中尾辰義君 その検討が進むにつれて実現の方向に持っていきたい、こういうわけですね。そうすると、まあこういうことも実現したいと、こういう方向なんですね、方向だけは。
#105
○政府委員(齋藤英雄君) 先生からお話ございましたが、私どもの理解では、いま申し上げましたように内外文献の整理、分類その他あるいはマイクロ化等を含めましてそういうことを計画的に前向きに進めていきたい、こういうふうに考えておるということでございます。
#106
○中尾辰義君 それじゃ委員会では結論も出ぬようですが、いずれにしてもこのままの状態では、先ほども言いますようにせっかくの公報が余り利用されていない。そして、私がいま見せたような現実が物語っておるように、特許庁が出したものをさらにまた企業の内部においてそれを書き直している、その辺を考え直した上で前向きに検討するということですが、その検討がいつ終わるのやら、また、これを工業所有権審議会にかけるということになりますと大体いつごろの見通しになるのですか、大体のそのめどですね。何もこの要約だけじゃありませんが、マイクロ化をするにしても予算も要することですけれども、大体いつごろになるのですか。その辺のめども一遍話をしてもらわぬと、ただ前向きに検討して、それから実現をしたい、これだけではどうも納得できません。いかがです。
#107
○政府委員(齋藤英雄君) 現在膨大な文献があって、私どもの方もこのままではいけないということを申し上げておりますが、私どもの一応のめどということ、これは非常に先行きでむずかしい問題ではございますけれども、ある時点におきましては特許協力条約というものに入ることを考えております。その場合には、当然各種の文献のある程度の文献を整備をいたしまして、分類をしまして、これを審査にも使いますし、あるいは民間の方にも利用していただくということをしなければいけませんので、その時期以前にその整備を終わりたいというふうに考えております。
 なお、これにつきましては、蛇足ではございますけれども、そういう関係を含めまして、いわゆるPCT、TRTの関係の国内関係の書類整備等も含めた実は調査官を、来年度昭和五十年度から一人専任に置くように私どもは考えております。そういう機構改正の関係も、現在審議中の予算の中に含まれておるわけでございまして、そういうことと相まちまして、本計画を進めていきたいというふうに考えております。
#108
○委員長(林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#109
○委員長(林田悠紀夫君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。特許法等の一部を改正する法律案の審査のため、明後二十日、日本特許協会専務理事岡野一郎君、弁護士松本重敏君、弁理士会会長小橋一男君、発明団体連合会常務理事北岡實君、武田薬品工業株式会社専務取締役立岡末雄君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#110
○委員長(林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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