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#1
第075回国会 商工委員会 第9号
昭和五十年三月二十日(木曜日)
   午後一時四十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         林田悠紀夫君
    理 事
                楠  正俊君
                小柳  勇君
                須藤 五郎君
    委 員
                小笠 公韶君
                剱木 亨弘君
                斎藤栄三郎君
                菅野 儀作君
                桑名 義治君
                中尾 辰義君
                安武 洋子君
                藤井 恒男君
   国務大臣
       通商産業大臣   河本 敏夫君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        嶋崎  均君
       工業技術院長   松本 敬信君
       特許庁長官    齋藤 英雄君
       特許庁特許技監  大谷幸太郎君
       特許庁総務部長  三枝 英夫君
       特許庁審査第一
       部長       土谷 直敏君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   説明員
       文化庁文化部著
       作権課長     国分 正明君
   参考人
       日本特許協会専
       務理事      岡野 一郎君
       弁  護  士  松本 重敏君
       弁理士会会長   小橋 一男君
       発明団体連合会
       常務理事     北岡  實君
       武田薬品工業株
       式会社専務取締
       役        立岡 末雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(林田悠紀夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本法案審査のため、参考人として日本特許協会専務理事岡野一郎君、弁護士松本重敏君、弁理士会会長小橋一男君、発明団体連合会常務理事北岡實君、武田薬品工業株式会社専務取締役立岡末雄君、以上五名の方々に御出席を願っております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、皆様には御多用中のところを本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうご
 ざいます。
 本日は、ただいま議題といたしました法案につきましてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にしたいと存じております。
 これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上お一人十五分程度でお述べを願い、参考人の方々の御意見の陳述が全部終わりました後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず岡野参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(岡野一郎君) 私は、日本特許協会の専務理事を引き受けております岡野一郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 当協会には、会長、副会長はもちろん、理事長、副理事長もおりますけれども、専務理事はいわば協会専従になっております。それで私を御指名になられたかと存ずるのでございますが、以下、当協会の考え方を率直に申し述べたいと存じます。
 まず、当協会の会員は、わが国の著名企業四百社余りで構成されておりますが、大手企業ばかりではなく、その大部分はいわゆる中堅企業でございます。その業種も鉄鋼、機械、電気、化学、商社等多岐にわたっております。そこで、場合によりましては全会員の意見が完全な一致を見るということはなかなか困難でございまして、十分時間をかけて討議しました上で、いわゆる小異をおいて大同につくという精神で協会の意見をまとめている次第でございます。したがいまして、後ほど御質問もあろうかと存じますが、会員各社の意見を伺っていないような事柄につきましては、専務理事の一存では満足なお答えもできないことがあろうかと存じますので、その点はあらかじめ御了承をお願いする次第でございます。
 さて、今回の特許法等の一部を改正する法律案におきまして最も重要な柱は、欧米諸外国の多くめ特許法が認めておりまする、いわゆる物質特許とクレーム多項制とをわが国にも導入しようという点かと存ずるのでございます。この点につきましては、当協会といたしましては長年要望しておりましたことでもありますし、まだ施行規則も明らかでない現在、細部の点は別といたしまして、基本的には賛意を表する次第でございます。この改正によりまして、ようやくわが国も先進工業国の一員として肩を並べることができるわけでございまして、御承知のとおり、すでに五年ほど前に調印済みであります特許協力条約、いわゆるPCTでございますが、の批准発効に備えまして、まことに時宜に適した御提案かと存ずるわけでございます。
 次に重要な点は、商標法の一部改正でございます。これも商標登録条約、いわゆるTRTでございますが、に、わが国もいずれは加盟する必要があろうかと存じますが、その準備のための第一歩というように承っております。今回の改正法案は、原則的には特許法の場合と同様に、工業所有権審議会制度改正部会におきまして、長期間にわたり十分慎重に御審議になった結論を取りまとめられました答申書に基づいて作成されております。この審議会には、当協会からも会長並びに理事長が委員として参画いたしましたので、審議経過等十分承知しているつもりでございますが、工業所有権関係の各法にわたりましていろいろ問題はありますにせよ、とりあえず緊急な重点項目に的をしぼって審議されたようでありまして、基本的には前述の特許法と同様、本法の一部改正につきましても賛意を表する次第でございます。この機会に審議会委員各位並びに関係御当局、諸団体各位に深甚の敬意を表する次第でございます。
 最後になりましたが、各種料金の改定につきまして、当協会といたしましては、その適正化を希望いたしており、会員の中には、今回の原案では一部高額に過ぎるのではないかというような意見も確かにございますし、また、その実施の時期につきましては、予算措置その他の関係から十分御配慮願いたいとの意見もございます。それらの点につきましては、さらに慎重な御検討をいただきたいと存じますが、大勢は、まあこの程度の値上げはやむを得ないであろうということでございます。
 以上のとおりでございますが、最も大切なことは、いろいろな面で国際的に協調していかなければならないわが国が、工業所有権関係諸条約で国際的に取り残されないようにしなければならないことかと存じます。何とぞ諸先生方の慎重な御審議によりまして、せめて今回の改正法案程度のことは実現されますよう希望する次第でございます。
 御清聴まことにありがとうございました。
#4
○委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 次に、松本参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(松本重敏君) 弁護士の松本重敏でございます。
 今回の特許法等の一部を改正する法律案について私の意見を申し述べます。時間も限られておりますので、その中で、特に私が審議会の委員として答申作成に至るまで直接関与いたしました、多項制の改正に焦点を合わせて意見を申し上げたいと思います。
 まず、改正についての答申の中にもありますように、私は、多項制への改正そのものについては賛成でございます。また、今回提案されております法案が、特許協力条約に一致させることを意図しつつも、なるべく従来のわが国の特許法の体系を変えることなく、最小限度の改正にとどめるという態度をもって貫かれている点も私としては賛成でございます。
 では、全くこの法案について問題はないのかと申しますと、私は、この改正法案を初めて見ましたそのときから幾つかの疑問点、問題点を持ち続けております。たとえ改正の意図そのものは正しくとも、立法技術において問題がありますときは、その結果、改正の意図が達成されないこともあり得るのであります。私がこれから申し上げたいのはその点でございます。
 問題の中心は、大変立法技術的なことになって恐縮でございますが、法案の性質上やむを得ないことかと存じますけれども、私の申し上げたい問題の中心は、特許法三十六条五項ただし書きの規定でございます。このただし書きは「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」という規定であります。何ゆえに問題となるのかというその理由と、ではどうしたらよいかというその提案、それを時間内に要約して申し上げたいと思います。
 問題の一つは、「実施態様」という用語自体の不明確性に由来することであります。その次には、この実施態様という概念が、特許法三十六条五項に突然顔を出して規定されているという点にあります。すなわち、他に根拠を持っていないということからくる法文としての不明確性でございます。現行法の「特許請求範囲」についての三十六条五項の規定は、三十六条四項の規定を受けまして、「発明の詳細な説明に記載した発明」について、その「発明の構成に欠くことができない事項」を基準として立法されております。そして、同じく特許法三十八条の併合出願におきましても、その一号は、やはり発明の構成に欠くことができない事項を基準として立法されております。したがいまして、私は立法技術といたしまして、三十六条五項における請求範囲についての規定は、あくまでも、この発明の構成に欠くことができない事項との関連がどのようなものであるかということが、明 になるような規定としてなさるべきものであると思います。しかしながら、いま私がいただいておりますこの法案は、ごらんのように実施態様という用語が突然三十六条ただし書きに顔を出すものとなっております。どうもこのままでは私には納得できない、納得できかねるということを私は感じております。
 多項制への改正の目的は、もちろんPCT――特許国際条約への合致という点に直接関連するものではありますが、その点にとどまるものではなくて、真に発明されたもののみが特許さるべきこと。そして、この特許された発明のみに国による保護が与えらるべきことという、特許法の本来の制度的理念が確実に行われるために、特許発明の保護範囲がどの限度にあるのかということを、第三者に対して明確ならしめるという点にあるのであります。つまり、特許出願人の責任において、特許保護の限界が画さるべきであるという理念が、その制度的表明としてなされるものが多項制ではないか、こういうふうに考えます。一言で言うならば、多項制実施のもとにおいて要請されるのは、特許権の範囲についての法的安定性にあるのではないかというふうに考えます。私が懸念いたしますのは、いまのままの法案で果たしてこのまま、このような多項制の改正目的の実現が不安なく結びついて行われるであろうかという点にあります。
 実施態様という用語は、用語自体といたしましてあいまいであります。私はそれから受ける語感といたしまして、特許法二条の技術的思想に対応するような観念として浮かぶのであります。そう考えますと、特許請求範囲の第二項以下に実施態様を書けといういまの法案の形でありますと、第一項の特許請求の範囲には技術的思想が書かれるということが反射的に思われるのではないか。そうなりますと、かえって請求範囲の限界が第三者に不明確なものとなってしまうという結果になりかねません。
 また、いま述べましたように、実施態様の言葉は三十六条四項には全く規定がありません。すなわち「発明の詳細な説明」の中には全く規定されておりません。また一方、現在の特許法施行規則の様式十六を見ますと、発明の構成が実際上どのように具体化されているかを示すものとして、実施例というものが記載さるべきことになっております、実施態様はこの実施例とも異なるものであります。どの程度に何が異なるのかということは、法文自体としては不明のままになっております。特許法三十六条六項に省令が定められることになっております。したがいまして、以上のような疑問は省令によって明らかにされるというのが法案の考え方であるかと思います。
 しかしながら、もし特許法三十六条五項の実施態様がいろいろに解釈される余地がありますと、省令で法文を明確化するというわけにはいかないのではないかと思います。そうしまして、三十六条五項の違反は特許法四十九条三号で拒絶査定の対象になるわけですから、これに対する不服の問題は、東京高等裁判所の判断に将来ゆだねられることになります。
 特に、今回の改正は物質特許の改正もございます。物質特許の請求範囲の書き方は、わが国ではいままで全く経験のないものであります。この物質特許の改正とこの多項制への改正とは不可分のものでございます。そして、物質特許を例にとってみてもおわかりになることかと思いますけれども、元来、発明というものは実施態様あっての発明でありまして、実施態様を離れて技術思想が思想だけとしてあるものではありません。このように考えてまいりますと、私は、現在の法案を国会において立法技術の面から立法の意図が確実に実施できるように検討する余地がなおあるのではないかと思います。
 では、どうしたらよいのかという提案でございますが、きょうの時点で私はまだ省令の内容を全く存じておりませんので、それほど具体的にいまこの場で申し上げられるほど明確な案を用意してあるわけではございません。ただ次の点だけを指摘しておきたいと思います。
 実施態様の用語は、もともとその沿革を尋ねますと、旧大正十年法の特許法施行規則三十八条に「發明ノ構成、作用、効果及實施ノ態様」とあった、この「實施ノ態様」に由来するものかと思われます。昭和三十五年度の現行法では、特許法三十六条四項で、従来の施行規則にあったこういう規定を施行規則から法律に昇格いたしますとともに、「発明の目的、構成及び効果」というふうに規定いたしまして、この旧施行規則にありました「實施ノ態様」という用語を削除したものであります。このようなわが国における立法の経緯から見るときは、また、特許法三十六条五項が同法の三十六条の四項を受けて規定されているという立法のスタイルから考えてみますときは、どうも私は、もしもこの実施態様の言葉を特許法三十六条五項に用いるならば、同じく同条の四項にも大正十年法のときと同じように顔を出しておかないと、バランスがとれないではなかろうかというふうに思います。そして、そのようにいまある法案を改めてみましても、少なくともいまの法案に比べてみまして、より明確になるということはあると思いますけれども、不明確になるとか、あるいは改正の趣旨に逆行するとかということは起こらないのではなかろうかと思います。
 以上、三十六条関係を申し上げましたけれども、そのほかの問題といたしまして私が考えますのは、特許法六十四条の「(出願公告決定後の補正)」及び百二十六条の特許後の訂正について、いずれもこれは従来どおり改正しておりません。そうして、特許請求範囲の減縮ということでまかなうということになっております。はたしてこのままで、多項制改正後行われます特許請求範囲の項自体全部の抹消という、新しく出てくるこの訂正補正の問題を支障なく運用することができるかどうか。また、多項制の趣旨が運用として誤りなく解釈されるかどうか、疑問なきにあらずと思うのであります。
 アメリカでは、このクレームというのが特許請求範囲に当たりますけれども、言葉の上自体でアクレーム、クレームズ、ドイツではパテントアンシュプルッフ、パテントアンシュプルッヘと、単数と複数で明確に区別されておりますが、日本語の性質上、この単数と複数との区別がありませんので、多項制になったあと、補正訂正の規定もこのような観点から検討する必要もあろうかと思います。今回の改正は同一カテゴリー、たとえば物の発明なら物、方法の発明なら方法について、三十六条と三十八条一号の両方の場合があります。そして、実施態様についていま私が申し上げましたような問題がありますとともに、三十八条一号という規定もこれは昭和三十五年法で入った条文でありますけれども、はなはだわかりにくい、むずかしい条文であります。
 そこで、最初の出願が審査の経過あるいは審判の経過におきまして、請求範囲の中から独立して特定の請求範囲の項全部を抹消する必要が生ずることが多く出てくるのではないかと思います。こういうことをすべて従来の特許請求範囲の減縮という用語の中に当てはめて処理してよいものかどうか。むしろ私は、減縮は一つの項の減縮であって、項全部の削除は、減縮のほかに削除とか抹消とか、そういう旨の規定を設ける方が、より多項制であるという趣旨が明確になるのではないかと思います。いまのままですと、特許請求範囲が多項全体として一つの特許請求範囲として把握されるという解釈論を生む余地が生じてくるように思います。特許法七十条が、特許請求範囲に基づいてその技術的範囲を定めるということを規定しておりますので、その特許法七十条との関連の問題としても、ここに問題があろうかということを申し上げる次第であります。
 最後に一言付言いたしたいと思いますけれども、特許法は、ただ特許庁だけでその全部を賄えるものではなくて、たとえば、権利侵害につきましては司法裁判所の権限にゆだねられております。そして、この特許請求範囲というものの解釈は、この権利侵害の場合に直接関連することであります。多項制への改正後、法律条文自体の解釈において国家機関相互間で、解釈上差異の生ずることなどあってはならないと思います。法律というものは、どのように改正しても、法文だけで一義的に明確にするということはほとんど不可能なことかとも思います。この特許発明というものを対象とする特許法の場合は特にしかりと言えるかと思います。
 ただ、法律の条文の趣旨を明確にするという改正目的のもとに行われました昭和三十五年法の現行法においてさえ、すでに幾つかの法文自体の解釈について判例上問題が生じております。今回の改正は、特許法の基本であります特許請求範囲に関するものでありますので、国会においても十分慎重な御審議と、及び改正後におきまして解釈上の疑義が残らないよう、十分に改正法の趣旨を説明されることをなさいますよう、その点の配慮を特にこの席をかりて要望するものであります。
 以上で私の意見陳述を終わります。
#6
○委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 小橋参考人、お願いいたします。
#7
○参考人(小橋一男君) ただいま御指名をいただきました弁理士会会長小橋一男でございます。
 特許法等の一部を改正する法律案に関し、弁理士会を代表して意見を申し述べる機会を与えられましたことを光栄に存じます。
 さて、この改正法律案の原案が弁理士会に示されたのは去る一月三十一日でありまして、その際の特許庁の御要請により、弁理士会は、とりあえず二月三日にこれに対する要望書、お手元に差し上げております資料1でございますが、を長官あてに差し出しましたが、それよりわずか二週間を経過したにすぎない、二月十七日にはすでに国会に上程されたのでありまして、私の個人の意見であればともかく、このような短期間に弁理士会としての十分な意見を出すことはとうてい不可能でありました。
 そこで、弁理士会内の専門委員会において急拠審議の上答申を得まして、三月十一日に緊急常議員会を招集し、常議員会の決議に基づきましてこの改正法律案に対する建議書、お手元に差し上げてあります資料2でございますが、これを特許庁長官に差し出した次第であります。そこで私は、お手元に差し出しました資料2の建議書に取り上げました問題点につきまして、弁理士会の意見を説明申し上げたいと存じます。
 まず、特許法、実用新案法に関する改正は、物質特許制度の採用と多項制の採用とを二本の柱といたしております。弁理士会では、この物質特許制度の採用については時宜を得たものとして賛成を表明し、今後その運用等についても御協力申し上げようと存じております。
 次に、多項制の採用につきましては、従来、わが国は世界独特とも言うべき単項制をもって実に九十年の長い歴史を歩んできておりますが、特許制度の国際化という視野から、このたび、一の発明について複数の項目で請求の範囲を記載する多項制の導入に敢然と踏み切られました点につきましては、弁理士会は心から敬意を表する次第であります。
 ところで、特許請求の範囲ということは、明細書の記載だけの問題ではなく、その出願が特許になった後、すなわち、特許権として独占排他的な権利が確定された後においてさらに重要な内容を持つものであります。
 従来の、単項制を主体とする現行特許法第三十六条第五項は、工業所有権審議会の答申書において、「多項制の採用にあたっての基本的考え方」という項目中で、わが国の単項制の基本条文として説明しており、多項制の採用に当たっては、この「第三十六条第五項を改めることが必要である。」云々の旨を強調されております。
 しかるに、今回提案されております改正案では、この単項制の基本条文に、「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」というきわめて漠然とした、たとえば実施態様を書いても書かなくてもよい、「妨げない」ですから、書いても余り役に立たないということを暗示するようなただし書きを加えて、特許法上の他に関連する重要な部分にはほとんど手を加えないで、これで従来の単項制を主体とするわが国の特許法の体系が国際的な多項制にくるっと変わる、そしてスムーズに運用できると考えるのはきわめて問題があるのではないかという問題が生じてきたわけであります。
 さて、このただし書きの項の実施態様という言葉がまことに漠然としております。特許庁の御説明によりますと、実施態様という言葉をどう定義されようとしているのか、まことに心もとないと言わざるを得ません。したがって、われわれ専門家でも不明瞭だと思っておるこの実施態様という用語を一般の発明家や出願人にも明確にするように、条文中ではっきりしてほしいと希望するわけであります。
 次に、この重要な多項制の特許請求の範囲の記載については、第三十六条第六項で、通商産業省令で定める旨を規定しております。ところがこの条項は、特許出願の拒絶理由に引用される重要な問題でもあり、また、PCT――特許協力条約との関連においてもすこぶる大切な条文であります。しかるに、この省令については、一切何も具体的に示されておりません。したがって、省令の内容を把握しなければ意見を申し上げるわけにはまいりませんが、その内容のいかんによっては、PCTの規則に違反するところも出てくるのではないかと心配しているわけであります。
 以上のような観点に立って、最善の特許法に改正していただきたいというところから問題点を取り上げて、建議事項の(イ)、(ロ)、(ハ)として取り上げたものでございます。(イ)、(ロ)、(ハ)は資料2に記載してございますが、まずこの(イ)の点について申し上げますと、「実施態様」という用語は、大正十年法の施行規則にあった、「實施ノ態様ヲ別項二附記スルコトヲ妨ケス」という条文を直ちに思い起させる言葉でありますが、今度実施態様として書くことができるものはやはり単なる付記ではないかという疑問を抱かせる一方に、先ほども申し上げましたように、実施態様という言葉は種々の意味で使用されており、特許審査上ないし明細書記載上とうてい定着した意味を持つ明確な概念とは言えません。したがって、この実施態様という言葉は発明の「一部又は全部の構成を具体化した事項」というように訂正した方がわかりやすく、明瞭になるのではないかと考えたわけであります。この訂正案は一例でありまして、最善であるとは考えておりませんが、いずれにしてもこの点を明確に規定して、混乱なく、スムーズに運用できるようにしていただきたいというのが私どもの本心であります。
 次に、(ロ)の点でございますが、特許法第三十六条第六項で、「特許請求の範囲の記載は、通商産業省令で定めるところにより、しなければならない。」と規定したことについての要望でありますが、このように省令に委任した形のままで、しかも、この規定に違反するということで出願が拒絶されるというのは好ましくないのではないか。省令にどのような規定が置かれるのか十分に明らかではありませんが、拒絶理由になる部分、特に従属クレームの書き方については本法に明確に規定していただいて、最初からその書き方などによって拒絶理由を出すというような、特許庁でも厄介なことのないようにすべきであると考えるのであります。さらに、この(ロ)のことにつきましては、省令案が示されていないということに多くの問題が集中しているのであります。PCTの規定に違反することがあってはいけないというような不安も抱いております。
 最後に(ハ)の点は、権利設定後の各クレームの取り扱いの問題であります。
 今回の改正案によりますと、独立クレームとこれに従属した二以上の従属クレーム、すなわち、いわゆる実施態様クレームを持った特許権または実用新案権が得られるわけでありますが、この独立クレームがなくなった場合に、そのような従属クレームはどうなるのかの問題があります。特許庁の説明によりますと、独立クレームのみに無効事由がある場合は訂正の審判で独立クレームを削除し、従属クレームを独立クレームに訂正することを認めるということでありますが、そのような訂正ですべて運用がスムーズに行われるものであるかどうか、また、実施態様であるとして書かれている従属クレームが、実は実施態様ではないというような場合があった場合にはどうなるかというような疑問も生ずるわけであります。そこで、訂正の審判でもし一つの発明または一つの考案が二以上になること、すなわち、二以上の従属クレームを必要に応じてそれぞれ独立クレームに訂正すること、これを認めるというのであれば、その点について法文上に明確にすることが必要ではないかと考えるわけであります。
 次は商標法の関係でございますが、その第一点は、更新登録出願の際の使用証明書提出の時期の問題であります。
 改正法案によれば、このような証明書類は更新登録出願と同時に提出すべきことになっております。今般の商標法改正は審議会の答申にもありますとおり、滞貨の一掃、審査期間の短縮、これを当面の大目的としてなされたものでありまして、この観点のみからすれば使用証明書類提出時期について寛大になり得ないことは理解できます。しかしながら、実際に使用している事実があるにもかかわらず、たまたまこの事実を証する書類が出せなかったという理由で大事な商標権を失効せしめるということは大きな問題であります。そこで、「同時に」という文言を削除することにより、拒絶理由に対する意見書と同時に完全な証明書を提出し得るようにされるべきであります。このようにしたからといって滞貨の一掃、審査期間の短縮という目的が著しく阻害されることは考えられません。特許庁の従来からの御説明によれば、更新登録をするまでの十年間の期間内に十分な準備ができたはずであり、同時提出を求めても酷ではないとされております。しかしながら、たとえば、同時に二件の更新登録出願をする場合に使用証明書を取り違えた、あるいはその他幾多の事例を想定できますが、このような場合にも個々の出願について見れば、そのための使用証明書は同時に提出されなかったことになります。私ども弁理士が代理する場合はこのようなミスはなかろうと思いますが、かかる立証書類のごときについてちょっとした出願人のミスで更新を許さないとするがごときは、この種法律手続のあり方としていかがでありましょうか。
 しかも、現在の運用要綱試案によれば、この証明書類の補正は許さないとしております。これに至りましては大いに問題であります。提出せられるべき証明書類の微妙な点において理解、認識にそごがあり、出願人側としては使用の事実を証する書類の提出があったと確信しているにかかわらず、審査官の判断によればそれでは立証不十分であるとされる場合を想定されれば、事の重大性は御理解いただけると考えます。このような場合に意見書提出の際、証明書類の追完が許されなければ、更新登録出願人すなわち商標権者の立場はきわめて不安定なものとなります。
 商標法関係の第二点は、いわゆる出願時のチェックの問題であります。
 前述しました運用要綱試案によれば、商標登録出願願書に出願人の業種を掲記せしめ、これと指定商品との関連で当該商標使用の意思の有無を推認しようとしておられるようであります。この根拠条文を現行の商標法第三条に求められているようでありますが、これははなはだ疑問であります。けだし同条の柱書は、「自己の業務に係る商品について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」というのでありまして、以降に述べる商標登録の要件を規制するのが、本条の趣旨であり、現に当該条文の見出しも「(商標登録の要件)」となっております。この条文を将来使用する意思を必要とする根拠条文として、省令により上述のごとく願書に業種を掲記することを要求し、もって出願時のチェックをしようとすることは、実質的に法律をもって規制されるべきであることを省令で律することに帰しはしないかと恐れるのであります。
 最後に料金でございますが、弁理士は料金について直接の利害関係は持ちません。しかしながら、組織を持たない出願人ないしは権利者、ことに中小企業の方々の声を代弁し、ことに国際的に見てわが国工業所有権関係の適正な料金額につき御意見を申し述べ、かつまた修正をお願い申し上げるべき責任があると確信いたしております。
 今回の料金は、一般的に二倍、すなわち一〇〇%の値上げとなっていることは、ここ数年来の異常な物価上昇、人件費の高騰を考えればやむを得ないという考え方もありますが、この種料金は光熱料金、交通料金等のごとき公共料金と同一には断じ得ないにしても、物価上昇等に即応して値上げすることを直ちに容認し得る性格のものではないと考えます。ことに、商標出願手数料が一挙に五倍に引き上げられることは、意匠のそれの三倍との関係においても均衡を失し、きわめて高い引き上げ率であり、また、一万円という額そのものも国際的に見て高きに失すると考えられます。
 たとえばイギリスの四千二百円、ドイツの三千八百円、フランスの四千八百円に比べると約二・六倍ないし二・一倍であり、アメリカの登録料を含めた一万三百円に比較して、この改正額一万円に登録料二万四千円を加えた三万四千円は実に三倍以上となります。このように、国際的水準より見ても異常に高い出願手数料をもって出願件数を抑制せんとする考え方は正当ではありません。出願時のチェック、取り消し審判における挙証責任の転換、更新登録出願に際しての使用証明書の提出等の一連の使用主義的色彩の強化措置により、商標登録出願の抑制は十分に期待し得るのであります、料金を高く取って出願件数を滅らそうとする考え方は健全でないのみならず、出願しなければならない商標については出願せざるを得ないのでありまして、この点から中小企業者にとって酷であるのみならず、意図しておられる抑制効果そのものもはなはだ疑わしいものであります。
 なお、本件に関しましては、お手元に差し出してあります資料3、4をごらんいただきたいと思います。
 資料3は、発明協会か商標の出願手数料などにつきまして求めたアンケートの回答でございまして、二倍程度が六〇・七%、三倍程度が一一・四%、五倍程度が五・八%でありまして、今回の値上げ案の五倍はその回答の結果と大いに違っておるんではないかと考えられます。また資料4には、四ページから六ぺ−ジに外国の例を掲載してございますし、十一ぺ−ジにはわが国の印紙代の変遷が示されておりますが、昭和三十四年以来商標と意匠との比率は十対六が保たれてまいっておりますが、今回の値上げ案による十対三・六の比率は、その歴史的事実を無視するものではないかと考えられます。
 次に、更新登録料でありますが、これは従来の二倍ということが予定されております。実に四万五千円であります。アメリカ、イギリス、フランスともに更新登録料を別途に取ってはおりません。そのために、手続きに要する手数料はそれぞれ七千円、一万四千円ないし二万一千円、八千七百五十円、七千八百円等でありまして、これらに比べれば更新に要する料金が異常に高額であることは一目瞭然であります。
 以下省略いたしますが、最後に料金の値上げの時期でございます。
 本改正法は、附則によりますれば、料金は公布の日からということになっておりますが、公布の日は事前予知が困難であり、私どもは代理人として、ことに外国の依頼者に周知せしめる時間的余裕がほとんどありません、しかるにかかわらず、前述した高率の諸料金の値上げが行われ、ことに高額の登録料が二倍に値上げになりますと大変な混乱を生ずることが予想されます、これらの事情をお考えの上、料金の改正実施施行時期につきましても、御考慮を賜りたいと御要望申し上げる次第でございます。
 御静聴ありがとうございました。
#8
○委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 北岡参考人、お願いします。
#9
○参考人(北岡實君) 発明団体連合会常務理事の北岡でございます。御指名を受けましたので、政府提案にかかる特許法等の一部を改正する法律案についての所見を簡単に申し述べさしていただきたいと存じます。
 まず私は、わが国特許行政の状況を改善するために、特許庁当局が年来鋭意努力を傾注してこられましたことに対し深い敬意を表するものでありまして、この法案もまた、工業所有権国際化の急展開に即応するための努力のあらわれであるということを十分に理解するものでございます。
 そこで、本改正法案の大きな眼目は、一つ、多項制請求範囲の採用、二つ、物質特許制度の導入、三、商標における使用主義への前進、及び四、料金の引き上げの四項目に要約することができますが、これらはいずれも、制度を時代の趨勢に適応させるように配意されておるものでございまして、その趣旨や方向につきましてはいずれも合理的であると認められ、賛意を表するにやぶさかではない次第でございます。しかしながら、この法案の内容ないしは条文の表現形態の中には、法案がそのままの形で法律として成立し、施行されました場合には、将来において不測の災いをもたらす恐れを禁じ得ない点がございますので、これらについてそれぞれ簡単に理由を申し述べ、適切な修正が施されることを希求いたす次第でございます。
 まず第一に、多項制の問題でございますが、PCT条約が発効いたしますと、その採用は必至であります関係から、従来の併合出願を援用した形で改正案の表現がなされておりますが、三十六条の五項ただし書き、「その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」とございますのは、これをめぐって解釈の相違が必然的に生じまして、これによっていたずらに混乱を招く恐れが十分にございますので、この点につきましては疑義を生じないような明確な規定が考慮されるべきであろうと思料されるものでございます。
 第二の物質特許につきましては、新たに開発された化学物質や医薬品並びに飲食物、嗜好物それ自体に特許権を与えるものでありまして、従来わが国がこれらに製造特許だけしか認めなかったというのは、産業政策面における国際競争力とか、国民生活への影響などが顧慮されたためだと言われておりまするが、この物質特許制度は、現在世界的な趨勢でありますのみならず、わが国近来の顕著な技術水準の向上に基づきまして、産業界から発明の保護、強化という要望が出されまして、その反映のあらわれであろうと存じます。したがいまして、物質特許制度それ自体にはもとより異論の余地はないわけでございますが、ただ、この化学物質に関する発明は、その他の発明とは格段に相違する点がございます。すなわち、物質特許を得るためには膨大な開発機構、完備した研究施設、広範な技術分野にわたる高度かつ優秀な研究要員の確保、膨大な研究開発投資及び長期に及ぶ時間的耐忍等が必要でございますから、この種の特許権を獲得できますのは、僅少の巨大企業に限られるのが一般であろうかと考えられます。
 これに加えて、巨大企業におきましては、経営面においてもきわめて卓越した能力を有しておりますので、製造から使用、販売、輸入等流通面までも含む膨大な独占権でありますところの特許権が戦略武器として縦横に巨大企業によって活用されますと、巨大企業の寡占化に一層の拍車がかかり、はなはだしい場合には、ある種の製品についての独占化も絶無ではないと考えられます。こうなりますと、はなはだ歓迎できない状況が社会に露呈してまいりまして、まことに社会的な不公正を一層助長することになると言えるわけでございます。
 たとえば、新たな化学物質を開発いたしますと、これに特許権が与えられる。その特許権を有する企業は、当然正当な経済活動として、当該物質の製造のみにとどまらず、販売、使用につきましても、自社または自分の系列の関係方面に限定することも可能と考えます。そうしますと、これでは無数に存在いたします中堅ないし中小企業人口の活動分野はますます狭められ、その活路が遮断されることになりまして、ひっきょうわが国産業構造のあり方にも至大な影響を及ぼすことは間違いないと思います。したがいまして、こうした特許物質につきましては、それを原材料として正当に購入あるいは使用したい向きにつきましては、特許法所定の裁定制度の運用を活発、明確かつ迅速化いたしますことによって、できる限り物質特許の採用に伴う不利益の状況を防除する必要があるわけでございます。
 第三の商標における使用主義への前進につきましては、TRTの加盟並びに出願の激増、滞貨の累積によって危機に当面している商標制度の刷新のために、これを幾分でも改善する実績が上がれば幸いだと存じますが、どうも法案を拝見いたしますと、抜本的な打開策としてはあまりにもなまぬるい感じがいたします。したがって、近い将来におきまして、当局としては商標制度の原点に立ち返って、さらに抜本的な改善を考究していただきたい次第でございます。
 第四の料金引き上げにつきましては、ごく大ざっぱに申しまして、先ほど小橋参考人の申されましたとおりでございますが、諸般の諸料金が大体倍増されております。商標登録につきましては一挙に五倍に達しております。このことは貨幣価値の低落、物価の高騰という経済現象にかんがみて、また、当局における料金政策等の面の配意もございますことと存じますが、たとえそれらが妥当な額であるといたしましても、インフレ収束が国を挙げて至上の急務とされております現在、物価抑制政策を推進する上からも、国民心理に大きく影響するような高水準の料金値上げは自粛されてしかるべきだと考えられます。
 のみならず、特許法等の一連の工業所有権制度は、産業奨励の趣旨を有しておる点からも、現在の物価水準にあまりこだわる必要はないわけでございますから、値上げを行うといたしましても、これを数割の程度にとどめられたいと考えておる次第でございます。
 次に、強く要望いたしたいことは、法案におきまして、料金の値上げに関する限り法律施行の日ではなく法律公布の日とされておりますが、現在、アラブの産油諸国を例外として世界じゅうが不況のあらしにあえいでおります。こういう折から、金融資金の逼迫はまことに深刻な状態にございます。したがいまして、料金引き上げの時期につきましては、でき得れば法律施行の日からとするのが相当と思量されますが、もし財政上の都合がおありになるといたしましても、少なくとも公布の日から五ヵ月程度の猶予期間が設けられてよろしかろうと存じます。このことは国内的に必要であるのみならず、海外諸国にあります日本特許所有者に、真珠湾のだまし討ちを思い出させるような唐突とした引き上げを行うことによりまして、彼らにわが国に対する国際的信頼感を損なうというようなことは、国際化時代におきまして決して策を得たものではあり得ないと思量されるからでございます。
 以上のとおりでございます。
#10
○委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 立岡参考人、お願いします。
#11
○参考人(立岡末雄君) 御指名にあずかりました武田薬品工業の立岡末雄でございます。本日の機会をお与えいただきましたことを厚く御礼申し上げます。それではただいまより申し述べさせていただきます。
 御審議中の特許法等の一部改正法律案によりますと、化学物質、医薬、飲食物等の発明に対しても特許が与えられるように改正されると承知いたしております。現行特許法がそのように改正されますということは、発明の奨励という観点、及び発明者に対して他の技術分野の発明者と同様に特許制度の恩恵に浴させることになるという観点、及びリスクの多い研究投資に対する投資意欲を向上させるという観点などから見まして、好ましい改正であると考えます。
 特許制度は、発明活動の領域におきます研究の競争を促すために役立つ制度でございます。さらに、特許が与えられる条件として、特許明細書に技術の公開が行われますので、公開されたその技術の上に立ってさらに進歩した技術を追求する研究が行われることになります。発明者や研究投資家以外の第三者の立場に立って考えてみましても、すべての人が進歩した技術の恩恵を受けることになりますから、特許制度は公衆にとっても望ましい制度であると考えます。
 天然資源に乏しいわが国は、これからもいよいよ技術資源の開発に努めなければならないと考えておりますが、多くの技術分野の中で、化学物質、医薬、飲食物等の特定の技術分野だけは研究の競争を促す特許制度が不必要であるとは考えられません。また、それらの分野では技術の公開を促す必要がないとも考えられません。国際的に見て著しく劣っている技術分野では特許を認めないという行き方があるのかもしれませんが、わが国の化学物質、医薬品等の技術分野がそれに該当するとは考えておりません。
 発明が生まれなければだれもが発明の恩恵に浴することができませんから、何をおいても特許保護を平等に認め、いままで特許を得ることができなかった分野においても特許を認め、それによって発明が生まれることを促進する必要があると考えます。特許の与えられない技術分野については大きい技術の進歩を望むことはむずかしいと考えますし、国際的競争の観点からながめましても、独自の製品が生まれるような、いわゆる物質特許の制度をわが国においても持ったほうがよいと思います。
 わが国の現行特許法で化学物質、医薬品、飲食物等の発明に特許が与えられないこととされましたのは、立法当時それなりの理由があったことと存じますが、それらの特定分野の発明者に対しては特許を与えないというような基本的権利において差別待遇を課することが、わが国の今日の状態においてもなおやむを得ないことであるとは考えにくいのであります。特許権は、わずか十五年間の短い期間の権利であり、この限定された期間の独占権の付与は平等であってほしいと考えます。
 医薬分野の発明につきましては、現行法では、公益の立場から特許を与えないこととされたという話も聞きますが、むしろ、すぐれた医薬を追求する研究意欲を失わせるような現行特許法のほうが公益に害があるのではないかと思います。医薬特許が認められましても、公益面からの必要がある場合には強制実施権を与える道が特許法の中に開かれておりますから、強制実施権制度の活用により問題は解決されるはずであると考えます。発明者、特許権者の利益と公共の利益とのバランスを図るために、強制実施権制度が設けられることは差し支えないと思います。
 また、改正法案に設けられております権利の制限、すなわち医師、歯科医師等の処方せんによって行われる調剤行為に特許権の効力が及ばないとする特許権の制限は、発明者あるいは特許権者として認めなければならない程度の制限であると考えます。
 化学物質、医薬品等の技術分野におきましては、わが国の技術水準が国際的に見て全面的にすぐれているとは言えないと思います。しかし、日本のほうが進んでいる分野のあることも間違いない事実でございます。物質特許や医薬特許を認めることになれば、その分野の研究が促進され、それらの技術分野の中で日本がおくれているところについても進歩が促され、技術の差はだんだん少なくなってくると考えられます。
 また、物質特許制度になりましても、化学物質の製造方法に対しましては従来どおり方法特許が認められるわけであります。さらに、製造方法の特許権者は、物質特許権者に対して強制実施権の裁定の請求を行うことができることになると理解しております。それによって製造方法の発明者も十分報われることとなり、よりすぐれた新しい製造方法のための研究と進歩も引き続き望み得ると考えます。
 ただ、従来間々見受けられました技術の進歩に役立つようには見受けられない製造方法の研究や、そのような製造方法の特許出願はその必要性と意義を失うことになると存じますが、これはむしろ研究の合理化に通ずるものであり、歓迎すべきことと存じます。
 物質特許、医薬特許、飲食物特許の制度は、すでに多数の国で採用せられております制度であり、それらの国々の中にはわが国の技術水準よりは低いと思われる技術水準の国も少なからずございます。わが国が物質特許、医薬特許、飲食物特許を採用いたしました場合、メリットばかりでなくデメリットもあり得ることは否定できないかもしれません。しかし、長期的また大局的に見た場合、メリットのほうがずっと多いことは否定できないと存じます。
 以上申し述べましたことを総合的に考えまして、物質特許制度の導入を希望するものでございます。
 多項制につきましては、実務上諸外国の制度と変わらない制度と考えますし、わかりやすい特許請求の範囲の記載が可能になると存じますので、その採用に賛成いたします。
 以上、私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとう存じました。
#12
○委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の陳述を終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#13
○小柳勇君 松本参考人に質問いたしますが、多項制のところですが、「実施態様」の言葉が不明確であるし、請求の範囲につきましても、権利関係などで問題だからということで、弁理士会も同じように修正の意見があります。さっき弁理士会会長からお話がありました言葉、修正の言葉でございますが、「ただし、その発明の一部又は全部の構成を具体化した事項」、実施態様をそのように修正したらどうかという提案がなされております。これは一つの提案だと思いますが、松本さんいかにお考えでございますか。
#14
○参考人(松本重敏君) ただいまの御質問に対してお答えいたします。
 私、いまここで直ちにこれならいい、悪いということまではちょっと断言いたしかねますけれども、私はこういうふうに思うんでございますが、特許請求範囲の規定というのは、先ほども申し上げましたように、今度の改正法におきましても三十六条五項でございますので、三十六条五項というのは三十六条の四項を受けまして、「第二項第四号の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明」と、その四項に記載した発明を書くということでございますので、結局その特許請求範囲の記載を明確な規定にするためには、どうしてもこの四項の方に関連を持たないと、この五項の方だけの条文としてはなかなか一義的に明らかになるということがむずかしいのではなかろうか、こういう懸念を持つわけでございます。
 そこで、「発明の構成に欠くことができない事項のみ」というこの第一項の規定は、私はあることはむしろ非常に歓迎しておるわけでございます。ただし書きとしてどうするかということでございますけれども、このいまの「一部又は全部の構成を具体化した事項」ということが、先ほども申し上げましたように、片方、発明の詳細な説明には実施例というものが書かれることになっております。その実施例はどういうものかといいますと、先ほど様式十六で私読みましたように発明の構成を具体化したものということなので、表現としてはいまの弁理士会の方の御提案とほとんど一致しております。
 それでは、じゃ実施態様というのは実施例なのかと言いますと、やはりそうではなくて、実施例とは違うものだという理解がもうほとんど特許をこれ実際にやっております――私も訴訟のほうはやっておりますけれども、特許法のある程度実務をやっておりますと、実施態様という言葉と実施例という言葉は違うということは直感としてかぎ分けておるわけであります。しかしながら、それではどこがどう違うかということになりますと、いまのような表現にいたしましても区別がつかないんじゃないか。その点でいまのこの御提案が直ちにそれでいいというようなこともこの場で直ちにはお答えできない、こう思うわけでございます。
#15
○小柳勇君 松本さんは審議会の委員でもございますが、審議会の答申が出て、法案が国会に出された期間が非常に早かったという弁理士会の意見もありましたが、この法案をごらんになりまして、この三十六条の五項をどうしたらよろしい――審議の過程を御存じですから、その審議の上に答申を御存じですから、それを受けて三十六条の五項についてはどのような文言にしたら一番答申にマッチするか、あるいは今後の仕事の上で正確になるとお思いでございますか。いまの言葉は一例でございましたけれども、松本さんはどういう案をお持ちですか。
#16
○参考人(松本重敏君) これは純粋に私の個人的な考えとしてお聞きいただきたいんですけれども、私は、やはり三十六条五項の条文をつくるに当たっては、三十八条一号をどうするかということと非常に密接に関連しておると思います。先ほども申し上げましたように、もちろん三十六条の四項を受けるという制約があるのが一つと、それからもう一つは、やはり三十八条一号の書き方だと思うのです。これはすでに特許庁のほうから御説明があったかと思いますけれども、審議会の答申におきましては、この三十八条の一号というのは削除するという答申の考え方でできておるわけです。多項制の採用に際して、この三十八条一号はなくするという考え方が出ていたわけでございます。したがいまして、今度の法案はその点では答申とは違ってきておるわけです。したがいまして、今度三十六条の五項の規定をどうするかということは、結局この三十八条の一号が生きているという前提で考えなくちゃいけないと思います。
 そうしますと、私が先ほど申し上げましたように、三十六条の五項にも三十八条の一号にもともにある共通の基準は何かというと、「発明の構成に欠くことができない事項」という言葉でございます。そうすると、それを基準にして考えるとなりますと、私は一番いろんな立場の方が見て理解し、そこに解釈上のそごがないという考え方の立法の形式としてはやはりドイツの出願規則がございますけれども、そのドイツの出願規則の中であるウンター・アンスプルフという言葉――副特許請求範囲あるいは下位クレームというふうに訳されるかと思いますが、この考え方をこの「発明の構成に欠くことができない事項」という言葉との関連において帰一するのが一番法解釈としては誤りがないんじゃなかろうか。恐らく特許庁のほうのいま提案されておりますこの案の実施態様という言葉は、その言葉の内容としてはただいま私が申し上げましたようなことを観念しているのだということは推測されるのでございます。
 ただ、先ほど来申し上げましたように、実施態様という言葉自体が「発明の構成」ということと言葉上の関連がないこと、それから実施態様という言葉がいろんな意味に使われる言葉であるということから、第三者あるいは全然立場の違う方から見ますと、果たしていま提案されておるような意味を持つ言葉として実施態様というものが理解されるかどうかという点について懸念を持つという意味でございます。したがいまして、ここの場でどうしたらいいかということは、先ほど申し上げましたように、私としては、特許庁がいまさらに検討しております三十六条の六項に設けられる予定になっております省令のほうでどういう内容になるのかということを検討さしていただいた上で考えてみたい、こうふうに思っております。
#17
○小柳勇君 第一日目の質問のときにもその点いろいろ質問をしたんですが、特許庁の方も法制局といろいろ詰めの段階で大変苦労してこの文言になったようです。法文上の問題、ただその言葉が私ども読みましてもはっきりしない。で、法文が生きて――これは町の発明家も読んでわからにゃなりませんからそういうことを言っているのでありますが、なかなかいまのところいい知恵もありませんのですけれども、私も省令の案を見たいと思っております。早急にひとつごらんになりまして知恵を貸していただきまして、また、特許庁長官もいろいろ御相談をされると思いますけれども、知恵を貸してもらいたいと思います。まあこのままでやむを得ぬ――最悪の場合やむを得ぬといたしますならば、附帯決議などでいまおっしゃったようなことはちゃんとしておかなきゃならぬと思うわけでありますから、いまのところ私どもとしては何とかこの委員会でわかりやすい言葉に修正をしたい、そのような気持ちでおりますものですから、今後とも知恵を貸してもらいたいと思います。
 いま一つ弁理士会の会長さんに質問いたしますが、これもやはり松本参考人のほうがいいでしょう。
 私、前の法改正のときにもちょうどこの委員会にいたんですが、全文公開にするか要部公開にするかという問題が、要部公開のほうで小委員会のほうは通ったけれども、審議会のほうで全文公開になったという話を聞いています。今回もこの全文公開では莫大な費用だし、要部公開にすると概算六億か十億ももうかるんじゃないかというような意見もあるわけでありますが、ただ、制度が発足しまして数年であります。したがって、これを根本的に変えることはなかなかいまの段階では困難なようです。私もこれ長官ともずいぶん詰めておりますけれども、なかなか大変のようでありますが、諸外国でやっていますね、アブストラクトの、抜粋で。その過去の審議会のいきさつと、抄録を出していけないとするならば、現在のこの全文公開にプラス出願人が抄録を出すようなことではどうか、こう考えるわけですが、これは松本参考人と、それから弁理士会の会長さんにもその点御意見を聞きたいと思います。
#18
○参考人(小橋一男君) お答えいたします。
 抄録を出すことの可否、それは簡単にできれば結構だと思います。しかし、出願公開制度のもとでたとえばわれわれが範をとりましたドイツあたりで行われているかどうか。もし行われていないとすれば、問題があるから行われていなかったのではないかということで、やはり慎重に検討された上、もしやられるとすればやられるべきではないかというように考えております。
#19
○参考人(松本重敏君) お答えさしていただきたいと思います。
 私は前に、ちょうど四十二年ごろかと思いますけれども、公開制度の視察のためにヨーロッパとアメリカのほうへ調査団として行った経験がございますけれども、そういうことから考えて私常に感じますのは、やはり公開という制度をとる以上は、全文公開というたてまえは最後まで貫くことがとにかく大切なのではなかろうか。どうしても全文公開がとれないというならば、それは一体どこに問題があるのかということで考えなくてはいけないのじゃないか。だから私は、やはり公開制度というのは出願人の立場ということもあるし、それからそれを見る第三者の立場もあります。したがって、公開の文書が後に非常に膨大なものになるとか、たとえばそういうようなところに課題があるのでしたら、いまのことですから、これはマイクロフィルムとかいろんな技術的な問題で処理できる可能性もあるわけですから、予算措置その他ということで償うようにして、なるべく現行法で立っております全文公開制度というものは少なくとも特許法の法律、特許権においては貫くべき筋のものではなかろうか。そういうことを前提にしていまの公開制度が法律化されているのではなかろうか、こういうふうに私としては考えております。
#20
○小柳勇君 そのような話を聞きました。ただ、特許庁の分会の諸君などは、莫大な百五十メートルの棚があるそうです。なかなか大変らしい。リコピーやるだけでも、プリントやるだけでも大変だ、できないような情勢のようです。したがって、抄録を出願につけてもらえぬだろうかというような意見も聞いたものですから御意見を聞きました。
 いま一つは、弁理士会会長さんに。私も町の発明家から手紙をもらっているのですが、今度料金が上がるので大変だと。この料金のほかに弁理士さんにお願いするとまた相当、現在二万円ぐらい出願料、手数料出しておるけれども、これがまた倍になるのではないかという心配がありますが、弁理士会ではどういう空気でございますか。
#21
○参考人(小橋一男君) お答えいたします。
 私は、もうすでに任期があと三月三十一日まで一週間でございますが、いままで私の関知しました範囲におきましては、まだ手数料を上げてもらいたいという声には接しておりません。実は昨年の七月に上げたばかりでございます。しかし、今度法律が変わるということにつきまして、若干のそれによるあれは将来考えられるのじゃないかというように考えておりますが、その将来の問題につきましては、ただいま私としてはお答えいたしかねるのでございます。
#22
○小柳勇君 これで最後でございます。ほかの委員も御質問がございましょうから。
 商標の今回の改正ですね、これは出願がたまっているからこれを減らすのだということを長官から聞きました。現在使っておる証明を出して、そのことによって初めから選択していくのだというお話ですが、弁理士会会長のお話では、若干の、同時に出すことは無理じゃないかということをおっしゃっている。とするならば、何か商標の出願をうんと減らすような方法を一この前のとき、五年前の特許法改正のときには、いまの公開制度とそれから別の審査請求の制度ができました。商標の改正について何か別に腹案でもございましょうか。
#23
○参考人(小橋一男君) 実は、審議会には弁理士会の委員も出ておりまして、私も一員として列席しておるわけでございまして、審議会に対して弁理士会の意見を申し上げて、それが骨子として今回の立案になったのでございまして、われわれとしては、これ以外にいまのところこれだという案の持ち合わせばありません。
#24
○小柳勇君 ありがとうございました。
 松本さんにもう一問ですが、これは審判官や審査官の身分、地位の問題について御見解だけ聞いておきたいと思うのです。たとえば海難審判の審判員の問題とか、あるいは裁判官の身分などいろいろ身分関係はむずかしい。採用条件ともつながりがありますからむずかしいのでございますが、独立してこれだけの権利を確立していく仕事ですから、もう少し身分的に特許法の中で独立性を明確にしてくれぬかという意見があるわけです。諸外国の例など御存じであればお聞かせ願いたい。と同時に、もし見解でもあればお聞きしておきたいと思います。
#25
○参考人(松本重敏君) いまの御質問の御趣旨はどういうことか、私があるいは誤解する点があるかと思いますけれども、私のそれについての考え方をお答えさしていただきたいと思います。
 私はこの点につきましては、かねて日本の特許庁についてある願望を抱いております。それはどういうことかと申しますと、もちろん審査官、審判官というものは準司法的な判断作用である、特許の要件の査定というものが。そういう意味で裁判官的な要素を多分に持っているものであります。と同時に、それが画一的な法解釈というものが要求される行政処分であるという点もまた否定できないところでございます。私、ドイツの特許庁に行きましたときに非常に感銘を覚えましたことは、あそこには――その後制度が変わったようですけれども、審査官の中に、いわゆる一つ一つのケースの審判のほかにグロセセナート、すなわち日本では大部と訳されておるようですけれども、そういう特別の機構が制度的に設けられておりまして、これは五人で編成され、その中に必ず特許庁長官とそれから当該問題となった審判の担当三名が入る。そして御存じかと思いますけれども、ドイツでは無効審判の場合には必ず法律専門家が構成員の三人に入る。そういうようにして、新しい審査の基準あるいは法解釈というものを要求される審判あるいは審査、審決におきましては大部を開いて特許庁としての法的見解を常に統一するということを制度的に心がけておる。私はいままでの場合は、いわば単項制というものは特許制度の中で非常にわかりやすく、原始的な制度だと思います。したがって、非常に理解がしやすいという点では大変いい点があったわけです。
 ただ、それがあまりに単純であるだけに、技術の多様化というものに対応できなくなってきたということで、今回多項制に改正するわけだと思いますので、そうなりますと、多項制というのは非常にいろいろな点で、発明概念というものが出願の過程、無効審判の過程、特許の裁判における侵害訴訟の過程、こういういろいろな三つの場面で特許制度が出てまいりますので、その点の法解釈というものが少なくとも特許庁の行政の処分の場においていままで以上に明確にされる要請は非常に強いものであると思います。
 そういう意味で、あるいはいまの御質問とはちょっと別の観点になるかもしれませんけれども、ぜひ特許庁のこれは技術専門官庁という、特許法の施行という意味では法律専門官庁でもあるわけですので、その法律部面としての技術を法律的に把握して統一的なものに育てていく。これはある意味でいままでは審査基準という形で行われているわけですけれども、それをさらにより高めた形で、ぜひ統一的にこの多項性の運営が支障なく行われるような努力を従来に増してしていただくように要望したいと思っております。これはいまのに関連しての私の意見となるかもしれませんけれども、独立という意味では準司法的な裁判官という要素があることはもうそのとおりと思いますけれども、同時に、純粋の裁判官ではなくて行政処分の執行機関であるという点からもひとつ御高察いただけたらということをかねて考えておりますので、付言して申し上げさせていただきます。
#26
○小柳勇君 ありがとうございました。
#27
○中尾辰義君 私は、商標につきまして若干お尋ねいたします。
 弁理士会の会長の小橋さんにお伺いしますけれども、今回の商標の改正は、累積しているこの商標出願を何とかもう少し審査期間を短くして整理していかなきゃならぬ、こういう趣旨でございます。それでこういう改正ができておりますが、一つは、今回の改定で果たしてこの法改正の趣旨というものが生かされるかどうか、こういう点につきまして、たとえば更新登録の場合、商標を使用してなければこれは削除される。それだったらもう新しく最初から出願したらどうだ、場合によっては連合商標を出願しておいたらいいじゃないか、こういうような対応策も考えられるわけですが、そうしたような場合には、果たしてこの法改正の趣旨というものができるかどうか、この辺の疑問もあるわけであります。それが第一点。
 それから二点は、あなたの方のこの建議書にあります更新登録のチェックをする場合に、同時に使用の事実を証明する書類をつけて出さなきゃならぬ。しかし、これは政府側としてはおそらくここのところがみそであって、これ取っちゃったら骨抜きみたいになるんじゃないか、こういうような考えじゃなかろうかと思いますが、しかし、実際出す方から見まするというと、ここに書いてあるような書類不備等によって書類の審査段階でばっさりと削られたんじゃどうもうまくないじゃないか、こういう御意見でありますね。この辺のところをもう少しひとつ細かく明細に、非常に大事なところだと私思いますのでお伺いしたいと思います。その二点。
#28
○参考人(小橋一男君) お答えいたします。
 更新登録をしないで連合出願でやっていけるんではないかということでございますが、更新登録というのは、必ず実際にその同一の商標を更新していくわけなんでございます。連合ということは、同一のものではなくて、それと類似のものを出願していくという違いがあります。それから連合出願で、たとえば繊維関係で糸なんというのがございますが、昔は木綿糸、絹糸と皆こう分かれておりましたのです。これが現在は統合されまして、一つの繊維関係というものが一緒になりました。そうしますと、たとえば木綿に自分の登録がある、それの連合出願をいたしたいといたしました場合に、ほかのところにその類似の商標がなければ出してとれるわけなんですが、統合されている関係で、たとえば絹糸に同じような商標が存在しておる場合は、とろうとしてもとれないわけです。
 それと、そういうような既登録がないにしても、先に出した出願があればそれに規制される。あるいはまた、昔登録された当時には、そのときの状態では許されておっても、現在はまた法解釈などの違いによって商標の適格性が認められない、そのために連合出願ができないというようなこともございます。ですから、更新登録というのが仮に失敗した場合に連合でどうかということは一口には言えないと思います。どうしても更新登録をしたいものはしなければならないということかと思います。
 そして、更新登録の出願と同時にその使用を証する証明を出すという問題、これは御説明においても申し上げましたように、その扱いについて、特許庁では仮にミスがあった場合にも補正を許さないという扱いのように承っておりますが、そうしますと、現在盛大に便っておる、しかも有名だというような商標がありました場合に、それをもちろん時期的には十分従来のように間に合うように出しましたとしても、ちょっとしたミスでその方式に合わないという場合は、人間でありますからあると思うのでございます。その場合に、いや、もう絶対補正は許さないのだと。しかも、そのことがわかるのはもう更新の出願できる期間をとうに過ぎた後になって初めてわかるわけでございまして、そうであったかということで改めて出し直しがきかないわけでございます。しかし、この更新のチェックというのは、実際使っていないものをチェックしようということであって、使っているものをチェックしようというわけじゃないんですから、使っているものが、人間ですから犯すであろう誤りのために消されるということは、これはだれが考えてもおかしいと思うのでございます。そこを何とか考えていただきたいと申し上げるのが私どもの主張でございます。
#29
○委員長(林田悠紀夫君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#30
○委員長(林田悠紀夫君) 速記を起こして。
#31
○中尾辰義君 それでいま何とか考えていただきたいと、この何とか考えるというのをきょうは皆さんの意見も聞いておるわけですから、もう少しその辺をこういうふうにしたらどうだ、こういう御意見をお願いしたんですよ。
#32
○参考人(小橋一男君) 申し上げます。
 実はこのことに関して弁理士会といたしましては、総会を私どもの任期の最後の三月三十一日に開くことになっておりまして、たとえば「同時」という言葉が入れられなかったときにどうしたらよろしいかというようなことにつきましては、弁理士会会長としてはまだ詰めておらないわけでございまして、あとは個人的な見解になるかと思いますが、そういうことでお答えいたします。
 どうしてもこの「同時」という言葉が入れられない、変えられないということが国会の御審議で明らかになる場合は、私どもとしてはどうしてもやってくれと申し上げても、これはしようがないのならばやむを得ないと思います。ただその場合に、私どもの申し上げることを運用で間違いのないようにやってもらいたいというようにお願いいたしたいと思います。
 現在私ども教えられている運用は、補正は許さないということでございますので、その辺の御考慮をお願いいたしたいわけでございます。
#33
○中尾辰義君 私はお伺いしていますと、あなたはこういう建議書も出していらっしゃるんですから、ちょっと確信のないような御意見じゃやっぱりね、どうしてもこういうふうにしてほしいんだというそういう強い意見があれば、また場合によっては取り上げられる場合もあるし、どうしてもだめならというような弱いことでは、どうもこれはぱっとしないように思いますがね。まあ煮詰まっていないようですから……。
 それからもう一点、特許協会の岡野さんと発明団体連合会の北岡さんにお伺いしますが、これは小柳君の方からも質問がありました。公開公報にその要約をつけたらどうだとこういう質問があったんですが、まあただいまの答弁もお伺いしましたけれども、とにかくこのままではどうしようもないんじゃないか。特許庁の内報も見てきましたし、また、これから公開公報もふえてまいりますが、公開公報を見てみましても写真版でこうやっておりまして、字も細かいし、現実においてはああいう大企業なんかも、あれをそのまま使っておらなくて、別に会社は会社としてまた別なものを、見やすいようなものを改めてつくってそれを利用しておる、そういうようなこともあるわけですね。それから、将来マイクロ化していくんだから、それでいいんじゃないかというふうな発言もあったようですが、マイクロ化した場合でも、やっぱりこの要約というものは要るのではないのか。要らないのか。マイクロ化すれば、もう全文公開でそれ一本でいいのか。マイクロ化をしてもこの要約というのはやっぱり要るのであれば、これは検討していかなきゃならない、まあそういうように思うんですが、その辺いかがでしょうか。
#34
○参考人(岡野一郎君) お答えいたします。
 全く同感でございまして、実は私どもももう数年前にそういう提案をしたことがございます。協会といたしまして、公開公報そのものは全文公開されるのは当然といたしまして、その抄録を何とか出願人側に義務づける御方針がないかというような提案をいたわけでございますが、そのときのお答えでは、実はこれは大正十年法の中にも――これは施行規則の方でございますが、昔は確かに
 「発明ノ性質及目的ノ要領」という一項目がありまして、「発明ノ名稱」の次にそういうことを書いておったのでございます。それがこの三十五年法のときに廃止になっておりますのは、そういうことを明細書の中に書きますと、権利範囲の解釈上問題が起こりやすいということでやめたんだというようなことでございましたが、これは全然明細書とは別にそういう抄録はあった方がいいというふうに考えます。ただし、これは抄録と申しますと、御承知でもありましょうが非常にむずかしい問題でございます。何字ぐらいでどういう要領でやるというようなことがしっかり統一されておりませんと、発明者並びに出願人の方ではよく内容を知っておるのでありましょうけれども、知っておるだけにまた都会のいいように書いてしまう。それではまた困るのでございまして、第三者的に公平に、しかも用語なども、統一された用語でやらなければ将来効果的ではなかろうと思うのでございます。
 私も、ちょうど十年前ぐらいにドイツの特許庁で、審査官がそういう抄録カードをつくっているのを見てまいりましていろいろ説明を聞いたんでございますが、そこへ使います用語は非常に制限されております。で、明細書の中から用語を引っ張り出して、新しい用語がありますと、それはもうどの用語で表現するかということまで厳重に審査して、どうしても新しい言葉を入れなきゃ書けないというような場合には、その新しい用語を庁議にかけて登録するというようなことまでやっておるのだという話を聞いたことがあるのでございますが、まあ抄録というものは非常にむずかしいものだと。それでありますので、わが国ではそういう仕事をいま日本特許情報センターがおやりになっているかと思います。時間的にいろいろおくれるとか問題はあろうかと思いますが、これはもっと育成していくべきものかと存じますので、参考までに申し上げました。
 以上でございます。
#35
○参考人(北岡實君) お答え申し上げます。
 この要約の問題は諸外国にもその例がございますし、日本のただいまの公開公報ではまことに見にくくて、虫めがねをもってしてもよくわからないという現状にございますので、要約はつけるべきだと思います。ただその場合に、要約だけを見ますと、先ほどの岡野参考人が申されましたような状態が起こりますので、これはいつでも原本をマイクロで見られるような措置をあわせて御考究願いたいと存じます。
 以上のとおりでございます。
#36
○須藤五郎君 私は武田薬品の代表の方に三点質問いたしたいと思います。時間が切迫しているようですから、私も質問をできるだけ短くしますから、答えも短く答えていただきます。
 まず第一点は、日本の企業の技術格差は小さくないと私も思いますけれども、武田薬品あるいは業界として、欧米企業と対等にこの法案が通った場合にやれるかどうかという点が一点。
 それから第二点は、物質特許のメリットとデメリットをどのようにあなたは見ていらっしゃるかという点が第二点ですね。
 それから第三点は、薬品業界は今年五月に完全自由化になり、物質特許導入と相まって一定の影響がないとは言えないと思いますが、武田さんあるいは業界のこれからの対応についてあなたの御意見を伺っておきたい。これで三点です。どうぞその三点をお答え願いたい。
#37
○参考人(立岡末雄君) お尋ねのことに対しまして、ごく簡単にお答え申し上げたいと存じます。
 まず第一の御質問の、日本におきます医薬品、現在その技術レベルはどうなっておるか、国際的に見て競争できるか、こういうふうに御理解さしていただくのでございますが、現在の医薬産業におきまして、もちろん技術レベルのかなり高いと考えられますものもございますが、一方において確かに低いものもあるわけでございます。分野によりまして日本で非常に特徴がある、こう感じられるものも現実にございますわけでございまして、まあ私は、総体的に見ますればまずまず対抗し得ると考えておる次第でございます。日本の研究投資あるいは研究者の数と申しますか、同じレベルの外国の諸会社全体の仮にこれを十分の一といたしますと、全体の新薬の十分の一ぐらいが開発できるわけでございまして、それで日本も技術レベルは国際レベルと言い得ると私は考えております。で、物質特許制度によりまして技術の進歩を促し、技術格差のふえないように今後大いにやっていかねばならぬ、かように考えておる次第でございます。
 第二問の、全体としてのこのメリット、デメリットということでございますが、確かにメリット、デメリットはございます。先ほど私、陳述にも申し述べたわけでございますが、たとえばデメリットと言いますと、やはり企業間に格差があって、それが問題にならないかとか、あるいは公益に害がないかとか、あるいはまた外国と比べましたときに、またその外国が独占というようなことになりはしないかと、かようなデメリットを心配すると申しますか、そういう点のあることも事実でございます。しかしながら、一方におきましてメリットという点では陳述にも申し上げましたことでございますが、第一点として非常に大きなのは、技術が確立されてそれが公開される。公開されますことによって技術がますますその上に立って進歩していく、そして質的にも向上が期待できるわけでございます。それから第二点に、独自の製品が生まれることになるわけでございますので、国際的な発言力が発生してくる、かようないい点があると思います。三番目には、現制度下でのこの方法、防衛的に周辺をいろいろとやっていかねばならぬという、まあ研究的に見ますと、これがロスということにもなるわけでございますが、そういうものが減少してくるというメリットもあると存じます。かようなことを総合いたしますと、メリットの方がかなり多い、かように私は考える次第でございます。
 それから三番目の御質問の、いわゆる自由化がいよいよ完全自由化になるわけでございますが、そういう場合に、外国資本に押されはしないかという心配でございます。御承知のように、製薬業界ではすでに外資系会社がかなり上陸しておるわけでございまして、すでに私どもはその試練を経てきておるというふうにも考えられるわけでございます。一〇〇%の自由化になりますれば、さらにその攻勢が激しくなるということも確かに考えられるわけでございます。私どもといたしましては、このための特許の新制度のもとで国際競争に耐え得るように努力をしたいと考えておりますし、またそれは十分見込みがある、かように存じておる次第でございます。元来、この化学物質なり医薬というものは方法特許ないし不特許で、いままで一種の保護と申しますか、されてきたかと存ずるわけでございますが、それがためにかえって体質が弱くなっていなかったかというふうに見られる節もないとは言えないわけでございます。これに反しまして電気、機械でございますね。この分野におきましては、昔から物質特許であったわけでございますので、特にそうだからといって外国資本に圧倒されたというふうには思われないのでございまして、化学あるいは医薬の場合もこのように同じようにいけるんじゃないか、かように考えておる次第でございます。
#38
○須藤五郎君 立岡さん、武長薬品会社ですね、武田長兵衛。そこで外国の特許権を買って、そして仕事をしていらっしゃる、製品をつくっていらっしゃるが、その特許料というものはどれほど年間にお払いになっていらっしゃるか、その特許料を払うことがおたくの製品にどういうふうにかかってきておるか、そういう点ちょっと。どういう製品をつくっていらっしゃるか私は知らないんですがね。
#39
○参考人(立岡末雄君) いまのお尋ねでございますが、私どももちろん外国の技術を使うこともございます。一方に私どもが外国へ出しておる、また、場合によりましてはそれがクロスライセンスと申しますか、そういうこともやっておるわけでございます。したがって、そこには特許料を授受をするということにもなってまいっております。しかしながら、そのことが薬の面ということになりますと、一応やはりこちらで製造いたしましてもいわゆる世間にすでに同じ効力と申し、同効と申しておりますが、また、その周辺の品物もあるわけでございます。そういうことから見ますと、結局その値というものはそういうことに一種の基準が置かれるわけでございます。したがって、法外に特許料がここに非常に影響してくるということはないんじゃないかと私は存じておる次第でございます、また一方、原料を輸入しているものもございますわけでございまして、こういう場合は直接にライセンス料を払うということはないわけでございます。
 そういうようなことでロイアルティーということの詳細な数字は私、ちょっと存じないわけでございますが、全体としてはごくわずかでないか、かように思っております。
 以上。
#40
○須藤五郎君 もう一問。
 皆さん五人の方に最後に意見だけ伺っておきたいんですが、皆さん先ほどから意見を伺っていると、この法案は非常な欠点もあるという意見を強く述べられている方も二、三あります。それから、これで大体よいという御意見も出たように思ったんですが、この修正をすべきだという御意見をお持ちの方があるならば修正をすべきだと、それで、特にこういう点を修正すべきではないかという御意見まで伺っておけば結構と思うんですが、ちょっと一人ずつそちらの方からひとつお答え願いたいと思います。
#41
○委員長(林田悠紀夫君) 簡単にお願いいたします。
#42
○参考人(岡野一郎君) 私は特にございません。
#43
○参考人(松本重敏君) 私は、先ほどの意見陳述の中にありますとおりですけれども、さらに結論的に申し上げますと、いまの原案を最も損なわないと言いますか、最小限度でするならば、実施態様というのを三十六条四項の「発明の詳細な説明」の記載事項にも掲げておけば、いまよりもより明確にされるんではなかろうか、こういうことでございます。
#44
○参考人(小橋一男君) 私は先ほど申し上げましたが、資料2の建議書に八項にわたって問題点を指摘しております。もし相なるべくならばこれが修正できればありがたいと思っております。
#45
○参考人(北岡實君) 第一の多項制の問題につきましては適切な表現形式をとられたいということ。
 第二の物質特許の導入につきましては、ぜひとも公共の利益のための通常実施権の裁定につきまして、明確に、これを広義に解釈するような御修正を賜りたい。
 それから、料金の引き上げにつきましては、先ほど申し上げましたように、相なるべくは数割の程度にとどめていただきたい。なお、この施行は猶予期間を設けていただきたい。
 こういうことでございます。
#46
○参考人(立岡末雄君) 全体につきましては陳述でも申し上げましたようなことでございまして、ぜひいろいろの御考慮は必要かと存じますが、お進めいただくことがありがたいかと思っております。
 なお、先ほどの御質問に対しまして、私どもの会社はここ二、三年と申しますか、ロイアルティーそのものは受け取りの方が大きくなっておりますので、御参考までに申し上げたいと存じます。
#47
○藤井恒男君 時間がないので、一問に限って松本参考人にお伺いいたします。先ほどの陳述に少し重なる面があるかもわかりませんが、私も勉強の意味でお聞きしたいと思うので、重ねてお伺いするわけです。
 あなたは先ほどのお話の中で、立法の技術によっては立法の意図というものが必ずしもそんたくされない場合がある、その辺のところはきわめて重要だというふうにおっしゃいました。そういった面で多項制について私触れるわけでございますが、いわゆる三十六条五項、一発明多項と、この併願出願とを分離した概念として多項制を導入するということは、実務上少なからぬ混乱を招かれると懸念をされるわけです。特に発明のカテゴリーが同一の場合、この一発明多項と併願出願、いわゆる三十八条の第一号ですね。これをどう区別して運用するか、両者を運用で明確に区別しようとすると、場合によったらこの三十六条五項を骨抜きにせざるを得ない。多項制採用のメリットというのが、この面において失われるんじゃないかという懸念もあるわけなんです。そういった意味でこの多項制というものを前向きでとらえるという立場に立って、三十六条の五項とそれから三十八条の一号を一体化してしまうというような考え方が成り立つかどうか。もちろん、その場合の法文上の技術という問題もありましょうし、いろいろな問題も派生するかもわからないけど、大ざっぱに言って、運用面における混乱を免がれるという点において、私がいま申したようなことが可能であるかどうか。あるいはそういう論議がなされたかどうか、またあなたはどうお考えであるか、この点だけお聞きしたいと思います。
#48
○参考人(松本重敏君) いまの御質問、大変むずかしい御質問だと思いますけれども、私のそれに対する考え方だけ申し上げさしていただきます。
 私は、この現在の法案のスタイルでもし多項制に踏み切ったときに、一番大変なのは特許庁だと思います。いまの御指摘のように、三十六条の発明であるか、一発明であるか、それとも三十八条一号における関係かということの識別を特に同一のカテゴリーの場合について行うということになりますと、これは審査官が大変な努力をしなければいけないかと思います。しかし、それは行政庁である特許庁がその点の審査ができる。もちろん、それが前提でこの法案はいくわけですから、その点さえ十分に行われるならばこれは第三者、国民の側から見れば私はこの法案は非常にいい形として運営できるのではないかと思います。なぜならば、これはもしこれを一緒にいたしまして提出いたしますと、出願の段階ではそれが一発明多項としての出願なのか、多発明多項としての出願であるものなのかということが未確定のままで出願される。そうしますと、これは先ほど来ありましたように、今度の改正は国際特許協力条約に合わせるという意味が非常に大きいわけです。
 そうすると、その外国の考え方はどうなっているかというと、一つの特許の出願願書でなされたもののクレームといいますか、特許請求範囲は、それがたとえ同じカテゴリーといいますか、でなされても独立のクレームというものが二つ以上あっていい、そういうふうにしなければいけないと規定があるわけです。したがいまして、もし三十八条一号をとりまして両方を三十六条関係で一括いたしますと、出願人は非常に楽だし、その点のロードは特許庁も楽になりますけれども、しかし、それではどういうふうにしてPCT、この特許協力条約と合致させるかということになりますと、やはりその段階でどうしても審査しなくちゃいけない。したがって、出願の明細書を特許庁へ出す段階でチェックするか、それとも審査に入ってからチェックするかということの時間のずれの問題であって、基本的にはやるべきことは同じになるのじゃないか。そうなると、私先ほど意見陳述の中で申し上げましたように、やはり特許制度の中で今度の多項制の一番大切なことは――いままでは明治以来どちらかというと、むしろ出願人が、自分はこういうことを発明しました、どうぞお役人の皆さん、私の発明を育ててくださいという、国家による保護というものに期待しておった。今度の多項制はそうではなくて、もう出願人が自分で発明し、自分で国家の保護を受ける以上、自分のことは自分できちんとしてきなさいというその責任が、国家よりもむしろ出願人本人の責任において解決しろという考え方が徹底してきているというのがこの多項制の制度的意義だと。そうなると、非常に識別は大変であっても、いまのこの法案にあるように、三十六条の五項か三十八条はどうかということは、出願の段階で出願人が整理するということがやはり本来の多項制に合致する考え方ではないか、そういう意味で私は先ほど、この現在の体系を損なうことなく、多項制に進むといういま上程されている法案の考え方には基本的には賛成ですということを申し上げたのは、いまのような考え方が裏にあるからです。こういうことで御質問のお答えになるかどうか、そういうふうに考えます。
#49
○委員長(林田悠紀夫君) 他に御発言がなければ、参考人の方々に対する質疑はこれにて終了いたします。
 参考人の方々には、長時間にわたり御出席をいただき、また、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表しまして厚く御礼を申し上げます。
#50
○委員長(林田悠紀夫君) それでは、これより特許庁当局に対し質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#51
○須藤五郎君 大臣、六十三国会で特許法改正案を審議しました際、衆議院商工委員会では、「工業所有権制度に係わる内外の関係者の意見を十分に尊重し、特許行政の円滑な運営を図るよう措置すること。」という附帯決議をつけました。また、参議院商工委員会におきましても同様の趣旨の附帯決議をつけております。今回の法改正についてどのような方々の意見をお聞きになったか、伺っておきたいと思います。
#52
○政府委員(齋藤英雄君) 今回の法律の改正におきまして、私ども前回四十五年の改正以来、四十六年に工業所有権審議会の制度改正部会を開きまして、そこで物質特許、多項制の問題につきまして審議をすることを決めたわけでございますが、決めましてから工業所有権審議会の制度改正部会の委員の方々の御審議によりまして、一応答申のかっこうに逐次でき上がってきたわけでございます。それで、その段階におきまして物質特許は物質特許の小委員会、あるいは多項制は多項制の小委員会をそれぞれ別々に設けまして審議を重ねたわけでございます。その審議の小委員会のメンバーの方は、こういう技術的あるいは専門的なことでございますので、その方面のいわゆる学識経験者あるいはその関係、たとえば物質特許でございますればそれに関係する関係業界の方、あるいはそれを使用する方等、それからその技術の程度をいろいろ考え、御審議いただきます学識経験者、いわゆる大学の先生とかそういう方々ですが、そういう先生方相集まりまして審議を重ねて、小委員会としての結論を四十八年の十二月だったかと思いますが、一応出したわけでございます。
 多項制の方も同様にいたしまして専門の方々、ことにこれは法律的な問題もございますので司法関係の方々の御参加もいただいておりますが、そういう方々の御審議によりましてほぼ同じ時期に小委員会を終わりまして、四十九年の一月にあわせまして制度改正部会を開催をいたしたわけでございます。制度改正部会で中間答申が一応出まして、その中間答申を関係の各方面にいろいろ広くこれは御意見を求めることにいたしまして、庁の内外、中はもちろんでございますが、外につきましても東京のみならず、各それぞれの地方にも説明会を数回開いております。開きまして御意見をお聞きいたしました結果、四十九年の九月十七日であったかと思いますが、最終の答申をいただいてそれを法文化をするということに相なったわけでございます。
 商標の方につきましては、四十九年の一月に審議を開始することにいたしまして、これはもちろん商標関係のいわゆる専門の方でございますとか、商標を特にたくさん使われる産業界の方も参加をされましたし、あるいは学識経験者の方も当然参加をされました。そういうふうな方々が参加をされまして、四十九年の九月十七日に中間答申を出しまして、以後それを公開といいますか、いたしまして、広く皆さん方の御意見もお聞きいたしました。これは重複いたしますが、それぞれの地方にも説明会を開きまして、遠くは福岡の方からあるいは札幌の方までいろいろ説明会等も開きまして、関係団体のそれぞれ御意見も広く聞きました。そういうふうなことで、最終的には四十九年の十二月の十六日に最終答申をいただきまして、後、条文化に入ったわけでございます。
 この最終答申をそれぞれいただきまして条文化に入りましたわけでございますけれども、この条文の構成と申しますのは、先ほど参考人の方からいろいろ御意見もありましたが、私どもの方の法律のまあいわば専門家と言いましょうか、そういう人と、内閣の法制局、あるいは通産省のそれをつかさどっております官房におきまして、実は相当な期間をかけまして審議をいたしまして、条文も逐次でき上がってきたわけでございます。それでそれができ上がってまいりまして、それをそれぞれ中間の段階でございますと、いろいろまた法制局の意見等で変わりますものですから、大体の素案ができたところでこれもいろいろ庁の内外にお示しをいたしまして御意見をお聞きいたしまして、最終的に閣議決定という次第に相なったわけでございます。
#53
○須藤五郎君 長官、私が丁寧に隠さずに答弁してくださいと前もって申し入れたために、長官は非常に丁寧に微に入り細に入りお答えをしてくださっているわけですけれども、時間の関係もありますので、要点だけをひとつぜひお答え願いたいと思います。
 それぞれの方々、いまおっしゃったような方々、あるいは団体の意見はどのようなものであったか。また、これらの方々の意見が法改正にどのように反映されておるのか。たとえば、改正条文のここにこのように読み込んであるとか、この意見を政府としては取り入れることはできなかったとか、特許庁の対応について伺っておきたいと思います。
#54
○政府委員(齋藤英雄君) 物質特許につきましても、あるいは多項制につきましても、あるいは商標につきましても、実はそれぞれの御専門でございますために多種多様の御意見がございましたことは事実でございます。その御意見を総合的にまとめますのにそれぞれの小委員長、商標関係の小委員長、多項制、物質特許の小委員長いろいろ苦心をされたことも事実でございます。したがいまして、この御意見を一々申し上げるのはいかがかと思いますので省略をさせていただきますが、それを最終的に皆さんの――委員会というのは全会一致で最終的に決まるわけでございませんで、それを最終調整を小委員長がいたしましてそれぞれの小委員会の結論を出した、こういう次第でございます。
#55
○須藤五郎君 いま、いかがかと思いますがと言ったそこを私たち聞いておきたいと思ったんですが……。皆の意見でこういう意見が出たが、これはわれわれ通産省としては取り入れるわけにいかないからそれは除外した、そうして、そういう意見はこの法案のここに生かされておりますというようなことを伺っておきたいと思います。
#56
○政府委員(齋藤英雄君) たとえば物質特許におきましては、ある委員の方は、物質特許につきましては新規性であるけれども、これにつきましていわゆる裁定制度と申しますか、先般来委員の方から御質問がありましたいろいろな裁定制度についてこれを迅速にやれ、あるいは重視してやれというふうな御意見が出た場合もございます。それで、それが二、三の方から出まして、それは物質特許の裁定の要領試案といいましょうか、参考資料に一応裁定の要領がついておりますが、あれになって現実にあらわれてまいったようなこともございます。
 それからなお、医師の調剤行為につきましても、これはある方からいろいろ御意見がございまして、それも答申の中に書いてございます。条文化もこれはいたしてございます。
 それからなお、答申の中では、たとえば化学物質についての特許明細書の書き方、あるいは請求範囲の書き方を厳格に書いたらどうだというふうな御意見もございました。それも答申の中には一応織り込まれております。
 二、三の例を申し上げましたけれども、そういうことでございます。
#57
○須藤五郎君 物質特許制度についてお尋ねしてまいりたいと思いますが、物質そのものを特許の対象にするかどうかについては、現行特許法を準備する昭和三十年ごろ、また、前回の法改正のときにも検討されましたが、時期尚早ということで見送られたように私は伺っておるのでございますが、物質特許導入に至るいきさつについて、経緯について伺っておきたいと思います。
#58
○政府委員(齋藤英雄君) 物質特許の中で特に中心をなしますのは化学物質の特許でございます。化学物質の特許は、大正十年法のときに特許事由になったわけでございまして、その後大正十年法を大改正をするということで、昭和二十五年から三十二年にわたりまして工業所有権審議会が設けられまして、そこでその数年間の間非常に基本的な問題につきまして審議が行われました。その際におきましても、いわゆる基本的な物質創造、発見、これについて権利を与えたらどうであろうかという御意見もございまして、そのための世論調査あるいは業界に対する意見聴取も行われました。しかしながら、そのときには結論といたしましては時期尚早ということでございまして、化学物質の特許につきましては、今後わが国の化学物質の進歩と国際動向によって改めて検討すべきものと考える、こういう答申をそのときはいただきました。昭和四十一年になりまして、同じように先般御審議をいただきました昭和四十五年法の改正でございますが、そのときにも一応審議をされましたけれども、そのときにはいわゆる審査、審判の促進方策が中心でございましたために、同答申には、物質特許につきましては今後引き続き審議されるというふうに記されてございます。
 それで、その当時、昭和四十五年当時におきまして特許協会、先ほど岡野専務がお見えになりましたが、日本特許協会が関係各方面にアンケートをとりましたときには、物質特許を採用すべきであるという意見が大多数でございました。したがってそのときからそういうふうな、これは関係業界としては技術水準としてはしかるべき水準にすでに達しておるという見解が多数であったように考えております。なおそのとき、昭和四十五年の五月でございますが、言うまでもなく、本委員会におきまして附帯決議をいただいておる次第でございまして、先ほども申し上げましたように、四十六年以降審議会で御審議をお願いしましていろいろの答申を経て条文化した、こういうことでございます。
#59
○須藤五郎君 物質特許の導入につきましてどのような方々や団体の意見を聞かれたか、名前を明らかにしておいていただきたいと思います。また、それぞれの御意見がどんなものであったか、内容をできるだけ聞かしていただきたいと思います。
#60
○政府委員(齋藤英雄君) 物質特許の導入に関しまして関係の各方面からそれぞれ御意見をいただいております。御意見をいただきました方の名前を全部挙げるのもと思いますが、関係の業界、学識経験者としましては、たとえばソニーの井深さんでありますとか、あるいは微生物科学研究所の所長の梅沢さんでありますとか、あるいは東北大学の名誉教授の徳久さんでありますとか、東京農業大学の教授の小原さんでありますとか、あるいは日本化学繊維協会の技術委員長の菊地さんでありますとか各方面。あるいは医薬品の工業会の会長さんの、その当時は渡辺順平さんでございましたが、そういう方の御意見でありますとか、あるいは東京大学の薬学部の教授でございます岡本さんでございますとか、あるいは食品関係の方の御意見も聞いておりますが、そういうふうな方々の御意見を一応聞いておるわけでございます。
 それでなお、この御意見は、私どものいま手元にありますのはほぼ要約していろいろ書いてありますが、大別をいたして申し上げますと、こういう方々が新規物質の開発能力に関していまどういうふうに考えているかというふうな問題でありますとか、あるいは研究活動に及ぼす影響が一体どういうふうなことであるのかとか、国民生活に及ぼす影響がどういうことであるのかというふうなことであるとか、そういうふうなことと、さらに、物質特許を与えた場合におけるその物質特許と他の権利との権利調整の関係はどういうふうに考えたらいいのであるか、そういうふうな問題。一番最後の問題は、最終的には裁定制度ということに相なりましたわけでございますが、そういうふうなことにつきましてそれぞれ御意見をいただいたわけでございます。
#61
○須藤五郎君 長官、いまの名前とか意見はあとでまた私の方が必要とした場合、資料でいただきに参りますから、そのときにいただきます。
 それから、各団体や個人の方々の御意見では、一致して物質特許導入に賛成であったのかどうかということですね。条件をつけたが導入には賛成であったのか、あるいは反対の意見はなかったのか、その辺はどういうぐあいでございましたか。
#62
○政府委員(齋藤英雄君) 私が聞いております関係各団体の御意見は、これにつきまして全く反対という御意見は聞いていないのでございますが、それぞれ条件づきの賛成という方がかなりございます。それで条件づきの、たとえば条件につきましてはある薬の関係の方と申し上げた方がいいと思いますが、そういう方は、医師の調剤行為についての配慮をすべきであるとかいうふうな御意見を述べられて、そういう条件が満たされれば賛成であるとか、あるいは、これはある技術関係の方でございますけれども、さらに高分子物質の審査基準を明確に確立してくれというふうなことを言われた方もありますし、そういういろいろな御意見がありました。したがいまして、それを条件づきと考えていいかということがありますが、そういうふうなことが満たされれば賛成である、こういう御意見が多数であったように私どもは承知をしております。
#63
○須藤五郎君 今回の改正に当たりましては、改正の内容が重要なものですから、各産業における影響について調査をされたと思いますし、それぞれの産業の技術開発力も調査されたと思いますが、どのような調査をされましたか、伺っておきたいと思います。
#64
○政府委員(齋藤英雄君) 私ども基本的にはたとえば物質特許の小委員会の委員の方はそれぞれ斯界における専門家の方でございますし、かっその中に大学の教授等、技術面につきましての最高レベルの方がおられます。したがいまして、そういう方の御意見がまず中心になっておるわけでございまして、それ以外に、いま多少例を申し上げましたような関係の業界なりあるいは個人なり、そういう方を逐次小委員会にお呼びいたしましてヒヤリングを行いまして、そういうところで小委員会としては意見を聴取をいたしましてそれで判断をした、こういうふうなことでございます。
#65
○須藤五郎君 そのせっかく調査されました調査の結果はどうでございましたか、ちょっと聞かしておいていただきたいと思います。
#66
○政府委員(齋藤英雄君) 私どもが調査と申しますか、これは各小委員会の委員の方の御意見あるいは関係団体、あるいは個人の方の御意見、それぞれいろいろございますが、結局帰するところは、わが国の技術と外国の技術にどのくらい格差があるのかないのか、どの分野であるのかないのか、これが中心になるわけでございます。
 それで大別をいたしますと、たとえば石油化学関係におきましては、高分子化学工業のように大規模大量生産のような分野におきましては、既存の技術をベースにいたしまして工業生産を確立するという技術、それを改良効率化する技術ということにつきましてはあるいは欧米諸国にも劣らない、こういう意見でございましたが、なお、新規物質の開発、基礎研究、この方面については多少のおくれがあるんじゃないかというふうな御意見もございますし、あるいはファインケミカルの分野につきましては、医薬の産業部門におきまして新規物質を創製すること、あるいは従来知られておりまする物質の別の製造方法を開発する能力、こういうものにつきましてはこれは格差はないけれども、基本的な薬理と申しますか、そういうふうな基礎研究につきましてはやや総合的におくれがあるんじゃないか、こういうふうな御意見も指摘をされております。
 なお、それ以外に各方面でいろいろ御意見がございますが、その点は省略をさしていただきたいと思います。
#67
○須藤五郎君 物質特許に関連の深い化学、医薬、食品の業界につきましては、特に綿密な調査が必要だと思いますが、どのように調査をされましたか、伺っておきたいと思います。
#68
○政府委員(齋藤英雄君) 化学関係につきましては、化学関係の技術の、たとえば日本化学工業協会というところの技術の委員長の方おられますけれども、そういう方の御意見でございますとか、これは裁定制度を充実化しろとか、あるいは進歩性、有用性の判断をもっと厳格化しろとか、そういう御意見もございましたし、あるいは特に問題であります石油化学関係につきましては、工業協会の会長さんの御意見を聞いておりますが、やはり裁定制度の問題、基準の明確化の問題、あるいは記載の厳格化の問題、こういうふうなことを一応出しまして、そういうことが実際に実行されるならば、あるいは制度として保証されるならば賛成である、そういうふうな御意見を承っております。
#69
○須藤五郎君 その調査の結果はどのようなものでございましたでしょうか、ちょっと聞かしておいてください。
#70
○政府委員(齋藤英雄君) 調査の結果は、それぞれの小委員会の審議の途中でいろいろそういう御意見を聞きましたわけでございます。
  〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
一番最終的には、物質特許関係の答申の中に総括して織り込まれておるわけでございます。
#71
○須藤五郎君 長官、提案理由説明や補足説明では、日本の食品、医薬、化学産業は技術開発力が向上し、欧米諸国との技術格差があまりなくなったというような趣旨の説明がされておりますが、本当にそうであるかどうか、科学的な根拠を示していただきたいと思うんです。
#72
○政府委員(齋藤英雄君) この問題につきましては、科学的なということとなりますと、必然的にある程度数字であらわすということに相なるかとも思いますが、この数字がどういう指標をとりましたらば一番的確であるかということは、これはいろいろ問題があるところであろうかと思います。したがいまして、これは一、二の例でございますが、たとえばアメリカにおきます化学分野での特許の取得件数というのを私どもは入手をしておりますが、それで拝見をいたしますと、一九五七年あるいは一九六一年ごろアメリカにおきます化学のある程度の著名企業につきまして調べがございますが、日本は六一年ごろは非常に件数も少ないし、順位もいろんな国に比べまして、欧米先進諸国に比べまして一番下に類する程度で低うございました。しかしながら、一九七三年程度になりますと、取得件数はアメリカが――これはアメリカにおける特許でございますからアメリカが第一でございますが、アメリカ、西独、日本、スイス、イギリス、フランス、イタリアと、大体こういう順位になるような資料でございますので、この点につきまして、一九六一年から七三年までの間にかなり日本の化学の技術というものは進歩をして進んできているんじゃないかというふうにも考えられます。
 それからなお、アメリカの同じような資料がございますが、これにつきましても、いろいろ出願をされております中でアメリカの特許を取ります順位を考えてみますと、やはりアメリカ、西独、日本、スイス、フランス、イギリス、イタリア、こういうふうな順位が並ぶわけでございまして、これを見ますと、これは一九七一年の資料であると思いますが、日本の化学方面の技術というのは、少なくともスイス、フランス、イギリス、イタリアに比べましては全般的に見ましてそう劣っているとは言えない、むしろ場合によっては進んでいる部分もある、こういうふうに考えられるわけでございます。
#73
○須藤五郎君 長官がいま示された資料は私も持っております。特許庁の資料として、もらって持っておりますが、この資料によりますと、日本の技術水準が向上したことを示す例として、まず「化学系著名企業の国別米国特許取得件数」を挙げて、いま長官おっしゃったように、一九五七年における日本の化学会社の特許件数が四件で全体の〇・二%であったものが、一九七三年には三百七十七件で八・八%に伸びたことを示しておると思うんです。確かに前進はしておりますが、一九七三年で見ましても、米国は六〇・二%の特許を保有しておるのでありますね。そうすると、相当日本との格差は大きいことをここで明らかに私は科学的に示しておると思うんです。
 それから次に、「米国特許分類二百六十類」ですね。これは化学だそうでございますが、この中での日本のいわゆる特許取得状況を掲げてありますが、これは一九七一年発行のUSP調査、米国特許明細書の数字のようでございますが、そうですね。日本の取得件数は三百八十四件で六.九%、うち物質特許百二十三件で四・七%、こういうふうになっております。米国は、それぞれ六六・二%、六七・九%と圧倒的に優位に立っておりますが、さらに物質クレームとともに用途クレームのあるのは十七件――私の挙げる数が間違っていたら訂正してください、十七件。そのうち医薬用途クレームがあるのはわずか三件であります。
  〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
これでも格差は歴然としておると思うのですね。
 また、西独の公開公報による医薬分野の出願件数を引用してありますが、特許ではなく出願件数ですから、まあ参考資料程度ということになろうと思いますが、米国は三百八十一件の出願に対しまして日本は百五十一件と、半分以下の水準でございます。
 そのほか、わが国の業種別の研究費の推移、主要国の研究費の推移などの資料がここにございますが、いずれの資料も、日本の技術水準が一定度前進したとは言えましても、技術水準で国際的に競争できるとは言い切れないと思います。この点、通産大臣の見解はどういうふうに考えていらっしゃいますか。このような状態で国際的な競争水準に達しておると安閑としておれるものかどうかという点でございますね。
#74
○国務大臣(河本敏夫君) いまお話しになりましたような数字だと私も思います。アメリカから比べますと依然として非常に大きな差がついておりますし、ヨーロッパ並みと申しましても、私はまだ西独には相当及ばない、こういうふうにも思うわけでございます。でありますから、いま御指摘になったような面でわが国もこれからよほどの努力をする必要がある、こう思います。
#75
○須藤五郎君 私の手元に別の資料がございますが、これらの資料はいずれも政府が公表しているものでございます。科学技術庁が出しておるものでございますが、四十八年度科学技術白書及び科学技術要覧、工業技術院の研究開発及び技術交流に関する調査報告書概要、これは四十七年度実績でございますが、四十九年四月発行、総理府統計局の科学技術研究調査報告によるものでございますが、まず、主要国の研究費の対国民所得比の推移を見ますると、ソ連、アメリカ、イギリス、西ドイツを下回り二・〇八になっております。この点につきまして科学技術白書は、「科学技術会議は、「一九七〇年代における総合的科学技術政策について」に対する答申の中で、研究費の国民所得に対する比率について、三%をめざすべきことを指摘するとともに、一九七〇年代のできるだけ早い時期に二・五%に到達するよう努力すべきであると述べ、――こうした目標の達成は難しいと考えられる。この比率を主要国と比較しで見ると、ほとんどの国が二・五%以上であり、我が国はかなり低位にあることがわかる。」こういうふうに述べておるわけです。
 次に、主要国における技術貿易額について支払い額と受取額の対比を見てみますと、日本は受取額の約八倍を支払っておるわけです。米国は逆に十一.三倍の受取額でございます。この点を工業技術院の資料で見ますると、技術輸入額の七六%は北アメリカからでございますが、技術輸出は四八%は東南アジアと、こういうふうになっておるわけですね。つまり、技術輸出の割合が低いばかりでなく、輸出先も技術的な先進国ではなく、相対的におくれた国に向けられておるということがはっきりします。日本の技術水準のおくれている一つの側面だ、こういうことは私は言えると思うんでございます。
 次に、主要国の研究者一人当たりの研究費比較を見ますると、日本は首位イギリスの約三分の一、フランス、西ドイツ、アメリカなどの二分の一以下になっております。これは主要国における特許発明一件当たりの研究費の比較を見ましても、日本はアメリカの十分の一以下、こういうことでございます。西ドイツの二分の一以下になっておるわけなんです。
 また、主要国の外国への特許出願件数を見ますると、外国出願の自国内出願との対比は四分の一でありますが、アメリカは約二倍、スイスは四倍、カナダは約三倍になっており、国際的に競争し得る特許を持っている、こういうふうに見られております。
 また、主要国の業種別研究費の対売り上げ高比率を見ますると、全産業で日本は一・四、フランスは三・二、西ドイツは二・八と、こういうふうになっております。また、化学工業は日本は二・四、アメリカは四・一、フランスは三・五、西ドイツは四・九と、こういうふうになっていて、この点でも私は日本の水準は低くなっておると考えます。
 また、会社等の業種別の研究者一人当たり研究費は全産業で九百二十七万円なのに、食品は六百六万円、化学工業は七百九十万円と、平均以下の水準でございます。また、指数で見た会社と研究費の伸びでは、三十七年から四十七年を見ますると、全産業で五・八倍になっておりますが、食品工業化学工業とも四・八倍にとどまっております。
 さらに、ここに厚生省薬務局からいただきました「製造(輸入)承認された新医薬品の国産・外国産の割合」という資料がございますが、これを見ますると、四八%は日本で開発された医薬品となっておりますが、総理府の資料で、医薬品工業の技術輸出額と技術輸入額の対比を見ますると、四十八年度で支払い額は九・四倍に達しています。これは数ではある程度あっても、国際的に通用するものはあまりないということになろうかと思います。
 このような実態でも、通産大臣は物質特許を導入しても十分やれる技術水準にあると考えておられるのかどうか、御見解を伺っておきたいと思います。
#76
○国務大臣(河本敏夫君) いま詳しく数字を挙げてお述べになりましたが、私もそのとおりだと思います。先ほども申し上げましたように、アメリカなどに比べますとはるかに及びませんけれども、ここ十年の間にはわが国の技術水準も飛躍的に進んでまいりまして、ヨーロッパでもドイツを除けば大抵の国には負けない、こういうところまで来ておりますので、私は、物質特許の今回の導入は客観的にはその条件は整っておる、こういうふうに思います。
#77
○須藤五郎君 本当に研究を進め、そして、こういう比率から日本がそれを克服してそれでどんどん進んでいくというためには、やはり研究費などはもっと私は出すべきだと思うのですよ。ところが、研究費が非常に少ないということが私のいま示した資料ではっきりすると思うんです。通産大臣、金も使わないで、あの膨大な資料をもって金をつぎ込んでやっているアメリカと競争していけるというふうに私は考えられないと思うのですがね。大臣は非常に安易に考えていらっしゃるようでございますが、この法律が通って、そして薬品などは五月から全部自由化になるというような状態で、はたして競争していけるものかどうか、そういう点を私は非常に危惧の念を持つわけなんですね。大臣、どうですか、もっと研究費をどんと突っ込んで、本当の開発に本腰を入れなきゃいけないのと違いますか。
#78
○国務大臣(河本敏夫君) 私もその点は全く同感であります。先ほども技術貿易についての数字を挙げてのお話がありましたが、まことにアメリカなどに比べまするとお恥ずかしいような状態でございます。しかも、研究体制の話が出ましたが、金額もさることながら、やはりこの国内における研究体制というものも、アメリカやドイツなどの現在の行き方をよほど参考にしなければならぬ。金だけ出せばいいというわけのものでもありませんので、金額も大いにふやさなければなりませんが、研究体制の一元化、強化というふうなこともあわせて検討していかなきゃならぬ。特にこれからの産業構造も変わるわけでございますし、世の中がずいぶん変わっていくわけでございますから、おっしゃったように研究費に、これだけの産業の量になっておるわけでありますから、もっともっと努力をしなきゃならぬ、こういうことは痛感をいたしております。
#79
○須藤五郎君 先ほど武田薬品の専務の方が、大丈夫、競争やっていけます、こういうふうに胸を張って答えられて、私はちょっと驚いたんでございますが、大臣どうですか、業界が大丈夫だと言っておるから大丈夫なんだというふうに大臣お考えになりますか、どうですか。
#80
○政府委員(齋藤英雄君) 私から、差し出がましいようでございますがお答えさせていただきます。
 確かに先生御指摘ございましたように、あるいは大臣御答弁ありましたように、日本はアメリカなり、場合によりましては、部分によりましては、西独なりに対しまして必ずしも技術水準がそれより上であるということは言い切れない面が非常にございます。したがいまして、その方面につきましての危惧が全くないということではございません。しかしながら、私ども先般来、参考人の方もあるいは申されておったかと思いますが、ほかの国では、欧米諸国ではほとんどの国が化学物質、医薬等につきましての物質特許がございます。
 それで、これは先ほど申し上げましたアメリカ、西独、日本という順序でしばしば順序が出てまいります。それより順位が下の国でございましてもやはり物質特許があるわけでございまして、化学物質の特許があるわけでございます。それらの国が、アメリカなりソ連等の国にそういう方面で圧倒的な圧力を受けましていろいろ支障があるかどうかということになりますと、必ずしもその面はそうは言いきれないのではないかという気もいたします。したがいまして、私ども今後努力をしなきゃいけない点は、先生御指摘のとおりであると思いますが、物質特許を導入した結果、にわかにアメリカなり何なりの国に圧倒的に、これは何か言葉は悪いですけれども、圧迫されてしまうということにはならないのではないかということは、諸外国のそういう例を見ましても、私どもはそういうふうに思っておる次第でございます。
#81
○須藤五郎君 先ほど武田の代表の方がああいう意見を述べられました。それで業界の武田の専務さんは、十分対処できるというふうな御意見でありましたが、政府としましてはそれをそのまま聞いて、大丈夫だとこういうふうに受け取ってはいけないということを私は先ほどは申したんです。やはりもう少し科学的に裏付けを検討していくという責任が私は政府にはあるのだと考えております。もしも政府が、業界の見解を何の検証もなしにうのみにするといたしますならば、それは業界べったりの考え方で、国民の立場に立ったものとは言えない、こういうふうに私は思っておりますが、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
#82
○国務大臣(河本敏夫君) 私もその点におきましては全く同意見であります。
#83
○須藤五郎君 技術交流を別の側面から見ますると、昭和四十八年度科学技術白書から「国別甲種技術導入件数割合の推移」こういう図表がありますが、そこの項を見ますると、一貫して米国からの技術導入が五〇%を超えておるわけなんですね。また四十八年版の科学技術要覧の「分野別・国別技術導入件数割合」、それを見ますると、化学は五五・九%を米国から導入していることになっております。また、厚生省薬務局が調べた甲種技術援助契約の認可状況を見ますると、総認可件数の四六・二%は米国から導入したものでございます。さらにこれを逆にアメリカの側から見ますると、技術雑誌に引用されました米国の資料によりますれば、「アメリカ企業の国際ライセンス協定の地理的分布(一九六一〜一九六七年)」、そこでは総計千七百四十五件のうち二〇%に当たる三百四十八件は日本でございます。一国でこんなに多数な国はほかにはございません。
 もし、このような状態のまま強力な権利を持つことになる物質特許を認めるならば、大きな力を持つアメリカを初めとした欧米諸国の企業のさまざまな形での日本への進出によりまして、日本の関係業界に重大な影響を与えることは明らかであると私は考えます。現に、ある大きな化学会社の責任のある地位の方が、物質特許が導入されれば世界企業による征覇は行われるだろう、こういうふうに述べておられます。ある製薬会社の地位のある方も、みずからの力はなくても、技術を導入してこれを独占的に進めればやれると言っております。しかしこの考え方は、みずからの技術開発を進めて水準を上げていくのではなしに、これまでの経済合理性に基づいた利益中心の考え方であり、自主的な技術開発を進める立場ではないと思いますが、通産大臣、こういう傾向でよろしいものかどうか、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
#84
○国務大臣(河本敏夫君) これから御指摘のように気をつけなければならぬ点はいろいろあると思います。ただしかし、大勢としましては長官がいま申し述べたとおりでございまして、やはりこの法改正の条件は整っておる、かように考えております。
#85
○須藤五郎君 提案理由や業界のヒヤリングの中で、物質特許制度がなかったことが模倣的な技術開発に走らせたとか、みずからの特許を防衛するために技術開発がゆがめられたかのように言われておりますが、これは誤りではないかと思います。確かに模倣的な技術開発に走らせる一つの要因になったといたしましても、それが主要な側面ではないと私は考えます。物質特許制度をとっているアメリカでも、ある物質特許が出ると、他の者はそれと同様の効果のある物質を探し出す研究をいたしますし、この特許を守る発明者は、これを排除するために周辺の研究開発を進めて防壁をつくるということをキーホーバーの著書でアメリカの状態が報告をされておりますように、水準の違いはあれ、結果的には同様になるのであると私は思います。技術開発のあり方をゆがめてきたのは特許制度そのものにあるのではなく、業界と政府の技術開発に対する姿勢の問題でございます。
 戦後、日本の財界は、みずから金のかかる基礎研究は行わず、外国の開発済みの技術を導入し、高い教育水準の安い労働力を使って急速に成長してきたことは、だれも否定することのできない事実だと思います。この技術開発に対する考え方を根本的に改めることなしに問題は解決しないと私は考えておりますが、通産大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
#86
○国務大臣(河本敏夫君) まあ、私もいまおっしゃったようなことの傾向があったことは認めます。しかし、わが国の産業もここまで発展をし、充実をしたわけでありますから、これからはこれまでのような行き方は相当変えなきゃいかぬ、こう思っております。
#87
○須藤五郎君 変えなきゃいかぬとおっしゃるならば、一体どういうふうに変えていこうというお考えでございますか。
#88
○国務大臣(河本敏夫君) つまり、いま言われましたことは、結局日本の産業というものは、海外の技術を導入して、それでやったじゃないかという趣旨のことを言われたわけですね、それはよくないと。しかし、戦後のあの荒廃から日本の産業を世界的に競争力のある近代産業に急いでつくり上げるということのためには、やはりある程度私は万やむを得なかった、こう思うんです。しかしながら、最近になりましてから、自主的な技術の開発等もだんだんと行われるようになりましたし、先ほど来申し上げておりますように、ヨーロッパの大抵の国には負けないというところまで来ておるわけでございますから、今後はさらにその傾向を進めていきまして、新しい技術の導入ももちろん必要だと思いますけれども、国内において技術の開発を進めまして、そのことによってさらに日本の産業を発展させる、そういう方向に転換をしていくということが必要である、そういうことを申し上げたわけであります。
#89
○須藤五郎君 将来有用な医薬物質が開発された場合、あるいは微生物たん白が開発されたような場合に、これらの開発力のある大企業に物質特許として独占されるようなことになれば、私はきわめて重大な結果が起こると考えるわけです。技術の独占そのものは、九十三条の裁定や不公正があれば独禁法の対象になって、一定の改善がされる可能性がございますが、特許によって、実際の原価に比して著しく高い価格によってたとえば医薬などが売られた場合はどうなるのでございましょうか。物質特許で独占権が認められ、原価の調査も困難である現状で、政府としまして対策を持っているかどうかでございますね。この問題の重大性については、キーホーバーがアメリカの医薬の場合について詳しく報告しておりますが、日本でも同様であろうと思います。英国では特許法四十一条で一定の枠をはめておりますが、日本でもこれを規制する対策を持つべきだと考えますが、どうでございましょうか。
#90
○政府委員(齋藤英雄君) いま御指摘がありましたような、いろいろなケースが場合によりましてはあろうかと存じますが、薬の値段といわゆる医薬特許との関係と申しますか、それをまあいろいろなところから調べてみましたところが、医薬特許があるということと、それからその医薬が高いかどうかということとは、必ずしも相関関係がないように私どもの方は認識をいたしておるわけでございます、したがいまして、その辺のところは医薬特許があるから云々、ないから云々というところには必ずしもならないのではあるまいかと思います。
 かつ、現在の医薬は、これは私は厚生省の御所管でございますから詳しくはございませんけれども、薬効の顕著なものはほとんど全部国民健康保険に指定をされた医薬になっておると承知をしております。その場合には、いわゆる薬価基準と申しますか、これを収載することになっておるそうでございまして、薬価基準はその薬効を既存の薬品の薬効と比較をいたしまして、それによって大体その基準をきめるというふうにも聞いております。しかもその薬価基準に収載されませんと、実際国民健康保険としての薬としては使用されないということで、使用されません結果、その薬品の需要というものは非常に少なくなるというふうなことがございますので、むしろそちらの方面の、何といいますか、医療制度と申しますか、そちらの方面の行政によりまして薬の値段というものは非常に大きく影響を受けているんではあるまいかというふうに私どもは考えております。したがいまして、繰り返しでございますけれども、その医薬特許というものと、その薬価というものが直接的に関係があるかどうかという点につきましては、私どもは必ずしもそうではないんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
#91
○須藤五郎君 前回の審議で特許庁長官は、特許公報を科学技術情報として利用するために現行公開公報では問題があることを指摘されて、発明の要約を公開してはどうかという同僚議員の質問に対しまして、審議会の審議を経ていないと答弁されておりますが^それは事実でございましょうか、どうでしょうか。
#92
○政府委員(齋藤英雄君) 先生のお尋ねは、公開公報の要約ということにつきまして、今回答申を出す際に、要約にするのか、あるいは全文公開にするのかということについて審議が行われたかどうかというお尋ねであろうかと思うんでございますが、これは前回、昭和四十五年法の改正におきます審議会におきましては、私おりませんでしたけれども、聞くところによりますと審議をされたそうでございます。しかしながら、今回の、現在御審議を願っております特許法の改正につきましては、私はこの問題につきまして重要な議論が行われたということは実は聞いていない次第でございます。
#93
○須藤五郎君 前回の法改正に関する審議会の昭和四十三年四月十九日発表された中間報告ではかなり詳細な検討がされておるわけなんですね。一九六八年第九号の「発明」という雑誌の中に、特許庁総務課の名前で「工業所有権審議会中間報告の解説」が掲載されておりますが、これによりますと、公開の方法について全文公開と要部公開、リスト公開について、利害得失について検討し、さらに要部公開方式と全文公開方式について公開費用、第三者の便宜、審議官の審査の便宜、公開に伴う法律上の問題等、詳細に審議して要部公開をきめておるわけなんですね。御存じですね、その点は。――いや、続けますから。したがって要約を出願人に書かせ、不備があれば審査官が修正できるようにしておけば私は目的を達することができると考えます。要部公開に対する長官の見解をここで伺っておきたいと思うんでございます。
#94
○政府委員(齋藤英雄君) 経過につきましては、先生いまお話がございましたとおりであると思います。私がいまも申し上げましたように、今回の特許法改正の審議会ではこの問題は審議されなかったということは申し上げましたが、いま御指摘がありました前回の四十五年法の改正の審議会では審議がされておるということはお話のとおりでございます。それで、今回その要部公開の問題につきまして先般来御答弁を申し上げましたわけでございますが、この考え方は確かに一つの考え方であろうかという気が私はしております。しておりますが、これは先ほど参考人の中の御意見にもございましたように、発明というものはやはり出願公開という、その出願公開をする公開は、発明を公開をいたしまして、それが原則になっております。したがいまして、その要約というものがはたしてその出願者が意図している発明の要部を的確に表現をしているかどうかということにつきましては、これはいろいろチェックを要する問題が一つございます。そうしませんと、出願人が意図しております発明自身――明細書に書かれた発明自身が公開されないことになるおそれがありますので、その辺は各種の手段を通じてチェックをしなきゃいけないという問題がまずあろうかと思います。
 したがいまして、その要約をつくります場合には、だれがその要約をつくり、それをだれがチェックをして、実際の出願の本当の要約であるかどうかということをチェックをして、それを公開をするということになるわけです。そういうことでございますので、その辺につきましてはことに、やや技術的なことを申し上げては恐縮でございますけれども、先般の改正で入りました特許法の二十九条の二という規定がございまして、これは実は、最初に添付された明細書に書かれた事項をもとにしておる規定でございます。それとの関係もございますものですから、その辺につきまして私といたしましては、これはいわば、こういうことをここで申し上げるのは言い過ぎかと思いますが、全く問題にならない案とは私は考えておりません。おりませんが、いま申し上げましたようないろいろな問題点がございますので、その点はやはり今後慎重に詰めた上で、その辺の調整がつきますれば、私どもの方としてはしかるべく考える方法があろうかとも考えております。
#95
○須藤五郎君 この発明の要約、これは出願者の添付書類でありますね。それで明細書の一部ではなく、権利関係に直接影響なく、また、審査請求によって開始される発明の実体審査ではございませんね、そうですね。――さらにこの点は六十五条でもちゃんと手当てされておると私は思っておりますが、要約公開をやらない理由は私はないと思うんでございますが、特許庁長官の考え方を伺っておきたいと思います。
#96
○政府委員(齋藤英雄君) 先ほど申し上げましたように、発明の真の要約であるかどうかという点について問題があるということを先ほど申し上げたわけでございまして、そのチェックをどうずるかということ。チェックをする――仮に出願人が出しまして審査官がチェックをするということになりますと、これ、公開は言うまでもなく出願後一年六カ月経過したときに公開をするわけでございますからして、その間に出願全部について一応、まあ審査ほど厳重ではなくても、一応見なきゃいけないというふうなことに相なると思います。そういたしますと、審査官に対します負担といいますのは、かなりその辺は考えなきゃいけない問題があろうかと思います。現在でございますと、これは言うまでもなく審査請求がありましたもののみを審査をいたしまして、それ以外のものは、もちろん方式審査は別でございますけれども、実体的な審査はいたしませんので、その辺は手間がかなり違っております。今回、今後仮にその要約を審査官が見ることになりますと、審査請求のないものについてもこれを一応は見なきゃいけないということになります、チェックをしなきゃいけないということになります。したがいまして、その辺の審査官の負担の問題等も出てまいりますので、そういう諸般の問題につきまして私どもやはり各方面の意見も聞いて、その辺は調整を要する問題ではなかろうかと思います。で、もしその辺で調整がとれました場合に、それにつきましては私どももいろいろまた考えてみたいというふうに考えております。
#97
○須藤五郎君 審査官の負担が大きくなるというふうなお答えでございます。そういう点もあるかもわかりませんが、しかし、公開するに先立って分類をつけてきておるはずでございましょう。そうすれば、この作業の中で、審査官は明細書全体に記載されておる技術事項は把握して行うものであると私は考えます。必然的に要約のチェックは私は可能だと思うんでございますが、どうでございますか。
#98
○政府委員(齋藤英雄君) 先ほど松本参考人がちょっとドイツの例も申されたかと思うんでございますけれども、私ども専門家でありませんので術語の点はよく存じませんけれども、要約というものにつきましては、同一の技術的な意味があるものにつきましてはやはり同一の術語を使うということはこれはまあ当然だと思いますが、そういうふうなことで、術語の統一というふうなことでありますとか、表現の統一でありますとか、そういういろいろなものにつきましてかなり厳格な要するに見方といいますか、書類を見なければいけないことが生じてくるということは必然的になると思います。要約がAのものとBのものが表現が違うとかいうことになりますれば、これは見る人も不便でございまするし、実際上も意味がないことになりますから。そういうことがございます。したがいまして、その辺は、いわゆる分類づけをすると私ども俗語で呼んでおりますが、分類づけをするのとはちょっと程度が違うんではないかというふうに考えます。
#99
○須藤五郎君 ここで質問を少し変えまして、まあ大臣もいていただきたいと思うんですが、私は、
 コンピューターに入れるプログラムの問題ですね、このプログラムに特許権があるかどうか、あるいは著作権があるかどうかということで少し意見を伺って、また私も意見を述べたいと思ってるんですが、この問題は数年前から論議を、この商工委員会で特許法の改正が出るたびにこの論議が交わされてきておるわけなんです。
 私は、かつて著作権法を審議したことがございます。その著作権法を審議したときに、それは昭和四十五年五月七日の議事録に出ておるんですが、このプログラムですね、コンピューターに入れる、このプログラムに著作権があるかどうかという質問に対しまして、文部省の方は著作権があると答えていらっしゃるわけなんですね。ところが通産省は、著作権も特許権もないというようなお答えでした。私はそのときに例を挙げまして、電子音楽というものは楽譜に、五線紙に音楽を書くことができないと、電子音楽というものはね。それじゃどういうふうにその権利を認めていくのかという質問をしたことがあるんです。そうしたら、文部省の方も答えることができなかったわけでございます。それで私が、それじゃ政府が答えなかったら、五線符にあらわすことができない電子音楽とか、また、いわゆる五本の線を引いた五線符の上にあらわすことのできない音楽というものはこれからも出てくる場合が多いだろう、だからそれの著作権をどういうふうに認定するかということについて、私ひとつ意見を述べましょうと言ったんですね。それはやはりテープに吹き込んでおくとか、レコードに入れておいて、そして、ある人がそういうものをまた使ったら、ここにこういう証拠があるではないか、だから著作権法違反ですよということが言えるではないか、こういうふうに私は述べたことがあるんです。それでそのときの政府の答弁は、著作権があるという答弁でございましたから、その著作権をどういうふうに認めるかと言ったら困ってしまったから、私はそういうふうにしたら著作権がわかるじゃないかということを意見として申したわけなんです。
 そこで、きょうは文部省の著作権課長も見えておるようでございますが、こういう立場に立ってこの著作権をここではっきりもう一度確認しておいていただきたい。著作権はありますかどうですかという私の質問に対して、どうですか。
#100
○説明員(国分正明君) お答えいたします。
 コンピューターのプログラムが著作権法の保護の対象となります著作物であるかどうかということにつきましては、現行著作権法におきましては、明文の規定はないわけでございます。また、最近の一つの開発物でございますので、判例あるいは確立された学説といったものもないわけでございます。しかし、私どもが昭和四十七年に著作権審議会に御相談し、またその結果四十八年にその検討結果の報告をいただいておりますが、その見解によりますと、プログラムの多くは幾つかの命令の組み合わせ方にプログラムの作成者の学術的思想が表現され、かつその組み合わせ方及びその組み合わせの表現は、プログラムの作成者によって個性的な相違があるので、プログラムは学術の範囲に属する著作物であるという見解を示しており、私どももそのような考え方に立つ七おります。
#101
○須藤五郎君 これに対する通産省の意見はどうでございますか、特許庁長官。
#102
○政府委員(齋藤英雄君) 私どもの方は特許庁でございますから、著作権のことは非常に詳しくございません。したがいまして、いま著作権課長がお述べになりましたことを私は精密に理解はできませんけれども、従来私が聞いておりますところと同一でございまして、われわれも全く同意見でございます。
#103
○須藤五郎君 そのときに、時の宮澤大臣はこういうふうに答えております。私はやはりこのプログラムも財産権がある、だから、著作権で守られるか特許権で守るか、どちらかで守らなければだめじゃないかという意見を述べたんですが、そしたら、宮澤通産大臣はこういうふうに述べています。これは五月十二日の速記録に載っているのですが、プログラムは無体財産権であることに間違いはございませんと、「したがって、法の保護を要するというところまではほぼ専門家の意見が一致しております。しかし、その法の保護はいずれの法律からもそのままぴったり当たらない」というわけですね。そぐわないというわけです。「いわば新しい財産権でございますので、私ども先般御審議願いました情報処理の法律の関係で今後プログラムの売買について協会が仲介をするということにもなりますと、いよいよプログラムにいわば市場価格がついてくる可能性がございます。その場合に、これをどうして保護するかということについて、いわば新しい法的な裏づけをしなければならない、こういうふうに考えまして、ただいま私どもの役所で検討を始めたところでございます。」と、こういうふうに通産大臣は述べている。これが五年前の通産大臣の答弁。そこで、私は通産大臣に、今日通産省でどういうふうな検討をされて、どういう程度にこれが進行しておるかということを伺っておきたいと思います。
#104
○政府委員(齋藤英雄君) コンピュータープログラムの問題につきましては、これは私どもの方と通産省の内部の機械情報産業局の両方の関係のところでございまして、私の一存でお答えすることはやや越権かと思いますが、従来の経緯でございますので、お許しをいただきたいと存じます。
 コンピューターのプログラムの保護につきましては、通産省の内部におきまして昭和四十六年の六月からソフトウエアの法的保護調査委員会というのを設けまして検討を行いまして、その結果、昭和四十七年の五月に一応の結論といたしまして、「ソフトウエアの法的保護について」という報告書を出しております。さらに、昭和四十九年の九月には産業構造審議会の情報産業部会におきまして、今後の情報化産業のあり方という中間答申が出されております。それで、いずれにつきましても、ソフトウエアの流通促進、こういう観点から将来におきまして立法措置をしたらいいのじゃ、ないかということも含めまして、何らかの法措置を講ずべきであるということを指摘をいたしております。
 しかしながら、現在の状況を見ますと、今度は特許法あるいは特許庁の立場でこれを拝見をいたしますと、これは国際的にWIPOという機関がございます。世界知的所有権機関と申しますが、そこで国際的にこの問題は検討をされております。昨年の多分六月であったかと思いますが、にも、委員会が持たれまして、そこで特許庁からも出席をいたしまして、各国の状況を述べ合って検討をし合っております。また、国際的にも法律のあるひな形につきまして、AIPPIというところですが、そこで完全ではありませんけれども、ある程度の考え方の概要のようなものの素案を出しております。そういうふうに国際的にも現在まだいろいろ検討がされておる段階でございまして、各国とも特許の観点から言いますと、真っ正面からこれを特許法の対象にしておるところは少のうございます。またアメリカなどは、判例によりまして多少右に行ったり左に行ったりしているような傾向もございまして流動的でございます。
 そういうふうなことでございますので、特許庁の立場といたしましては、いずれもこれは国際的なやはり流通ということも当然ある問題でございますので、そういうふうなWIPOの動向、あるいは各国の特許制度の動向、そういうものを考えまして私どもの方もこれに対処をいたいたいというふうに考えております。いずれにいたしましても、いま申し上げましたような経緯でございまして、何らかのこれにつきましてぴったりした法律的な措置は必要ではなかろうかと思います。先生御質問がございましてから現在まで私どもそういうことをいたしましたが、国際的にも少しずつその点は進んでおる、こういうことでございます。
#105
○須藤五郎君 世界でソフトウエアを特許法のもとに保護している国はあるのかないのか、どうなんですか。
#106
○政府委員(大谷幸太郎君) ただいま長官が申されましたように、各国におきましてコンピュータープログラム自体を特許しているという国は少のうございますけれども、全くないというわけではございません。たとえばアメリカでございますが、アメリカにおきましては、特許庁では最初は、プログラムはメンタルプロセスであるということで特許をしないというような方針をとっていたわけでございますけれども、その後関税特許裁判所の判決というのが出まして、これに影響されまして、従来の特許しないという方針を撤回したことがございます。しかしながら、その後、関税特許控訴裁判所でございますが、そこから連邦最高裁判所に参りまして、そこでその事件が破棄されました。したがって、特許されないというようなことになりまして、こういった方針が特許庁の審査方針に響いているようでございます。したがって、現在は最高裁の判決によりまして許さないという方向で行っていると思いますけれども、若干の許した例があるようでございます。
 それからイギリスでございますが、イギリスでは、一九六九年に発行されました、特許庁長官の通達でございますが、これではプログラム自体を特許請求の範囲とする特許は認めないということになっておりますけれども、請求範囲を変更いたしますと、その記載を変更してコンピューター、いわゆるハードウエアというようなかっこうにいたしますと許すということで、実質的にはプログラムを許しているというような方針を打ち出しているようでございます。
 現在、外国の特許庁でコンピュータープログラムを許しているというようなところは大体以上のようなところでございます。
#107
○須藤五郎君 私はこういうふうに伺っているんです。英国と西独では特許法で保護しているというふうに聞いたんですが、どうなんですか。
#108
○政府委員(大谷幸太郎君) イギリスは、ただいま申し上げましたように、請求範囲の書き方によってプログラム自体を変えてきた場合にはこれは特許しないけれども、ただし、そのプログラムを内包した電算機、コンピューターというような、請求範囲の書き方を変えればそれで許しているということで、これは実質的に特許をしているということになると思います。これは先ほど申し上げたとおりでございます。ただし、イギリスにつきましては特許制度・特許法審議委員会というのがございまして、これは、特許庁でそういった形で特許しておりますが、しかしながらこの委員会では、いかなる形で特許請求範囲を記載しようともコンピュータープログラムは特許すべきでないというような意見を出しております。しかしながら、この意見は国際的動向を見きわめた上で決めるべきであるというようなことで、意見を出しただけでこれが実際にまだ動いているというものではございません。
 それから西ドイツでございますが、西ドイツにおきましては、実務上はこれは余りはっきりした方針が出ておりません。特許庁におきましては、コンピュータープログラムについての特許制についての決定は何もないようでございます。したがって、いわばこれは審査官の裁量で許しているケース、許してないケースがあると思います。しかしながら、西ドイツにおきましては、多くの専門家によって検討されているところによりますと、コンピュータープログラムについての特許保護の利用性を原則的に否定しているというような意見が多いようでございます。
#109
○須藤五郎君 これはいま文部省は、特許法じゃなしに著作権法で処理するということの方針ですね。そうじゃないんですか。その検討がされているわけでしょう、あなたの方で。そうじやないんですか。
#110
○説明員(国分正明君) コンピュータープログラムの保護につきましては、先ほど特許庁の方から国際的な検討の動向について御紹介があったわけでございますが、日本の場合にコンピュータープログラムを著作権法で保護するかどうか。私どもが検討いたしておりますのは、現在、先ほどお答え申し上げましたように、多くの場合保護の対象になるというふうにお答え申し上げましたが、その場合にどこまで著作権法によって保護し得るか、また、保護し得る限界はどうかという点についての検討を重ねておるわけでございます。
 たとえて申しますと、著作権法による保護でございますと、原則的には複製権でどこまで保護できるか、プログラムを複製するということについて著作権法の保護があるというふうには考えられますが、現在の著作権法ですと実施権というようなものがございません。これは工業所有権等と異なる点でございまして、そういたしますと著作権法による保護だけで十分であるのかどうか、それを著作権法の中にも、たとえばコンピュータープログラムなどの場合には実施権まて含めて将来改正を検討するのがいいのかどうか、あるいは何か特別の立法措置を講ずるのがいいのかどうかというような点になろうかと思いますが、私ども現段階におきましては、著作権法の保護の対象にはなるけれども、そのどこまで保護の対象になるのかということについて検討を進めている段階でございます。
#111
○須藤五郎君 これで私は終わりますが、コンピューターのプログラムに特許権を認めるとなれば、日本には相当大きな打撃が来るだろうとも私は思うんですよ。だから、コンピュータープログラムに著作権を認めろ、それから特許権を認めろという立場で私はいま質問をしているわけではないんです。しかし、そんなものを認めるべきでないという立場でもないわけなんですね。やはり権利として財産権があるという答弁だから、その財産権を私は守らなきゃならぬことだと思うんですね。それで、これを認めるとなるとここのIBM、あれはうんとこさとプログラムを持っているわけですね。そうすると、日本の産業というものはIBMにうんとこさと金を払わなきゃならぬという事態も起こるわけです。
 それが果たしていいのか悪いのか、これはよく検討をしなきゃならぬことなんですけれども、それじゃ特許権も認めない、著作権も認めない、それでまた宮澤大臣は、これは必ず将来大きな問題になる、私、よくこれは研究さしていただきます、どっちみち将来大きな問題になることははっきりしておりますからと、こういうふうにはっきり答弁をしておられる。私もそのとおりだと思うんです。将来必ず国際的な大きな問題になるということは、これは皆さんも認めなきゃならぬ点だと思うんです。だから、それをどういうふうに処理していくかということなんですね。私は芸術家でございますから、著作権に対して私は極力権利を主張しますよ。そこで文部省に、これは著作権なのかどうか、著作権でやるのかどうかということを聞いておるわけです。
 だから、文部省が著作権だと言えば、これは著作権を私は強力に主張します。著作権として認めてもおかしくない面もあるんですよ、これ。だって、コンピューターで思想、音楽すらも生み出すことができるんです、これはもう、いまやだんだんと進歩して。そうなると、技術、思想の面にまでこのコンピューターが使われていくということ、そういう点から言ったらこれは著作権と言い得るわけなんです。だから、どうするかという問題にいまぶつかっているわけですね。そうして、宮澤大臣も、将来問題だから早く検討しなくちゃなりません、結論を出しますと言っているから、その結論が出たかどうかということを私は伺っておるんです。大臣、どうですか、どういうふうに考えますか。これ、本当は国際的に重大な問題なんですよ。
#112
○国務大臣(河本敏夫君) 先ほど長官が申し述べたとおりでございまして、あらゆる角度から慎重に検討していきたいと思います。
#113
○須藤五郎君 大臣、まだこの重要性を余り深く認識していらっしゃらないような答弁で困るんでございますがね。私は、日本の産業がこれを認めたら日本の産業ががたがたになるからというようなことで、このコンピューターの財産権を認めないという方向にいくわけにもまいらないだろうと思うんですよ、国際的にね。そうでしょう、長官。長官もそれはと言って、この間私に言いましたけれども、それ以上私は申しません。長官の言ったことは申しませんけれども、それはつらいことであるかわからぬ。しかし、これから後に日本のそのプログラム制作の能力はどんどんつけていかなきゃならぬですね。
 それで、物質特許は、日本が競争力が弱いからこれまで伏せておいた、ところが、もう物質特許には自信が生まれたから物質特許法を今度出したんだ、こういうことでしょう。これはずいぶん考えようによってはおかしなことですよ。国際的に言ったら恥ずかしい思いをしなきゃならぬようなことじゃないかと私は思うんですがね。それと同じようなことをこのコンピューターのプログラムにおいてもまた繰り返されるのかどうかということです。そういうこそくな考え方じゃ、日本のコンピュータープログラム技術もなかなか私は伸びていかないように思うんですよ。そうでございましょう。だから、これをどういうふうにしていくかということは、これは大臣、大きな問題で、もっと積極的な答弁をしておいてもらわぬと困る。宮澤さんの答弁よりも後退してしまったようなことじゃ困ると思うんですがね、大臣。
#114
○政府委員(齋藤英雄君) 現在WIPOという国際機関でこの問題を慎重に検討しております。慎重にと申しますのは、法律的な意味も含めましてやや詳細な検討をしております。これにつきましての、たとえばこれを保護するといいます場合に、一体保護の対象というのは何であるか、プログラム自身であるのか、あるいはプログラムを生み出すアイデアであるのか、どっちを保護するんであるのか。それから今度は、権利者というのは一体それではそのプログラムを実際につくった人であるのか、それに金を出した人であるのか、それを要するにつくるように指令をした人であるのか――一例でございますけれども、そういうふうな詳細な問題がございます。
 それからなお申し上げますと、それでは、これは当然特許流に考えますれば、ある時期におきまして出願をしたらやはり公開をして、皆さんのそのプログラムの水準を向上することをしなければいけないということも考えられます反面、これは非常に、たとえばある企業で外部にわからないで使えるものでもございます。したがいまして、公開をした結果秘密に、まあ言葉が悪いですけれども、盗用されるという危険もかなりあるものでございます。そういう問題点が具体的にいろいろ出ておるわけでございまして、そういう問題につきまして、各国集まりまして、自分のところの体験を話しながらそういう個々の問題、もう一つ申し上げますれば、一体保護の期間はいつを起算にして何年間保護するのがいいんだろうか。特許法は、言うまでもなく出願公告から十五年でございますが、そういうふうな長い期間保護するものではないのじゃないだろうか、プログラム、ソフトウエアはもう少し足の短いものじゃないだろうかというふうな議論も行われておりますしいたしまして、そういうふうないろんな方面のことにつきまして、具体的に、かつ前向きにそういう国際機関で検討が行われております。
 私ども特許庁の担当官も実はその検討の場に出席をして、私どもの方の現状なり意見を述べておりますが、そういうふうな状況を考えますと、私どもの方が、たとえば日本だけ独得のソフトウエア保護の新しい法律をつくるということに関しましては、やはりその辺考えなければいけないんじゃないかという気が私はしております。したがいまして、その点はこれはもちろん特許庁だけの問題でもございません、通産省全体の問題であると同時に、かつまた文化庁の問題でもございますので、関係各方面ともちろん十分協議の上これしなければいけませんけれども、いま申し上げましたように、国際的にそういうふうにやや細部の検討までが行われておる問題でございますだけに、私どもの方はその検討に参加しつつ、われわれが考えていく方向にだんだん進めながらその問題を解決していく、こういうことにいたしたいと実は思っておるわけでございます。私ども現在にわかに、たとえば、これも言い過ぎかもしれませんが、来年それではソフトウエアの保護の法律を提出ができますということは、ちょっと現在申し上げかねる状況にあるということを申し上げたわけでございます。
#115
○須藤五郎君 私は、もうこれできょうは質問打ち切っておきます。
#116
○委員長(林田悠紀夫君) 速記とめて。
  〔速記中止〕
#117
○委員長(林田悠紀夫君) 速記を起こして。
#118
○須藤五郎君 きょう私、問題の提起でとめておくわけなんですが、これは国際的にも大きな問題であり、国内的にも大きな問題だと私は思っておるんです。だから、そういう重大な問題ですから、もう五年たってまだ何の変化もないというようなことではなく、やはり大いに検討を尽くされていかなきゃならぬと私は思います。その点問題を提起して、きょうはこれで終わっておきますから、どうぞうんと検討をしていただきたいと思います。
 これで終わります。
#119
○委員長(林田悠紀夫君) 他に御発言もなければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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