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#1
第075回国会 文教委員会 第12号
昭和五十年六月五日(木曜日)
   午前十時十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月四日
    辞任         補欠選任
     宮之原貞光君     松永 忠二君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         内藤誉三郎君
    理 事
                有田 一寿君
                久保田藤麿君
                久保  亘君
                加藤  進君
    委 員
                山東 昭子君
                志村 愛子君
                高橋 誉冨君
                最上  進君
                秋山 長造君
                粕谷 照美君
                鈴木美枝子君
                松永 忠二君
                内田 善利君
                矢原 秀男君
                小巻 敏雄君
                中沢伊登子君
   衆議院議員
       文教委員長代理
       理事       河野 洋平君
   国務大臣
       文 部 大 臣  永井 道雄君
   政府委員
       文部大臣官房長  清水 成之君
       文部省管理局長  今村 武俊君
       文化庁長官    安達 健二君
       文化庁次長    内山  正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瀧  嘉衛君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和四十四年度以後における私立学校教職員共
 済組合からの年金の額の改定に関する法律等の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
○文化財保護法の一部を改正する法律案(衆議院
 提出)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(内藤誉三郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 委員の異動について報告いたします。
 昨日、宮之原貞光君が委員を辞任され、その補欠として松永忠二君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(内藤誉三郎君) 昭和四十四年度以降における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですからこれより採決に入ります。
 昭和四十四年度以降における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#5
○委員長(内藤誉三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(内藤誉三郎君) 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては、すでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#8
○有田一寿君 本日提案されております文化財保護法の一部を改正する法律案につきまして、若干の所見を申し述べ、あわせて二、三の質疑をさせていただきます。
 わが国の文化財保護法に関する法律は、明治三十年の古社寺保存法に始まり、史跡、名勝、天然記念物保存法、さらに国宝保存法を経て、昭和二十五年、現在の文化財保護法の制定を見たものであります。その間、昭和二十九年に一部改正を見ましたが、それ以後今日まで改正は行われずにまいっております。今回、時代の趨勢、国民の良識を背景として各党合意の上でこの法律案が提案されたことは、まことに時宜を得たものであると思い、私は積極的に賛意を表するものであります。
 ただし、本法案の内容をつぶさに検討いたしますと幾つかの問題点があります。たとえば、五十七条に規定されている、重要な遺跡が発見された場合における行為の停止または禁止命令の期間についてであります。最高六ケ月という期間の上限を定めておりますが、これについて学術団体等は短か過ぎると批判をしているようであります。ただし、これは重大な私権になることでありますから、法制上私権の保護との調整を図ることも大切でありまして、現時点においては、本法施行後五年間は九カ月、自後は六カ月という期間設定はやむを得ないものと考えております。
 なおまた、周知の埋蔵文化財包蔵地における開発工事の規制については、現行法どおり届け出制としておりますが、なぜ許可制にしないかという強い意見も一部にはあります。保存と開発の調和ということを考え、文化財最優先でいけばそれも一案でありましょうが、周知の埋蔵文化財包蔵地が三十万カ所以上もあるという現況においては、調査体制の現状から見て、その区域を明確にしにくい観点から、私は本法案のごとく届け出制としたことは妥当なものと考えます。
 その他補償問題、地方公共団体と国との関係等幾つかの問題はありますが、将来、国民の文化財保存の熱意の高揚をまって理想的な姿に再改正する時期も来ると確信いたしますので、本法案につきましては現時点において賛成であり、河野小委員長ほか関係の方々の御努力に敬意を表するものであります。
 以下二、三個条的に質問をさせていただきます。
 第一、民族共通の遺産である各種の文化財がほぼ完全に保存されるためには、法律や制度によってではなく、国民がわが国の文化財の誇りを持つことによって可能だと思うのであります。国民の中には、特に学者、評論家の一部には、西洋の文化及び文化的遺産はスケールが大きく価値が高い、わが国のものは価値が低いというような評価をしているものもあります。私はそう思いませんが、この点についてどういうふうに考えられるか。少なくとも、国民全部がわが国の文化財に誇りを持って、心の底からこれを守り後世に残していきたいという心情になるためには、その文化財保存のセンターであります文化庁長官のお考えはやはり重要だという気がしてお尋ねするわけでございますが、この点はいかがでしょうか。
#9
○政府委員(安達健二君) 文化財には、有形文化財、無形文化財、あるいは今度新設されておりますところの民俗文化財、あるいは史跡、名勝、天然記念物、あるいはまだそういうものになっておりません埋蔵文化財、これらはいずれも日本の歴史の証拠物件であるわけでございまして、また、私ども国民の立場から言いますると、私たちの心をそれを見ることによりましてなごませ、喜ばせ、そして勇気を与えてくれるものであるわけでございまするし、また、これは学術の重要なる研究資料でもございまするし、さらに文化を創造するにいたしましても、伝統を無視したあるいはそういうものでは十分な発展はできないわけでございまして、文化創造の基盤でもあるわけでございます。そういう意味におきまして、文化財は私どもの命の延長であるとすら言うことができるかと思うのでございます。そういう意味におきまして、これを守るということはわれわれの生命を守ることにつながると私ども考えておるわけでございまして、それにつきましては、最近におきましてそういう認識がおかげさまで漸次高まってきているように思うわけでございまして、それにはやはり行政の面におきまして最善の努力をいたしまして文化財を守っていくと、こういう精神が特に必要であるとともに、文化財を守るにつきましてはあくまでも強権とか、そういうものでなくて、理解と協力を得てやっていくということの基本精神が特に必要だと考えておるところでございます。
#10
○有田一寿君 次に、将来の問題についてお伺いをいたしますが、五月二十三日の小委員会で河野小委員長は、文化財保護については各党ともそれぞれ高い理念、理想を掲げて意見を持っているので、さらに検討を進め、合意の上新たな改正が行われるものと確信していると言っておられます。改正するとすると、案をまとめられた立場からして、どういう点をどういう方向について改正をなさりたいお気持ちがあるのか。もちろん、合意の上というただし書きがありますから、小委員長個人でどうこうということは申しにくい立場がございましょうけれども、いずれにしても、まとめられた立場から、その討論の推移から見て何らかの御感触があると思いますので、お聞かせを願いたいと思うわけでございます。
#11
○衆議院議員(河野洋平君) 有田先生の御質問、文教委員長にかわりましてきょう答弁をさせていただきます。
 私、衆議院の文教委員会で文化財保護に関する小委員会を文教委員会の中におつくりをいただきまして、その一員として今回の改正案に取り組んでまいりましたが、先ほど有田先生からもお話がございましたとおり、今回の改正は、あくまでも緊急、かつ、きわめて具体的な社会的要請を受けとめるという形で、各党合意のものについて法律案の改正を行おうとするものでございまして、各党、それぞれ、いろいろな御意見、まだまだたくさんあったわけでございます。その中には、文化財保護法を改正するならば、理念を明確に文化財保護法の中にうたうべきだという御提案も、それぞれございました。抜本改正に取り組むべきであるという御指摘もございました。恐らく委員の皆様方もお気づきだろうと思いますが、たとえば、文化財保護法と一口で申しますけれども、いま長官からもお話がございしたように、この中には有形無形の文化財、あるいはまた名勝、天然記念物に至るまで含まれておるわけでございまして、文化的所産と言われるときに自然的なものを中に包含をするということは、こういう分け方でいいんであろうかなんという疑問、疑念もまたあるわけでございます。本当に抜本的な改正をするならば、自然的環境、そういうものをもっと別の法体系をつくってはどうかという御意見もございますし、あるいはもっと細かい話になりますけれども、現在、日本の国の中にある重要文化財あるいは重要美術品、こういったものの海外流出についてもっときちっとした、細かい歯どめをするべきではないかというような御意見もございましたし、あるいはまた、具体的に文化財の保護そのものにきちっとした法律をつくるべきだ、かなりこの法律は抽象的な部分が――元来、文化財保護法は抽象的な部分が多うございます。もっと言えば、文化財あるいは文化という言葉そのものが法律になじまない部分もあるわけでございまして、そうした点をどう考えるか等々、いろいろなお話がございました。私自身、これから先、さらに文化財保護法というものを改正をしていくためには、社会の変化に対応して年々部分的改正は行わなければならないし、と同時に、抜本的改正もいま申し上げましたようなことで手をつけていかなければならぬ。今回の法改正は、たとえば、建築機材が非常に大型化しておる、あるいは日本全国に開発の波が進んでおるというようなきわめて具体的な社会的要請に基づいて文化財の保護をするための具体的手段について改正しただけでございまして、今後、文化財保護の具体的には財政上の問題についてももっと御検討をいただきたい。現状の財政的な問題だけで文化財が守れるかどうかというと、これは全く個人的な意見を申し上げることになりますが、きわめてむずかしい。何か、たとえば記念切手発行でございますとか、これは高松塚古墳のときにも皆様方の合意ででき上がっておりますけれども、切手の図案に文化財をしばしば利用をする、ああいうときには少しずつその上がりを集めて文化財の保護に使えないものであろうかとか、まあいろんな議論があるわけでございまして、まず財政的な基盤と同時に、国民の文化財に対する意識の啓蒙、こういったことを中心にやらなければならぬ、これらはもっと、文化財保護法の中にもっともっと盛り込まれていいのではないか、こう考えたりいたしております。
#12
○有田一寿君 いまこの小委員会の委員長からせっかく未来の展望についてお話しございましたので、私、ついでに一つ、ちょっととっぴですけれども、重ねてお伺いしたいと思います。
 文化財保護と一口に申しますが、日本の国は歴史が古く、また各宗教が以前から日本に入ってきておりますし、遺跡、その他埋蔵文化財、資料等、ずいぶん数が多い。決して他国に比べて負けていないと思うわけですが、国土が狭小であるというこの厳然たる事実、その中に各所に点在している、いわば三十万カ所以上も埋蔵文化財の埋められたものがあるように推定されておる現在、これを全く文化財オンリーでいこうということになりますと、私は日本の全体の国土計画の中からいって、やはりバランスの問題がいずれ起こってくるのではないかという感じがします。あるいはそうでないかもしれません。ですから、この文教委員会の討論としてはおかしいことになりますが、私は国土をふやす、失われた緑をあらためてクリエートするということ、もっと極端に言えば、国土を二倍にするというような考えも、やはりこれはあり得るんだと、そして、いままでの文化財点在地はなるべくそのまま自然環境とあわせて守るということが考えられないか、たとえば、日本の国土は千百十億坪、まあヘクタールじゃなく坪で申し上げますと。そうすると一八%が利用されておる。約二百億坪――朝鮮、台湾、満州の面積、まあ満州の日本が使っていた面積約六十億坪としますと、偶然ですけれども、台湾と朝鮮百四十億坪、合わして二百億坪、そうすると、この二百億坪が日本の周辺に造成されたとすると、国土は二倍になったというふうに考えても私はいいと思うわけです。それが住居地あるいは産業用地等になり得るならこれにこしたことはない。日本の海岸線は二万七千キロ、そのうち松島のようなああいう景勝の地、一万五千キロすべて残して、残った一万二千キロについてこれを四十メーターの深さまでサンドポンプによって埋め立てをしたならば、二百億坪ができると、これは可能なことであろうと私は思うわけでありまして、それに要する金は幾らだ、私は物好きに試算したことがありますが、四、五年前の物価で一千兆円ということでありましたから、いま倍にしても二千兆円というようなことだと思いますが、高いと言えば高いが、国を一つ買うと思えば私はきわめて安いと、えらいとっぴな話しになりましたけれども、ナショナルプロジェクトとして百年か百五十年計画で、ここら辺のことを詰めてみてもいいのじゃないかという考えが一方にあるわけでございます。もちろん、そういうことを考えなくとも、文化財はどんなに極端に保護しても一切大丈夫なんだと、自然環境も十分守れるということなら何をか言わんやですけれども、やはり経済ということも考えなきゃなりませんので、えらい先の、とっぴな話ですけれども、ちょっとそういうことが気になりますので、そういうことを申し上げたわけで、まあお答えしにくいようなことですが、感触をちょっとお聞かせくださいませんか。
#13
○衆議院議員(河野洋平君) 文化というのは、西洋ではカルチュアとこう言うわけでございまして、このカルチュア、栽培するとか、耕作するとか、いろんな語源はあるようでございます。われわれは文化そのものを人類史的に見ても、栽培をし、耕作をしながら今日までつくり、継承してきたわけでございます。これをどういう形でさらにつくり、さらに継承をするか、それはその時代、その時代に生まれている人間に課せられた非常に重要な課題であろうかと思います。私は文化財を保護し、次の世代に継承をしていくために、手をつけずに、もう触わらずに置いておくというのも一つの文化財保護であると思いますし、あるいはまた、触わり方がそれぞれあるんだと思うんです、いろいろ知恵を出せば。たとえば道路一本つけるにしても、できるだけ上に土を乗せて、深く埋めてそうして上を道路を通すというやり方もございますでしょう、あるいはずっと下を深く掘ってくぐっていくやり方もあるでしょう、あるいはよけて通る通り方もある、いろんな方法を考えつつ、われわれは次の世代にいろいろなものを継承をしていくわけでございます。方法については、その都度、最も賢明な方法を平和的に考えて継承をしていかなければならない。継承の方法は必ずしも一つではなくて、非常に多様な方法であるんだろうと思います。ですから一律的、画一的に考える必要もないし、その場面、その場面に合った、あるいはその文化財、その文化財に合った方法をとっていけばいいのだろう。ものによっては取り出して、きちんと博物館に保管をする方が保存がしやすいものもあれば、むしろ、地中に埋めておく方がりっぱな保存ができるものもございましょう。いろいろなその保存の仕方を考えていくべきだと、こう考えております。そうして、われわれはあくまでも与えられた前提条件の中における最善の選択をすることによって、新たな文化を生んでいく、そういうふうにも思っておりまして、与えられた前提条件そのものに不満である、その与えられた前提条件がわれわれにとって不足である、と言ってその与えられた前提条件にクレームをつけているだけでは、われわれには知恵は生まれない、あるいは新しい文化は、厳しいあるいはすばらしい文化は生まれないのではないかと、また、こんなふうにも考えたりいたしております。
 有田先生の大変壮大な御意見は、感心をして伺いましたけれども、いろいろな方法を私どもは考えながら、次の世代に文化を伝える努力をしなければならないと、私はそう思っております。
#14
○有田一寿君 具体的な問題で一つ二つとりますが、一つは、この法案は多年懸案とされていた埋蔵文化財の保護について、文化庁長官の権限は強くなっております、罰則の強化等も図ることになっておりますが、その充実を期することとして、こうした措置はもちろん必要でありますが、文化財の保護は、基本的には国民の理解と協力を得て行う必要があります。これは先ほどお話しがあったとおりであります。そのため、本法案においても損失補償の規定を設けるなど、私権との調整が図られておるようでありますが、本法案が成立した暁に、文化庁としてはどういう運用を図っていくかということで、基本的なものは、今度の提案された法案の中に盛られております。しかし、何事も、法は法の精神を生かして、運用によってこの効果が出るか、裏目が出るか決まるということ、特に、この文化財関係のものについては、なおさらその感が深いわけでございまして、その運用について、どういうお気持ちで当たっていかれるか、ここで文化庁長官にお伺いをしておきたいと思うのです。
#15
○政府委員(安達健二君) この点につきましては、ただいま有田先生が適切に御指摘いただきましたように、国民の理解と協力を得て行うということが基本であろうと思うわけでございまして、この点につきましては、従来もその精神でやってまいりまして、関係者との話し合い、徹底的な話し合いをする、あるいはそういう場合におきましての土地の買い上げの措置等も、十分話し合いをした上で保存をしていくというようなこと、あるいは将来どういうふうな形で保存していくかということについても、将来計画等につきましても、十分住民の方々の御了解を得、御協力を得ていくということでございまして、今度の改正案によりまして、たとえば国の機関等におきまして、事前協議制ということが法律上の制度化されたわけでございますが、これは従来も事実上やっておったわけでございますが、それが法律化されました以上は、さらに一層従来の協議制の精神を生かしていきたい、あるいは停止命令等の措置が法的に規定されたわけでございますけれども、この停止命令等の措置も、やはりあくまでもそれは任意な協力を前提にいたしまして、あくまでも任意な協力をお願いして、どうしてもいかない場合の最後のやむを得ない措置、伝家の宝刀というような形で運用をしていくというようなふうで、あくまでもやはり国民の理解と協力、関係者の方々との徹底的な協議というようなことを中心といたしまして、そして法的な裏づけも持ちながらこれを進めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#16
○有田一寿君 わかりました。
 この文化財の保存、修理等にじみな努力を払っておられる人々、これはもう非常に貴重なものでありまするが、御承知のように、年々減少している。その対策は叫ばれておりますし、ほとんど国民もそういうことを知っておりながら、やはりこの減少していくことをどうにもできないというのが現況ではないかと思いますが、この保存技術として、この保護措置を講ずることに、どういうふうの具体的に手だてがあり得ますか、そこら辺についてお考えをお聞きしたい。
#17
○衆議院議員(河野洋平君) 今回の改正案に幾つかの柱があるわけでございますが、大きな柱の一つに、いま有田先生御指摘の文化財の保存技術者の保護というものを立てたわけでございます。これは先生御承知のとおり、かねてから文化庁は予算措置その他で対処はしてきたわけでございますけれども、ただいまおっしゃいましたように、必ずしも十分ではない。したがって、全国各地の文化財保存技術者が年々老齢化している、あるいは後継者がなかなか見つからない、だんだん数が減っているというのが実態でございまして、これを予算措置だけではなくて、きちっと文化財保護法の中にうたうことによって法制化するということも今回の法律改正の一つのねらいでございます。やり方については、いままでやってきたやり方がそう全くひっくり返るほどの違いではございません。いままでやってきたやり方を法律的に裏づけをし、さらにやりやすくする、あるいは法制化することによって、その方々を、何といいますか、勇気づける、あるいは財政的な裏づけ等についても考えるということをなお一層やりたいと、こういう気持ちから今回の法律改正案の中に柱として立てさせていただきました。これの具体的なやり方等については、いままでの経過を踏まえて、長官から少し御答弁をさしていただきたいと思います。
#18
○政府委員(安達健二君) 文化財保存技術といいますおおよその内容といたしましては、一つは有形文化財の中で、美術工芸品、これを修理し、これを保存していくというのがございます。具体的に申しますと、たとえば彫刻でございますると、仏師と申しますが、彫刻の修理者というのがございます。あるいは絵画、書跡等でございますと、装飾師と申しますか、一般の言葉で言えば表具師でございますけれども、そういう方々、あるいは工芸と申しますと、たとえば甲冑、よろい等の修理とか、こういう方々でございます。それから、有形文化財のうちで建造物関係で申しますと、古社寺の建造物等の修理となりますると、一つは、この現場監督と申しますか、設計を監理して、そして、そういう伝統的な技法を伝えていくというような中心になる現場技術者、それから宮大工あるいは屋根をふく、ひわだぶきあるいはこけらとかカヤとか、そういう屋根をふく方々というのがございます。あるいはさらに無形文化財の点でまいりますると、楽器をつくる、雅楽の楽器とかあるいは能楽の面を打つとか、人形の頭をつくるとか、こういうような方々があるわけでございます。この美術工芸の関係の中のたとえば仏師というものにつきましては、京都に美術院というのがございまして、そこが財団法人になりまして、仏師の方たちが集まられまして、仏像の修理あるいは後継者の養成をしておられるということでございまして、これにつきましては、従来は非常に年とった人ばかりになったのでございますが、最近は若い人がこれをやりたいという人がだんだん入ってきたというようなニュースも入ってきておるわけでございますが、現在、文化庁では、ごくわずかでございますけれども、こういう美術院で後継者を養成される費用の一部を補助をいたしておるというのでございます。それから建造物関係になりますると、先ほど申し上げました現場技術者の点につきましては、文化財建造物保存技術協会というものが、財団法人で昭和四十六年にできまして、これが全国に散らばっておりますところのそういう現場監督の人方を中心といたしまして、設計・監理、あるいは記録をつくる、あるいはさらに伝統的技法を指導するというような形でございまして、ここでも後継者の養成をやってもらいまして、これに若干の補助金を出すというようなことをやっておるわけでございますが、さらに最近屋根のふきということで、全国の社寺の屋根工事工業組合の方々によりまするところの後継者養成の仕事をしていただいておるというようなことでございます。しかしながら、なお非常に残されたところがございまして、たとえば宮大工ということになりますと、まだこれは手が及んでいないというようなこともございまするし、また、無形文化財関係のものになりますると、いわば個人的な形でやっておられるわけでございまして、これを団体にしてどうするというわけにもいかないというようなこともございます。こういうようなことになりますると、やはり今度法律のような形にしていただきますると、団体で後継者を養成されるような場合の保存とか助成とかいうこともございまするし、個人がやっておられる場合におきましては、現在の無形文化財の個人の方々によるわざの保存のような方法によるところの助成等も今後考えられるということで、大変こういう法案が成立されるならば、これによりまして従来の施策をさらに充実強化し、あるいは一新をしてまいりたいと考えているところでございます。
#19
○有田一寿君 さらに、いまお話のありました点については、十分の熱意を持って熱意がとぎれないようにひとつお進めを願いたいという気持ちでございます。
 いまの技術、技能者の保存、育成、補助ということと、今度は、出先の文化財保護の仕事に従事する、早く言えば県の教育委員会、県庁等の方々等、このいわゆる全国的なネットワークが大変アンバランスになっておりますし、もちろん、熱意のある都道府県においては大変進んでおるようですけれども、必ずしもそれが満足に行われていない。これも資料を少し拾ってみたんですが、たとえば宮崎県は埋蔵文化財担当の専門職員というのは一名、千葉県は三十人おります。それから福岡県は二十一人となっております。これは四十九年一月の統計でございますけれども。ところが宮崎県は、その遺跡は多いのか少ないのかというと、A、B、CのCまで入れて計算しますと、これ、以前の統計ですが、四千六百三十ということで、全国七番目になっておりますから決して少ないというわけでもないようです。いわゆる文化財全部入れても宮崎は七名と、これは特殊な県を挙げて悪いのですが、これはたとえばと申し上げただけで、それぞれいろんな事情もあり、あるいはその他の面でカバーしておられるのかもしれませんが、そういうことでありますから、民俗芸能あるいは集落町並み等はそれぞれの地域社会に根ざしたいわゆる文化財でありまして、国が積極的にこれらの保護に乗り出す姿勢を見せたのは大変私は時宜にかなったことだと思っております。したがいまして、いまのように地方公共団体、なかんずく、市町村の自覚と努力が肝要であることは言うまでもありません。今回の改正で市町村の行財政体制の整備までは及ばず、今後の課題とされておるように私は理解しておりますけれども、文化庁として、これはそういう市町村に対してどういう指導が可能であってどういうことをなさろうとしているかそれをぜひお聞きをしたいと思うんです。
#20
○政府委員(安達健二君) 御指摘のように、現在の各都道府県におけるところの文化財行政体制そのものにつきましても、いま御指摘のように、まだアンバランスの点が相当ございます。なおまた、比較的に十分と思いましてもなおこれを充実しなければならないというようなことが現在のところではまず何よりも急務というのが私どもの一つの見方でございます。そういう面で、今度のたとえば改正案等におきまして都道府県には文化財保護審議会が設置できるというような規定が設けられ、あるいは文化財保護指導員と、文化財パトロールというようなものが法制化されるというようなことでございます。これらはいずれも県の体制でございますけれども、実質おやりになることは、各市町村にあるところの文化財の実際の保護の面での御協力、御尽力をいただくわけでございますので、そういう面では、現在のところはまだ都道府県段階での体制の整備というところにどうしてもいかざるを得ないというのが実情でございます。ただ、現在におきましても、実は市町村でも三分の二のものが国とか都道府県以外に市町村独自で文化財の指定をしていらっしゃるというようなことでございまして、市町村も非常に御熱心にこれを推進していただいておると思うわけでございまして、そういう面で、たとえば全国の史跡整備市町村協議会という自主的な組織ができておりまして、これは史跡等をお持ちの市町村の市町村長さんたちが協議会をつくりまして非常に熱心に活動していらっしゃるわけでございますので、私どももそういう方々と協力をして市町村における体制づくりにできるだけの力をかしたいというように考えておるところでございまして、なお、いまお話ございました民俗芸能や集落町並み等につきましてはあくまでもやはり市町村が、地元が中心になって守るということを主体にいたしておるわけでございますので、集落町並み等におきまして、まずは市町村がこれを選定されると、そして指定されると。それに対して重要なものを国が選定して助成していくということで、市町村を出発点にいたしておるというような考え方でございます。
#21
○有田一寿君 昭和二十五年に最初文化財保護法ができましたときの提案理由説明、山本勇造委員長のずっと読んでおりましたら、こういうことが書いてありましたが、いままでは地下に埋もれておる考古資料は遺失物法の取り扱いを受けていたということを考えて、ああそうだったのかなという感じがいたしました。それから外国では、文化財保護法に当たるようなものが、この二十五年当時は余りなかったということも、これに書いてございます。私はむしろ外国の方が進んで、日本はおくれていたのかと思っておりましたが、これもこのとおりだとすれば私の錯覚で、そして、それ以後終戦後今日まで、一部、昭和二十九年に改正され、それ以後二十一年間、私はやはり法の不備その他はあったにしても、よくぞ努力はしてきた、この数年間高度成長になってからしゃにむに開発が行われたという面はありますけれども、日本人というのはわりに賢明な民族ではないかという感じもまたしたわけでございまして、今度これが提案されたことについては、私は深く敬意を表するものであります。
 最後に、これだけお聞きして質問終わりたいと思いますが、佐倉にできつつあります国立歴史民俗博物館、これは相当な費用を要するものと思いますけれども、いわゆるある意味でネットワークのセンターとして私は大変有意義なものだと思いますので、何か五十三年ですか、開館を考えておるけれどもおくれそうでもありますというような話も伺いましたが、やはりこれはみんな関係者の熱意によってりっぱなものをつくり上げたいということを考えるわけでございまして、この進行状態といいますか、このアウトラインといいますか、これについてお聞かせ願いたいと思います。これは文化庁長官ですか。
#22
○政府委員(安達健二君) 現在日本にございますところの国立の博物館は、東京、京都、奈良にございますけれども、いずれも美術的な価値に着目いたしました美術品というようなものを中心とした展示をいたしておるわけでございまして、日本の歴史を物で示すと、あるいは日本の民俗資料と申しますか、われわれの庶民生活を物で示すというようなそういう博物館が日本には国立のものがないということが非常に残念であるということからいたしまして、この計画が進められてまいったわけでございます。現在の段階でございますと、実は具体的なものといたしましては、いま御指摘になりました千葉県の佐倉市にこれを建設するということで、五十年度に基本設計を行うということで基本設計に入っております。それから五十一年度は実施設計、五十二、五十三年度に工事をいたしまして、五十四年度ぐらいには開館の運びに持っていきたいということで進んでおるわけでございますが、ただ、私どもはいま御指摘になりましたように、国立のものを一つつくるという考え方ではなくて、全国にたとえば市町村立の歴史民俗資料館あるいは県にございまする歴史博物館的なもの、そういうようなものとのネットワークをつくると、そのネットワークの中心であるというようなことで、日本全国の中でいろんなそういうものと連携をとりつつ、日本の歴史を全国的なネットワークの中で保存し、国民並びまた外国の人にも見てもらいたい、こういう考え方でございます。
#23
○有田一寿君 終わります。
#24
○秋山長造君 文化財保護法ができたのが二十五年ですから、ちょうど二十五年たっておるわけです。この間ときに応じて多少の局部的な改正はございましたけれども、大きな規模の改正は二十五年間全然なかった。それだけに開発ブームその他との関連もございまして、ずいぶん文化財保護行政に関連した問題はたくさん山積しておったわけです。これをとにもかくにもこういう形で相当大規模な改正案をまとめられたわけでありますが、河野さんを初め、衆議院の関係の方々の御努力に対しては、私もまた敬意を表するにやぶさかではございません。ただ、しかし先ほども提案者御自身がおっしゃったように、まだまだなかなか抜本的というようなところまではとてもいけてない。緊急な問題についてだけとりあえずやったというような御述懐もあったぐらいで、私もベストを求めないまでもベターを求めるという立場で若干御質問申し上げたい。
 先ほどもちょっと有田さんからもお触れになりましたが、私は今回のこの程度の、これくらいな規模の改正をおやりになるんならば、埋蔵文化財その他いろんな問題について相当大きな改正をやられておるわけなんで、それをおやりになるくらいなら、第一章の総則のところを何とかもうちょっとこういまの新時代に向いたように手を加えていただきたかったんですよ。むずかしい言葉で言えば、文化財保護の基本理念ということですかね。一応いまの法律でも第一条の目的あるいは第三条の政府、地方公共団体の任務、第四条の国民、所有者の心構えというように分けて、大体のことは網羅的に書いてある感じもするんですけれども、ただ第二条の「「文化財」とは、」という、この定義の内容を相当改正をされ、また整備をされた点から考えましても、もう一つ食い足りぬのですね。この第一章の総則に書いてある文化財についての、まあこれは一つの民族の文化的な遺産でもあるし、国民の共有財産、これの保護に対して万全を期していかなきゃならぬ。これは政府自身の、あるいはわれわれ国会の、あるいはさらに日本の国民の一つの文化宣言ですからね、この総則は。だから、その点について文化財保護の基本理念がもう一つ明確な形で、格調の高い形でこの第一章の総則の中に盛り込まれると、あるいは前文でもいいし、この総則のところでもいいが、何かこううたい上げたいということを痛切に考えるんですが、漏れ聞きますと、衆議院の小委員会の方でもこの改正案を練り上げられる過程でそういう話も若干出たやに聞くんですが、その点はひとつどういう経緯だったんでしょうか。また、提案者の河野さんはこの点についてどういう御所見を持っておられるんでしょうか、お伺いしたいと思います。
#25
○衆議院議員(河野洋平君) 秋山先生御指摘のとおり、本来その基本的な理念が定かになれば、改正はその理念に従ってさらさらといくということだと私も思います。衆議院におきましても各党の先生方から基本理念はこれでいいんだろうかという御意見が出たことも事実でございます。ただ、問題は、先生ただいまもおっしゃいましたように、現在の文化財保護法には第一条、第二条、第三条でございますか、それぞれ文化財についての定義なり考え方が非常に短い文章でございますけれども、述べられておりまして、これに取りかえて先生御指摘のような前文を書くか、あるいはもっと次元の高い文化財保護についての理念を書き加えたいという気持ちはないわけではございませんでしたが、これは理念を書け、あるいはこれを少し書き直せという意見は一致しても、どう書くかという意見の一致はなかなかむずかしいわけでございます。
 御指摘のとおり、文化財保護法につきまして昭和二十五年にこの法律ができ上がりましたときに、先ほど有田先生からもお話がございましたように、山本勇造先生という、きわめて私どもとは比べものにならぬほど文化的な方々がお集まりになって参議院でこの法律をおつくりになった。そういう場面と、ことしの衆議院の文化財保護に関する一部改正での議論とは若干雰囲気が違いまして、先ほども申し上げましたように、社会的要請にのっとって緊急かつ重要、しかも各党合意のできるものだけ大急ぎでやって、とにかく破壊をいっときでも早く防ごうではないかという、非常に緊急に迫られた部分がございましたために、直した方がいいのではないかという点では、各党それぞれそれなりのお気持ちがありましたけれども、それじゃ、どう書くかということになるとなかなか一致がしにくかったということがございます。この点をどうぞ御理解をいただきたいと思います。
 そこで改正についての、つまり、なぜ改正をするのか、どんなふうに改正をするのかという法律改正についての理念というとオーバーでございますが、観点として、小委員会におきます最終的な決定の後の小委員長報告の中で、小委員会においては「文化財がわが国の歴史的、文化的業績のかけがえのない遺産であるとともに、国民の生活環境を構成する不可欠の要素であるとの観点に立ち」この改正案をまとめましたと、こう改正案に取り組む基本的な姿勢のようなものを小委員長報告の中には書かせていただいたわけでございます。
 先ほども私申し上げましたように、もしこの第一条、第二条あるいは第三条、第四条に至るまでのこの基本理念について抜本的に書き直すといたしますと、文化財保護法それ自体相当に直さなければならない部分が出てくるであろうと。先ほど、これはまあ全く私見でございますが、一体、文化財保護法の中に名勝、天然記念物というものが入っておることがいわゆる一般的な概念の文化財の中でいままでもうすでに二十五年間定着をいたしておりますから、ちっともおかしいとも思いませんけれども、論理的に言うと少し問題があるのではないか。むしろ環境庁でございますとか、そうしたところで名勝、天然記念物等の法体系はそちらに移してはどうかなどという議論も当然出てくるでございましょうし、この先生御指摘の第一章もしくは前文をいじることは今回提案をしたこの程度の法改正にはとてもとどまらない。恐らく昭和二十五年、当時の例の法隆寺が焼けた後、少なくとも、文化財保護について国民的合意のもとで取り組まねばならぬという大きな取り組み方がなければ恐らくそれはできないというふうにも私、思いまして、御指摘のお気持ちは私も同じような気持ちを持っておりますが、私どもの取りまとめの能力その他を勘案をいたしまして、今回はこの程度に、最も緊急かつ各党の合意が得られる部分、範囲ということにとどめさせていただいたようなわけでございます。
#26
○秋山長造君 この問題は、同時に文部省が文化財保護行政を手がけていく場合のやっぱり一番根本的な心構えなり、姿勢の問題にやっぱりかかってくると思うんですが、そういう面について文部大臣の御所見をお伺いしたい。文化財保護行政に取り組んでいく文部大臣としての姿勢なり、心構えをお伺いしたい。
#27
○国務大臣(永井道雄君) これは非常に重要な問題であると思いますが、私の基本的姿勢ということは次のようなことであります。
 たまたま先週の週末は京都大学に参りまして、時間がありまして大原に行くことができまして三千院とそれから寂光院に参りました。私はそこで感じたことの一、二を申し上げたいと思うんであります。実は、私はわりに三千院と寂光院が好きなものですからちょいちょい行くんであります。あそこのお寺もきれいなんですが、同時に特に三千院の場合お庭がきれいでありまして、コケが非常にいいんですが、戦争直後のころはずいぶんコケが荒れましてほとんど見るに耐えないということでありました。ちょうどこの間参りますと、新緑の候でもありまして、非常にコケが美しくて目にしみるような感がございました。
 もう一つ非常に驚いたことは、私は実は三十分ぐらいしか三千院にいなかったのですが、非常に若い学生諸君がたくさんいたということを目撃したわけです。そこで住職に最近の傾向はどうでしょうかということを伺いますと、これは非常な変化である、むしろ年配の人の方にはそう変化はないんだけれども、若い年齢層が非常にたくさんこの三千院、寂光院に来る、しかも朝早くのときが一番見どころであるというので村に泊まりまして、一晩泊まって朝五時ごろ来るというような人がふえてきた、そういうことで、いま民宿が四十軒ぐらいできましたという話でございました。なぜこういうことを御披露申し上げるかといいますと、山本勇造先生がお考えになった時分、これはもちろん基本的な方向というものをお示しになったわけでありますが、私はいまのこの若い人たちの動向を考えますと、一そう文化財を尊重していかなければいけないのではないか。ただ、それは保存ということではなくて、やはり若い人が未来へのエネルギーの源泉を求めているという、そういう面があると思います。実は、そういうことを住職ともお話をいたしました。さらにまた、先ほどコケのことや何かを申し上げたのは、実は何回もその場所に行っているからわかるんですが、非常にやっぱりよく保存をしませんというとずいぶん荒れてしまうということは非常にはっきりわかって、最近はその保存がよくできているために、実は戦前よりも非常に姿のいい三千院になりました。それは背景の山もございますし、庭もあるし、寺もあるということなんです。
 私、以上のような非常に身近なことを申し上げましたのは、そのことが実は文化財保護の基本的な方向、それからまた、そういう今度の法律の改正ということの基本にかかわっているからだと思うんでございます。一つの国の文化、とりわけ、わが国のように非常に古い歴史を持っております場合には、それはかなり多様なものが含まれておりまして、それが客観的な姿で文化財という形で残っておりますが、さて、こういうふうなものを抜きにして将来の日本の文化をつくれるかということになりますと、そうはいかない。もちろん、他国の文化というものにも私たちは注意を払うべきでございますが、しかしながら、それだけでは足りないという面がございます。でありますから、真空から未来は生まれないわけでございまして、過去をどのように媒介にしながら、未来をつくっていくか、そういうことがおそらく若い人たちの頭に去来しているんではないか。
 そこでもう一つの問題といたしましては、さて、そういう状況の中で他方では相当いわゆる開発というものも進んでいるわけです。そのことは必要なこともたくさんございます。京都で一番有名なのは京都の駅のそばの京都タワーホテルの塔の問題がございまして、あの塔の問題のときに京都の文化人を挙げて、一体あの塔を許すべきか許すべからずかという大論争がございました。当時、非常に激しい反対のお立場をとられたのは谷崎潤一郎先生と吉川幸次郎先生でありますが、相当数の方が賛成をされた。さらにまた相当数の人が棄権をしたわけでございます。いまも実はそのことを議論をしていますのは、京都という町が非常に重要な町であるからだと思います。
 そこで、これから、これまでも苦しんできたことの一つは、開発ということを日本はやっていかなければなりませんし、そして、そういうことがなければわが国民の生存と申しましょうか、それは可能ではない。しかしながら、他方において文化財を保存していくということがまた民族のエネルギーの源泉である。この二つの、あれかこれかということではなくて、そこに調和をいかにして求めていくかということが、私が承るところによりますと、今回、国会の諸先生方が最も御苦心になった点であるというふうに承っておりますので、非常に感銘を深くいたします。それはまた同時に、いまの若い人たち、住職の言葉をかりれば、年輩の人より若い人たちが考えているようですということでございましたから、私はたまたま先週の週末そのことを非常に強く感じました。
 実は文部省としてどうすべきかということは、詳細にわたって文化庁長官がいろいろ考えている。あるいは長官以下文化庁の方が考えていることでございますが、基本的姿勢ということを先生がお尋ねになりましたので、要約いたしますれば二点でございます。一つは、過去の文化というものを媒介することなくして将来を築き得ないということがあり、もう一つは、開発と文化というものの調和をどのように図っていくか。そのことを基本的な原則としてつくられた法案の趣旨というものを私どもは尊重して行政に当たるべきである、かように考えている次第でございます。
  〔委員長退席、理事久保田藤麿君着席〕
#28
○秋山長造君 いまも私からも御質問し、また提案者、大臣からも御答弁がございましたが、やはり文化財の問題については、政府といいますか、国といいますか、この取り組む姿勢の問題がきわめて重大。それから、同時にそれと並んで、やっぱり国民すべてのコンセンサスということが非常に重大な問題だと思うんです。いまも若い人たちが非常に関心を深めておるという実例を挙げてのお話がありましたが、これは局部的にはそういう面もありますが、しかし、全般的にはまだまだわれわれの社会はこういう問題についての本当の関心というものは、それほど認識は深くないと思うんです、率直に言って、残念ですけれども。そういうところからいろいろあっちこっちでこの文化財、特に埋蔵文化財の保存等をめぐってのつまらぬトラブルがやたらに起こっていると思うんです。この点についての国民全般の関心と、そして文化財に対する尊重の気持ちを広く喚起する、植えつけていく、こういうための、いわゆる広い意味の教育的な政府の活動、働きかけというのが非常に大事なんじゃないかと思うんですが、こういう点について教育と言えばすぐ学校とこうなるんですが、そういう狭い意味の教育でなしに、広くあらゆる社会教育、その他あらゆる面を含めての教育的な普及活動として、今後文部当局としてどういうことをお考えになっておるか、また、何をやろうとしておられるのか、ちょっとお伺いします。
#29
○政府委員(安達健二君) 文化財尊重の思想を国民の間で高めていただくということの一番近道と申しますと何でございますが、それはやはりこういうすぐれた文化財に接する機会をできるだけ多くとるという、そういう機会を提供できるようにするということが私基本ではないかと思っておるわけでございます。日本人であれば、そういう機会があれば自然にそういうものに引かれてくるというところがあるのではないだろうかということでございます。
 具体的に申し上げますと、やはりそういうものの文化財の活用というようなことが中心ではないかと思うわけでございまして、具体的にさらに申し上げますと、たとえば全国にたくさん史跡等がございますけれども、そういうものがただ単なるここは史跡であるというだけでなくて、それを史跡として整備をいたしまして、これはこういういわれでこうなっているんだということをやはり国民の方々に知っていただくというようなこと。あるいは博物館やあるいは歴史資料館、そういうものを整備していくということ。あるいは無形文化財でございますると、たとえばまあ文楽等ございますけれども、これは従来非常に息絶え絶えでございましたけれども、国立劇場ができまして、そこで文楽の公演が行われるようになりまして、最近は年四回ございますけれども、いつも満員の盛況になっており、しかも、そういうところに若い人たちも来ているということでございまして、したがいまして、やはりそういう機会を提供するということが私は必要ではないかと思うわけでございまして、そうしてまた、同時にそういう若い子供のころからのいろんな面での学校教育あるいは社会教育、青少年活動、そういうような中で文化財というものに対する尊重、理解というものを植え付けていくというような事柄が私どもとしての基本的な事柄ではないだろうかと思っておるわけでございまして、この点につきましては、私どものなお努力の足らないところが非常に多いと思いますので、できるだけの最善の努力を今後もやってまいりたいと、かように考えるところでございます。
#30
○秋山長造君 先ほどお尋ねした文化財保護の基本理念の問題に関連してもう一点だけお尋ねしますが、これ河野さんの御意見をも聞かせていただきたいし、それから大臣なり文化庁長官の御意見をもちょっと聞かせていただきたいと思うんですが、この文化財保護法の第四条の三項ですね、「政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当って関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。」、この財産権尊重を義務づけた規定、私はこういう法律の総則の中にこういうものを特に入れたということは、実は最初どういういきさつでこういうものをここに入れられたのかよく知らないんですが、今日これだけいわゆる文化財の保存とそれから開発との抵触、矛盾、衝突、摩擦、あつれき、そういうようなことで非常にお互いに苦しんでいるわけですが、そういう今日の事態から考えてみましても、文化財保護法の基本理念をうたい上げるべきこの第一章総則の中にあたかもそれにあらかじめブレーキをかけるような歯どめを先回りして自分でかけておくようなこういう条文をここへわざわざ入れておかなければならぬということがよく理解できません。もちろん、この文化財を尊重する余り私権をじゅうりんしてかまわぬ、財産権を侵害してかまわぬというんじゃないですよ。しかし、この文化財の保存その他に関連してたまたま起こる私権の侵害、財産権の侵害等については、後々で別な条文で十分損失の補償という規定があるわけなんですね。それからまあこの第一章総則にうたわれるのは、いわば文化財についての憲法ですからね。この財産権の尊重ということは何も文化財だけじゃないんで、すべての日本国においてはあらゆることについて財産権は尊重されるということは憲法にも書いてある。しかし同時に、その財産権はあくまで公共の福祉に役立つように利用しなきゃいかぬということも同時に憲法に書いてあるわけですからね。だから特にこれだけ書くんなら、さらに、ただし公共の福祉に役立つように利用されなければならぬということも書くんなら、それならまだいいけれども、特にここへぽつんと財産権を尊重しなきゃならぬということを、この文化財保護法の総則のこういう場所にぴしゃっとこう書いておく必要は私はないんじゃないかと、むしろこれは外した方がいいんじゃないかと、本当に高度の文化財保護の理念から言って。その点についてのひとつ御見解を参考にちょっと伺います。
#31
○衆議院議員(河野洋平君) 第四条第三項を外すか外さないかという議論、それ自体そのものずばりは衆議院ではございませんでした。しかし、文化財保護について議論がなされた数多い会合の中で、私権といわゆる文化財、国民的財産ともいうべき文化財と私権との兼ね合いが一番問題なのだという議論は繰り返し繰り返し行われたわけでございます。ここがまさに秋山先生おっしゃるように非常にむずかしいところだと私も思います。昭和二十五年に参議院でこの法律をおつくりになりましたときに、この字句、この項を挿入なさったときのいきさつ等については私もさだかに存じ上げませんけれども、恐らくその際も私権の尊重、つまり国民的財産としての価値を持つような重要文化財なんていうものは、たとえば所有者は命にかえて守ったこともあるかもしれない、あるいは戦災の中、火の海の中を持って逃げ歩いたかもわからぬ、つまり個人にとっては命の次に大事だというものであるかもしらぬ。まあそういったようなことがいろいろバックグラウンドとしてあったんではないだろうかと、私はいま御質問伺いながら考えたわけでございますが、この点について衆議院の文化財保護小委員会における直接的な御議論はございませんでしたが、確かに秋山先生のそういう御指摘に近い私権と公共の福祉との兼ね合いという議論はございました。それらについて他の改正部分についてはかなりそうした議論を踏まえて改正を行ったという経過だけ私から御答弁をさせていただきたいと思います。あとは文化庁からでも御答弁をお願いしたいと思います。
#32
○政府委員(安達健二君) 私ども、文化財保護法を行政の立場で執行する立場からこの四条の意味を理解いたしておりますことは、四条では国民、所有者等の心構えということで、国民は政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するため行う措置に誠実に協力しなければならない。それから二項で所有者その他の関係者は国民的財産ということで大切に保存するとともに、これを公開する等、その文化的活用に努めなければならぬということで、この文化財保護法の全体は、私有財産権に対する制限というものが非常に強く本質的に出ておるわけでございますが、そういうことで、単に私有財産権の制限であるけれども、同時にそれ以上に精神的な協力もしなさいということは、四条の一項、二項に示されておると思うわけでございます。したがいまして、その逆に、そういうまあ一種の私有財産権に対する強権を発動するというか、そういう法律の執行の立場からいたしますると、逆に所有者その他の関係者の財産権を尊重するという心構えがなければならないと、こういうことになっておるわけでございまして、したがいまして、まあ両方に対しまして、一般国民の側に対して要求すると同時に、政府、地方公共団体にも要求をするということで、その両者が協力して、話し合いをして、十分ひとつ了解のもとに、国民の理解と協力のもとに文化財を保存するということを、この四条全体で示されておるものだというように私どもは理解しておるということでございます。
#33
○秋山長造君 これは国会図書館の立法考査局から出ている「米・英・仏・西独の文化財保護法」という最近出た資料、ごらんになったと思うのですが、この中のアメリカ合衆国の保護法の中に、アメリカのような非常に国ができて日の浅い、ああいう国ですら、あるいはそういう国だからなおさらかもしれませんが、第四百六十一条というところで(国家政策の宣言)として「合衆国国民を鼓舞しかつその利益に資するために、国家的に重要である歴史上の遺跡、建造物及び物件を保存して公共の用に供することは、国家政策であることを宣言する。」と、こう非常に格調の高い宣言をしておりますね。さらにそれから、その条文からずっと後、文化財に関するいろんな具体的な規定があって、四百六十七条のところに、(法の抵触)という表題で「本章第四百六十一条から第四百六十七条までのいずれかの規定が、同じ主題の事項に関する他のいずれかの法律に抵触する場合には、本章各条の定めるところによる。」と、こう書いて、この文化財保護に関する法律というものの重みといいますかね、強さといいますか、それを非常にこれは強く強調していますね。だから、本当に文化財を大切にして、民族の共同の遺産として後世に伝えていくということからすれば、これくらいのやっぱり強い調子の法律をつくっておきませんと、いまのように、そもそものつくり初めからちょっと及び腰で、こういう「財産権」云々というようなことをわざわざこの総則の中へぽつんと出す、こういう法律の形というものは余りないのじゃないですか。総則の中にいきなりこういう財産権尊重というようなことを書いておるのは余りありませんですね。これはもう私の意見ですから申し上げて、また後日、別な機会にさらに論議を深めたいと思いますが、十分私の意のあるところだけ、ひとつおくみ取りをいただきたいと思う。
 それから、時間が済んでしまいまして入り口で終わってしまうのですが、埋蔵文化財の例の届け出か許可かという問題が一つありますね。それから、三カ月、六カ月というあの期限の問題がある。これらの問題は、後引き続いて松永君がおやりになるようですからそちらへお願いするとして、もう一点だけお聞きしたいのですが、これは河野さんへお聞きしたいのですが、今度の改正案で五十七条の四というのを新設されまして、埋蔵文化財の包蔵地の周知徹底について国及び地方公共団体は特別に努力しなきゃいかぬ、こういう努力規定が置かれておる。これはもう結構だと思うんですが、私は、いま申し上げた財産権の保護云云ということにまた関連してくるのですが、せめてこの埋蔵文化財のところで、この埋蔵文化財包蔵地の周知徹底ということと並べて、土木工事等のために土地を発掘しようとする者は埋蔵文化財の保護については特に留意しなきゃならぬ、一般的な心構えとして工事をやる場合の。何かそういうような訓示規定のようなものをもう一本入れてもらいたかったんですよ。どんなもんでしょう。
#34
○衆議院議員(河野洋平君) 秋山先生の御質問に直ちにお答えする前に、先ほど先生のお話に一言だけ私の気持ちを申し上げたいと思います。
 文化財保護については、アメリカはアメリカなりに、ヨーロッパの諸国はヨーロッパの諸国なりに保護に対する姿勢をその国、その国なりに持っておると思います。先ほど先生、一つの例としてお示しになりましたアメリカの例も私も拝見をいたしましたが、アメリカは恐らく非常に強い調子で自分の文化財を守る非常に強い姿勢をそこで述べておると思います。日本の文化財保護法は昭和二十五年山本先生初め参議院の先生方お集まりになっておつくりになって以来、日本の文化財保護行政の教科書となっておる文化財保護法の全般に流れている考えというものは、文化財を保護するのは国民の合意、コンセンサスによって、あるいは国民の意識によって守るのである、これは強権的に守るのではないという意識が非常に強く流れているように私この文化財保護法を拝見をしたわけでございます。それがいいのか悪いのかという議論は、これは一つの議論として私はあると思うんです。たとえば、文化財保護についての罰則規定一つを見ても、もっと罰則を重くすれば中学生、高校生が修学旅行で重要文化財の建造物等にいたずら書きをして帰ってくるとか、あるいは近ごろ若い人が外国へ出ていって外国の遺跡に何か書いて帰ってきちまうとかなんということが、もう少し何か教育できるのではないだろうかという気持ちが私ないではありません。しかし、さらばといって、文化財保護というものが強権的に行われるということの持つ別の側面を考えますと、私は、この法律はこういう感覚でできていたからこそ、そしてまた、こういう感覚でできているからこそ、今後とも日本の文化財というものは国民的基盤によって守られていくということになるんだろうというふうに実は私思っておりまして、先ほども先生のお話を伺って、非常に示唆に富むお話、今後とも参考にさせていただきたいと思って伺ったわけでございます。
 そこで、いま御指摘の部分でございますが、周知徹底については、五十七条の四に、先生御指摘のとおり、国及び地方公共団体は周知徹底を図るため努力をしろと、こう書きまして、一体、事業者その他は何も書かぬでいいのか、書くべきではないか、こういう御意見だろうと思うんですが、私ども確かに事業者がそういうことを考えてくれることが一番大事なことでございます。当初私どもは、そういうことを書きたいと思った実は時期があったわけでございまして、これらも問題を整理しておりますうちに、これらが具体的な字句として入らずに、むしろ、九十八条の二項の3に「地方公共団体は、第一項の発掘に関し、事業者に対し協力を求めることができる。」と、こう規定をいたしまして、事業者に対して協力を求める。まあこれ、先生の御指摘から言えば後手になるわけでございますけれども、こういう一項を書き足したわけでございます。当該地域において事業を行うと行わざるとにかかわらず、すべての国民、市民に対して文化財保護あるいは埋蔵文化財の保護について周知徹底せしむることが、これは何よりも一番大事なところでございますから、ここに重点を置いたというのが、今回の法改正の、先生御指摘の字句をあえて入れなかった理由でございます。もちろん、事業者についての云々ということを入れることによって、非常に具体的にいま直ちに問題解決ということがあるとすれば、私ども考えないではなかったわけでございますが、まあ訓示規定ということで、置くか置かないかという判断のときにその字句を落としたわけでございます。
#35
○鈴木美枝子君 文化財保護法の一部改正案の中での埋蔵文化財保護についてでございますけれども、河野さんは、御存じのとおり、衆議院で小委員会が先ほどおっしゃいましたとおり開かれました。ですから、各学者の方たちは小委員会でおやりになったと思います。そうしてまた、ここに申し込まれている資料もお読みになっているんじゃないでしょうか。「文化財保護法改訂問題資料集」というのでございますから、幾つかの問題がある。そして河野さんにあてて、そうしてこの問題を提出した団体の方たち、ちょっと読み上げさしていただきますと、地方史研究協議会幹事長、日本学術会議文化的環境保存小委員会委員長、日本考古学協会委員長、日本史研究会委員長、日本歴史学協会文化財保護特別委員長、文化財保存全国協議会代表委員、文化財保存全国協議会代表委員、歴史科学協議会代表委員、歴史科学協議会代表委員、歴史学研究会委員長、歴史学研究会科学運動委員長、歴史教育者協議会委員長、これは日本じゅうの方たち、考古学者を網羅しているような形で問題点を指摘して、そうして、これは河野さんにあてておりますので、これをどうにか取り入れた上でこの一部の改正案を実行してくれということでございます。そのことについてもう研究なされていらっしゃるでございましょうか、その点一言ちょっとお聞きします。
#36
○衆議院議員(河野洋平君) 文化財保護法に関する小委員会を二月十八日に開きまして、そこで今国会でき得るならば懸案となっている文化財保護法の一部改正を各党の合意の上で行いたいという意味のことを皆様方にお諮りをいたしまして、各党の先生方から、各党合意の上でやろうではないかというお話をいただきました。そこで、三月の四日でございますが、まず参考人の方々をお招きをして、御意見を伺おう、御関係筋の方々をまずお招きをしようということで小委員会といたしましては、日本考古学協会の委員長、それから日本学術会議の会員でこの問題に最も強い関心をお持ちだとそのメンバーの方々がおっしゃっておられる林さん、そして都道府県の教育委員会の教育長さん、これはまあできれば代表の方とお願いをしたんですが、当時、三月の前半は、各県ともに県議会等が開かれておりまして、なかなか時間お差し繰り願えなかったもんですから、それでも、その中から北海道の教育長さんにおいでをいただきました。さらに、早稲田大学の教授でございます本田先生にもおいでをいただきまして、意見を開陳をしていただいて、各党の方々から質疑応答が行われたわけでございます。ここで、いわゆる衆議院の文教委員会の中の文化財保護に関する小委員会といたしまして、公式にと申しますか、参考人との間に、小委員の方々との意見のやりとり、質疑のやりとりがあったわけでございます。その間の質疑等を小委員の皆さん方にお聞き取りをいただいておりました。そうして、いま先生お話しの資料、ちょっと私、いま記憶ございませんけれども、ずいぶん多くの方々から、郵便で意見をお送りをいただいたものもございます。あるいは直接おいでをいただいた方々もございます。あるいは電報で意見をお寄せをいただいた方々もございますけれども、そうした方々の御意見、お話は、私聞かせていただきました。そうして、国民的合意の上にと言えば、これは国会における議決あるいは文教委員会における各党合意、これほど国民的合意はないと私存じておるものでございますから、これは本当に自民党から社会党の先生方、共産党の先生方、公明党、民社党の先生方に至るまでお入りをいただいた懇談会を積み重ねてこの案をつくったわけでございまして、そうして、小委員会、衆議院文教委員会、衆議院本会議と、超党派といいますか、満場一致の御賛成をいただいておりまして、国民的合意、背景のもとにこれはできておるというふうに私は判断をいたしております。
#37
○鈴木美枝子君 河野委員はよく御存じの上でいまおっしゃっていると私は思いますけれども、このたび一部改正をするということの中で、先ほどから言われています昭和二十五年のこの文化財保護法、幾度も出てきました文化人山本勇造先生や、学者である羽仁五郎さん、それからいまおっしゃるように、国民を代表するところの議員、学者、加わってつくられた今日までの二十五年間の間の、経済成長だと言われた十年間の間に、どういうふうに埋蔵されている文化財がなってきたか、経済成長の問題と埋蔵されている文化とのかみ合いがもう一つ検討された上でこの改正をする必要があるんじゃないかという感じがするわけでございます。そうして、そういう声が、いま申し上げました考古学者、その他協会委員長、その他から提出された中に書かれていることを私は読ましていただきました。で、こういう声が、この経済成長のその土地の改造、開発している間に埋蔵されている文化とのかみ合いの中で、去年あたり文化庁は、文化庁国立埋蔵文化財研究センターをおつくりになっていますね。四十九年の四月からつくられているそうでございます。そうすると、この一年間何をなさいましたか、ちょっとお願いします。
#38
○衆議院議員(河野洋平君) 文化庁からでよろしいですか。
#39
○鈴木美枝子君 はい。
#40
○政府委員(内山正君) 昨年の四月から、奈良の国立文化財研究所において、ただいまお話のございました埋蔵文化財センターを設置をいたしました。初年度でございましたので、人員は八名というところでスタートをいたしました。
 ここでは、埋蔵文化財に関する調査、研究をいたしますと同時に、都道府県市町村等におきまして埋蔵文化財の保存、発掘等に従事しております技術者の養成、研修の事業を行うとか、あるいは地方におきまして非常に問題の多い遺跡等の発掘の場合の技術的、専門的な指導を行うというようなことを中心に事業を進めてまいっておりまして、初年度におきましては、埋蔵文化財関係の技術者の研修を二回にわたりまして実施をいたしまして、本年度におきましてはさらにその回数を増加いたしまして、一人でも多く各都道府県あるいは市町村等における埋蔵文化財関係の技術者の増強を図りたいということで、さらに、充実を図っておるのでございます。
#41
○鈴木美枝子君 まだ研究の段階なんでございますね。経済成長十年間の間の開発工事、その他に対する問題の解決ではなくて、研究の段階でいらっしゃるということをこのセンターの中ではやっていらっしゃる。
 最近五月二十九日の読売新聞でございますけれども、「開発に消える遺跡」ということで出ておりました。これを読ましていただきましても、「最近関東地方で、考古学上重要とみられる二つの遺跡が相次いで〃破壊〃され、もはやその全容は今年度中に公表予定の発掘調査報告書によってしか」だから書類の中にしかそれはとどめることができないという状態になっているわけですね。開発のために消えていく遺跡、こういうふうなことが書かれているわけでございます。その指摘された場所は二カ所で、千葉県松戸市の子和清水遺跡と群馬県赤城村の遺跡についてでございます。時代的に言えば、縄文時代、紀元前四千年−五千年の竪穴住居跡が二百五十個から超えてそれを発見されたと、一つの部落として発見されたわけでございます。これについてもいままで二十五年の法律以後、この部落として集約された中に一つの緑地をつくり、公園をつくり、そしてその付近にいきなり近代的な建物があるんじゃないようなその設計の中に全体をとらえているかどうかということ、これが私は問題だと思うんです。紀元前五千年前の竪穴住居跡が発見されたと、そして二百五十個もそれが出てきたと、二百五十個のうち、一つか三つぐらいをこう保存しまして、そして過去にこういうことがあったんだという、一つしか説明しないことによってこの部落という姿は消えてしまうわけでございます。いままでその全体部落としてとらえられたことはないんじゃないか、私の知っている限りでもないんだということが言えるんでございます。続けてちょっと読ましていただきますと、「かつてない大規模な集落跡だった。いずれも縄文人の生活環境、社会的組織を解明するための手がかりになるとして考古学関係者の注目を集めていたが、」いまとなって文化庁がこう言っているんです。「国の史跡指定を受け、保存する価置があった。惜しいことをした。」後になってからいつもこの惜しいことをしたって出てくるんじゃないでしょうか。このとき惜しいことをしたっておっしゃっているんですから、こういう経過についてちょっとお話しください、これが改正案にかかわることになりますから。
#42
○政府委員(安達健二君) 埋蔵文化財、周知の遺跡につきまして、土木工事等がある場合には、文化庁に県の教育委員会を通じまして届け出があるわけでございますけれども、実態的には実は届け出前にこれは困りますと、できるだけひとつこれは現状で保存してくださいということをお願いして、いわば届け出の来ないものが相当あるわけでございます。で、これはその届け出がなくて、県の教育委員会が事前に指導をして保存をするというのが一部ございますことが第一点でございます。
 それからもう一つは、出てまいりまして、ある事業範囲の中でこの分は特に重要であるからして工事の範囲から除外してもらいたいということで、その指導によってそれを地域から除いてきたところのものがございます。それからさらに、この部分はぜひ大事であるということで、これを緑地とかあるいは県とか市町村指定の史跡という形で残してもらうという場合がございます。それからさらに、特に重要なものにつきましては国が指定をすると、こういうことがございます。そうでないものにつきましては、学術上の記録を作製して、まあ記録の保存という形で保存をしていくと、こういうようなふうないろいろな種類がございまして、したがいまして、いわゆる埋蔵文化財のものがそのままの現状ですべてを保存するということは現在の実態からいたしまして、また遺跡等の重要性の問題あるいは先ほど来お話に出ておりますところの一般公益というようなものからしてこれを記録にとどめるものもあるということはもちろん事実でございますけれども、以上申し上げましたような手段によりましてできるだけ残そうということでございます。そうしてまあ、集落跡等につきましても集落跡といたしましてそのままの形で残しているところもございまして、たとえば加曽利貝塚というようなところにつきましては、そういうものとしての全体がわかるようなところの範囲内を史跡に指定をして保護しているということもございまして、まあたくさんございますからその中に相当数記録でとどまるものがあるということは事実上認めざるを得ないわけでございますけれども、なお残す方向におきましてできるだけの努力をしておる。また、あるいはその場合、たとえば住宅団地等におきまして、その中の一部がなお従来の遺跡等が史跡の中で残って、それをまあ一種の子供の遊び場というような形で残されているというような場合もございまして、実態はいろいろございまして、できるだけ実態に沿い、遺跡の重要度、性格等に応じましてできるだけの保存ができるように処理をいたしておるというのが実態でございます。
#43
○鈴木美枝子君 いまの御答弁では、何かでき上がっているような感じがするのですけれども、改正するのですからこの実態をよく調べた方がいいと思いますから申し上げますけれども、いまの読売新聞の続きでございますけれど、子和清水の――松戸市でございますね、これは貝塚としても有名だったと、そうするとそこへ京成電車の駅が建つ。そうして駅が建つというこの区域の区画整理の中で、これは大切なものだから調べるということを文化財保護法の規定で、四十七年ですから、これは過去を言っているんじゃないのです、こういう経過なんですから。四十七年三月から東教大の岩崎助手に予備調査を依頼しているのです。そして、これが四年間もやって調べているわけですね。そうしますと、この駅をつくるために四年間やったことがたちまちのうちに消えてなくなっていくというようなことがもう随所にあったわけですね。随所にありますからこそこの問題点を集約しましてこのことをどう解決するかということをお願いしていると、これがおわかりになっていらっしゃると思います。
 ここに幾つかの例を――私時間がございませんので、例を示しつつこれをどういうふうにとどめながら今度の一部改正案につけ加えていくかということが重要なことだと思います。これを委員長、お回ししてよろしゅうございますか。
#44
○理事(久保田藤麿君) どうぞ。
#45
○鈴木美枝子君 ここに写真がございますけれども。(写真提示)これは佐賀県姫方のこれかめ棺でございますね。そうしてこれ二千五百年前、そしてこれはどのぐらいあるかといいますと五百かめ出てきたというのです。いまお回しいたしますから。五百かめ、弥生時代の最大級のこれは墓地だそうでございます。九州にしかないのだそうです。日本中の中で九州しかないというと、重要なことでございますね。だけど、この上は全部開発の間に家が建ってしまった。そうして残っているのはたったの三カ所だということなのでございます。これは日本の歴史から言っても私たち国民から言いましても重要なことだと思います。で、このブルドーザーがかかってしまったんですからつぶれてしまい、ここにはまだその途中でございますから、――写真済みません、お回しくださいませ、河野議員のところまでお回しください。そうして全部つぶれたのは大変残念なんでございますね。これがもう最近まで、いま新聞にはこういう開発される遺跡がつぶれていくと、そうしてまた、いまのように九州にしかないというかめ棺でございますね、かめのような形の棺の中に二千五百年前の遺跡があると、こういうものに対して開発と遺跡を守るということについてはどうお考えですか。河野さんからお伺いしたいんです。
#46
○衆議院議員(河野洋平君) 鈴木委員から大変私は御激励を受けているような気がしてお話を伺っておりました。日本全国御指摘のとおり各地で遺跡が壊され、あるいは埋蔵地、埋蔵文化財がつぶされていくかという事例は相当な数あると思います。だからこそ、改正をしなければならぬというふうに私どもは思っておるわけでございます。恐らく二十五年前にはこの法律で相当保存ができるとお考えであったと思いますけれども、この二十五年間の間に鈴木委員がただいまおっしゃいましたように、ブルドーザーは巨大化し、開発のスピードは大変なピッチで進むということになりますと、二十五年前の文化財保護法ではなかなか現状では守り切れない部分がある。したがって、文化財保護法というものは、社会の変化に即応してやはり文化財保護の手段、方法についても一日の遅滞もなく対応をしていくように文化庁が運用を工夫をし、あるいは法律も改正すべき点は遅滞なく改正をしていかなければならない。いままでのもので守れなかったものは新しく直して守ることができるようにしていくということがまさに大事でございまして、大変いい具体例をお示しをいただきまして、私どもはますます改正のスピードを速め、あるいは改正点をさらに研究をし、そうした社会の要請にこたえなければならぬというふうに考えております。
#47
○鈴木美枝子君 もう一つつけ加えさしていただきますと、これはもう東京近県になりますけれども、川崎で東名高速道路をつくるときに、ここにはやっぱり縄文時代の晩期の大住居が出て、あと写真をお回しますから見ていただきたいと思います。この調査をする人たちが本当に少数な人数しか地方などはおりません。これをふやすこともやっていただけるんでしょうか。あとで一緒にまとめて答えを出していただきたいと思いますけれども、この東名高速道路をつくるときなどは、その調査員がクレーンの中で死んでいるような事件もございます。これ写真を見るとわかるんですけれども、工事がどんどん進んで、ここで調査の人が調べているという、こういう死ぬような事故が起きる中で、これは文化とは言えないのですけれども――ちょっとこれお回しになって、済みません、河野議員のところにお渡しくださいませ。(写真提示)ここにブルドーザーがあるのです、そのところで二、三人の方が遺跡発掘、埋蔵文化を発見しまして、そして調べていると、これは近代国家というのはそういうふうになるのかどうか知りませんけれどもね、ブルドーザーの下のところで穴をあける人が、調査員の人が長い間考古学や何かを研究していた方たちのその努力というものが、この開発という言葉によってつぶされるということがもう大きく証明されているんです。これついこの間です、東名高速道路のは。この横浜の、もう一つここにございますから、一度行って、こういう写真はごらんになりませんでしたか。見た方がいいです。ごらんになって、そうして、しかも現地へお行きになった方がいいんじゃないかと思うんですけれども、これは東急不動産が宅地を造成したんです。これは横浜市の遺跡のところでございます。これ大集落遺跡と言っておりましてね、縄文時代、弥生時代、こうダブって大きな史跡になっております。これもだめになっちゃったんですよ。この上に全部住宅が建っちゃったんです。こういうようなすべてのことをよくお知りになって、そうして改正してほしいというのが、日本じゅうの考古学者の方たち、あるいは地方史研究協議会の方たちの私はお望みなんだというふうに思っております。――それをごらんにおなりになりましたでしょうか、届きましたでしょうか。
#48
○衆議院議員(河野洋平君) 拝見しました。
#49
○鈴木美枝子君 それについて、ちょっとお答えください。
#50
○衆議院議員(河野洋平君) 鈴木委員御提出の写真は拝見をいたしました。この写真を拝見をいたしますと調査をなさる方の御苦労、御苦心というものが非常によくわかります。こうした問題は、
 一つは、法律の不十分さ、もう一つは、調査をなさる方々の体制と申しますか、そういったものがまだ不十分だからだろうと思います。
#51
○鈴木美枝子君 そうして、いまおっしゃいました改正された中にこのことも改正されるという要素ございますか。改正されなければ困るわけです。
#52
○衆議院議員(河野洋平君) 鈴木委員もうすでに法律案お読みをいただいておると思いますが、改正案の中には、工事の停止命令その他も書き込んでございまして、文化庁長官の判断によって工事の停止を命ずることができる、そしてその間に十分な調査を行うということが改正の一つの柱になっております。
#53
○鈴木美枝子君 停止命令を出せる、開発工事の方たちにですね。
 届出制の問題なんですけれども、それを中止するという以前に以下述べるようなことが申し込まれている。こういうふうに直していただきたいという希望の中に、現行法では、周知の遺跡については、土木工事の着手三十日前に発掘届け出を提出すること、そこで調査が必要なときは文化庁が指示することができるとしているのを、六十日前の届け出とすることのみの改定にとどめている。
 他方、不時発見の遺跡については、三カ月を超えない期間で工事の停止、禁止を命令することができる。いまおっしゃったことなんです。それでも調査が完了していないときは、最初の届出日から起算して六カ月以内まで停止命令を存続させ得るように、この法律は改正しようとしている。
 ところが、現在の実態を見ると、破壊される遺跡の調査日数は、個人の宅造や事業者の小規模な開発行為なら三カ月−六カ月以内となっていても間に合うかもしれない。だけれども、大規模開発ではその一部をあと残すにしましても三年以上、あるいはさっき読売新聞に書かれていたように四年も調べなければならないということがある。そうすると、三年以上の調査日数が必要なものは幾つもあるんだと、こう申し出ているわけです。
 もとより、われわれは遺跡の破壊を最小限に食いとめて現状保存を貫くことを主張するものであるけれども、破壊を前提とする事前調査の大規模化、長期化を目指すものでは決してないんだと、大きなものだけつくればいいというふうには思っていないんだと、だけれども、この日数で決められることは開発事業家の方に有利な問題を持つんじゃないかということが私は含まれているんじゃないかというふうに思うんです。
 そして、この十年間の経過を見まして、いまここに幾つか代表的な資料をお見せいたしましたけれども、許可制の問題なんです。許可制をもう少し考えて、そして許可制を図ってもらいたいというのは、いま言った日数の問題だけでは調査をし尽くことができないということなんでございますね。だから、届け出制でそして中止するぞと、事業をしている、開発しているところをとめるよと言いましても、とめている期間の問題と調査する問題のバランスがそれではとれていない。ですから、許可制を敷いてもらいたいということが、全体のいままでこれをお見せしましたこういう破壊されているものの裏づけにしましたところの改正に対する、お願いというと大変弱い形になりますけれども、研究している人たちの大きな希望であるということを私は申し述べます。それについてお答えいただいて、私の質問はやめます。
#54
○衆議院議員(河野洋平君) 鈴木委員の御指摘は、衆議院の文教委員会文化財保護小委員会の議論もほぼそこがまさに一番議論の多いところでございます。許可制、届け出制の問題は考古学協会を初めとして学者の先生方からかねてから御要請のあったところでございます。
  〔理事久保田藤麿君退席、委員長着席〕
 これは先ほど有田先生の御質疑の中にもございましたが、現在、埋蔵文化財の包蔵地は日本全国に三十万カ所あるとも言われ、あるいはもっとそれ以上あるとも言われておるわけでございます。その三十万カ所以上あると言われている埋蔵文化財包蔵地は、鈴木委員も御承知のとおり、何丁目何番地、地番幾つというほど明確なものではないわけでございまして、大体あの山のふもとの辺であろう、あるいはこの村落のどの辺にあるのではないか、あるいはあの湖のほとりであろう、あるいはあの川のふちであろう、あの山合いであろうという、もう少し具体的であろうかと思いますけれども、つまり何丁目何番地、地番幾つに埋蔵文化財が包蔵されておるというほど正確なものでない場合が多うございまして、許可制をとる場合には、やはりその点が非常に明確になっている必要があろう。つまり許可制をとるためにはそれなりの私権の制限が行われるわけでございますから、あまりあいまい、あやふやな状態の中で強い私権の制限をかけるということはなかなかむずかしいということなど、あるいは三十万カ所の中にもかなり明確な部分もある。その明確な部分だけでも許可制にできないかという御意見、御議論もございました。しかし、それらを踏まえて私ども幾つかの論議をいたしました。たとえば、それじゃもうごくしぼってここだけ許可制にしようじゃないかという議論も実はいたしましたけれども、そこだけしぼるとそうでないところが逆に弱くなってしまやせぬだろうかという意見などもございました。これは物理的、具体的、そして文化庁の行政的に考えて現状では許可制にすることはほとんど不可能だという行政上の見地、そしてこれは参考人の御意見の中にもたしか入っておったと思いますが、そうした御意見も十分勘案をいたしました上、現状では届け出制ということにしよう。これは社会党の先生方あるいは共産党の先生方からも許可制ということの非常に強い御主張がございました。これは将来さらに埋蔵文化財包蔵地の周知徹底を進めて、そしてきわめて明確な場合には許可制を将来とることもあっていいのではないかという小委員会内の議論があったことは、この場で私御答弁をさしていただきたいと思いますが、結論は届け出制やむを得ずということになったわけでございます。
 それから、届け出の日数を三十日から六十日にしたということは余り意味がないんじゃないかという御指摘でございましたけれども、私はこの三十日を六十日にしたというのは、文化庁が届け出の内容を検討する期間を三十日から六十日、届け出をいただいてから六十日間、その内容について検討をする期間を得たということは、やはり慎重な審査ができる、いまよりはかなり前進であろう、少なくも、現行法より前進をしていることは間違いないというふうに私は考えたわけでございます。
 それから、三カ月、六カ月という先生の御心配でございましたけれども、これもまた先生よく御承知のとおり、現行法では三カ月、六カ月と言わず、つまり停止命令の期間がないわけです。現状では、つまり事業者と文化庁との協議、話し合い、協力によって行われているわけでございまして、それを少なくとも協議もできない、協力もしてくれない、そういう仮に業者がいたという場合にはただただ切歯扼腕しているだけ、法的根拠は何もないわけですから、切歯扼腕しているだけだという現状を私ども見まして、前提はあくまでも協力を得、協議をして文化財というものは保護していく、埋蔵文化財というものも保護されていかなければならぬけれども、どうしてもそういうことでいかぬ場合には停止命令をかけることができるということを考えたわけでございます。悪徳事業者、まあ私は性悪説ではありませんけれども、そういうものが現実にあるわけでございますから、やはり停止命令というものはかける必要がある。それはやはり法的根拠を持った方がいいということを私どもは考えまして、その日数等については三カ月がいいか六カ月がいいか。確かに鈴木先生がおっしゃったとおり、現在の調査体制あるいは調査人員の何といいましょうか、充足率と言いましょうか、十分調査をするだけの人員がいまいるがどうかということになりますと、これは確かに人数が足りないから四年もかかっちまう。人数がいればあるいは一年でできるかもしれない、あるいは半年でできるかもしれないということもあるわけでございまして、その辺の人員はどういうことになっておるかということで文化庁等に調査を命じましたところ、昭和四十五年から五十年までの間のこの五、六年の間に調査員は、担当職員は五倍ぐらいにふえておる。これは非常なスピードで今後もふえる可能性もあるし、ふえるように指導しなければならぬ。先ほど先生御指摘のとおり、埋蔵文化財センターの設置なども一つのてこにして担当職員あるいは研究員というものが今後ふえていくであろうということを考えまして、しかし、直ちに三カ月、六カ月ということでは調査員の数等も不安があるという各党の先生方の御意見もございまして、それでは五年間だけはもう三カ月ふやして、全体を通して九カ月間の停止命令を行えるようにしよう、五年たてば調査員が相当な充足率を見ることができるであろうということから、この九カ月間という期日は五年間ということにさせていただいたわけでございます。
#55
○鈴木美枝子君 文化財研究センターをおつくりになって去年から発足した。そうして文化庁長官の指令によってこれが行われる。文化庁長官のもとに専門審議会が置かれる。この三つどもえを考えただけでも、民間、学者、その他の方たちの意見よりは国の官僚的な問題の中へ枠づけされていく傾向があるこの一部改正案のようなふうに思われるのです。そこのところを、そこがあるから許可制にしてもらいたいということがあるということをお含みおきいただいて、もう少しこれの審議を、その点を詰めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
#56
○委員長(内藤誉三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#57
○委員長(内藤誉三郎君) 速記を起こして。
#58
○松永忠二君 河野さんにお聞きします。
 いま、いろいろお二人の方の御答弁がありましたので、実は今度の法律は、緊急かつ具体的なもので、各党の合意したものをできるだけ早くまとめたいという意味だと、こういういまお話しがありました。しかし、実際はどうかというと、お話しのとおり、二十五年に制定されて、二十九年に一部改正して、二十五年間そのまま行われた。これが今回改正が行われようとしているので、これは決して私は抜本的という言葉は当たらぬにしても、これはもう広範囲なもので、ある意味では、そう何回もこういう機会はないというものだというふうに思うわけです。この機会をつらまえて、衆議院の皆さんが小委員会をつくっていろいろ努力されたことを私たちは敬意も表し、多とするわけです。私自身は、この席でも、参議院でもそういうものをつくって準備をすべきではないかということを言いましたが、ついその機に至らずしていまに至ったわけでありますが、そういうふうな意味から考えて、やはりできるものはこの際ひとつ入れ込んでいかなけりゃできないのじゃないか、そう何回もできるもんじゃない。部分的に少しずつ変えたらどうかというお話しだけれども、これもさらに現実問題は容易なことじゃない。だから、やはりこの機会に問題の点があるならば入れ込みをしていく必要があるのじゃないかということを私たちは感じますし、そういう意味で、この法律は決して反対をする法律では絶対ないし、よりよくするという意味で、衆知を尽くしていく筋合いのもんだと思うんですが、そういうふうなたてまえで私は御質問もするし、考え方も聞くわけであります。
 しかも、このことについては、文化財保護法を改めようという考え方を文化庁も持っているし、そういう空気が出てきたことはもう昭和四十七年のことです、都道府県の教育長協議会が動き出したのは。それから日本学術会議が文化財保護法についての勧告をしたのは昭和四十八年、それから文化財保護法改定に関する声明などで、全国の文化財保護協会などが改定の動きを察知をして、表面化したとして、いろいろ声明を出してきたのも昭和四十八年五月、したがって、文化財保護法を改正するなら、こういうことは少なくも改正しなきゃできないということは、もう社会で検討済みだと私は思うんですね。事実、一部私の手元にありますが、当時文化庁が考えた素案的な考え方のものも出たこともある。したがって、緊急かつ当面というのじゃなくて、やはり、これだけの空気が出てきている際に、やはり相当な努力、これはもう大変な努力だと思うんですよ。事実上、議員提案と称しても、政府折衝もせなできないような、これだけやってくるということは容易なことじゃないと思う。だから、大変骨を折っていただいたので、なおもう一息力を入れたらどうか、また、参議院としてもそのくらいのやはり努力をする私は責任があると思うんです。そういう意味から言って、やはりいろいろお話を聞きますと、何かいろいろなところからも意見を聞いたというお話もある。しかし、参考人を呼んだのは三月四日ですよね。しかも、これはある意味では別に懇談をしてまでやったわけでもないし、それじゃ、参考人を三月四日に決めて、出てきたのは、五月二十三日にもう案が出てきているわけですね。どれだけ一体、参考人の意見が入れられたのか、また、いまこれが発表された段階で、これについてこのような改定には反対の意思を表明するというようなことを言っているところもあるし、そうしてまた、それらのところは、今後の国会審議に、関係学会や保存団体の意思を十分にひとつ反映すべきことを要求するとか、あるいは学術会議などは、なお、改正に際して決定以前において本会議と十分連絡をとられたいということを言ってあるわけですよね。具体的にどうしてとったのか、それから、そういうような意味から言うと、私は何かこの審議の、なお努力をすると、あなたのおっしゃった、国民的合意を得るという意味で、なお努力をする余地があるというふうに私は思うんですが、この点について、あなたのお考え方を聞かしていただきたい。
#59
○衆議院議員(河野洋平君) 松永先生、ずいぶん以前から参議院にも文化財の小委員会等をつくって、保護法の改正に取り組むべきだという御主張があったこと、私も当時政務次官をいたしておりまして承知をいたしておりました。この母法でございます文化財保護法が、参議院の議員立法であるという性格にかんがみても、参議院による改正案の着手というのが本当なのかもしらぬと思ったことも実は私もあるわけでございます。それはそれといたしましても、先生御指摘のとおり、いろいろな団体、あるいは地方公共団体を初めとする直接的に利害を持っておる人たちから、現行文化財保護法では不十分であるという趣旨の御発言があったことを私どもは聞き及んでおりまして、でき得るだけ早く文化財保護法の手直しをしなけりゃいかぬと思っておりました。最近の新聞にも出ておりますように、ここ数年間で文化財の破壊あるいは文化財が保護の手おくれで姿を消していくという事柄が非常に多いということを聞くたびに、胸の痛む思いをしておったわけでございまして、一日も早く文化財保護法の手直しをしたい、こう考えておりました。昨年、衆議院の文教委員会で文化財保護法の小委員会が設置されまして、塩崎小委員長のもとで若干のやりとりがあったわけでございます。それを引き継ぐような形で、ことし、私、文化財保護法の小委員会の委員長を命ぜられまして、各党の皆様方に、各党合意の上でぜひこの法律をつくりたい、これは私のそのときの気持ちとして、でき得べくんば文化財保護法なんというものは、各党の合意で取り進めたいものだと、こう考えて、各党の先生方にその旨を申し上げて御了解をいただいておったわけでございます。学術会議からいろいろな文書が出ておることも承知をいたしておりましたから、先ほど申し上げましたように、学術会議から林先生にもおいでをいただいて、御意見の開陳をちょうだいをいたしましたのも、そうした御主張にこたえたものであったわけでございます。さまざまな方々から、さまざまな御意見がございましたけれども、各党それぞれに受けとめておられるところもございましょうし、そうして学術会議の林先生が、そうしたさまざまな団体の意見等も十分御承知の上で、参考人として意見を述べられるであろうということも考えまして、林先生あるいは江上先生においでをいただいたわけでございまして、そうした参考人の御意見を聴した後、これは本当に各党の先生方にずいぶん長時間の時間をお割きをいただいて、懇談会を重ねまして、ここをどうしよう、ここを入れるか入れないかというような、かなり詳細な議論をいたしましたけれども、先ほど松永先生おっしゃるように、まだまだ足す部分がたくさんあるんじゃないか、直すべき部分があるんじゃないかという御指摘は私も同感でございますが、盛り込み過ぎて全体ができ上がらなくなるということを若干恐れたところもございます。限られた日数、そうして、ここでやらなければまた一年間文化財を危機にさらさなければならぬということもございまして、私自身、自分の能力等を考えまして、できるのはこの程度であろうということから、緊急かつ重要、そして各党の合意のものということで柱を整理をさせていただいたわけでございます。柱それ自体は、先ほどから鈴木先生初め皆さんの御議論にございますように、埋蔵文化財の関係をひとつどうするか、それから民俗文化財の関係をどうするか、あるいは伝統的集落についてどうするか、それから文化財保存技術者の保護についてどうするか、さらに、地方公共団体の体制についても考えたい、このくらいのところに柱をしぼりまして御議論をしていただき、さらに、若干細かい定義を直すとかいうことを後から追加をさせていただいた、こういうことが審議の経過でございまして、限られた日数、少なくとも非常に緊急に迫られているものだけでも進めておこうという気持ちからこういうことになったことを御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#60
○松永忠二君 したがって、私はここで何かこの法律をひっくり返すようなものをわれわれ考えているわけじゃないんですよね。いま秋山委員からお話もありましたように、もう補充的なよりよくするための努力というのは、しかも、これはあなたのおっしゃったとおり、やっぱり時期があるのであって、ある時期を目指してやっぱり通さなければいけない。それについてはやはりそういう点でよりよくするためになお必要な折衝もするし、われわれの衆知も集めるという意味で私は申し上げている。しかも、現にできた案そのものに批判をしているものがあることも事実です。これもずいぶん長い間皆さんは自主的に金を集め、行動を通じ、あなた方からおっしゃると、国民的合意の上に立つ文化財保護というものが、大切だというならば、そういう人たちはそういう意味で働きをしてきたわけなんです。そういう人たちがこれではということを言っているわけだから、この段階でそれは可能なのかどうかということを参議院が新たに考えるというのは私は責任だと思います。そういう意味をひとつぜひ御理解いただきたい。そう考えてみると、私はちょっと理解ができないのは、これは文部大臣もひとつ文化庁の長官もお聞きいただきたいのは、実はこの前この法律ができるときはずいぶんいろいろな議論を重ねた、昭和二十四年に法隆寺が失火した後に、参議院で文部委員会というのがあって、文化財保護制度の抜本改革のための立法着手というのをやったわけです。それでとにかくできる限り世論を聞き、専門的な意見、各方面の関係者の意見を聞こうということで、その学識経験者、国宝の所有者、文部省、国立博物館などの関係者を集めただけでなくて、近畿、四国、九州、東北、東海、関東、北海道、全国にわたる委員派遣を実施をした。そうして第一次案から第三次案をつくり、第七次案までつくって、そうしていわゆる大公聴会というものも開いたわけです。そうして第五回の国会で参議院が二十四年の五月二十一日に第七次案を法案として提案をしたけれども、衆議院で廃案にしちゃったわけです。それで今度は衆議院が逆に自分たちで衆議院文部委員会というので対案をこしらえた。重要文化財保護法案というのを作成し、その後衆参の間で数次にわたって懇談会を開いた結果、参議院案に修正を加えて第十次案というのをこしらえて、第七回国会に山本勇造さん初め十八人の人がこれを出したわけです。そうして二十五年五月三十日に参議院で公布された、この努力とこの経過と比べて、あなたは抜本的じゃないとおっしゃるけれども、これは相当な法律改正ですよ。また、これはそう簡単に法律改正というのは次々にできるものじゃない、これだけ御努力をいただいたなら、もう少し衆知を集め、努力を重ね、前段の段階で参議院の文教委員長に申し入れて、参議院側の意向をまとめてもらえないだろうかというような努力もされるということがなければ、よく言う、どうも密室的なんじゃないかという議論になる。いや、あなた、幾ら首を振られたって、事実を私は言ってるのですよ。それからまたいわゆる何というのですか、官僚、いわゆる政府提案にしようと思ったがというふうに、未整理のものを盛り込んで、それをもとにするとか――非常な御努力を賜ったり、各省の折衝でなきゃこれはできないのですからね。率直にいって、私たちも議員提案を成立させたいけれども、そんな議員だけでできるものでないわけです。これだけ努力を重ねられたのだから、せめて、出たものについては皆さんが現段階では無理もないじゃないか、ここの辺はもう少しじゃないかというものをやっぱり率直に取り入れていくということにして、それでできるだけ早目にひとつこの問題を片づけていくということをやっていくべきものだ、何かおっしゃるように、各党合意ということを強調されるようでありますけれども、それぞれ党の違いがありましょうけれども、私たちのところでは衆議院としてそれを一まとめにすることは了解はしているところだ、参議院に来ればまた参議院としてひとつそれを土台にしてやっていこうじゃないか、前進であることは認めるわけですよ。だから各党合意ということを強調されるなら、衆参合意ということをまず前提に強調さるべき問題である。私たち党としてもやはり十分な議論を進めてから、法律ですからね、時期がありますので、私たちもそういう不可能なことを考えちゃいない、またできることとできないことを判断して、無理やりにやろうなんということも考えないけれども、何かそこだけを強調されるというようなことについて、私はやはりまあひとつお控えをいただきたい。こんな話はあれですけれども、この前の文化財の、とにかく参議院がまとめたら衆議院が廃案にした、私たちの参議院が全会一致でやったものを衆議院が廃案にしている現実の法案もたくさんあるわけですよ。だから、そういう意味でそういうことのないようにするためにもここでやはり衆議を尽すということをぜひひとつ各党の理事の皆さんにもお考えいただくし、委員長もそういう意味で何か日程を決めてさっさとやるということなしに、ぜひひとつそういうことを考えていただきたいのです。そういう筋合いのものだと私は思います。したがって、私たちとしては、やはりこの際、よりよくするための修正の努力も必要だ、極端なことを言えば、継続審議もいいじゃないかという意見もあります。これもしかし言うとおり、情勢もあるわけでありますから、必ずしもそれを固執するわけじゃありませんけれども、やはりそういう努力をして、そう何回改正できるわけじゃないので、せっかく努力したものをひとつ積み上げたいという気持ちでありますので、この点、私の申しましたことについて、まあ河野議員のお考えをお聞きをするとともに、特に私は委員長、各党理事並びに文教委員の皆さんにぜひこの点の御努力をお願いをしたいと思うわけです。ひとつお二人から少し伺います。
#61
○衆議院議員(河野洋平君) 松永先生の御指摘、十分わかります。先ほど来私申し上げておりました各党合意というのは、衆議院文教委員会におきます各党の合意でございますことを改めて私から申し上げたいと思います。と同時に、二院制の今日、参議院の先生方の御意見を十分に尊重することは当然のことでございまして、きょうも十分御審議をいただきまして、先生方の衆知をひとつこの法律におかしをいただけば、さらに、結構かと存じております。
#62
○委員長(内藤誉三郎君) ただいま松永委員のお尋ねでございますが、文教委員会で十分審議を尽くしていただきまして、その取り扱いは理事会において決めたいと存じます。
#63
○松永忠二君 そこで、少し具体的にお聞きいたします。
 総則の問題についていま秋山委員からお話がありましたが、基本理念ということについては非常にむずかしいというお話がありましたけれども、基本理念というのを一体こういうふうな形で出して議論したのかどうかという問題ですね。ただ出さないで議論をむずかしいむずかしいとお考えになっているのか。この基本理念については、実は自然環境保全法には非常によくはっきり出ているんですよ。基本理念というのは、第二条に、「自然環境が人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであることにかんがみ、」とあり、これは憲法にもあることです。また、「広く国民がその恵沢を享受するとともに、将来の国民に自然環境を継承することができるよう適正に行なわれなければならない。」、この程度の内容を参考にすれば、この基本理念の問題も別に困難じゃない。そして、これはひとつ大臣にも記憶にとどめておいてもらいたいし、河野さん御存じだと思うんですが、実はこれがあるとないとでは、よく言う、あなたのおっしゃった国民基盤に立って文化財を保護していこうという法的な基礎というものがここに打ち立てられるということですよ。いまの実はこの法律でも、その法律の関係の皆さんは、これでも、文化財が貴重な国民的財産であること、「文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすもの」というここでも、例の行政処分取り消し訴訟、いわゆる行政事件訴訟法第九条に基づいて訴えを出すことが十分できると考えていまやっているわけです。しかし、従来は、文化財保護法に基づく保存行政に対しては文化財の所有者以外は権利主張の余地がないように考えられていたわけですよ。ところが、公害とか、こういう問題については、そうじゃなくて、文化財保護法は、一般国民住民に対して、憲法二十五条の文化的生存権と二十六条の教育を受ける権利とを保障するために文化財保護行政等の仕組みを定めているものと解すべきであるというふうにして、つまり、行政訴訟法やなんかで争っているわけです。しかし、これがはっきり、いま言っている自然保護法のように、「広く国民がその恵沢を享受するとともに」と、その上には、「人間の健康で文化的な生活に欠くことのできない」といういわゆる憲法の条章をそこへ入れてくることによって、これは単に利害関係のものだけじゃない、広い意味の利害として訴えが出されるという、国民合意のもとに自然環境を守っていこうということができるわけです。だから、この基本理念というものをやはり国民の権利として、文化財を守っていく、文化財の恵みを受けるという、これが非常に大事なんですよ。これは、私の聞くところにおいては、あなた方が出して、そうして議論したのじゃない、具体的なものなんです。しかも、文化庁自身が自分たちで少し内部的に検討したときにもこのことは入っていたわけなんです。基本理念というか、国及び地方公共団体の任務に関する規定を改め、その責務を強化することというようなことは入れていたわけです。だから、学会によっては、こういうことを言っていたじゃないか、何でそれを省くんですかということを言っているけれども、これは単にそういうことじゃなくて、いま公害とか自然環境保全というのは、そういう意味で、受益者、そこに土地を持っていたりする者だけの利益じゃなくて、国民全体の利益という立場からそれを守っていく、その訴訟も、変な行政をやればそれに訴えて出ていく。被害者として訴えて出られる。これはもう近代のいまや日本じゃ常識になってきているところなんですよ。だから、その基本の問題をここに入れ込むことは必要だと私は思うんです。時間も短いので一一御答弁は聞きませんが、そういうことです。
 またもう一つ、秋山委員が、いわゆる文化財保護法の細部の個人の所有権ばかりを強調しちゃまずいのじゃないかということも、自然環境保全法にちゃんと出ているわけですよ。第三条に、「(財産権の尊重及び他の公益との調整)」ということで、「財産権を尊重するとともに、国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない。」と書いてある。ほかの法律にもうすでに出ているのですよ、こういうことは。それを言葉として入れ込むことが不可能だということは一体だれが言うのですかね。どこが一体そんなことを拒否しているのでしょうか。また、そういうことを各党が合意できない理由は私はないと思うのですよ。すでに国としてそういう自然環境法で認めている――私は自然環境保全も大事だと思いますよ。しかし自然に人の力を加えた文化財の方が自然環境より先に優先的に保存されなければできないしやるものだと思う。自然環境法でもこれだけのことが規定されて、理念としてこれだけのことがうたわれるなら、せっかくこれだけのことを衆議院の皆さんがやっていただけるのだから、ぜひひとりこれは加えて、大変でも法制局あたりとも折衝されて努力をするということが必要だと私は思うのですが、この点についての河野さんの御見解をお聞きしたい。
#64
○衆議院議員(河野洋平君) 松永先生、御指摘の問題は、先ほど秋山先生にもちょっとお答えを申し上げましたが、確かに文化財保護法は、先生十分御承知のとおり総則第一条で、「(この法律の目的)」を書いておりますが、この目的は、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」ということでございまして、あるいはまた第三条に、「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」、さらに第四条には、「(所有者等の心構)」が書いてあるわけであります。こうしたことを踏まえれば、基本理念というものはこの中からでも出てきて合意ができるかもしらぬという気持ちは私にもございました。当初、皆様方に一つのたたき台、素案のような形でお配りをいたしましたものにも、基本理念というのには少しほど遠いかもわかりませんけれども、地方公共団体の任務等を書きました文章の中には、そういうことを入れたことも事実でございます。ただ、これは繰り返しになりますが、秋山先生のときにお答えをいたしましたように、第四条第三項をとるかとらないかという議論は、実は衆議院では全く行われませんで、そういう議論が出なかったことは重ねて申し上げるわけでございますが、と同時に、基本理念については、ここで具体的なお名前を申し上げることはどうかと思いますが、幾つかの政党から基本理念をこういうふうに書いてはどうかという具体的な文章も提出をされたことも事実でございます。その文章について私どもは若干のやりとりをいたしました。いたしましたが、基本理念としてぴしっと合意をするまでには実は至らなかったわけでございまして、御指摘をいただけば、どうも衆議院は次元が低くて具体的な問題ばかりやるなとおっしゃられるかもわかりませんが、基本理念についてのやりとりよりも、より多く埋蔵文化財の保護でございますとか、民俗文化財の制定でございますとか、そういったものにより多くの時間をかけたことも事実でございまして、いまの御意見を伺っておりますと、確かに文化財保護の基本理念というものがびしっと一本決まれば、逆にあとの方の議論も合意は早かったかもしらぬという気持ちはないわけではございませんが、それをやると改正は限定された五、六点にとどまらずに、さらに大幅な、最初から最後まで全部手を入れなければならないことにもなるのではないかなどと判断をいたしまして、あえてその問題触れなかったわけでございます。これはきわめて次元の高い先生方の御意見をどうぞひとつ闘わして、おまとめいただけますならば、それはそれなりに大変結構なことだと思っております。
#65
○松永忠二君 その点については大臣と文化庁の長官にも、やはり事実上はいろいろ言うけれども、そういう点について、もしあるとすればどうだというような考え方も持っていただくように、ひとつ今後考えていただきたいと思います。われわれの力だけでどうこうという筋合いでは私はないと思う。
 それからその次に、いまお話の出ました埋蔵文化財、周知の埋蔵文化財における土木工事のため、土地の発掘に関する届け出を六十日にしたということは、これはお話のとおり一つの前進であることは事実です。ただ、このことについては再再、いまお話があったように、すべての団体が、つまり許可制にしてもらいたいということを言っているわけです。許可制にできない理由というのも、さっきから話している三十万カ所あるとか、地点をきちっと言わなければ私権の侵害になるとか、いろんなお話あります。しかし、私は、たとえばそれじゃ、なぜ外国じゃこれができるのか。それじゃ、ここにいま出ている、これはもうみんなそうなんでしょう。あるいは西ドイツのバイエルン邦、記念物保護法というのは、第七条に「遺跡記念物を求めて当該土地を発掘しようとする者、又は他の目的で当該土地を掘削作業を行おうとする者は、許可を得なければならない。」と言っているわけです。みんな諸外国で届け出じゃなしに許可でやっているのに、日本だけができない、できないと言うのは一体どういうわけだろう。そしてまた、これは日本では昭和三十五年から三十七年に埋蔵文化財包蔵地の分布調査をやって、全国で十四万カ所をやったんです。文化庁長官の説明によると、これから重要なところは指定をしたりしていくとか、あるいは買い上げたりしていくという話だけれども、しかし国の指定史跡が八・七二%しかないんですよ。しかも、この十四万件の中で、六千件だけを重要物件として、包蔵地を逐次調査していこうとして重要遺跡検討委員会というのをつくったわけです。ところが、これもまだ四千件ぐらいしかなくて、あとの二千件も残っちゃっている。それで追跡調査の必要があるのにかかわらず、問題の出てきた緊急調査で手いっぱいなんですよ、実際は。しかし同時に、全国遺跡地図というのがあって、これが昭和三十九年から四十二年に刊行になって、官公庁あるいは公団、会社、中央六十一冊、地方都道府県六十冊を配布してあるわけです。配布してあるということは、ここのところを工事をするときに気をつけてもらいたいということを言っているわけなんですよ。私自身も、この遺跡地図を見たこともあります。それで、この地図によれば、とにかく一つの場所がわかることは事実なんですよ。しかもその遺跡地図は、大体遺跡が集中していることも事実なんですよ。買い上げますと、こう言ってみたところが、史跡指定地の一万三千百十二ヘクタールの中で民有地が三二・六%、三千九百四十九ヘクタールの中で、四十五年以降千二百三十ヘクタールを公有にする計画、これもだめだというんで八百四十三ヘクタールを四十五年から十年計画でやっていこうと言っているんです。それもいまやってない。一体いつになったら、じゃ言うとおりはっきりして場所が指定をされるようになりますかと言ったって、これは全く十年河清を待つと同じことだと私は思いますよ。そこで、やはりこういうふうな許可制度を打ち立てた機会に、この地点のできるだけの調査をやる機会も与えられることはできるわけです。事実それじゃほかの国はどうしているのかというと、遺跡記念物の存在が推測できる一定の土地を発掘保護区域に指定することができるということにして、この発掘保護区域は土地利用計画の中に標示をして、今度はそれを少し参考にしているようでありますが、そのことはやっているわけなんです。だから何かそれを指定すると、そこ以外はすっぽかされちゃうという言い方をするけれども、それじゃ、そういうことを図ることは何十年先なんだということを聞きたいのですよ、もうそうなれば。そんなことはもうだめなんですよ。現にそれじゃ、自然保護法ではどうしているかと言えば、自然保護法上、国または地方公共団体の所有地を原生自然環境保全地域と言って、非常にやかましく規制している。その他のところで自然環境保全地域をつくって、この保全計画に基づいて特別地区を指定をすると、特別地区については、次に掲げる行為は環境庁長官の許可を受けなければならないと、ちゃんと規定してある。それで、しかも特別地域に入らないのは普通地区ですよ。自然環境保全区域のうち特別地区、海中特別区に含まれない区域を普通地区として、このところについては、届け出をしなければならぬと書いてあるのですよ。だから自然環境保全法でもそういうことをやっているわけです。国の持っているところはぴしっとしちゃって、そうでないところについては、いわゆる計画の中に入れてやっておいて、それで、その中で特別のところを決めて、そこはもうこういうことをしちゃいかぬ、こういうことはいいと許可制にするわけです。現に遺跡地図があるじゃないですか、ここと、どこならどこと言わぬだって。密集したところでも、ちゃんといわゆる特別地区に地区指定をしておいて、その他の地区について届け出をするとか、しかもそのところを決めるについては、どうしても緊急調査しなければできぬのだったら、いい口実で、これで予算をもらって、この際調査をしてしまったら、両方ともできるでしょう。だからどう考えても、世界の国が、日本ばかりが狭くて史跡がごたごたしているのじゃないのです。よその国だって同じなのに、世界の国がほとんど許可制にしているのに、何でわれわれの国はそんなことができないのか。それでしかもほかの法律で、そういうこともやっているわけです。だからこれについては非常に検討を要すると私は思うのですが、まあ専門家の意見は後で聞くとして、まず法律をつくった河野さんにちょっと伺います。
#66
○衆議院議員(河野洋平君) 松永先生も十分御承知の上の御発言だと思いますが、自然環境保全法は明らかに目で見える、顕在化している部分について、ここは指定をするということでございまして、埋蔵文化財包蔵地というのは、目で見て見えない部分でございますだけに、指定の仕方はきわめてむずかしいわけでございます。そうして民有地を許可制に仮にするとすると、やはりかなり強い私権の制限ということも行われるわけでございまして、明らかにそこに埋蔵文化財が包蔵されているということが、地域も範囲も明確である場合には許可制ということがかなり可能だと思いますけれども。範囲について不明確である、あるいは地域についても、全部が全部明確に地番までわかっているわけではない、顕在化していない部分について指定をするということは非常にむずかしい問題があるということは、先生御承知のとおりだと思います。確かに先生御指摘のとおり、埋蔵文化財包蔵地についての地図等の作製を文化庁いたしておりますけれども、これは埋蔵文化財包蔵地の周知徹底をするために非常に重要なものであって、私どもも応援をして、そういうものをつくり周知徹底を図っておりますが、これとてもきちっとその範囲、面積等まで全部が全部明確に出ておるわけではございません。そうしたことから、衆議院文教委員会でも、多数の先生方から、許可制にしてはどうかという御意見がございましたが、現時点において行政当局、文化庁の能力、掌握度を考えますと、許可制にすることはできない、不可能であるということから今回見送らせていただいたわけでございます。
#67
○松永忠二君 お話わかりますが、ほかの国でも推測できる一定の土地と言っているんですよ。推測できるというのは、もう遺跡と推測できるでしょう。それを推測できるところは工事しちゃ悪いと言っているんじゃないんですよ。そんなら私は私権制限だと思うんです。許可を受けなさいと言っているだけなんです。何もそれを、私権制限をするんじゃないんだ。許可しなさい。許可してやるというの、何があなたできないということはない。私はそういう考え方ですよ。届け出というのと許可というのは――それじゃ許可したことに誤りがあったかどうかというような点についていろいろ問題出ていることも事実でしょうけれども、許可する以上はできるだけの努力はして調査もしてみるとか、あるいはそれでいわゆるその能力で不可能な推測をした、その結果どうこうなったって、それはあなたそこまで責任問われたってしょうがないじゃないですか。私は、全国遺跡地図を各地に配ってあるのは、ここは遺跡がありますよと、周知の包蔵文化財の周知の場所だと言っているんでしょう。そういうためにやっておきながら、いやそれはただ漠然としてというようなことになれば、それじゃそんなものは余り尊重してもらわぬでもいいんだということになると何のためかわけわからぬ。そういうところをやるときには念を入れてくださいよという気持ちでやっている。それをこういうとこだけはこの地図の中のいわゆる集中したこの地域だけは許可ですよとこう言ったからと言って、何で一体私権の制限になるかって言うんですよ。私は禁止をしようと言うんじゃないんですからね。まあこれはなお検討を要するところだと思います。
 それから、もう二点ほどありますが、「周知の埋蔵文化財包蔵地における国の機関等に係る協議」について協議をすると、事前にね。私はこれは一つの前進だと思います、いろいろ批判はあるようですけれども。いままでたくさんの覚書をこしらえてやったことを法律的に事前協議ですか、協議としたことが。ただ、それに対して不信を持つのはだれの一体責任なのかということですよ。実は、いま問題の起こっているのは、政府、地方公共団体の建設事業で破壊され、破壊されようとしているところに問題が起こっているわけなんです。たとえば、平城宮の跡は国道二百四十二号のバイパス、藤原宮跡は国道百六十五号のバイパス、四つ池上の弥生遺跡は第二阪和国道の場所だ、難波の宮跡は近畿の財務局の第二合同庁社、社会施設をつくる、岡山県の津島の遺跡は県立の武道館がある、浜松の伊場の遺跡は国鉄の高架の電車区の建設の土地である、山陽新幹線で福山市の福山城、三原市の三原城、惣ケ池遺跡は日本住宅公団の宅地造成、何のことはない。政府や国がやる事業が、実はこれも破壊につながっているということで不信を持っているわけです。そういう人たちがこれから事前協議やったって何の歯どめができるだろうかという心配なんですよね。だから、法律に事前協議を立てたことは成果があるけれども、その歯どめをどこかにしておく必要がある。それじゃ歯どめがないのかって言うと、なくはないじゃないですか。たとえば協議の内容を公開する、あるいはまた私は審議会というかもつと、そんなむずかしい審議会じゃないと思う。専門家がとにかくこの協議の内容を一度チェックできると。そういうふうにしておかなきゃ、役人ばかりで話したんじゃ、それは専門は、文化庁の長官、役所の人だけでしょう、ほかの人はみんな素人なんだ。素人の意見の方が強いわけですよ。だからやっぱりここに、何か専門家がここをチェックできるとかあるいは異議申し立てができるとか、あるいはそれへかけて通すとかあるいは協議内容を公開するとか、こういうことを明文化しておけばこれは信頼をされる、そういう必要が私はあると思う。この点は河野さんどうですか。
#68
○衆議院議員(河野洋平君) 先生御指摘のとおり、埋蔵文化財の包蔵地の多くは公有地にございますし、それから公共事業等で埋蔵文化財包蔵地にぶつかる例は非常に多いわけでございます。いままでもそれなりに文化庁長官はそうした場面に乗り出して指導をしてきたわけでございますが、法的根拠が乏しいこともございまして、覚書でございますとかあるいは役所間のいろいろなやり取り等で、まあ早い話が力関係その他が出てくることもあったわけでございまして、今回法律に、国及び地方公共団体等が工事を行う場合には文化庁と協議しなきゃいかぬということを法律にきちっと書きましたことから、文化庁長官の判断を示す根拠はきわめて強くなったというふうに私は考えております。この国及び地方公共団体等が工事をするときにまあ文化庁に通知してくる、その通知を見て、これは非常に重要な遺跡があるという場合には協議をするよう申し込む、申し入れる。そして当該団体と文化庁とは協議に入るわけでございます。その場合の協議のイニシアチブは文化庁長官が持っておるというふうに私どもは考えておりまして、これでいままでの役所間の責任の回避なんというものはなくなる。今度は挙げて文化庁長官の最終的な判断というものが非常に強く出てくると思います。
 先生のおっしゃる御不信、不信感みたいなものについては、これはもう私どもは挙げて文化庁長官が毅然たる態度でこの問題に取り組むかどうかにかかっておる。法律的根拠は明らかにできたわけでございますから、今後は文化庁長官がその法律的根拠を背景にして毅然たる態度で臨むか臨まぬかということでございまして、私は少なくとも、現状では安達長官の文化財保護に対する気持ちはだれよりも強い。恐らく今後安達長官の後を引き継がれる文化庁長官はいずれも文化財の保護についてはだれよりも強い文化財保護についての気持ちをお持ちの方が長官になられると思いまして、この法律でいままでとは違った文化財保護ができると、こう確信をいたしております。
#69
○松永忠二君 もう少し。私はやや見解が違うのですよ。別に文化庁のあれを疑っているのじゃないのですよ。いわゆる行政訴訟法でそういう法律が出るということについて、考えてみると、それをチェックするためにも、またそういうものを出されないためにも、またそれが十分に対抗できるためにもやはりその役所だけでなしに専門家の意見でそこをチェックする必要がある。それからまたこの理由を公開をしていくと、理由を公開させる、これも何にも悪いことじゃなしに、そんなことはやるつもりですなんておっしゃるでしょうが、しかしそれをやっぱりはっきりさせておくと、だからこれはあなたのおっしゃるように、われわれが文化庁の長官を不信しているわけはないのですよ。しかし、起きている問題はそういう問題であり、いままで覚書があってやってきてもまだできない問題を事前協議の形でしたということについては一つの毅然たる態度がとれるということも事実なんだ。そして同時に、文化庁の長官を支えるものが外にあってですよ、文化庁がただ長官が言っているのじゃないのだと、こういう専門家も言っているんですよと、われわれじゃ困りますと、そういうやっぱりものをやっぱりきちっとしておくこと。行政的な判断でなしにやっていくということが必要だ。まあこれは一つの考えで、私たちはそういうふうに考える。
 それからその次もう一つ聞きますが、遺跡を発見したときの届け出、停止命令に期限を付したということで、まあ三カ月、それをまあ六カ月、引き続いたときには一回に限って六カ月、それを九カ月というお話ですがね。これもまあ長官の答弁も後ほど聞きますけれども、何か前に伺った長官のお話では、いままでのように、前段に指示ないし地方自治体の努力あるいは関係者との協力によって調査が行われ、調査の終了まで工事等は自主的に抑制される、こういうようなことが通常の事態では望ましいと。それから、停止命令とか禁止命令はそういうような任意な協力を得られない場合最終的な措置で、あるいは俗な言葉で言う伝家の宝刀だと、こういう説明なんですね。
 そこで、私はこれも無理があるのじゃないか。実は遺跡だって、全く簡単なものもあれば、ずいぶん広いものも出てくるわけだ。それを三カ月と区切りあるいは六カ月と区切るということはおかしいじゃないか。それじゃ無期限にそのことを停止をさせていいなんて私は理由はない。やっぱり歯どめをしっかりかけて私権を守らにゃできぬ。したがって私は、停止命令を出したり禁止命令、いろんな命令を出すときには、要するに、期間と区域を決め、その理由を明示しなければできぬと。だから、その現実のものを見て期限と区域と理由を明示をするということをしておけば、時にはもっと早くもでき、もう少し長く置くこともできるのじゃないか。こんなことこそ、法律の字句の少しの挿入でできる。事実上そういうことだ。それに、考えてみたって、規模が全然違うものを同じ日数を区切るとか、これも無理だと私は思うし、それからいまお話がちょっと出ましたけれども、幾ら条件を充実すると言ったって、これいま日本の国でこういうことをやれるのは大学の先生だとか高等学校のわずかの先生ですよ。労働力といえばみんな学生を頼りにして労働力を仰いでいるわけです。休みのときにやるんですよ、夏の休みに。それを、幾らだれでもできたからつて、三一カ月とかなんて言われたって、幾ら条件を整えると言ったって、それは無理ですよ。だから、もっと実情に即して、しかも自由野放しじゃなくて、その実情を見て区域と理由と期間を明示をしていくということをやっぱすべきだというふうに思いますね。
 そうしてまた、私は、何か伝家の宝刀は悪質なやつですからね、これは一番。六ヵ月たてばどうしてもいいという気持ちを持っているわけでしょう、この人たちはね。金を出してやってるんだからもうおれらが買ったようなもんだというような考え方なんだね。私は、何も禁止とか停止だけの面じゃなくて、こういう人にも工事のいわゆる変更を求める権限を文化庁に与えたらどうかと思うんですよ。何もあなた、ただ、この法律でいえば、六カ月たてばもう手放しなんですよ。そうじゃなくて、事前段階で、そういうことをやるというけれども、はっきりそれを、悪いやつなんだからやはりその状況によっては工事の一部変更させる。ただ停止じゃなくてその一部を保存したらどうだと。私たちが伊場なんかで言っているのはそれなんだ。全部が無理なら一部をとにかく保存するという努力はできないかということには何ら具体的なものは出してこないんですよ。だからやっぱり停止をするとか、あと期間を置いては破壊されちゃうという前提なんですよね。発掘をしてしまえばもうこれは文化財としての価値は発揮しちゃったという考え方は間違いでしょう。なお下から掘ったらもっといいものが出てくるかもしれないんです。あるいは学問が進めばもっとそれは別の角度から検討されるかもしれない。できるなら保存をしたいところなんだ。しかし、そうかと言ったってそれはできないんだから、やはり工事の一部変更を求めることができるとか、そういうようなことも加える必要があるし、そうしてまた、言うとおり指示するとか、いろいろなことを言っているけれども、指示するというなら、逆に私が聞いたなら、じゃ三カ月、六カ月以上に協力を求めることも考えているのかという、まず第一の方は、もっと長く協力を求めることを考えているのかということにもなりますよ。まあ、御答弁を聞いてみても、大体この御答弁は出ていることだからどうこうはありません。ただ、私がなぜあなたにお聞きするかは、どうせ私たちは議員なんですよ、ね。大体、あなたと議論するなら、私たちは同じようなものなんです。そっちの衆は専門家なんだ。専門家の御意見はまた聞けばいいんであって、あなたがとにかく議員提案としてまとめて判断をしたんだから、私は議員としてならこういう判断はできるのじゃないかということで、何かあなただけに聞くようでありますけれども、そういう意味で聞いているので、これはやはりもっと実態に即して検討を要するのじゃないかということが一つ。
 それと、あともう一つ。私は、伝統的建造物群保存地区というのについて、もっと県の責任を明らかにすべきじゃないか。県は何かその指定をするときに関係して「必要な指導又は助言をすることができる。」と書いてありますが、国が「特に必要と認められる物件の管理、修理、修景又は復旧について市町村が行う措置について、その経費の一部を補助することができる。」というのは、「国は」は「国及び県は」と入れたっていいじゃないですか。やりたくなければやらないんだからね。
 それから、この町並み保全、これは広範囲な地区の保存でしょう。これを市町村に責任を持たせるには余りに重過ぎると。やっぱり県もタッチをしていくし、それからまた県ももっと補助できるように、このところへ「国または県」ということを入れられないもんだろうかということがありますが、まあこれはもうほんの軽いことですが、前の問題についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
#70
○衆議院議員(河野洋平君) 大変多岐にわたる御意見でございまして、私がこの法律をつくりますときに想定をいたしておりました問題を御質問にお答えする形で申し上げたいと思いますが、確かに、先生御指摘のとおり、開発の規模は、いわゆる大規模な開発もあれば、せがれに嫁をもらうんだから一軒うちを裏に建てようということからくる発掘工事もあるわけでございまして、その規模はもう千差万別だと思います。で、私どもがここに書きました三カ月、六カ月、五年以内は九カ月というこの日数は、私権の制限ができ得る最大限度の日数を書いたわけでございまして、規模によっては六カ月の必要は無論ありませんし、三カ月の以内である場合もあるわけでございますから、規模によってもちろん一カ月、二カ月、あるいは三カ月を超える場合にもう二カ月あるいはもう三カ月という規模とか、停止の日数は最大限を決めているだけでございますから、中でそのやりくりをすることは十分そういうことができるようにしてございます。
 ただ、先生の御指摘は、もう一つは、これが最大限で大丈夫かという意味の御質問もあろうかと思います。これは確かに、三カ月、六カ月あるいは五年以内は九カ月ということが最大限で十分かどうかというところに私は問題があると率直に思います。特に、当初三ヵ月、六ヵ月でございましたものを、各党の先生方から大丈夫だろうかという御心配の御意見が出まして、もっと延ばそうということで、五年に限って九カ月と延ばした、これは最終段階で延ばしたわけでございまして、この場面では文化庁に私どもは三カ月、六カ月ということで調査は大丈夫だろうなという再三念押しをしたわけでございます。三カ月、六カ月という私権制限は、法制上私権制限にはやはり最大限の期限はつけておくべきだということから、先ほどの先生のお話だと、期限、方法、理由等を付してやればよろしいということに法律はしておいて後で文化庁長官が期限も決めるし、方法も決めるし、したがって、理由も明示するということにしておけばよかったのではないかという御趣旨の御発言だと思いますが、法制上は停止命令をかける場合には私権の制限になるわけで、最大限マキシマムのところはやっぱり歯どめはつけておく必要があるという御意見から最大限を決めたわけでございまして、その最大の限度を三カ月、六カ月としたことの十分か十分でないかという議論については、文化庁行政当局から可能な最短時間がいいのではないかという私どもの判断もございまして、詰めた結果、六カ月ということにしたわけでございます。ただ、委員の中から六カ月では心配だという御趣旨の御発言もございまして、五年間という余裕を設ければ調査に当たる人間も相当程度ふえる。先ほども申し上げましたように、四十五年当時から五十年までの間に調査担当者の数も五倍近くふえているということもございまして、この傾向は今後も続くであろうという文化庁からの発言もございまして、五年に限り九カ月ということにさせていただいたわけでございます。
 それから、伝統的建造物群の方は、確かに県の役割りというのはちょっと中途半端であるかもしれません。しかし問題は、いわゆる町並み保存ということになりますと、現在住んでおられる地区を指定をして、相当な、場合によれば日常生活に制限が加えられる場合もございますので、できるだけ身近なところで、住んでおられる方々の十分な納得の上で決めなければいかぬ。県よりも市町村の方が当該地域に住んでおられる方との十分な意見の交換、感情の問題等の理解ができるであろうということで市町村に指定の権限を与え、それを国が補助をするという形にしたわけでございます。もちろん、都市計画法その他の制定に当たっては、県段階がタッチすることは先生御指摘のとおりでございます。
#71
○松永忠二君 私は、おとりになった説明はわかりますが、私は法律的に不備ではない、その理由と期限と地域の広さを明示をしなければできぬということになればですね。そして、実際のところ、これでいいかこれでいいかと考えておられるように、実際は本当の大変な大規模なものになれば、もうできるわけはないわけですよ。しかし、法律的にここまできちっと言ってあればどうにもならないわけですよ、ここは。あとは良心にまつなんという話になってしまう。だから、これはやっぱり法律的にあれが通り得る最大限のものを選ぶべきだ。
 それから、その次の県のことですが、今度改正で国が直接やれるようなものがいろいろできたわけですね。そこで私は、もともとこの町並み保存というか、一つの町を、外国で言えば一つの都市を全部、風俗的にも全部遺跡を保存しているところがあるわけですね。だから、国がやれる規模のものと、それから県のようなところで県が自分の仕事としてやれるものと、それから市町村のやれるものとはやっぱり段階がある。それを何か責任がみんなそこにあるということであれば、もしそこでやらせるというなら、国は協力すると言っているんだから県も協力をさせなければいかぬし、むしろ考え方としては、町並み保存でなしに、これからいわゆる西都原のように大きなものを考えていくとすれば、これはとても市町村の力でどうにもなるものじゃない。だから、問題によっては国が取り上げることもできる、県が取り上げでやることもできる、その場合には、所有地の市町村の理解あるいは賛成を得なければできないという法律的な根固めをしておけばいいんであって、やっぱり余りに――これは一つの大きな目玉でしょう。しかも、これが外国にあるのに日本はないというので、大分、ぜひ日本もやってもらいたいという、それを市町村などというようなところに責任を全部持たせるのじゃ、本当の意味の法律の目的は達成できないので、これらもやはり――しかも、私は法律で何かやらにゃいかぬ義務づけをするのにも問題はあると思うけれども、こういう、国も県もやれるかということになれば、市の場合には県と協議をしますし、国と協議してこれはやってもらえるだろうかという、しかし、法律根拠はないのに、逆に、法律はおまえらがやれと書いてあるじゃないかということになると、これはやっぱり問題があるというふうに思うんですよ。
 まあ、これはひとつ今後検討することにして、最後に、大臣と文化庁の長官に、ひとついまいろいろ議論した点についてのお考え方を少し聞かせていただいて、それで質問を終わります。
#72
○政府委員(安達健二君) ただいまこの改正案の実施の場合の行政上の点につきましていろいろと御指摘をいただいたことは、われわれといたしましても大変貴重な御意見だと思っておるわけでございます。
 まず第一点といたしまして、国、地方公共団体、公社、公団等が行いますところの事業についての事前協議制が法律化できるということは大変な前進であるという御指摘につきまして、私どもも全く同様に考えておるわけでございまして、そういう場合に、文化庁長官としてどういう考え方なり精神で対処するかということにつきましては、先ほど河野先生からお話がありましたとおりでございますが、私ども、実際の行政の場合に当たりましては、こういう問題で、従来でもそうでございますが、文化財保護審議会あるいはその下にございますところの文化財専門調査会というところに十分相談をいたしまして、遺跡の重要性あるいはその保存についての考え方等はあくまでも学問的見地に立ったものを基礎にいたしまして、こういう問題に処してまいりたいということを基本にいたしておるわけでございます。こういう制度ができますると、昨年におきましても、沖繩県の仲泊遺跡あるいは熊本県の塚原古墳群等におきましては、これらが実際に道路の路線決定の変更あるいは工法の一大変更というような形で遺跡等の保存が図れたこともございますので、われわれといたしましては大変力強く考えておるところでございます。
 それから、停止命令の期間につきましては、河野先生からもいろいろお話がありましたけれども、私どもといたしましては、従来お答えいたしておりますように、この停止命令というのはいわば任意な協力が得られない最終的な措置、伝家の宝刀として運用するということを基本にいたしておりまして、そういう命令を出す以上は、調査体制を整備いたしまして、所定の期間に必要な調査を終了するというつもりでございます。
 なお、その間に特に重要なもの等につきましては史跡の指定をする、あるいは都道府県教育委員会によるところの仮指定等もございますので、これによりまして重要なものについては指定の手続によっての保存も十分できるのではないだろうかと、かように考えておるわけでございます。
 なお、伝統的建造物群についての県の役割りについての御指摘ございましたが、現在、重要文化財、国の指定文化財等につきましても、国が補助金を出す場合におきまして、都道府県等がこの補助金をさらに所有者負担分についての一部を都道府県が補助されるというような実例もできておりますので、この伝統的建造物群の保存につきましては、国、都道府県、当該市町村等と密接な協力をとりつつその保存の完璧を期するように努力をいたしたい、かように考えておるところでございます。
#73
○国務大臣(永井道雄君) 具体的な問題は、ただいま文化庁長官から申し上げたことに尽きるわけでございますが、要点として私考えますのに、これは、たとえば理念の問題を松永先生御提唱になりました。そこを議論をしていくというと非常に問題が多岐にわたるというようなこともあって、これは河野先生、そうしてまた各党の諸先生が衆議院で御努力になったことででき上がったものでありますから、もちろん、私たちはそれを非常に尊重していきたいという考えでございます。
 第二点といたしまして、いかような法律ができます場合にも、その法の精神というものに基づいて行政の面でいろいろいま御指摘になりましたような問題点がありますが、その法の精神というものをどのように行政に生かすかということによって、やはり、その法律の持っている性格というものが具体的にどういう意味合いを持つかという非常に重要なポイントになるんではないかと思います。でありますから、繰り返しになりますから詳細は申し上げませんが、協議制の問題もその一つであるし、あるいは調査をやっていく体制をきちっとつくり上げていくということも一つでございますし、また、国と都道府県と市町村の連絡をよくして仕事をしていくということも一つでございますが、私どもは、こうした点につきまして、この法案が法として成立いたしました暁には、法の基本的精神というものを考えまして、行政のサイドでそれを生かしていくように、特に先生が御指摘になりましたような諸点はきわめて重要なものを含んでいると思いますから、行政の立場としては、そういう努力をいたすという考えでおるわけでございます。
#74
○委員長(内藤誉三郎君) 午後二時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後一時三十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時三十六分開会
#75
○委員長(内藤誉三郎君) ただいまから文教委員会を再会いたします。
 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 休憩前に引き続き、本案に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#76
○久保亘君 私の質問の時間は約十分でありますから、端的にお答えいただきたいと思います。
 最初に、文部大臣に、文部省にとって文化財保護という一般的な学問的な解釈じゃなくて、文化財保護行政というのは一体何であるか、文部大臣の行政の立場に立った率直な見解をお尋ねしてみたい、できるだけ短い言葉でお答え願います。
#77
○国務大臣(永井道雄君) 文部省というのは、学術、文化、それから教育と、この三つを担当する、そういう仕事に当たっているということでございます。そこで文化の問題、これは文化財に限りませずかなり広くわたるわけですが、その文化行政の中でやはり伝統との関係において考えますと、非常に重要なことが文化財保護である。そこで、文化行政の一環といたしまして、文化財行政というものを重要視して、そしてこの将来の日本の文化の建設、これに役立っていく、それが文部省の文化財保護行政の基本的立場であると考えております。
#78
○久保亘君 私がお尋ねしたいと思っておりますのは、行政の運営面からの基本的な考えにちょっと触れたいと思うんですが、従来ともすれば、文化財保護というのは開発に気がねをしながら行われてきたと見る人が多いわけです。むしろ、開発が文化財の保護に気がねをするような行政というものを文部省としては確立する必要にいま迫られているんだ、こういうふうに私は考えているんですが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
#79
○国務大臣(永井道雄君) 開発というのをどう定義するかというのはなかなかむずかしい問題と思いますが、と言いますのは、開発によって相当の利益を受けている会社がある。そういうふうな角度から見ますと非常にいわば消極的側面がありますが、他方、開発というような問題は非常に多数の住民の住宅を建設していくとか、あるいは日本の産業の基盤をつくっていくとか、そういうふうな問題が含まれておりますから、まず開発の定義が非常に重要な問題になってくるかと思います。私は健全な意味における開発というものが進んでいかなければならないと思いますが、それと調和した形で文化財保護というものを行うべきであるし、また、文化財保護というのはある意味におきましては本当に健康な開発というものにも役立つ、そういう側面を持っていると思います。ただし、その開発というものは、国民、公共の利益に反するような側面を持っている場合、これはもう開発行政それ自体において矯正すべきものでございましょうが、もちろん、文化財行政というものもそういうふうなものがいわばあるから仕方がないというふうな形で文化財行政を犠牲にしてはならないものであるとこう考えております。
#80
○久保亘君 大臣のいわゆる講義のような、非常にすきのないきれいな解釈ということではなくて、現実にもっと生々しい行政の姿勢として、私はいま文化財保護行政にとって必要なことは、従来その開発というのは、もっとわかりやすく言えば日本列島改造論に代表された開発と思えばいいと思うんです。こういうような開発と文化財保護の行政の力関係という面でものを考える場合に、従来は文化財保護の方がどちらかというと片すみに押し込められてきた。これが逆にならなければ、本当の意味でいま大臣が言われたような文化財保護を含む文化行政というのは確立できないのじゃないか。私はこう思うんです。
 時間がありませんから、次へ行きますが、各論については、いろいろ御質問がありましたし、また、これからも機会を見て私どももいろいろお尋ねをしたいと思っているんですが、ただ一つ、この文化財保護について、広範ないろいろな立場の人たちの意見が代表される。行政に直接代表されていくような仕組みというのが必要なのではないか。そういう意味では、今日までの文化財行政の中には相当弱点があるのではないかと思うんですが、そういう立場で一般のいろいろな立場の人たちの意見が、ただ、意見として反映されるということではなくて、行政の中に、文化財保護行政の中に生きていくようなそういう仕組みというものが、これから行政の段階で考えられなければ、幾ら法律をつくってみても、幾ら制度をつくってみても、魂が入らない結果に終わるのではないか、こう思っております。そういう意味で、文部省は、今後のこの文化財保護行政ではできるだけやっぱり教育についてもそうでありますが、非常に誤解があるといけませんけれども、一般的な言葉で言えば第四権的な独立した主体的な権限というものを、この文化財保護行政においてもきちんと持つ必要があるだろうと思っております。どこかの総理大臣にまつわる話ではありませんけれども、金と権力というのは、いま文化財保護行政については必要なのじゃないでしょうか。金というのは文化財保護行政のための予算です。権力というのは、これはそういう開発部門の各省庁の圧力に屈しない、そういう部門の圧力に対して国民の立場に立って文化財を守るということで、堂々と対抗していけるだけの力をこの文化財保護行政が、行政の権限として国民の立場から確立される、こういうことだと思うんです。そういうようなことがきちんとしてこないと幾ら法律をつくってみても、文化庁が今度のこの法案の審議に当たっても各省庁の意見を徴されたと思うんです。各省庁からは、手厳しいこの法律の改正についての意見が出てきているはずです。それはあなた方もお持ちですね。そういう意見がずっと何枚にもわたって文化庁でまとめられたものがあるはずです。その中にも各省庁は届出制でもだめだとか、いろんなことを言ってきております。こういうような開発部門、それに関連する各省庁の行政権力というものに対して十分対抗できるだけの力を持ち得るかどうか。こういう点でこの法律の改正とあわせて、大臣がいま文化財行政に対して抜本的な文化財保護の行政の基本姿勢というものについて考えを確立される。そういうことが、この文化財を保護するという立場から必要なんじゃないでしょうか。私はそういうことを考えているんですが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
#81
○国務大臣(永井道雄君) ただいまの先生の文化財行政を重んぜよという問題は、これは実は文化財だけではなくて、教育四権ということをおっしゃいましたが、学術、文化、教育すべてにわたって重要なことであると考えております。その場合に、国民の声を聞けということでございますが、これは私も全く大賛成であります。ただ、国民の声を聞く方法といいますか、道は二つあると思います。一つは、実は国会を通して、国会は国民の代表者でおられるわけでございますから国会における御討議。そしてまた、国会における御決定、こうしたものを尊重していくということが私は国民を尊重していく、国民の声を聞く最も重要なる道筋の一つであると考えております。他方、現在の社会におきましては、各省庁に審議会ないしは懇談会、そうしたものが設けられておりますが、そうしたものは現在の社会におきまして、専門家行政的なものが次第に展開してきております。そうした事情というものに踏まえまして、国会以外の場においてやはり国民の専門家的な人々、またそれに当該の問題に関心のある人々の声を反映するために、そうした組織が設けられていると理解しております。そこで、私はその二つの道筋からわれわれ行政に対して与えていただく言葉というものを、非常に尊重して仕事をしていくということが基本であると考えております。なおまた、財源というものがなければ困るではないかということは、これは文化財行政に限らず、もう私は文部省の中で取り扱っておりますあらゆる事項と申してよろしいんですが、みんな財源を必要とするものばかりでございますが、ただし、これはまた内閣の一員として考えますと、基本的な国の財源との関係というものも考えなければなりませんが、その枠内におきましては、私たちとしてはでき得る限り文教行政、このための財源を確立していきたいと思っております。
 権力というお言葉がございましたが、私は国民から独立した形の権力はあってはならないという考えでございますから、それは教育の立場というものを重んじて私たちは仕事をしてまいりますが、あくまでも、国会を通しての国民の声というものを尊重いたす。そして、その基本的な御決定というものを、いわばわれわれの活動の原則としていく。さらに、それを審議会等の声によって補う形で、私たちは権限を持って仕事をしてまいりますが、権力的であってはならないと考えております。
#82
○久保亘君 誤解されると困りますがね。権力というのは、あなた方は現に行政権限というものを発動される場合にはこれは権力になる。その権力というのが、いままではどちらかというと国民の立場に立って対抗しなければならない側に対しては弱くて、そして国民の側に対して非常に強く働いてくるから大臣の言われるような問題がある。教育行政全般についてもそういうことが言えるんです。だからそういう点では、あなたの言われる考え方に私も賛成です。結構だと思う。ただ予算などを、全体的に予算が弱体なのはこれは問題なんだというとらえ方ではいけないのでありまして、文化財行政というのがいままで、日本の行政全般の中で、非常に財政的には弱い立場に置かれてきているんだという認識が必要なんじゃないでしょうか。こういうことを私は申し上げている。
 最後に時間が参りましたので、大臣の所見を一言で伺っておきたいのは、今日文化財保護法が改正されようとしておりますが、河野さんも言われておりますような、これは緊急かつ社会的な要請でいまやっておかなければならない部門だけに限った。そのことについても先ほどの質疑でも問題がありますように、これから文化財行政というものを文部省自身が抜本的に見直してどうあるべきかという方向を、あなた方は行政の立場でこれを確立してみる必要があるのではないか。そういう立場で、この文化財保護法の一部改正にとどまらず、今後文化財保護行政の全面的な見直し、行政の立場からの見直しというようなことについて文部省が仕事を進められて、また、私どもとそれらの問題について意見を交換をされる機会が近く生まれてくるだろう、こういうふうに私どもは理解をしてよろしゅうございますか。
#83
○国務大臣(永井道雄君) 私たちといたしまして文化財保護行政非常に大事でございますし、また、これの改革ということを考えなければならないということは十二分に自覚しておりますから、その意見は必要に応じて申し上げますが、他方におきまして、私たちの行政権限というものはこれは憲法以下の法によって規定されておりますから、したがいまして、国会における御論議というものをあくまでも尊重する、そして、それとの関連におきまして私たちの改善改革の意見を申し上げる、こういう形で相互に意見を交換するような形で、具体的に施策を是正していくというふうに進んでいきたいと考えております。
#84
○内田善利君 最初に大臣にお聞きしますが、先ほど前質問者の答弁に、法の精神をどのように行政に生かすかということだと、協議制あるいは調査体制あるいは国と県市との連絡をよくしていくというようなお話でございましたが、この中で先ほど総則の問題でも問題があっておりますように、問題は、私はいままでの文化行政を見てきて、結局、基本的には開発か保存かということになってくると思うんですが、その開発か保存かという調和論がややもすると悪用されまして、の方に走っていったということが非常に多いわけですが、開発のための調和論というようなことでたくさんの埋蔵文化財が失われていった事実を見ております。こういった問題について、先ほどの質問の中から、こういった基本的な姿勢を打ち出すべきじゃないかということに私も賛成なんですけれども、この点もう一度開発か保護かということで、その調和論ということになってくると思いますが、どのようにお考えかお聞きしておきます。
#85
○国務大臣(永井道雄君) 私は開発とそれから文化財保護あるいは文化行政、そうしたものの調和が必要で、あれかこれかではないと、こう申し上げましたが、それは、これまでも常に調和がとれてきたという意味合いではないのでございます。戦争で敗北いたしました後の日本は、人々が住宅はもちろんのこと、その日の食にも非常に苦しむという状況でございました。したがいまして、それから相当期間というのは経済復興ということがいわば至上命令であった、そうした社会的状況であったと思います。しかし、やがてその経済復興というものが経済成長になり、そうして、その経済成長の展開の過程におきまして、いろいろないわゆるゆがみを生じてきたということについては、もう国民の認識はひとしく一致していると言ってもよいのではないかと思います。これは文化財行政に限りませず、自然破壊というような問題もございまして、そこで私は今回の法改正というものがなぜ出てきたかということを考えますと、それは先ほど河野議員も述べられましたが、すでに文化財保護法というものがあるにもかかわらず改正を必要といたしますのは、そういう過去の日本の社会の発展の中におけるいろいろなゆがみというものも否定できない問題としてあるではないか、そこで、これからこそは調和という形に向かっていかなければならないと、そういう意味があって私はこの改正が行われたという認識を持っておりますので、その調和ということを申し上げた。それは他方から言いますと、これまで必ずしもそうでなかったということの裏表の関係にあると、こう考えているわけでございます。
#86
○内田善利君 河野小委員長がおられませんので、私は法の運用面について具体的にお聞きしていきたいと思いますが、まず、行管庁の監査結果にもありますが、埋蔵文化財の包蔵地を行政指導によって文部省は都道府県委員会に対してA、B、Cのランクづけをさせておられるわけですね。このA、B、Cのランクづけなんですが、このランクづけが、発掘途中に、CであったものがAが出たと、あるいはAであったものがCだったというようなことが起こるわけですけれども、このランクづけについてお伺いしたいと思います。
#87
○政府委員(安達健二君) いまお話の出ました遺跡についてA、B、Cのランクづけということでございますが、まず第一点として、明らかにしておきたいと思いますのは、全国三十万カ所についてこれをA、B、Cにランクづけをするというようなことはやっておりません。これが第一点でございます。
 それから第二点といたしまして、そのA、B、Cのランクづけと申しますのは、午前中にお話出ました重要遺跡の指定についての調査委員会がございまして、その調査委員会で各県から六千の箇所につきましての事前の調査をしていただいた上を、それをさらにこれに特に重要なものを選んで史跡に指定をしていくという作業がございまして、その場合におきましてそれぞれの遺跡に応じましてこれは非常に重要なものであると、それからCというのは、なおある程度、まあよくその現在のままで保存できればいいけれども、やむを得なければ記録でもいいと、Bはどうも性格がわからぬものというような程度のランクづけでございまして、したがいまして、それは史跡を指定する場合の事前の一つの参考意見としてA、B、Cのランクづけをしておるというのが実態でございます。私どもは、あらかじめ遺跡についてA、B、Cのランクづけをして、これはCだからいいんだというようなことはやはり埋蔵文化財の性格上必ずしもとるべき策ではない、やはり埋蔵文化財というのは本当に掘ってみなければ実態がわからないということであるし、また、そういう埋蔵文化財に対する尊敬の念からいたしましてもやはりそういうものをあらかじめつけることによってランクづけをすることは問題があると、たとえば、高松塚古墳のごときは実は遺跡地図にも載っていなかったようなものもあるわけでございます。したがいまして、私どもはあくまでも遺跡を常に尊重の念でやるけれども、特に必要なものについては事前のできるだけ調査をして史跡に指定をしていくということを中心にした意味でのランクづけでございますので、そういうように御了承いただきたいと思います。
#88
○内田善利君 どんな遺跡でも先祖の文化遺産である以上は私は平等に重要な遺跡として、そういった認識を持って当たるべきじゃないかと、そうして、そういった認識のもとに当たった実証を優先させるべきであると、そういうふうに思うわけですね。高松塚古墳の場合もありますが、あらゆるところでこれはCランクだというので業者がどんどんどんどんCランクということを知った上でどんどん破壊していくという例もあるわけですから、包蔵地をA、B、Cのランクづけをすることは私はやっぱり掘ってみてみんな平等だという立場から発掘したその上での私は格づけでなければならないと、そのように思います。
 それと次は、原因者負担ですけれども、これはもう毎回本委員会で言っているわけですが、この原因者負担がある面はまあこの文化行政の財源の乏しさからいい面もあると思いますが、これが小さな零細企業あるいは個人の問題になってまいりますと、個人経営に及んでまいりますと、非常にまた問題が起こってくるわけですね。原因者負担ということが最初は公共企業団体であったものがいまはその原因者負担が個人経営、零細企業にまで及んできていると、そういった面がありますので、この原因者負担ということについても、発掘経費の面から、これは経費が少ないので、あるいは経費を出したくないので、もう無届けであるいはやってしまうと、そういう例があるわけですが、この原因者負担についてお聞きしたいと思うんです。
#89
○政府委員(安達健二君) 遺跡の保存につきまして、けさほど来お話が出ておりますように、国民あるいは事業者との理解と協力のもとに保存を図っていくというようなことを基本姿勢にして進んでおるわけでございますが、調査費用の問題につきまして、現在私どもの考え方といたしましては、一つは、もちろん国あるいは公共団体あるいは国鉄とかあるいは道路公団とか、そういう公社公団等の事業等につきましては、これはやはり本来何らかの意味においての国の財政的なバックを持っておるわけでございますから、そういうものについてはこれは経費を、その当該工事に当たるところの機関が負担をするというようなことが、これはその事柄として国家全体から見れば当然なこととしていいのではないだろうかというように思うわけでございます。
 次に、そうではない民間の業者の場合でございますけれども、いまお話出ましたような個人の場合、あるいは零細な企業のような場合におきましては、これはやはりそういう負担を、その当事者に負担をさせるということは、これは非常に文化財保護のいかに理解を求めるといたしましても、その限界を越えているのではないだろうかということでございますから、そういう場合におきましては、県あるいは市町村が調査主体となりまして、それに対して国庫の補助をするというような形で、できるだけそういう負担能力の点におきまして困難のあるようなところは、公費の負担において調査費用を出すようにしていくべきだというようにいたしておるわけでございます。
 もう一つのところは、大規模な開発業者というような場合におきましてこれをすべて公費にするというようなことにつきまして、国あるいはそういう公社公団等との関連からして、大企業等の場合においては、その工事費の中で当然そういう経費を負担するということも、事柄の性格上十分納得し得るのではないかというようなことで、われわれといたしましては、できるだけ民間の企業等におきましても、その負担能力等からいたしまして困難なようなものにつきましては、できるだけ公費負担をふやしていくという方向で処してまいっておるということでございました。
 この法律の改正案等におきましては、そういう場合におきましてその協力を求めることができるというような規定を置きまして、九十八条の二の第三項で、地方公共団体がこの発掘に関し、事業者に対し協力を求めることができるというような形の中で、そういうような面についての協力も求め得るというような考え方で進んでおるところでございます。
#90
○内田善利君 本当は開発し、破壊する立場にある者が調査費用を出すということは、結局破壊につながるわけですね。原因者が負担するということですけれども、開発をする、そういう立場にある者が調査費用を出すというんですから、調査費も出し渋るし、また、埋蔵文化財もその影響を受けて壊されていくという傾向が非常にあるわけです。それと調査費をなかなか出せないということで、あの姫方遺跡の場合も二ヵ月ぐらいは大学生があるいは高校生がブルドーザーの前を走ったり、追っかけたりしながら発掘調査をしているわけです。これは自費で約二カ月ぐらいはやっております。そういったことを考えましても、原因者負担というのは、やっぱり公費に早くしていかなきゃならないんじゃないかと、そう思います。文化庁が財源がないのはよく知っておりますが、そういった面、もう少し原因者が、開発側が金を出して発掘調査をしながら開発していくというやり方、これはやっぱり考え直すべきじゃないかと、そのように思います。
 それともう一つは、姫方遺跡の場合もそうなんですが、先ほど見せていただいたかめ棺が五百個ぐらい出ておりましたが、姫方遺跡も同じようなかめ棺が三百ないし四百ぐらい出ました。私も最初の山の状態から、そして発掘されたかめ棺が二百ぐらい並んだ状態から、そして昨年でしたか当委員会で行ってみまして、全くもうがっかりいたしました。あれだけみんな一生懸命になって発掘費用を出して、あるいはいただいて、一生懸命になって大学生もブルドーザーの前にはだかりながら発掘していったあの姫方山がいまはもう見る影もなく無残になってしまったと、こういうことで、次にこの保存買い上げですね、部分保存――永久完全保存じゃなくて部分保存、これについてのあり方をお聞きしたいと思うんですけれども、まず業者が土地を買う、そして発掘調査が行われる。一次、二次、三次と発掘調査が行われて、その間にいろいろ交渉が行われて、開発か保存かと、先ほど大臣にお伺いしましたが、結局その場合も開発か保存かと、この遺跡はどうなんだということで大分論議がなされた結果、その調和論が結局破壊に終わってしまった。部分保存ということになったわけですが、私もやむなく部分保存にオーケーをしたわけですけれども、今度はその部分保存になったときに、その土地を今度は県が買わなければならない、業者は売らなければならない。その売るときの値段が、その業者が宅地造成のために買ったときの値段の八倍です。一年間ぐらい前に買って、そして造成をしていって遺跡が出てきて、部分保存となって、今度はその部分保存を、県に売る場合に八倍の値段で売っている。これは姫方遺跡だけじゃなくてほかにもたくさんあります。五倍ないし十倍の値段になって値段がつり上げられて売っている。そうしますと、非常に大きい場合には買った値段よりも大きい値段になって売っておる、こういう実情が起こるわけです。だんだんそうなりますと、なかなか買えない。買えないからいよいよ小さくなってくる。いよいよ部分保存で小さく狭められる。そして、あの建った塔は、姫方の塔は、それこそ石がきで小さくされて、しかも、それは業者の緑化政策によって、業者にとっては一石二鳥です。そういうことで部分保存というのが行われておる。これは姫方遺跡だけじゃなくてほかにもあります。
 そういったことを考えたときに、この部分保存、それから業者の土地の買い上げによって今度は部分保存する場合に、八倍も十倍にもなって売られていくと、こういうことが行われているんですが、この点についてはどのようにお考えですか。
#91
○政府委員(安達健二君) 姫方古墳の保存につきましては、当局側の方で若干手おくれと申しますか、そういうような点が正直に申しましてあった点もあるかと思うのでございます。結果的には約三千平米――約千坪ほどの土地を買い上げをいたしましてこれを保存するということになったというのが実態のところでございます。こういうような問題につきまして、やはり早くこれに対する適切なる指示をと申しますか、方針をはっきりするということが大事でございまして、そういう点を今後特に姫方の教訓といたしまして、そういうものの保存の方針を早く確立するということに今後特に努力をいたしたいと考えておるわけでございまして、土地の買い上げ等につきましては、やはり当然時価ということになるわけでございまして、四十六年当時は、土地の値段が非常に上がったときでございまして、そういうようなこともあるいはあったかと思いますけれども、今後はできるだけ早く対策を確立することによりまして、そういう遺憾なことがないように努力をいたしたい、かように考えておるところでございます。
#92
○内田善利君 時間の関係で、次々に移っていきますが、今度は装飾古墳の管理状況ですけれども、この管理運営が、福岡の場合は、大体北九州で全国の約七〇%の装飾古墳があるわけです。高松塚古墳の場合と違いまして、非常に北九州の古墳はそれよりも五百年も千年も前だと聞いておりますが、北九州の古墳は原始美術の源流とこのように言われておると、ところが行ってみますと、王塚古墳は三年間かかって、高松塚古墳がこれを参考にして保存をしているということなんですけれども、そのほか竹原古墳、あるいは五十にわたる装飾古墳があるわけですが、非常に彩色が薄れてきておる。一々挙げるわけにもまいりませんが、ほとんど管理がずさんで、ある管理の場合は七十歳ぐらいの女性の方が町費年間三万六千円で管理されているわけですけれども、かぎを見学者に渡されるわけですね。ですから、中に入っていった見学者がどんなことをしてもよくわからないわけです。実際、私が行ってみた日ノ岡古墳の場合、あるいは珍敷塚古墳の場合、落書がしてあったり、珍敷塚古墳の場合は吉井町にありますが、すぐ近くを県道が通っている。その振動で彩色が剥脱しておると、あるいはとびらが合わないと、管理者は隣りにおられますけれども、この点についても全く同じようなことが言えますし、あるいはカビがはえてたり、見学者の落書き、西日が入る、そういったようなことで、湿度も同じような状態に保たれていない、こういう状況なのですが、せっかく国が指定しても、国の管理は何らなされてない。県が指定した分も、県の文化課の方がときどき来られる、まあ町がほとんどこれに当たっていると、こういうかっこうでございますが、こういった五十にわたる、全国の七〇%にも当たる装飾古墳が、高松塚のような場合はあのようにしてマスコミの勢いに乗ったといいますか、文化庁は飛んで行ってやられた。ところが福岡にある、北九州にある七十の装飾古墳、これはまた人は書いてありませんけれども、太陽の形とか、船の形とか、あるいは動物の形とか、色でずっと刻まれておるわけですが、こういったものの管理、保存、こういった面についてはどのようになさるのか。こういうことを実際運用面でしっかりやっていかなければ、文化財保護法が改正になっても、その効果は上がらないのじゃないかと、こう思いますが。
#93
○政府委員(安達健二君) 装飾古墳は特に北九州に多うございまして、これは六世紀ごろの非常に貴重な史跡であるわけでございまして、この保存につきましては、文化庁としても、いろいろと腐心をしているところでございます。と申しますのは、一つは非常に顔料の剥落、退色、あるいはカビと申しますか、微生物の付着等がございますので、これをどうやって保存していくかということにつきましては、ひとつ学問的にしっかりした対策を立てる必要があるということで、昭和四十四年から三カ年間計画で、考古学、保存科学、土木工学等の学識経験者からなりますところの、装飾古墳保存対策研究会、当時の九州大学の鏡山先生を会長といたしまして、この研究をお願いしたわけでございまして、そういうところでいろいろ研究をしていただいたわけでございますけれども、なお、装飾古墳それぞれに特別な条件がございますので、これならば絶対確実というほどまでの対策までは立っていないわけでございますけれども、しかし、少しでも早く前進しなければならないということで、この研究結果をひとつ、一応踏まえながら、昭和五十年度からはいまお話に出ました珍敷塚古墳、竹原古墳、萩ノ尾古墳等で、石室の密閉措置を講ずるということで、同時に公開も可能なような保存施設を設置するというようなことを考えまして、五十年度からはひとつこの装飾古墳の保存施設、石室の修理等に大いに力を入れるということで、全体で総事業費といたしまして三千万円ぐらい、県に対する補助等で千五百万円ぐらい程度の補助を一応予定をしながら、積極的にこれを推進してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
 なお、この古墳の管理等につきまして、御指摘のような心配の点もございますので、私どもといたしましては、県の教育委員会、あるいは管理団体であるところの市町村等とも十分協議をいたしまして、この管理に遺憾のないように、今後とも十分ひとつ注意してまいりたい、かように考えているところでございます。
#94
○内田善利君 これは一北九州だけの問題じゃなくて、やはり国民全体の文化遺産だと思うのですね。そういった意味で、やはりこういったものが出てきたときには、あるいは出てくる前に、やはり開発計画のマスタープラン等で、古墳の科学的な保存、管理等を予算をきちっとつけてやるべきじゃないかと思いますね。文化庁予算がないことは知っておりますけれども、竹原古墳のごときは観覧料を取って、それで何とか細々管理をしている、こういうことです。ですから、文化庁ももう少し財源云々も当然やらなければなりませんが、あの記念切手等も、私はこういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、記念切手等もやはり文化財のきれいな抜けるような色彩を、国民の啓蒙も合わせて、ああいう色の古墳等のことは余りよく知っていない人が多いのじゃないかと思うのですが、こういうことについても対策を講ずるとか、何らかの方法で管理をしっかりしていかなければ、せっかくの開発したあのような装飾古墳がだんだん色彩がなくなっていくと、そういう心配があるわけです。そういった対策を講じていただきたいと、このように思うのですが。
#95
○政府委員(安達健二君) 全く先生のおっしゃるとおりでございますので、装飾古墳の壁画の保存と申しますか、そういうことも含めまして、大いにこういうものの保存につきましては、予算の獲得等にも十分努力いたしまして、遺憾のないように努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
#96
○内田善利君 それから開発なんですが、佐賀の東部工業団地、ここで九州の中でもハイライトとも言うべき内陸工業団地ができることになって、買収がほとんど行われているわけですが、ここの遺跡事前調査といいますか、それを文化庁やられておるわけですが、現在までの状況をお聞かせ願いたいと思います。
#97
○政府委員(安達健二君) 佐賀東部工業団地と申しますのは、工業関係の団地を造成するということで、この地域に所在するところの縄文古墳時代の集落跡、あるいは古墳、それから先ほどお話の出ましたかめ棺の墓、土壌墓、埴輪、窯跡、というようなものがあるわけでございまして、これにつきましては県の教育委員会とその地域振興整備公団との間でいろいろと協議を重ねまして、四十九年の八月からことしの一月まで予備調査を実施いたしましたのでございます。そのうち、重要な遺跡十カ所、三万一千三百平米につきましては、これは保存するということで、一応協議が整ったようでございまして、残りにつきましては、事前の発掘調査をするというようなことで、この遺跡につきましての保存に遺憾なきを期しておるというのが実態でございます。
#98
○内田善利君 そうしますと、予備調査の結果、三万一千三百平米を保存するということですが、これはランクづけは何ランクにあるのですか。
#99
○政府委員(安達健二君) 特にランクづけをしてはいないわけでございまして、とにかく、そのランクづけということでなしに大事なものとして、保存をしようと、こういう旨の協議が整ったというふうに聞いておるわけでございます。
#100
○内田善利君 何ランクということじゃなくて、重要な遺跡としてということですが、私が聞いたところでは、非常に重要な出土品が出て、耶馬台国との関係にもこれから関連があるんじゃないかと、このように聞いておりますが、その辺はどうですか。
#101
○政府委員(安達健二君) 特にこの時代の遺跡として特別なものというようなものではなくて、まあ一般的に重要な遺跡であるというようなふうになっているそうでございます。
#102
○内田善利君 河野小委員長まだお見えになりませんが、運用面でいろいろお聞きしたわけですけれども、結局この法律ができまして改正されて、また一段と文化財保護行政が確立されるわけですが、先ほど大臣がおっしゃったように、軍用面だと思うんですね。特にその衝に当たる人の問題と思いますが、その人の当を得ておれば文化財も保護されるけれども、人を得ない場合はブルトーザーを一緒になって指揮してるというようなことも起こりかねないんです。ブルトーザー一緒になって指揮して保護者の方々が見守る中を破壊していったという例もあるように聞いております。ですから、結局人の運用、また、国民全体がこの文化財をどう保存していくかという、また、文化財尊重の念といいますか、そういった面で非常に教育が大事になってくると思うんですが、先ほど申しましたように、まだまだ文化財に対する国民の考え方もまちまちでございますし、そういった教育面で教科書に文化財のとうとさを教えていくということについては、大臣いかがでしょう。
#103
○国務大臣(永井道雄君) 私は、実は文明問題懇談会でもやっとこの原稿がまとまってきた段階なんですが、日本の伝統をどう保存するか、そしてまた、将来に結びつくかということを御議論願っているわけです。それがちょうど先月のテーマでございまして、それを御議論願いましたから、今月にはそれが発表できるのです。やはり、どうしても人を得ませんと文化行政が進められませんが、人を得るという場合に、やはり若い人たちの協力が必要であったりいたしますから、当然文化をどう考えていくか、特に古い文化をただ温存するというのではなくて、将来の発展に生かしていく上にどうしたらいいかというような問題について、学校教育ももちろんでございますが、相当広くそういう問題についての考え方を進めていくようにしなければならないと考えているわけです。
 そこで非常に迂遠のようでありますが、こういうふうな問題も、いろいろこうした問題について、まあ伝統の問題についてお考え願っている先生にいま議論をしていただいている。これを将来どういう形で学校教育や社会教育に生かしていくかということはもう少しよく検討しなければいけないと思いますが、重要な課題であると考えております。またそれがありませんというと、先ほど申し上げた文化行政を行っていく上で人を得るということができませんから、長期の展望に立ってこの問題を考えていくべきであると思っております。
#104
○内田善利君 先ほどの原因者負担の問題ですけれども、特に公共事業がやる場合の問題ですが、文部省と建設省との間では覚書がつくられておられるようですけれども、農林省との関係は覚書ができてないで現地は非常に混乱している面があるのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
#105
○政府委員(安達健二君) 御指摘のように、農林省関係につきましてはまだ覚書ができてないわけでございますけれども、今度この法律案をもし成立いたしていただくならば、そういう問題は法律上の義務としての協議になるわけでございますから、当然、具体的なその協議の実施の問題といたしまして、このことが円滑にいく基盤ができるものと大変喜んでいるような次第でございます。
#106
○内田善利君 それじゃもう一問で、河野小委員長を私はお待ちしたいと思います。
 文化財の保護に関する行政監察結果の中で、いろいろ文化庁に対して行政管理庁の方から注文があってるわけですけれども、一貫してこれを見てまいりますと、文化庁に対する相当な注文があるようですが、反面、また合理的な、破壊をこれで合理化していくというような面もあるように私は思うんですが、この中で、時間の関係でお聞きしますけれども、「文部省は、史跡、名勝、天然記念物の実態を調査するとともに、所在地の都道府県・市町村教育委員会等の意見を参考にして、その保存対策及び指定解除等の措置を講ずる必要がある。」と、これは史跡、名勝、天然記念物が非常に変化があったということですね。埼玉県ではサギが指定当時は三万羽生息していたが、現在は四十七年には一羽も生息しておらない、指定の意義が失われていると、こういうのがありますが、こういったことを具体的に五つほど挙げてありますけれども、こういった点について、文部省としてはどのようになさっていくのか。
#107
○政府委員(安達健二君) 史跡、名勝、天然記念物等指定いたしました場合に、その実態に非常に大きな変化があると、たとえば名木を指定したものが、それがまあ長年の年月を経て枯死したというような場合には保存の対象を失うわけでございますから、そういう場合については保存の指定の取り消しといいますか、解除ということをしなければならないわけでございますけれども、しかしこの問題は、物によりましては慎重を要するというのがございまして、先ほどお話ございましたサギ山のサギというのは、現在は従来のところにはいないわけでございますが、もう少し、一キロぐらい離れたところにまた集まっておるというようなことでございまして、どういうわけでそちらの方がいなくなって新しいところへ移ったのかというところは、やはり十分調べるということが必要であろうと思っておるわけでございますので、現在はそういうものを十分調べておるということでございます。
 それからもう一つは、いろいろこの史跡等で非常に広地域の場合でございまして、その中に住家の密集地区などが含まれているような場合もございまして、こういう場合につきましては、それぞれの家を建てるという場合に、現状変更の許可を得なければならぬというようなことがございまして、具体的な場合に、これはどうするんだということについていろいろと問題を生ずるわけでございますので、各市町村、県と協議をいたしまして管理計画、そういう史跡、名勝、天然記念物の管理計画を立てていただく。これはこういう形で保存をしていくと、ここは絶対現状変更を許可しないと、そういうような形での管理計画を策定して、そういうものにつきまして国民、住民の理解と協力を得てやっていくというようなことをやっておるわけでございますが、そういう点がいまお挙げになりました中に含まれていると思って御説明申し上げたわけでございます。
#108
○内田善利君 国が指定しておりながら、あるいは県が指定しておりながら、そのアフターケアといいますか、後の管理が行き届いていない面が非常に多いわけですね。先ほどの装飾古墳もそうですが、その他、国が買い上げたところで、後はもう草ぼうぼうというところがあるわけですけれども、そういった国が指定し、買い上げたところは、その管理をしっかりやっていただきたい、このように要望いたします。
#109
○矢原秀男君 私も時間が限定されておりますので、簡単に答弁を願いたいと思います。
 まず最初に、私、文化財保護法の新旧対照表を、いまつくったわけでございますが、逐条的に簡単に質問申し上げますので、答えていただきたいと思います。
 第一章の総則でございますが、この法律の目的について第一条には「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」と、こうあるわけですね。「世界文化の進歩に貢献すること」、このことについて、いつも法律の目的にこういうふうに挙げられるのではなしに、具体的な計画というものを、将来、こういうふうに考えておるんだと、こういうことでございましたら、明確に答えていただきたいと思います。
#110
○政府委員(安達健二君) 日本の文化財というものは、単に日本の文化財として価値があるのみならず、世界的な目から見ましても価値があるということでございまして、保存すること、そのことが同時に世界文化の進歩にも貢献する、たとえば法隆寺の建物等をとってみましても、これはやはり世界的な木造の建築物になるわけでございます。それから同時に、活用を図って世界文化の進歩に貢献するという面から申しますと、具体的には日本の古美術等、国宝、重要文化財等を海外で展覧会をいたしまして、それによりまして世界の人々に日本の文化財の価値を知ってもらう。そして同時に、それが世界文化の進歩の一助にもなるというようなことでございまして、ごく最近では、たとえば桃山時代の美術展で国宝、重要文化財等、百数十件を持ってまいりましてアメリカのメトロポリタン美術館で展覧会をやるというようなことも、たとえばではございますけれども、そういうことがあるわけでございますので、保存をするということと、また、その国際交流を図ること等によりまして、世界文化の進歩に貢献するということができるのではないかと考えておるところでございます。
#111
○矢原秀男君 次に、第四章の「埋蔵文化財」のところでございますが、これはまた後深く御質問いたしますけれども、五十七条の二について、「周知の埋蔵文化財包蔵地」という、これを「発掘しようとする場合には」と、こういうことになるわけですが、一つはこれはだれなのか、そうして二番目には罰則が不明確ではないのか、こういう二点をまず簡単に答えていただきたい。
#112
○政府委員(安達健二君) 五十七条の二におきましては、当然この土地を発掘する者がすべてその条件があるわけでございますが、その場合には、その工事の責任者と申しますか、そういう人が届け出の義務主体であるということだろうと思います。そして、その罰則につきましては、特に罰則の規定は盛ってございません。
#113
○矢原秀男君 ないね。
 じゃ、また後、質問しますけれども、五十七条の三についてのこの二項の中に、「協議を求める」とあるわけなんですね。これについて、だれとだれとだれになるのか、そういうことについて伺います。
#114
○政府委員(安達健二君) これは協議の前に、国の機関、地方公共団体または国もしくは地方公共団体の設立にかかわる法人で政令で定めるものが、たとえば道路公団が道路をつくるというような場合でございますので、そういう場合には第一項によって通知があるわけでございます。その通知を受けました場合に、これは重要なものだから協議をしてもらいたいということを当該国の機関等、先ほど申し上げましたそういう機関に対しまして通知をするわけでございますと、その通知を受けたその国の機関等は文化庁長官に協議をしなければならないという法律上の義務を負うわけでございます。
#115
○矢原秀男君 「埋蔵文化財包蔵地の周知」の二項になりますけれども、周知の徹底について二項では、「必要と認められる援助をすることができる。」と、こうなっているんですけれども、援助の内容についてはどういうことを言っているのか。
#116
○政府委員(安達健二君) たとえば、先ほど来話出ておりますが、遺跡地図でございますけれども、いま文化庁で発行しておりますのは五万分の一の地図でございまして、これを写真にいたしまして、七万分の一ぐらいの小さな一種の点みたいになるわけでございます。しかし、これをたとえば一千分の一あるいは二千分の一ぐらいの地図に市町村でこしらえるというようなことを市町村でやっていただく。そういう場合に、そういう資料を提供するとか、あるいはそれに対する財政援助をするというような形におきまして周知徹底について援助をしていくと、補助を含んだ援助というような意味でございます。
#117
○矢原秀男君 「国の機関等の遺跡の発見に関する特例」、この中で第五十八条の二項でございますけれども、学術上の価値が特に高い、そういう中で二項では「当該土地の所有者及び権原に基く占有者に対し」云々とあるわけでございますが、この占有者に対して、違法の占有者の場合にはどうするのか。これは具体例実際にあるのですけれども、そういう場合を想定しているのかどうか。
#118
○政府委員(安達健二君) この権原のない者が占有者というのも困難ではないかと思うわけでございまして、これは、正規の所有者あるいは権原を持って、借地権なら借地権に基づいて占有している者というように理解をいたしておるところでございます。
#119
○矢原秀男君 それから第五章の二の「伝統的建造物群の保存地区の問題でございますが、先ほども八十三条の三の保存の具体的方法が出ておりましたが、これは結構でございますが、その次に群地区周辺住民の損失について、そういう点についてはどうするのか。
#120
○政府委員(安達健二君) まず保存地区に定める決定の問題でございますが、これにつきましては、一つは都市計画法の規定によって指定された都市計画の区域内における伝統的建造物群保存地区を定める場合におきましては、都市計画法の定めるところに従って設定をすると。つまり、その地区はこの文化財保護法によるところの伝統的建造物群保存地区であると同時に、都市計画法に基づく伝統的建造物群保存地区でもあると。これは後で都市計画法の改正もございますが、そういうことでございますので、都市計画の地区の決定の手続に従ってされるということになるわけでございます。それからそれ以外の都市計画を行っていないところの市町村におきましては、条例の定めるところによってそういう手続を定めるわけでございますので、当然そういうような似たような手続が定められるだろうということが言えるのでございます。
 それから、そういう手続によって定められましたところの中におけるところの制限、その地区内におけるところの建物の建築の制限とかそういうような問題も当然出てくるわけでございまして、それは一般の都市計画法に基づくところの規定が適用される場合もございましょうし、そうでない場合におきましては、市町村の条例に基づくところのそういうものの財産権に対する措置が規定されるであろうと思うわけでございまして、そういう地区の保存につきましては第八十三条の三の五項によりまして、文化庁あるいは都道府県の教育委員会が必要な指導助言をするということで、その間におきまして私の方といたしましては建設省とも相談をいたしまして遺憾のないように指導してまいりたい、かように考えるところでございます。
#121
○矢原秀男君 「選定保存技術の保存」に関する援助でございます。八十三条の十二です。「その他の必要と認められる援助をすることができる。」と、こういうことになるわけですが、保持者の受け入れとか身分の保障、製品の受け入れ、買い入れ、こういうことについては具体的にどう検討されたのか。
#122
○政府委員(安達健二君) この「選定保存技術の保存」のための必要な措置等につきまして、なお今後大いに検討すべきところがございますので、具体的な点につきまして、なおここで申し上げるだけの用意もございませんけれども、現在無形文化財というものにつきましての保存につきましては、いまお話のありましたようなことについての助成なども行われているようなこともございますので、無形文化財の例を一つの参考としながらこれらの保存技術に適した保存に対する援助措置等も考えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#123
○矢原秀男君 河野さん、ちょっと質問したいんですけれども、旧法文と違いますのが九十五条の四ですね。これが新しく起文されているわけなんですが、これの意味についてどのように討議されたのかお尋ねしたいと思います。
#124
○衆議院議員(河野洋平君) ちょっと安達さんに先に答えてもらいます。
#125
○政府委員(安達健二君) ちょっと技術的な点もございますので、簡単に御説明さしていただきますと、文化財で国有のものがございます。たとえば北海道にございます五稜郭の跡というようなものは国で所有しておる文化財でございまして、ただし、その管理を函館市に管理団体として指定してお願いしているというような場合がございます。そういうような国有の文化財につきまして、その休憩所とかいろいろな管理のための施設が要るわけでございます。そういう場合に、その土地等あるいは建物等につきまして、国有財産の場合にそれを無償で使用させるということで地方公共団体がせっかく国の管理をしていただいているんだからその労に報いたいと、こういうことでございますが、現在の国有財産法の二十二条でございますると、非常に小規模なもの、具体的に申しますと、ちょっとした便所の程度しかその無償使用の対象にならないということでございまするので、それを一般的に管理のために必要なものにつきましては、そういうものの利用をして大いに管理をやっていただきたいということで国有財産の無償使用ということができるようにしよう、こういうものでございます。
#126
○矢原秀男君 そこで、その管理のため必要な限度において無償で使用することができると、私はいいと思うのですけれども、いまお話がございましたように、小規模なものという一つのやっぱり法的解釈できると思いますので、国有財産法の二十二条に該当するかどうかということになると、これは私、国有財産法の二十二条のやはり無償の範囲というものはある程度改正しなくちゃならないのかどうか、そういう点はどうなんですか。
#127
○政府委員(安達健二君) これはほかに立法例等もございますけれども、この九十五条の四の規定は国有財産法に対する特例でございまして、特別法でございますから当然この国有財産法の二十二条とともにと申しますか、それよりも大規模なものにつきましてもこの規定によって無償使用できると、こういうことでございまして、この点は事務的にも大蔵省当局もそういう御意見でございます。
#128
○矢原秀男君 九十八条の二に該当するわけでございますが、先ほどもお話が出ておりましたが、国鉄用地の文化財、高速道路公団用地の文化財、いわゆる該当するところ、そういうところはどの程度実態を握っていらっしゃるのか。そうしてそれについては、やはりいまも問題出ておりましたけれども、どういうふうにして善処していかなくてはならないのかという、こういう点はどうなんでしょう。衆議院ではいろいろ河野さん中心にお話出ましたでしょうか。
#129
○衆議院議員(河野洋平君) 先ほど松永先生の御質問の中にございましたように、埋蔵文化財につきましてはかなりの部分が公有地の中に包蔵されているということが周知の埋蔵文化財包蔵地の調査の中でわかってきておるわけでございます。したがいまして、この埋蔵文化財包蔵地を大切にする――表現が余り適切ではないかもしれませんが、大切にする際に、民有地と同時に公有地の中に含まれる埋蔵文化財包蔵地の保全のために相当な配慮をすることが必要だという議論は、衆議院文教委員会文化財保護小委員会でございました。特に民有地と別に公有地、そしてまた、国及び地方公共団体等の工事にかかる部分等の部分におきまして別途な考え方を示したわけでございます。
 なお、どの程度把握をしておるかという具体的な問題……。
#130
○矢原秀男君 じゃ、それは時間ないですからまた後で。
 ちょっと深くお尋ねをしたいわけでございますが、やはりいま一番問題になっておりますのは、第四章の埋蔵文化財の問題であるし、私もそうだと思っております。五十七条の二の問題について、ちょっと御質問したいのですけれども、私、行政の立場からやはりすべて法律ができたときにそれを執行していく市町村という結論的な段階の中でどういうふうに大きな意味合いがあるかという立場から少々御質問したいと思うのですが、この五十七条の二についてはいわゆる届け出が三十日、それが六十日に延びた、こういうふうになっているわけでございますが、いま市町村、いわゆる県を中心として市町村で行われている開発までのルートの経過を申し上げますと、業者から開発申請が知事の許可を受けるために出てくるわけです。そうすると知事の許可、そうすると今度は三者の協議があるわけなのです。そこには土木や建設や各部の建設関係、教育委員会、開発業者の三者の協議がやられる。そうすると今度は業者は青写真をもって説明をする、また、三者の協議の中で教育委員会が有無を確かめるために、やはりまずいままでの調査の分布地図の上から見ていく。いま河野さんおっしゃいましたように、日本の国では大体推定では三十万カ所ではないか、これはこれ以上多くあると思うのですね。私のおります兵庫県においても、一万二千カ所もあるわけです。そうすると、必ず見落としがここで出てくるのですね。そうして、今度は開発範囲の調査、ここでまた見落としが出てくる。それから開発の許可、また草を刈ったりいろんなことをやっておりますとまた問題が出てくる。だからここで残せとか残さないとかいう問題がまた取り上げられてくる、初めて発掘調査になってくる、そうすると一つはつぼ堀りの調査、そうしてもう一つは全面的な発掘調査になるわけです。この段階においても残せ残さないという当事者関係のやりとりがあって、範囲の確認調査の中でやはり続けていくと非常にこれはもうものすごい期間がかかるのです。これは御承知だと思うのですね。ですから、ここで一番大事なことは、分布調査の段階で残すや残さないとかいう問題が出てくる、緊急の発掘調査の中でつぼ堀りにするか、全面調査にするか、すべて残せ残さないという紛争がある、そういう範囲確認調査の中で一番大事なことは広がりがどの程度にあるのかという、これが大きな問題になると思うのですね。ところがこれは兵庫県だけですけれども、全県も一緒だと思いますけれども、五年、六年の協議事項というもので塩づけになっているものが幾らもあるわけです。そうして一年、二年かかっているものが幾らもあるわけです。それが件数の中で何件あるかといえば、五〇%以上が一年以上全部問題になってたな上げになっているわけです。こういう実態をやはり皆さん方が知っていただかなくちゃ、いまこの五十七条の二がなぜやはり、これは各党の賛成の中でいろんなお話があるわけですけれども、期間の問題が非常にやかましく論議されているのは、こういう具体例が一つの県だけでもある。そういうふうなことで全国的にも私は右へならえだと思うわけなのです。そういう中で行政のあれを見ておりますと、先ほどもお話がございましたけれども、兵庫県の場合でも、二十一市、百町に近い町村があるわけですけれども、その百町に近い町村の中で二町しか担当者がおらないのです。一つの町に一人なのです。百町のうち二町しか一人ずつおらないというわけなのです。二十一市あるけれどもそのうち一人おるというふうなところはたった十市しかない。こういうふうな問題の中で県にも十三人おるわけですけれども、職員の担当の能力というのは一パーティーが二人なのですね。一カ月二十日間動くとしても百二十カ所から百五十カ所がもう限度なのです、家をあけて。六パーティー組んだら百五十カ所しか行けない。予備費もない、学者を依頼する予算もなかなか取れない、こういうふうな中でやはりこの問題を考えたときに、文部大臣に一つだけ私、質問したいのは、現在の日本の公立の大学の中で考古学の専門コースが国立大学の場合に何校あるのか。それがこういう現状の中で、いま取りざたされているこういう問題の中で、河野さんも五年もたてば人員補充ができると、こう非常に希望を持っていらっしゃいますけれども、もういまからこういう大変な中で、やはり学生さんが卒業してお勤めになる、そういうときに技術やいろんな能力が学校の中できちんとして後継者やいろんな事務能力を処理するためのそういう体制が国立学校でできているかどうかということ、それをお伺いしたいと思います。
#131
○国務大臣(永井道雄君) 考古学の講座を置いております国立大学の数は十一大でございます。なお学科について申しますと、史学科を置いております国立大学の数は十六大でございます。
#132
○矢原秀男君 文部大臣、今後、たとえば関西の場合でも確かに講座はあるわけなんですね。しかし、専門のコースというのはやはり実際ないですね。関西の場合でも、やはり京都大学にまあまあ専門コースですね。あとはですから私学の立命や関大、同大、関学、こういうようなところに依存をしているわけですけれども、私はこれやはり国立大学の中でこういうせっかくいま新しい法案が論議されている中で、やはり文部省として、大学が、考古学講座というものを現況のままだけでよいのかどうか、それとも将来この法律が改正できる段階の中で、今後もう少し積極的に充実をした、そういうせめて学部が設けられなくても、そういうふうな講座もちょっと私、講座だけに依存するのではなしに、せめてその上の段階の専門コースぐらいのいわゆる充実した講座を設けていく、こういう段階までは進まなくてはならないのではないかと思うわけです。大臣、どうでしょう。
#133
○国務大臣(永井道雄君) 先生の御指摘のように、確かに考古学ないし史学の研究というのをもっと強化していかなければならないと思います。先ほどちょっと申し上げるときに私、申し忘れましたが、実は、これは小中高の場合でございますが、指導要領の中にも伝統、それから文化財の研究というものを勉強するようにということがあるわけでございますが、やはりそういう地盤を強化していく、そして、その上でやはり大学における考古学、歴史学の研究、これは非常に重要なことでございまして、今後こういうものを国立だけに限りませず、私立大学も含めまして、どういう形で強化していくかということはひとつの重要課題であると思っております。これは文化財保護との関連においても重要でございますが、その他の問題との関連におきましてもきわめて重要な問題であると考えますから、これからよく検討さしていただきたいと思います。
#134
○矢原秀男君 最後に、きょうちょっと時間がもうございませんので、要望等だけに終わらしていただきますが、いまも問題になっております許可制と届け出の問題でございますけれども、私はこの問題については歴史的な経過の中で別な面の功罪を見ておりますと、現在の日本の中で、産業構造の中で常に公害規制やいろいろな法的なものができたときに、工場に対して許可制にするか届け出にするかで五年も十年も常に論議の場の中にさらされたわけなんです。その都度、許可制はだめだと、自由経済の中でだめなんだというわけで、自発的にというので届け出のそういうふうな中で、いまの日本の公害列島というものの大きな一面のやはり罪があると私は考えるわけです。ですから、今回の問題も私権との関係の問題等がいろいろ取りざたされておりますけれども、将来法の運用の中で善政をきちっとしていけば、許可制というそういう可能性というものを見通した上の中でやはりこの現在の届け出、こういうふうな解釈をしていかないと、やはりいまの乱開発の中で文化財というものがすべて壊されていく一面も出てくると思うわけです。ですから、私はいままでの日本のいろんな法律の中で許可制と届け出の論議を私自身が実際にいままでやっておりまして、この点は非常に痛感をいたしております。ですから、私は将来は許可制という形の中でよく検討してお互いのものが迷惑をかけない、そういう法の善用というものが大きな課題になると思います。
 それから考古学専門の立場の方から第四章の「埋蔵文化財」の中で、一つは、保護に対しては一項目もない。二番目は、環境整備については本当に具体的な事項が何もない、現在の問題点だけを取り上げられておる、それでも不備な面がある、こういうふうな御意見も伺っておるわけでございますが、衆議院の小委員会で非常に努力をされたその経過については敬意を表するものでございますけれども、私たちも今後ともいろいろな具体的な意見をさらに今後申し上げながらよりよいものにしてまいりたいと思っております。
#135
○内田善利君 それじゃ、河野小委員長にお伺いします。
 ただいまも許可制、届け出制の問題が出ましたが、この三十日以内に届け出をすると、その後の必要な事項を文化庁長官が指示するということになっておりますが、現況はこの指示が発掘完了後届いたり、いろいろおくれておるわけですね。行管庁の方の監査結果にも出ておるようですが、この指示事項は文化庁においては必要ないと、特に見られないと、こういうことなんですが、この点はどのようにお考えなのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
#136
○衆議院議員(河野洋平君) 内田先生御指摘のとおり、届け出の期間を三十日といままでなっておって、その三十日間に現地から文化庁まで届くまでの間に時間がかなり経過しているという分が一つと、それからもう一つは、やっぱりかなり大量に届け出が届いてくるために文化庁において審査に余裕を持って審査するだけの日数がないという面と二通りの問題があるだろうということが衆議院文教委員会の小委員会では議論になったわけでございます。三十日ではやはり余裕を持って審査をする、あるいは届け出が文化庁に到達をしてから審査が完了するまでに時間的余裕が足りないというような御指摘がございまして、これをもう少し延ばそうということから六十日ということに日数を延ばしたわけでございまして、文化庁当局にも私どもから質問をし、文化庁からも六十日あれば現在よりは相当に慎重な審議ができるという答えをもらっておるわけでございます。これらは現地調査なども考えて六十日という日にちをとったわけでございまして、現在までの三十日とした日数よりは相当に十分な審査ができるものと判断をした次第でございます。
#137
○内田善利君 いままでの指示事項であるならば、この包蔵地の発掘に関する届け出の受理を、指示の迅速のためならば都道府県教育委員会に委譲した方がいいんじゃないかと、こういう報告ですけれども、この点はいかがですか。
#138
○政府委員(安達健二君) 埋蔵文化財の土木工事等のための発掘届け出が出ました場合におきまして、この届け出の三十日の期間内に当該埋蔵文化財の性格あるいは重要性の判断あるいは当面の保護措置等の期間が要るわけでございまして、これを三十日の期間では一生懸命やっておりますけれども十分でないというようなことで、こういう提案がなされているわけでございまして、これを実際出てくる場合について見ますると、都道府県の教育委員会でまず意見を付して出てくるわけでございます。それについての都道府県の教育委員会の意見も考えながら、それに必要な指示をしていくというのが実態になっておるわけでございます。それは一面では期間を要しますけれども、またその指示の内容の公正を保つことができるということでございます。
 それからもう一つ、それならばそういう権限を都道府県の教育委員会に委譲すると申しますか、都道府県教育委員会に届け出をすれば足るというような方向はどうであろうかというようなことも十分考えられるわけでございまして、こういう点についても、いろいろ衆議院の小委員会でも御検討をなされたところと伺っておるわけでございますけれども、現在の状況からいたしますと、非常に先ほど来お話ございましたように、各県でまだ専門職員が一人とか、そういうようにまだ各県におきますところの保護体制が非常にアンバランスでございまして、そういうときに、これを県にいきなり委譲するということについてはなお問題がある。それから、さらに、こういうものにつきまして、たとえばこれはぜひ保存したい、あるいはこれは記録保存にとどめざるを得ないというような判断も、やはりある程度全国的な視野に立ってこれを判断する方が現段階においてはなお適切ではないだろうかというようなこと、あるいはまた、現在の地方自治体あるいは国の体制その他からいたしまして、できるだけ公正な学問的根拠のある判断をするというようなことをするためには、なお当分の間はやはり国において行う方が適切ではないか、こういうようなことで、総合判断といたしまして、従来のとおり届け出の先は文化庁ということでその届け出期間を延長するということにとどめられたと私ども理解をいたしておるところでございます。
#139
○内田善利君 それからこの法案の中に所有ですね、出土品が出た場合の所有権といいますか、これがどこに明記してあるのかよくわかりませんが、盗掘に遭ってその品物が供述が出てきて、それを届け出る場合に、そのどろぼうが所有者になった、所有者として届け出たということがありますが、この所有者についての明確な所有権ですね、それはどこにあるかお聞きしたいと思うのですが。
#140
○衆議院議員(河野洋平君) 今回の改正案の中には内田先生御指摘の部分が実は入っておりません。現行法でどのように処理されておるかは長官からお聞き取りをいただきたいと思います。
#141
○内田善利君 じゃちょっと前に。
 福岡で、前原町で、いま伊都国の重要な遺跡が展示されておるわけですが、どういう事情があったのか私よく知りませんけれども、一般のたくさんの人が見に行っているわけですけれども、それが所有者の方がいま撤去されたということなんですけれども、事情はよくわかりませんが、恐らく届け出もしてあるし、保管証も出してあると思うのですけれども、所有者、所有権という問題ですね、非常に大事じゃないかと思うのですが、ある出土品が大学にいっぱい分散してしまっているとか、あるいは発掘者が倉庫の中にボール箱の中に入れて置きっ放しになっているとかいろいろあるわけですが、私はこれを見まして九州も、あのように伊都国の出土品あるいは邪馬台国の問題等ありまして、やっぱり九州にも一つ国立の博物館があったらいいのになと、いろいろ一般の公開もできるしと思うんですが、これとあわせて、先ほど千葉県の話を聞いてうらやましい限りで、うらやましいと言うとおかしいですけれども、九州にもそういったものが一つできないものか、あわせて御答弁をお願いしたいと思います。
#142
○政府委員(安達健二君) 現在、埋蔵文化財の所有権あるいは管理等につきましては、五十九条から六十五条にわたりまして規定があるわけでございます。考え方の基本は、所有者が判明している場合にはこれを所有者に返すし、そうでないときには遺失物法に従いまして警察署長に通知すると、そして、それが文化財と認められた場合にはこれを文化庁長官の方に持ってくると、そして文化庁が文化財であるかどうかを鑑査すると、この鑑査は具体的には県の教育委員会に委任をいたしておるわけでございますが、そうして、その所有者が判明しないものの、そういう文化財であるところの埋蔵物につきましては国庫に帰属すると、こういうことが基本になっておるわけでございますが、ただ、帰属したそういうものが、活用の見地からして、国で保有する場合は別といたしまして、そうでない場合には、との土地の所有者、発見者にその「報償金の額に相当するものの範囲内で譲与する」ということになっておるわけでございます。国がこれを保有する必要があると思うものにつきましては、その所有者、発見者等に譲与金の支払いをいたしまして国の保有に帰すると、こういうのが現行法のたてまえでございまして、ただ、実際のこの発掘物の処理等になりますると、たとえば考古学者等が発掘されました場合におきましては、その報告書を作成するような関係におきまして、なお、その発見者が――発見者と申しますか、学者の人が研究室の中に置いておかれるということが相当事例があるということが実態でございます。そういうようなもので、重要なものにつきましては国が保有して、その報償金を支払うというような形で国の所有になっているものももちろんございまするし、また、発見者の方に渡すというような場合ももちろんございます。そういうような形でございまして、いまの、何と申しますか、直径四十七センチといいます非常に大きな、日本一の鏡の問題だろうと思うのでございますが、こういうものにつきましては、なおその手続きが終わってないと申しますか、そういう状況下にあると私ども理解しておるところでございます。
 先ほどお話しに出ましたところの歴史民俗博物館というものにつきまして、国立のものを千葉県の佐倉に建設するような計画で進んでおるわけでございますが、これにつきましては、私ども、もし、先ほど申し上げましたとおり、これは国がこれをつくって、そしてそれだけが地方のものと孤立してあるのではなくて、県立のもの、市町村立のものとのネットワークの中でこれを運用していきたいと。具体的に申しますると、たとえば、どこの地方にはどういうものがあるかということがわかるし、また国立のものも地方の美術館、博物館にもこれを貸し出すというような形で、一体的な運営を図ろうということでございまして、九州におきましては、九州歴史資料館という県立のりっぱなものもできておるわけでございまして、そういうような形で、国立、県立、市町村立、全体的に整備をして、これをりっぱなものにしていきたいと、こういうように考えておるわけでございまして、なお、国立のものをさらに地方につくるかどうかにつきましては、これは将来の課題といたしまして、なお検討を重ねてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  〔委員長退席、理事有田一寿君着席〕
#143
○小巻敏雄君 提案理由の中でも、今日の社会経済情勢の急激な変化、開発事業等の増加に伴い、文化財保護に関して種々の問題があるということ、現行法では今日の時代の要請にそぐわない面もあり、法的に不備な面も著しいという趣旨ですね。この点については、この問題に心を寄せる限りの者においてはそれは一致し、異論のないところであろうと思うわけであります。すでに今日の段階で河野先生の方から、当然、いまこの問題に手をつける以上は、今日的状況において、理念的にも情勢の推移を正しく反映をし、そして、そこのところから問題点を押えて、逐次各条について改正をするのが正しい姿であると、しかしながら、今日ではそれをやっておると、総則改正をやれば各条章に波及をして、今期に成立を期しがたいので、不十分ながら、開発の大型化に対応する文化財の破壊に歯どめをかける緊急課題のみにとどめたと、こういうふうに言っておられますので、そのことを一つは確認をした上で質問を進めたいと思います。
 また、この中で財政措置こそは今後の課題であって、財政状況がこのままでは、これはとうてい保存について万全を期することはできない、財政基盤の問題と国民意識の高揚を、これを法律に盛り込むということも必要だけれども、手がつかなかったということですね。したがって、この改正はひとつの過渡期的な緊急の手直しであって、問題は今後に多く残されている、こういう認識のもとに、今回、改正が行われるのだということを言っておられるわけですが、その点、大体皆様方とともに確認をしたいと思うんですが、河野さんいかがですか。
#144
○衆議院議員(河野洋平君) 小巻先生のおっしゃるとおりでございます。私ども、各党の先生方からは、もっと幅広いいろいろな改正意見が寄せられておったわけでございますが、それぞれに微妙な主張の食い違い等もございまして、それらの調整に時間を要するということも考えられましたので、当面、緊急な課題、しかも、できるだけ具体的な実効が上がるであろう諸点にしぼって今回の改正を行いたいと、こう考えておるわけでございます。
#145
○小巻敏雄君 理念の問題は、当然、本格的に改正を行うならば、総則に触れてこれは改正が行われなければならない。特に二月段階で、小委員会に自民党提案として出されたものの中でも、総則に触れて、国並びに公共機関の責任の問題、また事業当事者が当然国民として負うべき責務の問題、これらの問題意識が提起をされておりながら、これが素通りになってしまっておる問題、この点は特にこの法の運用と、今後の行政の実施の中で私は厳格に認識をされて進められなければならない問題であると、そういうふうに思うわけであります。
 特に理念問題について、今日の法律の第一条に「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献する。」というような記述があるわけでありまするが、私はこれが立法当時に、どういう討議と、どういう内容認識において法律化されたものかどうか、この参議院で山本委員長の提案理由説明なども読んでみたわけでありますけれども、文化財の意味については、祖先の残した一つの財産を、つくり上げたこの財産を放置しては、これは文化国家と言えないというような趣旨、それから世界に対しても相済まぬというようなことを記述をされておりまして、祖先と現代人、の尊重というような趣旨が強調されておるわけですね。しかし現代において、中学校あるいは高等学校で正しく教育を受けた子供であるなら、この第一条を読む場合にも、「世界文化の進歩に貢献する。」というようなことは、自然に、この文化遺産というものは日本の国民の大切な財産であるとともに世界の共有のこれは財産であるという認識は、つちかわれていなければならぬと思うわけであります。
 私はたまたまヨーロッパに行ったときに、エジプトの王家のいわば秘物ですね、こういうピラミッドの中から発掘されたさまざまな遺物がベルリンの博物館、カイゼルの手のもとで集積をされて観覧に供されているというものを見て、こういうものが本当の遺跡の保存であろうかというようなことを痛感したことがございます。あわせて、あの王家の谷が国家的なナショナルプロジェクトのアスワンハイダムの建設によって水没をしていく。いろいろ問題はありましたけれども、あの谷間の遺跡は山上に持ち上げられて、国際的な協力の手で保存をされている。日本の遺跡はそういう性質を持たないなどというふうな認識はとうてい許されるものではなかろうと思うわけであります。学会からは人類の共有財産という認識を持って要望が上がっておりますけれども、これは記述するとしないとにかかわらず、今日の人類の学術文化の到達点として当然ここに記述されたものに対する認識の中にも進歩があり、それを押えて運用、行政は行われなければならないと思うわけでございます。
 先ほど文部大臣の理念問題での御答弁でも、寂光院、三千院等で祖先の情緒を将来に生かす若者の姿などについてお触れあったわけですけれども、この国民的な共有財産であるとともに、日本の国民の任務として、この人類共有の財産を保管をするんだというような点について、当然御認識のことと思うんですが、お二人から一言づつ御答弁をいただきたいと思います。
#146
○衆議院議員(河野洋平君) 先生御指摘のとおりだと思います。特に私、申し上げたいと思いますことは、われわれが残すべき文化財の中には有形のものだけではなくて、無形の、その時代その時代、あるいはその地域その地域に生きていた精神とでも申しましょうか、あるいは日常生活の慣習のようなものまで含めてわれわれは後世に伝える責務もあるというふうに思っております。「文化とは人類のみが持つものである」という説もあるように、われわれが人間としてこの時代に生きている、このことを次の世代にも伝えるというために、われわれは最大限の努力を払っても払い過ぎではないというふうに私は確信をしておりまして、この文化財保護法に私はできる限りの努力をしてきたわけでございます。
#147
○国務大臣(永井道雄君) 私も、先生の御指摘に基本的に賛成でございます。わが国の有形無形の文化財あるいは文化、これはもちろん人類共通の貴重な財産であると考えます。しかし同時に、わが国固有の文化であって、その固有の文化というものが持っている重要性というものを認識していくということ、そしてまた、それについての研究ないしは教育が進んでいくということが、とりもなおさず同時に文化、人類全体の財産としての重要性を確認することである、かように考えます。そういう意味において、日本人として日本の文化を大事にしていくということの重要性の確認、そのことと、人類の一員として人類の文化を大事にしていくというもう一つの面、その両面を持ちながら、私たちは文化財保護にとどまらず、文化一般についての行政に当たっていかなければならないと考えております。
#148
○小巻敏雄君 現行法では今日の時代の要請にそぐわないので、とりわけ目玉として焦点を開発と埋蔵文化財の破壊の関係にしぼって、ここのところで現行法を強化して改正をするのだというふうに御説明があるわけですが、まさに、ずばりその点に関して、いままで二十五年間不自由な状況の中で遺跡を守り、そうして防止をし、保存に大きく貢献をしてこられた学会なり、住民団体なり、あるいは地方公共団体なりから、この点について幾つかの危惧の念が寄せられているわけです。特に、いままでの厳しい経験の中から、今回の改正点こそいわば改悪を導入するものではないかというような端的な危惧の念も寄せられておりますので、この審議の中では、少なくとも、破壊に歯どめをかけ、そして改良をして、効果を上げていくのだということをこの審議の中でどうしても一つずつ詰めて明らかにしなければならず、その点では法の解釈と法の運用についても、文化庁長官を初め、厳格に今日の時点での考え方を国民の前に開陳をしていただく必要があると思うわけであります。
 まず第一に、先ほどからも多くの委員によって問題にされた許可制をとらず届け出にとどめたという問題であります。いままでの審議のところで私どもが伺うところでは、一つは、許可制にすることは、私権尊重との調節上、十分な調査が進んでからでなければ無限定に許可制をとることはできないということと、部分的に許可制をしいていくと、その周辺地域の破壊を促すというようなことが理由とされておるように思うわけです。それはあり得ることだとは思いますけれども、同時に、それは必然のことではないと、私はそう思うわけです。特に現在すべての地域がいわば指定されていない限り届け出制になっておるのでありますから、そこでとって破壊を防止する中に許可の区域を設けたら、それは理屈としてはどうしてもこれが改悪になるというようなことは成り立たないわけだと思うわけですね。その点については覚悟のほどがおかしいのじゃなかろうかというふうにも理屈としては出てくるわけです。とにもかくにも、現在の点では直ちに許可制をとることはできないという状況であるなら、運用上その届け出という現行法のもとにどのように具体的に破壊を防止をしていくのか、それからどういう状況が整えば、どういう見通しのもとに許可制に移行することが可能なのか、これらの問題について長官から説明を聞きたいと思います。
#149
○政府委員(安達健二君) 届け出制か許可制ということにつきましての問題点は、いま御指摘になりましたように、許可制にする場合におきましては、許可を受くべき範囲が明確でなければならないということが一番の問題点でございます。これを三十万個所につきまして明確にするということは、現在の私どもの能力、あるいは地方を総動員いたしましても、これは著しく困難でございます。そういうことで具体的にはむしろ現在の届け出制というものの運用の中でこれをうまくやっていくということにならざるを得ない。その場合に、特に国とか地方公共団体あるいは公社、公団等の場合におきましては事前の協議制ということで、これは事実上の許可制に近い形になると思うわけでございまして、この場合におきましてはそれぞれ国、地方の機関でございますので、これにつきましては、これは協力がしていただける、逆に言えば、文化財の保存の模範の例としていただきたいということで恐らくそういうお考えになったのではないかと思うわけでございまして、そういう意味におきまして、現在開発の中の七割ないし八割はいま申し上げました国、地方公共団体あるいは公社、公団のものでございます。したがいまして、実態的に申しますと、その七割、八割の部分は事実上許可制に近い事前協議制がこれで法律上根拠づけができたのではないかと私どもは理解をいたしておるところでございます。
 それでは、そのほかの点につきましての許可制というものが可能であるのはいつであるかということになりますると、それは結局は三十万カ所につきましての線引きと申しますか、そういうものが完全にできるということでございますけれども、この線引きが実は実際に調査をしてみなければ範囲が確認できないという、そういうジレンマに陥らざるを得ないわけでございまして、私どもの考えておるところによりますると、まずできるだけ早く史跡に指定すべきものはなるべく早く指定をして、もうこのところは一切道路も家も困るということをなるべく早く明快にしていくということをまず第一の施策の中心にしていきたい。
 それから、埋蔵文化財の周知のところにつきまして、この法律等にございますように、この周知の徹底ということにつきまして最善の努力をいたしまして、そういうものにつきましての一般的な普及をして、届け出であるけれども実態的には許可制に近いような形でこれの了解がなければ工事ができないというような、そういう精神的な面を国民の間で理解していただくというようなことにするというようなことによりまして、法律上の形式としては届け出でございますけれども、実態的には七割、八割につきましては許可制に近い事前協議制であるし、また、その他のところにつきましても許可制に近いような形で十分住民に徹底するような形でやっていくということで、従来ここでお話しいただいておりますことにつきまして、今後われわれといたしまして大いに心していきたいものだということを感じておるところを率直に申し上げた次第でございます。
#150
○小巻敏雄君 いまの御答弁で七、八割は国の機関等の範疇に入って、大体、大型開発というのはこの範囲の中にあるから、多くの面ではここのところでやっていくんだと、こういう御説明なんですが、国の機関等の問題の協議についても疑念なり危惧の念が、いままでの実績から各県の中で裁判ざたにまで及んでおるものがあるのですから氷釈しておるわけではないと思う。
  〔理事有田一寿君退席、委員長着席〕
 しかしながら、その部分を一つ置いても、残ったものについて線引き問題というのは、今日の急激な開発の中で気の遠くなるような一つの御答弁で、これについてはとうていこれは納得性がないと思うわけでありまして、これは一定の前進の中で、やっぱり許可への切りかえについての調査計画なり予算配当と、そうして、それについての許可制への移行の条件というものを私は速やかに作成をされる必要があるだろうと思うわけであります。それ抜きに野放しであってはならない。
 なお、史跡指定の問題、これも先ほど言われたように、それが行われればその周辺が乱開発ということもあり得るわけでありますけれども、これもそういう点で、史跡指定において緊急の危険については、もし、これを処理しようとされるのであれば、それも予算もしくはこれに対する行政機構の強化と大きく相まって行われる必要があるだろう。そういう点については、今後の行政上の拡充その他について言われておるのか。無計画なままで言われるのであったらその場逃れの答弁ということに終わらざるを得ないと思うのです。その点いかがですか。
#151
○政府委員(安達健二君) まず最初の大事な問題といたしましては、周知の遺跡の明確化ないしは周知の徹底ということでございますが、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますように遺跡地図を作製いたしておりますけれども、これはなお申し上げましたように、五万分の一ないし実質は七万分の一でございまして、その地域等は明快でございませんので、これをやはり、市町村と協力しまして一千分の一なり二千分の一程度の地図にいたしまして、それを明快にしていくということがわれわれの当面大事なことでございますし、また、史跡の指定の促進につきましては重要遺跡確認の調査委員会を設けまして、そこで六千件を材料にいたしましてそれの指定を促進していくというようなこと、あるいは発掘調査の体制等につきましては埋蔵文化財センターというようなところで現に発掘して歩く人の技能の向上あるいはまた研修等の機会も多く持ちまして、実際的な調査も十分でき、発掘もできるようなふうにしていくというようなことを、ひとつぜひお話しのように計画的に推進するような具体的なものをつくってまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#152
○小巻敏雄君 これで大体いけると言ってみえを切っておられるのですから、その点は今後の計画推進については改めてひとつ責任を持って推進してもらわなければならぬと思うわけであります。
 続きまして、国の機関等の場合には、これは一つの模範として事業計画策定時に長官に通知を行う義務を負わせる、これは前進したものというふうに受け取っておるわけですけれども、多くの要望でもありましたし、後追いから着手の段階で協議に入るということですが、必要に応じて協議を求める。しかし、協議という以上はこれは平等でありましょうから、協議のときに合意に達しないときには一体、工事というのはどうなるのか。この点についても――それは文化庁の方が折れてしまえばおしまいですけれども、そうでない場合、いろんな場合にこの協議ということで、許可制でもその点になれば同様な面もあろうかと思うのですが、この対等なものの利益が相反して、そして合意に達しないときには現状変更に関しては一体どうなるのか、この点について伺います。
#153
○衆議院議員(河野洋平君) 一部改正案をつくりました過程におきます私どもの考え方は、この協議は対等と先生おっしゃいますけれども、文化庁長官はあくまでも文化財を守るという立場から文化財保護法の上にこの協議を規定をするわけでございますから、私どもは、あくまでもイニシアチブは文化庁長官がおとりになるというふうに考えております。そしてまた、過去の例に照らしましても、こうした協議がまとまらない場合には、協議が調わない場合に一方的に協議が調わないままに国及び地方公共団体等が工事に着手するということは過去の例に照らしてそういうことはないであろうと、私どもは考えておりますし、また、協議が調わないのに見切り発車をすればこの法律に照らしても多くの国民世論その他の指弾を受けるであろうということを考えまして、この法律、こうした法律的根拠を文化庁長官に持たせることによって現状よりははるかに強い歯どめになるということを期待をして、この条文を入れたものでございます。
#154
○小巻敏雄君 この点、行政で用いる協議という用語が一般の国語解釈と違って、この際には、合意できない場合には、現状変更しない状況で進んでいくのだというふうに言われておりますし、慣例にも一件もこれに反した例がないということであれば、これは許可制とほぼ内容において同様な政治効果を、行政効果を上げるものだというふうに理解をして進みたいと思うわけであります。しかし、日本の海岸線を、名勝旧跡を除いて四十メートルの深さまで埋め立てるなどというようなこう計画が出てきますと、これ、平等でやったら、大変なことになりますから、まあその点については今日確認された問題についてはひとつそのとおりに実行するようにお願いをしておきたいと思います。
 問題は不時発見の問題でありますが、不時発見の際に、停止もしくは禁止の命令権を新たに設けた。この点が規制の強化で、いままでの立ちおくれを法的規制で破壊防止のための目玉の部分だということになっておりますけれども、この点について、また長年こういう法の保証のない中で苦心をして、いろいろ運動してこられた方にとっては、この点が一つの不安のポイントになっておるわけです。この点については、いずれ、将来現実に問題になってくるわけですけれども、特に繰り返しになる点もあろうかと思いますけれども、ここで何点かの確認を求めておきたいと思うわけであります。
 特に、ここで三カ月の期限を付して、そして区域を定めて停止、禁止の命令を出すという件ですね。これは不時発見ですから、意識がなかったところで発見をするわけであります。そこで出てきたものというのはいままでの例にもしばしばあるように、その規模の大小は、その時点では十分に認識されない場合が多いわけですね、そういう状況である。これはいろいろケースも違いますけれども、私はまあ関西に長年在住をしておりますので、幾つかの遺跡の問題に触れてまいっておるわけですが、大阪でたとえば池上遺跡というような遺跡がございました。これはまあ国の機関等に準ずる万博関連事業がここに道路を通そうとしたものでありますけれども、これはもう周知の遺跡でありますから、これはもう発掘調査をして何するよりも、これはもう通念として、こういうところへ道路を通せば破壊されるのは当然でありますから、これは王家の谷ではないですけれども、民衆の生活の広範なある場所ですから、こういう状況で多くの人たちはそのまま史跡に指定をして、全域指定をしてやってもらいたい、こういうことになったけれども、事前発掘調査をやろうと知事の切なる要望もあって、学会もこれに応じて事前発掘調査をやろうということになりましたけれども、何とやっぱり始めてみたら、これは三年かかってようやくその相当部分に手が及んだというようなものであります。これは、日本の国の中でこの発掘調査に当たった人材といい、規模といい、決して低いレベルではなかったわけであります。それで三カ年の年月を要している。この古墳時代に直接接する弥生人の前期、中期、後期のですね、始めてみるに従って地域は広がってくるわけですね。ですからこういうような場面に、不時発見が行き当たったようなケースを考えれば三カ月というのはほとんどナンセンスになってしまうわけでありますね。しかし、これらの問題はいままで力の次第によってはたとえ法の保護がなくてもこれはやり遂げられてきたわけであります。こういう状況の中で、いわば規制が逆にスプリングボードになっていままでむしろ非常に法が立ちおくれておるから協議の実が上がったものが、実に逆にこれがスプリングボードになって、この期限を付して、その間にできるだけのことをして、そして調査後と称する破壊が進められる。このことは、私は、これに対する危惧というのは理由がないとはどうしても思えないわけですね。これらの問題について十分にこの時点での具体性のある見通しなり計画なりが述べられるものでなければ、この問題は改善か改悪かわからないという、しかもこれ通常の、いわば田夫野人の意見ではないのでありますから、この点については、十分な一つの御説明をいただきたいというふうに思うわけであります。
#155
○衆議院議員(河野洋平君) 最初に申し上げたいと思いますことは、先生も法律案お読みをいただいておわかりと思いますが、今回の改正案は、現行法のある部分を全く削ってしまってこういうふうに直すというものではなくて、現行法の上にこの部分を強化をするという部分が多いわけでございます。したがいまして、現行法で守られてきたものが、これから先、現行法で非常にうまくやれたものが、これによってその部分がなくなってしまうということではなくて、現行法どおり今後も進むと同時に、この部分がプラスをされるというふうにお考えをいただきたいと思うわけでございます。と申しますのは、確かに先生おっしゃるとおり、現行法には停止命令もあるいは期限もございません。しかし、非常に文化財保護に目覚めた意識の高い方々が集まられて相当な力となってデベロッパーの開発を阻止してきたなんということが数多くあることを私も承知をいたしております。しかし、反面、そうした知識が十分でないために、あるいはそうした知識を持った人の数が十分にそろわないために、力で押し切られてしまった部分もまたあると私は思うわけでございます。したがいまして、今回の改正点は、先生、御指摘の部分の改正は、現在までと同様に、文化庁は開発事業者、開発事業者といいますか、事業者と協議をし、あるいは事業者の理解を得て文化財保護に当たるわけでございますが、それがどうしてもいかない場合に、この三カ月、六カ月という分が発動するのであって、いままでのやり方は一切やめてしまって、今後はすべて不時発見の場合には三カ月、六カ月といくということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。不時発見でも、いままでと同様に文化庁は事業者と話し合いをし、理解を求め協議をしというプロセスはあるのだ、しかし、それがどうしてもうまくいかない場合には、停止命令権も今度は法律的に持てるようになっているよということを書きたかったわけでございます。これによって、日本全国各地の力関係によるばらつきなどをなくしたいという気持ちもございまして、こうした部分が挿入をされたのであって、現行法のその部分はなくなって、すべてこれになったということではないということを御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#156
○小巻敏雄君 実際に、大型の遺跡になればこれはやはり期限を付することなく、予算の枠をあらかじめ決めることなく、そしてしかも、公開をして多くの協力を求めて発掘調査をするのでなければ、いままでのところ非常に不十分な姿で、やや、遺骨の一部を収集して、あとは荼毘に付すというようなことに終わっておる例が多いわけですね。こういうことを考えてみますならば、むしろ、この際にはこの法に頼って、この伝家の宝刀がついたから大丈夫というふうにもし行政を進めるなら、逆にこれがスプリングボードになって、それがいままで世論に押されて抑えられていたものが、もう期限という一つの切符を手に入れたから、ここでいわば現状変更を加えてくるというようなことが懸念をされるわけであります。したがって、むしろこれは、私はその観点から読むなら、この五十七条の五の中で二項で定めておる問題と八項で定めておるものとの関連があるわけでありますけれども、むしろこの八項の「文化庁長官は、第二項の措置を執った場合を除き、第一項の届出がなされた場合には、当該遺跡の保護上必要な指示をすることができる。」、ここの中で、従来どおり期限を付することのない、模範的には国の機関等で行われておるあの協議のような姿で、これが行われていくのが常態であって、この二項を適用するのはむしろ例外であると、こういうような姿勢を確立をしていく必要があるのではないか。二番目と八番目というのは優先順位はないのだろうと思うのですけれども、やはりこれを読む人によっては、「第二項の措置を執った場合を除き」だから、第二項の措置をとらないんだから、これはもう土木工事の進む、現状変更の進むことを前提にして、八項というのは一つの指示規定を述べておるんだというような解釈も出てくるわけであります。この点は、私はひとつこの場で明確に、従来から、この規定のなかった時期において努力をして積み上げられてきたこの成果、これを八項が受け継いでおって、特に言うことを聞かない悪徳の例外においてこの二項が発動されるのである、こういう問題について、ここでひとつ明確にしていただきたいと思うわけであります。
 さらに重ねて言いますと、この通常の場合ですね、この二項の措置がなかった時期でも、やはり多くの力で守ってきた事実があり、それは三カ月というものにこだわったものではなかった、まして六カ月にこだわったものでもなかったのでありますから、そのことが中心的に行われていくのだと、素通りでこの法文を読んだのではわからないですね。それを一つ確立をした上で、二項について特に念を押しておきたいんですが、二項の場合には、そういう状況で、言うことを聞かない、どうしても強制命令をしなければ押しとどめることができない者に対して適用されるんですから、これは期限が来たらとめようがないと思うんですね、このケースの場合には。そういう人物だから命令を出すのでしょうからね、相手が。性悪説はとらなくても、概して性悪な相手をこれは予想をして設けた規定である、そうなってくれば、六カ月というこの期間はまさにピンチの期間になってきますから、そういう際に遭遇をしたことを予想をしておかなければならぬ。その点についての長官の所見をも重ねて伺っておきたい。
#157
○政府委員(安達健二君) この条文の形式といたしまして、五十七条の五の二項と八項でございますが、これはまあ「停止命令等」という見出し等もございますので、法律上の強いところが先に出たということでございまして、実体的には八項の方の「保護上必要な指示」の方が、もう九九%がこの指示の方で動くと、また私どもとしてもそれを動かしたいという考え方でございまして、現在の八十四条の二項でもそういう必要な事項の指示ということで運用をいたしておりまして、この一般の指示の中であくまでも協力を得て運用するということを基本方針にいたしたいということでございまして、ただ条文の体裁上逆になっているだけで、実体はむしろ八項の方が九九%であると、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 それからもう一つ、大体現在、先ほど来申し上げておりますように、大規模な開発というのは国の機関、公団等の行われるものがほとんどでございまして、この場合にはすべて協議という形で進行してまいるわけでございますので、事実上この停止命令というものが動く余地はないということが言えるわけでございます。あと小規模な個人単位のような開発行為の場合等で考えてみますと、仮に千平米以下の調査面積ということでございますると、これを一チーム――調査員一名、補助員二名、作業員五名の一チームで一カ月の面積を計算してまいりますと大体四百平米から二百平米ということでございますので、これは大体において、仮にそういう事態が生じたとしても調査は十分可能であるし、また、そういう場合として、命令を出す以上は全力を投球して調査をやり遂げるということでこの問題を処理してまいりたい。したがいまして、あくまでもこれは自発的な協力の得られない――伝家の宝刀として運用して、実態的には指示という形での協力での従来のよき慣行をひとつ育てていきたいと、かように考えているところでございます。
#158
○小巻敏雄君 まあこれは、長官が命令を出して、そして六カ月経過をして、どうしたって調査はなお続行を必要とするにもかかわらず期限が来たというような場合も予想できるわけですけれども、いままあひとつその場合には三カ月を超えるまでにやってみせると、これまたみえを切っておられるんですからね、その点はひとつ責任を持ってやってもらわなければならぬと思いますしね。それでもなおかつ当然予想しておかなければならないのは、どうしても学術調査その他において完了していないのに、しかもはなはだうまくない相手に対して、調査満了の日を迎えたと、こういう状況も予想をしておかなければならぬ。そういうときはどうするんですか。
#159
○政府委員(安達健二君) そういうことは万一にもないように努力をしなければいけませんけれども、そういう遺跡の性格等にもよりまするけれども、これを現状で保存する必要があるというような場合におきましては、当然史跡指定、あるいは都道府県教育委員会による仮指定というような措置がございまして、こういう措置をもってすれば、まあそういうことがあり得ないということで行政をするわけでございますけれども、その場合でもなおそういうことによって重要なものについての保存は全きを期する道が現行の文化財保護法で確保されておるというように理解をいたしておるところでございます。
  〔委員長退席、理事有田一寿君着席〕
#160
○小巻敏雄君 いま答弁をいただいた限りにおいて、そのことが厳格に実施をされていくなら、この従来の法律に対して今回加えられた措置が、これが改良として、前進として作用をすると。しかし、初め河野先生も言われたように、これは今日の状況の中の一部の状況に緊急にこたえておるのであって、どこまでも従来まあ緊張して法不備の中で文化財を守ってきた姿勢というのがいささかでも緩むなら、これは直ちに従来にも増してやっぱり破壊が進むという危機が存在しておると、この認識の上に立ってぜひとも予算配当その他が、あるいは機構の整備等がいま言われたような点についてこれの保障になるように進めていただきたいという要望をして、あと、他の条項についての質問を進めたいと思います。
 一つ私、この「民俗文化財」の問題についてお伺いをしたいのでありますが、民俗文化財の中で、特に参考人として衆議院に出席をされた北海道の教育長さんからも、アイヌ糸住民の民俗資料ですね、これらの問題について触れられておるところがありましたけれども、まあ日本の国の中でただ一つ民族の組成を異にしておるアイヌ糸住民に対して国がどれだけのことをすることができるのかというのは、現代世界の中では、国の品位が問われる問題でもあるでしょうし、間違いもなく日本――まあおおよそ単一民族によって構成しておるけれども、このアイヌ系住民は日本国民を構成する一つの要素であるわけですね。これに対して果たしてこの「民俗」というフォーカルなものとしてとらえるようなあり方でいいのかということを私は強く感じるわけであります。これについて、明治以来の行政の手というのははなはだ冷たいものであり、特に民族遺産であるところのユーカラなども、金田一先生等の個人的な業績の中で守られてきた。しかし、その日から何十年たっているのかということを考えてみるなら、ユーカラ、これらの問題は記録保存にとどめるばかりでなく、国が責任を持ってもっと積極的な保護策を北海道と協力をして進められるべきではないか。建築技術についても隠滅をしていく、チャシというようなものはもう見ることができないというような状況も伝えられております。むしろ、日本の支配階級に愛されたことのない民俗遺産というものが冷酷につぶされていく、こういう問題に対してこういう法改正をチャンスにして進んだ取り組みが行われるということをやってもらいたいと思うわけです。もしあのお能というものがあの演能を抜きにして謡曲だけをレコードにしておいたら一体これが保存になるのかということですね。ユーカラというのは生きた人が語っておるのであります。そして、それは絶滅に瀕しておるわけであります。これがテープにされておけばよいというのは、この日本の国民の一構成要素であるアイヌ系住民を完全に併呑し、同化してしまって博物館の中にだけ置こうという考えになるわけですね。この点について、ひとつ積極的な御答弁をいただきたい。たとえば無形文化財とか、無形の民俗文化財として指定するというような方向を考えることはできないのか。また、北海道の保護対策調査等に対して財政的措置をとるというような考えは持たれないのか、ひとつお伺いします。
#161
○衆議院議員(河野洋平君) 先生御指摘のとおり、民俗文化財について新しい考え方をここで出そうと思いました幾つかの理由の一つに、先般、衆議院の文教委員会文化財保護小委員会におきます参考人の御意見の中で、早稲田大学の本田先生だったと思いますが、本田参考人からも、日本舞踊の原形を北海道で見ることすらあるというようなことなど幾つかの具体的な事例、しかも、それがいまや姿を消してしまっているなんという幾つかの具体的な事例についてのお話も伺いました。なお一層この民俗文化財についてわれわれが真剣に、かつ積極的に取り組まなければならぬと考えたわけでございます。法の運用につきまして、どこまでの幅、どこまでの財政的な援助ができるかというのは、この法律を一つの足がかり、手がかりとして文化庁にお願いをしなければなりませんが、私どもは有形のものだけでなしに、無形の地域にかかわるもの、そういうものを特に大事にしていってほしいという気持ちを込めてこの条文をつくったわけでございます。法の運用等につきましては、文化庁から御説明申し上げたいと思います。
#162
○政府委員(安達健二君) アイヌの文化の保存の点でございますが、一つは、有形な文化財と申しますか、史跡埋蔵文化財関係ではチャシ(とりで)でございますが、この三件が国の史跡に指定してございますが、昭和四十八年度以降さらになお北海道に散らばっておりますので、そのチャシの分布調査を国庫補助で行っているわけでございます。それから、アイヌ文化の保存ということになりますると、いまお話のありましたアイヌのユーカラとか、あるいは建築技術とか、そういうような無形の民俗資料の問題、それからアイヌの丸木舟、あるいは生活用具のコレクションというようなものの問題と二つございますが、この丸木舟とか、生活用具等は重要民俗資料に指定をいたしまして、保存を図っておるわけでございますが、ユーカラとか建築技術及び儀礼等につきましては記録作成の措置を講ずべき無形の民俗資料に選択し、あるいはアイヌ語の採録等につきましての緊急措置を国庫補助でやっておるというのが第一点でございます。
 それから、無形文化財といたしましては、アイヌの歌舞、詞曲に関する研究事業とか、あるいは公開というようなことをやっておりますが、アイヌの芸能そのものをやはり取り上げていかなければならないというように考えられるわけでございますが、今度の法改正との関連から申しますと、現在民俗芸能と申しますものと、無形の民俗資料というものが分かれた保護になっておるわけでございますけれども、今度の法案によりますると、そういう民俗芸能と無形の民俗資料というものを一本にして考えようというわけでございまして、たとえばアイヌのユーカラというものとアイヌの芸能を別々の形ではなくて、これを一括してひとつ保存の対象にしていこうというようなことでございまして、これを具体的にそれならばどうやって保存するかということになりますると、これはさらに北海道の教育委員会とも十分相談をしていかなければならないのでございますが、ユーカラを現実にこれを伝承できるような人を見つけ、これを保持することが可能かどうかということになりますと、これはまた非常にむずかしい問題にもなろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、アイヌ文化というものを全体的にひとつ保存をするということで、こういうような法案ができればそれに沿った保存方策をひとつ講じてまいりたい、かように考えるところでございます。
#163
○小巻敏雄君 この件については、本委員会だけで審議といいますか、終わらずに、今後もまた機会を求めて、学校教育にもかなり大きな関係のある問題があると思いますので、また、他の機会に御質問をしたいと思うわけです。
 この文化財保護審議会のあり方等についても、この討論の過程で私どもは意見を持っておったわけであります。しかし、緊急にこの会期で上げようという状況の中で実現を見ておりませんが、この文化財保護審議会の審議内容については、官報で結果が公示をされるということがあるにしても、多くの人がこれを知り、そして関心を寄せてと、国民の広範な意見が集められるというふうになっているように思えないわけですね。この点では少なくとも、審議内容がもっと詳しくだれでも知ることができるようにできないのかということと、それからこの構成につきましても、いわば結果は大体専門家で構成をされている要因が多く、井上靖さん等、作家等もおられるというようなこともあるようですけれども、少なくとも、正規に学術会議から選ばれた方を構成員とし、また都道府県の教育長協議会等の意向が直接人材的にも反映をされるというような運用を考えていかれるということは必要なのではなかろうか、これらについての一つの所見をいただきたいと思います。時間も迫っておりますので、あと二、三の問題もあわせて御答弁をいただきたいと思います。
 財政上の問題は、これは立法の準備をされ、中心になってやられた河野先生からの――これはいまのままではこれはやっぱり器つくって中身は入らぬと、これはだれでも言えることだと思うんですね。比較的よく遇せられておる指定の、たとえば全国の国民がながめておる姫路城などでも、先般の新聞で市当局が泣いておるというような記事が出てくるわけですね。ましていわんやということになって、中小企業以下になればこれ大変な、関西などは無住の寺で日に日に荒廃していくというようなのは幾らでも数えることができるわけであります。これ大体町村あたりにゆだねられていることになるわけでしょうね。こういうところの財政補助、こういうものはいままでは大体無に等しいと私は承知をしておりますけれども、これ一体どうなのか。また、文化財保護指導員が非常勤とはいえ設けられたというのは前進だと思うわけでありますけれども、これらが逆に指導員を置き得なかったようなところは置くところが苦痛なところでありますから、ここに配当をされて、その裏づけがどうなるのか、重要な問題であります。こういうふうな問題について地方自治体の負担というのはこれはもう非常に厳しいものでありますから、これについての裏づけの問題についてお伺いをしておきます。
 それから文化財保存技術についてでありますが、これはかなりの御答弁がすでに行われておりますけれども、今後特に技術のそれぞれに応じて計画的な措置というものが十分に伺うことができなかったと思うのですが、時間が許す限りお伺いをしたい。
 町並み保存については、大体これは私権とそれから条例等との関係が一番露骨に接する問題であります。これについては中央の議会の決議とか、こういうものをもってかえるということだけで果たして十分であるのかどうか。住民の同意と解除の際の手だてというようなものについて、わが党としては、直接に投票制度によってこれを十分住民の支持を受けたものにしていくというようなことも考えたわけでございますが、これらについての御意見、御答弁をいただきたいと思います。
#164
○衆議院議員(河野洋平君) 御質問の中の学術会議の問題等は文化庁から答えさせていただきたいと思います。
 地方公共団体についてできるだけの配慮を今度したい、こう思いまして、財政上の問題あるいは体制の整備、ぜひやりたいと思って各委員からもそういう御指摘がございましたので、ひとつ財政当局その他とも最大限の折衝をいたしましたが、先生御承知のとおり、現下最もまずい財政状況の中での折衝となったこと、それから私自身の非力もございまして十分財政当局から満足すべき答えを引き出すことができなかったことは私自身もはなはだ遺憾だと思っております。ただ、いま御指摘がございましたように、文化財パトロール等について、非常勤ではございますが、法律化することができた。これは東京都はどうも動いておらないようでございますが、他のほとんどの道府県におきまして成果を上げているやに聞いておりまして、いままでも予算措置として半額補助を文化庁はしてまいりました。さらに残りの半額については、地方交付税の積算基礎にも入れていただいておるわけでございますから、この問題についての地方に対する財政負担はないかと存じます。法制化することによってこの人たち、この御労苦に報いたい、この方々をエンカレッジしたい、こう思っておるわけでございます。
 それから、伝統的建造物群については、衆議院文教委員会文化財保護に関する小委員会の中でも、共産党からは当該地域の人たちの四分の三以上の賛成を得るべきであるという非常に具体的な御提案もございました。私どももそうした御提案についても非常に貴重な御提案だと考えたわけでございますが、いずれにしても、この問題は当該市町村にゆだねたい。当該市町村が十分当該地域の人たちと話し合って、この歴史的家並みとして指定をしてきたものについて文化庁はこれらを選定するということにいたしたい。これが県あるいは国が頭越しに指定をするとか何とかということになりますと、当該地域の方々と十分な意思の疎通なしにやるというようなことは極力避けたいということから市町村段階にこうした問題をお願いをするということにしたわけでございます。
 漏れておりますところは長官からひとつ。
#165
○政府委員(安達健二君) 第一の点は、文化財保護審議会委員の人選あるいは審議の公開などの問題でございますが、委員は「文化に関し広くかつ高い識見を有する者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命」されるというようなことになっておるわけでございますので、その選任につきましては特に大臣の方で特別な御苦心をいただいておるものと考えておるわけでございます。なお、この下に百人ほどの専門調査員がございまして、この方の人選等につきましてもできるだけそれぞれの担当の専門家の人の適正な意見が反映されるような配慮を加えられているところでございます。
 なお、この審議会の審議内容につきましては、重要な問題等ありましたときは、そのつど報道機関にも実は発表しておるわけでございますが、必ずしも報道機関がそのまま伝えていただけないというようなこともございまして、必ずしも十分は出ておらないかもしれませんけれども、その内容等につきましてはできるだけ国民の皆様にも知っていただきたいというように運営をいたしたいと考えておるところでございます。
 それから先ほど町村の財政の問題につきましては河野先生からもお話ございましたが、今度の法改正などにおきまして、地方公共団体がもしこの史跡、名勝、天然記念物等の管理団体等である場合におきましては、この場合には土地の買い上げというようなものにつきまして補助規定をはっきりいたしまして補助を恒久化したいということで、現在八割の補助を出しまして市町村がこれを市町村有として買い取るようになっておりますが、そういう土地買い上げにつきまして八割の補助でございますので、相当高率の補助によりまして市町村の文化財保存の基本であるところの史跡、名勝、天然記念物等の公有化が促進をされておるということが一つございますので、念のために御紹介をさしていただく次第でございます。
 なお、町並み保存につきましては、河野先生のお話のようでございますが、同時に、先ほどから申し上げておりますように、都市計画の行われておる市町村等につきましてはむしろ都市計画の中でやった方がいいというのが専門家の圧倒的な意見でございまして、都市計画の中でやれば都市計画法に基づくところの当然な措置が伴うわけでございますので、これによって一般住民の意思等も十分反映されるのではないだろうかと。その他の都市計画をやっていないところの市等につきましては、先ほど河野先生のお話しのように、当該市町村の方の、十分な市町村の配慮が加えられて住民の最も身近な文化財を身近な人々の協力によって守られる体制ができるのではなかろうかと、かように考えておるところでございます。
#166
○小巻敏雄君 いまさまざま御答弁をいただいたわけですけれども、なお、本参議院でも審議は、参考人招致等の意見もあり、審議も後残しておるわけでありますが、どうしてもすでにここに出されておる法案だけでは今日で問題意識をされたことが盛られていない。これは過渡期的な法律案であって、引き続き検討し、法改正を行うというのは、言うのは容易なことでありますけれども、これが二年、三年の間にそう簡単に行われるというのは常識的でないですね。すでにいままでの間に、昭和二十九年以来何年たっているのかというふうなことを考えますと、どうしても、この法がこの状態で実施に移されるという場合には、繰り返すようですけれども、この行政の責務というものは非常に重いものがあり、二十九年から今日までいわば立ちおくれた法のもとに、国民の苦労と専門家の努力、そして市民団体の活動と、そして行政もいろいろあるでしょうけれども、とりわけ、県段階での苦労と、さまざまな状況があるわけでございますから、これについて衆参を通じての問題点の指摘、そして法案の審議の内容を、特に各界から寄せられた参考意見等を行政推進の上の大きな資料として進めていただきたいということを切に要望するものであります。
 私、この法律案が初めてつくられたころのことを思い出しますと、憲法理念が憲法の公布によって打ち立てられてからまだ時はたたず、しかも、国際的には朝鮮戦争が始まって来るという時期につくられた法律でありましたし、有形無形の文化財の多くは戦争で失われた。しかし、むしろ埋蔵文化財は安全であったわけですね、当時は。そういう状況と。しかし、それから後で文化財保護でも考古学でも飛躍的に発展をしておるわけであります。たしか前後して中国では殷墟が発掘をされるというようなこともございました。最近の高松塚の発掘は、日本一国にとどまらずに、広範な関心を呼び起こしているというようなこれも生々しい問題であります。これらの問題は一つ出てくれば部分的には直ちに歴史を書き直すというようなことにかかわってくる問題ではないか。もちろん、一国の財産というだけにとどまらない。もちろん、どこの国にもそれは義務を負うものではありませんし、日本の国民財産には違いないのですけれども、こういうような状況だ。学問の発達水準が法に十分に反映できなければ運用と解釈と、予算措置等の中で反映をしていく。これを抜きにすれば、よしんば網の目のようにみごとな法律をつくったとしても、これは内容は空洞化されてしまう、こういうふうな点を特に私は強く御要望申し上げまして、本日の討論を終わるものでございます。あわせていま部分的に触れたアイヌ系住民の問題等の、これは文化財問題の枠の中でこれは解決できるものではない。教育の領域というのは大きくこれにかかわるものでございますし、あるいは老人ホームの設定とか、厚生的な問題でもホームに入れば民族習慣を捨てなければならぬとか、さまざまな問題があるようなことではいけないと、こういうものをそのままそっくり生きた今日の日本国民の構成部分であるところの民族問題について、こういう状況で手をつけてもらいたいし、アイヌ語の問題でも、あれは一体何国民の言葉であるのか、死んだ言葉か生きた言葉か定義さえもない、こういうような状況に置かれているのではないか。多くのこれらの問題については民族問題の先進国の成果もありますね、これらの問題についてもひとつ十分御検討いただく中で法律的には直ちに、ずばりかかわってくる文化財の問題として飛躍的なひとつ前進をやっていただくようにというようなことを要望いたしまして、討論を終わります。
#167
○中沢伊登子君 きょうは朝から長時間にわたりまして大変熱心にこの問題についてのあるいは次元の高い意見が述べられたり、また、数多くの質問が行われたりしまして大変お疲れでございますが、最後に私も三十五分間だけ時間をちょうだいいたしておりますので、私は、具体的な問題について二、三お伺いをしたいと思うわけでございます。
 今回の改正は、開発に伴う遺跡の破壊という現状からすれば大変前進した改正案でございますが、しかし、この改正も行政上の運営のよろしきを得なければその実質的な効果は期待できないと思います。そこで、改正要綱は五本の柱からなっておりますけれども、その二、三についてご質問を申し上げたいと思います。
 まず初めに、遺跡発見の届け出と停止命令についてお伺いをいたしますが、先ほど来小巻委員からも繰り返し繰り返しこの点について質問がなされておりましたが、土地の所有者または占有者が出土品の出土などによって貝塚や住居跡、古墳等の遺跡と見られるものを発見したときは、その現状を変更せずに遅滞なく文化庁長官に届け出なければならないと、このように規定されているわけですけれども、現在において、これらの遺跡を発見した場合、ことごとく届け出がなされているのかどうか。もし全部について届け出がなされていないとすれば、大体遺跡発見の何%ぐらいが届け出られているのか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
#168
○政府委員(安達健二君) この遺跡の発見が現実に遺跡があってその届け出があったものがないものと比べて何%かということでございますけれども、私どもは一応これ全部あるものと期待をいたしておるものですから、そのものについての詳細な調査をいたしておりませんので、その点についてのお答えは少し困難で、お許しをいただきたいと思うのでございますが、この問題につきましては、実は日本全国非常にたくざんございますので、これをいかにして確保するかと言いますると、今度、法案等で文化財保護指導委員というような制度が設けられまして、現実にもいま補助金等でやっておりますが、そういう方がしょっちゅう見守っておいていただいておれば、遺跡があったのに届け出ないという人が実態的になくなるであろうということを期待いたしておるわけであります。
#169
○中沢伊登子君 大体、年間に二千件ぐらいの何か届け出があるようでございますね。届け出があった場合、その遺跡が重要であると認めるときは最大限六ヵ月の工事の停止または禁止することができると規定されておりますね。六カ月という期間があれば、遺跡の発見から、届け出から、調査、文化財としての指定までの一連の手続が完了するということのようでございますね、先ほど来のお話を伺っておりますと。ところが、日本考古学協会が主張しているように、期間を画定するということは、その期間内に指定いかんの手続がなされない場合、工事の進行を認めたということになり、逆に文化財の破壊を進めることになるのではないかと、これを非常に案ずるわけですが、その点はいかがですか。
#170
○政府委員(安達健二君) 現在の私どもの能力その他いろんな点を勘案して考えてみますると、一つは、発見の届けがございまして、それが重要なものと判断した場合にすべて停止命令をかけるかという問題が一つあるわけでございます。この点につきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、その場合におきましては必要な指示をするという形で、この辺のところは避けてくださいと、工事をする場合だったら、もし工事をされるんでしたら避けてくださいとかいうようなことをお話をし、そしてそれの中で保存を図っていくというようなことの行政が先行するわけでございます。そして、それでどうしてもそれについての自主的な協力が得られないというときに初めて停止命令を出すということにならざるを得ないというわけでございます。そういう場合等につきましては、これに対しましての調査ということの段階に入るわけでございますけれども、そういう特別な伝家の宝刀として考える場合におきましては、それに必要な十分な調査体制を整備いたしまして、所定の期間内に必要な調査を終えるようにいたしたいと、かように考えておるわけでございますが、先ほど来も申し上げておりますように、特に重要なもの等につきましてはその間に指定をするということ、これはもう、この期間内において指定のための調査ならばこれは十分可能だと思うわけでございます。
#171
○中沢伊登子君 資料によりますと、昭和四十八年に二千六十六件の届け出がございますね。これを一チーム何名とかで六カ月以内に全部指定ができるのかどうか。
  〔理事有田一寿君退席、委員長着席〕
 それだけの能力というと申しわけないんですけれども、そういうことができるんでしょうか。
#172
○政府委員(安達健二君) 一つは、ちょっと統計の問題でございますが、遺跡発見届けという形で土木工事等の以外の理由で重要な遺跡が見つかったと、遺跡が見つかったという届け出は年間三百件でございますので、いま二千何件と御指摘になりましたのは、いわゆる発掘届けでございまして、土木工事等を行う場合のものとそれからそういう埋蔵文化財について工事をするという場合の二千件のものでございます。これにつきましての措置といたしましては、届け出がありました期間内、現行法で言えば、一月の間におきましてこのそれぞれの遺跡の性格、重要性の判断、あるいは当面の保存の方策というようなものを考えるという期間が新しい案では約二カ月ということになるわけでございます。その間にこれにつきまして事前の調査をする必要があるという場合には、もちろん、その期間内でも調査を始めていただくということもあるわけでございます。さらに、その場合に、この点についてはこういうふうな調査をしてもらいたいというような指示をいたしました場合におきましては、必ずしもその期間は何カ月というような特定の限られた期間内というようなことではなしに、必要な期間内ということで、それについて、こういう形でこういうように調査をしますという調査の要領等がさらにまた届け出があるというようなことで実態的な進行を続けておるわけでございまして、特に重要なものにつきましては、これは史跡に指定する価値のあるものであるから、これについては工事はやめてもらいたいとか、そういうようなことの話し合いをするというようなことでございますので、こういうようなものにつきまして、すべて現行におきまして六カ月期間内にすべてが全部これで終わりというような形での運用はいたしていないというのが実態でございます。
#173
○中沢伊登子君 遺跡を発見した場合、届け出義務が課せられて、それを怠った場合には罰せられることになっておりますね。しかし、工事の途中で土の中から出てきたものが重要な遺跡であるかどうかということを判定できる人は、文化財に特別の興味を持っている者は別として、一般の人にとってはなかなかそれはむずかしいことだと思います。また、遺跡らしいものが発見されても、工事の進行上都合が悪いということやあるいは利益のためにはやむを得ないということで届け出ずにそのまま工事を進める業者があるいはいることも考えられるわけですが、これらの場合に、どのように対処されるおつもりでございますか。また、全然文化財とは知らずに工事を進めた一般人に対して罰則を課することも考えておられるのですか、どうですか。
#174
○衆議院議員(河野洋平君) 先生御指摘のとおり、埋蔵文化財の遺跡の発見あるいは出土品の判断というものは、当該地域におられるあるいは工事をしておられる方々にかなりの部分を発見についてゆだねている部分が多いわけでございます。ところが、いま先生御指摘のとおり、実際に、それが重要な出土品であるかどうかという判断はなかなかむずかしい。つまり、それがきわめてはっきりわかるような場合ももちろんございましょうけれども、かなり紛らわしい場合もあることは私も事実だと思います。こうしたことが非常にむずかしいわけでございますけれども、さらばと言って、全部専門家が行って見ておるということもこれまた物理的に全く不可能でございまして、現時点におきましては、衆知の埋蔵文化財包蔵地であればあらかじめの先入観を持っていただいておるわけでございますから、そうした先入観を持っておる工事者の良識判断にゆだねざるを得ない。
 それからもう一つは、先ほど長官からもお話がございましたように、文化財パトロールをお願いをして、その方々がパトロールをすることによって指導啓蒙あるいは発見のお助けをするということもあろうかと存じますし、あるいはまた、いま先生が御指摘のとおり、工事者はそうかもわからぬという感じがしながらも、えい、めんどうくさいというので進めていくというケースも実際問題としてあろうかと思うのですが、その場合も過去の例を幾つか聞いてみますと、工事者ではなくて第三者が見つけて届け出たというケースもかなりあるようでございまして、そうした方々、文化財を守ろう、あるいは日本の歴史を守ろうという善意とそうした良識に守られて、いままで文化財というものは保護されてきたということが実態だろうと思うのです。今回の法改正に当たりましても、そうしたいままでの構えをそのまま受け継がざるを得なかったということが実態だということを申し上げます。
 それから、善意のと申しますか、知らずに工事を続けてしまった人に対する罰則でございますが、過ち料が課せられることになっておりますが、ケース・バイ・ケースで、そのケースによっての判断ということになっております。
#175
○中沢伊登子君 そういったことで、いまお述べになりましたように、常時パトロールができる体制、これは非常に必要なことだし、大変いい制度だと思うわけです。
 そこで、文化財保護に関する指導や助言を行う文化財保護指導員制度ですか、それの創設は非常に重要なものだと私も思います。
 そこで、もう一つお伺いしたいのは、文化庁としては、今後どのような計画を持って文化財保護指導員制度を整備されるおつもりなのか。また文化財保護指導員にはどのような人を充てるおつもりなのでございましょうか、お答えいただきたい。
#176
○政府委員(安達健二君) 文化財指導委員の方々は県の教育委員会が委嘱をいたしまして、非常勤の方々でございますが、これらの方々はどういうような方がなられるかということでございますが、それぞれの専門家あるいはその郷土史家あるいは学校の先生などで文化財に非常に見識のある方というような方をお願いをしていると思うのでございます。そういう方々は、先ほど来先生も御指摘ございましたように、非常に重要な使命を果たしていただくわけでございますので、今後できるだけその御努力に報いるような、待遇の改善ということではございませんけれども、十分な財政的な保障ができるようにしたいということが一つでございます。
 それと同時に、こういう方々は文化財保護の第一線に立っていただくわけでございますので、そういう方々と会合の機会というようなものも全国的ないしはブロック程度にお集まりをいただきまして、いろいろ問題点をお互いに検討し合っていただく、あるいはまた、現在の文化庁の考え方などをお伝えする、あるいは文化庁に対する要望などをお聞きするというような形で文化財保護指導員の方々がその使命感に燃えて具体的にりっぱに仕事をしていただけるように、いろいろな手段でもってその強化を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。
#177
○中沢伊登子君 次に、今度の改正によって伝統的建造物群、これの保存地区制度が新設されました。かねてから要望の強かった町並みや集落の保存が実現することになりました。しかし、古墳や遺跡などと違って、現実に人がそこで生活をしている町並みや集落を保存することはなかなかむずかしいと思います。先ほどお話のありましたように、だから、これを指定するのはその地方に任せるんだと、こういうお話がありましたけれども、しかし、歴史的にはどんなに貴重なものであっても、そこに住んでいる人にとって古い造作や建物は日々の生活にとって不便な点が大変多いと思います。しかも、その人たちが近代的な生活をしたい、こういうことを考えておるときに、その近代的な生活を営むのを妨げることはできないと思いますね。
 そこでお伺いしたいのは、今度の改正によって文化財として指定されたものの現状変更することが不許可となった場合、補償されることになりましたけれども、その補償の規模とその内容はどのようなものでありましょうか。たとえば一つ例をとって申しますと、そこに住んでいる人が文化財指定に伴っての不便を避けるために他の地域に住居を求める場合に、その移転費、たとえば土地の取得費とか住宅建設費、そういうものは補償されるのかどうなのか。
#178
○衆議院議員(河野洋平君) 文化財の保護は最も基本的に、先ほど来御討議がございましたように、国民が文化財の価値を認めてお互いにそれを守ろうという意識がなければなかなか守れないものだと存じます。特に歴史的町並み、家並みについては先生御指摘のとおり、そこに住んで、現在日常生活をそこで営んでおるわけでございますから、とりわけ、そうした点ではいろいろ問題が出てくるわけでございます。私ども、先生方に非常にいろいろな角度から御質問をちょうだいをして、大変ありがたいわけでございますが、これだけの、先生方からごらんいただけば不十分な法改正ではございますけれども、これだけの法改正をやるために、関係省庁は二十省庁にまたがって、その調整、折衝というものに相当な時間と日にちを要したわけでございます。この伝統的建造物群につきましても、建設省を初めとして幾つかの役所との折衝がございました。たとえば、これを現状どおり保存をするために建築基準法との兼ね合いはどうなるか、あるいは消防、防火関係はどうなるか等々いろんな問題があったわけでございます。そうした調整の中から都市計画法にのっとりとか、いろいろな知恵などが出てまいりまして、こうなったわけでございますが、具体的に先生御指摘のとおり、その中に住んでおってきわめて不便であるなんていうときには、いままでも文化庁におきまして、管理棟と称して、それらのものを管理するためにという名目等をつけて、一むね管理棟と称するものをつくって、そこで新しくお住みをいただくというような措置をとることができるようになっております。具体的に土地の取得、移転費その他についての補助がどうなるかということにつきましては、文化庁から答弁さしていただきたいと思います。
#179
○政府委員(安達健二君) ただいまのお話の中で、一つだけ申させていただきますことは、伝統的建造物群保存地区の問題と、それから一般の建造物等の現状変更の問題とは若干色彩が違うということでございます。伝統的建造物群の家並みの保存というのは、どちらかと言いますると、外観の保存という点に重点がございます。したがって、外側は非常に昔だけれども中は近代化するという、そういう形の保存方法になろうかと思うわけでございます。ただし、それにいたしましても、非常ないろんな御不便ができるでしょうし、あるいは家の前の道路が拡幅できないとか、まあそういうようないろいろ御不便ができるわけでございますので、道路をつけかえたりあるいはたとえばそのために建築基準法等によるところの防災の関係が、防火設備等が特別に要るというような場合については、これを特別に見るとか、そういう形で外観をぜひひとつ家並みとして保存をしていくというところに重点があるわけでございます。
 一方、建造物の場合でございますと、これは実は建造物の一種の、そのものとしての保存でございます。したがいまして、やはりある程度不便がけれども昔の方に直すとか、そういうようなことがある程度ある場合がございます。そういう場合には、やはりいま河野先生のおっしゃったような、本当の家の方は古い方は直すけれども、その隣に管理棟を建てる、それに補助金を出してそちらで現代生活を送っていただいて、古い方の家は古い方のままの方でとっていただくというようなことになるかと思うのでございます。
 それから、史跡、名勝、天然記念物その他で、現状変更を申し出たけれども、そこには家は建てられないということになりますと、現在やっておりますことは、一つは、その土地を買い上げをすると、市町村などが買い上げをする場合に国が補助をして公有化するという形で実質的な補償をする。さらに、その家が上に乗っかっている場合におきましては、もう一つほかのところへ家を建てなきゃいけないわけでございますから、当然移転補償というようなものが損失補償というような形で補償されるというようなことがございまして、そういう点が、今度の法律でもって明確化されたというようなことであろうと思うわけでございます。
#180
○中沢伊登子君 時間がありませんから、例をいろいろ引きたいのですけれども、たくさん申し上げるわけにはいきませんが、私も関西の兵庫県ですが伊丹というところがありますね。あそこなんかはまさに白壁で、最近あけたいのだけれども、採光が悪いから。しかし大変その町並みが白壁で、格子がはまっているわけですね。それなんかも非常に非近代的なんですけれども、また住民の人たちは、あれはとっておいた方がいいというので、そういうところを見るのは伊丹へ行けというようなことで、なかなか住んでいる人は不便だけれども直せない、こういうようなところもございますが、まだいろいろ例を引きたいのですが、時間がありませんから先へ進みます。
 それから、いまの伝統的建造物群の保存地区として、文化財に指定された場合は、今度は公開しなければなりませんね。そうすると観光客もふえてくるでしょうし、その結果、静かな生活を楽しむこともできなくなるかもしれません。したがって、伝統的建造物群保存地区と指定した場合は、そこに住む人々の生活を守る施策が同時に行われなければならないと思いますが、この点についてはどのようにお考えになられますか。どんな施策を講ずるおつもりでございますか。
#181
○政府委員(安達健二君) 伝統的建造物群の保存の場合におきましては、やはり保存して、これをどういうふうに利用するかということが住民の中で一つの合意に達しないと、なかなかできないと思うわけでございまして、妻籠宿というような所はまさにこれは観光ということを一つのアイデアといたしましてその保存が図られておるわけでございますので、そういういま御指摘のような問題は生じないのでございますが、現に人が住んでいるというと、そこへお客さんが来てのぞかれるというところで非常に困るという問題がございます。そういうところの問題は、やはり一つは家並みのような場合でございまするとその当該市町村なりその地区の人々がどういうふうにこれを制限されるか。まあ、何時から何時まではこれは入ってもらっちゃ困るとか、いろんな方法をお互いにひとつ工夫をしていただくということが必要だろうと思うわけでございます。
 なお、重要文化財等の場合でございますると、特にそういうようなものでございますれば、自分はその家は売ってほかへ移られるという場合には、市町村がこれを公有化していくというような形で、保存と公開とを両面立てていくというようなこともだんだんとやっておるということでございます。
#182
○中沢伊登子君 それでは、今度は文化財保存技術者の問題について一、二お伺いします。
 これもけさから何遍か出た問題でございますけれども、当面する文化財保護の問題で重要な一つは、修理と技術者の問題ですね。これもさっきお答えがあったとおりでございますが、国宝や重要有形文化財である建造物修理の専門技術者は京都、奈良、滋賀、この三つを除いては個々の事業の都度それぞれ異なった事業実施者と雇用関係を結んで修理事業に従事しているために、身分が不安定で、修理技術者の確保と後継者の養成に大きな障害となっていることは、河野先生が先ほどお答えになられたとおりでございますが、同時に、そのほかの技術者については専従の宮大工は奈良県を除いてそのほかすべて日々雇用でございます。そうすると、その給与は大変低いし、工事現場を転々と移転しなければなりませんので、そのためにこういった人たちが減少と老齢化のやむを得ない状態にいまなっていると思います。そこで、文化財修理技術者の養成確保を図るために、文化財の修理修復をする人を対象とした文化財保護技能士制度、これは私どもが仮につけた名前でございますが、こういった制度というようなものをつくって、これを特別公務員としてその身分の安定を図るとともに、その生活保障をすることを考えてみたらどうだろうか、こういうことを私どもは寄り寄り話しをしているのですが、この点はいかがでございましょうか。
#183
○衆議院議員(河野洋平君) ちょっといま先生の御質問にお答えをする前に、先ほど私、伝統的建造物群について私が御答弁申し上げました言葉の中に、ちょっと私もはっきり意識をせずに補償という言葉を使ったようでございますが、この問題は伝統的建造物群保存地区そのものの規制が市町村の条例で決められるわけでございまして、したがって、そうした問題も必要があればその条例の中で取り決められるということになりまして、国はむしろそうした国が選定をいたしました当該地区については管理、修理、修景及び復旧について市町村が行う措置についてその経費の一部を補助することができる、こういうふうに今回の改正案では規定をいたしておりますので、ちょっと訂正、確認をさせていただきたいと思います。
 いま先生の御質問でございますが、確かに文化財保存技術者の保護はきわめて大事な問題だと私ども考えております。簡潔に具体的な問題についてお答えを申し上げますと、文化財建造物保存修理事業に従事しております方々については、現在京都、奈良、滋賀の三県以外の場合でも文化財建造物保存技術協会、もしくはその他の団体に職員として所属して身分上の安定を図る、現在でもそうしたことになっておりますが、これからもぜひそういうことにしてほしいと私ども念願をいたしておりますし、また、後継者の養成事業も財団法人文化財建造物保存技術協会が国の補助を受けて実施をするということにいまなっておるわけでございまして、こうしたやり方をしてまいりますればかなり技術者の保護ができるであろう、こういう見解を文化庁から聞いております。ただ、この問題は、これも先ほど申し上げました二十省庁との関連があったと申し上げましたが、この問題も労働省その他と非常にいろいろな問題がございまして折衝をいたしたわけでございますが、文化庁としては、とりわけ文化財保存技術ということに着目をした指導を今回の法改正を根拠になお一層充実をしていってもらいたいものだと、こう考えておるわけでございます。
#184
○中沢伊登子君 それと同様なことが、今度保存技術も指定されることになったわけですね。ところが今度はその材料、カヤとかひわだとか銅板とか本がわら、こういったものなどは修復に必要な資材ですね、この確保も年々困難になってきていると思います。したがって、これらの資材についても何らかの保護政策が必要ではなかろうかと思いますが、その点についてはどのようにお考えになっておられますか。
#185
○政府委員(安達健二君) 御指摘のとおりに、伝統的な建造物等の修理に必要な物資の問題がございます。いま御指摘のありましたカヤとかひわだ、そういうような屋根の材料でございます、それから実際建物の主要部分でございますヒノキ、こういうようなものの材料の需給状態というものをわれわれとしてもこれをつかんでおかなきゃならぬということで実は本年度から二年計画で調査をいたしておるわけでございまして、また、いろんな伝統的な工芸をやる場合にはやはり漆というものがもう欠くことのできないものでございまして、こういう漆というようなものの材料の需給状態も調べておりまして、今後はそういう調査のみならずそういうものを確保していくというようなことを、具体的な手当てをそういうものに講じていかなければならない、かように考えておるところでございます。
#186
○中沢伊登子君 最後に、そういうようないろいろなことを今度改正をやったり確保したり、また人材を集めたりなさることについてもどうしても予算の問題がこれについてくると思います。そして、文化庁の文化財保護のための予算というのはどれくらいおありになるのか。先ほど土地の買い上げには八〇%の補助をつけると、こう言ってらっしゃいましたけれども、その土地の買い上げなんかについてもどれくらいの予算を持っていらっしゃるかお伺いします。
#187
○政府委員(安達健二君) 昭和五十年度の文化庁の予算で文化財保護にかかわるものは百五十八億でございます。そのうちでいま御指摘のございました、特に大きな部面を占めておりますのは史跡地等の土地の買い上げの補助金でございます。これが五十年度予算で四十二億円ということになっておるわけでございます。ただし、この史跡の買い上げにつきましては、この四十二億円は当該年度の分の予算で買うものでございますけれども、たとえば、開発公社等が先行取得をするというような場合につきましてはそれを認めて、それを三年間なり五年間なりに返していく場合にこれを利子をつけて補助金をしていくとか、あるいはさらに枠外債、銀行から金を借りましてこれを長期で借りて十年なり二十年の期間内にこれを返還していくというようなやり方等も加えまして、五十年度におきましては地方公共団体が全体で買い上げる予算といたしまして百億円が可能であるようなふうに大蔵省とも話がついているところでございます。
#188
○中沢伊登子君 五十七分までが予定でございます、ちょうどいま五十七分になるところですけれども、ぜひやはりこれは平和国家、文化国家を目指す日本でございますから、せいぜい予算をお取りいただいてぜひともこの文化財の保護に力を入れていただきたい、御要望を申し上げるわけですが、蛇足になるかもしれませんが、私がいま住んでいるところは兵庫県の宝塚市というところです。宝塚市というのは、もともと宝をしまっておった塚のいっぱいあるところ、そういうところから宝塚市というんだそうでございますが、つい最近私の家から三十秒ぐらい歩いたところにいわゆるいまで言えば二DKの横穴式の古墳が発見されたわけです。それはまだ届け出があったのかどうか、そこら辺私知りません。主人がちょっと走って見てこいよ見てこいよと言うんですけれども、なかなかそこまで見に行くのに、夜になったり朝早く出たりするので行かれないのですけれども、主人は二、三遍行って見てきたようでございますが、中に何が入っていたか、それらはもうなくなっているそうです。ただ、その二DKだけ残っているのですがね、大変珍しいものだそうです。それから私の横に二分ぐらいあれば山に登ってしまうような小さな山があるのです。そこの上に池があるんですけれども、その山の周りが全部古墳なんです。それでその一つ一つの古墳は大したものではないのです。とりたてて言うべきほどのものではないけれども、その山の周りが全部古墳群なんですね。大変これは貴重なものだけれども、しかしその山のふもと全部家が建っているわけですね。その古墳が全部その人たちの庭の中にあるらしいので、古老の言いますのに、ちょっとあそこは指定をしてもらっても無理だろうと、こういうようなことで、大変もったいないなあと、こう思っているのです。それから私どもの家のもう少し東のほうに雲雀丘というところがあるんですが、そこはまた宝塚市では最高に大きな家の並んでいる最上流家庭があるところです。そこにも相当な古墳があると、こういうふうに言われているのですが、こういうのは一体どういうふうにしたらいいんでしょう。県の方にでも言って調べてもらったらいいんですか、もったいない感じです。古老や近所の皆さんはそう言っているのです。
#189
○政府委員(安達健二君) 恐らく先生のおっしゃるものでございますから非常に重要なものだろうと思うわけでございますが、これは具体的にすれば、恐らくそういうものは遺跡地図にも掲載されておると思うわけでございますが、さらに、これを確認をいたしまして、重要なものであれば国の史跡に、あるいは国の史跡に無理な場合には県の史跡に、あるいは宝塚市の宝の山の史跡にしていただくというようなことも可能であろうかと思うわけでございます。
#190
○委員長(内藤誉三郎君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
#191
○委員長(内藤誉三郎君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 文化財保護法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#192
○委員長(内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#193
○委員長(内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 次回の委員会は、六月十日午前十時開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後六時散会
ソース: 国立国会図書館
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