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1947/10/16 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 鉱工業委員会 第13号
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1947/10/16 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 鉱工業委員会 第13号

#1
第001回国会 鉱工業委員会 第13号
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   公聽会
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昭和二十二年十月十六日(木曜日)
   午前十時三十二分開会
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  本日の会議に付した事件
○臨時石炭鉱業管理法案
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#2
○委員長(稻垣平太郎君) これより参議院の鉱工業委員会に予備審査のため付託いたされておりまするところの臨時石炭鉱業管理法案に対する公聽会を開催いたします。本公聽会は本日と明後十八日の二日間に亘りまして、石炭鉱業会の経営者の方々、又同労組の方方、学術経驗者竝に一般公述人十六名の方々においでを願いまして、お話しを伺うことに相成つておるのであります。御承知のように、衆議院におきましても、去る十三日より本日に亘る四日間におきまして、公聽会を開いておるのでございまするが、当初衆参両院合同の公聽会を開いたらどうであろうかという議があつたのでございまするが、当参議院の鉱工業委員会におきましては、衆議院の空氣と離れ、冷靜に本問題を参議院獨自の立場において伺いたいと考えまして、本日この公聽会を開くに至りました次第でございます。
 御案内のごとく石炭増産の問題は、日本の産業復興、或いは民生安定のために不可欠のものでありますることは、今更私の贅言を要しないところでございまして、政府におきましては本年度三千万トン、明年度三千五百万トン、明後年度四千万トンを目標として、資材、資金竝びに生産用品等を傾注し、いわゆる傾斜生産によつてこれが完遂を期せられておるのでありまするが、この目的完遂のための緊急措置として、本臨時石炭鉱業管理法案を提出されたというのでありまして、その提出の説明に当りまして、水谷商工大臣は、本法案は先ず第一に、この増産に対する諸施策を生産に從事せられておるところの各方面に滲透徹底せしめたい。又第二には、行政と経営と労働とが三位一体になつて、石炭増産第一主義の民主的態勢を確立調整するということ、第三には、投入されますところの資材、資産、その他の高率的活用を図りたいという理由であつて、何ら特定イデオロギーに発足しているものではないというお話であつたのであります。從つて我々といたしましては、本法案はいわゆる党略的のものでもなく、又階級意識的のものでもなく純然たる経済上の立場より、本法案が増産上に役立つや否やという是非の問題を当委員会としては愼重に審議いたしたいと存じておるのであります。
 そういう意味合におきまして、多年石炭鉱業その他の鉱業界の方面におきまして、御経驗があらせられるところの皆樣方においでを願いまして、そうしてその貴重なる御経驗、御体驗によるお話を承り、我々の審査に対して代え難い資料を頂戴いたしたい、かように存じている次第であります。本日は、経営者の方お四人、労働側の方お四人のお話を承わることに相成つておるのでありまして、皆樣方には非常に御多用中にも拘らず、特に本院の依頼に應じて御列席下さいましたことは、我々は非常に感謝に堪えない次第でありまして、各委員を代表いたしまして、私より厚くお礼を申上げる次第であります。
 今日の順序は、後程私より順次御指名をさして頂くことにお願いいたしまして、お一人の持ち時間は三十分以内ということにお願いいたしたいのであります。
 尚先程申上げましたように、本問題は増産是非の問題でありまするから、増産是非問題の以外の範囲に亘るお話は別の機会にお伺いいたしたいと存ずるのであります。この点予めお願い申上げておきまして、これより公聽会の公述人のお話を承ることにいたしたいと存じます。
 先ず第一には、日鉱本部組織部長の高原淺市氏よりお話を承わりたいと存じます。高原淺市氏、どうぞこちらへ。
#3
○公述人(高原淺市君) 只今御紹介に與かりました高原でございます。私は炭鉱労働組合全國協議会の國管対策委員長をやつておつた関係から、衆議院の公聽会にも出張さして貰いました一人でございます。
 衆議院の公聽会において私が痛切に感じましたことは、我々が現在の経済破局を救うために、石炭がいかに重要であるかという認識の下に立つて、石炭復興会議等を通じ、常に労資が話合いによつて、今までいろいろな運動を進めて來たのでありますが、今度の炭鉱國家管理法案を繞りましては、完全に本質的に対立しておるのであります。誠にこれは階級的宿命と申しましようか、何らかの方法によつて私たちはこの点を打開しなければ、今後日本における石炭産業に大きな支障を來たすであろうということを痛切に考えたのでございます。
 そこで私たちがこういう点を調和して、從前のごとく和氣靄々と石炭生産に邁進できるところの態勢をどこに求めたらよいかということを一應檢討して見たのでございますが、幸い今首相官邸において行われておる非常時石炭増産対策要綱を、全國労働組合の代表或いは組合の幹部、業者、この三つに分類いたしまして政府が懇談会を開いたのであります。この懇談会の業者の発言、労働組合側の発言等を考えて見ますときに、私は初めてはつきりとした前途の光明を発見し得たのであります。
 それはどういう点であるかと申しますならば、第一番目に私共が首相官邸へ呼ばれた、そうしてあの非常時対策というものを仔細に承つた。その結果最後に得た結論は何であつたかと申しますと、今までの石炭増産運動といつたようなものは業者と労働者だけの話合いで進めておつたのだが、それではどうしても弱い。或いは時間的に非常に無駄が多い。どうしてもこれに筋金を入れるためには、政府の力がそれに加わつて來なければならないということであります。
 そこで私は最後に率直に水谷商工大臣に言つたことは、政府、業者、労働者、正にこの三つの力が融合統一されて石炭増産に邁進する時こそ、現在國家的な請要となつておる石炭増産の目的は達成される。これを具体的に最も強力に制定されたものが今次の石炭鉱業管理法案、いわゆる問題になつておりまする國家管理ではないか。政府は速かに國家管理を実施することによつて、労働者が考えておるところの政府、業者、労働者、三位一体となつての強力な増産運動が展開できるということを申上げたのであります。翌日にはいわゆる業者、資本家の代表を招いて同じ懇談会を開いたことを新聞で拜見したのでありますが、これは本日資本家の代表としてこの席上に見えておられますのではつきりすると思いますが、古河鉱業の円城寺さんが政府に主張したことがはつきりと新聞記事に載つておつたのを読んで、やつぱり俺の考えておることも円城寺さんの考えておることも同じだ、資本家の考えておることも労働者の考えておることも同じだ。これでこそ今度の國家管理法案というものは完全に合理的に理論付けられたという観点から私は喜んだのであります。それはどういうことであつたかと申しますならば、円城寺さんは政府に向つて、よろしい、非常時石炭増産対策、業者としてはこれに対して積極的に協力する用意があるが、それを推進して呉れるには常設機関の、いわゆる政府、業者、労務、この三つの力を綜合いたしまして、常設機関を設けて置く必要があると思うが、政府の見解はどうか、こういうふうに質問されたのだと思いますが、それに対して政府は正にその通り、常設機関設置の用意ありということを言明しておるのであります。そうなつて参りますと、今問題になつておりまする國家管理法案の大動脉、而も全体を現わしておる第一條がそのまま生きて來るのであります。第一條に何と書いてありましようか。「この法律は、産業の復興と経済の安定に至るまでの緊急措置として、政府において石炭鉱業を臨時に管理し、以て政府、経営者及び從業者がその全力をあげて石炭の増産を達成することを目的とする。」、そうしてこの法案の説明に水谷商工大臣は、衆議院か参議院かどちらか知りませんが、盛んにやはり私が先つき申しました通り、三位一体となつて強力に推し進めるということを説明しておるのであります。恐らくこの考え方が、政府の考えておること、業者の考えておること、私共が考えておること、これが本当に正しい考え方であると私は確信しておるのであります。
 そこで、私たちはこれを法制化してより強力に推進して行くためには、やはり管理法案というようなものが必要ではないか、こういうことになるのでありますが、そこへ來ると俄然業者と私共の方は大きな食い違いになつて、業者の方は、法制化してはいわゆる官僚統制に陷るから、法制化することはいけない。こういう点で、私たちが全面的に國家管理は実施すべし。業者の方は、今度の法案は字句的な修正をやつた程度では到底間に合わないから、これは全面的に反対だ。こういう立場に至つておるのであります。目的を達成するためには三者共完全に一致しておる。この点は極めて重大だと思いますので、参議院におかれましては十分に御考慮が願いたい。あとのいわゆる法文の末節末梢に至りましては、私共はそう議論する余地はない。ただ労働組合の立場から、私たちが現在の政府案が安全なものとして支持しておるのではありません。昨日の國管貫徹労働者大臣においても決議されました通り政府の原案には大幅な修正が加えられなければならない。それは労働者の立場から、而もそれが具体的に増産対策になる建前から、修正を加えなければならんという建前を採つておるのであります。現在の政府案は私たちに言わしめますと、むしろ今まで通り一方的に資本家の方の利益だけを守つておるものである。これをすら資本家側が反対されるというようなことは、私たちはその理由の発見に苦しむのであります。
 そこでもう少し問題を切り変えまして、今後の國家管理法案の審議を繞つて、極めて重大なポイントになるのであろうという観点から、一言申上げて置きたいことは、衆議院の公聽会においても出て來たのでありますし、而も今や院の内外を通じて重大問題になつておるのは、御承知の如くマツカーサー元帥の書翰を繞つての見解の相違であります。これによつて、或いは今日院内におけるところの國家管理法案の運命が決するのではないか、こういうことまで私共が考えておりますので、この点に対して一應私たちは眞劍に討議をしました結論を申上げて見まするならば、業者の方は、これは國管反対の意思表示をしておるものである、こういう見解の下にマツカーサー書簡に対する見解を述べておると思うのでありますが、私共の方は、政府の責任において増産をやれ、そうして石炭増産に対しては政府が全責任を負えというあの言葉を聞いて見ますときに、すでに昨年の九月四日対日理事会の席上において、現在の石炭赤字補給金等を繞つて日本の石炭産業は國有或いは國営ということを十分に研究する余地があるという提案をしたのはいわゆるアメリカであります。次の九月十八日の対日理事会におきまして、日本の炭鉱は國有國営にすべき十分なる條件を整えておると主張したのは英國の代表であります。同じ日に中國の代表は、日本における炭鉱は即時國有國営にすべしということを主張されておると、私はここに資料を持つておりますので、はつきり申上げることができるのでありますが、これを契機として、日本における石炭産業は、拔本的に何らかの改革をしなければならないということが定義付けられ、國民の前面に押出されたものであります。私が眞劍に考えて見て残念に堪えないことは、若し昨年の九月頃、或いは十月、十一月頃、ときの政権をとつておられた方、石炭対策の中心になつておられた商工省の方々が、あの当時若しどうしても石炭の重大性からして、その飛躍的な増産を確保しなければならない、拔本的な方針を樹立しなければならないという建前において、國家管理の問題を採上げたとしましたならばどうでありましよう。恐らく誰一人反対する者もなく、満場一致によつて、否、挙國一致の体制において昨年度ならば國家管理を実現しておつたでありましよう。それは聯合國の対日理事会におけるあの意向が大きく全國的に拡つておつたからであります。こういう点を私は極めて重大でないかと考えて、敢えて例に取つたのでありますが、とにもかくにも今度の炭鉱國家管理法案は、最前委員長が申されました通り、増産になるか、減産になるか、これがこの法案を活すか殺すかの分れ目である、こう考えますので、私は率直に四十二万炭鉱労働者の意思を代表して、國家管理を実行することが積極的な有效適切な増産対策であるということを断言して憚からないのであります。
 一方業者の立場からはこの國管を実施すれば減産になる、こういうことが盛んに主張されるのではありますが、直接坑内の惡條件を冒して切羽に働いて、或いは坑外にトロツコを押しておる多くの炭鉱労働者は、旱天の慈雨のごとく、暗夜に太陽を迎えるがごとき氣持を以て國家管理の実施を翹望しておるのであります。これに対しまして或る新聞が行なつたところの七月の輿論調査によつては、炭鉱労働者の中に多くの國管反対者があつたということを言われたのでありますが、それはどうしてそういう結論になつて來たかと申しますと、炭鉱労働組合が、國家管理はどういうものであるかということを山に働いておる人々に徹底せしめようという運動を始めたのは、八月の十五日からであります。八月十五日以後、我々は常磐に飛び、山口に飛び、或いは福岡、佐賀、長崎に、各委員が政府案、社会党案、民主党案、いろいろに携えて大衆討議に掛けたのであります。全國における炭鉱労働組合は即刻大会を開いて大衆討議の上、成るほど政府の言つておるところの國家管理というものは、我々炭鉱労働者が長い間封建的な圧制によつて苦んで來ておつた、或いはまるで別世界のような惡い條件の下に生活しておつた、この炭鉱労働者の社会的の地位を向上せしむるものである。労働條件の改善、それらを通じても、私的企業より数段優るところの希望がはつきりと握れるということによつて、國家管理即時断行という決議をしておるのであります。若し今衆議院、参議院において炭鉱労働者四十二万の動向によつて、國家管理法案の採決するか否決するかという目安にするという観点から、現在輿論調査を行うとしましたならば、恐らく大半の炭鉱労働者は、現在國家管理を一日も早く実施してくれ、一日も早く増産運動に邁進させてくれということを主張するに違いない、こう私は確信しておるのであります。
 そこでもう少し、然らば具体的に増産面に対する労働組合の立場からの見解を私率直に申上げますと、終戰後は御存じのごとく、月間五十五万四千トンというような慘めな数字にまで慘落したこの石炭を、月間二百万トンまでに引上げて來たこの裏面には、労働組合、労働者の力だけを殊更高唱するわけではありません。業者、経営者の協力又我々は認めるに吝かではありませんが、併し本当に増産の経路を御檢討願いますならば、昨年の四月、五月において、漸く石炭増産というものは軌道に乘つて來ました。これはどういうところに原因があるかと申しますと、労働者に自由が與えられた、労働者は團結できる、而も罷業権までも認められた、労働組合の結成が、長い間軍閥と封建勢力に押えられておつた炭鉱労働者を感激せしめたのであります。而も炭鉱労働者は與えられた自由、與えられた團結、與えられた労働組合を惡い方面に使うものではなくして、祖國産業再建のために、石炭の重大性を認識したからこそ一齊に立ち上つて、その與えられた團結の長所、與えられた組織力によつて増産を行なつたことが日本における炭鉱復興の大なる力であつたことを私は申上げて置きたいのであります。その後において炭鉱労働組合は大会を開くたびに救國増産運動を決議し、或いは長期増産運動を決議し経営者がどう考えていようと、資本家がどう考えていようと、我々だけの力によつて増産をやつてのけるのだという勢いを今日尚堅持しておるのであります。これに対しまして果して今日までの業者が、その業者の中には惡質のものもあれば、或いは良質の人もおられましようが、しかし私的企業の大きな欠陷を暴露しておる一つの実例を引用して見ますならば、この前水谷商工大臣が、常磐炭鉱の増産に行かれた、それを契機として高萩炭鉱の兄弟山である櫛形炭鉱を國家に献納するから國家管理の試驗台としてこれを國家の方によつて採掘して見てくれという申出でがあつた。申出での善惡を私はいうのではありませんが、遺憾ながらこの櫛形炭鉱は私が直接組織しておるところの労働組合であります。現在六百五十の人員を擁しておる。これが現在どういう状態に置かれておるかと申しますと、本年の三月から資本側の経済封鎖を食つて、資本家にボイコツトをされておるのであります。現場に届けられるものは労働者の生活を支える労働賃金だけで、坑木一本買う金も紙一枚買う金も本社からは來ないのであります。しかし私はこの六月行つて、そうなることによつて労働組合が腰を折つたり、反逆的な行爲をとることはいけない。石に噛りついても増産運動は続行してくれと頼んだ結果現在尚櫛形炭鉱におきましては労働組合だけの自治的な増産運動を展開し、増産の成績を上げておるのであります。私は六月櫛形炭鉱に行つたときに坑内には坑木一本も見当らなく、枕木にも使いものにならないものが五、六本轉つておるのを見た。私は炭鉱で生れて炭鉱で育つた人間でありまするが故に、坑木が坑内生活にとつていかに重大なものであるかということはぴんと響いて來るのであります。炭鉱に坑木がないということは、坑内作業をやる坑夫の生命を守らないということであります。どうして坑木がないのだ、こういうことを聞きますならば、幾ら本社に坑木を買つてくれということを請求しても買つてくれないのだ。こういうことであります。そこで何らかの方法によつて、とにかく坑木だけは買わなければいけない、労働組合は相協力して坑木の入手運動をやつておる。こういうことを考えて見ますると、個人資本家が惡いとは私は言いません。資本主義という制度功利打算的に運営されて行く、その制度そのものに対しまして、根本的な修正を加えなければこういう事態が各所に突発いたしまして、労働力と機械の設備とを持つておりながら、資本家にノツクアウトされたことによつて増産が地につかないというようなこの現状は十分に考えて頂く必要があると思うのであります。
 私は細かい統計等によつてもつと詳しく説明する用意をしてあつたのでありますが、時間がないそうでありますから……。特にお願い申上げたいことは、今私たちが主張しておりますることは、経営の徹底的民主化、これが何といつても労働者の望んであるところの中心であります。そうすると現在の業者の方からいいますと、現在ある経営協議会を中心として民主化がやれるではないか、こういう答えを出されるのでありますが、現在山元において行われておる経営協議会は、いかに資本家、労働者が一体となつて協議会を構成しておりましようとも、この協議会の制度として労働組合はこの奧に入るべからずという禁札の一本が立てられるのであります。いわゆる奧の院は覗かせないぞという、これであります。今日の炭鉱経営は資金の面において然り、主食において然り、住宅において然り、或いは食糧の特別配給等を通じまして多くの國民の不自由を掛け他産業の犠牲において今日炭鉱労働者炭鉱経営者が優先的な最も厚い待遇を受けておることは私ははつきりと知つておりますが故に、労働者にも責任生産を求める代り、今度は政府の金を赤字補給金をこれだけ貰つた、この金はこういうふうに使つた、今度の生産コストはこういう條件によつて高くなつた、安くなつた、こういう点まで懷ろを割つて労働組合と業者が一致してやれるところまで言わなければ決して経営の民主化とは言われないのでありますそれを一應解決しておるのが今度の國家管理法案である。難癖を付けますと相当あるのでありますが、時間がないので結論だけを申上げます。いわゆる今度の國家管理法案によつて業者は行政面の中に入つて行く。労働者は能ふる限り経営面の中に入つて行く。政治はどん底の切羽の底まで入つて行く。この三位一体こそが日本の國を救う、民族危機を救うところの経済突破の最も正しい行き方であるということをはつきりとお認め願いまして、是非とも炭鉱國家管理法案はもう理窟の上においては、氣持の上においては三者共ちつとも食い違いはないのであります。ただ一方は資本主義を守ろうとするイデオロギー、一方は抜本的に修正を加えて、いわゆる社会主義的な政策相互契約生産の建前をとつて石炭増産を図る以外に途がないという建前をとる者、この相違があるだけであります。是非とも賢明なる参議院におかれましては、衆議院を督励され、督促されて、一日も早く國家管理法案を実現せしてめ貰うよう切に懇願いたしまして、私の意見を終りたいと思います。
#4
○濱田寅藏君 只今の公述は甚だ結構でありますが、演説ではありませんから、余り叱りつけるような大きな声でやられると、折角の御意見も耳に入り兼ねるのであります。お靜かにやつて頂いて結構分るのでありますから、あとからなさるお方は一つお靜かに願うように委員長からお取計らい願いたいと思います。
#5
○委員長(稻垣平太郎君) 只今濱田委員からの御意見もございましたが、マイクもございますので、うしろの方の方にも聞こえるだろうと存じまするから、成るべくお靜かに、先程申上げましたように、靜かに愼重に皆樣方の御意見も承りたいと存じておりまするのでそのお含みでお話を願いたいと存じます。次には古河鉱業專務取締役の円城寺松一君にお話を願いたいと思います。
#6
○公述人(圓城寺松一君) 私は只今御紹介を頂きました古河鉱業專務の円城寺でございます。本議会に提出されておりまする重要なる石炭の國家管理法案につきまして、本日ここに我々の意見を述べる機会をお與え下さいまして誠に有難たく仕合せに存じます。
 炭鉱は、御承知の通り戰爭中は殊に坑内におきまして熟練労働者がおりませんものだから俘虜や或いは半島の方や中國の方や沢山な素人の人が入つてそうして戰爭の目的に副うように努力して來たのであります。それが終戰になりまして、一時に坑内の労働者を失いまして、非常に炭鉱が困つたことも御承知の通りと思います。これは炭鉱の特異性といたしまして、他の産業は一應建設すれば、あとは増産ができるのでございますけれども、炭鉱は採掘すればそれがなくなりまして、その次の建設をして行かなければならん。即ち他の産業と違いまして、破壞と建設とが伴うものでございます。終戰直後におきましては人手の不足からして坑内は破壞をいたしました。これを修復して漸次石炭の増加を図らなければならん。ところが、石炭鉱業の平時におきましては、只今申上げましたような破壞と建設とが進行いたしまして、出炭が維持されておりまするが、一旦破壞しまして建設することよりも破壞の方が大きい場合が多い。これを押返して修復して出炭を増加することは容易ならん仕事でございます。それには前公述人も言われました通り、我々は資材の不足その他炭價の不適正、いろいろな困難と戰いまして、漸次出炭を増加して、前公述者の言われましたように月二百万台、九月におきましては二百三十万トンというところまで持つて來たのでございます。そこへ突如といたしまして國家管理法案が提出されまして、果してこれで増産ができるか、できんかということが研究の問題として残されておるわけでございます。
 石炭の重要性は申すまでもなく、今日産業の基盤である、殊に経済が行詰つておりまする今日、我々は協力いたしまして増産をしなければならんことは分り切つておることでございます。そこでこの問題を險討いたしまするためには、果してこの案を実施して増産になるかならんかということでございまして、私たちがこの管理法案に反対をいたしておりまするのは、單に経営者としての立場からでなく、増産ができなければ日本全体が困る。この全体の中には我々と協力して働いて頂いておりまする炭鉱の労務者も含むのでございます。ないものを分配することはできませんので、結局労務者の待遇をよくするということにいたしましても、やはりこれは増産ができなければ、口に申しましてもできんことでございます。結局炭鉱に働いておる者を含めまして、日本國民のためにこの増産ができるかどうかということを我々は考えまして、この法案に反対をしておるわけであります。以下反対をいたします理由を申述べてみたいと思います。
 この法案に盛られておりまする大きな要素を拾つて見ますると、先ず地方に石炭局を作つて從來の監督行政以上に進んで行こうということが一つでございます。次は生産協議会というものを作つて、経営者と働く人とが協議をして、これによつて増産を図ろうというのが、第二の要素でございます。第三には民主的経営をするということで地方或いは中央に管理委員会が設けられております。更にいま一つは炭鉱の現場の所長又は鉱長を炭鉱の管理者として石炭局に直結する。これが法案に盛られておりまする要旨の大なるものでございます。從つて私は以下それぞれの要旨につきましてお話をさして頂きたいと思います。
 商工大臣の説明によりますと、石炭局を置いて、そうして人を増加して炭鉱の実態を把握しよう、そうしてこの実態に即して、物資つまり生産要素、資材、金融等を確保したい、こういう意味におきまして石炭局を設置するということになつております。書けばこうでございますが、実際石炭局を作れば、どういう人があるかということを考えますと、この案では石炭局辺を恰かも各社の本社に代りまして社長みたような地位に就くのでございまするから、その地位に就いて、而も能率を目的通りに果して行くという才幹を持つている人物を得なければならんのでございます。これは実は容易ならんことでございまして、私は始終申しておりまするが、我々の自分の会社の炭鉱でありますれば、私共は実態を把握し、これに対する対策を講ずることができるのでございまするが、他の社の炭鉱のことにつきましては、実態把握及びこれに対する対策ということは言うべくしてなかなかできないようであります。然るに一社、二社の問題じやなくて石炭局長の管轄でありまする百或いは二百の炭鉱の社長の仕事をいたしまして、果してその人が効率を挙げ、石炭が増産できるようなことができるかどうかということが私たちは非常に疑問でございまして、恐らくこれは不可能であろう、かように考える次第でございます。尚石炭局を作りましてよい局長がございましたといたしましてもその局員を充実するということが頭数だけでは参りませんので、これ又容易ならん仕事でございます。そこでこの法案は目先に出炭を増加しようというのを目的といたしておりますので、ゆるゆる石炭局員を人選し、ゆるゆる局員を充実するということでは間に合わんのでございまして、緊急増産の目的に副うような陣容を整えるということは、言うべくしてできないと私は思うのでございます。
 次は生産協議会でございまするが、この問題につきまして少し私の意見を申上げてみたいと思うのであります。これには私が申上げるまでもなく、過般商工大臣が提案の理由を説明されたその中に、商工大臣みずからが言うておられますが、今日の労資の関係を批評してございます。今炭鉱でやつておる労資の関係は、これは常に待遇問題ばかり論じておつて、生産は第二義的になつておるんじやないか。そこで生産協議会というものを作つて増産ということを第一次に取上げるようにしたい。今日の労資共終戰後の民主主義の扱い方について戸惑いをしておるのである。そこでこれを法制によつて労資の安定点を見付けたい、こういうことが生産協議会を置く理由として述べられております。ところで、これを法制を以ていたしましたら、直ぐ役に立つような増産ができるかどうか、こういうことでございます。この民主主義の行き方というものは法制によつてはできない。やはりこれは成長すべきものである。双方が理解し合つてそうして成長してでき上るものでありまして、一片の法制で以てかくせよと言うてみたところでできるものではないのであります。つまり商工大臣みずからが現段階においては労資共現場の会議というものは増産は第二義的になつておるかように言つておられます。そういう段階におきまする現場に法制を以て増産が期待されるかどうかということにつきましては、私は非常に疑問に思うのでございます。のみならずこの生産協議会に関する手続は、議を経てということになつております。これは初めは社会党案におきましては、決議ということになつております。それが連立内閣のやり取りによりまして、議を経てということになつておりまするが、これは非常にぼんやりした言葉でございまして、審議のたび毎にぼんやりした言葉をめぐりまして紛糾を來すだろうと私は思うのでございます。そこで生産協議会につきましては、一片の立法処置として直ちに増産に持つて行くことはできない。どうしてもこれは双方を育てなければいかん。かように考えるのであります。そうなりますと前申しました石炭局長以下石炭局の充実に対しまして、相当な日数がかかるから、これは緊急の増産対策に非ずと申上げましたが、第二の生産協議会につきましても、これが育つのを待つて、そうして増産をしようということを期待することはこれ又緊急措置とは申されんのであります。
 次は管理委員会でございます。管理委員会は商工大臣の説明には、野に一個の遺賢なきまでに拾い上げて、そうして人材を利用しようと、こういうお話でございまするが、実際この管理委員として出る適当な人があるかどうか。今日業界におきましては頭数はおりましても、我々が所長一人決めても技術的にもよろしい、人物的にもよろしい、貫碌もよろしいというような者はなかなか見付からんのでございまして、ようやくその適任者を見付けまして、それぞれ配置しておりますが、そういういい人を引上げて來なければ管理委員会のメンバーというものはできません。ところが、そのいい人を引上げられましたら、現場の仕事が今度は運ばなくなります。これは野に遺賢なきまでに拾い上げたら、実際の生産現場というものは非常に混乱し、或いは能率低下となつて來るのであります。そうして若しそれを忍んで出して、管理委員になつたといたしましても、この管理委員につきましては御承知の通り何らの権限も何らの責任も何んらの義務もないのでございます。かような管理委員会は、商工大臣は從來の委員会のようなものでなくつてと言つておられますけれども、結局從來の委員会の域を脱しないものと思われます。
 それから炭鉱管理者につきましては後程申したいと思いますが、ここにちよつと企業の形態変革ということについて一言触れて見たいと思います。これは企業の変革ぢやない。最後の決定権は本社に與えてある。かように説明してありまするが、一應炭鉱管理人の推薦はできますが、これは商工大臣がきかなければ、承知しなければやれないのであります。重要な人事権というものはすべて剥脱されておる。その他作業計画等におきましても、すべてこれは現場の生産協議会で決めたものをそれについて作らなければならん。若しそれと異つたものを作つたら、もう一應生産協議会に掛けるとこういうことになつておりまして、生産協議会には本社がタツチしない。現場でやるものでございますから、これ全く本社が棚上げになつておるのでございます。從來の本社は、現場から離れて本社という役目をしております。炭鉱の経営は、長期計画経営をしなければならんということを私たちは始終申しておりますが、現場を担当しておる人は、日日の能率を上げるために一生懸命に働いております。從つて山におる者山を見ずで、山の形が見えませんから、私たちは大所高所から見て作業計画というものの方針を指示しておつたようなわけでございます。これを本社を捨て置いて現場で作り、尚且つ素人でありまする石炭局長が見て、いけなければ変更を命ずる、こういうわけでございまするから、殆んど本社の機能というものは取上げられております。本社の代りに官廳が入つて來ますが、これはプラス、マイナスいたしますというと本社が多年炭鉱のことに通繞しておりまするのに比べると、どうしても本社以上に出ることはできない。即ち新らたに参加する官僚陣のプラスよりも、本社を棚上げするというマイナスが大きくなるのでございます。凡そいかなる仕事でありましても、最後の責任を持つ者は一個の自然人でなければいかんと私は思うのであります。これが最も責任を感ずるやり方でございまして責任を持つという人は、法人でも法人の中の社長、或いは個人経営であれば業主と、事業の最高責任、最後の責任を持つ者は、これは一個の自然人でなければならない。且つ炭鉱のごとく長い計画をしてやらなければならん事業におきましては、長くその地位に留まる自然人でなければならんと思うのであります。然るにこの法案におきましては、責任をどれくらい取られるか知りませんが、責任を取ろうという商工大臣以下石炭廳長官、石炭局長、これは地位が安定しない。いつでも轉任をいたします。大臣になれば一年も続かない。かようなわけでございまするから、長くその地位において責任を取るということに対しましては甚だ不適任でございます。これは私がいつも申しておるのでございますが、責任が一個の自然人に帰するのとそうじやないのと比べますというと、非常に譬いは惡いのでございまするが、仮りに私の家に病人があります。そうすると、私は非常に心配をし、何とかして治そうとしておる。ところが隣りの人が來て、あなたの家には病人があるそうじやないか、誠に御心配でございましよう、ああしましよう、こうしましようと言いましても、実際自分の家に病人を持つておるのとお見舞を申上げるのとの差は非常に大きいのでございまして、一個の自然人に責任を帰さなければ能率が上がらないということを申上げるのは、こういう意味でございます。
 それからここでちよつと炭鉱管理者について触れて見たいと思いますが、炭鉱管理者は、この法案によりますと経営の責任を持つことになつております。併しこの責任を持つべき炭鉱の管理者は、商工大臣に解雇をする権限を握られております。商工大臣が、不適任だということであれば、これを解雇することができる。いずれ適任であるとか、不適任であるとかいうことは、商工大臣御自身が分るわけではないから、下の官僚陣から、あれは駄目だから罷めさせろと、こういうことを言われるだろうと思うのであります、それによつて商工大臣は管理委員会に諮つて解雇する。管理委員会につきましては、先程申上げましたように、何ら責任も権限もないのでございます。それから又生産協議会において、これは彈劾される危險に暴されております。そこでこの炭鉱管理者が本当に炭鉱のためにその責任を取つて行くか、良心的経営によつて炭鉱を経営するかどうかということでございます。官僚陣に対して受けが惡かつたらいつでも商工大臣から解雇される。部下に受けが惡かつたらいつでも彈劾されて解雇される。かような地位におりましたならば目先々々上手に泳いでは行きますが、良心的な経営をするかどうかということが疑われるのでございます。
 それにつきましては、私みずからの経驗をお話申上げると、戰時中でございましたが、石炭が非常に必要である。從つて今日同樣官廳から、増産をしろ増産をしろということを命令されたのでございまするが、ちようどその当時私は岩石坑通を掘進して、非常に優良炭で且つ炭丈、炭丈と申しますると、切羽におきまする炭丈の厚さでございます。炭丈の良い炭層に早く着炭をして増産をしようということで夢中になつておりました。その岩石坑道の掘進には三方交替でやつておりましたので、合計三十六名の労働者が働いております。当時は鉱山局長と言つておりましたが、そこへ参りまして、そこを止めて、岩石坑道を掘進せずに外の切羽にこの人間を持つて行つてやらせろ、こういうことをしつこく言つておりました。そこで数字を挙げて、三十六名を外の切羽に持つて行けば、これくらいの石炭しか出ない。併し今私のやつておる方針通り掘進して行つたならば、その数倍に相当する石炭が出るのであります。それだから私は、御命令でありますけれども、この仕事は止めませんと、こう言いましたけれども再三それを押問答いたしましても、私は信念に基きまして、その命令に從わなかつたのでございます。若しこれが、当時この法案のごとく商工大臣の解雇権というものが存在しておりましたならば、私はやはり鉱山局長の命令に服さなければ自分の地位が保てなかつたのでございます。そこで、炭鉱管理者が良心的に炭鉱を経営するや否や、こういう制度で良心的に経営するや否やということにつきましては、私は非常に疑問を持つております。
 それから作業計画の変更でございまするが、作業計画を現場から出して、石炭局長がそのまま呑むのでございましたならば、國管法は要りません。それを呑まずに押付けようとするところに國家管理法案というものが必要でございまして、そこで現実の問題といたしましては、現場から出しました作業計画というものは、常に石炭局長から返却される、突つ返されるものと見なければならんのでございます。そうすると、法案で御覽の通り、三ケ月ごとに作業計画を出します。そうして手続を踏んで、生産協議会にも掛け、石炭局長に出す。そうすると石炭局長は、これを変更する場合には管理委員会に掛けて変更する。その変更の命令が続続と來ることを予定しなければなりません。これが変更命令がないようで、大部分のものが出したまま呑まれるものであるならば、こういう法案は要らんのでございます。そういうことでいかんから、これを強行しろという強行法でございます。そうすると、出したものを又協議をして、そうして皆に納得さして仕事をするということになりましたら、恐らく生産協議会のごときものは常設機関となつてしまうのでございます。そうなりますというと、炭鉱の管理者は、常に生産協議会に出席して仕事をしなければならん。外に向いては官廳なり或いは管理委員会に出席するなりして、仕事をしなければならんということで、殆んど山の生産に没頭する暇はなくなつてしまうのでございます。ここにおきまして私の実例を申上げれば、曾て戰時中に行政査察という制度がございまして、その査察を私たちも受けたのでございますが、その中の一項に、所長は山に一ケ月に何日滯在するかという事項がありまして、私は非常に不満でございました。これほど日夜一生懸命になつているのに、何日山におるかというような質問をすることは、官廳といえども甚だ失礼だと考えましたので、なぜこういうことを聞くか、僕はずぼらをして山を空けているとでも思つているのかということを反問いたしましたところが、そうじやない、会議が多くて書類を出したりしておるのじや所長は殆んど山におる暇はなかろうと思うのだ、それくらい会議だの、或いは書類提出だのというものが生産の邪魔をしておるかということを尋ねたいから、こういう質問をするのだ、ということでございました。当時は御承知の通りこの案に見るがごとく生産協議会はございません。その他生産協議会以外の経営協議会なんというものもございません。内部においてはそれ程ではありませんが対外的に関してだけでもそうであります。今囘この法案によりますと、内は前述の生産協議会に臨み、外は官廳と折衝いたしまして、炭鉱の管理者は殆んど増産に挺身するという暇はないと思うのです。そこでこの法案は決して増産に導くものじやない。これを私は委員長からも注意を受けておりますから、急いでおるので、こう申上げるわけではございません。これは先程も申上げましたように炭鉱の生産協議会も含みまして、眞劍に國民の一人として申上げておるわけであります。
 そういうわけでございまして、まだ申上げたいこともありますが時間がないそうでございますから、この辺で切上げたいと思いますが、最後に先程前公述者から常設の機関を作れということを言われた。これは私傳え聞くところによりますと、衆議院でもこのことが出たそうでありますが、私は官廳も労働者も経営者もぴつたりした氣持になつて増産しなければならんということは少しも異議はございません。そこで増産運動をやることについて、この法案は先程申しましたように、目先の増産を期待しながら誠に優長で、これが準備されていよいよ動き出すためには私は一年掛かると思ひます。局長を置き或いは局員を充実し、委員会のメンバーを作る、そうして本当に軌道に乘るのは一年も掛かるだろうと思います。そういうことをやるよりも、今日マツカーサー司令官から指示され、それによつて今政府がやつておりまする目先の増産対策を強行することについては、前公述者も言われました通り、政府も業者も労働者も一致して行かなければならんということに対しては、何らの異論がないのであります。併しあの時私が申上げたのは、実は炭價の問題につきまして、政府の一方的な決め方で、この炭價でいいじやないか、これで賃金も拂え、資材も買え、こういうふうに決められて、我々が動きがつかんようになるのじや困るのだから從來の炭價の決定につきましては、我我業者も納得するように参画さして貰いたいということを私は要求したのでございます。これに対して商工大臣は私に対して、そのときの表現は……私は工業会の副会長として出ておりましたので、副会長は炭價の問題を言われるけれども、自分は炭價以外にこの法案について全面的に推進する常設機関を作りたい、かように言われたのでございます。そこでこれは三者一体で行かなければならんことは分りきつたことでありまして、從來も労資協調して來ておりますから、こうやらなければならんことは分りきつたことでありますが、私は今日これに反対しております理由は、以上述べましたように、その要素のそれぞれが少しも増産にならない。この法案の内容を見ますると、むしろ実体法的性格よりも手続法的性格を持つておる。從つて手続が煩瑣で書類の操作、会議の常設、こういうことでこの法案では増産ができないということを申上げた次第でございます。御清聽を頂きまして有難うございました。
#7
○委員長(稻垣平太郎君) 次には福島縣日東宮炭鉱資材係の一條與作君にお願いたしたいと存じます。
#8
○公述人(一條與作君) 私は只今御紹介に預りました福島縣の日東宮炭鉱という小さな炭鉱の一資材係でございますが、私が今申上げますことは、社会主義か共産主義か資本主義か分りませんが、炭鉱生活十年の私が炭鉱のいろいろな仕事をした体驗と、そうして今日まで私共が承つております各労働者の人々の声を代表していることを申上げまして、委員皆樣の御協力をお願いしたいと思います。
 なぜ國管を支持するか、その根拠と、國管になれば増産できるかという二つの点について申上げて見たいと思います。この前の衆議院の公聽会にも私が出ました関係上、一部ダブるところがあるかも知れませんが、御了承を願いたいと思います。
 普通の商賣というものは、長くやつていればやつている程、だんだんその基礎が固まつて有利な條件になつて行くことは皆樣御承知の通りであります。だが、炭鉱はそれと反対に、長くなればなる程設備を延長するために金が掛かり、それを維持するために費用が嵩み、石炭の運搬坑道はだんだん遠くなつて金が掛かり、現場に労働者が到着するまでの時間が長く掛かつて、これ亦無駄な労力を使い、古くなればなる程、殊に常磐炭田のごときは排水量が多くなつて行くのであります。そうして採炭する炭層はと申しますと、良いところはだんだんなくなつてしまつて、惡いところが残つて來る。從つて掘る石炭の生産の原價というものは高くなる一方であります。九州、常磐は老朽に入つておりますから、戰爭で濫掘したしないに拘わらず、こうした現状は必然的に炭鉱が辿つて行かなければならん運命なのであります。從つて生産コストが高くなつて行くから、これを低物價の線で抑えようとすればいわゆる経営体は破壊されます。ここで低物價政策と公共性ある、又特異性ある石炭の自由企業というものは両立しないことがはつきり分つて來ます。これがすでに國有或いは國管の前提になる大きな一つの原因であると存じます。
 それからいま一つは、石炭がなければ日本は再建できないという至上命令から、國家が乏しき國帑の中から、僅か三年六ケ月の間に政府が炭鉱に補償或いは融資しました金は百四十八億一千九百万円という厖大なる数字に上つており、資材においては他の産業の犠牲において重点的に注入しております。又労働者は実質賃金の一部といたしまして、本当に乏しい食糧の中から加配米を頂いております。これを考えてみまするときに、炭鉱というものは資本家の営利事業場でなく、労働者は資本家に隷属して、ただ自分の生活だけを考えればよい労働者でないということがはつきり分つて來ると思います。かくのごとく現状の資本家は國家の補償なくては経営もできず、國家の援助なくては労働者も生活の安定さへも図ることができません。それなのに労働者の食糧は頼みます、金と資材はうんと廻して下さい、その使い道はこの通りですと、一片の事業計画と資金計画を出して、偖てその金や資材の使い道は晦日の夜となつてしまいます。皆さんこれで労働者が國家のためだといつて本当に立上がることができるでしようか。國民の代表である委員の皆さんが納得行くでしようか。私が晦日の夜という言葉を使つたのは闇だという意味ではありません。國民の血と汗とによつて納入された國家の資金が、本当に無駄なく百パーセント増産のために費消されているかどうか。又使用されなければならんという観点から、國民の代表として労働組合が参加してこの國家資金を一銭でも増産のために有利に使いたい。いわゆる法第三十八條の生産協議会は、こうしたもののためにも決議機関でなければならない。決議機関であるということが、我々には絶対に讓れない最低線であることを申上げまして御了承願いたいと思います。
 その他の理由といたしましては、日本の経済の血液ともいうべき石炭は、インフレによつて左右されることのない安全地帶、即ち民主的に且つ亦強固なる國管によつて護らなければならない。國管という一元的な運営の機構において、炭鉱の総力を発揮しなければならないとかいろいろあると思います。私が東京に参りまして目についたのは、國管反対のビラであります。あの國管反対のビラに黒い石炭を赤くすると書いてあります。誠に私は名言であると思います。黒い石炭が赤く燃えるときに、初めて石炭の眞價が発揮されると思います。黒い石炭が赤くならなかつたならばそれは燃えない石炭でこれは炭鉱ではボタと称しております。それから先程圓城寺さんがそんなに人があるかとおつしやいました。又衆議院においても早川さんははつきりと、失礼だが労働組合に人物があるかとおつしやいました。それなら私はお尋ねしたいと思います。労働組合にそんな人物がいないことを承知で今まで石炭復興会議に、労働者出て來い。経済復興会議にも國家のためだ、労働者出て來いといつて参加させたのは、我々を馬鹿だと知りながら何をしようとするつもりで我々を今日までこんないろいろな協議会に引張り出すのでありますか。併しこんなことを感情的に私が申上げても仕方がないと思いますが、人がないということは私は絶対に言い得ないと思います。資本家の方々には今日まで経営の面においていろいろな所がございましよう。併し又我々労働者には労働者として増産の面にいろいろ創意工夫を持つております。これはこの非常時にどうすれば石炭が出るかということを熱心に、たとい学校は出なくても研究するだけの我々は研究心を持つておるつもりでございます。
 それでは國管にすれば増産になるか具体的に数ある中から拾い上げてみたいと思います。今までは國家から労働者は加配米を頂き、配給物を貰つていますから、國家に対して責任があるように感じていましたが、併し一生懸命に働いて増産すれば増産する程、何だか儲けて行くのは経営者のお方だというような炭鉱労働者の單純な考え方から、何かしらはつきりしないものを私たちは持つていました。併し今度は國家でやるということがはつきり分りますれば、國家に対する意識が強く出て参ります。民族存亡の岐路に立てる日本経済の危機突破は、國家の名において我々もそれに参加してやるんだという自発的な勤労意欲が盛り上つて來る。これは必然であります。馬鹿を言うな、そんなことを言つたならば戰爭中のあの産業報國会的なやり方じやないかとおつしやるかも知れませんが、戰爭中の労働者はただ一方的に使われただけであります。経営に参画することなどは夢にもさせられませんでした。ところが今度は堂々と我々は法的根拠の下に参劃して、納得の下にやるのですから、おのずから事情は違つて來ると思います。そうして自分たちの参画した事業の一端を受持つことになりますから、事業計画というものと有機的な関聯を認識して、自分の受持つ仕事を怠ければ、この計画にはどんな影響があるかないかはつきりと分りますので、これは俺の仕事を重大だ、怠けたら外に迷惑が掛かる、責任を感じてそこに押付けられた勤労意欲ではない、本当に自発的に盛り上つて來る勤労意欲、これが増産の一つの理由だと存じます。
 それから鉱区の開放によつて増産が出來ます。常磐炭田に元の入山炭鉱は資材と資金と或いは調備、労力を豊富に持つておりましたが、磐城炭鉱は大きな死藏鉱区を持つておりまして、この死藏鉱区と入山炭鉱は隣合つておりまして、僅か図面の線一本を突入すれば、明日からでもどんどん掘れるのでありますが、それは所有権の都合から掘ることができません。だが戰時中には増産の建前から官廳の方が中に入りまして、これは両者が合併した方がいいというので合併いたしました。増産の見地からの合併なのであります。その結果相当な成績を挙げておることは御承知の通りであります。こうした例は常磐炭田にも沢山あり、日本國中にも沢山あります。國管を断行して鉱区を開放するとなれば、資材や設備、新らしい労力なぞは注入しなくても、明日からにでも増産のできる所があるのであります。殊に中小炭鉱におきましては、死藏鉱区の線一つを越えさえすれば、良質の石炭が樂々と掘れるのですが、現在ではそれができないために薄つペらな石炭を、拾うようにして、探すようにして掘つておる。これが非能率となりまして、從つてコストが高くなつて、労働強化となつておる現状であります。敢て私は中小炭鉱の代表といたしまして、管理の対象は全炭鉱とすることが増産の絶対條件であることを断言いたします。又中小炭鉱の労働者の総新であることをはつきりと申上げまして、委員会の委員各位の御支援を我々として良心的な立場からお願いする次第であります。
 この外に、労働者の参画によりまして、増産する面は先程もちよつと申上げましたが、長らくの体驗より生んだところの創意工夫の発揮、横流れの防止、家族の積極的の協力とか、いろいろあることと思います。
 結論として申上げますれば、管理の対象が全炭鉱であること、生産協議会が決議機関であること、これを最低の條件といたしまして、我々は十分に協力する用意のあることをはつきりと申上げて、私の簡單な公述を終り、委員皆さんの絶大なる御協力を得たいと存じます。有難うございました。
#9
○委員長(稻垣平太郎君) それでは次に井華工業北海道支店長の奥田立夫さんにお尋いたしたいと思います。
#10
○公述人(奧田立夫君) 私は只今御紹介に預かりました井華鉱業の北海道支店長奥田でございます。
 今般議会に上程いたされました臨時石炭鉱業國家管理法案が政府と経営者並びに從業者の三位一体によりまして増産を目的といたしますることは、法案第一條並びに政府の提案理由にも明瞭なところでございます。併し本法案を深く檢討いたしまするときに、いろいろの矛盾或いはいろいろの不合理を含んでおるのであります。特に経営権に大きな制約を加えております結果、万一この法案が施行されました曉におきましては、いわば経営権の棚上げとも申すべき事態に相成るかと存じます。かくいたしましては三位一体の増産はおろか、減産必至の状態に相成りますることを感知いたしまするが故に私は只今からかかる観点から所見を申述べさせて頂きまして、本法案の賛成いたし兼ねまする所以を明らかにいたしたいと存ずる次第であります。
 商工大臣は本法案の衆議院上程に際しまして、本案は特別のイデオロギーによるものではないということを特に申されましたことは、先程議長のお言葉にもありましたかと存じますが、本法案をよくよく檢討いたしますると、私企業の経営権を否定いたしまするがごとき條項が随所に発見いたされるのでございます。先ず十一條には、炭鉱の休廃止に際しては大臣の許可を必要とするということに相成つております。更に十七條以下に業務計画の決定或いは変更その他業務計画実施上の命令権は石炭局長が掌握しておりまして事業主の権限を甚だしく拘束、殆んど全く局長が権限を掌握しておると申して差支えない実態になつておると私は信ずるのでございます。或いは又炭鉱管理者の選任に当りましては先程もどなたからかお話があつたかと思いますが、大臣の許可を要することとなつておりますので、本來事業主に属しておるべきはずの人事権を國家が左右する、行政権が左右する、かように相成つておるのでございます。
 そこでいま少しくこの実例を法文の内容に取りまして考えて見まするに、事業計画の決定の一例を取りまするならば、事業を遂行するに最も大切な事業計画は生産協議会の議を経て炭鉱管理者がこれを決めることになつておりますけれども、その最後の決定権は法第十九條に示してあります通り、実質上石炭局長の手中に掌握されておるわけでございます。即ち第十九條は次の通りに規定されております。石炭局長は業務計画の案の提出があつたときには、これを審査した上で地方炭鉱管理委員会に諮つて当該指定炭鉱の業務計画を決定するということになつております。つまり決定者は石炭局長であります。而も順序といたしまして一應地方炭鉱管理委員会に諮ることに相成つておりますが、この地方炭鉱管理委員会と申しまするものは、申す迄もなく諮問機関でありますから、石炭局長はただこの機関に諮るだけでよろしゆうございます。その最後の決定権は経営者にあるわけでもなく、勿論生産協議会にあるわけでもなく、石炭局長だけに決定権が存するのであります。
 然らば凡そ経営権とはなんぞやということに相成るかと存じまするが、これにはいろいろの説もありましようが、私は経営方針の決定又これを行使いたしまするについての最後の決定権であると、かように存ずるのでございます。この最後の決定権が、本案によりますれば生産協議会にもありませず、勿論只今の事業経営者にも経営権がない。つまり私の先程申上げまする棚上げという実体に相成つておるかと存ずるのでございます。尚経営権を拘束或いは否定するような條項につきましてはまだまだございます。例えば十二條以下の企業の讓渡、委任、経営或いは解散は商工大臣の認可を要すると規定してあるわけであります。又事業主の所有いたしまする設備資材を他人に讓渡貸與などを命ぜられましても、これを事業主は拒みまする権利を持ち得ないことに相成つております。又経営権の重要な内容を構成いたしておりまする事項を、官僚の行政に代行せしめておりまするので、以上のごとく業務計画、或いはその実施の最後的決定権が、悉く商工大臣或いは石炭局長の手にあるのでありまして、経営権は從來の経営者、只今の経営者、或いは從業員乃至は本法に初めて構想されておりまするいろいろの機関には全くないのであります。その意味におきまして、私は私鉱業の経営権が棚上げになるということを冒頭に申上げました次第でございます。
 偖て先般本年七月のことでございますが、水谷商工大臣は北海道に御來道相成りまして、本法案に関しまして次のごとくお話があつたのでございます。石炭の増産は労働者諸君の協力に俟つの外増産の途はない。そこで今囘政府提案の炭鉱國管法案には、経営者の経営権を大幅に縮小いたしまして、その代り労働者諸君には大幅に経営に参加させる。かくいたしまして、経営参加の自覚に基く、労働者諸君の盛り上がる勤労意欲に政府としては石炭の増産を期待しておるのである、かように申されたのであります。勿論当時はまだ政府案が発表に相成つておりません頃のことでありましたが、その後政府案がはつきりいたしまして、すでに上程されておりまするが、成る程本法案は先程申上げましたように、生産協議会を構想いたしましてこれを法制化し業務計画遂行上の発言権を從業員に與えておることは事実でありますが、これは一應の仕組でございまして、実質上は発言するだけでありまして、これを決定いたしまするのは生産協議会でもございません。たまたま議が会議で纏まりませんければ、手続は別といたしまして、石炭局長は局長の案を上からそのまま示して参ることに相成るのであります。又生産協議会の議が纏まりましても、局長の意に副わない結論でありますれば、同じく修正、変更を命じ得ることに相成つておるのであります。かような状態でありまして、果して大幅に労働者諸君を経営に参加させるということが言い得るや否やという点を私は甚だ疑問に存ずる次第でございます。そこで前に申上げたように本法が施行いたされますれば、すでに経営権は棚上げに相成るのでございまするから、只今の経営者は経営権がないことになる。経営権を失つたいわゆる元の経営者と從業員諸君とが一緒になりまして、いろいろの協議をいたします。これが生産協議会の実態であるかと存じます。で從業員諸君の立場を引上げまして、今日の生産者と互格にいたしまして協議をするという意味ではございませんで、経営権を棚上げされました経営者、つまり今日の経営者がその立場を引下げられまして、労働者諸君と從業員諸君と同様のレベル、互格において生産協議会でいろいろの協議をする。これが生産協議会の実体かと私は存ずるのでございます。従つて繰返して申しまするが、果してこれが大幅に從業員諸君を経営に参加させ、その経営参加の自覚に基きまする勤労意欲の高揚を果して行けるかどうか。石炭の緊急増産は從業員諸君の協力に俟つの外はない。而もその協力を得まする手段といたしまして、生産協議会の機能、実質がかような次第でありますと果して以て勤労意欲の昂揚をこれに期待することができるでありましようか。更に観点を変えまして本法案は経営権を棚上げいたしまするくらいでありまするから、先程他の公述人からも申上げましたが、本社機構のごときは極めて軽視いたしますることは当然でありまして、政府と現場とが直結いたしまして、本社の存在が殆んど抹殺に近い状態であるのであります。かくいたしまして、只今の数々の現場は、恰かも扇の要を切り落しましたかのごとくばらばらの状態に相成りまして、綜合経営の妙味は破壊されますることは先程の公述の中にもございましたので私はここに詳論を省かして頂きまするが、要するに、本社は、綜合経営の中枢をなします。現場々々の長所或いは短所をそれぞれ調整いたしまして、長期の計画もいたします。又人物の適材適所の配置、乃至は乏しい資金資材の極めて適正な機動的な、而も迅速にして使用効率の最も発揮し得まするのは、これ又扇の要の重要な役割であるのであります。
 本法案は、かくのごとく経営権の棚上げは、これをいろいろと類推結論いたしますると、様々ございまするが、以上一例を以ちまして申上げました通り、経営権の棚上げは、当然の帰結といたしまして、労働意欲の昂揚は望むべくもなく、且つ綜合経営の妙味を喪失いたさせまして、而も独善的な官僚に最後的な決定権を挙げて委ねる仕組となつておりますることなど、悉くいずれも減産を招來いたしまするが、増産を可能ならしめるがごとき積極面が何ら私といたしましては考えられない次第でございます。各位におかれましては、本法案の実質的檢討を願いまして、本法案の採るべからざる所以を御了承願つて、私の公述を終りたいと存じます。
#11
○委員長(稻垣平太郎君) これにて一旦休憩いたしまして、午後一時半より再開いたしたいと存じます。
   午後零時二十四分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十一分開会
#12
○委員長(稻垣平太郎君) これより再開いたします。午前に引続き公述人のお話を承ることにいたしたいと存じます。先ず九州の赤池炭鉱の天野さんにお話を伺うことになつておりましたのですが、同氏が御都合で御出席できませんので、北海道大夕張炭鉱の生産部長畠山正隆さんにお話を伺うことにいたします。
#13
○公述人(畠山正隆君) 私は只今御紹介に相成りました北海道三菱大夕張炭鉱の坑内夫でありまして、実際に坑内に働いておる人々の立場から、今囘の臨時石炭鉱業管理法案に対する我々の言わんとするところを皆様にお聞き願いたいと、かように考えております。
 私は大夕張炭鉱の坑内夫として約十五ケ年間、ピツクを握り或いはハンマーを振い、ハツパを掛けて実際に石炭を今日まで出し続けて來た者であります。その意味におきまして、私の言うところは、私の実際の経驗を通じて、それから私個人の意見ではなくして、大夕張炭鉱の四千人の我々の仲間、從業員を代表して言つておるということを御記憶願いたいと存じます。
 先ず我々が現在一番感じておることは、いかにすれば石炭が思うように出るか、國家の要請に應えられるだけ出るかということであります。それ以外に何も考えておりません。私共の山におきましては、いかにしたら生産が上るかということを日夜組合といたしましては檢討いたしまして、あらゆる努力を盡して現在生産の増強に頑張つておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、我々が今つくづくと感ずることは、石炭がなぜ出ないかということでございます。これはいろいろ人によつて見方が違いまするが、私共が坑内の実情から申上げまするならば、いわゆる言い古された言葉でありまするが、坑内が非常に疲弊困憊しております。これはどなたも一致しておることと思います。それからいま一つは、技術とか資材が非常に偏在しておるということであります。一例を申上げますならば、私の山には三年も前から買溜めた坑木が沢山ある。ところが隣の山においては今や坑木がなくて採炭に從事できないというような実情にある。それからおのおの山によつてやり方がすべて違う、そういうようなことも非常に現在の増産を阻害しておる原因でありまして、これらの事柄が一元的に有機的に各山々が繋がり合いまして、足りないところは補い、或いはいろいろな面においてお互いに有機的に各山が繋がりますれば、この隘路も打開されるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 我々といたしましては、実際に生産に対する労働者の自覚から、生産は我我がやらなければならんというふうに感じておりまするが、又業者の方々もさようなお考えであろうと思います。我々は我々だけの力で石炭が掘れるとは思つておりません。業者の方でも、業者のみの力によつて石炭が出るのだというふうには恐らくお考えになつていないだろうと思います。その意味におきましてここに労務者とそれから業者と更に國民一般を含むところの國家の有力なる参加あつてこそ、石炭の増産が実際に軌道に乘るのではないか、かように私共は考えておるわけでございます。
 殊に石炭産業は、現在あらゆる面におきまして、國家的に見て優先的な取扱いを受けております。これはすでに石炭というものが國民全般の生活を左右するものである、食糧と同じような意味合いを持つて來たものであります。今政府の傾斜生産方式によりまして、すべて乏しい資材の中から、乏しい資金の中から、あらゆる面において疲弊し切つておる現下の國情からして、或いは一部の産業を犠牲にしても、一部の國民の人々を飢えしめても、炭鉱には、炭が欲しいからいろいろな物を廻して來るという実情であります。こうなつて來ますると、すでに石炭産業というものは、一炭鉱のものではなく、一炭鉱労働者のものでもなくなつて参りました。國民全般が自分たちのために責任を負い、そうして石炭が自由に掘れるようにしてやらなければならなくなつて來た実情にあるのでございます。この意味からしまして、我々労働者といたしましては、國民全般を含むところの國家が、業者と労働者の中に飛び込んで、三者一体となつて、この石炭の生産に対する責任を負い、又これに対するいろいろな施設その他の方面を充実して行かなければならんというような結論に私共は到達するわけでございます。御承知の通り我々が現在坑内に入つて働いておりますあらゆる面において、先程申しましたような隘路が山積しております。
 それからいま一つは、坑内というところは、御承知の通り、掘れば掘るだけ坑内が深くなり、あらゆる條件が惡くなつて來る。現在の炭鉱におきましては、新らしい坑内で十年か二十年或いは古いのには五十年も六十年も経過しておりまして、非常に老廃の域に達しておるわけでございます。これを積極的に更に石炭を生産しなければならんとするならば、新らしい炭層に向つて掘り進んで行かなければならんのであります。ところがこの新坑の開発ということは、非常に多額の経費を要しまして、これが囘收には何十年先か分らんというような実情にありますので、現在の業者の力を以てしては絶対にこの新坑の開発はできないわけでございます。
 それからまだ鉱区の問題でありますとかいろいろな問題もあります。私共の山におきましても、直ぐ隣接した鉱区が外の会社の所有のために、こちらから掘り進んで行けば非常に近くて直ぐ採炭に着手できるものを、お互いに企業が違うのでその鉱区に手が著けられないというような問題もございまして、これらの問題は、すべて國家が参画したところの一元的統制によらなければ解決ができないということをしみじみと私共は労働者の立場から痛感しておるわけでございます。
 それから臨時石炭鉱業管理法案が実施された場合に、石炭の増産に実際に役立つか立たんかということが一番の問題でございます。その意味におきまして私共が率直に申上げまするならば現在の生産を上げる方法というならば労働者が実際に石炭を掘るぞという氣構えを持つて起き上らなければ、絶対に石炭が出ないということを申上げたいのであります。然らばその労働者が、積極的に生産意欲を向上させて行く方法は何かということを申上げまするならば、自分たちが掘る石炭が如何樣にして掘られ、如何樣にして賣られ如何樣にして國民全般の手に渡るか。又それらのいろいろな内容が、手に取るように自分たちに分つてこそ、即ち積極的に経営に参画してこそ、労働者の自覚というものが向上されるものである。本当の働く氣持が出て來るものであるということに私は確信を持つております。これは私だけの考えではなく、同じ炭鉱に働く全労務者の等しく一到した氣持であります。その意味におきまして、私共は経営に積極的に労働者を参画させろということこそ、石炭増産の鍵である。かように申上げたいのでございます。現在業者の方々は我々と根本的に石炭増産ということに関しては一到しておる点が多々あるのでございますけれども、この点につきましていささか我々の積極的な経営に参加するということを拒否しておるような傾きがあるわけでございます。これが今囘の臨時石炭鉱業管理法案に対する両者の見解の相違だろうと私は率直にこれを申上げるわけでございます。
 今までいろいろの公述人から申述べられたことを率直に批判いたしますならば、業者の方々は、この法案が布かれると、石炭行政が石炭に対して何ら認識のないところの官僚の人たちによつて左右されるではないか。そういうことを反対の根拠としております。併し私共もその点については同じ意見でございます。ただこの法案に対する私共の考え方は、決して官僚統制を望んでおるわけではございません。我々の主張するところは、官僚統制を絶対に排撃いたしまして、現場を中心とする業者及び労務者の代表によつてあらゆる生産計画が立てられ、而して実際の現場に基いて、活きた体驗をこの生産計画の中に盛り込んでこそ、それが実行されてこそ、石炭の生産が実際に上つて行くのだという結論を言わざるを得ないわけでございます。それで私共が主張しまする点は、先ず先程から言われましたが、全炭鉱をこの管理の対象とするということでございます。
 それから先程公述人の方から申しました生産協議会の性格でございますがこれを実際の決議執行機関とせよということが我々の主張でございます。
 それからもう一つ申上げなければならないのは、先程から経営権の侵害であるというようなことを種々申述べられましたが、私はこれに対して、いささか私たちの考えておる点を申上げてみたいと思うわけでございます。現在の石炭は実際に、ただ單なる一企業家の手によつては生産はできないということが明らかになりました以上は、実際に現場を担当している経営者の人たちと我々が一到していろいろな計画を立て、いろいろな計画に基くものを実行してこそ、本当の意味における経営の民主化であつて、これは何ら経営権を侵害しているものでもなければ、我我が経営権を奪取するというような意図に基くものでないということを明確に申上げたいわけでございます。それで我々が望んでおるような國家管理法案と申しまするのは、現場を中心とした管理法案であり、その現場が直接國家に繋がるという方式を我々は主張しておるわけでございます。
 それから先程から、石炭局長の権限が大であつて、何ら本社の計画その他現場の計画も実際に実行できないのではないかというような御意見がありましたが、私共といたしましても、この点に関しましては重大なる関心を持つておりまして、石炭局長の権限或いは石炭長官の権限というものを大幅に縮小いたしまして、すべてを管理委員会中心にして運営をして行けば、本当の意味における経営の民主化或いは社会化ができるのではないか、かように考えておるわけでございます。その点に関しては、我々も業者の方々も殆んど意見が一到しておるわけでございます。
 要はこの管理法案が実行されまして増産になるか、それからこれが否決になつて減産になるか、増産になるかという点に結論が参るわすまけでございが、私共をして率直に申せば、この管理法案が若しか否決されて、今までのような形態でありますならば、労働者の生産意欲というものは起きて來ないというのであります。現在の石炭は労働者の手に、労働者の自覚によらなければ、石炭の増産が実際にできないとするならば、この案を若し葬り去られた後の、労働者の生産意欲の低下によつて、重大なる結果に終るであろうということを、私共は率直に申上げたいと思うのでございます。その我々のこの案の否決によつて減産される量と、それからの案が若し業者の思うように闇から闇に葬られてしまうことによつて、業者のいわゆる企業というものの生産意欲が低下した場合を比較して見て下されば、十分に分ると思います。
 我々は現場に働く本当の労務者の声といたしまして、この管理法案が一刻も早く施行されまして、そうしてこれによつて、我々が実際に生産の責任を負うような体制にされて頂きたいということを、炭鉱労働者といたしまして率直に皆樣にお願いするわけでございます。いろいろとまだ具体的な事柄も申上げたいと思うのでありますが、いずれもすでに述べられた事柄と重複することでありますし、我々といたしましては、ただ單に坑内の労務者の声といたしましてこの法案を是非通過さして頂きたい、かように皆樣にお願いするだけに止めまして、私の公述を終らせて頂きたいと思います。
#14
○委員長(稻垣平太郎君) 次に麻生鉱業社長麻生多賀吉君にお願いいたします。
#15
○公述人(麻生太賀吉君) 只今御紹介に預りました麻生鉱業の社長の麻生でございます。この度の臨時石炭鉱業管理法案につきまして、業界代表の一人といたしまして、ここに卑見を申上げて委員の皆樣方の御審議の参考に供したいと思うのでございます。
 本法案につきましては、私はどうしても納得できない点が多々ございます。これでは到底石炭の増産はできないばかりでなく、却つて減産を招くのじやないかと思いますし、これでは立法の目的を達成することもできませんし、又國民の期待にも副い得ないと確信いたします。ためにこの法案に全面的に反対をいたすものでございます。私の納得いたし兼ねます点は多々ございますが、その点につきましては先程圓城寺氏からそのアウトラインについていろいろお話がございましたので、私は特に現場におりまして仕事をいたしております関係上、その現場におります者としての見方としいたしまして、特にこれでは工合が惡い、できないという点を二つ挙げまして、委員の皆樣の御批判を仰ぎたいと思うのであります。
 その第一は、炭鉱の現場管理者の問題でございます。第二は生産協議会の問額でございます。
 先ず炭鉱管理者の立場から申上げます。私は法案を見まして不審を抱きましたことは、一体炭鉱管理者の選任権は一体誰にあるのだろうという点でございます。成る程炭鉱管理者は一應事業主が選任する建前になつております、併しそれには予め生産協議会の議、又は從業員の賛成を経なければならんということになつております。更にその上商工大臣の承認を経なければ選任の効力を生じないことになつております。炭鉱管理者の解任の場合につきましても、これと同樣のことをいたさなければならないことになつております。それだけならばまだしもでございますが、その手続を履んで、一旦選任されたといたしました場合におきましても、生産協議会に彈劾の権利が認められております。いつ彈劾を受けるかも知れず、又いつ商工大臣の認定次第で解任されるかも知れない全く不安定な地位に管理者が置かれるわけであります。而も炭鉱管理者には何ら自分の立場を弁明して、解任の不当を爭そうという機会は一ところも與えられておりません。一体あとで彈劾を許すならば、当初の選任の際に、一々賛成や承認を得る必要はないのじやないかと思いますし、又当初選任の際に賛成承認を與えられました以上は、少くとも相当の期間これに信頼して、落着いて手腕を発揮して貰うのが当然でありまして、彈劾を認めるのは不当だと思われるのであります。
 それはともかくといたしまして、炭鉱管理者の地位は先程申しました通り誠に不安定で損だと申す外ないのであります。然るに地位の不安定がありますに引替えまして、炭鉱管理者の責任は非常に大きくなつております。即ち法案によりますと、炭鉱管理者はいわゆる石炭局長の監督の下に、業務計画の立案及び実施の責に任ずる旨を課せられております。業務計画はその炭鉱の運営の基本となるものでございまして、炭鉱の仕事は万事これによつて進められて行く頗る大切な基本計画でありますが、法案によりますと、炭鉱管理者は石炭局長から指示されますところの天下りの基準に從つて、三ケ月ごとにこの業務計画案の原案を作成しなければならないことになつております。たとえその天下りの基準がいかに不合理でありましてもこれに異議を唱える自由を持たされておりません。その上原案の作成に当つては、予め生産協議会の議を経なければならないということになつております。生産協議会のことにつきましては、後程申述べさして頂きますが、容易にその賛成を得られない場合が少くないと私は考えます。成るほど生産協議会の議を経ることができない場合には、炭鉱管理者はその旨を併せて事業主に報告すればよいとされております。事業主はこれらの事項を考慮しながら、業務計画を作成いたしまして、再び生産協議会の議を経なければなりません。そういうわけでありますので、若し当局の指示に從おうとするならば、ここでも生産協議会の反対を受けるに相違ないのであります。結局事業主も生産協議会の賛成が得られないまま石炭局長の審査決定に俟つというのが落ちだと思います。炭鉱の経営に経驗のない、若しくはあつても適切な指導が到底できるはずのない石炭局長が、幾十幾百の炭鉱に対しまして、三ケ月ごとに一々有効適切な決定をして行くということは、到底不可能なことだと思います。一体石炭局長は何を基礎として審査決定をなすのであろうか、そういうことに非常に疑問を持つのでございます。併しそれもともかくといたしまして、一旦石炭局長が業務計画を炭鉱管理者に示しますと、いかにその内容が不合理であろうとも、又更にその実行が不可能と考えられても、最早炭鉱管理者はこれと爭うこともできず、これが実施の責に任ぜねばならんということになつております。
 併しそれのみならず、更にこれが実施に当りましては、炭鉱管理者は改めて生産協議会に対しまして、業務計画に関する事項、労働能率の向上に関する事項などと一々附議しなければならないという規定になつておるのであります。基本の業務計画に反対した生産協議会は、必ずや実施面においても反対を唱えることは明白であります。炭鉱管理者は全く動きの取れないことになるわけであります。事業が順調に行つておるならまだしもでございますが今日のように資金、資材その他万事が不足勝ちの際におきまして、出炭の画期的増産を要請せられますと、どうしても從業者に多少の無理を忍んでも働いて貰わなければならんわけであります。これを從業者に納得して貰うための努力は、現在ではなかなかむつかしいのでございます。炭鉱管理者がみずからの責任において作る計画でありますならば、その炭鉱の実情に合う、実行性のある計画が立てられる道理であり、又その点を從業者に納得して貰うという努力にも自信を持つてやられるわけだと思いますけれども、炭鉱の実情に薄いところの、官僚からの一方的指図であつて見れば、到底自信の持てる計画が樹てられる筈はないのであります。况んや自分を彈劾するかも知れない生産協議会に対しまして、強くこれを説得し得ないというのが人情の自然ではないか思うのであります。生産協議会の意向に從わんといたしますならば、官廳の指示に從うことができません。そのために不適任なりとして解任の憂目を見るかも知れないわけであります。反対に官廳の指町に忠実であろうとするならば、生産協議会の同意を得ることができず、ためにその彈劾の危險に晒されるというわけで、炭鉱業者は生産協議会と官廳の圧迫に堪えかねまして、進退に窮するということは必然であろうと思います。
 又炭鉱はその性質上常に長期に亘る計画を必要とするものでありますが、戰爭中にこの長期計画を無視した軍官の近視眼的な指導によりまして濫掘をいたしまして、炭鉱を今日の窮状に追詰めたというのは皆樣御承知の通りなのでございます。然に本法案は再びそれを繰返えそうといたすのであります。即ち前に述べましたように、炭鉱管理者は與えられた條件では到底引受けられないような事業計画を天降り的に権力が以て押付けられるという可能性が頗る多いのでございます。かような仕組では、いかに良心的な炭鉱管理者と雖も、その地位を失わざらんために、勢い長期計画を無視する無謀な指示とは知りながらも、目先の増産に專念せざるを得ないのは自然の成行きでありまして、その結果は再び炭鉱の荒廃を來すということは、目に見えております。
 言うまでもなく炭鉱管理者はその炭鉱を預かる責任者でございます。炭鉱増産の國家的要請に應えねばならん重大な任務を有するのであります。それだけでも大変な仕事でありますのに、その上に法案は尚いろいろの重荷を負わそうとしておるのであります。例えば申請書を出せ、報告をしろ、臨檢をする、檢査をするというようなわけで雜務に追われることは予想に難くありません。その上に本社の機能は、この法案によりますと弱体化するわけでありますので、現場の仕事はますます殖える道理となるのであります。炭鉱管理者の権限は、前に述べましたように生産協議会その他の種々の干渉を受けることになりますので、炭鉱管理者は全く奔命に疲れ果てて、本來の任務たる生産の方がどうしても疎そかになることは免かれないと思うのでございます。こういうふうにいたしまして炭鉱管理者が自分の経驗を活かし、良心に生きることができなくなりまして、又官廳や生産協議会の御機嫌を伺いつつ自分の保身上、その日暮しの安易な途を選ぶという悲しむべき事態を招來する虞れがあるわけであります。良心的な管理者でありますならば、こういう場合におきまして自然身を引き、自分がその責任の地位に立つことを潔しとしないという非常な状態が起るのではないかと私は考えます。これでは良心的な炭鉱経営は不可能であります。かようなことでどうしても石炭の増産が期待できましようか。國家管理機構中において、炭鉱管理者が最も中枢的な地位を占めることになつておりますだけに、以上申述べましたところの法案の欠陷は、現場におりまして、現在から考えましてこの仕事を担当いたしております私といたしましては、正にこの法案の致命的なものだと思うのでございます。
 次に生産協議会のことについて申上げます。この問題は今日わが國の直面しております重大な案件である労資関係のあり方の根本に触れる大きな問題でありまして、その処置如何は單にこのたびの石炭鉱業だけでなく全産業に深刻な波紋を生ずる重大な問題であると存じます。御承知のごとく労資の関係を緊密にすることは、生産のポイントであります。このことは多数の労働者の労働力に依存することの大きい炭鉱事業におきましては、一層重要性を持つておるのであります。私共もこれについては人一倍に心を拂い並み並みならん努力を続けておるのではございますが、この問題に関する私共の信念を端的に申しますならば労資関係の基調は、労資双方の理解と信頼とに立脚すべきものであるという一事に盡きるのであります。労働組合を認め、これと團体交渉を行い、團体協約を結び、経営協議会を開きますのも、皆この信念の発露に外ならないのでございます。この信念の下に、労資関係の正常化を願つて、倦まざる努力を続けておるのが現実の姿でございます。幸いにしまして、この努力は幾多の難問題に遭遇いたしましたが、少しずつではありますが、現在漸く実を結ぼうとしておるところと思います。
 こういうところへ持つて來て、突如として現われましたのがこのたびの法案であり、本法案は勤労意欲の昂揚に名を藉りて、卒然として生産協議会なるものを法制化し、これに経営権の大幅委讓を行わんと企てておるのであります。本法案によりますれば、生産協議会の機能は第三十八條に瞥見されておる諸事項、事業計画の作成、炭鉱管理者の選任及び彈劾等でありまして、以上の事項については、炭鉱管理者は生産協議会の議を経なければならないということになつております。先程も話が出たのでございまするが、議を経るとの字句は、頗る漠然としております。生産協議会は議決機関であるのか諮問機関であるのか不明でありますがこの点先程圓城寺公述人から論ぜられましたので、私はここで詳細に申すことを差控えますが、ともかく生産協議会は議決機関といたしまして、事業の大切な機関となるものでありまするから、先程申上げましたごとく経営権の大幅委讓という結果を招來するわけであります。
 この点につきまして商工大臣は何と説明しておられるかを振返つて読んで見ますと、商工大臣は提案理由の説明で、次のように述べておられます。経営者と労働者が互いにその立場を活かしつつ納得ずくで生産設計図を設定しその実施について、積極的に責任を以て協力する組織を設定し、これによつて勤労態勢の過渡的な不安と能率低下を克服する必要があると言うのであります。その言は誠に結構でありますが然らば法案の條項を果してその言の通りに期待されるかどうかという点であります。
 先ず第一に経営者と労働者が互いにその立場を活かすというのでありますが、私の信念を率直に申上げますならば、それは経営者としては、労働者の労働権を尊重し、一方労働者としては経営者の経営権を尊重するということが、お互いの立場を活かす所以でなければならんと確信いたしております。然るに法案は、労働者側に対して経営権の主体である経営者の人事権及び業務執行権に公然容喙するの権利を法律で認めんとしておるのであります。而も労働者がこれを現実に希望すると否とを問わず、又労働者諸君が、それにふさわしい能力を持つておるかどうかということも問わず、画一的に法律を以てこれを強行しようとしておるわけであります。そもそも経営能力の点におきまして、労働者が経営者より劣つておるということは、現在にあつては明らかであります。又労働組合の本質は、労働條件の向上ということにあるのでありまして、即ち労働組合は利益の分配鬪爭を主眼とするものでありまして、單に生産のみを目的とするいわゆる生産團体ではないのであります。このことにつきまして商工大臣の提案理由の説明がございますが、これは先程圓城寺公述人のお話がございましたので私はくだくだしく申上げません。そういう提案理由から考えましても労働者のこの二義的なものを一義的なものに轉移するということは本末顛倒でありまして、労働者及び労働組合の本質や能力に反することになると断ぜざるを得ないと思うのであります。これが果して互いに立場を活かすものと言えるでございましようか。炭鉱の國有を実行した英國においてさえ、炭鉱労働者が経営参加を原軍としては認められていない事実は、この際十分に反省して見る必要があるのではないかと思つております。
 第二に、商工大臣は労資双方が納得ずくで生産設計図を設定するのだと説明していられます。固より労資の納得がなければ事業の遂行はし得られるものではなく、私共も日夜そのために努力しておるものであります。併しそれは敢えて法制化されたところの生産協議会を必要としないのであります。先程も申しました通り、最も労資の正常なる関係は、相互の理解と信頼の下に着実に築き上げて行かねばならんと思つております。かかる基盤を漸次作ることを忘れて、徒らに法律を以て労資関係を冷たいものと変え、波瀾を起さしむるがごときことは、私にはどうしても納得できないところでございます。
 第三に、商工大臣は生産協議会に対し労資双方が責任を持つて協力する組織であると説明していられます。併し法案の中に、労働者の責任については殆んど規定するところはないのであります。法案中に特に一章が設けられておりまして、六ケ條に及ぶ罰則規定がございます。それは專ら経営者を対象といたしまして、且つ当局の命令指示に違反した場合の取締りを主眼とするものでありまして、仮りに労働者が非協力な態度に出ましても、何ら法律上の責任を負わない仕組になつております。ただ僅かに二十四條の規定が一ケ條だけでございまして、これすらも何ら罰則は伴わない、單なる道徳的規定に過ぎません。問題は、決して道徳論や期待論ではないのでありまして、由來権利は義務を伴うというのは、古今東西を通ずる鉄則でありまして、責任の伴わない発言権を濫りに法律で認めるがごときは嚴に愼しまなければならんことだと思います。言うまでもなく私共は労働者諸君の労働権を十分に尊重するものでありまして、労働條件の維持改善のために團結権並びに團体交渉権を行使することをいささかも否認しようとするものではないのであります。否、その地位の向上のためには微力ではありますが、最善を盡しておるつもりであります。労働者諸君の意思はでき得る限り経営の上に反映さしておるのであります。併しながら企業の根本に触れるというような経営権を引渡すということを法制化するがごときは、断じて許すことはできないわけであります。それは現在の経済組織の変革であり、ただ一石炭鉱業だけの問題ではないと思います。臨時緊急対策と銘打つた三年の期限付の本法案においてでも、軽々しく規定せらるべき問題ではないと固く信じております。
 尚政府はこれによつて労働者の責任感の増大と勤労意欲の昂揚を期待するというのでありますが、事実、果してそうなるでありましようか。法案は、生産協議会や管理委員会における労働者の発言権を大幅に認めながら、肝腎の生産に対する労働者の責任については殆んど何らの規定を設けていないことは、先程も申述べました通りでございます。責任のない発言権を認める以上、労働者側からは有利な労働條件の獲得を目指すことは自然の勢いであり労働代表は團結権を背景として強力にその主張を貫くでありましよう。ましてその主張が容れられない場合には、よつて生じるところの生産の低下は、経営者並びに政府の責任であつて、労働者側の責任ではないと主張するであろうと思います。こういうことでは政府の企図する労働者の國家的責任の自覚も現実には一個の口頭襌に終る外ないと思います。元來勤労意欲の問題は理念的な抽象論よりも、具体的な能率論として取上ぐべきものであつて、勤労意欲の昂揚が、具体的な能率の向上となつて現れるようでなければ意味がないと思います。能率の向上を図りますには、どうしても労働者の生活環境、即ち賃銀その他の労働條件を改善すると共に、現場の作業関係を整備することが肝要でありまして、かかる具体的な裏付けが並行しない限り、たとえ勤労意欲の昂揚がございましても、能率の向上とはならないのであります。單なる権利付與のみでは決して増産の目的を達成することはできないと思います。いわば政府のお考えは、佛を作つただけですでに魂が入つておるというふうな独断的な錯覚に陷つていられるのではないかと思うのであります。
 これを要しまするに、このたびの法案の中に盛られましたところの、現場管理機構の本質は、現在の経済組織や実情とは相容れない生産協議会を法制化して、炭鉱管理者を金縛りにすることによつて、労働者の意を迎えようとするイデオロギー的構想だと思います。生産の問題は観念論やイデオロギーによつて解決されるようなものではなく、具体的に現実に妥当するや否やによつて解決するものだと思つております。私共はこの場合、安易な妥協や軽率なる独断を絶対に避けねばならないと思うのであります。そうでありますのに、本案は、前に申述べましたように、英國においてもその例を見ない異例の処置であります。到底我々の承認できないというだけでなく、その狙いとする勤労意欲の昂揚も、本社を骨抜きといたしまして、現場直結による増産の目途も、現実と遊離した的外れの観念論に過ぎないものである以上、私共としましては、先程も申上げました通り、全面的に反対でございます。
 願わくば賢明なる委員皆樣方の良識によりまして、國家のために公平に御判断を下されんことを衷心より懇願いたしまして、私の公述を終ります。
#16
○委員長(稻垣平太郎君) 次は常磐湯本炭鉱の武藤武雄氏にお願いすることになつておりましたが、お差支えで、代つて炭連事務管長の小倉三次氏のお話を伺います。
#17
○公述人(小倉三次君) 只今御紹介を受けました日本炭鉱労働組合総連合事務局長の小倉でございます。立場が違えばこうも意見が違うものかと実はむかつ腹が立つくらいでありますが、だからといつて、ここに泥試合を展開しておる、そういう段階ではないという私の現在の氣持であります。イデオロギーとか何とか、そういう問題を離れまして、要はいかに増産できるかという立場に立つて問題を考えなければならないと思います。而もいかにして増産できるかという單なる抽象的な理論ではありませんで、もつと具体的に労働者は労働者の立場から、こうすれば増産ができるのだ、又経営者は経営者の立場から、こうすれば増産ができるのだという具体的な檢討をやらなければならない段階になつておると思うのでありますが、どうも経営者は、政府の示した案の逐條檢討といつたような城を一歩も出ておられないような氣もいたしますし、又我々労働者の立場から申上げますると、先程申上げました労働者の立場から、自主的な増産計画はこれだといつて、皆樣方の前にお見せする時期を失した。そういう意味におきましてちよつと立ち遅れの感のあることは、私共も率直に認めますが、併し次に申上げるような根本的な立場に立つて、目下着々と全委員を動員いたしまして、具体的な増産計画を樹立中でありますので、これは四五日中に参議院の委員各位のお手許に出し得る段取になるだろうと思います。結局これをここに発表できないことを非常に私は残念に思いますが、その具体的な計画を作りますに当つての、根本的の態度とでも申しますか、こういつたものを今日ここに申上げて、皆樣方の御批判を仰ぎたい、かように考える次第であります。
 マツカーサー元帥の九月二十六日の片山首相宛の手紙でありますが、これはいろいろ解釈されておりますが、帆保先生の言葉を借りて言えば、非常にスマートな手紙であつて、結局私はこういう工合に考えておるのであります戰前及び戰時中、石炭生産は五千万トンを超えておつたが、その後石炭業の基本的な條件は何ら実質的に変化していない。又資材は日本の國業において十分入手できるだろうと思うし、又労力に至つては十分ある。從つて現在よりより大なる生産が達成できないということは全く現実に即さないものではないかと思うというような氣持が、元帥のお氣持ではないかと、私はかように考えるのであります。
 それで増産の緊急手段として五つ六つばかりの條項が挙げらりておりますが、全くあの通りであります。あの通りでありますが、私は少くとも今までの経営者のやり口を具体的に檢討してみました場合に、現在の経営者において、あり六つの條件を果して実現する能力ありや否やという問題であります。これは経営者は、いや我々は我々の力においてあれをやるだけの自信があると、きつぱりおつしやるならばいざ知らず、一つ一つあの項目について檢討して参りましたときに、例えば一番最初に技術、能力の結集による産業の指導、実にこれが大事であります。併しこれに似通つたようなことが今までも、戰時中並びに戰前も行われておりましたが、何ら効果がなかつたと断言してもいいくらいであると私は考えるのであります。又炭鉱労務者住宅と食糧の供給とか、或いは新鉱の開発、石炭の横流れ防止、いろいろ挙げられておりますが、こういつたことを私も知つております。私は炭鉱労働者としては八年ばかりの経驗しか持ちませんが、私が今まで見て來ました経営者のやり口では、余程心構えも変え、余程頭の切換えをやり、余程積極的な力を持ち合せない限りは、絶対に実現されないだろうという氣持を持つておるのであります。
 大体戰爭中、或いは戰前非常に石炭が出たのに、最近さつぱり出ないということにつきましては、労働者は労働者の立場からの意見がありますし、経営者は経営者からの立場がありましようが、我々は大体炭鉱の合理化とでもいいますか、そういつたものは昭和の初め頃から七八年までに至つて、この間において非常に急激に進んだということを、現場の若い技術屋が言つております。結局昭和の初めから七八年頃までに急速に進歩した炭鉱の合理化を戰時中はそのストツクを食べておつた食べ盡してしまつたのが現在の状況ではないか、こういうようにも現場の技術屋が考えておる。御承知のように炭鉱は破壞の仕事でありまして、破壞をカバーするだけの建設が伴わなければ絶対に恒久的な増産は望めないのでありまして、そういうストツクを食い盡しておつて、何ら恒久的な、いわゆる破壞をカバーして行くだけの建設の具体的なものを、いわゆる経営者という能力において何ら持つておらなかつた。戰時中は山の倶樂部で軍部の監理官をサービスし、政府の御機嫌さえ取つておれば、官僚の御機嫌さえ取つておれば、資金や資材がどんどん入つて來るというようなことで、全然そこに、安價な國家の保護の上に居睡りをしてやつて來たのが、現在炭鉱経営者の大部分ではないかと、私はかように考えるのであります。
 その前に、あの終戰後のあの山の混乱状態に全く経営者は拱手傍観的と申しますか、放心状態に陷つておつたのであります。あの時に眞に炭鉱経営者として実力を持つておる経営者であつたならば、もう少し山は早く立て直しの態勢に持つて行けたのではないかというようなことを考えるのであります。あの時のざまが、全く炭鉱経営者が本当に能力のないことを如実に現わしておつたと思うのであります。これに対して、いや労働攻勢に我々はそれどころの騒ぎではなかつたというようなことを言う経営者もありますが、私は少くとも今國管問題を繞つて、やれ経営権だとか、やれ企業権だとか言つて騒ぐ経営業が、どうしてあの時自分の経営権を放棄しておつたかということを私は不思議に思わざるを得ないのであります。戰時中の話を申上げるのもどうかと思いますが、実は國管反対も唱えておられる経営者の方々は、資金や資材を十分出してさえ貰えば、三千万トンは完全に出すというようなことを言つておられるのであります。而も國管をやつて、何もわけの分らない役人が來て、采配を振られたら、却つて増産の邪魔になるというようなことを、大きな反対の理由に取つておられるようでありますが、戰時中のああいつた統制、こういうものを我々はこの臨時法案で再び実現するなんていうことは、これは絶対に避けなければなりません。
 大体戰時中の統制、それは我々の立場からいいますならば、資本が十分に儲けられるような恰好に一切が仕組まれておつた。例えば飛行機を増産しようと思えば、とにかく一切の資材が飛行機工場に持つて行かれて、人も労働者も実物給與とか、その他の産業に比較して現実の收入が多くなるように仕組がしてあつて、ああいう統制が行われて來たのでありますが、恐らく戰爭中のああいつた資本が十分に儲けられるような恰好に一切仕組まれた國家管理ならば、これは経営者が大賛成でありましようけれども、私はああいつた戰爭中、軍需監理官などを経営者が非常に喜んでおられたのですが、官僚統制になるのは反対だと言つておられる。而も戰時中ああいつた軍需監理官というようなものを非常に歓迎しておられた経営者が、今度官僚統制反対だと言つておられるそのお氣持に、若し経営の民主化という一歩積極的な、いわゆる前進の上に立つての御意見ならともかくも、やはりああいつた國家の保障の上にいつまでも居睡りをしておつて、経営に対して何ら積極的な計画を持たないような、持とうともしないそういう現実から一歩も脱却しないで官僚統制に反対を叫んでおられるのは私は非常に了解に苦しむ点であります。
 國管というと直ぐ官僚が乘り込んで來て戰時中のようにやられるのだというようなお考えが多分にあると思うのでありますが、私は國管になつてもなんら変らない。現在でも政府の援助がなければ炭鉱経営者は絶対にやつて行けない。これは恐らくいかに弁解されようと、経営者も十分認めておられる点だろうと思うのであります。その政府の斡旋援助がなければ炭鉱経営はやつて行けないという現実を経営者も承知するならば、私はこれをもつと、戰時中のああいつた惡い意味の統制強化でなしに、もつと國家の援助というものを円滑に行なつて行くためにも、又すでに皆から言われた言葉でありますが、炭鉱の傾斜生産を更に徹底的に推進して行こうという意味合いにおいても、いわゆる國民の他の産業を犠牲にして、國民の負担において炭鉱に資金や資材をぶち込まれておる以上、これが実際にどう使われておるか、どういう工合に現実に役立つておるかということを明らかにするということは私は当然だと思う。
 これを明らかにする方法の問題でありますが、これは私は日鉄の二瀬の山でありますが、大体小山の恐らく経理の帳面なんかを本当に眞面目に檢討したら面白いものが出て來るのではないかと私は思うのであります。こういうものは恐らく人前に出せないような書面なのでありましよう。ほんの鉱業会に報告する資料のために、或いは政府の補助金を貰う資料のために作り上げたものでありまして、実際この山はこれだけだ、生産コストは葛ら掛かつておるのだという、いわゆる経理の面から完全なものが果してできておるかどうか私は疑問に思います。又できておらないということも組合幹部からよく聞いておるのであります。こういうことでは、國民を犠牲にして、而も炭鉱に重点的に資金、資材を流しておる、それをそのまま放任して置くということは、現在の日本においては私は断じて許すべきことではない、飽くまでも経理の公開をやらなければならない、こういう意味合におきましても、いわゆる我々が今度の法案を強力に押しておる理由の一つがあるわけであります。
 それから又今度の法案が官僚統制が非常に強いというような話を経営者は言つておられます。私は頭が惡いのでその点はよく分りませんが、社会党の案を見ましても又政府の案を見ましても、私はあの案から官僚統制が強くなるとは毛頭考えておりません。労働者と経営者の民主的な対立も一切を任かして頂く、私はこの意味にしか考えていないのであります。そういう面から考えますと、経営者の方は國管に反対される本当の理由は、いわゆる先程來の公述人が述べましたように、経営の内部に労働者が食い込んでやつて行くという点に御不満がある。反対の根拠があるんではないか。徹底的に経営面に労働者の発言が及んで來ることを防ぎたいという意図が眞因じやなかろうかというように私は考えておるのであります。
 問題は、要はいかにして増産をするかということを我々が労働者の立場から考えて見ましたときに、幾つもの隘路が出て來ます。これはマッカーサー元帥の書簡によるばかりじやなしに隘路が出て來ます。その隘路はどう解決するか、この点はどう解決するかということを一々檢討して行くましたときにもう経営者の、現在の経営者の力ではどうにも解決できないものばかりなんであります。実は石炭復興会議の行詰つた原因もそこにあるのであります。どうにもならない。結局政府の強力な、いわゆるこの点はちよつと触れて置きますが、大体この石炭行政は実に多岐多樣でありまして、地下足袋を何とかして頂きたいといつて我々が現場から出て参りましても、そこへ行つて相談し、ここへ行つて相談し、お百度参りをいたしまして、結局一ケ月もかかつて漸くその問題が解決するというような点を、私は石炭行政のもつと一元化を望む者でありますが、こういう何と言いますか、結局國家の力に俟たなければ一切が解決しない問題ばかりが増産の隘路になつておるということであります。この点経営者の方は自信を持つて我々は必ずその隘路を打開して見せるぞということをおつしやつたことはありません。資金資材をよこせばやる。これではお話にならないと私は考えるのであります。
 それから増産の隘路にちよつと触れますが、新鉱の開発の問題にしましても、坑内の機械化の問題にいたしましても、これは先程の公述人が述べられた通り、もう一切そういつたものを根本的に、而も恒久増産を見込んで我々がこれを打開しようとした場合に、とても今までのようなやり口では駄目だということを痛切に感ずる次第であります。そこでこれは多少さつき申上げたことと矛盾するかも知れませんが、それじや資金、資材が來ないから増産ができないのだと言つておる私は時期ではないと思うのです。何とかして明日にでも一トンの石炭を出さなければならない。そのためには結局資金も資材も明日の間に合わないということになれば、これは労働者が、これは労働組合の我々幹部も一肌脱いで立ち上らなければならないと思うのですが、労働組合の幹部を初め組合員全部が、よし、それじや一つ竹槍戰術ではあるがともかく一つやろうじやないかという氣持になつて、自主的増産意欲とでも申しましようか、こういうものに頼らなければ当面の増産ができない、ここなんであります。私は若しこの國管案が先程申上げましたように、多少労働組合も立ち遅れの感はありましたが、最近組合員も非常に國管案の貫徹を望んでおります。いわゆるむつかしいことは労働者は知りません。生産協議会に我々の意見も対等の立場において述べられるのだ、そうすれば切羽に働いておつても、そこをこうして貰いたい、ああして貰いたいという意見が、我々の代表を通じてともかく生産協議会に持ち出される。そうして問題が自分の責任において、一切を運んで行かなければならんということになれば、労働者の自主的増産意欲が、この國管案を実施されることによつて上昇することは確かでありますし、又私はここで組合の幹部といたしまして断言いたします。自主的増産意欲が起きないにも拘わらず、若し單にいわゆる空念佛のように言う労働組合の幹部であつたとしますならば、幹部としての資格はもう喪失したものとさえ私は信念として持つておりますので、この点は生産協議会が決議機関になり、そこに現場に直接働いておる労働者の意見が十分述べられて行くということだけでも、恐らく同志諸君は起き上つてくれると確信いたしております。
 それならば今までの経営協議会でもいいじやないか、こういう意見になるのでありますが、今までの経営協議会を單に形式的に考えずに、経営協議会に問題が持ち込まれるまでは、経営協議会という名前でもいいでありましよう。併しその生産協議会に問題が持ち込まれて、それがいかなる方法で解決され、又いかなる方法で解決されて、それが現実にどういう効果を齎らしたかという、いわゆる結果にまでも責任を持たなければならんということになれば、現在の生産協議会では到底駄目だと思うのであります。いわゆる先程申上げましたように、國家の力を俟たなければ、増産の隘路が生産協議会で論議され、増産の隘路が解決できないという前提に立つておるのでありますから、その点あくまでも國家の法律において、この会議が認められることは一向に差支えがないと私は考えるのであります。又これが法律に決められて労働者が一方的に押し巻くつて、じやんじやんストライキをやるんでなかろうかというような考え方は、これは少くとも現在の日本の経済危機の実相をよく認識した上で、いかに健全な労働組合運動を進めて行こうかと考えておる組合幹部に対しての侮辱の言葉としてしか、私は受取れないのであります。
 それから恐らく私は理想的な、もつと理想的なことを申上げますならば、國有國営という問題にも発展すると思うのでありますが、この点は労働者みずからが果してその國有國営を、うまく國有國営のいわゆる労働者の責任を立派に果して行ける一つの実力を持つておらないかという問題に絡んで來るのでありまして、この点は我々労働者としても、自分の持つておる実力を過大に評價することも愼しまなければなりませんし、だからといつて過小に評價することも愼しなければならんと思うのであります。私は現在の労働組合の持つておる実力、この実力を以てするならば、今度政府が出しておられる國管案、否、それ以上のいわゆる社会党の原案くらいまでのものは、立派に消化して行くだけの実力があると私は自信を持つております。これは私個人の自信ではありませんが現場でこの國管案に対する協議会を開きましたときに、皆の意見がそういうところに一到いたしたのであります。いわゆる労働者が國管案を、現在の政府が示しておるような國管案、又社会党の國管案、これを要求するいわゆる主体的條件が私は備わつた、かように考えるのであります。具体的に資料を持合せませんので非常に恐縮ですが、例えばこれは本日私の後に公述される常磐炭鉱の社長大貫さんもおられるようでありますが、日本炭鉱労働組合総連合会長の武藤氏は常磐炭鉱であります。これは長年、十何年も純然たる炭鉱のいわゆる採炭夫でありまして、この常磐の湯本坑で九月の増産運動につきまして、これは組合幹部や生産部長が先頭に立つていわゆる増産計画を立てて、そうして積極的に一つ頑張ろうじやないかということで、政府の割当出炭量の二万七千トンはおろか、確か一万トンを超して三万八千トン余りも増産ができたということに関し、これは大貫社長も御存じなんであります。これらにも特別に資材を貰つて、資金を貰つてやつたのでありません。これはもう組合の幹部、生産部長が、よし、一つ計画増産をやろうと言つて、本当に自主的な出炭計画を立てて起き上つた結果がそういう成績を示しておるのであります。又これは九州の増産の隘路といたしまして、まあいろいろ挙げられておりますが、先般私現場へ帰りましたときも委員から直接聞きましたのですが、実に故障が多い。毎日四囘も五囘も故障がある。この故障があるということは、これは生産の上に一〇%乃至二〇%も影響しておることは事実であります。而も最近やや緩和された感がありますが、電力事情が非常に惡いのでありまして、こういう現場のことを申上げるとどうかと思いますが実は坑内に働く者といたしまして、仕事に出掛けて行つた。よし、今日は頑張ろうと、丁度仕事に油が乘つたときに、コンベヤーが故障を起した、一生懸命にシヤベルで炭を入れておつたとき、ベルトが止つて、ええ、くそツ、今日は仕事になるか――といつたようなことが、どれだけ生産を阻害しておるか分らないのであります。で、毎日頻繁に起りますこういう事故をつき詰めて來ましたときに、そこに結局、一番最初私が申上げました、いわゆる恒久的な、具体的な増産計画の樹立の問題とも関聯いたして來るのでありますが、今までの増産の計画は、実に一時的なものを取上げて、それを強力に解決して行こうと、こういう工合にやられると、次に又別な問題が起きて來るというようなことで、根本的に解決し得なかつたことは、皆さんの御承知の通りであります。この際我々が眞に、いわゆる現場に即した、何といいますか、合理的な、具体的な増産の計画、増産の隘路を檢討し、集計し、その上に立つた増産計画というものを持つたならば、而もその計画を立てる場合、又増産の隘路を研究する場合でも、労働者は労働者の立場から、十分それに関心を持ち、責任を持つて参画したならばいわゆる正しい意味の労働者の生産意欲というものが奮起されるのじやないか。
 そういう意味合におきまして、結論を申上げますと、結局経営に強力に労働組合が参画しない限りは一切の問題が解決しない。そのために我々は今度の臨時國管法案を非常に支持いたしております。併しあの生産協議会が骨抜きの諮問機関になつてしまつたり、先程も申上げました経理の状況が実に不完全で、人樣の前に出せないような、ずるずるべつたりの経理が行われておる。こういう小山の経理状況を國家の責任において監視せずして、ただ大手筋の炭鉱だけを管理して、次に漸次全炭鉱に及ぼすというような、いわゆる骨抜き法案になるならば我々も一應考えなければならん。と申しますのは、私は生産協議会を決議機関にし、全炭鉱を管理して頂く、こういつたいわゆる最低の線を是非通して頂けるならばこれは我々労働者は、三千万トンの生産において、又來年度の三千五百万トン、或いは四千万トンになりますが、この生産において、責任を持たなければならんというその考えが前提に立つておるからであります。若し先程申上げました骨抜き法案になつてしまうならば、いわゆる増産に対する責任が持てない。率直に申上げまして、これであります。
 何卒賢明なる議員各位の御批判を仰ぎたいと思います。突然今朝、会長が都合が惡くなりまして、僕に行けと言われましたので、非常に纒まりのないことを申上げたようでありますが、よろしくお願いいたします。
#18
○委員長(稻垣平太郎君) 次に常磐炭鉱社長の大貫經次さんからお話を伺います。
#19
○公述人(大貫經次君) 私は只今御紹介に預かりました常磐炭鉱の社長をしておる大貫経次でございます。これから國管法案に対する私の意見を述べさして頂きます。私は非常に口下手なのでありまして、又時間の都合もありますから、書いた物に副つて御説明申上げますからどうか御承知を願います。
 私は現在我が國の石炭の生産不振は機構が惡いためではなく、各般の施策実行に当つての努力が足りないからうまく行かないのだと確信いたしております。それにこの急場を救う増産に役立たないばかりでなく、むしろ現在のような多くの反対を押切つて強行すれば減産をさえ予想する、我々は確かに減産を予想する。そういう臨時石炭鉱業管理法案には強く反対する者であります。
 よく世間では、石炭産業の生産の不振の原因が、地上の産業にあるようないわゆる生産意欲の不足、或いは労務者の勤労意欲の欠如、そういうことがすべてであるかのごとくに扱つておるのでありますが、それは石炭鉱業の本質を理解しない、本当の皮相の観察から起つて來るものであると思いまして誠に遺憾に堪えない次第であります。
 昭和八年には、炭坑夫一人当りの平均一ケ月生産量は、十九トンであつたものが、今日では五トンそこそこに過ぎないのであります。或いは戰爭がすでにもう負けそうになつたという形相が濃くなつた戰爭末期でさえも、四十万人の労働者で、一ケ月平均四百万トンの生産がありましたのに、現在平和に立ち帰り、而も全部が日本人で四十万を突破する労働者に主食六合の配給をしながら、尚月に二百万トン台にまごまごしておるという現在の我が國の炭鉱の状況を、表面だけ見ますれば、いかにも機構が惡いかのごとき錯覚を持たれるかも知れませんが、一度石炭鉱業の実相を知られたならば、現在の増産達成には、機構いじりは却つて妨げになる理由がお分りになることと存じます。
 さて昭和八年の一人当り月産十九トンの記録が生れましたのは、昭和初頭のパニツクの煽りを食いました我が石炭鉱業が、その局面打開に当つては、專ら炭鉱現場の合理化、或いは機械化に集中いたしまして、当時の我が國の炭鉱技術は、世界の水準に劣らない程の進歩を遂げておつたのでありましてその結果が昭和八年の平均一人当りの月産が十九トンとなつておるのであります。その後各種の産業が盛んになりまして、石炭の需要量もますます多くなりましたが、その当時蓄積しました生産力は、即ち前にいろいろ合理化いたしましたという力でございますが、労働者の素質がだんだん低下などしたのでありましたが、よくその重圧に堪えまして、昭和十五年度には五千七百三十一万トンの生産記録を作つたのであります。
 御承知のごとく、炭鉱は、いわゆる地下を移動する工場であります。すべて一ケ所におるということはありませんで、常に移動しておるのでありまして、尚地圧、ガス、出水、自然発火その他いろいろな自然の惡い條件と戰いながら生産を行なつて行くのでありまして、そうして絶えず次の仕事場、次の作業場の建設をして行かなければなりません。即ち建設と破壞ということがよく言われますが、即ち準備作業、次に進行、次に維持、この準備と進行と維持、この三つの作業に対する力の配合が最も釣合いが取れてうまく行かなければ成立たない事業なのであります。然るに戰爭が酣わになりまして、資材や熟練した從業員が不足する一方海外からの石炭の輸送が非常に困難になりまして、國内炭の増産要求がますます強くなりまして、炭鉱経営の基本鉄則であるところの、先に申上げました三つの作業の調和と均衡が全く取れなくなつてしまつたわけであります。即ち準備作業が殆んど行われなかつたということであります。
 これを具体的に申しますならば、資材の面で申上げますと、昭和十四年に炭鉱の消費した鋼材の量は十四万トンでありましたが、昭和十七年にはその半分の七万一千トンとなり、十九年には更に減つて四万六千トンとなつたのであります。一方労働者の面で見ますと、昭和十五年全國炭鉱の坑夫の数が三十三万八千人の内、日本人の坑夫が二十九万三千人であります。それが十九年には総数は四十一万六千人と増加しましたが、日本人の坑夫は逆に二十四万四千人に減つておるのであります。而もその内容では、熟練した壯年者が続々と召集されまして、実質はそれ以上に低下しておるような状態であります。即ちただ頭数だけで生産量を維持していたというのに過ぎないのでありまして、そのために現在石炭は出ないが、準備をしなければならんというそういう準備作業は殆んど停止の状態になつておつたのであります。そればかりではなく、すでに壽命が來て危いというワイヤー・ロープの取替えもできない。或いは機械類の補修ができないとか、即ち既設設備の能力さへもだんだん減退して行つたのでありますが、一番終いになりましたときには、生産量を維持するために、非常な奔命に疲れまして、私は生れつき炭鉱技術家で育つておりますが、その炭鉱の技術家といたしましては、最も好みませんところの非能率的で、そうしてやがては炭鉱を破壞に導くであろうところの切羽の前進拂い、準備ができない先にすぐ切取つて行くという、採炭方式をしなければならなくなつたのであります。即ち終戰当時の我が國炭鉱業は本質的に見ましても壊滅の一歩手前まで進められていたのであります。それにこの終戰後の混乱、終戰後の九月、十月二度の九州、山口地方の大水害、そういういろいろの事情によりまして我が國炭鉱はそれまでに持つておりました切羽の約六割、半分以下になつたのです。約六割がなくなつてしまつたのであります。それが昭和二十年十一月の、いわゆる石炭が最低量になつた石炭生産量五十五万トンになつて現われたのであります。その後いろいろな施策によりまして漸次生産量も囘復し昨年十一月には一應二百万トン台に達したのでありますが、それから先の囘復状態は、甚だ芳しくない状態は皆さん御承知の通りであります。それから十ケ月を経過した今年九月の生産量はこれは約二百三十万トンで、前と比べますと二十八万トンの増加となつたのでありますが、一方労務者の数は八万人を増して四十三万人に達しておりますので、一人あたりの月産量は五トン三分で、昨年の十一月の実績は五トン八分であります。それよりも大分低下しております。
 この原因が何であるかということに御注意願いたいのであります。地方別によりまして、又炭鉱別によりまして事情はいろいろ異るのでありますが、総体的には現場施設の復旧がはかばかしく進んでいないことが一番重大な原因となつておるのであります。これを詳しく説明するのには非常に長く時間がかかりますから、ここは困難でありますが、極く簡單に申上げますると、一例を圧延鋼材に取つてお話し申上げます。この圧延鋼材は、炭鉱の準備建設には最も不可欠な一番重要な材料でありますから、まあ圧延鋼材について例を申上げますと、炭鉱の現在の状況をこれを戰後の荒廃から救つて、何とか立直させるためにはどれだけのことが必要かということになりますと、圧延鋼材の量は、毎四半期ごとに凡そ二万五千トン要するのであります。ところが昨年度中の炭鉱への入着量を見ますると、昨年度の第一・四半期が僅かに六千四百トン、第二・四半期が一万二千トン、第三・四半期一万三千四百トン、それから傾斜生産が非常にやかましく絶叫されて曾てない努力が集中せられたと称せられておる第四・四半期、これで需要量の六割六分即ち一万六千五百トンに過ぎなかつたのであります。その他機械類の製造の能力が非常にうまくない。或いは電線類、釘、針金類が極端に不足いたしまして又カーバイトやセメント、そういう物の不足が、鋼材の不足に更に拍車を掛けるような状態でありまして、生産量は全体として幾分囘復して來ておるような状態ではありまするが、炭鉱の本当の底力というものは、何ほども囘復できないような條件下に置かれておるのであります。
 そもそも本年度の生産目標三千万トンの数字が持ち出されましたのは、昨年の秋頃でありました。その時にも達成できるとは考えられませんので、当時は先ず二千五百万トン、ぎりぎり決著のところで二千七百万トンまでとされておつたのでありますが、それでは日本の経済危機の突破ができない、どうしても三千万トンは是非とも必要である、その達成のためには、いかなる犠牲も敢えて厭わずという政府の強い御意向によりまして、一切の議論を拔きにして決められたものであります。その当時私共石炭業者は、凡そ十項目に亙るいろいろの要望、三千万トン達成のためにはこうしなければならん、こういうことをして下さいということで、十ケ條に亙る要望を提出いたしました。で政府もこの実施を承諾されたのでありますが、さてその実施状況は甚だ芳しくないとこになつておるのであります。先ず第一に申し上げますと賃金問題でありますが、これは二月末までに新賃金の決定方が要望されておつたのでありますが、一月から三月までの分が決まつたのが四月、四月以降の分は五月十四日に中央で大枠が決まりまして、それに基いて各炭鉱の各職種別の賃金が定まつたのは六月乃至七月の半頃であります。で、その間賃金未決定のもやもやしておることが生産に何程影響したか。これはもう想像に難くないところであります。それから第二は鉱内夫の賃金を、二月分から全額新円拂いを実施するということでありましたが、これは一般と同時にやられたために、その当時非常に坑内夫が不足しておりました関係上、坑内夫の特別優遇による方法としてそういうことをやつて貰おうとしたのが、同時にやつたために、坑内夫増員政策をその当時ふいにしてしまつたという状態であります。それから食糧不足の要望も当然その時に入つておりましたが、主食は十分とはいえませんが、先ず一般の状態からいつて、不服をいえない程度になつておりましたが、ところが副食物の方については、遺憾ながら誠に窮乏いたしまして、いわゆる実際の採炭作業の外に、休んで畑を作るとか、或いは買い出しをやるとか、そういうことに余分のエネルギーが消耗されておるということも見逃せない事実であります。
 次にこの資材の点でありますが、御承知のごとく、炭鉱用資材は單独で能力を発揮するものはごく少くて、いろいろの物資が集りまして綜合力を発揮するものでありまして、而も荷物が著いてから二ケ月、或いは半年、一年後でなければ生産力に役立たない。そのくらいの時日がかかるというものが相当に沢山あります。それで三千万トンの計画実施に当りましては、遅ればせながら二十一年度第四・四半期中に圧延鋼材二万五千トン初めいろいろの主要材料を三月までに炭鉱に到着するように強く要望をしたのであります。ところが割当量二万四千七百トンに対しまして、現場到着が六月の末になりましたが、それがずれ込んで入つた量が二万二千四百トンとなつたのであります。それが第四・四半期からずれ込んで第一に入つたわけであります。尚ここで御注意願いたいことは、例えば鋼材の場合、今年度第一・四半期に炭鉱に入着した一万八千五百トンはその期の割当分ではないのでありまして、只今申しました第四・四半期の割当分乃至はその期以前のものがずれて入つて來たのであります。第一・四半期分の割当は生産主要物資の、それから政府の方の配給調整法というのが変更になりまして、政府の事務手続が非常に遅れた結果第一・四半期の分の割当が決まつたのは六月の末であります。炭鉱ごとに割当許可の発劵が行われたのは七月になりました。その分の鋼材が八月末までに各メーカーから業者の方に発送された数量は、割当量の二万一千トンの内僅かに千四百トンに過ぎないこういう状態であります。ここに資材の炭鉱向注入の空白期、つまり非常に大きなギヤツプができておるわけであります。かく申上げますことは、三千万トンの発足に際しましては、その期の割当量はその期の中に炭鉱の手に渡るように要望をしたのでありますが、その第一・四半期分は、割当の決まつたのが期末であつたからであります。
 以上申上げましたように非常にまずい状態であつたわけであります。仮りに一歩讓りまして、各期中の入着量を割当の期を無視いたしまして、各期の需要量と比較いたしますと、第四・四半期は六割六分、今年の第一・四半期に七割四分、平均で七割に過ぎないのであります。
 次に炭價の問題について申上げますが、三千万トンへの発足に際しましては、必ず期前に前決め制にする。適正なる炭價の前決めをする。而も炭價は全額新円で支拂うということを要望いたしましたが、その前決めの炭價が決りましたのは七月七日以降の分でありますが、その爾後の事務手続の関係もあつて、各炭鉱がそれぞれ平均炭價の計算できるような状態になつたのは八月であります。その間四ケ月の遅延がありました。比較的やりいい筈の炭代の全額新円拂い、これの実施も二ケ月遅れまして六月からであつたのであります。
 尚ここに特に申添えたいのは、七月七日以降の前決め炭價そのものが、いわゆる新物價体系の一環であるということで、政府の方では堅持しておられるようでありますが、これはその構成の技術の点につきましても非常なミスがあつた。その他インフレの大波の関係上非常な不適正炭價となつてしまつておるわけであります。早くも炭鉱は赤字の苦境に追込まれて四苦八苦の状態になつておるわけであります。
 次に住宅の問題でありますが、曾て四十万人の労働者がおりましたので、頭数から申しますれば收容能力は十分である筈でありますが、戰時中は修繕は殆んどやれず、新築分も極めて仮建築が多かつた、それも独身者の合宿が多かつたので、家族持ちが多くなつた現在の労働事情では非常に住宅が不足しております。新築或いは改築修理が急がれているのでありますが、これ又三千万トンへの発足條件として毎期予定通り工事完了が要望されておつたのでありますが、第一・四半期の完了、これは残念ながら九月の終り頃になる見込であります。
 最後に資金問題について申上げます。インフレ過程におきましては、期日遅れ、季節遅れの融資は非常にその價値が低減いたしまして、融資申請当時の計画物資の手当とか、工事の進行こういうことが非常に困難な状態になるのであります。今年からは期の初めに融資のことを勵行して貰いたい、こう申した。上期の分は大分二ケ月も遅れて実行された。下期分に対しては漸く期初め融資が実現されるような状態になりました。
 以上今までに政府が取行われたいろいろの実例を申上げましたが、要するに三千万トン計画に対する施策の実行は三月乃至四ケ月遅れておると申すことができるのであります。丁度それに符合するかのように、生産量も四月から六月まではなかなか計画に達しなかつたのでありますが、七月分からは御承知のごとく三千万トン達成の計画の線に乘つて参つたのでございます。このような点から見まして、当面の重要課題でありまする三千万トンの達成の途、これは達成のためのいろいろの諸條件、こういう計画の迅速に行われること、これが最善の方法であると信ずるのであります。計画の迅速な実施が最善最上の方針であると信ずるのであります。私たちはこの三千万トン発足の端緒となつたところの、去年の十二月二十七日の閣議で決められましたところの、いわゆる來年度三千万トンの石炭生産計画を完遂することは、現在の政治的経済的諸條件の下では、從來のような手段を以てしてはとてもできない。政府としてはこの際思い切つて石炭最重点主義に眞に徹底する、こういうことが決まつたわけです。この重大決意に本当に徹底することを望んでおつたのでありますが、実情はこれまで申上げた通り、いわゆる徹底し切れずに、三月四月という時日が遅れたのであります。要するに石炭の増産が捗捗しくないのは、石炭鉱業の機構が惡いからではなく、最重点政策に徹底できなかつたことに原因があるのでありまして、何も今更國管にするまでもなく、政府の本当の重点主義に徹底したやり方を敏速果敢に実行すればやれる問題であります。お題目だけの重点政策で、炭鉱の荒廃は救われるものではありません。この点につきまして、過日のマツカーサー元帥から片山総理に宛てられた書簡は、全くよくこの眞隨を衝いておるものと考えまして、敬服に堪えない次第であります。我が國には曾て世界の水準にまで達した炭鉱技術がまだ残つておりまして、それぞれの人によつて、或いは炭鉱それぞれの施設、設備によりまして、或いは又文献によつて今尚立派に残されておりますから、そういうものを本当によく使い分けをして、そうしてこの戰後の混乱した山の状況がよく立直り、又炭鉱の職場規律が確立されて、それがますますよくなつて行く傾向になつておりまするから、本当に徹底した重点政策を遂行されるならば、直ぐにでも立派な活動が開始できるのであります。これに適切な資金と資材とを與えさえすれば、現場は見違えるように立派に立直つて行くのであります。労働者に住宅と食糧の不安を與えることなしに、安心して貰えるようにすることによつて、要員の定著性を増して、労働力の内容充実ができるのであります。
 作業現場の施設がよくなり、いろいろの労働條件が整いますれば、労働強化などという香ばしくない言葉を用いるまでもなく、マツカーサー元帥の示唆されるところの二十四時作業態勢が一般的に行なつて行けるようになるのであります。このように石炭増産達成は、何も多くの反対を押し切つてまでも國家管理を強行する必要は微塵もない。これまで何度も唱えられて居つた施策の実行に忠実であれば達成できるという問題であります。これまで散散失敗いたし、又その非常に能率が惡いという定評のある官僚統制を更に一段の強化をするようなこの法案にはどうしても賛成はできないのであります。長年その炭鉱と運命を共にして來たところの経営者、そうして企業の中樞として重要な役割を果しておる本社機構、これを炭鉱経営の実際の面から切離そうとする現在の國管の指導、又制度、手続の煩雜さと、身分保障の不安、これは先程から御説明があつたことでありますが、不安から來るところの、現場担当者のいわゆる安心して長期計画、研究がやれない、そういう氣持を喪失するというようなこと、こういうことは私の約三十年に亙る現場の体驗からいたしましても、非常に増産の妨げとなるものであることを考えるのでありまして、こういう考えになり勝ちの、いわゆるこの國管には何としても賛成はできないのであります。
 以上石炭の増産の達成を遅らしておる原因は施策実行の不徹底によるものであつて、増産はこと新らしい國管によらなくても、既定の方策を実行するに忠実であることによつて達せられることを繰り返して申述べて私の意見を終ることにいたします。
#20
○委員長(稻垣平太郎君) これにて本日予定いたしておりました公述人の御意見は全部お伺いいたしたわけなのでありますが、一、二の委員より公述人の方に対して御質問をなさりたいということでありまするので、これを許したいと存じますが、御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○委員長(稻垣平太郎君) それでは小林委員。
#22
○小林英三君 この際に労働者側の方組合の方からして、先程から四人から石炭國管に対しての御意見を拜聽したのですが、その中に高原さんという方も、それから一條さんという方も、畠山さん、それから小倉さん、皆異口同音におつしやつておることが一つあるのです。それはこの國管案というものを、いわゆる生産協議会というものを決議機関にするということ、それから管理の対象を全炭鉱にすること、この二つが最低の線であるということを同じように言つておられるように聽いたのですが、その点はそうでありましようか、それからもう一つはそれが達せられない場合にはその國管に反対だという意向でありますか。最後の線だとこうおつしやるのですからそれだけ伺つて置きたいと思います。
#23
○公述人(小倉三次君) 小倉であります。管理の対象を全炭鉱に同時にやつて貰いたいという点と、それから生産協議会は決議機関にして貰いたい。この二條件は最低の我々の要求であるという具合に御解釋を願つて結構であります。と申しますのは、これが容れられなければ、いわゆる私共増産に責任が持てんということであります。飽くまでも増産に責任を持つためには、どうあつてもこの線だけは最低の線として確保したいと考えておるわけであります。
#24
○小林英三君 その外の方も同じような御意見でありますか。
#25
○公述人(一條與作君) 只今の小倉氏の御囘答と私も同樣でありますが、私が申上げることはこの二つが若しもこの法案の中から訂正される、或いは削除されたというようなことがありましたならば、私たちは小倉氏が申しました通り責任が持てないということであります。責任が持てないから從つて反対かと申しますと、私たちは責任を持たないだけであつて、それを通されたならば、そういうものを通された議員の方々が國家に対して責任を持つべきだこう解釋しております。
#26
○小林英三君 今の最後の線が守られない國管には反対であるという意見でありましようか。はつきり聽いて置きたいと思います。
#27
○公述人(畠山正隆君) その点に関して申上げますが、私共の全炭鉱労働者の一致した希望と申しますのは、今二人の方がおつしやつた通りであります。併し我々は強く現在の各議員の方方に対して、この点を要望いたしまして、そういうような國管法案を作り上げて貰うべく強く要請するものでありますが、併しこれが達成できないからこの法案には反対であるという意思表示は私としてはいたし兼ねます。とにかくも我々が望んでおるのは國管であります。何とかしてこの臨時石炭鉱業管理法案を実施して貰いたい。併し我我にはこういう希望があるのだということを申上げておるのであつて、決してこの点が絶対に確保されなければ、この法案に対しては反対だいうわけではありません。ただ生産に對する労働者としての責任は負い兼ねるという結論になるわけであります。とにかくにもこの法案を何とかして通して頂きたい。そのためには我々はこれを要望するということを申上げて置くのであります。
#28
○小林英三君 重ねて伺いますが、そうすると、今の最後の線が守られない國管が通つた場合には、皆さんとしては責任は負えない。こういうことははつきりしておるわけですね。
#29
○公述人(畠山正隆君) はあ。
#30
○帆足計君 只今までの御報告を非常に有益に承りました。殊に國管賛成の方の中からは、この法案の國家的、公共的性格につき指摘され、反対論の御議論の中からは、特にこの法案の官僚的な点について、その弱点を突かれたように承りました。私はこの法案につきましては、各方面から冷靜に檢討いたさなければならんと存じておりますが、最近街頭などのビラにおきまして、冷靜な論議に代うるに感情論を以てし、理性に代うるに偏見と暴力とを以てするようなビラが散見されておるのを非常に遺憾に感じ、同時に我々に対する侮辱だと考えております。このような攻撃の仕方をなさる人たちが、この民主社会に生れ変つた日本において、いかに國民の反感を激発するに過ぎないかということすら御自覚なさらないという現状を非常に遺憾に存じております。ところで、只今二つばかりお尋ね申上げたいのであります。一つは石炭の増産のために國家の協力、社会の協力を一段と強化いたさねばなりません。同時にそれに即應して石炭政策についての公共性を明確にして貰いたいという要請が社会的に存在しておると存じますが、それに対しまして國管反対の論陣の方々の御意見には、只今の國家管理法案の官僚的性格、そこから來て増産の阻害になるというお議論でございますが、それはそれとしまして、只今のような國家的な應援を強化し、同時に石炭政策の公共性を強くするという面からお考え下さいまして、國民のそういう要請に答えるようなふうにこれを修正するか、又は修正しないとするも、代案のようなものをお考え下さつているか、その点につきまして反対論者の御議論を一つ伺いたいと思います。
 もう一つは、今度は逆に、現段階におきまして石炭を増産しますためには施策並びに経営の封建性を除去しまして、資材、資金、輸送、炭價等すべてを合理的状況に持つて來ることが必要であろうと存じます。それらの施策は只今官僚統制のために歪められ、そうして誠に馬鹿々々しい炭價が半年も放任されているというような現状に暴されているように我々は曾つて承知しておりました。これらの生産諸條件を合理的な状況に置きまするために、國家統制並びに國家の應援というものが極めて合理的な状況に置かれなければならん。そのために管理を一面強化しますると同時に他面民主化することが必要であるというふうに了承しておりまするが、現在の國家管理法におきまして、中央地方の管理委員会の機構運営あれを見ますると、管理委員会は單に諮問委員会に過ぎません。そうして莫大な人員に擁しております。そうして恐らく実権を握るところのものは石炭局長と、それからその事務局でありましよう。そうして凡百の炭鉱に対しまして、細かなことまで果してそういう機構で円滑な指導が行くかどうか。これは何人も疑問にする点であろうと存じます。從いまして、現在の國家管理法の中核の一つをなしておりまするこの管理委員会並びに管理機構の官僚性に対しまして、賛成論者はどのようにお考えになつておられますか。又どのように修正を希望されておられますか。その一点を第二に伺いたいと思います。
#31
○公述人(圓城寺松一君) 只今帆足さんの御質問の前におつしやいました宣傳の方法につきましてのお説は、私共企業者としても同感であります。私たち自身も甚だ迷惑をしているのであります。その結果却つて我々に賛成して下さる方も、感情的に反対になりはしないかということを心配しているようなわけであります。この点につきましては業者といたしまして誠に遺憾の意を表明いたします。
 次に質問の点でございまするが、我我が反対している点でありまする官僚統制、それでこの点につきましては私は主として炭鉱を我々やつておりまする経驗から、官僚の、從來の官僚ばかりではありません、私たちもそうでありまするが、官僚陣で主として経営者に代つてやろうとしても能力がない。それともう一つは今日私公述の際に申上げましたように、責任の帰属が自然人の一個の帰属でない。こういうことで反対をしておるわけであります。官僚々々と申しますと、いかにも現在の官僚を攻撃しておるかに見えますが、若し我々が官僚陣営に入りましても、結果におきましては今の官僚より非常によくなるようにやり得る自信がないのであります。こういう点から官僚の進出は決して増産を招來するものでない、かように申上げておるわけであります。
 もう一つの点につきましては共公性と申しますと、社会一般まで拡げた公共性になりまするが、私たちは炭鉱の仕事はその炭鉱に從事しておりまする我々経営者並びに労働者が一番よく承知しております。一番山を愛する者でありまするから、社会的に公共化しなくても、炭鉱自体において民主的経営を推進することによつて増産ができると考えております。
#32
○公述人(一條與作君) 只今帆足さんのいわれる石炭局長の或いはそうした方の官僚の方の発言、或いは権限が強化しやしないか。それに対する組合側の返答というように承りましたが、それに対しましてお答えいたします。御承知の通り管理委員会というものは大体労働者、それから経営者、学識経驗者それに石炭局の局員の一部、こういうもので構成されておりまして、官僚の強化の反対ということは、労働組合も経営者側もこれは完全に反対であるということは意見が一致しております。從つてそうしたことに対しては労資双方を以て十分に官僚の独善的なところ或いは権限の強過ぎるところは十分に是正して行ける、こういうことを私は信じております。
#33
○下條恭兵君 大貫さんにちよつとお尋ねしたいと思いますが、先程來縷々と終戰以來今日までの石炭鉱業で御苦労なさつた点の御説明がありまして、私共大変よく分つたのでありますが、それでお話の中に傾斜生産に入つてからも尚非常に生産に時間的のずれがあつて、これを三千万トン生産にやはり時間的のずれを生じたという御説明だつたと思うのでありますが、この点につきましては、今度の臨時石炭鉱業管理法案に從いますと、遥かに資材の入荷その他が便利になつて來て、少しも現在までよりも將來の方が入荷に対してもよくなつて來るのではないかというふうに見られるのでありますが、この点に対して御意見を伺いたい。
#34
○公述人(大貫經次君) 只今お尋ねの國管法でやれば、資材も今より樂に廻つて來るのではないかというお尋ねでございますが、これは誠に私たちとして奇怪至極に存ずる次第である。本当に石炭が必要だ。再建をするためにいろいろな犠牲を忍んで傾斜生産をやるというときに、今のような状態であつたのでは、これを國管にすれば廻りがよくなるのではないかということについては、これは誠に経済の実情を無視した話ではないかと私は考えます。これは現在本当に國管が決まつて、資材資金において政府の許された範囲において傾斜生産をやつております。國管によつて更に傾斜の度を強くするということを一應考えられるものとして、然らば別に枠があるか、或いは又別の資金があるか、別の資材があるかということになる。もう一つは、さもなければ更に傾斜の度を強くして犠牲の範囲を廣めるかという二つになるのだろうと思いまして、本当に國家國民全体が石炭がなければならん。石炭そのものが必要なのであるか、少くも今でもそのずれを整理をしてどんどん取返すことは当然問題にしなければならんのじやないかと思います。今日になつてからずれを取返すということはない筈だと思います。今からどんどん必要の限度のところまでやらなければならんこういうふうに考えております。
#35
○下條恭兵君 重ねてお尋ねいたしますが、少くも今度の管理法の條文を読みますと、強力命令その他で現場のところよりもそういう点の援助の方策が余計に講ぜられているように思いますが、この点に対する御意見を伺いたいと思います。
#36
○委員長(稻垣平太郎君) 圓城寺君。
#37
○公述人(圓城寺松一君) 私たちは國管の内容を見まして、そういう生産の手続では増産が期待されん、こういうことを申上げておるわけでございまして、資材を豊富にする、そうして現場に應援をするために実情を把握し、そうして生産要素を確保するということなら、これは國家管理にしなくても官吏が当然やる得ることでございます。そこでその面はいかに官廳機構を充実しておやり下さつても、我々は喜んで受けるのでございますけれども、この國家管理法案においては、この手続、この方法、この機構におきましては増産ができんということを申上げておりますので、そういう援助を受けるということは、これは國家管理法案とは別途の模樣でありますから、さように御承知を願いたいと思います。
#38
○委員長(稻垣平太郎君) 外に御質問はございませんか。
#39
○佐々木良作君 経営者の方に……これはこの問題と直接関聯しませんけれども、基本的な恰好のことで一言お伺いしたいのですが、戰時中といい、現在といい、この企業は殆んど成立つていない、利潤的にも成立つていない恰好であるのにも拘わらず、犠牲を忍んでともかく力一杯のことをやつておる。從つてそうしますれば、資材なり資金なりが今より加わることによつてのみ高まるというふうに大体説明されたと思うのです。そういう立場から現在企業的には殆んど採算が成立つていないにも拘わらず、企業的な犠牲を忍んで業務を遂行しているということ、そのことを少くとも現在の商法に基く会社の場合にははつきりと目的は利潤と書いてある筈です。この株主に対して経営者としましてむしろこれは経済的にいかんのじやないかと僕は思うのですが、どうなんですか。つまり企業としての利潤を離れての経営もやつている、こういうふうに大概述べられたのですけれども、それならばそのこと自身は、経営者としてはむしろ株主に対して義務の履行をしていないのじやないかというふうに考えられませんですか。どなたでもいいですが。
#40
○公述人(圓城寺松一君) お答えいたします。これは戰後あらゆる企業が採算が合わずにいるという状態でありますが、これは別といたしまして、大体鉱業という仕事は十年二十年継続いたしまして常に適切なる利潤を挙げ得る仕事ではございません。昔から御承知の通り山師という言葉がありまするように、十年の中三年、五年損をして、これを我慢してやつて行くのが鉱業の本質でございます。從つて今日我々は採算が合わずにはおりますけれども、これを何とかして盛り立てて行こう、そうして金を儲けて配当できるところに持つて行きたい、これによつて資本も導入する、こういう氣持でやつておりまして、これは未来永劫炭鉱の赤字を覚悟してやつておる意味じやございません。利潤追求というのが資本家攻撃によく使われまするけれども、私はこの利潤を挙げようという氣持が、熱意が増産に運んで行くものと考えております。これは過日もお話申上げましたが、今の御質問のようなことを私は或る新聞記者から質問されたことがございます。あなた方はそんなに経営が苦しいなら、むしろ國管になつた方がいいじやないか、然るになぜ業者は國管に反対するかという質問を受けたことがございます。私はそれに答えまするのに、これは親が貧乏して食えないのに子供を育てたいという愛情と熱意がある、食えんから子供を外の人に育てて貰うというような熱意のないことでは、その子は育たんのでございます。殊に今日赤字に苦しみつつ何とかこの炭鉱業を継続して、そうして増産もし、他日利潤も生むようにしようという熱意は、これは親が子を愛し、自分が苦しみながらも子を育てておる氣持と同じでございます。この熱意こそこの責任こそ増産に持つて行くものでありまして、責任を分散して、そうして困つたときは外の人が育てて呉れるのだというように責任が分散され、誰に帰属するのか分らんような体系では國管案は反対だ、こう申上げるのでございます。
#41
○委員長(稻垣平太郎君) 本日はこれにて閉会いたしたいと存じます。公述人の皆樣方には非常に有益なるお話をして頂きまして誠に有難うございました。本日はこれで散会いたします。
   午後四時七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     稻垣平太郎君
   理事
           下條 恭兵君
           小林 英三君
           川上 嘉市君
           中川 以良君
   委員
           大畠農夫雄君
           カニエ邦彦君
           濱田 寅藏君
           大屋 晋三君
           平岡 市三君
           堀  末治君
          池田七郎兵衞君
           入交 太藏君
          深川榮左エ門君
           鎌田 逸郎君
           楠見 義男君
           小宮山常吉君
           宿谷 榮一君
           玉置吉之丞君
           藤井 丙午君
           帆足  計君
           細川 嘉六君
           佐々木良作君
           川村 松助君
  公述人
   日鑛本部組織部
   長       高原 淺市君
   古河鉱業專務取
   締役      圓城寺松一君
   福島縣高島炭鉱
   勤勞部     一條 與作君
   井華鉱業北海道
   支店長     奧田 立夫君
   三菱大夕張鉱業
   所       畠山 正隆君
   麻生鉱業社長  麻生太賀吉君
   日本炭鉱労働組
   合總連合事務局
   長       小倉 三次君
   常磐炭鉱社長  大貫 經次君
ソース: 国立国会図書館
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