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1972/09/12 第69回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第069回国会 法務委員会 第2号
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1972/09/12 第69回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第069回国会 法務委員会 第2号

#1
第069回国会 法務委員会 第2号
昭和四十七年九月十二日(火曜日)
    午前十時三十二分開議
 出席委員
   委員長 谷川 和穗君
   理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君
   理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君
   理事 中谷 鉄也君 理事 沖本 泰幸君
   理事 麻生 良方君
      石井  桂君    鍛冶 良作君
      福永 健司君    村上  勇君
      勝澤 芳雄君    河野  密君
      林  孝矩君
 委員外の出席者
        警察庁警備局参
        事官      斉藤 一郎君
        法務大臣官房訟
        務部第二課長  岩佐 善巳君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省人権擁護
        局長      影山  勇君
        外務大臣官房領
        事移住部長   穂崎  巧君
        外務大臣官房領
        事移住部移住課
        長事務取扱   平野 文夫君
        郵政省人事局長 北 雄一郎君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  長井  澄君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  牧  圭次君
        日本国有鉄道職
        員局長     加賀谷徳治君
        法務委員会調査
        室長      松本 卓矣君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十七日
 辞任         補欠選任
  渡辺 栄一君     大坪 保雄君
八月二十五日
 辞任         補欠選任
  中村庸一郎君     村上信二郎君
同月二十六日
 委員村上信二郎君が死去された。
九月十二日
 辞任         補欠選任
  高田 富之君     勝澤 芳雄君
同日
 辞任         補欠選任
  勝澤 芳雄君     高田 富之君
    ―――――――――――――
七月十二日
 一、裁判所の司法行政に関する件
 二、法務行政及び検察行政に関する件
 三、国内治安及び人権擁護に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政に関する件
 検察行政に関する件
 派遣委員からの報告聴取
     ――――◇―――――
#2
○谷川委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 このたび、私が法務委員会の委員長の重責をになうことになりました。もとより私は微力でありますが、練達なる委員各位の御協力を得まして、円満なる委員会の運営をはかってまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。簡単でございますが、ごあいさつといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#3
○谷川委員長 先般、本委員会は司法及び法務行政等に関する実情調査のため、九州地方各県に委員を派遣いたしたのでありますが、この際、派遣委員から報告を求めます。羽田野忠文君。
#4
○羽田野委員 去る八月二十八日より行なわれました派遣委員による福岡、佐賀、長崎、熊本四県の調査につきまして、私からその概要を御報告申し上げます。
 なお、詳細につきましては、報告書を別途提出いたしますので、会議録にとどめさせていただきます。
 派遣委員は、当委員会の決定に基づき、司法及び法務行政等に関する実情を調査することとし、関係各地方へおもむき、各方面の意見を聴取し、懇談を行ないあるいは関係諸施設を視察する等の方法により調査を行ないました。
 調査の概要とその結果について簡単に申し上げます。
 まず裁判所関係について申し上げますと、各管内とも一般通常の事件数は、おおむね横ばいないしやや増加の傾向でありますが、事件の内容は次第に複雑化し、難解な事案が多くなっているようであります。おもな事件としては民事では熊本の水俣病関係の損害賠償事件、福岡のカネミ油症関係の慰謝料請求事件、佐賀の佐教組行政処分無効確認事件等、刑事では福岡の九大籠城関係の建造物侵入等事件、長崎のエンタープライズ入港関係の凶器準備集合等事件、熊本のネズミ講関係の所得税法違反事件等がそれぞれの裁判所で審理中であります。
 家事審判は、逐年漸減の傾向にありますが、家事調停は逆に逐年増加しており、特に、家事相談に裁判所の門をくぐる人が各管内とも著しい数にのぼり、現地においては法制化を期待する旨の発言がありました。
 また、去る五月十五日の沖繩復帰に伴い沖繩県が福岡高裁の管轄に編入されました。現在までの段階では事件数は少ないようであります。
 特に調停事件はほとんどなく、これは住民にこの制度が十分に理解されていないためではないかと思われます。
 司法行政上の問題としては、九州管内のうちでも長崎、熊本の管内は離島を多くかかえており、職員の適正配置等について苦慮しておるとのことでした。
 検察庁関係について申しますと、九州全般から見ますると一般犯罪は横ばいないしやや減少の傾向でありますが、青少年の自動車利用による性犯罪等悪質犯罪の発生が注目されます。
 公害事件としては、各県に各種工場群があり、また港湾が多い関係で大気汚染、水質汚濁、海水汚濁等の事件が増加傾向にあります。
 次に、法務局関係について申しますと、管内の各行政事務とも逐年増加の傾向にありますが、中でも登記事務において著しいものがあります。これは国家経済の発展を反映するものと考えられますが、国土開発、土地改良、住居表示の実施等の国や地方公共団体の重要施策に基づく特殊事件の増加がこれに拍車をかけ、最近特に増加の傾向が著しくなったものと思われます。今後ますます急増するこれら事務処理については、大幅な職員の増員や能率化をはからなければ社会の要請に対応できないのではないかと痛感しました。また、管内のうちでも長崎、熊本は離島が多いため、職員の配置の適正化について苦慮していました。
 なお、出張所の適正配置について現地各庁から十分考慮してもらいたい旨の要望がなされました。
 入管関係について申しますと、最近は集団不法入国事犯も横ばい状態でしたが、昨年は減少しております。しかし、西九州は韓国と最も至近距離にあるという地理的条件のため密航者の上陸地に選ばれやすく、今後とも警戒の要があるものと思われます。
 最後に、庁舎の整備状況等について視察の結果を申しますと、熊本地方裁判所は、明治四十一年建築の建物である上、狭隘かつ執務環境劣悪の状態であり、早急の改築が必要であると感じられました。なお今回の調査で特に大村入国者収容所の実情等について懇談、視察を行ないましたので、その概要を申し上げます。
 当所は、総務、警備、診療室の二部一室に五課十四係を置き配置人員百八名の組織で業務を執行しております。
 収容関係は、開設以来本年七月末までに受け入れた被収容者の総数は二万三千二百九名で、そのほとんどが朝鮮人で、大阪以西の各入管事務所から受け入れた人員が全体の八〇・七%を占めており、これは大阪以西が朝鮮に近いという地理的条件によるものと思われます。
 処遇については、当所は、いわゆる船待ち滞在の性格を有するところから、被収容者に対する日常の取り扱いは人権尊重の基本的理念に立ち、収容所の保安上支障のない範囲内でできるだけ自由を与え、民族的な風習、生活様式を採用、公正妥当を期しておるとのことであります。韓国向け強制送還は、昭和三十六年七月九日の送還からは、順調に行なわれ、年間三、四回送還してきましたが、四十四年からは被収容者の減少に伴い、年二回実施しております。
 収容施設の整備状況は、新庁舎が本年十一月末に竣工される予定で現在内部仕上げを急いでおります。
 以上、簡単でありますが、御報告申し上げます。
#5
○谷川委員長 これにて派遣委員の報告は終わりました。
    ―――――――――――――
#6
○谷川委員長 この際おはかりいたします。
 委員派遣報告書は、これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(その二)に掲載〕
     ――――◇―――――
#8
○谷川委員長 おはかりいたします。
 本日、最高裁判所長井総務局長牧刑事局長より出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり」
#9
○谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#10
○谷川委員長 裁判所の司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。羽田野忠文君。
#11
○羽田野委員 最高裁判所にお伺いいたしますが、最近地方裁判所における一人制審理の場合に、未特例の判事補を参与させるというふうな規則の制定をお考えになっておるというようなことが報じられておりますが、さような事情でございますか。
#12
○長井最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点につきましては、最高裁判所一般規則制定諮問委員会に対しそのような規則を制定することの可否につきまして最高裁判所から諮問がなされ、それについての意見がまとまりました。その後諮問委員会の審理の経過、結果を参酌いたしまして、事務当局において検討をいたし、その結果は最高裁判所にも御報告申し上げておりましたが、ほぼ事務当局の案がまとまったという段階に達しておるわけでございます。
#13
○羽田野委員 その制定しようとする規則の概要でございますが、どういうふうなことをおきめしようということを進めておられるのか、内容の詳細を御説明願いたい。
#14
○長井最高裁判所長官代理者 内容につきましては、諮問当初の参考案としてお示しいたしましたものから、各方面の御意見を参酌いたしまして数次の案を内部的には検討いたしまして、最後に到達いたしました内容について、御説明申し上げたいと思います。途中の経過は省略することを御容赦願いたいと思います。
 その規則の案と申しますのは、本則五カ条、附則二カ条からなっておりまして、その第一条、「(判事補の審理への参与)」という点が内容となっております。それは地方裁判所は単独の裁判官、判事及びいわゆる職権特例のついた判事補が単独の裁判官として事件の審理に当たることを原則的な事件処理の手続と定められておりますが、この単独裁判官に対しまして、職権特例のまだつかないいわゆる未特例判事補をその事件の審理に参与させることができるということ、及びその参与の手続はその単独の裁判官をもって構成する単独裁判所が決定するということが内容となっております。
 第二条は、その参与の内容を具体的に説明したその一部でございますが、「(審理への立会い等)」ということでございまして、「裁判所は、参与させた判事補を審理に立ち会わせることができる。」その第二項「裁判所は、参与させた事件について、参与判事補に意見を述べさせることができる。」という内容でございます。その事件の事実上、法律上の問題点について、参与判事補に意見を述べさるということでございます。
 第三条は手続を明確にいたす意味で、調書の記載について定めてございます。「調書には、審理に立ち会った参与判事補の氏名を記載しなければならない。」と規定してございます。
 第四条は、参与判事補は、その参与判事補であるときはもちろん、その事件が終わりましたあとでも、その手続の過程で知り得た秘密を漏らしてはならないという、秘密を守る義務を規定しております。
 第五条は、参与手続を受けますところの事務をどのようにして各裁判官に分配するかという技術的な点を定めてございます。
 次に、附則は、施行の日及び、この規則はすべての裁判所で適用するということは諸般の事情から困難でございますので、実行の可能な、適正な手続の運用のできる裁判所を最高裁判所において順次指定するということを内容としたものでございます。
 以上、概要を御説明いたしました。
#15
○羽田野委員 こういう特例を設ける理由というか、設けなければならない必要性というものはどういうところからでございますか。
#16
○谷川委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#17
○谷川委員長 速記を起こして。
#18
○長井最高裁判所長官代理者 御説明が不十分で、案をお届けするのがおくれましたことをおわび申し上げます。
 この規則制定の目的は、当初は参考案の内容といたしまして、またその目的といたしまして、地方裁判所の事件の渋滞と訴訟の遅延という当面の問題に対処するために、単独体の審理の充実ということを一つの目的とし、他の目的は、いわゆる未特例判事補の事件処理能力の修得、向上という点を目的とし、この二つの目的をこの規則によって実現したいという構想でございましたが、その後諮問委員会及び関係各方面の御意見を十分承りました結果、地方裁判所における単独体の強化による一審の充実という点は、この規則によって直ちにその成果をあげるということはいろいろ御批判もございましたので、この点は一応当面の目的からは後退させまして、第二の、未特例判事補の事件処理能力の習得向上に資するという観点から、ただいま御説明申し上げましたような案をまとめたわけでございます。
#19
○羽田野委員 裁判所の構成あるいは一人制、合議制とかいうことにつきましては、御承知のように裁判所法にきわめて厳格に明定をしてあります。裁判所法の二十六条によると地方裁判所は、一人制と合議制ということで、裁判官が一人でやるかあるいは三人でやるかということがきめられておる。それにこの一人制についての特例というようなものを設けると、何か規則によって裁判所法の規定が改正されるか、あるいは改正されなくても、改正されたか変則を定められたというような印象を抱いてくる。ということは、規則で法律を改めるというような立法権の侵害にもなるのではないかという強い意見がある。私も、そういう性格を持っておるのではないかという非常な立法上の疑問を持っておるのです。この点についてはどうお考えになっておりますか。
#20
○長井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の点は、立案の当局といたしましてもきわめて慎重に対処し、また意を配った点でございます。
 それで、御批判には、表現といいますか名称の点からする御批判と実質的な面からする御批判と二つあるかと思います。名称の点については、まだこれがどのような審議過程を経て確定されるか問題点があろうかと存じますが、いずれにいたしましても裁判所法の基本的な審理の構造を最高裁判所規則によって変更し、廃止するというようなことは、これは法律上許されない問題でございます。私どもは憲法第七十七条に定められますところの最高裁判所の規則制定権の範囲でまかなえる事項具体的に申し上げますと、訴訟手続に関する事項及び司法事務処理に関する事項に限りまして、この規則の内容として案をまとめ上げたわけでございまして、法律の所管事項とされております裁判所法二十六条の規定を変更するというようなことは万ないという確信をもってこの案を作成いたしたのでございます。
#21
○羽田野委員 この点は、いわゆる憲法の番人であり、法律の番人である裁判所がきめることだから十分慎重にやっているということは私どもも理解できるのです。ただそれだけに、そういう性格の、裁判所がきめることであるだけに少しでも疑惑を持たれたり誤解をされたりするようなことはなるべく避けなければならないと思うのであります。
 それで、この一人制あるいは合議制というものは一つの定型的な、いわゆる型の定まったもの、こういう一人制の裁判というのは、裁判官が一人おって裁判をするものが一人制であり、三人で裁判をするのが合議制だ、こう、国民大衆はみんな信じ込んでいるし、実際にそうであるわけなんです。それにこの特例を設けて判事補を参与させる、その権限がどうであるとかいうようなことよりも、一般大衆はこの裁判官が一人にもう一人ついたということによって非常な疑問を持っている。
 そこで、二条にきめてある「審理に立ち会わせることができる。」という、立会わせるということはどういう形で一その形というものは、まず私の聞くことはあの法廷の形ですね、どういう形で立ち会わせるのか。それから二条の二項にきめてある「判事補に意見を述べさせることができる。」ということ意見というものは、判事補は相手から聞かれたときだけに述べさせられるのであって、自分から積極的に述べる権利はあるのかないのかということ。それからもう一つは、三条では参与判事補の氏名を記載しなければならぬ、こうなっておりますが、一審で地方裁判所で審理に参与した、そしてこの事件が長く係属して控訟審で高等裁判所へ行った。そのときにたまたまその一審に参与した判事補は、高等裁判所の左陪席、これはあまり長くなればそういうこともあるようですが、そういうときには前審参与はできないのかどうか、そういうような点はどういうふうにお考えになっておられるか。
#22
○長井最高裁判所長官代理者 裁判所の規則制定権の行使でございますから、ただいま御指摘のように、少なくともその権限の行使について国民の疑惑と誤解を招くようなことがあってはならないということは、まことにえりを正して私ども伺わなければならないことと十分戒心いたしております。ありがたい御指摘でございます。
 ただいまお尋ねの点について御説明申し上げます。
 規則第二条第一項の法廷における参与判事補の立ち会いの姿でございます。これは当初の案では、法服を着せまして受訴裁判所であるところの判事の隣に座するという構想でございましたが、法服着用は妥当でないという御批判もございましたので、法服は着用しないとする運用方針をもって、今後、会同、協議会等でその方向を打ち出していきたいと考えておる次第でございます。
 それからすわる場所でございますが、これはやはり運用の衝に当たるその判事の考え方というものが反映いたすわけでございます。訴訟指揮の分野にもあるいは入るかと存じますが、対等の席を占めるということはやはり問題が残ろうかと思いますので、先ほど御指摘のように裁判所の構成員であるというふうな疑惑と誤解を招かないような配慮をしてその席をきめるということにいたしたいと思います。ただ、法廷における進行の状況をこの参与判事補が十分に理解できるという配慮を捨てることはこの目的を遂げないことになりますので、そのような諸点を勘案したいと考えおります。
 次に第二条の第二項の「意見を述べさせることができる。」というのは、判事のほうが権限として意見を尋ねることができるということでございますから、尋ねられた事項についてはもちろん意見を述べる義務があるわけでございますが、ただこれはやはり将来あとを継ぐ者としての後進の育成の趣旨がございますので、そこには人格的な心服関係というものが打ち出されてこなければこの規定の成果をあげることはできませんが、そのような間柄になりますれば、むしろ参与判事補が自分の意見を述べて指導を請うということもあり得るわけでございまして、参与判事補のほうからこの点については自分はこう考えるということを述べることはこれは禁ぜられたところではございません。この両者の円満で親密な関係によりましてこれが活用されなければこの手続は生きてこないということになろうかと存じます。もちろん権利義務という観点から厳密に分析して理論構成することは法律の立場からは重要なことでございますが、運用上はそのように考えております。
 第三条の調書に立ち会って参与判事補の氏名を記載いたします点は、やはりこの手続に立ち会う者の責任ということがございますので、調書上明らかにしてこの手続の公正を担保するという考えに出たものでございます。
 控訴審にその参与判事補が将来関与するようになった場合に前審関与の問題が起こるかという問題につきましては、法律上はこの規定の立て方からは起こらない。構成員でないというたてまえをとっております。ただ実質的にこの参与関係で立ち会っております場合に控訴審の構成員になるということは、これは客観的に見て妥当でないとこう場面が出てくることも十分予想されるところでございます。そのような場合に備えまして、調書上立ち会いの関係を明らかにいたしまして、前審においてどのように参与しているかということを明らかにしておけばこの手続について誤解を招くような点を予防できるということを考えているわけでございます。
#23
○羽田野委員 わかりました。時間がだいぶオーバーいたしましたし、関連質問もあるやに伺っていますので、おそれ入りますがもう一問だけお許しいただきたいと思います。
 大体わかりましたが、私はこの制度にはいまだ釈然としない非常に疑問を持っておるのです。たとえばいまのように前審関与になるかというような問題について、法律には前審関与にならないけれども実質的にはやはり好ましくないというような、こういう形式と実質というものを分けて考えなければならないような問題がいろいろ含まれておる。私は最高裁判所がこういうまだ特例判事補にならない判事補の事件処理能力の向上をさせたいという気持ちはよくわかります。しかしながら、私は、これは基本的にやはり裁判所法二十六条を最高裁判所規則によって変えるという内容を持っておるというふうな考えもいたしますし、きょうの、これは新聞報道ですからはっきりわかりませんが、判事補二百人がこれに反対しておるというようなことも報じられておるし、またもう一つは、きょう私急拠質問に立ったのは、最高裁判所は十三日、あしたの裁判官会議で正式決定をする態度を変えていないというようなこと、これはやはり基本的な相当重要な問題をはらんでおるので、十分慎重に検討をされ、また関係各方面の意見も聞いて、その上で制定せなければならないものならば制定せなければなりませんが、よほど慎重を期していただきたいということがいまの私の感じ取ったところであり、また希望でもあるわけです。どうなんですか。
#24
○長井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような新聞の報道がなされておりますことは私も十分承知いたしております。慎重に手続を運ぶようにという御指摘につきましても、もっともなことでございまして、帰りまして十分に御趣旨をお伝えいたしたいと思います。
 なお、ただいま御指摘の判事補の要望の点につきましてはこれはこの案を作成いたします過程におきましての第二次案というものがございまして、これは第一次案と内容において構想においてある程度似たものでございまして、これに対する要望事項でございまして、ただいまお示しいたしました事務当局案とはかなり違っておると申しますか、その意見を取り入れましてこの案がまとまったという関係にございますので、その点については十分各方面の御意見を取り入れたものと確信いたしております。なお、これはあくまで事務当局の案にすぎませんので、次回の定例の裁判官会議においてまた慎重に御審議なされることは当然でございますし、この委員会の御意見、御指摘も十分にお伝えいたしまして、慎重に御審議なされるようにということを申し上げたいと思っております。
#25
○羽田野委員 終わります。
#26
○谷川委員長 関連質問を許します。中谷鉄也君。
#27
○中谷委員 一、二点だけ最高裁総務局長にお尋ねをしておきたいと思いますが、そういたしますると、地方裁判所における一人制審理の特例に関する規則案というのは、高等裁判所あるいは各地方裁判所の裁判官諸君はこの案は承知いたしておるのですか、おらないのですか。
#28
○長井最高裁判所長官代理者 この案はすでに各裁判官にお示ししてございます。また弁護士会のほうにもお伝えしてございます。
#29
○中谷委員 だんだんの修正を加えて、結局いまマル秘の判が押されているこの案が各裁判官あるいはまた日弁連等において検討をされたということでありますけれども、いま総務局長、同僚委員が質問いたしました判事補二百人が反対をしておる、第一線裁判官等に私若干の個々面接をいたしまして話を聞きましたけれども、この案についてもかなり不安を感じておる向きがあるのでありますが、そういう点について、この案について、いわゆる最終案について、最高裁としては判事補諸君は反対の意見は持っていないというふうに考えておられるのかどうか。だとすると、私かなり認識が違うと思うのですが、いかがでしょうか。
#30
○長井最高裁判所長官代理者 この案につきましての積極的な意見はまだ私のほうに届いてはおりませんが、ただいま御指摘になりました判事補の諸君の意見として新聞紙に報道されましたのは、かなり前にこの意見の取りまとめが開始されましたのが届いたということでございまして、ちょっとそこに時間的なズレがあるように存じます。
#31
○中谷委員 そこで、もう最高裁の問題、最近再任問題、青法協問題、まあそういうふうなことでわれわれとしてもたいへん最高裁のために惜しむ、そういうふうなできごとが次から次へ出てきているわけでございます。
 また、この一人制問題について、第一線、特に判事補諸君と最高裁との間に意見のそご、そうしてまた相違、最高裁の規則制定権に基づくところのこの規則についての反対意見がかなり有力に出てくるというふうなことは、決して私、好ましいことではないと思うのであります。そこで、すでにいわゆるかつての案について判事補諸君がそういう意見を述べているわけでありまするから、このただいま配付されました案についても、ひとつ最高裁としてはこれら裁判官諸君の意見を聞く。また日本弁護士連合会とこれらの問題について積極的に話し合いをされる、そういうふうなことで、ただ単に規則制定権があるから、めどをきめて規則としてこれを制定するというのではなしに、さらにそういうふうな手続をお踏みになること。これはいわゆる法律的な手続を言っているのではございません。そういうふうな機会をお持ちになるということが私必要だと思いますし、その点を希望いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#32
○長井最高裁判所長官代理者 この案に到達いたしますまでにも数次の案を作成いたしましたし、そのつど内部でも検討いたし、また必要とある場合には下級裁判所の裁判官の意見を尋ねて今日まで、当初の構想を修正いたしてまいったわけでございまして、十分に意見を聞いてやるべきであるという御指摘は、私どもも十分念頭にあるところでございます。また本日御指摘の点、御意見は、裁判官会議にもお伝えいたしたい、このように思っております。そのような取り扱いについての御意見は十分にお伝えいたして、御審議をお願いしたいと思っております。
#33
○中谷委員 ではちょっとしつこいことを聞きますけれども、この規則案を地方裁判所へ配付されたのは一体いつですか。
#34
○長井最高裁判所長官代理者 九月の七日に連絡をしたと思っております。
#35
○中谷委員 九月の七日に発送をして、長崎だとか沖繩へ着くのは、では一体九月の何日ころになるかということになれば、この案について意見を述べるというのは、電話か何かででも言わなければ意見を述べる機会はございませんですね。だからやはり先ほど同僚委員が申しましたように、九月の十三日裁判官会議がある。そこでもうきめてしまうんだ。ずいぶんいままで意見を聞いたんだからこの案でいいんだというふうなことは私かなり最高裁の――これまで手続をお踏みになってこられたなら、――そのときにおきめになるということについては、規則制定権があるからだというふうには私は納得といいまするか、了承しがたいものがあるのです。その点を私は申し上げておきたいと思います。だからやはり重視をいたします。若い裁判官諸君二百人が反対をしておるというのは、この案でないにいたしましても、この案はだから修正をしたんだといっても、これについてもまた、私の知る限りにおいてはかなり疑問視をしておる向きもあるわけですから、私はやはりそういう意見を上申し、述べる機会というものがあってしかるべきだ。時間的にそういう機会が、先ほどの発送と裁判官会議との関係においては私は持ち得ないじゃないかということだけを指摘をして要望したい点が第一点。
 なお、最後に一点だけ質問をしておきたいと思いまするけれども、かりにこの規則が制定された場合に、この規則が活用されるのは、東京、大阪等の裁判官の数の多い裁判所においてこういうことが運用されるのであって、たとえば若い裁判官、未特例、未特権の裁判官が常に左陪席に入っておる。裁判官の定員さえも若干欠けておるというふうな裁判所、いわゆる中都市における地方裁判所等においては、この規則というのは、実際運用はされないのじゃないかというふうな感じがありまするけれども、この点はいかがでございましょうか。
#36
○長井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の第一の点につきましては、意見の聴取の方法としてきわめて大切なことと存じますので、帰りまして十分に御趣旨をお伝えいたしたいと思っております。
 次に、第二の点につきましては、御指摘のように、大都市の裁判所は専門分化と申しますか、取り扱い事件の種類によりまして専門化いたしておりますので、勢い裁判官の数も多い。したがって、未特例判事補にこのような手続に参与する時間的仕事の量の上からの余裕もございますが、中小の裁判所はいろいろ本来の訴訟事件以外にも強制執行に関する事件、保全事件あるいは刑事手続に関する勾留、保釈というような手続もございますので、事実上この運用に当たっていただくことは困難である。また、当該庁の扱う事件の内容にもよることでございます。非常に最近指摘されます巨大訴訟と申しますか、そういうものの係属しておるところでは、この手続を運用して若い人に参画してもらうということは不可能でございます。この手続が運用上無理が出ますことは、審理の上に影響を及ぼしますので、そこは慎重に、職員の数、構成、事件の実情も見まして無理のないような運用という観点から、附則の第二項を勘案いたしたわけでございます。
 なお、実施期については、会同、説明会等で適正な運用の機会をはかるべきであるということも私のほうでは十分に考えていきたいと思っているわけでございます。
#37
○中谷委員 終わります。
#38
○鍛冶委員 関連してちょっと伺いたいのですが、ここへいま配られたのは、現在弁護士会と話ができた案なんですか。非公式な案なんですか。
#39
○長井最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、弁護士会にこの案を指参いたしまして御説明申し上げた段階でございまして、最終的に弁護士会からの御意見をまだいただいてはおりません。
#40
○鍛冶委員 まだ返事がないのですね。私はまたきまったと思ったのです。それなら一つ聞きたいが、この第二条の二項の「裁判所は、参与させた事件について、参与判事補に意見を述べさせることができる。」この意見とはどういうときを言うのですか。裁判を審理しておるときに意見を述べるというのですか、裁判全体に意見を述べるということができるというのですか、どういう意味ですか。
#41
○長井最高裁判所長官代理者 この規定にございますように、事件について意見を述べるという表現でございますので、当該事件について事実関係及び法律関係について法律家の修練として必要な段階においての意見を求めることになりますので、審理のごく初期の段階におきまして意見を求めることもございますし、また事件全体を見通しまして、結論としてはどのようなものが妥当と考えるかというようなことについて意見を述べさせせることもあるわけでございます。この規定の運用は、若い裁判官の指導、育成と申しますか、成長の観点から意見を聞いて指導をするという考え方で運用されるものと思っております。
#42
○鍛冶委員 ちょっとくどいようですが、そうすると、判決そのものに対しても筆を入れることができますね。そういうことになりますな。
#43
○長井最高裁判所長官代理者 これもすでに当委員会の御質問に対して御説明申し上げたと存じますが、意見を述べる方法としては書面で述べるということも運用上考えておりますので、それが判決の起案の形で出されることもあるかと存じますが、それについて裁判官がみずからの判決案を手を入れて作成することも当然あり得ることと考えております。
#44
○鍛冶委員 判事補が裁判官の書かれた判決に意見を、こういうものはいかがですと言うて入れることをいまあなたがおっしゃいましたが、判事補が私はこういうものがいいと思いますなどと言って原稿を書いて出すこともできますね。
#45
○長井最高裁判所長官代理者 私が申し上げたのは、先生がいまあとにおっしゃったこういうこともありますがというそちらを申し上げたつもりでございます。
#46
○鍛冶委員 もうちょっと考えるべきところがあるんじゃございませんか。もう少し勉強していただきたいと思います。それだけ申し上げておきます。
#47
○谷川委員長 勝澤芳雄君。
#48
○勝澤委員 郵政の御当局と国鉄の御当局にちょっとお尋ねいたしますが、最近郵政あるいは国鉄などの職場の中で労組間の争いから暴力事件があったとして告訴とか告発などが行なわれる。それが刑事事件に発展をしているのはまことに残念なことだと存じます。職場の中で相互信頼がない、不信が高まっている、こういうことはまことに私は郵政なり国鉄当局の管理者として遺憾なことだと存じますけれども、管理者としてのまず責任についてお尋ねいたします。
#49
○加賀谷説明員 ただいまの件でございますが、昨年来労使の間で不当労働行為といった問題などもありまして、いろいろな紛争があって、それ以来一部の職場で暴力問題なんか起こっておるというような点は事実ございますが、そういった紛争問題につきましては、紛争対策委員会を労使の間で持ちまして、いろいろ話し合いの結果決着を見ておるわけでございます。ただ御承知のように、国鉄の現場は単一の組合ではなくて、二つないし三つの組合があってその間においていろいろな問題があとを引いているというようなこともあろうかと思いますが、その間において組合同士の説得行為といったようなことが行なわれておりますと、それは問題ないことだと思うのですが、遺憾ながら一部の職場におきまして、一人の者を多数の者で取り囲んで暴力を加えるというようなかっこうになっておるというようなことになりますと、これは労働運動を越えた問題としてあるわけでございまして、御承知のように国鉄のような仕事は、四六時中生命、財産を預かって、時間と職場規律といいますか、そういったもので仕事を保っておるというような性質の職場でございますので、そういった事態におきまして管理者がその中に割って入って、そういうようなことをするなというようなことで制止することもあり得るわけでございます。そういったようなことでいろいろな問題が起きまして、逮捕問題といったような問題まで起きておることは私ども非常に残念に思っているわけでございますが、そういう紛争を解決する中で、地方においても、いかなる理由があるにしましてもそういった暴力行為をやることについてはお互い慎んでいこうというような話をしておるわけでございます。もちろん現場の管理者についても、仕事のけじめをつけるものはつけるということでやってまいらなければなりませんし、一方においては職場における全職員の融和といいますか、愛情を持たすような施策をはかっていかなければならぬわけでございますので、そういった点については一そう協力して、そういったことのないように、明朗な職場を築き上げるための努力をするつもりでございます。
#50
○北説明員 私ども職場を管理いたします場合に、明るい秩序ある職場を建設するように努力するよう管理者に命じておるわけであります。でありますけれども、現実にはいろいろなトラブルが発生をする。そのトラブルについても当然これを事態に即応するような形で解決をして仕事を円滑に運営していくという管理者の責務があるわけであります。でありますが、それらのいろいろなトラブルあるいは一つのそういった目標、そういったものの中に暴力というものの介在は許さないということで臨んでおるわけであります。現実に暴力事案というものが職場にございますが、この点につきましてはたいへん遺憾に存じておる次第でありまして、先ほど申しました明るい秩序ある職場を今後建設する、そのためにいろいろ手だてを尽くす、しかしその手段として暴力というものがあってはならない、こういう角度で臨んでまいらしておるわけであります。
#51
○勝澤委員 私が国鉄当局なり郵政当局に申し上げているのは、そういう暴力事件が起こる職場環境がどうなっているのか、職場環境についての管理者の責任はないのか、なぜ起きるのか、その点を特に申し上げている。しかも告発や告訴事件を見ますと、労組同士という問題よりも、特に当局側、管理者側が一方に加担をして実は告訴、告発が行なわれている。しかも労働組合というのは法律によって、自主的なものであって、管理者がこれに介入することは認めていないわけです。こういうような管理者の不当介入が今日の事態をまき起こしているという認識が実はない。だから暴力事件が起きる。暴力事件が遺憾だ、これはだれもあたりまえのことです。なぜそういう職場環境になっているのか、そういう職場環境をつくった管理者の責任は一体何なのか、こういう点を私は聞いている。もう一度国鉄側、郵政当局側は説明してください。
#52
○加賀谷説明員 職場の中で実際暴力が起こっておること、これは先ほども申し上げましたようにまことに残念なことでございますが、管理者側が不当に介入するとか、あるいは片方に偏しておるというようなお話でございますが、そういうことは絶対ないわけでございまして、実際問題として組合同士の抗争の中で、たとえば同じ組合員の中でも、違法な争議行為に参加しなかったとか、あるいは他の組合員についての説得行為というような中で数人が取り囲んで、それも一ぺんや二へんじゃない、再三再四にわたってなぐる、けり上げるというような行動が職場において行なわれた場合、それを管理者がやはり職場の秩序を保つという意味でそういうことはやめろ、そういった行動になりますといわゆる組合運動の範囲を越えたものであるということになるわけでございまして、当然それに割って入って、そういった行動をやめろというようなことがあるのは、私としては当然だと考える次第でございます。したがって、そういったような告訴事件とか逮捕事件なんかが発生しておるわけでございますが、しかし、これは私ども非常に残念なことで、どんな理由があっても組合がそういう暴力だけはやらないというような、組合側のそういうことは絶対やらないという協力も得て、今後とも職場を明るくしていきたいというふうにつとめておるわけであります。
#53
○北説明員 暴力事案を見まするに、組合同士の暴力行為、それから管理者に対する暴力行為、それから組合同士の暴力行為に管理者が入った形で、そしてこの管理者も暴力行為の巻き添えを食う、大別しますとこの三つのケースがあると存じております。そのうち先生特に御指摘のは、管理者がそこに入るというようなことはおかしいじゃないかという御指摘でございますけれども、やはり勤務時間内はもとより、職場内あるいは職場への出退勤の場合で局舎に膚接したような場所、そういったようなところでやはり両組合の間で暴力的なトラブルがあるという場合には、これは管理者としても黙視することはできないのであって、これはもちろんどちらに味方するということではございませんけれども、割って入って、そういった暴力の現場というものを暴力のない形に直すということは管理者として必要なことである、さように考えておるわけであります。国鉄当局の言われましたと同じように、そういった三つのケースがあるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、そういった手段でもって一つの目的を実現するということは好ましくないことでございますので、そういったことを排除するように今後ともつとめてまいりたい、かように考えております。
#54
○勝澤委員 暴力事件は遺憾なことだというのは当然なことなんですよ。だから、暴力事件の起こるような職場環境が一体どうして起きたのか、そういう職場環境を解消するための管理者の責任は何か、実はこういうお話をしているわけです。ですから、その根本的なものが何もなされずに、暴力はよせ、暴力はよせ――要するに暴力であるのかないのかは別に議論がございます。ですから、一体そういう暴力らしきもの、あるいは告訴、告発のようなものをお互いにし合うという職場環境というものがどうして起きてきたのか。いままでなかったわけですから、いままでなかったのがどうして起きてきたのか、起きてきた原因があるわけです。その原因の除去をせずに、暴力はいけない、暴力はいけない、中へ入って仲裁するのだ、それだけでは問題の本質は解決しないわけです。そしてまた、具体的な事実行為の中で一体なぜそういうことが起きてきたのかという解明もなされていないわけですから、私はそこに管理者としての責任は何なのか。管理者として、いやけんかするほうが悪いんだ、おれが悪いわけでない、監督が悪いわけではないと言うかもしれぬが、やはり監督者も当然責任があるのじゃないでしょうか。ですから、そういう点を言っておるわけですから、その点をよく御監督をしていただきたいと思います。
 具体的な問題については、いま中谷委員と私とひとつ区分けをしながら質問を続けます。
#55
○中谷委員 まず質問の前提として私申し上げておきたいと思いますけれども、労働法と刑法とがかなり交錯をしている部分、場面というものがあるだろうと私は思うのであります。要するに暴力はいかぬ、そういうふうに言われますけれども、一体労働法におけるところの団結権、団体行動権、団体交渉権その他の行為がいわゆる一般の私人対私人の行為と異なる部面を持っておるということはこれまた当然であって、ですから労働法あるいは労働運動に対するところのどの程度の理解度を持って問題に対応していくかという点に私はやはり問題の理解のしかた、勝澤委員と国鉄、郵政当局との質疑応答の中で私そういうことを感じたことをまず前提に申し上げておきたい。
 そこで最高裁にお尋ねをいたします。はなはだ遺憾な質問であります。いわゆる全逓の関係でありますけれども、最近静岡の郵便局において傷害事件なるものが発生をしたということで捜査当局が捜査をし、そうしてあまつさえ逮捕、勾留の措置をとられた事件があります。そこでお尋ねをしておきたいのでありますけれども、すでに最高裁のお手元に資料をお渡しいたしましたけれども、勾留状についてお尋ねをいたしますが、私はこの勾留状はなはだ遺憾であります。刑事訴訟規則の第三十七条であろうかと思いますけれども、「訴訟に関する書類は特別の定のある場合を除いては裁判所書記官がこれを作らなければならない」とあることは常識、あたりまえであります。勾留状に警察官あるいはまた警察署の割り印が押されておるような書類が添付されておるというような勾留状、私寡聞にして今回初めて拝見いたしましたけれどもそういうふうな勾留状というものは裁判所においては従来発付しておられるのでありますかどうか。これは労働運動というきわめてきびしい問題、そうして労働組合側はそれは労働運動に対する非常な介入である、弾圧であると言って緊張しておるときに、司法の独立を最大の眼目としている裁判所の勾留状に警察署の割り印を押したところの勾留状というようなものが出ておる。これは一体最高裁としてどのようにお答えになりますか。この点がきょうの質問の第一点であります。
#56
○牧最高裁判所長官代理者 ただいま中谷委員御質問の勾留状の別紙のところに警察の割り印があるというような問題でございますが、勾留状には法の規定によりまして被疑事実の要旨を記載することになっておるわけでございます。その被疑事実の要旨の記載につきましては手で書く、あるいはタイプでいたします、あるいはコピーをいたします、そういうようないろいろな方法があるわけでございます。本件の問題になっております分は、いわゆる送致書の犯罪事実をコピーしたものが被疑事実の要旨を作成するについて使われておるわけでございまして、もとの原本につきましてリコピーしたものを裁判官が勾留状の別紙に添付して、それに裁判官の検印を押してつくられておるわけでございます。リコピーでございますので、もとの印その他がいずれも印影が写し出されておるようにはなっておるわけでございますが、正式の分といたしましては、裁判官の割り印が原本には押されておるわけでございます。したがいまして、原本の効力その他については特に問題はないのではなかろうか。ただそのような、別紙としてコピーを利用いたします際には、そういうような誤解を招くようなことのないように、作成には十分注意すべきではあろうというふうに考えまして、この分については、その点についての配慮はやや欠けておったと言われてもやむを得ないかと存じます。まあ、こういう点は今後も起こらないように、誤解を招くおそれのないように十分事務処理していきたいというふうに私どもも考えております。
#57
○中谷委員 刑事局長、もう少し率直に御答弁をいただきたいと思うのであります。
 特に問題がないように思うというのは、法律的にそのことが裁判官の非常な職責の違反あるいはその他の何かの法律に触れるというふうなことではないと思いますという趣旨で問題がないというふうに言っておられるのですか。そんなことがあれば、世の中やみですよ、まず。とにかくこんなことが誤解を招かないようにしたいと思うと、こういうようにおっしゃいましたけれども、誤解するのがあたりまえでございましょう。勾留状に、どんな形にせよ警察署の判こが麗々しく出ておる。こんな勾留状というようなものは、一般的に誤解を招くかもしれぬ、――誤解をするほうがあたりまえの神経であります。誤解をしないほうがどうかしている。こんなものはそうすると静岡のみならず、和歌山の裁判所でも甲府の裁判所でも出ておるというふうに練達の刑事局長はお考えになっておられるのですか。そうして、これは異例のことなんですか。それとも一般的なことなんですか。今後誤解を招かないようにしたいと。私は誤解するのがあたりまえ、正解ですよ、それはけしからぬと思うのは。非常に遺憾なことだ。遺憾な質問をしますと言って私きょうは質問した。事はとにかく具体的なことですから、私は勾留状の被疑者名も、発付した裁判官名も言わずにお聞きしておるけれども、先刻この勾留状については資料を渡しているからよくわかっておられる。そのことは記録にはとどめません。しかし、誤解するかもしれぬなどというふうな答弁では、少なくとも質問者の私が納得しません。誤解するのがあたりまえではございませんか。
#58
○牧最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたとおり、「別紙被疑事実」の別紙にリコピーを使うというような事務処理はある程度行なわれているのではなかろうかと存じます。ただ、その際にはいまおっしゃられるようなことのないようにそれぞれの事務処理が行なわれているものと考えていますので、いまこういう形が出て、誤解を招くようなことがあるのは遺憾であるということが申し上げた趣旨でございます。
#59
○中谷委員 要するに誤解をするのがあたりまえなんですね、結局。要するに誤解を招くというのは、とにかく裁判所を信用しなさい。これは誤解じゃなしに正解でしょう。これはおこるのがあたりまえでしょう。私はきょうはそういう点を非常にしつこく聞きますけれども、誤解を招くというけれども、誤解されて不本意だというけれども、こんなことについて誤解するといいますか、おこるのはあたりまえです。裁判所に対して裁判所は一体中立じゃないのじゃないかというふうに労働組合の諸君が思うのは当然のこと、正当な感覚だと思う。これはだから裁判所に対して私も法律家の一人としてこういう質問をすることはきわめて遺憾であるということでありまするけれども、やはりこの点について卒直に裁判所のあり方の問題として反省のある答弁をしていただかないと、またこういう問題が起こると心配を私はいたします。ちょっと私、答弁気に入りませんので、あらためて御答弁いただきたい。
#60
○牧最高裁判所長官代理者 まあ事務処理として、たとえば逮捕状請求がございましたような場合に、逮捕状を作成いたします際に逮捕状請求書の記載を利用するということは規則上もございます。そういう事務の流れとして見ていただきますと、その中にはやはり警察官の作成した逮捕状請求書でごごいますので、警察官の割り印も請求書自体には残っていようかと思います。それを利用して逮捕状というものをつくるということもあり得るわけでございまして、すべてそういう事務の流れとしてごらんいただく場合には、そういう請求書に警察官の職印なりあるいは個人印なり押されているようなものも裁判所のほうの文書の中には出てくることもあろうかと存じます。ただ勾留状の場合におきましては、先ほども申し上げましたように、被疑事実を作成いたします際のやはり事務上の手続といたしまして、手書きで書く場合もあり、それをリコピーというものを利用するという場合もある。リコピーを利用する部分について、リコピーで被疑事実が特定され、それの内容が十分明らかになるような形になっておればよろしいわけでございまして、そこに余事なものが記載されることはやはり好ましくないということで、効力自体として問題はないといたしましても、そういう誤解を招くような分は避けたほうがよろしいと考えますということを先ほど申し上げたわけでございます。
#61
○中谷委員 勾留状の効力の問題があって勾留状が無効なら、何もあのとき勾留される必要はなかったわけです。高名な弁護人としてついておったわけですから、勾留尋問室からさっさと被疑者諸君は帰ったと思います。問題は、そういう勾留状を見た高名な弁護士であるところの弁護人が、これはもうとにかく裁判所の姿勢としてはなはだ遺憾である、こういうことを言っていることは、法曹の一員としてその裁判所に対してこの問題について指摘をしているわけですから、今後とにかくこういうような警察官の割り印がついたような、警察署の割り印がついたような勾留状というようなものは厳に注意をして、出さないということをお約束いただけますね。
#62
○牧最高裁判所長官代理者 勾留状に警察官の割り印があるという趣旨ではございませんで、リコピーを利用した、リコピーにもとの書面がそのまま写っておりますので、印影も一緒に出ておることもございます。それは勾留状の割り印として使っている趣旨ではございません。そういう意味で勾留状には直接関係のない、まあ余事のものだと存じますが、しかしそういうことで、法律上の問題ではないにいたしましても適当ではなかろうということで、そういうことのないように各庁もいたしておると存じますし、また今後もそういう点は会同等の機会で注意を喚起するということにはいたしたいということでございます。
#63
○中谷委員 非常に緊張関係がある事件ですからね。ことに労働運動の正当行為だと主張する、いやそうではないんで刑法の違反行為だと言っている、こういうような問題の中でこういうふうなものが出るということは、私はきわめて遺憾だ。会同で十分ひとつこういう問題については注意をし、二度とこういう間違いのないようにしていただきたい。
 そこで私は、この種事案について逮捕するあるいは勾留するというようなことについて、当然その勾留の要件を満たさなければその勾留をすべきではないということは、これはもう刑事訴訟法の規定のとおりでありますが、一体この「別紙被疑事実記載のとおり」といたしまして、別紙がその犯罪事実になっておるというのは、これは私はきわめてずさんだと思いますけれども、いかがでしょうか。
#64
○牧最高裁判所長官代理者 被疑事実の要旨として別紙を利用し、その間に検印いたしますれば、一応書類としての形は整うわけでございますが、その際に指示する形が必ずしも合致しておらなかったということで、その点はいささか粗漏であった。訂正して被疑事実を述べるなり被疑事実を改めるなり、そういう方法をすべきであったと思います。
#65
○中谷委員 ですから私が申し上げたいのは、そういう別紙被疑事実記載のとおりとありまして、どこにも被疑事実は添付されておらないわけですね。犯罪事実が添付されておるということならば、一体この点についても、これまた勾留状の効力の問題にはならないにしても、刑事局長の言われたとおり粗漏である。このことは、ひいて勾留をされたところの被疑者の立場に立つならば、あるいはその被疑者を取り巻くところの大ぜいの関係者の立場あるいはその被疑者の弁護人の立場からいうならば、ほんとうに慎重に勾留の手続をとられたのだろうかという点について私は非常に疑問を感じ、不安を感ずるだろうと思うのです。私は労働運動の中でこういうことがあったことはきわめて遺憾であります。まずこの点を指摘をしておきたいと思います。
 なお、さらに、とにかく私が今後気をつけていただきたいのは、別紙犯罪事実が一から三まで、とにかくたくさん書いてある。そのうちの一つだけを、これで勾留しましたよというふうなのも私は雑なやり方だったと思うのです。こういうことも、裁判所というものが今日司法権の独立、裁判の中立ということを言われている中において、全体の裁判官のあり方、勾留状のあり方として、会同等においても明確にしておいていただきたいと私は思います。そうでなければ私は、警察やその他国鉄、公安等に対する、当然のことでありますけれども、労働組合の諸君がたいへんな不信感を持っておる。それと同じような不信感を裁判所に対しても持つということも私はあり得ることだと思います。これは遺憾なことであります。この点についてもう一度ひとつお答えをいただきたいと思います。
#66
○牧最高裁判所長官代理者 勾留した際の被疑事実が非常にたくさんあるのに一部分であるというような場合に、それを抜き書きして別紙に付するということがこれは通常であろうかと存じます。したがいまして、勾留された被疑事実とは直接関係のない事実が出てまいっておりますのは、やはり書類の作成の事務としては多少粗漏の感を免れないというふうに考えます。
#67
○中谷委員 法務省の刑事局長にお尋ねをいたしたいと思います。
 刑事事件の捜査について、刑事法の専門家である刑事局長にお尋ねをすることははなはだ恐縮でありまするけれども、当然捜査は任意捜査が原則でございますね。強制捜査、任意捜査ということばがありまするけれども、任意捜査が原則であろうかと私は、思います。これはお答えが任意捜査が原則だというお答えが出るわけですから、その点について特にお答えは求めません。そこでいま私が申し上げておりますところの事件の名前、これは事件というのかどうか、静岡郵便局で起こったこのできごと、これについて郵便局の局員の諸君が八名、正確に言うと局員の人が七名で、組合の中央本部の書記さんが一名、こういうような人たちが逮捕された、こういうふうなできごとであります。私は、経過を申し上げておいて、今後こういうふうなことのないようにしてもらいたいということでひとつ質問いたしたいと思うのでありまするけれども、弁護士の伊達さんともう一人の弁護士が静岡の地検に行って、そうして次席検事の古谷氏と会見をして、任意出頭については担保をするということで、その点について次席検事との間に話を十分に詰めた。そういうふうな状態の中で、したがって、その話に基づいて任意出頭について弁護士伊達先生などはとにかくたいへんな努力をした。そういうふうな状態があって、そして時日の経過の後に強制逮捕というできごとがあった。私はこの話を聞きまして、一体では何のために次席検事と弁護士とが、ことに私たちの大先輩であるところの伊達弁護士とが任意出頭させます、任意出頭してください、それでひとつ捜査しましょうというような話をしたのか。どんな状況の変化があったのか。これは私をして言わしめればはなはだ残念であるし、検察庁との話し合いというものは、今後相当まゆにつばをつけて話をしなければ話ができないという感じがいたすわけでございます。この間の経過はどういうことであったのか、いまなお納得いたしかねますので、お答えをいただきたいと思います。
#68
○辻説明員 ただいまの御指摘は静岡郵便局の事件であろうかと思うのでございます。この事件につきましては、御承知と存じますが、静岡地検といたしましては、本年八月十日に事件を受理しておりまして、同月の十九日に処分をいたしておるわけでございます。この事件の捜査にあたりまして、ただいま中谷委員が御指摘になりました当該事件の弁護士と、静岡地検の次席検事との間に身柄の出頭について話し合いがあったかどうかということにつきまして、実は私はその点については報告を受けていないわけでございます。そこでこの事件についてどういう話し合いがあったかは存じないのでございますけれども、この種の一般に検察の運営といたしましては、ただいま中谷委員の御指摘のとおり、捜査は任意捜査を原則とするものでございます。いたずらに被疑者の身柄を拘束するということはあくまで避けるべきであろうということは当然でございます。そういう意味において、検察は常に謙虚な姿勢で事に処しておるわけでございますが、おそらく私は、やはり事件の捜査を開始いたしまして、この事件の場合に、やはり関係の被疑者の方々の間に証拠隠滅のおそれがあるというような事態が、その捜査の経過とともに出てまいりまして、そういう判断のもとにあるいは逮捕したのではないかというふうに考えるわけでございますが、何ぶんこの具体的な事件について、検察庁の次席検事と当該弁護士さんとの話し合いそのものを実は私は報告を受けておりませんので、明確なお答えができないことを残念に存ずる次第でございます。
#69
○中谷委員 私、この質問をこの委員会で何回も何回も繰り返してするというのもなかなか困難なことだろうと思うし、私は次の十月の閉会中審査において、またとにかく別の全逓、動労、国労にこの種の事案が出てきて、またどこの裁判所の問題、どこの地検の問題というような質問をするような事態がこないことを希望いたしますので、いま刑事局長はその間の事情を聴取しておらないということですが、ひとつその間の事情をよく話を聞いておいてください。
 そこで、結末については御存じでございますね。結局一名は起訴猶予、あとの七名は略式による罰金、こういうことであります。とにかく私の見るところによれば、もう私自身も実務から遠ざかって長いわけで、それほど自信はありませんけれども、とにかく起訴猶予とあと全員罰金、これは検察庁としては、あるいは裁判所も公正な処分をした、こういうふうに言われているのだろうと思います。そうだとすれば、罰金等の事件について、とにかく供述そのものがはっきりしないなどというふうなことだったというふうにお話しになるのですけれども、結局結果が罰金等の事件について、とにかく逮捕をするというふうなことは、やはり原則に戻ってこの種の事案については任意捜査ということでやはり慎重な捜査があってしかるべきというふうに私は思いまするけれども、この点はいかがでしょうか。結果からもう一度捜査のあり方についての御検討を、はたしてこれは逮捕しなければならなかった事案であるかどうか、この点もひとつ検討をされるということをお約束をいただきたい。
#70
○辻説明員 ただいま検察の最終処分が罰金の請求であった、そういう事件について捜査の過程において身柄を拘束するということはこれは均衡を失しておかしいのではないかという御指摘であろうと思います。しかしながらこれは検察の処分と申しますのは、まず事案を的確に捜査いたしまして、事実関係あるいは関係被疑者の情状であるとかそういうものを公正に判断をいたしまして、その結果の検察処分というものが出てくるわけでございます。そういう点がございますので、必ずしも罰金請求の事件について捜査の過程において身柄を拘束するのは不当であるということは一般論としては言えないわけでございまして、むしろまず検察処分の前提として正確な事実関係を確定するということのために、これは万やむを得ない場合には、やはり刑事事件であります以上、身柄の拘束ということもこれはやむを得ぬ場合もあろうかというふうに考えるのでございます。
#71
○中谷委員 まさに大山鳴動してネズミ一匹というふうな事案について、これはだれについてでもとにかく逮捕されて勾留されるというのはたいへんなことだと私は思うのです。そういうようなことで結局結果としては罰金だった。しかしお互いに法律家ですから、この捜査に着手するとき、大体これはこの程度の事件だというくらいのことは見通しがつくわけでございまして、そういうふうな中で、この程度のものなら大体任意でいくのが当然だろう。そしていま刑事局長がはしなくもおっしゃったように、万やむを得ない場合に限って強制捜査をするのだ。だから私がこの種の事案について検討されたいと言うのは、万やむを得ない場合であったのかどうか、この点がやはり問題でございますね。万やむを得ないというのは、ことばどおりお聞きすればとにかく千分の一くらいの確率の場合、万だから一万分の一ということに相なると思うのです。それを逮捕して――だからその点についても反省というか教訓というか、検討は当然されてしかるべきだということを私は申し上げておくのです。
 そこで郵政省、私は郵政省とか国鉄とはあまり縁がないので、最高裁、刑事局長に聞いておるので、自分のほうに質問がこないと思っておったら間違いなので、これから郵政省に対して質問させていただきますが、この静岡の事件というのは、郵政省としては何が捜査の端緒になったというふうにあなたのほうは理解しておられますか。
#72
○北説明員 暴力行為の被害者本人の告訴である、こういうふうに把握しております。
#73
○中谷委員 詳しいことは、御存じでしょううか。いつ、どんな告訴をされましたか。
#74
○北説明員 告訴状の内容までは存じませんので、そういった御趣旨であれば存じませんが、どういう事案であったかということは存じております。
#75
○中谷委員 捜査の端緒は告訴ですか、申告ですか。告訴は間違いございませんか。
#76
○北説明員 告訴であると把握しております。
#77
○中谷委員 その資料の出どころは。
#78
○北説明員 当該局からの報告でございます。
#79
○中谷委員 そこで、一体そういうふうな当該局からの報告というのが、どういうプロセスで資料として入手されるのですか。この場合、告訴したのは官の人ではございませんね。――そういうふうな中で、当該局からの報告だということですけれども、そうすると一体郵政省は次のような指導をしておるのですか。全逓の組合員を告訴した場合に一々とにかく報告をせよ、そして告訴状も加筆、訂正――先ほど一人制の裁判官の問題が出ましたけれども、意見を述べて、こういうように書いたらよかろうという指導までしておられるのでしょうか。そういうようなことについて私は非常に疑問を感じますけれども、一体どういうことなのですか、お尋ねしたい。
#80
○北説明員 先ほど告訴だと申し上げましたが、当該局から告訴したという連絡が上がっていたと私ども把握しているのでございますが、告訴を受けられたほうからいまお話がございました、個人の申告であった、こういうことでございます。
#81
○中谷委員 だから申告でも告訴でもどちらでもよろしいですけれども、私がきょう聞いているのは――私は法務委員会ではこういう質問のしかたをするのです。私は申告ならいっそう――これは口頭の申告ですね。書面の申告ですか、口頭の申告ですか。
#82
○北説明員 そこまで存じません。
#83
○中谷委員 口頭か書面かわからない。これはこういうことばはこの委員会で使ってもいいでしょうね。いわゆる全逓でないほうの組合ですね、そういうふうな口頭による申告などということを、なぜ郵便局の局長さんが知るのでしょうか。これは一体どういうことなんでしょう。とにかくこれは全く個人対個人の、言ってみれば、一つのトラブルでございますね。それがなぜ麗々しくそこの一覧表に記載されてくるのですか。そんなことは私は非常におかしいと思うのです。しかもどんな処分を受けたんですかというようなことは、これは逮捕された、勾留されたということは新聞にも載るでしょうし、そのことはわかります。しかし申告をしましたよというふうなことをいつ知りましたか。これは大体そういうことですぐ局長のところに報告にいくのですか、いかせるようにしているのですか。これは個人の自主的な判断にまかせるべきこと、むしろあなたのほうがそういうのは申告せよというふうに指導しているような形跡さえあるような気がする。申告をした、告訴をした、ちゃんと記録に残っておりますということをはっきり言うところを見ると、どうもそんな感じさえもして、私はそのことがはなはだ遺憾である。そのことが職場を暗くしていることではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
#84
○北説明員 個々のケースにつきまして、これは告訴せよとかいうことは指導いたしておりません。本件の場合にもそういったことはなかったと思います。
 それではどういうことで私どもが承知しておるか。これはいわゆる情報でございます。したがいまして、たいへん失礼いたしましたけれども、実際は申告であったようでございますが、告訴という形で伝わってきたということも情報であったということに基因すると思います。情報というものがどうしてとれるか。これはいろいろな場合があると思います。本件の場合的確にどういう形でその情報をとったかということについては調べてございませんけれども、何せ本件は相当多数の人間が局内で大騒ぎをしたことでございますから、その大騒ぎしたということは当然管理者は承知しておるわけでございます。しかもその被害者というのが、ある組合のその局の役員でございます。そういった関係でそっちのほうから告訴といいますか、申告をしたという話があったんじゃなかろうか、こういうふうに思いますが、この件は具体的にどういう情報経路でどうなったかということについては把握しておりません。
#85
○中谷委員 情報なんということばをお互いに使わないようにしたと思うのです。中国で日経の記者が情報ということば、いい情報が入ったと言って追放されたとか勾留されたという話がかってございましたね。情報なんということばは大体スパイをするというようなことによく似ていることばなんです。だから、全逓の諸君の郵政省に対する、ことに人事局長に対する不信感というのは非常に強いのです。情報ということを言うとスパイ網を張りめぐらしているんじゃないかというふうな感じさえもするので、何かもう少し適当なことばはございませんか。
#86
○北説明員 考えてみますが、恐縮でございますけれども、たとえば情報産業というようなことばもございますので、特に気がつきませんでしたが、考えてみます。
#87
○中谷委員 そういうふうな情報集めの人が置いてあるのですか。
#88
○北説明員 情報集めの人がおるわけではございませんけれども、労使関係でありましょうとも事業関係でありましょうとも、やはり一定の――情報ということばは御容赦いただきたいと思いますが、情報がなければ仕事ができないというのが通例だと思います。
#89
○中谷委員 そこで私は、そういうふうな静岡の事件についてばかり質問しても、あと私の先輩の勝澤委員が詳細に、他の各論の問題について質問の準備をしておりますので、この程度にしておきますが、私は一点、国鉄当局と郵政当局にお尋ねをしたいと思うのです。
 人を告訴するあるいは人を告発するということは、それ自体たいへんなことだと私は思います。そこで郵政省は、昭和四十七年の一月から六月に発生したおもな暴力事件等についてなどというところの詳細な資料をおつくりになっておられるようであります。この一々の内容についてはもう私お聞きしません。私たち刑事事件を若干やっておる者にとっては、こんなものを暴力事件としてあげなくともと思われるようなものもある、私に言わせれば。労働法との交錯の中において、はたしてこれが暴力事件になるのだろうかと思われるようなものもある。
 それはさておいて、告訴、告発の基準は一体何でございますか。要するにこの中には告訴してあるのと告訴してないのとございますね。そうして各局によって、東京、名古屋、金沢、大阪、熊本、仙台、札幌、告訴、告発のしておるものとしておらないものとの件数の違いもかなりある。ほとんど告訴しておる局もある、地方もある、あるいはまた全然告訴が少ないところもある。一体どのような事案について告訴し、どのような事案について告発をする。まず郵政省としては、告訴と告発というものをどのように理解しておられるのか。告訴とは何か、告発とは一体何か。どんな場合に告訴をし告発をするのか。先ほどの申告の話との関係においても、私はひとつお聞きしたいと思う。しかも各地方地方においてかなりばらばら。私は本来、あまり告訴、告発なんというようなものはしないほうがいいと思うのですが、この告訴、告発の基準は一体どうなんですか。そんなものはお持ちなのかどうか。告訴とは何か、告発とは一体何なのかということについて局長からお答えください。
#90
○北説明員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、省といたしましては、告訴、告発をせいということを言っておるわけじゃございません。したがいまして、こういったものは告訴だ、こういったものは告発だというような基準も全然ございません。結果的に、起こりました事件のうちで、告訴、告発はむらがあるのじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、それもそういったことに基因しているのではなかろうか。要するに本人次第であるということに基因しておるのではなかろうかと存じます。
#91
○中谷委員 告訴権の乱用とか、告訴そのものも私はやはり適正でなければならないと思うのです、ことに官側の告訴などというのは。告訴したければしたらいいというのは、人事局長の答弁ははっきり言って無責任だと思う。指導してないということは、ある男が憎いと思ったら告訴する。そうしてこのことは告訴しないで円満に話をつけようという話があれば告訴しない。そういうふうなことでは私はおかしいと思うのですよ。結局告訴する、告発しないというのは、それぞれの官の人の全く自由気ままになっておるのだ。それでは人事局長個人の見解は一体どうなんですか。自由気ままになっているのかどうかということを御答弁いただいて、次にあなた自身は一体告訴、告発についてどう考えますか。
#92
○北説明員 先ほどの答弁、若干不備でございまして、最初の御質問が組合同士ということに主眼がございましたので私そのベースで話をしておりましたが、一般職員については別に何も言っておりませんが。したがって本人の自由。管理職員につきましては、いろいろな会合がございますので、当然そういったものを乱用するのじゃないぞということは言っております。
 それから、私自身の見解、これは現実にそういった局面に遭遇しておりませんので、いまにわかに考えるわけで恐縮でございますが、やはりものごとについては軽重があろうか、どうしても黙視できないものについては告訴あるいは告発、しかし何が何でも細大漏らさず何かあればすべて告訴、告発ということは、これは非常識だと考えております。
#93
○中谷委員 そういうふうにおっしゃいますけれども、あなたのほうの資料、お持ちでしょう。これは持ってこられたでしょう。四十七年一月から六月に発生した「主な暴力事件等について」と称する資料、あなた持ってこられたでしょう。それを出してください。
 要するに、私が言っているのは、「管理者等に対するもの」というところの欄の中で、東京は九のうち八、大阪は七のうち一、熊本は十九のうち一というようなことに相なっておる。こういうことについて、私はその次の欄の、いわゆる「他労組組合員に対するもの」という点についての質問に入ってないのです。この点は一体どうなんだと……。そうして、事の軽重はあるだろうと言うけれども、私は、とにかくこの資料を全部見てみました。そうすると、全治三日間という、ネコのつめにかかれたようなものまでも、これは暴力事件になっておる。耳のはたでちょっと大きな声を出したというようなものもなんとかとなっておる。だから、一体これは官側が、とにかくいうてみれば告訴権の乱用の疑い十分じゃありませんか。告訴とか告発とかということの重大性というものについて考えずに、あの男は憎いからとにかく告訴しよう、告発しようというふうなおそれが、郵政省の資料の中からあらわれておるじゃありませんか。現にあなた自身は、そんなことの指導をした覚えはないとおっしゃっている。官側に対しても指導した覚えはない。そんなことで告訴権の乱用なんということは、私は検察庁も迷惑だろうと思うのです。警察さえも私は迷惑でないかと思うのです。こういう点については、いかがですか。この表を見て言ってください。
#94
○北説明員 表は、恐縮でございます、ただいま持ってまいりませんでした。
 管理者が告訴、告発する場合につきましては、先ほど申し上げましたとおりでありまして、ものごとの軽量をよく考えるあるいはその相手方のその後の態度というものもよく考える、こういった中から判断をすべきだと思っております。
 この件数は、数でございまして、必ずしも事案の軽重あるいはいま申しましたその後の相手方の出方、そういったものについての詳細がございませんので、そういったことを勘案しなければ、事件と、事件の中で告訴案件の占める率から直ちに告訴の当否ということを論ずるわけにはまいらぬと思いますが、先生御指摘のこともございますので、私どものほうでよく管内別等につきまして今後見まして、そういった、少なくとも管理者の場合、乱用にならないように、十分気をつけてまいりたい、かように思います。
#95
○中谷委員 乱用になっているということを申し上げているのです。大体それは、もうとにかく見てみまして、別にその後の本人の態度なんというようなことは情状の中における、あなたのほうはそういうことを言いたいのでしょうけれども、それはたいしたことじゃない。とにかくその事案として書かれてあるものを本体として見た場合、全くそれはでたらめきわまる処理のしかたがなされておる。だから、今後十分に検討するじゃなしに、現在までやっておることが、ただ全逓憎しのやり方が行なわれている点について、きわめて遺憾だということを申し上げておきたいと思うのです。その表を見ていたら、それは完全にそういう結論が出てまいりますよ。そのことを私は申し上げたい。
 そこで、国鉄当局に同じことを質問したいと思うのでありますけれども、国鉄当局はどういうふうにお考ええでしょうか。要するに、告訴、告発などが行なわれるというふうなことは、一般的にいって好ましいと私は思わないわけであります。こういうような問題について、とにかく労働運動の中におけるところのいろいろなトラブルがあった、あえてトラブルと申します。そういうふうなものがあったときに、それについて話し合いで話ができればそれにこしたことはない。それについて、あらゆるものについて、とにかく警察の世話になるのだ、とにかく検察庁へ話を持ち出すのだというようなやり方は、私は職場そのものにとっても決していいことではないと思うのです。この点についてひとつ御所見だけ承っておきたいと思います。
#96
○加賀谷説明員 ただいまの御指摘の点、職場のささいなことについても何でも告訴、告発をするというふうなことは、一つの職場管理といいますか、職場の日常生活の調和の面では決して好ましいことではないと思いますが、国鉄に起きております問題を見ますと、非常な暴力がふるわれておる。国鉄の管理者である助役が被害者個人として告訴した例もございますが、これなんかも組合員を多数で取り巻いて暴力をふるっておる中に、見るに見かねて割って入って自分自身も傷害を受けたというようなこともあるわけでございます。これは部下を告訴するというようなかっこうで残念なことでありますが、しかしこういったことが再三再四行なわれるという中で、個人の被害者としての意思によってやられたというふうに解釈するわけでございます。したがって、当局としまして特に告訴せいとかいうふうな指導はしておりません。全くその個人の被害を受けたといいますか、その程度において行なわれているというふうに解釈しております。
#97
○中谷委員 警察庁おいでいただいていますか。――そういうふうな一つの状態の中に、私は決して好ましい状態だと思いませんが、そうすると、結局、官側がどんどん告訴権を乱用して告訴をする。そういうふうな中で、とにかく官側のほうからもいろいろな問題がある。その異なる組合との間にトラブルが起こるというふうなことで、いわゆる全逓あるいは動労、そういうふうな組合からの告訴というものも相当件数あることはすでに御承知いただいているとおりだと思うのです。ところがこれが官側等の告訴についての捜査は非常に早い。ところがどうも全逓、動労等の告訴については非常にほうり散らかしの状態だというふうなことで、まさに非常な不満として私は聞き及んでおるわけでございます。そういうことが事実だとすればこれはたいへん遺憾なことであります。この点について簡単にひとつその間の状況を御説明いただきたいということが一点と、それから私は任意捜査原則ということを先ほどから申しましたけれども、ことに動労に対するやり方というのは任意捜査どころか、直ちに強制逮捕、強制捜査というやり方がごく最近非常に行なわれておるというふうなことについて、私はこれは先ほど法務省刑事局長が御答弁になられたように任意捜査原則という点からいって、どうも全逓に対するやり方以上の強制捜査方式というのがとられておることについては遺憾だと思います。いろいろな話を長く答弁をされれば私もまたいろいろなことを質問しなければいかぬことになりますので、この点についての御答弁をいただいて、あと勝澤委員のほうから質問をしていただく、そういうことですので、その点について御答弁をいただきたいと思います。
#98
○斉藤説明員 お尋ねのうちの告訴、告発の処理の状況でございますが、この処理状況を私どもが把握しておる数字を最初に申し上げておきたいと思います。(中谷委員「簡単でよろしゅうございます」と呼ぶ)国鉄関係は、鉄労関係当局関係。鉄労が四十二件、当局のものが十一件、それから動力車から告訴告発のあったものが十二件、それから国労からあったものが一件、それから国労脱退者からのものが一件、六十七件ございます。その処理の状況を見ますと、これはたまたまこういう結果になっておるのですが、動力車の告訴、告発事件は十二件のうち七件を処理しております。五件はまだ捜査をしておる。それから国労の告訴、告発は一件でございますからこれももう済んでおります。一人を検挙しております。それから鉄労が四十二件ございますが、これはまだ十九件しかやっておらなくて、告訴、告発が二十三件残っておるといったことで、別にどっちを特に急いでおるということではございません。むしろ数字から見ると鉄労の告訴、告発事件が二十三件も残っておるという状況になっております。郵政も同じようなことで、数字は持っておりますけれども、そういう結果には数字の上ではなっていないと承知しております。
 それから逮捕権については、先ほど法務省の刑事局長から非常に詳しくお答えがあったのでありますが、私ども全く同じように考えておりまして、捜査は任意捜査が原則である。逮捕権の行使というものは法で定められたやむを得ない場合に行なうのだというふうに基本的に考え、そしてそのような運用を続けております。ただ個々の事案について逮捕権を行使しなければならぬというのが、一つ一つ事件の態様が異なりますから一がいにここで詳しくお答えできないわけですが、逮捕権の運用というものの適正を期するということについては御指摘のとおり今後考えてまいりたいと思います。
#99
○中谷委員 これで私の質問を終わりますが、郵政当局は資料もあまり持ってきておられないし、非常に私はきょうの質問のやりとりは不満でありますので、あらためてこれはもう一度、私は質問したくないと言ったけれども、もう一度また来月しなければいかぬことになるかもしれませんから、今度おいでいただくときには、ひとつたくさんの資料をもって、質問については的確に答えられるような準備をしてきていただきたい。私はやはり明るい職場をつくるということのために質問をしておるわけですから、私はきょうのような資料――自分のところでおつくりになった資料も持ってきてないというふうなことではきわめて遺憾であるということを申し上げて、勝澤委員にかわりたいと思います。
 質問を終わります。
#100
○谷川委員長 勝澤芳雄君。
#101
○勝澤委員 郵政についての質問はいま中谷委員が質問いたしまして、いずれまた資料を十分検討させていただいて引き続き質問させていただくことにいたしまして、社労のほうでお待ちになっているようですからひとつ社労のほうへお出まし願いたいと思います。
 私は主として国鉄の関係について質問いたしますが、いま告訴、告発事件の取り扱いについて、警察側から公平にやられておるという御説明があったわけであります。そこで、はやり公平ではない、特に片手落ちにやられているのではないだろうかという実は批判があるわけでありますので、私は、具体的に品川電車区長の暴力事件、田町電車区長の暴力事件が動力車側から告訴告発されておりますけれども、この事件はどういうようにいままでなっておりますか、御説明賜わりたいと思います。
#102
○斉藤説明員 私のほうにお尋ねだと思ってお答えいたしますが、品川電車区の区長の傷害事件というのは、これは五月九日に発生した事案のお尋ねかと思うのですが、品川電車区の区長が管理者数人とともに構内において組合側と勤務のことについて話し合いをしておった。その際に国労員をなぐるなどの暴行を加えて、三週間の傷害を与えたという事案でございますが、これは五月十二日に告訴を受けまして、そして八月八日、区長を傷害でもって書類送検しております。それからもう一つ、田町の電車区長の傷害事件というのがございまして、五月十一日の事案でございますが、これも同じく田町電車区の区長が管理者十数名とともに話をしておった。その際、田町の支部の委員長に対して暴行を加え、そして三週間の傷害を与えたという事案でございます。これはやはり五月十一日に告訴を受けまして、八月二十八日に調べを完了して書類送検いたしておるわけであります。
#103
○勝澤委員 検察側、その後のちょっと御説明を願います。
#104
○辻説明員 ただいまの品川電車区長の傷害事件及び田町電車区長の傷害事件でございますが、ただいま警察庁当局から答弁がございましたとおりでございまして、前者の品川電車区長の事件につきましては、八月八日に警察からこの書類及び証拠物の送付を検察庁において受けております。後者の田町電車区長の傷害事件につきましては、これまた本年の八月二十九日に警察から書類及び証拠物の送付を受けておりまして、この両件とも現在東京地方検察庁において捜査中でございます。
#105
○勝澤委員 私はこういう事犯というのは相当慎重に取り扱っていると思うわけでありますけれども、やはり一方から見るとどうも片手落ちに見られがちなものですから、そういうように見られないように十分な配慮をすべきだと思うのです。いま経過がわかりましたから、いずれ関係者の中で十分検討されて、どういうように取り扱われるかということは御意見が出てくると思いますので、それは終わります。
 そこで、国鉄側にお尋ねいたしますが、ことしの七月十四日、富士の電車区で動労の組合員が逮捕されるという事件が起きたわけでありますけれども、このときの実情をいろいろお話を聞いてみますと、どうも国鉄の管理者として一体これでいいのかという点があるわけであります。
 それは、この本人が逮捕されたのは七月十四日の朝五時でありますけれども、この本人は乗務員でありますから、前日の二十二時三十五分に乗務が明けてきて、その日の零時十九分の汽車に乗る予定でありましたけれども、これが運転休止のため、翌日の十時に出るということで、自宅に帰らずにこの電車区の休養室で機関士と一緒に休養した。その休養するときに、二段ベッドでありますから、機関士は下で休養する。この人は機関助士ですから上に休養する。先輩を下に、後輩は上に、こういうことに大体きまっておるそうですけれども、この日だけは当直の助役が、おまえは下に寝ろ、機関士を上に寝せろということで、わざわざ上に寝べき機関士が下に寝かされた。それから翌日に警察官が五時に来る以前、電車区長は四時二十分ごろ電車区に出てきて、そして五時に警察官が来て、引き渡すときにわざわざ区長がその本人を起こして警察官に引き渡しをした、こういう実情であるわけであります。
 そこで、前日の夜寝るときに、あしたの朝逮捕される、逮捕されやすい位置に寝かした。しかもまた逮捕状を執行する五時以前の四時二十分ごろ、区長が助役の呼び出しで来ている。こういうことから考えてみて、警察、検察当局、逮捕状の執行の打ち合わせを事前に国鉄当局側と一体いかなる理由でされたのか、あるいは国鉄自体はそれを聞いてわざわざ区長を起こして呼び出しをして、そして区長が立ち会いのもとで本人を警察官に引き渡さなければならぬ必要性が一体あったのかなかったのか。そういう点から職場の中では、助役や区長は警察官と一緒になって本人の逮捕に協力した、こう言われて不信を買っているわけでありますけれども、その点についてひとつ両所の御見解を御説明願いたいと思います。
#106
○斉藤説明員 富士電車区の事件の場合に、国鉄側と逮捕を相談しながらやったんではないかというお尋ねでございますが、警察はこの事件に限らない、警察が捜査の段階で、捜査を進めていく内容が捜査過程において当然知れる場合がございます。たとえば相手方に照会をして資料を求めたというようなことがございますれば、何かやっておるなというようなことがだんだん感づかれてまいるのですが、そういった事前に捜査が外部との関係でわかってくること以外に警察が被疑者及び関係者に対して、名誉、人権上のこともございますし、逮捕を連絡して関係者と相談しながらやるということはいたしておりません。富士電車区の場合も、もし鉄道のほうで御承知になったら、それはこっちで先ほど申し上げたようにその所在、本人が当日はたしておるかどうかということを事前にそれとなく尋ねてみたり、あるいは勤務の状況を見たりすることでもって、わがほうの捜査進展状況が何となくわかったのではないかというふうに思っております。ただ相手が捜査機関である場合には、たとえば司法権を持っておる立場の人である場合、たとえば公安職員から公安職員がおやりになっておる事件を引き継いできたというような場合には、当然捜査関係者として、捜査の関係機関としてある程度の捜査経過というものはわかるということはございますし、私どもも特別司法警察職員であるという者に対しては、必要に応じて連絡をするということはいたします。
#107
○加賀谷説明員 ただいま警察のほうのお話のとおりだと思いますが、私のほうも、この前日からどうのといういまお話がありましたけれども、そういった詳細については実は聞いておりません。事前に相談する、連絡を受けるというようなことは全然ございません。
 それからまた、区長が朝早く出てくるというようなことは、まあ区長の職務柄、いろいろな場合にそういったことはあると思うのですが、その場合、あるいはその問い合わせがあるとか、何かそういったものによって区長の個人的な考慮からそういうことがあったんではないか、そういうふうに問いおる次第でございます。
#108
○勝澤委員 私は、この事実のできごとを詳細に申し述べているわけです。ですから警察のほうは、逮捕状執行には相当以前に国鉄当局側が――国鉄当局者は、あしたの朝この乗務員は逮捕状が出されている、そういう意図のもとに、夜の二十二時三十五分に乗務を終わってきた職員を――そこからもう逮捕が執行されるであろうということが言われておるわけです。ですから、それを私は具体的事実としてこう指摘しているわけです。逮捕状というのは、一体そんなに第三者に漏れていていいものなんですか、どうなんですか。それでなければ、夜寝るときにいつも上に寝ている者を、おまえ下に寝ろ、また寝る場所も当直助役が指名すること自体がおかしいわけですよ。実はこの問題、私は当時静岡の検察庁の次席検事に会いました。会ったときに、動力車の関係者からこういう事実があったんですよと次席検事に申し上げた。次席検事は、いやそんなばかなことはないでしょう――それはあたりまえでしょうけれども、ちょっと申し上げておきました。ですから、私には何か国鉄当局と官憲と一緒になって問題をやっているというふうに見られるんですよ。それが事実でなければ事実でない、誤解なら誤解だということを明確にしてもらいたいと思うのですけれども、いまの場合は、私が言いましたように、十時三十五分に乗務が終わって、来て寝るときに、おまえは上に寝る、きょうは下に寝ろと電車区の当直助役から指示された。そして五時に逮捕されたのですけれども、四時二十分に電車区長は助役の呼び出しによって電車区に来ておったというのですから、四十分も前に来て、そして警察官が来たときに、区長がその本人を起こして――区長が起こす必要はないわけですからね、当直の助役がおるわけですから。区長が起こして、そして警察官に引き渡した、これは事実なんですよ。この事実を見てみると、一体警察官は逮捕する前にいかなる理由で国鉄に通報しなければならぬのか。ほかの事件を見てみましても、みなそういうことを行なった形跡というのはないのです。これだけが特殊な問題としていわれているわけです。その点で実は警察の逮捕状執行についての疑問があるわけであります。あるいは国鉄自体に対する疑問は、助役が、いつも上に寝ている者に下に寝ろと言う。そしてわざわざ区長を呼んできて、区長に起こさして、区長の手から警察官に渡さなければならぬ、一体区長というのはそういう責任があるのかどうか。これもまた区長としてのあり方としておかしいじゃないか。現地でこの問題はいろいろ聞かれたようですけれども、黙して語らず、そのままにされている。ですからそのことがまた警察に対する不信、あるいは当局の区長や助役に対する不信――この事件そのものが当局側の山本という助役が告訴した事件ですからなおさら職場の不信感というものは高まっておる。そういうことですから、その不信感を除去するためにも真実をここで明確にすべきだと私は思うのです。もしおわかりにならないのでしたら、よくお調べになって、次の機会にでもやはりその事実を説明していただきたいと思うのです。
#109
○斉藤説明員 一般の逮捕権の運用について先ほどお答えしたのでございますが、いま重ねて富士電車区の事件についておかしいじゃないかというお尋ねでございますけれども、この場合だけ特別な扱いをする考えは私ども毛頭ございませんで、逮捕行為が事前にわかるということはどんな場合でも非常に困る。よく新聞に、けさ手入れかなんて出ますが、あれは絶対しゃべったのではなくて、逮捕状の発行をしたり、それからそのために捜査員が動いたりすると、そういうことでだんだんわかってしまいまして、逮捕する前に新聞に出ちゃうということで、まことにまずいことが多いのでございます。そういう捜査上のまずさのみならず、御指摘のように捜査の公正を疑われるので、逮捕をするからということで関係者と相談をするということはいたしておりません。ただ富士の電車区の場合が、お尋ねのとおり、それじゃどうして知ったのかということで、私もおかしく思いますが、実はこの席に参ります前に、先生の御質問がわかっておったので確認したところ、そういう事実はないと現場では言っております。ただ先ほど申し上げたように、逮捕する場合に本人がいないところに行ったってしかたがないので、おるかおらないか、所在を確認したりいたします。そういうことあるいは勤務の都合を聞いたりいたしますので、そういうことで関係の上司の人が、これは逮捕するんだなということを考えるなり、あるいはそのときの具体的な表現がわかりませんが、逮捕するんだということを感ぜられるような言い方をしたのかわかりませんが、そうだとすればまことに不十分なことで、至らないことで、警察のすべての捜査の公正を疑われるということでございますので、本件については、もしそういうことであれば十分反省して、今後そういうことのないようにいたしたいというふうに思います。
#110
○勝澤委員 国鉄はどうですか。
#111
○加賀谷説明員 その前日にベッドを上の者を下にするというようなお話の件ですが、これは私どもも詳細を聞いておりません。もしそういうことがあったとすれば、別にベッドの上だから下だからということで起こしやすい、起こしやすくないというようなことでもないと思いますので、これはまた別の問題で何かそういうことがあったのじゃないかというふうに考えます。また国鉄の乗務員の勤務というものは御承知のように非常に不規則でございまして、本人がいつ帰ってきてどこにおるかというようなことも、専門家でないとなかなかわからぬという面もありますので、そういった面で、たとえば警察のほうからお話がありましたように、本人がおるのかおらないのかというような問い合わせはあったのじゃないか、そういうふうに考えております。
#112
○勝澤委員 加賀谷さん、この問題は事前に逮捕を知っておった、そして、その逮捕について国鉄の当直助役や区長が協力をした。そこについての不信感があるわけです。ですから、警察と国鉄当局は一体になっおるのじゃないだろうか。しかも告訴したのが山本という助役だ。そういう不信感というのが重なっているわけです。わざわざ出てこなくていい区長がわざわざ出てきて、そして区長が立ち会って引き渡しをしている。だからそういうやり方の管理者としての職員に対するものの考え方、取り扱い方、これが職場の不信を呼んでいるわけです。ですから、あなたも、先ほど郵政当局も、ただ職場で起きている問題は暴力事件、暴力事件と言っているが、なぜそれが発生しているのか、発生した原因、どうして起きたのか。警察も検察当局もあるいは裁判所も、これはたいへんな迷惑だと思うのですよ。起こっている原因が、いまあなたは簡単に言うけれども、職場の管理者の一人一人の職員に対する、あるいは組合員に対する思いやりといいますか、管理のしかたといいますか、それが実は問題なんです。ですからこの問題について、それはもののとりようでいろいろにもとれますけれども、組合側でとっている見方というのは、おかしい、区長と助役と警察とぐるになっている、こう見ているわけでありますから、ひとつそういう点は、いまそんなことは警察もなかった、あなたもなかったと言うでしょう。言うでしょうけれども、事実は、富士の電車区の全部の職員は、そういうことを知った人は疑問を持っておるわけでありますから、それはやはり十分釈明をすべきだと思うのです。よくお調べになって、実情を十分聞いていただきたいと思います。その結果をまたお聞かせ願うことにいたします。
 それから次の問題は、甲府の機関区の問題であります。これは警察あるいは検察当局のほうも御存じだと思いますけれども、逮捕状がなくて逮捕したという話でありますが、ひとつこの辺の経過について御説明願いたいと思います。
#113
○斉藤説明員 ただいまお尋ねの件は、わがほうの山梨県の警察でもって六月二日に山本郁夫という人を逮捕した事案だと思いますが、この山本郁夫という人に対して暴行傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の逮捕状が出ておりまして、普通逮捕状を示して執行するわけですが、この場合たまたま山本郁夫さんがなかなか発見できなくてさがしておった。ところが六月二日に甲府の警察署の捜査の者が二人、本人がおられるのを国鉄の庁舎の入り口付近で発見して、急を要するのでその場で、令状が発付されておるということ、それから犯罪事実がこういう犯罪事実だという被疑事実の要旨を本人にお告げして逮捕したという事案でございます。
 刑事訴訟法によりますと、逮捕状を示して執行するのが普通の執行でございますが、そうでなくて、いまのように逮捕状を持ち合わせておらなくて急を要する場合に、いわゆる緊急執行と称しましていま申し上げたような手続で逮捕することが許されております。そこで逮捕してあと勾留まで進行したのでありますが、勾留の時点でもって、勾留尋問のときに、いまのことから、被疑事実の要旨の告げ方が不十分であったという理由で勾留が却下されております。
 この事案を検討しますのに、一応刑事訴訟法に認められておる逮捕状の緊急執行というものをやったわけでありますが、被疑事実の要旨の告げ方がまことに不十分でございまして、六つ事件が出ておるのを、一つだけ話してそのほか五つあるからという言い方で逮捕したのだそうでございますが、事人権に関する逮捕状の執行としてはまことに不十分、不適切なことでございまして、裁判官がそういう結論を下されたことはまことにそのとおりだと思うのでありますが、われわれとしても、こういうめったにない事案でございますけれども、かりに違法でないにしても、人権の観点からまことに不十分、不適切な措置であったということを深く反省しておりますので、この点については遺憾に思いますとともに、今後絶対にこういうことのないように十分指導してまいりたいというふうに考えております。
#114
○勝澤委員 この事件は当該の警察側からも遺憾であったという表明がされておるようでありますけれども、私は、労働運動に対する問題の取り扱いというのがただ単なる暴力事件というふうに取り扱っている、ここに問題があろうと思うのです。みな一人格を持った役員の人たちですから、別に証拠を隠滅したり逃亡のおそれはないわけでありますし、ましてや起きておる事件が、普通いわれておる暴力団のなぐるけるという問題でなくて、話し合いの中である程度の行き過ぎた問題が実は指摘されておるわけでありまして、それはそういうものが起きる環境というものが国鉄なりあるいは郵政の中にあるわけでありまして、電通とかほかのところにあるかというとないわけであります。ほかになくてなぜ国鉄とか郵政にあるのかというところから考えてみれば、この問題の取り扱い方というのはよほど慎重でなければならぬ。慎重でなければならぬ労働組合の問題に対して、いわゆる普通の暴力事犯と同じものの見方をして取り扱うから実はこういう問題が起きてくると思うのです。ですから、こういう点で、特にいまお話がございましたけれども、やはり労働組合関係の事犯を取り扱う場合には、私は暴力等処罰業を適用するのは法律適用自体が少し無理じゃないか。あの法律ができたときはそういう趣旨じゃないのですから、ちょっと無理じゃないかと思うのですが、一応あれば取り扱っておる。ですからもう少し本質というものをよく考えて取り扱いをすべきだということを特に申し上げて、以上この問題は追及はやめておきます。
 以上で私はきょうの質問を終わりますけれども、まだ不十分な点がありますので、次回に中谷委員と共同で質疑を続行させていただきたいと思います。
#115
○谷川委員長 次回は、来たる十月十一日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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