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1947/10/08 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 商業委員会 第12号
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1947/10/08 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 商業委員会 第12号

#1
第001回国会 商業委員会 第12号
  付託事件
○貿易組合法を廢止する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○中小商工業の再建に關する陳情(第
 百六十四號)
○マッチ産業公團制の實施に關する陳
 情(第二百八十九號)
○財團法人理化學研究所に關する措置
 に關する法律案(内閣提出)
○板ガラスの配給機構及び取扱いに關
 する陳情(第三百四號)
○百貨店法を廢止する法律案(内閣送
 付)
○昭和二十二年法律第五十四號私的獨
 占の禁止及び公正取引の確保に關す
 る法律の適用除外等に關する法律案
 (内閣送付)
○石綿輸入促進に關する請願(第二百
 六十五號)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月八日(水曜日)
   午前十時三十分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○財團法人理化學研究所に關する措置
 に關する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(一松政二君) それでは只今から商業委員會を開會いたします。財團法人理化學研究所に關する措置に關する法律案を上程いたします。つきましてはこの法案につきまして衆議院の方で何か別途の意見があつたり、或いは研究所の方で何か外の意見があるのではないかというようなことが懸念されましたので、本日はその點につきまして、親しく研究所の所長にお出でを願いまして、研究所としての御希望なり或いは御意見を伺い、且つ今まで衆議院において政府委員が委員會において聞いておられるところを、速記録が非常に遲くなりますから、皆さんの御參考のために今日は一つここで述べて貰いまして、この審議の參考に供したいと存ずる次第であります。
 では先ず最初に、政府委員から衆議院における何かこれに對する別途の意見があつたのかないのか、あるならどういう意見があつたのか。我々の參考のために意見があつたらその内容をちよつと説明して頂きたいと存じます。
#3
○政府委員(松田太郎君) 只今委員長からお話がございました衆議院におけるこの理研の法案に關して、この原案に對する何か反對のような御意見があつたろうか。そういう點があつたら率直にお話申上げるようにというお話でございますので、率直に申上げます。
 實は日は忘れましたが、衆議院の商業委員會におきまして實質的の第一囘の質疑のときに、商業委員會の付議せられたのでありまするけれども、商業委員會に属しておいでにならない海野さんという方から、特に委員長の許可を得られまして發言があつたのであります。この方の御意見は、この理化學研究所というものの將來という點から考えて見て、勿論この理化學研究所というものを大いに振興さして、同時に産業の發展の上に寄與しなければならんことは當然であるけれども、その機構乃至は組織というものを、この法案のように株式會社に變えるということが果していいのかどうか。由來我が國においても、例えば金属研究所でありますとか、その他繊維の試驗所でありますとか、いろいろ國立の研究機關が多いのであります。而もそういつたような研究機關は、いわゆる象牙の塔に入つておるような形でなしに、特に東北方面の金属研究所のごときは非常に産業果にも大きな貢献をなしておるのである。決して國立の研究所なるが故にその邊の點がまずいというものではない。又理化學研究所のように、今後大いに日本全體の理化學というものの研究を中心とした、立派な研究機關というものを育てて行くためには、やはり一營利會社のようは形である株式會社にするということになると、ややもするとその事業が營利方面に中心が置かれて、肝腎の研究を中心とする本來の使命というものが疎かになる虞れが多分にある。自分としてもいろいろ理化學研究所の問題については、從來も自分の研究等と相俟つていろいろな目で見ておけるけれども、どうしてもやはりこの組織というものを今後改組するならば、國立の研究機關という意味でやつて行くに越したことがないという趣旨のことを、いろいろ例を引かれまして再三お述べになつたのであります。
 それに對しまして政府委員、即ち私からの答辯としましては、その點は政府都内におきましても、理化學研究所ともいろいろ御相談をいたしまして十分檢討をした點である。その結果こういつた原案のような一應結論を得たのでありまするが、その趣旨は、成る程御説のように國立研究所という行き方も確かにあるわけでありますけれども、何分にもこの理化學研究所というものが、從來何故にここまで三十年の歴史を汚さずに發展をして參つたかという點に鑑みますときに、結局いわゆる國立であります場合には、或いは豫算の關係でありますとか、その他財政上の見地から相當の拘束を受けることは、これはその時々の國の財政の状況にもよりますけれども、概してそういう氣配と申しますか、そういう傾向のありますことは、これは從來の實績に微しますれば否定し難いところなんであります。然るに理化學研究所は、當初それらの方面に對するいろいろの權威者からいろいろな御相談の結果、而も最初は御下賜金まで頂いて、いわゆる民間の形としてスタートした。そうして言い換えれば、その當時は國の補助金も相當ありましたし、又この理化學研究に理解のある方々の方々からの寄附もあり、いろいろな意味で當時でしては相當金の關係にいろいろ拘束されずに、眞にこの日本の産業に寄與する研究は勿論のこと、又ちよつと見たところでは、何らそういうことに關係のないような、本當の研究の研究というような基礎的研究をせられたことが、やはりそれが段々と應用化され、産業化されて、思わざるところに産業界に寄與した點も非常に多いのでありまして、言い換えれば國家の豫算等に拘束されずに、自分の持つておる財産によつて自由に活動して來られたところに、この理化學研究所の今日に至る大きな發展の過程を見出すことができるのである。のみならず今後といえども實際問題としまして、遠い將來は別として、今理化學研究所といものが終戰後いろいろな状況で生死の境を彷徨して參ります場合に、何とかこれを再興さすためには、どうしても國としてもできるだけのお力添えをしなければならんのでありますけれども、今日の財政面その他の關係からいうとお力添えをいたす上からいたしましても、これが限度があるのでありまして、又將來の點から申上げましても、いつまでも今日のような情勢の下におきまして、補助金その他の或いは寄附金といつたような問題が飽くまでも昔のように繼續できるかどうかということは非常に疑問の點も多いのであります。それから又從來理化學研究所の一つの大きな經費の本となつておりました特許權その他の研究の成果を實施するためにできておりました理研工業株式會社その他數十の一つとコンツエルンと化した會社というものを、いわゆる持殊會社的の性格の下に解散を命ぜられるような形にもなつておるのでありまして、そうなつて參りますと、いよいよ以て收入の途が杜絶えるのではないか。そうなれば理化學研究所が一方において飽くまで理化學研究所本來の研究の使命を果されると同時にその研究の使命を果すに必要なる限度の經費というものは、やはり自分でこれを賄い得るという體制を取らなければならん。どうしても理研の將來というものについて一抹の不安がある。そこに從來理研が一方において理研の研究を實施面に移す意味のいろいろの會社がございましたのを一つの形に纒めるというような趣旨からいたしまして、理化學研究所の研究機關と、それから今申しましたような理研工業その他の發明研究の實施會社というものを一緒にいたした意味において、ここに理科學研究所を一つの株式會社にする。併しながら理化學研究という苟くも名前が附く會社である以上に、飽くまでもその研究が中心になりまして、今申しましたような線に副つてこの會社の事業を經營しなければならんことは當然のことでありまして、そういう意味での運營については各方面は勿論のこと、この理化學研究所とせられましてもその恰好でやられるということは、所長以下皆様の堅い決意だと私は信じておりますので、そういう方向を取るのがいい。それから又アメリカ等の例に徹しましても、こういつた株式會社の組織の下に、一方において重要な研究をし、一方においてこれを實施に移すという組織は五十ぐらいあるようでありまして、而もその中でその五十の會社の先ず第一のスタートを切つたのはやはりアメリカにおいても理化學研究所であるようであります。又その他G・Eの例を取りましても、正にこの理化學研究所の今日進んで参りますこの行き方というものと全く揆を一にしておるのでありまして、そういう意味から、言い換えれば、過去の理研の經歴竝に今後の理研の研究を中心にすると同時にこれを産業化して參るという點、それから理研の財政面というような以上の點から見まして、こういつた法案を提出いたしました理由であるということを、この通り申上げたのではありませんけれども、こういう趣旨のことを海野さんには御答辯を申上げたのであります。尚その他に一二やはり國立研究所という問題について御贊成の方があるようでありましたが、まだその方々からの正式の御質問というところにまでは至らずに、正式に御質問がありましたのは今の海野さんの御質問が中心でありました。それに對しまして今のような趣旨の質疑應答が重ねられたのであります。その點一つ御報告申上げます。
#4
○委員長(一松政二君) それでは今の問題に引續きまして理研の仁科所長の御意見を一つ伺つてみたいと存じます。よろしうございますか。
#5
○委員長(一松政二君) では、どうぞ。
#6
○説明員(仁科芳雄君) 理研の内部の意見についてお話申上げたいと思います。
 この理研の内部の意見がいろいろ出ましたのは、最初或る方面から理研を株式會社にしたらどうかという意見が出ましてから大分後の話であります。それは一體理研において會社としてやつて行けるかという危惧の念を抱く者が相冨あつたのであります。そこへ或方面から、これは國立にした方がよいのじやないかという意思表示がありまして、それに刺戟せられまして、そういう國立という議論をした人がございました。そのときに、どういう人がそういう議論をし、どういう人がこれに反對したかということを見ますと、大體大學の教授その他官立の所屬の人たちは、理化學研究所にはそういう人が兼任として澤山おりますが、そういう人たちは國立はいけない、こういう議論の人が大多數であります。それから從來官廳關係の職に就いたことがない人、そういう人は國立にするがよいということを言つた人が多いのであります。これはその見方によるのでありますが、つまり他所のものはよく見える、こういう心理状態が働いておるのじやないかと思います。も一つは、國立なれば確かだ、そう苦勞しなくても、じつとしてやつて行ける、純粹の學術研究だけをそれでやつておればよいじやないか、こういう議論があるのであります。そういうことで國立論を唱えた人がございました。
 理化學研究所内でも、これに對して相當の議論をしたしました。私の考えといたしましては、大多數が國立がよろしいというなれば、それは國立にすべきである。大多數が民間研究所としてやるべきであるというならば民間研究所にすべきであるというふうに考えておりましたから、できるだけ論議を盡しました。その結論として私の得ましたことは、大多數はやはり從來の理化學研究所の長所を活かしまして、先程政府委員の方からお話がございましたように、從來の理化學研究所の長所を活かしまして、やはり民間研究所としてやつて行つた方がよいという結論に致達いたしました。それはつまり數においてそちらの方が多かつたと私は見ましたからであります。以上申述べましたのは理化學研究所内の問題でございます。
 この外の理化學研究所の外部といたしまして申上げますのは、或る方面の意向でございますが、これはやはり理化學研究所の從來のやり方、それから官立の研究所が從來どういうことをしておつた、又アメリカにおいて大學の研究所というようなものがどういう性格を持つておるかということを併せ考えまして、日本の産業の再建に役立つためには民間研究所として活動した方が有効である、そういう御意見もございまして、これが明らかに我々の論議にも相當の影響を與えた。理化學研究所内の論議においても相當の影響を與えた。影響を與えたと申しますのは、つまりその意見は尤もである。日本におきましても先程申しましたような純粹の學術の研究だけをやつておる研究所は相當に澤山ございますから、理化學研究所が國立としてそういう仲間が一つ殖えたところで、國の産業の再建ということに對してはそれ程有効ではない。それよりも民間研究所として産業の直結した研究をする、而もそれが非常に基礎的な研究、學術の基礎を持つておつて、それから出て來た成果を産業に直結するということには民間研究所の方がいい、こういう議論でございます。
 で、我々はいろいろ論議しました結果、大多數はやはり民間研究所の方がいいという結論に到達いたしましたので、それでどこまでも從來通りの方針で進む。こういうことに決定いたしまして今日になつたわけでございます。理化學研究所内部の事情を御説明申し上げます。
#7
○委員長(一松政二君) 只今の政府委員と理化學研究所長の御説明につきまして何か御意見のある方がおありになろうかと存じますが……。
#8
○中平常太郎君 御説明を聞きまして一應御尤もな點は了承したのでありますが、この當初起きて來た財團法人理化學研究所というものは固より日本における科學面が極めて幼稚で發達の遲れていることから、尠くともこれを世界の水準に達せしめるというつもりで、理化學研究所が一つの大きな役割を持つておつたことは事實であり、又その効果がいろいろ實施面に現わされて大きな事業をなさつておつたことも誠に立派なことであつたのでありますが、この度そういう方面が分離することになりましたために、こういうような問題が起きて来たのであろうと思います。併しこれを株式會社にいたしまして、全く營利面に主たる目的を置くようなことになりますというと、これは全然目的の趣旨には反すると思うのであります。先程の御説明によりますと、十分公共性を取入れて事業面をやるというようなことでありますけれども、株式會社はその名のごとく決して單に公共のみを考えるわけにいかない。これは根本におきまして營利が主となるものでありまして、たとえばどのように言つたところでその營利に向つて邁進するようなことになる。從つて極めて不利益な、極めて研究の困難な、そうして將來の日本に數年、數十年後にまでも及ぼそうというむずかしい研究のようなものは、殆どこれは閑却されて取扱われないようになる虞れがあります。實利主義ということがございますが、この研究所の今後のやり方が實利に陷つて、ただ實際面にのみ即して行くとなれば、大きな發明、大きな研究は、これは絶えてしまう虞れが多分にあるのであります。研究所の内部の方で、株式會社にしたがよろしいというような大學教授あたりその他の方面からいろいろお話があつたといいますけれども、これは内部の問題におきましては、今日理化學研究所という相當に樣々な事業をなさつておられる場合においては、これは豫算面におきまして自由な點がございますから、或る意味におきましてはこれを好む人があるだろうと思います。併しながら私はやはりこれは株式會社にするということであるならば、この目的のために反しないように、或る一面が明らかにその株式會社の中に組織されて、そうして十分利益、不利益を論ぜず、研究面に向つて沒入するところの或る機關が別個にその會社の中にあるべきだと思うのであります。ただに利益を主として考えるというような状態のみに沒入することは全然目的と反するものがあるのでありまして、私はこの點はいかにも遺憾に堪えんと存じます。
 現在理化學研究所の研究なさつておるところのあらゆる化學面を見ましても、誠に立派な、日本の將來を擔つておられるような研究の種目が澤山に現われておりまして、誠に心頼もしく思つているのでおるのでありますが、かかる中でとにかく利益を度外視したところの研究精神が稀薄になるというのであるならば、私は反對せざるを得んのでありますが、どういうふうにこの株式會社の中においてその公共性を取入れられるお考えであるか。どの程度この株式會社にしたがために公共性が稀薄になる虞れを除かれる手段方法をなさつておられるか。とにかく今日までのこの研究所に公共性が株式會社になつたがために稀薄になるということは我々は忍び得ないことであると思うのでありますが、これに對して株式會社になさつた後に、こういう方面に向つてどの程度利益を度外視してこの研究その他が今まで通りにずんずん進んでなされるようなお考えか。その邊を一應お伺いいたします。
#9
○説明員(仁科芳雄君) 只今の御意見に對してお話を申上げますが、これは各方面から私が承つておるところであります。先日衆議院の方の商業委員會のお方が理化學研究所においでになりまして、一番御關心を持つておいでになつたのもその點であるように私は拜廳いたしております。お話の點は、理化學研究所が會社になつたために公共性を失うことはないかという點が第一と、もう一つは、會社になつたために理化學研究所が純學術的研究を疎かにするのではないか。この二つの點であるように私は考えます。
 後の方の理化學研究所が純學術的研究を疎かにするのではないか、こういう點について、先ずお話申上げます。
 今度會社になりますと、この會社の内部を二つに分けまして、研究を擔當する部面と、事業を擔當する部面とこの二つに分けて運營するつもりでおります。研究の方は從來通りの研究を續けて行く。それから事業の方はその研究から生れ出た成果を使つていろいろの研究をいたしまして、その研究と申しますと、一番初めは、全然利用目的を持たないような純學術的研究をいたしまして、それから出ました結果を應用いたしまする應用研究をいたします。そうしてそれでできた結果を産業に應用する、その産業化の研究というところまで進めたいと思つております。從來の研究は、ややもしますと應用研究あたりで止つてしまいまして、中間の試驗、産業にこれをすぐ持つて行く中間試驗というようなものが行われなかつたために、とかく實際それを産業に用いた場合にうまく行かないということがあつたのでありますが、我我といたしましては、そういう缺點を補うように今後は持つて行きたい、これが研究部門の方の事業でございます。これで得られました結果を日本の産業に適用いたしますにつきましては、できるだけこれを廣い方面に持つて行きたい。この事業部面の方は純然たる一つの事業を起すわけでございます。
 先程申上げましたことで分りまするように、研究におきましては、純學術的研究というものが基礎になるのでありまして、それをなくしましては理化學研究所に存立の理由がないのでございます。でございますから我々といたしましては、そういう研究がなくなるということは、即ち理化學研究所がなくなることである、そういうふうに考えております。これはただ机上の空論ではないのでありまして、實際アメリカあたりがどういうことをやつておるかということを見ますとはつきりいたします。例えば先程政府委員のお方からお話がありましたGEの會社の運營というものを見ましても、新らしい産業を生み出すのは、眞の純學術的研究が本となるのであります。でございますから理化學研究所におきましても、これは決して疎かにしないということを趣旨といたします。
 具體的な問題といたしまして、それではどれだけその方面に力を入れるかということになりますと、現在私の考えておりますのでは、純學術的研究に經費の一〇%乃至二〇%を使う、そういうふうにしたいと思つております。これは經費の上でそうなるのでございますが、併し純學術研究は、割に經費としては少いわけでございますから、經費が一〇乃至二〇%であるということによつて、研究そのものが一〇%乃至二〇%に過ぎないというのではないのであります。ともかくも先程申しましたように理化學研究所の事業の根源はそこにあるのでございますから、我我が會社になるということは、むしろ純學術研究を旺盛にし易いということからそちらにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。尤もこれはここ一兩年の間は必ずしもそういうふうになるとは申上げられません。と申しますのは、今日理化學研究所の財政状態は非常に困難でございまして、只今ではただ借入金だけでやつておるというような状態でございます。でございますから、ともかく初め食つて行くということが必要でございまして、そのためには相當純學術的研究を犠牲にするという面がないではないのでございますが、これは單なる一年若しくは二年の問題でございまして、先の問題ではないのであります。でございますから、その一年、二年の間には或いは政府の補助も頂かなくちやいけないというような事態が出て參ると考えております。現にこの二十二年度も政府からのいろいろな援助を受けておりますし、二十三年度もできればそういうふうにして頂きたいと思つておりますが、これから二、三年の後には理化學研究所としてもどうにかやつて行けるという状態に持つて行くつもりでおります。
 それからもう一つの公共性の問題でございますが、理化學研究所は、成る程株式會社ではございますが、成り立ちが、從來の歴史から考えましても、ただ單なる普通の株式會社とは性格を異にすることになるだろうと思つております。先程申上げました理化學研究所が、この研究の成果を應用して産業の發達を圖る。その方法といたしまして、いろいろございますが、例えば或る特許が取れた、特許權を許諾していろいろな産業の發展を圖る、そういう場合にいたしましても、ただ利益のためにということよりは、日本の産業の発達を圖る、そういう見地において、この特許權を實施するという方針を採るつもりでおります。又いろいろの産業の隘路をなしております技術の發達、つまりいろいろな隘用を打開する技術を生み出す、そういう點におきましても、我々は利益と申しますよりは、日本の産業が發達して行く、そうすることによつておのずから理化學研究所の基礎も鞏固になる、こういう方針を採つて行きたいと考えております。それから場合によりましては、理化學研究所自身がいろいろなものを生産するというような場合もありますが、これはまあ特殊事情でございまして、理化學研究所において行うことが非常に有利であるということが一つと、もう一つは、そういうことによつて新らしい技術を發達させることができる、發達しました曉には、その技術を世の中に一般に公開して、それを使えるようにする、そういうことで、できるだけ理化學研究所の公共性ということは保持して行きたい、こういうふうに考えております。
 私の考えておることをちよつと申上げました。
#10
○中平常太郎君 續きまして御質問申し上げます。一般的の御説明は分つたのでありますが、この研究面におきましては、直ちに効果を現わすものと現わさないものがあるのでありまして、株式會社にするためには株式會社というものの建前上、やはり利益の追求ということはそれは忘れられない。これは當然でございますが、全く利益を度外視したさまざまな理學的の研究はこれは百年の先のためになることでもやらねばならんことが澤山あると思うのであります。例えて言えば地下資源の問題或いは海洋の問題、その他一般的に、さまざま研究しなければならん、人間生活に及ぼす種々なる一般的の研究というようなものが、それは何ぼ研究しても、その株式會社の利益にならない、それは國民全般のレベルを高める上において必要であるが、それは株式會社自體に何ら利益を齎さないところの研究すべき部面が廣くあるのであります。そういう方面が私は閉却の虞れがありはしないかと思うのであります。利益の伴うべき各種の研究、或いは特許の伴うような研究は、これはもう十分以上にきつと研究になるだろうと思うのであります。それは會社自體の生存の上から申しましても當然なすべきことでありまして、そういう方面は、固より申上げるまでもなく努力なさることは當然でありますが、利益の伴わないところの各種の理化學の研究、地震の研究その他さまざまありますが、利益を伴わないことに對しましては、株式會社としてこれの研究をする部面がどういうふうに備わつて行くか。そういう部面はもう他の機關に讓られるのか。私は株式會社に負荷された目的の中に、そういうような問題が一つの重要な位置を占めるようなことができるのであろうかどうか。ややもすると特許權を得るためにものが秘密になり、利益の問題に思わず走つて、そのために會社は利益を得るでありましようが、一般の理化學研究所としての使命が忘れられはしないか。
 それからもう一つ最も憂えるところは、國民のこの理化學研究所に對する考え方が、誠に私は恐ろしいと思うのであります。これが株式會社に變つたということを聞くだけで、日本の國民はこれは公共性を失なうであらうと先ず悲觀をいたします。どうして國營にしないか、日本のような科學の發達の遲れた所において、どうしてこれを國營にしないのであろうか。一つの利益團體になぜさせたかという、私は國民からのお叱りがあることを豫想しておるのであります。それでそういう方面の十分なる理解が國民に與えられない限り、私は株式會社に理化學研究所がなるということは、餘程考慮すべき問題であると思いまして、まだ只今の御説明では滿足しないのであります。
 今までのようなふうに公共性を帶びたもの、利益の伴わないのに對する研究が、今日以上に、日本に科學の足りない今日、最も信頼すべき研究所が、ただ産業の開發の一部に伴う……それは固より何事も産業の開發であり、人類生活の必要性ではあるけれどもが、全般的に廣汎な、世界全般に及ぼす利益を考えるような大きな構想の下に行われる科學研究が、私は失なわれはしないか、この點であります。
 この點をもう一度御説明をお願いいたします。
#11
○説明員(仁科芳雄君) 今のお話の全然利用目的を持たない研究、若しくは利益を度外視した研究、これは從來理化學研究所がやつておりました中にもそういう研究もありますし、又利益を目的とする研究もあつたわけであります。私の考えといたしましては、その點は從來の理化學研究所がやつておつたより以上に、國といたしまして、つまり國家におきまして、理化學研究所がそういうふうな利益のない研究を受持つておつた割合があつたのであります。今後の理化學研究所は、從來理化學研究所が受持つておつた以上にその點を受持つ、そういう考えでやつて參るつもりであります。勿論先程からも申上げますように、大學の研究所とか或いはその他の國立研究所におきましては、おのおののそういう利益を度外視した研究が行われておるわけであります。例えば地震研究所におきましては地震の方の研究をやるとか、金屬研究所におきましては金屬の研究をするとか、そういう研究があるのでありますが、これも或る意味から申しますと、やはり利益を考えに入れた部面と、全然そういうことを考えに入れない部面と二通りあるのであります。理化學研究所におきましても、從來やつておりましたより以上に、國家に對して利益を度外視しない研究において擔當する部面は從來よりも殖える。そういうふうなことを念頭に置いております。ただ理化學研究所の性格は、從來からも考えまして、ただ單なる一つの非常な狹い範圍の、地震研究所であるとか、或いは金屬研究所というよりも、廣い綜合研究所の性格を持つております。そういう綜合研究所の性格を持つて、從來やつておりましたと同じように、十分學術的研究を怠らないようにする、そういうふうに心掛けて參ります。つまり從來よりもそちらを疎かにするということはないと考えております。でございますから、その點はむしろ從來通り、若しくは從來以上にするつもりで今やつております。
#12
○中平常太郎君 從來以上にその方面の研究の歩を進めるというお話がありまして、一應は了承したようなものでありますけれどもが、この大學あたりの研究や何かというものは、或る意味から申しましたならば、それぞれ好むところによつてやつておられますが、それがどの程度日々夜々に御研究を進めねばならんかという義務性は持つておられないのでございます。そういうふうのものは他にもありますけれども、廣汎に亙つて日本の理化學を押し進めようという目的を持つておるのは、この財團法人理化學研究所以外に私はないと思うのであります。その他特別のものにつきましては、それはその好まれる人、或いは專門の方が少數寄られて、そうしてじつくりとやつておられますので、それはどこにもあるのでありますけれども、そういうのは或る意味からいうたら深い深い。責任を持つた、その組織機關程に纒つていない、いわゆる專門の學者が好むところによつて、それぞれになさつておられるに過ぎないと思うのであります。固より立派なことでございますから大いにやつて頂かなければいけませんけれども、それはちよつとこの研究所とは違つた立場と思うております。殊に又あれは限られた部門だけを扱つておられます。ただ憂うるところは、株式會社は營利である。財團法人は非營利である。日本の科學は今まで進歩していない。この場合に科學を推し進めるために株式會社にした方がいいという結論を得るということは、私は國民が納得するだろうか。財團法人の理科學研究所を國立にしてもつと強い機構の下に、豫算を取つて十分に學者に權威を與える、そうして試驗應用に止まらず、試驗應用から脱して、今度本當に各方面にはこれを指示を與えるというようなところまで行くところの指導精神の横溢したところの國立が望まれるのであります。所長さんの今のお考えは結構でありますけれどもが、所長さんがいつお送りになるのか分らない。果して將來その所長がいつもいつも只今の所長さんのようにお考えになるかどうか。株式會社になつたら株主があります。又立つためには、自營のためには相當の收益をみなければならない。極めて不經濟な、不利益なら、いつ結果を生むやら分らんような大きな研究問題は恐らく閑却される嫌いがあるのであります。私はこの點なもつと研究すべきものであると思いますが、私のみ質問申上げることは失禮でございますから、今のところ質問は打切つて置きます。
#13
○委員長(一松政二君) 尚この際私から申上げて置きますが、定款をこの間皆さんのお手許に差上げるように要求して置きましたのですけれども、まだ定款が皆さんのお手許にお配りする程ないので、委員長の所にたつた一つ株式會社理化學研究所(假稱)として定款を届けて來てあるのであります。御參考のために今お廻しすると時間がとれますから……。主として中平委員のお尋ねになりましたこの最初の目的は、第一條は御承知の通り名前を書いてあつて、第二條がその目的になるのでありまして、「當會社ハ我國ノ科學及産業ノ興隆ヲ圖リ國民ノ福祉ノ増進ニ資スル爲左ノ事業ヲ營ムヲ以テ目的トス。」まあ一應その目的につきましては、今中平委員の御心配なされたことをはつきりここに謳つておりますので、御參考のために申上げたいと存ずるのであります。左の事業という所に、そのイの一番に、「純粹科學ノ研究及其ノ應用ニ關スル事業」、二が「科學研究成果ノ産業化ニ關スル事業」、三が「各種産業ニ對スル科學的助言ト指導ニ關スル事業」、四が「各種科學應用製品ノ製造及販賣」、五が「前各號ノ事業ニ附帶スル一切ノ事業」、こういうふうな第二條になつておりまするから、これはあとで御覽願いますけれども、一應御參考のために申上げて置きます。
#14
○説明員(仁科芳雄君) 先程のお話でありますが、理科學研究所のやつておりましたことは、これからやりますこととそうひどく離れていないのであります。つまり先程お話がございましたように、國立の研究所となりますと、或いは金属研究所とか、地震研究所とか、おのずからそういうふうなものになつた來ると思います。
 それから株式會社としてそれではどうするかといいますと、これは大體において從來の理科學研究所がやつておつたことは、内容において、今度新らしい株式會社のやることと同じこと、若しくはそれ以上營利的なこともやつておつたわけでございまして、非常に今度違つたことにはならない、そういうふうに考えております。
#15
○黒川武雄君 私は中平委員のお説に大贊成であります。今所長さんのお言葉を伺いますと……。所長さんは喜んで株式會社になさるのでございますか。そのお氣持を伺いたいと思います。
#16
○説明員(仁科芳雄君) さようでございます。つまり私は喜んで株式會社にするつもりでございます。
#17
○黒川武雄君 甚だ喜んでおるというお言葉なんですが、他の壓迫とか、そういうことはございませんか。
#18
○説明員(仁科芳雄君) 壓迫はございません。
#19
○九鬼紋十郎君 私も實はこの株式會社理科學研究所といつたようなものについて一番危惧するのは、やはり收支の點であろうと思うのです。研究所という立場からいつたならば、今中平さんの言われたように、研究を目的とする、或る程度利益を犠牲にしても研究をして行かなければならないという點が非常に必要でありますし、株式會社として獨立して經營して行くということは、獨立すれば相當の利益的な經營をして行かなければなりません。その結果は困難なものであると私は考えるのであります。そうしたならば、學術的な方々がこれを經營されるか、或いは營業的な手腕を持つておる人がこの經營に當つて行くかということは、恐らくその兩方が併立するということは非常に困難な問題であつて、營業方面に有能な人であれば學術方面には多少疎いのである。學術に專心しておる方であるならば營業といつたようなことは相當やはり疎いのではないかと私は思うのであります。そうすると、經營と研究というものが竝行して行われるということは非常な困難な問題であつて、理想は非常にいいのでありまするが、實際上において果してこれがうまく行くか行かないかということは、私は非常に疑問を持つておるのであります。そうすると、今後においてこの運營が、經營方面と研究方面とがお互いに摩擦を起すようなると憂いがありますし、株式會社になると、研究に最も必要としておるものを所長の椅子に据えるとか何とかいうことは、結局株式會社の性格上總會で以て社長なり專務なりを決めて行くということになつておりますので、果してその研究所内部に必要な人事と、そうして株式會社の設立上必要な人事とが合致しない點も多々できて來るだろうと思うのであります。そういつたときにおいて非常にこれが爭いの種になるというようなことも將來生じて來るかも知れませんし、又これが非常に國家的性格を持つて利益本位を離脱するならば、他からの寄附金とか或いは國家手な莫大な補助金といつたようなものがなければ、そういつた研究的な機關というものは私はできて行かないと思うのでありまするが、そういう點につきまして株式會社といつたような形態は果して適當であるかどうかということは非常に疑問を持つておるのであります。何がためにこれを株式會社にしなければなららいか。勿論民間の研究所として今後立つて行くということを所長も言われておるのでありまして、この點は私も贊成でありまするが、財團法人であるといけないということはどういう理由があるのか。株式會社でなければならないというのはどういう理由があるのか。その點がもう一つはつきりしないのでありまして、むしろ財團法人理化學研究所として行つた方が却つてよいのではないかというような考えも持つておるのであります。そういつた點につきまして所長さんの御意見を承れば非常に結構です。
#20
○説明員(仁科芳雄君) 財團法人と、それから國立と株式會社、この三つがいつも問題になります。その財團法人というのは現在の情勢では實際上困難であります。理化學研究所の基本金は今日のような貨幣價値ではもう問題になりません。それから寄附というものも今日もこれは求める方が無理であります。それから從來理化學研究所は會社の株を澤山持つておりまして、これも今度の事態で全部手離す、そういうことになります。それから營利行爲は財團法人の性格としてできない。そうなりますと、もう收入の途はないのであります。財團法人としては經營が困難になる。そうすると殘るところは國立と會社、この二つの途でございます。先程申上げましたように、從來の日本の國立の研究所と、それから從來の理化學研究所を行なつておりましたやり方と比べまして、從來の理化學研究所のやり方はむしろ會社に近いやり方をしておつた。形は財團法人でありましたが、その内容は多分に今日我々が考えておりまする株式會社の性格を、つまり我々が建てようとしておりまする株式會社の性格を持つておつたわけであります。そうしてやつて來たことが今日の理化學研究所を築き上げた原因になつておるわけであります。そういうことから考えまして、先程申上げましたように、國立よりは株式會社にした方がよろしい。こういうふうに考えております。株式會社と申しましても、その性格上いろいろのもながございまして、我々が今考えておる株式會社というものは單なる營利會社ではない。そういう意味で或いは從來の株式會社とは違つておるかも知れません。
 それから經營上研究者と事業家とは兩立しない、こういうふうな御意見でございますが、これは先程申上げましたように、理化學研究所におきまして經營都面を擔當する者と研究部面を擔當する者とは全然別人にいたします。そうしてこの研究所の株式會社の社長なる者がこの兩方の釣合を見て行く。そういうことにいたしますれば、必ずしも困難ではないように私は考えております。で、その人をどういうふうに、つまり事業部面にどういう人を入れるか。研究所の方は從來のようにもう陣營は備わつておりますが、その事業部面をどういうふうにして行くかということが、これからの我々の大きな問題になる、こういうふうに考えております。
#21
○九鬼紋十郎君 只今のお話で多少分るのでありまするが。併しながらどうせこういつた性格上、株式會社としても利益のある會社ということはいえないのでありますからして、會社自體の今後の増資なり或いは發展につきましても、果してその會社に應募する人があるかどこかということは、むしろ私はないのじやないかというような氣もするのであります。そうすればむしろ營利はできなくても、財團法人として置けば、寄附を仰ぐ點なり或いは國家的の補助を取る點なりは非常に便利なようにもなりますし、どうせ必ずしも營利を第一目的としておる會社ではないのでありますからして、むしろ營利を目的としない、營利事業をやらない財團法人という名前にしても、むしろその方がよいと私は思うのであります。
 そうして經營方面と研究方面とを別にするというお話で、これも結構ではありまするが、その間に又いろいろ政策上な手が延びるということになりますると、研究方面にも或る程度惡影響を及ぼすようなことにもならないとも限りませんし、殊に今もお話のごとく僅かに五千萬圓の資本金といつたよもなものは、今日から見れは微々たるものであつて、勿論こういつた資本金ではこの大きな事業は到底遂行できないのでありますからして、今後非常に大きな借入金なり或いは非常に大きな補助金なり、五百萬圓ですか、それでは尚更小さいのでありまして、到底運營ができないのでありまして、相當國家的な色彩をこれに加味していかないと、有名無實のものに終つてしまうのじやないか、こう考えるのであります。
 どうかその點を十分に愼重に御研究なさつて、趣旨は非常に結構なんでありますからして、そういつた趣旨を完全に遂行するのに最も適當な方法をお採り願うことを切望する次第であります。
#22
○中川幸平君 本法案は今日で三囘目か四囘目だと思いますが、初めて來られた方がいろいろ御質問になりまして、話は後戻りしたような感じがいたします。先程衆議院の質疑の模樣を政府委員から承りますと、さような問題は、當委員會でも再參心配してお尋ねしておつたような次第でありまして、殊に私共揃つて研究所を視察に參りまして、時間の關係上十分見せて頂くことはできなんだのでありまするが、視察させて頂きました。我々が誠に頭の下がる思いのした貴重な研究の模樣を拜見したのでありまして、これが今後我が國の再建に最も役立つ大切な所である。どうでもこれは從來のように財團法人として篤志家の寄附或いは國家の助成によつてますます盛んにやつて頂きたいと念願するのでありまするが、先程も話のありました通り、營利事業は今後できない、持株は離さんならんというようなことで、殘るところは會社か或いは國立ということり承りまして、國立では一々豫算に制約されて十分な機能を發揮することができないというので、會社という結論に到達したという説明を聞きまして、會社になつたところが、機構或いはその他の點について從來の財團法人と名前が變つただけで決して劣るものではない。會社になりましても、特殊會社として安全に研究して行ける程度に政府の助成をして頂く。或いは株主總會の外に、この研究所の運營委員會というようなこともお考えになりまして、政府竝びに國民の代表である國會から數人の委員を出して貰う。或いは顧問とか相談役とかいうようなものを出して決して所長初めそれらの研究所の方々に物質上の心配を掛けないようにすれば決して心配することがない。ただ株式會社という名前になつただけでことが足りるのではないかと思うのであります。要は會社の機構なり、それらの點について本委員會として十分研究すべきではないかという考えも持つておるのであります。それらの點につきまして、政府委員からもう一度私共の安心のなるようなお考えがありましたら、御答辯をお願いいたしたいと思う次第であります。
#23
○政府委員(松田太郎君) 先程來この理研の組織につきましていろいろ御意見がございます。いずれも私は理窟のあることと思うのであります。要するに今日の理研というものを今後どうするかという場合に、我々假にこれを國立にいたしましても、この原案のように株式會社にいたしましても、亦若しも先程のお話のような、從來のような財團法人で假に殘せるといたしましても、やはりそれぞれ一利一害はあるのであります。結局この際どの點に最も重點を置いてその一利一害というものをよく檢討して、その結果この理研というものの改組を考えるかというところに一番大事な點が私はあるように思うのであります。只今理研の仁科所長さんからも詳細に亙りまして今までの經過についてお話になつたのでありますが、私から申すのもいかがかと思いますけれども、この問題につきましては、非常に仁科さんとしては毎日頭を惱まされまして、關係方面とも始終少なからざる御折衝を續けられて、所長としての信念の下にこういうような形で行かれるように私は拜しておるのであります。結局この理研の發足の際しては、私はスタートがやはり大事でありまして、この際本當に理研を今後背負つて立たれる方のお考えというものに私たちは敬意を表しまして、その御趣旨に先ず副うような行き方をするということがやはり今後の理研の在り方というものについて一つのレールが敷かれるのではないかというような、これは私からこの席でこういうことを申上げますのも大變失禮かと思いますが、皆樣の大變御熱心なお話を承りまして、私も失禮とは存じながら、私と申しますが、政府といたしましてこれを提案いたしました僞わらざる氣持を申上げた次第であります。
 そういう意味で、只今お尋ねのございましたこの理研の將來というものにつきましては、勿論只今お話のように補助金その他の點につきましても、本年度におきましては僅かでありまするが、三百萬圓ばかりの補助金を組んでおります。又、今後におきましても、この理研が先程來お話のような理想的な形態に進んで參るためには、やはりここ一兩年というものはいろいろな荊の道を踏まなければならんこともあると思いますので、そういう意味から申しましても、我々といたしましてはできるだけの理研に對する、例えば今の補助金等の問題についても考えたいと思つておるのであります。勿論これは國會の御助言も得なければならん問題でありますけれども、氣持としてはそういうふうに考えておるのであります。
 又この理研の運營ということにつきましてはいかなる形においてお認めを頂くかは別といたしまして、やはり今日の皆さん方の御懸念になつておることが言い換えれば杞憂に終るように、逆に申すならば御懸念になるようなことが萬が一にも實現しないように、やはり今日この審査をお願いしております皆樣方の御氣持というものが、理研の法案が假に幸いにしてお認め頂くといたしましても、十分反映するように私はして頂いて、この理研の將來に對して、その進むべき道というものをはつきりと指針を與えて頂くように私はお願いたしいと思うのであります。
 その方法といたしまして、それをどういう工合にしたらよいかということにつきましては、私から申上げるまでもないことでありまして、本委員會におかれまして、そういう點については十分御檢討を頂くことが私は仕合せと存ずるのであります。先程來の委員會の問題でありまするが、その他の問題につきましても、ここの委員會におかれまして十分御檢討を頂くことが我我としましては非常に幸いなことだと存ずるのであります。
#24
○結城安次君 私の御質問申上げようと思いますことは、只今御質問になりまして政府委員からのお答えで大體盡きておりますが、私が懸念したことも大體そのことで……、先程營利會社になると研究が疎かになるというお話がありましたが、この會社は營利會社ですけれども、大體研究所が主體で商賣はその附屬ということになるべきもので、そうすればそれ程非常に心配する必要はないじやないか。殊に研究部門と業務部門というものがはつきり分れ、言い換えれば學者的良心というものがありまして、これは日立製作所も三菱も各社それぞれ營業附屬の研究所で十分な研究をしておる。今度は皆さん各所ともお困りのようでありますが、ここは研究主體の營業が附屬なのでありますから、而もその營業の成果によつて尚研究費がどんどん殖えて行く。補助金その他株式も少いというお話しですが、全く五百萬圓やそこらでは足りますまい。併し今は三百萬 それでは餘計できんことなんですから、むしろ私はこれは株式会社にして、研究主體の營業は附屬というような氣持の會社、而もその機構を今のうちにはつきりして、それから會社の運用に關する基準を、政府委員がおつしやつたスタートの際はつきりして置けば、立派な會社ができるのではないか、その點について我々はできるだけこれにお手傳いをしようという氣持を持つておる。
#25
○中平常太郎君 質問を保留しておつたのでありますが、段々お話がありまして、私一二囘缺席いたしておりましたために、議案が後戻りしたようなお話があつたのでありまして、どれだけ進行しておつたかということにつきましてお伺いしたいのでありますが、一つ私は最も懸念するところについて御質問申し上げます。
 補助三百萬圓という問題もありますので補助ということがこの研究所にある以上、そこの會社が發明したものが、その株式會社に特許權を得られるかどうか。いわゆる國家の支配に屬する金を貰つて、研究所を持つて研究しておるものなれば、一々その結果が、その會社のみ利するような特許權が得られるものかどうか。或る意味からいいましたならば、公の機關を利用して會社が利益をするということになりはしないか。この點を御質問申し上げます。
 それから不急事業の研究に疎かになるということを先程申し上げましたが、待遇問題などは、私は或る意味から申しますれば、事業面よりも研究面に十分な待遇を與えて、學者を優遇して、いつどういう場合にも十分な待遇によつて、ゆつくりと研究して頂く、というようなことを思いましても、會社の社長の方からその方は止めてこつちをやつて呉れというような、或いは詰らんことをやるより、何年經つてもあれは問題にならんが困つたものだというようなふうに、學者の態度に向つて批評を下すようなことが將來ありはしないか。利益をあせるためにそういう方面に誠に拙い結果を生じ、或いは又その學者に對して、これを輕視して待遇上に一つの面白からんような結果を生じはしないかということも株式會社になると考えざるを得んと思います。
 それから研究したものを悉く會社が自分の會社に利するだけに止めて、その製作に對する或いは特許權を得るというようなことになることは、株式會社であるならば固より當然でございますが、公共性を帶びた性質のものは私はこれは一會社が獨占すべきでないと思います。これが兩立したいように思いますが、その點を御質問申し上げます。
#26
○政府委員(松田太郎君) 第一の特許權の問題でございますが、これは從來におきましても、理化學研究所には補助金を出しておるのでありますが、これは理化學研究所として特許權を持ちますことは何ら差支えございません。又現にその特許權を理化學研究所で持たれたものを、それぞれ理研關係の會社等に實施をさして、それに對する收益というものをやはり理化學研究所で取られるというふうになつておるのであります。
 尚一營利會社に對して補助金を出すということはどうかという御質問でございますが、これは先程申しましたように、假に會社組織になりました場合は、會社として本當に一方において研究を中心とし、他方においてその事業をする結果、その研究というものが十分その會社として成り立ち得るような状態になる。又早くそうならなくちやならんと思いますが、そうなれば何も國の補助ということも必要はないかと思うのでありまするが、そこに立ち至りまするまでの間におきましては、やはりこの會社と申しますか、理研の特殊性に鑑みまして補助金というものは考え得ると、私は考えるのであります。
 それから第二の御質問の、いわゆる會社になつた場合は優秀な研究家或いは技術家という方を、俸給その他の關係からして得ることができるかどうか。社長さんの考え方一つによつてその邊がどうなるかというお尋ねによつてその邊がどうなるかという尋ねでありまするが、この點につきましては、むしろ私は率直に申しまして、國立になりました場合にはその點が非常に懸念されるのであります。勿論國立にいたしましても、それが豫算に關係ないというような制度ができれば問題は別でありますけれども、少くとも從來の制度その他から申しまするというと、その邊に相當の懸念があるのであります。結局この理研というものが本當に將來いい發明をし研究もして參りますためには、優秀な方がその生活その他について御心配なく、本當に研究に沒頭できるような體制を整える必要があるのであります。その點につきましては、やはり會社組織にいたしまして、本當にいい人を得る。言い換えればこの理研の本來の使命を全うするという意味からいたしまして、社長になられる方、言い換えれば理研を運營して行かれる方が當然そういうことを考えられる人、又そういうことを考えられるような方がこの會社の運營に當られるということは、これは私はむしろ當然のことと思いまして、又この理研を將來育くまなければならない國民全體として、そういう點については十分の私は關心を持つて見守らなければならん問題と思うのであります。
#27
○中平常太郎君 そういうふうな御説明になりますと、お尋ねしなければならんことができて參りました。今どうしても民間の方が立派な學者を入れ立派な待遇を與えられている。それは住友でも三菱でも官廳に御奉公しておられる人よりも、大分よい學者や技術家を入れてよい待遇を與えております。確かにその點は御尤もでありますが、それは自分の會社を利するために、飽くまでも優遇しておられる點をあなたが主張されたものと思いまして、それはもう普通、當然でございますが、官廳になつたがために豫算に括られるからどうか。官廳になつたがためにいい學者が得られないとかいうことは、これはその御意見は極めて私は當らないと思うのであります。又豫算に括られるということで逃げを張るということなどは、大體予算面を議する立法府を侮辱したものと思うのであります。立法府は必要なところに向つては十分に豫算を出し得るのでありますから、豫計に括られて日本の遲れた科學を尚阻害するとか、予算に括られていい學者を入れられないとかいうような今日の事態ではない。立法府は十分にそれらに對して豫算を與え得る權利を持つておるのであります。何もそれに對して御心勞をされる必要はないのでございますから、豫算に括られるからいい學者が得られないとか、豫算に括られるから活動ができないというようなことは凡俗の言うことであつて、今日は當らないのであります。
 そういう立場から豫算に括られるという氣持をもつてお話になるのなら私は飽くまでも抗議をする。それは豫算は必要な方面に向つて十分出し得るように立法府ができておるのでありますから、むしろ株式會社にしたために營利に走つて、營利の伴はないところの學者の研究が疎かになりはしないかという問題を我々には虞れるのであります。大所高所から見まして、非常に幼稚で遲れておる日本の理化學を世界の水準に達せしめるためには、國立で十分に待遇を與えて、各種の方面に亙つて組織的に大きなグループを作つて、相當大きな豫算を持つて、將來大々的に研究をなすべき事業でありますから、一會社に委ぬべき問題ではないかと思うのであります。根本の理念から申上げますならばその通りであります。
 根本理念に基いて發達するだけの値打があるや否やはこれは問題でありますが、今日の理化學研究所が私の考えておる程立派な構想を持つたものになつておるとは思わんのであります。かようなことではいけないのであります。どうしても現在、理化學研究所が、營利を半分以上やつておりますから、そのまま……所長は現在營利をやつておるのじやないか、何も機構は變りはしないとおつしやいますが、その程度に理化學研究所が營利を目的として今日やつておられますから、機構を變えたところで、株式會社にしたところで内容は變りはしないとおつしやる程までに營利に沒頭しておつたというならば、私は聊かそこに情けない感じがするのでございますが、理化學研究所の使命は本當をいうたならばそうでない筈であります。
 その意味におきまして、私は國民が株式會社にすることを納得するかどうかということを憂うるのであります。もつともつと大きいものにしたいと思つたのが一つの會社になつてしまうというので私は氣遺いに堪えんのでございまして、日本はそういうことで科學の進歩ができるかどうか。研究所が工場を持つて、その利益で以て漸く研究の研究面を繋いでおる。或る一部に厄介荷にも似たような研究所を持つて、損益を離れたところのことに聊か貢獻なさつておられるというような程度の、そういうふうな消極的な理化學の研究で日本の將來が擔えるかどうか、私はそこを憂うるのであります。
 私はできるならば國立として、相當何千萬圓かの國費を出して、正式に立派な學者に待遇を與えて、悠々として十分に、利害を離れて樣々たる生活面における研究、或いは世界の文化を進め、或いは日本國民の生活の向上、各種の方面に對する研究、私は現在の現象界の何ものも理化學で解決し得られるものと思いますが、じや、どの程度が日本が理化學に對して今日まで貢獻しておるか、その點誠に極めて幼稚な程度にしかなつていない。何一つ掴まえてみたところで理化學の資材にならないものはない。私に現象界を見て理化學の資材にならないものはない。私は現象界を見て、日本國民が困るというならば、何故日本が困らんようにこの現象界を利用しないかということを思うのであります。考えてみると、海水でも、空氣でも、泥でも……泥を食つて「みみず」は生きておる。泥の研究がどんなに必要なものか。どれだけ人間の生活において貢獻し得る資料があるかということなども、研究すればどれ程あるか分らんのであります。海水はさまざまな研究をすればその中に人間の食糧は溶けてしまつておる。誰がそれを研究するか。私は直ちに利益の擧がるようなことのみに研究をしておられることを非常に虞れるのであります。
 委員長にお伺いいたしますが、この委員會は逆流したということでありますが、今日までどの程度まで進行なさつておるか。私が後から總論に近いようなことを申上げまして失禮と存じますから、委員長に、どの程度まで進行しておつたか、お伺いいたします。
#28
○委員長(一松政二君) それではお答えいたします。この理化學研究所の問題だけで委員會が開かれて第三囘目だと思います。第一囘に今の株式會社の國立論、そういう方面についていろいろ質問應答があつたのでありまして、今中平委員、九鬼委員から縷々述べられた點は一應觸れております。それから更に第二囘目には、實地視察をして呉れということで正式に委員會といたしまして行つたのでありますが、そうして皆さんにいろいろ差支えがあつたとみえまして、行かれた方は七、八人であつたと思いますが、親しく參りまして、そうしてその場でもいろいろ所見を承つて來て、それから先日の委員會で一應理化學研究所にも觸れておりますけれども、理化學研究所の問題として今囘が第三囘目になつておりまして、今中川委員の發言もその點を言われたものだと思いますから、さよう御了承願いたいと思います。何かお答えありますか、その豫算の問題について。
#29
○政府委員(松田太郎君) 只今私の申上げ方が失禮な言い方のようにお取りになりまして申譯がないのでありますが、私共の申しました趣旨を御了承願いたいと思いますが、私はこの理化學研究所について、先程もちよつと申しましたように、この豫算制度等についてはこれは幾らでも變え得る方法があると思います。これは申上げるのも何かと思つたのでありますが、從來ややもいたしますというと、研究所の方に對して、やれ豫算の問題でありますとか、それから俸給令の問題とかというような點がございますものですから、過去のことを私の頭にありましただけを申上げましたので、何もこの制度が從來こうなつておるから今後もこうだということを私申上げていないのでありまして、その點を一つ惡しからず御了承願いたいと思います。
#30
○委員長(一松政二君) 本日の審議はこの程度で一應打切つて置きます。散會いたします。
   午後零時八分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     一松 政二君
   委員
           中平常太郎君
           松下松治郎君
          大野木秀次郎君
           黒川 武雄君
           中川 幸平君
          深川榮左エ門君
           油井賢太郎君
           九鬼紋十郎君
           小林米三郎君
           佐伯卯四郎君
           島津 忠彦君
           高瀬荘太郎君
           波田野林一君
           結城 安次君
           廣瀬與兵衞君
  政府委員
   商工事務官
   (總務局長)  松田 太郎君
  説明員
   理化學研究所所
   長       仁科 芳雄君
ソース: 国立国会図書館
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