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1947/08/26 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第3号
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1947/08/26 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第3号

#1
第001回国会 文化委員会 第3号
  付託事件
○京都上加茂ゴルフ場建設に關する陳
 情(第二十四號)
○ローマ字つづりに關する陳情(第五
 十七號)
○群馬縣勢多郡敷島村の古跡發堀促進
 に關する陳情(第五十八號)
○物資愛護思想普及運動に關する陳情
 (第百一號)
○國字國語問題の研究機關設置に關す
 る請願(第七十四號)
○ゴルフ場施設に關する陳情(第百四
 十八號)
○出版關係法規に關する調査承認要求
 に關する件
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月二十六日(火曜日)
   午後一時三十一分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○出版關係法規に關する調査承認要求
 に關する件
○國字國語問題の研究機關設置に關す
 る請願(第七十四號)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(山本勇造君) これから文化委員會を開きます。この委員會では先に研究會の形で以て小委員を設けまして、出版關係法規の關する調査を研究しておつたのでありますが、研究會でなくて正式な委員會としてこの問題を調査研究した方が宜しいと存じますので、出版關係法規に關する調査承認要求書を議長に提出したいと思うのでありますが、御異議がございませんでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(山本勇造君) 御異議がないものと認めます。するとこの要求書の内容等につきましては、委員長に御一任を願いたいと思うのでありますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(山本勇造君) それからそうしますと、その方の小委員會を作ることになりますが、その數や選出方法等についてはいかがいたしましようか。
#5
○三島通陽君 只今御決定になりました小委員會は、恐らく議長におかれまして、御決定に相成ることと思います。併し多少まだ時間もそれにはかかると思いますし、委員長におかれまして十分に御研究の上、その人數及びその選出方法をお決め頂きたいと思います。就きましてはその人數とそれから選出方法を擧げて委員長に御一任するという動議を提出いたします。
   〔「贊成」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(山本勇造君) では御異議がないものと認めます。では私において考慮いたします。そうしますと今の問題はそれで一應あれになりましたから、次に今日の議題といたしましては、帆足計君を通じまして國語研究所についての請願が出ております。それを採り上げたいと存じますが、今日はその請願をされた帆足君が都合によりまして見えられませんので、その説明は川上嘉市君が代つてなさりたいということでありますが、それについて御異議がございませんでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(山本勇造君) では御異議がないものと認めます。川上嘉市君。
#8
○委員外議員(川上嘉市君) 國字國語問題研究機關設置に關する請願が出てありまするが、その説明を私が帆足君に代りまして申上げます。御承知の通り一國の國語というものは、その國の文化の程度、それから國民の教育、或いは能率、或いは延いては待遇にまで影響する大問題でありまして、恐らくは日本語のごさくに非常に複雑化しておる國語は他に例がないようなふうに私は感じます。私の友人でオーストリーの統計局長をやつておられた人が、曾てオーストリヤで私が會いましたところが、自分は八ケ國の言葉をやつておる。それで今日本語を習いかけて見たところが、考え方が根本において違つておるからして、到頭これはまあ斷念してしまつたというような話がありましたが、實際に餘りに複雑し過ぎておるということは、誰でもが感ずるところだと思います。殊に國字が假名があり、或いは漢字があるというようなことで以て、非常にその國字の學習だけにも時間を取りまして、私は曾て國字問題竝びにその歸趨という國字改良問題の本を書いたことがあります。その當時に私調べたところが、小學校で兒童の授業の半分以上がその國字或いは國語に關する時間に費やしておりまして、外國に比べますと、その國字、國語を覺えるだけに一年半、どうかすると二年ぐらい餘計費やさなければならんような状態であります。而もその結果どうかというと、例えば尋常六年頃までやられた人達が、完全に新聞が讀めるかといいますと、これも讀めない。非常に讀めないということは、最近にその筋の意向がありまして、カナ文字協會が工場の勞働者千五百人の人にいろいろな文字を出しまして、それで試驗をした。で假に百點を滿點にして、何人おるかという例ですが、提携という文字が五十點、確執というのが五十五點、富裕という字が三十七點、憎惡というのが三十三點、軋轢という字が二十二點、これらは皆終戰後に決められました千八百五十字という漢字制限の中に入つておる文字であります。その文字が或ものによつては二二%しか讀めない。こういうのであります。即ち外國の學校では大抵小學校に行く前、殆ど大抵の子供が新聞が讀めるというのに比べると非常な差であります。私は昭和八年に西洋に參りました時に、各國の國民性とかいろいろのことを調べようと思つて、小學校の生徒に對する質問書を書いたのであります。その質問書が約四十ケ條ばかり。それから中等學校の生徒に對するものが四十ケ條。それから世の中に出た、成人に對するもの四十ケ條。これを英獨佛伊、四ケ國語に譯して持つて行つて、これに對して答辯を書いてくれといつて書いて貰つたのです。新聞がいつから讀めた、こういうようなことを書いて見て、その調査によつても、大低學校へ行く前に半分くらい新聞が讀めるということになつております。それは何かというと、結局國字が昔の通り、話す通りに文字が、文章が成つておりますために、非常に讀むことが容易である。で國語のために日本の子供が苦しむのに比べて、殆ど問題にならんくらいに樂々とできる。そういつた意味から日本の國字というものは、どうしても何とか工夫をしなければならんというふうな状態になつておると私は考えます。それで一方に教育のみならず、文化の方面からも今のように讀めないからして、ここに國民に本當にいろいろな文化的の學問、科學なり或いはその外の學問を教え込むのに非常な不便を來す。而もその文字が分つてもそうですが、非常に複雑しておるためにいろいろ分らない文字を澤山使わなければならん。例えば數學の方で正しい數と書いた正數という字と、それから又コンマの付いておらない數、整數、こういうふうなものも音が同じでありますから、これを區別することが、非常にむずかしい。而も多くの普通の大人の人でも正數という字を本當に兩方共區別のつかない人が大分あるじやないか。こういうような感じを持つておるのであります。動物とか植物、或は化學というような方面にわたりまして皆調べて見ると、同樣に普通の人が理解し得ないような專門語を澤山使わねばならんというような状態であります。從つて國民の文化をずつと普及する上において、非常な障碍になるのであります。
 それからもう一つ國民の能率の問題であります。これが又非常にすべての方面において、文字のために影響されるのであります。實は國字改良問題というものを自分で研究しかかつたのは大正三年、四年と西洋に留學しておりまして、その時分に各國をずつと歩いて見て、そうして最後にアメリカのフイラデルフイアに參りまして、テーラー・マニフアクチユア・カンパニー、これはテーラー・システムという科學的管理法をやつておる工場でありまして、小さな工場であるが理想的にやつておる有名な工場、そこを見ましたところが、工場で使つておりますいろいろな書類、例えば倉庫或いは會計、購買等いろいろな方面で使つておる書類が、ものを書きますときにみな頭文字だけで略字を使つておる。丁度今日進駐軍がRTOと書いて、レールウエー・トランスポーテーシヨン・オフイスということを表しているように殆どみな略字でやつておる。これを一々傳表に原價計算のことも、會計のことも、注文書なども購買の方面にしても、すべてのものをみな一々全體の長々しい文字で書くのと略字を使うのとは非常な差がある。これを日本のようにやつていてはやりきれんという感じを持つておる。
 もう一つは方々の工場なんかを見學に行くのに、紹介状をくれ、こういつて頼むときに、支配人なり社長なりがすぐステノグラフアー、速記のできるタイピストを呼んで、その人がメモを持つて來る。これに口述して綺麗にタイプライターに打つて、コツピーまで取つて、宛名まで書いて、支配人はただサインさえすればよいというようなものを持つて來るのであります。それを日本人が紹介状を書くときには、手紙を出し墨を磨つて書くというのと比べると、手数から考えて問題にならん。又それでは一つのコツピーも取れん。こういつたようなことを見ますと、これは今の会社の事務の整理の上から申しましても、その外の事務から申しましても、日本の文字では到底いかんというような感じを強く持つたのであります。そこで私はフイラデルフイアからワシントンへ行く途中汽車の中で考えた。どうしたらいいんだろう、たださえ文化の遅れている日本が、こんな非能率的な仕事をやつておつては仕方がない。新聞などの印刷におきましても、ライノタイプというタイプを打つと活字がすぐ出て竝ぶ、こういうふうなものと比べて、日本のあの面倒臭い活字を一つ一つ拾つてやるのと比べて見て問題にならない。これはどうしたらいいかということを考えたときに、日本にはアルフアベツトと同じような假名があるのだ、これをうまく利用すれば、西洋のアルフアベツトに代えることができはしないか、假名を國字にしたらどうだろうかということを考えたのであります。併しこれは一足飛びに實行できるというのではありません。これを實行し、或形に改良して、日本の國字として使い得りためには、もつと根本的な調査をしなければいけないのであります。第一言葉から改良しなければならぬ。言葉を鍛えないと今のままで假名で書いても分らないものが澤山あります。非常に日本の字が複雑な、一つの例としてお話申しますれば、私、あなた、という「私」の字が、これは私の著書の中に載せてあるのですが、英語であればアイ、ユーというそれだけで済むものが、日本語では、私、吾、我、己れ、予……これは余という字もあります。僕、妾……これは女の言葉であります。我輩、余輩、我曹、予輩、吾人、自分、拙身、身共、小生、小子、迂生、愚生、愚老、拙老、不肖、わし、俺、おら等こういつたように二十も三十も同じ語に對して言い表わし方がある。このままで以て假名にして見たところが、到底行くものでない。これをもつと根本的に調べ上げて、どういうものを以て標準語にしようということを権威ある機關によつて調査して、これならばいいというものを決めて、日本人の子々孫々に對して、本當に國字というものを定めるような一つの機關を要すると私は考えるのであります。
 それでこれは今の能率などに關する問題でありますが、今度は體格の問題もそうである。これは日本人は御承知の通り西洋人に較べるというと、子供の時分の死亡率が多いというような關係で以て、平均年齢を調べて見ますというと、十五年程短い。これは無論子供の時分の死亡率が多いために平均が下つているのでありますけれども、これまでは西歐の新聞を御覧になると、八十以上で死ぬという人が非常に多いのですが、日本では七十くらいで死ぬ人が、向うならば八十で死ぬ。そのくらいの差があると思います。體格は惡いし身體は小さいし、何とかして同じような立場において西洋人と競爭して、將來同じような文字を持つて行くためには、日本人に體格をもつとずつと良くせんというと、遅れている方が荷物を餘計背負つて行くというようになつては、到底いけない、そういう意味はらして日本人の荷物を輕くしてやりたいという感じを私つくづく持つのであります。その點から先程申しましたように、小學校なら小學校をやるのに、一年半乃至二年も餘計苦しんだ結果、本當に讀めるならいいけれども、まだ本も讀めないし、新聞も讀めないというふうであるならば、日本人はただでさえ字が餘計あるところへ、荷物を餘計背負わせて競爭するようなもので、走つて勝つはずがないと思うのであります。そういつた意味からして、いろいろな、他の方面からいいましても、日本の今の國字のままでいいといい人はどなたもないだろうと考えるのであります。將來どんなふうに行けばいいかということになると、これはいろいろな意見がある。例えばローマ字論者、假名文字論者、漢字制限論者もあります。いろいろありますけれども、我々は今かるがるしく一部の論者の説によつて、こういうものがいいと決めるわけに行かないのでありまして、これ程重大な、子々孫々に關する、日本民族に關する大問題は本格的な調査機關があつて、本當に愼重に調べて、そうしてやるべきものだと私は考えるのであります。そういつた意味において、今囘國字國語問題の研究機關というものを政府は設置されんことを希望するのであります。皆さん方の御賛成を得まして、若しこういうことができまするならば、將來の日本のために、非常な貢献をすることになるのではないかと考えるのであります。どうぞ御賛成をお願いいたします。
#9
○委員長(山本勇造君) 國字國語問題の研究機關設置に關する請願としまして、國語運動連盟の安藤正次氏それから放送協會の専務理事の古垣鐵郎氏それから日本新聞協會の伊内正徳氏國語審議會會長の安倍能成氏、それから日本出版協會の會長の石井滿氏、日本印刷協會の理事長の野澤隆一氏、こういう方々からの請願で、そうして今日川上君に説明願つたわけでありますが、今の問題について川上君に御質問がございましようか。
#10
○三島通陽君 今川上さんから屡々お述べになりましたことについてお伺いしたいこともありますけれども、それよりも丁度今日は文部當局の方が御出席でありまするから、この國語問題について、今まで文部省はどういうことをやつておられたか、そういうことを伺つて、それから併せて細かいことを伺いたいと思いますがいかがでございましようか。
#11
○委員長(山本勇造君) それではそういうことにいたしたいと思います。それでは政務次官の御説明を願います。
#12
○政府委員(永江一夫君) 只今御審議中の問題につきましては、文部省としまして一定の方針を持つているのでありますが、大臣が只今衆議院の方の文化委員會に出席中でありますから、私から代つて文部省の基本的な考え方を申し上げまして、そうして更に詳しい具體的なことは、他の政府委員から一應御説明を申し上げて見たいと考えております。
 大體國語國字問題の根本的な解決を圖りますためには、その基本的な調査研究が必要であることは只今お話の通りでございます。今日私達は國民文化の進展をはかり、眞の文化國家を建設すべき責任を持つておるのでありますが、そのためには、教育の刷新という面からいたしましても社會生活の能率向上という面からいたしましても、國字國語の簡易化、民主化ということが基本的な條件であると考えておるのであります。このことは、長年に亙つて我が社會の各方面におきましてその解決が要望されて來た問題でありまして、諸外國の識者の間におきましても、種種論議されておる問題でございます。御承知のように先程來朝いたしましたアメリカ教育使節團の報告書の中には、この點が指摘して述べられてあるのであります。
 これに對しましては、その解決策として漢字の制限論、假名文字專用論、或いはローマ字專用論等の論議が只今お話のように行われておりますが、現在におきましてはその中の一つを最も良い策として採り上げるという論據を持ち、國民を納得させるということができるとは言い難いと思うのであります。國字國語の問題の根本的解決を早急に計るためには、どうしても基礎的な調査研究を行うような研究所を設ける必要があるという只今のお説につきましても、私共全く同感でありまして、文部省といたしましては、昨年國語審議會が調査審議の上答申いたしました當用漢字表竝びに現代假名遣いを、教育上竝びに官廳事務において使用することに決定いたしましたが、これは將來における解決の緒口を開いたものでございます。文部省におきましては、以上のような暫定的な國字國語の整理統一の案を立てると共に、これが根本的な解決を圖りますために、國民の國字國語使用の實際、現代語の實態竝びに國語の歴史的發展に關する調査研究を行い得る研究所の設置を圖りたいと思います。そのためには、明年度の豫算といたしまして約四百萬圓を計上してこれを要求する豫定でおります。この研究所の設置が實現いたしましたならば、基礎的な調査研究を行うと共に、國字決定審議委員會のごときものを設けまして、廣く學界の協力を求め、國字竝びに國語の初期體系の決定のために基礎案を得るように努めたいと思つておるのでございます。大體以上申し上げましたのが、只今文部省の持つておりまする一應の基本的な、この問題に對する考え方でございまして、この研究所及び審議委員會等の具體的なことにつきましては、最初に申し上げましたように、他の政府委員から適時御説明申し上げたいと思つております。私は大臣を代表いたしまして、この問題についての一應の文部省の立場をここに申し述べた次第であります。
#13
○政府委員(稻田清助君) 只今政務次官から御説明がありました國語研究所に關しまして、現在文部省として考えておりますその構造の極く大體につきまして、一應御説明を申し上げたいと存じております。この研究所の目的といたしますところは、國語國字に關しまする基礎的調査研究をなすことにあるのでありまして、その構造といたしましては總務部及び第一部、第二部、第三部と全體を四つの部門に分ちて考えたいと思つております。總務部は大體總括的事務乃至全般的企畫を扱う仕事を受持つことになると思つております。それから第一部といたしましては國語國字の合理化、純化というような問題に關しまする調査研究、それから第二部におきましては現代語の實態に關する調査研究、及び現代語辭典の編輯というような仕事を受持つことになります。又第三部におきましては國語の歴史的發達に關しまする調査研究及び歴史的國語辭典の編輯というような問題を受持たせたいと考えております。
 更に細かく申し上げますれば、第一部の總務部につきましては今申し上げた點で盡きていると思つております。全體的の計畫をやり、又この研究所で研究の成果としてできました資料の出版を早くする、或いは國語に關しまする學術大會を開催するというような全般的な仕事を取り扱う譯であります。第一部の國字改良の問題につきましては、例えば國民が國語に關しまして讀解力或いは書く能力というような力の實際に關しまする調査の研究であるとか、その外國字國語の改良に關する諸般の問題の調査研究を行わせる。又この國語教育の進展を圖りますための各種の調査というような仕事を考えております。それから第二部の現代語の實態に關する調査研究の部門といたしましては、例えば全國の各地域における國字國語の使用の實情についての調査であるとか、或いは各個人別に、性別であるとか年齡別であるとか、或いは教育程度別、或いは職業別による言語の實態調査、それから現代語辭典の編輯、外來語に關する調査研究というような仕事が當然これに附隨して參ると考えます。それから第三部の歴史的の研究の部門におきましては國語の研究資料の調査研究、國語の各部門における歴史的發達に關する調査研究、歴史的國語辭典の編輯というような事業に相成るわけであります。
 これらの四部の構造に伴いまして、國字決定に關しまする審議委員會というようなものが設置されることが豫想せられるのであります。更にこの研究所員を凡そ十名くらい考えておりますが、こうした問題でありますので、廣く一般社會における專門家の調査研究を委嘱いたしますが、凡そ百名くらいの方に調査を委嘱して各種の問題を研究して頂きたい。こういうような經費といたしまして、これは固より今後の大藏省の査定を經まして議會に提出せられるのでありますが、文部省として現に考えておりまする豫算といたしましては、凡そ四百萬圓くらいに考えているわけであります。その中四分の三くらいは事業費に當てられるものだと思つております。
 以上大體この國語研究所として我々の考えております構造の概略を御説明申し上げました。
#14
○委員長(山本勇造君) 只今永江政務次官とそれから稻田教科書局長から御説明がありましたが、民間が研究所を建ててくれという請願でありますが、文部當局の方もそういうことを考えておられますようで、内容等についてはいろいろあるかと思いますが、大きな考えの上では兩方が一致しているようでありまして、この點は大變嬉しいと思うのでありますが、併しこの内容等についてはいろいろあるかと思いますから、一つ御質問を願いたいと思います。尚細かい點の御質問がある場合には、釘本國語課長が見えておりますから、その方から説明させるようにいたします。
#15
○委員外議員(川上嘉市君) ちよつとお尋ねいたしますが、只今までかなづかいとか、又はそれらの改良とか、いろいろなことがありましたが、あれはどんなふうな人が拵えましたのですか。例えば假名づかいならば假名遣の中で「ずつ」というようなので、「す」の濁りというようなことは、ちよつと非常識なように考えられ、非常に劃一にすればいいと言つても、そんな馬鹿なことはないと思うのですが、ああいうふうなことが……。
#16
○委員長(山本勇造君) ちよつと……。
#17
○委員外議員(川上嘉市君) 杜撰なあれは……。
#18
○委員長(山本勇造君) 假名づかいの問題になりますが、國語の研究所を、請願のあれをやつておられるのですが、そういう細かい問題に入るのはどうでしようか。
#19
○委員外議員(川上嘉市君) 委員なんかの人選に愼重を缺いてやせんかと思うが、前にこれらのことを決めた連中は、學校の先生だけだつたのですか。
#20
○政府委員(稻田清助君) 今度研究所に關しまする協議會乃至委員會の人選等につきましては、十分愼重に考えまして、各種の研究團體、その他にそうした母體から成るべく推薦される方から構成して行きたい、こう考えております。
#21
○委員外議員(川上嘉市君) 餘程愼重にやつて頂きたいと思います。
#22
○梅津錦一君 國語國字の問題ですが、その研究所を立てるとして、まあ立てる理由があるから立てるのだろうと思う。その主なる狙いですね、何故にそういうものを立てなければならないかということの意味を、一應文部當局の方からあれがございまするのですか、どういう御方向ですか、どういう意味で、こういう研究所を立てるとか、そうして將來、今大體大要は分りましたが、どういう水準に日本の國語を持つて來るのが、早く言えば、今小學校でやつてるところのあの國語が、初等科六年程度で以て日本の國語、國字の問題を仕上げるのか、或いは初級中學まで行つて、初級中學ですか、その幾年くらいまででやるのですか、その狙いがあると思うのですが、その線に向つて恐らく研究所が設置せられ、その線に副つて總ての運びが計畫されるのだと思いますが、概略で結構だと思ひますが、その狙いを御説明を願いたいと思います。
#23
○政府委員(稻田清助君) 只今考えております點につきましては、國語教育は、義務教育九ケ年を以て完成いたしたいというような考でございます。九ケ年の國語教育を終われば、一般社會人として必要な國語的素養は身につくということを狙つておるのでありまして、それ以上國語乃至國文學ということについて深く進むものは、高等學校の課程において十分修得する、こういうような見當でございます。
#24
○松野喜内君 川上委員からの御紹介で、國語國字の研究所設置に對する御要望、至極同感なのであります。偖て我々委員會がこれの必要に贊成をいたし、どういう方法に行くかということについては、これは餘程考えなければならないのであります。これまでにありました文部省の指導せられた國語の改良委員會等におきましても、相當假名づかいにしろ、漢字制限問題等についても努力された跡は窺われますが、國際的になつた今日においてはこれは更に一段と考えなければならんのであります、本委員會においては大きく考える必要があると思います。言葉においても國際語とかエスペラント語を最も強調することがいいのか、それともその主たる、今日國際的にはむしろ日本の教育において第二外國語としては英語を第一にしたらいいか、ということも考えられると思います。そういうふうに本委員會におきまして、その國語といい、國字といい、大きく先ず方途について論じ合うことが必要かと考えます。そういう部分的の細かいことについては、又小委員會等においても論ずることが必要と思われるのであります。漢字全廢論を唱える論者があるかと思えば今俄かにできないので漢字制限、その漢字制限もどの程度なりや議論しておる。ローマ字採用についてもこの前始められた方法について今日反對の説が強く出て來ておる状態なのですから、我々委員會というものは、この方面に關して少しく大きく取り扱う問題だけでも論じて見たらどうかと考える一人であります。
 研究調査機關を設けたらいい、設けろということについては、全面的にその趣旨においては贊成する者ですが、偖てこれも具體的に今文部省の考えておられるようなふうに行つたらいいのかどうか、これまでも文部省の考えた調査機關等によりましては、未だこの新憲法の下、新國際的な情勢においては今一段と本委員會等においては再檢討の上出發せねばならん。出發に際して私どもは大きい方途を今少し論じて行く必要があると思う。こういう點について又專門委員も煩わしたいことであります、こういう方の御見解も伺いたい、又文部當局におかれましては、今次官はじめ政府委員より研究會を設けるということの希望をそれから豫算等を出すということについても、そういう意圖があることは諒としますが、民間においても、これまで國語國字の改良の各般の研究會がありまして、すでに長年我々も參加して來たことでありますので、私はこの委員會がどういう皆さんが御意圖を持つておられるか、大筋のところを伺つて、一つその研究會を、研究所を立てるについても具體的の意見を練らねばならんと考えております。そういつたことについて、專門員の方その他の方からもう少し具體的の意見を承つて方途を決めて後にこれを小委員會なりにお願いするようなことになつたらと思います。先ず專門員その他の御意見があつたら伺いたいと思います。
#25
○説明員(釘本久春君) 先程川上さんからの御話がございまして、又只今の御意見も拜聽いたしまして、文部省で進めております國語改良事業につきまして從來の……ざつくばらんに申し上げますと、古くからの文部省の人間だけで國語改良のプランを立てたりしており、從つてどうも視野が狹くなつたり、新らしい今の情勢に適合しない虞れがありやしないかというふうな御心配をお持ちになつていらつしやるかのように拜聽いたしましたが、それにつきましては、先程お話に出ました、假名遣いの改定又當用漢字の制定に關しましてその案を作られました國語審議會の委員の構成などを若干御説明申し上げ、又これからやろうと思つております國語研究所のやり方について主として人的な面を御説明を申し上げたいと思います。國語審議會におきまして漢字制限の具體案及び假名遣いの改定案を作られますに際しまして、社會各方面の協力を得られるような案を作ろうというお考えで審議を進められ、又その委員のその審議に當られました主宰委員は古くからの國語審議會のメンバーばかりでなく、お話にも出ました、例えば民間のローマ字運動に携つておられる方、或いは又假名づかいの運動に携つておられる方、或いは又各新聞社の代表といいますように、民間の有らゆる面における國語改良運動の當事者、又は關係者に委員になつて頂いておりまして、そうした委員の方々が社會各方面に無理のない改良案を得ようという心構えであの案を作られたのであります。從いまして當用漢字、現代假名づかいにつきましては、その審議に當られた國語審議會の委員は、先づ今日の日本の、特に國語の改良につきましては各方面の方々の意見が網羅されておると私共は考えておるのであります。又明年度から作り上げたいと思つております國語研究所の仕事につきましては、先程政府委員の教科書局長からも説明がありましたが、この研究に當ります人的の構成につきましては、プロパーの所員といたしましては、いわゆる代表所員が十人ありますが、大體七十人であります。極く固定的な職員ばかりでなくあらゆる方面の方々の協力を仰ぐために約百人、國語研究所の固定的なメンバーよりもより多い百人ばかりの各方面の專門家、經驗者に御協力を仰いでこれに相當の研究費を注ぎ込みまして、自由に御究をして頂きまして、その研究を先ず國語研究所で整理し統一して、先程御説明いたしましたように、義務教育で大體國語に關する教養は十分積み上げられるというような具體案を得るようにいたしたいとかように考えております。從いまして先程の御意見、視野が狹くなり過ぎやしないか、古い文部省型に捉われはしないかというひとについては仕事のやり方、人的の構成方面について十分注意したい考であります。
#26
○委員長(山本勇造君) ちよつと私から質問したいのでありますが、今度のは總務第一、第二、第三とこういうふうに置かれておるそうでありますが、その第一の仕事は國字の決定をやるということでありますが、國字の決定はできればこれに越したことはないので、是非やつて貰いたいと思いますけれども、ここに來るまでは非常にむずかしいことだと思いますが、先ずその前に、國字の決定をする前に、言葉が研究されておらなければならんと思いますが、例えば標準語の問題であるとか、標準發音の問題であるとか、こういうふうなのはどこの部で研究されるのでありますか。
#27
○説明員(釘本久春君) お答え申し上げます。第一部はいわばこの研究所の第一の目標を明かにした部でございまして、國字の決定に役立つ基礎資料を調査すること、それからいわゆる國語の整理統一に役立つような資料を作る部門、こういうことにしております。今の委員長の御質問の標準語の制定に關する調査研究というふうなものは、この第一の部でいたすことに考えております。併しながらその基礎には今の委員長がお話のように、十分な現代語の研究調査がなければならない。そのためには第二部といたしまして、現代語のこれはできる限り科學的な、廣範圍な實體調査を、第一部の研究の基礎になりますように、第二部において行います。併しその現代語の實體調査を十分にいたしますその基礎には歴史的な發達に關する調査をいたす必要もありますので、第二部の基礎として第三部で調査をする、かような組立てになつております。尚又先程局長のお話にもございました委員會の件につきましては、この研究所は十分な内外の研究員によつて十分な科學的な資料を作ることに專念いたしますが、これによつてすぐ改革案を、國字國語の改革案を決定するというようなことは、その資料として出しまして、直接この委員會、或いは又國會その他において斟酌されて、研究されるようにすべきだと思います。かように考えております。
#28
○委員長(山本勇造君) 尚引續いて伺いますが、これは何年ぐらいの計畫になつておりますか。
#29
○説明員(釘本久春君) 何年というのは一つの問題につきましてですか。
#30
○委員長(山本勇造君) それでもよいです。
#31
○説明員(釘本久春君) 全體として何年ということはむしろ考えておりませんので、むしろ無限にますます大きくして行きたいと考えておりますが、少くとも五年の間に第一期の國字改革に關する基礎資料、基礎案と申しますか、參考案と申しますか、そういうものを出し、第二囘に又五年單位くらいで第一次國字改革參考案、第二次國字改革參考案というふうなものを五文單位ぐらい、兎に角關連學會の、全部の學會の協力を得て資料を作るようにいたしたいと思います。
#32
○委員長(山本勇造君) その答辯大變に結構と思いますが、例えばイギリスのあのNEDの字引をこしらえるのに二千人が三十年……。
#33
○説明員(釘本久春君) 八十年です。
#34
○委員長(山本勇造君) 八十年ですか、兎に角大變長い年限が掛つておるように思いますが、これで見ると僅かに七十人か、外の人を頼んでも百人くらいの數の人で、而も五年とか十文くらいのことでどんなことができますか。こんなことではこれだけ大きな問題は研究できないと思いますが、何かこれについてできるだけの御自信がありますか。
#35
○説明員(釘本久春君) 大變手痛い御質問を頂いた譯でありますが先程申し上げましたように、これで改革したら完全な、國家百年、千年の將來に亙つて間違いない改革案を得るということを五年や十年で得られると存じませんが、この國字決定に關する參考案を申しましても、細かくは申し上げませんが、いろいろな図がありまして、例えばローマ字を採用するとしたらどうか。或いは假名を採用するとしたらどうか。又採用するについても、どういう意見についてはどうかというような問題で、私は全體的な改革案を五年單位には出せるとは考えておりませんけれども、五文單位で相當に有力な改革案が或部内毎には出し得ると、かように考えております。結局大きく見ますれば、最初の十五年ぐらいに國語、國字の全體の改革案の基礎的研究が大體整うというくらいのものになろうかと思いますが、御答辯いたします。
#36
○委員長(山本勇造君) 政務次官にお尋ねいたしたいのですが、事務的のものでなしに、國語の問題ということは、ただ國語學者が言つているような、國語學者だけの問題でなく、これはもう國民全體の問題なんですが、その國の國語なり、國字の如何ということがその國の文化の象徴であると思いますが、私は又戰時中に、何度もフイヒテの「ドイツ國民に告ぐ」を二囘程讀んでおりましたが、あの中に、言葉が人間を造るよりも、人間が言葉を造ることの方が非常に多いんだという言葉をフイヒテが使つておりますが、あれは御承知のように、教育の問題を説いておるわけでありますが、その中で特にこの言葉の問題の重要性を非常に説いておるわけでありますが、先程梅津君からこの研究所はどういうことを目的にされるのかという問いがありましたが、結局我が國の言葉なり文字なりが國民の誰でもが分り、誰でも讀め、誰でもが書けるような、つまり國民の文字になるのであつて、或一部の人だけが分り、一部の人だけが書けるというような文字でなく、國民全體が誰にでも分り、誰にでも讀め、誰にでも書けるというような文字になつて來なければならんのではないかと私は思うのでありますが、從つて研究所もそういうような點で僕は考えて行つて貰わなければならんと思います。勿論歴史的に國語を見て行かなければなりませんが、この研究所では今のような點非常に考えて頂かなければならんと思いますが、そうしますと、たつた七十人とか百人ばかりの、そんな僅かな研究員で、而も考えていることは大變に澤山の問題を採り上げている。餘り問題が多過ぎますので、多いのは結構ですが、それならそれなりに人數を殖やし、規模を大きくして、そうしてやらなければならんと思いますが、政務官としてのあなたとしてどういうふうにお考えですか。
#37
○政府委員(永江一夫君) 非常に委員長から適切な御意見でございまして、私としては全然同じ感じを持つて承つたのであります。四百萬圓という當初豫算でありますが、これは只今文部省におきまして、來年度の豫算について折角これを集めまして檢討中でありますから、只今私は大臣の代理で申しました四百萬圓というのは、只今決定いたしておりまする、大體文部省として大藏省に要求する豫定額であります。それでこういう相當長い間かかり、而も國の基本的な問題を取り扱う豫算としてこれが少なきに失するという御意見は全然同感であります。ただ一應來年度この豫算で出發をいたしまして、そうして運營中に尚不十分な點が多々あろうと思いますから、それらは追加豫算の形式においてでもいたしたいと思つております。併し先程申しましたように、この豫算は大藏省に要求せんとする只今文部省の一つの試案でございまして、今委員長からお説にありましたような御意見、その他當參議院における文化委員會、或いは衆議院における文化委員會において更に御研究の上で、この額が少なきに失するという只今の委員長の御意見のような御意見がどしどし出て參りまするならば、私共は繼續豫算ではありまするが、當初豫算は四百萬圓を遠慮いたしまして、殊更に少なく要求せなければならんという用由を持たないのでありますから、こま點については委員長の御意見を尊重いたしまして、十分考えて見たいと思つております。
#38
○來馬琢道君 この國語、國字について明治以來の歴史を考えて見ますと、文部省が國語國字についての調査をやつておられるために、いつでも積んでは又引倒してしまつて、又新らしく積み上げて行くという感じを持ちます。私はローマ字問題について特にその感を深くするのでありますが、世間で申しまするヘボン式ローマ字というものが明治の文化と竝行して、すでに四十年來日本のローマ字、即ちローマ字によつて國語を表すという形式になつておりましたものを、日本式ローマ字ができて、又その日本式ローマ字を訓令式ローマ字というようなものにいたしまして、ローマ字綴にも三つ又は四つの式ができて來まして、それで今日まで進んで來ん。訓令式ローマ字によつて統一されるやな文部省の方では解釋していたようでありますけれども、そこに敗戰という悲しい事實が起り、その敗戰と同時に進んで我が國を占領したのがアメリカの軍隊であり、アメリカの勢力の下に我々は今生活しておるようなことになつたのであります。一時はSHIがなくなつてSIとなり、JIがなくつてZIとなり、TIAができてOHAがなくなつたというような、我が國に又又OHAができ、OHIができた。TIAだとかTIとかいうスペルが影が薄くなつて來たようなことになつて來た。我が國におけるローマ字がすでに英語系統で纒つていたものを騷がしたものは日本式ローマ字であつた。その日本式ローマ字もやはり世界の或大きな勢力には降服せざるを得ないという現状にありまして、私共すでに孫を持つております者には、毎日和英の字引を引きます時に、FUで引くのか、HUで引くのか、ZIで引いていいか、JIで引いていいかということに迷わされております。新らしい和英辭典は訓令式によつておりますけれども、少し古い辞書は我々は標準式といい、世間ではヘボン式といつておりまする式によつております。それはドイツ語であるとか、イタリー語であるとかいうような讀み方からしますれば、ヘボン式では十分なことはないのでありますが、このローマ字に對する我が國の文部省の態度だけでも随分國民は迷惑をしておるものと思うのでありますが、只今委員長の御質問によつて五ケ年に一遍、又次の五ケ年に一遍というようなソヴイエトの五ケ年計費というような調子で進んで行かれることは、豫算の關係上いたし方がないでありましようけれども、もう少し大局から眺めて漢字制限のごときことでも積んでは崩し積んでは崩しというようなことをしたり、仮名づかいにいたしましてもまだ何となく我々が不安に堪えないところがあり、どうも國字國語の問題は、今囘の調査によつて一氣に纏まるものとも思われないように感ずるのでありますが、文部省を中心とする調査機關を更に擴大して、もう調査は數十年來の研究で纒つておるものだと思う。ただ斷の一字を以て決行するところに新日本の有難味があるのかと思う。もつと大きな人々を集めたというては語弊があるかも知れませんが、田中館博士一人のために引摺られるというような噂の聞かれるような調査方法でなく、國家のためということであれば幾多の反對論があつても、必ずこれを決行するという誠實な政治裁斷が要るのではないかと思う。この點從來の文部省の態度に對してすでに經驗済の稻田局長、その他の方は私の今申しましたことについて顧みるところあり、又小調査を幾囘も繰り返して再び崩されるようなことのないよう、もつと大きな我我をして迷うところなく進ましめるような機關をこの際お作りになるという大なる意圓はありませんが、局長にこのことを伺いたいと思います。
#39
○政府委員(稻田清助君) 只今の來馬委員のお話、誠に御尤もと承つたのでありますが、ローマ字の問題につきましても、お話のごとき感はまあないでもないのでありますけれども、一應ここには一つの繼續的の進行方向があつたように私共は考えております、御存じのように昭和五年から昭和十二年に至りまする七年の歳月を經まして審議いたしました臨時ローマ字教育調査會におきましては、當時非常に論議のありましたヘボン式、及び日本式のこの兩者の論議の一應の折衷案といたしまして、例の文部省訓令式を決定いたしました。以後文部省教育その他におきましてこれをずつと繼續して參つたのであります。本年度から新たに六・三制を實施することになりまして、その教育の中に大いにローマ字教育を採り入れなければならないというような點から出發いたしまして、昨年度以來ローマ字教育協議會を開催いたしまして審議をいたしたのであります。この協議會におきましては、主に如何に教育上ローマ字を採り入れるかという點に重點がありましたのであります。自然標準式と日本式、その他の綴り字の問題も論議されたのであります。ただこれは論議が盡きない恰好でありましたので、何れこの綴り字の問題につきましては、もつと根本的に新らしい委員會を設けて審議するということにしたしました。一應今まで取り來つた方角が訓令式でありますので、訓令式を基準としてただ他の綴り式をも加味しても宜しいということで、今日に至つたのであります。そうして只今申し上げました新らしい委員會につきましては、目下その機成につきまして關係方面といろいろ相談中でございます。併しながらお話のように國語改良の問題につきまして、確乎たる基礎の上に立つて進まなければならないということは、私共全くその通りに考えるのでありまして、それなればこそ今度こうしたしつかりした國語研究所というようなものの地盤の上に、それをしつかり築いて行きたい。こう考えております。お言葉の點につきましては全く同感であります。十分その點努力いたしたいと考えております。
#40
○金子洋文君 文部省の方にお聽きしたいのは、さつき委員長から誰でも書ける、誰でも讀めるという示標方向が云われましたが、私は芝居を書いておりますが、芝居というものは殆ど言葉であります。その示標方向がはつきり決まらなければ、研究所を拵えても國民が迷惑をするばかりだと思います。例えばこれはいろいろ議論があるでしようが、この問題の漢字制限でも、假名づかいを直したものでも滅茶苦茶、それを守つてやる人と、僕らみたいに守らないで書いておる人間と、守らないで書く人間が惡いのかどうか、これも問題ですが、とても守つておられないから守らないで書いておる。例えば「お」ということになると、どうしても書けない。「お」一つに決められると、お父さんを、何々をという接続の字をどうしても「お」に書けない。これらは僕らがいかんとも思つております。最近の新聞など見ると、漢字制限といつても政治面など漢字制限どころではない、滅茶苦茶である。新聞は制限などして書かれておりません、ところが新聞は毎日國民が讀んでおる。そうすると一方では制限を云われて、而も實際にはちよつとも制限されておらない。迷惑するのは國民ばかりだろうと思います。であるからはつきりと、今委員長の言われたように誰でも書ける、誰でも讀める、そういう方向をはつきり決めて研究なさらないと迷惑するのじやないかと思います。その點はどうなるのですか。文部省の研究所の示標方向というのは……。
#41
○説明員(釘本久春君) 研究所を作新目的は、とにかく義務教育を終つた者なら誰でも、社會として何でも讀め、何でも綴れる。そういう状態に國語、國字を置まにはどうしたらいいかという具體案を得るため、それが目的でございます。それから今お話がございましたが、文部省の國語についての考え方がはつきりしていない、やり方に不徹底なところがあるというふうに伺つたのでありますが、委員長が言われました方向で國語政策と申しますか、國語の問題を解決して行こうという基本方向は今でもはつきりしておるのでございまして、漢字を制限すること、假名づかいを改定すること、新假名づかいを實行に移しましたのははつきりその方向を我々は持つておるからであります。併しながらまだ我々の微力のために十分は畫しておるつもりでありますが、社會各方面とも全部洩れなく當用漢字千八百五十字で讀み書きを賄つて頂く、又現代假名づかい、現代の國語文を書く場合に現代の假名づかいで書いて頂くということが徹底していない點があろうかと思います。その點は我々ももつともつと努力いたしまして、よく趣旨を汲み取つて頂くように努力しようと思つております。
#42
○羽仁五郎君 この問題について最初に委員會の委員の皆さんに考えて頂きたいと思うことは、さつき來馬委員から御發言があつたのですが、日本の明治以來の國語改良の仕事の上で、文部省が、國語改良の仕事をやつて來られた。その實績は來馬委員が言われたように試驗済でないかと思うのです。それで文部省がやつたために積んでは崩し、積んでは崩しというふうに仰しやつたのは随分婉曲に仰しやつたので、實際は文部省が國語改良事業を擔當しておつたために日本の國語改良が非常に阻害されたといつても差支ないのじやないか、そういう意味で私は委員各位が、文部省が果して日本の國字問題を解決するのに適當であるかどうかという點を公平な御研究を願いたいと思うのです。と申し上げますのは國字の問題は委員長も言われた通りに實際は國民がこれを讀み書きができるばかりじやない、國民がこれを支持しなければ決して實現できないわけであります。歴史的に見ましても、政府が文字を造るということは歴史上にないのであつて、國民が文字を造る、或いは國民の代表者である作家が文字を作つた。例えば近代イタリヤ語はダンテが造り、近代ギリシャ語はシエクスピアが造つたというように作家が造る。もつと言えば國民が造るのであつて政府が文字を造つて國民にこれを用いろということは今までにおいてもないことでありますが、將來においては一層あり得ないことだと思います。で今まで文部省の國字改良運動が常に失敗をして來た醜態を曝して來ておるというのは、國民に支持される實力のない文部省が、國民に向つて國字改良を命令しようとしたことにあると思うのです。文部省がいかに國民に支持される實力がないかということは、今金子委員から御發言もあつた通り、最近新らしい漢字制限を新聞が實行していないのは明瞭にこれを證明しておる。文部省は日本の言諭機關において全然支持されていない。その點を文部省が十分御反省をせられ又委員各位はその點を十分研究して一遺國民が支持するようなものが中心にならなければ國市改良運動は何度やつても失敗し、金子委員が言われたように國民に迷惑を及ぼすに過ぎない。國字の改良を積んでは崩し積んでは崩しというくらいに國民のエネルギーを濫費し、國民に迷惑をかけることはないのである。我々の數十年という娑婆に生きておつた者でない、まだ若い者すらたびたび改良及び改惡の度毎に迷惑を蒙つたわけであります。これはどうしても全國民が支持し、言論機關が支持し、作家が支持するような、そういう中心を作らなければ駄目だ。そういう中心が文部省に置かれることは今までの歴史の示すところではその資格はないのじやないかというように、これは私見でありますが、聰明なる委員各位が十分御研究を願いたい。そういう意味にどうも先程の質疑及び答辯を伺つていても、今差當つて作られる文部省における國語研究所というものは非常に中途半端なものであつて、それで在來の日本の政府がよくやるように、初め小さなものを作つて、大した問題ないというので通して、後で段々大きくして怪物のようなものができるという、その轍を履まなければ非常に幸いだと思うのでありますが、恐らく新憲法だからそういうことはないと思いますが、そのような疑いを抱かせる點もありますように、その原案が非常に不徹底である。これは文部省は本當に國民が支持し、言論機關が支持するものならば、もつと大がかりなものをお作りになりたい。その點の自信がないために大分小さいものをお作りになるのではないかと思うのであります。本委員會において十分この點を審議せられて、國民が支持し、なかんずく作家や言論機關が支持する、そういうふうなものを作つて行かなければならん。このためには私はどうしても行政官廳にそういう大きな研究機關を持つべきではない。これは國語研究に限らない。經濟安定文部にしても、或いは物價廳にしても、一般に從來の政府は非常に大きい研究所を持つておるという習慣に對して、我々國會が反對しなければならんと同じ理由から、これはどうしても政府が非常に大きな研究所を作るということはできん、調査機關を作るということは許されない。そういう根本的な調査はやはり國民に支持せらるべき國會が中心となる、或いは本委員會が中心となる、或いはそれが努力してそういう本格的な研究所を作らなければならん。そうだとすれば文部省内における研究所というものは、大體さつき來馬委員からも御發言があつたように、我が國字に對する大體の改良の方針というものは、明治以來それぞれの專門家が十分に審議を盡して大體の結論は出ておるのではないか。從つてそういう從來の學者の研究によつて結論に出ておるものを纒めて、それを國語政策上に、行政上に實現するということに必要の程度の研究所を文部省は持たれる。そういうふうな鹽梅に行かれるのが適當ではないかというふうに考える次第であります。
 大體私の申し上げた點は、第一には國語の改良の中心的な、根本的な機關というものは、文部省に置かれることは歴史的に見ても又將來からいつても適當ではないのではないか。そういうふうなものはもつと言論機關や、作家や國民が支持するような形において、即ち國會を中心として作られて行つた方が宜いのではないか。或いは國立國語研究所というふうなものになりますか、そういうふうな民主的な機關ができた方が宜い。それから第三にはやはり行政官廳内に過大な調査研究機關を作らるべきものではないという趣旨もこの際考えて頂きたい。第四には差當り文部省において言語行政の上で必要な研究機關を持たれるのならば、その限りにおいては我々も十分考慮しなければならんのではないか。以上四點であります。どうか聰明なる委員各位におかれて十分御研究を得たいと思います。
#43
○政府委員(稻田清助君) 只今のお話の中、又金子委員のお話の中に、新聞が協力しないという點があつたのでありますが、この點につきましては各新聞非常に御協力を願つております。その點に關しては我々大變感謝しておるわけであります。或いは又見意向の雜誌、その他大方いろいろ御協力を願つております點について、多少御見解と我々の感謝しておる點と相違することを申し上げたいと思います。
#44
○金子洋文君 あなたは漢字制限で政治面を御覽になつておるのですか。制限どころでない、大變なものですよ、溢れておりますよ。
#45
○政府委員(稻田清助君) 多小活字關係で、タイトル等について眼につくような漢字制限があると思いますが、本文につきましては五大新聞その他も例の主査會に御出席になつておるような關係もありますし、協力して頂いております。我々の方でも非常に細かく調査しておりまして、よく調べておるわけであります。大變御苦心願つております。
#46
○羽仁五郎君 今の點は現在の新聞社が現在の文部省に非常な好意を持つておるからでありまして本質的には現在の文部省を言論機關なり作家なりが支持しなければならないという法的な根據はないわけであります。その點を申し上げておるので、從つて從來も一年か二年は協力しておるのですが、五年經ち六年經つと、協力しなくなる、こういうことがあるわけであります。それは一つは小さく言えば、國語審議會の委員の構成などにもよる。さつき委員の構成の問題があつたようですが、言論機關が、その委員構成に對して全幅的な信頼をおいてないというふうなこともあつたのでありますが、併し私は問題は委員構成にあるのでなくて、そういう行政機關が研究して、そうして立案してそれを實行されるということに無理があるので、やはり民間において研究され、そうして國會においてそれが議決され、そうしてそれが文部省が行政をされるというときに、國民が初めてこれを支持するし、且つ長きに亙つて誠意を持つてこれを支持するじやないか。今までは文部省なり、政府なりが權力的にそれを國民に使わせる。だから一時は好意を持つて使うが、長いこと誠意を持つては使わない。假りに新聞紙上で使つても、手紙を書いたりする場合には依然として使わない。手紙は候文を使う。文部省が決めたものだから手紙を書く場合なら候文でもいい。併し國民自身が決めたものであるならば、候文でなく、ちやんと決めたところの假名づかいを使う、そういう根本的な點を考えて頂きたいと思うのであります。
#47
○團伊能君 全く御同感であります。私は先程川上さんの御提案の國語研究問題を、多少それを制限する。そのことは或形においてこうあつと欲しいという盜然的な意味においては、或いは文部省の御制限が、指し示すという、こうあつと欲しいとか、或いはこれに止めて欲しいとかいう意味のことと、私は前から承知いたしておりまして、それ以外において、それでなければならんというものとは私承知していないのであります。それで私は自分で書くのは勝手に書いておりますが、そういう線に幾らか沿うという、かすかな氣持で御協力しておるようなわけであります。これは非常に小學校教育というものに現れて参りまして、例の假名づかいがいろいろに違つて來る。棒を引いた場合もございますし、「てふてふ」とか「ちようちよう」とか、いろいろな問題がございまして、殆ど今までの只今羽仁さんが言われたように、いろいろあつちこつちへ行く。どういうことか分りませんから、結論におきまして文部省の仰しやることは信じない。自分で考えて行くという結論を結んでおりますが、その問題は別といたしましてもう一つ國語研究をスタートするに當りまして、生きておる文學が死んだ枠に入れてしまつて永久に或形におきまして人間の表現を止めてしまう、進歩がなくなるというような感じを私は強くいたします。殊に漢字の制限、文字の制限というものによりまして、或生きて、動いて行く動態であるところの文字というものが、或固定的なものに考えられて、そうして、それから先に發展性、或いはそれが政治體として發展し、動いて變つて行くというものを止めてしまう。そういうものに對して制限というものも全くくつ付いていないように思います。それが制限が十分にぴつたりと來ないのじやないかと思います。例えば今日まで假名づかいその他にいろいろな御研究がありましたが、私自分で文部省の方では伺つたこともございますが、決定的な御答辯を得ませんでした。例えば「ち」に點をうつて「ぢ」と發音する、「つ」に點をうつて「づ」と發音する。そういうものが、これは何も今日敗戰の結果こういう状態になつたばかりでなく、ずつと前から非常に日本人の常識語の中に必要であつたものが一つも作られていない。いろいろ漢字のむずかしいものは制限されておりますが、こういつたような意味で、伸びて行く方面につきまして一つのはつきりした考がないというような形の、ただ文字、國語改良は要するに面倒くさい漢字を使わせない、その能力を止めてしまう、或いはその冗費を、無駄づかいを省くということだけに集中しておりまして、發展してこういうものを使うという側面がない。その點につきまして御當局のお考えを伺わせて頂きたい。
#48
○説明員(釘本久春君) 只今の御説に對しまして私共の方で聊か進めております研究の一端を御報告申し上げます。
 只今の御話は、日本人の音韻も段々生きた言葉として豐富になつて行くんだ。その豐富になつて行く語音を書き表わす何か日本人に都合のいい假名を本にした表示形式をお前たち研究しておらないかというお話のように承りましたが、これは仰せのごとく是非研究しなければならない實際上の必要もございますので、數年來いろいろ研究しておりますが、その中で一つ纒まりつつありますものは外國の地名、人名、外來語の假名による表記をどうするか、例えば野球フアンが近頃多いのでありますが、それを野球フアンということを假名で書き表わす必要がもうすでに現代語としてあるのでありますけれども、その表記が決まつておりませんために「ふあん」と讀んでしまつて、非常に野球を心配されるような書き方をしなければならないというようなことがあるのであります。そういつた點で外國語から日本語に入り込んで來ました文字の表示形式などにつきましても定めまして、教科書面だけではすでに實行しておるものもあります。それから外國語を如何に假名で表記するかという問題などにつきましてもいろいろ研究して多少の案は用意しております。更に假名づかいの問題と離れまして、日本語を書き表わす場合の、日本語の發音を書き表わす場合の發音符號、これは假名づかいではございませんで發音符號で……。その際には今團先生の仰しやいましたような、或いは片假名のあるものに、スに丸を打つて表わすとか、ツに丸をつけるとかいうような表記方法を考えなければならないと思います。これも今案もできておりますが、いずれにいたしましても發音符號としての假名のつかい方、そういつた問題は私共の方では研究いたしております。併しこれは漢字を制限し、日本の言葉を本當に日本人全體の使いいい言葉にして行くといふ仕事と正に車の兩翼のように必要な仕事と考えられますので、進めておる次第でございます。
#49
○來馬琢道君 大變文部省の方では研究しておられるような答辯でありますから、これ以上申し上げることは本日は差控えてもいいと思うのでございますが、先程委員長から、誰でも讀める、誰でも書けるという言葉、今文部省の方ではその方針で今の假名づかいを進めておるのだという御意見のようでもありましたし、又そうあることは至極結構のようでありますが、英語におきましてもその他の言葉におきましても、必ずしも讀めるものが直ぐ書けるとも決まつていないので、必ずどう綴りますかという言葉は、いつでも初對面の挨拶には出ることが幾らもあります。アメリカでは夜という字を、ナイトという字の中のジー、エーチは止めにした方がよかろうというので、私ども廻つて見ましたときは、エヌ、アイ、テー、イーでナイトという字を拵えて、夜ということにしようとしたこともありますが、カラーという字がアメリカとイギリスとでスペルが違つてることがあります。なんでも田中館博士の日本式ローマ字を考えたときの動機を聞いて見ると、神保博士がヂエー、アイ、エム、ビー、オーと書いたらインボーと讀まれたので、困ると思つたので、ゼツト、アイ、エム、ビー、オーと書いたら、今度はチンボウと讀まれた。これは世界各國の言葉に掴つておつてはいけないから、日本は日本式のものを作つた方がいいということから日本式ローマ字ができたということを田中館博士のあれにもあることでありますが、随分日本人は不用意な言葉を使つてることが澤山あります。毎日のように、ラヂオで何とかやらの問題につきまして、放送局の内玄關へおいでを願いますと言つて、平氣で何年間も使つております、私も不深切でつい忠告をしなかつたのでありますが、玄關という言葉は技佛教の方で言いますと、最も深に幽玄な途へ入つて行くという堰ということでありまして、お寺の入口を玄關というのでありまして、それは漢語でございます。それに又別に小さい玄關を作りますから「内玄關」と言いますので、内祝言と同じことで、「ない」という音で讀むことが普通ですが、一體誰が考えたか、「うち」玄關という呼び方をしたのを天下の人々が笑いもしなければ忠告もしないという状態であります。人に申しますと「ない」玄關も「うち」玄關も同じではないかということで、すらつと笑つてしまつております。日本人は文字と言語との間における非常におかしな頭の作用のある國民であります。文部省邊りではもう小しああいうところまでも注意して貰うことが必要なのです。讀めるとか、書けるとかいうことが直ちにそのまま我々國民に直ぐと使えるものではありません。只今お話のありました「なお」というときの「お」の字を、これを「お」にされたために、我々は始終讀み損なつて、又讀み直して行くことがしばしばあります、あれは「ほ」とすることがむしろ宜かつたろうと思いますけれども、ああいうことが積んだり崩したりして、おる一つの言葉と思います。要するに私はもう少し文部省は神經質になつて調べるか、そうでなければそうと力強い機關を拵えて、根本方針を決めるということについて一段の努力をして貰いたい、これは政策の上から言つて見ても、日本國民の幸福の上から考えても、餘程高い所から見て頂きたいということを特に希望いたすところでありまして、又元のようなことを繰り返すお考えであるかどうかということをここでもう一度伺いたいと思います。
#50
○政府委員(稻田清助君) 只今の御注意等十分今後我々計畫を進める上において考えて行きたいと思います。
#51
○委員長(山本勇造君) 速記をちよつと止めて……。
   〔速記中止〕
#52
○委員長(山本勇造君) 速記を始めて……。
#53
○三島通陽君 段々皆さんの御意見が出ましたのですが、實は私、最初にこの請願の紹介者に伺いたいと思つておつたのですが、その時期を失してしまつたのです。紹介者が歸つてしまつたために質問ができなかつたのですが、一體この研究というものはどこに置かれるかという趣旨です。この請願者の趣旨が聽きたかつたのです。文部省に置かれるのか、或いは内閣の直属として大きな國立の機關でも置かれるのかということなのです。或いは民間に置くのか、又先程羽仁委員から國會の中に置いてもいいじやないかという御意見も出ましたが、これも私は一應御尤もな御意見だと思いますけれども、併し國會はやはり立法府であつて、こういうようなインステイチユーシヨン、研究所といいますか、そういつたものを果して國會が持つということに對して私は多少疑義を持つのであります。やはりこれは大きな官民合同といいますか、こういう大きな機關が欲しいというような文部省に對しいろいろな御意見も出ました。併しこれも一應御尤もなことでありますけれども、とにかく文部省というところは今まで相當各省から豫算を剥奪されて、而もこういうものを始めると言つては金を持つていかれ、これを始めると言つては金を持つていかれるというわけで、甚だ氣の毒な状態にあつた。併し文化國家としてこういうことは重大でありますから、文部省として大きな施設を持つことが宜かろうと思う。併し今までの文部省のやり方では私共は將來のために非常に心配されるので、この點文部大臣の御出席を得て十分御話を承つておかなければならないというような氣持をもつたのであります。そういうことを適當なる機會に發言させて頂くことをお許し頂きたいと思うのでありますが、今日は大臣がおいでになりませんから、そういう根本的な問題を適當なる時期に大臣の御出席を得て伺いたいと思います。或いは政務次官からお答え頂いても結構です。
#54
○委員長(山本勇造君) それでは今のような三島さんの御發言に對しては、文部當局から直接大臣に話して貰いまして、できるなら次囘に大臣の御出席を願つて御答辯を願うことにしたいと思つております。
#55
○來馬琢道君 先程申し上げたような私の考えでありますから、今三島委員の御發言に贊成をいたしまして、できることならば文部省の中に置かれる研究所ではなくて、内閣に直屬する即ち外交問題、又日本の歴史にも關係のありますさまざまの方面から觀た國語國字の問題を、この際大膽に決めるというような方針で、殊に我が參議院のごとく解散のない議院があつて、その中でその方面の權威者と言われる方々が集まつておられるとき、内閣の中にできたその研究所と國會とが協同いたしまして熱心に進みますならば、必ず先程申したような無用の勞力を費やすことなく、國民をして行くところに迷わしめるというようなことがなく、好き結果を得られるものと思います。このことをこの次までに是非大臣に傳えられて、明瞭なる、確信ある御答辯を得たいと思います。
#56
○委員長(山本勇造君) では今日はこれで委員會を閉じることにいたします。
   午後三時二十八分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     山本 勇造君
   理事
           金子 洋文君
           久松 定武君
   委員
           赤松 常子君
           梅津 錦一君
           團  伊能君
           徳川 頼貞君
           松野 喜内君
           大隈 信幸君
           藤森 眞治君
           岩本 月洲君
           來馬 琢道君
           高田  寛君
           三島 通陽君
           羽仁 五郎君
  委員外議員    川上 嘉市君
  政府委員
   文部政務次官  永江 一夫君
   文部事務官
   (教科書局長) 稻田 清助君
  説明員
   文部事務官
   (國語課長)  釘本 久春君
ソース: 国立国会図書館
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