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1947/11/11 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第7号
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1947/11/11 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第7号

#1
第001回国会 文化委員会 第7号
  付託事件
○ローマ字つづりに關する陳情(第五
 十七號)
○群馬縣勢多郡敷島村の古跡發掘促進
 に關する陳情(第五十八號)
○物資愛護思想普及運動に關する陳情
 (第百一號)
○ローマ字つづりに關する請願(第百
 八十七號)
○天草島各種觀光施設進に關する請願
 (第二百二十八號)
○觀光審議會設置に關する請願(第二
 百六十六號)
○神奈川縣下の觀光施設整備に關する
 陳情(第三百七十二號)
○觀光國策の樹立に關する請願(第三
 百十四號)
○映寫技術者免許制度改革に關する請
 願(第三百二十一號)
○放送事業に關する請願(第三百三十
 一號)
○映寫技術者免許制度改革に關する請
 願(第三百四十九號)
○著作權法の改正に關する陳情(第四
 百七十九號)
○陳寫技術者免許制度改革に關する請
 願(第三百九十四號)
○映寫技術者免許制度改革に關する請
 願(第四百十二號)
○新聞用紙の現行割當基準改正に關す
 る請願(第四百二十六號)
○皇居の名稱改正に關する請願(第四
 百三十一號)
○演能會觀覽税免除に關する請願(第
 四百三十七號)
○觀光事業上ホテル事業法の判定等に
 關する陳情(第五百四十號)
○派遣議員の報告
○國寶等の保存行政に限する件
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月十一日(火曜日)
   午後二時十四分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○派遣議員の報告
○國寶等の保存行政に關する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(山本勇造君) 只今から會議を開きます。この委員會から先日奈良の正倉院及び法隆寺等の視察に派遣されました方々からその報告を伺いたいと思いますが、御異議ございませんでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(山本勇造君) 御異議がなければ團委員からその御報告をして頂きたいと存じます。
#4
○團伊能君 この度參議院文化常任委員會から奈良地方の寺院その他國法の保存状態の調査に出張をお許し頂き、我々が調査に參りました。それにつきまして細かな旅程、その他の御報告は先月の打合會で申上げましたので今日はこれを省きまして、大體におきまして委員が考えましたところを纒めて申上げたいと思います。尚私の報告で足りませんところは御一緒に行かれました委員の方々から補足して頂きたいと存じます。調査委員は十月の十六日にこちらを經ちまして、二十日に歸つて參りましたが、その間に奈良東大寺の各寺院、春日神社の全部、正倉院の保存状態及び從來正倉院御物として保存されたものの個々につきまして保存状態を調査いたしました。尚それより法隆寺に參りまして、只今文部省におかれて再建中であり、殊に五重塔、金堂はこれを解體して再建中であります。その間にいろいろ發見されましたものや何かの説明を承り、法隆寺につきまして殆んど一日費しまして調査いたしました。尚引續きまして藥師寺、唐招提寺、これも文部省におかれまして今再建中である極樂院、新藥師その他の寺院を調査して參りました。尚奈良縣その他において非常に荒廢しておる寺院が多いことは聞いて決りますが、時間がなく、殆んど奈良周邊に終りましたことは甚だ遺憾と存じますが、この奈良を中心といたしまして最も重要な寺院のある地方でございまして、大體此處を視まして全國に亙つております今日の保存行政に關係ある古社寺、その他國寶の状態を推測することができるような參考資料を得ましたことは、我々非常に喜んでおりますところであります。尚これにつきまして一々この部分がこうなつておるということは、何れ機會を得まして本書、その他で御報告申上げたいと思います。戰爭中から今日にかけまして全く修繕をしなかつたもの、殊に木造の社寺の建築が思つたよりもひどい荒廢をいたしておりました。これは元來木造建築の根本的な缺陷といたしまして、木材の建築の上に非常に重い屋根をのつけております關係から、軒廻りが下つて參りまして、屋根が非常に傷んでおまりす。又神社建築におきましては檜皮葺が多いのでございます。これは大體伊勢の神宮におかれましても二十手ごとに改築するというような習慣があり、それから檜皮葺の耐久年齡は場所にもよりますが、大體二十年となつておりますのが、戰爭以前からこれを取替えず、春日神社のごときはもう四十年くらいになつておりまして、屋根の一部が全く腐蝕いたしまして、ここから雨がもつて參りまして柱まで腐つておる所がございました。こういう状態を見まして何とか保存行政につきまして、調査委員一行は非常な心配をいたしまして、いろいろな議論をいたし、又奈良地方におきまして奈良縣廳の文化課とか、或いは文部省の修理委員とか、或いは寺社の當事者、その他縣會、市會、その他これに關係ある保存行政に與味ある方に集まつて頂きまして、副知事にも出席して頂きまして、一晩座談會を開きました。燈が消えたので蝋燭を燈して十一時頃まで議論を鬪わして、いろいろ御意見も承つて參りました次第であります。これからこの状態について先ず二、三の例を申上げますと、奈良では東大寺の、これは惡い意味ではございませんが、戰爭中東大寺の大佛殿の周圍の廻廊に若しも火がついたならば、火は廻廊を廻つて、本堂の大佛殿を燒くかも知れない、これは有名な平家物語にございますように、重衡が奈良を攻めましたときに奈良坂から火がつきまして、大佛殿に火が入つて、三千人燒け死んだという記録がございますが、そのうち頼朝が再建いたし、その他の歴史を經ておりますものでございますが、若しもこれに、非常な厖大な建築でありますが、屋根に燒夷彈が止まるというようなことがあれば勿論燒けたのでありますが、それでなくともこの廻廊から火が廻るということを恐れたために、廻廊の一部を壞しては疎開いたしまして、本堂の兩脇の廻廊は壞してございます。若しも廻廊から火が廻るときのために疎開したわけであります。この考えは決して惡い考えであつたとは存じませんが、ただそれが疎開しつ放しで、目茶苦茶に一部を叩き壞してあるというわけで、そのあとの修理がしてございません、何とかこれらは大修理ではございませんが何とか後始末をつけて、一つ形のつくようにするということは、大したことでもないと存じますが、それさえ放棄しとあつて、戰爭中の叩き壞したままになつておりました。又年とともに非常に荒廢いたしておりましたところは、殆んど全部の學院でございますが、中に白蟻の害で柱が崩れて倒れかかつておりますのを、例えば新藥師寺の本堂で、これは關野博士の時代に再築いたしましたけれども、又白蟻が入つたために、危險な状態にあるのであります。春日神社その他も非常に痛んでおりました。こういう、これは奈良ばかりでなく、少しく調査が他になりますが、私が最近調査いたしましたところでも、奥州の平泉の光堂の屋根が漏りまして、中尊寺の經堂と、光堂の雨漏りで非常に困つておるような状態であります。又嚴島神社も先日の洪水で土砂に埋まりましたが、そのままに放つてあるというような状態、殆んど全國に及んでおります。これらの修繕が、ともかく今日完全でなくとも、これに對して何かと修繕することは、非常な緊急の必要があろうかと考えました次第であります。それにつきまして、ここに、尚その中にいろいろ重要な国寶が入つているのでありまして、これらの保存は、幸いにして奈良、京都は爆撃を免れまして、重要な国寶の佛像その他美術品は、東京と違いまして破壊を逃れておりますが、この危險な建築物の中に、依然としてこういうものが置いてございます。これらに對して文部省も何とか方法を講じて頂きたいと考えました次第であります。それにつきまして簡單に申上げますと、先ず皆さんの意見の大體一致したところを申上げ、又足りないところは補つて頂きたいと存じますが、第一の問題は從來の保存行政に関しまして非常な經費が驚くべき少額であつたということであります。これはこの二三年、實はその方面からも非常に心配して、文部省に指令を出されて多少の費用ができたようなわけであります。今日むしろこの費用の増加は、聯合軍その他に感謝すべきことと存じますが、本年度におきまして、文部省の保存行政に使う費用は約六百七十萬圓と通つております。これは今日の物價から申しまして、殊にその中には只今全く解體いたしまして、まだ再建中である法隆寺の五重塔と本堂の仕事も含まつており、又戰爭中まで修理しかけて中止になり、再び始まつております非常な大きな物では、姫路城の建築、これは途中まで濟みましたが、戰爭の途中で軍に徴發されまして、中途になつておりました。今日名古屋城の燒けました際、又從來から日本の城砦建築でもつて最も完備した姿を持つておりますのは、姫路の白鷺城でありますが、これの修理が途中で行詰つておりまして、この厖大な姫路城を考えますときに、今日、今年度におきまして、文部省がお使いになつておる費用は僅かに十二萬圓と申すような次第でありますから、この城砦の極めて一部分しか補修できないような状態でございます。そこで調査團といたしまして考えましたことは、これは奈良地方のみならず、從來木造建築の指定されたものだけでも、國寶重要美術に指定されたものだけでも非常な數に及びまして、これらが殆んど修繕を必要としておる。必要としないものはないような状態でございます。それで到底これが假令非常な豫算を通しましても、殆んど全體的に修繕することは不可能であるというような考えも抱きました。この點におきまして寺社の修繕も何か新らしき考え方の上にこの修繕をして、これを保持するという方法を、文化委員會としては考えなければならないような責任もあるように考える次第でございます。就きまして悉くが國家財政によつてこれを保存することは不可能でありますが故に、ここに一つの考え方といたしましては、建造物の中で、殊に重要なるものを重點的に考えて、そうしてこれを徹底的に修繕する。そうして外は都道府縣その他に親切に文部省なり國家が指導して、修繕をさせるというようなことより仕方がないかと存じます。尚從來の國寶の法律にございますように、寺社の修繕におきましては、半額は寺社それ自身が出し、後の半額を政府が補助する。政府の補助には、補助しただけの金を寺院がこれを出さなければならないという法律がございますが、これらは今日の状態、殊に寺院の場合に、殊に農地法の實施におきまして、寺社の小作その他の地面がなくなつておりますことや、又今日寄附金を集め難い状態におきまして、到底從來のように、半額を寺院が持つことは不可能でございますから、こういう法律は姑く止めて、重要なものは全額政府が出してこれを保護するというような工合に取計らうべきではないかと存じます。尚その寺院の建築の點につきまして、もう一つ申上げますのは、これらの寺院建築は、從來の歴史にございますように、大體滅びましたのは火災によるものでありまして、幸いに奈良京都が爆撃を逃れましたが、若しも爆撃されましたならば、全部これらの寺院は燒けてなくなつておつたものでございます。今日助かつたことは有難いと存じますが、併しながら尚火災というものは非常に多く、現に奈良の東大寺の入口にありまして、南大門と本堂の極く近くにあります寺務所の本坊が、今年の七月四日に燒けております。もう一飛びで東大寺の本堂に火が掛かるような所が火災で失われておる例を見まして、殊に重要なる建築は修繕をすると共に、周圍から木造建築を破壊して、不斷から疎開しておくということが一つの保存法として考えるべきことではないかと思います。一、二の例を申しますと、例えば京都においでになりました方は、誰しも仰いで御覽になる八坂の五重塔というのがございますが、實際にこれは鎌倉時代の建築でございますが、行つて御覽になりますと、鎌倉時代の非常に貴重な建築の軒には、民家の軒がひつかかるくらい狹く迫つておりまして、民家が毎日竈を焚いておりまして、それが一度火が飛べば燒けてしまうという状態においてあり、今日までの保存行政はこういうことに關心を持つておられなかつたが、何かこれから一つお考えを頂きたいと思つております。
 次に佛像、その他の寶物に關してでございますが、これは勿論本尊は信仰上寺院の中におくことが必要なものではございますが、これ等が悉く非常に燃えやすい木造建築の本堂の中においてあり、且これには、蝋燭、護摩その他の火を焚いておりますることは、一朝火を失しますときには全部燒けてしまうという状態におかれておるのであります。歴史的に從來は文部省におきまして寺院の歴史というものを尊重する關係から、寺社の本堂、その他に置いてございます佛像の位置燮更ということは全く許されず、位置を守ることが一つの保存行政のごとくに考えておられた專門家もあります。これ等についても一つ考えを改めて頂きたく、殊にこれ等の寺社の寶物の置かれておる位置につきましても、例えば法隆寺のごときは、奈良飛鳥七大寺が壊滅いたしまして、殘つた法隆寺へ地所の寶物をただ擔ぎ込んで來て置いたというような事例も多く、勿論それは千年以上そこへ置かれてはおりますが、法隆寺と縁故のないものを擔ぎ込んでおります。又東大寺の三月堂も、方々の寺院から佛像を持つて來て置いておるものが多いのでございまして、こういうものを歴史として保守してここに置く必要は何ら認めないものと考えます。こういう木造建築の中にある佛像を、一刻も早くこれから出して、そうしてどこか不燃燒建築物の中に安全に保存する、殊に重要なるものに關しては、これを實施して頂きたいと考えます。現に奈良の三月堂はその上に二月堂がありまして、奈良の水取りという名高い二月に行事がございます。非常に多數のここに信仰者が參詣いたし、又夜の祭として松明をつけていろいろな行事をいたします關係から、二月堂はすでに何囘か焼けておりますが、その火を被ればすぐ三月堂は燒ける危險性がある。その中には名高い秘佛執金剛像を初め、日光及月光天像、その他の天平の彫刻の代表的なものが置いてございますために、甚だ危險を感ずる次第であります。これと同時にこれは文部省の御所管ではございませんが、只今皇室の公的財産に指定されております奈良の正倉院の御物につきましても、これは今更その貴重性を申上げる必要はないと存じますが、その正倉院に見學いたすごとに、その保存状態を具さに御説明承りますと、非常に長い時間かかつて、正倉院の木造建築の木造の校舎を如何に宮内省が苦心してこれに火がつかないように守つたかという、又守りつつあるかという御説明を承りまして、これは例えば專門家に頼んで、奈良に雷が落ちる、雷の來る方向を氣象學から研究して、そつちの方に當りまして避雷針を澤山立てたり、實は正倉院は一遍落雷いたしており、その痕跡もございますが、幸いに消し止めたのでございますが、雷の來る方向の研究をしたり、或いは特別の水道栓を拵え、又寢ず番をつけまして、三百六十五日警戒をしておられる。尚奈良の市民の中の特別消防隊に依頼して、一度事あるときに駈けつけるというような苦心は正に非常に尊敬すべきものがあり、又忠誠の念感激すべきものがございますが、併し何故に我々から申しますれば、この燃え易く、而も落雷の虞れのある正倉院の木造の建築の中に、そんなに苦心して、この正倉院御物を置いて置かなければならないかということは、私どもの些か理解し難いところでございまして、これらは宮内省禁衞府の公的財産でございまして、國家の物ではないと申しますが、國家といたしまして、これは建全なるコンクリート、その他の倉庫を作つて、これをこの中に移して宮内府の保存をお助けする、且これは今日一々物を出すときは、天平時代から傳わる古い箱の中に入つておりまして、箱も古く、崩れておるようなものが……これは最近随分この點だけは直りましたが、誰か見られる毎に、非常に手數を掛け、又非常に費用を使つて、一々箱から出されて陳列するのでありますが、若しもその保存されるコンクリートの建築の中に多少の觀覧施設ができておれば、鍵さえあければ何時でも相當の物はここに竝んでおるという状態に置かれれば、これもこんな手數もなく、又このような心配もなく保存できるものと存じます。こういうことを拜見いたしまして、結論として考えましたことは、今日の保存行政のあり方につきまして、殊に文部大臣の御意見を承りたいと存じますが、今日國寶、重美、その他の指定は最早一萬三千點以上に上つておりまして、寶はどこに參りましても、非常に價値なき物まで國寶の札が貼つてございまして、そのために餘りにも國寶に澤山指定してしまつて、本當の立派な國寶と見境がつかなくなつておるというような状態でございます。そこで又今日までの仕事には尊重すべき仕事はございますが、これは登録する法律であつて、ただいろいろ學者的に研究をして、次ぎから次ぎに登録するということで仕事は終つておりまして、實際いわゆる現實に保存をするという方法は一つも考えられていないという感じであります。そのために戰爭中は必要な、貴重なものが、東京、その他戰災都市で失われましたが、これらにつきましても、疎開その他のことに文部省は一つも手を動かされなかつたということは、保存行政として甚だ責任如何なものかといふことを考えざるを得ない次第であります。固より多少出されましたが、僅かにその費用が百萬圓で、京都の寺にありました寶物の一部を鞍馬、比良その他に移されたことがございますが、東京市の中にありましたものは、一つも動かそうとされず、個人は個人の負擔と危險におきまして疎開をいたしましたが、その時に文部省に參りまして、トラックその他のお世話をお願いいたしました。隨分文部省には懇請いたしましたけれども、文部省は不急事業という方にはいつて、保存行政の豫算を切るという話で、殆んど委員を擧げて、大藏省に通つて、その事務の方に熱心になつておられまして、實際の國寶を助ける上に力を盡して頂けなかつたのでございます。
 こんな關係で多くのものが地に失われ去つたようなわけでございますが、そこで今日一萬三千に餘つておるような國寶及び重要美術を一度一つにいたしまして、この中から特に重要なものを選び出すという方に、この國寶調査委員のお仕事を向けて頂いて、特に何千點かのものは、これを、何と申しますか、本當の國寶として費用の許す限りにおきまして、管理費用も出して頂き、國家が立入つたお世話の下に、これを庇護して頂く。又一方には國民に向つて、誠に日本の文化の代表として徹底するように公開して教えても頂くという工合にして頂いたら如何かと存じます。
 それにつきまして尚この今日の委員會の制度につきましても、勿論制度はそれで結構と存じますが、從來尤も非常に良い仕事はして來られましたが、いわゆるその專門學者であつて、いろいろ詳しいことを知つておられ、新らしいものを探して來られては登録する、といふ仕事も勿論尊敬いたしますが、そればかりでなく、例えば藝術院方面からも委員を出すとかして、藝術の價値をこれにもう一遍見直して、特に良いものをその中から選ぶという價値の判斷は、委員を加え、又一方には國民教育關係の方も委員になつて、これを廣い意味で國民に徹底させ、或る時には教科書編纂の中にもこれを加えて、日本文化の姿を國民に向くように積極的にやつて頂く、こういう方へ委員會の運營を一つ改めて頂いたらどうかと存じます。
 これを結論といたしまして、第一費用を出して頂くこと、殊に來年度の豫算を仄聞いたしますと、今年度の約十倍の豫算は文部省におかれて組まれており、七千萬ばかりの豫算に計上されてあるというお話でございますが、これは文部大臣におかれては六・三制その他で、文部省豫算として非常にお苦しみあることはよく拜察いたしておりますが、併しこれだけは別に、これは實質、文化の中に使つておる金は、保存行政だけといつていいと思いますが、これは是非とも一億近い豫算をやつて頂きたいものということが一つであります。
 次に國寶、重要美術を一緒にしてこの中から單に今までの登録を目的とした國寶調査委員會の行き方を改めて、すでに登録は一萬三千もしてしまいましたから、方針を燮えてこの中から特に貴重な藝術的或いは歴史的價値あるものを選んで、そうしてこれの取捨選擇するということで、或いは斷簡零墨のごとき記録のようなものは、むしろ國寶を解除いたしまして、これ等は帝國大學の資料編簒局などで扱うべき物が多いのであります、そちらの仕事にお移し頂き、眞に優れた國寶だけを選び出す。
 次は最後はこれを選び出したものを、完全の形において、國家が力を貸して保存する。そして今日燃燒家屋の中に放り出されてあるような形のものを、丁寧に親切に燒けない建築の中にこれを納めて、而も將來不燃燒にして且つ尊敬を十分拂うところの形にこれを置いて、信仰上の滿足もこれに與え、且つ國民文化として十分明るく公開して展觀させるというところまで、立入つた行政のあり方を我々は結論として考えて參りましたような次第であります。尚足りませんところはどなたか御補足を願いたいと思います。大體これだけであります。
#5
○委員長(山本勇造君) 只今團委員の大變詳細に亙つての、この間の視察の御報告がございまして、その御報告を聞きますと、實に立派な御報告で、これは文化委員會としても大變に嬉しいことと存じます。その御報告の中には御意見に亙るもの、同時にその御意見から大臣に對する質問がございますが、これに對しまして一つ大臣から御答辯を願いたいと存じます。
#6
○國務大臣(森戸辰男君) 只今正倉院、法隆寺等を視察においでになつて、議員團の代表として團委員からの保存行政に對するお話があり、御報告がありまして、私共この問題を掌つておりまする者には、多くの示唆を與えられたのであります。
 新らしい日本は新らしい文化を建設して行かなければならんのでありますが、新らしい文化の建設は、日本の傳統文化の上に建てて行かなければならんと考えておりまする者にとつては、日本の古い良い文化が正しく保存され、評價され、尊重されて行くということが、非常に大事なことと思うのであります。こういう點におきまして戰後においては、特に日本在來の歴史的な、又藝術的な價値のあるものが、十分に保存され、國民に評價され、尊重されるような事態が、作られなければならんと存じておるのであります。戰爭中實は不幸にも御指摘になりましたように、戰災が大事な日本の藝術品を燒失破壞いたした實例がございまして、これにつきましては當時止むを得ないことではありましたけれども、その方面の行政をとつておりまする者が十分なことができなかつたことは非常に遺憾と存じておりまするが、その點で相當のものが失われた事實がありますし、又戰災を離れましても、御指摘のように或いは疎開であるとか、土砂の崩壊であるとか、白蟻その他の雨漏りなどで半ば自然的なものから多くの損害を受けておるような事態でありますので、實は日本の立派な文化が重きをなさなければならん時に、かような事態にあることは非常に殘念なことでありますけれども、併しちようどこのことがよい反省を與える機會でありまして、御視察の御報告にも明らかなように、正にこれが日本の國實その他重要美術品、或いは史蹟景勝等に關して國民が考え直すべき、反省すべき好い機會であるのでありまして、私は御報告等に指摘されたことが、日本のこれらの行政における禍を轉じて福となす機會に是非共なるようにいたしたいと心から念じておる次第であります。併し御指摘になりました建造物、寶物その他の物件に對しましては、すでに御承知のように國實と指定いたしまして、維持保有の方法を講じて参つたのでありますけれども、併し何分にもそれらの物が年を經ており、腐朽いたしておりまするので、ただ法律によつて保護を加えるのみでは維持保存上遺憾な點があるのでありまして、文部省では、これらの維持修理に必要な補助費を計上して参つたのでありますが、昭和二十一年度におきましては建造物、寶物類及び史蹟、名勝等の應急修理五ケ年計畫を立てまして、差當り昭和二十一年度は百十七萬圓を計上いたしたのであります。そうして本年度は五百九萬七千圓を計上いたし、更にこの計畫を充實いたして参つております。又法隆寺の保存につきましては、昭和九年度以降豫算を計上して参つたのでありますが、昭和二十一年度におきましては四十萬圓を計上いたし、更に本年度は百五十萬圓を計上して、目下修理工事を進めております。その他御指摘になつた姫路城の保存に關しましても、昭和九年度以來毎年度若干の經費を計上して工事を進めておりますが、本年度は稍、増加して十二萬五千圓を計上した次第であります。併しながら御指摘にもなつたように、現下の状勢では物價騰貴と資材、勞力などの不足がありまして、現在の豫算では到底これらの國寶その他の貴重な指定物體を維持し、保存して行くことは困難でありますので、明年度の豫算におきましては、更に補助金の増額を計上いたしておりますので、何率この點につきましては皆さんの強力なる御援助をお願いいたしたいと存じておる次第であります。これは經費の問題につきましてでありまして、私どもは決してこれが十分であるとは存じておりませんし、前申したような事情で、遙かに多く實は今日の事態において經費が増額されなければならんと存じておるのであります。他面御指摘になりました第二の點は、從來の指定された國寳その他が徒らに數が多くて、從つて大事なところに力が入れられていないという憂いがあり、これらに關する委員會の運營の上でも、登録或いは發見ということに重點を置かれて、それを更に評價し直して、良いものについては十分保存して行くというところにどうも力が入れられていないではないかということでありまして、これも至極御尤もと存ずるのであります。國寳保存或いは重要美術品、その他の保存等の法律もいろいろと只今御指摘になつたような事情を勘案しまして、いずれ改正をいたしたいというふうにも考えておるのでありますが、限られた國費でありますので、すべてのものを十分にとはなかなか參りませんので、御指摘のようにこの點でも産業におけるような重點的な方向を取つて、どうしてもこれは十分にやつて行かなければならんというものが委員會等で決つて、それについては事情の許す限り、遺憾なく修繕、維持等の方法が講ぜられるようにいたすべきであろうと存じております。そうして、その他の物の保存の仕方におきましても、社寺等の木造であるという大きな點では、これはそのこと自身は如何ともできませんけれども、疎開等ができ得る、安全地帶に移し得るものは移すということも或いは考え得るでありましようし、殊にその中にある重要な藝術品等では、從來信仰その他の事情で動かすことができない、或いは動かしては惡いと考えられて來たものも、今日の事態からは改めて考える餘地も新たにできたと存じますので、その方面についても、十分各方面の意向を聽きながら處理いたしたいと存じております。尚これにつきましては、國家と共に關係の社寺等は勿論、地方團體におきましても十分御協力を願う必要がありまするし、又御指摘のように、これらの美術品は、ただ美術品を取つて置くということではなくて、これが日本の國民の新らしい文化の創造の上に生きた國民的な生命の現われとして働らくということに意味があるのでありまして、若しそういう側面の仕事が行われるならば、この國寳その他重要美術品の保存ということの大きな目的の半ばが失われるのではないかと思つておりまするので、その點につきましても特に留意いたしまして、これらがただ古い物が保存されるということでなく、生きた國民的の力がこれらのものに現われており、それが再び國民の心に生きて行つて、新らしい日本文化の創造の一つの力として生れるように、できるだけな努力をいたすべきであると存じております。
#7
○委員長(山本勇造君) 尚御質問ございませんか。今の豫算の問題等についてはよろしうございますか。
#8
○團伊能君 豫算は私は存じませんが、文部省におかれましてこの追加豫算に關したことと存じますが、來年度豫算にいろいろ御計上になつておると思いますが、それを聽きまして、是非堅持して頂いて、我々も及ばずながら何でございますが、實行頂きたいと思います。
#9
○國務大臣(森戸辰男君) 豫算におきましては、實は二十二年度におきましては六百七十三萬圓が計上されておるのであります。この度は、私共要求額といたしましては七千百八十三萬圓餘を要求いたすことになつております。尚國寳その他國寳建造物等の補助が從來半額であつたのでありますけれども、これも御指摘になつたように、社寺等の今日の現状から言いますと、これは無理でありまするし、同時に全額ということも亦多少の無理がありますので、私どもでは大體八割見當を補助するというような方針で考えておるわけであります。これはまだ文部省の要求額でありまして、大藏省の査定を經て更に國會に出るわけでございまして、そういう程度でございます。
#10
○來馬琢道君 私の考えをちよつと申しますと、團委員の言われましたことで視察の方はよろしゆうございますが、ただ一つお考え願つて置きたいことは、あの建物は皆宗教的建物ということになつて、神社も宗教ということになつております。春日神社のごときは、相當に參詣者も多く、可なり宗教的に利用されておると思います。他の所においては、國寳たるが故に全然宗教的に使われていない所もあるかと思いますので、宗教的活動ということも亦我々は古社寺の中に見出したいと思つておることなのであります。この點について、あの貴重なる建物であるから、宗教的に使うことは危險があるというようなことも考えられるのであります。併しながら、あの建物が存續する所以は、宗教的に働くからであると言つても亦よいと思います。私どもはその點について、いろいろ思い惑うところがあります。この邊も、將來周到なる、而して冷靜なる判斷を持たれることが必要であらうと、只今團委員の申されたことにもう一つ私が補足して置きたい所以であります。
#11
○梅津錦一君 若し御視察の方の補足がございませんようでしたら、若干保存行政に關係しておりますので、外のことをお伺いしたいのですが……。
#12
○委員長(山本勇造君) 如何ですか、この間の視察の結果についての御質問がまだございますなら、お願いいたしたいと思います。
#13
○松野喜内君 團委員から詳細御報告願いましたので、その點はもう盡きておると申してもよいのでありますが、先囘も申上げました通り、今囘のお互い一行は、豫定以上に各方面を馬力を掛けましたこと、從來他の観察に加わつたことから考えましても、實に有意義に且つ徹底し得たと考える者でありますが、今森戸文相から、それに對する御答辯もあり、政府の考えておられるところ、文部省の取つておられまする御方針を伺つたのでありまするが、過去のことばかり申しちや相濟みませんけれども、これまで燒けたもの、戰災を受けたものについて、或る程度疎開等も文部省で力をお入れになつたのかどうか。更に奈良や京都は殘つたとはいえ、その他の所においと文教文化に非常に貴重なものを燒いたことは、非常に殘念な場面が少くないということを一方に考えとおるわけであります。過去のことを咎めるわけでありませんが、文部省では餘程この疎開には力をお入れになつたかどうか。私ども文教文化について國民に納得の行くように説明する責任もあるという點から伺つて置きたいという氣がするのであります。
 又今日文教と關係いたしまして、あの貴重な文化を、今來馬委員もおつしやつた通り、單に宗教的の見方のみでなく、工藝方面からいろいろ見られる次第であります。殊に學童等は、例えば五重塔の上に上つて、奈良朝時代の歴史的環境を一望の下にという氣がいたしまして、極めて物を通しての、實際の所を通してのいい教育場面と思いますが、不幸にして五重塔の階段等は、誠に危險千萬なもので、容易に上り得るように、一部階段だけでも換えと頂きたいと思いますが、そういう點についての文相としてのお考えを承わつて置きたいと思います。
#14
○國務大臣(森戸辰男君) 疎開の點では政府委員が來ておりますから、その方で申し述べます。
 それから第二の點では、できるだけ國民がそれによつて十分に美術品、藝術品として利せしめるように、又それに伴ういろいろな危害等がないようなふうに十分注意するつもりでございます。
#15
○委員長(山本勇造君) ちよつと大臣は今日は實は豫算委員會の方にあれしておるのですか、順序を繰合せて頂きまして、こちらを先にやつて頂いておりますので、餘り時間がないのでございますが、簡單でございましようか。
#16
○梅津錦一君 それでは要約とし申上げます。國寶であるところの正倉院の御物その他古社寺におけるそうした物を公開する意思が現在の日本の政府にありや否や、公開の意思ありや否や、若しそれを公開するとすれば、地域的になり、或いは國家の方針としてどんな方法を採るか分りませんが、とにかくそれを公開するとすればその設備が相當必要であろうと思うのですが、先程團委員から言われたように、不燃性の建築物を用意しなければならんのじやないか。こういう不燃性の建築物を用意するとすれば、これに對する相當の費用を見なければならんと、この二點でありますが、それに對して御意見を承りたいことと、若しそうするとすれば、その費用が國家において出し得るか否やということですが、以上二點に對しての御意見を承りたいと思います。
#17
○國務大臣(森戸辰男君) 梅津委員の御質問でありますが、できるだけ美術品、國寶に至るまでも、國民がその藝術的なものを観賞できるようなふうな事態に置かれることが望ましいと存じております。ただ社寺の物は社寺の所有でありまするし、正倉院の物も國家が直接持つておる物ではありませんので、そういう方面とできるだけお話合いの上で、事情の許すものは適當な方法で、而もこれは十分に安全が確保されなければならんのでありまするから、そういうような形で國民に近づけるような方向に向う、こういうことだけが申され得るのではないかと思います。具體的のことにつきましては、只今どうも確たることは申上げにくいのであります。尚そういうことになりますれば、安全な方法が講ぜられなければなりませんので、それに關する費用も要るのでありますが、これもまだ具體的にどういう費用が要るというようなこともちよいと申上げられませんので、只今お答えはできませんけれども、そういう方向に進みたいという私の希望は十分申上げて置きます。
#18
○久松定武君 森戸大臣に御多忙中恐れ入りますが、ちよつとお伺いしたいのでございますが、只今までの國寶その他重要美術につきましては、主に社寺等の國寶のことに關してございますが、個人所有の國寶竝びに重要美術品に對しましては、政府當局として今後どういう御方針でおられるかをちよつと伺いたいのでございますが、實は敗戰の結果、國民の經濟は非常に破壞されまして、只今國寶等を所有するものの中にも、非常に經濟的にも辛うじて持つている。そうして今後それも保存することも修繕することもなかなか困難な状態にあるような方々も非常に多いと存じますが、これに對してはやはり社寺等に對する補助と同樣に、又保存の指導等に政府におきましては今後乘出して行かれますかいかがでありますか、その點をお伺いしたい。
#19
○國務大臣(森戸辰男君) 誠に御尤もな御質問でありまして、民間にありまする國寶その他重要美術品についても、社寺におけると同じような考慮が拂われなければならんと存ぜられるのであります。ただ問題は國家の財政がこれを許すかという問題に歸著いたしますので、これは團委員が先程お話しになつたように、今日の事態では重點的な方法によつて行かなければならんのではないかというように考えられますので、すべてのいはゆる指定された重要美術品、竝びに國寶について、國家が十分にそれを修理し、或いは保存をするために、國費を出すということについては非常に望ましいことであるけれども、なかなか困難な事情にあるというふうに考えられるのであります。
#20
○委員長(山本勇造君) 只今久松委員から仰しやつた質問は、非常に僕は大事な問題で、幕末維新の時に可なりにこつちのものが出て行つたて思いますが、丁度あれに似ている。あれ以上にどうかすると日本の國寶なんかは流れて行くように思う。或いはすでに流れたものもあるように思いますが、これをこのままにして置くことは、日本の文化のために嘆かわしいことと思いますので、又文部省においてこれらの點について御研究ができていなければ、これは是非共して頂きたいと思います。
#21
○國務大臣(森戸辰男君) この重要美術品竝びに國寶の、私人の、民間にありますものについては、修理の點では修理保存の點について完全な補助が國庫から望まれるかということは、先程申したようになかなか困難であらう。むしろ重點主義で行かざるを得ない時代にあるのではないかということが一つでありますが、他面においてはそれではどうなるかということにつきまして、そういうことであればこれはみんな手放して、今委員長の御指摘のあつたように、外國に流れ出るというような危險もあるのではないかという心配は勿論あるのでありまして、これにつきましては、國立の博物館でそういうものについて買入れるという途も得られておりまして、これも無限ではありませんけれども、そういう特殊のもの、これも重點的に考えるべきでありましようが、そういうものについてはこれを買入れて、そうして博物館に重要な美術品、或いは國寶として保存をして置く、こういうような途がとられると存ずるのであります。尚それでもできない場合におきましては地方團體、或いは民間のいろいろな團體が協力してこれらの問題に十分な關心を拂つて行かれるようなことになるのが今日の時代では望ましく、又必要ではなからうかと考えるのであります。
#22
○委員長(山本勇造君) それではこちらの委員會で大臣を獨占するわけには、委員會が混んでおりますのでできません。大變殘念でありますけれども、豫算の方にお廻り願わなければならんと思いますが、それじや先程の藤森さん……。
#23
○藤森眞治君 只今美術、建築その他のことにつきまして十分御意見を承りましてが、私はこれ以外の古典についての保存のことについて承りたいと存じます。第一には雅樂、舞樂、これは各地の神社等に若干残つておりますが、完全にこれが残つておりますのは、今日までは宮内省の下におきまして残つております。併しながら現在の状態におきましてはこれの將來が甚だ怪しまれるのではないかという杞憂の念をいたされるのでありまして、これにつきまして何か文部省の方でお考えになつておりましようか。それが一つ、尚その次には古い儀禮その他、例えて申しますと、京都の祇園祭であるとか、或いは平安神社の祭であるとか、或いは平泉の延年舞、或いは飛鳥山の附近にありまする田樂舞、こういうようなものの保存が必要でなからうか。今この時を失いますというと、殆んど消滅に蹄するという虞れがございますので、これにつきましてどういうふうなお考えがござしましようか。
 それからその次には宮城のことでございますが、聞きますところによりますと、乾門から竹の門に參ります所に大きな道路ができる。そうしてこれは東京都の緑地課の方でこの邊一帶を緑地化するというような計畫があるということを承つております。只今のところではこの所管は大藏省の所管になつておりますそうでありますが、今後これがいろいろな變遷において、いろいろ宮城の形が變わるというようなことがあるということを私どもは慮りますので、これについて或る一つの施設とかというような意味におきまして原形を變えない。又變わるにいたしましても、十分な政府の監督に申しますか、有りのままの形を變えないというようなふうの御方針で進まれる意思はございませんかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
 それから最後に先程團委員から白鷺城のことが出ました。私は、姫路におりまして、而も白鷺城のすぐ前におります。これが戰災當時に周圍の建物は全部燒けまして、その中に白鷺城がくつきり浮き上がつております。これが助かるとは思えないのが、奇蹟的に戰災を免れた次第でありまして、その後若干の修理も加えられておりますし、また現在修理が續けられておると存じますが、先程お話にございました唯一の城砦でありますので、特に御留意をお願いしたい。これはお願いのことでございます。簡單でございますが、以上を以て終ります。
#24
○國務大臣(森戸辰男君) 古典藝術の保存ということについて、藤森委員の御質問でございますが、これは極めて御尤もなことでありまして、私ども終戰後新らしい世界文化に接して、新らしい日本文化の建設の方向に向いますと同時に、日本文化の古典的なものが保存せられるということも、この際特に留意すべきものであると存じます。實は甚だ不十分でありますけれども、古典藝能保存のために、本年度は金額としては極めて少いのでありますが二十三萬圓を計上いたしておるのであります。そうして雅樂、舞樂等もその中の一つに數えられておりますので、そういう方面で、私どももこういうものも、殊にすたれる危險のあるものについて、而もその中で優れた古典的の素質を持つておるものは、できるだけ維持して行きたいと存じております。尚地方のそれに關連した儀禮的のものについてそうでありまして、併しこれはすべて地方にある儀禮的なものをみんな保存するというわけにも行きませんけれども、その中の古典的なもので、文化的に考えて重要なものについては、こういうものが維持せられることが望ましいと存じております。
 第三の宮城の問題については、私よく存じておりませんので、よく事情を承りまして御返事いたそうと思います。
 尚最後の白鷺城のことにつきましては、誠に御同感であります。私も實は福山でありまして、福山城がありましたが、この度の戰災で燒けてしまいました。こういう日本の城砦の建築というものが段々少くなつて來ますので、こういう代表的なものがよく保存されるということは、非常に意義があることと存じておる次第であります。
#25
○委員長(山本勇造君) 就いては大臣があちらに行かなければならんそうでありますから……。併しながら文部省の方から政府委員としまして社會教育局長も見えております。又説明員といたしましては藝術課長、それから文化課長代理も見えておりますから、質問がございましたら、どうか政府委員なり説明員なりにお願いいたします。とにかくこれの擔當の社會教育局長が見えておりますから、何か御質問がございましたら、この機會に仰しやつて頂きたいと思います。
#26
○赤松常子君 先程久松委員からの御質問に關連した問題でございますけれども、私もこの間ちよつと京都へ參りまして、或る國賓を拜見いたしたのでございますが、それは大名の參勤交代時代の宿屋でございまして、非常に建築が功妙にできておるために、國賓に指定されております。ところがこれは個人の所有であるし、今住宅が拂底いたしておりますから、そういう國賓の建物の中に數家族の方が住まつておられて、日常生活をしていらつしやいまして、煮炊きしていらつしやる状態でございます。非常に私は萬一の場合を豫想いたしまして、國賓がこういうふうな危險にさらされていいものかと感じたわけでございますが、そういう個人の道具ではなくて、住んでおるそういう家に對して、どういう保護が、或いは保存の方法が考えられておるのか。そういうふうなことは非常に重要でございますので、ちよつと伺いたいと思つております。
#27
○政府委員(柴沼直君) 只今赤松さんからお話がございました住宅を國賓に指定するということは、最近に著手いたしておるのでありまするが、本來居住に使つておりますままで指定いたします際には、やはりこういう際でもありますので、本來の使用を制限することは非常に困難なのでございます。從つて指定するときに、謂わば條件ではないのでありまするが、我々の方と所有著と話合いで、或る程度これを使つて行くことを認めながら指定をするというようなことを認めざるを得ない實情に相成つておるのでございます。ちようど先程團委員からお話がありましたお寺で國賓の建物の中で、お燈明をあげ或は蝋燭をあげてお祭りをする。或いは松明をつけてお祭りをするというふうなことを認めざるを得ないのと同じような關係でございますので、我々の方としては、それを使う際の危險をどういうふうにして豫防するか、或いはどういう點に注意しなければならんかというようなことは、直接にも亦府縣等を通じまして間接にもいろいろ話合いをすることには相成つておるのでありまするが、尚これは全然止めてしまうという方法は、現在のところ非常に困難な状況なのでございます。從つて非常に住宅が拂底して參りました場合に數家庭入るというようなことは、實はこれは恐らく豫想しておらなかつたかと思うのでありますが、現状として或いは止むを得ず黙認しておるような形に相成つておるのではないかと存ずるのでありまして、尚現地の、特に京都には、府廳に相當な技術者がありますので、それらを通じまして、できるだけ危險を少くするような使用の仕方について指導をするように、早速取計らつて行きたいと存じます。
#28
○來馬琢道君 奈良で聞いて來たことを、幸い大臣がいなくなつても政府委員がおられますから伺いたいということは、お寺の方でも相當な金を集めて出す、國家の方からも費用が出るというわけで、工事にかかる。これはもうとてもこのままでは直らんというわけで、一應解體する。あとの經費が續きませんので、直ちに再築することができない。この場合に、技師もおりますれば、事務所もあります。工務所と申しますが、事務所と申しますか、工事を監督する場所もある。解體されてしまつたから、住職は寢泊りするところがない。よそへ住宅を見付けて、そこから通つて來る。そうして一向工事は進まない。段々その間に人件費に費用がなくなつてしまうということが住々にあるということであります。かようなことはその社寺におきましては、相當迷惑なことなのであります。何かこういうことについてお考えになつたことがありましようか、伺つて置きたいと思います。
#29
○政府委員(柴沼直君) 奈良における例として御指摘になりましたのは必ずしもそう數は多くないだろうと思うのでございますが、ただ戰後特殊の資材が不足をした場合、それから經費が初めの見積りとインフレ的な經濟状況によつて非常に變つて參りますような場合に、工期が相當遅れるような場合もございますので、その恐らく極端な場合を御覧下すつたのかと思うのでありますが、實は初めに著手いたします時に、相當綿密な工程を建てまして、何日の程度までと豫定をしてかかるのでありまして、その工程につきましては修理技術者と所有者、或いは居住のお寺さんと等十分打合せかついて始めるのであります。從つて技術者の惡意、或いは怠慢等によつてそういう問題になつたのではないだろうと想像いたしますが、具體的の場合をお示し願いますれば、早速に調査いたすのでありますが、恐らくそういう場合には、最近では先程大臣から申上げましたように少くとも平均八割ぐらいまでは國庫で持つべきであるという考え方で補助金も出すようにいたしておりますので、多少の値上りによる遅延がありましても、それのみによつては、かようなひどい實例はそう屡々出て來ないと實は考えておつたのであります。いずれ適當な機會に實際の場所等も御指示願いまして、その上で一つ早急に處理をいたしたいと存じます。
#30
○梅津錦一君 文部省のそうした國寶乃至古建築に對する見解を聞きたいと思うのですが、先程來言われておるように徳川時代、明治の初年において、日本の古代美術、或いは日本の貴重な資料が海外に流出したということはもう事實であります。現在この敗戰後、先程から言われておるこの日本の現在におけるところのものの考え方、この貴重なものを海外に出さないとすれば、少くとも國家においてこれを保護しなければならない。或いは將來日本の文化としてこれを保存し、且過去における日本の記録としてこれを永遠に保存して行くとするならば、少くも現在が一番大切であるということが言えると思います。こういう意味において、文部省はこうしたものを保存し、或いは流出を防ぐというようなことに對してどんな状況であるか、その考えておられる外廓を伺えれば非常に仕合せだと思うのでありますので、お願いしたいと思います。
#31
○政府委員(柴沼直君) 終戰後相當貴重な美術品が、海外に流出するという噂があり、又實際そういう事實があるのだということも聞かされておるのでありますが、幸いに國寶又は重要美術に指定されたものはまだ一點もございません。この點は聯合國側も非常に好意をもつて港々に相當な手當をいたしておつてくれますので、まだその事態を發生したおらない。併し指定してなくて而も國寶、重要美術級の立派なものというのも尚あるのでありまして、こういうものについては、我々の方の調査がまだ至つておりませんので、必ずしも保證ができないような状況でありまして、或いは我々の知らない間に出ておることがあるのかとも思うのでありますが、そういうことのために、なんらかこれが流出を止める法的な措置をどうするかという問題になるのでありますが、それには實は重要美術品等に關する法律が、その海外流出を止める法律なのでありまして、これができました當座は實は丁度爲替相場の關係で日本の物が外國に非常に流れ出る危險にさらされまして、それの對策としてできた法律なのであります。從つてこの重要美術品等に關する法律を嚴密に實施して參れば、一應法的には對抗することができるということになるのでありまするが、それは法的の面だけでありまして、實際にはなかなかそう參りません。第一所在が戰災等のために殆んど大部分行方不明になつておりまして、實體を把握することが非常に非難であります。そういうことのために捗々しく調査が進みませんのでありますが、この點は國立博物館に美術の研究に關する部門と國寶、重要美術等の調査に關する部門とを一つに纏めて、強力な組織にいたしましたので、この組織の力に頼つて一つ大事なものが出ないように實際の調査を進めて貰うということをお願いしてやつておる次第であります。
#32
○藤森眞治君 先程大臣にお尋ねしながら時間の関係で十分お伺いもできなかつたわけですが、この雅樂、舞樂と申しまするものは、これは千數百年の歴史を持つておりまして、随分すたれるはずでございますのが、現在まで續けられたということは、これは全く宮内省の非常な努力なんでございますが、今これに對して若干の豫算を取るというお話ですが、どういうふうな、なんでおやりになるか。文部省の方でこれを引受けてこれの保安をおやりになるお積りですか。或いは又宮内府の方で續けて貰うという御意思ですか。先ずそれをお伺いいたします。
#33
○政府委員(柴沼直君) 雅樂に關しましては只今お話のございました通り、宮中關係のお力によりまして、保存されて參りまして、尚現在宮内府におきましても雅樂を保存する意圖を今日でも持つておられるやに聞いておるのであります。文部省としては從つて宮内府からこれを離して別途に保存の方法を講ずるということは計畫いたしておらないのでありまして、どちらかと申せば宮内府が維持される上にいろいろな形で援助をするという積りなのであります。尚樂譜その他を作製して將來へ備えるというようなことは、これは我々の方でやつてもよろしいかと思うのでありまするが、雅樂の演奏する團體の實體を保存する方は依然宮内府のお力に待つて、我々は側面からいろいろな形でそれを維持し易いような條件を作つて參りたい、かように考えておる次第であります。
#34
○藤森眞治君 それにつきましては宮内府の方と十分御協調もなさなければならんし、いろいろな交渉がありましようが、現在の宮内府の關係では積極的にやりにくいんじやないか。殊に噂によりますと、或いは樂譜だけを残して、もう他の何はやれないようにするというような事情があるとも聞いておりますが、これは聞き傳えで、直接聞いた譯ではありませんから確かでないかも知れませんが、そういう點もありますので、宮内府の方と十分な御協力と申しますか、御相談がございますでしようか、どうでしようか。
#35
○政府委員(柴沼直君) 宮内府の豫算が將來どうなるかということによつて自然お話のように雅樂を維持できるかどうかということに相當重大な影響がそこに起つて來るかと思うのでありますが、只今宮内府と我々の方と連絡しております限度では、尚當分現状のまま維持して行く様子のようでございまして、側面援助の程度を出ないのでありますが、尚識者から、雅樂の保存ということは一般民間におられる識者の方からも我々やかましく聞かされております。若し宮内府の方でなんらかお差支があるような場合には、一つ十分その邊相談をして、場合によつては我々直接にでもその保存に乘り出して行きたいと、かように考えております。
#36
○藤森眞治君 それからその次に伺いました地方にありますいろいろな古典藝術と申しますか、まあ文化の遺産のようなものでありますが、これにつきましては文部省の方では相當なお調べがありますのでしようか、如何でございましよう。
#37
○政府委員(柴沼直君) 組織的には調査はしたことは實はないのでございます。從つてお示しするような材料はないのでありますが、併しいろいろ耳にいたしましたりなどはする機會は多いので、或いは高田委員の方がお詳しいのかも知れんと思うのでありますが、観光連盟等と我々の方とも相談をいたしまして、地方のそういう藝能を保存し、奬励し、或いは展示するようなそういうことを目的とした郷土藝能の振興會というようなものを作つて貰いまして、それによつてできるだけそういうものが傳つて行くようにというような努力を今いたしておるような程度でありまして、それ以上はまだ出ておらないのであります。
#38
○久松定武君 先程大臣より御回答がございましたのですが、國寳竝びに重要美術品に對する補助については重點主義である、こういうお話がございましたが、これは重要なものであれば個人の所有のものに對しても補助する、こういう意味に取つてよろしいのでございますか。
 それから尚今までの國寳指定によります、或いは重要美術の指定になりましたものを見ましても、指定當初におきましてはそれを御鑑定の上で御決定になりますが、その後におきましては唯終戰後におきまして書類をもつて存否を戰災を蒙らなかつたかどうかという御質問のみでありまするが、實際の御視察が殆んどない。然るに或る筋の方面における、その方面における方々はすでに全國に亙つて御視察になつた。そういうような現状であるように私も聞いておりますし、又それを私自身承知しておる一人でありますが、こういう點につきましては御當局は今後どういう方針で、殊にこの經濟危機の状態にあります現状におきまして、個人の所有の重要美術、國寳等は非常に危險に曝されておる次第でありまするが、それに對する保護の見地から今後どういう御方針でお進みになるかを伺いたいと思います。
#39
○政府委員(柴沼直君) 大臣の申されましたのも、重要なものであれば、社寺のものであると個人のものであるとを問わず、その補助を考えたいというふうに申上げたのでありまして、事務的に實際に個人のものにつきましても補助をやつた例がございます。最近著手いたしておりますものでも、この近みでは横濱の原さんに國庫補助が出て現在著手しております。そのような状態でありまして、これは寳者につきましても同様に個人のものといえども重要なものについては十分に考慮して參りたいと存じております。それから調査の不十分の點につきましては、實は仰せの通りでありまして、我々自身非常に腑甲斐ない話ではございまするが、残念に思つておるのであります。これは豫算の都合、或いは人員の都合等もありますので、今までどうしてもうまく參らないのでありますが、できれば仰せのように具體的に直接調べるということを是非してはみたいと思つておるのであります。只今のところでは聯合軍から命令を受けました外國に返還すべきものの調査が辛うじて一部分につきまして實際調査をするという程度でございまして、非常に残念に思つておるのでありますが、國立博物館の方の陣容の整備と共に、少しずつでもその隘路を打開して、そういうふうな實地調査に進めて參りたいと存じておる次第であります。
#40
○委員長(山本勇造君) 尚御質問があるかも知れませんが、重要美術品等の問題につきましては、委員會としてはこれで閉じまして、若し尚あれがございましたら、後懇談會に移しましたら如何でございましようか。尚他に御相談したいことが一、二ございますのですが、委員會としては大分長くなつておりますから、今日はこれで一應閉じますことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○委員長(山本勇造君) それでは委員會はこれで閉じることにいたします。
   午後三時四十七分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     山本 勇造君
   理事
           久松 定武君
   委員
           赤松 常子君
           梅津 錦一君
           三木 治朗君
           若木 勝藏君
           團  伊能君
           徳川 頼貞君
           松野 喜内君
           大隈 信幸君
           藤森 眞治君
           來馬 琢道君
           高田  寛君
           服部 教一君
           三島 通陽君
  國務大臣
   文 部 大 臣 森戸 辰男君
  政府委員
   文部事務官
   (社會教育局
   長)      柴沼  直君
ソース: 国立国会図書館
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