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1970/05/11 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 議院運営委員会 第17号
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1970/05/11 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 議院運営委員会 第17号

#1
第063回国会 議院運営委員会 第17号
昭和四十五年五月十一日(月曜日)
   午前十一時二十五分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         徳永 正利君
    理 事
                佐藤  隆君
                鍋島 直紹君
                船田  譲君
                小柳  勇君
                矢山 有作君
                上林繁次郎君
                田渕 哲也君
    委 員
                鬼丸 勝之君
                近藤英一郎君
                大松 博文君
                高田 浩運君
                玉置 猛夫君
                中山 太郎君
                増田  盛君
                山崎 五郎君
                米田 正文君
                小林  武君
                杉原 一雄君
                永岡 光治君
                森中 守義君
        ―――――
       議     長  重宗 雄三君
       副  議  長  安井  謙君
        ―――――
   国務大臣
       国 務 大 臣  中曽根康弘君
   政府委員
       防衛政務次官   土屋 義彦君
       防衛庁長官官房
       長        島田  豊君
       防衛庁防衛局長  宍戸 基男君
       防衛庁人事教育
       局長       内海  倫君
       防衛庁衛生局長  浜田  彪君
       防衛庁経理局長  田代 一正君
       防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君
       防衛庁参事官   江藤 淳雄君
       防衛施設庁総務
       部長       鐘江 士郎君
       防衛施設庁施設
       部長       鶴崎  敏君
   事務局側
       事 務 総 長  宮坂 完孝君
       事 務 次 長  岸田  実君
       議 事 部 長  海保 勇三君
       委 員 部 長  若江 幾造君
       記 録 部 長  西村 健一君
       警 務 部 長  植木 正張君
       庶 務 部 長  上野山正輝君
       管 理 部 長  前川  清君
       渉 外 部 長  西宮 信安君
   法制局側
       法 制 局 長  今枝 常男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○本会議の運営に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(徳永正利君) ただいまより議院運営委員会を開会いたします。
 本会議の運営に関する件を議題といたします。
 去る五月八日の本院本会議における中曽根防衛庁長官の発言問題について、質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○森中守義君 中曽根さん見えていますか。
#4
○国務大臣(中曽根康弘君) はい。
#5
○森中守義君 いままで長い国会の中で、一つの国会の中で、閣僚が二回も発言を取り消したという先例はありませんね。おそらくいまの防衛庁長官が初めじゃないですか。三月の七日か、衆議院の予算委員会で、例の海原国防会議事務局長の問題で一回発言が取り消された。それから今回の陸軍、海軍の問題。こういう二回ですが、人によるといろいろ言っているわけですね。少しのぼせていはしないかという人もいますし、少し勇み足過ぎるのじゃないかという人もいるし、少し若過ぎるのじゃないかという人もいる。説はいろいろですが、要するに、一つの国会で、権威あるべき閣僚が二回も国会の発言を取り消されたという先例はあまりない。どういうつもりですか。人の説だから、それぞれの考えによって違いましょうが、要約すれば、さっき申し上げた三つのようなことに要約をされているようです。どういうおつもりで軽々な発言をされるか。
#6
○国務大臣(中曽根康弘君) 浅学未熟、考えの足らざるところでありまして、大いにつつしみたいと思います。
#7
○森中守義君 それ自体が内閣の権威を失い、ひいては国会の権威を失う、一国会で二回も連続をして発言が取り消された、こういうことからして、この際思い切って閣僚を去るような心境にはなりませんか。
#8
○国務大臣(中曽根康弘君) 自分の責任につきましては、一生懸命精進と節度を欠くことなく邁進してまいりたいと考えております。
#9
○森中守義君 そこで、私はちょっと内容を聞いてみたいのですが、三月七日の衆議院の予算委員会の中で、海原さんという国防会議事務局長をとらえて、国防会議事務局長はお茶くみにすぎないという言い方、会議録にはその辺が棒線によって削ってあるようです。しかし、どうなんですか、これは。国防会議の事務局長というのは防衛庁長官の隷下にあるのですか。この防衛庁の設置法、それとこれを母法にして国防会議の構成等に関する法律、これからいけば防衛庁長官の隷下にはない、こういうふうに私は見るのだが、よその閣僚が――特にこれは内閣総理大臣に直属しているわけですね。そういう重要な地位にある人をとらえて、単なる庶務課長だ、お茶くみだ、こういうようなことはどういうおつもりで言うのですか。少なくとも国防の基本を、成案を得るような重要な地位にある人を、閣僚であるあなたが、お茶くみではないか、文書の整理をしたり発送をしたり、つまり庶務課長的な存在だと、いささか穏当を欠いているとは思いませんか。大体こういうことを言うこと自体が見識がないというように私は思うんですが、どういうつもりでこういう答弁をしたんですか。
#10
○国務大臣(中曽根康弘君) 国策、特に国防に関する国策は、国会議員ないし国民代表である政治家が決定すべきであって、事務局官僚が決定すべきではないと、そういう文民統制の趣旨を全うしようという考えがございまして、そういう考えが強く頭を支配し過ぎておりましたので、人に対する礼儀を失いました。そういう意味で取り消さしていただいたのでございます。
#11
○森中守義君 そこで、まあこまかなことになるんだけども、こう言っておられるんですね。「事務局長というのはその庶務課長にすぎないだろう。事務屋でありますから、政策論を述べる地位ではないと思うのです。」と。まあ後段はいいとして「庶務課長にすぎないだろう」と、一体どこにそういうあれですか、国防会議の構成に関する施行令とか、あるいはその母法等にそういうものがありますか。
#12
○国務大臣(中曽根康弘君) 事務局長というのは事務をやるのであって、国策を決定するものではないと、そういう考え方がございましたので、そういうことばが出たのでございます。
#13
○森中守義君 いや、それにしても私どもの聞く範囲では、海原さんという人は官僚の経験からいい、その能力といい、まさに防衛庁の切れ者だと聞いている。そういう人材であるのかないのか、私は会ったこともないけれども、少なくとも表現のほうは適正ではありませんね。おそらく国防会議でいろんな資料をそろえたり成案を得る。むろんそれは政策論とか政治論とかというのは、立場上ワクの中には入らないでしょうけれども、やはり日本の国防に関してはおそらく最大の中枢部をなしている人だと思うんですよ。それにかかわらず閣僚が、お茶をくむんだと、文書の発送や授受をやる事務屋さんだと言うに至っては、幾らあなたが、おれは閣僚だ、防衛庁長官だと言っても、これは言い過ぎですよ。私は何も官僚のひいきをするわけじゃないけれども、そういう感覚で日本の行政を見ているというならば、不見識というよりも、閣僚の行政に対する認識が間違っている。まあ、結果的に取り消したと、こういうことだからいいようなものの、さっき申し上げたように、一つの国会で、しかも数ヵ月を出ずして連続して二回も閣僚が公式の発言を取り消すというのは、おそらく戦後の、あるいは戦前の日本の閣僚史の中に私はないと思う。そういうところにあなたの感覚を問題にされる、あるいはまた、あなたのそういうものの考え方というのが問題になるのですよ。こういう衆議院の予算委員会のあとに、何かこう少し感じるところもなければならぬだろうし、国会の質問あるいは答弁というものは、私はそう軽々に見るべきものじゃない。あるんなら――一つの政治生命がかかっていますよ。にもかかわらず、参議院の本会議で、問われもしないのに、空軍あるいは海軍と答える、二、三カ月前にこういうことをやっておいてまたぞろ繰り返すということは、衆議院の予算委員会の発言が発言であっただけに、全く反省もなければ謙虚きもない。そういうところで私ども問題にしているのですが、衆議院の予算委員会のあとで、いま少しみずからを顧み、発言には慎重を期さねばならぬ、そういういさきかも反省があったとは思われない、どうですか。
#14
○国務大臣(中曽根康弘君) 不注意でありましたことを反省しております。
#15
○森中守義君 不注意であったことも反省するならば、何もこれはこういうことには私はならぬと思うのですね。存外ことばというものは、しかも国会における野党相手の質問あるいは答弁などというものは、適当にまくし立てを言っておけばよろしい、そういうつもりじゃないのですか。ここに「ブースター」という政治経済評論誌がある。この中にもおもしろいことがありますね。中曽根語録なんというのがある。しかも、この中でいろいろ読んでみると、自分の言ったことをいかにも得意満面としてあなた語っている。つまり新聞、テレビあるいはラジオ、こういうものを相手にものを言うのがあなたの仕事ですか。そういう意味で、私どもは少なくともこの中曽根語録というのは、この編集者がつくったことだろうから、そのこと自体は言いませんが、少々自分の言ったことに酔い過ぎちゃいませんか。したがって、国会でどういう質問がされようと適当に受け流しておくか、適当に上つらをはねておけばそれで事が済む、そういうように私は思えてならないのですけれども、国会の答弁に対してどういうつもりでしゃべっているのですか。
#16
○国務大臣(中曽根康弘君) 空軍、海軍という発言はまことに軽率でございましたが、国会における答弁、討論につきましては、自分は誠意を尽くして自分の考えを申し上げ、また御質問者との対話をできるだけこまやかにやろうと努力していると存じております。
#17
○森中守義君 それから閣僚の人事などはわれわれの知るよしもないけれども、この「ブースター」によると、こう言っておられるのですね。「佐藤首相はよくぞ私を防衛庁長官に任命してくれた」、そのあとで、「初閣議後の記者会見で、感激にほほを紅潮させながらこう語った中曽根長官は、そのわけを「七〇年代を迎えて、総理大臣じゃなきゃ最もやり甲斐のあるのは、安全保障を担当する外務大臣か防衛庁長官じゃないか」、こう言いながら、「志願して防衛庁長官になった中曽根康弘です」と、こういう言い方をされている。防衛庁長官を志願されたのですか。閣僚選考のいきさつなど知るよしもないけれども、あなたがこう言っているわけだから、私は志願をして防衛庁長官になったのかどうなのか、その辺のいきさつを少し――これはものの本によって私は聞いているわけですが、まきか虚構なものとも思えない。閣僚就任の経緯をこの際聞いておきましょう。
#18
○国務大臣(中曽根康弘君) その語録と称するものはその社で編集したのでございまして、私はその内容についてよくまだ知りませんし、責任も持てませんが、私は一九七〇年代の日本の政治を見まして、安全保障の問題というのは非常に大事な政治の一つであると考えておりました。したがいまして、もし自分に国務をやらしていただくなら、この問題を自分にやらしていただけば非常に名誉であり、やりがいがある、そう信じておりました。それだけでございます。
#19
○森中守義君 いや、志願をしてやったというのだが、ほんとうにそうなのかどうなのか、それを聞きたい。
#20
○国務大臣(中曽根康弘君) 別にあれにしてくれ、これにしてくれと言ったことはありません。しかし、自分は一番やりがいのある仕事であると考えていたことは事実であります。
#21
○森中守義君 そうなると、ここで「ブースター」で言われているのはあれですか、これは一月二十一日北海道に行ったときのことのようですがね。隊員を前にして、「私はこのたび、志願して防衛庁長官になった中曽根康弘です」、こういうあいさつですか、演説をやっているのですね。別に志願をしてやったのでなければ、これはどういうつもりで言ったのですか。
#22
○国務大臣(中曽根康弘君) 自分はやりたいと思っていて任命されたのでありますから、北海道へ参りましたときは、自衛隊員を鼓舞激励するために、自分はこれだけの熱意を持ってやっておるんだという意思表示としてそのことは言いました。
#23
○森中守義君 まあそれははったりなのかよくわからぬけれども、少なくともこの「ブースター」から受ける印象は、何か閣僚志願をやって、その中でも防衛庁長官をことさらに志願をした、こういう印象が非常に濃厚ですね。しかし、あまりこれは閣僚として、いかに隊員を前にしたといいながら、士気高揚、鼓舞するという意味においてもこれは必ずしも適切じゃありませんよ。この辺にあなたの大体人柄というのか、ものの発想というのがうかがえる。少なくともこういう言い方というのは、これまた閣僚としては前代未聞じゃないかと思うんですがね。少なくともこういう言い方が現役の閣僚として通用するかどうか、私はそういう点ではいささか穏当でない。しかも、こういうものの考え方、発想というものが何かにつけて表明されているんじゃないか、こういうように思うんですよ。これは別に答弁は要りません。
 それから、四月八日の参議院の本会議における例のハイジャックの瀬谷質問に対する答弁、これなども全くこれは穏当じゃありませんよ。大体、長年参議院でずっと総理はじめ閣僚の答弁を聞いておりますと、それぞれの閣僚は、やはりあらかじめ用意したメモを手にしてきわめて慎重に答えています。ところが中曽根さんの場合にはそういをものがあまり見られない、自分自身で過信をしているんじゃないですか。それは質問者の答弁にぴったり呼吸の合った答弁をされる限りにおいては問題ないけれども、聞かれないことまでもしゃべるような、しかも、質問者の答弁にどれほど呼吸の合った、そのものずばりで答弁が行なわれているかということを検討してみると、必ずしもそうではない。ただ、本会議という議場のことですから、質問が過ぎていたとか、あるいは的をはずれていたとか、そういうことが本会議なるがゆえにあまり問題にならない。しかし、四月八日の答弁のごときは、まさにこれは、これまた閣僚の答弁としては前代未聞ですよ、明らかに。質問者はそのことを聞いていない、そこで、今度は演壇から質問者に向かって、質問者の了解が得られるならば言いますよ、いいですか、いいですかと、こういうようなことを言いながら――むろん質問者は了解も何も与えていない、演壇と議席のことですから。いいですかと自分で自問自答しながら、かってにしゃべりまくっている。どだいこの辺になると、閣僚の答弁としては越権というのか、行き過ぎというのか、不遜というのか、あとで議場を出るときに与党の、だれとは言いませんけれども、そういう非難があった、出過ぎている。また、これは参議院対衆議院というそういう空気はむろんないけれども、いささか参議院に対する傍若無人なふるまいに対する非難というのは決して少なくありませんよ。しかも、その内容が権威ある内容ならともかくとして、政務次官の山村君と松尾日航社長が帰ってきた、その聞いた話によればということで、根拠はきわめて薄弱、しかも内容が精密に調査もされておらなければ、整理もされていない、そういうものを議場の本会議において、原稿もなく、質問者の要項にないことを演壇から質問者に向かって、質問者の了解が得られるならばしゃべりますよ、こういうことも私ども長年の院内の生活において経験がありません。まきに不遜という以外にないじゃないですか。閣僚の答弁としても、その内容からいっても断じてこれは穏当でない、どういうつもりであんなことを言うのですか。おそらく本会議の質問、答弁には長年の慣例があり、慣習があり、一定の規則もあるのですよ。明らかにそういうものを踏み破っておるのですよ。その辺に最初言ったように、少々のぼせ上がってはいないかというようなことがぴったり合うような気がする。どういうつもりでああいうことをやったのですか。
#24
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は議会というところは対話をするところである、そういう気持ちがございましたので、できるだけこちらが持っておる考えや情報というものはお教えし、また御意見も拝聴する、非常にざっくばらんに、フランクにやったほうがいい、官僚の書いた作文を棒読みに読むというやり方はおかしい、いままであまり適当でないと考えておりましたので、そういう気持ちでやりましたが、あのあとで、あれは行き過ぎであったと反省いたしました。
#25
○森中守義君 それはね、五年や十年の議会生活ではないはずですよ。当選九回、十回というまあいわば議会人としてはかり古いほうですからね。むろん言論の府です。絶えずコミュニケーションというものが旺盛に行なわれる必要がある。しかし、委員会であれ、本会議であれ、一定のルールに基づいてやっているんですよ。しかし、官僚が書いたものよりも自由奔放にものを言ったほうがいい、それは答弁の踏みはずしがない限りにおいてはけっこう。しかし、私がいま問題にしておる山村運輸政務次官と日航社長から聞いたという情報の発表までは、これは明らかにルールを踏みはずしていますよ。たとえば、与党であろうとなかろうと、質問者には質問のルールがありますよ。それならば、そういう言い方するならば、われわれだって本会議の質問の際には、防衛問題であれ何であれ、政府に通告しませんよ。いいですね、それで。いままでルールがあればこそ、われわれは一通り事前に質問の要項を提示をして、それにのっとって閣僚が答弁をしておる。これは一口に言えば本会議の混乱をなくするため、あるいは質疑がより正確に行なわれるためにという、長年議会運営の中に集積をされたいわば一種の私は慣習だと思う。それを役人が書いたものは無味乾燥だから言いたいことをしゃべるのだというなら、われわれだって、いまからは政府側に質問の通告なんかしません。それはきのう、あるいはおとつい出てきたような、いわば新人の場合ならそれはまたそれでも話は通るけれども、国会のエキスパートであり、当選九回、十回という人が、そういう不穏当なことでは通りませんよ。まあ参議院の議長にもちょっと伺っておきますがね。中曽根さんのいまのような答弁ならば、われわれも委員会や本会議等で質問通告しなくていいですね、閣僚がそういう答弁だから。どうですか。
#26
○委員長(徳永正利君) いま議長にお尋ねでございますが、この参議院のいままでの慣例、あるいはまた質問要領の通告等につきましての御発言でございますから、私から便宜お答えいたします。
 中曽根防衛庁長官の発言は、できるだけ事務官の書いたものでなくて、少し自分の考えを入れたことをやって対話を重ねたいと、こういう御希望のお話があったわけです。それと、いままで参議院の長い間の慣例からくる発言通告、質問通告というのは、これはもう、いまここで議長が、それはもうやめたがいいだろうというような御発言は、ちょっと問題だろうと思いますから、この辺はひとつ切り離して御質問を進めていただきたいと思います。
#27
○森中守義君 それはおのずから異質のものだから、からめてということは私も考えませんけれども、いま、中曽根さんの答弁からいくと、それも原稿なしの答弁なんですよ、それが質疑者の答えにぴたっとなっておりゃいいんですよ。しかし、かなり、本会議等の質問に対する答弁を見てみると、三分の一はピンぼけですよ。的を射ていないんだ。むろん、その中には有益な御意見もありますよ。一々非難はしないけれども、一つのルールとしてそういうものが院内で行なわれているわけだから、そういうことを無視されちゃ困る。ことに、四月八日のハイジャックの問題等については、自分自身で認めているんですね。質問者の質問に答えているんじゃないですよ。何も、参議院の本会議で中曽根さんの演説を聞こうとか、情報提供のために本会議をやっているんじゃない。これこそ、私は無礼千万と言わねばならぬと思う。質問者には一定の時間の制限のワクがある。それをこえたならば議長がベルを鳴らす。長くやれば演壇をおろされる。ここまで厳粛に本会議で守られている。むろん、閣僚には時間の制限がないといいながら、質問者が聞いてないことを、演壇から質問者に向かって、了解を得られるならばしゃべりますよ、答えますよと、こういう言い方というのは、おそらく参議院創設以来ないんじゃないですか。だから、私はそういう意味ではまことに不見識であり、ときには議長あたりから――幾ら国務大臣といえども、重宗議長と防衛庁長官では親子のような年だから、少しぐらい厳重に警告を発してもいいんじゃないですか。ということを言いたいわけなんですがね。
 しかし、それはそれとしまして、要するに、この日の答弁、瀬谷質問に対する答弁は、もうほんとうに参議院としては異例のことであるし、腹に据えかねるような点も非常に多かった。二百五十名の参議院議員を前にして――何も中曽根演説を聞いているんじゃないですよ、質問に対する答弁、それがより完全に行なわれて、初めて院の運営ができるわけですからね。まあ、この中身は別として、中曽根さん、どうなんです、そういうことに対して、少しく行き過ぎであったとか、あるいは参議院軽視とは言わないけれども、そういう疑いすら持たれるようなことを平気でやっている。そういう責任をどう感じますか。参議院は何も中曽根のために右か左か動いているんじゃない。非常に不満であるし、閣僚として不適任である。中には、いまから防衛庁長官は参議院に呼ぶな、こういう極端な意見すらある。当時のことを振り返ってみて、どういう気がしますか。
#28
○国務大臣(中曽根康弘君) 四月八日の答弁につきましては、行き過ぎでありましたので反省しております。今後は、御質問に対しまして、できるだけ焦点を合わせまして、御満足のいくような答弁をいたしたいと思います。
#29
○森中守義君 あのね、そういう木で鼻かんだような答弁でも困るんだ。それはもう言わなくてもそのとおり、あたりまえのことだ。焦点の合わないような答弁をやられたのじゃ迷惑する。しかし、私が言っているのは、問われてもいないことを、なぜとくとくとしゃべるのか。それが院のルールとして――国務大臣といいながら、国会に違いない。そういうやり方は、これから注意しますでは、これは済みませんよ。半年や一年のふなれな議員なら別として、ざっきから言っているとおり。少しく、ものの判断を誤まっていないのか。横着過ぎはしないのか。不遜過ぎはしないのか。そういう心境を聞かしてほしいと、こういう意味であって、事務的に、間違っていたから訂正をするとか、これから注意する、あたかも、人のほっぺたをぶんなぐっておいて、痛かったろうと言うようなもんだ。そういうことでは参議院は、ちょっと、わかりましたと言うわけにはいきませんね。もう少し、いまのあなたの率直な心境を説明したらどうですか。
#30
○国務大臣(中曽根康弘君) 非常に恐縮に存じておりまして、大いに反省して、精進してまいりたいと思います。
#31
○森中守義君 それから、まあ多少中身に入りますがね。この前日か、前々日ぐらいに、ミグ戦闘機が、七機か八機で緊急発進をして「よど」号を襲った、あるいは対空砲火があったと、こういう情報が中曽根さんの口から出された。しかも、それは逐次追跡してみると全く架空のものである。聞いてみれば、米軍がそういうことを言ったから言ったまでのことだ。まきに言うことが無責任ですよ。それと、その中で言っている美林の飛行場に着いたときの状態、会議録を読めばさらに正確になるのですが、あの瞬間的に受けた印象というものは、韓国に対しては感謝する、無限の感謝をしなきゃならない。一たん北鮮になれば、人の命まで奪いかねないような、そういうひどいことをやるんだという、こういう印象なんですよ、瞬間的に非常に濃厚なものとして植えつけられた。その辺に――そこまでエスカレートして言っていいかどうかわからぬけれども、いま防衛庁長官の防衛構想の中には、とりあえず北鮮、とりあえず中国、これが仮想敵国としていつも頭の中にこびりついている。機会があれば、随時こういうようなことを印象づけていこうと、こういう発想が全くなかったとは言いかねない。というように、私はあのときの、聞かれないことを演壇から、いたけだかに言った、その腹の中にはあったんじゃないだろうか、こういうように思うのですがね。どういうあれですか、まあ私はそう間違いないと思うんだけれども。
#32
○国務大臣(中曽根康弘君) 政府は仮想敵国というものを持っていない、仮想敵国を持っていないということを随時、国会でも声明しておるのでございます。防衛庁もそういう方針で対処しておるのであります。北鮮だからどうこうと、へんぱな扱いをするような考えは毛頭ございません。
#33
○森中守義君 あのね、きょうは場所がらなのか、あるいは立場上なのかわからぬけれども、いつも、聞かれぬことまでしゃべる人にしては珍しい。もう少し率直にいろいろ言ってみたらどうですか。ただ、この場を何とか終わればいいという、そういうつもりなら、そういうつもりでわれわれもやりますよ。少なくとも、ものを言っていることに権威がないと言うのですよ。ミグの問題にしろ、対空砲火の問題にしろ、未確認情報だがということはつけ加えてあるけれども、少なくとも国会を通じて、あるいは新聞、テレビ等を通じて国民の前にものを言うには、もっと正確なものが必要ですよ。そういうことの反省はないのかどうか。いま防衛庁という組織は、聞きかじったことを、何でもかんでも都合のいいことはしゃべればいい。ぐあいの悪いことはしゃべっちゃならぬ、そういうことで防衛行政というのは行なわれているんですか。それを聞いておきたい。
#34
○国務大臣(中曽根康弘君) あのときは皆さん、特に新聞記者の皆さんが情報にうえておりまして、何でも何かないか、何かないかと執拗に聞かれましたから、そういう情報が入ってきましたから、事実を事実として未確認情報として参考までに申し上げる、そう言って申し上げたのでございます。それ以上の他意はございません。
#35
○森中守義君 これはまたはなはだ不見識ですね。防衛庁長官というのは情報屋ですか、トップ屋ですか。そういうことに論難されてもやむを得ないんじゃないですか。しかも、いま未確認だが事実は事実として言うならば、相当確固たる根拠を持っていたんでしょう。その時点における事実とは何をさしているんですか。未確認ということと事実というその混合された内容はどうなんですか。未確認はあくまでも未確認。しかし、事実は事実として言ったと、こう言うんだから、相当確信と確証があったんじゃないですか。
#36
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう情報が入ったという事実でございまして、内容云々という問題ではないのでございます。(発言する者あり)
#37
○森中守義君 こういうざわめきがあるから、私は質問を留保します。質問しません、あとにする。
#38
○委員長(徳永正利君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#39
○委員長(徳永正利君) 速記つけて。
#40
○森中守義君 別にきげんが悪いわけじゃないけれども、同僚の議員がしゃべっているときには、異論があればこれは正式に発言を求めて言うべきだ。そういうことはやめてもらいたい。何も好きとのんでものを言っているわけではない。それで、さっきの件に戻りますが、北と南を対比する。そういう印象をことさらに植えつけるために、これはしゃべられたわけですね。しかも、しゃべった内容から言っても、これはあとで全部そういうことでないことになった。また、そのほかに美林におりた場合、私も山村運輸政務次官からいろいろ聞きました。日航の社長や機長からも聞いた。おそらく防衛庁長官にも私が聞いた範囲のようなこともかなり耳に入っていたと思う。そういう北側の配慮については全然言われてない。とにかくひどかった、百三十数名の命がとられるところだった。こういう点が過大に強調されて、あと北側が「よど」号に対してどういう配慮をしておったかということが関係者の口から述べられておるにかかわらず、そういうことは全然触れられていない。この辺に意図的であったのじゃないか。そういう不正確な情報、そういう正確でないつり合いのとれないようなことを質問者の了解を得ないでどんどんしゃべっていいということは、これは参議院としちゃ許されない。ですから、このほか何か聞いていたはずだと思うんですが、その部分はどうしてカットしたんですか。
#41
○国務大臣(中曽根康弘君) 山村新治郎君から聞きまして、自分の頭に残っていた大切であると思うようなことをあの際申し上げたのであります。その際も、北鮮側は、無許可で入ってきた飛行機であるから、そういう問題についていろいろ情報を与えないということももちろん考えられる、そういうことも申し添えておいたのでございます。
#42
○森中守義君 そこで、何も防衛庁長官はトップ屋でも、新聞屋でも、スポークスマンでもないと思いますから、少なくとも権威ある防衛の責任者ならば責任者のように、もう少し慎重な配慮というか、慎重ないろんなやり方が必要だということは言うまでもありませんけれども、自今厳重にこれは注意をしてもらいたい。
 それから、いま一つ最後に聞いておきますが、四月の五、六日であったような記憶がする。参議院の運輸委員会で一連のハイジャック問題等々で防衛庁長官の出席を求めた。そのときに断わってきたのですよ。どういう理由だと、こう聞いたところが、兼務している拓殖大学の総長、そこの入学式か何かあるので、そこに出なくちゃいかぬ。だから、委員会で指定をした時間を午後一時に延ばしてほしい。実はこういうことを防衛庁の島田官房長官から連絡してきた。で、私は閣僚の兼職、兼業、兼務というものが一定の制限があることは知っております。私学等の学長あるいは総長などがその禁止条項に該当するかどうかは少し議運段階で検討してもらわなくちゃいけませんけれども、しかし、事、緊急のハイジャックの問題等で防衛庁長官の出席を求めて事態の推移を明らかにしたい、問題の解明をしたい。こういう国会の要請に対し、議院外の仕事、しかも学校の入学式か何かのことを理由にして委員会の出席を拒む、あるいは延期をする。これはまさに私は閣僚として国会、その地位、その立場に対する認識を怠っておる。こういうことに相なろうかと思う。幸いにして当日はその他の院の理由のために委員会が開会に至りませんでしたから、結果においてはなかったのですけれどもね。当初は、指定をした時間、それを断ってきたのは、いまのような理由なんだ。まあ他の閣僚を呼んでも、たとえば外交の使臣が到着したので出迎えなくちゃならぬとか、その他国家的な行事等のために閣僚が時間の延期とか、出席を他に変えてという、こういうことは間々あります。しかし、兼務をしている自分の学校のために閣僚がその任務を果たし得ない。それをいかにも当然であるかのように国会の出席を拒んでくるという、こういう例はいままでないんですよ。これは議運の理事を通じて議運の委員長にもいろいろ話があったと思う。これは中曽根さん、どういうつもりであったのですか。つもりと言うよりも、あなたはこう考えていた、こういうつもりであったということじゃこれは済まない。閣僚としてその職責を果たし得ない。しかも、われわれから言わせるならば、明らかに私用ですよ、これは。国会外の仕事ですよ。それで大事な国家的な問題が渋滞をする。その職責を果たし得ないということになった場合に、その責任は簡単じゃありませんよ。要するに、そういうところに何か自分一人がばかでかく偉いものであって、他の言うことなどはどうでもいい、野党の質問などは適当にあしらっておればいい。そういう認識がかなり強いのじゃないですか。そういうことでは防衛庁関係のいろんな法案であろうと、少なくとも防衛庁が求めるようなことは、われわれとしては応ずるわけにはいかぬ。たしか四月の五日あるいは六日ぐらいの時点の問題であったように記憶する。それはあなたが断わってきたので、どういうつもりでそういう措置をとったのか、これはひとつ具体的な事実問題として当時の状況を詳しく説明してもらいたい。
#43
○国務大臣(中曽根康弘君) 国会は国権の最高機関でございますから、それは最優先で国会の仕事に従事しなければならぬと心得ております。当日は拓植大学の入学式がございまして、学部、大学院、短大、それから高校、約三千名以上の新入生並びに父兄が武道館に集まりまして、そこで時間をいろいろ切り詰めまして、十一時ないし十一時半には出席いたします。それまではできたらほかの閣僚に御質問願うか、土屋政務次官を出席させておきますから、御質問くださればありがたいと思います。もしそれがだめなら私らも国会には出席いたしますけれども、そういう大学にとりましては一年に一回のことでありますので、でき得べくんばそのようにお時間をいただきたいと思います。そういうようにお願いしたわけでございます。
#44
○森中守義君 そこで、経過はそうであったにしても、おそらく閣僚が委員会や本会議等の出席を要求されて、それらの理由で延期とか、あるいは拒んだという例はないですよ。私もそういう場合に直面したことがあります。それでも、すべての、そういう場合に直面をした閣僚は一切のことを捨てて国会に出席してきている。中曽根さん一人だ、そういうことをやっているのは。あんた一人ですよ、そういうやり方をしているのは。時間を切り詰めたとかどうとか言われるけれども、それは国会は閣僚として呼んだのだ、中曽根個人じゃありませんよ、何も中曽根個人にものを聞こうなんて意思は全くない。防衛庁長官という地位に対してものを聞いている。それならば大学の入学式が一日であろうと半日であろうと、閣僚に任命されたときに国務に専念するということが約束づけられている、宣誓しているわけです。そういうことは理由にならない。しかし、そういうものの考え方や行動をとろうというところに、今日こういう問題が発生する原因が私はあると思う。不適当ですよ。要するに、委員会であろうと本会議であろうと、傍若無人なふるまいが結果的にそういうことをいろいろつくり上げた。いままで衆議院でも同様でしょうけれども、倉石さんの問題以外にこういうことで議運が開かれ、閣僚がいろいろきびしく追及されたという例はありません。いやしくもこういう問題ではない。歴代の閣僚の中にこういう問題で追及を受けたという例はありませんよ。多少恥を知ったらどうですか。口ぎたなく言うならば、そういう意味で恥知らずということになりはしませんか。私はそういう意味でここに幾つかの実例をあげたわけですが、先だって来、議運段階でいろいろ言われているように、閣僚として不適任・佐藤内閣の閣僚として適当でない、こういう意味で、佐藤内閣に汚点を残したわけだらか、その責任を感ずるならば、みずから進んで辞表を提出するのが政治家としての進退を明らかにすることじゃないか、こう思うのです。どうですか。これで終わります。
#45
○国務大臣(中曽根康弘君) いろいろ御迷惑をおかけしたことは大いに反省いたしますが、目下の仕事につきましては、大いに精進してまいりたいと思います。
#46
○委員長(徳永正利君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#47
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
#48
○杉原一雄君 先般の発言はもちろん本会議を通じて取り消されたことでありますけれども、私はそういう形式的行為で問題は処理されるものとは思いません。先ほどの先輩の森中議員の質問の応答の中でも、そういう潜在意識がちらりちらりと出てきておるようである。海軍と言い、空軍と言うことが心の中ではきわめて当然だという潜在意識が存在するのではないかと実は疑われるのであります。これは私の主観でありますから申しわけない結果になるかもしれませんけれども、しかし、そういうことを頭に置きながら、実は先ほど長官が、幸いにして、おれは対話方式でいくのだ、原稿などは見ておらないのだというような自信たっぷりのお答えであったようでありますから、私は非常に過去にさかのぼって失礼でありますが、去年の二月の八日に、金沢にジェット機の104が落ちたことをまず思い出していただきたいと思います。その後、私、本会議で二月の十四日に有田長官を中心とした総理その他の閣僚に質問をしたわけであります。ただ思い起こしていただく材料としてちょっと申し添えておきますが、その当時の金沢の市街地に落ちたあの一瞬において四名の人が死んでおるわけであります。後ほど確認された結果から見ると、十人名の人が重軽傷であります。倒壊家屋、焼けた家屋を含めて百五十であります。長官のことばをもってするならば、日本の国土上空を守るべき航空自衛隊が逆に日本の良民を殺しているのであります。住宅を破壊しているのであります。でありますから、そのことをあなたに責任追及しようと思いませんが、問題は、その後、有田長官等からどのような引き継ぎを受けて、そうした、まずとりあえず、小松航空基地に対してのその後の処置、それから金沢市民、石川県民に対して安心を与えるような処置その他がどうなされているか。このことを概略でようございますから、まずお聞きしておきたいと思います。
#49
○国務大臣(中曽根康弘君) 雷のあるときにジェット機を飛ばすことが私はどの程度危険であるか、その調査を厳密にやらしておりまして、自後こういう雷のある場合の飛行については特別の規制を与えるようにしています。
 それから小松の飛行場のたしか滑走路の飛行の経路、飛行機の航空路を変更させろ等と記憶しております。
 それから被害を受けられました市民の皆さまに対する救恤その他につきまして、防衛施設庁を中心にして最善を尽くすように努力いたしております。
#50
○杉原一雄君 当時の有田長官の私に対する答弁の中で数項目にわたっておるわけです。いま長官が答えた雷の異常調査の問題、それから飛行コースの問題、その問題等について調査の結果、さっそく自後そのようなことの起こらないような処置をとるというのでございますが、結果的にいまの答えではどのような処置をどうとったかという答えにはなっていないのですが、その辺はどうですか。
#51
○国務大臣(中曽根康弘君) 詳細につきましては、私、正確に申し上げる知識を持ち合わしておりませんが、私が引き継ぎを受け、その後、下僚に命じまして指導してやらしておりますのは、いま申し上げましたようなことでございまして、もし御必要がございますならば、後ほど書類をもって詳細を御報告さしていただきたいと思います。
#52
○杉原一雄君 実はここで聞いても始まりませんでしょうが、ただ大筋として、これは単なる小松基地あるいは金沢市の問題ではないわけですから、総理も責任を持って答弁されたように、その後あなたがお使いになった空軍でしょうか、航空自衛隊基地に対してどのような行政指導と申しますか、指導行政が行なわれているか、その点の荒筋をお聞きしたいと思います。
#53
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど申しました点も含めまして、詳細は書類をもって後刻御報告申し上げたいと思います。
#54
○杉原一雄君 というのは、めんどうくさいということと、もう一つはわからぬということと、いろいろあるんですが、あなたは先ほどの質問にもありましたとおり、ノー原稿でいろいろよくおしゃべりになるということですが、それを実は聞きたいのです。なぜかと申しますと、やはりいま航空自衛隊を空軍というような発言の中にひそんでいるいわゆる考え方、自衛隊に対する取り組み方、そこに大きな基本的な問題がございますから、やはりいま私が尋ねたようなことなどが、大体どういう形で県民なり国民に安心を与えるような処置をとっているんだということは、やはり文章で――数字まで出していただくことは文章の問題でしょうけれども、大筋はおつかみだと思います。その大筋だけはお聞きしたいと思います。
#55
○国務大臣(中曽根康弘君) 雷のときの飛行については調査委員会をつくりまして、厳密に技術的な調査をやりました。そしてその調査の結果に基づいて必要な措置を航空総隊を通じて幹部に指令をしたはずでございます。それから飛行の空路につきましては変更いたしました。それからいろいろな被害者に対する手当てにつきましては、これもできるだけの努力をするようにして大部分はもう済んだのではないかと私思うのです。あるいは一部はまだ残っているかもしれません。
#56
○杉原一雄君 そこでその種の問題、私、実は確認しないで質問しているが、失礼に当たる点もあるかもしれませんが、本会議の質問の中で、私は有田長官にこう言ったんです。あなたは二月の八日、事故発生の当日夜おそく金沢へお着きになって、取りかこまれる記者会見の中でおっしゃったことに、以後、市街地上空を飛行しないということを有田さんがおっしゃった。しかし、私は現地の永田基地司令にお聞きしたら、そういうことを私におっしゃったってできません。市街地上空を通らないで着陸や離陸はできませんということを永田司令が私に言明しているわけです。だから、そこら辺の食い違いがあるわけですから、いまコースを変更したということはどういうことなのか。いわゆる基地内の滑走路の方向を変更したというのか、あるいは金沢、小松等の市街地を通らないで発着し、かつまた演習をしているんだということなのか、その辺のところを明確にしてください。
#57
○委員長(徳永正利君) 速記とめて。
  〔速記中止〕
#58
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
#59
○政府委員(宍戸基男君) ただいまの御質問でございますけれども、有田長官からの指示がございまして、進入経路、それまで金沢市内の上空を通って進入しておりました経路を変更いたしまして、市街地を避けて進入をするというふうな措置をさっそくとりました。また訓練等につきましても、市街地上空では訓練は避ける、禁止するというふうな措置を当時とっておるわけでございます。
#60
○杉原一雄君 いま私、先ほどからくどく聞いておることは、自衛隊を空軍という長官の潜在意識の中にそのようなことがなおかつ潜在することにおいては、今後の自衛隊の防衛行政というものは、非常に私さまざまの恐るべき結果が予想されるわけです。昔、私たちも陸軍の一兵卒として演習をやった場合に、農民の畑を踏んで歩くことが何も悪いことじゃない、正当だということで、ろくろくあとも補償されておらなかったようなことなどを思い浮かべておるわけです。いまだんだんと防衛が、自衛隊その他が羽を伸ばしていく結果が、逆に、敵を防ぐという自衛のためといいながら、国民を痛めつけ、苦しめる結果になるのではないか。そういうことを常日ごろ憂慮したところに、本会議で空軍が出たり海軍が出たりするものですから、これはたいへんな防衛庁長官だなというふうに実は心配のあまり、いま言ったような二、三の点をお伺いしたわけですが、なお航空自衛隊の基地は、それは小松だけでございませんので、全国各地にあり、かつまた日本国土の上空を自衛隊航空機がしきりに飛びこうておるわけですから、そういう状態についての事故発生――その後発生しておると思うのです。だが、そういう状態についてどのような行政努力をして、航空自衛隊の皆さんにそのことを自粛、自戒し、かつまた技術的にも検討をしてやれというようなことを、長官等を通じておやりになっておることがあればお聞きしたいと思います。
#61
○政府委員(宍戸基男君) 金沢の事故はたいへん大きな事故でございましたが、あれを契機といたしまして、雷対策等につきましては、特に技術的な検討もいたしまして、新しい装置、装備等を導入いたすことにいたしました。そのほか、もちろん従来からもやっておりましたけれども、各種のレーダー等もそろえるようにいたしました。また訓練等につきましても、市街地の上空はできるだけ避けるというふうな留意もいたしました。幸いにしまして、その後は市街地における大きな事故は発生いたしておりません。もちろんいろいろな訓練をしょっちゅうやっておりますので、事故が全然ゼロだというところまでには至っておりませんけれども、事故率といたしましては、その後一年間ずっと低下の傾向を示しておる状況でございます。
#62
○杉原一雄君 自衛隊法の第三条によりますと、わが国の平和を守るのだということが大題目になっておるわけです。ところが、守る平和といったものは一体何だろうかということになるわけですが、それは上空をかすめて海域を侵す、いわゆる敵に対して日本の国土、国民を守るということであろうと思うのです。これにも増して必要なことは、やはり何としても民生安定と事故なき社会と、こういうところに平和という理念が広められなければならない。そういう観点からやはり自衛隊のあり方その他の問題についても、私、十二分の戒心等をお願いしたいと思います。
 最後に、私は実は委員会は文教委員会におるわけですが、機会があれば文部省の人に質問しようと思いながら、資料だけは文部省からいただき、学校方面からいただいておるわけです。そういう観点から、いまここでお聞きしておきたいのは、小松基地の場合も特にそのことは大きな問題になっておるわけですが、文部省からいただいた基地の調査条項によりますと、やはり学校が公害によって侵されておる。その中で特に、私、注目をしておるのは、基地周辺の学校の、いわゆる私の言い方をすれば公害です。それに対して防衛庁当局がどのような努力をしてきたか、実情はどうか。ここに私はやはり未来をになう子供たちのことでございますし、優先的に考えていただきたいという希望を含めて若干の長官の把握しておる情報ないし方針があったらお伺いしたいと思います。
#63
○国務大臣(中曽根康弘君) 基地等の周辺整備法によりまして、その基地から一定距離内にある公共建物、特に学校、そして一定の音量を越しておるところ、それにつきましてはコンクリート建てに変えて防音装置を国でやるようにいたしております。ことしは周辺整備につきましては昨年よりはさらに力を入れまして、予算におきましてもかなりふやしてきました。今後とも基地につきましてはできるだけ御迷惑のかからないように対策を厚くしてまいりたいと思っております。
#64
○委員長(徳永正利君) それでは午前の質疑はこの程度といたしまして、三十分休憩いたしまして、午後一時より再開いたします。暫時休憩いたします。
   午後零時三十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十二分開会
#65
○委員長(徳永正利君) 議院運営委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑のある方は順次御発言を願います。
#66
○矢山有作君 それでは長官にお尋ねします。
 長官、過日の本会議で羽生議員に対する答弁の中で、空軍、海軍ということばを使いながらこれを取り消されたわけですが、その取り消された理由ですね。これはどういうことで取り消されたのか、それをまずお伺いします。
#67
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本国憲法におきましては、前項の目的を達するため云々とありまして、陸海空軍、たしかそういう名前が出ておったと思います。そういう憲法上の解釈からいたしまして適当でない、そういうふうに思いましたので、航空自衛隊、海上自衛隊というふうに訂正したのでございます。
#68
○矢山有作君 憲法上の立場に立って空軍とか海軍、要するに軍隊ということばを使われなかった、こういうことでありますけれども、私は平素、防衛庁長官の言動なり国会答弁のはしばしから、その本心は軍隊にしたいという気持ちを常に持っておられるんじゃないか、そういうふうな疑いを持たざるを得ないわけです。長官の本心を伺いたいんですが、あなたほんとうに自衛隊を現状のままでよい、軍隊でなくてよい、こういうふうに腹の底から考えておられるか、あるいはさらに一歩進めて、軍隊であってはならない、憲法上のたてまえから軍隊であってはならない、こういうふうに考えておられるか、その点はどうですか。
#69
○国務大臣(中曽根康弘君) 新しい国民的合意が出てくれば別でございますけれども、現状におきましては自衛隊が適当であると考えます。
#70
○矢山有作君 新しい国民的合意が出てきたとしても、現状では、あなたも先ほどおっしゃっているように、明確に規定されておるわけですね。念のために読んでみましょうか。第九条に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、第二項で、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はは、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」、要するに、陸海空軍という戦力は保持しないということは憲法上明確に出ておるわけです。したがって、国民の合意ができたからとか、どうとかいうのは、やはり憲法の立場を踏まえてお考えにならなきゃいけない。この憲法の立場から踏まえるならば、陸海空軍は持たせないということが明確に出ていると思います。そのためには、国民の合意ということと、その憲法の明文の規定をはずしていこうという考え方は間違いじゃないですか。
#71
○国務大臣(中曽根康弘君) 国民の合意という意味は、憲法は改正という条項もございます。もし将来われわれの時代にあるかどうかわかりませんが、法律的可能性としては改正ということもあり得るわけでありますから、そういうふうに将来改正ということがあれば、またそれは別だけれどもも、現在の憲法が続いている間は自衛隊という名前が適当である。憲法の解釈の上から妥当である、そういうふうに申し上げたのでございます。
#72
○矢山有作君 あなたのいまの考え方を裏づけするような答弁というのは、調べてみると、衆議院の予算委員会の質疑でも出ておるんですね。こういうことをあなた言っておられます。憲法改正の考え方について、あなたの言ったことは、一世代、つまり大体三十年ぐらいたったら、その憲法がいいか悪いか、その効果はいかん、そういう総点検をやる必要がある云々、さらにそれに続いて、それは九条ばかりを意味するのではありません。私は大体第九条というのは次の世代の選択にまかしたらどうか、そう考えております。こういうふうに言っておられるわけです。私は憲法というものがどういうふうにして生まれてきたかということをお考えになる必要があるのじゃないかと思うのです。あなたもおそらく戦争に行かれたでしょうが、われわれも軍隊に召集されて、あの第二次大戦、いわゆる侵略戦争において、日本の侵略戦争において、どれだけみじめな思いをしたか。その敗戦の深刻な反省の上に立ってあの憲法というものができた、そういう政治的な背景というものを私は考えなければならぬと思うのです。あの憲法ができたいきさつについて、いろいろとアメリカの押しつけだとかいろいろな議論がなされております。しかしながら、少くとも敗戦の深刻な反省の中からその憲法ができたということで、われわれ世代はその憲法に対して責任を負わなければならぬ、しかも、それは将来の日本の高い理想を掲げている憲法でしょう。政治家とすれば、少くともあなたはその憲法ができた当時すでにりっぱな成年に達しておられ、一端の責任がある、そういう中で政治家になった。そうするならば、政治家としてはそうした高い憲法の理想というものを守っていく責任があるのじゃないですか、憲法の中にも、国務大臣の憲法の順守義務ということを明確にしておるわけですから、そうすると、いまの段階でこの憲法が改正された場合とか何とかいう仮定を置いてものを言うということは間違いなんです。われわれがよくあなた方に質問します。そのときに、こうしたような仮定の場合にはどうしますかという質問をすると、あなた方は、それは仮定だから答えられないといつもおっしゃる。憲法というような国の基本に関する法律の問題を論議するとき、仮定の問題に立って論議されるということは間違いじゃないですか。私は少くとも政治家として国家百年の大計を考えるという上からいうならば、私はもっと慎重な発言をなさってしかるべきだと思います。そういう新憲法を守っていくという上においてのあなたの慎重な気持ちがないところに、軽々しく軍隊とか、あるいは空軍だ、海軍だということばづかいがぽんぽん飛び出していくのじゃないですか。
#73
○国務大臣(中曽根康弘君) いまの憲法が妥当性を有している限り、この法の支配のもとに服していくというのは、法治国家の公務員として当然取るべきつとめであると思うのでありまして、そういう考えに立って私たち進退しなければならぬと肝に銘じております。向うの予算委員会におきまして、衆議院におきまする発言はそういう御質問がありましたので、一般論としてお答えいたしたのでございます。
#74
○矢山有作君 そうすると、あなたはいわゆる法制上のたてまえだけから軍隊ではないという、こういうお気持ちですか、現在の法制上のたてまえからだけ。
#75
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は憲法第九条に関しましては、憲法調査会におきます最終結論の各自の意見表明の際に、九条はそのまま維持するほうが適当であろう、ただし、自衛隊は認めるということ、海外出兵はしないということ、徴兵は行なわないということ、そういうことを条件として国民的合意で維持していくことが賢明であろう、そういうことを結論としても公表しております。現在でもそういう考えは変わっておりません。
#76
○矢山有作君 私は、法制上の制約だけから自衛隊は軍隊でないというように、この法制上のたてまえに非常なウエートを置かれてものを考えられると、そうすると、法制上の制約を取っ払ったらよかろう、保守党の中の一部のタカ派や改憲論者の意見と同じような間違いを犯すおそれが出てくると思うのです。法制上の制約が優先して、日本国民は平和に徹し、軍事力は持つべきではない、それが日本の真の平和国家として世界平和に寄与する道である、こちらが先にあるので、法制上のワク組から――ワク組というのはあとから確認したにすぎないと私は思う。こういうふうに考えないと、とかく不徹底になるし、また誤りを犯すことになると私は思うわけです。だから法制上のワク組を先に置いて、そういうふうに法制上のワク組があるから軍隊でないというものの考え方でなしに、憲法の示しておるいわゆる平和主義に徹する、そういう立場のほうから優先してものを考えていかぬと、私はとかく問題が起こってくる。そういうふうに思うのです。だから、今度も憲法の精神というのを、もっと私は憲法の精神の真髄においてあなたにつかんでいただきたいと思う。そうすればその慎重きが、それがあなたの心の底にあれば、今度のような間違いは起きないんじゃないかと思う。どうなんですか。法制上のワク組をあまり強調するというところに間違いが起こる。
#77
○国務大臣(中曽根康弘君) 政策論並びに政治論といたしましても、先ほど申し上げましたように、憲法調査会の最終結論の意思表明におきまして、先ほど申し上げました形で維持していくことが適当である、そういうように立法政策の考えも申し述べておるのでございます。
#78
○矢山有作君 それではさらに、長官の答弁の中で、これも軍隊に近づけたいと疑われるような国会答弁がありますので、それを指摘してあなたの答えを求めたいのですが、防衛力の限界について、あなたは、日本の本土防衛を見ていると、日本の自衛隊の力では遺憾ながら足りません。特に海、空において、かなり早期にこの力をもう少し拡充していく必要がある。こう二月二十日の衆議院の予算委員会で言っておられます。そして他の個所でまた、「現在の情勢で言いますと、たとえば防空能力というものがまだ非常に弱い状態です。あるいは海上警備力にいたしましても、沿岸防衛を全うするための兵力がまだ足りません。」、これは二月二十四日の衆議院の予算委員会でのあなたの発言です。長官はここで「兵力」と言っておるのですね。そこで聞きたいのは、兵力と防衛力と軍隊の軍事力との違いはあるのかないのか、防空能力、海上警備力は量的にどの程度までが自衛力で、どの程度を越えたら軍隊ないし軍事力になると判断しておるのか。また質的に判断した場合の防空能力、海上警備力の自衛力と軍隊の境界線というものを私ははっきりこの際示していただきたいと思います。
#79
○国務大臣(中曽根康弘君) 従来の政府の考え方は、近代戦を有効に遂行し得る組織的武装力を軍隊と、こう言っておったと思います。現在の日本の自衛力を見ますと、その段階まで至っていない、したがって、自衛力という概念であらわす、こういう立場でありまして、自衛隊はその状態にあると私も思っております。しからば、どの程度が軍隊なり、あるいは軍事力と申しますかという御質問でございますが、これは世界の科学技術とか、他の国の武装力の点とか、そういうものもある意味における具体性があると思うわけであります。近代戦を有効に遂行し得る組織的武装力というのでありますから、相手の力との対比においてこれはある程度考えられると思うのでございます。そういう意味において日本は専守防衛に徹して攻撃的兵力を持たない、攻撃的武装力と申しますか、そういうものを持たないという限界がございますので、自衛力としてわれわれは維持していき、またいくべきであろうと考えておるわけでございます。
#80
○矢山有作君 どうも私がお聞きしたことがはっきりしてこぬのです、抽象的な答えでね。長官が衆議院で答弁した当時には、防空能力、海上警備力がどの程度までがあなた方の憲法第九条の解釈で許される範囲か、戦力ならざる防衛力か、軍隊ならざる自衛隊かの関係をはっきりと認識されていたわけじゃないわけですね。どうも話を聞いていると抽象的になる。どうなんですか、その辺。限界というものは明確でないですね、いまだにあなたの考えの中に。
#81
○国務大臣(中曽根康弘君) 他国に脅威を与える、攻撃的武装力を持たないという限界ははっきりあると思います。したがいまして、B52であるとか、IRBM、ICBM、そういうようなものは持たない、それを持たない範囲内において本土防衛を目的とした武装力を整備する、そういうことでございます。
#82
○矢山有作君 そういう抽象的な言い方ではおそらく国民だれが聞いても軍事力、防衛力、この限界だとか、あるいは軍事力と自衛力の限界だとか、そういうふうなものについての判断の基本というものはさっぱり出てこぬと思うのですね。あなたはいま専守防衛だと言われましたね。またそれから国力、国情に応じて、それがまた客観情勢に応じてその防衛力は変化していくべきものだ、防衛といえばやっぱり周囲の脅威の大きさに比例して移動していく、いまおっしゃったことですね。固定するものじゃない、これもいまおっしゃったと同じように、これは衆議院の予算委員会でもおっしゃっておりますね。そうすると、周囲の脅威というのはだれがどのように客観的に、科学的に判断するのですか、これは。これをまず聞きたい。
#83
○国務大臣(中曽根康弘君) それは最終的には国権の最高機関である国会が政治的に判断し、また最高裁判所は司法的に判決を下すものと思います。
#84
○矢山有作君 それでは次に、周囲の脅威の大きさに比例しながらその防衛力は移動していく、こう言うのですが、これは問題があると思うのですよ。脅威を多分に主観的に判断して防衛力をほとんど無制限に増強できるという立場に立てば、これが、かつて富国強兵ということばがありましたが、これと専守防衛というのを置きかえても何ら矛盾してこないことになるわけです。そうなると自衛隊も軍隊も同じ論理の上で増強されていくということにもなるわけでしょう。国会答弁の軍隊は正確な答弁――そうすると、あなたは、国会答弁で言っている、軍隊軍隊と言っていますが、それは正確な答弁になるのじゃないですか。取り消し要らぬじゃないですか。そうなりませんか。そうならないのですかね。
#85
○国務大臣(中曽根康弘君) 御質問の趣旨がよくつかみ切れませんが、日本国憲法上におきまして自衛隊にはいろんな制約がございます。たとえば、いまのように外国に脅威を与えるような攻撃的兵器は持てない、海外出兵はやらないとか、あるいは交戦権は持たないとか、あるいは軍法会議は持たないとか、そういうものは国際的に軍隊とは違うステータスを意味していると思います。そういう範囲内におけるこれは防衛力としてわれわれはこれを維持していこうと思っておるのでございまして、その点ではいわゆる軍隊とは違うと思います。
#86
○矢山有作君 しかし、攻撃的兵器は持たぬとおっしゃいますがね、いまの自衛隊の装備の状況からいって、さらに四次防で、これまであなたが国会で答弁しておることを考えるならば、これは攻撃的な兵器でないとか、あるいは防御的な兵器であるとかという限界はつけにくいのじゃないですか。これは現在の自衛隊の実態から見て、どこまでを攻撃的な力を持ったもので、どこまでが防御的なものであるという限界がつけられますか。私はそれはつけにくいと思う。だから、専守防衛、専守防衛と言いながら、どんどん自衛隊が増強されていけば、これはやはり実質的においては軍隊と変わらないものになるのじゃないですか。攻撃的武器と防御的武器の見分けというのはどこでやるのですか。
#87
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本のような場合は、海を越えて他国に脅威を与えるという点において攻撃的性格というものが認められると思うのです。そういう意味におきましては、攻撃的な航空母艦とか、ICBMとか、渡洋爆撃機とか、そういうものは持てない。それ以外の本土防衛というものを中心とした装備力を持つ。それからもう一つは、一番大事なことは、何といっても憲法並びに国会の規制というものが大事である。政治の選択の意思、主体というものが一番大事であると私思います。兵器は使いようによってはある部分は攻撃に使えますし、防御用にも使えるわけでございます。しかし、日本の場合は、海を越えて相手方を攻撃するという性格のものは、先ほど申し上げました種類等につきましては持たない。そういうことと同時に、政治の選択意思というものを明確にして、それを憲法並びに国会が厳重に監督し、政府がその線を誠実に順守していくということが一番大事ではないかと思うのであります。
#88
○矢山有作君 ところがあなたは、これまでの国会答弁の中で、これからの自衛隊は制空権、制海権を持たなければならぬということも言われておるわけですね。公海上における撃破能力を持たなければならぬということも言われておりますね。そうすると、その制空権、制海権の範囲というのは一体どうなっているのですか。
#89
○国務大臣(中曽根康弘君) 本土防衛を主としておるわけでございますから、本土並びにその周辺ということになります。
#90
○矢山有作君 それは領海の範囲に限るとか、あるいは領空の範囲に限るとかいう意味で言っておられるのですか。それとも、もっと広い範囲で拡大して考えておられるのか。その辺を具体的におっしゃっていただきたい。
#91
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本を守るということでございますから、日本の領土、領空の上を守るということは、これはもう当然であると思います。しかし、日本の領土、領空の上を守るという意味において、それに近接して必要であるという、要するに自衛権を発動するという意味におきましても必要であるという範囲内におきまする地域、空域、海域というものは、やはりわれわれとしては守らざるを得ない分野であるだろうと思うのです。これを外国の領土に近接した地域であるとか、あるいは海域であるとか、そういうところまで及ぼすということは考えていないのであります。
#92
○矢山有作君 ところがそういう考え方をされますと、先ほど、これからの科学技術の進歩とか、いろいろな状況を考えながら防衛力を強化していくというようなことを言われたと思うのですが、兵器というのはこれからどんどん進歩していきますね。そういう背景の中で、制空権、制海権を確保することが必要である、公海における撃破能力が必要だということになると、これはどこで、その範囲を限定するということができなくなってくるのじゃないですか。無限に拡大をしていく可能性というのが出てきやしませんか。特によく言われるのに、攻撃は防衛の最大のものだということを言われておりますね。だから専守防衛、専守防衛といいながら、そういうふうな軍事力の強化をやっていけば、これはやはり無制限に拡大していくおそれが出てくるのじゃないですか。どうなんですか。
#93
○国務大臣(中曽根康弘君) そのような無制限な拡大を戒めておるのが日本国憲法であり、それから自衛隊法の条項であるだろうと私は思います。先ほど申し上げましたように、専守防衛に徹してわれわれの体系を整えていきたいと考えておるわけであります。
#94
○矢山有作君 ところが、そういう憲法なり、自衛隊法の制約のある中でどんどん拡大されていっているのじゃないですか。軍事力はさらに強化されていっているのじゃないですか。そこが問題なんですよ。私はどうも記憶では最初考えられておったのは、おそらく防衛力の範囲――防衛力の範囲というのは、領土、領空、領海、そういうところが最初のときでは考えられておったんじゃないか。それがだんだん防衛力が強化され、さらに兵器が近代化されるに従って範囲が拡大してきた。そうして今日の状態では、あなたの答弁に出ているように制海権、制空権ということばになり、さらに公海上における撃破能力ということばになってきたのじゃないですか。このいままでの経過のあとをたどってみると、やはり軍事力強化ですね、あなた方の場合における軍事力の強化に比例して、その防衛の範囲というのはどんどん拡大していっているのじゃないかという気がしてしようがないのです。そうしてそれがやがて戦前のような、あなたはいま盛んに海を越えて外国の領土を侵略しない、こういうことを言っておりますが、外国の領土まで広がっていくおそれというものは出てくるのじゃないか、現実の動きとして。憲法や自衛隊法の解釈を厳格にしないで、いいかげんな解釈をしているところに、そういう問題が現実に起きているわけですね。
#95
○国務大臣(中曽根康弘君) 政府が国会で言明しました制限を厳重に守っていくということが一番大事なことであると思います。そういう点につきましては深く改心して実行してまいりたいと思っております。
#96
○矢山有作君 そうすると、憲法に定められた点を十分守って戒心をするというのであれば、いわゆる制海権、制空権とか、公海上における撃破能力だとか、そういう強力な、あなた方の場合に言う軍事力を考えないで領土、領空、領海を防備できる範囲にとどめるというふうに、あなたは考え方を変えられるわけですか。
#97
○国務大臣(中曽根康弘君) そういうふうにことさら狭くするということではありません。やはり本土防衛に必要な範囲内の周辺海域、空域というものは、日本としても重要な地帯でありまして、その範囲内において防衛の体系をつくっていこう、こう考えている次第であります。
#98
○矢山有作君 私はやはり、これは幾ら議論してもすれ違いになりますが、あなたの考え方を聞いていると、やはり領土、領空、領海からもっと広い範囲の防衛範囲というものを想定されて、それにあわせる軍事力の整備というものをやはり念頭に置いておられるのじゃないかと思うのです。そうでなければ、あなたがおっしゃるように、憲法なり自衛隊法を守っていこうというなら、少なくとも領土、領空、領海の外に対してまで力を及ぼすような問題を考えなくてもいいのじゃないですか、その点明確にしてくれませんか。
#99
○国務大臣(中曽根康弘君) たとえば領海のみに限定しますと、東京湾の外域がございますけれども、あの外域に相当な輸送船が日本に入って来る、あるいは日本の沿岸の公海上を日本の輸送船その他相当航海しておるわけでございます。それらについて無関心で防衛措置を講じたいでいいかというと、そういうものではないと思う。海峡についてもそういうことは言えると思います。そういうような意味におきまして、やはり領空、領海に近接した周辺地域というものは、われわれとしては守る体系の中に入れておかなければならぬと思います。
#100
○矢山有作君 やはり考え方がすれ違いです。やはりそういう考え方で推し進めていけば、これは兵器の進歩に応じてだんだんそういう範囲は拡大されていくというおそれを私は強く感じます。それはあなた方が憲法を守って、いわゆる憲法では空軍、海軍、陸軍は持てない、いわゆる自衛力としてのものは持てても、そういう軍隊は持てないという考え方の中で、厳重にそれを守っていこうというそういう姿勢はやはり感じられませんね。やはり憲法なり自衛隊法のワクを踏み破って軍事力の強化というものを積極的に考えているとしか思えぬわけです。そういうことが国会答弁なんかで、やはり軽々しく出てくるんじゃないですか。私はその点ではくどいからもう言いませんけれども、ほんとうに憲法のたてまえを守るというのであれば、憲法が一体何を規定しているのか。そのことをよく考え、私は今後のあなた方の言う軍事力という問題を考えてもらわなければ困ると思うのです。そうしない限り、これはとどまるところを知らないような状態になっていきますよ。
 まあこまかい議論については、いずれまた他の委員会等でやることがあると思いますから、この点だけはあなたにきびしく私は注意を申し上げておきたいと思うのです。特に、あなたが防衛庁長官に就任なさってから以来のいろいろな言動を見ておりますというと、やはり、あなたは本格的な軍事力強化という気持ちが腹の底にあるということしか私どもは考えられない。だからああいう発言が出てくるわけですからね。そういう点では、私どもはあなたが防衛庁長官ということの席におられることに対して非常な危険を感じます。そういう点は、非常にきびしく、私はあなたに反省をしてもらいたいと思います。
#101
○小林武君 なるべく短時間で質問を終わりますが、私は防衛庁長官が、この間、本会議で直ちにいまの発言についてこれを取り消し、こうこうこういうことでございましたというような御答弁をされた。私はそれを長官が言いそこねて、これを訂正したというふうには受け取っていないわけです。そういう考え方があるから、また、私の党といたしましても、長官の真意を承りたい、こういうことで先ほど来いろいろな議論がされておるわけでありますが、私は中曽根長官について詳しく知っておるわけではございませんけれども、いままでの政治的な行動等を見ている限りにおいては、きわめて先を見通した、ある意味においては、私どもから言えば、ちょっと驚嘆するようないろいろなアイデアといいますか、いろいろな大きな構想をお持ちで、防衛庁長官の政治的な立場というものが今日に至りましたその理由もそこにあるように思うわけであります。そういうふうに見ておるわけです。だから、今回の海軍、空軍という「軍」ということばはたいへんな表現であるということを、いまは何か非常に慎重にお使いになっているようであるけれども、これは、一つはやはりはっきりした一つの見解の上に立って、防衛庁長官はおれでなくてはならぬという意気込みの中にあるところの議論だと私は考えているわけでありますが、そのことについて一つだけお尋ねしたいわけです。
 それは、あなたの言う防衛五原則ですか、その五原則の中の安保条約を補完するとかいうのが第五項か四項にあったと思いますが、このことの内容は、一体、具体的にはどういうことを意味しているのか。
  〔委員長退席、理事船田譲君着席〕
率直な、しかも具体的な御答弁をいただきたいわけであります。
#102
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の体制でまいりますと、攻撃的兵器とか核兵器は、日本はつくったり、持ったりいたしません。そういう意味において、日本の防衛体制の中で、そういう部分をかりに将来必要とする場合には、これは安保条約によって米軍に期待せざるを得ない。戦争抑止の核というものも現在は動いておるわけであります。それ以外の日本の本土防衛に関する限りは、できるだけアメリカに依存しないで、自分でやっていけるようにつくっていきたい。他国に依存するということくらい、いざというとき不安なことはございません。そういう意味において、国のほかの政策とのバランスを考えながら整備していこう。現在、自衛隊が持っておるいろいろな装備品の中にも、米軍の貸与品というものはまだずいぶんございます。それも第二次世界大戦で使った兵器類でございまして、もう老廃化したものもあるわけでございます。そういうものはできるだけ国産で更新するとか、そういうような形で、自分で自分の国を守る体制でできるだけ進めていきたい、それが国としての自然体である、そういうように考えているわけであります。
#103
○小林武君 まあいまの、ことばとしてはちょっと受け取れないのですけれども、たとえば旧式なアメリカの貸与品を新しいものに変えるというような意味が自主防衛論でもなければ、あなたのおっしゃる自主防衛五原則の中の日米安保条約、安保体制を補完的な役割りにするということの意味にはならないように思うわけであります。少なくとも補完的という立場に、そこまで下げるとすれば、あなたはやはり防衛庁長官として第四次防というものを計画されておる、その点についての検討も深められているわけですから、その四次防というものを考えた場合に、補完というものの具体的な内容というのは明らかでなきゃならぬと思うのです。その場合、アメリカがいままで果たしてきた、あるいはこのアジアにおける、アジアの平和を保つというか、アメリカがよく言った、アジアの平和のために、いわゆる陸海空にわたってのアメリカの果たした役割りを、今度は日本が補完する、日本が主体になるという場合になったら、一体どういう日本の防衛――その防衛を担当する自衛隊というものの性格ができるのかと、私はそういう点で四次防に対するあなたの考え方、どうも私はその点ではあまり専門的な知識を持たないのでありますけれども、少なくともその形の中には、単なるいままでの自衛隊というようなワク外から出た、あなたがはしなくもこの間発言された「軍」、海軍、空軍とこうおっしゃったことは本音じゃないか、私は本音なら本音だとおっしゃるほうがいいのではないか、私は外交委員会あるいは予算委員会その他でよく外交、防衛のことを議論される場合に、いつでも中途はんぱな、何だかわかったようなわからないような議論を毎度繰り返されている、その繰り返している中からでもだんだん一つの変化が起こっているということだけは間違いない、二次防、三次防、四次防と、こう変わってくる性格の変化を見るというと、それは自衛権の中身の問題ではなくて、もっとやはり外に出ていくものだ、こう考えているのですが、その点については私の見方というのは思い過ごしなのかどうかということを、少なくとも四次防なり、日米安保条約体制というものを補完的なものにするというあなたの防衛五原則が、どういう内容を持っているかということを明らかにしてもらわないというと、この間のあなたの海軍、空軍ということが、あれは言いそこないであったのか、それとも本音であったのか明らかにならぬと思うのです。私はそういう点で、中曽根さんともあろう方がそういう言いそこないをやるというようなことには考えておらない、あなたの政治行動をいままで見てきている、俊敏なる政治家であると。その俊敏なる政治家が今日の政治的な大きな立場を持たれたということも当然である、これは保守党の体内においては当然のことであると私は思っておる。
  〔理事船田譲君退席、委員長着席〕
そういう考えを持っているのですが、これは社会党一議員の間違った考えなのかどうかお聞かせをいただきたい。
#104
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は、先ほど申し上げましたように、憲法に対する基本的な考え方にいたしましても、憲法調査会における責任ある発言として、最終的に発言の中で、先ほど申し上げましたような九条に対する考え方を公式に表明しておるわけであります。その考え方は変わっておりません。したがいまして、空軍、海軍と申し上げましたのは、これは私の言い違いでございまして、航空自衛隊、海上自衛隊と申すべきところであったのがまことの真意でございます。
 自主防衛の五原則は、文字どおり自主防衛、日本を守るための五原則という意味で申し上げたのでございまして、あの中で安保条約を補完するという意味は、日本の防衛について、日本が攻撃兵器、核兵器、その他足りない、持てない分については、戦争抑止その他において安保条約でこれを補う、そういう意味で申しておるのでありまして、アメリカに日本が補完するという意味ではございません。
#105
○小林武君 ちょっとぼくもその点は言いのがれのような気がするのです。アメリカが果たしてきた役割り、その役割りについて日本がどれだけの協力をしなければならぬかという、あるいはさらに日本の自衛力というようなものをもっと高めることによって、みずからの問題はみずからの手で守るのだと、こういう原則は、これはあなたの党並びにいまの政府の私は方針だと思って間違いないと思う。それを目ざしておるわけでしょう。その場合、アジアにおけるところの責任の協調というのは、ニクソン・佐藤声明書の中にも明らかになっているじゃありませんか。そういう現在を踏まえて、あなたが補完的役割りをと言った場合に、きわめて抽象的に、自衛上のというようなことだけでは理解できない。それじゃわれわれは補完的といった場合には、B52がどうなるとか、第七艦隊のことを――第七艦隊の、はたして使命をどうするか。あなたの一体、海の力をもっと増すということは、そういう意味がないのか。あるいはあなたが先ほど来答弁なさっている中に、兵器の進歩、あるいは相手方の出方その他によって、自衛の限界、そういうものに一つの大きな幅があるということをおっしゃっているのですからね。私は少なくともいまの政治情勢、国際的な情勢の中から考えて、カンボジアの問題を引き出すまでもなく、台湾や朝鮮の問題についても、日本の政府の態度は明らかになっているのですから、その中での自衛といって四次防を考えた場合、私はもっとやはり明確にその点を明らかにしてやる必要があると思うのです。私は国会の中の本会議で、あなたが言いそこなって言ったのかどうかということで海軍とか空軍とかを問題にするようでは、私はこれはいささか国会ではりっぱじゃないと思うのです。しかしながら、大きな問題があるからこそ、空軍、海軍というあなたの言ったことが重大になるわけですから、そういう意味で率直に私は言ってもらいたいと思うのですよ。これ、いまここで終わったところで、また次の国会になれば同じ論争が繰り返されるわけです。そのときにはいまの情勢はもっと変化しているかもしれない。四次防というものの外郭がはっきりしてくるでしょう。四次防というものの実態がはっきりあなたの目の前に出ざれるわけです。その際に、またぞろ、その段階でわれわれのいままで繰り返したようなことを言っておるのじゃ話にならぬと思うのです。憲法九条というものをある程度変えなければならないところまでいっているというようなことは、財界の一部からも声が出ているじゃありませんか。そういうことからいえば、あなたは、第四次防をやるという大使命を帯びた自民党政府の最も期待される防衛庁長官なんですから、私はそこではっきり言ってもらいたいと思うのですよ。そうでなければ、私はこの問題の解決は、単なるここでのお互いのことばのやりとりだけで終わってしまう、こう思うのです。それにつけ加えて、もう一つあなたにお伺いしたいのですが、核兵器というものに対する限界の問題ですね。原子力で動かす潜水艦、これは兵器とか何とかという問題は入らないのですか。あなたは、将来一切の船を動かすところの力がみんな原子力によって動くということになったら心配はないというような、なかなかうまいことを言ったらしいのですが、現在の段階の中で原子力潜水艦というものはどういう一体、攻撃力のために準備され、どういう戦略的、戦術的利用価値があるか。こう考えましたときに、原子力潜水艦をつくるということは違憲でもなければ、あるいは平和利用の問題にも触れておらないというあなたの見解は、これはどういうことになるか、私はそれについても中曽根防衛庁長官は早くも先手をひとつ打った。このことをうやむやにすることによって、私は日本の海上の力というものは飛躍的な変化を起こすのじゃないか、こう考えているのですが、これについての御見解を承りたい。
#106
○国務大臣(中曽根康弘君) 四次防につきましても、いまのような基本的観念に立って国土並びに国民生活を防衛するという専守防衛の基本原則で貫いてまいりたいと思っておりますし、また、国民生活の安定、発展を阻害することがないように財政的スケールにおいても注意してまいりたい、こう思っております。私は率直に政治家としても申し上げますけれども、日本の生活水準というものをできるだけ西欧並みに、一般大衆に至るまで引き上げたい。その生活水準を上げるということが、今日の日本の政治家の歴史的な責任であるように心得ておるのであります。そういう一番の大目的を達成するために防衛というものがこれを阻害することのないように、そういう配慮を自分は心の中でもしているのでありまして、先般、経済社会発展計画を新しくつくる際にも、企画庁のほうから何も話がありませんでしたけれども、われわれのほうから企画庁に人をやりまして、その内容と日本の防衛のスケールというものはどういう程度でいくべきか、社会保障費そのほかの経費の見積もり等も調べさせたり、いろいろ検討してきておるのでございます。四次防につきましても、そういうような情勢判断のもとにできるだけ節制を旨とした考え方に立って実行していきたいと思っております。
 原子力潜水艦の問題につきましては、原子力基本法をつくりましたときに、私は提案者の一人でございまして、そのときに国会で答弁をしたのでございます。その答弁の中に、原子力の放射能、あるいは爆発力を直接兵器として人間の殺傷や破壊に使うというような場合が原子力兵器として該当をする、しかし、原子力が発達してきて、それでいい鋼板ができて、それを船のアーマメントに使うとか、鉄砲、小銃に使う、こういう場合は基本法に反するものでもない。あるいは原子力発電というものを自衛隊が使うということも、これは反するものではないでしょう。それと同じように、原子動力が船の輸送について普遍化して使えるようになった場合に、潜水艦にその原子動力を装備するということは違反ではない、そういう意味のことを申し上げたのでございまして、現在持つということは、これは適当ではございません。基本法違反になるのではないかと私は心得ております。しかし、将来、いまのようなわけで普遍化した場合には、これは持ち得るものである、そういう見解を表明したのでございます。
#107
○小林武君 現在、原子力潜水艦をつくれば、これは問題だという、原子力基本法に違反するという考え方のようであります。しかし、私はその場において大臣の答弁を聞いたわけではありませんから、速記録等をもって大体推察すれば、大臣はかなり先の見通しを立てた一つの発言をなさっていると、こう思っているわけです。私も実は原子力船をつくるときに科学技術特別委員会の委員で賛成したほうです。それは平和利用ということであるからです。ただ、私はあなたに御注文申し上げたいのは、動かす力に利用すれば原子力潜水艦をいまつくってもこれは軍事利用ではないという考え方であるから、まあひとつがまんしますけれども、そういうお考えであるならば詭弁もはなはだしい、こう思うわけでありますが、いまそのことについて長々議論するつもりはございません。ここでやめますけれども、私は四次防の問題というのはどうせ具体的になることですし、その際にあからさまに出てくる問題ですから、この場限りの御答弁でなかったということに、ひとつこれから中曽根さんの発言というようなものは、少なくともその場限りのために発言したことでないというように願っているわけです。まあ短時間に終わるという約束でありますから、以上をもって私の質問を終わります。
#108
○小柳勇君 五月八日の本会議の直後、私どもは緊急に議運理事会を招集してもらって、わが党から次のような提案をいたしました。
 第一は、憲法第九条によってわが国には空軍、海軍はない、しかるに、中曽根長官は本会議の答弁において海軍、空軍ということばを、いわゆる軍隊の存在を認めた、したがって、閣僚として不適格であるから直ちに辞任をしてもらいたいという要求を党として出したところであります。わが党としてもいろいろ意見はございました。本会議の中で前言を不適当として取り消し、今後注意するという答弁があったのであるから、もうこれでよいではないかという発言もありましたけれども、大多数の意見は、今日、朝からいままで質問がありましたように、そのことば自体が問題ではない、長官の発言の裏に本質的なものがある、その本質的なものをたださなければならない、それは日米安保条約の中で、わが国の自衛隊の任務が非常に大きくなっておる、また先日の日中覚書貿易の中で中国はわが国の軍国主義復活を非常におそれているということばがある、また、すぐ第四次防に入っていくが、こういう国際的、国内的な重大な段階に入ってあのような長官の発言があり、それが長官の意識の中から本質的なものとして出ておるならば、これを十分ただして、その上で長官の進退をきめてもらいたい、こういうことで議運の委員長に提案をいたした次第でございます。議運の理事会では、いろいろけんけんがくがく、議論がございまして、本会議の問責決議案、戒告決議案、あるいは議運の委員会のほうに来てもらってその真意をただす、いろいろ意見がありました。その第三の方法をきょう選んでいただいて、ここにきょうのこの委員会を開いてもらった次第でございます。午前中からの長官の答弁によって、私もここで聞いておりましたが、あのことばは長官の海軍、空軍を認めた本質的なものでなかったということを、きょうは私はこれを率直にお認めしたい。ただ、将来の問題として、日本が国際的に国内的に非常に大きな段階でありますから、あのような、いまの憲法第九条に違反することばをまず第一には否定されました。私は憲法違反でありますから、取り消しを言われましたが、もう一ぺんここで確認をしたい。
 あと私もう一つ、私の質問でございますけれども、いま私どもが懸念いたしておりますのは、第四次防に関連をして産軍共同体の問題がある。産業界は、長官を中心にして軍備増強のほうに政府に圧力をかげてくるであろう、国会にも突き上げをするであろう。カンボジアに進攻いたしました米国政府のいまの苦況を考えますと、私どもの心配というのはあながち杞憂ではないと私は考えますが、この産軍共同体の構想なり、今後の産業界の防衛庁長官を中心にする軍需関係のいわゆる管理者の内閣なり長官に対する突き上げ、要請、そういうものに対してどういうふうに対処していくか、これが第一点であります。
 それから第二点は、先般、防衛大学の卒業生が卒業直後他の産業に就職するので、三カ年義務的に勤務させたいという発言をしたことを承知しております。防衛大学の優秀な卒業生が、自衛隊におるよりも産業界に入っていこうという、そういう意欲があることも承知をいたしておりますが、これを強制的に義務づけるということは現在の法律では許しておらぬと思うが、そういう構想があるやに承っております。これはいま憲法九条があるにかかわりませず、さっきだれかの発言にありましたと思いますが、徴兵制になりはせぬかという杞憂もありますから、また防衛大学に入ろうとする優秀な青年もたくさんありますから、この問題について長官はどういう考えを持っておるのか、この二点はきょうただしておきたいと思います。
#109
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、先般の本会議におきまして、海軍、空軍ということばを不用意に使いましたことは私の間違いでありまして、重ねて訂正さしていただきます。以後はよく注意をいたします。
 次に、産軍共同体の点でございますが、私は財界とか、あるいは産軍複合体というようなものが政治を圧迫したり、あるいは防衛庁に歪曲した政策を導入するようなことになることは最も戒心すべきことだと実は心得ております。そのために就任以来特に装備局長に命じまして、防衛産業というものをどういうふうにしていくか、四次防を控えまして確かに御指摘のとおり重大な場面でもありますから、その基本的な政策について検討を命じ、数回その問題で装備局長といろいろ論議をし検討しておるところでございます。しかし、また一面におきましては、装備を製造していく力というものも、これを継続的に維持していくことは必要でありまして、現在の防衛全般を考えますと、一番の基礎は国民であります。国民の心でもあります。しかし、そのほかに経済力もございますし、交通通信能力もございますし、あるいは文化力もございますし、あるいは第一線の実務を担当するものとして自衛隊というものもあると思うのです。その総合的な防衛力の中に、やはり軍需生産を行なうという場面も一つ分野としてあると思うのです。しかし、それがちゃんと節制のある立場を堅持して継続的にその能力を保持しておくという意味におけるこの規制なり、あるいは育成ということは必要であろうと思うのです。そういうことに関するいままでの政策が、私は着任以来明確に意識をもってとらえているように実は感じられませんでした。そこで、この点は新しい防衛計画の策定の前にきちんとしておこう、そういう意味で目下鋭意検討さしておるのであります。たとえば競争原理を導入するとか、あるいはいろいろな国産的な武器の開発等について役所には一定の限界しかございませんから、民間の能力をいかにそれを開発して協力を求めるとか、兵器の開発等についても、やはりそういう部面も必要だとは思います。しかし、それが変な癒着を起こしてはたいへんだ、そういう意味において、この斉々した体系をつくるためにいま一生懸命努力をいたしておりますが、いやしくも財界のそういう力が政治を歪曲したりすることがないように厳重に戒めて今後も持っていきたいと思っております。
 防大生のことにつきましては、約五百人の卒業生の中で五十人ばかりがほかの職業に変わりました。その中には体が悪くて自衛官としては不適であるという人もあります。しかし、そうでない人も二分の一から二分の一を突破してございます。そういうことを考えてみますと、相当、何百万円という金をかけて防大生を国が教育してきておるのでございますから、それが終わってほかの産業に流れ込むというのは、いかにも国民の前に申しわけないような気が私しております。現在は、これは道義的な問題としてつなぎとめてあるわけでございますけれども、しかし、委託学生というようなものもございまして、受験をするときの契約条項といいますか、あるいは自衛官になる前後、そういう契約的なもので二年とか三年は自衛官として奉仕していく、その後は自由になる、そういうことも検討していいんではないか、そういう気がいたしまして、まだそういうふうに持っていくという意味ではありませんけれども、検討してみたいと、答弁申し上げましたが、いまそういう気持ちでおるわけでございます。
#110
○小柳勇君 ほかの大臣があのような失言をされた場合に、今度のような問題の扱い方をしたかどうかについて検討してみますと、おそらくそうでなかったのではなかろうかと私は考えるわけです。中曽根長官が国防の前線に立って自衛隊を掌握しながら非常に日夜努力しておられることには敬意を表しておりますが、平素の行動なり、ことばの中で、森中君のことばを借りますならば、行き過ぎ、勇み足、思い上がり、こういうものがわが党だけではない、野党各党の中にもそういうものがあって、期せずして今回のような問題の扱い方になったのではないか。特にアメリカですら――中国はもとよりでありますが、アメリカですら日本の軍国主義復活をおそれておるという報道がある。その軍国主義復活の象徴としての中曽根長官に対する警告、不信、そういうものが本日のこの議運委員会の問題の扱い方になったものであろうと私は理解し、そのように考えますだけに、いままで朝から質問をいたしましたことに対する答弁は了承いたしましたが、ざらに今後の長官の大臣としての御成長を念ずるとともに、日本の平和な国土建設というものを念願しますだけに、今後の大臣の行き方に対する所信をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
#111
○国務大臣(中曽根康弘君) 私の不注意から、至らぬ、思いがけぬ御迷惑をおかけいたしましたことをたいへん恐縮に存じております。以後、憲法をよく守り、慎重に言動いたしまして御期待に沿うようにいたしたいと思います。
#112
○森中守義君 これで一とおり質疑が終わったわけで、これでいいようなものの、いま小柳君からの話がありましたように、この議運がこういう形で開かれたこと自体が参議院としてはかなり衝撃である。したがって、委員会散会後、委員長理事打合会でもお開きになりまして、ただもうこれで終わるのか、あるいは何かの処分をするのか、ことばを詰めて言いますとね、そういったようなことを私は委員長理事打合会で御協議いただきたい。これは要望ですから、ぜひそのようにお取り計らいをいただきたいと思います。
#113
○委員長(徳永正利君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#114
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
 他に御発言もなければ、これにて散会いたします。
   午後二時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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