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1970/03/26 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 商工委員会 第8号
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1970/03/26 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 商工委員会 第8号

#1
第063回国会 商工委員会 第8号
昭和四十五年三月二十六日(木曜日)
   午後二時九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     田渕 哲也君
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     田渕 哲也君     瓜生  清君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         村上 春藏君
    理 事
                川上 為治君
                近藤英一郎君
                山本敬三郎君
                竹田 現照君
    委 員
                赤間 文三君
                井川 伊平君
                剱木 亨弘君
                平泉  渉君
                八木 一郎君
                阿具根 登君
                大矢  正君
                小柳  勇君
                浅井  亨君
                矢追 秀彦君
                瓜生  清君
                須藤 五郎君
   国務大臣
       通商産業大臣   宮澤 喜一君
   政府委員
       通商産業政務次
       官        内田 芳郎君
       通商産業大臣官
       房長       高橋 淑郎君
       通商産業省通商
       局長       原田  明君
       通商産業省貿易
       振興局長     後藤 正記君
       通商産業省繊維
       雑貨局長     三宅 幸夫君
       中小企業庁次長  外山  弘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○産業貿易及び経済計画等に関する調査(繊維問
 題に関する件)
○輸出中小企業製品統一商標法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(村上春藏君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 三月二十五日、高山恒雄君が委員を辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。
 本日、田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として瓜生清君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(村上春藏君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、繊維問題に関する件について質疑を行ないます。
 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#4
○大矢正君 大臣に、日米間における繊維の交渉問題についてお尋ねをする前に、事務当局に一、二お伺いをいたしたいと思います。
 それは、御存じのとおり綿製品につきましては長期にわたる政府間の取りきめがありまするし、また鉄鋼につきましては、政府の関与しない形で業界の自主的な規制というものが行なわれておりますが、今日の日米間の貿易関係において、いま私が申し上げた以外に、政府間あるいは企業の自主的な形における輸出に対しての規制が他に行なわれているものがあるかどうか、お尋ねをいたします。
#5
○政府委員(原田明君) いろいろな形をとっておるようでございますが、いま御指摘の繊維以外にも輸出自主規制をとっておる品目は多数ございます。
#6
○大矢正君 多数あると言われてもわかりませんから、どういうようなものがどういう形で規制をされているか、現実に。たとえば輸出入取引法の問題とかあるいは管理法上の問題とか、そういうようなことは抜きにして考えて、輸入するアメリカ側の希望なり要望なり要求なりによって自主的に規制をしているものがあるかどうか。
#7
○政府委員(原田明君) アメリカ側の要望という場合のことばが非常にいろいろあるかと存じますが、アメリカの政府の要請と申しますか、アメリカの政府との話し合いという形で始まっている自主規制に綿製品がございます。それから業界同士の話し合いで行なわれているものには鉄鋼がございます。その他の品目につきましては、アメリカにおきまして業界を主とする輸入制限運動がエスケープ・クローズの調査でありますとかいろいろな形で起こりまして、その結果としてやむを得ず自主規制という形で輸出規制に追い込まれたというような形をとっておるものが相当多数にあるわけでございます。
#8
○大矢正君 最近新聞の報ずるところによりますると、アメリカ側の、もちろんこれは政府自身がそのとおり考えているかどうかは別にしても、業界の中ではかなりの品目にわたってわが国に対し輸出の規制を求める動きがあるようでありますが、あなたが今日までつかんでいる資料では、どういうものがあるか御説明願います。
#9
○政府委員(原田明君) いずれもアメリカが政府あるいは業界として日本側にアプローチをして自主規制をしてくれという形をとっているわけではございませんが、アメリカにおきましてそれぞれの業界が輸入制限的な動きを非常に強くいたします。その結果、自主規制あるいは向こうにおける輸入制限立法への動きというような形をとっておりますものには、記憶いたします限り、たとえばくつ、はきもの、タイル製品、あるいは電子機器等々といったものがあげられると思います。
#10
○大矢正君 あなたは通産省の中で貿易を担当する事務官としては最も最高の立場にある人でしょう。新聞をわれわれが読んでいたって、アメリカがどういう規制をしようと考えているか、どういう品目を考えているかというようなものはよく載ってきますよ。あなたの省からは、アメリカをはじめ世界各地に事務官が派遣されて、その国の一切の状況について本国すなわちあなたのほうに、そういう貿易上の問題についてはどういう問題があるかというようなことは、報告が来ているはずだと思うのですよ。もし来てないとすれば、あなたの局なりあなたの省というのは、新聞社の調査機関よりぐっと落つる情報収集力しかないということになるのだが、そういうお茶ら化すような答弁じゃなくて、もっとまともに、まじめに答弁しなさいよ。あなた方、資料によって、はっきり言ってくれるならいいけれども、どうも私は考えてみたところだとか、思ってみたところこの程度だとか、そういうふざけた答弁をこの席でしてもらっては困りますよ。もっと正確に答えなさいよ。
#11
○政府委員(原田明君) 取引法に基づく輸出規制の行なわれている品目、アメリカに行なっております品目は、非常に多数ございますが、例示といいますか、輸入制限運動というものに非常に関係のあるようなものを申し上げてみたいと思います。
 トランジスタラジオそれから双眼鏡、この双眼鏡につきましては、最近はそれほど強い輸入制限運動が起こっているというふうではございません。それから乾電池、金属洋食器、洋がさ及び洋がさの骨、スポンジぞうり、野球用のグローブ、ミット、バドミントン・ラケット、タイル、陶磁器、綿織物はもちろんでございますが、といったような品物でございます。
#12
○大矢正君 大臣にお尋ねしますけれども、いまあなたがお聞きになっておられるとおり、あるいはそういうことは答弁の中で聞かなくてもあなた自身がおそらく勉強されておられることだと思うのですが、かなりの品目に対してアメリカは、できることならば国内で立法措置によって輸入を防ぐ、あるいはまた政府の力を借りて輸入を押える、あるいはまた日本の業界に対してあらゆる形でこの輸入を押えるというような動きがますます出てくることは明らかですね。その最大の焦点が、いま行なわれている日米繊維交渉であることも、これは御存じだと思うのです。ですから、またあなたも担当大臣として日夜御苦労なさっておられることを私自身もよく存じております。そこで、先般来、この委員会におきまして、私は日米交渉に臨む通産大臣の考え方というものは一体どこにあるのだということを私なりにまとめてみますると、こういうことになるのではないかと思うのでありますが、間違いがないか御確認を願います。
 まず、大原則はあくまでもこれはガットの場において問題の処理、解決をはかるべきものであると思う。そこで、アメリカ側からガットの場で問題を解決するまでには、期間的にもまたアメリカ自身の国内立法の関係上間に合わない点もあるので、この際、例外として日本に自主的な規制を求めてきた。そこで、そういう例外的なものであるがゆえに、もちろん簡単に問題が解決していいということではないが、たとえそういう例外的なことであったとしても、基本的にわが国も守らなければならないことがある。それはあなたの答弁を私なりに集約をしてみると、まず第一は、被害が立証されなければならないことである。被害がないところに規制はないということがまず第一の問題点である。第二の点は、したがって、被害が立証されないのに包括規制ということはどう考えてみたって理屈に合わないわけなんですね。被害のないところに規制がないということは、これはもう明らかに選択的な規制であって包括的な規制でないことは、これはもう一目瞭然であって、日本語をどのように読みかえようとしても、原則としては被害の立証だということになれば、包括規制というものはあり得べきことではない。よって二番目の問題は、第一と第二とうらはらになりますが、包括規制ということはあり得ない。第三の問題は、これは日米間の問題であると同時に、台湾、韓国、香港、その他特にこれに関連の深い東南アジア開発途上国に重大な影響を与えるものでもあるし、また、かつては綿製品協定の際にわが国がアメリカと一方的な取りきめをしたがゆえに、わが国のシェアが低下して開発途上国のシェアが上昇したという過去の苦い経験から照らしてみても、国益を守るという意味から見ても、これはあくまでも問題の解決は多数国間協議において行なわれるべきものである。それから第四番目は、これはまた最初に戻りますが、本来的にはガットの場で行なうべきものでありますからして、あくまでも例外的な規制である。例外的な規制であるということは、アメリカがその準備をするまでの、ほんとうに限られた短期間のものである。こういう私は四つに分類をして、あなたが先般来答弁されたことを考えておるわけですが、こういうあなたがお答えになったことの私の解釈は間違いがありますか。
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来申し上げておりますことを正確に御理解願っておると思います。なお、さらにもう少しこまかいことを一つだけ申し上げますと、被害の点はガット十九条の考えをそのまま取り入れておりますから、正確には被害またはそのおそれと、その立証というふうに考えておりますが、大矢委員のいまおまとめになりましたことは、私の在来申し上げておりましたことを正確に御理解願っておると、こう考えます。
#14
○大矢正君 そこで、いま毎日のように新聞をにぎわしております日米間の繊維交渉の、もちろん政府は関知しないとおっしゃっておられるようでありますが、この動きについて、大臣からお答えをいただきたいと思うんですが、現実に、いまどういうことになっておるのですか、繊維の話というのは。新聞にはいろいろ載ってきております。しかし新聞にこう書いてあるからといってあなたに質問しても、あなたがそれにまともに答弁されるような方でないから、まずあなたから伺って、それから話を始めたほうがいいと思うんです。
#15
○国務大臣(宮澤喜一君) ある段階までのことはすでに御承知でございますし、申し上げておりますから、それから後の段階から今日までを申し上げることにいたします。
 アメリカの貿易自由化等々に熱心なグループの委員長でありますケンドールという人が過日参りました。で、本来のわが国に参りました目的は、万博でありますとか、あるいは自由化一般であるとかいうことであったわけでありますが、おのずからこの人も日米間のいま急迫した問題であるこの問題に関心を持っておりまして、何とか打開の方法はないだろうかということを個人の資格としていろいろ模索をしておったわけであります。私ともかなり長い時間そのことについて話をしております。そこでケンドール氏個人としては、私どもの申しておりますこと、これはすなわちいま大矢委員がおまとめいただきましたような諸点でございますけれども、これはケンドール個人としては理解のできることである、それはわかったと、しかし、なかなかそれらのことは、先ほど大矢委員がまさに仰せられましたように、時間もかかることであるので、その本体論はわかったとして、それに達するまでのつなぎのような措置は何か考えられないだろうかというようなことを言っておりまして、そうしてその末に、たとえばいまから十二カ月なら十二カ月の間、過去の実績あるいはその一定割合増しということで、暫定的に、いわばこれは包括になるわけでございますけれども、そういう規制を考えてもらうわけにはいかないだろうか。その期間が済んだ後は、これは絶対に期間を更新することはしないし、この本体論につまり入るんだ、こういったような話でございます。そこで私は、まあせっかくのお話でありますから、一日ほど間を置いたんでございますけれども、政府としては、やはりそのつなぎのほうの話は、国会の御意思もあり、また私どもの考えております原則論もあるので、政府としてはどうもその話を受け付けるわけにはいかないということを言って、断わりましたわけであります。しかるところ、ケンドール氏は、政府に対してそういう話ができないとすれば、一人のアメリカの財界人として日本の財界なり業界なりとそういう話をしてみたいということでありましたから、私は、それは別段私として反対すべきことでないというふうに返事をいたしました。その結果、ケンドール氏はそういう考えでわが国の財界あるいは業界等に多少の接触をいたしたようであります。
 なお、それと前後いたしまして、そういうつなぎの措置とさらに本体、原則論とを合わせて一つのセットにいたしました案が、これは正確に申しますとどういう表現になりますか、案が流布されたというふうに申すのが一番正確なことばだと思います、これが俗にケンドール案と呼ばれておるものでございますけれども、この呼び方は、少なくとも私の知る限り正確でありませんで、ケンドール氏がそういう案を起草したのではないようであります。わが国のワシントン駐在の大使館が一民間人から入手したものといって外務省に報告してきておりますし、またそれと前後してわが国の繊維業界も同じ案をどういうルートかで入手しております。したがって、この案の正確な出どころあるいは起案者というのは不明でございます。不明でありますが、ケンドール氏が私に考えとして申しましたことと実体的には似ておりまして、あたかもケンドール氏もこの案というものを自分の頭のどこかに置きながら私に話をしたごとくでございました。それがただいま誤ってケンドール案と呼ばれておりますものの実体でございますが、そこで政府としては、つなぎの部分にはかかわり合えないという態度は、これは政府部内、そういうことでまいっておりますし、まあ業界が、あるいはもう少し広く財界が、いろいろな見地から本体のほうが確保されるのであれば、このつなぎのほうを暫定的な期間受けとめて、大体その案に沿って善処をしようというのであるか、あるいはいずれにしてもこういう案は受けられないというのであるか、その辺は、ただいま業界内部でもまた財界の一部でも、いろいろ議論をされておる。大体ここまでがかいつまんだ、先般申し上げました以来の経緯でございます。
#16
○大矢正君 そこで、時間がないから集中的にお尋ねしますが、いまの段階では、日米繊維問題については政府は関与しない。あくまでアメリカの一財界人とわが国の財界、あるいは繊維業界との間で話がいろいろされているのであって、もちろんその間の情報は政府側としては入れておるが、政府がそれに対して、政府の意思はこうであるとか、あるいはこうすべきであるとかというようなことは一切行なっていない。せんじ詰めていくと、そういうことになるわけですか。
#17
○国務大臣(宮澤喜一君) これはまたまっすぐに申しませんので、おしかりも受ける点があるかと思いますけれども、この案そのものが、わが国でいろいろ議論になっておりますと同様に、アメリカの業界、あるいは議会筋でもいろいろに議論になっておるわけでございます。そこでアメリカの、ことに業界は、かなり極端な立場をとっておりますので、この案について相当の不満を持っておるらしく思われます。それが議会筋等にも反映をしておるごとくでありまして、したがって私どもがこの案の評価を公にいたしますと、それはすぐ先方に逆の反作用を呼ぶおそれもございます。そこでその点を考えながらお答えを申し上げざるを得ないのでございますけれども、政府としてはこの中にあります本体の部分については、先ほど大矢委員がサマリーをなさいました私どもの考えております幾つかの点が、かなり取り入れられているというふうに私どもは見ておるのでございますけれども、つなぎといわれる部分が、政府としては受け入れられない、原則上受け入れられないという立場でございますから、私どもとして、いままでこの案そのものを業界なり財界なりとの正式の話題に供したことはないわけでございます。これから先どうなりますか、かりにそういうことがあるといたしましても、つなぎの部分については政府としては、政府の、どう申しますか、正式に取り上げる部分ではないという形で話題にするしか方法がないであろう。まだ話題にするということをきめてはおりませんが、やはりつなぎの部分については政府ベースで話し合うのに適さない考えである、こういうふうに思っております。
#18
○大矢正君 これは三月二十日の新聞に、あなたが発表されたのではないと思いますが、ケンドール試案というものが載っております。このケンドール試案というものはこういうものだということを詳細に書いておりますが、これはそのとおりでありますか。あなたに聞いてもあなたは答弁されないだろうから、そこでそういう聞き方はいたしませんが、このケンドール試案の内容自身は、あなた自身が一番よく存じておるわけなんだから、そのケンドール試案に対してあなた自身どう考えておられるのか、お答えをいただきたい。
 それはもちろん申すまでもなく、先般この委員会におきまして私が読み上げ、エードメモアールを確認をしているわけですし、しかも、さっき私は大原則と、その大原則に基づく例外の場合の基本的な守るべき事項、これを申し上げたが、これはもうもちろんあの覚え書きの中に書かれていることでありますが、こういうものが政府の基本的な立場でありますよということを国際的に明らかにした上でケンドール提案というものが出てきて、そのケンドール提案というものに対して、あなた自身は、あれがいいと思っておられるのか、悪いと思っておられるのかお答えをいただきたいと思います。
#19
○国務大臣(宮澤喜一君) この場合は、この間のエードメモアールとは全く私どもの取り扱いは違ってしかるべきものでありまして、これはどう申しますか、政府間の秘密のやりとりでも何でもないわけでございますから、そこで、ケンドール氏が私に話しましたことをふえんいたしますと、あの報道されたようなものになる。あれは、私はああいう考え方が政府としても非公式には先ほど申しましたような経緯で入手いたしましたし、業界も持っておるので、あの報道そのものは正確であると私は思っておるのでございます。ただ、これがケンドール氏の案でないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 それから、これについてどう評価するか、おまえはどう思うかということでございますが、この評価につきまして、先ほど申しましたような顧慮を私はしながらお答えを申さなければならぬ立場にございます、アメリカ側の反作用を考えますと。しかし、本体にかかる部分は、私どもが日本で主張しておった幾つかのことを取り入れておるというふうに考えております。ただ、そのつなぎの部分というものは、これは政府としては政府ベーシスでは受け取りにくいものだ。こういう評価をしております。
#20
○大矢正君 そういたしますると、政府の考え方は明らかなんですから、よろしゅうございますか、政府の考え方は明らかなんでありますから、この問題の解決の基本的な方向なり考え方というものは。もし業界同士で――私は実際はそうであると思いませんよ、佐藤総理以下、裏から回って相当な圧力をかけたのであろうということは、これはもうみんなが想像しているところだけれども、しかし、それの証拠がないから、それを言うわけにはいかぬけれども、ともあれ、政府の考え方は、あなたの先ほど来述べられておることとすれば、もしそういうような政府の考え方と反するような形で日本が譲歩をして、たとえそれが業界同士の自主的な話し合いであろうとしても、まとめることについては、むしろあなた方がそれをとめるべきであって、基本的なあなた方の考え方を、彼らに、日本の業界に理解をさせて、解決をさせるべきものじゃないですか。その点どう思いますか。
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) そこは非常にむずかしいところであると思います。もとよりああいう規制をだれも好んでしょうという業界は、私はいないと思います。思いますが、非常に問題の解決が長引いておって、先行き不安から一部の産地にはやや動揺が見られるとか、こういう陰うつな雰囲気では、今後の輸出というものについて不安があるとか、あるいは中には、アメリカが規制立法をするかもしれないと考えておる人もございますので、そこで、いろいろなことから、業界自身が、まことに本意ではないが、しかし、ここで妥結に入ったほうがいいと考えることはあり得ると思います。私はあるとは申しませんが、あり得ることであると思うのでございます。そこで、もしそのつなぎの部分について業界がいずれの考慮からがして、どうもこれはやむを得ないというふうに考えるに至りましたときには、今度はそれが文字どおり短期間のつなぎであるというようなこと、それからその後にくるべき本体はかくかくであるべきだというようなことの確認は、今度は政府があとを引き取りまして政府ベースで考えなければならないと思います。しかし、まずその前段というものが、そういうことになりますかなりませんかということは、いまのところ私にもはっきり見通しが立たないのでございます。
#22
○大矢正君 あなたはいま政府ベースでというお話がありましたが、話をまとめるのは何も政府間で協定をしなきゃならぬと限らないわけですね。鉄鋼規制のように、自主的に業界がアメリカ側に、一方的に、われわれはこの程度で規制をいたしますと通告すればこれは済むかもしれない、それをアメリカ側がのめば。したがって政府側が関与するかしないかという問題は、これは前提となるべき問題では本来ないわけですね。そうじゃないですか。あなたの話を聞いていると、最初から政府間において取りきめをするという前提に立ってものを考えておられるようだが、お尋ねをしたいと思います。
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) それは鉄鋼の場合と私は違うと思いますのは、かりに、これは全くかりにでございますが、業界がこれもやむを得ないというふうに考えるに至りましたときには、まず私どもが確実にしておかなければならないのは、あの書きものにもございますように、これは期限はたとえば十二カ月である、で、これ以上どんなことがあっても延長というようなことはしないというような、そういうあの中にはたしか保証と書いてあったと思いますが、ギャランティというようなものがある。そういう関係のものは、これは政府間で確認をしておきませんと、くずれてしまうおそれがございます。鉄鋼の場合には、これは期限なしに数量を業界同士でやったのでございますから、政府が何にも関与しないでよろしかったわけですが、今度の場合には、かりに業界がそうなりましても、その規制の幅なり期限なりというものは、これは政府が確約を取っておきませんと、また今回と同じようなことが将来向こう側の事情で起こり得るわけでございますから、そこは政府が入りませんと、やっぱり私は業界としても安心ができないだろうと思っております。しかし、これは全く仮定の道行きでございます。
#24
○大矢正君 この包括規制ということは被害を立証していないと……。被害が立証された場合に規制をするんだという原則からいけば、包括規制というものは、いままでの日米間の貿易の中身を調べれば一目りょう然としてくるわけですね。それをあなた方はのむとはおっしゃっておらぬが、業界の中で、かりに、それでも例外でしかも短期間だからのむということは、基本的には政府の今日まで考えてきたこととははずれることになりますね。そうでしょう。被害が立証されなければ、あるいは被害のおそれがない限り規制はないんだと、こういう原則は、あくまでもそれは選択規制であるということは、さっきから私が申し上げているとおりでしょう。といたしますれば、日米間における化合繊製品の中身を品目別に調べていけば、全部の品目が被害を与えているということになろうはずもありませんし、またそのおそれもないわけですね。そういたしますると、これは包括規制ということは現実にあり得ない、われわれが考えてみて。そういう解釈になるわけですね。にもかかわらず、たとえそれが例外的な規定であっても、包括規制を認めるということは一あなた方が認めていると私は言っているんじゃないんです、あなたのことばをかりれば業界が認めるかもわからぬ、こう言っているんです。だとすれば、むしろあなた方自身が業界を説得して、それでこの原則は曲げるわけにいかないから、業界はもう少しやっぱりがんばるべきではないかと、こう言うのが本筋じゃないでしょうか。
#25
○国務大臣(宮澤喜一君) それは政府の守るべきルールというものと業界が考える、いわゆる事業のビジネスマンとしての判断というものは、一応立っている基礎は私は違うと思うのでございます。たとえば鉄鋼などの場合でございますと、これはいわば包括規制でございます。この際はもう被害とかなんとかいうようなことは全く問題にせずに、いま御承知のような規制をやっておるわけでございます。これは鉄鋼界が何らかの考慮のもとにそれが適当であると判断をした結果であろうと思います。だれも好んでしたこととは思いませんが、そういう結果になったと思いますので、それで、もしいまの一年間なら一年間、これはおっしゃるように事柄の内容は包括規制というふうに言わざるを得ないと思うのでございます。が、そういうことで業界がやむを得ないと言うならば、私ども別にこれに対して何も言うつもりはない。ただその話は、政府の立場に立ちますと、政府の持っておるガット等の原則にもとりますから、政府としてはどうもその話は受け取れない、こういうふうに私はケンドール氏に答えたわけでございます。
#26
○大矢正君 これは会議録に残りますから……。そうすると、宮澤さんのいまの考え方や立場からいくと、かりそめにも包括規制などということは、たとえそれが例外的な取りきめ、ごく短期間の、ガットの場で問題が処理される問の例外的な取りきめであっても、これは好ましいものではない、むしろこの際そういうものははねのけて、被害のないところに規制がない、すなわち選択規制ということを貫いてもらいたいものだという気持ちをあなたが持っておる、こういうふうに解釈できますね。
#27
○国務大臣(宮澤喜一君) そうは申し上げておらないつもりでございます。最善の方法でないことは明らかでありますけれども、業界のほうの事情で、それもいろいろな複雑な事情ということになると思います。そういう道を選ぶとするならば、私たちはそれに対して妨げるものではない。最善の方法でないことはもう御承知のとおりでございます。
#28
○大矢正君 あなたね、ことばでもって逃げようと思っても、それは話になりませんよ。どうしてあなた方自身が、もうこの段階まできたら、ここまで執拗に粘られたら、たとえば将来の日米関係を考えたら、まあわずかの期間のことでもあるから包括規制は認めざるを得ないなら認めざるを得ないと、あなたここではっきりと言うべきじゃないのかな。これは私はあなたの言われるように、一切の責任はあげて業界にあり、政府はむしろそれをもっと筋を通してもらいたいのだという考え方があったが、業界がかってにとは言わぬが、業界からこういうような、言ってみれば不当な内容で妥結をしなければならなくなったことは全く残念でならないと言わぬばかりのようなこういう御答弁は、どうも私は率直にあなたからお受けするわけにはいきませんね。そういうあなたの答弁ならば、私はそれはあくまでも業界が将来きめることであるかもしれません。きめることであるかもしれませんけれども、しかし政府の立場というものはこういうものだということは、私は明らかにすべきではないか。この間私はエードメモワールに固執して、ここで読み上げたりしてまで速記録に残したのは、ねらいはそこにあるわけですから、政府の態度はあのエードメモワールに集中されておるのだ、そこが政府の考え方だと。だとすれば、それと異なる解決の方法は将来に禍根を残すのだということが含まれておる内容です。あなたのことばを一〇〇%信用して、政府は何もこういう協定は結んでもらいたいと思っておるのではないのだ、日本の業界が、自主的にアメリカの情勢や、あるいは日本国内全体のことを考えて、たいへん不満ではあるけれども、ある程度の包括規制をのむのだ、こういうようなことに私はならぬと思うのですよ。もう一回お尋ねしますが、私は、あなたそういう逃げ口上ではなしに、政府としてはどうなんだという気持ちをはっきりしてもらいたい。どうですか。
#29
○国務大臣(宮澤喜一君) もう一度お答え申し上げますが、そのつなぎに当たる部分は、政府としては政府ベースではこれは受け取るわけにまいりません。何かの事情で――これもいろいろな複雑な事情の結果にしかあり得ませんけれども――業界がつなぎの部分についてやむを得ないという結論に達するならば、政府はそれを妨げるものではない。もしそういう結論が出るのでありましたら、今度はその背景になっておりますところの期限なり何なりについて、よほどしっかり確約を先方からとっておきませんと、さらに昔のようなことになりますから、そこは政府がしなければならぬ仕事でありましょうが、このつなぎの部分については、これは業界の判断にまつ、こういうことでございます。
#30
○大矢正君 それじゃ重ねてお尋ねをいたしますが、ごく最近の新聞等の報ずるところによりますると、たとえば化繊協会、あるいは紡協の一部では、まあ例外的な措置としてごく短期の取りきめであるから、包括的な規制と思われる内容もやむを得ないのではなかろうかとの判断もある。しかし一方において、縫製加工業者をはじめとして、機屋その他俗にいわれる中小の力のないところにアメリカの制限をかぶる業界にあっては、猛烈な反対をする。日本の業界が一つになったって、最後にもう一団体になったって反対をするんだというようなことが新聞等に報じられておりますね。この事態を見てどう思いますか。そしてあなたはそういう業界を、ある意味において指導すると言っちゃ語弊がありますけれども、話し合いに乗ってやる立場のあなたとして、このどっちに一体味方をするのですか。そしてどういうような収拾をしますか、二つに割れているいまの繊維業者の関係団体の動きを。
#31
○国務大臣(宮澤喜一君) それは率直に申しまして、この際この話が全部いわば決裂した場合どのような結果になるであろうかということは、これはおそらく何人にもちょっと予想のしにくいことであります。他国の、それもことに立法府の動きでございますから、何人にも予測をしがたいところでございますから、そこはやはりそういうお互いの業界同士といいますか、従来からのつき合い等々でそういうことの判断はおそらく専門家の方がよくできるでございましょうから、その方々が、つまり業界の専門家たちがよくそこらは考えられて、いずれとも結論を出されていいのではないだろうか、非常に率直に申しますとそういう感じでございます。
#32
○大矢正君 大体私の時間もだんだん迫ってまいりましたが、私はしかしいまのところが一番大事なところだと思うので、私のあとから発言をされる各野党、あるいは与党の同僚の議員に、ひとつぜひ徹底的にこの問題は議論をしてもらいたいと思います。お願いを私からいたしたいと思うのであります。
 そこで最後に、多数国間協議ということは、これはもう原則でありますね。そこで、このことが日本以外の各国に与える影響が甚大であるし、同時にまた、それをやらない限り日本側の業界だけが損失をこうむるという過去の綿製品協定のような状況に照らして、問題がここまでまいりますれば、当然のこととして最終的な諾否、どういうまとまり方をするのかわかりませんが、そういうものがまとまる以前に、そしてそれが明らかになる前に、ほかの国との間に、一堂に会して話をするか、あるいはそれぞれ個別に打診をするかして、実質的な多国間協議を私は行なうべきものではないかと、たとえば日米間において合意に達したものを、これが合意に達しましたがあなた方もこれに従ってください、聞いてくださいといって、日米双方がそれらの国々に圧力をかけるのではなしに、合意に達する以前において、すなわちいまここわずかの期間内において、ある程度問題が明らかになってくると思うので、それを最終的に固める前に、私はその話をすべきでないと思いますが、大臣どう思いますか。
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) ものを頼んでおりますのはアメリカのほうでございますから、したがって関係のある幾つかの国、いわゆるそれらの国に対してアメリカがわが国に対したと同様の努力をいたすべきが私は当然だと思います。また、現にごらんの書きものにも、関係国との間にそういう取りきめができない限りあの紙に書いてありますことは全部無効であるということが書いてございますが、それはそれをあらわしておるものと了解しております。
#34
○大矢正君 ただいまのおことば、私はおかしいと思いますね。かりに日米両国において合意に達するとすれば、達する状況にきたとすれば、その責任はアメリカ側だけではない。日本もあるわけですね。そうでしょう。日本が突っぱねて、がんばっておれば、これはほかの国には響いていかないわけですから。それをあえてまとめるわけですから、そうすると、これはアメリカだけが各国を回って歩いて了解を得るだけではなくて、日本自身もそこで責任を負わなければならぬという立場が出てきますよ。たとえばかつて綿製品協定の取りきめをやったことによってEEC、ヨーロッパ諸国、あるいは東南アジア等から日本が非難された事実があるじゃありませんか。それを考えれば、いまあなたがおっしゃるように、これはアメリカの要求によってやることなんだから、アメリカが個別に回って歩くか、一カ所に集めて話し合いをすればいいのではないかというような、そういう内容のものではないのではないでしょうか。もし一つの合意に達する可能性ありとしますれば、その時点で日米双方が各国と話し合う、あるいは日本が各国を呼ぶなり回るなりして話し合う、この必要性は当然のこととして生まれてくるのではないでしょうか。あなたの認識と私の認識がその辺では大きく食い違いますね、はっきり申し上げて。
#35
○国務大臣(宮澤喜一君) 私はアメリカの要求だと言っているのではなくて、要請だと言っているのでございますから、要請をする側が、その関係各国に対して同じような要請をすべきものだと思うのでございます。われわれは事が成就しない限り、アメリカの要請に最終的に応ずるわけにいかないということを言っているのでございますから、要請を受けましたわが国が、また関係の国に何も要請して回る義理合いのものではない。それはアメリカがやるべきことだと私は思います。
#36
○八木一郎君 三つばかり大臣から直接伺いたいと思います。その一つは、日米交渉は大詰めにきた、今週がそのリミットであろうというような大かたの観測でありますが、肝心の保利官房長官は、いやいやまだゴールに迫っているとは考えられない、こうはっきり言明していらっしゃる。そこで長引くこの情勢を見守っている国民といたしましては、一体担当している通産省は、この見通しはどのように受けとめて処理なさろうとしているのか、率直な感想を伺いたい、それが一点です。
#37
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来から政府といたしましては誠意を持って、できるだけすみやかに解決したいということを申し上げているわけでございますが、ただいまの局面というものは、ただいまも申し上げておりましたとおり、政府の関与できないような部分が出てまいっているわけで、これは文字どおり業界がどう考えるかということにかかるわけでございます。したがってその判断を私どもとしては待っている、その判断をまあ注視しているということになるわけなので、一説には、もう最終的な段階がきたということを言われる方もございますけれども、私は業界そのものが非常に数の多い、しかも態様の異なった複雑な業界でございますので、ことに過去もう十カ月くらいこの問題では業界も大いに戦ってきておりますわけですから、そんなに簡単に結論が出るというふうには、どうも私にはいまのところ思いにくうございます。多少これは時間がかかるのではないだろうか、いずれにいたしましても。というふうに見ております。
#38
○八木一郎君 そうすると国会の内外で私どもがお目にかかって、この日米繊維問題について雑談的な話が出てくると、時間をかせぐような姿勢が政府に見えれば見えるほど、あるいは佐藤総理の国会発言などから、どうも八木さん、ニクソン・佐藤さんの間に何か話があったんじゃありませんか、ほんとうの話はどうですということが日増しに出てくるわけです。これについては私は何とも言いようがないわけですが、その問題はどのように大臣は受けとめていらっしゃるか、聞かしていただきたいと思います。
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) これはどうも総理の言われること以外に私には知識も情報もないわけでございまして、総理大臣は本院におきましてもまた衆議院におきましても、いわゆる密約というようなものはないということを何度か言明をしておられます。また同時に、佐藤・ニクソン会談で、年内のうちにも善処するというふうに先方が受け取るようなことがあったのではないかという御質問に対しまして、総理大臣は、自分はなるべく早く処理をしたいと思ってそういうことを申したので、あるいはそれがそういうふうに受け取られても無理からぬことであったかもしれない。正確なことばは忘れましたが、そのように聞こえる答弁をしておられます。これが総理大臣がいままで佐藤・ニクソン会談について、国会に説明されたすべてでございまして、それ以外のことはどうも私も存じませんし、総理大臣がそう言われるのでありますから、そのとおりだと考えておるわけでございます。
#40
○八木一郎君 当委員会は、昨年の、つまり四十四年の四月に全会一致の決議が出されております。私自身、当時の委員長でもあり、発議した責任者でもあります、それだけに、大平大臣が全会一致の決議の趣旨を体して最善を尽くす決意を表明して、国民に約束しておりますから、これは当然宮澤大臣お引き継ぎを受けられた後も同様の決意のもとに行動しておられることと信じておりますが、信頼をする佐藤さんとこの問題に触れていろいろお話をされておる大臣として、いわゆる大臣のことばで言うと本体、つまりわれわれが繊維規制は反対である、衆議院は本会議決議を持っておるし、参議院も当委員会で決議をいたして、確固たる、不動の姿勢でこれには対処してもらわないと困る。また当然そうしていただけるという期待を持っておりますから、この段階であらためて所管大臣の決意を伺い、その本体はどこまでもくずさないとは言いながら、何らかの妥協という空気がきたために、私はいわゆる本体にぼかしが入ったような気がして、やがては国会と政府の結びつき、この決議を体しての話し合いは置いてきぼりで、自由な業界の話し合いのまとまりがつけば、まあそれでいいんだといったような姿勢をとっておられるように見えるわけです。そのことが国民の決議をした立場と、政府のつなぎの上に、看過しがたいような政治課題をはらむというような心配も出てまいりまするので、念のためでありまするけれども、大平大臣の決意を引き継ぎ、そのとおり姿勢はくずさずに対応していくかどうか、また、いるのかどうか言明を得たいと思うのであります。
#41
○国務大臣(宮澤喜一君) 当委員会におかれましても、また衆議院におかれましても、昨年御決議がありまして、それは私ども十分に存じております。また、その御決議の範囲内でしか政府としてはしたがって行動ができない、それを越えるような行動は政府にはできないというふうに考えております。そう考えておりますために、先ほどのような、本体についてはとにかく、つなぎの部分については政府ベースでは受け取れないというふうなことになってまいりました。ちなみに、あの案を書きました人々から申しますと、おそらくはこのようなつなぎの部分は本体に達するための一つの便法で、本体そのものの考え方、これは両院の御決議の考え方ですが、それは認めるから、そこへいくまでのつなぎをつけてくれというのが、おそらくつなぎが出てきた理由だと思いますけれども、それはわからぬではございませんが、いかにもつなぎの部分というのは御決議の精神に私は沿っていないと考えますので、政府ベースとしてはどうもそれには乗れない、こういうふうに申しておるわけでございます。
#42
○八木一郎君 ことばの上ではよくわかるわけです。わかるわけですが、先ほど大矢委員からもお尋ねがありましたように、そこのところが簡明率直にわかれば、つまりあなたのおことばを借りれば、決議の具体的内容は、要約すると、いわゆる本体であって、一つは、被害のないところに規制なし。二つは、単独では、日米両国間で取りきめなどはすべき筋のものではない、多国間で解決しなければならぬ課題だ。三つには、なるほど貿易の自由化促進はこれは進めるべき方向としてわれわれは考慮しておる、こういうようなこと。ことばは違うかもしれませんけれども、そういうようなことが本本の内容かと思っているわけです。ところが、問題のつなぎのところは、いわゆるつなぎ問題といって例外だ、まとめるとすればこのような方法しかないであろうと、こういうふうな気持ちからまとめなければならない。何かの拘束を受けて縛られては、政府も傍観はしておれない。しかし国会の決議もあることだから、動きは反対の姿勢を崩すことはできない。しかしまとまるならばまとめてもらいたいが、その方法も、まあ出たものでは、いわゆる何とか案ではないかというふうに、どうも心にもないことが姿勢に出てきておるために、私どもはその疑念はやはりまだ解消しないわけなんですね。これはもう少し解明をして、大きく日米両国の間の高い次元に立った姿勢からこういう判断が云々というような一つの見解が背後にあって、そうして最善の道は何か、当事者間でつく話を、それはけしからぬと言うか言わぬかは、これは国会と政府の、国民と政府の約束ごとがある以上、そのあるべき私は政府の姿勢というものを期待しておる。そこがどうも、何といいますか、隔靴掻痒の思いといいますか、ぴったりしないような感がするのですが、率直なお気持ちをこの際伺っておきたいと思うのであります。
#43
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもがこの問題について考えております幾つかの基礎になる要素について申し上げる必要があると思うのでございますが、一つは総理大臣がしばしば国会で言明しておられますように、この種の問題は、日米お互いに譲り合って解決を、それもできるだけ早くしなければならないものである。自分はその精神でニクソン大統領と話をしてきた。これは国会にしばしば総理大臣が言っておられますが、この行政府の最高責任者である総理大臣の判断には、私ども行政府におります者は当然拘束される、されなければならないと思っております。それが第一点であります。
 第二点は、現在のわが国の輸出の伸び、これはアメリカに限りません、ヨーロッパでもさようでございますが、これはわが国の成長率からいえばあえて異とするに足りませんが、外国の成長率からいえば、非常に伸びが大きゅうございます。その結果、かなり相手方が脅威だと感じているというような事情がございます。これは私は長い目で見ますと、よほどわれわれが注意をしなければならないことだと考えております。これが第二の要素であります。
 第三の要素は、第二の要素ともからみますが、わが国がこれだけの貿易黒字をかせぎながら、物の自由化、資本の自由化等が、実はガットに照らしてもOECDに照らしても、はなはだ遅々としておりまして、これはしばしば非難を受けるところでございます。
 まだほかにもいろいろあろうと思いますが、これらの要素が基本になりますので、政府としてはできるだけすみやかにこの問題は解決したほうがいいと、こういうことを基本として考えております。そういうことがございますので、こんな話はもうけってこわしてしまえばいいではないかということに、なかなか私どもそういうふうに簡単に踏み切れない、もっと目先のことを申せば、その結果アメリカの立法がどうなるかというようなこともないではございませんけれども、そのようないろいろな要素がございますので、総理大臣の言われる譲る、譲るというところまでは譲ろうという精神で私どもはこの問題を考えてまいっておるわけでございます。
#44
○八木一郎君 時間がきましたから、もうこれで打ち切りますけれども、この日米妥協の到達点であるかのような風の吹き回しが、いわゆるケンドール提案ということできておるわけですね。まとめるというにはそれ以上にいい案はない。そうかといって、どうも政府も積極的にまとめよう、こういう方向に顔は向いてないわけです。私もまとめようという人に個別に二、三お会いしても、これでは国民と政府の約束ごとを無視せざるを得ないじゃないか、まとめる方法がないんだから。こういうような居直りの姿勢になる。そうすると、何か今度は日本側が被害を受けるわけですから、その間、いわゆるつなぎの期間、急速に政府の行政力をもってこの問題があってもなくてもやらなければならない。構造改善とかその他適切な近代化政策の実行について考慮しておる、用意もあると、そういう腹づもりをもって、ある時期が来たらば政府も乗り出さざるを得ないと、こういう心持ちがおありになるのかとも思えるんですけれども、その点だけ伺って私の質問は終わります。
#45
○国務大臣(宮澤喜一君) これもいろいろ考えておりますが、公の場で非常にお答えしにくい問題の一つでございます。理由は、もう御推察すぐいただけると思いますが、ただ私どもが頭を非常に悩ましておりますのは、いわゆる二次製品、縫製加工といったような部分になりますと、業者はもう非常にたくさんございますし、しかも零細であって、私ども近代化なり構造改善なりの希望をつのりましても、なかなかそうそうは簡単に出てこないほど、いわば零細と申しますか、そういう業界でございますので、どういうことをしたらば、その人たちが受けるかもしれない損害を何がしかでも政府が救えるだろうかという適当な施策というものは、なかなか見つけにくうございます。ほかのように、業界の態様が比較的一様であって、しかもそれほど零細ではないということになりますと、いろいろなことが考えられると思いますけれども、なかなかうまく相手方の態様にぱしっと合うような方策というものがなかなか考えにくい。私ども、もし事態が発展をしてまいれば、そういう可能性というものも考えなければならないと思っておりますものの、なかなか適切な道というものが見つからないというのが実は現状でございます。
#46
○矢追秀彦君 ちょっとおくれてまいりましたので、あるいは重複する点があるかと存じますが、いま非常に問題になっておりますケンドール提案というのがございますけれども、このケンドール氏の政治的立場というのですか、どういう立場で折衝されておるのか、政治的な立場をお伺いしたい。
#47
○国務大臣(宮澤喜一君) ケンドール氏の立場は貿易の自由化を推進し、かつ日米関係の友好を増進したいということを念願している一人の実業家として、全く個人的な立場でこの問題について自分のできることはしたい、こう思ってこの問題に当たってきているように見受けております。
#48
○矢追秀彦君 財界の彼は相当主要な人でありますけれども、結局日本の政府がこの繊維交渉にあたりまして、この間から予算委員会でもいろいろ答弁が出ておりますけれども、何か大事な問題になりますと、それは民間の業界同士の話し合い、こういうふうに逃げておられるような、そういう感じを受けるわけです。そういうわけでこういう質問をするわけですけれども、結局ケンドール氏もやはり米国政府とある程度のいろいろな話し合いをしてこちらへ来られておると思うのですけれども、そういう民間と民間、そうしてこちらの政府、米国政府、わりあいこちらの政府とはきわめてはっきり話をされておる。向こうのほうはどうなっているのか、また政府同士では話し合いをどのようになされておるのか、要するに民間業界同士の話し合いと、政府間同士の話し合い、この繊維交渉というのはどうあるのがほんとうの姿であるか。その点を直接やっておられる通産大臣から。
#49
○国務大臣(宮澤喜一君) 日米両政府間の交渉で申しますと、今月に入りましてわが国から先方にエードメモワールを出しましてわが国の立場を明らかにした。それについて先方からのまだ答えに接していない、両国間の折衝はそういうところでございます。そこで、推察いたしますと、ケンドール氏等が日本に来るということもあって、事実上、個人ではあるが、そういう人たちの打診をも通じて何か新しい可能性が生まれるであろうかというような、そういう期待をワシントンの少くとも一部では持っておったのではないだろうか。ただ、そこで非常に私どもにしかとわかりかねますのは、伝えられましたような案が、これでアメリカ政府としてはあの案を事実上支持するというような立場にあるかといいますと、どうもそうではないようであります。わが国の業界でもあの案にはいろいろ反發がございますが、アメリカの業界ないし議会筋の一部は、もっと強くあの案に反發しているようでございますが、したがって、ああいう流布された案というのは、一つのぼんやりした石として打たれておって、これを中心に関係者がどの程度歩み寄ってくれるかというような性質のものではないだろうかと、こう思って見ております。
#50
○矢追秀彦君 いまのお話だと、もう一つケンドールというものの立場もはっきりするようなしないような感じを受けます。いまのケンドール案に対する米側のほうの考え方にも反撥がある、日本の業界にも反撥がある、そうなると、結局現在の繊維交渉の現状、またあり方というのは、何か非常にあいまいとしているといいますか、ちょっとよくわからないといいますか、われわれ国民の目から見まして非常にそういう感をいまの答弁で非常に深くするわけです。したがって、エードメモワールが出されて返事がこない。政府の姿勢をもっと強くしたほうがいいのか、それともいまのような交渉をこのままやっていって何とか線が出るのか、その点はいかがですか。
#51
○国務大臣(宮澤喜一君) 非常にあいまいとした状態ではないかと言われますのは、まさにそのとおりでございます。おそらくわが国が出しましたエードメモワールに対して、米国側もにわかにはどうも賛成ができない、むしろ腹の中ではどうも賛成でないと思っているのではないかと思いますが、しかしそういうことになれば、これはもういわばそれで話はおしまい。いわば決裂のような状態にならざるを得ません。で、それを回避しようという努力の一端が、いまいろいろな形でなされておると、こういうふうに考えていただきましたらいいのではないかと思います。
#52
○矢追秀彦君 一年間暫定包括規制という
  〔委員長退席、理事川上為治君着席〕
話も出ておりますけれども、かりにそういう線で出る場合、日本の大手それから中小に分けまして、たとえば大手ならある程度これくらいならのむけれども中小が承知しないとか、その辺の情勢分析はどうでしょうか、仮定になりますが。
#53
○国務大臣(宮澤喜一君) これは全く私どもに実はわかりません。いろいろ業界の中でも態様が異なりますし、大小もございますので、おのおの利害関係が一緒でないということはわかりますけれども、それがどのようにどういう段階で議論されておるのか、私どもに実ははっきり把握ができないのでございます。
#54
○矢追秀彦君 いま把握ができないと言われましたけれども、かなり業界のいろんな大会も行なわれていますし、代表者ともお会いになっていると思いますので、やはりある程度のことはわかってしかるべきじゃないかと思うんですが、その点はおわかりにならないとおっしゃるのでやむを得ませんけれども。
 次に、これも仮定の問題になりますけれども、かりに、どういう線で解決がなされるか、ある程度線が出た場合ですね、二国体、要するにアメリカと日本の間は、この繊維問題については協定という線でいかれるのか、あるいは覚え書きという線でいかれるのか、大体どっちの方向をお考えになっておりますか。
#55
○国務大臣(宮澤喜一君) これは実は外務省のほうのそのほうの専門家でありませんと、私にちょっとわからないんでございますけれども、少なくとも第一条何々、第二条何々といったような形のものではないというふうに私は考えておるんでございます。ただこれは、そのほうの専門家でありませんと、ちょっと正確なことを申し上げられません。
#56
○矢追秀彦君 特にこの繊維の問題で日本に対して非常にやかましく言っておるのは韓国だと思うんですけれども、やはり日本がここでへたなことをやれば韓国は相当困る、そういうことを聞かされておりますけれども、その問題はいかがですか。
#57
○国務大臣(宮澤喜一君) それは韓国にいたしましても台湾にいたしましても、繊維の輸出のウエートはわが国よりはるかに大きいと思われますし、またアメリカが問題にしておりますような品目は、それらの国が第一の輸出国であるものが多うございますので、それはわが国とは比べものにならない打撃を受けることになるのではないだろうかということを心配しております。
#58
○矢追秀彦君 最後に一問だけで終わりますけれども、かりにどういう形で落ちつくか、どっちみちいまのような状態でそのままおさまらないことは事実だと思います。その場合、先ほどからも出ておりました、特に中小の業界に対して近代化とかあるいは構造改善という問題もありますけれども、その問題もさることながら、実際製品をほかの諸国へ、いわゆる輸出という面で、たとえばアメリカで減った分を他の地域で
   〔理事川上為治君退席、委員長着席〕
補うということは可能なのか、またそれの推進に際して政府は何らかの手を考えておられるのか、あるいは期間が限定されますから、その間はたとえ積んでおいても、またその後アメリカへでも出せると、そういうふうな自信がおありなのか。その辺の、企業の体質改善ではなくて、輸出という問題についてどのような手を打とうとされておるのか、その辺をお伺いいたします。
#59
○政府委員(三宅幸夫君) 他の地域にうまく転換できるケースがありましたら、できるだけ御援助いたしたいと思いますが、従来衣料品等につきましては対米依存率が非常に高うございますので、うまく転換できるかどうかいまのところまだそういう相談にも入っておりません。
#60
○瓜生清君 さっきから大臣の答弁を聞いておりますと、現段階では、業者同士の話し合いであって、政府がほとんどそれにタッチしてないような印象を受けるお答えですが、実際そうなのかどうかお答え願いたいと思います。
#61
○国務大臣(宮澤喜一君) 公の立場ではタッチいたしておりません。なお、現在までのところ、個人的ないわゆるプライベートな立場でもまだタッチをいたしておりません。
#62
○瓜生清君 それからもう一つは、この問題を日米間の互譲の精神で解決しなければならないということをしきりにおっしゃるわけですが、そもそも発端はこれはアメリカが悪いんです。それの被害をこうむるのは日本であって、なぜ譲らなければならないのか。またそうすることによってどういう事態が――かりに決裂するというようなことがあった場合に……。その点ひとつお聞かせ願いたいんです。
#63
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は私自身は互譲ということばを使ったことはございませんで、そのことばは総理大臣がしばしば答弁に使っておられるわけでございます。私が思いますのに、日米間は長いことの友好関係であるし、これからもまたそうでなければならないので、お互いにそのときどきで譲ったり譲られたり、こういう間柄ではないかと、こういう趣旨を言っておられるのだろうと、私はあの答弁を伺いながら推測をしているのでございます。
#64
○瓜生清君 あとのほう。
#65
○国務大臣(宮澤喜一君) それでございますから、この際は、まあ理屈は理屈、筋道は立てなければならないけれども、しかしその範囲では譲ったらどうだということを総理大臣は答弁で示唆しておられるのではないかと思います。
#66
○瓜生清君 たしか昨日だったと思いますが、帝人の大屋社長とお会いになったと思うのです。この繊維の内容はなかなか言えないでしょうから、問題が出たのかどうかですね、お聞かせ願いたいと思います。
#67
○国務大臣(宮澤喜一君) これは出ませんでしたた。
#68
○瓜生清君 それからもう一つお聞きしたいのは、何か新聞報道が間違っておるのかどうか私はわかりませんが、少なくともテレビとかラジオとかあるいは新聞とか、そういうものから受ける感じでは、業界とは密接な――公的、私的は別にしまして――接触を保っておられると思いますが、もしも万一こういうふうな問題が一時的にせよ起こるとすれば、その被害を最も強く受けるのは私は繊維産業に働いておる労働者だと思うのです。ところが、そういうふうな働いておる人たちの意見というものがどうもいままで聞かれたようなためしがない。その点について、今後どういうふうな姿勢でそういった繊維産業に働いておる人たちの意見を吸収される御意図があるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
#69
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう段階にかりになるといたしますと、私ども当然業界のいろいろな態様の経営者の方々からも影響等々を聞く必要があると思うのでございますが、その際には、むろん雇用とか賃金とか労働時間とかというものについての影響、これは当然経営者を通じて聞くことはもう当然のことだと思います。なおそのほかに、もしその結果非常に深刻な問題があるということであれば、また直接にもそういう方々からのお話も伺わなければならない、こう考えております。
#70
○瓜生清君 最後の質問ですが、非常に荒っぽい議論で、この間の代表質問でもちょっと触れたのですが、むしろ逆に、この話をぶちこわしてアメリカが立法措置を講ずるのなら講じさしたらどうか。そうすればアメリカ自体がそういう法案を通すかどうかということは別としまして、ガットの精神に反しておるということを世界じゅうに、何といいますか、喧伝することになるわけですから、そういう議論に対してはどういうお考えですか。
#71
○国務大臣(宮澤喜一君) ここでこれにお答えいたしますことは、すぐに先方にも公の発言として伝わることを覚悟しなければなりませんので、非常にお答えしにくうございます。しにくうございますが、私は、アメリカがそういう立法をするということは賢明なことでもないし、また適当なことでもない。よその国の立法府のすることにかれこれ申したくはございませんが、そう思います。
 なお、ただいま言われましたその結果は、明らかにガット違反であるから世界各国の非難を浴びるであろうと言われました。私はそのとおりと思いますが、さてそのあとどうなるかということを考えてみますと、そのあとはおそらく従来自由貿易主義の旗頭でありましたアメリカが旗を振ることをやめるわけでございますから、かりにわが国がかわってその旗を振るか、そこまで覚悟があればまた別でございますけれども、せっかく自由貿易に動いてきておったこの二十年近い世界の潮の流れというものは変わらざるを得ないだろう、そのことは全部にとって私は不幸ではないかというふうに思います。
#72
○須藤五郎君 大臣は、昨年ですか、四月に国会で決議をされましたね、この繊維問題のとき。あの決議をあくまでも尊重されるのかどうか。
#73
○国務大臣(宮澤喜一君) そうしなければならないと思っております。
#74
○須藤五郎君 そうすると、この間、覚え書きをアメリカに送られたと言っているのですが、その覚え書きをここへ資料として政府の手から私たちは受け取りたいのですが、その資料出してください。
#75
○国務大臣(宮澤喜一君) それはいつぞやもそのような意味合いのお尋ねがございまして、私どもは、それに対して外交上の慣例として、両国が合意しない限りエードメモワールというものは公にいたすべきものでないということでございますので、私どもはそのルールに従わなければならないということを申し上げました。その結果非常に当委員会にいろいろお手数をおかけしたのでありますが、そのことは私はいまもそのとおり考えますので、残念でございますが、資料としてお目にかけるわけにはまいらないと考えます。
#76
○須藤五郎君 その問題につきまして、この間大矢議員が覚え書きを一部始終ずっと読み上げて、そして大臣の確認をとったと思うんですが、そうすると大臣は大矢議員が読まれた覚え書き、あれにはあなたのほうからアメリカに渡した覚え書きと一分の違いもないということを御確認なったということなんですか、どうなんですか。
#77
○国務大臣(宮澤喜一君) それは英文、和文等々いろいろなことがございますので、一分のとおっしゃいますと正確にはそう申し上げられないかもしれませんが、実体はもうあのとき大矢委員の言われましたことで覚え書きの内容は尽くしております。
#78
○須藤五郎君 そこまであなた公の場でおっしゃるなら、もう覚え書きが出ていると同じことなんですから、この際、進んで政府が責任ある覚え書きをここに出していただきたいのですよ、私たちはその覚え書きをもとにしてものを判断していかなければならぬわけですから。ですから、政府が、政府の責任によってこの場に覚え書きをぜひとも出していただきたい。それでないと、私たち非常に審議に困る面が出てまいります。
#79
○国務大臣(宮澤喜一君) それは国会の御審議というお立場からであれば私はごもっともなお話だとは思いますけれども、他方で、私ども行政府としては外交上のルールをまた守らなければならないという義務を課せられておりますので、覚え書きを政府の責任においてお目にかけるということは、やはり私はそのルールを破ることになるというふうに考えます。
#80
○須藤五郎君 そうすると、その覚え書きを、そのものを出すのは外国に対してルールに反するのであって、その覚え書きの内容を確認することはルールに反しないという、こういう御理解なんですか。そこは私はどうもおかしいですね。もうそれを確認するならば、その実物をここへ出されたほうが間違いが起こらないです、将来に。私たちはそれをもとにして論議をしようとしているのですから、その実物がないということは困るのですね。だから大矢さんの言ったことは間違いがありませんというなら、その間違いない覚え書きをあなたのほうからここへ出されたらどうですか。それが出せないということはどうもおかしいですよ。それは間違いありませんということを言いながら、その文書を出せないということは、一体どういうことなんですか。
#81
○国務大臣(宮澤喜一君) それは御承知のような経緯でございまして、大矢委員の言われましたことは、何かの理由でこの覚え書きの内容というものはアメリカの議会筋には渡っておるではないか、しかりとすればアメリカの議会は議論をするのに基づく資料があるのにわが国の国会に同じような資料がないのは適当でないではないか、こういうお尋ねであったのでございます。私はそれは非常にごもっともなお立場だと思いました。そこで、ただアメリカがどういう形で議会のほうにそういう資料を漏らしましたかということは、これはまあよその国のことでございますからせんさくはいたしませんが、両国が合意してそういうことをしたのではないことは確かでございます。でありますから、何かのミスだと考えるよりほかございませんが、先方があやまちによってそういうことをしたからといって、われわれが正面から今度はルールを破るというようなことでは、これはルールを守る精神でございませんから、私どもは、かりに先方にあやまちがあっても、われわれはそのルールを破るわけにはまいりません。しかし、国会が平等な立場で審議をすべきではないかと言われます大矢委員の御主張はごもっともでありますから、私どもはそのルールを破らないという形において、実体的に両国の間にかわされております議論について確認をいたしたわけでございます。
#82
○須藤五郎君 そういう中途半端にしておきますと、あとから問題の起こったときに、私たちの覚え書きはそれとは違っておりますとかなんとか言って逃げ道をつくられるおそれがあるわけですよ。だから私たちはこれを論議する場合に、政府の資料としてこれでございますというやつを出していただいて、それをもとにして私は論議をしないと、その論議自体に何だか権威がなくなってしまうような感じがするのですね。だから、政府は、むしろそれを進んでお出しになったほうがよいのではないか。何も出さないで論議さしておいて、そのときはこう申しましたけれどもそれは実体とは違うのですというような、そういうことをあとであなたがおっしゃられたら、われわれの論議というのはむだになってしまうわけですよ。だから私は、そういうことを重ねて要求しておるのですよ。
#83
○国務大臣(宮澤喜一君) この点はたいへん当委会にもお手数をかけまして、大矢委員が詳しく新聞に報道されましたものを速記録にお読み込みになりまして、私が実体それに間違いございませんという確認を同じく申し上げて速記録にそれは登載されておりますので、後日になって、それは違っておったというようなことを申し上げることはございません。
#84
○須藤五郎君 いま瓜生さんが質問なすった点、私も問題があると思って質問の一点に言っておるわけですが、日本がアメリカの要求をいれなければ、立法措置をして報復的な立法をするぞといっておどかしをかけておるわけですね。われわれ日本側はアメリカのこの威嚇に屈すべきではないと思うのですよ。立法するならしろと、そういうき然たる態度を私はとるべきだと。そうして日本はあくまでも原則を押し通していくべきだと私は思うのですが、立法された場合に、日本にとってどういうマイナスの面が起こってくるのか。それでその立法をもしもしてきたら、日本政府はどういうことをやろうと考えておるのか、その点を私は伺っておかないといけないと思うのですね。
#85
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は一向に立法するぞということでおどされているという感じはいたしません。またおどしに乗るつもりもございません。ただ、その話とは別に、立法に進む危険性は相当にあると見ております。その場合にどうなるかということでございますけれども、これはなかなかよその国のことでもございますし、わかりかねますが、おそらくひとつそういう立法ができようとすれば、これに便乗をしようとするものがたくさんおりますから、相当たくさんの品目を持った立法になる危険性が強いと思います。そうしてそういう立法が成立をかりにいたしましたときに大統領が拒否権を使えるか使えないかという問題がございます。これについても現在の環境からいたしますと、私は何ともいずれとも判断しがたいと見ております。そういたしますと、かりにそういう法律が成立をしたということになりますと、むろんこれは世界各国それに対して当然非難をいたしますが、その非難はおそらく報復の形であらわれるだろうと思います。お互いにそういう報復を繰り返していきますと、世界の自由貿易というものはもう目に見えて縮小してしまう、そういう結果になるであろうと思いますが、しかし、これは全く仮定のことでありますし、立法する、すると言って、私は一向にそれでおどかされているというようなことはございません。
#86
○須藤五郎君 あなた、さっき、昨年国会でやった決議の精神をあくまでも守っていくのだということを述べられたでしょう。そうしたらあくまでも原則を貫いて、自主規制や包括規制に応じないというこの態度は、私はくずすべきじゃないと思うのですよ。その原則を押し通した結果、アメリカ側は立法措置で報復的な手段に出てくるなら、私たちはわれわれだってやはり自主的に一つの考えを打ち出したらよいじゃないですか。何もアメリカが立法措置したらこうなるだろうといって、日本の国会の決議よりもアメリカのほうの考え方を優先的にそんたくしてものの判断をしていくということは、それはおかしいじゃないですか。あくまでも私は原則を押し通し、日本の国会の決議を尊重していくのがあなたの立場ではなかろうかと思うのですよ。
#87
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま立法をしたらどうなるかというお尋ねがありましたから、私はこうではないかと思いますと申し上げただけのことであります。なお、そういう立法がなされることは私は非常に不幸なことだと思いますし、これはただ日米だけのことでない、世界全体の自由貿易の潮の流れというものが逆転をするということは、これはだれにとっても不幸なことだ、ことに日本にとっては不幸なことだと思いますから、そういう事態は避けてもらいたいものだと考えております。もちろん国会の御決議を守らなければならないと考えておりますことは、先ほど申し上げましたとおりであります。
#88
○委員長(村上春藏君) 五分間休憩いたします。
   午後三月四十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時二十九分開会
#89
○委員長(村上春藏君) これより委員会を再開いたします。
 山本君から発言を求められております。これを許します。山本君。
#90
○山本敬三郎君 私は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党共同提案をもって、米国の繊維品輸入制限に関する決議案を提案いたします。案文を朗読いたします。
   米国の繊維品輸入制限に関する決議(案)
  米国の求めている毛・化合繊製品の輸出自主規制は、明らかにガットの精神に違反するものであり、かかる制限は、目下構造改善を推進しつつある繊維工業に深刻な打撃を与えるのみならず、中小繊維業者にとっては死活の問題であって、これを容認できないことは昨年四月の決議で表明した通りである。
  政府は、繊維の輸入制限問題についてはあくまでガットの精神に基づいて解決すべきであるとの基本的立場を堅持し、次の諸点を厳守すべきである。
 一、米国繊維産業の被害の立証を前提とすること。
 一、輸出規制は業界の納得をえた上で、重大な被害又はその恐れのある品目に限ることとし、包括規制はあくまでさけること
 一、関係多数国の協議で問題の解決をはかること。
  右決議する。
#91
○委員長(村上春藏君) それではおはかりいたします。
 米国の繊維品輸入制限に関する決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#92
○委員長(村上春藏君) 挙手多数と認めます。
 よって本決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、宮澤通産大臣から発言を求められております。これを許します。宮澤通産大臣。
#93
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御決議の御趣旨を拝承いたしました。政府といたしましては、この御趣旨に沿いまして善処いたします。
    ―――――――――――――
#94
○委員長(村上春藏君) 次に、輸出中小企業製品統一商標法案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次発言を願います。
#95
○小柳勇君 大臣に三点質問いたします。
 第一点は、先般の参考人の意見にもございました、また各地域からも陳情があがっておりますが、統一ブランドをつくりまして、品物を高級化するためには、まず国内の中小企業を育成することが大事でありますが、それには現在の中小企業近代化資金の援助以外に、統一ブランドをつくるための資金援助が必要であるということが再三この委員会で問題になりました。したがって、中小企業近代化資金など現在の制度のほかに、統一ブランド法を適用するに該当する企業が資金援助など要請した場合に、これを援助する方策を今後考えてもらいたいと思いますが、いかがでございましょう。
#96
○国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしましては、この法案が成立をいたしましたならば、法案の目的に従いましてできるだけの援助をしてまいりたいと考えております。特定中小企業構造改善貸し付けあるいは特定中小企業輸出振興貸し付け等々でこの法案の目的とするところを推進してまいりたいと考えております。
#97
○小柳勇君 第二点は、外国の日本の商品に対する評価の問題でありますが、外務省で本年度の予算二百五十万円をかけまして、西欧数カ国の市場調査をして、日本の品物の評価を定めたいと言っております。通産省としても統一ブランドをつくって、これから日本の品物の高級化と、それから市場の拡大と、それから声価を高からしめなければならぬと思いますが、調査の費用など、調査機構などが通産省自体としては整備してないように思うんです。したがって、ジェトロなどと協力をして、日本の品物が現在海外の市場でどのくらいの評価を得ておるか、地位を持っておるかということを、まず調査を確実にして、その評価の上に立ってPRをする必要があろうと思うので、調査機構の整備なり、あるいはこれに対する予算の裏づけなりをしてもらいたいと思いますが、大臣の見解を聞いておきたい。
#98
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来その点につきましては、ジェトロが非常に実績をあげてきたと考えておりますので、私どもとしては二元的なものにいたしますよりは、ジェトロの活動を強化していきたいと考えております。また、ただいま御審議願っております予算におきましても、そのようなことをお願いいたしておるわけでございます。当面、人的並びに財政的な面からジェトロの活動を強化することによってその目的を達していきたいと考えます。
#99
○小柳勇君 最後の質問は、この統一ブランドができまして、国内の品物がよくならなければなりませんが、当面数業種がこの対象になっているようでございますが、この法律ができましたのを機会に、他の業種もこぞって統一ブランドをつくって、海外における市場を拡大するように今後国内の軽工業に対する通産省当局の指導、中小企業庁の指導を要望するのでありますが、この法案が通りましたあとのPR体制あるいは指導体制、軽工事育成体制について大臣の見解をお聞きして私の質問を終わります。
#100
○国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねの御趣旨には私もしごく同感でございます。そこで、一度こういう統一ブランドができまして、かりにその名前にそぐわないようなものが出ましたのでは、かえってそのイメージをこわすことになりますので、しっかりした製品のできる体制に持っていきまして、統一ブランドをつける商品が多くなるということが望ましいと思います。ただいま御指摘になりましたように構造改善等々近代化促進を進めてまいりまして、なるべく統一ブランドの名のもとに、信用ある品物が多く出る、その範囲が広がるように私どもは努力を続けてまいりたいと思います。
#101
○委員長(村上春藏君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#102
○委員長(村上春藏君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますから、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#103
○委員長(村上春藏君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決に入ります。
 輸出中小企業製品統一商標法案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#104
○委員長(村上春藏君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#105
○委員長(村上春藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#106
○委員長(村上春藏君) 速記を起こして。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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