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1947/12/01 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第9号
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1947/12/01 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 文化委員会 第9号

#1
第001回国会 文化委員会 第9号
  付託事件
○ローマ字つづりに関する陳情(第五
 十七号)
○群馬縣勢多郡敷島村の古跡発掘促進
 に関する陳情(第五十八号)
○物資愛護思想普及運動に関する陳情
 (第百一号)
○ローマ字つづりに関する請願(第百
 八十七号)
○天草島各種観光施設促進に関する請
 願(第二百二十八号)
○観光審議会設置に関する請願(第二
 百六十六号)
○神奈川縣下の観光施設整備に関する
 陳情(第三百七十二号)
○観光國策の樹立に関する請願(第三
 百十四号)
○映写技術者免許制度改革に関する請
 願(第三百二十一号)
○放送事業に関する請願(第三百三十
 一号)
○映写技術者免許制度改革に関する請
 願(第三百四十九号)
○著作権法の改正に関する陳情(第四
 百七十九号)
○映写技術者免許制度改革に関する請
 願(第三百九十四号)
○映写技術者免許制度改革に関する請
 願(第四百十二号)
○新聞用紙の現行割当基準改正に関す
 る請願(第四百二十六号)
○皇居の名称改正に関する請願(第四
 百三十一号)
○演能会観覧税免除に関する請願(第
 四百三十七号)
○観光事業上ホテル事業法の判定等に
 関する陳情(第五百四十号)
○映画入場税軽減に関する請願(第四
 百五十六号)
○フイルム物品税撤廃に関する請願
 (第四百五十七号)
○映画産業の取扱い業種順位引上げに
 関する請願(第四百五十八号)
○官設展覧会に書を加うることに関す
 る請願(第四百六十二号)
○映画産業の取扱い業種順位引上げに
 関する請願(第四百七十五号)
○フイルム物品税の撤廃に関する請願
 (第四百七十七号)
○平和記念祭日を設定することに関す
 る陳情(第五百六十二号)
○大学新聞用紙割当に関する請願(第
 五百十号)
○象頭山を史蹟天然記念物保存法によ
 り指定することに関する請願(第五
 百九十五号)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十二月一日(月曜日)
   午後一時四十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○ローマ字つづりに関する請願(第百
 八十七号)
○ローマ字つづりに関する陳情(第五
 十七号)
  ―――――――――――――
#2
○理事(金子洋文君) それでは只今から文化委員会を開きます。初めにこの前議題となりましたローマ字つづりに関する請願及び陳情に対して質疑を続行いたしたいと存じます。それについて各委員の御意見を一通り申上げて森戸文部大臣の御意見をお聽きしたいと思います。
#3
○來馬琢道君 先頃中央大学講師の宮崎君から請願書が出まして、委員外議員として松村眞一郎氏が來られて説明されたことでありますが、松村氏の述べられたことも、この宮崎靜二氏の請願せられたことも、我々が普段言つておりますヘボン式ローマ字を日本のローマ字にされることを望むという大体の趣旨でございます。從來我々は英語から入りましたヘボン式ローマ字を使つておりまして、これは明治五、六年頃からすでに日本のローマ字として用いられ我々はこれを標準式ローマ字と言つておるものでありますが、ローマ字ひろめ会という会がありまして、或は西園寺公望公爵が会長となつたこともあり、鎌田慶應義塾大学総長がなつたこともありまして、随分古くから運動をやつておりまして、大阪では櫻根孝之進という熱心なる医学博士でありますが、この方がローマ字ひろめ会の、ローマ字の普及に心配しておられました。それですべてそれはヘボン式で、即ち英國流の発音で書かれたのであります。尤も日本のローマ字式の文書はポルトガル辺りから参りましたものもあり、キリスト教の書物などをローマ字で書いたものもあり、僅かばかりの文書には英語以外のものが残つていることも承知しておりますが、大体において、我が國においては英國式ローマ字ということになつておりました。その後田中館博士、田丸卓郎博士などが日本式ローマ字という工夫をされました。田中館博士のことにつきましては私共多少知つておりますが、どうもこのドイツ語やフランス語等の発音によつて見るというと、英國式だけではどうもいけない。例えば友人の神保という博士がヨーロッパに行つたときに、そのジンボをJimb。と書いたところが、そのJimb。というのをインボと読まれた。それじや困るといつて又Zimb。と変更したところが、今度はチンボと読まれたというようなことで、ローマ字がよその國へ行くと必ずしも英國式では通らないというようなことで、これは日本は日本流のローマ字を決めるがいい。日本には丁度五十音の図があるから、ア行からワ行までのあの図によつて五十並べたらよかろう。そうすればタチツテトのところのチという字をtiにして、從來使つておるようにchiにしない。それからヅという字もZuにしてしまいまして、Dsuというような字は使わないということになれば、この方が簡單でいいという訳で、五十音図にならつてローマ字の一つのテーブルを作つたんであります。一体日本の五十音図というものは、今ここで説明するまでもありませんが、佛教が持つて來ましたものでありまして、サンスクリットから出たものであります。あの方にはア、アーとか、イ、イーとかいうような文字が並べてありますが、それを五十にすつかり作りましたのが日本でやつたものであります。併しヤイユエヨのところにはイとエが二つあり、又ワヰウヱヲのところに來まして又ヰとヱがあります。これはアイウエオ、即ちア行の音と同じものがそこにある訳でありまして、尤もワヰウヱヲの方はwi、weと言うことができるのでありますけれども、ヤイユエヨのイとエに至りましては全く同じものが五十音図の中にあるというようなことでありまして、その外にまだンというものがないというような欠点もあります。むしろこれは我々が五十音図をもつと整理して行くべきものであると思つておるのでありますが、かような訳で、この日本式のローマ字というものができましてから大分政治的にこれが主張されまして、文部省におきましては、このローマ字を日本式にすべきか、ヘボン式にすべきかということで始終研究されておつたようであります。櫻井錠二博士が大分このヘボン式ローマ字を主張せられておつたはずでありますが、大体文部省におきましては多年の研究の結果、日本式ローマ字を捨てることもできず、さりとてヘボン式を捨てることもできずというような訳で、稍々折衷せられたものができたのが、即ち訓令式と我々が言つておりますところの、昭和十二年九月十二日の日本式ローマ字を主とせるところの、只今小学校及び中学校等で使つておりますところのローマ字でありますが、あれは誠に私共が使いにくいものでありまして、例えばTiをチと読ませることなどは……、これは一番近い例で申しますると、秩父宮樣のお名前になぞられたものかどうか知りませんけれども、曾つて日本郵船会社が秩父丸という船を持つておりました。CHICHIBU丸と書きました船であつたのでありますが、文部省の訓令式ができましてからTITIBU丸となつたのであります。即ちTITIBU丸といたしたためにアメリカへ行きましたところがタイタイブ丸と読まれまして、それを直そうと思つても、もうチチブという発音ができないようなことで皆困りました。遂に郵船会社の方では面倒なことであつたから、秩父丸という名前を改めて鎌倉丸にしたという歴史があります。かようなことで日本式ローマ字を主とせるところの文部省の訓令によるローマ字、即ち我々が言つておる訓令式ローマ字というものはいろいろ不便なことがある。殊にアメリカから進駐軍が多く参りまして、更に英國軍も参つておりますようなことであります。東京中、仮りに東京中だけのことを申しましてもすでに至る所にヘボン式が用いられておりまして、何々町という場合でも CHO が使つてありますし、昔は逗子という、あの駅の名前は DZUSHI、逗子と本当に親初に発言しておりましたけれども、ZUSHIでは本当の音が出て來ないのであります。かくの如くにしてすでに英文式のローマ字がかように日本中に氾濫しておる今日であります。而してその子供たちは学校に入りますというとCHOが使えなくてTIOを使うとか、或いは「ふ」という字をFUを使わないで HU を使うというようなことで、和英の字引を引くにいたしましても又はローマ字を綴つて見るにいたしましても実に中等学校程度の子供達は非常な苦しみを感じております。
#4
○理事(金子洋文君) 來馬君にちよつと申上げますが速記がすぐ帰らなければいけないそうですから、大臣の答弁を是非速記に残したいと思いますので、簡單に……。
#5
○來馬琢道君 そうですか。どうかこのようなことで苦しんでおりますから私はむしろこの際ヘボン式に統一されることを希望したいと思うのでありますが、それは宮崎さんたちのやはり希望でございます。この点につきまして文部当局の御答弁を伺いたいと思うております。
#6
○松野喜内君 委員長ちよつと一言……
#7
○理事(金子洋文君) 速記記がもう十分ということでありますので、大臣の御答弁が載らないということになりますので、恐れ入りますが……。
#8
○國務大臣(森戸辰男君) 只今來馬委員からローマ字の綴り方について、今日行われておりまする訓令式よりもヘボン式の方が妥当ではないかという御質問でありましたが、この点につきまして文部省といたしましては昨年來十分考慮いたしておりまして、実は訓令式を公式なものとして、その他のものを退けておるというのではないのでありまして、現在行われておりまする訓令式と、日本式と、ヘボン式というものはそれぞれの形で妥当しておることを否定しておるわけではないのでありまして、後に申しまするように、ローマ字教育会で差当り三つ学校で使うというわけにはいかんから、訓令式を使うということになつておりますけれども、これも差当りの本年度に限つてのことでありましてそれについては更に愼重な研究の上にこれを決めなければならんというふうに考えておるのであります。それで、從つてこれがためにはローマ字調査委員会を設置するというふうに実は本年度初めから考えておつたのでありますが、いろいろな事情でその段取に行きませんでしたけれども、諸般の準備が整いましたので、至急にこの委員会を設置しまして、この問題を調査研究して頂きまして、その基礎の上にローマ字の綴りの問題を決定して行きたいと存じておるのであります。
 次に何故こういう調査委員会を設けるまでに至りました理由については、すでにお分りと思うのでありますが、第一には國語のローマ字綴の方には現在各種の制式が行われておりまして、その主なものは御承知のようにヘボン式、日本式、訓令式でありますが、これらの制式にはそれぞれ学術的な根拠があり、且つ社会的にそれぞれこれを支持する有力な背景を持つておるのであります。そうしてローマ字の綴り方については國家としても速やかに統一した案を得ることが望ましく且つ必要なのであります。從つてこれを統一するために、権威のある公正な委員会において、学術上、教育上、実際生活上のあらゆる觀点から十分な檢討が加えられた後、初めて決定せらるべきものであると考えておるのであります。さきに実は臨時ローマ字訓査会におきまして、昭和五年から昭和十二年までの長い期間に亘つて國語のローマ字綴りが審議せられ、その結果昭和十二年九月二十一日附内閣訓令第三号によつて発表せられ、右制式に統一されたのであります。これがいわゆる訓令式でありまして、これは日本式とヘボン式との調和妥協を図つたとも申されるものでありましたが、現在ローマ字によつて國語を書き表わす意義も必要もその当時とは非常に異なる状態にありますので、改めてこの問題を檢討いたす必要が生じて來ておることは皆樣の御意見からも十分窺われるのであります。一面アメリカ教育使節團もその報告の中で、いかなる制式のローマ字を採用するかは、日本の学者、教育家、政治家から成る委員会によつて定めらるべきことを勧告しておるのであります。更にさきにローマ字教育を行うためこの問題を協議するために設けられた只今申しましたローマ字教育協議会も、文部大臣に提出した意見の中に、ローマ字の綴り方については適当な機関を設けて、その改善を図られたいと述べておるのでありまして、訓令式を学校で教えるということは、差当り当座の問題でありまして、根本的にはもつと十分な研究調査の上、妥当なローマ字を採用すべきことを建議いたしておるわけであります。かようにしてローマ字による國語の書き表わし方を統一するためには、從來論議されていたように、單に日本語の各音列の綴り方を元とするだけでは十分でなく、これに関係するあらゆる問題を解決しようとする研究が必要でありまして、これからについて協議、調査、審議をいたしまするためには、各方面の権威者を集めた委員会が設立されることが必要なわけでありまして、さきにお話いたしましたように、政府は今年初めからこの必要を痛感いたしまして、かような委員会を設置いたしまするように、すでにその予算も得られておるのでありましたけれども、諸種の事情のためにその段取に至らなかつたのでありまするが、併し最近いよいよかような方向に発足し得る事態に到達したのであります。そこで、それではこの調査委員会はどういうふうなものであるかと言いますと、これには官制を設けまして委員会は文部大臣の監督に属して、その諮問に應じ、ローマ字による國語の書き表わし方に関する事項を調査審議することを任務といたすので、委員は、いわゆるローマ字研究専門家だけでなく、廣く学者、教育家、藝術家、政治家、報道関係などの中から、適当な方を学界、團体から選定して頂いて、これを委嘱するという形を採りたいと思つておるのであります。即ちこの委員会の委員は、文部大臣が直接に任命するのでなくて、この委員会の構成におきましても、委員の任命におきましても、その運営におきましても、極めて國民生活と密接な関係のあるローマ字の綴りということに十分な考慮をいたしまして、できるだけ民主的な方法によらなければならんと存じておるのであります。從つて委員会の構成並びに委員の選定という点においても、十分民意を尊重いたすという建前に立ちたいと思つておりまして、從つてこういう委員を選びまするにも、委員を選ぶ一つの基準を定めるということにいたして、勝手な者を当局者が任意に選ぶというようなことは避けたいと存じておるのであります。例えば一つの基準は、ローマ字論者を選ぶことは当然でありまして、その中には訓令式即ち日本式、標準式即ちヘボン式というような各方面の者が考慮に入れられまするし、又次には國語改良運動家という者が考えられ、更に言語関係の学者というものも当然参加して頂かなければならず、又科学者といたしましては、人文科学、自然科学の二つの部門からの参加が必要と思われますし、教育関係、作家、政界、実業界、官界、報道関係者、その中には出版、新聞、雜誌、放送等を含めて、これらの各界から委員に出て頂くことが、この委員会を民主的にして権威あらしめるものとするであろうと考えておるのであります。而もこれらの中から政府が、或いは文部大臣が、勝手に選ぶのではなくして、それはそれぞれ選挙母体に推薦して頂くという形を採りたいと思つておるのであります。例えばローマ字論者の陣営から考えれば、日本ローマ字学会、或いはローマ字運動文部、ローマ字ひろめ会という三つの團体から適当な方を御推薦願う、國語改良運動では、國民の國語運動連盟、言語関係では、日本言語学会、國語学会、語学教育研究所、フランス文学会等のごとき、又科学者では、人文科学委員会、自然科学委員会の会、教育関係では、教育刷新委員会、教育研究所、中央教育研究所、学校からは日教組というような、こういう選挙母体を定めまして、そうしてその母体から委員を選挙して頂く。こういう方法を以てこの委員会を構成いたしたい。こういうような考えを持つておるのであります。
 更にこの基準と選挙母体を決めまするに当りましても、これは一つの案でありりまするが、これも亦適当な準備委員会を作りまして、その委員会でこの基準と選挙母体というものも定めて頂くようにするのが妥当であろう。こういうように考えておりまして、至急にこういう方向に段取を進めて行きたいと思つておるのであります。
 かようにして、極めて民主的な委員会において、この重要な問題であり、長年論爭の中心であり、ときには感情的な議論の場面でもありました問題を、極めて民主的に、そうして冷靜に廣い場面から調査審議して頂きまして、その結論に随いましてこの問題を決定して行きたい。こういうような考えでおる次第であります。
#9
○理事(金子洋文君) 速記を止めて。
   午後二時七分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時三十七分速記開始
#10
○委員長(山本勇造君) 速記を始めて。それでは本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十八分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     山本 勇造君
   理事
           金子 洋文君
   委員
           三木 治朗君
           若木 勝藏君
           徳川 頼貞君
           松野 喜内君
           大隈 信幸君
           岩本 月洲君
           來馬 琢道君
           高田  寛君
           服部 教一君
           三島 通陽君
           三好  始君
  國務大臣
   文 部 大 臣 森戸 辰男君
ソース: 国立国会図書館
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