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1970/05/06 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 社会労働委員会 第17号
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1970/05/06 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 社会労働委員会 第17号

#1
第063回国会 社会労働委員会 第17号
昭和四十五年五月六日(水曜日)
   午後一時二十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐野 芳雄君
    理 事
                上原 正吉君
                鹿島 俊雄君
                吉田忠三郎君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                高田 浩運君
                徳永 正利君
                山崎 五郎君
                山下 春江君
                横山 フク君
                占部 秀男君
                大橋 和孝君
                中村 英男君
                中沢伊登子君
   衆議院議員
       社会労働委員長
       代理理事     伊東 正義君
   国務大臣
       労 働 大 臣  野原 正勝君
   政府委員
       労働政務次官   大野  明君
       労働大臣官房長  岡部 實夫君
       労働省労働基準
       局長       和田 勝美君
       労働省労働基準
       局賃金部長    藤繩 正勝君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○家内労働法案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 家内労働法案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。野原労働大臣。
#3
○国務大臣(野原正勝君) ただいま議題となりました家内労働法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 現在わが国では、問屋や製造業者から委託を受けて物品の製造、加工等に従事している、いわゆる家内労働者が多数存在しており、その数は、把握し得たものだけでも百四十三万人に達しております。
 これらの家内労働者は、作業場所こそ一般に自宅でありますが、委託者から原材料等の提供を受けて一人で、または家族とともに物品の製造、加工等に従事し、その労働に対して工賃を支払われているものでありまして、その大部分は、実質的には雇用労働者に近い性格を持っているものであります。
 ところで、これらの家内労働者は、工賃や安全衛生等に関する労働条件が一般的には低く、従来から問題が少なくなかったのでありますが、特に最近の経済の発展に伴い、雇用労働者の労働条件をはじめその他の就業者の就業条件が向上している中にあって、そのおくれは著しいものがあります。
 このため、家内労働に関する対策の必要性は、かねてから指摘されていたところでありまして、政府としましては、昭和三十四年、最低賃金法の制定により、さしあたり、最低賃金と関連のある家内労働者については、最低工賃を決定し得ることとして工賃面においての保護をはかったのでありますが、たまたま同じ時期にヘップサンダルの製造に従事する家内労働者にベンゼン中毒問題が発生し、これらを契機として、総合的な家内労働対策樹立への要請が高まってきたのであります。
 このような情勢にかんがみ、労働省は、昭和三十四年十一月、臨時家内労働調査会を設置して家内労働の実態把握と家内労働対策の検討をお願いいたしていたところ、昭和四十年にわが国家内労働の現状に関する報告を提出されるとともに、今後の家内労働対策の進め方について見解を示されたのであります。
 これにより、わが国の家内労働の実態はきわめて複雑で、かつ、多岐多様にわたり、その対策は、なお慎重な審議を要することが明らかとなりましたので、政府は、同調査会の見解に従って昭和四十一年、労働省の付属機関として家内労働審議会を設置し、法制的措置を含む総合的家内労働対策の検討をお願いし、昭和四十三年十二月、同審議会の全員一致の答申を受けたのであります。
 この答申は、臨時家内労働調査会以来十年の長きにわたって調査審議した結果に基づくものでありまして、政府としては、これを十分に尊重してここに家内労働法案を提出いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして概略御説明申し上げます。
 第一には、委託者と家内労働者との委託関係を明確化するため、委託者は、家内労働者に家内労働手帳を交付しなければならないことといたしております。
 すなわち、委託者と家内労働者との間における契約内容は、従来必ずしも明確でなく、無用の紛争の原因ともなっていますので、委託者が交付した家内労働手帳に委託等のつど必要事項を記入することにより、家内労働者の工賃等の権利保護に役立てようとするものであります。
 第二には、家内労働者及びその補助者の就業時間が長時間のものとならないよう委託者及び家内労働者に対して努力義務を課するとともに、行政官庁が就業時間の適正化に関し必要な勧告をなし得ることとしております。
 すなわち、家内労働者が何時間就業するかは、家内労働の性格からして本来自由でありますが、その健康を害し、工賃単価にも悪影響を及ぼすような長時間の就業は好ましいことではありません。しかし、家内労働の実態から画一的にこれを規制することはきわめて困難でありますので、このような措置により、その自主的な努力を促そうとするものであります。
 第三には、工賃の確保をはかるために、その支払い方法について必要な規定を設けております。
 すなわち、工賃は、原則として、全額通貨により物品の受領後一カ月以内に、また毎月一定期日を工賃締め切り日とする場合はその日から一カ月以内に支払わなければならないことといたしております。
 なお、産地等の実態により、直ちにこの規定を適用することが著しく困難な場合については、行政官庁は審議会の意見を聞いて、当分の間、別段の定めをすることができる旨の経過措置を設けて、無用な混乱を生じないよう配慮をいたしております。
 第四には、工賃の低廉な家内労働者についてその改善をはかるため、行政官庁は、審議会の意見を尊重して、最低工賃の決定をすることができることといたしております。
 すなわち、最低工賃については、現在最低賃金法において、最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度においてこれを決定し得ることとなっておりますが、今後は、最低賃金との関係のみでなく、家内労働者の工賃の問題として、最低賃金との関係も考慮しつつ、工賃の低廉な家内労働者に対し工賃の最低額を定め得ることとしたものであります。
 この場合において、最低工賃を決定するにあたっては、同一地域における同一または類似の業務に従事する労働者に適用される最低賃金との均衡を考慮することといたしております。
 第五には、委託者及び家内労働者は、危害を防止するために必要な措置を講じなければならないこととするとともに、行政官庁はこれらに対し、必要により、委託の禁止その他必要な措置を命じ得ることといたしております。
 すなわち、安全及び衛生の確保に関し、委託者及び家内労働者が守るべき必要な措置を労働省令で定めることとし、この場合、家内労働者の補助者についても、必要な保護がなされ得るよう配慮いたしております。
 第六には、家内労働に関する重要事項を調査審議するための審議機関を、中央及び地方に設けることといたしております。
 これにつきましては、労働省に中央家内労働審議会を、政令で定める都道府県労働基準局に地方家内労働審議会を置くことにしておりましたが、地方家内労働審議会に関しましては、衆議院において「都道府県労働基準局に地方家内労働審議会を置くものとする。ただし、政令で定める都道府県労働基準局にあっては、この限りでない。」と修正されております。
 なお、家内労働審議会を置かない都道府県労働基準局の地方労働基準審議会に家内労働部会を設けることとし、また、これらの審議機関は、家内労働者代表、委託者代表及び公益代表各同数の委員をもって組織することといたしております。
 その他、委託の打ち切りの予告、委託者の届け出、労働基準監督官の権限及び違反の防止等に関する所要の規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行ない、もって本法案の円滑な実施を期しているのであります。
 以上申し述べましたとおり、本法案は、最低工賃を除き、従来全く法律の対象になっていなかった家内労働者に対して、新たに法的保護を加え、家内労働者の労働条件の向上をはかり、もってその生活の安定に資することを目的とするものであります。
 しかしながら、家内労働問題は、各般にわたる困難な諸問題を内包しておりますので、これが運用にあたっては、法制定の趣旨について関係者の十分なる理解と協力を得て、実情に即しつつその円滑なる実施につとめるとともに、今後とも引き続いて検討を重ね、本法の施行その他の行政措置の結果を待って、逐次法的整備をもはかってまいりたい所存であります。
 以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#4
○委員長(佐野芳雄君) 本案につきましては、衆議院において修正議決されておりますので、この際、衆議院における修正点について衆議院社会労働委員長代理理事伊東正義君から説明を聴取いたします。伊東君。
#5
○衆議院議員(伊東正義君) 私は、衆議院の社会労働委員会を代表しまして、家内労働法案に対する衆議院の修正部分についてその内容を御説明申し上げます。
 ただいま労働大臣からも御説明がありましたが、その要旨は、まず第一に、家内労働に関する審議機関として労働省に中央家内労働審議会が置かれ、都道府県労働基準局に地方家内労働審議会を置くものとするといたしまして、政令で定める都道府県労働基準局については、この限りでないものとするということが第一点でございます。
 第二は、以上の修正に伴いまして、この法案の附則の労働省の設置法につきまして所要の字句の整理を行なったわけでございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#6
○委員長(佐野芳雄君) 本案に対し御質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○大橋和孝君 家内労働法案に対し二、三御意見を伺いたいと思います。
 この家内労働法案では、家内の労働者を「同居の親族以外の者を使用しないことを常態とするもの」と定義されておりますが、最低賃金法では、家内労働者は「その業務について同居の親族以外の者を常時使用していないもの」、こうなっているわけでありますが、この家内労働者の定義がこのように二通りあるわけがどうも理解に苦しむわけでありますが、今後、家内労働行政を推進していくにあたりましては、他人を雇用する家内労働者も家内労働者として保護の対象になると言えるかどうか、その基準を明確にして置く必要があるのではないか、こう思うのでありますが、これについてひとつ御意見を伺っておきたいと思います。西ドイツでは、かなりこの幅を広げて、二、三人くらい使っておる人も最低賃金の中では考えられているようでありますが、ここの二条に出ているところがよくわからないのですが、明確にして置く必要があるのじゃないかと思います。
#8
○政府委員(和田勝美君) 先生御指摘のように、最低賃金法と家内労働法案におきます「家内労働者」の定義に多少の差異がございますが、趣旨とするところはほとんど変わっておりません。これは、実は家内労働審議会で、どういう表現にするかということについてはずいぶんいろいろと御議論がありました結果、法案にありますように「同居の親族以外の者を使用しないことを常態とする」、家内労働者の今日の実態からしてその定義のほうがよかろう、こういう趣旨の御答申をいただきましたので、家内労働法案におきましては、審議会の御答申の文言をそのまま借りましてこういうように書いたわけでございます。これは「常態とする」ということでございまして、運用にあたりまして、臨時的な要素のあるものについては親族以外の方を使用される場合も運用上含むものとする、これも家内労働審議会における御答申で、そういうような行政上の運用のものとして扱う。それからもう一つは、常時親族以外の者を使用するということにつきましては、家内労働審議会では、それには非常にいろいろ問題があるから、今回の場合には、そういうのは普通の使用者的立場の色彩が濃い、しかし、家内労働として今度規制するのは、主としては「労働の対償」として工賃をもらう、そういうことにしたほうがよかろうという御意見がありましたもんですから、そういう家内労働審議会における御審議の経過及び答申のありました線に沿って規定をさせていただいたわけでございます。
#9
○大橋和孝君 いまの御説明を聞いておっても、答申の結果によってやったという説明でありますけれども、しかし、他人を使用しておった場合は、家内労働者として保護を受ける対象になるのかならぬのかという問題がすぐ出てくるわけでありますから、このことを規定するときには明確にしておく必要があると思います。「常態とする」でありますとか、「常時」云々ということでなくて、外国の例では、西独あたりではちゃんと幅をつけて、二、三人のものは対象として認めておるのですね。そういう例も外国にあるわけでありますから、これは「常時」するのだとか、「常態」であるとか、ぼやけたようなことを言わないで、法律で定めるときには初めから明確にしたらどうですか。
#10
○政府委員(和田勝美君) 先生の御議論のように、西ドイツあたりでは確かに「同居の親族以外の者」を使うものにつきまして、お説のような規定もございます。これに対しまして家内労働審議会におきましては、他人を使用する者については、現在の日本の政策全体から見ると、中小企業者的な扱いになるという場合が非常に多いじゃないか、それに対しまして家内労働法案で規定するのは、そういう中小企業的な色彩のものをできるだけ抜いて、主として「労働の対償」として所得を得るものというように限定をしたほうがよかろうというようなことになりまして、そうしますと、いわゆる自分と同居の親族以外は使わないのが普通の状態であるものに一応限ったらどうかという御議論になったわけでございます。ただし、家内労働は非常に複雑であり、微妙なところがございますから、そこは行政が進むに従ってだんだん明らかになっていくと思いますので、これは法律の運用でやるべきだと思います。
 それからもう一つは、これは衆議院でも御議論になりましたが、今後の問題として、少数の他人を使用するものについても、必要がある場合には家内労働者に含まれるということについて検討したらどうかという附帯決議もつきましたので、そういう御趣旨を十分参酌しながら、今後私どもとしては、先生の御指摘のありました点は、この法案が施行になりました以降の行政の実績の上で考えさしていただきたい、こういうように考えております。
#11
○大橋和孝君 しつこく申すようですけれども、今度のこの家内労働法が制定される中では、やはりこういう人たちを守らなければならぬという前提があるわけですが、やはりあいまいなところを残しておいて、そうして見のがされていくのが私は非常に心配なわけです。ですから、その意味では、こういうような法律をつくるときから中に非常にあいまいさが残っておっては、附帯決議に出ておるように、他人を使用した場合は当然労働基準法によってやるべきで、これは法律ができておりますからいいと思うのでありますが、それが実際そうでありながら運用されてないところに問題があるわけですから、「常態」だとか何とか、あいまいでなしに、その点を十分にして、そうした場合には必ず認めてやっていくことを先行さしていかないと、この法制定の意義がぼやけてしまう、没却されていく心配があるということを強調しておきたいと思います。
 それに続きましてもう一つお伺いしたいのは、一般的な問題でありますが、家内労働者の劣悪な労働条件を今回の立法によって改善しようとするのでありますね。それが劣悪な労働条件のもとにあっても、なお家内労働者がますます増加の一途をたどっておる。このような家内労働者、特に内職者の増加傾向というものは、政府は、一体どういうふうに行政上これを見ておられるのか。このような状態でよいのか悪いのか。私は、このあたりも、一般問題でありますけれども、いまの問題に引き続いて少し見解をはっきりしていただきたい。これは、家内労働調査会か何かの四十年の報告があるわけですが、その中を見てみますと、やはりこの家内労働者の数は八十四万だと、こう出ておる。四十三年の労働省の調査では百三万人と出ておる。そのうちで八〇%が内職だと、こういうふうなことも発表されておるのですね。しかし、これは考えてみますと、十分に把握されていない。むしろ、これは委託者のほうからの報告で出ていると思うわけでありますから、現実にいったら二百万、三百万あるいは四百万もあるかもしれない。こういう状態でありますが、特に、最近では、そういうふうに増加の傾向をたどっておるということですが、これをどういうふうに考えておられるか。また、私、西独の問題を引き出すようでありますが、西ドイツあたりでは、一九六〇年に基準法の法律で、十八歳未満の人たちに対しては出来高払いを禁止していますね。あるいはまた、米国だとかあるいは英国あたりでは、家内労働というものは非常に少ないということが報告されているわけでありますが、日本では、最近では、とめどない物価の上昇傾向もあるでありましょうし、いろいろな意味でこれが多いわけでありますが、こういう増加の傾向を一体どう政府はとらえているか。この点ひとつ明らかにしておいていただきたい。
#12
○政府委員(和田勝美君) 先生御指摘のように、確かに家内労働者は調査をいたすたびごとに増加をいたしておる。三十七年に調査をしましたときに八十五万、それが四十年の六月に調査をしましたときには八十四万、まあ大体並行でございますが、四十四年は百四十三万と、これは私どものほうの昨年の五月末の調査がそういうことでございますが、その後におきましても漸次ふえておるというようなことが一応予想されます。特に四十年代になって伸び率が高いように考えられます。これは、一つには労働力不足を背景といたしまして、都市周辺農村などを中心としまして、軽電気関係で漸次家内労働のほうに工程の一部が分担させられているようなところがございますし、農村あたりでいろいろの省力化の投資その他が進むに従いまして、家内労働者の需要も相当ふえてきておるというようなことも言えるだろうと思いますし、都市におきまして相当ふえておりますのは、これはやはり家事労働の機械化等が進みましたことに伴いまして、余暇が増大をしてきた。そういうところに人手不足がからみまして、家内労働が非常な勢いでふえてきておる、こういうような状態であろうと考えております。この家内労働がふえておりますことはいいことか悪いことかということにつきまして、実は家内労働審議会でも相当御議論がございましたが、その価値判断をすることは非常にむずかしいから、家内労働がふえることがいいとか悪いとかいう価値判断をせずに、家内労働にある現在の問題点を法律によって規制するようにしたらどうかと、価値判断は一応別個にしたらどうかというような御意見がございましたので、家内労働審議会からの答申も、そういう趣旨で一応家内労働に対する価値判断をせずに、家内労働に伴って出ておる問題点だけを、特に悪いと思われるところを法律で規制をするようにしよう、こういう御意見でございました。今度の家内労働法案も、そういうような家内労働審議会の御意見に沿ってつくっておりますので、一がいに家内労働がどうこうという価値判断をいたさないという立法の精神でございます。
#13
○大橋和孝君 私は、この問題に対しては非常に疑義を持つわけですね。もっと端的に言うなら、家内労働法をいまつくるということは、これはもう必要悪だ、こう言いたいくらいなんですね。それはなぜかと言えば、こういうような家内労働というものをもっともっと少なくして、西欧なんかでも、英国にしたって、米国にしたって非常にこれは少ないわけですから、労働条件というか、雇用の関係なんかももっと明確にする必要があるし、この家内労働者が非常にいまのようにふえていくという傾向は、私は、できるだけ避けなければならぬのではないかという気持ちを持っている。特に西独あたりの一九六〇年に規定したものを見ても、子供たち、十八歳未満の者、これに対しては出来高払いなんかも禁止する法律が出ている。日本では、家内労働の中に子供が一緒に参画してやっています。われわれもそういう実態をたくさん見て知っています。一家総ぐるみでやりますから、未成年者もみな家内労働に属している。こういうようなことがあって、非常に問題が、何というか、安上がりの方向にしわ寄せられていっているという状態、こういうことを見るときに、やはりもっとひとつ労働行政の中で明確にしてもらう必要があるのではないか。よいか悪いかということは考えていないのだというふうなあいまいなことではなくして、労働条件を高めるため、あるいはまた労働不足の状態をよくするためには、これらのことにもっとやはり労働行政の中ではっきりした態度をもってもらわなければならない。こういうたてまえからいまお尋ねしているわけでありますが、審議会云々のこともございましょうけれども、やはり労働省としてどうするかということをもう少し明確にしてもらう必要があると思うが、大臣どうですか。
#14
○国務大臣(野原正勝君) この問題はなかなかむずかしいと思うのでありますが、現実は、とにかく日本の経済の実態からして、家内労働はかなりまだこれからもふえる傾向にあると思います。やはり家内労働というものは、御指摘のとおり、たいへんある意味において問題はあるとしましても、やはりこの家庭の生活がいろいろ機械化されたために、いままで使われておった時間が幾らか余ったというか、そういうことでやはりその時間をできるだけひとつ自分たちの生活のためにも、あるいは将来の安定のためにも活用しようという意欲的なお気持ちが高まってきますれば、当然、家内で働く内職というふうなことが出てくるわけでありまして、そういう面に対して、いままで明確な法的な規制も行なわれず、ただ自然にあったというだけでこれを見のがすわけにはいかない。そこでだいぶ時間はかかりましたが、この家内労働法が提案されたと思うのでありますが、やはり現段階におきましては、この現実を踏まえて、いかにして正しく家内労働を評価するか、それに対する保護あるいは規制の対策を講ずるかという面で、この法律の必要な意義があると思うのであります。したがいまして、これに対しましては、必ずしも十分ではないという御意見もあり、また衆議院の論議の過程ではいろんな点で意見があったわけでございますが、やはり家内労働は、今後とも十分な保護を加え、あるいは規制を行ない、日本経済の発展のためにできるだけ役立っていくような形で進めたいというのが大方の御意見であったと思うのであります。そういう点で、この法案の持っている中身にはさまざまな問題を内包しておりますけれども、これらを十分この機会に御指摘をいただきましてよりよい法案として、今後の日本経済の発展、あるいは各家庭における余暇のある方々が、それによって生活の安定にも役立つということになれば幸いであるというふうに考えているわけでございます。
#15
○大橋和孝君 この法案のいま考えられている保護しようという気持ち、それはよく私もわかるわけでありますが、それを論ずる前に、前提としてこの家内労働というものの国の踏んまえ方、これから聞いておきたい。これが没却されますと、その保護しようということも、先ほど申したように、必要悪としてやらなければならぬ、それも根本から言えば、こういう家内労働というものをもっと正常な方向に持っていくということのほうが重大である。それが没却されてしまって、そういうものを保護する、保護するというそちらのほうがどんどんふえていくようでは、正常な労使間の問題じゃなくなるし、労働条件の劣悪な方向にどんどんとしわ寄せがいくという方向ではおもしろくない。だから、そういう前提条件として、この家内労働そのものをもっと政府としては、ことに労働省としては、これをどういうふうに考えていくんだ、もっともっといい条件の労使間の契約のほうに持っていくようにして、この家内労働というもののウエートを高めると同時に、またよりよいものにしていく。これだけに力を入れてしわ寄せをしていくというような方向にほっておかないということを、ひとつけじめをつけてもらいたいというので質問をしているわけですから、大臣としても、やっていただくことはありがたいんですけれども、この家内労働というものがどんどんふえていくということに対しては、それが自然の成り行きでやむを得ないとか、経済のたてまえからいったら安く物ができていいんじゃないかというようなことでなく、家内労働に携っているものはいつでも条件が悪いし、ちょぼっとくらい保護する、保護するということで実際は何も保護されていないということであれば、この家内労働法というものは必要悪で、かえって悪いものをつくってしまう、こういうことになるわけですから、そういうことにならないようにということを私は大臣に強く要望したいし・決意を新たにしてやってもらいたい。いろいろなことをお聞かせ願う前にこれを明確にしておきたいと、そう思って重ねて申し上げておるんですから、大臣も、その点に対するけじめをひとつ明確にしておいていただきたい。
#16
○国務大臣(野原正勝君) 家内労働法が制定を見た結果、やはり働く人たちの所得がふえる、健全な家庭生活と両立できるという形でいく必要があるのであって、劣悪な条件がいつまでも続いていくというようなことによって、一般の労働社会における賃金の条件がかえって家内労働法のためにゆがめられるというようなことがあってはならぬ。したがって、日本の家庭制度自体から考えましても、にわかに家内労働を禁止するとか、やめてしまうというわけにわいかない。やはりこれは家庭生活と両立できる中で家内労働が適正に生かされていくという姿が好ましいと思うんでありまして、そのためには、この家内労働法を中心にしまして、今後、足らざる面はひとつだんだんとよくしていって、そして日本の経済の発展にも役立ちあるいは家庭生活の安定にも役立つという形でいきたい。そのためには、ひとつこの機会に十分なる御審議をいただきまして、りっぱな家内労働法として成立をみたい、こういうことでございます。
#17
○大橋和孝君 この家内労働者のうちで、特に内職労働者は、いま大臣がおっしゃっているように、おもに家庭の主婦が従事しているわけです。このことは、一般労働者の生活が家庭総ぐるみで、たくさんの人が就業する構造をとらなければ家計の維持ができない、こういうふうないま状態になっているんじゃないかと思うんでありますが、政府の経済政策は、労働者の家計をむしろ圧迫するような方向で行なわれている。これがために起こってきた結果ではないか、こういうふうに思うわけであります。特に、この経済政策がどんどんとられていきまして、物価が非常に高くなってきている。こういうことが各家庭に対しての非常に大きなしわ寄せで、いままでは、むしろレジャーのためにかなりのものが家内労働をしているという傾向にあったかもしれないが、現在ではそうではないということが出ている。たとえばこの一九六七年十月に、人口十万以上の都会に住んでおって、小学生以下の子供を持つところの約三千人の主婦を対象にした内職についての世論調査というのが行なわれたはずであります。その内職の動機の欄では主人の収入が少ない、子供の教育費が要る、こういうようなことが原因で、家計の都合からの理由が七五%を占めている。こういうのが労働省で発表されておるわけでありますね。こういう点から考えてみましても、非常に何といいますか、家計を圧迫している物価の値上がりだとか、いろいろのひずみがある。家計が圧迫されているということが家内労働者をふやしているということになるわけであります。先ほど私の申した点は、こういうことでもはっきりしているように、こういうことでどんどんふえていくことに対して、労働行政の中で手放しにしておってはいかぬのじゃないかと思います。現にそういうものがあるからこれは一応認めて、それをよくするという先ほどからの大臣のお話はけっこうだと思うのでありますが、もう一つ前に出て、こういう家内労働者がふえていくという傾向、その中の七五%が生活のためにやらなければならぬという状態に置かれていること、これらのことを考えてみると、やはりこういうような家内労働者のふえていくということに対しては、労働行政の中でもっとそこで何かする方途を立てることが前提条件として必要じゃないかと思うのであります。
#18
○政府委員(和田勝美君) 家内労働者が家内労働に従事する理由についてはいろいろのものがございますが、一つの例として、昭和四十二年に内閣が内職に関する世論調査を行ないましたときに、一番大きな比率を占めましたのは、いま先生の御指摘の生計費の不足を補うためというのが三八%でございます。それに対しまして自分の小づかいがほしいからというのが二二%、あるいは趣味、技能、余暇を生かしたいからというのが二五%、あるいは子供の教育資金をつくるためというのが二九%、こういうような数字が出ておりますことと、最近におきましては、家内労働をやっております家庭の収入を見てみますと、漸次低いところから中級に及んできておるという状態が最近の傾向として見られるわけでございます。したがいまして、家内労働には非常に貧困というもの、そういうものがある時期には非常に集中的に考えられておりましたものが、漸次貧困から多少違った角度で家内労働に従事する方がふえてきているというようなことも言えるように思います。しかし、そういう実態の中にありまして、私どもが今度家内労働法案を提案さしていただきましたのは、先ほど大臣が申し上げましたように、いろいろの事情があるにしろ、とにかく家内労働が行なわれておって、これを直ちに禁止し得るような状態にはならない。そういう点からしますと、家内労働が行なわれることによって出てくる弊害を何としてでも排除するような方式をとることが必要だ。それと、もう一つは雇用労働者に影響することがあってもなりませんので、最低工賃制をしきまして、家内労働者の工賃の底を切って漸次上げるような法律体制をつくる、こういうようなことでこの法案を提案さしていただき、家内労働者に対する病気の問題あるいはけがの問題がございますが、そういう点も実情に即しつつ安全衛生対策ができるようなことにしていきたい、そういう弊害を除去するようにしていきたい。いろいろの事情で家内労働に従事していらっしゃいますが、その従事している方々が働くことによって出てくる弊害を除去していきたい、少しでも家内労働の条件をよくするような行政措置を講じていきたいということでこういう法案を提案さしていただいたわけでありまして、経済政策あるいは社会政策全般との中におきまして、下ざさえをしていくという意味では、相当な効果があるのではないかと思っております。
#19
○山下春江君 ちょっと関連。いま大橋先生から御質問があったことで尽きているようでございますが、家内労働のこの法案は、とにかく全体的にいってたいへんいい法律をつくっていただいたいと思うのですが、一つには、それはこの家内労働というのは「かぎっ子」をなくするのです。現に目で見ておるのですが、私がある家内労働をしておる人をたずねて行ったら、学校から帰った子供がランドセルを置いて、おかあさんがやっておる仕事――これはたいへんきれいな竹細工の仕事ですが、おかあさんは年とってから覚えたので非常に不器用なようですが、子供のつくりましたものはロスが一つもなくて全部合格するし、それから数も同じ時間におかあさんよりもたくさんつくるというようなことがありました。しかし、それは全部見ておりましたが、子供は決しておかあさんに強制されてやっておるのじゃなくて、自分が好きで、すぐに飛び込んでやっておったようですが、この家内労働というものが放置されていて、これは全然弱い立場ですから、その工賃は、注文する人がこれを押えつければ、ないよりましだということで、全然工賃が上がる機会が少ないということがこの法律で助かるならばたいへんありがたいということ。それからかぎっ子が――おかあさんがそこでやっておるので、いっとはなしに、いろいろな種類がありますから、子供たちは好きになってそれを手伝っている。いつ坊やは勉強するのかと言ったら、晩におかあさんと一緒にやるのだと言っておりましたが、私は、その風景を見て、いまの社会状況からいったらたいへんいい。これは大橋先生の御質問とちょっと方角が違うみたいですが、たいへんいいことだと思いますから、この法律が出たことに対してはたいへん賛成しているのですが、その工賃がこれでは安いではないかとか、いろいろな条件を是正するためにだれかに訴えていきたいときには、この家内労働審議会というのでしょうか、どこかこれを訴える機関がございましょうかどうでしょうか。
#20
○政府委員(和田勝美君) 最低工賃の問題として御提案をいただければけっこうだと思いますが、その点につきましては第八条に最低工賃の規定がございます。八条以下これに関連してのいろいろ規定がございますが、そういう家内労働者の方が申し出ていただく場合には、まず都道府県基準局のほうにお話をいただけるとけっこうだと思います。都道府県基準局のほうで関係のいろいろな事情を伺いながら、基準局長の発意で家内労働審議会のほうに提案をいたしまして最低工賃をつくる。そのときには委託者及び家内労働者、それから関係方面の意見を必ず家内労働審議会が聞かれることになっております。そこで皆さんの御意見を聞きながら最低工賃をきめる。改正の場合も同じでありまして、申し出の規定がございまして、なるほどこれは低過ぎる、もっと高めてやるべきだという場合にも同じ手続で改定をする、こういうことになっておりますから、まず都道府県基準局のほうにお申し出をいただければけっこうだと思います。
#21
○大橋和孝君 近年は労働力が非常に不足しておる。それに対処するために、家庭にいる婦人の労働力をいまのように能力再開発という名目で、政府も婦人労働者の活用に目をつけているわけであります。しかし、一方では、職場の婦人労働者に対しましては、若年の定年制とかあるいは結婚退職制というものがあって、企業からむしろ比較的若いうちに締め出されておる。その後また、一度婦人労働者を解雇しておきながら再び安い賃金で雇用するという傾向も、実際問題としては明確に出ておるわけでありますが、政府としまして、労働政策の中でこういうふうな矛盾をどういうふうに解決されるのかということが一つは前提の問題となるわけで、いまは、この法案よりも前提の問題について私ちょっと伺っておきたいわけです。そういうことで、家内労働の中にも、普通であれば婦人労働者としてずっといけるのが比較的若くてやめたりあるいは家庭の事情でやめたりしている。そういうものがまた家内労働の中で低い工賃で雇われていく、こういうようなことが非常に明確に出ている。こういうことは、私は、矛盾しているように思うのですが、家内労働者が非常にふえてくるという傾向は、そういうところにも一つの原因があるわけですから、こういう労働力に対しての矛盾があるものを何か家内労働法なんかでカバーしてしまうというようなことにならないように、前提としてこれは考えておかなければならない。先ほど山下先生がおっしゃったように、この家内労働法の制定、その中にきめられていることに対しては、私も一定の価値は認めているわけですが、それを論ずる前にこういう前提条件を考えておかないと、ただ単にそういうところにほうり込んでしまって、少しは底を引き上げてやろうと、法律でカバーしていくようなかっこうで、職場婦人の労働をちゃんとやっていかなければならないのに、そういうふうに家内労働へほうり込んでしまって、いまおっしゃったような、かぎっ子にもならないからこういうことをやったほうがいいということで、婦人の賃金から言ったら片手落ちになっていることがそのままあるようなことでは、私はよくないと思うんですね。そういう矛盾を解決するために、もう少し抜本的に政府は考えていかなければいかぬ。この法律を制定する前に、私は、一ぺんそういうことに対するきちっとした政府の考え方を聞いておきたい、こう思うわけです。
#22
○政府委員(和田勝美君) 家内労働者の大部分が確かに婦人でございまして、家内労働者のうち八八%が婦人の方でございます。御婦人につきましては、普通の形での雇用形態の方と、それからこのごろ俗に言われますパートタイムの方と、それから家内労働という形がございますが、雇用労働という立場におきましては、男女同一賃金、同一価値は同一賃金を払うんだという原則、そういうものがございまして守られているものがございます。あるいはまた、このごろは婦人の若年定年につきましては、判決等が出まして、公序良俗違反というような意味合いで、順次婦人の雇用者としての立場の確立についてはいろいろの施策が講じられております。パートタイムにつきましても、最近ではいろいろの形がございますが、これについても託児所その他の措置が順次とられていっております。しかし、そういうふうに、普通の雇用形態で婦人が出られる場合ももちろんございますし、今後におきまして、日本の労働力不足から考えて、そういうものが必要になってまいると思いますが、しかし、どうしても家庭から出られない御婦人がやはりいらっしゃるのであります。しかも、雇用というかっこうではなく、家におって働いて小づかいもかせぎたい、あるいは子供の学費もかせぎたいという場面は、これはおそらく当分の間日本に続くだろうし、なかなか全部が全部雇用労働というほかの国のような形のこともむずかしいと思う。やはり自宅で働かれる場面が多い。最近特にそういう面が多いということになりますと、これを奨励するとかいう意味ではなくて、そこにある弊害を排除してあげなければならんのじゃないか、こういうのが家内労働法案を提案さしていただいた理由でございまして、そういう趣旨から申しまして、決してこれが雇用労働者になられる婦人の方の足を引っぱるようなことは厳に慎しむべきだ、その点が最低工賃の問題にもつながっておりますし、安全衛生の問題にもつながっておる。こういうような理解でございますので、決して法律の運用に当たりまして、雇用労働者の阻害になるような運用は一切いたさない心がまえでやってまいりたい、かように考えております。
#23
○大橋和孝君 特に、それはもう運用の面では、実際なかなかきれいごとでやっていくようなことではないわけですから、いまの局長のお気持ちのように、そういう点に流れないようにしてもらいたいということを強調しておきます。
 それから工賃の問題、あとからも詳しく聞きたいと思いますけれども、この労働力の不足に家内労働、ことに内職なんかの活用で対処されているというのがお話のような実情で多いわけです。しかし、その労働条件は、一般に、いわば先ほどからもほぼお認めになっているように、よくない。中でもこの工賃については非常に不満が大きいわけです。今回の法案では、最低の工賃の決定を家内労働審議会の議を経て行政官庁が決定すると、こういうことになっているようでありますが、実際問題として、従来からの委託者と家内労働者の力関係や、習慣なんかがありまして、この制度がスムーズに両者の間に浸透していない場合が多いと思いますね。これもいろいろあとから工賃の問題を論ずるために一ぺん政府のほうの考え方を聞いておきたいと思うんであります。このたてまえは、ちゃんと審議を経て行政官庁できめることになっているから、これがみな家内労働者に全部浸透して承知をされておればいいんでありますが、なかなか委託者と家内労働者の力関係で、委託者のほうから言われるままに、先ほど山下先生からもお触れになりましたように、安く押さえつけられても、ないよりましだ、働くほうがましだということで、これはやられていくのがいままで習慣となっているわけであります。こういうことは、せっかくいい法案をつくるのであるから、やはり今後の運用面でよほど注意してもらわないと、相変わらずいままでの習慣で、いわゆる委託者が横暴をきわめればそのようになってしまう。そういうことになるわけでありますから、この問題については、私はやっぱりもう初めからこの法律を運用するに当たっての、何といいますか、相当きちっとした考えをしておいてもらわないと、せっかくいい法案ができても、これが何も活用されないという状態におちいるではないかということが心配でありますので、この問題について少し御意見を伺っておきたい。
#24
○政府委員(和田勝美君) 先生御指摘のように、この法案の八条以下で最低工賃に関する決定の方式を書いております。これはいま御指摘がありましたように、委託者及び家内労働者の方がここに書かれておる趣旨を、法律で規定されようとしている趣旨を十分に御理解をいただいて、活用をしていただくという心がまえをお持ちいただくことが一つ大事であるわけです。そのためには、われわれ行政機関におります者が、この家内労働法案全体をよほど浸透させる、その意味における啓蒙がよほど徹底してまいりませんと、家内労働者の皆さんは、案外法律的な問題に関しては無関心な向きが多うございますので、そういう点に関しては、よほどわれわれはいろんな方式を通じての啓蒙を検討してやっていかなければならない、かように思います。実は、臨時家内労働調査会で、最低工賃とか、標準工賃という問題について、行政指導をとにかくとりあえずやってみたらどうかという御意見が三十六年に出て、それを受けてやってまいりましたが、やはりなかなかうまく浸透しない。それはもちろん行政権限がございませんので、行政的にどうこうということができなかったというのが一番大きな問題点であります。それを家内労働審議会にも御報告しているうちに、やはり法的な権限を設けなければ、行政官庁としても、最低工賃をつくっていくにも限界があるから、こういうような御意見になりましたので、最低工賃に対する今回の法案の中に盛り込みましたような最低工賃の規定ができたわけでございます。この点は、今後とも、私どもは家内労働のことでございますから、にわかに、一気かせいとはいきませんが、じっくりと皆さんに訴えながら、この法律に基づく権限を行使する都道府県の労働基準局長の努力と相まって、ぜひ最低工賃制度が行き渡り、その趣旨が理解をされまして、家内労働者のほうの工賃が漸次上がっていく、こういう体制に持っていきたい、かように考えております。
#25
○大橋和孝君 まことにそれは御苦労の点はあると思います。私、ここでちょっと一つだけピックアップした例をあげておきたいと思いますが、「暮らしの手帖」で一応示されておった例だと思いますが、安い工賃の一つの例です。輸出の花形といわれている金属玩具ですけれども、その場合、一ダースが二ドルの問屋渡しの価格であります。それがアメリカでは十二ドルで売られている。その間のバイヤー、問屋の利益に比較して、内職の工賃は、十六工程で合計わずか六円七十四銭、問屋渡しの価格に比べれば一割にも達していない、こういうことが出ていたわけです。こういうものを見ても、いまおっしゃるとおりに、非常にこれはむずかしい問題です。多岐多様にわたっているだけになかなか監督がむずかしいと思うのでありますが、私は、そういうような「暮らしの手帖」や何かで報告されたものをいろいろ読みまして非常に矛盾を感じておったわけです。そういう状態でありますからして、これはなかなか机上でこれがいい、これがどうだということで言われておりましても、実際問題としては、大きな矛盾が出ているわけですね。一ダースが二ドルの問屋渡しが十二ドルで向こうで売られている。その十二ドルで売られているものが、こっちで十六工程の内職でやったのがわずか六円七十四銭だと、一割にも達していない。こういうふうにしわ寄せされたら、業者はほくほくで非常におもしろいけれども、働いている人はたいへんだ。現にそういうことがあちらこちらに一ぱいあるから、ぜひこれは考えていただきたい。
 それからもう一つ、私はお尋ねしておきたいと思うのは、仲介人の問題です。家内労働者の工賃を低くさせている要因の一つに、委託者と家内労働者の間に仲介人がたくさん入っておる、介在しておるということ。これはずっと調べて見ますと、第一次、第二次、第三次というふうに仲介人が入って、そして家内労働者のところに物が運ばれるわけでありますから、この間で、悪く言うならばこれは中間搾取ということもありましょう。それは仲介人を通して行くわけですから、そこの間に全部マージンが行く。これはたいへんな問題じゃないかと思います。この零細な家内労働の中にそういうものが入って、そこで利益を中間で抜いていくということになれば、私はなかなか許せない問題だと思うわけでありますが、この仲介人のマージンの率は五%から二五%の幅があると言われております。しかも、物によりましては、幾重にも仲介人がその間に存在しておる。そこで、マージンの率の規制や、あるいは必要以上の仲介人の排除は家内労働者の保護につながる問題であると思うのでありますけれども、この問題は、政府が本気に取り組まなかったならば解決しないのでありますが、一体この法案をこれからどういうふうにして運営されるか、運営の中でこういうものに対してどう取り組まれていくか。これは非常に重大な問題だと存じますので、いまの安い工賃と含めて、この仲介人の介在という問題に対しては、一体どういうふうにおとらえになるのか、この二点について聞きたい。
 それからまた同時に、いま罰則の規定を設けておやりになるわけでありますが、私は、ずっと罰則規定を見てみまして、罰則規定が千円ですか、五千円だかという簡単な罰則規定では、この仲介人とか、そこに入っているいろいろな者から見れば、こんなものでは、罰金払っておいてでもどんどんとそれが推し進められるという事実もあり得るのじゃないかという心配を持つから、罰則規定そのものに対してもあまりにもゆるやかではないかと、こう考えておるのですが、その辺についても一ぺんお考えを聞いておきたいと思います。
#26
○政府委員(和田勝美君) 工賃の全体の問題でございますが、確かに雇用労働者に比較しまして工賃でございますので、なかなか時間に割り振ることがむずかしゅうございますが、そういう困難性をあえて、その危険をおかしましてやってみますると、確かに雇用労働者の一時間当たり賃金に対して工賃は低うございます。これは御指摘のとおりでございます。しかし最近の傾向としましては、内職的な家内労働者の工賃について申し上げてみますると、昭和三十四年ごろには、一時間当たり十二円から二十一円程度でありましたものが、昭和四十四年につきましては、一時間当たり四十五円から百十円程度、平均的に申しますと八十三円くらいになります。こういうことから見まして、一応上昇率は四倍くらいになってきております。その間におきまして、雇用労働のほうの賃金も上がりましたが、これを零細規模の製造業について二十九人未満で見てみますと、はやりその間四倍くらい上がっておる。これは毎月勤労統計の数字でございまして、だから倍率については同じような状況でございます。根っこの数字が家内労働のほうが低うございますので、低いということは御指摘のとおりでございます。しかし、今後の推移を見てみましても、また今度家内労働法案ができるということになりますと、こういうもののできたという意義が相当浸透してくれば、私どもは、工賃の上昇ということは漸次期待できるのではないか、かように考えておりますし、行政指導の姿勢としましても、そういうことでやってまいりたいと考えております。
 それから仲介人の問題でございますが、家内労働が、先生すでに御存じのように、これは大部分は自宅で行なわれておるというようなことでございますので、非常にあちらこちらと働いておられる場所が散在をしております。そのために原料とか、製品の運搬というようなことについて、委託者だけではなかなかできにくくて、仲介人が介在をするということもございます。そういう意味において、ある程度それはやむを得ないところもございますが、しかし、ただいま御指摘がありましたように、確かに仲介人が介在することによって、いわゆる中間搾取的なピンはねが行なわれているという例も、確かに私どものいままでやってまいりました調査その他でも指摘されますし、先生がお話のような五%から二五%程度の手数料を取るというような問題も肯定できるところでございます。そういうようなことがございましたので、今回は第三条で「家内労働手帳」というものをつくりまして、労働条件をはっきりさせる、労働条件といいますか、働く条件をはっきりさせる、そうしていわゆるピンはねというもの、途中でピンはねによって工賃が消えていかないように文書で明確にさせたい、こういうのを三条等で規定しておるわけでございまして、ある程度の手数料というのはやむを得ないでしょうが、過度な手数料を取られるということのない状態をはっきり家内労働者が意識をしていただけるような制度を設けたいと考えておりますのも、先生の御指摘のようなところからこういう条文をつくったわけでございます。
 なお、罰則等につきましては、賃金部長からお答え申し上げます。
#27
○政府委員(藤繩正勝君) 仲介人につきましては、御指摘のような実情でございますが、仲介人の中には、御承知のように、請負的な仲介人と代理的な仲介人がございまして、請負的な仲介人は、この法律の適用にあたりましては、一応委託者として罰則その他の対象になるということになっております。それから代理的な仲介人につきましては、三十六条に両罰規定がございまして、もしこの法律に違反するような行為がありますれば、一応、委託者の代理人あるいは従業者ということで行為者として処罰をされる、こういう制度になっておるわけでございます。なお、罰金が非常に低いではないかという御指摘がございますが、この点につきましては、労働基準法の二十四条の賃金支払いの違反がやはり同じ金額でございまして、それとあわせてできておるという点がございますほか、この点の処罰につきましては、たとえばたくさんの家内労働者に対して何回も不払いをするということになりますると、その数と回数とをかけました、つまり倍数によりまして罰金が課せられるということでございまして、労働基準法の場合でも、ときには三十万円ぐらいの罰金を課された例もございます。そういう意味では、場合によりましては、必ずしも低くないということも言えるのじゃなかろうかと思います。
#28
○大橋和孝君 いま手帳の問題が出ましたが、私、手帳についてもちょっとお伺いしたい点があります。なるほど手帳にその経過を書くわけですから、明確にはなると思うのでありますが、いまのような工賃の問題あるいは仲介人の問題やらを規制するのには、私は、もっと別な方法でこれを何か規制をしてもらわないと、ただ単にいまのような考え方では一この仲介人も、従業者が一ぱいあるからして、中に入る人がいなかったらどうにもならぬ、これもよくわかるのでありますが、いまのような問題で、手帳に書いて実際の状態がわかっているから、それで排除できるということにはまだまだならぬのじゃないかと思うわけであります。もう少し政府のほうで今後の問題として何か規制していくような方法を考えてもらいたい。少なくとも、私ども聞いておっても、第一次、第二次、第三次と仲介人がおる。そこで二割、三割ずつでも、三段階で取られたらたいへんなマージンになって、下では安くなるわけですから、常時二十何%ということになればたいへんなことになるわけです。ですから、これはひとつもう少しその規制のしかたを、全面的にはできないにしても、何かいい方法を考えてもらいたい。
 それから「労働手帳」の制度の問題でございますけれども、家内労働者と委託者との委託関係を明確にするために、いまおっしゃったように、両者の間の契約が従来必ずしも明確でないからして紛争の原因になっておる。たとえば仕事の委託の量あるいは工賃の問題、あるいは仕事の納期の問題、こういう問題で非常にトラブルがあるわけでありますが、これを防止するために、家内労働者の権利を保護するという立場からこうしたものをやられるわけでありますけれども、この内職労働者がおもに家庭の主婦でありますからして、この手帳によって、その一定の収入がここにちゃんと明確にされるわけでありますが、今度一定の収入以上になってまいりますと、これは世帯主の扶養控除だとかあるいはまた扶養手当あたりがなく一なってしまうばかりでなくて、税金の対象になってくるわけであります。ですから、労働手帳に計載することを正直に書いてしまって、ある程度になれば問題になる。たとえば新聞なんかにも出ておりましたように、年収二十二万五千円以上こしたら配偶者控除がアウトになってしまうし、税金加算されるということも、家内労働としてやっておる場合には、問題点になるのではないかと思うのであります。ですから、いま局長がおっしゃったように、労働手帳に明記されておるからというけれども、明記すると税金対象になるから、明記が期待できるかどうかということも問題になってくると思うのでありますが、そういうことで不正記載なんかが行なわれたり何かするならば、せっかくここで手帳制度をつくってもこの制度がくずれてしまうだろうし、あるいはまた、かえってそのために扶養控除だとか、税金がかかってくるようなことになれば、家内労働者としては工賃が安い上に、また子供まで総ぐるみで働きながら、その人たちが当然受けるべき扶養控除も受けられなくなってしまうという問題がございますから、この手帳制度をつくるということならば、もう一つ根本的にこういう人たちの税金の面も考慮されて、税金面をどうするとかというものもむしろあってほしいように思うわけでありますが、そういう親心はどんなものか、ひとつ聞いておきたいと思います。
#29
○政府委員(和田勝美君) 家内労働手帳の問題点につきましては、先生が御理解をいただきましたように、働く条件を明確にするということから無用の紛争を生ずることを防止をするということについては効果のあることをお認めいただいたようでありますが、まさにそのとおりの気持ちから家内労働手帳をつくり、なお、どういう事項を規定するかということは、法律上に固苦しい文言で書いてございますが、これは実は労働省令でいろいろ事項を定めることになっております。労働省令で定める場合には、家内労働審議会の意見を聞いて、労働大臣としては定める予定にしております。したがいまして、実態に即した事項をこの中に規定をしたいと考えておりますが、一応、家内労働審議会では、おそらくこんな点を書くことになるだろうという点をいま申し上げてみますと、工賃の支払い基準あるいは委託者の住所氏名、それから仲介人等で委託者のために行為する者の氏名あるいは工賃を手渡す者の名前だとか、あるいは家内労働者の名前及びその補助者の名前、それから不良品とか、格外品はどういうように扱うとか、あるいは最低工賃とか、工賃の支払いはどういうときにどうやってやるか、あるいは安全衛生に関しまする順守事項、あるいは工賃の単価、それからいつ納めるかという納期、いつ支払うかという時期、こういうようなものがこの中に入ってまいると思いますが、これらにつきましての書き方は、実情に合いますように――家内労働審議会の構成は、御存じのように、委託者と家内労働者と、学識経験者の三者で構成をいたしますので、その御意見を聞きながらやってまいりたい、かように考えております。
 これがそういう効果がありますと、労働条件が明らかになって、そのために逆に税金問題が出てくるのではないか、こういう御心配でございますが、実は、家内労働者の皆さんからもそういう心配が非常に出ております。そういうことを考慮しまして、家内労働審議会におきましても、私どもに対する答申をいただきました節に、あわせて総理大臣と大蔵大臣と、労働大臣に対しまして、家内労働者に対する税制の改善についての建議がなされまして、税制の改善をはかるように格別の努力、配慮をしろ、こういう御方針が出ております。私どもは、税制全体とのかね合いでこの問題を考えなきゃならないと思いまして、この趣旨につきましては、すでに大蔵省あるいは自治省という関係方面には趣旨の連絡をしてございますが、いまのところでは、要するに夫婦の分離課税の問題とか、課税最低限の引き上げだとか、いろいろの問題がこれにはからんでくるわけであります。あるいは勤労控除の問題だとか、そういう点につきまして、私ども労働省としても、十分ひとつ案を考えて、そういう税制を扱う関係省に提案をするような積極的な姿勢でこれからひとつやっていきたい。税制当局にまかせっぱなしで、向こうが考えてくれるだろうというような消極的な姿勢でなくって、積極的な案をつくっていきたい、かように考えておるわけでございますが、いまのところでは、実は工賃がまだまだ相当低うございますので、具体的にきわ立った問題としては出てまいらないとは思いますが、いま申しましたような点につきまして、労働省としても、事務的に税制面で、減税案というものを考えて今後対処してまいりたいと、かように考えております。
#30
○大橋和孝君 いま制度について聞いているところで、局長もおっしゃっているわけです。先ほどの質問にちょっとまた戻るわけでありますが、工賃が安いと先ほど提起したのですが、この問題は、やはり労働手帳の問題を心配する前に、まだ工賃が安いからそこまでいかぬというわけですが、私は、ここでことばじりをとるわけじゃございませんけれども、先ほど申し上げたそういう工賃の安い実例もあるわけですから、どうか工賃をひとつ十分引き上げていっていただきたい。私は、もう一つそこで言いたいのは、手帳でいま言うてるような仲介とか、そういう問題が規制されるようなことを考えておられるのじゃなくして、そういうものに対しては、また特別の規制方法を考えてもらう。手帳も私はいいことだと思うんです。こういうことでやってもらうことは一番いいことだと思うんですが、それが正直にやれるような形で、税制の問題も、いま具体的な問題を労働省で考えておられるということは非常にありがたいと思います。いわゆる一家総ぐるみで生活をささえるためにやっている人たちを守る、また、勤労意欲をより発展させる意味においても、そういう人たちに対する工賃をよくする、一面、よくしても税金云々で、努力すれば努力したでそのまた横つらを張り飛ばすというような過酷な政治でなくて、努力したなら努力した人に多少大目に見てやるというあたたかい税制の考え方も、必要と思うので、これだけの法案をつくって、そういう弱い労働者を大事にしようというたてまえの法案ができるとするなら、私はこれをごく早く、これから徐々に考えますという状態じゃなくて、こういう法案を出して、それがすぐ実行できるようになるには、こういう裏づけがしてあるよ、これが私は親心の届いた行政だと思うんです。ですからして、いまの決意のほどはありがたいですけれども、これからおもむろに考えてやりますということでは、このせっかくの法案が、いま私が指摘したように、十分に履行されない。やってみればすぐ税金で損するわいというような手帳の制度をつくってみてもいけないわけでありますから、聞けば、工賃が安いんであまり影響ないという話でありますけれども、それならもう一言言わなければならぬのでいまお願いしているわけですが、工賃がもっと上がって、そして手帳に書いてあることによって税金の対象になるほどに工賃を上げてもらいたい。工賃が上がって、しかも税金の対象にならないようなまた税制も考えてもらいたい。こういうようにならなければ、せっかくつくったものがよくならぬわけですから、私は引っくるめて、えらいことばじりをつかまえたような言い方をするようでありますけれども、決してそういう意味じゃなくて、こういうような法案ができたならばできた時点で、もうそういうふうなことで非常に血の通ったあたたかい法案として、あるいはまた行政として受けとめられるようなものにしてほしい。いまの決してことばじりをとったんじゃなくて、ほんとうにそういうことをやってもらいたいという意味で申し上げているわけですから、この点はひとつ労働省としては総ぐるみになって、そうして税金にもはね返りのいかぬように、また、こうしたことで規制できるものなら少しでも規制して、あるいは別の方法で規制するとかして中間搾取をなくするように、そして工賃が上がっていくように、家内労働というものに対して、ほんとうにこれを守るところの血の通った法律であるというようにしてもらいたい。これはひとつ特に強調しておきたいと思いますから、大臣にこのことを伝えてもらって、労働省全体としても、ごく短期間にこれはやってもらいたいと思います。そこに政務次官がおられますから、大臣にその点やってもらいたいと思いますが、そのお気持ちをはっきり述べておいていただきたいと思います。
#31
○政府委員(大野明君) ただいま先生御指摘の点につきましては、大臣がおりませんので、私から十二分にその意を伝えておきます。
 確かに労働力の不足している今日の社会情勢において、家内労働者の方々の力というものは非常に大きいと言われておりまするが、そこにはまだまだ工賃が安いとか、いま御指摘のような点たくさんございますので、十二分に意をくみ取りまして、早急に労働省といたしましても善処いたすようにやっていきたいと考えております。どうか御理解賜わりたいと思います。
#32
○大橋和孝君 もう二、三点だけ簡単にひとつ聞かしていただきたいと思います。
 就業時間の問題でありますが、「家内労働者が業務に従事する場所の周辺地域」とは、一体、具体的にどの程度の範囲をおっしゃっているのか、これをひとつ私は聞かしていただきたい。一方、就業の時間の場合には周辺地域と、こう規定されているのに対して、最低賃金法の工賃額の決定のときになりますと「一定の地域」になっているのですね。この場合の地域の限定の相違は、一体何を根拠にしてやっていらっしゃるのか、ひとつその分け方の根拠を聞かしていただきたい。
#33
○政府委員(藤繩正勝君) 第四条の規定におきまして「家内労働者が業務に従事する場所の周辺地域」という表現が出てまいります。これは家内労働者の就業する地域の周辺ということでございまして、具体的には家内労働の産地的なものを実は考えているわけでございます。これらの産地などにおきます同種の雇用労働者が実際に労働している平均的な労働時間と比較して、非常に長くなるというようなことのないように処理いたしたいという趣旨でございます。したがいまして、産地でございますので、そういった表現になっておりますが、最低賃金の場合には、先生御承知のように、通常は都道府県労働基準局単位でやっておりまして、必ずしも県の単位と同一ということには限りませんけれども、一応、管轄地域という意味でそういう用語は使いわけをいたしておりますが、さして大きな相違があるわけではございません。
#34
○大橋和孝君 それで、ちょっと私ひがんだ受け取り方かもしれませんけれども、時間的に言う場合にはだいぶ広めてお話をし、それからまた、工賃のほうで言えば、比較的縮小してあれされているというふうに私は解釈したのですが、そうじゃないですか。
#35
○政府委員(藤繩正勝君) その点は逆でございまして、最低賃金は、実際に決定した状況をごらんいただきましてもおわかりになりますように、通常はたとえば東京でございますと東京都全域につきまして、先般も金属労働者八十四万の最低賃金をきめたということになっておりますが、家内労働の就業時間につきましては、たとえば山梨の県内の機業地なら機業地というところを取り上げまして、そこには通常の労働基準法適用の事業主、雇用労働者もいる、家内労働者もいるという状態の場合にそこをとらえるというわけで、どっちが大きいかということは一がいには申し上げられませんけれども、どっちかと言えば、家内労働のほうが産地的にまとまったものが多いということになろうかと思います。
#36
○大橋和孝君 それからこの「委託の打切りの予告」の問題でありますけれども、委託者からの一方的な委託の打ち切りは、家内労働者にとっては、雇用労働者の一方的な解雇みたいなものにあたると私は思うわけでありますが、この「委託の打切りの予告」というものが委託者に対して遅滞なくせよという努力規定に終わっているだけでは、私は、どうも不十分だと思うのであります。家内労働者にとって、委託の継続打ち切りはそのまま生活に響いてくるわけでございますから、非常に大きな問題であろうと思います。ですから、明確に予告期間を規定する必要があると思いますが、これはどうですか。特に、また「委託の打ち切り予告」は、労働基準法の第二十条「解雇の予告」と同様な性格を持っておると思うわけでございますが、したがって、労働基準法第二十条にありますような予告手当を委託者に支払わせるような方法があってしかるべきだと思いますが、この点についてどういうふうにお考えになりますか。
#37
○政府委員(和田勝美君) この打ち切りの問題につきましては、実は家内労働審議会が相当長期にわたっていろいろ御熱心に実態調査をされまして、審議会としても相当な御議論がございました。ただ、その際に委託の打ち切りについては明確な期間を置いて予告させるべきではないかという御意見も非常にございましたし、また一方におきましては、いや、委託者自身も非常に不安定なんだ、思いがけないところでばたんと委託者自身が切られてしまって、とても家内労働者に予告をする余裕はないんだという実情も委託者から述べられて、家内労働というのは、全体として見れば、雇用労働のようにはっきりした形でおまえを雇うという形になりにくい社会経済情勢が一般的にあるから、それを無理に法律で一カ月前に予告せいというようなことを言われても、ほんとうにこれが実行できるであろうかという実情論が非常に御議論になりまして、結局は、できるだけ早く委託の予告をしたほうがいいけれども、なかなかむずかしい問題が委託者及び家内労働者双方にあるんじゃないか。だから家内労働者側から見ますと、実は必ずしも一人の委託者から仕事をもらっているというばかりでもない、複数の委託者から委託してもらっているという実態も実態調査で出ております。そういうようなこともございまして、にわかには委託の予告打ち切りというのはむずかしいだろう、しかし、それに対しては一定の方向を指示するような法律上の措置を講じたらどうかという御議論に大勢が落ちつきまして、第五条にありますように、「六月をこえて」云々、こういう規定になったわけであります。これは、ただこのままでいいというわけではございませんで、この法案が法律になって、現実に動いていきます場合において家内労働が漸次整理された姿になっていくだろうと思いますので、そういうのを見ながら行政措置でやる、あるいは行政措置ができなくなったときには法的な改正もするという漸進主義でいったらいい、こういうことでございますので、この法案では、第五条のように、なまぬるい規定ではございますが、そういう漸進を目ざした規定であると、こういうことで御理解をいただきたいと思うのでございます。
#38
○大橋和孝君 うまいこと言うからころっと聞かされちゃうけれども、漸進規定はよくわかりますけれども、先ほどもちょっと私触れましたように、これは、低工賃で非常に弱い立場にある家内労働者を守る法律なんです。私ども、法律を見せてもらっていると、委託者のほうを主体に考えて、下のほうを守るべき法律の精神が上のほうを考えたために飛ばされてしまうというような形も考えられぬこともないと思うんですね、しいて解釈すれば言えるわけなんです。この問題は、結局は、労働基準法が労働者を守るためにつくられて、そしていろいろ規制されてきた一わけですが、今度の家内労働法というのは、家内労働者に対する労働基準法だと見ていいと私は思いますが、そういう観点から言えば、やっぱりこれが基準になっていくわけですから、あんまり手ぬるいことをやってもらってはいけない。むしろ手きびしいのをつくっておいて、場合によっては、それをゆるく見ることもあり得るよということのつくり方であったらかえっていいと思うんですが、そこのところは、たてまえが反対だと思うんです。初めからゆるい法をつくってきつくすればいいんですよというのでは、家内労働者を守るための法律とは言えないわけですよ。労働基準法をつくった場合には、そういう方針でおそらくつくられておったと思うんですね。労働者を守るために基準になる法律だから、手きびしいけれども、多少悪いというときには何とかして情状酌量することのできるものだというものをつけてもらえば、私は話がわかる。これは逆じゃないかと思いますが、それはどうですか。
#39
○政府委員(和田勝美君) 基準法には、確かに一カ月の予告という制度を設けまして、非常に強い規定として実行されております。この点は、雇用労働者の場合には、たとえが悪いかもしれませんが、一対一、特定の事業主と特定の労働者ということが前提でございまして、他にはほとんど収入がないというようなこともありますので、急に切られてはたいへんだということで一カ月の予告期間、これに対しまして委託者と家内労働者の場合には、一般的には一人の委託者と家内労働者ということが多うございましょうが、実はそればかりでないことも相当あるようでございます。都合によって実は家内労働者のほうで委託者を選定がえされる場合もあるようでございまして、短期的には非常に流動的であるというようなことが御議論になりまして、それで第五条にありますように六カ月をこえるというような一つの長期のものにしておく、しかも六カ月をこえても、先ほど言いましたように、委託者も地位の非常に弱い委託者がおられる。それをあらかじめ予告しなければいけないし、予告手当も払わなければならぬというのでは、委託者としても、とても責任を負いにくい面もあるというような実態論が非常に支配をしたわけでございます。そういう御議論がいろいろ重なりまして、しかし、そのまま放置しておくのは問題だから、五条で一つの方式を示しておいて、行政の浸透を待って、さらに明確なものへ進み得るような行政指導があった上で法律的な措置を講じていったらどうかということで、確かに実情があまりにも法案の上で作用し過ぎているのじゃないかという先生の御指摘はそのとおりでございますが、家内労働が相当複雑多岐、非常にいろいろな様相を持っているということも事実のように思いまして、審議会の御意見のあるところをこういう五条のようなことで規定したわけでございますので、先ほども申し上げましたが、前に進むという姿勢のもとにおいて御理解をいただきたいと思います。
#40
○大橋和孝君 それから工賃のほうの問題について伺いたいと思うのですが、工賃は全額を通貨で家内労働者に支払うということに原則としてはされておるわけでありますけれども、実際、全額通貨以外に例外の措置として労働省令で認められるようでありますが、これは一体どういうわけでありましょうか。ことに専業的に家内労働者になっているのは手形決済の部分が相当あるように聞いておりますが、そのような状態はどうなっているか。
 第二点には、この専業的な家内労働者と委託者との間に、従来からの慣行としまして、工賃を手形によって決済されているケースが非常に多いと思うのです。この手形の現金化される期間が非常に長いので、家内労働者は資金の回転が困難となって資金難におちいることが非常に多いわけでありまして、手形を結局無理に現金化するために、そこで何割かの大きな割り引きをして現金化していることが事実上あるわけでありますが、これは実質的な工賃の低下を招くことになりますので、この法律の趣旨と全く反する結果になるわけでありますから、この法律の趣旨を生かすためには、行政指導としては非常に具体的な政策が必要であると思うのでありますが、それを一体どういうふうに考えておられるか。専業的な家内労働者は十二万人あって、その一割が手形決済なんかされているという報告も基本調査の中で出されておるわけでありますから御存じだろうと思うのでありますが、手形決済のために、工賃が安い上にもう一つ安くなっている。こういう問題について一体具体的な方策がどうとられるか、しかも省令あたりでそういうことを許されるということの理由もわからない。
 第三点には、地域を区分して、地域ごとに最低工賃を定めるというふうにおっしゃっている。私は、最低工賃をやることには決して反対だとは申しておりませんが、やはり全国一律な最低工賃を決定するというような立場、全国一律な最低賃金の立場から考えて、私はこれはどうもおかしいわけでありますが、この最低工賃をきめる地域についての問題、これは一体理由はどこにあるのかということもひとつ聞かしてもらいたい。なぜ全国一律にもう少し幅広くしないのか。一定の小さいところに区分をするのはおかしいと思うのでありますが、この点についてもひとつ聞かしていただきたい。
#41
○政府委員(和田勝美君) 原則は、第六条で工賃は通貨で全額支払うということになっておりまして、通貨以外で支払いますものとして労働省令で定めますものは、通貨と全く実質的に同じような口座振替制とか、郵便為替とかあるいは銀行支払い保証付小切手というような、間違いなく現金化されるものはかまわないというのが第六条の「工賃は、労働省令で定める場合を除き、」ということでございます。手形払いの場合は、実は六条で考えておりませんで、附則の第二条のほうでございます。附則の第二条で「工賃の支払いに関する経過措置」というのがございまして、家内労働審議会の意見を聞いて、経過的に、ある期間手形払いも認め得る場合も想定されております。これはどこまでも経過的な問題でありまして、本則は通貨で支払われるということが前提であります。なぜ、しからば附則の二条のようなものを設けたかと申しますと、実は専業的な内職者の方は、むしろ請負とかいうようなものよりも売買形式でなさっている場合がございます。これは例をちょっと申し上げてみますと、福井県の織物業、それは両方が独立した企業者のような形で行なわれておる。しかし、実際は家内労働者というような場合、それから奈良県の靴下製造業というような場合、それから山口県の撚糸とか、染色整理業というようなもの、それから長崎県の陶磁器の素地の製造、石川県の山中の漆器をつくって問屋に納める、こういう場合は、実態は働かれる姿は家内労働者ですが、その方の専業意識としては、私は事業者であるという意識、現金でもらうなんというのはこけんにかかわるというような言い方をされる向きもございましたので、そういうのは漸次−商慣習もあることですから、一挙に行きにくい。漸進的にやっていきたいという意味で経過措置が入ったわけでございます。本則はどこまでも通貨で払うというのが前提でございます。
 それから、最低工賃の問題でございますが、実はこれも先生十分御理解をいただいておるところでございますが、家内労働に発注をされますものは実に千差万別なんでございまして、工賃をあらかじめきめるとか、あるいは一律にきめると申しましても、非常に工数その他の関係で問題がある。それならば、それは時間に引き直して引き取ったらいいじゃないかというような議論があろうかと思いますが、実は時間に引き直すには非常にむずかしい能率問題とかありまして、時間の測定が非常にむずかしいのでございます。これは自宅でやられるのが主でございますので、一体どれだけの能率でどれだけおやりになるのかということが、家内労働者個々人の自分の御判断というのが非常に多うございますので、そういう意味でなかなか一律というものはむずかしかろう、全国一律というのはむずかしかろう。やはり一定地域のある製品につきましてのピースレートをつくって、そういうものが漸次定着していくに従って拡大していくというのが実際的な方式だろうというふうな議論になりまして、ここで最近工賃については一律制を廃して、一定の地域の一定の業種ということできめておるわけでございます。これも家内労働法全体が、漸進的に一歩一歩踏み固めていこうという家内労働審議会の答申の基本の姿勢を取り入れて書いたという点で御理解を賜わりたいと思います。
#42
○大橋和孝君 なるほど、多種多様にわたっているから全国一律にやることはむずかしい、だからして地域的にやるのだという意味は、私もわからぬこともないのですが、多種多様にわたっているからこそ、その中のある種のものはかなり普遍的にいけるものもまた出てくるのじゃないかと思うのです。ですから、初めから地域的にやるものだというふうなことにしないで、やはり同じような業種であれば、全国的にそう差をつけないでいく。何となれば、いま物価指数だとか、いろいろ考えてみましても、必ずしもいなかだから安いとか、あの地域は特に産地に近いから安いということではなく、生活の面から考えて、物価指数とか、消費物価の面からいってもほぼ似ているということになれば、できるだけ一律の方向に持っていかなければならぬので、私の先ほどの発想と同じで、いいことのほうを先にきめておいて、いけない場合はこれは附則でこういうふうに取り扱うのだというような規定のしかたをしてもらわないと、初めから地域的にこれはやっていくのだという安易な方向できめていくことは、ほんとうにそういう人たちを守るという立場から考えたら、本末が反対じゃないか。したがって、なるべくならば一律できめていく。だけれども、行政上こういう区分でやらなければならない場合においては、こういう法律の定め方もやむを得ないが、どうも法律をいろいろずっと見ていますと、何か委託者のほうに都合のいいような、あるいはまた実際きめるのにも、安易な方向が先行しているような感じが、私のひが目かもしれませんけれども、するわけです。これはひとつ厳に慎んでもらって、こんないい法律をつくるときには、もっと前に進んだものを出してもらって、実態に即していないものは経過措置として、そちらに移行するというような形に持っていっていただきたいと思います。そういう点で、私は、少し足らないところがあるような感じがするわけですから、特にそういう点をひとつ考えていただきたいと思います。
 それから次に、委託者は家内労働者に「最低工賃額以上の工賃を支払わなければならない。」としておりますが、この確認ないし調査は労働基準監督官が行なわれることになるだろうと思うのでありますが、いまの労働基準局の行政で、人員が非常に不足しているところで、一体、この無数におる家内労働者に対して最低の工賃が支払われている状況というものを十分に把握できるかどうか。この規定の効果が上がるのか、ここに疑問がある。つまり労働監督の行政の中で人員が少な過ぎるのじゃないかというように思うわけでありますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
 それからもう一点は、最低工賃は、同一の地域内において同一又は類似の業務に従事する労働者に適用される最低賃金との均衡を考慮して定められなければならない、こういうふうになっておるのでありますけれども、現実には、やはり工場の労働者と家内労働者とが同一の仕事をしておっても、家内労働者のほうが工賃が非常に安くて不利であるということが起こっておるわけでありますが、ここにいう「均衡」とは、一体、完全な均衡なのか、それとも工場労働者の最低賃金は一定の高いところにあって、家内労働者の工賃はそれよりも幾らか低いものであるということで均衡を保っているといっているのか、ほんとうに同一のレベルで均衡を保っているといっているのか、私は理解に苦しむわけですが、この点についても明快なお答えを願いたいと思います。
#43
○政府委員(藤繩正勝君) 最低工賃の件に関連いたしましてお答え申し上げます。
 先ほど、全国一律の最低工賃制という御指摘がございまして、理論的にはそういうお立場もあろうかと思いますが、現実に、私ども、いま執行上も最低工賃を旧最低賃金法の規定に基づきまして幾つかつくっておりますが、ひとつその実例を御紹介いたしますと、たとえば長野県のメリヤス製造業というものがございまして、その中には編み立てとか、リンク、まつり、手がかり、いろいろ業務の種類がございます。その中のたとえば編み立て一つをとりましても、婦人用の丸首、半袖、無地カーディガンというのがございまして、そして針数が幾つとか、ゲージが幾つあるかというようなこともそれぞれ違っておりまして、また前みごろ、うしろみごろ、えりというものに従いまして、それぞれ別の最低工賃をきめなければならない。というのは八時間に換算いたしますときの標準能率が違いまして、それぞれの標準能率を設定いたしまして換算をいたします。そうして必要経費を除いて、その地域の雇用労働者の最低賃金あるいは雇用労働者の一般的な賃金と比較する。こういうぐあいに非常に複雑になるわけでございます。そこで、なかなか一がいに一律ということは実際上たいへんむずかしいということをぜひ御理解を願いたいと思いますのと、最後に御指摘になりました比較の問題も物品の一定単位あたりでこれはきめるわけでございます。条文では十三条の2項にございますが、そういうきめ方をいたしますので、当然賃金と比較いたします場合には、家内労働の物品の単位当たりに要する標準的な時間というものを、それぞれいま申し上げましたように算出をして換算する。しかも、その場合、家内労働の場合は雇用労働にない減価償却費あるいは副材料費、光熱費などの必要経費が含まれておりまして、そういうものを差し引きまして均衡を考慮するということでございまして、均衡の考慮のしかたにつきましては、家内労働審議会で御議論をいただいて、その結果を尊重して行政官庁としてはきめるわけでございますが、ただいまあげました長野県の例その他を見ましても、雇用労働者の場合より、どっちかというと、少し高目にきめておる。非常に技能的な労働が内容になっておるということも考慮されまして高目にきめられているというのが実情でございます。
 なお、最低工賃の効力につきましては、十四条に「最低工賃の効力」といたしまして、「委託者は、最低工賃の適用を受ける家内労働者に対し、その最低工賃額以上の工賃を支払わなければならない。」とございまして、これに対する違反は罰則の対象になるわけでございます。と同時に、十六条にまいりまして「工賃及び最低工賃に関する規定の効力」とありまして、そういう「規定に違反する工賃の支払を定める委託に関する契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、これらの規定に定める基準による。」ということで、刑事的にも民事的にも担保されておるということになっているわけでございます。
#44
○政府委員(和田勝美君) 法律的には、ただいま賃金部長からお答え申し上げたとおりでありますが、民事及び刑事上の問題は法理的に解決されたとしても、実際上、それじゃ家内労働者をどう見られるのかというと、これは確かに家内労働者の自覚とともに、監督官の活動ということが当然必要になってまいります。そのために、実は四十四年、この法案を提案しましたときに、一応局内の事務整理のために一応の定員を取りまして、わずか二十二名、監督官は二十五名でございます。ことしは、家内労働だけということではございませんが、全体として七十五名の定員増ということでございます。しかし、家内労働のこの法案が通りました後における事務量を考えますと、これは相当な事務量になってくる。そういう点では、確かに監督官の数というものが絶対的に不足をするのではないかという御指摘でございますが、私どもとしては、相当努力をしなければいけないけれども、何とか、とにかくこなしていこうという姿勢でございます。しかし、実際に法律を動かしてみますると、おそらく相当な状態が出てくることは覚悟せざるを得ないと思いますので、私どもとしては、四十六年以降におきましても、必要な監督官の増員ということについては、大臣以下ぜひ努力をさしていただきたい、かように考えております。
#45
○大橋和孝君 いまの点、大体わかったわけですけれども、もう一つ念を押してお尋ねしておきたいと思いますが、私が申し上げた一律の工賃ということは、工場あたりで働いているのと、これを家内労働に持ってこられた場合と比較して見ておるわけですが、工場へ行けば一定の賃金で案外高い。ところが家内労働の場合は同じような仕事をやっても安い、こういうようなことになってくると、しろうと的な考えですけれども、工場へ行けば福利厚生施設もあって、そうして賃金も高い。家内労働になりますと、光熱費とか、電気、そういうものを自宅で使っておるわけですから、それだけ負担になってくるわけですね。その上にまだ福利厚生施設もやってもらっていない、しかも、その工賃が低い。地域がばらばらしているから、地域で非常に差があり、うまくできていない。こういうことで悪いところはいつまでも悪いまま残しておかれることになる。ですから、私は、家内労働の最低工賃の考え方は、もっとレベルを高いところに置いておいてこうすべきだと、けれども、実情はこうなっておって十分でないから、できるだけこうするんだと、これを例外的な経過措置としてやられるべきである、こういうように思いますが、その点が納得いかぬわけです。先ほどの説明を聞いておっても、それは多種多様であるから、低い例をあげてみたらこういうのもあるでありましょうと、それはそういうものはあるでしょうが、そういうものを先に持っていったんじゃこの法律の精神は死んでしまうわけです。
 次に、もう一つ必要な点は、工場でやっておる仕事と同じようなことを家内労働でやったとしたら、こっちは賃金は高いし、いま言ったように、福利厚生施設、いろいろなことでカバーされていく、電気も使わんでもいい。家でやったら自分で電気や、ガスや、何から何までやらなければならね、しかも福利的なものは何ももらっていない、工賃も安い、こういうふうになりますね。そういうことをこの法律ではできるだけチェックをしてやろうというたてまえなんだから、やはり最低工賃のときにもう少しいいものをつくりなさらぬかというので、私は、どうも納得いかぬのですが、そこのところはどうでしょうか。
#46
○政府委員(藤繩正勝君) 最低工賃、最低賃金もそうでございますけれども、たとえば賃金の場合には、本来、賃金は労使が対等の立場で自由に決定するというのが原則でございます。しかし、それでは例外的に非常に低いものが生じがちである。したがって、最低賃金を設けるということでございます。工賃の場合も全く同様でございまして、工賃は、委託者と家内労働者がやはり決定するというのが原則でございますが、その下ささえとして国が罰則をもって最低限を画するというのが最低工賃でございます。
 そこで、その最低工賃のきめ方につきましては、いま十三条でごらんいただいておりますようなことでございまして、その地域におきまして「同一又は類似の業務に従事する労働者に適用される最低賃金」というものを基準にして、それとの均衡を考慮して定めるということにいたしておるのでございまして、それは最低の罰則を伴った下ささえという意味において、そのような規定になっておるわけでございます。
 それから、先生の御指摘の光熱費やあるいは減価償却とか、いろいろなものが要るではないかという御指摘は、まさにそのとおりでございまして、先ほども御説明いたしましたように、最低工賃をきめます場合には、したがいまして、そういうものをまず最初に抜きまして、抜かれたあとの金額につきまして、なお単位当たりの能率等を勘案して最低賃金と比較する、こういうきめ方をいたすわけでございます。
#47
○大橋和孝君 わかりました。あと一、二点。
 今度は、安全や衛生の問題でありますけれども、委託者及び家内労働者は危険防止のために労働省令で定める必要な措置を講じなければならない、こうあるんでありますけれども、具体的な措置として、一体、中身は何でありますか。家内労働でも、新聞なんかで報じられておるところを見ましても、やはり中毒事件が起こったりして社会問題にもなっておるわけでございますが、こういうような問題に対して、具体的な措置は何であるかを伺いたい。
 第二点は、危険防止には防止施設を設けることとなって、新たな設備投資がなされなければならぬであろうと思うのでありますが、しかし、生産に直接結びつかない投資はなかなかやりたくないというのが原則でありましょうから、家内労働者や委託者、これは中小企業、零細企業でありましょうから、経済力の弱い立場で、なかなか投資に対する経済的負担も大きくなろうと思うのでありますが、この実態から見まして、一体、法案の趣旨を生かすために具体的な方途は何を考えておられるのか。どういうようなことをお考えになっているのか、それを第二点として聞きたい。
 第三点は、危害防止の目的を達成するための手段の一つとして、政策融資が考えられたらどうかと私は思うのであります。零細な委託者や家内労働者に対して融資する場合には、やはり債務の負担ということが非常に問題になってくるわけでありますから、債務の保証の問題がここに起こってくると思うのです。そうすると、その負担能力を考えた場合に、やはり危険防止の具体的な対策を立てて、そうした負担能力を考えたところの特別施策を考えなきゃいかぬと思うのですが、この点についてはどうなっておるか、この三点について、時間もかかりますからまとめてお聞きします。
#48
○政府委員(藤繩正勝君) この法案で、家内労働者及び補助者の安全衛生の確保のためには、危険有害な業務における被害の防止のための必要な措置を委託者及び家内労働者は講じなければならないとしておりますので、危害の発生のおそれがある場合に委託及び受託の禁止、機械設備の使用停止命令などの措置を講ずることにいたしておるわけでございます。その具体的な内容につきましては、今後、家内労働審議会の御意見を伺いながらきめていくわけでございますけれども、いままで主として災害が起こっておりますのは、金属加工におけるプレスでございますとか、あるいはヘップサンダル事件に見られましたような有機溶剤的なものがいままで問題になっております。したがいまして、この内容といたしましては、家内労働者に施設、道具等を貸与する場合に安全装置を取りつけさせる、あるいは危険有害業務の委託の場合に適切な作業方法等を指示する、あるいは安全衛生教育を実施することを義務づける、あるいは有害な原材料等によります場合には、その貯蔵方法や、内容物の表示というような具体的措置を規定するというようなことを現段階では考えております。いずれにしましても、審議会の御意見をちょうだいしまして具体的にきめてまいりたいと思っております。
 それから御指摘のように、そういった規制をいたします場合には、委託者のほうで、ある程度の負担が出てまいりまして、それについてどうするかということでございますが、委託者は大部分におきまして中小、零細事業の経営者でございます。そこで、通産省ともよく連絡をとりまして、先生御承知の一般的な中小企業対策で近代化資金その他の措置がございますから、できるだけそういったものを十分にこういった方面に運用していただくように、私どもからもお願いをしたいと思っておりますし、それからまた一般の労働基準法適用の事業の場合に、中小企業を対象に、一定の安全衛生施設の整備に関しましては、特別融資の制度も実施いたしておりますが、そういったものの適用が可能かどうかということも、今後の運用に照らしまして検討をいたしてまいりたいというふうに思います。
#49
○大橋和孝君 もう一点、この問題について。ちょっと気がおさまらぬのですが、それは中小企業、零細企業だから、中小企業対策としてやられることはそれは当然だろうと思うのですが、この法律ができた場合、先ほどから何べんも強調しているように、特別ですね、これは。いま私が指摘したように、中小零細企業だからその能力がないわけです、いままでの傾向からいったら。そういうところの融資に対しても、なるべくならばそのままにしておきたいというのが零細企業者の気持ちだと思うのです。だからやはりこの法律をつくったたてまえからいったら、この場合には特別に何か考えなければ意味ない。中小企業の近代化の金借りてやりなさい、中小企業対策があるからそれでやりなさいと言っておったのでは意味をなさぬ。私は、それで質問しているのですから、ありふれた答弁をいただくだけだったら何も時間かけて質問することないわけですから、もう少し具体的に、そうするにはどうするか。たとえば特別融資をするのも、小さな零細企業であれば、負担能力がないからなかなか金も貸してくれないのですよ、何とかしなさいと言ったって。だから労働省のほうでそういう小さい零細企業に対しては何か保証をするような方法を考えてやらなければ実際できないのです。こういうことをあなたのほうはどう考えておられるのかということを問うているのでありまして、一々零細企業は中小企業対策のほうでやりますということならば、いつまでもできていかないというのが結果にあらわれてくるわけですね。だから、そんなことなら今度この法律をつくってみたって何にもならぬじゃないですか。私はそういうことをいま三点に分けてどうされるのかということを聞いているのですから、もう少しこれに対しての前向きの姿勢を示してくれないと、から念仏の法律をつくっても何にもならぬ。働いている人はいつまでたってもよくならないし、危険もあるじゃないですか。現に新聞にも出たように、中毒事件が起こっているじゃありませんか。だからそういうことに対して、こういう零細企業であるだけに、労働省としては、働くものを守るたのめ法律をつくるのだから、つくっただけのものをあらわしてもらいたいというのが私の考え方ですよ。だからそんな冷たい答弁を受けるのだったら何も時間かけて話をする必要はないと思います。だから、ここのところは、大臣におってもらわなければ話にならぬけれども、次官、ひとつここのところをはっきり大臣にこの問題はちゃんと伝えて詰めておいてもらいたいのですよ。
#50
○占部秀男君 関連して。いまの大橋君の問題ですね。これは、従来、家内労働法なら家内労働法というものがなければ一般的な社会問題として取り上げられる問題になってくるわけです。ところが、一朝家内労働法というものができて、法の対象ということになると、単なる社会問題ではなくて、少なくとも労働省としては、何らかの行政手段によってそういうことが行なわれないようにしなければならない義務というか、責任があるわけですよ。従来と同じような形だったら何もこの法律を設ける必要はないのであって、そこを大橋君はいま言っているわけです。
#51
○政府委員(和田勝美君) たいへんおしかりを受けまして恐縮に存じます。実は、賃金部長からいま通産省とも連絡をしながらやるということを申し上げまして、決して労働省は、この法律ができて新しくものを考えないということではなくて、多少さっき触れたわけでございますが、特にこの法案では二十五条をごらんいただきますと、国または地方公共団体の援助という規定がございます。この条文等を基礎といたしまして、私どもは積極的な施策を講じて安全衛生問題をやってまいりたい。したがいまして、いま大橋先生が御指摘になりましたように、委託者につきましても、中小企業あるいは零細企業が相当多いわけでございますから、通産省のほうの施策も施策としてやってもらい、私どもとしましても、安全と衛生を守るという意味からの施策を講ずるということで、担保の問題その他についてもひとつ積極的な検討をいたしまして、四十六年度予算編成等に当たりましては十分考慮さしていただきたい、かように考えております。
#52
○吉田忠三郎君 和田君ね、いま君の答弁を聞いて、ありきたりのおしかりをこうむりましてとか、そういうおせじめいた答弁やめなさいよ。議員が質問しているのは、しかるとか何とかいう意味じゃないのですよ。この法律を立法化した場合に、家内労働に働く労働者を、ここにも書いてあるように、どう一体保護するかという、そういう意味で指摘をしているのです。あるいは問題点を提起しているのです。そういうおせじめいた答弁は自今やめなさい。
#53
○政府委員(和田勝美君) 国会における御審議でいろいろの御指摘をいただきますことは、私どもといたしましても十分心がけてそれに応じたいと、こういう気持ちで御答弁を申し上げていることを御理解いただきたいと思います。
#54
○大橋和孝君 じゃ、最後に労災の問題についてちょっとお尋ねしておきたいと思うのですが、この家内労働者の労働災害の発生を未然に防止する対策が必要であることは言うに及ばないわけですが、また一方、家内労働者が一度労災を起こした場合、これは家内労働者の経済力から言いますと、ほんとうに死活の問題になるわけですね。ですから、この間の事情を考えて見ますと、何らかの対策を講ずる必要があると思うのでございますが、今度のこの家内労働法の中では、こういう問題についてどのように用意をされているのか。いわゆる特別加入の方途が強制的にやれるような形にまで発展していただけるのかどうかということが第一としてはお伺いしたいと思います。
 それから、臨時家内労働調査会が四、五年前に発表いたしました、現在の労働者災害補償保険法ですか、この三十四条の十一、五号の「労働省令で定める種類の作業に従事する者」を適用して、労災保険の特別加入を当面の行政措置として行なうよう要望しておるのでありますけれども、この措置がなされないまま今日に至っておるのが現状だと思うのでありますが、この原因は一体何であるか、この点を第二点に聞かしていただきたい。
 それから家内労働審議会が四十三年末の答申に、労働災害審議会に対して、応急策としての家内労働者の労災保険加入について検討するように要望があったことは御存じのとおりだと思うのでありますが、これは本年度において、現行労働災害保険法の抜本改正がこれから出るわけでありましょうが、この中で、この家内労働者の労働災害問題を、労災保険制度の中でどのように位置づけてやっていかれるのか。この問題についても、ひとつ特別加入をどういうふうにされるのか、これを検討しておられるのか、その内容をひとつ聞かしていただきたいと思うわけであります。
 それからその次の点は、労災問題をあわせて、家内労働者に対して健康問題があるわけでありますが、これは非常に重要な問題で、国ないし委託者の負担で健康診断を行なう必要があろうと思うわけでありますが、この健康保全の目的のために、今回この法案ができた中で、これをどういうふうに消化されていくのか、省令か何かに盛り込まれてこれがやられるのか、そういう点に対しても十分わからないわけでありますが、この点についてひとつ御説明願いたい。この四点についてちょっと教えてください。
#55
○政府委員(和田勝美君) 労災の適用の問題につきましては、労災が雇用労働者と事業主という関係の規定でございますのに対しまして、家内労働者はそういう雇用形態でないという姿を前提にした法律構成になっております。したがいまして、労災をまるまる適用するということが法制的にはできないという状態でございます。しかし、幸いに労災保険法には特別加入制度がございます。家内労働審議会におきましても、この業務上の災害あるいは病気についてはどういう制度を設けたらいいかという点で相当の御議論がございましたが、結果的には、答申でごらんいただきますように、「当面暫定的な措置として、現行の労働者災害補償保険制度における特別加入制度に加入させるものとし、特定の業務の範囲については、関係審議機関の意見をきいて定める」、こういう答申が出てまいりました。これによりまして、実は、私どものほうで労災保険審議会に対して、家内労働審議会からそういう申し立てのあった旨を申し越しましたところ、昨年の八月、労災保険審議会の建議がございましたが、その場合につきましても、「家内労働者の労災保険適用についても、家内労働法成立後には家内労働における災害の発生状況による適用の緊急性を考慮するとともに、」云々ということで、特別加入を認めたらどうかという建議が出てまいりました。労災保険審議会のほうも、そういうことでいわゆる受けて立たれたわけでありまして、この法律が成立をいたしました暁には、労災保険審議会のほうで、緊急といいますのは、病気が出やすいところ、けがが出やすいところ、たとえばヘップサンダルにおける有機溶剤を使う家内労働あるいは金属加工におけるプレス加工というような、そういうけがや病気の出やすいところを指定をして特別加入制度を設けよう、こういうことになっておりますので、そういう制度の運用によりまして、仕事の上のけがや病気に対しては対処してまいりたい、かように考えております。
 それから健康診断につきましては、いわゆる有機溶剤等を使う特殊なところ、あるいはじん肺の発生しやすいようなところにつきましては、災害防止協会のほうに実は健康診断の委託費等もすでに流しておりますが、そういうようなものを活用していく。もう一つは、委託者全部が家内労働者ばかりでございませんで、自分のところで雇用労働者というかっこうで雇って家内労働者と同じような業種をやらしておる場合もございます。そういうときには、委託者のほうが、雇用労働者について特殊な健康診断をやる義務がございますが、そういう機会を利用して、委託者が家内労働者についても健康診断をするような、そういうような行政指導をしていったらどうかと、かように考えております。この法案が成立した暁には、労災保険における加入状況等をにらみ合わせながら、特殊健康診断につきましても、具体的な予算措置その他を講じて健康管理を行なう、こういうような方式を講じさせていただきたい、かように考えております。
#56
○大橋和孝君 これだけ最後にお聞きしますが、いまの御答弁の中でも、まだ、私はちょっと食い足りんものを感ずるわけです。おそらくこの法律ができますと、実施に当たりましては、またいろいろな問題で省令あたりもいろいろ考えられることだと思うのですが、この省令を出される中で、いまの健康の問題あるいは災害に対するいろいろな問題を、もう少しこの法の精神を生かして、前向きに省令でそういうものを打ち出す、こういうことをやってもらいたいと思うんです。これは次官もおられますが、ひとつ大臣も、労働者全体として取り組んで、この法律を実施した段階で、省令でそういうものをもっと前向きにやっていくということを打ち出してもらいたいと思うんです。そうでなかったら、健康の問題にしたって、労災の特別加入の問題にしたってお座なりになりやすいと思いますから、今度の法律が実施されるに当たっては、省令でそういうことをやりますというくらいのことを言明してもらって、この問題に取り組んでいただきたい。最後に、私は要望しておくわけですが、すべて先ほどから私が議論をしてまいりました問題を積極的に省令の中で打ち出してもらいたい、これらのことを大臣にも伝えていただいて、ぜひ次官としての決意のほども一ぺんはっきりしておいていただきたい。それで私の質問は終わります。
#57
○政府委員(大野明君) 先生の御指摘のとおり、家内労働法をつくるに当たりまして種々の御意見を承り、また私どもとしても、たいへん意義があり、また参考になったということは言を待ちません。特に工賃あるいは安全衛生、保険制度等におきまして不備な点がございまするが、この点におきましても十二分に前向きの姿勢をもって、省令等においてやれというお話でございますが、もちろん家内労働審議会等の意見も参酌しつつ、できるだけ一日も早くできますように大臣にも申し伝えますし、私自身もそのような姿勢でやっていきたいと考えております。
#58
○渋谷邦彦君 初めに、大臣は二十分の予定でということで中座をされたのでありますが、七十分経過してもいまだにお姿が見えませんが、どうなっておるのでしょうか、その返事を待ってから質問いたします。
#59
○委員長(佐野芳雄君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#60
○委員長(佐野芳雄君) 速記を起こして。
#61
○渋谷邦彦君 理由がはっきりしているようでありますから、あえてどうこういたしません。
 まず、最初にお尋ねしたいのは、昭和四十三年の答申でございますが、本法が施行されるにあたって、その実効ある運用を期するためには、効果ある行政的な措置が講ぜられたいという意見が述べられているようでございます。その一環として、先ほども監督官の話が出たわけでありますが、もうすでにこの答申が出されて一年半に及ぶわけでございます。この間、当局として、具体的にどのような措置を講ぜられるのか、そして、また具体的にどういう方向で検討を加えられているのか、その点からお尋ねをいたしたいと思います。
#62
○政府委員(和田勝美君) 先生御指摘のように、家内労働審議会から答申が出まして、家内労働については必要な法制的な措置を講ずること、それは最も基本的で、かつ、緊急な必要性を認められるものについて、法制的措置を講ずるようにということで、幾つかの項目にわたっての法制定の答申をいただいたわけでございます。それとあわせて、いま先生が御指摘になりましたように、行政体制も漸次整備をしていって、行政指導を推進することによってさらにこの法制的措置が効果あるものに成熟をはかっていくように、そういう意味で段階的に法制の整備を進めることが望ましい、こういうように審議会の御意見が出ておるわけでございます。そういうことに関連をいたしまして、私どもとしては、前回の通常国会にただいま御提案をいたしております家内労働法案とほとんど全く同じといってもいい法案を提案いたしましたが、その際、予算的には一億一千九百万円ほどの予算を計上いたしました。残念ながら、国会の審議が未了になったわけでございますが、今回さらに再提案を申し上げまして、その裏づけとしまして、四十五年度では一億四千万の予算を計上さしていただいております。こういうように四十四年度に比較しまして二千百万円の増加ということで、伸び率はある程度のものでございますけれども、もちろん十分なものではございませんが、私どもとしては、それなりに努力をしたように考えております。さらに焦点でありますこの法律を施行する実質的な権限を持ちますのは労働基準監督官でございます。四十四年度におきましては、各局の事務体制を整備するとともに、家内労働の事務を処理するものとして二十二人の定員を獲得いたしまして、そのほか、監督署に所要の監督官を家内労働のために置くということで、二十五人の監督官を増員いたしました。それが四十四年でございますが、四十五年に入りまして、一応、局の体制は、四十四年にきまりましたもので認めることにいたしましたが、監督官につきましては、単に家内労働だけではございませんが、家内労働の加わることも考慮いたしまして、七十五人の増員ということにいたしておるわけでございます。七十五人は家内労働だけでございませんで、安全衛生問題等がございますから、決して十分なものではございませんが、一応四十四年度及び四十五年度につきましては、以上のような措置を講じた次第でございます。
#63
○渋谷邦彦君 いまの御説明ですと、総括的な答申に基づいたこれからの方向というものをお示しになったのだろうと思うのであります。お話しを承るまでもなく、監督官を充足するだけで一切のことが解消できるとは決して思えませんけれども、しかし、その監督官の充足ということが相当程度家内労働全般にわたって、前向きにこれを進めていくことができるという印象を受けるわけであります。ならば、この一億四千万円の内訳はどうなっているのか。と同時に、一体どのくらいの人員を充足すればまずまず最低限、監督官としての職責を十二分に果たし得るものかどうか、この二点、お願いをしたいと思います。
#64
○政府委員(藤繩正勝君) 予算の内訳を御説明申し上げます。
 四十五年度予算総額一億四千万円の中身でございますが、家内労働審議会の運営関係が一千四百万、委託者の指導推進費が三百万、最低工賃の推進費が二百三十二万、家内労働の実態調査費が約五百万円、家内労働の行政措置費が約百万円、内職問題の対策費といたしまして三百九十四万円、それから内職相談施設の運営費が約一億五百万円ぐらい。それ以外に労災特別会計のほうから家内労働の安全衛生管理費といたしまして五百四十七万円、そういう内訳になっております。
#65
○政府委員(和田勝美君) 今後の問題でございますが、当面、私どもとして考えておりますのは、最低工賃の推進、それから安全衛生対策関係の充実、それから家内労働者が多数存在をいたします地方における地方家内労働審議会の設置数の増、内職公共職業補導事業の充実、次に労働基準監督官の確保ということでございます。この五つを当面の問題として取り上げていくわけでございますけれども、この法案は、先ほどからお答えを申し上げておりますように、急激な勢いでいくよりも、漸進的に地固めをしつつ進めというような趣旨で行政姿勢を持っていきたいと思いますが、それにいたしましても、監督官が四十五年で二千七百五十三名でありまして、基準法の施行自体も相当な量にのぼりますので、ずいぶん監督官に不足を来たしている。ただ、それが直ちにここで何人ふやせばいいかということをお答えを申し上げることの検討が進んでおらないことはまことに申しわけございませんが、相当の数をふやさなければ、把握し得ただけでも百四十三万人の家内労働者がおられるわけでありますから、私どもとしては、これからこの法案が通りました暁には、実態を見きわめながら年次計画的に所要数の充足をはかるということで、四十六年度あたりからそういう計画的なものについて取り組んでまいりたいと、かように考えております。
#66
○渋谷邦彦君 監督官が将来どのくらいあれば所期の目的が達成できるかという検討がいまだになされていない、非常に残念なことだと思うわけでございます。せっかく法律ができましても、その運用において、はたしてわれわれの期待どおりに進むのであろうかという多大の疑問をいだかざるを得ない。それは一朝一夕にして人的な確保ということは望むべくしてなかなか望めないということもわれわれ重々承知しておりますけれども、しかし、この法律を制定するに当たっては、すでに十年の歳月というものをけみしているわけです。昭和三十四年以来、調査会を中心として、内々労働省としてもこれに取り組んでこられたはずなんですね。しかしながら、いまお聞きするところは、決して明確な今後に臨む構想ではないんじゃないかということに非常な不安をいだくわけであります。と同時に、いま予算の内訳を伺いました。少なくとも、その予算の内訳からうかがい知れるところでは、たとえば内職の対策費として三百九十四万円という御説明があったようですが、はたしてそのくらいの規模の予算でもって成果をあげ得るとはもちろん思っていらっしゃらないでしょうけれども、しからば、四十六年度あるいは四十七年度にどうして一体これと取り組んで、予算の規模をふやしていくおつもりなのか、ここらあたりはほんとうは大臣の御答弁が必要なんですけれども、いま、考えの中に年次計画ということもございました。この年次計画の中にどういうふうに盛り込まれていくおつもりなのか、この辺お聞かせをいただきたい。
#67
○政府委員(和田勝美君) 先ほど、当面、問題として考えます五つの点を申し上げたわけでございます。この点につきまして、最低工賃の推進というのは、現在の予算では、法律がございませんので、ほとんどないわけでございますが、これは新しいものとしてぜひ考えなければならない。いまは最低賃金とのかね合いでできておりますが、この法案が成立いたしますれば、最低工賃というものが新しい問題として出てまいりますので、この問題をぜひやっていかなければならない。労働安全衛生対策につきましては、先ほど申し上げました労災保険審議会がどの程度の範囲内について特別加入制度を認めるかということのかね合いと、先ほど大橋先生から御質問がありました健康管理問題に必要な、いわゆる健康診断費、こういうようなものを私どもとしてはさらに考えていかなければならぬ。それから内職公共職業補導費につきましては、これは婦人少年局の所管でございますが、年々増加をいたしておりますが、新しい法案ができました観点からして、新しいスタンド・ポイントでこの職業補導事業を考えなければならぬのではないか、そういう点。また、これに関連をいたしまして、農村地帯における家内労働問題が最近漸次浸透をいたしておりますが、そういうものに対する予算上の問題はどういうふうにして展開をしていくべきか、こういうこと。それと家内労働審議会の増設の問題は、予算的にはそれほど大きな問題ではないと思いますが、この問題。それから、最後は監督官の確保、これは今後におきます家内労働法の浸透度合いをどう段階的にやっていくかということを検討して、必要ならば予算措置を講じなければならない。かように考えております。
 いずれにいたしましても、一億四千万円ということではとても足りる予算額とは考えておりませんので、四十六年度予算の編成に当たりましては、以上申し上げましたようなことを内容とする新しい観点からの予算編成に取り組みたい、かように考えております。
#68
○渋谷邦彦君 これからこの問題を軸にして五年計画なり、十年計画をお立てになるだろうと思いますけれども、それに関連しまして、やはりこの実態の調査というものが最大の課題だろうと私は思う。先ほど来から、労働省のほうで御調査になられた数字を伺っております百四十三万人、その中の八八%がいわゆる純然たる家内労働者と見られる、いわゆる内職者である、しかし、この調査の方法がどんな方法で行なわれたものであるか。そして、また潜在的な家内労働者というものはこれを上回るどのくらいのパーセンテージがおるものなのか、その辺はいかがですか。
#69
○政府委員(藤繩正勝君) 先生御指摘のように、家内労働の実態はたいへん複雑でございまして、また、家内労働者が多く家庭で就業しておるという事情もありまして、人によりましては、あまり内容にタッチしてもらいたくないという傾向もときには見られます。そういうことでなかなかその実態を把握することがむずかしい。それから、従来こういう法律もございません関係で、行政としても、調査におのずから限界もあるというようなことでございまして、私ども、百四十三万人という調査につきましても、そういう意味で限界のある調査だというふうに心得ております。この調査は、従来から労働基準法の施行等の関連で接触をいたしております産地の委託者関係、業者団体とか、そういったものを通じまして職員が把握するというかっこうでおもにやった調査でございます。そういうことでおのずから限界があろうかと思います。現に、婦人少年局が最近調査いたしました婦人の内職の状態の調査によりますと、約三百万人という数字が出ております。これは、私どものほうの調査が委託者との委託関係にあるものを中心に調査いたしておりますのに対しまして、婦人少年局のほうは、いわば団地などで隣りの奥さんから頼まれた内職というようなものもその対象にしておる。私どもが比較的、一定期間、継続して家内労働に従事しておるものを主として把握しておりますのに対して、婦人少年局のほうは、そういった婦人の内職者を通じて調査しております関係で、ときには、ほんの臨時的にやられた方も調査の対象に入ってくるとか、いろいろそういう違いがございまして数が多くなっておりますが、先生御指摘のように、かなりの潜在的なものがあるであろうということは、私どももそう存じております。したがいまして、おそらく三百万程度の数字ではなくて、希望者も含めれば、それに倍する程度のものが存在するのではないかというふうに推測をいたしております。
#70
○渋谷邦彦君 いま申されました数字からうかがっても、全体の人口の比率から見ても決して低い割合ではない。それだけに、この家内労働法というものの持つ意味というものが高く評価されねばならない。ならば、これからどういう年次計画をお立てになるおつもりなのか。労働省としても、いろんなビジョンをこの問題に限らず考えておられると思うんでありますけれども、事、生活に直接深刻に関係するだけに、やはり最重要の政治の問題としてこれに取り組まねばならない、そうした観点からいま伺っているわけでありますけれども、この答申に基づいてどういう青写真をつくっているのか、これからつくろうとするのか、その辺の輪郭をひとつ教えていただきたい。
#71
○政府委員(和田勝美君) 私どものほうの調査によりますと、いわゆる大都市及びその周辺に家内労働者が非常に多くいらっしゃるということでございますので、この法律が成立いたしました以後において、まず手を尽くすべきものは大都市及びその周辺における家内労働者を正確に把握をするということであろうと思います。次に、いろいろのいわゆる産地がございまして、先ほど申し上げましたように、石川県の漆器あるいは会津の漆器、その他そういう産地的なものがございます。そういう産地はわかりやすいわけでございますが、その産地における実態を正確に把握をするというようなことをまず第一義的にやっていきたい。それから、この家内労働法そのものの考え方と、その実行方法ということを基準局あるいは婦人少年局、あるいは都道府県、市町村、こういうものを通じて一般的に国民の皆さんのほうに浸透させる。こういう法律ができたということと、その法律の中身というものを浸透するというふうな方式を講じてまいりたい、かように考えております。
#72
○渋谷邦彦君 これからそういうことで浸透さしていくと、まだ非常に大ざっぱな考え方だと私思うんですけれども、それに先立って、せっかくできたこの家内労働法というものを国民に浸透させるには、具体的にはどうおやりになるのですか。
#73
○政府委員(和田勝美君) 都市につきましては、一応私どものいままで十年以上にわたります行政指導経験がございますので、これは委託者と話し合いをしまして、委託者が持っておる家内労働者の方もわかっておる向きもありますし、そういう委託者のための協同組合等もございます。そういうようなところをまず拠点といたしまして、その他協同組合に入っていらっしゃる委託者と結びついておる家内労働者に対する徹底をはかっていく、こういうようなことが一つの方式でございます。それから監督署は、事業場と結びつきが多うございますので、そういう事業場に監督に出むく場合、あるいは事業場のほうから監督署にいろいろの報告、事務連絡がありますが、そういう際に、家内労働者を使っておられると思う方々に対する啓蒙、そういうような方式、それから先ほど申しましたような産地は、これはもう大体わかっておりますが、この法律の趣旨の徹底をはかる、それと、もう一つは都道府県及び市町村の機関にお願いをして住民への徹底、特に都道府県を通じての市町村の協力ということが、私どもとしては、こういうことを周知する上においても非常に価値のある方式だと思います。そういうようなことを来年度予算あたりでは考えさせていただきたいと、かように考えております。
#74
○渋谷邦彦君 まあ、局長ですから、その立場上、考えさしてもらうと、こういう言い方しかできないんだろうと思います。これは考えなければ、先ほどあなたが申されたことは、どうも自語相違になるんですよ、やらねばならないわけですから。えてして、いままでこの委員会のみならず、しばしば指摘をしてまいりました点は、せっかくできても啓蒙ということについて、指導ということについて、確かに法律が制定され、当初においてはたいへん力んでそういうことをおっしゃるわけですけれども、一年たち、二年たっていきますと、当初のそういう考え方というものはいつの間にか置き忘れられて、それで、一向に下部機構にまで浸透しないといううらみがあるわけです。それは定期的にレクチャーを持ったり、いろんな講習会というようなものを持ったりして啓蒙宣伝につとめられるだろうと思うんでありますけれども、どうもやはりその点お役所のやり方というのは、どうしても効果があらわれないところで終わってしまうという傾向があるんですけれども、労働省としても、いままでの説明を伺うまでもなく、相当積極的に取り組んでいくと判断してみれば、相当思い切った啓蒙宣伝指導というものを行なうのではあるまいか、その辺の具体的なやり方をどうしていくのかということを、あまり抽象的な言い方ですと一般の国民がわかりませんので、ここで局長が言われたことを一般の国民が理解を深めるか深めないか、こういうことになるわけです、申すまでもなく。その点もう少し具体的にどうやるのかということを教えてくれませんか。
#75
○政府委員(和田勝美君) 先ほどは抽象的なことを申しましたが、基準監督署を使うあるいは内職公共職業補導所を使う、あるいは市町村を使うと、こういうことを申し上げたわけでありますが、この法案が成立いたしまして、まず最初に動き出しますのが家内労働審議会でございます。各府県に家内労働審議会ができますのと、基準審議会に家内労働部会ができますのと二つございますが、そこには学識経験者及び家内労働者、委託者の代表の方々にお入りいただきますので、そういう方々との全国的な会議等も持ちまして、啓蒙宣伝の問題についての意見も十分伺いながらやってまいりたいと思います。それと安定所等におきましても、もちろんこれは普通の雇用労働者の職業紹介でございますが、私どもの監督署、安定所、そういうような出先機関につきましては、それぞれパンフレットとか、ポスターとか、そういうようなものももちろん掲示をいたしまして、そういうようなルートを通じてもやってまいりたいと思いますが、具体的な方法等につきましては、先ほど申し上げましたような全国の家内労働に関する審議会の代表の方々の意見を聞きながら具体的な方策を講じていきたい、かように考えております。
#76
○渋谷邦彦君 それもけっこうだと思うのですけれども、往々にして議して決せず、決して行なわれずということがございますので、その点も十分側面的に労働省としてもプッシュをしていただきたい問題である。全国的に見ますと、愛知県というところは人口の比例からいくと最高だと思うのです。東京だとか、大阪だとか、それぞれ二十万、二十数万という数が出ておりますが、しかし、実質的には、おそらく愛知県が人口の割合からいうと最高であろう。最近の傾向は、団地の中でおやと思うような家庭の人がやっております。この統計に示されておりますように、その多くはやはり収入が足りないというところに起因する、これがほとんどではなかろうかと思います。したがいまして――別にそういう資料はいま必要としません。が、その啓蒙宣伝を行なう場合に、当然これはもうおやりになっていただけるものと私は思うんですけれども、団地の中にも掲示板がございましょう。こうしたものをやはりフルに活用いたしまして、その地域において――あるいは人に知られたくないという人もございましょう。けれども、そのポスターを見ることによって、あるいはチラシを見ることによって、安心して、ああ、こういうときにはこういう方法があるんだなというような、非常にこまかい問題かもしれませんけれども、そういう方に手の届くようなあたたかい措置というものが、えてしていままで行なわれてないということを強調したかったわけです。だから、そういう点もおそらく織り込んでの総括的な御答弁であったろうと思うんですけれども、最近の顕著な例は、そういう団地に非常な勢いで広がっている、これはお認めになっていただけると思いますが、いかがでございましょうか。
#77
○政府委員(和田勝美君) 先生御指摘のように、団地が一つの工場のようになっていて、一階から四階まで回っていく間に一つのものがっくり上げられるというような事例もございます。団地の奥さま方が全部内職をなさっているということもございます。私も、最近団地へ参りまして家内労働の実態調査もいたしましたが、そういうことで、団地については、ぜひ、いまお話のありましたような方式は十分取り入れて啓蒙していくべきだと、さように考えております。
#78
○渋谷邦彦君 委託者と委託を受けるほうの立場でございますけれども、先ほどもちょっと賃金部長さんからお話があったように記憶しておるんですけれども、委託者自身が内職をやっておる、内職者から内職者へ仕事が流れていく、こういう傾向もあるわけですね。そんなわけで、せっぱ詰まって、お互いに多少でも生計の足しになればという、もう切ない思いでそういう仕事をしておる者が大部分です。したがって、この法律の運用というものが、その人たちのために十二分に保護が加えられていくような方向に向けられていかなければならないことは、再々ここで論議されたとおりであります。そこで考えられますことは、これもいま問題点の一つになったのでありますが、企業者との関係というものが当然問題になります。この辺のいままでの行政的指導というものは一貫性を欠いておる。中小企業のことについてはこれはもう通産省にまかせる以外にはないとかというようなことで、いつまでたってもその辺の要するに隘路というものが解決されないままに、一方は役所が違うんだ、一方は労働省だと、こういうことではもう家内労働者にとってはどっちにも行きようがない。工賃の問題についてもしかりであります。これはもう再々問題になったことを繰り返して申し上げませんけれども、その中でも、特に――これも、私、未確認で、未確認のことをこの委員会で申し上げることもどうかと思うんですけれども、追跡調査をしておるわけじゃございませんから。横浜でネッカチーフをつくっているある企業者、実際は非常に安い工賃でもって請け負わしておるわけですね。ところが、それがマーケットに出ますと、何ともう百倍近い価格がつけられる。まあ、百倍というのも少し大げさな言い方かもしれませんが、特に輸出向けの商品についてはそれがきわ立っているというようなことがいま話題の一つになっているようであります。こうなりますと、やはり中間的な搾取というようなことが行なわれているものか、あるいは家内労働者という、法律的なそういう恩恵を受けてない人たちに対しては、もうとにかくしぼるだけしぼり取るやり方でいくんだというようなことになっていきますと、これまた大きな社会問題に発展しかねない。そこで、一方においては、中小企業を指導する一つの機構というものが当然必要になってきましょうし、将来、その辺の関連というものをどうアジャストしていくのかということがもう一番大きな問題だと思う。これはまた厚生省の問題にも関連していきますけれども、この辺はやはり家内労働者という一つの固定したもの、あっちだ、こっちだということじゃなくて、一つの法律のワクがきまった以上は、その中で十分保護を受けていけるという方法にするためには、そういう二つ以上にまたがる役所の仕事をどう調整していくおつもりなのか、この辺を明確にひとつお示しになっていただきたい。
#79
○政府委員(和田勝美君) 現在までの家内労働者に対する措置が、確かに通産、労働、厚生というようにいろいろとまたがっておる面の多いことは御指摘のとおりでございます。しかし、今度新しく家内労働法というかっこうでこの法案が成立をいたしますれば、この責任は労働省にございますので、労働省が家内労働という立場から、いろいろの行政に対する協力あるいは調整をとっていく。そういう意味で、労働省が家内労働者に関する問題は労働省が主導権を持って行政を進めていく、こういうことにさしていただきたいと考えております。
#80
○渋谷邦彦君 いま、主導権とおっしゃいましたけれども、それは別に法律的にその位置づけというものがなされているわけではないはずだと思うのですけれども、そうした場合に、いま局長は非常に前向きの答弁なんですけれども、これは絶対に確信を持ってそれを言い切れますか。
#81
○政府委員(和田勝美君) 実は、この法案の付則のほうで労働省設置法を改正をいたしまして、家内労働法の施行が労働省の責任であるという法律上の根拠が今度明確になりますので、この家内労働法の施行ということにつきましては、労働省が全責任を負わざるを得ない、かように考えております。しかし、問題は、この法律の施行を労働省が負うからということで、ほかの省の施策にとやかくということじゃなくて、ほかの省の施策が家内労働法のあることを十分意識をしながら努力をしてもらうこともまた重要だと思います。ただ、そのときには、責任はほかの役所にあるという姿勢でなくて、家内労働法の施行という責任を通じてほかの役所の協力を求める、そういう意味における主導権を労働省としては持っていきたいということでございます。
#82
○渋谷邦彦君 もちろんこの問題は、今日の日本の企業の体質それ自体を変えていかなければならない本質的な問題がひそんでいることは、もう言うまでもないと思うんですけれども、たとえばホンコン・フラワーなんという、一時、たいへんな勢いで日本に入ってまいりました。しかも、非常に安い労賃でもってつくられる、しかし、見たところ、なかなか精巧なそういう製品が日本の国に入ってまいりました。同業者はたいへんなショックを受けたという一時期がございました。そうなりますと、やはり中小企業者、なかんずく零細企業者にとっては、それに太刀打ちするためには、もう何としても、涙をのんでも加工賃というものを低く押えておかなければならないということになり、それを心配するあまり、いまのことを含んで申し上げているわけであります。将来、そういうような問題が起きないという保障は何もないわけです。あるいはポンド切り下げによって、いろんな国際通貨の変化が起こるというような問題も、当然それがからんでまいりますでしょう。これから輸出貿易というものがさらに飛躍的に伸長ずるということになりますると、そのしわ寄せは、大企業でもない、中小企業でもない、家内労働者に全部それがいってしまったのでは、この法律の持つ意味がなくなってしまうおそれはないかというようなことまでやはり心配せざるを得ないわけですね。その点については、審議会の答申においても、警告を発したり、意見が述べられているようでありますが、この点についてはいかがですか。
#83
○政府委員(和田勝美君) 先生ただいま御指摘のとおりでございまして、審議会の答申の中でも、「家庭婦人の家内労働への新たな進出、家内労働業種の変化、開発途上国における零細企業や家内労働の発達等の影響など」、こういうことをうたっておりまして、非常に開発途上国における問題を相当この家内労働審議会においても意識をされております。私どもも、実態的に見まして、いま御指摘のありました香港の家内労働あるいは韓国における家内労働、日本の家内労働で従来やっておった分野がそういう方面に流れておる事実も私どもは承知をいたしております。そういうかね合いの中で、この家内労働法案の提案をさしていただいているということ、これは実は国際的には貿易の自由化、企業の自由参加というような問題が出てまいります。国際競争の問題もこの家内労働にすら影響が与えられてきておるというようなことを、私どもとしては、十分意識をしなければいけない。そういう意味におきましては、通産省あるいは外務省の問題も出てくるように思います。しかし、これは国際分業化の一つのあらわれであるという認識もとらなきゃなりませんし、いろいろの広い視野から家内労働の問題を考えていかなければならない。そういうような点は、ただいま先生の御指摘のとおりに考えまして、この施行実施に当たってまいりたい、かように考えております。
#84
○渋谷邦彦君 この問題は、さらに具体的に一つの問題が事実となってあらわれてこないと明確な方法というものがないのではないか。ただ、いままでのやり方というのは、問題が起こってからそれに対していろいろな方法手段を講ずる、手おくれのことが非常に多過ぎるということなんですね。これではやはり決して政治が前向きに進んでおるとは言い切れない。そういうことを加味しながら、その点も含んでそういうことの起きないように善処方をお願いしたいと、こういうわけでございます。ともかく、とりわけ通産省との関係というものが非常なウエートをもってやはりこれからも問題解決の上にいろんなネックが出てくるのではなかろうかと思いますので、その辺の関連性というものについてはくれぐれもセクショナリズムにおちいることのないように十分な配慮をしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。どうしても中小企業の立場に立ってみれば、仕事もほしい、金も忙しい、そうすると勢い家内労働者に、実際は最低工賃というものが一応の基準としてきめられているにもかかわらず、それを下回るようなことがあってみたり等々、いろいろなことがこれからも起きるであろう。仕事をもらうほうの家内労働者にとってみれば、たいていは顔見知りであるとか、そういう縁故関係が多いという観点から、安い工賃についても文句も言えない、またその持っていき場所もない、一体どうしたらいいのかというふうになると思うのですね。また、それが社会問題として表面化することもそういう立場の方はきわめておそれております。その辺も、ただ罰則の規定があるからといって、一がいに制裁を加えるというようなことがあったのでは中小企業も成り立たないでしょうし、その辺のこともとくと勘案されていらっしゃるであろう、こう思いますけれども、これからどういうふうに対応されていくおつもりでございましょうか。
#85
○政府委員(和田勝美君) 家内労働審議会におきましても、家内労働がきわめて複雑で、かつ、多岐多様であるという前提のもとに立っておられます。委託者につきましても、大企業が直接委託をする場合もありますれば、相当重層的な経過を経て委託をする場合もある。あるいは委託者のほうが必ずしも強い委託者ばかりでございませんで、非常に弱い委託者の立場もある。そういういろいろの要素がある。しかし、それにもかかわらず、家内労働者は保護されなければならない、そういうのがこの法案の立場でございまして、決して委託者のサイドだけでものを考えるためにこの法案ができたわけではございませんし、家内労働者をいかに保護し、その作業条件をいかに上げていくかということが法案の立場でございます。しかし、いま先生が御指摘になりましたように、確かにいろいろの状態があまりにも複雑にからみ合っているというときに法律一辺倒でもってものごとを押しくっていくとか、あるいは直ちにそれを刑事事件にするということで決して事態は改善しない。これは家内労働審議会でも同じような御意見でございました。そういう意味で、この法案は基本的で、かつ、緊急なものについてやって、漸次この法律の施行を通じての行政指導が進むに従って段階的に整備をはかっていけと、こういう趣旨は、先生の御指摘になりました基本的な考え方と全く同じことだと考えております。そういう意味で無理はしない、無理はしないけれども、基本的にやらなきやならないものについては措置を講じていく。まあ、言ってみますれば、弾力的な運用をはかることによって、漸進的に一歩一歩固めて家内労働者の保護の充実をはかっていきたいと、かように考えております。
#86
○渋谷邦彦君 そこで四十年の統計、それからその後に出された統計を比較いたしますと、年々ふえているという傾向ですね。この傾向がはたしていいかどうかはさておきまして、これもやはり社会問題として軽視できない現象ではなかろうか。しかし、労働災害だとか、あるいはいろいろな社会福祉の面での恩恵というものが受けられない立場に立って考えてみた場合、願わくば、やはり正規の雇用関係に基づいた仕事をするということが一番望ましいのじゃなかろうか。また、そういうチャンスというものがあり得るであろう。可能性は十二分にある。けれども、企業者側の立場に立ってみれば、先ほど来申し上げましたように、非常に工賃が安いというところが魅力である。あるいは設備やその他のことを考えてみた場合でも、自分のほうが負担しなくても、家内労働者のほうでそれを全面的に負担すれば、それ以上のむしろめんどうを見る必要もない。どちらかといえば、委託者のほうは、極端な見方になるかもしれませんけれども、たいへんいい立場に置かれているということは言えると思うわけですね。そうなりますと、やはり委託者のほうがあるいは必要以上に利益をあげる場合があるのじゃなかろうか。そういう点もやはり調整が必要で、あるいは労災補償というものも受けられるとか、あるいはその正当な社会福祉の恩恵も受けていけるというような方向にやはり政府としては向けていく一面の努力というものも並行的に必要ではないか。こんなふうに考えられるわけでございますけれども、その辺の見解については、当局としては、どのようにお考えになっていらっしゃるか。
#87
○政府委員(和田勝美君) 働く場面につきましては、大別すれば、雇用の場で働くというのと、いわゆる家族従業者、あるいは家内労働で働くという場面があるわけでございますが、労働の近代化と申しますか、就業形態の近代化というのは、これは雇用の場面に漸次いくというのが私どもとしては就業構造の近代化だと思っております。そういう点からいたしますれば、家内労働者あるいは家族労働者が漸次雇用労働関係のほうに移行していくのが近代化という観点からしますれば、一般的な傾向であり、わが国におきましても、家族従業者についてはすでにそういう傾向にありまして、雇用率は最近非常に高まってきております。しかし、一方におきまして、家内労働につきましては、先ほどお答えをしましたし、ただいま先生御指摘がございましたように、最近四十年代になって家内労働者がふえてきた。この事実を、しからばどう見るのか。さらにふえていくものとして見るのか、あるいはいまはふえたけれども、ある程度停滞するか、これは家庭構造あるいは社会構造、あるいはその子弟の教育の問題、家計補助の問題というものがどう動くかによって、私は、ずいぶん変化していくものだろうと思います。その変化する姿勢は、おそらくある時期からは家内労働はむしろ減少するというような傾向が、ほかの国の例から見ますれば、出てくるのじゃないか。しかし、それにいたしましても、要するに外に出て働けないという方が世の中にふえてくるという事実、これから考えますと、家内労働はそういう変化はありましょうが、当分の間、なくなるものとは考えられない。そういうように、相当程度続くことが予定をされる家内労働につきましては、就業構造の近代化ということにかかわらず、その家内労働を保護する姿勢というもの、家内労働にまつわるいろいろの弊害を排除していく姿勢というのが国の姿勢としてはぜひ必要ではないか、かように考えておりまして、そういう観点からこの家内労働法案を提案をして御審議をわずらわしておる、こういうことであろうと考えます。
#88
○渋谷邦彦君 いま申し上げた中で、一番そうした場所で働く方の不安と申しますか、せっかく国できめた社会福祉制度というものの恩恵にあずかれないという方が非常に多いのではないかと思います。その辺は、これから当局としてどういう方向に持っていくべきなのか。ひとしくそうした人たちが国のそういう政治の恩恵というものを受けていくようなことになり得るのか。この辺はどのように分析をして、これからの考え方の一つに盛り込まれようとされるのか。
#89
○政府委員(和田勝美君) 実は、先生御指摘の点も、家内労働審議会で相当な御議論がございました。家内労働者を雇用労働者と同じレベルで、同じものの考え方で全面的に扱えという御意見もありました。それに対しまして、方向としては、できるだけ雇用労働者的な扱いに持っていくということにつきましては、大方の御意見が大体同じ方向であったと思いますが、それを直ちにいまやるべきかどうかについては、家内労働の実態がそこまで行っておるかどうかという認識について御議論が分かれまして、今回の法案のようなことで、そのところは割り切れずに出ております。それを家内労働審議会の答申の本文の最後のところでこういう言い方をしております。「政府は、家内労働に関する法制の制定に関連して、工賃についての賃金と同様な民事上の保護及び公衆衛生上問題ある家内労働の取扱いについての検討、適正なあっせん施設の拡充、社会保障制度及び税制の検討、中小零細企業対策の推進等の諸施策を実施していくことが必要である。」、こういうように本文の末段で指摘をしておりますが、ここに盛られました考え方は、私どもも、この法律が制定をしましたら、法律の施行を通じながら、家内労働態勢と言いますか、家内労働の実態をよりよく把握することによって、その漸進的な誘導策というようなものもとっていくことを指示して、その場合には、ここに読み上げましたようないろいろの施策を総合的に考えていかなければならない、このように考えております。
#90
○渋谷邦彦君 その問題も将来に残された課題のようであります。これからやってみなければわからない、率直に言えばそういうことではないかと思います。そこで、その問題に関連しながら伺うのですが、今回、家内労働手帳というものが発行されるわけでありますけれども、この中身は、工賃はどのくらい取るか、あるいは支払いはいつか、そういうようなことが明記されるような仕組みになっておるようでありますが、そのほかの恩典はどういうことがあるのですか。
#91
○政府委員(和田勝美君) 家内労働手帳につきましては、三条に書いておりますように、委託者と家内労働者の間におけるいろいろの条件を明確にするということがねらいでございます。これは、実は家内労働者と委託者の間に、従来条件が明確にならないために無用の紛議を生じておる。それが非常な混乱を呈し、ピンはねの問題その他が出てくる大きな理由になっておりますので、まず基本的には委託者と家内労働者の間における条件を明らかにする。そのためには、家内労働手帳というような文書形式によって明確にして、後日の争いのないようなものをつくり上げるということにいたしたいというわけでございます。家内労働手帳につきましては、そういう趣旨に出るものでありまして、実はそれ以上の効果をこの家内労働手帳に特に期待をしているということは法律的にはないわけでございます。しかし、私どもは、この家内労働手帳が法的にはそういうものでありましても、この家内労働手帳がいろいろ集積、分類、整理をされますに従って、工賃の上昇の問題とか、労働条件のあり方とか、そういうものに十分活用し得るような価値が出てくる、かように考えております。
#92
○渋谷邦彦君 私は、先ほどの社会福祉の問題に関連しまして、この家内労働手帳を持参している者につきましては適当な社会福祉施設を利用できるとか、そういうような便法まで織り込んだことばできないのかということなんです。いまこの法律の中には盛られておりませんが、将来、そういうような考え方を持つことはできないものかということであります。
#93
○政府委員(和田勝美君) ただいま御提案しております法律におきましては、先ほど申しましたようなことが家内労働手帳でございますが、この家内労働手帳の扱い方いかんによりましては、その家内労働者の方が、家内労働をめぐるいろいろな問題提起をできるようなものにすることも可能だと思います。
 それから、将来の問題としまして、社会保険等につきましての検討が行なわれて、この家内労働にも社会保険が、雇用労働者だけでなくて、適用されるというようなことになりますれば、家内労働手帳はそういう際にも活用できるような方途が十二分に考えられるのではないか。ただ、現在のところ、社会保険等につきましては適用しないという前提になっておりますので、現在のところでは無理でありますが、将来の問題としては十分に考える余地があろうと考えております。
#94
○渋谷邦彦君 だから、私があえてそのことを申し上げたのは、先ほどの説明の中にありましたように、工賃が非常に安い。たしか一カ月実際稼働する日数が二十二日という一おたくからいただいたこの資料によりますと、ほとんどの方が一日五、六時間の労働で一万五、六千円です。一万五、六千円じゃ、ないよりはあったほうがましだという、極端に言えばそういうことになるかもしれません。そうなりますと、病気をしたときにはどうなるのか。あるいはそのほかにもいろいろなことが想定されると思うのですが、何にも恩恵がない。だから、せめてそうした家内労働手帳というものを、いまお話のような方向に向けて、もっと幅広く利用ができるような仕組みにしていくことのほうが望ましいのではないか。ここでいま結論を伺おうとは思わないが、そういう意味で私は申し上げたのです。
 大臣は、四時半に衆議院のほうで採決のために御退席になるそうでありますが、せっかくおいでになったのですから私伺います。きょうできなかったことは明日にいたします。
 冒頭に、私、この法律案ができるにあたって、今後の運営、そしてまた予算措置がどうなっているかということを聞きました。まことに少ないのですね。労働省全体の予算が非常にワクが小さいですから、その中の一部分とすれば知れたもの、こうなりますけれども、これから労働省がかかえていかなければならない問題は非常に重要だ。大臣も、そういう決意をほのめかされました。そこで、せっかくこうした法律が、十年間のいろいろな検討の期間を経て、いま、ようやく日の目を見ようとするときに、あまりにも予算措置が少な過ぎるのじゃないか。しからば、四十六年には、一体どのくらいの予算を確保する、獲得する、御方針でいらっしゃるか、この辺いかがですか、お尋ねしておきたいと思います。時間がなければ明日に持ち越しということにいたします。
#95
○国務大臣(野原正勝君) 家内労働法成立によりまして、おそらく必要な財政措置が要ると思うのでありますが、必ずしも十分ではないという御指摘のとおり、事実少ないようでございます。この法律ができますと、これはやはり労働省の責任でございますから、これに伴う必要な予算というものは当然要求するつもりでございます。この夏には、大体の予算の要求の案ができますが、まだ十分事務当局から聞いておりません。どの程度必要か、事務当局の意見を聞きまして、当面のこの法施行に伴う最小限度必要な予算はぜひとも要求したいと考えております。額のことはただいま聞いておりませんので、どうも残念ながら申し上げられませんが、必要なだけの予算はあくまでもこれは要求するという態度で進みたいと、こう考えております。
#96
○渋谷邦彦君 いま、そういう御答弁を伺うことは、私、たいへん残念なんですけれども、ここで即答できなければけっこうなんです、あしたに持ち越しますから。しかし、これは、あくまでも大臣という立場の方は――釈迦に説法みたいなことを言う必要はないかもしれませんけれども、事務当局から出された資料がありましても、これは政治的判断をなさって、今度このくらい獲得するつもりだというのは、やはり大臣のことばとしてお伺いしなければ、こちらとしては納得がいかない。そういう意味でお尋ねをしたわけでございまして、この法律案の中身がわりあいに簡単にできておりますけれども、しかし、その性格というものを考えてみた場合に、絶対に軽視できない法律だと思います。大臣もそうだろうと思う。特に、大臣は、前向きにすべて取り組まれるというお話もありますので、明日でもけっこうでありますから、せっかくのこうした法律が死文化しないように、実効をあげるためには、少なくとも、来年度はこのくらいの考え方で折衝していきたいという御方針をお伺いしたい、こういうことでいまお尋ねをしたわけでございます。
#97
○国務大臣(野原正勝君) 事務当局の意見を聞いてないというのは事実でございますが、事務当局の意見のとおりやるかというと、決してそうじゃございません。最高責任者である私が判断いたしまして、これは家内労働法の問題に限らず、労働省予算全体は、はなはだ遺憾ながら、非常に少ないのであります。なぜこう少なかったかということを非常に疑問に思いますが、とにかく、いままでの予算というものは非常に少ない。また、必要にして最小限度の人員さえも十分でないと考えております。そういった予算の問題や、陣容の問題等につきましても、皆さま方の御協力を得まして十分なひとつ対策を考えたいということで、これからその問題と取り組んでいく、ただいまのところはまだはっきりしたことは出てまいりませんけれども、そういう姿勢で今後は対処するという決意でございます。
#98
○渋谷邦彦君 もう時間がないようでございますので、これ以上申し上げませんけれども、実は、もう一点大事な問題をお聞きしたいのです。それは、この問題を軸にして、いま事務当局からいろいろな技術的な問題についてお伺いしました。ただし、これからのビジョンというものについては、これは大臣からやはりお伺いしないと、私としても理解に苦しみますので、その問題が一つと、重ねてくどいようでございますけれども、意のあるところ、明日この二つをまず冒頭にお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
#99
○委員長(佐野芳雄君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめておきます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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