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1970/03/19 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 大蔵委員会 第9号
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1970/03/19 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 大蔵委員会 第9号

#1
第063回国会 大蔵委員会 第9号
昭和四十五年三月十九日(木曜日)
   午前十時二十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         栗原 祐幸君
    理 事
                沢田 一精君
                成瀬 幡治君
                鈴木 一弘君
                瓜生  清君
    委 員
                青木 一男君
                青柳 秀夫君
                伊藤 五郎君
                岩動 道行君
                大竹平八郎君
                鬼丸 勝之君
                津島 文治君
                中山 太郎君
                矢野  登君
                木村禧八郎君
                松井  誠君
                横川 正市君
                上林繁次郎君
   政府委員         渡辺  武君
       内閣法制局第三
       部長       荒井  勇君
       大蔵政務次官   藤田 正明君
       大蔵大臣官房審
       議官       高木 文雄君
       大蔵省主税局長  細見  卓君
       国税庁長官    吉國 二郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
   説明員
       大蔵省主税局税
       制第三課長    早田  肇君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国税通則法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(栗原祐幸君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 国税通則法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は、順次御発言願います。
#3
○木村禧八郎君 この国税通則法の一部を改正する法律案につきましては、特に国税不服審判所の設置をめぐって衆参両院でこれまで非常に多くの質疑がすでに行なわれてきたわけです。それで私もこの間一部質問したのですが、全体をいま検討してみまして、国税不服審判所を設けて、そうしてはたして納税者の権利がほんとうにいままでよりも救済されるのかどうかにつきまして、私は非常に疑問を持つに至ったわけです。一体どれだけのメリットがあるのか、そこを最後の詰めとして、私の質問として――まだほかに社会党としても質問は残っておりますが、私の一応の詰めとしまして、どれだけのメリットがあるのかをはっきりさせたいわけなんです。
 そこで、いろいろな角度から質問をしてきたわけですが、繰り返すようになるのですが、ここで再確認をしておきたいのですが、この国税通則法の改正の目的は、「納税者の権利救済制度の整備拡充をはかる」ということが趣旨になっておる。これに間違いないわけですか、提案理由は。もう一度確認しておきます。
#4
○政府委員(細見卓君) 間違いございません。
#5
○木村禧八郎君 もう一度伺いますが、「納税者の権利救済制度の整備拡充」になっておるのでありまして、運用によって納税者の権利を擁護するということですか、この点はどうなんですか。そうではなくて、制度的に納税者の権利救済を確立する、充実するということであると理解していいわけですか。
#6
○政府委員(細見卓君) たびたび申し上げておりますように、従来、国税には協議団制度というのがございまして、審査の請求にあたっては協議団の議を経て裁決しておったわけでございますが、その場合、裁決権が国税局長にあるというところから、執行部門である直税部なりあるいは間税部なりをかかえております国税局長が、どうしても、当主管部と申しますか、課税に当たっておったほうの部局の意見に影響を受けることがあり得るということで、今回は、国税庁長官が本来持っておりますいわば審査に関する権限を、全面的に国税部局つまり執行部門から切り離しまして、それを不服審判所に移していわば執行部門から独立させるわけでありまして、ここに制度として新しい要素が一つございます。したがいまして、そういうふうに制度として切り離れます結果、従来、国税局長でありますと、国税庁長官の発しておりますいわば執行の指針である通達というものに拘束されざるを得なかったわけでありますが、ここでいわば国税庁長官の分身とも言うべき不服審判所長が出てまいりましたことによりまして、執行部のそうした行き方というものについて全面的に反省ができる。したがって、通達と違った裁決もできるし、あるいは従来の国税当局の行なってきました行政慣例というものと違ったものを違った形で裁決ができる。そういうふうに、国税局長から権限を移しかえることによりまして制度的にそういうことができるようにする。ただ、その場合、審査会のようなものを設けましてさらに意見の慎重を期しておるわけでありますが、いずれにいたしましても、制度として執行部門から審査部門を切り離しました、まさに制度としての大きな改革であろうと思います。
#7
○木村禧八郎君 それは、形だけではなくて、実質的に制度として納税者の権利擁護の確立、充実になると思いますか。実質的に、形だけではなくてですよ。
#8
○政府委員(細見卓君) 新しい制度をつくりましても、それを運用いたしますのはそれの任に当たる者であり、また、その者の心がけいかんが大きく、制度を生かすも殺すもその上に大きな役割りを果たすわけでありますので、先般青木委員に対して大蔵大臣が申し上げましたように、この運営にあたっては、極力納税者の権利の救済という観点に立って運用を進めていくように部下職員によく徹底いたしますということを大臣も申しておるわけでありますので、そういう意味で新しい制度に新しい精神が漸次盛り込まれて、そういう方向で中身が充実していくことを私どもは期待しておるわけであります。
#9
○木村禧八郎君 その運営ということになると――もちろんこの制度を運用する人なりその運営面が重要でないとは言いませんけれども、運用ということになると、信頼感というものが非常に重要だと思うわけです。運営する人に対して信頼感がなかったら、これは形だけつくったって決して納税者の権利救済にならないと思うんですよ。だから、いまの租税行政制度がいわゆる納税者にとって信頼し得るようなそういう機構になっているかどうか、制度的に。それから今度、不服審判所の機構、制度も、この運営によって納税者の権利が救済されるというように信頼できるようなふうになっているかどうかということが非常に重要だと思うんです、ですから、審査会の委員についても、どうなっているかという委員自体の構成によっても運営が非常に違ってくるんですよ。そうでしょう。それから民間をどれだけ採用するかということも今後の運営に非常に大きい影響があるんです。それは信頼感につながるわけですよね。この運営と信頼感というものが非常に重要だと思うのです。そういう点を考えてみると、まだその点については十分明らかにもされておりませんし、それからいまの実態からいっても、形だけは整っても、提案の趣旨にあるように制度として納税者の権利救済ができるような形になっていないと思うんです。そこで、これから、多少これまでの質問の繰り返しになるように思われるかもしれませんが、整理する意味で一応ここでまた質問したいのですが、まず、積極的なメリットが今度の国税通則法を改正することによってどういう点にあるのかをここでひとつ列挙してもらいたい。どういう点、どういう点と具体的に述べてもらいたい、形だけではなくですよ。具体的に、この改正によってこういう点とこういう点とこういう点がいままでより納税者の権利救済について有利になるのかどうかですね。
#10
○政府委員(細見卓君) 第一点は、先ほど申し上げましたように、この新しい制度の核心とも申しますべき、裁決権が従来の国税局長から切り離されまして、独立した審査機構として、執行等に拘束されない形で、より第三者的に判断ができるようになっておるという点が、第一点の制度として一番大きな点でございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、国税庁長官の執行命令でありまする通達に拘束されない裁決ができる。まあ現在いろいろな意味で税務行政に関する御批判があることは私どもも承知しておるわけでありますが、その一つに、通達行政が画一的であって、納税者の実態に即した課税ということについて、納税者がいくら主張しても、いやそうは言われても通達がこうなっておりますから、私どもではいかんともできませんということに対する不平というのがわりあい多かっただろう、むしろ現状の一番多い不平ではないかと思うのでありますが、その点に関しまして、審査会というような民間の方々の御意見も入れて、税務行政の実態が納税者のほんとうの姿をとらまえて執行されておるかどうかということについて反省の機会が持てるようになっている、これはやはり独立したことに伴います大きな制度的なメリットであろうかと思います。
 それから異議の申し立てに伴いまする、異議の申し立てに対する決定におきましては、理由が白色申告者におきましても明示されることになります。したがいまして、従来この点について問題がございました白色申告者について、更正の理由だとかあるいは争点を明らかにするのにも、税務官庁側の理由が不明確であると言われておったものについて、理由が明示される。したがいまして、その不服というものにつきましても、異議につきましても、争点がおのずから明らかになってまいりまして、そういう意味で審査の請求に対する理由等につきました答弁書を出すことができるようになり、また、答弁書を出すことになっており、これがやはり大きく納税者の権利を保護することになっておると思います。
 それから審査の請求にあたりまして、むずかしい書式を要求すればするほど、手続としては完備いたし、また、裁決もその意味では明確を期し得るわけでありますが、納税者の全体のあり方をも考えまして、その理由その他について、あるいはまた審査の請求の内容につきましても、口頭による補正ができるようにいたしております。
 そういう意味で、簡単に審査の請求ができる。金もかからないし、時間的にも簡単にでき、しかも、専門的な知識が必ずしも要求されないというような形でこの問題を処理しておるというようなことが審査請求としては一つの大きな改善であろうと思います。
 そのほか、通則法全体の問題といたしましては、更正請求の期間を延長いたしたとか、あるいは延滞税の減額をきめておるというような点がございますが、不服審査ということに関して申せば、前に申し上げました点が大きな改正になってておると思います。
#11
○木村禧八郎君 納税者権利救済は、申告に対して税務署のほうの更正決定なりあるいはまた修正申告に対して決定があった、それに対して異議の申し立てがある、この異議の申し立てがあった段階から納税者の権利救済の段階に入るわけでしょう。そういうように理解していいわけですね、異議申し立ての段階からですね。
#12
○政府委員(細見卓君) たびたび申し上げておりますように、真実の所得に対してしか、課税されない。税務当局が真実の所得でないものによって課税いたしておる、それを直す、補正をするという意味におきまして、それは権利の救済であろうと思います。
#13
○木村禧八郎君 そうしますと、段階的に分けて、異議申し立ての段階は、それ以前の段階と違って、――それ以前は、税務署のほうで、質問、検査なども、これは事前事後の検査をしますが、これは罰則を背景としたそうした各税法に基づいて税金を取る側、税務署の側において更正決定するわけです。あるいは、無申告の場合は税務署が決定する。ところが、異議申し立ての段階に入れば、取るほうではなくて、取られる側のほうの権利救済をする手段として、まずその第一段階として異議の申し立てということが認められるわけでしょう。そうですね。だから、この段階からいわゆる権利救済の段階に入る。段階的に区別する場合は、そういうように理解していいわけでしょう。それで、異議の申し立てから、今度は、審査の請求があり、あるいは裁判ということもございます。ですから、段階的に見る場合に、異議の申し立ての段階から納税者の権利救済の段階に入る、こう見ていいわけでしょう。それ以後――それ以後と言っては変ですが、取る側と取られる側というのは、そういう区別もおかしいのですが、そういうように分けてみると、異議申し立ての段階は取られる側のほうのサイドから見たそうした救済の段階に入るんだと、こう理解していいですか。それから異議申し立てをしない段階では、これは取るほうの側のサイドでやるんですね。ですから、質問検査権なんかを理解する場合も、そこで違いが出てくると思うんです。そういうように、異議申請の段階から以後は、今度は、審査請求なり、裏判なり、あるいは不服審判なり、そういう段階は、これは納税者の権利救済の段階に入るんだと、こう理解していいわけでしょう。
#14
○政府委員(細見卓君) 行政の終局的な権利救済につきましては、もう御承知のように、司法裁判があるわけであります。行政当局が行ないまする不服の行政救済と申しますものは、適正な行政行為を行なうことによって納税者の権利を侵害しないようにすることが行政不服段階における審査のいま一つの――行政不服審査法にもございますように、もって適正な行政を確保するとございますように、そういう一面があるわけであります。ほんとうの意味の純粋の権利救済だけを対象にいたすものは、やはり三権分立のたてまえからいたせば司法機関が行なうのが筋ではないかと思います。
#15
○木村禧八郎君 いま私が申しましたのは、納税者の権利救済制度の整備充実をはかることが国税通則法の改正の趣旨だというのですが、その場合、権利救済というのはどの範囲をさすのですか。国税不服審判所を設けたことによっていままでと違うメリットがあると言われたが、それだけではないのじゃないですか。もっとほかに、異議申し立ての段階からもう制度的に権利救済になるようなそういうことも趣旨としてこの国税通則法の改正が行なわれたと、こういうふうに理解しなきゃならないのじゃないかと思うんですよ。納税者の権利救済制度の整備充実、これは単に国税不服審判の段階において権利救済をするということじゃない。また、それだけだったら、ほんとうの意味の権利救済にならぬと思うんですよ。だから、権利救済となったら、もう異議の申し立ての段階からそういうふうに制度的に権利救済にならなければならないと、こう理解すべきじゃないですか。そうしなければ、ほんとうの意味の納税者の権利救済にならない。審査段階だけでなく、異議申し立ての段階においても制度的に権利救済にならなければいけないのじゃないですか。
#16
○政府委員(細見卓君) 今回提案いたしております国税通則法の一部改正法案は、大さなポイントを、協議団が発展的に独立していく不服審判所の設立ということを主体として、それをおもな目的といたしまして、それに伴う前後の体系の整備をいたしておるわけであります。もちろん、広義におきまして異議申し立ても正当な納税義務を納税者に保障するという意味で権利の救済であることには違いないと思いますが、正当でないものどうかということについての適正な所得についての調査ということは、その課税官庁に異議申し立てが行なわれます限り、当然その官庁がそれぞれの制度、従来の権限に基づいて調査する、この点は従来の異議申し立ての段階はそのままにいたしまして、審査請求の段階で立法論として一歩前進した、こういうわけでございます。
#17
○木村禧八郎君 それでは伺いますが、異議申し立ての段階と審査請求の段階、それはどういうふうに違うのですか。更正決定がありますね。これは、異議申し立てをやらないでいきなり裁判には持っていけないですよ。それから税務署長の決定に対して、いきなり審査請求に持っていけるかどうか。それはどういう手続になるのか。その更生決定に不服であるとき、まず異議申し立てをやって、そうして今度は見直し調査があって、それが決定され、それに不服があるとき、今度はそれに従うか従わないか。それで従わない場合、これは裁判に持っていくのか、あるいは不服審査のほうに持っていくのか、そういう順序をちょっと伺いたい。
#18
○政府委員(細見卓君) 異議申し立ての対象になりますのは、御承知のように、白色申告者の課税関係に伴う異議の申し立てであるわけであります。白色申告者と申しましてもかなり差はございますが、一般に、記帳が行なわれておらず、課税問題についての事実の認定というものが主として争点になる。そういう意味で、事実関係の確認ということが多いという意味で、原処分庁である税務署なりあるいは国税局に異議の申し立てをするようにまず第一段階としてその過程を経させるようにいたしておりますのは、事実問題が現実問題として大多数であると。しかも、それが正当な記帳などによって裏づけされておらないことが争点になることが多いと。したがって、事実の確認が主であろうということで異議申し立てを前置しておるわけでございますが、御承知のように、青色申告のように、正当な記帳が行なわれておりまして、その課税関係につきまして税務当局が否認をいたす場合には、より正確な資料に基づいて、あるいは法律的な解釈の違いに基づいて更正を行なうというようなものにつきましては、異議申し立てを経ずに審査の請求になるわけであります。しかし、ただ、異議申し立てを行なわれた納税者につきましても、異議申し立ての決定が三カ月たってもなお行なわれないときには、納税者との間に話し合って審査請求に移るということになっておるわけであります。で、審査請求後さらに三カ月にわたって裁決されないときには、訴訟ができるようになっておる、そういうわけであります。
#19
○木村禧八郎君 それで、いまのお話で、白の場合は、まず第一にどうしても異議申し立ての段階を経なければならないというようになっているでしょう。そうしますと、そこからやはり権利救済の問題が起こってくると思うんですがね。もし第一段階の異議申し立ての段階で権利救済がされないように制度的になっているとすれば、その面については、いまの国税不服審査制度を設けても、もうそこへ至らない間に、たとえば見直し調査をやりまして、更正決定で百二十万円だと。自分は百万円と主張したのだけれども。ところが、それを今度は審査を受ける。その質問検査を受けるときに拒否すれば損ですからね。大体損にきまっています。そういうようなことから、またこれは総額主義と争点主義の問題になってくると思うんですがね。見直し調査をされるような場合、そのときに総額主義でやられるのならば、どうしたってまたほかの所得があったのが発見されるんじゃないか、そういうような疑いも出てきて、それで結局拒否もできない。あるいはまた、今度は総額主義で調査をした場合、たとえば百万円自分が所得があると申告したのに、百二十万に更正決定される。二十万円については、必要経費についてこれは自分が否認したと。そうして税務署がこれを認めたと。そういう場合は、百万円と納税者の申告どおりの金額が出るとしますね。今度ほかに二十万円の脱税があったということが発見されて、百二十万円ということなる。そういうことになれば、結局において原処分の金額と同じように課税されるということになるわけですが、そういうような問題もあるわけですね。
 それですから、白の場合は、審査請求に行こうとしても、第一段階でどうしても異議申し立ての段階を経なければならぬということになると、そこにほんとうに正しい意味での権利救済が制度的に確立されないという疑いが出てくると思うんです。その場合、だから、これまでも質疑を通じて非常に問題になってきたのは、最後は、結局総額主義か争点主義かの問題が非常に重要になってくると思うんですね、そこでですね。
 元来、原処分庁が見直し調査をするということ自体にやはり問題がある、その段階でですね。そうでしょう。更生決定をしたその処分庁が見直し調査をやるということ自体に一つ問題があるのじゃないですか。だから、異議申し立ての段階からもう救済の段階に入るという場合、処分庁がまた見直し調査することに一つ問題があるのであって、これでは正しい意味での権利救済に制度的にならぬ。それは運用の面においてそうならぬようにするといったって、制度的に何も保証がないやじないですか。そういうことがあるから、私は、制度的に納税者の権利擁護ということを今度の国税通則法の改正の趣旨としたのならば、そこから出発して、やはり納税者の権利救済を制度的に確立するようにならなければいけないと思うんですよ。国税不服審判の段階だけを問題にしたのじゃいけないのであって、やはり異議申し立ての段階から制度的に納税者の権利救済になるようにしなければいけない。いままでわれわれの質問においてもそこのところが少し混乱があったと思うんですけれども、答弁も、国税不服審判の段階、そこのところだけとらえて、いままでより多少のメリットがあるとかないとか言っているんです。そこへ行けない。白の人なんか、そこへ行くまでには、第一段階の異議申し立ての段階でもう見直し調査の段階で、審査請求に行けないという事態が起こってきちゃう。こういう問題をどういうふうに処理するのかですね。
 だから、結局、結論的には、ずいぶん問題になりました総額主義と争点主義の問題ですが、争点主義について何か法律で規定できないのかどうか。ただ運用運用と言ったって、それでは何らの制度的な保証はないのですから、私はそこが非常に重要な問題になると思うんですが、どうなんですか。
#20
○政府委員(細見卓君) 争点主義の問題もさることながら、白色申告者の課税、特に更正決定の場合におきましては、残念ながら記帳がほとんど行なわれておらないので、推計課税によらざるを得ない。したがって、それに対して異議が申し立てられました場合にも、争点というようなものがクローズアップされないで、何となしに私の所得は多過ぎますという式のものが多いわけであります。しかし、それでも納税者の異議がありますから、取り上げて再調査をいたさなければならない。その再調査にあたりましては、より事実を明らかにいたしまして、異議の決定については、先ほど申し上げましたように、理由を明示するわけであります。そこで、はじめて争点らしきものがおのずから浮かび出てまいるわけであります。そこの段階から以後におきましては、理由の開示、その理由に対して審査の請求が行なわれ、それに対して課税官庁は答弁書を出していくということによりまして、法律に文言があろうとなかろうと、現実的には争点主義的に運営されていかざるを得ない。もし、記帳にして正確であり、その事実にして正確なものでありますとすれば、答弁書、理由書というようなものを中心にして審査が行なわれていくわけであります。
 ただ、残念ながら、白色の段階におきましては、そういう事実そのものが明らかにならないというものが多いということが現実でございまして、その事実関係の調査ということ、事実関係の存否というようなことについての争いが多い。そういうような点を考えまして、むしろ処分した官庁のほうがいろいろなことについて納税者の実態を承知しておる。もし、処分官庁と違った審査請求の不服審判所へかりにそうした人たちに出訴してもらったといたしましても、事実関係の調査はおそらく課税処分庁に逐一出さなければならないし、それに対して納税者の反論というようなものも、多くの場合事実関係の問題でありまして、現地において確かめ合わなければならない。そういう事件が非常に反復的であり、また多数あって、しかもそれが事実関係で現地について調査をしなければならないことが多いというようなことを考えて、従来の税務争訟というのは、御承知のとおり、異議申し立てと審査の二段階になっております。その審査の段階におきましては、少なくとも納税者の争われる論点というようなものも明らかになっておるわけでありますから、そのものについてはもっとフランクに通達とかあるいは従来の慣例にこだわらない裁決をしてまいろう、これがまさに争点主義を貫きながら納税者の権利を擁護できるゆえんであろうと私どもは考えているわけであります。
#21
○木村禧八郎君 そうなると、何か水かけ論みたいになってしまうんですけれども、青色申告でも、審査の段階で、本人についてはこの質問検査について拒否した場合に罰則はないけれども、第三者にあるわけですね。これがまた一つの問題ですけれども、とにかくその前に、いま問題になっている白の場合、結局どうしても第一段階として異議申し立ての段階を経なければならぬということになると、異議申し立ての段階でやはり権利救済を制度的に確立しないと、せっかく不服審判制度を設けても、そこまで至らない段階で、結局、争点主義を制度的にはっきり規定しないと、原処分維持のための調査になってしまう。実際にはそうなってしまうと思うんです。だって、原処分庁が見直し調査をやるんでしょう。ですから、それで調査を拒否すれば結局不利ですわね。税務署のとおりになってしまうのだから、これは却下されちゃうわけですね。そうすると、百万円は百二十万円に更正決定されて、その百二十万円どおりに決定されてしまうことになるわけでしょう。
 ですから、私は、この異議申し立ての段階での権利救済というものは、ここのところをやらなければ次の段階に行けないのですから、ここは非常に重要だと思うんです。そこで、どうしても争点主義を制度的にあるいは法律の規定においてこれをはっきりさせませんと――ここのところは運用運用ということで逃げてしまうわけですよ。ところが、運用となると、今度はさっき言った信頼関係ですよ。信頼関係になると、はたして税務当局なりそういうものが信頼できるかどうか。過去の経験から考えて、信頼できない点が非常にたくさんあるでしょう。いわゆる更正決定の段階において事前に調査があるんですが、それについてこの前も私は質問いたしましたが、いろいろ問題がある。たとえば納税相談の問題なんか、白色申告の場合、いわゆる税務署へ出て行く出署の依頼があって、そうして出署しない人、それから出署しても税務署の言い分に応じない人、それから申告書を出しても税務署の調査との間の調査額よりは低い人、そういういろいろな段階がありますけれども、出署しない人とか、あるいは出署しても税務署の言い分に応じない人とか、あるいは申告書を出しても税務署の調査額より低い人、いずれもすみやかに更正決定をしなければならぬことになっておるわけですね。そういう場合、出署しない人については、税務署のほうの認定において決定されてしまう。そして、申告書を出しても、税務署の調査額より低い人については、いろいろ調査いたしますが、この間質問したように、たとえば深夜調査とか、あるいはおとり調査とか、いろいろそういうような調査があるわけです。そういうことについて納税者に不信をいだかれておる。もしほんとうにそれが信頼されておるのなら、何も国税不服審査制度ですね、こんなものがなくたっていいわけなんです、ほんとうに信頼されているならば。そこに信頼感がないからこういう救済制度が出てくるのであって、だから、私は、先ほどメリットを伺ったのですけれども、国税不服審査の段階に至る前に、どうしても異議申し立ての段階で、もうすでに決定に従わざるを得ないように追い込まれていってしまう、見直し調査の段階でね。ここのところを救済しなければ、ほんとうの救済にならぬのじゃないかと思う。青についてはあとにします、問題があるのですが。まず、白についてはそうでしょう。これをだんだん詰めていくと、結局、それは一番納税者として不安なのは総額主義ですね。だから、争点主義をもっと制度的に何かどこか法律で規定できないものか。そうすれば、制度的に法制的にはっきりするわけです。ここがいま一番争いになっているんです。そこのところが一番議論の焦点になっている。結局、総額主義と争点主義をどういうふうにはっきりさせるか。運用において総額主義にならないようにすると言っておる。そうすると、信頼関係になる。信頼感が問題になるので、信頼感ということになると、信頼感が不十分であるからこういう救済制度が起こるということになるのであって、そこに法律的に争点主義にするということを規定すれば、そこで非常にはっきりしてくる。制度的に救済するということになってくる。ここが一番焦点になるのじゃないかと思うんですがね。
#22
○政府委員(吉國二郎君) ただいま木村先生の仰せの信頼感、したがって、納税者が安心して異議申し立てできるようにすべきではないか、それを制度的に担保しなければならぬじゃないかという御説は、私もよくわかるのであります。ただ、問題は、税務署がよく信頼されるということ、これには私ども全責任を尽くさなければならぬ思いますが、いま御説がございましたように、私どもどうもふっ切れないところがございますのは、税務署は、同時に、いまクロヨン(九・六・四)とかいろいろ言われておりますように、調査と申しますか、申告納税に対する確実な所得の把握が不十分ではないかという指摘を受けておりまして、その面からの信頼関係というものがむしろ争われておるような状況にもございます。したがいまして、いま先生おっしゃったとおり、いろいろの調査をやっておりますが、そのやり方が悪いというために、調べられた納税者に信頼感がないという事実も私は絶無ではないと、これはそのとおりだと思うのでございますけれども、同時に、正しい調査をして、申告内容というものを源泉徴収を受けている納税者と同じようなところまで高めるということについての信頼感というもの、これも確保しなければならないという、非常にむずかしい立場に立っておるわけでございます。また、権利救済という点におきましても、いわゆる権利保護を求めるということにつきましては、納税者は、自分が所得があるにかかわらずそれより低い決定を求める権利保護の請求は行なえないはずだ。論理的にはそういうことはあり得ないと思うのでございます。つまり、ただ税法上算出された所得額よりもよけいに課税されておるということを是正するということが真の権利救済か――納税者としては、税法上の所得に対しては納税する義務がある。同時に、それ以上の決定を受けるものに対してはこれの是正を求める当然の権利がある。その権利救済という面をとらえて不服審査を運用していこうという考え方が今回の改正であると思います。そういう意味では、毎々申し上げておりますように、一つの正しい所得を把握する立場にある税務官庁というものが異議申し立てを受けた場合には、やはりその正しい所得に対して行政としての全力を尽くすということが前提でなければならないと思いますが、審査を請求された、つまり税務官庁が最終的にきめた所得がほんとうに正しいかどうかを争われる審査の段階では、できるだけ両者の主張を聞いて、審判所自体がみずから進んで所得を調査する任務というものは積極的には持っていないという立場から申しますと、審判所としてはその言い分がどちらが正しいかを中心にして審査をやっていくほうが筋であろうということになるかと思うのであります。そういう意味で、異議申し立て段階と審査段階とはやや違う色彩を持っておっても私はいいと思う。つまり、それが、今回の改正においては、審査段階においては権利保護ということに重点を置いたシステムをつくるということにした理由ではないかと実は私は考えておるわけでございます。そういう意味で御理解願えればと思うわけであります。
#23
○木村禧八郎君 審査段階ではわかるんですよ。これは、民事的に、税務署のほうから答弁書を出す、それに対して納税者のほうがいろいろ問題を指摘してこれに反論を出す、これは対等の立場ですよ。対等の立場というか、両方の立場が保護されているわけですね。擁護されている。ですから、これは民事的な裁判の形だと思うんですよ。そういうものは取り入れられている。ところが、異議申請の段階はそうじゃないですよ。そこに問題があるというんですよ。だから、異議申請の段階もそういうふうにするためには、それに近づけるためには、やはり総額主義を打ち切って、そこに審査段階と違う点があるから、争点主義でやるんだということを、そういう規定を入れるとか、法律的に規定をするとか、何かもっと制度的に法規的にはっきりさせませんと、運用運用というのじゃ、権利救済制度の整備充実の趣旨に反する。そこにそういう段階の違いがあるわけです。だから、二審制になっているのでしょう。どうしても第一段階を経なければならぬ。その経なければならぬ第一段階において権利救済の問題がないんですよ。ところが、実際、事実問題として、制度的に保証されていないのじゃないですか、運用運用というのですから、そうでしょう。制度的にそれは確立されていないでしょう。
#24
○政府委員(細見卓君) 八十四条の四項に、「異議決定書には、決定の理由を附記し、異議審理庁が記名押印をしなければならない。」とありますように、つまり、異議申し立ての段階におきましては、争点というようなものすらまだ確立しておらない。何とはなしに私の所得はそんなに多くないのにこういう決定を受けて困っているんだと、その理由も必ずしも明らかにならない。つまり、青色申告のように、取引の全貌なり事業の全貌なりがそれなりに明らかになっておって、その部分について、たとえば帳簿上重大なミスがあるとか、あるいはその法律の解釈において問題があるということでありますれば、そこからかなり争点的に事案が処理できるというので、不服審判所におきましては、その書面のやりとりという形でいわば実質的な争点主義が保証されておるわけでありますが、異議申し立てにおきましては何が争点かということ自体が明らかにならないようなのがむしろ事例としては多いわけであります。その異議の決定におきまして初めて異議審理庁は決定の理由を明らかにして、そこで納税者との間に初めて争点というものがクローズアップできるようになる。その争点をクローズアップする前の、何が争点かということ自体がまだ調査できておらない段階が、多くの場合に異議申し立てにあるわけでありまして、行政なりあるいは税務行政の現実をごらん願えれば、制度としては少なくとも審理段階で一歩進めたわけでありますし、争点主義に近づけるためにここで初めて決定の理由というものを附記することによって争点主義に移行できるように準備いたしておるという点は、ただ運用運用だけでなくて、制度的にもそういう効果が入っておるというようにお受け取り願いたいと思います。
#25
○木村禧八郎君 異議申請の段階で争点も明らかにならぬというけれども、百万円で申請したら更正決定百二十万円だと。二十万円が争点じゃありませんか。この二十万円の争点について、これを総額主義で調査をする場合と、争点主義で調査する場合とは、非常に違うわけですよね。総額主義でやる場合は、さっきもお話ししましたが、百二十万円に更正決定した場合、その二十万円分について、これは必要経費として納税者のほうで見積もったのに対して、税務署が否認した。その必要経費は削られた。そこが百二十万円になったとするんですね。そこが争点になるわけですよ、はっきり言って。ところが、原処分庁が見直し調査をするのであるから、どうしたって実際問題として原処分維持の傾向になるんですよ。原処分庁がやるんですもの、メンツが失われるのですから、立場が。そこにまたい総額主義ならいほかに調査をすると二十万円出てきた。で、必要経費において納税者の立場を認めてそれを百万円にきめたけれども、いままで原処分庁として百二十万円に決定したのにこれを今度百万円に減らすのは、もう立場上いままでの決定に不備があったわけです。それで、やはり今度は百二十万円というものに課税をする、そういう傾向になりやすい。大体、原処分庁が見直し調査をするということに一つ問題があるし、見直し調査の段階でこの調査を拒否すれば、不利ですよ、どうしても。それに協力しなければ、それじゃ税務署の決定どおりになる。つまり、却下されてしまうわけですよね。そういう不利な状態にあるわけですよね、納税者としては。だから、その場合に、そういう不利の状態を救済するには、争点主義を法律ではっきりと規定すればいいんですよ。そこを規定しないというところに問題がある。そうなると、取る側として非常に弱くなるというので、そこができない、運用で運用でと。運用ということになると、信頼関係です。信頼関係は制度的に何ら保証されていない。だから、そこのところがもう運用でいくので、そういう法律でなければしようがないということになるかもしれない。ここが一番重要ですよ。
 だから、国税通則法を改正して国税不服審判所を設けてこの制度を設けたその段階においては、いかにも納税者の権利を救済するように見える。ある程度前進の点もないわけではない。メリットがあるかもしれませんが、その段階へ行けない人はどうしますか。また、納税者の権利擁護の段階は、さっきいったように、異議申し立ての段階からそういう段階に入る、われわれはそういう考えを持っているわけですから。
#26
○政府委員(吉國二郎君) 御指摘のように、処分庁が調査をすれば見直し調査になるということは、当然そうなると思いますが、その場合に次の審査請求につなげなくなるということはないのではないかと思います。そこで、異議申し立てに対して却下は、それは形式要件を備えないときだけで、内容がもう理由がないというのは棄却でございますが、棄却に対しては当然審査請求ができるということになると思いますし、また、先生のおっしゃっておるのは、かりに百万円の所得がある、かりに一千万円の売り上げがあって九百万円の必要経費であるといったのを、税務署が二十万円否認したために必要経費が八百八十万円になってしまって、百二十万円の決定になってしまった。ところが、調べてみたところが、ほかに売り上げが二十万円落ちている、それでやっぱり百二十万円であったという場合には、確かに内容的にも権利保護の理由がなくなってしまいますから、これは審査しても結局だめだということになると思うのでございます。その場合に、どうも私どもふっ切れないのでございますが、行政の適正な運用を保つという面から申しますと、百二十万円の納税をすべきであった人が、百万円と言っておった。ところが、調べてみたらそれは百二十万円でも文句がなかったんだという結果になった場合に、これは権利救済をしなかったということになるのかならぬのか、その点はなかなかむずかしいところではないかと思うのでございます。ただ、もちろん先生のおっしゃっておるように、納税者を信頼すれば、納税者の言い分だけ聞けばいいじゃないかという立場があり得ると思う。それは、全く審査の専門である国税不服審判所はそこまで手を伸ばしてやる必要はないのではないか、つまり二十万円の経費についての争いがあれば、それだけについてやっておけばいいので、それから先まで手を出さなくてもいいので、はないかということで青木先生がおっしゃっておったのでありますが、そういう意味では、権利救済ということだけのためにやっておる審判所の場合に、そういう運営を強く打ち出すということは私も一つの十分理由のあることであると思うのでございます。そういう意味で、審判所が真実の所得を把握しないでいいという意味ではないとは思いますが、真実の所得というものもいわばいろいろな資料が積み重なってできるものでございますが、その途中の段階であっても、その資料に争いがあった、その資料の争いについてだけ審判をやっていけばいいのではないかという考え方は、これはそういう手続法として考えられるべきものだと思います。そういう意味で、大臣からも、青木先生の御質問に対しまして、そのような考え方で運営をいたしたいということを申し上げたわけだと思います。
 そういう意味で、非常にぎりぎり詰めてまいりますと、争点主義というものと総額主義というものの最後の姿、一体納税義務というものはどこにあるか、さらに納税義務を前提として権利救済がどこまであるかということが、そこがなかなか割り切れないところがございます。今度の制度は、いわばそこで一つの均衡をとってあるということではなかろうか、そう解釈していただくと私どもは筋が通るのじゃないかと思うのでございます。
#27
○松井誠君 ちょっと関連して。いまの点ですけれども、木村委員が言われるように争点主義ということばを明確に書くということも制度的な保証の一つだと思うんですけれども、もう一つは、異議の申し立てがあったら原処分庁の調査権というものがその段階でなくなる、見直し調査というものができなくなるんだということがはっきりすれば、それなりに一つの保証になると思います。あなたが言われたように真実の発見をしなければならぬという任務がずっと続いていくとすれば、見直し調査をせざるを得ないということになると思います。しかし、人間のやることですから、一〇〇%どこまで行けば完全な調査ができるということは元来ないわけです。ですから、一応全額を決定したときに調査が終わった、それから先は調査をしないんだというたてまえをとってもらえば、いまの問題はそれなりに解決できると思う。そういうように調査権というのはいつまでも続くんだという立場で――というのは、いまあたが言われたように真実を発見するのが義務なんだということから形式的に出てくると思いますけれども、その真実の発見というのは、いま言ったように厳密に考えれば、調査というのは未来永劫いつまでも続けなきゃならぬということになっちゃう。その辺はやはり人為的に一つの時期を区切って、それから以後は調査できない、人間の能力で調査できる段階はここまでなんだ、異議の申し立てがあれば、あった部分についてだけしか調査ができないというようなたてまえをとれば、できぬことはないわけですね。そういう調査権の限界といいますか、そういうものを考え直すというわけにはいかないのですか。
#28
○政府委員(吉國二郎君) おっしゃるとおり、真実というものも、絶対的真実というものではなくて、相対的真実というものが実際社会においては実際ではないかということだと思います。そういう意味では、どこまで真実を追求するかという問題があると思います。いま主税局長が言っておりましたように、実際に異議申し立ての段階において、百二十万、百万というのが、明確にこれしかないということではなくて、百二十万円は多すぎる、百万であるというような申し立てが非常に多い。その場合に、やはり調査しなければそれに対する判断はつかないという問題はあると思います。ですから、どこまでが真実の所得かというものを追求するのを徹底するということは、いまの制度、税務署員の数からいって相対的に当然限界があると思います。その限界というのを考えながら、また、その真実のあらわれ方の程度、それによっても差はついてくると思います。おっしゃるように、ここまで調べればこれ以上調べるのは無理だという段階においては、そこで言い分を比較して、そこで答えを出すということもこれは私はあり得ることだと思います。現に、税務署におきましても、異議申し立てのあったものの四〇数%は税務署側の決定を直しておる。そういう意味では、運用においてもそういうことが行なわれているのは実は真実であろうと思います。原則というか、絶対的にこれがそうでなければならぬということになりますと、さっき申し上げたような真実性の程度が違いますので、問題が起こる可能性が非常にあり得る。そういう意味では、運用で解決ができる問題ではないかと私が申し上げるのは、いわば松井先生のおっしゃったような意味で真実性をどこかで切るということで解決していくのが筋道ではなかろうかと思います。
#29
○木村禧八郎君 こういうことができないのですかね。更正決定に対して異議申し立てるそのときに、見直し調査の段階を飛ばして、すぐに不服審査のほうへ持っていく。その場合は、さっきのお話のように、税務署のほうも答弁書を出さなきゃならぬ、また、反駁もできる、こういうことになって、対等の立場になるでしょう。そういうことはできないのですか。
#30
○政府委員(細見卓君) 遠い将来の問題といたしまして、納税者と税務署との間に信頼関係もでき、納税者も適正な申告を大部分の人がしていただいて、更生決定というような部分はむしろ例外の例外だというような時代になりますれば、現実的にもそういうことが可能かと思いますが、いまの現状におきましては、まあ現状を現状として認識して一歩前進というのでは、やはりいま提案いたしておるようなものが――そういう意味で、木村委員から御指摘がありましたように、一方に徹底しておらない面がございます。それは現実の認識のあるいは違いがあるのかもしれませんが、私どもは、現状を考え、現状に発生するいろいろな異議申し立ての案件を処理しながら、しかも納税者の権利の救済ができるということになりますと、こういう二段がまえのやり方が、多数発生してくる件数をただいたずらに放置するというようなことになっても、ほんとうの意味の権利救済にならぬわけですから、事実問題の処理については原処分庁の段階で何が真実かということをおよその整理をしておく、それができて、なお争点のあるものを不服審判所へ持ってきて、そこで処理するというのが、現実的に多数なおまだ異議の申し立てのある現状におきましてはやむを得ないのであって、将来の姿としてはそうした審査処理あるいは異議の申し立て審理庁を一本化することも理想としては考え得ることであろうかと思います。
#31
○木村禧八郎君 すぐに裁判所に持って行けないというような事態、そういうことは出訴権の制限になるわけですね。なぜ制限しなきゃならぬかということですね。そこが一つの問題になる。なぜ二段がまえでやらなきゃならぬか、二審制にしなきゃならぬか、その理由は一体どこにあるのですか。
#32
○政府委員(細見卓君) 先ほども申し上げましたように、日本の制度におきましては行政不服に対する最後の救済は司法裁判所によることになっておるわけでございます。これをこの段階におきまして、現状の――これも認識の問題でありますが、租税事件というのは、法律問題というよりは事実問題が多い、しかも多数発生するということを考えまして、現在の司法裁判所のほうへ直接つなぐということが、事務処理の能率その他からいたしまして、御承知のように、現在の司法事件というのは、一年とか二年近くかかっておるものが大部分でございます。そういう現状を考えますと、いまそれを訴願前置を省略して司法裁判所へ持っていくのは適当じゃなかろう。そこで、それでは司法裁判所の一審的なものを行政部内に置いて、いわば第一次的な司法救済的なものを行政部内に考えたらどうかというのが先般社会党のほうから御提案になっておった審判所制度であるわけでありますが、現状におきまして行政部内にそういうものがまだ慣例としてでき上がっておらないので、国税庁長官の行政権とそれから不服審判所の審判権との間にもし異なった見解ができたときにどうするかとか、あるいは最終的に徴税の権限はだれが持っておるのかというような微妙な点が一方にございますし、また、一方におきまして、そういうふうにできた租税裁判所的な不服審判所も、それを直接高等裁判所につなげるかどうかというようなことにつきましては、日本の司法制度そのものにつながるかなり根本的な問題もございますので、なお時日をかけて権討をいたさなければならない。そういうようなことで、あちらこちらそういう意味で非常に妥協的な要素が多いわけでありますが、衆議院での附帯決議にもございますように、われわれとしては、この制度が制度として純化してまいりまして、不服審判所がアメリカの租税裁判所のようなことになるのにも、やはりそこに国民に信頼されるりっぱな審判官を得て、司法部内においてもそこで処分したものは司法の一審と見ても差しつかえないというような信頼を得なければならない。そういうようなことで、やはり時日をかけて新しい制度を育てていく。育てていく過程でまた新しい脱皮が可能ではないか。そういう意味で衆議院でいただいた附帯決議はわれわれはその方向で努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
#33
○木村禧八郎君 これは選択制にはできないんですか。
#34
○政府委員(細見卓君) やはり、選択制ということは、いまの制度論を解決しておかないと無理じゃないかと思います。
#35
○木村禧八郎君 いま二審制をとっておるのは、結局、事実認定の必要上と、それから非常に件数がたくさんあるということですが、税務署においてこれを一応整理をする必要があるというようなことだったんですね。しかし、いまそういう理由を伺ったんですけれども、実質的にはそれは出訴権の――憲法で保障されているそういうものの制限になるということはもう明らかなんですけれども、結局、いままでの御答弁を聞いていますと、制度的に納税者の権利救済がどうも不十分である。ことに異議申し立ての段階ではですね。大体、原処分庁が見直し調査をやるということ、そこに一つの問題がありますし、それから、いま、争点主義が法律的に制度的にはっきりされていない、運用で逃げているという点がやはり一番問題じゃないかと思うんですが、そうすると、今度は、運用が問題になってくる。
 もう時間が過ぎましたから、私はあと簡単に質問しますが、運用の面については、まず一つは、更正決定する場合の事前調査、事後調査ですね、それに一つ問題がある。それは信頼感との関連でですね。そこで、この間質問いたしましたが、実際問題として、深夜調査ですね、こういうものは、今後、一体どうするのか。これには非常に弊害があるということは明らかになったと思うんです。たとえば、営業妨害になるんじゃないか。それから深夜調査では十分に調査ができないんじゃないか。不十分な調査のまま更正決定するということは不合理じゃないか。それから申告内容が不明の段階において事前調査するということは問題ではないか。おとり調査なんかも、これはいわゆる人権侵害の問題にも関連してくる。そこで、これは今後続けるのかどうか。この間、長官は、やはり税務職員も非常に能率が阻害されるんだと、健康上にも問題があるということを言われましたが、こういうのは続けていくのかどうか。これについては相当不信感がありますよ。その信頼感との関連も出てきますが、今後こういうことは続けていくのかどうか。
#36
○政府委員(吉國二郎君) 先日お尋ねがございましたが、深夜調査につきましては、その節申し上げましたように、営業の形態からいたしまして、調査をする場所がないと申しましては語弊がございますが、営業所に夜通って来て帳簿は営業所に置いてあるというような状況でございますと。昼行っても当事者はいない、夜行かなければ帳簿も見られないし当事者との話し合いもできない、こういう段階でございますので、私は、これは好ましいことではないけれども、将来、それらの人が青色申告になり正しい帳簿を提出をしてくる、そして一定の場所で互いに話し合いができるという状況ができるまでは、例外的にこれはやはり続けざるを得ない面があるということは、最小限度申し上げざるを得ないと思うのでございます。
 それからおとり調査という問題は、これは警察でもよく問題になる問題でございますが、この間も申し上げましたように、実際にその店に行ってみて営業の状態を見て、その情報をもとにして調査をするということにいたしておりまして、そこで見て、帳簿を破っているのを見て「おい」と言ってすぐやるというようないわゆる君子豹変のようなことはやらしておりません。そういう事実があって、情報が入れば、それをもとにして、正確な調査を、翌日、あるいはある時期において行なうといったようなことにいたしておりまして、いわゆるおとり調査をそのまま実行するということはやらしておりませんので、これもやはり正確な所得を把握するという面で最低限度必要なものはやらざるを得ないのではないかと思います。
 さらに、事前調査につきましても、たとえば季節的な営業とかいうようなものになりますと、夏は氷屋をやる、冬は炭屋をやる、まあこれはだいぶ昔の話になりますけれども、そういうようなことで、営業の形態が常に変わっております。したがって、帳簿その他が不備である場合には、その実態を把握しておかないと実際問題としてその処分ができないという問題があるわけでございます。これらも、帳簿の整備等が確実に行なわれるようになり、お互いに信頼感ができてくれば、自然に消滅すべき問題だと思います。先ほどお話がございましたが、事前調査をして出署しない場合にはすぐにそれで認定するか。そういうことはいたしておりませんので、さらに事後調査で補充をいたしまして、その上で最終の決定をするということにいま進めております。
 そういうようなことで、裏を返して申しますと、いまこれだけ税務職員は全国民のために非常な苦労を払っているという点は御理解を願いたいと思うのでございます。税務職員も好んでやっているわけではもちろんないので、やむを得ず申告の適正化、全体の申告納税の向上という面を考えてやっているわけでございますので、漸次お互いの理解、信頼が深まるにつれて問題は解決していくのではないかと、かように考えております。
#37
○木村禧八郎君 これは税務職員の精励についてはわれわれ認めることにやぶさかではないんですけれども、行き過ぎるということに問題があるので、ですから、特殊の例外としてやるんならばこれはやむを得ないと思います。それを一般化するようなことが問題じゃないかと思うんですね。そこが一般化されるようなおそれがあるのではないかというので質問しているわけです。ですから、そういうことはもう特殊な例外なんだと、これは一般化するようなことはないんだと、こう理解していいわけですね。
#38
○政府委員(吉國二郎君) いま申しました深夜調査とか、おとり調査と申しますか、そういうようなものは、業種業態によって当然制約されてくると思います。
 また、先日お話がございました札幌局の問題を調べてみましたけれども、あれは、調査対象を選定するために、あらかじめ、売り上げ、あるいはそれに対する営業利益、利益率等を同業種と比較をいたしまして、そうしてそこの中から抽出をして調査をするということを指示しているわけでございまして、あれで直ちに決定するのではなくて、これには調査を施行するのがいいかどうかということをやるためにやっているようでございます。権衡だけで課税をするという指示はいたしておりません。基本的に申しまして、原則としてはそういうような考えで調査対象をできるだけ選びそれに対して調査を必要と認めるものをできるだけ対象にして調べるということを今後とも進めてまいりたいと、かように考えております。
#39
○木村禧八郎君 いま、札幌の国税局長のいわゆる権衡査案的方法について、これは実際には推計課税になるのではないかという質問に対して御答弁があったんですが、実質的にはこれは推計課税になるのじゃないですか。権衡査案的指導という指導をしているようですけれども、われわれが聞いたところでは、権衡査案というのは、第一に密度の高い調査を典型的にやる。それから収入と経営の基準をきめる。それを一般化する。経済指標ですね、経済成長率とか、あるいは物価の伸び率とか、国民所得の伸びとか、経済指標等でこれを修正する。そうして推計課税の柱がつくられる。そうして標準率と効率表というものがつくられる。そういうものをもとにして課税される。これは推計課税の基礎がここできるわけです。こういう指導をするわけなんです。これはやっぱり推計課税になっていくのではないかと思うんですが、そういうことになると、これは信頼感が失われますし、申告制度に反しているわけですから、青色申告を指導していることと全く矛盾してくるわけですね。そういうおそれは全然ないと言われるようですけれども、私はいわゆる権衡査案というものの内容を聞きましたら、やはり推計課税の基礎になると思うのですが、どうですか。
#40
○政府委員(吉國二郎君) 権衡査案の段階は、確かに推計でやっているわけです。実地調査はやっておりません。そこで見た場合に同業者等から見て非常に利益率が低いと。そういう者に対しては、一応当たって、それが非常に大きな所得者であれば、実額調査をやって、それをはっきり確かめて、是正をする必要があれば是正をする。もしあまり大きな所得者でない場合は、それで注意をして、おたくはこういう点が問題、があります、十分注意をして申告してくださいという申告相談をするというやり方でございまして、これでいきなり決定をしてしまうという趣旨では決してないわけであります。その点は通達でも明らかにいたしておりますので、それを行き過ぎて決定してしまうようなことがあってはたいへんでございますから、この点は特にこれこそ運用上注意しなければいけないことだと思います。通達は、はっきり権衡査案というものはそういう事前のいわば準備調査として実行するということを言っているわけでございます。
#41
○木村禧八郎君 最後に一つだけ、いわゆる信頼感との関連の問題なんですが、これは何回も質問したんですが、国税審査会の審査委員ですね、これはだれだれと名前は必要ないですけれども、十人のうち、納税者の権利擁護の立場から、信頼感を深める意味で、どういうようなところを代表する人をどの程度考えるか。たとえば、納税者の立場を考えるような人をかなり重視して審査委員にするとか、これは信頼感との関係で非常に重要ですよ。それから審判官についても、民間人の登用ということもこれは非常に重要だと思う。先ほど、事実認定について公正なる事実をそこで調査するんだとか言っておりますけれども、しかし、これも突き詰めていけば、たとえば法人税なんかについては、八幡製鉄あたりを実際調査できるかどうか、あんな大きなところを。ほんとうですよ。そういうのは十分調査できていないで、小さい個人ならばもうお勝手までもわかるんですよね。そういうことを突き詰めていけば、いまの調査やなんかというものは非常に不合理があると思う。政治的にも政策的にもいろいろ曲げられている点が非常にあるのではないかと思うんですよ。だから、それを突き詰めていけば、これは政治の問題ということになってくると思うんですが、大資本については、税務署のいまの定員からいっても、そういうことは客観的にでき得ないようになってしまっている。ですから、そういうことを議論していけば、不均衡なり不公平がたくさんあるのじゃないかと思うんですよ。厳正厳正と言うけれども、一番厳正に調査されるのは小さいところということになりやすいと思う。ですから、そういう点もやはり考慮に入れながら、信頼感を得るような制度をそういう方面でも考慮しなければならぬと思う。最後に、その点をどういうふうに考えられるか、伺いたいと思います。
#42
○政府委員(吉國二郎君) ただいま八幡製鉄の例が出ましたけれども、御承知のとおり、国税庁創設の当時に、大きい所得者に対しては徹底した調査をすべきではないかということで、調査課というものを国税局に設けまして、調査官というものを特別に置いたわけであります。しかし、調査課所管法人というのが現在全国で約一万五千ございます。一万五千の法人を現在さらに分けまして、六十億以上の資本金を持つものを、特別調査官という非常に優秀な人間を選びまして、特別の調査に付しております。その特別調査官のやりました一件当たりの調査日数というのは、平均で約二百日ぐらい、八幡あたりになりますと五百日ぐらいかける、つまり一年いわばべったりはりついている以上のことをやっているわけでございます。細密に調査をしておりますし、もちろんまだそれで足りない部分もあると思いますけれども、それに対して最終的な決定かをする場合に、政治的配慮が入るということは、これは絶対ございません。これは国税庁限りですべて決定をいたしておりますので、その点は御心配はいただかないでいいと思うのでございます。ただ、能力がなくて、五百日かけても本物が抜けておったということがないとは私は申せませんけれども、そのためには特別調査官は最高の調査官を充てております。そういう意味では、体制としては大きなものに集中的な調査をするという体制がとられているわけでございます。現に、一万五千の法人が実際問題として法人税の六六%を負担している状況でもございまして、したがって、その更正額も相当大きいということも事実でございます。極力そういう意味で国税庁としては努力いたしております。さらに今後ともそういう点は強化をし、正しい調査を公平に実行するということにつとめてまいりたいと考えております。
#43
○政府委員(藤田正明君) 審査委員の選定につきましては、この間大臣が申し上げたのですが、ただいま木村委員が言われたように、納税者の信頼を深める、そして納税者の権利を守るというふうな方を、人格の円満、常識の発達した方を選ぶように努力をいたしますし、また、審判官の民間人の登用に関しましては、おっしゃるとおりに大いに適格な人を選ぶようにつとめるつもりでおります。
#44
○木村禧八郎君 いま、長官は、八幡製鉄――これは大法人についての調査の一つの例ですけれども、五百日と言われましたが、何人ぐらいで調査しているのか。私は、実際問題として、ああいうマンモス会社、今度は合併して新日本製鉄になりますが、客観的にいまの定員で実際的にほんとうに調べられるかどうかと思うんですよ。あれの資産とか、あるいは原材料とか、含み資産とか、たなおろし資産とか、いろいろあると思うんですけれども、そういうものを実際に調べられるのかどうか。いま御心配ないと言われたけれども、一万幾らの大法人、六十億以上ですか、ほんとうにそうなら私はいいわけですよ。われわれは感じとして非常に疑いを持っているんです。ですから、感じとしてわれわれに疑いを持たれないように、こうこうこうしているんだという、そういうことを言ってもらえばね。不当にいわゆる中小零細業者なんかをいじめているようなそういう感じを一般に持たれているでしょう。ですから、中小零細業者をいじめているんじゃない、大企業、マンモス企業においても、大法人をこういうふうに調査しているんだ、厳正に調査しているんだという、もう少し具体的な何か御説明がないと、どうもさっきの御答弁だけでは、御心配なくと言ったって、あまり心配しないというわけにはいかないんですよ。実態はどうなっているんですか。
#45
○政府委員(吉國二郎君) 小さい所得者に対する実地調査というものは非常に限られていることは、御承知だと思います。したがいまして、全数を調査するなどということはほど遠いことでございまして、極力制限をしていく。ところが、調査課所管法人については、これはほとんど連年続けて調査いたしますし、さらに、連年調査をいたします関係で、部分的にことしはこの部分をしっかりやるというようなことで、たとえば三年もあれば全部が完全に調べられるというような体制をとっているわけであります。で、特別国税調査官の対象としている法人は六十億以上でございますが、全部で百四十五しかありません。それに対しましては、さっき申し上げましたように、延べで約二百日ぐらいかけて調査をするわけでありますから、相当な深度のある調査ができるわけでございます。また、これらの法人は、全国に何十、何百という支店を持っております。これを一々しらみつぶしに調べるということもなかなかむずかしいわけでございますが、支店調査というものも各地に参りまして調査もいたしておりますが、大体これらの会社の要点というのはやはりございます。つまり、大きな会社としては、支店で勝手な操作をやらせますと、会社自体の内部索制がとれなくなります。したがいまして、中枢部門というものをしっかりつかむことによって相当な成果があがるわけです。この中枢部門に対しては集中的な調査をかなりきびしくやっておりますので、口幅ったい言い方をさっき申し上げまして恐縮でございましたが、われわれとしてやり得る最高の努力をしていると申し上げていいと思いますし、さらに、最後的に決定をするのは、あくまでも国税局長が責任をもって決定をいたしております。そこに政治的な配慮などというものは一切入らないということは申し上げられると思います。
#46
○渡辺武君 発言の順番がまいりましたが、議事進行について一言申し上げたいと思います。
 私は、質問すべき点がたくさんございまして、なお若干の時間が必要だと思うんです。ところが、もう十二時ほんのちょっと前という時間でございまして、御参加の方々もおなかがもうすかれたというころだと思います。それで、もしできましたら、午後から再開していただいて発言するようにしたいと思いますが、どうでしょうか。
#47
○委員長(栗原祐幸君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#48
○委員長(栗原祐幸君) 速記をつけて。
#49
○渡辺武君 国税庁長官にまず最初に伺いたいと思います。
 この前のこの委員会で、私は、長官に対して、異議申請を審理する審理庁ですね、これは行政不服審査法三十二条の規定を待たずとも、各税法の調査権を異議の審理にあたって適用できるという長官の見解は間違っていやしないかということを申し上げました。そうして、明示された法律に基づいてその点をあなたに申し上げたわけですけれども、一日おかれて、きょうになりまして、いろいろ御検討なさったと思いますので、まず最初にあなたのお答えをいただきたいというふうに思います。
#50
○政府委員(吉國二郎君) この点につきまして、慎重を期するため、主税局長から統一的なと申しますか、おとといの議論を整理いたしまして、御説明をいたすことにいたしておりますので、主税局長から御返答いたします。
#51
○政府委員(細見卓君) 租税の不服審査は、真実発見を通じて正当な納税者の権利を救済することであるというのは、申し上げるまでもないわけであります。そのためには、まず、法規に適合した真実の所得を見出しまして、それによって過大な更正から納税者を救済することが必要であり、また、これによりまして、行政不服審査法第一条で行政不服審査の目的の一つとして掲げておりますところの行政の適正な運営の確保に資することになるものであります。
 ところで、各税法の質問検査権でありますが、これは、たとえば所得税法二百三十四条に、「所得税に関する調査について必要があるときは、」と明示されておりますように、法規に適合した真実の所得を発見するために必要がある場合には常に行使するものであります。したがいまして、この調査権を単に課税処分を行なうためのものであるというふうに狭く解釈しなければならないというような根拠はなく、不服の申し立てがあった場合にもこの調査権によって真実を発見し、これによって正当な納税者の権利を救済することも当然含んでおるわけであります。
 いま申し上げましたように、各税法の調査権が不服申し立ての審査に適用されるということは、行政不服審査法が立法される以前からそのように解されておったわけでありまして、このことは行政不服審査法が制定された後も別に変わるわけではございません。すなわち、行政不服審査法は一般的な不服審査に関する調査権を規定いたしておりますが、このことが法令の反対解釈として行政庁が他の法令に基づいて有しております調査権を不服審査の場合に行使できなくなるのではないかというおそれを避けるために、三十二条におきまして、「行政庁が他の法令に基づいて有する調査権の行来を妨げない。」と念のための規定をいたしたことから見ても、このことは明らかであるわけであります。
 なお、不服申し立てに関しましては、「別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」という改正後の通則法八十条の規定から、およそ行政不服審査法のほかは同条にいう「別段の定め」に該当しない規定は、不服申し立てに関して一切適用されることがないと解することは、私どもは適当でないと考えるわけであります。
 すなわち、第一に、行政不服に関連する事項でありましても、行政不服審査法に必ずしも規定が設けられていないものについて定める他の法律の規定があるとすれば、その規定が不服申し立てについて適用されることは当然のことであります。
 第二に、上に申し上げましたとおり、行政不服審査法の制定の経緯及び行政不服審査法に規定した調査権に関する規定は、審査庁が「他の法令に基づいて有する調査権の行使を妨げない。」という同法の三十二条の文言から明らかでありますように、各実体法上の調査権に関しまする規定は行政不服審査法の規定とは独自に適用されるものであると、私どもはかように理解したわけであります。この三十二条の規定は注意的な解釈規定でありまして、実体規定ではなくて、改正後の八十条におきましてその適用を除外いたしておるとしましても、各実体法上の調査権が独自に適用されるといういま申し上げました解釈は変わりないものと私どもは考えております。
#52
○渡辺武君 いま統一見解を伺いましたが、私はどうしてもその見解は納得するわけにはいきません。まあきょうは時間もないし、この問題でまた長々とやり合うわけにもいきませんでしょうから、いずれまた別の場所でこの問題はよくお互いに検討し合いたいというふうに思います。しかし、内閣法制局からせっかくきょうおいでていただいておりますので、内閣法制局に対して若干質問してみたいというふうに思います。問題の所在はいま聞かれたところでおわかりでしょう。おわかりですね。
 それじゃ伺いますけれども、私は、各行政庁というのは、明示された法の定めるところによって行政を行なわなければならぬということ、このことは国家権力の乱用を防ぐために確立された民主主義の原則の一つだと思います。ところで、この明示された法によれば、現行国税通則法の第八章の第一節「不服審査」、その第七十五条には、「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てについては、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」と明示されています。
 そこで、伺いますけれども、まず、この国税通則法第一節には、不服申し立てについての審査庁の調査権について別段の定めがありますかどうか
#53
○政府委員(荒井勇君) 現在の国税通則法第七十五条におきまして「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てについては、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」と書いておりますが、その場合、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てに対する審査のための調査の権限に関していかなる定めがあるかということでございますが、それは……
#54
○渡辺武君 第一節ですよ。「この節」ですよ。
#55
○政府委員(荒井勇君) この国税通則法の第八章第一節の中に調査権についての規定があるということはございません。
#56
○渡辺武君 これはないですね。
#57
○政府委員(荒井勇君) それから――この節だけで見ればそういうことでございますが、そのほかに、三本柱がございまして、他の国税に関する法律に別段の定めがある場合というものと、それからその定めがあればその定めるところによるということと、そういうものを除いては行政不服審査法の定めるところによる、三段がまえになっているわけでございます。この行政不服審査法の規定はその不服審査に関する一般法であって、それは不服審査についての特別法の定めがあることを排除はしないという大原則は行政不服審査法の第一条の第二項というところでうたわれているわけでございます。すなわち、読み上げますと、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。」と、こういうわけでございます。この法律は、不服申し立てに関する審査あるいは審理というものについて必要な調査権についての規定を二十七条以下数カ条において規定しておりますが、それはそれだけが一般法で規定されている事項でありまして、特別法に、すなわち、他の法律に特別の規定がある場合にはその特別の規定によるという大原則が一条二項にうたわれていることでもありますし、そしてそのことを確認的に明示しているというのが同法の三十二条の規定である。すなわち、「審査庁である行政庁が他の法令に基づいて有する調査権の行使を妨げない。」と。「妨げない。」という規定の書き方は、そこで創設的にその権能を認めたということではなくて、それはそもそも実体規定として、他の法律で書かれているというものがそういう場合に適用がありますよ、妨げませんよということで、念のために注意的、確認的に明らかにしたといういわゆる解釈規定というものであるわけでございます。
 そういう観点から見ました場合に、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てがあった場合の審理をするために必要な調査というものについてその規定がないかといえば、それは各実体法であるところの各税法上の質問検査権に関する規定がまさにそれであるということになるわけでございます。先ほど主税局長から見解を表明されておりましたけれども、たとえば所得税法の二百三十四条というところでは「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、」その質問検査権というものを行使できるのだということを書いております。それは、所得税に関する調査について必要があるという場合に行使できるのだということでありまして、それに対する限界として法律が明示しておりますのは、同条の第二項に書いておりますように、この第一項の質問検査の権限というものは「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と。だから、それは犯罪捜査のための調査権として行使することができないという限界を明らかにしておるわけでございますけれども、それは、反面から言うと、行政上の調査の目的というためには行使ができるということでございまして、それは更正決定をするために必要があるときはというような、たとえばそういうような表現で限定はされていないわけでございます。行政不服審査というのは、まさに行政上の段階の問題でございまして、犯罪捜査の問題ではこれはもちろんのことないわけでございまして、そういう観点からいいまして、それは賦課処分、更正決定というようなための調査であろうと、その異議申し立てがあった段階における見直し的な調査のためであろうと、それが、事、所得税に関する実態的真実というものを発見するために必要な調査というために必要があるという場合にはおよそ適用があるという規定になっているわけでございます。
 そういう行政不服審査法の第一条第二項に鮮明されております行政不服審査法と他の法律との適用関係、大原則ということ、あるいはこの調査権に関しまして確認的に解釈規定として明らかにした三十二条の規定、また、この一条の第二項をも含めて、「行政不服審査法の定めるところによる。」ということを書いております今回の改正第八十条の規定というようなもの、いずれを通じて見ましても、国税に関する法律に基づく処分に対する異議申し立てがあったという場合における調査権の規定というものは、こういう一連の不服審査法第一条第二項、あるいは三十二条、あるいは新しい規定でいいますならば八十条というようなものの規定を通じまして適用があるということは明らかであろうかと解釈するわけでございます。
#58
○渡辺武君 いろいろ勉強になりましてありがとうございました。ただ、私も時間のあれもありまして、まだほかに質問したいことがたくさんあるので、私が伺った範囲内でひとつ御答弁願いたい、明快にですね。
 それで、先ほど伺いましたように、七十五条には、「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てについては、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」と明示されていますね。それで、国税通則法の第一節ですね、「この節」というのだから、第一節のことだと思うのですが、第一節には、不服申し立てについての審査庁の調査権について別段の定めがないとあなたはおっしゃったですね。そうですね。
 それでは、次に伺いますけれども、いま読んだところに、「他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、」の「別段の定め」というのは、「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てについて」の「別段の定め」ですから、そういう「別段の定め」のあるもの、これは、国税徴収法のほかに、所得税法、法人税法などの国税に関する法律にありますかどうか、これをお答え願いたい。別段の定めがありますか。
#59
○政府委員(荒井勇君) 国税通則法以外の法律で不服申し立てについての別段の定めをしてある例としては、典型的な例を言いますと、国税徴収法の百七十一条から百七十三条というようなものが、不服申し立ての期限の特例であるとか、あるいは差し押え動産等の搬出の制限、不動産の売却決定等の取り消しの制限であるとかありますが……
#60
○渡辺武君 それはわかっております。わかっていますから、端的に聞きますが、所得税法には、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについて別段の定めがありますか。イエスか、ノーかで答えてください。
#61
○政府委員(荒井勇君) 所得税法の規定の中で言いますと、たとえば第十九条で納税地指定の処分の取り消しがあった場合の申告等の効力ということで、異議申し立てについての決定または判決により納税地指定の処分の取り消しがあった場合におけるその処分の取り消しにかかわる行政処分の効力といったようなことについて特別の規定があるとか、それからまた、その「別段の定め」というものの解釈になりますが、その別段の定めというものは、行政不服審査法の面から見ても別段の定めであり、同時に、所得税法なり各税法の観点から見ても、その国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てにかかわる特別規定というものに両者ともに当たるという規定があるわけでございまして、それがまさにいままで長々と説明申し上げました調査権に関する規定などであると。それは、単に国税に関する法律において不服申し立ての審理手続等として別段の定めがあるというのみならず、それは行政不服審査法そのものが第一条第二項で言っておりますように、特別規定がある場合にはその特別規定の定めるところが優先し、そうでない場合には一般法としての行政不服審査法の定めるところによるということを書いておりまして、それは両者の目から見て特別の規定というものに当たるのだということでございます。
#62
○渡辺武君 その解釈は非常におかしいですね。国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについて別段の定めがあるかどうかということなんですよ、所得税法にね。おととい吉國長官もはっきり答弁されましたけれども、ないんですね、ないんですよ。法人税法にもない。特に先ほど言われた調査権についての所得税法二百三十四条ですか、これには国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについての別段の定めは、縦から読んだって、横から読んだって、斜めから読んだって、ないんですよ。別段の定めがありますか。あなた、さっき解釈してくれたけれども、解釈じゃなくて、法の明示するところを言ってちょうだい。
#63
○政府委員(荒井勇君) 行政不服審査法の一条二項にも書いておりますが、それからまた七十五条にも同じ表現がありますが、その「不服申し立てについては、」ということの意味でございますけれども、それは「他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。」と書いて、この法律はどういうことを書いておりますかというと、その不服申し立てのための手続、それからその不服申し立てがあった場合に今度は審理庁のほうがどういう手続で審理をするのか、そうしてどういう手続でそれを裁決なり決定をするのかという一連の手続を書いておるわけでございまして、二十七条以下に明文でありますように、まさにその不服申し立てがあった場合の調査手続というものも、この「不服申し立てについては、」という中に入っておるわけでございます。「不服申し立てについては、」「この法律の定めるところによる。」と。不服申し立てがあった場合の手続、それが、申し立て人側の手続、審理庁側の手続、そして審理庁側がその真実の発見を通じて申し立て人の権利救済をはかるというためのそういう調査の手続というものを、「については、」「この法律の定めるところによる。」ということで、それは同様に現行の国税通則法の七十五条の中で「不服申し立てについては、」と書いておる中には、その不服申し立ての手続もありますし、不服申し立てがあった場合の調査をどういうふうにやるかというようなことも「については、」の中に入っておるわけであります。そういう観点から見ますと、先ほども例示で申し上げましたような所得税法の二百三十四条というような規定は、行政不服審査法の一条二項が、まさにそういう不服申し立てに対するあるいは不服申し立てがあった場合における審理のための調査の手続というようなものについても、この法律で一般規定を設けておるほかに特別規定があればその特別規定の定めるところによるということを明示しており、それと同じ趣旨のことが七十五条の中へ繰り返して書かれているということである、そういうふうに考えるわけであります。
#64
○渡辺武君 私の聞いたことについて明快に答えていただきたい。行政不服審査法の解説をしていただいても答弁にならぬのですよ。いまあなたは行政不服審査法の第一条の二項を引かれましたが、ここでもはっきり言っているでしょう。「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申し立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。」と。ですから、他の法律に別段の定めがある一たとえば国家公務員法などに別段の定めがあるわけですよ。公職選挙法にも別段の定めがありますよ。それから地方税法にも別段の定めがある。とにかくそういう別段の定めのあるものを除いてはこの法律の定めるところによると。あなたのおっしゃるのは、これを受けて国税通則法の七十五条を言っているんで、だから同じことを言っているわけですよね。そうしますと、いま言われた所得税法の二百三十四条に別段の定めがありますか、別段の定めはないでしょう。どうですか。
#65
○政府委員(荒井勇君) 別段の定めとか特別規定というものはどういう規定であるかというのを、そもそもの出発点から御説明申し上げますと、一般規定対特別規定ということをよく言われるんですけれども、特別の規定あるいは別段の規定というのは、一般的により広い対象を相手として規定されている法律、これを一般法というわけでございまして、それに対して、特定の狭い分野についてスペシャルな規定を設けておるというのが特別法ということになるわけでございます。行政不服審査法というのは、およそありとあらゆる公権力の行使にかかわる行政処分に対する不服申し立てがあった場合の手続を書いてある非常に広い一般法であるわけでございます。それに対しまして、その観点を国の収入の大宗であるところの租税、その中でも特に所得税というふうに限定をして、その所得税についての真実を発見するための調査手続――それは犯罪捜査のためではございませんが、行政目的のためであるというその調査について書いておる条文というのは、およそありとあらゆる行政処分が行なわれた場合に、その権利救済、及び不服審査法の一条一項に書いておりますような「行政の適正な運営を確保する」というための調査という非常に広い調査目的というものに比べますと、事は対象として所得税というもののみに限定した狭い規定であるという意味におきまして、まさにそういうものを特別の規定と言うわけでございます。
#66
○渡辺武君 どうも御苦労さんでした。とにかくそれじゃ答弁にならぬですから、私のあなたに対する質問はやめましょう。それで、これは重大な問題でありますので、私は自分の見解をいまここでまとめて申し上げて記録にとどめておいていただいて、後ほどこの問題についてまた別の機会でいろいろ検討し合いたいというふうに思います。
 まず、最初に申し上げたいことは、行政庁は明示された法の定めるところによって行政を行なわなければならない。これは国家権力の乱用を防ぐために確立された民主主義の原則の一つだと思います。ところで、明示された法によれば、現行国税通則法第八章第一節「不服審査」第七十五条には、「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについては、この節及び他の国税に関する法律に別段の定め。があるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」と明示されております。
 ところで、第一に、この通則法第一節には、不服申し立てについての審査庁の調査権についての別段の定めはありません。
 第二に、他の国税に関する法律で不服申し立てについて別段の定めのあるものは国税徴収法だけで、所得税法、法人税法その他には別段の定めはありません。
 第三に、したがって、七十五条に明示されたところによれば、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについては、異議申請の場合も、審査請求の場合も、行政不服審査法の定めるところによらなければなりません。行政不服審査法には、不服申し立て審査にあたって審査庁の持つ調査権については、二十七条から三十二条に規定されております。吉國国税庁長官は、「三十二条の規定を待たずとも」と言われておりますので、三十二条の規定を除外すれば、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てを審査する際の審査庁の持つ調査権は、二十七条から三十一条までの定めるところ以外にはありません。この五条には、所得税法二百三十四条、法人税法百五十二条から百五十七条などの各税法の調査権は含まれておりません。したがって、異議申請を審理する審理庁は、三十二条の規定を待たずとも各税法の調査権を持つという吉國氏の見解は誤りであり、法の定めを越えて権力を行使する危険を持つものであります。
 次に、今回の国税通則法改正案は、第八章第一節第八十条で、「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申し立てについては、この節その他国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法(第二章第一節から第三節まで(不服申し立てに係る手続)を除く。)の定めるところによる。」としております。
 ところで、不服申し立て及びその審査の際の調査権は、第一に、この節すなわち第一節では、審査請求について審査する国税審判官の調査権が第九十七条に規定されておりますけれども、異議申請の際について別段の定めがありません。
 第二に、所得税法、法人税法など各税法には、国税徴収法を除いて不服申し立てについての別段の定めがありません。
 第三に、行政不服審査法に定めた調査権は、第八十条で排除されております。
 以上によって改正案によれば、異議申し立てを審理する際に行政庁は調査権を持っていないのであります。
 最後に、行政不服審査法の第三十二条にいう「前五条の規定は、審査庁である行政庁が他の法令に基づいて有する調査権の行使を妨げない。」という規定は、公職選挙法、地方税法、地方公務員法、国家公務員法、労働保険審査官及び労働保険審査会法、社会保険審査官及び社会保険審査会法等に規定されている不服申し立てを審査する際の審査庁が、行政不服審査法以外のそれぞれの法令に基づいて有する調査権の行使を妨げないということであって、不服申し立てについて特段の定めを持たない所得税法や法人税法など各税法の定める調査権を不服申し立て審査の際に行使してよいということを定めたものではありません。
 以上が私の見解です。この問題は残念ながらこれで質問は切りまして……
#67
○政府委員(藤田正明君) ただいまの渡辺委員の見解に対しまして、国税庁長官の吉國長官から見解を述べさせます。
#68
○政府委員(吉國二郎君) ただいま御指摘がございました渡辺委員の御見解のうちで、私が「三十二条を待たずとも」と申し上げたのが、あたかも二十七条から三十一条だけで調査ができると言ったというふうに受け取れる個所がございましたが、そういう趣旨ではございませんで、第三十二条は注意的規定でございまして、国税に関する法律の質問検査権は三十二条によってオーソライズされてはおりますけれども、これによって創設されたものではないという趣旨のことを申し上げたので、その点をはっきりいたしておきたいと思います。
#69
○政府委員(荒井勇君) 権威のある参議院大蔵委員会のために申し上げておきますと、その第一点は、この三十二条というものをどのように解釈するかということでございますが、それは、先ほども申し上げましたように、行政不服審査法の第一条第二項で言っておりますように、行政不服審査について、「他の法律に特別の定めがある場合」には特別規定が優先し、この法律は一般規定であるということが大原則であって、それは調査権につきましても他の実体規定に規定があればそれが適用されるのであるということを、何べんも繰り返しますが、注意的確認的に明らかにしたところの解釈規定であるということでございます。それは解釈規定であるという点からいいまして、その規定の「定めるところによる。」という対象から除かれたにしても、その解釈規定の本質というものは、むしろ一条二項の原則をただ事調査権に関して再度明らかにしたというものでございますから、それを引用しなくても、一条二項の点はまさにその「定めるところによる。」という大原則をそのまま引いておるわけでございまして、この三十二条の規定が、「(第二章第一節から第三節までを除く。)」ということで除かれたにしても、本質的には変わりがないということでございます。
 たとえば、解釈規定としましては、先ほども申し上げましたが、所得税法の二百三十四条の第二項に、「前項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」という解釈規定がございますが、それはある種の税法の規定には書かれておりません。そうすると、書かれていないからその犯罪捜査のための調査ができるかといえば、そういうものではないのでございまして、解釈規定があろうとなかろうと本質は変わりはないわけでございます。たとえば、経済関係のある種の法律におきまして、この法律の規定は独禁法の規定を妨げるものと解してはならないというようなことが書いてある。同種の他の経済法令には必ずしもそういうことは書かれていない。そうすると、その規定は独禁法の規定を排除するものであるかというと、そうではないので、解釈規定というものは、たとえば証券取引法の百九十五条の二にはそういうことが書いてある、同種の他の経済法令には書いてないということから、その解釈が変わるかというと、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」というのは、当然の原理をそこで確認的注意的に書いているだけでございまして、それは本来そういうことができるはずはない。あるいは、独禁法との関係というのは、解釈規定を待たずとも明らかであるということでございます。
 そういうようなものでございまして、三十二条というものを注意的あるいは確認的な解釈規定であるという点から見ますと、それが引用してあるか引用してないかということは、事の本質にいささかも影響がないということでございます。
#70
○委員長(栗原祐幸君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#71
○委員長(栗原祐幸君) 速記をつけて。
#72
○渡辺武君 それじゃ、国税審判官の調査権について質問したいと思います。
 また吉國長官の名前が出ますけれども、吉國長官は、六十一国会の七月十七日の委員会で、松井委員の「審判官も税法に基づいての調査権は持っておるのでございますか。」という質問に対して、「形式的には持っているということになるわけでございます。」と答弁され、さらに、「今回は審判に関しての質問検査というものについて特則を設けましたので、審判官はこの質問検査権を行使するというたてまえで、一般の税法の質問検査権は審判に関しては特則によってこちらに優先をさせるという考え方でございます。」と答弁しておられます。ところが、この答弁の直後に、当時税制第三課長であられた早田肇説明員は、松井委員の「税法上の調査権というのは審判の段階で審判官にはもうない、これは間違いないですね。」という質問に対して、「そのとおり解しております。」と答弁しておられます。また、六十一国会の衆議院大蔵委員会、これは六日六日の日ですけれども、吉國長官自身も次のように答弁しておられる。「今度国税不服審判所法で罰則を設けたというのは、むしろ従来の各税法の罰則を排除をいたしまして、」云々というふうに答えておられます。つまり、一方では形式的に各税法に基づいた調査権を持っている。しかし、今度の改正案では審判官の質問検査権を特則づけたからそれを優先させるんだということを言っておられる。ところが、あとのほうで、六月六日の――その前の答弁ですか、各税法の罰則を排除したと言っておられるし、それから早田説明員は、これはもうないんだと、税法上の調査権というものは審判の段階では審判官にはもうないんだということを言っておられる。これはもう答弁が全く食い違っているというふうに思います。一体どちらがほんとうの御答弁なのか、その点を伺いたいと思います。
#73
○政府委員(吉國二郎君) 私がお答えしたのは十五日だったと思いますが、松井委員からこういう御指摘がございました。国税審判所の所員も国税庁の職員である。したがって、そういう意味からいうと、いまの所得税法等における国税庁の、または国税局、税務署の職員は質問検査権があるという規定が適用になるのであるかという御質問がありましたが、形式的にはさようなことになりますと。さらに、続いて直ちに松井委員から、それでは両方適用があるのかという御質問があったのに対しまして、今回は特則を設けましたので、特別法としてこれが優先をいたしますとはっきり申し上げております。つまり、それで特別法が優先いたしますから、両方は使えないのでございます。松井先生は、その際に、それで安心いたしましたということを言っておられます。答弁に矛盾はないと思います。
#74
○渡辺武君 七月十五日じゃなくて十七日ですよ。両方あると。いわば片方は形式的、片方は特則づけられているけれども、あなたのいまの御答弁は両方あるということでしょう。――ちょっと待ってください。ところが、早田さんは、これはもうないんだと、各税法に基づく調査権はもうないんだということを答えておられる。また、あなた自身も、各税法の罰則は排除したんだということも言っておられる。ですから、その辺、答弁が食い違っているんじゃないか。つまり、あるということと、もうないんだということは、全然別のことですよ。
#75
○政府委員(吉國二郎君) 法律の形式としては、それだけ読めばそういうかっこうになる。しかし、特別法は一般法に優先して適用されますから、一般法の適用はなくなる、それと、なくなるということは、全く同じことでございます。
#76
○渡辺武君 そうすると、どういうことですか、ないのですか、あるのですか、調査権が。
#77
○政府委員(吉國二郎君) ないという意味を申し上げたのは、特別法をわざわざ抹殺するような規定は置いてございません。しかし、特別法が制定されれば一般法の規定は適用がなくなりますから、質問検査権もなくなる、こういうように申し上げたわけでございます。同じことでございます。
#78
○渡辺武君 そうすると、各税法の調査権は国税審判官には形式的にも実質的にも全くないということですか。
#79
○政府委員(吉國二郎君) まあそれだけを読むと、適用になるという意味で、形式的にはございますと、そこにちょっと引っかかっておられるようでございますが、形式的と申しますか、答えは、要するに審判官については各税法の質問検査権は適用になりませんということをはっきり申し上げております。
#80
○渡辺武君 どうも、各税法の調査権が、異議申し立てを審理する審理庁にはある。これはあなたの先ほどからの主張ですね。ところが、審査請求を審査する審判官にはないというのは一体どういうことですか。
#81
○政府委員(細見卓君) これはまさに立法論でありまして、審査の段階においては新しい調査権を設けて審査にふさわしい調査権にしたというわけであります。
#82
○渡辺武君 それじゃ説明になりませんよ。そうでしょう。あなた方の議論によれば、異議審査の場合にはもともとあるんだ、各税法の調査権がもともと適用になるんだ、こう言っておられる。ところが、審査請求の場合にはないんだと言われる。その、ないという根拠は一体何ですか。
#83
○政府委員(吉國二郎君) これは一貫しておると思うのでございますが、渡辺先生は、異議申し立てにと申しますか不服審査については調査権が適用にならないという御解釈ですから……
#84
○渡辺武君 各税法のね。
#85
○政府委員(吉國二郎君) ええ、それに対しまして、私どもは、各税法の調査権というものはそれぞれ適用があると考えております。ただ、審判官については、国税不服審判所ができた場合に、原処分庁と同じ調査権を使うのは適当かどうかということをいろいろ判断いたしました結果、これは別個の調査権のほうがよかろうということで設けました特則でございますので、各税法の審判官に対して適用される特別法は当然国税通則法になりますから、そこで、国税通則法に特則を設けますと、いままで適用のあった一般法の調査権は当然これによって排除される、こういう理論構想をとったわけでございます。
#86
○渡辺武君 そうすると、現行通則法でも、七十五条によって、協議官ですね、これは行政不服審査法二十七条から三十一条によって調査権を持っておる。そうでしょう。また、協議団令の第五条によってやはり別段に特則づけられておる調査権を持っておる。それでも各税法の質問検査権は行使できるんだということを協議団は言っているわけですね。事実、国税庁協議団の「議決事務提要」、これは通達を集めたものだそうですけれども、それの一七一に、はっきりと、「国税に関する法律の規定に基づく当該職員または収税官吏の質問検査権の行使を妨げないものであることに留意する。」ということがいわれております。各税法の質問検査権を持っておるということになっておるわけですね。ところが、国税審判官だけが特則づけられておるから各税法の調査権がない。どういうわけですか。協議団のときにはあって、同じように特則づけられておる。
#87
○政府委員(吉國二郎君) 協議団につきましては、法律で国税通則法では特則を定めておりません。したがいまして、先生の御指摘のように、行政不服審査法の二十七条から三十一条までが適用になる。しかし、その場合には、三十二条がございまして、いわゆる固有の――三十二条の結果ではございませんが、固有の調査権が働くということになっておりますから、したがいまして、その場合は協議団に関しては各税法の調査権がそのまま適用になって、不服審査法の二十七条から三十一条は並行適用と申しますか、両方適用になるということになっています。それで、協議団に対して特別の調査権を与えておりませんから、各税法に対する特別規定はございませんので、各税法がそのまま協議団の場合は適用になる。今回は審判官について特別の調査権を設けましたので、そのために一般法である所得税法、法人税法の調査権は適用にならない、その差があるわけでございます。
#88
○渡辺武君 しかし、協議団令の第五条には、協議団のこの質問検査権についてはっきり特則しているでしょう。
#89
○政府委員(吉國二郎君) 協議団令第五条には、「前条第一項の合議体が合議を行うに当たっては、当該合議に付された事案について、協議官自ら必要な調査に当り、又は国税庁長官若しくは国税局長を通じ国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員に対しその調査を嘱託する外、当該不服申し立ての目的となった処分に関する事務に従事した職員及び当該不服申立てをした者にその意見を述べる機会を与えなければならない。」と、これはそのとおり規定してございますが、これは御承知のとおり政令でございますので、法律に対する特則にはならないわけでございます。
#90
○渡辺武君 この前の私に対する長官の御答弁の中で、こういうことを言われたと思うんです。異議の審理は、審査請求の場合と違って、原処分庁が審理するので、もともと税法の調査権を異議の審理に適用できるというふうに答えておられたですね。いまは、特則づけられているから不服審判官のほうにはないんだということを言われたけれども、この前の御答弁の模様ですと、異議の申請のときの審理庁は、これは税金をかけた当の課税庁ですね。だから、各税法の調査権が適用できるんだと。審査請求の場合とは違うんだと。審査請求の場合は、これは国税不服審判所という新しい機構をつくったのだからという趣旨のことを言っておられる。そのことと、いまの御答弁、これまた全然別のところから同じことを説明するということになると、一体どちらがほんとうですか。
#91
○政府委員(吉國二郎君) この間のは、はっきり覚えておりませんが、私が申し上げたのは、調査を行なうということにおいては、原処分庁の場合は、課税調査であろうと、異議申し立てによる調査であろうと、調査は調査であるということを申し上げたと思うのであります。で、国税審判所については、国税庁の職員ではございますが、審判所として新しくつくったものであるので、新しい調査権を設定することが適当であるということで、それとは別に今回特則を設けたのだという趣旨で申し上げたつもりであります。
#92
○渡辺武君 最後に確認しますけれども、七十五条に特則づけられた調査権だけが国税審判官の調査権というふうに理解していいですね。各税法の調査権は審判官には適用できないということですね。
#93
○政府委員(吉國二郎君) 九十七条だけが審判官の調査権であるということは事実でございます。
#94
○渡辺武君 それでは、その九十七条の国税不服審判官の質問検査権について質問したいと思います。
 国税不服審判所は、改正案の第八十条で、行政不服審査法第一条の適用を認めているわけですが、この第一条は、私よく申しますとおり、「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」というふうにはっきりうたっているわけです。つまり、一言で言えば、行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関して不服申し立て人の権利を救済するということが根本の趣旨だと思うのです。ですから、国税不服審判所もこの権利救済機関なんだということを繰り返しあなた方は言明しておられるわけで、したがって、この審判官の持つ調査権もこの趣旨に沿って主として税務争訟の原因となった原処分庁の違法または不当な処分、したがって、原処分時の課税資料の調査に置かれなければならないというふうに思います。権利救済を求めている審査請求人に対しては、その主張を補正する程度の調査、したがって、行政不服審査法第三十条にいっている「審尋」の程度にとどめるべきだというふうに考えますが、私が申し上げるまでもなく、審査法三十条の審尋というのは、これは質問を受けた人、がそれに応じなくても別に罰則はない。そうですね。あるいは、今度の改正案に出されているように、質問に応じないためにその主張の基礎を明らかにすることができなかった場合でも、その主張を採用されないというような、そういう事態もない。非常にゆるやかなんです。私は、不服申し立て人、つまり、国家権力の行政庁の違法不当な行為によって、それに対して不服を申し立て、権利救済を申し立てているその人に対して、権利を救済するという立場に立つならば、当然、行政不服審査法第三十条のように、不服申し立て人に対しては罰則のないきわめてゆるやかな審尋程度にして、そうして彼の申し立てを補正する程度にする。しかし、この事件の根源になった行政庁の違法不当な行政処分に対してこそ主要な調査の目標を向けるべきだというふうに考えます。行政不服審査法のこの立場、これが現行国税通則法の中にも全面的に取り入れられている立場だ。先ほどのような解釈でなくて、国税通則法をこれをすなおに書いてある条文のとおりに読めば、現行の国税通則法で与えられている協議団の権限、あるいは異議審理庁の持っている調査権、これは不服申し立て人に対しては審尋程度の調査権しか持っていない。ところが、今度の改正案では、権利救済制度については全く不相応な、あなた方がよく使うことばで言えば全くなじまないきびしい罰則を伴った広範な強大な調査権なんです。
 たとえばですよ、所得税法二百三十四条でさえ、これは納税者に納税義務を履行させるというつもりの調査権、それでさえ、調査対象を厳格に特定しているでしょう。時間がないからその点については読みませんけれども、納税者あるいは納税者と認められた者、その他厳格に特定していますよ。ところが、今度の改正案には、審査請求人、それから特殊関係人ですか――これはもとより法的には全く限定されていない――関係人、参考人など、きわめて広範な範囲を調査対象としている。この点では、いまの所得税法二百三十四条よりもはるかに広範な調査権を国税審判官は持っているというふうにに言わなければならない。
 もう一つ指摘したいことは、行政不服審査法の二十七条から三十一条の調査権したがって、先ほど申しましたように、現行通則法の不服審査の際の調査権、あるいは現行協議団令五条などの調査権に、権利救済制度としては当然のことですけれども罰則がないわけですね。ところが、今度の改正案によれば、審判官の持つ調査権というのは、これはきびしいものです。三万円以下の罰則がついているというような状態です。
 もう一つ申し上げたいのは、調査に応じないでその主張の基礎を明らかにすることができなかった場合にその主張は採用されないなどという、事実上の強制力を不服申し立て人本人に及ぼそう、こういうものだと思う。これは現在の通則法にない新しい点で、ここに法改正の核心の一つがあると私は思う。皆さんはいままでの調査権よりももっと軽い調査権になったんだと盛んに宣伝してるけれども、現在の国税通則法を、条文に基づいて、これをねじ曲げないですなおに読めば、現在の国税通則法で与えている異議審理庁の持っている調査権というのは、不服申し立て人に対しては審尋程度のものにしかすぎない。罰則もない。調査に応じなければその主張を取り上げられるなんというそんなばかなことはない。ところが、いま申しましたとおりです、この改正案では。私は、この改正案の一つの重要なねらいがここにあると思う。現行国税通則法、これは行政不服審査法の手続規定を全面的に取り入れている。これをすなおに読めば、常識のある人がすなおに読めば、先ほど私が申しましたように、不服申し立て人に対しては審尋程度の調査権しか及ばないんだということが明らかだ。あなた方は、各税法の調査権が及ぶんだというような、私の立場から言えば牽強附会な解釈でもって、不服申し立て人に対してきびしい罰則のついた調査権を発動する。めちゃくちゃなことをやっておられる。しかし、正常な理解力を持った人なら、それはおかしいということは明らかだと思う。そこで、そういう手続規定全部を入れた現行国税通則法がぼつぼつじゃまになってきた。だから、そこのところをそっくり抜いて、そして、今度の改正案に見られるように、きびしい罰則のついた広範な調査権を国税審判官に与えたというところに今度の法改正の一つの重要な核心があるというふうに思います。
 ちょっと前置きが長くなりましたが、そこで伺いますけれども、改正案の九十七条の一項に、「担当審判官は、審理を行なうため必要があるときは、審査請求人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。」ということで質問検査権を規定しているわけですが、その第一号に、「審査請求人若しくは原処分庁又は関係人その他の参考人に質問すること。」と、その他第四号まで規定されているわけですけれども、原処分庁が更正処分をしたときに使った資料ですね、これを審査請求人が審判官に提出さしてくれと、あるいは、ここが争点だからこの点について原処分庁に質問してくれというふうに申し立てた場合ですね、その場合に必ず審査請求人の主張を取り上げて審判官は原処分庁から原処分についての資料を取り寄せるかどうか、あるいは質問などをするかどうか、この点を伺いたいと思います。
#95
○政府委員(細見卓君) 私どもは見解を異にいたしまして、今回の不服審判所は全体として権利救済のためのものであり、そのために調査権につきましても必要な範囲にとどめたと考えておりまして、その点については全く見解を異にしておることを明らかにいたしまして、いまの点について申し上げますと、事案の審理に必要な範囲のものは取り寄せることがありましょうし、必要でないものについてはその審判官の判断に従って出さないこともあろうと思います。
#96
○渡辺武君 審査請求人が申し立てても、審判官の判断で原処分庁から資料を出させるときもあるし出させないときもある、こういうことですね。私はこれは非常に重大だと思う。必要に応じて審判官が判断するということでありますけれども、一体、その必要性の判断を優位に置くのか、それとも、審査請求人の申し立てを優位に置いて審判官は考えるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
#97
○政府委員(細見卓君) 審判官は真実の発見のために最善の努力をいたすわけでありますから、その意味におきまして真実の発見に必要なものと認められるものはちゅうちょなく調査をいたすということになろうかと思います。(「そのとおり」「それが公平だ」と呼ぶ者あり)
#98
○渡辺武君 真実の発見といっても、どういう真実を発見するかということが大事だと思います。(「真実は一つ」と呼ぶ者あり)問題の起こったのは、行政不服審査法の第一条にもはっきり書かれているように、原処分庁の不法不当な行政処分、これが原因でしょう。そうでしょう。それをやられたために納税者は不服の申し立てをしている。ですから、審判官が調査にあたっては、原処分庁の原処分をやるについて使った資料ですね、原処分時の資料、これを調べることが真実発見の最大の重点だと思う。もちろん、不服申し立て人のほうも、これは必要ならば調べていいだろうと思う。しかしながら、どちらの真実を発見するかといえば、税務争訟の根源となった原処分庁の……(「真実は一つしかないよ」と呼ぶ者あり)応援団、ちょっと黙っていてください。(「質問を簡単にしてくださいよ」と呼ぶ者あり)質問を簡単にやっている。(「時間がないよ」と呼ぶ者あり)原処分庁の資料その他を主として調査すべきだと思う。これは、権利救済制度というたてまえからして私は当然のことだと思う。したがって、審査請求人の申し立てを優先して、そうしてその申し立てをすなおに受け入れて、審判官が、原処分庁の資料を調査するという制度を確立する必要があると思う。その点はどうですか。
#99
○政府委員(細見卓君) 不服申し立ての理由書を出していただくと、それに対して、原処分をいたしました官庁は、答弁書を出して、私どもはかくかくでこういう決定をいたしておりますということを申し上げて、それをさらにより詳細に真実を発見するために必要と思う範囲において審判官は調査権を行使して、申し立て人のほうにも処分官庁のほうにも必要な資料あるいは必要な調査をするということになろうと思います。
#100
○渡辺武君 そうしますと、ある場合には申し立て人の要望に応じて調べ、ある場合には調べないということでは、そこにこの調査にあたってのいろいろな不公平も出てくるし、また、審判官にもいろいろな人たちがいるので、恣意的なものになる可能性がある。したがって、調査にあたってはどういう基準でやるか、必要性の有無の判断をどういう基準でやるのか、その基準をはっきり確立する必要があると思う。私は、先ほど言ったように、この基準というのは、税務争訟にあたっての権利救済、その観点からして、原処分庁の原処分時の資料、これをまず最優先に調査する、そうして不服申し立て人の権利を救済していくという一基準、これが必要だと思いますけれども、どうですか。
#101
○政府委員(細見卓君) 先般、大臣も申し上げましたように、この制度が発足いたすからには、やはり納税者の権利を救済するという心がまえで職員がみんな当たらなければならないと。その際には、できるだけ、納税者の言い分と申しますか、争点を中心とする審理を進めていくべきだという心がまえについて申し上げておるわけでありまして、そういう意味で、私どもは、審判官は適正な判断によって必要な範囲の権限を行使して、いたずらに納税者のほうに迷惑をかけることもなくやっていくだろうと確信いたしております。
#102
○渡辺武君 ですから、先ほど木村先生も言われましたように、実際の行政段階で何とかいたしますというこれでは結局のところ法的の保証がないんです。法律にきめられていることでも、先ほど明らかになったように、いろいろにねじ曲げた解釈をされる。ところが、その法的な保証さえない。どうして実施段階でもってうまくやるということを国民は期待することができますか。私はできないと思う。したがって、権利救済制度ならば、権利救済制度にふさわしい法的な基準を、審判官の調査にあたっての必要性の判断については、はっきりと確立すべきだ。権利救済制度にふさわしい基準、これをやらなければ、ほんとうに権利救済制度にふさわしいような調査なんというのはできない、そう思いますよ。
#103
○政府委員(細見卓君) 何が真実であるかというのは、おそらく法律で書きようがないので、適正な納税義務が幾らであるかということをさばく、それが審判官の役割りでありまして、その事実の判断にあたりましては、一般の民事裁判が同様でありますように、やはり、裁判官の心証によって公正無私に判断していくという以外、私はどんな法律をもってしても規定のしようがないことじゃないかと思います。(「行政の運用だ」と呼ぶ者あり)
#104
○渡辺武君 行政官ですから、法律に基づいて行動しなきゃならぬ。その辺の基準をはっきりしないと、今後の運用について信用しろ信用しろと言ったって、信用できないんですよ。それで、いま、不服申し立て人が申し立てたときという例をとりましたけれども、職権調査というものがありますね。審判官は、職権で原処分庁の原処分時の資料をとる、そして調査するということをやります。必ずやりますか、やりませんか。
#105
○政府委員(細見卓君) これは、まさにやってみなければわからないので、職権でやらなければならない事態も起こり得ようかと思いますが、必ず職権でやるものだということにきめてかかることもないと思います。
#106
○渡辺武君 非常にあいまいな答弁で私は、やっぱり、その答弁の中に、国税審判官が持っている調査権というものは原処分庁に対してはまことにあいまいなものなんだということを考えざるを得ない。その反面で、あとから質問したいと思いますけれども、(「もう時間がないよ」と呼ぶ者あり)不服申し立て人については、これは広範囲で強い調査権を発動するということになっていくと思う。しかし、それにしても、審判官が審判するのに必要な最低限の資料というのはあるはずだと思う。必要かどうかわからないというけれども、税務争訟が起こっている。しかも、税務署のほうは、租税法定主義で、法律に基づいて確信のある更正をやったはずです。その資料を調査しなければ、事案のほんとうの真実というものは発見できない。あなた方、真実を発見するというならば、原処分庁の原処分時の資料、これは必要最低限の資料だと思うけれども、それを職権なりあるいは不服申し立て人の申し立てに応じて、実際に調査するかどうか、この点をお答え願いたい。
#107
○政府委員(細見卓君) 原処分庁の処分にあたっての書類も必要なものでありますし、納税者の真実の記録された帳簿というのも、やはり必要なものであろうと思います。
#108
○渡辺武君 納税者のほうについていま聞いているんじゃない。原処分庁の必要最低限の資料があると思う。特に原処分庁の原処分時の資料、これはあると思う。これを職権なりあるいは審査請求人の申し立てによって必ず調査するかどうかということを聞いている。
#109
○政府委員(細見卓君) 必要があれば調査いたしますし、必要がなければいたしません。
#110
○渡辺武君 現在の協議団は、これはこの前古國さんの衆議院での答弁もありましたけれども、とにかく調査にあたっては、いわゆる一件書類と称するものを税務署から全部持ってくる、そうしてこれを調査する。これは普通に行なわれていることですよ。そうでしょう。その一件書類の内容を言ってください。(それは無理だと呼ぶ者あり)
#111
○政府委員(細見卓君) 帳簿の書類その他は相談しておるようでありますが、一件書類と申しますからには、課税処分にあたって、かくかくの所得があると判断するに必要であった資料と、こういうことであろうと思います。
#112
○渡辺武君 責任者がそんなあいまいなことじゃ困まりますね。さっきの「議決事務提要」に、はっきりと、一件書類というのは、これの三一に、「原処分に関する一件書類(以下「原処分関係書類」という。)の提出を求める。」と、三三には、「原処分庁から提出を求める原処分関係書類とは、原処分および異議申立ての決定の経緯を明らかにするいっさいの関係書類をいう。」とあります。この一切の関係書類を、いまは協議団はちゃんと調査して、そうしてそれぞれ活動している。今度の国税審判官は、協議団が手に入れている程度の資料、これを調査するのかどうか、これを伺いたい。
#113
○政府委員(細見卓君) それは、協議団と同じようにいたします。
#114
○政府委員(吉國二郎君) 現在の協議団は、現在の改正法のような整備された法制下にございませんので、こういう事務通達でやっておりますから、今回は、正式に答弁書を提出させる。それに基づいて質問を発し、それを拒否するならば、九十七条四項――これは納税者だけではございません、税務官庁にも適用ある規定であります。ですから、提出を求められ、税務官庁が拒否すれば、主張がいれられない結果になるわけでありますから、その点では法制としてはさらに整備したということになると思います。
#115
○渡辺武君 何ですか、いま協議団が手に入れている資料ですね、これは国税審判官も手に入れて調査するということですね。それを確認しますか。
#116
○政府委員(細見卓君) 協議団も必要な書類を調べているわけでありますし、今回も答弁書で足らない必要な書類を調査することには変わりないと思います。
#117
○渡辺武君 それで、審査請求人の資料その他を調べてほしいといって原処分庁、が審判官に申し立てた場合、そのときはどうしますか。
#118
○政府委員(細見卓君) 必要があれば調査いたしますし、必要がなければいたしません。
#119
○渡辺武君 そういうあれは、どこに法にきまっておりますか。
#120
○政府委員(細見卓君) 「審理を行なうため必要があるときは、」というのが全体にかかっているわけであります。
#121
○渡辺武君 いま、私の聞いているのは、原処分庁が申し立てた場合です。
#122
○政府委員(細見卓君) この法のたてまえにおきましては、双方対等でございます。
#123
○渡辺武君 そうしますと、原処分庁税務署が、国税審判官は、これこれの審査請求人の持っているこれこれの資料を調査してほしいと申し立てたとき、審判官は審査請求人の資料を調べるということですね。
#124
○政府委員(細見卓君) 真実の所得をはっきりするために必要があれば、やむを得ないと思います。
#125
○渡辺武君 そうしますと、先ほど述べたように、国税審判官は各税法の質問検査権に劣らない大きな質問検査権を持っているわけですが、各税法の質問検査権も、申告納税制度のたてまえからその乱用をきびしく戒め、判決なども出ておることは、皆さん御存じのとおりだと思います。そこで、伺いますけれども、審査請求人、その関係人、参考人に対する審判官の職権調査はどういう基準で行なわれるのか、それを伺いたいと思います。
#126
○政府委員(細見卓君) 先ほど来申し上げておりますように、「審理を行なうため必要があるときは、」というわけでございます。
#127
○渡辺武君 いままでのように、これを乱用するということがあり得るということですか。
#128
○政府委員(細見卓君) 乱用は私どもはないと信じております。
#129
○渡辺武君 そうしますと、どういう調査をやるかということは審判官の心証であって、その調査のやり方については特段の基準はないということですか。
#130
○政府委員(細見卓君) 当然、権利の乱用にならぬように、審理を行なうために必要な限度に限られるわけであります。
#131
○渡辺武君 審理を行なうこと、これは国税審判官の一つの任務だと思う。しかし、その審理は、審査請求人の権利救済のためにやるのが権利救済制度の本旨だと思う。ところが、その点について調査にきびしい罰則のついた調査権を持っているのだから、その調査について権利救済のたてまえからする一定の基準を設けるべきじゃないですか。その基準をはっきりと設けなければ、先ほど私の質問の御答弁の中で原処分庁に対する質問検査権、これははなはだあいまいだった。いろいろ伺って、まあ必要最低限の資料、協議団の手にしているくらいの資料は調査いたしますというようなことです。ですから、私どもは、納税者の立場に立って考えれば、この強大な罰則を持った質問検査権、これが国民の上に及んでくる。無制限に及んだらどういうことになるだろう、これはたいへんことです。いまこの国税通則法改正案に心配している国民はたくさんあります、どういうことになるだろうかと。したがって、権利救済というたてまえからこの調査権に一定の基準を設けるべきだ。どういう基準かといえば、この調査権は、先ほど申しましたように、原処分庁の不当違法な処分から起こってきているのだから、したがって、その原因である原処分庁の処分の不当性、違法性、そうしてそれを裏づける資料、この調査に主として向けられなきゃならぬ。不服申し立て人については、その権利を救済するというたてまえから、現在の現行通則法で定められているように、審尋程度にとどめなきゃならぬ。これが私は調査権の正しい運用のしかただと思う。その点について、ただ審判官の心証にまかせるということでは、審判官のお気に入りのところにはあまり調査権を発動しない。しかし、審判官が「こら」といってにらんでいるところにはきびしい調査権を発動していく。これでは行政上の不公平が起こる可能性がある。したがって、そういうことをやらないような歯どめをつくらなければならない。民主主義の原則に基づいて、いま私が申し上げたような基準をつくる意図があるかどうか、その点を伺いたいと思います。
#132
○政府委員(吉國二郎君) 不服審査法でいっておりますように、もちろん「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保すること」が目的でございますので、正しい行政が行なわれているかどうかを判定することは、これは当然でございます。ただ、いま、先生は、不服申し立てがあれば必ず違法不当があるときめておられるようでございますが、それがはたしてそうであるかどうかを判定する必要性があることも事実でございます。私どもは、衆議院の附帯決議二の(2)「質問検査権の行使に当たっては、権利救済の趣旨に反しないよう十分配慮すること。特に、国税不服審判所の職員は、その調査が新たな脱税事実の発見のためではないことを厳に銘記の上、納税者の正当な権利救済の実現に努めること。」という非常に明確な基準をちょうだいしておりますので、これをできるだけ実行していくつもりでございます。
#133
○渡辺武君 それははっきり確言できますね。――確言したものとして、あとを続けます。
 次に、関係人、参考人などについて伺いたいと思います。
 九十七条第一項の一号の「関係人その他の参考人」は、二号、三号にいう「前号に規定する者」あるいは「第一号に規定する者」ということばがありますけれども、これの中に入りますか。
#134
○説明員(早田肇君) 「前号に規定する者」でございますから、入ります。
#135
○渡辺武君 そうしますと、この関係人、参考人は、質問をされるだけじゃなくて、立ち入り検査もやられる。そうして帳簿なども領置されるということになるわけですね。そういう強力な調査対象の的にされている関係人一参考人、これは一体どういう方なんでしょうか。
 それから時間を節約するために二つ三つやりますが、この関係人、参考人の判定の基準ですね、これは一体どういうものなのか、具体的な事例をあげて御説明いただきたいと思います。
#136
○説明員(早田肇君) 関係人とは、その審査請求事案につきましての代理をする人、審査請求人の使用人その他の従業者等、審査請求事案に関係を有する者の総称でございます。参考人とは、そういうような者も含め、行政庁がその判断の参考に供するため意見を聞く場合、たとえば取引先とか、そういうようなところでございます。
#137
○渡辺武君 これは、関係人、参考人はあなたも御存じのように、調査に応じなかった場合は処罰を受けるわけですね。そういう意味で、もう少し具体的にお話しいただきたいと思う。たとえば小売り店の場合はどうなんです。関係人というのは何なのか、参考人というのは何なのか、ある小売り店を想定して御説明していただきたいと思います。
#138
○説明員(早田肇君) 小売り店の場合に、たとえば、商品を仕入れをしている、あるいは小売り店の広告をしている、その業務についていろいろ関係しておられるような方、こういう方でございまして、これはケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないわけであります。
#139
○渡辺武君 そうしますと、取引銀行それから恥引先、これはどちらへ入るのですか。
#140
○説明員(早田肇君) 参考人でございます。
#141
○渡辺武君 顧問弁護士や顧問会計士、これはどこに入るのですか。
#142
○説明員(早田肇君) 必要があれば参考人でございます。これは事案によってです。
#143
○渡辺武君 それから青色申告会とか同業組合ですね、これはどちらに入りますか。
#144
○説明員(早田肇君) 関係人、参考人ということばでだれがどこへというのは、具体的な事案について合理的に判断する必要があるわけでございまして、関係人、参考人という名前だからだれでもよろしいということではない。したがって、その事案について具体的合理的に判断し得る範囲の人間を考えなければならぬわけでございます。
#145
○渡辺武君 特殊関係人というのがありますね。この特殊関係人については、政令に委任するという規定があって、その政令案をもらいますと、ちゃんと書いてあるわけですね。ところが、この特殊関係人と審査請求人本人には調査権に罰則がつかない。いま御質問している関係人、参考人については、先ほど来申し上げておりますように、調査権に罰則がつけられているわけですね。ところがいまのお話ですと、そのときそのときにきめる、こういうわけです、関係人、参考人は。そうでしょう。ですから、こういうようなことになりますと、これは現場の審判官がその場合その場合で任意にきめられるということになるわけですか。
#146
○政府委員(細見卓君) 全体にかかっておりますのが「審理を行なうため必要があるとき」と申しておりますように、権利の乱用になってはいけないことは当然であり、本来の趣旨の権利の救済を考えるべきものであります。したがいまして、関係人、参考人がケース・バイ・ケースで三課長はきまると申しましたが、そのケースが、たとえば売上りげの脱漏の問題であればその売り先ということになりましょうし、仕入れの脱漏の問題があれば仕入れ先というふうに、具体的な事案によって、その事案の性質によって、関係人というようなものにもおのずから違いが出てくるということを申し上げているわけであります。
 これらの方に罰則があるという問題につきまして、先般も申し上げましたように、納税者がまさに不当な納税義務を課せられておるということであるとすれば、その救済のために第三者として助力をしていただきたいという意味で、納税者の権利救済、それから真実発見のかね合いということで、この程度の罰がよかろうじゃないかということで、法務省その他とも御相談して、いわば罰としては一番軽いものにしているわけであります。
#147
○渡辺武君 そうしますと、とにかく、協力していただきたいということと、協力しなくちゃ処罰するぞということじゃ、全然違うと思うんですね。国税不服審判所が審査請求人の申し立てに応じて審査請求人の権利を救済する義務はある。しかし、おれが権利を救済してやるんだからおまえたちは当然協力しろ、協力しなければ処罰するぞと、これは全く権力主義的な立場じゃないですか。権利救済制度とはほど遠いと私は思う。しかも、あなたに伺いたいのは、そのときどきに審判官が事案に応じてきめる、こういうことです。きめられた人こそ迷惑だ。処罰されるんですね、うっかりすれば。憲法にちゃんと規定してある罪刑法定主義に基づかなければ処罰を受けることはないんですよ。ところが、ある審判官が、うっかり、ある事案でもって、この人は参考人だ、この人は関係人だと指定したばっかりに、自分の直接的な利害関係とは全く別の人が審査請求をやっているのに、その事件でもって自分が処罰される。三万円以下、こういうことになっている。これは罪刑法定主義に反するのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
#148
○政府委員(細見卓君) 罪刑法定主義だからこそ条分を書いておるわけでございます。
#149
○渡辺武君 それは処罪するという条文は書いてあるけれども、どういう範囲の人を処罰するか特定してない。所得税法二百三十四条、これはきびしい法律です。しかし、これにだって、処罰を受けるべき人が――可能性がある人ですよ――ちゃんと特定されている。ところが、この改正案では、関係人、参考人、まことにばくばくたる表現で、そうして、現場の審判官が事案に応じてどんどん指定することができる。これはとんでもないことで、国民の権利侵害もはなはだしいと思う。どうでしょう、もう一回その点をお答えください。
#150
○政府委員(細見卓君) 先ほども申し上げましたように、法益の権衡と申しますか、納税者が真に不当な課税に泣いておるということであれば、それらと取引関係のあった方々、それらの方々が、多く経済行為でありますから、青色申告その他によってきちっと帳簿をつけておられて正当な申告をなさっておられた方であれば、そういう方が帳簿を見せていただいたとかいうことによって何ら不利を受けることはないと私は確信いたしますので、そういう意味で、これは、納税者のというか、審査請求人の権利を救済することに重点を置いて、そこに重点を置きながら必要な第三者の協力を求めるというような体制で、その辺で、法の利益と、それからそれの与える強制といいますかその損害というものとのバランスをとってつくったものと私どもは確信いたしておるわけであります。
#151
○渡辺武君 そんなばかなことは私はないと思うんですよ。協力するしない、これは関係人、参考人として指定されるべき人たちの自由意思だと思う。ところが、いま問題になっているのは、自由意思じゃないんですよ。協力を強制しているのです、罰則によって。これは強制規定です。周囲の人たち、しかも不特定の人たち、これがいつ処罰されるかわからないような状態に置かれているという不安な状態、これが一体権利救済制度と言えますか。それは、あなた方は、不服を申し立て
 るのだから、その人たちの権利を救済するために協力するのは当然だと。しかし、問題は、先ほど申したように、行政不服審査法の第一条にはっき
 り書かれているように、行政庁のいわゆる不当な行政処分に対しての不服申し立てをやって権利救済を求めている。いいですか その立場からするならば、本人はともかくとして、そのまわりの人たちが取引したというだけでうっかりすれば処罰される、こういう状況に置かれている権利救済制度というのはありますか。私は、これは権利救済じゃないと思う。別の意図があるものだと思う。
 ところで、どれほどこの罰則がひどいものかということで、私はちょっと伺いたいと思う。百二十六条に「三万円以下の罰金」としてありますけれども、この三万以下の罰金というのは、刑事訴訟法の第六十条の趣旨によれば、二万五千円以上の罰金、拘留または科料にあたる事件については、定住者も逮捕勾留できるということになっていると思いますけれども、どうでしょうか。(「裁判になってからの話だ」と呼ぶ者あり)
#152
○政府委員(細見卓君) もう一度確かめますが、六十条に比べて重いという意味ですか、どういう意味でございます。
#153
○渡辺武君 そういう意味じゃないんです。第六十条の趣旨は、二万五千円以上の――反面解釈ですよ。二万五千円以上の罰金、拘留または科料にあたる事件については、定住者も逮捕勾留する。二カ月の勾留です。逮捕勾留できることになっている。これは、ただし、証拠隠滅または逃亡のおそれがあると認められたときなんですけれども。ですから、三万以下の罰金、金額からすればこのひどい物価の値上がりのおりではそう重い罰則じゃないなんていうように宣伝はできると思うけれども、中身を洗ってみれば、うっかりすれば逮捕勾留を受けなきゃならぬ、こういうものですよ。それはあとであなたのほうで研究しておいてください、時間がないから。
 しかも、百二十七条の趣旨ですね、これまことに読みくだりの悪い、一般の人にはわかりにくいものですけれども、私は次のように理解しますけれども、それが当たっているかどうか、お答えいただきたいと思うのです。百二十七条によれば、「法人の代表者」、それから「人格のない社団」つまり労働組合だとか青色申告会だとか政党だとかこういう団体の「管理人」まあ言ってみれば責任者ということになりますか、それから「法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者」、これらの違反行為者だけではなく、「その法人又は人」にも罰則が適用される、こういうことですね。だから、たとえば青色申告会の人がだれか関係人、参考人になって、そうしてこの事案で罰則をかけられる。本人が罰則をかけられる、その関係人、参考人が。それだけじゃない、その団体の責任者も処罰される。まことにこれはきびしいと思う。こんな罰則を権利救済制度の罰則としてつくるという意図は、私はまことに疑惑をいだかざるを得ない。私の百二十七条のこの内容の解釈ですね、法人の代表者、人格なき社団の管理人、法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者、これらの違反行為者だけではなく、法人または人も罰則を受ける、そういう解釈でいいでしょう。
#154
○政府委員(細見卓君) 一般の両罰規定の規定のしかたと同様であります。
#155
○渡辺武君 そうしますと、こういうことになると思うんです。審査請求を出して、審判官が、その取引先やらその他関係人、参考人をずっと調べた。うっかりこれはもうその調査を拒否することができない、調査に応じないわけにはいかない。なぜかといえば、応じなかったら、これはとっつかまって勾留されるんですよ。しかも、その個人がやられるだけではなくて、団体の責任者もやられる。団体そのものはたいへんなことになる。青色申告会なんというのは、税金問題ではこういう事件にたびたび遭遇するだろうと思うのです。たいへんなことです、これは。そうしたらどうなりますか。取引先が圧力をかけられる。いや、あの人と取引していたためにたいへんなことになっちゃった、うちの中へ審判官が入ってきて、そうして張簿から何からひっくり返して立り入り検査をやる、根掘り葉掘り聞いていった、あんな人と取引するのはまっぴらだと、こういうことになるじゃないですか。銀行が関係人、参考人になったら、どうなります。銀行だって、あんなところと取引するのはもうやめようじゃないかということになりかねないと思うんです。そうしたら、審査請求した本人はどうなります。自分が審査請求をしたためにまわりの人がとんでもない迷惑を受けた、これじゃしようがないから審査請求はあきらめるかということになるのじゃないですか。事実上そうならざるを得ないと思う。ですから、これは権利救済制度どころじゃない、不服申し立てそのものを客観的に圧殺する機能を果している、こう言わざるを得ない。とんでもない法律だと私は思うのです。一体、これが、いままでよりも一歩前進の権利救済制度だなどと言えますか。いままでの国税通則法ではこんなことはなかった。今度は、こういうことが起こる。白昼公然とやられる、こんな不合理なことが。ですから、きびしい調査権、これは皆さんが宣伝しているように本人の権利救済じゃないんです。不服申し立てそのものを圧殺する。それだけじゃない。権利救済を口実にして、そうして不服申し立て人を徹底的に洗って、帳簿から何から全部引き揚げて調べ上げる。不服申し立て人だけじゃない、その関係人、参考人に至るまで徹底的に洗い直すことができるんです。そうして、いみじくも吉國さんが先ほど言われましたけれども、国税審判官はこれは収税吏だと言われた。つまり、一つの課税行為の延長としてこの制度を私は利用しているのだと思う。よく見直し調査見直し調査と言うけれども、こうして徹底的に洗い直して、そうして新たな課税源を発見したり、あるいはまた原処分で足りなかったことをこれで補充する、こうして、なるほど不利益処分はしないかもわからぬけれども、原処分は維持できるということになるのじゃないですか。私はここに今私の改正案の核心の一つがあると思う。その点はどうですか。
#156
○政府委員(吉國二郎君) ただいま御指摘になりました点は、関係人が直ちに処罰されるようなことを言われますけれども、関係人が質問を拒否した場合という条件があることは、もちろん御承知のとおりであります。また、両罰規定にいたしましても、法人または人の業務または財産に関して罪を犯した場合となっております。だれかが何をやったらすぐ法人が責任者が処罰を受けるというわけじゃございません。さらに、これらの規定は、各種の法律で拒否犯等についての罰則を付しておる場合に同じ規定が全部ございます。先生は、さっき、不服審査法で三十二条の規定は特別のものにしか適用にならぬという解釈を示されましたが、一般の解釈は、三十二条は、原処分庁つまり行政庁に他の法令で与えられている調査権は使えるという解釈で、そういたしますと、これらの法律も同じ結果を生むわけでございますし、また、従来の国税通則法でございますと、これよりもっと重い罰則が第三者にも科せられていたことは事実でございます。そういう面から申しますと、これがかなり低く直されているということをもって、むしろこれが眼目であると申し上げたいぐらいのところでございます。
 さらに、かりに取引先に対してリベートを出しておったと。そのリベートはしかし取引先がはっきりしないから否認をされたという場合に、その取引先を調べて、その取引先はそのリベートはもらっておりませんといううそをつく、あるいはその帳簿を示さないという場合に、本人はそれで三百万円の課税を受けてしまわざるを得なくなります。そういう場合には帳簿を明らかにしてもらいたいというのがこの趣旨でございまして、また、そのもらった者は当然申告をし納税をすべきはずの人なんであります。それが申告をしないということは、その人も脱税をしておるという前提がここにはあるわけでございます。実は、衆議院では、この点に非常に疑問を持たれまして、異議申し立ての段階では罰則が二十万円以下、一年以下の懲役でございます。異議申し立てのときはかたりきついから、これはしようがないといって答えるかもしれない。しかし、審査請求になると三万円だ。三万円ぐらいなら払ってもそれで三百万円助かれば得だというので、これはちっとも審査請求人を助けることにはならぬと。もっと重い罰則をつけるべきじゃないか、各税法よりも軽い罰則にしたのははなはだ不当であるという御意見がでたことは、御承知のとおりであります。そういう趣旨から申しますと、いまのあらゆる法律体制からこれが逸脱したものではない、むしろそれらをやや軽減したものであるというのが私どもの考え方でございますから、その点は御了承いただきたいと思います。
#157
○委員長(栗原祐幸君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#158
○委員長(栗原祐幸君) 速記を始めて。
 本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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