くにさくロゴ
1970/04/14 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第7号
姉妹サイト
 
1970/04/14 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第7号

#1
第063回国会 外務委員会 第7号
昭和四十五年四月十四日(火曜日)
   午前十時十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月七日
    辞任         補欠選任
     岩間 正男君     野坂 参三君
 四月十四日
    辞任         補欠選任
     高橋  衛君     岩動 道行君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         長谷川 仁君
    理 事
                石原慎太郎君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                岩動 道行君
                杉原 荒太君
                廣瀬 久忠君
                山本 利壽君
                小野  明君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                白木義一郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務大臣官房領
       事移住部長    遠藤 又雄君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  井川 克一君
       外務省国際連合
       局長       西堀 正弘君
       大蔵大臣官房審
       議官       高木 文雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省アジア局
       北東アジア課長  伊達 宗起君
       外務省条約局外
       務参事官     山崎 敏夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とザンビア共和国との間の条約の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の
 条約の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出)
○旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る七日、岩間正男君が委員を辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(長谷川仁君) 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とザンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 以上二案件を便宜一括して議題といたします。
 二案件につきましては、去る三月二十四日提案理由の説明を聴取しておりますので、これより補足説明を聴取いたします。
 山崎外務参事官。
#4
○説明員(山崎敏夫君) わが国とザンビア及び韓国との間の租税条約につきまして補足説明を申し上げます。
 最初に、ザンビアとの間の租税条約は、提案理由でも御説明申し上げましたとおり、OECDモデル条約に近いものでありますが、この国との場合には、ザンビアが発展途上国であるということを考慮いたしまして、ザンビアにおいて納付された租税をわが国において控除するにあたって、ザンビアで産業育成のために認められる租税の減額または免除措置を考慮に入れるという、いわゆるみなし税額控除を行なうこととしております。このザンビアとの租税条約締結交渉はザンビア側の申し入れによって行なわれたものでありますが、同国が特にわが国にこの条約の締結を申し入れてきた背景には、独立後、旧宗主国でありました英国以外の国との経済関係を強化したいという考えがありまして、特に最近経済成長の著しいわが国を重視いたしまして、今後のわが国からの企業進出等に期待を寄せているという事情があったようであります。なお、ザンビアとの租税条約は、わが国がアフリカの国と結びます最初の租税条約であるという意味においても非常に意義のあるものと考えます。
 次に、韓国との租税条約につきまして簡単に交渉の経緯について御説明申し上げます。
 韓国は、昭和三十九年の末に、日本の商社に対しまして高額な法人税及び営業税を課すことになりまして、これが発端となっていわゆる商社の課税問題が両国間の懸案の一つとなったわけであります。政府は、この問題を解決するために、韓国側に対しまして、税務当局の一方的な認定による課税を行なわずに、実態に即した課税を行なうように再三申し入れました。そうして、今後、より長期的な観点から租税条約の締結交渉をすみやかに開始したいというふうに提案いたしました。その結果、先方もようやくこの交渉に応ずることになりまして、昭和四十二年六月に第一回の条約交渉が行なわれたわけであります。交渉は、いろいろ現実の課税問題があったことや、あるいは、韓国側がまだ租税条約を締結した経験がないということもありまして、かなり難航いたしましたが、結局、前後八回にわたる交渉のうちに、昨年八月の第三回の定期閣僚会議の際に実質的に合意を見たものであります。韓国との租税条約につきましては、わが国が最初に結びました租税条約であります日米租税条約と同じように、事業所得の課税につきましていわゆる総括主義またはエンタイア方式という方式を採用しておりますことや、あるいはザンビアとの租税条約と同様に、いわゆるみなし税額控除の規定を持っております点で、OECDモデル条約とは若干異なっております。しかし、他方、国際運輸所得の相互免税としておる点や、あるいは利子配当及び使用料につきまして限度税率――具体的に申しますと、一二%をこえない税率でございますが――この限度税率を設けております点では、OECDモデル条約と同じ考え方に立っております。
 ここで、御参考までに日本と韓国との間の最近の経済交流の数字を若干申し上げますと、企業進出につきましては四十四年三月――昨年の三月現在で、わが国から韓国への現地法人は四、支店は三、駐在員事務所は三十五となっています。ただし、その後現地法人は急にふえまして、現在のところでは二十一となっております。他方、韓国側からわが国へは支店が八つ出てきております。船舶につきましては、昭和四十三年度でわが国から三百六十便、先方から七十二便。航空機は羽田―京城、大阪−京城、釜山−福岡間の三路線がありまして、現在わが国から週十六便、先方からは週二十便の乗り入れが行なわれております。さらに貿易につきましては、昭和四十四年暦年において、日本からの輸出が約七億六千七百万ドル、韓国からわが国への輸入が約一億三千四百万ドルとなっております。
 以上をもって補足説明を終わらせていただきます。
#5
○委員長(長谷川仁君) 以上をもって二案件の説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#6
○西村関一君 ただいま補足説明がございましたこの条約、先方からの申し入れによって交渉が行なわれたということでございますが、現在わが国とザンビアとの経済交流というものは非常に微小なものである。銅を年間約一億数千万ドル輸入している点は別として、わが国からの企業進出がほとんどなされてない。投資所得はゼロである。こういう、経済関係があまり盛んでない状態にあるザンビアに対して今回条約を締結する必要性がどこにあったかという点が一点。
 それから第二点は、本来ならば経済関係の発展が先行し、あるいは近い将来その見込みがあるという場合に、課税関係を明確にする必要があるということで租税条約を結ぶのが普通であるが、現在のようなザンビアとの経済関係を背景として条約を結んでも、将来経済関係が盛んになったときには、この条約では通用しないような事態が起こらないとも限らない。そういう場合にあらためて新しい条約を結ぶ必要が生ずるという可能性はないのかどうかということが第二点。
 第三点は、先週この委員会において審議し本院において可決されましたマレイシアとの租税協定は、旧条約がOECDにのっとったものであってマレイシアには過酷であったということで、マレイシアの課税権をある程度手直しをした、そういうものでありますが、ザンビアとの条約もきわめてOECDモデルに準じておるということは、いま参事官が言われたとおりであります。現実には、ザンビアとの経済関係が盛んになったときにザンビアにとってこの条約が酷であるという状態になるおそれはないのかどうか。
 その三点についてお尋ねをしておきたいと思います。
#7
○国務大臣(愛知揆一君) この日本とザンビアの関係というのは、ただいまいろいろ御説明を申し上げたとおりでありますけれども、いまのところは、昨年のたとえば輸出額で言えば、こちらは二千万ドルでザンビアからの輸入額は二億九千万ドル。ところが、日本の立場から言えば、たとえば銅というものが非常に日本としては期待したい物資でございます。そういう意味で特殊の関係があるということが言えるのではないかと思います。
 それから、ザンビアからは、これも御説明したかとも思いますけれども、五年ほど前に経済使節団が参りまして、そのときに貿易協定が締結された。それから一方、ザンビアとしては英連邦の特恵税率を含む四段階の関税制度を一本化したわけでございます。こういう点が、わが国の一九六六年以来対ザンビアの輸出の条件がよくなったというようなことから、やはりわが国とザンビアとの間の経済関係というものは、現状はともかくとして、将来に相当の伸びを期待したい。同時に、先方からも、この種の希望がしばらく前から非常に熱心に行なわれてきたというようなところで、この条約の締結は適当であると踏み切ったわけでございます。
 それから、この二重課税の具体的な問題については、やはりこれからの行き方としては、せっかくOECDでモデル条約というものができておりますから、各国との間では、大体OECDのモデル条約にできるだけ似た形のものをつくるということが、特殊の場合を除いては、適当ではないかと考えますので、いまから見込んでいるところでは、これを少なくとも近い将来に修正するというような必要性は起こってこないという判断に立っているわけであります。マレイシアの例をおあげになりましたけれども、ザンビアその他、今回の国会にも二重課税の条約の御審議を数件お願いしているわけでございますが、原則的にはこのOECDのモデルに従ってまいるのを原則にしたいということで今回御審議を願っているわけでございます。そういういろいろの点、経過、あるいはザンビアに日本として期待している特殊の資源というような関係もありますので、先方に特に希望もあったような場合にこれに応じて、わが国の国益という点から言っても、この際この条約を締結するということについては適当であろうという判断に立ったわけでございます。
#8
○西村関一君 もう一つお尋ねをしておきたいのですが、先ほど参事官の補足説明の中にもございましたけれども、本条約は先方の申し入れによって交渉が行なわれた。しかも、アフリカ諸国――ブラック・アフリカの最初のケースであるということで、その意味においては特異なケースだと思うのでございますが、これに続くところのアフリカ諸国とのこの種の条約を結ぶという見通しはいまのところございませんですか。
#9
○政府委員(高木文雄君) ごく最近に、このザンビアに非常に近接しておりますケニア、それからタンザニア、ウガンダ三国が、いずれも日本とこのザンビアとの協定の結果を見まして、やはり同様に租税協定を結びたいという、まだ非公式な形でございますけれども、申し入れを受けております。こちらといたしましては、寄り寄り、私どもといたしましては外務省と御相談をしておるというところでございます。
#10
○西村関一君 続いて韓国との租税条約についてお尋ねをいたします。
 第一点は、五年ほど前に在韓日本商社が韓国政府から不当な課税を受けたということで、いわゆる課税問題が起こったのでございます。その後これはどういうふうに解決されたか。この問題が今回の租税条約でどのように解決されるとお考えになっておるか。
#11
○政府委員(高木文雄君) 新聞等でかなり長い間報道されておりましたように、わが国の韓国における商社に対する課税問題というのが、昭和三十九年以来いろいろもめておったわけでございます。どういう点がもめておったかという点をちょっと御紹介いたしますと、一つは、日本の商社の支店がたくさん韓国にございますが、その支店の所得について法人税なり所得税なりを韓国側が課する場合に、その支店が得ましたところの収入の面についてはあまり問題がないのでございますけれども、私どもの考えから言うと、経費をこの辺ぐらいまで認めてくれて差額を所得と見てもいいじゃないかということに対して、いわば経費の認定が少しきついといいますか、なかなか認めてくれない。たとえば、こちらから物を出しました場合には、その出しました物につきましては、韓国における支店でいろいろ経費がかかっておるのは言うまでもありませんが、こちらの本国でもいろいろかかっておるわけでございますが、本国の経費もその所得の計算の際に見て、引いてもらわないとぐあいが悪いわけですけれども、その見方が若干辛いといいますか、十分に引いてもらえないという点が一つございます。それから、たとえば日本から品物を向こうへ輸出しまして、あるいはこちらでつくって持って行って向こうへ据えつけるというような場合に、それから得たところの会社の所得は、いわば税法上の租税条約のときにいつも問題になるといいますか、国際間でいつも問題になるんですが、その所得は、日本の国内で生まれてきた所得と韓国の中で生まれてきた所得と、いわゆる所得源泉が二つの国にまたがるわけでございますが、それをどこで線を切るかということについて、やはり若干争いといいますか、われわれ――われわれというよりは、商社として納得のいかなかった点があるのでございます。それからもう一点は、帳簿書類を、こちらの帳簿書類をよく見てもらって、その帳簿書類に基づいて実査をして計算をしてほしいのでありますけれども、国内でもよく問題でございますが、一種の標準課税的な行き方というようなことがございまして、主としてその三点で、所得税につきまして、また法人税につきまして問題があったわけでございますが、その後何度も話し合いをいたしまして、徐々に理解を深めてもらった問題でもございますので、特にそういった点、他の国との租税条約とは違いまして、今度の日本と韓国との租税条約では、かなり詳しく、いま申しましたあたりのところをどういう約束にしておこうかということをきめたわけでございますので、これで四、五年にわたりました問題はほとんど解決の道がついた。で、企業といたしましては、一体どういう税金がどういう計算でかけられるのかということが前もってわかっておれば、かりにそれが多少重いとか軽いということがあっても、それは計算ができますけれども、いままではそれがわからなかったものですから、非常に紛争があったわけであります。その点が明らかになったわけでございます。
 なおもう一点つけ加えさせていただきますが、ただいまのは所得税、法人税の問題でございますが、別に営業税の問題というのがございますけれども、これは日本で向こうに試案を出して、いろいろ仕事をします場合に、先方の税法で、何と言いますか、物を、本店・支店の関係で、日本の本店から品物を全部支店が一ぺん買い取った感じでものを考えて、そうしてそれを売ると、仕切り売買だというふうに判断する場合と、単に口銭といいますか、支店は窓口になって手数料だけが支店に帰属するのだという考え方で営業税の税率が違ってくる、また課税標準が違ってくるというような問題がありまして、これも争いの種ではあったのでございますけれども、この辺は、実はこちら側が先方の税制なりあるいはものの考え方なりについて十分理解がなかったというようなこともありまして、最近では関係商社とも、韓国側のものの考え方でよかろうということでいっておりますので、このほうは、今度の協定というよりは、事実上の解決はすでに済んでおるという形でございます。
#12
○西村関一君 いままでの説明で大体わかったんですけれども、営業税につきましては、これはこの条約の二十条(1)でございます。必要に応じて協議できるということになっている。これは別途どういう解決をはかるというお考えになっているのか。営業税については「必要に応じ――協議することができる。」ということになっております。これはどういうことを意味するのか。
#13
○政府委員(高木文雄君) 営業税の問題は、三つに分けて御説明することがおわかりやすいかと思いますが、一つは、例の請求権取引に関連する問題でございます。これにつきましては、従来から法人税のほうは請求権協定の議定書で免税になっているのですけれども、営業税については請求権協定には何らの規定がなかったということから従来紛争があったのでございますが、このほうは、今回の条約の議定書に定めを置きまして、この条約が発効しました後の取引については向こう側で営業税をかけないということに今回の租税条約の議定書の中で規定をいたしております。それから、いわゆる民借取引というのがございますが、請求権取引に比べればはるかに民間べースのものでございますけれども、これについてはやはり同じような紛争がございましたのですけれども、まあいろいろ議論をしてみますと、本来の性質としては、韓国側がこれに対して課税することが不当であるということはどうも言えない筋のものであろう。民借でございますので、これは韓国側が課税をしてくるのもまあ筋の通った話であろう。ただこれまで紛争がありましたのは、ある時期から突然課税されたものですから、そこで予想外といいますか、予定外のことであったというのでもめまして、これにつきましても、条約の議定書で、一九六七年以前の取引に関しましては免税扱いにする、それから、新しいものにつきましては、まあ事の性質にかんがみまして、課税されてもやむを得ないということに扱うことにいたしたわけでございます。さて一番問題は、いまの請求権取引、民借取引以外の一般取引の場合に、営業税はこれからどうなっていくかということでございますが、その点につきましては、ただいま先生から御指摘ありましたように、条約の二十条に規定がございまして、相互に協議してやっていくということにきめられておるわけでございます。ただその場合に、当面何か協議しなければならないような紛争があるかと申しますと、先ほど申しましたように、日本の商社の活動について仕切り売買である前提でものを考えるか、ただコミッションといいますか、口銭を取るという、口銭だけが支店へ帰属するという形で課税を受けるかという問題の争いがあったわけでございますけれども、その点は前者のほうでいってもやむなかろうということで、各商社とも最近はそういう前提で納めておりますので、今日ただいまの段階で一般取引について何か直ちに協議に入らなければならない問題はないと考えております。
#14
○西村関一君 次に、この条約によりますと、企業利得に対する課税、これは従来のわが国との条約例ではあまり見ないエンタイア方式をとる。その理由はどこにあるのですか。
#15
○政府委員(高木文雄君) 事業所得の課税に関しまする租税条約のきめ方は、ただいま御指摘のございましたように、二つ考え方がありまして、いわゆるエンタイア方式という考え方――総括主義という考え方と、帰属主義と言っておりますが、アットリピュータブルという考え方と二つございます。で、アットリビュータブルのほうが紛争が少ない、わかりやすいということで、最近わが国は各国と条約を結びます場合にはそういう考え方でいっておりまして、OECDのモデル条約でもそのようなものをモデルとしておるわけでありますが、わが国が一番最初に租税条約を結びましたアメリカと日本との間ではいわゆるエンタイア方式になっております。今回、日本側が韓国側に租税協定を結ぼうではないかという提案をいたしましたときに、まずそこらあたりをどういうスタンスで話を進めていくか、当然こちら側はアットリビュータブル方式を望んだわけでございますが、韓国側は日本とアメリカとの条約を見まして、日本はアメリカとの間ではエンタイア方式でやっているじゃないか、そうだとすれば、日本が今度は韓国と結ぶ場合にエンタイア方式でやっていかぬわけはないじゃないか、こういうことで、エンタイア方式を先方が希望したわけでございます。そこで、当方といたしましては、そこで議論をしておりますと実は入り口でなかなか奥に入れなくなりますので、かりにエンタイア方式であっても、その中の所得配分の問題とかあるいはいろんな点について考え方が合理的であれば、エンタイア方式についてさらにこまかい点についての課税原則が満足すべき内容のものができれば、名前といいますか、形式はエシタイア方式でもかまわないじゃないかということで議論を詰めていったわけでございますが、実はそのことに、その詰めることの作業にたいへん手間どりまして、条約の交渉に長くかかったわけでございますけれども、そうはいうものの、初めからアットリビュータブルでいこうではないかと言っておりますと、入り口のところでなかなか交渉が進まなくなってしまうものですから、そういう形式をとったものでありまして、そこで、結果から申しますと、非常に最後に両方の意見がうまく合ってまいりましたので、特に所得源泉についての詳細なルールをつくることができましたので、エンタイア方式をとりましたけれども、たいへん当方として不利だとか先方が有利だということなしに、ほどほどのところで話し合いがついたと確信をいたしております。
    ―――――――――――――
#16
○委員長(長谷川仁君) 委員の異動について御報告いたします。
 ただいま高橋衛君が委員を辞任され、岩道道行君が補欠として選任されました。
    ―――――――――――――
#17
○西村関一君 いまの御説明によりますと、エンタイア方式にしたところでわが国の企業が影響を受ける、不利な取り扱いを受けるということはないという見通しでこのようにしたと、結果的にはそういうことですね。
#18
○政府委員(高木文雄君) そのとおりでございます。
#19
○西村関一君 それから、船舶及び航空機の運航利得に関する課税でございます。これは本条約におきましては登録地主義をとっている。これは企業体主義と言われておる課税のやり方をしないでどうしてこの登録地主義をとることにしたか、その点お伺いしたいと思います。
#20
○政府委員(高木文雄君) ただいま御指摘の船舶、航空機についての課税の原則として、企業体全部、たとえば日本の船会社なら船会社が持っております船が韓国へ行きましてそこで所得があがりました場合に、その船かどこに登録――といいますか、船籍を持っておろうと、それは免除しましょうということにするのが、まあ大体各国との間の常識といいますか、それが常例でございます。今回は、第一原則としまして、ただ、日本の船会社が持っておる船の全部ではなくて、日本に船籍があるか、韓国に船籍があるか、あるいは韓国が相互免除をやっている国、そこに船籍があるか、いずれかでなければ困るということにきまったわけでございますが、具体的には、実は韓国は非常にたくさんの国と船舶、航空機についての相互免除をしているようでございますので、実質的に企業体主義をとる場合とどこが違うかというと、非常に明確なのは台湾の場合でございます。つまり、もし日本の船会社が船籍を台湾に持っている船をもちましてそれで韓国のほうにそれを運航するという場合には、これは今回の条約、相互免除規定が適用にならぬということになります。なぜそういうことが起こりましたかと申しますと、これは先ほど申しますように、韓国は非常に多くの国と相互免除協定を結んでおるのでございますけれども、どういうわけか台湾との間で協定ができていないということでございまして、これは韓国側と台湾側とどちら側にどういう事情があるか私どもつまびらかにしておりませんけれども、そういう事情がありまして、それで、もしわが国が、またわが国のほうが台湾に船籍を置く船を持つということも現実的ではないのでございますけれども、この点で、韓国が免税しない国に登録されたものについては免除しないという希望が強く出ましたので、当方としてはほとんど実害がないという前提で、先方さんがその点を非常に強く主張されるならばそこは譲歩いたしましょうという形で、形式的には譲歩したかっこうになっております。
#21
○西村関一君 最後にもう一点だけお伺いしたいと思いますが、日韓請求権及び経済協力協定に基づくところの無償三億ドル、有償二億ドル及び民間借款が当初三億ドル以上ということになっておったのでありますが、昭和四十二年の第一回日韓定期協議会の結果、二億ドル追加した。それはどういうふうに実施されているか、現状どういうふうになっているか。民間借款の中には船舶借款三千万ドル、漁業借款九千万ドル、これは一体どのように使われておるかどうかということをこの際お伺いしておきたいと思います。
#22
○説明員(伊達宗起君) 御説明申し上げます。
 まず第一に、請求権協定に言っております二億ドルの有償の経済協力につきまして御説明申し上げます。現在、韓国側と協議いたしまして、こういう事業に融資をしようということで、日本側も一応金額をイヤマークと申しますか、コミットしたものが一億二千九百万ドル、それから、そのイヤマークいたしたものの中で、すでにもう五年度に入っておりますが、それが実施に移されまして、実際に政府から支払いが行なわれたもの、それが七千五百万ドルというのが有償の二億ドルについての数字でございます。
 次に、無償の経済協力三億ドルにつきましては、まず実施計画というものをつくっておりますが、その実施計画で現在までに両国政府間で合意されましたものが二億三千三百万ドル、その中で、これはまた認証という手続がございますが、契約ができ上がりますと日本政府において認証いたします。その認証の額が一億一千万ドルという数字になっております。
 次に、実際に実行されまして政府が支払いました額といいますのは、現在――この二月末現在でごさいますが――一億百万ドルというようになっております。以上が無償でございます。
 民間の信用供与に関しましては、承認しました実績は、ことしの二月末現在におきまして、一般プラント類が三億五千一百万ドル。漁業協力、これは漁船等の、沿岸漁業その他の漁業に対する信用供与でございますが、それは約二千万ドル。詳しく申し上げますと、一千九百四十四万ドルということになっております。その他船舶の輸出がございますが、これにつきましては、承認額は二千五百四十六万ドル。合計いたしまして三億九千六百万ドルというのが現在の数字でございます。
 以上でございます。
#23
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、二案件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより二案件について一括討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、二案件につきまして順次採決を行ないます。
 まず、
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とザンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#26
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 速記とめて。
  〔速記中止〕
#27
○委員長(長谷川仁君) 速記を起こして。
 次に、
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件
 を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#28
○委員長(長谷川仁君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、二案件について、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 速記をちょっととめて。
  〔速記中止〕
#30
○委員長(長谷川仁君) 速記をつけて。
#31
○委員長(長谷川仁君) 次に、旅券法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては、去る三月二十四日提案理由の説明を聴取しておりますので、これより補足説明を聴取いたします。
 遠藤領事移住部長。
#32
○政府委員(遠藤又雄君) 旅券法の一部を改正する法律案について補足説明をいたします。
 現行の旅券は、一回渡航して帰ってくれば失効するといういわゆるシングル旅券を主としておりますが、かかる旅券制度は世界に例がなく、渡航者に多大の不便を与えています。
 このまま推移すれば、旅券を入手するのに多くの日数を要し、旅券行政も円滑を欠くに至ると思われます。
 また、最近は国際的には渡航自由化の趨勢にあり、国連主催の国際旅行観光会議やOECDの観光委員会等は、旅券は五年数次往復用旅券を原則とすべしと勧告しておりますし、世界各国の約半数、特に先進国においてはその大半がこの制度を採用しております。
 しかしながら、他面において、無軌道な渡航者が増大していることも御承知のとおりでありますので、渡航の秩序を守る必要もございます。
 そこで、五年数次往復用旅券を大幅に採用して渡航者の便宜をはかるとともに、秩序ある旅券制度を守るため、罰則、返納規定整備等の最小限の整備をはかったものが今回の改正案であります。
 なお、改正後において、わが国と承認関係にない地域への渡航については、運用面において善意をもって措置したいと考えております。
 以上がこの法律案についての補足説明でございますが、御審議の上、すみやかに御採択いただきますようお願い申し上げます。
#33
○委員長(長谷川仁君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 これより、質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#34
○西村関一君 今般、旅券法が衆議院で可決されました際に、昨年同様、理事懇談会で確認されたことについて外務委員長から報告があり、その内容も、旅券法の一部改正案はいずれの地域に対しても渡航の制限を目的にしたものではなく、かつ、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置する。昨年同様のことが再び確認されたと承知しておるのであります。ただ一点新しいものといたしましては、善意をもって措置するということは、相手方が入域を認める場合には、渡航手続の簡便化をはかりつつ善処することであるという点がつけ加えられております。そこで、「相手方が入域を認める場合には」ということでありますが、これは、すべて渡航を認めるということであるならば問題はございませんけれども、相手方が入域を認める場合には善処するということは、必ずしもすべての場合について渡航を認めるつもりではないというふうにも、裏返せば、とれるのでございます。相手方が入域を認める場合でも、どういう場合はいけないのか、どういう場合はよろしいのかというような点についてお考えを聞かしておいていただきたいと思います。
#35
○国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。この件につきましては、率直に申しまして、いろいろの考え方あるいは経過にかんがみまして、衆議院においては四月八日に田中外務委員長が委員会で報告された、ここにあげられておることはそのままにお読み取りをいただきたいのでございまして、これにコメントすることは私としては非常にむずかしいわけでございます。その間の事情を御了察いただきたいと思います。
#36
○西村関一君 外務大臣の立場もあり、衆議院の外務委員長から報告をされたということに対して、その文面のそのままを受け取ってもらいたい、こういうことでございますが、それでは審議にならないと思うのです。審議の過程を経て衆議院においてはそういう委員長報告というものがされたと思うのです。内容にわたってもう少し具体的に述べていただかないと、文面をそのままと言われたのでは、それはちょっと私としても、そのままそれでよろしいというわけにはまいらないと思うのでございます。従来は、たとえば朝鮮民主主義人民共和国に対しては、国会議員及びその同行者という者たちに対しましては旅券を出されておる。それから、商用、新聞記者、スポーツ関係というような点については旅券が出されております。あとの技術者と芸術交流等はケース・バイ・ケースで行なわれておるということでございますが、友好使節団の場合は大体において認められていなかったというのが従来の事例であったと思うのです。そういう点に対して今度の改正案においては、「相手国が入域を認める場合においては渡航手続の簡便化をはかりつつ善処する」ということが言われておるのでございまして、また「善意をもって措置する」ということが言われておるのでございますが、従来とどういう点が変わってくるというふうに受け取ってよろしいのでしょうか、この点をもう少し伺っておきたいと思います。
#37
○国務大臣(愛知揆一君) ごもっともな御質疑でございまして、私がただいま申しましたのは、田中委員長の御発言について、これをもとにして政府として申し上げることは、文面どおりが読み上げられましたことを申し上げたわけでございますので、政府の考えているところを申し上げなければ御審議にならない、これはごもっとものことでございますから、少しくどくなるかもしれませんが、申し上げたいと存じます。
 実は、この旅券法は前国会において衆議院では可決されて審議が終了いたしたわけでございます。その際に、田中委員長の報告にもありますように、昨年私が衆議院の審議のときに、この旅券法の一部改正案を提出いたしましたのは、いずれの地域に対しても、つまり未承認国あるいは地域に対しても、渡航の制限または禁止をするんだという目的で改正案を提出したものではございません、いずれの地域に対する渡航についても善意をも措置する方針でございます――ということを当時の政府の方針として申し上げたわけでございまして、それを、念のため、さらに今回も引用されておるわけでございます。その後、御承知と思いますが、ことしの三月、政府としては次のような方針をきめたわけでございます。これは主として未承認国への渡航の手続の緩和ということでございます。まず第一に、相手国が入国を認める、これは当然のことだと思いますが、そうした場合には未承認共産圏の渡航趣意書というものの提出を求めておりますが、これは、今日までは十五部という非常な部数を求めておったわけでございますけれども、これを半分にしたい。それから、渡航趣意書は旅券の発給申請と同時に受け付ける。これは、いままでは趣意書を先に十五部取って、それから審査をして、それから渡航旅券の発給申請を受け付けていたわけですけれども、これを同時に受け付けることにしました。そして受け付けて、発給申請がありましたら、現在は三週間ぐらいの期間を要しておりますが、これをできるだけすみやかに処置をしたいということを内容とする渡航手続の簡易化をしたい、こういう方針を明らかにいたしたわけでございます。そこで、ただいま御質疑にございますが、田中委員長が、「相手側が入域を認める場合には渡航手続の簡易化をはかりつつ」というのは、政府の三月初旬以来明らかにいたしましたことを、ここに抽象的に原則的にお述べになったものである。そして「善処する」ということは、そういう簡易化をいたしながら、やはりこれは旅券法のたてまえからいいましても、未承認国に対してはケース・バイケースで審査をする。その審査をする場合に善意を持って審査をする。こういう意味合いをお述べになったものと私どもは理解しておりますし、政府としては、そういう方針でやってまいりたい、こういうふうに考えております。ただ、これはいろいろ議論のあるところだとあらかじめ思っておりますけれども、未承認国あるいは未承認共産圏と申しましても、一つの国、一つの政府だけではございませんで、日本の周囲には、不幸にして、いわゆる分裂国家が三つも隣接しております。あるいはまた、東ドイツというような国もございます。やはり国の国益という立場から言って、政府といたしましては、それらの国の事情、それらの国や地域の隣合っている国の事情、あるいはそれらの国々の状況と日本との関係ということを十分慎重に考えなければなりませんから、一がいに、一律に、どこの地域に対しても同様な原則をつくってアプライすることは政府としてはできない、そこが「善処する」という気持ちの内容でございます。やはりケース・バイ・ケースに善処するということになるのはやむを得ない政府の立場、こういうふうに私ども考えております。
#38
○西村関一君 今度の旅券法の改正につきましては多くの利点がある、改正の上において進歩があるという点は認めるわけであります。いま大臣から御説明のありましたように、手続の簡素化の点についてもいろいろな配慮がなされているということも認めるのでございます。ただ問題は、そういう手続の簡素化などは、これは何も改正をしなくても、行政上の措置でできることじゃないか。そのこともまた改正の理由になるのだと言われることにつきましては、それはもうそう本質的な問題ではない。これは行政的な措置でやられることだ。ただ、私が問題としてお尋ねしたいと思いますことは、今度の改正によって渡航の自由の権利というものが制約をされる。従来の旅券法よりはかなり大幅に制約をされるという点が問題になる。ということは、今度は罰則がついているわけであります。罰則によりまして、次の申請の場合には発給しないというようなことまで言われているわけでございます。そうなってまいりますと、共産圏と申しますか未承認国と申しますか、そういうところを相手にして通商貿易をやっている商社の人たちなどにとっては、一面においては手続が簡素化されるということがあっても、実際上の問題としては、ある者が北京に行き、北京から平壌に行き、平壌から北京に行くというような場合には、最初からわかっている場合には、そのような渡航目的、渡航目的地というものを申請して手続して行けばいいということでありますが、事実、現地へ行ってからそういう事態が起こった場合には、まあ、それがいまのような事例ですと、香港まで行って、香港の領事館で手続するということも考えられますが、かなり日時がかかる。その間、平壌もしくは北京における滞在期間が切れてしまうということもないとは言えないと思うのです。でやむを得ず渡航者が指定されていない所に行くという場合には刑事罰を受ける。刑事罰を受けるのみならず、次の申請の場合には交付しないというようなことも言われているわけです。二重にと申しますか、処罰を受ける、差別待遇を受けるということになるわけです。そういう点がかなり問題になると思います。それらの点に対しては「善処する」ということで解決策がついている、そういうことはないのだ、そういうことはしないのだ、善処すると言われればそれまででございますが、特に商社につきましてそういうような事態が起こった場合にどういうふうに考えていったらいいのか、その点もこの際伺っておきたいと思います。
#39
○国務大臣(愛知揆一君) いまお述べになりましたことにはいろいろの点があるわけでございますが、私は、いま申しましたように、旅券法の改正をするのは、渡航制限を強化するとか禁止するという目的でやったものではございません。むしろ、「渡航の自由について善意をもって措置する」という、これが基本の考え方でございます。それから、「手続の簡素化」ということは、これはもうお話しのとおりで、現行の旅券法でも行政運用上の心組みとしてさようなことはできるわけでございます。その点はおっしゃるとおりでございます。それから、その次の罰則の問題でございますが、これは予想されるこの罰則の一番いま御心配の点は、いわゆる横流れの場合だろうと思います。ところが、これは現在の旅券法では罰則はないけれども、横流れをして目的を達せられていたという、そういう事態は当局側としても承知しておるわけでございます。で、横流れをして罰則にかかるような、しかも、その目的というものが貿易の用務というように、きわめてはっきりした目的であるような場合におきましては、ケース・バイ・ケースの審査をいたしますけれども、横流れなどをして罰則にかかるようなことを避けてあげたい、こういう配慮で運用していきたい、こういうふうに考えているわけです。それから、この罰則の問題は、さらに、もし罰則にかかったような方だって、三万円までの罰金に処せられたような場合でも、これは自動的に、その後において旅券の交付をしない、取り上げっぱなしだというようなことを自動的、機械的にやる意思はございません。罰則は罰則、あるいは旅券の交付は交付ということで、これはまあ事情によりますけれども、そういう配慮は十分にしてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
#40
○政府委員(遠藤又雄君) ちょっといま大臣の御説明に対して補足いたしたいのでございますが、いま西村先生の御質問にございました、たとえば北京に行っている間にどっか他の未承認共産国への渡航の必要があって追加しなければならない場合のことでございますが、これにつきましてはいろいろな簡便な措置を講じたいと思います。これは従来どおり渡航趣意書でもってクリアする必要がございますが、これは別途御本人の本社の方その他の方が東京においてクリアする。それから、その新しく渡航先の追加手続をするのにどっかのもよりのわが公館に出る必要がございますが、それについても何とか便法をはかりたい、こういうふうに考えております。
#41
○西村関一君 今度の旅券法の改正については、渡航を制限するとかいうことが目的ではなくて、できるだけ渡航ができやすいように考えて前向きに考えていきたいという趣旨だということは了承いたします。先ほどからも伺っておりますように、また、大臣が言われました横流れといいますか横すべりといいますか、渡航の点につきましては、こういうことはよろしくないと、そういうことをできるだけしないようにしていきたい、そういう配慮からも改正をしなければならないのだということでありまして、そういうことができれば、これにこしたことはないのであって、横すべりをしないでも、行きたい所へどこへでも行けるというように法手続及び行政上の配慮が行なわれればこれは問題はないと思うのでございますが、実際問題として、従来の例を申しますと、これは北京、あるいはハノイ、あるいは東ドイツ等の国交未回復国に対する渡航は、これはできておったわけでございますが、朝鮮民主主義人民共和国――北鮮に対しましては、おおむね横すべりをしなければ行けなかったというのが従来の事例であったと思うのでございます。ただ、国会議員とその同行者だけは平壌行き旅券ということで行けたわけでございます。それも、さっき申しましたように、若干の例外がございまして、商用とか新聞記者関係とかあるいはスポーツ関係とかいうのがありましたけれども、ほかの未承認国のようには自由に行けなかったという点があったと思うのでございます。そういう点につきまして、これは政府といたしましては、ただいま条約を審議いたしました韓国との配慮もあって、なかなか北鮮へは、自由に行ってよろしいというようなことはおっしゃることができにくいと私は思いますけれども、善意をもってケース・バイ・ケースで善処していこう、こういうことを言っておられるのですから、それに外務委員長の報告の文面等から察しまして、およそ政府の意図がどこにあるかということもわからぬでもないわけでございます。しかし、心配すれば、その取り扱い等の上において差別的な罰則がついておりますから、罰則があっても、罰則に触れた場合でも旅券の発給ということとは関連させない。ケース・バイ・ケースで、罰則を受けたような場合であっても発給し得る場合もある。そういう意味の含みのあるおことばがございましたが、これが通った場合、なるべく罰則に触れないようにしていくのがこれは法治国の国民として当然の責務だと思いますけれども、あえて罰則を犯さなければ行けないというようなところに追い込むということは、政治の上において避けなければならない点だと思うので、これはこの前の国会におきましてもここで審議をしたわけでございます。一応審議は尽きていると言えば尽きていると思うのでございますが、今度あらためて衆議院から送付されてまいりました旅券法の改正案の審議にあたりまして、そういう点についてもう一度あらためて、国交未回復国に対する渡航についてはできるだけ罰則を適用しないように便宜をはかっていくと、また、関係領事館に出て手続をしなければならない場合にも代理申請を認めるとか、文書での申請を認めるとか、何らかのそういう便宜を講じてすみやかにそういう事態に処することができるような配慮を当局としてはしていかれる用意があるのかないのか、そういう点もこの際伺っておきたいと思います。
#42
○国務大臣(愛知揆一君) 大体いま西村さんのお述べになりましたような気持ちなんでございます。ただ、申し上げておきたいと思いますのは、未承認共産国と申しましても単数でございませんから、それぞれ、その国と日本との関係、その国と隣接国との関係とか、いろいろ、申し上げるまでもなく、きびしい緊張状態にあることを考慮いたしますると、たとえば、ある地域に対してはもう原則どおりにどんどん処理が円滑にいきましょうし、また、所によっては、なぜここにももっと自由にしないか、いや、こうこうこういう事情でこれはもうしばらく考えていただきたいということの裁量権は残しておいていただきたいと思うのです。これは、これもまたいずれいろいろと御審議いただくことになると思いますけれど、第十三条一項第五号ですか、こういう問題になろうかと思いますけれども、「著しく且つ直接に公安を害する」おそれのあるような場合には発給しない。しかし、発給しない場合においては行政権においても十分な制約がかかって、厳重な制約がございますけれども、しかし、その厳重な制約の中ではあるけれども、行政権の裁量というものは残しておいていただきませんと、著しくかつ直接に国益、公安を害するおそれがある場合が考えられるであろうと、こういうふうに考えておるわけでございますが、そこで、しかし、そういう地域でも、先ほど申しましたように、従来は罰則がなかったという関係もございましょう。あるいは、率直に申しますが、こういう申請を出してもなかなか認められぬだろうということで、もう横へ行くことを承知の上でやっておられた方もございます。しかし、そういう方々のほとんど、私、承知している大部分は、純粋な貿易上、商売上の用務で行かれた。これは実績の上では資料として掌握してございますから、そういう方々が渡航の理由あるいはその目的とされるところは個別審査の対象になって、十分それがよくわかりますような場合には、横流れなどをなさらなくても、罰則にかかるおそれのあるようなことをなさらなくても、これは正式に発給をして差し上げれば、これはその方々としても楽になられますし、先ほど申しましたように、わざわざ罰則にかかるおそれのあるようなことをおさせしないでいきたいと、こういうふうに考えております。
#43
○西村関一君 大臣の言われますお気持ちもわからぬわけではございませんが、従来の実績から見て、商行為そのものを目的で行かれるので、そういう者に対して制限をしたりなんかする考えはないと、そういうところまで罰則を適用するような、そういう考えはない。罰則に触れないように旅券を発給する心づもりをしていきたいということでございますから、それで了解がつくと思うのでございますけれども、ただ、罰則が今回つけ加えられておりますということにつきましては、つまり渡航先の追加の手続を怠ったということで罰則に触れる、三万円以下の罰金になるということは少し過酷じゃないかというふうに考えるのですが、追加手続を怠ったといういわば秩序違反の問題に対するところの処罰としては、刑事罰にするということは少しきつ過ぎるんじゃないかという議論も学者の間にもあるようでございます。そういう点につきましてはいかがでございましょうか。
#44
○国務大臣(愛知揆一君) これも私、ごもっともだと思うのでありますけれども、実を申しますと、この改正案をつくりますときに、法秩序ということから言って、この罰則はもっと強くしたいという意見が相当強かったのでありますけれども、いろいろ私どもも努力をいたしまして、とにかくここまで下げた――と言うと語弊がごさいますけれども、三万円の罰金ということにいたしたような経緯もございまして、この点は、やはり禁止規定というものがある以上は、それに違反すれば罰がかかるということは、どうも法秩序としてやはり必要だという考え方に対しては、外務省としても、それ以上、これに対して意見を言うわけにもいかぬわけでございまして、しかし、こういう種類の問題でございますから、くどいようでございますが、もうこの罰則というものはかからないようにするというのは、結局、運用の問題ではないかと思います。これはしかし、政府の態度だけではなくて、やはり旅券の発給を求められる方々の御協力も得なければならないのであり、渡航の手続を簡素化すると同時に、その衝に当たる当局の説明なり、あるいは当局の説明に申請者のほうでもきびしい国際状況のもとにおいては御協力を願って、ここしばらく様子を見てもらうというような、そういう私はやはり協力を申請者のほうに対しても求めたいと考えるわけでございまして、そういう点の取り扱い等については今後も十分に配慮していかなければならないと思います。当局側のほうにはそういう点を十分ひとつ運用上配慮するようにやってもらうように私どもは十分心がけていきたいと思います。
#45
○西村関一君 大臣のお心のうち、御苦心のうちは私もわからぬじゃございません。十分配慮をしてこの改正案を提案しておられるということは理解するのでございます。その上に立ちまして、国交未回復国、未承認国に対する渡航につきましては、一面の配慮は必要でございますが、また他面、積極的に交流を盛んにしなければならないという積極的な面もあると思うのでございます。たとえば、朝鮮半島におけるところの二つの分離国家――大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国――政府は朝鮮民主主義人民共和国という呼称を使われることに対して遠慮をなすっておられるようでございますが、現にこの二つの国家が存在するということは、これは自明の事実でございまして、その意味におきまして、大韓民国に対しても渡航の自由が認められ、朝鮮民主主義人民共和国に対しても渡航の自由が認められる。これは日韓条約下にあります日本国政府といたしましては、そういう二つの国を平等に取り扱うというわけにはまいらないというお立場も私はわかります。しかし、政府ベースではなくして民間ベースにおいて、あるいは私ども政治の面に携わる者の立場から申しましても、二つの分離国家を融和せしめるといいましょうか、この対立を緩和させるといいますか、そういうことのためにも友好使節団が北に対しても行かなければならない事情があると思うのでございます。これは南に対するところの配慮から、従来はなかなか旅券が出なかったという事実があるわけでございます。そういう点につきましても、私は、大臣のお立場なり政府の配慮のある点は十分にわかるつもりでございまして、しかしまた、他面、友好関係を深めていくという上においては、むしろ積極的な配慮も必要じゃないかと思うのでございます。私なども朝鮮民主主義人民共和国に対して前後二回渡航をいたしております。その際も、いま言われますいわゆる横すべり、一回は北京から、一回はモスクワから行ったわけでございます。もちろん、国会議員でございますから、平壌行きの旅券を申請すれば出たわけでございますが、とっさの場合そういうことができないので、北京からあるいはモスクワから行ったというわけでございます。そういうことは今後なるべく避けたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、私は、国交がない国であっても、この現実の対立のきびしい中に飛び込んでいってその事情をよく聴取する、承知する、そしてまた人的交流を重ねるということは、社会党はただ北だけに片寄って行くというのじゃなくて、南に対しても、大韓民国の側に対しても、私は同様なことを考えて行かなければならぬというふうに思っているのでございます。現に私は五月一日にソウルにおけるプレジデンシャル・プレーヤー・ブレックファーストという集会に大韓民国の二人の国会議員の名前で招待を受けております。国会開会中でなければ、その一日の前後数日私は参りたいと思っている次第でございますが、国会開会中でございますから、諸般の事情からその招請に応ずるかどうかということについてはまだ決定をいたしておりません。私は、やはり大韓民国に対してもわれわれの側からも大いに交流を重ねていくべきである。社会党は日韓条約に反対したから韓国には行かないのだというようなかたくなな態度はとるべきではないと、少なくとも私個人はそういうふうに考えておるのでございます。そういう意味におきましても、そういう南北に対する交流を隣国日本としては今後考えていかなければならなぬのじゃないか。特に友好使節団に対しましては、北側に対してもいわゆる善処する、配慮するとおっしゃいます点、今後、従来よりはもっと前向きにお考えを願いたい。これは大臣のお立場はよくわかりますが、もう少し大所高所に立って、今日の南北の緊張緩和あるいは東西の緊張緩和をおはかりになるという自主外交ということを政府は、大臣の常におっしゃる点から申しましても、そういうことができやすいような姿勢をとっていただきたいということを私はお願いしたいのでございますが、その点につきまして、くどいようでございますけれども、大臣のお考えを承っておきたいと思います。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) 私も西村さんのお気持ちはよくわかります。西村さんのような方が南北両方においでになるというふうなことについては私も敬意を表する次第でありますが、ただ、友好使節団というようなことばには、いろいろの環境やあるいは使節団というものの性格その他にはずいぶん考えなければならぬことがあると思います。いま、政府の立場において友好使節団というようなことを現在の段階で考えるところまでは行っておりません。
#47
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 午前の会議はこの程度とし、午後二時五十分に再開することとし、暫時休憩いたします。
   午前十一時四十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時八分開会
#48
○委員長(長谷川仁君) 午前の会議に引き続き、これより外務委員会を再開いたします。
 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#49
○西村関一君 外務大臣にお伺いいたしますが、先般の外務委員会におきまして、国連憲章改正の問題について質疑が行なわれました。また、羽生委員からウ・タント事務総長が来日されるにあたって、どういう問題に対して大臣は総長とお話し合いになるかというような質問があったと思うんでございますが、すでにウ・タント事務総長も来日しておられるわけでございます。大臣も先ほど来お会いになったわけでございます。
 この国連憲章改正の問題につきましては、特にわが国が他国に先がけて憲章を改正すべきである、こういう立場に立って大臣も意欲的に取り上げておられるということでございますが、普通いわれますところの敵国条項の問題であるとか、一種の差別条項の問題であるとか、あるいは安保理事会の常任理事国への参加を実現したいというような問題等も、憲章改正にからめて、われわれの側からは、そういう点を考えておられるのじゃないかと想像いたしますが、それらの点について大臣のお考えを可能な範囲で率直に承りたいと思います。
#50
○国務大臣(愛知揆一君) 本件に関しましては、昨日羽生委員の御質疑がございましたときにかなり詳細にお話し申し上げたわけでございまして、きょう重ねてお尋ねがあったわけでございますが、まあ要するに、一つは、国連の平和活動といいますか、機能について不十分な点があるのでこれをさらに積極的に機能を拡大するのにはどうしたらばいいか。それについて総会、安保理事会等の運営や現状のあり方が不十分であるということを指摘しつつ、これは当然憲章改正の問題に及ぶ。それから一つは、社会経済問題の取り上げ方についてさらに積極的にやっていく必要があるということ。それから一つは、きのうもいろいろ御議論がございましたが、もはや時代おくれになっておるような規定の改廃、たとえば敵国条項あるいは信託統治理事会というようなものの廃止、まあ、大ざっぱに申しますとそういう範疇に属するような問題を取り上げていきたい。ただ、その憲章改正ということになると、まあ私も決して気が短くないほうではございますけれども、日本流に、提案したからといってすぐ二十五回総会で決議がまとまるというふうなせっかちなことは、私は問題の性質上、とうていいかないということは、テークアップしながらも、そういう現実の障害ということにつきましては十分考えているつもりでございます。昨年来の経過を見ても、昨年の二十四総会の後半で、しばしば申し上げておりますように、コロンビアが国連憲章再検討に関する諸提案検討の必要性という議題を出して検討したこともありますが、米ソをはじめとする主要国がきわめて消極的な態度であるような関係で、いろいろ紆余曲折はありましたけれども、結局、第二十五総会の仮議題に含めるという趣旨の共同決議案が十二月二日に成立をいたしたわけであります。しかし、その内容を見ると、御承知のように、反対十一票がありますが、その中には、ソ連をはじめとする共産圏がこの反対投票の中に入っておりますし、それから棄権が二十二でありますが、西欧諸国、ガーナ等がこの棄権二十二の中に入っている。こういうふうな状況から見ましても、国連のあり方を再検討してみようではないかという私の呼びかけというものは、一言にして言えば、主としてこうした議題のもとに審議が行なわれるということになれば非常にけっこうな推移である、こういうふうに現在の段階では見られておるわけです。これからの進め方その他については、ウ・タント総長などの私見もたたいてみたいと思っておりますけれども、それらも参考にいたしまして、われわれとしては、日本として考えればこういう点がこういうふうになればいいというような積み上げ方について、外務省だけじゃなくて、国内のその方面の権威者、学者その他の方々にも、いままでも寄り寄りいろいろと御検討を願っておるわけでありますけれども、ここにまだしばらくの時間もございますので、一方においてそういう検討は十分ひとつ練り上げておこうと、こういうふうに考えておるわけであります。まあ、国連の状況その他よく御承知のとおりでございますから、先ほど申し上げました、こういうことを言い出しかつ盛り上げてまいりましても、右から左にすぐ実りができてくるというふうにあまりせっかちに大きな期待を持ち過ぎていても、そのようになかなか進まないということもあり得るということは常に念頭に置いていただかなければならない、こういうふうに考えております。
#51
○西村関一君 もちろん、大臣がおっしゃるように、外交上の問題ですから、相手国があるし、また、特に国連の問題は一つや二つの国じゃない、各国を対象としての折衝でありますから、そう簡単に右から左にいくものだとは思わないのでございます。日本としてはどうあるべきであるかという点を国連の諸情勢から勘案して、外務省当局としては十分に検討しておられると思うのです。そういう点に対してお考えが煮詰まっておらなければしかたがありません。煮詰まっておるとすれば、ある程度の御見解を発表していただきたいということでございます。
 なお、大臣のことばじりをとらまえるというのではございませんけれども、昨日羽生委員の御質問に対してかなり詳しく述べたというようなことをおっしゃいますが、おそらくそれは予算委員会での質疑応答の事柄だろうと思うのでございますが、本委員会は申すまでもなく外務委員会でございます。外交問題プロパーの委員会でございます。予算委員会は、言うまでもなく予算審議の委員会でございます。おのずからそこに分野があると思うのです。予算委員会の答弁があろうがなかろうが――もちろんわれわれといたしましては予算委員会の質疑応答に対しては重大な関心を払っているつもりでございますが――やはり外務委員会の審議というものを重点的に国際情勢一般等につきましてはお考えを願いたいということを意見としてつけ加えて申し上げたいと思うのでございます。
 そこで、当然常任理事国への参加という問題が出てくると思いますが、まあ、そういうことになりますと、ただ権利を取得するというのじゃなくて、これに付随いたしますところの義務を履行しなければならぬという問題が起こってくると思うのでございます。その義務の履行の問題につきましては、国連軍への参加というような問題が直ちに出てくると思うのです。しかし、日本といたしましては、平和憲法のたてまえから海外派兵――それは防御のためならば海外派兵といいますか自衛隊の海外派遣ということも可能であると、こういう政府の見解もあるようでございます。これは議論の分かれるところでございます。自衛隊を海外に派遣する場合につきましては、自衛隊法の問題にも関係いたしますし、そうにわかに政府としての結論をお出しにならないと思うし、そういうことはないと思うのでございますが、しかし、何らかの形で義務を負わなくてはならぬということでございます。それにつきましては、軍事面においては義務を負うことがないにしても、経済面において日本としてはより多く国連に対して義務を負うということも一つの道であろうと思いますし、あるいはまた、鶴岡国連大使が就任当時示唆され、国際災害救助隊というようなものをわが国で創設してはどうかというような、これは非公式の発言であったようでありますが、そういうような考え方も、少なくともわが国を代表するところの、政府を代表するところの国連大使が、非公式の場であるとはいえ、発言しておられる、常任理事国メンバーとなる暁においては、どういう形で権利とともに義務を履行するか、そういう点に対する大臣のお考えを承っておきたいと思います。
#52
○国務大臣(愛知揆一君) 前段のお尋ねは非常に広範にわたっておりますので、まずその点についていま一度お話しいたしたいと思いますが、要するに、わが国としてそれなら何を考えているのかということですが、これは、先ほども触れましたように、第一は、国際の平和と安全の維持を一番大きな目的にしているのがこの国連ではないだろうか。その国連の平和維持機能が果たされているだろうか、あるいは世界じゅうの人たちがどういう点にさらに期待を持っているだろうかという点を掘り下げて、過去の反省の上に立ち、さらに将来の動向を踏まえて考える必要がある。そういう点から、安保理事会及び総会のあり方、そして従来現行の総会と安保理事会の関係、両機関の関係のあり方を再検討する必要があるということが一つ大きな中心の課題であると思います。
 それから、先ほども申しましたように、経済社会開発という面は、国連としてもこれは時代の流れに沿うて非常に大きな問題であるべきはずである。で、その点について、国連の諸機関を総合的にそのあり方を再検討して、各種の機関の事業を調整したり、また、個々の機関のあり方についてそのあるべき姿というものについて建設的に考え直すことが有意義であると、こういうふうに信ずるわけでございます。そういう面において、先ほど申しましたように、第二の柱はそういう点に主力を置いていくべきではないか。
 それからさらに、そういった点をも考えながら、国連憲章というものを見直してみれば、旧敵国条項といわれているものや信託統治理事会というような、国連二十五年の歴史に照らしてももう不必要になったものというようなものが相当ある。あるいは敵国条項などは、これは御議論がいろいろあるところでございますが、私は、旧敵国条項というものが国連憲章の上に残っていることが現在日本の国益にとって実害を与えているとは思いません。日本がすでに国連に加盟している以上は、条理上も、敵国条項によって日本が不利をこうむるとかあるいは不測の圧迫を受けるとかいうことからは解除されておりますから、実害というものはないと思いますけれども、しかし、少なくとも、俗なことばで言って、愉快なことではない。国連憲章に手をつける場合、当然こういうものは整理してしかるべきではないのか、これが第三のいわば柱に当然取り上げてしかるべきではないかと思います。
 いま第二にあげた社会開発等の問題について申しますならば、現在の経済社会理事会あるいは国連貿易開発会議、国連開発計画、国連工業開発機構その他いろいろの機構がある。これらの点について、先ほどから指摘しましたように、総合的に再編成するということが私は必要じゃないか、こういうふうに考えております。そういったような考え方のもとに、これも先ほど抽象的には申しましたけれども、具体的な構想というものは相当に研究を進めておるわけでございます。それらの点について、まだ未熟な点や練れない点がたくさんございますし、私ども、あまりこまかい未熟なところまで申し上げることはひとりよがりになりまして、国連の中でどういうふうに進めていくかということも考えていかなければ、ただ、これはひとりよがりの作文に堕するおそれがございますから、もう少し成り行きともあわせて検討してから具体的な問題を提起しても決しておそくはない。要するに、考え方の基本が、いま申しましたそういうところにあるということを明確にしておきたいと、かように考えておるわけでございます。
 それからその次に、国連に、特に安保理事会に対するアプローチの問題で、私は、そのいまの段階では、あるいは私見が入るかもしれませんけれども、そういうアプローチをするなら、おまえらは義務を何を考えているのだ、義務として国連に対する軍事協力ということを考えているのであろう、こういうふうな想像や議論がなされるのは、私としては、ちょっと私の発想と非常に食い違いがあると思います。現在でも国連の憲章においては、なるほど常任理事国は軍事参謀委員会、これのメンバーになるということにはなっておりますけれども、兵力の提供は義務づけられてはおりません。これは現状の姿ですけれども、日本が国連の中で大いに働かせてもらいたいと、日本の国際的責任を大いに完遂しよう、こういう意味は、日本が平和憲法を持っておって、ユニークな国づくりに現にこうして邁進しているではないか、この精神の上に立って、日本らしい協力のやり方については私はまだまだやるべくしてやらないことが現在だって相当あるわけです。これは軍事的な問題を私は全然考えておりません。日本は徴兵をしない、あるいは海外派兵をしないということがまず大前提になっておるわけですから、その考え方の中で、たとえば、国連に対する分担金の問題は、いま五大常任理事国のすぐ次で、常任以外では第一になっているけれども、これはもう当然のことで、今度改正されれば、おそらく常任理事国の中のあるものよりはもっと上位になるでしょう。しかし、そんなことじゃなくて、他のいろいろの機構あるいは国連の仕事に対して、たとえば財政的な寄与などは全くおさびしいものでございます。これで現在国連の協力とか国連機能の改善とか言うのにはまことにおさびしいものである。まずそういう点に、現に残されている日本として当然やるべき国際協力の面があるのではないか、そういうところを改善していくということは、日本の最も堅実な着実な、また果たさなければならない義務である。こういうところから入っていきたいわけです。現に、今回御審議を願っている予算の上でも、ほんのわずかではありますけれども、従来より国連協力の実をあげているものもございますけれども、こういう点をやっていくのであって、一足飛ぴに国連の中の機構を強化し、日本が積極的に参加したいという意欲を表明する。日本の中から、政府は軍事協力を考えているのじゃないか、こういうふうに考えるのは、現状あるいは従来からの考え方の中に入れてもらおうという考え方であって、それならば、そういうことを私は提案したりあるいはそういう運動をしないほうがましだと思います、率直に申しまして。私どもの考え方はそうではないというところに発想のもとがあるのであって、そういう面に対して建設的な御意見を国民的に大いに出していただきたいものだと考えます。たとえば国連大学、これは正式には国連側では国際大学と言っておるわけですけれども、国際大学を日本につくりたいというようなことなどはたいへんけっこうな構想の一つだと思います。こういうような面のことがもっと国内的にも取り上げられてしかるべきじゃないか。要するに私がお答えしたいのは、そういう気持ちで国連に対する協力とかあるいは機能の強化ということを訴えつつあるというのが現在の政府の立場である、こういうことをひとつ御認識いただきたいと思います。
#53
○森元治郎君 大臣の御答弁の中で、敵国条項は実害はないと二度ほどおっしゃられたのですが、ときによって眠けざましで動きだすようなものはやはりすみやかに取っておいたほうがよろしいと思うので、実害はないが少し消極的過ぎると、向こうはち巻きで汗流していくほどではないけれども、ただメンバーシップを持っているからあたっていいのだということは、ときによってある国につつき出されるおそれは十分あるので、これはやはりすみやかに取ったほうがいいという御答弁のほうが聞いていて気持ちがいいのですが、いかがですか。
#54
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、あったほうがいいなんていうことは決して申し上げておりません。
#55
○森元治郎君 いや、そうは言わない。実害はないと言うから……。
#56
○国務大臣(愛知揆一君) これはまた条約論になるわけですね。第五十二条と百七条とをどういうふうに読むべきであるか。極端な条約論から言いますと、通説とはほど遠い非常にまれな議論だとは思いますけれども、読みようによっては、旧敵国である日本に対しては加盟国が制裁を加えることができる、安保理事会の決議を経なくともそういうことができるのだと読めるのではないかという意見すらあるくらいですから、こういう議論が起こり得るようなものは、あるいは実害があると言ってもいいでしょうから、私はないほうがいい。それからもう一つは、さっき私は三本の柱を立てて御答弁いたしたわけですけれども、総会と安保理事会のあり方あるいはその相関関係というようなことになってくると、何といってもその国連の場におけるあるいは米ソの対立であるとか超大国の利害関係というものがからまってきて、なかなか問題は取り上げにくい面もあるけれども、旧敵国条項などということは、国際的な世論に訴えて、あるいはそこに感情論も入るかもしれませんけれども、憲章改正問題としてはきわめて常識的に取り上げやすい問題だと私は思うのです。ですから、憲章改正の問題としましても、旧敵国条項の廃止というようなことは、だれもが反対のできない問題ではないか。そういう意味で、こういうものは可能性ということから言いますと、全体の機構の改正ということよりは、実現の可能性がずっと大きいと見通してもいいのではないかということも含めて、いま御注意がありましたけれども、この廃止ということについては大いに努力を続ける、こういうふうに考えていただきたいと思います。
#57
○西村関一君 私の質問に対する大臣の御答弁は、おおむねわが意を得たと申しますか、私がただしたいと思っておりました点を大臣の口からお述べになったことでございまして、わが国が国連に協力し得るところの道は、軍事力を差し出して自衛隊を派遣するというようなことではなくて、むしろ経済技術開発の面でありますとか、あるいは、日本でなければできないような――平和憲法を持っている日本としてふさわしいような協力を国連に対して行なうべきであるというようなことで、そういう立場に立って政府を鞭撻してほしい。たとえば、いうところの国連大学に対する日本からの発言というものを支持してもらいたいというような御答弁がございましたが、これはこの委員会においても、私から申し上げたことであり、国連大学の構想については、わが社会党におきましては、中央執行委員会の決定によりまして、すでに具体的な構想を出しているのでございます。これに対しましては、総理も、大蔵大臣も、外務大臣も、どの党が出したとかどの党のイニシアチブであるとかということではなしに、そういう考え方で国連に臨んでいく、協力していくということは賛成である、むしろそういうふうにあらねばならないというような御答弁が予算委員会、外務委員会その他においてなされたわけでございます。またさらに、われわれといたしましては、いま大臣の御答弁の中にも出ておりましたように、平和的な立場に立って国連に協力していくためには、平和共栄隊と言っておりますが、そういうものを国内で組織して、軍事力ではなくて、あるいは災害の復旧でありますとか、あるいは紛争処理のために非軍事的な協力でありますとか、あるいは開発途上国に対するところの諸開発の協力でありますとかというようなことに当たらしめる、国連の指導と指揮のもとに。そういう任務を持ったところの平和共栄隊というものを国連に出すべきではないかというような見解も、われわれの党といたしましては、社会党といたしましては、具体的に出しているのです。そういうことは大会の決定でもあり、社会党は何でも反対する政党だということでなしに、国連に対して、平和憲法下にあってわが国がどのような貢献をし得るかということに対する具体的な方策を打ち出しておるのであります。また、先ほど私が指摘いたしました、鶴岡大使が示唆された国際災害救助隊というようなものをわが国で創設するということも、これは私は一つの案である、一つの考えである、アイデアであるというふうにも思うのでありまして、その他、これは与野党ともに英知をしぼって、国連に対する非軍事的な協力を行なうためにはどういうことをすべきであるか。日本としては他の国ではできない、日本にふさわしい協力を国連にすることができるかということについては、これは与党とか野党とかいう立場を離れて、英知を集めてこれは検討し、政府を鞭撻していかなければならぬと思うのでございます。そこで、私はさらにお伺いをいたしたいと思うんでございますが、国連憲章の四十三条に、各国の軍隊を供出して国連軍をつくるという、項目がございますが、いまだかつてこれが行なわれたことがない、空文の状態にあることは御承知のとおりでございます。いままでの国連軍、国連警察隊と称するものは、憲章には何らの規定がなく、事務総長の責任においてそのつどやっていることでございます。たとえば、スエズ動乱に対しましては、国連緊急軍、いわゆるイマージェンシー・アーミーというものが出されておりますし、コンゴ、キプロス、レバノンに対しましては国連監視団というものが出されております。そういうような情勢でございますが、また他の国、たとえば北欧諸国あるいはカナダなどが打ち出しておりますところの、また実行しておりますところの、国連自体が募集をして個々人がこれに志願をするという方式で国連に警察部隊を編成する、これはあくまでも軍事力じゃなくて警察部隊である、警察力である。現にキプロスの国連監視団の中には、ニュージーランドは文字どおり警察を出しておるという事例もあるわけでございまして、そういうような形の考え方もある。それはいわゆるスタンドバイ・フォースといわれておる形式でございますが、こういう点につきまして政府はどのようにお考えになっていらっしゃるか。前段に申しました点と関連をいたしまして、そういうような問題に対して全然考えてないと言うならそれもけっこうでございますけれども、そういうような考え方も、世界の諸国においてはそういう考え方もあるということを私が指摘するまでもなく、外務当局は十分に検討しておられる点だと思いますけれども、そういう点に対しまして、どういうふうにお考えでございましょうか。
#58
○国務大臣(愛知揆一君) この種類の問題については、いまもいろいろと御説を拝聴いたしましたが、私から御説明するまでもないと思いまするけれども、一言に国連軍あるいは監視団あるいは緊急軍あるいはスタンドバイ・フォーセズ、いろいろのことばがあり、いろいろの組織ができたり考えられたりしていることはよく承知しておりますが、私は、ともかくこういった種類の部隊をつくって協力をするのだというようなことについては、少なくとも私は反対でございます。考えたくありません。現行の憲法はもちろんですが、現在のあります法令の範囲内でこれはやれることは考えられるかもしれませんけれども、そういったことも含めて私はやりたくありません。
#59
○西村関一君 私の伺っておりまするのも、自衛隊とは別個にそういう部隊をつくって、これを国連に供出するという意味じゃなくて、国連が発議しまして、国連が計画を立てまして募集する、そういうものに対して、スタンドバイ・フォーセズの考え方とは若干違いまして、国連自体のイニシアチブにおいてそういうものに志願していく。国民がそれぞれの立場に立って、それぞれの考えによって、その目的に応じた働きに対して自分を投げ出していく。そういう訴えに対してこたえていく。そういう考え方もあるわけなんで、そういうようなことに対しまして、これはしかしやはりそういう考え方もあるということを検討していただきたいと思うのでございます。私の伺っておりますのは、日本で自衛隊とは別個な部隊をつくって、あるいは自衛隊からひとつそれを割愛して、自衛隊の管轄外においてそういうものをつくって、訓練して国連に供出するということは、これは私は問題だと、私どもも大臣が申されるまでもなく、われわれも賛成しかねるところでございますが、しかし問題は、平和憲法下にあるわが国として、独自の立場に立って、国連の平和維持機能をどのように評価し得るか、それに対してどのように協力ができるかという点にあると思うのでございます。また、大臣が申されましたように、開発途上国に対するところの経済技術援助の問題でありますとか、あるいは国連の関係諸機構に対する積極的な参加、協力でありますとかというようなことはもちろんでございますが、いま私の申し述べたようなこういう問題に対して軍事的な協力をするということに対しては、大臣も強くおっしゃられましたが、われわれもかねがねそういう形の協力をすることは間違いだということを主張いたしておりますように、また、国連それ自身のあり方としてもそういう考え方が出てまいりますことは、国連の真の姿を乱すと言いましょうか、変えると申しますか、という点でありまして、そういう点は私は問題があると思うのでございますが、大臣の先ほど来述べておられます国連に対するわが政府の協力の姿勢、見解というものにつきましては、私は大筋の御方針としてはうなずくのでございまして、ただ、世界の国々にはいろいろな考え方がある。いま私の申し上げましたような、志願制度による、しかも平和維持部隊として、これは軍事力を主体とするんじゃなくて、建設あるいは開発を主体とするところの部隊に自発的に志願するというような考え方もあっていいんじゃないかというふうに思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。
#60
○国務大臣(愛知揆一君) どうも、率直にお答えをしたいと思いますけれども、いま現状では国連がそういう計画をしているとも思えませんし、近くそういうふうな組織をつくるために各国の人たちに呼びかけるということがそう簡単にできるとも思いません。それから、平和建設とかなんとかいう目的に限定すれば、あるいはそういうことは将来考えられるかもしれませんけれども、いまお話しの要点は、軍事的協力あるいは警察軍と呼ばれるような、あるいは監視団と呼ばれるような名のもとにおける協力ということからお話がだんだん出てきたんでありますから、そういう種類の組織、名前は何であろうとも、これは場合によりましては私は非常に危険だと思います。ですから、そういう場合に個人として参加するなら応募してよろしいではないかということに軽々に賛意を表するわけに私はまいらないと思います。
#61
○西村関一君 私に与えられている時間が参りましたから、この問題に対しましてなおもう少し掘り下げて伺いたいし、他の問題も残っておりますけれども、一応質問を保留いたしまして、きょうはこの程度で終わります。
#62
○石原慎太郎君 大臣にお伺いいたしますが、一部予算委員会での質疑応答に重複する部分があるかと思いますけれども、御了承願いたいと思います。
 日本航空機のハイジャック事件によって実は問題の本質的な重要性がいささか相殺されたうらみがあります。ソビエトの空海軍による日本近海の演習の問題についてお尋ねしたいと思いますが、大体の推移を見ておりますと、事件がほとんど突発的に起こり、しかも、何らの公式の通知を受けることなく、これが起こった。日本の外務省がソビエトに大使を通じて抗議をし、その効果があったかどうか、とにかく演習が突然また全面的に中止をされた、そういう経緯をたどったわけでありますが、外務省として正式な抗議というものの事務的な経緯と、それに対してソビエトが演習を全面的に中止した、その中止というものがどういう形で日本に通達されたかということについてでありますが、どうも一方的に始まり、一方的に終わって、外務省の正式な抗議というものが、形としてはややから振りといいますか、そういった形で終わったという印象はいなめないのですが、その点いかがでございますか。
#63
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまもお話がございましたように、これはハイジャック事件の突発によりましてこの問題の起承転結が少しぼやけている傾きがございます。政府とこの問題についてのソ連側との交渉、それからその終末でございますけれども、当方からの抗議といいますか申し入れば三月二十七日でしたか、あるいは日付が間違っておりましたらあとで訂正いたしますが、これは私が駐日ソ連大使を招致して口上書を渡すと同時に、口上書には重点的なことだけ書きまして、口頭でこれを補って、口頭で補足いたしましたことも、全部本国政府に即時申し入れ伝達をして中止を求めたわけです。これに対しまして、途中の経過はいろいろございましたけれども、最初問題となる四水域、それから特にその中でわがほうとして最も重点を置きましたのが土佐沖と能登沖でございますが、最初に土佐沖の中止が水路通報によって公表され、それから次いで、それだけではこちらは満足できないので、中間的にも接触をいたしましたが、三月三十一日、ソビエト連邦政府としては正式に本邦周辺日本水域における爆撃演習計画を中止する旨を本国政府の名において駐ソ中川大使に対しまして回答をいたしてまいりました。それで終結をいたしたわけでございます。これが終結するに至りますまでの正式の交渉のてんまつでございます。
#64
○石原慎太郎君 実は私も同志の国会議員数人と、私たちの組織の名でソビエト大使館へ抗議に参りまして、大使がおりませんので、参事官と一時間ほどかなり激しい応酬をしましたのですが、そのときに、日にちが三十日でございまして、次の翌日三十一日に全面的な撤回という形になったわけですが、どうもその限りでは、参事官も本国から何らの訓令を受けていずに、土佐沖は中止をしたが、能登半島沖の演習に関しては全くその予測を持たない形で、彼らの言い分は、ともかく公海であるから、それがどのような近距離にあろうと公海は公海であると、非常に一方的な注釈をしておりました。私も、共産主義大国のエゴイズムという形で抗議をして、そのことばは非常に不愉快であるというふうな返答をもらい、またわれわれとしては、そういったことばの表現以上に、こういった演習を実際に行なわれて被害を受ける側の日本としてははるかに不愉快であるという応酬をいたしましたか、外務省が日本に非常に大きな打撃を与え得るこの演習を中止するようにソビエトに抗議をした際に、アメリカ側と何らかの連絡があったかどうか、こういった外交交渉について、アメリカに何らかの形で、さらに問題が緊迫いたしたときにアメリカが日本の立場を弁護する、そういった態度をとるべくアメリカ側に何らかの要請をされましたかどうか、お伺いしたいと思います。
#65
○国務大臣(愛知揆一君) アメリカ側に対しては、本件については、この三十一日に一応落着するまでの間何もいたしておりません。それからなお、先ほど申しましたが、三月三十一日のソビエト連邦政府としての正式の回答の中では、ソ連としては、公海に危険水域を公示するということは国際慣例に――現行の国際慣習と矛盾するものではないと思うという、そういう一項が入っておりますことと、それから、かくのごとく何月何日にとりあえずどこを廃止し、何月何日にどこを中止したということが書いてございますが、そのほかに、こうした変更を加えるにあたっては日本側の申し入れと日ソ善隣関係を発展させることの利益を考慮してかくかくの措置を講じたということも、同時に、向こうの回答の中に入っておるわけであります。
#66
○石原慎太郎君 私はあの演習というのは非常に大きないろいろな意味を持っていたと思いますが、あれが、ああいう早い時期に計画撤回という形でなしに、もっと時期が切迫してくる、あるいは一部演習が行なわれるといった場合に、日本側から、日米安保体制というものをテストするといいますか、一種の踏み絵としてためす大きな機会でもあったと思います。幸いそういった事態にならず済んだ――これは幸か不幸かわかりませんが、ああいう形で落着したわけでありますけれども、いずれにしても非常に突発的に非常に重要な計画が一方的に発表されてまた一方的に収拾した。これが一体何の意図で行なわれたかということは非常に意見があると思いますけれども、外務省として、あのソビエトの演習計画というものが、その発表から撤回までの推移を見て、つまり、何の意図でなされたかという判断をお持ちでしょうか。
#67
○国務大臣(愛知揆一君) その直接のお答えにならぬかと思いますが、ただいまも申しましたように、ソ連側としては、公海条約の原則に従って、公海の上においてこういったような危険水域を設定することは国際慣行には違反しないと思うという立場をとっているわけでございますね。それに対して、口上書にも盛りましたこちらの主張の根拠というのは、公海の自由ということはこれは国際条約上認められている原則ではあるけれども、その公海条約それ自体の中で、沿岸国、非沿岸国を問わず、適正な利益に対しては適当な考慮が払われなければならない、つまり、公海の自由ということにもある種の制限があるんだということが書いてある。そして、これが一挙に、一時に土佐沖、能登沖というようなところで行なわれるというようなことは、公海の自由についての適正な考慮が払われていない証拠であると日本政府としては思わざるを得ないので、中止、撤回を要求するというのがこちらの主張であったわけであります。したがって、そういったものの見方等につきましては、向こうが撤回したのですから、そうはいうものの、これは適正な考慮を払うほうが、中止するほうがベターだと、先ほども申しましたように、日ソ国交上の利益という親善関係増進のために意義のあることとして中止をしたというのでございますから、その辺の考え方については、わがほうの主張を受け入れたもの、かように私は考えておるわけでございます。
 それから、何ゆえにこういう時期においてこういうことをやったのかということについては、いろいろの見方がございましょうけれども、ただいまの段階におきましては、まあこちらの要求に対してすみやかにこれに応じてくれたわけでございますから、それはそれといたしまして、なお今後の状況をよく見守っていきたい、こういうふうに考えております。まあ、私の受けた印象としては、今回ノビコフ副首相の一行が来日いたしましたときの感触から見ましても、こうしたことについては、日ソ親善関係ということからいって大いにソ連としても注意深くしなければならないということは、強く彼らとしても印象を深くしたのではないかと、こういう印象を受けておるわけでございます。
#68
○石原慎太郎君 日本政府がソビエトに対して抗議をしたその言い分というものは、これは国際的な常識というもので十分考えられるわけでありまして、こういったものを、日本政府の抗議を受けてから彼らが教えられるということは、実際考えられない。当然知っているべきことを承知であえてこういった計画を発表し、そして日本の政府の抗議を踏まえてこれを撤回した。まあ、元手をかけずにソビエトが外交の上で日本の心証をかせいだということが一番常識的に見られるわけでありますけれども、いずれにしても、単純といいますか露骨というか、非常に原始的な外交のタクティックスであると言わざるを得ないのでありますけれども、そのあとモスクワで行なわれました赤城・イシコフ会談に――その会談の詳しい内容はつまびらかにされておりませんが――このソビエトの日本近海における演習の撤回というものが、何らかの形で、条件なり、いわゆる条件の一つのてこなり支点として持ち出された事実があるかどうか。お伺いしたいと思います。
#69
○国務大臣(愛知揆一君) これは、ただいまも申しましたように、ソ連側が非常に高度の政治判断からこういうことをやったのか、あるいは担当の人たちがケアレスにこういう計画をしたのか、そういうことはなかなかこれは判断に苦しむところであります。同時に、先ほども申しましたように、今日の段階で、これに対して、推定をもとにした観測やコメントを政府としてすることは差し控えるべきだと思いますけれども、ただ、私が率直に今度は日本に与えた影響というものを考えれば、むしろ私は、こういうことが行なわれるのだということに対しては、日本の国民の中では相当これを重大な事柄として受け取ったと感じておるわけであります。むしろ、日本のこうした種類の問題について、少し日本国民としても、広く言えば国際情勢の推移といいますか、こういう問題に対しての認識をゆり動かされたという効果は私は日本国内にあるのじゃないか。そういう点で、むしろ日本側の今後に処する上において一つの大きな参考資料にする必要があると、こういうふうにとらえてしかるべきじゃないか。私は、個人的な感じをあわせて申し上げますと、そういうふうに受け取ってしかるべきじゃないかと思います。
#70
○石原慎太郎君 大臣のおっしゃるとおりでありますけれども、どうも政府なりあるいは与党、こういったものに強い反感を持ち抗議をした人たちが、この問題を、大臣が言われたような形でとらえて、日本人の新しい正当なる防衛意識の造形というような形にこれを積極的に役立てるといいますか、そういった啓蒙のてこにしていないようなうらみがあると思うのです。私は、将来、日本あるいはソビエト、アメリカをめぐる国際関係、あるいはその他の国をめぐる国際関係の条件いかんによっては、ソビエトがこういった演習を実際に行なう可能性が十分あるという気がいたします。実際に、中共封じ込めの世界戦略というものの一環として、地中海あるいはインド洋で画期的な演習というものを行なってきておるわけでありますし、そういった軍事的などうかつというものをてこにした世界的政略というものははっきりしたソビエトの意思としてあるわけでありますが、将来、これは一つの仮定論でありますけれども、あるいはその仮定というものに政府が軽率に意見を述べられることもいろいろ問題があるかと思いますけれども、実際に将来に演習が行なわれたとき、あるいは行なわれる可能性が非常に強くなったとき、そしてその演習が今回のような計画のもとに日本の非常に大きな打撃を与え得るときに、私たちは、国土の、国家の防衛というものに関して一応日米安保体制というものをとっているわけてありますが、そういったものにのっとって、アメリカが、日本のこの種々こうむる打撃というものを防ぐために、直接の発動ではないにしても、安保にのっとった一つの積極的な意思表示というものをすべきだと思いますし、また、そういった意思の発動というものを日本が要請すべきだと思いますが、政府にそういう意思がおありかどうか。また政府は、それを要請したときにアメリカが動く可能性があるかどうか、それについていかがお考えでいらっしゃいますか。
#71
○国務大臣(愛知揆一君) これは今回のこの演習の問題について、そして特に一部においても行なわないで全部が中止になったというような経緯から申しましても、これを日本が安保条約上の問題としてアメリカに持ち出すとか、アメリカの反響を政府として特にアメリカに求めるということは私は行き過ぎのことではないかと思います。また、そういう措置をとりませんでしたことは先ほど申し上げたとおりですが、今後も、本件に関する限りはそういったことはやらない、あるいはもっと積極的に、やるべきでないと、こういう態度がしかるべき態度ではないかと思います。
#72
○石原慎太郎君 そのお答えに対して私はいささか異論があるのですが、たとえば、さきの日米共同コミュニケでうたわれました朝鮮半島における緊張、日米安保体制にとってそれが非常に大きなモメントになり得るという認識に比べれば、つまり、朝鮮半島をはさむ、もっと物理的に地理的に近いところで、これはまさしく直接――直接に近い間接で、朝鮮における緊張以上に私たちの生活に実害を与え得る事態が発生するわけでありますから、安保が朝鮮半島の緊張に対して発動する可能性があるのに、日本近海において起こったもっと直接的に被害を与え得る緊張の事態について原則的に基本的に安保を発動させないというお考えがちょっと私おかしいと思うのです。私はむしろ朝鮮半島の緊張もそうでありますが、これから考えれら得るこうした演習に対して、たとえ演習であろうと、それがはっきりした実害を与え得る限り、日米安保体制にのっとって日米が共同でこれに対して強い姿勢を示す必要が絶対にあるし、政府はそうした要請を安保協定を結んでいるアメリカに対して要請すべきだと思います。私がソビエトで会いましたジャーナリズム関係の要人、あるいは外務省関係の要人と打ち割って話をすると、安保条約というものを非常に評価していない。私はNPTにも反対でありますし、日本の核問題について決して私自身の意見を強く言ったことはありませんが、幾つかの事例を並べたサゼスチョンはしたつもりですけれども、そういったものを非常に向こうの人間が強く非難して、私がそれに反論しましたときに、それならばこれは個人的な意見であるが、安保条約ならばいいではないかということを数人の人間が個人的な意見として申しました。私はそこにソビエトの首脳が日米安保というものに対して持っているほんとうの価値観というものがあらわれていると思う。私は、ある意味で、今回の演習が行なわれることが望ましくはなかったのですが、非常に日本の安全保障防衛の問題について非常に大きなてこになり得たという気がいたします。それは、演習がさらに近づきあるいは一部で行なわれたときに日本の世論はわくでしょうし、その緊張自体が日米安保の一種の踏み絵になったという気がいたします。そしておそらくアメリカは、相手がソビエトである限り、決してこれに対して強い形で臨まなかったのではないかという気がいたします。それならば安保条約をわざわざわれわれがかまえる必要はないわけでありまして、説明が長くなりますが、アメリカで私はSACあるいはNORADというものを見まして、その機能からいって、日本人の中で、特に政治の立場では自民党、安保を評価している人間たちの、アメリカの核のかさの抑止力、おもにそういったものを通じての抑止力というものに対する期待がほとんど間違いであるという認識を非常に持ってまいりました。アメリカの核戦略というものの機能は、これはSACにしてもNORADにしても、これは全くアメリカと、アメリカが仮想敵国視しているソビエトあるいは中国の間に介在するアメリカの友好国に対して働かない。これは明らかなことでありますが、それらが何となくあいまいに、なれ合い的に評価されたような形になって、日米安保に限らず、ほかのアジア諸国の安保体制ができ上がっている。その安保体制のひよわさというものをソビエトは十分承知しているわけでありまして、私は今度のソビエトの演習の計画というものは、むしろそういった有名無実の、実質的に内側から崩壊している安保体制というものを日本人に再評価させる一つの挙であったのかという憶測を持ちましたが、そこまで行かずにこういったものが撤回されたわけでありますけれども、私は共同コミュニケにあれだけのことをうたわれた以上、物理的実害のはるかに多いこういった演習がもし実現されたときには、政府としてははっきりと日米安保にのっとって、アメリカをインヴォルヴした形で、こういった日本の防衛の姿勢を示すべきだと思いますが、それについて、やはり先ほどと同じようなお考えでいらっしゃいますか、もう一度お伺いしたいと思います。
#73
○国務大臣(愛知揆一君) 私は今回の演習の問題に限定してお答えをしているわけで、今回の演習は中止された。これがかりに中止されなかったり、それから、その演習の度合いとか激しさとかいうようなことが日本の独立安全というようなものに対して非常な脅威を与えるようなものに発展していたかどうかということになると、これは仮定の問題でございますが、そういう場合が起こればまた起こったときの状況によって、日米安保条約に限らず、日本としての主体的な立場でそれに対処する方策はおのずからあったろうかと考えるわけですけれども、日米安保条約を持ち出すまでもなく、日本の外交といいますか、ディプロマティック・チャンネルを通すわがほうの正当な合理的な主張がそのまま貫徹されたわけでありますから、その過程において、あるいは結果において、日米安保条約を持ち出すというようなことは、私としては、これは日米安保条約の性格その他からいいましても適当な考え方ではない、私としてはそういうように考えるわけであります。
#74
○石原慎太郎君 仮定というものをはずして、過去に起こった事件についてのみ大臣がおっしゃる形は、その限りで了解いたしました。これは質問でなしに、実際にソビエトの世界制覇、世界侵略の形から見て、私は先ほど申しましたように、こういった演習計画を再び蒸し返される。実際に、さきの計画とは違いますが、やはり日本の漁業の操業というものに直接関係のある、いささか遠い公海において、ソビエトが日本の迷惑、被害というものの上で演習を多々行なっているわけでありますし、こういったものがこれから先もっと大きな打撃を与える形で行なわれる可能性があると、私はそう思いますので、そのためにも、やはりそういったケースに日米安保というものを発動し得るのだという一つの姿勢、あるいは暗示というものをはっきりと私はこの機会に何らかの形でソビエトに対して与えておくほうが、将来起こり得るそういったできごとを未然に牽制する意味があるんじゃないかという気がいたします。
 その問題からはずれまして、二、三他の問題についてお聞きしたいと思いますが、政府はすでに調印いたしました核散防条約、前回も二、三質問いたしましたけれども、その後時間の推移があるわけでありますが、まあ問題になっております査察の形、内容について、一番こういったものに国益をかけて関係のあり得る日本なりあるいは西ドイツ、こういった国がどのようなフォームを考ええているか、また、それをいつまでにはっきりした形であらわそうとしているか。すでに外務省に、科学技術庁なり、あるいはその他の専門的な分野の機関との連携の上でそういった附帯の事項についての何かの原案がおありかどうか、お尋ねしたいと思います。
#75
○国務大臣(愛知揆一君) 核防条約につきましては、今後の進め方については、まあ大きく分ければ、前々から申しておりましたように、二つの問題があると思います。
 一つは、その核大国の核軍縮等についてのかまえ方、進め方、これの推移を見、そして非核保有国に対する安全保障というような問題がどういうふうにこれから考えられ、進められるかという問題が一つあります。これはなかなか政治的な高度の判断を要する問題ではないかと思いますし、まだその判断を下すべき時期ではないように思います。
 それからもう一つは、非常に具体的な問題で、平和利用についての査察の問題、このほうは、これは日本としての直接の努力の対象になる問題でもありますし、相当具体的な問題でもありますので、これについては、公平の原則の上に立って日本が、よく申しますように、たとえばユーラトム諸国と実質上平等の待遇を与えられなければならないという点を根拠にした日本の主張がどういうふうに具体化されるかということについて、いますでに努力を始めているわけです。
 それから、その後IAEA等についても若干の進め方が見とられますので、その現在までの経過、事実関係等については国連局長からとりあえずお答えすることにし、なおもっとより専門的な点につきましては、あるいは科学技術庁のほうから御説明したほうがよろしいかと思います。
#76
○政府委員(西堀正弘君) いま大臣から申されましたように、実際上の問題といたしまして、批准を進めるというときには、この保障措置協定等といったものの内容がどうなっておるかということは、われわれとして内容を十分に考慮しなければならない点でございますので、どのような保障措置協定をIAEAとの間に結ぶかということについては、われわれとしては最も重要視しておる問題でございます。で、御承知のように、IAEAにおきましては、この四月の初めにこの保障措置協定の特別委員会――保障措置協定委員会というものが設置されまして、したがいまして、これが今後各国とIAEAが結ぶことになります保障措置協定、これについての基本的な考え方というものは、この委員会できめられていくわけでございます。目下のところ、大体六月の初めころまでにこのIAEAの事務局のほうがこの保障措置協定の基本的な考え方、IAEAとしての保障措置の基本的な考え方を、各加盟国にと申しますか、この非拡散条約へのサインをしあれをした国に提出することになっておりますけれども、それをわれわれ見まして、そうしてそれに対する――もちろん見解はそれまでもわれわれは非公式にはやっておりますけれども――見解を提出する。そうしてその基本的な考え方に基づきましてIAEAでは各国とこの保障協定の締結交渉をすることになるわけでございます。で、まあおそらくその協定の締結交渉か始まりますのは、ぎりぎりの――と申しますのは、これは三月五日に効力を発生いたしましたので、それから百八十日以内ということになっておりますので、それは八月三十一日になりますが、したがいまして八月三十一日ぎりぎりのころに、おそらくこのIAEA事務局とそれから各国との協定締結交渉が始まることになるとわれわれは考えております。それで、まずこのIAEAといたしましては、核不拡散条約の原締約国になった国――まあ四十数カ国ございますけれども、これとの交渉をまず優先的に行なうことになると思います。したがいまして、おそらくは日本、それからまたユーラトムもそうでございますけれども、及びスイスといった国々との交渉はおそらくその後になるのじゃないか。これはまあIAEAの事務局の能力から考えましても、原締約国のほうがまず優先されて、その後に日本との協定交渉ということになるのじゃないかと思います。
 もちろん、協定のと申しますか、条約の規定上は、日本としていま直ちに保障措置協定の交渉に入らなければならないという義務はないのでございますけれども、ユーラトムもそうでございますし、スイスもそうでございますが、日本はこの保障措置協定の内容に非常に重要度を置いておりますので、その実質的な面において、大まかなところ、少なくとも実質的内容が煮詰まっていないと、これは日本政府の声明においても明らかにいたしましたように、批准できないという立場でございますが、そのわれわれの批准を待たずに、それ以前に日本のこれに対する考え方――この考え方につきましては、いま大臣が申されましたように、保障措置の有効性でありますとか平等性でありますとか、それから国内の管理制度のできるだけの活用といった点をわが国の立場といたしまして強力に申し、そうして現実にはこれらの国々と並行して非公式な協定交渉はやっていきたいと、こう考えております。
#77
○石原慎太郎君 いま、非公式にはすでに会合があり、まあ幾ばくの話し合いが行なわれているというようなことをおっしゃいましたが、特にどういう点に力点を置いてその準備というものが進められているのですか。
 それから私は、八月という一つのタイム・リミットというものに対して、時間が決して十分にあるとは考えられませんし、日本がいま持っている技術のポテンシャルあるいはそれにからまった日本の国益、あるいは将来持つであろう日本の技術の開発の可能性、そしてまた、それが開発する国益というものを十二分に守る形での保障措置の協定というものをつくる必要が絶対にあると思いますし、そのためには、もうすでに相当の準備が進んでいても決して十分という気はいたしませんが、その非公式の会合の中で、先ほど申しましたように、どのような点に特に力点を置いて論議が行なわれているか、できましたらお答えいただきたいと思います。
#78
○政府委員(西堀正弘君) わが国の基本的な方針としては、先ほど大臣が申されましたように、各国との平等性の確保と申しますか、しいて言いますならば、ユーラトム諸国がIAEAと結ぶであろうところの協定と比較して実質的に不利でないということが基本方針でございますけれども、それともう一つは、IAEAの査察を受けるために日本の平和的な原子力の利用が阻害されるというようなことがあってはなりませんので、その査察の簡素化ということがまた一つの柱でございます。したがいまして、このIAEAの査察員が四六時中あるいはまたきわめてひんぱんにわが国の原子力の平和利用を査察するというようなことでは、これはやはり非常な損害を受けるわけでございますから、これをなるべく、できるだけ計器によるところの査察と申しますか、自動化あるいは機械化、こういった点を一つの非常に重要な点として要請しているわけでございます。要するに、核不拡散条約のもとにおきますところの査察と申しますのは、日本に入ってくる核燃料が兵器ないしは核爆発のほうに向かないということを保障することでございますから、したがいまして、日本における核燃料の流れ、これの非常に重要な点において、要するに、兵器ないしは核爆発のほうにその核燃料が向かないことを確保すればいいわけでございますから、したがいまして、これをわれわれ統計的手法と言っているのでございますが、いま申しましたように、機械化ないし自動化によって核燃料の流れをチェックすればいいのではないか。もちろん、IAEAへ日本から出すところのデータをそのままサーティファイすると申しますか、認証するということは、この条約のたてまえからいいましても、できないと思います。少なくとも日本から出すところのデータの正確度でございますね、これが正確であるかどうかといったことをチェックする程度のIAEAの査察というものは、これは絶対に必要なんでございます。これは、いまのところはユーラトムあたりはユーラトム独自の査察でもって自分のデータをそのまま認めさせようというような要求をしておるようでございますけれども、これはIAEAとしては受け入れられない。これは条約の規定から申しましても、IAEAとしては独自の査察をもってそのデータが正確であるかどうかといったことは少なくともやらなければならない。したがいまして、その程度のことは受けなければならないのでございますが、いま申しましたように、できるだけ簡素化をする、こういう点、これが一つ。
 それからもう一つは、日本の国内における核燃料の流れを要するにチェックするわけでございますから、日本から出すところのデータ、これの信頼性と申しますか、これがはっきりしたものであるということをIAEAに信用させるという、そのためには日本におけるところの査察技術、これの開発ということを大いにひとつ科学技術庁その他のほうでやっていただかなければ、われわれのIAEAとの交渉、特にIAEAとよその国との間に結ばれますところの協定と比較しての平等性の確保という点からいいまして、わが国の国内におけるところの査察技術の開発、この点が非常に重要な問題であります。これは科学技術庁にわれわれとしても十分にひとつ開発に取り組む努力をしていただくようにお願いしておる次第でございます。
#79
○石原慎太郎君 時間がないので、あと一つだけ大事な問題をお聞きしたいと思います。
 実はもう少し技術的に具体的なことをお伺いしたかったんですが、時が進みましたらその時点で詳しくお聞きしたいと思いますけれども、最後に、この核散防条約に非常にかかわり合いのある問題でありますが、非常に現在の技術が核の面においても高度に進んだために、私たちはいろんな面で概念の修正というものをしいられていると思うのです。特に核兵器というものの拡散を防ぐということを目的にしているこの条約、その趣旨というものは、核兵器というものが、在来の核兵器というものは非常に有害である。もちろん、その放射する放射能によって非常に広範囲のかつ長期的な被害というものを人類に与えるがゆえにこういったものの拡散を防ぐ条約が講じられたのでありますが、実は核というもの、あるいは核兵器というものはもう非常に進歩して、このNPTというものがある意味でずれているということを証明する技術的水準を招来しておると思います。私は単に核兵器ということばでくくってしまった場合に、日本が将来日本の防衛の上で非常に大きな打撃を受ける可能性がこのNPTの中にあると思うのです。それはつまり、この間申しました耳にしても超ウラン元素の核兵器にしても、すでに開発され配備されておる武器も多々あるわけでありまして、そういったものが非常に有効な通常兵器と考えられ得る段階まで来ておる。つまり、破壊力だけはほかのナパームあるいはその程度の進んだ火器に比べてはるかにあるが、放射能の被害というものは非常に少ない武器がすでに開発されておるわけであります。将来こういったものに対する技術的なポテンシャルまでを一がいにくくってしまって抑制するということが、たとえてみれば、鉄砲をもって自国の防衛あるいは戦略を考えている国に弓矢で向かうにひとしいような防衛体制というものを日本にしいるような結果になるのではないかという気がいたしますけれども、そういった場合に、NPTにおける核兵器、核というものの概念修正をやはり日本が率先して行なっていただかないと、非常に複雑な情勢下にあるこの国の防衛というものが非常に阻喪を来たすのではないかという気がいたします。そうなれば、私がよく言っておることですが、NPTがノン・プロリファレーションではなくてノン・プロピシェーション――ざんげの代償なき条約になってしまうおそれが非常にあると思いますけれども、その点について、非常に先のようで実はほんとうに短い将来に迫っておる問題だと思いますので、大臣のお考えをお伺いして質問を終わります。
#80
○国務大臣(愛知揆一君) これはもう非常にある意味では次元の高い御意見であるし、また、時間的にも非常に長期の展望に立った御意見であると思います。そういう意味におきまして私は教えられるところが非常に大きいように思いますけれども、しかし、現時点において、現内閣としても非核三原則というものを大多数の国民の世論というかコンセンサスの上に立って政策の基本としておる立場から申しますれば、かねがねの日本的なものの考え方というものは、私は、この核防条約はいろいろの点で不十分ではあるけれども、しかし、考えておるところのフィロソフィーといいますか、それには相通ずるものがあるのではなかろうか、したがって、現在はやはり核武装というもの全般を一つの問題としてとらえて、そうしてこの核兵器が活用され殺戮の道具に使われることが制限されるように、拡散されないようにということを、何と申しますか、基本的な考え方として推進していくということに意味があるんじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけでありまして、そういう点からいっても、未来永劫この拡散防止条約が最善なものとも言えないし、また、現に指摘されている欠点以上のいろいろの発想の違い方を求められるような世の中があるいは来るかもしれない。それはそのときの問題として私は取り上げてしかるべきではないだろうかと、たいへん常識的なお答えかもしれませんけれども、私どもとしてはそういう考え方であります。ただ、先ほども言いましたように、具体的に言えば、この当面している批准という問題に対しては非常に慎重でなければならないし、それから、いつかも申しましたように、いま展開されておる米ソのSALT交渉、それからこれからの――これからというか、当面しておるいろいろの動きもよく掌握していかなければならない。具体的には平和利用の査察の問題にはっきりした保障を取りつけることだと思いますが、同時に、世界の流動している核を中心としての動きについても十分情勢を掌握していってこの批准問題というものに対処しなければならない、こういうふうに考えます。そのある点においては、石原さんの言われる点についても同じようなやはり考え方の要素がひそんでいるという点も私はあるのじゃないかと思います。要するに、しかし、非常に大きな核防というものに対して、あるいは日本の防衛というものに対しての、私は言いようによっては、先ほど言ったように、非常に次元の高い、また長期な展望に立っての御意見であると思いますが、現実の当面扱っていき、また対処する問題としては、もう少し現実的に取り扱っていくことが現在の内閣の態度としては適切である、こういうふうな考え方を持っておるわけです。
#81
○石原慎太郎君 一言だけ、誤解を招くと困りますのでお断わりしておきますが、これは決して長期の展望ではなしに、数年のうちにそういう事態が軍事的に来る。可能性ではなしに、実際に事実があるわけでありますし、私が申しましたいわゆる原爆、水爆というカテゴリーをはずれる核兵器というものは、正確に呼べば核兵器には違いないが、しかし、われわれの忌避しなければいかぬと考えているいわゆる水爆、原爆というカテゴリーの核兵器とは違った、そういったわれわれが忌避しなければならない有害性というものをほとんど持たない通常兵器として非常に有効な兵器であるということで、つまり概念の混乱というもののままにこれを規定してしまうと、現実に私たちの防衛というものの機能ははなはだ低下する、そのおそれがあるという意味で申し上げているわけであります。御承知いただけたと思いますけれども、お断わりしておきます。
#82
○杉原荒太君 一つだけお尋ねします。これは大臣からでなくて、担当の事務官からでけっこうです。
 最近、ソ連の国内情勢について、何らかわれわれが注意しておらなければならぬようなことがありはせぬかということを、これは私の個人的な感想ですが、それをもって質問するのですが、ソ連の政府や党の要人が病気だという説があったようですが、それからもう一つは、これまたそれだけにまず限定して言いますと、その要人の病気説というものは、私は何かの新聞で読んで実は注意しておるのだけれども、それは中川大使あたりからも、情報としては、それは確認した公報が来ておりますか。
#83
○政府委員(有田圭輔君) その病気説は、コスイギン首相にも川島特使が行かれましたときに面会を求めて、これがかぜだということ、その後入院したということ、それから、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長が御承知のように訪日することになっておりまして、これが直前になりましてグリップと申しますか、かぜのためにどうしても来られなかった、たいへん残念であるがキャンセルしたいということを言ってまいりました。これはその前にイランに行っておりまして、イランから帰りましたときに、非常に暑いところから寒いところへ急に帰ってきて病気になった。また、イランに行く前にも少しからだの調子が悪かったのだけれども、イランにはどうしても行かなければならぬということで無理して行かれたということでありまして、そのほか一、二やはり病気で引きこもっておるという話がありまして、それにモスクワでも外交筋のうわさになりましたし、新聞等にも書かれましたものですから、たしかソ連の外務省筋でもこれはほんとうに病気なのであるということを説明しております。その種の公電は来ております。で、これはまず病気ということは真実であろうということになっております。ただ、いろいろ推測をすればいろいろな推測をされる方もあります。しかし、われわれとして現時点では確かにこれは病気というように考えております。
#84
○杉原荒太君 それ以上私はこういう問題に立ち入りたくはないのですね。これは私、一つのごとく参考として聞きたい。レーニンのたしか誕生百年祭が近く来るのじゃないですか。
#85
○政府委員(有田圭輔君) 四月二十二日です。
#86
○杉原荒太君 四月二十何日だったですね。それを中心にして何らかことがあるようです。それはどんなことか知らぬが、それは別に情報として外務省では取っておられないのですか。
#87
○政府委員(有田圭輔君) 特に聞いておりません。いろいろ新聞情報があるということは聞いております。
 行事といたしましては、四月二十二日のレーニンの生誕祭が行なわれますし、それから五月一日には御承知のメーデーがございますし、それからその後五月早々、五月七日でしたか、対独戦勝二十五周年記念、これらの行事がございますので、これはいろいろソ連政府のほうでも準備しております。いろいろ、ソ連の政治局内に異動があるのではないかというようなうわさも、これは前から流れておったこともありますが、また、最近になって幹部が病気であるということに関連しましていろいろうわさが流れております。ただ、御承知のように、政治局の幹部の中にはかなり老齢の方もございますし、それからまた、かなり以前から健康を害しておられる方もおられますので、そういう意味からして、一部の人に、健康上の理由とかその他の理由で変化があるということは、これは想像し得る事態かもわかりませんが、実際その点についての確報と申しますか、そういったニュースはございません。
#88
○委員長(長谷川仁君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#89
○委員長(長谷川仁君) 速記をつけて。
 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたし、本日これにて散会いたします。
  午後四時四十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト