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1970/04/28 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第9号
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1970/04/28 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第9号

#1
第063回国会 外務委員会 第9号
昭和四十五年四月二十八日(火曜日)
   午後零時五十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     亀田 得治君     西村 関一君
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     萩原幽香子君     松下 正寿君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     石原慎太郎君     長田 裕二君
     鹿島守之助君     白井  勇君
     加藤シヅエ君     亀田 得治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         長谷川 仁君
    理 事
                木内 四郎君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                長田 裕二君
                梶原 茂嘉君
                白井  勇君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                山本 利壽君
                小野  明君
                亀田 得治君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                白木義一郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       法務省入国管理
       局長       吉田 健三君
       外務大臣官房領
       事移住部長    遠藤 又男君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る二十三日亀田得治君が委員を辞任され、その補欠として西村関一君が選任されました。次いで昨二十七日萩原幽香子君が委員を辞任され、その補欠として松下正寿君が選任され、また、本日加藤シヅエ君が委員を辞任され、その補欠として亀田得治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(長谷川仁君) 旅券法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑に入るに先立ち、この際、御報告申し上げます。
 本日の外務委員会理事懇談会において、政府側から、
 一、旅券法の一部改正案は、いずれの地域に対しても渡航の制限をする目的に出たものではない
 一、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置する
 一、右の善意をもって措置するとは、相手国が入域を認める場合には、渡航手続の簡便化を図りつつ、善処することであるなどの発言があり、与野党理事がこれを確認いたしました。
 以上御報告申し上げます。
 前回に引き続き、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#4
○亀田得治君 時間がたいへん詰まっておるようですから、簡潔にお尋ねをいたします。
 前回の委員会で、法務省のほうから、再入国の許可に関しましてこういう発言があったんですね。これは広州交易会のことですが、「個別審査の重点は、個々の人がこの交易会に出ることによって、積極的に貿易促進あるいは国の利益にどういうふうに役立つかということを積極的に調べたわけでございまして」と、こういうことがこれ、速記録に明確に載せられることは、はなはだ私も、今後のこともありますので、ぐあいが悪いと思いまして、念を押しておきたいと思うんです。つまり、この再入国の許可をするかせぬか、これは何といってもやはり国の公安なり利益に反することはないと、この反しないという立場からこれは検討されなきゃならぬわけですね、法の体系から言えば。それを何か、国の利益に役立つと、こういうことを一つの新しい基準というかね、条件として持ち出しておるようなこれは印象を与えるわけですね。これは私はまあ、日本国としては有害ではないし、有益であればなおいいという、その気持ちはわかりますけどね。許可するかしないかという場合に、日本の国益に積極的に役立つと、そういうことを持ち出してくるのは、これは私は行き過ぎだと思うんですよ。こういうことが公式の議事録に載せられると困ると思いますので、この点ひとつ御釈明を願っておきたいと思うんです。
#5
○政府委員(吉田健三君) ただいま亀田議員から御指摘の点は、広州交易会の再入国の許可の問題に関しまして、私が、積極的に国の利益に資するような云々という発言をしたわけでございますが、これがただいまおっしゃいましたような新しい基準とか、あるいは積極的に何か国の利益に資する、あるいはプラスになるようなことをやらなければ許可にならないのだと、そういう意図では毛頭ございませんし、そういう意図で発言したのでもございませんので、私の趣旨は、従来人道ケース以外は許可になっていなかったものを、新しく今度の広州交易会という場合に許可されるという意味で、前向きの姿勢といいますか、積極的に個別審査に入ったと、そういう意味の気持ちを説明申し上げた次第でございます。もちろん、十分御承知のように、再入国の行為というものはおのずからプラスの面とマイナスの面を伴っておりまして、たとえば里帰りということを例にあげてみますと、里帰りとしてある人が動くということ自体が在留管理の問題、あるいは外交上ある国からの強い抗議を受けるというようなことがあるわけでございまして、このこと自体は国の利益にはやはりマイナス面と見られるわけでございますが、しかし同時に、より高い次元から、人道上の理由でもって、積極的に政府としましてはこれを認めるという方針をとることもあるわけでございます。広州交易会の場合は、必ずしもそういう意味ではございませんが、プラス面とマイナス面というものは一つの行為に伴いますので、それを慎重に検討しまして、結局、法務大臣が再入国を許可することができると、入管令二十六条の規定に基づきまして慎重個別審査の結果、それが国益に沿うものであるという場合には許可になり、国益に沿わないということになれば不許可になると、こういうことに相なるかと思う次第でございます。
#6
○亀田得治君 やはり考え方が少しあいまいですね。あいまいです、いまお聞きしたそのとおりであっても。国益を害しないということが一つの法律上の基準ですわね。ここがはっきりしてないわけですよ。ことに再入国の場合には、これは実質的には在日外国人の一時的な外国旅行だと、形式は入管法の再入国の形はとりますが、実質的には旅券法十三条の五号というふうに実質的には考えられておるわけですね、これは。その点は別といたしましても、ともかく国の利益になるかどうか、利益を害しなければいいのだ、これは大きな違いがあるんですね。どういうことがそれじゃ国の利益になるか、あるいは害することになるか、これ自体もまたなかなか具体的なケースになると判断がまちまちになりますが、それはいまは問いません。ただいまのあなたの答弁を見ておりましても、たとえば外国から抗議を受ける、これは国の利益にならぬという意味のことをおっしゃいましたが、それはなるほど一般的な、常識的な意味での利益という概念には当たるかもしれませんが、法律が要求しておる国の利益というものは、そんなばく然とした精神的な、一般的な、政治的なそういうものじゃこれはないはずなんです。そういう点、これははっきりしておりませんが、いずれにしても一番大事なところは、この再入国にしろ、あるいは旅券法の十三条の場合にしろ、基本的にはその権利を持っているわけですね。国の利益を害しなきゃいい、こうなっておるわけですから、そんなあなた積極的に利益になるものだけを許していくと、そんなことはないですよ。それじゃ憲法の基本的人権なんというものは第一成り立たぬじゃないですか。だから憲法二十二条に最終的な保障の根拠があるんだ、そこをはっきり踏まえておいてほしいというのは、そこからきておるわけですよ。だから、いまの説明ずっと聞いておりますと、やはり国の利益になると、こういうことが出てくるわけですが、そんな標準を一体かってにどこから持ってくるわけですか。条文ではそんなこと書いてないでしょう。日本の公安なり国益を著しく害しない、こう書いてあるだけなんですよ。それをいつの間にか、原則と例外を反対にした旅券行政なりあるいは入管行政を長くやっているものですから、錯覚が生じているわけですね。
#7
○政府委員(吉田健三君) ただいま御指摘の点に及びますと、これはまさに現在最高裁で争われておる領域に踏み入ったかと思う次第でございます。旅券法と入国管理の相違というのは、やはり外務大臣が日本人に対して一種の公証行為といいますか、旅券を発給されるという旅券法十三条の規定と、入管法による再入国というのは、日本におる外国人が、二十六条によりますと、「法務大臣は、本邦に在留する外国人がその在留期間の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基き、再入国の許可を与えることができる。」、この条項に基づきまして、法務大臣が認定されて再入国の許可を出されるわけでございまして、これは許可行為、法務大臣の行政裁量の面があるわけでございます。もちろん憲法、国際法上の制約は当然受けるわけであり、この入管法の精神に基づいて公正な外国人の管理ということをやらなければならないのは当然でございます。したがいまして、個々に、法務大臣がこれは国益に沿わないんだという認定をされる場合には不許可になり、そうでない場合には許可をされるという行為がそこから出てくるかと思うわけでございます。旅券法との関連、あるいはわが国におる外国人、これは一般の外国人すべてであり、また短期、ある期間日本に滞在しておる外国人もおるわけでございますが、そういった人が一度外国に出る行為は一時の海外旅行であるというふうに見るのかどうか、そういう人に再入国許可を出す行為は法律的にどうであるのかという点が、まさに先生十分御承知のように、現在われわれとしては考えが……、先生が訴訟の一方の当事者になっておられると思うのでございますが、争点になって、最高裁に現在係争中であるわけでございます。
#8
○亀田得治君 これはいたずらに時間とっておっても困るのですが、こういう記録が残るといかぬと思いますので申し上げるのですが、ただいまのお答えのようなことならいいんですよ。国益に沿わないと考える場合には許可しないのだ、それだけならいいのですよ。その日本の国益に積極的にプラスになる、そういう要件を持ち出すことは間違いだ、こう言っているのですよ。ものによっては非常にどちらから言うても同じような場合もあるだろうが、しかし、場合によっては非常に開く場合もあるわけですね。これはひとつ明確にしておいてほしい。それから、在留外国人についても憲法二十二条というものは適用されることは、これはもう最高裁でも判例としてきまっていることなんです。そういう立場から、再入国問題は実質的には一時的な外国旅行だというふうに考えられているわけですね。その点は問題ないのですよ。はっきりしているのです。たとえば海外旅行を求める諸君は、旅券法の十三条の一項の五号自身が憲法違反だ、あるいは入管法の五条ですか、五条の例のこの公安に関する規定、規定自体が憲法違反だというふうな議論が当初あったのです。しかし、それは最高裁がはねたわけです、それは。だから、現在もっぱら問題となっているのは、具体的な適用の段階において、この旅行の自由を縛り過ぎることは結局は憲法違反になる、そこが争いになっているわけですね。だから、何も私がいま言っていることが未確定な問題でも何でもないのです。私がいま二十周年の朝鮮人の里帰りですね、あの具体的な事態をどう見るか、そういう議論をしているわけじゃないのですから、そこは勘違いしないように考えてほしいのです。何か憲法二十二条とは離れた角度で再入国問題というものがあるというふうに考えていたらそれは大きな間違いですよ、その点は争えないのですから。だから、具体的な適用において争いが起こっているだけなんです。さっきの答弁でもはなはだ不十分ですが、たださっきの答弁の際には、国の利益になるというようなことは言わなかったから、まあ一応これでやめておきますがね。どうも土台がはっきりしておりませんからね、これはまた別個にひとつやりましょう、法務委員会等で。
 それから、次に外務のほうにお尋ねいたします。今度の新法の十九条ですね。第一項の五号、これは旅券の返納命令を出す場合の一つの項目ですね。これはどういう程度のことを考えているのか、少し具体的にお話しを願いたいのです。
#9
○政府委員(遠藤又男君) 十九条一項五号は、「一般旅券の名義人の渡航先における滞在が当該渡航先における日本国民の一般的な信用又は利益を著しく害しているためその渡航を中止させて帰国させる必要があると認められる場合」、こういう条文になっております。これにつきましては、在外における日本人の信用の問題を考える必要がまああろうと思うのでありまして、要するに、外国に在留する日本人というものは、単に日本国内での内国民としての立場とは違って、相手国の法令に服して、そうしてその国の社会慣習等を尊重しながら多年にわたって鋭々努力を重ねて現在のような相手国国民からの信頼と友好をかち得たというのが各地での現状でございますが、そういう際に、一部の無思慮な渡航者の言動によりまして、相手国官民からひんしゅくを買って、そして日本人一般の評価にかかわるというような場合には、何らかの措置をする必要がある、こういうことでございまして、当該国における日本人一般の信用評価にかかわるという場合に、この規定に従いまして返納を指示すると、こういう趣旨でございます。
#10
○亀田得治君 そういう精神的な気持ちは当然わかるんですが、もしこれに違反しますと、罰則が出てくるわけでしょう。そういうものであるだけに、明確じゃなければいかぬわけですわね、明確でなければ。そんな不明確なことで処罰されるということはこれはかなわぬですね。だから、もっと端的に聞きますが、十九条の一項の五号について、政令なり規則なり告示等でもっと具体的な規定というものを考えるのかどうか、これは大事な点なんです。処罰される人は、絶えずどういうことを自分がしたら処罰されるんだろうかということがわかっていなければいかぬわけですよ。処罰の大原則ですから。それを、処罰するほうの主観によって、なるほどこれはいいことではないが、まあこの程度のことはどこでもやっているんだというふうな普通の悪いことだ、そういうことをやっていてぽかっとやられると、これじゃやはり抜き打ちということになるわけですね。特にこの場合には、すでに旅券を政府からもらって、外国旅行というひとつの権利の行使をやっておる状態の中で取り上げるやつですから、私はそういう面からいっても、これは当然もっと明確に基準というものを持っていなければいかぬと思うんです。大臣、どうでしょうか。この点、いま直ちにどういうことというふうに具体的に羅列することがむずかしいでしょうが、やはりそういうふうにしておく必要があると思うんですよ。そうしないと、ややもすると、やはりどこそこの国で多少いたずらをした、かっこうが悪い、抗議が来た、感情的になってぱっとやると、そういうことじゃいかぬと思うんです。どうでしょう。
#11
○国務大臣(愛知揆一君) いまのお尋ねの点は、第十九条の「当該渡航先における日本国民の一般的な信用又は利益」を害する行為、どのような行為を言うのかということに集約されると思いますけれども、ここに言う「一般的な信用又は利益」と申しますのは、日本国民一般が当該渡航先において有しておる信用、利益をさすものであって、特定個人の信用、利益をさすものではない、こういうふうに理解すべきものであると考えます。ですから、もう少し砕いて申しますと、たとえば個人間のトラブルであるとか、単に現在の政府を批判する言動のみではこれに該当しないというふうに理解をいたしたいと思います。
#12
○亀田得治君 この返納を命ずる場合の条項として、五号の前のほうに一号とか二号というのがございますね。これよりも程度の低いものと一般的には理解できるわけですか。
#13
○国務大臣(愛知揆一君) もう少し砕いて言えば、破廉恥罪というようなもの、こういうものだけを対象にするという考えでいいのじゃないかと思いますが、詳しくは事務当局からもう少し説明を聞いていただきたいと思います。
#14
○政府委員(遠藤又男君) これは、程度の重い軽いというよりも、ちょっと範疇が違うように思いますが、要するに、これはいままでにない規定なんですが、実際の必要から出たわけでございます。いろいろな最近無分別な渡航者が多くなってまいりまして、せっかく向こうで長年にわたって築き上げた日本人の信頼と信用が害されるという場合が出てまいりましたので、それに対してこの条文を適用したいということで、その前の一号から四号までよりも重いとか軽いという比較はできないように思うのでございます。
#15
○亀田得治君 そういう具体的な事例を根拠にしてこういうものが生まれてきたということであれば、なおさらもっとこの基準が明確にできるはずだと思います。その経験をずっと規約化しただけでも相当はっきりするでしょう。もちろん、それだけに限る必要はないと思うのです。ただ、それに類したことということが最後についてもいいと思うが、ともかく明確にしておかなければいかぬですよ、こういうことは。そうしないと、これは処罰対象になるでしょう。国内にいる人ならば、政府と本人との意見が非常に違えば、自分の行為はそういうふうにとれる行為でないというように思う人は司法裁判所に直ちに訴えるということもできるでしょう。外国にいる人はそんなことはできやしない、事実上。だから、事実上非常に間違って権限が発動されると、不必要に人権を侵害するという場合が出てくるわけです。だから、これは法律制定後でいいからはっきりしておいてほしいのです。本来は、こういう趣旨のものは法律制定の段階でみなさんから具体的な説明がなされなければいかぬと思うのです。しかし、いまそういうものを用意しておられぬようでありますから、これはやはりきちっとしておいたほうが使いやすいわけですね。きちっとしておりませんと、使うほうも、今度は良心的な人は憶病になっちゃう。それから監督者から見ても、使わないのが憶病過ぎたのかどうか、その判断もできないわけです。だから、ぜひこれは要求としてははっきりしておいてほしいのです。どうですか、大臣。
#16
○国務大臣(愛知揆一君) ごもっともでございますから、早急にこれははっきりいたしたいと思います。
#17
○亀田得治君 それでは、数次旅券のことについてちょっとお尋ねしておきます。
 今度の改正案でいきますと、数次旅券というものが旅券の中心になる感じですね。したがって、数次旅券が拒否されるということは旅券を拒否したのと同じような結果になると私は思うのです。大部分それで出していこう、要求のあるときには、そういうことなんですから。ところが、条文の立て方を見ますと、何か数次旅券を求める国民の権利ですね、はっきりしておらぬように思うのです。第三条の第五項ですね。まず出てくるのは、ここで見ますると、「数次往復しようとする者は、その旨及び理由を一般旅券発給申請書に記載して、数次往復用の一般旅券の発給を申請することができる。」、この申請権だけが国民に与えられておる、申請券だけが。そうしてこの申請の結果、外務大臣が第五条によって旅券を発給するわけですが、この第五条で、「有効期間が五年の数次往復用の一般旅券を発行することができる。」、国民は申請権だけ、申請したのに対して、出すか出さぬか外務大臣の専権にまかされているような条文の書き方になっているのですね。ところが、現行法はその点が非常に違っておるわけですね。現行法十二条ですね、「国内において旅券の発給を受けようとする者で、外務大臣が指定する特定の用務により本邦と特定の一又は二以上の外国との間を数次往復する必要があるものは、外務大臣がその必要を認めたときに限り、数次往復用として当該旅券の発給を受けることができる。」、数次往復旅券の発給を受ける権利というものが十二条では明確にされておるわけですね。それは外務大臣のこの認定行為というものを前提としておりますが、しかし、この条文の書き方としては、国民が直接この数次往復用の旅券を取ることができるんだ、こういうことが、もう率直に一つの文章の中で書いておるわけですよ。私はこのほうが改正案よりもいいと思うのですね。改正案では、申請だけすることができると、申請はすることができる。別個な条文で、外務大臣はそれを認めるかどうかきめましょう。遮断されているわけですね。せっかく便利な制度をつくるんだ、つくるんだと言いながら、何かこの辺に妙な感じがするわけですね。現行法のような書き方をすると、たとえば共産圏なり未承認国、そういうところに対して、同じように数次往復用旅券を出せという要求がどんどん出てくるかもしれぬ、そういう際のことを考え、政府のほうに裁量権ができるだけ持てるような条文構成をやろうということでこういう改正案をつくったようにも思うのですが、この辺はどういうことなんでしょうか。
#18
○政府委員(遠藤又男君) 数次往復旅券についての現行法とそれからこの改正法案との比較でございますけれども、現行法第十二条は、はっきりした規定ではございますけれども非常に限定的になっております。第一に、用務が特定されるというのが第一点、それから「一又は二以上の外国」、これもまた特定でなければならない。「特定の一又は二以上の外国」という点、それから発行するのが外務大臣だけである。在外の領事官が入らないという点で非常に限定的につくられてあるわけです。したがって、現在までの実際が、数次往復は従のかっこうになりまして、主たるものはシングル旅券ということになってきたわけでございます。ところが、今度の改正法案になりますと、確かに三条で申請して五条で発行というような規定になっておりますけれども、これは地域を非常に幅広くいたしまして、外務大臣が指定する範囲内の渡航先ということで、非常に広いことになります。これはまた、あと指定のしかたをいま考えておるところですけれども、いずれにせよ、非常に幅広い、ほとんど世界どこにでも行けるような仕組みにする。それからあと、用務ということにつきましても、これはまあ目的を非常に幅広くするつもりでございまして、目的は特定せずというようなことにしたいというように思っておるわけでございます。したがいまして、現在の十二条が、いま申し上げましたように非常に限定的になっているということに比べまして、今度の新しい法案ができますと、その点は非常に便利になるということで、非常な改善であるというように思っているわけでございます。
#19
○亀田得治君 いや、その「一又は二以上」というのを包括的にしたり、特定用務というものを非常に幅広くする、そういう点で確かに改善であり、国民も便利になると思うのです。だから、それはそれで改めたらいいんで、ただその数次往復旅券を国民が求める権利は、これはすなおに条文の中に私はあらわしてほしいと思うのです。そこを言っているのです。現行法がそういうようになっているのに、なぜこう申請権と許可を与える外務大臣の権利というものを分離して、ともかく君らは申請書を出す権利しかないのだと、与える与えないは別個だというような書き方をしたのか。たとえば数次往復旅券をくれということで、どうしても出してほしい、たとえばその必要性という点について外務大臣が認定することになるんでしょう、今度の場合は一応そのことが前提となるんでしょう、条文にそうなっておりますから。その必要性について外務省と申請者との間で意見の食い違いがある、どうも役所の認定には承服できない。そういう場合に司法に裁判を求めるということになりますと、現行法のほうが私はやりやすいと思うのです。外務大臣が必要性を曲げて認定しているような場合には、それをくずしていくことはやりやすい。ところが新しい法律になると、申請権しか認めないような書き方になっておりますから、非常に違ってきます。行政訴訟をする国民の権利を行使する場合に大きな違いが出てくるのですがね。せっかく国民のためにやっているんだとおっしゃっているんですが、そうでないような面も出てくるわけですね。これは法務省なり法制局の方、どういうように考えますか。おそらくそういう国民の権利を弱めるつもりでお書きになったのではなかろうと思いますけれども、結果においてそういうようになるような気がするのです。
#20
○国務大臣(愛知揆一君) これはいま御説明をしたようなことでございまして、いろいろの読み方があろうかと思いますけれども、提案をいたしましたわれわれとしては、現行の十二条というのは、「特定の用務」とか、あるいは特に「必要を認めたときに限り、」とかいう非常に限定的な制限がついておりますから、それに比べますと、今回のほうが数次旅券について非常に、何といいますか、緩和した考え方で立案いたしておりますから、要するに、これは運用上の問題だと思いますが、いま申しましたような考え方でございますから、旅券の発行については、求められれば、この必要と認めるときというのは、もうほとんど全部が必要と認めるという気持ちでこれを運用していきたいと、こういうことで、法文の書き方には、いろいろ御意見も伺っておりますとごもっともだなという感じもないでもないわけでございますけれども、そういう方針で、あるいはそういう趣旨で運用に十分当たりますことをここにはっきり申し上げることによりまして、まげて御了解いただきたいと存じます。
    ―――――――――――――
#21
○委員長(長谷川仁君) この際、委員の異動について報告いたします。
 ただいま石原慎太郎君及び鹿島守之助君が委員を辞任され、その補欠として長田裕二君及び白井勇君が運任されました。
    ―――――――――――――
#22
○亀田得治君 そうしたら、こういうふうに理解していいのですか。数次往復旅券の申請があった、その場合に、ほとんど大部分は認めるつもりで今度の制度はつくっておるのだ。例外的に、そんな必要ないじゃないかという特にはっきりした別個な事情が認められれば別だが、そうでなければ、申請者はもうどんどん認めていく方針でつくっているものだ、こう理解していいですか。
#23
○国務大臣(愛知揆一君) そのとおりでございます。
#24
○亀田得治君 それじゃ、この点はその程度で理解しておきます。
 それから、数次往復用旅券のいわゆる特定用務の指定ですね。これが非常におくれていたわけですね。それはどういう事情なんでしょうか。国民の便利のためにできた制度であるのですから、もっと早く告示をして実行しておるべきじゃないかと思うのですが、この資料を拝見いたしましても、三十七年からですね、発行されておる。そんないいものをなぜもっと早くどんどん着手しないのか。
#25
○政府委員(遠藤又男君) 御承知のとおり昭和三十六年に告示を出して、そのあと何回か広げていったわけでございますが、それは主として為替管理のほうの関係でございました。御承知のように、実際に業務渡航が為替面からいって自由化されたのは昭和三十八年でございましたし、少しゆるめられたのはその直前ということで、この為替管理の緩和化に伴って、数次渡航で出る方が多くなったということで、昭和三十六年に至って初めてつくったという事情でございます。
#26
○亀田得治君 その事情はわかりました。
 それで、現行法の十二条では、なるほど相手国について「一又は二以上」と、こういう限定がありますけれども、これは「二以上」なんですからね。したがって、今度の改正法のように、ひとつ包括的にやってやろうという気になりさえすれば、私は政令でもそこの運用的なことをきめてやれるものだと思うのですよ。それから「特定の用務」ですか、という点についても、これは認定のしかたですから、国民の便宜のために運用を広げていく、こんなことはちっとも問題が起こるわけじゃないですからね。だから、この「特定の用務」とこの「一又は二以上」というのがあるからどうしても書きかえなければならぬのだということには私は必ずしもならぬと思うのです。書きかえるのだったらその部分だけを書きかえて、いまのままのていさいのほうがいいとこれは思っておるわけですが、先ほどの大臣の答弁がありましたから、それで了解いたしておきます。
 以上です。
#27
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
#29
○森元治郎君 今回の改正が国民の海外渡航に多くの便宜をもたらす点は認めますが、これは承認国へ渡航する場合のことであって、未承認国への渡航はかえって歴然と区別される結果となっています。
 すなわち、旅券に渡航先を包括記載する際に、除外地域として未承認社会主義国四カ国を明記するとのことでありますが、これは寝ている子を起こすようなもので、これら四カ国はよくない国だとの印象を国民に与えかねないと思います。このように、国民の渡航の便宜をはかると言いながら、未承認社会主義国を不必要に差別するような改正のしかたはおもしろくありません。
 第二点は、十三条一項五号の発給制限規定は、同僚委員も指摘しましたように、制定当時の解釈がその後拡大されて、時の政府の外交政策に利用されるよりどころとなっているのであります。外務大臣は、十分戒心してこの規定を運用したいとは言っておられますが、今後もこのような拡大解釈をたてに未承認国への渡航を制限する場合があることをほのめかす限り、この規定が存続されることには賛成することはできません。
 第三点は、先ほど委員長の発言にもありましたように、政府は、「この改正案はいずれの地域に対しても渡航の制限をする目的に出たものではなく、いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置する」と述べており、問題となっている北朝鮮への渡航については、審議の過程において、貿易、スポーツ関係者は認めることを示唆しておりますが、従来国会議員とその同行者しか認めなかった政府が、このように折れざるを得なくなったのは、国際情勢が緊張の時代から次第に鎮静化している事態をおのずと反映していることにほかならないと思います。このようなときに、法のていさいのため、法秩序維持のためとはいいながら、渡航先以外の地域に渡航した者に対して新たに罰則を設けるのは、あまりに政治性がないと思われます。海外渡航者が年間五十万からやがて百万になろうとしているときに、わずか一にぎりの渡航希望者のために、国際的あるいは隣接国とわが国との関係微妙の名のもとに、罰則にきゅうきゅうとする神経質な、そしてしゃくし定木の態度は納得できません。アメリカでさえ中国に対する渡航を緩和する姿勢を示し始めておりますいま、わが国としても、単に運用面で配慮するというだけでなく、法のたてまえ、法の立て方自体も、このような時代、情勢にふさわしいものとすべきであろうと思います。
 以上申し上げたような理由から、私は、この法案に反対するものであります。
#30
○山本利壽君 私は、自由民主党を代表して、この法律案に賛成するものであります。
 今回の改正によって、わが国と承認関係にある国へ渡航する者に対して、五年間有効の数次住復用旅券が発給されるようになり、また渡航先も、全世界地域等の包括的記載が用いられるようになることは、先進諸国の旅券毎度や国際勧告にも沿ったものであり、現在の一回限りの旅券を原則とする制度に比べて格段の前進でありまして、国民の海外渡航の便宜をはかる見地から、まさに当然の施策と言うべきであります。一方で、年々急増する旅券事務の破綻を防ぐ意味からも、この措置は、事務の地方分散をはかる点とともに、早急に実現が望まれていた改正であります。
 一部には、いわゆる国益公安条項が現行法のまま存置されること、また、渡航先以外の地域へ渡航した者に対する罰則が設けられることに反対される向きがありますが、この発給制限条項は諸外国の旅券制度にも見られるところであり、また、罰則については、政府も述べておるように、違法であることに対して適度の罰がかかるのは法秩序維持の見地からやむを得ないと思われるのであります。しかも、政府は、先ほどの委員長の御報告にもありましたように、「この改正案は、いずれの地域に対しても渡航の制限をする目的に出たものではない」こと、また、「いずれの地域に対する渡航の自由についても善意をもって措置する」ことを明らかにしておりますし、答弁においても、理由のわかる者には道を開き、罰則にかけられることは避けたいと述べておりますので、今回の改正が渡航制限の強化をねらいとしたものであるとの非難は当たらないのであります。
 以上の理由から、私は本法律案に賛意を表するものでありまして、この改正によって、旅券行政の合理化も実現し、国民の海外渡航もより一そう便利なものとなることを念願して、討論を終わります。
#31
○白木義一郎君 ただいま問題となっております旅券法改正案について、私は、公明党を代表して、反対の意を表します。
 改正案によりますと、承認国への渡航については現行法において全体の五%しか発給されていない、五年間有効の数次往復旅券を全面的に承認国への渡航に活用する、また、手数料の増収分は事務の機械化に回し、国際的な海外渡航の自由化に対処できる旅券行政の簡易化及び合理化をする、という以上の点については、外務省の説明どおり、実情に沿ったものであると思います。
 だが、その反面、明らかに未承認国への渡航と承認国への渡航を差別していることがこの改正案の趣旨になっていることは、今後さまざまな問題を引き起こす危険が多分にあると思わざるを得ません。未承認国への渡航は現行のシングル旅券であり、しかも、相手国の入国許可が確認された場合であり、さらに、それは政府の許可を必要とする。その点について外務大臣は、国益に反しない限り十分考慮し、ケース・バイ・ケースで善処すると言われておりますが、いままでのわが国の未承認国に対する消極的な姿勢、あるいは政府の政策の変更などの場合、現在外務大臣の言われておることとの間に大きな隔たりが生じ、国民の渡航の権利をはなはだしく害するおそれがありますが、それに対して保障すべき措置を政府は十分とるべきであると考えます。
 次に、現行法における渡航先からの未承認国への入国、いわゆる「横すべり」について、今回の改正案では、三万円の罰金と旅券または渡航書の没収という罰則を新たに設けたことは、事実上未承認国への渡航を一段ときびしく規制するものであります。なかんずく、未承認国のうちでも北朝鮮に対する政府の姿勢は、中国または東ドイツなどに比べ、より差別する感が強いが、これは、政府の言う極東の緊張緩和の方向と大いに矛盾すると思わざるを得ません。米ソの緊張緩和、また東西ドイツの歩み寄りなどの国際情勢の中で、承認国、未承認国として差別することは時代への逆行であり、等距離完全中立外交を目ざすわが党としては承認できないものであります。したがって、この改正案には反対の意を表します。
#32
○委員長(長谷川仁君) 他に御意見もないようでございますが、討論は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 旅券法の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#34
○委員長(長谷川仁君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時四十八分散会
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ソース: 国立国会図書館
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