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1970/05/07 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第10号
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1970/05/07 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第10号

#1
第063回国会 外務委員会 第10号
昭和四十五年五月七日(木曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月三十日
    辞任         補欠選任
     長田 裕二君     石原慎太郎君
     白井  勇君     鹿島守之助君
 五月二日
    辞任         補欠選任
     亀田 得治君     加藤シヅエ君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         長谷川 仁君
    理 事
                石原慎太郎君
                木内 四郎君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                山本 利壽君
                小野  明君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
                白木義一郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省条約局長  井川 克一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省条約局外
       務参事官     山崎 敏夫君
       法務省民事局参
       事官       三井 哲夫君
       日本ユネスコ国
       内委員会事務局
       次長       広長敬太郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○民事訴訟手続に関する条約の締結について承認
 を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書
 の外国における送達及び告知に関する条約の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○外国公文書の認証を不要とする条約の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する
 協定の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査(国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 去る四月三十日長田裕二君及び白井勇君が委員を辞任され、その補欠として石原慎太郎君及び鹿島守之助君が選任されました。また、去る二日亀田得治君が委員を辞任され、そう補欠として加藤シズエ君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(長谷川仁君) 次に、理事の補欠選任についておはかりいたします。
 ただいま御報告のとおり、石原慎太郎君の委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に石原慎太郎君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(長谷川仁君) 次に、
 民事訴訟手続に関する条約の締結について承認を求めるの件
 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の締結について承認を求めるの件
 外国公文書の認証を不要とする条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定の締結について承認を求めるの件
 以上四案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#6
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました「民事訴訟手続に関する条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 民事または商事に関し、外国人または外国に住所、居所を有する者が一方の訴訟当事者である場合には、裁判上の文書の送達、証拠調べの手続及び外国人訴訟当事者の地位の問題等につき、種々、裁判手続上の障害が生じます。この条約は、このような障害を除去するためにヘーグ国際私法会議で採択された条約案をもとに、一九五四年三月一日にヘーグで作成されました。
 この条約は、各締約国が裁判上の文書の送達及び証拠調べ等の司法共助について、相互に協力することを定め、また、外国人訴訟当事者の地位に関する規定を設け、ある種の事項については内国民待遇を規定する等、訴訟の円滑な運営と訴訟当事者の利益をはかるものでありまして、現在二十一カ国がこの条約の締約国となっております。
 わが国は、この条約の締約国との間では、訴訟件数も多く、現在幾多の不便がありますので、この条約の締約国となることにより、これらの点が改善されることが期待されます。
 次に、「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 外国における裁判上の文書等の送達及び告知の手続は、一九五四年の「民事訴訟手続に関する条約」により円滑化されましたが、近時の訴訟の迅速化の要求にこたえるため、さらに改善が望まれております。
 この条約は、その目約のためにヘーグ国際私法会議で採択された条約案をもとに、一九六五年十一月十五日にヘーグで作成され、現在九カ国が締約国となっております。
 この条約は、一九五四年の「民事訴訟手続に関する条約」の第一条から第七条までの裁判上の文書等の送付に関する規定にかわるものでありまして、国家間の裁判上の文書等の転達の方法及び経路の改善を定めるとともに、外国にいる訴訟当事者が文書の送達を受けなかった場合にこうむる不利益の救済を規定する等、訴訟の迅速化と訴訟当事者の利益の保護をはかるものであります。
 わが国は、この条約の締約国となることにより、これらの利益を受けることが期待されます。
 次に、「外国公文書の認証を不要とする条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 現在多くの国で、外国公文書が提出される場合には、その文書の作成国に駐在する自国の外交官または領事官による「認証」を受けることが法律上または慣行上要求されており、そのため外国公文書の提出者は、複雑で煩瑣な手続を行なうことを要しております。この条約は、文書作成国の当局が証明文を付することによって、このような認証制度の不便を除去することを目的として、ヘーグ国際私法会議で採択された条約案をもとに、一九六一年十月五日に作成され、現在十一カ国が締約国となっております。
 わが国は、現在外国公文書に認証を要求しておりませんが、わが国の公文書を外国に提出する場合に認証が必要とされることが多いので、この条約の締約国となることにより、他の締約国に提出するわが国の公文書については、認証が免除されることとなり、従来の認証制度の不便が除かれることが期待されます。
 最後に、「教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この協定は、出版物、美術品、視聴覚資材、科学資材、盲人用物品等の教育的、科学的または文化的資材の輸入に関する関税障壁を各国が相互に撤廃することにより、国際間の文化交流を一そう盛んにし、世界平和の維持に寄与することを目的として、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の提唱によって作成されたものであります。わが国といたしましては、この協定に加入いたしますことは、わが国の文化の海外紹介及びわが国民による諸外国の理解の増進に非常に役立つものでありますが、同時に、書籍をはじめとする教育的、科学的または文化的物品に関しては、今日輸出国となりつつあるわが国にとりましては輸出促進の観点からもきわめて意義あるものと考えられるのであります。
 以上四件について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願い申し上げます。
#7
○委員長(長谷川仁君) 引き続き補足説明を聴取いたします。
 山崎条約局参事官。
#8
○説明員(山崎敏夫君) まず、民訴関係の三条約につきまして一括して簡単に補足説明を申し上げます。
 これらの三条約は、いずれもヘーグの国際私法会議で採択された条約案をもととして作成されたものでありまして、一口で申し上げますれば、民訴手続条約及び送達条約は、渉外事件の訴訟手続を迅速かつ簡単にしようというものであります。また、認証不要条約は、各国間の公文書の往来を簡易化しようとするもので、これも手続的なものであります。渉外関係の訴訟事件につきましては、従来、「外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法」という法律に基づきまして、各国との間にそれぞれ司法共助取りきめを結んだ上で、送達、証拠調べ等の司法共助を行なってまいりましたが、この手続はかなり繁雑であります。しかるに、これらの訴訟事件は近年非常に増加しておりますので、わが国が民訴手続条約及び送達条約に加入することは国民一般にとって非常に役立つものと信じます。
 ここで民訴手続条約についてちょっと説明申し上げますと、外国で裁判上の文書等の送達や証拠調べを行なう場合、従来は、わが国の地方裁判所に係属する事件であれば、この地方裁判所から最高裁判所、外務省、名あて国に駐在するわが国の大使館、名あて国の外務省、管轄の裁判所へという非常に複雑な手続を踏んでおります。しかるに、わが国がこの条約に参加いたしますと、今後は、わが国の領事官が名あて国の司法省や裁判所等のいわゆる指定当局に直接送達や証拠調べの要請を行なうことができることになり、手続が簡素化されるとともに、名締約国との間に個別的に司法共助の取りきめを結ぶ必要はなくなるわけでございます。この条約は、さらに外国人の訴訟当事者に対して訴訟費用の担保の免除等の保護も与えております。
 次に、送達条約について説明申し上げますと、この条約は、ただいま御説明いたしました民訴手続条約の第一条から第七条までの規定を改めて、送達の経路をさらに改善したものでありまして、この条約の締約国との間では、わが国の裁判所から、名あて国の国務省、司法省等のいわゆる中央当局に直接送達の要請を行なうことができることとなりまして、また、送達の名あて人が十分な余裕を持って訴訟上の防御をすることができるようにはかっております。
 最後に、認証不要条約につきましては、従来の認証手続が多くの場合どのように行なわれてきたかを例をあげて説明申し上げますとわかりやすいかと存じますが、たとえば、わが国の市町村の役場で作成された公文書をフランスに提出をしようとする場合、この公文書をまずその市町村長が証明して、それをさらに外務省で証明いたしまして、この外務省の証明に基づいて、日本にありますフランスの領事の認証をもらい、しかる後にフランス当局に提出するといった繁雑な手続を踏んでおるわけであります。しかしながら、この条約の締約国となりますと、市町村長の作成をいたしました公文書に対して、外務省におきましてこの条約の規定に従った証明文をつけるだけでフランス当局にこの公文書を提出することができるようになるわけであります。したがって、在日のフランス領事の認証をもらう必要はなくなるわけであります。わが国の公文書を外国に提出しようとする者は、こういうわけで、時間の点でも経費の点でも多くの利益を受けることができます。他方、わが国は、先ほど提案理由でも申し上げましたとおり、外国の公文書に対しまして一般的に日本の領事官の認証を取りつけることを要求しておりませんことを申し添えます。
 最後に、「教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定」につきまして簡単に補足説明を申し上げます。
 国際連合教育科学文化機関、すなわちユネスコのおもな目的は、国際的な文化交流を通じて各国の国民の間の相互理解を深め、世界の平和に貢献することでありますが、この協定は、このようなユネスコの掲げる理想を実現するため、国際的な文化交流ないしは知的交流の手段であります書籍、美術品、視聴覚資材、科学資材等の各国間の流通を容易にすることを目的として作成されたものでございます。これらの物品の各国間の流通を促進する方法といたしまして、この協定では、各国の関税を撤廃することを義務づけておりまして、さらに、これらの物品の輸入のための数量制限や為替制限もできるだけ撤廃するよう観誘しております。
 わが国といたしましては、この協定の対象となる物品の輸入関税はほとんどすべてがすでに無税となっておりまして、残された若干の物品につきましても、今国会ですでに成立いたしました関税定率法の改正で無税とすることとなった次第でございます。他方、これらの物品の関税以外の輸入制限措置に関しましても、わが国におきましてはほとんどすべてがいわゆる自由化品目となっておりますので、この協定の要求いたしておりますところは十分に満たし得るわけでございます。
 以上をもって補足説明を終わらせていただきます。
#9
○委員長(長谷川仁君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#10
○森元治郎君 この民事訴訟関係の三件について、締約国の数を教えてください。外国公文書、民事及び商事の条約と民訴条約、それぞれの締約国の数を教えてください。
#11
○説明員(山崎敏夫君) 民事訴訟手続条約の締約国の数は二十一、それから二番目の送達及び告知に関する条約は九、外国公文書の認証を不要とする条約は十一であります。
#12
○森元治郎君 たいへん手続が簡単になるんだが、御説明を聞いていて感ずることは、特に憲法上の手続を経て国会で批准を得なくとも、何かこういうものを信頼関係で、慣行でいくというようなことはできないものか。どうしても条約の形式をとらなければならないのですか。たとえば送達関係にしても、途中の手続を省いてずばり外務省の認証があれば外国の公文書は向こうのしかるべき機関に一発で届くというようなことは、これは慣行でできるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
#13
○説明員(山崎敏夫君) 何ぶんにも裁判上また裁判外の公文書の送達でございますので、それがほんとうの公文書であるかどうかの証明というものはどうしても相手国から要求されることが多いのでございます。したがいまして、もちろん、見たところは公文書らしくあっても、それがほんとうであるかどうかということは、ことに裁判の問題となりますと、きちっとしておかなければなりませんので、やはりこういう証明手続というものが要るわけでございまして、現在においてもそういう手続を踏まざるを得ない。また、それを簡易化するために、先ほど申し上げました司法共助でやっておるわけでございますが、その手続は非常に複雑な次第でございます。
#14
○森元治郎君 私が伺いたいのは、話はわかっていますが、その手続の煩瑣なことをやめるというそれだけのことに、条約というようなかたい形式じゃなくて、話し合いですか、もっと実務的で外国公文書は自由にする。民事訴訟は二十一、外国公文書は十一、送達はわずか九ですから、締約国間で話し合って、あえてこういう条約の形式をとって国会の審議を仰がなくても、相互間でできないものですか。たとえば外国公文書の場合は外務省の証明書か認証があればいいのだから。何でも条約にしなければおさまらないのかどうかということなんです。
#15
○説明員(山崎敏夫君) 最初の民事訴訟手続条約及び二番目の送達及び告知に関する条約につきましても、これを実際に実行いたします場合には別途法務委員会のほうで御審議いただいておりますように、法律をつくらないときめられないようなわけでございまして、そういう送達経路というものはやはり法律事項になっておりますから、その関係からしても、そのもととなる条約はやはり国会の御承認をいただいて、きちっとする必要があるわけでございます。
 それから、もちろん相互の信頼関係で、ルートをなるべく短くし簡単にするということは可能なんでございまして、この条約にもその点はそういうふうな取りきめを二国間でやることを妨げないという趣旨もございますし、現に日本とアメリカとの間、日本とイギリスとの間には領事条約が結ばれておりまして、領事官を通じて直接そういうことができるというふうなことも規定されておるわけでございます。それも、この両方の領事条約ももちろん国会の御承認を得たものでございますが、やはりいずれにいたしましても、そういうルートについてはきちんと両国政府間で条約をもって定めませんと、事はうまく運ばないのが実情でございます。
#16
○森元治郎君 近ごろ国会で見ていて、外務委員会で感ずることは、そろそろ政府は、署名はしたけれども批准をしてないものがあるのを、何か蔵を掃除するように、古いものから順次国会に出し始まったように思うのですが、たとえばいま衆議院でやっておるガスの条約にしても一九二五年、それから今度出てきたのも、古いのがやっといまごろ目がさめたようなかっこうして出てくる。何かそういうふうな決心を、大臣、されたのですか。古いものを古い順から、一九二〇年くらいから古いのがだいぶ出てくるのです。
#17
○国務大臣(愛知揆一君) どうもごもっともなお尋ねのようにも思えるのでございまして、たいへん古いものの御審議をお願いすることはまことに恐縮でございますけれども、一九二五年の毒ガスに関する条約につきましては、実は前国会で当委員会でも問題にせられましたように、一九二五年の条約については、当時調印をしておったがどうして批准をしなかったんだろうかということにつきましては、いろいろその当時の状況も調べてみましたが、特に御説明を申し上げるに足るような調査の結果が出てまいりませんでした。この点はまことに遺憾に思っておるわけでございます。しかし、昨年の第二十四回の国連の総会でも、いままで批准をしていなかった国に対してあらためて、やはりBC兵器の禁止ということが軍縮委員会でも非常に熱心な問題として討議されている今日の状況でもありますので、まず、いままで批准していなかった国の批准を早急に求めるという決議が、御承知のように全会一致で採択をされているということにもなりましたし、また日本政府といたしましても、軍縮委員会では新たないろいろの提案をいたしております関係もあるので、この際、たいへん古くなって恐縮ではございますが、BC兵器禁止への一つの姿勢の明確化という点からいたしましても、この際批准をすべきものであると決意をいたしたわけでございます。
 また、いわゆる東京条約につきましては、これも前に御説明いたしましたように、ハイジャッキングの防止策としては十全でないということ、ことしの十二月にはあらためてヘーグで会議があることになっておりますので、そこでよりよきものができたならば、そこで調印をし批准もしたいというふうに考えておりまして延び延びになっておりました。もう一つは、国内法の整備ということが必要でありましたが、このほうの準備がいろいろ遷延しておった、そこへ不幸にして「よど」号事件というものが起こりました。こういう次第で、これまた数年おくれておりましたが、ここにあらためて早急に批准の必要を認めたわけでございます。
 こういうようなわけで、今国会で古いものがいろいろ出てまいりましたことはまことに恐縮に思いますけれども、それぞれの背景や理由が具体的にあるわけでございますから、ひとつ、ただいま提案理由でも御説明いたしましたものも含めまして、それぞれの実体的な理由があります点を御理解をいただきたいと思います。
#18
○森元治郎君 この民事訴訟手続に関する条約は五七年の発効ですよ。そうすると、それから十三年たっている。十三年たったものを急に今国会で出してきたのはどういうことなんですか。この訴訟件数が多いということ、最近特に多くなったからということなんですか。
#19
○説明員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、この条約が作成されました一九五四年――昭和二十九年当時にはわが国の私法上の渉外事件が非常に少なかったというので、その実益が乏しかったということは事実でございます。しかし、その後経済関係が増大いたしましたり人的交流もふえて、事件が非常にふえておるということが第一でございます。
 それから、先ほど申し上げましたように、こういう手続をとりますためには司法共に助法基づきます取りきめを各国との間にやらなければなりませんが、この取りきめをやること自体がかなり繁雑であるということでございます。ただ、この条約に参加するとなりますと、先ほども申し上げましたように、やはり関連国内法を改正し、それから当局を指定し、いろいろな手続をとる必要がございまして、また、これについては法務省のほうで法制審議会その他にもかける必要があるということでございまして、このヘーグ国際私法会議関係につきましても全部の条約について洗い出していろいろ御検討をお願いして、その結果としてこの三つはまず入ろうということになったと承知しております。そういう関係で、一つ一つの条約について検討しかつ国内法を整備する関係があったために、これだけ若干提出がおくれた次第でございます。
#20
○森元治郎君 署名と批准との関係ですがね、この署名したときは、署名しないと都合悪いから、一応趣旨は賛成だからサインしておこう、実行はまた先の話というようなつもりでやるのか、本気でやるつもりなら、調印と同時に批准というのが普通のことだと思うのです。たとえば、民事訴訟手続に関する条約は二十一の締約国がもうすでにそれぞれの国でこれを批准して実行されておる。日本は二十二番目になるわけですが、何かふわふわっと署名しておるような感じがするのですがね、その間どういうことですか。
#21
○説明員(山崎敏夫君) このヘーグの私法会議にはわがほうの代表が出席いたしまして非常に積極的に寄与をしておったわけでございますが、内容の検討につきましては慎重を要しますので、署名は最近までしがなかったわけでございます。署名したのはいずれも今年の三月になってからでございます。
#22
○森元治郎君 ヘーグの国際私法会議でたぶん十五くらいの条約が署名され、発効、未発効あるわけですが、十五のうち八つが発効しておるのですね。これはほとんど日本も参加しておるんだと思うのだが、遺言方式条約というのは前に批准したと思うのですが、そのほかに日本がこれからやろうと思っておるものは何件か、こういうものあったら件名を。
#23
○説明員(山崎敏夫君) 現在検討中のものといたしましては、扶養義務準拠法条約、それから扶養義務承認執行条約、それから未成年者保護条約、この三つにつきましては将来参加を検討していきたいと思っております。また、有体動産売買準拠法条約につきましては、現在国連の国際商取引法委員会で再検討が行なわれておりますが、わが国としても、その作業の結果を見定めて慎重に検討してまいりたいと思います。
#24
○森元治郎君 ちょっとこの民事または商事に関する裁判上の案件というのはどんなようなことか、具体的に、しろうとわかりのするように、訴訟上の案件とはどういうことなんですか。
#25
○説明員(三井哲夫君) 最近三年間の統計では、大体各国で総計が二百五十一件ございます。おもなものは離婚関係、それから不動産関係、これはもつ。ばら相続だそうです。
#26
○森元治郎君 そうたいして大きくないのですか、大きい事件ですか。ちょっと例を示して言ってくれませんか、たとえばこれこれと。
#27
○説明員(三井哲夫君) ただいま申し上げましたのは件数でございますけれども、その一件についてたとえば被告が五人いるとか、そういうことがあれば、それだけ数がふえるわけでございます。それで実際の事件といたしましては最も多いのが離婚、外国人と結婚して、その後、日本人が離婚する場合が一番多いわけでございます。それから相続問題で、その相続人の一人が外国に行ってしまっているような場合、わが国の場合、通常は親が死んでもすぐには相続登記をいたさないでほうっておきますけれども、そのうち相続人の一人が外国に行ってしまうと、その者の承諾書を取ることができませんので、一々訴訟をやらなければならない、そういう事件がございます。大体、大部分はそういう離婚の事件と相続に関する不動産登記の事件でございます。
#28
○森元治郎君 商事に関してはどういうことがありますか。
#29
○説明員(三井哲夫君) わが国では民事と商事と区別しておりませんで、すべて民事でやっておりますが、商事と申しますと、普通は会社の事件でございます。会社更生の事件とか、たとえば会社が経営が思わしくなくなったとか、その場合、会社更生法に基づいて更生手続を開始するわけです。その場合、何らかの都合でその事件に必要な証人が外国にいるとか、あるいは会社がつぶれそうになった、破産した、その場合に、その事件に関して必要な証人が外国にいるというような場合、これがもっぱら商事に関するものです。
#30
○森元治郎君 ユネスコのほうの協定についてちょっと伺いますが、文化交流のためということを大きくうたっておるのですが、提案の趣旨の説明を見ますと、大いに国際間の文化交流をやり、わがほうの文化の海外紹介など大いにやっているようなことを言っておりますが、ユネスコの国内委員会が調べた去年の統計などを見ると、こういう出版物あるいは視聴覚の資材、美術品の輸入といったようなものはものすごい数で、これに反して日本から向こうに出しているものというのはまことにりょうりょうたるもののような統計を見せられたのですが、どんなふうなことになっておりますか。私が調べてもらったのを見てみますと、協定の対象になる品目の輸出入実績ですが、アメリカ、イギリス、ドイツ連邦、フランスなどからどっさり輸入をしておりますが、輸出はほんとうに十分の一あるいは五十分の一くらいのひどい数字が出ているのですね。フランスなんかの書画、それから、肉筆で書いたもの、昭和四十四年は二十二億六千四百万。これに対して日本がフランスに同種関係のものを送っているのは一千三百万といったようなふうに読めるのですが、これでほんとうに驚いたのは、日本から向こうに出すものがまことに少ない。交流ではなくて一方的な外国文化のはんらんにまかされているといったようなことをこういう数字から感じるのですが、実態はどうなっているのですか。
#31
○説明員(広長敬太郎君) 御説明いたします。
 これまでの、昨年までの輸出入の実績によりますというと、いまおっしゃられたとおりであります。で、これはおいおい日本の文化活動を盛んにすることによって是正していきたいとわれわれも考えておるわけでありますが、この協定に加入することによりまして対象になります品目は、実はニュース用のフィルムと、その他、国連の製作にかかわるフィルム、録音物等の視聴覚資材のみでございます。それ以外のものは、いま御質問のありましたものを含めまして、すべてすでに関税は無税になっております。でございますので、この直接の影響はないのでございますけれども、ただ、この協定に加入することによりまして、今後相手国が関税をかけているようなもの、たとえばフィリピンあるいはギリシアとかというような国におきましては、わが国の輸出いたしておりますたとえば教育用・研究用の科学機器――コンピューターなど入りますが一そういったものに対する関税はかけられております。したがって、そういう面では、今後この協定に加入することによって輸出が伸長されるのではないかというふうに考えております。その他のものにつきましても、こういういわば片貿になっておりますのは、われわれ日本の文化を海外に発展させるという実際の行動を通じまして是正していきたいというふうに考えています。
#32
○森元治郎君 大臣、実際ユネスコ日本国内委員会の調査なんか見ても、大いに日本の文化が向こうへ輸出され向こうの理解を深めているかというと、非常に少ないのですね。どういうふうにしてこれを振興するか。文化、文化ということはしばしば伺うのでありますけれども、ほんとうに行っていない。その理由はどこにあるのか、どうしたらもっとこちらのものを向こうに出せるか。一つには言語の問題もあるのでしょう。しかし、これは言語はお互いさまだが、日本はかねがね明治の中期以降から言語の違う外国語を翻訳し翻訳し、とうとう翻訳物がわれわれ楽に理解もできるようになった。だから、日本語はむずかしいと言ったって、やはり年月と時間と金、人、努力をすれば、むずかしい日本語のことばも外人がわかるような、外国人のセンスではだで感じるようなものもできると思うので、これやはり国が少し援助して、ことばの問題を、翻訳なら大きな翻訳所をつくるのも一考だと思う。幕府時代には蕃書調所というようなものがあって大いに翻訳物をやっておりましたが、今度は積極的に日本の文学物、石原慎太郎君のものでもいいでしょう。(笑声)そういうものをどんどん翻訳して、それを政府が少し補助して援助して理解を深めるということが大事じゃないかと思うが、やっているやっていると言うが、実態は非常にお粗末なんですね。新聞を向こうで見るといっても日本語の新聞ではだめですが、雑誌、定期刊行物いろいろな書籍、書画、日本のものでもいいものがたくさんあるんですから。それから、映画祭なんかで、モナコあたりの映画祭でも入賞するようないろんな天然色の科学的なフィルムのいいものたくさんあると思うんです。こういうものはさっぱり行っていない。これを国が援助して、本気になって翻訳研究所くらい設けていいと思う。そしてりっぱなものをやる。「雪国」などで川端さんがノーベル賞をもらったというが、これもサイデンステッカーさんとかなんとか、ある限られた外国人の翻訳などで紹介されただけだった。それを日本人がやったほうがもっとはだにあったものを訳せると思うんです。うんと力を入れなければほんとに恥ずかしいと思うんですよ。どんなふうに大臣のお考えはお持ちか伺いたいと思う。
#33
○国務大臣(愛知揆一君) かねがね私も苦慮しておりますことを御指摘いただきまして非常に感謝を申し上げるわけですけれども、やはりいろいろ従来やっておりましたことに反省を加えていかなければならないと思いますけれども、一つはやはり経費の問題だと思います。それからもう一つは、いまも御指摘がございましたが、語学といいますか、ことばの問題、たとえばユネスコにいたしましても、これはちょっとお尋ねのこととはずれるかもしれませんけれども、もっと日本の人が中に入り込んで大いに活躍してもらうということが、また日本の文化の高揚、宣伝にも役立つことになりますけれども、やはりことばの関係その他でなかなか適当な人が得られないということもございます。しかし、一面においては、先般も、政党的に言えば各党の御協力をいただいて、たとえば日本の古来の文化の一つである日本の書道の展覧会、これはパリにおきましても非常に好評でございまして勇気づけられたわけでございますが、ひとついま申しましたような点について各方面の建設的な御意見をできるだけ取り入れて、政府の施策の上に反映していきたいものだと考えておる次第でございます。
#34
○森元治郎君 いまお話があったとおり、国が少しやってやらぬと、翻訳者、学者といったって、とても限られた人ですから、ある委員を任命しプールして、そして人の養成、指導、そういうことをやらない限り、それぞれの文学者なりあるいは個人の先生方にまかしておいたんじゃ、とてもそれはだめだと思うんですね。ぜひともこれは具体的に乗り出して、人の養成――いまお話しの国連にだって、この前も私よけいなことを言いましたが、英語つかいみたいな者を集めてきて、それで向こうに国連に置いておくだけで、そうじゃなくくて、本格的なものを養成し、向こうへ行ったために身分上あるいは生活上困らないようにするような制度をつくって国連の中に人を送り込む。これが国連活動をやるときに、ちょうど政府が強力なる官僚のバックによって政治をやっているように、そういう第五列が国連の事務局に入ってきてはじめて、何かやるときに国連を引き回せるんですね。ただ大臣がちょっと涼しくなったころ飛んで行って一言しゃべっただけでは、とてもこれは国連は動かせないんですよ。ふだんから人を養成し、各部局に配置をし、情報をしっかりつかむ。そこで相呼応して自分の国の主張が国連に反映すると思うので、人の養成、金の援助、これは文化関係においてもぜひとも来年度予算あたりから繰り出していかなければならぬと思うんです。もう一ぺん大臣に伺います。
#35
○国務大臣(愛知揆一君) いま申したことに尽きるわけで、私といたしましても、気持ちの上においては、こうもやればいいああもやればいいと思いましても、具体的な障壁がなかなか越えられないで苦慮しているわけでございます。一そうの努力を傾倒いたしたいと考えております。
#36
○森元治郎君 大至急そういう研究所みたいなものを援助をしてもらいたいと思います。
 そこで条約に入りますが、附属議定書をちょっと見ますと、アメリカだけが自国産業保護のために協定義務を免除されるのですね。そんなことが附属議定書に出ているのですが、これは各国も異議なくこれを承認したのでしょう、わが国もこれに入るのですから。どうしてアメリカだけがこの協定義務からのがれるようになっているのですか。
#37
○説明員(山崎敏夫君) この協定はだいぶ前につくられましたもので、当時は日本は参画しておらなかったわけでありますが、実はこの協定の作成段階におきまして、われわれが承知しておりますところでは、アメリカはいわゆるエスケープ・クローズというものを協定の本文の中に入れることを主張したそうであります。しかし、これは各国がそういうものを乱用するようなことになってはいけないという反対意見も相当ありまして、結局、そういう特殊な事情がありますアメリカだけを対象とする議定書がこの協定につけられたわけでございます。アメリカの特殊な事情と申しますのは、一九四二年のメキシコとの通商協定以来アメリカが締結する通商関係の条約――これも一種の通商関係の条約と観念されているのでありますが一それにはすべてこのようなエスケープ・クローズを入れるという慣行がありまして、その後アメリカの国内法でそれが義務づけられたわけであります。さらに、ガットの規定におきましても、このガットの中にこのようなエスケープ・クローズが入っております。この協定にいたしましても、このようなエスケープ・クローズを入れないと自分のほうとしては協定に入りにくいということを当時アメリカが言ったために、アメリカの加入を容易にするという一つの目的で、かつ、本文に入れるのはいかがかということで、まあ議定書がつくられたわけであります。そういう特殊事情でございますが、議定書の内容は、別にアメリカだけに特権を与えるというものではないので、このような留保をつけて入りましたアメリカに対しましてはもちろん、他の加盟国はいつでも同様の留保を援用できるという仕組みになっているわけであります。なお、その後実際問題としてアメリカがこのエスケープ・クローズを発動した事例はございません。
#38
○森元治郎君 これはよその国がアメリカの文化攻勢をこわがってこういう留保をつけるのならわかるが、アメリカがこういうものをつけるのは納得がいかない。まずいと私思うのですが、どうですか。
#39
○説明員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、最も強力な経済体制を持っておりますアメリカがこういうものを入れたのは、われわれとしても若干わからない点もあるのでございますが、いずれにいたしましても、できましたのが一九五〇年の当時でございまして、わが国もその当時は協定の作成に参画いたしておりませんし、また、アメリカがガットをつくる場合にこれを入れたわけでございまして、それと同じような形で入れたいということを主張したと承知しております。
#40
○森元治郎君 まあ、お互いさまだから、アメリカだけが留保するのでなく、締結国は同時にこっちもこれで入れるのだから、そこで納得したのでしょうが、文化協定の中にこういうものを入れるというのは、協定本来の趣旨からいくと、ちょっと好ましくないというふうに思います。
#41
○西村関一君 本協定の趣旨は、国連のユネスコの活動をより円滑に活発にするために批准を求めておられると思うのでございます。これが発効に伴いまして、ユネスコ国内委員会としては一体どういう積極的な計画をお持ちになっていらっしゃるか。従来のユネスコ国内委員会の活動は、予算等の制約があってかなり努力をしておられますけれども、必ずしも十分であったとは言えないと思うのでございます。この条約の批准に伴ってどういう新たな計画をお持ちになっていらっしゃるか、その点を次長からまず伺っておきたいと思います。
#42
○説明員(広長敬太郎君) この協定に加入いたしますというと、わが国につきましては、主としてニュース用の映画フィルムが無税になることになります。この点につきましては、教育、科学、文化、ユネスコ活動に必要な外国のすぐれたニュー久・フィルムを入手することができますので、それを用いまして各都道府県及びその都道府県の中にあります民間のユネスコ協会等に御活用いただけるものを積極的に取り入れまして活用していただくということを考えております。
 それから次は、わが国から積極的にユネスコ活動として各国に協力するという意味で問題を考えますというと、本年度から日本の金をユネスコ本部に寄託いたしまして、それを使いまして、日本の教育専門家がアジアその他の地域に出かけていくという制度を考え、目下ユネスコと細目を詰めておりますけれども、そういう方々が教育用器材を持って行かれるわけであります。それを持って行かれて、現地でもって現地の先生方にどうして教育するかということを研修していただくわけでありますけれども、その場合に、日本の教育機器のすぐれた点などを説明いたしまして、なるべく広範に使っていただくように努力したいというように考えております。さらに、先ほども御指摘がございましたけれども、その他の文化財、特に日本の文字で書かれた文学作品等でございますけれども、これにつきましては、来年度予算におきましては積極的に予算の増大をはかりまして、現在国内委員会及びユネスコ本部で日本語の文献を翻訳しているその量を拡大いたしまして、積極的に各国に活用していただくようにはかっていきたいというように考えております。
#43
○西村関一君 いまお話しの、ユネスコ本部に若干の金を寄託して、日本から派遣する学者、その他専門家の活動に資するようにしたいということですが、それはどのくらいの金を寄託するつもりですか。また、予算があるのか。それから、来年度においてはさらに予算のワクを広げてやりたいということですが、現在よりはどのくらいのワクをふやしていきたいか。私の承知している範囲では非常に国内委員会の予算は少ないですよ。あれでは何もできないと思う。そういう点に対して事務局の積極的な考え方をこの際要求したいと思うんですが、そういう点に対してはいかがですか。
#44
○説明員(広長敬太郎君) 第一の点でございますが、本年度の予算で認められました予算は総額で八百万円くらいであります。そのうち五百万円ほどをユネスコのほうに寄託いたします。三百万円ほどは日本人の国内における準備、器材、教材を買うのに充てるということにしております。さらに、今年度は、農業教育の関係の教員を現地で研修するということで、農業教育を中心としておりますけれども、来年度はさらにこれを拡大いたしまして、理科あるいは数学というようなものを考えております。
 それから、翻訳関係の予算は、目下思想文献の翻訳で、日本語から英語、フランス語に直しますのが約二百万円でございます。昨年度まではこのユネスコに五十万円ほど寄託しておりましたけれども、本年度はそれが継続できませんでしたが、来年度は努力いたしまして、これを少なくとも五〇%アップぐらいにはしたいというように考えております。非常にそれでも総額は少のうございますけれども、何せ、御承知のように予算制度がなかなかきびしゅうございますので、徐々に大いにやっていきたいと思いますが、よろしくどうぞお願いいたします。
#45
○西村関一君 いま次長からの御説明によりましても、きわめて零細の予算ですね。零細といっても、二十万とか三十万とかという金は、ユネスコの国内委員会がユネスコ本部に寄託するといったような金じゃないと思うのです。そんなわずかな金で何ができるか。五百万円とか三百万円とかといっておっても、一けたも二けたも違うのじゃないかという印象をわれわれは受けるわけなんであります。この条約を批准するにあたって、ユネスコ活動をもっと活発にしていくためには、国内委員会の予算はふやさなければ、ただ輸入の関税が免除されるということだけで、それでこと足れりという考え方では、私は日本の国内委員会としての使命は全うできないと思うのです。そういう点は事務局としては文部大臣に強く要望して、そういう予算の面において……しかし、予算にはやはり事業が伴いますから、具体的な事業の応答、いま森委員からの御質疑にもありましたように、また外務大臣からの御答弁にもありましたように、この際文部当局としてもしっかりそういう点に対して本腰を入れてやってもらわなければ、ユネスコに対するわが国の貢献というものは私はあまり期待はできない、こう思うのですが、これは次長に幾ら言ってみたところで始まらぬと思いますけれども、そういう点に対して外務大臣にお伺いをいたしますが、これはやはり外交上の問題にも関連があることでございまして、予算の獲得ということはなかなかきびしいものがあるということは承知しておりますけれども、このユネスコの精神を生かしていく日本外交の立場からも、やはりこういう面に対して、この条約を批准するにあたって、むしろ、外務省の管轄でないとか、文部省の管轄だからということでなしに、大所高所から日本外交の、文化外交、文化・科学・技術外交という立場からもこの問題を取り上げていただきたいと思うのですが、外務大臣の御所見を承っておきたいと思います。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま西村さんから御質疑がありましたその御趣旨は、全く私は同感なんでございまして、かねがね外交政策の基本として文化あるいは技術その他の面においての国際協力の中において日本の占める役割りは大いに大きいと思っております。これは大いに伸ばしていかなければならない。そういう観点に立って、所管がどうであるというようなことは別といたしまして、特に先ほども私自身も申しておりますように、一つの大きな問題はやはりお金の問題、予算の問題でございますから、これはひとつ大いに従来の旧習になずまず、飛躍的な努力と成果をあげるようにいたしたいと考えております。
#47
○羽生三七君 ちょっと関連して。
 先ほどの森、いまの西村両委員の御質問に関連して大臣から金の問題というお話がありましたが、大体日本がこの種の問題についての考え方をひとつ変える必要があるのじゃないかと思うことは、恒か金を任す場合に、これは特に大蔵省ですが、すぐ投資効率を考えるわけですね。利潤のあがることをまずまっ先に考える。この種の問題は、そういう目に見えた利益というものは何もないわけです。ですから、そういう意味での考え方を根本的に変えない限り、いまお話を聞いておれば、二十万とか三十万とかというような、いまの世の中ではけたのまるで違う金で議論をしておるこの現状、まことに遺憾に思うわけです。そういう意味では、それは外務省、文部省の関係もあるでありましょうが、大蔵省のお考え方をちょっと変えてもらうように積極的なひとつ御努力をお願いをしておきます。
#48
○小野明君 関連。
 この提案理由を見ますと、輸出国となりつつあると、輸出が増大をしておる、こういうふうな説明があるわけですが、出されております資料によりますと、現在額のみが書かれておりまして、どういうふうに増大しておるかということがわからないわけですね。それで、この附属書関係で、大まかでいいですから、伸びつつある点を若干説明をいただきたいと思います。
#49
○説明員(広長敬太郎君) これは私たちの事務局で調べたものでございますけれども、伸びつつありますのは、実は先ほど森先生から御指摘がありましたように、総体的にはなかなか出にくいのでございますけれども、輸出のほうをとってみますというと、たとえば書籍ですと、昭和三十四年にはわずかに八億五千七百万円だったものが、三十九年には二十二億六千二百万円、それから四十四年には四十九億三百万円というようにふえております。それから、新聞はほとんど変わりませんで、雑誌その他の定期刊行物は、これまた三十四年には七億八千七百万円であったものが、三十九年には十六億八千四百万円、四十四年には二十六億八千万円というように伸びております。書画につきましても、これは三十九年から四十四年の間に伸びまして、三十九年では一億九千一百万円だったものが四十四年には四億五千一百万円に伸びております。それから、映画用天然色フィルム、これはかなり伸びておりまして、三十九年では四億八千七百万円にすぎませんでしたものが、四十四年には十億六千七百万円にふえております。
 以上のようでございまして、次第に伸びつつあるのでございます。
#50
○小野明君 もう一問ですが、この附属書のD関係の伸びておるというのは、これでは免税額、物品価格総額だけを書いてありましてね、わかりませんね。
#51
○説明員(広長敬太郎君) お手元にお配りしてありますのはこれでございます。これは四十四年中の輸出入の実績だけでございます。おっしゃるとおり、これだけではいかに伸びたかわかりません。
#52
○小野明君 どういうふうになっておるのか。
#53
○説明員(広長敬太郎君) それの抜き書きしたものが、抜き書きといいますか、それを逐年というか……
#54
○小野明君 いや、逐年でなくていいですよ。
#55
○説明員(広長敬太郎君) この附属書のDでございますか。
#56
○小野明君 D関係、教育用・研究用の科学機器ですか。
#57
○説明員(広長敬太郎君) これは実は輸出のほうは私どものところではこれはデータは貿易月表の統計から出してつくりましたものでございますからわからなかったのです。大蔵省かどこかこれは……国内委員会のほうではわかりません。
#58
○西村関一君 やはりそれは調べてね、この委員会に資料提出しなさらぬと、こういう大事な審議をしているときに、わからぬじゃ済まされぬと思いますね。その点、委員長においてもしかるべくお取りはからいをいただきたいと思います。さらに、「美術品、視聴覚資材、科学機器、」に続いて「盲人用物品等の」云々ということがありますが、この資料の品名の別紙のところに、「附属書E(盲人用物品)に関連して」というのがございます。これは一体どういうものが入っているか。
#59
○説明員(広長敬太郎君) 関税定率法施行令の第十六条の三によりますというと、これは盲人用物品だけではございませんけれども、盲人用のものについてだけ申し上げますというと、「盲人用の点字器(机上用のもの又はポケット型のものに限る。)」そうでございますが、「盲人用の点字器、タイプライター、時計、はかり、温度計及び体温計」というように規定されております。
#60
○西村関一君 いまの品目は承知しておりますが、どの程度入っておりますか。どのくらいの数が入っておりますか。
#61
○説明員(広長敬太郎君) ただいまのところ、手元に数字がございませんので、調べまして後ほどお答えさしていただきます。
#62
○西村関一君 これは私、なぜこういうことを聞くかと申しますと、そのために盲人たちがどれだけの利便をユネスコから受けているかということを知りたいんです。それから、国内委員会としても、そういうものを入れておれば、当然その数字くらいはつかんでおらなきゃいけないわけですね。盲人だけじゃございません。身体障害者用の義足とか義手とかいうようなものもあろうかと思います。あるいはろうあ者の補聴器でありますとか、いろんなものがあると思います。そういったものがどの程度まで日本に入っているか、それがどれだけの利便を与えておるかということを知りたいんです。あるいは、逆に日本からそれらのものがさらに開発途上国等に送られてどれだけの貢献をしているかということも、おわかりになれば、ひとつこの際お答えを願いたいと思います。
#63
○説明員(広長敬太郎君) 両方ともただいま手元にございませんので、調べてお答えさしていただきます。
#64
○西村関一君 これじゃ質問のしようがありませんから、これはやはり後日、委員長において、しかるべく資料を整えて各委員に提出をお願いいたします。
 以上でございます。
#65
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、四案件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#66
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより四案件について一括討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、四案件につきまして順次採決を行ないます。
 まず、民事訴訟手続に関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#68
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、
 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#69
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、
 外国公文書の認証を不要とする条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#70
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#71
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、四案件について議長に提出すべき報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#72
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#73
○委員長(長谷川仁君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#74
○森元治郎君 アメリカ軍のカンボジア進駐は、まあ、たいへん大きなショックを与えておるようですが、そのときにあたって、インドネシア政府が主唱者となって、会議を十六、七日開くそうですが、政府はこれに外務大臣を出席させるということのようですが、いかがですか。
#75
○国務大臣(愛知揆一君) このカンボジアの情勢につきましては、政府としても非常に重大な関心を払っておるわけでありまして、政府としては、かねがね、インドシナ半島全体について軍事的な争いがエスカレートしないようにということを念願といたしておりましたことは御承知のとおりであると思います。そういう観点からいたしましても、カンボジアに新たな事態が起こってこの戦火が拡大するようなことが起こるようなことは何としても防ぎたい、こういう念願に燃えているわけでございますが、たまたま、アジア太平洋諸国の中にも同じような機運が盛り上がってまいっておりますので、いろいろの経緯はございましたけれども、インドネシアが主催国になって相当多くの国々に対して会議の招請を行なったわけでございますが、政府といたしましては、さしあたりカンボジアにおいて戦火が拡大しないように、また、カンボジアの中立というものが確保できるように、そういう観点から何らかの解決の方途が建設的にないものかと、そういう考え方に立って協議をし、あるいは何らかの行動に出るようなことになれば、これも一つの解決策の一助になるであろうと、まあ、そういうような考え方から、十六日、十七日といま予定されておりますが、会議に参加をいたすと、かように考えておる次第でございます。
#76
○森元治郎君 世界の情勢を見ても、ソビエト、中国はもちろん、イギリスもフランスも、アメリカの今度の行動に対しては不賛成ということははっきりしているように伝えられております。いま大臣のお話で、この会議で何か協議し行動に移れるようならばけっこうだとおっしゃったが、何をこの会議でおやりになるつもりか、日本政府の場合。何をここで訴えたいのか。
#77
○国務大臣(愛知揆一君) カンボジアの問題に限定して申しますれば、たとえば一九五四年のジュネーブ協定というものが存在しておりますし、そうして、カンボジアの中立ということが中心になって関係国が合意をし、かつ、その線で努力をしてきたことも事実でありますから、たとえばその考え方に、こういう事態の際において、そこに戻るというような考え方がはっきりしてくるのは一つの行き方ではないかと考えております。しかし、いずれにいたしましても、日本だけで、あるいはある国だけでは、そういったことがなかなか実行ができにくい。イデオロギーを越え、平和目的ということのためにコンセンサスをつくり上げていくということが私は必要なことではないか、それに対して日本としてもそこに参加するということに意義があるのではないかと考えておるわけでございます。
#78
○森元治郎君 この会議に実際に出る国々は、もうインドネシア政府から連絡があったと思うのですが、大部分は、主たる国々は、現に兵力を出しておるようなニュージーランドやあるいはオーストラリアとかタイとか、直接関係のないようなのはマレーシア、シンガポール、日本――日本は若干足を突っ込んだような形に引きずり込まれつつあるけれども、そのほかの、新聞で見ると、招請状を出したといわれる、カンボジアから西のほうのビルマ、インド、パキスタン、セイロン、あるいは北に来て北朝鮮、中国などというのは何も返事をしていないようですが、参加国はきょう現在のところはっきりしたのはどこですか。
#79
○政府委員(須之部量三君) インドネシア政府からまだ正式な意味で最終的な国がどうなっているかということの連絡は受けておりません。で、いま出席するということのはっきりしておりますのは、ニュージーランド、豪州、それからマレーシア、タイ、フィリピン、それからラオス、南ベトナムは――もちろんインドネシア含めてでございますが――はっきりしております。それから、シンガポールと韓国については出席が、まだはっきりと返事があったという連絡があったとは聞いておりません。それからなお、カンボジアはもちろん当事国――会議にはおそらく出てくると思いますが、いわゆる会議の招請を受けた会議のメンバーとしてということではないという形で出てくるというふうに考えております。
#80
○森元治郎君 きょう現在の話じゃ五、六カ国、しかも、みんな直接関係している国だけが集まって相談すれば、よそから見ればこれは一方的な会議だということは、私ら偏見持たないようにつとめてるつもりですが、それでもこういう現に戦っている国だけに、日本が遠くから出席するということは、非常にまずいんじゃないか。私は、すみやかにあのカンボジア進撃の三十日、ニクソンの演説、日本時間一日の午前八時、あの瞬間だって、しばらく延期せよということを私は言ってよかったんじゃないかと思うが、ずるずると、呼ばれたから入ってく。もちろん、インドネシアの裏には、アメリカがインドネシアをして招請をさせたでしょうけれども、わずかその直接関係者が集まって、日本ば兵隊も出してないのに、そこへ行ってどんなことを言おうと、全世界平等に東西に向かって説得力のあるアピールは生まれてこないんじゃないか、色のついたアピールになるんじゃないか、こんなふうに思いますが。
#81
○国務大臣(愛知揆一君) いろいろの見方はございましょうけれども、しかし、目的は、先ほど申しましたように、日本といたしましては戦争状態の拡大ということを欲しない。あるいは、現状に対してどういうふうにしたらばそういう大目的に沿うような解決が求められるかということに対しては、私も、平和愛好国の一人の日本としてなすべき任務といいますか、使命を達成するような努力をすべきではないか、かように考えるわけでございまして、参加国の数あるいはそれに対しての見方はいろいろございましょうけれども、しかし、現に私の知る限りにおいて、ただいま言及されましたが、インドネシアがアメリカの要請によって動いているとは私は考えませんし、インドネシアは、ベトナム戦争に対して、御承知のように中立の立場に立っておるわけでございます。そういう点も考え合わせ、また、そこでたとえば一つの一たとえばの話ですけれども−アピールが数カ国あるいは十数カ国の間の合意でできるということ、その内容によりましてはこれはやっぱり国際的に相当の影響を呼ぶものではないか。私としては、一方に偏せざる立場でもって平和的な解決がすみやかに行なわれるように乗り出したい、これが日本としてのっとめではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
#82
○森元治郎君 「偏せざる」と言うが、先ほど申したような、きょう現在の応諾した国々の顔ぶれ、数の少なさから見たら、これはどうしたって結論は一方的な色がきわめて濃い。「アメリカのカンボジア進駐はやむを得ざる措置」というような気風を持った国々の集まりであるならば、なかなか相手側を引きずり込んで、引っぱっていこうというのには不向きな会議だと思うのです。私は、この際はすみやかに、招請はあったけれども延期、こういうのが政府のとるべき立場だったと思うのです。いかにこの会議でやるかくらいの――アピールがどういう内容か伺いますが、どんなコミュニケになるのですか。これは新聞では、それぞれ案を練って各国に内示し協議もしておるらしい。その訴える点を伺いたいのですけれども、そのようなことは、会議に行かなくても、日本がそれぞれの関係を通じて、共同であるいは個別に大いに発言をしても、十分内容次第によっては他国を傾聴させることができると思う。わざわざ参戦国の中に遠くのほうから出て行って一緒になってしゃべっても、決して人はこれに耳を傾けないと思う、こんなふうに思うのですけれども、どうしても参加なされるおつもりのようだが、私は、日本はいよいよ東南アジアに出てきたというような反感あるいは危惧を――危惧が正当であるかどうかは別として――与えることは、日本にとってきわめて大きなマイナスだというふうに思います。そこで、何をここで訴えようとするのか。新聞でいろいろ個条書きみたいなものが出ておりますが、共同コミュニケの内容となる日本側の立場をもし一つ一つと分けられるならば、どんな内容になるのでしょう。
#83
○国務大臣(愛知揆一君) 要するに、先ほど申し上げましたような線に各国を同意をさせて、そうして一つのムードを出すようにいたしたいということを考えておるわけでございまして、これはまだ会議前でもございますから、的確に具体的に申し上げる段階ではございません。
#84
○森元治郎君 とてもそれは、ムードは反日のムード、よけいなところに出てきたといったようないろいろな他国の反撃、自分の意図に反して非常な疑惑を他国に持たれる結果になるから、私はこれはやめられたほうがいいと思うのです。
 ところで、一体政府は、アメリカのとった措置はやむを得ざる措置だと、「やむを得ざる措置」ということはどういうことから判定してそういう結論を出したのですか。
#85
○国務大臣(愛知揆一君) まず大前提として、政府として戦火が拡大するということは決して望んでいないわけでございます。平和的な処理、解決がどうしても望ましいことである、こういう観点に、大前提として立っておることは申すまでもないところであると思います。
 それから、今回のニクソン大統領のとった措置というものは、いわゆる「聖域」と称せられておりますけれども、カンボジアの国内に北越軍等がかねがね入っておる、居すわっておるということが事実であり、かつ、その軍事的な活動が、最近、特に最近において非常に激化して、これが米軍及び南越軍に対して非常に危険な状態になっている、これを自衛措置として追い払わなければいけないということで、この聖域に攻撃をいたした。そしてこれはその目的だけの短期間のものであって、いわゆるベトナミゼーション、あるいは米軍のすでに発表しておりまするベトナムからの漸次撤退ということを成就させたいための一つの手段であると、こういうことが大統領の言動にあらわれておるわけでありますし、それがいろいろの説明からも確認されていますので、その声明等にあらわれている米側の立場には、米側としては万やむを得ざる措置であったんだろうというふうに読みとれるというふうに考えているわけですけれども、しかし、これを決して好ましいことと思っているわけではございませんで、こういう事態が起こったから、ますますもって、これはカンボジアの中立の維持という、その基本的な精神に基づいて、こういう事実が現出するように日本として最善の努力をする。たとえば今度の会議も、森さんのおっしゃるように、あるいは一方的に偏しているではないかというようなこともいわれますけれども、そうかといって、ここで手をこまねいて、このアジアに万一大動乱がさらに起こるようなことを手をこまねいて傍観しているということは、アジアの一国として、平和国家としての日本としてとるべき措置であるかどうか。私は、これが一つの第一歩として、さらに多くの国々が参加し、あるいは国連が動き、あるいはその他の方法によりましてその解決の方途というものが見出せることになり、あるいは関係各国がこれに理解と協力を示すようになることが望ましいことではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
#86
○森元治郎君 アメリカの進駐は、満州事変のころに、例の林銑十郎朝鮮軍司令官が鴨緑江を渡って関東軍あやうしと言って朝鮮軍を出動させた。そして政府は心ならずもこれを追認している。こういうようなこととよく似ていると思うんです。いま大臣、おっしゃったが、ニクソンは、これは短期間だ、ベトナム化のためだと言うが、短いからいい、長いから悪い、そういうもんじゃないので、いやしくも相手は中立国であるというなら、中立国らしく、アメリカはどうしたらということの配慮が当然あって、世界に訴え、関係国に訴え、十分手続がとられるまでの時間があるんですから、前から陣地を構築しておったといいますから、前からそういうのがあるならば、関係国――ソビエトでも、イギリスでも、フランスでも、世界に向かって、国連に向かってそういうことを知らせる。しかも、カンボジア政府に向かって同意を取りつける。それが順序ではないかと思う。短い期間――ちょっと二カ月、六月が終わるまでちょっと入ってすぐ引っ込んでしまう。アメリカ人の生命があぶないから他人のことはかまっていられないでは、中立国をほんとうにアメリカは大事にする精神があるのか。必要の前には国際法も自己流に解釈していくのでは、ほかの集団とアメリカは何ら異なることがない。世界法の秩序を守っていくんだという民主主義の旗じるしを掲げているアメリカとしてはほんとうにまずい、弁解のできないやり方じゃないか。大体、カンボジアから、来てください、地上兵力を派兵してくれということは言われてないはずだ。しかも、プノンペンから来る電報を見れば、軍のスポークスマンも、政府筋のあれでも、われわれは中立国なんだ、われわれはアメリカの進攻を認めないという軍司令官もあるし、痛しかゆし、来てもらいたいようなもらいたくないような、何かもやもやとした空気も向こう側にある。やはり事を起こす前には十分の世界の理解を求め、そして中立国を大事にするというならば、解放戦線なり北ベトナム軍を攻撃する前に、まずみずから範をたれて、中立国尊重の態度が事前にあるべきだと思うのだが、大臣は、アメリカの態度は好ましくないとおっしゃった。私は、会議なんかに行くよりは、好ましくないということ、そうして当然中立国を守るんだという方途を見つけたいといういまの大臣のその気持ちをアメリカにぶつけることのほうがより大事である。会議に参加することは二の次、三の次である。この前の私の質問の要点は、アメリカが暴に報いるには暴だというような調子で、短期間でちょっと入ってちょっと出てくるというような軽率な行き方、これは私は厳重に責められるべきものだと思う。条約尊重を身をもって示さない。他国の非難が当然来るから、フランスもイタリアもイギリスも冷たい。こういうことになってくる。アメリカは事前に中立国尊重の一体誠意があるのかないのか。このようなことでは世界の非難は当然アメリカがしょうべきであると思う。これを押えることのほうが、指摘することのほうが平和への一段階につながると私は思うのですが、どうですか。
#87
○国務大臣(愛知揆一君) 現に起こりました事態について、その過去の経緯がどうであったかということを論ずるよりも、私は、前向きに事態が平和的に解決できるように、そうしてカンボジアの中立ということが確保されて、事態がおさまるように、この点について最大限の努力をするのが日本の立場ではなかろうかと考えておるわけでありまして、そういう点で、アジア・太平洋諸国のみならず、参加各国に対してもこの気持ちを徹底してコンセンサスをつくり上げるということに努力を集中いたしたいと考えているわけであります。
#88
○森元治郎君 カンボジアからアメリカに対し、あるいは関係国に対し、地上兵力を出して追っ払ってくれという要請があったのですか。
#89
○国務大臣(愛知揆一君) これは外国の事実のことでありますから、政府委員から……。
#90
○政府委員(須之部量三君) いままで発表されておりました文書では、軍需物資の援助は求めておりましたが、軍隊の援助を求めたということはなかったと思います。ただ、二、三日前でございましたか、今回の措置に関連しましてカンボジア側で、今回の米側の措置、これについては了承するという意味の声明を出しておるのは御存じのとおりでございます。
#91
○森元治郎君 中立国に黙って、自分の必要からベトナム化を促進するためにということ、しかも、浸入していくのは短い期間だからといって黙って押し込んで、思い切って大砲をぶっ放してしまったんでは、アメリカはとても世界の理解と同情は得られないと思う。こういうことに対して、私は、アメリカはやめるべきだというくらいの強いことをアメリカに言うべきである。一体、愛知さんも私も年輩だ。あなたのほうが少し年上かもしれないけれども、同じ時代で、日伊同盟とか日独同盟とか、いろいろございましたよ。一つ協定結ぶというと、もうそれは全く忠実というか――忠実はけっこうなことですが――あまりにも石頭のような頭でやっていて、最後にぶっ飛ばされて、泣き言言って悪口言う。日米安保条約というのは平和のためにあるのですから、これが東南アジアの平和のためにならぬ、へたすれば世界平和にも脅威を与える、安保条約の目的とすることにも反する、日本の利益にもならない、アメリカの利益にもならないといったらば、私は、アメリカに向かって厳然として面をおかして忠告することが日本外交の一番大事なことじゃないか。あなたのためなんだ、私のためなんだと。それを、ただ追随して、できた事実をあとから追認して、「やむを得ない措置」であると。「やむを得ない」という日本語の表現はあまり外人は使わない表現で、日本語独特の、わかったようなわからないような非合理的なおかしなことばです。それでごまかしていくということは、いよいよ戦火を拡大していくと思うのです。大臣に伺いたいのは、ほんとうの友好というのは、やはり面をおかして忠言をするということ、これが一番大事だと思う。この点をお伺いしたい。
#92
○国務大臣(愛知揆一君) 安保条約を前提にして日米が友好関係にある、それだからアメリカの言うことには何でも追随する、こういうふうな前提にお立ちになっての御質疑ですけれども、私はそうは考えません。これは安保条約とは直接関係のないことでもあるし、それから、日米親善ということは現内閣の基本方針でありますが、アメリカの言うことと別に、日本の自主的態度というものがあるわけだと思います。したがって、そういう立場に立って行動をいたしつつある、こういうふに御理解いただきたいと思うわけであります。
#93
○森元治郎君 自主的立場がさっぱり表に出てこないから国民は非常に心配をするわけなんです。大臣の見通しとしては、もはやベトナム戦争ではなくてインドシナ戦争になった。これは信用すべき筋からの新聞報道によれば、どんどん山奥に入ってしまう。そこのベトコンというか北べトナムというか、北側の兵力はどんどん奥地へ入る。あるいは北のほうへ下がって山岳部に入る。とてもこれは簡単に片づくものではないことは過去ベトナム戦争の実績が示すとおり。今日一つも事態は変わらない。私はどろ沼への一歩でインドシナ戦争になったと判断しますが、大臣は、七二年くらいには片づくと穏かになるんだ、撤兵も一カ月一万二千五百人か何かでどんどん撤兵はする、そうして問題は広がらないで終わっていくというお見通しかどうか。外交はやはり長期的な見通しも大事ですから、大臣の事態の見通しを伺いたい。
#94
○国務大臣(愛知揆一君) いまおことばにもありましたが、インドシナ全体の戦争になるというようなことは何としてもこれは避けなければならない、私はこう考えております。
 それから、今回のニクソン大統領の声明と申しますか、この文章をよく読んでみましても、とにかくアメリカの国民は何ぴとも戦争を望まない、そして米軍の撤退ということをみんなが望んでいる、その目的を達成するためであって、その心配をふやすようなことをしたくないためにこういう措置をとっているんだということでありますから、少なくともその限度においてこれがとどまってもらわなければ困ると考えるのは、当然ではないかと思います。そのニクソン声明にあるような終局の目標というもの、あるいは基底の考え方というものが成果をあげるようにしなければならない、そういう考え方に立って、いまも仰せられましたが、これがどろ沼に入る、あるいは昔の林将軍の越境ということにならないようにするというのが私はアメリカの国民の願いでもあると思うし、それからアジアの平和国家である日本のもちろん願いでもあるわけです。これに対してできる限りの努力をするというのは、私は、私どもの責任だと考えるわけであります。
#95
○森元治郎君 いま大臣のおっしゃったことをそのままアメリカに大臣の手紙としてぶっつければわれわれは満足だし、会議に行かなくても、この会議参加国というのは少しばかりの兵力を、条約上の立場その他から形式的に出しているだけで、これはアメリカに向かってずばり言うほうが会議参加よりはもっと効果的であると思う。
 そこで、大臣、お答えがなかったが、私はインドシナ戦争に入ったという判断、これを大臣は入らないように努力するとおっしゃったが、これは入ったと私は考えざるを得ない。ことに中ソが、ことにソビエトは対応する対策を考慮せざるを得ないというふうになり、中共は全力をあげて応援するとなってくれば、これはなかなかもつて、インドシナの戦火は拡大の一歩に入ったと判断するが、大臣のお考えと、もう一つは、七二年までに沖繩返還と言われるここ二年くらいで、一体インドシナ半島に穏やかな状況ができると思うか。私は、インドシナ戦争の糸口に入った以上、いままでよりも複雑広範な、きわめて危険を包蔵するところの事態がインドシナ半島に広がっていくという判断ですが、大臣の御判断を伺います。
#96
○国務大臣(愛知揆一君) これは、その見通しとそれに基づく判断の問題でございますから、意見が異なる点があるのはやむを得ないかと思いますけれども、これは昨年秋の日米共同声明でもそうでありますし、また、先ほど引用いたしました今回の米大統領の声明にもありますように、すみやかにベトナム戦争というものを終局したいということは、大統領もアメリカ国民も熱願をしておるし、また、その方向に向かって努力を大いにしなければならない、こういうことが明らかになっておりますから、それはそんなことを言ったってできないのだ、広がるばかりだ、こういうふうに見通さないで、好ましき状態をクリエートする努力というものが私は必要じゃないか、こういうふうに考えるわけでありますから、私は、一九七二年には少なくともインドシナの状態が現在よりはずっと平穏になっている、こういう好ましき状態をつくり上げるために日本としての努力もしていかなければなりませんし、見通しとしてアメリカとしてもそれを希望して熱願しているわけでありますから、そういう方向への努力は成果をあげ得るものと確信して進まなければならないと、かように考えております。ただ、いまのお話の中で、私、事実関係の上において一つ指摘しておきたいと思いますのは、北越、ベトコンがカンボジア領内に数年来潜入をして、その戦力が相当に強烈になっておる。このことは、一九五四年のそれこそジュネーブ協定に違反する事実というものがここに明らかにされているということを見のがすわけにはいかないのでありまして、これは一方に偏しないで好ましき状態をつくり上げるためには、そのほうの態度、今後のあり方というものに対しても私どもとしては大きな期待を持たざるを得ない、かように考えておるわけであります。
#97
○森元治郎君 大臣はニクソン大統領の演説を引かれました。私その演説を持っておるのが、その調子は、どうもメンツ、大国の威信、こういうところに非常にこだわって、政治性のない演説、ただ国民の浪花節的気持ちをあふるようないわゆるレトリックの非常にかった演説のように見られる。相手のベトコンに世界の第一の大国がほんろうされて二流国になって敗北を喫するなんということは、とても耐え切れるものじゃない。どうしてもたたきつぶせと言えば、これは大国意識を持っておるアメリカ国民としては、そうだと、理屈なしに、そうだという気分、そういうところに訴えているので、政治性の非常に少ない、せっぱ詰まった演説であるように理解をします。私は質問をこれでやめますけれども、日本政府のとるべき態度は、アメリカに向かってすみやかに兵をおさめろと、そして、やはりおそくても交渉による解決というねばり強い方策に転換をすべきだという忠告をすると同時に、ニュージーランドやタイや豪州などという、アメリカのお世話になっている国々と相談するよりも、何といっても、やっぱりグローバルな外交で、ソ連もあるしあるいはヨーロッパの国々もある。これとも相談をして、いまからでもおそくない、広い視野から持っていこうというふうな外交を展開すべきだと思うのです。あまりに現象的な、現場中心のような、東南アジア、インドシナ半島だけを見ている外交ではなくて、やはり東西を見ながらいく必要がある。これにはアメリカにもきついことも言わざるを得ない。そういうアメリカの自制を求めつつ、その実行を求めつつ、パリ会談もさらにうまくいくように持っていき、その仲介をとるのが日本外務省、外務大臣の任務だと思うのです。あまり局限してものを考えないで、広く東西をはかりながらやつていくと、こういうこと。
 それから、兵を引くのはアメリカもつらいでしょう。日米交渉のときに、要するに、大東亜戦争の前のアメリカと日本との日米秘密交渉の中の一番の難関は、中国大陸に展開している日本の兵力を即座に引けと。あれをそっくりアメリカにお返しになったらいいですよ。なかなかそれはできるものじゃない、それを即座に。いま十一月二十六日のハルのノートが出てきましたが、アメリカは同じ立場に立っている。しかし、この撤兵をやらなければ、次の大きな戦争か何かしらんが、おそるべき未来に知らず知らずに入っていくおそれがあると思うのです。そういう過去のことも思い出すと、やはり政治には勇断が必要である。こういうこともひとつアメリカに言うだけの外交を展開してもらいたい。この二点を伺って質問を終わります。
#98
○国務大臣(愛知揆一君) 私もある点においては思いを同じゅうするわけであります。まことに微力でございますけれども、できるだけ各国に訴えながら、また、とるべきステップはとっていくということについて十分考えながら行動していかなければならないということについては、全く同感を持つわけでございます。
#99
○西村関一君 私は、このたびのアメリカのカンボジア侵入につきまして、あの事件が報道せられましたときに、これはたいへんなことになった、日本もまたアメリカも、抜きさしならぬ状態にはまり込んでしまうんじゃないか。さらには、今度の戦争がアメリカが企図しておるような短期に終わることは考えられない。そういう観点から、非常な心の痛みを感じたわけです。何としても、これは自主的な日本外交の立場からも、与党とか野党とかいう立場を越えて、この事態を一日も早く収拾するためには、与党と野党も協力して日本政府に言うべきことを言い、日本政府を通じてアメリカにも言うべきことを言うという態度をとってもらわなければならないんじゃないかという感じを強く持ったわけなんであります。私は、去る五月の四日の日にも、たまたまアメリカから参りました、次期大統領候補の一人と目されておる某氏の側近といわれている人間と会いまして、率直にこのカンボジア問題について意見の交換をしたのでございますが、彼もまたニクソン大統領の決定は必ずしも賛成できない、いろいろな皆さんの御意見のあるところをよく伝えるということを約束して帰ったわけなんでございます。アメリカの世論も、すでに御承知のとおり、賛否両論分かれておる。流血の惨事まで起こっておる。こういう状態で、必ずしもニクソン政権は順風を帆にはらむというような立場にはないと思うのであります。こういうときにあたって、いま森委員からるる話がありましたように、日本政府といたしましてはこれはアメリカのニクソン声明を支持するとか、カンボジア進攻はこれはやむを得ない措置であったとか、また、いま大臣が言われたような、戦火の拡大を防ぎ平和的な処理をするためには一時聖域をたたくということもやむを得ないと、こういう、アメリカ側の言っておることを一方的に是認するということでなしに、先ほどグローバルということばがございましたが、もう少し、東南アジアの置かれておる、特にインドシナ半島が置かれておるところの現時点における情勢を、鋭くその情勢をつかみながら、日本外交の独自な自主的な判断に立ってこの事態に処してもらいたいと思うんでございます。
 そこで、大臣にお伺いしたいのでございますが、いまも森委員の質問にありましたように、私も、アメリカが企図しておるような短期に事態が収拾されるものとは考えないのであります。と申しますことは、たとえ南ベトナム解放民族戦線あるいは北のベトナム民主共和国の軍隊が拠点といたしておりますところのいわゆる聖域をつぶすことができたとしても、第二、第三の聖域ができる。あの広いインドシナ諸地域のあのジャングル地帯において、全部のジャングルを抹殺するということはできないんです。私もカンボジア、ラオス、ベトナム各地を歩いて回りましたが、そういうことはできないんです。カンボジアのプノンペンからシアヌークピルまでの、アメリカの資金によってアメリカがつくったあの道路の周辺はものすごいジャングルです。空の上からながめてみても、ホー・チ・ミン・ルートといわれておる地域はものすごいジャングルです。聖域をつくろうと思えばどこへでもつくれるのであります。ただ一カ所、二カ所の聖域をつぶしたからといって、それで簡単に解放民族戦線やベトナム民主共和国の軍隊が参ってしまうというふうに考えることは、私は認識不足もはなはだしいと考えるのであります。これはアメリカはアメリカの立場で、独自な資料と独自な判断によって、軍事的な判断によってやっていることだと思いますけれども、少なくとも日本政府といたしましては、大臣がさっき言われましたように、戦火の拡大を防ぐという立場から、もう少し自主的な判断に立ってこの戦争をやめさせるために努力をしてもらいたいということを考えるのであります。
 かつて九年前に、南ベトナムのゴ・ジンジエム政権ができたときに、アメリカが五年前に北ベトナムに対して、ベトナム民主共和国に対して爆撃を開始したその前四年間というものは、南ベトナムに進攻した。九年間かかっておりますけれども、いまだにベトナムの戦争は終息していない。そのような二の舞いを今度またカンボジアにおいて彼らがおかすんじゃないか。そういうことをおかさせてはならない。シアヌーク政権が追放された。新しいカンボジア政権ができた。そういうことの成り立ちにつきましては、その背景につきましては、いずれ歴史がその事態を証明すると思うのであります。しかし、九年前のゴ・ジンジエム政権ができた背景にはアメリカがあったということは、これはもう周知の事実であります。そういういわゆるかいらい政権をつくって、そうしてアメリカは、頼まれたからベトナムに出兵したんだということを言い続けてまいりましたけれども、必ずしもそれがベトナム人民の全体の意思ではなかった。そういうことがさらにカンボジアまで及んでいくということに対しては、一方においてはシアヌークによるところの新しい政権の宣言が行なわれておるという事態で、東西両陣営がまさしくまつ二つに分かれてこの事態に対処しようとしている。こういうときに、自主平和憲法を持っている日本といたしましては、あくまでも中立外交の立場に立って、もちろんアメリカ側に日米安保条約の責任がありますから、アメリカに傾斜するということも――傾斜するということばはどうかと思いますけれども、アメリカ側の言い分に耳をより多く傾けるという政府の姿勢は誤りないと思いますけれども、しかし、もっと大所高所に立って、この事態をどのように終結していくかということを政府は考えてもらわなきゃならないんじゃないかと思うのです。私は、どうしたってそう簡単に――ここ二カ月やそこいらでこの事態が収拾されるとは思わない。このままアメリカがカンボジアから軍を引き揚げるとは考えられない。そのプラスする面よりはマイナスする面のほうがどんなに大きいかわからないと思うのであります。そういう見地に立って、これは政府のお考えと食い違うかもわかりませんけれども、私はそういうことを大臣に申し上げてははなはだおこがましいのでありますけれども、この時代に大きな責任を負っておられるところの日本国の外務大臣として、このアジアに起こっているところの事態に対処するために、もう少し自主的な態度をもってやってもらいたい。インドネシア国の招集する会議に出ることも考えておられるようでありますけれども、しかし、これはアジアの諸国が協力している会議とも思われないし、世界の世論も支持している会議とも思われない。私は、こういう会議に出られないほうがいい。森委員の意見と同じでございます。出られるとしても、日本の自主的な立場をきめてアメリカに忠告する。森委員も強く言われましたが、アメリカに忠告するという姿勢を持って出られるならば、これまた別の観点から意義があるかもわかりませんが、しかし、この会議の性格上、これに出られることは私は害あって益はない。日本国に害あって益はない。もう少し自主的な姿勢を示すためにいろんな方法があろうかと思います。そういう点に対しまして、インドシナ半島の情勢は一体どういうふうにつかんでおられるか、その点を、私の所見を交えて大臣の御見解を伺っておきたいと思うのであります。
#100
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、こういう事態に対処して一番大切なことは、冷静に正確に判断をしていくことが自主的外交の要諦であろうと思います。私は、単純に考え、現象を追うという考え方はとるべきでないということについては、森さんの御意見と私は同感でございます。そこで、私は先ほど申しましたが、現にアメリカがとっている措置の基本になったニクソン大統領の演説という中で、先ほども申しましたけれども、それ自体の中で、米国民の大多数は米軍のベトナム撤退を望んでいると、そして私が今夜とった行動は、その撤退計画の成功をさせるために不可欠なものであると。私は、文字どおりこれが一つのよりどころであると思いますけれども、そして、現にとった措置は、この大目的を達するためであると、それから、大多数の米国民はこの戦争を限りなく続けるよりもすぐ終わらせたいと望んでいるが、今夜とった行動はその目的にかなうものであると、こういうことを言っております。これは大統領の決断の私は目標だろうと思う。アメリカに対する態度といたしましては、これをそのままほんとうにアメリカがやり得るように、文字どおり米国大統領が苦心惨たんしてこういう態度をとったんだろうと私は想像するのでありますが、この苦心惨たんしてつくり上げたこの一つの考え方というものが、ほんとうに文字どおりこれが実現できるように私は力をかすことが大事なことではないかと考えております。ですから、私は、そんなことを言ったってできやせぬぞと、戦争は広がるばかりだと、そんなら何もしないでいたほうがいいぞと、こうおつしゃられることは私としてはどうかと思います。私は、すでに当事者がこう言っているのですから、それがほんとうにこのままできるように力をかす。また、そのことが、米国民の大多数だけじゃなくて、全世界の人が期待していることだろうと思いますから、これに対してなし得る限りの協力をするということは、私は日本のとるべき態度であると思います。
#101
○西村関一君 アメリカの当事者であるニクソン大統領がベトナム戦争を短期に終結させるために考え抜いたあげくとった処置である、これはアメリカ及び世界の世論も支持するであろう、そういうきわめて同情的な、アメリカに対する理解的な大臣のことばなんです。それは私は、アメリカ側といたしましては、日本国政府の外務大臣がそういう理解の上に立って協力的な態度をとってくれるということに対しては、アプリーシエイトすると思うのです。しかし、必ずしもアメリカの世論、特に上院外交委員会、上院全体などは、このカンボジア進攻に対して、議会を無視しておる、これは許しがたいニクソン大統領のあやまちであるようなことを言っておりますし、世界の新聞報道界の報道を見ましても、必ずしもアメリカに有利な見解が述べられているとは思われない状態であります。今後それがどう好転するかということは私はあまり期待していないのであります。大臣は、冷静に事態の推移を見きわめながらものごとを判断していきたいと、早急に態度をきめるべきではないということを言われましたことに対しては、もちろん私も大臣のそういうお考えに対して異論を差しはさむものではございません。しかし、先ほど申し上げましたように、もしかりに――仮定に立った議論はすべきでないというふうに言われるかもわかりませんけれども――この事態が、先ほど申し上げましたように、ベトナム戦争が九年間も続いておるカンボジア戦争がインドシナ戦争に拡大して何年続くかわからないという心配が世界の多くの人々からなされておる、そういうことがないことを望みます。アメリカが期待しておるように短期に終わることを望みますけれども、しかし、もしそういうことが不幸にしてさらに一年、二年、三年、四年、五年と延びてまいります場合において、どういう事態にわが国は追い込まれていくかということを、これは沖繩問題と関連いたしまして、カンボジア戦争はB52の爆撃下にあるわけでございます。そういうB52の駐留を認めておる沖繩県を持っている日本といたしまして、これはもう見過ごしにすることができない問題だと思うのでございます。また、東南アジアの問題、特にインドシナ半島の問題は、日本に直接響いてくる問題でございます。一方においては中国がありソビエト連邦があり、それに対応するところのアメリカ合衆国がある。その中にあるところの日本国といたしまして、何としてもインドシナ半島の平和を求めていかなければならぬのであります。それを、ただアメリカに対して理解ある態度を示すだけでなくって、その前にインドシナ諸国人民の声を率直に聞く態度がやはり必要じゃないか、そういうことのために高い次元の外交を展開すべきでないかというふうに私は考えるのでございます。このことをしないならば、私は千載に悔いを残すような事態にならないとも限らないと思うのであります。先ほどもお話がございましたように、二年以内にこの戦争が終わればけっこうでありますけれども、終わらない場合においては、沖繩の返還という問題もその時点においてまた新しく取り上げられる。そういうことがないという確信を大臣はお持ちだと思いますけれども、そういう根拠は一体どこにあるか。アメリカのニクソン大統領の情勢分析とその判断、その決断によるところの行動、ただそれを支持するということだけでは、私はその根拠が薄弱であると思うのであります。特に日本国の外務大臣としてもう少し目を開いて、失礼な言い分でございますけれども、この事態に処するところの的確な、かつまた敏速な判断、そしてまた、これに伴うところの行動を起こしていただきたい。そうでないと、日本の国内の世論も沸騰すると思います。もし外務大臣がインドネシアに行かれるというようなことになりますと、日本の国内の世論も沸騰すると思います。私はそういうことを避けたいと思うものでございますけれども、アメリカの世論も沸騰すると思います。そういうような情勢判断に立って、私はこの機会に――またさらに本日は衆議院、明日は参議院の本会議においてこの問題が取り上げられることであります。さらに引き続き衆参両院の外務委員会においてもこの問題が取り上げられることであります。きょうはこの外務委員会におきまして、時間がございませんから、私はこれ以上大臣にお伺いすることをやめたいと思う、次の機会に譲りたいと思いますが、資料を出して申し上げれば限りがございません。しかし、私は、以上申し述べましたような立場に立って、決して政府を攻撃するとか外務大臣に対して非難を浴びせるとかという意味じゃなくて、この事態に処する日本国の態度、日本国民の態度、そういう点について、もう言うことのできない心の憂いからこういうことを申し上げておるのであります。決してエキセントリックに申し上げているのじゃなくて、私の長い間のいろいろな情勢分析から、あえてこのことを申し上げているのであります。その点、大臣からの御見解をさらに伺いまして、私はその質問を次回に保留いたしたいと思います。
#102
○国務大臣(愛知揆一君) 非常に広範な御意見でございますから、御答弁が間違えるかもしれませんけれども、第一に、私は明らかにさせていただきたいと思いますのは、全部に対して、このニクソン声明に対してまるで一辺倒に理解を示したかのようなお受け取り方をなさっておるのでありますけれども、それは違うのでございます。私は、このニクソン大統領の演説の中でも、終局の目標は、先ほども読み上げましたように、米国自身だってベトナム撤退を早期に望んでいる。それで、これは米国民だけではなくて世界的な私は願望だと思うのです。このことが明らかにされているというところに注目をして、文字どおりこの目的が達成できるように日本としても努力をすべきである、こういう見解に立っているわけでございます。そして同時に、その方法論として今回の軍事的行動をとったことが、ニクソン大統領が言っているように、その目的にふさわしいものであるかどうかということについては、アメリカ国内においても、あるいは諸国においてもこれに対して論議が分かれているということは、私も冷静に分析いたしております。そこで私は、これから日本としてとるべき態度は、ここに言っていることが、見方によれば、ただいまもお話しのように、そんなことを言ったってできっこないのだと言ってしまわないで、実際ここにこういう目的でやったことが、この目的が達成できるようにするということを、そこに焦点をしぼっていく。これは相手側だって望むことだろうと私は想像するのであります。米国ができるだけ早く撤退するということは、ここに一つの命題が提起されているということは、確かに日本政府としてもこれに焦点を合わせていくことがまた一つの実際的なアプローチではないだろうか、私はかような意味で申し上げておるのであります。全体について一辺倒にAからZまでこれに理解と同情を示しているということではございません。その点をまず明らかにしておきたいと思います。
 それから、沖繩問題にも言及されておりますけれども、沖繩については、前々から申し上げておりますように、もう一九七二年返還、核抜き・本土並みということは決定した事実であり、合意された事実でございますから、これに影響することはございませんし、また、先ほども申しましたように、このニクソン大統領のこのくだりの点について、このとおりに進むようにしたいと思いますし、また、その成果があがれば、七二年返還の時期には、いまよりは少なくともはるかに軍事的な活動、紛争というものはデスカレートしていく、こういうふうな見方で進んでいきたい。また、そのためにはそれ相応の状態をつくり上げることについて日本としても協力をしていくべきではないか。これはお断わりしておきますが、アメリカに対する協力というだけではございません。これは全アジアに対する日本の立場としてさようにすべきである、こう考えておるわけでございます。
 お断わり申し上げましたように、非常に広範な御意見でございますから、お答えが足りなかった点もあろうかと思いますが、なお必要に応じて補足させていただきたいと存じます。
#103
○黒柳明君 マリク外務大臣提案のインドネシア会議、今後どんなことがあってもこれに出るということは政府の最終決定なんでしょうか。というのは、二十三日の武器援助から始まって、このわずか二週間くらいの間にベトナム、カンボジアの様相というのは非常に流動性があって変化があるわけです。議会も驚くような、地上軍の介入はすでに五万にもなっているわけですね。あるいは北爆したかと思ったらすぐ停止、あるいはニクソン大統領の声明、そして六月までの限定作戦とか、非常に毎日毎日変化が多い。十一日、十二日行なわれるというのが、どこかの国の外務大臣の都合で十六、十七日に延びた、こういうことも伝わっております。ですから、まだ十六、十七日までには日にちがあるわけですね、一週間ばかり、その間に。ソ連も中国も非常にこれについては非難しております。あるいは何らかのもっと強力なカンボジアを支持する行動に出るかもわかりません。いかなる事態があっても十六、十七日に予想されるいわゆるアジア会議には日本政府としてはもう出るのだ、こういうことはもう最終的に決定されたのか。あるいは、これから一週間の間、何か変化があった場合、いわゆる反共的な色彩が強いといわれているわけですね、あるいは、日本としても平和に対しての努力、こういうことを中心に出るわけだと思うんですけれども、そういうことが非常にやっぱり挫折するような方向、あるいは、反共色が決定的になるような意図、あるいは、こんなことないと思いますけれども、中国あたりあるいはソ連あたりが相当に強硬な手段に出た場合、日本としてやっぱり国際的なこういう立場というものを考慮せざるを得ないような事態が出る場合、そういう場合でもこの会議には出席するんだと、こういうことは決定しているんですか、どうですか。
#104
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまもお話がございましたが、「いかなる事態が起こっても」と言われますと、将来のことですから、一〇〇%、何でもかんでも、やりが降っても何でもというような意味で決定したというのではございませんが、ただいまのところは出席をいたすことにいたしまして、そして会議が始まる前にも、ただいまもお話がございましたが、反共的色彩が濃厚であるとか、あるいは一方を敵視するというようなことになったんでは意味が少なくとも薄らぐと思いますし、日本の意図するところではございませんから、そういうような根回し等については、現在もいろいろとやっておりますが、ただいまのところは、出席いたしまして十分日本の意見を述べ、かつ、コンセンサスを調整することにつとめたいと思います。
#105
○黒柳明君 いまも言いましたように、非常に流動性があるということを踏まえて、と同時に、私も、できるならば出席してもらいたくないということも含んでぜひ検討もしなければならないのじゃないか。まして何か事態が起こった場合には、当然、これに対しては十二分に出席に対しての考慮が払われるべきだと、こう思うわけです。
 それから、ロン・ノル政権の特使でシン・バルさんが来て外務大臣とお話したと、経済援助をお願いしたいと、こういうことですけれども、この内容は新聞で報道されております。概括的にどういうことであるのか、時期や何か明瞭にされておりません。検討するということでお話は終わっているということですけれども、この点、いかがなんでしょうか。というのは、結局、この会議に出席することも、何か日本が思ってもいないような反共色が強いという目で見られ、ましてこのシン・バルさんという人は、報道で見るところによると、いまの革命の先頭に立ってシアヌーク殿下を追っ払ったその主役者であるともいわれております。ですから、こういう人に会うこと自体には問題はないと思いますけれども、何らかここで経済援助を与えるなんということになりますと、日本がさらにまた色めがねで見られる可能性があるんじゃないかと、こう思うのですけれども、いま、現在検討という、これを約束したというようになっておりますけれども、この点についてもうちょっと触れていただければと思うんですが。
#106
○国務大臣(愛知揆一君) シン・バル氏が来日しまして、私に面会を求めましたから、昨日夜会いましたことは事実でございます。そして要点は、これは正確な日にちはちょっといま失念いたしましたけれども、二、三週間前にカンボジア政府として一般的に各国に対して協力を求めたわけです。で、そのときに、日本としては軍事援助というようなことは全くできませんということはもう頭からお断わりをしているわけです。さらに、昨日シン・バル氏からも援助を求める話がございましたから、これは軍事援助ということでは問題になりませんよということに対して、それはよく承知しております、そういうことをお願いするわけではございません、ただ難民と申しますか、そういう者に対して人道的な立場等から見ても、カンボジア人民は非常に苦労しておりますから、そういうところも頭に入れて、できれば御協力を願いたいということでございましたから、そういうことでございますならば研究はいたしましょう、そういうことでお別れをしているわけです。
 なお、お尋ね以外の点に及びますけれども、御承知のように、カンボジア国内といいますか、領域内におけるベトナムの利益代表国を日本が引き受けておるわけでございますが、ベトナム人の虐待問題その他がございまして、そうして日本は仲介をいたしまして、ベトナムの調査団というか、調査使節をカンボジア領内に入れてほしいという要請を仲介あっせんをいたしましたが、いろいろ経緯はございますけれども、カンボジア側がこれを受け入れることになりましたので、もうすでに調査団は入っておると思いますけれども、こういったような点について、カンボジア側が他民族に対して非人道的な取り扱いをするということはやらないようにということについては、こちらからもこの機会にも言及いたしておきました。それが昨日の、わりあい短い時間でございましたけれども、会談の内容でございます。
#107
○黒柳明君 各省庁ともまた打ち合わせもあると思うんですけれども、大臣としては人道上やはり経済援助は出したほうがよかろうとお思いになるでしょうか。出す方向で検討を進めるおつもりでしょうか。
#108
○国務大臣(愛知揆一君) これは経済援助ということばが適当かどうかと思いますが、まあ、考え得るものとしては、人道的な立場に立っての措置ではなかろうかと考えます。もし検討の対象にするべきものがあったとしても、人道的な立場ということから検討すべき問題ではないかと思っております。
#109
○黒柳明君 まあ、人道的になりますと、結局ロン・ノル政権が虐殺をしているということは、これは世界の目をおおわしむるような悲惨事なわけですけれども、そういう方面にこそもっと手を伸ばさなければならない、こういうやはり声が出てくると思うんですけれども、その点いかがでしょう。
#110
○国務大臣(愛知揆一君) 私としては、いまも申しましたように、カンボジアにおけるベトナム人の虐待、虐殺というような問題については至大な関心を持ちまして、さようなことがないようにこの上とも十分の措置をしたいと思います。ことに利益代表国という立場にもございますから、そういう点については十分の配慮が必要だと思っております。
#111
○黒柳明君 国際休戦監視委員会の参加ということがけさ報道されておりますけれども、この意図はどうでしょうか。
#112
○国務大臣(愛知揆一君) これは一つの考え方として、私は、やはりこういうふうに複雑にこんがらがって、先ほど来いろいろ御意見もございましたが、こういうときの一つの考え方としては、一九五四年のジュネーブ会議あるいは協定というものがございますから、こういうところに着目をしていくのが一つの実際的な方向ではないか、一つの考え方としましては。で、そういう場合には一CCの問題も当然出てくるわけでございます。これは御承知のように、ICCはインド、ポーランド、カナダが構成国になっておりますけれども、そういう姿で活動が再開され、各国がそれに賛成してくれれば、これは適切な解決策の一つではないかと思っております。
#113
○黒柳明君 そうすると、けさの報道は、やはり外務省としては参加の方向に検討していると、各国の賛成があればですね。もし参加した場合に、憲法上の問題というのは起こりませんですか。
#114
○国務大臣(愛知揆一君) いま私が申しましたのは、一九五四年を中心に考えれば、そうしてインド、カナダ、ポーランドというようなところがその任務を再開してくれれば、これは一つの適切な方向だと思っております。ただ、御承知のように、いまこのカンボジア問題については、たとえば国連事務総長からも意見というか、提案というものが出ておりますし、フランスもそうですし、これはポンピドー提案というのが前からありましたが、さらにいろいろ考えもあるようですし、そのほかいろいろの考え方も出ておりますから、やはり先ほど来申しておりますように、アメリカのベトナム撤退ということを含めて、平和的な解決が国際的な合意のもとにでき上がるようになって、かつ、その方法論の中に適切な提案についてコンセンサスがまとまるようなときがあったならば、日本のなし得る限りの協力はしても差しつかえないんじゃないか、かように考えますが、これはまだ仮定の問題でございます。いわんや、前々から問題がございますように、国際監視団といっても、その性格、使命、ずいぶんこれはそのときどきの状況によって違いますが、日本国が現在協力し得る限度というものは、憲法はもちろんでありますが、現行の法令で許される限りの援助協力ということしか考えられないと思っております。
#115
○黒柳明君 こまかいことはまたあさってやりたいと思いますけれども、今回のアメリカのカンボジア侵入というものは、一九五四年のジュネーブ協定の違反、また、あるいは国際連合に加盟しておる中立国に対して侵略したことについての問題、侵犯行為、こういうものがあると、こう言われておるんですけれども、外務大臣はどうでしょうか。
#116
○国務大臣(愛知揆一君) その点は、私はニクソン演説あるいはその後の米カ両国の発言等について、そこから読み取れることを事実として申し上げるにとどめたいと思いますけれども、数年来、この「聖域」というのはことばが私は不適当だと思いますけれども、とにかくこれはカンボジア国内、領域でございますね、そこに北越軍、ベトナム軍が侵入し、かつ蟠踞し、かつ、最近では軍事行動が活発になっていると、こういうふうな事実が指摘されている。これがやはりジュネーブ協定の違反だということが言われておりますですね。そして、これが米軍あるいは南越軍に対しての攻撃が激化したから、それを撃退するための自衛権の発動ということも言われておりますですね。こういう点は、それらの当事国がそういう見解を出しているということを事実として申し上げるにとどめておきたいと思います。
#117
○黒柳明君 その点は、やっぱりニクソン大統領も、北越に占領ないし侵略されたところを、占領、侵略するのはいいんだということで、非常に苦しい表現をしているわけですけれども、その法的根拠、アメリカがカンボジアに兵を出すという法的根拠はあるとお思いですか。要するに、トンキン湾事件のときには、国連憲章の五十一条、これによって兵を出したと、このようなことだったんですけれども、あのときはライシャワー・池田会談があって、ライシャワーが支持を要請した。今回はアメリカから支持の要請もなかったと思いますけれども、今度は法的根拠はどこら辺にあるのか、どうでしょう。
#118
○国務大臣(愛知揆一君) これは、法的根拠ということになってまいりますと、まあ、私といたしましては、そう申しますと御批判をかえって生むかと思いますけれども、私はとにかくカンボジアにおける軍事抗争というものを何とかしてすみやかにおさまらせたいという願望に基づいて政府として行動したいと思っておりますときに、当事者の言動等についてとやかく申すことはいかがかと思いますので、事実どこの政府がどういう見解を表明している、だれがどう言っているかということがもし御必要でございますれば、条約局長から事実として御報告するにとどめたいと思います。
#119
○黒柳明君 トンキン湾事件のときの五十一条の集団自衛権の発動、ところが、トンキン湾のあの決議は、すでに御存じのように破棄されているわけです。ですから、トンキン湾事件、あのときも国連憲章というものを一応大義名分としてアメリカはベトナム進駐――ベトナムに対して攻撃を始めたわけです。今回の場合には、そういう法的根拠がないんじゃないか、こういうこともまた問題になっているわけです。また、トンキン湾事件のとき、アメリカの駐日大使から日本に対して支持の要請があった。今回はそういうこともなかった。そういうことに対して、これはもう中ソはもちろん、英国もフランスもこれに対して大きな非難をしているわけです、カンボジアへの介入に対して。もう国際世論あるいはアメリカの議会筋、それに国民の反戦デモもますますエスカレートする。日本国内の各紙、けさの新聞ごらんになったかと思うんですけれども、このアジア会議についても、全部各紙とも、問題がある、疑問だと、こういう世論を出しております。ですから、あのトンキン湾事件にしても、何らかのやっぱり侵略する法的根拠、攻撃する法的根拠、あれは日本が支持したという何らかの根拠がなきにしもあらず。ところが、今回の場合にはアメリカから要請があったわけでもない。それを、このニクソンの演説に対して支持する、アメリカの態度に対して支持する、あるいは、アメリカの侵略について非常な非難があり、アメリカ国内ですらも非常に反発があるものに対して日本は支持すると、こういう態度は非常にうまくない。これが、私の意見のみならず、けさの各紙の論調なんですけれども、外務大臣はこの点についてどうでしょうか。
#120
○国務大臣(愛知揆一君) その点は先ほど西村さんの御質問にもお答えしたんですけれども、米軍のベトナム撤退ということがアメリカ国民のいわば総意でもある、それを実現したいのだということが目的に掲げられてあることは、これは相手方のほうから言っても、あるいは軍事的な紛争がエスカレートしたくないと考えている大多数の世界じゅうの人たちの望んでいるところではないかと思います。その点に私は焦点を合わせていきたいと思うのであって、先ほど私正確に申し上げたつもりですけれども、アメリカ国内の議論もその他の議論も、その目的は目的として、とった措置がその逆に行くんじゃないか、そのおそれがあるのではないかという心配であり、反対であり非難であるのではないかと、私は冷静に分析しておるつもりでございます。で、私としては、その目的が掲げられて常々と宣明されておる以上は、この目的が達成できるようにするということがアメリカのためにもなるでしょうけれども、アジアのためでもあるし、全世界のためでもある、こういう観点に立って努力をいたしたいと、こう申しておるのでありまして、全部について理解とか支持とかいうことを申しておるわけではございません。
#121
○黒柳明君 沖繩ないし日本の在日米軍の動きについて、何か指示かなんかありましたでしょうか。通達かなんか、外務省に特別の変化かなんか。
#122
○国務大臣(愛知揆一君) 私のところにはそういう連絡、情報は、まだただいまの時間では、全然ございません。
#123
○黒柳明君 B52がこれば通常のように六機ずつ定期的に飛んでいく。ただ問題は、従来よりも帰還がおそい、このような報道がある。あるいはカンボジアに行っているんではないか。これは推測の域を出ないと思うんですけれども、もしB52が沖繩からカンボジアに行くと、あるいは行く可能性が十二分にあるんじゃないか、こう思う。あるいは、ベトナムから撤兵途中の海兵隊が沖繩に相当いた、これがまたカンボジアに行くのであろうか、出動の準備とかされているという報道がありますけれども、このような点については沖繩住民は非常に不安を感じ、ある意味においてはまた抗議というようなかまえもあるわけですけれども、まだ施政権返還になっていませんけれども、返還を間近に控えるそういう沖繩の情勢、つまり、先ほどあった、七二年返還が非常に無理になったんじゃないか、こういう見方もされておるわけですけれども、B52がカンボジアに行く前に、あるいは、沖繩にそういう不安な空気がただよう前に、ひとつ米政府に対して日本政府として、せめて何らかのくぎをさす、そういうおつもりはないんですか、する必要があるんじゃないかと思うんですけれども。
#124
○国務大臣(愛知揆一君) これはただいまも言及されましたように、施政権がまだ向こうにあるということは事実でございますけれども、ベトナムに対するB52の発進につきましても、施政権はないけれども、沖繩住民の欲せざるところであり、また、日本政府としてもその沖繩県民の心情を理解し、その考え方を支持する撤去を、かねがね要求しておるくらいでございまして、この点はよく御承知のとおりであると思いますから、私たちの気持ちというものが十分御理解いただけると思います。
#125
○黒柳明君 富士の演習場で海兵隊が練習を始めた。従来から始まっておりますけれども、カンボジアの戦いが始まってから、量的にも質的にも、何か異常な雰囲気であるということなんですけれども、これがないとは思いますけれども、何かインドシナ戦争にわが国が巻き込まれるようなことにつながる、そういう可能性があるのじゃないか、こういうことですが、富士の演習についてはどうでしょうか。
#126
○政府委員(東郷文彦君) 現在やっておりますのは、だいぶ前からの予定をそのとおり実行している、こういうふうに了解しております。
#127
○委員長(長谷川仁君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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