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1970/05/09 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第11号
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1970/05/09 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第11号

#1
第063回国会 外務委員会 第11号
昭和四十五年五月九日(土曜日)
   午前十時二十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月九日
    辞任         補欠選任
     鹿島守之助君     初村瀧一郎君
     野坂 参三君     岩間 正男君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         長谷川 仁君
    理 事
                石原慎太郎君
                木内 四郎君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                梶原 茂嘉君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                初村瀧一郎君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                山本 利壽君
                小野  明君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
                松下 正寿君
                岩間 正男君
   国務大臣
       内閣総理大臣   佐藤 榮作君
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       内閣法制局長官  高辻 正巳君
       防衛庁防衛局長  宍戸 基男君
       防衛施設庁長官  山上 信重君
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アジア局
       長        須之部量三君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省欧亜局長  有田 圭輔君
       外務省条約局長  井川 克一君
       外務省国際連合
       局長       西堀 正弘君
       大蔵省理財局長  岩尾  一君
       水産庁長官    大和田啓気君
       水産庁次長    藤村 弘毅君
   事務局側
       常任委員会専門  瓜生 復男君
       員
   説明員
       外務省欧亜局外
       務参事官     加川 隆明君
       外務省条約局外
       務参事官     山崎 敏夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通
 商航海条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航
 海条約の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出、衆議院送付)
○北西大西洋の漁業に関する国際条約及び関係諸
 議定書の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出、衆議院送付)
○全米熱帯まぐろ類委員会の設置に関するアメリ
 カ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約へ
 の加入について承認を求めるの件(内閣提出、
 衆議院送付)
○南東大西洋の生物資源の保存に関する条約の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為
 に関する条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス
 及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に
 関する議定書の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (国際情勢に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 本日野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として岩間正男君が選任されました。
#3
○委員長(長谷川仁君) 日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件
 日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件
 北西大西洋の漁業に関する国際条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件
 全米熱帯まぐろ類委員会の設置に関するアメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約への加入について承認を求めるの件
 南東大西洋の生産資源の保存に関する条約の締結について承認を求めるの件
 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件
 以上七案件を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。
 愛知外務大臣。
#4
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま議題となりました「日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 昭和四十年十一月、ルーマニア側より、わが国との間に通商航海条約の締結を希望する旨の提案が行なわれ、政府は、昭和四十四年四月に東京において、通商航海条約の締結について交渉を行ないました結果、同年九月一日に東京において、わがほう外務大臣と先方ブルティカ外国貿易大臣との間で、本件条約の署名調印が行なわれた次第であります。
 この条約は、本文十二カ条及び議定書から成っております。この条約は、出入国、身体及び財産の保護、内国課税、経済活動、出訴権、関税、輸出入制限、輸入貨物の取り扱い、商船の出入港、積み取り権等の事項に関する最恵国待遇を相互に保障しているほか、国家企業による輸出入活動を無差別待遇の一般原則に従わせること、海難救助に関する内国民待遇、仲裁判断の執行、経済関係の発展に寄与することのある経験の交流等について定めております。この条約の締結により、わが国とルーマニアとの間の通商及び海運関係は、一そう安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。
 次に、「日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 昭和四十年五月、ブルガリア側より、わが国との間に通商航海条約の締結を希望する旨の提案が行なわれ、政府は、昭和四十四年十一月に東京において、通商航海条約の締結について交渉を行ないました結果、本年二月二十八日にソフィアにおいて、わがほうブルガリア駐在山下大使と先方アヴラモフ副総理大臣兼外国貿易大臣との間で、本件条約の署名調印が行なわれた次第であります。
 この条約は、本文十二カ条及び議定書から成っております。この条約は、出入国、身体及び財産の保護、内国課税、経済活動、出訴権、関税、輸出入制限、輸入貨物の取り扱い、商船の出入港、積み取り権等の事項に関する最恵国待遇を相互に保障しているほか、国家企業による輸出入活動を無差別待遇の一般原則に従わせること、海難救助に関する内国民待遇、仲裁判断の執行、経済関係の発展に寄与することのある経験の交流等について定めております。この条約の締結により、わが国とブルガリアとの間の通商及び海運関係は、一そう安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。
 次に、「北西大西洋の漁業に関する国際条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、北西大西洋水域の漁業において最大の持続的漁獲の維持を可能にするためこの漁業の調査、保護及び保存に関する協力を取りきめることを目的としており、一九四九年二月八日に作成され、翌年七月三日に効力を生じたものであります。
 この条約は、全締約政府の代表により構成される北西大西洋漁業国際委員会と称する委員会を設置すること、同委員会は、調査、研究及び共同措置のための提案を行ない得ること、締約政府はこの条約の実施に必要な措置をとること等を規定し、また、一括して付託いたしました五個の議定書はこの条約の運用の強化をはかることを目的として条約の規定を改正しまたは適用拡大するため作成されたものであります。
 現在、この条約には、米、英、カナダ、ソ連等十四カ国の政府が加盟しております。
 わが国は、従来、北西大西洋水域における漁船の出漁は小規模であったためこの条約に加盟しておりませんでしたが、今後は相当数の漁船の出漁が予想されますので、わが国としてもこの条約に加入することによりまして、漁業における国際協調に貢献することのみならず、将来におけるわが国の漁業の安定した発展をはかることができると考える次第であります。
 次に、「全米熱帯まぐろ類委員会の設置に関するアメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約への加入について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、東太平洋水域においてマグロ漁船が漁獲するマグロ類の資源を最大の持続的漁獲が毎年可能となる水準に維持することを容易にするため情報の収集及び解釈につき協力することを目的としており、一九四九年五月三十一日に、アメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間に作成されたものであります。
 この条約は、全締約国の代表により構成される全米熱帯まぐろ類委員会と称する合同委員会を設置すること、同委員会はマグロ類の資源等について調査を行ない、締約国がとるべき共同措置について勧告すること等を規定しております。現在、この条約には、アメリカ合衆国及びコスタ・リカ共和国のほか、カナダ、パナマ及びメキシコが加盟しております。
 わが国は、従来、この条約水域におけるマグロ漁船の出漁は限られたものであったためこの条約に加盟しておりませんでしたが、今後は、この水域でのわが国漁船による規制対象魚種の本格的漁獲活動が予想されますので、わが国といたしましても、今般この条約に加入することによりまして、漁業における国際協調に貢献することのみならず、将来におけるわが国の漁業の安定した発展をはかることができると考える次第であります。
 次に、「南東大西洋の生物資源の保存に関する条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 近年南東大西洋水域におきましては、トロール漁業の急速な発展によりまして同漁業の生物資源に及ぼす影響が懸念されており、その保存措置の必要性が関係国によって叫ばれてまいりました。かかる背景のもとに、国際連合食糧農業機関(FAO)は、同水域の生物資源の保存及びその合理的な利用を目的とする国際的な漁業管理機構を設立するための準備作業を行なってきたところ、昨年十月に同機関の主催による全権代表会議が開催され、この条約が採択された次第であります。
 わが国は、南東大西洋水域における漁業に利害関係を有する水産国の一つとして、本条約の採択にあたってはその準備作業の段階から積極的に参加し、わが国の意見を反映せしめた条約とすることができました。わが国がこの条約の締約国となりますことは、漁業における国際協調を旨とするわが国の立場上きわめて有意義であり、同時に、この水域におけるわが国の漁業の安定した発展をはかる上にも有利であると考えられます。
 次に、「航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、国際民間航空機関の主催のもとに一九六三年八月二十日から九月十四日までの間東京で開催された航空法に関する国際会議において作成されたものであります。
 この条約は、航空機内の犯罪を抑制し、機内秩序及び規律を維持することによって国際航空の安全を確保することを目的としており、そのおもな内容は次のとおりであります。
  第一には、航空機内で行なわれた犯罪等につい
 て当該航空機の登録国が裁判権を設定すること
  第二には、機長が航空機内で犯罪その他安全
 危害等の行為を行なった者に対し拘束を含む妥
 当な措置をとりさらに必要な場合にはその犯人
 等を降機させまたは着陸国の当局に引き渡す権
 限を機長に対し与えるとともに、着陸国は、機
 長がこの権限に基づき犯人等を降機させるのを
 容認し、引き渡される者を受け取りその犯罪に
 ついて予備調査を行なう等の義務を負うこと
  第三には、航空機の不法奪取の場合には、締
 約国はその航空機の管理を適法な機長に回復さ
 せるために協力するとともに、着陸国はその乗
 客、乗組員がすみやかに旅行を継続し得るよう
 にし、かつ、航空機及びその貨物を返還することの三つであります。
 この条約は、航空機内の犯罪等の行為の防止を国際協力によって解決していく上できわめて有意義なものであり、また、航空機の不法奪取につきましても、それを国際協力によって防止する第一歩として意義があると認められます。
 なお、政府といたしましては、もっと早い機会に御承認を求めるべきでありましたが、今日まで延引いたしましたことを深く遺憾に存ずる次第でございます。
 最後に、「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件」につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この議定書は、毒ガス及び細菌学的手段の戦争における使用を相互に禁止しようというものでありますが、化学・生物兵器の禁止を訴える国際世論が国際連合、軍縮委員会等を通じて、近年とみに高まっており、特に、昨年末、第二十四回国連総会では、まだこの議定書の当事国となっていない諸国は一九七〇年中にこの議定書に加入し、またはこれを批准するよう勧告する決議がほとんど全会一致で採択されました。わが国は、軍縮委員会で明らかにしておりますとおり、化学・生物兵器はその使用のみならず、開発、生産、貯蔵をも有効な管理のもとに禁止することを主張しております。この議定書を批准することは、この主張を推進するためにも有意義であり、また、今後の軍縮交渉におけるわが国の立場を強めることになるものと考えます。
 よって、以上七件につきまして御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#5
○委員長(長谷川仁君) 引き続き、補足説明を聴取いたします。
 山崎外務参事官。
#6
○説明員(山崎敏夫君) わが国とルーマニア及びブルガリアとの間の通商航海条約につきまして、一括して補足説明を申し上げます。
 御承知のとおり、わが国は戦後、ソ連及び東欧諸国との間におきましては、ソ連、ポーランド、チェッコスロバキア及びユーゴースラビアとの間に通商条約または通商航海条約を締結いたしておりますが、ルーマニア及びブルガリアにつきましては、一九六五年以来先方から申し入れがございまして、昨年、通商航海条約締結のための交渉が行なわれまして、ルーマニアにつきましては昨年九月一日に、また、ブルガリアにつきましては本年二月二十八日に、それぞれ署名を行なった次第であります。
 これらの二つの条約の内容について申し上げますと、その間には実質的な相違はございませんのみならず、従来わが国が他の東欧諸国、特にソ連、チェッコ及びポーランドとの間に締結いたしました通商航海条約と比較いたしましても、出入国及び滞在、身体及び財産の保護、経済活動等のいわゆる居住条項――エスタブリッシュメント条項と呼ばれるものでありますが――に関する規定が新たに加わったということのほかは、内容もほぼ同様のものでございます。具体的に申し上げますと、いま申し上げました居住条項のほかに、関税、輸出入制限、商船の出入港及び積み取り権に関しましては最恵国待遇を規定しております。また、国家企業による輸出入活動については無差別待遇の一般原則に従うことを規定しております。また、海難救助に関しましては、これは人道上の問題でもありますので、特に内国民待遇を定めております。
 以上申し上げましたように、この二つの条約におきましては、海難救助の規定以外内国民待遇を定めた条項はございませんが、この点につきましては、わが国と社会体制を異にしておりますルーマニア及びブルガリア側では、通商航海条約においては最恵国待遇を与えることを原則としている。つまり、一般的に内国民待遇、すなわち相手国の国民と同等の待遇を要求するということには困難があったわけでございますが、わが国といたしましては、相手国から最恵国待遇、つまり、他の第三国の国民よりも不利でない待遇を条約によって確保するということは、わが国とこの両国との間の今後の通商海運関係の安定及び発展に役立つと判断いたしましてこの条約を締結した次第でございます。
 なお、わが国とルーマニア及びブルガリアとの間には、戦前におきましても通商または通商航海に関する交換公文がありましたが、これらの取りきめは、わが国と相手国との間の国交回復の際に効力を失ったということが確認されております。
 最後に、この両国との間の貿易海運関係に関しまして若干御説明申し上げますと、まず、貿易に関してでございますが、わが国とルーマニアとの間では、一九六九年、すなわち昨年におけるわがほうの輸出が約二千二百万ドル、わがほうの輸入が約一千四百万ドル、合計三千六百万ドルとなっております。わがほうの輸出品目といたしましては、船舶、各種機械、鋼材、化学品、繊維品等の工業製品が中心でありまして、他方輸入品目といたしましては、重油、鉄鉱、採油用種子等があります。
 また、わが国とブリガリアとの間では、一九六九年――昨年のわがほうの輸出が約一千二百万ドル、わがほうの輸入は約九百万ドル、合計約二千百万ドルとなっております。わがほうの輸出品目としましては、ルーマニアの場合と大体同様に工業製品が中心でありますが、輸入品目はブロイラー、葉たばこ等農産物が中心でございます。
 次に、海運関係につきましては、わがほうからルーマニア及びブルガリアに対する定期配船は、現在月一回でございます。そのほか、若干不定期船が行っております。ルーマニア及びブルガリアからは不定期船がときどき来ている程度でございます。
 次に、漁業条約の三件に関しまして一括して補足説明をさせていただきます。
 わが国の遠洋漁業は、近年大西洋及び東太平洋のほうにも大いに進出しているわけでございますが、この漁業三条約に加入いたしますのは、いずれも、これらの水域におけるわが国の漁業の安定的発展をはかるためのものでございます。
 まず、北西大西洋漁業条約でございますが、これは、いまから約二十年ほど前、すなわち一九四九年に作成された条約でございます。その条約水域は、昔から世界三大漁場の一つとして名高いところでございまして、タラ、ニシン、ヒラメ、カレイ等が最も多く漁獲されております。この条約にはヨーロッパ及び北米のおもな漁業国はすべて加盟しておりまして、「北西大西洋漁業国際委員会」というのは、この種の委員会の中では歴史も古く、非常に権威のあるものとされております。この条約は、その後に作成されました国際漁業条約の模範となっているものでございます。また、この委員会で採択されました漁業規制措置が他の国際漁業委員会で先例として見ならわれていることも多いのでございます。わが国といたしましては、これまで、この条約の対象水域が地理的にも遠く、また、わが国の関心を有しております魚類の資源状況もよくわかっていなかったために、ごく小規模で試験操業を行なっていたという事情もございまして、この条約には加盟しないで、その会議には近年オブザーバーを派遣いたしますとともに、その規制措置については外部から協力するという態勢をとってきたわけでございます。しかるに、最近になりまして、試験操業の結果、他国があまり利用していない魚類でわが国が関心を有しておりますニギス、シズ、イカなどの漁業が非常に有望であるということが判明いたしました。そこで、わが国といたしましては、今後はこの条約に加入して正式のメンバーとなり、他国と協力しながらわが国の漁獲量の増大をはかることとしたい、また同時に、規制措置に関しましても、今後はその作成に積極的に参画してわが国の発言権を確保したいというのがこの条約に加入するおもな理由でございます。
 なお、この条約は、何ぶんにも非常に歴史の古いものでございますので、関係議定書が五つついておりまして、これを一括してこの条約とともに御審議をお願いしておるのでございますが、これらの議定書につきましては、当方で作成いたしました説明書にその内容を簡単に説明してございますが、そのうち、「北西大西洋の漁業に関する国際条約の取締措置に関する議定書」と「北西大西洋の漁業に関する国際条約の委員会が採択した提案の効力発生に関する議定書」につきましては、この条約の寄託国政府でございますアメリカ合衆国政府から、この二つは昨年の十二月十九日に効力を生じた、こういうことをことしの四月二十一日に通報してまいりましたので、ここに御報告申し上げます。この結果、まだ発効いたしておりません議定書は、昨年十月一日に作成されたばかりでございます「北西大西洋の漁業に関する国際条約の部会の構成国及び規制措置に関する議定書」だけでございます。したがいまして、参考資料として御提出いたしました改正部分に関する資料につきましても若干訂正する必要が生じましたので、これらの訂正部分は表にいたしましてお手元に御配付申し上げましたので、これでごらんいただきたくお願い申し上げます。なお、念のため申し上げますが、御承認をいただくために提出しております条約テキスト自体には何ら変更はございません。
 次に、いわゆる「熱帯まぐろ条約」につきまして御説明いたします。この条約は、「北西大西洋漁業条約」と同じころに作成されたものでありまして、表題は米国とコスタ・リカとの二国間条約という形になっておりますが、内容は多数国間条約でありまして、東太平洋のマグロ類を対象といたしております。
 この条約により設立されました「全米熱帯まぐろ類委員会」には、創立メンバーであるアメリカ合衆国及びコスタ・リカのほかに、パナマ、メキシコ、カナダといったこの水域に関心を有する国が加盟しております。この条約の対象とする東太平洋の水域は、以前からマグロ類の非常に豊富な漁場として有名なところでございますが、この委員会は特にマグロ類の一種であるキハダにつきまして規制水域を設けて、キハダの総漁獲量の規制を行なっております。わが国はこの水域内におきましても操業を行なっておりましたが、この条約の締結国が現に漁獲しておりますものとは直接的な競合は少なく、また、その漁法も異にいたしておりましたので、この条約には加盟しないで、委員会の規制措置を尊重するという形で外部から協力してまいったのでございますが、最近はわがほうも本格的な操業を行なうということになってまいりましたので、また、委員会が規制措置をだんだん強化する傾向にありますので、その作成過程にも積極的に参画してわが国の意見を反映せしめたいというふうに考えまして、この条約に加入することとした次第でございます。
 なお、この条約の第五条の第三項の規定によりますと、加入を希望する政府は、すべての締約国の同意を得なければならないということになっておりますが、わがほうは、すでにすべての締約国から加入を歓迎する旨の回答を得ていることを申し添えます。
 最後に、「南東大西洋生物資源保存条約」につきましては、この水域におきましては、トロール漁法によりまして行なっておりますタラの一種であるメルルーサの漁獲及び南阿やポルトガル等沿岸国によるイワシ、アジ、サバ等の漁獲が近年急激に増大してまいりまして、適切な資源保存措置の必要性が関係国によって叫ばれてまいりました。このような背景のもとに、国際連合食糧農業機関、すなわちFAOが中心となりまして、いままでの同種の条約をモデルといたしまして、南東大西洋水域のすべての生物資源について、その保存を目的としてこの条約は昨年十月に作成されたものでありまして、きわめて新しい条約でございます。
 わが国のトロール漁船はこの水域では現在約二十隻が操業を行なっておりまして、メルルーサ、タイ、イカなどを漁獲いたしておりますが、今後さらにこの水域へ出漁する漁船数は増加するものと思われます。したがいまして、わが国はこの水域の資源保存には深い関心を有しておりまして、そのための条約の作成には最初から積極的に参加いたしまして、わが国の意見を多く反映せしめた条約を作成することができた次第でございます。
 現在この条約は、わが国を含む六カ国が署名を行なっておりますが、いまだ効力は発生しておりません。わが国といたしましては、この条約発効の後は、委員会の行なう保存措置の作成には当初より参画し、この水域におけるわが国の漁業の安定した発展をはかりたいと考えております。
 次に、「航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約」につきまして補足説明を申し上げます。
 従来、航空機内で行なわれた犯罪に関しましては、船舶の場合と異なり、いずれの国が裁判権を行使するかということにつき国際的に統一された規則が存在しておりませんでしたため、たとえば公海上を飛行する航空機内で犯罪が行なわれました場合、いずれの国の裁判権に服するかがはっきりしないために処罰を免がれる結果となる可能性があったわけでございます。しかしこの条約ができますと、締約国は、その国に登録されている航空機内で行なわれた犯罪につきましては必ず裁判権を設定する義務を負うこととなりますので、このような不都合は解消されることとなるわけでございます。
 また、航空機内で行なわれた犯罪等の行為を抑制することについての機長の権限に関しましても、国際的に統一された規則が存在いたしませず、各国の慣行にゆだねられていた次第でございますが、この条約により、国際的な基準が定められ、その範囲内で行使される機長の権限を相互に認め合うということにより、機内の犯罪の抑止及び機内の秩序規律が維持され、航行の安全が確保されることが期待できることとなった次第でございます。
 さらに、この条約は、最近頻発しております航空機のいわゆるハイジャッキングにつきましても特に一条を設けまして、ハイジャッキングが行なわれ、または行なわれようとしている場合には、締約国は、その航空機の管理を適法な機長に回復させるために協力すること、及び着陸国は、その乗客、乗組員がすみやかに旅行を継続できるようにし、かつ、航空機とその貨物を返還することを規定いたしております。
 この条約は、航空機内の犯罪や安全危害等の行為を抑制し、機内の秩序規律を維持して航空機の航行の安全をはかるということに関する多数国間条約としては唯一のものでありまして、わが国は、一九六三年九月十四日に署名いたしましたが、昨年十二月四日にこの条約は発効いたしまして、現在その当事国は、おもな民間航空国を含む二十二カ国でございます。
 なお、政府は、との条約の提出に伴い、航空機の機長の権限の強化をはかるための航空法の一部改正法律案及び条約第十三条の犯罪容疑者の受け取り及び予備調査等に関する規定の実施に関する法律案を提出し、別途御審議をいただいておりますことをつけ加えさせていただきます。
 なお、この条約は、ハイジャッキングのみを対象として作成されたものではございませんために、ハイジャッキング罪の創設及び犯人の訴追、関係国への引き渡し等に関する規定を欠く点で不十分な面はございますが、ハイジャッキングを国際協力により防止する第一歩として、それ相応の意義はあると認められるものであります。この点に関しましてこの条約を補完する目的で国際民間航空機関(ICAO)が中心となりましていわゆるハイジャッキング防止条約草案の作成準備を行なっておりまして、本年十二月にヘーグで開催される予定の外交会議において採択される運びとなる見通しでございます。
 最後に、いわゆる「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書」につきまして補足説明をいたします。
 この議定書は、前文、宣言及び末文に相当する部分から成っておりますが、実質的な規定は宣言の中の次の三項目であります。
 第一には、毒ガスの戦争における使用を禁止する他の条約の当事国となっていない限り、窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガス及びこれらと類似するすべての液体、物質または考案につきまして戦争における使用の禁止を受諾することであります。なお、ここに言及されておりますおもな条約は四つございますが、これにつきましては、関係条文を御参考としてお手元に配付してございます。
 第二には、細菌学的戦争手段の戦時における使用についても、同様の禁止を受諾することであります。
 第三には、当時国の間で以上の禁止規定につき相互に拘束されることに同意することであります。この相互に拘束されるということにつきましては、この議定書の当事国でない国が交戦国の一方に参加したというだけの理由で、その時から条約遵守の義務が消滅するという一八九九年のヘーグ宣言のような総加入条項を有する条約よりも一歩を進めた意義がございます。
 この議定書で禁止される毒ガスが具体的にどういうものかにつきましては、御配付申し上げました資料により御理解いただきたいと存じます。
 なお、この議定書には、二十数カ国が留保を付しており、これらの留保につきましては参考資料としてお配りしてございます。その内容は大別すると次の二つがあります。
 第一のカテゴリーは、議定書の署名、批准国または加入国に関してのみ拘束を受けるという留保でありますがこれには特別な意味はございません。
 第二のカテゴリーは、議定書の義務違反があった場合には自国が拘束されないというものでございます。すなわち相手国側がこの議定書の義務に違反して毒ガス等を使用した場合には、自分の国はこの議定書上の義務から免除されるという留保であります。
 なお、政府といたしましては、この議定書が禁止している毒ガスについては戦争のいかなる際にも使用しないことを基本政策といたしておりますので、批准に際しましては留保は付さない方針であることを申し添えます。
 以上をもって御説明を終わります。
#7
○委員長(長谷川仁君) 以上をもって説明は終了いたしました。
 なお、ただいまの七案件中
 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきましての質疑はこれを後日に譲り、残る五案件のうち、まず、
 日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件
 及び
 日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件の二件の質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言願います。
#8
○羽生三七君 このルーマニアとの関係ですが、私、実は数年前ルーマニアに参りまして、当時の国家元首であったゲオルギウ・デジ――現在なくなってチャウセスクになっておりますが――この人と数時間会談をした。そのときに、もう外交上の問題とかイデオロギー上の問題はほとんど出なくて、終始貿易問題が出て、特にわが国の資源は豊富であるから、何でもあるから幾らでも買ってくれと、貿易の話ばっかり出たわけです。事実、あの国が非常に資源に富んでおるということはわかりますが、先ほど承った貿易額の範囲では、非常に往復とも少ないと思うのです。どうしてたいした貿易額に発展しないのか。その辺の事情はどういうことなのか。資源はあるが値段が高いというのか、あるいは、向こうが日本の品物を買う力がないというのか、少しわかるところからお知らせください。
#9
○説明員(加川隆明君) お答えいたします。
 わが国とルーマニアとの貿易においては、他の東欧諸国と同じ問題でもございますけれども、輸出面では両国とも各種機械設備、鉄鋼、船舶、化粧品、繊維品等の工業製品を中心にわが国の産品に対する需要は非常にふえておる、次第に増加しつつあるということは事実でございますけれども、先方からの輸入については、やはり相互に地理的にこう離れておりますので、トランスポーテーションの問題、それに対する費用、それから歴史的、伝統的に交流が必ずしも十分でないものでございますから商品のなじみが薄い、こういうことがございます。わが国の、当方からする買い付け可能品目というものがきわめて限られておる・こういう状況でございます。先方としてもそういう状況があるものでございますから、対日買い付けの拡大を積極的に進め得ない、こういうような事情がございましていままであまり進まなかったわけでございます。ただ、羽生先生のおっしゃるとおり、ルーマニアは非常に資源もございますので、東欧諸国の中では日本との貿易関係はわりあいにいい線をいっておる、まあこういう状況でございます。
#10
○加藤シヅエ君 ルーマニアとかブルガリアとかというような国から農業生産物、加工品を日本でもそろそろ輸入しているように市場で見かけておりますけれども、いま国内で添加物の問題が非常にやかましく消費者から言われておりまして、せんだっても、こういうような国から入ってきたものには、日本ですでに禁止という方針が決定されているものが、依然として入っているというようなことを新聞で見たように思いますけれども、そういうことに対しては外務当局としてはどういうふうな取り締まりをなさいますか。
#11
○説明員(加川隆明君) お答えをいたします。
 その点に関しましては、実はたいへん申しわけないのでございますが、当方といたしまして、もちろん、そういう添加物等があれば、通産省とか関係当局とも相談いたしまして必要な措置をとるというような一般的なお答えしかできませんのですが、もう少し調査してからお答え申し上げます。
#12
○西村関一君 ルーマニア、ブルガリアにつきましては、この条約の趣旨の説明があり、その件に関する限りは問題がないと思うのです。ルーマニアと日本との関係についてでありますが、特にルーマニアは国連外交を強く推進している国であると思うのであります。東欧諸国の中におきましても特に国連中心主義外交を進めている国であると思うのであります。その見地から、かつて中国の周恩来首相がこの国を訪問してチャウセスク氏と会見いたしましたときにも、周恩来氏の提案いたしました共同声明を出さなかった。それは、中国が国連に対して国連を尊重するという態度をとらない限り、ルーマニアの外交方針と違うから、この点においては共同声明を出すことができない、こういう態度をとったいきさつもあることは御存じのとおりであります。そういう面から経済外交とともに、国連外交という立場からルーマニアとわが国の関係はより密接でなければならぬと思うのです。しかし、いまのお話を聞きましても、経済交流の面においても、人的の面においても、また外交方面におきましても、必ずしも国連外交の面において深いつながりを持っているというふうにも考えられないのです。特に東欧諸国の中におけるルーマニアの存在は、バルカン半島のバルカン諸国の中において特異な地位を占めておるルーマニアです。このルーマニアの存在は非常に大切だと思うのです。そういう点につきまして、経済外交とともに、特殊な東欧諸国内におけるそういうルーマニアの立場を高く評価するといいましょうか、そういう点につきまして外務大臣はどういうふうな見解を持っておられるか、この際お伺いをいたしておきたいと思います。
#13
○国務大臣(愛知揆一君) 私、まことにごもっともな西村さんの御意見と思います。そういう意味でも、この通商航海条約が今回締結されるということは、従来に増してルーマニアとの間の国交関係が政治的にも私は明るくなっていくだろうと思うのです。すでに最近においては、人的な交流も政治的にもかなり活発化しておりますから、今回この条約の成立が行なわれまして、これは幸いにして先方からも数年来非常に希望しておったところでもございますから、この機会にあらためてそういう点を十分考慮のうちに入れましてやってまいりたいと思っております。
#14
○森元治郎君 通商航海条約について西側の諸国と結んだ形式と共産圏との形式と、これにはおのずから若干の相違はあるんだろうと思うが、相違点があれば指摘をしてもらいたい。
#15
○説明員(山崎敏夫君) 仰せのとおりでございまして、先ほども補足説明で申し上げましたように、この条約は海難救助に関しましては内国民待遇を規定してございますが、その他は全く最恵国待遇が中心となっております。これは、先ほども申し上げましたように、社会体制の相違から来るものかと思いますが、わがほうは従来通商航海条約の締結の基本方針といたしましては、事柄の性質は許す限り内国民待遇及び最恵国待遇を得たいということでやっておるわけでございます。戦後結ばれました、たとえばアメリカとの通商航海条約なんかも、多くの点において内国民待遇を規定しておる。内国民待遇をもらうということは、相手国の国民と同じ待遇を保障をされるわけでありますから、非常に強い保障でございますが、ブルガリア、ルーマニアともに、この点はなかなか与えられないという点がございまして、これは他の東欧諸国との関係でも同様の事情がございましたので、わがほうとしても、最恵国待遇だけでもかなりの保障であるという認識のもとに条約を結んだ次第でございます。
#16
○森元治郎君 最恵国待遇といい、内国民待遇といっても、その内容で損得はあると思うんだが、ルーマニア、ブルガリアの側から見れば、日本の最恵国待遇は保障されるが、小さいと言っちゃ失礼だけれども、通商関係もたいへん大きくないバルカンの国々のこの両国の内国民の待遇なり最恵国待遇を受けても、たいへんな利益というか、日本で彼らに最恵国待遇を与えるほどわれわれはもらえない。質の違う待遇があるだろうと思うんです。そういう点はやはり不平等の感を免れない。実質的な不平等の感を免れないんだが、この点について通商航海条約交渉で話し合いが行なわれたのか。向こう側の説明でもあれば伺っておきたいと思う。
#17
○説明員(山崎敏夫君) 仰せのとおりでございまして、たとえば事業活動に関しまして、最恵国待遇を相互に約しましても、わがほうの関係で申しますと、たとえばアメリカ、イギリスその他西欧諸国には内国民待遇、一部の業種を除いては内国民待遇を保障しておりますから、実質上ルーマニア、ブルガリアはわが国においては内国民待遇を取ることはできるわけであります。それに反してわがほうの場合には文字どおりの最恵国待遇、つまり、内国民とは若干不利であってもしかたがない。ただ、他の第三国の国民とは差別されないという保障を得ただけでありまして、待遇の実質的内容については森先生御指摘のとおり、差異があることは事実でございます。この点に関しましては、わがほうとしては、従来から東欧諸国に対しましても、こういう事態になってまいったのでありますから、できるだけ内国民待遇をもらいたいということは常に要求しておるのでございますけれども、やはり向こう側の体制の相違と申しますか、また、いろいろな事情で得られなかったというのが事実でございます。しかし、先ほども申し上げましたように、やはり最恵国待遇だけでも保障されるということは、たとえばそういう東欧諸国と西欧諸国との経済交流、人的交流がいま非常に盛んになっておりますので、それと差別されないという意味において非常に意味があると私は考えております。
#18
○森元治郎君 非常に意味があるとまでは私は思わないけれども、西側諸国の、地続きのEEC諸国などと彼らとの通商航海条約のパターンと、われわれの今度のものとには違いはないのですか。
#19
○説明員(山崎敏夫君) 先ほども申し上げましたように、西ヨーロッパの諸国と東ヨーロッパの諸国との間には、最近は貿易及び人的交流が非常に盛んでありますが、彼らのその関係はおもに貿易取りきめでやっておりまして、あまり通商航海条約という形は必ずしもやっておりません。しかし、やっております場合でも、われわれ以上のものを取っているという場合はないのでありまして、こういう通商航海条約を東欧諸国ほとんど全部と結んでおるというのはむしろわが国だけではないかと存じます。
#20
○森元治郎君 私は、このルーマニアとブルガリアとのこういう関係は、戦前型の軽い意味の協定、いまおっしゃった西側の取りきめでいいんじゃないか。最近、共産圏諸国は形式が非常に好きでして、何とか重いかっこうが好きなんですね。また、新進諸国は、たとえば外交官の立場にしても、公使なんというのはおもしろくない、何でも大使にしてしまう。それぞれに背伸びといいますか、形を重くしたりすることが好きなんで通商航海条約ということになったんじゃないか。こちらもそれでいいというのなら、実害もないし、いいじゃないかということで航海条約という形になったと想像するんだが、いかがですか。
#21
○説明員(山崎敏夫君) 先ほど経緯からも申し上げましたように、確かにこの両条約とも、先方から特に通商航海条約を結びたいという希望があったためにつくられたものでございます。事実上は貿易取りきめでも大体足りるじゃないかということは仰せのとおりかとは思いますが、しかし、何と申しましても、東欧諸国と日本とは相当離れておりますし、社会体制も異なっておりますので、こういうものがあるということはわれわれにとって一応の安心感があると思いまして、まあこういうものを結んだわけでございます。なお、ルーマニア、ブルガリアとも、ソ連との間にはやはり通商航海条約を結んでおるわけでございます。
#22
○森元治郎君 やっぱり通商航海条約を結びたいと向こうから言ってきたんですね。それはそうだろうと思う。それよりは、むしろ貿易額にしても大体向こうから日本が買い入れるものは一千万ドル台、多くて二千万、日本はうんと出超して、買うものを買ってやって、私は自由に動ける貿易取りきめのほうがいいんじゃないかと形式上は考えたわけです。
 そこで、今度は同じ共産圏の中のこの種条約との関係ですが、一番初めは多分日ソ間の通商航海条約だったと思う。日ソ間、ポーランド、チェコスロバキア、そして十年ぐらいたって今日のこの二つの通商航海条約を結んだと記憶しております。十年の差がある。この十年の差ということと、ルーマニアは共産圏の中においては特異の存在と言ってはおかしいけれども、若干ソ連、ポーランド、チェコとの関係と違って、自主独往というほどではないが、独立的に行こうという空気を持った国でありますから、何らか、これらの先に結んだ共産圏諸国との航海条約の形と時間の経過と、バルカン諸国における共産圏のルーマニアの特別の地位にかんがみて、これは航海条約の上に何らかの形で違いがあらわれておるのかどうかということは、前の各国別の、ユーゴスラビアを含めて各国別の通商航海条約、一々対照しておりませんから詳しく御質問できないが、おおよそのところの説明を伺ってみたいと思います。
#23
○説明員(山崎敏夫君) ソ連との通商条約が確かに十年以上経過いたしまして、われわれとしてもいろいろと改善をはかりたいと思ったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、まあ、原則として最恵国待遇でいきたいということの向こう側の方針はくずせなかったわけでございます。しかしながら、ソ連との条約におきましては、その十二条の一項におきまして、経済活動を行なった者に対する身体の保護とか財産の保護とか出訴権に対して最恵国待遇は保障しておりますけれども、それ以外には、先ほど申した、いわゆる居住条項がないのでございます。それに対してわれわれとしては、今後日本人は相当向こうへ行って入国滞在し経済活動をやるのでありますから、できるだけそういうものについて待遇の保障がほしいということで、先ほど補足説明でも申し上げましたように、出入国滞在、身体財産の保護、それから軍事義務の免除、内国課税、経済活動等に関して最恵国待遇を入れるということについて先方は同意したのでございまして、その点は、やはり十年の時間の経過と申しますか、若干の改善があったのでございます。それからさらに、日ソ条約では国家企業についての規定がございませんけれども、この両条約にはガットの十七条の規定にならった規定が設けられておりまして、国家企業が商業的考慮に基づいてビジネスライクに行動するように保障されているという意味において進歩ではないかと思います。
 それから第三に、また日本とソ連との条約の間にはガットとIMFというものに関する規定が全然ありませんけれども、この両条約の間ではこの点に関しまして規定がありまして、現にルーマニア、ブルガリアともガットに対してはかなりの関心を持っておるわけでございます。ソ連はガットに加盟するような意向はいまのところは全然ありませんけれども、すでにルーマニアはガットに対して加盟を申請しておりますし、ブルガリアもそういうような意向を有しておると承知しております。その関係もありまして、ガットの規定が優先するということの規定をこの条約の中に設けることに対して、ルーマニア、ブルガリアとも、いずれも全然異議を唱えなかったわけでございます。さらにIMFというものに関しましても、まあ、いまのところ、この両国ともIMFに加盟する意向は持ってはおりませんが、議定書の第一項において、ガットとともにIMFについての優先権を規定することについても、何ら反対を唱えなかったというわけでございまして、そういういろんな点においてかなりの改善はあったとわれわれは考えております。
#24
○森元治郎君 この東ヨーロッパの共産圏諸国を回って見れば、買いたいものは何でも日本から買いたいが、見返りに出す物がない。そこで、日本側が大体二対一、三対一くらいで出超になっておる。向こうじゃこれを買ってくれ、あれを買ってくれという注文は相当あるんだと思うんです。大臣は、一体、見返りはないが通商貿易はどんどん進めていきたい。買いたい、買ってもらいたいという気持ちのこういう国々に対してどんなふうな通商貿易の発展の方策を考えておられるのか、これをちょっと伺っておきたい。
#25
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどもちょっと触れた点でありますけれども、先方の希望は、いま森さんのおっしゃったような、非常な日本に対して期待を持っておることも事実でございますが、同時に、わがほうとしてどういう点が、たとえば貿易上の先方の希望に応ぜられるかということについては、現状並びに今後の先方の経済の発展の状況や計画なども十分参考にしたいということを考えまして、最近では、たとえば経団連の会長を団長にして、経済使節団も、特に政府からも委嘱いたしまして、派遣をいたしまして、具体的にさらに専門的な立場から先方の希望というものをも十分聴取したいということで、その結果についてのリポートなども出てきておりますので、そういう点をさらに政府においても検討を加えまして、今後先方の希望にこたえながら日本の立場を伸ばしていきたい、こういうふうな姿勢で前向きに取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。
#26
○羽生三七君 ちょっと関連して。
 このルーマニア、ブルガリアともにコメコンの加盟国ですが、コメコン内部のことは別として、他国との、つまりコメコン加盟国以外の国々との間の貿易については、別に何らの障害、制約、そういうものはないわけですか、コメコンのために何か貿易上の制約が起こるということがあり得るのかどうか、絶無かどうか。
#27
○国務大臣(愛知揆一君) その点はコメコンの加盟国である関係からいって、先方には先方の事情があるいはあるかもしれませんけれども、同時に、ただいまもガットの話が出ましたけれども、たとえば、東欧の諸国の中でも、すでにチェッコ、ユーゴ、ポーランドというようなところはガットに入っておるというようなことでもあり、ルーマニアにそういうすでに希望があらわれておるというようなことは、なかなか興味があると申しては語弊があるかもしれませんが、一つの流動的な将来に対する動きを示唆しておるものではないだろうかというふうにも感ぜられるわけでございます。
#28
○森元治郎君 日本の現在の通商政策を見ていると、せめてスエズ運河、中近東手前くらいまでは手が伸びるが、ヨーロッパ大陸までには伸びておらないような、通商貿易にしても、既存のイタリア、フランス、ドイツ、イギリスというものとは一生懸命だが、そのほかにはまだ力が及んでいないように見えます。そこで、ちょっとこの条約とは直接関係はありませんが、地続きだからひとつ質問したいのはトルコであります。トルコの例のイスタンブール、向こう側がウシクダラ、あそこに橋をかけようというんで各国の企業が入札した。日本は初めはとても乗り気ではなかった。ことに、いつも銭のことになると理屈は抜きで出したがらない大蔵省なんかは、初め見向きもしなかったようだったが、だんだんに、工作をされたんでしょう、乗り気になったけれども、とうとう負けてしまった。あのボスポラスにかける橋、あんな遠くのところで、日本の直接のもうけにもならぬけれども、日本は経済大国になって金をたくさん持っている、もっとほかの国にも応援してくれ、トルコなんか国をあげて日本に期待をし、金も出してくれと熱心に説いてきた。私は、ああいう場合には、海外援助は大いにやるとかねがね歴代外相が言っているのですから、ほんとうに日本は平和建設のために努力するんだという一つのマイル・ストーンというか、そういうもののためにも、ヨーロッパ大陸とアジア大陸のかけ橋になるボスポラス海峡の橋はどんなことをしても取るべきだったと思うのですが、だめになってしまった。これはどういう事情でだめになったのか、大臣も財界のほうはお知りでしょうからお聞きになっていると思うので伺いたいと思います。
#29
○国務大臣(愛知揆一君) 前段で御指摘がございましたように、日本の経済協力という立場から申しますと、これは率直に申すのでございますけれども、私は、従来受け身であったことが多いように思われるわけでございます。つまり、受け入れ希望国からの希望が出てきた場合に、これをどう処理をするかということのほうが、率直に言って、傾向としては強かったように思われますので、日本として経済協力に対する基本的な考え方をどうすべきであるかということを、積極的に、あるいは自主的に構想をつくるべきである、私はかねがねそういう方向で努力をしてきたつもりでございます。そうでございませんと、どこまで、たとえば地域でも広げるという地域的な観念もございましょうし、あるいは純粋経済的に考えて、公正な条件で他国と競争をして日本としてやり得るものはやるという立場に立ち、また、それに限定するのがいいか、あるいは政府の直接の援助というようなこともそこに加味するかどうか、あるいはその限界はどう考えていくかというような点についての基本的な考え方というものが私は必要であると考えているわけでございまして、最近にも、そういう点でひとつ政府部内の思想統一というようなものもはかっていきたいと実は考えているのでございます。
 そこで、トルコの具体的なお尋ねでございますが、私は結論的に、トルコの橋梁の問題に、いわば積極的な森さんから御質疑が出ましたことを私は非常に歓迎したいと思うわけでございまして、これは、いま申しましたような基本的な考え方というものが全体的にまだ十分にはできておりませんけれども、やはりヨーロッパとアジアとのかけ橋に文字どおりなるというようなものについて、日本の技術あるいは日本の資力というようなものがここに使えることができるならば、これはたいへんけっこうなことではないかと考えまして、私は実は非常に積極的にこのプロジェクトに対する参加を推進いたした一人でございます。しかし、これは御承知のように、トルコ側、あるいは従来のいろいろな関係もあるコンソーシアムの関係もございますし、結局、公正な競争で入札をするということは当然のことでありますが、これに対しまして日本の関係者の努力にもかかわらず、まあ、ことばは適当でないかもしれませんが、この入札に落ちたわけでございます。非常に私は残念に思っております。しかし、同時に、このすでにきまりましたこのプロジェクトとワン・パッケージになっておるもう一つのプロジェクトがございます。このプロジェクトに対して、先般の入札のときのいろいろの貴重な経験を生かしまして、関係の方々がさらに積極的にくふうをこらして、公正妥当な条件で、しかも、国際的な入札に応じ得るような、そしてこれが日本に落ちるようなくふうを積極的にいたしたい、こういうふうに考えまして、いま関係の方々にもあらためて努力をお願いしている、こういう状況でございます。
#30
○森元治郎君 そこで、いまのお話を聞いて感ずることは、そういう雄大な日本の理想的な仕事をする場合に、財界と一部政治家と関係会社あたりの裏のほうでやっているような形であるから私はできないんだと、やはり国民的な背景の中に、世間にこれを公表して、そして世間の協力を、世論の協力を求めることがこれを成功させる大きな道だと思うのです。どうしても四畳半でそろばんはじいたようなやり方では取れるものも取れないのじゃないか。やはり公表する。していく発表機関もあるのですから、その経過などを国民に知らせつつまいるんだということが大事だと思う。そしてまた、トルコは貧乏でいつ金を返すかわからぬというようなことをみんなが言う。債権国会議のお世話になっているのはインドネシアも同じ。インドネシアのほうは国が近いせいか、東南アジアの、日本の平和と安全と繁栄に関係するでしょう。それで熱心だけれども、遠くのほうになると、にわかに金がないと。同じ債権国ですから、遠くのほうへ行ってしまうと、貧乏にはあまりつき合いたくないといったようなこういう態度は、外交上とるべきじゃないと思う。それだけちょっとお伺いします。
#31
○西村関一君 関連で一問いたしたいと思います。
 ルーマニアは、御承知のとおり、東ドイツ、つまりドイツ民主共和国と外交関係を結んでいることはもちろんでございます。同時に、西独――ドイツ連邦共和国ともおのおの通商代表部を置いておるという状態でございまして、西独の、ドイツ連邦共和国側との経済関係を密接にやっているわけでございます。先ほど外務大臣から、日本がその間ヨーロッパとの関係において橋渡しをしていくことが大事だというようなお話がございましたが、ドイツ連邦共和国あたりからの技術や資本がルーマニアに流れ込んでいるという状態に対しても、むしろ積極的に日本から経済協力を推し進めていく。具体的な方法としては、先ほど森委員の質問の中にもございましたが、すでにドイツ民主共和国に対して日本の経済・技術交流が行なわれておる。プラント輸出も行なわれておるという現状でございますから、ですから、むしろ日本の技術をもって、技術及び経済力をもってプラント輸出の方向に向かって協力していくというようなことがもっと積極的に行なわれていいんじゃないかと思うのであります。
 ブルガリアにつきましても、これは農業国でございますから、見返りがないというようなこともございますけれども、しかし、またくふうをこらしてまいりますならば、農業関係の資材でありますとか、農業関係の機具といったようなものを、ブルガリアと協力して日本の技術を提供するということも可能じゃないかと思うのです。そういう点に対して、いま外務大臣おっしゃったような観点から、もう少し積極的な経済交流を深めていくということが願わしいと思うんです。その点、あわせてお伺いしておきたいと思います。
#32
○国務大臣(愛知揆一君) ブルガリア、ルーマニアに限らず、東欧諸国の動向といたしましては、まあ、いろいろ複雑な国際政局の中に微妙な立場にある点も私はあるのではないかと思いますけれども、日本に対しましては技術的な援助を求めたいという空気が非常に強いように私は看取いたしております。そこで、たとえば技術協力の協定というようなことも話題に出ることもございますけれども、これらの点についてはわが国としてはなかなか慎重にやる必要もありますので、技術協力協定というようなことに一挙に進むということはなかなか考えものだとは思いますけれども、しかし、プロジェクトごとに、検討の対象になるものについては、私は前向きに考えてよろしいんじゃないかと思っております。ただ、先ほど申しましたように、これはどうも政府だけでもなかなかいい知恵、あるいは将来に対してどういうふうなところが一番双方のためになる点であるかということがなかなかつかまえにくいところもございますもんですから、政界あるいは経済界の方々にもお願いをして、そういうふうな調査とか意見の聴取とかということに積極的にここ一、二年来政府としての立場でもお願いをして関心を向けるようにし、同時に、先方の要請にもこたえるというような姿勢を現にとりつつあるわけでございまして、今後の発展ということについては、私としても前向きに考えていきたいと思っております。
#33
○森元治郎君 ブルガリア、ルーマニア両国とソ連との貿易量ですね、おそらくルーマニアは特別な立場のようだから、その輸出入の中に占める割合は、ブルガリアに比べてルーマニアのほうがソ連圏が比較的少なくて自由圏が多い。ブルガリアはソビエトのほうにわりあいに比重がかかり、西側とは少ないんじゃないかと思うんですが、その数字、おおよそでいいですから、お知らせを願いたい。
#34
○説明員(加川隆明君) お答えいたします。
 ただいまのブルガリアは、ブルガリア全体の貿易に対ソ貿易が占める割合、これはブルガリアはおっしゃるとおり五一・三%、それからルーマニアは二八・七%、こういうことになります。
#35
○森元治郎君 それじゃ西側のほうはこの両国はどんな割合になってますか。
#36
○説明員(加川隆明君) ルーマニアと西側諸国との貿易は三四%、それからブルガリアと西側諸国との貿易は二四・四%ということでございます。
#37
○森元治郎君 大体、本条約は格別悪いところない、まあ、普通の形式の条約のようであります。そこでちょっと話を政治のほうに向けて、現実政治というのは表面の動き方と違ってなかなか複雑怪奇な面があるようであります。一昨年ソ連がチェコスロバキアに軍隊を出して、ふだんあまり快い態度を示しておらないルーマニアに対してもソ連軍は何かするのじゃないかというような報道がなされ、ルーマニア政府もまた、だれ言うとなく、天に向かって、祖国は断固防衛するというような、たいへんに緊張した場面が一昨年の秋に展開をいたしました。大臣、非常におもしろいのは、私トルコに当時おりまして、ルーマニアのほうからトルコのほうに――詳しいことは外交上ですから申しませんが――もしソ連から押しかけられたらよろしく頼むといったようなことを言ってきたんだという話でありました。ソビエトのワルシャワ条約機構の中に入っている片方の国が、NATOの一員であるトルコのほうに再度の話があったと聞く。いわゆるそういうごたごたにつきもののデマでもなさそうに判断をいたしました。複雑怪奇だなといったような感じを深めたのであります。これは私はある共産圏の大使にお話したところが、非常に、おまえつまらないことをどこから探ってきたかみたいな顔をした、疑い深そうな顔をした人がおりましたが、だから、バルカン情勢というものはそんなふうで、表面と違って、なかなか複雑だといったようなことを感じた経験があります。この辺の東欧諸国における団結といいますか、こういうものは依然として鉄の団結なのであろうか。新聞が報道するように、多極化してそれぞれが自主路線を走っている、ゆるい渋滞で結んでおるのだというふうな現状なのか。ソ連圏――ソ連を盟主とする東欧圏――の団結のありさまというものはどんなふうに理解をされておりますか、伺います。
#38
○国務大臣(愛知揆一君) まあ、他国の動向につきましてあまりコメントすることは私の立場としていかがかと思いますけれども、公表されておるところで拾ってみましても、少し古くなるかもしれませんけれども、たとえばルーマニアで例をとってみますと、一九六四年に声明を政府として出しておりますが、その中に、国際共産主義・労働者運動の諸問題に関するルーマニア労働者の立場として、諸外国との関係は、独立、主権及び領土保全の尊重、互恵、内政不干渉の原則に基づくべきである。それから、先ほどもちょっと触れましたが、コメコンの超国家機関化には反対であるというようなことを公表したものの中にございますことは御承知のとおりだと思います。それから、いまチェコ事件のことに言及されましたが、この事件の当時、チェコへのルーマニアの態度としては、軍事介入に加わらなかったことは事実でございますし、同時に、軍事介入については国際共産主義運動における大きな打撃であるということを公式に声明しておりましたことも御承知のとおりでございます。こういうふうに、公表されたところから見ましても、この情勢というものについては、なかなか興味のある状況であるということは言えるのではなかろうかと思います。
#39
○委員長(長谷川仁君) 五案件に対する質疑のうち、ただいま質疑中の
 日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件
 日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件の二案件につきまして、質疑は尽きたものと認めて御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、二案件について一括討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御発言もないようでありますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 まず、
 日本国とルーマニア社会主義共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#42
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、
 日本国とブルガリア人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#43
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 残り三案件に対する質疑は一時中断し、午後は、国際情勢等に関する調査を行なった後、再び三案件の審査を行なうこととし、午後零時五十分まで暫時休憩いたします。
   午前十一時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時九分開会
#45
○委員長(長谷川仁君) これより外務委員会を再開いたします。
 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#46
○森元治郎君 しばらくぶりで総理と御質問申し上げます。
 出席が、大体悪いですよ。毎国会言うのだけれども、池田さんのときから鳩山さん、たいへんよく来られたのですが、総理は、毎回、毎年悪い。一年であなたの顔は二度くらいしか見られないですよ。この機会によく注意しておきます。
 きょうの質問は、時間がわずか三十分か四十分でしょう。ですから、質問の応酬に明け暮れるわけにはいかないと思う。質問に入る前に、けさの新聞を見てぴんと来たことから始まります。
 総理は、きのうの衆議院の外務委員会で、中華民国を中国の正式な代表者だということで平和条約を結んだ、正式な代表者だということで中華民国を選んだ、当時の選択は間違っていなかった、こういうお答えであったんですが、これはもう総理も御存じのように、今日の日中関係がこのような非常な複雑、深刻な事態になったのはスタートがまずかったと思うんです。これが尾を引いて、総理の腹の中と総理大臣、政治家、自民党代議士として世間に公式に言う場合と、静かに腹の中で考えておられることは違うと思う。その悩みが答弁にしばしばあやふやなことになってくるんだろうと思うんです。そこでこう選んだと申しますが、当時占領下であって日本は相手国を選ぶ権利はありません。一九五一年の十二月、例の有名な吉田。ダレス書簡の始まりである、吉田さんが中華民国を選ぶと言ったのは、選ぶんではなく、当時の吉田さんにとっては、選ぶ立場になかった、占領下で。そして、ダレスの要請によってやむなく平和条約後の中国の代表者は中華民国ということにさせられてしまったということは、これは何びとも今日明白なことであろうと思うんです。この点からひとつ総理に伺います。
#47
○国務大臣(佐藤榮作君) 森君から久しぶりに御質問を受けるような気がいたします。しかし、私の立場に、公式には何らか腹のうちと違うことを言わざるを得ないだろうと、御同情いただいたようでありますが、その御同情はちょっと御返上申し上げておきたい。と申しますのは、この中国の代表に一体どちらを選ぶか、その選択権は日本にまかされたように、私は当時のことを思い起こしておるのでございます。森君も当時もうすでに議員になっていらしたか、あるいはまた在来の仕事をしていらしたか、そういう意味で、それぞれのソース、種というか、そういうソースについては確信を持ってただいまのようにお話しだろうと思います。しかし、私が吉田さんのもとで働いておって吉田さんから聞かされたことは、これは日本で選んだ、こういうことでございます。私、このことが、当時の情勢で、まだ大陸自身が十分に完全におさまっている状況でなかった、したがって、そのときの選択は私は間違っていなかったと、かように私は説明しておるのでありまして、どうもこの点では、当時を思い起こしながらただいまのお尋ねに私のしゃべったことは、腹のうちと別に違うことをしゃべってはいない、私の感じたことをそのまま表現したことを受け取りいただきたいと思います。
#48
○森元治郎君 それを違うんでありまして、当時私はまだ落選中の身でありまして議員ではありませんでしたが、吉田総理の側近のあなたの友人の白洲次郎君や松本重治君などと、ダレスが来て東京におられたころ、われわれはこのニュースのぐるりにいたわけです。困ったことになったと、これは。こういう事実があることが一つ。もう一つは、これはもう皆さん御承知のイギリスは、中共と国民政府、いずれを選ぶかは日本政府にまかせようじゃないかというのがイギリスの立場であったが、これをアメリカは言うことを聞かず、日本政府をして国府を選ばしたことは歴史的事実であります。これは、佐藤さん、当事幹事長をやっておられたが、えらい立場であったと思うんですが、これは事実なんですよ。歴史的事実。こういうふうに選択をまかされたといま吉田さんがおっしゃったと言うが、いやしくも自分で手紙を書いておいて、片方では国民政府を選ぶと言いながら、片方ではいや、実は選ばせられたんだとは、これは政治家としては死んでも口は開けないでしょう。おそらく、あるとすれば、メモワールか何かに書いて後世の史家にまかせるという方式をとるのだろうと思う。この点もう一回伺いたい。
#49
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま明確に申し上げましたとおり、私は吉田さん自身から、はっきり、この点は、日本の自由にまかされた、日本で選んだ、こういう形でございます。ことに、その当時一番大きな理由は、平和条約を結ぶなら、現実に戦った相手そのものと平和条約を結ぶのが当然だと、こういうことで吉田さんはこれを選ばれたようでございます。私が申し上げるまでもなく、蒋政府、蒋政権とあの大東亜戦争は戦ってきたのでございます。そういう意味で、その点は非常にはっきりしております。
#50
○森元治郎君 しかし、いま、古い国際法であるかもしれませんが、現に支配する領土を持つ、人民を実効的に支配しているのは、当時残念ながら北京の政府であり、国民政府の蒋介石は台湾に来ておる。一千万足らずと七億の人口。こういうことから考えて、吉田さんの気持ちは、好ききらいは別として、国民政府のほうにはなかったと私は当時聞いている。困った困ったと。これは白洲君のことばであります。いずれ総理も彼と会ったときに聞いてごらんなさい。ほんとうに困ったと、現実は北京だと、こういうことは、われわれ、この交渉を裏で見ておって心配した当時の経過を顧みて考えておるわけであります。正しく選んだということであるけれども、私は、選ばせられた、正しくはなかった、むしろ気持ちは、好ききらいは別として、現実の北京にあったんだというふうに理解します。しかし総理は、吉田さんから直接ということで、この時間に押し問答をしても結論は出ないけれども、この点にいささか私は歴史的事実と違うと思うので御質問をしたわけです。
 そこで、過去すべての機会を通じて自民党の方々、歴代の政府は、国民政府というものと非常に断ち切れない感情を持ち、非常に離れがたいものを持っているような感じがいたします。それにはいろいろあるでしょう。政治的なもの、経済的なもの、あるいは歴史的なもの、あるいは心情的なもの、こんなものがあると思うのです。これを逐次御質問申し上げます。
 第一番目に当たるのは、中共――北京というと、政府は、関係改善はもちろん、接触から口を聞くことまで渋りがちで、そっけない態度を従来とってきたように見えます。いずれの国とも仲よくと言いながら、これをすなおにやれない理由は何だろうと考えてみると、一つには国民政府と現に平和条約を結んでいるのだ、したがって、中共と何らかのかかわりを持つことは国際信義に反するのだ、これは現実があるんだ、これさえなければというような、微妙な響きをわれわれは感ずるので、ほんとうならば、断じて一〇〇%AならA、Bは一切ゼロと、こういう態度であればすなおに聞きやすいのですが、どうも結んでいるからしかたがない、もしなかったら助かるんだがなというような感じを受ける。その点はどんなふうにお考えになりますか。
#51
○国務大臣(佐藤榮作君) 昨日も衆議院で同じようなお尋ねがございました。これは確かにいま森君が言われるように、私どもが中華民国と平和条約を結んだ、それはそのときも、将来施政権が及ぶ範囲にこの平和条約は適用されると、こういう条項があるはずでございますから、そういう意味で、これを中国の代表者として選んだ。ところで、ただいまは大陸には別な北京政府がある。そうして中国はどこまでも一つだ。これも、私が申すまでもなく、北京政府も、国民政府も同じように中国は一つだと言っておる。そういう立場であるとき、日本の選び方、その選んだことについて、いまからとやかく批判をされてもこれはしかたのないことですが、とにかく選んだ国民政府、それが現実に厳存しておる。その意味では、やはり国際信義を私ども守っていかなければならない。これはまあ条約上の権利であると同時に義務でもある、かように私は考えますので、ただいま御指摘になりましたような点に非常に困難な問題がございます。しかし、いずれは、中国の国内問題でございますから、そういう問題は解決されるだろうと、そういう際に、少し先走った話もいたしますが、同一国民でございますし、一国家をなすという場合、おそらく話し合いでそういうことが片づいてくれる、そういうことを実は期待しておる、これが私どもの立場でございます。でありますから、ただいま平和条約を結んだ相手方、これはやはりわれわれも国際信義上からもそれを立てていかなければならない。しかし、現実に大陸を支配している北京政府がある限りにおいて、大陸との交流では、やはり北京政府と何らかの接触を持たざるを得ない。ただいままで私ども政府間交渉を持たない。しかし、民間の交渉はむしろ積極的にそういうものについてはこれを望んでいる。そういう形で、あるいは文化交流、あるいは人の交流、さらにまた貿易等も続けられておるというのがただいまの中国大陸と日本との関係でございます。この点はただいま仰せになりましたとおりの状態で、私どもは一方で国際信義を守りつつ、また現実には、ただいまの大陸にある北京政府と接触をせざるを得ない、こういう状況であります。
#52
○森元治郎君 なかなか、つらいところですな。ただ最近ちょっと変わってきているのは、著しく感ずるのは、こういうことです、総理。総理は安保条約関係でも、昨年の通常国会あたりまでは、ワシントンに行くまでの態度は白紙である。とうとう白紙でもって終わりまで逃げ切ってしまった。そうしてその後ワシントンに行ったところ、核抜き・本土並み、これは久住忠男君なんかのあの沖繩復帰問題研究会の意見と同じようなものになった。いままで中国に対してはきわめてつれない態度であったが、近ごろはたいへんけっこうな方向になってきて、ことばづかいも、きのうの答弁を見ると「れっきとした政府」、こういう「れっきとした」ということが記事に書いてある。しかも、国府台湾と言わずして、台湾省と北京政府というふうに割り引きをして表現しておる。こういうふうにあなたが変わってきたことはいいことなんだが、これはわれわれにつつかれて引きずられてきているような感じがするのですね。どこにも確固不動という姿勢が見えないですね。この点はひとつ一問伺います。――おっかない顔をしなくてもいいですよ。
 それから、台湾省と北京政府との関係は、これは話し合いで片づけてもらう筋のものだ。これは中国のことですから、何しろ世界的大政治家を生み出すところですから、国共合作もあるだろうし、腕力を使わないで話し合いができるかもしらぬ。かりにできて、それが一つになります。その政府はもう文句なしに、北京政府に指導権が移ろうとも、これを承認するにやぶさかじゃないでしょうね。
#53
○国務大臣(佐藤榮作君) 遠隔の国とも仲よくいたしますが、もちろん隣の国にれっきとした政府ができれば、これと仲よくするのは当然でございます。
#54
○森元治郎君 そのように、話し合いによってできることが、両者が話し合って一つの形になってくれることが一番望ましいならば、隣国たる日本はこれをじゃましないような態度をもって見てやることが大事だと思う。ところが、今度の日米共同コミュニケを見ますと、第四項で台湾の地域の平和と安全の維持ということが特に浮きぼりをされて書かれている。しかも、愛知外務大臣の説明の要旨によれば、あそこに外部からの武力攻撃の発生ということは「予見されないけれども」と書いてある。予見されるおそれがあるというので対策が立てられるのが普通なんだけれども、予見はされない、いつのことかわからぬが書いておけば何かの足しになるであろうというようなこういう態度は、両者の話し合いを促進させることにはならない。依然、冷たく分けるほうに大きく働くのではないか、こういうふうに考えます。
#55
○国務大臣(愛知揆一君) 私の説明についてのお尋ねですから簡単にお答えいたしたいと思いますが、ただいま総理の言われているように、中国の問題は、双方とも一つの中国という主張がある、これはひとつ話し合いで解決をしてもらいたい、こういう態度でおりますが、しかし、もしこれが武力で解決がされるというようなことになれば、日本としては、非常に至近距離にあるところでありますから、日本の安全に対しても至大な影響がある、日本の国益の立場からいっても、そういう場合についてはしかるべく措置をとらなければならない、こういう考え方が出ているわけです。私は、これは一つのやはり現実の問題として、予見はしたくない問題ではあるけれども、やはり一つの可能性の問題として、抑止的な効果も含めてここに明らかにしておくことが必要である、こういう立場に立ってこの声明ができている、また、私の説明もそういう趣旨で説明をいたした、こういうような御了解をいただきたいと思います。
#56
○森元治郎君 特に予見しないのに外部からの武力攻撃ということは、私はそのようにやさしくとらない。外部からの武力攻撃といういま大臣が頭の中に考えているのは、どこの国がどこの国にどういう攻撃をしかけてくるという可能性なんですか。
#57
○国務大臣(愛知揆一君) 現実の問題としてさようなことはなかなか予見したくないことであるし、また、予見しておりませんけれども、可能性の問題としては、中国の一つの中国のなり方が武力抗争によってなるということも考えられないことではない。その武力解決というものが大規模になるというようなことは、これは日本の立場からいっても対岸の火災視するわけにはいかない、日本の国益からいって非常に重要なことではないでしょうか。そういう態度、そういう考え方を明らかにしておるわけであります。
#58
○森元治郎君 攻撃の可能性があるかもしれぬとおっしゃるが、現在台湾には、アメリカの地上軍、あるいはアメリカの航空隊、こういうものはいないのじゃないかと思うのです。第七艦隊も、いわゆる台湾、火のつきやすい台湾海峡付近は遊よくしていないで、離れている。そういうふうな危険があるならば、こういう武力の力というものは当然台湾地域に集まっていなければならない。そこで初めて、いま言ったようなコミュニケの表現に当たる事態が予想される。何もない、静かになっている。こういうときに突然ああいう項目を入れるということは行き過ぎではないか。入れる必要はない。何となれば、条約は誠実にこれを履行するということは、向こうの国も日本の憲法もこれは認めているんで、特にとりたてて平地に波乱を起こす必要はないのじゃないか。まして中国から見れば、自分の領域に入っているんだ、自分の領域に行き来したり、あるいはときに力を用いるのに何で他人の了解を得るかといった気持ちもあるでしょう。いずれにせよ、静かにさしておく必要があると思う。韓国に関するある共同コミュニケの中には、「予見される」ということばは使っていない。向こうはもっと緊迫しているんでしょう、時間がないから触れませんが。片方は予見されないのにこういうものを入れる。私は行き過ぎであると思う。総理、どうですか。
#59
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも、まあ行き過ぎか、いま批判を受けております。十分これからは注意いたしますが、しかし、森君も御承知のように、大陸反攻ということが一方で言われ、片一方では、台湾省解放だという、そういうことが言われる。そういうようなこのことばだけを聞いていると、いかにもあぶない状態にあるように思います。私は森君も、台湾省を武力解放する、そういうことも全然お聞きでないとはおっしゃらないだろうと思う。私どもはそういうような万一のことを考えながらこれを書くことは、これは当然じゃないでしょうか。いま外務大臣も申し上げましたように、ただいまそういう危険はないんだ、ないんだが、万一のことを考えてこういう表現をしている、こういうのでございます。それはただいまの北京政府、また中華民国、その間のことばじりをとるわけじゃありませんが、双方で発表しておるそれだけは、たいへんな危険なものであるかのようにもとれる向きがない、かようには断言できないのじゃないでしょうか。
#60
○森元治郎君 自民党政府が台湾を固執しているような感じをしていることは先ほど申したとおり。
 そこで、時間ありませんが、こういうことはやはり台湾との関係を断ち切れない原因だろう。佐藤尚武さんがよくこの参議院の外務委員会で、終戦時における蒋総統の日本の兵士その他に対する温情ある態度、暴に報いるに暴をもってしなかったということは忘れるべきじゃない。こういうことがたいへん戦前漢文教育を受けたわれわれクラス以上はこれは感激してしまうんですな。そういうところが、そんないい国を、政治上あるいは法律上どうかしらぬが、捨てて、北京政府を承認しようということはまずいんだというような、これをはばむ一つの原因になっているようですが、総理はどうお考えになりますか。
#61
○国務大臣(佐藤榮作君) 佐藤尚武さんのお話は、それはそれなりに伺っていいことだろうと思います。しかし、ただいまのきびしい国際情勢のもとにおいて、いずれの国を承認するか、あるいはどうするかというようなことは、ただ単に心情だけでものごとをきめると、こういうようなわけにはまいりません。また、ただいま私どもが蒋政権について特別に信義を守る、かように申しましたのも、過去において一たん選んだ以上、やはり国際信義は貫くんだ、そこを日本の態度としてやっぱり持っていないと、国際的な信義を守らないような国に発言権はだんだんなくなるだろう、かように私は思いますので、そういう意味で、このきびしい状態でありながらいまなおその信義のために主張を貫いておる、かように御理解をいただきたいと思います。
#62
○森元治郎君 情に流されないという総理の御答弁まことに満足であります。政治はやはり情と理を両面から見、しかも、大乗的な決断をしなければならないのですね、政治は。それはけっこうですが、ただもう一つは、台湾に未練があるのではないか。日本の自民党の方々、あるいは最近旅行者が多くなって台湾でたいへんもてたりなんかして、日本語は通ずるし、やはり台湾はいいというような声が非常に強い。しかも、商売は盛んだ。何となく、これをせっかく放棄はしたが、よそに行っちまっては、どうも中国の共産圏の中に入って彼らが苦労するかと思うと気の毒だというような声がある。これは自民党のあなた方を支持して議席をふやしてくれた連中がほとんどこう言うのです。こういうのもこれは無視できない民衆の声なんですよ、未練。これはどう考えますか。
#63
○国務大臣(佐藤榮作君) これは直接にお答えすれば、はっきりそんなものはありませんと、こう言えばそれでよろしいのですが、私どもはいま非常に気をつけておりますのは、いわゆる経済大国になった、経済大国になった日本、これはもうGNPも世界で三番目だ、そういう経済大国。これは過去の歴史では、同時にそれが軍事大国でもあるのが普通でございます。ただいま日本の歩む道は、経済大国にはなったが、軍事大国にはならない、また昔のような行き方で、いわゆる他の国土を自分の植民地化するような考え方でそれに臨まない、そういう新しい日本の行き方をいま示しているわけであります。したがいまして、私どもはこれだけのものになりましたが、経済大国ではありますけれども、いわゆるミリタリー・アニマル、これにはならないし、またエコノミック・アニマルだ、かように言われたくないのです。したがいまして、そういう点はよほどはっきりしたもので割り切って、やはり経済協力は経済協力、同時にまた、その国の繁栄に日本が技術的援助もする、経済的な援助をする、そういうような立場でこれは割り切ってまいる考えでございます。この点をよく理解していただかないと、いろいろ誤解を生じやすい、かように私は思うのであります。
#64
○森元治郎君 今度経済の面から、何となく国民政府にへばりついていたい、中共に向かいたくないというのには、経済の面からもあると思う。あそこに日本はたくさんの投融資をしているし、出入りの貿易にしても、中共関係よりきょう現在は多い。往復七億ドルくらいあるでしょう。また、資本の協力においては、DACの加盟国としても数億ドルの金をつぎ込み、技術協力もやっている。電気機械関係その他のものの台湾進出はたいへんなものである。もしこれが台湾が捨てられて北京承知ということにいったならば、われわれのこの築き上げた経済資産といいますか、権益というか、この地盤はどうなるんだろうという不安、自民党の中にもたくさん、向こうから砂糖や、あるいはバナナの取引などで非常に親しくなり、お金の往来も盛んです。こういう人は、やはりこのままでいてほしいという気がしている。その気は、すなわち党の政策にもそれとなくひよわいようだが強く反映しておる。総裁選挙になれば、たちまちこれがまた反映するというように、なかなか経済問題も無視できないと思うのです。この点はどうお考えですか。
#65
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま申しましたように、わが国の基本的態度はただいま申したとおりであります。しかし、いま森君が御指摘になりますように、おそらく台湾に出かけておる連中は大陸に出かけていないと、そういう立場もございますると、やはり台湾のほうに親しみを感ずる、これは普通の人情だろうと思います。しかし、政府がそれをすすめておると、かようにはお考えにならないように。これはどこまでも民間的な問題である、かように御了解をいただきたいと思います。私は、森君もお若い時分にずいぶん満州や北京などに活躍された、その当時のことを思いながら、そのときとはよほどいまは変わっているのだ、その変わり方をぜひ御了解いただきたい、かように思います。
#66
○森元治郎君 資産の問題だから思い出しましたが、日本が台湾に持っておった資産ですね、台湾にあった資産、これの処理は一体どうなっておるのか。平和条約の四条の(a)項にもあったし、日華条約の第三条にもあったと思うのですが、この台湾における日本の資産の処理については両国の間で特別取りきめの主題として相談するのだと、こう書いてあります。その後一向にそれが新聞紙面にもあらわれてこない。取りきめの主題とすると条約文にあるだけで、交渉をやったことがあるのか、やっているのか、一体どうなっていますか。
#67
○国務大臣(愛知揆一君) これはただいまお話しのとおり平和条約の第三条に規定がございます。台湾における日本の資産の処理は日本政府と中華民国政府との間の特別取りきめの主題とすると、お話しのとおりでございます。その後どうなっているかということでございますが、日本側としては何どきでも交渉に入る用意があり、かつ、交渉する申し入れもいたしておりますけれども、先方がまだその気持ちにならないといいますか、この交渉に応ずる態勢にございませんので、現在のところ、懸案になっておる次第であります。
#68
○森元治郎君 これは日本国及び日本人の財産の処理の問題ですね。しかも、日華条約を結んでもう十八年、全然やってないというのは、これは怠慢であろうかと思うのです。いろいろむずかしい問題があることは承知しているが、とにかく特別の取りきめとして両方で詰めてみるということが大事でなかろうかと思う。
 そこでもう一つ関連して伺いたいのは、あえてこれをやらないのは、将来中国との、北京との関係が変わった場合に、変な特別の取りきめをしないほうが有利といいますか便利というか、そういう下心もこちら側にはあるのではないかと――勘ぐりであります。台湾側にもいろいろあります、それはわかっていますが、こちらではそういうことを一体頭に入れているかどうか、それをお答え願います。
#69
○国務大臣(愛知揆一君) それは森さんも御自身でおっしゃっておりますように、少し勘ぐり過ぎたお考えかと思うのでありますが、日本政府といたしましては、平和条約を締結いたしましております以上、先ほども申しましたように、何どきでもこの第三条による交渉をいたすべきであるという態度で、何度かこの交渉については申し入れをいたしておるわけでございますが、まあ、よく事情を御承知と思いますから多くを申しませんけれども、やはり先方が日本の中に持っている資産、こちらが向こうに残してきた資産と申しますか、それの評価、どちらが多いか少ないかというようなことにもこれは関連する問題でございまするので、先方としてはあまり進まない気持ちもあろうかと察せられるわけでございますが、当方としては誠実にこの条約による話し合いを早く進め、妥結していくべきものである、かように考えております。
#70
○森元治郎君 どっちが多いかといえばこっちが多いにきまっているでしょう。向こうの日本における資産と、われわれが向こうに置いてきた資産とは比べものにならないから、少ないので、あえてこれをやろうとはしないんでしょう。それはわかります。しかし、いよいよお話をされるということでありますから、これはとどめます。
 最後に総理に伺いますが、これはとどのつまりであります。総理も一生懸命近ごろは心を入れかえて外務大臣でも、愛知君でもひとつ北京に出してとくとけんかをさせ、話をしてみようというようなことが国会でも堂々と述べられてきて、明るくなってきたことは確かであります。そこで伺いたいことは、ぎりぎりの線でありますが、中共というものが世界の多くの国からの承認を受けたり、また、国連においても、代表権の問題でこれを支持するものが非常にふえて、もはや重要事項指定方式では防ぎ切れないというようなことになってきた場合に、なおかつ、世界の大勢にさからって、仁義に従い信義に従って台湾政府を中国の正統政府として最後まで守り通していこうとするのか。先ほどあげましたように、大乗的な見地から世界の大勢に従って行動する、こういうふうにやるおつもりかどうか、これを伺って終わります。
#71
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、世界の大勢に逆行してまでどうこうすると、こういうようなことはしたくございません。ただ、私、いまお話を聞きながら、どこまでも私も中国は一つだ、かように実は考えております。北京政府、いまの国民政府、そういう中華民国というものがありますが、中国は一つなんだ、二つの考え方にはどうしても私自身賛成はできません。したがいまして、ただいまのような、世界各国が承認する場合に、中国自身でそういう問題についていかに対応されるか。おそらく一つの中国として対応されるんだろうと思いますが、そういう場合ならば私どももけっこう、その大勢に従う、これは当然のことであります。また、おそらく、これからもでございますが、いわゆる二つの中国論が私どももくみしないが、北京政府もさようなものは採用されぬだろう、かように私は思っておりますので、先ほど来申しますように、いまのところ、実力のある北京政府と中華民国、その二つが話し合いによって、そうして民族的な国家を建設されることを――これはどんな政治態様であろうとそれは私どもの関与するところじゃございませんが――それが一つであることを心から望んでおるということを、先ほど来申したことをもう一度繰り返して申し上げましてお答えといたします。
#72
○西村関一君 総理にお伺いいたしますが、中国問題は七〇年代の第一の課題であるということがいわれておりますし、総理もそのことに言及しておられるのでございます。ところが、今日の情勢ほど日中間の緊張が激化しているときはないと思うのであります。これは、御承知のとおり、中華人民共和国側が連日のように「人民日報」等を通じまして、総理並びに佐藤政府の態度をきびしく批判しておることも御承知のとおりでございます。特に、これらの論調の中におきましても、「日本軍国主義の加速度的復活」ということばがございます。また、沖繩返還がペテンであるというようなことが言われております。私はこのような中国側の言説がわれわれ日本人として、野党側にある私自身にとりましても、望ましいことではない、こういうことが言われるということは、ここちよいことではない、そういうことが間違いであるということを言いたい気持ちでございます。しかしまた、冷静に考えてみますというと、そういうようなことを向こう側が言うということについても、向こう側の理由もまたないとは言えないというふうに思うのでございます。佐藤総理に対するきびしい批判をいたしておりますことも御承知のとおりでございますが、私は総理がしばしば繰り返して言っておられますように、国際間の緊張の緩和については、戦争によらず、話し合いによって解決をはかりたい、日本人の英知と勤勉にたよって話し合いによるところの解決をはかりたいということを言っておられるのでありますが、中国問題の解決にあたりましても、まずその態度から出発をすべきであるということは言うまでもございませんが、同時に、私はかつての太平洋戦争の悪夢について私どもは忘れ去ろうとしても忘れ去ることができない記憶を持っておる。そういうことに対してどのような反省をしておるか、また、どのような姿勢を中国側にいたしておるかということが第一の問題ではなかろうかと思うのでございます。御承知のとおり、当時の日本の軍閥は一千万人からの中国人を殺しておるのであります。三千万人からの中国人を傷つけているんでございます。大陸を支配しておるところの中華人民共和国に対して一言半句のあいさつもなしに国民政府との間に外交交渉を持っておるということだけで、そのほうのあいさつが済んでいるからということだけで、この中国大陸を支配しておるところの中華人民共和国に対して何らのあいさつがなされていないということに対して、私は、日本人の道義の立場からもこれは考えなければならぬ点ではないかと思うのでございます。そういうことなくして、どんなに大使間の折衝をはかろうとか、北京政府に対して話し合いをしようとか言いましても、そのことは私はその第一の点がそういう姿勢がとられていないならば、それは望まれないことではないかというふうに思うのでございます。そういう点に対して総理の御見解を承りたいのであります。われわれは忘れることができません。中国側が−総理の言われるところの北京政府側が忘れてくれても、われわれは忘れることができない。そのことに対して深い道徳的な怒りを感ずる、そういう気持ちが、そういう基本的な姿勢がなければ、私は中国問題の解決ははかり得ないというふうに考えますが、その点、総理の率直な御見解を承りたいと思います。
#73
○国務大臣(佐藤榮作君) いま多分に複雑な内容を含んだお尋ねでございますので、最終的な結論だけを申し上げるわけにもいかないので、しばらく、そういう意味で長い話になるが、一応お聞き取りをいただきたいと思います。
 私は、最近年ごとに佐藤政権、あるいは佐藤政権というよりも、この個人佐藤榮作に対するたいへんきびしい非難が北京から次々に放送されております。私は他の場所でも率直に申し上げたのですが、私自身の責任を問う、あるいは私自身を非難する、これは主権者である日本国民ならできることだと、かように私は思っておりますが、とにかく北京からいわれのない非難を受けること、これはまことに残念に思っております。かような状態がなぜ起こるのか、このことを考えますと、ただいま言われるように、過去の戦争、その傷がいえておらない、こういうこともありますが、同時に、大陸と日本との交流がたいへん、きわめて制限された形で行なわれておる。そのために、両国ともそれぞれの国情につき、それぞれの考え方について十分の理解を持ち得ないような状態になっておる。そういうところに相互の不信ができたり、相互の誤解を生じたり、かようになってきたのではないかと私は思います。したがいまして、隣国――しばしば口にすることでありますが、どうも近い日中の両国ではあるが、その関係はまことに遠い、遠い国だと、かように言わざるを得ないような現状である、かように私は思うのであります。ただいま言われますように、過去の悪夢、そういうことがやはり尾を引いておる。しかし、それを解こうとする努力は一体日本側にもまた中国側にもはたしてなされたかどうか、こういう点に私は問題があるように思います。友好商社の諸君も出かけていろいろ中国の事情を知っております。帰ってきてから、中国の実情について率直な話はなかなか伝えてくれません。また、どういうような形で友好商社の諸君が待遇を受けたか、そういうようなことはなかなか伝えてくれないし、また、抑留された諸君が釈放されたことは私も心から喜び、厚くお礼は申し上げておりますが、これらの方も、帰ってから後は一切口を緘してそれらの実情についての報告はない、発表はない、こういうようなことでは、ただ国が隣しておるというだけであって、正常な国交はなかなか出てこないのではないか、私はまことにそれを残念に思うのであります。したがいまして、ただいま私どもがやっておる覚書協定、これは小さなパイプでございます。この小さなパイプを通じてのみ、ただいま日中間の交流、それが開かれておる。しかし、そのパイプ自身も、だんだん一年ごとに小さくなるんじゃないか。もとはもっと広かったのが、ことしは昨年よりも、また昨年は一昨年よりも、というように、佐藤政権――佐藤政権というよりも佐藤榮作個人に対する批判が非常に激しくなっておる。これは私まことに残念に思うのであります。ただいま御指摘になりましたように、道義を忘れた国民だ、かように日本を御指摘になりましたが、私はさようには思っておりません。私は中華民国に対して、先ほど森君も心情からどうも台湾が忘れられないのではないかという御指摘がございました。これは当時の蒋政権が、戦争に負けた敗残兵、これを日本に送り返してくれた。そのことを考えながら私どもも心から感謝をしておる。感謝はしておるが、感謝と国を承認するということは別だということを、先ほど理屈めいたことを申しましたが、私はそれらのことを考えながら、ただいま西村君のお尋ねになることこれ自身には、私もどういうようにお答えしたらいいのか、私どもはただ単に出かけておる友好商社の諸君のみが道義を守っておる日本国民だ、かような狭い感じでは考えておりません。おそらく中国のとった終戦時の寛大なる処置、これは蒋政権であろうが・あるいは中共政権であろうが、すべてに対して日本国民は心からいまだに忘れられない感激を覚えておるものだ、かように私は確信しております。こういうような事柄も、やはりそのまま伝えることができるならば、今日のような誤解は招かなくても済むんじゃないかと、かように思います。私はあえて、日本が軍国主義化している、そしてその方向に加速度的に走っている、かように私自身も考えておりませんし、また、国民の方々もさような考え方はないと思っておりますが、まあ、西村君御自身もさようにはお考えにならぬだろうと思います。私は、なるほど自衛隊の予算はだんだんふえてはおりますけれども、これをもって日本が軍国化する、それが加速度的にその方向へ進んでいると、かようにはお考えにならないんではないだろうかと思います。私は、そういうような事柄が、ただ予算面だけから、あるいはまた、かっこいい自衛隊員から受け取られるとしたら、これはまことに残念なことだと思います。私は、それらの点をも含めて、ただいま私の感じていることを率直に申し上げ、道義iこれはもちろん日本国民に伝統的なうるわしい美徳であります。道義を忘れるような日本国民でないと、これだけははっきり申し上げておきます。
#74
○西村関一君 いま総理がおっしゃいましたお気持ちは、御心情は、私も了解するにやぶさかでないものでございます、しかし、私のお尋ねいたしましたのは、中国問題を解決するための根本的な、具体的な姿勢、そういうものがいま欠けているんじゃないか、残念ながら欠けているんじゃないかという点を、国民の一人として、そういう問題がいまひっかかりになっているんじゃないかという点を憂えますから、あえて御質問を申し上げた次第なんです。総理に御質問申し上げるという機会はあまりございませんので、この機会にそのことを伺ったんであります。私は、中国北京政府、総理が言われます中華人民共和国の当局が言っておるとおり、そのとおり日本が危険な道を走っているというふうに断定するものではございません。しかし、多分にそういう危険があるというふうに向こう側が見ておる、少なくとも、そういう危険があるというふうに向こう側が見ておるということは、これは否定することができないと思うんでございます。これは日米安保条約の自動延長の問題、あるいはまた、ニクソン・佐藤共同コミュニケの中身の問題、また沖繩を含めた日本にある米軍基地がどこを向いているかというような問題等を中国側が見る目は非常にきびしいと思うんでございます。そういう点からきびしい批判が出ておる。向こう側の立場に立って考えますならば、これは私は無理からぬことでもあるというふうに理解しなきゃならぬ。これをどう解いていくかということについては、私は日本としての、さきに申し上げましたように、日本がかつて中国に対してどういうことをやったかということに対するきびしい自己批判をしなければならないし、そういう立場から、まだ中国側に対して、大陸中国――中華人民共和国に対して何らのあいさつをしてないということは――向こう側はそういうことを要求してないと思います。してないと思いますけれども、日本の側といたしましては、そういう立場に立って、謙虚な立場に立って中国問題の打開に取り組んでいかなければならないんじゃないかということを考えますから、あえて私は総理にそのことを伺ったのでございます。そういう意味から――私も太平洋戦争の終戦を中国の大陸で迎えたものでございます。その際受けました中国側のあたたかい配慮に対して、いまなお忘れることができない感銘を持っているものでございます。それだけに、われわれは、中華人民共和国がいま支配いたしておりますところの中国八億の民に対して心の底からの責任を感ずる。そういう立場に立って、どのようにして和解の道を講じていくかということを真剣に考えていくという態度が――私は、具体的な外交問題とか、あるいは条約の問題とか、政治の路線の問題とかということには触れません。そういう問題はまた外務大臣にいろいろ伺いたいと思います。そういう基本的な日本国政府の姿勢の問題、また日本国民の姿勢の問題について、それが私は根本に横たわっている問題だと考えますから、あえて総理にそのことをお伺いした次第であります。もう一度御所見を伺いたいと思います。
#75
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御説明申し上げましたとおり、私は、日中間にこういうような不信、誤解ができる、それは一体何なのか。ただいま言われるように、日本人は信義を重んじない国民かと、かように思いますと、そうではない。私は、やはりこの誤解あるいは不信を生じている原因は、相互の交流がとだえていることだ、かように考えます。したがいまして、あらゆる機会をつかまえてもっと交流を盛んにすべきだと思っております。一時、高碕達之助君が生きておる時分には、いわゆるLT貿易、これが開始された当時、そのことを思い起こしますと、比較的に各面における交流が行なわれたように思います。文化人あるいは文人墨客、あるいは演劇人、さらにまた科学技術の近代的な学者まで盛んに交流が行なわれたものであります。それを積み重ねていくというのが当時の方針であり、歴代内閣はその方針に変わりはないように思います。ただ、不幸にして長崎の国旗事件が起きてからこの関係がとだえた。一方的にその責任を、日本側が間違っているというようなことで、だんだん中共との交流が遠のいてまいりました。そういう事柄が今日のような状態を引き起こしたのではないかと思っております。私は、先ほど申しましたように、ただいまの古井君――松村さん時代にはパイプは大きかったが、だんだん松村さんが年をとられると同時にそのパイプが小さくなったということを申しました。古井君になりましてから、昨年よりことしと、よりパイプが小さくなり、きびしいものになったような気がいたします。しかし、私は、ただいまのように、相互の不信や誤解を招かないためには、どうしても交流を刺戟しなければならない、かように思いますから、これらの点が、幾ら小さくても、これはつないでいきたいし、また、その他の方法で大使級会談、あるいはさらにまたそれより以上のものが要求されるならば、そういうところでも話をしていいんじゃないだろうか。また、こちらからも出かけるが、北京からも来ていただきたいと思います。私自身がすでに東京で北京からのお客さんにお目にかかった時分がございます。しかし、ただいまはそういうようなことはもうない。北京からは全然お客さまがいらっしゃらない。そういうようなとだえた状況になっておる。そのもとにおける覚書協定、これはたいへん限られたものではないだろうか。これは十分の成果をあげておらないこと、私まことに残念に思いますけれども、ただいまのわずかなパイプも、これは大事にしていきたいと思いますし、また、私どもよりも社会党やその他野党の方々はお出かげになる機会も多いと思いますから、戦後の新しく生まれた新生日本のあり方というものをよく説明していただきたいと、かように私は思います。これは同じ日本人として、いまのような日中関係であってはいいわけはないのであります。これは、私が、その政権交代だとかいうような点で、皆さん方が、社会党の専売特許になさらないで、やはり正しく理解していただく、その努力を日本国民全体のためにもやっぱり払っていただきたい、このことを私もお願いをいたします。
#76
○西村関一君 いま、総理のほうから逆に社会党に対する御注文を受けたのですが、そういうことを承るまでもなく、私どもとしては、そういう問題に関しては与党とか野党とかいう立場を離れましてものを言っているつもりなんです。総理もその点はよくおわかりいただいておると思うのですが、必要ならばいかようの協力もすべきである。ただ、心中ひそかに憂えるところがありまして、あえて総理に苦言を申し上げて御心境をたたいた次第なんです。ただいま覚書貿易の、たとえ細いパイプであってもこれを大事に守り続けていきたいというおことばでございましたから、そのことをぜひ御努力をいただきたいと思うのでございます。
 次に、私はベトナム、カンボジア問題について総理の御意見を伺いたいと思うのでございます。このたびのアメリカのカンボジア進攻にあたりまして、アメリカの世論が沸騰している。一々申し上げる時間がございませんが、今日、ワシントンで行なわれました記者会見の模様などをテレビ等を通じて承知いたしますと、ニクソン大統領もかなり苦境におちいっているという印象を受けざるを得ないのであります。私は、こういう不幸な事態が・これはベトナムのみならず、カンボジアの人たちが戦火に巻き込まれて家を焼かれ、耕地を失い、また多数の人命が殺戮されておる。こういう不幸な事態が一日も早くなくなることを希望することは、これはもう日本人としてだれしも当然のことだと思うのでございます。私はこれが、政府側はやむを得ないことであったと、アメリカのカンボジア進攻はやむを得ないことであったというようなことで、しかも総理は、それは決して積極的にこれを支援するという意味じゃない、全くやむを得ないことであったという意味の御答弁を昨日の衆議院の外務委員会においてなさっていらっしゃるのでございますが、やむを得ないことであったといって、そのままにしておいてはいけないと思うのでございます。どのようにして、まかり間違えばカンボジア進攻がインドシナ全体に戦火を及ぼすというような事態にならないとも限らないと思うのでございますので、そういう点に対して、私は端的に総理の御見解を承りたいと思うのでございますが、インドシナ、特にベトナム戦争を終息させるためには、アメリカがカンボジアにあるところのベトナム民主共和国の軍隊、あるいは南ベトナム解放民族戦線の軍隊が寄っておるところの、いわゆる「聖域」というところをたたくことはやむを得ないんだ、そういうことに対して武力を用いることはやむを得ないんだということじゃなくて、それこそ総理が言われましたような話し合いによるところの解決の道を、まあパリ会談の道も残っておりますけれども、それだけにたよらないで、日本の自主的な立場からこの戦争を終結させるための話し合いの道を求めるという積極的な姿勢が私は必要だと思うのでございます。私は、かつてハノイにおいて故ホー・チ・ミン大統領に会いました。彼の意見をたたいたのでございますが、彼は、決してインドシナ半島の、アメリカが考えているような共産主義化を求めてない。むしろ、インドシナ諸国が中立化することを求めている。東の陣営からも西の陣営からも侵されない、全く中立化地帯をつくることを求めておるということを申しました。そのためには、インドシナ諸国、南北ベトナム、ラオス、カンボジアが一つになって、それぞれの国の主権を認め合いながらお互いに中立化をはかっていく、必要ならば連邦政府を設けていこう、連絡機関をつくっていこうというようなことに対して国際会議が開かれるならば、いつでも自分はその会議に臨む用意があるということを五年前に私に申したことを思い出すのであります。そういうようなことのために、何とか話し合いによるところの解決が、武力によるところの解決じゃなくて、話し合いによるところの解決がはかられないだろうか。ICCの機関の復活ということもございますが、しかし、日本として、積極的にこういう問題に関して、北のベトナムに対しても、あるいはラオスもまつ二つに割れておりますが、カンボジアもロン・ノル政権ができたとはいえ、シアヌーク殿下はいまなお健在である。かなりきびしい状態が続いておる。これをこのまま放置しておきましたならば、インドシナ全体の戦争にまで発展しないとは言えないと思います。時間がございませんから私は多くを申し上げることはできませんが、総理、この問題に対して、日本国政府として、少し積極的な働きかけをする。どういうことであるかということは、いまにわかにお答えできないと思いますが、一昔でけっこうでございますから、こういう点につきましてお考えを承りたいと思います。
#77
○国務大臣(佐藤榮作君) 戦火が拡大することは、ただいま御指摘のとおり、私どももたいへんな問題だと思っております。ただいまジャカルタで関係国が会議を持とう、日本もそれに参加しろ――それに参加すべきでないという昨日の野党諸君の言い分でございましたが、私はこういうものにこそ日本は発言権を持って、そうして積極的に出るべきだ、かような話を実はいたしました。そうして話し合いの場を見つける、そういうような努力をすべき一つの場ではないかと実は思っております。あるいはフランスの提唱する国際会議、イギリスの提唱する国際会議、また過去におきましては、つい先月、わが党の川島君がソ連に出かけて、米ソの間でもっとこういう問題について話し合わないか、日本は仲介の労をとるから、こういうような申し合わせまでいたしました。私は、軍事強国がこういう問題の背後にあることを考えながら、そういうところで話をしない限り、この問題はなかなか解決がしにくい、かように思っております。ただいまも西村君が言われるように、あらゆる機会に一そう努力しろと御鞭撻をいただきましたので、私も、さらに、ただいまのような、いま計画されておるような場におきましても、話し合いの方途を見つける、外務大臣をわずらわす、ただいま考えでございます。どうぞよろしく御鞭撻のほどをお願いいたします。
#78
○羽生三七君 時間の関係で、きわめて簡単に二つだけお尋ねをいたします。
 一つは、昨日の本会議でお尋ねをしました、ベトナム戦争が続いていた場合、沖繩の返還に関連する問題であります。この場合、もし沖繩基地からのアメリカ軍の発進を求められた場合の事前協議、これについてイエスもあればノーもあると昨日答えられましたが、衆議院の外務委員会においては、新聞の報道によりますというと、安保の事前協議は政府の専権事項であると、こう答弁をなさっておられます。そこで、このよし悪しは別であります。よし悪しは別として、一回一回問題が起こるたびに事前協議ということはこれは非常にめんどうだと思います。それはよくわかります。しかし、十年前の安保国会の論議を見ると、岸首相は、そういう場合に適当な方法によって国会に報告しその了解を求めるべきであると考えると明確に答えております。さらに続いて、これはきのうの総理の答弁に関連いたしますが、これは本来行政権に属していると考える、しかし、重大なことであるから国会に報告して了解を求めると言っているのである、重ねてこう言っておられます。したがって、国会の了解を求めるということ、これは事前であるか事後であるかはここのところはちょっとあいまいであります。おそらく総理は事後を言われたと思います。そこで、重ねて申し上げますが、いい悪いは別として、一回一回協議をするということは非常にめんどうだということはよくわかります。だがしかし、それは困るから半年とか一年包括的に了解をしないかという協議を求められた場合に、この場合に、私はこの種の問題までも政府の専権事項というのはどうかと思う。私は、この種の場合には当然国会に了解を求めて、十分な論議をして、国会にその承認を求めなければならぬ。国会が拒否する場合もあるかもしれません。これは非常に重大な問題だと思います。一括して包括的に長期にわたりある一定期間――半年、一年の事前協議をもってアメリカの出撃を要請された場合にどうなさいますか、お答えをいただきたい。
#79
○国務大臣(佐藤榮作君) 事前協議はそのつどするべきものでございまして、包括的に前もって、あるいは予約的に一年あるいは一年半だとか、あるいは半年だとか、そういうような自由使用と間違えられるような処置ではございません。したがって、いわゆる自由使用は私どもは認めておらないのでありますから、どこまでも事前協議、その形において行なわれる。したがって、ただいま羽生君がお尋ねのような、包括的云々はこれはないと、かように御了承いただきたいと思います。また、そのノーの場合ならばこれは問題ございませんけれども、イエスの場合というような場合には、とにかく重大なる影響を与えるものですから、これは国民からの批判は必ず受けることだと思います。その前に国会で非難されることは、これまた責任ある政府としては当然考えなきゃならないことだと思っております。私は、それらの点を、岸内閣時分も、「国会に報告をして」という、その「報告をして」ということは、事前に国会の了承を得るということではなくて、決算事項みたような形、そのことを岸内閣でも言ったのではないだろうかと、かように思ったのでございますが、私は、当然、こういう事柄は政府の責任において処置され、政府が間違っておれば国会において非難されることはもちろんですが、これはもう国民自身が許さない、かように私どもは思っておりますので、ただいまのように、問題が起きたときに前もっておはかりをして、承認を得て、しかる後にイエスと言う、こういうような処置はとらないというのが昨日の説明でございます。あるいはことばが不十分でございましたから、そこまで詳しく申さなかったので誤解があるかもわかりませんが、きょうは、ただいま重ねてのお尋ねでございますので、はっきり申し上げます。
#80
○羽生三七君 実はこういう問題はかなり仮定の問題ですから、あまりこまかいことを言うのはいかがかと思いますが、総理が言われるように、緊急性があるからこそ事後承諾するというのでしょう。それですから、そうなると、それじゃ毎日やるということになるのですか。包括的でなければ、発進するたびに毎日そのつど一回一回相談をするという、これはまあ、こんなことは何か質問のための質問みたいにとられても困りますけれども、しかし、事実は、包括的でなければ必ずそういうことになりますね。一日に三回出れば三回全部やらなければならぬことになるわけです。だから、それはどういうことを意味するのか、一日をいうのか、十日をいうのか、一カ月をいうのか。そのつどというのはこれはどういう意味なのか、これはやっぱり明確にしておいていただきたいと思います。
#81
○国務大臣(佐藤榮作君) これはその取り扱い方の問題ですが、国会とは別に、米軍と日本の政府との間で話し合う。その場合に、これはある程度の同一のものであれば、そのつどと申すような、飛び立つごとにというような、そう狭いものではないだろうと思います。しかし、そこにもおのずからまあ考え方が生まれてくるでしょう。いわゆる事前協議で一応了承したと、イエスと言った、そういうものを引き続いてやられる、こうなると、必ず随時協議の問題、これが関連して行なわれる。そういうことで両者の間に誤解を生じないような限度が加わる、かように御理解をいただきたいと思います。
#82
○羽生三七君 だから、いま総理がお答えになりましたように、そのつどといってもなかなかそこには問題があるから、一応の幅というものがあるだろうという。その幅の問題なんですよ。ですから、これはずっと詰めていくと、そういま総理がおっしゃるような簡単な問題ではない。非常な私はむずかしい問題にぶつかると思いますから、これは懸案にしておきます。
 それから次に、時間がないんです私、だからそのためにこれ、詰めて申し上げませんが、その次にお伺いしたいことは、これも沖繩返還に関連して作業をお進めになっていると思います。返還協定の作業を事務レベルでだんだんお進めになっておると思いますが、この場合、七二年のアメリカの国会にこちらが合わせていくためには、少なくも明年中に作業を完全に終わって協定の原案ができなければいかぬと思います。そこで、その場合に、事務レベルではいろいろとやっていらっしゃると思いますが、たとえば沖繩の基地の面積、あるいはその数、陸海空の兵員の規模、数、あるいは兵器の量、性能等、こういう問題をどうするかということがあります。だから、これは事務レベルで相談やっておるとおっしゃるかもしれませんが、私はそれは少しおかしいと思うのです。というのは、この問題は、このアメリカの極東戦略がグアム・ドクトリンでどの程度変化するのか。きのう本会議で総理はそうたいした変化はあるまいとおっしゃいましたが、そうかもしれません。だから、変化があるのかないのか、あるなしにかかわらず、一体アメリカとしては今後沖繩に対してどういう期待を持っているのか、たとえば、アメリカのリーザー陸軍長官は、沖繩は太平洋の兵たん補給基地としての一大拠点と、こう述べております。また、チャップマン海兵隊総司令官は、沖繩は永久基地と、こう言っています。したがって、アメリカの極東戦略との関連で一体七二年返還を前にして日本の政府当局がどういうアメリカとの折衝で取りきめをするかという、この基本がなくて事務レベルで作業をしても、これは賠償をどうするかとか、買い取り額は幾らあるとか、そんなことは問題にならぬと思います。したがって、私は本格的にアメリカの極東戦略とこれは一体どういうことになるか、アメリカと話し合いをしてその上で日本で要求すべきものは要求して――これは要求がなかったら私はおかしいと思う。返ってきさえすればいいということじゃありませんから、要求をしてその基本的な問題を煮詰めていくべきであると。そういうことを考えておられるのか。ほんとうに事務レベルまかせなのか、その辺をひとつお答えをいただきたい。
#83
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま羽生君のたいへん親切な御提案、お尋ねでございます。政府もそのとおり考えております。ただ、ただいま国会中でございますから、政府はまだ関係省の間で相談をいたしておりません。ただいま言われるような方向でなければならないと、かように考えておりますので、近く国会が終われば、関係省で十分相談をいたしまして、そうして、この問題と取り組むつもりであります。そうして、最初に申されたように、七二年中に返ってくるといたしましても、できるだけ七二年の早目に返ってきてほしいと、かように思いますので、そのためには七一年中には諸準備を終わらなければならない、かように思います。そうして、その諸準備を終わるそのためには、事務レベルでやるんでなくって、やはり基本的な考え方をまとめてそのもとで交渉する、事務当局で折衝するにしても折衝すべきだ、かように実は考えております。ただ、お尋ねがございませんでしたが、いま言われるように、アメリカの二、三の人たちが言っている、沖繩が太平洋のかなめ石だと、いわゆるキー・ストーンだと、こういうことが今日も言われておる。永久基地だというようなことが言われている。しかし、永久基地だとか、あるいはかなめ石だとかというその点にこだわるならば、日本に返すはずはございません。現に施政権を持っていて自分たちが自由かってに使えるのですから、そのもとにおいてこそ初めてかなめ石の役は果たせるのであります。日本に返れば、これはもう現在の内地――本土における基地と同様な扱い方を受ける。一部では、だからかなめ石だと言っているから、今度は本土が沖繩の基地化するのだ、こういうような話までされますけれども、そうじゃなくて、このかなめ石の性格が変わるんだと、そこをひとつ御理解をいただいてもらいたいのであります。また、私どもは、これを日本の施政権下に返す以上は、いままでと同じような沖繩の使い方はこれはごめんをこうむりたい。ですから、そこで、ただいまのような、時間はかかるでしょう、いまの施設を撤去したり、あるいは縮小したりするのに相当の時間はかかるだろうと思いますが、しかし、これは変わった形において処理したいと、かように思っております。
 また、この点はお尋ねではございませんでしたが、どうも日本本土の基地というものが、戦争時代の、占領状態の継続、連続のもとに基地があるということ、だから縮小はいたしましてもその性格にはあまり変化がない、そういうことがしばしば指摘されております。私は、本土の基地はもう占領当時のような状態ではないのだと、数が減ったというだけでなく、性格的にも変わっているのだということははっきり申し上げたいし、沖繩が施政権が返還されれば、そういう意味でこの基地の性格が変わってくる。そのことを申し上げてただいまのお答えといたします。
#84
○羽生三七君 時間の関係でこれが最後でありますが、一つは、いまも総理自身のお答えの中にありましたけれども、私がずっと前に、昨年でしたか、七二年返還と言わなくても七一年でもいいではないかと、こう申したときに愛知外務大臣が、実は七二年が最短距離だということを答えられました。これはよくわかります、この作業していく場合のむずかしさは。そういう意味で、いまのようなことを国会が終わったらお考えになって、作業をまだ政府のハイ・レベルでおやりになると思いますけれども、実際上間に合うのか、間に合わせればいつごろまでにそのいろいろなあれができるのか、基本的な問題が片づくのか、これが一つ。
 それからもう一点は、これで最後ですが、昨日の本会議でもちょっと触れましたけれども、日本が自衛隊で通常兵器以外は持てないと、攻撃的兵器あるいは核、それはアメリカに依存をする。そうすると、理論上から言うと、半永久的に安保から脱却できませんね。永久にお持ちになるとは私は思っておりません。だから、実際にほんとうの意味の独立をするには、まさか憲法改正して攻撃的兵器を持つということではないのですから、総理のお考えは――だと、確信をいたしますから、そうなれば安保から脱却できるのは一体どういう条件ができ、しかも、それを最も早く達成するにはどうすればよいのか、これは非常に基本的な問題だと思いますので、これを伺いまして私の質問を終わります。
#85
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、もうすでに外務大臣が指揮して大使と基本的な取り組み方を相談をしております。しかし^ただいまのところは外務省自体の問題でございます。これをやっぱり政府全体としての取り組み方に持ち上げたい、かように思っておりますので、いまの準備状況、それに乗っかって、そうしてあらためて日米で協議をすると、かような段取りになろうかと思います。これはまあできるだけ早く、この十三日で国会も終わりますから、そうすると、外務大臣が外国へ出たりなんかいたしますけれども、この月中には第一回の会合が持てるだろうと、かように私は思っております。で、まあ、これはどうかただいまのような準備であるという、それだけをお含みおき願いたい、御了承いただきたいと思います。
 それから次の核を持たないで自衛隊だけでやっていけるのかどうか……。
#86
○羽生三七君 いや、核ではありません、攻撃的兵器。
#87
○国務大臣(佐藤榮作君) それでどうなるのか、通常兵器だけを持ってやっていけるのかどうか、そのためには日米安保条約が永久的に続くのじゃないか、そういう点でどう考えるか、こういうお尋ねであったかと思います。私ども、まあ核拡散防止条約にも参加するということで、核兵器は持たない。これは私だけの問題でなくって、いわゆる核三原則なるものは国民的なコンセンサスだと、かように私考えておりますが、どうもこういうものを、核を現実にあちらこちらに持っている国があると、そういうものに攻撃にさらされると、そういうことではこれはたいへんだと思いますが、しかし、あまり先走った心配をしなくってもいいのではないかと思いますのは、いま、あれだけ激しい対立をしていた米ソ自身で核兵器を限定しようとか、あるいは種類等についてもいろいろ相談して限定してみようかと、いままでのところ、これは成功したとは私申しませんが、そういうような動きがある。そうして、核兵器の持つおそろしさというものに対しては、これは各国ともそれを認識しておりますから、核を持ちながらやはり核を持ったがゆえに戦争はしないというような方向に進まざるを得ないんじゃないか。でありますから、核兵器のある今日も通常戦争は盛んに行なわれておる。そういうのが現実ではないかと思います。で、まあ、こういう事柄が各国でどういうように感じが変わってまいりますか、これからの変化にひとつ期待したいと思います。
 もう一つは、これもまだどうなるかわからないことですが、国連軍、いわゆる国連が戦争抑止機能を持つようになるかどうか、そういうこともいろいろくふうされておるようでございます。私は、まあ、そういうことなど考えると、一国だけがその国の安全を確保するという時代はもう通り過ぎて、新しい時代がとにかく開けつつあると、そういう時代でありますので、日本の選択はただいままでのところあやまっておらない、通常兵器によるいわゆる直接侵略に対応するというその態度は正しかったように思っております。しかし、核自身の核兵器の小型化とか、あるいはまた中距離弾道弾だとか、いろいろおそるべきものもそれぞれ言われておりますから、これは今後の情勢の推移を見きわめなければならないことでございますが、私は、まずそういう問題が起こらないように、国際的多数国間の協力によって戦争を抑止できるように、そういう方向でありたいものだ、また、そういう方向で私どもも努力するということをこの機会に申し上げておきます。で、私は、ただいま申し上げますように、いろいろ国際情勢は変化する、同時にまた、科学技術の進歩もある、そこらに、ただいまのような、安保条約、それを継続しなくてもいいような状態も起こり得るのではないか、かように思います。しかし、現状において安保条約の必要なことは、これはもう社会党の方も御承知のとおりでございます。ただ、いま安保は戦争に巻き込まれる危険ありという、そういう説明がしばしばなされておりますが、私はこの説には賛成ができませんので、それだけは申し上げまして、ただいまのような、今後の進歩発展、それに期待をかけておるということで、ただいまの御答弁といたします。
#88
○国務大臣(愛知揆一君) 委員長、ちょっと一音。
 念のためでございますけれども、沖繩返還についての進め方でございますが、すでに沖繩・北方問題特別委員会等におきましては詳細に申し上げておりますけれども、念のために、ただいまの総理の御答弁に補足いたしますと、すでに先月末閣議で、返還準備につきましての基本方針を決定をいたしまして、各省庁の分担等もきめまして、それから日米協議委員会――これは東京における日米の沖繩返還に関する協議委員会でございますが、これはすでに発足をいたしまして、会議もすでに開いております。それから、沖繩、那覇におけるこれに対応する準備委員会もすでに所要の法律も御審議を終了していただきましたので、すでに発足をいたしております。それから、これに関連いたしますが、日米安保協議会、これはこの十九日に東京で会合を開くことに相なっております。こういうようなわけで、諸般の準備を着々と進めております。ただいま御指摘の点も含めまして、十分な準備を、かつ、迅速にいたしたい、こういうことで鋭意努力をしております。
#89
○羽生三七君 質問はこれでやめますが、誤解があるといけないので一言補足しておきます。
 私が申したのは、このままの状態では安保を脱却できることはなかなかないのではないか。したがって、安保から脱却するためには――安保条約を廃棄しろとかしないとか、そういう議論ではないのです、私の言っているのは。脱却するためには、それを必要としない――私たちは、ないほうが安全だという議論ですが、政府の立場から言っても、それを必要としないような条件をつくるには、国際緊張の緩和なり、そういう外交的努力がもっと積極的に行なわれなければならぬのではないかということを念を押しておいたので、それが私の質問の基本ですから、誤解のないように。
 それからもう一つは、いま外相の御説明でよくわかりましたが、そういうこともわかるけれども、総理大臣、外務大臣、防衛庁長官等のそういうレベルで、アメリカの最高レベルと基本的な極東戦略に関する話し合いをしなければ、事務レベルの作業に入れないのではないか、それが先決ではないかということを申し上げておるのですから、これも誤解のないように申し上げておきます。
#90
○石原慎太郎君 たいへん限られた時間でございますが、いろいろお聞きしたいことがございますので、時間の許す限り問題をたばねた形でお伺いをしたいと思います。
 まず、最近非常に問題になりました日中覚書貿易に関する共同声明についてお伺いをしたいと思いますが、これは自由民主党の中でも非常に大きな問題になりました。しかし、ここでは私はむしろ党の問題としてよりも、党の総裁である佐藤総理よりも、一国の日本の総理大臣という立場でお答え願いたいと思います。
 私が属しております自由民主党という政党は、総理はあまりよく御存じないかもしれませんが、はなはだ、こういう党の重大な問題について、私のようにあまり資格のない党員議員が討論すべく十分な自由な機会というものを与えていただくことができませんので、あえてここでこの問題についてお伺いをしたいと思います。
 私は、先ほどの日中共同声明というものを、非常に自民党議員として以上に、一人の日本人としてふかしぎであり不可解であり、かつ、許しがたいものに受け取れます。そうして、これは非常に国民に大きな誤解を与え政治に対する不信というものを招きかねない、むしろ日本の外交の問題以上に、政治の尊厳といいますか、ディグニティー、ゼネラルシップというものに非常に大きな影響を与える問題だという気がいたします。第一に、この交渉の代表というものの資格というものが非常にわけがわかりません。第二に、その代表なるものの日中問題に対する見解というものが非常によくわからない。そしてまた、この二つの問題に対する政府の見解というものも非常に不明でございます。古井代表が日本を立ちます前に総理がこれを引見されまして激励されたとか、あるいは大いに期待されたとか漏れ聞きますが、たかだか七千万ドルの貿易の交渉の代表に総理がこういう措置をとられることが、今日の複雑な日中関係の中で非常にこの代表の資格というものに象徴的なイメージを与えかねない。そういった際に、まず御質問として、総理がどういうつもりでこれを引見されたか。それから第二に、古井氏が帰ってこられましてるる説明の中で、何としてもこのかぼそいパイプだけは切りたくない、切るべきでないということを、ほぼ絶対の公理のごとくに前提としてお話しになりましたが、私は、日中関係にとってこの覚書貿易を切るか切らないかという問題は、決して切るべきでないというものの考え方、判断は、絶対的な公理ではあり得ないという気がいたします。これがはたして政府の見解と非常に通ずるところがあるのかどうか、それを伺いたい。ちなみに私の判断では、多くの資料を集めてみましても、日中間の貿易というものをより強く希求しているのは中国の側だと思います。たとえば昨年度の七千万ドルになりました日中貿易のほかに、住友金属であるとか神戸製鋼であるとかいう製鉄会社が、年間五十万トンの鋼材というものを、おそらく純軍需物資として中共に売って、しかも、これは国際価格の五%も高い値段でクレジットなしのキャッシュの取引、こういう事実を踏まえましても、この日中貿易というものを非常に強く希求しているのは私は中国の側であると確信いたしますが、こういった日中間の問題につきまして、このかぼそい覚書貿易というものを絶対に切るべきでないというものが、日中関係にとっての外交の絶対の公理であり得るのかないのか、その点についてもお聞きしたいと思います。
#91
○国務大臣(佐藤榮作君) これは石原君個人に答えるのでなくて、私が政府、同時に自民党総裁としてお答えするんですからお聞き取りをいただきたい。
 御承知のように、日中共同コミュニケ、いろいろ批判する筋もございます。しかし、あの共同コミュニケをそのままはたしてみんなとっておるでしょうかどうでしょうか、問題はそこだと思います。一時非常に興奮を見せたかのような一部の諸君にいたしましても、共同コミュニケ、まあ北京でやればこういうものかなあというような意味に考えておるし、また、日本が軍国化しつつあると、かように日本国民で感じておる者もございません。非難をされておる当の私自身にいたしましても、実はあまりその問題について論評したくないような気持ちでございます。私は、そういう事柄が今日の日本国民の大体共通する感じじゃないかと思っております。もちろん、ある一部の者は、あの共同コミュニケを、ためにする、利用する向きが全然ないことはないと思っております。かくまで言われても政府は黙っているか、こういうような非難もあると思います。また、政府がかように非難を受ける、これは当然だ。中国においてはこういうような見方をしているじゃないか、さようにされてもこれが国内においてやっぱりこういうような態度もあるんじゃないかというような、利用する、ためにする道具に使われておることは、私も認めないわけではございません。しかし、国民大多数の方々は、この問題を実はそういわゆる重点を置いて取り上げておるとは、私、どうも思えない。そこに一つの問題があるように思います。また、ただいま覚書貿易そのものは金額としてもわずかじゃないかと、かように言われますが、私は、先ほど来社会党の諸君にもお答えいたしましたように、金額の多寡の問題ではないのです。私はもっと相互に理解を深め、正しい認識のもとに立って折衝したいと、また交渉を持ちたいと、かように実は考えております。とにかく、私どもが今日まで台湾にある中華民国、これを承認しているということ、そういうところにすべてがはね返ってきておるんじゃないかと思うんであります。貿易自身は、あの交渉でもわかるように、共同コミニュケを出すまでは四十日もかかった、しかし、貿易の妥結は一日できまったと、こういうような実情を考えると、一体日中でどういうような交渉が持たれ、どういうような折衝をしてきたのか。いまはあまり口にはしないことばですが、いわゆる政経分離というようなことばが過去にありましたけれども、そういうような事柄がまざまざと実は行なわれておる。ここにはもう政治優先、それより以上の何ものもないというふうに思える、かように私は思うのであります。こういう点がとにかく友好親善を続けていくという上にはどうしても解きほぐしていかなきゃならない問題だと、かように私思っておりますので、ただいま言われる点については、どうもいまの状態でよろしいんじゃないか、かように私は思っております。ただ、あの覚書協定の代表者古井君、これが一体どういう資格でとこういう言われ方をしますが、もともと高碕さんの始められたLT貿易、高碕さんが亡くなってから松村さんがそれにかわられて、松村さんのあと、やはり細いパイプながらその代弁をするもの、それはやはり古井君ではないかと思っております。でありますから、一部では、この種の問題は民間にまかして、そうして政治家は手を引いたらどうか、こういう議論がないわけでもありません。私はそれも一つの考え方だと思います。しかし、はたして村田省蔵さんがやられたような、また、高碕さんは議席を持たれましたが、むしろどちらかと言えば、これは経済人だと、そういう立場においてこういう問題が取り組まれることが望ましいのではないかと、ただいまの状態ではですよ、私はさように思います。したがって、いま古井君の資格を云々することも必要ですが、ただいまだれが適当かと、岡崎嘉平太君が古井君と同じような働きができるか、これはおそらくできないと私は思っております。そういうことを考えると、いまのところじゃやむを得ない適当な人として古井君が選ばれると、かように私は思いますし、また、先ほども申しましたように、やっぱりいまのパイプは小さい。しかし、それはつないでいく。そうしてわれわれのこの七〇年代にそのパイプをひとつ大きくしようじゃありませんか。詰まりかけるような細いパイプ、それでは困りますから、詰まらないようにパイプを大きくしていく、その努力をすることが必要ではないかと思います。私は先ほど西村君や森君や羽生君などが、あるいは沖繩の問題等に事寄せてお話しになりましたが、こういうような問題についての理解が北京政府にあるんなら、私はよほど事態は変わるだろうと思います。したがって、先ほどのお尋ねは、ただ単に沖繩問題だという意味でなしに、わが国のアジアにおける外交の方針だ、また方向だと、こういう意味で実は答えたつもりでございます。また、そういうことは、ここが国会の場でありますだけに、私もでたらめは言いませんから、忠実にこの状態は伝えていただけると、かように思います。そのことによりまして、誤解ならばそれは解いてもらいたいし、認識が不足であるならば、この認識は深めていただきたい、これが私の北京政府に対する希望であります。
#92
○石原慎太郎君 いま総理が最後に言われました問題が非常に大切だと思いますが、先般の共同声明を出しました日本側の代表、すなわち古井氏が、その声明を出すまでの交渉の過程で、今日の日中関係の停滞の素因というものをどのように認識し、どのように分析し、どのように相手側と話し合ったかさっぱりよくわかりません。これはいま総理が言われましたように、日本側の立場というものがはたして向こうに正確に伝わっているのかどうか、今日の日中関係の停滞は、それは確かにある部分佐藤現内閣の姿勢というものに基因するものがあるかもしれませんが、しかし、常識的にながめまして、外交の現状の原因というものは多元的であり、日中問題は少なくとも二元的なものだと思います。そしてその素因の大なるものは、私は、日本側の態度よりも、むしろ今日の中国の態度、非常に硬化したあの姿勢というものに原因があると思わざるを得ません。こういった問題について日本側の代表がどのように相手側を説得しようとしたか、相手側がそれにどのように反発したかということが一向に伝わっていない。もし今日の日中関係のこの停滞の素因というものを、単にあの共同声明でうたわれておりますように、日本側の政府の姿勢というもののみにあるという、一元的に考える、そういう認識を持った人が日本側の代表として行くならば、これはまさしく単なるロビイストでありまして、一国の問題の交渉の代表資格はないと断ぜざるを得ない。おそらく日本の国民には、ひざを屈し、手をつき、腹ばいになって結んだごとき印象を与えるこの覚書貿易というものが来年も継続するのでありましょうが、この問題に対して来年もおそらく何らかの資格で何らかの方々が代表としておもむかれる。私は、そういった代表に対して、政府というものが今時点から真に代表の資格のある代表というものを選ばれるような、そういった見識をお持ちになるべきだと思いますけれども、この点いかがお考えでございましょうか。
#93
○国務大臣(佐藤榮作君) 石原君、これはいわゆる政府交渉ではございません。これはどこまでも民間交渉でございます、覚書貿易は。また、成り立ちから申しましても。ただ、交渉している人がわが党の有力な代議士だと、そういうことで政府と一体であるかのように言われますけれども、政府はこれに干渉はいたしておりませんし、どこまでもこれは民間の取り引きだと、さように御了承いただきたい。もちろん、わが党の人でありますから、出発前に私をたずねてもみえました。古井君と私も懇談もしましたし、古井君は同時に外務大臣とも話をしました。また、その他の諸君――藤山君にいたしましても、また川崎君にいたしましても、これまた私に出発前には会っております。けれども、これらの諸君はほとんどあいさつ程度でありまして、その中身については立ち入った話はいたしておりません。私が古井君に話したことは、何が何でも話は続けてこい、かようなことは申してはおりません。しかし、古井君が出かければ、きっと苦しい立場に置かれるだろうと、かように想像いたしましたがゆえに、古井君の立場については相当同情した表現で応待をしたことは、これは事実であります。私が想像した以上に古井君は苦労して帰ってきたと、かように私は思っております。しかし、帰ってから体の調子でも悪いのか、まだ会っておらない、こういうのが実際でございます。以上、政府の交渉でないこと、これをひとつはっきりしておきたい。そういう意味で、先ほど申しましたように、政治家が関与しないほうがいいんじゃないかという、そういう議論も出ておるということ、それをつけ加えて申し上げておいたのでございます。
#94
○石原慎太郎君 この席でございますので、総理がそうおっしゃいましたら、今度は自民党総裁としてのお考えをお聞きするわけにはいきませんので、その問題はカットいたしますが、先ほど来羽生委員と総理との応酬の中で、私は、日本の安保という問題は結局のところ、いままで、あるいはいま現在の条件というもののみを基盤にして語られているような気がいたしてなりません。私は先年の末にアメリカに参りまして、アメリカの核戦略の基本的な基地であるオマハのSACと、それからもう一つコロラドスプリングのNORADを比較的詳しく見てまいりました。私がブリーフィングを受けました高級将校の説明ですと、ここをかつて訪れたことのある政府の領袖なり与党の議員というものは、たしか小坂善太郎元外務大臣だけだったと漏れ聞きましたが、私はこういった施設を見たことで、当然予想したことでございますけれども、あまり自分の予想というものが歴然とした形で目の前にあらわれたので、非常にしらけた気持ちになりました。それはこのSACあるいはNORADの機能というものからすれば、われわれが日米安保条約――私は安保条約をある条件をつけて評価する人間でございますけれども、その人間にしてなお、日米安保条約というものを通じて私たちが核戦略、核問題についてアメリカに期待しているアメリカの核のかさの抑止力というものは機能的に皆無である。すなわち、今日反体制勢力というものが一つの象徴的なターゲット――的として、その打倒にエネルギーを集中している安保体制なるものが、実は今日の核兵器あるいはほかの技術の進展とともに、実は内側から形骸化しているということを非常に歴然と見てまいりました、たとえばNORAD、SACについては、おそらく総理、外務大臣はもう十分御存じと思いますけれども、これはNORADというのは、名前がさすとおり、北アメリカというもののみを防衛するための核戦略というものの警備体制でございます。そうして、それを迎撃し反撃する、つまり世界的な大きさで、広さでアメリカの報復的な核戦略を遂げていくSACというものは、あくまでもこの北アメリカ大陸というもののみに警備を集中したNORADというものの警備体制によってその発進というものを指令されて出て行く。簡単にいきまして、その順序を見ましても、私たちが抑止力というものを信じている安保、しかも、その安保の中でアメリカに――この間も中曽根防衛庁長官がはっきり言われましたが、核戦略に関しては全部向こうまかせであるところの、われわれが向こうまかせで期待しているところの核の抑止力というものは、実は皆無である。安保条約というものは実は半ば以上形骸化しているというときに、私たちはこれからの日本の防衛という問題を、万が一というものは考えても万万万が一というものは考えなくてもいいのだという形では決して防衛論は成り立たないと思いますが、その場合に、いままでの現在の核兵器の技術水準ということではある意味で妥当性を持っていたかのごとくに見えました非核三原則、これは総理の非常に評価されるべき政治的な業績の中で瑕瑾に入るものだと私は信じます。この非核三原則なるものがはたしてここ数年間の間に非常にその概念修正をしなくてはならないごとく、非常に高度な発展を予期されている核兵器というものの技術の進展度合いから見まして、原則として寿命を持ち得るものであるか、あるいはそれに対してわれわれがもっと柔軟な形でそれを認識し、今後の安保なり日本の防衛という問題を考えていくべきであるかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。そうしてまた、一つの核兵器の技術水準というものが、ある段階が到来しましたときには、核兵器というものの概念修正と同時に、非核三原則もまた十分に修正さるべきものである、あるいは日本の核絶対に対する態度というものも修正さるべきであるかどうかという問題についてお伺いしたいと思います。
#95
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ、私どもがいわゆる広島や長崎、その原爆を投下された、そういう立場であるから、まあ核というものについてこれを憎むその気持ちが特に強いのかわかりませんが、しかし、私は、ただ単に広島、あるいは長崎、これが被爆された唯一の日本国民だ、こういう意味で日本国民のために核を憎んでおるわけじゃございません。これは私どものこの尊いというか苦い経験から人類に与えることを考えると、核は絶滅すべきだ、核は滅ぼすべきだと、かように私は思っております。若い世代の方にはなかなか核の持つそういう意味もこれなかなかわかっていただけないのじゃないかと思っております。でありますから、ただいまのお話も、おそらくこれから科学技術が進めば進むほど、核の威力はいよいよ強力になる。強力になればなっただけに、核を使う機会はほとんどなくなるんじゃないか、そういう方向へ進むんじゃないか、これが私の考え方でもあります。したがって、私はただいまそういうようなどんどん進んでいくだろうその兵器から見て、核のおそろしさを一そう倍加し、三倍にも十倍にもなるだろう、そういうことを考えると、こういうものに金をつぎ込むよりも、もっと平和に徹するほうがよりしあわせになるように思う。そういうところから、ただいまの非核三原則を私は打ち出しておるのであります。あるいは、これから先どんなに変わるかそれはわかりません。私の願うような方向に行かないかもわからない。しかしながら、私は現状において米ソ、これはまあ核の一番大きな保有国であります。中共がそれに次ぐものだと思いますが、この米ソが、その両国自身が、ただいま共存の立場に立ち、そうして核兵器を使わない方向でおりますことは、核兵器のおそろしさを、持ちながらみずからがよく知ってきたからだと、かように私は思っております。しかも、今日は運搬方法が昔のような状態ではない。さらにそれは変わっております。そういうことを考えますと、おそらく、このおそろしさは、そういう意味で、使うことのないような方向になるのじゃないか。それに目ざめれば目ざめるだけ早く人類のしあわせが来るのじゃないか、かように私は思うので、私のほうが、むしろお若い石原君よりかロマンチストかわからないが、私はそういうように思うのであります。
#96
○石原慎太郎君 佳境に参りましたが、時間が切れましたので、これで打ち切らしていただきますが、私は、総理が野党の皆さんよりもむしろロマンチックで、非常に理念的であることを発見し、非常に何と申しますか、複雑な心境でございます。
#97
○黒柳明君 日中の問題と、カンボジアの問題について若干お伺いします。
 多分にまあ誤解に基づくとはいえ、日中問題というのは非常にやっぱり険悪になっていると思います。総理の前向きな発言というものは、最近いろいろお伺いしております。日中問題は決していまのままではよくないと、こういうようなこともいま発言があったとおり。ただし、現状は非常に日米共同声明における非難、あるいは先日の日中覚書貿易に対するコミュニケに対するあるいは非難、さらには、けさは、一昨日の衆議院本会議における総理の、大使級会談をやると、あるいは政府間交渉もやってもいいというコメントに対して、すぐ北京から反発が来ている。こういうようなことで、非常にやっぱり総理の努力と私はあえて言ってもいいとは思うのですけれども、にもかかわらず、中国側の姿勢というものは硬直化しているわけです。しかし、さらに私は、いまここで問題にしたいと思うのは、もうすでに周知のようにMRBM――準中距離弾道弾が、本年じゅうともいわれ、一年は出ずして実戦の配備につくであろう、こういう予測が成り立っておりますし、先日の人工衛星の打ち上げから見て、これは間違いない、こうもいわれております。そうなりますと、ともかくいわゆる中国の核の脅威といいますか、それに対して有形無形のやはり圧力というものを日本としては感ぜざるを得ないのじゃないかと、こういうような時期が近々に来ると、こう思うのですけれども、総理は、現在の中国の日本に対する非常に強硬なる非難、態度、それとともに、近々中に訪れるであろう、要するに、中国の準中距離弾道弾、核が、日本がその射程距離に入る、こういうことと関連して起こるであろうその中国の脅威というものについてどのように受け止められるか、まずお伺いしたいと思います。
#98
○国務大臣(佐藤榮作君) 中共は、いち早く、核は最初には使用しない、攻撃を受けたら使用する、それに対応する、しかし、みずからが進んで使用するということはしない、こういうことを表明しております。私は、中共はそういう意味ではやはり平和国家ではないか、かように思っておりますので、ただいまいろいろ何やかやと並べられましたが、あまりこの際は批判をしないほうがよりまさるものではないかと思いますので、ただいまの一点だけ申し上げてお答えといたします。
#99
○黒柳明君 賢明なる答弁だと思います。またこの答弁が北京からあしたの朝すぐ反発で返ってくる可能性がありますので、総理が中共は平和国家である、こう言った、まあ中共のほうでは非常に賛意を表するのじゃないかと、こう思います。まあ、それはそれとしまして、ただし、現実は、また、私が言うまでもなく、非常に中共の態度はきびしい、こういうわけです。まあ、軍国主義の復活、こういうような面も、防衛費の増額あるいは四次防に対する思惑、これらの問題もあるとは思うのですけれども、やっぱり巷間にいわれている、専門家筋が言うように、日本の脅威的な経済成長、アジアの諸国を含めて、それより日本の国民総生産――GNPのほうがひいでている。このような経済成長というものがまあ軍事に向くのじゃないかと、こういう誤解というものが、相当やっぱり日本に対する中国の非難のあらわれとなって出ているのじゃないかと、こう思いますけれども、やっぱり誤解は誤解として、正常化を望む総理であるとするならば、やっぱりこういう面についての誤解を積極的に取り除くという努力も最大限にやってほしいと、私は国民の一人として、こう思うのですが、いかがでしょう。
#100
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのお話は、もう先ほどもこれはたしか森君でしたか、にお答えしたように記憶しておりますが、まあ、過去の歴史から申せば、経済大国即軍事大国、これが普通の姿であったと思います。しかし、日本の場合は、経済大国にはなったが、軍事大国にはならない。また、経済大国だといっても、いわゆる経済に徹したようなエコノミック・アニマル、そういうものにもならないということを申し上げましたので、まあ、こういう点をよく理解していただくように、あらゆる機会をつかまえて話をする以外には方法はないんだと、かように思っております。
#101
○黒柳明君 何だかだんだん答弁が短くなりますけれども、ひとつ思い切って御答弁願いたいと思うんですけれども、ICBMが七二、三年代にはできる。ワシントンもニューヨークも射程距離に入る。これは現実の議論として論議されておりますけれども、これはたびたび言われるんですけれども、そういう時点になってもアメリカは日本を守るか、核のかさは安全か、それについてはそのとおりだ、たよるほかないと、こういうふうな答弁もあったんですけれども、そうなりますと、非核三原則というものをもって、私は何も核を肯定する意味じゃございませんけれども、こういう立場では、日本としては核についての主権、独立国としての主権はない、こういうようなことが半永久的に続くんだと、こういうふうに理解してよろしいですか。
#102
○国務大臣(佐藤榮作君) 実は答弁をはしょったのは、うんとお尋ねがあるように思ったものですから、答弁で長い時間を取っては相済まぬと、今度は少し答弁に時間をとりますから御了承いただきます。
 ただいまの問題ですが、核兵器がどんどん発達する、いまも中共自身が近いうちに中距離弾道弾は持つだろう、こういわれる。日本などは明らかに射程距離内に入る。そうして日本は安全なのか。大いばりができておるのか、こういうようなお話が一面に心配の種として残ります。私はいわゆる、先ほどの石原君のお話もありましたが、アメリカとの日米安全保障条約、これはやはりその意味におきましてもわが自衛力の足らない点をこれで補っていくということで、そういう方法はぜひとりたい、かように思いますがゆえに、当分この安保体制は堅持する、自動延長に入りましても、直ちに廃棄通告などはしない、こういうことを実ははっきり申し上げておるのであります。ところで、ただいま、他国の大統領のポケットにあるそのキー、それで守られる国がはたして安全なのか、これが一つの問題だと思います。私はかつてフランスに参りましたときに、ドゴール大統領に会ってきた。そうしてドゴール大統領と話をした。フランスは核兵器を持つという、それを持つだけに値する力があるんだ、イギリスでは、いまのウィルソンですか、ウィルソンに会ったときには、イギリスは核兵器はもうアメリカにまかして、われわれのいままでとったような、保守党がとったような政策は断ち切る。しかし、断ち切るが、それかといって保守党よりも、よりNATOには忠実な国になってみせる、こうウィルソンは申したのでありますが、その話をしながら、ドゴールに一体どういうようにあなた考えていらっしゃるんですかというお尋ねをいたしましたら、ドゴール大統領はそのときに、自分はだれよりも祖国フランスを愛する。自分より以上にこの国を愛しておる人はいないはずだ。その愛するフランス、そのフランスの安全が他国の大統領のポケットにあるキー、それで守られる、そういう状態に甘んずるわけにいかないんだ。私は、ウィルソン首相が言ったことにも非常に胸を打たれるし、同時に、ドゴール大統領の申したことについてもたいへん胸を打たれたのであります。それで、ドゴール大統領に、一体どの程度のものを持ちますか、アメリカと同じもの、あるいはソ連と同じものを持つのにはたいへんな財力が要る、かように思うが、一体どうですか。そこまでは考えない。しかしながら、核兵器というもの、核戦争も全然発言権のないような状態には置かない、これがフランスの行き方、私の行き方です。こういうことを実ははっきり申したのであります。私はそれらの話を聞きながら、先ほど来問題になっている非核三原則、これを打ち出している。私はその二人とも私が非常に感動した問題でございますが、ただいまそういうことをお尋ねがあるにつきましてお答えした。ただいま申し上げますように、さっきから申すように、ロマンチスト、かように言われるかわかりませんが、とにかく私は核兵器を持てば持つだけに、核のおそろしさが身にしみて、核を使うというようなそういうことはみんな避けるだろう、かように思うようになっておるのであります。私は、この方法は賢明な方法じゃないか、核拡散防止条約、これに参加したのもそういう意味で私は賢明な方法だ、かように考えております。
#103
○黒柳明君 答弁は長かったですけれども、私はあまり感動しないお話で、申しわけございません。それとやはりうらはらに論じなきゃならないのは、やはり平和利用の問題だと思うのです。当然核時代に入る今日にあたって、平和利用は推進すべきである、こういう意見であります。昨月は敦賀の原子力発電所も、東海村に次いで第二番目の送電を行なって、万博の発電を行なっているというようなことですし、また五十年、六十年には五百万キロワットですかあるいは三千、五千万キロワット、こういうばく大な発電を原子力発電所から流す可能性がある、こうもいわれているわけです。しかしながら、日本がこの平和利用に対して技術的などのくらいのレベルがあるか。まあ、第五番目の人工衛星打ち上げの国になりましたけれども、電波が通じない、故障らしいということでございますけれども、何か平和利用に対しての政府の抜本的な施策、この技術開発というものに対して熱意がないんじゃないか、おくれているんじゃないかという点を感ずるんですが、いかがでしょう。
#104
○国務大臣(佐藤榮作君) 平和利用についておくれているというおしかりを受けましたが、私はさようには思っておりません。核の平和利用、ただいまの発電計画等から見ましても、これはよほど進んでいると思いますし、また、核そのものをその他の面で使うとか、あるいは平和利用の面では、私は胸を張ってしかるべきだと、かように考えております。ただいま人工衛星のお話が出ましたが、人工衛星も、いままでにもなく、アメリカなどからも協力しよう、こういうことをしばしば言われたものであります。しかし、私はやせがまんを張って、とにかく日本自身で独自の人工衛星を打ち上げてみせる、こう言ってみんなにがんばらしたのであります。日本でつくったものは、これは非常に特異なものであります。一番最初、一番小さな人工衛星を打ち上げ、それに成功したというわけであります。したがって、小さいだけに値段も非常に安かった、こういうことでもあります。しかし、この打ち上げに成功したことは記念すべきことだ。ソ連、アメリカ、フランス、それから日本、今回は中共、こうなっておりますが、フランスの場合はこれはアメリカから教わったものでありますから、私どものように独自の技術で開発したという、そういう意味のいばり方はできないのであります。私はその点では、中共自身、これはたいへん、どこからも締め出されていながらこれを成功した、これは偉大たる成功だ、かように考えます。しかし、人工衛星担当のあの技術は、これは特に中共にも専門の学者がいて、それが外国からその知識のもとは持ってきたようでありますが、しかし、いずれにいたしましても、これは大成功だ、かように私は思います。
#105
○黒柳明君 一昨年総理がいわゆる核アレルギー解消論というのをおっしゃいまして、一応相当話題になりました。今日の時点においては、当然、いろんな面からこれについて状態が変化してきていると思うのですけれども、現在国民の核に対するアレルギー症というものはどのようになっているというふうに総理はお考えでしょうか。
#106
○国務大臣(佐藤榮作君) どうもあまり変わっておらないじゃないかと、私はまことに残念に思っております。発電――電気の場合には、これは公害を起こさない、そういう意味でいわゆる石油をたくのとは違って、火力発電とは違って、また見物の対象にもなるということで、観光の対象にもなるということで、敦賀のこの港――相当離れたところにできたものなどは、これはたいへんそういう意味では喜ばれておると思います。しかしながら、その発電所から汚水が流れて、それが海水を汚染するのではないか、そのほうの問題はいまなお解決しないで残っておる、かように思いますし、また、あの発電所自身はどんな爆発をするかわからない。そういう意味のたいへん恐怖を持っておる、かようにも聞いておりますし、まだまだなかなかたいへんな問題である、かように思います。ことに、いま舶用――船舶用に動力を使用するとすると、やっぱり海水が汚染するという、そういう問題がいつまでもつきまとう。これはやっぱりある程度の汚染があるようで、全然ないとは私申しません。そういうものについての処理というか、それには注意しなければならない。かように思いますが、こういう問題のほうの、海水汚染のほうが先になりまして、舶用の原子力がなかなか一般化するというのにはまだまだ、かような気がいたします。ぜひともいま黒柳君が言われるように、原子力、これは使い方によっては大いに役立つものである。またしかし、そこには危険がある。それに対してはどういうように始末するのだ、こういうことまではっきり申している。それをやっぱり信頼していただくようになりたいものだと、かように思っております。
#107
○黒柳明君 いま総理は核に対する技術はおくれていないと、相当ばく大な経費もかけてこの平和利用に対する技術開発をやっておるわけですけれども、その反面、アレルギー症は解決していない。こういう相矛盾するこの責任は、やっぱり申しわけないけれども、総理にあるんじゃないか。これはどこにこういう原因があるのか、やっぱり国民に対する理解というものが、非常に努力が足らないんじゃないかと、こういうこともまたその一端であるかと思いますけれども、今後のこの平和利用を中心にしての核政策というものについて、相当思い切った処置、政策、施策というものをとる必要があるんじゃないか。でなければ、ますます核に対する脅威というものははだ身で感ずる時代に、中国の例をとれば、今後は入ってくるわけです。一方平和利用に対して、世界の核政策というものは、現実の国民の生活にまでプラスとして入り込んでくる。こういうことも世界の一つの流れではないかと思うのですが、そういう観点をとらえて、今後の平和利用を中心にしての政府の抜本的なこの核施策に対して、今後は総理はどのように対処されるつもりかお伺いしたいと思います。
#108
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま言われるように、政府ももっと国民に対する啓発をしろ、こういうお話、これは私どもも積極的にそういう点に取り組むことにいたします。何とぞ御協力のほどお願いいたします。
#109
○黒柳明君 カンボジア問題に入りますけれども、昨日本会議の席上で、エスカレートする、要するに、インドシナ戦争にまで発展する可能性があるんじゃないかと、総理は、残念ながら資料を持ち合わせない、見通しはわからない、このようなことをおっしゃったわけですね。それとともに、第七艦隊がトンキン湾上に出撃した、あるいはアメリカの哨戒艇がメコン川の掃討作戦を始める、こういうようなことについてどういう見通しがあるか。要するに、拡大をするのかしないのか、可能性として。要するに、日本としても戦争の拡大化は望まない、アメリカとしても望まないわけです。このために、アジア会議を持たれて積極的に日本も出る、こういうことなんです。しかしながら、先ほどもお話がありましたように、本日のアメリカ大統領の記者会見におきましても、まだまだこれは見通しがない。むしろ、苦境に立たされて、アメリカ全土の学生の反戦デモもますます拡大化の方向に向かっている。言うならば、マスコミの非難は、これは一つのアメリカとして大統領のかけである、こういうこともいわれている。ばくちを打っているんではないか。要するに、エスカレートするか縮小するかわからない。ただ、いままでの現状ではベトナム戦はどろ沼化だ、ひとつ打ってみようということでカンボジア進攻をしたのだ、こういわれておりますが、日本政府として、こういう非常にいわゆるかけを打ったというようにいわれているような――専門家筋がですよ――こういうカンボジアへのアメリカの侵入、介入に対して、積極的には支持しないけれども、ともかく支持する意思というものを一番に表明したということは、ちょっといまの時点においては先走ったのじゃないか。ますますこれからエスカレートする可能性があるやに私は想像しますけれども、いまに至っても佐藤総理は、ニクソン大統領の介入声明について支持したことには絶対間違いない、将来、どうこの戦争が長引いても、どろ沼化しても、この支持というものに対しての信念は変えないと、こういうお考えでしょうか、どうでしょうか。
#110
○国務大臣(佐藤榮作君) アメリカはベトナムにおける撤兵計画をぜひとも実施したい、その実施をするためには、いわゆるカンボジアからされる攻撃、これを停止する必要がある、こういうことでございますし、そうして大体もうその期間も見通しも立てておるように実は聞いておりますので、そういうところで、比較的早く掃討作戦は完了するのではないかと思います。やっぱりアメリカ自身がベトナムに長く駐留すること自身、何よりも問題を起こすもとでありますし、撤兵計画というものが計画どおり進むことが、本来から申しまして本筋である。われわれの賛成すべきことではないかと思います。それをやはり掃討計画することによりまして撤兵が行なえる、こういう見通しでありますし、また、現にカンボジアから攻撃を受けている。あるいはベトナム兵が攻撃を受ける。同時に、同盟しているアメリカ兵がベトナム領にいるのがカンボジア領内から攻撃を受ける。そこで、いわゆる自衛権の発動で飛び出したと、こういうことでございますから、私どもの、積極的な支援ではございませんが、やむを得ない処置であったと、この表現は、そのまま事態を認識しておるものだと、かように御理解をいただきたいと思います。
    ―――――――――――――
#111
○委員長(長谷川仁君) この際、委員の異動について報告いたします。
 ただいま鹿島守之助君が委員を辞任され、その補欠として、初村瀧一郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#112
○黒柳明君 二十三日にアメリカ大統領が武器援助、この武器援助も、要するに、捕獲した武器をまず援助するというところから始まって、このわずか十六日間、相当アメリカの介入によって戦争はエスカレートしたという、この過去の十六日間のいわゆるカンボジア戦というもの、これについては総理も認めざるを得ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。まさか、この十六日間で戦闘はますます縮小しているということは、これは言えないと思いますが、いかがでしょうか。
#113
○国務大臣(愛知揆一君) すでに黒柳委員には私の見解は申し上げたところもございますけれども、アメリカの大統領の演説によって読みますると、また、アメリカ政府の国連安保理事会への報告によって読みますると、過去二週間以内、この声明の出たときを時点にして過去二週間以内における、カンボジア領内にかねて潜入し蟠踞しておった北越軍等の軍事行動がきわめて激化した、それに対する自衛ということを言っておるのがこの演説の内容であり、また、安保理事会に対して出された報告の根拠になっておる、かように存じておるわけでございまして、それ以外に現場の戦闘状況がどういうことになっておるかということは、政府といたしましては実情はわからないのが当然かと思います。
#114
○黒柳明君 それはちょっと、ますます敵の攻略が激化したですか、そうじゃないんですよね。アメリカ軍の進攻がますます激化しているんじゃないですか。これは過去の十六日間というのは、これはだれが見ても客観的にアメリカ軍の戦闘状態というものがどんどんエスカレートしているということは、これは海上でもきのう初めて第七艦隊なり哨戒艦艇がメコン川掃討作戦に出たということで、これは再びお答えいただかなくてもいいですけれどもね。要するに、これは過去の十六日間はエスカレートの方向に向かっている。ところが、総理は将来に対する、縮小するかエスカレートするか見通しは材料を持ち合わせないということですよ。そうなりますと、過去のこの経過は将来早く終息の方向に向かってほしいですけれども、相当エスカレートするというのがニクソン大統領の初めの地上軍介入のときの悲壮なる決意にも含まれておる。六月末の限定と、こういうふうに言われておりますけれども、そうじゃないということの世論のほうが強い、わけです。ですから、私は、早い時点においてこのカンボジア米軍介入ということを政府としても再検討するには何もそんなことはちゅうちょする必要はないと思う。もし――誤りであったとは言いませんよ、誤りであるならばあるとして検討しなければならない。そういう時点が来るならば、いさぎよくといいますか、すなおに米軍に対して諌言するということも将来の時点においてあるかと思うんですが、それを全面的にいまの支持というものを将来も続けるのかどうか、こういうことなんです。
#115
○国務大臣(佐藤榮作君) いまの十六日の時点がどうこうという、これは私が申し上げるまでもなく、カンボジアに入っていなかったときから、カンボジアへ入ったんだから、これははっきりしていますから、それがエスカレートという形でそこまで戦線拡大されたと、とう言われること、これはそのとおりだと私は思います。それが望ましくないということは、もう私どももしばしば言っている。戦線がそういうとこへ拡大することは、これは望ましくないこと、これは申しておるとおりであります。しかし、その地域から攻撃されれば、やはりベトナムにいる米兵はみずからを守るためにその地域を攻撃せざるを得ない、こういうのでございます。もう私があまり材料を持たないと申しましたが、新聞などの報ずるところでは、ニクソン大統領は三十五キロ以上は入らないとかいうようなことを申しておるように伺っておりますが、そういうような一つの限定があるのじゃないだろうか。あるいはもう一つは、アメリカが六月中でもうこういうことはやめるというようにも言っているというような話も聞きますが、そんな事柄もあるんじゃないか、かように思いますので、私は、新しい時点に対して、いつまでもこういうものを承認するわけではない、この掃討作戦なるものはできるだけ早く終息するという、やむという、効果のあがるような方法でこれはとにかくやめてもらいたいと思います。
 私は何度も申すようですが、ともかくカンボジアと北ベトナムとのその間にはラオスとベトナムがあるんですから、このラオス、ベトナムを越して、カンボジアに北ベトナム兵が駐留するとか、あるいはベトコンが入るとか、こういうことは普通の状態では考えられない。でありますから、これはもうシアヌーク殿下の時分でも、やはりカンボジアの中立を守るためには君たちがいては困るんだ、君たちは帰ってくれ、こういうことをしばしば注意をしておるはずであります。なかなか帰らない。しかし、最後には自分たちのところからは戦闘はしないからアメリカからもやはり攻撃しないようにしてくれ、こういうことで初めて「聖域」というような話で、その地域には攻撃が行なわれないという、そういうことが結ばれていた。ところが、その後、そうではなくて、その地域から攻撃されたという、これは自衛的処置をとる、これはやむを得ない処置じゃないか、かように私はいままで説明してまいったのであります。それを重ねてこの機会に、いまエスカレート云々からそれに答えて申し上げておきます。
#116
○黒柳明君 時間がありませんから、最後にまとめて二点ばかりお伺いしますけれども、いま自衛権の発動、これは総理は再三おっしゃっておられます。五十一条の自衛権の発動だと、これは私申すまでもなく、ロン・ノル政権からの要請はなかった。ところが、五十一条は国連加盟国について自衛権の発動が個別的、集団的にできるわけです。南ベトナムは国連加盟国じゃないけれども、前回のトンキン湾事件からベトナム戦にアメリカが介入した時点においても論じられましたけれども、さらに総理は、ただしロン・ノル政権はそのアメリカの介入を喜んでいる、こう言っていらっしゃいますね。だけれども、アメリカがともかくベトナムに介入した時点においては、これはロン・ノル政権の要請がなかった、これははっきりしているわけです。後においてロン・ノル政権はアメリカのベトナム介入を歓迎すると、こう言っているわけですよ。そうなると、ともかく介入した時点においては、国連憲章五十一条自衛権の発動というものは、法的にはこれはオーソライズドされていない。法的には根拠がないアメリカのベトナム介入である、こういうふうに思うんですが、それはいかがでしょうか。
 もう一点は、いわゆるICCに対するまず復活、こういう問題から始めていきたい、こういうふうに外務大臣もおっしゃっていらしゃいますけれども、何らかの、日本政府としてはこの憂うべきカンボジアの事態について何かこちらから自動的に、指導的に何か手を打つつもりなのかどうか、国連の場を通じて。あるいは、さらにきのうは外務大臣は、参加ということはちょっと意見が早いと、こうおっしゃいましたけれども、当然復活ということになれば、参加ということもうらはらの問題だと思います。そうなった場合に、当然これは自衛隊の海外派兵ということにつながっていくことはこれはもう明らかなことですね。このことについてはどのようにお考えになっているか。計三点のことをまとめてお伺いしたいと思います。
#117
○国務大臣(愛知揆一君) 総理からお答えがあると思いますけれども、その前に、先ほども念を入れて――率直に申しますが、念を入れてお答えしておりますように、アメリカ政府の発表や国連安保理事会への報告につきましては、自衛権の発動であり、国連憲章第五十一条の援用である、かように説明されているというのが事実である、こういうわけでございます。
 それから、その前提になっている事実としては、先ほど総理からも御指摘がございましたが、かねがねシアヌークも言明をいたしておるように、あるいはまた、ICCの有力な参加国の中の一つであるカナダのシャープ外相が公式にかねがね言明しておりますように、カンボジア領内に北越軍がこれほどの勢力で蟠踞して中立侵害をしておると、こういう事実が前提になっていた。これもまた客観的な事実であろうと思います。ある大きな、国際政治に発言力の強い国は、今日さような事実があったことは知らないと、こういう見解を表明しておることもこれまた事実でございます。日本政府といたしましては、先ほど来総理がお話しになっておるような見解を背景にして、具体的に言えば、カンボジア問題については、かねがねの一九五四年のジュネーブ協定というもの、この精神というものが私はにしきの御旗であると思います。かつて日本政府が表明した態度もそこにあるわけでございます。そこで、アメリカはいま申しましたような見解のもとにかような行動を展開しておるけれども、同時に、このニクソンの演説の中には、アメリカ国民はベトナム戦争の早期終結を望んでおる、それにこたえるためにこういう措置をやったのだということを言っておることも事実でございます。このニクソンが声明しておる大目的というものは、アメリカ国民のみならず、私は相手方も、また全世界もこれを望むところではないと思います。その目的が何とかして達成できるように、この事態のもとにおいての最善の努力をするのが日本の責任ではないだろうか、こういう考え方で今後進みたいというのが政府の見解でございます。
#118
○国務大臣(佐藤榮作君) いま詳細に外務大臣からお答えをいたしましたから、私からつけ加えることございません。私は、最後の問題――これから先一体日本がどうなるのか、これはいわゆる憲法を守り、自衛隊法を守り、制限を守って、それに反しない範囲において私どもがやはり休戦監視その他の機構に参加することは考えられるじゃないか、そういうことを考えるので、いわゆる自衛隊の派兵など、さようなことは毛頭考えておりません。もしそういうような誤解があったらたいへんでございますから、さようなことは考えておらないということをはっきり申し上げます。
#119
○松下正寿君 私は中国問題と安保問題、それからカンボジア問題、三点について質問したいと思っておりましたが、最後のカンボジア問題についてはもう十分に御答弁がございましたから、それ以上政府からお聞きいたすことは困難であると思いましてこれは省きまして、中国問題と安保問題の二点について総理大臣並びに外務大臣にお伺いしたいと思います。
 日中覚書についていろいろ問題もあるようでございます。これについて私は何か根本的なやり方が間違っておるんじゃないかという感じがするわけです。私は、総理が言われましたように、日中間の理解を増進すること、それから、その一つの手段として日中間のパイプを細くてもつなげておく、できたらば、なるべくそのパイプを太くする、その御方針はまことにけっこうであると思うわけであります。
 それからまた、同じ中国といいましても、現在は実際上二つ中国があるわけでありますが、それもはなはだ変態的である、したがって、一つの中国になってもらいたい、これは抽象的にはそのとおりであります。
 また第三に、どちらの中国のほうが一番実質的であるかといいますと、これは北京政府のほうが有力であるし、そして絶対的な力を持っておることもこれまた間違いのない事実であります。したがって、日本と北京政府との接近ということはこれは時間の問題で、その点については自民党から野党全部一致した見解ではないかと思うわけであります。ただ、先刻どうして日中間に十分な理解ができないかということについて総理自身が、どうもこれができなくてほんとうに困ると、非常に感じておられたわけでありますが、私は日中間の一番大きな問題というのは、むろん相互の誤解があるかもわかりませんが、とにかくやはり根本的にはイデオロギーの差ではないかと思うのであります。したがって、軍国主義云々ということがございますけれども、マルクス主義というものをそのままに翻訳してみますというと、佐藤内閣はむろん、私などもみな軍国主義になっちまう。共産主義でない者はこれは軍国主義、これは一種の定義であります。したがって、これについていろいろ論議したところで実はしかたがないわけであります。ただ、私が申し上げたい点は、中国人は、一面においては――これは中国の政治家を例にとるわけでありますが、一面において、非常に強いイデオロギー的な偏見といいましょうか、信仰のようなものを持っておりますが、他面において非常に現実的な国民である。したがって、現実を無視する程度まではイデオロギーを振り回さない。この二つの認識がはっきりしていますというと、いままで政府がやってこられたことは、少しやり方が違うのじゃないだろうか。と申しますというと、このイデオロギー問題については、なるべくならば向こうをいら立たせないように、できれば、御無理ごもっとも、帝国主義と言われたら、それもしかたございません、軍国主義、それもどうも間違っておりましたから将来改めますといったような、一口で言えば、非常に卑屈な態度をとってきたように思うわけであります。むろん、総理は、いや、これは政府のことでなくて民間の仕事なんだと、自分は直接にはあずかり知らぬとおっしゃるかもわかりませんが、しかし、これは常識上考えてみて、総理大臣や外務大臣が今度の日中の覚書等について全く無関係、何も知なかったということは、これは考えられないわけであります。直接の権限や責任を持っておられるかどうかは別としておいて、一応、佐藤総理のインフルエンスはあったに違いないと思うわけであります。そういう点を考えますというと、私は、今後の日中間の困難な問題を打開するためには、いままでのような――私は、古井さんやそういう方に対して別に偏見も何もないわけでありますが、とにかく、ごもっともであるというような態度でなくして、やはりイデオロギー的な差というものをはっきり認めて、向こうが日本が軍国主義であると言うならば、これは向こうのイデオロギーの一つの結論でありますから、これで議論してもしかたがないと思いますけれども、やはり日本の立場は違うのだということを、はっきりとした態度、そしてそういう態度を表明し得るような総理大臣のインフルエンスでもって中共にお送りくだすったほうが、私は、もっと効果があがるのじゃないだろうか。私は、あれほど現実的な中国の政治家が、こちらのき然たる態度、しかも、中国を日本が襲うといったようなことはないことが明らかである以上は、この現実主義の、第二の現実主義のほうがもっと力を持ってこざるを得ないだろうと考えるわけであります。その点について総理大臣の御意見を伺いたい。
#120
○国務大臣(佐藤榮作君) 日中間でずいぶん食い違っているその原因はイデオロギーの差ではないか、こう言われるが、私は、必ずしもそうは思わない。イデオロギーの違う国とも、私どもは誤解なしにつき合いができておる。はっきり申しまして、ソ連とはイデオロギーが違っております。また、東欧諸国ともイデオロギーが違っております。しかし、これらの国とつき合うのに、別に何ら支障は来たしておらない。そういうことを考えますと、いまの、イデオロギーの差だということで片づけられることはいかがかと思います。私は、それよりも、やっぱり、何といいましても相互に交通が途絶している。そうして、過去の――先ほども議論がありましたが、過去の痛ましい状況、それがなおこびりついている。そういうところから、やっぱり新しい日本というものが理解されておらない、そういうところに問題があるのだろう、かように思います。そこらは、先ほど来いろいろ申しましたが、これより以上は申し上げません。ただ、イデオロギーの差だということだけでは、どうも片づけられないように私は思います。
#121
○松下正寿君 私は、イデオロギーで全部を片づけようと申しておるわけじゃございませんが、ただ、日本を、常識で考えてみて、どうしても軍国主義であるとは思われないわけでありますが、これをはっきりと軍国主義というふうに規定するところを見ますというと、私はちょっと統計からきた結論とか、その他科学的に分析してそうなったとかじゃなくて、やはり非常な抽象的なイデオロギー的な結論であることは明らかであると思います。ただ、こういう問題で総理と議論することはむだでありますから、これ以上触れませんが、私の申し上げたいのは、はっきりしたイデオロギー的なそこに差があることは間違いのない事実であります。ソ連、東欧はどうかとおっしゃいますけれども、ソ連はもうだいぶ古くなりましたから、それほど振り回さなくてもいいわけであります。中共のほうはまだ新しいですから、盛んに振り回さないとぐあいの悪いような事情もあるわけであります。そういう点を考えて、別にイデオロギー的に対立するというのじゃなくして、もっとはっきりと、その点は違うというき然たる態度を持った人をお送りになったほうが、私は日中の関係はもっとよくなりはしないかと申し上げているわけで、重ねて御答弁をお願いいたします。
#122
○国務大臣(佐藤榮作君) いまの結論として、もっとはっきりした、き然たる態度を持って交渉に当たる人を出したらどうかと、こう言われることについては、私も心から賛意を表するものであります。しかし、なかなか、相手方がそういう人を受け入れてくれなければ交渉にはならないのでございます。ただいまのところ、そういう人もなかなか見つからないので、そういう人はきらわれておる、こういうふうなこともございますから、その辺のところも考えながら、ただいまの御意見は御意見として、十分、これから対処する場合に、善処する材料にしたいと、かように考えます。
#123
○松下正寿君 総理は、私と結論において同感で、まことにうれしく思います。ぜひとも、そういう人をひとつお願いしたいと思いますが、同時に、やはり、こちら側でなしに、日中貿易を求めておるのは、中国側は日本よりもっと切実であるという認識をはっきりとしていただきたいということを希望しておきます。
 この第一の問題につきまして、私は、やはり、何といっても一番大きな難問題になっておるのは、国府の問題、あるいは台湾の問題であると思うのです。先刻、総理は台湾問題は、北京と台北でじっくりと話し合って、話し合いの結果、うまくおさまることを希望するとおっしゃったわけであります。これは希望としては受け入れられるわけでありますが、そういうことが、近い将来に――近いというのは、ここ二年、三年、あるいは五年ぐらいのうちにできるかどうかといいますと、ちょっと私は期待ができないのじゃないかと思います。どちらも一つの中国を要求しておりますし、台湾では、最近は大陸進攻ということは、看板は、一応表面からは、町からはおろしましたけれども、やはりたてまえは持っておるわけであります。したがって、この両関係者が、話し合いで解決をつけるということは、相当困難じゃないかと思うのであります。私は、そういう希望を持つのはけっこうでありますけれども、やはり日本は、まあ内政干渉してはいけませんが、しかし、同時に、日本は台湾とは非常に密接な関係を持っておる。これは先刻、密接な関係を持って、執着を持つことは事実であるが、それで政策をきめないのだとおっしゃったわけであります。私は、日本と台湾との関係が密接であるということを、別に遠慮をしたり、恥じたりするのではなくて、もっともっと密接にしていただいて、そうして、それをむしろ兄弟のような仲のよい立場から、内政干渉とかいったようなことでなしに、仲のよい立場から、台湾に対してもっと穏当な態度をとるように、中共に対しては、いま申し上げたような態度、台湾に対しても、もっと穏当な態度をとるように、やはり兄貴分として、あるいは兄弟分として持ちかけることが必要であると思いますが、この点について、総理大臣はどうお考えでございますか。
#124
○国務大臣(佐藤榮作君) いままで私からも申し上げましたように、日本が承認し、また、平和条約を結んでおる国府との関係、これはわれわれは国際的にも相互信頼を深め、また、十分に義務を果たす、信義を尽くして交わるという、そういう責任のあること、これはもうはっきり申し上げたとおりであります。しかしながら、中国は一つだと、かように言われておるもとにおきまして、国府が大陸に施政権を及ぼすことができていない現実、この現実から見まして、北京政府ともやはり接触せざるを得ない、これがただいまの偽らない状況でございます。これは、私はそのことを率直に先ほど来声を大にしてお答えしたとおりでございます。ただ、いま言われますように、何か承認した国、あるいは平和条約を結んだ国と、そういう関係のない国、いわゆる未承認国といいますか、そういう場合に、非常に困ったことには、とにかくただいまのところ中国は一つだというその議論、これはどこまでもつきまとっておるわけでありますし、私もそれに賛成しております。でありますが、何だか、中国が二つであるなれば非常に解決がしやすい、かようにも思います。それが、どうも民社党の御意見などを聞いておりますと、曽祢君の本会議における質問など私は客観的にそのときも批判したのでありますが、伺っているところ、どうも二つの中国論、それに間違えられるような、事実疑問がある。したがって、私は、いま直ちに民社党の御意見については批判を差し控えますと、こういうことを申し上げました。ただその二つの中国論というような誤解を生みやすいということだけを指摘したにとどめたのでございます。ただいまのお話にいたしましても、そういうようなお話ではございませんけれども、何だか一つの中国論から見まして、われわれが二つの中国論に加担しているかのような印象を与えるおそれなしとしない、かように私は思いますので、その点ではどうも御意見を交えてのお尋ねでございますが、松下君と私との間にはやや――相当の差があると、こういうことだけ指摘しておきたいと思います。
#125
○松下正寿君 時間がありませんから、まだたくさん申し上げたいことがありますが、安保条約の件です。先刻、石原委員と総理との質疑応答で大体はっきりしておりますから、それで漏れた部分あるいは強調されなかった部分だけをお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
 何といってもアメリカがアジアから徹退しつつあることは、これはこまかく申し上げるまでもなく、明らかな事実であります。したがって、日米安保条約の性格も非常に変わっておることも、これも間違いのない事実ではあると思うのであります。そこで、日本の立場というものは非常に今後困難になると思いますが、それについて将来核武装しろとかいろいろな議論も出てくるわけであります。私はそういう立場をとっておりませんが、何といってもこの際に、北京政府は平和国家であるということばだけで全部が片づくならば何も心配はないわけでありますが、現実的にそういうふうに簡単に割り切ることもできないところに悩みがあると思います。私は唯一のやり方は力と平和主義とを総合したものとしては、やはり現在問題になっております核防条約について日本はき然たる態度を示して、日本の平和利用について一切干渉されないような姿勢が必要じゃないか。最近IAEAなどとの交渉などを聞いておりますと、どうもその点で不安に襲われるわけであります。その点につきまして総理大臣及び外務大臣からの御答弁を願いまして私の質問を終わります。
#126
○国務大臣(佐藤榮作君) いわゆるグアム・ドクトリン、これがアメリカのアジアからの後退を意味するかどうか、これは私は多分に松下君とは認識を異にするものであります。私が昨年の十一月にニクソン大統領と直接会って大統領の口から私のこの耳で聞き取ったところでは、いわゆるアメリカは後退というようなもの、それではございません。もちろん、アメリカ自身がこれは平和主義に徹する、そういうことではございますけれども、そうして、いままでの約束したものはこれは忠実に守っていく、しかし、これから約束するようなことについてはこれはよほど慎重にしていく、こういうことでもありますし、また、みずからがただいまの平和主義に徹するという、そういう意味の問題も提起しております。したがって、各国は、自分も援助するけれども、何といっても自助の精神がまず第一必要だ、みずから守るその心がけ、それのないところにはわれわれは助けようがないのだ、こういうような言い方をしております。私はそのこと自身が後退だとは思っておりません。私は、当然のことではないか、かように思います。また、よけいなおせっかいをしてもらいたくないという、そういう場合もあると思います。やっぱり独立国家としては、ただいま言われることがもっともなことである。約束された事柄は守って、そしてその他の事柄はどこまでも独立自助、そういうことでいけという、これは私、アメリカならずとも、当然のことではないだろうかと思っております。
 それからその次に、核拡防条約についての平和利用、これは先ほど黒柳君にも私答えたように、積極的に平和利用の問題とは日本は取り組む、その決意でございます。そのために、核防条約に参加したがゆえに非常な不公平な取り扱いを受ける、こういうようなことがあってはならないと思います。ただいま批准をお願いする前に、これらの点において、状態を確かめて、不平等な取り扱いを受けないという十分の確信を得る、これがまず第一大事なことだ、こういうことでただいま準備を進めておる次第でございます。ただいま御注意になりました点は、私も同様に考えております。
 以上お答えいたします。
#127
○国務大臣(愛知揆一君) 核防条約の関係で一育つけ加えますと、これは科学技術庁長官からお答えするのがしかるべきことだと思いますけれども、いまお触れになりましたIAEAあるいはその他関係国との間のいろいろの話し合い等の経過から見ますと、日本の主張、すなわち査察をできるだけ簡素化する、少なくともユーラトム並みにするというこの主張、考え方については、相当の反響、よい意味の反響があるようでございます。ただ問題は、日本側の査察管理体制というものについてのまだ十分の信頼性がない、これに対して、したがって、わがほうとして、あるいは予算の面におきまして、あるいは技術陣の養成という面におきまして一段と努力をすることが必要ではなかろうかというのが科学技術庁長官の見解でございます。私どももさように存じますので、協力してその方向に努力を急速に展開したいと、かように存じております。
#128
○岩間正男君 安保問題に入るに先立って、きのうの参議院本会議で黒柳議員に対する総理の答弁に関してお聞きしたいと思います。
 総理は、ベトナム戦争並びにカンボジアのこのたびの介入問題について次のように述べています。「最初の起こりの場合には、ベトナムから要請があった、これが五十一条というわけではない、他の国連憲章の発動、援助という形で進んだのでございますが、今回はすでに米国が駐留しておるのでありますから、その米軍の安全のために自衛権を発動すること、これは当然のことではないか、これが五十一条の問題でございます。」、もし、そうだとすれば、これは従来の政府の答弁とは全く違っていると思います。たとえばわが党の松本善明議員が昨年の三月に質問主意書を提出いたしました。これに対する政府の答弁の中でも次のように言っています。「米国のヴィエトナムにおける軍事行動は、ヴィエトナム政府の要請に基づく集団的自衛権の行使であり、その法的根拠は、国連憲章第五十一条に求められる。」、こう言っているんです。それとも、きのうの発言はこれは間違いとして取り消されますか。もし取り消されないとすれば、「他の国連憲章の発動、援助という形で進んだ」と言っていますが、これは一体憲章のどの条項に基づくものであるのか。
 以上の二点についてまず簡単に答弁を願います。
#129
○国務大臣(佐藤榮作君) えらいところを見つけられたものですが、私のことばが少し足らなかった、かように思うので、誤解を受けたようです。そこで、参議院の本会議における答弁は、米国政府の見解によれば、今回のカンボジアを根拠とする北ベトナムの南ベトナムに対する攻撃に対して米軍が反撃を加えたのは、自衛権の行使であり、これは国連憲章第五十一条に基づくものであると述べたのである。また、最初の起こりの場合についての説明には、これがいま問題になっておるんですが、多少不十分な点があったかもしれないが、これは従来の答弁にも述べたとおり、ベトナム政府の要請に基づいて、米国が国連憲章第五十一条の集団的自衛権を行使したものである。以上、正確に申し上げます。
#130
○岩間正男君 きのうの発言、取り消されたことになるわけでありますけれども、非常にいままで政府の説明聞いておりますと、混乱があります。非常に首尾一貫してないところがある。こういう態度の中に、このカンボジアの介入問題について要請のないこのアメリカのカンボジアの軍事介入をいかに合理化しようとするかという、そういう態度にきゅうきゅうとしている、この政府の態度が見えるんです。私は、こういうことをいまやるのが政府の任務ではないと思う。こんなことじゃない。あくまでもこれはアメリカの侵略をやめさせるために最大限の努力をするということ、これが当然政府の任務でなきやならぬし、あなたたちの外交方針としていままで掲げてきたところじゃないですか。したがって、私は、カンボジアへの不法侵入や北爆の即時停止をアメリカに当然要求すべきである。また、ジャカルタのアジア会議への参加について先ほどから述べておられますけれども、こういうものを私は見合わせるのは当然だと思います。この点、いかがですか。
#131
○国務大臣(佐藤榮作君) だいぶ問題が飛躍したようですが、私は、そこまでは賛成をいたしません。ただいまの、先ほどの答弁、本会議における答弁は、この席でこれを補足したということで御了承願いたいと思っております。
 さらに、ただいまのように、北爆をやめさせる、カンボジア侵入をやめさせる、だいぶ思い切った御発言ですが、そこまでは賛成はいたしておりません。
#132
○岩間正男君 どうもアメリカの言い分に、先ほどから聞いていますと、アメリカのニクソンの演説、あるいは国連の報告、これは一方的なもの、これに対していろいろな今日国際的な世論も、国内的世論も起こっている。こういう点から、私は、当然政府はもっと厳正な態度をとるべきだ、そう考えるのであります。ところで、あなたたちはあくまでアメリカの政府を支持しておられるんですが、一体この日本政府がこんなに肝いりをしている米国政府というのは一体どんな政府だ、このことを私は次の一事から考えてみたいと思う。米上院の外交委員会秘密聴聞会で、これはロジャース米国務長官は、四月二日ですが、次のように言っています。「米政府はカンボジアへの介入は考えていない」、このように証言している。さらに、「ラオス、カンボジアをふくめたインドシナ地域への新たな措置をとる場合は、事前に米議会と協議する」と、こういうことを、はっきりこれは確約しているはずであります。ところが、今度の行動というのは、全くこの約束を無視して行なわれたものだ。自分の国の議会をさえも欺くこのような米国政府、これを日本政府が弁護して、しかも合理化するためにきゅうきゅうとしておる。私はこのことは非常に教訓深いと思う。それは今後の日米安保条約の運用に関する問題と関連するからです。日本に対してだけはあらかじめ相談して、一体、事を運ぶということを、このようなアメリカがやるか。そういう保証があると考えられますか。自分の議会をさえ欺いて、今日御承知のように、もう収拾できないような大きな問題になっている。国内の世論、反対世論が巻き起こっておる。こういう政府に対して、これをたよりにして安保条約をほんとうに今後実施していく、日本政府と相談していくというふうに考えられますか。この点、お聞きしたいと思います。
#133
○国務大臣(佐藤榮作君) いまアメリカ国会における問題を持ってこられて、私を責められましても、私は答えようがございません。私どもが過日判断をいたしました当時の材料は、これは別にアメリカ政府のやったこと、それを正当化するためにきゅうきゅうとして考えて得た結論ではございません。私や外務大臣の答えは、まずアメリカ兵が攻撃を受けて、同時に、同盟のベトナム軍がカンボジア領内から攻撃を受けた。これを攻撃することは、これに対して反撃することは、これは自衛権の発動ではないか。こういう事柄は望ましいことではない。しかし、やむを得ない措置であるから、それだけははっきりそういうことに話したらどうですか、こういうことを外務大臣に話をいたしまして、別にアメリカから要求されてとやかく言ったわけではございません。これはどこまでも自発的なものでございます。これは追随でもなければ、それこそ自主的な判断で私どもはきめたのであります。私は、ただいまいろいろなお話があります。確かにアメリカ国内でいろいろ議論がいまこの問題をめぐってたいへんな状態になっておる。もともと、もう考えてみると、朝鮮事変以来ずいぶん長い間戦乱が続いております。ここらでアメリカ国民としても、もう戦争はこりごりだ、そういう気持ちは必ずあるだろうと思う。そのことは容易に私どもにも想像のつくことであります。したがって、いまニクソン大統領のやっておりますことも、急いで問題を終結したい、ベトナムからアメリカ兵を引き揚げたい、撤兵したい、そういう前提、その基礎になる前提行為、それをいま整理している、かように私ども判断しておりますが、これは間違いでしょうか。あるいはいま言われるように、アメリカ弁護のためのきゅうきゅうたる策だ、かように言われるでしょうか。
#134
○岩間正男君 私はこれは論議したいけれども、時間ないのです。ただここで一言申しておきたいのは、トンキン湾事件の苦い経験、これを再び繰り返すということですか、これはできないことだ。もっとほんとうに、自主的判断と言われましたが、それを貫くような政治行動をとるべきである。
 私は次に、いま述べたようなアメリカとの危険な関係のもとでの在日米軍基地の問題、つまり、安保の問題が集約的に出ている基地問題について若干質問したいと思います。
 それで第一に、沖繩が返ってくれば、日本にある米軍基地は二百数十カ所になります。現在二百カ所もの外国軍の基地を置いている国が世界のどこかでありますか。また、一国の首都とその周辺に膨大な基地群を認めている国が日本以外にどこかにありますか。このことをお聞きしたいと思います。
#135
○国務大臣(愛知揆一君) アメリカが集団安全保障の条約を結んでいる国は相当数ございますが、その中で基地をどのくらい持っているところがどのくらいあるかということについては、率直に申しまして、なかなかお答えがしにくいんです。なぜかといいますと、これは数だけで比較し得べき問題ではなくって、たとえば一つの港を一つの数、提供した基地と考える数え方もございましょうし、一軒の事務所を一つの基地と勘定する場合もございましょう。そういう関係もございますから、これは一がいに数で比較するということは非常にこれは誤解を招くことであろうと思います。中にはまた基地の数等を公表していないところもございますから、これはそういう意味合いにおきまして、お答えすることは差しひかえたいと存じます。
#136
○岩間正男君 いまのような答弁されましたが、質においてもどうです。首都周辺だけを見たって、沖繩の嘉手納と並ぶ第五空軍の二大攻撃基地の一つ、横田基地があります。また、厚木、横須賀があります。いざというとき、基地周辺、それも一千二百万近い人口をかかえている首都が、東京が被害を受ける覚悟をしないことには、このような基地を置くということはできないはずだと私は思う。一体総理は、どういう考えから首都にまでこのような一体米軍の基地を許しているのか、お聞きしたい。
#137
○国務大臣(愛知揆一君) 一言補足いたしますけれども、日本の場合におきましては、最近十年間をとってごらんなりましても、しばしば政府から御説明いたしておりますように、基地の数は非常に減っております。面積も非常に減っております。それから、たとえば昨日の閣議でも決定されておる中にもございますけれども、横浜市内の相当の基地というものも、全面返還、日米安保協議会におきまして、基地の整理縮小ということについては着々進んでおるということは御了解いただいておると思います。
#138
○岩間正男君 なるほど、核戦略にあまり必要のない基地はドル防衛の立場からこれは返しておるでしょう。しかし、核戦略の基地は、これは返していますか。横田をごらんなさい。三沢をごらんなさい。岩国をごらんなさい。そうして横須賀、厚木、佐世保、こういうところは返していますか。私はこの問題をここで論議をする時間ないから、これは防衛の委員会でやるつもりでありますが、私はこの基地の性格についてもう一つお聞きしたいのですが、現在本土にある百二十五の基地のうちで、占領当時から継続使用している基地は幾らあるか、これをまずお聞きします。そうして、大体この基地というのは……。
#139
○委員長(長谷川仁君) 岩間君、持ち時間はあと二分でございます。
#140
○岩間正男君 この基地は日本の必要からこれはこんなものをつくったんじゃないんです。マッカーサーの占領時代から米軍の戦略の必要によって合意させられたのが、これはこの基地です。その基地が戦後四分の一世紀にもわたって引き続き使用されている。総理は昨日の衆議院外務委員会で、もうこの辺で占領の継続といった考え方をなくしたいという意味のことを発言されました。しかし、考え方ではなくて、実態はどうかという問題です。もし、真に戦後に終止符を打ちたいというなら、占領時から継続使用されているこのようなこまかな基地ではなくて、根幹をなしている横田とか板付とか横須賀とかいった基地を撤去させること、あなたはそうするこれは責任があると思うんですが、この点、一体どういうふうに考えておりますか。これは時間ないから、これは時間の関係から続いてみな質問しますから、次に答えてください。
 もう一つ、この上に、政府は昨年の日米共同声明によって沖繩を含む日本全土をアメリカを盟主とする多角的反共軍事同盟に組み込む安保条約を朝鮮、ベトナムあるいは中国などに対する侵略的な軍事同盟に改悪するとともに、自動延長によって半永久的にこれを維持しようとしています。自主防衛の名によって軍事力の画期的な増強がいまはかられようとしている。日米共同作戦体制を西太平洋全域に繰り広げようとしています。これは日本の進路をますます危険な道に追いやることです。私たちは、最後に、こういう現在の政策に対しまして、日本とアジアの真の平和を確保する道は、安保条約を廃棄し、沖繩の全面返還を実現する以外にないと思います。ちょうど六月二十二日の安保条約の固定期限終了を前にしまして、また、このたびのアメリカのカンボジア侵略によってあらためて明らかにされた安保条約の危険な本性を踏まえて、政府が自動延長の決定をやめ、アメリカに対して破棄の通告をすることを私は国民とともに要求して私の質問を終わりたいと思います。
 以上の三点について御答弁を願いたいと思います。
#141
○国務大臣(佐藤榮作君) 一番最後のは御要求のようですから、これはまあ聞きおく程度にします。
 安保条約廃棄、これを通告しろと、これを要求しろと言われているのですが、私どものほうは、廃棄はいたしません。これだけはっきり言っておきます。自動延長の期間に入る、こういうことを御了承願いたいと思います。
 そこで、問題はやっぱり軍事基地、これは昨日も申し上げたところでございますが、どうも日本の国内にある軍事基地は、占領当時の延長と、そういう感じはまことに色濃い。ただいま相当の数は減らされておりますが、また駐留の陸軍などは数はよほど減っております。しかしながら、どうも占領当時の延長、この残滓がいま非常に強く残っております。これはやっぱり新しい時代から見てそれを払拭しなければならない、かように思っております。そこでいまもお話しになりましたように、空軍基地並びに海軍基地、これがなお広範に使われておる。私は、わが国の自衛隊について昨日も申し上げ、これも中曽根君が皆さんから、「海軍」と言ったというのでずいぶん攻撃を受けて、ことばを取りかえしましたが、とにかく海空の自衛力というものはただいまのところ不十分でございます。私は、そういう意味におきまして、アメリカの空軍基地、海軍基地、これが大きいことは当然ではないだろうかと思います。私どもは今後整理する方向、それはただいま言うような海空の自衛力をふやす、そういう意味でいろいろ計画も持っております。また、その点では、立場は違いますが、ぜひとも国家的見地から御賛同願いたいと、この機会に前もって申し上げておきます。
 それから、ただいまのことで大体お答えしたかと思いますが、いかがですか。いいんでしょう、以上で。
#142
○岩間正男君 占領時代からの継続している基地、数……。
#143
○政府委員(山上信重君) 答弁いたします。占領後今日まで継続しておる基地は、講和条約発効の際に二千八百二十四施設ございましたが、その数二千六百九十八施設がすでに返還になってございまして、現在まで継続して使用しておりますのは百七施設でございます。
#144
○委員長(長谷川仁君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#145
○委員長(長谷川仁君) 午前の残り三案件を再び議題といたします。
 どうぞ総理大臣退席してください。
 速記をとめて。
  〔午後四時三十一分速記中止〕
    ―――――――――――――
  〔午後四時四十一分速記開始〕
#146
○委員長(長谷川仁君) 速記を起こして。
 三案件に対し質疑のある方は、順次御発言願います。
#147
○羽生三七君 この漁業関係の三案件全部に関連する問題で一問だけいたしますが、最近外務省といいますか、外務大臣が、領海の問題について三海里とも言い、十二海里とも言い、いろいろな意見を述べられておりますが、現時点で一体外務省として考えておられる最終的なお考えはどういうものなのか、この機会にお聞きせをいただきたい。
#148
○国務大臣(愛知揆一君) 領海の問題は、一口に申しますと、やっかいな問題でございまして、政府のただいまの見解といたしましては、現在は国際的に大多数の国が国際法規として守っておりますのが三海里でございますから、現在の政府の見解はということになりますと、三海里説をとっておる、これが現状でございます。
 それから、今後どう考えるかということにつきましては、やはりこれは国際的な多数国間の取りきめがきちんとしておりませんければ、利害得失がいろいろございますから、大多数の国が合意するものであって、かつ、これが国際的に順守されるという保障がとられるならば、たとえば十二海里説でけっこうでございます、こういう考え方になります。と申しますのは、すでに海洋法会議その他で十二海里、そのうち六海里は領海、六海里は専管水域ということで相当大多数の国々の合意を得る程度に進んできました事実も踏まえまして、大多数の国がそれで合意ができるならばそれはけっこうなことだ、こういうふうな考え方でございます。ただ、その際におきましても、どうして十二海里説が大多数の合意の結着を得られなかったかといいますと、十二海里説でいいのだけれども、沿岸国はそれ以外の水域においても特殊の権益を留保するというような相当の国の主張がございますから、そうなりますと、十二海里説というのが実際上守れなくなる、こういう点がありまするから、その辺のところがもう少しはっきりした形で十二海里説なら十二海里説で、きちっとした基準が万国的に守られるという保障がなければ、にわかに同意するわけにはいかない、かような考え方であります。
#149
○羽生三七君 よくわかりましたが、そこで、大多数の国が十二海里説ならばそれに同意してもいいというお話ですが、そうすると、いろいろな会議がある場合に、日本としてはこういう主張だというものはないのですか。きまったならばそれに賛成するというのですか、その辺はどうですか。
#150
○国務大臣(愛知揆一君) 日本としての主張は十二海里説で、そのうち六海里が専管水域ということは、大多数の国が順守するということが保障されるならばそれでけっこうである、これが日本の立場であります。
#151
○森元治郎君 関連して。
 そういう場は、前はジュネーブの海洋会議のような、どういう場で国際的な話し合いをするのか、最近予定されているのですか。
#152
○政府委員(井川克一君) これはやはり国際連合主催のもとにおける一九五八年及び六〇年の海洋会議のようなものになると思います。委細は、おそらくことしの国連総会において議論がされまして、そのような会議をやるかやらないか、また、いつやるかということが国連総会で決定になると思っております。
#153
○小野明君 漁業協定についてお尋ねをいたしたいと思いますが、私がお尋ねしたいのは、日中の民間漁業協定であります。事が民間漁業協定でありますだけに、答えにくい点があるかと思いますが、安保と同じように、六月二十二日が期限切れである。そこで、西日本の漁業界あるいは漁民等、非常に大きな関心を持っておるのでありますが、これに関しましてどのようにお考えであるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
#154
○政府委員(藤村弘毅君) これは従来まで一年間の協定でございましたけれども、昨年の十二月に、中国が今回に限って半年というきめ方をいたしております。その理由といたしましては、日本船が数多くこの民間協定に違反しておるということを強く言っておりましたが、そういう理由で半年ときめられまして、本年の六月二十二日までが一応期限になっております。そこで、民間といたしましても、自分たちで自主的にこの協定を厳守するというお互い同士の誓約をしておりますし、私どものほうにも、これを守りますからということを強く言っております。私どもも、民間協定に属する一分網目の制限とか禁止区域等について、条件制限等で規制している面もありますので、その点を強く確実に守るような指導をいたしまして、現在までのところ、民間協定に違反したものは一隻もございません。それで、これにつきまして引き続き同様の協定を延長するようなことに中国と話を進めさせるようにつとめておる次第でございます。
#155
○小野明君 その話し合い、交渉というのはいつごろから始まるのですか。そして、その交渉の内容というのは、いま言われた内容でまとまる見通しなんですか。
#156
○政府委員(藤村弘毅君) 現在のところ、交渉開始の時期は定まっておりませんが、私どもが考えておりますのは、昨年暮れに中国側が言ってきておりました、民間協定に違反したということを理由にしておりますので、本年度全く違反がないように自粛をしておりますので、引き続き同様の内容で結ばれるものと期待しております。
#157
○小野明君 いま一ぺんこれは外務大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどの総理の御答弁では、覚書貿易協定、これについては、ささやかな小さなパイプであるが続けていきたいということがありました。けさの新聞によりますと、さきに、肥料メーカーの四社にいわゆる周恩来四原則というものが適用されるということがあったのですが、けさは、今度は鉄鋼五社に対しましてこの四原則というのが適用される、こういう報道でありまして、かなり鉄鋼五社としてはこの措置に苦慮いたしておるという報道があった。この影響はどのようなものなのか、どう見ておられるか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
#158
○国務大臣(愛知揆一君) 実は、御承知のような状況でございますから、政府としてまだ正確な情報背景の分析などはできておりません。ことにただいまお尋ねの鉄鋼大手に対する先方の態度というようなものも、率直に申しまして、私自身けさの新聞でそういう情報を知りましたようなわけでございます。したがいまして、ただいまお答えできるところとしては、よくその事情を調べていくということだけしかお答えできませんが、ただ私は、実は先ほど総理からの答弁の中にもあったようでございますけれども、日中貿易について、先方も実は非常に日本との貿易を期待する面もあるのではなかろうかと私は想像いたしますので、成り行きやそういう背景などを、いま少しその真意というようなものも何らかの方法でもう少し分析して、事態を静観してみたいと考えております。
#159
○西村関一君 ただいま日中漁業の民間協定についての話がございました。同じく日本と海域を接しておりますところのいわゆる北鮮――朝鮮民主主義人民共和国との間において民間協定が結ばれておるかどうか。また、その実際の状態、日本の漁家が北鮮海域に出漁するようなことがあるかないか、そういう問題に対して、本条約に関連してお伺いをしておきたいと思います。
#160
○政府委員(藤村弘毅君) 北鮮とは民間協定はございません。それから、ごくわずかの漁船が北鮮の沖合い近くまで出る時期もございますけれども、あまり多くの漁船は出漁していない状況でございます。これとのトラブルにつきましては、私、ちょっと正確に記憶いたしておりませんが、昨年の春ごろでしたか、一件あったと記憶いたしておりますが、そのほかはあまり聞いておりません。
#161
○西村関一君 もう一つは、大陸だなについての政府の統一見解はどういうことになっておりますか。
#162
○国務大臣(愛知揆一君) 統一見解となりますと、私が責任持ってお答えできるかどうかわかりませんが、たとえば日ソの漁業交渉などの場合にもこの問題がよく出るわけでございますが、たとえばタラバガニ、ズワイガニですか、こういうものは先方は大陸だな資源と言い、こちらはそういう見解を持っていないわけでございます。したがいまして、大陸棚条約というようなものがいま議題になって――議題といいますか、国際的にも話題になっておりますけれども、それに対しましても、日本側としては別の異なる意見を持っておりますために、大陸棚条約については、にわかに賛意を表しがたいという見解を持ち、また、ソ連等に対するバイラテラルの交渉の際にもそういう立場を日本としてはとっている、これが現状でございます。
#163
○西村関一君 次にお尋ねいたしたいと思いますことは、海洋資源の調査研究、開発の問題についてです。これは現在の階段においてどの程度進んでおりますか、お伺いしておきたいと思います。
#164
○政府委員(藤村弘毅君) ただいまお尋ねの海洋資源と申しますものは、水産資源のことでございましたら、水産庁で扱っておりますので、私からお答えいたしますが、海底資源につきましては、私どもではございませんので、お答えしかねます。
 で、海洋生物資源につきまして水産庁で考えておりますのは、遠洋漁業につきましてまだ未開発の漁場にこれを開発するという点と、それから、遠洋におきます未利用のたん白質、たとえば南氷洋におきますアミの大きいようなものでございますけれども、ユーファウジアという動物ですが、現在鯨のえさになっているだけで、人間が利用しておりません。こういう未利用のたん白質の利用方法を開発していくというような方法が一つございます。
 それから、沿岸におきます潜在的な海洋の生産力を開発するために、沿岸の漁場の再開発ということを考えております。最近の土木工学を利用いたしまして、海洋の沿岸漁場の性質を変えるなり、水の流通をよくするという方法、沿岸漁場再開発という方法を一つ考えております。
 もう一つは、新しい、いままで使っておりませんでした方法で、沿岸漁場を利用いたしまして栽培型の漁業を開発いたしたいという研究を進めております。
 さらにもう一つつけ加えまして、海洋を大きく回遊いたしますマグロとか、サケ、カニというような魚族を養殖するということを企業化できる段階に来ているという判断で、本年度からそういう資源の開発を考えておる次第でございます。
#165
○国務大臣(愛知揆一君) 委員長、ちょっと補足させていただきたいと思います。
 先ほど大陸棚条約の問題が国際的に話題になっていると申し上げましたのは、訂正いたします。大陸棚条約はすでに成立いたしておりますが、わが国は加入しておりません。なぜ加入しておりませんかと申しますと、魚族、魚類はいわゆる大陸だな資源ではない。公海中に生息しておる魚類であると、簡単に言えば、これが日本側の主張の根拠でございまして、大陸だな資源というのは、一口に申しますれば、鉱物資源というようなものを称するものだと。そこにかりに定着している魚類等についても、大陸だな資源になることは、わが国が従来公海中におる魚族として扱っておった水産業あるいは水産政策のたてまえからいっても、これは日本国益をそこなうゆえんである。簡単に申しますと、そういう根拠に立ちまして、この大陸棚条約に加盟しておらないわけでございます。同時に、大陸だな資源の調査開発等については、これは通産省あるいは科学技術庁等で研究調査――いま的確な資料をここに持ってきておりませんでしたけれども、予算の上にも相当の政府としては予算を計上して、調査研究、開発に当たっておるはずでございます。
#166
○西村関一君 大陸だなの問題について、大臣から先ほどの御答弁に対する修正と補足の御答弁がありましたが、それは了承いたします。私は全くしろうとでございます。その間の問題の所在についてはよくわからないのでありますけれども、ただ、仄聞するところによりますと、常識的に考えますというと、日本の単なる海洋魚族資源という面だけじゃなくて、大陸だな資源を含めて、あるいは広大な海域を占めておりますところの大洋あるいは海洋についての研究がわが国はおくれておるというふうに聞いておるのでございます。いわゆる海洋学と称せられる分野がまだ十分に開発されてない。私はきわめてわずかな経験しかございませんけれども、ロサンゼルスの郊外にあります加州大学の海洋教室を見学したことがあるのでございますが、非常に進んだ施設を持ち研究を続けておるようでありまして、わが国の海洋学の状態はどうもおくれておるというふうに感ずるのでございますが、この点について大臣はどのように御理解になっていらっしゃいますか、この機会にあわせてお伺いいたしておきたいと思います。
#167
○国務大臣(愛知揆一君) この点は確かにごもっともと存じております。したがいまして、多少おくればせではありましたけれども、先ほど申したように、関係省庁の間でこれは大いに取り上げていかなければならない問題であるというので、予算的にも相当前向きに取り上げることにいたしましたのがここ一、二年来の政府の姿勢でございますが、なお一そう努力を傾倒しなければならない問題である、かように政府部内でもみんな理解をいたしております。
#168
○森元治郎君 だいぶお疲れになったでしょうから、二つの質問をします。
 第一問は、ただいま議題となってる三件、一括して質問いたします。大臣、これはこの間の外務委員会でも、外務省は古い条約をだんだん整理しているのじゃないかということを言いましたが、北西大西洋の条約を見ると、一九四九年のあれで、二十年前ぐらいのものである。全米熱帯まぐろ条約、これも古いもので二十年前。だから、古いものを片づけ始まったのではないかという質問をしたわけです。何でこんなものをいまごろ始めたのか。魚を急にとり始めたのか。もうとっくにとってるはずですが、その理由。
 それから、南東大西洋の条約に関して関係国条約作成会議では、関係十七カ国が参加しているのに署名したのは六カ国しかないという。しかも、ちょうだいしたこの表で見ると、漁獲高の実績が四番目のソビエトと五番目のスペインが入ってないというのはどういうことか。同じく南東大西洋の条約でありますが、東経四十度とインド洋側の水域が条約水域に含まれたのはどういうことかということです。
 それから、北西大西洋の条約のほうにいきますと、はしょりますが、条約第一条二項には、「この条約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸国の漁業管轄権に関する締約政府の主張に不利な影響を与えるものとみなしてはならない。」と書いてあります。この趣旨の規定は南東大西洋条約第二条にもあるのです。これはどういうことを意味するものか。この条約は、北西大西洋の条約の規制の範囲を見ますと、だいぶ大西洋の北の奥のほうになっておって、日本はおそらくラスパルマスあたりの漁船がこれをとりに行ったのだと思う。とる魚種は、この関係国がほしいようなものではなくて、彼らが食わないというイカなどを一生懸命とってきたのがこれに入るという理由はどういうことか。おそらくどこかがさしたのではないか。こそこそ来てイカだイカだと言ってマグロでもやったのではないかと、さされたので、おそれながらと言ってこれに入りましょうということになったのかどうかということ。それから、これはあちこち文句がむずかしくおかしくてわかりませんが、いろいろな部会に入って、委員会に入っていろんなむずかしい会議をやるのでしょうが、どの部会に入る御方針かを伺いたい。
 それから、熱帯まぐろの条約ですが、条約区域が東太平洋全域となっていて一定水域に限定されていないのはどういうことか。また、条約第一条第三項によると、締約国の分担金は「当該締約国が利用した漁獲の数量」に比例してきめられることになっておりますが、この「利用」という字はちょっと意味がわからない。また、分担金というのはどういう趣旨のことか。日本はこの水域では加盟国と同じような魚種をとるのかもしらぬが、分担金の額は漁獲した量によってきまるのでしょう。分担金の意味と「利用」ということばとあわせて御説明を願いたい。これが第一問。その点から聞きましょう。
#169
○政府委員(藤村弘毅君) 水産庁に関係ある分から先にお答えさせていただきます。古い条約、新しい条約両方ございますが、北西大西洋の条約は昭和二十四年で古いのでございますが、昭和三十七年からこの水域にわが国の漁船が出漁するようになっておりまして、政府といたしまして四十三年と四十四年に補助金を出しまして試験操業をいたしております。それによりまして、ここの水域で従来外国船がとっておりました魚種と違う魚種で日本の好みに合うような魚種、たとえていいますと、ニギス、シズ、ヤリイカというようなものがとれるということがわかりまして、徐々に日本の漁船がこちらに出るようになっております。それから、ここは、御承知のように日本から非常に遠隔の地でございますので、従来、昔のような小さな漁船では出られませんでしたが、最近のように大型化してまいりましたので、この漁場に出漁できるようになりましたので、最近この条約に加盟する必要があるというふうになってきたわけでございます。
 それから、全米熱帯まぐろの条約もこれも古い条約でございますが、従来は日本漁船はここでマグロのはえなわ漁業を主として操業いたしておりましたが、これも昭和四十三年から日本のまき網船がここに出漁するようになりまして大規模に漁獲するかまえを見せておりますので、これに積極的に参加するという考え方でございます。
 それから、南東大西洋の条約につきましては、これは最近日本漁船がアフリカの東海岸でやっておりますもののうちの大型のものが南のほうに下がって漁業をいたすようになりまして、外国漁船も入りまざって操業いたしまして、ここに資源保護ということを考えなければならなくなってまいりましたので、日本が積極的にこれに条約をつくることに参加したわけでございます。それからソ連につきましては、まだこういう条約に加盟するかどうか全然見通しが立っておりません。スペインはおそらくそのうちに加盟するんではないかというふうな見方をいたしております。
 それから次の、インド洋をなぜ南東大西洋の条約に含んだかというお尋ねでございますが、インド洋につきましては、確かに地図からいきましてもこの辺が大西洋でないことは明らかでございますが、現在のところ、インド洋につきまして、こういう規制を設けるというような話し合いが全然ございません。国連のFAOの機構でもまだそこまでは進んでおりませんので、従来ここでやっておりました漁業がインド洋の一部についても漁場は続いておりますので、そういうものができるまでは、インド洋の一部を含めて規制をしなければ資源保護という意味がないということで、インド洋の一部を含めてきた次第でございます。
 それから、全米熱帯まぐろの条約の「利用した漁獲の数量が占める割合」といいますのは、漁獲いたしましてそれを利用した国という意味でございまして、たとえば日本がとって日本に持ってきて日本が食べれば、これは日本が利用したと考えますが、日本がとりまして、これを冷凍してアメリカに輸出してアメリカが食べたという場合には、アメリカが利用したというふうにこれは解釈されて、そのように現在運営されております。ただ、かん詰めにいたしましては、かん詰めをつくった国の利用ということになっております。それからこの分担金でございますが、全米まぐろ委員会というのは、委員会が独自に研究機関を持っておりまして、スタッフも三十名近いスタッフをもって研究所を持っておりまして、独自に研究をいたしております。研究所の経費並びに委員会開催の経費を各国で分担するということでございまして、おそらく日本の場合で言いますと、現在はマグロだけで計算いたしておりますのでマグロでこの分担金を計算いたしますと、マグロだけの計算をいたしますと、二万六、七千ドルになるんじゃないかというような試算をいたしております。約九百六十万円ぐらいという計算をいたしております。
 以上が水産庁の関係でございます。
#170
○森元治郎君 それじゃ第二問に入りますが、やっぱり南東大西洋の場合は、ソビエトもこれに入るように引っぱり込まなければいけないと思うんです。生物資源保護に一番うるさいのはソ連ですから、まっ先にこれは入ってもらわなければならぬのに、ぬけぬけとのかしておくのではだめですね。これを要望して次の問題に入ります。
 次の問題はサケ・マスの問題ですが、ずっと前、当時の外務省の政府委員北原欧亜局長にもこの委員会で申し上げたことなんですが、オホーツク海は禁漁区になっておりますね。そして禁漁区になっておるのをいつまで放置しておくのか、これは、魚が足らなくなってしまうからこれを禁漁区にしようということに踏みつけられてオーケーしたと思うんだが、あれからすでに七、八年はたっていると思う。よほど魚はふえたんじゃないか。もちろん、これはカムチャツカ沿岸のほうは魚はオホーツク海全部に散らばっているわけじゃないでしょうが、これは一網入れて探ってみたらどうだろうか。いるじゃないか、魚は足りない足りないと言ってたって。こういうくらいの交渉をおやりになったらどうだと言ったら、政府委員は、なるほどもっともだと言ったけれども、ほんとうは何もしないで、本省に帰ったら忘れちゃったんだろうけれども、これはやっぱりおやりにならぬと、いつの間にか禁漁区の公海はソビエトの湖になってしまうと思うんですよ。われわれが船であそこを通ったら、おまえは何しに来たんだということになりますよ、スパイだと。そういうふうな既成事実をつくることは私はまずいと思うのです。この点はひとつソ連としっかり話し合って、網を入れてみようじゃないかという交渉をされたいと思います。それから、だんだんサケ・マスの漁獲量が交渉で減らされておる。向こうは、おかで待っていて、川に向かってのぼってくるのをつかまえるのですから、そうして何トンぐらいとるか、こっちは見たわけじゃないから、去年あたりは十二万トンくらいとったと言うけれども、わからない、見ないから。向こうの善意を信頼しなければならない。海のほうは監視船によって取り調べがなかなかきびしい。日ソ共同宣言ができたのは昭和三十一年ですから、もう十回ぐらい交渉しているかな。十数回やっているでしょう。十年後二十年後というものをどのくらい想定しているか。もう魚はいなくなったからやめなさいと言われて、ああそうですかと引っ込むかどうか。なぜ二十年、二十五年後ということを言うかというと、核拡散防止条約は二十五年なんですね。長い話。長いけれども、これは条約に調印すれば現実のものになってくる。魚だって、これは二十五年を計算すれば一体どうなるんだ。十数年の間に二、三万トン減ってきた。それに十年、二十年たったら二、三万トンになってしまうじゃないかと思うのですが、どこでふんばるのか、これに対する長期見通し。大体北洋漁船というのは大手です。しかも、海の上ですから、われわれは見られません、何をやっているのか。一生懸命魚をとっているのでしょう。ふえたの、減ったのといってもわれわれは見られないが、協定はどんどん減らされて、禁漁区を広げられる。あそこはだめだろう、ここはだめだろうと言う。これに対して、ことしばかり、来年ばかりで出漁を考えないで、長期的には見通しはどうするかというとと。
 第三点は、ソビエトがかねがね生物資源の保護には共同で研究しよう、調査しようと言ってやっておるわけですが、何も共同の船に乗って資源を調べているわけじゃないのですね。今日の段階では、それぞれが船に乗っていって、それぞれが調査して、そうして資料を突き合わせて、それにとどまっている。これは徹底的に私はやるべきだと思う。いままでの交渉経過を見ると、悪いのは日本ですよ。どうもわれわれもそう感じてしまうくらい向こうは資源の保護で突っ込んでくる。これを切り返すくらいの科学的な資料をもって提示して、持続的な魚類の生産をはかることが日本のため、ソ連のためになるのじゃないか。これをひとつ国の金をかけても、業界から献金をとっても大いにやってもらいたいと思うのです。
 この三点で質問は終わります。
#171
○政府委員(藤村弘毅君) 第一点のオホーツク海の禁漁でございますが、これは御指摘のとおり、これは昭和三十四年に禁漁になりまして、その後十年以上たっております。これにつきましては、西カムチャツカのマスの資源が極端に減って、カムチャツカの西側の河川にマスがほとんど上がらなくなったということがソ連の主張でございまして、事実、私どもも毎年関係者の相互交換で向こうに行ってみれば、減ったことは確かに認めるわけでございまして、それで禁漁にいたしました。その後何もしていないじゃないかとおっしゃいますが、これにつきましては、このマスはオホーツク海の中で回遊しておるものではございませんで、オホーツク海のマスは、サケ・マス全部千島列島を越えまして太平洋に出まして大きな回遊をいたしておるのでございまして、外側も中側も含めまして、日本の調査船が行きましてこの調査をいたしております。網も実際に入れて調査もいたしております。その結果、必ずしも資源がふえたというデータは日本の漁船につきましてもまだ出ておりません。
#172
○森元治郎君 ふえたとは出ないが、減ったとも出ないだろう。
#173
○政府委員(藤村弘毅君) はい。昨年のデータでいきますと、若干マスがふえておりますが、まだそうもとのようにふえたというデータは出ておりません。それで、現在のところ、まだこれを解禁ということにはいたしておりませんが、これを解放いたしましても、ただいま申し上げたように、このオホーツク海の中だけにおりますマスではなくて、千島列島の東側でこのマスもある程度わが国の漁船がとっております。そこで、直ちにその分だけふえるというわけではございません。そういう関係で、現在オホーツク海の解放ということは特に強く主張はいたしておりません。しかし、ここが、そうしているうちに、公海の性質を失うんではないかという御指摘でございますが、現在サケ・マスは日本漁船はとっておりませんが、その他の漁業で、底引き、カニ等につきましてはここで操業いたしておりますので、公海の性質は失う心配はないんではないかというふうに考えております。
 それから、サケ・マスの総漁獲量でございますが、御指摘のとおり、年々減っております。これはソ連側といたしましては、常にわが国と同量とることにしようじゃないかという主張を強くいたしておりますが、わが国といたしましては、従来の実績――この漁場を開発したという実績と従来継続してきました実績の関係並びに日本側の調査船のとりましたデータによりまして、あるいは漁船の漁獲物からとりましたデータによりまして検討いたしておりますところによりますと、現在程度の漁獲ではサケ・マス資源に減少を及ぼすほどの影響はないというふうに考えておりますので、わが国としては、もう少しよけいとれるという主張をいたしておりますが、ソ連側の漁獲は年々減っております。昨年だけはマスが豊漁でございまして、ソ連側も計画量にほぼ近いだけとっておりますが、ソ連側の漁獲が年々減っているという事実で、ソ通側としては、サケ・マス資源が非常に危険な状態であるという主張をいたしておりますし、わが国の研究者といたしましては、沖合いの資源調査からいって必ずしも心配する状態ではないということで、その主張が対立している状態でございます。そういう状態で、漁獲量が若干減ることは資源保護という面から言いましてもマイナスにはならないという点で、双方の妥協ということで、若干減っておりますが、これがこのままの状態でゼロにまでいくということは私どもは考えておりません。科学的な根拠に基づいて資源量を算出して漁獲量をきめていくという考えはあくまでも貫くつもりでおります。
 それから、調査でございますが、共同調査は、御指摘のように、相互に計画を交換してやっておりますが、科学者の交換をいたしまして、わが国のサケ・マスの遡上期、あるいはソ連のカムチャツカあるいは樺太のサケ・マスの遡上期に相互に科学者を派遣いたしまして、遡上の状況あるいはその他のデータ、研究機関の研究の方法、研究の実態等を相互に見ておりまして、それに基づいて両方のおのおのが研究して、その結果を交換し合っている次第でございます。確かに御指摘のように、本年もシロザケとマスについては全く見解が対立したままで交渉を終わったわけでございますので、そういう点はまことに遺憾でございますが、今後はさらに緊密な調査をいたしまして意見の食い違いをなるたけ少なくしていくようにつとめたいというふうに考えております。
#174
○森元治郎君 二十年後、二十五年後という長い見通しはどうなんだということ、それから資源調査も、「一生懸命、せっかくこれから」というのは、これは役人さんがいつも最後に言うことばだけれども、この共同調査、資源調査をやろうとさんざんソ連側も言っている。言っているソ連だって、さっぱり結果が出てこない。これは両方で本気になってやらなくちゃいけませんよ。カニがどこから来るのだという話だって、お互いわかればノーベル賞をやってもいいですよ。沖のほうからはいずりながら岸に来るのか、岸に住みついているのか、これすらもわからない。これはロケット一発ぶつ放す金ぐらいあれば、そんなものはわかるはずだと思う。そういうことをもっと真剣にやらないと、いつも変な腹の探り合いみたいな非科学的、非合理的な詰め合いになると思うんですね。ソ連と。もっと日本もソ連も真剣になるように、そうして科学的データでもって、九万トンは間違い、来年から十二万トンとろう、二十万トンとれるではないか、こういう戦いができぬかな。二十年、二十五先はどういうふうに見ているのですか。
#175
○政府委員(藤村弘毅君) 毎年減っておりますが、先ほど申し上げましたような状況でございます。十年近く前になりますが、ソ連の川のサケ、マスが減ったという主張で、私どももそれを見ておりますが、カムチャツカの川に人工ふ化放流をするように日本も協力するからという申し入れをしたこともございますが、そのときソ連は取り合っておりません。それが昨年来、ソ連も人工ふ化に日本と共同してやろうじゃないかということを言いたしまして、今度の会議でも、それを具体的にやるためにことしの秋に専門家の会議をやろうということを言っておりますので、私どもとしましても、サケ・マスが人工ふ化によって相当ふえるということは日本の北海道並びに本州の河川で確認いたしておりますので、このソ連が申し出してきました両国の共同によるカムチャツカの川の増殖計画というものを真剣に取り上げて、両国でサケ・マスをふやして、将来さらによけいの漁獲ができるようにつとめたいというふうに考えています。
#176
○羽生三七君 一問だけ。いまの生物資源保存の条約の第十八条にありますがね、「四の批准書」云々と。ところが、核防条約のように四十カ国、米英ソを入れれば四十三カ国ですか、そういうのもあるし、あるいはひどいのになると、聞くところによれば、二カ国でも条約が成立するといいますが、この種の国際条約で一体基準といいますか、二カ国でも四カ国でも十カ国でも四十カ国でもかまわないと、どうもそれ私はふに落ちないので、やはり条約の性質によるのでしょうが、一定の基準がなければ国際条約というものに値しないのではないか。二国間条約というのはわかりますが、どこに一体その基準があるのか、この点だけ一つ。
#177
○説明員(山崎敏夫君) この南東大西洋の生物資源の保存に関する条約は……
#178
○羽生三七君 これに限らないのですよ、一般論。
#179
○説明員(山崎敏夫君) この場合には四つの批准書が寄託されれば発効することになっておりますが、これは正確に申し上げまして、お配りいたしました資料でも明らかなように、この水域に現在魚をとっておるおもな国が、ごらん願いましてもわかりますが、南アフリカ、ナミビア、アンゴラ、ソ連、スペイン、日本ぐらいでございまして、その大体四つぐらいが入ればかなりおもな国がカバーされる、かなりそこで有効な規制ができるということで四つに大体きまったのではないかと思います。結局、条約の性格によってきめられていく問題でございまして、ことに、こういう技術的な条約に関しましては、その利害関係国の多少によってきまっていくわけでございます。まあ、核防条約とか、そういう政治的な条約については、もちろんできるだけ多くの国が入ってもらうような形になるわけでございます。これは全く条約の性質によってきまるべきものだと存じます。
#180
○森元治郎君 では大臣、サケ・マスについてお聞きのとおり、どうかひとつまじめに本気になって善処されることを望んで質問を終わります。
#181
○国務大臣(愛知揆一君) 承知いたしました。
#182
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ三案件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#183
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#184
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、三案につきまして順次採決を行ないます。
 まず、
 北西大西洋の業漁に関する国際条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#185
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、
 全米熱帯まぐろ類委員会の設置に関するアメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約への加入について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#186
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、
 南東大西洋の生物資源の保存に関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#187
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#188
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十四分散会
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ソース: 国立国会図書館
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