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1970/05/12 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第12号
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1970/05/12 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 外務委員会 第12号

#1
第063回国会 外務委員会 第12号
昭和四十五年五月十二日(火曜日)
   午前十時三十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     初村瀧一郎君     鹿島守之助君
     岩間 正男君     野坂 参三君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         長谷川 仁君
    理 事
                石原慎太郎君
                木内 四郎君
                増原 恵吉君
                森 元治郎君
    委 員
                鹿島守之助君
                杉原 荒太君
                高橋  衛君
                廣瀬 久忠君
                三木與吉郎君
                山本 利壽君
                小野  明君
                加藤シヅエ君
                西村 関一君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
                白木義一郎君
                松下 正寿君
   国務大臣
       外 務 大 臣  愛知 揆一君
   政府委員
       外務政務次官   竹内 黎一君
       外務省アメリカ
       局長       東郷 文彦君
       外務省条約局長  井川 克一君
       外務省国際連合
       局長       西堀 正弘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       警察庁刑事局調
       査統計官     関沢 正夫君
       警察庁警備局警
       備調査官     山田 英雄君
       防衛庁装備局技
       術調整官     国本  隆君
       外務省条約局参
       事官       山崎 敏夫君
       運輸省航空局国
       際課長      松本  操君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為
 に関する条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス
 及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に
 関する議定書の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○日米安保条約廃棄等に関する請願(第二五六
 号)(第一六三三号)
○世界連邦の建設に関する決議に関する請願(第
 一〇二一号)(第一〇二二号)(第一〇四〇
 号)(第一一四六号)
○米国の繊維貿易制限に関する請願(第一三一八
 号)
○世界連邦建設に関する請願(第一三七一号)
 (第一三七九号)(第一三八〇号)(第一三九
 六号)(第一三九七号)(第一三九九号)(第
 一四一七号)(第一四三〇号)(第一四四七
 号)(第一四六九号)(第一四八六号)(第一
 五九五号)(第一五九六号)(第一六二一号)
 (第一六五六号)(第一七九四号)(第一八一
 九号)(第二二八〇号)(第三六三六号)
○中国渡航に加えられている差別の撤廃に関する
 請願(第一四九六号)(第一四九八号)(第一
 五六三号)(第一五九七号)(第二二五三号)
 (第二三五〇号)(第二四七四号)(第二五九
 一号)(第二八六四号)(第三〇六七号)
○繊維製品の対米輸出自主規制反対に関する請願
 (第一六七九号)
○米国の繊維品輸入規制反対に関する請願(第二
 〇一〇号)(第二〇一一号)(第二〇一二号)
 (第二〇一三号)(第二〇一四号)(第二〇一
 五号)(第二〇一六号)(第二一六三号)
○在日朝鮮人帰還促進に関する請願(第三二三三
 号)
○日米安保条約廃棄に関する請願(第三七二九
 号)(第三七三〇号)(第三七三一号)(第三
 七三二号)(第三七三三号)(第三七三四号)
 (第三七三五号)(第三七三六号)(第三七三
 七号)(第三七三八号)(第三七三九号)(第
 三七四〇号)(第三七四一号)(第三七四二
 号)(第三七四三号)(第三七四四号)(第三
 七四五号)(第三七四六号)(第三七四七号)
 (第三七四八号)(第三七四九号)(第三七五
 〇号)(第三七五一号)(第三七五二号)(第
 三七五三号)(第三七五四号)(第三七五五
 号)(第三七五六号)(第三七五七号)(第三
 七五八号)(第三七五九号)(第三七六〇号)
 (第三七六一号)(第三七六二号)(第三七六
 三号)(第三七六四号)(第三七六五号)(第
 三七六六号)(第三七九七号)(第三七九八
 号)(第三七九九号)(第三八〇〇号)(第三
 八二〇号)(第三八二一号)(第三八二二号)
 (第三八二三号)(第三八二四号)(第三八二
 五号)(第三八二六号)(第三八二七号)(第
 三八二八号)(第三八二九号)(第三八三〇
 号)(第三八三一号)(第三八三二号)(第三
 八三三号)(第三八三四号)(第三八三五号)
 (第三八三六号)(第三八三七号)(第三八三
 八号)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣承認要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨十一日初村瀧一郎君及び岩間正男君が委員を辞任され、その補欠として鹿島守之助君及び野坂参三君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(長谷川仁君) それでは、
 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件につきましては去る九日提案理由の説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#4
○森元治郎君 いま少し触れてみますと、この条約の柱は、機長の権限と裁判権だと思います。十一条の、機長は「あらゆる適当な措置をとる。」という、これはだれも聞きたいところだと思うのですが、少しこまかく御説明を願います。
#5
○政府委員(西堀正弘君) この条約は、先生御承知のとおり、ハイジャッキングを直接目的としたものではございませんけれども、ハイジャッキングに関係するのがこの十一条、この条項が唯一でございます。そこでここには「あらゆる適当な措置をとる。」とございますが、これは要するに、国内法の許す範囲内でできる限りの措置をとるということを意味するわけでございます。しかしながら、その航空機が飛行中の場合には、何といたしましても旅客の生命の安全を考える関係上、きわめて強硬な措置をとりがたいというのが実情であります。そこでここの第十一条の冒頭に「飛行中の」と、こうございますけれども、この措置は、これは要するに、犯罪の発生時点を規定しているものでございますので、いわゆる乗っ取られたところの航空機が締約国内に着陸したような場合にも、この十一条に規定しているところのあらゆる措置、適当な措置というものはとり得るものである。で、その際の措置といたしましては、機長に管理を回復させるために、国内法に従いまして航空機、乗客の安全を害しない範囲で物理的力を行使することなどが考えられると存じます。
#6
○森元治郎君 いまの御説明の、国内法の許す限り適当な措置をとる。その国内法はあまり効果的なものはまだできていないんだと思うんだが、「適当な」ということばに相当する国内法はどんなものですか。
#7
○政府委員(西堀正弘君) われわれが申しておりますいわゆるハイジャッキング条約、これは来たる十二月からその採択のための外交会議が開かれることになっておりますけれども、今度の「よど」号事件を契機といたしまして、国内法に関しまする限りは、今国会に御審議をいただいておりますところの航空機等強取防止法案でございますか、これが成立いたしますれば、ここに申すところの国内法の許す範囲というのは、非常に、この東京条約で考えられているものよりははるかに広い範囲の国内法の権限というものが与えられることになると思います。
#8
○森元治郎君 で、全般的に見てハイジャッキングの防止という観点からは十分だとはとても言えないですね。せめていい点と言えば、ここが泣きどころというところ、せめてお客さんにここはおいしいから食べてみろということですか、十一条二項ぐらいかな。
#9
○政府委員(西堀正弘君) 先生先ほど申されましたように、この十一条、もちろん、それの直接の関係でございますけれども、そのほかに機長の権限をこの条約においては明確にいたしておりますので、その機長の権限につきまして、航空法の一部を改正いたしまして、この条約にのっとりまして改正いたしたわけでございます。したがいまして、具体的に申しますならば、「よど」号の事件のときにおきましても、この条約のすでに当事国になっていたと仮定いたしますれば、当然、そのときまでに、いま御審議願っておりますところの国内法である航空法の一部改正というものもできていたわけでございますので、機長といたしましては、あの「よど」号事件のときにさらに有効な抑制措置、その犯人に対して抑制措置をとり得たのではないかということも考えられます。
#10
○森元治郎君 機長が、悪いことをするやつを拘束というかな、拘束というのはどういうことをやるんですか。
#11
○政府委員(西堀正弘君) 要するに、具体的な例で申しますならば、他の乗客に対してあるいは危害を加える、あるいは他の乗客の財産を損傷するというようなことを行なうような者がありました場合には、まず最初に警告を発するでございましょうし、それから、それでもなお聞かないというような場合には、これは身体の拘束、すなわちその者を取り押えるといったこと、これがいわば身体の拘束でございます。
#12
○森元治郎君 これは飛行機の上で、乗員が、柔道何段かでもってその腕を廊下の中で示したんでは飛行機があぶないので、乗員とは単数、複数いろいろあるだろうが、拘束というのはやっぱり力というものが含まれているだろうね。この拘束というものはどういうものでしょう。含まれているでしょうね。力でつかまえ、格闘もし、なぐり倒しもし、ピストルまで使えとは書いてないが、ピストルなど武器を持たないで肉体で取り押えるということですね。これを見ると、つかまるほうはおとなしいという仮定の条約なんだね。体を拘束してやる。そう簡単じゃないですよ。だから、これはこの条約のたるんでいるところだと思うんです。ぴりっとしないところだと思う。
#13
○政府委員(西堀正弘君) 確かに先生のおっしゃるとおりに、犯人が非常に凶悪な場合には有効適切な防止措置というものは確かにとれないかと存じますけれども、この六条の二項でございますが、これをごらんいただきたいのでございますが、機長はみずから拘束する権限を有するのみならず、他の乗組員に対してもそれを命ずることができます。また、旅客に対しても援助を要請することができる。また、旅客のほうにおきましても、必ずしも機長の命令を待たずに自己の判断において、相当な事由があると認められる場合でございますけれども、とにかくできる限りの措置をとって、そういう犯人を取り押えるということが一応許されておるわけでございます。
#14
○森元治郎君 機長は、乗員に対しては命令、お客さんのほうにはひとつやってください、あるいはお客さんの自発性を期待しているわけだ。このお客さんというのは、いまの日本人なんか、人のことはさわらないほうがみんな得だから、私はいやだと、こっちを向いていますよ。条文だけで、とてもこないですね。これは何ともならないですね。だから、もっとびしっとした国内法を研究して、またさらに国内法の発展的な改正をやるだろうと期待していいだろうと思いますが、どうですか。
#15
○政府委員(西堀正弘君) これはむしろ運輸省所管でございますけれども、運輸省におきましても、実際に身体の拘束をする場合にどういった有効な方法があるかということにつきまして目下研究中と承っております。場合によりましては、手錠を機長に与えるというようなことまで、実は可能性について、考えておられるようでございます。
#16
○森元治郎君 松本国際課長、その点ひとつやってください。
#17
○説明員(松本操君) お答えいたします。
 おっしゃるように、相手が非常に凶悪であり、あるいは武器を携行しているというふうな場合に、機内で格闘行為その他を行ないます場合には、航空機の安全そのものに問題が出てまいります。必ずしも機長が、先生、先ほどおっしゃいましたように、柔道、から手の達人ではございませんので、どうしても拘束に限度があるかと思います。この点につきましては、これがかりに完全に武装した警察官でありましても、相手によってはやはり困る。特に無事の旅客が附近にたくさんおりますので、そういう者の安全ということも当然第一に考慮しなければならないでありましょう。どの程度までにこれが実施できるかということに対しましては、先生御指摘のような問題があろうかと思います。その点につきましては、私どもも目下鋭意研究をいたしておりますが、しかし、東京条約そのもの、あるいはこれに関連する航空法の改正につきましては、ハイジャックということを大きな眼目といたしておりますが、それに伴うハイジャックに至らない程度の――軽微と言うと、おかしゅうございますが、それほど凶悪でないものについては、相当の抑制効果を持つのじゃないかというふうに考えております。
#18
○森元治郎君 おそらく、いまはやりの横取り、強盗――強取というのですか、ああいうものに対する手段というのは、運輸省でも法務省でも対策を考えて、いずれそのうち国会に承認を求めるようなことになると思うのだが、そういう予定はありますか。
#19
○説明員(松本操君) 現在私どもの考えております段階におきましては、この東京条約への加盟及びこれに関連いたします関連法令の整備、もちろん、その中には航空法の改正も含んでいるのであります。この段階においてまず十分な予防措置をとる。だから、かりに機内にそういう者が乗っておりました場合に、機長がその権限を行使し、乗員を指揮し、場合によっては旅客の助勢を求めることによって相当程度の抑止力を期待できるということから、とりあえず、現段階におきましては、引き続き早急に次段の法改正措置をとるというところまではまだ考えが至っておりません。
#20
○森元治郎君 ことしの十二月にできるというのは何でしたかね。十二月に会議があって何か条約かなんかできるのですね。
#21
○政府委員(西堀正弘君) 要するに、東京条約では足りませんハイジャッキング、これの防止そのものを目的としたところの条約の採択会議が十二月に行なわれるわけでございます。いま一応できております草案の名前は、これは仮称でありますが、民間航空機不法奪取防止条約ということになっております。
#22
○森元治郎君 資料をください。
 それから、第一条の(b)の「犯罪であるかどうかを問わない。」、この辺の説明をしてください。それと第二条と合わせてやってもらったほうが時間の関係からいいと思う。要するに第一条(b)の説明だ。
#23
○政府委員(西堀正弘君) 第一条の(b)は「航空機若しくはその機内の人若しくは財産の安全を害し若しくは害するおそれがある行為又は航空機内の秩序及び規律を乱す行為」とございまして、これは例をあげて申しますと、たとえば航空機を損傷せしめる行為、それから、乗客の身体に危害を加える行為、それから、他の旅客の財物を窃取する行為及びその離着陸の際の禁煙規則に反して契煙する行為などがあげられると思います。それは前段の「おそれがある行為」まででございまして、そのあとのほうの「航空機内の秩序及び規律を乱す行為」、これはたとえて申しますならば、機内で泥酔をして他人に迷惑をかけたり、それから、他人の睡眠を妨害したり、それから、禁煙規則に反して喫煙することなどの行為が考えられます。それから第二条でございますが、第二条の趣旨は、一国の政治的性質の刑罰法規あるいは人種または宗教による差別に基づく刑罰法規に反する犯罪、これは犯罪といいましても非常に特殊なものでありますので、そういったきわめて特殊なものに国際的に承認を与える理由がないという立場から、この安全危害行為となる場合は別でございますけれども、条約はこれを認めないというのがこの第二条の趣旨でございます。
#24
○森元治郎君 わかりました。この第一条の(b)の「犯罪であるかどうかを問わない。」というのは、これは法律からはわからないが、「機内の人若しくは財産の安全を害し若しくは害するおそれがある行為(犯罪であるかどうかを問わない。)」、犯罪というのは結果的に見て犯罪と判断するのだろうが、やっているときには犯罪になるのかならぬのか。それまでの状態もあるわけだな、だれが判断するのか。
#25
○政府委員(西堀正弘君) 先ほど申し上げました前段の例でございますけれども、航空機を損傷せしめる行為、それから、乗客の身体に危害を加える行為、それから、他の旅客の財物を窃取する行為、こういったものは刑法上の犯罪に該当するわけでございます。そのあとで私が申し上げました離着陸の際の禁煙規則に反して喫煙する行為、こういったものは刑法上の犯罪には必ずしもならないのじゃないか。そこで「犯罪であるかどうかを問わない。」と、「問わぬ」と、こういうふうに規定されているわけでございます。
#26
○森元治郎君 この第三条裁判権ですね、ここで言う裁判権、この第三条第一項、登録国がこの裁判権を持つことをほかの国が認めるという趣旨の規定なのか、同じところ、第二項にある登録国に裁判権設定の義務を負わせる意味の、負わせる趣旨の規定とどっちに一体重点があるのだろうか。これはもちろんあとのほうの、登録国に、お前は裁判権を設定する義務を負うのだという点にこの項は重点があってつくられたのかな。
#27
○政府委員(西堀正弘君) 要するにこの条約は、たとえば日本のような場合につきましては、必ずしもこの条項に関する限りは必要ないわけなんでございます。日本におきましては、刑法第一条の第二項におきまして、日本国籍のと申しますか、日本の航空機上において行なわれた行為、これは日本が裁判管轄権を持つと、こういうふうに規定されておりますので、問題はないわけでございますけれども、国によりましては、国外にあるところの自国の航空機の中で行なわれた犯罪について必ずしも裁判権を設定していない国もございますので、そういたしますと、そういった国々との間で何か起こりましたときには、そういった犯人が全然どちらの国の裁判管轄権にも服しないという非常に不合理なことが起きますので、そういうことをまず防止しようというのがこの条約の目的でございます。したがいまして、それが第一条でもって、「裁判権を行使する権限を有する。」ということで規定し、なお第二項におきまして、そういったことを完全に裁判管轄権を、国外にあるところの自国の航空機に対して、有していない国にあってはこれを設定しよう。これが第三条第二項の目的でございますので、両方合わせまして、その条約の目的が、この条に関する限りは、達成されるということでございます。
#28
○森元治郎君 要するに、登録国に裁判権設定の義務を負わせる気持ちが強いということが重点と解していいわけですね。
#29
○政府委員(西堀正弘君) どちらが重点かとおっしゃいますと、私もわかりませんですけれども、要するに、設定されなければこの条約の目的は達成されないわけでございますから、そういった意味で、重点がそちらにあるということは間違いではないと思います。
#30
○森元治郎君 これはすべての国に開放するという条約のほうがいいんじゃないかと思うのだ。これはそうなっていないようですが、その前に、KLM、スカンジナビアとか、ああいう有名な国際航空路を持っている国々は全部入っておりますか、どれか落ちている国がありますか。国際航空路を持っているアラブ連合が入っていないのじゃないかな。
#31
○政府委員(西堀正弘君) 現在この条約の当事国は二十二カ国でございますが、そのうち主要民間航空国は米国、英国、カナダ、ドイツ、イタリア、オランダ、ブラジル、スウェーデン、デンマーク、これらはいずれも入っておりますので、いまのSASで申しますと、入っております。
#32
○森元治郎君 スイス航空、それから、いまけんかをやっているイスラエル航空会社もそうだろうし、アラブ連合の航空会社もある。非常にこういう事件と密接な関係が起こりそうな、また起こっている国々を引っぱり込まなければ、こういうもののわかった人ばかり集まってもだめなんだから、それを引っぱり込む工作はしなくともいいのかな。
#33
○政府委員(西堀正弘君) ただいま先生おあげになりました諸国のうち、イスラエルは当事国となっております。それから、サウジアラビア、これも当事国になっております。あと、まあ共産圏諸国、それから、ICAOの非加盟国は一国も当事国になっておりません。それから、キューバは署名もいたしておりません。それから、韓国は署名のみで、いまだに批准はいたしておりません。
#34
○森元治郎君 それで核防条約、宇宙平和利用条約等はオール・ステーツに開放している。そういうようにしなければ、こういう東西対立で、東から西、西から東にいろいろ事件が多いわけでありますから、自由主義国の中だけでこれをやったら、あまりこれに引っかかりそうな事件の起こり方は少ないですね。これは開放方式というか、そういうようなことにしたほうがよかったと思うのですが、なっていない理由はどういうところにあるのですか。
#35
○政府委員(西堀正弘君) この条約は一九六三年に東京で開かれたわけでございますけれども、ICAO、すなわち国際民間航空機関、これが主催をいたしまして開かれた条約でございまして、したがいまして、こういった国連の特別専門機関が主催して開かれる会議において採択されますところの条約は、また大体の慣行といたしまして、国連の加盟国及び専門機関の加盟国に開放されるといったことが慣行でございますので、東京条約も、遺憾ながらその慣行に従ったということでございますけれども、先生おっしゃいましたとおり、この種の条約というものはなるべくたくさんの国が入るということが望ましいわけでございますから、たとえば十二月に採択されますハイジャッキング条約の場合におきましても、この予想と申しますか、その点は非常に強調し、各国の同調も得られません場合には、おそらくこの東京条約と同じように、国連の加盟国または専門機関の加盟国といったようなことになるのじゃないかということを非常におそれるわけでございますけれども、われわれといたしましては、その点、望ましい姿に、なるべく先生のおっしゃったオールステーツ・フォーミュラというようなものをハイジャッキングのような場合には何とか主張いたしまして、これをこのような方向に持っていきたいと考えているわけでございます。この点につきましては、それぞれ関係国の思惑がありましょうから、はっきりとそういうようになるということはもちろん申し上げられませんけれども、そういった方向で努力したいと、われわれとしては考えております。
#36
○羽生三七君 関連して。
 この前、いま森委員の質問と同じ趣旨のことをこの委員会でお尋ねしたことがあるんですが、それは犯罪者が同じ体制の国へ操縦士を脅迫して飛行機を飛ばすことはまずないんじゃないかと思う。それは、同じ体制の国なら政府間の連絡で、向こうに着いたって逮捕されることは明らかなんですから、その場合にはどうしても全く体制の異なる国を目的にするのは当然だろうと思います。したがって、いまの審議しておる条約そのものは一九六三年の時点の問題を中心にしての条約作成だろうと思いますが、新しくできるのがそういう問題をどの程度実は考慮しておるのか。そうでなかったら、私、まずたいして意味はないんじゃないかという感じがするので、これはもう犯罪者の心理を考えれば、どうせ行った先でとらまるのにそんなところに飛ぶわけはないんですから、およそそういう条約の効力の及ばないところを目ざすのは当然であろうと思います。そういう場合には一体どうしてそれを規制するのか。この問題の一つの焦点になるのではないかという気がするのですが、十二月できるかできぬかわかりませんが、今度新しくできる条約にはそういうことが考慮されておるのか、それらの辺はどういうことになるのか、お聞かせいただきたい。
#37
○国務大臣(愛知揆一君) この点については、前回の委員会で私からもちょっと触れた点でございますけれども、この種の条約については、私はお説ごもっともだと思うのです。それで、ただいま政府委員から申しましたように、これは参加国の同意がなければいけませんけれども、日本政府としては、私は、十二月に新しい条約案が審議されるわけですから、ひとつ前向きにいわゆるオールステーツ・フォーミュラにするのがよろしいという、そういう努力を大いにしていきたいと考えておるわけでございます。
#38
○羽生三七君 運輸省のほうではないですか、どういう研究をしておるかということで。いまの十二月のできるという新条約の中にそういうことはどういう形で考慮されておるか、まだ予測はつかないわけでしょうか。
#39
○説明員(松本操君) 運輸省といたしましては、これは条約の締結という形になりますので、内容的な点につきましては外務省と十分連絡をとって遺憾なきを期しておりますが、いま外務大臣が答弁されましたような条約の適用方式をどうするかというふうな点について意見はいろいろと申し上げたわけですけれども、具体的にどのようにするかということは、外務省におまかせした形になっております。
#40
○政府委員(西堀正弘君) ただいま運輸省のほうからお答え申し上げましたとおりでございますが、このハイジャッキングの条約の草案は、いわば実質条項のところだけまとまっておりまして、われわれが申します最終条項、すなわち、いかにして批准するかとか、いかにして加入するかといった最終条項はまだブランクになっております。それから、これはおことばを返すわけでございませんけれども、このハイジャッキングという非常に憎むべき犯罪を防止するというのが今度のハイジャッキング防止条約でございますけれども、その中には、もちろん政治活動家とかそれから亡命者というような政治的なものもございますけれども、中にはまた一般普通の犯罪の追及からのがれたいといったものもありますし、それからまた、精神錯乱者といいますか、それからまた、動機不明のものといったものもありますので、そういったものにつきましては、いまの政治的な関連はございません。これらのものにつきましては、いまの社会体制の違う国といったような考慮はなかろうかと存じます。
#41
○森元治郎君 これが、共産圏の代表であるソビエトが、核防条約の中でなかなか気のきいたことをやった。東ドイツは署名するにあたっては西のほうに行かなくてモスクワでやっていいようになっているし、それから、西ドイツはモスクワに行かなくて、ロンドン、ワシントンでやれるというなかなか気を配ったやり方をやっているのですね。しかし、こういうところはことしの秋のヘーグの防止条約採択にあたってはこれはやり得ることではないかと思うのですね。そういう方向でひとつ取り組んでもらいたいと思うのです。
 それから、話は少し飛んじまうけれども、北朝鮮に入った学生の行方ですね。逃げ込んだというか、まあ送って行ってあげたのかといういろいろ取り方があるけれども、こういうものは政府はじだんだ踏んだんだろうと思うが、どう今後するつもりか。もう行ってしまったもので、国交のない国だからいかんともしかたがないということなのか。向こうの新聞、これ新聞記事ですが、いま取り調べ中で、必要な調査を行なって適当な措置をとると、彼らを犯人ときめつけて、犯人は不法入国であると、不法入国で北鮮に送り込んだ日本の責任は大きいというようなことを言っていると伝えている。ああいう北朝鮮とか北ベトナムとか東ドイツの国は、日本の利益代表を第三国にお願いしているということはないでしょうね。ないのだと思うから聞きようがないが、せめて赤十字関係でもあるのだと思う。善人ならばその後どうなっているかと心配するが、この太いやろう、どろぼうみたいなやつはどうなってもかまわないということなのか。日本国の憲法によれば、この間旅券法でもあったように、どの国民についても海外において保護していくのだということを再三おっしゃった。どういうことになるのでしょうね。
#42
○国務大臣(愛知揆一君) この北鮮に潜入したと申しますか、事実上入り込んだいわゆる赤軍派の取り扱いについては、まあ一連の刑事事件として当局が捜査中のようでございます。したがって、一つには日本の国内的なその当局の意見等も十分尊重しなければなりませんし、それから同時に、やはり北鮮側が本件についてどういうふうな態度をとりつつあるかということについても、もう少し情勢を見据えて措置を慎重に検討したいと思っておるわけでございます。法律上から言えば、当然、こういう重大犯人の引き渡しを要求することはたてまえ上妥当なことと思いますけれども、やはりそれをやるかやらぬかについては慎重な検討をいましばらくさせていただきたい、かように考えております。
#43
○森元治郎君 で、私は当時日航のモスクワ線開通のお祝い飛行でモスクワに行って、外務省大使館も、松尾社長も、ソビエト側に対しすぐその折衝を始めまして、よろしく北朝鮮頼むということを目の前で見たわけです。だから、またこの筋で悪らつな連中を何とかひとつ引っぱりたいが、ちょっと聞いてくれないか、どうなっているのかということは、言っても悪くないと思うんだ。もう一ぺん頼んでいるんだから、ソ連なんかくやしくて頼めないと言わないで、恥も外聞もなくいままでは頼むと言ったんだから、どんどん頼んで、その後どうなっているか聞いてもおかしくないと思うんだが、そういう措置はとっておられますか。
#44
○国務大臣(愛知揆一君) それは恥とか外聞とかの問題とは別に、ソ連を仲介にするということも確かに一つの方法だと思いますけれども、現在は具体的な問題としては日本の捜査当局がどういう考え方に結論づけるか、それとも関連いたしまして、それから一方北鮮側の動向ということも見据えまして、犯人引き渡しの要求ということをどうするかということになろうかと思いますけれども、先ほど申しましたように、どういう方向でやるか、あるいはやらないでもうしばらく事態を静観するか、これらの点についてはまだ政府としては結論を出しておりません。
#45
○森元治郎君 私は、このまま黙っているのでは済まないんで、何らかの声をあげなくちゃまずいと思うんですね。これは責任じゃないかと思う。日本の権威もなくなってしまうし、向こうがどう出るかは二の次として、法律問題なんかは別にして、政治的に発言をすべきだと思うんですね。しかも、向こうでは招いた客ではない、歓迎もしてないということを言っているようですから、それならば、招いたんでもなければ、歓迎をしたんでもなければ、そうとどめおくという気持ちもないとすれば、十のうち一分、二分、三分くらいは帰せる条件もなきにしもあらず。私は声をあげるべきだと思うんです。もう一ぺん伺います。
#46
○国務大臣(愛知揆一君) そういう御意見も十分参考にいたしまして善処いたしたいと考えます。
#47
○石原慎太郎君 ちょっといまの関連ですけれども、外務大臣、御存じかどうか知りませんけれども、日本に昔金田というミドル級の拳闘の選手がおりました。これはどういう意思でか知りませんが、自分で望んでか、あるいは家族の者に引き連れられてか知りません。北鮮に帰りました。しばらくして、たしかラオスであったと思いますけれども、共産圏のアジアの競技大会があって、プロの選手なのに、どういうわけかアマチュアの資格でこれに参加しましたときに、現地の日本の公館に亡命を申し出てきましたが、結局、大使館はこれを非常ににべない形で向こうの官憲に渡して、その後この選手は行くえ不明になっている。御存じのように北鮮の憲法の十二条三項では、親日分子は公民権停止。日本の場合には、公民権停止されてもせいぜい選挙に出れない、投票できないということで済みますが、たまたま自分の劇場で崔承喜を呼ぼうとしましたときに、その親族者が、結局のところ、そういう申し出に非常に好意を示しているというだけで、すべて行くえ不明になったという非常にきびしい国でありますから、少し範疇としてはずれるかもしれませんが、やはりいまの森さんの御質問にありましたように、こういう問題に対する姿勢というものが、どうも北鮮側が日本に対すると日本が北鮮に対すると、非常に態度といいますか、その質といいますか、量といいますか、そういうものの強さなり弱さなりというものが非常に違うような気がするのですね。こういうものをぜひお考えいただきたいと思って、一言申し上げさしていただきました。
#48
○国務大臣(愛知揆一君) 承知いたしました。
#49
○森元治郎君 この政治亡命者、いま審議中のこの条約との関係ですが、機長がそういう者を拘束して、そうしておりて向こうへ渡しちゃって、これが日本の重大な政治亡命者であった場合、みすみす向こうへ放してしまうことになるわけです。機長さん、そんなことわからぬわけです、政治亡命であるかどうかはね。そういう場合どうするんだろうね。
#50
○政府委員(西堀正弘君) この条約に関しまする限りは、要するに、単に降機せしめるという場合もありますけれども、あるいはその機長の判断で、これはこの登録国、すなわち日本の刑法上重要な犯罪だと考えられるものにつきましては、これをその着陸国の官憲に引き渡すことができるということになっておりまして、着陸国の当局はこれを引き渡しを受ける義務があるわけでございます。したがいまして、そのいまのお答えになるかどうかは存じませんけれども、政治亡命者のような場合に、それが刑法上重罪と考えるかどうか、すなわち単に降機せしめたのみではその者の後刻追及ができるかどうかという点、若干疑問はありますけれども、もしも機長においてそういう判断をいたしましたならば、これは着陸国の当局に引き渡しをさせるわけでございまして、その場合は、先生のおっしゃいましたように、単に降機せしめてどこかへ行ってしまうということには、その場合にはならないわけでございます。
#51
○森元治郎君 機長は何たって操縦することが専門ですから、刑法上のこと言ってもわからぬし、これは重大犯人かどうか、無線でもってあるいは予告されていればわかる。わからなければ、ただおろしてしまって官憲に渡しっぱなしで、犯罪人の引き渡しの条約みたいなのがあるのは、日本の場合はアメリカとくらいでしょう。そうなると、かえって、むしろ機内にとどめてあって、貨物の部屋にでもぶっ込んでおいて、また連れて帰っちゃったほうがいい場合もあるので、おろすばかりが能じゃないと思うんだな。
#52
○政府委員(西堀正弘君) 私の先ほどの御説明はどうも若干誤っていたようでございますので、訂正さしていただきます。
 この条約の目的といたしておりますのは、第一条に規定しておりますとおり、飛行機の機内において行なわれた犯罪もしくはその他の行為ということでございまして、したがいまして、その政治亡命者というものをそこで読めるかどうか、おそらくはまあ読めないと考えるべきじゃなかろうかと存じますので、私がさきに御説明申し上げた点は訂正さしていただきます。
#53
○羽生三七君 もう一つ関連して、いまの点に。
 これは警察庁のほうかと思いますが、先般の「よど」号事件のような場合、外務省とか防衛庁とか警察庁がどうしたという質問はきょうは私はいたしません。ただ警察のほうの立場から見て、あの事件のようなケースの場合、もし法律に、条約に何か関連させるとすればどういう点が問題になるのか、そういうことをお考えになっていることあるのかどうか、あったら承りたい。あのときとった処置のことをかれこれ言うわけじゃないのです。それは別の問題です。いや、わからにゃいいですよ。
#54
○説明員(関沢正夫君) いまの先生の御質問でございますが、はなはだ恐縮でございますが、いまこの条約ができておりましたらということでございましょうか。
#55
○羽生三七君 いや、できておるおらぬにかかわらず、この条約を審議している際に、もしあの際に事件を見て、こういうことが取り入れられるならば非常によかった、いいだろうと思うような何か参考になることはあるかどうかと、こういうことです。
#56
○説明員(関沢正夫君) それで一つ、この条約とは直接関係ございませんが、御承知のとおり、法務省から提出してございますハイジャッキング問題がございます。それがあの場合、やはり強盗罪になるかどうか、つまり何罪で処罰するかということで、非常に内部的にも検討いたしました点が一つであります。これが今度幸いにして法務省から提案されて御審議いただいておるわけでございます。これが一つ解決できることと、それからあとは、やはり引き取りの場合にどうするか、万一の場合、韓国で渡すという場合に、引き取りの場合に手続がどうなるのか、こういうことでございまして……
#57
○羽生三七君 いや、よろしいです。
#58
○森元治郎君 ことしの年末に採択されるといわれるハイジャック防止条約草案、これによれば、ハイジャックにはしょっぱなから犯罪と断定しちゃう、そしてこれは厳重に処罰するという方針で臨む。そこで、乗っ取り犯人を登録国へ引き渡すことは、これで、このさきの防止条約ではできるのか、できないのか、乗っ取り犯人は。その点どうですか。
#59
○政府委員(西堀正弘君) 十二月に採択を予定されておりますハイジャッキング防止条約につきましては、とにかくハイジャッキングという憎むべき犯罪をとにかく厳罰をもって罰するということを各当事国に要求するわけでございます。したがいまして、そのハイジャッカーが着陸国に着いた場合には、これをその着陸国が罰する、あるいは引き渡しをする、どちらかでございます。それはそのときのケース・バイ・ケースでございます。いずれにいたしましても、引き渡した場合においては、相手の当時国において、これまた厳罰に処せられるわけでございますから、要するに、ハイジャッキングの防止という点からは一応完ぺきな形になるわけでございます。
#60
○羽生三七君 そうするとですね、この条約が日本の国会で批准されて、それから同時に十二月に新しい現状に即した条約ができるという場合、これは大体の想像として、新しくできる条約が、この条約ですべての要件を満たすようになるのか、二つそろっておって要件を満たすのか。新条約の中で大体このいま審議中の条約も取り入れられた形で、さらに新しい情勢に対応した、つまり統一的なものになるのか、その辺はどうでしょう。二つ並んで条約があるのでしょうか。
#61
○政府委員(西堀正弘君) まあ、要するに、東京条約にいたしましても、ハイジャッキング条約にいたしましても、国際航空の安全かつ整然たる運航ということが目的でございます。したがいまして、事ハイジャッキングに関しましては、今度できるハイジャッキングの条約一本でもちろん十全でございますけれども、その国際航空の安全な運航という意味から申しますれば、ハイジャック以外の犯罪もございます。機内における犯罪もございますわけでございます。そういう場合におきましては、東京条約でもって機長の権限が拡大されておりますし、そういった場合において、東京条約、それからハイジャッキング条約、両方一体となりまして、国際航空の安全な運航という意味において十全と申しますか、犯罪防止という意味において、両方合わせてこれは相補って十全な形になる、こういうことでございます。
#62
○森元治郎君 もう一点で終わります。ああいう強盗に襲われて三日も四日も閉じ込められる。自分の用も足せなかったお客さんがたいへんな損害ですよね。こういうものを、こういうような国際間の約定で何か補償の道をきめておくのか、あるいは国際航空運送に関するワルソー条約とかいった、そういうもので救済していくのか。乗員、航空会社、乗ってるお客さん、これに対する補償みたいなものは考慮されているんですか。別途にやるのですか。
#63
○政府委員(西堀正弘君) この改正ワルソー条約、これはワルソー条約がありまして、それはヘーグ議定書で改正されたものでございますが、わが国は両方とも当事国になっておりますので、この改正ワルソー条約はわが国に全面的に適用になるわけでございます。その第十七条におきまして、「運送人は、旅客の死亡又は負傷その他の身体の障害の場合における損害については、その損害の原因となった事故が航空機上で生じ、又は乗降のための作業中に生じたものであるときは、責任を負う。」、こう規定しております。それから二十条におきまして、「運送人は、運送人及びその使用人が損害を防止するため必要なすべての措置を執つたこと又はその措置を執ることができなかつたことを証明したときは、責任を負わない。」、こういう規定をしております。またこの条約は、第一条の規定によりまして、「国際運送」、すなわち、「当事者間の約定によれば、――出発地及び到達地が二の締約国の領域にある運送又は出発地及び到達地が単一の締約国の領域にあり、かつ、予定寄航地が他の国の領域にある運送」に適用されることになっております。したがいまして、ハイジャッキングそのものが発生いたしまして、その結果旅客が死亡したような場合には、当該旅客についての運送がワルソー条約に言う「国際運送」の場合でありまして、そして運送人が当該損害の防止について過失がなかったことを証明し得ないときは、運送人は、ワルソー条約に規定する責任を負うことになると、こう考えられます。
#64
○森元治郎君 それは救済の道があるわけだね。
#65
○政府委員(西堀正弘君) いま申し上げました、旅客が死亡したり、負傷したりするような場合でございますので、ハイシャッキング――この前のような場合には、乗客の多数の者が北鮮まで連れていかれて帰ってきて、そのために自分の仕事ができなかったという意味における損害というものは、ワルソー条約においては考えておりませんです。ただ、保険会社に当たって実はちょっと検討したんでございますけれども、主管が外務省の主管でございませんので詳しいお答えはできないのでございますけれども、しかもなおかつ、保険会社によって多少内容が異なりますので、一がいには申されないのでございます。現在政治活動家が特定の政治目的のために行なったハイジャッキングの場合には、何と申しますか、政治色のない者が、その保険約款におきますところの「変乱」ということばがあるようでございまして、その「変乱」の中に、政治色のない者は含まれないというようなことでございますので、現在の保険契約のもとでは、ハイジャッキングをカバーする特別な契約がないわけでございます。ただし、特別な契約を今後ハイジャッキングについて保険会社とやるということは、これは考えられる、しかも可能である、こういうことを保険会社のほうでは言っております。いずれにいたしましても、本件はきわめて新しい事件でございますので、保険会社のほうでも考えておるようでございまして、明確なことは、特に主管が大蔵省の関係でございますので、申し上げられません。
#66
○説明員(山崎敏夫君) ただいま西堀局長から申されましたことは、国際運送の場合についてそのとおりでございまして、ワルソー条約は国際運送について規定してあるわけでございます。ただ、今回の「よど」号事件についての御質問の処置でございますと、国内運送の問題でございますので、これは国内運送約款で、日航と乗客との間の問題となってくるわけでございます。で、それがたまたま外国に連れて行かれたということはありましたけれども、あくまで、日航と乗客との間の国内運送約款の問題として処理さるべき問題だと存じます。
#67
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#69
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#70
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#71
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#72
○委員長(長谷川仁君) 速記をちょっととめてください。
  〔速記中止〕
#73
○委員長(長谷川仁君) 速記を起こしてください。
 午前中の会議はこの程度とし、午後一時に再開いたします。
 それまで暫時休憩いたします。
   午前十一時四十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十八分開会
#74
○委員長(長谷川仁君) 休憩前に引き続き外務委員会を再開いたします。
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件につきましても、去る九日提案理由及び補足説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#75
○森元治郎君 最近古い条約がだいぶ出てきておりますが、署名は済んだけれども批准ができてない条約の一覧表、ちょっと私ももらったものがあるんですが、戦前のものと戦後のものに分けて、戦前は幾ら残っているのか。戦前戦後。
#76
○政府委員(井川克一君) わが国が署名いたしておりまして現在まで批准をいたしておりません多数国条約は、戦前のものが九本でございます。ただ、そのうち、ただいま御審議をお願いいたしておりまするいわゆるBC兵器条約の議定書がございますが、これが御承認を得ますれば八本となるわけでございます。それから、戦後にできました条約でわが国が署名し未批准のものは十三本でございます。ただそのうち、先ほど御審議願いましたいわゆる東京コンベンションがございますので、これを引きますると十二本になります。ただ、さらに申し上げますが、署名いたしましたものも、たとえば核兵器不拡散条約のごとく本年署名したものもございますし、たとえば一九六九年の船舶のトン数、速度に関する国際条約、これは去年できました。それから郵便連合の東京条約、これも去年できたわけでございますので、全部で、したがいまして東京条約も引きまして、戦後に本年まで署名いたしまして未批准のものが、東京条約を除きますると十二本、こういうことになっております。
#77
○森元治郎君 それで、これは逐次片づけていくんですか、戦前九本、戦後のその十二本。だいぶ大掃除に入っているようだが、これから出そうなものは戦前何本、戦後何本ですか、合計。
#78
○政府委員(井川克一君) ことに最近非常に多数国国際条約がふえまして、毎年大体十本ないし三十本の条約ができているわけでございます。もちろん、この中にはわがほうと全然関係のないものもあるわけでございます。私ども、確かに今度の東京条約の問題、あるいはただいま御審議をお願い申し上げておりまするBC兵器の問題、たいへんおくれてまして申しわけないと思うわけでございますが、したがいまして、私どもといたしましては、今国会が終わりましたらばさっそくにも各省の関係官に来ていただきまして、いままでの条約というものを総点検いたしまして、わが国が入るべきもの、入らなくてもいいものというものをもう一ぺんきっかりと仕分けをいたしまして、しかも、それをある程度の年数のプログラムというふうなものをつくりまして、国会に提出して批准、御承認をお願いするという計画をつくるために、各省との連絡会議、再検討の会議をいたしたいと思っております。
#79
○森元治郎君 この未批准の条約の一覧表をあとで資料として出してもらいたいと思います。
 そこで本論に入りますが、このガス条約の議定書、四十五年たって今度これを批准するわけですが、私は追い込まれた批准行為だと思うわけです。ソビエト、日本をとらえて、あそこの経済大国何やるかわからぬ、あんなもの批准もしないでどうだというふうな攻撃の材料に使われて、とうとう追い込まれてきたというふうに感じます。大臣いかがですか。
#80
○国務大臣(愛知揆一君) わが国としては、もともとこの議定書には賛成でございますけれども、いわゆる毒ガスの戦時における使用禁止については前々から、一八九九年のヘーグ宣言、それから一八九九年と一九〇七年のヘーグの陸戦法規慣例条約、これの締約国になっておりますので、また、特に現在においては第二次大戦を通ずる国家間のほぼ一致した慣行である毒ガスの使用禁止ということになっている状況でもあるので、従来は、まあ率直に申しまして、いまさら批准ということも考えないでもいいのではないかというような、まあ率直に申しまして、安易な気持ちもなかったわけではないと思います。しかし、昨年の国連総会の決議もございまして、従来入っていなかった国あるいは批准をしていなかった国は、早急に加盟し、または批准の手続をとってほしいということが、国連総会でもたしか全会一致の決議になっております関係もありますので、これはひとつその要請にこたえなければならないというふうに考えたことと、それから、やはり昨年の軍縮委員会に、日本として加盟――といいますか、参加ができることになりまして、軍縮委員会において大いに活躍をしたいという意欲を持っているような関係もあって、この際やはりこれは批准を堂々とすべきである、こういう決意をいたしたわけでございます。
#81
○森元治郎君 大臣ちょっと堂々と批准をというのは少し……四十五年では、あまり堂々でもない。まあまあというふうなもんだな。これはちょっと聞けないのだが。まあそこで、私は人に言われて四十五年前のものを批准するよりは、いませっかくアメリカの案、イギルス案、ソ連案などでBC兵器関係の禁止条約草案がジュネーブで出され、日本も安倍さんがしゃべっていますね、いろいろ。あれと一本にしようじゃないか、いまさら古いものをわれわれサインしなくても、もう日本はやらないと宣言しているのだから、憲法もそうなっているのだから、それを促進するほうが先だと言って、新らしいものと合わせてやれば一番いいと思う。しかし、これは時間もかかるでしょう。時間がかかるので、あまりぎゃあぎゃあ言われて孤立するのもまずいというのでやったのでしょうが、これは外交的には少しく失敗だったと見るほかはない。失敗といっても愛知さんを責めるわけじゃない。過去四十五年間ぼやぼやしたほうが責められるべきなんですが、形式上はあまり成功ではなかったと思います。しかし、ちょっと大臣の説明でおかしいのは、前にこれ以前に三つばかりの条約でこの条約の内容のもの結んでいるから、いまさらこういうものを批准署名というが、それなら、いまさら二五年のガス条約にサインしなくても、もう間に合っているのだから、いまさらやることない。二五年当時おっしゃったほうがよかったと思うのですが、どうでしょう。
#82
○国務大臣(愛知揆一君) 私もごもっともだと思いますが、やはり軍縮委員会を通じて日本もすでに提案や、いろいろの意見も発表している関係もありますから、やはり皆さんが古いものを批准をしてないという点に何らかの疑念を持つとすれば、それは片づけておいて、前向きに新らしい提案が成立できるように努力するほうがベターであるという考え方に立ったわけでございまして、これは前にも申し上げましたように、率直に言って、なぜたとえば戦前においても批准まで日本はしなかったのだろうかということについては、今日において公にかつ納得のできるような御説明を政府としてはするだけの資料が実はないわけでございまして、過去のことは過去のこととして、今回そういう環境のもとにおいてやはりこれは批准をしておくことがベターである、こういうふうな考え方に立ったわけでございます。
#83
○森元治郎君 それで大臣は、資料がないとおっしゃいますが、よく勉強する人が調べたものを読むと、こんな空気もあったんですね。この条約が、議定書が作分されて二年のあとですから、一九二七年――昭和二年。このとき、広島県の竹原市忠岡町の海上、大久野島というところに陸軍関係の毒ガス研究所があったんでしょう。大量生産というのでやっていたということは、今日だれでもわかっておるんですね。そして当時、日本の兵隊さんのほうの研究のもの、すなわち「瓦斯戦史」、この「瓦斯戦史」の一節にこんなことがあるのが当時の空気をあらわしていると思う。「斬新ナル化学兵器(質)ヲ卓抜ナル戦闘方式(法)ニヨリ大規模(量)ニ投入シテ相手国ヲ奇裂シ」――電撃を加え――「積極的ニ主動ノ位置ヲ占ムルハソノ要訣中ノ要訣ナルベク……コノ際タダ消極的ナ防護方法ノミニ腐心スルハ守株ノ譏ヲ免レザルベシ」ということが書いてある空気を見ると、そうそうガスも捨てたものじゃなくて、戦争をやるほうから見れば、これもやっぱりやっておかなきゃならぬという空気もあったようであります。一つのこれは空気を示す材料だと思う。だからといって、昔の話をいまさら持ち出して、どっちがいいということをいま聞こうと思いません。
 そこで今度は、問題は次のほうへ行って、昨年のスウェーデンの国連の決議ですか、今年中――七〇年中の議定書批准という決議に従って、その後どのくらいの批准を完了した、あるいはまた手続をとりつつあるかということ、これは原署名国が三十八くらいですか、原署名国は。結局、批准した国と加入書寄託などを加えて戦後二十五、合わせて六十八カ国というふうになって、日本、アメリカ、ブラジル、エルサルバドル、ニカラグア、ウルグアイの六カ国がサインしただけでまだ批准はしないというふうに拾ってみたんですが、どのくらいの国が批准を完了したのか、また手続をとりつつあるかいうことをちょっと教えてもらいたい。
#84
○政府委員(西堀正弘君) 先生のおっしゃいますとおり、六十八カ国が現在の当事国でございまして、署名しただけで批准していないのが、ただいまおあげになりました六カ国で、ただいま手続中がわが日本とそれからアメリカ合衆国、これは大統領の手元に、議会の批准のための承認を得るべくその承認を求めているわけでございますが、まだ本日のところ、大統領はその裁可をしていないということであります。裁可があり次第議会に提出するということになっております。
 それからもう一カ国、モロッコが国会の手続中だそうでございます。モロッコが当事国になるべく国会の手続中だそうでございます。
#85
○森元治郎君 中国とドイツは戦前この議定書の当事国となっているが、御承知のような二つの国になっているけれども、これはその後どうなっているかということ。それから、この議定書に中共に含まれるか、中共はどうなっているか。
#86
○政府委員(西堀正弘君) いまの先生のおっしゃいましたとおり、中国それからドイツ、いずれも戦前に批准を了して当事国となっております。それで、戦後になりまして、中共もそれから東独も、これら中国及びドイツの批准にリファーいたしまして、中共及び東独ともにこの議定書の適用を受けるという旨の宣言をいたしております。
#87
○森元治郎君 この当事国は拘束を受けることはわかっているけれども、六十八カ国ですから、国連加盟国から見ても半分くらいは入っていないわけですね。そういう国は、この毒ガスあるいは細菌を戦争の手段として使わないという、こういうものの道義的拘束というか、これは一般的な、国際法上の一般的な精神的な拘束というものは受けるのか受けないのか。やっぱり大勢としてはひっかかり――やはり大きい意味では拘束されていると思うのだが、どうですか。
#88
○政府委員(井川克一君) 森先生のおっしゃったとおりだと思います。これが、こういうふうな毒ガスを使わないということは国際慣行になっているという意識が国際社会の意識であると、こう判断してよいと思います。
#89
○森元治郎君 この表題にあります「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び」云々と、「これらに類するガス」とはどういうことか。
 それから、ここに私、「これらと類似のすべての液体、物質又は考案」、「考案」はディヴァイスというのか、「物質」とは何かということ、「類似の」という意味です。
#90
○政府委員(西堀正弘君) まず最初に、「これらに類するガス」といいますのは、ここに、先に掲げてあります窒息性ガス、それから毒性ガス、これらと同様の殺傷効果を与える毒ガスというものを「これらに類するガス」ということで付加したものでございます。例をあげますというと、マスタードのように皮膚に作用して傷害を与えるところのびらん性ガス、あるいは議定書ができた当時は存在していなかったのでありますが、たとえば神経ガスといったものがこれに該当するということになります。
 それから、「これらと類似のすべての液体、物質又は考案」というのは、単に気体状の毒ガスばかりでなく、液体、気体を問わず、同様の効果を及ぼす物質、それから考案物の使用、そういうものも禁止したいということでこういう字句を使ったものでございます。
#91
○森元治郎君 「物質」にかわって「材料」と翻訳したようなものもありましたね、前に。その違いはどういうことなんですか。
#92
○政府委員(西堀正弘君) それはおそらくマテリアルということばだったと思いますけれども、それをたまたま「材料」と訳し「物質」と訳し、そのときの、特に取り上げて申すべき理由はなかったのではないかと存じます。
#93
○森元治郎君 衆議院の段階でも、この条約の「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類する」ということを、その二つの表現を使い分けているのですね。それはあとで触れますけれども、ここでも「物質」と言ったり「材料」と言ったり、そのときの条約局かどっかの当事者の個人の感覚で年じゅう字を変えるということは、条約が、だんだん成立する実体までやがて変わってくることになるおそれ十分だと思うのです。だから、条約はつくったときはつくったときの気持ちでつくったんだから、それをずっと残していく。もしこれを変更するのだったら、新たにやっていかないと非常な混乱を生ずると思うのですが、この点はどうですか。
#94
○政府委員(西堀正弘君) 確かに戦前のこれに関しまする条約を見ますというと、あるものは「これに類似する」と使い、あるものは「その他の」と使っているわけでございまして、その点、条約正文と申しますか、原文が同じ字であるにかかわらず、両方使っておるというのは確かに思わしくないことでございます。しかし、この字句に関しまする限りは、戦前の「これらに類する」と、それから「その他の」という用法を比較してみまして、そのサブスタンス――実質的な内容という点から考えまして、われわれこれをいままでの「その他」と訳するよりは「これらに類する」と訳したほうがよりよいという結論に達しまして、この点につきましては、実は法制局との審議の際にも非常に問題になったところでございますけれども、まあ、あやまちじゃございませんけれども、とにかくこれを改むるにはばかることなかれという正論が勝を制しまして、これをあえて直しますならば、何かそこに作為があったんじゃないかということをあるいは疑われる心配もあるということでずいぶん議論したようでありますけれども、いま申しました、はばかることなかれという正論が勝を制しまして、そしてベターが「これに類似する」、要するに、実質的内容を考えて今回改めた次第でございます。
#95
○森元治郎君 それとあと一点の「物質」と「材料」。
#96
○政府委員(西堀正弘君) 先ほどの「物質」及び「材料」の点でございますが、マテリアル――マティエールでございます、フランス文で。以前に「材料」と申しておったのでありますが、何かその材料からあるものをつくるそのもとの原料といったような語感が多いものでございますから、ここでは、そうではなしに、先ほど申し上げましたように、気体状のもののみならず、個体も含む、液体も含むといったような意味でございまして、「材料」ないしは「原料」と言うよりは「物質」と訳したほうが、これまた実質的内容に即応するものであると考えまして、これもあわせて直さしていただいた次第でございます。
#97
○森元治郎君 そこはお役人さんの頭のいいところで、「材料」とは書いてあるが、いまのような説明を加えれば一向差しつかえないので、字を取っかえてしまうから何か逃げようとするのかということになるので、「材料」と書いてございますが、われわれの「材料」と書いた意味は、ただいまあなたが答弁した意味なんだと言えばたんたんとしておるのを、あちこち直すのだな。これはまたあとで一まとめにしてやりますがね。
 それから、催涙ガスが議定書の使用禁止の対象になるかということが衆議院の段階でもいま質問の重点にありますね。当時としちゃなるほどコンセンサスはなかったでしょう。が、しかしこれも含ませるべきだという空気も相当強かった。たまたまそれが合意という形までにクリスタライズされなかったというだけなんですよね。当時としてはおそらく禁止対象というはっきりしたものにはならないと思うけれども、いろんな記録なんか見ると、アメリカですら、ガスを含むのだということはワシントンの軍縮会議なんかでも言っていることである。日本でも松田道一さん、昔外務省の条約局長をやった静かな学者なんですが、松田道一さんなんかが、例のワシントンの潜水艦及び毒ガス五カ国条約の文面と同じ趣旨にしようということで、中に催涙ガスも含めようという議論のあったことも確かですよ。だから、これはその対象になかった催涙ガスを含むという考え方が昔は相当強かったことは確かなようであります。イギリスなんかはやっぱり現実派だから、初めは含むみたいなこと言っているけれども、このごろは盛んに毒ガス使っている。四月二日にロンドンに着いたらば、新聞のトップのほうに、ベルファストで、例のカトリックとプロテスタントとのけんかで催涙ガスをどんどん使っていると書いてある。しかし、このごろ変わってきちゃって、さすが恥しいのでしょう、英国の議会の中でも、けしからんじゃないかという議論が行なわれている。そういう経過は間違いないですね。ちょっと経過だけ聞いておきます。
#98
○政府委員(西堀正弘君) アメリカは、政府の方針といたしましては、終始一貫催涙ガスは含まないということを言ってきたようでございまして、これは戦前からそうでございまして、ただ、アメリカの代表団の顧問の中に、そういったことを含めたらいいじゃないかと言う者があるやに聞いておりますが、代表団といたしましては終始一貫しているようでございます。それから、英国におきましてそういうことが言われているということもわれわれは聞いておりますので、それは事実であろうと存じます。
#99
○森元治郎君 いまは、ワシントンの軍縮会議では、代表は言わない。だけれども、条約討議の基礎となったアメリカの海軍将官会議の報告書とか、あるいは、米国全権団専門委員会報告書、いずれもこれは催涙ガスを含むものとの趣旨を明記されておるのですね。まあ、あっちこっち混迷があったんでしょう。古いことを言ってもしかたがないが、そういうことのようです。そこで、毒ガスについて言えば、議定書の対象になるこれは毒性のあるというもの、これは効果が非常に強いということが一つ。それから、強い効果が持続的なものということになるでしょう。強くて長く持つもの。一体、持続的なものと一時的なものという区別ですね。これはある程度の標準があるのですか。
#100
○政府委員(西堀正弘君) 一時的という場合に、それが何分を意味するかといった意味におきましては、これははっきりと申し上げかねるのでございますけれども、われわれが致死性と非致死性と
 一応分類いたします場合に、致死性の場合には、有毒であって、しかもそれを吸い、あるいは付着いたしますと、死に至らしめるということ。それから、非致死性の一時的効果という場合には、ウ・タントの報告書にも確かにありましたが、たとえば催涙ガスの種類によって違いますけれども、あるものは三分から五分、長いもので十五分。とにかくそのガスをかぶったところから立ち去ったならば、瞬時とは言いませんけれども、数分ないし、十数分のうちにその効果がなくなる。こういったものをわれわれは一時的効果を及ぼすにすぎない非致死性の化学剤と、こう考えております。
#101
○森元治郎君 その持久度の基準は三分、五分――何分でしたか、いろいろあるのですがね。
#102
○政府委員(西堀正弘君) われわれが普通催涙ガスと申します中にはCN――これは日本が持っておりますけれども――CSそれからDNでございまして、CNの場合は効用持続時間は三分、CSの場合は五分から十五分、こういうことでございます。
#103
○羽生三七君 私のは質問というよりも、いまの森委員の質問に関連するんだけれども、全くのしろうとだから、たとえばこの種のいろんなガス、各種のガスを、一体それを上から、空からまくのか、固形物質で置けば何か自然発散していくのか、何かで撃ち込むのか、どういうガスはどういうふうな形式で使うのか、そういうことも全くわからぬので、日本の自衛隊がどうしているというんじゃないんですよ。世界的に一般的にそれはどういうことをやっているのかということを聞かしてもらいたいと思います。これは事情説明でいいんです。政治的質問ではありません。
#104
○政府委員(西堀正弘君) 私もよく存じませんわけですが、毒ガス銃というやつでもって固形のものを撃ち込んで、それが着弾してからガスを発生するのもあるようでございます。それから、液体のものでございます。濃度の非常に多いもの、そこへ適当に水をまぜまして、そしてそれを噴霧状態にしてまくというのもあるようでございます。それからもう一つは、酸素ボンベのようなああいうようなボンベ状のものに入れておきまして、それを噴射する。こういった大体三種類があるようでございます。
#105
○羽生三七君 いま沖繩で問題になっている搬出するというガスは、それのどういうものに当たるわけですか。
#106
○政府委員(西堀正弘君) 沖繩に米軍がいま持っているといわれておりますところの毒ガスは三種あるようでございまして、VXというのとGBというのと、それからマスタードでございまして、それでVXとGBというのは神経ガスでございます。それからマスタードは、御承知のように、びらん性ガスで、皮膚に付着して皮膚をびらんさせるものでございます。VXとGBにつきましては、もうちょっと詳しく書いてあるのがありますから、読み上げましょうか。
#107
○羽生三七君 いや、いいです、聞いてもわからぬから。
 ベトナムでおもに使われているものはどんなものでしょう。これもわからなければいいですよ。
#108
○政府委員(西堀正弘君) ベトナムで使われておりますのは催涙ガス、これはCS、それから、いままで使われたといわれておりましたのは枯れ葉剤でございますけれども、これはその後中止したようでございますので、CSだけでございます。
#109
○森元治郎君 細菌学的戦争手段、これはバクテリアだけというのが締約国相互間の理解になっているんですか。
#110
○政府委員(西堀正弘君) そのとおりでございます。
#111
○森元治郎君 これをみんなだれも考えるんですが、四十五年前といまでは時代が違いまして、いまこれを批准されてみると、われわれの感覚としては、たとえそういうような締約国間の合意があったにしても――してもです――ビールスですとか、リケッチアと言われるものなどが、兵器に、細菌学的兵器の範疇で利用される状況にありますから、いまの受け取り方としてはこういうものも含まれるんだということを主張して、向こうに批准書を寄託するときには、意見を述べて注意を喚起することも大事じゃないかと思うんです。これは昔の話だから、古い時代の、おくれた時代の、四十五年前のバクテリアを目ざしたものだから、内容は実体が変わってきておるんですね。ですから、こういうものも含むものと了解するというようなことを寄託国に一発ぶつけることはたいへん進歩的だと思うんだが、この点どうですか。
#112
○政府委員(西堀正弘君) 先生、いまおっしゃいましたとおり、このジュネーブ議定書の作成当時には、このバクテリア、すなわち細菌兵器だけが考えられていたのでございますが、その後確かにビールス、それからリケッチアなども兵器として使用することが可能になったわけでございます。したがいまして、このジュネーブ議定書で禁止しておるこの細菌学的戦争手段には、いま先生おっしゃいましたとおり、細菌兵器のみならずビールス兵器なども含めて理解すべきだといった説をなす者もあるのでありますけれども、日本が批准するに際しまして、みずから範囲を拡大して注意を喚起することまではよろしゅうございますけれども、それを、日本がそこまで含むのだと言ってみましても、全く一人相撲でございますし、いままで六十八カ国に及びます当事国の意見というものも、これは聞かなければ、実定国際法上の問題としては意味のないことでございますから、ただジュネーブにおきます軍縮委員会におきましては、もちろんそのビールス、リケッチアも含めまして、したがいまして、細菌学的手段とは言わず生物学的生物兵器、以前の細菌兵器というのをいまは直しまして生物兵器ということばを使って、それの一切の禁止を日本は主張しておるわけでございます。
#113
○森元治郎君 これからできる、さらに新しくできる新時代を加味した、四十五年の経過を踏まえた次のこの種条約が必ずつくられるはずで、いまジュネーブでお互いにやり合っているのですが、そういう場合には当然日本としても、説をなす者もあるがなんて変なことを言っていないで、当然、ずばり言えると思いますが、どうでしょう。
#114
○政府委員(西堀正弘君) そのとおりでございます。日本といたしましては、あらゆる化学兵器、それから生物兵器を、使用のみならず、開発、製造、貯蔵等に至るまでこれを禁止すべきだという立場でもって進んでおります。
#115
○森元治郎君 それからいわゆるターゲットですね、こういうガスや細菌をぶつける相手、これを、人間だというふうな御説明があったようだが、人、現在それは合意というか、二五年当時の議事録かなんかにそんなものを記載したものがありますか。
#116
○政府委員(西堀正弘君) 特にその人間以外のものにつきましての、動物ないしは植物でございますが、それがかかるかかからないかということについて記載したような文書は私はないのではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この議定書ができた当時の解釈では、これはあくまで対人といいますか、人間を殺傷するものと解釈されていたようでございまして、現在でもこの議定書の解釈といたしましては、人間に対するものということになっております。
#117
○森元治郎君 そうすると、合意というものはない、こういうことですね。それから、動植物まで含まれる、発展しておると解釈してもいいし、しなくてもいいし、その辺は不明確になっておる、こういうことですね。
#118
○政府委員(西堀正弘君) まあ、この議定書の解釈といたしましては、やはり動物、植物はこれらのガスの使用禁止の対象にはなっていないんだと解釈せざるを得ないわけでございます。
#119
○森元治郎君 そうすると、人間というけれども、ただばく然としたヒューマン・ビーイングというんではなくて、「戦争における使用」でしょう。「戦争における使用」というのは、やり合っている当事国が相手の戦闘員なり、人を殺す意図をもって武装した人間だけなのか、非戦闘員なんかも一体含むのか、その辺のこまかいことの詰めはしてあるんですか。
#120
○政府委員(西堀正弘君) この議定書がつくられましたとき、この議定書の文言にもございますとおり、その対象が人間であるか、動物であるか、植物であるかという点には触れてないのであります。この議定書、そしてその解釈といたしまして、各国とも、この議定書の禁止の対象としては人間に限られるという点が、これは各国のコンセンサスと相なっている、こういうことでございます。
#121
○森元治郎君 コンセンサスになっていると言うけれども、何も、合意しましたといってコンファームはしていないわけなんだな。ただそういうふうな以心伝心的な意味の合意のようなものと言ったほうがいいかもしらぬ。あやふやなんだね。あやふやならば、やはり動植物、いろんなガスだの細菌だの吹っかけられた草だの動物だのを食べれば人間も影響を受けるんだから、当然そういうものも含まれると解釈してもけっこう、また解釈すべきだと思う。ただ、政府委員の答弁としては、そこまでの話はなかったというだけであったら別ですよ。当然これは含まれるべきものだ、常識的に見て。この条約に含めろと私は言っているわけじゃない。将来は当然含まるべきものだと思うし、ジュネーブのスウェーデンのときのいろんな決議案を見ても、いろいろな動植物というものは必ずきまり文句で出てきているんですね。だから、日本政府は、この条約は四十五年前からの古いものだからいいようなものの、将来は動植物を含んでいくんだという態度で処理してもらえるのかどうかをちょっと伺います。
#122
○政府委員(西堀正弘君) このジュネーブ議定書の禁止の対象としては、いまの人間ということにせざるを得ないと思うわけでございますが、いまおっしゃいましたように、動物ないしは植物につきましては、もちろん非常に害を及ぼすものにつきましては、これは立法論といたしましては、もちろん禁止の対象にいたすべきものだと思います。また現に、先ほどちょっと触れましたけれども、アメリカがベトナムにおいて使用されていたという枯れ葉剤、これは実は液状の二・四・五−Tというもののようでございますけれども、これはその後、多量の剤は人間の健康を害する、それから動物の胎児の発育にも悪影響を与えるという報告が行なわれた模様でございまして、枯れ葉剤のように農業にも広範に使用されるものにつきましては、薬剤の成分が、生産されるところの牛乳その他の食物に含有されるような、このような食物を長期間にわたって摂取し続ける結果、体内に蓄積されて健康に悪影響を及ぼすということになる、こういった見地からアメリカは使用制限を国内においてもするようになったのでございまして、したがって、またベトナムにおいても使用しないことにしたという、こういう報道がございますので、ジュネーブの軍縮委員会におきましては、これらのものもみな含めてわれわれとしては対処しているわけでございます。
#123
○森元治郎君 要するに、この条約にひっかけて含むか含まないか、いまの時点で古いやつと一緒に議論するとごちゃごちゃになるところがあることはわかるが、将来はそういうふうに必ず向かってもらいたいと思います。ところで、留保条項というのがあるね。すべて提案国そのものはもちろん拘束されるが、それを同盟国が使ったときはこの条約の拘束からははずれるんだよといった留保条項、この留保条項は日本はつけるのかつけないのか。そうして、私は、このソビエト、イギリス、イスラエル、これは留保しておるのですね、こういう一番おっかないところに位置しておる人が、これから留保なんというのは非常におっかないことなんで、留保を撤回してもらいたいと思う。それは将来に向かって何かの機会に――留保条項があるのだからしかたがないけれども、これは抜け穴ですよ、これは。日本はなぜつけないのですか。
#124
○政府委員(西堀正弘君) 日本といたしましては、毒ガスというようなものは、いかなる際にももう使用しないのだということを基本政策といたしておりますので、この議定書を批准いたします際にもこの留保は全然つけるというようなことは考えておらない次第でございます。
#125
○森元治郎君 ソ連、イスラエル、イギリスは留保をやっておるでしょう。これは撤回してもらう。これはこの条約は留保条項があるのだから文句は言えないが、別の場で、ジュネーブあたりでやる分には一向差しつかえないのだ。これは抜け穴だもの。世界二大強国という片方が留保条項をつけたのでは、おっかなくてしようがない。
#126
○政府委員(西堀正弘君) 先ほど井川局長から申し上げましたように、毒ガスの不使用という点は、第二次世界大戦を通じまして大体一般慣習化しておると考えてよろしかろうと存じますので、これら留保した国々も、まあ大体において戦前に行なったようでございますし、もちろん日本として留保を付さないで批准するわけでございますから、そういった点を強調することも一つの方法かと存じますけれども、それよりも、もっと端的に現在行なわれておるジュネーブの軍縮委員会において、日本のCB兵器に対するところの非常に積極的な理想主義的なその主張を強く打ち出していくといったほうがより現実的ではなかろうかと考えます。
#127
○森元治郎君 防衛庁の人、だれか来ていましたね。この三月の衆議院で、化学生物兵器に対する防ぐ法ですけれども、ディフェンスの機械の研究開発を行なっておると強い発言があったのですが、どうでしょうか。
#128
○説明員(国本隆君) 防衛庁といたしましては、ガスそのものの研究はいたしておりませんが、それを防護する器材の研究開発はやっております。たとえばガスマスクとか、あるいは化学剤の自動検知装置というようなものがその例でございます。
#129
○森元治郎君 そうすると、これは相手がどんな薬を使うか、薬のほうも研究し、いまあるのは、Aをねらってガスマスクをつくったが、どうも進歩してBでなければならぬ、こっちもマスクを変えなければならない。防護器材だけ発達したって、生命のほうがないというのじゃ……攻めるやつがあるから守る。ちょうど大陸間弾道弾とABMみたいなものですよ。核弾頭がばらっと散れて防ぐやつができないというのだ、防御が。これはイタチごっこです。ですから、古いガスなんか相手にしていたら、これはとても追いつきませんよ、日本は。科学の進歩はおそろしいと思うのです。そういうことは防護器材の研究というのは度が過ぎます。これは毒ガスをかえって開発進歩させる糸口になりかねないと思うのです。このかね合いがむずかしいのです。だんだんやっているうちにすばらしい毒ガスをつくり上げちゃうかもしれない。もう古いものでよければ研究開発する必要はないですよ。あれしかない、催涙ガス一手しかないのだと思えば、古い十年ぐらい前の器材でがんばってもいいですよ。どうですか、これはイタチごっこになりませんか。
#130
○説明員(国本隆君) 御指摘のとおり、非常にむずかしい問題であると思いますけれども、防衛庁といたしましては、現在米軍から供与されておりますマスクを使っておりまして、これは日本人のからだにマッチしておりませんし、またいろいろ改善すべきところが多々ございますので、当面の問題といたしましては、私たちはその基準を改善するほうに努力いたしておるわけでございます。
#131
○森元治郎君 大臣、どうですかね、この条約の中心人物はフランスだったと思うんです。昔、昭和六、七年ごろフランスのフランス通信社、昔のアヴァス通信社の特派員でヨーロッパ戦争でガスを吸った男と、特派員で行ってこれと一緒に仕事をしたんですが、非常に年じゅうせき込んでいる姿を見て気の毒に思った。私はガスはこわいと思うんだが、どうも科学がこれほど発達したのに、今度は逆比例というのか、わりあい鈍感になってきているんじゃないか、鈍感に。やっぱりこれは神経質に対処していかないととんだことになると、こう思うんですが、大臣、どうでしょうか。
#132
○国務大臣(愛知揆一君) 同感でございますので、先ほど来申しておりますように、今後――現在までもそうですが、軍縮委員会も通しまして日本のBC兵器絶滅に向かう努力を大いにやっていかなければならないと、こういうふうに考えております。
#133
○森元治郎君 まあ、安倍君がジュネーブで一生懸命やっておられるけれども、どうも東西のまん中をとったみたいで少し線が細いんですね。きれいごとを言うのはやっぱり弱いんですよ。一方に偏して逐次一つ一つ片づけていくという根本的態度がないと、ああいう多数国間の会議では会場を引っぱれないですよね、そんなうまい調子のいいことばっかり言っていちゃ。だから、いまおっしゃった絶滅するんだという気持ちで進んでいかないと、とんだことをしでかすんじゃないかとも思います。
 ところで、催涙ガスですが、国会の質問でも、皆さんが催涙ガスは非常に注意をして、催涙ガスを治安のためには使っていいが戦争には使って悪いといったような言い方はおかしいんじゃないか、これはやめるべきだというような声が相当強いと思うんです。しかし、催涙ガスにもおそらくいろいろあると思うんだが、警察庁の方に伺いたいのは、何種類くらいあって、強さで分け、効果で分け、ちょっと催涙ガスを説明してください。私は、反対するにも賛成するにも、知らぬ。お話聞いたことが少ないんで伺いたい。
#134
○説明員(山田英雄君) 現在警察で保有して使用しております催涙ガスはクロルアセトフェノン、いわゆるCNでございます。これは一時的に催涙させまして人の行動を抑制する、こういう効果を持っておりますが、先ほど国連局長から御答弁ありましたように、持続的効果を伴わないもの、気化しやすい薬品でございますので、大気中に、正常な大気中に出ますれば、先ほどもお話しのように、三分ないし五分で催涙もやむわけでございます。したがいまして、いわゆる毒ガスの範疇に入るものではないと、かように考えております。警察といたしましては、この種ガス以外には催涙ガスを保有しておりません。
#135
○森元治郎君 戦争に使う催涙ガスというのはあるんですか。名前は。
#136
○政府委員(西堀正弘君) ウ・タントの報告にもございますけれども、催涙ガスといたしましてはCS、それから警察のお持ちになっているCN、それからDM――これはアダムサイトといわれるものでございますが、まあ、催涙ガスといたしましてはこの三つの種類があるようでございます。
#137
○森元治郎君 そうすると、それは使っていけないのですね、戦争に。
#138
○政府委員(西堀正弘君) これは議定書において禁止の対象になっているものではございませんので、したがいまして、これは戦争における使用というものは禁止されていないわけでございます。
#139
○森元治郎君 大臣、催涙ガスの取り扱いについてはどういうふうなお考えですか。全体はこれをやめたらどうだという意向も強いのですね。治安上やむを得ないというお考えのか。やめる方向に持っていきたいというのか。
#140
○国務大臣(愛知揆一君) この催涙ガスの問題につきましては、このいま御審議を願っている議定書の対象になっておるのは、戦争の手段として使うガスの対象は何かということですが、その場合において、この議定書においても、対象になっているガスの中には催涙ガスは入っていないと、これがいい、悪いとか、戦争、現実とかいう議論はともかくといたしまして、これの参加各国のコンセンサスの中には入っていないわけでございます。それから今度は別の、その次の問題として、しからば戦争手段としても入っていないのですから、各国の国内の治安上の手段方法として入っているかどうかといえば、これも入っていない、これが現状でございます。それからその次は今度は、将来の立法論という問題になり得るかと思いますけれども、致死性、いわゆる致死性ガスはもちろんのこと、なるべく人類殺戮の道具として用いられるようなガスは絶滅したいというのが基本的な考え方で進まなければならないと思います。同時に、立法論としましても、国内治安上の用い得るものとしては別に考えなければならない。これは最近の国際会議あるいは各国の提案などいろいろ調べてみましても、たとえばスウェーデンの提案などにも、国内治安上用いるべきものについては別問題であるということが前提になっているようでございます。そういう点について、将来の立法論としては、十分そのガスの種類、性格その他に科学的な調査も十分した上でもって立法論としても慎重に考えなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。
#141
○森元治郎君 要するに大臣のお話は、将来の立法論としては慎重に取り扱うということが一つ。たとえ国内治安の場合でもはたしてこれが国内的治安に利用すべきものかどうか、あるいは程度、種類、そういうものも反対の声を頭に入れつつ検討していきたいと、こういうことですか。
#142
○国務大臣(愛知揆一君) そういうことでございます。
#143
○石原慎太郎君 この現在の議定書とそれからもう一つジュネーブでいま行なわれています規制に関してお伺いしたいのですけれども、森さんも、四十五年前から技術というものは非常に進んで、以前の各カテゴリーの中に入るものが非常に違ってきたということを言われましたけれども、私が一つお伺いしたのは、たとえば純然たる治安対策上とか戦争用でない、しかも、使用によっては非常に有毒な、用い方では非常に平和目的にある部分で利用でき得る薬品なりガスが非常にあるわけです。たとえば有機燐酸系統の農薬というのは、これは集中して撒布しますと完全に人間のおとなでも人命にかかわるといったようなものがありますが、そういうものも、使用によっては非常に戦争目的として有効な手段を果たすことになりますけれども、そういった非常に現代的な薬品というものの使用のしかたについても、この議定書なりあるいはジュネーブで行なわれている会談の中でお考えになっているかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#144
○政府委員(西堀正弘君) このジュネーブ議定書はあくまで戦争における使用でございますので、したがいまして、いまのような……
#145
○石原慎太郎君 いや、戦争に、つまり有機燐酸系統の農薬を撒布しても兵器になり得るわけです、十分に。
#146
○政府委員(西堀正弘君) したがいまして、そういった化学剤につきましては、それが致死性と考えられるものであるならば、現在の各国でコンセンサスが得られている以上のものがかりにあるといたしました場合、それをわれわれとしても前向きに検討していって、ジュネーブ議定書においてもそれの戦争における使用につきましてはできるだけコンセンサスが得られる限りそういうものも含めたいと考えているわけでございますが、いまジュネーブで行なわれております軍縮委員会におけるわが国の主張というのは、単に使用のみではございませんで、その使用のもとになる開発なり、製造なりそれから貯蔵なりをも禁止しようということでございますから、そういった化学剤で非常に危険だというものは、当然その対象としてわれわれは主張しておるわけであります。
#147
○委員長(長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。
  〔午後二時二十一分速記中止〕
  〔午後二時四十五分速記開始〕
#148
○委員長(長谷川仁君) 速記を起こして。
#149
○森元治郎君 まず大臣に第一に御質問申し上げます。この条約の例の名前ですね、いまから四十五年前に結んだ条約では、「窒息性ガス、毒性ガス又は毒性ガスその他の」と、こうなっているね、オリジナルなものは。これが変わってきたのですね、ちょっと。「これらに類する」はシミレールということでしょう。この点は問題だと思うのだね。昔のものを批准するといったら、そのものをそのままして写せばいいので、どっちが適当かなんというよけいなことは言う必要はないので、近代的な解釈を加える必要はないんで、新しい条約になってしまうじゃないですか。西堀国連局長、あなたは五月六日衆議院では、日本語の訳としては正しいほうを使ったと。訳はもうすでにきまっているのですよ、「その他」とね。横文字はいま抜きです。「その他」と。それを、正しいからといって、あとから、四十五年たったいまになって、内容は変わらない、変わらないのに表現だけ変えていくということは、非常なこれは間違ったことで、もとの条約ではないと言ってもいいと思うのです。大臣、昔、枢密院というのがありましたね。あの枢密院では条約の御諮詢案と称して、外務省はそれはぶるぶるしていったものですよ。あそこでひねられて、カンマ、ピリオド、ハイフン、てにをはからもうがっちりしぼられたわけですね。あそこだったらこれは通りませんよ。これはどうなんですか。西堀さんは、訳として正しいというよけいな解釈をする必要は一つもないのに、正しいと言って、そしてあしたはあなたは何と言ったかといったら、「その他」、及び「これに類する」、いずれも正しくと、ただサブスタンスを比べた場合、「これに類する」としたほうがよりベターであるのでそれに従ったと。正しいと言っているうちに、今度は「ベターである」とか、答弁すらも変わってきているのだな。よけいな心配する必要はないので、あるがままに四十五年前のほこり一ぼいのこの議定書を出して御承認をもらえばいいのですよ。何で、来たものを、ちょっとほこりを払って、変なものを書き入れているのだ。これはもとの条約ではないでしょう。これはどうでしょう、大臣。
#150
○国務大臣(愛知揆一君) これは率直に申しまして、衆議院の会議録でもごらんのとおり、衆議院でもだいぶこの点につきましては御論議があったわけでございますけれども、まあ最終的にはお認めをいただいたと私思いますけれども、内容は全然変わっているわけではございません。ただ、この表現、題名のこれは、もともとが英、仏両文が正文ということにもなりますから、現在の字の使い方から言えば、前の「その他の」が正確ではありますけれども、今度の「類似する」云々のほうがまあより正確ではないだろうかということで、これは政府部内のことを申してたいへん恐縮なんでありますけれども、法制局との間のいろいろの相談の結果、その道の専門の、そういう用語の使い方の専門家の意見を採用いたしまして、フランス語の表題にむしろ近いような表題の日本訳を採用することにいたしたわけでございます。内容的に全然違っているわけではございませんで、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
#151
○森元治郎君 内容が違ったらこれは新たな条約だから、これはまた別で、内容が違ったらたいへんだよ、大臣。そしてこれは簡単じゃないですよ。これはだから、さっきも言ったように、「その他の」とはあるけれども、意味するところはシミレール、「これらに類する」という意味なのだとなぜつけ加えない、たとえば、提案理由の説明とか補足説明の中で。「これに類する」というフランス語のほうが、フランス人が一番毒ガス吸ったんだから、フランス人の気持ちが一番よく出ているのがシミレールだと思うのだよ、私は。だから、こういう意味ですよと言えばいいのに、苦心惨たんして法制局と相談して、四十五年前の古いものをちょいと書き直すとなると、条約が違うでしょう。別な条約ですよ、これは。そう言われてもしかたがない。どうですか、西堀さん。
#152
○政府委員(西堀正弘君) 決しておことばを返すつもりはないのでございますけれども、この戦前の条約、これはサインをいたしましたのは一九二五年、それでそのサインいたしましたのが原文、すなわち英文であり、仏文にサインしたわけであります。それで、これは御批准を仰がなかったわけでございます。ということは、枢密院に御提出申し上げなかったわけでございます。と申しますことは、正訳をつくらなかったわけでございます。と申しますのは、いままでありましたのはすべて翻訳文、仮訳であったわけでございます。という意味で、正訳と申しますか、この日本文によるところのこのジュネーブ議定書というものが存在しておりましたのは、現在まで仮訳にすぎなかった。今度国会に御提出申し上げました、そのときに初めてこれは日本文の、何と申しますか、確定訳――法制局の審議を経たところの確定訳として御提出したと、こういうことでございまして、戦前にあった日本文によるところの正文を変えたということが、これは非常に三百代言的になりまして申しわけございませんけれども、これが正確なる御説明でございます。
 それからなお念のために申し上げますというと、戦前ベルサイユ条約――対独・ハンガリー・オーストリアそれからブルガリア、この四カ国それぞれについてベルサイユ条約があるのでございますが、そのいずれにもこういうこの条項がございます。それで、このベルサイユ条約の場合は、その四つとも御批准を仰いだわけでございますが、対独の条約の場合は「その他」と訳しておりまして、それから、ハンガリー、オーストリア、ブルガリアは、これはいずれも「これに類似の」と、こう訳しておるわけでございまして、この点は先ほどちょっと申し上げましたけれども、同じ実質的内容を有するものを日本文でもってこのように違ったことばを使っていたということは、戦前のことではありますけれども、非常に思わしいことではございません。四つとも実質的内容が同じなのでございますから、同じ日本文を使うべきであったと思うわけでございますが、たまたままあ対独の条約を取り扱った者が英文系統の者であり、あるいはあとの三条約を取り扱った者が仏文系統の者であったというところから、こういったはなはだぐあいの悪いことになったのではなかろうかとわれわれ推測するのでございますが、まあ、いずれにいたしましても、いま申しましたように、四つのすでに御批准を仰いだところの条約がございまして、そのうちの三つがいわゆるシミレールをそのまま訳したもの、それから、そのうちの一つがアザーを訳したという、この四つがございますので、われわれといたしましては、今度日本文によるところの正文を作成するにあたりまして、それでどちらがよろしかろうということでもって、この議論を相当長時間にわたってやったようでございます、法制局との審議におきまして。それで、先ほど申し上げましたように、これはいま少なくとも仮訳とは言い条、かつてこの議定書においてあった日本文が「その他」とあるものを、この際、こちらがベターとはいいながら、直すというのも、非常に卑近なことばで申しますと、痛くない腹を探られるというようなこともあるのではなかろうか、直さないほうがいいのではないかという議論もあったのでございますが、先ほど申し上げたように、あやまち――と申しますか――は、よりベターなものに直すのにはばかるなかれという正論が勝ちを制しまして、直すということで、このように修正したと、これが偽らざる実情でございます。
#153
○森元治郎君 この当時御批准を仰がなかったから正訳ではないと言うが、いやしくもサインをしたときは当時の内閣で十分検討をし、これで御批准を仰ごうとかかったことは、これは当然なわけだな。あの当時私はこういうことは知らないけれども、各方面に行っている文書はこういうもので行っている。古い文書を見てごらんなさい。「これに類する」と書いたものはないはずだ。当時の古いものをそのまま認めなさいよ。いままで批准しないじゃないかとか古いからとか言うが、それをやりなさいよ。やればいいんだよ。何で、頭がいいのが集まって、どっちが適当かなんて、よけいなことですよ。古いものをあっちこっち引っぱり回したりする必要はないんで、蔵にあったものを出してきなさい。これを持ってくればいいんだよ。これは小細工というのだな。そういう必要は毛頭ないですよ。それで前の方は三つがシミレールで一つが「その他」だと、そういうふうな説明ですね。これは以前のやつに「シミレール」もあるのだと言うが、何もほかのことで比較することはないんだな。当時われわれに、あなた方からくれているこれはなんかは、みんな、そうやってわれわれにお読みなさいと言って全部「その他」で下さっているのだな。これは、ここでこんなことをやるから、何だろうということになるのですよ。持ってきなさいと言ったら持ってくるんですよ。お菓子を持って来いと言ったら、はいと言って、女中さんが途中でつまみ食いしたりなんかしてはいけないので、言ったとおり持ってくればいいんです。私は、そういう小細工は別な条約になってしまうと思うのだな。
#154
○政府委員(西堀正弘君) またおことばを返すと言っておしかりをこうむると思いますけれども、この条約に署名をいたします場合は、大体において時間が限られているわけでございます。これは戦前もそうであったと思いますし、戦後はまさにそのとおりでございますけれども、非常に時間が限られている。したがいまして、署名のためのこれは閣議請議をいたします。この場合につくりますところの日本文というのはあくまでも仮訳でございます。それで、その後、今度この条約に、署名済み条約について御批准を仰ぐために国会に提出すると、そのときは、これは法制局との審議を経た――それこそ日米通商条約の場合のごときに至りましては、あの題目をきめるために六時間を要したというようなきわめて慎重なる審議を経て、そこで日本文としての正訳をつくるわけでございまして、この場合におきましても、これは署名は、先ほど申しましたように、原文でいたしたわけでございますけれども、そのためにはおそらく当時の閣議決定があるのじゃないかと思いますが、その閣議決定の場合には仮訳を提出して、これは御参考までに仮訳を提出して、それによって閣議決定を経てそれで署名を訓令した、こういうことでございまして、したがいまして、決しておことばを返すあれじゃございませんけれども、当時のものはあくまでも仮訳であった。これは戦後におきましてもそのとおりでございまして、署名の場合などはこれは仮訳で、それは法制局の審議も経ない。したがいまして、批准のために国会の承認を仰ぐときには、前に出しますところの、閣議に出しますところの日本文というものは、これは全面的にと申しますか、非常に多くの点において改正を受けると申しますか、修正をされるというのが実情でございます。
#155
○森元治郎君 ここに仮訳とでも書いてくれれば非常にわかりやすいのだな。どこにも仮訳と書いてない。批准前のものが全部仮訳だということになれば、こっちだってこれを直してもいいのだな。いまここに出ているものを、ほかの文言も直してもかまわないのでしょう。これは正文は仏文と英文なんだから、すべてのこの個条だって、法制局との検討の結果、よりいいほうがいいと、こう言っていじくっていったら審議できなくなってしまうな、これは。
#156
○政府委員(西堀正弘君) 先ほど私が申し上げましたように、いままでの日本文はすべて仮訳でございます。現にこの外務省条約局編さんの「多数国間条約集」にこのジュネーブ議定書が載せてありますけれども、ここには明確に「仮訳」とここに印刷されております。
 それからもう一つ、国会の御審議におきましてこの条約文を修正していくことが可能であるかどうかという点につきましては、私、条約局におりました当時の下田条約局長の御答弁をそのままお伝えするわけでございますけれども、条約の承認を仰ぐものは、極端なことを申しまするならば、これこれこれこれの条約の締結について承認を求める、あの紙一枚でございまして、その紙にくっついているところの条約正文、これは非常にまた三百代言的で申しわけございませんけれども、これは参考資料じゃございませんけれども、承認の対象というのは、あくまで締結について承認を求めるのだという、あの紙一枚である。かつての下田条約局長の有名な御答弁をお伝え申し上げたいと思います。したがいまして、法律の場合の審議と違いまして、条約につきましては、その内容の訂正というものは、これは国会ではすることはできないのである、こういう解釈をいままで、戦後とってきておるわけでございます。
#157
○森元治郎君 総理大臣の国会の説明は「その他」みたいな説明はなかったですか。総理は衆議院の委員会のこの審議に出たことないの。
#158
○政府委員(西堀正弘君) お出になりませんでした。
#159
○森元治郎君 とにかく帰ってから、当時――四十五年前だから、蔵あけてよく探して、その間の事情調べてください。私はこれは、どうです、これ、再提出だな、「その他」として。そういうほうが望ましいと思うが、どうかね。あんた正しいと言ったり、ベターであると言ったり、どっちがほんとうなの。
#160
○政府委員(西堀正弘君) 衆議院で申しましたことをまた繰り返さざるを得ないのでございますけれども、両方とも正確でございます。ただ、どちらが実質的内容に合っているかという意味において、「これらに類する」というほうがベターである。したがって、「その他」も正しければ「これらに類する」も正しいのであります。ただ、実質的内容を比較してみた場合に、フランス文のシミレール――「これらに類する」ほうがベターである。こういうことを申し上げただけでございます。
#161
○森元治郎君 正しいと言って一本の解釈をきめておきながら、あっちもいい、こっちもよりいいと言う。あやふやだが、一本に統一しなさい。少し頭ひねって書いてごらんなさい。どういうことになりますか、二つ合わせて、短いことばで端的に、西堀局長。横文字は使わないことにしてさ。
 それから大臣、これは、こういう小細工はやらないほうがいいですよ。ちゃんと「その他」で意味が通ずるんだから。当時はその気持ちで結んだ条約だから、あるがままにこれを持ってきて、どうぞ国会で皆さん慎重御審議を願いたいと言えばいいので、ベターだの、ベストだの、ライトだのなんと言う必要はないのです。あるがままを御審議ください、いいものはこれからつくりますからと、これでいいんだよ。そうですな。
#162
○国務大臣(愛知揆一君) 何と申しますか、御注意の点は重々よくわかります。
#163
○森元治郎君 いいですよ。
#164
○羽生三七君 一点だけ。
 現在のジュネーブ軍縮委員会における英国案、ソ連案、有事査察を伴うCB兵器の禁止を提唱しておる日本案、この前あれは四月十三日の予算の分科会で詳細に、これ大臣、局長から承りましたが、その後、そのときの答えで、いずれ態度の決定を迫られるというお話があったのですが、その後どうなっておるのか、その後の事情を、少し日がたっておるので、お聞かせいただきたい。
#165
○政府委員(西堀正弘君) もう繰り返しませんけれども、英国の案は御存じのとおり生物だけ、ソ連のは生物とそれから化学も含めて、ただし検証がない。それで、日本としては、両方実質的討議をやっていって、しかも有効な検証制度を伴ったものというのが日本の基本的方針でございました。そうして、そのためには専門家会議を招集して、そこにその専門家によって有効な査察と申しますか、検証制度というものをこしらえていこうじゃないかというのがこの前申し上げたところでございます。そこで、この前羽生先生は、たしか、日本のそういった立場と申しますか、専門家会議を招集しろといったような立場は、何か英国案とソ連案との間にはさみ打ちになって、一種の逃げ道としてそういったものを提出したというようなふうに思えるのだがと、こういうお話があったのでございますけれども、われわれとしては、決してそういった、何と申しますか、行き当たりばったりの立場でもって、いま申しました専門家会議というものを提唱しておるわけでございませんで、これはそもそも軍縮条約というもの――あらゆる軍縮条約はそうだろうと思うのでございますけれども、その軍縮条約の成立のためには当事国がその条約に違反するということを抑止するところの力、すなわち抑止力、これと、当事国がお互いに相手方を信頼できると考えること、すなわち信頼性と申しますか、この二つが必要であると思うのでございます。そして、この二つを保証するものがいわば検証方法であると思うわけでございます。そこで、生物化学兵器につきましても要するに、抑制力と、それから信頼性というものを保証しなければならない。いま日本が提案しておりますのは、生物並びに化学両方でございますけれども、使用、開発、製造、貯蔵、この「使用」につきましては、この検証方法、特にいま日本が言っておりますところの有事査察と申しますか、何か違反が行なわれたという場合には、それをそこへ行ってチェックする有事査察というようなことにつきましては、この「使用」につきましては、これは他の三つの形態に比べまして、いわば簡単なあれでございます。と申しますのは、あの国において使用されたらしいということがありますと、その国としては当然どっかから派遣されることになります。これはまだ議論の最中でございますけれども、たとえば国連事務総長が調査団を派遣するという場合に、使用された国でございますから、喜んでその調査団を受け入れるということがあるわけでございますね。それから、これに反しまして開発とか製造とか貯蔵、これは違反している国、あるいはあそこではどうもあぶないという場合には、その国へ行って調査しなければならないわけでございますから、おいそれとは入国もさしてくれないというようなことで、非常にあとの三者の態様の場合には、これは困難なわけでございます。そこで、生物兵器につきましては、これはいまのところ、どの国もその効果、殺傷効果その他と申しますか、あるいは一般に広がるといった悪い効果の面から、あまり使われていない、しかし、化学兵器につきましては、これは化学兵器の中でも、化学剤の中でも、ものによってだいぶん違うのでございますけれども、たとえば神経剤とかびらん剤とか、こういったものは平和利用がきわめて限定されております。しかしながら、青酸カリの青酸のような血液剤でありますとか、それからホスゲンのような窒息剤でありますとか、こういったものは、製造の過程において、紙一重の差でもって、あるいはプラスチックになり、あるいは農薬になり、あるいは医薬品になり、あるいは染料になる。こういったことでございますので、こういった化学剤を兵器に使うものを、有効な検証方法を伴って全面的に禁止するというのは、非常に困難なわけでございます。しかしながら、だからといって、この有効な検証方法を開発するのを、われわれ日本がいま主張しておりますBC兵器全面的な禁止ということを打ち出すためには、これはもう好むと好まざるとにかかわらず、避けて通れない一つの道なんでございます。したがいまして、われわれがいま専門家、これはいま特に製造、それから開発、貯蔵に関してでございますけれども、この製造の有効な検証ということになると非常に高度の専門的知識を要しますので、したがって、専門家の会議を提唱しているわけでございます。で、これに関連いたしまして私ちょっと触れさしていただきたいのは、地下核実験の停止の問題でございますが、この場合に、先生御承知のように、アメリカはオープン・ソサエティーとして、当然のことながら、厳重な検証方法、現地に行っての検証方法を主張しておりますし、それからソ連のほうにおきましては、これは閉鎖された社会として、これは入れられない、こう言っておるわけでございます。結局、そこの妥協を求める場合には、これは政治的決断というものが必要なんでございますけれども、しかし、その政治的決断を、技術的な検証方法というものを開発することによって、その政治的な妥協への決断というものを促すことはできると思うわけでございます。そこで、日本が地下核実験についていま言っておりますのは、御承知のとおり、ある一定期間のうちにマグニチュード四・〇以上の地下核実験を監視するといった有効な検証方法を開拓するために各国が大いに努力するといった約束を取りつけた上で、とりあえず、マグニチュード四・七五以上の地下核実験を全面的に禁止する、こういったことを言っているわけでございます。そして、将来この四・七五以上のものにつきまして検証方法が開発されたときには、今度は全国的に地下核実験を禁止する、こういうことを日本は言っておるわけでございます。その場合に、全面的に禁止いたしましても、マグニチュード四・〇以下のものにつきましては、これはまあいわばお目こぼしと申しますか、その程度のことは、間違いと申しますか、違反があってもたいしたことがないから、これは目をつぶろうじゃないか、これが一つの妥協でございます。これと同じようなことが、このBC兵器につきましても専門家の間でもって討議をせしめて、そうするならば、完全、完ぺきな検証方法、すなわち一切の違反というものがないという意味の完ぺきな検証方法というものはまず不可能じゃなかろうか。まあ、それを待つことは百年河清を待つにひとしいことでございますから、それよりはむしろ、ある程度のお目こぼしがある、ある程度の違反はあっても実害のない程度のところでもって有効な検証方法というものが見つかるのではなかろうか、こういったところが要するに日本の考えているところでございまして、決して、英国とソ連との両方の案にはさみ打ちになって、その逃げ場としてあれを言い出したといったふまじめなことではないのでございまして、日本がいま言っております専門家会議、そこにおける有効な査察方法、それは一種の妥協をねらっておるわけでございますけれども、その妥協についての技術的な方法を開発することによって米ソ両大国の政治的決断を促す、こういった意味で専門家の会議を提唱しているわけでございます。したがいまして、われわれの提唱しておりますのは非常に良心的な意味で、しかもまた、自信を持っていま提出しているわけでございますから、どうぞ御理解と御同情を持って見守ってやっていただきたいと存じます。
#166
○羽生三七君 御説明はよくわかりましたが、私の主として承りたいことは、そういう経過はよくわかります。そこで、その日本案が、中間的な、何というか、逃げ道というところにウエートを置いて私はこの前質問をしたのではなしに、むしろ非常に日本案は評価をされておるが、しかし、非常にめんどうなために、ソ連案がいいか英案がいいかというある程度決定を迫られておる時期にこういうものが出てきて、結果としては、案としてはいいけれども、むしろいずれかの案の決定をおくらせる役割りを果たしておるのではないか、そういうことが一部の批評にあるわけですね。そこで、そういうお尋ねをしたときに、何とか成立させるように努力をしておるというのが最後のお答えであったわけです。ですから、その努力はどの程度に実って現状はどうなっておるかと、それをひとつ聞きたかったわけです。現状説明をひとつお願いしたいと思うのです。
#167
○政府委員(西堀正弘君) 日本の提案しておりますその専門家の会議、したがって、そこにおきまして実質的な検証方法を何とか開発しようじゃないか、この提案につきましては、スウェーデン、カナダ、それからパキスタン、それからオランダという国々が称賛をし、かつ非常に同情を持ってながめて支持をしておるわけでございます。したがいまして、英案、ソ案このいずれによろうかという話は、いまのところ、むしろそこらの論議よりは、日本が提案しいま申しました四カ国が支持をいたしておりますところのこれをもう少し突き進めようじゃないか、それが現状でございまして、六月十六日に再開いたしますところのこの軍縮委員会においてもまずこの点から始めたい、そうして、これが夏の会期において最後に至りましてもまだそう簡単にはいかないということになりましたときに、あるいは英案によるかソ連案によるか、まあどちらによるかというと、いまのところ英案によらざるを得ないかと思いますが、そこらはまだいまのところ何とも申し上げることができない。一年くらいは日本の非常に実質的内容のある提案をもう少し突き進めていこうじゃないかということになることも考えられますので、いまのところは、それ以上のことは申し上げられないといった段階でございます。
#168
○委員長(長谷川仁君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#169
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認めます。
 なお、討論、採決につきましては、本会議散会後委員会を再開しこれを行なうこととし、暫時休憩いたします。
   午後三時十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時十六分開会
#170
○委員長(長谷川仁君) 休憩前に引き続き、外務委員会を再開いたします。
 再び
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 休憩前に質疑は終局いたしておりますので、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#171
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#172
○委員長(長谷川仁君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#173
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#174
○委員長(長谷川仁君) 次に、請願第二五六号日米安保条約廃棄等に関する請願外百六件を一括して議題といたします。
 まず、専門員から説明を聴取いたします。
 瓜生専門員。
#175
○専門員(瓜生復男君) 今国会中外務委員会に付託された請願は全部で百七件でございます。
 まず、お手元の表の上の欄の1でまとめました二五六号、一六三三号及び三七二九号外六十件は、安保条約を廃棄すること、このため条約の終了通告を行なうよう国会が議決すること、沖繩の即時・無条件・全面返還を実現するよう議決することを要望するものであります。
 次に、2でくくりましたのは世界連邦の建設に関するもので、一〇二一号外三件は、参議院が「世界連邦の建設に関する決議」を採択されたいというものであり、一三七一号外十八件は、世界連邦の建設促進につき必要な措置を講ぜられたいというものであります。
 次に、3の一三一八号、二八七九号及び二〇一〇号外七件は、繊維品の対米輸出自主規制に反対する請願でありまして、国会の決議を遵守すること、安易な妥協により自主規制に応じないこと、対米交渉を中止してガットの場に移すこと等を要望するものであります。
 次に、4の一四九六号外九件は、中国への渡航が差別されており、また旅券法の改正によって差別が拡大され、制限が強化されるので、このような差別、制限が行なわれないようにし、自由に諸外国に渡航できるように善処されたいというものであります。
 最後の三二三三号は、日朝赤十字会談を再開して円満な妥結をはかり、在日朝鮮人の帰還業務促進のため、適切なる措置を講ぜられたいというものであります。
 以上で御説明を終わります。
#176
○委員長(長谷川仁君) 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#177
○委員長(長谷川仁君) 速記を起こしてください。
 それでは、ただいま審議いたしました請願一三一八号ほか二十八件は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#178
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#179
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#180
○委員長(長谷川仁君) 継続調査要求についておはかりいたします。
 国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本院規則第五十三条により本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#181
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#182
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#183
○委員長(長谷川仁君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。
 閉会中、国際情勢等に関する調査のため委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#184
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。
 つきましては、派遣委員の人選派遣地、派遣期間等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#185
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 なお、本院規則第百八十条の二により、議長に提出する議員派遣承認要求書の作成等につきましても、便宜、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#186
○委員長(長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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