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1970/03/10 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第2号
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1970/03/10 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第2号

#1
第063回国会 法務委員会 第2号
昭和四十五年三月十日(火曜日)
   午後一時十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 一月二十日
    辞任         補欠選任
     河口 陽一君     西郷吉之助君
     上田  稔君     木内 四郎君
 二月十三日
    辞任         補欠選任
     占部 秀男君     松澤 兼人君
     成瀬 幡治君     小林  武君
 二月十四日
    辞任         補欠選任
     木内 四郎君     佐藤 一郎君
     西郷吉之助君     藤田 正明君
     植木 光教君     内田 芳郎君
     木村 睦男君     江藤  智君
 二月十七日
    辞任         補欠選任
     近藤英一郎君     大谷 贇雄君
     佐藤 一郎君     河口 陽一君
 二月十八日
    辞任         補欠選任
     大谷 贇雄君     西田 信一君
     内田 芳郎君     上田  稔君
 二月二十六日
    辞任         補欠選任
     西田 信一君     山崎 竜男君
 三月四日
    辞任         補欠選任
    上田  稔君      内田 芳郎君
 三月五日
    辞任         補欠選任
     内田 芳郎君     上田  稔君
 三月十日
    辞任         補欠選任
     藤田 正明君     小林 国司君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         小平 芳平君
    理 事
                河口 陽一君
                後藤 義隆君
                亀田 得治君
                山田 徹一君
    委 員
                上田  稔君
                江藤  智君
                木島 義夫君
                小林 国司君
                山崎 竜男君
                松澤 兼人君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
   政府委員
       法務政務次官   大竹 太郎君
       法務大臣官房長  安原 美穂君
       法務大臣官房会
       計課長      伊藤 榮樹君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   寺田 治郎君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   大内 恒夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (昭和四十五年度法務省及び裁判所関係予算に
 関する件)
 (今期国会法務省関係提出予定法律案に関する
 件)
○派遣委員の報告
    ―――――――――――――
#2
○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として小林国司君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(小平芳平君) 理事の補欠選任についておはかりいたします。
 委員の異動に伴い理事が一名欠員になっておりますので、この際その補欠選任を行ないたいと存じます。
 選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に河口陽一君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(小平芳平君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 法務行政について小林法務大臣から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。小林法務大臣。
#6
○国務大臣(小林武治君) 委員各位には、平素から法務行政の諸問題につきまして種々御尽力いただいておりますことに対し、この機会に厚く感謝いたす次第でございます。
 本日は、法務大臣に就任いたしまして初めて当法務委員会に出席いたしましたので、私が日ごろ考えておりますことを申し上げたいと思います。
 まず、私は、わが国の民主主義及び法治主義の基盤である法秩序を維持し、国民の基本的権利を保全、擁護して平和な社会生活を保障することが法務行政の使命であると存じておりますが、今後とも法務行政の最高責任者として全力を尽くしたい所存であります。このような観点から当面重要と考えております二、三の点につきまして申し述べたいと思います。
 第一は、治安対策についてであります。御承知のとおり、昭和四十二年秋以来、一部学生等による過激かつ大規模な集団暴力事件が全国各地において相次いで発生しましたが、昨年秋以後の国際反戦デーや佐藤総理訪米の際の暴力事件に加担いたしました学生が大量に検挙され、国内の治安情勢は一応平静に向かいつつあり、また、大学紛争も収拾のきざしを示しつつあるやにうかがわれるのでありますが、過激派集団は本年六月の日米安全保障条約再検討期を目ざして組織の立て直しと強化を企図しており、今後の情勢にはなお楽観を許さないものがあると存ずるのであります。私といたしましては、過激派集団の動向を慎重に見守り、いやしくも社会不安や国内の治安を危うくするような事態を招くことのないよう配慮するとともに、過激な違法行為に関しては、即時厳正な態度をもってこれに対処し、治安維持に万全を期する所存であります。
 第二に、綱紀の粛正についてであります。私は、健全な民主政治の基盤は、すべての公務員の姿勢が厳正に保持されることにあると信じております。最近の情勢にもかんがみ、今後ともこの点についてはより一そう意を用い、公務員の汚職事犯には、特に厳正な態度をもって臨み、綱紀の振粛をはかるとともに、国政に対する国民の信頼を高め、国政の適正な運用に寄与いたしたいと考えるのであります。
 第三に、法務行政の充実についてであります。各位御承知のように、法務省が所管いたしますところは、民事、刑事、矯正、保護、人権擁護、出入国管理、訟務その他国民の権利義務にかかわる事項でありますので、じみではありますが重要な、これら各種の行政の充実と適正迅速な運用につとめたいと考えるのであります。
 特に、わが国最近の産業経済の著しい発展に伴い登記事件その他の民事行政需要が著しく増大している情勢にかんがみ、国民の権利の保全、経済活動の円滑化、公共事業の促進に応ずることができるよう、効果的な施策を講じて国民の期待にこたえたいと存じております。
 また、法務局、刑務所その他所管各庁の老朽庁舎等の改築、職員の待遇改善等につきましても十分に留意いたしまして、法務省関係職員の士気高揚につとめたい所存でございます。
 最後に、法務行政の充実をはかるための予算につきましては、できる限りの措置を講じてまいりたいと考えておりますが、この点につきましてもよろしくお願いいたします。
 以上、簡単ではありますが、私の所信を申し上げまして、委員各位の格段の御協力を重ねてお願いする次第でございます。
#7
○委員長(小平芳平君) 次に、大竹政務次官から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。大竹法務政務次官。
#8
○政府委員(大竹太郎君) このたび小林法務大臣のもとに法務政務次官を拝命いたしました大竹太郎でございます。
 ただいま法務大臣から所信が述べられましたが、私もその旨を体しまして、全力をあげて努力する決意でございます。皆さま方の御協力と御指導をお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ごあいさつといたします。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(小平芳平君) 次に、昭和四十五年度法務省並びに裁判所関係予算及び今期国会における法務省関係提出予定法案について、順次説明を聴取いたします。最高裁判所大内経理局長。
#10
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 昭和四十五年度裁判所所管予定経費要求額について御説明申し上げます。
 昭和四十五年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、四百八十八億九千四百八十一万円でありまして、これを前年度予算額四百二十三億八千五百八十六万八千円に比較いたしますと、差し引き六十五億八百九十四万二千円の増加になっております。
 これは、人件費におきまして五十五億九千八百九十万八千円、裁判費におきまして一億六千三百三十七万八千円、営繕費におきまして三億一千六百九十万二千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等におきまして四億二千九百七十五万四千円が増加した結果であります。
 次に、昭和四十五年度予定経費要求額のうちおもな事項について御説明申し上げます。
 まず、人的機構の充実のための経費であります。裁判官等の増員といたしまして、いわゆる学生集団事件等の適正迅速な処理と法廷警備態勢の充実をはかるため、判事補二十人、裁判所書記官二十人、家裁調査官十人、裁判所事務官(法廷警備員)百人の増員に要する人件費として八千八百九十万八千円、簡易裁判所の交通事件(略式事件)の適正迅速な処理をはかるため、簡易裁判所判事五人、裁判所書記官五人の増員に要する人件費として九百八十四万八千円、執行官法所定の金銭の保管及び予納事務を取り扱うため、裁判所事務官(歳入歳出外現金出納官吏補助職員)二十人の増員に要する人件費として八百九十一万七千円、合計一億七百六十七万三千円が計上され、家庭裁判所専任所長の増設といたしまして、家庭裁判所を充実、強化するため、専任の家庭裁判所長の増設二庁に要する経費として百八十九万八千円が計上されました。
 次は、裁判運営の近代化及び能率化に必要な経費であります。裁判官の執務体制の近代化をはかるため、下級裁判所裁判官研究庁費一億七千三百二十八万四千円、資料室図書、図書館図書の充実をはかる等のため、裁判資料の整備に要する経費一億二千七百十八万円、裁判事務の能率化をはかるため、検証用器具等の整備に要する経費五千九百四十万二千円、電子計算機による事務機械化の調査研究のため、研究開発に要する経費九十三万円、合計三億六千七十九万六千円が計上されました。
 次は、裁判所庁舎等の警備体制の整備に必要な経費であります。庁舎警備関係の旅費、庁費として七千七万二千円、法廷秩序維持関係の旅費、庁費等として三千六百八十六万一千円、合計一億六百九十三万三千円が計上されました。
 次は、営繕に必要な経費であります。裁判所庁舎新営、増築等に要する経費として、裁判所庁舎等の継続工事十三カ所、新規工事十五カ所、増築工事三カ所の工事費及び営繕事務費等三十八億二千六百二十一万五千円が計上されました。
 最後に、裁判費であります。国選弁護人の報酬、証人、調停委員等の日当、その他裁判に直接必要な旅費、庁費等として二十六億九千百五十一万五千円が計上されました。
 なお、この経費には、裁判官等の機動的な配置をするためのてん補に必要な経費二千三百八十五万二千円、特殊損害賠償事件の処理に必要な経費一千万円、国選弁護人の報酬を約一〇%増額するに必要な経費三千六百八十二万二千円、国選弁護人等の日当の現行の単価八百五十円を九百円に、証人等の日当の現行の単価六百五十円を七百円にそれぞれ増額するに必要な経費七百三十四万四千円、合計七千八百一万八千円が含まれております。
 以上が昭和四十五年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。
    ―――――――――――――
#11
○委員長(小平芳平君) 次に、法務大臣官房伊藤会計課長。
#12
○政府委員(伊藤榮樹君) 昭和四十五年度法務省所管予算の内容について、概要を御説明申し上げます。
 昭和四十五年度の予定経費要求額は九百四十九億七千二百七十八万五千円でありまして、これを前年度予算額八百二十二億五千八百八十万六千円に比較いたしますと、百二十七億一千三百九十七万九千円の増額となっております。
 増額分の内訳を大別いたしますと、人件費百五億四千九百八万五千円、一般事務費十七億七百九十五万七千円、営繕施設費四億五千六百九十三万七千円となっております。
 まず、増員について申し上げますと、
 第一に、公安労働事件の増加に対処するため、副検事十一人、検察事務官二十七人が増員となっております。
 第二に、自動車等による業務上過失致死傷事件の増加に対処し、事件処理の円滑適正化をはかるため、副検事二十六人、検察事務官二十四人が増員となっております。
 第三に、法務局において事務官百九十人が増員となっております。まず、登記事件は経済の成長等に伴い著しく増加しておりますので、登記事務の迅速、適正化をはかる観点から百八十二人の増員が行なわれております。また、国の利害に関係のある民事、税務等の争訟事件の処理を充実するため事務官五人、近時の人権侵犯相談事件等の増加に対処するため事務官三人の増員が行なわれたものであります。
 第四に、刑務所における職員の勤務体制を改善し、あわせて保安警備の充実をはかるため、看守九十九人が増員となっております。
 第五に、非行青少年対策を充実する観点から、関係職員四十四人が増員となっております。その内容は、少年院の職業補導の充実のため教官十九人、少年鑑別所観護活動の充実のため教官十二人、保護観察所の観察機能の充実のため保護観察官十三人でありまして、犯罪を犯した青少年の健全な社会復帰を強力に推進しようとするためのものであります。
 第六に、国際交流の活発化に伴い、増加している出入国審査業務の適正、迅速化及び在留外国人の資格審査の適正化をはかるため、地方入国管理官署において、入国審査官二十一人、入国警備官三人が増員となっております。
 第七に、公安調査庁における破壊活動調査機能を充実するため、公安調査官二十人が増員となっております。
 増員の内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和四十三八月閣議決定に基づく定員削減計画による昭和四十五年度削減分として四百十九人が減員されることとなりますので、所管全体といたしましては、差し引き四十六人の定員増加となるわけであります。なお別に、沖繩北方対策庁に当省定員から一人を振りかえ、本年五月から法務事務官一人がこれに出向する予定となっております。
 次に、一般事務費について御説明申し上げますと、前年度に比し、旅費類が単価増分を含めて四億三千五百六十万円、庁費類七億三千九百十万円、収容者食糧費、弁償金等のその他の類五億三千三百二十五万円が増額となっております。
 法務省におきましては、昭和四十五年度予算案の主要事項を治安対策の充実強化、国民の権利保全の強化、非行青少年対策の充実強化、刑務所等被収容者の処遇の改善、出入国管理業務の充実等に取りまとめておりますので、これらの主要事項を中心に御説明申し上げたいと存じます。
 第一の治安対策の充実強化につきましては、さきに申し上げました公安労働事件担当の検察官十一人を含む合計二百五十一人の増員経費及び関係組織の人件費を含めて五百九十七億八千九百万円を計上し、前年度に比して六十七億六千三百万円の増額となっております。これにより検察機能矯正機能及び破壊活動調査機能の充実をはかるほか、保護観察機能を強化して罪を犯した者の更生と再犯の防止をはかり、もって法秩序の維持に万全を期することといたしております。
 その増額分について申し上げますと、
 まず、検察庁関係としては、二十二億九千四百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、直接検察活動に必要な検察費一億一千三百万円、公安関係事件処理の適正をはかるための応援捜査旅費一千六百万円、捜査用器材等二千万円、機動力、通信施設等整備庁費六千三百万円、並びに公害犯罪に対する調査、研究費二百万円等が含まれております。
 次に、矯正関係としては三十七億四千四百万円が増額されておりますが、この中には、関係職員の人件費のほか、職員研修、訓練を充実整備するための経費等二百万円、施設備品費三千六百万円等が含まれております。
 次に、公安調査庁関係としては、四億円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、調査用器材千四百万円、調査活動費四千二百万円の増額が含まれております。
 次に保護関係としては三億二千五百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、保護司等との連絡通信費、事務能率器具等庁費千二百万円、更生保護事業補助金四百万円等が含まれております。なお、八王子、堺、小倉について保護観察所の支部を設置し、その所在地の地方裁判所支部の管轄区域内において、事務を分掌せしめ、保護観察の一そうの充実をはかることとしております。
 第二に、国民の権利保全の強化につきましては、
 まず、登記事務処理の適正化に関する経費として、さきに申し上げました事務官百八十二人の増員経費及び関係職員の人件費を含めて九十二億円を計上し、十三億二百万円の増額となっております。これにより、経済の発展、公共事業の活発化等に伴う登記事件の増加に対処して、事務処理の適正、迅速化につき一そうの改善をはかることとしております。その増額のおもなものは、登記諸費(すなわち、法務局、地方法務局において一般登記事務を処理するために要する旅費、庁費)一億六千二百万円、不動産登記簿の粗悪用紙改製に要する旅費、庁費千七百万円、事務処理の能率化をはかるための超高速度複写機等庁費千三百万円、公共事業関係登記事件の処理に件う応援等の旅費、庁費三千六百万円、登記関係地図の維持管理をはかるための庁費等九百万円、不動産登記簿の表示をメートル法表示に書きかえるために必要な旅費、庁費四千五百万円のほか、謄抄本作成事務を一部請負により処理するための庁費三千七百万円等であります。
 次に、人権擁護活動の充実に関する経費につきまして、関係職員の人件費を含めて四千一百万円の増額となっております。そのおもなものは、特殊(同和)事件を含む人権侵犯事件調査の強化をはかるための調査・相談旅費等五百万円、人権擁護委員の活動強化をはかるための実費弁償金四百万円(委員百四十八人の増員及び一人当たり平均年額の増額)、交通事故被害者等救済の一環としての法律扶助事業補助金五百万円等であります。
 第三に、非行青少年対策の充実、強化につきましては、治安対策関係と重複しておりますが、さきに申し上げました少年院教官等四十四人の増員及び関係職員の人件費並びに収容関係諸費を含めて九十二億七千五百万円を計上し、前年度に比して七億六千三百万円の増額となっております。これにより、前年に引き続き粗暴化、兇悪化の傾向にある青少年犯罪に対処する検察体制の充実をはかるとともに、少年院、少年鑑別所の機能を人的、物的に整備し、同時に青少年に対する保護観察機能を強化して、罪を犯した青少年の更生と再犯の防止をはかることといたしております。
 その増額分について申し上げますと、
 まず、検察庁関係としては四千万円が増額されておりますが、これは検察取り締まり経費(検察費)であります。
 次に、少年院関係としては、四億八千二百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、初等少年院の被収容者のうち義務教育未修了者に対する教育の充実をはかるための教科資材費百万円、教育・生活用備品八百万円、収容者用日用品・医療衛生資材・食糧費(被収容者一人一日当たり五円四十八銭の増)等収容経費二千九百万円等の増額分が含まれております。
 次に、少年鑑別所関係としては、二億一千一百万円が増額されておりますが、その中には、関係職員の人件費のほか、鑑別観護用備品二百万円、居室照明器具・日用品・食糧費(被収容者一人一日当たり五円六十四銭の増)等収容経費二千万円等の増額分が含まれております。
 次に、保護観察所関係としては、さきに申し上げました保護観察官十三人の増員及び担当職員の人件費並びに補導援護経費を含めて二億四千六百万円が増額となっておりますが、この中には保護司活動の充実をはかるための保護司実費弁償金及び更生保護委託費の単価引き上げによる所要経費九千五百万円等が含まれております。
 第四に、刑務所等被収容者処遇の改善につきましては、一億二千八百万円の増額となっております。刑務所におけるおもなものは、刑務所作業賞与金の支給計算高を一〇%引き上げるための千二百万円、生活用備品、収容資材、医療資材、入浴用燃料、日用品、浄化槽清掃料等の収容諸費(収容人員一日平均六万人としての四千人減に伴う減額を含めて)六千五百万円等であります。
 なお、被収容者食糧費につきましては、主食につきまして従来米四割麦六割の混合率でありましたが、これを五対五の割合に改め、麦価及び菜代(被収容者一人一日当たり二円九十三銭ないし三円五十八銭の増)の単価引き上げ、及び誕生日菜一人当たり二十五円、祝日特別菜一人一日二十五円並びに被収容者の心情の安定をはかるための茶、脱脂粉乳等を加給するのに必要な経費一日一人当たり一円五十五銭増の二円九十四銭に内容改善をはかり、千六百万円(四千人の減額を含めて)の増額となっております。
 第五に、出入国管理業務の充実についてでありますが、さきに申し上げました入国審査官等の増員及び関係職員の人件費を含めまして二億九千五百万円の増額となっております。その中には、近時増加する出入国審査業務及び在留資格審査事務の適正充実をはかるための臨船審査等旅費三百万円、模写電送装置等出入国審査費三百万円、舟艇建造費千一百万円、万国博覧会開催に伴う出入国審査業務の増加に対処するための旅費、庁費四百万円等であります。また、港出張所を千葉県木更津港等五カ所に新設し、審査業務等の迅速、適正な処理をはかることにしております。
 次に、その他の事項経費のうち増額となったおもなものについて申し上げますと、
 一、訟務費(訟務部、法務局、地方法務局において、国の利害に関係のある民事・行政事件等の訴訟事務を処理するために要する経費)につきましては、弁護士等謝金一千六百万円、訟務旅費六百万円、庁費類五百万円、保証金二千万円、計四千七百万円が増額となっております。
 二、昭和三十九年の閣議了解を得ました犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第四回国際連合会議を本邦で開催することにつきましては、本年八月、国連加盟各国政府代表、個人参加等外国人千二百人の参加のもとに京都市国際会館で実施するに必要な経費として、通訳等謝金千四百万円、会議参加等旅費六百万円、会場借料等庁費六千一百万円、合計八千一百万円が計上されております。
 三、昭和四十六年度において法務省に電子計算機を導入することを前提として、その準備作業に要するカードせん孔委託費等三千六百万円が増額となっております。なお、電子計算機の借り入れについて、その製作に多くの日数を要しますので、あらかじめその借り入れ契約を結ぶため一億六十八万円の国庫債務負担行為を要求しております。
 四、刑務所作業費につきましては、原材料費が相当額増額されましたほか、金属、印刷等の作業を充実するための機械器具の更新費、作業付帯経費等合わせて一億八千万円が増額となっております。
 五、昭和四十四年十二月に実施されました衆議院議員総選挙関係の検察経費として三千八百四十四万九千円が新規に計上されております。
 以上が一般事務費関係で増額となったおもなものであります。
 次に、施設の整備につきましては、四億五千七百万円の増額となっております。これは検察庁、法務局等庁舎の新営整備経費が五億三千九百万円の増額となりましたが、刑務所、少年院等の収容施設の新営整備経費が二億一千八百万円減額となり、差し引き三億二千一百万円の増額となったことと、各所修繕費、営繕付帯事務費におきまして一億三千六百万円の増額があったためであります。
 なお、年次計画に基づく法務局出張所の整備として、前年に引き続き三十九庁の新営が認められております。
 このほか、法務本省電子計算機室等新営費として、前年に引き続き建設省所管の官庁営繕費に四億七百万円が計上されており、さらに特定国有財産整備特別会計に下野刑務所(仮称)――その後黒羽刑務所と称することに決定しました――等十三施設の施設整備費として四十七億三千七百万円が計上されております。
 以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の概要であります。
 終わりに、当省主管歳入予算について一言御説明いたします。
 昭和四十五年度法務省主管歳入予算額は二百九十四億二千一百二十七万二千円でありまして、前年度予算額二百六十一億五千五百九十八万六千円に比較いたしますと、三十二億六千五百二十八万六千円の増額となっております。これは過去の実績等を基礎として算出されたものでありまして、その増額のおもなものは、罰金及び科料と刑務所作業収入であります。
 以上をもって、法務省関係昭和四十五年度予算案についての説明を終わります。
    ―――――――――――――
#13
○委員長(小平芳平君) 次に、法務大臣官房安原官房長。
#14
○政府委員(安原美穂君) 法務省の今国会提出予定法案につきまして、簡単にその概要を御説明申し上げたいと思います。
 お手元に第六十三回国会提出予定法案という刷り物を差し上げておりますので、この順序に従いまして御説明を申し上げます。
 法務省が予定をいたしております法案は全部で九件でございまして、そのうち予算関係法案は二件でございます。そして、すでに予算関係法案であります法務省設置法の一部を改正する法律案及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案は、国会に提出済みであります。その他も、すでに準備を完了しておるものがほとんどであります。
 まず法務省設置法の一部を改正する法律案でございますが、その内容は、これを要しますに、刑務所の設置、廃止であり、もう一つは入管の事務所の出張所の設置でございます。
 刑務所の設置、廃止の問題は、所在地等の状況等にかんがみまして、東京都豊島区にございます東京拘置所を現在小菅刑務所のあります葛飾区へ移転いたしまして、小菅刑務所と宇都宮刑務所を廃止し、新たに栃木県那須郡黒羽町に黒羽刑務所を設置するということと、収容者に対する処遇の充実をはかりますために岡崎市に岡崎医療刑務所を設置するというのが、刑務所関係の設置法の改正であります。
 第二の入管関係でございますが、岩手県の宮古港、それから茨城県の鹿島港、それから千葉県の木更津港、静岡県の田子の浦港、愛知県の衣浦港、以上五つの港における出入国者の増加に対処いたしまして、出入国管理事務を一そう有効適切に行なうため、この五カ所の入国管理事務所の出張所を新設するということと、大阪入国管理事務所伊丹空港出張所の建物を、今日空港の整備拡張に伴いましてその位置を伊丹市から豊中市に移すということを内容とするものでございます。
 次の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案は、先ほど裁判所当局から御説明がありましたように、判事補二十人、簡易裁判所判事五人及び裁判官以外の裁判所職員計百五名を、裁判の処理の迅速・適正化をはかるという観点から、増員しようとするものであります。
 その次は、執行官の恩給の年額の改定等に関する法律案。これは、一般の公務員恩給の増額に準じて執行官の恩給を増額することを内容とするものでありまするが、最近総理府当局においてでき上がりました一般公務員の恩給法の一部改正法案の内容を検討しておりますが、おおむね執行官は、一般の公務員の恩給に準じて支給される執行官の恩給については特に法律の改正を必要としないという見通しが非常に大きくなりましたので、この法案はおそらく提出をいたさない公算が大でございます。
 その次は、裁判所法の一部を改正する法律案であります。簡易裁判所の事物管轄を若干拡張すること。さらに具体的に申し上げますと、民事訴訟におきまして簡易裁判所の取り扱います事件は、請求の目的物の価額が最高限十万円以下であることが要件になっておりまするが、これは昭和二十九年に従来の三万円から十万円に額を上げたのでありまするが、その当時に比べまして経済事情に変化がございます。たとえば国民所得において五倍、勤労者所得において三倍、消費者物価指数においては約一・八倍というふうに、経済事情が変動してまいっておりますので、現在におきましては非常に訴訟の目的物の価額が大きくなっておりますので、したがって簡易裁判所の扱います事物管轄が十万円以下では狭きに過ぎるのではないかというふうに考えまして、これを調整する必要があるという結論に達し、その金額の引き上げといたしましては、この十万円を三十万円に引き上げたいということを内容とするものであります。その結果、民事裁判における簡易裁判所、地方裁判所間の負担料も適正化されるということが見込まれる次第であります。
 その次は、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案であります。民事訴訟及び刑事訴訟等における証人等の日当の最高額を若干増額することを内容とするものでありまして、さらに具体的に申し上げますると、民事訴訟及び刑事訴訟における証人の日当の最高額を現在の千三百円から千六百円に、鑑定人等の日当の最高額を現在の千百円から千四百円に、民事訴訟及び刑事訴訟における証人、鑑定人等の宿泊料の一日の最高額を、特別区の存する地域におきましては二千七百円とし、その他においては二千三百円とすること等をおもな内容とする改正でございまして、これは経済事情の変動に伴う改正であるのでございます。
 その次が、戸籍法の一部を改正する法律案。これは、出生及び死亡の届け出は現在の法律におきましては事件発生地に限定されておりまするが、これを事件本人の本籍地または届け出人の所在地でもできるように簡易化する便宜をはかるということを内容とするものでございます。
 ちなみに、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案と戸籍法の一部を改正する法律案は、参議院で先議をお願いすることを政府といたしましては予定いたしておりますので、よろしくお願いしたいと考えております。
 それから、その次の民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案。民事訴訟手続に関する条約及び民事及び商事に関する裁判上の及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の実施に伴いまして、民事訴訟手続に関する特例等を制定するということを内容とするものであります。もう少し具体的に申しますと、現在わが国の裁判所と外国の裁判所との間で、いわゆる司法共助、裁判所裁判官の文書の送達あるいは証拠調べの嘱託は、現在の制度におきましてはそれぞれの国とわが国との間で個々に協定を結んで実施いたしておりまするが、これらの条約は多数国間の条約でありまして、これに加入することによりまして、個々に協定を結ぶことなく、簡易迅速に書類の送達あるいは証拠調べの嘱託ができることに相なるものでありまして、近くこの条約案につきまして国会の御承認を得る予定でありますので、それに伴いまして必要な特例法を設けるものでございます。
 その次は、出入国管理法案。これは、出入国管理令を廃止し、新たにすべての人の出入国の公正な管理に関する法律を制定することを内容とするものでありまして、第六十一回国会に提出したものと同じ内容のものを準備中であります。
 最後に、沖繩において弁護士となる資格を有する者に本土の弁護士となる資格を付与するための法律案。沖繩において弁護士となる資格を有する者に本土の弁護士となる資格をどのような方法で与えるかということを内容とするいわゆる一体化法案でありまして、さらに具体的に申しますと、沖繩の弁護士資格を有する方でその資格を取得した後三年以上沖繩の裁判官、検察官または弁護士としての実務経験を有する方には、一定の口述試問を中心とする選考を行ないまして、これに合格した者には、わが国の本土の弁護士資格、それから検察官になる資格、検事になる資格、判事補になる資格を与えよう、それからまた、そういう実務経験三年未満の者でありましても、沖繩の司法試験に合格した人で、わが国で司法修習を受けた者については、三年未満の経験者でありましても選考を受ける資格を付与することといたしたいということ、それから、以上のような方でない方、主として経験三年未満の方で、沖繩の弁護士資格を有する方につきましては、民事、刑事に関する実務に関する特別の試験を行ないまして、これに合格した方について先ほど申しましたような選考を受けるようにしようということでございます。
 それから、このようないわゆる選考を行ないます前に、わが国の法令及び民事、刑事に関する実務の講習を行なうこととし、その便宜をはかることといたしておりまするが、講習を受けなくても選考は受けられることといたしております。
 なお、これらの選考及び試験、講習は、沖繩が復帰する間に行なう。具体的には、四十五年度と四十六年度に各一回行なうことといたしまして、これらの事項は司法試験管理委員会が所掌することといたしております。
 最後に、これらの選考を受けなかった者あるいはこれらの選考に合格できなかった者で、現に沖繩で弁護士を登録しておる方につきましては、沖繩復帰の日から五年間沖繩地域に限り弁護士の実務ができることとしているのであります。
 以上、法務省提出予定法案の説明を終わります。
#15
○委員長(小平芳平君) 以上で説明は終了いたしました。
 本件に関する質疑は後日に譲ることといたします。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#16
○委員長(小平芳平君) 速記を起こして。
    ―――――――――――――
#17
○委員長(小平芳平君) 次に、派遣委員の報告に関する件を議題といたします。
 先日当委員会が行ないました、最近における司法行政及び法務行政等の運用に関しての実情調査のための委員派遣について、それぞれ派遣委員から報告を願います。
 まず、第一班の御報告を願います。後藤義隆君。
#18
○後藤義隆君 派遣委員を代表して調査の結果を御報告いたします。
 去る一月二十九日から二月三日の六日間、小平委員長、占部委員と私の三名が、山口、長崎、福岡の三県を回り、司法行政及び法務行政等に関する状況を調査いたしてまいりました。
 まず、一月三十日下関入国管理事務所において入国管理に関する事項について当局の説明を聞き、翌三十一日は長崎地方裁判所において調査事項に関する各当局の説明を聴取いたしました。
 翌二月一日は大村入国者収容所を視察し、二日には福岡高等裁判所において関係当局から説明を聞いた後帰京いたしました。
 なお、今回の調査にあたり、現地の各当局から終始懇切な御協力をいただき、また、最高裁判所から総務局付今井判事補、馬場事務官、法務省から伊藤入国管理局警備課長、栗原事務官が同行して御協力くださいましたことを報告して、厚く御礼申し上げます。
 以下調査項目に従って調査の概要を申し上げます。
 最初に、第一の司法行政及び法務行政等に関する事項について派遣各地の状況を一括して申し上げたいと存じます。
 まず、民事事件におきましては、過去三年間の通常事件について申し上げますと、福岡地方裁判所管轄の受理件数は相当増加しており、裁判官の一人当たり負担件数は二百五十件ないし三百件となっておりますが、長崎地方裁判所管轄の受理件数は横ばいの状況であります。家庭裁判所における家事事件は過去数年来審判事件が減少しているのに反し、調停事件は徐々に増加する傾向にあります。さらに、簡易裁判所管轄の通常事件受理件数は、過去三年間において福岡、長崎の各地方裁判所管内とも減少いたしております。
 民事事件の中で近時世の注目を集めるに至りました公害に関する民事訴訟事件は、福岡高等裁判所管内における多くの地方裁判所で係属しておりますが、そのうち、特に顕著な事件としては熊本地方裁判所に係属中のいわゆる「水俣病事件」と福岡地方裁判所に係属中のいわゆる「カネミライスオイル中毒事件」でありますが、前者は現在主張整理中で将来示談和解の方向にあり、後者は鑑定等証拠調べ中でありますが、鑑定人の選定、刑事事件の処分を待って審理続行の模様であります。なお、福岡地方検察庁の説明によりますと、この種公害事件を刑事事件として取り上げることはむずかしいが、右「カネミライスオイル中毒事件」は昨年八月より検事を専従させて鋭意取り調べ中とのことであります。法務局で取り扱った公害事件は、ほとんどが小規模の事案でありますが、これらの事件処理には、人権擁護委員と協力して、相手方の人権も考慮しつつ、説得により迅速、妥当な処理解決を心がけているようであります。
 次に、刑事事件の状況を申し上げます。過去数年間における刑事事件数は、福岡、長崎の各地方裁判所管内とも横ばいまたは漸減の模様でありますが、昨年度は各地で学生、労組、反戦団体等の公安事件が発生し、事案の内容も相当複雑、困難なものもあるため、他の事件処理に若干影響を受けている模様であります。
 刑事事件の中でまず交通事件について申し上げますと、道路交通法違反事件は一昨年七月より施行された交通反則金通告制度により相当減少いたしておりますが、交通事故に関する業務上過失致死傷事件は増大し、刑事事件全体に対する割合は徐々に増加しており、この傾向は少年事件にも言える傾向であります。裁判所の判決も、悪質な交通犯罪事件については、科刑が重くなり、執行猶予率も少なくなっておりますので、高等裁判所への控訴が増加する傾向にあります。なお、長崎地方検察庁からは、悪質な交通犯罪事件に対する罰則の強化、交通犯罪の刑事裁判に付随する被害者の簡易救済措置等について、また、長崎県弁護士会よりは、交通事故による被害者救済のため自動車損害賠償保障法の強制保険金額をさらに一そう引き上げるべきである等の、各意見がありました。
 刑事事件の中で公職選挙法違反事件は、全事件数から見ますとさほど多くありませんが、審理期間はかなり長期にわたるものもあります。その原因としては、事案複雑、訴因多数、被告人等の引き延ばし、その他種々の事情で集中審理が困難なためであります。罪種としては買収犯が大部分を占め、事前運動、組織的違反が多いのがその特徴であります。昨年末に行なわれました衆議院議員選挙の違反件数は前回の選挙のときに比し少ないようでありますが、これは期日前検挙を励行したのが原因の一つと考えられます。
 次に、登記事件の処理状況について申し上げますと、登記事件の受理件数は逐年増加し、過去十年に比較して倍増いたしておりますが、特に長崎地方法務局のように離島や山間僻地が多く、また一人庁の多いところでは、職員の相互援助も思うようにならないため、区画整理その他の集団処理事件が提出された場合等にはやむを得ず嘱託官庁等の応援を受けて処理している状態で、事務の迅速処理はなかなか困難なようであります。このような状況に対処するためには、職員の増員のほか、職員の能率向上のための庁舎施設の改善、司法書士の研修、事務機械の導入、事務内容の合理化等が必要であるとの当局の意見がありました。
 次に、第二の調査項目であります出入国管理に関する事項について申し上げます。私どもが調査に参りました下関入国管理事務所の管轄区域は山口県全域及び福岡県の北部地区にある北九州市及び三市四郡でありますが、職員数は現在八十三名になっております。管内居住登録外国人の数は、二万八千余人でありますが、その大多数は朝鮮人で、その他中国人、アメリカ人の順になっております。在留資格で最も多いのが協定永住で八千三百余人でありますが、そのうち韓国籍の朝鮮人が大部分を占めております。不法入国事案の概況を申し上げますと、当管内は本邦中朝鮮半島に最も近い位置にあるため、違反事件は朝鮮半島からの密航者が多数を占めていましたが、最近韓国の経済事情の好転、同国の治安状況の安定その他の事情と相まって集団密航事件が漸減し、これにかわって不法残留事件が大きな比率を占めるに至っております。しかし、依然として小型韓国漁船の出入が多いため、これを利用して潜入する密航者もあとを断たないので、当局では外国船の要注意リストを作成して看視を厳重にするとともに、船内点検を綿密に実施する等により密航者の防止に努力いたしております。また、本年五月末より就航予定の「関釜フェリー」による密出入国者の防止は今後の重要業務になるものと考えられるので、当局はその対策を目下検討中であります。
 次に、大村入国者収容所の視察の模様について申し上げます。同所は昭和三十八年に建設せられました収容能力千名の収容所でありますが、最近シロアリの害等により腐蝕し、また収容者減少のため不使用部分の荒廃がはなはだしいため、昭和四十四年度から三カ年計画で新営工事に着工いたしておりました。同所の業務は被退去強制者を送還するまでの収容管理と強制送還の実施でありますが、その所遇は治安上支障なきかぎり自由を与えている点に特徴があります。処遇状況について申し上げますと、男女別々に一部屋十名の雑居房に収容しておりますが、給食平均カロリーは一日二千四百カロリーを若干上回っており、収容者の嗜好に沿うよう食事にくふういたしております。毛布は夏期四枚、冬期十枚を支給しておりますが、衣服は私物を使用することになっております。ただし、貧困者には衣服、日用品等を適時支給いたしております。その他環境衛生、運動娯楽、診療等には十分配慮いたしておる模様でありました。
 次に、第三の調査項目であります裁判所及び法務省の関係庁舎の営繕状況について申し上げますと、地方裁判所並びに地方検察庁の各支部、簡易裁判所、区検察庁等の庁舎の中には明治、大正時代の建物や終戦後の資材不足時代の建物で老朽、狭隘、損傷のものが相当存在しており、また法務局関係でも本庁をはじめ支局、出張所等において右のような庁舎が多数存在しておりますが、関係当局はこれらの庁舎の新営、改築を順次実施いたしておるようであります。関係当局からの庁舎等に対する要望を申し上げますと、長崎地方裁判所の厳原、平戸、島原の各支部、福岡地方検察庁の直方、行橋の各支部、福岡法務局及び長崎地方法務局の各本庁並びに両管内支局、出張所の老朽庁舎等の新営を、福岡高等検察庁、福岡地方検察庁等の合同庁舎については事務量増大による狭隘のため増築を、それぞれ要望いたしており、また長崎地方裁判所並びに長崎地方法務局からは本土、離島間の人事交流を円滑に行なうため職員宿舎の新営を望んでおりました。
 最後に、職員の増員についての要望を申し上げます。福岡地方裁判所からは、最近公安事件の増加により法廷闘争の激化、審理の複雑困難なため裁判官等及び警備員の増員を要望しており、また福岡高等検察庁からは管内で検事の欠員が相当生じているので早急な補充を、福岡地方検察庁からも公安事件等の増大のため検事等の増員を、さらに長崎地方法務局よりは登記事件等の増加と地理的悪条件等のため職員の増員をそれぞれ要望いたしておりました。
 以上調査の概要を申し上げましたが、詳細は法務委員会調査室保管の本委員派遣資料により御承知願いたいと存じます。
 これをもって報告を終わります。
#19
○委員長(小平芳平君) 次に、第二班の御報告を願います。亀田得治君。
#20
○亀田得治君 このたび派遣されました委員を代表して第二班の調査の結果を報告いたします。
 去る二月一日から四日間、近藤委員、山高委員と私が、大阪府及び兵庫県において司法行政及び法務行政等並びに出入国管理に関する問題等について現地調査を行なってまいりました。
 大阪府においては、二月二日午前中、大阪高等裁判所に関係当局の御参集を得て、司法行政及び法務行政等の問題、なかんずく交通犯罪、選挙犯罪、公害及び登記の各事件の現況等の調査懇談を行ない、午後は、新築成った大阪弁護士会館においてこれら司法行政、法務行政等に関する諸問題につき在野法曹の意見等を聴取いたしました。また同日、大阪高等、地方裁判所新営工事現場及び大阪法務合同庁舎の営繕の視察を行ないました。二月三日午前中、大阪入国管理事務所において出入国管理問題の調査等を行ない、午後、兵庫県に参り、神戸地方裁判所に関係者の御参集をわずらわしまして、大阪の場合と同様司法行政等の調査懇談を行ないました。二月四日午前中は、神戸入国管理事務所並びに同神戸港出張所を調査視察して、調査を終わりました。
 調査にあたり、現地の各関係機関等から終始懇切な御協力をいただきましたこと、並びに最高裁判所及び法務省から種々実地に御便宜をお取り計らいくだされたことを、厚く感謝申し上げます。
 以下調査項目に従って申し上げます。
 調査項目第一、司法行政及び法務行政等に関する事項。
 まず民、刑事件処理の概況について申しますと、大阪高等裁判所及び高等検察庁の管内民、刑事件の総受理件数は、最近減少の傾向にありますが、民事事件において、手形小切手訴訟事件を除き、未済件数が既済件数を上回っているのが注目されます。わけても民事交通事件の増加や第一審行政訴訟事件の未済が目立っております。刑事事件において総受理件数が減少しているのは、昭和四十三年七月から交通反則通告制度が実施され、道路交通法違反事件送致が減少したことによるものとされています。しかしながら、業務上過失致死傷事件の激増、殺人、放火等の凶悪犯の増加傾向は注目されます。
 第二は、交通犯罪事件の現況と対策であります。交通反則通告制度実施後の交通犯罪事件の状況を見ますと、まず道路交通法違反事件について、警察における交通の指導と取り締まりは、軽微違反者には警告指導または告知を、悪質違反者には検察庁送致の措置をとることになり、現場措置が違反態様により適切に行なわれることになった結果、大阪府警察では、昭和四十四年警告指導件数は八十万件をこえることになりますが、送致件数は激減し、告知件数を加えても年間三十五万件程度にすぎない状況で、告知件数についても毎年約十万件程度の減少となっております。交通事故を内容とする業務上過失致死傷事件については、自動車登録台数、免許人口の激増により交通事故が年々増加し、大阪府警察では、昭和四十四年は四十一年に比し件数において四六%の増加を示し、近畿管区警察局管内では、年間三〇%前後で増加している実情であります。
 以上の傾向は検察庁ないし裁判所の事件受理についても言えることであって、たとえば大阪高等検察庁管内では、道路交通法違反事件は、昭和四十四年は四十二年の五分の一に減じましたが、交通関係業務上過失致死傷事件については、昭和四十四年は四十二年の一・五倍に達し、成人のみで一・六倍、刑法犯中に占める割合は七二・三%であります。
 次に、少年交通事件の特色等について申しますと、業務上過失致死傷事件が、昭和四十三年から窃盗を抜き首位に立ち、毎年増加していること、一般に無免許運転を犯す率が高いことなどがあげられます。さらに事件処理問題に関して、家庭裁判所終局区分中検察官送致は減少し、不処分、審判不開始が近年多くなっている状況であり、また交通反則該当の少年交通事件の逆送事例に対しては、罰されない成人の反則事件との不均衡があるとの検察見解がありました。なお、現行交通反則通告制度を少年事件にも適用することの可否につき意見交換がありましたが、警察、検察の積極論と裁判所の消極論が対照的でありました。
 交通事故対策は現下の重大課題であり、そのため、道路環境の整備拡充、大阪都心部幹線道路の一方通行実施の例に見られるような交通規制の改善など、行政施策の推進にまつところが大きいのでありますが、当面、検察、裁判においては、交通事犯の激増に対し、交通専門の部や係の設置など捜査機構の充実強化、審理促進のための裁判官増員が望まれるのであります。
 第三は、選挙犯罪事件に関する事項であります。昨年十二月に行なわれた衆議院議員総選挙関係の選挙違反事件検挙総数は、近畿管区全体で本年一月二十六日現在千二百四十六件、千八百五十六人で、前回、昭和四十二年のそれに比べれば、件数で百八十件減少いたしておりますが、人員で二十七名の増加、罪種別では、買収のみが他の減少にもかかわらず二百人も多くなっているのが注目されます。これらの事件捜査は間もなく終了の見通しでありますが、第一審係属中のこの種事件の三〇%が昭和四十年以前に起訴された長期未済事件である現状からも、係属中の事件はもちろん、今回の選挙違反事件についても、早期開廷、集中審理、公判促進が望まれております。
 第四は、公害に関する事件についてであります。いわゆる公害に関する事件がどのようにあらわれているか、現地の状況を見ますと、まず公害対策基本法付属関係法律違反事件の受理はなく、罰則の定めのある各地の公害防止条例違反事件すら皆無の状況で、これに類するものとして、業務上過失致死傷、河川法違反、清掃法違反など若干の事件をあげ得るのみであります。しかし、最近のビル工事、マンション建設、工場操業、飛行機などからくる騒音、振動、じんあい、工場廃液、地下水流失など、また、日照権、通風、採光を阻止され、生活を侵害されたことに基づく、損害賠償請求ないし建築差しとめ、危険防止のための不動産仮処分など、主として相隣関係を中心とした民事事件は多少存在するという実情であります。他方、直接公害事件とは言えない警察への苦情や生活権の侵害と目される中、小の公害による人権侵害事件は年とともに増加していることは事実のようであります。
 最近の公害事件は、種類が多様化するばかりでなく、内容も複雑な利害関係がからんだものが多く、また、地域住民の生命、生活に関する深刻な問題であるので、公害に関する事件訴訟の処理には特段の考慮と迅速性が要求されることはもちろんでありますが、基本的には、公害紛争の行政的処理に関して早急の解決策が望まれる次第であります。
 第五は、最近の登記事件処理の現況であります。大阪法務局管内登記事件数は、この十年間で、所有権移転、抵当権等の登記甲号事件において二倍、謄本、抄本等の登記乙号事件において三・七倍の増加を見ており、神戸地方法務局でも甲号事件で二倍に近く、乙号事件で四・六倍という増加ぶりであります。これら事件増に伴う登記事務従事職員の増員はなく、登記事件の適正迅速な処理に苦慮しているのが実情であります。
 さらに、近畿管内本、支局、出張所計百八十五庁舎の大半は老朽狭隘であり、施設の整備改善が望まれています。
 調査項目第二、出入国管理に関する事項。
 大阪入国管理事務所管内外国人登録人員は、昨年十一月末現在二十三万七千九百三十四人で、中でも大阪府は、万国博覧会関係労務者の移入並びに外国人経営企業体が大阪地区に集中しているため、在留外国人は他の地区に反し漸次増加の傾向にあり、また、大阪には在日朝鮮人、韓国人の二八%が居住している関係から、在留外国人の管理上、期間更新、再入国などの許可事務手続の合理化が急務とされ、また違反事件の発生は年間一万二千件にも及んでおり、事務所の処理方針としては、退去強制よりも仮放免許可へと移っているとされています。
 出入国管理上改善さるべき問題点として、国際交通の多様化に即した出入国手続の簡素化、犯罪調査のためのコンピューター制導入、違反審査の必要的収容の改善、在留管理関係業務処理体制の拡充、神戸港出張所の業務体制の確立と増強、そして万国博覧会対策の確立などがあげられました。
 調査項目の最後は、本委員会に対する現地の要望事項であります。
 現地で多くの傾聴すべき意見ないし要望が強く述べられましたが、まず交通事件に関して、大阪弁護士会から、交通事故の被害者救済と自動車損害賠償責任保険の円滑な運用をはかるため、自動車損害賠償保障法第十条(適用除外規定)及び第五十五条(自家保障規定)を削除すること、交通事故被害者の医療に関し、その医療の適正化と救急医療機関の監査、整備をはかること、自動車損害賠償責任保険における傷害保険金を引き上げることの要望がありました。
 公害事件に関して、大阪弁護士会は、各種公害事件につき訴訟救助制度を弾力的に運用し、訴訟資力のない者にも広く救助が与えられるよう指導すべきであり、騒音、日照権、悪臭、食品等各種公害に関し、現行法の不備を改めるべきだとしています。
 登記事件の処理に関するものとして、大阪法務局から、登記所の地図の補修、再製の早急な実施が望まれ、大阪弁護士会は、登記簿の改編作業はまず都市から促進されたいとの意見でありました。
 出入国管理に関する要望として、神戸入国管理事務所から、在留資格審査要員及び入国審査官の増員、鉄製高速舟艇や自動車の増配、さらに尼崎港湾合同庁舎建設促進などがあげられました。
 一般司法行政等に関するものとして、大阪弁護士会は、大阪地方裁判所民事交通部裁判官の増員を切望しており、その他簡易裁判所事物管轄拡張に対する反対意見、出入国管理令改正に対する反対意見、司法修習生委託費増額、国選弁護料等の増額、無料法律相談活動に対する謝礼金支出、弁護士会館の敷地、建物に対する課税免除など各種意見要望等を提出し、神戸地方検察庁から神戸法務合同庁舎設備ボイラー改修工事等の実施促進の要望があり、神戸弁護士会は兵庫県篠山地区の過疎問題をあげ、これらの解決を望まれました。
 いずれも今後委員会としても十分検討すべき重要な諸問題であると存じます。
 以上をもって報告を終わりますが、詳細は調査室の資料に譲りたいと存じます。
#21
○委員長(小平芳平君) ただいまの報告に対し御質疑はございませんか。――別に御発言もなければ、派遣委員の報告はこれをもって終了いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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