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1970/04/23 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第11号
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1970/04/23 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第11号

#1
第063回国会 法務委員会 第11号
昭和四十五年四月二十三日(木曜日)
   午後一時二十三分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     大森 久司君     小林 国司君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     亀田 得治君     西村 関一君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     西村 関一君     亀田 得治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         小平 芳平君
    理 事
                河口 陽一君
                後藤 義隆君
                亀田 得治君
                山田 徹一君
    委員
                上田  稔君
                江藤  智君
                小林 国司君
                堀本 宜実君
                山崎 竜男君
                大森 創造君
                小林  武君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
   政府委員
       法務大臣官房長  安原 美穂君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  影山  勇君
       法務省矯正局長  勝尾 鐐三君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   寺田 治郎君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   矢口 洪一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       法務大臣官房訟
       務部長      香川 保一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資
 格等の付与に関する特別措置法案(内閣提出、
 衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (長沼ナイキ訴訟に係る福島裁判長忌避申立て
 に関する件)
 (静岡刑務所問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、西村関一君が委員を辞任され、その補欠として亀田得治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(小平芳平君) 理事の補欠選任についておはかりいたします。
 委員の異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、この際その補欠選任を行ないたいと存じます。
 選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に亀田得治君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(小平芳平君) 裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。小林法務大臣。
#6
○国務大臣(小林武治君) 裁判所法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、近年における経済事情の変動にかんがみ、簡易裁判所が取り扱う民事訴訟の範囲を改定しようとするものであります。
 御承知のとおり、簡易裁判所の取り扱う民事訴訟の目的の価額については、昭和二十九年の改正により、十万円をこえないものとされ、今日に至っております。しかし、その間わが国の経済は著しい成長を遂げてきたのでありまして、統計によりますと、国民の所得や消費にも著しい増大があったほか、物価についてもかなりの程度の上昇を見たことが知られるのであります。かような経済事情の変動を考慮いたしますと、前回の改正以来すでに十数年を経過した今日におきましては、簡易裁判所が取り扱うことができる訴訟の範囲は狭きに失するに至っており、この際、これに右の経済事情の変動に応じた改正を加える必要があると認められるのであります。
 そこで、今回、右の経済事情の変動の状況を勘案して、簡易裁判所が取り扱う民事訴訟の目的の価額の上限を三十万円に改めることといたしました。
 なお、この措置に伴いまして、訴訟の目的の価額を算定することができない請求につきましては、現在と同様に地方裁判所がこれを取り扱うことになるように、民事訴訟法に所要の改正を加えることといたしております。
 以上が裁判所法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいまするようお願いいたします。
#7
○委員長(小平芳平君) 以上で説明は終了いたしました。
 本案に対する自後の審査は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(小平芳平君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 裁判所法の一部を改正する法律案の審査のため、この意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#11
○委員長(小平芳平君) 沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法案を議題といたします。
 御質疑のある方は順次御発言を願います。
#12
○小林武君 一、二の点について質問をするわけでございますが、提案がありました提案理由の説明、補足説明書の中に、「沖繩と本土とで、その取得の要件がかなり異なっている上に、弁護士の職務は特に公共性が強く、またその資格は裁判官、検察官の任命資格とも共通であることにかんがみ、これに本土資格を付与するにつきましては、選考及び試験を行なおう」と書いてあるわけでございます。こういう考え方について、提案者、提案した側においてはいろいろと努力をされたことについて、あるいはいろいろな方面のことを勘案しながらやったことについては、認めることにやぶさかではございませんけれども、私はこの問題についてやはり基本的な考え方が一つあるのではないかと、こう思っているわけです。その点は、一つはやっぱり琉球政府という政府が存在している。もちろんこれは、今度の施政権返還に伴って、沖繩の問題を検討する場合に、琉球政府というものに対して、これは独立国としての性格に欠けるところがあるというような政府見解も出ておりますから、多少そういう点で日米と同じ立場に置かれないという見解があるかと思いますけれども、二十五年間にわたって琉球政府というものが存在していたということだけは、これは明らかなんであります。その琉球政府の中で、裁判官あるいは弁護士というような者が仕事をしておった。こういうことを、私は、本土に返るにあたって、先ほど私が読み上げたような提案理由の説明の中に、取得の要件が変わっているとかというようなことは、これは当然のことだと思うのでありますが、また弁護士の公共性の強さというものは、琉球の政府だって私は同じだと思います。琉球の政府はその公共性があんまり重んぜられておらなかったというふうなことも言えないのではないか、こういうことが一つあります。
 それからもう一つは、資格はどんな形で与えられたにしろ、合法的なやり方によって、そうして現在まで弁護士としてやってきた。弁護士としての資格を与えられたということは、一つの既得権であります。その既得権に従って仕事をしてきたわけでありますから、これは提案理由の説明のような趣旨によって簡単にやっぱり奪われていいというものではないのではないか。
 第三点として私考えますのは、これも先ほど来申し述べたんでありますけれども、その第二条ですか、選考の項について、「本邦の裁判官、検察官又は弁護士として必要な学識及びその応用能力があるかどうかを判定」――こういうことばが使われておりますけれども、前のところで申し上げたように、それらの力があるかどうかという評価の問題になると思うんであります。要件が相違したとか、職務の公共性だとか、それだけの力があるかどうかというようなことは、評価のしかたとしては、これは問題があるのではないかと、こう思うわけです。こういう三点のことについて、どういう見解を持っているか、お聞かせいただきたい。
#13
○政府委員(影山勇君) 沖繩の復帰に伴いまして、復帰前に資格免許を一体化すという問題につきましては、ただいま御質問のありましたように、この資格免許は合法的に沖繩において与えられたものであって、復帰に際しても当然これを認むべきであるという御意見は、沖繩においても本土においても存するところでございます。しかし、今回のこの弁護士資格付与に関する特例は、昨年成立いたしました資格免許の一体化法とその目的を同じゅうするものでございまして、そういう点から、本土と一体化し、そして本土の資格を与えるという観点からは、それぞれの資格免許の有する特質を考えまして、やはり何らかの措置をとることが相当と考えられたわけであります。特に弁護士は、人権の擁護、社会正義の実現というような、他の職業よりも特にその点に特殊性を持った職業でございますので、そういう意味で、資格要件のはなはだしく異なった資格相互間の平均化と申しますか、一体化を行なうにあたりましては、やはり本土と一体という意味で、本土並みの資格を付与するためには、そこに若干の措置を要するものと考えたわけでございます。
 次に、既得権の考え方でございますが、まあ既得権と申しますと、御承知のように、特に法律の条文に既得権を保護しろという成文があるのはおそらくないのじゃないかと思います。一般的にまあ条理として、すでに持っている権利、利益というものはむやみに剥奪すべきものではないという考え方に立った一つの法理かと思われますが、これもやはり必要のある場合、相当の理由のある場合には、既得権の制限がある程度やむを得ない。特に沖繩の弁護士の既得権というのをそのまま考えますと、沖繩限りで仕事を行なうという形の権利だと思われますが、これが本土と一体化しますと、やはり本土並みの仕事のできる資格ということになりますので、その点を勘案いたしまして、こういう措置をとったわけであります。もっとも、今回の措置によりましても、この選考に漏れた方あるいは選考を受けられなかった方については、五年間この沖繩で弁護士事務を行なうということにいたしておりますのは、まあ一種の既得権思想のあらわれというふうな面もあるかと考えているわけでございます。
 それから、本土における裁判官、検察官、弁護士として必要な学識及び能力という点の判定でございますが、これはまあ仰せのように、非常にむずかしい問題ではございますが、これは本土の弁護士、裁判官、検察官の代表と申すべき方々によってその審査をすると、選考を行なうということでございまして、必ずや適正な結果が得られるものと考えているわけでございます。
#14
○小林武君 本土との一体化ということで何らかの措置をとる、一体化するということが、私が言いたいのは、非常に本土というところに重点が置かれて、何か沖繩で資格を持っておった者は本土との一体化にはきわめて、何というかな、力の不足というようなものが意味されておるようにも私は見られるんですね、この法律案全体の中に。私は、そうでなくて、日本国憲法というもののもとにおいて裁判というものが行なわれる、沖繩の場合は施政権を持っておるアメリカの関係で裁判が行なわれたということ、こういう一つの違いは当然考えられなければならぬ。そういう意味での一体化という問題であるならば、まあ当然これは何らかの措置の中に入り得るものだと思うのですよ。そういう点でいろいろ議論が出てくるということになりますというと、私はその中で考えなきゃならぬことは、沖繩は琉球政府であったということだと思うのです。それじゃ沖繩で二十五年間やっておったのは公共性なんというものは全然なかったのかというようなことにもなるし、どんな裁判が行なわれておったんだといえば、これはきわめて本土なんかに来たら問題にならぬような裁判が行なわれていたとか、弁護したとかいうことになると、私はこれはちょっと考え方がおかしいのではないか、こういう観点に立つんです。しかし、適当な措置をとるということは、私は裁判官のことは知りませんけれども、たとえば本土の中においても学校の制度が変わりましたときに免許状の切りかえというのがあったのです、教師の免許状。これも決して、弁護士の皆さんと仕事の領域は違いますけれども、どうでもかまわないというもんじゃない。その場合にとらるべき一つの何らかの措置というものは当然、幾らいままで教師をやっておったからといって無条件にやるというようなことは、少なくともあの教育の大きな変革の中では許さるべきではないということ、しかも大学卒でなきゃだめだというような一つの条件が新たに付加されたわけですから、そういう意味では私は何らかの措置というものはあってしかるべきだと思って認めるわけです。その場合と同じように、私はこの場合の何らかの措置ということについては、どうもいままでの実績というようなもの、しかもそれは合法的な一つの手続によって、それは試験でも何でもけっこうですよ、任命のしかたでも何でもけっこうだ、選考のしかたでも何でも、一つの政府が合法的に行なった、そのことについて私はちょっととらるべき措置について問題がある、こう感ずるのです。たとえば選考試験というようなものについて、これはあまりやりとりしても時間とりますから、私も早いとこ終わりたいですから、言いますというと、これは何といいますか、研修ということばがよくありますけれども、研修するとか、それから研究会をやるとか、いろんな方法があるでしょうが、そういうものによって本土との一体化というようなものをはかるということが、少なくとも琉球政府に、二十五年間とにかくその道に携わってきた人たちを――これは年数から言えば、一年の人も三年の人もあるかもしらぬけれども、少なくとも二十五年の沖繩におけるところの一つの裁判に関する問題には、一年やろうと、それは関係者だと思うのですよ。そういう一つのものを認めるというのが妥当じゃないかという考えが非常に強いわけです。ここで修正案出そうなんという気持ちもございませんけれども、私は、少なくともそういうものが選考とか試験とかいうものに相当強く配慮されないということになると、きわめて不公平であるし、妥当性を欠くように思うのですが、この点はどうですか。
#15
○政府委員(影山勇君) 簡単にお答え申し上げます。
 やはり本土と一体化いたしますと、沖繩もいわば本土でございまして、そういう意味では、将来に向かって弁護士資格というものが本土と一致してまいらなければならないわけでございます。問題になりますのは、現在の有資格者をどうするかという点でございますが、この点は、その他の資格、免許におきましては、講習をしてそれにそのまま本土資格を認めるというのもございますが、弁護士の場合は、資格の取得の要件が、たびたび申し上げますように、本土のそれとはなはだしく異なるものがございますので、やはりこれについては試験、選考のような措置が必要ではないかと思います。たとえば公認会計士のようなものですと、昭和三十六年以来試験の方法も試験委員もすべて共通にいたしておりますので、こういう場合には簡単に本土資格に乗り移ることができるわけでございますが、仰せのようなお考えもございましょうけれども、ただいま申しましたような重要な職業でございます弁護士についての資格という問題でございますので、その要件のはなはだしく異なる場合にはこういう措置もやむを得ないものというふうに考えております。
#16
○国務大臣(小林武治君) 私からお答えをいたしておきますが、小林委員のお考え、私にもわかります。したがって、これを一番端的に示すものは、沖繩にも憲法が施行され、内地の法律がそのままいくから、いまの沖繩の弁護士さんたちは日本の法令によってもうその資格を得たものとみなすと、こうやれば一番簡単に済むわけで、それが一番いい形かもしれませんが、これにつきましてはまあいろいろの考え方がありまして、日本弁護士会等におきましては、これでもまだどうかと、こういう御意見もありまするし、いわば方々の意見が折衷されてこの案ができたということでございますし、お話のような精神は、私は選考の際にも十分生かされていったらよろしかろうと、こういうふうに思いまして、さような妥協と申しちゃ何でありますが、そういう結果できたのでございますから、そのような形になった、こういうことを申し上げておきます。
#17
○小林武君 大臣のいまの御答弁をいただいて、私はやはり選考その他についても一つのゆとりがあるように聞こえましたから、そうあってもらいたいと思うのです。
 ただ、私、どうも先ほど来の政府委員の考え方の中に、どうしても何か選考の条件が違うから一つやっぱり下だというような見方は、本土復帰の際における――これはひとりこの弁護士だけの問題じゃないのです、よほど考慮を要するところだと思うのです。私は、復帰の条件をどうするか、復帰の対策をどうするかという問題になった場合に、これは産業の面においても、あるいは行政の面においても、あらゆるところに、やはり二十五年間異民族の支配下にあったということと、少なくとも沖繩というのは、歴史的に見て、日本本土との間には、これはもう長い間沖繩の人たちには一つの抵抗の気持ちがあるわけです。さんざん苦労をかけておいて、今度あれするときには沖繩は一つ低いという感じが少なくともどんなあれにでも出てくるのはまずいと思うのです。こういうことを言ってはあれですけれども、きょう沖繩副主席の方ですか、琉球政府副主席という名刺をいただいて、沖繩県副知事というようなことにこれがなったら、これとはだいぶん感じが違う。主席なんといったって、今度知事になったらどうだということを考える。そういうことについては抵抗を感じていらっしゃらないと思うけれども、やはり受け入れる側の一つの配慮というものは当然あっていいと思うのです。そんなことはただ名前が変わっただけだということになるかもしれないけれども、資格を云々される問題になりますと、たいへんこれは沖繩の人でも不本意だということになるのじゃないですか。先ほど来の御説明によると、二十五年間の沖繩の弁護士の力というようなものはその公共性の上からいっても問題があるし、力不足のために非常に沖繩の人たちは日本本土よりかも法律的に不利であった、裁判上不利があったということの結論にもなるわけですから、この点はなかなかしっくりいかないのですよ。
 なおそれから、大臣の答弁の中に一つありましたが、そのことで弁護士さんたちが反対だという御意向ですけれども、私が聞いた弁護士さんは、どういうわけかそうじゃないのです。反対の人も確かにあるだろう、しかし、選考とか試験とかということについてはわれわれは賛成ではございませんという、そのことについては――選考の問題については多少あとで質問いたしますけれども、そうではないと、こう言うのですね。そうして、少なくともああいう形のアメリカの施政権下における弁護士というようなものの活躍の中には、本土の弁護士では味わえないような大きな役割りを果たしてきているということをその弁護士さんは私に話している。評価のしかたというのはいろいろあると思うんですよ。どうも何だか一枚も二枚も下だといったような印象がその法律やまたそれを説明する答弁の中にもあるんで、これがどうも私は専門家でないから特にそういうことを敏感に感ずるのかしれぬけれども、これはしかし、大臣のお話にもあったんですけれども、選考のときにはこのことがよほど頭にしみ込んでおらぬというと、これは大きな不満になると思うんですが、これは私の思い過ごしですか。
#18
○国務大臣(小林武治君) いや、私は必ずしも思い過ごしだとは思いません。ことに問題は、沖繩だけでおやりになっておると、従来と全く同じと、こういうことになります。今度は、この方々が内地に来て弁護士を自由におやりになれると、こういうことをきめるわけでございます。そのことが多少いままでのこととは違うし、したがって、この選考とか試験等からでも、沖繩だけでおやりになるなら、これが発効後も五年間おやりになってよろしいでしょう、こういうことも言っておるから、まあ内地へ来てもみんな弁護士の仲間としてお仕事ができると、こういうことについては、みんななるべく同じだというふうな考え方を持たせたい、こういうことでありますし、それはいま小林委員の言われる、何らか多少向こうの資格が低い、劣っているんじゃないかということが頭にあってこれをやるんじゃないか、こういうふうな疑惑と申すか、そういうことも考えられることではないかと思う。これは私も非常によくないと、したがって、そういうことをできるだけ避けるために、やっぱりいまおっしゃったようなことを選考の際には頭によく置いてひとつ考えてもらったらどうかと、こういうようなところでがまんをしてもらうと申しますか――というようなことになると思います。
#19
○小林武君 まあいまのその話についてことばじりのようなものをとらえて言うわけじゃないけれども、たとえば沖繩だけではやれるという、こういう考え方にも私はやっぱり問題があるんですよ。沖繩が本土に復帰しても弁護士さんは本土では通用しないような弁護士さんでも沖繩には通用するというような言い方は。まあしかし、その沖繩の弁護士がこっちへ来て弁護士やるということについても、何も迷惑する者はないと思うんですよ。弁護士というのは頼む者と頼まれる者があってやるわけですけれども、失敬な言い方ですけれども、あの人を弁護士に頼むのはごめんだという人があるかもしれない。そういう選択の自由があるわけですから、これはほかの商売やっているのと同じようなものだと思うんですよ。だから、この点についてだれもこれは問題もないことだと思う。そういうことで先ほど来しつこく言ってるんですけれども、やはり大臣もお認めになったように、一枚低いというような考え方からは抜け切らなければならない。しかし、一つの、二十五年間は施政権下にあったということからいって、本土とのいろいろな違いはあるだろう。そういうものを考えるならば、私はやはり、選考ということもさることながら、そういうものを埋め合わせるやり方というのはあるんじゃないか。たとえば、いろいろお話を承ると、裁判官、検察官というような場合には、研究、研修という点については従来もそれぞれかなり手厚くやっておるということを聞いておるわけでありますが、そういうことによってこれはむしろおもに行なわれることで、私はそういう意味でちょっと不満があるわけです、率直に。しかし、これはいまここでそういうやりとりを際限なく続けるわけにいきませんけれども、大臣の先ほどのお話のように、このことについては、ひとつ切りかえにあたって、選考その他についての十分な配慮があってしかるべきだと思う。これを一つ要望申し上げるわけです。
 それから、選考について、私は選考というのは何をやるのかということが一つ不安ですから、これは亀田委員からもずいぶんその点について詳細な質問がございましたからいいようなものですけれども、選考という場合には、一体選考するのにはどういう人がなるのか、選考するときの基準というのはどういうものなのか、私は日本の国の場合でもやはり問題相当感じているのですよ、この種のものでなくても。まあそういうこともありますから、選考というのは具体的に一体どんなことが行なわれるかということなんです。
#20
○政府委員(影山勇君) 選考の内容、方法でございますが、これは先ほど申しました司法試験管理委員会が行なうわけでございます。この構成は、前に申しましたように、法務省の事務次官と、それから最高裁事務総長、日弁連の代表の方、そういう三者構成で選考の合否をきめるわけでございます。そうして、それの補助的な機関といたしまして選考委員を設けることになっておりますが、この選考委員はやはり裁判官、検察官、弁護士の実務家の方に出向いていただくということでございまして、先ほど来のお話がありましたように、特に沖繩の弁護士の能力が低いからということをきめてかかっているわけでは毛頭ございませんで、ただ一律の試験よりも、いま小林先生のおっしゃいましたように、経歴による実務的経験その他を加味するというような方法で、要するに本土で実務家として通用し得るかどうかの判定ということになるかと思います。
#21
○小林武君 この選考の問題は、あとで大森委員から質問があると思うのですけれども、国が裁判官を忌避するというような問題が一つ起こっている。そのことは大森委員の質問でひとつあれしますが、私はかなりショックを受けている。ところが、そのほかにも、たとえば教員の世界で管理職になる者を選考する、さらには今度新たに教員になる者を採用するについての試験を行なう、こういう場合の選考の場合に出てくる私は非常に大きな問題点は、その人の持っているところの思想がどうだとか、どういうことをしたかというようなことが――それは悪いことをしたのは別ですけれども、そうでないことなのに、当然憲法上保障された個人の自由の範囲に、良心の自由の範囲に関する問題でも、選考の場合にははねられる一つの条件になるということは、これはもう本土といえども――本土のほうが多いのかどうか知らぬけれども、非常に多いわけです。そういう点、何か選考の場合にそういうようなことが起こりはしないかということを非常に問題にしている側もあるし、私もその点についてはあり得ないことではない、いろいろな方面から。これは、いまここでやるあれには必ずあるなんというのじゃありませんけれども、一般の日本の本土の、日本の社会で行なわれているようなそういう法的なものの中にもそういう事実があるのです。そういう心配になるような選考のしかたというものはないわけですね。単なる実務的な問題だけということになりますか。
#22
○国務大臣(小林武治君) これは他の席でもお話がありましたが、この法律は資格をただ定めるだけの法律であって、あるいは任用とか、採用とか、そういう問題には一切関係がありません。したがって、この選考においては、いまのお話の心配なされるようなことが入る余地が全然ないと、こういうことを私ははっきりさせておきたいと思います。
#23
○小林武君 まあそういう心配はないということでございますから、ないことを願ってやまないのですけれども、アメリカの施政権下における弁護士の立場というものの中には、やっぱり大きく抵抗する場面があるだろう。沖繩県民の、琉球の人たちのために、法廷においてこれを争うということもあるだろうし、そういうことが選考の何かの基準の中に取り入れられるなんということがあってはならないと私は思うのでありますから、非常に先のことをあまり推測し過ぎるような話でございますけれども、十分考慮していただきたいと思うわけです。
#24
○国務大臣(小林武治君) いまのことは、私がここで、国会ではっきり答弁を申し上げたと、こういうことも十分この選考の方々にもお知らせをいただきたいと、かように考えます。
#25
○小林武君 じゃ質問を終わります。
#26
○山田徹一君 いま、結局はレベルの問題がいろいろ審議されてきたわけですけれども、かつて、本土から司法関係の人たちあるいは弁護団の人たちで、そういう点について調査なさったことがおありですか。
#27
○政府委員(影山勇君) ちょっと御質問の趣旨がわかりかねますが。
#28
○山田徹一君 レベルをですね。
#29
○政府委員(影山勇君) 前例といたしましては、朝鮮から朝鮮の弁護士資格を持っていられる方が引き揚げてまいられましたときに……。
#30
○山田徹一君 いや、沖繩の司法界の人々に対して。
#31
○政府委員(影山勇君) 沖繩の弁護士さんの能力の調査をしたことがあるかと、こういうお尋ねでございますか。
#32
○山田徹一君 はい。
#33
○政府委員(影山勇君) そういうことはございません。
#34
○山田徹一君 それでは、この参考資料の関係ですけれども、「沖繩の弁護士資格を有する者(本土の弁護士資格を有する者を除く)」と、こうございますが、現在のこの資格を持っていらっしゃる方の中で、本土において司法修習を完了してというか、終わって、しかも本土の弁護士資格は持っていないという方もいらっしゃるわけですか。
#35
○政府委員(影山勇君) お尋ねのとおりでございます。
#36
○山田徹一君 そういう方たちは、もうすでに本土で司法修習を終わっているんですから、選考の必要はないように思われるのですが、この点どうなんでしょう。
#37
○政府委員(影山勇君) この点は、先日もお尋ねがございまして、その際に申し上げたわけでございますが、この本土の修習で、修習内容も同じでございますけれども、司法試験は沖繩の司法試験を通っていられる方でございますので、この点は、他の十年、二十年とやっておられる方と同様に、一応選考は受けていただく。ただし、こういう方々は、もちろん学力も応用能力もすぐれていられることと思いますので、この選考もお通りになることと思うわけでございます。
#38
○山田徹一君 この前の委員会で亀田委員からも質問あったことですけれども、この選考の方法ですね、それを聞いていて、まずほとんどの人が選考にパスするというふうに私感じたわけですけれども、いずれにしても、そこにある程度の人が合格しないというような場合に、沖繩のいわば弁護士が少なくなると、本土から沖繩に行かなきゃならぬと、ところが本土と沖繩との経済的――あらゆる面の格差といいますか、本土からあちらのほうへ喜んで弁護士の方々が行かれると、あるいは行きにくいだろうと、いろいろと考えられるわけですが、そういう点に対しての対策は持っていらっしゃるわけですか。
#39
○政府委員(影山勇君) 特に対策ということもございませんが、現在沖繩の弁護士さんの数は本土の他の府県の人口に比較いたしますとかなり多いことになっております。この選考が単なる一律の試験でないという点を考えますと、特に沖繩の司法需要について弁護士不足で困るというようなことにはならないのではないかといま推測いたしておるわけでございます。
#40
○山田徹一君 じゃあ、現在ちょっと多過ぎるというような感じなんですか。多過ぎるという意味ではないのですね。
#41
○政府委員(影山勇君) はい。この司法需要をはかるのはなかなかむずかしいのでございますが、ただいま申しましたのは人口比をとらえただけでございます。
#42
○山田徹一君 次に、この講習の点についてお伺いしますが、過去に、本土から協力という形でか、何らかの形で、研修ですか、そういう講習に匹敵するようなことが行なわれたことはありませんか。
#43
○政府委員(影山勇君) これは裁判官、検察官につきましてはそういうことが行なわれてまいったようでございまして、裁判所は裁判官の研修、法務省は検察官の研修をいたしております。その方法は、こちらから裁判官、検察官の実務家が現地に講師として参りまして講習を行なう、あるいは沖繩の裁判官、検察官が実務修習として本土に参るというような形で行なわれてきておるということでございます。
#44
○山田徹一君 この講習について、沖繩で三カ月程度の講習を行なうことになっておりますが、その講習によって司法官あるいは検察官等が実務に支障を来たすという心配はないのでしょうか。
#45
○政府委員(影山勇君) まず、この講習は選考を受ける必須的な要件ではございませんので、裁判官、検察官のうちには、あるいは特にこの講習を受けなくてもいいという方もいらっしゃると思います。しかし、現実に実務をやりながら講習を受けたいという方のためには、時間的その他いろいろな配慮をして、参加したい場合にはできるようにしたいというふうに考えているわけでございます。
#46
○山田徹一君 もう一つ待遇の問題でございますけれども、選考に合格をされた中には、当然、判事としてすでに五年も十年も経験を積んでいる方と、それから浅い人とあるわけですが、そういう人たちの給与の待遇についてはどのようにお考えになっておりますか。
#47
○政府委員(影山勇君) お尋ねの点は、経過措置として別途考えるわけでございますが、これは他の公務員とも共通な面がございまして、いままでの在職年数をどういうふうに考慮するかということは経過法の際に検討いたしたいというふうに考えておりますが、いずれにせよ何らかの措置が行なわれる予定でございます。
#48
○山田徹一君 優遇される方向に考えていらっしゃいますか。
#49
○国務大臣(小林武治君) これはまあ、裁判官も検察官も公務員である。したがって、一般公務員としておそらくそのままみな横すべりでおつきになる、こういうことでありまするし、これはもう内地と一体化の精神によって、内地並みにいろいろなものを経過措置によって直すと、こういうことになるだろう、特別に優遇ということでなくて、要するに内地並みになる、こういうふうに思っております。
#50
○委員長(小平芳平君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 沖繩の弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#53
○委員長(小平芳平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#55
○委員長(小平芳平君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#56
○大森創造君 時間がございませんから、私が口火を切ったあとから順次きっとこの問題については質問があるかと思います。はしりとして私のほうから三十分で質問をいたします。
 長沼ナイキ基地訴訟事件の札幌地裁の福島裁判長の忌避申し立て、その理由は何ですか。
#57
○国務大臣(小林武治君) 私はごく概括的なことを申し上げますが、裁判の公正についての疑いのあるような場合には訴訟手段として忌避ができる、こういうことでございまして、一般的の問題でなくて、今回の問題、長沼事件の裁判については、いまの裁判長がお取り扱いになることは裁判の公正を期待ができないんではないか、かような疑いを持って忌避をいたした、こういうことでございまして、またもっと詳しいことにつきましては、御質問によって事務当局からお答えを申し上げます。
 なお、私がこれについてちょっと申し上げておきたいことは、これは実はもう単なる訴訟手続法上の問題であるということと同時に、訴訟というものについては国家も個人も同じ当事者にすぎない、別に国家が特別にえらい、こういう関係ではありません。したがって、単純なこれは訴訟当事者にすぎない。訴訟をするからには、訴訟というものは争いであるから、有利な判決をお互いに得たい、こういうことはもう原告も被告も当然であるのでありまして、国のほうも、単なる訴訟当事者として、自己に有利な判決を期待する、得たい、こういうことはもう当然なことでありまして、そのために各種の手段を訴訟手続上とる、こういうことでありまして、今回のこともその一つにすぎない、こういうことでございます。
#58
○大森創造君 後段の部分、私しろうとですが、そんなことはよくわかります。わかるけれども、ひっかかる。福島裁判長を忌避した理由をもっと具体的にひとつおっしゃっていただきたいと思う。福島裁判長のいかなる部分が悪いのか。
#59
○説明員(香川保一君) 福島裁判官は青法協の会員でございまして、その青法協がいろいろの運動の一つとしまして長沼事件の原告側の支援活動を行なっておる、その支援活動を行なっておる青法協に属しておる裁判官が長沼事件そのものを裁判するということは、その裁判の公正について疑惑を招くおそれがある、これが今回の忌避の理由でございます。
#60
○大森創造君 そうすると、この青法協に所属している裁判官であれば、福島君でなくても忌避するか。
#61
○説明員(香川保一君) ただいま申しましたように、忌避の理由は、青法協の会員であると、単に青法協に所属しておるということで忌避を申し立てたのではないのでありまして、長沼事件の支援活動を行なっておると、その青法協に所属しておるということでございますから、青法協の会員であればその裁判官をすべて忌避するというふうな筋合いのものではございません。
#62
○大森創造君 そうすると、憲法擁護などという運動をしている場合に、公安事件や違憲訴訟などについては忌避する要件になるかな。
#63
○説明員(香川保一君) 個々の訴訟の具体的なケースに応じて慎重に考えなければならぬことでございまして、ただいまの御質問の憲法擁護というふうなことを活動目標にしておるといたしますれば、これは公安事件であろうと、政治的な問題の事件であろうと、それだけで忌避するというわけにはいかぬと、かよに考えます。
#64
○大森創造君 この間私が決算委員会へ出たときに、午前中総理が来て、そのときには私は党大会でいなかったのでございますけれども、午後から法務省が来て、あのときにはどなたがおられましたかな。和田静夫君が質問した、そのとき答弁に立ったのは、きょう来ていますか。
#65
○説明員(香川保一君) 政務次官と私でございます。
#66
○大森創造君 そこで、私の記憶では、速記を調べてもらえばわかるけれども、こういう答弁しているね。福島裁判長が青法協に所属している、その青法協なるものはこれこれこれこれの活動をしているからまかりならぬ、忌避の理由になるという説明をどなたかしたな。
#67
○説明員(香川保一君) そのときも、ただいま申しましたように忌避の理由を申し上げたわけでございます。それと変わりはございません。
#68
○大森創造君 それはちょっとニュアンスが違うな。それでね、政務次官かあなたかどっちか、こういう答弁をしているはずだよ。福島裁判長個人の問題ではない、青法協というものが各種の運動をしているから、それに所属している福島君は忌避するという答えをしていたはずだな、どなたか。
#69
○説明員(香川保一君) さような趣旨とはちょっと違うと思いますが、青法協は政治活動をやっておるといたしましても、その青法協の会員に裁判官がなるということについてとやかく言うのは忌避の問題外のことだと思うのであります。忌避の理由は、あくまでも、長沼事件そのものが訴訟になっておる、その訴訟を担当する裁判官が長沼事件の支援活動を行なっておる青法協の会員であるという、客観的な事情から見まして、外部的にはその裁判の公正について疑惑を持たれるということはやむを得ないことではないか、かような意味で、その裁判に福島裁判官が関与することが適当ではないと、そういうだけのことでございます。
#70
○大森創造君 この裁判はいつ始まった。
#71
○説明員(香川保一君) 昨年の十月から始まっております。
#72
○大森創造君 そのころから、有名な男だから、福島裁判長は青法協の会員だということは知っていたんでしょう。
#73
○説明員(香川保一君) 福島裁判官が青法協の会員であることは、御指摘のとおり、当時からうすうす存じておりましたが、その青法協が問題になっておる長沼事件の支援活動をやっておるということは、ごく最近私どもが知り得たことでございます。
#74
○大森創造君 そうですかな、ほんとうにそうですか。
#75
○説明員(香川保一君) 間違いございません。
#76
○大森創造君 それと、最高裁のこの間の岸事務総長の談話というものと、あなたのほうの今度の見解は、関連があるんだろう。
#77
○説明員(香川保一君) 全く関係ございません。
#78
○大森創造君 いつだったかな、四月の何日か、三月何日かに、佐藤総理と中曽根防衛庁長官が長沼ナイキの問題について会談したという記事をぼくは見た、新聞で。これは見たことがありますか。
#79
○説明員(香川保一君) 存じません。
#80
○大森創造君 ぼくは見たんだ。そこで聞くけれども、どうなんだ、この間の決算委員会の、午前中はぼくは聞いてなかったが、速記にきっと書いてある。そこで、和田静夫君に電話したが、彼はいないんで――彼は確かめてもいると思うんだけれども、この問題は、この間私が聞いたあなたのほうの答弁によるというと、小林法務大臣にも連絡しない一つの見解であるというようなことを言うたね、どなたか。
#81
○説明員(香川保一君) そのとき申し上げましたのは、この忌避の申し立てについて閣議決定はいつあったのかという御質問がまずございましたので、事柄の性質上閣議決定を受けるような問題ではございませんし、もちろん閣議決定を経ておりませんし、閣議に報告するつもりもない、報告もしてないと、かように答弁したと記憶いたしております。
#82
○大森創造君 そうすると、小林大臣はこの問題について忌避をしたということについて直接の報告を受けておりますか。
#83
○国務大臣(小林武治君) この点ははっきりさしておきたいと思いますが、国が当事者となる裁判については代理人を指定するというのが私の職務です。しかし、訴訟でありますから、一々私は指揮をいたしません。これはいわばおまかせしてあるんだと、こういうことでございます。で、この問題につきましては、私はむろん、これを出す前には、こういうことをやるという報告を受け、同意を与えております。しかし、そのことは、私は閣議にもはからなければ、どなたにも申し上げておりません。中曽根長官にも言いませんし、農林大臣にも申しません。そういうわけでありまして、これが、政府が政治的の立場において動いた、決定したという事実はありません。はっきり申し上げておきますが、事務的な訴訟代理人がかようなことをするということを、最終的にその報告を受けて、私は同意をしておる、こういうことでございます。
#84
○大森創造君 前に戻りますけれども、総理大臣は政府の統一的な見解であるというふうに述べたのかな。ぼくはそう聞いたんだ。午後からの和田静夫君の質疑の中からそう聞いたんですよ。あなた午前中の決算委員会にはおられましたか。
#85
○説明員(香川保一君) この問題について総理が答弁されるときは出席いたしておりましたけれども、これは速記録でお調べ願いたい。私の記憶間違いかもしれませんが、さようなことを総理が言われたようには全然記憶いたしておりません。
#86
○大森創造君 これはすぐ速記を見てみればわかるし、質問した和田静夫君に聞いてもわかることですが、総理は何かいまの法務大臣のようなニュアンスの答弁ではない。小林大臣がそういう態度でおられることは当然であろう。まして総理大臣は小林大臣と同一の立場よりもっと離れておるのだろうと思うのだけれども、しかし、何か総理が和田静夫君の質問に対して、政府の統一見解らしい、政府として意思を統一した長沼事件に対する態度の打ち出しをしたのだという趣旨の答弁をしたように私は聞いた。これはみんな不在ですから問題にいたしません。あとで調べます。
 そこで、どうなんですか、もう時間がありませんから、源田実さんが証人に呼ばれておるのはいつですか。
#87
○説明員(香川保一君) 去る三月十三日の口頭弁論期日において決定されました。
#88
○大森創造君 いつ呼ぶことに予定されていますか。
#89
○説明員(香川保一君) 五月の十五日でございます。
#90
○大森創造君 青法協というのが長沼ナイキ事件というものに対して支援活動をしていなかったならば、忌避しないのかな。
#91
○説明員(香川保一君) まず忌避はしないだろうと私は思います。
#92
○大森創造君 そう思うのだけれども、それでどうなんだな、沖繩返還、それから憲法擁護、共同声明反対というようなことを運動したらば、どうなる。
#93
○説明員(香川保一君) 具体的にその活動の趣旨なりを調べませんと何とも申し上げられませんが、抽象的ではなはだ恐縮でありますけれども、訴訟で問題になっておることに関連して非常に重要な関係を持つ、そういった関係の政治活動をしておる、あるいは運動をしておるということになれば、これはやはり忌避を申し立てるべきであろうというふうに考えます。
#94
○大森創造君 憲法擁護ということをぐんぐん推し進める団体、そうすると、長沼は違憲であるというふうに、私はそういうふうな見解を持つ学者、文化人、弁護士などが多いと思うのです。で、政府は矢つぎばやに違憲で負けておるから、今度はその前にチェックするという政治的な意図があったのだろう。
#95
○国務大臣(小林武治君) これは大森委員のお許しがあるならば――先ほど、総理がどう言ったと、こう言われたと思います。私はきわめて率直で、正直でございます。この問題は訴訟手続上の問題がありますから、政府の態度などというものは関係ありません。したがって、少なくとも責任者である私が政府のどなたにも御相談申し上げておりません。ただ、この問題はこういう忌避をするということだけは私は総理に知らせた。こういうことをいたしますということだけ通知をしました。したがって、それが何か頭にあっておっしゃったかどうか、それは知りませんが、少なくとも、いま申すように、防衛庁長官にも何も申しませんし、また訴訟の被告である農林大臣にも何も申しておりません。ただ、私がこういうことをきょうかあすか出しますという通知は、私は総理にいたしております。それしかありません。そのことをはっきり申し上げておきます。
#96
○大森創造君 小林大臣ね、青法協という、こういう団体に、弁護士はいいでしょうけれども、裁判官が所属するということは望ましいと思うか、思わないか。
#97
○国務大臣(小林武治君) これは、いま裁判官の問題は、私のほうの問題でありませんから、これは最高裁にお聞きを願いたいと思いますが、もし私が第三者であれば、非常に片寄ったことをその中で特に活動されておるというようなことは好ましくない。これはしかし、私が言うべきことではありません。私は個人としてそういうふうに考えます。
#98
○大森創造君 長沼ナイキ事件について支援活動をしておるから、そういう青法協という団体に参加しておるから、福島裁判長が忌避された、きょうの答弁をそういうことに理解していいですか。
#99
○説明員(香川保一君) そのとおりでございます。
#100
○大森創造君 この前の答弁とちょっとニュアンスが違うのじゃないかな。
#101
○説明員(香川保一君) 同じ趣旨でお答え申し上げたはずでございます。
#102
○大森創造君 憲法擁護ということを進めていくならば、長沼基地反対ということに通じますよ。憲法の問題を研究するというと、長沼ナイキ事件に対してどういう態度をとるべきかということが当然疑問になる。そして、この青法協というのが憲法の問題や沖繩の問題や平和の問題を取り上げるということになれば、具体的に問題になっている長沼ナイキの問題、違憲の問題などというのはそう数多くないから、札幌の青法協の諸君が長沼ナイキの問題を憲法の問題として取り上げるのは当然だろうと思うのだ。そうすると、憲法の問題、護憲という立場からする運動ということに対しては、好ましくないと思うのかな。
#103
○説明員(香川保一君) 護憲運動それ自体は、ちっとも好ましくないことではないと存じます。
#104
○大森創造君 憲法の問題は人権の問題であるという立場から、イタイイタイ病や公害の問題などについて青法協は取り組んでおられる、いろんな問題について取り組んでおられるのだけれども、そのことによって、それに所属する福島裁判長を忌避するということ――さっき小林法務大臣が言われたように、国だって当事者だし、それは被告の立場にあるのだから、忌避することは、それはかってですよ、自由ですけれども、問題が問題で、私は国だから与える影響が非常に大きいと思う。長沼ナイキ問題について福島裁判長所属する青法協が具体的な支援活動をしているからまずいのだと。それと、この間の岸事務総長の談話、それは要約すれば、裁判官は政治的団体に加入すべきではないとして、青法協を明らかに意識した見解を述べておられるのだが、いつだったかな、つい最近ですね。これとは関係ないのかな、関係あると考えられるのだけれども。
#105
○国務大臣(小林武治君) 先ほどからお答えしているように、青法協会員であるからどうだという趣旨で忌避をいたしておるのではない。このことが直接この問題に関係しておると、こういうことの答弁はいたしておりますが、私どもはいまの最高裁の所見というものに関係はしておりませんということをはっきり申し上げておきます。これは法務省が訴訟当事者としての考えでいたしたのでございます。
#106
○大森創造君 青法協の方針そのものは、いいと思うか、悪いと思うか。
#107
○説明員(香川保一君) その点については、とやかく申し上げる必要はないと思います。
#108
○大森創造君 長沼ナイキ事件について見解を出すのはどうだろう。
#109
○説明員(香川保一君) 誤解のないように、くどいようでございますが、今回の忌避の申し立ては、青法協がいろいろの政治活動をしておる、あるいは長沼の支援活動をしておること自体を非難するというふうなことでは毛頭ないのでありまして、長沼の支援活動をしている会に所属しておる、そのことも別に非難しておるわけではないのでありまして、所属しておるから、当該裁判をした場合に、外部から見れば、そういう支援活動をしておる団体に属しておる者が当該事件の裁判をするということになりますれば、外から見れば裁判の公正について疑問が生ずるということ、そういうことは裁判の権威を維持するためには好ましくないと、だからその裁判だけは関与しないでいただきたい、かような趣旨が忌避の申し立てなんでございます。青法協の活動がいいとか悪いとか、あるいはそれに所属することがいいとか悪いとかいうふうなことは、全然関係のないことでございます。
#110
○大森創造君 そうすると、この青法協に所属するということが忌避の理由にはならぬのであって、忌避に関係がないことである、しかし世間の誤解を招くからと、そういうことかな。
#111
○説明員(香川保一君) さような趣旨でございますが、忌避と同趣旨の制度としまして、裁判官の除斥あるいは回避の制度が設けられておるわけでございます。たとえば当事者と近い親戚関係にあるという場合には、当然その裁判官はその裁判に関与してはならない。あるいはまた、そういう除斥の事由あるいはそれに近いような理由があったりあるいは忌避の理由があるような場合には、裁判官がみずから進んでその裁判に関与しないという意味の、回避をするという制度がございます。このような同趣旨の制度をお考えいただけばおわかりになりますように、たとえば当事者と親戚関係にあると、そういうことでありましても、その裁判官が不公正な裁判をするという筋合いのものではないのでありますけれども、いかに裁判官が公正に裁判しても、外から見ると、あれは親戚だからああいう裁判をしたのだというふうに見られたのでは、裁判の公正保持ないしは権威の維持のためには好ましくないと、かような趣旨で除斥、忌避あるいは回避の制度が設けられておるわけであります。そのような趣旨のものでございますから、決して当該裁判官に対する人格的な攻撃とか、不公正なことをやるのだというふうな意味の申し立てでは毛頭ないわけでございます。
#112
○大森創造君 どうもいまの趣旨とは逆な悪い影響を全国に与えているような気がして私はならないのだ。法務省がいま私に答弁しているようなことでなくて、そういう大臣おつもりでやったのだかしれないが、現在全国に与えている影響はそんなものでないような気がするのです。悪い逆な影響があるような気がする。だから、裁判官になり手が少なくなることはぼくにはよくわかるんだな、弁護士になる人は多いけれども。裁判官の価値判断は狂ってしまう。こういうチャチな裁判官なんかにはなるものかという空気が全国にびまんしている。何だか知らぬけれども、ひきょう未練な感じがする、いまの政府のやり方は。これは私の一方的な見解だからいいわ。何とも私は、よっぽど警戒せぬというと、あなた方が主張している、そして事務的にこうするのは当然であるというふうなことを言われていますけれども、与える影響は非常に悪く影響していると思う。
 そこで、青法協、これはどうなんだな、裏を返すというと、たとえばあの平賀書簡の飯守さん――これは説明するまでもないでしょう、皆さん方よく御存じだから。飯守鹿児島地裁所長が、自民党の国民協会の機関紙に「造反裁判官を許すな」と題していろいろなことを書いている。こういうのは忌避の理由になりはせぬかな。それから、私に言わせれば、平和憲法をじゃまものだと言うような思想の持ち主、それからそういう団体に所属しているということは、何かこじつけて忌避の理由になりそうな気がぼくはするのですがね。
 きょうは時間がありませんから口火だけ切っておきます。御注意していただきたいと思うのですけれども、司法研修所の憲法の講義の内容なんかも、私調べてみたいと思うのです。きょうの三十分の時間では質疑とても尽くせませんし、私は専門家でないから何ですが、あとからひとつ質疑がされると思いますが、きょうは口火だけ切っておきます。どうも私はこの処置はふに落ちない。少しこそくじゃなかろうかと思うのだ。だれかがこそくだよ、これは。だれかが官僚主義だ。
 以上できょうは終わります。
#113
○亀田得治君 静岡の刑務所の問題でお聞きするわけですが、その前に、いま大森委員から取り上げられた問題でありますが、これは非常にせんだっての最高裁事務総長の談話とも関連して重要な問題であり、また非常な専門家の間でも関心が高まっておる問題です。これは短時間ではなかなかこまかい論議ができませんので、いずれ別個な機会で十分審議をしたいと思っておりますが、ただいま大森委員から法務省とのやりとりの中で、二つだけとりあえずこの点は確かめておきたいと思った点がありましたので、二点だけお尋ねをいたしておきます。
 その第一は、長沼訴訟に対する支援活動という表現を使われておりますが、その中身はどういうことなのか、支援の中身ですね、いろいろ具体的に考えられるわけですね、どういう行動なり動きを支援活動と言っているのか、この定義から確定しておいてもらわないと、先に行っていや支援活動というのはこんな意味だということになったんでは、これはなかなか議論をする基礎がくずれますから、これはまあ一つあなたのほうからお答え願いたいと思います。
 それからもう一つ、一緒に聞きます。大臣にお答え願いたいのですが、忌避をするについて、事務当局から報告があり、それに対して自分としては承認を与えた、こうおっしゃる。そのことばから想像いたしますと、単なる報告ではないようですね、そういう理解していいのか。大臣が承認を与えて、それで事務当局が忌避の文書を裁判所に出した、単なる報告じゃない、承認を与えた、こういうふうに理解すべきだと思いますが、大事な点だと思いますので、ひとつ確かめておきたい。
 そしてもう一つは、総理大臣にはこれも報告はした――報告といいますか、連絡はとった。これは事務当局とあなたの間ほどの強さのものでもないような感じを受けておるんですが、時点としては忌避の申し立てが裁判所へ現実に出される前の時点のように思いますが、そういうことかどうか。
 それから連絡のしかたもいろいろありますね。その時点の問題と、それからもう一つは、電話等でこういうふうにやりますよというふうにいく場合と、あるいは閣議なりあるいは閣議の終わったあとなり総理に直接お会いになって、そうしてお話をしたということなのか。これはだいぶん内容が違うと思うんですね。
 それから第三点は、これは単なる報告なのか、やはり総理の判断を求めるような意味のものなのか、これも微妙だと思いますが、この点ひとつ大臣のほうから。
#114
○国務大臣(小林武治君) 私がそういう事務当局から話を受けて、よろしいと私がそれを承知したと、こういうことでございます。
 それから、総理の関係は、了解を得るべき事柄でありません、総理には。このことは私は、全くありのまま申し上げますが、参議院の予算委員会の席上、私はうしろから行って、こういうことをやりますよと、こういうことだけを言った。したがって、よろしいとか、悪いとか、そういうことを受けるつもりで私はやったつもりではございません。こういうことをやると、少なくともそのくらいのことは知らしたほうがいいだろうということで知らした。これでおわかりだと思う。したがって、事前において私は承認を与えた。それからして、総理にはわざわざ言ったんではない。予算委員会で、みなあそこに並んでいるから、うしろから、こういうことをやります、こういうことだけ知らせたと。
#115
○亀田得治君 事前ですね、総理の件も。
#116
○国務大臣(小林武治君) 事前。しかし、これは指示を受けたり了解を得るという問題じゃありません。そういうことを私がやりますということを単純に知らせた、こういうことに御了解願います。したがって、ただそうかと言っただけの話です。
#117
○亀田得治君 そうかとおっしゃった。
#118
○国務大臣(小林武治君) そうかと言うぐらいは言うでしょう。
#119
○説明員(香川保一君) 現在裁判所に係属中でございますので、詳細な支援活動の内容はごかんべん願いたいと思いますけれども、抽象的に申しますと、自衛隊は憲法違反であるということを一般に周知させて七〇年代の安保廃棄に向かっての運動を展開しよう、こういうふうな趣旨で、いろいろの具体的な長沼事件の調査なり、あるいはそれを、何と申しますか、原告側に――というよりは、自衛隊違憲論を導き出すようないろいろの討論のつどいをやっておる、こういうふうなことでございます。
#120
○亀田得治君 それじゃいずれの機会にいたしまして、静岡刑務所の問題に移ります。これは若干、時間あまりありませんから、お尋ねをいたします。できるだけ簡潔にひとつお答えを願いたいと思います。
 けさの新聞で、いわゆる非常に驚くべき犯罪をやった金嬉老、この人が静岡刑務所にいて、出刃ぼうちょうなり、あるいはやすり、それから毒物らしい粉末などが出てきた、持っておった、それがわかってきた、こういうことで、これは非常なショックを全国に与えていると思いますね。まあガスの爆発があったり、飛行機の乗っ取りがあったり、いろいろ世間を驚かすようなことがずいぶん多いわけですが、この法務省関係で、法律の取り締まりの元締めというところで、このようなことがあったのかということで、この与える影響というものは非常に大きいと思うのです。おそらく法務大臣も、また矯正局長も、頭を悩ましていると思います。当初にひとつ大臣のほうから、こういう事件が起きてどのようなお気持ちを持って対処されているのか、その大臣としてのお気持ちなりをお聞きしたい。そのあと局長のほうから、こういう事件が発覚して、どういう段取りを一体とっておるのか、この事件に対して、その点をまずお聞きして、その上で若干お尋ねをしたいと思います。
#121
○国務大臣(小林武治君) お答えをいたします。
 私も、起こり得べからざることが起こっておる、こういうことで、非常に遺憾に存じておるのでありまして、とにかくこれは刑務所の綱紀の重大な問題であるということでございます。まだ調査の結果はわかりません。きょう矯正局からの係の検事も参っているそうでありますから、その真相等はできるだけ至急取り調べまして、そうしてまたこの席にも御報告をいたしたいと存じておりますが、私どもも刑務所として全くこれはだれも考えられないことが起きたというふうなことに思うのであります。しかし、必ず中に何らかの綱紀の重大な欠陥がある、かように考えますので、いまのように調査を急いでおる。そうして、できるだけ真相を明らかにして、これに厳重に対処していかなければならぬと、こういうふうに考えております。
#122
○政府委員(勝尾鐐三君) 本件につきましては、昨日の晩の七時ころに私のところへ現地から電話の報告があったのでございます。その電話を聞きましたときには、私自身も、信じられないと申しますか、非常なショックを受けまして、とにかくほんとうにどういう――出刃ぼうちょうといってもどういうものなのか、これをまず確かめたいということで、直ちに、とりあえず直近の監督官庁であります東京矯正管区の担当の第二部長を昨夜、保安課長を随行させまして、静岡へ差し向けたわけでございます。そうして、けさ方、とりあえず管区の二部長だけを東京に返しまして、それまでに判明した事実を確かめた結果、いまお尋ねのございました刃渡り二十一センチ全長三十三センチのステンレスのほうちょう、さらに全長十一センチやすりの部分が七センチ五ミリという柄のついた目立てやすり、さらに約四グラムのビニールの小さな袋に入れた白色の錠剤を砕いたものではないかと思われる粉末、これらを金嬉老が房内に所持していたという事実が、とりあえず確認されたわけでございます。
 そこで問題は、やはり十センチ前後のやすりだとか、あるいはたばこだとか、あるいは四ミリ程度のそういう粉末といったものは、たとえば差し入れの本の中に綴じ込むというような形で不正に授受されるということは一応考えられないでもないのでございますが、三十三センチという長いほうちょうということについては、とうてい通常の考えられる手段では本人の手に入るということは、まず、私の経験と申しますか、常識では、通常の方法ではとうてい入り得ないものだというように考えましたので、これはやはり、本省のほうの、私のほうの責任で徹底的な調査をする必要があると考えまして、管区の二部長と入れかわりに、私のほうの局の検事と保安課長の補佐を現地に差し向けまして、入手経路、あるいはそういうものを所持した目的等について、早急に徹底的な捜査をするように指示をして現地に差し向けたというのが、現時点の状況でございます。
#123
○亀田得治君 この粉末は毒物ではないかということが一つ問題点として出ておるのですが、その点はまだ十分な調査はできていないのですか。
#124
○政府委員(勝尾鐐三君) 粉末の点につきましては、今朝の午前一時に、静岡地方裁判所によりまして、いまのほうちょうとやすりとそれから粉末が押収の手続がとられております。それで、私のほうといたしましては、検察庁に連絡をいたしまして、検察官のほうから裁判所のほうに、その粉末について静岡薬科大学に至急その鑑識をしてもらいたいという申し入れをしてございます。したがいまして、その鑑識の結果が出れば、すべて性質等は明らかになると思っております。
#125
○亀田得治君 それから、ライターは、まだ油があって使える状態のものですか。
#126
○政府委員(勝尾鐐三君) 御指摘のとおり、使えるものでございます。
#127
○亀田得治君 この刑務所長が記者会見をしていたのをずっと拝見いたしますと、看守がおどされて差し入れたということも考えられるというふうに言っているんです。非常に重大だと思うのですね。こんなばかげたことは絶対ありませんということばが出ておらぬわけですね。そういうことが所長から言われておるわけですが、その点どういうふうに考えておるのか。さっきの説明ですと、あり得べからざることであり、したがって内部的に相当問題があるように思うというふうに、きわめて遠回しにおっしゃっておるわけなんですが、どういうふうにその辺は見ておられるのか。おそらく所長とも局長は連絡をとっておられると思いますが、どうなんでしょうか。
#128
○政府委員(勝尾鐐三君) 本件の場合についてはたしてそうであったかどうかということは、すべて調査の結果を待たなければ明確なことは申し上げることができませんが、一般論として、従来刑務所等にあった事故等を思い浮かべまして一般論として申し上げますと、いわゆる看守、第一線の職員の事故の中に、いわゆる利欲で誘われて物品の不正授受の橋渡しをするという場合、あるいは最初何げなしにある収容者に対して便宜を与えた、そうしますと、その次にさらにより以上の不当な便宜供与の要求がなされた場合に、それに応じないと前の便宜供与を公開をするというような、いわゆるおどし、これによってずるずる入り込んでいくという場合、こういう場合が過去の例の中に見受けられるわけでございます。おそらく、所長がそういう趣旨の発言をいたしたとすれば、いわゆる処遇上何か軽い便宜供与を与えた、それを種にして次から次へと重大な便宜供与をするようにはめ込まれたというような場合も想像されるという趣旨で申し述べたのではなかろうかと思います。なお、職員の問題が出ましたのは、そういう過去の例からの一つの推測として言ったのであろうと思いますが、当初私が申し上げましたように、通常のいわゆる差し入れ物品の中にまぎれ込まして入れるというふうにしては、あまりにも大きいものでございます。といたしますと、結局、施設内にいる人間と申しますと、職員、あるいは、御承知と思いますが、収容者の世話をしております、あるいは清掃等をやっております経理夫という受刑者がおりますが、そういったいわゆる犯人と日常接触をしている人間との間からこういう事態が想像されないこともないということで、いま言った所長の談話になったと、このように承知いたしております。
#129
○亀田得治君 それはいずれ十分調査をされることと思いますが、もう一つニュース関係を見てふに落ちないのは、三月二十五日の金嬉老の公判廷において、金嬉老が爆発物を差し入れられたことがあると、こういう意味の発言をしておるのですね。これはきわめて重大なことです。それで、これは山根弁護士かだれかに語ったところによりますと、房外でそれに火をつけて確めてみた、看守もそれを見ていたということまで言っているわけですね。金嬉老の発言がそのとおりかどうか、これも確かめてみなければわからぬでしょうが、しかしいやしくも公判廷においてそういうあり得べからざることが出ているわけですね。当然検察官も立ち会っているわけですから、その段階において十分な私は金嬉老の静岡刑務所内における処置について調べるべきものだと思いますね。それがなされないで、結局金嬉老が山根弁護士に語ったことから本件が外部に漏れてきたと、明るみになったと、あまりにも私は法務省の内部の連絡等がおかしいと思うんですね。検事はそこまでの役割りはない、おれは公判廷をやっておればいいんだ、そんなものではなかろうと思いますね。そういう点は、これは一体どう理解していいんですかね。
#130
○政府委員(勝尾鐐三君) お尋ねの点につきましては、三月二十五日でございますか、その直後だと思いますが、静岡刑務所の側におきまして、本人が房の外に出ている留守中に、舎房全体にわたりまして綿密な捜査、検索をやると同時に、関係の職員について一応の事情の聴取をいたしておりますが、その結果については、そういう事実は認められなかったようでございます。しかし、いまの御質問のように、爆発物ということになりますときわめて重要なことでございますので、その点についてはさらに十分な調査をするように、本日静岡へ派遣いたしました検事に私のほうから指示してございますので、その結果を待ってさらに明らかにいたしたいと思っております。
#131
○亀田得治君 それは金嬉老のそういう公判廷における発言があって調べたと言われますけれどもね。その点がどのような調べなのか、具体的に明らかにしてほしいと思うんです。ほんとうに調べておるのであれば、今回のような出刃ぼうちょうにしたって、事前に刑務所側が探知しなきゃいかぬわけですね、それができておらぬわけですわな。だから、そういうことから見ても、爆発物の問題、そんなことはなかったと簡単なことで私は済まされぬのじゃないかというふうに思います。それはまあ十分調べてください、本件の出刃ぼうちょうなどとともに。非常に関連性があるように思います。
 それで、たとえば鉄片の探知器ですね、こういったようなものはこの刑務所には備えてあるんですか。そうしてまた、特別なそういう被疑者、被告人等については、どの程度房内を調べる、あるいは毎日やっておるのかどうか、その辺はどういうふうになっておりますか。
#132
○政府委員(勝尾鐐三君) 最初の第一点といたしまして、金属発見器の備えつけの問題でございますが、現在矯正施設全部につきまして、収容者の活動を勘案いたしまして、大型の金属探知器、あるいは小型の金属探知器、あるいは携帯探知器等、規格において若干の相違はありますが、全部配置してございまして、静岡刑務所につきましては、本所に三台、浜松、沼津の支所に一台ずつ配置してございます。これは、主として差し入れ物品がございます際に、その差し入れ物品について金属等が混入されていないかどうかということについて、差し入れ物品を取り扱う係のほうで使用しているものでございます。
 それから、第二点のお尋ねの捜検の方法でございますが、すでに御承知のことと思いますが、居室内の捜索・検索、身体の捜索・検索に分かれるわけでございますが、身体の捜索・検索につきましては、房の出入の際、たとえば出廷のために出かける、あるいは運動のために出かける等の房の出入の際に、必ず捜検をするということに相なっております。しかしながら、その捜検の方法につきましては、一番厳格なのがいわゆる裸検身でございます。その次の検身はいわゆる簡易検身。一番簡単なのは触手検身でございます。裸検身につきましては、人権上の問題等もございますので、よほど緊急差し迫った場合でないと、これは現在ほとんど行なっておりません。簡易検身と申しますのは、たとえばシャツのボタンをはずして、中が見える程度のそういう検身。触手検身というのは、要するに着衣の上からさわって検身をするという方法でございますが、一般的に申し上げますと、未決等については触手検身で済ませているというのが実情のように承知いたしております。
 それから、居房の捜索でございますが、これもいわゆる畳を全部ひっくり返し、ふとんの綿の中まで、あるいはまくらのカバーの中までといったような徹底的な捜検をやる場合、これは職員の人手の関係あるいは時間等の関係で、所長がその必要を認めるときに随時行なうということに相なっておりますが、大体全国の状況を見ておりますと、一週間に一回ないし二回というのが限度のようでございます。それ以外に、毎朝、起床点呼・点検というのがございますが、その際には通常収容者を舎房から廊下に出しまして、そこでまず収容者のほうの健康状況あるいは衣服の中に何か持っていないかといった程度の触身検査程度で済ませ、舎房の中につきましては、重点的に、本日は畳の中をおもに見る、本日はまくらをおもに見るというような、いわゆる重点を一カ所ぐらいにきめまして捜検をするということで、いわゆる綿密な捜検、簡略な捜検、これを盛り合わせてやっているというのが実情でございます。
#133
○亀田得治君 探知器は、差し入れの弁当とか、そういうものにおもに使われておるようなふうにいまとったわけですが、特殊な方については、部屋全体なり探知できるような、そういうものが必要なんじゃないですか、そのほうが手っとり早いですがね。まあ事実調査を十分やらないとわからぬですが、相当長期間金嬉老がこれらのものを持っておったように思われますね、どうも。その間、いまの説明ですと、いろんなやり方でお調べになっているわけですが、おそらくみんなそれがはずれているのではないかというふうに思いますね。だから、ほんとうにそういう優秀な探知器を備えるということは非常に必要だと思うのですが、そういうものはまだ法務省にはないわけですか。
#134
○政府委員(勝尾鐐三君) 御指摘のとおりでございまして、いわゆるそういう部屋全体を探知するガイガー器のような何か性能のいいもの、これをぜひ備えつける必要がある。現在までは、いわゆる差し入れ物品の検査器の補充でいささか手が回りかねたということと、それから新しい性能のいい機械の試作ということを関係の会社等と相談をしている段階でございまして、まだこれが備えつけるというところまでは至っていないのでございますが、今回の事件の発生を見ましてその必要性を一段と痛感をいたしましたので、これにつきましては早急に整備を検討するつもりでおります。
#135
○亀田得治君 ちょっとこまかいことを聞きますが、差し入れに関するいろんなこまかい規定を見ますると、何か座ぶとんも入るようですが、実際にそれは入れさしておるわけですか。
#136
○政府委員(勝尾鐐三君) 御指摘のように、省令によりまして自弁物品の許可品目の中に座ぶとんが入っております。しかし、この点につきましては、私といたしましては、官給品で間に合うものは、この種のものはできるだけ官給で間に合うようにいたしたいということで、座ぶとんにつきましても最近新しい繊維でいいものもできてまいっておりますので、できるだけ座ぶとん等の差し入れにつきましては備えつけのものを使用させるように指導はいたしておりますが、中にはやはり健康上の理由だとかで、備えつけの座ぶとんでは薄過ぎるとかあるいは小さ過ぎるということで、いわゆる保健上のような観点で希望をする場合には許可をしているというのが実情でございます。
#137
○亀田得治君 この金嬉老の場合には、座ぶとんの許可をしたのですか、調べてないのですか。
#138
○政府委員(勝尾鐐三君) そこまでまだ私も調べておりません。
#139
○亀田得治君 まあいろいろお調べになってあらためて報告願いたいと思いますが、そこで最後に大臣にもう一度お尋ねしておきますが、これは調べの結果がどのように出てくるかはそれに待たなきゃなりませんが、いずれにしても刑務所内における管理として大きな欠陥が考えられるわけですね。法秩序ということに対する一つの大きな不安感を与えたということでも、これは社会的に政治的に大きな責任があると思うのですね。こういう点について、法務大臣として私は責任を感じなきゃいかぬと思うのです。第一義的にはもちろん静岡刑務所長だと思いますが、その点のひとつ御所見だけ最後に承っておきたいと思います。
#140
○国務大臣(小林武治君) これはもうきわめて遺憾な大事件であると、したがって十分にこれはみんなが関係者は責任を感じなければなるまいと、かように考えております。
#141
○委員長(小平芳平君) 小林大臣から、あるいは局長から、問題の経過を詳細に調査して報告してくださるという御答弁でありますので、そのようにお願いしたいと思いますが、私が疑問に思いますことは、これだけのことが行なわれていて、おそらくその関係者の間にはいろいろなうわさがあったと思うのですね。それはもう一人の人が、看守がおどされて次から次へ深みに入ったというようなことがあり得るという御答弁でありましたけれども、一人の看守が二十四時間毎日見ているわけでもないわけですので、おそらくいろいろなうわさがあったと思うのですが、そういううわさについては何ら報告は受けておりませんか。
#142
○政府委員(勝尾鐐三君) これも実は調査の過程において十分究明していくように私どものほうから指示してあるところでございますが、うわさといたしましては、この金嬉老の処遇に関連して少し甘やかしているのではないか、けしからぬといったような趣旨の話が職員の間から出ているといううわさを私自身は聞いておりましたので、率直に申し上げますと、昨年の暮れごろからそういううわさが私の耳に入りましたので、東京管区のほうにも指示をいたしまして、もし不合理な特別処遇ということが行なわれているとするならば、それを正しい処遇に直すように措置をしてもらいたいということを指示をいたしまして、ことしの三月以降は、その点、従来いろいろ言われていたうわさについては私のほうの耳に入らなくなったということがございますが、とにかくそういううわさが一時私どもの耳に入ったということは事実でございますので、この点についても究明をするように指示してございます。
#143
○委員長(小平芳平君) そういう刑務所という特別なところでありますので、一般社会のように、うわさがあったからといって、すぐ問題として第三者が取り上げるようなわけにいきませんので、先ほど来十分な検査をしているというお話でありますけれども、そういう点も今後の事件の再発防止の参考にしていただきたい、このように思っているわけです。
 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十八分散会
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ソース: 国立国会図書館
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