くにさくロゴ
1970/05/07 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第14号
姉妹サイト
 
1970/05/07 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第14号

#1
第063回国会 法務委員会 第14号
昭和四十五年五月七日(木曜日)
   午前十時十分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         小平 芳平君
    理 事
                河口 陽一君
                後藤 義隆君
                亀田 得治君
                山田 徹一君
    委 員
                江藤  智君
                木島 義夫君
                小林 国司君
                堀本 宜実君
                山崎 竜男君
                小林  武君
                松澤 兼人君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
   政府委員
       法務大臣官房長  安原 美穂君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  影山  勇君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       岸  盛一君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   寺田 治郎君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢崎 憲正君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   大内 恒夫君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   佐藤 千速君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   外山 四郎君
       最高裁判所事務
       総局総務局第一
       課長       林   修君
   事務局側
      常任委員会専門
      員         二見 次夫君
   参考人
      日本弁護士連合
      会臨時司法制度
      調査会意見対策
      委員会委員長    鈴木  匡君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、参考人として日本弁護士連合会臨時司法制度調査会意見対策委員会委員長鈴木匡君の御出席を願っております。
 この際、委員会を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。参考人には御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は、目下当委員会におきまして審査を進めております裁判所法の一部を改正する法律案について参考人の御意見を承り、本案審査の参考にいたしたいと存じております。何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。なお、議事の都合上、御意見は二十分程度お述べをいただき、その後委員からの質疑にお答えをお願いいたしたいと存じます。また、御発言の際は、そのつど委員長に許可を受けることになっております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では御意見をお述べ願います。鈴木参考人。
#3
○参考人(鈴木匡君) お許しをいただきましたので、私からこの法律案に対します所見を申し上げさしていただきたいと思います。
 この法律案につきましては、日本弁護士連合会といたしましては反対をいたしておるのでございます。すでにその反対理由につきましては諸先生も御存じいただいておることと存じますので、そのうちのおもなものを二、三申し上げさしていただきまして、その次にこうした結論を出すに至りますまでの日本弁護士連合会における経過の大要を申し上げさしていただきます。それが終わりましたら、裁判所、弁護士会の連絡協議の状態について触れさしていただきたいと存ずる次第でございます。最後に、私自身がなお連絡協議で伺いたいと思っておったような二、三の点に触れさしていただきたいと思う次第でございます。
 まず第一に、日弁連がこの案に反対をいたしております理由の一つに、簡易裁判所は地方裁判所とは全然性格が違っておるのだと、一審事件を地裁と簡裁と分け合って行なう、そういうような目的で設置されたものではないというわけでございます。そういう関係からいたしまして、簡易裁判所では、現在におきましても、簡易な事件、軽微な事件、これを扱うのにふさわしい、その程度の人的構成になっておるのでございます。御承知のように、昭和二十二年に裁判所法が制定されるにあたり、従来区裁判所が第一審裁判所として行なっておりました権限は、自後地方裁判所において行なうことにされたわけでございます。一方新憲法では、犯罪捜査などで強制処分を必要とするような場合に、現行犯の場合以外は裁判官の令状によらなければ逮捕、捜索などができないということになり、終戦後間もないことでもございまして、交通不便な実情などを考慮されまして、警察署の近くに裁判所がないと急を要するときは間に合わないというような事情からいたしまして、区裁判所とは性格の違った簡易裁判所が全国で五百七十カ所設けられたわけでございます。刑事については令状の発付を主として、これとともに軽微な事件を扱わせ、民事については調停や和解を主として、これにあわせて少額の事件を簡易迅速に行なわせようとしたわけであります。それだからこそ、簡易裁判所の裁判官につきましては、司法試験に合格して、さらに司法修習を経るというような、法律専門家というようなむずかしい資格要件を必要としないで、円満な社会常識のある人をもって足るとしたものであって、現在においても、その過半数はこうした特任の裁判官であるばかりでなく、有資格の裁判官は大部分の方が地方裁判所と兼任の方が多いのでございます。したがって、実際には簡易裁判所ではほとんど特任の裁判官が裁判を行なっておられるというような実情でございます。こういうような実情であるのに、簡易裁判所に多数の事件が扱われるということになりますと、簡易裁判所設置本来の趣旨に反するばかりでなく、その機能も果たし得ないのではないかということをおそれているわけでございます。
 次に、国民の裁判を受ける権利を弱体化するのではないかというふうのおそれでございます。国民の裁判を受ける権利を十分に保障するためには、第一に裁判官の資格を厳重にすることが必要であって、昭和二十二年に裁判所法が制定されますまでは、最下級の区裁判所におきましても、そこの裁判官はすべて高等試験司法科試験に合格してさらに一年半の試補を経た後裁判の実務に相当年数の経験を積んだ方が裁判を行なってこられたわけでございます。簡裁はそれとは性格が違うために、かような要件を必要としておらないのであります。そういうところで一審事件の半数に及ぶ多数の事件が裁判されるということになりますと、この面で弱体化するということをおそれているわけでございます。さらに、この簡裁の事件につきましては、上告は原則として高等裁判所ということになります。ことばをかえて申しますと、最高裁判所はこれに関与しないというようなことになってまいりますので、この点も、戦前は全部第一審が上告事件を扱ってこられたのと異なって、これを比較いたしまして国民の裁判を受ける権利を弱体化することになるというように考えておるわけでございます。そういたしますと、国民の裁判所に対する信頼感や安心感を阻害するのではないかというふうに考えておるのでございます。
 裁判所の機能には二つあるのではないかというふうに考えられます。その一つは、積極的あるいは具体的機能とでも申しましょうか、現実に裁判を受けるという面であり、他の一つは消極的あるいは潜在的機能とも言うべきものでございまして、これは自分の権利や利益が侵害されたりあるいはそのおそれのあるようなとき、そういったときに、その侵害を排除したり、あるいは義務の履行を求めるために、国民はだれでも、またいつでも、裁判所に訴えを出して、その保護を求められるという安心感と信頼感であります。裁判の弱体化ということは、単に具体的な事案についてだけでなくて、国民の裁判所に寄せまするこれらの信頼感や安心感に対しても決して好ましい影響を与えるものとは考えられないのであります。現在、地裁の新受件数がふえてまいりまして、地裁の裁判官の負担が過重であると言われております。だからこそ今度の改正でその負担過重を緩和したいというのが裁判所のお考えのように伺っておるのでございますが、むしろ裁判所の負担が過重であるならばその過重を解消するために地方裁判所を充実強化していただくのが本来のあり方ではないだろうか。これをしないで、地裁の負担を減らすために、第一審事件の半数、あるいはところによっては六割、その前後になろうかとも言われておりますが、こうした多数の事件が簡易裁判所に移りますということは、国民の利益という点から考えましても納得できないのではなかろうかということを日弁連としては考えておるわけでございます。本来、先ほど申しましたように、簡裁はもっと少額で簡単な事件を扱うところであって、たとえて申しますと、野ら着のままで裁判所に出かけて、そして訴状などを書かないで口頭で申し立てて、すぐその場で裁判をしてもらえる、あるいは準備書面などというむずかしいめんどうな書面も書かないで口頭で受け付けていただく、進行していただくと、こういうようなことをやっていただいてこそ地域住民が非常に利益を受けるという、またそういうための裁判所ではなかろうかというふうに考えられておるのに、地方裁判所の負担が多いからといってその一部を肩がわりするというような考え方には納得できないというふうに考えておるわけでございます。もちろん最高裁判所におかれましても、人的構成とか物的設備の両面にわたって地方裁判所を強化充実することについては何ら異論はないと申し述べておられます。まことに敬意を表しておる次第でございますが、そしてまた本年も二十名の増員を国会で御承認をいただいたように伺っておるのでございますが、弁護士会といたしましてはこの充実強化を特に望んでおるというような次第でございまして、これこそ国民の利益にかなうものではないかというふうに考えておるわけでございます。簡裁に比較的余裕があるからというのが最高裁のお考えのようでございますけれども、私どもはそのようには考えられないのではないかというふうに思っておるわけでございます。と申しますのは、いま申しましたような簡易迅速な方法で少額軽微な事件をおやりいただくたてまえになっておるにかかわらず、いざ口頭で申し立ていたしましても、それは書面で出せとか、なかなか民事訴訟法に規定いたしております簡易裁判所の督促の規定が活用されておらないのでございます。もっとも、これに対しましては、裁判所のお考えは、口頭で受け付けることは、ややもすれば裁判所がどちらか一方に偏しておるのではないかというような誤解を受けるので、そういう点も考慮しているんだというようなお話ではございます。がしかし、これは私どもの考えからいいますと、むしろそうではないということを啓発するだけのことであって、その努力が足らないのではなかろうかと、地域住民に親しまれるためには、その本質をよく理解してもらって利用してもらうことこそ本来の簡易裁判所のあり方ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。また、比較的余裕があるとは述べておられますけれども、一方では、訴訟事件以外を見てみますと、督促事件なり公示催告などの事件はかなりふえてきております。訴訟事件は三十年に比べて約二万件ほど減っておるというようなお話でございますけれども、督促事件では四十二年の比較では七万件の増加というような現実になっておるわけでございます。もちろん、これに対しましては、比較的簡単だというようなおことばではございますけれども、そうだといたしますならば、むしろ簡裁の本来の仕事にお力添えをいただくのがほんとうではないかというふうに考えておるわけでございます。昭和二十九年の改正の状態に戻すのにすぎないというようなおことばでもございます。昭和二十九年の改正は経済事情の変動だけではないと思います。当時上告事件が最高裁に非常に数多くなり、最高裁の負担を軽くしようとすることもその理由の一つでなかったかと存ずるわけでございますが、これを昭和三十年の地裁と簡裁の負担割合に今度も戻すのであるというようなことになりますと、今回もまた最高裁の負担を減らすということにもなり、国民の権利を保障する裁判所のあるべき姿に逆行するのではないかというふうに考えておるわけでございます。訴訟遅延の原因の多くは、人口の都市集中の結果、過疎地帯、過密地帯、こういうところから出てきたものでありまして、この社会現象に裁判所の機構が対応されれば、こうした対策も一そう効果を発揮するのではないかと、したがって、こういうことを考えないで解消していこうとしても、それは無理ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。都市におきましては、地裁も簡裁もともに多数の事件をかかえておられるというような現象でございまして、これは東京や大阪の係属件数をお調べいただけばわかることかと存ずるわけであります。現在でも複雑あるいはむずかしいような事案を簡易裁判所で審理されておりますのを、これに対しまして、それ自体が無理でなかろうかというふうに考えておりますのに、さらに訴額を三十万円まで拡張されますということになりますと、一そうこうした不適当な事案が多くなってまいろうかと考えるわけでございます。不動産に関する訴訟は、固定資産の評価額をもって訴額を算定されるという扱いになっております。固定資産の評価額は、実際の取引価額の何倍、何十倍ということになりますので、こうした数百万円に及ぶ事件も簡裁で扱われるという不合理な結果になることも考えられます。もちろん、これにつきましては、一そうの申し立てなどの対策あるいはそれらの活用が考えられるというのが裁判所の御見解のようでありますけれども、その条文の効果は現実にははっきりいたしておるというふうには考えておらないのでございます。そのほか、法曹資格のない裁判官を将来また増員されるのではなかろうかと、あるいはこれに対して法曹資格なり弁護士資格を与えるというふうになってきはしないかとか、判例の不統一を来たすのではないかとか、あるいはこういった判例の不統一を来たすおそれのある場合には民訴の条文の活用ができるんだという御意見でございますが、それに対しては別に行なわれなかった場合の救済規定もないのではないか。さらに一般事件の上告をなるべく最高裁が扱わないようにしたいという御方針でもあるんだろうかというようなことをおそれたり、将来高裁支部の廃止とか地裁支部の統廃合もお考えになっておるのではなかろうか。もしそうだとすると、こうした支部の設置などにつきましては、市町村長を先頭にして地域住民の人がかなり誘致のために努力されたというようなこともあるはずです。そういった点も考慮しなければならないのに、たまたま臨司意見書は廃止というようなことも記載しておりますが、それでもって地域住民が満足するのかどうかというようなことをもおそれておるわけでございます。また、これをいたしますと、地方によっては非弁護士がばっこをするということを強く訴えられてきておるところもございます。また、地域住民は近くの裁判所の裁判を受けることができるので便利だというような御意見もございますけれども、必ずしもそう言えないという実例などもあげられてきております。あるいは、これがために訴訟費用がかさんだりして、裁判を受ける機会を失うことになるのではないかという反対意見も出ておるわけでございます。こうした意見で、日弁連といたしましては賛成ができないということになっておるわけでございますが、それもこうした結論を導きますまでの経過を簡単に御説明申し上げさせていただきたいと思います。
 昭和三十九年の八月に、臨時司法制度調査会から内閣総理大臣に意見書が出されたのでございます。これに対しまして、日弁連としては、重要な事項について反対事項がございますので、そこで、これらの広範な問題についてどう対処するかを審議してその対策を実行するための機構といたしまして、臨時司法制度調査会意見に対する対策委員会というものを設けたわけであります。略称して臨司意見対策委員会と言うておるわけでありますが、これが昭和三十九年の九月十二日の全体理事会の承認を経まして設置されてきたわけでございます。自来、この委員会が主になりまして、この臨司に盛られました諸般の条項について検討をし、あるいはまた理事者と協力して対策の実行につとめてまいってきておったわけであります。昭和四十二年五月には日弁連としての意見をまとめるということになった一わけでございます。
 一方、その意見書が出ましてから、日弁連と裁判所との関係が必ずしも円満にいったとは言えないような状況に立ち至ったのでございます。この不幸な現象はだれが考えましても一日も早く解消しなければならないというようなことからいたしまして、昭和四十年の理事者は、この臨司意見対策委員会と常に協議して連絡を保ちながら、最高裁と話し合いを重ねまして、御承知のように、四十年九月三十日に、いわゆるメモというものの取りかわしをいたしたわけでございます。その内容につきましては、御存じいただいておりますと存じますので、時間の関係上省略さしていただきますけれども、そのようにしてメモの取りかわしができ、続いてこのメモを中心にして、もとにして連絡協議を進めていこうというような申し合わせも四十一年の一月にできたわけでございます。こうして、四十二年の九月十四日に、最高裁判所から「第一審裁判所のあり方について」という議題が出されたのであります。そこで第一審裁判所のあり方について協議に入るかという問題に入ったわけでありますが、たまたまそれ以前に長官と所長の会同が裁判所で行なわれまして、そのときのことばが、連絡協議は臨司の意見を実施に移すためのものであるかのごとく、そう誤解されるような発言がございまして、それでいろいろまた日弁連としても意見が出てまとまらなくなってまいったわけでございます。そういう経過を経たり、さらに弁護士会側の協議委員の任期が到来して、その補充に若干の日がかかったりなどいたしまして、四十三年の九月二十一日に連絡協議委員の弁護士会側の委員の委嘱が行なわれたのでありますが、新たに選任されました委員は、四十三年の十月九日に会議を開きまして、今後のこの第一審裁判所のあり方についての進め方について協議をしたわけでございます。その席におきましても、今後とも臨司意見対策委員会と連絡を密接にして、合同会議を行なうなどして進めていこうという方針を決定したわけでございます。
 四十三年の十月二十二日に臨司意見対策委員会が開催されましたが、このときにも弁護士会側の連絡協議委員が参加いたしたわけでございます。そうして同月の二十四日に連絡協議の弁護士会側が小委員会を開催して、進め方についても協議いたして、裁判所のほうに具体的な内容についての御意見があるのかどうかということについてお伺いすることになったわけでございます。
 四十三年の十一月五日に連絡協議が最高裁判所と開催されたわけでございますが、そのときに、第一審裁判所のあり方について、特に現在地方裁判所の管轄とされている事件で簡易裁判所の管轄とすることを相当とするものはないのか、あるいは現在簡裁の専属管轄となっている事件で地裁の競合管轄を認めるべきものはないのか、これに関連して運用上考慮する余地はないのかという提案が話されてきたわけでございます。
 そして四十三年の十二月六日に連絡協議の小委員会が開催されまして、その席で裁判所のほうから民事、刑事についてのいわゆる調整案というものが述べられたのでございまして、ここに問題になっております三十万円までを簡易裁判所の管轄に移そうというような御見解が明らかにされてきたわけでございます。もっとも、この三十万円にまで拡張したいという裁判所の御意見は確固不動のものではないので、これはたたき台としてのものであるというようなふうの御意見もあったようでございます。これは四十四年の一月十六日に最高裁のほうから日弁連に同じ趣旨の御連絡をいただいております。今後簡裁のあり方について日弁連の意見を伺って十分意見の交換をし協議したいというようなお話を承っておるわけでございます。
 そこで日弁連といたしましては、一月十七日にこの連絡協議の弁護士会側の委員と臨司対策委員との合同会議を開催いたしまして、裁判所の御提案になりましたことについていろいろ協議を重ねたわけでございます。
 次いで一月の三十一日に連絡協議の第二回の小委員会が開催されたわけでございますが、この席上で簡易裁判所の性格についても御協議を、たたいたらどうだろうというようなことを申し上げたわけでございますが、裁判所におかれましては、協議することには異存はないけれども、これと並行していきたいというような御意見が述べられたわけでございます。
 その後、四十四年の二月及び三月にもこうした合同委員会が開催され、協議いたしたのでございますが、その後にまた、私どものほうで委員の任期が満了したりいたしましたので、若干おくれてきまして、四十四年の九月になって委員が選任されて、ここに会議を開くことになったわけでございます。そして九月十日と十月十六日と十一月十日の三回にわたりまして臨司の対策委員会と連絡協議の弁護士会側の委員との合同会議を開いて協議をいたした結果、最高裁との連絡協議には前提条件をつけて協議を進めていこうということになったわけでございます。したがいまして、このような経過をたどっておりますので、当初から、この臨司に関係いたします事項につきましては、臨司意見対策委員会が主になって検討し、また連絡協議の方々とも合同会議を開いていろいろ検討を進めて、連絡協議の席上で御意見を述べてこられたような次第でございます。
 いま申しましたように、十一月十日に裁判所との連絡協議は進めていこうということになりましたので、当時私がその合同会議の取りまとめ役をいたしておりました関係で、代表いたしまして結果を連合会長に報告いたしたわけでございます。そこで阿部会長は十一月十四日に正副会長会議を開催されたわけでございます。その席におきまして、私も求められて出まして、十一月十日には前提条件を付して協議に入ることになりましたということを御報告を申し上げ、それが了承されまして、その後の全体理事会には連合会の理事者から報告されたという経過をたどっておるわけでございます。
 このようにして、協議に入ることになりましたので、四十四年の十一月二十七日、十二月二十四日、四十五年の一月十九日、二月十七日、二月二十四日、三月六日と六回にわたって最高裁と連絡協議を重ね、その中間の四十四年の十二月八日には連絡協議の小委員会をも開催してきたわけでございます。
 ところが、その連絡協議に入ってから後のことしの一月になりまして、法務省から日弁連に対して、簡裁の事物管轄を三十万に拡張するために、む二月初めに法制審議会の全体会議にかけて、今度の国会に改正法律案を提出する予定であるというような御連絡をいただいたわけでございます。そこで、阿部会長は連絡協議会の弁護士会側の委員と法制審議会の弁護士会側の委員と臨司対策委員会の正副委員長を招集しまして、この人たちが会合をしてその意見をどう取りまとめていこうかについて協議を重ねたわけでございます。その結果、せっかくいままで最高裁と日弁連との間で連絡協議会が持たれてきた、こういう途中であるので、話の煮詰まらないうちに行くということは残念だから、何とか提案を見合わせてもらうようにしたいということで、一月の二十九日には阿部会長が五十嵐東弁会長とともに法務省にお話しに伺い、翌日の三十日には阿部会長が東京の三会長と一緒に最高裁を訪ずれてその申し出をしたようなわけでございます。
 これらの申し出をいたしましたけれども、不幸にしていれられなかったと申しますか、提案されるに至ったのでございますが、もっともその間におきましても、裁判所も提案をできるだけ待ってもらっておりますというようなお話もございました。だからこそ、弁護士会側のほうも、先ほど申しましたように、六回にわたって裁判所と協議を重ねてきたわけでございますが、最後に三月六日の日に、今後協議を続けていくべきまだ問題がたくさん残っている、前向きの姿勢で進めるということで、しかも期限を定めなくては無理かもしれないから、一年を限って裁判所と引き続き連絡協議をしていってはどうだろうかという提案をいたしたわけでございますが、最高裁におかれましては、いまになっては応じかねるというようなことで、双方の間で連絡協議の話が煮詰まらないままで提案されるというような状態に相なったわけでございます。
 連絡協議会の中身につきましては、これもすでに諸先生に御存じいただいておるところかと存じますので、と同時にお与えいただきました時間もございませんので、省略いたしますが、最後に連絡協議の終わりますといいますか、打ち切られましたといいますか、最後の三月六日の日に、これでもうこの問題についての協議は終わらざるを得ないという立場になりましたときに、実は私自身としてもなおお伺いしたい問題が多いということで申し上げた点もございます。そのときに申し上げたのは、地方裁判所のほうでは、なるほど事件の数はふえておりますけれども、審理をされますに要する期間、これがだんだん短縮されてきつつある、すなわち能率が上がりつつある状態に思われるのに、簡易裁判所では、事件数は減ってきたというふうにはなってはおりますけれども、審理の期間がかなり長くなってきている。三十三年のときには審理期間が四カ月ということになっておりますけれども、四十四年には五カ月半というような数字も出てきております。こういうような状態のところへ、新たに三万七、八千件の事件が移るということになると、それだけでも簡裁としてはお困りになるのではないかというような点と、さらに一審判決の上訴に対して原判決の破棄される比率を見ますと、簡易裁判所では増加の傾向を示しておる。と申しますのは、やはり現在の状態でも簡易裁判所では困難な事件が増加しつつあるのではないかというようにも、あるいはその機能が、簡裁本来の目的のために働いておるために、そういうような人的構成のために、こうした事件を扱うことが無理ではないかというように考えられるというようなことからいたしまして、この点についてもお伺いしたいということを申し上げたわけでございますが、もちろん私一人が伺っても連絡協議としての利益にはなりませんので、その程度で終わったというかっこうになっております。
 先ほども申しましたように、地域住民がより近くの裁判所で裁判を受けることができるからそれだけ便利ではないかというような御意見でございますが、はたしてそう言えるかどうかという問題も伺いたい理由の一つでございます。実はお手元に私が資料としてお許しをいただきましてごらんいただくようにいたしております愛知県の図面をごらんいただきますとご便利かと存じます。御案内のように、愛知県には人口二百万をこえます名古屋市がございます。その西方に人口五万人近くの津島市というのがございます。津島市の簡易裁判所の管轄区域には、名古屋市と津島市の中間に囲まれております大治村、甚目寺町、美和町、七宝町、蟹江町、十四山村、飛島村、弥富町、佐屋町、八開村、佐織町、こういったところが津島市と同時に津島簡易裁判所の管轄区域になるわけでございます。いま三十万に拡張されますと、津島市の簡易裁判所で、住民が比較的近いところで裁判を受けることができて便利ではないかというふうに考えられると、それは実情に沿わないものではないか。と申しますのは、名古屋市の西方にあります町村はどちらかといえば名古屋市のベッドタウンになるかと思います。と同時に、次第にこれも農村地域が都市化いたしまして、ほとんど大部分の人は名古屋市に生活の深いつながりを持ってきております。そういうような事柄のほかに、交通の利便などから考えましても、名古屋市に来たほうがやはり便利になろうかと考えられます。会社の帰りに、あるいは農家の人であれば名古屋の市場に来た途中で簡易裁判所に立ち寄っていくならば、きわめて便利に裁判が受けられるような地域ではないかというふうにも考えられます。これはしかも、名古屋と津島の距離は電鉄の距離にいたしましても十七キロしかございません。これはかなり迂回した道を通っておって十七キロでございます。また、津島市の人口は、昭和四十五年の二月二十八日じゅうに基本台帳の登録人口では四万九千九百四十人であり、四十年の十月一日の国勢調査では四万六千五百五十九人というわずかな人口の裁判所でございます。住民はよりよい裁判所の裁判を受けたいという念願のほうがはるかに強いのじゃないかというような感じもいたします。さらにこの問題につきましては、北海道の例なども、北海道の弁護士から、簡易裁判所が三十万になると地域的に非常に困るというようなことも訴えられておるようなわけでございます。こうして、地域的に便利になるというようなことは一がいに言えない例が全国的に調べますとかなりたくさん出てくるのではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。
 あるいはまた、裁判所の御意見によりますと、十数万の事件などでは、旅費、宿泊費などが高くなって、訴訟をあきらめるようなことになるのではないか、そういう人たちに対しても今後の改正によって権利の保護ができていいんじゃないかというご意見もございましたが、私は必ずしもそういった御意見にはにわかに賛成できないのでございます。と申しますのは、汽車賃が高くなるとはいいましても、これはまず本人訴訟ができるわけでございます。本人訴訟であれば、本人の汽車賃だけであり、しかもそれは相手方の敗訴に対して負担を請求できることでもあるということにもなりますし、またもしこういうことに耐えないものであるならば、せっかく政府が多額の補助金を出して御支援をいただいております法律扶助制度の活用が望まれるわけでございます。この法律扶助制度の活用さえされますならば、ただ費用の立てかえ、免除が受けられるばかりでなく、必要に応じて代理人の選任さえしてもらえるわけでございます。そして、その費用の立てかえあるいは免除も受けられるというような制度もございますので、こういう制度を活用すれば、むしろ十分本人の納得するような裁判が受けられて喜ばれるような状態ではないかというふうに考えておる次第でございます。さらに、名古屋の例を申しますと、名古屋の家庭裁判所では、即時調停といいまして、本人が出頭すれば、そのときすぐ裁判所で調停がしていただける。あるいは日中勤務の関係などで裁判所へ来れないような、あるいは来るのに休んでこなければならないというような人に対しては、夜間調停の制度もとられておるわけでございます。もし簡易裁判所に多少でも余裕があるならば、こういう制度をとっていただきますならば、これこそ地域住民の人たちが非常に喜ぶのではないかというようなことを考えておるわけでございます。あるいはまた、できるだけ簡易裁判所においても有資格者を充てたいというような御意見でございますが、せっかく有資格者をお充ていただきますならば、地裁を強化していただいて、その方が地裁の裁判官としてやっていただければいいのではなかろうか。簡裁に移されるために、上告も最高裁に申し立てることができなくなってしまう。そういうことを考えるならば、この面からしても、地裁の強化こそ望まれる問題ではなかろうか。現に、簡易裁判所は非常に弱体化されているのではないかというようなことも強く言われております。
 そこで、私は、名古屋を中心にいたしまして、その実情を名古屋の会長から聞いてまいったのでございますが、名古屋の地裁管内には簡易裁判所の裁判官の人数が昭和四十五年の三月一日現在で三十二名おられるということでございます。五月一日現在では二十九名ということでございます。三月一日現在で調べますと、三十二名のうちに、兼任の方が八名で、簡易裁判所専任という方が二十四名ということになっておるようでございます。その二十四名の中で、法曹資格を持っておられます方は二名、特任の裁判官が二十二名ということでございます。五月一日現在の調べによりますと、人員二十九名の中で、兼任の方が七名で、簡裁専任の方が二十二名ということでございます。そのうちの一名の方だけが法曹有資格者で、二十一名の方は特任の裁判官だというふうに伺っております。次に、岐阜地方裁判所の管内を伺いますと、これも五月一日現在の実情で、人員は十二名だそうでございます。そして、そのうちの三名が兼任になっており、九名が専任だということだそうでございます。専任の九名の方だけが簡裁の事件を扱っておられて、兼任の三名のうち二名は実際は地方の仕事だけしかおやりにならないというふうに伺ったわけでございます。次に、三重県津の地方裁判所管内の五月一日現在の調査によりますと、その人員が十名だそうでございます。そうして、そのうち一名が地裁との兼任であり、簡易裁判所の専任の方は九名だそうでございますが、簡易裁判所で裁判をおやりになる方はこの特任の九名の方だけだというふうに伺っておるわけでございます。また、福井地方裁判所の管内の五月一日の状況を伺いますと、簡易裁判所の裁判官の人員が五名で、この方は全部特任の裁判官だというふうに伺いましたわけでございます。特任の方が総数の過半数だというふうに伺っておりますけれども、この地方におきましては、過半数というよりも、ほとんど特任の方のみの裁判というような結果になってあらわれておるわけでございます。こういった諸般の点について、私自身としても連絡協議でこまかい点についてお伺いし、少しでも国民の利益になるような方法が裁判所との協議で実現できるならば、これにこしたことはないというふうに考えておったわけでございます。しかも、これらは、東京でお考えになるほかに、地方で単位弁護士会、地方の裁判所と御協議申し上げるなどして、最も効果的ないい方法を検討するのが私ども弁護士としての義務でもなかろうかというふうにも考えておりますので、引き続いて連絡協議が継続されることを望んでおったわけでございますが、残念ながら、裁判所におかれては、今日の事態では、長官や所長会同で何回も要望もされておるし、国会のほうの御意見もあるから、これで打ち切るのもやむを得ないということで終わったわけでございますが、その他のいろいろな諸般の点についてなお私どもは協議すべき事項があるというふうに考えておったようなわけでございます。
 まだ申し上げたいこともございますけれども、お許しいただきました時間もかなり経過したと思いますので、この辺で終わらしていただきたいと思います。
#4
○委員長(小平芳平君) ありがとうございました。
 以上をもちまして参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
#5
○亀田得治君 きょうはお忙しいところをわざわざ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 ただいま非常に専門的な立場から問題点の御指摘をいただきまして、たいへん参考になったわけでございますが、若干補足してひとつお尋ねをいたしたいと思います。
 その第一は、経過は相当いろいろあったようですが、ともかく裁判所側とそうして弁護士会側との連絡協議が進んでいた、そういう状態の中で、一方的に法務省から国会に法案を提出する手続が進められていったその段階でも、なお連絡協議、最終は三月六日ですから、続いておるわけですね。そういう日時の関係等いま詳細承ったわけでございますが、それをお聞きしまして、昨日も最高裁側からはほぼ同じような説明を聞いたわけですが、きょうは一そうはっきりしましたが、こういう状態で司法制度の根幹に触れるような問題が処理されていくということは、たいへん私も残念だと思っております。最高裁――裁判所側は、十を三十に直したいんで、そんなおおそれたことは考えていないんだと、簡単に言えば、そういう意味のことを言われますが、しかし在野法曹の皆さんは、そうじゃなしに、司法制度の根幹に触れるじゃないか、ことに簡裁というものをどうしていこうとするのか、ますますあいまいになるじゃないか、そういうことで問題を投げかけておるわけですね。専門家同士ですから、問題を一方が投げかけたら、やはり投げかけられた人が了解できるようなことじゃないといかぬと思うのですね。それがない、こういう状態で法案の審議が進んでおるわけですが、このままでもし法案が通されていくということになりますと、今後その法曹三者の間の関係というものが非常に悪くなるんじゃないかというふうに私は危惧しておるわけです。私だけじゃなしに、多くの方もそういう危惧を持っておると思いますね。この例の臨時司法制度調査会で、法曹一元という問題が根本問題として取り上げられ、しかしこれは結局は具体的な結論が出なかったわけですが、しかしその考え方については非常にやはり高く評価されたことは事実なんです。まあ調査会のほんとうの仕事は、そこで一たん打ち切って出直せばいろいろ問題が起きなかったと思いますが、いずれにしても法曹一元という問題のとらえ方、このことが調査会で相当前向きに盛り上げられたわけで、私はこれはプラスであったと思います。しかし、このことを今後具体化していくには、やはり法曹三者間のスムーズな関係というものが土台になると思うのですね、土台になる。これが敵対関係にあったんでは、それはとても土台がくずれてしまうわけですね。法曹の実務経験者を裁判の中に生かしていこう、こういうことなんですから、その間が断絶されたんじゃ、これは話にならぬわけですね。そういうことを非常にこの法案の扱うについては実は心配しているわけですが、そういう点についての皆さんの側の御所見をひとつ承っておきたいわけです。統一的に何か決議をされたというものがないかもしれぬが、鈴木さんとしての御意見でもけっこうです。その点ひとつ。
 もう一つは、私としては裁判所側にも希望しておるわけですが、弁護士会側としては、三月六日で終わりにしないで、もっとひとつ協議を続けようじゃないか、突っ込んだ協議を――そういうことについての現時点における姿勢、考え方ですね、相手が応ずるなら、私のほうはいつでも、いまからでもやりましょうという姿勢なのか、いやこれはもういろいろやったが本件に関する限りだめだという姿勢なのか、第二点としてその点をひとつお聞きしておきたい。
 それから、いろいろ詳細な点の御指摘がありましたが、裁判所側から出された資料によりますと、松江管内の簡裁ですね、今度の制度改正によると七二%に簡裁がなる。これが全国で一番率の多いところですね。これは裁判所側から委員会にいただいた資料です。そうすると、一審の事件が七二%も簡裁に場所によっては移る。これはもうたいへんなことじゃないかと思うんですが、あなたのほうで先ほどずっと簡裁の裁判官の内訳をお調べになったようですが、もし松江の部分がありますれば御参考までに聞かしてほしいんです、なければけっこうですが。その松江の数字はいま私が申し上げたようなことになるわけですが、こういう点についての御所見をもう一つ突っ込んでお伺いしておきたいと思います。
 それから次は、例の昭和四十年九月三十日の最高裁のメモですね、メモが出ました。それから後に裁判所、弁護士会の連絡協議が発足したわけですが、その当初において最高裁側と弁護士会側の責任のある方が会って――これは特に名前だけはこういう公式の場所ですから遠慮さしてもらっておきますが、お会いになったその際に、最高裁側の真意はどうなのかという問いに対して、弁護士会側で反対があればできないでしょうというふうなお話があり――これは文書も何もありませんよ――ということをわれわれは聞いておるわけなんです。これは責任ある地位の方の話ですからね、非常に大事だと思うんです。そういうことがうやむやにされるようでは、いわゆる法曹一元の基礎である法曹三者の関係というふうなものもくずれていくわけですね。非常にわれわれがこれは重視しておるんですが、皆さんのほうではこの点はどういうふうに受け取っておるのか確かめておきたいと思います。
 それからもう一つは、三月六日に、最後の提案なんでしょうが、弁護士会側から最高裁側に、もう一年考えようじゃないかという提案をされた、その点の説明を、これは非常に大事だと思いますので、もう少し詳しく御説明いただきたいと思います。こちらの提案に対して、向こうの回答なり、先ほど概略はお話ありましたが、あなたの御存じのとおり、よろしくひとつ承っておきたいと思います。
 一応以上、なおそのうちまた追加して聞くかもしれませんが。
#6
○参考人(鈴木匡君) 御質問いただきました点について順次お答えさしていただきたいと思います。
 弁護士会が今度の裁判所のお考えになっております簡裁の事物管轄拡張は簡裁の性格を変えるものではないかというふうに考えて、裁判所といろいろ御協議申し上げてきたわけでございますので、そういった点については、やはり私どもといたしましては、もう少しく裁判所のほうからもほんとうの御意見が伺いたいという考えを持っておったわけでございます。ただ単に十が三十になる、一が三に変わるだけだというのではなくて、やはり昭和二十九年のときにすでに簡裁の性格が区裁判所化したんじゃないかというように言われており、現にそういったことが裁判所でお出しになっております著書にも書いてある、あるいは学者の書いておる解説書にもそういうことが実際にうたわれておる、これはもう間違いないことだというようなことからいたしまして、十分検討したいということを申し上げておったのでございますが、そうしたことも十分できないままに終わりまして、そして、対立するというようなことはおそらく裁判所も好ましいとはお思いになっておられないと思いますと同時に、弁護士会としても非常に残念なことでもあって、今後法曹三者が協力していく上にも決してプラスになるとは考えられないわけでございます。常に、私どもももちろんでございますが、裁判所におかれても法曹三者が協力しなければいけないんだというようなことをおっしゃっております。歴代の理事者もそういうことを頭に置いて協力して、司法の円満な運営に少しでも弁護士会として、あるいは弁護士としてできるだけの貢献をしたいというふうに考えてきておるのでございますので、今度のようなふうに終わるということは、最初に私が申し上げましたように、まことに残念であるということに帰するわけでございまして、先ほどお尋ねのございました、法曹一元の基盤の培養といいますか、あるいは将来こういうふうに持っていく、この方向に持っていくということから考えましても、好ましいことではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。そして、もし裁判所から今後、それでは協議を続けようと言われた場合に、いまの状態ではどう考えるかと、いまの姿勢ではどうかというようなお尋ねでございますが、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、去年の十一月十日に連絡協議に入ると、裁判所と協議さしていただこうという方針を立ててもおりますし、その後、臨司対策委員会と連絡協議の弁護士会側の委員あるいはそれに法制審議会の弁護士会側の委員を加えた合同会議を開いて、いろいろ経過の報告をし、今後のあり方について協議しましたおりにも、引き続き協議は進めるべきであるというような意見にもなっておるわけでございます。この対立した状態のままで終わるということは、新しい日弁連会長並びに新しくなられた日弁連の副会長の方々も同様に心配されまして、できたらこの状態を解消したいと、もしこれが継続されてそういうことが解消できるならば、双方にとって、あるいは司法の将来にとって望ましいことではなかろうか。また、これを一年延ばしていただくについて、あるいは逆に申しますと、延ばさないで今度どうしてもやらなければいけないと言われるほどの緊急性がどこにあるだろうか。先ほど三月六日の点についてもう少しく詳しくというようなおことばをいただきましたが、三月六日にも同じことを述べておるわけでございます。いま述べましたように、その緊急性は一体ないんじゃないでしょうか。四十四年度は四十三年に比べまして地方裁判所も簡易裁判所も一審事件の新受件数が減ってきている、そういう時期でもございますので、そこで協議して煮詰めた上でおやりいただいたほうがいいのではなかろうかということで、新連合会長、新副会長も陳情を重ねたということでもございますし、私どもこの臨司対策委員会の取りまとめの立場におります者も、そういった理事者の方々と協議などして、これが継続されるならばさらに協議を重ねて何とか対立関係を解消していきたいというようなふうに考えておったわけでございますので、現時点の姿勢といたしましては、やはり以前と同じように継続して協議に進めていけるものというふうに考えておるわけでございます。先ほど私がいまの名古屋、岐阜、三重、福井の実情を申しましたけれども、お尋ねの松江の点につきましては、私としては調査いたしておりませんので、はなはだ残念でございますが、その点についてはお許しをいただきたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、いまお伺いしますように、七二%にも及ぶということは、それだけ三十万以下の金額というものがその地方で高く考えられておるということが言えるのではなかろうかと思います。これが広く考えられるものならば、こんな大きなパーセントにはならないかと思います。そういたしますと、日弁連が前から申しておりますように、過半数にわたる多数の事件が、特任裁判官の裁判によって一審を受け、高等裁判所で上告がストップするということについての弱体化ということが一そうこの地方では言われるのではなかろうかというような気がいたします。いま御指摘のありましたような個々的な事情もございますので、連絡協議はもう少しく、全体的な比率だけでなくて、きめこまかな検討もしたいというようなことで、継続をお願いいたしておったようなわけでございます。
 なお、九月三十日のメモの取りかわしの問題につきましては、私も御指摘のような事情は非公式には伺っておるわけでございます。おそらく、連絡協議は円満に進めて、双方が協力し合って司法の将来のために互いにその職責を果たそうというようなお気持ちから御協議いただいたことでございますので、御指摘のようなふうで、一方的に強行と言いますと少しことばが強いわけでございますが、とにかく話の煮詰まらないようなものはこれを実施に移そうとまでは当時はお考えになっておらなかったのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。また、今日におきましても、この三月六日、話をこれ以上もう続けられないという裁判所のお気持ちの中では、先ほども申し上げましたように、長官と所長の会同で何回も要請されておるような事情にもあるのだ、あるいは国会でそういう拡張の必要があるのではないかというような御質疑をいただいたような経過もあるのだというようなことから考えると、これも一つの国民の声にもなるから、残念だがこの際は打ち切らざるを得ないというようなおことばになっておったわけでございます。先ほども申しましたように、日弁連が一年の継続を提案いたしましたのは、ただ臨司対策委員会がそういう考えを持つというだけの問題ではなくて、理事者も加えて協議してそうしたことを提案するようになってきたわけでございます。だからこそ、新しき理事者にかわりましてからも、何とかそういう方法がとれないものかということで陳情を重ねられたわけでございます。一年継続の提案のときには、いま申しましたように、具体的な緊急性という問題もないというような、こまかいその点の説明もして申し上げたわけでございます。先ほども触れたことでございますが、こういった事情を考慮して、しかもそれをずるずると引き延ばされるというふうに裁判所がお考えになりますと話はまとまりにくい、だからとにかく期限を切ってでもどうでしょうかというふうに申し上げたようなわけでございます。
 大体お尋ねいただきました点についてのお答えを一応終わらしていただきたいと思います。
#7
○山田徹一君 きょうは御苦労さまでございます。私は全くのしろうとでして、心外のようなこともあるかもしれませんけれども、その点あしからず。
 一般論として、二十九年に十万円になった、ずっと引き上げがされていない。一般的な側から見ると、たいしたことじゃないじゃないかというような感じを受けるわけなんですね、私たちは。専門的な話をいま聞きまして、ほんとにたいへんな問題もあるんだなということを感じましたが、その問題と、それから行政といいますか、人の問題ですね、質の問題、あるいは簡易裁判所の特質の問題等と、事件数がふえるということだけによってからんでいるようにも感ずるのですけれども、やはりそういう点が非常に大事な問題なんですか、専門の立場として。
#8
○参考人(鈴木匡君) 当事者にとりましては、私どもも、かりに医者にかかるのと同じだと思いますけれども、少しでもいいお医者さんに見てもらいたい、多少の距離のことよりもそれを一番中心に考えるわけでございます。訴訟事件も、やはり当事者にとっては一種の社会生活上の病気とでも申しますか、紛争の解決ということになろうかと思います。したがいまして、金額の多寡ということよりも、その自分の主張が間違っていないかどうかということに非常な関心というか、本人が真剣になるということも、一つの事情でございます。もう一つ、経済的な価値から見ましても、その金額が小さくても一たとえば十万円がいま経済価値が変わってきたから多少上がってもいいのではないかということになりましても、戦前よりも強化された組織、機能でやっていけるならば苦情はなかろうかと思う。戦前を考えてみますと、たとえば一円の事件でも、先ほど申しましたように、区裁判所が行なわれた当時は、高等試験の司法科試験に合格して、しかも一年半の試補を経て、なお相当年数実務の経験をされた裁判官が裁判をされたわけです。今度はそうでなくて、そうした条件はあまり考えないで、社会常識のある人によって行なわれればいいという程度で考えますと、現に、たとえて申しますと、不動産の事件などにいたしましても、非常にむずかしくて、たとえば境界事件などになりますと、金額は非常に小さいですけれども、事件がむずかしくてなかなか進行しない、一応審理は終わってもなかなか判決が再三延びていくというようなことで困るというような例なども出てきているわけでございます。せっかく戦後すべての方面で日本が非常に発展をしてきております。しょっちゅうここでも延べられておることだと思いますけれども、国民生産も非常にふえたとか、あるいは社会保障なり社会福祉も非常に至れり尽くせりになってきたとか、いろいろ言われますが、そういった状況ならば裁判もひとつ至れり尽くせりの方法が考えられていいのじゃないか。にもかかわらず、戦前よりもそれがさらに弱体になるのじゃないでしょうか。せっかく国民の利益ということで考えていただいて、弁護士会も骨折りますからひとつ強化していただけないものなのか、地裁の強化に努力していただけないでしょうかということが弁護士会の基本的なあり方になっておるわけでございます。
#9
○山田徹一君 もう一つですけれども、こうして連絡協議会なり合同会議が開かれているわけですが、十三回、十四回、十五回と重ねてこられた内容ですね、中身、詳しいことはよくわかりませんが、すべての点に三者の法曹の方々の意見が食い違ってきたわけなんですが、それとも一致した点もあるのですか、その点。
#10
○参考人(鈴木匡君) 私どもは地裁の強化を揚げている、地方裁判所をもう少しく充実強化していただいたらどうでしょうかということを申し上げておるわけです。裁判所におかれましても、それは同感である、自分のほうもそういうふうに考えているのだというふうにお述べになっておるわけでございます。そうであるものなら、私どもはその点について一緒にこれと合わせて御協議申し上げさしていただいたらいかがでしょうか、そうして一番合理的な国民のためになるような線を見出すようにしようじゃないでしょうかということも申し上げておるわけでございます。それから、裁判所におかれましても、区裁判所化する意思はないのだというようなこともお述べいただいておるわけです。がしかし、実際には過半数の事件が簡易裁判所に移るということになるわけです。先ほど御指摘いただきました松江ですと、七割二分からが簡易裁判所に移るということになりますと、これは事実上は区裁判所化したと言わざるを得ないのではなかろうかというふうにも考えられるわけでございます。あり方としては、裁判所も区裁判所化する意思はないというように伺っておりますので、こういう点なども、ともかく協議さしていただければ、よりお互いの意見が近づいていくような感じもいたしておるわけでございます。
#11
○後藤義隆君 ちょっとお伺いいたしますが、先ほどお話がありました臨時司法制度調査会の関係でありますが、臨時司法制度調査会は、亀田先生、私、それから衆議院からは、前に判事をして弁護士等しておる瀬戸山さんとか、あるいは弁護士の小島さんとか、それから社会党の人が、だれだったか覚えてないけれども、だれか二人くらいやはり出ておったと思いますが、それから弁護士の代表が東京から二人、これは島田先生と長野國助先生であったと思う。それから大阪は関西から二人。名前はちょっと忘れましたが、あるいは阿部甚吉さんじゃなかったかと思う。名前は覚えていないが、もう一人は神戸の会長じゃなかったかと思いますが、とにかくそういう人たちが審議をして、そうして最終結論を出して答申したわけでありますので、それにはあまり異議がなくて、弁護士、そういう法律家の人たちがあまり異議がなくて、そしてとにもかくにも簡易裁判所の事物の管轄は引き上げることが必要であるという結論を出したわけです。ところが、その後において皆さん――皆さんと言えば語弊がありますが、日弁連のほうでは今度はそれを決議をなさっております。そしてこれを見ますと、決議の中でもって、まああまり詳しいことは申し上げませんが、次の四点の実施に対して断固反対すると、そしてその中の第四番目に、簡易裁判所の事物の管轄の範囲を拡張することと、これは非常に断固反対と弁護士会は反対されておるわけですが、これのおもな理由は、いままでいろいろお話を伺っておりますと、これはやはり簡易裁判所の性格に大体反するからということが根本的な理由だと思いますが、そうしてくると、やはり簡易裁判所の性格に反するということ、事物の管轄を拡張することが簡易裁判所の性格に反するという御見解ならば、将来この決議を変えてそしてやはり妥協するという余地はないのじゃないかと、こういうようなふうに私は考えますが、その点はどうですか。
#12
○参考人(鈴木匡君) 昭和三十九年の臨司の意見書をおまとめいただきますについて、御指摘いただきました諸先生――もっとも大阪の阿部先生は違うと思いますけれども……。
#13
○後藤義隆君 いや、違っておったかもしれません。
#14
○参考人(鈴木匡君) 御指摘いただきました御先生がいろいろ御関係いただいたということは伺っておりますが、当時からも私ども伺っておりますのは、法曹一元の制度について盛んに御検討いただいておって、あれは三十九年の八月二十八日ですか、意見書を出されましたのは。私どもは、昭和三十九年の五月ごろに一応法曹一元の制度はとらないんだという基本方針をきめられて、そのころから急いで幾多の問題をおまとめいただいたというふうに伺っているわけでございます。そのおまとめいただきました中に、簡裁の事物管轄の範囲をある程度拡張すると、その拡張理由については、判事補に裁判をさしていく職権特例ですか、あれを廃止すべきではないかというふうなこととあわせ事情がからみ合って、そして簡易裁判所の管轄をある程度拡張すると――そのある程度とは三十万ないし五十万とかというようにお書きいただいたように伺っておりますが、当時におきましても、弁護士会としてはその前から、昭和三十七年に臨時司法制度調査会が設置されますと、それに対してどう扱っていけばいいかとかで委員会ができておったわけでございます。その委員会においては、よりより協議されておりまして、臨司の意見書の中に、法曹一元の制度をとらないとか、あるいはいま御指摘いただきました簡裁の事物管轄をある程度拡張するとかいうような問題が出てまいりまして、そのときからもうこの点については賛成できないんじゃないかというような意見が出ておったように伺っております。それで、いま御指摘になりました三十九年の十二月になって日弁連の総会の決議が出た。総会の決議の出る前には、すでに単位会では反対の意見を表明しておったところもあったはずでございます。
 ただそこで、そうすると今後全然妥協の道がないのかというお尋ねでございますが、私は、簡易裁判所本来の−昭和二十二年ですか、裁判所法の法律が制定されますときに時の大臣が御答弁になりましたように、少額軽微な事件を簡易迅速にやって、しかも各所にこういう裁判所を置いて司法の民主化に貢献したいんだというふうな、そういう特色を持った方向でいこうということを前提にしたり、あるいは地裁の強化を前提にして御協議いただきますならば、話ができていくんじゃなかろうか。どの方法で、あるいはどんな内容でということになりますと、これは総合的に判断されることと存じますので、一がいにいまこれならばとかというふうにちょっと私も一存では困難かと思いますけれども。
 それからもう一つ申しますと、私どもが昨年の十一月十日に、最高裁と連絡協議を続けましょう、入りましょうと、こう言ったときにも、お互いにその自分らの利益ということは考えないようにしようと、国民の利益ということを念頭に置いてこの話を進めていこうという申し合わせをいたしまして、これは日弁連の内輪の申し合わせでございますけれども、私どもといたしましては、国民の利益を中心にして考えようという申し合わせをして出しておりますが、そういう方法で協議は進められていけるんではないかという感じは持っているわけでございます。
#15
○後藤義隆君 それから、あまりくどいようですけれども、ただいまもお話があった、先ほどもお話があったが、地方裁判所を強化すると、これについては裁判所側も賛成だというようなふうに伺いましたが、地方裁判所を強化するということは具体的に言えば何か。まあ元来、庁舎をりっぱなものをつくるとか、あるいは判事を増員するとか、あるいは判事以外の職員を増員するとか、そういうようなふうなことが考えられるが、それよりほかに、現在これはもういずれもやはり相当な国家財政が必要であるが、それより以外に何か強化する方法がありますか。あなた方が要求する地方裁判所を強化するということ、具体的にこうすれば強化ができるんじゃないかというようなふうに。
#16
○参考人(鈴木匡君) 私よりも先生のほうが専門家でよく御存じだと思いますけれども、御指摘のように、人的機構と物的設備の充実強化というのを第一に掲げておるわけでございますので、何としてもそれをお願いしたいというのが第一だと思います。そうなれば、予算の問題もおそらくなると思います。先ほども触れたわけでございますが、今度でも、地裁では二十人の増員をお許しいただいておる、予算でお認めいただいたというようにも伺っておりますので、そういった方法こそ、たとえば昭和二十九年以来この姿はあまり変わっていないのじゃないかという御意見であります。確かにそのとおりでございますが、その間にもそういう方法で話し合いを進めていくべきじゃなかったかというような感じが下地にあるのだろうと思います。
#17
○後藤義隆君 それから、これは先ほどからいろいろお話があったのでありますが、経済事情の変動によって簡易裁判所の事物の管轄を改正するということは国民にとって利益になるのか、それとも不利益になるのかという点を私どもは考えてみる必要があると思いますが、それは昭和二十二年当時の事物の管轄――これは昭和二十二年当時ですが、当時の事物管轄五千円が、また昭和二十六年当時の事物の管轄三万円が改正されないまま今日に至っておったとしたならば、国民は簡易裁判所の利用価値がほとんどもうないのじゃないか。わずか五千円やあるいはまた三万円というようなことではないのではないか。これをやはり経済事情の変動に伴って十万円に引き上げたことは、国民がそれによって非常に利益を得ているのじゃないか。したがって、昭和二十九年に十万円に引き上げたわけですが、今度三十万円に引き上げるということは、やはりそれから十五年間たっておるわけでありますから、やはり引き上げることが国民にとって必ずしも不利益でなしに、あるいは利益なことがあるのじゃないかというようなふうに私は考えられるのです。それは同じもの――まあ品物と言ってもいいが、同じものでありますが、それが従来は自分のすぐ近所の簡易裁判所でもって訴訟ができておったものが、今度は非常に物価が騰貴いたしまして、そうしてインフレなどのために貨幣価値が非常に下がってまいりました。それで、前は十万円であったものが、今度は十万円をはるかにこえるような非常な価格になってまいった。そうすると、いままでは簡易裁判所でできておったのが、今度は地方裁判所まで行かなければならないというようなふうなことになって、そしてそういうようなふうな点から考えてみると、これは経済的にも、あるいは時間的にも、そしてその他の点でもって、非常に私は不利益になるんではないか。やはりある程度そのときの経済事情に応じてこれを従来と同じようなふうに簡易裁判所でもって取り扱わせるほうが、国民はそれによって利益を得るんじゃないか、こういうふうに考えるわけなんです。それから、それに対しまして、あなたは先ほど愛知県の名古屋とそれから津島市とのことのお話があったわけですが、私が調べてみましたところが、本庁やあるいは地方裁判所の支部の所在地にある簡易裁判所でなしに、そこと離れて全然独立しておるところが二百九十あるようであります。愛知県、名古屋の管内においても、あなたもちろん御承知のとおり、これは十一独立した庁がありますが、いままで、自分の近所でもって簡易裁判所で訴訟ができておったものが、今度は遠いところの地方裁判所に行かなければならぬ。そしてまた、控訴については、名古屋みたいな同じ市内に、すぐ愛知県みたいな高等裁判所があるところはいいけれども、高等裁判所の数は御承知のとおりきわめて少ないわけです。それでもって、控訴事件はわざわざ遠いところの高等裁判所まで行かなければならない。それからまた上告になると、東京までわざわざ出てこなければならない。こういうふうなものが、さっきあなたのお話でもって、津島市で訴訟するよりは、いろんな出入りが激しいので名古屋まで行ったほうが便利だというお話がありましたが、そういう人もあるかもしれないが、しかし、この津島ならすぐ自分のひざ元であって、あるいは隣かその隣かに簡易裁判所があるのを、わざわざそこを飛びのけて名古屋まで行かなきゃならぬということになれば、私は国民のためにあまり利益ではないのではないか、こういうようなふうに考えますが、それから、経費をかりに使ったとしても、勝訴すりゃ、それから費用がもらえればいいじゃないかということもあったんですが、しかし、やはり国民の一人であるところの敗訴したほうの側から見ると、非常に大きな負担になります。これは、訴訟費用の負担が非常に多くなって、どっちにしてもそれはあまりいいことじゃないのじゃないか。国民の側に立って考えてみると、経済上の変動に伴って、ある程度の変更することは、やはり私は必要じゃないかというふうにも考えられますが、その点はどういうふうにお考えですか。
#18
○参考人(鈴木匡君) いま、ある程度引き上げたほうが国民の便利になるのではないかというようなお尋ねでございます。これは私どもの考えておりますのは、それじゃ戦前はどうであったろうか。戦前は地方裁判所と区裁判所というのが御案内のようにあったわけでございます。そうして、先ほども申しましたように、地方裁判所と区裁判所のこの二つで一審の事件を全部処理されておったわけでございますが、区裁判所が行なっておった事務は、裁判所法ができますときに、地方裁判所支部が行なうことになったので、それだけでも戦前と同じ状態になっておるわけでございます。ですから、新たに設けられました、御指摘になりましたたくさんの簡易裁判所は、別の目的のためにつくられておるわけと言えるのじゃなかろうかと思います。ただ、そこにございますように、昭和二十二年には五千円までの事件を扱うことになったのは御指摘のとおりでございますが、それが、私どもの理解しておるところによりますと、議会で大臣が答弁されましたように、その程度の軽微な事件を扱わせよう。それ以上は、全部戦前と同じように有資格の裁判官が、それから戦前と同じ場所で――いまは支部ということに変わっておりますが、前と同じところなんです。そこで裁判を受ければいいじゃないかというふうになっておるかと思います。だから、考え方といたしましては、昭和二十二年には、制度といたしましては、戦前よりも強化されたような制度ではなかろうか。新たにもう一つ余分に簡易裁判所というきわめて簡易なものを簡単にやろうというものができて、それ以上は昔と同じ場所でやってもらえるのだということになったわけでございます。ですから、簡易裁判所で受ければ近くていいのにということも一つの御意見ではございますけれども、それじゃ昔はどうであるかといいますと、やっぱり交通不便なときにおいても、昔はいまの地方裁判所支部のところで有資格裁判官の裁判を受けてこられたということになろうかと思います。ことに交通便利な今日に、ほんの三里か四里しか離れておらないのに、そこの簡易裁判所へ行かなければならないというようなことになりますと、私ども名古屋の近くの例を申しますと、かえってそんな簡易裁判所でやっていただかなくても、むしろ地方裁判所でやっていただいたほうが便利でもあり、しかもそれは強化された機構でやっていただけるのだというふうに考えておるわけでございます。そうして、さらに控訴した場合にも、簡易でやっておけば近くの裁判所で受けれるけれども、遠くなるじゃないかというような御意見でもございますが、これも、それじゃ戦前はどうかといいますと、やはりいまと一つも変わっておらないということでございますし、交通の便利になった点など考えますならば、本人から言いますと、そういうことについての不利益よりも、内容の充実したところを好むのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。また、上告の場合も、昔はそれじゃどうであったか。昔はやはり全部第一審も御案内のように受けてもらえた。私ども、おそらく国民の心理から考えますと、なお最高裁判所があるという、そのことばが非常に強い信頼感となってあらわれておるのじゃないかというような感じがいたしておるわけでございます。ですから、御指摘のございましたようなことも考えられますけれども、もう少しく深く立ち入って戦前などから比較したりしていたしますと、やはり日弁連は、私が申し上げましたような考え方からいたしまして、性格が変わるようなことは好ましいことではないんじゃないかというふうに考えておるわけであります。
#19
○委員長(小平芳平君) これにて参考人に対する質疑は終了いたします。
 参考人には、御多忙のところ、長時間にわたりありがとうございました。委員を代表し厚くお礼を申し上げます。
 午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十九分休憩
    ―――――――――――――
   午後一時四十分開会
#20
○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、裁判所法の一部を改正する法律案の質疑を行ないます。
 御質疑のおありの方は順次御発言願います。
#21
○亀田得治君 本論に入る前に、法務大臣に一言お尋ねしたいと思います。
 それは、昨日、地方裁判所の裁判官の充実ということに関連して、いろんな質疑を本法案との関連においてやったわけですが、その際にも触れた問題なんですが、ちょうどきょう午前、札幌地裁において例の福島裁判長に対する忌避についての決定がありましたので、その点についての大臣の所見をお聞きしておきたいと思います。といいますのは、福島裁判長に対する忌避の申し立てが出た、これに対して当時法律の各専門家からは、もう少し法務省が行なう忌避としては慎重であるべきじゃないか、こういうことがいろんな人から指摘をされたはずであります。きょうの決定の正文は私も見ておりませんが、内容としては、たとえ福島裁判官が青法協に加盟をしておるとしても、青法協の中には裁判官の部会を独立させており、したがって、この裁判官に対して一つの具体的な事件についての意見というものを押しつけていくという関係とは見られない、また福島裁判官も青法協の会員としての札幌における活動はそれほど重要なものでもないといったような、いろんなことが書かれておるようでありますが、総合的にそのことによって不公平な裁判が行なわれるとは思われないということで却下したようであります。私は、結論としては、これでよかったと思っておるわけであります。もしこれが通っておれば、昨日も非常な論議をやったんですが、裁判官が一番きらっている、思想の自由を――これは憲法が保障しておる、その憲法と矛盾しかねないような問題に触れられてくるということになるわけでありまして、一応私もほっとしているわけですが、それだけに、法務省として、法務大臣としては、今後この種の問題はやはり慎重にやってほしいという気持ちがしているわけであります。大臣のひとつ所見を、この際決定が出たことについてお伺いしておきたいと思います。
#22
○国務大臣(小林武治君) この種の忌避は、訴訟手続上当然の権利でありますが、慎重にやるべしと、こういう御意見には、私も同調するのでございます。
#23
○亀田得治君 慎重にやることについては同調されたわけですが、あの忌避の申し立てについて、なるほど忌避の権利はあるかもしれぬ、訴訟法上。その点を盛んに法務省は言われるわけですが、やはり重要な事件になればなるほど、法律上許されているかどうかじゃなしに、扱い方の当不当、慎重さ、やはりそこが一番大事なところだと思うんですね。だから、そういう点で、やはり慎重さが多少欠けていたんではないか、その点大臣いまから振り返ってみてどういうふうにお考えですか。
#24
○国務大臣(小林武治君) 私どもはその件について十分検討をした結果の結論でございまして、慎重さにおいて欠けておったとは思いません。
#25
○亀田得治君 やはりその裁判官のほんとうの気持ちというものをつかんでおられぬのじゃないかと私たち思うのですね。われわれは、裁判官がいろいろな、もう極端に言えば一人一人違った思想を持っておると思うのです、極端な表現をすれば。しかし、どんな思想を持っておりましても、裁判官としては憲法七十六条の大原則によって憲法と法律と良心で忠実に行動をしてくれる。具体的には、昨日も論議になりましたが、たとえはっきりとした政党に所属しておる裁判官でありましても、裁判をする場合には、やはり憲法と法律と良心と、これをちゃんと基礎に置いて、そうして行動してくれておる、こういうふうに考えておるのです。私は一般の国民もそう思っておると思います。裁判官もまたそれを誇りにしておると思うのですね。ところが、今回の措置は、訴訟法上の理論構成をするために、福島裁判長が青法協所属であってどういうことをしたといったようなことを申し立てとしては一応つけておりますが、そういう具体的なことがなければ、なおさら一そう簡単にこれは却下される、したがって訴訟法に合うようにそういうことはつけておりますが、そのほんとうの腹は、やはり青法協の会員けしからぬ、憲法擁護、平和と民主主義、こういろことを目的にしておる青法協自体けしからぬ、こういう考えがあってあのような行動がとられたものだと私たち思うのです。真相はそうじゃないですか、どうでしょう、はっきりおっしゃってほしい。
#26
○国務大臣(小林武治君) これはもうはっきり申し上げて、思想がどうのこうのなんということは書いておりません。これらの問題を総合して、公正な裁判をなすことについて外部的に疑いが持たれる、こういう趣旨であるのでございまして、彼がどういう思想だからどうということはこの面にも書いてないのでございます。また、青法協はどうのこうの、会員であるからということでもって特に出しておるという問題でもありません。これが慎重を欠いたか欠かないかということは、それぞれのめいめいの見方でありまして、われわれは欠いておらぬ、あなた方は欠いておる、こういうことでありますから、これは見解の相違というか、世間が広くこの問題について、これはそれぞれ分かれた意見があるのでありますから、一方的な意見でどうこうと、こういうわけにはまいりません。
#27
○亀田得治君 これはなかなか慎重さを欠いたといったようなことを最高の責任者がおっしゃられるとは私も期待はしておらぬのですが、結論から見てやはりそういうことが言えると思うのであります。青法協会員ということがあまり頭を支配し過ぎておったのではないか。そうして、札幌の裁判所において、同じ裁判官ですから、裁判官の気持ちというものはよくわかるんだと思います。したがって、私としては、正当な決定が下されたと、ほんとうにこれは司法制度のためにほっとしているんです。もしあれが忌避と法務省の要求が通っておれば、これは全国の裁判所に相当衝撃を与えると思います、裁判官に。昨日も、そういうことに関連して、裁判官を多数集めようと思うのであれば、やはり裁判官が一番自分の命の綱と思っておる、そこは大事にしてやらぬといかぬという議論をしていたわけです。それはともかく、裁判官は、普通の行政官庁のように、裁判についていろんな命令を受けない、指図も受けない、これが大きな特徴ですから、それをみんな誇りにしているんです。時の政権のいかんにかかわらず、それが憲法、法律から見ておかしいということになれば、それを否定できるんですからね。そういう意味では、非常にまた責任も重いわけです。だから、そこを傷つけないようにやってほしい。まあ今後ともひとつ、今回の事件を一つの経験として、慎重の上にも――慎重は大臣も同意をされた――慎重の上にも慎重を重ねてこういう問題は扱ってほしい、これはもう希望しておきます。
#28
○委員長(小平芳平君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#29
○委員長(小平芳平君) 速記を起こして。
#30
○亀田得治君 総務局長にまずお伺いしますが、簡裁の訴訟事件ですね、これは統計にもあるように、最近減っておることは事実なんですが、しかし、たとえば督促手続ですね、これはずいぶんふえておりますね。三十年度に比較してどういうふうになっておりますか。
#31
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 総務局長にというお話でございましたので、便宜私から申し上げますが……。
#32
○亀田得治君 いや、民事局長。そうか、あなたは何でも知っているものだから。おのおの所管があるんでしたね。
#33
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まあ立ち上がりましたので私から説明さしていただきますが、お手元に「裁判所法の一部を改正する法律案参考資料−法務省」というのが出ております。それの4という表でございます。一三ページでございます。一三ページに長い表がございますが、そこに簡易裁判所の事件の件数が出ております。督促手続の欄をごらんいただきますと、昭和三十年度十四万千二百十七件、これに対しまして昭和四十四年度は二十万八千四百二十三件というので、大体六万件余りふえておると、こういう状態でございます。
#34
○亀田得治君 この督促手続は、昭和三十年からのずっと統計の趨勢を見ますると、やはり今後とも少しずつふえていくのじゃないかというふうに私思うんです。もちろん、年度によって前年度より多少減になったりしておる年もありますが、しかし全体としてはまあずっとふえていっておるというふうに思うのですが、この状態は今後とも変わらぬと思いますか、どうです。民事局長でいいです。
#35
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大体いまおっしゃったような傾向を示すのではないかと考えております。
#36
○亀田得治君 そうすると、この昭和五十年度ですな、何件くらいになります。
#37
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大体、五年後でございますので、二十五万件くらいになるのじゃないかというふうに考えます。
#38
○亀田得治君 それから次は過料ですな、これはどういう数字になっていますか。
#39
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) お手元にございます表でごらんいただきたいと存じますが、昭和二十九年度九万四千件余りでございましたのが、四十四年度は二十七万五千件余りということに相なっております。
#40
○亀田得治君 これも年度によってでこぼこはありますが、これは非常なふえ方ですね。これは昭和五十年度推定すると、どれくらいになると思います。
#41
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) この過料の点は、大体三十万件から三十五万件前後で行き来するものではないかと考えております。
#42
○亀田得治君 これはちょっとその増加の速力が鈍いようなことを言われますが、その根拠はどういうことなんですか。
#43
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) この四十四年度過料の二十七万五千件余りと申しますものの内訳でございますが、大体その九〇%が住民基本台帳法違反の事件でございます。一昔前の何で申しますと住民登録法違反の事件でございますので、住民の移動関係がそう大きく変わるとは考えられませんので、したがいまして、過料事件が特段の事情があってさらに急激な増加を示していくというような情勢が考えられないということからでございます。
#44
○亀田得治君 その過料の一番多いのが住民登録の関係。そのほかはどういうものがおもなものです。
#45
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大体その他のものは非常にこまかい事件でございまして、いまここに正確な統計は持っておりませんが、特に取り立ててこれに次ぐものとして申し上げるようなものはないんじゃないかというふうに記憶いたしております。
#46
○亀田得治君 これは種類が幾つぐらいあるんです。私がまあそういうことを聞きますのは、だんだん社会が複雑になり、したがっていろんな行政機構も複雑にどうしてもなるわけですね。まあ簡素化するとは言ってるが、なかなか実際は逆ですね。したがって、この過料の対象になる法規というものがふえていくわけでしょう。そうすれば、どうしても数がふえていくと私は思うんですよ。
#47
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その他のものということでしいて申しますと、戸籍法違反の事件でございます。それから外国人登録法違反の事件でございます。そういったものの中には、特段にそのことによってふえていくというような要素がございませんので、数字としてはそう異同しないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#48
○亀田得治君 そうすると、最低人口増に比例した程度の増加は予定しなきゃいかぬわけでしょう。
#49
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一応人口と申しますか、人口の移動と申しますか、そういったものと関連するとは存ぜられますが、この表でもおわかりいただきますように、四十年が三十四万五千件余りでございまして、それから四十四年の現在は二十七万五千件余りというふうに減少をいたしておりますので、この割合で減少するとは申せませんけれども、その辺のところを上下するのではないかというのが、先ほど申し上げました根拠でございます。
#50
○亀田得治君 まあそれにしても、これ、三十年に比較しますと、三十五万といえば四倍ですわね。たいへんなこれは激増ぶりですわ、途中の出入りは別として。
 それからもう一点聞きたいのは、調停と和解ですね、これはどうなってます。減ってますね。
#51
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 和解でございますが、この和解事件は、二十九年一万七千四百件余りでございましたのが、四十四年は……。
#52
○亀田得治君 三十年でやってください、全部三十年。
#53
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 三十年一万八千三百件余りでございましたのが、四十四年には一万三千件弱ということで、やや減少をいたしております。また、調停でございますが、三十年に七万件弱でございましたのが、四十四年は五万件弱ということで、これもある程度減少をいたしております。
#54
○亀田得治君 この減少というものを民事局長はどういうふうにごらんになっておるか、これが一つ大事な点ですね。本来は、調停とか、和解とか、簡易裁判所の大いに特色を発揮すべきこれは分野なんですよ。社会のいろんな状況を見ておりましても、調停、和解の対象になるような事柄が減っておるとはこれは見られない。ふえこそすれ、減っておるとは見られない。にもかかわらず、統計の上では数が減っておる。結局、これはまあ調停、和解のところでまたもう一度聞きますが、いま全体を聞いておるところですから、端的に言いまして、簡裁が調停、和解という、そういう分野でほんとうの使命を果たしておらぬ。たとえば、調停に持っていっても、なかなか右から左にいかない。それは現に、東京や大阪の忙しい調停所であれば、調停主任判事なんていうものは、全くこれは形式的なもんですわね。いまや一人で一日二十件も三十件も持っておるのですから、全部調停委員まかせ。それがもっと親切に、しかも早くめんどうが見れるという状態になれば、相当ここへ集まってきて、ふえなきゃいかぬわけですよ。督促手続がこんなにふえているということは、これはやはり一つの紛争ですから、もう法律上きちっとした手続がきまっておるから、ここへはどんどん持ってくる。調停、和解という幅のあるところでは、結局、そこをうんとしっかりやれば、非常にこれまた期待されて集まってくるはずなんです。私はこの数字をそういうふうに見ているんですよ。町のいろんな相談屋がはびこるとか、いろんなことがこれとうらはらです。この減少というものは、いわゆる簡裁の負担が軽くなっているとかいうんじゃなしに、簡裁の本来の使命からいったら、なかなかもってこれは悪い数字だと、こう考えているんですが、その点民事局長平素からどういうふうに見ています。
#55
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まず和解のほうでございますが、これは御承知のように即決和解と呼ばれるものでございまして、当事者の双方が争いがありましたときに、話し合いをいたしまして、そこで話し合いがついた場合に、両方打ち連れて裁判所へ参りまして、調書にそれを取ってもらって、結末をつけるという種類のものでございます。これがまず減っておるということは、やはり世間と申しますか、社会が複雑になりまして、いろいろなことでなかなか話し合いがつきにくくなってきたということを、端的に示しておるのではないかといったような感じがいたします。それにいたしましても、その減り方は、後ほど申します調停に比べますと、そう多くはございませんので、いま直ちにそういったことから、今後の和解事件がさらに減少の方向に向かうかどうかというようなことまでは、簡単には予測できないのではないかと考えておるわけでございます。
 で、調停でございますが、調停事件は、実は、この表でよくごらんいただいてもおわかりのように、相当数の減少を示しておるわけでございます。戦前と比較するのはいかがかと存ぜられますが、戦前の最盛期等を考えてみますと、約半分くらいに調停事件が減っているという状況でございます。で、これはやはり、いま申しました双方の権利意識というものがかなり高くなり、また紛争そのものがきわめて複雑困難になってきたというようなことに、最大の原因を有するものではないかというふうに考えております。もちろん、調停を担当いたします側といたしましても、そういった新しい社会のあり方、新しい紛争を生起するもろもろの社会現象、そういったものを完全にフォローして、十分に調停能力のある者がこれに当たらなければいけないというようなことで、調停委員の年齢層等々の問題から、必ずしも十分ではないかと存ぜられますけれども、これまたこの減少の大きな原因は、社会の複雑化及びそれと関連する一般国民の権利意識といいますか、自己主張と申しますか、そういったものの目ざめてきたといったようなことに大きな原因があるのではないかというふうに私どもとしては考えております。
#56
○亀田得治君 その分析のしかたはちょっと問題があると思いますよ。なるほど権利意識は発達していることは事実です。しかし、それであれば、よけい紛争が起こる種というものは多いわけですね。紛争自体は多い。そうして小さい紛争が多いですからね、全体から見たら。だから、権利意識が発達すればするほど、早くそれを片づけたい、これは費用とかいろいろな面から見ても、そうだれでも考えると思うのです。だから、和解とか、調停とか、そういうものが非常に生きておるということなら、その権利行使の方法として、そこへ申し込んできて、公正に処断してもらう、これは常識的だと思うのです、そうなるのは。だから、そういうことを第一、裁判所としてもあまりPRしてませんね、専門家の間ではわかっておるけれども。それが行き渡れば、権利意識が発達しているというなら、よけいそこへ私は集まってくるべきものだと思っているんです。だから、これが今後どういうふうな数字になっていくかということは、やはり裁判所側のこの問題に対する取り組みによって変わってくると思うのですね。取り組みさえよければ、ふえる基盤というものは、これはお認めになるでしょう。紛争があるんですから、取り組みさえよければ、そこへ入ってくるわけだ。だから、取り組みが私はこれは悪いということの数字的なあらわれだと思うのです。あなたのほうの欠点を私はいま言っておるわけですが、率直にそういうふうにお感じになりませんか。あなたがさつき、たとえば調停委員のことなんかお話しになった。確かにそういう面ありますよ。一つの欠点として、多少惰性的にもなっているし、やっぱり新らしい社会に応じた調停委員というものはどんなものか、いやなかなか適当な人はひまがないとかいうようなことになるでしょうが、そこですよ、くふうしなければならぬというのは。だから、ともかくこの数字が減っているから簡裁は楽になっているんだということで、もしこういう統計をお使いになるとしたら、これは非常な間違いだと思うのです。これは簡裁を殺す方向だ、そういう考え方は。これは何でしような、裁判所の中でもいろいろこの数字の御論議がなされておると思うのですが、ざっくばらんにおっしゃってください。
#57
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 紛争解決の手段といたしまして調停の果たしておる役割りというものは、非常に大きなものがあるわけでございます。ことに西欧の諸国と比べまして、日本の国民感情といいますか、国民性の点から、いきなり訴訟に持っていくよりは、こういった方向で解決をしていくということは、国民性にも合っておるわけでございます。私ども、調停というものの果たす役割りというものは、そういう意味では非常に高く評価をいたしておるわけでございます。そういった観点からいたしますと、現在簡裁で扱っております調停事件の数が事件の数として決して十分な数ではないということは、亀田委員御指摘のとおりでございます。ただ、いろいろな観点から見てまいりますと、現在の調停制度というものが一つの曲がり角に来ておるということは言えるのではないかという感じがいたしまして、実は本年度の予算の要求の際に、調停制度を根本的に検討するということで、委員会のようなものを設けて各層の御意見を伺ってはどうだろうかといったことを考えた次第でございまして、ただ予算そのものとしては認められるに至りませんでしたけれども、私どもそういった方向で、現代の時代に適合した調定制度、それは手続の面もございますし、またこれを担当いたします調停委員の問題もございます、それから対象になります事件、たとえば交通事件でございますとか、何としても早急に被害者を救済しなければならないといったような問題、そういった問題について、新しい視野からの調停制度というものは、これは早急に考えていかなければいけないというふうには考えておる次第でございます。
#58
○亀田得治君 なかなかむずかしい問題点はたくさんあると思いますが、そういう問題点が整理をされて、そうして陣容もきちっとそろったということになれば、それは交通関係一つとったって、ずいぶんお願いに来ると思うのですね。その点どういうふうにお考えでしょうか。推測的な数字というものは計算しにくいだろうが、私はずっとふえてくる性格のものだと思いますね。どうですか。
#59
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 過去においても倍に近い件数というものがあったこともあるわけでございまして、まあ直ちにそこまで参りますかどうか、これはいろいろの問題があるかと存じますけれども、現在の数字で満足しておるというわけのものではございません。
#60
○亀田得治君 それから次に、簡裁の民事訴訟の件数ですね、これ簡裁の裁判官一人当たりにすると年間何件になるのですか。
#61
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 簡易裁判所の民事訴訟の審理件数は、お手元の資料の一〇ページにあるとおりでございまして、簡易裁判所の裁判官の定員は七百六十人でございますから、各裁判官の民刑双方担当するといたしますれば、これはそこにございます五万三千件をその七百六十で割った数字ということになるわけでございまして、大体七、八十件ということになろうかと思いますが、ただしかしながら実際問題としては、簡易裁判所の裁判官は民刑を両方担当しているわけではございませんので、そういう点では負担件数はこれと若干変わってまいる、かようになるわけでございます。
#62
○亀田得治君 ほかの、簡易裁判所の訴訟以外の件数ですね、これは全体としては非常にふえているわけですね。それらも一緒に簡裁の裁判官は処理していかなければならぬわけでしょう。三十年に比較してどっちが負担量がふえたと考えておるのですか。あなたのほうのこういうような弁護士会のやりとりの資料を拝見したら、何か事務量の標準的な件数をつけたりしておるようですがね。ともかく全体をずっと計算して、事務量は一体ふえたと言えるのか、減ったと言えるのか、どっちなんですか、三十年と四十四年。
#63
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) その点につきましては、いま申し上げましたとおり、民事、刑事を総合的にごらんいただく必要があろうと考えるわけでございます。
 そこで、先般お手元にお届け申し上げました一枚の資料の表でございますが、「簡易裁判所新受件数累計比較」というものが参っておると思います。その資料をごらんいただきますと、まあ亀田委員先ほど来三十年との比較というお話でございましたので、三十年と比較いたしてみますると、三十年の民事訴訟八万二千件、刑事訴訟八万六千件、民事のその他の事件四十六万件、刑事のその他の事件百九十四万件で、総計が二百五十八万件ということになっておるわけでございます。それに対しまして、四十四年度におきましては、こまかい内訳は省略いたしますが、総計では二百六十八万件ということでございますので、三十年と比較いたしますれば約十万件ふえておるわけでございます。ただ、その中間の時期をごらんいただきますと、ピークの時期は、三十八年度に五百八十五万件ということになっておるわけでございまして、そのころに比べますれば、件数としては約半減しておるということになるわけでございます。もっとも、先般も少し申し上げたかと思いますが、この五百八十万件から二百六十八万件に減りましたおもな理由はいわゆる道路交通事件の減でございますから、事務量から申しますとこの減少はそう大きなものと評価するわけにはまいらないと思います。しかしまあ、それにいたしましても、ピーク時よりは約三百万件減っておるわけでございます。そうして、昭和三十年度と比較いたしますと、件数はほぼ横ばいということでございますが、裁判官の数は三十数名増加いたしておりますので、負担においては三十年当時よりも軽くなっておると、かように考えておるわけでございます。
#64
○亀田得治君 三十八年のピーク、まあこの辺は、これはちょっと異例だと思うのですけれどもね、非常な無理をしたやはり簡裁の仕事をやっていると思うのです。そういうことをしておるから、調停などは少なくなるんですよ。三十八年から調停が少なくなっている、この表を見ると。――三十七年からですか。それだけサービスが全体としてやっぱり落ちてくるわけじゃありませんか、無理がかかって。督促手続とか過料なんというものは、これは右から左形式的にいきますからね。いろいろ考える余地のあるような調停といったようなことは、一番初めにこの影響を受けてくるのじゃないですかね。いろいろ仕事を分担しておる、たくさん担当者のおる簡裁は、まあそれなりにまた仕事のやり方があると思うが、何もかも全部かかえてやっておる独立庁などでは、どうしても調停といったようなほうで手を省く。それが関係者にいろいろな意味で影響を与える。まあまあそんなところなら行ってもしかたがないなあと、そういう評判が立つと、またそれが伝わる。ちょうどピーク時において、この大事な調停の減少ががたっとこうきておるわけですね。これはひとつ、全体の数字を計算して、そうして裁判官が多少ふえたりしておると、したがって三十年よりも現在が負担の点ではよくなっていると、そんな甘い考えじゃやはりそれはいかぬと思うのですね。統計というものは、これはまあ学者に聞いても、実際見ようによって、同じものを見ておって逆なことをこう言われる場合がよくあるわけでしてね。この裁判統計の場合だってね、やはり私がいま言っているような点、これは空に言っているのじゃない、いろいろなそういううわさを聞く。なるほどそう思うて見ると数字の上にもそうなっているから申し上げるのでね。まあ以上のようなことで、ほんとうに私はね、簡裁というものが負担が軽くなってきておるということなら、それはけっこうなことだと思っているんです、実際は。また、軽くしなきゃいかぬ、現状よりももっと。軽くしないと、簡裁の本来の魅力を発揮できるようななかなか手の込んだ国民に対する奉仕的な役所ということにはなっていきませんからね。事務量が減ったかどうかまあ疑問があるのですが、あなたの説だと、減ってきた、こう言う。それをもっと進めたらいい、そのほうが本来のところに行くのですよ。あなたの場合は、減ったからそこへ持ってくるのだと、こういきたいところですが、そこがちょっと性急です、その点。まあ総論的にはこの程度にしておきます。
 それから、この審理期間の問題ね、これもよく裁判所側と弁護士側との間で議論されておりますが、これはどうなんですか。どうもこう、よくわかっておることをことさらに何か議論しておるように思うんですね。簡裁の審理期間は二分の一くらいだとね、だから地裁のほうが負担が重い、簡裁のほうはもうちょっと持っていってもいいというような理屈に結びつけておるようにとれるのです。私、ゆうべ、弁護士会と裁判所側のやりとり、これ全部読みました、せっかく夜届けてくれたから。やはりお互い専門家同士ですからね、無理な理屈のつけ方というものはおもしろくないのです、これは。それは、地裁は何といったって困難な事件を持っておるんでね、長いのはあたりまえですよ。簡単な事件なら、地裁だって簡単に処理しているでしょう、実際問題として。だから、そういうただ審理期間の問題なんかをことさらに裁判所側がおっしゃると、どうもふに落ちないんだな。そして実際の統計にあらわれておる数字を見ると、きょうも御指摘があったように、簡裁のほうが少しずつこれ伸びておるわけですね。ここにあるのは昭和三十一年と四十二年の比較ですが、三十一年が三・八カ月、それに対して四十二年が五・二カ月、ずっと伸びているんですよ、負担が。この負担というか、審理期間だけの点を見たら、地裁のほうはずっと横ばいでしょう。数字がはっきりこう示しているんですよ。だから、結論的には、地裁よりも簡裁のほうが非常に訴訟事件において負担が怪いということは私は言えないと思うんです。それはどういうふうに考えているんですか、民事局長。総務局長のほうはだいぶこの書類を見たから。
#65
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 審理期間の点は、亀田委員御指摘のとおりの地裁と簡裁の関係に相なっておるわけでございます。ただ、私ども、これはもう御専門であらせられますので、亀田委員十分御承知だと思いますが、たとえば簡裁の五・二カ月の平均審理期間というものは、一つの事件が参りまして、それを迅速的確に審理するという場合、それを大量的に観察いたしますと、ほとんど、理想的とまでは申し上げかねるかもしれませんが、きわめてスムースに事件が処理された場合における平均期間を示しておるということが言えるのではないかと思うわけでございます。それに反しまして、地裁の約一年というこの審理期間は、まだまだくふうの余地と申しますか、短縮の余地のある期間ではないかということが考えられるわけでございます。すなわち、簡裁の現在の審理期間は、いわばランニング・ストックと申しますか、一般的に、これ以上非常に縮めにくい期間の前後を示している。それに対して地裁のほうは、まだまだ縮める余地のある期間であるということでございます。そのことから、やはり、楽か楽でないかということを申し上げれば、簡裁のほうが楽であり、地裁のほうが非常に苦しいということが言えるのではないかと存じます。
 また、これを別の面から見てみますと、簡裁におきましては、昭和四十四年度でございますが、新受件数以上に既済件数があるわけでございます。すなわち、既済が新受を上回って、その結果、未済として残っておるものが、四カ月分程度しか残ってないということでございます。ところが、地裁のほうは大体一年近い分が残っておるということでございまして、その点からも、やはり、負担量ということだけで申しますと、地裁と簡裁の間にある程度の差があるのではないかということで、そういったことを弁護士会との連絡協議会等におきましても私ども主張をしたということでございます。
#66
○亀田得治君 私は簡裁のほうは五・二よりももっと縮めなきゃいかぬと思っているんです、これは。また、そういう性格の事件を扱うべきだと。だけど、地裁のほうは一つの案件で何十年とかかっているのがあるわけですわね。一年分たまっているとおっしゃいますが、平均一年かかるんなら、一年たまってちょうどいいわけですわ、とんとんですからね。その現状の数字でいいとは言いませんが、もっと裁判官をふやし、くふうをして縮めるべきだと私も思います。思いますが、現在の簡裁に比べたら、私は、質から見たら簡裁のほうがどうも長過ぎる、そういう感じがするんですよ。それで、いわゆる簡裁的な事件ですね、地裁で単独でやる、簡単に処理していく、そいつは簡裁とそんなに変わらぬのじゃないの、審理期間。これは平均数字が十一・幾つである。実際はそうだと思いますがね。だから、私は、地裁の裁判官が――新受件数が毎年ふえておりますが、裁判官の増もありますが、ともかく非常に努力しておるというふうに感じています。簡裁のほうは、努力したいと思うのだろうが、なかなか、いろいろ雑務が一緒にあるものだから、手が回らない。本来、簡裁なら、やっぱり長くて四カ月、早ければ三カ月というような数字が出てこなきゃ、私は簡裁としての処理じゃないと思うんですよ。まあそういうふうに考えておるんですが、今度、政府原案のような、民事の事件を大量にこっちへ回していく、こういうことになると、五・二というやつがどれぐらいになると思いますか。長くなることは事実でしょう。どうなりますか。
#67
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 予測でございますので、正確には申し上げかねますが、ある程度長くなるということは、これは十分考えられるところで、私どももそれはそういうふうになるのじゃないかと思っております。
#68
○亀田得治君 簡裁がある程度長くなり、地裁がある程度短くなり、えらい接近してくる。しかも、事件の質は非常に違う。これはちょっとおかしいですわ、その辺。私は必ず、この五・二が長くなるだけじゃなしに、調停などがもう一つまた、まま子扱いされる、独立簡裁などができるんじゃないかと思うんですけれども。きょう午前中最高裁のほうからいただいた資料、あれを参考人の方にちょっと私申し上げたんですけれども、一番簡裁事件の多くなるのが、率で言うと、松江ですね、七二%でしょう。調停事件なんか消えてしまいますよ、そんなむちゃなことをしたら。だから、いろんなところに響いてくるわけでしてね。松江なんか、どうなんですか。それはまた人員の配置がえをしてとかなんとかおっしゃるんだろうが、そう簡単にいきますか。
#69
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 午前中にも松江のお話が出たわけでございますが、この私どものほうから出しております資料によりますと、確かに比率において、四十四年度を基準にした場合の推定が七二%と二八%ということでございます。ただ、移動いたします件数でございますが、それは、これまたお手元の資料に出ておりますとおり、二百五十件ということでございます。これもあくまで推定でございまして、しかも四十四年度の事件を基準にしたものでございますから、それより下回ることはあっても、上回ることはない。従来のこの種の法改正の実績に徴しますと、四十五年度は七月からということで、正確な統計が出てまいりませんから、四十六年度になるということでございますが、年間の新受件数の移動がはっきりつかめますのは四十六年度以降になるわけでございますが、四十六年度になりますれば、四十四年度とはまたある程度の経済事情の変動が生ずるのは自然の勢いだと考えられまして、そういたしますれば、おそらくこの二百五十件もさらに下回るというふうに一応推定できるわけでごいますが、かりにこの二百五十件のとおりに移動すると仮定いたしましても、これまたお手元に「簡易裁判所新受件数」のこまかい表を第四表としてお届けしておるわけでございますが、その松江の項をごらんいただきたい。これは各簡易裁判所ごとにはあまりこまかく推定その他もできませんけれども、昭和三十八年度の総数は二万五千件でございましたのが、四十四年度は総数で一万三千件ということで半減いたしておりまして、約一万二千件ぐらい減っておるわけでございます。むろんこれも減りましたおもなものはおそらく道路交通事件等であろうと思いますから、それによって直ちに負担の非常な軽減というふうには申せませんけれども、しかしともかくも総数二万五千件が一万三千件に減っておるわけでございます。そういたしまして、二百五十件かりに民事訴訟が移動いたしました場合、新受がどうなるかと申しますと、約八百件ということでございまして、その数は昭和三十八年度に比べましても約百件程度ふえるにすぎないわけでございます。つまり民事訴訟のこの法改正によりまして移動いたしました後の推定新受件数自体が三十八年度より百件程度ふえるにすぎなくて、そして民・刑合わせると総件数では約一万二千件程度の減ということでございますので、件数の面からまいりますれば、それによって非常な負担過重になり、あるいは増員を云々ということには、松江の場合にはむしろならないのではないかと思うわけでございます。他の地方につきましてはいろいろ問題のあるところもございまして、私ども一々いまいろいろやっておるとこでございますが、いま御指摘の松江については大体さように考えておる次第でございます。
#70
○亀田得治君 三十八年度を持ってきているのは、これはちょっと異例なピークの年なんですから適当じゃないと思うのですよ、必ずしも。
 そこで、もう一つ問題になっているのは、大体大都市と地方との不均衡という問題が絶えず出ておるわけですね。たとえば大阪の場合、あなたのほうから出された資料でいきますと、昭和三十八年、四十四年、これを比較しますと――民事のほうですよ――物価の変動があってもこうふえておりますね。その他の民事事件もふえております。ここへ今度は十万が三十万になった分がさらにふえてくるわけですね。これはたいへんな負担増になってくるのじゃないですか、現在でも毎年ふえておるのですから。ふえておるところに、さらに制度改正によってふえる、こういう場所が相当できるでしょう。どうするのですか。
#71
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 大阪について御説明申し上げます前に、先ほど松江について御説明申し上げました際に、三十八年というのは非常に異例な年であるからそれを基準にしてはというお話もございましたので、念のために、先ほどの第三表でもう一度御説明申し上げたいと思いますが、第三表の民事第一審訴訟だけの表でごらんいただきましても、二百五十件移動いたしました結果は八百十二件になるわけでございまして、それはその左のほうをごらんいただきますと、たとえば昭和三十年度は千三十二件、昭和三十三年度は千百六十四件ということで、その三十ないし三十三年度当時よりはなお下回っておる、これは訴訟だけから申しましてそういう数字になっておるわけでございます。で、こういう地方のほうはそういう意味ではほとんど件数の面からは問題はないというふうに申し上げても差しつかえないと思います。大阪のような大都会の場合におきましては、その点は御指摘のとおり若干の問題はあるわけでございます。これまた第三表をごらんいただきますと、大阪の場合に三千四十六件移動するという推定でございまして、これも先ほど来繰り返し申し上げておりますとおり、四十四年の件数を基準にした推定でございますが、かりにそのとおりになるといたしましても六千七百件程度でございまして、たとえば昭和四十一年に比べまして千件あまり多いにすぎないと、こういう数字になるわけでございます。そうして一方、これはまあ便宜ここに三十八年の表しか持ってきておりませんので、三十八年とばかり比較するということについていろいろ御注意を受けるかもしれませんけれども、この前後の年はこれに準ずる件数であったというふうに御理解いただけようかと思うわけでありまして、そういう意味におきまして昭和三十八年度の大阪地裁管内の簡裁の新受総件数は百四万件でございます。三十七年、三十九年等の数字を私いまここに持っておりませんけれども、これはおそらくこれより少し少ないのではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても百万件前後の新受件数がございましたのに対しまして、四十四年度は二十三万件ということで、約八十万件程度減っておる、五分の一程度になっておる、こういうことでございますので、こういう件数の面だけから申しますれば一応十分処理できる態勢にあるというふうに申し上げられると思います。しかし、むろんこの点も、先ほど御指摘もございましたいろいろ訴訟とその他の事件の比率その他もございますので、そういう点を緻密に考えて作業をしなければならないと考えておりますけれども、大まかな御説明としても一応は御理解いただけるのではないかと、かように考えている次第でございます。
  〔委員長退席、理事山田徹一君着席〕
#72
○亀田得治君 どうもことさらに都合のいい説明をされますね。三十八年の大阪の百四万というのは、これは何でしょう、大部分が刑事の九十八万、これが占めておるわけでしょう。これは特殊なものでしょう。だから、そういうものを何もひっくるめて百四万と二十三万の比較だと、そんな比較のしかたはもう全く筋が通らぬのですよ、これは。ともかくその地方においては総件数がもともと少ないのですが、総件数においては問題が多少軽いでしょう、おそらく。しかし、地裁と簡裁の比率が問題ですよね。七二%も簡裁に民事一審が行くと、これじゃあやはり性格問題がどうしたって出てくる。大都会では簡裁自体が多い。そこにさらに負担がかかってくる。そういう意味で、別個なこれは総数という点において問題が出てくる。比率のほうは若干地方よりもバランスが逆になると思いますが。
 簡裁の刑事関係のことをちょっと聞きたいと思います、これも重要な問題ですから。年間の令状の発付ですね、これ刑事局長のほうからお答え願います。どうなっていますか。三十年と四十四年、または四十三年でもいいです、比較しておっしゃってください。
#73
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 令状その他ということでございますが、四十四年について申しますと、簡裁のほうが三十万五千二十五、それに対しまして地裁のほうが二十二万七百五十七ということでございます。
#74
○亀田得治君 三十年はどうですか。
#75
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 三十年について申し上げますと、まず簡裁のほうは四十八万七百二十一、それに対しまして地裁のほうは三十八万九千八百五十七、このようになっております。
#76
○亀田得治君 パーセンテージにするとこれはどういうふうになりますか。
#77
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 三十年を一〇〇として申し上げますと、四十四年におきまして、簡易裁判所が六三・五、地方裁判所のほうが五六・六と、こういうことになります。
#78
○亀田得治君 この令状というのは、内訳わかりますか。
#79
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 令状は、御承知のとおり、逮捕状、勾留状等でございます。その他のものには何が入るかと申しますと、保釈、それから勾留延長の事務、それから捜査関係の令状、許可状の令状でございます。そういうものが含まれております。
#80
○亀田得治君 令状申請に対する却下の数なんというのは出ていますか。
#81
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) すべてとっておりませんが、勾留請求に対する却下というもので見ますと、これは地裁と簡裁と区別いたしておりませんので、その間の内訳はわかりかねますが、勾留請求に対する結果を見ますと、たとえば昭和四十三年におきまして、却下率が四・五七という数字がございます。
#82
○亀田得治君 逮捕のほうは出ていませんか。
#83
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 逮捕のほうはちょっといま率は出しておりませんが、数字的に申しますと、四十三年におきまして、約二十万の逮捕状の請求に対しまして、却下が約四百というような数字的なものはございます。
#84
○亀田得治君 その統計のこまかい内訳があまりはっきりしないのですが、簡裁の一つの役割りは、民事では調停、和解、督促手続、いろいろなものがありますが、やはり刑事関係では、逮捕状の正しい出し方、こういうところに私はあろうと思うのです。ところが、巷間――これは専門家から聞くわけですが、どうも簡裁における令状の出し方、特に逮捕段階における令状の出し方が非常に慎重さを欠いておると、請求したものはほとんど出てしまうのじゃないかということを聞くわけですが、ただいまの、四十三年度において、逮捕の関係が約二十万あって、そのうち却下がわずか四百件と、これはあまりにも少な過ぎますわね。少な過ぎるように思うのです。そして、この四百件のうち、地裁が扱ったものと簡裁が扱ったものがおそらくあるはずですね。おそらく地裁のほうが多いのじゃないかと思うのですわ、普通のうわさから言うと。これは、何といっても、捜査をするほうは、ともかくつかまえて調べたほうが便利なんですから、まだまだ日本の警察官は、基礎的な科学捜査よりも、つかまえて白状させる、これが伝統的に抜けておりませんからね。請求するほうは、相当私は行き過ぎた請求もあると思うのです。しかし、それはまあ捜査官のかってですからね、自由ですから。しかし、それをチェックするのは、これは簡裁の重大な役割りなんです。だから、その点においての仕事というものが、いまの数字をお聞きしただけで、なるほどわれわれが危惧しておるとおりだというふうに感ずるのですが、どうですか、刑事局長。
#85
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 令状事務、これは簡裁に限らないわけでございますが、御指摘の簡裁判事における令状事務の問題、これは数字的にそれが少な過ぎるかどうかということは問題があろうかと思いますが、裁判官としての司法的抑制の心がまえということになると思います。つとにこの点、私どもも、重要な裁判官の仕事の一つとして認識をいたしまして、毎日、簡易裁判官の会同におきましては、令状事務というものを協議のテーマに必ず一つ取り上げまして、令状の事務の運営の協議をいたしておるわけでございます。私どもの心がまえとしましては、それは協議会、裁判官の会同ということではございますけれども、いわば研修的な意味も含めまして、毎年そのような協議を行なっているわけでございます。司法的抑制ということの重要性というものを絶えず簡易裁判所の裁判官の方に認識してもらうという意味で、従前から行なっている次第でございます。
#86
○亀田得治君 この約四百件の地裁と簡裁の内訳の数字、これはあとでいいですから出してください。これはあまりにも少な過ぎますね。
#87
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 実は統計的には、地方裁判所の裁判官が簡易裁判所の裁判官として出す場合もございますので、簡裁判事としての勾留書類、あるいは地裁判事としての勾留書類というものが、必ずしも統計上はっきり出ません。簡易裁判所に請求がありまして、地方裁判所の裁判官が同時に簡易裁判所の裁判官の資格を持っている場合が相当ございますので、その区別が統計上明確に出るかどうかわかりませんが、仰せのとおり資料を整えて提出したいと思います。
#88
○亀田得治君 いわゆるよく問題になる別件逮捕ですね、これは刑事局長はどういうふうに考えておるのですか。
#89
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) どういうふうにと仰せになりますと……。
#90
○亀田得治君 両論あるわけでしょう、許される、許されない。
#91
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 問題は、いわゆる別件につきまして犯罪の嫌疑があり、逮捕状を出す必要があるという場合に、実はしかしながら、捜査機関のほうでそれを正当に使わないと申しますか、その機会に本来ねらっておりますところの別の事件のほうの捜査を行なうということが問題点、大きな問題点になると思うのであります。
#92
○亀田得治君 問題点というんじゃなしに、刑事局長としては、その問題点とおっしゃることを認めるのですか、認めないのですか、どっちなんです。
#93
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 従前の判例におきましても、いわゆる別件逮捕中の供述というようなことの任意性というようなものが否定されているという事例があるわけでございまして、そういう意味から言いますと、この問題、一般的な考え方としましては、やはり消極に考えるべきものであろうと思っております。
#94
○亀田得治君 そうすれば、ほんとうの目的は別にあって、そうして捜査官が逮捕状を請求してくるわけですね。ほんとうの目的は別にある、そういう場合の令状請求というものは、何か意外に簡単な事件なんですよ。したがって、その表向き出てきておる事件について、ほんとうに必要性ということを十分簡裁の裁判官が検討すれば、そこでチェックできるわけですね。そういうことが十分なされておらぬように思うのですね。悪意を持って考えれば、裁判官自体が本件のねらいは別にあるんだ、しかしそれはもう腹の中にしまっておいて、そうして捜査官の言いなりに出しているというふうなことがあるのじゃないですか。いずれにしても、表に出てきた案件についての必要性ということをもっと厳密にやってもらえば、別件逮捕なんというものは相当防げるんですよ。大体表に出してくるやつは簡単なやつですよ、簡単なやつ。それを何もかにも持ってくれば判を押すもんだということになっておる。そういう状態が、これが私は改革されなければ、せっかく簡裁の新しい仕事として任務を与えられながら、人権を守るという点からこれは非常な大きな欠陥になるのですよ。民事もさることながら、刑事におけるこの点、簡裁の任務、これは非常に大きいと思うのですがね。
#95
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 亀田委員の仰せになりましたのは、一般的に別件逮捕を認めているというような仰せでありますると……。
#96
○亀田得治君 いや、結果がそうなってしまう、出ているんだから。
#97
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) いや、結果がそうなると申しましても、別件につきまして犯罪の嫌疑あり、逮捕の必要ありと考える場合は、これはやむを得ないのでございまして、別のものをねらっているのだということを捜査機関のほうで表明して請求をしてくるわけではございませんので、そういう場合なら明らかでございますけれども、そうじゃないのが普通の場合でございますので、裁判官としましては、当の請求された事件につきまして、犯罪の嫌疑あり、しかも逮捕の必要があると考えますれば、これはやむを得ないのじゃないかと思うのでございまして、実は別のものをねらっておりますよと言いながら捜査機関のほうで請求してくるわけではございませんので、そこのところにチェックのむずかしさがあると思うのでございます。
#98
○亀田得治君 それは表向きはそうなっておりますよ。そんなこと捜査官が言うてくるわけがないですよ、それは。だから、その必要性という点について一件一件厳密にやっていけば、ぴんとくるのがあるはずだと私は言うのです。やっておらぬもんだから、どんどん素通りしていくわけです。なぜこんな簡単なものを一体逮捕までするのか、そこで相当やりとりをするということが足らぬものだから、別なところをねらっているというようなことが事実上暗々裏にやっているようなかっこうになっちまう。表に出ると、裁判所はそれは思わしくないと言うだけであってね。それはまあ、捜査官が請求してくる場合に、どれもこれもそんな目で見る必要はないと思いますがね。しかし、警察のほうはやるんだと、こう言うておるんだからね、言うておるんだから。一件一件やはりほかのことはないんだというようなぐあいにあなた念を押したっていいじゃないですか、まじめな裁判官なら。
#99
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) しかし、どんどんとおっしゃいますけれども、それは問題になりました場合に結果的に見るとそうだということはあり得てもでございますね、どんどんと先生おっしゃるほどはたしてやっておるかということは問題なんでございまして、先ほど申し上げましたように、別件につきまして犯罪の嫌疑があり、必要があると考えれば、それを今度運用するかどうかということは、これは今度は捜査機関のほうの問題なんでございまして、もっと目を光らせればいいじゃないかという仰せでございますが、結果的にそう言い得る場合は、それはあるかと思います。当の令状の段階におきましてどの程度の資料が検討されたかということできまる問題でございまして、結果的にどんどん出していると、こういうような御認識であるとしますると、私どもとしましてはいささか反対せざるを得ないわけでございます。
#100
○亀田得治君 まあ結果的に出ておるということは、これはまた客観的な事実。それはどんどんどんどんというふうな大げさな表現になっていいかどうか、それは問題がある。しかし、本来そういうふうなことがあってはならぬのだから、ならぬという状態に比べたら、どんどんと言われたってしかたがないくらいに出ていますよ、それは。だから、これは簡裁としての重要な役割りですよ。民事のほうばかり議論がこの間から言っておったけれども、令状の点――五百七十カ所の簡裁を置くというのは、主として令状の関係にあったわけでしょう、大きな理由は。だから、これは今後とも十分研究してもらわなければいかぬ。
 それからもう一つ刑事事件関係のことで、これは事務総長がいいかもしれぬと思いますが、地裁の刑事の負担を軽くするために、いわゆる検察官手持ちの証拠の事前一括開示ですね、この制度を何とか制度化すべきじゃないか。これは前に、いろいろな公安事件で、しょっちゅう法廷でもめる事件ですね。長くかかるというのは、大体そういう種類の事件でしょう。で、岸さんなどが集中審理とかなんとか大いに言われるのだが、それがないために実際問題として集中審理に非常な支障を来たしておることは事実なんです。で、検察官は、法廷では二百九十九条だけたてにとって、これに反しなければいいのだ、そんなことをやっているわけですから、これはずいぶん、裁判官も、関係者も、むだが多いのですね。私も、連休の四日徳島へ行って、それで一日つぶされたのですよ。起訴状も朗読できない、その議論やっておるだけで。これは前に日弁連から最高裁に申し込んだはずですね、刑事訴訟規則の中にでも挿入できないか。二十八年の二月二十一日です、最高裁に。最高裁としては、裁判の経験から、それはけっこうだ、しかし規則の改正だけじゃいかぬので、基本法の改正が必要だというようなことであり、ただ検察官が、法務省が反対して、結局制度化されず、そのためにあれ法廷で絶えずこれは紛糾しているのですね。だから、実際にこうやっていくと、被告人なりあるいは弁護側は、どうしたってそれは小出しの意見の陳述にならざるを得ないのですよ、慎重にかまえますからね。先へ行ってどうなるかわからぬのだから、どうしたってそれは小出しになります。そうしたら、少しずつしか進んでいかぬ。みんなが迷惑していることで、思い切って立法化するということをやるべきだと思うのです。これは裁判官でも、訴訟指揮としてはずいぶん勧告をしたり、特殊な具体的な状況までいけば、判例にもあるような命令を出す裁判官もおりますが、現状ではしかしそこまで行くまでがずいぶん時間がかかっている。私はむだだと思うのですね。それは検察官が、たとえば証拠物を、被告人に有利な証拠を隠すという問題もあるのですね。そういうことを防ぐためにも、私は必要だと思うのです。検察官が隠しておった手持ち証拠があとから出てきて無罪になった大事件があるわけですからね。検察官が税金でつくった書類を自分だけ見ておって相手をやっつけるためにだけ使っていく、そんなことよくないですよ。相手も当然今度は必要以上に否認をしていかなければならぬことにどうしてもなる。それは皆さん裁判やっておられて十分わかっておられると思う。私は、地裁の負担を軽減するというのであれば、この点を立法化してもらえば相当変わってくると思う。刑事事件は幸い減っているのですから、そうすると刑事関係で手のすいた裁判官をさらに民事のほうに、民事がふえているというのだから、若干でも民事のほうにさいていく。非常に裁判官不足しておるのだから、一人でも二人でもこれは大事なことなんだ。だから、ぜひこれはこういうことを、地裁の負担が重いということで簡裁との問題が出てきておるととは間違いないのですから、地裁自体としてどうするかということを考えなければならぬ。これはだれでも皆さん認めているのですね。その一つとして、この問題、懸案の問題をこの辺で処理できませんかね。弁護士会と対立ばかりしていますが、この問題でしたらそれはもう意見一致しますよ。
#101
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 私は、しばらくちょっと実務から離れておりまして、少し実情にうとい点があるかもしれませんけれども、刑事事件を迅速に、しかも充実した審理を行なうためには、やはり弁論をできる限り集中して行なうというのが一番いい方策だと思います。そのためには、やはり当事者が事前に十分に準備をしなければならない。弁護側としては、権力――力を持っておりませんから、その弁護側の調査活動というものについてある程度の限界があろうと思います。アメリカの弁護士のように、自分で自動車をかって、そしてほうぼう歩き回って証拠を集める、そういうふうにして独自の準備をやっているやり方もございますけれども、今日の日本ではまだ一足飛びにそこまで行くわけにいかない。そうなりますと、できる限り検察官が手持ちの証拠を相手方に開示する、いわゆるディスカバリーの制度を十分に発揮することが非常に望ましいと思います。しかし、それぞれの国の手続の違いや、それから訴訟に対する考え方の違い等もありまして、一挙にそれをいまやっていいかどうか、あるいはやるとすればどの範囲でやったらいいか、そういういろいろな問題点がございまして、こういう点はやはり関係の機関である法務省とも十分に話し合わなければならない問題であろうと思います。弁護士会ばかりでなくて、法務省側の意見も十分聞かなければならない、そういうように考えます。ただ、最近世界各国の傾向として、証拠開示――いわゆるディスカバリーというものの範囲を広げようという、そういう傾向であるということは、これははっきり言えると思いますが、私としてはいま現在その程度のことしか申し上げられません。その後いろいろな実情、事例を持っております刑事局長から、もう少し具体的に説明してもらいたいと思います。
#102
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 御承知かと思いますが、先般、最高裁判所の決定が出まして、訴訟指揮として検察官に対して開示命令ができる、これは裁判所固有の権利としてできるんだという裁判例がございまして、それを契機といたしまして、この開示の問題というものも逐次実務上発展しつつある状況でございます。先ほど総長からも申し上げましたように、世界的な問題の一つでございまして、たとえば訴訟構造を同じくするアメリカでは、主尋問がありました後に当該調書の閲覧を認めるというような立法、これもまず判例が出まして、それからそれに対して判例が行き過ぎだというようなことで立法的な解決をみたというような例もございますので、それぞれの国の訴訟のあり方と申しますか、そういう実務と非常に密接な関係を持っておるものと思われます。わが国におきましても、逐次その訴訟指揮に基づくところの開示命令というものが実務上発展してまいりまして、やがてそういうものが立法の形において実現するというような行き方も一つの方法であろうかと思います。およそいかにあるべきかということを実務を離れて立法だけで考えるということよりも、わが国の訴訟指揮というものの中からよき運用というものが次第に育って、それが立法化されるという方向、それも一つ好ましいのではなかろうかというふうに考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、現段階におきましては、実務において新しい傾向が逐次生まれつつあるというふうに見ている次第でございます。
#103
○亀田得治君 いま局長がおっしゃった例は、昭和四十二年(し)六十八号、四十四年の四月二十五日の最高裁の決定のことですか。
#104
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) さようでございます。
#105
○亀田得治君 この案件は、私も資料をいただいてずっと拝見したわけですが、これはいわゆる検察官が証人申請をする、あるいは書類を書証として証拠調べを求める、どちらもする気持ちがない、そういう文書についてのこれは開示命令でしたね。普通は、検察官が証人調べをする、それに関連した証人自身の調書、それをいつ見せるかということが主として争われる案件ですが、この最高裁の非常にこれは勇断をふるった決定だと思うのですが、これはそれ以外のやつですね、それ以外の、検察官としては全然これを無視していきたい、弁護人が黙っておれば弁護側に有利な書類はもう没にしてしまう、そういう書類についてのこれ開示命令ですね。だから非常に意味が私はあると思うのです。そうですかね、これは。
#106
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 亀田委員のおっしゃっておるのは大阪の事例についてかと思いますが。
#107
○亀田得治君 ええ、そうです。
#108
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) それはまさにそうでございます。いわゆる広い意味の開示というものを認める線でございます。もう一つの考え、いわゆる狭い意味のオーソドックスの開示というのは、先ほど仰せになりました、当該証人の捜査機関に対する調書というものを事前に見せるという問題、これは横浜の例について最高裁が決定した例がそれでございます。このように狭い意味のディスカバリーと、それから大阪のような広い意味のディスカバリーと、二つの線が出ているということでございます。
#109
○亀田得治君 そこで、そこまで最高裁が踏み切って実務上命令を出しておるのですから、私はもうこれを制度化していいと思うのです。これは非常に訴訟の能率が違ってきますよ。裁判官もこれで困っておるわけだ。制度はそういうふうになっておらない、しかし、被告人や弁護側が求めるのは、裁判の公平と迅速という立場からこれは無視できない、当然であるということで、非常に困っているわけですね。そこまで決定したのなら、最高裁あたりがもっと立案者になって、法務省にも呼びかけ、立法化するように努力すべきじゃないですか。どうですか、法務省。
#110
○政府委員(影山勇君) 私、直接の刑事関係の所管でございませんので、特にこういう刑事訴訟手続の専門的な、非常にむつかしい、異論のあるところでございますので、まあきょうの御議論ございましたことを所管の局長に伝えるということにさせていただきたいと思います。
#111
○亀田得治君 これは、ちょうど朝鮮事変前後から公安事件が非常にふえて、それまではいかなる事件においても検察官は弁護側に一括書類を見せておったわけであります。その公安事件に限ってストップがかかってきた、それから起きてきた問題なんで、さっき申し上げたように、日弁連が二十八年二月二十一日に、最高裁、法務省、最高検、三者に申し込んだのですよ。最高裁はこれを了としたのです。最高裁は当時第一線の刑事関係の裁判官をお集めになって意見を聞かれたはずです。会議録もあるはずです。ほとんどが、それはもう大いにわれわれ楽になっていいやというようなことで賛成をされた。ただ法務省のほうは、筋としてはむげに断わることもできぬものだから、できるだけそういう考えを尊重して運営していこう、ただし立法化されることは困ると、これだけはやめてくれ、こういうことでストップになり、そのためにこれ、訴訟指揮上の問題としてもめているのですね。だから、これは法務省に責任があるのですよ。実際は法務省がこれ、最高裁のことについても提案権を持っているというのは、ちょっとこの点が問題がありますがね。実際は、しかし、この種の問題については、やはり最高の意見というものを法務省としてもやっぱり尊重してもらわぬといかぬと思うんですよ。一種の技術的に言えば訴訟指揮上のことですからね。その点の疑いを立法化していこうというんですから、訴訟指揮の責任者の意見をやっぱり尊重していかなきゃ。それは、検事のほうも反対、こっちも反対というなら、それは何だがね。三人のうち二人までよろしいと、こう言っているものを、多少自分のほうが不便になるからと、そういうことだけでいつまでもがんばってるというのは、私はよくないと思うんです。これはひとつさかのぼって研究してください。幸い、いま刑事局長から御説明のあったような最高の決定が具体的事件に出てきているんだからね。おそらくこの決定は、各種の裁判所は非常に助かるからね、どんどん使われていくと思うんですよ。そんなものをどんどん使われてから、そうしてじゃあ立法いたしましょうじゃ、それはだめですわ、そんなことじゃ。率先していく、いいと思うことは。それは、第一、日本の検事さんは少し狭量ですよ。法廷であんた無罪になったってね、おめでとうと言う検事さんはめったにおりゃせぬですよ。検事は捜査の段階では厳密にやりなさい、それは。しかし、全部捜査終わったとすれば、あとは被告人に有利なことも不利なことも一切裁判所にまかしましょう。したがって、いわんや有利な証拠を隠しておくなんて、そんなことは絶対いかぬですよ。公益の代表者として許されぬことです。あとは、被告人に不利なことを法廷に持ち出すのがすなわち真実の追求だと思ってるんですね。そうじゃないですよ。有利も不利も全部出して、そうして判断を求める。それじゃなきゃいかぬですよ。その態度で割り切れば、こんなことは簡単なことなんです。戦前だってやってきたんですよ、あの反動的な。ほかの、詐欺や、どろぼうや、強姦や、強盗や、そんな事件はみんな見せてくれる。いまでもやってるんですよ、そう。だから、これは筋が通りませんから、ぜひひとつあなたのほうから、地裁の負担軽減に関連して、こういう意見がきょう出ていたということで、これはひとつ研究してください。してくれますな。
#112
○政府委員(影山勇君) ただいま申し上げましたように、ひとつ所管の部局にきょうの御議論の模様を伝えることにいたします。
#113
○亀田得治君 こういうわけで、刑事関係見ますると、地裁のほうは、裁判官の増員とともに、また一つ負担を軽くできるという道もある。一方、簡裁のほうはですね、逮捕状等令状等についてはもっと時間をかけてもらわなけりゃいかぬ。これはわれわれもそう思ってるんですよ。さっきのお答えを聞いても、なお一そうその感を強くしている。この点を一つ特に申し上げておきたいと思うんです。
 それから次に、簡裁の裁判官の問題ですがね、これはきわめて実際の仕事の担当者ですから重要な問題です。設立当時、木村司法大臣が提案理由説明の中で、これは一般に知れわたっていることですが、ひとつ問題をはっきりさせていくために会議録を読みますが、「特に簡易裁判所判事につきましては、いわゆる法曹の経歴のない者でも、選考委員会の選考を経まして、これに任命し得る道を開きまして、広く人格識見のすぐれた徳望のある人を、簡易裁判所の裁判官に迎えまして、これによって、この制度の妙味を一層発揮することを期待いたしておる次第であります。」と、この考えは裁判所側としては現在もそのとおりお考えになっているんですか。
#114
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私どもは、現在としてもそのように考えておるわけでございます。
#115
○亀田得治君 そこで、現在の簡裁の裁判官の内訳ですね、それはどういうふうになっていますか。
#116
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 内訳というと御趣旨は、いまのお話との関連でございますれば、いわゆる選考任用の者がどのくらいいるかということでございますが、との点は、先般申し上げましたとおり、大体五三%、約三百九十名ぐらいでございまして、そのさらに内訳というお話でいまあったようでございますが、これは内訳という意味でございますが、いずれにしても、裁判所法の規定による選考を受けて任用されておるものでございます。ただ、その前歴ということと理解いたして御説明申し上げますれば、裁判所の書記官等をやっておりました者が約三百二十名、それから家庭裁判所の調査官等から参りました者が約十名、それから行政官その他民間等から来ました者が約六十名と、ごく大まかに分けましてそういうことになっておるわけでございます。
#117
○亀田得治君 裁判所側としては、簡裁の裁判官について、いわゆる有資格者、選考任用者、これはどっちに重点を置いていくんですか、今後。
#118
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判所法は、簡易裁判所の裁判官としてどちらが原則であるということに規定上はいたしていないように存じます。ただ、先般亀田委員からお話のございました臨時司法制度調査会の意見書におきましても、できる限り法曹有資格者を充てるような提案がされておるわけでございます。一般に弁護士会等で法曹有資格者をできる限り充てるようにという御意見がございますので、そういう点は私どもとしても十分念頭に置いて考えていかなければならないと、かように考えておるわけでございます。ただ同時に、いわゆる特任判事と申しますか、特別の選考の判事につきましても、これの素質を改善するということはやはり同時にきわめて必要なことでございますので、その面につきましてもあわせて努力してまいらなければならない、こういうふうに現在のところ考えておるわけでございます。法曹有資格者で埋められますれば、それはもとよりそれが望ましいことでございますけれども、しかし、現状において特別選考による判事というものもまた同時に存在する、その素質を向上していくということもきわめて必要なことである、こういう考えでおる次第でございます。
#119
○亀田得治君 だから、お話を聞いていると、重点がどこにあるかわからぬわけですね。臨司なりあるいは一般に、法曹有資格者に重点を置かれるような発言もありますが、どうも私、その辺に疑問があると思っているんです。法曹有資格者でない者が扱うような仕事というものを簡裁に実は期待しておるわけですね、実際は。だから、まあ法曹有資格者を持ってさておいたら間違いないだろうというふうな考えがちょっとおかしいんですよ。だから、法曹有資格者でなければ困るような仕事を簡裁に持っていくべきじゃないんです。ほんとうはこの趣旨からいったら、ある程度法律知識もあり、しかしまた一般的な、社会的な常識、そういうことで割り切っていくというのは、一方では法曹有資格者が不足しておるわけでしょう。だから、それはなるべくやはり地裁で働いてもらい、両方一ぺんに充実するといったって、実際問題として無理ですよ。だから、この辺が、私は、弁護士会がおっしゃっておる、また皆さん自身も、そう言っておるなら間違いないだろうと、そういうように調子合わせておっしゃっておられますけれども、私はちょっと疑問を持っておる。それは、有資格者が余っておるんなら、それは半々ぐらいに簡裁に置いておく。法律に関係した問題もあるから、特に令状問題などは非常に大事ですね。一般にあまり議論されておりませんけれども、今度民事、民事ということでやっておるんだけれども、簡裁という場合には、その人が刑事もやるんですから、これは無視できないわけですよ。したがって、法曹有資格者の必要性は私はもちろん認めているんですよ。認めているんだが、一般におっしゃるように、そっちをふやすんだと、それだけではちょっとおかしいと思っているんです。だから、むしろそういう方があれば、地裁のほうに一人でも、場合によって若干定年延ばしてでも臨時的に、そして地裁のほうを充実してもらう、そういうふうに考えるべきである。そのかわり簡裁には、たくさん仕事を持ち込むということじゃなしに、広く常識的な人をそこに集めて、そうして、ただし令状問題なり、そういったようなことは、これはなかなか法律家として訓練も必要ですから、そういう点の訓練は十分やってもらう。採用後において、これは人格・徳望だけじゃ間違い起こりますよ。十分やってもらうというようなことであるべきじゃないかと思うんですがね。衆議院でも附帯決議がついていますが、私はそれ自身にちょっと疑問を持っておるんですがね。小型地裁化しようというのであれば、法曹有資格者で埋めろ、当然こうなるべきですよ。それはちょっとおかしい。しかも、その点に表面上は最高裁も同調されておるわけです。どうもその点は私疑問を持っておるんですが、どうですか。
#120
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、先ほど申し上げましたように、裁判所は法曹有資格者といわゆる特別任用の裁判官とどちらが原則であるということには規定上はいたしておらないと考えておるわけでございます。ただまあ、従来から法曹有資格者をできる限り任用するようにという各方面の御意見があるわけでございますし、そのこと自体はやはりもっともなことであると思うわけでございます。これは事件の種類がいろいろございましても、とにかくいやしくも法曹資格を有する者が処理するのに適しない事件というものはあるはずのものはないという考えでございますので、そういう意味で、法曹有資格者を排除するものでないことは当然のことでございますし、いま亀田委員の御指摘の趣旨も、そういう趣旨でないというふうに理解したわけでございますが、結局、私どもが法曹有資格者と申しますのも、たとえば裁判官として十年、十五年という、いわば働き盛りの裁判官が簡裁で仕事をするということは、これはまあ実際問題としてきわめてわずかな例であろうと思います。乙号支部等において、兼務でやっておる場合には、そういう事例もないではございませんけれども、一般的には、そういういわば法曹有資格者で、しかも働き盛りの者が、簡易裁判所でやっているという事例は、きわめて少ないというふうに申し上げられるかと思います。やっぱり中心をなしますものは、まず定年退官後の裁判官、すなわち六十五歳から七十歳までの法曹有資格者でございまして、これは地方裁判所、高等裁判所では働けないわけでございますから、まあそちらの給源としては役に立たないわけで、役に立たないという表現は非常に問題ございますが、とにかくそちらの給源にはならないわけで、もっぱら簡易裁判所でやってもらう。これはやはり非常に意味があることであると考えるわけでございます。
 それから、五年未満の判事補、三年から五年までの判事補がございます。地方裁判所が非常に負担が重いというふうに申しましても、いわゆる左陪席の裁判官、すなわち単独で裁判のできない裁判官は、地方裁判所、家庭裁判所等においても比較的負担が軽いわけでございますから、こういう法曹有資格者は、これは簡易裁判所で働いてもらうという面がかなりあろうと思います。もっとも、この方たちは比較的若い人でございますし、まあ先ほど亀田委員の御指摘のような趣旨からいきますと、どちらかといえば、法律家としては非常にすぐれておっても、年功といいますか、そういう意味での練達の人ではないわけで、これはあるいは亀田委員の御趣旨には必ずしも沿わないかもしれませんけれども、そういう諸君も、給源という点では、地裁としては比較的余裕があって、簡裁では働いてもらいやすい人であるということに一応なるわけでございます。その他、これはいろいろなルートもございまして、中には弁護士等から来られた方でも、いまさら地裁ではどうかと思うけれども、簡裁なら比較的やってもという方もないではないように私ども聞いておるわけでございまして、そういう事例はきわめてわずかであろうと思いますけれども、そういう意味で、必ずしも地裁、高裁と競合しない給源というものもやはりあるということは御理解いただけると思います。そうして、地裁等に余裕があります場合というのは、全国的視野ではございませんで、たとえば当該庁、特に甲号支部とか乙号支部等では、いろいろな配置の関係で、地裁と簡裁を兼務して有資格の人に事件をやってもらうということは、同時にやはり、その限りでは好ましいことであると考えるわけでございます。しかし、もとより私どもも、弁護士会から御指摘になりますほど特別任用の裁判官というものの素質が悪いかどうか。ことにこの種少額軽微な事件の処理についてその能力を持っていないということになるのかどうかという点については、やはり私どもとしては、今後一そう改善につとめることはもちろんでございますが、現状でもかなりの程度にまではなってきておるのじゃないか、そういうふうな感じを持っておる、その辺のところが率直な感想でございます。
#121
○亀田得治君 こういうことははっきり答えられますか。地裁と簡裁いずれでも行ける人、そういう人は簡裁には来られない、地裁で働いてもらう。そっちが足らぬのですからね。そういう考え方ははっきり言えますか。
#122
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、御承知のとおり、裁判所は、全国に五百七十の簡易裁判所、四十九の地方裁判所、家庭裁判所、それから八十二の甲号支部に百五十八の乙号支部、こういう非常に大きな複雑な組織を持っておるわけでございまして、典型的な東京地裁本庁、大阪地裁本庁というようなところをとりますれば、それは少しでもそういう働き盛りの者には地裁本庁で働いてもらいたいということになろうかと思いますけれども、しかしそれぞれの裁判所の単位になりますと、小さな裁判所でも、たとえば最小限度民、刑それぞれ一部ずつの部の構成ができるように配置をする必要がある。しかし、事務量は六人、所長を入れまして七人になりますが、たとえばそういうだけの事務量が必ずしもないというような場合には、やはり兼務としてその地の簡易裁判所の仕事をしてもらうということも非常に意味のあることで、その人にいまお話しのような趣旨から申しますと、むしろそれでは他の本庁なり支部の仕事を応援してもらったほうが能率的かということになろうかと思います。また、事実そういうこともやっておるわけでございますけれども、その辺はやはりそれぞれのケースによって具体的に考えてまいりませんと、一がいに働き盛りの人は全部簡裁のほうの仕事はしないというふうにはなかなか定員配置の面ではまいらない。また、それを別に避けることも必要ないのではないか。そのために、かえって地方裁判所に――つまり他の地区に応援に行くロスのほうが多いということもあるわけでございますので、その辺は具体的な事情、事情によってきまってまいる、こういうふうに御理解いただきますのが一番いいのではないか、かように考えるわけでございます。
#123
○亀田得治君 まあ一つ一つの裁判所の配置というふうなことになれば、なかなか複雑だと思うが、そうではなしに、私の申し上げるのは、地裁が足りないんだから、地裁の力が抜けるようなことはあえてして、そうして簡裁の有資格者を多数にする、これは私はちょっと疑問があると見ているのです。簡裁の場合は要所、要所に法律的に相当訓練された人がおれば私はいいと見ているのですが、そういうものにまた育てていかなければいかぬと思うのです。これは「自由と正義」ですか、簡裁の裁判官が自分の感想を述べておりましたが、こんなことを言っております。あるいはお読みになっているかもしれないと思うのですが、これは東京管内の簡裁の某裁判官です。「一般的に言って、庶民の経済生活上の紛争は、概して少額であり、企業者などの紛争は多額である。けれども、紛争の数からいえば比較にならないほど前者の数が多いものと思われる。ところが、従来の裁判所の方針は、後者の裁判は多額なるがゆえに重点を置き、前者の裁判は少額なるがゆえに、多数の国民の権利を守るべき裁判所であるのにかからず、第二義的になっているように思われるが、これは簡裁判事であるわたくしの僻目であろうか。庶民の訴訟は少額であるが、庶民にとっては、直ちに日常生活に影響を及ぼす重大なものである。だからこそ安易・迅速・低廉な解決を望むのである。この切実な庶民の要望と期待に答えることができなくて、どうして国民の裁判所といえるであろうか、と思う。」、ここで三ケ月教授のことばを引用しておりますね、論文の中から。「「形だけこしらえたけれども、ほんとうの努力が足りなかったのではないか。家庭局を作って家庭裁判所をバックアップしたように、少額訴訟局を作らなかった。手続の点でも人員の点でも、それに対応する道具立をしないで、〃お前たちだけで独自の道を開拓して行け〃といったってできるわけはない。」これは三ケ月教授のことばであるが、部外者の正鵠を射た客観的判断であると思われる。」、いろいろ続いて長いこと書いてあるのですが、一々時間かかりますから読みませんが、ともかく簡裁の裁判官には簡裁の裁判官らしいことをやらしてくれ。これは大きな訴訟と小さい訴訟の区別の点だけを言っておるわけですが、その簡易裁判所の裁判官にふさわしいことをやらしてくれと思い切って言っているわけですね。そんな簡裁の裁判官に地裁の裁判官のようなことをやらしてもらいたくないという趣旨でいろいろ書いておるのです。これは私は、そういう意味で、非常に簡裁判事としてりっぱな見識を持っておられる方だというふうにこれを見て感じておるわけですが、そういうことが必要なんですわね。だから、いたずらに法曹有資格者というのを簡裁でたくさん採ることがすなわち簡裁の前進ということには必ずしもならない。全部は排除はできませんよ。それは法曹資格もあり人格識見もすぐれておる、それにこしたことはないですよ。それは地裁だって最高裁だってみんな根本的にはそうなければならぬのだから、地裁が苦労しておるのだから、だからそっちをまず優先的に考えて、そうして簡裁のほうには、要所要所に置いて、あとは特任の方――選び方が問題ですよ、選び方が。ある人は、あれを使って司法行政の締めつけをやりはぜぬかとか、そんな疑いの持たれるようなことをしちゃいかぬ。これは厳正に、したがってまた、部内だけじゃなしに、部外においてもりっぱな人が集まってくるような、そういう法曹をやっぱり考え、そういう人がそろってくると、簡裁が急に生き生きしてくるわけですよ。ちょうどさっき調停の問題について、民事局長が調停問題自身について根本的な検討をおやりになっているということ、これは私は簡裁の一つの部門として非常に大事なことだと思う。しかし、その際にもおっしゃったのだが、委員自体の選任のしかた、これは非常に大事ですよ、もめごとですからね。担当する人によって、それは非常に違ってくるわけですね。これを理想的な形で制度化するというのは、なかなか苦労が要ると思います、こんな大体忙しい世の中に。しかし、調停の面でそういうことをおやりになっているということは、これは即簡裁全部について私は言えると思うのです。そういう気持ちで、私この簡裁がつくられたときの特任簡裁判事というものの性格を当事提案者は考えておったと思うのです。それが必ずしも私は生かされておらぬと思うのです、現状ではまだまだ。そういうふうに思いますが、だから提案された当初のような考え方にふさわしいようなことをやはり人事面においてやってほしいと思います。それはどういう考えですか。
#124
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 基本的には、私どもも亀田委員のお話しになりましたこととそう違ったことを考えておるわけではないように伺った次第でございます。簡易裁判所は簡易裁判所にふさわしいあり方をしなければなりませんし、それにはまたそれにふさわしい裁判官を任用しなければならないという限りにおきまして、少しも異論のないところでございます。昨日来、木村司法大臣の提案理由のお話がたびたび出てまいっておりますけれども、私ども少額軽微の事件を扱うという簡易裁判所の性格というものは今回の提案によっても少しも変わるものでないと考えておりますし、それは法務省の提案理由では経済事情の変動という面から説明されておりますけれども、そしてまたそのとおりでございますけれども、一面いま亀田委員のお話しのような面から見ますると、先般日弁連で御調査になりました資料等によりますと、弁護士さんがおつきになって事件おやりになる場合の訴訟物の価額の一つの基準としては、大体二十五万円から三十五万円程度の事件より上の事件でないといろいろな面で弁護士訴訟としてはペイしない面があるように伺っておるわけでございまして、そうしますと、その中をとりますれば三十万くらいのところが一つの本人訴訟と弁護士訴訟との境界線というようなものとも見得るわけでございます。むろん少額でも、非常に重要であり、ぜひ弁護士がおつきになっておやりにならなければならない事件がありますとともに、高額でもごく簡単な事件もありますから、一がいには申し上げられませんけれども、費用その他の面からいくとそういうことも一つの資料に出ておるわけで、本人がみずから訴えを起こしていろいろやっていくという面からは、一つのメルクマールとしては三十万というものが出てまいる。それに関連してのいろいろ訴訟手続の面での問題につきましては、昨日来もいろいろお話がございました。あるいはまだこれからもいろいろお尋ねがあるのかとも存じますが、そういう点、実は私どもも、今回の衆議院、参議院の御審議を通じまして、いろいろまた反省する面もあったわけでございまして、これは十分そういうものの活用についても考えてまいりたい。むろんそういう点につきましては、弁護士会等ともやはりよく御相談申し上げる必要があろうと考えるわけでございます。特任簡判の素質等について御批判を受けます場合に、判決書が理由が非常に簡単でよくわからないというような御指摘を受けたこともございますけれども、こういうものもいわば民訴の特別規定を適用したものもあると思うわけで、そういうふうな御指摘を受けないためには、やはり全体的な手続をある意味で簡易化するという方向に持っていくということの上での判決の簡易化という意味では御理解をいただけたのではないかと存じまして、そういう点は今後とも弁護士会ともお話し合いをしながら、簡易裁判所の手続がふさわしい形で行なわれるようにということについての施策を考えてまいりたいと、ごく大まかな意味においてさように考えておるわけでございます。
#125
○亀田得治君 局長はいろいろなことをうまく並べられますが、「自由と正義」十六巻十号に「簡易裁判所の実態」、こういうのが載りましたね、これはごらんになりましたか。
#126
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 拝見しております。
#127
○亀田得治君 あそこにいろいろなことが具体例として書かれておるわけですが、要するに、私は訴訟というふうな本来あまり適しない仕事をさせておるというところに相当理由があるように思うのです。そういうように感じませんか。
#128
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは昨日もちょっと申し上げたかと存じますが、木村司法大臣の提案のとき以来、簡易裁判所では訴訟というものをやるという前提でまいっておるわけでございます。立案の過程において、いわゆる訴訟のような形の訴訟はやらないという案もあったようではございますが、でき上がりました法案としては、訴訟をやるという前提で、しかも金額的に区は裁判所の二千円を五千円に引き上げる。これの評価は別でございますが、ともかくも訴訟をやるという前提で法律ができておるので、訴訟をやらないという前提で簡易裁判所を考えるわけにはまいらない、かように考えるわけでございます。
#129
○亀田得治君 私は何も、訴訟を全然ストップと、そんなことを言っているのじゃないのですよ。それは例外的なきわめて簡易なもの、いわゆる普通訴訟というふうな範疇には入らぬようなきわめて簡単なものということで発足したことは、これは間違いないわけです。それはあなたのほうは、三十万円まではその範疇に入っているのだ、こういうふうに言われるのでしょうが、そこが問題なんです。いままた、あなたは何か区裁判所の二千円というようなものを出されますけれども、だからその辺をもう少し割り切って考えなければいかぬのですよ。何とかして理屈をつけて、簡裁のほうに少し事件を持っていこうという気持ちがあるのですね。それがちょいちょいあらわれる。そういうことは捨てなければいかぬ。簡裁は簡裁らしくいこう、結果がどういう数字になろうと、そんなことはその数字に対してはそれぞれに対応していこう、そうでなければいかぬのでして、ちょっとあなたおっしゃったから私から指摘しておきますがね。
 この資料は全部拝見しましたよ。おのおのの立場を大いに強調しておられる。これはけっこうなことです。しかし、どうもこの中で私ふに落ちないのが一つあります。これは話が出たついでにちょっと申し上げておこうと思うのです。これは日弁連の調整案についての反論ですね、あなたのほうの。これの一〇ページから一一ページにこういうことが書いてある。「同時に、その委員会において、奥野政府委員は、「現在の区裁判所におきましては、民事事件につきましては二千円以下の事件しか取扱っておりません。貨幣価値の関係もありますことを考慮いたしまして、簡易裁判所では民事事件については五千円を超えない請求を取扱うことにいたしましたので、民事事件につきましては今の区裁判所よりも権限が相当広いように考えております」と答弁しているのであって、すくなくとも、簡易裁判所における民事訴訟事件の訴訟物の価額の上限に関する限り、裁判所法の立案当局は、簡易裁判所の権限を区裁判所の権限より縮小する意図を有していなかったことが推認されるのである。」、私これを読んで、ずいぶん無理な理論構成をされるものだというふうに感じたんですよ。それから、この反論に対する反論がまた弁護士会から出ておりますね。これは当然だれでも反論したくなりますよ。これを見ますと、「前記奥野政府委員の答弁は、磯田委員の、簡裁の民事・刑事の管轄を、原案よりも拡げるべきではないかとの趣旨の質問に対し、これを封ずるための答弁と読めないことはないし、当時の裁判所法の立案当局の意図については、それまでの、司法法制審議会、枢密院、および議会の全議事を綜合的に検討する必要があり、局部的な議論によっておしはかるのは危険である。区裁判所の民事の管轄の上限を二千円としたのは、昭和一八年であり、それがそのまま戦後にもちこされたのであって、昭和二十二年当時のインフレーションの進行のはげしい情況の下で、簡裁の民事の管轄の上限が当初二千円以下とされていたものが、五千円以下となったという経過があることをも見逃してはならない。」云々というふうに反論しておりますが、私は、もうともかくお互い専門家同士が議論をやるのに、あんまり無理なことを引き出してきてはいかぬと思うんですね、無理なことを。昭和十八年、そして二十二年と、これはもうえらいインフレで、みんなたいへんな苦労したわけでしょう。それは貨幣価値が全然違うわけですね。決してそんな、あなた、立案者が区裁判所以上の権限を簡易裁判所に与えようなんて、そんなことは夢にも考えていません、夢にも。それを、ただ数字を二つ、インフレーションということを無視して、そうしてこういう理論構成をやって、何とか簡裁というものを区裁判所の延長のような印象を与えようというような、そういう無理なことをやっちゃ、私はいかぬと思うんですよ。それはやっぱり事実は事実として、お互いすなおに認め合っていきませんとね。だから、こういう理論構成をやるから、それに対する反発だって、やっぱり多少感情的にもなってくるだろうし、要らぬことですね、要らぬことです。第一、きのうも問題になった、あなたのほうの解説自身ともこれは矛盾するじゃないですか、こんなことをやるのは。あなたのほうの解説の中じゃ、わざわざイギリスやアメリカの例を引いて、「アメリカの少額裁判所やイギリスの治安裁判官等にならって、少額の民事事件またはいわゆる違警罪その他の比較的軽微な犯罪に関する刑事事件を、簡易な手続で迅速に処理させるため設けられたものである。」、そうして、戦前の区裁判所というものは地方裁判所に引き継がれておるのである、そういうようなことが書いてある。そういうことをしておって、ただ二と五の違いをいま言ったような論理構成に使うというのは、私ははなはだ――この資料全体、言いたいこといろいろありますが、これだけは私も見ておってかちっときましたよ、これは。だから、こんなことは以後言わぬようにしてほしいですな。最高裁の権威に関しますわ、それは。どうなんですかね。
#130
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この点は、弁護士会とも、連絡協議の際に、いろいろ話に出た点でございまして、文章になりますとこういうことになりますために、亀田委員かちんときたとおっしゃいます、非常に恐縮したわけでございますが、私どももこれを、何と申しますか、非常に強い意味で主張したことはございません。衆議院の議事録をごらんいただいてもけっこうでございますし、また先ほども、その評価の点はともかくとしてというふうに申したわけでございます。ただ、要するに、そういう政府委員の説明も一つあるということを指摘したわけでございます。同時に、私どもとして、少額軽微という点は、これはまあだれも異論のないところでございますが、少額の度合いということが結局問題でございます。その少額の度合いについて、一体立案者がどう考えておったのか。つまり、二千円というものに対して、インフレの進行過程でこれをどう評価していったのかということは、この弁護士会の御指摘を待つまでもなく、枢密院の議事録及び司法省の議事録、その他審議会の資料等、しさいに点検しましても、出ていないわけでございます。出ております最初のところは、最初は二千円という案でございますから、これは枢密院では、区裁判所の管轄と同様にしたと、こういう司法次官の答弁になっておるわけでございまして、その点で、これは、つまりインフレでどのくらいあれしたから、ちょうど二千円にしておけばまあ区裁判所との関係でよいかげんになるのだというような説明がどこかにありますと、その区裁判所より大体どのくらい金額を下げようと考えておったのか、あるいは上げようと考えておったのかという――おしかりを受けるかもしれませんが、ともかく、どう扱おうと考えておったのかということが、その端緒がつかめるわけでございますが、資料をしさいに点検しましても、そういうようなところに触れますのは、枢密院で司法次官が区裁判所の管轄と同様にしたと言っておりますのと、その後、枢密院で修正されまして五千円になりまして、その五千円というものをどうして選んだかということが、また結局資料がございませんで、結局ここの奥野政府委員の答弁になっているわけでございます。しかし、奥野政府委員の答弁は、この質問に対するものであって、それをそのまままつ正直に受け取るというわけにいかないということも十分了解しておるわけでございますが、しからばその二千円よりも非常に狭くしようとしたというふうな弁護士会の御主張をこの資料によって裏づけることができるか、それはやはり無理であろうということで、結局ここはきめ手になるはっきりした資料がない。一つの資料としては、枢密院のこの資料と、国会のこの資料がある、こういうことの意味で指摘しておるつもりでございまして、まあ亀田委員のお話しの点は、私どもも十分理解しておるつもりでございます。そういう前提でございますが、しかしまあ、私どもとしても、そういうような気持ちでこれまでいろいろ申し上げてまいった次第でございます。
#131
○亀田得治君 まあ論争のためには、何でも手がかりがあれば利用するというようなことは、これは必要ないですよ。また、ほかの場所における論争なら、多少戦術的にも考えなきゃならぬ場合もあるだろうけれども。それならば、あなた、簡易裁判所の権限が民事に関しては区裁判所の権限よりも広くなったのだと、そんなばかなことを言っちゃ、それは全然、ほかの資料までこれは値打ちが薄れてきますよ、それは実際。実態をだれだってみんな頭に置いて議論しているわけでしてね。敗戦直後にしてどんな経済状態になったか、そんなことみんなあなた知り尽くしていることです。だから、これはまあ、あなたはさっきまた二千円問題出されたものだから、私もゆうべ見て、その点感じておったものだから、ちょっと指摘しただけです。まあお互いにフェアに行こうじゃないですか。無理なことを言うと、どうもそのために時間がかかってしまう。
 あとまだ三、四十分ありますから若干お聞きしますが、たびたび皆さんのほうからもお答えのあったことですが、いわゆるこの簡裁の民事の訴えについての簡易な手続ですね、これがまあやられておらない。今後はどうするつもりですか。
#132
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 簡裁の簡易な手続ということについて法律の規定がございますが、それを十全に運用していない、運用されていないということは、御指摘のとおりでございまして、私どももいろいろな機会に御説明を申し上げておるところでございます。で、今後の問題でございますが、それの運用されていないということの、まあどうしてそういうふうに運用できなかったかということと関連いたしまして、やはり考えなければいけない問題であると私どもは考えておるわけでございます。で、これは亀田委員も御承知のことだと存じますが、たとえば口頭受理ということの問題にいたしましても、実は簡易裁判所において初めてこういった制度ができたわけではないわけでございまして、また比較をいたしますとおしかりを受けるかも存じませんけれども、区裁判所の当時においても実はそういうような規定があったわけでございます。にもかかわらず、区裁判所当時を通じてこれの具体的な運用がなかなかできにくかったということは、やはり衆議院でもお尋ねがあって申したところでございますが、私どものほうのいろいろの理由もございますけれども、一般の国民に対する関係において、どうしても相談的なものが入ってこざるを得ないのであって、そういった相談的なものが入ってまいりますと、裁判の公平、公正という観点からの批判を受けなければならない。それをどのようにしてマッチさせていくかということを現段階において非常に苦慮した結果、それが十全に運用できないというような結果に立ち至っておるものと、このように考えておるわけでございます。といたしますと、裁判の公平、公正ということを害さないものであるならば、私ども口頭受付の制度というものを伸ばしていくということについては異論がないわけでございますし、また実際にやれるわけでございます。それならば、どのような場合にやるかということになるわけでございますが、いろいろな論文等でも指摘されておりますように、ただ口頭だけで受け付けるというようなやり方はどうであろうかと思われるが、一定の書式をつくりまして、そういった書式に書き込む方式をとっていく――ちょうど戸籍の届け出でございますとか、住民登録の届け出でございますとか、そういった場合のように、あらかじめきめられた書式を利用いたしまして、これを使っていくというようなことであるならば、同様の目的を達し得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。ただこの場合には、どのような事件でもそうしていいということではございませんので、まあ金銭関係の訴訟のように非常に単純なもので、それからまた不法行為、自動車事故等の損害賠償のように、だれが書いてもそうとしかならないようなもの、そういったものについては、備えつけ用紙による書類書き込み方式――これは訴訟定型化方式と申しますか、そういったものを採用することによって先ほど来申し上げております欠点を除去していく、しかも弁論主義と釈明権の限界との調和を求めることができるのではないだろうか、このように考えておるわけでございます。
  〔理事山田徹一君退席、委員長着席〕
また、簡易の呼び出しの方式でございますとか、判決の簡略化の問題でございますとか、こういったものは裁判所自体の問題でございますので、現在でも前者については事件に応じて十分に実行いたしております。ただ判決の簡略化の問題は、これは先ほど総務局長も申し上げましたが、簡易裁判所の判決がどうも理由が必ずしも十分ではないというような御指摘もあることとも関連いたしまして、これまで私ども必ずしもその方向で推進するということをしてこなかったのでございますが、一連の問題といたしまして十分にこれらの件も考慮し、そういった理由がはっきりしないというような批判を受けない種類の進行をなしておる事件につきましては大幅に取り入れていきたい。で、書面尋問――証人とか鑑定人を書面によって尋問するというような規定もございますけれども、これは反対尋問の機会を奪うという大きな問題がございますので、直ちに取り入れていくことは困難でございますけれども、その精神を生かしまして、少なくとも主尋問は書面によって済ませる、反対尋問があるならばその場で反対尋問を行なうといったような方式をとることも可能ではないだろうかというようなことを考えておるわけでございます。それから、これは要するに、これまで私ども特則の運用ということにつきましては正直申し上げまして必ずしも積極的ではなかったわけでございますが、いろいろの御指摘もございましたので、今後の問題といたしましては、先ほど申し上げました裁判の公正というようなことを疑われない限度におきまして、できるだけこういった諸種の簡易な制度の運用ということについては実行いたしていきたい、このように考えておる次第でございます。
#133
○亀田得治君 簡易裁判所では、いわゆる法律相談的なことですね、こういう相談には応じておるんですか。つまり、外部の人から見ると、裁判所となっておれば、そこへ入っていって聞いてみたいというふうに考える人もたくさんあるんですね。そういう場合には、相談に応じておるのか、応じていないのか。家庭裁判所の場合はやっていますね。記録にも載っておる、統計的に。民事の場合には、その点は法律上明確にはしてないわけですが、実際はどういうふうになっているんですか。
#134
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 民事事件におきましては、調停の場合と訴訟の場合とではやや趣を異にいたしております。調停の場合は、どうしたらいいでしょうかと言って出てきますこと自体が、すでにある意味では紛争があって、その紛争を調停によって解決してほしいという申し立てとも見られるわけでございますので、比較的軽い気持ちでそれに応じて、その場合にはこういうふうになさったらいかがですか、調停の申し立てをなさいというようなことで指導をいたしておる。現に、ある地方の管内等におきましては、調停申し立ての定型用紙をつくりまして、そういうことならばこの用紙にお書き込みなさいということで、即座に調停の申し立てを受け付けてやるというふうにいたしております。これは具体的には、京都地方裁判所等の管内は非常にそれを励行しておりますし、東京地方裁判所の管内におきましても、用紙を配って、そういう申し立てのあった場合には利用させるという扱いをいたしておるわけでございます。しかし、訴訟ということになりますと、これは先ほども申し上げましたように相手方のある問題でございますし、また訴訟の請求原因等をどのように構成していくかということはかなりむずかしい問題でもあり、またそれが裁判の結果にも必ずしも重要な影響を持たないわけではないという問題でございますので、正直申し上げて、窓口といたしましてはそれに対して憶病な態度をとっておるというのが現状でございます。しかし、具体的には、地方の独立簡裁等におきまして、本人の方が見えて、これは調停である、これは訴訟であるというふうに一々分けて言ってこられるほどの法律上の知識もない方がたくさんございますので、結果といたしましては、かなり相談に応じ、またその相談のためにかなりの時間をとられているというのが実情でございます。しかし、その点について、家庭裁判所のように非訟事件ではございません関係もございまして、特に相談ということを明記し、あるいは相談何件あったというふうな統計資料をとるというようなことは、いたしていないのが実情でございます。
#135
○亀田得治君 そういうやはり統計はとっておったほうがいいんじゃないですか。それは簡裁というものは、少額軽微な問題について、いろいろな面で周囲の人との接触があったほうがいいのですし、最高裁としても、重要なやはり参考資料になっていくと思うのです。
#136
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実は、いろいろの御質問あるいはお話等がございまして、そういったことの必要性ということも、私ども痛切に感じておりますので、この機会に、相談というふうな一項目ができるかどうかは別といたしまして、何らかの形で相談的なものを把握できるような方法を講じていきたい、その点については、前向きに考えてみたいと考えておるわけでございます。
#137
○亀田得治君 それで、簡裁の簡易手続に関連してくると思うのですがね。当初簡裁の立法化の過程で、兼子さんが、簡裁の判決に対する控訴――地方裁判所、これは続審制をやめて覆審制にしたらどうか、こういう提案をやっております。私はこれは非常にいい提案じゃないかと思うのですが、簡裁自体を、簡裁の簡易手続を実行する上において、どうしても現在のような続審制であれば、やはり控訴されたときのことを念願に置いてやりますから、そこも割り切ってしまって、ともかく簡裁としてあまりあとのことを考えないでやっていけるように、そういうふうにすれば簡裁としても助かるし、また関係者としてもかえってそのほうがさっぱりしていいわけです。控訴までしなければならぬという、多少それは複雑な事情があるのでしょうから――簡裁の判決に対して控訴ということは、どうですか。
#138
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 確かに、簡易裁判所の制度が考えられます最初の段階において、いま御指摘の兼子教授からそのような御提案があったということは、私ども当時の記録で拝見しておるわけでございます。ただ、この考え方は、相当早い段階においていわば捨てられてしまったもののようでございまして、当時の裁判所法の審議の最終段階における要綱案といったようなものには、もはやそのような構想はございませんで、原則としては、すでに存在いたします民事訴訟法の手続によってやる。ただ特則として、先ほどちょっと申し上げましたが、口頭受理の制度でございますとか、簡易の呼び出しの制度でございますとか、調書を簡略化していく制度でございますとか、判決を簡略化する制度でございますとか、そういった区裁判所にも一部ございましたものを取り入れ、さらにまた新たなものとして、簡易の呼び出し、あるいは調書の簡略化といったような制度を加えることによって、簡略にする道も開いていくということときめられて、それが成文化されたというふうに承知をしているわけでございます。
 で、一番問題になりますのは、やはり何と申しましても、民訴の原則をとりまして、一審から二審に行くのに継続審の形をとったということでございます。継続審の形をとってしまいますと、これまでの手続がどうであったか、簡易裁判所における手続がどのようにして進行し、そこにおける証人はどのようなことを述べたかということが、控訴審におきまして、何らかの形で、資料の形で残されておりませんと、審理ができないということでございまして、このことのありますために、せっかく定めました簡易の手続というものが非常にとりにくいというような現状に相なっているのでございます。これが、当初兼子教授が考えられましたような覆審という制度をとりまして、一審は一審限りにしてしまって、それに不服があって控訴された場合には、あらためて最初からみなやりなおしていくというようなことでございますと、一審の手続としてはどのような自由奔放な手続をとりましてもまあやっていけるということに相なるわけでございますが、私ども、その当時、どういう議論があって、覆審制の構想が捨てられ、継続審の現訴訟法の規定をそのまま適用するということに相なったかは、つまびらかにはいたしませんけれども、やはりそうなってしまっております以上は、なかなかそういう継続審の形においての簡易な特則を用いるということに限界があるということと相なるわけでありまして、それが、先ほど申し上げました、この特則を非常に使用しにくいということの一つの法律的な大きな理由でもあるわけでございます。
#139
○亀田得治君 いや、その経過はそのとおりでしょう。だから、そういう簡易な手続をせっかくきめながら、それが利用できにくいという、その原因を排除したらどうか、制度の改革をやって。そのほうが簡易裁判所としては生きてくるわけです。だから、何も、当時提案があって、それが早い時期に捨てられた、そんな事情をせんさくする必要はないですよ。現段階において、新しくやはりそういう必要性というものが感ぜられるということであれば、それは新しい立法問題として検討して私はいいと思うのですよ。必要なことは何でも新しく考えたらいいじゃないですか。何も臨司のあれに書いてあることばかりやらぬだって、いいことは何でも考えたらいいですよ。これは事務総長、どうですか。
#140
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) まあ一つの、これは新しい制度を考えるという点について、その方向に向かっての努力をするということは必要だと思います。
#141
○亀田得治君 法務省、どうですか。そのほうが、簡易裁判所の手続を、思い切って簡易手続活用のために便利だということは、これはみな認めていると思うのです。
#142
○政府委員(影山勇君) 昨日来、簡易裁判所の性格の論議が続いたわけでございますが、そうして将来もまた、この簡易裁判所をどういうふうに持っていくかということは、やはり簡易裁判所のみならず、その上級の裁判所の機構その他にも関係する重要な問題だと思いますので、根本的に簡易裁判所の検討――性格、体制を考えます上に、なお十分検討すべき問題だと思っております。
#143
○亀田得治君 ともかく簡易裁判所の場合には事件がきわめて簡単なんですからね。簡単なんですから、したがって、控訴率もほんのわずかでしょう、地裁に比べて。控訴率が低いから、何か簡裁の判事しっかりしているような議論も、どっかで総務局長がやっておったようですが、そうはならぬですよ、これは事件の質が違うんだから。だから、そういうもの何ですから、特殊なものだけが上に行くんですから、これはもう切り離してしまう、簡裁の審理と。そうすれば、自由に腕をふるえるわけですよ。そして余った時間をまた簡裁として必要な方面に時間を使っていく、こういうふうになって、ともかく割り切っていかないといかぬですよ、ある程度。そういうわけで、ひとつこれは研究してください。
 だいぶ飛ばしましたが、職員の問題ですね、これはどうしても触れておかなきゃならぬので触れますが、現在独立簡裁で二人しか職員がおらぬというのはどことどこですか。
#144
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 簡易裁判所の一般の職員の定員の配置につきましては、原則的に所管の地方裁判所の権限というふうにしておるわけでございますが、私どもとしては、どのように小さな裁判所でも最小限度三人は配置する、こういう方針で地方裁判所を指導しておるわけでございます。ただ、いろいろな関係で、一時欠員その他の事情によって二人という庁があるようでございますが、しかしながら、私どもとしては、これはぜひ三人は置くようにと、こういう指導をいたしておる次第でございます。
#145
○亀田得治君 ともかくも、理屈はどうでもいいんだ、二人というのはどことどこです、いま。
#146
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 最高裁としては、二人ということは承認していないわけでございます。
#147
○亀田得治君 承認しないと言ったって、現に二人のところはどことどこかと聞いているんですよ。それが一人欠員なら欠員という意味でしょう、あなたのおっしゃるのは。その理由は別として、そういうところが幾つあるのか、それを聞いているんです。
#148
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは時期によりまして違いますので、一般的に申し上げられませんけれども、従来いろいろ国会で御質疑があったりして、調査いたしました、そのある時点時点におけるものを見ますると、大体十五庁程度はあるというのが従来の例になっておるわけでございます。ただ、私どもとしては、できる限りそういうものはすみやかに埋めるようにということを絶えず指導しておると、こういう関係でございます。
#149
○亀田得治君 人事局長のほうが詳しいのかもしれませんがね。やっぱそっちですか。三人のところはどことどこがあります。
#150
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これも一応の定員ということでございますが、三人庁は大体九十ということになっておるわけでございます。
#151
○亀田得治君 定員じゃない、現員。
#152
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま申し上げましたのから先ほどの二人庁引きました七十五庁が大体三人庁ということになろうかと思います。
#153
○亀田得治君 そうはならぬでしょう。四人庁であって一人欠けておるという場合が、現実には三人庁になるでしょう。だから、いま現にどういうふうになっているか、それを聞いている。
#154
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 仰せのとおり、四人庁でたまたま三人のところもあろうかと思いますから、その数は先ほどの数に加えなければならないのでございます。
#155
○亀田得治君 引いたり足したりしていると、ややこしいですね。三人しかおらぬのは幾つなんです。定員とか、そんなことじゃなしに、引いたり足したりして結局幾つあるんです。
#156
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 御承知のとおり、裁判所法では簡易裁判所の職員の任免及び勤務裁判所の指定は地方裁判所の権限ということになっておりますので、これは本日現在で何庁あるということを調査しようと思いますれば、全国の裁判所に照会いたしませんことにははっきりいたさないわけで、ただ、亀田委員の趣旨が、大数的に見てというお話と伺いまして、従来いろいろ調査した機会で見ますると、大体二人庁は十五庁くらいあった場合が多いので、現在もそのくらいあるのではなかろうかというふうに申し上げまして、それから三人庁は大体九十庁と、こういうふうに申し上げたわけでございます。四人庁の欠員庁はあまり従来調べたことがございませんので、手元にいま資料としては持っておらないわけでございます。あるいは、何かの関係で調査いたしますれば、一定の時点のものがわかるかもしれませんが、一応さように御了承いただきたいと思います。
#157
○亀田得治君 そういうところで一番の悩みはどういうことですか。二人とか三人というところの職員の悩みというものは、どういうふうに理解していますか。
#158
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この辺になりますと、もう人事局長のほうがあるいはいいかと思いますが、私の承知いたしております範囲では、やはり宿直の問題等がかなり問題であるように聞いておるわけでございます。
#159
○亀田得治君 それは、皆さんちゃんと知っておって放置しておくのはよくないですよ。二人庁というようなことは酷ですよ。一日おきに宿直しなければならない、それでは家庭生活も何も破壊されていきますよ。われわれみたいな者はいつどこへ泊まるかわけがわからぬが、そういうわけにいかぬのですから、これは定員どおりきちんと置きませんと。第一、三人庁で一人欠けるいうたら三分の一欠けるんでしょう。これは三百人の職員の中の百人欠けたとしたらたいへんでしょう。簡裁の場合は、あれもこれもやっているのですからね。私は、職員問題なり、いろいろ職員関係のことで問題たくさんあるのですがね。これが一番の悩みのようですから、これだけをいまわずかの時間しかないから申し上げておるので、そうして、こういう人たちが、いろいろな待遇の面ね、いろいろな面でやっぱり悪いようですよ。いろいろな消耗品でも、地裁のほうで残ったものを分けてもらうとか、足りぬようになってもなかなか来ない、自分の小づかいで買う。テレビとかラジオ、こういうものはもう必需品ですわね、現在では。そんなところにテレビ、最高裁で備えつけているところありますか。これはたいてい寄付を受けたり、自分らで少しずつ貯金をしたりして備えつけたりしているのが多いように聞いておるのですが、どうなんですか。
#160
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) テレビの問題は、あるいはあとで経理局長からでも説明していただいてはと思いますが、先ほど二人庁、三人庁の宿直の問題を申しました関係がございますので、これもあるいは本来所管としては経理局かとも存じますが、ついでとして私からちょっと補足的に説明さしていただきたいと思います。
 と申しますのは、確かに三人庁といいますものは非常にいろいろな面で困る問題でございますが、これは事件数をいま一々ここで指摘いたしますと非常に時間かかりますので省略いたしますけれども、訴訟はほとんど一年に十数件というような庁が大部分でございます。その他の事件を含めましても三、四百件というようなところがかなり多い。そういうような関係から、定員の配置でも三人にせざるを得ない。それで、いま問題になりました宿直の点につきましては、これも一応の解決ということにすぎないかもしれませんけれども、庶務課長の官舎のようなものを庁内に置くというような施策をやっておりまして、すでに四十五年度の分を含めますと百庁ぐらいについてそういう方針で施策が進められているわけでございまして、こうなりますれば比較的宿直の場合にも、庶務課長がその構内に住んでいるというようなことで、いろいろな面で全然そうでない場合に比べますとよほどその負担その他が緩和されるというようなことになる、こう考えているわけでございます。
 で、将来の問題としてこの小さな簡易裁判所というものをどういうふうに持っていくかということは、国会の御意見も伺い、また法曹各方面の御意見も伺い、あるいは現地の御意見も伺いしながら、やはり総合的に考えてまいらなければならない。事件のきわめて少ないところに五人、六人置くということも困難でございますし、そうかといって、やはりそこに裁判所があるということの意義はむろんあるわけで、その辺のところをどういうふうな方法でもって解決していくべきか、これは大きな問題として、十分御意見を伺いながらやってまいりたい、かように考える次第でございます。
#161
○亀田得治君 訴訟事件のほかに、令状も扱っているわけですからね。だから、それが非常に離れた遠距離になってしまうということになると、不正規な身柄の拘束ということが事実上結果としてあらわれてくる場合もあるわけですね。だから、統合するにしても、民事事件の数だけでいいものじゃないわけです。第一、こういう種類の役所ですから、お客さんが少ないから店しまってしまうというわけにはこれはいかぬわけでしょう。だから、その辺のところをよく検討してあれしませんと、いよいよ結論を出した、また反対されたというふうなことになってしまう。だから、令状関係というものは一つの大きな要素だと思うのです。それで、簡裁の方はとにかく種類から見たらあらゆるものをやるわけだ。これはたいへん気をつかうと思うのですよ。毎日督促なら督促だけをやっている大きな簡易裁判所の担当者などは、そういう意味では楽ですね。たまにぽつんぽつんと来るような事件であっても、その関係者にとっては一生に一ぺんしかない事件かもしれぬから、間違わないようにやらなければならぬ。そういう意味では、最高裁の裁判官よりも良心的に考えたら気が重くなる場合もあるんですよ。最高裁だったら、調査官がついていろいろ準備して、そうして自分はひとつじっくり考えていって判断していくという立場ですからね。そうじゃない、これは全部やらなければならぬ。だから、こういうところをないがしろにしてはこれはいかぬと思うのです。いろんな超過勤務とかなんとかそういう点でも、やはり地裁の職員の方などに比べると予算が足らぬのじゃないですか。非常にそういうふうなことを聞きますがね。これはひとり裁判所だけじゃないんですがね、どこの役所へ行っても、地裁のほうよりやっぱり軽く見る、それはいかぬと思いますね。そんな状態にしておくと、どうしてもひがみもできるし、やっぱりそこの仕事の正しい処理に直接間接影響してくると思うのですよ。だから、ぜひ簡裁の簡裁らしい育成ということを、この点はまあ、法案のいかんにかかわらず、最高裁も弁護士会もみんなが要望しておるところですから、裁判官の充実、あるいは施設の充実と同時に、職員の立場というものを十分やっぱりふさわしいものにしていくように努力してもらわないといかぬですよ。その点どういう考え方か、最後にお聞きしておきます。
#162
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 具体的な事項につきましてまたお尋ねがあれば、所管の局長から説明するといたしまして、それぞれ大筋におきまして私ども亀田委員のお話と全く同感でございます。これは行政庁におきましても、末端の機関というもののめんどうをよく見ていくということが非常に必要なことであると思っておりますけれども、特に裁判所の場合には別に高等裁判所であるから上級であり、地方裁判所はそれより下級で、簡易裁判所はさらに下級であるというようなことは決してないわけで、むしろ国民が最も接触するのはやはり第一審の裁判所であります。その地方裁判所、簡易裁判所というものが、むしろある意味では一番重要であるとも言えると思うわけでございます。ことに控訴、上告ということはだれでもできるわけではございませんので、少なくとも第一審を確保するということはきわめて必要なことで、これはつとに最高裁としても一審強化の問題に取り組んでまいっておるところでございます。同時に、亀田委員からお話のございました、件数が少なくてもいろいろな仕事をやることがなかなかたいへんであるという点は、これは一般の書記官、事務官の職員もそうであろうと思いますが、裁判官につきましても、私ども現場の人たちから始終聞かされておることでございまして、そういう点はこの件数を読みます場合にも私ども十分念頭に置いて考えておるつもりでございます。そうして、そういうような意味合いにおきまして、職員の配置あるいはその待遇等について、従来ともいわば一審強化という旗じるしのもとにやってまいったつもりでございますけれども、今後ともさらに一そうの努力をいたさなければならないと、かように考えておる次第でございます。
#163
○亀田得治君 非常に急いで各論的な部分を飛び飛びに取り上げたものですから、相当残ってはおるのですが、本日のところ一応この程度にしておきます。
#164
○委員長(小平芳平君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト