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1970/05/12 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第15号
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1970/05/12 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 法務委員会 第15号

#1
第063回国会 法務委員会 第15号
昭和四十五年五月十二日(火曜日)
   午前十時四十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         小平 芳平君
    理 事
                河口 陽一君
                後藤 義隆君
                亀田 得治君
                山田 徹一君
    委 員
                井野 碩哉君
                木島 義夫君
               久次米健太郎君
                小林 国司君
                堀本 宜実君
                山崎 竜男君
                小林  武君
                松澤 兼人君
                山高しげり君
   国務大臣
       法 務 大 臣  小林 武治君
   政府委員
       警察庁警備局長  川島 広守君
       法務大臣官房長  安原 美穂君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  影山  勇君
       法務省民事局長  新谷 正夫君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       岸  盛一君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   寺田 治郎君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢崎 憲正君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   大内 恒夫君
       最高裁判所事務
       総局民事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局総務局第一
       課長       林   修君
       最高裁判所事務
       総局人事局給与
       課長       中村 修三君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事
 訴訟手続の特例等に関する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○航空機の強取等の処罰に関する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○裁判所法の一部改正案反対に関する請願(第四
 二九三号)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案を議題といたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#3
○亀田得治君 これは、日本と外国との間の送達なり証拠調べなどについてお互いに協力し合おうと、こういうことですから、非常にけっこうな、当然な法案でありますが、若干念のためにお尋ねをしておきたいと思います。
 この法律案のもとになっておる民事訴訟手続に関する条約、この締約国は現在どういう国になっておるでしょうか、締約なり加盟。
#4
○政府委員(新谷正夫君) 民事訴訟手続に関する条約の締約国を申し上げます。まず、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、ノルウエー、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、スイス、これがハーグの国際私法会議の構成国でございまして、この十四カ国がまず批准をいたしております。その後それ以外の国から加入いたした国が七カ国ございます。それは、イスラエル、ユーゴスラビア、チェコスロバキア、 ハンガリー、ポーランド、ソ連、バチカン、この七カ国でございます。合計二十一カ国がこの条約の締約国になっております。
#5
○亀田得治君 それから、もう一つの民事または商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約、これはどうなっておりますか。
#6
○政府委員(新谷正夫君) これも、国際私法会議の構成国といたしましては、デンマーク、アメリカ合衆国、フィンランド、ノルウエー、アラブ連合、連合王国、スウェーデン、この七カ国が現在批准いたしておりまして、そのほかに加入いたしました国がボツワナ、バルバドスと二カ国あります。さらにそのほかに、現在批准はまだいたしておりませんが、署名だけ終えております国が、ドイツ、ベルギー、フランス、イスラエル、オランダ、トルコの六カ国となっております。
#7
○亀田得治君 これは、普通の条約に比べて、いわゆる政治的なものではないし、もう少し加盟の速度が早くてもいいと思うのですが、多少おそいような感じもするのですが、そうでもないのですか。
#8
○政府委員(新谷正夫君) ハーグの国際私法会議で取り上げました条約はまだほかにもございますけれども、それと比べてみましても、この二条約の批准の速度と申しますか、これに加入いたしております国の数は比較的多いほうであろうと思います。先ほど申し上げましたように、民事訴訟手続に関する条約のほうは、これは一九五七年に発効いたしております。さらに、民訴条約の一条から七条までを改善する趣旨でできました送達条約のほうは、一九六九年でございますので、昨年発効いたしたばかりでございます。そのような状況でございますので、まだこれからこの条約に加入する国があらわれてくることであろうと、このように考えられるのでございます。
#9
○亀田得治君 それから、日本は、あなたのほうからいただいた資料二三ページ以下を拝見いたしますと、二十二カ国との間で司法共助についての個別的な取りきめをやっておるようですが、この内容はどういうふうなことですか。
#10
○政府委員(新谷正夫君) 御承知のように、明治三十八年にできました外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法という法律がございます。これによりまして、外国の裁判所とわが国の裁判所との間で送達、証拠調べの共助をいたすことになるわけでございますが、この国内法である共助法が働きますためには、それぞれの国との間に相互に保証が必要でございます。わが国のほうでやるかわりに、先方の国においても同じように送達なり証拠調べについての共助関係に立つという保証が必要な関係で、ただいま御指摘のようないろいろの取りきめができておるわけでございます。
#11
○亀田得治君 今後は、こういう二国間の取りきめというものは必要がなくて、最初にお聞きした二つの条約というようなものにお互いに加盟しておればそれで足りるという関係になるのですか、その点はどうなんでしょう。
#12
○政府委員(新谷正夫君) 先ほどの二国間の取りきめができております国が、必ずしもこの条約に加盟いたしておりません。たとえば、先ほど申し上げました民訴条約の場合でございますが、批准した国の中でわが国と共助の取りきめをいたしておりますのは、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スペイン、イタリア、ノルウエー、スウェーデン、スイス、イスラエル、その程度でございます。したがいまして、この民訴条約と個別的な共助に関する取りきめとは必ずしも一致しない面があるわけでございます。民訴条約なり送達条約に加盟いたしておりません国との間では、やはり共助法による相互の取りきめが必要になろうかと思うのでございます。ただ、内容といたしましては、共助法によりますと相互の保証が必要でありますことはもちろんでありますけれども、実際の共助の方法といたしまして、外交上の経路を通ずるとか、あるいは費用の償還の請求についての保証が必要であるとかいうことになっております。これらの点は民訴条約なり送達条約によりまして非常に改善されておりますので、望ましいことは、これらの条約に加盟した国相互間で円滑に国際間の共助が行なわれることが望ましいんであろうと、こういうことは言えようと思います。
#13
○亀田得治君 そうすると、まあ二国間の取りきめをしておるのが、この資料によりますと二十二カ国あるわけですが、その中で両条約に加盟をしておるものとしておらぬものとがあるようですが、また今後加盟するのがふえるだろうと思いますが、ともかく二十二カ国の中で加盟しておるものについては重複するわけですね、関係が。その場合には、二国間の取りきめよりも、両条約によって今後は処理していくと、今後日本が批准した暁ですよ、そういう関係になっていくわけですか。
#14
○政府委員(新谷正夫君) そのようになろうと思います。
#15
○亀田得治君 この二国間の取りきめと両条約で、その内容が違っておる――まあ後にできるもののほうがよりいろんな点についての研究が進んでいるでしょうからよくなっていると思いますが、どういうような点ですか。
#16
○政府委員(新谷正夫君) 二国間の取りきめによりまして共助を行ないます場合には、わがほうといたしましては共助法の規定にのっとって行なうわけでございますが、この共助法によりますと、先ほど申し上げましたように、相互保証が必要でありますのみならず、送達なり証拠調べの嘱託は外交機関を経由して行なう、これが非常に大きな重要な点でございます。そのほかに費用の弁償について嘱託国が保証しなければならないというふうな点が重要な点であろうと思いますけれども、民訴条約によりますと、その点が相当改善されております。これは条約でございますので、あらためて相互保証ということは必要でございませんけれども、そもそもこの民訴条約ができましたいきさつといたしましては、先ほど申し上げましたような外交機関を経由してこのような嘱託をするということが、非常に煩瑣であるのみならず、時間がかかるという点に難点があるといわれていたのでございます。この点を解決するために、国際私法会議におきまして、一九〇五年以来、この外交機関を経由するという方式をやめまして、新たな方法を取り入れることになったわけでございます。一九〇五年の条約を改めましたものが、一九五四年の、先ほどの民事訴訟手続に関する条約でございます。これは内容はほとんど同一でございます。これによりますと、外交機関を経由することも、これは全然廃止したわけではございませんけれども、さらにより便利な方法といたしまして、受託国がこの嘱託を受ける当局――経由機関としての当局を指定いたしますと、嘱託国側の領事官がその指定当局に直接要請すればよろしいことになっておるのでございます。これによりまして、従来の外交機関を経由するという煩瑣な手続を解消いたしまして、事務的にスムーズに行なうようにいたしたわけでございます。現に外交機関を経由いたしますために、各国間のこの経路を通じて送達なり証拠調べの嘱託が届きます期間といたしまして、おおむね三カ月から四カ月かかっておるのが通例のようでございます。はなはだしきに至りましては、一年をこえてようやく相手国の実施機関に到達をした、こういう例もあるようでございます。これらの点を解消いたしますために、民訴条約におきましては、領事官が嘱託国の指定当局に請求をすればいい、このようになっております。さらに費用の弁償の保証でございますが、これも原則といたしましてこの締約国相互間においては費用の償還請求をしないと、こういうことになっておるのでございます。まあこれらの点が共助法による実施の場合とたいへん違うところであろうと思うのでございます。さらに送達条約の場合には、民訴条約をさらに一歩進めまして、領事官から相手国の指定当局に要請するという形式をさらに進めまして、締約国が中央当局というものを指定をしておきますと、嘱託国の権限のある当局、言いかえますれば裁判所が直接相手国の中央当局に嘱託することができるということになっておるのでございまして、これによりまして民訴条約の場合よりはさらにまた簡素迅速化するといことになっております。その他の点につきましては、おおむね送達あるいは証拠調べにつきましては、民訴条約と同じような内容が取り入れられておるのであります。
#17
○亀田得治君 いただいた資料の一一九ページですね、外国裁判所に対する送達の嘱託の規定ですが、中華民国がこの表によりますと非常に多いわけですね、どんな事件ですか。
#18
○政府委員(新谷正夫君) 中華民国に対する嘱託事件の内容でございますが、中身を一々申し上げる資料ございませんけれども、件名によって申し上げますと、離婚に伴う慰謝料請求事件とか、あるいは損害賠償請求事件、不動産関係の事件、売り掛け金の支払い請求事件、債権の存否確認の事件、そういった事件があるようでございます。
#19
○亀田得治君 それから、その裏の、証拠調べの嘱託の関係ですが、一番多いのだけちょっと参考に聞きますが、アメリカ合衆国が一番多いですね、二十四件。これはどういうふうな案件でしょう。
#20
○政府委員(新谷正夫君) アメリカ合衆国に対しまして証拠調べを嘱託しました事件は、親子関係の事件、あるいは損害賠償、不動産関係、売り掛け代金の支払い請求事件、そういったものがおもな内容でございます。
#21
○亀田得治君 それから、その次の一二三ページですか、向こうからの嘱託による関係ですが、送達関係ではドイツが一番多いようですね。これはどういったような案件でしょう。
#22
○政府委員(新谷正夫君) ドイツから送達の嘱託を受けております事件は、特許権侵害事件、不正競争事件、あるいは売買に関連する損害賠償事件、意匠登録・実用新案登録侵害事件、売買契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づく差し押え命令、あるいは離婚事件、証拠保全、そういったものがドイツからの嘱託にかかるものでございます。
#23
○亀田得治君 特許権というのはドイツらしい案件のように思ったんですが、これは件数四十五件の中で、特許とか、意匠とか、そういう関係はどれくらいあるんでしょう。
#24
○政府委員(新谷正夫君) 最近の件数でございますけれども、昭和四十二年におきましては、特許権侵害事件が二件ございます。それから四十三年に一件、四十四年に、これは工業所有権侵害に基づく事件でございますので、特許権なのか、あるいはその他の工業所有権なのかわかりませんが、これが一件ございます。
#25
○亀田得治君 その裏ですね。一二五ページ、証拠調べの関係、これは米国が非常に多いようですが、これはどんなような案件でしょう。
#26
○政府委員(新谷正夫君) アメリカの裁判所から嘱託を受けました証拠調べ事件と申しますのは、昭和四十二年に商標権侵害事件、それからマットレスの売買事件、輸出貨物の売買代金請求事件、それから昭和四十三年に同じく輸出貨物の売買代金請求事件、昭和四十四年におきましては生命保険金の事件、こういうふうになっております。
#27
○亀田得治君 まあえらいこまかいことを聞くようですが、おおよその状態が想像できますのでお聞きしているわけですが、その次のページですね、一二六から一二七にかけての表ですが、これもアメリカがずば抜けて数が多いですね、これはどういうふうな案件でしょう。
#28
○政府委員(新谷正夫君) アメリカ合衆国から送達の――これはアメリカに駐在する日本の領事に対する送達の嘱託でございますが、このアメリカ関係におきましては、離婚事件、あるいはそれに伴う慰謝料請求事件、不動産関係の事件、損害賠償請求事件、親子関係不存在確認事件、あるいは売り掛け金等の金銭の支払い請求事件、自動車の引き渡し請求事件、そういったものがおもなものでございます。
#29
○亀田得治君 その裏の一二八ページですね、これはすべて在米の領事官のようですが、嘱託先は。これはどんなような案件でしょう。
#30
○政府委員(新谷正夫君) 昭和三十九年におきましては、不当利息の返還請求事件が一件ございます。それから四十年におきましては、損害賠償請求事件が一件と、所有権移転登記手続請求事件が一件ずつ。四十一年におきましては、不動産所有権の確認と移転登記手続請求事件、これが一件ずつになっておりますが、そのような状況でございます。
#31
○亀田得治君 その次の一二九ページに、外国においてする送達に要する期間というのが出ておりますが、さっき局長からも、ちょっと長いところは一年以上だというお話がありましたが、この表によるとブラジルが一年二カ月以上というふうに書いてありますが、これはどうしてこんなにかかるのでしょうか。
#32
○政府委員(新谷正夫君) これは裁判所のほうの資料なんでございますけれども、実はブラジルでなぜこんなに長くかかるのかということは、私どものほうでは把握できないわけでございます、ブラジルという国のお国柄の関係もございましょうし、いろいろその国の内部の事情もあって、このように長くかかるのではないかと思うのでございますが、これはたいへん極端な例であろうかと思うわけであります。
#33
○亀田得治君 お国柄というのは、のんびりしているということですか。それにしても、ちょっと長過ぎますな。これは一般のほかの事務でもそういうふうにやっているわけですか、お国柄というのは。
#34
○政府委員(新谷正夫君) 一般的に、先ほどお話しのように、のんびりしておるというふうなこともその原因であろうかと思うのでございますけれども、直接この裁判所関係におきまして、このように時間を要するというものは、ほかには経験いたしておりません。この送達に要する期間といたしまして、目立ってブラジルの場合には長い時間がかかっておると、われわれもこれは非常にいま奇異に思っておるわけでございます。
#35
○亀田得治君 それから最後にもう一つお聞きしておきますが、条約の加盟国でもない、また二国間の特別取りきめもないという国がたくさんあるわけですね。そういう国との間では、便宜のはからいをするというふうな道はないのでしょうか。また、そういう条約、取りきめ等がなくても、そのような依頼というようなものはないのかどうか。必要性というものは、おそらく私はあると思うのです。こちら側から見た場合も、やはりあると思うのですね。そういう場合には、どういうふうにいままでおやりになるわけですか。個別にその事件について特別な措置をとっていくということしかないのだろうと思いますが、その辺のところをちょっと説明してください。
#36
○政府委員(新谷正夫君) 個別的な取りきめもありません場合には、これはちょっと動かすわけにもまいりませんので、相手国のほうでわがほうの要請にこたえて送達なり証拠調べを実施してもらえるという保証がないわけでございますので、これはいかんともいたしがたいわけでございます。現にいまそのような例といたしまして問題になった国といたしましては、フランスとか、ベルギーとか、イタリアというふうな国があるようでございます。これらの国に対しましては、司法共助についての取りきめをしたいということをそれぞれの国から申し入れがあったことはございますけれども、主としてこれらの国におきましては、一九五四年の民訴条約の内容に従ったような取りきめをしてほしい、こういう提案があったようでございます。そうなりますと、ただこの取りきめだけでは実際に手続が動きませんので、立法措置も必要になってまいる場合もあるわけであります。この民訴条約に加盟いたしますれば、この問題は一挙に解消するわけであります。どうしてもこういった取りきめができない場合には、これは送達の場合には公示送達の方法に訴えるしかないと思います。証拠調べは、これは相手国のほうで実施してもらう必要がありますので、これは実際上行なうことができないという結果になるわけであります。
#37
○亀田得治君 一つのケースで、証拠として非常に中心的な価値のある点だというふうな問題等の場合にも、結局それはあきらめざるを得ないということになるのか。事実そういうふうにやった場合が多いのだろうと思いますが、しかし、それは特に外交ルートを通じて事案の性質というものを説明して、そうして協力を求める、相手が了解すればそのことができるということになるのか、ならぬのか。そういう手続でやった場合に、裁判上その証拠調べの結果というものが利用できなければいけませんね。そういったようなことはどうなんですか。
#38
○政府委員(新谷正夫君) 取りきめがない場合におきましても、たとえばわが国の裁判所からある特定国の裁判所に対して証拠調べの協力の要請を出すといたします。その場合には、相手国が取りきめがなくてもそれに応じてやりましょうということでございますれば、その限りにおいてはその証拠調べも実施可能になるわけでございます。異議がなければ行ない得るということでございまして、これは今回の条約の中にもそういったことが散見いたしております。現に、国際間におきまして特段の取りきめがなくても、相手国が異議を述べないという場合には、これが実施できる場合も残されておるわけでございます。しかし、これは何らの保証がないことでございますので、必ずそれが実現できるというわけのものでもないわけでございます。そういう意味で、取りきめなり条約はやはり必要であるということは言えるかと思います。
#39
○亀田得治君 条約なり取りきめの必要性はわかるのですが、全部がまだそろっておらぬものですからね。いままではそんな例はないのですか、そのために非常に困ったといったような。
#40
○政府委員(新谷正夫君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、裁判所におきまして、フランスとかベルギーとかあるいはイタリアに対しましてそういう要請をし、また向こうから持ち出してこられたというケースがあるようでございます。これらの場合にも、取りきめがないということの理由によりまして、これが実現しておりません。したがいまして、取りきめがありませんと、相手がそれに異議を述べないという場合であれば別でございますけれども、そうでない限りは、保証がないわけでございますので、いかんともいたしがたい、こういう結果になるわけであります。
#41
○亀田得治君 それは、日本が要求された場合にも、取りきめがないということで断わったわけですか。
#42
○政府委員(新谷正夫君) ただいま申し上げたのは、先方の国から来た場合のようでございます。
#43
○委員長(小平芳平君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○委員長(小平芳平君) 御異議ないものと認めて、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#45
○委員長(小平芳平君) 次に、航空機の強取等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#46
○亀田得治君 この法律案は、早く時節柄成立させなければならぬ性格のものでありますが、この立法が考えられた直接の動機になったのが例の「よど」号事件ですが、警察のほうにお聞きいたしますが、「よど」号事件のその後の捜査の状況ですね、その点をこの際できるだけ詳細にひとつ報告を願います。
#47
○政府委員(川島広守君) 「よど」号事件のその後の捜査でございますが、現在まで乗客の方々百十八名及び乗務員七名の方々の御協力をいただきまして、機内における彼らの言動の調査等につきまして事情の聴取をいたしたわけでございます。そのようなかっこうで、なおまた「よど」号の機体、あるいはまた被疑者の自宅、あるいは関係所、全部で四十カ所の押収捜索を実施いたしまして、相当数の証拠物件等も押収いたしたわけでございます。さらに、機内に遺留指紋が百七十九個遺留されておりました。これらの遺留指紋と照合等をいたしまして、田宮以下被疑者九名の人定をほぼ終わったわけであります。ほぼと申しますのは、被疑者九名のうち八名につきましては完全に遺留指紋の一致を見ておりますけれども、一名の被疑者につきましては遺留指紋の照合ができませんので、そこで安部公博という被疑者につきましては、乗客の証言あるいはまた人相その他面割り等によりまして、ほぼ安部公博であるというふうに――最終的な断定に至っておりませんけれども、以上のような形で九名の被疑者のおおむね特定を終わったわけでありますが、さらに加えまして、その後、赤軍派の議長といわれております塩見孝也及び最高幹部の一人であります前田祐一、これらにつきまして、三月の十五日の日に、大菩薩峠の事件その他の事件で両名を検挙いたしました。その後取り調べの中でいろいろ出てまいりまして、この両名が今日の「よど」号のハイジャック事件に関して事前に謀議をしたことが明らかになりましたので、四月の二十二日に両名について新たに強盗その他の容疑で逮捕状を得まして再逮捕をして、今日に至っているわけでございます。したがって、その後両名の供述の内容等から、関連の被疑者等も数名出てまいりました。うち一名については一昨日逮捕いたしたわけでありますが、その他の自余のものにつきましてもただいま捜査を続行いたしておる、かような現況でございます。
 なおまた、「よど」号の機内に遺留されておりました小刀――三十三センチの長さでございますが、刀。それから鉄パイプ爆弾一個、それから試験管十一本、うち二本につきましては濃硫酸が入っておりました。これをセットすればおおむね過去のわれわれの実験例では十メーター内外については殺傷力を有するというふうなものも押収をいたしております。
 以上のようなことが捜査の一応のあらましでございます。
#48
○亀田得治君 その鉄パイプ爆弾というのは、実際に使用したら「よど」号が破壊されるというふうな、そういう中身のものですか。
#49
○政府委員(川島広守君) 昨年の秋に一連の鉄パイプ爆弾等の使用されました事案もございまして、その後私のほうで同様のものを使いまして屋外で実験をした結果では、先ほど申しましたように、おおむね十メーター内外のものにつきましてはかなりの破壊力を持っておりますから、かなりの負傷、あるいは場合によりましては死ぬということもあり得るかと思います。したがって、これが御案内のとおりに機内という密室の中でもしもかりに使用されたといたしますならば、相当な破壊力を持ったものである、かように考えておる次第でございます。
#50
○亀田得治君 どれくらいの大きさのものですか。
#51
○政府委員(川島広守君) 大体十二、三センチの長さでございます。よくございますガスその他水道の管に使いますようなもので、継ぎ手みたいなものでございます。
#52
○亀田得治君 そういう鉄パイプ爆弾は何個積んでいたんですか、いままでの調べの結果では。
#53
○政府委員(川島広守君) 機内で押収いたしましたのは一個でございますが、その他乗客の方々の証言、あるいはまた写真等を見ますと、鉄パイプ爆弾は十二本であろう、かように推定いたしております。
#54
○亀田得治君 それは、北朝鮮でそういうものは全部出されたんじゃないんですか、何か特に目につかないようなところに一個だけあったわけですか、どういう鑑定なんでしょうか。
#55
○政府委員(川島広守君) 鉄パイプ爆弾の押収しました一個は、座席のところに放置してあったわけでございます。乗客の方々のお話では、全員がそれぞれひもでつって腰のあたりに下げたり、あるいは首から下げたりしておったそうでございます。そのうちの一本がどういう理由か知りませんけれども座席のところに放置してあったのを押収したわけでございます。
#56
○亀田得治君 座席の下とか、そういうわかりにくいところなんですか。
#57
○政府委員(川島広守君) そうでございませんで、座席の上に置いてあったわけでございます。
#58
○亀田得治君 それじゃ、おりるときに一個だけ置いていったわけだな。向こうでも当然向こうの担当官が機内は全部調べているだろうと思いますがね。そういうような点もお帰りになった人から警察はお聞きになっていると思いますが、それはどうなんでしょうかね、一個だけちゃんと置いてあるというのは。
#59
○政府委員(川島広守君) 乗務員の方及び山村次官にもお話をお伺いしたわけでございますが、そのお話では、被疑者がそれぞれ持って機外に出ましたあとは、直ちに封緘をしたそうでございます。そうでございますから、押収しましたのは、いま申しましたこの鉄パイプ爆弾一本と試験管が十一本、そのうち濃硫酸が入っていますのが二本でございます。そのほかに白さやに入っております短刀が一本、これを機体から押収したわけでございます。それ以外の、いま申しました十二本の鉄パイプ爆弾でありますとか、あるいは日本刀につきましても五本というふうに乗客の方々のお話ではなっておりまするし、その後、先般北朝鮮から送られてまいりました写真によりましても、ほぼ五本というふうに判断されるわけでございます。したがって、そのようなものは彼らが機外に出ますときにそれぞれ携行して表に出た、そのまま直ちに封緘をしたというふうな模様でございますが、したがって、いまお話がございましたように、おそらくそこに置き忘れていったのだろうというふうに推定されるわけでございます。
#60
○亀田得治君 何かわざと忘れていったような感じもしますね。それはみな持っておりるのが普通でしょうな、まあその辺はよくわかりませんが。そこで塩見、前田二人のことについては先ほど御説明がありましたが、これは三月十五日ですか、逮捕しましたのは――そうですね。それで、事前に謀議をしたというのは、それはいつごろなんでしょうか。
#61
○政府委員(川島広守君) 塩見、前田の両名の取り調べにつきましては、両名が黙否権を使って、事柄の全貌を明白に供述をいたしているわけではございません。したがって、謀議の日時、場所等につきましてはつまびらかでございませんけれども、現在までの捜査では、おおむね三月の中ごろからこの種の計画が謀議されておったのではなかろうか、かように推定をいたしておったわけでございます。
#62
○亀田得治君 塩見、前田というのは、この二人は今回の事件について中心的な役割りだったんでしょうか、その準備過程においては。
#63
○政府委員(川島広守君) そのように判断をいたしております。
#64
○亀田得治君 そうすると、この計画を立てて相談を始めた、すぐほかのことで逮捕された、そういう関係になるわけですね。
#65
○政府委員(川島広守君) そのように考えております。
#66
○亀田得治君 中旬からこの計画が進められたのではないか――すぐこの両名が逮捕、あとはだれが中心で進めたのでしょう、いままでの捜査の結果から見て。
#67
○政府委員(川島広守君) 先ほども申しましたように、その辺の詳細については、まだ供述を得ておりませんので、断定的に申し上げることはできないのでございますが、おそらく、これも推定の域を出ませんけれども、現地に行っております田宮という今回の実行行為のキャップと思われますこの男、これはそもそも赤軍派の政治局員の中の一人でございますから、おそらくこの田宮なる者が今回の実行行為の指揮をとったものと判断をいたしております。
#68
○亀田得治君 この三月十五日に塩見、前田両君を逮捕しているわけですが、本件が発生した三月三十一日まで約二週間期間があるわけですが、その間において何かこの種の計画があるというふうなことは全然警察としてはわからなかったわけですか。
#69
○政府委員(川島広守君) 先ほどもお答え申しましたように、塩見及び前田が供述を部分的ながら始めましたのは四月に入りましてから、しかも半ば過ぎての時期でございまして、四月二十二日に再逮捕をいたしたわけでございます。三月三十一日までの間は完全黙否でございまして、これら両名の被疑者からこの種の事案を何らかの形にせよ推断するような材料は全く出ませんでございました。またその他、いわゆる被疑者九名の者につきましては、うち五名が指名手配中の被疑者でございまして、他の四名はそれぞれ昨年の各種違法事案の被疑者で保釈になっておる者でございまして、これら幹部につきましては、指名手配を受けている者につきましては、懸命に捜査を続行いたしておりました、その過程でこの両名がつかまったわけでございますが、自後の、要するに九名中の五名につきましての指名手配につきましても、実は懸命に捜査を行なっておったわけでございますけれども、何らこの事件に直接結びつく、あるいは間接的でありましょうとも、これを事前に察知をする、そのようなことは全くつかみ得なかったのでございます。
#70
○亀田得治君 法務省側から出た資料を拝見しますと、乗っ取り事件というのは世界的にずいぶんたくさんありますね。ことに年を追って数がふえて、昨年などは非常なふえ方ですね。そういう状態であるわけですが、警察としてはそのような事件が日本でも起こるかもしれぬなあといったようなことは考えていたんですか、いや全然そういうことは予想していなかったんですか、どっちなんですか。
#71
○政府委員(川島広守君) いま先生のお話もございましたように、過去近年二、三年の間に急激にいわゆるこういうハイジャック事件というのが世界的にも多発してまいりまして、一般的にはこういうことが将来において日本においても起こり得るであろうということは考えておったわけでございます。ただ、昨年の十一月十六、十七のいわゆる佐藤総理が訪米されますときに、赤軍派ではございませんでしたけれども、他の過激派の集団の中で、飛行機を羽田空港に強行着陸をするとか、あるいはまた早朝あるいは深夜の飛行機便を使って羽田空港を混乱におちいらして佐藤総理の訪米を阻止するとか、いろいろな具体的にそういうふうな企図が情報として入りましたので、当時日本航空あるいはその他の航空会社あるいは運輸省の航空局その他といろいろ具体的に相談をしまして、御記憶のとおり、羽田空港を事実上一日だけ閉鎖したというような事案も一時的にはございました。そういうこともございましたので、一般的には考えておりましたけれども、具体的に今回の赤軍あるいはその他の派閥によるこういう事案が起こる可能性があるということを考えて種々対策を練ったということは、実はやっておらなかったわけでございます。
#72
○亀田得治君 一般的に考えておれば、たとえば若干の空港警備上の手は打っておくべきなんですね。そこまではしなかったのですか、そういうことですか。
#73
○政府委員(川島広守君) お話のとおりでございます。羽田空港について申しますと、大体七時から八時の時間帯に発着陸する飛行機は十数便でございまして、過去におきましても早朝の七時から八時の時間帯にほとんど問題が起こっておらない、そういうようなこともございまして、当時あの時間帯には正私服全部合わして二十一名の警察官が空港の一般的な意味での警備に当たっておったのでございますけれども、全然この種の事案を予想しておらなかった、お話のとおりでございまして、結果的にこのような事案が起こってしまったことは、まことに遺憾でございますが、いま先生からお話がございましたように、そのような心がまえと申しましょうか、準備がなかったことは、御指摘のとおりでございます。
#74
○亀田得治君 現在はどういうふうにやっておるわけですか。
#75
○政府委員(川島広守君) この事案が起こりましてから、四月の一日付で全国の都道府県警察に対しまして本件事案の概要を知らせると同時に、今後警察が特に警戒、警備の上でとるべき主要の手段について通達を流した次第でございまして、現在国内には五十八カ所の空港がございまして、それに対して昼間は総計三百六十名の正私服の警察官を充てて警戒に当たっておる次第でございます。なお、四月六日に警察庁内にハイジャック対策委員会を設けまして、事前の予防措置、起こることを希望いたしませんが、万が一起こりました場合の措置等について目下検討を加えておる、かような次第でございます。
#76
○亀田得治君 まあ、今度の法案は、とにかくハイジャックについて現在の刑法よりも非常に重く処罰するという中身のものですが、何といってもやはりこういう法律を適用するまでもなく事前に押える、ここが一番大事なところですから、それでいまもお聞きしているわけですが、なかなか、厳重にやり過ぎると人権侵害になる場合もあるだろうし、ゆるくやっておると抜けていくという心配があるだろうし、その辺のところをどういうふうに研究して実際おやりになっているのか。たとえば、探知器ということも新聞等で拝見しているわけですが、こういうものはもうすでにちゃんと各飛行場に配備されているのですか、どうなんですか。羽田ぐらいはもちろん配備しているだろうと思いますが。
#77
○政府委員(川島広守君) ただいまお話のございましたように、実はこの種の事案を防止いたしますためには、何と申しましてもそのような犯行の企図を事前に察知をするということが最良の防止策でございまして、いわゆる水ぎわと申しましょうか、空港の現場でこの種の容疑者を発見をするということは、お話もございましたように、人権上の問題もございまして、非常にむずかしゅうございます。そこで、警察側のとっておる措置でございますけれども、あくまでも第一次的には、航空関係の会社そのものが御承知のとおりに、この運送約款というものがございまして、運送約款の中には、いわゆる危険物、そういうものを機体に持って入ってはいけない、そういうことをはっきり運送約款に記されておるわけでございます。ここで他の会社のことを云々するのはいささかどうかと思いますけれども、事実上も、御案内のとおりに、いま羽田空港に例をとりますれば、大体一日四百便くらいの離着陸があるわけでございまして、乗降客が約二万八千名といわれます。文字どおりエアバスということがいわれるような時代でございまして、なかなか警察側としまして事前にこのような容疑者を発見をするということが非常に至難でございます。そこで、いま申しましたように、関係会社が、運送約款に基づきますれば、そのようなものを持っている者については一応乗ることを拒否することができることになっております。したがって、実質上は、この運送約款の規定どおりに実施していただきますれば、かなりの防止というものができるのではなかろうか。そういう意味で、関係の会社では、あの事件が起こりました後、ガードマン等を採用になっておられるようでございますし、それぞれのいま申しましたような会社の側でも、いろんな防止対策をずいぶんとっておられます。それと、わが方といたしましては、協力をいたしまして、今日まで至っておるわけでございます。そこで、いまお話のございました金属の探知器等は、羽田を含めまして、その他主要な空港にはかねて持っておりますので、これを人権上の配慮を加えながら使わしていただいておるのが現状でございます。ちなみに、あの事件が起こりました後、羽田では、検挙事案が五件、手荷物を受託荷物に変更するというような事案等を含めまして二十四件、締めまして二十九件の事案が実は起こっております。大阪空港におきましても、三件程度同様な事件が起こっております。そういう意味合いでは、部分的には探知その他によりますいろんな警戒の実績もあがっておるかと思いますけれども、いまお話ございました、何と申しましてもこれはたいへん乗客その他の方々の自発的な協力をまってしかできないことでございますので、今後とも探知の問題につきましては、航空関係会社でもそれを推進するためのいろいろな器材の整備にもいま努力されておるようでございますけれども、今後とも警察としましては、あくまでも人権上の配慮を第一に考えながら、いま申しましたようなことにおいて御協力申し上げたい、かように考えておる次第でございます。
#78
○亀田得治君 その羽田空港で二十九件というのは、その中身をもうちょっと具体的に説明願いたいと思います。
#79
○政府委員(川島広守君) 検挙いたしましたのは、あいくちを発見いたしましたのが三件、これは銃刀法違反で現行犯逮捕しまして書類送致をいたしております。それから散弾銃を持っておりましたのが一件、それから角棒、それから警杖等のものを持っておりましたのが一件、これは軽犯罪法で書類送検をしたわけでございます。その他取り扱いました二十四件の中身は、わきざし、ナイフ、拳銃――この拳銃は外国人のボデーガードが持っておりましたものでございまして、それから模擬刀――おもちゃの刀でございますが、模擬刀、実際に使えば殺傷力がありますけれども、それから玩具の拳銃、それからほうちょう、その他精神病者の保護でありますとか、迷子の保護でありますとか、こういうものが二十四件、こんな内容であります。
#80
○亀田得治君 それは探知器でわかったのですか。
#81
○政府委員(川島広守君) 探知器によって発見したものもございまするし、挙動不審その他によってそういうものを発見したものもあります。
#82
○亀田得治君 正当に持ち歩きできるものも探知器にはやはり反応してくるのでしょうな、同じような金属であれば。
#83
○政府委員(川島広守君) さようでございます。そこに問題が実はあるわけでございます。
#84
○亀田得治君 それで、反応があったから荷物を開いてもらったがそれは差しつかえのないものであったというふうなものはどれくらい出ているのですか。
#85
○政府委員(川島広守君) ちょっとその点についてはまだ調査いたしておりません。
#86
○亀田得治君 じゃ、両方これは大事なことで、なかなか百発百中というわけにいかぬ問題だろうし、二十九件あげるために何でもない人にどの程度迷惑がかかっておるのか、これはあとでいいからちょっと知らしてくれませんか。実情だけ知っておきたいと思うのです。計画の事前探知なり、あるいはその現場の直前における探知なり、なかなかこれは苦労の要るところだと思いますが、しかしこれは事件としては経験も浅いことですから、十分やはり今後科学的に捜査技術を研究して、人権侵害を起こさぬで、しかも的確に悪いものはきちんと把握する、こういう方向でひとつ努力を要望しておきます。
#87
○委員長(小平芳平君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#88
○委員長(小平芳平君) 速記を起こして。
#89
○松澤兼人君 いろいろお話を聞いてみて、それからまた各委員会などで速記をとっておるので見まして、いろいろ、赤軍派といいますか、あるいは過激派集団といいますか、人数の点について、あるいは十四人といい、十五人といい、ただいまの話では九人ということになっております。正確な数は九人ということでいいんですか。
#90
○政府委員(川島広守君) 九名でございます。
#91
○松澤兼人君 そうしますと、いままで山村政務次官などが十四人あるいは十五人と言っておるのは間違いないんですね。
#92
○政府委員(川島広守君) 山村次官が十四名あるいは十五名とおっしゃったことは、私存じ上げておりませんけれども、被疑者は九名でございます。間違いございません。
#93
○松澤兼人君 これはもう山村政務次官が衆議院の委員会で十五人ということをはっきり言っているんです。中に乗った人が十五人というんだけれども、警察のほうでは、九人ということで断じて間違いないと、こうおっしゃるわけですね。
#94
○政府委員(川島広守君) 機長、副操縦士、その他機関士の方々の証言で、九名であることははっきりいたしております。
#95
○松澤兼人君 それでは、もう九人ということ以外には疑わしい人もおらないし、警察としては九人だけを対象にしているというふうに考えていいんですね。
#96
○政府委員(川島広守君) 九名だけでございまして、山村次官のお話も私直接お伺いいたしましたけれども、九名でございます。
#97
○松澤兼人君 確かに、山村政務次官が委員会の席上話をしたのは、十五人という人数で出ていたように思うんです。最終的には知りませんですよ。ですから、警察としては九名であるということで、今後も、もう九名以上には飛行幾に乗っていたいわゆる被疑者というものはいないと、こういうふうに断定ができるわけですね。
#98
○政府委員(川島広守君) 金浦から飛び立ちましたときに、山村次官を含めて四名、被疑者が九名、これはもうきわめて明瞭になっておりますから、間違いございません。
#99
○松澤兼人君 それでは九人ということで……。
 いま亀田委員からお話がありまして、九名のうち一名だけは指紋が出てこないということであったというんですが、そうすると、もう九人全部、名前なりあるいはその経歴というものは警察のほうで的確に把握しているということと考えられますが、そうなんですか。
#100
○政府委員(川島広守君) そのとおりでございます。
#101
○松澤兼人君 そこで、最初福岡に到着したときに、福岡の県警本部長なり、あるいは板付の警察署長なり、外からいろいろと機内と連絡をとって説得につとめたということでありますが、それは警察庁そのものの方針として、地元の板付警察署長ですか――に説得に当たらせたのか、あるいは、地元の板付警察署長が自発的に、おれがひとつ説得してみようということになったのか、その辺のところはどうなんですか。
#102
○政府委員(川島広守君) 今回の事件で、いまお尋ねございました板付における説得ということは、実はやっておりません。犯人らは警察官を絶対に機体の近くに近づけない。警察官が近づけば爆破するというようなことを言っておったようでございまして、警察官が直接犯人らに向かって説得をしたという事実はございません。
#103
○松澤兼人君 これもやっぱり速記などを見ますと、警察本部長が飛行場に待機していて、そうして実際は板付の警察署長が内部と連絡をとって説得をしたということが書いてありますけれども、じゃあ、そういう事実はなかった。
#104
○政府委員(川島広守君) そういう事実はございません。
#105
○松澤兼人君 そうしますと、板付飛行場において説得したという事実は、警察以外にだれかがやったのですか、あるいは運輸省とかその他の政府関係の機関がやったという事実があるのですか。
#106
○政府委員(川島広守君) 御案内のとおりに、百二十名の乗客のうち、老人、子供、御婦人、あるいは病人の方、二十三名が板付で飛行機からおりたわけでございます。そのような具体的な説得については、日航の所長さんがおやりになったというふうに聞いております。
#107
○松澤兼人君 そうすると、警察の説得なり、あるいは老人、子供の機外へおろすということですが、そういうことに関係がないし、また運輸省あるいは航空局としても、あるいは飛行場としても関係がない、日航の係員あるいは職員が、病人やあるいは老人、子供をおろしなさいということだけ説得をしたということになるわけですか。
#108
○政府委員(川島広守君) 先ほどのお答え、ちょっとことばが足りなかったのでございますが、今回の板付においてとりました措置は、県警本部長と、それから日本航空の現地の所長さん、それから運輸省の保安事務所長さん、三者で終始緊密なる打ち合わせ、協議を遂げました上で、まず何よりも乗客の安全なる救出をはかることが第一義である、そういうような立場で、飛行機の発進を阻止して、そうしていま申しましたような老人、子供、その他の方々をまずおりていただいて、長期にわたって説得を遂げるというようなことで、三者の意見は一致を見ておったわけであります。そのような三者の意見の一致に基づいて、いま申しましたような措置がとられたものでございます。
#109
○松澤兼人君 そういうお話を聞けば、警察としても、あるいは運輸省航空局、あるいは現場の飛行場長ですか、あるいは管理官、そういう者が話し合いをしながら、第一線に立つ人は日航の職員であるということがよくわかるわけです。そういうふうに解釈していいですね。
#110
○政府委員(川島広守君) 先ほど申しましたように、常時三者で協議を遂げました上で、私のほうといたしましては、直接機内の犯人らに呼びかける手段、方法を持ち合わしておりません。これはあくまでも日本航空の持っておりますチャンネルで、その責任者である所長さんがおやりになったと、そういうことでございます。
#111
○松澤兼人君 そこで、赤軍派といいますか、いろいろこれも法務大臣なりあるいは国家公安委員長なりがお話しになっておりますが、大体赤軍派に属する人たちは二百名あるいは三百名というふうに言われておるようでありますが、警察として、赤軍派に属する集団というものは何人ぐらいとお考えになっていますか。
#112
○政府委員(川島広守君) 約四百名前後と把握しております。
#113
○松澤兼人君 それで、大菩薩峠の合宿訓練に集まった人は何人ぐらいですか。
#114
○政府委員(川島広守君) 五十三名全員を現行犯で逮捕いたしたわけでございます。したがって、五十三名でございます。
#115
○松澤兼人君 それで、ごく概略でいいのですが、いわゆる赤軍派という名前を名乗って、各地でこれまでどのような事犯があったのか、お調べついておりますか。
#116
○政府委員(川島広守君) いわゆる赤軍派と申しますこの派閥は、元来いわゆる共産主義者同盟――ブンドと申しますが、この派閥の中の関西派のグループが中心になりまして、昨年の春ごろから動き出しまして、正式には昨年の九月の四日、都内の葛飾の公会堂で赤軍派の結成大会を持って、そこで正式に赤軍派という派閥が誕生したわけでございます。その誕生いたします前後に、彼らが機関紙その他で公言し、現にまた事犯を起こしましたのは、昨年の九月にいわゆる彼らの言う大阪戦争と称しまして、阿倍野署管内に火炎びんその他を投げつけまして、警察官に負傷を負わせるという事犯が大阪地区でございました。それから、東京にのぼってまいりまして、本富士の事件、それからいまお話ございました大菩薩峠の事件、その他いろいろございまして、四十七件の現行犯を現在まで敢行いたしております。それで、現在まで逮捕しました延べ人員が三百三名、実質人員が二百三十二名というものを逮捕して今日に至っておる次第でございます。
#117
○松澤兼人君 延べで三百三名、現在まだ逮捕取り調べ中の人は何人ですか。
#118
○政府委員(川島広守君) 現在、勾留、取り調べを受けております者が五十一名おります。
#119
○松澤兼人君 そうしますと、これは延べですけれども、三百三名なり、あるいは実質人員で言えば二百何人ですね。それから五十一名が拘禁中あるいは拘束中である。そのほかの人は普通の生活をしているわけですね。
#120
○政府委員(川島広守君) この赤軍派の集団は、昨年の十一月の五日のいわゆる大菩薩峠事件でおおむね幹部は根こそぎ検挙されまして、事実上壊滅状態に一時はなったのでございますけれども、その後、事件のあと十二月から本年の一月にかけまして、全国に、きわめて精力的なと申しましょうか、オルグ活動を行ないまして、そして勢力の回復をはかりました。本年の一月の十六日に都内の全電通会館で武装決起集会なるものを開いたのでございますが、そのときにはおおむね約二百名程度の者がこれに参集してまいりました。大体四百名と先ほど申しましたが、そのうちの実際に行動的でございましたのは約二百名というふうに判断いたしております。大体昨年の九月四日の発足当時でおおむね二百名でございますから、本年の一カ月、二カ月間の間に、ほぼ発足当時の勢力に回復をした。しかも彼らは、現在いわゆる六月の七〇年闘争のピークといわれておりますけれども、これらのピーク時には彼ら自身としては闘争は組まない、そしてこの秋に武装蜂起を決行するというふうなことを機関紙等でも公言いたしておるわけでございまして、現在もそういうような意味合いで、さまざまな集会デモにもそれぞれ数十人ずつ参加をいたしておる、さらにまたいわゆる組織の拡大に狂奔しておるというのが赤軍派の現状でございまして、過去の先ほど申しましたように引き起こしております集団破壊事犯というものはきわめて悪質なものでございますので、警察側といたしましては、彼らの、特に指導幹部等の行動確認につとめておるのが現状でございます。
#121
○松澤兼人君 そうすると、発足当時が二百名、それから大菩薩峠の事件以来警察としてはほとんど壊滅状態になったと考えていたところ、最近また二百名、発足当時の勢力に盛り返したということのようですけれども、中の移動というものは相当顕著に流動しているわけですか。
#122
○政府委員(川島広守君) 先ほども申しましたように、幹部の、いわゆる主要幹部は別でございますけれども、高校生その他の者もかなり入っておりまして、そこに若干の移動があることは、これはもう当然でございますけれども、最近では高校生なんかにつきましても、東京都内でも先般のように二月の闘争には約二十名程度、高校生だけではございませんが、参加をいたしております。これらの赤軍派と申しますのは、何と申しましょうか、ほかの派閥からも、いまはやりのことばで申しますと、かっこがいいと申しましょうか、かなり魅力的な存在のように彼ら過激派の学生どもには映っておるようでございます。いずれにしましても、内部に勢力の移動がありますことは、お尋ねのとおりでございます。
#123
○松澤兼人君 全体として、いわゆる過激派集団、確かに、反代々木派とか、あるいは反共産党とか、そういう過激派集団の中における指導権と申しますか、ヘゲモニー、そういう指導力あるいは指導権という立場から考えてみたら、相当影響力がある集団なんですか。あるいは、彼らが非常にかっこがいいかもしれないけれども、しかし全体の過激派集団の中においてはそれほど影響力が大きくない、あるいは指導権が強くないということなのか、その辺の評価はどういう……。
#124
○政府委員(川島広守君) 赤軍派と申しますのは、いまお尋ねのこの過激派集団全体の中におきましては、ほとんど影響力を持っておりません。いわゆる最近のことばで申せば一匹オオカミとでも申しましょうか、全然これらの一般の過激集団とは離れたこれは存在でございます。
#125
○松澤兼人君 そこで、まあ影響力のあまりない、そうして、いわゆる統一的な革命行動といいますか、革命運動ということからは離れておるということであれば、過激派集団全体に対する影響力というものはそう大きいものではないと考えて
 いいのですか。
#126
○政府委員(川島広守君) 全体に対します影響力はきわめて弱いと思います。ただ、先ほどもお答え申し上げましたように、これら赤軍派の現在の当面の目標といたしますのは、いわゆるこの秋に向かって武装蜂起をする、そのための勢力の拡大、そのための準備行動、こういうところに力点を置いておりますので、先ほども触れましたように、全国各地を飛び歩きまして高校生あるいは学生等に対して強力に働きかけをいたしております。現在既存の過激派集団、このものとは、先ほど申し上げましたように、繰り返しになりますが、離れた存在でございます。赤軍派自体がいわゆる勢力を拡大していく、そういうような意味合いにおいては非常に危険な存在でございます。
#127
○松澤兼人君 この秋の闘争ということを呼号しておるように聞いたわけですが、それに対する、まあ全体の過激派集団といいますか、そういう人たちとの連絡というものはないと考えて、あるいはできないと考えてよろしいですか。
#128
○政府委員(川島広守君) 断定的に全くないのだというわけではございませんで、先ほど触れましたように、もともと共産主義者同盟――ブンドから離れてきた組織でございますから、もともと根は共産党にあるわけでございます。そういう意味で、共産党の中で四つの派の派閥に分かれておりますけれども、そういう意味では幹部同士が同じ根から生まれてきたわけでございますから、そういう意味ではつながりがあるわけでございます。ただ、お尋ねがございましたように、いわゆる過激派集団全体に対する影響力からとらえますと、赤軍派というものはいわばそこから出てきた一匹オオカミ的な存在でございますので、その意味では影響力が弱い、かように理解をしております。
#129
○松澤兼人君 やはり心配になることは、その赤軍派というものが過激派集団の中で非常に強いヘゲモニーを持つようになること、あるいはまた特定の運動あるいは行動に対して他の集団の人たちが共同戦線を張るとかということが心配になるわけでして、その心配はあまりないということであれば、もう一つの問題は、やはり運動、戦術という面で赤軍派がああいうはでなことをやれば、負けてはいられないからといって、それに近い集団あるいは派閥が競争的に非常に過激な運動あるいは戦術行動をとるということも考えられますが、そういう点はどのように評価されておりますか。
#130
○政府委員(川島広守君) 過激派集団の中で赤軍派がいわば飛び抜けて過激であるということは一応言い得るわけでございますけれども、他の派閥の中でも、非常に過激な考え方を持ち、または過去に現に過激な行動をいたした実績を持っております派閥も相当ほかにもございます。したがって、赤軍派だけが危険というわけではございませんで、過激派集団全体の中でそのような過激な行動の実績を持っておるわけでございますから、そういう意味では、われわれの立場から申すと、赤軍派だけではありませんで、それ以外にも非常に治安上警戒しなければならないようなものが他にもございます。ただ、お尋ねにございましたように、赤軍派がこのようなことをいたしましたので、それに競争心にかられてというお話でございますが、その懸念は多分にあるものと、さように考えております。
#131
○松澤兼人君 警察としては、こういう赤軍派の行動については、絶えず、常時監視といいますか、注意をしておられるわけですか。
#132
○政府委員(川島広守君) 現在令状が発付されておりましてまだ逮捕できません者が数十名赤軍派につきましてもおりますが、したがって、いま懸命にこの捜査をいたしておる次第でございますが、その他令状が出ておりません者の中にも、いわゆる幹部級の者もまだおりますので、こういうふうな人たちの行動の確認につきましては十分に対処してまいりたい、かように考えております。
#133
○松澤兼人君 警察のほうとしても、やはりこういうハイジャックに対する警察側としての規制、対策ということを考えておられるようですが、まあここで審議しておりますのは法務省関係ということで、条文を見てみましても、これでははたして取り締まりになるのかということを非常に疑問に思うわけなんですけれども、先ほども亀田委員からお話がありました、乗客の持ちものを提出させるとかあるいは検査するとかいう方法、いいことには違いありませんけれども、文明国へ行けばあまり、そういうことは慎重に、上から洋服をさわってやるというようなことをやらないように思う。非常に乗っ取りということを重要に考えれば、多少そういう人権無視の疑いのあるような取り締まりをしてもいいという、そういう議論もできてくるし、また一方、人権を尊重しろということを言えば、そういうことはすべきでないと、非常にむずかしい問題だと思うんですけれども、警察当局としては、こういう法律ができたとして、はたしてこれによってハイジャックを防止できるかどうかという、そういう見込みを持っていらっしゃるかどうですか。これではどうも私は阻止したりすることはできないように思うんです。警察当局としてどんなお考えですか。
#134
○政府委員(川島広守君) 今回の御審議願っておりますこの法案につきましては、やはりあくまでも抑止力としては相当な効果があるものと判断をいたしておりますが、この法律が成立することによりまして、直ちにすべてのハイジャックの事案を防止できるというふうにはもちろん考えておりません。
#135
○松澤兼人君 同じことを法務省のほうにお尋ねいたしますけれども、いままでなかった乗っ取り事件に対する特別法ということで、刑期を重くしたり、いろいろと刑法にないような犯罪の規定をしているようでありますけれども、どうもこれだけでハイジャックという、乗っ取りというものを阻止あるいは防止することは非常にむずかしいのじゃないかと、やればこうなるぞという一つのおどかしにはなるかもわかりませんけれども、一方では、そういう危険をおかしてでも乗っ取って、あるいは国外へ脱出するとか、政治的な亡命をしようと考えている人にとっては、そういう新しい処罰ということでは少しもきき目がないんじゃないかと思いますが、この点はどうですか。
#136
○政府委員(辻辰三郎君) いわゆるハイジャックでございますが、現在の刑罰法規におきましては、この刑罰法規にぴったりと適用できる罰則規定がございません。で、まずその間隙を埋めまして、いわゆるハイジャックを真正面から処罰できる罰条をつくるというのが、この法律案の第一の目的でございます。この第一条におきましては、御案内のように、その法定刑の最高を無期懲役というふうに規定いたしておるわけでございますが、現行法の場合にはいろいろの関係の罰則を適用することになるわけでございますが、その中で最高刑が無期になるというものはないわけでございます。これはもちろん、爆発物を爆発さすとか、そういう別途の行為があれば別でございますが、そうでない限りは、最高はどういたしましても有期懲役どまりということになるわけでございまして、その点から、今回の法案がハイジャックそのものにつきまして最高刑を無期懲役にしたということは、非常に一般的な抑止力という点においては意味が深いものがあろうかと存ずるのでございます。
 それから、第二点といたしまして、この法案の第五条に、今回の法案に盛られております各犯罪は、いわゆる世界主義という立場をとっておりまして、何人がどこで犯しましても日本国としてはこの罰則を適用する、日本国の刑事裁判権が働くところにその犯人が参りました場合には処罰するということを宣言いたしておるわけでございます。で、申すまでもなく、このハイジャックの防止というものは、国際協力がたいへん重要な問題になっておるわけでございまして、現にことしの秋に予定されております国際連合の民間航空機構、いわゆるICAOの法律委員会におきましては、このハイジャック防止条約というものの草案をすでにつくっておりまして、この秋にこれの条約会議を催そうという予定になっております。そういたしますと、このハイジャックにつきましては、その処罰につきまして、各国がこれを処罰する義務を負うという内容の条約になるわけでございまして、この法案の第五条もそれとまた相まつような規定になっておりまして、各国が、関係国がこのハイジャックをお互いに処罰していこうということの実現を期しておるわけでございまして、この面におきまして、またこの法律案はハイジャックの防止に一つの大きな力を持っておるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
#137
○松澤兼人君 現実の問題として、赤軍派の連中が北朝鮮へ行ったという場合には、もう処罰の方法はないということですか。
#138
○政府委員(辻辰三郎君) この今日のハイジャックにつきまして、これは理屈の問題で、今回の法案は法律になりましても遡及効はございませんから、今回の日航機事件については適用はないわけでございますが、理屈の問題といたしまして、将来のかりにハイジャックが起きました場合、その犯人が国外に出ましたという場合には、その犯人が日本国に帰ってまいりましたときには、この罰条が適用されるということになるわけでございます。
#139
○松澤兼人君 最近の新聞を見ますと、スペイン航空、イベリア航空ですか、爆弾をしかけたというようなことが数件あったらしい。これはいわゆる飛行機の乗っ取りとは関係がないのですか。
#140
○政府委員(辻辰三郎君) いわゆるハイジャックといわれております行為は、この法案の第一条がどんぴしゃり規定している行為であろうと思うのでございます。これはまず、航行中の飛行機、これを強取するとか、あるいはほしいままに運航を支配するという点に、犯罪の構成要件の骨子があるわけでございますので、単にとまっている飛行機に爆弾をしかけておいたということだけでは、いわゆるハイジャックに当たらない場合が多いんじゃないかと思います。
#141
○松澤兼人君 飛行機の中でそれでは時限爆弾を据えつけて、それで飛行機を破壊するという、そういうことも、人命に関すること、あるいは航行の安全ということからいえば、この法律の適用を受けるかもしれないが、そうでない場合はこの法律の適用を受けないということになりますか。
#142
○政府委員(辻辰三郎君) このハイジャックという行為でございますが、これはいわゆる航空機の乗っ取りでございまして、最も典型的なものは、みずからが乗ってそれの運航を支配して自分はどこかに行くということで、自分自身はとにかく安全にどこかに行こうというところにこのハイジャックの骨子があるわけでございます。で、要件といたしましては、この第一条にございますように、「暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、」航行中の航空機を強取したり、あるいはほしいままにその運航を支配する、これがいわゆるハイジャック行為と考えるわけでございまして、先ほど申し上げました国際条約案でございますとか、わずかながら外国にもハイジャック処罰の罰条がございますが、そういうものはいずれもこの第一条と同じような要件を規定いたしておるわけでございまして、単に爆弾をしかけて自分も死んでしまうというようなものは乗っ取りという行為には当たらない。これは別途、わが国の罰則でいきますならば、爆発物の取り締まり罰則であるとか、殺人であるとか、いろいろな別の適用条文があるわけでございます。
#143
○松澤兼人君 そうしますと、国際条約締約国はこの法律の趣旨に従って責任を持つと、しかしその条約に参加しない国は適用されないわけですから、かりに北朝鮮に行ったというような場合にはいかんともしようがないということですか。
#144
○政府委員(辻辰三郎君) このハイジャック防止条約は、先ほども申しましたように、まだ結ばれていないわけでございまして、ことしの秋に一つの条約会議が行なわれるという予定でございます。したがいまして、この条約の締約国云々という問題はもちろん起きていないわけでございます。かりにこの法案が法律になりました後に、施行後におきましていわゆるハイジャックの犯人が外国に出て行ったという場合には、先ほど来申し上げておりますように、それらが日本の刑事裁判権を行ない得る地域に来ました場合には、現実にこの条文で処罰されることはもちろんでございます。そのほかに、どこに参るか知りませんが、着陸いたしました外国で外国の当該処罰法規が適用されるという場合は、当然にまた外国の犯罪として処罰されることは、御承知のとおりでございます。
#145
○松澤兼人君 それですから、日本から飛行機を持ってアメリカに行ったと、アメリカにこれと同じような法律がありとすれば、当然そういうことになる。また、将来ハイジャックを規制するような国際条約ができて、それに加盟した国に飛行機が着陸したという場合には適用があるけれども、その法律がない、あるいは将来条約ができても、それに参加をしない国に着いたときにはいかんともしようがないと、こういうことですか。
#146
○政府委員(辻辰三郎君) 将来条約ができました場合に、その条約には加盟していない、それからまた、その国として、国内法としてハイジャックの処罰法規を持たないという国に着陸したという場合には、その国におきましてはハイジャックとしては処罰されないわけでございますが、やはりその場合におきましても、その国の何らかの刑罰法規、別の刑罰法規に触れる行為があるとすれば、それで処罰されることはもちろんでございます。
#147
○松澤兼人君 それは出入国管理というのはどこの国にでもあるでしょうから、それで、不法に入国したということになれば、それ自身やはり処罰されるでしょうね。それで、その犯人がかりに北朝鮮から日本に送り返されるというようなこと――送り返すということもないかもわかりませんが、そういう場合には、日本の国内法が生きて、そうしてその送り返された人に対して処罰を加えるということになるわけですか。
#148
○政府委員(辻辰三郎君) さようでございます。
#149
○松澤兼人君 どうも、あまりめったにそういうことはあってはいいことではないと思いますが、法文そのものがはたして抑止力あるいは防止力としての効力があるかどうかということを非常に疑わしいように思うのですが、しかし、ないよりもあったほうがいいという意味では十分審議に値する法案だと思います。
 で、私は以上お聞きいたしまして質疑を終わります。
#150
○山田徹一君 この罰則法案が答申されるまでの期間ですね、非常なスピードでやられたわけですけれども、その間に反対意見等はなかったのですか。あったらどういうことか、伺いたい。
#151
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御質問は、法制審議会のことを御指摘のことかと存じますが、法制審議会は、今回のこの法案が成立いたします過程におきまして、法制審議会の総会が二回と、刑事法部会が一回と、特にこの刑事法部会は終日そういう詳細な点にわたりましていろいろと議論が行なわれたわけでございます。で、その三回にわたります会議におきまして、非常にこまかい法律的な面におきまして、字句はこういう字句がよかろうとかというような一つの御意見は出たわけでございますが、この一条から五条までのこの趣旨につきましては御反対はなかったわけでございます。
#152
○山田徹一君 この「よど」号の事件については、百数十名の人質がとられたわけでありますけれども、十日の日に何か関西のほうで人質事件が起きている。ここ数年の間、非常に人質に関する問題が多いのですけれども、この一、十年どのくらいの件数がございますか。
#153
○政府委員(辻辰三郎君) 人質という御指摘でございますけれども、これもいろいろな形がございまして、主として刑法の場合には、略取及び誘拐の罪といいますか、そちらの罰条に当たる行為が多いと思うのでございます。あるいは不法監禁とか、そういうことになると思いますが、いま突然の御質問で、一般の略取・誘拐関係の犯罪とか、あるいは不法監禁罪の統計資料をただいま持っておりませんので、もし必要でございましたら、後ほどお答えさしていただきたいと思います。
#154
○山田徹一君 そこで法務大臣にお尋ねするのですが、このような事件が続発する根本的な原因ですね、人命軽視に当たるこのような事件、この根本的な問題が、これは一に事件を起こした当事者だけの責任に帰するわけにはいかないと思うのです。政府、政治家、あるいは行政面に携わる指導部門の人たちも、社会的な私は責任があると思うわけなんです。そういう点について、何とかここでさらに深く検討して、ただ法だけで縛るという意味でなしに、考えなければならない重大問題だと思う。こういう点について法務大臣はどうお考えでしょうか。
#155
○国務大臣(小林武治君) これはもうお話のように、遠い原因と近い原因とあるということは当然でありまして、やはり主として青少年の健全育成の問題、あるいは社会教育の問題、あるいはおとなの反省の問題、いろいろのことがあると思いますが、全体としてやはりみんながひとつ反省をするということと同時に、やはり予防的な措置、これは直接の問題でありますが、十分気をつけていかなければならぬというふうに思います。大きく申せば、これはもう社会教育の問題にも十分な配慮をすべきである、かように思います。
#156
○山田徹一君 そこで、この法案の一条を見ますと、「無期又は七年以上の懲役に処する」と、このようになっております。最低が七年ということなんですが、もしこの法律がなかった場合、最高どの程度までの刑が課せられることになりますか、「よど」号について。
#157
○政府委員(辻辰三郎君) 「よど」号事件につきましては、現行の刑法が適用されるわけでございますが、まず考えられますのは刑法の強盗罪、それから不法監禁罪、それから国外移送目的の略取罪、かようなものが刑法犯として考えられると思うわけでございます。そのほかに特別法犯といたしましては、出入国管理令違反であるとか、あるいは銃砲刀剣類所持等取締法違反、あるいは爆発物取締罰則違反、かような刑罰法規が適用されると思うわけでございますが、まだあの事案については的確な事実関係が明らかでございませんけれども、いままで私どもが承知いたしております限りにおきましては、全部罰条が有期懲役刑どまりでございますので、これらのたくさんの犯罪が成立いたしますが、それはそれぞれみな有期懲役どまりでございますから、法律上におきましては、最高併合罪の仮定をいたしまして懲役二十年というのがこの法定刑の処断できる場合の最高の刑であると、かように考えております。
#158
○山田徹一君 そうしますと、諸外国の例では、刑の期間といいますか、どのようになっておりますか。
#159
○政府委員(辻辰三郎君) お手元にお配りいたしておりますこの法案の資料の一つに「外国立法例の概要」がございます。現在ハイジャック関係を真正面から規定をしておりますのは、アルゼンチンとオーストラリア、メキシコ、アメリカという四カ国でございます。最もこのうちの代表的なアメリカの例をとって見ますと、アメリカの場合は「死刑又は二〇年以上の拘禁刑に処する。」、かような規定になっております。
#160
○山田徹一君 資料の中のアルゼンチンの法律では死刑がないように思うのですね。そこで二条には「死刑又は無期懲役」、こういうふうになっておるわけです。先ほど大臣にお尋ねしましたように、責任を本人、当事者だけに持っていくという わけにはいかない。死刑というのはちょっと人命尊重の上から考えて酷じゃないのか、このように思うのですが、大臣どうお考えですか。
#161
○政府委員(辻辰三郎君) この法案の第二条には、御案内のとおり、「死刑又は無期懲役」という法定刑が規定されているわけでございます。これはハイジャックの一条の行為の結果人を死亡さした場合でございます。
 この一条のいわゆるハイジャックといいますものの犯罪としての性格なんでございますけれども、これは現行刑法の強盗に当たる場合が大部分なんでございますが、いわば強盗の場合と強盗でない場合もございますが、強盗の一つの形態という部分を非常に多く持っておるのでございます。そういたしますと、現在の現行刑法の二百三十六条に強盗罪を規定いたしておるわけでございますが、二百四十条におきまして「強盗人ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役」というふうに、いわゆる強盗致死あるいは強盗殺人といたしまして「死刑又ハ無期懲役」という規定があるわけでございます。そういたしますと、今回のこの法案におきましては、現行刑法とのバランスをとる上から見ましても、当然この強盗致死または強盗殺人と同じ法定刑が定められないと、かえって均衡を失するという結果になるわけでございまして、かような観点からこの法案に第二条の法定刑が規定されたわけでございます。
#162
○山田徹一君 いま世間では死刑廃止論が相当に言われておるわけです。それに対して法務大臣はどうお考えですか。
#163
○国務大臣(小林武治君) 死刑の問題はいろいろ論議がされておりまするが、実は法制審議会におきましても論議の結果、死刑の廃止ということは時期尚早である、しかしなるべく死刑になる犯罪を限定しよう、こういうふうな方向に進んでおるのでありまして、私もこの際、死刑廃止はまだその時期でない、こういうふうに考えております。
#164
○山田徹一君 一条の二項にあります未遂罪はどの程度――どの程度と言ったらおかしいのですけれども、その点説明していただきたいと思います。
#165
○政府委員(辻辰三郎君) この未遂は、いわゆる刑法に言います未遂と同じでございまして、犯罪の実行に着手したけれども犯罪の目的を遂げなかったという場合でございます。この一条に当たる行為につきまして、いま具体的な例を申しますと、このハイジャックをしようとしまして、機長なら機長に暴行または脅迫を加えたと、その結果機長やあるいは乗客のほうが抵抗をして、何をするんだということで、暴行・脅迫を加えたけれども、機長や乗客の抵抗にあって本来の目的を遂げることができなかったと、かような場合が典型的な未遂に当たるわけでございます。
#166
○山田徹一君 そういう罰するという規定になっておりますが、これはどの程度の刑になるのですか。
#167
○政府委員(辻辰三郎君) この未遂罪の法定刑は、全部罰則規定は特段の規定がない限り刑法総則の適用を受けるわけでございます。したがいまして、法定刑はこの一条の一項と同じでございますが、未遂罪は未遂の減軽というのが刑法総則にございます。この未遂のほうには、刑法の四十三条でございますが、「犯罪ノ実行ニ着手シ之ヲ遂ケサル者ハ其刑ヲ減軽スルコトヲ得但自己ノ意思ニ因リ之ヲ止メタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除ス」と、こういうことになっておるわけでございます。
#168
○山田徹一君 それから第三条の予備罪ですね、この予備罪とそれから第一条との関係というのも、この逐条説明書の五ページに、「本条の予備罪が成立する場合としては、航空機に乗り込むための航空券を購入する行為、犯行に使用する凶器を入手する行為、これらのための資金を準備する行為などが考えられる。」と、このようにあるんですけれども、これは航空機に乗り込む前の行為だと思うわけですね。そうしますと、思想を取り締まるというようなことにはならぬですかね。
#169
○政府委員(辻辰三郎君) 予備行為は犯罪行為を実現するための準備行為をいうと、こういうのが定義と申しますか、準備行為でございまして、単なる内心の意思というものを処罰するわけではございません。
#170
○山田徹一君 そうしますと、航空券を購入する行為ですね、これの裏づけはどういうことになるのですか。
#171
○政府委員(辻辰三郎君) この本法案の場合、第三条は「第一条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者」というふうになっております。したがいまして、航空券を買ったという場合にも、第一条の行為をやると、ハイジャックをやるというその目的でその当該の航空券を買ったというような場合が、第三条の予備に当たるわけでございます。
#172
○山田徹一君 第四条についてですけれども、「偽計又は威力を用いて、航行中の航空機の針路を変更させ、その他その正常な運航を阻害した者は、」と、この威力というのはどういうのですか。迫害と威力とどこをもって書き分けるか。
#173
○政府委員(辻辰三郎君) この第四条の「偽計又は威力」ということでございますが、これは、「偽計」につきましては、刑法第二百三十三条の偽計業務妨害罪における「偽計」と同じ意味でございます。また、「威力」につきましても、刑法第二百三十四条の威力業務妨害罪における「威力」と同じ意味でございまして、すでに刑法における既成の法律概念でございます。具体的に申し上げますと、との「偽計」というのは人を欺く陰険な行為というふうにいわれておりますし、「威力」といいますのは、この本法案の場合には、第一条の程度に至らない暴行・脅迫を含みますほか、一般的に人の意思に影響を及ぼすような不法な勢威というふうに考えられるわけでございます。
#174
○山田徹一君 そこの点ですけれども、その第一条に至らないような程度という例をあげたらどういうようなものでしょうか。
#175
○政府委員(辻辰三郎君) この第四条の考えられます一般的な事例と申しますか……。
#176
○山田徹一君 例をあげてひとつ、どの程度の……。
#177
○政府委員(辻辰三郎君) 例をあげて申しますが、たとえば数人の者が、おれは何々組の者であるというようにですね、乗客数人が、おれは何々組の者であるというようなことで、まあ暴力団であるというような、こう勢威を示しまして、そうして富士山のほうへちょっと針路を変えろと、富士山を見るから富士山のほうへ変えろというようなことをしたと、機長のほうはやはりこの勢威に押されて、本来ならば富士山のほうを航行する予定がないのに富士山のほうへ針路を変えたと、かような場合を想定いたしております。
#178
○山田徹一君 これは変な質問かもしれませんがね。針路を変えさせて、たとえば大阪へ行くのに福岡へ行かせたと、こういう場合も、この威力を用いてやった場合も、これは乗っ取りにはならぬわけですか。
#179
○政府委員(辻辰三郎君) この第一条と第四条の関係でございますが、第一条のほうには、御案内のとおり、「航空機を強取し、又はほしいままにその運航を支配」するというふうに規定をいたしております。で、「強取」といいますのは、もちろん機長が持っている占有を犯人のほうが奪い取って、占有を自分のほうに取り込んでしまう。それから「運航を支配」するといいますのは、機長の持っておる運航支配権を自分が奪ってしまって、そうして自分の思いどおり運航をするということを意味しておるわけでございます。で、第四条のほうは、いまだに機長のほうに運航の管理権があると、機長から犯人のほうには移っていない状態でございまして、機長が、先ほど申し上げましたような例でいけば、まあうるさいから――うるさいといいますか、まあ向こうに威力があるから、多少気持ちは悪いと思いますが、しかし運航支配権はまだ機長のほうに残っておる。機長が言われたからちょっと針路を変更した、かような場合を言うわけでございまして、結局一条と四条とは、運航支配権が残っておるかどうかという点が大きな相違点になるわけでございます。
#180
○山田徹一君 時間もだいぶ過ぎましたので、専門家の意見によると、こういうことをまあ新聞で読んだんですが、「犯人がたとえ乗っ取りに成功し、目的地に着陸しても、先方の国の政府官憲により到着と同時に逮捕され、直ちに本国に強制送還された上でしかるべく処罰される、ということで各国が徹底しない限り、こうした事件は今後も防止し得ない」、このように言っているんですが、これに対して何か政府で考えついているようなことがありますか。
#181
○政府委員(辻辰三郎君) それは、先ほど申し上げましたとおり、この法案だけの立場からいきますと、ただいま御指摘のとおり、いわゆる乗っ取りに成功して国外に着陸したといいます場合、その犯人をこの法律で日本国が処罰できるようになりますためには、日本国にその犯人が送り帰されるか、あるいは犯人みずからが帰ってくるかしなければ、働かないわけでございます。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、このハイジャックの防止と申しますのは、現在国際協力が強く叫ばれておるわけでございまして、本年の秋にはこの国際条約といたしましてハイジャックの防止条約案ができ上がるだろうと思うのでございますが、そういたしますと、この条約に加盟いたしております限りは、どこにそのハイジャックが起きようと、加盟国は、自分の裁判圏に犯人が入りました場合には、その国内法でこれを処罰するという義務を負うことになるわけでございます。さような場合には、日本におきましても、この法案の第五条の規定によりまして、ハイジャッカーが日本へ来ました場合には、そのハイジャックの行為が世界のどこで行なわれようと、また世界の何国人によって行なわれようと、日本のこの処罰規定によって処罰するということで、各国がやはり相互に協力してハイジャックの防止に寄与できるということに相なろうかと思うのでございます。
#182
○山田徹一君 この締約国というんですか、相手が北鮮の場合はそれも不可能な問題ですが、そこで私はお尋ねをしたいのは、いろいろ問題点があろうけれども、日本から考えれば、北鮮とか、中共とか、こういう方面に今後起こるとすれば起こるんじゃないか。したがって、人道の問題として、こういう問題だけについても、北鮮が現にあのような人道的な態度を示してきたわけなんですが、政府としてこの際、これを契機に、そういう人道的な問題に関するものだけでもいいから交渉を持つように私は考えられないものかどうか、こういうことをお尋ねしたいんですが、大臣にひとつ。
#183
○国務大臣(小林武治君) これは人道上の問題ということは、今度の問題に対する反対給付、こういう問題でありますが、やはりあくまで人道的にものを考えていく、こういうことで、そういう考え方はひとつぜひ持ちたいと、こういうふうに思っております。
#184
○山田徹一君 ちょっとこれに関連して、北鮮に籍がある在日朝鮮人ですね、この方たちが帰化したいと、こういうふうな意向を持って、いろいろの年限とかそういう条項にはマッチしているんですけれども、帰化できない、北鮮籍のために――こういうふうなことを言ってきたのがいるんですが、そういうことになっているんですか。
#185
○政府委員(新谷正夫君) 帰化のわれわれの考え方を申し上げますと、在日朝鮮人で帰化を希望しております人たちは、戦前から日本人としてわが国で居住し、こちらに生活の本拠を持っておる方が大部分でございます。このような人たちをどう扱うかということでございますが、これは日韓条約のときにも実は問題になった点でございます。私どもとしましては、そのような事情を十分考慮いたしまして、できるだけ日本に帰化を認められる者は認めよう、こういう方針でいまやっておるわけであります。そこで朝鮮に本籍を持っておる人たちをどう見るかということでございますけれども、これにつきましては、前の条約の審議のときにも申し上げたことでございますけれども、わが国としては韓国の国籍法に従って処理されるべきものであろう、このように考えておるわけでございます。そういたしませんと、日本に帰化を認めることは事実上不可能でございます。と申しますのは、北朝鮮にも国籍法に相当する法律があるらしいのでございます。これは正式には確認はできませんけれども、この法律によりますと、自由に北朝鮮側の本籍を失うということはできないという仕組みになっております。そういう事情もありますので、私どもとしては、そういうことはともかくとして、長らく日本に住所を有し、日本に生活の本拠を持っておる人たちのことでありますので、そこのところはできるだけ帰化を認められる方向で考えようというので、いまのような取り扱いをいたしておるわけであります。日本の国籍法の要件を備えませんと、もちろんこれは帰化を許すわけにはまいりませんけれども、向こうの国籍法の問題というよりは、むしろわが国の国籍法の問題として許せるものは許していこうということでございます。ちなみに、北鮮に国籍を持っておる人と韓国側に国籍を持っておる人とどのくらいの割合になるかということをある時点において調査したことがございます。大体北朝鮮側に本籍を持っていた人が約五七%くらいございまして、四三%くらいは南朝鮮に本籍を持っておる人でございます。これは一カ月間の実績を調べたわけでございます。それによりますと、そのようになっております。これは御参考までに申し上げます。
#186
○山田徹一君 ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、じゃ北側に籍を持った人は、はっきり言って帰化はできないということですか。
#187
○政府委員(新谷正夫君) いや帰化は許しております。許しておりますが、それは自分は北朝鮮の国民であるということは言っておりません。これはむしろ日本人になりたい一心でございますので、そこまで言いますと、いまの北朝鮮にあるらしい向こう側の国籍法の関係上、帰化を許すことはできないようになります。そこで私どもは、そこのところは非常に弾力的にものを考えております。
#188
○山田徹一君 ちょっとそこのところでややこしくなってくるのですが、この法律の最後の第五条は、よそはどうあろうと飛び込んできたハイジャックは罰するのだ、よその法律はかまわないのだ、そういう意味にもとれるのです。してみれば、ほんとうに本人が思想的とか、そういったものもあるかもしれませんが、いずれにせよ、日本人になりたい一心で、子供のときから、赤ん坊のときから日本に生まれて、親も日本だと言って、籍だけは北鮮にあると、その情勢を無視して、しかも主人のほうは韓国側で奥さんのほうが北のほうだ、そのために夫婦とも一緒に日本人としての帰化を望んでおったが許されない、こういうことが起きておるわけなんです。それでお尋ねしておるのです。
#189
○政府委員(新谷正夫君) その本籍がどこにあるかということは、私ども問題にしておりません。要するに、わが国の国籍法の四条の要件を備えておるかどうかという観点で、許可する場合もございますし、許可しない場合もございますけれども、本籍の所在いかんによっては区別をしていないというのが実情でございます。
#190
○山田徹一君 最後に、いずれにせよ、これだけの死刑までつけた罰則規定を設けましたけれども、世界の例を見ても、ますますふえておりますし、まあさっき法務大臣が言った近因と遠因がありますけれども、方法としては、とにかく乗っ取りのできないような航空機の構造――キューバにはそういう事件がない、完全にいわば操縦席と客席とを遮断しているという話を聞いたんですが、そういうような構造面でお考えになったことはないでしょうか、ここで言うのはちょっと違うかもしれませんが。
#191
○政府委員(辻辰三郎君) もとより、いまの御質問は法務省の所管の事項ではございませんので、責任あるお答えはできないわけでございますが、今回のハイジャックが起きまして、関係官庁でいろいろと御相談したときがございますが、その一環といたしまして、運輸当局の話を聞いておりますと、運輸当局におきましていろいろいま御指摘のような航空機の構造面からこのハイジャックの防止ができないかどうかという点は検討なさっておるように承っておりました。
#192
○委員長(小平芳平君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#193
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後一時二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十六分開会
#194
○委員長(小平芳平君) 法務委員会を再開いたします。
 民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#195
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の力の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#196
○委員長(小平芳平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
#197
○委員長(小平芳平君) 次に、航空機の強取等の処罰に関する法律案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#198
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 航空機の強取等の処罰に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#199
○委員長(小平芳平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案に対する議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#200
○委員長(小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#201
○委員長(小平芳平君) 裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 なお、この際、審査の都合上、第四二九三号の請願をあわせて議題といたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#202
○小林武君 六十一国会の衆議院における法務委員会の会議録によりますというと、寺田最高裁判所長官代理者の答弁の中に、「私どもも、決して弁護士会との間で完全に話を煮詰めた上で法務省にお願いするという気は、毛頭持っておらないわけでございます。」というのがあるわけです。このことについて、私のような専門家でない者は、かなりの疑義を持つわけです。法曹一元の原則という、法曹の一体化とかいうことを言われておりますし、また私ども今度の問題で、当初においては、きわめてしろうと考え的なものもあるので、わりあいに、何といいますか、あっさりとものを考えておった。ところが、いわゆる法務委員会というところは専門家がたくさんいらっしゃって、その質疑を通して聞いており、それにつられて勉強したわけではありませんけれども、多少速記録等を調べてみますと、私は、今度の法律案に関して、弁護士会がこれに対して反対だということ、それからもう一つは、法務省における全司法労働組合という組合もまたこれに対して反対の態度だと見てよろしいと思う。いわば、われわれのほうから言えば、私の立場から言えば、国民大衆というものに接触面を多く持った者は簡易裁判所に対する今度の問題については賛成の意を表しておらない、いわゆる法務省とか最高裁というような立場のほうが強くこれを主張しているという点が、私は特徴的だと見ているわけです。われわれ法務委員会の、いわゆる専門家でもなければ、法曹でもない、その一群の者ではないわけですから、きわめて国民的な立場といいますか、一般大衆、庶民の立場からわれわれものを考えた場合に、庶民の立場からはこうだという主張が、弁護士会のこれについてもいろいろな議論がありまして、一致しておらないというようなことを速記録の中に相当主張している人もあるようですが、私は機関の決定というものを考えた場合においては、たくさんの大きな団体の中で一部の者がどう言おうが、機関の決定というものは尊重しなければならぬ。その機関の決定というものを見て、内部に何があるかというそのことを言うのは、それはいまのような民主的な社会ではちょっとおかしいと思うのですが、そういうことも考え合わせたりいたしまして、非常にこの寺田最高裁判所長官代理者の、毛頭ないのでございますと、弁護士会と話し合いをやろうというような気持ちは毛頭ない、このことは一体どういう意味を持っておるのか、これをお尋ねしたいわけですね。
#203
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま小林委員から御指摘のありました発言、私が衆議院法務委員会においていたしたものでございまして、ことばの足りませんでした点、まことに恐縮に存じておる次第でございます。こういう発言が出ました経緯について、若干速記録によって御説明申し上げたいと思うわけでございます。弁護士会との連絡協議の経過そのものにつきましては、先般いろいろお話ございまして、御説明申し上げたとおりでございますが、衆議院の法務委員会では、との連絡協議の途中で二、三度ばかり、主としていわゆる野党の方から御質疑があったわけでございます。そうして、いわば、いつまで話し合いをしておるのかと、もういいかげんに結論を出すべきではないかというようなニュアンスのお尋ねがあった次第でございます。それに対して私が御説明いたしました部分のうちの一部が、いま小林委員から御指摘のございました発言になっておるわけでございまして、この発言そのものは岡澤委員の御質問に対するものでございますが、岡澤委員は、民事の訴額が簡裁において十万円だというのはいかにも現在の実情に合わないという感じがするが、これについて裁判所の見解を聞きたい、こういう御質疑でございました。それに対しまして、私どもとしてはやはりこれを引き上げるべきであるという考えのもとに弁護士会と連絡協議を続けておるということを御説明申し上げました上でいろいろお話し合いをしておるわけでございますけれども、御承知のとおりの日弁連の総会の決議もございます関係もございまして、話し合いが非常に難航しておるような状況でございます。しかしながら、今後とも粘り強く話し合いを進めましてやってまいりたい、こういうふうに一応答弁したわけでございまして、ところがそれに対しまして岡澤委員から重ねて、局長を責める気持ちではないけれども、五年間もやっておるじゃないかと、いわば小田原評定だというようなお話もございまして、で、これは提案権は法務省にあるわけなんでして、結局は国会において議決をすればいいわけであります。あまりに気を使い過ぎられまして、結局は国民のための裁判ということが忘れられて、弁護士のための裁判所であったり、また裁判所のための裁判所であったりしてはならない、立法機関であり国権の最高機関である国会の場に問題を出すべきではないか、こういうふうな――私とものやっていることは、いわばある意味では国会軽視ということも言えるわけでごいます――こういうようなまた重ねての御発言があったわけでございます。しかし、そこで実は、私は国会軽視というような気持ちは毛頭ないということで、その点はひとつ御了解いただきたいということを申し上げるつもりで発言したわけでございまして、また事実、いま小林委員から御指摘のありました少しあとのほうの部分では、「国会軽視というような気持ちは毛頭ないわけでございますので、その点はひとつ御了解いただきたいわけでございます。」と、こういう説明をしておるわけでございますが、その少し前のところでいま御指摘のあったような発言になりまして、実はその際、「毛頭持っておらないわけでございます。」と言いまして、すぐその毛頭という字の使い場所が適当でなかったということに気がつきましたので、「毛頭持っておらないと申しますか、必ずしもそれを期待して、そうでなければならないと考えておるわけではない」と申し上げ、どうしてもやむを得ない場合もあり得るというニュアンスで、すぐ直ちにその場で、いわば取り消しと申しますか、表現を変えて説明したわけでございます。ただ、はっきり毛頭という表現をこの席で取り消しますとは申しておりませんので、表現を言いかえておるわけでございまして、そういう点で弁護士会のほうにたいへんいわば失礼なような表現になりましたことは恐縮に存じておる次第でございまして、この点は日弁連との連絡協議会の席におきましても御指摘がございましたので、私の真意がそこにあるということを繰り返し御説明申し上げまして、一応私の真意は御了解いただいたものであると、かように考えておる次第でございます。
#204
○小林武君 まあ、日弁連とどういう関係にあったかということは、われわれ干渉すべきことでもなければ、興味もないわけです。なお、この問題について質問がどういう質問であったかということは、いまお話がございましたけれども、相当何べんも読んでみました。その質問自体の中に、私はまあ、院の違う、しかもよその党の人のあれに干渉がましいことを、批判がましいことを言うことは避けますが、名前をあげてだれだれということは言う必要ないと思いますけれども、やはりことばじりの問題でなく、考え方に問題があるのではないかと思いますことは、「弁護士会との間で完全に話を煮詰めた上で法務省にお願いするという気は、」――ここのところですね、煮詰めたということが問題なんですよ。私は、弁護士会と法務省なりあるいは最高裁なりがいろいろな問題で話し合いを煮詰めるということは、これは何ら国会軽視でも何でもないと思います。話し合いを煮詰めたから国会なんかに出さぬでもよろしいとか、国会の議員がそんなよけいなことを言うなということになると、これは国会軽視、しかし、提案されるものが最も完ぺきなものであるということのためには、私は関係の方面で徹底的な話し方をする必要がある。これは少なくとも、臨時司法制度調査会意見書というのを見ましても、主題は、これは何といっても法曹一元の制度に関するものが中心になっていると思うのですが、結論はどうなっていても、そういうたてまえからいっても、私は煮詰めるということは問題じゃないことだと思うのです。だから、この際に、私の考え方からすれば、在野の者について干渉されるというような考え方を両者の間の意見の食い違い等が起こった場合には特段に激しく持つ性格をいわゆる裁判所とか検察庁とかいうものはお持ちではないのか。これはもっとも相当年配の者が持つひが目かもしれませんけれども、私はそういうことをこのことばの中から非常に痛感しました。このことばだけを私は言っているのではありません。ほかのところ、少なくとも各速記録を読んでみて、そうでないならば、これは単なることばじりみたいなものですから言いませんけれども、全体のやはりこの中に流れている対立点とか、それに対する最高裁の考え方とかいうものの中には、どうもそういうあれが流れているというような気がするわけです。順次そのことについて申し上げますけれども、そういう点では、煮詰めるということは、両者が煮詰めるということ、話し合いを煮詰めるということの、どういうことが煮詰めるのかわかりませんけれども、私は、煮詰めると言えば、対立点があってもいいと思うのです。いわば、弁護士という仕事は、われわれから言えば、一般庶民を、たとえば刑事事件で言えば、守ってくれるほうの側ですから。裁判官は裁判をしてそれに判定を下す。検察庁はこれに対して罪のある者を問いただすのだということになるわけでしょう。そういうたてまえの中で、おのおの性格の違ったといいますか、仕事の上ではある点の対立点を持っている、立場を異にしている人たちが、いかに法の裁きというものを国民の立場に立ってやるかということ、すなわち公正にして弱い者が負けないようなやり方で裁判の公正さを一体示しているかということ、この点でも私はたいへんいい例だと思うのです。そういうことで考えましたら、煮詰めるというようなことの手続というものが、何が国会軽視につながったり、法務省の提案権というものに対して干渉がましい態度であるというようなことにとられるということは、いささかこれは旧来の持っている体臭というものをここに戦後になっても出し過ぎているのではないかというふうに考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
#205
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私自身が煮詰めるということばを使いましたわけでございますけれども、煮詰めるということば自体が必ずしも明確な意味を持ったものではないようにも思います。ただ、私どもとしては、こういう問題については、できる限り法曹三者、場合によりましては学識経験者をも入れた法曹四者で十分話し合って、そうしてでき得べくんば一致して結論を出して、そして法務省から国会に提案していただくということが望ましいと思い、できる限りその方向で努力すべきであるということは、終始一貫その気持ちでまいっておるわけでございまして、これはその前のほうの、たびたびの国会の速記録をごらんいただきましても、繰り返しその趣旨を述べておりますことで、御理解いただけると思う次第でございます。そういう意味におきましては、いま小林委員からお話のございました点、私どもも全くそういう気持ちでこれまでやってまいった次第でございます。遺憾ながら今回の場合、最終的に意見の一致を見るに至りませんでしたけれども、私どもとしては相当に努力を尽くしたつもりでおる次第でございます。
#206
○小林武君 まあ努力を尽くしたとか誠心誠意やったとかいうことは、それはお互いにそれぞれの立場でやられることだと思うのです。これはとにかく国会というところでは、与党があり、野党があり、数でものを言うというふうな場所ですけれども、そういう立党の精神の違うところのものが議論するという場合に、それは全力をあげてその問題に取り組むという姿勢は、これはもう政府側といえども、それから議員といえども、何ら変わるものではない。しかし、問題は、そういう見解の違うものにわれわれがぶち当って、野党であろうが、与党であろうが、政府であろうが、何であろうが、国民のためにこれがいいかどうかということの立場に立って議論した場合には、一致点はあるような気がするのですね。しかし、それは立場上のことからいって、そのことを無視してやるというようなやり方があったら、これは私はやはり問題だと思うのです。その点では、まあ後ほど触れていきますから、なぜそういうことを言うのだということは後ほど触れますから、まあここではやめますけれども、そうすると、最高裁の立場からいって、弁護士会がもしも対立した意見を持つ――それは弁護士会でなくてもいい。あるいは全司法という司法関係の労働組合の意見といえども、私はその点では、名前は労働組合でも、そこで働いている人なんですから、そういう人たちの間の意見であろうが、十分話を聞くということは、話し合いをするということ、煮詰めるということは、今後も決して、どんな質問があろうと、国会軽視であるとか、あるいは提案権に対する何だというようなことにとらわれないでおやりいただけるものだと思うのですが、いかがですか。
#207
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 弁護士会との関係におきましては、私担当しておるわけでございますが、従来もさようにやってきてまいったつもりでございますが、今後とも十分に弁護士会と話し合いをするというふうにやってまいりたいと、かように考えております。
#208
○小林武君 私はまあ、岡澤委員が質問されて、そうしてこの方は弁護士らしいのですけれども、弁護士というものは一言居士が多くて、そうして日弁連という団体は意思統一などというようなものはできないというような議論をされているようです。されています。そのことを受けてなされる答弁というものは、私は苦労されていることはよくわかりますけれども、よほど慎重なはっきりした御答弁をいただきたい。その際、委員長として――これはここの委員長ではありませんからあれですが、委員長の発言として、全法務委員の共鳴するところでありますから、力強い答弁をしなさいと、こういうことを言っているわけです。それを受けて影山さんの答弁がございましたけれども、なかなか慎重におやりになっているということは、質問者もどうも食い足りないというようなことを言っているところを見ると、確かにそうかと思いますけれども、しかしその中でやはり主張点についてははっきり言っている。「事物管轄の問題を解決しなければならないということを、十分に考えておるわけであります。」という、その事物管轄の問題がここでは中心の課題なんですから、このことについては少なくとも、何といいますか、しっかりやりますということをおっしゃっている。私は、そう言ったからと、この答弁をしたからといって、文句を言うわけではありませんけれども、私はそういう国会の中におけるところの質疑を通して見て、いささかやはり、法曹一体の、何といいますか、理念といいますか、そういうものがここでは薄れている。こういうことでは、ほんとうの法曹界におけるところの問題の解決というのはなかなか困難じゃないか。いたずらに対立感が対立感を生んで、そしてそのことの結果は、結局国民が安心して一体その国民の裁判というようなものにたよることができなくなるんではないかということを考えているから、そういう質問をしたわけです。
 この点は、この程度でひとつやめまして、簡易裁判所に関する今日の問題点というようなものについては、この点については、どうもこれほど法曹界において、在野といいますか、官側といいますか、これほどはっきり対立したものは、私はないと思うんです。われわれ、比較的こういうことについていままで――いまでもそうですが、うとかった者にとっては、ちょっと驚異に値する問題だと思うのです。日弁連の側から言えば、簡易裁判所というものは、これは区裁判所と性格的に全然違うんであって、わが国の司法制度というものが全面的に変えられてきた中で、国民のための裁判ということをねらってやられたと、こう言っている。そういう性格のもとで、どういう裁判をやるかということは、たとえば、その当時の大臣がどういう趣旨説明をやったと、こう述べているんですね。私たちはそういうことを聞いて、まともに受けるわけです。国民全体がまともに受けると思うんです、それは。ところが、それに対して裁判所側の態度というものは、これは法務省もそうです、きわめてどうもそれと違った立場に立って、こういう簡易裁判所というようなものはだんだんその性格を変えていかなければならない、変えていくことが、それが簡易裁判所の趣旨に沿うんだというような意見、これはいずれも専門的な立場に立って、それぞれ立場は違っても、公判廷で裁判に携わる人たちの間の意見ということについて、これはもう全く私は驚きだと思うんです。それについて一言、先ほども述べましたけれども、同じく全司法の労働組合、司法制度研究中央推進委員会の簡易裁判所白書というものを見ましても、これもまた、この点では日弁連と大体同じ主張の上に立っている。この点のことをどうわれわれが判断したらいいのか、そういう対立というものはわれわれが感ずるほどのものでないのか、そう違いないものなのか、まるっきり私たちが感ずるようなびっくりするほどの対立なのか、この点を概括的にちょっとお話しいただきたいのです。
#209
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まず、先般来亀田委員の御質問に対して私が答えてまいりました関係上、裁判所の考え方を申し上げさしていただきたいと思います。
 亀田委員のお話に対しまして、私いろいろ申し上げましたし、また私どものほうの資料にいろいろのことが出ておりますようなことがからみまして、先般来私御説明申し上げました点が、多少御理解をいただきにくいような表現になっておったのではないかと感ずるわけでございます。いま小林委員から御指摘のございましたポイントにつきましては、私どもとしても、少額軽微な事件を簡易な手続で処理するという基本的な簡易裁判所のあり方というものにつきましては、これを変えようとか、あるいは変わっていくことが望ましいというようなことは、決して考えていない次第でございます。その点は、亀田委員の御質問に対して冒頭に申し上げたとおりでございますが、いま小林委員からも御指摘のありました少額軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理するという、その基本的性格につきましては、発足以来性格は変わっていないというふうに理解いたしておりますし、またもとより今回の法案でそれが変わるものでなく、また今後とも変える気持ちを少なくともいまのところ持っておらない次第でございます。ただ、いろいろ訴訟の範囲等につきまして意見が分かれまして、つまり少額軽微というのはどの範囲までかということで意見の差はございますけれども、それはいわば程度の問題かと存ずるわけでございまして、いまの基本的な点については、私ども別に日弁連と意見が対立しておるというふうには必ずしも受け取っていない次第でございます。
#210
○政府委員(影山勇君) 法務省といたしましても、簡易裁判所の性格につきましては、ただいま裁判所からお答えになったのと同様に考えておりまして、問題は、少額軽微な事件を扱う裁判所という点に解釈が分かれる、見解が分かれるという点があろうかと存じますが、特に今回の改正は、前回の改正による額についてたびたび申し上げておりますように、その後の経済変動というものを見合わせまして、前回の改正の線に沿って、訴訟の最高額を合わせるという趣旨の改正でございまして、これによって簡易裁判所の根本的性格を変えるというようなことは考えておらないわけでございます。
#211
○小林武君 そこらは、われわれしろうととしては、そういう発言にはなかなか、なるほどそうかなとは言いかねる。今度の改正というのは、大体昭和二十九年の改正に端を発しているということを、まあようやくこのごろわかりました。昭和二十九年というと、私にとってはなかなかこれは忘れられない昭和二十九年ですよ。この年に教育の中立性確保に関する法律というのが出て、日本の教育が大きく方向転換する時期なんです。それと関係あるかどうか知りませんけれども、昭和二十九年の簡易裁判所のこの改正というやつは、それを受けているから、あなたのほうで今度の六十三国会における答弁の中にも述べられているわけです。この点ははっきりしているわけですね。六十三国会の衆議院における速記録の十七号の二ページの二段目にこう書いてありますね。「もとより、裁判所法のもとにおける簡易裁判所は、裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、」と、これは弁護士会のほうではそうはとっておらないのです。「裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする」とはとっておらないのですね。それは区裁判所とは別個の一つの制度として出ているということを述べているのです。さらにその次に、「わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所間に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に沿うゆえん」であると、こう言っている。しかしこれを、全司法労働組合の主張からいっても、日弁連の主張からいっても、そうはとっておらないと思う。もっともこれは私の読み方が悪いせいがあるかもわかりませんから、間違っておったらひとつ御指摘をいただきたいと思う。なお、この「簡易裁判所の上告審が高等裁判所である関係上、ひいては、最高裁判所の負担の調整にも寄与することができると考えられる」と、このことは少なくとも本筋をはずした――そもそもその簡易裁判所というものを見る場合には、これは非常に大きな性格上の相違点を持っていると、こう思うのですけれども、ただ、ここで言う六十三国会の場合は、二十九年の改正を前提にしてやられておるからね。前提にしてやられているということをここで言っていることは、逆に言えば、二十九年の改正というものがどういうものであったかということを説明しているのと同じだと思うのです。私は、二十九年のときに、教育の問題であれほど騒いだのに、裁判所のこの改正のときにどうして騒がなかったのか、いまごろになってから騒ぐのはおかしいという考えを持たないわけでもないのですが、どうですか。これやっぱり全く違わないと、これしろうとの勘ぐりですか。
#212
○政府委員(影山勇君) ただいま小林委員のお読みになった部分は、二十九年の提案趣旨の中におそらくあると思われますが、そこで多少異なると申しましたのは、簡易裁判所ができますこの立法過程と申しますか、その論議の際に、簡易裁判所というものはもっと簡潔な組織にして、たとえば手続のようなものを自由裁量にして、判決も簡単にして、そして覆審――御承知かと思いますが、覆審と申しまして、控訴をもう一つやり直すというような議論もありましたようなわけでございますが、これを法律として成立いたしました姿の簡易裁判所法を見ますと、やはり民事の第一審をも扱うということになったわけでございます。そういう点をとらえまして、多少違うというような表現になったのではないかと思われます。そして、その二十九年の際に、やはりその二十九年の提案は、三万円から二十万に事物管轄の上限を上げるという提案でございました。やはり論議がございまして、もちろん簡易裁判所の性格論というものが前提になっていると思われますが、それが十万円に修正されまして、そしてその際弁護士会の方の御意見も国会で参考人として述べられまして、その結果、法案として成立いたしたものでございまして、特に二十九年によって簡易裁判所が区裁判所になったというふうには私ども考えてはおらないわけでございます。
#213
○小林武君 どうも何かそこらあたりが、何といいますか、法律の専門家で、そのものぴしゃりと論理的に説明されたというふうには受け取れないのですね。後ほどひとつ、国会軽視かどうかは別として、申し上げたいのですけれども、第九十二帝国議会衆議院における第十一号裁判所法案委員会での司法大臣木村篤太郎の答弁がここにありますが、「新憲法実施とともに、裁判所の制度は面目を一新するのであります。この際にぜひとも裁判の民主化ということを取入れなくてはならぬと確信しております。しかして本法案におきましては、御説の通り裁判の簡易化ということについて特に考慮を払ったのでありまして、」、こういう提案趣旨の説明、提案に対しての大臣の、木村さんの答弁が出ているのでありますが、あとのことは読まなくとも、とにかく裁判所の制度は面目を一新するものである、裁判の民主化のためにできた、こう言っているのですが、二十九年のこの改正の三浦寅之助政府委員の説明の中には、この中に、六十三国会における答弁の中にあるようなそのままの問題が出ているわけですね。「簡易裁判所は、裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、」というと、設置の趣旨がほんの少し違っているということですか、面目を一新するということとこれとは違うのですね。私は、面目を一新するというところに、区裁判所と簡易裁判所の性格の違いが出てくると思うのです。だからこそ、そこにおいて、特任の判事というようなものの必要性も出てきたわけでしょう。こういう非常に大きな変化を来たした。それが二十九年のときには、いやそうは違わないのだと、われわれのことばで言えば、多少違いはあるといえどもそう違いはないのだと、こう言っておる。そこに先ほど来言ったような三カ条の問題、私が述べたような三つの問題を言っているわけです。昭和二十九年というものが、結局今日のこの法律の提案の土台になっている。このことについては、速記録のどこかに「前提として」という答弁が出ているわけです。これが違わないというのは、どうも法律の読み方というのは特別の読み方があるのかどうか知らぬけれども、日本語を読むということになったらそんな違うはずはないと思うのですよ。法律用語はむずかしくて、われわれも閉口しますけれども、口語文に書いてくれたらいいがなあという気がないでもないけれども、その点についてのあれは私は納得いかぬですね、どのような説明を受けても。しかも、御答弁の中にありましたですね、当初において混乱があった。簡易裁判所についての考え方に覆審の問題が出てきたということが、この速記録の中に出ているわけですよ。その混乱の結果が二十九年の改正だということになったら、これこそ国会軽視だと思うのですよ。自信のないものを提案しておいて、あとになってから、ようわからなかったけれども提案して、そうしてとにかくうまいことを言って法律にした。大まじめになって、国民や、その制度のもとに働いている、また制度のもとで一生懸命やっている人たちは、これこそ民主国家における裁判だということで一生懸命やったところが、いやそうではない、混乱を起こしておったのだ。あとでいずれ取っかえなければならないという話であったならば、これは国会軽視だ、国民を侮辱するということになると思う。大筋としては、そういう答弁になっておりますですよ。だから私は、この点から非常に不信感を持ったわけです。正直言って、しろうとだからそういうことを言うのかどうか知らぬけれども、感覚的に私はよほどぼけているのか、それともあまりにも幼稚にして法律を解さない者の感覚なのかどうかわからぬが、しかしまあ日弁連もそう言っているのですから、まるっきりばかみたいなことを言っているのではないと思うのですがね。これはどうですか。たとえば、先ほどの覆審の問題でもそうですよ。
#214
○政府委員(影山勇君) 私の説明がたいへん不十分で御迷惑をかけたと思いますが、私の申す趣旨は、この法律案の提出以前に、裁判所構成法というものが裁判所法に変わる際に、司法省あるいは内閣の法制審議会等で議論がありました際に、民衆に親しまれる新しい裁判所としてそういう裁判所を設けてはどうかという構想もございましたということを申し上げたつもりでございまして、そして裁判所法として提案されました簡易裁判所はただいまごらんになるような裁判所であるということを申し上げたつもりでございます。
#215
○小林武君 その答弁はちょっとどうもぼくは……。
 その前に、簡易裁判所というものはそもそもどういう性格を持って生まれてきたかということが、これは国民にとっては大事なことなんですよ。そのことについて、これはこの間亀田さんもこれ触れられたのではないかと思ったのですが、最高裁判所事務総局総務局のまとめた「わが国における裁判制度の沿革」、その資料によれば、「違警罪即決令の廃止等に伴い、軽犯罪に対する簡易迅速な裁判機構が必要とされるにいたったことから考えられたものであるが、民事事件についても、アメリカのスモール・クレイムズ・コートの思想にならい、この種の裁判機構を設けるべきであるという意見が有力となり、ここに、少額の民事事件および軽微な犯罪に関する刑事事件について、任用資格や定年等を異にする裁判官に、簡易な手続で事件を処理させようとする簡易裁判所の構想が成立した。」というのである。そうして、少額軽微な事件を処理する単独裁判所であって、同じ一審裁判所でありながら、地方裁判所と簡易裁判所とは性格の異なったものとして構想されたことは疑いのないところである。つまり、簡易裁判所は新憲法のもとに基づく司法の民主化を実施し、国民の信頼するに足る司法の基礎を国民的基盤に求められる、こういうふうなことをわれわれはすなおに受けとっておるのですが、こうだとすると、先ほど私が申し上げた、あなたたちの答弁の中の多少異なるというのは――裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんというのは、これは二十九年にさかのぼって言わなければならぬと思うのですが、二十九年のときにそういう考え方が出てくるというのは、私は、裁判所法が出てきたときの提案の趣旨とはこれは非常に大きな差があると、こう見ておるのですが、違いますか。
#216
○政府委員(影山勇君) 確かに、昭和二十九年のときには、一方において、そこの提案理由の趣旨にもございますように、物価変動のみならず、当時民事上告の特例法が廃止されたりいたしました関係上、最高裁に対する上告の負担の軽減等ということもございましたために、あるいはそういう表現になったかと思いますが、趣旨といたしましては、特に民事の事物管轄の変更という点にかんがみまして、そういう表現になったのではないかと考えるわけでございます。
#217
○小林武君 いや、これ何とかそこのところ、しろうとにわかるように言ってもらわぬと困るので、どうもそこのところがしっくりしないですね。私は、かりに簡易裁判所というものは、とにかく先ほど来何べんも言っているように、新たなものとして生まれた、新憲法下における裁判の民主化というたてまえから、しかもその中には特任の裁判官というものも考えられた、新たな機構として生まれたそういうものが、区裁判所とはそう違いはございません――われわれ簡単に言えば、多少違いはあるけれどもというくらいの考え方で事物管轄なんとかいうのをやった、これはやはり間違ってやせぬか、性格を変えたということにならないか、その性格を変えたのか変えないのかというのが問題なんです、私のいま質問しているのは。この間も性格を変えた変えぬでだいぶ議論があったようですが、私は性格を変えたと思っている。その点はどうなんでしょうか。まるっきり変わったんでしょう。そうしたら、そういう質問のやりとりの中で、衆議院においても参議院においてもやりとりの中から何が出てきたかというと、当初において混乱があったというようなことが出てきて、初めは覆審のあれも考えたというようなことが出てきておる。いわば、とにかくはっきりした意思統一がなされないままに提案されてそのことが生まれた。いわば生まれたのは鬼っ子でございましたというようなことだと思うのです。そうでないですか。一貫して読めることは、これを読めばそういうことになる。
#218
○政府委員(影山勇君) 簡易裁判所と区裁判所との違いにつきまして、お手元に表として配付いたしましたが、権限も、二十九年の改正を経ましても、いまの事物管轄の点の拡張のほかは、著しく性格は異なっておるわけでございます。たとえば、戦前の区裁判所ですと数も二百八十程度でございますし、簡易裁判所の場合は五百七十という数でございまして、その他刑事の管轄あるいは民事の管轄で、たとえば執行事件を前は簡易裁判所でやるとか、微細事件を簡易裁判所でやるとか、その他権限の上にも違いがございまして、二十九年の改正で、そういう権限の違った簡易裁判所に権限の違いました区裁判所を全く変えてしまう、あるいは変えてしまったというふうには、私ども考えておらないわけでございます。ただ、民事訴訟の第一審を扱うという点で、その点の管轄が広がっている。二十九年に三万円から十万円に拡張されたというつもりでございまして、二十九年の改正で簡易裁判所の性格を全く変えたというふうに私どもは理解しておらない次第でございます。
#219
○小林武君 どうも同じことを繰り返していても時間は来るしあれですけれども、どうですか、これは亀田委員がこの前のときに、「法律時報」か何かのことを取り上げたときに、法務省自体がそのことを認めているという例にあげた。私もいまそれを持ってきたのですけれども、「簡易裁判所も、終戦後発足した制度であるが、発足後年を経るに従い、次第に、いわゆる区裁判所化して、今日では、民事の督促、和解、調停事件等、刑事の略式、交通事件等を別とすれば、その手続は、地方裁判所の手続等と実際上ほとんど異ならず、当初簡易裁判所のあり方として予想されていたところとはるかに遠ざかってしまったように思われる、」、こういうことが書かれてあって、いまあなたが後半におっしゃったように、「しかし、少額民事事件あるいは軽微な刑事事件について、極めて簡単な手続で迅速に判断を与える英米の少額裁判所あるいは治安裁判所に類する制度の必要は、もとよりなくなつたわけではなく、」と書いてある。これは多少残っているだろうと思うのです。しかし、性格が変わったということをここで認めている。認めないでこの間もだいぶ議論されておったのだけれども、私はやはり、こういう問題については、そういう何というか、白を黒と言いくるめような――それは法律上の論争ではそういうことが正しい論争のしかたかもしれないけれども、われわれのような庶民間のものの言い方からするならば、白を黒と言いくるめるようなかっこうになってしまうのです。私は、主張点が当然変えられるべき性格のものであるから、こう変えるんだと出てきたのは、これは賛成、反対は別として、まさに傾聴し、討論して、堂々と戦うだけの理由は出てくると思うんです、両方とも。しかし、変わらない、変わらないと言って、変わっておる。やっぱり中身ごまかすような話は、これは国会の中で議論する場合には、やはりいささか国会を少し軽んじているという見方になる、正直言って。こういう見方は間違いですか。
#220
○政府委員(影山勇君) この簡易裁判所の性格については、先ほど申しましたように、やはり戦前の区裁判所とは著しく異なるものがあるというふうに考えておるわけでございまして、特に民事について事物管轄が拡張されたために簡易裁判所が全く戦前の区裁判所になったというふうにはわれわれとしては考えておらないということを申し上げているわけでございます。
 それから、ただいまお読み上げの部分は、法務省から何か……。
#221
○小林武君 これはそうだと思うんだが、七六ページ、七七ページ、「法曹時報」か何かからだったかな、その中からとったものですよ。きのうとにかく持ってきた、写してきた。
#222
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま小林委員からお話のありました点は、あるいは私のほうでかつて雑誌に載せましたものの一部であったかと思います。確かにそこにいま大体お読みのような趣旨のような記述があるわけでございまして、その点は表現におきまして、確かに若干私先ほど来申し上げましたところよりは非常に強い表現になっておるように思うわけでございます。で、この際における研究あるいは執筆等の関係がどういうふうになっておりましたか、はっきりいまでは記憶いたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、先ほど来私も御説明申し上げ、また法務省からも御説明がありましたように、基本的な性格においては変わってきていない。そして、区裁判所当時とは権限においても相当の差があるというとらえ方をするのが正しいと考えるわけでございます。で、その御指摘の記述は、若干それとニュアンスを異にしておることは認めるわけでございます。
#223
○小林武君 私に言わせれば、それは答弁ではないと思うんですね、かみ合わないですから。私は問題を提起しているんですから、それは少なくとも事実に即してぼくは言っていると思うんです。裁判所法の中における簡易裁判所に対する日弁連なりあるいはその他の全司法の労働組合なりの主張というものが間違っているというなら、それは違います。そんなことは裁判所法にありませんというなら、別ですよ。あるいは、そのときの提案趣旨の説明の木村篤太郎氏の発言というのは、それはうそです、違うんです、こう言うならば、ぼくは何しろその方面の知識暗いんですから、そうですかと言って、一ぺんにかぶとぬぐのだ。しかし、そのことが事実として存在するならば、いまの問題はだめだ。あなたの答弁は答弁にならないんです。やっぱり法律でも教育でもやたらに変えるということはだめなんですよ。いくさに負けたときに、文部省が何と言ったかというと、おろちのしっぽから剣が出たとか、神風吹いていくさに勝ったというばかなことを学校で教えたから、日本の国民は科学性も合理性もなくなったんだから、そういう神話みたいなものを教えるのはいかぬ。そうだと思っておったら、きょうの新聞見たら、神さまがどんどん出てきたというんですね。こういうことをやると、教師は、一体不信感がもうわくわけです。それから、国民の中に何を一体植えつけようとしたかという問題になると思うんですよ。だから、当初の法律の中にきめられているものがあったら、そのことは少なくともあったものはあったとして、しかしその法律はこういう点で欠点があるしいまの事情に合わないから直しますというはっきりした態度でやるべきだと思うんです。私は、二十九年のときには、もし改正するならば簡易裁判所というのは誤りでしたと、抜本的改正をやらなければなりませんと、こういううたい出しのやり方をすれば、まだこれは筋として立っていると思うのですよ。前のは何も変わっておりませんと言いながら、いまのような説明をするということは、法だけに、私はちょっと、文部省ぐらいが言うのであればかまわぬというようなことを言うと、文部省にも悪いけれども、それはやっぱりいけない、法というものがそんなぐらつくことでは。しかも、日本国憲法の中においていま日本の国の政治でも裁判でも行なわれているのですからね。その中において、二十何年ぐらいの間にこんな一体大きな変化が起こるということは、しかも、私は先ほど来申し上げているように、法律のしろうとばかりの問題ではなくて、弁護士会も、それからあなたたちの官側の考え方とは雪と炭ほどの違いだ。これはここの中で議論される専門家はどう受け取っておるか知らぬけれども、われわれのような庶民の立場に立ってものを考えた場合には、どっちがほんとうのものやらわからぬと、こういうことになる。法不信につながる問題じゃないですか。だから、私は法律のことよく知らぬししますからあれだけれども、法を何というか知らぬ者が、国民という立場から考えると、これは非常に深刻な問題ですよ。私は昭和二十六年に法廷で若い警察官にこう言われた。われわれの問題はとにかく立法趣旨からいってこういうことはないはずだというような弁護士側のあれがあったらば、その警察官は、法というものは弓から放たれた矢のごときものである。それを聞いて、私はずいぶん寒心した。寒心したというのは、寒くなったのですね。立法趣旨がどうであっても、出ていった矢は、放たれた矢というものは、そのときどきの権力なり何なりに自由に解釈されるということになったら、こっちは一体、法廷に立っているのですから、そんなことをやられてたまるかということになるわけです。やっぱり立法趣旨というものは、とにかく立法趣旨が生かされたやり方、解釈をしなきゃならぬ。しかしながら、先ほど言ったように、時代に合わないと、いろんなことがあって、理由があって、さらにもっと国民のほうに近寄るためという改正をやろうというならば、それは堂々と出して改正をやるべきだ。それをまた真剣に討論するのが国会のこれは役目だ。出されるまでの過程においていろんな関係者が衆知を集めて、そうして完ぺきなものを出してくるというならば、これは国会軽視も何も起こりゃせぬ。こういうことが私の主張なんです、いままで言っている。
 この点についてこれ以上やめましょう。これは水かけ論であります。水かけ論と言っても、こっちは水かけ論じゃないのだけれども、答弁がもう終始一貫変わらない、これじゃ話にならぬ。違うと言ってくれればまだいいのですよ。せめてここに書いてあるぐらいに言ってくれれば、だいぶ変わりましたと。まあ私はかなりショックを受けたのは、それともう一つは、答弁の中に、当時の簡易裁判所に対する考え方が混乱しておったと、このことだけから、国会というものは、一体まごまごしているというと、何を持ってきて審議させられるかわからぬというような感じを持ったのです。もちろん、対立点のきわめて激しいものは、この参議院段階でも、衆議院段階でも、これはここ十数年の間に何べんかありました。そうして結果的には、きわめて、あまり芳しくないことになっている。ああいうことは、私は大きくいろんな面に影響していると思うのですよ。それであるからいまのような議論をするわけです。それで、まあ私は、ひとつ事務総長に御意見を承りたいわけでございますけれども、これほどの議論のあるところでございますから、われわれが安心できるような、少なくとも国民が。それについて、これほどの対立点、専門家の間における対立点というものについて、どういう配慮をなさろうとするか、そういう点、御意見あったら承りたい。しかし、おまえが言ってることはわけわからぬで言ってるんだということならば、そういう御意見でもけっこうです。
#224
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 先ほど来の質疑応答聞いて、小林委員の仰せになる御趣旨は、よくお気持ちはわかります。しかし、今回の訴額の引き上げというものは、経済事情の変動に伴って、十万円のものを三十万円にしたと、率直に、まあすなおにその点をごらんになっていただきたいと思うんです。従来十万円の貸借なりあるいは売り掛け代金まで、その限度で簡易裁判所が事件を扱っていると、しかし経済事情の変動によって、その三十万という線が、今日の状況から考えますと、そうとっぴな、簡易裁判所のこれまでの性格を変えるほどの意味を持っておると、さようにシビアにお受け取りにならなくてもよろしいのではなかろうかと、かように考えます。
#225
○小林武君 そこがぼくは、初めてこの法務委員会の委員になったわけですから、初めてこの法律案を見たときには、きわめてすなおに、物価の変動によって、なるほどなあと、計算してみたらそのくらいになるのかなあと理解しながら読んだ。しかし、やっぱり法務委員ですから、これがぴんからきりまであったところで、まあ法務委員ですから、やはりいろいろな点で検討しなくては、国民にもすまぬし、提案された政府にもこれは義務を尽くしたことにならぬから、それで、私なりに、とにかくいろいろ検討してみたり、あるいは同僚の意見に耳を傾けながらいった場合には、いまのような事務総長の言われるようなことには、幾ら何でも、はいそうですかと、すなおになれと言ったって、すなおになれない。すなおになれと言われれば、ますますこれはいかぬと思う。いまおっしゃるのは、今度の提案趣旨の説明がそうだということなんです。しかし、先ほど来言っておりますように、簡易裁判所の二十九年のあの改正、それからそれを受けた今度のこれ、二つ一緒にして見なきゃだめです。一緒にして見た場合には、単なるこれは物価の変動によるということにはならぬ。この点については、衆議院においても、今度の場合非常に議論になったところだと思うのです。そしてまた、皆さんのところでも、先ほど来言ってるように、大きく変わってきたということは、ある程度認めておられる。それはまあどういう形の発表かわかりませんけれども、変わってきたことは歴然としてるんですよ、それは。さっきの文部省の神話教育みたいなものなんです。神話教育やったから日本国民うまくなくなったと言う。今度、このごろ、神話教育やらなければだめだと言う。どっちがほんとうかわからない。戦後二十何年のうちにそれほど教育の真理というものが変わるんだったら、何をたよりにして教育やるかという問題が教師の間に出てくるのは当然だ。裁判官や検察庁の方々の間では、そういうことはあまりお感じにならぬかもしらぬけれども、法律を知らぬ国民の側から言えば、これはとうてい理解も何もできない、こうなるのですよ。これは庶民感情ですわ。専門家の意見はどうだか知らない。しかし、そう不安がるところの理由が全然ないとは皆さんもお言いにならないだろうし、だから私はその点で、先ほど来申し上げましたように、法曹全体が、ほんとうに三者でも四者でもいいですけれども、やはり煮詰めるだけ煮詰めて、そうしてやられるということは、これは決して毛頭そんな考えございませんとか、国会軽視につながるというような、そんな問題じゃないんだというふうに考える。この点はどうも、しかし、何といっても理解できませんね。私を説得するようなひとつ発言してください。この性格上の変化というものを、あなたがもし、おまえどうしてわからぬのかというのなら、わかるように言ってもらいたい。
#226
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 小林委員を説得という、私とうていできるかどうかわかりませんけれども、ただ、私のほうでいろいろな形で発表いたしましたものとの関連において性格論が問題になっておりますので、その点に関連いたしまして、少し釈明と申しますか、説明をさせていただきたいと思います。先般、法務省のほうから提出されました資料でもごらんいただいておりますとおりに、区裁判所と簡易裁判所との違いというものは方々にあらわれておるわけでございます。裁判権の点にあらわれておる。裁判権でも、民事と刑事とにあらわれておる。数の点にあらわれておる。それから裁判官の資格等の問題にあらわれておる。さらに、民事訴訟手続の督促と申しますか、簡単な手続でやるという面であらわれておる。こういういろいろな点であらわれておるわけでございます。その中で、民事・刑事の裁判権以外の点は、当初の区裁判所と簡易裁判所の違いというものは、いまでも引き続き全然変わらずに続いておる。つまり、当初の違いがいまも違っておる、こういうことでございます。
 次に、裁判権の点につきましても、民事、刑事の訴訟以外の事件の関係につきましては、これまた当初の違いといまの違いとほとんど違いがない。当初違っておりました点と現在違っております点とまずほとんど違いがないと、こう申し上げて差しつかえないと思います。さらに、民事の訴訟の中で、特別のいろいろな権限が区裁判所にございまして、その特別の権限につきましても、当初の違いといまの違いとは全然変わっておらない。以上申し上げましたもろもろの点の違いというものを非常に高く評価いたしますれば、区裁判所と簡易裁判所の違いというものは、発足当時と現在と少しも違っておらない。つまり、それを性格づけるならば、性格は少しも区裁判所に近づいておらないし、全く性格を異にするものだと、こういうことになるだろうと思います。そして、最後に残りました民事の訴訟の範囲、それも訴訟物の価額による範囲、つまり訴額による範囲、それが変わってまいっておる。発足当時五千円でありましたのが、三万円になりまして、十万円になりまして、そして今度三十万円という提案がされておるわけでございます。御承知のとおり、区裁判所の当時は二千円であったわけでございます。で、その点で、区裁判所当時の二千円と簡易裁判所の五千円というものの比較をどう見るかということ、その比較が今日の三十万円というものとの関係でどう評価されるか、これの見方の問題であろうと思います。で、抽象的に少額の事件ということで申しますれば、これは私ども現在三十万円まで少額の事件と考えておるわけで、その点で少しも発足当初と変わるところはない、こういうことになるわけであろうと思います。しかしながら、区裁判所の当時の、これまた最初は百円で、二百円、五百円、千円、二千円となっておりますから、そのどの時点をとるかということによっても違ってまいりますけれども、しかしながら、比較的安定した時期の価額をとって、それで経済変動を合わせますれば、三十万よりもはるかに高いところになるわけでございます。そういう点では、三十万円に改正いたしましても、なおかつ区裁判所よりはかなり遠ざかっておるということになるわけであります。ただ、時点の取り方によりましては、それが変わってまいるわけでありまして、それをどう評価するか、その点を非常に重く見ますれば、発足当初の五千円より、今日の三十万円、あるいは二十九年当時の十万円というものは、若干区裁判所に近づいた、その限りでは近づいた、こういうことになるかと思うわけでございまして、その点を強調いたしました文章の場合に、いま御指摘のような、性格が区裁判所に近づくというような表現になるわけでございます。ただ、先ほど来申し上げました、その他もろもろの点におきましては少しも変わっておらないので、全体としての評価としては基本的性格は変わっていないということは間違いでないと思うわけでございますけれども、しかしまあ、いま申し上げました訴額の範囲のほうを非常に重く見ますれば、そこで少し近づいたかどうかという議論になっている。これは経済変動というものをどう把握するかということにもからんでまいりまして、そこに性格というものの表現がそういう場合適切かどうかという問題あろうかと思いますが、そういうような点で、あるいは私どもの説明もときによりましてやや混乱しているという御指摘を受けますれば、これは甘受せざるを得ないかと思いますけれども、根本のところはそういうことでございますので、ひとつそういうふうに御理解いただきたい。そうして、結局三十万円というものが今日いわゆる庶民が接近する比較的少額軽微な事件を取り扱う簡易裁判所の権限としてふさわしいかどうか、この点が三十万円がふさわしくないという御意見でございますれば、これはまあ意見が違うということになるわけでございますが、三十万円というものがそう高い額でない、少額軽微な事件の中に入るというふうな御見解であるといたしますれば、その途中の経過の説明という点では、私どもの説明も、基本的性格とかいろいろ表現を使っておりますために、多少誤解を与えるような面があったかと思うわけでございます。根本は、三十万円で一般の国民の方々が簡易裁判所へ訴えを持ち出すのにふさわしい額かどうか、そういう点でひとつ御検討いただきたい、かように考える次第でございます。
#227
○小林武君 それでは、少し別な角度からやはり問題をながめることにして、日弁連とのいままでの議論で、日弁連を納得させられなかった点はどこですか。話し合い幾らか持たれたわけでしょう。項目をあげてひとつやってみてください。どこが食い違っているのか。
#228
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 日弁連との連絡協議で問題になりました点は多々ございますが、まず一番その日弁連で基本的におっしゃいますのは、簡易裁判所の事物管轄の拡張ということは、要するに臨時司法制度調査会の意見の実現である、そうしてそれがひいては昭和三十九年十二月の日弁連の臨時総会の決議に抵触するものである、こういう点であろうと思います。臨時司法制度調査会の意見の実現であれば、なぜ不適当であるかということになりますと、この説明がたいへん長くなりますので便宜省略して、もしお尋ねがあれば申し上げたいと思いますけれども、要するに、日弁連におかれては、臨時司法制度調査会意見というものには全体的に反対の立場をとっておられるわけでありまして、その意見の中に簡易裁判所の事物管轄の拡張の問題がうたわれておりますので、それと同じ方向の案であり、この案については反対であるということであり、そうしてまたその点は、昭和三十九年十二月の臨時総会の決議に抵触をするので日弁連としては反対せざるを得ないというのがまず第一のポイントであると思います。
 それからまた、内容のほうに入りましての御意見につきましては、これは先ほど来小林委員がお取り上げになっております発足当初の簡易裁判所の性格との関係ということでございます。端的に言えば、発足当初の簡易裁判所の性格を変えることになるという御指摘になるわけでございます。
 その他の点は、まあいろいろございますが、簡易裁判所の人的・物的な機構、特にいわゆる特任簡裁判事の問題、それから判例統一の問題、六体そういうようなところが大きなポイントではなかったかと記憶するわけでございます。
#229
○小林武君 日弁連という同じ専門家の集団に対しても、いまのような問題点があるわけですからね。この点は、別に政策の違いとかなんとかいうことじゃないと思うのですよ。これは社会党と自民党との間の政策の違いとかなんとかいうことはちょっと性格が違うと思う。しかも、最近においては、同じ試験を受けて、同じところで修習をして、そうしてやるというような形になっております。いわば一体感のきわめて出るような形、そういうことでもありますし、法廷においていろいろやる仕事についても日常触れ合いが非常に強いわけですね。私はそういう点ではきわめて共通面をたくさん持っておることだと思うのです。その中でどうしても納得がいかぬということ――いまの説明では、それは私はもう正直に言って、あまり私にもはっきりした説明ではないと思うのです。もっと具体的な問題で対立しているように思うのです。あなたのおっしゃる、何か臨時司法制度調査会の意見書というものを見るというと、まずこれは反対せざるを得ないだろうと思う。この内容、初めの振り出しから見て、おしまいのほうに行ったら何だかわからなくなる。問題は、簡易裁判所が別の方向に行くというのが何だか書かれておるようにわれわれでも読めるわけですね。だから、この点について、とにかくもう最高裁並びに法務省のおっしゃることというのは、私としても筋が通っておらないと、こう見ているわけですよ。どう考えても。やはり正直に、あなたたちのところから出した文章でしょう、これ。この文章の区裁判所化してきたということを認めた上でいくならば、また別ですよ。そういう文章ではないのですか、これは。まあこれはとにかく原本からとってきたものだし、ここに引例されている点でも、「発足後年を経るに従い、次第に、いわゆる区裁判所化して」いるということが書いてある。これは最高裁の事務総局の資料によったものだというふうに、こういうように引例してあるのです。私のもその資料からとったもので、間違いない。「現在、最高裁判所事務総局で研究中であるが、法制審議会の司法制度部会においても取り上げられるもの」とあるから、これはおたくのものだと見てよろしいものだと思うのですが、違いますか。こういうことが少なくとも文字に書かれてあるのですからね、お認めになるのがほんとうじゃありませんか。その認めた上に立っての議論なら別ですけれども、いやもう事務総長の話も何も変わっておりませんという話をやるというと、これは納得いきませんよ。このことについては簡単には賛成できません。これに対して一体どういう態度をとるかというようなことをもっと端的におっしゃっていただければ別ですけれども。それ、同じことを突っついても、お答えいただくのはきまり切ったことで、何べんも繰り返しておっしゃることになるようですから、ひとつ別なことを一点お聞きしたいけれども、いまのようなことになったら、一体特任判事というようなものは、これは将来どうなんですか、必要性ありますか。私は、簡易裁判所というものが出発する当初の考え方、困難だということはよくわかります。あなたたち、困難だと、こう言っておる。やろうと思ったらやれなかったと書いてある、この速記録の中に。容易じゃなかったということを書いてあります。読むのがめんどうだから、要約して言えば、容易じゃなかった。だから、手続の上でも簡略にやろうと思ったけれども、簡略にやれない理由はここにあるとおっしゃっておる。何だってそうです。たいへんです。制度を根本的に変えるのですから。教育のことばかり申し上げてはなはだあれですけれども、教育勅語でやっておったし、勅令でやっておった教育から、教育基本法に変わるということは、たいへんなことです。そのことの上に立って教育するということは、またこれは百八十度の転回ですから、それこそ内部にもいろいろな問題が出てきますし、これはたいへんなことであったということは、皆さんも外部からごらんになってよくわかるだろうと思う。しかし、そこにおいて徹底的にその困難を追及してやられたというあとはなかった。もうすぐに方向を変えて、そして性格が変更されていったというところに、私は問題があると思うのです。もしそうであるならば、特任判事というものの必要性はどうなるのか、必要があるかないかという問題、そういうことがあるから、私は、弁護士の皆さんの中にも多少、いろいろ書かれておるものの中に、いかにも何か法律のしろうととまで言わぬけれども、法律のよくわからぬ者が出て裁判の上にいろいろな支障を来たしておるということを書いたものを若干見たのですけれども、私はそれは少しやはり言い過ぎじゃないかと思っております。新しい制度の上に立って、新しい性格を持った特任の判事の方が、いわゆるしろうととまでいかぬけれども、法というものを国民の立場に立って血の通った裁判をやるという方向では、特任判事というものは、私はむしろ、簡裁というものを拡充し、簡裁というものを充実させるという角度であったほうが民主化のためによろしいと考えられるが、いまのようなやり方であったら結局それはないほうがよい。だんだんこれはなくする方向に行くのかどうか。これはどっちのほうに聞いたらよいのかわからぬけれども、どうですか、これについては。
#230
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 性格ということばで議論いたしますと、たいへんいろいろ話がむずかしくなりますけれども、要するに少額軽微な事件を簡易な手続で処理するという限りにおきまして、簡易裁判所というものは発足当初からずっとつながってきておるわけでございます。ただ、民事で申しますれば、金額が五千円から三万円、十万円、三十万円と、いわば経済事情の変動に応じて変わってきておるわけでございまして、そういう前提をとりますれば、特任簡易裁判所判事というものも、やはり少額軽微な事件を処理するための裁判官として十分その存在意義があると、かように考えておるわけでございます。
#231
○小林武君 そうすると、これからはどうなんですか。特任判事というものは、何といいますか、だんだんふえていく。そして、先ほど来の御答弁ですというと、性格が変わっておらないとおっしゃるわけですから、そういうことになりますというと、特任判事による、国民にとっては非常に便利な、安心してある意味の相談も持っていけるような、しかも正しい裁判の手続もしてくれる、こういうものはさらに充実していく、そういうことで特任判事というものはふえていくと、こう見てよろしいですか。
#232
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 特任判事もその他も同様でございますけれども、結局りっぱな裁判官を得るということが必要でございますので、特任判事につきましても、従来いろいろ指摘をされておりますように、選考を厳重にする、また研修も十分にやる、こういう前提におきまして任用をしてまいりたい。それがふえてまいりますかどうかという点は、これは試験の成績等にもよるとございますけれども、りっぱな者がおればやはりそれはふえていくこともけっこうであろう、かように考えておるわけでございます。そして、国民の身近な裁判所ということで、ますます簡易裁判所の真価を発揮してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#233
○小林武君 簡易裁判所というものが今度改正になれば一そう、性格の問題もあるけれども、仕事の量もふえてくる。そのことについて、そこで仕事に従事している人たちの労働力といいますか、労働過重にわたるような状況がいま非常に問題になっているようでありますけれども、さような事実はございませんか。
#234
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 簡易裁判所がほかの裁判所に比較して労働過重であるとは考えておりません。特に裁判官の場合には、むしろ高等裁判所、地方裁判所に比べますれば、簡易裁判所は幾らかゆとりがある、かように受け取っておるわけでございます。
#235
○小林武君 これはやはり、上級のほうのあれから見れば、そう見えるでしょうね。なかなかしかし、ところによっては必ずしもそうでないところもあるのじゃないですか。
#236
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 定員配置等はできる限り適正にするようにつとめておりますけれども、若干のアンバランスはあるということは事実であろうかと思います。しかし、私どもとしては、絶えずそれをならしていくようにつとめておるつもりではございます。
#237
○小林武君 特任判事というのは、なる場合には、選考といいますか、試験といいますか、これはどういう手続でやられているわけですか。
#238
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 特任判事の選考につきましては、最高裁判所の規則がございます。それで、各地方裁判所に推薦委員会というものがございまして、その推薦委員会は、地方裁判所の裁判官、家庭裁判所の裁判官、検察庁、弁護士会、学識経験者、こういう方々からなっておるわけでございまして、その推薦委員会で推薦を受けました者が、最高裁判所にあります簡易裁判所判事選考委員会の選考を受けるわけでございます。で、簡易裁判所判事選考委員会そのものは、最高裁判所判事、高裁長官、次長検事、弁護士、学識経験者、こういう方々からなっておるわけでございます。そして試験の選考のやり方は、筆記試験と口述試験と人物考査、こういうようなことになっておるわけでございます。
#239
○小林武君 これはたいへんむずかしい試験だというふうに聞いているのですが。
#240
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは最近では非常にむずかしい試験だというふうに評価されておると私どもは考えております。しかしまた、弁護士会のほうからは、やはり選考に問題があるということになると思いますが、選考判事についての御指摘は結局そこに帰すると思うわけでございます。と申しますのは、結局、発足当初に一挙に多数の簡易裁判所ができ、また一挙に多数の簡易裁判所判事を確保するために、いまから見れば幾らかゆるやかな選考が行なわれたようでございまして、その御印象が弁護士会等では非常に強いのではないかと思います。しかしながら、ここ十数年来は非常に厳格な試験になっておるというふうに私どもとしては考えておりますし、また職員もかなりそう受け取っておるようでございます。で、きわめて例外的なことではございますけれども、司法試験に通りまして、この選考に落ちた者もあるというふうにも聞いておるわけでございます。
#241
○委員長(小平芳平君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#242
○委員長(小平芳平君) 速記を起こして。
 暫時休憩いたします。
   午後三時二十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時二十分開会
  〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
#243
○理事(山田徹一君) 法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#244
○松澤兼人君 これまでの質疑応答の中で、やはりこの法案の持っております一番大きな問題点は、日弁連、いわゆる弁護士の諸君と裁判所側との間で対話が断絶したということが非常に大きな問題だと思うのであります。前回も亀田委員が、特にもし弁護士側が希望するならば、裁判所側として話し合いをする意図があるかという念押しの質問に対しましても、裁判所側としては、もう時期がおくれている、このままでやはり法案の成立をはかりたい、こういう御意思のようでありますけれども、そういう断絶の間にこの法案がかりに成立したといたしますと、今後の裁判の運営についてはたして弁護士側が十分に協力することができるかどうか、あるいは協力を期待することができるかどうか、この問題が、われわれ法案の審議にあたりまして、委員が一様に持っている一つの不安であると思うのでありますが、あらためて、今後どういう機会にどのような形で話し合いを再開するお考えなのか。連絡協議会というものがこのまま、断絶のままで、法案の成立及び公布実施ということになった場合に、どのように裁判に影響があるとお考えでございますか、その見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
#245
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま松澤委員からお話のございました点は、私どもといたしましても、今後とも日弁連とは十分お話し合いを続けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。遺憾ながら、この法案の立案の過程におきましては、最終的に意見の一致を見て御提案いただくということになりませんでしたけれども、しかしながら、今後かりにこの法案が法律として制定いたされました場合、この法律の運用の問題をも含めまして、司法制度全般の問題にわたり、日弁連とは十分お話し合いを続けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。それにつきましては、現在のところは連絡協議の委員の方は任期満了になって後任の選任されておられない方もあるようでございますが、しかしながら、窓口は、一応私のほうは総務局長が担当いたしておりますし、日弁連のほうにも連絡小委員という方がおられるわけでございますので、そういう方々を通じまして連絡協議の再開ということについてお話し合いをしてまいりたい、かように考える次第でございます。
#246
○松澤兼人君 それでその時期は、この法案が成立いたしまして、公布され実施に移されるという段階まで、まあそういう期限をつけるということはどうかと思いますけれども、できるだけすみやかな機会ということになれば、法案の施行というそれが最も適当な時期ではないかと思いますが、われわれが受け取る場合において、すみやかに、あるいはできるだけ早くということが、法案施行の時期まで、そういうふうに考えられますが、それは困難であるということになりますか。
#247
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 連絡協議の委員は、私どものほうは事務総長以下事務総局の各局長ということになっておりまして、これは委員はそろっておるわけでございます。したがいまして、私どものほうとしては何どきでもお話し合いできる体制にあるわけでございます。ただ、日弁連のほうは、各界から御選任になるように伺っておりますので、その御選任の手続等があろうと思いますが、しかし、日弁連のほうで御準備が整いますれば、そうして小委員会で開催の日時、場所等についてお話し合いができますれば、できるだけ早い機会に開くことにもちろん異存はない、そういうことを希望しておる次第でございます。
#248
○松澤兼人君 それでは、その話し合いの再開といいますか、協議を始めるという連絡協議会という形は、法案成立したまあできるだけすみやかな機会に裁判所側からおやりになるお考えでありますか。
#249
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、私どもとそれから日弁連の主として直接の窓口を担当されます事務総長といろいろな機会に接触いたしておりますので、そういうところを通じましていろいろお話し合いをしてまいりたい、一応かように考えておる次第でございます。
#250
○松澤兼人君 私個人の考えなんですけれども、日弁連のほうでは、ただ金額を十万円、三十万円という問題でなくて、裁判制度あるいは司法制度そのものに対する変革が行なわれるであろう、その結果国民の裁判に対する信頼が低下するのではないかということを非常に心配されているように考えられるのであります。私たち委員の立場から考えてみると、この特別国会で無理やりに、あるいは是が非でも成立させなければならぬという緊急差し迫った性質のものでないように思うのでございます。非常に急がれるということ、つまり、一方では弁護士の諸君との話し合いを断絶させたままこの特別国会で是が非でも成立させなければならないという、そういう差し迫った事情というものはどういうところにありますか。
#251
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまの松澤委員の御意見も、まことにごもっともでございますが、私どもとしては、この問題は四、五年前から取り組んでまいり、また二、三年面からは日弁連ともお話し合いを続けてまいった事項でございますし、そうして、日弁連と意見は一致いたしませんでしたけれども、論点もはっきりいたしてまいっておる次第でございますので、この上話し合いを続けましても日弁連との間で意見の一致を見るということはなかなかむずかしいかもしれない、かように考えるわけでございまして、そこで国会において御判断をいただく、こういう時期に参っておるのではないか、かように考えたわけでございます。
#252
○松澤兼人君 そこで、いまお聞きしました、どうしても特別国会で成立させなければならないということは、あした一日だけであります。成立させなければならない緊急差し迫った問題というのはどういうことですか。四年前から話があったということはよくわかります。しかし、あしたで期限の切れるこの特別国会でぜひとも成立させなければならないというほど差し迫った問題ですか、ただ乗りかかった船だからこの国会で何とか成立にこぎつけたいという便宜的な意味だけですか、その点をひとつ。
#253
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 御承知のとおり、昭和二十九年以来現在の制度でやってまいっておるわけでありまして、経済事情の変動はすでに数年前から感じておるところでございます。そうして、三十万円になりますれば、その程度の事件について国民が簡易裁判所へ訴えを起こすことができるという利益を有することができるわけでございまして、他面、裁判所の面から見れば、地方裁判所と簡易裁判所の負担の調整というところにかかってまいるわけでございますので、そういう点をいろいろ総合いたしまして、ぜひこの国会で成立をお願いしたい、かように考えておる次第でございます。
#254
○松澤兼人君 まあ、せっかく法案が提案され、衆議院を通って参議院に来たわけですから、事務的に考えてみれば、この国会で成立するとしないとでは裁判所側としては非常に大きな得失があるわけですから、その気持ちはよくわかるわけですけれども、一方、日弁連のほうと話し合いの急につく見込みがない、つまり断絶したままで、いわば裁判所の一方的な力によってこの法案の成立をはかるということは、法曹一体化ということから考えてみても、どうも片手落ちのような気がするのです。私は先ほども、法律の施行前にということを言いまして、それも困難であるというようなお話を承ったのでありますけれども、かりにこれが、この特別国会でなくして、来たるべき通常国会で成立されるなんということであれば、十分時間的な余裕もあるわけであります。それまで待つことができないという緊急性というものがあるかどうかということをお聞きしておるわけです。
#255
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまの松澤委員の御意見も、まことにごもっともでございますが、しかしながら、私どもといたしましては、これまで十分に、いろいろ弁護士会にも御説明してまいったところでございますし、また、いま松澤委員から御指摘のとおり、衆議院でも慎重に御審議をいただき、さらに当院においても十分時間をかけて御審議をいただいておりますので、この国会で結論を出していただきますれば、まことにありがたい、ぜひそのようにしていただきたいと希望する次第でございまして、さらに、この法案が成立いたしました暁に、いろいろの運用問題その他につきまして弁護士会と話し合うということにつきましては、繰り返して申し上げましたとおり、前向きで対処してまいりたい、かように考える次第でございます。
#256
○松澤兼人君 裁判所の側は、いわゆる司法制度あるいは裁判制度の根幹に対して変革を与えるものでないという立場をとっておられるわけでありますから、この際乗りかかった船で、ここまで来たものであれば、ぜひとも今国会で成立させたいという気持ちは、よくわかる。しかし、何と申しましても、それは拙速ということではないかと思うんです。ですから、少し時間がかかっても、十分に在野法曹の意見を聞いて、納得の上で法案の成立、施行に臨むということが、法案そのものの成立よりも、法律の運用の面において非常にプラスになるのじゃないかということを考える。いま御答弁の中で考えましても、緊急性というような、あるいは差し迫った問題であると、これはこうしなければ絶対に裁判が維持できないというほど差し迫った緊急性というものをどうしても了解することはできないのです。この点、繰り返してお尋ねいたします。
#257
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 差し迫った緊急性というお話になりますと、確かにいろいろな考え方があり得るかと思いますけれども、しかしながら、私どもといたしましては、従来からの弁護士会との折衝の経過及び衆議院及び当院における御審議の経過にかんがみまして、御結論を出していただきたいということを希望する次第であります。
 なお、弁護士会におかれましても、これは先ほど小林委員のお話の中に、機関決定というお話もございましたけれども、しかしながら、いろいろ伺っておりますと、いろいろな御意見がある。それは必ずしも機関決定に反するものとしての御意見というほどでもないように伺うわけであります。つまり、どこに機関決定があるかということにもいろいろお話があるようでございます。しかし、そういうところは弁護士会のことでございますから、私どものほうでとやかく申し上げることではございませんけれども、いろいろ私どものほうの受け取ります声の中にも弁護士さんの声もあるわけでございまして、今後この運用について十分お話し合いをすべきことは当然であると思いますけれども、法律案につきましては、ぜひお願い申し上げたいと、かように考える次第でございます。
#258
○松澤兼人君 何か、日弁連の中で、人によってはこの法案に必ずしも反対ではない、どこに主体性があるのか明確でない、言ってみるならば、日弁連を相手にしても信頼ができないというようなお話のように私は受け取ったのです。相手の日弁連というものを裁判所側でそういうふうに考えていたために、これまで話し合いができなかった。そういう考えで今後折衝しても、やはり話し合いがつかないということになるのじゃないですか。ひょっとするとこれは日弁連という団体に対する内政干渉みたいなことになると思うので、その点はちょっとわれわれも国会の答弁として受け取るわけにはいかないと思うのですが。
#259
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私の申し上げましたことが日弁連の内政干渉のような趣旨にお受け取りいただいたといたしますれば、それは私の本意ではございませんので、御了解いただきたいと思います。ただ、衆議院の法務委員会で、参考人としておいでになりました日弁連の代表の方々の中に、そういうような御意見の方も出ておりますし、またいろいろなものに書かれておりますものの中にもそういうことが出ているわけでございます。一々引用することは省略いたしますけれども、そういう声もあるということを申し上げたつもりでございまして、決して私ども、日弁連と話し合いをするについて、先方が責任体制にないというようなことを申し上げておる趣旨ではございませんので、その点は御了解いただきたいと存じます。
#260
○松澤兼人君 それじゃ、あらためてお聞きいたしますけれども、いま私が申し上げたのは私の主観かもしれません。しかし、裁判所側としては、日弁連という団体の正規の機関で決定されたものが――日弁連の代表であるその人と話をする以外には正規のルートはないというふうに考えるべきではないかと思うのです。いろいろの団体が入っているとか、あるいは個人的にこの法案について日弁連の中にいろいろ御意見の食い違いがあるということを理由にして、過去に話し合いができなかった、将来も話し合いができないだろうというふうに予想されることが、適当でないということを申し上げておるわけです。相手方の団体の正規の機関によって選挙され、決定された者は、その団体の正規の代表者であると、こうお考えいただかなきゃならないし、もちろん裁判所側としてもそうあるべきものだと思いますが、その点ひとつはっきりとお答え願います。
#261
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、別に今後とも日弁連と話し合いが困難であるとは考えておりませんし、さように申し上げたつもりもないわけでございます。ただ、この問題につきましては、日弁連から参考人として御出席になりました方が、衆議院の法務委員会で、理事会の結論、それから正副会長会議の結論、それからいわゆる合同会議の結論というものを区別して御説明になっておりまして、まあ私ども内部のことに詳しくございませんから、そのいずれが決定的な正規の機関であるかということについて十分には承知いたしておりませんけれども、しかし、その間にいろいろな御意見の差があったというようなことも伺っておりますものでございますから、そこでまあ最終的な決定機関がどういうふうになっておるのかということについて十分には承知いたしてない面があると、こういうことを申し上げたつもりでございます。で、まあ、たとえば理事会できまったということになりますれば、これはもう言うまでもなく、決定機関でございましょうから、そのお話に従って、私どももまた、意見が合うか合わないかは別として、お話し合いをする、こういうことになろうかと思いますが、そういう趣旨であって、実は私が申し上げていることではございませんで、そういうような参考人のお話もございましたので、申し上げたような次第でございます。
#262
○松澤兼人君 これはあなたのお話というふうに私も受け取りませんけれども、しかし、そういう答弁の中で、意見の食い違いがあるとか、いろいろ意見が多岐にわたっているとかいうことを、この委員会の答弁の中で、まあ強調もされないでしょうけれども、そういう点を取り出して御説明、御答弁になるということは、やはり向こうの団体に対する信頼性とかあるいは信用性というものが十分に裁判所側に把握されてないんじゃないかという気がするんです。この点を心配しますから、率直に、相手方の正規の団体あるいは正規の機関で選出され、決定された意見ならば、それを信用して、信頼して話し合いをすべきである。ほかにいろいろの意見はあるでしょう。けれども、正規の機関で決定し、そして選出された代表、その人に対して率直に意見の交換をするということがやはり話し合いの筋道ではないかと思うんですが、そうじゃないですか。
#263
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの松澤委員のお話は、お話のとおりであろうと思います。私どもも、今後ともさようにやってまいりたいと考えております。
#264
○松澤兼人君 先ほどもちょっと拝見したのでありますけれども、大阪の裁判所の増改築で裁判所の分館のようなものがちょっと遠いところにできた。これも、在野法曹あるいは弁護士会に相談があれば適当な知恵もかしてあげられたのに、裁判所だけで位置の決定をして、そのために裁判の遅滞というものが目に見えるようになってきたというお話もありますが、やはり建物一つを建てるのでも、そういったようなあらかじめ在野法曹と十分にお話し合いをして、そうして協力を得て裁判所の位置をきめるとか、あるいは増改築といったようなこと――これはもちろん行政上の権限であろうと思いますけれども、協力があることとないこととでは運営の面で非常に大きな違いがあると思うんです。そういう事実はお聞きになったことはあるんですか。
#265
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、あるいは所管としては経理局長の所管かとも存じますが、私たまたま当時大阪の裁判所に勤務いたしておりましたので、ある程度経過を存じておりますが、伺っておりますと、事前に十分な御連絡をしなかったように聞いております。
#266
○松澤兼人君 そういうことはあまり好ましくない。本来ならば、やはり十分な協力を得た上で増改築にかかるべきである。しかし、もちろん、協力、相談でありますから、建築の問題についてどうこうと弁護士会のほうでもおっしゃるはずもないと思いますけれども、そういうことがいまだに尾を引いて、そういうことが裁判の遅滞とかあるいは遅延とかということになってくるのじゃないかと私は思うのですけれども、今後もやはり、そういう一つの建物の問題でも、協力を得ることと得ないこととでは大きな相違があると思うのです。そうじゃないですか。
#267
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 現在各地方には、司法協議会でございますとか、あるいは第一審強化方策協議会でございますとか、いろいろな機関がございまして、そういうところでいわゆる法曹三者がお話し合いをしておるわけでございます。ただ、先ほど来松澤委員からお話のございました大阪の増築の場合には、大阪の事件の関係が非常に急迫を告げておりまして、そのために性急に何らかの方策を講じなければならない。それにつきましては、大阪の裁判所としては、最高裁判所に上申をするというようなことで、いろいろ裁判官会議等を開いて検討いたしたわけでございますが、そういう間に、最高裁との折衝等に非常に急を要しました関係で、あるいは所長のほうから十分に御連絡をすることをしなかったのではないかというふうに考えるわけでございまして、一般論といたしまして、こういう問題についていろいろ弁護士会の御意見を伺うということは必要なことであろうと、かように考えるわけでございます。
#268
○松澤兼人君 先般、裁判所の増改築の問題について資料をいただいたわけでありますが、そのときに、たしか六割程度は増改築の必要がないというお話であったと思うのですけれども、そういうことでしょうか。
#269
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判所といたしましては、簡易裁判所、地方裁判所、その他の裁判所で、毎年新営あるいは増築をいたしております。大体ただいま御指摘の六割、あるいはそれ以上の整備が一応済んでいる、かように考えている次第でございます。
#270
○松澤兼人君 大体年次計画で増改築を必要とする庁舎というものはつかんでいらっしゃると思うのです。あと先はあるでしょう。年次的に、どことどこを今年度でやる、どこは来年度だというようなことで計画を立てていらっしゃると思うのですけれども、毎年度におけるその増改築あるいは新営ということになりますか、そういう費用の大まかな見積りはどのくらいですか。
#271
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) まず計画でございますが、私どもといたしましては、大体五年ぐらいをめどにいたしまして一応の計画を立てております。最近では、もう五年計画のうちの二年を経過いたしましたが、昭和四十六年度から昭和四十八年度までの三カ年間におきまして新営、整備するといったような一応の目標を立てているわけでございます。その目標と申しますのは、戦前及び終戦直後までに建築されました庁舎、これを昭和四十八年度までにはぜひ新営、整備の予算的な措置を講じたい、かように考えまして、現在、約百庁ばかりでございますけれども、それを整備いたしたいと、かように考えております。
 それから、毎年の営繕費の大体の額でございますが、最近におきましては、一年間に約三十八億というふうに相なっております。
#272
○松澤兼人君 まあ、毎年度三十八億で新築、増築、あるいは改築、こういうことをやられて、非常に見違えるほどりっぱになった庁舎も見受けられるわけでありますが、今後裁判の遅延を防止してできるだけこれを促進するということのためには、やはり入れものである庁舎、それから能率的な運営をする人――裁判職員、こういうものが両々相まつ必要があると思うのです。三十八億毎年使うとして、一庁舎に対する建築費というものは十分まかなっておられるのですか。
#273
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) これは裁判所の規模の大小その他によりまして、高等裁判所、地方裁判所――地方裁判所の場合におきましては甲号支部、乙号支部、さらに簡易裁判所と、それぞれ規模が違うわけでございますが、私どもといたしましては、職員の数なり事件数なりその他の事情を十分に勘案いたしまして、従前よりもはるかにりっぱな余裕のある建物を建築したいと考えまして、予算要求もいたしておりますし、現にそういうように十分な予算の獲得に、毎年その実現につとめておる次第でございます。
#274
○松澤兼人君 私聞くところによりますと、この庁舎の新営について各方面に寄付の割りつけをするということを聞いているのです。ここにそのデータがありますけれども、こういうような各裁判所とも、足らない分は地元の地方団体であるとかあるいは会社、まあ法人、個人、そういうものに寄付の割りつけをなさるのですか。
#275
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) ずっと前におきましてはそういう事例もあったように私どもも聞いておりますが、それははなはだ遺憾なことでございますので、最高裁判所といたしましては、およそ寄付の採納につきましてはこれを十分に抑制するという方針でございまして、少なくとも現在建築しつつあります建物につきまして、ただいま御指摘のような寄付を求めたり、あるいは任意的なものであるにいたしましても、そうした寄付にたよるということは一切いたしてございません。
#276
○松澤兼人君 ずっと前ということですが、四十三年、四十四年はずっと前に入りますか。
#277
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 四十三、四年のことにつきましては、具体的に私ども承知いたしておりませんが、何かございましたらまた調査いたします。
#278
○松澤兼人君 私の知っている裁判所でりっぱな庁舎ができた。それで、裁判所のほうから祝賀金というようなことで三百万円ほどの協力要請があった。実際には三百万円はできないで二百四十万集まったということを聞いているんですが、こういうことがお耳に入ったことはないですか。
#279
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 承知いたしておりません。
#280
○松澤兼人君 そういう寄付を要請するということは、裁判所だけのことでやっていいことですか。
#281
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほど申し上げましたように、寄付を求めたりあるいは寄付を受けるといったことは、私どもといたしましては、裁判所の場合特にはなはだ好ましくないことでございますので、これは厳に慎しまなければならないことであると考えます。ただいま四十三、四年のことにつきまして御指摘がございましたが、私どもは、さようなことがないように、今後とも十分に全国の裁判所に対しまして注意をいたしたいと、かように考えます。
#282
○松澤兼人君 今後じゃない。前にはそういうことがあったとおっしゃるから、四十三年、四十四年は前であるかどうか。前じゃないでしょう。
#283
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 四十三年は確かにごく最近のことでございますので、もしそういうことがありましたといたしますれば、はなはだ遺憾なことであると存じます。私が先ほど以前と申しましたのは、それよりも以前にそうした事例があったやに承知いたしておりますので、そういったことははなはだ遺憾なことである、かように申し上げた次第でございます。
#284
○松澤兼人君 私金額を言いますと、三百万円裁判所から要請があったと、それで実際には二百四十万しかできなかった。それはその内部のいす、カーテン及びその竣工式の費用ということに充てられたと私は聞いた。いすやカーテンなどというものは、当然、これは新営費ですか、営繕費の中に入ってしかるべきじゃないか。そんなものをあなたのほうで査定で、いすはよろしい、カーテンはよろしいということにはならないと思うのですよ。
#285
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 御指摘のように、庁舎新営の場合には、そういう備品でございますとかあるいはカーテンといったようなものは、当然裁判所のほうで予算的にまかなう筋合いのものでございます。これを寄付に仰ぐといったようなことをすべき筋合いでないことは、まことに御意見のとおりであると存じます。
#286
○松澤兼人君 せっかく私その問題を出しましたから、もう少し。まあ三百万という目標額に対して、地元はこれ何とか協力しなければならぬということで二百四十万だけは協力したわけです。で、いま申しましたように、法人、個人、それから調停委員にまで寄付を依頼している。調停委員なんという方々は、これは全く名誉職でやっていらっしゃる人でしょう。そういう人に寄付を要請するということは、これは適当であるとはどうしても考えられないし、そういうことをお聞きになっていらっしゃらないということはふしぎだと思う。
#287
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) そうした事実をただいま初めて伺ったわけでございますが、そうした事実がございますといたしますれば、まことに遺憾なことでございまして、はなはだ申しわけない次第だと考えます。
#288
○松澤兼人君 それで、そういう会社、それから個人、調停委員、それから地方団体、そういうところへ割りつけですよ、実際。これはどこまでも任意であったとおっしゃるかもしれないけれども。それをその地元としては、まあせっかくりっぱな庁舎もできたことだし、裁判所側からそういうことを頼まれたのだから、協力しなければならない、こういうことになるわけですね。拒絶ができないところへ割りつけの依頼をするということは、これは全く、その権限というか、権力をかさに着たふるまいじゃないかと、こう思うのです。さらにひどいことは、地方団体に割りつけられた金です。その金がギャンブルの益金をプールしてある、そのギャンブルの益金の中から負担しているのです。これはおもしろいことですか。
#289
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 寄付につきましては、任意に寄付のお申し入れがございましても、これはお断わり申し上げるのが筋合いだと、かように考えるわけでございまして、まして裁判所のほうからそういう寄付を割りつけるといったようなことは、はなはだ好ましくないことでございます。ただいま仰せのごとく、そうしたことははなはだ遺憾な次第であると、かように考えます。
#290
○松澤兼人君 まあその裁判所は、地方団体に応分の協力を願う、こういうふうに言ってきている。ある町村は、郡という単位でギャンブルの益金を保管しているわけです。それで、たとえばだれか転任したという場合には、せんべつ金として、そのギャンブルの益金の中から一万円とかあるいは五千円とかというふうなものをプールして支払う。それで町村の割り当てはない。裁判所ともあろうものが、そういうギャンブルの益金から、そういう寄付の申し出をして、その金を受け取るというようなことは、これは全くけしからぬことだと思う。その金額は、ある郡では三十五万。その下に幾つかの町があるわけです。それをプールしたものが、郡の町村長会議というような名前で、そのギャンブルの益金を保管していて、いま言ったような費用がある場合に、そこから出している。そこから出したものが裁判所に行っているということは、これは驚くべきことではないですか。
#291
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) さらにいろいろ詳細な事実を承りますと、私どもといたしましても、もしそれがそうした事実であるといたしますと、まことに驚くべきことである、かように考えます。
#292
○松澤兼人君 逆に申し上げますと、そのプールされた町村会の支出金の中で、二十五万円、神戸地方裁判所洲本支部庁舎お祝い、こう書いてある。これは、ギャンブルの益金を保管した、その金の中から二十五万円が裁判所の新築祝いに支払われているわけです。裁判所はそういうことを御存じないでしょうけれども、無理な寄付の中請をすれば、そういうことにならざるを得ない。どこの町でも、どこの村でも、そんな裕福な金を持っているわけじゃありません。一般経費の中から出すには町村の財政が非常に貧弱であるから、一応ギャンブルの益金がそこにプールされて、そういう共通の交際費的なものは、そのギャンブルの益金の中から処理しよう、こういう趣旨でプールされて保管しているわけです。こっち側の書類にはちゃんとそれが出ている。裁判所のほうは知らないと言えばそれで済むかもしれません。しかし、あなたはいまそういう新営費というものは十分にめんどうを見ているとおっしゃったけれども、実際にめんどうを見ていないのじゃないか。聞くところによれば、あるいはその費用がカーテンの費用になったという、あるいはいすの費用になったという、そういうことは当然裁判所として見るべき問題ですよ。多少竣工式に町長が一封持ってくるというようなこととはまた別です。別ですけれども、ある郡に対しては二十五万円――ある郡といっても、郡はありませんから、町村です。そこに三十五万円。名前も出ましたから申し上げますけれども、洲本もやはり応分の協力をしている。これは、ギャンブルの資金からではない、一般経費から出しているわけです。それだけ無理をしなければ金が集まらない。言えば簡単に出るとお考えかもしれませんけれども、それは権力をかさに着た地元に対する圧迫だと言わなければならない。そういう事実を全然お知りにならないのですか。
#293
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほど申し上げましたように、今日ただいま初めてお伺いした事実でございます。いろいろこの問題につきまして、初めて場所が洲本であるといったようなことまで判明いたしたわけでございますが、裁判所の庁舎の新営につきましては、もとより、先ほど申しましたように、建物あるいは備品に至るまで、もちろん場所によりまして備品まで全部一挙にそろわないところもございますけれども、そうした機会における整備といったことに心がけている次第でございまして、再々繰り返して申し上げましたように、寄付を求めましたり、あるいは寄付のお申し出をお受けするといったようなことは、今後とも十分に戒心して疑惑を招くようなことのないように一そう周知徹底をいたしたい、かように考えます。
#294
○松澤兼人君 ついでだから申し上げます。ある郡では二十五万円、これは申しました。それからある郡では三十五万円、そうしていま名前が出ました洲本市は四十万円、これは先ほど申しましたように一般会計から支出されております。祝い金として支出されております。その予算はちゃんと議会に出るわけです。決算もおそらく出るでしょう。市民がそれを見て、裁判所の新営はけっこうだけれども、なぜ洲本市がいすやカーテンの費用を四十万円も持たなければならないか、そういう疑惑が起こってくることは必然だと思うのです。
 それからもう一つ、たとえば、名前が出たから申しますけれども、洲本の近所には非常に大きなある電機会社がある。そこではカドミウムの問題が公害として起こったことがある。これが、もし地元の住民が会社を相手どって、そうして損害賠償を取るというような訴訟でも起こした場合には、まさか裁判所がその法の運用に対して会社側に味方をするということはあり得ないことだと思いますけれども、まあ人間的に言うならば、あるいは人情的に言うならば、それはそうだけれどもというような気持ちにならざるを得ないでしょう。何かしらやはり地元の会社あるいは法人というものはそういうことによって多少の利益を得たいと思うし、もしくは何らかの反対給付というものをそれとなく期待するということは、これは人情のしからしめるところだろうと思う。裁判の公正まで私は疑いませんけれども、しかし、そういうことは、瓜田の履といいますか、あるいは李下の冠といいますか、当然これは、そんな金が足りなければ、古いいすを使っていたらいいでしょうし、カーテンだって、別に夜そこに寝泊まりするわけじゃない。なければないで済みそうなものだ。それまでにして、そうして新営を誇るということではないと思いますよ。この話、もちろん私が言っただけですから、あなたは私の言ったことを信用しないかもしれない。しかし、いま申しましたように、二十五万円というものが、この競輪の益金の中、それをプールしたものから出ているということが、反対の資料でちゃんと出ている。これは否定できない。これは各町の町会なりにこのプールされた金の使途というものがちゃんと行っているわけです。ですから、町会の人は、少なくとも二十五万円神戸地方裁判所洲本支部の新営の祝い金として出たということは知っているわけです。これは否定できない。あなた方知らぬだけのことです。こういうことで新営を誇るとか、あるいは増改築をやったというようなことは、結局弱い者いじめにならざるを得ないでしょう。私もうこれ以上言いません。ひとつ詳細に調査して、私の言ったことが間違いかどうか。そのほか、たとえばバス会社から裁判官等に対して無料パス等が渡されているという話も聞いております。裁判官が出張する場合には、出張の旅費というものはつくのでしょう。それはパスはあったほうがいいでしょう。けれども、やはり裁判官というものは、まあ清貧に甘んじてでも法律の正義を守るということがいままでの裁判官の一つの心がまえだったと思う。バスの場合でも、どちらが先に言ったか知りませんよ。しかし、渡っていることは私は事実だと思う。国からはやはり出張旅費とかあるいは旅費というものが出ている、そして一方はそういう交通費、まあ自由なパスを受け取っているというようなことでも、私はどうも裁判官としていわゆるモラルの上からいって欠けている点があるのじゃないかと思うのです。これは事務総長にひとつ御意見なりあるいは御感想なりを承り、この問題については徹底的に調査して、そしてそういう事実があったとするならば、今後どうするかということをひとつお聞かせ願いたい。
#295
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 先ほど来お話を伺っておりまして、そういう事実があるということになりますと、これは裁判所にとって非常に遺憾なことでございます。最も清廉であるべき裁判官に対する世間の信用を傷つけるのもはなはだしい事柄だと思います。さっそく厳重に調査して、その上で事実を確かめまして処置をとりたいと、かように考えております。
#296
○松澤兼人君 そのほかいろいろと裁判官の問題について聞いておりますけれども、それは個人的なことかもしれませんので、その点には触れません。裁判所として、あるいは制度として、そういうことはあってはならないことですから、厳重に調査の上、どういう処置をとるか、報告、またお知らせ願いたいと思う。
#297
○亀田得治君 関連して。先ほど来の質疑で出たこと、私も初めてで、松澤委員から聞いたことですが、これはそういう町村の書類にまでちゃんと出ておる問題ですから、おそらく間違いないんだと思います。裁判所としてそういうことを否定されておるのであれば、ただそういうことをしたことに対して今後注意するようにとか、そういうことでは私は済まぬのではないか。受け取ってならぬものがちゃんと裁判所の中にいつまでもあるというのは、おかしいのですね。だから、当然これはもとに戻すべきではないか、筋からいって。戻し方については、いろいろ何となしにそれがばけておるのか検討しなければいかぬだろうと思いますけれども、調べた上で対処するとおっしゃいますが、従来のやり方は、まあ注意をするとか、一般に対してもこういうことはいかぬという通達を出すとか、それじゃ私は筋が通らぬと思うのです。やはりもとの状態に戻さなければいかぬと思うのです。事務総長、どうですか。
#298
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) ともかく、一応事実を厳重に調査いたしまして、その上で裁判所らしい態度をとりたいと思います。四十三年、四十四年ということでございますが、おそらく当時の最高の責任者である高裁長官、所長はかわっておるのではないかと思いますけれども、そういうこととは無関係に、事実は事実としてはっきりさして、そして裁判所らしい態度を明白にいたしたい、かように思います。
#299
○亀田得治君 国会も済んでしまうわけですが、裁判所らしいということは、事実がはっきりすれはもう戻すと、うふうに理解しなければならぬと思いますね。受け取ってしまったものはしかたがない、それじゃ普通のどこかの処理と同じであって、裁判所らしいという感じは一つも出てこぬと思います。そこを聞いておるのですが。
#300
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) ただいま事務総長から申し上げましたとおり、まず厳重に調査をいたしますが、そのあとの処置につきましては、私どもといたしましても、いろいろ知恵をしぼりまして、何らかの具体的適切な、最も適切な方法を考えたいと思います。いすあるいはカーテンといったような現物をお戻しするといったようなことが適当であるか、あるいはその他さらに適切な方法がありますか、そうした点をさらによく考えたい、かように考えます。
#301
○亀田得治君 ちょっと関連質問だから、あるところで私もちょっと疑問を持った問題があるものですから、ついでにお聞きしておきますが、裁判官の転任の場合ですね、普通のつき合い程度の送別会ということは、これはまあ別に非難さるべきことでも何でもないと思うのです。しかし、相当多額なせんべつ金が出るというふうな問題は、これはどういうふうに最高裁として扱っておるのですか。
#302
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 転任の際にそういう多額なせんべつが出たということは、実は全然耳にいたしておりません。もし何かお示しいただければ、もちろん十分に調査いたしたいと思います。
#303
○亀田得治君 これは何ですね、ほかの官庁の場合には、検察庁の調べを受けて、そうして刑事事件として追及されておる場合もあるわけです。裁判所はそれを裁判しておるわけです。程度がどこかというふうなことで議論が大いにありますが、だから、この庁舎に関する寄付といい、そういう転任なんかの際における送別会というものではなしに、せんべつ金、これは金額が相当張ってくるとやはり問題になろうと思います。これもなかなか、名前出しにくいわけですが、私もそういうものを現実に礼状を見たことがあるわけです。なるほどこういうことをやっているのかなと、そのときは思っておりました。いまでも覚えておりますよ、ここで言えばわかるはずです。弁護士会にちゃんと張ってあるわけだ、掲示板に。多額のせんべつをいただきと、こう書いてある。これはまあ少なくても、礼儀上多額と書いたものか、ほんとうにこれは多額なのか、そこまでは本人に聞いているわけじゃありませんし、そこまでせんさくするつもりもないが、ただそういうことについて何か最高裁としてきちんとした一つの考え方でも出して、行き過ぎがないように、誤解を受けることがないように、どういったようなことをしておるのか、しておらぬのか、それはもう裁判官の良識にまかしておるというのか、その辺のところをちょっとお聞きしたいわけなんです。
#304
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 裁判官の良識として、そういうことはあり得ないというように私ども実は考えておりまして、いま伺ったことがもし事実とすれば、非常にこれは申しわけないことでもございます。したがいまして、先ほどと同様に、十分に事実を調査いたしまして、そして、そのようなことがあるとすると、最も適切と思われる措置をとらしていただきたい、こう考えるわけでございます。
#305
○亀田得治君 その適切というのは、どういうことなんですか。ぼくら、もう単純に、それはもとへ戻すことであると思う。多少かどが立って、出したほうから見れば失礼に当たるかもしれぬが、そういうことが問題になってくれば、やはりきちんとしておかなければいかぬものだと思います。必要があれば、それはお名前をお知らせしてもいいですよ。
#306
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) この委員会でなくて、また別途のところでお知らせいただければ、きわめてありがたいと思うわけでございますが、返すとかというような点も、まことに亀田委員の仰せのとおりではなかろうかというように現在のところは考えているわけでございます。
#307
○小平芳平君 時間もおそくなりましたのと、それからこの法案に対する質疑もずっと長く続けられてきておりますので、また私もきわめてしろうとでありますので、簡単にお伺いいたしたいと思います。
 まず初めに、小林委員から先ほど質問のあった、それに対するお答えとして、簡易裁判所の性格は少額軽微の事件を簡易迅速な手続で扱う、この少額軽微と簡易迅速ということは変わらない、一切変わらないということでありますが、それでよろしゅうございますね。
#308
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判所としては御指摘のとおり考えております。
#309
○小平芳平君 そこで、この三十万円がはたして少額軽微かどうか、そこは意見の分かれるところだとおっしゃったのですが、初めに、この少額軽微ということがはたしてどうかという点について考えますと、これは過日委員会で後藤委員から御指摘があったのですが、たとえば昭和二十二年の五千円が今日昭和四十五年まで固定されていたらどうか、あるいは昭和二十六年の三万円が今日まで固定されていたらどうかということになりますと、やはり少額軽微というものが必ずしも十万円に固定されなければならないということもないと思うのです、それは。そういう点については、やはり国民にかえって不便をかけるという点もわかると思います。ただ、この三十万円ということは、法務省の説明でも、あるいは最高裁の説明でも、はっきりした根拠はないわけですね。まあばく然と、国民総生産も何倍になった、国民所得も何倍になった、物価も何倍になったということで、三十万円というものが必ずしもかっちり計算に出るものではない。それにもかかわらず、ただ今回の改正は、物価にスライドするだけなんだと、こういうふうに答弁をなすっていらっしゃるわけです。その辺がどうもわれわれしろうとにはよくのみ込みかねるわけですが、結局手っとり早く言って、三十万円というものは、二十九万円でもいいし、三十一万円にもなり得ると、そういう金額なんでしょう、そうじゃないですか。
#310
○政府委員(影山勇君) 過日の答弁にも申し上げましたように、三十万円を示す、それだけで示す指標というものはございません。ございませんけれども、過般来説明しておりますような種々の統計の示すところによりまして、三十万円を妥当というふうに考えたわけでございます。
#311
○小平芳平君 したがって、そういう三十万円というものがなぜきまるかという、その基本原則というものがないわけですね。ですから、少額軽微とは何か、それは何となく少額のことなんだという以外根拠がない。そうなると、それじゃ来年になるとまた五十万円に上げるとか、あるいは三年たったら百万に上げるとか、どういうことを少額軽微というか、何らそこに基本原則がなくて、ただばく然とこれが少額軽微なんだ、こういうふうに言っているにすぎないと、こういうことですか。
#312
○政府委員(影山勇君) 結局、地方裁判所と簡易裁判所の民事管轄の事物の最高額をきめます場合に、一般の国民が一定の名目の金額に対して感じております。重要度というようなもの、あるいはかりに訴訟に負けてそれを失いました場合の切実感というようなものが、一応の基準かと思います。しかし、いま申しましたように、切実感あるいは重要度というものをきちんとした数字で示すということは、なかなか困難かと思われます。ただ、前回の改正から見ました場合に、やはりこの程度の経済成長から見まして、三十万円程度のことに相当するのではないか。したがって、将来問題は、経済の成長が続きます場合に、国民のそういう切実感と申しますか、重要度に特段の変化が起こりました場合に、特に管轄を改定する、物価あるいは経済変動に伴って始終変えてまいりますということは、また別な、管轄を固定しておくという別な要請にも反しますので、必ずしもそうはいきませんが、ただいまも申しましたような、まあ国民感情と申しますか、国民の価値観という点で、私どもはいまの程度の改正を必要とするのではないかという考え方でございます。
#313
○小平芳平君 その国民の価値観というのは、これはむしろ弁護士会の人たちなどが、直接接していらっしゃる方たちがむしろぴんとくる問題じゃないかと思うのですね。それは、商売をやって十万円の争いになった、三十万円の争いになったという場合と、それから土地家屋なんかの争いで、それは確かに金額は十万円以下だけれども、とにかく先祖伝来の重要な争いなんだというふうなこともあると思うわけですね。したがって、そういう点で、非常にばく然とした国民の価値観によってきめるのだというわけですが、やはりそういう点をよく御相談なさってきめるべき問題だと思うんです。それはそれとしまして、小額軽微はそれじゃ三十万円というふうに考えられたとしましても、簡易迅速な手続は十分には行なわれていないわけでしょう。これは亀田委員の質問に対して項目ごとに非常にこまかいお答えがあったわけですが、そういう専門的なこまかいことをお尋ねしておるわけではないのですが、要するに、私はむろんしろうとなものですから、こういう民事訴訟法にこういう手続があるのだということすら初めて聞いたわけですが、こうやって口頭で訴えて受け付けてもらえるとか、そういう簡易迅速な手続は、この訴訟法に定められているような十分な手続、制度が行なわれておらない、そういう結論じゃないですか。
#314
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 先般から申し上げておりますように、現在のところ簡易迅速な手続が十全に行なわれておるとは申し上げかねる状況でございます。
#315
○小平芳平君 そこで、簡易迅速な手続が行なわれていない、現在のところ行なわれていないところへ、出された資料によりますと、六割の事務量が簡裁ではふえるわけでありますね。そうなると、小林委員が指摘されていた木村国務大臣の答弁、軽微な事件のみを取り扱う、簡易な手続によって裁判をするということが、現実にこの木村国務大臣の答弁の趣旨のとおりの簡易裁判所になっておらない。現実に従来でも簡易迅速にそういうものが行なわれておらない上に、さらにこれで六割も事務量がふえるならば、ますます木村大臣の答弁の趣旨に反する簡裁になる、現実問題としてそうなりませんか。
#316
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまお話しの点は、簡易な手続の中には、いまお話ございましたような口頭受け付けというように、かえって事務量をふやすようなものもございますけれども、しかし大部分は、調書を簡単にできるとか、呼び出しを簡単にできるとか、あるいは判決を簡単に書くとか、むしろ裁判所の事務量を少なくする面のほうが多いわけでございますから、これを励行するということが事務量をふやすことにはならない、かように考えるわけでございます。ただ、いま御指摘の事件がふえるという問題と、いまの手続を簡易にやるかどうかは、また別個の問題として、当然私どもとして考えなければならない問題であると思いますが、しかしながら、その点につきましては、全国的視野に立ちます限りは、これは昭和三十三、四年当時に九万件ないし九万五千件ございましたものが、次第に減ってまいりまして、そうしていま五万件余になっておりますものの六割がふえる、こういうことでございますから、ふえましてもなおかつ九万件を割るわけで、つまり一ころより上回るわけではございませんので、そういう点で、件数によっても、またその事務量が過去のその時点よりふえることではないというふうに考えておるわけでございます。
 なお、定員は、その当時よりは若干ふえておるわけで、減ってはおらないわけでございますので、全国的視野に立つ限りは十分まかなえると考えるわけでございます。ただしかしながら、各地域における問題がございますし、また事件がだんだんむずかしくなってきておるというようなことを考えますれば、今後事件の趨勢を見まして、増員その他の手当てについても十分配慮しなければならない、かように考える次第でございます。
#317
○小平芳平君 その簡裁の事務量がふえる点については、また後ほどお尋ねいたしますけれどもね。いまそれでは結局、少額軽微と簡易迅速は、少額軽微は三十万円ときめた、簡易迅速は思うとおりいっておらない。それでは簡易迅速も、ここにきめられておるような簡易迅速の手続が実現するわけですか、しないわけですか。
#318
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 先般来たびたび御指摘もございますし、いままた小平委員からも簡易迅速の簡易裁判所の特色を生かせという御趣旨の御質問でございます。私どもその意を体しまして、今後いわゆる少額軽微の事件につきましては、やはり簡易迅速の方向でもってその特色を生かしていくようにいたしたい、前向きに検討いたしたい、このように考えております。
#319
○小平芳平君 この衆議院法務委員会の附帯決議の第三項目でありますね、これはいかがですか。
#320
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 衆議院法務委員会の附帯決議第三項目は、要するに、複雑困難な事件については、これが簡易裁判所の管轄のものであっても、できるだけ地方裁判所でその適正な手続によって取り扱うようにしろと、こういう御趣旨のものだと拝承いたしております。御趣旨はまことにもっともでございます。その趣旨に沿いまして、今後、会同、あるいは研修、あるいは事件の受け付けに関する指示等におきまして、そのような方向で十分運用いたしたい、このように考えております。
 なお、これに関連する法改正をも検討せよということでございます。そのような運用をいたしてみまして、その実績によりまして、関係方面とも十分その点法改正という問題につきましても検討していただきたい、このように考えております。
#321
○小平芳平君 そうしますと、こうした法改正をこの三十万円の提案と同時に立法化するようにという趣旨の御意見もあることを御存じと思いますが、そうした同時立法化というようなことは考えておらない、将来の問題として考えていくと、こういうわけでありますか。
#322
○政府委員(影山勇君) お尋ねが法改正でございますので、法務省からお答えいたします。
 まず、ただいま最高裁人事局長からもお話がございましたように、運用の実情を見るということと同時に、また私どもといたしましては、衆議院法務委員会と当法務委員会の御論議を通じまして、この問題については、十分法律の改正について、所管部局にこの模様を伝えまして、早急に検討に入りたいというつもりでございます。
#323
○小平芳平君 要するに簡易迅速だと、簡易迅速の性格が一切変わっておらないというのでしたら、将来の検討なんと言っておらないで、もっと手っとり早く対処していかなければ、私がお聞きした点で、簡裁の実情なんかで申し上げますので、こういうようなことが起きてくるんじゃないかということを私は心配するわけです。それで、まず三十万円ということを今度の国会でぜひ決定していただきたいという御答弁が再三あって、松澤委員が質問したのに対してもそういうような御答弁があったのですが、これはしろうと考えですが、なぜそういうように緊急に三十万円にしなければならないかということは、どうしてもこれが必要なんだということは納得できがたいわけですけれどもね。それは答弁していただいても同じことだからけっこうですが、そこで、現在簡易裁判所はじゃひまなんですか。とにかく六割、あるいは法務省の資料だと六四%事件が増加すると言われて出ておりますがね。その中には、ただ量的に六割ふえたという、単純に十の仕事が十六になったという以上に、やはりむずかしい事件も入ってくるということが言えると思うんですね、しろうと考えですが。そうなったときに、六割、七割のそういう事務量がふえても十分やっていけるんだ、過去にそういう事件の多いときもあったんだと局長が先回りして御答弁なさったんですが、現在の簡易裁判所でも手一ぱいであって、そういうように最高裁が、六割も事件ふえるような法改正をするならば、よほど人員の補充なり、物的・人的の補充をしてくれるんだろうというふうに、むしろ現場の簡裁の人は考えているのが当然じゃないでしょうか。
#324
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 現在の簡裁がひまかというお話でございますが、ひまという表現はあるいは適当でないかとも存じますが、先ほどちょっと申し上げましたかと存じます。高等裁判所や地方裁判所に比べますれば、簡易裁判所はそれよりは幾らかゆとりがある。これは負担件数等からも、そういうふうに出てまいっているわけでございます。でございますから、ある程度の件数がふえますことは、十分まかない得ると考えるわけでございます。ただし、大都会の簡易裁判所等におきましては、ある程度の定員的措置を必要とするものもある、かように考えておるわけでございまして、それにつきましては、現在簡易裁判所の定員の中から地方裁判所に応援に行っております者を戻しますというような方策によって解決してまいることができる、かように考えておる次第でございます。
#325
○小平芳平君 きわめて常識的に、ある一つの法改正をしますと、その法改正の結果、ある役所で六割の事務がふえますという場合には、それなりの対応処置といいますか、予算措置といいますか、何かそれがなければ、普通は――裁判所という特別なところだからそれでいけるのかもしれないのですけれどもね、実際われわれ、普通の法律改正が出た場合には、一体事務量がどの程度ふえるか、過重労働にならないかどうか、あるいはスムーズに事務がはかどるかどうか、そういうことを考えるのがこれは常識だと思うのですね。ですから、そういう意味でお尋ねしているんですが、実際に最高裁として、事務量の増加に対して、簡裁に対して通達とか、説明とか、あるいは指示とか、そういうようなものを何かお出しになる予定ですか、それはいかがですか。
#326
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまのお話は、まことにごもっともなお話でございます。普通でございますれば、事件が減ってまいりますれば、その人員をむしろ減らす、そしてそれを今度は多くなったほうの、たとえば地方裁判所のほうに定員として回すというようなことが考えられ得るわけでございますが、裁判所の場合には、いろいろな関係から、そういうふうにはしておりませんものですから、事件が非常に減ってまいりましても、定員としてはそのまま置いてあるような場合があるわけでございます。そういう関係で、これだけの事務量がふえるのに、この際増員その他の措置をとらないということについての御疑念は、まことにごもっともに存ずるわけでございます。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、全国的見地からは十分まかない得るというふうに考えておりますが、個々の庁につきましては、それぞれいろいろ手当てが必要と考えるわけでございまして、これは規程の改正なり、通達によりまして連絡する、かような方向をとる予定でございます。
#327
○小平芳平君 最高裁としては、五百七十カ所あるという簡易裁判所の実態を実際つかんでいらっしゃるかどうかということですね。個々に通達をするとおっしゃるのですけれども、個々に通達をするには、それなりの実態を掌握していなければ、実際には通達も出しようがないわけですね。かりに東京でも、ちょっと聞いたお話ですが、中野とか渋谷ですね、こういうところは非常に設備が悪い、庁舎も古いというような実情は御存じですか。
#328
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 承知いたしておりまして、たとえば渋谷の場合は、この会計年度に新築の予算が計上されておる次第でございます。
#329
○小平芳平君 中野はどうですか。
#330
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 中野は、昭和四十七年度の予定と承知いたしております。
#331
○小平芳平君 渋谷は四十五年から始まっていつ完成しますか。中野は四十七年から始まっていつ完成しますか。
#332
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) ただいまお尋ねの渋谷及び中野、いずれも単年度完成の予定でございます。同年、その年に完成するという予定でございます。
#333
○小平芳平君 そうしますと、通過した場合ですね、七月一日になっていますね、この施行が。ことしの――四十五年七月一日からこの三十万円というものが動き出したとかりにいたします。そういたしますと、現在でも中野の簡裁には法廷は一カ所しかない、そうして一回審理をすると、三カ月くらい先でないと次の審理が回ってこないというふうな実情なんだそうですが、そこへまた六割でおさまるかどうか。東京のことですから、それ以上か、まあ六割くらいか、よくわかりませんが、そうなった状態というものは、これはまひ状態というのじゃないですか。
#334
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 庁舎のお尋ねでございますので、まず私からお答えを申し上げます。全国的な簡易裁判所の庁舎をこの機会にどういうふうに整備するかという問題があるわけでございますが、私どもといたしましては、戦後に建築いたしております裁判所の庁舎は、実際上はかなり余裕を見て実はつくっておる次第でございまして、ただ個々的な場所につきましては、必ずしも現状にそぐわなくなっている場所もあるわけでございます。お尋ねの中野の場合なども、非常に大きい裁判所でございますので、他の地方の僻陬の地の独立裁判所並みに考えることができないのは当然でございます。すでに中野は、昭和二十五年に建築をいたしましたあと、昭和三十七年度及び昭和四十一年の二回にわたりまして増築をいたしたような次第でございます。で、今日に至っております。先ほど総務局長から御答弁申し上げましたように、中野につきましても、ごく近い機会にこれを建て直す、新営をいたすという予定になっておりますが、なお事件の実情その他を見きわめまして、増築が必要であるとか、その他の手当てが必要であります場合には、もちろん所要の手当てをいたしていきたいと、かように考えます。
#335
○小平芳平君 いや、中野の庁舎は戦後このような変遷をしてきたと、そういう点を私はお尋ねしているのではなくて、私がお尋ねしている点は、簡易迅速ということが一つあるわけです。その簡易迅速という原則から考えた場合に、また三十万円に額をした場合に、先ほどの総務局長の御答弁では、全国的には心配ないと、こういう御答弁ですね。ですから、全国的に計算したら心配ないという計算が出るのかもしれませんが、実際問題それじゃ中野では、一回審理をしたら三カ月先でないとその審理の事件を入れられないというような状態、あるいは調停といいましても会議室をつい立てで仕切ってやっているということですね、まる聞こえぬで、実際の調停なんかできないと、実際問題。あるいは暖房もないから、冬はがたがたふるえながら、あるいは炭火で頭がくらくらするような中で、さあ調停だと言っているんですが、そういう状態で、簡裁に心配ない、全国計算の上じゃ心配ないということがどうして出てくるかということがふしぎなんです。
#336
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 中野の簡易裁判所を御指摘でございますが、中野の簡易裁判所は、過去におきまして、訴訟事件だけで見てまいりますと、民事、刑事の訴訟一年間に千三百件処理したことがあるわけでございます。このたび民事の事件につきまして三十万円になりました場合に、私ども昭和四十四年度の事件から試算いたしまして、民事、刑事合わせて千六十件に相なるわけでございます。過去の実績に徴しまして、十分余裕があるのではないか、このように考えておるわけでございます。
 それから、調停室等の問題でございます。部屋といたしましては、相当数余裕を持っておるわけでございます。まあ暖房の関係とかいろんなことになりますと、必ずしも十分じゃない点もあろうかと存じますけれども、その点につきましては、一般の設備の問題といたしまして、できるだけこのことをやっていきたいというのが、現在もそのつもりでおるわけでございます。今後なお一そうその面の設備の改善等には努力をしていきたい、このように考えておるわけでございます。
#337
○小平芳平君 簡裁には乗用車はあるんですか。
#338
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 乗用車は、簡裁にまでは現在配置しておりません。
#339
○小平芳平君 したがって、てくてく行くんだそうですよ、現地へ。そういったこまかいことを言っていてもきりがありませんので、中野の場合でもいまの御答弁では十分ゆとりがあるというのですが、これは事務総長、ひとつ大局的に、ただ計算の上でだいじょうぶだというのじゃなくて、もう少しそうした実情を把握していただきたいと思うんですが、少なくとも、私がでたらめなことを言っているんじゃなくて、やっぱりこういう意見を持っている人もあるわけなんです。
#340
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) もちろん、仰せのとおり、各簡裁の運営が実際上どのように行なわれているかということにつきまして、今回の法改正もございますことであり、十分に実情を把握して、それに応じた適切な措置をとるように心がけることをここでお誓い申し上げます。
#341
○小平芳平君 それから、先ほどもちょっと申しました不動産事件のような場合ですね、評価額が時価より低い、普通ですね。そういう場合に、十万円でもどうかと思うような事件が、三十万円まで簡裁へ行くということに対する不安というものが出てきませんですか、これは。
#342
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 現在、不動産の事件が簡裁に行くのか地裁に行くのかということは、固定資産税の評価額によっておるわけでございます。しかし、その固定資産税の評価額が必ずしも不動産のそのものの価格を率直に示しておるかどうかというところは、ただいま御指摘のとおり、問題のあるところかと存じております。私ども今後の扱いといたしましては、そういった場合には、率直に、その取引価格といいますか、その不動産の実際の価格と申しますか、そういった価額で事件が取り扱える、したがいまして、実際の価格が高いものでございますれば、その価額でもって地方裁判所あるいは簡易裁判所に分けるというような扱いを、これは受け付けの段階におきましてやっていけるように、受け付け事務等十分指導していきたい、このように考えております。
#343
○小平芳平君 いまはできないわけですね、それは実際。実際は受付でいやな顔して受け付けてくれないわけですね。
#344
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) おことばを返すようでございますが、理論的にはいまでもできるのでございますが、確かに受付でいろいろ画一的な扱いをするというような関係でトラブルがあるやに承っております。そういった点は、十分そういうことのないように指導していきたいと考えております。
#345
○小平芳平君 最後に、むしろ私は、この簡裁というものが、民衆の裁判所として、あるいは軽微な事件を簡易な手続で、あるいは司法の民主化にも貢献するという、こうした簡易裁判所が、特任判事の方も職員の方にも待遇をよくし、社会的地位も向上していくのが当然だと思うんですが、で、特任判事という方はこういうむずかしい試験を通ってくるんだという説明が先ほどありましたが、長年の下積み生活から多くの人生経験を積んだ方たちが任命されていると思うのです、今日結果としてはですね。ですから、いわゆる資格を持った方には、それなりの任務といいますか、権威といいますか、力がある、そういう分野があることは当然と思いますが、こうした簡裁の特任判事の制度、あるいは簡裁の特に職員の方々の給与、地位、そういうものはより一そう向上していくように最高裁は持っていくべきじゃないか思う。ただ、何だ簡裁か、特任判事じゃ、長尾のおかみさんのけんかさばくぐらいのことならいいけれどもというような考え、そういう考えじゃいけないと思いますけれども、そうじゃなくて、より充実していくという、向上していくという方向があってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。特に生きがいを持って――生きがいというと大げさですが、やりがいを持って簡裁に働いている人たちが――それは最高裁も大事な仕事をやっているんだけれども、この簡裁は簡裁でこういう任務を持って働きがいがあるんだという、そういう簡裁であるべきだと思いますが、いかがですか。
#346
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) まことに御趣旨のとおりでございます。全く同感でございまして、詳しく御説明申し上げますれば、最近の簡易裁判所判事の質の向上等についても御説明申し上げることができるとは存じますけれども、もしそういう御質問があれば後日に申し上げることにいたしまして、ただいまの御質問、まことにそのとおりであると重々われわれも感じておるわけであります。
#347
○理事(山田徹一君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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