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1970/02/14 第63回国会 参議院 参議院会議録情報 第063回国会 本会議 第2号
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1970/02/14 第63回国会 参議院

参議院会議録情報 第063回国会 本会議 第2号

#1
第063回国会 本会議 第2号
昭和四十五年二月十四日(土曜日)
   午後三時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程第二号
  昭和四十五年二月十四日
   午後三時開議
 第一 常任委員長の選挙
 第二 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、常任委員長辞任の件
 以下 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#2
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 小笠原貞子君から病気のため三十日間請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(重宗雄三君) この際、常任委員長の辞任につき、おはかりいたします。
    内閣委員長     八田 一朗君
    地方行政委員長   内藤誉三郎君
    外務委員長     山本 利壽君
    大蔵委員長     丸茂 重貞君
    社会労働委員長   吉田忠三郎君
    農林水産委員長   任田 新治君
    商工委員長     八木 一郎君
    運輸委員長     岡本  悟君
    予算委員長     塩見 俊二君
から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(重宗雄三君) 日程第一、常任委員長の選挙。
 これより欠員中の文教委員長及びただいま辞任を許可されました各常任委員長の選挙を行ないます。
#8
○船田譲君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
#9
○矢山有作君 私は、ただいまの船田君の動議に賛成いたします。
#10
○議長(重宗雄三君) 船田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、内閣委員長に西村尚治君を指名いたします。
   〔拍手〕
 地方行政委員長に山内一郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 外務委員長に長谷川仁君を指名いたします。
   〔拍手〕
 大蔵委員長に栗原祐幸君を指名いたします。
   〔拍手〕
 文教委員長に楠正俊君を指名いたします。
   〔拍手〕
 社会労働委員長に佐野芳雄君を指名いたします。
   〔拍手〕
 農林水産委員長に園田清充君を指名いたします。
   〔拍手〕
 商工委員長に村上春藏君を指名いたします。
   〔拍手〕
 運輸委員長に温水三郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 予算委員長に堀本宜実君を指名いたします。〔拍手〕
     ―――――・―――――
#12
○議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、佐藤国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(佐藤榮作君) 新しい年を迎え、第六十三回国会が開かれるにあたって、所信を申し述べます。
 私は、まず、さきの総選挙において示された国民各位の力強い支持と信頼にこたえるべく、心を新たにして、国政に取り組む決意であります。一九六〇年代は、長年にわたる国民の念願であった沖繩の核抜き、本土並み復帰が決定し、戦後に終止符を打つと同時に、わが国経済力の著しい充実を背景にして、国際社会での地位の向上をはかることのできた時期でありました。これはひとえに国民各位のたゆみなき勤勉と努力のたまものであり、衷心より敬意を表するものであります。
 一九七〇年代は、この成果の上に立って、さらに大いなる前進と飛躍を遂げなければなりませんが、わが国を取り巻く内外の諸情勢は大きく変化しようとしております。私は、時代の流れを的確に把握し、人間性豊かな社会の建設を目ざして、最善の努力を傾ける所存であります。
 まず、広く世界情勢を展望すれば、一九七〇年代は、国際間の新しい安定した秩序と均衡を達成するための重要な時期であると思います。
 第二次大戦後の世界は、東西の対立をはじめ、南北問題の深刻化、武力紛争の存在などさまざまな混乱が続発いたしました。これらは、人種やイデオロギーや宗教上の対立、さらには地域間の利害関係、経済発展の不均衡などによるものであります。それにもかかわらず、大局的に見れば、世界は一九六〇年代において、緩慢ながら東西間の相互理解に基づく平和へ、経済的により高い相互依存関係へと進んできたと見られるのであります。その結果、世界の平和は、基本的には力の関係に依存しながらも、国際政治の多くの面において、軍事力以外の要素の比重が高まり、各国の自主性が増大し、軍事的均衡のみならず、より多元的な均衡が模索されるようになったのであります。
 さらに、最近における重要な特色として、大国といわず中小国といわず、各国がより多くの精力を国内問題の処理に傾けるようになってきたのでありますが、その大きな理由は、ここ十数年の目ざましい経済、社会の変革の結果、人類が新しい段階に進む過程でのさまざまな問題に直面するようになってきたからであると思います。
 したがって、一九七〇年代は、世界各国がそれぞれの進歩のため、じみちな努力をさらに一段と強める時期となるものと予想されます。このような努力が成功するかどうか、またその結果として、国際間に新しい安定した秩序がもたらされるかどうか、これは人類の未来に決定的な影響を及ぼすものと見られ、その意味で世界は大きな転換期に立っているといえるのであります。
 ひるがえって、わが国を見れば、現在われわれは日本の歴史の上で、画期的な時点に立っているのであります。明治の先人が開国と同時に大きな国家目標として掲げ、これを受け継いでわれわれが努力してきたもの、すなわち、西欧先進諸国の水準に到達するという願望については、近年その達成に向かって飛躍的な前進が見られたのであります。
 これからは、日本の国力が世界に対し、前例のない重みを持つ時代に入っていくのであります。わが国の国民総生産は二千億ドルをこえんとし、十年後にはさらに三倍程度に増大することも不可能ではありません。いまや、模倣、追随の時代は過去のものとなり、われわれは他国を目標とすることなく、みずからの手でみずからの目標を設定すべき時期となったのであります。
 一九七〇年代には、わが国で世界に類を見ない高密度社会が形成されるものと思われます。国鉄新幹線網、青函の連絡、国土縦貫道路、本土と四国との架橋をはじめとする全国的な交通網の整備、情報網の進展により、わが国土は、本土はもとより沖繩、小笠原をも含めより一そう凝集結合され、画期的な国土総合開発の時代になるものと思います。
 しかしながら、一九七〇年代をもって真に輝かしい七〇年代とするには、各分野における幾多の努力が必要であります。すなわち、第一にわが国力の増大は、必然的にわが国経済の著しい国際化を伴わざるを得ないのでありますが、かかる急速な発展を、いかにして他国の利益と調和のとれた形で行なうかは重大な問題であります。第二に、成長のために必要な経済面及び社会面の構造的問題の解決、あるいは成長がもたらす国民生活上の諸問題の克服は決して容易なことではありません。第三に、今日までの経済発展により、絶対的貧困の解決という課題を一応実現しつつあるわが国には、高度化する工業社会にふさわしい人間文明の創造という課題が控えているのであります。したがって、七〇年代は日本にとって偉大な発展の十年となり得る素地を持っていると同時に、また試練の十年でもあります。
 七〇年代を偉大な十年とするために、まず何よりも必要なものは、新しい指針であります。日本は軍事的手段によって世界政治上の役割りを果たす国ではありません。また、単なる福祉至上主義の国家を目標とすべきでもありません。われわれは、わが国の国情と国民性に合致した独自の目標を掲げるべきであります。日本の特色は、狭小な国土にたくましいエネルギーを有する一億の有為な国民が生活しているということであり、伝統を保持しつつも近代技術を駆使して、前例のない速度で豊かな社会を形成しつつある、活力にあふれた国ということであります。また、日本人は安逸を求めず、みずからの手で生活をつくる国民、生きがいと働きがいを求める国民であります。したがって私は次の二つを七〇年代の日本の政治の指針として掲げることが最も適当と思うのであります。
 第一の指針は、内面の充実をはかることであります。すなわち、世界のどの国にも先がけて、経済繁栄の中で発生する人間的社会的諸問題に取り組み、これをみごとに解決して、物心ともに豊かな国民生活の基礎を築くことであります。
 第二の指針は、内における繁栄と外に対する責務との調和をはかることであります。すなわち、われわれは国際信義を重んじ、独自の平和努力によって、世界政治の矛盾克服のため国際連合の場を中心として重要な役割りを果たすべきであり、さらに伸び行く経済力を世界の民生安定のため、進んで用いる用意がなければなりません。
 私は、アジアの一員である日本が、これらを実現するという点に世界文明史的意義があり、七〇年代の国家目標としてふさわしいものであると信ずるものであります。
 このような指針のもとにおいて、わが国の進むべき道はおのずから明らかであります。すなわち、自由を守り、平和に徹する基本的態度のもと、国力国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところを日米安全保障条約によって補完するという政策は、さきの総選挙の結果にも明らかなとおり、広範な国民的合意の上に立つものであることを確信いたします。
 われわれの目標は平和であり、そのために国際間の緊張を緩和し、すべての国との友好関係を樹立し、平和を恒久的なものとする国際秩序の形成につとめなければなりません。核兵器の拡散を防止することは、かかるわが国の目標に合致するものであり、政府はこのほど核兵器不拡散条約に署名いたしました。
 また、経済の国際化に賢明に対応するかたわら、援助と貿易の両面で開発途上国の自助の努力を助けなければなりません。そしてその大きい部分がアジアに向けられるべきは、何人も異存のないところであると信じます。これらアジアの諸国と手を携えることは、日本の歴史から見ても至当なことであり、わが国が、一九七〇年代をアジア開発の十年とみなしているゆえんもここにあるのであります。
 わが国は、韓国、中華民国など近隣諸国との善隣友好関係を維持するとともに、米国、ソ連、中共との関係に特に留意しなければなりません。
 申すまでもなく、わが国にとって米国との関係は、他のいかなる国との関係にもまして重要であります。日米両国が政治、経済、文化などあらゆる分野にわたって長期的に安定した信頼と協力関係に立つことは、世界の平和と繁栄を促進するための基本的な要素であります。この認識のもとに、太平洋新時代に即した新しい日米関係をつくり上げるために、一そう努力しなければなりません。さらに、西欧など自由主義諸国との協力関係を促進しなければならないことは当然であります。
 日ソ関係は、近年とみに親善友好の度合いを増しつつありますが、貿易、経済などの相互関係を一段と活発化して、平和共存の関係を確立しなければなりません。両国間の最大の懸案である北方領土問題については、今後とも粘り強くわが国の正当な要求を主張し、その解決をはかる決意であります。
 中国大陸との関係は、北京政府がその対外関係において、より協調的かつ建設的な態度をとることを期待しつつ、相互の立場と国際環境の現実とを理解し合い、尊重し合った上で、友好関係の増進をはかり、経済、文化、報道などの各面から積み上げて、日中間の交流と接触を促進していく考えであります。
 内政上の課題は、人間尊重の精神に基づいた社会の調和ある発展であります。このためには長期の見通しに立った総合的な構想に基づく諸施策が必要であると考えます。
 内政の柱の第一は、民主主義の擁護であります。わが国において主権在民の民主主義が発足してから四分の一世紀が経過し、すでに国民の生活感覚の中に溶け込んでおります。今後とも、その確立を目ざしてあらゆる努力を払い、国民的信念にまで高めなければなりません。
 民主主義は国民のためのものであります。近時、国民の間に、行政の能率化、裁判の迅速化、国会運営の正常化などを望む声が一段と高まっております。立法、司法、行政それぞれの立場で、このような国民の声に応じて、その機能が十分に発揮されるよう、さらに努めなければならないと思います。政府としては、その条件整備に格段の努力をいたす所存であります。
 さらに、基本的人権の尊重に力を尽くし、法秩序を厳正に維持することは、政府の当然の責務であります。暴力によって民主主義を破壊したり、その擁護を唱えながら、実質的にこれを軽視する風潮を厳に戒め、もって国民の期待にこたえる決意であります。
 第二は、教育の刷新充実と社会道義の確立であります。国民の教育に対する伝統的な熱心さとたゆみない努力により、わが国教育の普及充実は、世界で最も高い水準にあり、今日の繁栄の基盤を築いたのであります。
 しかしながら、社会構造の変化と国際化時代の要請に照らし、教育の内容や教育制度を再検討すべき時期にきていると考えます。
 教育の目的は、人間の形成と個人の創意を生かしつつ国家、社会に貢献するための能力を啓発することにあります。戦後のわが国の教育は、ともすれば、知的教育に偏して人間形成という面がおろそかになり、社会生活における個人の責任と自覚を促すための努力もまた、十分でなかったことは否定できないのであります。国際化の時代において、日本人が世界で敬愛されるためには、国民の一人一人が市民としての良識を持ち、他に対するおもんぱかりを持つ人間であることが要請されるのでありますが、特に、次代をになう青少年が豊かな情操を持ち、近代生活にふさわしい倫理観と社会連帯感を備えた国民として育つことが何よりも大切であります。このため、単に学校教育のみならず、家庭におけるしつけをはじめ、職場その他国民生活のあらゆる分野における人間教育が必要であると思います。
 また、知識、能力の啓発の面についても、進歩する社会の要請に応じ、新しい文化の創造と技術の開発のために画期的努力が払われてこそ、初めてわが国が国際社会の進運に伍していくことができるのであります。このため、特に、教育者のあり方をはじめ、幼児教育から大学まで、教育の内容及び制度の全般にわたって、新時代に即した教育体系をつくり上げ、もって国運興隆の基礎を確立したいと念願しております。
 第三は、社会開発の推進と社会保障の充実であります。経済成長によって国民の所得水準は上昇し、個人的な消費生活は豊かになってまいりました。しかしながら、その過程で、住宅や生活環境など社会資本の整備が相対的に立ちおくれ、自然が無秩序に破壊され、また都市の過密問題や農山村、離島の過疎現象が生じていることも事実であります。さらに急速な産業や技術の発展に社会的環境の整備が十分に即応することができないために、交通災害をはじめ種々の公害が生じ社会的緊張の高まりが見られることも否定できません。私は、このような現代の悩みを解決するために、かねてから社会開発の推進を強調してきたのでありますが、今後自然の保全に配意するとともに、経済的な豊かさと並んで、精神的・社会的な豊かさの実現を目ざしてより一そうの努力を払ってまいります。もとより社会開発は、長期にわたる事業であり、単にひずみの是正としてではなく、二十一世紀に通ずる巨大な経済社会の環境条件の整備として、長期的展望に立った構想のもとに推進しなければなりません。
 経済繁栄の恩恵にあずかることの少ない老人、母子家庭など恵まれない人々に対して、あたたかい充実した援助の手を差し伸べなければなりません。この見地に立って、生活保護基準及び福祉年金の引き上げを行ない、心身障害者に対する福祉施策の拡充を進めるとともに、新たに農業者年金を創設することといたします。
 また、政府は、沖繩の経済、社会、文化などの各面が一日も早く本土並みとなるよう最善の努力をいたします。沖繩県民をはじめ全国民が相協力して、種々の困難な問題を克服し、一九七二年の復帰の日を迎えようではありませんか。
 第四は、国際的視野に立った経済政策の運用であります。近年わが国の経済規模は、世界第三位となり、国際的地位の向上とともに、わが国経済が国際社会に果たすべき責務と役割りが増大してきているのでありますが、同時に、貿易、資本取引その他技術や文化の国際的交流が一段と活発化してまいりました。このような国際的交流の利益を十分に享受し、またその摩擦面をできるだけ少なくするためには、経済政策を、国際的視野で見直すとともに、情報化の推進、新技術の開発など新しい事態に適応した構想を積極的に進めていく必要があります。
 ことに、わが国経済は、すでに景気上昇の五年目を迎え、国際収支も好調を持続しているのでありますが、この景気上昇をできるだけ息の長いものにするためにも、視野の広い経済運営を行なうことが肝要であります。
 第五は、農業の近代化であります。わが国が近代国家として発展するために、農業が大きな役割りを果たしたことは申すまでもありません。今後も、農業が時代に即応しつつ健全な発展を遂げてこそ、初めて均衡のとれた豊かな国として成長することができるのであります。
 しかしながら、農業の現状を見ると、思い切った構造改善によってその近代化をはかるなど、多くの努力が必要であることは明らかであります。
 政府は当面、農家、農業団体及び地方自治体の協力のもとに、米の生産調整を行なう一方、生産性の高い近代農業の育成を目ざして、総合農政を積極的に展開いたしますが、農民各位の近代化への創意と努力を切に期待するとともに、広く国民各位の御理解を得たいと思います。
 第六は、物価の安定をはかることであります。政府は引き続き公共料金を極力抑制し、生産者米価及び消費者米価の水準を据え置く方針であります。しかしながら消費者物価の上昇は、かかる政府の努力にもかかわらず、なお根強いものがあります。特に、最近における著しい土地価格の上昇は、住宅建設や生活環境の整備をおくらせているのであります。また、最近ではこれまで落ちついていた卸売り物価も上昇傾向にあり、労働力不足の進行を背景に、これが賃金・物価上昇の悪循環の一つのきっかけになることも憂慮されるに至っています。
 政府は、経済成長を適切に保ちつつ競争条件を整備し、中小企業、流通部門の近代化をはじめとして積極的な生産性向上対策を進めてまいります。さらに総合的土地対策を強力に推進し、また輸入を活用することなどによって物価の上昇を極力押え、消費者物価の上昇は四%台にとどめるよう努力する所存であります。政府は物価の安定に率先して最善を尽くしますが、同時に国民各層の協力をお願いいたしたいのであります。特にこの際、便乗値上げを厳に回避し、また、高い生産性を実現している産業においては、その成果の一部を価格の引き下げという形で社会に還元するよう努めることを強く期待するものであります。
 本年、世界七十六カ国の参加を得て、人類の進歩と調和を標榜する万国博覧会を盛大に開催するに至ったわが国は、一九七〇年代において、さらに国家として一大飛躍を試みんとしております。われわれの前途は洋々としているとはいえ、決して尋常なものではありません。富裕な国となりつつあるわが国が、国民一人一人の人間性を保全、発展せしめ得るのか、精神の面、文化の面において真に世界に貢献し得るのか、われわれの愛国心を高い普遍的な人類愛にまで昇華し得るのか、これらは、今後われわれが身をもって回答すべき問題なのであります。若さと迫力は今の日本を特色づけるものでありますが、今後のわが国は自信を持ちつつもおごらず、古来の美風たる謙譲と勤勉さを失うととなく、日本という国が存在することが人類を豊かにするゆえんであると世界からひとしく認められる、そういう国を築き上げていきたいと念願するものであります。
 以上、今後引き続き政局を担当するにあたり、私の信ずるところを述べてまいりました。わが国が一九七〇年代の試練を乗り越えるため、私自身こん身の努力を払うことをここに誓うものであります。国民各位におかれても、内外の新しい情勢に対応せんとする政府の施策に対し、一そうの御理解と御協力をお願いするものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(重宗雄三君) 愛知外務大臣。
  〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(愛知揆一君) わが外交の基本方針と当面の重要施策について所信を申し述べます。
 一九七〇年代の初めの年にあたり、私は、国民の皆さまとともに、わが国が希望に満ちた新たな外交への門出を迎えたことを喜びたいと思います。
 昨秋、沖繩返還が日米間の理解と信頼の上に立って合意されたことは御同慶の至りでありますが、この背景には、戦後二十数年にわたる国民の営々たる努力による国力の充実があったのでありまして、このことは一億国民の間に深い民族的自信をつちかったものと私は確信いたします。
 また、日米安全保障条約は堅持されることになり、この方針について広範な国民的理解が得られたことにより、わが国の安全は一段と確固たるものとなったのであります。かくして、わが国の外交は、新たな展開の時期を迎えたと申すべきでありましょう。
 しからば、わが国がとるべき外交上の基本的指針は何でありましょうか。私は、それは、国際緊張の緩和と平和のための秩序の形成という目標に向かって、国力の充実に伴いとみに重きを加えている国際責任を積極的に果たすことであると考えます。これを具体的に申せば、各国との友好関係と相互理解の一そうの増進、南北問題の解決への貢献、国連の強化と軍縮のための努力、そして国際的な各種交流の一そうの促進の四本の柱であると思うのであります。
 私が、かねてから、平和への戦いを提唱しておりますのもこの趣旨にいずるものでありまして、私は、このような基本的指針のもとに自主的な外交を積極的に進めてゆきたいと考えるのであります。
 わが国は、国の体制を同じくする自由諸国と深い協力関係にありますが、体制を異にする諸国との間においても相互の立場の理解と尊重の上に立って友好関係を推進する考えであります。
 まず、米国との友好信頼関係は、沖繩返還の合意によって、ますますゆるぎないものとなりました。私は、今後、両国間の問題のみならず、広く国際間の諸問題に思いをいたしながら、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と繁栄のための日米の協力を進めていく所存であります。
 経済面においては、日米両国間の往復八十億ドルをこえるに至った貿易関係に伴い、ときに若干の摩擦が起こることは避けがたいのでありますが、これらの問題は話し合いにより円満に解決をはかってゆきたいと思います。
 なお、沖繩問題については、施政権返還協定締結のための交渉を進めるとともに、那覇に沖繩復帰準備委員会を設置し、沖繩県民の立場に十分の考慮を払いながら諸般の復帰準備を進めてまいります。
 次に、ソ連との関係は、貿易、航空等を通じて近年とみに密接の度を加えておりますが、善隣関係をさらに強化するためにも、最大の懸案である北方領土問題の解決が望まれるのであります。私は、わが国固有の領土である北方領土の返還について、強い国民的な願望を背景に忍耐強くソ連と交渉を続けていく所存でございます。
 中華民国との友好協力関係を維持するとの政府の方針に変わりはありません。しかしながら、中国大陸には北京政府が現に存在しております。政府としては、従来から、民間レベルでの交流を促進し、また、抑留邦人の釈放問題等についても、第三国における双方の外交機関間の接触を呼びかけてまいりました。
 私は、北京政府が、その対外関係において、より協調的かつ建設的な態度をとることを期待しながら、相互の交流と接触をはかってゆきたい考えであります。
 朝鮮半島における平和と安定は、わが国を含むアジア地域の平和に密接な関係を有しますが、韓国の政治的安定と経済的発展が着実に進んでいることは、まことに心強い次第であります。
 政府は、一日も早くベトナムに和平が実現することを強く念願しており、このため、わが国としてできる限りの役割りを果たしてまいりたいと考えております。また、和平実現に至る過程においても、民生安定のための援助を強化していくとともに、和平実現に伴い、ベトナム及びその周辺諸国に対して、幅広い国際協力のもとに、戦後の復興と民生向上のため可能な限りの援助を行なう考えであります。
 さらに、政府は、広くアジア諸国との友好関係をますます深めるとともに、域内の連帯感を強め地域的協力を推進してゆくため、東南アジア開発閣僚会議、アスパック等の機能を一そう充実し、また、域外の先進諸国とも力を合わせて、エカフェ、アジア開発銀行等の国際協力機構の強化をはかり、もってアジア地域全般の発展に寄与したい考えであります。
 オーストラリア、ニュージーランド、カナダの太平洋周辺先進国との関係も日を追って緊密化しつつありますが、アジアの安定と繁栄のためにも、これら諸国との協調をますます推進してまいりたいと考えます。
 ヨーロッパにおきましては、欧州共同体は昨年末で過渡期間を終了し、各分野において共同活動の新たな進展が見られるに至りましたが、英国等の加盟の動きもあり、七〇年代を通じて共同体の拡大及び経済統合の強化が予想されますので、わが国としても、欧州共同体諸国をはじめ、その他の諸国との関係をますます緊密にしたい所存であります。
 中東紛争の現状はまことに憂慮にたえません。私は、同地域に公正かつ永続的な平和がすみやかに確立されるよう、関係国の一段の努力を要望いたしたいと思います。
 南北問題解決のため最も重要なものは、開発途上国に対する先進国の支援であります。
 開発途上国の経済開発が進み、これら諸国が政治的、社会的に安定を達成することは、世界平和のために望ましいことは申すまでもないところでありますが、わが国自身の要請とも合致するものであります。しかも、近年わが国力の増大に伴い、開発途上国からはもとより、先進諸国からも、南北問題解決のためわが国の果たし得る役割りについて、ますます強い期待が寄せられているのであります。ときあたかも、国連においては、七〇年代を第二次国連開発の十年として、積極的に南北問題に取り組む姿勢をとり、本年秋の国連総会でその開発戦略を採択すべく目下検討が進められております。わが国としても、援助量の一そうの増大と援助条件の緩和を可能な限り促進し、また、技術協力を拡充するとともに、民間投資を促進したいと考えます。
 なお、わが国の援助の重点はアジア地域にありますが、今後は世界的視野に立ち、事宜に応じ、中近東、アフリカないし中南米等の地域に対する援助をも拡充していきたいと考えております。
 さらに、南北問題解決のためには、貿易面での協力も必要でありますので、片貿易の是正、開発輸入の促進、特恵関税の供与などを積極的に配慮いたしたいと思います。
 国際緊張緩和の努力の中で重要な役割りを占めるのは軍縮であります。わが国は、昨年七月、軍縮委員会に参加することができましたが、自来、平和に徹した立場に立つわが国の同委員会における活動は、わが国の参加の意義を各国に強く印象づけたものと信じます。政府としては、今後とも国の英知を結集して、さらに積極的な活動を行ない、もって内外の期待にこたえたい所存であります。
 核兵器不拡散条約につきましては、わが国は、当初から、核兵器の拡散を防止するとのこの条約の精神に賛成し、条約の作成過程において、わが国の主張が条約に反映されるよう努力を重ねた結果、条約中にわが国の主張がかなり取り入れられましたので、一九六八年春の国連総会で条約推奨決議に賛成投票いたしました。
 したがって、わが国としても、今般、条約が近い将来発効するとの見通しを得ましたのを機会に、条約に署名したのであります。同時に、政府は、軍縮、安全保障、原子力平和利用等の問題に対するわが国の関心と見解を内外に対して明らかにいたした次第であります。
 本年は国連創設二十五周年に当たりますが、私は、国連の平和維持機能を強化し、同機構を改善するため、わが国として積極的に貢献したいと考えるのであります。この点について、私は昨年の国連総会演説においても触れたのでありますが、各国の協力を得ながら、引き続き検討を加えてまいりたい所存であります。
 最後に、世界に平和で豊かな社会を創造するためには、商品、資本、技術、企業等の国際的交流が一そう促進されなければなりません。私は、この意味で、まずわが国が世界経済全体の調和のとれた発展のために、その主要なにない手の一人として国際的期待にこたえることは、わが国自身の長期的国益にも合致するとともに、一九七〇年代におけるわが国の国際的責務でもあると考えます。かかる見地から、わが国といたしましては、今後とも残存輸入制限の早期撤廃、資本取引の自由化等につとめ、経済の開放体制への移行を急ぎたいと思います。
 科学技術の開発のための国際協力も、今後ますます重要性を加えると思われます。わが国は、原子力、宇宙、海洋等いずれの分野においても平和利用のみの見地から開発に努力してまいったのでありますが、ますますこの特色を生かして国際的交流を推進していく所存であります。また、環境整備、都市問題など世界的な悩みであるいわゆる現代社会の問題についての国際協力にも積極的な役割りを果たしてまいりたいと思います。これらの新しい分野こそ、人類の福祉のためにわが国民の創意を生かすのに最もふさわしいものと考えるのであります。
 以上、私は、わが国の外交が取り組むべき課題について申し述べてまいりました。
 思うに、国際情勢は依然として複雑かつ流動的であります。一九七〇年代は、わが国が増大しつつある国際責任を自覚し、理想を忘れず、現実を見失わず、国際協調の中に日本の安全と繁栄を確保すべくさらに格段の努力をいたすべき時期であります。私は、かかる考え方のもとに、力強い外交施策を進めていく決意でございます。国民各位の深い理解と強い支持をお願いいたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#16
○議長(重宗雄三君) 福田大蔵大臣。
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十五年度予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大綱を御説明申し上げ、あわせて、今後における財政金融政策について所信を申し述べたいと存じます。
 まず第一に、一九七〇年代を迎え、新たな十年への第一歩を踏み出すにあたりまして、過ぎ去った一九六〇年代を振り返ってみますと、わが国経済の発展にはまことにめざましいものがありました。
 すなわち、この十年間に、わが国経済は、年率にして実質二%をこえる成長を達成いたし、その結果、国民総生産は、昨年は実に六十兆円に達し、いまやその規模において世界第三位の地位を占めるに至り、また、一人当たり国民所得におきましても、十年前の約十一万円から、昨年は四十七万円へと、四倍余りに増大したのであります。
 このようなわが国経済の発展を、物の生産、普及の面で見ますと、鉄の生産は昨年粗鋼で八千二百万トンに達し、その規模は十年前の五倍に拡大したのであります。
 また、自動車の保有台数を見ますと、この十年間に百万台から千五百万台へと増大し、テレビジョンはほとんど全世帯が、また電気冷蔵庫は百世帯のうち八十五世帯がこれを保有するに至っております。
 この間、産業構造の高度化は一段と進展いたしました。また、かつては人口過剰がわが国経済の宿命のように言われていたのでありましたが、今日では一転して労働力の確保が問題とされるに至っているほどであります。
 さらに、国際貿易の面でも、十年前には三十四億ドルにすぎなかったわが国の輸出は、昨年は百五十七億と、四・六倍に拡大いたし、その世界総輸出に占める割合も、三%から六%へと二倍に拡大されておるのであります。
 わが国の国際収支は、かつては外資の流入等によりましてやっと均衡を保持していたのでありますが、今日では、経常収支の黒字が資本輸出をまかない、なお余りある状態であります。かくて外貨準備高も、十年前の十三億ドルから、本年一月末には三十六億ドルに増加いたしました。
 以上のようなわが国経済の急速な拡大の結果、内にあっては、国民生活の水準は格段の向上を示し、豊かで多彩な消費生活が可能となってまいったのであります。また、外にありましては、わが国の国際社会に占める地位は飛躍的に高まり、今日では、国際通貨基金や経済協力開発機構等におきまして、各国から重要な役割りを期待されるに至っておるのであります。
 顧みると、一九六〇年代は、戦後の復興を終えたわが国経済が新しい国づくりへの基礎固めをした年代でありました。この輝かしい六〇年代の成果を踏んまえ、新たな展望に立って、真に世界に誇るに足る日本国を建設すること、これこそが新しい七〇年代の国家的国民的目標でなければならないと信じます。この目標に向かって立ち上がるべきときが来たと信ずるのであります。
 この目標を達成するためには、われわれは二つの課題を解決しなければならないと存じます。一つは、内、経済の質的成長の達成であり、一つは、外、世界経済への寄与貢献であります。
 まず、課題の第一は、経済の質的成長の達成であります。すなわち、六〇年代を経済の量的拡大を推進した年代とすれば、七〇年代は経済成長の質的内容を高めるべき年代と考えるのであります。
 一九六〇年代には、経済の急速な拡大の反面におきまして、物価問題をはじめ、公害、自然の破壊、交通難、過密過疎現象、老人問題等の諸問題が生じてまいりました。また、住宅、生活環境施設、道路、港湾等各種社会資本の充実や、農業、中小企業等の近代化への要請も、格段に高まってきておるのであります。
 一九七〇年代におきましては、引き続いて成長政策を進めることといたしますが、これらの諸問題を解決しつつ、成長の成果を国民生活の中に吸収し、均衡のとれた経済を実現して、真に豊かな明るい社会を築いていくよう努力してまいらなければならないと考えるのであります。
 特に、物価の安定は、調和のとれた国民生活の向上を実現するために不可欠のものであります。最近、消費者物価のみならず、従来、比較的安定していた卸売り物価にも上昇傾向が見られるに至り、物価の動向には楽観を許さないものがあります。さらに、七〇年代においては、労働力不足の深刻化を背景とした物価と賃金の循環的上昇の懸念も看過することができないのであります。
 成長する経済のもとにおきまして、成長政策を進めながら物価の安定を確保することは、きわめて困難な課題ではありますが、総需要を適正な水準に保つとともに、競争条件を整備し、輸入政策の活用をはかり、経済の効率化を進め、もって全力を尽くしてその実現に努力いたしたいと存じます。
 第二の課題は、世界経済への寄与貢献であります。
 世界の平和と繁栄なくしては、わが国の繁栄も発展もあり得ないのであります。六〇年代に急速な経済成長をなし遂げたわが国は、この間、国際的にもゆるぎない地位を築き上げたのであります。
 新たに迎えた七〇年代におきましては、経済の国際化が一そう進展する中にありまして、わが国は、世界経済との連携を強化しつつ、進んで世界の平和と繁栄に貢献していくべきであり、これこそ、今後、わが国の進むべき道であると信じます。われわれは、流動する国際情勢に対処しつつ、国際社会におけるわが国の使命を積極的に果たして、世界各国から真に尊敬される国とならなければならないのであります。
 そのためにも、まず、貿易・資本の自由化を促進しなければならないと存じます。貿易・資本の自由化は、今日世界の大勢であり、同時に、それは、わが国経済の効率を高め、国民福祉を向上させるためにも欠くことのできないものであります。したがって、われわれは、自由化の持つ積極的意義を十分認識し、社会的経済的障害を克服しつつ、これを強力に推進していかなければならないと存じます。
 また、開発途上国の経済の発展は、世界の平和と繁栄のために不可欠のものであります。わが国は、これら諸国の開発努力を支援するため、今後とも、国力の増進に応じ、経済協力、特恵関税の供与等の施策を、一そう積極的に推進していかなければならないと存じます。
 さらに、国際金融面におきましても、わが国は、今後、国際通貨基金の強化充実に力を尽くす等、国際通貨体制の安定を確保していくため、一段と積極的な役割りをになっていくべきものと考えます。
 このようにして、内にあっては、均衡のとれ充実した社会を築き、外にあっては、国際社会で積極的にその責任を分担する新日本の建設を進めることといたしますが、その前提として、何よりも何よりも必要なことは、また大事なことは、経済の持続的成長を確保することであります。
 わが国経済は、目下、五十二カ月にも及ぶ戦後最長の景気上昇を実現し、また、国際収支も好調を持続しております。しかし、今後、成長があまり速きに過ぎるときは、経済社会の均衡を失し、あるいは、その反動として落ち込みを招くおそれなしとしないのであります。
 したがって、七〇年代においては、労働力、資源、輸送等、次第にきびしさを加えつつある成長制約条件の打開につとめるとともに、引き続き慎重にして節度ある経済運営の態度を堅持し、着実な歩調で、長期にわたる持続的成長を確保してまいらなければならないと存じます。
 ひるがえって、世界経済の現状をみますと、数年来動揺をくり返してきた国際通貨情勢は、ようやく落ちつきを取り戻したものの、欧米主要諸国は、賃金、物価の上昇あるいは国際収支の不調に悩み、引き締め政策を遂行中であります。これら諸国の今後の経済動向、特に、米国景気の先行きにつきましては、注視を怠ることができないのであります。
 他方、国内におきましては、総需要の拡大に行き過ぎの懸念が生じたため、昨年秋以降、金融調整措置が講じられてまいりました。現在までのところ、金融面において次第にその影響があらわれつつありますが、実体経済は、なおかなり強い拡大基調を示しておるのであります。
 このような内外経済情勢に対処して、わが国経済の持続的成長を確保していくためには、当面の財政金融政策を、格段の慎重さと節度とをもって運営していくことが必要であります。
 昭和四十五年度予算の編成に当たりましては、このような観点から、経済を過度に刺激することのないよう周到な配慮を加えたのであります。
 また、金融面におきましても、引き続き、金利機能の活用、適正な競争原理の導入、資本市場の整備育成等により、金融の効率化と企業体質の強化をはかりつつ、持続的成長を確保するため、財政面の施策と相まって、慎重な政策運営に配意してまいる所存であります。
 次に、昭和四十五年度予算について御説明申し上げます。その特色は次の諸点であります。
 第一に、財政面から経済を過度に刺激することのないよう配慮した点であります。すなわち、財政の規模をできる限り抑制するとともに、公債及び政府保証債の発行額を、前年度当初予定額に比し、それぞれ六百億円減額いたしました。これにより、公債発行額は四千三百億円となり、一般会計における公債依存度は、前年度当初予算の七・二%から五・四%に低下することになります。さらに、現下の経済財政事情にかんがみ、法人税を増徴することといたしたのであります。
 第二に、税負担の軽減をはかったことであります。最近における国民の税負担の状況にかんがみ、昭和四十五年度においては大幅な所得税の減税を行なうとともに、地方税につきましても住民税を中心とする減税を行なうことといたしました。これによる減税額は、平年度約三千八百億円にのぼる見込みであります。
 第三に、一般会計予算及び財政投融資計画とも、限られた財源の適正かつ効率的な配分につとめ、国民の福祉向上のための諸施策を着実に推進したことであります。
 かくして、一般会計予算の総額は、歳入歳出とも七兆九千四百九十七億円となり、昭和四十四年度当初予算に対し一兆二千百二億円、一七・九%の増加となっております。
 財政投融資計画の総額は、三兆五千七百九十九億円でありまして、昭和四十四年度当初計画に対し五千二十九億円、一六・三%の増加となっております。
 なお、国民経済計算上の政府財貨サービス購入は、前年度に対し、一四・八%の伸びとなる見込みであります。
 以下、政府が特に重点をおいた施策について、その概略を申し述べます。
 まず、税制の改正であります。昭和四十五年度の税制改正におきましては、給与所得者を中心とする中小所得者の負担軽減を主眼として、平年度約三千五十億円にのぼる大幅の所得税減税を実施し、夫婦と子供三人の給与所得者の課税最低限を年収約百三万円に引き上げるとともに、給与所得控除の拡充、中堅層以下の所得者を中心とする税率の緩和等を行なうことといたしました。
 法人税につきましては、現下の経済財政事情にかんがみ、二年間の臨時措置として、普通法人の所得のうち留保分につき、法人税の負担を現行の五%増に引き上げることといたしました。なお、中小法人に対しましては、従来の軽減税率を特にそのまま据え置く等、格段の配慮を行なっておるのであります。
 このほか、企業体質の強化、中小企業対策、公害防止、過密過疎対策、住宅対策等を中心として所要の措置を講ずることとしたほか、国民の貯蓄態度に及ぼす心理的影響に十分配意しつつ、利子配当課税の漸進的な改善をはかる等、税制の整備合理化につとめることといたしております。
 なお、地方税につきましても、住民税の課税最低限の引き上げ、個人事業税の事業主控除の引き上げ等、中小所得者の負担軽減をはかることといたしております。
 次に、歳出について申し述べます。昭和四十五年度予算におきましては、各般の重点施策の着実な遂行をはかっております。
 第一は、社会資本の整備と公害対策の充実であります。わが国経済の均衡ある発展を確保するため、各種社会資本の整備の促進につとめました。すなわち、住宅・生活環境施設の整備に対し財源の重点的な配分を行なうとともに、道路・港湾・空港・漁港等の整備をはかり、治山治水を推進する等、特段の配慮を行なっております。
 道路整備、海岸事業につきましては、昭和四十五年度を初年度とする新五カ年計画を策定することといたしております。空港整備につきましては、新たに特別会計を設け、利用者の負担を拡充することにより、事業の促進をはかることといたしております。また、本州・四国間の架橋につきましては、本州四国連絡橋公団を新設することといたしております。
 次に、公害対策につきましては、引き続き大気汚染防止対策、水質保全対策を強化するとともに、研究調査体制を整備し、また、重油脱硫に対し関税軽減を行なう等、特段の配慮を加えることといたしておるのであります。
 第二は、社会保障の充実であります。社会保障施策につきましては、経済の発展と国民生活の向上に応じ、年々充実をはかってまいりましたが、昭和四十五年度におきましても、生活扶助基準の引き上げを行なうほか、福祉年金の改善等、低所得者層に対する施策の充実をはかっております。また、児童、母子、老人、身体障害者等の福祉対策、看護婦養成等の保健衛生対策につき、引き続き、きめこまかく配慮してその充実につとめました。
 第三は、農林漁業及び中小企業の近代化であります。
 農業につきましては、米の生産が需要を大幅に上回り、過剰米の在庫が累積しつつある状況にかんがみ、農政の新たな展開をはかることといたしております。すなわち、生産者米価及び消費者米価の水準を据え置く方針をとることとするとともに、百五十万トン以上を目標として、米の生産調整対策を講ずることといたしておるのであります。このため、農地の転用を推進するほか、八百十億円の奨励金を計上して、米の減産をはかることといたしております。
 また、開田、干拓は、厳に抑制することといたしましたが、農業の生産性向上と農家所得の安定向上をはかるため、農道等の整備、畜産・園芸の振興、農産物の流通改善等を推進することといたしております。
 なお、農業の経営規模拡大と老後の生活安定に資するため、農業者年金制度を創設することといたしておるのであります。
 中小企業対策につきましては、中小企業振興事業団、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の融資規模の拡充を中心に、その充実をはかっております。
 第四は、文教及び科学技術の振興であります。
 文教につきましては、文教施設の整備、特殊教育及び僻地教育の充実、文化・体育の振興、情報教育の拡充等、各般の施策を引き続き推進するほか、私学の国家社会に対する役割りと経営の現状にかんがみ、新たに経常費補助を創設して、教育研究水準の向上をはかることといたしております。
 科学技術につきましては、動力炉の開発、宇宙開発、海洋開発を中心に、大幅な拡充をはかることといたしておるのであります。
 第五は、経済協力の推進及び貿易の振興であります。
 このため、日本輸出入銀行及び海外経済協力基金の事業規模の拡大、技術協力の強化等の施策を通じ、わが国経済の実情に応じつつ、その推進をはかることといたしておるのであります。
 以上のほか、沖繩と本土との一体化を推進するとともに、防衛力の整備、法秩序の維持、交通安全対策等に特に配意いたしたのであります。
 最後に、昭和四十五年度の地方財政は、引き続き、地方税、地方交付税等の歳入の大幅な増加が見込まれるのでありますが、現下の経済情勢にかんがみ、国と同一の基調で、重点主義に徹し、節度ある運営を行なうとともに、将来に備え、地方財政の健全化を一層推進するよう期待するものであります。
 なお、この際、昭和四十四年度補正予算について、一言申し述べます。
 今回、公務員給与の改善、義務的経費の追加に要する経費、診療報酬の改定に伴う経費の増加、米の政府買い入れ増加等に伴う食糧管理特別会計繰り入れの追加、地方交付税交付金の増額等を内容とする補正予算を提出いたしました。
 このうち、給与改善に要する経費につきましては、既定経費の節減及び予備費の減額を行なって、これに充てることとしております。
 他方、昭和四十四年度における公債発行額を四百億円減額することといたしておるのであります。
 以上の結果、この補正により追加される額は、千九百十三億円であり、昭和四十四年度予算は、歳入歳出とも、それぞれ六兆九千三百八億円となるのであります。
 以上、予算の大綱について御説明いたしたのであります。
 いまや、わが国は、新たな展望のもとに、真に世界に誇るに足る日本国を築くべく、ここに、その第一歩を踏み出したのであります。
 しかしながら、わが国経済の前途には、幾多の困難な問題が横たわっていることもまた忘れてはならないのであります。これらの障害を一つ一つ着実に克服し、長期にわたる持続的成長を確保し、国際社会におけるわが国の責務を積極的に果たしつつ、真に豊かで希望に満ちた社会を築き上げていくこと、これが一九七〇年代におけるわれわれの目標であります。
 私は、今後も、財政金融政策を、より一層総合的視野のもとに、節度を持って運営し、この目標を達成するため、全力を傾倒してまいる決意であります。
 国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
#18
○議長(重宗雄三君) 佐藤国務大臣。
   〔国務大臣佐藤一郎君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(佐藤一郎君) 私は、一九七〇年代への第一歩を踏み出しましたこの時にあたって、長期的な展望に立ちつつ、わが国経済の当面する諸情勢とこれに対処する所信を明らかにし、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 一九六〇年代は、わが国の経済力が著しく充実し、国際的地位が急速に高まった時代であります。すなわち、この間に、実質国民総生産は、約三倍となり、規模において自由諸国第二位の大きさとなるとともに、国民の消費水準は大幅に上昇し、これまで成長の制約要因であった国際収支も急速にそのゆとりを増し、わが国経済の世界経済に与える影響力も大きくなってきているのであります。
 しかしながら、その反面において、国内的には、経済的社会的不均衡が表面化し、これに伴う社会的緊張の高まりが見られることも否定できません。すなわち、農業、中小企業などの近代化が相対的におくれ、これが一つの要因となって諸物価の高騰をまねいているとともに、住宅、下水道等の社会資本の整備が立ちおくれ、公害、交通災害等の問題が深刻化しつつあります。また、国際面では、経済力の充実に伴いまして、わが国の対外的諸政策に対する海外の期待や要請も、急速に強まっておるのであります。
 私は、七〇年代を迎えるにあたり、まず、これまでの急速な成長過程で生じてきました国内、国際両面での諸問題の解決に全力をあげて取り組むことが緊要であると考えます。さらに、今後の経済社会の発展と、その高密度化、国際化、労働力不足の本格化といった変貌に意欲的に対処しながら、より豊かな蓄積の上に、わが国経済社会の真の繁栄を築いていくことが、われわれに与えられた大きな課題であると考えます。特に、六〇年代に、成長と国際収支の両立という課題を達成したわれわれは、七〇年代においては、成長と物価安定の両立という困難な課題について、その解決を求められているのであります。この場合、特に労働力不足の本格化という事態を考えますと、企業の経営体質の改善や、労働力の有効利用に積極的に取り組むことが重要であり、賃金引き上げのみで労働力を確保していこうということでは、もはや、この新しい時代を乗り切ってはいけないと考えるのであります。
 政府といたしましては、このような課題を解決しつつ、今後わが国経済社会が進むべき方向を明らかにする必要があると考え、現在、新しい経済社会発展計画の策定を進めているところでございます。
 ここにおいて、私は、七〇年代の第一年である昭和四十五年度の経済運営を特に重視し、そのあり方について申し述べたいのでございます。
 わが国経済は、四十年度の不況の後、予想を大幅に上回る急速な成長を続け、ここ三年実質一三%をこえる高い成長を持続しております。
 この間、年率二〇%をこえる設備投資の増加と輸出の好調にささえられて、経済活動が急速に拡大し、また、物価の騰勢も顕著となるなど、景気の動向に懸念すべき現象があらわれてまいりましたので、昨年九月、公定歩合の引き上げ等の金融調整措置が実施されたのであります。その後、金融面においては、調整措置の影響があらわれてきておりますものの、実体経済の基調にはまださほどの変化が見られず、物価面においても、なお根強い騰勢が続いております。すなわち、四十四年度の消費者物価は、五・七%という大幅な上昇が見込まれる上、従来ほぼ安定してきた卸売り物価も、国際的インフレを反映した輸出入価格の上昇が一つの要因とはいえ、なお騰勢を続けており、いまや、物価の高騰は、国民生活を脅かす大きな要因となるとともに、経済の健全な発展の妨げになるというまことに警戒を要する局面を迎えております。
 他方、国際収支は、好調な世界経済の拡大を背景に、大幅な黒字を続けており、四十四年度は二十億ドル程度の黒字となるものと見込まれます。今後、米国景気の沈静や、西欧諸国の引き締め政策の効果浸透の影響を受けて、わが国の輸出の伸びも鈍化が予想されますが、四十五年度の国際収支は、なおかなりの黒字で推移するものと見込まれております。
 以上のような内外の諸情勢から見まして、政府といたしましては、今後、適正な成長を長期にわたって確保することを経済運営の基本的態度としつつ、財政金融政策の慎重かつ機動的な運用により、総需要を適正な水準に維持し、物価の安定を当面の最重点課題として積極的に取り組むとともに、社会開発の強力な展開、経済の一そうの国際化、効率化等に力を注いでまいる所存でございます。
 このような経済運営のもとにおいて、四十五年度の経済成長率は、これを実質二%程度と、四十四年度に対しかなり控え目に見込んでおります。
 当面の物価安定対策について申し上げます。
 まず、公共料金につきましては、その引き上げが直接国民生活の負担となるばかりでなく、政府の物価問題に取り組む姿勢を示すものとして影響は大きいものがございます。したがって、四十五年度においては、米麦価水準を据え置く方針とし、その他公共料金につきましても、四十四年度に引き続き、極力抑制することといたします。
 さらに、物価の上昇は、経済の急激な発展に伴う経済各部門の生産性上昇の格差に基づくところが大きいので、この面からも、農業、中小企業、流通部門等生産性の低い分野における構造政策を一そう充実しますとともに、輸入政策の積極的なる活用、競争条件の整備等の諸施策を推進してまいりたいと存じます。
 とりわけ、最近の生鮮食料品の値上がりが、消費者物価の高騰をもたらす大きな原因となっていることにかんがみ、政府といたしましては、四十五年度予算において、これら物資の需要に見合った生産の促進と安定出荷体制の整備をはかるとともに、卸売り市場の充実等流通機構の整備に特に意を用いておりますが、今後とも、各般の施策を一段と充実してまいる所存でございます。
 次に、国民の住宅への願望は、近年ますます強まっておりますが、その達成は、地価の高騰により、一段と困難になりつつあります。土地問題の解決は、今日焦眉の急となっておりますので、強力な総合的土地対策を進め、地価の安定を達成することにより、国民の期待にこたえてまいりたいと存じます。
 今や、インフレとの戦いに安易な態度は許されないのであり、この戦いに勝つことなくして、今後のわが国の発展はあり得ないと考えるのであります。そして、物価問題の解決は、議論の段階から、これをいかに実行するかの段階にきていると考えます。また、これは、ひとり政府の施策のみで達成されるものではなく、国民各層の理解と協力を得て、初めて実効を期し得るものであります。
 このような視点から、政府といたしましては、以上述べました諸施策を強力に進めてまいりますが、民間におかれても、物価安定のため、いわゆる便乗値上げは厳にこれを慎しむとともに、企業の生産性向上の成果を、その配分にあたって、価格引下げにも充てるよう強く要望するものであります。
 以上により、四十五年度の消費者物価上昇率を四%台にとどめるとともに、卸売り物価の沈静につとめ、これを端緒として、今後長期的な物価の安定をはかってまいる所存であります。
 今後、わが国経済の発展に伴って、経済の質的内容を充実し、真に豊かな国民生活を築いていく必要がありますが、このためには、これまでの成長の過程で、所得の上昇や私的消費の充実に比べて、相対的に立ちおくれの見られる住宅、下水道等の生活環境を中心とした社会資本の整備をはかり、また、近年特に深刻化しつつある公害、交通災害、有害食品の解消・除去等につとめることにより、国民の健康と安全を確保する等、いわゆる社会開発の推進に最大限の努力を傾注していかねばなりません。
 この課題の解決は、決して容易ではありませんが、政府、企業、国民が一丸となって当たるという強い共通の決意のもとに、政策を進めてまいりたいと存じます。
 なお、政府といたしましては、市民の直面する消費生活上の諸問題を中心に、国民との対話の場をつくり、情報、意見の交流を通じて、政府、国民が一致協力しながら問題の解決をはかることが肝要であると考え、四十五年度予算におきまして、国民生活センターの設立等、所要の施策を推進することといたしました。
 次に、今後予想される労働力不足の本格化や、わが国経済の国際化の一そうの進展等の急速な環境条件の変化に対応しつつ、わが国経済の体質を強化し、その持続的成長を確保していくには、従来の国内中心的な視野にとどまらず、国際的視点に立って、経済の効率化を強力に進めてまいることが要請されているのであります。
 そのためには、引き続き総合農政の推進、中小企業の構造改善等に取り組むとともに、今後の経済発展の方向を展望しつつ、新規産業の振興、新技術の開発等を進めることにより、わが国産業の質的内容を総合的に高め、産業構造の絶えざる改革を進めていく必要があります。
 これとともに、労働力の流動化、その質的内容の充実等に積極的に対処してまいらなければなりません。
 このようなわが国経済の体質改善を踏まえ、また、わが国の国際的地位の向上にも即応しつつ、従来にもまして対外経済政策を積極的に推進してまいることが必要となってきております。
 このことは、これまでの保護政策になれたわが国産業に対し、少なからぬ影響を与えることが予想されておりますが、わが国経済のより一そうの発展のため避けられぬことでありますので、各界の合意を得て、積極的に展開してまいりたいと存じます。
 この観点から、政府といたしましては、残存輸入制限の撤廃の促進、関税率の引き下げ等輸入政策の弾力的運用をはかるとともに、経済協力の充実、資本及び為替の自由化、海外投資の促進等の諸施策を一そう積極的に進めてまいる所存であります。
 以上、わが国経済の当面する諸情勢について私の所信を申し述べました。国民各位の御理解と御協力を切望いたします。(拍手)
#20
○議長(重宗雄三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次回に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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