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1947/07/28 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第5号
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1947/07/28 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第5号

#1
第001回国会 司法委員会 第5号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○昭和二十一年法律第十一号(弁護士
 及び弁護士試補の資格の特例に関す
 る法律)の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年七月二十八日(月曜日)
   午後一時三十二分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國家賠償法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより委員会を開きます。本日は國家賠償法案の予備審査を議題に供します。前回に引続きまして、質疑を続行いたします。
#3
○齋武雄君 第五條の「別段の定があるときは、その定めるところによる。」ということになつておりますが、結局特別法でもやりますが、特別法はここに附則として削除された以外にあるのでしようか。
#4
○政府委員(奧野健一君) 現在のところは、大体郵便法その他、お手許に差上げた程度であると思います。
#5
○鬼丸義齊君 先般の予備審議の場合に御答弁を願つたのでありまするが、この刑事補償法に規定してありまする以外にも、例えば強制処分とかいうような不当拘束に対しまする損害については、この第一條、やはりこの賠償法によつて、賠償を受け得られることになるのでありましようか。若しそれとするならば、刑事訴訟法の方にその補償範囲を拡大して、同質のものでありまするならば、手続上でも非常に省けることにもなりまするし、実際問題としましても、全然類似行爲に対しまする賠償であるならば、却つて刑事補償法の方で以て言つた方がいいのじやないかと思います。その点明らかに願いたい。
 尚先般も私より質疑申上げたのでありますが、この第一條の故意又は過失ということであります。これが違法というものの中に、この違法という文字で以て盡し得ない場合の故意過失というものがあるのでありましようか。
 次に、先般も御答弁がありましたが、違法阻却の原因があるとするならば、この違法の違法ならざる場合においては、やはり阻却する部分に入ることになるのじやないかと思いますが、殊更故意又は過失という一つのものを附け加えなければ、違法よりなんだか離脱するようなものがあるような結果になるのでありますか。事例を挙げまして、一つこの点を明快にして戴きたいと思います。
#6
○政府委員(奧野健一君) あとの方からお答え申し上げます。故意、過失と申しますのは、要するに主観的に、自分の或る行爲についての結果に対する認識をしておるのが故意で、認識すべきに拘らず、不注意のために認識しなかつたということが過失でありまして、純然たる主観的な要件でありますか、併しその行爲が違法であるかどうかということは客観的な問題でありまして、故意、過失ということと違法ということとは別個な要件になりますので、これは故意、過失があるから違法だということを言う必要はないということにはならない。その行爲が法規に違反しているという客観的な要件であり、故意、過失というものは主観的な心理状態でありますので、その両者は別個に考えていいんではないかと思います。
 而して違法ということを入れる必要がなぜあるか、民法では不法とか違法とかいう規定はないではないかということをこの前も御質疑がありましたが、民法においては権利を侵害した場合とか、権利侵害ということを要件に入れております。ところが、権利侵害、つまりいかなる権利が侵害されたかということは、非常に訴訟等で問題になるのでありまして、苟くも違法行爲によつて損害を生ぜしめれば、いかなる権利を侵害したが故に損害を生じたかという、その侵害された権利を探求するということは、なかなか場合によつてはむづかしい問題もありますので、判例等におきましても、いかなる権利を侵害したかということについていろいろ問題が起きておりまして、学者はむしろ、苟くも違法に他人に損害を加えれば、もうそれで不法行爲が成立するので、いかなる権利を害したか穿鑿する必要がないのではないかという議論が優勢でありますので、結局本法におきましては権利侵害という要件を削つてしまつたのであります。
 そこでどうしてもそれに代るいわゆる違法性の問題を現している必要が出てまいつたわけでありまして、権利侵害ということを削つた代りに、いわゆる違法にただ單にそれを加えております。それが適法行爲であれば、不法行爲にはならないのでありますから、違法行爲によつて損害を加えたという場合であることを明らかにいたしたわけでありまして、これは故意過失という主観的要件とは別個に違法という法規に反しておる、結局権利を侵害するという意味と殆ど同樣に考えてよいと思います。そういう意味で違法ということを特に掲げたわけであります。
 刑事補償法につきましては、刑事補償の範囲を拡大する方がいいのではないかという御質疑であつたと考えます。御承知のように、刑事補償法は本法とは要件が非常に違つておりまして、無過失の場合でも刑事補償法の適用を受ける場合があり、又金額についても法律で一定しておりまして、損害の有無に拘らず、その金額を支拂うということになつておりますので、刑事補償法とこれとは全然別なものであるのでありまして、勿論刑事補償法の適用のない場合、いわゆる行政執行法等によつての不法監禁の場合におきましては、本法の適用があるわけでありますが、そういうふうに刑事補償法と本法とは全然要件が違いますので、刑事補償の法外にやはり本法を規定しておく必要があると思います。
#7
○鬼丸義齊君 刑事補償法の方を拡張した方がよいじやないかと申上げたのは、一方は不当拘束であり、他は從來あります刑事補償法であれば、起訴後若しくは免訴の場合でなければ、賠償ができ得ない。ところが、その辺の強制処分による不当拘束の損害もおよそ同質なものでないかと思う。同じ性質のものを殊更に補償法の方に讓り、他を補償法そのまま生かして置くということになりますと、事務的には分担されますけれども、少くとも同質の行爲に対しまする國家の扱いが二途に出ることになる。それを整備する意味で、同じ不当行爲の場合でありましても、起訴前と起訴後とを問わず、苟くもこの権利原則によりまするような不当行爲の場合には、すべてを挙げて國家賠償の方でやることにした方がむしろ適当ではないかと、かように考えるのであります。その点についてのお考えはどうであるかということを明らかにして戴きたい。
 尚又、只今の第一條の故意、過失の点についての客観要件と主観要件との点についてでありまするが、憲法の規定によりますと、苟くも公務員が違法なことによつて損害をかけた場合には賠償する。それに加えて、被害者の方から故意、過失を立証するような場合には、非常に困難な條件をここに加えてあれば、少くとも憲法の本旨に副わないのじやないか。或いは刑事補償法の場合にでもやはりそうでありましたが、とかくこういう新らしい制度に対します場合に、官吏の見方は國家側に立ちます。國家側に非常に忠実と申しますが、濫訴を虞れる、或いは賠償金が多額に上るというような予算等に考慮を拂うと思いますから、憲法には立派に賠償の責任が國家にあることを規定しておりながら、こうした立証上非常に困難な一つの條件を加えて、結局折角憲法において保障されますことも有名無実の結果になる虞れがあると思います。違法に他人に損害を掛けたという憲法そのままの文字によります賠償の場合に、この故意、過失というものを殊更加えなければならない理由が、私にはどうしても納得ができない。でありますから、すべて過失主義を取つておる結果だという法制上の原則によつて、これを主観條件として入れたというのであれば、入れなくても済むものを、殊更に入れたために、却つて憲法の趣旨に背くということになるかと思いますので、これをどうしても備えなければならないという理由を、もう少し明快に御説明を願いたいと思います。
#8
○政府委員(奧野健一君) 初めの、刑事補償の範囲を拡張した方がよいのではないかという御議論でありますが、御承知のように、刑事補償の方は金額の限定がありますし、無過失責任を認めておるということであり、実損害の全部の賠償というためには、やはりこの法律があつた方が、その場合國民の権利の保護に十分になるのではないか、殊に又刑事補償もおいおい更に金額等を拡張をされることになつて來るものと思われます。それとこれと合せて人権の保障に役立つことになるのではないか、刑事補償を拡張してこの法案をよすという必要もないのではないかというふうに、両者再建ということに相成るのではないかと思います。
 次に、故意、過失の問題でありますが、この前も申上げたように、現在の損害賠償の建前が、一般的に過失がなければ損害賠償の責任なしという司法の原理を今取つておりますので、この法律においても、過失ある場合でなければ、國家賠償の義務はないのじやないかということにいたしておるのであります。実は午前中衆議院においても、この点が非常に問題になりまして、無過失賠償にした方が権利の保障に十分なのであつて、進歩的であるのだから、むしろ故意、過失というようなものを除いてはどうかという御議論もあり、少なくとも全部無過失ということが行過ぎであれば、立証責任を逆にして、過失ないことを國家の方で証明した場合はこの限りではないというふうな立証責任の轉嫁というか、逆にすることを考えてはどうかという御議論もあつたのであります。成程國家が賠償するのでありますから、無過失でも、苟くも損害があれば、それを補償して、賠償することは、人権の保護によいことは申すまでもないのでありますが、果してどれだけの事件が本法の実施の曉に出て参るか、ちよつと予想がつきませんのであります。そこで無過失の場合でも、國家の賠償の義務ありということになると、國家財政の立場から、これは余程考えなければならないのではないかというふうにも考えます。又一面、苟くも無過失でもこれによつて國家に賠償せしめるということになれば、公務員が公務を執行するに、やはりいろいろのことを考えて臆病になつて、爲すべき正当な行爲さえ澁るというふうなことになつても困るのでありまして、いろいろ考えまして、非常に保守的であるという非難はあろうと思いますが、大体現行の過失なければ責任なしという原則を採用したわけどありまして、さよう御了承願います。
#9
○鬼丸義齊君 丁度この刑事補償法の場合にもありますが、成程刑事補償法は無過失の責任にはなつておりまするが、それがために非常に濫訴を虞れて、そこで若し冤罪者の方で以て……被害者側の方におきまして過失があつた時分には、刑事補償法の方では賠償の責なし、こういうことになつております。ことろが、実際問題としまして、いろいろと犯罪嫌疑者を調べまする場合、無理な調べ方をいたしまして、自白をせしめる。一回自白という、一つの事実があれば、結局補償されないということになつております。それがために当初この法を制定いたしまする時に、相当の金額を國家の方で負担することになりはしないかということを憂えておりましたが、いわゆる被害者側におきまして過失がある時分には、賠償の責なしという規定ができたために、殆んどその大部分は実際上國家が賠償するということは極めて少額に止まつております。丁度それがために、結局刑事補償法という立派な一つの法規ができておりまするに拘らず、実際は空文に等しい程度になつております。そこで私は既に新憲法下において、明白に國家がさような違法行爲に対する賠償をするということを認めました場合に、これに基きまするこの賠償法が提出されるのでありまするが、これが又やはり刑事補償法と同様なる運命になつて、かような「故意」、「過失」というような非常な、困難な條件をつく附けておるがために、刑事補償法と同様な運命に陷りはしないかということを私憂うるのであります。結局國家財政が負担に堪えざるようなことは私はないと思います。ということは違法という一つがありまする限りは、決して濫訴などというようなことは、國家で負担し得ない程度というふうな、そういう大袈裟には考えられんと思います。そういう意味からいたしまして、違法の問題に対します違法という文字を入れる限りにおきましては、殆んど故意、過失というものは大部分その中に含蓄しておるのであります。又これに対しまする阻却の問題等につきましても、やはりこの違法阻却の場合には責任ないというようなことになるのでありましようから、全く故意、過失の問題につきましては、ただこの賠償法を制定いたしまして、やはりこの刑事補償法同様に空文の結果に終りはしないかということを虞れますが故に、成るべく憲法の趣旨に從いまして、被害者に対して、國家は大部分それに対する損害の賠償をしてやるんだということに私はならなければ、折角作りました法が空文になる虞れがあると思うのであります。或いは立証責任を轉倒するということも考えられんではありませんけれども、若しそれとするならば、非常に私は変則な法文の作り方になると思います。これはそれよりも寧ろあつさりと「故意」、「過失」というふうな文字を捨てて、憲法の趣旨に倣つて、私はこの法律を作つた方がよいのじやないかと思います。先般來しばしば申述べたのであります。よろしくどうぞ……
#10
○山下義信君 「故意又は過失によつて違法に」というあそこのところで、段々同僚諸君から質疑出ておるのでありますが、私は元來この國家賠償法というものの立法をなされる本旨というものは、全く新憲法によりまする人権の尊重である。それを解釈して見まするというと、いわゆる人民の権利を尊重するということは、一面におきましては公務員側が職務を執行する上において余程注意しなければならんという、これは一大警告の立法でなくちやならん。それでこの法律ができたことによつて、人民がどんどんと訴訟を起して、賠償が求められることになつたから、非常によくなつたのでなくして、この立法あるが故に、人民の損害を與えるがごとき輕率なる公務員の職務の執行が余程減少して來るということに相成ることが、立法の要旨でなくてはならんというふうに考えます。でありますから、その意味におきまして、政府当局がこれを無過失賠償にするというと、公務員が非常に職務を行うのにびくびくするようになるということを大変御心配でござりまするが、そうなりますると、私は非常によいんじやないかと思います。むしろそうなつてこそ、この法律の立法の價値があるのであると、こう思います。公務員諸君も、今日の実際問題といたしましては、日夜職務に精励されておるとは思いまするけれども、併しながら一部におきましては、誠にその素質が低下いたしまして、殊に最近はいろいろなるところの行政機関というものが、殊に末端に至りまする程、それが悉く公務員制度というものに相成りまして、國家の公権力を代表行使いたします者が増加しております。つまり言い換えますると、俄か仕立ての官吏というものが非常に多く相成つておりまして、素質が低下いたしておるというような事実でござります。でありまするから、官吏服務規律というようなことが果して嚴重に励行されておるかどうかということなぞを考えますると、一面今日の公務員の職務執行の上におきまして、誠に寒心に堪えないような点もあるのでござります。そういうようなことから考えまするというと、私共は同僚諸君がしばしば質疑しておられまするように、この点はむしろ緩やかに直された方が立法の趣旨に副うのではないかということを思うのでござりまするが、それにつきまして伺いたいと思いますのは、「故意又は過矢」と「違法」というものの関係が主観と客観の條件であると仰せられましたが、そうなりまするというと、この賠償責任というものは、両者の條件が揃わなければ賠償の責任がないということになるのでございましようか。これは念のために伺うのでございますが、私共は故意又は過失というものと違法ということは、この両者の間に原因と結果の関係がありはしないかということも思うのでございます。故意若しくは過失ということが原因になりまして、違法ということがそれによつて生ずる結果ではないかということが思われまするので、これはどういうふうに解釋してよろしうございましようか。私共法律の素人の者に分り易いようにお示しを願いたい。例えば公務員が或る事態の調査をいたす、その調査が極めて疎漏でありましたがために、それに基いて職務を行なつた結果が、人民に損害を與えたというような場合には、これはどれに該当いたしましようか。例えば職務を行う上におきまして、著しい故意若しくは過失というようなことではなくとも、その取扱いが非常に緩慢でありましたために、知らず知らず時機を失して関係の人民に損害を與えたというような場合には、どういうことに当りますでございましようか。これはお示しを願いたいと思うのでございます。それが第一点でございます。
 それから次には、先程お尋ねもありましたようでございますが、第五條の「他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。」ということに相なつておりまして、郵便規則の損害賠償の條項は、その規則にそのまま存置されてあるのでございます。これを見ますと、その損害賠償の金額というものが、いわゆる從來の規定の通りでございまして、從來の第百二十五條によりますと、ああいうふうな金額が規定されております。十円でありますとか、そういつた金額でございます。これは先刻の御答弁の中に、刑事訴訟法の賠償額の一定の金額も今日の時代にはそぐわないから、或いはその金額を引上げる必要があるやに御答弁になつたようでありますが、この郵便規則によります損害賠償額というものも、極めて不適当に低い金額に相成つておりますが、これ又関連いたしまして相当金額にまでお引上げになる御改正の御意思がありますかどうか、この機会に伺つておきたいと思います。
#11
○政府委員(奧野健一君) 郵便法の改正につきましては、主管が違います関係上お答え申上げることはできませんが、やはりこういう國家賠償法のようなものが出るということになれば、やはり再檢討されることと考えます。この点は主管官廳の方にもお話をお傳えいたしたいと考えておるのです。
 最初の故意過失と違法との関係でありますが、違法というのはむしろ過失の結果てはないか、例えば或る調査の結果が疎漏であるために、損害を生ぜしめた場合にはどうなるかという御質問であります。まあ先程申しましたように、故意過失ということは、心理、心の主観的な問題で、その結果のなされた行爲自体が違法であるというのは違法であつて、違法なりや否やということは、故意が違法であるかどうかということについて、違法なりや否やということを見るので、故意過失というのは、故意過失があつて違法行爲というものをやるのでありますから、原因結果の関係というふうに考えられるかと思います。過失であることをやらなかつたとか、或いは過つて或ることを、違法なことをやる、そういう過失があるから、そういうことをやつたことになるので、そういう意味では過失が原因で、違法行爲が結果となつて現れるということが言い得ると思います。從つて、調査が過失によつてやらないで、その結果間違つたことをやるというふうな場合は勿諭、この過失によつて、そういう違法なる行爲を行なつたということになつてこの條文に該当する。又怠慢で間に合つておつたために損害を生ぜしめたというような場合にも、それが忘れておつたというような場合であれば、過失で以て忘れておつてやらなかつたというようなことであれば、やはりこれに該当するのであるというふうに考えております。
#12
○齋武雄君 本法の規定によりますと、損害賠償を要求する権利者は、公務員が故意又は過失であるということ、その外に違法であるということを立証しなければならないので、立証上は非常に困難になるのであります。憲法に認めた精神は、簡單に損害を要求することができるという趣旨でないかと思うのでありますが、二つの立証責任を持つということは非常に困難であります。政府当局は無過失責任を規定しないということは、今後どれ程こういう事件が起るか、予算の関係も財政の関係もあるので、無過失責任を認めることはできないということは一つの理由でありますが、そういうことを考慮して、國民の権利を行使し難く困難にするということは、その考え自体がどうかと私は思うのであります。やつて見なければ分らんのでありますから、憲法に規定してあるように、たやすく損害賠償ができるような方法を講じたらいいのじやないか。こういうふうに考えております。
 いま一点の理由は、不法行爲の一般原則によつて故意過失ということを認めたのである。こういうことを言つておりますが、不法行爲の個人間における損害賠償の場合には、ただ故意過失ということを立証すればいいのであります。故意過失によつて権利を侵害された、権利を侵害されて、自分の権利はどんな権利だということが直ぐ分るのでありまして、故意過失を立証すればいいのでありますが、本法の規定によると、その外に違法だということを立証しなければならん。國民はすべての法律は詳しくないのであります。官吏の方はその当事者が分るのでありまして、私は少くとも違法性の阻却ということは、國家において立証の責任があるようにした方がいいのじやないか。不法行爲によつて損害を受けた者は当然支拂を要求できるのだ、ただ國家において違法性がなかつたのだ、阻却する事由があるのだという場合において、挙証責任を國家に認めた方がいいのじやないか。そうして國民に対して損害賠償の権利を容易に行使できるようにした方がいいのじやないか。こういう考を持つておるのでありますが、この点についてのお考をお願いします。
#13
○政府委員(奧野健一君) たびたび申上げますように、憲法では公務員の不法行爲によつて云々というので、その不法行爲というのを、どういうふうにこの法律に持つて來るかということは、立法の問題で水掛論であるかとも考えますが、大体今まで不法行爲という概念が、民法の七百九條のように故意過失主義を取つておる我が國としては、やはり過失責任を取る不法行爲を考えておるというふうに解釈いたしまして、この一條ができておるわけであります。尤もこれは不法行爲と憲法にあつても、それは従來の民法の考の過失主義の不法行爲でなくても、無過失主義を取つてもいいのではないかということも議論が成り立つわけで、その点はどちらでも水掛論のようなものであると考えます。ただこの一條では故意過失の外に違法を要件にしておつて、その立証責任があるということになると、却つて今までよりも救済されないことになるのではないかという御意見でありましたが、故意過失の立証の点は民法通りであります。
 違法という点につきましては、私はこれは権利侵害と同じような意味で、客観的なもので、法律の解釈というようなことになるわけで、違法ということについて特に立証しなくてもいいのではないか、故意過失によつて客観的にこういう行爲がある、それによつて損害が被つたということを立証すれば、その違法なるや否やということは、これは法律解釈の問題と同じことで、当事者がどの法律、どの法令に違反するのだというふうなことを、特に立証をしなくてもいいのではないかというふうに考えております。
#14
○小川友三君 先程以來非常に詳しい政府委員の御説明もあり、又同僚議員より熱烈なる御質問がございましたのでありますが、この憲法の第十七條から見まして、「不法行爲により」という工合に第一條を訂正をして戴いた方がいいように信ぜられるのであります。それは濫訴はありましても、新憲法によるところの人権の尊重という実体を表現をすることができるのでありまして、又政府側にしましても、金額に定額がありまして、支給する賠償金額に定額がありまして、そう大して莫大な金額には上らないと私は思うのであります。大体この補償事件の昭和十二年から十八年の例を見ましても、特に十八年度は四千六十一円しか補償されておりませんので、丸で雀の涙くらいの補償ですから、これは補償があつてもなくても大したことはない、寧ろ國民がこのため訴訟をしてこれに幾十倍する費用がかかつておるのではないかというくらいに思われますのでありまして、先程鬼丸議員さんからのお話の通り、空文的な賠償を我々國会議員が作るということは非常に悪いことでありまして、この第一條は「國又は公共團体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、不法行爲により損害を受けたるときは、國又は公共團体はこれを賠償する責に任ずる」ということに、憲法の條項とやや同じに御訂正を願う方がいいのではないかと思います。又同僚議員の方々もそういう御意見のように承つておりますので、政府委員の方の、賠償金額が大きくて困るということは全然ないと思います。精々出しても五億か十億出せば一切済むのじやないかと考えております。その理由は、私この間東京地方裁判所で特別弁護に立つたのですが、警察でまだ依然として拷問をやつております。十九歳の青年が、拷問によつて嘘なことを白状させられて、懲役八ケ月に処せられておりましたが、これは全く拷問によつて嘘を自白したのでありまして、非常に氣の毒なことであります。こうしたことは、いわゆる一番國民が信頼するところの、公権力の行使に当る公務員が大膽不敵になりまして、どんどん國民を罰するというような趣が多分にあるのであります。公務員の大膽不敵な行爲は國民の非常に迷惑するところでありまして、今、山下議員さんから仰しやつた通り、公務員は臆病になつた方がいいのではないかという点は、正しく人権尊重の上から大賛成せざるを得ないのであります。何してもこの解釈が故意又は過失によつて違法という工合に三つ重ねに重ねられてしまいますと、何が何だか分らないような状態に追い込んでしまいまして、結局被害者は泣き寝入りになつてしまうというような点が見受けられるのでありまして、本案は憲法第十七條の精神をそのまま生かしまして、「故意又は過失」、「違法」ということを、平たく「不法行爲により」又は「違法により」という工合に政府委員の方は御賛成を願いたいと思つております。賠償金額を非常に心配されておりますように思われますが、賠償金額には定額が決まつておりますのでありまして、大したことはどうせ拂わないのでありますから、どうか一つその点も御訂正を願うような時が來るのではないかと思つておりますが、よろしく一つお願いいたします。
 それから山下議員さんからお話の、郵便法の補償ですが、あれは一銭五厘のときに十円だつたのですから、その倍数で以て支出をして戴くというような工合に主張いたすものであります。その点一つお願い申上げます。
#15
○岡部常君 今、小川君も触れられましたが、賠償のことに関しましては、政府でそんなに御心配になつているものとも私は考えないのでありますが、いかがでございましようか、額が上るというようなことを非常に御懸念になつているのでありましようか。
#16
○政府委員(奧野健一君) 実は、これはどれだけの事件が出て來るか、予測がつかないので、これに関する予算等も特にまあ予備金から出すことになりましようが、予算をどのくらいこれがために組むということは、まだいたしておらないのであります。ただこれを全然無過失賠償にしてしまうということになると、そういう点についてまあ財政の主管の方ともよく話合いをする必要があるのではないか、場合によつては全額に或る一定の限度を設けるというようなことも必要であるのではないか。小川さんがさつき金額に限度があると仰せられましたが、この賠償金額については別に限度を設けておりませんが、一方、無過失でも賠償するということになると、或いは或る一定の金額の限度を設けるというようなことも檢討して見なければならないのではないか、大体過失主義で行くから、それほどまあ事件も予測がつかないのでありますが、このために予算を今急に組まなければならないという程に考えていないのでありまして、これの実施の曉において、その実績を見て予算等の処置をして行けばいいのではないかと思つておりますが、無過失ということになると、果してどういうものであるか、只今その点までは研究いたしておりません。
#17
○岡部常君 この点につきましては、冒頭に鬼丸委員からもその弊があるというようなことで、怯懦に陷つてはいかんという御希望もあります。私もやはりその点を強調しておきたいと存じます。それからこれは無論補充費途に属することかと思いますが、その点お伺いいたします。
#18
○政府委員(奧野健一君) これは恐らく補充費途から出るものと思つております。
#19
○鬼丸義齊君 段々と御説明がありましたが、第一條の点につきまして、政府の、非常な尨大な賠償金額に上るという虞れにつきましては、最近の公務員が國民にそれ程大きな損害を加えておるということになるかと思います。私は或いはこの濫訴に対しまする方面は、裁判で片附きますが、併しながら予算を以て賠償するという現実の事実になりますと、眞にやはり損害をかけていなければならない。近來の公務員の全般のものから見まするというと、やはり政府の御心配になつておりまするように、國民に対しまするこの違法或いは越権等の行爲によりまして、損害をかけておりまするものは非常に多い。この制度が布かれますることによつて、先程も山下委員の御説の如く、布かれることによつで、各官吏の方が御注意を願いますならば、この法の目的の全部を私は達すると思います。その意味においてこそ、私は憲法の精神、狙いも恐らくこれにあると思います。特に一つ御再考を煩したいと思います。
#20
○政府委員(奧野健一君) 衆議院の午前の委員会でも申上げたのでありますが、この点は審議に当られます委員各位で、どうしてもこの点を修正するということになりますれば、それは政府の建前としては財政の関係もありまするから、積極的に御賛成いたすということは言い兼ねましても、結局は審議される皆樣によつて修正なり、その他適当の処置をお取りになつて然るべきではないかというふうに考えております。
#21
○山下義信君 只今政府委員の大変含蓄のある御答弁がございまして、誠に結構に思うのであります。この故意又は過失ということと違法ということの、これだけの條件ということになりますと、重ねて申しまするように、私共素人でございまするが、この過失ということは、しばしばおつしやる通りに主観的な條件、言葉を換えて申しまするというと、これは個人的の條件、つまり公務員の個人の心理條件、それに対して國家が賠償するということは、本來は不合理であります。職務執行に際し違法に人民に損害を與えたことに対して、國家が賠償を與えてこそ合理的でありまして、その公務員の個人的過失というものによつて生ずるところの、この職務上に起きた損害を賠償するということは、私は不合理であると思う。その不合理であることをすぐ次の但書の第二項に入れておいでになる。即ちその公務員に國家が求償をなされるときには「重大なる過失」とある。こういうことが第一條の一箇條の條文の中に、既に問うべきことでないことをそこに置かれてありまするということは、條文の中におきまして、私共は多少の矛盾性を、感ずるように思うております。殊にこの立法によりまして、公務員が怯懦になるという先般來からの御説明もございましたが、併しそれは御杞憂でございましよう。第一條の第二項によりまして、重大なる過失の場合でなければ國家が求償されるということはないのでございますから、そういうふうに私共は感ずるのでございますが、只今含蓄のある御答弁を拜承いたしまして、どうかそういうふうな線に沿うて進みますることは、誠に結構に存ずるものでございます。
#22
○小川友三君 只今山下委員の御説の通り、政府委員の方が、委員の先程來の主張に基きまして、財政の方と考慮してというような御説がありましたので、誠に感謝に堪えない次第であります。新憲法に基く人権の尊重という意味から、我々議員は熱烈眞劍にこれを討議し、國家賠償法案に賛成をいたすものであります。この第一條に対して、先程來主張した政府委員の方の、更に「故意又は過失」を消すことに対しまして、お考を改めて貰いたいと思います。
#23
○政府委員(奧野健一君) 小川委員のお考は恐らく、「故意又は過失によつて」云々というのを、「不法行爲によつて損害を加えたときは」というふうなことに改めてはどうか。それが憲法の文字にも合致するのではないかという御意見と思いますが、ただ「不法行爲により」ということになりますと、余程解釈問題として、やはり故意、過失がなければいけないのか、或いは無過失でもいいのかという議論が、更に又起るかと思います。そうして現行の制度では、「不法行爲により」と言えば、恐らく民法七百九條の建前から、「故意又は過失」がなければ不法行爲ということにはならないというふうな解釈になろうかと思いますので、「不法行爲により」というふうに改めることは、必ずしも明確にはならないのではないかというふうに感じます。併し更に進んで「故意」「過失」がなくても、單に「違法に他人に損害を加えたときは、」無過失でも國家が賠償するというふうに改めたほうが、人権の保障に一歩前進することになつて、進歩的であるというふうな御解釈で、御修正なりが行われるということになれば、これは又別でありますが、ただ「不法行爲により」ということになりますと、ややこの内容が更に明確でないようになるのではないかというふうに考えます。
#24
○大野幸一君 私は憲法十七條によつて、國家は特別の地位から下つて、一般私人と同じ立場になつたのだという前提の下に、会社の役員が他人に損害を加えたときと、國家の公務員が他人に損害を加えたときと同じまでにすればよい。それで無過失賠償責任は司法関係において、私人同士の間でも極く少数なんでありますから、從つて國家が更にその上無過失賠償責任まで負はなければならんということはどうかと思います。だから「故意又は過失によつて他人に損害を加えたるとき」と、こういうことまでになれば、これが即ち民法の不法行爲、不法行爲の最初の七百九條に「故意又は過失により他人の権利を侵害した」と、こう書いてある用語と一致して、國家は共に私人間と同じ義務があるのだということになるのでありまして、ただここに、前回の委員会において私が申しました違法ということを、特に入れるということについて、例えば我々の経驗しておることは、警察はとにかく拘引状を裁判所から求めなければならん、併し裁判所は無茶苦茶に來たものは拘引状を出してしまう、併しこれは適法ではないかというのです。併し拘引状を出すべきかどうかということを愼重に考慮して、判事は出さなければいけないが、そこに過失があつたときにのみ罰すると、こういう程度にすればよいので、「違法」ということを削除して戴きたいというのが私個人の希望であつたのであります。
 それから第三條の点は、私の前回申しました不眞正連帶債務で、どう考えて見ましても、國家と費用負担者との双方に請求し得られなければ不合理だと思うから、この点を一つ考えて戴きたいと思います。過失としていろいろ考えられますが、やはり不注意によつて結果を生じた、こういうのでありますから、主観的と言いますけれども、人間は事をなすに必らず注意深くなければならない、その不注意によつて結果を生じた場合を過失と言うのであります。いくら注意しても結果を生じたという場合には、過失には入らないが、少くとも注意深くやつた場合には、結果が避けられた場合には、これは國家といえども賠償すると、こういう意味で、これが即ち不法行爲であつて、敢えて不法行爲と入れたからといつて、これが解釈が曖昧になる、故意過失よりはむしろ曖昧になるというのではなくて、不法行爲即ち民法上の故意過失のことになるのだと存じますから、「故意」、「過失」として戴いて、「違法」を取つて戴くか、それとも不法行爲なら不法行爲、憲法に既に「不法行爲」と書いてありますから「不法行爲」だけで打切つて、一方の趣旨から見ては、即ち故意又は過失というのは、当然あり民法の七百九條と同じ意味に解釈せられて差支えないと思います。從つて「故意又は過失」のみか、或いは「不法行爲」か、どちらかの方が却つてよろしいかと存ずる次第であります。
#25
○政府委員(奧野健一君) 第三條の点につきましても、この前申上げましたように、費用負担者と管理者が違う場合、管理者が國であるか、費用負担者が公共團体である場合に、結局損害賠償というようなものは費用の中に入るのであつて、結局は費用負担者が負担することになるのであるから、直截簡明にそういう場合に、費用負担者がその損害賠償の責に任ずるということを、明確にするという趣旨で規定をいたしたのでありますが、こういう例は割合に少いのでありまして、この点むしろどちらにも請求ができるということにして置く方が、國民の権利保障の上において完璧であるという御意見が多数であつて、これをそういうふうに修正されるということになりました場合には、政府といたしましてもその点については別段意見は持つておりません。
#26
○小川友三君 今の第三條の問題でありますが、これは、政府と異るいわゆる被害を掛けた、いわゆる過失した側の方は、五〇%づつ賠償を負担するということにお決めになつてはいかがでしよう。
#27
○委員長(伊藤修君) 委員の方はお分りのことと思いますが、將來この法律を解釈する國民の疑義を防ぐために、明確にして置きたいのですが、第一條の「公権力の行使に当る公務員が」と、こうあります。行権力の行使に当りましては、公務員が爲した場合というように解釈される虞れがある、それを明確にして置きたいと思いますが、御解釈いかがですか。
#28
○政府委員(奧野健一君) これは結局公権力、いわゆる警察権であるとか司法権であるとか、或いは税金の財政権に携わる公務員が、それらの権能を行使する場合に、他人に損害を加えた場合で、全然公権力の公使に当らない、いわゆる公権力の行使を行わない場合には、たとえ公務員であつても、この規定の勿論適用はないわけです。
#29
○委員長(伊藤修君) そうすると、ちよつとなんですね、國民は公権力の行使であると信じた、それによつて被つた損害に対しては、個人に対しては請求できないことになりますね。例えば税務官吏が税務署の判を持つて來たから支拂つた。それがあに図らんや詐欺であつたという場合においては……
#30
○政府委員(奧野健一君) それは概観的に見て、公権力の行使と思われるような場合であれば、やはりこれに該当するものと、全然……
#31
○委員長(伊藤修君) 客観的において公権力の行使であると認め得る場合は、すべて公権力を行使する公務員と、こう解釈していいですね。
#32
○政府委員(奧野健一君) そうです。
#33
○委員長(伊藤修君) そういう意味ですね。
#34
○政府委員(奧野健一君) そうです。
#35
○委員長(伊藤修君) その次に「その職務を行うについて」は、これは御説明もありましたけれども、これをもう少し詳細に明確にして戴きたいと思います。
#36
○政府委員(奧野健一君) 「職務を行うについて」と申しまするのは、大体民法のいろいろな用語から解釈が決つておりまして、單に職務を行うに際してやつたというだけではなく、又「職務行爲自体」としてということよりも廣く、單に、「際して」と、いうよりも狹い、要するに職務執行について、それと不可分の関係、大体において不法行爲ですから、嚴格な意味で職務行爲が不法行爲であり得ないのでありますが、それが職務行爲というように見られ、或いは職務行爲と関連して不可分の関係に立つという客観性のある行爲という意味でありまして、單に職務を行なつておる場合に、偶々全然関係のない不法行爲をやつたからといつて、それがこの條文に当てはまらないので、その職務行爲と連絡関連して、殆んど職務行爲の外観を持つておるということが、即ち「職務ヲ行フニ付キ」という民法の四十四條でありますとか、民法の七百十五條等にあります「何々ヲ執行スルニ付キ」という用例がそういう解釈になつておりますので、それをここに持つて來たわけであります。
#37
○委員長(伊藤修君) それから第二條の管理という動的の場合のみについて書いてありますが、靜的の保存ということはこれに含まんでも差支ありませんか。
#38
○政府委員(奧野健一君) 「管理」というのは保管或いは占有を含んでおる訳でありまして、又一般に公法上は「占有」というような言葉の代りに「管理」というふうに使われておりますので、「設置‥‥保存」とやらないで、「設置‥‥管理」とやりましたが、「保存」というのと同じに考えていいと思つております。
#39
○齋武雄君 いま一点、只今の委員長の質問に、公権力を行使する公務員に限つてということで、例えば官吏とか警察官とか税務官吏ということでありますが、それでは公権力を行わない一般公務員がやつた場合に関する國家賠償は別に作るのでありましようか。それは憲法には書いてないと思います。單に公務員ということになつておりますが、公権力を行わない公務員がそういう行爲、過失によつて損害を與えた場合には、別にそういう法律を作るのでありましようか。
#40
○政府委員(奧野健一君) 公権力行使ではない、そういう公権力の行使に当らない公務員がやつた場合には、公権力の発動ではありませんから、一般の民法の不法行爲によつて、公務員個人が私人として賠償の責に任ずるわけでありまして、只今まで國家の公権力の行使としてやつた場合の損害については、國家の賠償義務がないということで救済されなかつたのでありまして、その点だけで、今度はこれによつて救済するということになりまして、公権力に関係のない者の行爲は、これは一般に民法によつて賠償義務がある。
#41
○齋武雄君 そうするというと、國家が私人として、一般不法行爲において、民法の規定に該当する場合は賠償する。ならん場合は賠償しない。こういうことになるようでありますが、憲法にはそういう区別がないので、公務員の場合、全部國家賠償法に規定する場合になると考えるのでありますが、そういう場合、私は一般賠償によつて、公権力であろうが、公権力でなかろうが、公務員の不法行爲については、特に憲法が規定を設けたのでありまして、必ずしも公権力だけでないと考えておるのであります。その点どういうふうにお考えになりますか。
#42
○政府委員(奧野健一君) 一般公権力以外の場合は、すべて國家といえども、民法の不法行爲の適用で、公権力の発動の場合だけこれで行くというふうに考えておるわけなんです。ただこの四條で「民法の規定による」というので、そこは同じことになるのじやないか。例えば運送の事業をやつておる鉄道が人を轢いたというような場合には、御承知のように、國が民法七百十五條で、損害賠償の責に任ずるのでありますが、その点は今迄とも変りがない。ただそれを第四條で、「民法の規定による」という中に含んでおるというように解釈すれば、この賠償法で全部がこれによるということになるわけです。実質は民法によるということになる訳です。
#43
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこの法案に対する質問はこの程度で後日に譲ることにいたします。散会いたします。
   午後二時四十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           平野 成子君
          大野木秀次郎君
           鬼丸 義齊君
           鈴木 順一君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
  政府委員
   司法事務官 
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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