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1947/07/30 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第6号
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1947/07/30 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第6号

#1
第001回国会 司法委員会 第6号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○昭和二十一年法律第十一号(弁護士
 及び弁護士試補の資格の特例に関す
 る法律)の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年七月三十日(水曜日)
   午前十時四十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○民法の一部を改正する法律案
○刑法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれから委員会を開きます。本日は予備審査のために本委員会に付託されました「民法の一部を改正する法律案」を上程いたします。まず政府の御説明を伺います。
#3
○國務大臣(鈴木義男君) 民法の一部を改正する法律案について、提案理由を御説明申上げます。
 日本國憲法は、その第十三條及び第十四條で、すべて國民は、個人として尊重せられ、法の下に平等であつて、性別その他により経済的又は社会的関係において差別されないことを明らかにし、その第二十四條では、婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。及び配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は個人の尊嚴と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないことを宣言しております。然るに現行民法、特に親族編、相続編には、この新憲法の基本原則に牴触する幾多の規定がありますのでこれを改正する必要があります。政府はまずこの問題を臨時法制調査会及び司法法制審議会に諮問して朝野各方面の権威者の討議をお願いし、その答申を基礎として更に愼重審議を重ねると共に、所要の手続を進め、ここにこの第一回國会に本改正法律案を提出する運びとなつた次第であります。以下改正案の内容について御説明申上げます。
 改正案は、先づその劈頭に、民事法全般に通ずる日本國憲法の大原則を明文を以て規定し、その解釈運用の指針といたしました。即ち第一條において、私権はすべて公共の福祉のために存すること、権利の行使及び義務の履行は信義に從い、誠実にこれを爲すことを要することを規定し、続いて第一條の二に、本法は個人の尊嚴と両性の本質的平等とを旨として解釈すべきことを規定したのであります。今回の改正もこの基本原則に則つて行われたものでありますが、同時にその解釈についてもこの原則に從うことを要し、その結果、今回の改正では、まだ根本的改正の行われなかつた民法第一編乃至第三篇の諸規定についても、その内容は、この二ヶ條の規定により、相当の実質的変更があるものと考えるのであります。
 第二に、今回の改正により、民法から戸主、家族その他家に関する規定を削除しました。現行民法の下では、戸主は家の統率者として、家族に対し、居所指定権、婚姻及び縁組の同意権、その他各種の権力を認められておりますが、これらはすでに述べました日本國憲法の基本原則と両立しないため、新らしい憲法の下では、これを認めることができません。そして、これらの権力を否定すれば、最早民法上の家の制度は、法律上はその存在の理由を失うのみならず、これを法の上に残すことは、却つて戸主の権力を廃止する趣旨を不明瞭にする虞れがあります。よつてこの法律では、戸主、家族その他家に関する規定はすべてこれを削除いたしました。これにより、從來の民法において、戸主が戸主たる資格に基いて、家族の上に行使していた各種の権利は認められないことになります。尚その他家の存在を前提とする各種の制度、即ち継親子、嫡母庶子、入夫婚姻、親族入籍、引取入籍、離籍、分家、廃家、廃絶家再興、一家創立、隠居、法定推定家督相継人、婿養子縁組、遺言養子及び家の氏に関する規定等も、すべて民法典の上からこれを削除したのであります。
 尚、ここに御留意をお願いしたいことは、右のように民法典の上からは家に関する規定を全部削除したのでありますが、これは我が國において現実に営まれている家庭を中心とする親族共同生活を否定する趣旨ではないことであります。私どもは現に親子、夫婦を中心とする家庭生活を営んでおり、この親子、夫婦間の法律関係は、從來から家族制度の中心をなしているのでありまして、今回の改正も、この点は日本國憲法の基本原則に從い、より完全な合理的な制度に高めるための努力をいたしましたが、亳もこれを制限せんとするものではないのであります。
 第三に、婚姻については、婚姻は両性の合意のみに基いて成立すべきものとする基本原則に從い、先ず成年者が婚姻をするについては、父母等の同意を要しないものとし、未成年者の婚姻については、その保護のため父母の同意を要することとしてありますが、この場合も、父母の一方の同意を得られない場合、又は父母の知れない場合等についての從來の制限を緩和してあります。更に婚姻生活に対する外部の干渉を排除する等のため、未成年者は婚姻によつて成年に達したものとみなすと同時に、婚姻年齢は男女とも從來より引上げて、男は満十八才以上、女は満十六才以上に改めました。又婚姻生活の内部においても、両性の平等を徹底するため、婚姻によつて夫婦が夫又は妻の何れの氏を称するかは、婚姻の際夫婦の定めるところによることとし、妻の無能力の制度はこれを撤廃し、婚姻中は夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならないものとし、婚姻より生ずる費用は夫婦間で分担すべきものとし、その他妻の財産に対する夫の使用收益権、管理権の規定等、夫婦の法定財産制に関する從來の不平等な規定はこれを一掃しました。尚離婚原因に関する從來の複雜旦つ不平等な規定を整理して、これを夫婦間に平等なものとすると共に、婚姻を継続し難い重大な事由があるときも離婚を請求できることとし、同時に、裁判所は、法律上の離婚原因がある場合でも、一切の事情を斟酌して、婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができることとしたのであります。尚、離婚に伴い、離婚した者の一方から、相手方に対し、財産の分與を求めることができるものとし、その額等について爭いがあるときは、家事審判所でこれを定めることといたしました。
 尚、離婚に関連いたしまして、協議離婚が、当事者特に妻の眞意に基かないで届出でられることを防止するため、家事審判所の確認を以て離婚の要件としてはどうかという有力な意見がありましたので、政府としても十分檢討の結果、家事審判所を各地方に多数設置し、容易にその確認を受けるような途が講ぜられるならば格別、財政上家事審判所の開設箇所、及びこれに配置できる家事審判官の数が著しく制限される現状を前提にして考えるときは、莫大な数に上る離婚について悉く右のような確認の手続を経ることは、協議離婚の届定を困難にし、延いては健全な婚姻制度を維持するゆえんではないと考え、右の意見を採らなかつた次第であります。
 第四に、親子関係につきましては、先づ子の人格を尊重し、これを保護するため庶子の名称を廃止し、未成年者を養子とするには、家事審判所に許可を要するものとしました。養子の離縁原因についても離婚の場合と同様、縁組を継続し難い重大な事由があることを理由とする離縁の訴えを認めると同時に、法律上の離縁原因があつても、裁判所が一切の事情を斟酌して縁組の継続を相当と認めるときは、離縁の請求を棄却することができることにいたしました。子の氏は、嫡出の子は父母の氏、嫡出でない子は母の氏を称するのでありますが、父又は母と氏を異にする場合には、子は家事審判所の許可を得て、その父又は母の氏を称する途も開きました。
 次に、親権は未成年の子に対するものとし、成年の子に対する親権は、子の人格を尊重するためこれを認めないことといたしました。又両性の本質的平等を徹底するため、母の親権に対する制限はこれを撤廃し、父母の婚姻中は、親権は父母共同してこれを行うべきものとし、父母が離婚した親権者は、父母の協議で定め、協議定まらないときは、家事審判所がこれを定めることといたしました。親権を行う父母の一方が、勝手に父母の共同名義で或る行爲をした場合に、第三者を保護する規定も別に設けてあります。尚、親権者が再婚その他の事情で親権を行うのを不適当とする場合等のため、親権を辞する途、及び一旦辞した親権を回復する途を開きました。
 第五は、後見人及び親族会に関する改正であります。親族会は從來家の制度の擁護と後見の監督とを重要な使命としていたのでありまするが、制度の運用の実情を見ますると、必ずしも十分にその機能を果してはおりませんので、家事審判制度の創設と同時に、後見監督の作用の一部はこれを家事審判所に、他はこれを後見監督人に移すこととして、親族令を廃止することといたしました。
 又、後見監督人は、從來後見の必置機関となつていたのでありまするが、実情に副はん点がありますので、改正案では、指定後見監督人がある場合の外は、必要がある場合に家事審判所がこれを選任することといたしました。
 第六に、扶養に関しましては、先づ扶養教務を負う者の範囲を親族共同生活の現実に即せしめるため、直系血族及び兄弟姉妹の外、三親等内の親族にまで拡張すると共に、扶養義務者の順位、扶養の程度、方法等に関する現行法の繁雜な規定を整理し、家事審判所で適宜にこれを定めることができるようにいたしました。
 第七に、相続に関しましては、すでに述べました理由で、戸主家族、その他家に関する規定を削除した以上、戸主権の承継を本質とする家督相続の規定も又これを存置することのできないことは当然であります。これに伴い、改正案においては均分相続制度を採用し、大体は從來の遺産相続制度によりますが、兄弟姉妹をも相続人に加え、配偶者は常に相続人となるものとし、配偶者の相続分については一定の割合を確保するために特別の措置を講じ、これに関聯して遺留分の定め方についても若干の変更を加えました。その数字の詳細は法案の当該條文に讓り、ここではこれを省略いたします。
 相続については、右のような均分相続制を採りますが、これを系譜、祭具、墳墓等の承継に適用することは不適当でありますから、この法律案では、これらの物は祖先の祭祀を主宰する者がこれを承継することといたしました。
 第八に、今回の改正に伴い必要な経過規定を設けましたが、その中には、離婚に伴う財産分與の請求に関する規定のように、新憲法の精神を実現させるため、実質上新法の効力を或る程度遡らせたものもあります。
 最後に、本改正案では、親族、相続編の條文全部を口語体に書き改めました。本來本改正案のように法律の一部改正の場合は、從來の法律の文体に從う慣例でありますが、親族及び相続に関する規定が、國民全部の日常生活を規律することに鑑み、その理解を容易にするため、この部分のみを口語化した次第であります。ただ從前の規定の意味を正確に表現するためには、十分の檢討を加える必要があるに拘わらず、そのための時間の余裕が少なかつたため疑わしい場合は、原文の表現を踏襲しましたので、その字句は必ずしも満足すべきものとはなりませんでしたが、これらは將來適当な機会にこれを改めたいと思います。
 以上が本法律案の要点であります。何卒愼重御審議の上可決せられんことをお願い申上げます。
#4
○委員長(伊藤修君) 只今の法案の対する質疑は他日にこれを讓りまして、この際司法大臣に質問の通告がありますから、それを許可いたしたいと思います。鬼丸君。
#5
○鬼丸義齊君 お許しを得まして、司法大臣に対して、青少年の不良化防止に対しまして、お尋ねいたしたいと思います。
 不條理な戰爭を強行いたしましたために、これによつてあらゆる方面に亘りまして多大の犠牲者を出しておりますることは、御承知の通りでありまするが、その中で最も深刻な被害を受けておりまする者は、次代の國家を背負つて立ちまするところの責任のある青少年であると言うことができると思います。彼等は戰爭中に輝ける前途の希望に燃えて、或いは学業に、又はそれぞれの職業を修得いたしておつたのでありまするが、そうして又、それぞれの立場にあつて人生への基礎を作りつつありまするとき、戰爭のために應召され、或いは又軍需工場等に徴用され、若しくは学徒といたしまして動員をせられまして、あらゆる劇職に耐えて、ひたすら戰勝を樂しみつつ努力を続けておつたのであります。その際戰爭は最惡の結果に終つたのでありまするが、而も終戰後は直ちに失業いたしまして、食うに十分なる食なく、着るに又衣類がなく、殆ど廃墟の巷に投げ出されておりまする折柄、吹き荒んでおりまする道義頽廃の嵐に吹き捲くられまして、ために余儀なく闇屋に轉落いたしまして、遂には誘惑の魔手と良心の麻痺から集團強窃盗の徒の組しまして、國法を犯して鉄窓に繋がれるというのが、今日不良青少年の一般的犯罪コースであります。
 政府の発表されておりまする不良青少年の犯罪檢挙の件数は、統計によりますると、必らずしも著しく増加しておるようにはなつておりません。併しながら実際のことといたしましては、未檢挙の不良青少年の暗躍振りというものは、誠に寒心に堪えざる状況にあると思ひます。敗戰日本再建の容易ならんことと思い合せまして、戰慄をさえ覚えるのであります。彼等の大部分は敗戰の嵐に捲き込まれまして、その影響によつて罪を犯した者でありまして、若しそれ戰爭さえなかつたならば、將來有爲な才幹として、國家のために立派な國民であつたものと思われるのであります。換言いたしますれば、彼等は本質的には回復すべからざる惡人ではないのであります。むしろその非社会性というものは極めて偶然なるものであつて、いわゆら俄か仕立ての惡人ということができると思います。
 これを思いまして、その罪は戰爭指導者及びその追随者に大半の責任があると言うことができると思います。申すまでもなく、その國の將來を知らんといたしまするならば、その國の青年を見よと申しまするが、戰後の我が國青少年は、滔々として不良化の一途を辿つて、社会の暗黒面に動きつつある。彼等を一日も早く罪惡の泥土から救い上げ、人生の光明を與えなければ、國家の將來も又彼等と同じ運命を共にするということに至るのではないかと思うのであります。
 今日、青少年の問題の重大性は、一日もこれを忽諸に付することのできん問題であると私は思います。この問題はむしろ戰爭の後始末とも言うべきものでありまして、これらの青少年の犯罪の処分を、平和時代に適用いたしまする一般的犯罪と何ら区別するところなく、それぞれの罪に應じまして、殆ど事務的に、何ら特段なる考慮も拂うことなく刑罰を科し、投獄して、遂には済度すべからざる本格的の惡人に仕上げておりまする現状であります。私はこの実情は衷心遺憾といたしておる者であります。
 かかる青少年に対しましては、一般的犯罪者に対しまするがごとき刑罰を科することなく、むしろ彼等を正しく指導する教化方策に重点を置き、戰後不良青少年の臨時措置法を新設いたしまして、以て不良化防止の目的を達せんと考えておるのであります。
 而して、私の試案といたしましては、大体満二十五歳以下の青少年であつて、一時戰爭の影響によりまして、時代の波に誘われて罪を犯しました者に対しましては、刑罰という汚名を冠せしめることなく、國立の授産所又は特殊学校のごとき教化設備を開設いたしまして、不良青少年の能力、希望、環境、特質等を考察いたしまして、一定の期間再教育をすることが最も妥当なことでなかろうかと思います。而も從來のごとき感化院式の不愉快なる仕組でなく、又いわゆる格子のない牢獄であるというふうなものでもなく、授産のため、或いは学業の修得のために、一定の期間強制拘束をし、その成績を見て、或いは外泊を許す自由を與えて、精神的には明るく解放されて、純眞なる学徒として学業に親しみ、愛さるる青少年として呪われた戰爭の惡夢から目覚め、光明溢るる平和日本建設のために挺身せしむべきことが適当ではないかと思うのであります。そしてその対象といたしまするものは、満二十五歳以下の青少年である。戰爭の影響により懲役五年以下に相当する罪を犯した者に対しまして、裁判所の裁量により、被告人の能力、希望、環境、或いは特質等を考慮いたしまして、五年以下の期間、國家の指定いたしまする学職を強制修得すべきことを命じて、これに背くがごときものがありましたならば、その期間鉱山とか、或いはその他の強制重労働に服せしめんとするものであります。
 要しまするに、戰爭の影響による青少年の犯罪は、一般的犯罪とは本質的に異つておるのでありまして、この際不良青少年の臨時措置法を制定いたしまして、青不年の不良化防止に対する適当なる施策を設定し、戰後の後始末に備える御意思があるかないかにつきまして御意見を伺いたいのであります。
 この点につきまして、私はすでに法制部の方で以て、この臨時措置法の制定につきまして法文化の準備をいたしております。鈴木司法大臣は久しく野にありまして、刑事裁判に携わつて、不良青少年の滔々として惡化して行きまする現状は、十二分に御承知だろうと思います。この際こうした制度によりまして、まず以て青少年を本格的の惡人にしてしまつたならば、國家の前途は大変なことになると考えますることから、この案を考えたのであります。大臣としていかなる御所見でございまするか伺いたいと思います。
#6
○國務大臣(鈴木義男君) お答えをいたします。只今鬼丸委員から誠に適切なる御質問がありまして、誠に感銘をいたしたのであります。不良少年の激増ということは、隠れもない事実でありまして、お言葉の通り、全くそれらの人々に責任のない無謀なる戰爭のために、これら前途有爲の青少年が一つの自暴自棄に陷り、或いは適当なる指導者を失いましたために、日に日に不良化しつつあることは誠に痛心に堪えないのであります。我々の周囲にも沢山のそういう実例を見出しておるのでありまして、これは社会的な問題としても又國家の問題としても、戰後最も重大な問題の一つに相違ないのであります。
 故に司法省におきましても、厚生省と協力いたしまして、何とかこれらの青少年の救済のために全力を挙げたいと考えておるのであります。ただ、お言葉の中に二十五歳以下の青少年ということでありましたが、勿論実際上の取扱いにおきましては二十五歳位を標準といたしまして、それ以下の青少年は特別の扱いをすべきことは賛成でありまするが、只今法律の上では御承知のように、少年犯罪と言われまするものは、満十八歳未満ということに限定されておるのでありまして、そうしてこれらの犯罪者をどういうふうに遇しておるかと申しますと、相当数少年審判所に送られるのでありまするが、審判官諸氏も十分にこの法の精神を体して、できるだけこれらの少年を刑罰に処さないで訓戒を加え、保護者に引渡し、或いは適当な指導者を與えるようにして済しておるのでありまして、よくよく止むを得ないと目せられまする者が処罰を受けておる、こういう実情であることを御了承願いたいのであります。しかしその止むを得ずして処罰せられまする者も決して少くないということはお言葉の通りでありまして、非常に憂うべき現象でありまするから、これに対しては十八歳未満の本当の少年、二十五歳未満の普通刑罰法の適用を受けます青少年と多少処遇を異にしなければならんとは思いまするが、お言葉のような趣旨に則りまして、是非これを特別に成年者の犯罪者等と区別して取扱わなければならんということにつきましては、全く同感であります。
 厚生省におきましても又我々と協力いたしまして、この議会に兄童福祉法案というものを提出する予定でありまして、又この委員会において、お言葉のような法案を御提出に相成るということでありますれば、御趣旨において至極賛成でありまして、私どもは良い法律でありまするならば賛成するに少しも吝かでないのであります。
 私、平素考えまするに、無論こういう青少年の不良化を防止いたしまするのめに、國家はあらゆる制度と法制とたを備えてやつて行かなければならんとは勿論でありまするが、一番大切なことは制度以上の精神である。或いは宗教的情緒或いは信念というようなもを以て、青少年に接する人の現れることが大切であり、最後には愛情がこの種の問題を解決するということを痛感いたすのでありまして、先日も厚生大臣と共に有名なフラナガン神父の國に帰られまする送別会に臨みまして、親しく親父の述懐談を承つて、私は殊にその感を深くいたしたのであります。我が國に多数のフラナガン神父が現れて下さいまするならば、この制度の完備と相俟つて、幾多の悲惨なる戰爭犠牲者たる青少年を救うことができるのではないか、我々はそういう方面にも努力しなければならないということを痛感いたしておるのであります。そういう意味におきまして、できるだけお言葉のような國立授産場のようなものを設けて、格子なき、牢獄でない、本当に氣持よく働くことができ、職業を覚え、技術を覚えて、健全に社会に飛び込んで行くことのできる施設を作りたいということは、私の深く念願とするところであります。ただ御承知のごとく今年から直ぐやるかというふうに申されますると、あらゆる面についてインフレを防止いたしまするために、極度に財政支出を制限いたしておりまする際でありまして、必ず直ぐに着手できるということをお約束申上げ兼ねることを残念に思うのであります。私はそれにも拘わらずできるだけの努力をいたしまして、御期待に副うような、たとい小規模であつても、一應模範的な施設としてでも是非一つ設けたいという希望は持つておるのでありまするが、尚この種のものは政府が施設と法制を備えてやつただけで成功するものでないことは、只今申上げる通りでありまするから、進んで民間の心ある人々、殊に宗教的信念、或いは少年愛に燃えておられまする有識者の方々の特別なる御援助と御協力を得て、一大社会的事業としてこの種の仕事が発展いたしまするようにお願いをいたしたいと、こう考えておるのであります。
 御質問の御趣旨は一々御尤もでありまするから、できるだけの範囲において政府も善処いたしまするということをお答をいたして置きたいと存ずるのであります。
#7
○委員長(伊藤修君) 尚司法大臣に対する質疑は岡部委員より申出でがありまするから、この際同委員の質疑を許します。
#8
○岡部常君 私は、すでにこの委員会におきましても問題になつておりまする司法省の存廃に関連する問題をお尋ねいたしたいのであります。新聞紙上で承わりますると、すでに衆議院でもそのことが質問せられておるように伺つておりますから、そのことに対しましては重複を避けて、それに関連する一つの問題を質疑いたしたいのであります。
 存廃は如何ようともあれ、今回の裁判所制度の改革によりまして、司法省内部にいろいろな変動が想像せられるのであります。それにつきまして私は行刑局の將來、行刑の在り方ということにつきましてお伺いいたしたいのであります。
 或る新聞の記事によりますると、行刑局はそのままとするが、特に保護事業関係の事務は拡大強化する方向に進めるということの記事が出ておるのであります。これは司法当局がお出しになつたかどうかは存じませんが、この後段の司法保護事業関係の事務を拡大強化するということにつきましては、私も非常に結構な考え方であると思うのでございますので、是非こうして戴きたいと存ずるのでありまするが、この文章で見ますると、行刑局はそのままとするがというふうに出ておりまするので、何らかそこに軽重の差ができておるかのようにも取られるのでありますが、まさかそんなことはないことを私は確信いたします。又その半面といたしましては、行刑はすでに相当整備せられ拡大強化せられて、その必要はない、もう十分であるかのようにも取れるのでありますが、若しそういうふうな意味がここに取られまするならば、大いに考えなければならないのではないかと信ずるのであります。
 現在の行刑の状況は、私が申すまでもなく、又日常現れておりまする状況で、政府当局は勿論、世間でもよく御承知であろうと存じまするが、極端に申しますれば、行刑は正に破産状態に瀕しておると申しても差支えないのであります。甚だ悲しむべき状況に立至つておるのであります。平素四万から五万位を上下しておりました收容者が、現在におきましては正に七万台を突破いたしまして台八万になんなんとするというような状況になり、而もその増嵩の勢いは底止するところを知らないのであります。而も戰災によりまして受けました被害というものが四割何分ということになりまして、收容力が著しく低下しているときに、かくのごとき收容者増嵩の傾向を呈しておりまするので、ここに非常な難問題が横わつているということは、皆さんの御承知の通りであります。私は平素でもそうでありますが、こういうふうな國家非常時に際しまして、行刑に対する國家の考え方、やり方というものが、いかに國家の治安に重大なる影響を及ぼすかということを考えまして、現状と照し合して寒心に堪えんものがあるのであります。私が申すまでもなく、外の部面がいかに改善せられまして充実せられましても、たつた一つ行刑という一点で破綻ができなするならば、國家はそこで崩壞するというようなこともないとは申せないのであります。遠くフランス革命の時に、一つの小さい刑務所が破獄せられたことが導火線となつて、あの大革命が勃発したというようなことも、余りに有名なのであります。日本におきましては、刑務官が非常に苦しい立場に耐え忍んで、すでに数ケ所に起つた暴動のごときも、よく最少限にその暴動を喰い止めて、まあ大して世の中に問題を惹起しなかつたのは、せめてもの幸いだと存ずるのでありますが、これはものには程度がございますから、恐らく最後の線まで行つているのではないかということを考えて、非常に心配しているのものであります。
 そういう非常な時に際会しておりまするから、從前とてもそうした行刑のことについては深き関心を持たれているとは思いますが、一度しくじりましたならば取返しのつかない線まで行つていることを、私はこの際敢て断言いたすのであります。將來どういうふうに行刑を持つて行かれるか、又根本的には、行刑に対して保護、或いはその外の裁判とか、或いは檢察とかいうようなものに対比いたしまして、どういうふうな重みを持たしたらいいかというようなお考を伺えれば大変結構であります。又今後制度の上におきまして、いろいろな動き方がありといたしましたならば、いかなる方法に行刑というものは持つて行くのがよろしいかというようなことは、これは差当りの問題よりは、もつと根本的の國家將來の刑政の大本を左右するものであろうと考えるのであります。十分に御考慮になつておることとは存じますが、お考えの一端でも伺えれば大変結構だと思つておるのであります。
#9
○國務大臣(鈴木義男君) お答をいたします。どういうところから間違つて傳えられたのか存じませんが、司法省を改廃するというようなことが傳えらまして、大分いろいろな議論がそれから捲き起りまして、私ども十分申上げることを注意いたしておつたのでありますが、それでも一つの仮定論に立つて揣摩臆測を逞ましうするという人々が多かつたために、いろいろなことが傳えられまして甚だ遺憾に存じているのであります。司法省の機構に多少の変化を見るようなことが近い將來起らないとは保証いたしませんが、只今のところ別に根本的な変化というようなものは起り得る筈がないと考えておるのでありまして、その点については予め御諒承置きを願いたいのであります。それから新聞に傳えられたところも、その過ちの一つでありまして、若しそういう形であるとすれば、私が話したときに、行刑局はそのままであり、今保護課としてあるのでありますが、これは保護局にでもしてもつと力を入れてやらなければならないと考えておると言つたようなことが、そういう形において傳えられたのではないかと存ずるのであります。
 それとは離れまして、只今御質問の、我が刑務所の状態が破綻状態であるということは至極同感でありまして、収容能力はすでに限度を超えておる、そうして我が國にとりまして最も困難にして大切な問題が、この行刑の問題であることは何人も疑わないと思うのであります。先に鬼丸委員にお話を申げました青少年に対するだけでなく、成年犯罪者に対する場合でも、累犯をできるだけ減少いたしまして、本当に社会人として復帰いたさせまするためには、もつと今の刑務所、或いは行刑のやり方というものを根本的に考え直して、やつて行かなければならんのではないかというようなことを、私としては考えている次第であります。このことにつきましては、只今監獄法改正委員會等におきましても十分に審議を煩わしておるところであります。從つて私はこの行刑のことにつきましては最も力を入れておるつもりでありまして、今度各省で要求いたしました追加予算が千五百億円になんなんとしておりまするが、御承知の健全財政の建前から、大藏当局は大鉈を振つて七百億に皆切り下げてしまつたのであります。この刑務所費も、事務当局のお話では、どうしても二億五千万円程はなければならんという申出でがありましたが、私はもつと多くなければならん、原案よりも更に増加しなければ、実際やつて行けないぞ、ということを大藏当局に迫りました結果、出された予算の中で、原案より一億円殖えて三億五千万円になつたというのは、恐らくこの刑務所費だけなのであります。これを以て見ても、私が如何に刑務、行刑に対して熱意を持つておるかということを一つ御諒承願つておきたいのであります。理想案としてはいろいろのことを考えておりますが、これはすべて費用を伴い、又幾多の施設と訓練とを前提とするものでありますから、只今此処で漫然と申上げることは差控えたいと存じますが、是非一つこの委員会の御協力を得まして、刑務所を完全にし、行刑を理想的にいたしますために、一歩でも前進いたしたいと、こういう希望を申上げまして御答えといたしたいと存じます。
#10
○委員長(伊藤修君) では、これより予備審査に付託されましたところの刑法の一部を改正する法律案に対しまして、前回に引続きまして質疑に入りたいと存じます。この進行方法といたしましては、大体論を先に一つお願いをいたしまして、それが済みましたら各條審議に入る、こういう方法に進みたいと存じますから、そのつもりで御質疑を願いたいと思います。
#11
○松井道夫君 民法の一部を改正する法律案、この方の質疑は……
#12
○委員長(伊藤修君) それは提案説明だけ伺つてそれで……
#13
○松井道夫君 延ばすことに……
#14
○委員長(伊藤修君) 後日に延ばすことにいたします。刑法を一つ纒めて行きたいと存じます。
#15
○松井道夫君 前回の大臣のお話では、今回の刑法の一部を改正する法律案は、日本國憲法の施行に伴つて、その制定の趣旨に適合するように、應急的の改正をするのであるというお話でありました。それはそれで了承いたしたのでありますが、刑法を全般に亘つて改正する必要もお認めになつておつたようでありますが、その具体的の恒久的な根本的改正、これはいかなる機関で、いかなる方法で立案いたしたら適当であるか。その点に関する御意見を承りたいのであります。又すでにその点の立案の準備、或いは更に進んで、立案が進行しておるような状況であつたならば、その点に関する御報告も願いたいと存じます。
#16
○國務大臣(鈴木義男君) お答えいたします。新憲法の施行に伴いまして、取敢えず應急的に、どうしても直して置かなければ憲法と釣合わないという部分だけは、大体お手許に提出いたしましたような形において修正をいたしますこと勿論でありますが、刑法全体を新らしい精神に則りまして改正する必要があるのではないかということは、これも恐らくは異論がないところではないかと思うのであります。併しその新憲法の精神に即して、どういうふうな基本的観点から改正すべきかということになりますると、人によつて所見を異にいたしまして、相当議論が分れるところであろうと思うのでありますが、今まだ具体的に刑法改正委員会というようなものを拵えたわけではありません。過去において数次そういうものを持つたことがありますが、憲法改正という大きな時代の轉換に際会いたしましては、過去の仕事は一應それといたしまして、全く新らしく出発をしなければならんと考えておるのでありますから、刑法にせよ、民法にせよ、民事訴訟法にせよ、刑事訴訟法にせよ、実は應急的に改正することに忙殺されておりまして、この仕事を一通り終りまして、一段落いたしたときに、根本的全般的な改正に着手いたしたい、こういうふうに考えておりますから、只今まだ具体的にどういう方策を持つておるということをお答え申上げる時期に達しておらんということをお答えいたします。
#17
○松井道夫君 只今のお言葉でありましたから、刑法の関係ではございませんが、今の民法の関係でございますが、この今度出ました民法の改正四、五編でありますが、この改正は全般的に書き直されましたので、見方によりましては、恒久的改正であるとも、まあそういう印象も與えるのでありますが、この点はいかがでありますか。これは一編、二編、三編につきましては、私も根本的な恒久的な改正を別に考える必要があると存じておるのでありまするが、この四編、五編は相当根本的に改まつておりまするようでございますが、只今の点が疑問に相成るのであります。これが恒久的の改正であるといたしますれば、その態度でやはり審議をいたさなければなりませんし、將來又一、二、三編の改正と相俟つて根本的改正を考えておるということになれば、要するに刑法の一部改正と同じように、やや應急的の性質を持つておるということでありまするならば、又その態度で臨むことに相成りますので、その点を御答弁願います。
#18
○國務大臣(鈴木義男君) それは一編、二編、三編と同じく、全く應急的の改正のつもりであります。ただ改正の箇所が大変多いからして、根本的のように見えますけれども、これはやはり、他の編と相俟ちまして、根本的にやり直さなければならん時が來る、而も近く來るというようなことを考えておりますので、只今は全く新憲法施行上最少限度の必要なる箇所だけを修正をいたして置く、こういうことで試みたものが、提出いたしました民法改正案であるということを御了承願つて置きたいと思います。
#19
○齋武雄君 この改正刑法によりますというと、執行猶予の決定する範囲を廣くして、非常に結構だと思うのでありますが、私は更に進んで宣告猶予ということを考えておるのであります。いわゆる言渡を猶予するということを考えておるのでありますが、立案するについて、司法省でそういうことを御檢討になつたかどうか。御檢討になつたとすると、この改正法にないのでありますが、そういうことは早いというお見込で草案にはないのであるか、その点をお伺いいたします。
#20
○國務大臣(鈴木義男君) その問題も根本的な問題でありまして、この應急的な修正の際には採り入れなかつたわけでありまするが、十分当局としては考えておるところでありまして、今の制度では、檢事に起訴、不起訴の自由裁量権を與えておる。これが果してよいかどうかということが一つの問題であると思うのでありまして、苟くも犯罪構成要件を充しておりまする以上は、必ず起訴すべきものではないか。判断は裁判所がこれをなすべきものである。そこで、例えばそういう建前を取る。これも立派な私は理由があると思うのでありまするが、建前を取る以上は、裁判所において、何でもかんでも皆執行猶予にしてしまうというのも、罪状の軽いものは、これもいかがかと存ずるのでありまするから、從來檢事が不起訴にしたというような種類のものは宣告猶予ということで、被告人の改悛の情を俟つというようなことが非常に適切ではないか。イギリスの制度なんかではそういうふうなことが行われておるようであります。そういうふうにやつてはどうかという議論もあるのであります。すべてそれらは余りに実は根本的な問題になりますので、この憲法の施行に併う應急的な改正としては、少し深入りし過ぎるというので省略いたしただけでありまして、考えておらないわけではないということを御了承願います。
#21
○松井道夫君 私は死刑の廃止ということを考えておるものであります。即に新憲法によりまして、戰爭、即ち國家の作用によりまする対外的の殺戮行爲は、これは我が國においては放棄いたしたのでありまするが、國内におきまして、國家の権力で殺人の行われておりますのが死刑であります。これをこの際、戰爭の放棄と一部共通いたしておりまする理念であると存じまするが、死刑の廃止というものを考える必要がありはしないか、かように考えるのであります。尚基本的人権によりまして、國民から奪うべからざる権利として、勿論生命権がその最大なるものでございまするが、これを終局的に奪つてしまう死刑というものは、その基本的人権を尊重するという新憲法の建前と、究極において、必ずや矛盾すると私は考えておるのであります。又進歩した刑罰理論、行刑の理論から言いまして、死刑というものは意味をなさない。これは以前からこの議論があつたところで、御承知の通りであります。更に死刑を必要としない社会状態を作る。さような残虐な犯罪というものを、この日本の國から追放してしまう。それだけの社会状態を、あの新憲法の精神、規定を実現することにより、これをこの日本の國土に実現するという高い理想を掲げることに相成りまするので、私はこれを新憲法に即應しまして、この刑法を改正する上につきまして、直ちに採り上げていい問題ではないかと存じておるのであります。見方によりましては、死刑廃止論というのは昔からあるのでありますから、一つの根本的な恒久的の問題であるとも言えるのでありますが、併しながら観方によりましては、只今申上げましたように、憲法改正に伴い、これに適應いたさせるために直ちに取上げていい問題だと思います。私は司法当局におかせられまして、この刑法の一部を改正する法律案の立案に当られた労を多とするのでございますが、願はくば更に只今の死刑廃止というものをお取上げになりまして、でき得ますならば、この法律案の一部変更をして下さいまして、とにかく他の民事訴訟法、刑事訴訟法乃至民法と同じように今年一杯位に改正されますれば又よろしいのではないかとも思われます。この機会に必ずしもこの刑法の一部改正法律案を通さなければならないということでもなかろうかと存ぜられますので、私の希望といたしましては、この法律案に一部変更を加えられて、その他死刑を廃止するということに関連して、他の法律もいろいろの作用が出て來ると思います。その辺の改正も考えて戴くということを希望するのであります。それらの点に関する御意見を承りたいと思います。
#22
○國務大臣(鈴木義男君) 只今御提起になりました御質問は、非常に矢張り根本的な問題でありまして、これを理論として討議いたして参りますると、何時間論じても盡きない問題であると存ずるのであります。而して世界の大勢から見て、殆ど多数が死刑廃止論に傾いておるといつてもよろしいのではないかと存ずるのでありまして、理論としては或る程度まで解決せられておる問題ですらあると思います。殊に私個人として、社会主義の理想を実現するという見地から言えば、やはり死刑廃止ということは賛成でありまして、早晩実施すべきものと考えておるのであります。それらのことを余り論じますることは、問題が余りに根本的で、結局その人生観、世界観の問題に遡つて賛成か反対かが分れるところでありまして、次の刑法の全般的改正の際に必ずこれを採り入れまして、朝野の衆智を集めて、十分に御檢討を願つて御解決を得たいと考えるのであります。問題が根本的でありまするだけ、今早急にこれを決定することが、適当でない。殊に社会主義國家の典型的なソビエツト・ロシアですらも、混乱時代においては死刑が必要であるとして存置いたしておりましたことは御承知の通りでありまして、最近廃止いたしました。時代が平靜に歸つて、廃止しても差支ないということになつたから廃止するというような趣旨の説明が付いておるわけであります。我が國のごときも終戰後の混乱が引続いておりまして、人命を軽んずること大根や人蔘のごときであるというようなことすら言われておる際であります。果して死刑がそういう暴虚なる犯罪の威嚇的防止の手段になるかということは、又大議論の的になりますけれども、一部の論者は、少くともやはり威嚇的防止の役割を務める故に、今ここで廃止することは適切でないという有力な反対もありまして、この問題はいま一層周到なる檢討に委せるという趣旨で讓つておる訳であります。この次の改正の際には必ず十分に檢討するということを申上げてお答えといたしたいと思うのであります。
#23
○松村眞一郎君 司法大臣のお話によりますというと、この度の改正は憲法が改まつたについて應急と申しますか、それに即應した部分の改正に止めた、こういう御趣旨であつたのであります。そういたしますとこの度の憲法で特に著しい改正として認められておりまする一つに、政治と宗教の分離ということが非常に明瞭になつております。その関係から申しますというと、刑法の中の礼拜所に関する罪というようなものについては、何か改正の際に御考慮になつておるのでありましようか。必ずしも現在の法律の規定は新らしい憲法に適用するようにも思われないのであります。特に礼拜所に関する罪、そういうことについて現行のままこれを保持して置かなければいけないという何か御議論でもあつたのでございますか。その点いかがですか。
#24
○國務大臣(鈴木義男君) 御答えいたします。この新憲法改正に伴つてと、こう申上げましても、程度の問題でありまして、比較的影響の強い部面について、取上げて改正をいたした訳でありまして、何でもかんでも影響があるから取上げるということになると、やはり全般的改正ということになりますので、それは後日に讓つた訳であります。この礼拜所の罪等につきましても多少の考慮は拂つたのでありますが、大体この規定は、すべての宗教に対して公平に平等に取締つておるのでありまして、殊に新憲法で政治と宗教を分離したから、この点について取締の態度を変えなければならん、若干変えなければならんかも知れませんが、少くも今應急に変えなければならんという程の必要を感じないということで、これは次の機会に檢討することに讓つたのであります。かような御趣旨と御諒解を願います。
#25
○松村眞一郎君 議論になりますからここで申上げることは避けますが、第二編の第一章の不敬に関する罪はお除きになつたのでありますが、これは根本的に今年の改正される不敬と礼拜所に関する不敬ということはどういう程度に軽重がありますでしようか。礼拜所の不敬は存置しなければならんという程の問題かどうかということを、不敬という字がありますから、私はそれについて実は考えておるのでありまして、やはりこれは一應考慮する値打のある大きな問題であるというように私は考えます。ただこれは意見だけ申上げて置きます。
#26
○鬼丸義齊君 戰爭から続いて敗戰ということで以て殆ど國情は一変して参りました。現在行われておりまする刑法全般の制定当時と今日の事情とは殆ど別物の感がする位に変つて参つております。この度の一部改正につきましては憲法の改正の結果だけということでありまするが、その他の刑法におきましても、全く違う時代を違う法律によつて律しておるような形がいたしまする。殊に金刑等に至りましては、経済事情の変化によりまして、もう丸つきり別物の感がいたします。殆ど無用の刑罰に終つておるような有樣であります。どうかいろいろな改正或いは新法の制定等でお忙がしくはあろうと存じまするけれども、少くとも根本的の改正に対しましては、一つ最も早い機会におきまして実現するようにお願いいたしたいのであります。又承りますれば、根本的の刑法改正に対しまする審議会等の結成すらもないと聞いておりまするが、改正審議会か或いは委員会でも早急に作られまして、改正についての結果を早く得たいと思いまするから、至急に一つ着手して戴きたいということを御願いいたしておきます。
 尚、逐條につきましては、纏めまして質疑もいたしたいと思つておりますが、先程岡部委員からも、行刑についての御質疑があつたのでありますが、私は未決拘留の拘留所に対します点について、嘗つて未決拘留は、その本質をして、とにかく証拠の湮滅と逃走の防止に外ならんのであります。而もそれが有罪なりや無罪なりやということは未定のものであります。未定のものといたしまするならば、むしろ善良なものという標準において戴きたい。故に只今の未決拘留の実際を見ますというと、殆ど実刑以上の苦痛を與えております。而も被疑者の何人たるとを問わず、一律にどれもこれも処分いたしておるのでありまするが、私は甞て名古屋の留置場の設置につきまして、当時司法省の方にお願いをいたしたのでありますが、元來未決拘留は、そうした善良なる人の、いわゆる証拠湮滅、逃走を防止するが目的で、その他の範囲に出でておらない、こういう趣旨から、被疑者の人となりによりまして、一律にこれを処分しまするというと、平素非常に高級な生活をいたしておりまする者と、野天の生活をいたしておりまする者と、殆ど同樣な扱いになつております。これがために、高級なる生活に置かれておりまする者の立場からいたしますると、精神的にも肉体的にも非常に大きな苦痛を感じております。故に未決拘留の目的を達しさえすればよろしいというような見地から行きますならば、聊かもその間に懲戒というものを含んではいけないのであります。こういうふうな意味から、拘置所の被疑者の拘置については、一等、二等、三等というようなふうに等級を付して、一等或いは二等については有料とし、三等は無料とすることにいたしますることとなれば、それぞれのいわゆる身分に應じまして、望むところによつてその処分が、変つて参ることになる、目的が、逃走と証拠湮滅との二つにありといたしますならば、何らその間に処分を変えたからといつて、少しも差支ないと思います。当時衆議院において、そういう趣旨から、名古屋の拘置所を模範的に建設するのであるということで以て予算を戴いたのでありますが、いよいよ実施に当りまするというと、司法省の方から統一ができないからというようなことで以て、又一律になつてしまつております。幸いこの点に対しまする最も理解ある鈴木司法大臣は、恐らく同樣なるお考を持つておると思います。この際責任ある地位に立たれたのでありますから、若しもこの趣旨に御賛成であるといたしましたならば、この点について特に格段なる一つ御考慮を願いたい。これは当時世界に先例がないからというようなこともありました。併しながら世界の先例は必ずしも我々は学ばなければならんことはない。ないならば、むしろ率先して世界に臨むのがいいのじやないかということで以て、当時実は非常に両院共に議院の方では賛成されたのでありますが、この点に対しまする司法大臣の御所見がどうであるか、一つ承りたいと思います。
#27
○國務大臣(鈴木義男君) 実は只今御質問のようなことを私も甞て主張した一人でありまして、是非一つやつて見たいという希望を持つておるのであります。実は就任日浅くしてそこまで手が廻り兼ねておりますが、ただ実行上この等級別ということは……無差別というわけにもちよつと行かないと思いまするので、等級別はやはり必要であると思う、そうすると人員を要し、その人員についての多少の訓練を要するという、いろいろのことがありますから、或いはお説のように、やれる所でやる、私はこれはよいことは一部分でやつても段々学ぶことになつて行けば幸いだと思うのでありまして、甚しく弊害を生ずるのでなければ、やれる所で先ずそれをやつて行くということで一つやつて見たいという氣持は持つております、お言葉に刺戟せられまして、できるだけその理想の実現に努力して見たいと存ずるのであります。但し宿屋ではないから余り贅沢なことをやるわけに行かん筈であります。又日本の現状が許す範囲においてということを御了承置きを願いたいと思います。
#28
○委員長(伊藤修君) それじや本日はこの程度で質疑を打切りまして、明後日午前十時から刑法及び弁護士の法律、彈劾法を審議して戴きたいと思います。尚明後日は公聽会の人選とか、いろいろの問題もありますから、是非御出席を願いたいと思います。
 それではこれで閉会いたします。
   午後零時九分散会
 出席者は左の通り。
  委員長      伊藤  修君
   理事
           松井 道夫君
   委員
           齋  武雄君
           奧 主一郎君
           鬼丸 義齊君
           鈴木 順一君
           岡部  常君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           西田 天香君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   司 法 次 官 佐藤 藤佐君
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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