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1947/08/05 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第8号
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1947/08/05 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第8号

#1
第001回国会 司法委員会 第8号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○昭和二十一年法律第十一号(弁護士
 及び弁護士試補の資格の特例に関す
 る法律)の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○連合國占領軍、その將兵又は連合國
 占領軍に附属し、若しくは隨伴する
 者の財産の收受及び所持の禁止に関
 する法律案(内閣提出)
○昭和二十一年勅令第三百十一号(昭
 和二十一年勅令第五百四十一号ポツ
 ダム宣言の受諾に伴い発する命令に
 関する件に基く連合國占領軍の占領
 目的に有害な行爲に対する処罰等に
 関する勅令)の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月五日(火曜日)
   午後一時五十五分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十一年法律第十一号(弁護士
 及び弁護士試補の資格の特例に関す
 る法律)の一部を改正する法律案
○刑法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) 大変お待たせいたしました。これより開会いたします本日は「昭和二十一年法律第十一号(弁護士及び弁護士試補の資格の特例に関する法律)の一部を改正する法律案」を議題といたしまして、質疑を継続いたします。
#3
○松井道夫君 司法当局にお尋ねしたいのでありますが、この法律によりますと朝鮮弁護士令によりまして弁護士の資格を有する者が、弁護士銓衡委員会の銓衡を経て弁護士になる、それが今年の五月三日以前でありますると、裁判所施行令十條によりまして、三年経ちますと判檢事の資格を得ることができる、然るにその後銓衡を受けまして資格を得た者は何年経つても当然に判檢事の資格を得ることはできないことなつておるようであります。又今度の改正法によりまして、満洲國の判檢事で、高等試驗、司法科試驗をすでに通つておる者が、弁護士銓衡委員会の銓衡を経て弁護士になる、これは何年弁護士になつても当然に弁護士たることの資格を得ることができないことになつておるようでありますが、当委員会の委員間におきまして、この際そういつた人達に判檢事たることの資格を得ることができるようにしようじやないかという意見がありまして、昭和二十二年五月三日以後、この法律の第一條第一項の規定によつて弁護士たる資格を得た者で、弁護士の在職年数が三年に達したときには、そのときに司法修習生の修習を終えた者とする、それから改正案にありまする第一條第二項の規定によりまして弁護士たる資格を得た満洲國の審判官、檢察官のその資格を得たときに、司法修習生の修習を終えた者とする、そういつた趣旨の修正をいたしたいという意見があるわけなんでありますが、それについての御意見を承りたいと存じます。
 それから仮に今の修正案に御異議がないといたしまして、修正をする場合について考えてみますると、高等試驗にすでにずつと以前に合格いたしまして旧弁護士法によつてすでに弁護士の資格を有する者で、満洲國の審判官又は檢察官の職に在つた者、こういう人たちも相当數おられると思うのでありまするが、権衡上、こういう人たちにも判檢事たるの資格を得られるようにするということが考えられるのでありまするが、この修正案によりまして、これらの者も弁護士審査委員会の銓衡を受けることができるといつたような解釈ができないものかどうかということをお尋ねしたいのであります。
 第三に、この法律の施行につきまして、どの位の費用を必要とするのかという点を併せてお尋ねしたいのであります。
#4
○政府委員(國宗榮君) 第一点について申上げますが、前囘この点につきまして、御質問を受けましたときに、裁判所法並に檢察廳法と関係いたしまして、一應研究してみたいということを申上げて置きましたが、政府といたしましても、この弁護士法特例によりまして資格を得られた弁護士に対しまして、判事補並に檢事に任用するということは非常に望ましいことでございます。只今の修正の御意見に対しましては、政府といたしましても賛成いたしたいつもりでおります。
 更に若しかような修正の結果といたしまして、只今御質問になりました第二点の、高等試驗、司法科試驗に合格いたしまして、旧弁護士法によつてすでに弁護士の資格を有しておられまして、満洲國の審判官又は檢察官の職に在つた者が尚この修正案によりまして弁護士銓衡委員会の銓衡を受くることができるかどうか、できましたならばそのときに司法修習生の修習を終えたものとみなされまして、判事補並に檢事に任用し得る資格を得られるかどうか、こういう解釈問題の点でございますが、この点につきましてもいろいろ研究いたしました結果、これらの者が弁護士審査委員会の銓衡を受けられるかどうかこういう問題につきましてはすでにこの資格を有する者が重ねて同じ資格を取得するという点につきましては、通常その必要も利益もないように考えられるのであります。併しながらこの本法案で參りまするというと、單にこの「弁護士法第三條の試驗に合格し、満洲國の審判官又は檢察官の職に在つた者」と、こういうことになつておるのでありまして、形式的に申しまするというと、旧弁護士法によつて弁護士の資格のありました者も、当然には除外される趣旨ではないと、かように解釈されると思うのであります。而もこの修正案によつた結果によりますると、同じくこの高等試驗に合格いたしまして、満洲國の司法官の職に在つたものであるに拘わりませず、昭和十年以前に高等試驗に合格したがために、旧弁護士法によつてすでに弁護士の資格を有しているから、裁判所法施行後弁護士の在職が三年に達したときに、初めて司法修習生の修習を終えたものとみなされるということは、実質的に申して、從來弁護士の資格がなかつた者との権衡上妥当でない、殊に前者の方は司法官としての経驗の年数も長いという実情を考えて見まするというと、甚だ不利益でありますので、こういう理由からいたしましても、重ねて弁護士審査委員会の銓衡を受くる利益があるとかように考えるのであります。以上の点から見ますると旧弁護士法によつて弁護士の資格を得た者も、それが満洲國の審判官又は檢察官の職に在つた者である限りは、重ねて弁護士審査委員会の銓衡を受けることができるとかように政府といたしましては解釈いたしております、從いまして、この修正案によりまして、仮にすでに弁護士の資格を得ておられて、満洲國の檢察官或は裁判官をしておられた方も弁護士銓衡委員会の銓衡を受くることによりまして、司法修習生の修習を終えた者、こういうふうにみなすことができまして、判事補並びに檢事の任用資格を得られることになるであろうと政府は解釈いたしております。
 尚、三点でございますが、この法案実施につきましての経費の問題でございますがこれにつきましては、朝鮮弁護士の銓衡に計上されましたのは、大体一名につきまして約百円の見当でこれまで計上されておりましたが、実際上諸物價の騰貴によりまして、それでは賄い切れないものがございますので大体これを三倍と見積りまして、かような銓衡を受けられる者が、現在のところ四十九名という見当になつております。この総額といたしまして、一萬四千七百円、一人三百円の割合でございますが、これらの経費を必要とすると考えております。内訳を申しますると、官吏以外の委員の手当がございますがこれが七千円くらい必要かと思いますそれから事務費といたしまして七千三百五十円くらい、これは各種用紙の印刷費とか廣告料、或いは会議費というようなものでありまして、合計いたしまして約一萬四千七百円、一人当り大体三百円の経費を必要とする、かように考えております。
#5
○委員長(伊藤修君) それではこの程度において質疑は打切りたいと思いますが……。
#6
○政府委員(國宗榮君) 只今の経費は現に予算には計上されていないのでありまして、いずれ法案が通過いたしましたならば、予備費等から支出を願いたいと思つております。
#7
○來馬琢道君 この法案につきましてちよつと疑問とするところを明らかにして置きたいと思いますが、満洲國は外國であつて、日本内地ではなかつたということ、國情が非常に違つていて日本の内地とは一律に行かないこと等のことが、満洲國において経驗があつた、試驗が済んでいたということのために、帰還した諸君にかくのごとくして資格を與えるということは、或る意味から申せば、一般國民としては少しく不安に思うことがないではない、私が大正十二年の大震災の前から、借地借家調停委員に選任されておりましてあの大震火災に遭つて燒けた学校の地下室に入つて借地借家調停を始めたときに判事になるべき方々が見えて、そこで私共が調停しているのを聞いていて、権利金ということが分らない、法律には明文かないといつて、私に質問されて、懇々と説明をしたことがありました。これを法律的に解釈いたしますと土地に対する権利、家に対する権利、又は店に対する権利というような言葉がありますが、調停委員が不用意に使つております用語を法律的に解釈されると、こちらも説明に困ると思うけれども、さて調停を求めに來ている当事者間においてはよく分つておる、で、かようなことは台湾或いは朝鮮のような所でも相当特殊の事情があると思う。満洲國に至りましては、旅順、大連あたりは先ず日本領土のようなものでありますけれどもそれより北の方に行きますれば普蘭店とかあそこらの境から北の方は外國であります。それも軍司令官が大使であり、或いは満洲國の顧問をしておるというような状態でありましたから其処で得て來た経驗が我が日本内地における法律上の種々なる事件に遭遇して直ちに活用せられるものかどうかということは、私共が疑はざるを得ないところであります。判檢事ということになりますれば、尚更疑はざるを得ないのであります。而してこれが議員の方から提出せられた案でありますれば、これに司法省が同意したということで、内閣が同意したということでありますれば、大変手続は簡明に考えられますが、司法省がこの内閣の方からこれを提出されたということになりますと、弁護士試補という問題は相当むずかしかつたと思うのであります。特例を設けてかようなことにするということが何か外の方に影響はないのでありましようか。私いろいろなこと、司法保護とかその他のことで、司法省の方と觸れておるところがありますので、後日に至りまして、そういう問題が起りますと我々議員としての職責上甚だいかがかと思いますので、その辺を明らかにして置きたいと思うのです。併し尚考えて見ますと、極めて少数の方々に便利を與えるような法律の改正案でありまして、惡い大きな先例とはならないものであるとは考える併しながら先だつて來拜見いたしました陳情書のようなことで、泣くがごとく訴うるがごとくというような態度で当事者の方から委員会に申出があつてそれを酌量してこの案を無造作に通過するということは甚だ面白くないことであると思う。これは全く少数の引揚者諸君を優待する考えでこの法律案を通すのであるという解釋でよろしいでありましようか。我々はどこからどういう質問を受けないとも限りませんので、そのときに國会議員の一人として答える肚構えをして置きとうございますから、この点提案者としての当局の答弁を求めて置きとうございます。
#8
○政府委員(國宗榮君) 御質問の点誠に御尤もと考えるのであります。殊にいろいろこの判事並びに檢事の任用につきまして愼重な御心配を頂きましたことは、政府といたしましても深く敬意を表する次第でございます。ただ併しここに救済を受けますところの満洲國の檢察官並びに裁判官であつた方々は、日本の法律を学ばれまして、そして日本の法律におきまするところの、先ず最高の試驗と申しまする高等試驗司法科試驗に合格なさつた方でございます。その上に、満洲國の法律は、御承知の通り、法律の系統は全く我が國と同じでございまして、勿論外國の法律でございまするから、いろいろな点におきまして違つてる点もあろうと思いますけれども、大体におきまして、日本の法律を引受けておつたと申しても差支ないのであります。又法院の組織等におきましても、大体我が國を模範といたしまして動かされておつたのでございます。その経驗というものはやはり我が國の法制を動かして行く上におきましても、決して尊敬に値いしないというものではないのでありまして、経驗もやはりその点におきまして判断に入れてよろしいと考えております、尚更これらの知識、経驗を持つ人人を、改めてその資格を考えまする場合に、先程申上げましたように、銓衡委員会の議を経ることになつておりまして、銓衡委員会におきましては、資格付與につきまして愼重に審議いたしまして、日本の判事並びに檢事として遺憾ない檢討をいたしまして、十分この点に愼重を期したいと考えております。從いまして御心配の点につきましては、私共はさしたる支障はないということに考えております。
#9
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑がありませんければ、これを以て質疑を打切りたいと考えますが、御異議ありませんですか。
#10
○委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めます。
 では、これより討論に入りたいと思います。討論は賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
#11
○松井道夫君 表決に入ります前に、私から修正の動議を提出いたしたいと存じます。お手許に配付してありますのが。それでございますが、尚印刷の工合などがありますから、一應読み上げて見ます。
 附則に次の二項を加える。
 昭和二十二年五月三日以後第一條第一項の規定により弁護士たる資格を有する者で弁護士の在職年数が三年に達するものは、その三年に達したときに、司法修習生の修習を終えたものとみなす。
 第一條第二項の規定により弁護士たる資格を有する者は、その資格を得たときに、司法修習生の修習を終えたものとみなす。修正の理由といたしましては、先程司法当局の御意見を伺いました中で申述べましたが、念のため更に一言申述べてみたいと存じます
 この昭和二十一年法律第十一号によりまして、朝鮮弁護士令による弁護士たる資格を有する、それから第二條にその他のものも規定してあるわけなんでございますが、この第一條の規定によりまして、朝鮮から引揚げて參りました朝鮮弁護士令による弁護士たる資格を有する者が、弁護士審査委員会の銓衡を受けた上で日本の弁護士たる資格を取得する、さようなことに相成つたのでありまして、続いて今囘の改正法によりまして、満洲の審判官、檢察官であつた人達、先に日本の高等試驗、司法科試驗を通つた方、そういつた方々が今度引揚げて來られるその方々にやはり弁護士審査委員会の銓衡を経た上で弁護士たる資格を付與する、こういうことに相成るのでございまして、私実は満洲で審判官をやつておりました経驗もございますので、非常に当局のこの措置に敬意を表し、且つ喜んでおつた次第なのであります。然るに、たまたま憲法の改正に伴いまして、裁判所の機構が変りまして、新らしい裁判所法がこの五月三日に施行されたのであります。そうしてその判檢事たる資格につきましては、新らたに種々の規定ができましたので、判檢事になるには司法修習正の修習を経るということが一つの大きな要件になつて参つたのであります。それで裁判所法施行令の十條或いは檢察廳法の三十七條でございますか、そういう経過規定によりまして、從前の弁護士は概ね判檢事たるの資格が與えられたのでありまして、たまたま五月三日の今の新らしい法令の施行当時に、弁護士三年に至らない者は施行後三年に至つたときに判檢事たるの資格を有する、即ち司法修習生の修習を終えたものとするという工合に規定されたのであります。ところがこの弁護士の特例に関する法律で、第一條の朝鮮弁護士会で弁護士たるの資格のある者、それが審査委員会の銓衡を経た者でも、たまたま帰つて來方が遲いということで、今の法令施行後に帰つて來た人達は今の経過規定の適用を受けませんで、いつまで弁護士をやりましても判檢事たるの資格を得られない、又今度新らしい改正法で、第二項になります満洲の判檢事におきましても同樣のことが言われるのであります。それで私といたしましては、こういう方々もそういう状況ではお氣の毒であるからして、何とかその実力にふさわしい待遇を與えて差上げなければいけないということを考えまして、委員の大方の方方の御賛同を得まして、御了解を得ましてこの修正案を立案いたしたのであります。その際種々司法当局からの御助力も御協力も得たことを感謝いたすのでございますが、この修正案の第一項は即ち先程申しました裁判所法実施檢察官廳法実施後に帰つて参りました朝鮮の弁護士たる資格を有せられる人たちが、三年経ちましたら、日本に帰つて参りまして今の弁護士となりまして三年経ちましたら、判檢事の資格を附與するという規定でございます。それから第二項の方は満洲の今の判檢事の方がこの新らしい改正法によりまして弁護士になる資格を得られる、そのときに判檢事になる資格を得る、即ち司法修習生の修習を終えられたものとするという意味合になるのであります
 この機会に、先程來馬委員から重要な点の御質問がございまして、政府委員からもお答えがあつたのでございますが、私もこの修正案を提出いたしまする責任上、私の意見をちよつと述べて附加えてみたいと思います。只今政府委員のおつしやつた通りでありまして、その上、向うで日本の司法官試補にあたる修習をされまして、判檢事になりまして、主として日本人の権利義務を取扱い、犯罪を取扱つておられたのでありまして、私の経驗からいたしましても、さして御心配になることはないと確信をもつて申上げる次第であります。
 どうか十分御討論の上、この修正案を御可決あらんことをお願いいたします。
#12
○齋武雄君 私は只今の修正案に賛成する者であります。賛成の理由は、同じ資格のある同じ素養のある者が帰つて來る時期によつて差別をするということはいかんことだと思うので、この修正案に賛成するのであります。同じ素養のある同じ資格のある者は、その時期の如何によつて差別すべきものでない。同樣にすべきものであると、こういう考えの下に修正案に賛成する者であります。
#13
○委員長(伊藤修君) 只今松井君の提出されました修正動議は、賛成者がありましたから成立いたしました。これに対して御意見のある方はどうぞ……
#14
○來馬琢道君 只今松井委員から修正案が出まして、賛成者の意見と同じように、同じ資格、同じ経驗をもつた方に待遇の差別があることはいけないということは、今日におきましてはさよう取計らうのが最も適法と信じます。この修正案を入れて当局の、政府の提案せられたものに賛意を表します。
#15
○委員長(伊藤修君) 他に御意見はありませんか。
#16
○政府委員(國宗榮君) 政府といたしましても、只今御賛成の各委員の御意見の通りの趣旨を以ちまして、この修正案に賛成いたします。
#17
○委員長(伊藤修君) 他に御意見がありませんければ、討論はこれで終結いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
#18
○委員長(伊藤修君) 討論は終結いたします。
 次に採決に入りますが、先づ第一に松井委員より提出されましたお手許に配布されました修正案に対しまして採決いたしたいと思います。修正案に対して御賛成の方は御起立を願いたいと思います。
#19
○委員長(伊藤修君) 全会一致で可決いたします。
 それから修正の部分を除く原案に対しまして御賛成の方は御起立を願いたいと思います。
#20
○委員長(伊藤修君) 全会一致で可決すべきものと決定いたします。
 次に、本会議における委員長の口頭報告につきましては、予め多数御意見の意見者の同意を得なくちやならんのでありますが、委員長にその報告の内容をお任せ願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
#21
○委員長(伊藤修君) 尚、本案に対するところの賛成の方に、順次御署名を願うことになつておりますから、どうぞお願いいたします。
 それではこれより刑法の一部を改正する法律案を上提いたしまして、総体論の質疑を継続いたします。
#22
○小川友三君 刑法の一部を改正する法律案につきまして、この原案は誠に民主化されており、特に第一章において、皇室に対する罪を削除したという点について満腔の敬意を表する次第であります。併し、非常に民主化をされまして、國民の幸福を中心として本案はでき上つておりまするが、遺憾なことには、第二十六條であります、第二十六條に「次の一項を加える」という條項「猶豫ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ罰金ニ處セラレタルトキハ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消スコトヲ得」という條項であります。これを政府におかれましては修正する御意見をお持ちであると信じておりますが、その修正の場合は、猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金金一千円以上に処せられたる場合、更に情状によつては刑の執行猶予の言渡を取消すことを得というような工合に、修正の御所見があるかどうかということをお伺しまして、この條項に対しましては敬意を表する次第であります。
#23
○政府委員(國宗榮君) 罰金に処せられまして、そうして執行猶予になつた者が、その後罰金に処せられた場合にその執行猶予を取消す必要のありますることは、この度の改正案によりましてその通り規定しておるのでございますが罰金よりも重い懲役とか禁錮に処せられまして執行猶予になつた者が、その後同じく罰金に処せられた場合に、これを取消し得ないというのは、罰金に処せられた場合との関係上均衡を失するように考えるのでございます。重い罰金の執行猶予が取消されるような場合には、これより重い懲役、禁錮の執行猶予は当然取消さるべきものであらう即ち懲役、禁錮の執行猶予の取消の原因は、罰金の執行猶予の取消原因より寛大であつてはならない、かように考えておるのであります。只今の御質問によりまするというと、一定の罰金額を限りまして、その罰金に該当した場合には、これを取消すことを得というふうに改正したらどうかという御趣旨に拜しましたが、罰金刑は御承知の通り各法律によりまして非常に金額が違つておりまして、統制法令のごときは非常に多額の罰金を科することになつておりますが。今囘は全然改正いたしませんでしたが、刑法全般に亙りまする罰金刑というものは、その統制法令に比べまするというと比較にならない程の罰金刑が定められておるのでございまして、必ずしも罰金刑の多額或いは少額等によりまして犯情がいいとか惡いというふうには考えられないと思うのでありまするから、その点につきましては、今御質問のような、金額によりまする制限を附することは余り適当ではない、むしろ罰金刑に処せられて、これがため執行猶予を取消され得る場合は裁判所の判断によりまして、その犯罪の情状性質等によりまして、取消す必要がある場合には取消し得るというふうにして置いた方が、運用上よろしくはないかと考えまして、只今御質問の趣旨は私共としては直ちには應じ兼ねる次第でございます。
#24
○齋武雄君 草案によりまするというと、安寧秩序ニ対スル罪、即ち百五條の二乃至百五條の四を削るということになつておりますが、これを削つた理由はどこにあるかということをお尋ねするのであります。これは戰時中の法規であるから削るという理由であるか或いは現在においてはこういう法規は必要ないから削るのであるか、若しくは言論の自由ということを尊重せしめて削るということであるか、どういう意味であるか、ちよつと委員には分らないのであります。參考のためにその條文を讀んで見ますというと百五條の二には「人心ヲ惑亂スルコトヲ目的トシテ虚僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ處ス銀行預金ノ取付其他經濟上ノ混亂ヲ誘發スルコトヲ目的トシテ虚僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ七年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ處ス」、百五條の三は「戰時、天災其他ノ事變ニ際シ人心ノ惑亂又ハ經濟上ノ混亂ヲ誘發スベキ虚僞ノ事實ヲ流布シタル者ハ三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ三千円以下の罰金ニ處ス」、百五條の四も又同樣であります。そういう規定でありますが非常に重い無期懲役まであるのであります。これを削除したということは、戰時ということが此処に書いてありまするので、これは戰時中の特別規定であつた、それで戰爭がなくなつたのであるから、こういう規定つまり安寧秩序を惑乱する犯罪は必要がなくなつたのであるか、私の考えとしては、戰爭はなくなつたけれども、現在においては世相は混乱しておる、社会状態は非常に惑乱しておる、そういう場合において虚僞の事実を流布して人心を惑わした、社会を惑わしたそういうような場合には、或る程度必要でないかと考えるのでありますが、これを全部削除いたしまして、他の方法があるのであるかどうか、又言論の自由ということを過度に尊重して、こういうことを廃止することになつたのであるか、廃止する理由についてお伺いしたいのであります。
#25
○政府委員(國宗榮君) 御質問誠に御尤ものことと思うのでありますが。この第七章の二安寧秩序ニ對スル罪を削除いたしましたのは、先ず第一に、これはやはり何といいましても、戰時色が相当濃厚であるという点を第一点として考えたのでございます。更にこの百五條の二から四までをよく通覽して見まするというと、規定が大体におきまして概括的でありまして、場合によりましては、この運用によりましては、只今も御質問の通り、相当言論に対しまする濫用の虞れがあるという点を考慮いたしまして、然らばこれに対しまする條章が不必要であるかと申しますると、必ずしもそうは考えていないのであります。これを具体的に書き改めまして、そして適当な規定を設けるということに努力いたしたのでございますが、差当り非常に技術的にむずかしい事情がございましたので、この第七章の二のこれに該当いたします規定につきましては、今後の刑法の全面改正の場合に讓りたいと、こう考えまして一應削除いたしたのでございます。併しながらこれを削除いたしましても、例へば人心を誑惑せしむべき流言浮説又は虚報、こういうような行爲があります場合には、警察犯處罰令第二條第十六号の適用を受け、又取引所における相場の変動を図る目的を以て虚僞の風説を流布し、又は有價証券市場における相場の変動を図る目的を以て虚僞の風説を流布した者は、取引所法又は証券取引所法違反というような罪にも該当いたします。食糧に関するところの食糧供出阻害の煽動罪というものも、食糧緊急措置令の第九十一條に該当いたして参ります。或る程度安寧秩序に対する罪として行われるものについては現存の法規においてもこれが取締をやつて行ける。從つてこの七章の二も概括的でない、具体的な規定にした今後の刑法改正の際に讓りたいと考えて、削除いたした次第であります。
#26
○齋武雄君 三十四條の二に、刑の言渡の效力を失う規定があります。非常に結構な規定であると思うのでありますが、この規定によりますというと「刑ニ執行ヲ終り又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ經過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」、これは第一項でありまして、第二項には「刑ノ免除ノ言渡ヲ受ケタル者其言渡後罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ二年ヲ經過シタルトキハ刑ノ免除ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」、こういうふうに刑の軽重によつて情状によつて区別しておるのであります。免除の場合は比較的軽い罪でありまして、そういう関係から「罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ二年ヲ經過シタルトキハ刑ノ免除ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」と規定してある。第一項の場合は執行を終り、又は執行の免除を得たのである。こういう者は十年という規定をして、刑の軽重によつて決めたものと考えるのでありますがそういうふうに考えますと、第一項の場合においても、例えば五年以上の懲役の場合には五年を経過したとき、罰金の場合は三年を経過したときは刑の言渡はその效力を失う。早く刑の言渡の效力を失わせて、そうして立派な人間にさせる。これが本当でないか。一律でなく刑の軽重によつてその年数を区別するお考えは持たなかつたかどうか。そういうことを御研究になつたかどうか。こういうことをお尋ねいたします。
#27
○政府委員(國宗榮君) 「刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ經過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」三十四條の二、第一項になつております。「刑ノ免除ノ言渡ヲ受ケタル者其言渡後罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ二年ヲ經過シタルトキハ刑ノ免除ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」、これが第二項になつておりますが、刑の免除は刑の種類とは違いまして、刑の免除も有罪の言渡ということにはなつております。例えば懲役とか禁錮、或いは罰金、或いは懲役のうちの十年、五年こういう趣旨で両方区別したわけではございません。併しながら、只今第一項十年を一律に定めたのはどういうわけかという御質問でございますが、この場合におきましては、どういう條件があろうとも一定の條件、即ち十年という日時の経過によりまして、一律にこの刑の言渡の效力を消滅せしめるという規定でございまして、その間におきまして犯罪の情状或いはその後の本人の経過等によりまして、ここに特別の具体的な刑の效力を言渡す措置をとるということは、これは恩赦法による特赦に讓りたい、かように考えまして、この刑法の現定におきましては、まず罰金も或いは懲役も禁錮も、又それらの経過の十年或いは五年ということも考慮せずに、一樣に十年ということに定めたのであります。そういう刑によりましての区別は、恩赦法による特赦の方法によりましてこれを救済したい、かように考えている次でございます。
#28
○齋武雄君 関聯いたしまして……、そういう御趣旨であれば、刑の免除の場合に、二年という区別をしたことが意味をなさなくなるのでありますが、一律に同一期間を経過した場合において軽いとか重いとか、そういうことを考えないで、一定の期間を経過した場合において、刑の言渡は效力を失わせるようなことにしたのだ、そういう御趣旨であれば、特に刑の免除を受けた場合において、二年という期間を規定した場合については、どういう御趣旨でございますか。
#29
○政府委員(國宗榮君) その点につきましては、刑の免除の言渡というのは有罪の言渡とはなつておりまするけれども別に何年という刑を言渡すわけでもございませんし、又何円という罰金を言渡すわけでもございませんし多少具体的に刑を言渡した場合とは違う。更にこの刑の免除の言渡によりまして有罪の言渡とはいわれておりますけれども、これによりまするところの刑の免除の言渡となつておりますところによりまする法律的の效果ということも、殆ど現行の法規の上にはないのでございまして、ただ逓信官署の雇員規程とか傭人規程、郵便電信電話官署代書人規則に、刑の免除の言渡を受けた者については、雇入につきましては或る程度の制限があるという程度に止まつておるのであります。從いまして、この刑の免除とそれ以外の刑の有罪の言渡の場合とは、これは明らかに区別をつけてよかろう、かように考えましたので、二年というふうにいたしたのであります。
#30
○岡部常君 やはり三十四條に関聯した問題でございますが、一方に五十八條累犯加重の規定を削除せられましてこの点非常に進歩的な立法であろうと考えるのでありまするが、飜つて、三十四條の十年経過ということをお定めになりましたこの十年というものは、一方において累犯加重というものを削除したのに対比いたしまして、余りに長いのではないかと考えるのであります。御承知の通り、從前この累犯加重ということによりまして、いわゆる前科者というものが随分悩み続けて來たのであります。又考え方によりますとこの規定あるがために、いわゆる毒を喰らわば皿までといつて、やけを起して、そうして余分な累犯者を生んだというのが、從前の刑罰法規の私は欠点であつたと考えるのであります。これがすつぱりと削除せられましたならば、この刑の言渡の效力を失わせる十年という経過も余りに長いのではないかと考えるのであります。從前の累犯加重の五年という制限さえも、実は長かつたように私は考えるのでありますこれはもう実際の統計を御覽になれば思ひ半ばに過ぎるものがあるのではないかと思うのでありますが、それに比較いたしまして、十年というところにまだ物惜みをしているといつたような感じか現れまして、この点について更にもう一段進歩したお考えを煩わしたいと思うのであります。先程斎さんがおつしやつた程度のことにするということも一つの考え方だし、又思い切つてこれを累犯加重の、累犯條件の五年というような半分のところへ持つて行くというのもいいのではないかと考えるのであります。その点に関しまして御所見を伺いたいと思います。
#31
○政府委員(國宗榮君) 御質問の点でございますが、これを十年にいたしましたのは、十年の期間の間、必らずしも刑を受けた者の善行を要件としない即ちそれがよい行いをしておつたかどうかということを要件としないのでありまして、この期間内におきまして、刑罰に触るることがなかつたならば、もう形式的に刑を消滅させてしまうというのが本規定でございます。從いまして、実は十年ということを考えましたのは、以上のような考え方から出発しておりますので、政府といたしましては、非常に愼重を期したつもりなのでございます。
 尚、只今五十八條などの関係につきましてお話を承りましたが、五十八條はこの裁判確定後再犯者たることを発見したとき、刑を再び定めるのでございまして、これは憲法の三十九條の刑事裁判の確定力を強調いたしました規定によりまして、特にこれを不利益に変更することを禁ずる精神に出でたものが三十九條であろうと思いますのでその趣旨に從いまして、一度裁判確定になつた後、再犯者たることが発見されたときに、更に刑を加重するということは、この三十九條の精神に反するのではないか、こういう趣旨から五十八條を削除いたしたのでございまして只今の三十四條の二の十年の期間と申しますのは、先程申しました通り、全く刑の処せられた者が、その執行を終つた後の善行につきましては、何らの要件を加えず、一律に形式的に十年経てば刑の效力を消滅させるということでありますから、愼重を期した意味で十年という期間を考えたのであります。
#32
○宮城タマヨ君 第百八十三條を削除されているのでございますが、これは新憲法の精神に則り、それから女性の解放という点から当然削除されるべきだと思つておりますけれども、現社会情勢で、そうして又理想的な建前からいえば、削除でよろしうございますけれども、現段階において刑法の方の実際の線に沿つて行かなければならないという点から、実際の社会情勢に沿わなければならないという点から考えまして、削除されているという点について政府部内の経緯、そこまでになりました経路を一度お聞きしたいと思います。
#33
○政府委員(國宗榮君) 刑法の改正法律案におきましては第百八十三條、即ち姦通罪につきまして、削除の案を立てておるのでございますが、憲法の十四條によりましての、夫婦の平等と男女の基本的平等ということが規定されまして、從いまして今日現行の刑法の百八十三條によりますると、女子が姦通した場合のみ罰する規定でありまして男女平等の原則から申しましても、憲法上改めなければならないということになりましたので、昨年内閣及び司法省内に開かれました法制調査会並に法制審議会におきまして、各方面の方方のお集りを願つて、そうしてこれにつきまして自由なる御論議を願いました結果、非常に議論が沸騰いたしまして廃止したがよろしいという御意見と更に男女両方を罰する規定を設けた方がよろしいといふ御意見が相対立いたしまして、相当紛糾いたしたのでございますが、決を取りました結果、少数の差をもちまして、姦通罪は刑法の規定から削除いたしまして、そうして夫婦間の愛情と、社会の道義の問題に任せたらよかろうというふうな御答申を得ました。この答申に基きまして私共としては立案に從事いたしましてそうしてこの百八十三條削除の原案を作りまして提案いたした次第であります。
#34
○大野幸一君 前囘委員会において、五十五條の連続犯について御説明があつたのであります。それは捜査上の便宜のためではなくて、憲法三十九條によつて、今度同一犯罪については重ねて刑事上の責任を問われない、こういう意味を全うするために、若しそういうことになると困るからということで專ら政府の意見は、いや捜査のためじやないということを強調されたのであります。併し政府委員の方の率直な御説明で、私はちよつとごまかされておつた感があるのでありますが、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないということは、新憲法三十九條によつてできたんじやなくて、もう從來から、即ち犯罪の同一性ということになれば判決の確定力一事不再理の原則が適用されて來たのであります。ただこれを憲法上に……今まで刑法上の原則として適用されて來たのを、憲法に明らかにしただけのことであつて新らしくできた原則ではないのであります。そういうわけですから、今まで連続犯として認めて來たことに、何年間、何十年間これをやつて來て何等……幾らか不便もあつたでしようけれども、もう連続罪というものは当然のようになつて來たのであります。ただ特別な場合、窃盗罪と強盗罪或いは猥褻図書頒布罪のごとき、一部分を罰した後、多量の犯罪が出て來たということだけを例に挙げられる逆の效果を考えると、前囘にも申しましたように、犯人の受ける心理的影響というものは連続犯の一部について仮りに処罰されても、その後に残つておるということがある。これが発覚されれば、又やられるのだと、こういうことになつて、いわゆる自暴自棄に陷る、自分はまだ処罰されることが残つておるのだと、こういう意味において、いつまでも罪から逃れることがなくて、自暴自棄に陷る場合があるということと、政府が口で何とおつしやつても、あの五十五條を削除したゆえんのものは、これは搜査官の口から出るところ、或いは一般の常識となつておるところの、これは搜査が十日間では、或いは十三日間ではできない、それを救済する意味でできたのは、間違いないのである。そういう点は他に一つ何か方法を講じてこの五十五條は、動機が動機で、口で言うことと……弁解することと肚の底と違つては政府みずからが不正直を唱えることになるから、これは一つ特別な場合で不便があるならば、これはその点を改良して、連続犯は從來通り一つ存置して貰いたいと、こういう考えでありますが、それとも搜査上困るということがあれば、これはこの委員会で正直に一つ政府の搜査の実情を述べて貰いたいと考えるのであります。
#35
○政府委員(國宗榮君) 御質問の連続犯削除の点でございますが、連続犯につきましては、これまでの実情から申しまして、大審院の判例等におきまして、連続犯の範囲を、時間的連続の点におきましても、又同一罪名の点におきましても、極めて廣く解釈しておるのであります。而もその情勢は、次第に連続犯という観念が拡まるように実は見られるのであります。例えば窃盗と強盗というようなものをも連続犯にいたしておりまするし、又時間の点におきましても、三ケ月或いは四ケ月の間をおきまして、罪を犯した場合におきましても、同一犯罪である限りにおいては、連続犯というような観念を持つて参りますし、更に殊に時效、短期の時效、例えば賭博というような名がつきましても、單純賭博なんかにつきましても六ケ月の時效でありますが、かようなものにつきましても、この連続犯の観念を非常に拡げて参りますと搜査上不都合が生ずるということが、これまで実務上考えられておつたのでありまして、今囘の改正におきましても、連続犯と申しますのは、これは議論もありますけれども、元々数罪であるという考え方に出発しておりますから、これを削除いたしまして、実際の一罪としての観念に適合するような処罰をした方がよろしいという点が一点でありまして、それから尚、御指摘になりました搜査の便宜の問題でありますが、これはやはり、何と申しましても搜査上便宜と申しますか、搜査の点におきまして、檢察或いは警察の点におきまして、治安を維持して行く上において、やはり或る程度の時間的制限を受けておりまするから、十分治安の維持を図る上におきましては、やはりこれを連続犯として観念いたしまして軽微な窃盗罪で処罰を受けて、兇惡な強盗罪がどうしても処罰できないという、こういう結果を生じさせたくないということも実は考えたわけなんであります。これを被告人或いは犯罪人の側から申しまするというと、お説のごとく或いは心配の点も起るかと思うのであります。併しながら、趣旨が非常に廣く、時間的にも又同一罪名におきましても拡げて参ります関係上、これを本來の数罪の点を一罪に改めて処分し得るようにした方が、最も刑法としては時宜に適するんじやないか、こういう点からこれを削除することにいたしたのであります。
#36
○齋武雄君 只今宮城さんから姦通罪の問題についてお話がありましたが、私もこの点について政府の御意見を確めておきたいのであります。姦通罪を削除したということは、両性の平等ということから來ておることは当然でありまして、現在の刑法が婦人のみを罰しておる、それが憲法に違反する、こういう建前から削除ということになつたと考えておるのであります。こういう道義的犯罪は、法律で以て規定すべきでないということは理想であります國民の道義に信頼して、國民の教養に信頼して、こういうのは法律で規定すべきものでないのでありますが、併しその当時の段階においては、現状においては否定せざるべからざる場合があるのであります。規定するということは非常に遺憾なことでありまするが、現在においては両罰主義の方がよろしいのではないかと考えておるのであります。なぜそういうことを主張するかというと、自由ということを履き違えておる、姦通罪がなくなつたから自由である、解放されたんだ、決して姦通罪の削除は婦人の解放ではないのであります。勝手だということではないのであります。或いは男子は無論のことでありますが、平等にするという建前から來ておるのであつて、解放して自由勝手だという意味ではないのであります。ところが國民はそれを履き違えておるのであります。法律では罰しないから何をやつても自由なんだ、民主主義についてもそういう考えを持つておる國民が多数あるのでありまして、國民の教養が高まつて、道義が昂揚したならば、いつでも廃止することは結構でありますが、政府がこの規定を削除したということは、現在の國民の道義教養の程度に信頼してよろしいのである、信頼してよろしいという確信を持つて、この規定を廃除したのであるかどうか。或いはこれは審議会の多数の意見のために削除したけれども、政府としては議員の自由意思によつて平等であればよろしいのだ、平等の規定であれば、両罰であろうが、削除でもそれはいずれでも固執しないのだ、或いは審議会の通り、現在の國民道徳に信頼して十分だとお考えになるのであるか、その点を確めて置きたいのであります。
#37
○政府委員(國宗榮君) お答えいたします。姦通罪を削除いたしましたのは只今御質問のように、今日の國民の道徳、或いは文化、こういう面からみまして、削除しても十分に差支えない、こういう意見に立つて削除いたしたというわけでは実はございませんのでありまして、政府といたしましては、今日の社会の道徳、文化、それらのものは、この姦通罪を削除して十分に男女間の正当な道義を維持して行けるかどうかということにつきましては、いろいろ疑問を持つておるのでございます併しながらこの姦通罪の規定を削除いたしますのに、政府だけの考えを以ちまして削除するということはいかがかと存じまして、委員会の答申を先ず尊重いたしまして削除しておりまするけれども、併しながらこれは單に委員会の意見でございまして、究極におきましては、國の唯一の立法機関でありまする議会におきまして、十分な討議と十分な御意見を拜聽いたしまして、議会自身におかれまして御決定を願いたいということが、政府の希望なんでございます。
#38
○小川友三君 百八十三條の問題が議題に上げられたのですが、私はこれは削除しないで、訂正をして貰いたいと思つております。男女両方を罰する、但し体刑は加えない、まけて罰金はお互に千円ずつ拂う、國庫に千円ずつ拂うという方法で、最低限度千円、ずつとお決め願うように、皆さんに御賛成を願おうと思つておりますが一人で決めるようですが、大体これは話してあります。昨年削ろうというような話が出た、というのは、昨年は戰爭に負けて間もなくて、廃頽思想が横溢しておつたのでありますが、我々はこうして現に長く家を空けておりまするというと、姦通罪がないのだというので、家を侵されるということが極めて危險率が100%に近いのでありまして、両方を罰するという建前を主張するものでありますが、政府の御意見を一つ承りたい。
 それから第三十四條の、今岡部先生から御質問がありましたが、岡部先生は拘置所の所長を永らくやつておられた方で、恐らく五年以内の再犯とか、十年以内の再犯率が非常に多いことを示されておつたように、発言の中に聞いておるのであります。これを名案を出しまして解決したのですが、罪を犯した者で、妻子がある者は五年以内に一人でおる者は十年という工合に條件をつけて、これを修正してもらいたいと思いますが、政府の御意見を御伺いいたします。
#39
○政府委員(國宗榮君) 姦通罪について申上げます。小川委員は姦通罪は両方共処罰しろという御意見でございますが、これを処罰いたしまする限りにおきましては、或る人間の生理的生活におきまして、夫婦の生活によりますることが最も人倫の道であろうと考えるのであります。この道を維持する上におきまして、両方罰するということを刑法に宣言いたしますのは、全く夫婦間の生理的純潔維持の原理を強調するものでありまするから、これにつきまして一旦刑法で罰する、かような規定を宣言いたしました以上、これは簡單には取扱えないものと政府は考えております。從いましてもしかような規定を置きまして、そうしてこれに違反する者がありますならば、やはりその双方の処罰を以てする方が妥当ではないか、むしろ事の性質上財産犯でもありませんし、多く道義的の犯罪でありまして、両方に贖罪の精神を起させるというような意味合からいきましても重刑を以て臨むのが妥当ではないかというように政府は考えております。
 それから三十四條の二の、只今の御意見でございまするが、どうも独身者と夫婦者との間に区別をつけるということ、これは社会上、事実上の点におきまして、そういう点も強調し得られるかとも存じまするけれども、法律の上におきましては、ちよつと政府といたしましても直ちに賛成いたし兼ねる点と思うのであります。
#40
○岡部常君 小川さんが、私の説明が足らなかつたせいか、十年くらいの間は非常に罪を重ねる者が多いかのようにお聽き取りになつたそうでありますが、これはそういう意味で申したのではありませんので、成るべく早く制限を解いてやれば人間はよくなり得るじやないかという建前で、もつと制限を緩和してもらいたい、こういう意味で申したのであります。誤解のないようにお願いいたします。
#41
○阿竹齋次郎君 私ちよつと分らなくなつて來たのですが、私は原案は言うまでもなく政府のものだと思うておるのです。ところが、小川さんの質問に対して政府は、あれは私のものではない審議会の意見を代弁するものである骨子だけであると言うておられるが、そうすると、政府の責任はない、政府のものかと思うと政府のものじやないこうおつしやつたのですが……。
#42
○政府委員(國宗榮君) 只今の御質問にお答えいたします。小川委員にお答えいたしましたのは、小川委員から姦通罪を自分は廃すべきものである、罰する場合には、お互いに千圓くらいの罰金刑に処してやればよろしい、こういう御意見でございましたので、その御提案に從いまして、政府としての罪金ならば千圓の罪金刑ではよろしくない、かように申上げたのであります。罪するか罪しないかということにつきましては、政府は固執いたしておりません。
#43
○委員長(伊藤修君) 今の阿竹委員の質問の要旨は、委員会の立案に基いてこの姦通罪を削除することに決定したいという提案をしたのだ、政府の意見ではないのだ、そうするとこの提案は政府の意見であるか、委員会の提案であるのか、こういう御質問であります。
#44
○政府委員(國宗榮君) この立案の経過は、先程から申上げました通り、委員会の答申に基いて立案いたしたのでありますが、勿論これは政府の責任において提案いたしたのであります。
#45
○阿竹齋次郎君 それをもつと早く初めからはつきり言つてくれればよいので、責任を轉嫁するような説明をしなさらんで頂きたい。そうしなければ頼りがない。
#46
○政府委員(國宗榮君) 政府といたしましては、委員会の答申に基きまして政府の責任において、姦通罪を削除するという原案を提出いたしておるのであります。ただ先程御質問がありました通り、政府はこれを固執されるかという御意見に対しましては、政府としては固執するのではない、この委員会において御決定を願えれば、それについて政府は異存がないという点を申上げたのであります。
#47
○阿竹齋次郎君 それはどうせ議会にかけて決めることで、多数決で決まることとか、政府が信念をもつて提案することは、言わなくても決まつていることだ。却つていろいろな御説明をなさるので分らなくなつてしまう。
#48
○松村眞一郎君 只今の姦通罪の問題は裁判に現れておる何か経過はないのですか。経過といつてはおかしいが、資料はないのですか。年々どういう形において現れているのか……。
#49
○委員長(伊藤修君) 先にお手許にお配りした資料に数字が出ておる筈ですが……。
#50
○松村眞一郎君 そうするとその経過は、この立法の際に參考にされたのでありますか。つまり道義の経過がどんなような工合になつておると結論になつたのでありますか。つまり私がお尋ねするのは、有夫の婦の姦通というものをもう無罪にしてよい、罪と見ない方がよいというほど道義が進んでいるという判断であるのかどうか。その方の判断をまず決めて、女を罰するならば男も罰することを必要とする。こういう平等論が出て來ると思うのでありますが、憲法の要望しているものは、平等を要望しているのであつて、日本の道義がどのくらいに進んでいるかということは、これは別問題だと私は思います。日本の道義の程度が、女の姦通を罰しなければ、節操を維持したり日本の風儀を維持する上において、まだ早いのだということを、女について判断ができたならば、その結論を男にもつて行つて、男も有罪にしなければならんと思いますが、現在有罪になつているその事実が、すでに日本の道徳の進んでいる現状では、この問題はもう問わなくてもよい、道義に全然任してよいという判断に出発しておれば、女は罪に問われない、だから男も罪に問われないという論法になると私は思う。でありますから、姦通罪に対する裁判所の見方、そのようなことは何かどつかに現われていないのでありますか、件数の外に……。何か裁判の経路から見て或いはいろいろな事実がありそうだけれども、直ぐに親告罪に取下げる何かそこに、離婚の問題にも、姦通が原因になつて離婚した数が多いとか少いとか何とかいうことがすべて民法にも私は関係があると思いますが、事実は一つの事実なんであります。そんなことは資料の方から判断できませんでしようか。
#51
○政府委員(國宗榮君) 民法上の資料はちよつと手許に持ち合せておりませんが、大体姦通罪は御承知の通りこれまで親告罪になつておりましたので、告訴を俟たなければ実は檢察裁判の問題になつて來なかつたのであります。從いまして全体の犯罪の数から申しますと非常に少いのでありまして、大体十年間の統計を見ましても余り増減はないというのが実情でございます。而も第一線の檢事局等に現れます姦通罪は、多くは何と申しますか、私共から申しますと、國民の中で余り教養のないと思われる人々の告訴が非常に多いのでありまして、多少教養のある方々の告訴はほとんど数えるより外ないくらいであります。而もその審理の途中におきまして、告訴がどういう動機でなされるのか分りませんが、主として非常に感情的なものが多い、それから又同時に、男女間の生活資材と申しますか、財産的な要求に関して姦通の告訴は起されておるものが多いように感ぜられるのであります。從いまして、裁判、檢察の上に現れてまいりました姦通事件というものから見まして、男女間の國民的の一般の道義の水準というものを判断するということは極く一面しかできないのでありまして、全般を見まして、男女間の夫婦の間の道義は確立されておるとか、或いは進んでおるとかということを断案するのは甚だ資料に乏しいと考えておるわけであります。民事上の関係におきましては資料を持ち合わせておりませんので、どういうふうに判断してよいか御説明申上げ兼ねるのでありますが、さようなわけで、この原案を提出いたしましたのも裁判、檢察の上に現れた事件の数並びに事件の性質等から見まして、こういう程度のものならば、まず答申に基いて削除してもよいのじやないかという見解から削除いたしました。併しながらこれは先程申上げた通りに、誠に全般的に判断する資料に乏しいところから見たところでありますから、それで議会におきまして自由な御討議を願いたい、かように先刻申上げたのであります。
#52
○岡部常君 松村委員がおつしやつた民事上に現れた離婚原因などの資料が得られれば大変面白いと思いますが、その点は少しもお調べにならなかつたのでありますか。この材料を求めるのはむずかしいと思いますが、若し裁判上にそういうことが片鱗でも見えますれば、これは非常な参考になろうかと思います。さような点で道義がどういうふうに現れておるか、見られれば大変結構かと思います。
#53
○政府委員(國宗榮君) 実はこの点については、甚だ粗漏でございまして、よく調べてございませんが、尚できるだけ調べて資料を提出いたしたいと思います。
#54
○小川友三君 この姦通罪が立法以來合計して何件ぐらいあつたのでありましようか、お伺いしたいのであります。
#55
○委員長(伊藤修君) その資料は出ております。
#56
○小川友三君 大分論議つくされましたので、議事を進行しては……。
#57
○宮城タマヨ君 私は起草委員会の御様子を聞きたいのですが、姦通罪によつて生れる子供についての問題がでましたか。籍その他いろいろな点で伺いたいのでございますが…。
#58
○政府委員(國宗榮君) この姦通によります子供の問題につきましては、実は委員会におきましては何らの論議も出なかつたのであります。
#59
○宮城タマヨ君 あ、そうでございますか。
#60
○政府委員(國宗榮君) その点、申上げる資料を持つておりません。
#61
○委員長(伊藤修君) それでは、この際お諮りしますが、この刑法の一部改正、この法律案の審議の上におきまして、何か参考資料をこの際御要求になる方は一つ申出て頂きたいと思います
#62
○岡部常君 私先程係の方に申上げて置きましたのでありますが、今後審議を進めて行く上につきまして、一般の委員外の方にも便利だと思いますが、新旧対照の改正に觸れた点だけでも…
#63
○委員長(伊藤修君) これはこの間委員部を通じまして要求して置いたのでありますが……。
#64
○岡部常君 民法の方は出ておりますが、見よいものを廻して頂ければ非常に……。
#65
○委員長(伊藤修君) これは先だつて四、五日前にお願いしておきました。
#66
○岡部常君 今はなかなか法典も手に入りません。
#67
○小川友三君 同感々々。
#68
○委員長(伊藤修君) 尚、他に資料を御要求になることはありませんですか。
#69
○小川友三君 ありません。
#70
○委員長(伊藤修君) それでは尚御研究願つて置いて、若し資料の御要求のある方は、委員長まで申出て頂きたいと思います。
 それでは、この法案に対する質疑はこの程度で打切りまして、爾余は後日に讓りたいと思います。
 尚、この際お諮りしたいことが一、二件ありますから……。第一に公聽会における公述人の選定は委員会においてなされるということが参議院規則に明らかになつておりますが、これは人選の問題でありますから相成るべくは理事と委員長にこの人選をお委せ願いたいと思いますが、いかがでございましようか。
#71
○委員長(伊藤修君) それでは御異議がないものと認めまして、理事と委員長において適当に選定いたしたいと思います。御承知を願います。
 それから、先般來、本委員会の専門調査員のお方をいろいろ人選しておりましたけれども、今日まで定まりませんでしたが、昨日までの大審院の高等裁判所ですか、梶田年というお方がありますが、この人を専門調査員の一名にお願いしたいと思います。御同意願いたいと思います。
#72
○委員長(伊藤修君) それでは御同意を願いまして、御本人に交渉してみる積りでございますから、よろしくお願いいたします。
 明日はいかがでしよう。午前中にやりましようか。それでは明日もお暑いでしようけれども、午後一時からということにいたしたいと思います。それでは本日はこれで散会いたします。
   午後三時三十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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