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1947/08/06 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第9号
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1947/08/06 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第9号

#1
第001回国会 司法委員会 第9号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○連合國占領軍、その將兵又は連合國
 占領軍に附属し、若しくは随伴する
 者の財産の收受及び所持の禁止に関
 する法律案(内閣提出)
○昭和二十一年勅令第三百十一号(昭
 和二十一年勅令第五百四十二号ポツ
 ダム宣言の受諾に伴い発する命令に
 関する件に基く連合國占領軍の占領
 目的に有害な行爲に対する処罰等に
 関する勅令)の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案(衆議院送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案(内閣
 送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月六日(水曜日)
   午後一時五十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○刑法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それでは委員会を開きます。本日は「刑法の一部を改正する法律案」に基きまして、各條審議に入りたいと存じますが、先ず政府委員のこれに対する御説明を一應伺つてから、質疑を継続いたしたいと思います。
#3
○政府委員(國宗榮君) 「刑法の一部を改正する法律案」の全般的な概括的な説明は、提案理由で申上げて置きましたのでございますが、各條に亘りまして簡單に御説明を申上げます。
 先ず第一に、目次の改正でありますが、これは一應條文の整理をしたに止るのであります。
 第一條でありますが、『第一條第一項中「帝國内」を「日本國内」に、同條第二項中「帝國外」を「日本國外」に、「帝國船舶」を「日本船舶」に改める。』かようにいたしましたのは、新憲法下になりまして、「帝國」という文字を使わなくなりまして、日本國と相成りましたので、その字句を整理をいたしたのでございます。
 第二條でありますが、『第二條中「帝國外」を「日本國外」に、同條第三号中「乃至第八十九條」を「、第八十二條、第八十七條及び第八十八條」に改め、同條第一号を次のように改める。一 削除』、かように改正いたしましたが、「帝國外」を「日本國外」と改めましたのは、先程申上げた理由によつて改めたのでありまして、「一 削除」といたしましたのは、後に御説明申上げます「皇室ニ對スル罪」を削除いたしました関係で、これを削除いたしました。第三号を改めましたのも、これは「外患ニ對スル罪」に関しまして改正をいたしましたので、それに應じてかように改めたのであります。
 次は第三條でありますが、『第三條第一項中「帝國外」を「日本國外」に、「帝國臣民」を「日本國民」に改め、同條第二項を削る。』かように「帝國外」並びに「帝國臣民」という言葉を改めましたのは、先程申上げたと同じ理由によるのでありまして、更にこの第二項を削る、第二項は「帝國外ニ於テ帝國臣民ニ對シ前項ノ罪ヲ犯シタル外國人ニ付キ亦同ジ」、かような規定に相成つております。これを削除いたしたわけでございます。その趣旨は、從來外國人が日本人に対しまして、その法益を侵害して罪を犯した場合には、それが外國で行われた場合におきましても、日本刑法を適用することになつていたのでありますが、この規定は諸外國の立法例も考えてみまして、この種の國外犯については、これを当該國の刑法に讓りまして、日本國刑法の適用を除外するという趣旨で、かようにいたしたのであります。一つには憲法の改正によりまして、戰争放棄並びに國際信義、かような原則に基きましてこの規定は特別に我が國の特殊な保護主義を強く主張しておるというふうに見られましたので、この点を削除いたした次第でございます。
 次は第四條関係でございますが、第四條は、これはやはり先程申上げました通り「帝國外」並びに「帝國ノ」という言葉を、「日本國外」或いは「日本國ノ」というふうに改めましたのであります。理由は前に申上げた通りでございます。
 次は第五條でありますが、第五條は現行刑法には「外國ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行爲ニ付キ更ニ處罰スルコトヲ妨ケス但犯人既ニ外國ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得」、かように規定いたしてありまするが、この「免除スルコトヲ得」というのを「免除ス」というふうに改正いたしました。その趣旨は第三條第二項を削除いたしたと同じ考えに基きまして、國際信義の立場をここで明かにいたしたい、かように考えたのであります。外國において刑事裁判を受けた者に対して、日本で更に重ねて刑の言渡しをする場合において、犯人がすでに外國で刑の全部又は一部の執行を受けていたときには、必ず減軽又は免除しなければならない、こういうようにいたしまして、外國の裁判を尊重する趣旨を一層明らかにいたしたのでございます。
 次は第二十條中に「前條」とあるのを「第十九條」と改めておりますが、これは実は刑法へ第十九條の二を加えましたときに、当時整理しなければならなかつたのでありますが、手違いによりましてそのままになつておりましたので、第十九條を改めまして、今囘この整理をやるというに過ぎないのでございます。
 次は第二十五條でありますが、二十五條は「左ニ記載シタル者二年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情状ニ因リ裁判確定ノ日ヨリ一年以上五年以下ノ期間内其執行ヲ猶豫スルコトヲ得」ということを第一項に掲げておりますが、これを「二年以内ノ懲役又ハ禁錮」を「三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金」に改めましたのでございまして、その趣旨はこれまで御質問にもありましたように刑の執行猶予の範囲を廣めまして、そうして刑罰の効果を、いわゆる刑事政策的な目的を廣く達成しようという考えから、かようにいたしたのでございます。而もこの改正は、これまで罰金刑に対しましては執行猶予の制度がございませんのでありましたが、これによりまして新しく五千円以下の罰金につきましても執行猶予が言渡されるというふうに改めたのでございます。
 次は第二十六條でありますが、二十六條は現行法によりますと、「左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス可シ、一 猶豫ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑二處セラレタルトキ、二 猶豫ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ、三 前條第二號ニ記載シタル者ヲ除ク外猶豫ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルコト発覺シタルトキ」とありますが、この一項に更に第二項といたしまして「猶豫ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ罪金ニ處セラレタルトキハ刑ノ執行猶豫ノ言渡を取消スコトヲ得」というのを一項加えまして、これは執行猶予につきまして罰金につきましてもこれを認めまして、その結果、これとの均衡上、罰金に処せられた場合も、刑の執行猶予の言渡を取消すことができるというような規定を加えたのであります。これは必ずしも罰金に処せられた場合に取消さなければならないのじやないのでございまして、罰金に処せられた場合におきましても、情状によりましてこれを取消すことができると、かように改めたのでございます。
 次は「第六章時效」とありますのを「第六章刑の時效及ヒ刑ノ消滅」に改めることにいたしました。これは章の一番終りに、第三十四條の二といたしまして「刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ經過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其ノ效力ヲ失フ、刑ノ免除ノ言渡ヲ受ケタル者共言渡後罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ二年ヲ經過シタルトキハ刑ノ免除ノ言渡ハ其效力ヲ失フ」、いわゆる前科抹消の規定を設けることにいたしましたので、この章の標題も「刑ノ時效及ヒ刑ノ消滅」と、かように改めたのでありまして、三十四條の二は新しく條文を加えたのでございます。これはいわゆる前科抹消の規定を設けたのでありまして刑事政策的な制度の拡張という趣旨で設けたのでございます。この刑の言渡の效力を失うということにつきまして十年の期間を定めましたのは、前囘も申上げました通りに、刑の執行を終り又はその免除を得たる者が、罰金以上の刑に処せられることなくして十年を過したという継続的な事実によりまして、一率に前科の抹消をするという趣旨によりまして、先づ愼重を期しまして、十年という期間を設けたのでございます。更にこの刑の免除の言渡を受けた者につきましては、刑の免除は有罪の言渡でありますけれども、普通の懲役、禁錮、罰金に処せられた場合とは趣きを異にいたしまして、いわば無罪の言渡があつた者と余り違はないような法律上の效果を持つておりますので特にこの点に限りまして、その期間を二年といたしたのでありますが、これは刑法仮案でかように定めておりましたので、大体それによりまして、この二年の期間を定めたのでございます。
 次は、第九章併合罪に中の第五十五條を削除いたしました。「連續シタル數個ノ行爲ニテ同一ノ罪名ニ觸ルルトキハ一罪トシテ之ヲ處斷ス」、この規定を全部削除いたしたのでございます。これを削除いたしました趣旨は、五十五條はいわゆる連続犯に関する規定でありまして、「連續シタル數個ノ行爲ニシテ同一ノ罪名ニ觸ルル」、こういう場合にこれを一括して一罪として処断することになつておるのでありまして、一罪として処断するには、科刑上におきましては併合罪としての取扱いをしないということでございまして手続の面におきましては、その一部について起訴があれば、当然全部を公判に繋属し、又その一部について有罪裁判が確定すれば、その確定力が当然連続犯の全部に及ぶ、從つてその他の部分が後に発覚しても、改めて起訴処罪することができないということを意味しておるのでありまして、從來の刑事手続、特に捜査に相当の時間的余裕がありました関係上、これらの連続犯の殆ど全部につきまして、十分な捜査を遂げて、起訴して、審判を受けることが大体可能でありましたが、併しその場合におきましても、大審院の判例が、非常に連続犯の範囲を廣くいたしまして、次第にこれが拡張されるような傾向にもありましたので、時としてはそういうような場合におきましても、軽微な犯罪につきまして確定裁判があるために、重要な犯罪が改めて処断することができない、こういうような不都合を生じたことがあります。この場合には止むを得ない処置といたしまして、刑事訟訴法の四百八十六條によりまして、被告人に不利益な再審の規定に基きまして再審によつて前の裁判を取消しましてそうして裁判を直す、かようなことによつて救済して參つたのでございますが、今日の薪らたな刑事手続におきましては、捜査の期間ま非常に制限を受けておりまするし、又憲法上、裁判の審判も迅速にしなければならないということが要求されておりまする結果、これまでのようにゆつくりと、犯罪の全罪情を調べた上で、これを処断するということは到底困難になつて参りました。そこで從來のような考えの下に連続犯の制度が残されておるとしますれば、恐らく常に僅か一部のみが実際の審判の対象となりまして、大部分の余罪はその蔭に隠れてしまつて、被告人が本來受けなければならない刑より遙かに軽い刑で責任を免れるということになりまして、而もその点の著しい場合例えば極く軽微な窃盜罪によりまして処断を受けて、兇惡な強盜罪の処断を免かれるというような著しい場合を救済しようといたしましても、今日におきましては、從來のように刑訴の四百八十六條の規定を流用することが、刑事訴訟法の應急措置法におきましてできないことになつておりますので、かようなことでは社会の正義の通念にも反しまするし、治安の維持にも惡影響を及ぼし、もともと連続犯の対象となるのは、数行爲でありまして、本來それぞれ独立して一罪を構成すべきものでありますから、これを立法上どの程度処断上の一罪とするかということを考えた結果そのことは一應便宜の問題ではないか、かように考えまして、今日の治安維持の関係、処罰に社会正義を顯現するというような観点からいたしまして、先ず第五十五條を削除いたしました方がいいのではないかということから、この五十五條を削除いたしたのであります。
 次は五十八條でありますが、五十八條は、これは「裁判確定後再犯者タルコトヲ発見シタトキハ前條ノ規定ニ從ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム、懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ其執行ノ免除アリタル後發見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス」、この規定を削除いたしました。これはいわゆる累犯加重の決定が、憲法の三十九條の精神に反する疑いがあるのではないかという点から、これを削除することにいたしたのでございます。
 次は「第二編罪」の中の第一章の「皇室ニ對スル罪」でありますが、これを削除いたしました。即ち「第一章皇室ニ對スル罪」を「第一章削除」に改め、第七十三條乃至第七十六條を削除いたしました。この度の刑法の改正の中におきまして、最も重要なる点はこの「皇室ニ對スル罪」の削除であろうと考えるのであります。新憲法におきまして、天皇は日本國の象徴であらせられ、日本國民統合の象徴であらせられことは、明らかに規定しておるのでありまして、而もかような特別の地位を有せらるるのでありまして、皇族も又、これに從いまして法律上特殊の身分を有せらるるのでありまするけれども、他面これらの地位と矛盾しない範囲におきまして、一般の國民と平等な個人としての立場をも、以前も有せられ、今日も尚且つ有せられておるのでありまして、この個人という立場である限りにおきましては、法的に異つた扱いをするということは、新憲法の趣旨に合致しない、かように考えまして、この「皇室ニ對ナル罪」を削除いたしました次第でございます。固より個人の尊重又個人の平等、こういう趣旨を徹底せんとするものでありまするけれども、これにつきましては日本國民の傳統的な感情に異常な衝撃を與えるのではないかという点を非常に懸念いたしたのであります。併し政府といたしましては、これらの罰條の存廃が、直ちに我が國民主化の問題の一環といたしまして、列國の注視の的となつておることを考慮いたしまして、挙げてこの章を削除することにいたしたのでございます。
 次は第三章の「外患ニ關スル罪」を改正いたしました。これは第三章の「外患ニ關スル罪」は、戰爭状態の発生並びに軍備の存在を前提とする規定でありまして、今次憲法におきまして戰爭放棄を宣言いたしておるのでありまするから、この條章は当然に改正を加えなければならない、かように考えたのであります。ただ併し戰爭を放棄いたしましても、外國との関係におきまして処罰を要するものがございます。それを改めてこの度規定いたした次第でございます。即ち八十一條を改正いたしまして「外國ニ通謀シテ日本國ニ對シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ處ス」外國と通謀いたしまして、日本の國に対し武力を行使するに至らしめた者、外國が日本に対して武力を行使する、かような場合に、これを行使するに至らしめた者を死刑に処すと規定をしたのであります。「第八十二條 日本國ニ對シ外國ヨリノ武力ノ行使アリタルトキ之ニ與シテ其軍務ニ服シ其他之ニ軍事上ノ利益ヲ與ヘタル者ハ死刑又ハ無期若クハ二年以上ノ懲役ニ處ス」、これも日本に対しまして、外國自体が武力の行使をして参りましたとき、これに対してその軍務に服したり、或いは軍事上の利益を與えるという行爲がありました者は、死刑又は二年以上の懲役に処す、とこういう規定にいたしたのであります。
 それから八十三條乃至八十六條は、いずれも戰爭状態並に軍備の存在を前提といたしまする規定でありまするので、これは削除いたしました。そうして八十七條並に八十八條等におきましては、この削除等によりまするところの整理をいたしまして、八十九條をも、只今申上げましたように、軍備の存在並に戰爭状態を前提といたしまする規定と解されまするので、これを削除いたしました。
 次に第四章の「國交ニ關スル罪」でありまするが、これは第九十條竝に第九十一條を削除いたしたのであります。第九十條は「帝國ニ滞在スル外國ノ君主又ハ大統領ニ對シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス、帝國ニ滞在スル外國ノ君主又ハ大統領ニ對シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス但外國政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス」、かような規定でありまするが、勿論この規定を削除いたしましたのは、皇室に対しまする罪を削除いたしましたのに應じまして、この規定を削除いたしましたのでございまするけれども、併しながら、これによりまして外國の君子又は外國の使節に対しまする國際法上のいわゆる不可侵権、國際法上認められました権限を認めないという趣旨ではないのでございまして、これを削除いたしますると同時に、一般の暴行脅迫の刑を加重いたしまして、そうして外國の君子並に外國の使節等の保護に欠けるところないようにいたしたのであります。ただ併し、後にを説明申上げまするけれども、侮辱の規定を削除いたしておりますので、外國の使節に加えられました、或いは外國の君子、大統領に加えられました侮辱については、この九十條、九十一條ノ規定を削除することによりまして、保護を與えられないという結果に相成りまするけれども、暴行並に脅迫、或いは名誉毀損等の罪を重くいたしまして、これらの君主並に使節に対しまする一般的の保護においては欠けるところのないように顧慮いたしたのでございます。
 次は第百五條であります。「犯人藏匿及ヒ證憑湮滅ノ罪」の中の第百五條、「本章ノ罪ハ犯人又ハ逃走者ノ親族ニシテ犯人又ハ逃走者ノ利益ノ爲メニ犯シタルトキハ之ヲ罰セス」、かような規定があるのでございます。この「罰セス」を改めまして「其刑ヲ免除スルコトヲ得」、かようにいたしたのでございます。かように犯人の藏匿証憑、湮滅に親族が関與した場合におきまして、情状によつてこれを処罰し得るということにいたしましたのは、犯人の捜索と正しい裁判のために國民の協力を得ようとする、こういう趣旨に基きまして從來「罰セス」と相成つておりましたのを「其ノ刑ヲ免除スルコトヲ得」というふうにいたしたのでございます。
 次は「第七章ノ二 安寧秩序ニ對スル罪」、これを全部削除いたしました。百五條ノ二から百五條ノ四でありますが、この規定はいわゆる戰時色が相当濃厚であるという点、竝に規定の内容が相当漠然としておりまして、もう少し具体的な規定をする必要があろうという点、從いましてこれの運用によりましては、今日憲法で認められておりますところの言論の自由等に対しまして、運用の如何によりましては余り面白くない結果を生ずるという点から、この規定を一應全部削除することにいたしました。併しながらこの規定の中には尚趣旨から申しまして存置してよろしいものもあると考えられますので今後の刑法の全面改正の場合におきまして、これを再び考慮に入れまして、具体的に適当な規定がいたしたい、かように考えておるのであります。
 次は百三十一條であります。百三十一條は「住居ヲ侵ス罪」の中の一でありまして、「故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下の懲役ニ處ス、神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ」、これは憲法の改正によりまして、神宮、皇陵等につきましては一般の規定による方がいいではないかという点と、「皇室ニ對スル罪」を削除いたしましたので、第一項の規定をも削除いたしまして、一般の規定によらしめることといたしたのであります。
 『百三十二條中「本章」を「第百三十條」に改める。』、これは百三十條を削除いたしましたので、條文の整理をいたしたのでございます。
 次は「第二十二章猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪」の中の第百七十四條でありますが、「公然猥褻ノ行爲ヲ爲シタル者ハ科料ニ處ス」、かような規定になつておりまして、極く軽い刑がこの百七十四條に規定してありますが、この科料を「六月以下ノ懲役若クハ五百圓以下の罰金又ハ拘留若クハ科料」、かように刑を改めました。これまで非常に科料が軽いのでありまして、今日の世情に照しまして、かような行爲につきましては刑を改める必要があると考えまして重くいたしたのでございます。
 次に百七十五條でありますか、百七十五條は「猥褻ノ文書、圓畫其ノ他ノ物ヲ頒布若クハ販賣シ又ハ公然之ヲ陳列シタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者亦同シ」、この「五百圓以下ノ罰金又ハ」を「二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金若クハ」というふうに改めまして、刑を重くいたしました。この趣旨も百七十四條の趣旨と同樣であります。勿論出版の自由は認めなければなりませんのでありまするけれども、かような文書の出版は正しい出版ではないのでありまして、今日の時世に照しましてこの刑を重くする方が相当であろう、かように考えましたので「五百圓以下ノ罰金」を「二年以下の懲役又は五千圓以下の罰金」、かように改めました。
 次は百八十三條でありますが、これは姦通に関しまする規定でありまして憲法の十四條によりまして、夫婦の同権と男女の基本的平等が規定されましたので、姦通をいたしました場合、男女兩方を罰するか、或いはこれを罰しないかという処置をいたさなければならなくなりましたので、政府といたしましては、この規定を削除して、男女同権の趣旨を明らかにいたしたのでございます。
 次は「涜職ノ罪」の第百九十三條であります。「公務員其職権ヲ濫用シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ權利ヲ妨害シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス」、これを「六月以下」を「二年以下」に改めました。更に百九十四條でありますが、これは「裁判、檢察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職權ヲ濫用シ人ヲ逮補又ハ監禁シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス」、この「七年以下」とありますのを「十年以下」に改めました。更に第百九十五條の「裁判檢察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ當り刑事被告人其他ノ者に對シ暴行又ハ凌虐ノ行爲ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス、法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ニ對シ暴行又ハ凌虐ノ行爲ヲ爲シタルトキ亦同シ」、この「三年以下ノ懲役又ハ禁錮」というのを「七年以下」に改めまして、一般にこの涜職の罪の中でいわゆるこの職権濫用と見られる、いわゆる人権蹂躙ともいわれるところのものにつきまして、特にこの刑を加重いたしまして、これらの者に対しまするところの責任をはつきりといたすことにいたしたのでございます。
 次は第二十七章「傷害ノ罪」の中の二百八條の暴行罪の規定でありますが「暴行ヲ加ヘタル者、人ヲ傷害スルニ至ラサルトキハ一年以下ノ懲役若クハ五十圓以下ノ罰金又ハ拘留若クハ科料ニ處ス、前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス」、この第一項中の「一年以下」を「二年以下に改め、更に、「五十圓以下」を「五百円以下」に改め、尚第二項を削りました。即ち暴行罪の刑を二年以下或いは五百円以下と重くいたしますと同時に、親告罪になつておりまするこの暴行罪を、親告罪の規定を削除いたしまして、告訴をやらなくても、直ちに暴行罪として処罰し得るように改めたのでございます。その趣旨は今日の新らしい憲法の下におきまして、暴力は杏定されなければならないのでありまして、暴力を以て種々のことが行われますことは好ましくないと考えまして、これらのものは告訴に拘わらしめず、当然に暴行に対しましては処罰がし得る、而も刑を重くする、かような趣旨で改めたのでございます。
 次は第二十八章の「過失傷害ノ罪」の中の第二百十一條でありまして、「業務上必要ナル注意ヲ怠リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス」、この第二百十一條の次に、後段として、「重大ナル過失ニ因リ人ヲ死傷ニ致シタル者亦同シ」、かように附け加えました。この趣旨はやはり今日の新らしい憲法の下におきまして、人の生命、身体等に対しまする保護を十分に厚くする必要があると考えましたので、かような規定を設けたのでございます。
 次は第三十二章の「脅迫ノ罪」、二百二十二條でありますが、二百二十二條は「生命、身体、自由、名譽又ハ財産ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者ハ一年以下ノ懲役又は百圓以下ノ罰金ニ處ス、親族ノ生命、身體自由、名譽又ハ財産ニ對シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者亦同シ」、いわゆる脅迫罪の規定であります。この中の第一項中の「一年以下」を「二年以下」に改め「百圓以下」を「五百円以下」に改めました。この趣旨も新憲法下におきまして、個人の生命、身体、自由、名誉、これらのものに対しまする保護を十分に厚くし、同時に前に二百八條の所でちよつと申落しましたが「國交ニ關スル罪」の九十條、九十一條を削除いたしました関係で、外國の君主並びに外國の使節等に対する保護をも十分に厚くし得るという点を予測いたしまして、二百八條の刑を重くいたしますと同時に、この「脅迫ノ罪」につきましても、個人の生命、身体、自由、名誉等の保護を厚くすると同時に、外國の君主、使節の保護にも欠くるところがないように、この刑を重くいたした、次第でございます。
 次は第三十三章「略取及ヒ誘拐ノ罪」の中の二百二十六條でありますが、この中の「帝國外」を「日本國外」に改めるというのは、字句の整理をいたしたのでございます。
 その次は第三十四章「名譽ニ對スル罪」でございます。この中の二百三十條「公然事實ヲ摘示シ人ノ名譽ヲ毀損シタル者ハ其事實ノ有無ヲ問ハス一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス、死者ノ名譽ヲ毀損シタル者ハ誣罔ニ出ツルニ非サレハ之ヲ罰セス」、この規定の中「一年以下」を「三年以下」に、「五百圓以下」を千円以下」に改めました。今日個人の自由が非常に叫ばれておりまする一面、正当なる言論でなくして、可なり人の名誉を毀損すべきような事実をむやみやたらに述べまして、今日の事態を紛糾させており、或いは社会の正しい民主化の方向に障碍を與えておるというような事象に鑑みまして、名誉に対しまするところの罪の罰を重くいたしましてこの点正しいところの個人の名誉を保護して行こうというふうに考えたのでございます。同時に先程申上げましたように「國交ニ關スル罪」の規定を削除いたしました関係上、それらの者に加えられまするところの名誉毀損の罰に対する保護を十分にいたす必要がありますので、「三年以下」並びに「千円以下」というふうに刑を重くいたしました。更に二百三十條の次に二百三十條の二を一項加えました。二百三十條の二は「前條第一項ノ行爲公共ノ利害ニ關スル事實ニ係リ其目的專ラ公益ヲ圓ルニ出テタルモノト認ムルトキハ事實ノ眞否ヲ判斷シ眞實ナルコトノ證明アリタルトキハ之ヲ罰セス、前項ノ規定ノ適用ニ付テハ未タ公訴ノ提起セラレサル人ノ犯罪行爲ニ關スル事實ハ之ヲ公共ノ利害ニ關スル事實ト看做ス、前條第一項ノ行爲公務員又ハ公選ニ依ル公務員ノ候補者ニ關スル事實ニ係ルトキハ事實ノ眞否ヲ判斷シ眞實ナルコトノ證明アリタルトキハ之ヲ罰セス」、かような規定を此処に加えたのでございます。個人の名誉は当然に保護されなければならないのでありますけれども、併しながら眞に眞実を申しまして而もその眞実が公共の利害に関する事実でありまして、專ら公益のため、公益を図る目的に出でたというやうに認められるものであります場合には、これが眞実な言であるとしまするならば、憲法の保障いたしております言論の自由という点から考えましても、これらのものは処罰しないというふうにいたしまして、正しい意味の言論はこれは罰しないけれども、そうでないものはこれは重く罰する、かような趣旨によりまして二百三十條の二を加えたのでございます。ただこの二百三十條の二の第三項の規定の「公務員又ハ公選ニ依ル公務員ノ候補者ニ關スル事實ニ係ルトキハ事實ノ眞否ヲ判斷シ眞實ナルコトノ證明アリタルトキハ之ヲ罰セス」、この規定は一般の場合と異りまして、公然事実を摘示しまして、人の名誉を毀損するという言動をいたしました者が、公共の利害に関する事実について專ら公益を図るに出でた、こういう制限を置きませんで、ただ公務員並びに公務員の候補者に関する事実につきまして、單にそれが眞実であればこれを罰しない、虚僞である場合にのみこれを罰する、いかなることを申しても、眞実であればこれを罰しない、かように廣い規定を設けたのでございます。これは特に公務員が公務員として、他人から非違を摘発されまして、その事実がありようなものは、公務員又は公務員の候補者になることは好ましくないという点から、單に事実の眞実であるか、或いは虚僞であるかによりまして処罰を異にするという規定にいたしましのでございます。
 三十四章のうちの二百三十一條侮辱罪の規定でありますが、「事實ヲ摘示セスト雖モ公然人ヲ侮辱シタル者ハ拘留又ハ科料ニ處ス」、この規定を削除いたしました。この削除いたしました趣旨は、今日の言論を尊重いたしまする立場から、たまたま怒りに乘じて発しましたような、軽微な、人を侮辱するような言葉につきましては、刑罰を以て臨まなくてもよいのではないか、かような考えからこれを削除いたしましたが、この点につきましては、尚考慮の余地があろうかと考えているのでございます。特に九十條、九十一條を削除いたしました関係上、外國の使節等に対しまする單なる侮辱の言葉が、往々にして國交に関する問題を起すような場合も考えられまするので、これは削除いたしましたけれども、考慮を要するのではないかと考えております。
 更に次は二百三十二條でありますがこの名誉毀損罪は告訴を待つて論ずることになつておりますが、皇室に対しまする罪を削除いたしましたので天皇皇族に対しまするところの不敬の規定をも当然に削除いたしました関係上天皇並に皇族に対しまするところの、從來不敬として考えられておりました名誉毀損の範囲に入るものは、これを名誉毀損の罪に上つて一樣にこれを処断することに相成りました。從いまして天皇、或いは皇族方が告訴をしなければ、本章の規定によりまして処罰をすることができないことに相成るのでありますが、天皇並に皇后、皇太后、太皇太后、皇嗣、かような方々がみずから告訴をなさるということはちよつと考えられないのでございまして、從いまして、この方々に限りまして特別な規定を設ける必要がありましたので「告訴ヲ爲スコトヲ得可キ者カ天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣ナルトキハ内閣總理大臣、外國ノ君主又ハ大統領ナルトキハ其國ノ代表者代リテ之ヲ行フ」というように規定を改めました。外國の君主又は大統領、これも九十條、九十一條を削除いたしましたので、元來、外國政府の請求を待つて論ずる罪になつておりましたが、やはり一般の名誉毀損罪によつて、外國の君主又は大統領に對しまするところの名誉に對する保護をいたさなければならないので、これにつきましても、外國の君主又は大統領から直接告訴を受けるということは非常に困難なことでございますので、その國の代表者が代つてこれを行う、その國の代表者はその國を代表して、我が國に駐在しておられるところの外交使節、或いはその國から依頼を受けました他の外交使節等によりまして、これを行うことができるというふうにいたしたのでございます。
 次は三十六章の「竊盜及ヒ強盜ノ罪」の中の二百四十四條「直系血族、配偶者及ヒ同居ノ親族又ハ家族ノ間ニ於テ第二百三十五條ノ罪及ヒ其未遂罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除シ其他ノ親族又ハ家族ニ係ルトキハ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス、親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス」。それから二百五十七條「直係血族、配偶者、同居ノ親族又ハ家族及ヒ此等ノ者ノ配偶者間ニ於テ前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除ス、親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス」、親族相盜の場合と贓物に関しまするところの親族間の犯罪というものにつきましてかような規定があるのでありまするが、この中、家族といいますのは、民法の改正によりまして、この観念を認むる必要がなくなりますので、これを改めまして、家族という文字を削つたのでございます。
 大体非常に雜駁な説明でございますけれども、以上が改正案の本文全部につきましての簡單な説明でございます。
 附則につきまして簡單に申上げますと、この法律施行の期日は、政令で定める。第二十六條第二項の改正規定は刑の執行猶予の言渡を受けた者がこの法律施行前に更に罪を犯した場合については、これを適用しない。第三十四條の二の改正規定は、この法律施行前に刑の言渡又は免除を受けた者にもこれを適用する。二十六條の二項は「猶豫期間内更に罪ヲ犯シ罰金ニ處セラレタルトキハ刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消スコトヲ得」、この二項の「改正規定は刑の執行猶予の言渡を受けた者がこの法律施行前に更に罪を犯した場合については、これを適用しない。」、これは当然の規定でありまして、法律の施行前に更に罪を犯した場合には、この法律施行後に発見いたしましても、この二十六條第二項の規定は適用しないとこういうことを言つておるのであります。それから三十四條の二は前科抹消の規定でありますが、「この法律施行前に刑の言渡又は刑の免除の言渡を受けた者にもこれを適用する。」、これはこの法律の施行前に刑の言渡又は刑の免除の言渡を受けた者もやはりこの恩典に浴せしめることがよいということでかような規定を設けたわけであります。その次は、「この法律施行前の行爲については、刑法第五十五條、第二百八條第二項、第二百十一條後段、第二百四十四條及び第二百五十七條の改正規定にかかわらず、なお從前の例による。」、これはその五十五條を削除をいたしますし、第二百八條の第二項は特別な親告罪になつておりますのを削りましたし、二百十一條の後段には特に重大なる過失によつて人を死傷した者について刑を重くしておりますし、二百四十四條と二百五十七條は家族につきましての親告罪に係らしておる規定でありますから、これを法律施行前の行爲につきましてここまで及ぼすことは不利な……法律の效果を特に遡及させることになりますので、從來の例によつて、これを処断するということにいたしておる次第でございます。
 簡單でありますが……。
#4
○委員長(伊藤修君) ちよつとお諮りいたしますが、目次を初めといたしまして五十八條までに対しましては先般來、大体論の御質疑の中で相当論議が進められておりますが、之を各一條ずつやつて参りましようか。五十八條まで一括して質疑の対象にいたしましようか。いかがですか。
#5
○松井道夫君 一括してやられた方がよいのじやないかと思います。といいますのは、大分法案も山積しておりますし、残りの國会の期間も少いので、成るべく審議を進めるという意味で、そういうことを希望いたします。
#6
○岡部常君 私はちよつと反対でございます。今までも審議の経過を見ますと、あつちこつち、余りにあと先に順序なく論議されて、纒まりがつきにくいようでありますから、少くとも章別か何かでおやりになる方が纒まりがよいのではないかと思います。一條々々でなくてもよいのですが、何か纒まりをつけて行きたいと思います。
#7
○委員長(伊藤修君) 他に御意見はありませんですか。
#8
○齋武雄君 私は委員長が言われたように総則は総則として、総則のみについて自由に質疑した方がよいと考えます。総則のみに限定する、そういうように考えます。結局五十八條まで……
#9
○松井道夫君 総則は、御意見のように五十八條まで総則全部一括してやられるのが適当ではないかと思います。各條になつて來ますと、多少まだ問題もあります。又余りまだ質疑も行われておりませんので、これは今の岡部さんの御意見に從つた方が然るべきだと考えます。
#10
○松村眞一郎君 やはり大体は順序を追つておやりになつたらどうかと思う。或いは章なり纒めて、各論を全部通じてということよりも、やはり各論の第二編になりますれば二編の中、委員長において適当にどこまでとお切りになつた方がよくはないですか。便宜上何章までというように……余り第二編の初めから、終いまでやつておりますと、前に行つたりうしろに行つたりしますから、適当に区分しておやりになつたらいかがですか。
#11
○委員長(伊藤修君) 各委員の方がいろいろな御意見もありますが、大体こういうことにいたしたいと思います。初めの目次から五十八條までを一括して、総則として議題に供しまして、この範囲において質疑を御継続願う、こうしたいと思いますが……
#12
○委員長(伊藤修君) では、さようにいたします。どうぞ御質疑のある方は……
#13
○岡部常君 これは、前にお伺いした方が適当であつたかも知れませんが、今度の改正の中に、あつて欲しいと思うことが、私は一つ抜けておるように感じますので、その点だけ申上げたいと思います。我が國における仮出獄の制度、これは今までの実績から見まして、相当の成果を挙げておると私は信ずる者であります。この運営よろしきを得ますならば、又而して從來の経過は相当よく運営されておると私は見るのでありますが、結局不定期刑を刑法の上には一般的に認めておらないに拘わらず、相当不定期刑に代るだけのよい效果を挙げておるように考えるのであります。今までの実績から見ましてこういう改正の際に何らかそれを改正せられる、或いは仮釈放の條件を寛大にするとか、仮出獄に関しまして受刑者を保護する規定というようなものを今囘の改正についてお考えになれなかつたかどうか、何らかそこに躊躇されることがございましたなら、それをお示し願いたいと思うのであります。
#14
○政府委員(國宗榮君) この度の「刑法の一部を改正する法律案」におきましては、日本國憲法の制定に伴いまして、当面必要なる最少限度に改正を止めるという建前をとりましたので、只今お尋ねのような仮出獄の問題につきましても一應考慮いたしたのでありますけれども、これは仮出獄その他刑法の、例えば宣告猶予というような制度いわゆる刑事政策的な根本的の問題につきましては、刑法の全面的な改正におきまして愼重に考えてこれを採り上げ、そうしてこの新らしい憲法の下におきまするところの刑事政策的な規定を明らかにいたしたい、かように考えましたので、この改正案にはこれを採り上げなかつた次第でございます。
#15
○岡部常君 そういたしますと、將來は今例に挙げられました宣告猶予等と並びまして、假釈放、假出獄の制度というものに更に改善を加えるという御意思があるのでありますね。
#16
○政府委員(國宗榮君) 假出獄並びに恩赦の制度、更に先程申上げました宣告猶予の制度、或いは執行猶予の制度というものの全般に亙りまして、勿論刑法の改正の際には考慮いたすつもりであります。
#17
○岡部常君 分りました。
#18
○齋武雄君 第五條についてお伺いしたいのでありますが、第五條には「外國ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行爲ニ付キ更ニ處罰スルコトヲ妨ケス」という規定がございまして「但犯人既ニ外國ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減經又ハ免除スルコトヲ得」、この規定の但書を改正して、必ず免除する、こういう規定のようでありますが、その改正の理由として、只今当局から、外國の裁判を尊重する意味においてこういう規定にしたのだ、その刑の執行が終つた場合において、外國の裁判を尊重して必ず免除すべきだそういう意味において、この改正ができたのだと、こういうお話でありますが、然らば但書でなく、第三條の本文においてもそうでなければならないのではないか。本文においても「外國ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行爲ニ付キ更ニ處罰スルコトヲ妨ケス」、第三條の本文は更にそういうことは考えていない、執行の終了した場合と終了しない場合において相違した外國の裁判を尊重するという意味であれば、両方同一でなければならん、第一項の場合には更に日本においても裁判する、その場合において執行が二つになるのであるか、外國の裁判も執行することになり、又日本の裁判も執行することになるのであるかどうか、そういう点についてお伺いして置きたい。
#19
○政府委員(國宗榮君) 第五條の本文は「外國ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行爲ニ付キ更ニ處罰スルコトヲ妨ケス、但犯人既ニ外國ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減經又ハ免除スルコトヲ得」、これを免除するといたしましたのは、外國におきまして裁判を受けまして、刑の全部又は一部の刑の執行を受けた場合におきましてはこれはもう我が國において執行しないこういう趣旨でありまして、本文におきまして確定裁判を経たる者で以て、尚且つ裁判の執行を受けない者があると考えられるのであります。元來外國の裁判を受けた者も、我が國の法律によつて処罰し得るというのが本文の規定でありまして、若し我が國の裁判で処罰して場合において、外國の裁判の執行をすでに受けた者は、その受けた限度において刑の免除をする、こういうふうにいたしたのであります。從來の規定によりますと、外國で確定裁判を受けまして、更に外國で執行を終えて参りました者も、日本の裁判所において裁判をして、刑を二重に執行することが可能であつたのであります。さようなことをしないという趣旨を明らかにしたのであります。
#20
○齋武雄君 ちよつとそのことに関聯してでありますが、外國で確定判決を受けて、まだ執行をしないで日本に帰つて來た、その場合において、日本で判決をすることは妨げないのでありますが、そういう場合において、日本の判決と外國の確定判決が違つた場合において、外國から刑の執行の委託というか、嘱託というか、そういう場合にはどうなるのでありますか。
#21
○政府委員(國宗榮君) 外國の裁判の效果を日本の裁判所において執行するということは、特別な條約関係がなければできないことでありまして、日本におきましては日本の裁判の執行のみを扱う、その点については、外國からそういう要求がございましても、それは條約なり、その他において決められた場合に限られるわけでありますのでさようなものは、今日いわゆる犯罪人引渡條例というものがありましても、さようなものは條約としてはないのじやないかと思います。
#22
○齋武雄君 そういう條約は、將來においてないというお考えの下に、こういうふうになされたのでしようか。若し刑の執行を委嘱するという條約があつた場合において、どういうふうになりますか。
#23
○政府委員(國宗榮君) その点につきましては、外國の立法例においても、大体外國の裁判を尊重いたしておりますが、併し只今のような條約ができたというような場合におきましては、これは外國の裁判の刑と我が國の裁判の刑の種類とが違う場合があるのでありまして、その場合には、外國の裁判の執行を以て直ちに日本の裁判の執行ということは言い得ない場合があろうと考えるのであります。條約上さようなことが定められますれば、この憲法の規定にもございますが、條約を尊重しなければならん、何らかの方法によつて、それらのものを日本において執行し得る法令を作らなければならないと考えております。
#24
○齋武雄君 これは前から質問しておるのでありますが、二十五條の執行猶予の規定の御説明には、第二十六條第二項の取消の場合において、罰金に処せられても刑の執行は取消すことができる、これは必ずするのでなく、できるのである「取消スコトヲ得」となつておりますから、無論そうでありますが、それの御説明として、二十五條に罰金刑についても執行猶予を言渡すことができるのだ、それだから第二十六條の二項において罰金の言渡しを受けた場合においても取消ができるのだ、こういう均衡を得るためだというお話でありますが、然らば均衡を得るためならば、罰金刑に処せられた者は罰金刑の執行猶予を取消すことができるのだ、というようなお考えがなかつたかどうか、それは裁判官において適当にやるのであるから心配がない、必ず強行規定でないのであるから心配がないというお話もできるでありましようが、或いは裁判官の考え次第による自由斟酌でありまして、自由でありますから、若い判事の人が無闇にそれをやり得ないという保証ができないのであります。それでありますから私の考えとしては、罰金刑の場合には罰金別の執行猶予は取消すことができると、こうちやんと区切りした方が却つて有利で、この運用がよくなるのぢやないか、こういうふうに考えておるのでありますが、折角執行猶予の規定を決めましても、多数の統制法規があつて、分らない法律があつて、二十円、三十円の罰金になつた者、懲役二年までの執行猶予を取消されるということは、どういうものかと考えるのであります。そういう点についてお考えになつたのでしようか。
#25
○政府委員(國宗榮君) 御尤もな御質問と存じますが、元來罰金に処せられまして執行を猶予された者は、少くともそれと同等以上の罪を犯さないという期待の下に執行猶予をされておるのでありますから、再びこの罪を犯して罰金に処せられたような場合には、その執行猶予を取消すという途が開かれていなければならないのでありましてそこで罰金に処せられたことを取消す事由といたしたのでありますが、この点につきましては、只今の御説明の通りでありますけれども、併し罰金に処せられて執行猶予になつた者が、その後再び罰金に処せられた場合に、その執行猶予を取消す必要があります以上この場合と比較いたしまして、罰金より重いところの懲役、禁錮に処せられて、執行猶予となつておる者が、その後罰金に処せられた場合にこれを取消し得ないというようにいたしますのは罰金よりも犯状の重いところの罪によりましては、執行猶予になつておる者が罰金に処せられるような行爲をその後いたしまして、これは罰金に処せられたというので取消にならないといたしますのは、どうも均衡を失するのではないか、さように考えた次第であります。ただ御心配になる点は、沢山の統制法令その他の取締法令によりまして罰金刑を定めております。極く軽微な罰金に処せられたために執行猶予を取消される、こういう虞れが多分にあるという点につきましては、これは私共といたしましては、その罰金に処せられる行爲につきまして十分な檢討を加えまして、執行猶予を取消してよいかどうかということについて、裁判所いおいて適切な判断を下すものと考えまして、かような規定にいたした次第であります。
#26
○宮城タマヨ君 第五十八條の第一章が削除されておりますけれども、これは「皇室ニ對スル罪」全部削除のようでございますが、これは余り極端から極端なように考えられるのでございますけれども、少くとも國のシンボルにあられる方と私共と全く同じということについては、何か虫の納まらないものがございます。それはいろいろの事情で或いは暫定的に考えてあるものでございましようか、それともそうでないのでございましようか、そこをちよつと承りたいのであります。これを全部削除されたために、先へ飛びますけれども、第二百三十二條に第一項を附加えられたというわけになるのでございましようか、ちよつと伺います。
#27
○委員長(伊藤修君) 宮城さんに申上げますが、只今審議の目的は五十八條までになつておりますので、「皇室ニ對スル罪」はこれが終つてから進みたいと思つております。そのときに御答弁を願うことにいたします。整理上そのいうことにいたします。
#28
○宮城タマヨ君 さようでございますか。
#29
○松井道夫君 只今の二十五條、二十六條の関係でありますが、私はこの二十五條が改正されましたのは、新憲法の施行に伴いまして、より以上國民の基本的人権といつたものを尊重するのに適合する裁判ができ得るように、恩典の範囲を拡げた、さように解釈しておるのであります。ところが、この二十六條に持つて來まして、只今斎さんから御質問になりましたように、さような骨子と解しておりますに拘わらず今まで、罰金の刑をその後受けましても取消しされなかつた、懲役刑に対する執行猶予は、この今度の改正によつて取消される可能性ができて來たということは私は奇異の感を抱かざるを得ないのであります。これが罰金刑の執行猶予を得まして、その後罰金刑をやりまして、取消されて罰金刑のみならず懲役刑にもなるのだ、罰金刑は怪しからんから懲役刑にするのだ、罰金刑の執行猶予は取消して懲役にやるのだというようなことでありますならば、これは今の懲役の執行猶予の場合に、罰金刑を受けた、それで執行を取消して懲役刑にやつたということが出て來ると思いますけれども、罰金と懲役刑というものは、これは全然性格を異にしておるものと私は考えますので、片方で罰金に処せられたから、罰金の執行猶予は取消されるということと、罰金の刑を受けてから罰金の執行猶予も悪質の懲役刑の執行猶予も取消すところの可能性を與えなければならないということは出て來ないと思います。これが罰金刑と懲役刑というものが、この刑の性格として同じようなものでありますれば、或る程司法当局の考えておられるようなことが出て來るでありましよう。軽い罰金刑の執行猶予も取消されたのであるから、從つて重い懲役刑の執行猶予も尚更取消されなければならんということが出て來るのでございますけれども、懲役刑と罰金刑とは性格が違つておるのでございますから私はさうな結論は出て來ないと存ずるのであります。何かこの憲誇の改正に即應いたしまして、懲役刑の執行猶予を受けたる者に対し、その後罰金刑を犯したるが故に、罰金刑に処せられたるが故に、執行猶予を取消して懲役刑にやらなければならんといつた積極的な理由があるかどうかということを私はお尋ねしたいのであります。只今いろいろ御説明がありましたけれども、先程申上げたような趣旨に、理由として拜聽いたすのでありますが、私はそれは新憲法に即應する上におきまして必ずそうなくちやなくんというようなことを考えません。而もそれだけ積極的の理由とは受取れないのであります。
 それからもう一つお尋ねしたいのは五千円以下の罰金の場合に、執行猶予をして頂くことができるようになる、これは頗る結構なのでありますが、罰金というものは、これは低ければ低い程執行猶予をつけて頂いてもよい性質を持つておるのであります。これが一万円、五万円となりますと、或いは資力が少いために家庭を破壞せられ、社会的の活動を全然封せられてしまうといつたような、或いは企業が潰れるといつたようなこともございましようから、これを社会的に見まして低いように附してある、財産状態その他を見て執行猶予を與えるということが適当だと存ずるのでございます。そういうことを見て参りますと、その罰が軽くて例えば五千円以下の罰金でなければ執行猶予が與えられないということは、何だか観念上矛盾するように考えるのであります。例えば罪が軽いからといいまして、二十円或いは五十円といつた罰金に執行猶予をつけるというようなことは私笑われるのぢやないかと思います。まあ五千円となつて参りますれば、これは成る程と感心するような裁判も沢山出て來るだらうと存じます。懲役刑とは性格が違うのでありますから、懲役ですと、二月三月といつたような短いものをやりますことは、これは短いから短いだけ、より以上不適当であるとも言えるのであります。罰金はそれと違いまして、軽い金額であればある程、執行猶予になることは却つておかしいといつたようなことになつて参りますもので、それで私の伺いたいと思う点は、要するに罰金というものは、これは法律上懲役よりも軽い刑ということになつておる、それで懲役刑で執行猶予が附けられるのでございまするから、それよりも軽い罰金刑は、金額を問わず執行猶予をつけることもできるとも考えられるのでありまして、五千円以上の多額の罰金刑に対し、執行猶予が附けられないという積極的な何か理由がおありなのか、その点をお尋ねしたいのであります。
#30
○政府委員(國宗榮君) 第一についてまずお答えいたします。罰金刑と懲役禁錮の刑でありますが、罰金刑が財産刑でありまして、懲役禁錮刑が自由刑でありますことはお説の通りであります。併し執行猶予と申しまするのは、御承知の通り、猶予期間中は全く何らの犯罪を犯さないという期待を掛けておるのでございまして、その間に罰金に処せられますような犯罪を犯しましても実は好ましくないのでございます。そうして先程齋委員さんに御説明申上げました通りに、罰金に処せられて、執行猶予の言渡しを受けた場合に、更に罰金に処せられた場合、執行猶予が取消されるということに相成つておりまする以上、それよりも重いところの懲役禁錮に処せられまして、執行猶予となつた場合には、更に罰金に処せられた場合に、これが取消しの原因としないといたしますることは均衡を失するというふうに実は考えておるのでありまして、何かこの点につきまして、憲法上、積極的に、そういうふうにしなければならない理由があるのかということに対しましては、その点につきましても何も理由はございません。ただかような執行猶予というものが、期間内に犯罪を犯さないという期待を掛けておる点と均衡の点につきまして、かように取消しの原因といたしたのであります。
 それから第二点でございますが、成る程罰金刑は懲役禁錮の刑より軽いということに法律上明らかになつております。從いまして、罰金刑に五千円というような限界を設けることはどうかという御質問でございますが、而も罰金刑の金額の多額なほど執行猶予の意義があるのじやないかというようなお話でございましたが、罰金刑も犯罪の情況によりまして金額が多額に科せられ、或いは少額に科せられるというのでありまして、執行猶予にいたします場合には、やはりその情状によりまして、金額の少いものの方がまず犯状が軽いと見られるのでありまして、それらの者が執行猶予期間中を何らの犯罪を犯さず過しました場合は、刑の言渡しの效力がなくなるのでございますから、罰金に処せられましたことによりまして、資格その他等に制限を受けております者が、全然その制限がなくなるという、こういう法律效果を伴つて参りますので、從いまして、この刑の建前といたしましては、五千円以下という点で限界を設けたがよかろうと、かように考えたわけでございます。併しながら、この懲役禁錮が罰金刑よりは非常に重い刑になつておる、それならば、罰金刑につきまして何らの制限を設けなければよいではないか、こういう御質問に対しましては、これは又罰金刑が財産刑でございますし、懲役禁錮は自由刑でございますので、おのずからそこに刑といたしましての種類が違いますので、懲役禁錮に設けましたような或る程度の制限というものを罰金刑にも置いたがいいのではないか、かような考えから五千円という程度にいたしました。
#31
○齋武雄君 五十八條の削除についてお伺いいたしたい。五十八條は再犯の規定でありまして、五十七條と関聯しておるのであります。五十七條は「再犯ノ刑ハ其罪ニ付キ定メタル懲役ノ長期ノ二倍以下トス」とあり、五十七條は存置しておるのでありますが、五十八條は、裁判確定後に於て再犯者たることが分つた場合において、それを加重することになつておるのでありますが、それを今囘削除したのであります。同じ再犯者であつて、裁判確定後においては削除して罰しない、そうして五十七條が残つておるのでありますが、これは五十八條を削除しても、五十七條の規定との均衡を失しないかどうか、或いは均衡は失するとしても、憲法上一事不再理の原則からして、第五十八條はどうしても削除する必要があるのだ、こういうお考えの下に削除せられたのであるか、その点をお伺いいたしたい。
#32
○政府委員(國宗榮君) 五十八條を削除いたしましたのは、憲法の三十九條の趣旨によりまして、この憲法の第三十九條は、刑事裁判の確定力を強調しておりまして、特にこれを不利益に変更することを禁ずる精神に出たものである、かように考えておりますのですが、この刑法の第五十八條は、すでに確定した裁伴を、後日被告人の前科が発見したという理由で、不利益に変更することを認める規定でありますのでこの憲法の第三十九條の趣旨に反しはしないか、かように考えましたので、まず削除したのでございます。ところがこの五十六條、五十七條のいわゆる再犯累犯の箇條でございますが、これにつきましては、一旦処罰された犯罪行爲を、いま一度この処刑の対象とするというのじやないのでございまして一定の期間内に一つの裁判をいたします場合に、その犯罪の情状といたしまして、これを法律的に取上げるという規定に過ぎない、かように考えましたので、これは存置して置いてもよろしい、こう考えましてこの規定を削除いたさなかつたのであります。で、成る程お説のように、五十八條を削除いたしました関係上、裁判の当時におきまして、累犯になつておることが分らなかつたものとの関係におきましては、不均衡を生ずるということは言えるのだらうと思うのでございます。併しなから実際の裁判の運用におきましてはその点余りに差異がないのじやないかかように考えまして、この点はそのまま存置いたしましたような次第であります。
#33
○委員長(伊藤修君) 外に御質疑ありませんですか。
#34
○松村眞一郎君 今の五十八條の規定は削除し放しては疑義が生じないのですか。今の刑事訴訟法の三百七十五條にあります手続は、この規定を受けてできておるわけであります。ですからこの五十八條を受けて刑事訴訟法の処罰があるのでありますから、ただ削り放しでなくて、実際再犯というものが確定後に発見した場合はもう問わないのであるという趣旨であれば、明文を置く必要があるのではないのですか。むしろ削り放しにしないで、前條の規定を適用せずということにしないと、五十七條の規定を率直に読めば、これは一事不再理というのではない、ですから、新らしいことを発見した、新らしいことを発見したから、何とか処罰しなければならんという議論が起きやしませんが。これはむしろ削除は同じ性質になりますけれども第五十八條の第二項にはやはり「前項ノ規定ヲ適用セス」と書いてあります。むしろ削り放しにするということは、もう一遍再犯のことを何とかやらなければならんということに疑義を生じやしないか、ということの疑いを生じますか、それはいかがですか。
#35
○政府委員(國宗榮君) この「再犯者タルコトヲ発見シタルトキ」、裁判確定したる後再犯者を発見したときと申しますのは、裁判確定の後に処罰を受けたことが分つたということでありまして、これを削除いたしましても、別に再犯者ということだけによりましては刑罰の対象にはならないのでございます。尚刑訴の三百七十五條との関係におきましては、この刑法の五十八條を削除いたしますれば、当然に刑訴の三百七十五條の適用がないのでありまして、この点についての差支はないものと考えております。
#36
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑はありませんですか。……それでは五十八條までの質疑はこの程度にいたしまして、実はこの進行状態といたしましては、逐條について全部一通り質疑をいたしまして、その後は小委員会を作つて、小委員会に本案を付託して、小委員会において尚審議して頂く、こういう形式をとりたいと存じておりますから、小委員会に廻す前に十分御質疑を継続願いたいと考へます。本日はこの程度で質疑を終りまして、明日午後一時から五十九條以下を質疑を継続いたしたいと存じます。本日はこれにて散会いたしたいと思います。
   午後三時三十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   司法事務官
   (刑事局長)  國宗  榮君
ソース: 国立国会図書館
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