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1947/08/20 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第16号
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1947/08/20 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第16号

#1
第001回国会 司法委員会 第16号
  付託事件
○國家賠償法案
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○連合國占領軍、その將兵又は連合國
 占領軍に附属し、若しくは随伴する
 者の財産の收受及び所持の禁示に関
 する法律案(内閣提出)
○昭和二十一年勅令第三百十一号(昭
 和二十一年勅令第五百四十二号ポツ
 ダム宣言の受諾に伴い発する命令に
 関する件に基く連合國占領軍の占領
 目的に有害な行爲に対する処罰等に
 関する勅令)の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案(衆議院送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣送付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○裁判所予備金に関する法律案(内閣
 提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月二十日(水曜日)
   午前十時三十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○刑法の一部を改正する法律案
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案
○裁判所予備金に関する法律案
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開きます。審議に入ります前に質問の通告がありますから、これを許可いたします。齋武雄君。
#3
○齋武雄君 この機会に司法大臣にお伺いしたいのでありますが、刑法の二百三十條の二、第三項でありますが、第三項によりまするというと、名譽毀損の犯罪の行爲は、「公務員又ハ公選ニ依ル公務員ノ候補者ニ関スル」云云ということになつておりますが、これは最高の理想を掲げた案であると私は考えておるのであります。いやしくも、公務員たる者は、私的行爲であつても模範にならなければならん、こういう理想を掲げたものであると考えておるのでありますが、公務員はよろしいとして、候補者に関して、公務員の候補者、こういうものが、公務員と同一に取扱われるというと非常に弊害があるのじやないか。惡用される虞れがあるのではないかと考えるのであります。大臣は、私から申上げるまでもなく、在野法曹としても権威者であり、又衆議院議員として何回も体驗はおありになるのでありますが、選挙の場合において、自分が推薦する候補者を当選させるために、他の候補者を故意に誹謗する場合があるのであります、そうして混乱させる虞れがあるのであります。若しこういう規定が候補者ということに適用されることになりますというと、どんどん惡用するのでないか。故意に他の候補者を誹謗いたしまして、そうして当選を妨害する、こういうことが盛んになるのでないか、こういうことを惧れるのであります。大臣のように、或いは他の人格の崇高な人のように、いくら誹謗されても、選挙の結果に影響を來たさんということであれば結構でありますが、多数の候補者の中には、その誹謗されたために少数の差で破れるということがあるのであります。そういう場合において、名譽毀損罪の告訴をいたしましても、その審理が選挙後になつて何等效果を得ないということがあるのでありまして、そういう観点から私は「候補者ニ関スル事実ニ係ル」、こういうことを抹殺したいのでありますが、その点につきまして、選挙についても多年の経驗があり、又在野法曹としての権威者であるところの大臣に、この点に関することをお伺いしたいのであります。
 第二点は、他の方からもお話があるでしようが、最高裁判所と國会との連絡とか関係をお伺いしたいのであります。例えば最高裁判所が予算を提出するというような場合もあるでしようし、或いは裁判は自由心証で裁判官の自由でありましようが、裁判をやる形式等についてとか、いろいろ連絡すべき事項があると考えるのでありますが、最高裁判所と國会との関係についてこの点についてもお伺いしたいと思います。
#4
○國務大臣(鈴木義男君) 只今齋委員の御質問は誠に適切な御質問でありまして、この二百三十條の二の第三項につきましては可なり愼重に審議いたしまして立案いたしたのでありまして、時間的にも非常に長い時間をかけたびたび会合して審議を凝らし、賛成、反対、あらゆる意見を拜聽いたしました結果、我が國を明朗な民主國にして行くためには、或る段階における若干の犠牲はこれを忍ばなければなるまいということで遂に最後にこういう結論に到達いたしたのであります。勿論齋委員が指摘せられますような我が國の國民性に基づく若干の杞憂は確かに存するのであります。殊に公選による公務員の選挙等の場合に故意に惡質なデマを飛ばしてその当選を妨げ、或いは名譽を毀損するが如きことをなすということは、お言葉までもなくしばしば私共の体驗しておるところでありまして、それをなからしめることが非常に大事なことであります。併し單にそれは政治教育によつて目的を達し得るものでなくして、不幸にしてかくの如き過ちに堕するような者が出まするならば……、出ないことを希望いたしまするが、或る意味においては実際教育としてそういう弊害を段々矯めて行くことができるのではないかというようにも考えるのであります。現に私自身のことを申上げるのは甚だ恐縮でありますが、選挙の際に、前回、例えば選挙法改正に絡んで私共があの案を通過させたくないという信念の下に或る程度の阻止運動をいたしたわけであります。私は言論だけを以て戰つた積りでありますが、確かに長時間の演説をしたことは間違いない事実でありますが、そのとき若干の紛爭が起り、小競合いが起り、遂に腕力の沙汰にまで及んだことも事実でありまするが、私はそれには決して関與しなかつたのでありまして、私は終始一貫して言論だけで戰つたのであります。併し選挙になつてみますると、私は委員長の頭を拳骨で殴つたという演説をして歩いている人がある。更に下駄を脱いで議長の頭を殴つたというようなことを申して歩いておつた人があるのでありまして、そういうことは全く虚僞の事実でありますが、選挙となると、少しでも対立候補を傷つけるためにそういうことを言つて歩く人があるのであります。こういうことを考えると非常に私はこの規定を設けますについて心配をいたしたのであります。併し、この規定ありますが故に、そういう根拠なきデマを飛ばすものはむしろ処罰されるのであつて、愼重に本当に眞相を突き詰めて事実であることの証拠を提示して言い得ることでなければ言はれないということになるわけでありますから、私は必ずしも齋委員の御心配になるような弊害はそう頻発すめものではなかろう。又一方から申しまするならば、いやしくも國民の公僕となり、又多数の投票を得て公務員となりまする者は、公私両面の生活において、人から誹謗せられるような生活をしておらない者でなければならん。これが我が國を本当に民主化するために、明朗に民主化するために、必要な大前提であると考えるのでありまして、そのためには批評の自由並びに報道の自由というものを極度に尊重しなければならない。事実であるならば遺憾ながらこれを否定するわけにはいかんのでありまするから、それが表現せられましても、これを阻止するわけにはいかんのであります。それによつて、いわゆるいい加減な、國民の公僕として或る意味においては國民の儀表として好ましからざる人々を排斥することができるわけでありまするから、弊害も多少は考えられまするが、利益の方がより大きいと、こういう見地に立ちまして、ついにこの第三項を入れることに決定をいたしたわけであります。故にその弊害を矯めるためには、政治教育、國民教育の方面からできるだけの手段を盡すことにいたしまして、やはりこの規定はこれを活かして参りたいと存ずるのであります。
 それから最高裁判所と國会との関係というを質問でありまするが、これも亦尤ものことでありまして、裁判権が独立をいたしましたために、立法と一應離れることになりましたので、行政とも離れることになりましたので、司法大臣がこれを代理するわけにはいかんのであります。何らかの形で國会との間に連絡交渉を持つことの必要であることは申すまでもないのでありまするから、その方法についてはこれから研究をし、できるだけ適当な方法を講じたいと思うのでありまするが、少くも事務総長というものが官制上置かれておるのでありまするから、事務総長が最高裁判所を代表して行政府と交渉し、立法府たる國会と交渉をするということに相成るであろうと思うのであります。予算のことにつきましてはいずれ適当な機会に立法化する予定でありまするが、只今までのところ、前の最高裁判所長官代行が時の大藏大臣との間に協定をいたしまして、最高裁判所において作成したる予算を大藏大臣に提出をする。大藏大臣はこれに意見を付して、そのままの形で國会に提出をする。國会はこれを適当に修正し、追加し、或いは削除する。こういうふうにお願いをするということになつておるのであります。ただ國会に参つて説明をすることができるかできないかということが問題になつておるのでありまするが、必要でありますれば説明をするようにいたしたいと思うのでありまして、その点については今後最高裁判所と國会との関係をどうするかという根本問題を決めまして、いずれ皆様に御協力を願いまして、立法化するときが参るのではないかと、こう存ずるのであります。
 尚予算の編成につきましてはやはり最高裁判所の暫定的な内規によりまして、決して最高裁判所長官、事務総長の独断でこれを決めるのでなくて、別に諮問委員会を拵えまして、確か両院議長もこの中に入つておつたように記憶いたしますが、その他の人を諮問委員として編成をするというようなことに相成つておるのであります。それらの点を明確に法律の形に直すことはこれからの仕事に属するというふうにを了承願いたいと思います。
#5
○委員長(伊藤修君) 本委員会に本審査のために付託されましたところの「裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律案」、この法案を上程いたします。まず司法大臣に本案に対する提案理由の御説明を願います。
#6
○國務大臣(鈴木義男君) 只今上程の裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律案について提案理由を御説明いたします。
 御承知の通り日本國憲法においては、裁判官の身分の保障に関し、その第七十八條において裁判官が心身の故障のために職務を執ることができない場合においても裁判によつてその認定がなされなければ罷免ができない旨及び裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことができない旨を規定しているのであります。從いまして裁判官の分限及び懲戒に関して特別の立法を致す必要があるのでありまして、改正前の憲法に基づく從來の判事懲戒法は、先に裁判所法の制定に際しその附則において廃止されておるのであります。
 次に裁判官以外の裁判所の職員は、執行吏を除いてすべて官吏となつておるのでありますが、日本國憲法は裁判所の独立を著しく強固に規定いたしておりますので、これに從い裁判所法においてもその任免は、一級のものについては、最高裁判所の申出により内閣が、二級以下のものについては、最高裁判所以下の各裁判所においてこれを行うこと及び職員に対する身分上の監督権は、最高裁判所が最終的にこれを有することを規定しておるのでありまして、裁判官以外の裁判所の職員の分限及び懲戒についても、裁判所のその職員に対する以上の程度の自律権に即應するように特別の立法をいたす必要があるのであります。
 かような趣旨に基づきましてこの法律案を提出いたしたのでありますが、その主なる内容といたしましては、第一に日本國憲法第七十八條においては、裁判官が心身の故障のために職務を執ることができないときは、これを罷免することができる趣旨を規定しておるのでありますが、その故障の程度については規定しておりませんので、これを回復の困難な故障とし、尚從來裁判官は終身官でありましたので、本人が願い出た場合にも免官できなかつたのでありますが、新制度により終身官ではなくなりましたので、本人が願い出た場合には免官ができる旨を明瞭に規定いたしました。
 第二に裁判官の懲戒は戒告及び一万円以下の過料といたしました。改正前の憲法に基づく判事懲戒法によれば、裁判官の懲戒は、免職、停職、轉所、減俸及び譴責の五種類でありましたが、免職即ち免官及び停職は、前述の日本國憲法第七十八條の規定に牴觸いたし、轉所についても右同様の結果を生ずる疑がありまするのみならず、裁判官の地位に艦み罰目としては不適当であり、次に減俸も日本國憲法第七十九條第六項及び第八十條第二項に牴觸いたしますのでいずれもこれを廃し、戒告及び過料といたし、過料の額は、裁判官の受ける報酬額に照し最高一万円を適当といたしたのであります。
 第三に裁判官に関する心身の故障のために職務を執ることができないか否かの裁判及び懲戒の裁判については、裁判所の組織、管轄及び手続のうち極めて重要な事項のみを規定いたし、その他は、原則的に最高裁判所の決める規則に委ねることといたしました。これは、この種の裁判は、裁判所の内部規律に関するものでありますので、成るべく裁判所の自律に任ずるのが適当と考えたからであります。
 最後に、裁判官以外の職員については、その官吏たる性質より官吏分限令、官吏懲戒令の適用を受けることは、当然でありますが、前述の裁判所職員たる特殊性に艦み、又裁判所の自律権を尊重いたしまして、懲戒委員会は、一級官吏の場合の例によることなく、最高裁判所の定めるところによつてこれを設けることといたし、その議決に基づいて、懲戒及び心身の衰弱による免官は、一級の職員については最高裁判所の申出により内閣が、二級以下の職員については、最高裁判所以下の各裁判所においてこれを行う外、減俸についても各級別に從つて最高裁判所以下の裁判所においてこれを行うことに致しました。尚執行吏は、官吏ではなく純粹に裁判所の職員でありますので、その懲戒については、最高裁判所の定めるところによることといたし、從來の執達吏懲戒令は、これを廃止することといたしたのであります。
 以上はこの法律案の概要であります。何卒愼重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
#7
○委員長(伊藤修君) 只今の法案に対する各條の説明、及びこれに対する質疑は後刻に讓りまして、やはり本委員会に本審査のため付託されましたところの、裁判所予備金に関する法律案の提案理由の御説明を、大臣にお願いいたすことにいたします。
#8
○國務大臣(鈴木義男君) 只今上程されました裁判所予備金に関する法律案につきまして、提案理由を申上げます。
 裁判所法におきましては、裁判所の経費について規定を設けまして、これを独立して國の予算に計上いたし、その経費中には、予備金を設けるべき旨を定めておるのであります。從いまして、その予備金の管理につきまして定めをいたす必要があるのでありまして、ここにこの法律案を提出いたす次第であります。即ち國会の予備金に関し、昭和二十二年法律第八十二号が制定施行されましたことは、御承知の通りでありまして、この法律案は、これと同様の趣旨に出たものであります。
 この法律案におきましては、裁判所の予備金は、最高裁判所長官が、これを管理するものといたしまして、その支出につきましては、最高裁判所の裁判官会議の承認を経なければならないといたしておるのであります。
 以上甚だ簡單ではありますが、提案の理由を申上げました。何卒これ亦御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#9
○委員長(伊藤修君) 只今の法案に対する内容の各條に対する説明並びに質疑は、これを後刻に譲りたいと思います。政府委員の御都合によりまして午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時零分休憩
  ―――――――――――――
   午後一時三十三分開会
#10
○委員長(伊藤修君) 午前に引続きまして委員会を続行いたします。最初に「裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律案」に関しまして、逐條について政府委員の御説明を願いまして、それから質疑に入りたいと思います。
#11
○政府委員(奧野健一君) それでは裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律案を御説明申上げます。
 御承知のように従來旧憲法の下におきましては、裁判官は刑法の宣告及び懲戒の処分によるにあらざれば意見に反して免職されることはなかつたのでありますが、今度の憲法におきましては、裁判官が罷免される場合は、いわゆる國民審査の結果罷免を可とする投票が多数であつた場合の外、裁判官彈劾によつて罷免される場合と、それから心身の故障のために職務を執ることができなかつた場合、そういう裁判を受けた場合に罷免されるという、この場合だけになつたのであります。從いはして從來の判事懲戒法の中いわゆる罷免に関する事柄は、彈劾法による罷免と、國民審査による罷免と、それから心身故障のために職務を執ることができないと裁判された場合の方に移り、その外のいわゆる懲戒に該当するものについては、判事懲戒法を止めました結果、何等規定がないことになつております。ところがこの点につきましては、すでに裁判所法におきまして裁判所法の四十九條で「裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱かしめる行状があつたときは、別に法律の定めるところにより裁判によつて懲戒される。」ということになつておりまして、このいわゆる法律の定むるところによつて、裁判によつて懲戒されるというその事柄を採り入れたのが、この分限に関する法律の一つの部分であります。それと憲法にあります心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合は罷免されるということに憲法でなつておりますので、その二点を採り入れたのが第一條であります。尚この第一條は心身の故障のために職務を執ることができないと裁判されたというふうに憲法にはなつておりますが、一時的な心身の故身の場合を指してないことは明らかでありまして、回復困難な場合に伴う永久的な場合であることはおのずから解釈上明らかでありますので、むしろその点を明らかにする意味で、「回復の閑難な」云々という文字を憲法の文字の外に外れたわけであります。その場合とそれから從來の裁判官は終身官であり、特定の場合でなければ職を免ぜられないということであつたので、依願免官、自分から願いによつて官を免ぜられる、退官するということはあり得ないというふうに考えられておりましたが、それはあまり窮屈でありますし、現在終身官ではなくなりましたのでもありますし、やはり願いによる免官ということは認めていいのではないかという、今までの非常に窮屈な解釈を改めて、願いによる免官ということを認めた、それが第一條であります。尤も第一條の立て方は心身故障のために職務を執ることができないと裁判されただけでは当然まだ罷免にならないので、それに基づいて任名権を持つておるものがその裁判に基づいて免官をするという手続を執るという建前であります。即ち最高裁判所長官にありましては天皇、その他の裁判官につきましては内閣が、その裁判に基づいて免官することになるという建前で、第一條ができておる次第であります。
 それから第二條、これがいわゆる懲戒でありますが、懲戒の事由につきましては、裁判所法四十九條で「職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは」ということになつておりますから、改めて懲戒の事由は二條には書かれませんでした。そこで懲戒の罰の内容は戒告とそれから科料ということにしたのであります。現在の判事懲戒法におきましては、まあ勿論罷免に該当する免職の場合もありますが、その他にいわゆる減俸でありますとか、譴責でありますとか、轉所、或いは停職というふうな、まあ罰の種類があるのでありますが、いろいろ考えまして、罷免に該当する、いわゆる免職の場合については彈劾法等でやる。ところがその以外において現行判事懲戒法の中でどの罰の種類を採り入れるかということについて、いろいろ檢討いたしましたが、いわゆる譴責、これは戒告という文字に改めましてが、譴責という字が漢字制限の関係上使われないので、戒告と改めました。これは國会法の職員等についてもそういうふうな懲戒の種類になつております。それから減俸ということは、どうも憲法第七十九條、八十條で減俸はできないということになつておりますので、やはり減俸ということを正面から謳うことは、これは憲法違反ではないかということで、これはいろいろGHQなどとの交渉の結果、減俸というのはやらないということにして過料、これは何も報酬を減ずるのではなくて、その判事の一般財産の中から佛えばいいというのでありますから、過料を科することは実質上の減俸であるが、必ずしも憲法違反というような疑を抱くということにはなるまいというふうに考えまして過料ということが謳われてあります。その外に停職というようなことを考えられますが、これはやはり一時的な罷免ということになりますから、やはり憲法に違反するのではないか、停職ということはやはり憲法の七十八條等から見て適当でないということで、結局懲戒の内容は戒告と過料ということにいたしたのであります。その上は、いわゆる彈劾法によつて罷免ということにいたして、罷免に足らないいわゆる職務上の違反或いは品位を辱かしめる行状のあつた場合は懲戒裁判ということにいたしたのが、第二條であります。
 それから第三條は裁判権の問題でありますが、これは高等裁判所と、それから最高裁判所が裁判権を持つのであります。高等裁判所はその管轄区域内の地方裁判所と簡易裁判所の裁判官の懲戒事件を第一審として高等裁判所がやる。懲戒のみではありません、いわゆる心身の故障のために職務を執ることができないという裁判も含むわけでありますが、高等裁判所は即ち自分の下の地方裁判所及び簡易裁判所の裁判官の事柄をやる。それから最高裁判所は一審としては……一審が同時にそれは最終審になるわけでありますが、最高裁判所、自分の裁判所の判事及び高等裁判所の裁判官にかかる分限事件を一審且つ終審としてやるということになつております。尚その外に高等裁判所が下級裁判所の判事に関してやつた懲戒事件の抗告事件を最高裁判所に抗告することができることといたしたわけであります。即ち地方裁判所以下の裁判官に対する懲戒事件は高等裁判所がやつて、その裁判に不服があれば最高裁判所に抗告ができるということになりますが、高等裁判所並びに最高裁判所の裁判官の懲戒事項は最高裁判所が第一審にして且つ最終審にしてやるということになつて、両者の間に一審、二審というふうな区別ができるという結果になつておるのでありますが、この点は止むを得ないじやないか、現在の判事懲戒法でも大体そういうことになつております。そういうふうに二つの種類のものも認めざるを得なくなつたわけであります。
 第四條は高等裁判所がやる場合、大体高等裁判所でやるのは普通三人の合議体でありますが、これは事柄が重要と考えましたので、五人の裁判官でやる。最高裁判所の裁判の場合は小法廷と大法廷がありますが、これは愼重を期するために大法廷で扱うということにいたしたのであります。
 第五條は、分限事件の管轄裁判所を決めた規定であります。これは「第六條の申立の時を標準としてこれを定める」というのがちよつてお分り難いかと思いますが、結局大阪の判事であつた者が東京の判事に轉任しておるというふうな場合に、大阪の地方裁判所の判事が東京の地方裁判所の判事に轉任しておつたような場合に、高等裁判所は大阪でやるのか、東京でやるのかというふうな場合に、申立の時期、監督権を行う裁判所の申立によつて事件が始まつて参るのでありますが、申立時期を標準として決める、いわゆる非行があつた、行爲の時を標準にするのではなくて、申立の時に、どこの裁判所におつたかということによつて管轄裁判所が決まるということを第五條で規定をいたしております。
 それから第六條は、事件の開始、これは要するに分限ということは、裁判所内部規律に関する事柄であるのでありまして、檢事の起訴と、そういつたような外部の手続を俟たないで監督権がある裁判所の申立によつて、職権でこれを開始して行くという行き方をやるのが第六條であります、「当該裁判官に対して監督を行う裁判所」というのは、どれであるかということにつきましては、これは裁判所法に監督系統の規定があります。第八十條等にその規定があります。これによつておのずから決まつて参るわけであります。要するに最高裁判所の判事については、最高裁判所が申立をする、高等裁判所の判事については最高裁判所又はその高等裁判所が監督権を持つことになります。地方裁判所及び簡易裁判所の判事は最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所がおのおの監督権を持つ、そのいずれからでも裁判の申立をすることができるということになるわけであります。
 それから第七條は、いわゆる有罪の裁判だといいますが、懲戒をする、或いは心身故障で職務に堪えないという裁判をするその裁判については、その原因、どういう事実及び証拠によりこれを認めたか理由を示さなければならないということで、愼重を期しておるわけであります。で概ね刑事の判決の場合のような考え方をいたしております。勿論申出を却下したり、無罪であるかというような場合においては、それほど嚴格にいたさなくても宜しい、その他の点はいずれ最高裁判所の定めるところによつておのずから決められることであろうと思うのでありまするが、ただ有罪といいますか、そういう裁判だけは眞重に裁判書きを書くというようにいたしたわけであります。第七條の第二項は、この手続はむしろ訴訟ではなく、内容は非訴事件手続的なものでありますが、口頭弁論というふうなものではないが、併しこれは当該裁判官に陳述の機会を與えて十分主張並びに立証上の主張を聽いて裁判をするというので、陳述の機会を與えなければならないていうことにいたしたのであります。
 第八條は、抗告であります。これは高等裁判所の裁判だけに対して抗告を認めております。即ち高等裁判所の裁判に対して最高裁判所に抗告ができるということにいたしたわけであります。尚「最高裁判所の定めるところにより」というのは、抗告の期間でありますとか、或いは何時からその期間を起算するか、或いはその間執行停止をするかどうかというような事柄は、すべて最高裁判所がルールで決めることにいたしたわけであります。
 第九條は「分限事件の手続の費用は、國庫の負担とする。」これは現在でも判事、懲戒法或いは官吏の一般の懲戒はそういう建前になつております。
 次の第十條は、分限事件と刑事事件或いは彈劾事件がある場合に、それらの事件の結果を俟つて、いろいろな処理をするのが適当な場合があるであろうと思いまして、中止をすることができるとしたのであります。両方の手続が両方進んで矛盾した結果になることを避ける趣旨であります。
 第十一條は裁判の手続、これはこの法律で特に定めてないものは、大体最高裁判所のルールに委して行こう。要するにこれは裁判所の内部規律に関する問題であり、又そういう手続については大体憲法の第七十七條で、最高裁判所が規則を制定する権限がありますので、それに委ねたのが第十一條であります。
 それから第十二條は、内閣に結果を通知して、結局これによつて内閣が罷免、免官をするわけでありますので、内閣に通知をしなければならないと規定したのであります。
 第十三條は懲戒の中の過料についての執行は、非訟事件の過料決定の執行と同様に非訟事件手続法第二百八條の規定を準用いたしたわけであります。
 以上が裁判官についての懲戒と、それから心身故障のために職務執行ができないとする裁判の事柄であります。ところが裁判官の外の、裁判所の職員といたしましては、第十五條に列挙しておりますように、事務総長でありますとか、いろいろ裁判所調査官、或いは裁判所事務官、技官ていつたような者があるのでありますが、これは純然たる行政官ではない。やはり裁判所の職員でありますので、まあ文官ではありますので、何らかの規定がなければ、文官分限令でありますとか、或いは官吏懲戒令が適用されるのでありますが、これはやはり裁判所職員として、最高裁判所のすべて監督を受けておるのでありますから、これはやはり一般の行政文官と違つて、その懲戒等の委員会の組織等がやはり最高裁判所以下の部内で以て、これを作つて行うということが適当であろう。この点内閣の方面とも折衝の結果、やはりそれは裁判所職員として、その裁判所の規律に從わしめるのが、適当であろうということで、要するに一般の文官の懲戒令、或いは分限に関する規定の特例を十四條以下にいたしたのであります。即にこの列挙しておる職員の懲戒による免官、或いは減俸、或いは譴責というこの種類のものは、これは一般の文官懲戒令にある。これを適用されるわけであります。ただそのやり方は普通の文官の懲戒委員会の議決を経るのではなくて、一級の者は裁判所職員高等懲戒委員会というものを作りまして、その議を附して最高裁判所の申出によつて内閣が免官をやる。二級の者については、今度高等懲戒委員会の議決によつて最高裁判所が自ら免官を行う。三級官以下の者につきましては普通懲戒委員会を設けて、その議決によつておのおのその長でこれを行うということにいたしたわけであります。これは十四條の一項は懲戒による免官の場合でありますが、二項は懲戒による減俸の場合、これは一級及び二級のものについては、高等懲戒委員会の議決によつて最高裁判所がこれを行うのであります。免官の方は一級のものは内閣が行うのでありますが、減俸は最高裁判所が行う、三級のものについては普通懲戒委員会の議決によつて各その長で行うということにいたしたのであります。次は譴責でありますが、これは最高裁判所の定むる所によつて各長がこれを行う。これは大体文官の懲戒の執行のやり方がこういつたような形式段階を踐んでおるのであります。それに倣つたわけであります。その高等懲戒委員会、或いは普通懲戒委員会に関する規定は最高裁判所がこれを決めるということといたしたのであります。尚執行吏、いわゆる前の執達吏でありますが、これは裁判所の職員ではありますが、純然たる官吏ではありませんので、特にその点についてこれは執達吏懲戒令というのが別にありましたが、それを廃めて、要するに、最高裁判所で定むることにして、おのおの各地方裁判所がこれを行うということにいたしたわけであります。最後に第十四條に、今までの規定は、すべて懲戒の場合の規定でありますが、懲戒以外にいわゆる心身の故障のために職務が執れなかつたような場合についての規定を最後に掲げて、これはやはり第一項の手続によつて内閣或いは最高裁判所或いは各その長が行い、おのおの委員会の議決を附して行うということにいたしたのでありまして、これは官吏分限令第三條第一項第一号に該当する規定をここに持つて來たわけであります。これによりまして裁判官の彈劾法、それから裁判官その他の職員の分限に関する法律とによつて彈劾及び懲戒の手続が全部網羅されておるわけであります。簡單でありますが………。
#12
○委員長(伊藤修君) 只今の御説明に対する御質疑がありましたらどうぞ。
#13
○鬼丸義齊君 第一に伺いたいと思いまするのは、この彈劾裁判所法はいつ頃できますか。段々項目を分けて伺いたいと思います。それから從來裁判官に対する彈劾事件というような先例があつたでありましようか、それも一つ伺いたいと思います。この規定によりますると、裁判官みずからは陳述をすることができるようになつておりますが、この裁判は弁護人を附することができないのでありましようか。次は管轄の問題でありまするが、申立の裁判所が管轄をするということであれば大体よかろうと思いまするけれども、却つてその所属以外の裁判所の方で以て裁判することの方が公正に行きはしないかと思います、その点はどうか。從來私共裁判所に対しまする裁判について遺憾に思つておりまするのは、忌避の申立規定がありまするが、忌避の申立事件は年に数百件としてあるに拘わらず、裁判所始まつて以來未だ曾つて一遍も忌避の申立の立つたという前例がないということに聞いております。そういうようなことでなく、今度は本当に裁判官の方もやはり憲法の趣旨に則りまして、明朗に、極めて公正に一般からの批判を受けるというふうに撤するといたしましたならば、ただ監督権を持つておりまする者、弁護士などからも直接申立が……そのまま起訴になるのでなくとも、所属長官に対して懲戒の申出でをなさしめるようなことが許されまするならば、一段と明朗になりはしないかと思うのであります。そうして裁判所法にありまする四十九條の職務上の義務違反でありまするが、これは消極的の義務違反の場合もありましようし、或いは消極的の義務違反の場合もあると思いまするが、事実の問題としましては、裁判官の扱いの上におきまして、刑事訴訟法に違反する体の取扱いをいたしておりますようなふうな事例は乏しくないのであります。そうしたような場合にやはり職務上の義務違反として懲戒の事項に当るかどうか、これを一つ伺わして頂きたいと思います。以上であります。
#14
○政府委員(奧野健一君) 先ず第一点の裁判官彈劾法案はどういうことになつておるかというお話でありますが、これは実は一應司法省におきまして大体の成案を得ておつたのであります。ところがその後新内閣になりましてから、むしろこれは國会の提出法案にしてはどうかということになりまして、その案をそのまま國会の方へ引継ぎまして、衆議院におきましてそれは議院運営委員会が主になつて草案を作り、それを司法委員会と合同で大体成案を得まして、只今関係方面と折衝中であるようでありますから、近くこれは成立するものと考えとおります。
 それから次に懲戒の事例でありますが、これは相当件数があります。まあ正確に何件あつたかということは、記録が戰災で燒けましたので、明確には申上げられませんが、相当これは懲戒事件はあつたわけでありまして、特別に從來は懲戒裁判所というものを拵えてやつておつたのでありまして、この事件は相当あり、今後もやはり懲戒事件は相当あるのではないかというふうに考えております。
 それから次に管轄の問題でありますが、これにつきましては、五條、六條におきまして、要するにそういう非行を行つた行爲のときにどこにおつたかということによつて決めないで、いよいよその事件が起きたときに、その裁判所の所属しておるところを標準として、その地方裁判所であれば高等裁判所というふうに決めるわけであります。大阪の地方裁判所がら東京の地方裁判所に轉任した場合に、大阪の裁判所当時における非行について、東京地方裁判所に轉任後事件になつたという場合には東京の地方裁判所を標準にして結局東京高等裁判所が懲戒事件を行う、大阪高等裁判所が行うのではないというのが五條でありまして、これはやはり結局地方裁判所判事であれば、高等裁判所がやることになつておつて、自分のところで自分の手でやるのではないわけであります。ただ最高裁判所だけにつきましては、これは自分の手で自分のところの所属の裁判官を自分の手で裁判することになる。これは從來ともそういうことになつて、これは止むを得ないことになりますが、その他の点ではその所属の裁判所以外の結局裁判所がやることになりますので、御懸念の点は先ずなかろうかと考えるわけであります。
 次に例えば弁護士のような職業をもつている人に、起訴権ではないけれども、何か申立を認めるというようなことにしてはどうかという御意見でありますが、これは申立は監督権を行う裁判所の申立によつて始まりますが、それを促すために弁護士会等でいろいろな事実をその裁判所に申達されることは、これは毫も差支えのない、いわゆる職権の発動を促す動機を作ることは、これはやることができるものだというふうに考えております。
 尚次に裁判官が当該裁判官に陳述の機会を與えておるが、この場合に弁護人を選定して弁護権を行わしめることができないか、これは恐らく最高裁判所の作るルールによつて、いわゆる第十一條の定むるルールによつて、そういう弁護士の選定、弁護権を行使せしむるということができるつもりであります。大体以上お答えいたします。
#15
○鬼丸義齊君 先程伺いました弁護士からそうした懲戒事項の申告をするという場合に、勿論申立を促すべきことはこれは自由でありまして、敢えて法の命ずるまでもないと思います。法文でもつてそいつを命じて申出でをすることができるということにいたしますれば、自然明朗になりはしないかと思います。要らぬおせつかいだということではなく、弁護士会もやはりそうした裁判手続の公正に行われますることを野にあつてそれを監視し、監視しておるというと語弊がありますが、相共に携えて司法権の活動のために寄與するということでありまするならば、そうした非行のあります場合に、それを申立権限者に対して申告を申し出でることができるというようなことを明文の上において現わしておいたらどうかと思いますが、その点どうでありますか。
 尚弁護人を附するということは、これはやはり弁護士の懲戒法にもございまして、これは当然やはり最高裁判所の別個の規定によつてそうした裁判手続の方がができるわけでありますか、それを伺つて置きます。
#16
○政府委員(奧野健一君) 弁護士を付けることはこれは最高裁判所の定めるところに委してしもう、多分そういうことになると信じております。それから弁護士会が明文をもつてそういう懲戒事項の申告をせしめてはどうか、というお考えは御尤もでありますが、大体今度は廣く最高裁判所の裁判官は國民審査に付され、又彈劾されることにもなり、すべての裁判官もやはり議会の彈劾裁判所において彈劾される。而もそれは衆議院議員をもつて組織される訴追委員会というものの訴追を待つて、彈劾裁判所は衆議院と参議院雙方の同数の議員によつて構成される彈劾裁判所が裁判官を、場合によつては、これを罷免するという手続になつておりますので、非常に罷免という殆ど死刑に該当するような事柄について、全くこれは國民の代表の方々の批判をそのまま受けておるのでありまして、それ以外のことはもう実は余り大したことはない。むしろ内部で叱りおいたり、或いは戒告、或いは過料というような、むしろ内部自身の自主的な内部規律で、これを監督して行くというのがむしろ適当ではなかろうかと思いまして、特にまあ外部、といつては多少語弊がありますが、監督権者以外の者に、或いは檢察官或いは弁護士会というようなものに、そういつたように法文上そういう申立をする権限を與えるということも余りどうであろうか、むしろ彈劾ということによつて廣く國民一般或いは國民の代表たる國会の訴追を受け、國会の裁判に服するということで今度の新らしい憲法下における裁判官の監視ということは、十分やつて行けるのではないかという考からこの懲戒とはややそういう意味で軽く……軽くといつては語弊がありますが、内部的に自主的に、自治的にこれをみずから粛正して行くという方向に行きましたので、その点を明らかに明文をもつていたすことを差控えたわけであります。さよう御了承願います。
#17
○鬼丸義齊君 先程伺いましたこの彈劾法案が司法省案から國会の方で以て定めるということで、議会運営委員会なり、或いは司法委員会はすべてこの衆議院の方でやるというふうに聞いております。その当時司法省の方として提案者の問題についてやはり協議に與つたことがあるのでありますか、衆議院だけで以て提案者になるというふうな趣旨になつたのでありますか、どんなものでありますか。
#18
○政府委員(奧野健一君) その点は内閣の最高方針でありまして、自分としてそれ程その点については意見を求められたというようなことはなかつたのです。
#19
○齋武雄君 先程の御説明では第二條に「裁判官の懲戒は、戒告又は一万円以下の過料とする。」こういうのは譴責という意味と同じで漢字制限の結果、戒告という文字を使つたという御説明でございましたが、裁判官以外の裁判所職員の懲戒というものは五頁の二行目にありますが、「第1項に掲げる職員の懲戒による譴責」ということがありますが、文字が違つておりますが、裁判官の場合は戒告、この場合は譴責という文字を使つておりますが、何か意味があるのですか。
#20
○政府委員(奧野健一君) 御尤なお尋ねでありますが、これは裁判官の方は新らしくこれで作るのでありますが、この裁判官以外の裁判所職員は実は一般官吏の懲戒令というものの適用があつて、ただそういう場合に高等懲戒委員会或いは普通懲戒委員会の議を経て誰が事実上行うのかということについての特例を設けただけでありまして、文官の官吏懲戒令にはやはり譴責という言葉がありますので、これは止むを得ずその言葉を踏襲したので、國会職員等につきましては、新らしく規定を設ける場合で、戒告というような言葉になつておるようであります。同じ法律でその点は不揃いでありまして、御指摘の通り甚だおかしいのでありますが、そういう意味で根本に文官懲戒令の適用があるのだという頭でそういう結果になつたのであります。
#21
○齋武雄君 それは了解いたしましたが、そうすると戒告と譴責というのは同一意義に解して差支ありませんか
#22
○政府委員(奧野健一君) 同一意義に解してよいと考えております。
#23
○委員長(伊藤修君) 他に質疑はありませんですか。ではこの法案に対するところの質疑はこの程度で打切りまして、余は他日に讓りたいと思います。
 次は裁判所予備金に関する法律案。この法案に対する内容の御説明を政府委員にお願いいたします。
#24
○政府委員(奧野健一君) これは非常に簡單な規定でありまして、もうすでに提案理由の説明で盡きておるかと思いますが、國会の予備金について昭和二十二年法律第八十二号で大体これと同じ内容の規定を設けられております。勿論これは國会の場合におきましては、議院運営委員会の委員長が次の常会の開会の初めにおいてその委員に報告して承諾を求めなければならないというような点だけが、これは最高裁判所の裁判官会議の承認を経なければならないというふうに改めた外、勿論管理者が國会の場合はその院の議長が予備金を管理することに対して、裁判所の予備金でありますから、最高裁判所が管理するということにいたし、その支出については最高裁判所の裁判官会議の承認を経なければならんということ、丁度それは國会についてはその院の議院運営委員会の承認を経なければならんというのと同じにいたしたのでありまして、これは裁判所法に國会法三十二條と同樣な規定、即ち第八十三條というのがありまして、「裁判所の経費は、独立して、國の予算にこれを計上しなければならない。前項の経費中には、予備金を設けることを要する。」ということ、これは國会法の三十二條と全然同樣な規定でありまして、その國会予備金に関する法律案と同樣な法律案を裁判所予備金に関する法律案として出したのでありまして、これは大体第一條はその予備金は誰が管理するかということを規定し、これは当然のことではありますが、最高裁判所長官がこれを管理すること、それからこれを支出した場合には事後に、或いは事前に適宜に最高裁判所の裁判官会議の承認を経なければならないという、一種の監督的なことを規定いたしたのであります。これはむしろこういう規定を置く必要もないではないかという考えもいたすのでありますが、まあ國会の予備金について規定を設けて、裁判所の予備金について規定を設けないというのもいかがかと考えられますし、又予備金は最高裁判所が管理するということを明らかにして置かないと、或いは大藏大臣の管理ではないかという疑問もありますので、これを明らかにしたのであります。尚同時にこの財政法に、或いは憲法に、いわゆる予算の予備費と國の全体の國の予備費との関係を明らかにする必要もあり、これは予備金と予備費とは違うので、予備金といいますと、裁判所なり或いは國会なりの独立の予算の中に計上された予備金でありまして、この支出はやはり予備費と大体同じように不測の経費にこれを使用するために、予備金として取つておるのでありますが、これは裁判所の予算の中に計上されて、國の予備費とは別個なものであるということを明らかにいたしたというのがこの法律の骨子でございます。
#25
○委員長(伊藤修君) この法案に対するところの御質疑はありませんか。ではこの法案に対するところの質疑をこの程度に止めて、余は他日に讓りたいと思います。実は本日関係方面で三時に面会することになつておりますから、若し継続願えますならば、松井さんに代理して頂いて、皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律について御説明願つたらいかがかと思いますが、松井さんお願いいたします。
#26
○理事(松井道夫君) それでは引続きまして、「皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律案」の、逐條の説明を政府委員に伺うことにいたします。
#27
○政府委員(奧野健一君) これは大体提案理由の説明で盡きておるかと考えますが、結局憲法の施行に伴いまして旧皇室典範及び皇族親族令、及び皇族身位令というものが廃止になり、それと同時に皇族から臣下に入る場合に、いわゆる華族に列する者の戸籍に関する法律というのも廃止されて参つたのでありますが、而して今度の皇室典範の第二章によりまして皇族が臣籍に降下される場合、及び臣籍から皇族に列する場合の戸籍の取扱といつたようなことが問題になつて参るので、いわゆる皇族につきましては御承知のように戸籍法の適用を受けないのでありまして、皇統譜という戸籍に代わる皇統譜に登録されております。從つて臣籍に御降下になりますと、戸籍を新らしく作り、戸籍法の適用を受ける必要が生じて参る。現在その橋渡しになる規定がありませんので、この規定によつて臣籍における戸籍を作つて、その後は一般戸籍法の適用を受けるという、いわゆる皇族から身分を離れて臣籍に御降下になる、受入態勢を定める必要があるので、この法律を制定いたしたのであります。勿論戸籍法全体が新民法に伴いまして変えて行かなければならないのでありますが、皇族のこの度の御降下は大体今年中に御降下になることに承つております。で戸籍法の改正は來年度から改正するつもりでありますので、一應現在の戸籍法で受入態勢を決めるという建前でこの法律はできておるのであります。即ち先ず第一條につきましてはこれは皇室典範の十一條によりますと、「年齡十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。」ということになつておりますので、皇族の身分を離れて臣籍に御降下になるわけであります。その場合に入るべき戸籍を新らしく編成する必要がありますので、第一條によつてそういう方々につきましては新戸籍を編成するということを規定いたしたのであります。
 ところで第二項は皇室典範第十三條によりまして皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は同時に皇族の身分を離れられる。いわゆる親王又は王の妃及びその直系卑属及びその妃は親王及び王と同時に皇族の身分を離れられるということになりますと、親王及び王が第十一條の規定によつて臣籍に降下され、新戸籍を編成した場合に、その妃及びその直系卑属及びその妃はやはりその前項の新戸籍の中に入つて戸籍簿に登録するということにいたしたのが第一條第二項であります。
 而して第二條は皇室典範第十四條第一項乃至第三項、即ち皇族以外の女子、いわゆる臣籍におつた女子で、それが親王の妃或いは王の妃となつて皇族に列せられておつた者が、その後親王、或いは王、即ちその夫を失つた時はいわゆる元の皇族の身分を離れることができる規定であります。そういう場合に又元の戸籍に帰るという事柄。その外に第十四條の第三項では、それらの皇族以外の女子で、皇族に列した者が離婚によつて皇族の身分を離れていわゆる離婚復籍ということに該当するような場合であるとか、或いは又十四條に列挙しておるような場合に、臣籍にお戻りになる、それから婚姻前にあつた戸籍に入る。丁度この場合は離婚によつて離婚前の戸籍に復籍するのと同じ考えであります。その場合に、若し入るべき戸籍がすでに全部除かれて除籍になつておつた場合には、第二條の第三項で新たに戸籍を編製するというのが第二條の第三項であります。第二條の第二項は「皇室典範第十四條第四項の規定により皇族の身分を離れた者は、その直系尊属につき第一條第一項の規定により編製した戸籍に入る。」これは皇室典範の第十四條の第四項で「第一項及び前項の規定は、前條の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する。」ということになつておつて、前條、即ち第十三條では大体親王、或いは王が皇族の身分を離れられると、その妃、或いはその直系卑属、及びその妃という者は随伴して、やはり伴つて臣籍に降下されることになつておりますが、ただ例外として、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除くということになつておりますから、本來は自分の親であります親王或いは親王妃と共に臣籍に降下されるべき者であるのであるが、もうすでに他の皇族と婚姻しておられました関係上、やはり皇族に留まつておられたという場合に、その後その夫を失つた場合とか、或いは離婚したような場合にはやはり臣籍に帰るのでありますが、その場合にすでに先程申しましたように戸籍があるわけでありますから、その戸籍へ入るというのが第二條の第二項であります。
 それから第三條は皇室典範十二條で、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。」いわゆる臣下と御婚姻した者は皇族の身分を離れてその戸籍法の適用を受けることになるのでありますが、それが今度離婚されるという場合に又皇族に逆戻りされるのではなくして、その場合はやり臣籍に降下されたままで、今度は復籍すべき籍がありませんので、その場合には新戸籍をその離婚された方について作る。ただ先程申しましたようにその直系尊族にもうすでに臣籍に降下されて戸籍を作られてある場合は、その既に作られた戸籍の中に入るということに、まだそのそういう尊族が臣籍に降下されて新らしく戸籍を作られていない場合には、離婚になつた、その曾て皇族であつた女の方について新戸籍を編製するというのが第三條の規定であります。
 それから第四條は、これは当然なことでありますが、皇族以外の女子が皇后となり又は皇族男子と婚姻したときは、皇族に列するわけでありますから、その方の戸籍を除くというのであります。
 第五條、六條、七條は、これはただ新戸籍を編製する場合、或いは戸籍に入る場合、或いは戸籍から除かれる場合の各條に述べた戸籍の変動についての屆出、並びにそれに添附すべき書類、屆出の期間というようなものをここに規定いたしたわけであります。
#28
○理事(松井道夫君) 御質疑がありましたら。
#29
○來馬琢道君 少し傍系の質問になりますが、はつきりしないからここでお伺いいたしますが、王族の問題をどういう方法によつて示されておるのですか。王族御自身だけならば本件と関係がないわけでありますけれども、そこに嫁しておいでになります皇族があられます。例えば李王世子殿下に梨本宮の女王が行つていらつしやるという場合には、この際どんなものでありましようか。
#30
○理事(松井道夫君) 速記を止めて。
#31
○理事(松井道夫君) 引続いて速記を始めます。別に御質疑はございませんか。
#32
○齋武雄君 ありません。
#33
○松村眞一郎君 なんですか。
#34
○理事(松井道夫君) 皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律案、今説明を願つたのです。
#35
○小川友三君 あります。
#36
○理事(松井道夫君) それじや今日はこの程度にいたして置きましよう。次会は明日の午前十時から罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案について質疑に移ります。本日はこれで散会といたします。
   午後二時四十七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           奧 主一郎君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
           鈴木 順一君
           岡野  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齊次郎君
  國務大臣
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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