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1947/08/21 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第17号
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1947/08/21 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第17号

#1
第001回国会 司法委員会 第17号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣提出)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○連合國占領軍、その將兵又は連合國
 占領軍に附属し、若しくは随伴する
 者の財産の收受及び所持の禁止に関
 する法律案(内閣提出)
○昭和二十一年勅令第三百十一号(昭
 和二十一年勅令第五百四十二号ポツ
 ダム宣言の受諾に伴い発する命令に
 関する件に基く連合國占領軍の占領
 目的に有害な行爲に対する処罰等に
 関する勅令)の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案(衆議院送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣送付)
○函舘市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○裁判所予備金に関する法律案(内閣
 提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月二十一日(木曜日)
   午後一時三十五分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開きます。本日は罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案の予備審査を議題に供しまして、これが質疑を継続いたします。
#3
○大野幸一君 提案者に対して、今度の提案改正第九條と旧法の九條の解釈と、旧法の九條を提案九條にしなければならないという理由を今一度御説明願いたいと思います。
#4
○衆議院議員(武藤運十郎君) 重ねて御説明を申し上げます。御承知の通り、戰爭中に強制疎開が第一次から第六次まで六回に亙つて行われました。そのときに建物の除却を命ぜられたのでありますけれども、除却の際にこれを執行する、例えば東京に例を採りますというと、東京都では疎開事業所というのが御承知の通りこの事務を扱つたのでありますが、そのときに疎開建物に対して補償金を交付しますと同時に、その建物の敷地の借地権をも補償をいたしまして、借地権がなくなつたと言われておるところが非常に多いのであります。場所によりましては借地権の補償がなく、建物の補償だけでありまして、借地権の残つておると考えられておるところもありますけれども、強制疎開地の大部分は借地権がなくなつたということになつておるのであります。そこで借地権者を併し保護しなければならないという建前から、第九條では、元の借地権を失つた借地権者は、そこに住まつておつた借家人、それから戰災で燒けた場合における借家人や居住者と同じような立場において、地主に対して借地権の設定を求めることができるということにいたしましたのが、簡單に申し上げますというと第九條の規定であります。從いまして強制疎開を受けた敷地の借地権者は、借地権者としてその借地権を地主に対して主張することはできないのでありまして、借家人と同じ立場において改めてその地所を貸して貰いたいという申し出をすることができるに過ぎないような立場に置かれております。これに反しまして、戰災によつて家が燒けたその建物を持つておつた借地考者は、御承知の通り罹災土地物件令が消滅すると一緒に、言い換えますならば、この法律が施行されると一緒に、今まで冬眠状態に置かれたという、進行を停止しておつたところの借地権が一齊に復活をいたしまして、地主に対しましては何らの意思表示をする必要がなく、当然に借地権者として借地権を行うことができる。この点が戰災地の借地権者と強制疎開を受けた土地の借地権者とが非常に違うところでありまして、前回にも申し上げました通り隣同士でありましても、戰災に遭つた者は当然借地権者として元へ戻つて參りまして家を建て、なんら地主に対して権利金を拂う必要もない、他の者に貸される虞れもない、家を建てることができるのでありますけれども、強制疎開を受けたところの借地権者は、当然にそこへ戻つて來ることはできない。若し戻つて來ようとすれば、地主に対して改めて賃借の申し出をして、地主の承諾によつて改めて借地権を得なければならぬ。而もその際には地主から改めて借地権の権利金を請求をされるというような誠に不利益な立場に立たなければならないのであります。それも地主が誰にもその地所を貸さないで持つておつた場合でありまして、若し地主が既にその土地を第三者に貸してしまつたとか、從つて更に又家ができてしまつたとかいうような場合には、これは申すまでもなく泣き寢入りをする外に仕方がないというのがこの第九條の定め方なのでありまして、私が前回にも申し上げました通り、戰災も強制疎開も戰爭被害の点におきましてはなんら区別する理由がないと考えられますにも拘わらず、こういうふうにこの法律が戰災借地権者と強制疎開を受けた借地権者との間に非常な大きな区別をして、強制疎開を受けた借地権者の保護が非常に薄いという考え方から、戰災地の借地権者と同じようなところまでその保護を引き上げたいというところに改正の趣旨があるのでございます。
#5
○大野幸一君 ちよつと條文上から言いますと、第九條の「旧令がその施行の日から準用されていたものとみなし」という場合を例を挙げて御説明を願いたいと思います。
#6
○衆議院議員(武藤運十郎君) それでは御説明を申し上げます。旧令と申しますのは、御承知の通り戰時罹災土地物件令、この只今問題になつております罹災都市借地借家臨時処理法のその約一年ばかり前に作られておりました戰時罹災土地物件令によりますというと、戰時罹災土地物件令は強制疎開地の問題は全然問題にしておりません。戰災地だけを扱つておるのでありますが、この戰時罹災土地物件令によりますと、戰災地の借家人は家が燒けたその燒跡に借地権者又は地主の承諾がなくても、一時使用の目的でいわゆるバラツクを建てる権利があるということになつておりまして、御承知の通り燒け跡には随分多くのバラツクが建つております。そのバラツクを建てておりました者は、今度はこの罹災都市借地借家臨時処理法に基きまして、地主に対しましては、借地権の設定を求めることができますし、又借地権がある場合には、借地権者に対して借地権の讓渡を求めることができるということに規定されているのであります。戰時罹災土地物件令が強制疎開地の借家人、居住者に対しましては、なんらの保護を與えておらなかつたのでありますけれども、この九條の改正によりまして、強制疎開地の借家人や居住者に対しましても、戰災地と同じように保護を與えようという趣旨でございます。
#7
○大野幸一君 趣旨の御説明を聽きましてほぼ分りましたのでありますが、
全くこの第九條は、いわゆる雀の涙程の移轉料、補償金を貰つてそうして借地権がなくなつた、こういう場合を規定したと思うのであります。借地権がなくなつた後、所有者というのがその後借地権を取つて非常な高い利得を得ている。そこでそこに借地権を持つておつた人、いわゆる疎開によつて犠牲になつた人が指を銜えて見ていなければならん。そういうことはいわゆる戰爭成金を所有者にして興さしめているということは、例は多々あるのでありまして、その実例は多いことでありまするから、こういう場合を救済して、そうしてやはり戰爭による犠牲を均分化するという意味で、私は第九條は非常に有効であり、そうして又必要なものであると思うのであります。ただ「但し、」という但書以下「公共團体が疎開建物の敷地、又はその換地を所有し、又は賃借している場合は、この限りでない。」ということ、これは公共團体に優越権を與えた規定であります。併しながら公共團体も常にその所有物を公共のためにのみ使つていないのでありまして、東京都などにおきましては、長年の習慣によつて東京都がこれをいわゆる私経済の目的、即ち公共のためでなくて一般借主、貸主との間のような関係において、賃貸していたところがあるのであります。こういう場合、單に公共團体が所有しているという理由のみで、その犠牲者にはこの権利を認めないということは、甚だ公平を失するのでありまして、公共團体がその公共のために、公共團体の目的のために、敷地又はその換地を所有する場合に限るべきであつて、一般賃貸借をなしている場合には、やはり前段の適用を受けべきものであると信じますが、それについての考慮は拂われなかつたかどうかということをお伺いいたします。
#8
○衆議院議員(武藤運十郎君) 只今御質問の御趣旨は誠に御尤もなことでありまして、お説の通り東京都内におきましては、例えば下谷竹町の十二番地の公園地、芝公園の公園地、そういうものが公共團体、東京都の所有であるにも拘わらず、普通の貸地として賃貸をされておる例が非常に多いのであります。併しながらこの場合におきましては強制疎開地を緑地にいたしますとか、或いは防空空地にいたしますとか、そういうふうな場合に限ることになつておつたように私は記憶をいたします。このことはすでにこの前に、九十議会でこの法案が審議をされますときに質問がございまして、司法当局から私が只今申上げましたような御説明があつたように考えておりますので、恐らく只今大野さんの御質問のような御趣旨に牴触しないように扱われておることと考えます。
#9
○來馬琢道君 この問題は只今お話になつたことで分つているようなものでありますが、東京の戰災に遭つた土地の実情によりますと、只今強制疎開の跡についての意見も出ましたが、不幸なる借地人及び借家人は、小面積の土地でありますと、東京都がこれを買收してしまつたのを改めて返して貰うということに非常に面倒な手続を要する。それから大きい土地の所有者でありますと、それ程の大金を支拂うことができないから、暫く東京都が防空地帶として借りて置くということで、地代も拂いまして暫くの間公共用として置きました。今回の種々なる制度の変化によりまして、その土地は時としては緑地にするからという理由で、二割と限つて建物を建てることを許して、廣い地所の中に極めて小さな建物を建て、それで復興に進んでおるものもある。それは併しながらなんどき取拂われるか分らないというような危險な状態に置かれておる。地主の方は地主の方で、土地は買われずして地租はかかつてくる。何時始末をつけてくるか分らないから、不安の間に土地を貸さなければならない。いくらかでも地租を稼がなければならんというような状態で、只今お話のありましたように單純ではないのであります。私は個人のことを言うならば、その強制疎開に遭つて買上げて貰うことができなくて、而して地租だけかけられる。東京都の方からは借地の契約を解除せられるというような面倒な所に挾つたこともあり又自分の知つておる者の中には只今お話のあつたような権利を主張しようと思つてもそこは東京都の方ですでに他の人に貸してしまつておるというような事件がありました。この法律をそのまま行つて行くにいたしましても、利害は非常に複雜なことになつてくると思います。実はこの改正をするということになりますれば、もう少し東京都の一部だけなりとも統計でも取つて、利害得失を考えてからにしないと、原則は大変に宜しいけれども、只今大野さんのお話のあつたようなことがあるか知らんと思うのであります。大体発案者においては、東京都のことを中心としておられるのでありますか。その他の戰災及び強制疎開に遭つた都市のことをすべてこれでお考えになつてのことでありますか。又私の申したような実情については、相当御考究のことであつたでありませうか。意見を決めるためにお伺いいたしたいと思います。
#10
○衆議院議員(武藤運十郎君) お答を申し上げます。只今申し上げましたのは、ただ一例を東京都に採つただけでございますけれども、強制疎開の行われましたのは、東京都だけではないのでありまして、大都市は勿論中小都市にも強制疎開の行われました所があるのであります。ただ東京都とか、名古屋、大阪というような大都市の方が余計に大きい部分を強制疎開をいたしたように聞いております。從いまして、この改正の趣旨、又適用の範囲というものは東京都のみではないのでありまして、全國凡そ戰爭中に強制疎開の行われた都市を含むのでございます。それからいろいろ複雜な利害関係等のお話もございまして、誠に御尤もだと思いますが、只今お話の統計などにつきましては、実は誠に調査も不行届で申し訳ないのでございますけれども、纒まつた統計というふうなものを私の手許に持つておらないのであります。ただ私共がこの改正案を出そうと考えるに至りましたことは、啻に東京都内における強制疎開を受けた借地権者だけではなく、各地の強制疎開を受けた借地権者から、この戰災地と強制疎開地との借地権者の取扱をどうして平等にしないのかということが数多く言われて來ております。それが全國的な実情である次第でありますので、確たる統計は持ちませんが、大体においてこういうふうに改正した方がいいのだろうという結論を得た次第でございます。殊にこの前にも申し上げました通りに、すでにこの罹災都市借地借家臨時処理法が第九十議会に提案を司法省からいたされました際に、東京弁護士会その他から正式にこれを改正をして貰いたい。この條文を修正して貰いたいという申し出がこの委員会にあつたのであります。併しすでに貴族院で先議可決せられておりましたし、司令部の方も再び了解を得なければならんというようなお説もありましたので、暫く樣子を見ることにして、そのまま私共は修正の意見を採り上げることなしに原案のまま承認をいたして参つた次第でございますけれども、私振り返りまして考えますというと、この改正というものは、すでに先の九十議会における罹災都市借地借家臨時処理法の審議されます際に、これと同じような改正條文を改正をすべきであつたと考えております。從いまして、今日かような改正を出しましたことはむしろ遅きに失するのではございますけれども、遅れたといえどもなさないのに勝さる。まだ復興も途上にございまして、この問題について救済される借地権者が非常に多いと考えられますので、遅ればせではありますけれども、全國各地からの修正の希望を集約いたしまして、本條といたした次第でございます。只今の御質問の統計等につきまして御入用のあります次第ならば、私どういうふうにいたしますか知りませんが、委員長からでも正式に東京都の方へお申し越しを願えば、或いは提出されるのではないかと存じます。どうか惡しからず御了承を願いたいと存じます。
#11
○來馬琢道君 一つここに実際問題として伺つておきたいことは、戰災後僅かに二年半とは申しますが、大分生活の窮迫というようなことの事情もあつて、東京へ出て來て仕事をしようとするものは急いで燒けトタンを集めて、燒け残つた柱を建てて家を建て、そこにすでに生活の本拠を定めたというような人もあり、少しく余裕のある生活をしていた人は、地方へ疎開して暫く樣子を見ていたというような関係で、今日においてはすでに旧の通りの状態に復することのできないようなところが大分できておると思いますが、これに対しては、やはり金銭の補償によつて清算する外には道がないだろうと思うので、この法律は強制疎開に遭つた人を保護すると同時に、可なり多くの紛爭を引き起すものかとも考えますが、提案者においては、その程度においてなんとか協定せらるべきものとのお考えでありましようか。
#12
○衆議院議員(武藤運十郎君) お答えいたします。誠に御尤もな御心配でありまして、この改正は勿論強制疎開を受けた土地の借地権者を保護するということにありますけれども、又すでにその土地の上に家を建て生活ないし営業の本拠を求めておるというような場合、言い換えましたならば、すでに正当な権限に基きまして、建物所有のためにこの土地を使用しておる者があるような場合には、それを覆すということはいたさないのでありまして、さような状態はこれを尊重いたします。從いましてそういうふうに形のできておるところは借地権は復活しないということになるのであります。言葉は不完全でありますけれども附則の最後に「この法律施行前、旧第九條に基き、裁判、調停又は裁判上若しくは裁判外の和解により既に確定したものは、その効力を妨げられない。」こういうふうに経過規定を設けましたし、それからややこれも不完全だと思うのでありますから、只今御質問の御趣旨のような点はすでに権限に基いて建物所有の目的で土地を使用する者がある場合にはこの限りではないというような趣旨の一項を加えまして、御心配のような疑義をなくす必要があるとも考えております。要するにすでに正当な権限に基いて家が建つておる場合、建築に着手しておる場合、そういうものはそのままこれを尊重してこれを覆すということはいたさないといふ趣旨でございます。
#13
○來馬琢道君 只今の附則のことについては承知しておるのですが、私の言い方も甚だ不完全だつたが、二ケ年半たつてもまだ解決していないところが相当にある実情であります。即ちもと自分が住居しておつたという理由で、そこに先程申したような粗末なる家屋を建てて、それでそこに営業の本拠をおいて働き始めておる借地人、即ち家主はまだ安全なる地方に疎開したままでいて、出て來るのには相当の準備を要するのでなかなか來られない。
 手紙を以て地主に交渉しておるというような状態で、思わず今日まで疑問の間に不安の経営を続けておるところが相当あると信ずる。浅草公園あたりなどは、そういう者がまだ相当にあると思う。それでこの法律がかように決まりますと、初めてこれによつて、それじや一つその弁護士を頼んで自分の権利を主張しようかしらんというようなことが起つて來るだろうと思います。そういう時のことを只今私が申しました金銭によつて清算するということに考えて行かなければならんかと思うので、そこを発案者にもう一度伺いたいと思います。
#14
○衆議院議員(武藤運十郎君) お答え申し上げます。御質問の趣旨は強制疎開を受けた土地のその敷地に、前に住まつておつた借家人がバラツクのようなものを建てて、生活の本拠なり、営業の本拠なりとして、その土地を專有をしておる。ところがこの法律によつて地方に疎開又は避難をしておつた元の借地権者が、借地権の復活を得たために、そのバラツクの持主に対して明け渡しを求める、或は明け渡しができない場合にどうなるかというような、そのトラブルの解決の御趣旨であるかと考えますが、さような場合には当然この九條の改正によりまして、借地権は復活をいたす建前にはなつておりますけれども、私が先程申し上げましたように、すでに旧令に基きまして家が立つておるような場合には、これは國家が更に保障するというようなわけには考えていないのであります。
#15
○松井道夫君 只今の点でありますが、これは借地借家の臨時処理法でありまして、臨時の処理でありまするから本來から言いますと、去年この改正案にあるような方法でやれば一番宜かつたのを一年の経過で一年間というのを二年間に改めるといつたような機会に九條の改正をやる、さようなことが一見簡單にできるようにも考えられるのでございますけれども、すでに一年間借地権がないならないということに基きまして、いろいろな生活関係、経済関係がその上に設定される。成る程他人の権限に基いてその建物を所有の目的で使用しておるといつた場合には、これはこの限りでない。且つ又その附則の第二項で、そういつたようなことがあれば差支ないのだ、さよう仰せられるのでございまして、一應尤もに感ぜられるのでございまするけれども、先程申しましたように、その借地権がないということで轉々その上にいろいろな生活関係が設定されるというようなことが当然考えられることで、來馬委員の心配されることもそこではないかと存ぜられるのであります。でありまするから、私が考えまするのに、第三者に対する関係におきまして、一方從來の原則よりも強い制限をこの際九條に付ける。外の法律の用語その他を借りまするならば、例えば元の法律の臨時処理法第二條の「但し、その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき、」というものよりも一歩進んだ強い制限をそこに付したならば混乱を或程度防ぎ得るのじやないかというように考えられるのでありますが、その点の御意見を伺いたいと思います。それからこの附則の二項でありまするが、「裁判、調停又は裁判上若しくは裁判外の和解により、既に確定した」という中のこの裁判外の和解でありますが、これは裁判所の手続で和解の手続ということで、それでその確定という文字がさように取れるのでありますが、そうでなくして和解契約で借地権者と所有者乃至は第三者の間に、民事上の和解、民法上の和解があつたとする、そういつたような場合には、勿論現に成立した法律として差支ないようにも思えるのですが、若しそうでありませんと、錯誤であつたとか、ないとかいうことで、約束が無効か或いはいずれにしても紛爭の種になるということに相成るだろうと思う。今の裁判外の和解により、確定したというのはどういう事柄であるか。
#16
○衆議院議員(武藤運十郎君) 第一の、九條の改正によりまして多少の混乱を生じないかというふうな御趣旨で、それに対してもつと強い何か適当な條項をというような御趣旨であるように伺いますが、誠に結構なことでありますし、この九條改正の趣旨を実現をする適当な條項がございますならば、是非御修正を願いまして結構と思うのであります。私どもは一番最初に申し上げましたように、この趣旨が実現いたしますれば、條文の文句等は皆さんの御協力によりまして、成るべく問題の起らないような完全なものとしたいと考えておる次第でございます。
 それから第二の裁判外の和解という趣旨は、地主と元の借地権者との間に話合で契約ができたという場合にはそのままそれを有効として扱うのであります。例えば借地権が強制疎開によつて消減をしたという前提の下に、古い借地権者が再び地主に対して幾何かの権利金を拂つて、借地権の設定を改めて受けたような場合、これはこのまま有効として不当利得というふうな形で権利金を取り戻されない。言い換えますれば、借地権が当然復活ということでなくして消滅だという前提の上に立つてできた契約を尊重するということになります。それから又或いは地主と旧借地権者と折衝しましたけれども、折衝が成り立たないで借地権は消滅したものだということで契約がすでにできておるような場合には、再びこの法律によつて借地権の消滅を承認した形の契約を無効にして、再び借地権を復活させるというようなことはいたさない。そういう趣旨でございますから、この点につきましてはそれほどの混乱はないと考えるのでございます。
#17
○松井道夫君 ちよつと今の確定したというのは同一の効力を有するという趣旨ではございませんでしようか。その意味の確定じやございませんですか。
#18
○衆議院議員(武藤運十郎君) 裁判外におきましては、御承知の通り不服申し立をする手続というものはないのでございますから、裁判外で契約ができた場合には、それを以てまあ確定という言葉で表したのであります。裁判の上の確定という言葉とは確定という言葉の意味が少し廣いのでありますけれども、その場合にはもう覆さないという趣旨に御了解を願いたいと存じます
#19
○大野幸一君 今の提案理由を見て見ますと、今まですでに事実上ここに占拠したものに対しては効力がないとしておる場合には土地所有者との関係において変更ないようにするというような御趣旨でございましようが、そうだとすると、これはなんにもならなくなることで、で私が最初に申し上げましたように、土地の所有者が厖大な利益を得ておる、その半面において疎開によつて損失を受けた土地の賃借権者、その建物に住居していた住居権者を保護したいという意味で賛成の意を表したのでありますから、すでに事実上として土地の使用が開始されていた場合に、その借地権者、いわゆる罹災、疎開建物によつての犠牲者と土地所有者との関係に効力がないとすることは、先程申しました不公平が生ずると思うのであります。そうして提案者は御説明にならないようでありましたが、先程來馬委員からの御心配の点は、すでにこの條文、この法律自体で私は解決されておると思うのでありますが、どうお考になつておるでしようか。即ち第九條では疎開建物の敷地の借地権者が借地権があつた場合には当然のこと、その借地権を失つたものについて特に規定したのであります。その場合に第九條の「前七條の規定を準用する。」ということになつておるのであります。即ち前七條とは処理法の二條から八條までをいうのでしよう。その間にすでに來馬委員の御心配になつた点は解決されておるのであります。それは物件令第四條の第一項のような場合、即ちその建物に居住したる者が使用していた場合、或いは又第四項によつて土地の所有者が二ケ月を経過しても誰も現れないときにこれを他人に臨時に貸すことができるというような場合に、人に貸してあるとこういうような場合に、建物に居住していた者が建てていた或いは又土地の所有者から一時賃借して使つていたような場合には、この臨時処理法の三十二條によつて、即ち「第二十九條第一項本文又は第三項の規定に基いて、建物所有の目的で罹災建物の敷地又はその換地を自ら使用する者については、第二條乃至第五條、第七條第二項及び第八條の規定を準用する」ということになつておるのでありまするから、これによつて借地権がないこととなつたものもあることとなつたという第九條の改正趣旨が決れば、そのあとは全部いわゆる今までの既存の法規関係は、この戰災都市借地借家臨時処理法においてすべて解決されていて、それ以上を保護する必要もなければ、又それ以下に落ちる必要も私はないと思うのでありますが、この点についてのお考を承りたい。
#20
○衆議院議員(武藤運十郎君) 只今大野さんのお説の通りであります。私の説明が不完全でございました。ただ先程の御質問はどこかこれに対して國家で保障するかというようなお話がございましたので、それはすべて只今大野さんが御説明になつたような趣旨で、罹災都市借地借家臨時処理法が解決をします以外には、國家で保障を特にするということはございませんという趣旨を申し上げたのてあります。
#21
○來馬琢道君 強制疎開地の問題は、地主には事業執行者が借地権に対する保障金を支拂い、借地権者には又相当の借地権に対する保障金を支拂い、借家人には居住権及び営業権に対する保障金を拂つて全部解決してしまつたものであるのに、この点は戰災によつて滅失した建物とはすつかり樣子が違つておりますので、私はそこに特別なる考慮を要すると思うので、いろいろな方面から考えて質問をしたわけなんであります。それで或意味から申しますれば、すつかり清算が済んでいる。ただ貨幣價値が低落して來たために、そのあとに再びなにか事業を興した者が非常な儲けをしたように考えられるところが、東京都内においても余り多くないけれども、多少あるので、從來の居住権者、借地権者がむらむらと元の権利を思い起して、今大騒ぎをしているというようにも考えられるので、私はその辺の状況を頭の中に描きながら、発案者の御意見を伺つて、こういう紛爭の起つたときに金銭で清算すべきものかということを質したのであります。眞直に行けばそれ程大きな問題ではないだろうと思つているのであります。只今の御意見に対して私の先程質疑いたしました趣旨を申しましたが、この意味において只今私の質疑いたしたことを御了解願つて置きたいと思います。
#22
○委員長(伊藤修君) この際本案に対する司法省の御意見を参考のために伺つて置きたいと思いますが、民事局長一つ御意見を伺わして頂きます。
#23
○政府委員(奧野健一君) この改正の提案につきましては、大体において司法省といたしましても御賛成をいたしておるのであります。ただ只今問題になりました九條の改正点だけに対しましては、遺憾ながら賛成をいたし兼ねるということを前から申し上げておるのであります。現在の九條は疎開の関係によつて、借地権は補償を受けて、現に消滅しておるのであります。それが今度疎開が解除になつて土地の所有者に還つて來たといつたような場合には、前の即に消滅した借地権者は又借地権の設定を要求することができて、その要求に対しては、地主は正当な事由がなければ拒めないということになつておるのであります。ところが只今のこれに対する御提案の趣旨は、初めからそういうふうに更に借地権の設定を求めるということにしておいて、その地主は正当な理由がなければ拒めないということにしておいても、或いは権利金を又地主から取られるというようなことになつて困るから、むしろそういう場合に借地権は初めから消滅しなかつたことにしておいたらという御提案であります。一見理由があるように見えますが、事実上はもう借地権はないのでありますから、その後そのないところに新らしく権利関係がいろいろあることを十分予想されます。然るに初めから遡つて借地権は消滅しなかつたものとみなすということにいたして、その後のその土地の上の権利関係が崩れてしまうということでは非常に権利関係の混乱を來すのみならず、その後から、而もそのときには借地権はないから十分理由のあることでありますが、その設定を受けた後からの権利が何ら補償なくこの遡及法によつて消滅するということは、或いは憲法違反でもあるということも考えられます。尤もこの附則に裁判と調停と、裁判上の和解、裁判外の和解の確定したものは云々という規定がありますが、これは裁判と調停、裁判外の和解、裁判上の和解というようなもののはつきりしておるものは宜しいでしようが、單なる契約による借地権の設定契約をしたというようなものは覆えるわけになるのでありまして、而も借地権者は事実今後借りるつもりもない者も、やはり借地権あるものとみなされるという餘計なところまで進んで行くことにもなりますし、事実借地権を復活して自分で使いたいということになれば借地権の設定の要求ができて、それに対しては地主の方では大体拒めないというふうになつておるのでありますから、目的は大体それによつて達するので、初めから消滅しなかつたものとみなして、その後の権利関係までぶち壊してしまうという法律上のいろいろな混乱もありますので賛成し兼ねる。この点は裁判所の方で、事実この問題を取り扱つておる係りの者も同樣の意見を持つておりますし、戰災復興院等におきましても、そういうふうに権利関係を遡及せしむるということは反対であるというふうな意見でありますので、政府といたしましては遺憾ながら九條の点だけは御賛成申し兼ねるという考であります。
#24
○大野幸一君 好いところで政府の方針を聽く機会を得たのであります。一体この法律が衆議院を通過するときに、私は議会を傍聽していたのでありますが、これは所有者を保護しておるのか、借地人を保護しておるのかと、こういう問に対して、時の司法大臣木村氏は、勿論これは借家人、借地人を保護しておるのだとおつしやつたのであります。私はこのとき、感が非常に強い男ですから、これは口では言うけれども嘘である、こういうことをちやんと看破した。友達にもこのことを話した。こういう人が憲法を作る、司法大臣をしておるということを、私は心から非常に不満に思つておつたのですが、ああいう政治家は遂に追放を受けるという運命は天の法則だと私は思つておつた。今裁判所からのお話があつたけれども、裁判所において今日行つておるところの実際の臨時借地借家処理法なるものは、ちつとも借家人を保護していなければ借地人も保護していないのであります。これはどういうわけか、私は不思議でならなかつたのであります。例を採りますならば、それでは私がお問いいたしますが、借地権は誰が補償したのでありましようか。これは國家が補償したのであります。今日地主が持つておるということになるのです。その國家が補償した借地権を誰に返してやるのが正当であるか、問題はそこに帰着するのであります。これは一言にして分る。それは所有者に返すのが本当か、借家人に返すのが本当か、借地人に返すのが本当か。本法が、どこまでも借地人、借家人を保護するという規定であるならば、その約束に基いて今日返してやるならば、借家人、借地人に返してやらなければならないのであります。それから司法省の御心配になつた、法律関係を複雜ならしめるというお話でありますけれども、これは先程私が申し上げました通り、物件令第四條第一項、第三項、第四項によつてその場合は処理されておる。それならば戰災都市でもすでにそういう場合はよく起つておるのであります。戰災によつて、借地権者があつて、そうしてその借地権者以外の人が、いろいろそこに事実関係ができておるのでありましよう。これはちやんとこの法律でやつておるのであります。政府はどこまでも地主を保護するというところの、私は全く、甚だ申し訳ないけれども、裁判所の眞意を疑うのである。裁判所の実際の眞意は、あの法律が衆議院でできたときの速記録を御覧下さい。武藤運十郎氏が今日提案者として出ておられるけれども、何ケ條であつたか、附帶決議というものが出ておる。附帶決議によつて、借家人、無産者階級を保護しようという意味で、裁判は迅速にやれ、保証金を安くやれ、あの附帶決議がある。その附帶決議は、全員一致、総起立を以て委員会を通過しておるのであります。今日の裁判所の取扱は、初めは成る程安かつた。私は近頃法廷に出ませんけれども、友人を通じてしばしばその非難を聞くのであります。全く反動的になつておる。取扱が反動的になつておると私は断言して憚らない。その裁判所の御意向を今ここに反映されましたことを甚だ遺憾と思うのであります。私は從來我我の通過させるところの附帶決議が如何に薄弱なものであるかということを経驗するものであります。あの附帶決議は、今日は言わなかつたけれども、武藤運十郎氏をして、再び附帶決議でなくて、あれは本当に成文化しておかなければならない。法律を作るときは時の運用宜しきを得る、裁判には人の宜しきを得なければならんといつて、幾度もだまされてしまつた。できたものは勝手な解釈をされてしまう。それは裁判所は、法律の解釈において自由なわけでありましようけどれも、その委員会の発言、委員会の附帶事項などは、いわゆる立法の解釈の重要なる材料である。その材料をふみにじつて己のいわゆる主観によるところの解釈というものをされては國民としてはたまらない、それは決して裁判官の特別の地位を保つものではない。私は司法というものは立法の下において立法の意思を付度してやるのが裁判所だと思うのであります。どうも私は今政府委員のお考えから保守々々とどこまでも寧ろ所有者々々々本位に引戻されつつあるということを遺憾の意を表しまして、司法省のその意見には賛成をし兼ねる者であります。
#25
○松井道夫君 この機会に政府委員にお尋ねしたいと思いますが、今の九條の問題ですが、これを第三者に属した権利を妨げないという趣旨の規定にして既成事実は尊重する、今後この改正法の施行後まだ残つておる部分はこの改正法で始末するこういつたような趣旨ならばどうでしようか、政府委員の御意見は…………
#26
○政府委員(奧野健一君) そうすると原案といいますか、元九條と大体同じようなことにならないかと思います。
#27
○松井道夫君 元九條の改正の趣旨の一つですが、この失わなかつたものとするというのがあるのですから、今の消滅したという工合に解された場合に施行以後は消滅しなかつたものとして二條、三條その他の請求をすることができるということにする。こういうことにしたらどうですか。要するに遡及効はないということにする。
#28
○委員長(伊藤修君) 速記中止。
#29
○委員長(伊藤修君) それでは速記を始めて。
#30
○松村眞一郎君 私はこの大体の議論は、いろいろ承つておるのですが、第一條の罹災都市の問題、これは臨時の立法であるのを、これを「火災、震災、風水害その他の災害」と、あまりこれは廣くなり過ぎるという感じがありますがどうですか、提案者に、あまりこんなことを廣くやると、戰災のためにこれは作つた立法なんですから、余程事情が私は異つておるのじやないか。殊に全國的に適用しようというようなことになると、第二條の一年を二年にするということは、年限の延長ということは、これは極く平易に考えられるけれども、第一條の場合に、すべてなにもかも罹災に適應するということになると、余程これは愼重にやらなければならんですね。ただ二年間の法律ではあるけれども、それを少し私はなにか余程全國的の資料がないというと、立法としてはどんなものかと思うのですが、なにか資料はありませんか。委員会がそういう資料を集めることも適当であるし……。
#31
○委員長(伊藤修君) 資料はすでにできておる筈ですが簡單なものは……。
#32
○松村眞一郎君 先達ての資料だけでは……全國的にそれを及ぼすことはどうですか。
#33
○衆議院議員(武藤運十郎君) ちよつとお答え申し上げます。只今の御意見は誠に御尤もな御意見でありまして、戰災の法律について將來起るべき火災、震災、風水害その他の災害に、恒久的な問題を取り扱おうということはどうかというふうな御意見であります。誠に御尤もでありまして、私もそういうことは考えたのでありますけれども、御承知の通り昨年から一年間の統計を取つて見ましても、非常に火災や震災、或いは風水害が相当廣範囲に亙つて起つておる所があります。而もその復旧状況を見ますというと、被害を受けた人の主観的な立場を考えて見ましても、又その資金、資材等の客観的な方面等を見て見ましても、殆んど日本全國同じような経済状態に置かれておるのでありまして、借地借家関係に関する問題というのも戰災地、強制疎開地も又その後燒けたり、或いは風水害に遭つたというような場所の借地借家関係も全く同じような状況の下に置かれておるのであります。從つてこの関係から申しますと、さような恒久的な問題につきましては、別途に一つの特別法を作れば、これに越したことはないと思うのでありますけれども、只今申し上げましたように、殆ど同じ状態の下に置かれており、この法律をそのまま準用するような形で使いましても、少しも不便を感じない。のみならず大変都合が好いことになりますので、便宜ここへ、「又は火災、震災、風水害その他の災害」というものを入れまして、問題の処理を図る方が一番ずつと早いだろうというふうに考えて出したのであります。成るほど罹災都市借地借家臨時処理法は、名前の通り臨時の立法でありますけれども、相当長い期間今後行われるだろうと私は考えます。必ずしも臨時という名前だけによつては法律の性格を律するわけには参りませんので、例えば震災後にできました、御承知の借地借家臨時処理法というようなものも、震災後の借地借家関係を臨時に処理するということを主たる目的として作られたものでありましたけれども、その後二十数年間というもの、臨時という名前の附かない、恒常的な性格を持つ法律が既に何回か廃止されたような期間の二十数年間を、臨時処理法が借地借家関係を律して來ているというような実例もあるわけでありまして、必ずしも私共は臨時の名前が附いているから、恒久的のものは扱わないというような趣旨ではなくして、法律に盛られた内容によりまして、恒久的のものを盛りましても差支を生じないような場合にはさように取り計らいましても、実利主義から申しまして、決して不便はないのではないかというふうに考えた次第でございます。ただこの法律案が來る九月十五日を以て一ケ年の期間が切れるというようなわけで、早くこれを議会を通過させなければならないというような考えを持つたものでありまするからして條文の整理におきまして甚だ不完全なところがございます。例えば第一條の中に一般戰災によらざる災害を加えますというと、何ケ所か一條、二條、十條、十一條、十二條、二十七條等に多少言葉を変えなければならないところがございます。何故かと申しますと、御説の通りこの法律は戰災のみを目的といたしておりますので、この條文の中にこの法律施行の日からとか、或いは昭和二十一年七月一日からとかというふうな言葉が使われております。そういうものはやはり戰爭によらない災害については災害発生の日からとか、或いは災害発生の際とかいうふうに各條について断りを付けるか、或いは第一條に纒めまして、断りをしなければならないのでありますが、それは要するに立法技術の瑣末の点でございまして、大体においてこの法律を戰爭によらないその後の罹災地に適用いたしましても、少しも無理がないのみならず、誠に借地借家人にとりましては都合のよいことに帰着するのでございます。廣い範囲に亙つての資料というふうなお説もございましたが、私の手許にも十数通弁護士会とか或いは借地借家人組合とか借地借家人同盟とか或いは党とかいう所から全國からこれの実施を、かような燒けた所にも適用するようにして貰いたいということを申し送つて参つておる者がございます。私共はさような実情の下に手取早く新らしい法律を作るというのも大変ですから、この際これを利用して戰爭によらない災害地につきましても、借地借家関係をできるだけ早く処理をしたいというような考え方から、この改正案の中に加えた次第でございます。
#34
○松村眞一郎君 私はこの法律が臨時の法律であるということは本質的に臨時のつもりで書いたのじやないかということを私は申し上げておるので、今のお話のごとく本質的に臨時の性質のものでないというなら、初めから臨時法でなくて、新らしい立法をした方がよくはないか、根本的に考えて今の震災のために臨時にやつておいたけれども、自然にだらだらになつてしまつたというのは決してよい例でない。惡例である。惡例でありながらこの惡例をもう一遍やろうというのは私は賛成できない。本質上こういうような罹災の場合には、こういうようにするのが宜いという議論が出れば、もう正面から臨時でなくてやつてしまおうと、こういう議論が出ます。臨時という法律の中に加えて置いて、そうしてそれこそ分らないところに入り込んで、そうして永久的に居坐るというような思想の考え方で、こういうような権利関係に重大なる影響を及ぼすような立法をいたしたくない。こういう私は堂々たる議論をしておるので、正面から行こうじやないか本質上それが必要なら………。併しながらこれはなぜ臨時であるかというと、経済自体を考えておるのでない。今日の経済自体から借地権者が自己の家を建てようと思つても、建てることができないという今の事態によつて行われておる法律でありますから、どうしてもこれは臨時でなければならんと思う。震災の後でいつまでもだらだらになつたものと性質が違う。もう少し本質的に檢討して、地主を保護するとか、借地人を保護するとかいう見地でなくて、およそどういう立場でやるのか。これは土地の利用ということが非常に重点であるのじやないかと思います。土地を遊ばして置いては困る。そんなような観点から來るならば、その観点で立法するということにして、恒久的性質を持つておるものであれば、その点は後日にして、私の結論を申せば、ここに十二條の改正などに一ケ年を二ケ年にするというようなことがありますから、そういうようなことだけにして置いて宜いのじやないか。或いは第七條の六ケ月を一ケ年にする。今度は年限の延長だけの改正に止めて置いて、根本的なものは、もう直ぐに九月になるからというので、早急に我々があわてて研究すべき問題じやないと思う。むしろ私の結論を言えば、年限延長だけでこれを通して行こうじやないか。後は考えようじやないか。こういうような私の結論であります。
#35
○衆議院議員(武藤運十郎君) どうもお叱りを受けたようなわけでありまして、誠に恐縮ですが、これは勿論法律の性格から、申しますれば、臨時的なものでございます。それから一般の災害につきまして規定をしますとするならば、これは恒常、恒久的なものでなければならないこともお説の通りでありますが、ただ私共が早く先程申し上げましたように昨年の五月から今年の五月までの間にも、もう火災だけでも四百戸以上、千戸、二千戸も燒けた所が八ケ所もございますし、四國方面の震災、風水害も、相当の範囲に及んでおります。そういう所の借地借家関係を取り敢ず救済をしたいという建前から、まあこれを利用と申しましては語弊がございますけれども、この臨時の法律を臨時に借用いたしますわけでありまして、お説の通りのこの恒久的なものにつきましては、いずれこれは私は立法者ではございません、政府ではありませんけれども、是非私共努力をしまして、一括した法律を作るように皆様の御協力を得たいと思う次第であります。
 ただ実際問題といたしましては、燒けた場所などで非常に混乱をしておりまして、どういうふうに処理するかということを皆困つておりまして、或例を申し上げますというと、一つの町では自治的に地主と借地借家人と全部が協定をいたしまして、法律はないけれども大体その処理については今あるところの罹災都市借地借家臨時処理法に基いて借地借家関係を処理しようじやないかという申し合せをして、実際の扱いをいたしておるような所もあるような次第でありまして、その処理についてこういう趣旨のものを要求しておりますことは、これは非常に切なるものがあるわけであります。そこで私共はこういう要求に今取り敢ず應じて解決をして上げたいという趣旨なのであります。どうか御了解を願います。
#36
○松村眞一郎君 これは議論になりますけれども、そういうような自治的に協定して行われておる習慣があれば、それを助長してやつたらどうですか実際問題として……。そうしてそれを考えて、固めて立法にする。私はこれは非常によく地主のことも考え、それから借地人のことを考え、経済事情の差迫つたことも考え、いろいろのことを考慮して細心にやらなければならんこれは社会立法だと私は思います。そういう意味において私はこの趣旨についてはもう少し檢討したいということを考えておりますから、咄嗟に九月が迫つておるからというので、一挙してそういう大問題を一緒に片付けようというようなことには、私自身がよく事情が判りませんから、判らないという意味において賛成ができない。これだけの話であつて惡いという結論はできません。なにかこれはやらなければならんだろうという氣持はありますけれども、よくその事情が判りませんから、そういう意味において、この大切な影響を及ぼす問題をちよつと簡單にやろうというのは、私には用意がないということだけを申し上げて置いて、急いでやろうということなら、私は初めから結論を申し上げますと、期限の延長だけ賛成いたしますから、その他のものは分らないという意味において賛成ができないという訳です。
#37
○松井道夫君 只今松村さんのお説に対して武藤さんの御答弁がありまして、それで申し上げるわけでありますが、只今いろいろ整理を要する條文があるというお話であつて、第二條に「この法律施行の日から一箇年」、これを二ケ年に改めるということで、火災震災地の場合は矢張り二年内にしなければならんことになります。要するに只今の御答弁では、整理を要するものの整理がまだ行き届かんようなお話であつたのであります。外にもあるようなお話なんで、若しも只今の松村さんの御意見に承服できるということならばなんですが、強いてこれを保存して置きたい、かような御意思でありますならば急速に整理して頂きたいと思います。
#38
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこの程度で質疑を打ち切りまして、他他これに対する質疑を続行したいと思います。尚明日から二十六日まで、民法並びに家事審判法及び農地相続に対する法案について御審議を煩わしたいと思います。二十六日は委員会をしたいと思いましたけれども、二十六日は本会議があるそうですから、又ごてごていたしますから、二十七日から午前午後を通して、或いは夜分になるかも知れませんが一つ是非お務め願いたいと思います。
 尚二十七日から御承知の通り、ここで採決して行かなければならん法案が四、五件ありまして、委員会の出席の定員を要する次第ですから、努めて御出席を煩わしたいと思います。若しそういたしませんと採決が不可能に終りますから、委員会の怠慢ということになりますので、どうか是非御出席は確実にお願いしたいと思います。では本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           奧 主一郎君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  衆議院議員
           武藤運十郎君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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