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1947/08/29 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第20号
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1947/08/29 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第20号

#1
第001回国会 司法委員会 第20号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案(衆議院送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○裁判所予備金に関する法律案(内閣
 提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○高等裁判所の運用状況調査に関する
 件
○連合委員会開催に関する件
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月二十九日(金曜日)
   午前十一時三十七分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判官彈劾法案
○民法の一部を改正する法律案
○高等裁判所運用状況調査に関する件
○連合委員会開催に関する件
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
 を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開きます。
 本日は衆議院回付に係るところの裁判官彈劾法案を上程いたします。先ず提案者の説明をお伺いいたします。
#3
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 只今議題になりました裁判官彈劾法案について、その提案の趣旨について申上げます。
 裁判官の地位は、司法権独立の原則に基いて憲法によつて保障されており、明治憲法もその第五十八條におきまして「裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ」と規定しておりました。日本國憲法も七十八條において「裁判官は裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。」と規定し、同じく第六十四條において「國会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。」と規定して、裁判官の罷免が、原則として、國会に設けられた彈劾裁判所の裁判によつてのみ行われるべきことを定めております。この彈劾の制度は日本國憲法により新らたに認められた制度でありまするが、國会に設けられた彈劾裁判所にその權限を属させておる点において、極めて注目すべきものがあります。即ち從來の判事懲戒法によれば、免官の処分は判事みずから組織する懲戒裁判所によつて行う同僚裁判であつたのでありましたが、本法制定の曉においては、裁判官と雖も廣く國民監視の下に置かれることになり、國民の代表たる両院議員の中から選ばれた彈劾裁判所の裁判員によつて罷免されることになるため、司法権の正しい運営が期待され、いわゆる主権在民の大原則と、公務員の罷免を國民國有の権利であるとする精神に基く新らしい民主主義的制度が確立されるものと考えられるのであります。この憲法の規定に基きまする裁判官に対する彈劾の制度を憲法附属法の重要なる一つとして定めようとするのが本案提出の趣旨であります。
 尚本法案起草に当つて、裁判官彈劾制度に関する考え方の基調といたしました点は、公務員を罷免するは、國民固有の権利であるとする趣旨と、裁判官の地位の安定とをいかに調和するかの点でありました。日本國憲法によれば、すべて裁判官はその良心に從い、独立してその職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束されるものとされておるのでありまして、裁判官が公正に良心に從つて裁判するためには、一應その地位の安定を図らなければならないことも亦当然であります。その故に憲法第七十八條は、「裁判により心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない」ものとしておるのでありまして、この彈劾の制度をいかに規定するかは、司法権の独立にも関係する重要な問題であります。從つて單に彈劾のための彈劾に堕し、裁判官を徒らに不安定な地位に置くことは裁判官の公正な裁判を期待する所以でもなく、又決して憲法の認めた彈劾制度の本旨でもないと思うのであります。かかるが故、この点に特に意を用い、司法權独立の原則に從つて裁判官の地位を尊重しつつ、公務員を罷免するは國民固有の権利であるとする主權在民の憲法の原則とをよく調和せしめ、以て裁判官彈劾制度の適正妥当なる運用を期そうとした次第であります。
 次に本案の要旨を御説明申上げます。
 第一に、彈劾により裁判官を罷免する事由としては、(一)職務上の義務に著しく違反し又は職務を甚だしく怠つたとき、(二)その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を甚だしく失うべき非行があつたとき、の二つを挙げております。
 第二に、彈劾裁判所及び訴追委員会は、いずれも國会に設けられるものでありますが、國会とは別個に独立して職務を行うものである点から、國会の会期と関係なく、閉会中もその職務を行うことができるものとしております。
 第三に、訴追委員会の組織は、國会法に定められているので、その員数を二十人、その予備員の員数を十人といたしました外、訴追委員及びその予備員の選挙の時期、補欠、任期、辞職等に関する規定及び委員長その他の職員についての規定を置いております。
 第四に、訴追委員会は独立してその職権を行うものとし、その職責の重大性に鑑み訴追委員会は、十五人を以て定足数とし、罷免の訴追の議決には出席訴追委員の三分の二以上の多数の意見によるべきものとしております。
 第五に、訴追の手続については、訴追委員会は彈劾による罷免の事由をみずから調査し、又は官公署にその調査を嘱託することができるものとし、その調査に関しては証人の出頭等を要求することができるものとしております。
 第六に、罷免の事由ある場合においても、特に情状によつて訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶予することができるものとして、時宜に應じて適当な処置を執り得る余地を認め、而して訴追の猶予は罷免の訴追と同樣、出席訴追委員の三分の二以上の多数の意見によるものとしているのであります。
 第七に、何人でも、訴追委員会に対して罷免の訴追をすべきことを求めることができることとして、彈劾が眞に國民のために認められた制度であるということを明らかにしております。
 第八に、彈劾裁判所については、各議院において、その議員の中から選挙された同数の裁判員でこれを組織することは、國会法で定められておりますので、本案では、訴追委員会におけると同樣、裁判員及びその予備員の員数、選挙の時期、補欠、任期、辞職等に関する規定及びその他の職員に関する規定を設けているのでありますが、特に裁判員の員数は、衆議院議員及び参議院議員たる裁判員各各七人合計十四人とし、審理及び裁判を行うには、各議院の議員たる裁判員それぞれ五人以上の出席を要するものとしております。
 第九に、審理及び裁判については、その公正な運用を期待して、裁判員は独立して職權を行うものとすると共に、彈劾裁判所の対審及び裁判の宣告は、すべて公開の法廷でこれを行うものとしておるのであります。
 第十に、裁判員に対する除斥、忌避及び回避、法廷における審理証人等については刑事訴訟法の規定を準用することとしているのでありますが、この法律に特別の規定のない限りは、審理及び裁判の手続については、彈劾裁判所がみずから必要な規則を定め得ることとしております。
 第十一に、罷免の裁判については、特にこの手続を愼重ならしめるため若干の規定を設け、殊に罷免の裁判をするには、特に審理に関與した裁判員の三分の二以上の多数の意見によるべきものとしておるのであります。
 第十二に、罷免によつて、裁判官又は檢察官となる資格を失つた者は、特定の場合には彈劾裁判所の裁判によりその資格を回復することを得させることを規定しております。
 第十三に、訴追された裁判官が辞職して罷免の裁判を免れんとすることを防ぐ意味において、罷免の訴追を受けた裁判官は、本人が免官を申出た場合でも、彈劾裁判所の終局裁判があるまでは免官し得ないものといたしました外、訴追された裁判官の職務の停止の彈劾と刑事訴訟との関係についての必要な規定を設けました。
 最後に、虚僞の申告者に対する罰則、及び正当の理由なくして証人として召喚に應じない者に対する過料の制裁を規定しておるのであります。
 以上が簡單でありまするが、本案を提案いたしました趣旨であります。衆議院におきましては、本案がたまたま彈劾裁判所に関する事項が議会運営委員会の所管事項になつておる点に鑑みまして、又國民の手によつて裁判官彈劾の制度を早急に法制化することは議員自身の任務であるという考えよりいたしまして、法案が政府提出を待つべき性質のものでない、こういうような考えからいたしまして、彈劾裁判所に関する調査と裁判官彈劾法案の起草に議会運営委員会が当ることになりまして、去る七月九日彈劾裁判所に対する調査について議長の承認を得て、爾來五十日間、約十七回に亙りまして会議を開き、小委員会を設けて原案の起草に当り、又は司法委員会との合同審査も四回程行い、その間に各方面の意見を斟酌いたしまして、更には諸外國のいわゆるインピーチネントの研究も比較檢討いたしまして、意見を取纒め、去る二十三日本会議におきまして、委員会提出案といたしまして満場一致可決をいたしまして、こちらの方に回付申上げた次第であります。
 何卒御審議の上、成るべく早く可決あらんことを念願いたしまして、説明に代える次第であります。
 各條については、政府委員より説明を申上げます。
#4
○松村眞一郎君 これは大変に重大な法案であります。今御説明を承りますと、いろいろ各方面の資料に基いての御調査ができたようでありますが、法案以外にいろいろの資料を頂きたいと思います。本院においても相当に愼重に研究しなければならんと思いますから、ただ法案だけ見て決定するというふうなことは、頗る我々としては自分で力の不足を感じますが、参考資料を御送付願いたいと思います。
#5
○委員長(伊藤修君) それでは提案者に資料の請求をいたして置きます。
#6
○小川友三君 裁判官彈劾法案ですが、これは第二章第五條は訴追委員が全部それに……
#7
○委員長(伊藤修君) 今各條の説明を簡單にお願いして、御質疑があるならそれからにして頂きます。それでは説明員から各條について簡單な御説明を願いたいと思います。
#8
○衆議院参事(三浦義男君) 私衆議院の法制部長の三浦でございますが、説明員としてあらましを便宜御説明申上げます。
 全文、第四章に分かれておりまして、総則におきましては、その原則を決めることにいたしたのであります。
 総則の中で特に重要なる点は第二條であります、第二條は、彈劾による罷免の事由を規定いたしておるのでありまして、二号に分けて考えてあるのでありまするが、これは裁判官としての職務上の義務に著しく違反する場合、又はその職務を甚だしく怠つた場合、それから更に職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき、かようなことに規定をいたしたのであります。この趣旨は、裁判官としての職務上の義務という点が罷免事由として取上げらるべき問題であるということが一つと、もう一つは、司法権の尊嚴というような見地から罷免事由を考うべきではないか、かような点から考慮いたしておるのでありまして、この二号に要約せられた次第であります。
 次に第四條でありますが、この彈劾裁判所及び訴追委員会は、國会の閉会中でもその職権を行うことができるということにいたしまして、その事態が閉会中起つた場合におきましても、國民彈劾の趣旨に則りまして、常にその職権を行使し得るという原則を規定いたしましたわけであります。
 次に、第二章の訴追に関する事項に関しましては、第五條に規定いたしてあります通り、訴追委員の員数を二十人といたしておるのであります。尚予備員を十人と定めてあるのでありまするが、訴追委員及び予備員は衆議院議員を以て構成するということになつておるのでありまするが、この点は國会法の中におきまして、さように定められてありまするので、この規定に從いましてこの訴追の規定も規律いたしましたわけであります。その選挙は、衆議院総選挙の後に初めて召集される國会の会期の初めにこれを行うという原則を決めたのでありまするが、特にこの第一回國会においては、その会期中に行うということにいたしまして、早く訴追委員が、この第一回國会において、この法律が御可決になりました場合におきましては、発動し得るの途を開いたわけであります。
 次に第六條、第七條等は、訴追委員会の委員長、書記等の構成の問題、その権限の問題を規定してあるのであります。
 尚、第八條の職権の独立の問題でありまするが、これは訴追委員になりました國会議員の方は、國民の代表として、國民の基本的人権に基きまして、その代表の名においてこの訴追を行う意味におきまして、独立してその職権を行う、國会のいろいろの拘束に囚われないということにいたしてある次第であります。
 第九條は召集であります。
 第十條の議事におきましては、二十人の訴追委員の中十五人以上の出席を必要とすることにいたしてあるのでありまして、罷免の訴追をいたします場合、又は罷免の訴追の猶予をいたします場合におきましては、出席訴追委員の三分の二以上の多数ということに、第十條第二項の但書に規定してあるのでございます。それ以外の一般の議事につきましては、過半数ということにいたしてあるのであります。尚、訴追委員会の議事は機微に亙る点がありますので、この点は公開しないということが、第十條の三項に規定してある次第であります。
 第十一條は、訴追委員会の職権行使上必要な調査等に関する規定であります。
 次に第十二條でありまするが、第十二條は、罷免の訴追は、彈劾による罷免の事由があつた後三年を経過したときは、これをすることができないということにいたしまして、一應三年間は、そういう事由があつた場合におきましては、遡つてもやり得るし、尚又今後三年の間はそういう事態を訴追し得る途を開いてあるわけであります。但し刑事訴追がありましたような場合におきましては、その事件の確定後一年ということにいたしてある次第であります。
 第十三條の訴追の猶予の問題は、訴追委員会は、情状により訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶予することができるということにいたしまして、第二條におきまして罷免事由が規定されておるのでありますが、これに該当する場合におきましても、尚情状によつて、必要がないときは、訴追委員会の権限において猶予をなし得るという途を開きまして、丁度現在の起訴猶予等の規定がありますのと、大体において照應いたします規定であるのでありますが、これがいろいろの点から考慮いたしまして、実情に副う所以ではなかろうかと考えて規定せられたのであります。
 次に第十四條は、訴追状の提出の問題であります。
 次に第十五條でありますが、第十五條は、先程衆議院の運営委員長からもお話がありました通り、憲法に基きまするところの國民彈劾は、國民の基本的権利である点に鑑みまして、何人も裁判官につきまして、彈劾による罷免事由があると考えられるときは、訴追委員会に対して罷免の訴追を求め得るということにいたしまして、廣く國民の声を聞き、そうして訴追委員会の職権の行使をして遺憾なからしめんとする趣旨に基いておる次第であります。
 次に第三章の裁判に関する規定でありまするが、第十六條におきまして、裁判員は衆議院議員及び参議院議員各七人といたしまして、全体が十四人であります。その予備員が又各四人でありまして、全体で八人ということにいたしてある次第であります。それから裁判員及びその予備員の選挙も、今回におきましては、第一回國会の会期中にこれを行うということにいたしてあるのでありまして、この点は訴追委員について申上げましたと同樣の趣旨であります。
 次に第十七條は、裁判長の職務に関する規定でありますし、第十八條は、書記長及び書記に関する規定でありまして、以上は裁判所の構成に関する組織権限の規定でございます。
 次に第十九條は、職権の独立の問題であります。この点は特に裁判員については強く要求せられる点であるのでありまするが、その趣旨は、訴追委員について申上げましたと大体同樣でございます。
 次に第二十條の規定でありまするが、これは十四人の裁判員があるのでありますが、それぞれ五人以上、つまり十人出席者がありますれば、審理、裁判をすることができるということにしてある次第であります。
 二十一條、二十二條は裁判に関する「訴追状の送達」、「弁護人の選任」等裁判の進行上の手続であります。
 更に第二十三條「口頭弁論」についても同樣でございます。
 それから第二十四條の「訴追委員の立会」でありまするが、これは彈劾裁判所において裁判が行われます場合におきましては、その法廷における審理及び裁判の宣告に訴追委員が立ち会うことといたしまして、同時に又訴追の事由を述べることにしてある次第であります。國会公益の代表の見地に立ちまして訴追委員がこれに立ち会うということにいたした次第であります。
 次に第二十五條の「開廷の場所」でありまするが、これは彈劾裁判所で開くということは当然のことでありまするが、第二項において特別の規定をいたしてある次第であります。
 第二十六條は「審判の公開」でありますが、「彈劾裁判所の対審及び裁判の宣告は、公開の法廷でこれを行う」ということになつておる次第であります。この点に関しましては憲法第七十八條におきまして先程委員長から説明がありましたように、公の彈劾によらなければ裁判官は罷免されないという規定があるのでありまして、尚司法権に関しましては憲法第八十二條に公開の法廷でこれを行うということが規定いたしてある次第であります。これらの憲法の規定と照應いたしまして、尚彈劾裁判所の公開の問題を考えられました結果、常に彈劾裁判所におきましては公開をしてこれを行うということにいたされたのであります。この点に関しましては、例えば公秩良俗に反する場合等においては、公開しないようなことを認めたらいいではないかという意見もあつたのでありまするが、憲法七十八條の「公の彈劾」という意味は非常に強い意味であるという関係方面等の意見をも参酌いたしましてかようになつた次第であります。
 第二十七條、第二十八條等は裁判の進行上、「法廷の秩序維持」、「訊問」に関する問題であります。「訊問」に関する場合におきましては刑事訴訟に関する法令の規定を準用することにいたしてある次第であります。召喚、訊問等についてでございます。
 それから第二十九條は証拠の問題でありまするが、この証拠を調べまする場合におきましては、「彈劾裁判所は申立又は職権」によりまして独立にその証拠を調べることもできまするけれども、地方裁判所がそれらの証拠の取調べについても便宜な点が多々ありまするので、それらに嘱託するの途を開いてある次第であります。尚証拠等の調べに関しまして強制的な処置をすることは彈劾裁判所としては適当でなかろうと考えられまして、強制的な処分をする場合におきましては、これは裁判所に依頼することにしてある次第であります。
 次に第三十條の規定でありまするが、これは「裁判員、書記長及び書記の除斥、忌避及び回避」に関する事項につきまして、刑事訴訟の規定を準用いたしますと同時に、「法廷における審理、調書の作成並びに手続の費用」等につきまして、規定をいたしますることは、相当條文が煩瑣になります関係もありますので、刑事訴訟に関する法令の規定を準用いたすことにいたした次第であります。
 次に第三十一條は「裁判の評議」に関する規定でありまするが、罷免の裁判をいたしまする際には、「審理に関與した裁判員の三分の二以上の多数の意見による。」ということが第三十一條第二項の但書に規定いたしてあるのであります。「審理に関與した裁判員」と申しますのは、審理の一貫性を重んずることにいたした次第でありまして、途中で仮に裁判員等が議会の解散その他の事由によりまして欠けたりいたしました場合におきまして、予備員からの補充をいたしました場合と、或いはその他の場合において関與者が変りました場合に、特に愼重を要すると考えられまして、その点は審理に加入した「裁判員の三分の二以上の多数」と決めました次第でありまして、これは刑事訴訟におきましても、同樣の原則に則つている次第であります。
 第三十二條は「一事不再理」の事項を規定してありますが、これは一般の裁判においても同樣でございます。
 第三十三條は裁判の理由を附すことを規定しておりますし、第三十四條は「裁判書」の問題、第三十五條は「裁判書の送達」、第三十六條は「裁判の公示」の問題でありまして、裁判の行われました結果に関するいろいろの手続上の重要な問題を規定してある次第であります。
 第三十七條におきまして、「罷免の裁判の效果」を規定してあるのでありまするが、「裁判官は罷免の裁判の宣告により罷免される」ことにいたしてあるのであります。從いまして、この規定によりまして、裁判官は宣告によつて罷免されることになりますると、裁判官として再び就き得ないことになる次第でありまするが、その場合におきまして、恩給の問題、或いは他の文官等への就職の問題等をどうするか、或いは又弁護士等になり得るかどうかという問題等もあり得ると思いまするが、恩給の問題に関しましては、從來判事の懲戒法におきましては規定してあつたのでありまするが、それが廃止になりました関係上、この点は別途に恩給法に規定を設けまして、大体同樣の趣旨を規定することにいたしてある次第であります。尚他の公務員等への就職の問題は、新らしく制定を見ます公務員法の規定に讓ることにいたしてある次第であります。弁護士等の問題につきましては、これは弁護士法等の改正の場合において、更に愼重考究して頂くことといたしてありまして、特にこれらの点は、この彈劾法の中に、規定を設けなかつた次第でございます。
 第三十八條は「資格回復の裁判」の規定でございまするが、これは第一号と第二号に規定してありまするが、一旦罷免の裁判の宣告によつて罷免いたしました者につきまして、「罷免の裁判の宣告の日から五年を経過」いたしまして、相当とする事由がある場合におきましては、その情状を汲み、彈劾裁判所が適当と認めた場合において、資格回復の途を開くことといたしましたのと、第二号に規定してありますように、罷免事由ありとして罷免の裁判をいたしましたが、その後いろいろ新らしい証拠を発見いたしましたりいたしまして、罷免の事由がないことが明瞭になりましたような場合と、相当の事由がありまするときにおきまして、資格回復の途を開くことにいたされた次第でございます。
 次に第三十九條でありまするが、三十九條は彈劾裁判にかかりました場合におきまして、いつでも罷免の訴追を受けました裁判官の職務を停止する途を開きまして、裁判に係りました裁判官が、裁判をすることが適当でない場合にこの規定を発動する途を開いた次第であります。
 第四十條は刑事訴訟との関係を規定いたしたのであります。彈劾裁判所は刑事裁判とは独立に行われる建前を採つておるのでありまするが、必要に應じましては、同一の事由について刑事訴訟に繋属いたしておりまする場合は手続を中止し得るというふうにいたしたのであります。例えば裁判官の涜職の行爲がありましたような場合等におきまして、かような問題も起り得るかと考えております。
 第四十一條の規定は、彈劾裁判、それから訴追ということが行われます場合におきまして、本人がその事情を見越しまして、或いは辞職を願い出るというふうなことがありまして、それが受理せられるようなことになりますれば、不当にこの裁判を免れるというような結果を招來しないとも限らないのでありますので、それらの場合におきましては、先程來申されましたように、彈劾裁判所の設置せられましたところの趣旨に鑑みまして、彈劾裁判所においてこの審理の結末がつきますまでは、免官を留保するというふうにいたしました次第であります。
 第四十二條は、規則の制定権を規定いたしたのでありまするが、大体刑事訴訟法の規定を準用いたしまして、それぞれ訴訟の進行等に関しまする事項は、それに準じて行われることになる次第でありまするが、更に審理及び裁判の手続等については、細かい規定、或いはその他刑事訴訟法等を準用いたしました場合におきまして、尚十分でないような場合がありました場合におきまして、規則の制定をいたしまして、それによつて審理、裁判の手続に支障なからしめた次第であります。
 第四章は罰則に関する條項でございます。四十三條の虚僞申告の罪は、御承知の通り刑法におけるところの誣告罪の規定に相應する次第でありまするが、刑法誣告罪の規定におきましては、彈劾により罷免の裁判を受けさせる目的のために虚僞の申告をしたというような場合には誣告罪が適用されないようになつておりまするので、その点を補います意味におきまして四十三條の規定の必要がある次第であります。
 次に第四十四條でありまするが、これは証人等に対しまするところの過料の制裁であるのでありまして、訴追委員会及び彈劾裁判所が、それぞれの権限を遺憾なく行使いたしまする上におきまして、証人等から提出せられますところの証拠に関しまして、十分にこれが取調べ等ができます意味におきまして、過料の制裁を加えることにいたしまして、その結果の遺憾なきを期しました次第であります。
 大体概要だけを申上げました次第でありまするが、以上を以て私の説明を終ります。
#9
○委員長(伊藤修君) それではこの程度において、質疑は他日に讓りたいと思います。
 尚「罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案」が午後二時に衆議院の本会議にかかることになつておりまするから、二時半頃に終了し、三時頃までに、こちらに参ることと存じますが、この法案は、御承知の通り九月十五日までに成立せしめないと、現行法律が効力を失うような状態にあるものですから、これを緊急に可決しなければならん事情にある次第であります。從つて委員会といたしましても、採決の段に入る次第ですから、定員を欠かないように一つ午後二時半に御出席を願いたいと思います。それではこの程度で休憩いたしまして、午後二時半に再開いたしたいと存じます。
   午後零時十八分休憩
  ―――――――――――――
   午後二時五十二分開会
#10
○委員長(伊藤修君) 午前に引続きまして会議を開きます。「民法の一部を改正する法律案」を議題に供します。政府委員の御説明を継続いたします。
#11
○政府委員(奧野健一君) それではこの前に引続きまして、今日は第三章親子、第一節実子というところから、即ち七百七十二條から御説明をします。
 この七百七十二條は、現行法の八百二十條と全然同一であります。
 次の七百七十三條は、これも現行法の八百二十一條と全然同一でありまして、ただ條文が整理されたに過ぎないのであります。
 次の七百七十四條は現在の八百二十二條と同樣であります。
 次の七百七十五條は、現在の八百二十三條に該当するのでありますが、これは現行法の八百二十三條によりますと、否認の訴は、「子又は其法定代理人ニ対スル訴ニ依リテ之ヲ行フ但夫カ子ノ法定代理人ナルトキハ裁判所ハ特別代理人を選任スル」ということになつておりますが、今度の七百七十五條によりますと、これは今までは親権を行うのは父である、父がやらない場合において、母が親権を行うということになるのであります。今度の法律は、やはり親権について父母に差等を設けることは、両性の平等から適当ではないと考えまして、親権は父母共同行使ということになりますので、その関係で、「子又は親権を行う母に対する訴によつてこれを行う。」ということになりました。更に「親権を行う母がないときは……特別代理人を選任しなければならない。」、この場合は家事審判所が選任をするということに改めましたのは、七百七十五條で現行法の八百二十三條を改めたのでありまして、大体趣旨においては同じようなことであります。
 次の七百七十六條は現在の八百二十四條そのままであります。
 次の七百七十七條、これも現行法の八百二十五條そのままであります。
 次に七百七十八條、これも現行法の八百二十六條に該当いたしますが、多少変りました。即ち現行法の八百二十六條では「夫カ未成年者ナルトキハ」云々ということになつておりますが、これは未成年の夫婦でも婚姻すれば成年になりますので、こういう関係の規定は不必要になる、この現行法も八百二十六條の第二項のみが必要になりますので、第一項の方は婚姻後も未成年であるということを前提とする現行法の規定は、婚姻によつてすべて成年になるということによつて不必要になつたわけであります。それでまあ現行法の八百二十六條の第一項が削られたということになるわけであります。
 次に七百七十九條、ここでちよつと御注意申したいのでありますが、現行法で「第二款嫡定ニ非サル子」というような見出しがあり、それから「庶子」という字が現在の八百二十七條の第二項にあるのでありますが、この庶子という言葉は余り適当でないので、即ち「庶子」という文字は削除いたしたのであります。すでに「私生子」という字はなくなつて、「庶子」という言葉だけが残つておりましたが、子の名誉のために庶子という言葉も今回無くなしたのであります。ただ「嫡出の子」と「嫡出でない子」という二つだけあるのでありますが、嫡出でない子というのも実は余り賛成しないのでありますが、それは止むを得ないと考えまして、「嫡出でない子」というのを使いますが、「庶子」、「私生子」というのは廃めたわけであります。そこで七百七十九條は現在の八百二十七條の第一項に該当するわけであります。第二項は今申しましたように「庶子」という言葉をなくしたわけであります。
 次に七百八十條は現在の八百二十八條そのままであります。
 次に七百八十一條、これは現行法の八百二十九條でただ「戸籍吏」といつているのを、「戸籍法の定めるところにより」というふうに変更いたしただけであります。すべて戸籍吏という字はすでにないのでありまして、強いて書けば「市町村長に」というふうに直さなければなりませんのでありますが、これも必ずしも市町村長という言葉だけでは足りないので、結局はやはり「戸籍法の定めるところにより」というふうにやつた方が、すべての場合を含むと考えまして、そういうふうにすべて戸籍吏とあるのを、「戸籍法の定めるところにより」云々というふうに修正いたしております。
 次に七百八十二條でありますが、これは現行法の八百三十條そのままであります。
 次の七百八十三條、これは現行法の八百三十一條そのままであります。
 次の七百八十四條、これは現行法の八百三十二條そのままであります。
 次の七百八十五條も、現行法の八百三十三條そのままであります。
 次の七百八十六條は、現行法の八百三十四條そのままであります。
 次の七百八十七條、これは現行法の八百三十五條そのままであります。
 次の七百八十八條、これは子の監護者の指定、或いは強制認知の場合等においての子供を認知した場合に、母親が監護すべきか、父親が監護すべきかというようなことについて問題が起る、その場合の規定、即ち七百六十六條を、父が認知する場合にこれを準用するということにいたしたのであります。七百六十六條と申しますのは、父母が離婚した場合に、その子供の監護を誰が見るか、父が子供を認知した場合に父又は母いずれに監護せしむべきかという問題について、新らしく七百八十八條を設けたわけであります。
 七百八十九條は現行法の八百三十六條に大体該当いたしますが、庶子というふうな言葉を使わなかつたわけでありまして、庶子という言葉をなくなしただけであります。
 次の七百九十條は新らしい規定でありまして、從來は嫡出の子供は父の家に入り、父の氏を称すということになつておりましたのを、家という関係がなくなりましたので、「嫡出である子は、父母の氏を称する。」父母と同一の氏を称する、即ち婚姻しておる間の父母と同一の氏を称する、その氏を子供が称するということであります。ただ子供の出生前に父母が離婚すれば、父母の氏が両方変りますから、その場合は、離婚の際における父母の氏、即ち離婚前に父母が称しておつた氏を称するということにいたしたわけであります。婚姻から生れた子供でない、嫡出でない子は、母の氏を原則として称します。尤もその次の七百九十一條という新らしい條文を設けまして、すべての場合において子が父又は母と氏を異にする場合においては、子は家事審判所の許可を得て、その父又は母の氏を称することができるということにいたしたのであります。例えば父母が離婚しておるような場合に、子供がその違つた方の父母の氏に変更することができる、或いは又子供を連れて、つまり連れ子をして嫁に行つた者が離婚になつて元の氏の復したという場合に、その子供が家事審判所の許可を得て母の氏に変えることもできる、それから連れ子のような場合に、やはり家事審判所の許可を得て、女が男の氏を結婚の結果称する場合には、家事審判所の許可を得て自分と同じ氏に変更せしめることができる。而も子供が十五歳未満である場合には、その法定代理人、例えば只今の例で、母親がこれに代つて、家事審判所の許可を得て氏の変更をすることができる、この規定によつて連れ子をすることができるということにいたしたのであります。それから私生子を認知したような場合に、認知された子供が今度は父親の氏を称したいと思う場合には、この規定によつて家事審判所の許可を得て、父親の氏を称することができるわけであります。ただ家事審判所の許可を得ることにいたしましたのは、一應、子の眞意を確かめたり、或いは場合によつては、私生子を認知した父親に妻があつたような場合に、そういう自分の配隅者の意思を無視して、やはり自分と同じ氏を名乘らせしむることも適当ではないので、そういう場合にいろいろそういつたような事情を斟酌した上で、家事審判所が許可を與えるということができるゆとりのために、家事審判所の許可を得て氏を変更せしむることができる、而して殊に子供が十五歳未満であるというようなときに、その法定代理人である母親が連れ子をして子供に氏の変更をせしめたというような場合、子供が大きくなつて子供の母親の氏を称したいというような場合には、やはりそういう自由を認めて置くのが適当ではないかというので、末項で、「前二項の規定によつて氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に從前の氏に復する」自由を認めているのであります。
 これが「親子」の「実子」の関係でありますが、次は「養子」の関係であります。この養子制度を一体認めるかどうかというようなことは、相当問題があろうかと思います。殊に婿養子とか遺言養子というようなことは、專ら家の継続ということのために認められた制度であるので、養子制度を認めるべきかどうか、なかなか議論のある点と思いましたが、從來と違つて、むしろ養子ということは、子の保護養育というふうな方面から、やはり養子制度というようなものは残していいのではないか、各國も大体養子制度というものがあるようであります。そこでまあ子供のない者に親の愛情を味わうことができること、並びに孤兒或いはそういつたようなものの貧困なる子供の養育保護というような方面から見ましても、養子制度というのは、必ずしも家の継続としての養子でなくても、やはりこれを認めていいという考えから、養子制度を残したわけであります。
 先ず七百九十二條でありますが、これは現行法の八百三十七條そのままであります。
 次の七百九十三條は現行法の八百三十八條そのままであります。
 次に現行法に八百三十九條というのがありまして、法定の推定家督相続人たる男子が法定家督相続人としてある場合には男子を養子にできないという規定がありますが、これは家督相続ということがなくなりまして、法定の推定家督相続人というような観念もなくなりましたので、子供のある者が、殊に男の子供があつても更に養子ができる、而も男の養子もできるということにいたしてこの規定を止めたわけであります。又婿養子ということも止めました。これは養子にして更に自分の娘と婚姻せしめればいいわけでありますから、特に婿養子という制度を設ける必要もありませんので、婿養子というものを止めたわけであります。
 次に七百九十四條でありますが、これは現行法の八百四十條を変更いたしたのであります。これは現行法では後見人は被後見人を養子とすることができないことになつておりますが、これは家事審判所の許可を得ればできる、家事審判所の許可を得なければならないということにいたしたのであります。全然後見人が被後見人を養子とできないことにいたしておることは非常に不便でありまして、現行法では一應そうなつております。禁止されておりますが、現行法においては遺言養子の方法によつて被後見人を養子とすることができるのでありますが、遺言養子という制度をなくなすことにいたしました。これは家督相続を廃止する結果当然そういたしたのであります。そうなると全然後見人は被後見人を養子とする途がなくなつてしもうので、それではいろいろ不都合な場合もあろうかと思いまして、家事審判所の許可を得ればできるという途を開いたわけであります。
 次の七百九十五條というのは八百四十一條に大体該当いたすのでありますが、八百四十一條は現行法では「配偶者アル者ハ其配偶者ト共ニスルニ非サレハ縁組ヲ爲スコトヲ得ス夫婦ノ一方カ他ノ一方ノ子ヲ養子ト爲スニハ他ノ一方ノ同意ヲ得ルヲ以テ足ル」という事項を但書の中に簡單に致したに過ぎないものであります。
 次の七百九十六條と申しますのは、現行法の八百四十二條に大体該当するのであります。これは現行法では條文が「前條第一項」ということになつておりますが、第一項だけになつて來ましたので、そこを整理したに過ぎない、現行法通りであります。
 次に七百九十七條でありますが、これは大体現行法の八百四十三條そのままでありますが、第二項が継父母、嫡母という関係がなくなりましたので、第二項を止めましたのと、それから「其家ニアル父母」という文字のうち「其家ニ在ル」というのを削つたのであります。それに代えて「法定代理人」ということにいたしたのであります。
 次の七百九十八條というのは新らしい條文でありまして、末成年者を養子にする場合に、家事審判所の許可を受けなければならないことにいたしたのであります。これは從來末成年者を養子にして、いろいろそれを食い物にした、或いは藝妓稼業等のために養子を利用するというようなことがありましたので、末成年者を養子とするのは家事審判所の許可を得るということにいたしたのであります。
 尚その後の八百四十五條及び八百四十六條という規定は削除いたしたのであります。これは養子について父母の同意を必要とするという規定でありますが、やはりこれは婚姻と同じように、そういう養子縁組というふうな身分上の行爲について、他人の意思が、たとい父母であろうとも入ることは適当ではないという考えから、父母の同意を必要とする規定を削除いたしたのであります。つまりこれは現行法の八百四十四條、八百四十五條、八百四十六條に値いする規定でありますが、それを削除いたしたわけであります。
 ここで一言お断りして置きたいと思いますことは、婚姻については、末成年者の婚姻の場合だけ父母の同意ということを特に書きましたのであります。養子縁組の場合には、末成年者を養子縁組とするには家事審判所の許可を取るまでは、父母の意思の同意ということは書かなかつたのでありますが、これは家事審判所は勿論許可を與える場合に、父母の本心を確めますので、これは父母の同意ということは、おのずからそこに含まれているということと、父母の同意だけで子供を養子にやれるということにしては、まあ先程申上げましたような、人身賣買のようなことが行われることを虞れて、結局家事審判所の許暁ということにすれば、その中におのずから父母の意思も加わつて來るという考えであります。
 次の七百九十九條というのは、現行法の八百四十七條の條文の整理をいたしたわけであります。
 次に八百條、これは現行法の八百四十九條を大体條文の整理をいたしたに過ぎません。
 次の八百一條は現行法の八百五十條でありますが、この前申しましたように、「公使」の外に「大使」というのを入けただけであります。
 次に「縁組の無效及び取消」、これも大体において現行法そのままでありまして、八百二條と申しますのは、八百五十一條に該当します。
 それから八百三條は、現行法の八百五十二條に大体において該当するのでありますが、ただ條文が変つて参りましたので、條文が整理されているに過ぎないのであります。
 次の八百四條と申しますのは現行法の八百五十三條そのままであります。
 次の八百五條は、現行法の八百五十四條、これは條文の整理と、それから戸主に取消権を認めているのを、「戸主」というのを除いたのが八百五條であつて、現行法の八百五十四條に該当する規定であります。
 次の八百六條は、現行法の八百五十五條そのままであります。
 次に現行法では八百五十六條という規定がありますが、これが縁組についての同意ということがなくなりましたので削除いたしたのであります。ただそれに代えて八百七條という規定を設けまして、先程の八百九十八條の家事審判所の許可を受けない養子縁組の取消を認めたのが、八百七條であります。
 次に八百八條と申しますのは八百五十九條に該当いたします。その前に八百五十八條というのが現行法にありますが、これは婿養子縁組の場合の規定でありますから、これは不必要となつて削除いたしたのであります。この八百八條は、現行法の八百五十九條に大体該当いたします。ただ二項を付けまして、縁組の取消の結果、先祖の祭を司宰する者に変更を先ずる場合についての規定、これを二項で準用いたしました。その外は大体現行法の八百五十九條に該当する條文の整理をいたしたのであります。
 次は「縁組の效力」でありますが、八百九條は、現行法の八百六十條と全然同樣であります。
 次の八百十條は、大体現行法の八百六十一條に該当するわけであります。即ち「養子ハ縁組ニ因リテ養親ノ家ニ入ル」とあるが、「家」というのがなくなりましたので、「養子は、養親の氏を称する」ということにいたしたのであります。
 次は「離縁」であります。協議上の離縁を依然認めることにいたしまして、八百十一條というのが丁度現行法の八百六十二條に大体該当いたします。「戸主ノ同意」というふうなことがなくなつただけであります。尚八百十一條の末項でありますが、現行法では、養親が死亡した後に養子が離縁をしようと思う場合には、戸主の同意を得てこれをするということになつておりますが、戸主が亡くなりました結果、戸主に代えて家事審判所の許可を得て、養親が死亡してから養子が離婚ができる、それを家事審判所にかからしめたわけであります。
 次の八百十二條は八百六十四條に該当いたしますが、條文の整理をいたしておるわけであります。
 次の八百十三條は八百六十五條に該当いたします。條文の数を少しく整理をいたしておるわけであります。
 次の八百十四條というのが、これが現行法の八百六十六條に該当するのでありますが、これは婚姻の離婚の場合と同樣、いわゆる從來の列挙主義を改めまして一應例示的に一号、二号というのを掲げましたが、三号におきまして「その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。」というようにいたしまして、例えば現行法の八百六十六條にいろいろとありますところの、例えば養親の直系尊属から虐待又は重大な侮辱を受けたときであるとか、或いは他の一方が自己の直系尊属に対して虐待をなし、又はこれに重大な侮辱を與えたときであるとかといつたような場合を全部例示の中から落しましたのでありますが、これらの場合においては、恐らく縁組を継続し難い重大な事由のある場合に該当するだろうということに考えるのであります。尚婚姻の場合と同樣、第二項を置きまして、例示の一号、二号に該当するようなことがありましても、裁判所におきまして、一切の事情を斟酌して、縁組を継続せしむるのが相当と認めた場合は、離縁の訴えを棄却することができるという七百七十條の第二項の規定を準用いたしたのであります。
 八百十五條は現行の八百六十七條に大体該当いたします。
 それから八百十六條という規定、これは養子が離縁によりまして縁組前の氏に復ずる、これが現行法の八百七十五條、養子は離縁によりその実家に復籍して行くという関係に該当する規定でありますが、「家」という関係がなくなりましたので、縁組前の氏に復ずるというだけを規定いたしたのであります。
 次の八百十七條という規定は、いわゆる祭祀の司宰者の変更の場合であります。即ち離縁によりまして養子が実家の氏に復した場合に、養子がすでに系譜、祭具、墳墓等の承継をして先祖の祭祀の司宰者になつておる場合に、その離縁の場合に、後継者を定めるというのが八百十七條で七百六十九條の規定を準用いたしたわけであります。
 次に「第四章親権」であります。親権につきましては、大体現行法におきましては、未成年者のみならず、独立の生計を立てる成年者以外の者は、たとい成年者と雖も親権に服することになつておりますが、この改正案におきましては、成年に達しないいわゆる未成年の子のみが親権に服することにいたしたのであります。すでに成年に達しておるものは、個人の尊嚴という意味からして、やはり親権に服しないことが適当ではなかろうかと思いまして、未成年者のみが親権に服するということが第一点、それから第二点といたしましては、現行法の八百七十七條に……、八百十八條は現行の八百七十七條に該当する規定でありますが、大部内容が変つております。現行法の八百七十七條によりますと、「子ハ其家ニ在ル父ノ親権ニ服ス」というふうになつて「父カ知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ親権ヲ行フコト能ハサルトキハ家ニ在ル母之ヲ行フ」ということで、第一次的に父が親権を行い、第二次的に母が行うということになつておりますが、これはやはり両性の平等ということからして適当ではないと考えまして、夫婦が婚姻中の場合であれば、共同して父母が親権を行うということにいたしたのが八百十八條の第三項であります。勿論子供が養子であるときは養親の親権に服しますが、そうでないときは、実父母の親権に服する、而も父母が共同して行うのでありますが、然らば父母の間でその方法等について意見が纏らなかつたらどうするかというような問題も実はあるのであります。この点についてスイス民法等は意見が不一致のときは父の意見で決めるということになつておりますが、それはむしろ却つて適当ではないというので、意見の不一致のようなこともあるかもしれませんが、そこは夫婦間の父母の間の適当な処理に任すという意味で、「父母が共同してこれを行う」というだけにいたしまして、ただ「父母の一方が親権を行うことができないとき」、事実上不可能であるとか或いは親権或いは管理権が喪失しておるような場合は「他の一方が行う」ということにいたしたのであります。
 即ち八百十八條では、父母が婚姻中は共同して親権を行うのでありますが、離婿したような場合にはどうするかという問題が起きますので、八百十九條で「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」、こういうことにして離婚の場合は必ず父母の中どちらか一方が親権者となるということを定めて、離婚の届出でをしなければならないということにいたしたのであります。協議上の離婚のときには必ず親権者の一方を定めなければなりませんが、「裁判上の離婚の場合には」裁判所が判決の中で「父母の一方を親権者と定める」ということにいたしたのであります。それが第二項です。第三項は父母が子供の出生前に離婚しておる場合は、これはどうしても共同ということは困りますから、これは生んだ母親が親権を持つ、併しながらその後父母の協議で、父を親権者と決めることもできるということにいたしたのであります。次は父が私生兒を認知したような場合に、そこで母親と父が婚姻はしておらないのでありますから、共同親権ということはむづかしいので、その場合に親権者は父母の協議で父と決めない限りは母が行うのでありまして、特に協議で父を親権者とするということにした場合に限つて父が行う。そういうふうに決めない場合、やはり母親が親権を行うということにいたしたのであります。以上すべて親権について父母の協議でやるということにいたしておりますが、協議が整わない場合が予想されますので、そういう場合には家事審判所が協議に代る審判をすることができるということにいたしたのであります。協議で一應親権者が決まつた場合、或いは家事審判所が協議に代わる審判をして親権者を決めた場合でも、その後子供の利益のために必要があるときは、家事審判所は親権者を変更することができるということにいたしまして、子供の親権ということについて、專ら子供の利益を図つて親権者を決めて行くという方針をとつたわけであります。
 次は「親権の効力」であります。これは現行法と大体同じであります。即ち八百二十條は現行法の八百七十九條が大体それに該当いたします。それにただ現行法では「親権ヲ行フ父又ハ母」とあるのを「親権を行う者は」、即ち共同親権の場合に多かろうと思いますので、父又は母ということはできないので、その場合は「親権を行う者は」というふうにいたしたのであります。
 次の八百二十一條というものは現行の八百八十條に該当するのであります。これもやはり「親権ヲ行フ父又ハ母」という文字を「親権を行う者」というふうに変えたのみであります。
 次に現行法の八百八十一條に子供の兵役を出願する場合の規定がありますが、これは兵役がなくなつた関係上現行法の八百八十一條というものは削除いたしたわけであります。
 次に八百二十二條は現行法の八百八十二條に該当するのでありますが、ただ文字を多少変えた、それから「裁判所」とあるのを「家事審判所」に動かしたというような多少の整備を行なつたわけであります。
 次に八百二十三條は現行法の八百八十三條に該当いたします。
 それから次の八百二十四條というのは現行法の八百八十四條に該当いたします。大体現行法では「親権ヲ行フ父又ハ母」ハというようになつておるのを「親権を行う者は」と、共同親権の場合に抵触しないような表現に変えたに過ぎないのであります。
 次に八百二十五條というのは新らしい規定でありまして、只今御説明申しましたように、親権は父母共同して行うことになる、その結果子供に代つて法律行爲を親権者が行うという場合、或いは子供の法律行爲に同意を與えるというような場合は父母が共同してやるということになりますので、多く父母共同の名義で以て子供に代つて法律行爲をするというようなことになろうと考えるのであります。この場合に夫婦の一方が、勝手に共同名義を利用して、子供に代つて法律行爲をやつたというような場合に、他の一方は、自分の意思に反して他の一方が共同名義を利用したんだ、自分の意思を無視したのであるから、その法律行爲は無効であるというようなことを言い出さないとも限らないのでありまして、そうしますと、善意の相手方が非常に迷惑をいたしますので、相手方の保護ということを考えまして、そういう場合にでも善意の相手方に対しては効力が妨げられない、有効であるという規定を設けたのが八百二十五條であります。
 次に八百二十六條は大体現行法の八百八十八條であります。
 ちよつとその前に御留意を願いたいのは、現行法の八百八十六條と八百八十七條でありますが、これは母が親権を行う場合に、親族会の同意を得なければ、重要な事柄ができないということになつて、若し親族会の同意を得ないで、そういう法律行爲をした場合は取消すことができるというのが八百八十六條と八百八十七條でありますが、これは父母共同の原則から行きまして、女たるが故に、妻たるが故に、母たるが故に制限をした規定でありますから、これは適当でないと考えまして、八百八十六條と八百八十七條は削除いたしたのであります。從いまして、父母共同でやるときは問題はないとしても、父が死んで母のみが親権を行う場合にもやはり親族会等の同意は必要でありません。そうして親族会そのものも廃止いたしましたので、更に問題はなくなつたわけであります。
 次に八百二十六條というのは、先程申しましたように、八百八十八條に該当する。大体文字を多少変えたに過ぎないのであります。「裁判所」を「家事審判所」というように変えたに過ぎないのであります。
 次の八百二十七條は現行法の八百八十九條に該当します。現行法の八百八十九條の第二項というのはやはり母が親族会の同意を得る場合の規定でありますから、現行法の八百八十九條の第二項というのは削除いたしたわけであります。
 次の八百二十八條は八百九十條に該当するのでありまして、文字の整理をいたしたに過ぎません。「親権ヲ行ヒタル父又ハ母」というのを「親権を行つた者は、」というふうに変更したに過ぎないわけであります。
 次の八百二十九條、これは現行法の八百九十一條そのままであります。
 次の八百三十條というものは現行法の八百九十二條に大体該当いたしまして、「裁判所」を「家事審判所」と改めた程度のものであります。
 次の八百三十一條は現行法の八百九十三條に大体該当いたしまして、「父又ハ母」を「親権を行う者」というふうに変更しただけの規定であります。
 次の八百三十二條もやはり現行法の八百九十四條を多少文字を変えたのと、親族会がなくなつた関係上、親族会員との関係を削除したに過ぎないのであります。
 次の八百三十三條、これが八百九十五條に該当いたすのでありますが、戸主権の代行というようなことはなくなりましたので、その点を削除いたしたわけであります。ここで八百三十三條で「親権を行う者は、その親権に服する子に代わつて親権を行う。」というような場合はどういうような場合かといいますと、結局それは私生兒、婚姻せざる子供が私生兒を生んだといつたような場合に、その母親の親権者が、その親権に服する子に代つて更に親権を行なうというふうなことが想像されるのでありまして、正当な婚姻をいたす場合におきましては、すでに成年者となつて、親権に服するというようなこともないのでありますから、この條文の適用は極めて少ない限られた場合を予想することになるわけであります。
 次に「親権の喪失」でありますが、八百三十四條、これは現行法の八百九十六條に該当いたします。ただ裁判所に代つて家事審判所が親権の喪失を宣告いたすことにいたしたのであります。
 次の八百三十五條というのが、現行の八百九十七條に大体該当いたしまして、やはり「家事審判所」というようなものが「裁判所」に代つて出て來るというのがその差異であります。現行法の八百九十七條の第三項は削除いたしたのであります。これは父に代つて今度は母が行うということになりますが、これは父母同樣に共同親権である関係上、この規定削除いたしたのであります。
 次の八百三十六條というのは八百九十八條に該当いたす規定であります。
 次の八百三十七條というのは現行法の八百九十九條に該当するのであります。現行法におきましては、八百九十九條では、「親権ヲ行フ母ハ財産ノ管理ヲ辞スルコトヲ得」というのでありますが、今度は父母共に共同親権ということになりましたので、「父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家事審判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる」途を拓いたわけで、現行法におきましては、母のみが財産の管理権を辞することができる。要するにそれは母が財産を管理する能力が低いという考えから、母だけについて管理権辞任の場合を認めておりますが、父母平等と云ふ原則から行きまして、父母共に親権或いは管理権を辞任することができる。併しながらこれは父母の親権は権利であると同時に、むしろ義務でありまして、勝手に自分で親権、管理権を辞するということは許すべきものではありません。特に家事審判所の許可を得なければならない。而も家事審判所は止むを得ない事由があるときに限つて許可をするということにいたしたのであります。尚その止むを得ない事由が止んだときは、これ亦家事審判所の許可を得て親権又は管理権の恢復をすることができる途を拓いたのでありまして、この八百三十七條というのは新らしい規定で、父母平等の原則に立つたものであります。
#12
○委員長(伊藤修君) 政府委員の民法に対する説明はこの程度で打切りまして、その他は後日にお願いいたしたいと存じます。
 この際ちよつとお諮りして置きますが、民法及び刑法並びに民事訴訟法、刑事訴訟法、こういう法案に対するところの審議の上における資料その他の研究事項もあると存じますから、高等裁判所の所在地へ議員を数名派遣いたしまして、現在におけるところの実際の運用状況その他を調査いたしたいと存じます。これにつきまして、その日時、その人員、行先等は委員長に御一任を願いたいと存じますが、いかがでございますか。
#13
○委員長(伊藤修君) 御異議ないと認めます。
 次に経済査察官の臨檢檢査等に関する法律案、これが本委員会に付託されておりますが、この法案の審議に際しましては、治安及び地方制度委員会から連合委員会の申出がありますから、これは連合委員会を開きたいと思いますが、御異議ありませんか。
#14
○委員長(伊藤修君) それではさよう決定いたして置きます。
 次に農業資産相続特例法案、これも本委員会に付託されておる次第でありますが、この法案の審議につきましても農林委員会から合同審査の申出がありますから、これも合同審査を開きたいと思いますが、御異議ございませんですか。
#15
○委員会(伊藤修君) それではさよう決定いたします。
 只今衆議院の方から回付されましたところの罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案を上程いたします。直ちに議題に供します。
#16
○衆議院議員(松永義雄君) 只今議題と相成りました罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案について御説明申上げます。
 この法律案は、先に衆議院議員武藤運十郎君より提出されました法律案につきまして、衆議院司法委員会において審査の結果、これを全文修正議決して、本日衆議院本会議において委員会の修正通り議決せられたものであります。その経過及び要旨につき申上げます。
 まず原案の要旨は、第一に、現行法が罹災地と建物疎開地に関してのみ適用することになつておるのを、火災、風水害等一般災害の場合にも拡大すること、第二に、災害地における建物復興に伴う諸條件が困難である等の理由から、法律の定める期間を延長して、借家人の優先権実現を容易にすること、第三に、建物の防空上の強制疎開の場合も戰災の場合と全く同樣の取扱いにすること等にあるのであります。
 衆議院の司法委員会の審査におきまして、第一に、火災、震災、風水害等の一般災害中、いかなる地区における、いかなる程度のものについて本法を適用すべきか、又その範囲なり地区なりを決定するのは法律によることとするかとの問題がありました。尚本法の第一條でこの一般災害を取上げますことは、法律の体裁としても、期間計算に関する條文との関係においても、別に條文を起すべきではないかとの問題が生じました。第二に、原案の第九條は、防空上の必要から建物を除却されたその当時の借家人に対し、現行法が新たなる借地権の設定、新たなる借地権の讓渡を以てのみ遇するのは、戰災と強制疎開との取扱い上不公平であるから、現行法の優先的取扱いより更に遡つて、本來疎開当初から借地権を失わなかつたこととし、換言すれば、権利を遡及的に復活させようというのでありましたが、かくすることによつて、敷地の上に存した法律関係の混乱は非常に煩雜を來すこと、仮に原案のごとき制度が戰災地と疎開地において事の初めから採らるべきであつたということが言えるにしても、今日において地方の法律関係を混乱することは避くべきではないかということが問題になりました。審査の結果、條文の整理等の関係があり、結局只今の案の通り修正議決することに相成つた次第であります。
 現下の諸情勢より、本案を提出いたしますのは、誠に切実な理由があり、且つ本案の成立は目睫の急を要する実情に鑑みまして、十分御審議の上、何卒御賛同下されますよう期待して止みません。是非お願いいたします。
#17
○委員長(伊藤修君) それではこれより質疑に入ります。
#18
○大野幸一君 現行第九條によつても、疎開によつて移轉した人は、その当時におけるその敷地の借地権者であつたという解釈から、優先貸借権を認められるものと解釈せらるるかどうであるか。
#19
○衆議院参事(川口頼好君) 現行法の第九條は、只今仰せになりましたように、この法律が出ます前の戰時緊急措置法によりまして、借地借家に関しまする勅令が出ておるのでありまするが、その当時におきまして、震災地につきましての場合と、それから防空空地につきましての場合と、根本的に建前を区別いたしておりまして、借地権が多眠状態にあつて滅びないようにするというような規定は、防空空地については全然設けられない建前を前提といたしまして、そうして現在の第九條が設けられた次第であります。從いまして、この九條によりまして、第二條及び第三條によりまして、その当時の建物の借主は、借地権の設定と借地権の讓渡を受けるという優先権を與えられるという解釈になると存じます。
#20
○小川友三君 第二條中の一年を二年に改めるということでありますが、これはいろいろな事情がありまして、今四百数十万戸住宅が足りない。一面日本では腐朽して行く建物が一年に二十万戸あり、一年間にできるのが三十万戸で、差引十万戸殖えるのであるが、この建物を造るのに五、六十年掛かるというのに、二年間に切られたのでは、建てないうちに期間が切れるという虞れがあるということと、それから海外に應召中に燒けて、分らない所に帰つて來る者その他引揚同胞に対して、予定は今年一杯ということになつておりますが、二年ですとなかなか思う通りに行かないので、これを二ケ年としないで、五年くらいに延したらどうかと思いますが、その点に対する御意見を伺います。
#21
○衆議院参事(川口頼好君) 現行法を作りますときは、差当つて一年位の余裕を與えれば復興ができやしないかと考えて作つたものでありましようが、その後の状況によりまして、差当りあともう一年くらい延ばせば相当の効果があるのではないかと考えてこの案を拵えた次第であります。
#22
○小川友三君 法律は最大多数の國民を救う法律でなくちやならないのでありまして、一部の人が助かるであろうという見当のことでは甚だ不公平な法律であると存じます。最大多数の最大幸福のためにするには、これを五年くらいに延して頂きたいと思いますが、御意見をお伺いいたします。
#23
○衆議院議員(松永義雄君) 只今御相談願つておりますのは、罹災都市借地借家臨時処理法に関連しまして、新らたにここに設けることになりました火災その他の罹災につきまして、この期間を一年間延ばすということでありまして、過去におきまする一年間において、とにかく相当の整理が付くだろうという考えの下に現行法が制定されたと思うのであります。ところが、その後の経過を見ますと、只今御説明申上げましたように、資材或いは轉入難或いは資金、いろいろの理由から、最初現行法の制定当時に目標とした趣旨がまだ十分徹しられないのでありまして、ここでどうしても期間を延さなければならん。併しその期間を延ばすにつきましては、現行法が御承知の通りにこの九月十五日に切れるというような工合で、九月十五日までの期間になつておるような次第でありますので、大体それに準じまして差当り一應一年間だけ延して置く、そうして又一年経つてから、そのときの模樣を見まして、又考えたらいいんじやないかという考えを持つてここに一年と定めた次第であります。
 松村眞一郎君 私はこの二十五條の二というのが、法律の性質をすつかり変えてしもうということを感じますが、どういうふうにお考えになりますか。
#24
○衆議院参事(川口頼好君) 申上げます。最初に第一條の改正で行こうというふうなことから、実は二十五條の二という新らしい條文を起すことに変つた次第でありまするが、先ず、只今の御質問の御趣旨は、いろいろ沢山あると思いまするが、一種の恒久立法になりはしないかというような意味ではないかと考えるのでありまするが、その意味におきましては、この復興状況が平時状態みたいに行かないで、偏頗の状態にあるということを前提にいたしまして、そうしてその地区なり、それから期間的、時間的の前後の関係、明治時代の火災とか、大正時代の火災とか、或いは昭和時代の火災でも、古いものは考えませんで、極く最近の特殊状態にある災害のみを考えるというふうなことでありまして、そういう意味でやはり臨時処理法の範囲内でやろうというふうな考えから、準用するという形でこの中に入れられたのだと考えております。
#25
○松村眞一郎君 只今の説明では明瞭でないと思います。なぜかと申しますと、この臨時処理法というのは、十二年でなくなつてしもう法律です。ところが、今度こんな改正をされますと、別に定める法律というのはいつでも定められると思う。それから又十二年、十二年となりますが、第二十五條の二というのは永久の規定なんです。この法律の精神から申しますと、何百年続くか分らない。なぜかというと、別に定める法律で定めるのでありますから、その別に定める法律の施行の日から、この法律は又施行される、そうすれば永久じやありませんか。この法律自身は十二年しかない法律であるものを、永久の法律にしてしもうということはどうですか、そうなるでしよう、そこはお認めにならなければいけないと思います。その意味において永久立法であるというようにお認めになるでしようか、どうでしようか。もう一度説明します。この法律は、この法律施行の日から一年内に申出でたなれば、それで借地権が設定されるわけです。それが十年間続くという規定なんです。だから十一年でしまわなくちやならん。今度は一年を二年にされたのでありますから、十二年経てばなくなる法律なんです、ところが、今度二十五條の二において、別に法律で定めるところの火災、震災、風水害に御適用になるようになつたのですから、この法律は別に定めるのであつて、いつまでに定められるかということがここに書いてないので、いつでも定められる。そうして定めたら又十二年続くということだから、永久じやありませんか、大変な永久立法です。二十五條の二ということで書くことは、國民に誤解を招かせると考えます。立法上永久立法です。ただ期間が、十二年という意味が臨時じやないので、十二年でなくなるから臨時法ですけれども、今度は十二年、十二年と永久に続く法律になつてしまう。臨時法でないと思いますから、私はこういう改正をされるならば、表題と違うという意味において賛成いたし兼ねます。
#26
○大野幸一君 松村委員の二十五條の解釈ですが、それはちよつと法律的に何か誤解されておると思うのであります。第二條久至第八條、第十條乃至前條及び三十五條の規定は、この規定自体は別に法律で定める、震災、風水害その他災害で滅失した建物がある場合にこれを準用する、こういうわけですから、一年内にそういう火災、風水害があつた場合に、ということが前提なんであります。そのあつた場合に、具体的にその風水箇所、風水被害物を指定するのは法律で指定しよう、こういうことであつて、本條の、更に別の法律で定めるというのは、別の法律で定められる範囲において建物を指定する場合だけであると思いまして、臨時法たる性質には反しないと思うのでありますが、提案者の説明はいかがでありますか。
#27
○委員長(伊藤修君) ちよつと速記を止めて
   午後四時八分速記中止
  ―――――――――――――
   午後五時三十九分速記開始
#28
○委員長(伊藤修君) では大変お待たせいたしました。速記を始めて下さい。
#29
○鬼丸義齊君 ちよつと提案者にこの際お確かめいたして置きたいと思います。改正案の第二十五條の二の規定を加えましたことは、本法の臨時処理法の性質を恒久的ならしむるような感がございます。併しながら戰災地の借地の法律関係はこれを長く確定さして置かないということになりますると、それがために都市の復興を著しく遅延させまして、更に又幾多の紛爭を頻発させますような弊害等もありまするところから、第二條及び第二十九條の賃借申出期限は今後絶対に延期せないことを希望したします。
 尚、二十五條の二の、別に法律で定めるところの災害に対しまする点については、この基準について非常な考慮を拂う必要があろうと思います。條文では何らの基準が示してありません。例えば災害が百戸の場合もありましようし、数百戸の場合もありましようが、これらの場合がございませんので、これを適用する場合におきましては深甚なる注意を拂われて、著しく不公正にならないことに細心の御留意をお願いいたしたいと思います。この二点を希望いたします。
#30
○衆議院議員(武藤運十郎君) 只今鬼丸委員の御質問乃至御希望に対しまして、提案者といたしまして少しく意見を申上げたいと存じます。
 先ず第一に、この法律が二十五條の二の入ることによりまして、恒久性を持つようになるのではないかという御意見でございますが、その点は仰せの通り恒久的な性質を持つようになると私も考えております。併しながら我々國会議員の献身的な努力によりまして、戰災地その他の災害地が意外に早く復興をいたすことになりますならば、恐らく本法自体も近い將來において廃止されるようなことに立ち至るであろうと考えますし、又、私共はさようなことを希つている次第でございます。
 第二点の二年間以上延ばさない方がよかろうではないかというふうな御意見も誠に御尤もでありまして、提案者といたしましても、一年では少し無理でございますが、二年ありますならば、先ず先ず十分であろうと思いますし、又その程度で一應法律関係に安定を與えなければならないと考える次第でございます。
 第三の、二十五條の基準を十分留意しろというような御注意でございます。これも今度は御承知の通り法律で規定をされることになりますから、いずれ両院の一致したる総意によることでございますと思います。從來戰災地に罹災都市借地借家臨時処理法を適用いたします勅令を出します場合に標準をどういうところに置いたかということを司法省の経驗を伺つて見ますというと、第一次の勅令によつて適用地区を指定いたしました場合に、大体におきまして一千戸以上ということを標準として施行地区を決めたそうでございます。然るに、それでは範囲が狹いのでありまして、その後各地の戰災者からこちらの方の地区もやはり罹災都市借地借家臨時処理法を実施して貰いたいという要望が非常に多く参つたそうでありまして、その結果第二次の勅令による指定におきましては三、四百戸以上を標準として指定をいたしたそうでございます。大体それによりまして、この罹災都市借地借家臨時処理法の居住者保護という目的を達しているがごとき状態であるということであります。從いまして、今後起ります戰災以外の火災、震災、風水害その他の災害に、新らしき立法によつてその地区を、及びその災害を指定します場合におきましても、大体私が只今申上げましたような標準、三、四百戸以上を標準として法律を制定いたします方がよいのではないかと愚考いたします。この点は又そのときになりまして、議院から提出されますか、政府から提案されますか分りませんが、議題に上つて参りました法律案に対しましてはお互に十分檢討いたしました上で、最も適当な立法をいたしたいと考える次第でございます。
 簡單でございますけれども、提案者としての意見乃至釈明をいたす次第であります。
#31
○松村眞一郎君 私は最初衆議院から御提案になりました案を眺めましたときに、第九條が、疎開建物の敷地についての問題を遡及的に規定するということになつております関係がありますので、その点はその案として余りよい立法方式でないと考えまして、その当時予備審査でありますが、私はその規定の存在を喜ばなかつたものであります。この度衆議院においても全部的に檢討されまして、そうしてその規定は削除されたのであります。幾多の点においていろいろ改良されたことを私は眺めまして、非常にその点は喜んでおるのであります。例えば從來二十七條におきまして、勅令で指定しておりましたものを、この度は法律で指定するということにされましたので、誠に國会の権限を尊重する趣旨も現れており、喜ぶべきことであると存じます。ただ私はこの罹災都市借地借家臨時処理法なるものを端的に解釈いたしますというと、この度の罹災都市に対しまして建築を成るべく促進いたしたい、復興を速かにいたしたいという趣旨におきまして、家を建てたい者に成るべく早く建てさせる趣旨で、一年間に申出をさせる、そうして復興をいたす努力の方に貢献する意味の立法であると考えます。ところが、一年間の経過を見ますというと、大分復興はいたしておりますけれども、全國一般に眺めまして、尚一年を延期するのが適当であるという趣旨において、改正の要点があると考えます。その趣旨私結構だと存じます。それでありますから、私はこの十二條の改正でありますとか、或いは二條の改正でありますとかいう点については、結構なことと存ずるのであります。併しながら、この度この一條の改正を加えられておりまするところの趣旨は、今後いろいろな、震災なり、火災なり、風水害なりが起りました場合に、その都度法律で或る風水害を指定いたしまして、その指定いたしました法律の施行の日から又二年間の間は申請することができる、土地所有者に対しまして申出ることができるような工合の規定になるわけであります。將來永久に……永久と申しましては或いは言葉が穏かでないと存じますが、今後火災が起り、震災が起り、風水害が起りますというと、それに應じて又法律を出す、そうすると又二年間は土地所有者に対して申出ができる、そうして得ました借地権は十年続くのであります。こういうような意味で法律の改正が第二十五條の二としてここに揚げられておるのであります。本質上永久立法にいたしまする場合においては、もう少し檢討する必要があるのじやないかという意味において私はこの法律が從來の関係で申しますというと、今度の延期によりまして二年の期間内に申出をしなければならん、そうして十年の後にはその得たる借地権は失われるのであります。これを簡單に申しますというと、十二年で法律の本條の規定は効力を失うのであるという立法であるのを、この度はそれが永久に、いろいろな災害がありますごとに、新らしい法律が出ましては又、十二年続く、又その次の法律が出ますと又十二年続くという意味におきまして、常に災害ごとに新らしい法律は出してもよろしいという意味における永久立法であると私は考えます。そういう場合に、果してこの災害の……先達ての罹災、すでに生じたる罹災を眺めての立法として、一年間という期間を当時定めだのであります。それでその実情を見ましてこの度二年といたしたのであります。將來の災害は直ちにそれを二年間申出期間にした方がいいのであるか、一年がいいのであるかということもいろいろな場合について檢討して見なければならんと私は考えるのであります。今日いろいろな物資の不足であります際でありますから、二年の期間が或いは適当でもありましよう、併し將來はどういうような工合に経済状態が変動するかも分らないのでありますから、その際において適当に立法する方が私はよかろうと考えるのであります。
 私の意見といたしましては取敢えず今の罹災都市の問題だけを期限の延長によつて解決いたしておきまして、引続き正面から、凡そ災害のあつた場合における建築については、どういうようにしたものであるかという立法をいたしました方が、國民に対して非常に分りのいい法律ができるのではないかと私は思うのであります。この罹災都市借地借家臨時処理法を見まして、これが永久的に働くものであるということが、初めこの法律を読みました人は卒直には分らないのではないかと私は思います。元來民主主義立法におきましては、成るべく分り易いように法律を書くということになつておる際に、専門家が考えましても容易に了解し得ないのに、二十五條の二の規定によりまして恒久的の性質を有する立法とするということは、私は立法の手続として甚だよろしくない、実質問題でなく、実質問題は更に檢討をすることを必要と考えますけれども、その立法態度として、民主主義的の方法には適当なるものでないと考えまするので、その意味におきまして、全部の修正に賛成することの意見を申述べることのできないことを非常に遺憾に考えるのであります。そういう趣旨でありまするから、この問題の内容について、全面的に反対をいたしておるのじやございません。ただそういう形におきまして私としては満足することができません。然るに今一年の期間は九月に迫つておるのでありますから、この法律を更に檢討するの間もないような事態であるということについて、非常にこの法律の取扱いについて我々は困難な地位に置かれたのを深く遺憾とするのであります。併しながら、私は仮に九月の何日に間に合わないとしても、急いで又立法しますれば、この何月何日までは更に申出をしてもよろしいという立法もなし得ると考えるのでありますから、そう欠点もありと考えられまする立法を、急速にこの際可決することを私は躊躇いたす意味におきまして、本案には賛成いたしかねることを一言申述べて置きます。
#32
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑がなければ、これを以て質疑を終了いたしまして、直ちに討論に入りたいと存じます。御異議はありませんか。委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めます。罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案、この法案全部を討論の問題といたしまして、賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
#33
○來馬琢道君 この法案に対しまして討論に入る前にちよつと……。松村委員が述べられました点は私も大体において同感であります。建物疎開による問題を先頃委員会において審議いたしておりましたところ、今回その方は除かれましたので、その点については非常に私は我が意を得たものと思つております。この戰災後の復興につきましての見方はいろいろあります。成るべく早く家を建てさせる方がいいというので、臨時処理法ができて、相当の働きをいたしたのでありますが、ここにインフレーションというものが大きな影響を與えておるのであります。僅かに一千円足らずで十坪の家ができるとか、六坪の家を三千円で建てさせるといつた時代と、今日どこで聞きましても一坪が一万円いや一万五千円出さなければ建てられないと言つております状況と比べてみると、例えば或る人が借地権を得るといたしましても、そこへ家屋を建てることが容易なことではありませんので、東京の一部におきましては、なかなか復興事業が進まないのであります。又私の居住しております所、從つて毎日見聞しておるところの浅草方面のことから考えてみると、初めのうちはいろいろと制限をいたしておりましたが、戰災後二ケ年後にはもうこのくらい家が建て込んでしまえば、土地区画整理も行われるものじやないし、道路の拡張も到底実行できるものじやない。だから早くここへ家を建てて、政府をして道路の拡張などができないようにする方が賢い方法であるというような宣傳をいたしまして、盛んに家屋を建てて、而もマーケットというような、この頃の日本の言葉で言うマーケットというような極めて火事の起り易い家屋を沢山建てまして、その人々は相当の收益を挙げております。今回各火災保險会社がいわゆるマーケットに対しては火災保險の契約を解除するということを新聞で見ましたが、私はそうあるべきものと思つております。こけら葺の屋根、その他実に火災に危險な建築を続々いたしております状態は、我々が常に憂慮しておる次第でございます。それ故にむしろこのような特点を與えまして、余り長く持つことのできないような家屋を建てさせるということは、都市復興の大方針に叶つておるか、或いは多少資力のある者を誘致して、その人々によつてやや都市計画に叶つた建築を、少し遅れてもいいからやらして置く方がいいかということを考えて見ると、必ずしも速成主義に賛成することはできないのであります。依つて一ケ年の延期というようなことに対してむしろ私は疑義を持つておるのであります。併しながら今日の事態は理論ばかりでも通されないかとも思うこともあります。いろいろな疑いを持ちつつも、只今鬼丸委員の御質疑に対して、衆議院の方から來られた提案者が、その趣旨を諒としておるということを言明されたことでありますから、松村委員の議論は私も趣旨において賛成いたしておりますけれども、この際この程度において本案を可決いたしまして、尚我々がゆつくり、工夫いたしまして、本案の欠陥と認むべきものを改めて行くということにいたす方が、只今の策としては適当かと存ずるのでございます。松村委員の意見に対しまして衷心から賛意を表しますけれども、本案の成立に対しましては、この際特別の事情を考えて賛成することを表明いたします。
#34
○小川友三君 本案に大体賛成する者であります。第二條によつて先に一年延ばすということは、非常に借地人側としては欣快に堪えないところであります。但し第七條において、今政府当局が発表している通り四百数十万戸の家が足りないのでありまして、材木の絶対量、建築資材の絶対量が足りないということは、政府が発表いたしてある通りでありまして、六ケ月間を一ケ年に延期して呉れることは有難いが、これは三年乃至五年十年に、この第七條の規定を延して、將來法律を作りますという希望條件を附けまして、原案に賛成する者であります。
#35
○齋武雄君 賃借の申入れを一年間延べることがよろしいか惡いかということは、見樣によつて違うと思うのでありますが、私は現状においては、一年間延ばした方がいいと考えておるのであります。折角臨時処理法によつて家屋居住者或いは土地賃借人を保護したものが、現在において未だその恩惠を蒙らない人があるのでありまして、この際法律の趣旨を徹底して一年間延して、そうして救済するということについては私は賛成であります。ただ二十五條の二でありますが、これが恒久的性質になるということにつきましては疑問を持つておるのであります。先程の鬼丸委員からの質問に対する提案者の御答弁は、一年の間に、或いは近き將來において整理されることがある、だから愼重にこの法律を適用したいと思つておるのである、こういう御答弁がありました。それに滿足いたしまして、私は衆議院の修正通りの案に賛成する者であります。
#36
○松井道夫君 いろいろ御意見が出まして敬服するわけでありまするが、ただこの法律を改正する、特に一年の期間を二年に延ばすということにつきましては、私は早く都市を復興するというように考えておらんのであります。これは都市の復興を遅らせるものだと信じておるのであります。というのは、普通の都市でございますると、もう一年間で大体整備されるべきものは整備されまして、この法律の恩惠を受けるべきものは恩惠を受けまして、もうすでに借地関係を確定いたしまして本格的の復興に入るべき時期が來ておる。この間復興院の総裁が述べておられましたように、土地を收用するような方法も考えておるということでございましたが、そういうときに一体その借地申入れの権利ある人がないのかおるのか、土地所有者から直ぐ收用してよろしいのか、といつたようなことが問題となりまして、結局その借地の関係をいつまでも曖昧ならしめ、住宅の政策を施行する上において支障を生ずる、個々の土地所有者が他の資力ある、意思ある者にこれを貸しまして、どんどん家を建てるといつた計画が全然できないことになる、折角そういうことを予定しておつた人たちも、そういうことを実施することができないことになりまして、これは都市の復興を遅らせることは概ね間違いないと存じておるのであります。ただ私は借地借家関係の権威であられる武藤さんが提案者になられたということで、まだ意思あり力もある人が残つておる、而もこの人たちはこの法律の出たことをよく知らない、内容がむずかしいので分らないでおるのであるからして、そういう人をこの一年間の中に救つてやりたい、そういう意味で借地借家人を保護する、都市の復興をやや遅らせても仕方がないから、いまの氣の毒な人を保護してやる、さような意味で私はこの期間の延長ということを排しておるのであります。でありますから、只今鬼丸さんからも言われましたように、こういう法律関係を一年々々と延ばして行くということは、法律関係を不安定ならしめて、都市の復興を遅らせる、そういう意味で、私はこの期間の延長については重大な疑問を持つておる。現に先程も申しました前長岡市長の田村文吉氏もさような体驗を述べておられるのであります。但し今申しましたように、借地人を保護する、氣の毒な人もまだ恐らく、武藤さんがそう言われるのだから相当残つているのだろうと信じまして、この期間の延長には贊成したい氣持でおるのであります。いまの二十五條の二ですが、この規定に関しましては、私は松村さんの御見解――結論ではございません、御見解と同一であります。要するに、永久法を作るべきものであるという点で同一であります。又十分審議の期間を與えられなかつたということについて遺憾の意を表することも同一であります。非常に問題は將來起きるのじやないか。只今六ケ月の使用期間というものがある。その間に著手しなければ、借地権の讓渡或いは賃借り、等の契約を解除することができるといつたようになつておりまして、すでに解除権が発生しており、或いはすでに解除してしまつたもの、そういつたものを、この期間が一体一年延びるのかどうか、或いは解除できなくなるのか、或いは解除の結果が又、復活して來るのかといつたような経過的な疑問が多々ありまして、そういうことについて十分審議する時間のないのが残念なんでありますが、この前の武藤さんの御意見では、これはすでに生じた効力はどうこうする氣持もないので、將來のことを考えておるのだという御意見でありましたので、それの意見通りの御意見であろうと解釈してよろしいのであろう、さよう考えておる次第であります。本來ならば経過法でいろいろ書かなければならんことが沢山あるのではないかと存ずるのでありますが、私の意見を開陳した次第であります。
#37
○阿竹齋次郎君 頗る簡單に意見を述べます。私は元來疎開賠償金というものは、疎開によつて起る損害を賠償するものであつて、地上権というものはそれでなくなつて來るものではないという解釈をしておる、然るに、從來裁判所は地上権を失つたような裁定をしておる、それは借地人の方にも油断があつたけれども……、併し今日の実情に即して、窮状を救うために原案に賛成いたします。
#38
○委員長(伊藤修君) 他に御意見がないようでありますから、これに依つて討論を終結することに御異議ございませんか。
#39
○委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めます。つきましては本案の採決をいたしたいと思いますが、本案に御賛成の方は御起立を願います。
#40
○委員長(伊藤修君) 過半数と認めます。依つて原案通り本案は可決すべきものと決定いたします。
 本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては、予め御承認を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
#41
○委員長(伊藤修君) 御異議ないと認めます。
 尚多数御意見者の御署名を順次お願いいたしたいと思います。
#42
○委員会(伊藤修君) ではこれで散会いたします。
   午後六時十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           奧 主一郎君
           鬼丸 義齊君
           鈴木 順一君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  衆議院側
   議     員
   (議院運営委員
   長)      淺沼稻次郎君
   議     員
  (司法委員長)  松永 義雄君
   議     員 武藤運十郎君
   参     事 三浦 義男君
   参     事 川口 頼好君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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