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1947/09/16 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第21号
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1947/09/16 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第21号

#1
第001回国会 司法委員会 第21号
  付託事件
○國家賠償法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○裁判所予備金に関する法律案(内閣
 提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○靜岡刑務所の脱獄事件に関連し行刑
 状況に関する件
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月十六日(火曜日)
   午前十一時四十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○靜岡刑務所の脱獄事件に関連し行刑
 状況に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) では司法委員会を開会いたします。予め発言の通告がありますから……。この通告に関しまして、地方制度委員会の委員諸君の御発言の御希望がおありになりますから、これを許可することに御異議ありませんか。
#3
○委員長(伊藤修君) では岡部君。
#4
○岡部常君 終戰以來滿二ケ年以上を経過いたしまして、この間における我が國の治安状態が誠に憂うべきものがあることは皆さん御承知の通りでございます。この憐れな治安状態が僅かに連合軍の占領治下ということ、MPの力によつて僅かに守られておるような次第であります。これは時節柄誠に止むを得ないことでございますが、この根本的問題を別といたしまして、警察力の消長、又檢察裁判の運び方、運營如何にかかる点が非常に多いのであります。私は当面の問題に関連いたしましてこの点には触れません。この点についても遺憾な点が多々あらうと思いますが、これらのいろいろの力の最後を締め括るもの、最後の締め括りをなしておるものは私は刑務所の問題、監獄の問題であろうと考えるのであります。然るにこの方面におきまして各種の事情から甚だ面白くない状況を呈しておることは皆さまが御承知の通りでございます。既にこの二年間におきまして各地におきまして不祥事が続発し、又暴動化した点もあります。又大挙して脱獄を企て、それがために一地方の治安を棄したこともあるのであります。併しながら現在までは幸にして先ず社会不安、日本全体の不安というところまでには至つておらなかつたのでありまして、これはせめてもの仕合せと存ずるのであります。併し一日もゆるがせにできない重大なる問題であるということは世人も言われておるところであり、私も、機会に臨みましてときどきそのことを政府当局にも警告を発しておつた次第でありまするが、最近に至りましては、果然と申しましようか、靜岡刑務所におきまして未だ曾て見ないような不祥事が突発いたしたのであります、否突発したのでなく、この原因は相当遡つて過去に属する原因もあるのではないか、なかなか廣い範囲に亘つてその欠陷も考えられるのであります。既に昨日私は本會議においてそのことにもちよつと触れておきましたが、このことは單に刑務所の問題でなく、司法省の問題でなく、社会全体の問題、我々一人々々の足下に火のついたような重大問題化しておると考えるのであります。私は今においてこのことを根本的に解決する方法を取らなければ、國家百年の大計を過るようなことになるのではないかということを憂うるものなのであります。私は司法委員の一員といたしまして、先ずこのことに対する政府当局の詳細なる御報告を得たいものと存ずるのであります。
#5
○政府委員(岡本善一君) 靜岡問題を惹起いたしまして世間を騒がせ、社会に重大な不安を與えましたことを行刑当局の責任者としてお詑び申上げたいと存じます。事件につきましては目下檢察廳方面で捜査中の部分もありまして、十分完全とは申上げられないのでありまするが、我々の知り得た範囲において御報告申上げたいと存じます。
 実はこの事件の発端は、受刑者の仮釈放の問題に関連したことなのでありますが、懲役五年の刑を受けて靜岡刑務所に服役いたしております池谷八十吉なる者が、行刑成績につきましては相当良好だということであり、又工場の班長も命ぜられておりました関係で、本人に対しまして本年八月二十五日付を以ちまして仮釈放の上申が本省に参つたのであります。ただ併し前科の犯数が比較的多いなどの関係もございまして、司法行刑局といたしましては本人に対しましては來る十月十七日を期して仮釈放をするといういわゆる期限付の認可書を靜岡に送つたのであります。それが着きましたのが本月の六日の日で、暴動の起りました当日でありますが、外にも仮釈放を認可したものもありまして、それを文書係の看守が、只今申しました池谷に対しても、仮釈放がされるらしいということを漏らしたのであります。池谷は早速各工場に、自分が今度は出所できるということを言つて挨拶に廻つたのでありまするが、只今申しました通り、仮釈放の期日が、その日ではなくて十月十七日になつておりました関係上、所長としては外の者に、丁度同じように仮釈放の認可の参つておりました外の釈放者に対しては、仮釈放者に対しましてはその旨を示達いたしたのでありますが、池谷に対しましては、それを示達し得なかつたのであります。ところがそれを池谷が挨拶をいたしました関係で、外の受刑者等は既に仮釈放になるのではないかということを知つておりました。それが実際に仮釈放の示達がございませんので、その連中等が、殊に各工場の班長等が中心になりまして、戒護課長の許に、仮釈放に池谷がなるということを聞いたのにどうしてならんのかということを申しました。相当激昂したような樣子で戒護課長に詰め寄つたのであります。その情勢を所長が知りまして、それでは自分がその班長たちに会つて一應説明をしようということで、班長たちを呼び、尚池谷の仮釈放の問題に対しましては増井という看守が漏らしたということでありましたので、増井もその会議室に入れまして、所長から増井に対して、お前の言つたことについて根拠があるのかというふうなことを質したのであります。併し増井といたしましても、確実なるところを申したのでありまんので、その言語が非常に曖昧でありました。それが、その場に集つておりました班長連十數名の感情を刺戟いたしまして、更に所長に対しまして詰め寄り、暴力に訴えてでも池谷を釈放させるというふうなことで殺氣立つて参りました。遂には丁度その当時工場から
作業を終えて出て参りました一般受刑者等もそれに合流いたしまして、或いは椅子を振り上げ、或いは拳骨を振り上げまして、そうして増井看守と野村所長に毆り掛つたのであります。これがために、増井看守は頭部に負傷いたしたのでありますが、更に班長並びに受刑者は殺氣立ちまして、野村所長に対しまして一層詰め寄つて参りました。逐には所長を事務所の外に通れ出しまして、尚も執拗に仮釈放の要求をいたしましたのであります。たまたま工場作業が終りましたので、監房に引揚げます受刑者等もここの騒擾に附和雷同いたしまして。數十名の者が或いは棍棒を持ち、或いは棒切れを持ちまして、事務所その他の窓ガラス等を破壊をいたしますし、相当惡化する情勢に立ち至つたのであります。そこで所長といたしましては、事ここに及んでは自分一人の力ではどうにも收拾がつくまい、寧ろこの際に自分の責任において池谷を釈放することが所の秩序を維持し、或いは逃走暴動等を防止する所以だというふうなことに判斷いたしまして、逐に池谷に対して釈放することを言明いたしたのであります。そして同日の午後七時頃に池谷並びにその他の班長を所長室に集めまして、池谷を本日釈放する旨を申渡したのでありまするが、その際池谷は自分は釈放されることが有難いが、この度の不祥事故については、自分のために起つたのであるから、この事件については水に流すことを言明して貰いたいという申出がありました。所長といたしましても、その當時の氣勢に押されてしまいまして、そのことを了承いたしたのでありまするが、それならば一札書面に書いてくれということで、逐に九月六日のことについては円滿に解決し、今日限り一切水に流すという趣旨の書面を本人に渡したのであります。このことが翌日の新聞に一部掲載されましたので、事實調査のために行刑局とそれから關東行刑管區から三名の係員を派遣いたしまして、眞相の調査に當ると共に、翌八日になりまして靜岡の檢事正並に靜岡の刑務所長が上京いたしましたので、種々これが對策について打合せをいたしました。この際多少の犠牲を賭しても断乎粛正しようという方針に相成りました。行刑局から山田事務官をその翌日現地に派遣いたしました。尚十五名の戒護看守を應援に出しまして、現地で刑務所首脳職員と打合せ、又檢察廳とも協議をいたしまして、警備態勢の整うのを待つて、首謀者の檢擧を開始する方針を立てたのであります。その當時の協議といたしましては、その晩はそのままといたしまして、翌日を期して取調べに掛つて貰うという方針でありましたが、その翌十日朝三時頃、宮原他八名、全部で九名の逃走事件を惹起いたしたのであります。逃走の方法を考えて見ますと、事件の直後、刑務所内に多少の動搖がございまして、班長等は――各工場の班長として選ばれてゐる者達は、これは自分等の責任であつて申訳がないから、これを鎭めるためには自分等を警備の補助に充てて使つて貰いたいということを七日申出ていたようであります。これを輕率に信用いたしまして、七日から十四名の班長を夜間交替で所内の警備に補助として使用いたしたのでありまするが、先程申しましたように、檢挙の免れ難きを知つた警備員等の中の三人がその夜舎房中に拘禁されておりました他の受刑者六名をそれぞれ居房中より連れ出し、一方戒護事務室の看守部長の机の中から非常門鍵を盗み出しまして、右盗み出しました鍵をもつて西門から逃走するに至つたのであります。午前三時頃巡警の看守が非常門が明いていることを発見いたしまして、直ちにこれが逮捕の手配等につきまして、檢事局、警察その他にも連絡いたしますとともに、戒護職員を所内に立ち廻らしたのでありますが、時既に遲く、漸く十二日になりまして、その中の三名だけが逮捕されました。他の六名につきましては、既に靜岡縣を去りまして東京都内に入つて騒がしているということを仄聞いたしておるのであります。目下東京管區から三十名の戒護應援者を現場に派遣いたしまして、靜岡警察部と十分な連絡の下にこれが警戒に当つておるとともに、檢事局におきまして著々この事件につきまして捜査を進められておるような実情であります。
#6
○岡部常君 これは本事件にのみ関係することでありませんが、やはり共通の欠点が全國一般に数えあげられると思いますが、先ず第一に、拘禁の状態がどういうふうになつているか。物的設備並びに人的設備がどういう現状に置かれておるかということを御説明願いたいと思います。
#7
○政府委員(岡本善一君) 過剰拘禁の問題でありまするが、昨年四月以來、收容者の数が次第に上昇して参りました。それがために逃走その他の事故を惹起せしめたのでありまするが、收容者の数は年末ぐらいを契機といたしまして多少下つて参りました。新憲法施行直前になりまして相当数減少を見たのでありまするが、その後又最近に至りまして非常な増加を……急激な増加を示して参り、今年の六月末は全部で七万四千台であつたのでありまするが、七月末になりまして七万八千、約四千の増加を示して、更に八月の末になりまして遂に八万を突破するに至つたのであります。
 これに對しまして收容施設につきましては、戰災その他の関係から相当減少いたして、我々としては非常に窮屈な單位に元にいたしまして、臨時に收容定員を定めたのでありまするが、それが五万六千台に過ぎないのであります。かような関係で、相当過剰拘禁の程度が甚だしくなりまして、我々といたしまして軍の遊休施設その他を入手すべく極力努力して参つたのでありまするが、或いは地元の反対だとか、或いは関係方面の方で了解を得られないというふうな事情で以て、当時我々が企図した程度の收容力を増加することを得なかつたのであります。併し最近のかような顯著な増加振りに鑑みまして、我々といたしましてこれが收容力増加のために、先ず差当つて刑務所内で以て、建設の許し得るものにつきましては早急にこれを建設する。又現在或る程度敷地の目当もついておりますものにつきましては早急に予算化いたしまして、新らしく建設をしようというふうなことを考えまして、目下一部につきましては予備金、又は一部につきましては來年度の予算に計上するために、極力努力中なのであります。
 一方人の問題でありまするが、先程申しましたように、收容者が非常に増加して参りまして、殊に收容者の側におきまして、最近民主主義の誤解、その他の理由から非常に自由奔放な風潮が見えられることになつたのであります。かような関係で、人的の戒護力が非常に心許ないというふうなことを考えまして、昨年來相当数の看守の増員をはかつて参つたものでありまするが、併し最近の増加振りを見まして、到底これに比例しそうにもございません。更に又一面勞働基準法の関係などもございまするので、これにつきましても目下予備金の要求について準備いたしておりますと共に、來年度におきましては、更に徹底した増員の対策を実現して見たいと考えておる次第であります。
#8
○岡部常君 私は問題を局限いたしまして、靜岡刑務所におきまする拘禁状態、過剰拘禁というような抽象的なことだけでなく、一体平素はどういうふうな坪の割合になつているか、今はどういう状況にあるかというような具体的な状況もこの際御説明になつて欲しいと思います。又看守の方面につきましては、これは靜岡に限りませんが、やはり靜岡に目標を置きまして、その素質なり、教養の方法なり、又現在の士氣がどんなふうであつてかという点をもう少し御説明願いたいと思うのであります。又從いまして、それに対する待遇の具体的數字、又勤務状態というようなものを皆さんの御理解のいくように御説明願いたいと思います。
#9
○政府委員(岡本善一君) 靜岡刑務所を例にいたしまして御説明申上げます。同刑務所は戰災によりまして、建物の大半を燒失いたしまして、目下これが復旧工事に努力いたしておりまするが、物的の警備力というふうな点から見まして、我々の想像し得ぬ職員の努力が要り用であります。徐々に恢復はいたしておりまするけれども、現在の実情を申しますと、その定員が四百六十六名でありますのに、暴動事故の当日の人員は六百三十七名でありまして、二疊に三人の割で当時收容されていたのであります。我々は理想といたしましては、〇・九坪前後、非常にいろいろの面で窮屈になりました関係上〇・五坪一疊を標準に定員を仮りに考えて参つたのでありまするが、靜岡の実情は二疊に三人の割で收容者を收容いたしております。これがために、收容者の氣分をいらだて、或いは嚴正な刑の執行につきまして少なからん支障を來たしていたことは事実であります。一方これに対します職員でありまするが、全部で七十三名、その事務の方に二十名が割かれまして、残り五十三名で以て仕事をやつている。その中夜間は十三名で勤務して参つたのであります。而もその看守は拜命後日の浅い者が多く、五十三名の中で三十六名が一年以内という実情であります。特に靜岡におきましては看守の採用が困難なようでございまして、殊にその上に敗戰後職員の一般傾向といたしまして職場を死守しようという敢鬪精神が欠除し、又新拜命者に対する教習も十分でなかつたことは否定でき得ないのであります。尚今一つ事故の原因といたしまして、班長制度の問題であります。先程申しました通り、班長がその釈放の問題につきまして所長に要求を迫り又警備中にその一部が逃走いたしたのであります。受刑者から適任者を選定いたしまして、これを職員の補助者として使用するということは自治性の一方向といたしまして、必ずしも不可ではないと考えるのでありますが、靜岡の特色といたしまして、いわゆるやくざ氣質の受刑者が多く、これらを押えるために累犯者を班長に指名していたようでありました。職員にこれら班長を統制する力がなくなつて参りますと、班長はその本性を発揮いたしまして、遂に彼らに與えられた以上の権限を主張する、或いはその責任を忘れまして、只今申しましたような不祥事を惹起する重大原因と相成つておるように考えるのであります。尚靜岡の問題につきまして非常門の鍵を職員が盜まれたという事実、その他官紀の弛緩を想像し得るような事実もございました。この際私共といたしましては徹底的にその内情を調査し、所内の肅正を断行いたしまして、かような事故を繰返さないように努めたいと存じております。
#10
○山下義信君 只今行刑局長から靜岡事件の御報告を承つたのでございますが、承つておりまする間に私共この肌に粟を生ずるような感がいたしまして、実に容易ならんことであると思われるのでございます。刑務所のそういつたことは、かねて憂慮させられておりまして、本委員会におきましてもしばしば同僚議員から当局に御警告もあつたので、この際靜岡刑務所事件のみならず、全國に亙りまして、不穏な状態が漲つておりますることは、これは容易ならんことと存じまするので、本日は局長から事件の概要の報告がありまして、これを我々が聽取いたしましたという程度に止めておかれまして、私共その責任者でありまする司法大臣に伺いたいと思いまする点も、かれこれございまするので、次回司法大臣の御出席を委員長からお話し下さいまして、その席で、又改めて御相談申上げる点もあるかのように存ぜられまするので、かように御計らい願いたいと思います。
#11
○委員長(伊藤修君) 他に御希望、御意見ありますか。この際事実を究明しておかれる点がありましたならば…。
#12
○委員外議員(小野哲君) 丁度好い機会でございますので、私治安委員会の委員の立場から、希望なりその他の点について申上げておきたいと思います。只今行刑局長から今回勃発いたしました靜岡刑務所の不祥事件についての詳細な御説明がありまして、内容を知ることを得たことにつきましては、誠に実は残念に思つておるような次第でございます。ただ問題はかような事件が再び行われるようなことがあつては、誠に治安の問題から申しまして由由しき大事であろう。一面刑務所自体、言い換えれば行刑方面の充実を図つて行くことが必要でありますと共に、これと密接な関連がある治安維持のために、必要な施策を徹底的に行なつて行くことも大切であろうと思うのでございます。特に今回の如く脱獄囚が未だに逮捕されない、こういう状態は、経済的に誠に緊迫した状況下において、國民に対して精神的な影響を及ぼすことは見逃し得ないので、從いましてこれらの問題は單に司法当局又は内務当局の問題ばかりでなくて、今日の國民生活の根本の状態から考えまして、國家として、政府としての施策を強く行なつてゆかなければならないではないかと、かように考えられるのでございます。さような意味合におきまして、私共の属しておりまする委員会、又その委員といたしまして重大な関心を持つておりますということを、行刑局長にも申上げまして、尚先程山下委員からの御発言がありましたが、後日司法大臣等の御臨席を得る機械がありまするならば、同時に又治安維持の責任当局者もやはりこれと関連いたしまして、諸般の事情を聽取することが必要ではないか、かように考えておりますので、両委員長におかれましては予めお含みおきを願つておきたいと思います。
#13
○委員外議員(岡本愛祐君) 行刑局長にお尋ねしたいのですが、新聞によりますと、脱獄囚は何度が糯米を盜み出して、餅を搗いて、それをおのおの携帶して逃げたと、実に用意周到なのに驚くと同時に、又靜岡刑務所内の取締りの非常なルーズであるのに驚くのであります。その事実は如何なものでありますか。
#14
○政府委員(岡本善一君) 只今御指摘になりました餅の点につきましては、餅を搗きました残りの餅の一部が所内に残つておりました事実から推測いたしまして、大体それが眞相だろうと考えるのであります。只今のところ逃走者などにつきまして、刑務所当局としましては十分な調べができませんので、大体の推測をいたしておる程度なんでありますが、餅を持ち出して搗いた事実については、これを認めざるを得ないのであります。
#15
○委員外議員(鈴木直人君) 私からも二つの点について、疑問を持つておる点について御質問いたしたいと思いますが、刑務所長が相当乱暴されて取り巻かれておるということは、非常に大きい問題でありますが、先程の御説明によりますと、殆ど所長一人であつて、刑務所の幹部という人達が、全然それに関係をいたしておらない。少くとも所長がそういうふうなたつた一人で取り巻かれておるような場合においては、その幹部、その他係員というような人達も一緒に馳せ參じて、善処するということが常識的に考えられるのでありますが、その点がどうも不審に思われるということが一つ。それに関連して、刑務所長が平素所員と一体となつて、そうしてその事務に携わつていると、いわゆる本当に徳の人である、所員も慕い、刑務所長も相慕うてその職域を全うしておるという事実が、從來あつたのであるかどうか、又私は熊本の知事をやつておつたときに、あそこの刑務所を二三回視察いたしましたが、あの所長の如きは、所長の人格、徳義、性格が一に全体の入獄者の心に訴えられて、実に朗らかにお互いに「やあ」「君」「おい」というような工合で行つておるようでありまして、むしろ刑務所外における社会よりも、却つて刑務所内の方が羨ましいという感じを常に持つているというふうに、私は感じて視察いたしておるのですが、恐らく熊本の刑務所であつたならば、あの所長はそういうことは起さなかつただろうというふうに私は考えるのです。まあその人的な要素の点、一体どういうふうな所長であつたか、所長と所員、或いは入獄者と所長との関係がどういうふうであつたか、糯米で以て餅を搗いたことすら分らないというようなことは、非常に不思議に思われます。設備とか或いはそういう点も必要でありましようが、それを運營して行く上において、最も必要なのはやはりその人の問題だと思います。その点はどうなつておりますか、率直に一つお知らせして頂きたいと思います。
#16
○委員長(伊藤修君) その問題に関連して「中部日本」に、なにか釈放するのに、金を以て出所ができるとかいう記事があつたように思います。その点も併せて御説明願います。
#17
○政府委員(岡本善一君) お答え申上げます。本件の事項中における、下級或いは幹部職員の統制なんでありますが、相当の暴動になりました。受刑者が丸太などを振り廻し会議室、事務室等のガラスを破壊する等におきまして、事務室におりました職員の方も相当に鎭圧に努めたようでありますが、所長と受刑者との應答におきましては、幹部職員がその場に列席しながら、所長に対してその手助けもしなかつたというような事実を聞きますことは、私共の甚だ遺憾に堪えないところであります。平素刑務所長と刑務職員とが一体になつて、渾然として力を合せなれけば、到底受刑者の修養或いは教化の目的を達し得ないと信ずるのでありますが、その点につきまして、特に靜岡において、職員が敢鬪の精神を以て所長を助なかつたという点につきまして、非常に遺憾に存じております。
 「中部日本」に仮釈放の問題につきまして、職員に、不正があるのではないかというふうな記事が出たとのことでありますが、私共も当時新聞でさようなことを見ましたが、只今までのところ、檢事局の調べにおきましては、まだそれが眞実なりや否やということについては判明いたしておりません。事実その点について糺明をして頂けば、更に判然とするのではないかと思います。
#18
○委員長(伊藤修君) 他に御質問はありませんですか。それじやこの程度で一應休憩しておきます。
   午後零時三十六分休憩
  ―――――――――――――
   午後二時二十三分開会
#19
○委員長(伊藤修君) それでは午前に引続きまして委員会を開くことにいたします。政府委員の差支によりまして、司法省の行刑局第二課長の瀧澤勝司氏に、政府委員に代つて答弁して頂くことに御承認を願います。行刑に関する靜岡の問題、その他一般の問題について……。
#20
○松井道夫君 司法委員会におきましては、休会の期間を利用いたしまして、その委員の一部のもので名古屋高等裁判所管内の数ケ所の刑務所を視察して参つたのでありますが、その結果、我我は非常に現在の状況に即しない刻下の行刑方面に対する努力が足りないという状況を具さに見せられ、知らされて帰つて來たわけなのであります。午前中靜岡の刑務所におきまする望ましからざる事件の詳細な説明がございましたが、敢えて靜岡一ケ所に拘わらず、例えば今の名古屋高等裁判所に管内におきましても騒擾事件、或いは脱獄事件といつたようなものが発生しておるのでありまして、これが全國的にさような状況が見られる。現に事件を発生しなくともさような原因が潜んでおるのではないかというような懸念を深くいたしまするのであります。名古屋高等裁判所管内のみに限つて申すわけではございませんが、人の問題におきましても看守が非常に手不足である。殊に夜分嚴重に警戒しなければならんような関係もありまして、勤務時間が今の労働基準法に即するには遙かに遠い。さような関係から又病氣で倒れるような人も出て來る。ますます警備、行刑それ自身の上におきまして惡い影響を及ぼしておるというようなことが顯著に現われておると存ずるのであります。又金の範囲におきましても戰災で痛んだ、或いは風水害で痛めました破損個所がなかなか修理できない。殊に戰災で焼けました刑務所などは、名古屋なんか現にあつたのでございますが、ほんの薄い板で囲いました所に既決因を收容しておりますというような所もございまして、非常に警備上懸念に堪えんものがございます。結局金の問題が十分に行きませんので、これを十分な設備にすることができないということに相成るのではないかと存じます。又そういうことに関連いたしまして、今の收容力、これは午前にも話がございましたが、收容力が非常に足りない。或る刑務所で聞いたのでありまするが、最近にその收容の定員について行刑当局の方からそれを相当殖やした員数の指令があつたというようなことを聞いたのでありまするが、それも從前の施設が良くなつて、それで殖えたわけでなくて、現状におきまして、既に非常な無理な拘禁状態をしておるのに、それに対して有効な手を打つたということでなしに、定員を殖やして行つておるというようなことを聞いておるのであります。これは全國的の数字が、私の或る刑務所で聞きましたところにおきましては、定員の約倍の計算に相成る。これは勿論戰災その他で收容力が激減いたしましたのでそういうことになつておるのだと聞きましたが、午前中に伺つた数字からみますと、比率は倍というようなふうには勿論行つておらない遠い数字が出ておるようでございますが、それが果して実情に即した数字なりや否や非常に疑問を持たれる。いずれにいたしましても過剰拘禁のために重要な刑そのものの執行、その間に十分刑の教化的機能を果すことができない状態に相成つておる。更に独房で当然拘禁いたさなければならんような人達も数名一緒にしておらなければならない。その間に年少者であるますれば惡い影響も受けましようし、いろいろな惡い弊害を釀し出しておるように聞いておるのであります。
 そういつたことが事故の頻発という形になつて現われざるを得ないと存ずるのでありまして、靜岡の事件でもこれがたまたま議会の開会中に、而も新聞で大きく報ぜられましたが故に政治的の問題にもなり兼ねないような状況でございまするけれども、それに似ました幾多の事故が既に発生し、或いは將來発生寸前にあるのではないかというように感ぜられるのであります。私は詳細な今の事故の調査表とでも申しますか、そういつた御調査になつたものができておるに違いないと思いますので、事故の状況、その原因、それに対する対策といつたようなものをその都度御研究になつておると思いますが、さような資料の御提出を当局に求めたいと存ずるのであります。
 そういつた無理な状況に更に付加えまして職員の待遇が頗る不十分であるのでありまして、本当に表現としてはまずいことでございますが食えないのである。而も相当な過労を強いられまして、その責任は又極めて重い。そういう状況になつておりまして、この職員の士氣の弛緩というようなことも午前中に言われたのでございまするが、これは余程えらい所長でも頭にいない限り士氣が弛緩するのは当然ではないか、刑務職員も亦人間であります。新聞によりますれば、田中檢事事件以來ではないでございましようが、檢事におきましても非常に退官される方が殖えて來ておるというようなことが記事に出ております。檢事といえば、これは國家におきまして非常に優遇を受けておる筈の人達でございます。それよりもずつと低いところのこれらの刑務所の官吏連が非常な苦しみにおきまして今の重要な職務を担当して來ております。こういつた事態につきまして私共は非常に深く心を打たれて参つたのであります。午前は治安委員会の方と一緒でございますが、こういうことが將來ますます拡大した形において現われますならば、これは治安上の大問題でございます。只今申上げましたような点につきまして、その政治上の責任を負担しておられますところの行刑当局のお考え、又將來の改善に対するお心構えといつたようなものを拜聽したいと存ずるのであります。又附け加えまして収容力の点に関連いたしまして、最近仮出獄が非常に多いということを聞いておるのであります。私は勿論刑の目的を達成し得ますならば、早い機会で仮釈放で出してやるということは非常に良いことだと思いますし、仮出獄で出すということ自体が又刑の目的を達成いたしまする上において、それ自体非常に有効な場合があると確信いたしておりますので、仮出獄が多いということは私非常に喜びに堪えないのでございますが、併しながらこれが收容力の観点からのみ主として考えられまして、刑の効果という点が僅かしか考えられない、そういう状況でどんどん出されて行くということでございますと、又半面非常な危惧の念も湧いて参りますのであります。それで私は行刑当局に対しまして仮出獄に関する戰前、戰中、戰後に亘ります資料、その人員、今の数だけでございませんでその比率或いは刑期を三分の一経過いたしますれば出せるということになつておる筈でございますが、それが一体どれくらい平均で出されておるのか、それが戰前、戰中、戰後と比べてどんなことになつておるか、又一番重要な点と存じますのは、仮出獄中に再び罪を犯して檢挙せられたといつたようなものがどれくらいの比率であるものか、それが今戰前、戰中、戰後に亘つてどういう差異が出て來ておるのか、さような点の資料を頂戴したいと存ずるのであります。人権を確保いたします観点から、一方におきまして裁判官に大いにその人権確保という精神に徹せられまして、執行猶予を沢山付けて貰いたいという要望があるのであります。この間或る議員から執行猶予中に又罪を犯した或いはそれを取消されるといつた者が相当沢山あるというような質問書が出ておりまして、それに対する政府の御答弁は、それ程でもないのだ、併しそういうことがあつてはいけないから十分注意するという答弁書が出ておつたと存じますが、仮出獄の点におきましてもそういうことを十分考えなければならないと存ずるのであります。ただくれぐれも今の刑罰の目的を達成いたしまする意味合におきまして出す、出し得る、それを妨げない程度で出し得るということは、これは非常によいことなのでございまするから、こういうことが、ここで私が質問いたしました関係上それが大きくなりまして、非常にこれを注意されまして、條件を嚴格にするというようなことがございますると、これは又行き過ぎでございまするので、私はそれを懸念いたすのでございまするけれども、いずれにいたしましても、過剩拘禁のために仮出獄になるということがどの程度であるか、それに対する対策はどうであるか、更にその仮出獄になつた者が犯罪を犯すというようなことがあるのではないか、そういつた点に対する資料、いろいろな御意見、それを伺いたいと存ずるのであります。
#21
○説明員(瀧澤勝司君) 只今いろいろ收容力の問題、事故の問題、或いは仮出獄の問題につきまして、御質問がございましたが、只今持つております資料の範囲でお答えいたしまして、尚詳しい表につきましては、後刻お届けしてもよろしいと思いますが、先ず第一の刑務所で一体收容がどれだけできるか、收容力の問題でございます。実は戰爭前におきましては、六万八千人の收容力があつたのであります。ところが戰爭によりまして、全國大小五十二ケ所の刑務所が、多かれ少なかれ戰災に遭いまして、終戰当時におきましての收容力は約三分の一を喪失いたしまして、四万四千二百人、この程度に減少したのであります。その後御承知のように、巣鴨刑務所を接收され、尚豊多摩の刑務所を接收されまして、合計三千何百人の收容力を失いましたので、四万人そこそこの收容力しかないのであります。その後陸海軍刑務所を多少接收いたしましたり、或いは戰災後の復旧によりまして、多少回復したのでありますが、なかなかこれも思うように回復いたしませんために、非常な過剩拘禁を來たしておるような状況なんであります。実はこの四万何千人と申しますのは、戰爭前の、午前中も局長からちよつと触れましたように、〇・五乃至〇・九坪を標準としたものでありましたが、これでは到底收容定員として廣過ぎる、まあ廣過ぎるというと語弊がありますが、先ず一坪に二人という標準にこの定員を改定いたしまして、各所に收容させよう、こういうことで計算をし直しました。ところが大体二十一年度の、昨年度の末におきましては五万六千一百人、こういうふうに定員が変つて來たのでございます。ところが今申しましたように、一坪に二人、こういうことでございまするので、定員とは申しながら、或いはこれがもうこれ以上入らん。最大收容能力といつた方がよいかも知れませんが、この程度に計算いたしましても、五万六千人しか入らんのであります。ところが現在何名收容しておるかと申しますると、大体全國の未決、既決の囚人が、合計いたしまして八万人をちよつと突破しておるのであります。これは先月の末でございます。ところがこの八万人の中には構外作業と申しまして、刑務所の設備外に出ていろいろ仕事をしておるのが一万人ばかりおりますので、約七万人というものが、この新らしい定員によつて計算いたしました五万六千人の中に詰め込まれておるというわけであります。しかもその定員と申しますると、北海道の隅から九州の果てまで、而も本所、支所と、こういうところに散在しておるのを入れますので、実際問題といたしましては、東京、大阪、神戸、京都と、こういうところに入つて参ります收容者を、直ちに平均して入れるということはできないような状況なんであります。即ち北海道等におきましては、或る程度、設備の定員が定員に比して少いというところも出て來るのでございますので、殊に被告の收容者はよそへ送ることはできませんので、現実の問題といたしましては、東京、大阪、神戸或いは京都というような場所におきましては、定員の倍以上を拘禁しなければならぬというような状況になつておるのであります。比率で申しますると、これは六月の末でございますが、京都の如きは二・四一倍、大阪の拘置所におきましては一・七倍、而もこの大阪の拘置所におきましては、昨年も集團逃走を起しまして、非常な過剩拘禁でありますので、一万千五百人というものは大阪の拘置所でなしに、大阪の境市にあります拘置所の方に入れておるのであります。この一万千五百人というものは除いて、現在大阪の拘置所にあります者が一・七倍、京都もこれも一部は刑務所に入れ、尚且つ警察にも置いて貰う。全く話は逆なんでありますが、刑務所に入れ切れないで、警察に入れて貰うという状況まで呈しておるのでありますが、これも現在入つておる者にありましては約二倍の者が入つておるという状況になつておるのであります。大体の状況といたしましては、只今申しました通りの状況でありまして、具体的の靜岡の問題につきましては、午前中の話のように、二疊に三人入れておるというのが現状なんであります。何しろ五万六千しか入らん所に七万入れる、而も切り詰めた定員でありますので、実際問題としては、もうこれ以上はどうしても入らんというのが現状だと思うのであります。これにつきましては、相当沢山の收容力を増すような刑務所を増設しなければ解決できない問題なんであります。現在までのところ、でき得る限り詰めて來たのでありますが、恐らく現在程度がもうマキシマムのマキシマムだろうと思いますので、これ以上は入れませんから、どうしてもこの建築をしなければならんということになつておるのであります。当局といたしましては、ここまで追い詰めたことにつきまして、誠に責任を感じておるのであります。実は終戰直後におきましては、少しく收容者が減りまして、大体收容力と同じような程度であつたのでありますが、二十年度の末から逐次受刑者、收容者が増加して参りますので、できるだけ軍の遊休施設というようなものを手に入れると同時に、中の復興建築も促進して行きたいと、こういうような方針で参つて、軍の遊休施設等につきましても、数ケ所候補地を選定いたしまして、或いは財務局或いは縣廳等と交渉して來たのでありますが、実は刑務所をそこへ移轉するということにつきましては、現地では挙つて反対なんであります。是非來てくれという所は何処にもないのであります。大体話が決まりまして、さて現地の人と話してみますと、成る程あなた方のお立場はよく分りますけれども、強いてここに持つて來なくても外にあるでしよう。これが昔でありましたならば、縣廳或いは大藏省等の天下りの命令で、命令と申しますといけませんかも知れませんが、否應がなかつたのだろうと思いますが、現在はやはり住民大会とか何とか大会を開きまして、結局反対されまして、実際手に入れることのできましたのは宇都宮の刑務所が一ケ所、その他一、二ケ所小さい所は手に入つたのでありますが、全体の收容力として手に入りましたのは二千人もないという状況なのであります。一方、所内の復興建築におきましても予算の制約、資材の制約等を受けまして、本年度の予定建築につきましてもまあ六千人程度の回復しかできないだろうと考えておるのであります。しかし一方、こういう時勢でございますので、犯罪人はどんどん殖える、刑務所がないからといつて檢挙の手を止めるわけには行かないのが実情なのであります。そういうような結果どんどん檢挙されて入つて來る、刑務所は超滿員になる、こういうような状況が現状であるのであります。結論と申しまして、この時勢に対應するような行刑の態勢を整備しなかつた、つまり收容力を増す、警備力を増加する、増強する、こういう対策をとらなかつたことが我々の責任とは考えるのでありまするが、何と申しましても、行刑の仕事は金の問題、物の問題、同時に人の問題ということに相成りまして、極めてむつかしい問題でありますので、今日のような状況に追い込んでしまつたのであります。大体靜岡の問題にいたしましても、午前中の局長の説明にもありましたように、極めて職員並びに物的設備の警備力というものは弱まつた、こういう点にあると思うのであります。從來でありますならば、職員が、相当質の良い職員が入つて來る、又相当長い勤続をしておつて事務にも精通した職員が入つて來る、一方建物の方もしつかりしておる、又入つて來る收容者の方におきましても、一遍惡いことをして入つて來るのだからという謹愼の情が多いのであります。ところが終戰後におきましては靜岡の如きは大半を燒失してしまつた、物的の警備力というものは極めて薄弱になつた、加うるに職員の方におきましては新しく拜命した者が非常に多い、しかもこれが行刑の仕事に興味があるからというので入つて來るのではありません、生活のために入つて來る者が多いのであります。現在のこの頽廃した世の中の失業者、というと語弊があるかも知れませんが、そういう中から結局安い月給で傭わなければならん看守にこの重大な警備力を背負せなくちやならんのであります。五十三人の看守の中に、三十六人は一年未滿の看守なのであります。全國の平均から申しますると大体八千八百人ありまするが、この約半数に亘る四千七十五人、これが一年未滿の職員なのであります。こういう職員がこの設備で收容者に対するのでありますので、この收容者たるや終戰後誤つた民主主義に支配された自由放埓を民主主義の如く考える世の中の一番惡い連中を結果として集めたのがこの收容所なのであります、しかも何と申しますか、一番頽廃した一番自由民主というものを履き間違えた連中を集めて刑務所の方で処遇しなければならんのであります。この連中が自由或いは平等というものを無責任に要求する、これに対して從來のような戰爭前のような圧制というものは禁ぜられておるのであります。殊に憲法発布……施行されまして、この憲法というものが、有らゆる人権を尊重しなくちやならん、こういうことは勿論でありまするが、この人権の尊重ということを彼等は口に唱えまして、必要な、適当な規則の励行すらこれを拒む、これに対して職員が押え切れない、これが段々昂じまして、結局今まで刑務所の組織力と申しまするか、刑務所の組織による警備の力が自由平等を間違えた受刑者の勢力に負けたというのが今度の靜岡事件の眞相だろうと思うのであります。即に一定の刑務所の警備力の限界点に達して、たまたま看守の失言によつてその氣運を作つて、遂に刑務所が負けた、こういうことに存すると思うのでありまして、今度の事件も決して偶発的な事件ではないのでありまして、我々としてはこれに対して拔本的な、根本的な対策を講じなければ、悔いを後日に残すものじやなかろうかと考えておるのであります、誠に当局といたしましても無責任のようなことでございまするが、今後かかる事故が絶対にない、我々は勿論こういうことのないようにできるだけの力を盡す積りでありまするが、こういうような原因に対して発生したこの種の事故が絶対にないということは確言できないような状況が今日の状況なんであります。どうかこの点につきましても十分御了察願いまして、司法当局を鞭撻され、しかも予算等が議会に提出されました場合には、十分酌んで頂きたいと思うのであります。
 それからその次は、現在の刑務所における各種の事故、逃走事故というものはどういう程度になつておるか、こういう御質問のようにお伺いいたしましたが、実は終戰後におきましては、非常に刑務所の事故が逃走の事故が、殖えて來ておるのであります。これを表で申上げますと、昭和十八年には、全國の刑務所における脱走事件が八十二件で、この人員が九十四名であります。昭和十九年におきまして百三十九件の百四十二名という数字を示しております。二十年におきましては、これが非常に増加いたしまして四百三十二件の五百六十二名と、昭和二十一年に参りましては、更に殖えまして、四百六十四件の九百九十三名という数になつております。二十一年に特に件数に比較いたしまして人員の多いのは、御承知かも知れませんが、大阪の拘置所の脱走事件、集團脱走事件或いはその他各所における集團逃走事故が非常に多かつたので、この通りな数字を示しておるのであります。本年の統計を見ますると、半年……トータルがちよつと出ておりませんので……、大体昨年度の件数と同じくらいな件数になつております。この二十一年度の逃走の件数の内訳を見ますると、刑務所の外で起つた、つまり刑務所の塀の外へ泊り込みをいたしまして、作業をしておる構外作業と、刑務所の内において仕事をしておる者が逃げた、こういう者との件数がほぼ相半々になつておるのであります。二百二十六件の構内と、二百三十八件の構外と、こういうような表になつております。而も最近に起きますところの刑務所の事故というものは非常に惡質になつて來ておるのであります。御承知のように最近は非常に凶惡な犯罪が世の中には多いのであります。集團強盜をやる、ピストルを持つて集團強盜をやる、こういうような非常に凶惡な犯人が殖えて参りました。数字から申しますと、二十年の四月には千六百人しかおりませんでした強盜が二十二年の五月には四千五百九十六人、三倍以上も入つておる、こういうような状況なんであります。而もこの凶惡な強盜犯人が中で徒党を組んで当局に挑戰するという例は少なくないのであります。殊に神戸、大阪の如きはこの事例がときどき発生いたしまして、刑務所長以下常に武裝してこれに対処しなければならん事例が沢山あつたのであります。有名な……でないかも知れませんが、神戸の國際ギャング事件という事件の首謀者が神戸拘置所内外相呼應して、脱獄を図ろうとしたために、非常な苦労をしたと申しまするか、危險な目を冒しまして、常に武裝して刑務所長以下これに対処しておつた。又外部におきましてもこれを阻止するために武裝警官が常に配置されておつた、これが神戸におきましては遂に脱獄もできず、大阪の方へ控訴のために送られまして、大阪の拘置所に現在入つておるのでありますが、これが最近又再び脱獄を図りまして、遂に一看守が決死になりまして、本人の指を噛みつきまして、とうとう脱走を防いだというような例もあるのであります。又これも神戸の例でありますが、某看守長の如きは工場におきまして巡回中薪割りを以て致死させられたというような例も少なくないのでありまして、こういう場合に当局といたしましても、殉職に対してはできるだけ手を盡さなければならんのでありますが、最近まではこの殉職に対しても特に國家が予算を出すということはできないような状況であつたのであります。たまたま先般大藏省関係の某関税課長が殉職したのを機会にいたしまして、近くこれが國家の予算から出るという話でございますが、刑務所の職員が殉職した、これに対しても國家としては一文も特別に余計出すということは特に弔慰金としてできないような建前であつたのであります。今日の時勢におきまして、常に危險な囚人を眼の前にして働いている、看守諸君の士氣を昂揚するためには、万一そのために死亡したならば、君達の後は見てやるぞという、これだけの國家が情を持ち、それだけのことをしてやらなければならんと思うのであります。然らずしてただ徒らに、危險な場合があつたら命を的にしてやれ、死ねということは、余りに過酷じやないかと考えておるのであります。幸い今後そういうことが制度化されたので、看守の士氣を鼓舞することには、大いに役立つことと考えておるのであります。
 それからこれに関連したことでございますが、職員の士氣の昂揚のために、看守の教養訓練というものを考えなければならんのであります。而も先程も申しましたように、大半が新拜命の者である。更に近く労働基準法が適用されたのでありまするが、これに要する職員も相当増員しなければならんのであります。まあこうしますと新しい看守が相当はいつてくる。これに收容者以上の力を與えるためには、教習をうんとしなければならんのでありますが、このための看守の練習所も、本年度初めて國家の予算で計上されたような状況であります。昨年度迄は私設團体でありますところの刑務協会が、この看守の教養をやつておつたのであります。こういうような状況が職員を教養するために極めて不十分であつたということを御了承願いたいと思うのであります。
 更にその次の御質問に対して申上げたいのは仮出獄の問題でありますが、最近御承知のように非常に仮出獄が多いのであります。又この仮出獄をする理由につきましても、過剩拘禁の問題を関連いたしまして、從來よりも程度を低めるというか、標準を下げていたしておることは事実であります。大体昨年度の仮釈放は昨年六月から本年五月迄約三万六千人いたしておるのであります。月に三千人程度の仮出獄をしておるのであります。これは從來の例に比較しますと非常に多い数であります。戰爭前等の如きは、四千人ぐらいの者が一年に仮出獄になつておつたのでありまするが、一躍月に三千人も仮出獄をするというような状況になつておるのであります。これにつきまして詳しい先程の御質問の表は、いずれ調査の上差上げたいと思うのでありまするが、從つて仮出獄を取消される、取消されないまでも仮出獄をされた者が、再び犯罪をするということが非常に大きな数になつておるのであります。これにつきましては後刻詳細正確なものを調査した上差上げたいと思うのでありますが、本來の仮出獄の、実際つまり善く教化された、再犯の虞れがないという確信をもつて出すのでなくして、ある程度標準を低めたという点につきましては、過剩拘禁のためにそういうふうにしたということは、御了察願いたいと思うのであります。我々はもつとできるならば施設があり人間があるならば、もつと執行しなければならんという者まで、過剩拘禁のためになるべく出せということを指令しなければならんような状況であるのであります。そのために非常に警察或いは檢事局方面からも、非難は受けておるのでありまするが、これも止むを得ない事態だと考えておるのであります。
 大体御質問に対しましてはこの程度だと思いますが、若し不十分な點がありますれば、更にお答えいたします。
#22
○委員長(伊藤修君) 今松井議員から要求になりました資料の提出を責任をもつてお願いいたしたいと思います。
#23
○説明員(瀧澤勝司君) はい。
#24
○山下義信君 せつかくでございますので、少し勉強さして頂きたいと思います。行刑局の組織というものは私はよく存じないのでありますが、あなたのお名前を事務局で承りますと第二課長でいらつしやる。この第二課というのはなにをしますところでありますか。
#25
○説明員(瀧澤勝司君) 第二課と申しますと刑務所の警備の問題であります。それから作業の問題、現在のところそれに加えましていろいろ衣食住の方の問題とお医者さんの方も担当しておりまして、刑務所の現場の殆ど大部分が第二課に入つております。こういうような状況になつているのであります。
#26
○山下義信君 分りました。そうすると今の脱走事件というようなものが起きますと、それが刑務所から報告が、電報かなにかで本省へまいるのでありましようが、それはどういうふうに処置されるのでありますか。なにか具体的な処置をされまするルートと言いますか、順序と言いますか、極く簡單にお示しを願いたい。
#27
○説明員(瀧澤勝司君) 現在司法省の下に行刑管区というのがあります。これは大体控訴院所在地のところに行刑管区というのがありまして、この管区長というのはその場所にありますところの刑務所長が兼ねているのであります。つまり名古屋で申しますと、名古屋の刑務所長が名古屋の行刑管区の管区長になつておりまして、これが中間監督機関として存在しているのでありますが、脱走事件等につきましては司法省にも電報で直ちに報告する。それからそれについて簡單な報告は文書にして更に追送するということになつておるのであります。詳しい報告につきましては、行刑管区長の方に勿論これも電報でもやりますし、詳しい報告は行刑管区長が受け取りまして、果してその事件の処理が適切であつたかどうかということについて調査し、足りない点は補足する、こういうような仕組になつております。
#28
○山下義信君 その行刑管区長というのは刑務所長でありますね。そうすると刑務所長が自分へ報告するのでありますか。行刑管区長というのは刑務所長が管区長に当つているのでありますね。そうすると脱走事件の起きました刑務所長が管区長たる自分に報告するのでありますか。
#29
○説明員(瀧澤勝司君) ちよつと私の説明が足りなかつたと思いますが、東京の例で申しますと、小管の刑務所長が関東行刑管区長を兼ねているのであります。靜岡刑務所は関東の行刑管区長の指揮下にありますので、これを関東行刑管区長でありますところの小管の所長に報告すると共に、司法省にも報告する……。
#30
○山下義信君 そうすると一人が二役の場合と別の場合がございますね。管区長の下に刑務所長が沢山ある場合と、兼務している場合とある。その管区長限りで処置しまする限度と、それから上の方へ、本省まできまして、本省から又処置を命令します限度というものがなにかございますのですか。
#31
○説明員(瀧澤勝司君) はつきりしたものはないのでありますが、大体原則といたしましては、刑務所に起りました事故等につきましては、直ちに行刑管区長がそれを調査しまして、どういう点に欠陥があるかということを調べて……。
#32
○山下義信君 今の靜岡の場合ですと…………。
#33
○説明員(瀧澤勝司君) 靜岡の場合では、これは勿論行刑管区長もそれに対して監督しなければなりませんが、事件が大きい問題でございますから、司法省からも直ちにこれは調査をいたさせ、又それに対し司法省としても処置をとらなければならん。こういうことになるのであります。
#34
○山下義信君 そうすると靜岡の場合にはどういうことになつておりますか、本省の方の御処置は。
#35
○説明員(瀧澤勝司君) 事件が新聞に出ましたのですから、直ちに司法省と行刑管区から一人づつ調査に参りました。それでその後その調査の報告と又刑務所長、檢事正なんかの報告によりまして、これはただ行刑管区長に委しておいては適当じやないということで、本省から特に事務官を派遣して、同時に行刑管区からも一人職員をその補佐としてやつて双方で今処置しているのであります。
#36
○山下義信君 人を派したということは今日午前中に大体承つたのでございますが、私のお尋ねいたしますのは、靜岡でこういう事件が起きた、今のお話ですと新聞で御承知なさつたということであります、私は新聞でもよろしうございます、その報告が來た、それは課長で計られますのか、或いは行刑局長で計られますのか、例えばその事件をどの程度にお扱いになつたか、事務官というのはどの程度の事務官が、これは甚だ穿つようなことを伺うようでございますが、素人で存じませんので、どの程度にその事件をお考えになつて、どの程度の事務官を御派遣になつたか。これは重大と見て取つて当該主管課長が行かれたか、或いは局長が又上司にこれを報告して、急遽何等かの具体策をとられたかという、司法省内において監督官廳としてとつた処置がございますれば承りたい。その事務官を派遣されました程度によりまして、重大と御覧になりますれば、課長御自身おいでになる、或いは局長が出向き、大臣が出向く場合がございましよう、それをどの程度にお扱いになりましたか、その事件の扱い方の、あなたの方の事務の処置方を承りたい、こう思うのであります。
#37
○説明員(瀧澤勝司君) 靜岡の例で………。
#38
○山下義信君 今度の靜岡事件でお話願いますれば大体が分ります。尚最前松井君から最近の事件の数並びにそれを処置した状況の報告を要求せられたようでございますが、從來もあつたことでございましよう。いろいろ御処置なさつたこともございましようが、私の今この席で伺いますのは、靜岡事件に対しまする本省の取扱い方、どの程度にこれをお扱いなさつたかということを承りたい。
#39
○説明員(瀧澤勝司君) 七日の朝、当日は日曜日だつたものですから、新聞で私は見まして、直ちに靜岡に電話を掛けて見たのであります。ところが靜岡にどうしても電話が通じないのです。それで関東の行刑管区へ電話をかけましたところ、ここに副長という者がおるのですが、これが出まして、実は自分の方にも電報は入つていないが、事件が起きたから誰かやろうと思つておつた。我々の方も一緒に出すということで七日に直ぐ出したわけでございます。それで八日に刑務所長と檢事正が上京されて参りまして、そこで行刑局長の部屋におきまして、これを如何に処置すべきかということを皆で檢討したわけでございます。丁度その日私は外の用事がございまして、他所へ出ておりまして、その席にはおらなかつたのでございますが、檢事正、局長が協議されまして、これは司法省の方針としても強硬態度で以て臨む、たとえ刑務所長の意見と多少違つてもこの事件は司法省としてそのまま部下に委せておくことはできないので、誰か司法省の意向を傳え、これを実行させる者をやらなければいかんということで、その席に私おりませんでしたから、私の直ぐ下におりますところの二級の事務官、これは元檢事でございます、これが行刑局長の意を承け、又我々の意向を実施するために靜岡の刑務所に参りまして、又一方におきましてはああいう事件が起きて來ましたので、所長もそのまま置くわけにもいかないので、新任の所長が來るまで、やはり司法省の意向を誰かそこではつきり傳える、同時に又善後適切の処置をしなければならんとこういう意味で次席の事務官が行つておる。
#40
○山下義信君 私は何もお責めするわけではございませんが、その意味で聽いて頂きたいのでございますが、靜岡の刑務所の不穏の状況というものは、予めお分りになつていらつしやいましたでしようか、七日の朝の脱走事件が起きて、初めてお分りになつたのでございましようか、予め前から不穏の状況というものは分つておりましたのでしようか。
#41
○説明員(瀧澤勝司君) 甚だ手落ちだつたのでございますが、その以前には実は知らなかつたのです。それ程急迫したものではないだろうと思つておりました。これは我々の手落ちでした。
#42
○山下義信君 ちよつとこれも私お責めするわけではないのですが、解せないのでありますが、もう只今の統計でもお示しの通り、一ケ年に何百という脱走事件がある。して見ますると今日の各刑務所というものが必しも靜謐の状態でないということが常識上分りますが、今年の一月から七月迄の事件、そこにトータルが出てないとおつしやいましたが、私の持つております資料では事件二百七十件で、七月の末までで四百五名の脱走者がある。そういうふうに頻々としてあるのでございますから、この靜岡の刑務所の状況なども、状態が分つておらにやならん。然るに仮釈放者の者を申請してどつと出して來る。その中に直ぐ八月の末に出す者と十月までに出す者と二段に差別して申請する、それが一緒の申請であつたと思います。八月二十五日に一齊に出して呉れということで、書類の上で仮釈放者を出しますその期日を、一つは即座に出すようにし、一つは二ケ月近くも先に延ばすという差別的の事例を聞いたら果してどういう事態が起るか、それでよいかということの御檢討が所管の主務のお方にあつたものかないものか、一層平穏無事の時代のような事務のお取扱いのように私どもには受取れる。この辺の御配慮というものがあるかないものか、且つ又脱走がありまする都度に、ずつとそれぞれ処置をなされ、おいおいそういう事件が段々多くなつて來れば、事容易でないというので、何が具体的な対策というものがお立てにならなければならんとこう私は考える。これは私は今朝も委員長に御依頼して置きましたから、その辺のことは又私ども御当局に伺いたいと思いますが、課長からそういうふうな省内の処理の仕方というものを打ち明けて一つお話下さいますれば、何も責めるばかりが能じやございませんので、大いに協力したいことは協力したいとこう思います。どういうふうになつておりますか。
#43
○説明員(瀧澤勝司君) この責任などの取り方でございますか。
#44
○山下義信君 左樣でございます。
#45
○説明員(瀧澤勝司君) 脱獄事件などございますと、その責任者は一應手続書というものを出すのです。これは所長は全部の責任について出しますし、部下の者におきましては、第一番に課長とか、或いは直接受刑者を取扱つた看守とか、こういう者は一應司法省に手続書を提出いたします。まあ從來の判任官以上、つまり看守長以上でございますが、司法省の方で懲戒委員会を開きまして、これに対していろいろ当時の状況等を調査いたしまして、重い者は罰する、殊にひどい者は轉任さすとか、否罷めさせるとか、そういう方法もとりますし、又当時の状況からみまして、これは止むを得ないということになれば、不問に附することもあるのでありますが、それから看守にとりましては、各刑務所に懲戒委員会がありまして、事案を審査いたしまして、その状況によりまして、やはり同じような非常に不注意であつた、勿論こういう者の責任は刑事問題でありますが、不注意だという者に対しては、懲戒免職いたしますし、減俸にもいたします。又できるだけの注意はしておつたけれども、やはり逃げたという場合には爾今注意するように注意だけをして、特に懲戒の処分をとらんというようなこともあります。
#46
○山下義信君 もうこれでおしまいであります。今の追加予算になにかこの行刑方面のことで御要求になつておりますものがございますか。
#47
○説明員(瀧澤勝司君) 実は追加予算が編成されましたのはもう大分前のことでありまして、初めの予定では、八月一杯に成立するだろう。こういう見込でおりましたことが大分遅れましたので、更に今非常に予算的に困つておる点があるのであります。と申しますると、本年度の予算を編成いたしましたのは、昨年の秋頃のことなんでございます。それでその予算を編成いたしまして、まあ本年度の予算が成立したのでありますが、行刑の方の予算と申しますと、食べる問題とか着せる問題とか、それから燃料の問題とか、こういうものが非常に大きなパーセントを占めておるのであります。それが非常な値上りのために、もう本年度の前半期も經たずに全部使つてしまつたというような状況でありまして、我々としましては、これの値上りに要する費用というものを、全部追加予算に一應組んだわけでございます。それでこの追加予算が通つたならば、九月か十月の初めには現実に予算になるだろうと思つておつたところが、延びましたものですから、すでに予算がない。なんとか予備金の前渡しというような恰好ででも出して貰わなければ、米も買えない。麦も買えない、石炭も、燃料も買えない、飯を食わせることができない、こういうような極めてせつぱ詰まつた状況になつておるのであります。
#48
○山下義信君 増築なぞの予算は全然見てないのでありますか。
#49
○説明員(瀧澤勝司君) 増築の予算は、予備金要求と申しますか、追加予算を組んでしまつてから出したものですから、今の予備金の方に要求をする準備をしておるのであります。やつと省議で決まつた程度であります。
#50
○山下義信君 その金額はどのくらいでありますか。
#51
○説明員(瀧澤勝司君) 建築関係は会計課の方でやつておりますので……、大体それをひつくるめまして、來年度の要求は、建てて貰いたいという刑務所は約三万人くらい容れるだけの設備を作らなければいかんということになると思いますが、これを現在の建築予算等を標準にいたしますと、恐らく三十億くらいの金額になるのじやないか、こういうふうに考えられるのであります。今日の日本の情勢として、果して刑務所の建築のためにそれだけ予算が出し得るかどうかということは、相当問題だろうと思うのでありますが、いずれにいたしましても本当に治安を確保し、收容者と雖も、基本的な人権を尊重してやり、普通の行刑をやつて行くためには、それだけの施設はどうしても建てて貰わなくちやならんし、又それに要する職員或いは食糧、燃料というようなものも確保して貰わなければいけないのじやないかとこういうふうに考えるのであります。いずれにいたしましても、今日のようなこの混乱した、而も道義の頽廃した今日の時勢で、犯罪人はどんどんできて來る。これを旧來の考えと同じような標準で、どんどん処罰して行く、これは收容者というものは、受刑者というものは、殖えるのは当り前だと思うのであります。これを根本的に犯罪のできないような政策をして貰うとこういうことが大事だと思うのでありますが、この状況が続くならば、どうしても犯罪人の最後の取締り場所であるところの行刑というものは、十分それに対應するだけの態勢を整えて行かなければならんと考えておるのであります。
#52
○大野幸一君 收容能力のところでいろいろ御説明願いまして了解いたしましたのですが、この仮出獄を、刑期三分の一勤めたときに、刑務所の方から何か既決囚の成績なんかを上申せしめられておるでしようか。それともそれはただ当該刑務所長の認定に委されておるのでしようか、どちらでしようか。
#53
○説明員(瀧澤勝司君) 仮釈放、刑法上の言葉でいうと仮出獄でございますが、これの許可権は司法大臣にあるのであります。從いまして刑務所長がこれが仮釈放に適するということになりますと、仮釈放の上申書というものを司法大臣に提出することになつております。司法省におきましては提出されました書類を審査いたしまして、適否を判定して、そうして適するという者につきましては、現地の刑務所長に指令を発しまして、刑務所長はこれに基いて仮釈放を執行するのであります。從來はその仮出獄の審査書類というものは非常に綿密な詳しいものであつたのでありますが、一年に三万人もやるとか、四万人近くもやるということになりますると、これに掛りまするところの職員というものもそれ程数がありませんので、段々事務簡捷の都合からいたしまして書式も簡單になつて参りまして、現在は半罫紙一枚ぐらいのところにいろいろ本人の犯罪事実とか、或いは入つてからの成績というようなものを書くような手続にしております。
#54
○大野幸一君 私のお聽きしたことは三分の一勤めた者が全部一應その状況を具申せしめるというのじやなくて、只今の御説明では、三分の一勤めても、あながち刑務所長が上申して來るとも限らない訳ですか。
#55
○説明員(瀧澤勝司君) 三分の一勤めた者については全部出すという意味ではありません。
#56
○大野幸一君 具申書を全部出すというのではありませんか。
#57
○説明員(瀧澤勝司君) 出しませんで、刑務官会議というものがありまして、その席上で決めて出してこれはやろうというふうにしております。
#58
○大野幸一君 それから次に今度の視察をした結果感じたことで、御参考に申上げて置きたいと思うのですが刑務所を増築し、人員を殖やす、こういうことが、皆が一番いいというように考えられておるのでありましよう。併しここに物もなくて、人間を殖やさないで、一つ成績を上げるという方法についてどうしたらいいかという工夫がまだ足りないかと思うのであります。というのは、先程御説明になりましたように、金もなし、物もなし、設備もなし、同時に人もというお説があつたのであります。併し私はむしろ人が第一だと、こう考えるのであります。その人という意味も、看守のいわゆる第一線に当られる人の意味の人ではなくて、監獄の長たる人の徳如何によつては、相当囚人に及ぼす影響が大なるものであると考えておるのであります。こういう意味において長を選ばれることに対して、一つあそこに入つておる人は、岡部委員のお話によると惡いことをした人には違いないけれども惡い人ではない、こういう説明を聞きまして私は非常に感動したのでありまするが、由來檢事は犯罪事実を調べて……それから檢事がどうも刑務所長になると、やつた時からのことをよく知つておるものだから囚人を罪惡人視する。こういう長が座つておるとなんとなくやはり囚人は咎められておるのであります。あそこまで入つていて咎められていてはたまらないので、そこで改過還善というものは行われないのじやないかと私は考えるのであります。こういうことを痛切に考えます。それで監獄の長たる人が全く咎めない氣持の人が所々に見受けられたのであります。私が今回伺いました所々の所ではそういう非常に立派な人だと思つたのでありますが、中には話を聞いて見ますと、相当どこまでも囚人を惡い人間と咎めておるような氣持で監獄の長を勤めておると、その囚人の受ける感じが非常に和やかさを欠いておる、こういうのでありまして、今後の長というものはあながち檢事ばかりでなくて、むしろ裁判官として判事さんなんかを一つやるとか、或いは又社会事業家を一つ長に据えて見る、こういうような方面から一つ考えて貰つて、そうしてやあ物がないからとか、家が建たないからとかこういうことばかりを考えないで、一つ工夫をして頂く、こういうことを一つ申上げて置きたいと思うのであります。
 それから序でに一つ、二三年前から婦人が監獄の長となられたようですが、これに対する成績の御感想を承われば結構と思います。
#59
○説明員(瀧澤勝司君) 勿論物も金も必要だし、その上に良い人間がなくちやならんということは私も同感であります。お説のように同じ状況でありましても人徳の高い刑務所長でありますれば、そういう事件も起らんということは、これは言い得ることと思いますので、刑務所長に適任な刑務所長を得る、これは現在の刑務官或いは判檢事だけでなしに、廣く一般から適任者があつたら是非なつて頂きたいと、これは私の個人的な意見でございますが、是非そういうようにして頂きたいと思うのであります。昔から行刑は教育だ、結局刑務官は、立派な人格者でなければいかんということをもうずつと日本の行刑では言われて來ておるのであります。そういう意味におきまして立派な人格者をどうしても得なくちやならんという点につきましては我々も大いに努力いたしたいと思いますし、又そういう立派な方がございましたら是非なつて頂きたいと思うのであります。
 それから次の女の刑務所長はどうかというこういう問題でございますが、これも私の個人的な意見になるかも知れませんが、少くとも女の心理をよく理解し、又男では分らんようないろいろの細かい点について十分注意されておりますので、非常に成績は上つておるように考えております。
#60
○鬼丸義齊君 刑務所長の問題は大分重要な問題であるからこの際後に引続いて又質問をしたいことも沢山あろうと思いますので一應委員会を懇談会にしてやつて頂きたいと思います。
#61
○委員長(伊藤修君) それでは明日午前十時から司法委員会を開きます。本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時四十分散会
  出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
           平野 成子君
  委員外議員
           岡本 愛祐君
           小野  哲君
           鈴木 直人君
  政府委員
   司法事務官
   (行刑局長)  岡本 善一君
   宮内府事務官
   (内藏頭)   塚越 虎男君
  説明員
   司法事務官
   (行刑局第二課
   長)      瀧澤 勝司君
ソース: 国立国会図書館
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