くにさくロゴ
1947/09/23 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第24号
姉妹サイト
 
1947/09/23 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第24号

#1
第001回国会 司法委員会 第24号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
  ―――――――――――――
  委員の異動
九月二十日委員平野成子君辞任につ
き、その補欠として中村正雄君を議長
において選定した。
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月二十三日(火曜日)
   午前十一時一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○民法の一部を改正する法律案
○家事審判法案
  ―――――――――――――
#2
○理事(鈴木安孝君) これより委員会を開会いたします。本日は委員長が不在でございますから、私が代つて取扱います。前回に続き、民法の一部を改正する法律案の御説明を政府委員から伺うことにいたします。
#3
○政府委員(奧野健一君) それでは前回の続きを御説明いたします。
 今日は第五編相続の編からであります。この前にお話を申上げましたように、今回家の法律上の制度を止めた結果、戸主権の承継である家督相続の制度を止めることにいたしたのであります。家督相続の制度は、家の戸主権の承継と、及びその戸主の持つております財産全部をその家督相続人一人に承継せしむるという制度でありますが、戸主権の承継ということがなくなつた結果、及び一人のみに全財産を承継せしむるという制度もやはり個人の平等という点から適当ではないというふうに考えまして、家督相続を止めて財産はすべて遺産相続になりますが、その遺産相続はいわゆる諸子均分相続ということにいたしたのであります。尤も直系卑属だけが家督相続人になるのではなく、配隅者があれば配隅者は常に家督相続人の中に加わる、いわゆる直系卑属があれば配隅者と直系卑属が相続人になる。又直系卑属がない場合には直系尊属と配隅者、又直系尊属がない場合には兄弟姉妹と配隅者が相続人になるというふうな建前で、すべて財産は遺産相続ということにいたしたのであります。
 そこで、條文は家督相続に関する現行法の九百六十四條から九百九十一條という規定を全部削除いたしたのであります。そうして大体現行法の遺産相続の規定の條文を繰り上げたのでありますが、遺産相続の中に現行法の家督相続に関する規定を準用いたしておる、その準用になつておる分を、遺産相続の中に織り込んだと御了解願いたいと考えます。
 そこで八百八十二條というのは大体現行法の九百九十二條に該当いたしますが、「家族」という字を止めたわけであります。
 それから八百八十三條というのは現行法の九百九十三條で準用しておる分を表に出したのであります。家督相続の規定の準用を表に出して、いわゆる家督相続に関する九百六十五條に該当する規定を本文の方に出したわけであります。
 それから次の八百八十四條と申しますのは、現行法の九百六十六條に該当する規定をここに移したわけであります。相続回復に関する規定であります。
 次の八百八十五條というのも現行法の九百六十七條の規定をここに準用ではなく表に出したわけであります。
 次の「相続人」でありますが、八百八十六條、これは現行法の九百六十八條の規定をここに準用から止めて、本文に出したわけであります。
 次の八百八十七條でありますが、これは現行法の九百七十條に該当いたす規定であります。
 次の八百八十八條は九百七十四條に該当する規定でございます。
 そこで次の八百八十九條から内容がやや変つて参るのでありまして、先程ちよつと触れましたように、家督相続を止めてすべて遺産相続になりまして、その遺産相続人は直系卑属がある場合には直系卑族、而してその他に配隅者があれば直系卑属と配隅者、直系卑属がない場合には直系尊属、その他に配隅者があれば直系尊属と配隅者、そうして直系尊属がない場合には兄弟姉妹、尚配隅者があれば兄弟姉妹と配隅者、これらが同順位で相続人になるというふうにいたしまして、從來と変りました点は、從來は直系卑属がある場合には、直系卑属のみが遺産相続人になりまして、配隅者があつても配隅者は相続人にならない。ところで直系卑属がない場合には、現行法ではその次に配隅者のみが相続人になりまして、たとい直系尊属がありましても直系尊属は相続人にならないで、配隅者のみが相続人になる。そうして直系尊属がない場合には戸主が最後に相続人になるというのが、現行法の遺産相続の規定でありますが、これは適当でないと考えまして直系卑属、直系尊属、直系尊属のない場合は兄弟姉妹、いわゆる戸主に代つて兄弟姉妹が相続人になることにいたしました。その他に配隅者は常に直系卑属、直系尊属。或いは兄弟姉妹と同順位において相続人になる。即ち夫婦の財産は、やはり夫婦の協力によつてできたものであるという前提からして、配隅者を全然除外するということは適当でないので、常に配隅者がその相続の一部分に與かるという建前を採つたわけであります。即ちそれが八百八十九條であります。
 次の八百九十條、これが先程申しましたように、新らしい規定でありまして、常に配隅者は相続人になる。この場合に直系卑属がある場合には直系卑属と同順位、直系尊属がある場合には直系尊属と同順位、直系卑属も直系尊属もなくて兄弟姉妹がある場合には、兄弟姉妹と配偶者が同順位で相続人になるというのが八百九十條であります。從いまして、八百八十九條、八百九十條という規定が新らしい規定になるわけであります。
 次の八百九十一條と申しますのは、現行法の九百六十九條がそれに該当するわけで、要するに相続人となることができない者に関する規定でありまして、これは現行法の九百六十九條が遺産相続について九百九十七條で準用されておつたのを表に出したわけであります。
 それから次の八百九十二條、これは相続人廃除の規定でありまして、現行法の九百九十八條に該当する規定であります。
 次の八百九十三條は現行法の九百七十六條、遺言で相続人の廃除ができるという規定であります。
 次の八百九十四條というのは、九百七十七條に相應する規定であります。相続人廃除の取消しに関する規定であります。
 次の八百九十五條は、現行法の九百七十八條に関する規定であります。
 次に「相続の効力」でありますが、八百九十六條は、現行法の千一條に該当する規定であります。
 次の八百九十七條というのは、新らしい規定でありまして、いわゆる系譜、祭具、墳墓の所有権、これは家督相続人の特権に属する事項として、これだけは必らず家督相続人が承継することになつておつたのであります。ところが、家督相続を廃止することになつたので、このいわゆる家督相続人の特権に属する所有権を何人に承継せしめるかという問題が生じたのであります。ところで、家の制度は止めましたが、我々の祖先崇拜、祖先の祭祀をするという風習は、これは我が國の美風であつて、これを否定する理由は毫もないのであります。そこでやはり祖先の祭り事を継ぐという慣習を活かして、これに必要なる財産をその祖先の祭祀を見る人に承継せしむべきで、これを他の相続人と一緒に分割せしむるということは適当でないので、必らず祖先の祭祀を主宰すべき者に承継せしむるということにいたしたのが八百九十七條であります。然らば何人が祖先の祭祀を主宰すべきものであるかということにつきましては、まず被相続人が、死亡した人が、予め誰を自分の祭り事を見て貰う人とするかということを指定しておつた場合においては、その者がこれを承継する。若しそういうふうに指定がない場合においては、慣習によつて、例えば長男であるとか、或いは末子というふうな、その地方々々における慣習によつて決まる。尤もその慣習が明らかでない場合においては、家事審判所がこれを決めるということにしまして、祖先の祭祀を継ぐ者がこれらの所有権を承継して、それ以外の財産が各子供に分配されるということになることにいたしたのであります。
 次の八百九十八條は、現行法の千二條に該当いたします。共同相続人の場合の共有に関する規定であります。
 次の八百九十九條は、現行法の千三條に該当するもので、現行法通りであります。
 次に「相続分」であります。共同相続人がある場合に、その相続分をどういうふうに決めるかという点を規定したのが九百條でありまして、大体現行法の千四條に該当する規定でありますが、これは全く新らしく内容を規定いたしたわけであります。即ち直系卑属、いわゆる子供とそれから配偶者がある場合においては、子供は三分の二を取つて、残りの三分の一が配偶者の相続分になるわけであります。即ち子供が二人の場合には、子供が各各三分の一ずつ、配偶者も三分の一ということになります。ところが、子供が三人ということになれば、子供の三人で三分の二を分けるわけであります。そうなると、配偶者の方が三分の一になりますから多くなるわけであります。子供が一人のときには、配偶者は三分の一で、三分の二を子供が取るということになるわけであります。
 次に配偶者と直系尊属とある場合においては、配偶者の相続分と直系尊属の相続分は各各二分の一ずつであります。そこで配偶者が二分の一、残りの二分の一は、若し父母両方ある場合においては更に二分の一ずつになるわけであります。父又は母がある場合には、配偶者二分の一、父又は母が二分の一になりまするが、父母双方がある場合においては、その二分の一を更に半分ずつというこうになるわけであります。
 次に配偶者と兄弟姉妹のある場合には、今度配偶者の方が多くなりまして、三分の二を取つて、残りの三分の一を兄弟姉妹が平等に分けるということになるわけであります。而して先程言いました直系卑属、それから直系尊属、兄弟姉妹、これらが各各数人ある場合には、相続分は相等しいものといたしたのであります。即ち子供が三人あれば、三分の二の更に三分の一ずつ、父母がある場合には、二分の一の更に二分の一ずつていうことになり、兄弟姉妹が数人ある場合には、三分の一を数人で平等に分けるということになります。ただ直系卑属の中で、嫡出の子供とそうでないいわゆる私生兒、庶子、もうそういう言葉はなくなりましたが、嫡出とそうでないものとある場合には、嫡出であるものの直系卑属の相続分の二分の一を嫡出でない者が相続することになります。この点は諸子均分という平等の原則に違反するのではないかという議論もありますが、やはり正当な婚姻から生れた子供とそうでない子供との間において区別をするということは、これは正当な婚姻を奬励尊重するという上から、各國そういう取扱いをいたしておるところでありまして、これは必ずしも憲法に違反するものではない。要するに嫡出でない子供を相続人の中に入れることが第一非常に問題であるのでありまして、相続人の中に加えるかどうかということは法律を以て自由に決め得ることでありますから、そういう者について嫡出である者との間に相続分の差異を生ぜしめても憲法違反ではないというふうに考えておるわけであります。
 次に、後段に、同じ兄弟姉妹の中で、父母を共に同じくする兄弟の場合と、父母の中一方のみを同じくする兄弟と、いわゆる全血と半血、全部の血を同じくする者と、半分の血を同じくする者との間において差異をつける、これは各國の立法例におきましてもそういうふうになつておりますので、やはり結局自分の子供、自分の尊属がなくて自分の兄弟が自分の財産の相続人になるわけでありますが、その場合に同じ兄弟の中でも自分と父母を共に同じくする兄弟と、父母の一方だけを同じくする兄弟の間において、やはり血の繋がりからいつて全然同列に置くことは適当でないし、又その被相続人の感情から申しましても、自分と父母を共に同じくする兄弟の方に多くありたいという氣持もあることは否み難いことでありますから、各國の立法例に倣いまして、父母を共に同じくする場合と一方だけを同じくする場合において差異をつけたわけであります。
 次の九百一條は、これは大体現行法千五條に該当する規定であります。
 次の九百二條は、遺言で今申しました相続分を変更することができるという現行法の千六條の規定をそのまま採つたわけであります。尤も遺言で相続分を変えることができますが、これはやはり後から出て参ります遺留分の規定に反することは許されないわけであります。
 次の九百三條は現行法の千七條であります。ただ現行法の千七條の中から「分家、廃絶家再興ノ爲メ」という文字を削除しただけであります。いわゆる共同相続人を決める場合に、すでにその中の或る者が婚姻とか養子縁組のために財産を分けて貰つておるような場合は、それを勘定に入れて相続分を決めるという規定であります。それが現行法の千七條の規定を大体採用いたしたわけであります。
 次の九百四條と申しますのは、現行法の千八條にそのまま該当するわけであります。
 次の九百五條というのは、千九條に該当するわけであります。
 次に「第三節、遺産の分割」であります。九百六條、九百七條、これは大体新らしい規定であります。
 遺産の分割はこれは必ずしも現物で分割しなければならないものではないのでありまして、先ず協議で以てこれを分割するのでありますが、その遺産に属する者又は権利の種類、性質或いは各相続人の職業等一切を考慮して適当に分ける、例えば店舗のようなものを現物分割することはできないのでありまして、こういうものは或る一人にその店を讓つて、他の者は金で分配する、或いは又場合によつてはその不動産一ツしかない場合にこれを賣却してその金で分配する、或いは又共同で共有にして置くというふうなことも一種の分割でありまして、物又は権利の種類、用途等に應じて適当に分割をするという分割に関する標準を決めたのが九百六條であります。
 次の九百七條は、現行法の千十一條に該当する規定でありますが、要するに遺産は一應八百九十八條で共有になりますが、いつまでも共有にして置くことができませんので、いつでも分割の請求ができる。而して分割は被相続人相互の話合いで分割をする。その分割の基準は九百六條にあるような方法で分割の話合をする、ところが話合いが纏まらないときは家事審判所に分割の請求ができる。而して家事審判所は場合によつては一定の期間遺産の全部又は一部を分割を禁止することができる。即ち農地につきはしては別に農業資産の相続の特例に関する法律を出してこれが細分化されることを防ぐのでありますが、その他の例えば店舗であるとか、商賣であるとか、そういうもについて場合によつては分割を適当としないものが多々あろうかと思うのであります。そういう場合には家事審判所は分割を禁止するという途も認めて行きたいという考えであります。
 次の九百八條は現行法の千十條、千十一條であります。勿論被相続人は遺言で五年の期間を越えない間は分割を禁止することができる、これは現行法通りであります。
 次の九百九條は現行法の千十二條に該当するわけであります。千十二條とやや異なりますところは、但害をつけたことであります。これは例えば甲乙丙という不動産がある場合に、一應は分割前は相続人の共有であります。そこで相続人の中の一人が、甲の土地の自分の共有の持分について抵当権を附けたいというふうな場合に、その後分割の結果その甲の不動産は全然別の、いわゆる抵当に入れた人に属しないで、外の人に分配されたという場合に、その分割の効果は相続のときに遡つて効力を生ずるということになりまして、結局その結果抵当権を附けた人に初めから属していなかつたことになる。從つてその共有の持分を抵当に取つた人は、全然初めから所有権のない人から抵当権の設定を受けたことになつて、その抵当権は初めから無効であるということになつては氣の毒でありますから、そういう場合でもその第三者の権利は害しない、いわゆる他の人に不動産の所有権が分割されて移つても、その持分の上の抵当権は消えないという意味で但書を附けたのであります。これは現行法にもそういう問題があるわけでありますが、現行法の不備とされておつた点を附加えたわけであります。
 次の九百十條、これは新らしい規定でありまして、相続が開始になつてから私生兒を認知したという場合は認知の結果、出生のときに遡つて嫡出の子供であつたことになります。そうなると、初めから嫡出子として相続人になつておるわけでありますから、そういう場合は相続の分割に預かることができるわけであります。ところが、もうすでに分割に着手してしまつておつたような場合においては、更に分割のやり直しということは徒らに法律関係を混乱せしむることになりますから、そういう場合には價額によつて他の者からその相続分に相当するものを分配して貰うということにしたのが九百十條であります。
 次の九百十一條は大体千十三條に該当いたします。
 次の九百十二條は千十四條に該当いたします。
 次の九百十三條は千十五條に該当いたします。現行通りであります。
 次の九百十四條は現行の千十六條、そのままにいたしました。
 次の「相続の承認及び放棄」、これは大体現行通りでありまして、九百十五條というのが現行法の千十七條に該当いたします。ただ「裁判所」とあるのを「家事審判所」に直したに過ぎないのであります。
 次の九百十六條は千十八條に該当いたします。現行法通りであります。
 次の九百十七條は、現行法の千十九條、現行法通りでございます。
 次に、現行法で申しますと千二十條というのがあります。これは家督相続が放棄ができないことになつておりますが、これは今度は全部遺産相続になりましたので、この放棄ができないという規定を消除いたしたのであります。でありますから、千二十條に該当する規定はなくなつたわけであります。そこで相続は、放棄は自由にできるということにしたしたのでございます。
 次の九百十八條は現行法の千二十一條に該当するわけであります。
 次の九百十九條は現行法の千二十二條に該当いたします。
 次の「承認」は、やはり現行通り「單純承認」と「限定承認」に分けたのでありますが、單純承認の九百二十條、九百二十一條は全く現行法の千二十三條、千二十四條通りであります。
 次の「限定承認」であります。これも大体現行通りでありますが、ただ共同相続人が今度は多かろうと思いまして、共同相続人の場合の限定承認について新らしく九百二十三條という規定を置いたわけでありまして、尚その他にも後から出て参ります九百三十六條、九百三十七條がこれに関聯する規定であります。
 先ず最初の九百二十二條というものは現行法の千二十五條と全く同じであります。
 次の九百二十三條という規定が新らしい規定でありまして、今度は相続人が数人ある場合が非常に考えられるのであります。そこでそういう場合に一人が限定承認をする。多人が單純承認をするというふうなことになりますと、非常に法律関係がこんがらかつて参るわけであります。そこで限定承認は共同相続人の全員が共同してのみ限定承認ができる。そうでなければ、全部單純承認をするか、或いは相続放棄をして貰う。即ち限定承認ということになりますと、結局これは相続財産の限度で全体の債務を拂うということになりますので、清算をすることになるわけであります。そこで清算をやると、商賣等が非常に蹉跌を來たす場合が多くなるわけで、できるだけ限定承認を避けたいというふうに考えるわけでありまして、限定承認をやるならば、全部数人が一致して清算をするということに……できるだけ清算をやらないで、單純承認をしてその商賣を守つて行きたいというふうに考うたわけでありまして、その意味から限定承認は共同相続人の全員が共同してのみできるとしたのであります。
 次の九百二十四條というのが現行法の千二十六條に該当しているわけであります。「家事審判所」に改めたわけであります。
 次の九百二十五條は現行法の千二十七條に該当します。
 次の九百二十六條は千二十八條に該当いたします。
 次の九百二十七條は千二十九條に該当いたします。
 次の九百二十八條は現行法の千三十條、そのままであります。
 次の九百二十九條は現行法の千三十一條そのままであります。
 次の九百三十條、これは現行法の千三十二條に該当いたしますが、「裁判所」とあるのを「家事審判所」に改めただけであります。
 次の九百三十一條は現行法の千三十三に該当いたします。
 次の九百三十二條は現行法の千三十四條に該当いたします。ただ「裁判所」とあるのを家事審判所に改めただけであります。
 次の九百三十三條は、現行法の千三十五條そのままであります。
 次の九百三十四條は、千三十六條でありますが、ただ條文の整理をいたしたのであります。
 次の九百三十五條は千三十七條に該当いたします。
 次の九百三十六條と九百三十七條が新らしい規定であります。先程申しましたように、数人の相続人がある場合には全員一致して初めて限定承認をするということにいたしたのでありますが、その場合相続財産を管理するという場合には、これは数人がお互いに管理するということよりも、管理者を選定することは最も管理に適するわけでありますから、いわゆる家事審判所に相続財産の管理人を選定せしむることといたしたのであります。而して選定された管理人は他の相続人のためにこれに代わつて相続財産の管理及び債務の弁済、そういうふうな一切の清算事務を行うという権限を與えることにいたしたのであります。これが九百三十六條であります。
 次の九百三十七條は、限定承認をした共同相続人の中の一人がいわゆる九百二十一條の一号或いは三号に掲ぐる事柄、例えば相続財産の全部又は一部を処分するというふうなことがあつた場合に、そういう相続財産を処分したものは單純承認したものとみなされることに九百二十一條でなつております。ところが、そうなると、ばらばらに外の者は限定承認をする。その相続財産を処分したものは單純承認をしたものとみなされるということではいけないので、そういう場合でもやはり單純承認とみなさないで、全部が限定承認ということにいたして置きたい。ただ併しながらそういうふうに相続財産を処分したようなものの責任を、これはやはり單純承認をした場合と同樣に、追及せしむるのが相当であるというふうに考えましたので、そういう場合にはやはり限定承認ではあるけれども、限定承認で弁済を受けられなかつた部分については、その者の相続分に應じて無限責任を負うということにいたしたのであります。その結果相続財産の処分をした者は、結局單純承認をしたと同じように、自分の相続分に應じて無限の責任を負うことになる。そこでいわゆる九百二十一條の規定と限定承認の規定を調和いたしたのが九百三十七條であります。即ち相続人の中の一人が相続財産を処分しても限定承認でありますが、その処分したものだけはその相続分に應じて無限責任を負うというのが九百三十七條の新らしい規定であります。
 次の九百三十八條は、現行法の千三十八條に該当いたします。ただ家事審判所に申述をいたすことにいたしたのであります。
 次の九十三十九條は現行法の千三十九條に該当いたします。
 次の九百四十條は現行法の千四十條であります。
 次の九百四十一條は現行法の千四十一條であります。
 次の「財産分離」の章は全部「裁判所」というのが「家事審判所」に変つた以外全部現行法通りと御承認願いたいと思います。
 そこでこれは略しまして、次の第六章の「相続人の不存在」、これは現行法の「相続人ノ曠欠」という規定に該当いたしますが、「曠欠」という字は今度はなくなりましたので、「不存在」という言葉に改めたのであります。内容も全然現行法の通りであります。ただ「裁判所」とあるのが、「家事審判所」に変つた程度でありまして、九百五十一條から九百五十九條まではこれは現行法の千五十二條から千五十九條までに全然該当して「家事審判所」と「裁判所」を代えただけであります。
 次の「遺言」も全然從來の通りでありまして、特に申上げる重大な変更をしたのは殆どありません。ただこの九百七十八條と九百七十九條のみが現行法の千七十八條、千七十九條というのを削りましただけであります。千七十八條、千七十九條というのは從軍中の軍人軍属に関する事柄、それから大体從軍中の遺言の作り方に関する規定で、これは不必要になりましたので、現行法の千七十八條、千七十九條を削除いたしたわけであります。それと現行法の千八十條、或いは千八十一條という軍艦或いは海軍所属の船舶に関する規定がありましたが、これを取りまして九百七十九條のように、普通の船舶の場合だけに限つて、軍艦或いは海軍所属の船舶というような規定をなくしたわけであります。それが九百七十九條。その他は全部現行通りであります。
 次の「遺言の効力」も全部現行通りであります。これは遺言全体について尚再檢討いたさなければならないと考えましたが、取あえず憲法の要請に從つてその点は手を着けなかつた、憲法の要請に從うところだけ手を入れたので、遺言全体については殆ど全部從來通りにいたして置きましたが、これは近き將來やはり遺言全体について再檢討をいたして見たいと考えております。遺産相続になりますと、遺言が非常に大きく働いて來るものと考えますので、この点は後日の研究問題にいたして今回は全然手を着けなかつた次第であります。
 最後の「遺留分」の規定でありますが、これはやはり遺留分を存続することにいたしまして、この千二十八條の遺留分の額だけが変つただけで、後は全部現行通りであります。即ち「遺留分」といたしまして、兄弟姉妹は遺留分がないことにいたしたのであります。これは兄弟姉妹というのは、現行法の最後に戸主が相続人になる。それに当嵌まる規定が兄弟姉妹が最後の相続人になるのでありまするが、現行法で戸主の相続人になる場合については遺留分がありません。それと同樣の歩調をとつて兄弟姉妹には遺留分を認めなかつた。即ち結局直系卑属と直系尊属と配偶者、この三つの相続人だけに遺留分を設けまして、直系卑属のみが相続人であるとき、又は直系卑属と配偶者が相続人であるときは、財産の二分の一だけはそれらの者に残して置かなければならない。だから半分だけは自由に遺言で処分ができますが後の二分の一だけは直系卑属或いは直系卑属と配偶者がある場合は、二分の一だけは残して置かなければならない。その他の場合は三分の一だけは残して、他は処分してもよろしい。即ち「その他の場合」というのは一項以外の場合で、例えば配偶者のみである場合、或いは直系尊属のみである場合、或いは又直系尊属と配偶者が相続人である場合、この三つの場合が二号に該当する。この場合には必らず三分の一だけは相続人のために残す、三分の二だけは自由に処分ができるということにいたしたのであります。この千二十八條を除いては大体現行法通りであります。
 尚最後に千四十三條という規定だけが新らしく加わつた規定でありまして、これは相続開始前に遺留分の放棄を新らしく認めたのであります。これは家事審判所の許可を受けなければならないことにいたしました。そうでないと濫用されて、意思に反して予め遺留分の放棄をせしめられるという弊害を防ぐために、これは予め遺留分の放棄をいたすのでありますから、家事審判所の許可を受けるということといたしました。遺留分の放棄がありますれば、全財産を被相続人は他に処分をすることができ、処分をしても、その相続人の相続が害せられても、遺留分の減殺の請求はできないということになるわけであります。ただこれは濫用いたしますことを防止するために、必らず家事審判所の許可を受けて遺留分の放棄をなさしむるということにいたしたのであります。
 大体以上で本文は終りました。最後に「附則」は経過的な規定でありまして、大体におきまして新法を適用するのでありますが、ただ重要な問題は、すでに家督相続が始まつておる場合はすべて家督相続の旧法による、これが第二十五條であります。「應急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。」即ち應急措置法と申しますのは本年の五月三日から施行になつておりますので、その前に相続が開始しておればすべて旧法通り家督相続の規定が適用されるということであります。
 それと第二十七條で、日本國憲法公布の日以後に戸主の死亡になる家督相続があつた場合、この場合には新法によれば共同相続人となる筈であつた者は、家督相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。即ち日本國憲法の公布、去年の十一月三日から、應急措置法の施行のある今年の五月三日迄の間に、戸主の死亡によつて家督相続があるという場合、一應やはり旧法の規定によつて家督相続人が全部の財産を取るのでありますが、それでは殆ど新法の施行に近寄つておるのにも拘わらず、尚旧來通り全財産を家督相続人が取ることは適当でないと考えまして、他の新法によれば共同相続人となる筈であつた者が、家督相続人に対して財産の一部分の請求ができるということにいたした。これはただ去年の十一月三日から今年の五月三日迄の間に戸主死亡の場合でありまして、その後は全部應急措置法並びに來年の一月一日からはこの新法……この新法も應急措置法も遺産相続については全然殆ど同じであります。諸子均分相続ということになるわけであります。
 次の二十八條という規定がちよつと重要な規定でありまして、應急措置法施行の当時、即ち今年の五月三日施行の当時戸主であつた者が、今後婚姻の取消、離婚、養子縁組の取消、又は、離縁によつて氏を改められた場合、即ち今までの入夫婚姻で入つて來た者、或いは養子が戸主になつておるというような場合に、入夫が離婚によつて氏を元の氏に変わる、或いは養子が離縁によつて元の氏に復帰するというような場合に、戸主であつたとき相続によつて全部財産を自分が得た、その後離婚或いは離縁によつて元の氏に変つた場合に、その財産を全部持つていつてしまうということは不適当であると考えましたので、その場合には配偶者或いは養子、配偶者とか養子がないときは配偶者又は養子の相続人が、氏を改めた者に対して財産の一部の分配を請求することができる。即ち養子に來た者或いは婿で入つて來た者が養子とか或いは婚姻の解消があつた場合に、全財産を持つて行くということに対する例外財産の分配の請求権を認めたのであります。
 大体それらが稍々重要なる規定でありまして、大体旧法と新法の移り変りの経過的規定を附則に規定いたしたわけであります。
 以上簡單でありますが説明を終ります。
#4
○理事(鈴木安孝君) それではこれで休憩いたしまして、午後は一時半から家事審判法の説明を聽きたいと思います。
   午前十一時五十八分休憩
  ―――――――――――――
   午後二時十七分開会
#5
○理事(鈴木安孝君) では休憩前に引続いて委員会を開きます。家事審判法案の政府委員の御説明を聽くことにいたします。
#6
○政府委員(奧野健一君) それでは家事審判法案の説明をいたします。この度憲法の要請する男女の平等並びに個人の尊嚴の思想を汲み入れて民法を改正いたすのでありますが、幾ら民法を改正いたしましても、家庭内における粉爭を解決するには別にある機関を設けて、普通の裁判所ではなく、特に家庭生活に深く入つて面倒を見るような施設が必要であり、且つそれが嚴しい裁判官のみでなく、常識豊かな素人も交えて柔かい感じのする、そういつたような家庭の面倒を見る機関が欲しいということで、これは永らく以前からその意味で家事審判所の要請があつたのでありまして、殊に衆議院等においても建議案等があつたわけであります。この点につきましては古くから司法省における法制審議会におきましても、この法案の準備に調査をいたしておつたのであります。そこで今回民法を全面的に改正いたします機会に、この際年末の要望である家事審判所というものを作る。よつて以て深切に家庭内における粉爭の解決に当るようにしたいということで、今回家事審判法を作ることに相成つたわけであります。
 勿論これは、民法におきましてはいわゆる家の制度を止めまして、個人の平等並びに尊嚴、両性の本質的平等という見地から民法を改正するのでありますが、これは決して我が國の從來の家庭生活そのものを破壞或いは否定するものでは毫もないのでありまして、我が國古來の親族相寄つて相助け、親族共同生活を営んでおる家族制度というものが、これは我が國の美俗であることは疑いないのでありまして、これをできるだけ維持発展を図りたいという意味もありまして、この家事審判法の第一條に、「この法律は、個人の尊嚴と両性の本質的平等を基本として家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする」という目的を明らかにいたしたのでありまして、この趣旨から見ましても、親族の共同生活である実際の家庭生活或いは家族制度というものを、民法並びに我が國の法制としてこれを否定するものでないという趣旨を明らかにいたしたのであります。
 而して家事審判法におきましては大体審判と調停を行うのであります。審判につきましては、第三條にありますように、一人の審判官、それから参與官、まあ素人を立ち合わせて行うのであります。調停は家事審判官の外に調停委員を以て組織する調停委員会で大体において行うということにいたしておるのであります。そこで一般の家庭事件につきまして、調停と審判を行うことによつてすべての家庭事件の円満解決を図つて行きたいということにいたしたのであります。
 家事審判所の機能は即ち審判と、それから調停ということでありまして、いわゆる一般の訴訟事件は取扱わないのであります。尤も人事に関する訴訟事件は、まず必ず家事審判所に調停の申立てをしなければならない、而して調停ができなかつた場合に初めて訴訟で黒白をつけるという建前、即ちいわゆる調停前置主義を採つたのであります。即ちあらゆる人事の爭い事は必ず家事審判所でまず調停を行う、然る後にどうしても調停ができなければ判決によるということ、並びに訴訟事件ではない、いわゆる身分上のいろいろな事件につきましては、審判手続によつてこれを迅速に解決して行く。先程來民法の説明におきましても裁判所とあるのを審判所と改めた部分が相当あるのでありまして、從來人事訴訟或いは非訟事件手続法或いはその他の所にいろいろありました審判事件を、家事審判法の審判ということに全部組入れたわけでありまして、九條に列挙してあるのはすべてのものをここに組入れた次第であります。そういうわけで大体家庭事件のすべては一應家事審判所に來て審判或いは調停手続によつて解決し、若しどうしても調停で解決ができないものに限つて一般の訴訟で行くという建前になつておるわけであります。
 次に第二條で、然らば家事審判所というのは一体どういうものであるかといいますと、これは一つのやはり裁判所でありまして、地方裁判所の支部を設けて、その支部におきましては家庭に関する事件を取扱う、從來支部というのは管轄区域だけについて設けておりましたが、取扱う事件の種類によつて、そういう一般の地方裁判所の外に、特に支部を設けることにいたしたのであります。從いまして簡易裁判所でもなく、一般の訴訟を行う地方裁判所でもなく、地方裁判所の一種でありますが、そういう家庭事件のみを取扱う地方裁判所の支部を設けて、これを家事審判所というふうに呼称いたしまして、一般の嚴めしい感じを與える裁判所とは響きの上において柔かく感ずるように、特に裁判所なる名称を避けまして、実質は地方裁判所の一つの支部でありますが、これを名前は家事審判所と申しまして、又それに勤務する裁判官はやはり判事でありますが、これを家事審判官という呼称をいたしまして、感じの柔らか味を持たすことに心掛けた次第であります。
 それから第三條は、要するに家事審判所の仕事は、審判と調停に分れておりまして、審判は審判官一人、それから参與員という、これは世故人情に通じた素人を立ち会わせて、その意見を聞いてこれを行う。尤もこの参與員も場合によつては立ち合わさないで一人でもできることが第三條の第三項に規定しておりますが、まあ大体においてやはり参與員を立ち会わせて、その意見を聞いて行う。尤もその意見に拘束を受けることはないので、どこまでも審判は家事審判官が行うので、参與員の意見に束縛を受けるというふうなことはない。ただ諮問的に意見を聞いて、常識の発達した参與員の意見を参考にしながら審判を行うというのであります。調停は家事審判官と調停委員、大体二人くらいを以て構成する調停委員会という委員会で調停を行います。尤も家事審判官一人だけで調停を行うこともできるのでありますが、原則としてはやはり調停委員会を組織して調停を行うということになるわけであります。
 第四條は、除斥、忌避、回避に関する民事訴訟法の規定を裁判官並びに参與員或いは書記に準用しておるのであります。
 第五條は、参與員並びに調停委員が調停並びに審判に参與する場合においての旅費、日当、止宿料等に関する規定であります。
 六條は手数料に関する規定であります。
 この家事審判法は非常に簡單でありまして、全條で二十九條でありますので、いろいろな審判並びに調停に関する手続につきましては、一般的にこの第七條によりまして、性質に反しない限り、非訟事件手続法の規定を準用することにいたし、ただ檢事の関與に関する第十五條の規定は準用しないことにいたしますのであります。
 尚その外に、いろいろ審判或いは調停に関する手続の必要な徴細な事項につきましては、最高裁判所の定めるルールでその基準を決めることにいたしたのであります。
 これが総論的な事柄でありまして、第二章は、審判に関する事柄であります。而してどういう種類の家庭事件がいわゆる審判ということになるかと申しますと、大体これは九條に規定をいたしまして、甲類と乙類に分けてあります。甲類というのは、調停に適しない事件を主に掲げております。乙類に掲げた事件は、調停に適する事件を掲げているわけであります。
 而して甲類に掲げるのは、例えば禁治産の宣告とか、禁治産の宣告の取消、これはやはり身分に関する事柄でありますので、これは現在におきましては、人事訴訟手続法によつて訴訟の形によつて判決されるわけでありますが、今度は審判手続によりまして禁治産の宣告、取消をやる、或いは又準禁治産についての処分も同樣、又不在者の財産の管理に関する事柄、これは余り長く不在の関係になりますと失踪宣告になるのでありますが、失踪宣告になると、やはり身分上の関係になりますので、財産上の関係ではありますが、身分上の関係に極めて密接な不可分な関係になりますので、やはりこれも家事審判所の管轄といたしたわけであります。次の第四号もやはり失踪宣告並びにその取消、これはやはり一身の身分に関する事柄でありますから、家事審判所の管轄にいたしたわけであります。それから五号以下は、「親族」「相続」をお読みになつた際に「家事審判所の」云々というように出て参りますのを拾い上げたわけであります。特別代理人の選任でありますとか、或いは子供が親と氏を異にする場合に、子供が家事審判所の許可を得て親の氏に変更することができる、その許可に関する事柄でありますとか、或いは未成年の者が養子になるのには、家事審判所の許可を必要としました、その許可でありますとか、或いは八百十一條第三項に規定する離縁に関する許可、それから又子供の懲戒に関する許可、又八百二十六條の利益相反する場合の特別代理人の選任に関する事柄でありますとか、又八百三十條二項乃至四項の財産管理者の選任の関する事項でありますとか、又親権或いは管理権の喪失の宣告或いはその取消に関する事柄、或いは又親権、管理権の辞任或いは回復に関する許可、又後見人、保佐人、後見監督人の選任に関する事柄、それから又その辞任に関することの許可、或いは又後見監督人、後見人、保佐人の解任に関する事柄、臨時保佐人に関する選任、それから後見人が就職した場合の被後見人の財産調査並にその目録の調製に関する期間の伸長に関する事柄、又禁治産者を精神病院に入院せしめたり自宅で監置する等についての許可、それから後見人に対する報酬の付與、それから一般的に家事審判所が後見の事務を監督いたしますその監督に関する処分、又後見人等の財産の管理の計算の期間の伸長に関する事柄、遺産の管理に関する処分、相続の承認放棄の期間の伸長に関する事柄、それから相続財産の保存管理に関する事柄、或いは相続の限定承認の申述の受理、それから鑑定人の選任、相続財産の管理人の選任、相続放棄の申述の受理、相続財産の分離に関する処分、相続財産の管理に関する処分、それから相続財産の管理人の選任、その他相続財産の管理に関する処分、遺言確認、遺言書の檢認、遺言執行者の選任遺言執行者に対する報酬の付與、遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可、遺言の取消、遺留分の放棄についての許可、こういうことは事の性質上和解によつてどうこうするという事柄ではありませんので、これは甲類といたしまして、これは必ず審判によつてやる。
 ところが、乙類に掲げました事柄は、当事者の協議で自由に変更し得る性質のものでありますので、これは調停にも適するが、同時に審判でやるのでありますが、性質上調停を許す性質の事柄であります。即ち夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分でありますとか、或いは夫婦間の財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分、婚姻から生ずる費用の分担に関する処分、それから離婚等の場合における子の監護者の指定その他子の監護に関する処分、それから離婚の場合における財産分與に関する処分、こういうものは一應協議によつて決めるのでありますが、協議が調わない場合は家事審判所の審判で決める。併しこれは調停でお互いの協議で財産の分與の金額等を決めることができる性質のものであります。第六がいわゆる祖先の祭祀を継ぐ者に関する指定であります。第七号は親権者の指定又は変更、それから第八は扶養に関する処分扶養の方法でありますとか、扶養の順序、扶養義務者の順序等についての処分を家事審判所がいたしますその事柄であります。第九が推定相続人の廃除及びその取消、それから第十が遺産の分割に関する処分、これらの場合にはすべて家事審判所の乙類、いわゆる調停に適する事件として審判手続に管轄されるわけであります。
 その外にも、他の法律で、特に家事審判所の権限に属させた事項についての審判を行う権限を有する。例えば農業資産の相続の特例に関する法律等におきまして、これは家事審判所の審判に服することになつております。その他或いは戸籍法等に関する事柄で、家事審判所に属せしめておるものがあるわけであります。これはまあ、將來又これに属する事件もあろうかと考えます。その場合には、その事件はこの乙類に属するものであるか甲類に属するものであるかを必らず明らかにして、その特別法に明白にして置く考えであります。
 十條は審判の際における参與員の事柄であるまして、参與員と申しますのは、大体地方裁判所が前以て候補者を選んで置きまして、その中から家事審判所が各事件について、一人以上を指定して参與員として立ち会わすことになるわけであります。而してどういう人々が候補者として適当であるかというようなことについての資格、員数、その他必要なる事項につきましては、最高裁判所が予め決めることになつておるのであります。
 次に第十一條は、調停に適する、いわゆる乙類に掲げる事件につきましては、本來はまあ審判をやるのでありますが、その前にいつでも職権で調停に付することができる。いわゆる調停に適する事件でありますので、審判をする前にまず調停を進めることができることといたしたのであります。
 第十二條はいわゆる参加、これは現在の人事調停法等におきましてもある規定でありまして、審判の結果について、利害関係を有する者を審判手続に参加させることができる。
 次に第十三條は、審判はこれを受ける者に告知することによつてその効力を生ずるのであります。
 而してその審判に対して不服を言えるかどうかということにつきましては、第十四條に、最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみができる。これは一般の非訟事件手続法が第七條でかぶつて参りますので、非訟事件手続法では普通の抗告でありまして、別にいつまでに抗告をしなければならないという制限はないのであります。併しそれではいつまで経つても確定をいたさないで因るので、二週間の期間の内にのみ抗告ができるという、いわゆる即時抗告のみを認めることができるということにいたしたのであります。而してどういう事件について即時抗告ができるかということは、最高裁判所の定めるところに委ねたわけであります。
 それから次に十五條は、金銭の支拂、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、これは判決と同じように強制執行ができる。例えば離婚の場合の財産分與の請求の場合に、幾らを拂うというふうな審判をいたしますと、その審判で以て履行しない場合には、強制執行ができるということになるわけであります。
 尚財産の管理人を選任した場合に、民法の委任に関する六百四十四條以下の規定が準用されるということにいたしたのであります。これが審判事件であります。
 次に調停事件はどういう種類のものが調停に掛かるかといいますと、これは人事に関する訴訟事件、その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。いわゆる人事訴訟手続法による訴訟事件の外、苟くも家庭に関係のある事件であれば、例えば親類同士の金銭の貸借の事件でも、やはりここに廣く入るわけでありまして、本來の人事訴訟の外に家庭の紛爭、親族間の紛爭でありますればすべて家事審判所にその調停を求めることができる。尤も但書がありまして、これはいわゆる第九條の甲類に属する事件は審判のみをやるべきで、調停に適しない事件でありますから、これは調停はできませんが、要するにすべての家庭に関する事件であつて、いわゆる甲類に属する事件を除いては、すべて調停を行えるということにいたしたのであります。而してそういうふうな人事に関する訴訟とか、その他家庭の事件についてはすべて訴えを起す前に、まず家事審判所に調停を申立てなければならないということにいたして、いわゆる調停の前置主義を採つたわけであります。從いまして訴訟を起さんとする場合には、必ず家事審判所にまず調停の申立をしなければならないということになるわけであります。若し調停を申立てないで訴えを起したような場合には、裁判所はその事件を家事審判所の調停に廻さなければならないことにいたして、まず調停をやつて、然る後に訴訟に移るという、調停を前置する主義を採つたわけであります。
 それで十七條に関する調停に適する人事事件、家庭事件について、訴訟に現に係つておるような場合には、裁判所はいつでもその事件を職権で家事審判所の調停に廻すことができるということにいたしたのであります。即ちすべてまず調停を行なつて行くのであります。
 それから二十條は十二條の参加に関する準用であります。利害関係のある者に、その調停に参加せしむることができるということにいたしたのであります。
 次に調停ができまして、当事者間に合意ができまして、これを調停の調書に書きますれば、調停が成立したものとして、その記載は確定判決と同一の効力を有することになるのであります。これは実は現行の人事訴訟手続法におきましては、調停ができ上つて、更に裁判所の許可、認可があつて、初めて判決と同一の効力があることになつておりますが、調停ができて、更にそれに対して裁判所が認可を與えるということは重複するので、從來認可を與えなかつたというような例もありませんので、事件を迅速に解決せしめるため、裁判所の認可を必要としないものといたしたわけであります。尤もこの二十三條に掲げる事件については調停はない、これは又二十三條のところで申しますが、第二項がそれであります。
 それから調停委員の組織について二十二條に規定を置いておるのでありますが、これは調停委員会は裁判官である家事審判官一人と、それに調停委員二人以上を以て組織するわけであります。調停委員はどういう人がなるかと申しますと、地方裁判所長が前以て候補者を選んで置きまして、各事件毎に家事審判官がこれを指定するわけであります。尚地方裁判所長が前以て選任していない者でも、当事者が合意で、この者を調停委員にして貰いたいといい、相手の合意があれば、調停委員に指定することができることになつております。尚その他にも家事審判所は事件の処理上必要と認めるときには前項に掲げる者以外の者を調停委員にすることができることになつております。
 次の二十三條というものは、これは新らしい規定でありまして、從來婚姻又は養子縁組の無効取消というような事件は、これは人事訴訟法に規定のある事件でありまして、この人事訴訟法のこれらの事件につきましては、当事者の処分といいますか、当事者が自由勝手に処分ができない。言い換えれば、当事者が自白をしても、裁判所はその自白に囚われることなく、弁論主義でなく、職権主義でその眞相を究めて行くというのが婚姻或いは養子縁組の無効又は取消に関する事件で、飽くまでも当事者の話合いというのではなく、眞相を究めて行くという手続になつているわけであります。それでたとい当事者間に婚姻の無効或いは養子縁組の無効の事実について爭いがないという場合でも、裁判所は果してそういう事実があつたかどうかということを職権で証拠調べをした上で判決をしなければならないというわけであります。でありますから当事者がそういう事件について和解をするとか或いは調停をするということができないので非常に不便に考えられておつたのであります。ところが、当事者がそういう離婚、婚姻の無効、養子縁組の無効或いは婚姻の取消というような事件について爭いがない、双方共無効又は取消しの原因の有無について爭いがないという場合、お互がどうしてもそれで調停したいというのに調停させないで、裁判所が飽くまで原因についての職権の探究をいたすということは、いかにも無駄な場合もあります。而も当事者が爭いがなければ大体事実の眞相もそうであろうというように見られるので、從來そういうものについて調停ができなかつた不便を緩和するために、そういう事件について当事者が爭いがない、合意が成立しておるというような場合には一應取上げまして、それについて家事審判所が、尚必要な事実を調査した上で、この通りであるというふうに思えば、当事者の合意に相当する審判をすることができる。即ち大体審判の形式ではありますが、実質は和解或いは調停と変りはないわけであります。即ち從來調停されなかつたそういう事件については、爭いがない場合、調停したいというような場合にその途を拓いたわけであります。併しこの事の性質上、当事者の言い分そのままを信ずるわけにも行かないで、人事訴訟と同一な建前から、必要な事実を一應裁判所でも審判所でも調査して、その通りであれば、そういう審判をするということができる途を拓いたわけであります。
 そういう事件は必ずしも婚姻又は養子縁組の無効又は取消に限らないで、同じような事柄は二項にありますような協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消、それから子供の認知、或いは認知の無効、若しくは取消、民法七百七十三條の規定によつて父を定めることの訴訟、或いは嫡出子の否認、身分関係の存否の確定に関する事件というようなものもやはり身分の事柄でありますから、当事者の言い分だけで判断するのでなく、実質を裁判所が職権で調査しなければならん事案でありますが、こういう場合に当事者の合意がある場合には、その合意に適したような事実を現わして参りますれば、その合意に副うような審判ができる。いわゆる養子縁組等の無効の審判、或いは嫡出子否認の審判等をいたすことができる途を拓いたのであります。
 次の二十四條、これは進めて見て調停ができなかつた場合に、いわゆる強制調停と申しますか、強制ではないのでありますが、当事者が調停が不成立に終つた場合に、家事審判所は相当と認めるときは、調停委員の意見を聽いて、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を観て、職権で、当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判ができる。この場合には金銭の支拂等も命ずることもできる。尤も乙類に関する事柄は、これは審判事件で始末をつければいいのでありますから、これは調停、いわゆる強制調停をやらないというのが二項であります。
 尤も当事者が調停が成立しない場合に、結局審判官が調停條件を自分の方で決めて審判をするわけでありますが、当事者はこの審判に拘束されることはないので、これに対しては二十五條で異議の申立をすることができる。その異議の申立は二週間内にする。けれども二週間内に異議の申立があつたときには審判はその効力を失うということになつている。若し異議を申出でないときはその審判が確定判決と同一効力を有することになりますが、不服であれば二週間内であればいつでも異議を申立ることができる。異議を申立てればその審判はその効力を失うことになりますから、決して強制調停ではないのでありまして、調停できなかつた場合、一應審判所はそういう調停の案を示しますが、これに不服で異議を申立てれば、その審判は全然なかりしことになつて効力を失つて、ただ異議が入らないときにのみ、調停と同じように確定判決と同一の効力を有することになるわけであります。
 そこで二十六條で、これは調停が不調になつた場合に関する規定でありますが、乙類に属する事件、いわゆる調停に適する事件について調停ができない場合には、調停申立の時に審判の申立があつたものとみなす。この審判の申出は出訴期間が決めてある場合があります。例えば嫡出子の否認の訴えは一年間になさなければならないとか、或いは財産分與の請求は離婚の時から二年の間に請求しなければならないというふうなことになつておりますので、調停の申立をして、調停で揉んでいる間に二年は過ぎ去つてしまつて、いよいよ調停が不調になつたというので、今度財産分與の審判の申立をしようとするときにはすでに二年を経過しておるということがあつては困りますので、そう場合は初めの調停の申立をしたときに審判の申立があつたものとみなして、その後審判手続に移つて行くということによりまして、出訴期間を徒過せしむることのないようにいたしたのが二十六條であります。
 二十六條の一項は乙類に属する事件の審判事件でありますが、二項は調停を行うことができる事件で調停ができない場合、或いはその事件について二十三條とか二十四條で審判をしない、或いは前條で又はいわゆる前條の二項で以て異議の申立があつたがために強制調停が効力を失つたというような場合には、それで調停が不調に終つたわけであります。そこでそれから後訴訟等に移るわけでありますが、そのときに新らしく訴えを起す、そうすると出訴の期間のあるものがもうすでに出訴期間を失つておる場合がなきにしも非ずであります。そういう場合、今まで調停をどんどんやつておつたが、結局調停が不成立に終つたという場合に、その終つた時から二週間内に訴えを起せば、調停申立の時にその訴えの提起があつたものとみなす。即ちすべてそういう事件について調停前置主義でまず調停に移さなければならん。調停をやつて見たが、調停が不調になつたから訴えを起すという場合に、もうすでに出訴期間が徒過してしまつているというような場合は非常に氣の毒であるから、初めの調停の申立をやつたときに訴えの提起があつたものとみなして訴訟を進めて行くというのが二十六條の第二項であります。
 第四章は罰則であります。調停事件の関係人が正当な事由がなくて出頭しないときは五百円以下の過料に処する。或いは又調停委員とか、或いは調停委員であつた者が秘密を漏泄した場合の罰則、参與員についても秘密漏泄に対しての罰則規定を設けてあります。二十九條はやはり職務上取扱つたことについて知り得た他人の秘密を漏らした者の罰則であります。
 附則は、これは明年の二十三年の一月一日から施行し、新民法の施行と同日としたのであります。
 尚、多分この次の議会にお願いすることになろうと思いますが、これによつて人事調停法等が廃上になります。尚その外に人事訴訟手続法でありますとか、非訟事件手続法、そういつたようなものについては相当改正を加えなければならない個所がありますので、これらの点につきはしてはこの次の議会に、家事審判法の施行法といてそういう経過的な規定を設けたいというふうに考えております。
#7
○理事(鈴木安孝君) では今日はこの程度にいたしまして、次回は、二十五日は休みまして、二十六日の午前十時から開会することにいたします。若し二十六日に本会議がありますれば本会議終了後ということにいたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後三時六分散会
 出席者は左の通り。
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           來馬 琢郎君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト