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1947/09/27 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第25号
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1947/09/27 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第25号

#1
第001回国会 司法委員会 第25号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに關する請願(第十一號)
○帶廣地方裁判所設置に關する陳情
 (第四十九號)
○刑事訴訟法を改正する等に關する陳
 情(第六十號)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 關する陳情(第百四十號)
○法曹一元制度の實現に關する陳情
 (第百四十五號)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に關する法律案(内閣提出)
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
○經濟査察官の臨檢檢査等に關する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○靜岡刑務所の囚人逃走事件調査班の
 報告
―――――――――――――――― 
昭和二十二年九月二十七日(土曜日)
   午前十一時二分開會
―――――――――――――――― 
  本日の會議に付した事件
○靜岡刑務所の囚人逃走事件調査班の
 報告
○裁判官彈劾法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより委員會を開會いたします。
 まず先般當委員會より派遣せられましたところの靜岡刑務所事件について、派遣議員よりその結果の御報告を願うことにいたします。
#3
○鬼丸義齊君 今囘靜岡刑務所におきまする暴動事件の調査のために、岡部、齋兩君、竝に私と泉專門調査員相携えまして、去る二十一日に靜岡市に參りまして、翌日の二十二日から靜岡の檢察廳竝に同地方裁判所の兩廳を訪問いたしまして、白神檢事正竝に同廳の次席檢事、地方裁判所の方では所長が不在でありましたがために、野口部長判事が出席されまして、いろいろと事件の内容を聞かせて頂きました。そうして更に同日の午後には靜岡の刑務所に參りまして、野村前所長竝に山田、高橋兩司法事務官を初めといたしまして、同所の幹部が數名出席されまして、詳細に亙りまして事情を聽取いたしたのであります。
 ちよつとこの間差挾みまするが、治安及び地方制度委員會からも丁度私共一行と同じコースによりまして中井、濱田、岡本三委員が同行いたされまして、すべて調査のコースは同じ行動を取りまして、相共に携えましていろいろと事情の調査をいたしたのであります。
 その翌日の二十二日は靜岡の縣廳に參りまして、小林知事初め警察部長、刑事課長と會見いたしまして、更に縣側から見ました事件の内容について事情を聽取いたしたのであります。午後は再び靜岡の刑務所に參りまして、二三疑問の點を責任者から質しまして、最後に囚人三名から、いろいろとかような事件の起りました事情等について詳しく聞いて見たのであります。そうして翌二十四日に歸京いたしたのであります。
 大體事件の概要といたしましては、戰後の犯罪者が非常に激増いたしましたところから、全國各刑務所の拘禁者が非常に過剩いたしております。定員を超過いたしておりまして、設備が不十分のところに、更に過剩拘禁というような状況であるのでありまして、靜岡の刑務所もやはりこのお多分に漏れず、否むしろその點におきましては、代表的に設備が不完全で、又拘禁の數におきましても、定員二百九十四名に對しまして六百十九名の二倍強の過剩拘禁をいたしておりまする状況にあつたのであります。これは非常に犯罪數が激増いたしておりまして、過剩拘禁の危險等を考慮いたしまするところから、一般に從來のような假釋放の詮議等におきましても、從來のごとき嚴格なる審査をなしておるのでなくして、まだ假釋放には十分でないというような者でありましても、過剩拘禁のためには止むを得ず、不十分ながらも假釋放するというようなことが自然と生じて參つておるのであります。
 この事件の起りといたしましては、本年の八月二十五日に野村所長から、靜岡市の用宗の九百三十八番地に居住いたしておりましたる前科八犯、最終は昭和二十年の三月七日に詐欺、窃盜、戰時窃盜で懲役五年の言渡を受けまして拘禁、その刑の執行中の者を初めといたしまして、その外に六名、即ち計七名の假釋放の申請を司法省に對していたしたのであります。それが九月六日の午前十一時五十分に、靜岡の刑務所に對しまして、司法省から認可されまして、書面が參りました。こうしたような書面は固より祕密事項になつておりまするので、文書課長がそれを開封いたしまして、所長の方に報告いたしておるのであります。他の者は固より知るべき筋合のものでなかつたのであります。ところが、この七名の中で以て池谷八十吉という者が先程申上げました前科八犯の者であります。それが一番兇惡な人だということになりまして、他の六名の者は即日假釋放をしてもよろしい、併しこの池谷八十吉だけは前科も澤山ありますようなところから、特に何か感銘を深くするような時機を選べというような趣旨から、十月十七日神嘗祭の日に出所せしむるということに指令があつたのであります。
 他と六名の中一名は刑務所におりましたので、渡邊佐太郎という者は即日釋放されたのでありますが、他の五名は、丁度そのときに清水の造船所の方に行つておりましたので、直ちに電話で以て造船部隊に對しまして、五名の釋放方を命じたそうでありますが、當日はすでに時間が遲れておりましたので、翌日この五名だけは釋放すべきことを刑務所の方から傳逹したということであります。ところが、この池谷八十吉という者は、入所以來非常に成績がよかつたというようなところから、丁度最近、先程も申しましたごとくに、假釋放の手續をいたしますについては、過剩拘禁に加えるに看守が非常に少いというようなところから、こうして前科數犯であるような惡質の者は、從來でありまするならば容易に假釋放などはいたさなかつたのでありますけれども、最近の情勢から止むを得ずそういうことになつたのでありますが、大體看守の定員が非常に不足をいたしておりまするところから、囚人の中で以て成績のいいものを班長及び副班長というようなふうに所長の方から命じまして、そうしてそれらの者は看守のする仕事の補助をなさしめて、所内は自由獨歩を許されておるのであります。さようなことから八月の二十五日に池谷八十吉外六名の者を假釋放をすべき申請をしたというようなことが、どこからか漏れまして、池谷はその申請後間もなくその事實を感知しておつたのであります。そこで丁度この九月の六日、即ち暴動のありました日の午後の二時項に、所内におりました渡邊佐太郎という者は直ちに即日釋放になつたのであります。ところが、それより先に、自由獨歩を許されておるから池谷としては事務所に參りまして、増井義春という昨年の七月に任命されました看守から聽きまして、君も今日は假釋放の認可が來たようである、今日は出られるであろうというようなことを増井看守が池谷に漏した。これがこの事件の直接の原因になつておるようであります。
 そこで、この池谷八十吉という者は、後に私共調査いたしまして分つたのでありますが、非常に所内の人望を得ておつて、在所の囚人は皆擧げてこの池谷に對して心服をいたしておると最初私共聞いておつたのであります。そうしたような立場から、すでに渡邊佐太郎が同日午後二時に出ておりながら、池谷に對しては一向釋放のことを言つて呉れない、傳達がない、これはおかしいじやないかというようなことで、池谷も不審に思い、そのことを他の班長格の者に話したところから、そこで他の班長十二三名の者が相携えまして、戒護課長にその事實を確めに行つたらしいのです。それは池谷が増井から今日假釋放になるというようなことを聞かされたので、そこで所内の自由獨歩を許されておりますから、勝手に所内各所を廻つて、いろいろお世話になつたが、今日出ることになつたからということで以て暇乞いに廻つたというようなことがあります。にも拘わらず、すでに渡邊は出所を命ぜられたに拘わらず、池谷だけが何も話がないというところから、他の班長の十二三名の者が、先程申しましたごとくに戒護課長の所に出掛けて行つて、その事實を確めたのであります。戒護課長の方もそれに應對をいたしておりまするけれども、何だか非常な強硬な昂奮をいたしておりまする状況を、傍におりました文書課長が見まして、文書課長の方から所長に、そういうようなことで、班長連中が今戒護課長の所に來て、池谷をなぜ出さんかと言つて責めているということを告げたのであります。そこで野村所長は、それならば俺が一つ話をしようということで、とにかく班長連中を會議室に集めよということで、所長の居ります部屋の隣の部屋の會議室に班長十二三名の者を入れまして、所長がそれらの者に會いまして、池谷にはまだ來ていないことを告げたのであります。ところが、班長連中、殊にその中で小俣という者と宮原という二人が、所長に對して、すでに池谷は増井から假釋放になるというようなことを聞かされて、すつかり出る氣になつて、各所に暇乞いに廻つているのである、それにも拘わらず今出られんということになつたらば、池谷の立場がない、池谷の顏をどうして立てて呉れるかということで以て、強硬に所長に迫つた。それは話は違う、そんな筈はないからということで以て、その席に増井を呼びに行つて確かめたところが、最初は増井の方も曖昧のことを言つていたけれども、大勢の勢いが強いので到頭已むを得ず洩したことをそこで話した。だから、そこでのつぴきならん状況になつた。續いて所長に對して、すでにそういうことになつている以上は、何でもかんでも今日出せ、こういうようなことを所長に強硬に迫つたらしいのです。ところが、所長の方では、成るほど同日の午前十一時に假釋放のことが本省の方から指令は來ているけれども、併しそれは十月十七日でなければ出せない。十月十七日に出すべきことの命令を受けておるのだからその日がこなければ出せない。のみならず、そうしたようなことを豫め所長の責任として、本人に言つて聞かせるわけには參らんということで、ともかく所長はその十七日に出すことをも祕して、何とか宥めてそこを收めようとして努力したけれども、どうしても納まりがつかない。そこで、それならば池谷の顏は丸潰れになるのだから、我々同僚としては見ておれないというようなことで、もうそこで非常に状况が惡化いたしまして、その場におりました増井に對して椅子を振り上げて毆りかかるというような状況になりましたので、もう所長としましては、絶體絶命な實は場面になつた。折から丁度午後の四時になりましたのて、各囚人がそれぞれ仕事をしておりました工場の方から舍房に歸つて來ました。その歸つて來ておりまする囚人のうち舍房に入つた者もあり入らざる者がありまして、大きな聲を出して會議室で以て非常な騷々しい状況でありますところから、その囚人のうち五六十名の者は、舍房の中からてんでに木片或いはその他その場にあり合せのものを携えまして、その會議室の前の廊下からその邊一面を取巻きました。そこで會議室の中では非常な勢いで以て所長に迫つて參りますところから、所長としてももうその場の雰圍氣が只ならんことを看取いたしましたので、すでに翌日の十月十七日に出すことが決まつておるのでありますから、できないことではあるけれども、何とかして本省の方に行つて譯を言つて繰上げて出すべきことを頼もうというふうな氣持になりまして、翌日はちようど日曜でありますためにどうすることもできないので、翌々日の八日の日に本省の方に行つて、何とか努力して池谷を八日の日に出してやつてしまおうというような氣持になりまして、そこでそれならば八日まで待つてくれということに所長は返事をしたらしいのです。そこでそれならば八日の日に間違いなく出すかということで以て詰め寄つたところが、所長としましては、先程申しました通りに、十月十七日の指令があるのでありまするから、八日に出すといつたところで、所長としては確實にそれを責任をもつて引受けるわけには行かない、何とか努力はするけれども、責任をもつてということは困るというような曖昧なことを言つた、曖昧ではありませんけれども、所長の肚としてはとにかく八日の日に司法省に行つて、事の次第を言つて、何とか承認を得ようというふうな氣持になつて、そうした返事をしたのであります。ところが重ねてそれを責任を負うて出すかということを詰め寄られたので、それは責任を負えない、併し出すべく最善を盡すということを答えたところが、それではまだ曖昧だ、それはもう、そんなものは信用はできないというようなことになりまして、その場の状況がもう刻々と險惡になつてしまつた。それじや仕方がないから増井の身體は預かる、こういうことになつた。先程申しましたその場におりました池谷に、今日釋放になるだろうということを漏しました増井看守の身體を預かるこういうふうな態度に出たのであります。それは固より所長としてはそんなことは承認するわけには行きませんが、そのうちに、いや預かると言つて怱ち皆立上つてしまつて、増井に向つて椅子を投げつける。椅子でぶち掛かる、皆で毆り掛かるというようなことで、とうとう匕首で以て何でも増井の頭を切つたらしい。そういうようなところから増井はその場から、……ちようどこのときは戒護課長もその場におつた、それから總務課長もおつたらしいが、戒護課長が増井を支えて外へ助け出して行つておりますところを、何十人かの囚人が追つ掛けて、手に手に棒を持つて、上から乘つ掛つて増井を襲う、こういうことであります。
 續いて今度は所長に對して暴行をし始めた。そこで所長ももう身邊危い状況に迫りましたので、會議室から飛び出して、それから先のことは、もう所長としては後から考えて判斷がつかないというのですが、廊下に飛び出し、續いて更に事務室の側を通つて、刑務所の入口の所までも皆から取巻かれつつ押迫つて來たのであります。全體を通じまして、そのときには七十名くらいが手に手に兇器を持つておつて殺到しておるのでありまするから、そのうちに、どこで一體毆られたのであるか分らない。やはり所長は頭を毆られてしまつた。手を當ててみて血が出ておつて驚いたということであります。そのうちに所長の着ているワイシヤツまでもすつかり破られてしまつて、さんざんひどい目に遭わされて、而もそこにおつた者がどれくらいのものか數が分りませんけれども、窓ガラスを全部で以て二百枚から割つてしまつた。そうして机を引繰り返し、叩き割る、丸つ切り、本當に後から考えれば凄まじい状況であつたということを皆言うております。
 そういうような者に圍まれておりまして、とうとう終いは、最初は匕首を持つて所長に迫つたのでありますが、皆寄つてたかつて、その匕首は取上げたのでありますが、續いて炊事場の方に行つて、これは多分小俣らしいのですが、炊事場に行つて庖丁を取つて來て、その庖丁を所長に突きつけて出せということを迫つたのであります。そこで若しもそれを拒絶すればこれはもう當然所長としても身邊危ういばかりでなく、もう場内殆ど囂々とてし暴動化しておりますので、これは結局出す外ないということの決心をいたしまして、そこでとうとう所長は今日出してやるというようなことを明言するに至つたのであります。
 もうそういうことをなりますと、池谷が出ますれば問題は解決するであろう、おさまるべきであると考えたに拘わらず、やはり依然として險惡な雰圍氣にあつた、その雰圍氣の間に文書課長が出所の辭令を書いて、そうして更に元の會議室の隣の所長室に引上げて參りまして、そこで辭令を渡そうとしたのであります。その渡そうとしておりまするときに、班長十三四名の者が立會い、やはり前におりました四五十名の囚人が廊下にずつと取巻いておりまする眞中において辭令を渡そうとしておつた。ところが、今度は池谷が、私はとにかく今日出して貰うことは有難いけれども、併し今日でかしたこの事件をこれを一つどうか不問に付して貰いたい、若しもあとで以てこれが問題になるということになるならば、自分としては今日は出られない、こういう一つの又難題を申入れられた。そこでそれを承認するということは所長としては實際できない立場にありますることは言うまでもありません。すでにその日に池谷を出すということ自身が越權行爲でありますばかりでなく、それだけのガラス障子を破られる大きな暴動が起つたに拘わらず、それを調べることを全然しないというふうなことについて明言を求められますることは、これは非常に無理なことでありまするけれども、それを拒絶すれば直ちに又元の形に歸りますので、そこで絶體絶命になりまして、遂に今日の事件は決して調べるようなことはしないというような返答をするに至つたのであります。それから續いて、その明言をすると同時に、今度は池谷の方は更にそれに對して、それならば一札貰いたいというような更に大きな難題を吹つ掛けて來たのであります。併しその場の状況止むを得ないといたしまして、到頭涙を振つて所長はその場の状況、暴動事件については不問に付して調べないということを書いて池谷に渡した。尤もこれを渡しまするときにも所長は固より躊躇して容易に返事しなかつたのでありますけれども、おりました文書課長、總務課長いずれも口を揃えてもう事ここに至つてはいたし方がないから、五十歩百歩だから書いてやれ、それでなければおさまらんからというので到頭書いて渡した。實はこういうことになつたのであります。
 その解決が午後の五時半頃になつたそうですが、更に今度は、又その上に所長に對して、我々は今池谷一人を出すことは困る、どうか送らしてくれ、こういう又次いでの難題が申入になりまして、いろいろと所長の方でも困る趣旨を言つたのでありますけれども、聽き入れないので、或いは代表者にしろというようなことを言つてもそれも聽かず、到頭しまいには十三名の班長全部が池谷を送るということになつた。ところが、だんだんともうその日は午後の七時頃なつてしまつた。乘物等の關係もありまするので、結局又そうした者を所外に出しますることは非常に危險であるから、旁々そこで刑務所内のトラツクに乘せて、そうして文書課長に戒護課長、それから看守が二人、四人附添いまして、午後の十時に刑務所を出發いたしました。元來は彼が住んでおりまするのは用宗でありまする、靜岡市内でありまするけれども、用宗には行かない。袋井の方に自分の姉がおるからそこに行きたい、というようなことを言いまして、結局袋井まで送つて行つたのであります。送つて行きますると、そこで姉婿でありまするか、それから五百圓か何かの金を貰いまして、「どぶろく」をどこかへ行つて若干買つて來たらしいのです。そこで「どぶろく」を皆で飲んで、翌日の午後七時にあとの者は皆引返して來たという事情になつております。
 そこで何分にも前夜來暴動化しておりまする非常に險惡な所内の秩序をどうして一體おさめて行くかということについて、看手も足りませんことではあり、それから又彼らも非常に殺氣立つておりまするので、一觸即發の雰圍氣は依然として續いておりますので、そこで班長の申出でによりまして、今度は班長十三名があとの見廻りをする、いわゆる警備に當るということになりました。そうしてその班長十三名が自由獨歩で以て警備に當つておつたのであります。
 ちよつと前後いたしましたが、その以前に看守の一名が都合よく門から一人抜け出まして、丁度所長が脅迫されておりまする最中、所内が非常に暴動化しておりまするさなかに一人看守が出まして、そうして警察の方に應援を頼んだ。丁度所長が池谷をいよいよ今日中に出すということを言明をして漸くおまつておるときに武装警官を三十名携えまして、靜岡署長、竝びに司法主任等が引率しまして刑務所に駈けつけて來たのであります。ところが、そこで又今度は、一旦所長はいよいよ池谷を歸すということを言明しておさまつておつたようなときに、警察官がどうつと來たのでありまするから、又再び色めき出して元のような形になろうというような形勢が察知されましたので、所長は今武装警官全部を入れて強硬な態度に出ることは、却つて事態を惡化せしめるということを考えまして、署長と司法主任だけを門内に入れまして、事の事情を話して、とにかくこの場合警察が入つて來ていろいろ言いますということは、結局事態を惡化せしめるから、この際歸つて呉れということで、署長もやはりそういうような雰圍氣にあることを知りまして、そこで署長は部下を携えて歸つたのであります。そういう事情がありました。
 ところが、丁度翌日の七日であります。警察の方にそうした應援を求めておりますようなところから、警察側から所内の暴動事件が新聞社の方に傳わりまして、七日の新聞に所内の暴動事件のことがずつと掲げられてしまつた。一面所長としましては、司法省の方に參りまして……、その前に檢事正の所に參りまして、そうして事の次第を報告いたしました。併し所長としては、その事件をもう不問に付するということを書面にまでして誓つておるような關係から、餘り強硬な態度で出て貰いたくないようなふうに、檢事正に報告したのでありますけれども、餘りに事態が重大でありまするから、檢事正としては當然本省の指揮を仰がなければならんというようなことになつて、八日の日に署長とそれから檢事正は、司法省の方に參りまして、いろいろと打合せをいたしました結果、やはり他の將來にも大きな影響のあることであるから、それを不問に付してはいかんというようなことになつて、まあ調べるようなことに實はなつたのであります。
 所長も書面は出してありますけれども、併しながら上司の命令でありまするし、致し方ないのでその晩歸つて來て、それは九日のことですが、所長が歸つて來まして、午後の二時頃に皆を集めて、どうも君らには事件を調べるというようなことはないと誓約してあつたけれども、どうもそういうような工合に行かんことになつたという工合に所長の方から班長連中の十二、三名に傳えた、そこで所長の苦衷を諄々と説いたものですから、一應その場は皆了解したのです。止むを得ない、事ここに至つてはいさぎよく調べを受けて、責任があれば責任を負う外ないということで以て、所長の前では一應從順に承知したのであります。そこで承知して歸りましたものの、班長連中といたしましては、事の意外なことに對しましては、なかなか容易におさまらない。そこでこのままにしておれば固より責任を問われるのであるから、責任を問われるということになれば、五十歩百歩だから一つ逃げようじやないかというようなことが議題になりまして、それからいよいよ逃げることに話が決まりまして、その逃げる手段として、西門の鍵を巧みに盗み出して、結局翌日の十日の午前三時に、西門から最初六名、續いて三名ということになつて、九名が逃げ出したのであります。この鍵を盗み出すところに參りますと、いろいろと複雑な事情がありまするが、とにかく最初鍵を保管をいたしておりました鍵箱は先日の暴動によつて減茶苦茶に壞わされてしまつた、こういうことでありますから、止むなく西門の鍵も机の引出しの中に入れてあつた。これを取出して逃げたのでありまするが、その場におりました長谷川という看守部長、それから應援に參りました看守が二、三名おりましたのを、巧みに口實を設けて部屋の外に誘い出して、その留守に鍵を盗んで使つて出た、こういうことになつております。
 一面刑務所の方といたしましては、司法省の指揮を受けまして、ともかくそのままにして不問にいたしますにしても、治安の維持上、刑務所の手ではいけない。のみならず更に進んでこれを檢擧するということになりますると、相當な準備を要するので、そこで全體で以て横濱外數ケ所の看守を約三十名特に派遣をされまして、みずから警戒の任に當つておつたのであります。併しそれは皆が逃げまする九日の晩の十一時頃に十名近くの看守が應援に來たというようなことでありまして、それまでは逃げた班長級の者が專ら警戒に當つておつたのであります。看守はその間に時間的に方々を巡廻いたしまするけれでも、少くとも警戒は十分ではなかつた。その隙に乘じて出た。出掛けんとしておりまする時に巡警が參りまして、一部は散つたけれども、更に到頭目的を遂げて逃げた。こういうことになつております。
 そこで逃げまする前に新聞に報道されておりました問題の餅でありまするが、これが實は新聞には逃走用の餅を搗いて逃げる用意したのだというふうに出ておりましたが、行つて状況を調べて見ますると、搗いた餅を全部五つに割つて、いろいろな薄板か何かにそれを包んで荷拵えはしてありまするけれども、それは所内に殘つておつた。それからその後逃走いたしました者の中で以て三名が捕つて、それらの者の陳述によりまするというと、餅は持つて行つていないということになります。檢察廳の調べによりますると、その餅は班長級の者が警備に當るがために間食にそれを出すのだというようなことをおどして炊事の方で搗かしたということになつておりましたが、私共はその後囚人によつて調べて見ておりまするところによると、結局やはり逃走の準備として前夜からその餅を搗かせる用意をして、逃走する際これを携えて逃走するつもりであつたには相違ない。ところが、いよいよ出發するというときに、大分荷物があつたというようなところから、荷物が多いためにそれを持ち出すことができない状況になつて、そのままに置いて行つたというようなことに私共は聽き取つて歸つたのであります。どうもそれが事實のように私共は信じております。
 そういうことでありまして、新聞でも御承知の通りに、その逃走者の九名の中三名は捕まり、續いて高橋という炊事係の者が掴まり、續いて昨日の新聞によりますると、この中で一番元兇であります宮原が水害地で捕まつた、こういうようなことが報道されております。
 そういうことでありまして、檢事局の方では只今專ら暴動事件、これは暴行等の取締規則によつて處分する準備として調べておるらしいのであります。暴行、逃走という廉で調べておるのであります。そこで更にこの新聞に載つておりました所内の涜職問題、これは新聞にはいろいろなことが出ておりまするけれども、只今までのところでは、具體的にはどういう涜職事件があるかということは分つておりません。檢察廳の方におきましては、これから續いてこの點について嚴重な調べをするつもりであるけれども、先ず以て暴行事件竝びに逃走事件の調べをした後にその方に手を伸ばすという豫定であるから、この際の逃走者竝びに當時の暴動に當りました責任者は、それぞれその獨房に入れてありますが、それを我々が調べることは暫く遠慮してくれというような御注文がありましたので、私共の調べました囚人三名というのは、そうした責任の地位にあつて直接問われております以外の者の中から、特に三名だけについて聞いて見たのであります。柳元明、村松太一、松井豐作、この三名の囚人について聞いて見たのであります。これが實は私共の調査に對しましては非常に大きな指針を與えて貰つたような氣がいたします。
 ということは、餅の問題におきましても、私共は檢察廳のお話によつて、餅と逃走とは關係ないものであるというようなふうに一應は考えておりましたが、この囚人の話によりまするというと、やはり逃走に備えんがために、炊事の者を脅し上げて搗かして、そうしてこの餅を持つて去ろうとしていたとき、手荷物があるために持つて行くことができなかつたというようなことが、私共眞實だと思う結果を得たのであります。又池谷という者が、所内において人望があつて、所内を壓しておる。囚人全部が心から信服して、池谷のためにこうした大きな騷動まで起したというようなことにつきましては、檢察廳の報告によりますると、大體池谷の人望がそうしたものに至らしめておるというふうに檢察廳の方では見ておりましたが、私共の調査いたしたところによりまするというと、そうでなく、池谷はすでに前科八犯を持ち、そうして非常な粗暴牲を持つております。もう苟くも自分の意に添わない者に對しましては片端から毆り飛ばす。池谷に關係を持ちまする者の毆られない者は殆どないくらいで、殊に昨年までは非常な暴威を振つておつたらしい。結局池谷という者が全體の上に乘つかつて所内を壓しておつたということは、結局彼の徳望でなくして、暴力で以て壓しておつたというのが實際らしい。彼は第一工場という製紙をいたしております工場を擔當いたしておつたのでありますが、その製紙の第一工場の方に收容いたしてやりますのが全體で約六十人、その第一工場の囚人全體に對しまして彼の威令というものは看守以上の大きな力を持つておつたということは間違いないのであります。更に又ひとり第一工場のみならず、その他の工場に對しましても、獨歩を許されておる關係上、各方面に顔を出すのでありますが、すべての班長の上へ乘つかりまして、結局班長中の代表者であり、そうして苟くも意に副わない者は片端から暴力で以て壓して行くというのが結局池谷の專横を極めました現實の事實らしいのです。
 そこで一體なぜこういうことをやらしめたのか。こういう點につきまして、非常に私共は疑いの眼を以て見ておるのであります。というのは直接關係のありまする古林豐四郎という戒護課長が、池谷を中心といたしまして、副班長をいたしております宮原、更に又その下におります小俣という者、これはいずれも揃いも揃つて非常な粗暴な人間であります。もう一言いつて意に反けば直ちに暴力に訴える、大抵の者がビンタを張られておるというのが實際の状況であります。この暴威を振うに對しまして戒護課長がこれまで一囘だも咎めたことなく、又これに對しまして制裁を加えたことはない、こういうようなところから、却つて所内の勢力關係から行きましては、彼はむしろ刑務官以上の聲望というか、威力を持つて所内を壓しておつたということは事實であります。
 これは結局、なぜ一體池谷に對して戒護課長がそれ程寛大であるかというようなことについていろいろな疑惑が生じて參つておるのであります。これはいずれは檢察廳の方で以てその事實を確めることと思いますが、只今までのところでは具體的には贈收賄というふうな事實關係は私共の調査では分らなかつた。とにかくそうしたわけでありまして、戒護課長といたしましても、あすこへ收容いたしておりまする囚人全體の氣風といたしましては、どうもやはり親分子分というふうな一つの氣風がありまして、そこで女々しい態度を非常に嫌うというような風習がありまするので、概して粗暴に流れて力の強に者が勝つ、結局弱肉強食の氣風がありますから、そこで毒を制するに毒を以てするというふうな戒護課長の方針ではなかつたかと思います。これにつきましては、所長といたしましては直接にこれらの囚人に當りませんから分りませんが、戒護課長のそうした一つの方針の誤りといいましようか、職務上の取扱い振りが、やがて彼らをして増長せしめ、そうして續いては彼らがその暴威を所内に振うというようなことに相成つたものだと私共は思つております。そういうふうに思つて歸つたのであります。
 そこで問題はどうして一體こういうようなことが起つたか、こういうことになりまするが、この點が私共としては一段と關心を持たなければならん點だと思います。
 第一番に、増井看守は誤解をいたしまして、先に八月十五日に假釋放の申請を司法省にやつたのでありますが、その假釋放の申請書に基いて六日の午前十時に司法省の方から假釋放の認可が來たけれども、この仲間に當然池谷も入つているものだというふうに誤解をいたしまして、増井看守はこれには關係はないのでありますが、同じ庶務におりますから、書面が届いておつて、文書課長が開いて見ておつたのを、遠目に見ておつて、ああ來たな、池谷も今日出るなと、ふうに考えまして、池谷に今日出るからと言つて、一刻も早く喜ばしてやりたいということで言うた失言が直接の原因であります。確かこの逃走罪の方におきましては、それに對して長谷川部長が細心の注意を拂わずして、大切な鍵を普通の雜用物を入れます机の引出しの中に課のままで入れたということが、或いは失態と言えば失態でありますが、併しすでに鍵凾は破れてしまつたのであります。却つてそうした氣のつかない場所に普通の扱いをした方がいいだろうというので机の引出に入れたということが、たやすく彼らに鍵を取られたという一つの理由にもなつております。
 尚、一體所内で餅を搗いたのがどうして分らなかつたかという點が、新聞だけ見ておりますと、非常に私共不思議に思つておりましたが、實地に臨んで見ますと、餅を搗いた所は丁度鐵筋コンクリートの壁があつて、倉庫の間に場所がありまして、其處で搗いておつても傍からでは音も聞えなければ固より分りません。殆ど暗がりの中で以て搗いておるような場所でありますから、場所を見まするというと、分らないのが當り前だと思えるのであります。そこで結局炊事係が脅されて、いずれ池谷、小俣が脅かしたのでありましようが、高橋までその仲間になつて搗いたということになつております。
 そこで、私共の調査によつてみまする所によるというと、職員の責任につきましては、大體只今まで報告いたしましたようなふうに、戒護課長の責任が一番重いと思つております。そこで所長の方の責任はどうであるか、これを私共檢察廳の話を聞き、或いは所長自らも聞き、その他の關係者の言うところを聞き、更に囚人の言うところを聞きましても、いかにも出すべからざるところを、即日池谷を出すということにしたり、或いは暴動事件の取調べをしないという書面を書いて渡す、又所内に拘禁しております者を所外に自動車で送り出させるというようなことを、次から次へと違法な行爲をいたしておりまするが、併し、これは私共視察に參りましたその一行全部が恐らく均しく感じておることと思つておりまするが、もうそうした處置をとるに非ざれば恐らく事態を一段と大きなことにしてしまつたことだろうと思います。例えば所長が頑強にそれを拒みまするならば、必ず私は所長は殺されておると思います。そうして殺されることを避けんがためにはそうするより外なかつた。それならばなぜそういうことをしたかということにもなりまするが、そればかりでなく、假に所長がその場合殺されたといたしましたならば、これはもう必ず彼らが殺氣立つて來まして、續いてちよいちよい私共が調査いたしておりまする間に散見をいたしておりますのは、確實なところは掴み得ておりませんが、時にはいつそのこと刑務所に火をつけて、全部一緒に逃げ出そうじやないかというふうなことすら、その場の話題に上つたということであります。そのぐらいにこの暴動事件は殺氣立つておりまする状況であり、それが而も所長を殺してしまつたというようなことになりましたならば、次いで起る問題としましては、當然これはもう放火、續いて全部の者が逃走するというようなふうなことになつておるものだと私共は感じたのであります。故に所長の態度が、官吏道から見るならば、甚だ緩漫のようにも思えまするし、不當のようにも思えまするけれども、少くとも私の見ましたところでは、所長としてはむしろこれは本當に止むに止まれずやつたものである、むしろ私共は滿腔の同情を持つて歸つたようなわけであります。
 それから一番大事なことと思いますることは、過剩拘禁、先般來名古屋の高等裁判所管内に私共視察に參りまして、名古屋の拘置所、刑務所、三重の拘置所、刑務所、又警察署の留置場、更に岐阜の刑務所等を視察して參つたのでありまするが、いずれも戰災を被つておりまして、固より不完全ではありまするが、就中この靜岡の刑務所に至りまするというと、これはもう本當に不完全と申しませうか、バラツクだけでありまして、舍房、いわゆる拘禁者を拘禁いたしておりまする舍房、これらなどでも本當に見て參りまするというと、定員四名ぐらいの所に十何名も入つております。過剩拘禁のためにあれらの者が力を揃えて一齊に押したならば、固より家までも壞し得るようなふうな私共感じを持つたのであります。殊にこうした秩序を紊す、規律を紊す一番大きな原因としましては、拘置所が丁度刑務所の眞中にあります。それがために、拘置所は御案内の通りに自由に面會ができるのでありますから、そこで一々面會に參りまする者と、それから既決囚の入りまするところの舍房との間に何らの遮蔽物を作つてない。でありまするから自由に出入りができる。そこで所内自由獨歩を許されておりまする班長、副班長などにおきましては、面會人といかなる連絡でも取り得られる。それでこそいろいろと入るべからざるものが所内に入る。煙草が入る、何が入るというようなふうで以て、幾つもの品物が入つておる。金が入るというようなことで以て、入るべからざるものが入つておりまするのは、そういう方面において連絡を取ろうと思えば、自由自在、とにかく私共實地を視察して參りまして、この設備で以て、多少隙があらば逃走しようというような既決囚人を收容しておる場所などとは思いもよらない場所です。僅かに周圍を圍つておりまする煉瓦造りの塀がありまするが、それ以外ない、中は本當のアツパツパーであります。建築物の柱、本材、所内に幾らでもありまするから、本當に逃走いたそうといたしますならば、鍵を用いずして、何もせんでも、その有合せの材木を使いますならば自由に逃走ができる、こういうような實は現状でござります。
 とにかく三百人足らざる定員に對しまして六百何十名というような過剩拘禁であり、設備は不完全である、監視は足りない、戒護に當りまする監守は、調べてみますと七十何名かの定員の中で、四十何名が拜命後一年以下の者ばかりである。殆ど新任の者ばかりでやつておりますから、慣れ切つておりまする既決囚の前科數犯ありまする班長に乘せられますことは當然のことである。これは少くとも責任者を責める前に、やはり私共は設備の不完全、待遇の足らざること、定員の足らざること、旁々その責任はむしろ私は國家にあるような感がして參つたのであります。
 甚だ殘念でありましたけれども、新聞で報道せられておりまする所内の規律の問題に對しましては、私共の手によつて今は明らかに掴むことができません、状況にありまするが、檢察廳の言明されますところによれば、必ずやこれに對しては嚴重なるメスを加えると申しておりまするから、いずれは明白になることと思います。今日も靜岡の刑務所長から、今度新らしく新任されました荻生治雄氏から書面で言つて參りましたが、靜岡刑務所の今後に處するについてはいろいろと資材が足りない、それについて協力してくれということを言つて參つております。とにかく視察して參りました私共としましては、少くともあの設備ではこうした結果が當然生れるものだというふうに感じて參つたのであります。
 足らない點が澤山ありまするが、大體の概略だけを御報告申上げたわけであります。尚他の諸君からも種々御質問になられる點を又……。
#4
○委員長(伊藤修君) 只今の鬼丸委員の御報告に對しまして何か御發言がありますですか……。御發言ないようであります。本件に對する取扱いにつきましては、これを午後に御相談申上げることにいたしまして、時間も十二時を過ぎましたからこの程度で休憩いたして、午後一時から再開いたしたいと存じます。
   午後零時十四分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十四分開會
#5
○委員長(伊藤修君) それでは午前に引續きまして、委員會を續行いたします。先ず午前の報告に對しまして政府の意見を伺いたいと存じます。
#6
○政府委員(岡田善一君) 御指命により簡單に申上げます。
 午前中鬼丸委員から靜岡刑務所の騒擾竝びに集團逃走事件に對しまして、極めて詳細に、而も公正に眞相を穿つた御報告を得まして、むしろ我々といたしまして、在來報告を受けましたより以上にその眞相が明らかになつたような氣がいたすのであります。
 殊に野村所長に對する御意見につきまして、極めて同情的な御見解を拜聽いたしまして、私共といたしましても、所長に關する限りにおきまして、やや意を強うしたような氣もいたすのであります。
 勿論かような事故を起しましたにつきまして、刑務所内における職員の勤務上の怠慢、或いは士氣の弛緩ということは、我々當然考えなければならん點でありまして、かような點につきましては、今後檢察方面のお調べの結果と相俟ちまして、職員の人事の刷新と強化ということを早急に實現いたしたいと考えております。
 又職員が概して經驗の少い、いわば就任以來一年以内の者が相當多數でございますような實情に鑑みまして、職員に對する訓練と教習を更に徹底いたしたいと考えております。
 併しながら、かような事故を起しました原因につきましては、今朝來鬼丸委員も御指摘に相成りましたように、過剩拘禁と施設の不十分、乃至は警備關係の職員の少いというふうなことを特に痛切に考えておりまして、かような點につきまして、目下收容施設の増強竝びに刑務職員の増員の問題につきましても、大藏當局に折衝いたすべく著々準備中でございます。
 又職員の待遇の問題にいたしましても、或る程度大藏當局において是正して頂くというふうにはなつておるのでございますけれども、この點につきましても更に一層努力いたしまして、結局かような事件を轉機といたしまして、禍を轉じて福となすという趣旨におきまして、更に我々一層事故防止の面に努力いたしまして、社會に對しお詑び申したいと存じております。
#7
○委員長(伊藤修君) 本件に對しまして、その取扱いにつきお諮り申上げたいと存じます。
#8
○阿竹齋次郎君 その前にちよつと一言聞きたいのです。頗る簡單です。只今御當局は經費が不十分とか過剩拘禁と言われる。それは成る程そうでしようけれども、もつと大きな原因がないか。即ち刑務所長が自分の職務を元來怠つておる。その怠つておる一番大事なことが教化だと思います。要するに何がために囚人を此處に入れて置くかという教育が足りなかつたと思います。ロシヤのように手放しにせよとは申しませんが、もつと刑務所長が人格的に、囚人に尊敬せられるように導かなければならんと思います。これが缺けておつたと思います。そうして又政府の御監督が不十分であつたと思います。この點に對しまして、大臣やあなた方にも大なる責任があると思います。
#9
○政府委員(岡田善一君) 只今御指摘になりましたように、刑務職員は人を教化する仕事をいたしておるのであります。人と人との關係でありまして、職員にその人を得なければならんことは、私共といたしましてもかねがね考えておる次第なのであります。從いましてこれが銓衡につきましても或いは訓練の問題にいたしましても、從來とも相當努力して參つたつもりでありますけれども、かような事件を起しましたことを考えて見まして、我々の力の足らなかつたことを恥じる次第であります。固より私共といたしましても、かような事件を起しました責任につきましては、十分痛感いたしておる次第でありまして、上司のこの事件に對する責任の追求につきましては、私自ら甘んじてその責をとりたいと考えております。
#10
○阿竹齋次郎君 度々濟みませんが、もうあなたは努力するということは言えない資格になつてしまつたのです。たとい努力したとしてもああいうような大きな事件が證據になつて現われておる。それだから單に私は拘置所なんかや取調べなんかを嚴重にやつておるということよりも、實際に囚人を取扱つてびくびくさせることは決して行刑の目的を徹底するものじやないと思います。理想的に……もつと根本があると思います。根本に缺ける點があつたために、こういうような失態を演じたと思います。
#11
○委員長(伊藤修君) それでは本件に對しまして派遣議員の御報告もありましたし、又政府の、御意見も拜聽いたしましたので、これに對しまして委員會といたしましては、この問題に對し、この騒擾の原因がどこにあつたか、そしてそれをどういうふうに今後處理すべきものであるか、例えば待遇の改善であるとか、設備の増強に圖るとか、その他いろいろな問題があると存じますが、これに對しまして當委員會の決議によりまして、委員會の意思を表示いたしたいと存じます。次いでこれが決議文の作製に對しまして委員を三名程擧げて、このお方にこの起草をお願いいたしたいと存じますが、御異議ないでしようか。
#12
○阿竹齋次郎君 どういうふうに意見が纒りますか……。
#13
○委員長(伊藤修君) 起草をしていただくだけで、その起草の結果は委員會に諮つてやる。御趣旨の點がありますれば、その内容を修正して頂きます。
#14
○阿竹齋次郎君 ここの委員會で決まつた意思を文章にするのではないのですか。係のものが自分の意見で以て作つて見るのですか。
#15
○委員長(伊藤修君) 原案を作つて頂くのです。それに對して、委員會が、皆さんの御意思がそこに盛り込まれておるように御決定願えばいいと思います。
#16
○阿竹齋次郎君 委員會の意思は大體分つておりますから、できますね。
#17
○委員長(伊藤修君) 今日まで現われた空氣は……。
#18
○阿竹齋次郎君 これは私の意見で參考にならんかと思いますが、私は具體的にいうならば、所長は罷職にすべきである。大臣は議會において責任のある説明をして貰いたい。大臣に對し行刑の民主的方策についての具體的説明を求めたい。
#19
○委員長(伊藤修君) それは本日大臣をお招きしたのですけれども、閣議がありまして……。午後は衆議院の方がありますから、從つて當委員會におきましては御報告を願い、そして今後にとるべき態度を明らかにいたしまして、その結果、今の起草ができましたれば、それに對しまして大臣の責任ある御答辯を願う。こういうふうに運んで行きたいと思います。
#20
○阿竹齋次郎君 有難うございました。委員會はそうですが、私は大臣が議會で言うと、それを國民も喜び安心する。
#21
○委員長(伊藤修君) ですから、草案ができましたら、それに基いて大臣から責任ある御答辯を願う。こういうふうにいたしましたら御趣旨に副うと思います。
#22
○阿竹齋次郎君 それで結構です。
#23
○委員長(伊藤修君) それではその起草委員の指名は委員長に御一任願いましてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○委員長(伊藤修君) それでは本件につきまして直接御調査を煩わしましたところの鬼丸委員、岡部委員、齋委員の三名の方にこれが起草をお願いすることにいたします。
#25
○鬼丸義齊君 視察をいたしましたのは今囘ばかりでなくして、すでに先般名古屋の高等裁判所管内を視察いたしたのでありまするが、大體私共の視察いたしました状況から見ますというと、全く司法の現状というものは待遇の薄いことのために司法官並びに檢察官等の生活窮乏の状態はもう全く目に餘るものがあつて、よくも私共は我慢してくれると襟を正しておるのであります。のみならず施設におきましても概して貧困であり、とかく事件は日を追うて激増いたしておりまするに拘わらず、定員は從來の定員を以ていたしましても尚且つ到底處理でき得ない状態にあるばかりでなく、社會情勢のために司法官の定員を充たすことが非常に困難で缺員に繼ぐ缺員であります。これらに對することといたしましては、このままにして私は放擲して置きまするならば、本年中を待たずして司法の中野幹部は皆野に下つてしまうというようなことになりはしないかということを虞れております。でありますから一つこの際司法關係に對しまする政府の關心事を一段と深からしめる意味において、私はこの際ひとり刑務所に止まらず、司法關係のすべてに對する一つ激勵的の意思を決定いたしたいと思います。どうかその趣旨を一つ織り込んで頂きたいと思います。
#26
○委員長(伊藤修君) 只今鬼丸議員の御發言にありますがごとく、先に申上げましたところの決議文の内容に、今鬼丸議員の申されました趣旨をも織り込むことにつきまして御異議ございませんですか。
#27
○阿竹齋次郎君 それは大臣がやらんならんことです、こちらから言われんでも……。
#28
○委員長(伊藤修君) この委員會といたしましては、大臣は氣が付いておるかどうかは存じませんが、委員會はこう考えておるんだ、こうなくてはならんということを表示する意味におきましてはよかろうと存じます。
#29
○阿竹齋次郎君 そんなことが氣の付かない大臣はないと思います。
#30
○委員長(伊藤修君) 理論といたしましてはそうでございますが、やはり氣の付かんこともあり得ると思いますし、又鞭撻する意味におきまして委員會の意思を表明する。そういう根本的な問題から觸れて行くことも必要じやないかと存じます。
#31
○鬼丸義齊君 その點につきまして、私共は見ておりますると、司法省の事としては内容の擴充強化に對しましてはむしろ遲れておると思いますが、結局豫算に制せられておると思います。そこで委員會の決議といたしまして、そうして首相を激勵し、續いてはやはり大藏省に對しましてもその趣旨を了解するように我々努力して行かなければならんと思います。かたがたこの際意思表示をいたしますることは非常な、殆ど崩壊寸前にありまする司法を救うことになりはしないか。治安の問題は私は生活問題と殆ど竝んで重要な今日の場合だと思つております。その意味において一つ司法省、司法大臣を激勵すると同時に、政府を併せて激勵して、そうして大藏省の方の理解を私共は促すということまで行きたいと思つております。その趣旨で今申上げたわけなんであります。
#32
○委員長(伊藤修君) では、さよう決定いたしまして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○委員長(伊藤修君) それではさよう決定いたします。
 次に衆議院囘付にかかるところの裁判官彈劾法案を議題に供します。前囘に引續きまして質疑を繼續いたします。
#34
○鬼丸義齊君 前囘も伺つたのでありますが、まだ私共了解ができにくいと思いますのは、この裁判所彈劾法案につきまして、訴追委員がその全員衆議院からのみ取ることになつております。これは憲法の規定によりますれば、裁判官の選任は兩院から取ることになつておりますが、その他のことは國會法に讓つておるようであります。國會法の定める結果として、この彈劾法案というものはできた案でありまするが、私共は訴追委員を衆議院のみにおいて獨占をいたしますることは、いかがかと思いまするのみならず、殊に訴追委員は起訴、不起訴の判斷をしていずれかに決め得る重大なる權限もございます。私共は憲法にすでに定めておりまする裁判官を兩院から出しまする點は、これらは何としましても憲法の趣旨に從わなければなりませんが、訴追委員につきましては國會法に定めた結果でありますものでありまするから、この際法案提出に對しましてこの國會法を改正をして、そうしてこの訴追委員を適當に兩院に配分して頂くということにいたすことの方が妥當ではないかと考えますので、この點に對しまして重ねて一つ伺いたいと思います。
#35
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) この問題につきましては、先日も質問がありましてお答え申したのでありますが、衆議院で案を作る場合におきましては、國會法の改正までを考えずに、憲法の規定に從いまして、その他の部分は國會法に讓るということになつております。國會法の規定の中に訴追委員會は衆議院から出すという規定がございますので、本法案におきましては、第一條において「裁判官の彈劾については、國會法に定めるものの外、この法律の定めるところによる。」とある。從いまして、衆議院で案を取扱いましたものは憲法、更に「國會法に定めるものの外、この法律の定めるところによる。」ということで取扱いを國會法の規定に從つてやつたわけであります。更にこの問題につきましては、審議の過程において、衆議院の方においては、この衆議院だけが訴追委員を出すということについて議論なかつたかということもこの前質問があつたのでありますが、私歸りまして衆議院の國會法の審議にあたりました當時の速記録等を見、又事務當局にも伺つて見たのでありますが、やはりそのときにはこの議論がなかつたように私共伺つておるのであります。そういうようなわけでありまして、問題の扱い方を第一條に示してありまする通り、「裁判官の彈劾については、國會法に定めるものの外、この法律の定めるところによる。」、從つてこの法律に定められたものは國會法に定められたもの以外の規定であるということで御了承を願いたいと思うのであります。まだ足らざる點は説明員の方からお答えさせることにいたします。
#36
○説明員(三浦義男君) 只今お話のありました點に附加えまして、二、三申上げたいと思つております。先程の御質問の御趣旨よく了承いたすのでありますが、この建前といたしまして一應かように考えておつた次第であります。それは國會法の規定に基きますることは固よりのことでありまするので、一應それはそのままとして行きましたことは只今お話の通りでありまするが、尚從來の日本のこの司法制度と多少違いまして、今後は裁判所というものがいろいろの實際裁判の中心となつて行く。これは從來もさようでありまするけれども、その観念を中心として考えて行きます場合におきましては、訴追委員或いは一般の司法權に關しましては、檢察廳というような關係よりも、比重の面におきまして裁判所が非常に大きい役割と意義を持つて來るのであります。從いまして裁判というものは國會議員、衆議院、参議院の方々からおなり願つて、そうしてここで公正適切なる判斷をして頂くということが新らしい行き方なのであると推測いたすのであります。かような意味におきまして、裁判所を中心に考えます場合におきまして、ここに参議院の方々はお入りなつておることは固より當然でありまするが、訴追委員會におきましては、さような意味において、多少比重的に見ますと輕い、と申しますと語弊があるかも知れませんが、その間に多少の輕重の差があると想像されるのであります。それともう一つは、衆議院の方はたびたび解散等がございまして、いわゆる民意を代表するという機會がしばしば廻つて來るのでありまして、今度新らしく置かれましたこの彈劾法は、從來の懲戒などと違いまして、國民の名において公の彈劾をするという意味でありますので、さような點を考えます場合におきましては、新らしく解散等によつて民意を代表して來る衆議院の人を訴追委員に入れるのも又一理あるのではないか、かような見地からもこの問題を考えられると思つておるのであります。
 それと更に外國の例によりますと、アメリカ、イギリス等におきましては、下院に訴追の權限を持たしておるのでありまして、この場合は、裁判の方は上院でありますけれども、日本の憲法におきまして、彈劾裁判所はすでに衆議院と參議院と兩方に確定されましたのでありまするが、訴追委員會の方におきましては、さような外國の例等も取入れまして、そうして衆議院がその訴追委員に選ばれるということになつておるように推察されるのであります。
 かような見地からこれを立案いたします場合において一應考えられたのでありまして、決して參議院を輕くするとかどうという意味ではないのであります。この點御了承を願いたいと思います。
#37
○鬼丸義齊君 衆參兩院の比重は著しく相違いたしておりますることは、これは比重の問題ではなくして、總員全部衆議院で獨占しておる。比重どころの騒ぎでない。それから又すべてアメリカの例によるといたしましたならば、アメリカは上院において裁判をすべていたしまして、訴追は下院においていたすことになつておりまするので、この點は誠にはつきりいたしておりまするが、今憲法に規定いたしまする日本の場合に考えて見ますると、すでに兩院に裁判官が跨つておるといたしましたならば、當然この訴追を衆議院で以て獨占するといふことに對しましては、いま少しく大きな理由がなくちやならん。兩院にすでに裁判官が跨つておりまするならば、同時に訴追委員會につきましても亦當然考慮を拂わなければならんと思ひますが、その國民の意思を代表するといふことが、成る程衆議院においては解散等がございまするから、新らしい意味においての國民の意思を代表することにもなるでありましようが、併しながらその點も五十歩百歩の問題と思います。裁判員におきましても、訴追委員におきましても、共にやはり國民の意思に從つてやらなければならんのでありますから、國會法におきまして、兩院が對等に裁判員を定めるといふことになつておりまするならば、當然その前提でありまするところの訴追委員も又兩院に按分をしなければならんものであると、かように私は思うのであります。
 そこで私は、法案制定に當りまして考慮を拂う上において、大體國會法の規定に基いて起案をせられたことには相違ないと思いますが、この法案を起案いたしますにつきましては、いわゆる不公正、不均衡なることに對しましては、起案者としまして、相當深い理由を私は考えて貰わなければならんと思います。ただ國會法に規定してあるから、それによつてというのでなくて、すでにいよいよこれを實施に移そうといたしまする彈劾法案制定に當りましては、この點の均衡、妥當なることについては、私は大いに大きな理由を附けなければならん、かように實は思うのであります。國會法は法律でありまするから、惡い點がありましたならば、立案者の方におきましては當然改正ということの途もございます。又衆議院において何らの問題が起つてないとするならば、私共參議院といたしましてはますます以て了解ができない。只今御説明の程度だけで以て、國民の意思を代表するのが衆議院であるというようなふうには私共はとつておりません。その意味におきまして、立案者の方において、私の今質問いたしまする趣旨に御了解を得るのであるならば、この際誰が見ましても尤もだというところに立つて、新らしく法律を制定する場合には、定めて頂きたい、かように考えまするので、この際國會法を改正し、而してこの彈劾法に對する均衡を保つようにすることが適當だというような御意見をお持ちになるかどうかをこの際伺つて置きたいと思います。
#38
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 非常に重大な質問でありますが、國會法は五月の三日よりその效力を發しておるわけでありまして、いわば今開かれておりまする第一國會に適用をされておるのであります。併しこれが制定になりましたのは、明治憲法の下における議會において制定になつたのでありまして、その場合におきましては、衆議院で一度議決をいたしまして、これがたしか貴族院で審議未了になり、二囘目に衆議院及び貴族院を通過したということになつておると思うのであります。衆議院の方は別といたしまして、參議院の性格と貴族院の性格とはおのずから異なるものでありまして、その點は私共よく了承できるのでありますが、併し衆議院に席を占められております各位の方が、國會法を決定するに當りまして、當然、新憲法の下においていかように國會が運用され、又彈劾裁判所のの在り方はいかようであるかというようなことの上に立つて、私共は、この國會法に同意されたことであるという前提の下に、今御議論になつたようなことはないものと考えまして、そうしてその立案に當つたわけでありまして、この點はよく御了承を願いたいと思うのであります。
 ただ國民の意思を代表する限度その他についての議論をいたしますれば、私は却つて問題を紛糾させる結果にもなろうかと思うのでありまして、その點から申しますならば、今の參議院の姿というものと過去の貴族院の姿とはおのずから違うのでありまして、私共はこの點はよく了承しており、尚且つ衆議院と參議院の關係におきましても、私共は相協調し合つて行かなければならんということもよく了承できるのでありまするが、案を扱いました建前というものが、憲法の規定、更には國會法の規定以外のものを扱うという前提の下にこれを扱つたのでありまして、その點は何も比重に掛けてこれを扱つて、いわゆる衆議院が優位性を持つておるというようなことから出たのではないのでありまして、この點は篤と御了承を願いたいと考えておるのであります。
#39
○齋武雄君 この前にも質問をしたのでありますが、「訴追委員會は、情状により訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶豫することができる。」こういう規定になつておりまして、それに對する不服の方法がないのであります。國民が訴追を強行して訴追委員會に申告した場合、訴追委員會において、これは彈劾裁判所に廻す必要がないのだといつたときは、自由に不起訴にできるのであります。その場合において、訴追した國民が納得しないとしても方法がないのであります。本案によりますというと、それに對する不服の規定が規定されていないのであります。
 前囘の御説明では、衆議院議員は國民の代表であるから國民の意思に反するようなことはしないだろう、訴追を適當としたものは訴追をやり、猶豫すべきものは猶豫するだろう、こういうお言葉でありましたが、そうなることを私は希望するのであります。併し必らずしもそうであるとは私は考えないのであります。人間でありますかるから、誤つて、訴追すべきものを或いは猶豫したりどうかすることがあるのであります。そういう場合においては、國民の訴追の權利を剥奪する結果になるのではないか、こういうことを虞れるのであります。訴追委員會において自由に情状によつて訴追を見合わせるということになりますれば、國民の訴追の權利というものを侵害することになりはしないか、こういうふうに考えておるのであります。
 それでありますから、起訴、不起訴の權利は、私としては訴追委員會において自由にすることはできない、必らず彈効裁判所に訴追の申立てをする、そうして若し許すべきことがあつたならば、彈劾裁判所においてこれはやるべきことであつて、訴追委員會に權限を持たすということは不合理ではないか、こういう考えを持つておるのでありますが、その點についての御見解をお願いしたいのであります。
#40
○衆議院參事(三浦義男君) 只今のお話の點は、實は衆議院におきましても、いろいろ論議せられたのでございます。只今のお話のようないろいろな意見も出ましたのでございますが、結局二條の彈効事由に該當したしました者につきまして、尚その後の事由によりまして、例えば本人が非常に改悛の情が著しい、或いは又この十三條にあります場合は、例えばこの訴追に三年前のものに遡つてもできることになつておりますので、その場合におきまして、すでにもう相當の時日を經過して、今もう訴追する必要も餘り認められない、かような事情等もありますので、それらを勘案いたしまして、又日本のいわゆる情状によりという情深い仁慈の精神というものも採入れまして、そうしてそこにある訴追權の運營を圖る、かようなことが今の段階において望ましいのではないか、かようなことから十三條の規定が入つておる次第でございます。併しお話のような點もありまして、十三條は不要ではないかという御意見も確かにあつたのでありますが、全員結論といたしまして御贊成になつたのでございます。
 尚これに關しまして、先程の訴追を申出ました者の處置の問題でありまするが、これは第十三條に規定してありまするように、罷免の事由がある場合には、誰でも訴追委員會に訴追を求めることができる、いわゆる公けの彈劾によるという意味を廣く解しまして、國民多數の人々の訴追權を認めることにいたしました關係上、特定の書式とか何かということをやかましくいいませんで、又その人も或る場合においては自分の名前を明らかにしないでも訴追を申出で得る。かようなことにいたしまして、そうして廣く世論に聞く、かような建前をとりました關係上、特に或る個人がこの訴追權を侵害された、これを認めないという場合においては、侵害されたということに對する救濟の方法を考えなかつた次第でございます。
#41
○齋武雄君 情状によつて訴追を猶豫するという情け深いことは私も同感でありますが、併し私のいうのは、訴追委員會にこういうことを委するのが適當であるかどうかということであります。こういうことをやめるということは、或る場合には猶豫するということは結構であります、結構でありますが、先程委員の方から裁判所の權限が多くなつた、檢察官の權限が不足である、こういうお話でありましたが、この規定によつて逆であります。この規定によつて訴追委員會の權限は大きいのであつて、彈劾裁判所の權限は小さいのであります。見方によつては何でも猶豫されるという虞れがあるのであります。そういう權限を訴追委員會に附與することは適當であるかどうかということは問題なのであります。訴追を猶豫することはいかんというのではないのであります。それは結構でありますが、彈劾裁判所に裁判の猶豫の權限を與えてよろしいのではないか。訴追委員會にその權限を與える必要はないのじやないか。こういうことを私は考えるのでありまして、その點についての説明をお願いします。
#42
○説明員(三浦義男君) 只今の點に關しましては、先程申しましたように御意見、御尤もでございますが、尚現行刑事訴訟法の關係におきまして、檢事等もかような事柄が認められておりますので、將來の問題といたしましては、御意見のような段階になる時期もあるかと思いまするが、現状におきましては、まだかような制度をとりますることが實情に即するのではないか、かようなことを考えておる次第であります。確かに裁判所に持つて行つて、こういうことは裁判官がやるということも御尤もでございますが、この十三條の規定は、できるだけ狭く解しまして、そうして御意見に副うように運營されなければならないと考えておる次第でございます。
#43
○鬼丸義齊君 只今刑事訴訟法の檢事の起訴猶豫に對しまする規定の御引用がありましたが、私は成る程訴追委員というものは非常な重要なことであつて、すべて訴えがありましたならば悉くこれを律するというようなことは、これはまだ日本の文化の程度からいたしましたならば非常に煩瑣に堪えないことになりましようし、本人に迷惑を及ぼす場合も非常に多いと思うのでありますから、取捨そのよろしきことになるのでありましようが、併しながら少くとも檢事に對しまする告訴の場合におきましては、若し檢事局がそれに對する不起訴の決定をいたしましたならば、抗告の途があります。私はただこの一般國民全體に對して訴追の權限を與えたいというのであるならば、それを第一囘の審議によつてそのまま排斥いたしまして、そうしてあとは一切願みないということになりまするならば、やがて國民の信頼というものが、……彈劾裁判所法による訴追委員會の信用があるかどうかということに對しまして非常な疑いを持ちます。私はこの際折角そうした規定を作るのであるならば、少くとも抗告を許し、抗告に對する一つの制度を設ける必要がありはしないか。そうして抗告の上再審議をして、而して訴追者が尚且つこれを排除されましたならば、必ずや私はこの訴追者の方では了解が行くと思います。ただ一遍、第一囘の初審、終審で以て、訴追委員會だけの處置において最終の決定をいたしまするのは、いかにもどうも告訴者に對しまする親切なる行き方でないと思います。刑事訴訟法との關係からいたしましても、私は少くとも抗告の途だけはこの際開いておくということがいいのではないかと思いはするし、又先程も私の伺いましたごとくに、衆議院において訴追委員會を獨占をいたしますならば、この場合にこそ、私は參議院において抗告訴追委員會というものを擔當せしむることになるならば、極めてこの間の均衡もよくあり、又同時に一般國民に對しましても親切なる結果を齎すものではないかと思います。御所見を伺います。
#44
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) この問題は、この前私が質問がありました場合に、訴追者の考え方と訴追委員會の取扱い方の間に齟齬ができないのが原則であるし、かくなるだろうということを申上げたのでありますが、私は今でもそういう考えを持つておるのであります。ただそういうことでないことが起きた場合に、どういうふうにやるかということが質問者の趣旨のようでありますが、實際から申しまして、そういうことにならないのを希います。又そうなつてはならないと思うのであります。ただ今の御質問は、十五條にも關聯することでありまして、全部裁判に掛ける、何人も、廣汎の人がその彈劾權を用いて彈劾の追訴をすることができるのでありますから、それを一一裁判所でこれを取扱うことになりますならば、非常な手續上その他の問題があろうと思うのでありまして、それを訴追委員會において處置して行くということは妥當ではなかろうかと考えるのであります。その中にいわゆる起訴不起訴の問題を取扱つて行くというようなことも、當然含まれて來て然るべきではなかろうかと思うのでありまして、問題は手續その他のことから考えましても、一々裁判所にこれを掛けなければならんということも大きな問題ではなかろうかと考えます。
#45
○委員長(伊藤修君) 御質問の趣旨は、抗告を必要とするかどうか。刑事訴訟法において、檢察官が起訴處分をする場合において、それに對する抗告の申立方法を許しておるのだから、必ずしも訴追委員會が神樣でない以上、過ちもあり得るのだから、その場合に國民に納得するように、その不服の申立の機會を與える點に對して、御所見はどうか、こういう點をさつきから鬼丸委員が伺つておるのじやないかと思いますので、その核心に對して一つどうぞ。
#46
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) この問題は、十五條が非常に廣汎に亙つた規定であり、何人もそう手續がむずかしくなくできるということになつておりますから、それが一々決定した分に對して、又抗告を許すということになりますと、どうも大きな問題になりはしないかと思うのでありまして、又そうなければならんという原則は私は思料できるような氣がいたしますけれども、實際問題として、不可能だという結果になるではなかろうかというふうに存ずるのでありますが……。
#47
○説明員(三浦義男君) 只今の點に關しましては、憲法六十四條の「國會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、」ということがありまして、その前提といたしまして、彈劾裁判所が行い得る權限は、憲法上訴追ということが前提になつてその裁判をする、かようなことになつておりますので、一般の裁判所の例によりまして、抗告とか或いはその他の裁判を認めるということは、この憲法の意圖していないところであろうとも考えられますので、只今の御話の點は、法律問題といたしましてもむずかしい問題がありますので、先程來お話のありましたように、できるだけ運營の面においてもこれを御期待に副うようにして行く、こういうような方法において考えるより外ないと考えております。
#48
○齋武雄君 只今のお話ですが、質問とどうもしつくり來ないようであります。質問は裁判官が抗告を受理するという意味ではない。彈劾裁判所は抗告を受理するということをいつておるのではないのでありまして、それは他の方法で結構であります。訴追委員會でも何でも構わんのであります。裁判所が抗告を受付けるという意味ではないのであります。訴追委員會のやつたことについて、更にそれに抗告の方法をなぜ考えなかつたか。一囘だけで済ましてしまう。立派にやつて呉れればそれで結構でありますが、數多い場合においては、そうでない場合があるのであります。それから廣汎な規定だと言われますが、刑事訴訟法においても何人も告發ができるのでありまして、刑事訴訟法と同じであります。この訴追の方も何人もできるのでありますが、刑事訴訟法も同じであります。何にしても犯罪ありと思料した場合、告發も告訴もできるのでありますから、その點においては相違はないのでありまして、檢事の場合においては、抗告は許しております。或いは再抗告までやるのでありますが、抗告をし、更に再抗告までするのでありますが、訴追委員會はただ一囘だけで、不服があつてもできないということは、或る場合においては國民の訴追の權利を侵害する虞れがあるのではないか。國民に納得させるためにやはり不服の方法をここに規定して置く必要があるというふうに考えております。裁判官がその抗告事件を取扱うという意味ではないのであります。
#49
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 運用の點からいえば、第十條でありますが、「訴追委員會は、十五人以上の訴追委員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。訴追委員會の議事は、出席訴追委員の過半數でこれを決し、可否同數のときは、委員長の決するところによる。但し、罷免の訴追又は罷免の訴追の猶豫をするには、出席訴追委員の三分の二以上の多數でこれを決する。」、こういう工合に、議事の運營については非常な窮屈な規定をしておるのであります。普通の委員會のように、訴追委員の過半數が出席してそれでいいというのではないのでありまして、この議事の運營のことを考えるにつきましても、その決定が公正に行われるということは、運用で私は行けるのではないかと思うのであります。この運用を誤まれば、ということになると思うのでありますが、ここに書いてあるように、十五名以上の訴追委員の出席がなければ開くことができない。二十名のうち十五名以上でありますし、更に加えて訴追、又は罷免の訴追の猶豫をするためには、出席訴追委員の三分の二以上ということの規定があるのでありますから、嚴重な規定であるのでありまして、必ず、運用で行けばそういうような事故が起らないで済むというような結果になりはしないかということを、私推察できるのであります。それでもできないということになれば、これは何か救濟の途を拓かなければならん。これは何か途が出て來るだろうと思いますが、私はこれで行けるのではないかという考えで立案したわけであります。
#50
○鬼丸義齊君 それは實際問題としましては、すでに訴追委員會において不起訴と決定したものは訴追者の意見に反することになるのでありますから、その訴追しなかつた者だけに對して、抗告を許されるならば、多くの場合において最初の訴追委員會で決したことと恐らく同樣な結果を得るのでありましようと思います。併しながら實際に當りまして、一般の告訴、告發をいたしております者が抗告をして、そうして不起訴と決定しました場合には、非常にそれで以て告訴者の納得ができませんことが實際なんです。ただ單に不起訴で以てやり放しで以て、檢事の手許で告訴がありましても、それを不起訴にしてしもうということがありますと、それだけではどうしても納得の行かない場合が多いのです。ところが同じ結果になるにしても、やはり再審の途が開けておりますことになりますれば、少くとも訴追の申告者というものは非常なる滿足をすると思います。故に私は何も大した大きな手續を要することではありませんから、やはり抗告の途を一つ拓いて、そうして抗告委員會で以て採決してやるということにしたならば、憲法の趣旨に私は副うことになりはせんかと思います。訴追委員會は成るべく鄭重なる規定がござりませんで、ただ一審、終審でありますれば、どうしても申告者の方で納得が行かないという場合がある。たまたま衆議院の方で以て訴追委員會を獨占を致したのでありまするから、そこで抗告のところをせめて參議院の方にでも持つて來まするというと、この均衡が非常にいいし、同時に又訴追の申告者におきましても、私は大いに滿足することになつて、憲法の趣旨に合うのではないか、かように實は思うのであります。
#51
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 御説御尤ものような氣がするのでありますが、問題は誰でも方式が簡單な訴追ができるということになつておるのでありまして、この訴追委員會で扱う件數というものが、考え樣によれば隨分餘計になるのではなかろうかと思うのであります。そういうような手續上のことや、もう一つは第十三條の規定において、訴追委員會は、情状により訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶豫することができるということでありまして、この點から考えて見まするならば、猶豫するということに切つておるわけではありませんから、更に訴追してもいいという形が現われて來ると思うのでありまして、必ずしも救濟の途がないわけではなかろうと思うのであります。一遍訴追したから、それで直ちにあとは訴追ができないということはないと思うのでありまして、訴追してそれが猶豫になつた場合においては、更に又訴追者は訴追ができるということに私はなろうかと思うのでありますから、それは救濟の途は十三條の運用でできるじやなかろうかと思うのであります。
#52
○松村眞一郎君 只今の説で私は疑問に思われるのですが、猶豫はいつまでも許すのですか。猶豫の期限です。
#53
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 期限はございません。
#54
○松村眞一郎君 そういうことは甚だ不明確にすると思います。私はむしろ疑問を持つておるのでありまして、そういう不安に感ずる状態をいつまでも續けるということは無期限ですか。そういうことは私はおかしいと思う。何とか始末をつけなければならん。國民がここに告訴をしておる、それを默つておつて、何ら解決するところなくやつておるということは私は意味をなさんと思います。
#55
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) その期限がないということは、要するに罷免の關係においては三年間ということを切つておりますから、その間猶豫ができるということでありまして、三年が過ぎればおのずから別になろうと思います。
#56
○松村眞一郎君 三年間も猶豫しておるということは常識としてどうでしよう。私はおかしいと思う。私はむしろこの文字を見ますというと、猶豫することができるというのでなくて、訴追の必要がないのでありますから、必要がないということなれば「訴追せざることを得」でよいじやありませんか。必要がないのですね。必要なしと認めておりながら猶豫するということは私はおかしいと思う。むしろ猶豫でないのであつて、そういうことを言われるならば、はつきり決めた方がいい。必要がないなら止めた方がいい。だから私は猶豫ではおかしいと思う。それはおかしいと思います。必要がないのに又必要を生ずるということはおかしいと思う。これは何も刑事訴訟法を見ても猶豫ということは書いてありません。「控訴を提起せざることを得」というので、猶豫ではありません。それは不起訴になつてしまうのです。はつきりしなければならん。私からいえば、これは若しこの趣旨でやるならば、猶豫という字は私はいかんと思います。それは私の意見として申上げます。
#57
○説明員(三浦義男君) 實はここに書いてあります十三條の意味は、そのときの事情によつて「情状により訴追の必要がないと認めるとき」ということが一つでありまして、それは先程十五條の問題に關聯してもお話がありましたように、一般の人からいろいろ訴追の請求をさせます關係上、例えば或る人について、裁判官についてこういうことをやつて呉れといつて參りました場合に、そのときの訴追を求めて來ましたそれだけの事情におきまして、第二條の問題を決定いたしますことは或る場合においては適當でない場合もありますので、そういう際におきましては一時訴追をいたしますことを見合して、又同様のことを、あらゆる方面からさような訴追をしろ、こういうようないろいろの具體的な事情を擧げられまして、公正なる要求がありました場合においては、又それを取上げまして、訴追委員の三分の二以上の意見によつて訴追をするかどうかを決める。こういうような含みのある實情に即した規定なのでありまして、最初に一人の人が訴追を持つて來まして、罷めさせてくれということをひどく惡く言つて參つた場合に、直ぐそれに捉われてやりますことは、裁判官の地位の安定性ということから考えなければなりませんので、そこらは一般に十五條によつて誰でも廣く訴追を認めます關係上、この十三條はさような意味において御考慮を得ればよい、かように考えます。
#58
○松村眞一郎君 私はそういうことは訴追の必要がないということになれば……必要があるかないか分らないときじやありませんか。そういうのは必要がないのであつて、必要があるかないか分らないから猶豫するのであつて、必要がないと書いてある。訴追する必要がないということに猶豫という問題は起り得ん。あなたの御議論であれば、訴追するか否かは分らない。それなら分らないと書いたらよいではないか。訴追が必要がないということは事實でありませんか。今必要がある。あとから訴追の必要が出て來るというのは訴追の必要がないのじやない。そういうことで訴追の必要がありや否やを決めるのは輕率である。それで訴追してよいか惡いか分つていないのに、必要がないということは一人で決められない。そういう輕率なことで猶豫しては困るのであります。そういう意味でお書きになつたら飛んでもない間違いである。そういう人事は輕率にやるべきではない。一方で告訴して猶豫しても亦來るかもしれん。他の訴追が來たら又やれるということになる。そんなあやふやなことで御起案になつたとするならば、私はこの文字の上において甚だよくないと思う。訴追する必要がないならば訴追しないでもいいじやありませんか。必要があるかないかということは絶對的なものであつて、必要がないと決めて、あとから必要が生ずるというのはおかしい。
#59
○委員長(伊藤修君) 今のは訴追すべき事實の全然ない場合、いわゆる不起訴の場合ですね。そういう場合と、訴追すべき事實があつて、尚且つ情状によつて猶豫する場合と二つあるのじやありませんか。そうすると、ごつちやに御答辯になつておるのじやありませんか。
#60
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) その點は第十條で決定しておるのでありますから、第十條で訴追する必要がない。必要と決つた場合においてはおのずから別だということになりましようが、「情状により」という文句があるのでありますから、自然起訴不起訴を決定する場合においては、情状によつて不起訴と決まつた、そういうときがあり得るのでありまして、その場合において決まつたけれども、あとこれと又同じような事件が出て來て二つ重つた形が出て來れば、訴追という結果になりはしないかということを説明員が申上げたのじやないかと思います。そういう工合に御了承を願えばよいのじやないかと思います。
 それから松村委員の、「必要がないと認むる」とある。そういうものだから、猶豫する必要がなくてもうそれで問題は解決するのじやないかという御議論のように承つたのですが、併しその上に「情状により」ということがありますから、だからその情状によつて必要がないと認めたるときは、その罷免の訴追を猶豫することができるということになるのであつて、情状ということがその下に掛かつておる……。
#61
○松村眞一郎君 情状により必要がないと認めたのでありますから、現に必要がないと認めたのに、更に又情状を考えるということはおかしい。元來訴追することも、本案を檢討することも、訴追するか否かということを檢討することは一事不再理でなければならん。一事不再理の原則ということはすべて行われるわけであります。一旦決めて置きながら、あとから蒸し返すことはおかしいと思う。もしそういうことができうるというなら刑事訴訟法でも同じことである。起訴しないことを又あとで……刑事訴訟法でも同じようなことが書いてある。情状ということがあるが、刑事訴訟法においても、あなたの御議論はもう一遍できるという御議論か。檢事が一旦不起訴と決めた場合、情状でもう一遍起訴ができますか、それを御覽になれば非常に明瞭でしよう。
#62
○鬼丸義齊君 私は實は十三條の規定に大きなものが洩れておると思いますのは、これは一つの懲戒事案ができておる、事實ありということを前提にした場合の猶豫である。ないものであれば猶豫も何もないのであります。併しないものが、大部分じやないかと思います。一般國民全體から訴追を申告して參りますものは、違反の事實というものがないものの方が殆ど大部分である。これは審査の結果違反の事實あり、懲戒の事實ありというものに對して猶豫をするのであつて、猶豫も何も根本的に原因にならない場合の處置が書いてない。あるものだけを斟酌して、申告があれば悉く懲戒の事實あるものとして十三條はできておるように思います。少くとも全然懲戒の事實なきものに對する措置というものがこの規定の中には抜けておるのであります。これだけであると猶豫だけです。
 それから今の松村君のお話でありますが、やはり檢事の場合にも不起訴に對しましては、一事不再理がないのです。ここでは結局今松村委員のお説のような一事不再理にすることの方が安定するのじやないかと思います。
#63
○委員長(伊藤修君) 不起訴の場合と起訴猶豫の場合と二つあるのであつて、十三條は起訴猶豫の場合で、それを混淆して説明員の人は説明しているように見えるが、十三條には二つ含まれていないことは明らかなんです。條文の建前から……。
#64
○松村眞一郎君 これは刑事訴訟法でも問題になることで、何も鬼丸君と議論する必要はありませんが、刑事訴訟法二百七十九條に犯人の年齡ということがあります。年齡ということならば明瞭に起訴できません。年齡で取下げてしまつたということになれば、そういうものは必らず一事不再理で二度やることはない。こういう起訴というようなことは身分に關する關係であつて、非常に不安定でありますから、これは猶豫という制度はいかんと思う。訴追委員が全責任を以て必要なしと認めたらやめたらいいです。訴追委員を我々は彈劾するにしましても、輕率なことをやるのはいかない。そうでないと、先程御説明のように裁判官というものを非常に地位を不安定にして、三年間もぶら下げて置くということになる。國民が非難しておるそういう裁判官を三年も訴追の審判を遲らせるということは非常に不滿足に考えます。早く處置しなければいかない。疑いないものは疑いないとして、とにかくそれで信じて、もう一遍起れば又もう一遍訴追したらよいじやないか。非常に憂いておるのは彈劾の裁判は相當に時がかかると思います。そういう關係でありますから、問題は早く片付けないと、裁判官の處理に困るという意味におきまして、猶豫ということには自分の意見としては反對であります。
#65
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) これはやはりあれじやないのでしようか。十三條は起訴猶豫の規定であつて、不起訴の規定ではないから、起訴不起訴の關係は大體十條の手續によつて終了する形になつて、その終了した後の起訴の状情酌量というものがあつた場合の起訴猶豫が十三條で設けられておる、こう御了解願えば妥當じやないか。我我起案に當りましては、訴追するか、罷免しないかということは手續上一應決まつてしまうわけでありますから、決まつてしまつたあとで又訴追の猶豫という問題が起きた場合にはこの手續で扱う。不起訴と決まつたものについてはこの中に含まれておらないので、十條の議事で大體終了する形になると考えております。
 それは第十條の讀み方になりますが、十條の但書にそのことが書いてあります。その但書に三分の二以上の多數を要する。重大なことですから、これはこの條文を適用するというお考えならば、猶豫の場合も、不起訴の場合もこれでやらなければならんと思います。こういうことを二つに區別することはいかんと思います。猶豫と書いてありますけれども追訴せざる場合も入つて來る。そうでなければ讀めないではありませんか。「罷免の訴追又は罷免の訴追の猶豫」というのですからその二つしかない。非訴追ということは書いてない。非訴追はどうするか。猶豫というのは非訴追、起訴するかしないかということを三分の二で決めるということで、猶豫の中に非訴追ということも入つておる。そうでなければどうしますか。非訴追のときに過半數でやるか、三分の二でやるのが當然です。
#66
○阿竹齋次郎君 答辯を承ると、當局の御定見を疑わざるを得ない。當局の御答辯、一々きりはありませんが、言葉尻を捕えるのではありませんが、「なりはしないか」といふような言葉が出て來る。これは誠に頼りないことで、提案者はもう一應御研究になつて説明の出直しでもやつて呉れては……。
#67
○齋武雄君 訴追する權利は、國民の憲法上與えられた固有の權利だと考えております。憲法十五條によつて公務員に對する罷免權を持つておる。これが訴追の權利だと思うのでありまして、その訴追の權利を訴追委員會において、輕々しく排斥すべきものでないと私は考えておるのであります。ただ訴追の權利が結局罷免の權利でありますが、權利が濫用であつた場合において、それは排斥してよろしいのでありまして、濫用であるかどうかということは非常に困難であります。訴追權の濫用であるかどうかということは非常に困難な問題でありますから、そういう意味において、國民に納得させる意味において、私の意見としては、起訴猶豫ということについて、抗告の權利を認めるということを考えなかつたのかどうか、その點をお伺いしたいのであります。
#68
○松村眞一郎君 それに關聯してちよつと發言させて頂きたいと思います。それは原案の御説明によると、猶豫というのですと、國民はそういう答辯を得ても仕方がないと思います。若し猶豫ということであるならば、三年の間不安定であるということを國民が聞いても仕方がない。どつちかにして呉れということを國民は要望するだろうと思います。猶豫が惡いという判斷よりも、起訴するかせざるかということの判斷ならば、國民はそこに何らかの異議を申立てることができましよう。抗告の途を開くとすればはつきりと條文が必要だと思います。猶豫という考え方では根柢からいけないと思います。訴追するかしないかということを決めてしまえばよろしい。早く事件を片付けなければならんという要望をいたしますから、そうして一旦訴追しないということに決めた以上は、今申上げましたごとく國民に對して通告しなければならん。刑事訴訟法でいえばこれを通知することになつておりますから、そういうような工合に手續を踏まなければいかんから、やはり抗告の途を開く方が親切でないかと思います。えらくこだわる必要はない。或る意味においてこの委員會は懇談的に考えていいと思います。原案を強く主張されることに執拗であるが、率直に成る程と考えなければならんことになるならば、考えていいじやありませんか。私はこの點はそういう態度でやつて頂きたいと思います。
#69
○衆議院議員(淺沼稻次郎君) 決して原案を固執するわけではありませんが、私共職掌上自然いろいろあることで、これを纒め上げるには甲論乙駁して案として纒め上げたものでありまして、纒め上げるまでの議論をよく了承しております。二条と十三條の關係が殆どこの案の根本をなしておるものであります。從つてそれについては深刻な議論も衆議院にあつたのでありまして、今松村委員の云われるような議論も隨分ございました。併し結論といたしましては、やはり猶豫の途を開いた方がいいのじやなかろうか、餘り嚴格に決めてしまつてはどうかという議論も出て參りまして、その結果十二條と十三條の關係を審議した結果、原案といたしましては猶豫できるということがまあ多數で決まつたわけであります。從つてそう決まつております以上、私の方といたしましては、當然そのことを申上げなければならん立場でありますから、申上げておるのでありまして、その點は政府と、それから委員各位との關係というようなことに私はこだわらないで、やつて行きたいということは固よりであります。ただ私の表現のことについても御議論がありましたが、そういう意味を含めておりますから、非常に割つた話を申上げておるのであります。私が當局のような考えに縛られて議論しておれば、或いはもう審議についても、例えば訴追委員會の構成その他の問題、國會法の改正問題、これについてこれ以上審議をして頂くことも甚だ不可能じやなかろうかと考えるのでありますが、何といたしましても國會で初めて作り上げる大きな法律の一つでありますから、そういう意味で議論のあるところをうんと聽かして頂ければ、私共考えべき點があれば別にこだわるわけでありません。議論のあるところは、こういう議論があつたということを知つて頂かなければ、私共の勤めも勤まらんわけでありますから、その點を御了承願つて置きたいと思います。
 只今松村委員の云われました議論は、衆議院でも相當深刻に行われました。ただ國民の持つております基本的な權限をこれで抑える結果になりはしないかということにつきましては、第十五條の規定によつて相當廣汎にできるということを決めておりまして、これが廣汎である限りにおきましては、一面におきましてその取捨選擇の權限を、訴追委員會が持つということが妥當ではなかろうかということで決めたのでありまして、而も第十條の規定にある通り、非常に公明なる態度を以てやつて行く。こういう愼重なことで行くことになればそういうことに陥らんという警戒を以て案の作成に當つたことだけは御了承願いたいと思います。
#70
○委員長(伊藤修君) そうすると、不起訴の場合はどこで決するのですか。速記を止めて。
   午後三時八分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時二十二分速記開始
#71
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#72
○説明員(三浦義男君) 先程御質問になりました第一點の起訴、不起訴の問題でございまするが、この法案におきましては、第十條の第二項の但書のところに、「罷免の訴追の猶豫をするには、出席訴追委員の三分の二以上の多数でこれを決する。」と言つております。この規定の中におきまして、罷免の訴追をするかどうかということを決定いたします場合におきまして、いわゆる起訴を決定することになるのでありますが、その場合訴追する者、いわゆる起訴される者を決定するときに、結局起訴されない不起訴のものを合せて勘案して決定するつもりにこの條文の意味が書いてあるのでございます。
 第二點の、さて起訴をされました者につきまして、第二條に該當いたしました者につきまして尚特別の情状がある者につきましては、十三條の規定によりまして特に猶豫の制度を認めたのであります。これはいろいろ衆議院においても議論があつた點でございますけれども、日本の實情に即しまして、かような規定を置くことが尚必要であろうというようなことから置かれたのでありまして、これは運營の面におきまして、成るだけこの規定が濫用せられないようにいたしまして、そうして國民の彈劾の聲を如實に反映するようにされなければならないと考えられておる次第でございます。
 尚次に、抗告の問題についてでございまするが、この問題は、裁判所訴追委員會、彈劾裁判所全體の構成に關しまする重要な問題であるのでありまして、衆議院におきましては、すベて簡潔に處理する必要上、できるだけ二審、三審というような制度を採らないで行こうというようなことが考えられまして、訴追委員の全智全能を搾つて、そうしてこの訴追の問題を決定する。かようなことに考えられまして、抗告の方法を認めなかつた次第であります。その點は尚十五條の規定とも關聯いたすのであります。十五條は、罷免の訴追を請求いたしまする者につきまして、廣範圍に國民の聲を聞くというような趣旨から、特別の書式とかやかましい、制限を設けませんで、或いは投書の場合もありますし、或いは又口頭で申出て來る場合もありますし、或いは又正式のいわゆる訴追要求書として現われて來る場合もあるでありましようが、とにかく十五條は廣汎な權限を認めました關係上、これらに對しまして一々その罷免の訴追の要求に應じて、これが不起訴になつた場場合に抗告の方法を認めるというようなことは、煩瑣を増すのみであつて妥當ではなかろうと考えたのであります。さような意味から、國民の聲は十分に廣く取上げて聞いて、そうして訴追委員會の多数の意思によつて決めるというような建前から抗告の必要はなかろう、かように考えておる次第でございます。
#73
○中村正雄君 今の御説明ですと、結局罷免の訴追の猶豫ということは、訴追しないということと同じことをおつしやつておるのと違いますか。第十條の但書と十三條の關係も御説明ありましたが、十三條というのは、十條の但書の罷免の訴追の猶豫をするという内容を十三條が規定しておるのであつて、十條と十三條は同一事項をいつておるので、十條は形式をいい、十三條は内容をいつておるので、別々のことをいつておるのではないから、今御説明になつた點を考えると、罷免の訴追の猶豫ということは、罷免の訴追をしないということをいつておるのと同じように聞えるので、猶豫ということはおかしいのではないですか。
#74
○説明員(三浦義男君) 多少言葉が足りないかも存じませんけれども、いわゆる不起訴というものは、初めから二條の要件に該當しないということが條件でありますが、猶豫の場合におきましては、二條の條件には該當するが、尚そこに或る特殊の事情によつてこの起訴を暫く猶豫してやる、こういう規定の趣旨でありまして、先程もさような意味において申上げましたつもりでございます。
#75
○委員長(伊藤修君) 他の條項について御質疑はおありになりませんか。
#76
○岡部常君 十四條に「訴追状には、訴追を受ける裁判官の官職、氏名及び罷免の事由を記載しなければならない」とあり、十五條には「何人も、裁判官について彈劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員會に對し、その事由を明かに具し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる」というふうに書いてございますが、その訴追者のことについては何も觸れておりません。これは何か外に手續の上で決められるのでありましようか。訴追者の身分を明かにするとかいうようなことは考慮されておらないのでしようか。
#77
○説明員(三浦義男君) 十五條の罷免の訴追を求めることができる者の範圍は特に限定いたしておらないのであります。社會的に一般の判斷能力を持つておる者であれば、誰でも十五條の規定によつて訴追を求め得る。かように考えておる次第であります。
#78
○委員長(伊藤修君) 御質問の趣旨は、十四條の二項の上段の方に、裁判官の官職という條件が、明らかに形式が謳つてある。十五條の方には訴追を受ける者の方が、その形式が謳つてないがいかがという御趣旨でございますが。
#79
○岡部常君 本當の突き詰めたところは、訴追者が責任を明らかにしているか、明らかにしている手續をとつているかどうかということであります。ただ徒らに訴訟をするのでは困る。自分はこうこうこういうようなことで、こういう理由で彈劾するのだ、こういうふうな責任を取る態度をとらせるようにしなければいけないと思うので、その點はこれだけでは分りませんから、その他に何か決めるおつもりであるかどうかということが第一點であります。
#80
○説明員(三浦義男君) 只今のお尋ねの點でございまするが、十五條の規定の場合におきまして、特に訴追を求める者に對しまして、自分の氏名とか或いは職業、こういうものを明らかにさせるという規定を置いたらどうかというようなことも考えられたのでありまするが、そういたしますと、たしかにお話のように責任の所在を明らかにすることには合致いたすのでありまするけれども、又こういういわゆる嫌なことと申しますか、或いはこういう訴追を請求するというようなことを、さような限定をいたしますると、却つて廣く國民の聲を聽くことができなくなるのではないかというような意見もありまして、只今申上げましたような、廣く國民の意見を聽くことの方がむしろ公けの彈劾の趣旨に沿うからというようなことで、特に十五條の規定以外に言及することを止めました次第でございます。
 尚先程の十四條、十五條の問題でありますが、十四條は訴追委員會が訴追を行います場合の規定でありまして、十五條はそれ以外の一般の人がやる場合の規定になつておる次第でございます。
#81
○鬼丸義齊君 この訴追委員會は證人喚問ができるのですか。十一條によりますると、訴追委員會から官公署に對して證人の調査を嘱託した場合に、その官公署の方はその調査に關して證人の出頭及び證言を求め得ることになつておりますが、委員會が證人を喚問することができるか。それから更にその委員會が證人喚問ができるというならば、これには宣誓をせしめて、宣誓違反に對して僞證の責任を問うまでのことができるかどうか。その點を一つ明らかにして頂きたい。
#82
○説明員(三浦義男君) 只今お尋ねの第一點の點は、十一條の第二項の規定によりまして、訴追委員會は證人の出頭を要求することができることに建前がなつておる次第でございます。尚その場合の僞證の問題等に關しましては、これは刑法の僞證罪の規定の適用を受ける、かように考えております。
#83
○鬼丸義齊君 十一條の二項は訴追委員會も兩方できるのですか。
#84
○説明員(三浦義男君) 御趣旨のように兩方できます。
#85
○鬼丸義齊君 刑法の僞證罪になりますと、宣誓をせしめなければならない。これは彈劾裁判所の方には證據の蒐集について刑事訴訟法の規定によるということになつておりますが、訴追委員會の方にはそれがない。二十九條の一項、刑事訴訟法の規定を準用するというのであるけれども、訴追委員會の方はそれがないようですが……。
#86
○委員長(伊藤修君) 御起立を願います。速記が取れませんから…。
#87
○鬼丸義齊君 それでは私の今のは……。
#88
○齋武雄君 只今僞證罪については刑法の規定によるのである。こういうお話でありますが、四十四條には、僞證した場合には訴追委員會において千圓以下の過料に處する、こういう規定があります。刑法の規定と全然違うようでありますが、最初の刑法の僞證罪になるというお話はどうでありますか、四十四條の……。
#89
○説明員(三浦義男君) 只今お尋ねの點は、私うつかり申上げましたが、訂正いたします。四十四條第二項の規定でございます。それから私が僞證罪と申しましたのは、四十四條第一項の彈劾裁判所の場合における僞證罪と混同しましたが、彈劾裁判所の方におきましては、裁判所として宣誓いたさせますので、それで僞證罪の適用がある、かようになるわけであります。
#90
○委員長(伊藤修君) 速記止めて。
   〔速記中止〕
#91
○委員長(伊藤修君) 速記始めて。
#92
○中村正雄君 訴追委員と裁判員の身分はどういうふうに見ておるのかという點と、八條と十九條の職權の獨立の意味、これについてお伺いしたい。
#93
○説明員(三浦義男君) 只今の第一點の訴追委員會の委員と、裁判所の裁判員の身分の問題でありますが、お尋ねの御趣旨よく了解しかねる點がありますけれども、訴追委員會、それから彈劾裁判所共に議員から構成はいたされますけれども、只今第二點においてお尋ねになりました獨立してその職權を行うという、あれとも關聯いたしまして、全く訴追委員、それから裁判員として行動いたしまする場合におきましては、議員たる身分を離れた公正な立場に立つた訴追委員であり、裁判員である、かような見地から仕事を行わなければならない、かような意味に身分はあるべきであると考えているわけであります。獨立して職權を行うと申します意味は、これはいわゆる國會の議員の方がなられる場合におきまして、さようなことはないのでありますけれども、議會の立法府の權限とは全然別であつて、それとは全く離れたそれぞれ獨自の獨立した權限を以てそれぞれの訴追委員の仕事なり、裁判所の仕事を行うという意味を現わしているつもりでございます。
#94
○中村正雄君 私の聞きますのは、裁判員の身分をどういう官吏にするのか、官吏でないのかという關係で、それから議員が無論裁判員なり訴追委員になるのですが、これは職權の獨立という場合に、何に對して獨立するのかということをお聞きしているのと、國會の監督を受けるべきものでないから、何も職權の獨立を謳う必要はないのではないか、當然外の掣肘を受けるはずはないということがはつきり分つている。憲法にも國會法にも載つているから分つているのに、なぜ獨立を謳わなければならないかというその必要を伺つているのです。
#95
○説明員(三浦義男君) 只今のお尋ねは、憲法第六十四條にあるように、彈劾裁判司については兩議院の議員で組織する。それから訴追委員會については國會法に衆議院議員で組織するというように規定しておりまして、その身分は議員であるということになるわけであります。それは先程來お話もありました通りに、國會議員の方は國民の代表者として國民の名において裁判をされ、訴追をされるということを端的に現わされたからであろうと思うのでありますが、そういたしますと議員といわゆる立法府の議員たる職責というものとがどういう關係に立つかということが問題になつて參りますので、議員として國民の代表の名においてやるけれども、その仕事は議會と全然別の獨立した職權を行うのだという、かようなことを規定する必要があると考えられますので、さような規定を置いた次第であります。
#96
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこれで散會いたします。
   午後三時四十五分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           中村 正雄君
           奧 主一郎君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  衆議院側
   議院運営委員長 淺沼稻次郎君
   參     事
   (法制部長)  三浦 義男君
  政府委員
   司法事務官
   (行刑局長)  岡田 善一君
ソース: 国立国会図書館
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