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1947/10/01 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第26号
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1947/10/01 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第26号

#1
第001回国会 司法委員会 第26号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
 ることに関する請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○裁判所予備金に関する法律案(内閣
 提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈刻法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○札幌高等裁判所並びに高等檢察廳帶
 廣支部設置に関する陳情(第三百二
 十四号)
○最高裁判所裁判官國民審査法案(衆
 議院送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月一日(水曜日)
   午前十一時一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○民法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより委員会を開きます。本日は民法の一部を改正する法律案を議題にいたします。これに対する質疑に入りたいと思いますから、御質疑の方はどうぞ御発言を願います。
#3
○松村眞一郎君 この度の改正は家族制度を認めないというのでありますが、その家という観念をなくするということからいろいろなところに及んでおるようであるが、大臣の説明を見ましても、家の存在を前提とする各種制度、就中継親子、嫡母庶子の関係はなくなるということになります。結局親族関係を狹くしたという結果になるのでありますが、その点は扶養の義務はなくなるのであります。継親子、嫡母庶子の関係というものを認めないという関係から扶養の義務はなくなるということになるので、保護が少し薄くなるという感じがあるのでありますが、その点はどうでしようか。
#4
○政府委員(奧野健一君) お答えいたします。從來継母、継子の関係――継親子関係は本当の親子の関係ということになつておりましたし、又嫡母と庶子の関係も親子の関係になつておりました。從いまして直系血族、兄弟姉妹が互いに扶養の義務があるという八百七十七條の第一項に該当しておりました関係上、当然扶養の義務があるということになつておりましたが、そのまま継親子、嫡母庶子の関係を、なぜ親子というふうに見ないかということは、これはやはり家をなくするという関係から、強いて犠牲的に親子の関係を認めておるので、これは家という観念を捨てる以上は、無理に親子の関係として認めないでもいいじやないか。併し親子でないが、親族であるのでありまして、いわゆる姻族一等親の関係になるわけであります。ただ姻族一等親の関係だけでは、この八百七十七條では直系血族、兄弟姉妹の間は扶養の義務があるということになつて、姻族一等親の関係では、当然には扶養の義務が出て來ません。ただ八百七十七條の第二項で特別の事情あるときは家事審判所は三等親内の親族関係についても扶養の義務を負わせることができるということになつておりまして、姻族一等親は勿論三等親内の親族でありますから、この間に特に家事審判所において扶養の関係を認めた方がよろしいというふうに思つた場合には、継親子の関係、嫡母庶子の関係はやはり扶養の義務を認めることができる、当然には今までのように親子と見ないが故に、当然の扶養関係はありませんが、特別の事情があるとき、いわゆる同じ家におつて本当に親子というふうな関係になつておるというふうな、特にそういう事情のある場合には、家事審判所は扶養の義務を設定することができるというふうになつて参つたのでありまして、親族関係が狹くなつたといいますか、強いて今までのように擬制的に親子の関係を認めておつた嫡母庶子、或いは継親子という間においては親子の関係を認めず、ただ一般の親族関係、いわゆる姻族の関係だけにした。從つて当然には扶養の義務が発生しない。特に特別な場合だけに限つて家事審判所が特に扶養の義務を認めることができるというふうな限度になつたというふうに御了解願います。
#5
○松村眞一郎君 庶子と嫡母との関係ですが、これは從來庶子といつたような名称をなくした方がよかろうというような思想が一方にあつたわけであります。そんなような思想から止められたのでありますか。或いはもう少し離婚の原因との間に……、今度の離婚の原因の一つとして、裁判上の離婚の場合の七百七十條の第一号に「不貞な行爲」ということがあります。この範囲との間に問題が生じやしないかということを私は疑いを持つておる。それは姦通ということを文字の上からは避けたのでありますが、この精神はやはり姦通というものを包含した思想であるんじやないかと思います。そうしますと、「配偶者に不貞な行爲」ということにあつて、これは男の方からも、女の方からも区別のないことになりますが、同じ考え方をしなければならないのじやないかというように思うのであります。そこで一方において認知という制度があるわけでありますね。そうすると妻が知らない間に認知するということが行われ得ることと思います。そうしてこれを從來庶子と言つたのであります。今度は認知という制度はあるのであります。併し庶子とは言わないというのでありますから、そうすると戸籍関係の方が問題になるのであります。やはり親子の関係は父との間には戸籍上はつきりさせるということになつて、その認知について妻は全然知らないということが起るんじやないかと思います。そうすれば認知は即ち姦通の自白ということになるのじやないかと私は思います。そういう問題はどういうようにお考えになつていらつしやいますか。
 妻が少くとも知らない間に夫が認知をしておる。これをちつと見ると、外にそういう婦人との関係があるんだということを自白しておることになると私は思います。そういうのはやはり不貞な行爲として離婚原因としてお考えになつたのでありますか、どうでありますか。
#6
○政府委員(奧野健一君) 從來は認知によりまして庶子ということになりますが、お説のように庶子という名前を止めたわけであります。言い換えれば、嫡出子と嫡出でない子ということになるわけでありまして、いわゆる從來の私生子及び庶子に当るものは嫡出でない子又は嫡出にあらざる子ということになるわけであります。從いまして庶子という言葉はなくなりましたが、父親との関係において親子であることは勿論であります。その場合に父親の正妻との間において、從來は嫡母庶子の関係で、その間においても親子の関係を擬制しておりますが、今度はその間の関係においては親子の関係を擬制しない。ただ父親である自分の夫を通じての姻族一等親の関係に過ぎないということにいたしたのであります。
 そこでこれを仮に私生兒と呼びまして、私生兒認知という制度を設けて置くことは、やはり行貞の行爲の自白、或いは姦通の自白ということになつて、七百七十條の一号に該当するのではないかというふうな御意見でありますが、まあこれは婚姻前にそういつたような関係の者があつて認知するというふうなこともありましようが、この七百七十條の一号は婚姻後の場合を考えて設けておるわけで、認知するからといつて、必ずしも配偶者という関係のまだない時代における、そういつたような他の者との関係があつたからといつて、当然にはここに入つて來ないと思います。併しすでにもう婚姻後そういつたような婚姻によらざる子供を作り、それを認知するというふうなことがある場合、そういう場合においてはやはり不貞な婚姻ということがあり得ると思うのでありまして、不貞の行爲ということは、只今御指摘のように妻だけはでなく夫も同樣に、いわゆる配偶者の一方が姦通をした、他の男女と関係したというふうな場合を主に考えておるわけであります。そういうわけで私生兒の認知をしたような場合に、その前提として不貞の行爲があつたというふうなことであるならば、やはり七百七十條の離婚の原因になる場合があり得るというふうに考えます。
 戸籍の上におきまして、認知いたしましただけでは当然に父の戸籍に入るということにはならないことにいたしたのでありまして、これ点ま戸籍法を御覧頂かないと分りませんが、戸籍法は現在制定中でありますが、大体親權の場合を御覧になるとその関係がやや明瞭になるかと思います。親權につきましては、八百九十條の四項でありますが、「父が認知した子に対する親權は、父母の協議で父を親權者と定めたときに限り、父がこれを行う。」というので、父を親權者とするということがない限りはやはり母親の方に親權がある。勿論協議で父親にするというようにすることができるようになつております。そうして父がはつきり分つた場合に、子供が父の戸籍に入りたいという場合には、父の氏に変更することを家事審判所に申出て、その許可を受けて父の氏を知乘ることができることになつております。これは七百九十一條に「子が父又は母と氏を異にする場合には、」云々とありまして、認知されても現在当然には父の戸籍にはありませんから、父とは氏を異にする場合でありまして、その場合には家事審判所の許可を受けて、その父又は母の異つた氏に入ることができる。そこで家事審判所はその際その父親の妻の意見等も十分聽きまして、氏の変更の許可をするということになりますので、自分の配偶者の意見を無視して自分の子を認知して、氏を自分のものと同樣なものにして自分の戸籍に入れるということはまずないという考えであります。
#7
○松村眞一郎君 私のお伺いするのは極めて簡單なことをお尋ねしている。妻の知らない間に認知することは姦通の自白ではないかということをお尋ねすればよいのであります。私は完全に姦通の自白だと思います。そはが直ちに離婚の原因になると私は思う。それがどうかということの答弁を得ればよろしい。
#8
○政府委員(奧野健一君) 今度姦通罪ということは止めることになるようでありますが、他の夫婦以外の者の肉体的交渉があることがまあ姦通ということでありますれば、そういうことになりましようと思いますが、ただ婚姻前に他の男女と関係があつたというのを婚姻後認知したというような場合は、いわゆるここの配偶者の不貞行爲ということに当然なるかどうかはやはり疑問じやないかと思います。これは婚姻後の、いわゆる配偶者たる地位を得たる後の不貞行爲を大体考えておるわけであります。
#9
○松村眞一郎君 問題をそう横に外れることをちよつと止めて貰いたい。私は明瞭に言つておる。夫婦が結婚してから後のことを言つておる。結婚してから後の私生兒といつてはおかしいが、認知したならば、それは明らかに姦通の自白ではないか。初めから私は姦通ということを申しておる。結婚後のことを言つておる。結婚前のことを言つておるのではない。そういうような関係で七百七十條の不貞というものの定義をはつきりして置く必要があると思う。
 更に私は言葉を換えてお尋ねいたしますが、不貞の行爲というのは、配偶者が結婚後他の配偶者以外の者と姦通、といつては何だが、和姦をした場合には、これは不貞の行爲、こういうふうにこれはお考えになつたのかどうかということをお尋ねする。それであれば、明瞭に妻の同意なくして認知した場合には、これは姦通の自白であるということは明瞭であります。ただそれだけお尋ねしておるのであります。
#10
○政府委員(奧野健一君) 婚姻後配偶者の同意なくして、他の男女と肉体的関係を持つということは、ここの不貞という意味に考えております。
#11
○松村眞一郎君 問題は総則の方に移りますが、この民法は憲法の規定を受けて均分相続ということにされたわけであります。そうしますというと、均分の相続から必ず生じて來るものは私は共有の関係だと思います。そういうふうな共有の関係にいて非常に深切に考慮した規定が要るのじやないかと思うのでありますが、そういうようなことについての御考慮は、今度の改正案には周到に行き渡つておるかどうかということを実は疑う者であります。或いはそういうことは次の改正の時に考えるというようなことで留保されましたかどうですか存じませんが、余程將來のことを考えませんというと、均分々々で進んで行けば必ず共有が存続すると思います。その場合にいろいろな問題が私は起ると思います。そんなことを相当に予測することの立法が必要じやないか、共有のまま、或いは農業とか普通の商工業とかいうようなものが共同経営の形で、默つておれば行われて行くということについて制度的な考慮が一般的になされないというと、立法として余り深切でないのじやないかと私は思うのです。共有の関係、分割の関係についてどのくらいの審議をされたのでありますか、若しそういうようなことについて何かの資料があれば、均分相続の善後策といいますか、それをよく調えて行くことについてのいろいろな材料でもあれば提供して頂きたいと思うのであります。或いは審議会でそんなことは余り研究しなかつたかどうか、その点を伺いたい。
#12
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな点でありまして、一應從來の遺産相続に関する規定をそのまま採用いたしたのでありますので、その共同相続人のある場合の共有の関係、それが又更に分割される場合のいろいろな関係については不十分な点があると考えます。そこで成るべく近い機会にこういうものに対する根本的な再檢討を加えて行きたいというふうに実は思つておるわけで、從來余り家督相続ばかりで、遺産相続というのが行われてなかつたので、現在の遺産相続の規定が今度は本則になるということになると、現在のままでは或いは適当でないものが相当あるのではないかというふうに考てえおるので、その点は更に再檢討をいたしたいというふうに考えております。
 併しながら全然その点について考慮を拂わなかつたわけではないのでありまして、先ず分割に関しては、例えば九百六條或いは九百七條という規定等も新らしく設けまして、いわゆる分割は共有関係が止んで分割になる、その分割はどういうふうな方針であるということを九百六條に掲げ、その分割は第九百七條で共同相続人の協議で先ず決める、協議ができない場合に家事審判所がこれに関係して行く、その場合に家事審判所は遺産の全部又は一部について分割を禁じで、例えば営業用の店舗であるような場合には、これを分割するということは実は適当でないというふうな場合もありましようし、又相続人が皆幼少で一本立ちができないというような場合に分割することは適当でないというような場合もありましようし、そういつたような場合に、分割を一定の期間禁止することができる途も開いたわけであります。そうして分割につきましては九百六條にありまするように、遺産に属する物又は権利の種類とか性質とか、各相続人の職業とか、その他一切の事情を考慮してやるわけで、必ずしも現場を分割するというふうなことじやなく、或いは或る一人に商賣をやらして、その外の者には金でやる、外の財産をやる、或いは借金の形で他の共同相続人に金を分配するというふうに、いろいろ実情に應じた分割の方法をやり得ることを考えたのであります。
 勿論これだけでは不十分でありますから、農地のようなものにつきましては、もうすでに御審議中と思いますが、農業資産の相続の別例にする法律を出しまして、或る家産制度にやや近い考え方を採つた農地の細分による農業経営の支障を除くための特別法を拵えたわけであります。尚その外商業その他の業務についても、そういつたような特別法が要るかというようなことは、将來更に研究いたしたいと思いますが、取敢えず農地は分割可能なものでありますから、これはどうしても手を打たなければならないというふうに考えたのであります。一般の商工業のようなものは、これを分割しようといつてもちよつと分割ができない。農地のように幾らでも細分できる性質のものではありませんので、それは恐らく当事者の協議或いは家事審判所のアドヴァイス等によつて、適当にそこはうまく行くんではないかということで、取敢えず農地だけについてそういつたような特別法を作つたわけであります。
 それは分割の場合の問題でありますが、それから分割に至るまでの共同相続の関係、これは共有の関係になるのでありまして、その場合に共同相続人が負担した債務は分割されるのか、或いは連帶的になるのかというふうな問題もありますし、そうして又共同相続人の中の一人が限定承認をする他の者が單純承認をするというふうに、ばらばらにいたします場合には非常に法律関達が混乱いたしますので、特に九百二十三條という規定を新らしく設けまして、数人が共同相続人である場合には、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみこれがすることができるという法律関係を一本にいたしまして、尚それに関聯いたしまして九百三十六條でありますとか、或いは九百三十七條の規定を新らしく加えたのであります。そういう意味で共同相続人の共有関係に関する或る一定の手当をいたし、又分割の場合においても多少の考慮を拂つたつもりでありますが、今後更にこれらの点について再檢討をいたしたいというふうに考えております。
#13
○松村眞一郎君 只今の御答弁では再檢討する、分割と共有関係については取敢えずこの程度の規定を置いたのであるという御答弁でありますが、これは引続いて御研究になると了解してよいのでありますね。
#14
○政府委員(奧野健一君) さようでございます。
#15
○松村眞一郎君 均分相続に関する前後措置と申しますか、それについてはこの度の改正ではまだ不十分であつて、引続きこの点については考慮するということの御答弁のあつたことを私は非常に喜ぶ者であります。この度の改正によりますと、「親族」、「相続」の関係は一應これで改正が整つたのであります。これから農地の部分は「親族」、「相続」を除いた方の部分の研究であるがごとき形がここに現われるのでありますけれども、それはそうでない、これは取敢えずのことであるということに了解したことを私は非常に喜ぶ者であります。
 それについて申上げたいのは、スイスの民法を見ますと、これは農政局……農林省の方から出してある資料であります。破産に関する立法例というものを農政局から出しておりますが、その中にスイスの民法の飜訳の規定が大分載つております。それを見ますと、共有の場合について、なかなか詳細に亘つて考慮がここにできております。私は均分相続の場合において考えなければならん問題は、今の分割の場合よりも共有の場合の考慮が余程よいのじやないか。一々分割かるということが可能であるかどうか。むしろこのままに置いて置くということが相当行われるのじやないか。從來の遺産相続なれば大体家族の遺産の分配のような場合であります。大抵は共同相続人が自分の相続権を放棄するような関係で行われている。今度のは戸主に当るものの財産の分割になります。これは余程考えないといけない。将來のいろいろな財産制度の上にも影響を生じまするし、経済のいろいろな機構についての影響も非常に重大だと私は考えます。分割の場合の考慮は勿論でありますけれども、共有の場合の考慮を相当にする必要があると私は思うのであります。それと同時に家産に関する立法令は、いろいろ考えさせられるような参考資料が此処に出ておりますが、例えば分割をしましても、分割禁止の標準というものが又なければいかんと思います。いろいろな事業関係から見てそのような考慮も亦ひとり司法省だけの問題ではなく、農林省だけの問題ではなく、廣く全般についてそういうことが必要だと思いますから、引続いての御考慮として、政府の方でも考え、我々の方でも考えて行きたい、こういうふうに考えております。
#16
○宮城タマヨ君 子供の籍のことでちよつと伺いたいのでございますけれども、今まで捨子でございますとか、それから特別の事情のございます子供の籍は、一家創設によつて籍を新らたに起すことができておりますが、それを利用してと申しますが、惡用してと申しますか、姦通によつて生まれました子供の父の籍にも入れたくないし、私生子として母の籍にも入れたくないときに、一家創設をさせて二人ともの名前を隠しておつたということが、今までは実際に行われておつたのであります。今度はそういうことはどういうふうになるのでございましようか。
#17
○政府委員(奧野健一君) お説のように今までは捨子の場合には一家創立というようなことで、それを惡用しておつたという例を我々も耳にいたしております。併し今後は、本当に捨子であればやはり今までと同じような取扱いにはなるつもりでありますが、今度はその点はどうしたつて屆出の関係が、非常に詳しくいろいろな環境を書かなければならない関係上、何といいますか、戸籍の関係者と話合いでそういつたような取扱いは今後は非常にできなくなつているわけであります。尚事実上本当に捨子があつて、警官がこれを拾つて、何処の子供であるかも全然分らない場合は、やはり從來と同じように、一應一家創立の手続をいたさなければならない。一家創立といいませんが、新らしく氏を決めて戸籍を作らなけいばならないと思います。その場合に捨子ではなく、いわゆる從來は何といいますか、私生子があつた場合に認知して父の家に入る。ところが父の家は戸主が頑張つておつて、どうしても同意しないが故に、父の家に入れない。そこで母の家に当然入るわけでありますが、やはりその場合に母が家族であるという場合は、その家の戸主が同意しなければ母の家にも入れないということになる。そうしますと、母の家にも入れないということになるので一家を創立するということになつておつたのでありますが、今度は家という関係がなくなり、戸主が自分の戸籍の中に入ることを拒むといつたような権利もなくなりましたので、これは本当の捨子の場合は別でありますが、母の家にも入れないからといつて一家を創立するといつたようなことはない、当然母親の戸籍に入るということになる。その場合戸主がおつて妨げたが故に一家を創立するということはできなくなつたのであります。その意味で、今までの一家創立を惡用するということは全然なくなるわけであります。
#18
○松村眞一郎君 遺留分の規定の千二十八條のところで、兄弟姉妹については遺留分の規定がないのでありますが、これはどういう理由でありましようか。兄弟姉妹の遺留分は認めないというわけですか。
#19
○政府委員(奧野健一君) これは從來の家督、遺産相続におきましては、直系卑属、それから配遇者、それから直系尊属、その次に戸主が最後の相続人になる順序であります。而して戸主につきましては從來遺留分がなかつたわけであります。そこで戸主というものはなくなつて、そのままだと國庫に帰属してしまうのでありますが、尚兄弟姉妹があれば、やはり近親の関係から兄弟姉妹に相続せしめたらよいのではないかというので、まあ戸主に代る意味で兄弟姉妹というのを持つて参りまして、從來戸主に遺留分がなかつたと同じ考えで、兄弟姉妹に遺留分を與えなかつたのでありますが、実際上におきましても、兄弟姉妹に行ぐかも知れんというふうな場合でありますと、遺留分まで兄弟姉妹に確保して、相続の後の経済的確保を兄弟姉妹までやる必要もなかろうという実際上の問題と、まあ現行法の戸主に代るものでも、從來の戸主には遺留分がなかつたというふうな両方の関係から、兄弟姉妹だけには遺留分を特に確保しなかつたわけであります。
#20
○松村眞一郎君 私は從來の成文を、どういう根拠で遺留分の範囲を決めたかということに疑いを拔くのであります。私はむしろ扶養の義務と遺留分というものは表裏の関係を持たしたらよいのではないかという感じを持つのであります。なぜかというと、八百七十七條によりますと、兄弟姉妹互いに扶養の義務を持つておる。そうしますと、親が死亡した後にも互いに扶養の義務を持つておるということは継続するわけであります。そうすればそういう関係も考慮して遺留分の方にも認めておつた方がよいのではないか。だだ遺留分は從來認めなかつたとか、認めたとかいうものでなく、遺留分の本質を何処に置くかという根本論をいたしたのであります。それは扶養義務と表裏を持たした方が論理的に立つのではないか。從來はどういう関係で遺留分を持たしたか存じませんが、私はそう考える。遺留分と扶養義務というものと表裏を持たせた方がよくはないかと自分は思うのですが、そんな考慮はなかつたかどうかということを伺うのであります。
#21
○政府委員(奧野健一君) そういうお考え方も一理であると思います。從來やはり戸主に最後の扶養義務が実はあつたのでありますが、にも拘わらず遺留分が戸主にはなかつたのであります。併しそれは單なる理屈でありますが、実際としては、扶養義務と遺留分を牽連せしめて考えるという考え方も一つの考え方と存じます。ただ一般的に考えまして、やはり遺留分というのは、私有財産制を認めておる以上、遺言の自由といいますか、遺贈の自由、死後の自分の財産の遺贈の自由ということを認めるという要求と、それから尚相続人を法律上法定相続主義を認める以上は、やはり相続人の経済的保障、生活の保障ということのために、遺言による財産の自由処分に対する制限を加えることも考えなければならないという、両方のまあ妥協が遺留分という制度になろうと思うので、遺留分というものはできるだけ少くして、自分の財産である以上は、その財産に対する処分の自由をできるだけ認め、最少限度相続人の生活の保障というような意味から遺留分を認めるが、これはできるだけまあ遠慮勝ちに認めるべきではないかというように考えますので、できるだけ遺留分の限度を拡げないというような頭から、從來戸主が第四番目に來る順位でありましたが、そういうものに遺留分を與えていないという、そこへ代るものであるからという理由で、実は與えないことにいたしたのでありますが、お説の点も今後十分斟酌して考えてみたいと考えております。
#22
○松村眞一郎君 遺留分の制度については、今御答弁になりましたごとく、相続人の自由財産処分権に関する保護の関係でありますから、余程重要に考えなければならんと思います。ところが、近代の立法は、相続税というものを非常に高くしておるのでありますから、事実上遺留分というものはだんだん侵蝕されておるという感じを私は持つておるのであります。そうすれば、そんな傾向を考えますというと、殆ど相続人に残る分量というものは價値がだんだん減つて來るのではないかという氣がするのであります。そうしますというと、遺留分の関係と相続税などの考慮と、相続人なるものの保護というような立場から考えて、從來のごとく三分の一とか二分一とかという制度がいいのであるか惡いのであるかということも、一つの問題ではないかと思うのでありますが、そういうようなことについては、余り研究はなかつたのでしようか。遺留分の分量についての問題です。
 他の國の立法を、私まだよく研究しておりません。外國などの立法の遺留分に対する変遷は、どんなふうになつておるものでしようか。余程これは考えなければならんのじやないかと思います。今申しましたような関係で、國家が相続ということに余り重点を置かないで、そういう無償の財産の継承というようなことについては重きを置かないという傾向から、私は相続税というものがだんだん増加して來るのじやないかと思う。そうすると遺留分というような問題も、そういう考慮をしての、何らかここに割当というようなものが出て來るのじやないかというような考えも起るのですが、外國の立法はどうでしようか、御研究になつたことがありましようか。
#23
○政府委員(奧野健一君) 御承知のようにアメリカ等におきましては、やはり遺言による財産の処分の自由というものを非常に高く尊重しておりますので、遺留分という制度はないように心得ております。ドイツ等におきましては、ブフリヒトタイルというので遺留分の制度がありますが、英米のように遺言に重きを置く國におきましては、遺留分の制度はないのであります。そこで結局相続はすべて遺言によつてやる、いわゆる被相続人の意見を飽くまで尊重するという主義を採りますれば、これは自由に処分ができる。誰を相続人にするかというようなことも、すべて自由であるという説を採ることも一つの考えでありましよう。そういう場合にも遺留分というものは全然なくしていいと考えます。ただ我が國の從來の考え方から行きますると、やはり相続人というものは法律で大体法定して行く。誰が相続人になるかということを法律で予め決める以上は、やはりそれに対して或る程度の経済的保護という意味で、遺留分というものはどうしても不可分になつて來るのじやないかというので、我が國におきましては、從來と同じように法定相続主義を採りました関係上、遺留分を認めることにいたしたのであります。
 そこで遺留分の限度をどの程度に置くかということは、非常に重要な問題と考えます。要するにやはり直系卑属或いは配偶者というようなものが相続人である場合には厚く、そうでない場合には薄くしていいんではないか。兄弟姉妹にまでなると遺留分がなくてもいいんではないかというふうに考えたわけであります。御説のように、相続ということは不労所得といいますか、そのまま被相続人の財産を労せずして得るわけでありますから、これに対しては國家が相当干渉を持ち、相続税等の税率を多くするというふうな考えも、近代的にそういう傾向にあるのでありますが、それと又別に、やはり遺留分の制度を併存せしめて置くということも必要であろうと思うのでありまして、これらの点は尚篤と將來檢討をしたいと思いますが、まあ取敢えず從來の制度をできるだけ余り大変革をいたさないという考えで、いわゆる自由遺贈主義を採らなかつた結果、やはり法定相続制度を採つた以上は、從來通り遺留分という制度を認めて置こうということで、今囘はこういうふうに、從來通り遺留分という制度を認めて行つたわけであります。
#24
○松村眞一郎君 七百五十三條でありますが、未成年者が婚姻をしたときはこれによつて成年に達したものとみなすというようなことは、これは私権関係では、どの場合でも成年として扱うという、こういう思想であると思います。適用する範囲は、私法に関する限りはすべてこれで行くということであると思います。刑法の方の関係は勿論除かれますけれども、民法としての適用の範囲、商法としてもそうであらうと思いますが、それでよろしいのでありますか。
#25
○政府委員(奧野健一君) 民法、商法という私法関係に限つての考えであります。例えば未成年者禁酒或いは禁煙というようなものにまで、これを成年者とみなすというつもりではなく、私法関係のいわゆる無能力者として、法律行為の能力の関係においては成年者とみなすという意味であります。
#26
○松村眞一郎君 この刑法の姦通の関係で、この間も刑事の方の政府委員の方にお伺いしたのですが、從來は民法上の不法行為の請求権を有する夫権の侵害として認めておつたという説明でありますけれども、將來はどういう方法で相姦者に対する訴えの根拠を説明し得ることになりましようか。
 姦通罪が廃止されている刑法の方の草案の関係を一貫した場合、どういうような工合になりますか。民法の関係で御覧になつて………
#27
○政府委員(奧野健一君) やはりこの点は、この改正法におきましてもお互いに誠実の義務といいますか、お互いに夫婦相互間に貞操の義務があるというふうに考えております。言い換えれば、相互に貞操を要求する夫婦権といいますか、夫だけではありません、妻からもそういう要求をする權利があろうと思うのでありまして、これは男女両配偶者にそういう、お互いに貞操を守ることを要求する權利がある。從來ならば夫権に該当すると思いますが、夫婦共にそういう権利がある、やはりその権利の侵害というように、民法上の不法行為の観点から見ると、そういうふうになろうかと考えます。
#28
○松村眞一郎君 今の説明は、夫婦間の問題だと思いますが、私のは、第三者、相姦者に対する請求権の根拠ですね、それをどういうように説明しますか。民法の改正、刑法の改正の結果、その権利関係が変更しやしないかということの疑いであります。
#29
○政府委員(奧野健一君) それは夫婦相互に、そういう請求権といいますか、そういう権利はありますが、これは第三者もこれを害するということは許されないので、やはり第三者がそれを害すれば、第三者に対して、そういう権利の侵害として、不法行為の損害賠償請求権があるというように見ていいものではないか。即ち刑法でたとい姦通罪が廃止になりましても、民法上夫婦のそういう権利義務という関係は、民法上依然としてあるのでありまするから、その民法上の夫婦関係から生ずるそういう権利の侵害として、第三者に対して損害賠償を請求する権利というようなものを認めていいんじやないかと思います。
#30
○松村眞一郎君 第三者関係は、少し私まだ理解し兼ねますが、第三者が從來は夫婦関係を破壊したという思想で私は訴え得ると思います。從來でもです。將來でもその議論でいいんじやないかと思いますが、それは夫権という問題でなくて、夫婦関係という或る不可侵権を持ちているという私は解釈です。それは夫婦の貞操義務というものの相互関係を外から侵害して來るという意味においての不可侵権の侵害であるから、それで不法行為の根拠があるというように考えております。それであれば、この姦通という行為が不貞の行為として、民法でもこれから尚強くこれは見るわけでしよう。男の姦通もこれは認める意味で先程も御説明になつているようでありますが、そうすれば、その関係は、民法の改正によつて却つて強くなつたのではないかという感じが私はする。この民法の改正では、從來は姦通罪というものの規定の妻に関する部分があつて、夫の方は姦淫罪の別の條項で離婚の原因になつておつたと思います。今度は不貞の行為というので、両方共同じ立場に立つておるという先程の御説明でありましたが、結局夫の方の貞操義務が強くなつたのではないかと私は思います。民法の方面では……。そうすると、不法行為の関係も、その意味において從來よりも弱くはならない、同じ程度の強さがあるのではないかというように解釈しております。どういうような工合に解釈しておられますか。
#31
○政府委員(奧野健一君) その通りであると考えております。從來よりもむしろ夫婦間の相互の協力ということは、七百五十二條で強く協力扶助の関係を認めているのでありまして、その関係を他から侵害されるという場合には、これは夫婦の権利といいますか、或いは夫婦権、或いは配偶者の権利といいますか、その権利侵害として、そのものがやまり他の第三者にも対抗し得る権利、現在債権でも不可侵権を持つていると言われておるくらいでありますからその夫婦間の誠実を認める、そういう夫婦間の権利は、第三者によつて侵害された場合には、やはり不可侵性を持つておつて、それに対して損害賠償の権利を認めることは、從來より以上強く保護されることになるというふうに考えております。
#32
○委員長(伊藤修君) ではこの程度で散会いたします。
   午前十一時五十八分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   委員
           奧 主一郎君
           水久保甚作君
           鈴木 順一君
           岡部  常君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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