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1947/10/03 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第28号
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1947/10/03 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第28号

#1
第001回国会 司法委員会 第28号
  付託事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部設置する
 ことに関する願請(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
 (第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
 情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○家事審判法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
 関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
 (第百四十五号)
○裁判官及びその他の裁判所職員の分
 限に関する法律案(内閣提出)
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
○裁判官彈劾法案(衆議院提出)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○札幌高等裁判所並びに高等檢察廳帶
 廣支部設置に関する陳情(第三百二
 十四号)
○最高裁判所裁判官國民審査法案(衆
 議院送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月三日(金曜日)
   午前十一時一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○民法の一部を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開会いたします。昨日に引続きまして民法の一部を改正する法律案の質疑を継続いたします。
#3
○岡部常君 改正案の第八百四十一條の規定についてお伺いをしたいと思います。未成年の子が禁治産の宣告を受けたときには、改正案におきましては、家事審判所が後見人を選定すべきことになつております。從つて父母以外の者が後見人に選任せられることもあり得るのでありますが、これを改めて父母共同して親権を行なつておるようなときには、その協議によつて後見人になる者を定め、その協議が整わない場合に、家事審判所に請求をして、父母のいずれかの一方を以て後見人に選任せしめるようにしてはどうかというふうに考えられるのであります。その点に関するお考えを承りたいと思います。
#4
○政府委員(奧野健一君) その点も御尤もな点でありまして、実は現行法におきましては、親権を行う父又は母が未成年者の子が禁治産の宣告を受けた場合に、当然に後見人となることになつておりましたのを、これを改めて、そういう場合には禁治産になりますと家事審判所が後見人を選定するということにいたしたのであります。
 実は親権というものと、後見というものはやや内容を異にいたしておるのでありまして、從いまして親権者が当然に後見人になるということにいたしますと、婚姻中の場合でありますと、父母が共同後見人ということにならざるを得ない。然るに、後見についてはやはり後見人は一人でなければならないという從來の九百六條、今度の八百四十三條の規定、やはり後見についてはやや親権と異にして、專ら禁治産者の監護や、法律行爲等についても、法廷代理人としていろいろ働かなければならないので、共同後見ということは却つて法律関係が煩わしくなる。親権の場合は、父母が親としての愛情によつてこれを保育して行くということであるので、これは共同親権でもよろしいが、後見のときには、どうしても一人の方がよろしい。そうなると現行法のままを踏襲して行きますと、父母が共同後見ということになつてまずいというので、いつそそういう場合には家事審判所が選ぶということにしたい。尤もこれは実際問題としましては、家事審判所は恐らく親権者の中の一人を後見人として選任するであろうことは十分予想できるのでありまして、そういう意味を以ちまして、後見人は成るべく一人の方がいいというような関係から、親権者が法定後見人になるという現行の制度を止めたわけであります。そこで只今お話のように父母が協議してどちらか一人に決める、協議が調わなければ家事審判所が決めるという考え方もこれは非常によい考え方と存じます。実際の狙いとしては、家事審判所が選任する場合において、これは父母兩方とよく協議をして適当に決めるだろうという予想の下にいたしたので、狙いは今岡部委員の言われることと同じようなつもりであります。法文の上に出さなかつたに過ぎないわけであります。
#5
○岡部常君 やはり後見に関することでございます。後見と後見監督の関係であります。後見人が辞任する、その他の事由で更送した場合に、本來の後見監督という職務から考えまして、後見監督人を変更することが必要であろうと考えるのでありますが、それに関する規定がないようでありますが、これは設けてはいかがかと考えるのであります。その点を一つ……。
#6
○政府委員(奧野健一君) 今度は家事審判所ができまして、後見の事務の監督というふうなことは、今までと違いまして、非常に親切に後見の監督等もいたすことになりますので、実は後見監督人という制度は從來のように必ず置かなければならない制度とはいたしませんで、置いてもよし、置かなくてもいいという任意の制度にいたしましたのが八百四十九條であります。そういう考えからいたしまして、後見人の変つたときに若し後見監督人があつた場合に、これを必ず更送するというふうな点についても、それ程神経質に考えなくともいいのではないか、殊にすべて後見事務については家事審判所が監督いたしておりますので、そういう関係からいたしまして、又現行法のように必ず後見人がなければならないという建前を取りません関係から、その点は相当裕りのあるように改正したわけであります。
#7
○岡部常君 ちよつと順序を間違いました。少し遡ります。轉倒いたしましたが七百七十五條であります。本條におきましては前條の否認権、嫡出の否認をする場合、「否認権は、子又は親権を行う母に対する訴によつてこれを行う。親権を行う母がないときは、家事審判所は、特別代理人を選任しなければならない。」となつております。即ちこれによりますると、否認権の訴えは通常裁判所に提起することになつておるのでありますが、特別代理人の選任につきましては、その訴えに関係のない家事審判所に選任をさせるということになつておるのであります。本來この選任というものは、いわば非訟事件的性質を有すると見られる関係からいたしまして、家事審判所の管轄とするという考えのように推測できるのであります。実際問題を考えますると、受訴裁判所、現に訴訟の係つておりまする受訴裁判所に右の選任をなさしめた方が、実際の事情にぴつたり合うのではないか、事務管掌上も便宜が多かろうと思うのでありますが、この点のお考えを承つて置きたい。
#8
○政府委員(奧野健一君) お説御尤もと考えます。実は通常裁判所と家事審判所との關係について、そういつたように分れる場合が相當……他の場合、例えば離婚の訴訟は通常裁判所、ところが、その場合親権者を誰に決めるかというようなことが家事審判所というふうなのがあつたり、或いは又その他監護者を決めるというような場合についても、そういうふうに分れる場合があるわけでありますが、今度の家事審判法におきましては、大体そういつたような嫡出子否認の訴えのような事件も、すべて一應家事審判所に來るということに、即ちそれは、まあ通常裁判所に行つても、先ず一應家事審判所でいろいろ話合いを進めて見るという意味で、家事審判所に廻すことになつておりますので、実際問題の運用といたしましてはそれ程不便はないという考えであります。尚否認の訴えはどうしても訴訟であるが、時によつては又特別代理人の選任というようなことは、今仰せられましたように非訟事件手続的なものでありますので、それは家事審判の方の審判事件にいたすというような考えなら二つに分かれるということになりましたが、併し実際の運用としてはすべて一應調停前置主義を採ります関係上、一應すべて家事審判所に参りますから、その点は運用よろしきを得ることができるというふうに考えます。
#9
○岡部常君 然らば、その場合に、裁判所と家事審判所の連絡は、具體的にどういうふうにされるおつもりでありますか、その点もお教え願いたい。
#10
○政府委員(奧野健一君) 家事裁判所は、大きな地方裁判所所在地の所では、できれば独立して建物でも持ちたいと思いますが、現在においてはそういう余裕もありません。ただ專門の家事審判をやる審判の專門の判事が配置される。併し大体同じ地方裁判所なら地方裁判所の建物の中に居るわけでありますから、その通常訴訟部との連絡は極めて密に爲し得る。それから從來の區裁判所のような人の少い所におきましても、やはり家事審判所というものは置きますが、それは多く普通の民事訴訟を行う判事と兼任の形で、審判事件をやる場合は、家事審判所或いは家事審判官として行いますが、同一人が恐らく訴訟事件も行いますので、これ又相互の連絡は十分つき得ると考えております。
#11
○岡部常君 それでは実際家事審判所と裁判所が遠隔の地にあつて、連絡できないという場合は想像できないわけですね。
#12
○政府委員(奧野健一君) 現在そうであります。
#13
○岡部常君 次の問題に移ります。八百十八條第三項の問題でありますが、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同してこれを行う。但し、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。」と規定してございます。父母が共同してこれを行うということは、両性がこれを平等に行うという憲法の原則から來たものでありましようが、親権の行使、例えば子の財産管理、子の法律行爲を代表して行う場合、殊に訴訟行爲をなす場合に、共同名義でなさなければならないというようなことができまして、不便の場合が多いと考えられるのであります。又一方だけで法律行爲又は訴訟行爲をした場合には、その効力については難問を生ずる場合もあろうと考えられるのであります。それでありますから、父母が共同して行うことを原則、原則としては父母が共同して行う。但し父母が任意にその協議によつて、そのいづれかの一方が親権を行うことを協議によつて定めましたときは、その者が親権を行い得るということにしてはいかがかと考えられるのであります。親権を一方に與え、他方がこれをみずから放棄するということならば、棄権するということであれば、必ずしも両性の本質、平等に反するという非難は起らないであろうと考えるのであります。これに対する御意見を伺いたい。
#14
○政府委員(奧野健一君) 或いはさような共同名義でいろいろ訴訟をやつたり、法律行爲をやるというふうなことがなかなか煩わしいので、そういう意味で後見の場合は、どうしてもやはり一人の方がよろしいというので、先程言つたように共同後見ということを止めたわけであります。親権につきましては、どうしてもやはり父母どちらか一方ということは、両性の平等という建前から困るというので、やはり共同親権を行うということにいたしたのであります。
 そこで、只今お示しのように、その共同行使の方式は恐らくやはり共同名義ということで、父母が共同代理人というふうなことになつてやるということになろうと思いますが、併しこの場合でもやはり一方が一方に更に代理の委任をするというふうなことで、やつてもいいのではないかというふうに考えております。ただ父母の話合いで親権を一方だけに譲つて、自分は親権を放棄するという話合いだけで放棄するというふうなことは、やはりどうも濫用等の虞れもありますし、適当ではないのではないかというので、共同行使ということにいたしておるのでありますが、勿論放棄するようなつもりのある場合においては辞任をすることができる途を八百三十七條に規定しております。これは家事審判所の許可を得なければいけないということになつております。何といいましても親権は権利であると同時に義務でありますから、そう無暗に放棄するということは許されないので、やはり家事審判所の許可に係らしむるのが適当であるというふうに考えております。一方が辞任をすることが許されるならば、他方が後見人になるということになるわけでありますが、そうでなくして夫婦でありながら離婚をするような場合に、これは八百十九條で一方が親権者にならなければならないことになつておりますが、夫婦関係を継続しておりながら、夫婦の間の話合いだけで親権者を一方だけにしてしまうということは、いろいろ弊害も考えられますので、やはり夫婦で婚姻中は共同行使、ただ先程申しましたように、代理、更に一人に委任して、一人で双方を代理するということは、或いは解釈上、共同行使の形式としてそういうことも許されるのではないかというふうに思つております。これは解釈問題でありますが、建前としては共同名義でやるというふうに規定はなつておるわけであります。
#15
○岡部常君 只今の御説明を承つておりましてもやはりちよつと納得の行かない点があるのでありますが、やはり共同行使というところに相当無理が生ずるのではないか、そういう予測をしておるように感ぜられるのであります。殊に八百三十七條において辞任が認められ、家事審判所がこれに関與することになつておることなどからも考えて、むしろ私は最後に申しましたように放棄を認めて置いても一向差支えないように考えられるのであります。この点については意見が分かれておりますからお答えを要求いたしませんが、そういう感じだけを述べて後に審議いたしたいと思うのであります。
 更に引続きましてお尋ねいたしたい。八百九十條は「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」ということにいたしまして、他の相続人となるべき者と同順位といたしておるのであります。而して第九百條におきまして、配偶者の相続分は、直系卑属と共に相続人であるときは三分の一とし、直系尊属と共に相続人であるときは二分の一とし、兄弟姉妹と共に相続人であるときは三分の二と定められておるのであります。併しこういう場合が想像せられるのであります。即ち配偶者が被相続人との婚姻期間が短くて、相続財産を作り上げたということには殆ど寄與するところがないのに拘わらず、他の共同相続人たる直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹等は大いにその財産を作ることに寄與そておるような場合にも、一律に右の相続分を與えるということになる場合もあろうと思いますが、これはいかにも不均衡な感じがいたす、適当でないように考えるのであります。そうでありますから、こういう特殊の事情のある場合には配偶者との共同相続人は法定の相続分の割合の変更を家事審判所に請求し得るものといたしたならばどうであろうか。家事審判所はその姫合には諸般の事情を斟酌して、その割合を定める裁きをなし得ることに改める必要があろうと考えられるのであります。その点についてのお答えを頂きたい。
#16
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな点であります。非常に婚姻の期間が少いのに相続をしたような場合に、そういう不均衡の起ることは重々予想されるのであります。併しながらやはり相続分ということは予め一定して置きませんと、その各場合によつて、婚姻の期間の長短によつておのずからいろいろ違つて來るということでは非常に紛爭が多く起るのではないか、一々の相続について相続分の変更の申請というようなことで、家事審判所を煩わしていろいろ相続の後の紛爭が多く起りやしないかということを虞れまして、やや一律的にこういうふうに決めることは、場合によつては穏当じやないという場合も重々考えられますが、それよりもやはり法律の安定性ということから考えまして、多少の例外的な不均衡な場合があつても已むを得ないというので、むしろ相続分が一定した方がよろしい。然らばどういう割合で一定するかという場合に、やはり被相続人の心持から見て、直系卑属のある場合はやはり直系卑属に次ぎ、直系尊属との場合は五分々々、兄弟姉妹になるとむしろ配偶者の方に多くといつたような工合で一律に決めたわけで、御指摘のように場合によつては不均衡な場合がありますが、やはり相続分については予め一定して置いた方が相続の際に紛爭を未然に防ぐというような意味で、どちらを取るべきかという問題からして、やはり法律としては相続分を限定して置いた方がいいということで、こういうふうに決めたと御了承願います。
#17
○岡部常君 やはり九百條の問題でありますが、第四号に関しまして「直系卑属、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。」という原則が立てられておるのであります。いわゆる均分相続主義というものを以てこの場合の根本則としておるのでありますが、これに対しまするところの例外というものは、今後において必要に應じてこれを認めてよいというお考えではるか。目下審議に掛けられておりまするところの農業資産相続特例法において、農業資産について一大特例を設けることになつておるのでありますが、これはこの外に漁業とか或いは森林その他各種産業について随時特例を設けてもよいのである。若しこういうふうに特例を設けるといたしましたならば、これは憲法の國民の平等原則というものに牴触するようなことはないかという疑いがあるのでありますが、これは憲法に対する根本的の根拠をお示し願いたいと思います。又これは相続制そのものに対する根本問題としていかなる思想理念によるかというようなことも伺つて置けば大変結構だと思うのであります。大分今までとは違つて來ておるのでまないかと考えられるのであります。
#18
○政府委員(奧野健一君) 農地以外に、例えば商賣であるとか、店舗であるとかいうようなものを分割いたしますと、商賣はやつて行けないというような場合にもやや同じ問題が出て來ます。併しながら結局それは遺産の分割という問題でありまして、相続分の分割とは……均分相続にしても分割の方で分割を禁止するとかといつたような方法によつて、いわゆる財産の細分化ということを避けることは勿論できるわけで、この二つの観念は勿論違うわけであります。そこで分割につきましては、当事者の協議で分割しないことにする、共有のままにして置く。或いは分割するにしても、その一人に対して或る営業をやらして、他の者には他の財産があれば他の財産、財産がなければ借金の形で結局均分的に相続するというふうなこともできるわけであります。そこで農地だけにつきましては、商業とか店舗のように分割できないものと違つて、農地は幾らでも細分化できるわけであります。ところが、均分に細分化いたしますと、日本の農業というものが立ち行かなくなつて、日本の農業経営というものが不能に陷り破滅に陷つてしまうということになるわけであります。そこで只今のお話のように、新憲法の精神から行きますと、法の下では皆平等でなければならない。從いまして、均分相続というふうにならざるを得ないことになろうと思います。ところが、一方そういたします結果、農業経営というものが、破滅いたし、日本の農業というものが破壊されて、延いて日本全体に重大な影響を及ぼすという場合は、要するに公共の福祉ということを害することになるわけであります。新憲法においては各人が平等でなければならないという思想と同時に公共の福祉を守るという強い要請もあるので、共にそういう必要のために公共の福祉を守るために、或る例外をそこに認めて、農業資産を承継する者に限つては或る特別な相続分を余計に取らすというふうなことによつて、農業の経営が維持できるのであるということでありますれば、これ又公共の福祉の要求として認めて行くべきではないか、要するに各人が法の下に平等であるという思想と、公共の福祉という思想と、両方の新憲法の要請を考えてみる場合には、やはりそういう特例を設けることも憲法上許されるのではないかという意味で、今回の農業資産の特別な相続の特例を立案いたしたわけであります。
#19
○岡部常君 私の承りたいところもそこでありましたが、その場合には、これは昨日のに遡るわけになりますが、公共の福祉ということが主であるか、或いは私権の尊重ということが主になるかということになつて参るのであります。今の御説明では、公共福祉の方がむしろ主になつておるような感じもいたされるのであります。その点はどういうお考えでありますか。
#20
○政府委長(奧野健一君) それはちよつと一概には申されないのではないかと思います。そこの両者の適当な調和を図つて行くことが一番いいのではないかと思うのであります。
#21
○阿竹齋次郎君 言葉尻を捉えて理屈がましいことを言うのではありませんけれども、今説明を聞くと、公共の福祉のためにならば、憲法の平等の趣旨に背くようなことになつても仕方ないということになるのですか。
#22
○政府委員(奧野健一君) 憲法では、一方において個人の平等という思想も織り込んでおり、又一方において公共の福祉ということのために制約を受けてもいい、又公共の福祉ということを非常に重く憲法で保障している。この両者を適当に調和して行くべきで、どちらを從、どちらを主というふうに決めることはできないのじやないかというふうに思つておるわけであります。
#23
○阿竹齋次郎君 この公共の福祉ということは、見方によつて、人によつて違うのですけれども、それでありますから、それは議論になるところで、憲法には背くと私共は思つておるのですが、農業資産の分配は、財産の分割を禁ずることが目的であつて、不動産の根本的処分を禁ずるものでないと見られておるのです。共同所有権の分割機能を禁ずるものであつて、所有権の否認でないというふうに解釈して、この法案なり農業資産特例法を読んでおるのですが、それはまあ考えが違うから………
#24
○委員長(伊藤修君) 今の岡部さんの御質疑中の産業ですね。林業とか漁業とか農業というものに対して、将來特別の相続法は認める、それは考えられるという、そういうことができ得るかどうか、そういう御質疑がありましたが……。
#25
○政府委員(奧野健一君) その点は今どういうものについて、農業資産同樣な特例を開くかという考えは、現在のところでは持つておりませんけれども、これは各主管の或いは商工省なり農林省なり、いろいろ主管廳とも相談して、そういう点は将來の問題として研究して行きたいというふうに考えております。そこで若し農業資産の相続の特例というものが、憲法上認め得るものであるということであれば、やはり他にそれと同じような法律的要請がある場合には、そういう特例を設けるのも、憲法に違反しないということになるのではないかというふうに考えております。
#26
○阿竹齋次郎君 それは根本的な説明をして貰い方によつて、こつちが分るのであつて、根本義をはつきり決めて貰わなければ、聞かして貰わなければ分らない。憲法に背くか背かんか、背かんのはどういうわけで背かんのだということを、はつきり聞かして貰いたいのです。公共の福祉に副うからということは……それが公共の福祉に副うかどうかということは見方によつて違うのでありますから、甲は公共の福祉であると言うけれども、乙は公共の福祉にあらずと言うことがあるから……
#27
○政府委員(奧野健一君) 結局公共の福祉といつたのは、農業が細分化されて、それでなくてさえ非常に小農になつておる我が國の農業が、更にこういう民法の規定によつて細分化されるということになると農業が潰れてしもう。それでは日本全体の農業というものを破滅に陷らしめるということになつて、公共の福祉を保つことができないという意味で、やはりそこに例外を設ける、公共の福祉を維持するために例外を設けるということは、やはり憲法上許されるのではないかというふうに思つております。
#28
○委員長(伊藤修君) そうすると、公共の福祉のためにということに重きを置いて、個人の平等による均分相続ということは全部破壞されてしまいはしないか。いろいろの相続の特例を設けるということは……。
#29
○政府委員(奧野健一君) そこは結局兼ね合いの問題で、個人の平等、個人の尊嚴の尊重という思想と、公共の福祉という思想をどの程度調和せしむるかという問題になつて、そこはちよつとはつきりした一線を画することはやはりむつかしいんじやないかと思つております。
#30
○阿竹齋次郎君 現階段におきましては、農家経営としては、あなたの言われるように、細分化を止めることが、実際経営として当然しなければならんと思いますが、機構としてはそうしなければならんかも知れませんが、その立法に附くところの根本観念が、あなたと私とはやや違つて來るのではないかと思います。私共は、農業資産相続特例法案、この立法の根本義は、所有権は否認しない、共同所有権の分割機能を禁ずるのが目的であるというので、あの法律が出て來たと思つている。あなたの言うように、例外ということは考えない。
#31
○政府委員(奧野健一君) いわゆる所有権は認める。そうして共有して、これの分割を禁ずるということで十分だろうと思います。ただあの農業資産特例では、農業資産の承継人には、他の者と違つた特別な相続分というものを與えているようでありますが、その意味で他の資産相続人とは別な取扱いをしているという意味で、多少平等に反すると思います。
#32
○阿竹齋次郎君 分りましたが、あなたの御説明によると、公共の福祉になれば、憲法に背いても、例外があつてもかまわんというふうなので、こういう質疑をしたわけです。
#33
○小川友三君 養子禁止に関する規定が不完全でありますので、養子に行つたものが離縁しないで、又外に養子に行けるということでありますが、こうなると、何遍でも養子に行つて、養親が沢山できてしまつて、財産を相続する場合に沢山の財産が入るということになりますが、この点について政府はどういう御意見でありますか。
#34
○政府委員(奧野健一君) 養子に行つた者の更に両養子ということを別に禁止いたしておりませんから、この法律上はできることになつておりますが、事実上そんなに何回も養子に行くということも余り考えられないのじやないかと思います。
#35
○委員長(伊藤修君) 岡部さんの御質問は……
#36
○岡部常君 よろしうございます。
#37
○小川友三君 併し法律を作る立前から申しまして、何遍でも行くという者はないと政府委員は思うかも知れませんが、こうしたせち辛い世の中になると、何遍も行く、そうして何遍も方々から蓄財を持つて來る、これが流行して参ると大変なことになると思います。まして女の子は非常に余つている世の中でありますから、何遍も養子に行つて、離縁もしないで出て來て、又向うえ養子に行くという、幾何級数的なことが起つて來ると大変だと思いますから、この点政府の責任のある答弁を願います。
#38
○政府委員(奧野健一君) 養子を認めるかどうかということが第一問であります。從來のような家を継ぐという思想からではなく、やはり子供の保護、或いは親子の愛情を味わいたいといつたような場合に、全然養子を禁止するということは、まあ日本の國民の感情からいつて適当ではないという意味で、從來の家を継ぐという思想と、やや違つた意味で、養子制度を認めたので、認めるということになると、その養子が更に他の者の養子になることはできないということも、ちよつと法制上いかがかと思つて、特にそういう点について現行法でも別は禁止いたしておりませんので、この法案においても二度目の養子を禁止するといつたような特別な規定を置かなかつたのでありますが、そう何回も養子に轉々として何するということも、ちよつと考えられないと考えまして、大して弊害もなかろうというふうに思つて、從前通り別にその点について制限を置かなかつたわけであります。
#39
○小川友三君 それにつきまして、養子に行つて離縁をして、籍から拔かないで、又養子に行けるということは、いわゆる成年者は親の承認を必要としないのですから、何遍でもできるという危險が多分にありますからして、その点につきまして飽くまでも制限をして貰いたいということを私は主張いたします。
 それから第九百條の第四号ですが、嫡出でない直系卑属の相続分は二分の一だという軽いものになつておりますが、これは同一である、直系と同一であるということを主張するものであります。それは半分やればよいのだからというので、方々で夫はひりつけて歩くとか、女が生んで歩くとかいうことを防止するため、それを同一にしたいということを主張いたします。
 それから八百三十四條と八百三十五條でありますが、農地調整法というのができまして、親が子供にすでに調整法ができる前に地所を沢山買つてやつておる、それを農地調整法によつて一世帶一町以上持つちやいけないということになりまして、この不耕作地は今取上げをどんどん喰つております。本議員も沢山の土地を買つて子供のために持つておりましたのですが、それがどしどしと取上げられております。ところが、子供が大きくなりまして、裁判を起して、これは怪しからん、自分の親父はうちの地所を賣つてしまつた、親権を濫用したからというので、親権を喪失するという裁判を起された場合は、完全にこれに当嵌まると私は思つておりますが、その点の御解釈につきまして……。
#40
○政府委員(奧野健一君) 親が自分の財産をどういうふうに処分するということは、これは親権とは全然関係ありません。ただ子供の相続権を害するような場合は勿論、遺留分を害したような場合に限つて、遺留分の現在によつて相続人が保護されますが、それ以外には、親が自分の財産をいかように処分いたしましても、この親権を濫用したということには当嵌まらないと考えております。
#41
○小川友三君 今の政府委員の御答弁と違うのであります。子供の名義ですでに地所を沢山買つてあります。子供が五人おりますから、五人に何町づつか地所を買つて置きまして、それが一世帶、夫婦だけでも、子供がいても、つつ括めて、一町以上地所を持つちやいかんという今度の農地令であります。そうすると、子供の名義で買つてあつて、そうして子供の名義で登記してある。そういう地所を五人の子供に持つておる。或いは沢山の子供に持つておる。それが一世帶戸主の名義で一切が含まれてしまいまして、農地は今どんどん取上げられております。そうすると、後日になりまして、子供が大きくなつてから、これは私の地所だつた。うちのお父さんは、親権者はこれを自分に断らずに賣つてしまつた。それだから親権を喪失するという八百三十四條と八百三十五條によつて告発されますと、親権を濫用した廉によつて親権を喪失するということになるものでしようか。
#42
○委員長(伊藤修君) その問題は專門委員か何かにお聞き下さい。この法文の解決じやないですから……。
#43
○小川友三君 それでは八百十九條の、「子の出生前に離婚した場合には、親権は、母がこれを行う」という点でありますが、夫が種を播いたのでありますから、一概に母がこれを行うということに法律で決めますると……これは父母協議の上で行うということにした方がよいと思いますが、それについてお伺い申上げます。
 それから八百二十三條の「子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。」ということでありますが、今娘が夜の商賣をやつておる、或いは未成年者で闇屋をやつておる者があるのでありますが、これはどういう工合に子供を処罰するものか。八百二十二條によつて懲戒場に入れる性質のものでありますかどうかということを伺いたい。
#44
○委員長(伊藤修君) 第一段の方はさつき御答弁があつたから……。岡部さんが御質問になりましたから、余り重複は避けて、第二段の方だけ……。第一段については速記録を御覧下さつて……。
#45
○小川友三君 あ、そうですか。
#46
○政府委員(奧野健一君) まあ親権者が未成年の子に対しては監護教育いたし、場合によつては必要な範囲で懲戒をいたすことができるのでありますが、ここにいわゆる懲戒場に入れることができるという、懲戒場というのは、古い言葉を使いましたが、それは結局現在の矯正院とか感化院に入れるということになるわけでありまして、矯正院及び感化院に入れるにつきましては、その方の手続がいろいろあるので、その方の手続を踏んで行く場合には、やはりそういう感化院なり矯正院に入れ得るのでありますが、それには矯正院法等によつてその要件も備わることが必要であります。そこで今の場合がそういうことに該当するかどうか、ちよつとお答えいたし兼ねます。
#47
○大野幸一君 七百六十七條に「婚姻によつて氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつて婚姻前の氏に復する。」こうありまして、離婚の場合に婚姻前の氏に復するという規定であるまするが、この夫婦婚姻継続中に子供ができた。そこで夫婦の間で協議をして離婚をする場合に、子供の立場を考え、又妻としても、これから男女平等で、相当社会的地位を得て、その氏において有名にもなつている場合も想像できるのでありまして、これを必ず婚姻前の氏に復するというふうに窮屈にするのではなくて、妻は任意に婚姻前又は婚姻中の夫の氏を称することができるというように改正するのも一法であると思います。又同じく離婚、離縁の場合でも、八百十六條の「養子は、離縁によつて縁組前の氏に復する。」、こういう場合でも必ずこれを強行法的にしなければならんという理由もないように考えますが、こういうふうにお決めになつた理由を承りたい。若し今回において一應こういうことにしたというお話でしたならば、來るべき民法大改正のときに、相当この点について考慮されるかどうかをお伺いしたいと思うのであります。
#48
○政府委員(奧野健一君) その点はいろいろ議論のある点でありまして、衆議院等におきましても非常に問題があつたわけであります。まあ当時考え方によりまして、氏というのは人の称呼といいますか……でありますから、どのように自由にしてもよいのではないかという議論も立ち得ると思います。ただ現段階におけるところの國民感情といたしましては、離婚してしまつたのに、やはり旧姓を名乘るというのはどうかと思う。この法律におきましては、離婚でなく、婚姻を解消する、いわゆる一方が死亡した場合に、死亡によつて婚姻は解消しますが、その場合は、やはり死亡した場合を考えますと、夫の氏を称していてもよいし、又旧姓を名乘ることもできるという自由を與えたのであります。併し離婚の場合は協議で夫婦別れをする、或いは裁判で離婚をして、離婚をしてしまつた後で尚且つ依然として婚姻当時の氏を使つておるということは、やはり今の國民感情からいつて、紛わしくもあるし、どうも適当でないじやないかというので、離婚の場合だけは当然に復氏するということにしたので、これが現在の國民感情に適するのではないかというふうに思つておるわけでありまして、今後いろいろな國民感情がそういう問題について変つて参りました場合には、勿論これらの点について再檢討いたしたいと思つております。
#49
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこの程度で散会いたします。明日は午前十時より民法について質疑を継続いたしたいと思います。
   午後零時四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   委員
           大野 幸一君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  政府委員
   司法事務官
   (民事局長)  奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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